○武藤山治君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
外国為替及び
外国貿易管理法及び外資に関する
法律の一部を改正する
法律案に関連して、
質疑をいたしたいと存じます。四月一日にIMF八条国に移行するために外貨割り当て制を廃止することを骨子とする法改正でありますので、
質疑は多岐にわたりまするから、聞きこぼしのないよう、明確な御答弁を願いたいと存じます。
まず最初に、
総理大臣に、五点について
お尋ねをいたします。
本日、経済閣僚懇談会を開いて、国際収支改善
対策を検討したようでありますが、短期的措置は、すでに、公定歩合の引き上げ、輸入担保率引き上げなどで、どうやら措置をいたしておるようであります。もちろん、この措置は、
国民大衆に不安を与え、迷惑をかけるという、私どもの立場から言うならば、急激な
経済政策の変更を
意味するのでありますが、とにかくさらに抜本的
対策をどうするかという問題が今回大きな問題になると思うのであります。おそらく
政府はその妙薬を持っておらないのではないかと考えますが、本日の懇談会の結論は一体何か。昨年十二月所得倍増計画の中間
報告では、超高度経済成長のおかげで、生産設備は近代化され、国際競争力を十分持つことになり、この結果、
わが国の経済成長を押えつけていた国際収支の、天井は高くなったと、所得倍増
政策を自画自賛いたしております。
政府がつくった公表の文章であります。天井が高くなったと発表した翌月から逆調幅が拡大されたのであります。ろうばいした
政府は、IMF出資金ゴールド・トランシュを準備高に加え、見せかけの外貨準備で
国民を欺き、さらに三億五百万ドルをIMFから借り入れせざるを得ないありさまであります。しかるに、
池田総理は一昨日の本
会議で、小松議員に答え、外貨準備は予期以上だと、満足、楽観の
姿勢を見せたのであります。これは
総理の単なる主観か、それとも事実の推移がそれほど楽観できる状態なのか、
総理が必要以上に語気強く楽観論をぶてば、
国民は安心をし、国産品愛用運動にも耳をかさないし、業界も実力以上に背伸びをする結果になるでありましょう。その
国民の心理の総和が経済に与える影響は大きいのであります。
総理、人間の心理を忘れてはならないのであります。一国の経済は数字だけでは動かないのであります。バラ色のムードに包んだ所得倍増論をぶち続けることは、現段階では国家、
国民経済に害こそあれ、益するところは皆無であると私は断ずるのであります。(
拍手)対外準備が外貨流出
傾向に耐えられるかどうかという問題も重要でありますが、それ以上に国際収支の大幅変動を招くような
政府の経済運営の
方法に問題があるのであります。本日の閣僚懇談会も、この事態の重大なことを認識したから開かれたのではないか。今日の事態を招いた
責任を痛感し、事実を率直に
国民に訴え、
反省を
国民に示すことが、
民主政治家のとるべき
態度ではないかと私は思うのであります。(
拍手)
総理大臣の心境を
お尋ねいたします。
第二に、外貨準備高の問題であります。いよいよ四月一日からIMF八条国となり、開放体制になるのでありますが、
わが国の外貨準備高は貧弱で、少な過ぎるのではないか。三月末十八億ドルと大蔵
大臣は発表し、さらにIMFからの借り入れゴールド・トランシュ一億八千万ドルを加えると二十億ドル見込めるから、外貨繰りの面では心配ないと
国民を安心させようといたしております。しかし、正味十七億弱しかないのであります。試みに、八条国移行時における
各国の外貨準備高を見ますと、ドイツは七十一億一千九百万ドル、イギリスは三十二億四千五百万ドル、イタリアですら二十九億七千二百万ドルの外資準備を持って八条国に移行したのであります。これらの国と比較して、いかに
わが国の準備高が少ないか、これでも国際収支の天井が高くなったといえましょうか。楽観は禁物ではありますまいか。
首相は、外貨最低限度額は幾らでいいのかという
根拠はむずかしいと
国会で答弁をいたしております。市中銀行筋では、外貨準備高の最低限度額を計算するのに、月間輸入額の三倍と、異常危険準備二億から三億ドル、景気変動準備金三億から四億ドル、合わせて約二十億ドル前後が最高限度額だと説明いたしております。
総理の率いる
政府では、
わが国の外貨準備の最低限度額は幾らくらいを目標としておりますか、明らかにせられたいのであります。
第三に、IMF八条国に移行し、
わが国の円が、ドル、ポンド、マルクなどの主要交換可能通貨の仲間入りをし、基本的には同格になるわけでございますから、現在のごとく
国内の物価騰貴が続きますならば、円の
信用は低下するではありませんか。国際通貨としての円の価値を高めるためには、貨幣価値の安定が緊要だと思うのであります。
日本円の
信用低下を防ぐためにも
対策は重要であります。当面いかなる
対策の用意があるか。物価の面と通貨の面から、それぞれの具体的な
総理の見解を
お尋ねいたしたい。
第四の問題は、円の交換性回復に伴い、一ドル当たりの為替レートが三けたにもなっている円の呼称単位を、そのままでよいかという問題であります。通貨価値を守ろうという心理的効果をねらい、
国民の自信、
外国人の
日本円に対する
信用向上のためにも、呼称単位の切り下げ、すなわちデノミネーションが必要だとの見解もあるが、
総理の考えはいかがでありますか。
第五は、英国、フランスは、中国
政府に対し、アルゼンチンからの小麦輸入代金を年利四%で融資したと、今月二十三日の
新聞は報じております。この弾力的イギリス、フランスの
態度と、自主性なき
池田内閣の
態度を比較するとき、との広大な市場に対する
わが国の立ちおくれを痛感せざるを得ません。
日本の将来を案ぜずにはいられないのであります。(
拍手)さらに、米商務省は、十九日、
外国の企業が
アメリカの技術方式を買ってつくっている商品の中共向け輸出統制を四月一日以降緩和すると発表しました。すなわち、
アメリカは、自国の機械を海外に売りつけるため、自国の利益を
増大するために、間接輸出を認めようというのでありましょう。
わが国の岡崎嘉平太氏は、過般、今後の日中貿易の目標は
政府間通商協定の締結であり、LT貿易がその基礎となるように持っていきたいと語っております。
池田総理が中国との
政府間協定に踏み切るならば、日中貿易は本年度の一億六千万ドルをはるかにこえるでありましょう。
日本の貿易構造の改善にもなるでありましょう。
総理の
決意、所見のほどをお聞かせ願いたいのであります。
さらに、五月までにココム制限の緩和が行なわれると報道されております。
日本はココムから脱退し、南北問題に取り組むこと、東西のかけ橋になることが、現時点における歴史の要請と考えるが、
総理の見解はいかがでありますか。
次に、大蔵
大臣に
お尋ねをいたします。
日本の対外債権債務のアンバランスという問題が、経済の正常発展を阻害しているのではないかという問題であります。十二月末の対外資産を見ますと、合計四十九億七千八百万ドル、債務は七十四億六千万ドルとなっております。差し引き
わが国は、対外資産
関係におきましては二十四億八千万ドルの借金の国であります。負債額が債権を上回る国であります。
わが国の対外債権債務がかくもアンバランスであり、しかも、外貨準備運用のうち、
アメリカ市中銀行への定期預金七億ドルは、経済的
信用の担保ともいうべきものでありましょう。金はわずか二億八千九百万ドルであります。外貨総準備のうち安心して使用できる絶対額は、二十億をはるかに下回る状態であります。しかるに、
総理は、過般、本
会議場を通じて、外貨準備は予期以上であると言って楽観いたしております。
第一は、
わが国の対外債務が二十四億八千二百万ドルも債権額をオーバーしている姿を健全と思うか。かかる姿を解消するために、どんな
施策を実行したらよいと考えるか。
第二点、八条国移行後は、この負債、債権のアンバランスがさらに
増大をすると思うが、見通しはどうか。
第三は、
外国からの債権を
増大して国際収支の均衡をはかる安易な
対策は改めなければならない。いつごろにどういう条件が整えば改められるのか。
第四に、今回の赤字大規模化現象を循環的パターンの再現と見るか、それとも構造的欠陥からくるもので、かなり長期間かような状態が続くと判断をいたしておるか、大蔵
大臣の明快なる御答弁を要求いたします。
次に、外務
大臣に四点ばかり
お尋ねいたします。
輸入貿易管理令に基づき通産
大臣が自由物資を数量割り当て物資に移行させて輸入を制限することができれば、貿易収支悪化を防げると参議院で答弁したようであるが、これには、ガット規約第十九条による特認が必要であると考えるが、特認を受ける考えがあるのかないのか。あるとするならば、受けられると思うのかどうか、見通しのほどを聞きたい。
第二は、国連貿易開発
会議でありますが、
政府は、国連貿易開発
会議をどのように評価しておるのか。
第三に、
日本として、この
会議に臨むにあたり、何か具体的プランを提示するのかしないのか。
第四に、プレビッシュ国連貿易開発
会議事務局長の
報告に対し、
日本政府の統一的見解を示してほしい。もはや古典的な自由貿易の理念によって、またガットのワク内で、低開発地域の直面している問題は解決されないと思うのであります。
世界百二十一九国が
世界貿易の前進について討議をする今回のこの
世界会議、すなわち、南北問題、
世界の富の偏在の問題が、初めて体系的、組織的に検討されることは、国際的協力体制の再編成への胎動が始まったことを
意味するものであります。いまこそ、
わが国は、この
会議に積極的に協力し、中正、公平な低開発国協力に努力すべきだと考える。この機会に、
アメリカ追従をやめ、自主独立の経済外交を樹立すべきだと思うが、外務
大臣の見解をただしたい。(
拍手)
次に、通産
大臣に
お尋ねいたします。
現在の非自由化品目は百八十二品目となり、九二%の自由化をしたわけでありますが、最終的に
あと何%程度自由化するのか。
第二に、その最終目標はいつごろを設定しておるのか。
第三は、非自由化品目中三十七品目の自由化
義務免除以外の品目百四十五品目があるが、業種別に分類すると、どんな種類がウエートを占めているのか。先進国の非自由化品目は、フランス百九、西ドイツ六十五、イタリア六十四、
米国四十三となっておりますが、これらの国と比較して、
日本の百四十五品目はいまだ多いように感ぜられるが、どの程度の品目になるか、最終的目標をお聞かせ願いたい。
さらに、通産省は、輸入に対し、数量ベースに基づく輸入見積もり計画を策定するようだが、この計画で輸入をチェックできるのかどうか。
第五に、ガット規約第十九条に触れないのか。触れるとすれば、
アメリカの業者団体が綿製品の規制をしているがごとく、業者組合を拡大強化する以外に道がないのか。
第六に、近時、
外国資本の
わが国への進出は目に余るものがあります。合弁会社、外資会社、外資導入会社は、
昭和三十七年度末百七十社、三十八年度中に六十ないし七十社増加いたしております。これらの外資系の流入は、中小企業を圧迫し、民族資本が形成されず、実権は
外国に握られ、外資が競争の手段に使われ、競争激化の弊害を生んでおります。解放体制に入ると、一そう
外国資本が入り、民族資本は圧迫されると思う。通産
大臣は何か名案を持っておるのか。なお、外資流入で対外債務が一そう
増大し、
日本経済の自主性がそこなわれる心配はないかどうか。
この点を通産
大臣に
お尋ねいたします。
最後に、企画庁長官に見解を
お尋ねいたします。
外貨予算の廃止によって、これから自由物資の輸入は急増するであろうが、現段階における企画庁の見通しではどの程度輸入が増加する見通しであるか。
第二に、
政府の経済見通しは、企画庁が担当して作成いたしております。貿易収支、経常収支は全く見通しを誤まった。食い違った
原因を明らかにせられたい。
第三は、見通しを立てた
責任者として
責任をとるか、どんな
反省を企画庁長官はいたしておるか。
第四に、国連貿易開発
会議に三月三十日に出発するようでありますが、企画庁長官は
日本政府の意思をどのようにこの
会議に反映しようとしておるのか、
政府できまったものを明らかにしていただきたいのであります。
以上、私は
日本社会党を代表しての
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕