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湯山勇君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
肥料価格安定等臨時措置法案に反対の討論をいたします。
現行肥料二法は、
昭和二十九年に
制定されて以来、農家に対して必要な量の肥料を低廉に
供給する役目を果たし、今日までにおきましても、なお順次肥料
価格が下がる等、それなりに一応の使命を果たしてまいったのでございます。ところが、この数年前から、
政府・自民党の間に、肥料工業者側の要請によりまして、この肥料二法を廃止する、こういう動きが出てまいりました。このような動きに対しまして、現行肥料二法を廃止するということは、農民に対して必要な量を適切な時期に
供給する体制をくずすものであり、また、肥料の
価格を引き上げる意図を持った反農民的なものである、こういうことの理由をもって、この反対運動が猛烈に盛り上がってまいりました。ついに、それによって今日までこの肥料二法を守り抜いてまいったのであります。
ところが、いよいよ本年の七月三十一日をもって現行肥料二法は期限が切れることになりました。
政府・与党は、これに便乗して、いまだ現行法による肥料
審議会があるにもかかわらず、それにはかることを避けて、肥料懇談会という御用諮問機関を設け、現行肥料二法を骨抜きにし、農民の
立場を後退させ、メーカーの
立場を大幅に
強化するこの
法律を提案してまいったのであります。
農民の生産物に対しましては、
流通の合理化あるいは
価格の安定をはかる、こういう名のもとに生鮮食料品の値下げ対策を講じまして、野菜の値下がり、あるいは昨年、一昨年と生産者乳価の引き下げ、あるいはまたバナナの自由化、あるいは最近は黒いうわさのあるレモンの自由化、こういう
流通価格対策によって生産農民を圧迫してまいったのであります。ところが、生産農民のための
流通価格対策であるこの肥料二法は、いまこれを廃止しようとしておるのであります。これは明らかに
政府のとっている態度は矛盾をしております。不公平であります。そして反農民的であります。この意味において、私
どもは断じてこれに反対をする次第であります。(
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以下、簡単にその理由を、項目をあげて申し上げます。
この
法律は、従来の輸出カルテルに加えて、
需要者と協定するというベールをかけてはおりますけれ
ども、公然と
価格カルテルを認めているのであります。これは明らかに独禁法の骨抜きであります。たとえば、生産費について見ますと、生産者側のいう生産費は最高九百三十五円八十銭、一俵についてでありますが、最低は七百三円九十二銭と、二百三十円の開きがあります。強いメーカー側は、どうしても生産費の高いほうについていく。これは今日までの乳価やその他のことを通しても明らかであります。つまり、カルテルの
強化、このことは肥料
価格の値上げに通じている。こういう意味から、私
どもは
賛成のできない点であります。
さらに、現行肥料二法は、内需優先の原則を貫いております。ところが、今回の新しい
法律によっては、内需の確保を輸出の
調整によってはかっていく、こういう間接的な態度をとっております。したがって、従来とられていた生産指示、
調整保管の指示、こういう内需対策は、今回の
法律からは消えております。この
審議にあたって、もし、これで内需が足りなくなったらどうするか、災害等の場合はどうなるのか、労働争議等の場合はどうなるのか、こういう質問が繰り返されました。しかしながら、これについて、労働争議等の場合は、一社一社そう全部が一緒にやることはないだろうから、やらないところから、やるところの地域へ回すのだ、こういう、まことに妙な答弁がなされております。肥料生産がコストが合わなくなって、操短をやっていくというようなのは一社、三社の問題でなくて、全体にわたる問題でございます。労働運動等に対するそのような認識でもって内需を確保するというのでは、とうてい私
どもは安心ができないのであります。
次に申し上げたい点は、
政府は、肥料生産者に対して、今日までに、あるいは体質改善の資金、あるいは輸出赤字の処理等の名目をもって、約三百億円をこえる優遇減税、財政
措置を講じております。しかも、その三百億円の効果がどれだけあらわれているか、どれだけ今後あらわれてくるか、そういうことを、いま見きわめることをしないで、これを廃止して、新しい
法律に切りかえていこう、こういうことでございます。今日までやったことの結果がどうなってもいい、ともかくも、これからはこれでやるのだ、こういうことでございますから、これでは三百億円に対するメーカーの食い逃げを認めるのではないか、こういう批判が出るのもまたやむを得ないことではないかと思うのであります。(
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その四番目は、輸出の赤字転嫁の問題でございます。今日までもいろいろ問題になってまいりました。特に、今日におきましては、硫安は総生産の四割を輸出に向けております。しかし、今日の生産の
状態では、国内
価格と輸出
価格との間にはどうしても開きがある。どうしても輸出赤字が出ることは必至でございまして、私
どもは、一俵について七、八ドル出るのではないか、これに対して
政府の側は、今後の合理化その他によって四ドル程度になる、こういうことを申しております。いずれにしても、輸出赤字の出ることには変わりはございません。その輸出赤字が、新法によりまして農民に転嫁される危険が多分にあるわけでございます。もっと言えば、農民に転嫁される可能性がさらに増大してまいった。これが新法の性格でございます。これについて、
委員会における与党の質問の中には、輸出赤字は当然農民もその半ば程度は持つべきである、こういうことを質問しておる方もあったのでございますが、
政府は、そこまでは肯定いたしませんでした。しかしながら、
政府は、コストの引き下げのために合理化をやっていく、その合理化によってコストダウンした部分を輸出赤字に向ける、こういうことを申しておるのであります。コストの引き下げということは、当然消費者
価格の引き下げに向けられなければならないにもかかわらず、それを輸出の赤字に回すというのであれば、結局、これは結果的には輸出赤字を農民に振り向ける、これと同じことであると思うのでございます。(
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次に申し上げたい点は、今回、従来とっておったマル公をやめて、
価格の決定にあたっては、肥料の生産者と消費者側の代表が話し合いによってきめる、こういうことにしておるのでございます。一体、はたして、今日強い
立場、弱い
立場にある両者が対等に話し合えるという保証がどこにあるでしょうか。現に生産費についても、従来のバルクライン方式によれば七百四十三円九銭、総平均方式によれば七百七十八円六十二銭、それぞれ方式の立て方、ものさしのとり方によって生産費も違っております。ところが、そのどの方式をとるかについて何ら指示がしてございません。もし、不当な
価格になった場合には、
政府は立ち入り検査をする、指導、助言を行なう、最終的には、
政府自身が調停を行なう、こういうたてまえにはなっておりますけれ
ども、この調停には強制権がありません。もし、メーカー側が言うことを聞かない場合には、何ら打つ手がない。これが実情でございます。あるいは、ここが本法のねらいであるかもしれないと思うのでございます。
いずれにいたしましても、以上のような観点から、わが党は、あくまでも現行の肥料二法をさらに二年程度延長する、これを主張してまいりました。しかし、残念ながら、ただいまの委員長報告にありますとおり、これはいれるところとなりませんでした。しかしながら、真に農民を思い、農業を憂えるならば、今回出されたような空文の新法をこそ廃止して、現行法を継続することが私は正しい態度であると思います。このことを、この際さらに強く訴えまして、私の反対討論を終わります。(
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