○
戸叶里子君 私は、ただいま議題となり接した
大気圏内、
宇宙空間及び
水中における
核兵器実験を禁止する
条約、いわゆる部分的核停
条約の
締結の
承認を求むる件について、
日本社会党を代表して、賛成するものであります。(
拍手)
わが国は、世界唯一の原爆被災国として、また、第五福龍丸の事件等多くの犠牲者を出したのみならず、いまなお多くの放射能の影響を受けた人たちがベッドで死を待つ生活をしているのであります。また、放射能を受けた新妻が、生まれ来る子供への影響に不安を感じ、自殺をしたというような、数限りない悲劇があるのであります。したがって、私たちは、核実験を行なうと聞いたとき、怒りを込めて幾たびか
国会において核実験禁止に関する決議を行ない、国際世論に訴え、民間団体も科学者も、それぞれ、実験に抗議する声明書、要望書を発表して、関係各国に実験の中止と全面実験禁止協定の早期
締結の実現を要望してまいりました。私たちのこの悲願は、人間性のある限り、聞きいれられないはずはありません。もちろん、米ソにとっても、もはやオーバーキルにまで達したことを悟ったことや、関係諸国が経済上新しい兵器をふやすために
予算を費やすべきでないとの結論に達したこともありましょう。が、とにかく、ジュネーブの軍縮
委員会において何回かにわたって討議され、今回の部分的核停
条約という結論に達したのであります。
しかし、この
条約は、前文においても明らかにしておりますように、「国際管理のもとにおける全面的、かつ、完全な軍備縮小に関する合意をできる限りすみやかに達成し、その合意により軍備競争を終止させ、かつ、核兵器を含むすべての種類の兵器の生産及び実験への誘因を除去することをその主要な目的として」と、完全軍縮、完全禁止を主要目的としているのであります。
これによっても明らかなように、
条約そのものは、私たちの理想からまだ遠く、問題も多いのであります。たとえば、アメリカのラスク国務長官が昨年この
条約に正式調印したときの発表や、アメリカの外交
委員会での答弁を見ても、「核実験禁止への第一歩にすぎない、核戦争の脅威を終わらせるものではない、核貯蔵を減らさないし、生産を中止させもしない、また、戦時における核兵器の使用を制限させるものでもない」等と発表いたしております。また、日本
政府の
国会での答弁を聞いてみても、「それ自体完全なものでありませんが、このような問題でも合意が見出せるという点は、将来への希望が持てるということであります」との大平外相の答弁や、
佐藤国務大臣の、「漸を追うてその大目的に達するという意味で賛成である」との答弁から見ても、不完全な
条約であるから早く完全なものにしたいとの考えがあらわれております。
すなわち、具体的な問題としてあげられることは、完全軍縮の話し合いのつかない間に、核兵器の実験禁止をすることにとどめたために、核兵器を開発しておらない国は、この
条約に加盟することによって、
大気圏内外及び
水中で実験ができなくなり、実質上核兵器の保有は不可能となりますが、現在の核保有国は、この
条約に加盟しても、無制限に生産し、保有することが許されているのであります。また、他国に売却あるいは譲渡することも禁止していないのであります。その運用のいかんによっては、米英ソの核兵器所有国の核兵器独占と固定化を、さらに確立するような結果にもなりかねないのでありまして、そのことを指摘して、フランス、中共が加盟することを
反対しているようにも見られるのであります。
そこで、私たちは、
条約に加盟した以上、一日も早くこれを完全なものにする義務があります。幸いにして、この
条約の二条には、改正規定があるのであります。それによると、米英ソの原締約国を含む全締約国の過半数の賛成があれば、
条約の改正ができるわけであります。
委員会で、私は大平外務大臣に対し、日本こそ、この際、完全な核兵器の撤廃を提唱すべきであるが、その次善の策として、核兵器保有国は、他国にこれを売却、譲渡、いかなる外国の基地にも置かないということを内容とする
条約を本
条約に補充すべきであるが、そのことを提案する意思がないかどうかを質問いたしました。その
理由は、わが国の領土である沖繩に、現在すでに核兵器が保有されていることや、あるいはまた、日米安保
条約等で、日米間の軍事的提携が強化されればされるほど、わが国にもアメリカの核兵器が持ち込まれるのではなかろうかとの
国民の危惧を除くためにも必要であると感じたからであります。(
拍手)この時宜を得た提案にさえ、外務大臣は、この
条約は五百回の軍縮
委員会の結果できたものであるし、諸国の出力をよく研究して云々という、相変わらずの積極性のない答弁しか得られなかったのであります。との程度の改正にさえ熱意を示さないようでは、全面禁止への努力を
政府は一体持っていられるであろうかと疑わざるを得ないことは、まことに残念でたまりません。(
拍手)
私たちは、一日も早く二条の改正規定を取り上げて、合法的にこの
条約を完全なものにするため、最大の努力が払われなければならないと思うのであります。それと相呼応して、非核武装宣言を世界に強く訴え、日本はいかなる場合にも核兵器を持ち込まないということをはっきりさせることこそ、具体的に全面禁止への行動面への一歩前進として、全世界にアピールすることができると思うのであります。(
拍手)
政府は、この点をぜひ考慮し、実行されるよう心から願うのは私のみではないと思うのであります。
さらに、問題は、この
条約に加盟していない中共、フランス等に対して、拱手傍観していてはなりません。これらの国の望んでいるところは、いずれも全面禁止でありまして、今日のような抜け穴だらけの
条約では、持てる大国には何の影響もなく、持たない国にのみ制限を加えているという不公平な点を是正することこそ大切であります。(
拍手)したがって、前文に示されているような目的に向かって、継続的な努力が払われなくてはなりません。特に、中国に対しては、外相自身
委員会で指摘されておりますように、国連での中国の代表権のないために、全面禁止への実質的な動きも制限されてくるわけでありますから、国連へ中国加盟を積極的に考えることも必要であると思うのであります。(
拍手)これらの努力をしてこそ、初めて
条約の精神も生きてくるのであります。
また、私たちはたん白の摂取を水産魚族にたよっております。したがって、私たちは、
水中汚染、死の灰の恐怖等、これまでの実験によって幾たびか苦しみ、あるときにはノイローゼぎみにさえなってまいりました。ソ連医学アカデミーの発表によりますと、
大気圏内外及び
水中における核兵器の実験を過去数年間のような頻度と強さで継続するならば、生活圏の汚染度は短時間に急激に増大して、人体、特に子供の体内に含まれる放射性物資の蓄積量が許容量をこえるであろうと説明し、人体内に入った放射性物質の照射によって、人間の遺伝機構が破壊されるおそれがあることを考慮に入れなければならないといっております。すなわち、このまま核実験を禁止しなければ、将来の幾世代にもわたって遺伝性疾病と、生まれながらの奇形児が生まれる回数がますます多くなることを指摘したのであります。考えただけでもおそろしいことでございます。また、実験が行なわれていた
期間には、核爆発による生成物の一昼夜の降下量がときどき一平方キロ当たり数百ミリキュリーに達し、日によっては一平方キロ当たり数キュリーに及ぶこともあったのであります。これは実験が行なわれておらないときの放射能の強さの水準に比べて数万倍も高いのであります。
大気圏内外の実験中止後、降下物の放射能は実験中に比べて数百分の一に減少したと言われております。この科学的根拠に基づく調査を見ても、いかに実験の禁止が必要かを強く感じるわけでありまして、この意味から、私たちはこの
条約に賛成するのであります。(
拍手)共産党の方々は、これに
反対されるということは、日本の
国民がこれ以上の放射能をこうむり、奇形児がふえてもかまわないと言われるのでございましょうか。(
拍手)平和を愛する者が平和への一歩前進することに
反対することはどうしても了解できません。
さらに、
条約批准後アメリカは地下実験を二十二回行なったといわれております。いかに
条約で地下実験が禁止されていないとはいえ、当然このことにも反省を促すための要望をしなくては、なかなか全面実験禁止まで前進しないのみならず、私たちの最もおそれている地下実験こそ、合法的なものと考えられる結果になると思うのであります。幸いにして、ちょうどソ連より
連邦閣僚会議第一副
議長のミコヤン氏が日本に訪問されており、フルシチョフ首相よりの手紙を携帯され、その中には日本と共同して、あるいは同時に地下核実験の即時停止を核保有大国に呼びかけようとの提案もあるようであります。(
拍手)まことに喜ばしい限り、ぜひその実現を願ってやみません。
人類の限りなき幸福と世界平和のために、私がこれまで指摘してきた問題点の解決に当たられることを要望して、全画実験禁止への一歩前進のこの
条約に賛成するものでございます。(
拍手)