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小松幹君 私は、
日本社会党を代表して、今回日銀によって実施された
公定歩合の
引き上げに伴う政府の
考え方をただすとともに、今日の
日本経済の
問題点をあげて、政府の具体的な施策をお伺いいたしたいと思うのであります。
公定歩合の
引き上げについては、金利を
国際水準にさや寄せするという見地から、
池田内閣は常に一貫して、一律
的金融引き締めはしないと、こう言い切ってまいりました。
公定歩合を上げて一律
的引き締めをするというよりも、
選別融資等によって
量的規制をもって実施しようとする策をとってまいったのでありますが、
衆参両院の
予算委員会の総理並びに
大蔵大臣の発言も、この線に沿って、一律
的引き締めはしないということに終始しておるわけでございます。ことに
大蔵大臣に至っては、
公定歩合の
引き上げは下の下であるとまで、数次にわたって放言しておるのでございます。そうして日銀の
公定歩合引き上げの措置を退け、その実施を今日まで引き延ばさせてきたのでございます。言うならば、政府は、
高度成長政策の道連れに、低
金利政策にしがみついて、
公定歩合の
引き上げを押えてきたのでございます。しかし、それが突然、今回の
公定歩合二厘の
引き上げに踏み切ったということは、一体何を意味するのでございましょうか。円の
交換性の回復とともに、その信用を守り、
国際収支の逆調を戻す、こういう説明をされておりますけれども、この一律
金融引き締め政策への転換は、あるいは
池田内閣の
金利政策の変更を意味するものではないかと思うのであります。はしなくも、このことによって
高度成長政策の破綻を暴露したものであるとも解釈されるわけでございます。(拍手)
私は、この際、総理並びに
大蔵大臣の、食言とまで受け取れるところの態度の豹変、
政策転換の真意をいま一度承りたいと思うわけでございます。
公定歩合の
引き上げは、他の
金融引き締め政策と並行して早期に実施することが、
引き締め政策の実効をあげるのにまことに効果的であったと考えられるのであります。しかるに、政府は、この
引き上げを渋り、日銀の
早期実施意図をくじいて、三カ月にわたってこれを押えてまいりました。昨年の十二月、本年の一月、二月と、その
引き上げの機会はあったのでございますけれども、この機会をやり過ごして、
公定歩合引き上げにはまことに
タイミングを失したという感もするわけでございますが、ついに三月十七日、
日銀総裁のたっての説得で、しぶしぶに
池田総理のオーケーによって二厘
引き上げがきまったのでございます。いつもながら、
金利操作の
タイミングのまずさと、オーソドックスな
金融政策の発動を渋る
池田内閣の措置は、一体どういうわけでございましょうか。これは、低
金利政策にこり過ぎて、こだわって、そして金融の
流動性というものに目をはずしているから、こんなに低
金利政策にこだわって、
タイミングをはずすのだと思うのであります。すでに、池田さんが最も例を引き、また指向している
西欧諸国においても、フランスにおいても、オランダにおいても、イタリアにおいても、最近は英国においても、
公定歩合は
引き上げられ、
高金利時代の
成長政策が実施されています。
公定歩合の操作をもっと有効適切に働かせることはできなかったのかどうか。この辺について
大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
ある
電気化学会社の社長の
ことばを私はここで引用いたしますが、低
金利政策をやってきた
池田内閣が、ここで二厘
引き上げに追い込まれたのは、結局政策の貧困という以外にはない、
高度成長をあおっておいて、いきなりいまになって二厘を
引き上げるとは、まさに
池田内閣は無責任である、という批判を新聞紙上いたしておりますが、これは私は、
公地歩合引き上げの犠牲に供せられた国民の声でもあると思うのでございます。国民の実感としては、
公差歩合を上げたとか下げたとかいうよりも、
高度成長政策の犠牲が
いろいろ形を変えて国民にのしかかってくることについて、まことに不満を感ずるものでございます。
池田内閣の
高度成長政策は、すべてが、まあ何とかなるだろう、やってみなければという式の
膨張政策をとって、不
均衡拡大をはかってまいりました。
国際収支の不均衡は、この
膨張政策の中に当然はぐくまれておる現象だと思うのであります。
日銀信用の膨張、さらに年々歳々の財政の膨張、
外資借り入れ金の膨張、これらが果たす政治的な影響は、私は、物価を騰貴させ、今日の
国際収支の逆調を招いたものの最大の原因であると思うのであります。これらの
膨張政策のもたらすひずみを、池田さんは、すべて
池田式な
経済金融政策をもって処理しよう、しかも、この
池田式金融政策を強引に押しつけることによって解決しようとはかってきたのであります。これが大きな間違いでもあり、破綻を呼ぶものでもあったと思うのであります。
このたびの
公定歩合引き上げの措置も、
過剰投資から生まれた
生産力の膨張に基因する
輸入増加にあると思うのでありますが、これを食いとめるためにとられた
短期決戦の措置でもあると思うのであります。これはいみじくも
大蔵大臣が、
公定歩合の
引き上げとともに、
短期決戦だという
ことばを使っておりますが、まさに
短期決戦の気がまえで、
過剰投資等の一切の過去の
経済政策のしわをここで一挙に
金融政策で解決しようとする荒療治的な発言でもあったと思うのであります。しょせん、これも
高度成長政策の失敗のしりぬぐいにしかすぎないと思うのであります。
総理にお尋ねいたします。あなたの
経済成長政策は、もはやこの辺で
政策転換をはかり、
安定均衡の成長、犠牲とロスをつくらない
均衡成長政策に切りかえるべきだと思うが、いかがなものでございましょうか。御所見を伺いたいと思うのであります。
英国では、
公定歩合の
引き上げなどによって成長と停滞を繰り返しておるのだということで、
ストップ・
アンド・ゴーと批判されております。しかし、日本の場合は、財政においても、
日銀信用の膨張においてもゴー・
アンド・ゴーであります。しかしながら、池田さんの
金融政策だけは、
ストップ・
アンド・ゴーではなくて、バック・
アンド・ゴーと批判さるべきものであると思うのであります。(拍手)「山高ければ谷深し」などという文学的な経済企画庁の
報告書も出たこともございますが、全く行ったり戻ったりの変則的な
成長政策をたどってきたわけであります。
池田経済政策も、もはやこの辺で終止符を打たれたほうがいいのではないか、というのが国民の
大かたの心理であります。だから、池田さんはオリンピックまでなどといわれておるのは、この辺のところがあるのではないかと思いますが、池田さんのお考えを承りたいと思うわけでございます。
次に、現状の
国際収支の逆調でございます。これはたいへんなことだと思うのであります。
池田内閣は、
成長安定ムードの中に
国際収支の見方もまことに楽観的な見方をしております。輸出入の数値の結果を、その数だけを見て、どうにかなるというような
考え方で対処しておりますが、現在、日本の貿易は構造的な変化をたどっておるのでありまして、それがむしろ
経常収支の
構造的赤字を増加している最も大きな原因になっておるわけでございます。
手持ち外貨等の状況の悪化も、この
国際収支の逆調に沿うて危険になっているわけでございますが、政府はこうした危険に対してもきわめて安易な
考え方を持っておるのでございます。
経常収支の赤字は
資本収支で補えばよろしい、もし足らなければ外貨で借金をしてこれを埋め合わせればよろしい、という
バランスを考えているのみでございます。
最近は、
長期資本の助けに
インパクトローンを入れたり、あるいは
短期資本確保のため、
ユーロダラーの出ていくことをいわゆる
金利引き上げによって引き止めをはかったり、また
IMFのスタンド・バイ・クレジットの取りつけによって、まことしやかに外貨は
とんとんに調和しているのだというような言い方をしておるのであります。最近また、
IMFの
ゴールドトランシュ一億八千万ドルをこれに加えて、計算上では外貨の
手持ちはいいのだというようなから手形みたいな
ゴールドトランシュを入れておるということも、まことに
池田内閣の、借金でも何でもいい、形式的に
とんとんになればいいんだという安易な
考え方に立っておる証拠だと思うのであります。本年、三十八年度の
経常収支の赤字は八億ドルに達しようとしております。
資本収支の黒字を加えても結果として
総合収支は赤字になり、外貨の
手持ちが一億ドル以上の減少を見るということは必至でございます。
政府は、安易な数字や、あるいは国民だけをごまかすようなこの
バランスによって赤字の原因を究明せず、
構造赤字の改善もせずしていくということは、まことに私は日本の
国際収支の危機に際してとるべき処置ではないと思うわけであります。
総理大臣の
国際収支に対する
考え方を承りたいと思うのであります。特に、
構造的赤字に対してどんな考えを持っておるのかを承りたいと思うわけであります。
昨年の初め、
金融引き締めが解除され、
貿易規制の手をゆるめて以後、わずかに半年たたずして、
国際収支の逆調を再び招いたということは、
国際収支の天井が非常に低くなっているということでございます。景気の波も大きな波でなくして、いいときはちょっとで悪いときのほうが長いというように、
日本経済のボトルネックもいよいよ圧縮されてきたという感がするのでございます。しかも、この要因は、
国際収支の原因でありますが、その中でも
国際取引における産業上、市場上の構造の変化が決定的な作用として働いているということに気がつかなければならないと思うのであります。
通産大臣にお伺いしますが、日本の貿易のいわゆるマーケットの上における
国際収支の
構造赤字というものにどのような対処をしていくか、お考えを承りたいと思うわけであります。
最近、ここ一、二年の間に、
企業間信用の膨張が非常になされてまいりました。すなわち、三十七年四月より今日までの
大蔵省法人統計によりますと、
売り掛け債権が
売り上げ高をはるかに上回っているということであります。三十八年四月から六月の
法人企業売り上げ高は十三兆五千八百八十八億円でありますが、
割引手形を含む
売り掛け債権の残高は十四兆二千八百八十五億円となりて、
売り上げ高よりも
売り掛け金のほうがはるかに多いということは、
信用膨張が非常になされておるということであります。現在では十五兆以上の
企業間信用があるといわれておりますが、不健全な
融通手形や、百数十日をこえるような手形が含まれているということを考えると、
企業間信用は私は相当
問題点があると思うのでございます。ことに
企業間信用は金融緩和したときには解消されるのが常識でございますが、この三十七年から三十八年の時期にわたっては、景気がある程度上積みになっても、異常な
企業間信用の膨張を示して、
擬制市場を拡大してきているわけでございます。
政府は、この企業間における信用の異常な膨張、
擬制市場の拡大に対して、一体どのような判断をし、具体的にどのような対策を講じていこうと考えておるのか、このままほうっておくというのか、あるいは手形の乱発、あるいは不健全なる長期の手形の
振り出し等に対して規制する
考え方はあるのか、ないのか、
大蔵大臣並びに
通産大臣の明確なる御答弁をお伺いしたいと思うのであります。
現在、日本の企業は、過去の
設備投資が生産化し、
企業採算上からも
操業度を絶対に落とされない状態になっていると思うのであります。さらに、
国際競争力やシェアの拡大などによって、
生産拡大あるいは
企業拡張を
自分自身の中に強く迫られてきているものが現在の日本の企業でございますが、現在、
設備投資意欲も決して衰えておるわけではありません。特に
生産者在庫投資も必然的に増加をいたしております。このようなときにおいて、
公定歩合が二厘も
引き上げられたというこの一連の
金融引き締め政策は、企業にとっては非常な重圧であると思うのであります。しかし、企業としては預貯金の
手元流動化や、あるいは
企業間信用の拡大などによって、とにもかくにもこの苦しい、いわゆる
引き締めの苦境を抜け切らねばならないのでございますが、
中小企業にあっては、この抜け切りが非常に困難な事態に遭遇しておると私は考えるわけであります。
政府は、この
中小企業に対していかなる指導をなし、手当てをなして健全なる
中小企業の育成をはからんとしておるか、
金融引き締め政策に伴う
中小企業対策についていかなる策があるのか、
通産大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。
昨年の末から今年にかけて、
中小企業の倒産は非常にふえております。昭和三十八年度では千七百三十八件、
負債額では千六百九十四億円と、非常に倒産の額が上がっておりますが、
不渡り手形もこれによって非常に多くなっております。四、五月が日本の経済の危機だともいわれておりますが、
公定歩合がこのときに二厘
引き上げられたということは、
中小企業の犠牲がますます過大になるということもまたわれわれは考えるのでございます。政府は、これら
中小企業の倒産に対して、何らかの積極的なる策を持っておるのか、この点について
通産大臣にもお伺いいたしたいと思うわけであります。
次に、今回の
短期貸し出し金利を
引き上げたということは、
長期金利の
割り安傾向が強められたと思うのであります。このまま放置しておけば、
金利体系は
アンバランスを生じてくると思います。
長期資金の確保もなかなかむずかしくなってくるようにも考えられます。公社債の起債にあたっても、
長期金利の
引き上げは考慮されなければならないというような段階になったと思うのでありますが、政府は、
長期金利に対して一体いかなる考えを持っているか、お伺いをしたいと思います。政府は、
政府保証債の
発行条件ともからんで、この
長期金利の
引き上げを考えておると思いますが、
大蔵大臣の御意向を承りたいと思うわけであります。
さらに、
大蔵大臣は、先般二月六日の
大蔵委員会において、三十九年度の
起債額は規模として五千億程度にしたいということを言っておりますが、
公定歩合が
引き上げられた今日、
起債環境が変わってまいりましたが、やはり以前と同じように
予定どおりこの起債を五千億やるつもりはあるのかどうか、特に
政保債、
地方債、
電力債、
一般専業債の確保ができるのかどうか、これを数字的に
大蔵大臣は説明してほしいのであります。
次に、
株式市場対策であります。現在のように
株式市場が低水準のときに、
公定歩合が二厘も
引き上げられましたことは前例のないことであって、三十二年のときに二厘
引き上げられましたが、そのときは株価は過熱の状態でありました。今回は、そのときと違って、一昨年以来株価がまことに不振で、低調をきわめておるときであります。株価の回復、向上は望むことは非常にむずかしい段階にこの
公定歩合の
引き上げが行なわれたのであります。
株式需給の
アンバランスという構造的なもの、ないしは
金融引き締め政策等の結果によって、株価に対してはまことに先行き不振を投げかけたようなものだと私は考えておるわけでございますが、政府は、今後の
株価回復対策についてどのような意見を持ち、どのような対策を持っているか、
大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うわけであります。
先般、
大蔵大臣は、
共同証券に対し買い出動を裏から強く要請いたしました。しかも軽率なことには、大臣の口から
共同証券の株の買い出動を発表してしまって、一波乱が株の間に起こったわけでございますが、政府は、
共同証券におんぶしてそのお先棒をかつぐ程度の
株価対策しかお持ち合わせがないのかどうか、
大蔵大臣にお伺いをいたすわけでございます。
しかも、
大蔵大臣の口から株の
大口買い占めを指示するような、まことに軽率な発言をしたということは、この辺の株価に対するものの判断がきわめて低調であり、策がないのであると私は考えるものでございます。
大蔵大臣の軽率な態度にもよりましょうけれども、もとは株価に対する
考え方が全くないのであると批評されてもしかたがないと私は思うのであります。しかし、かりに
共同証券あるいは四大証券が株の買い出動を始めたとしましても、すでに二回発動しましたが、作為的に買いささえが行なわれたとしましても、
株式市場はなかなか好転しそうもありません。
株式市場は現在一千億からの
余裕金をだぶつかしておるわけでございます。
共同証券の買い、あるいは
協調融資あるいは
増資等によって
共同証券が買いささえをしようとしても、その
資本量はたかだか三、四百億円程度であります。この三、四百億円程度の
共同証券の買いささえは、これは反応の底が見えておるわけでございまして、あまり大きな期待は持てないと私は考えるのでございますが、政府、
大蔵大臣は一体どのような
考え方を持っておるのか、お伺いをいたしたいと思うわけでございます。
特に、
明年度は
株式増資の希望は六千億に達しております。三十八年度の実績は四千三百億円の株の増資でございますが、来年度は四割増しの増資がきております。いまの不況のときに、この増資六千億を行なっていけば、いよいよ市況は低落を深めるばかりで、立ち上がることもできないというようにもいわれております。政府は、これに対して来年度の
増資調整をやるのかやらないのか、このまま見過ごして企業の増資を認める腹かどうか、この点を
大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うわけでございます。
次に、
輸入担保率の問題でございます。政府は、三十七年の十二月
輸入担保率を
引き上げましたが、今度十五ヵ月ぶりに再び
引き上げて、しかも、輸入を規制することとして、
消費財方面においては三五%の新
担保率を適用して、しかも、これを恒久化しようとしております。このような
担保率の適用は、
ガット十一条国の
適用国では、日本がただひとりこの
担保率というものを持っておるわけでございます。これは他の国から見れば、
関税引き上げにかわる
輸入障壁とも見られないわけにはいかないと思うのでございますが、この点について政府、
通産大臣はどのように考えておるのか、お伺いいたしたいと思うわけでございます。
以上をもって、
公定歩合の
引き上げに伴う政府の
経済政策を問いまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔
国務大臣池田勇人君登壇〕