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1964-03-24 第46回国会 衆議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十四日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十五号   昭和三十九年三月二十四日    午後二時開議  第一 社会福祉事業振興会法の一部を改正する   法律案内閣提出)  第二 中小企業指導法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第三 中小企業信用保険法及び中小企業信用保   険公庫法の一部を改正する法律案内閣提   出)  第四 商工組合中央金庫法の一部を改正する法   律案内閣提出)  第五 揮発油税法及び地方道路税法の一部を改   正する法律案内閣提出)  第六 関税定率法等の一部を改正する法律案(   内閣提出)  第七 所得税法の一部を改正する法律案内閣   提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  大平外務大臣ライシャワー大使傷害事件に   関しての発言  鉄道建設審議会委員選挙  公定歩合引上げに関する緊急質問小松幹君提   出)  日程第一 社会福祉事業振興会法の一部を改正   する法律案内閣提出)  日程第二 中小企業指導法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第三 中小企業信用保険法及び中小企業信   用保険公庫法の一部を改正する法律案内閣   提出)  日程第四 商工組合中央金庫法の一部を改正す   る法律案内閣提出)  日程第五 揮発油税法及び地方道路税法の一部   を改正する法律案内閣提出)  日程第六 関税定率法等の一部を改正する法律   案(内閣提出)  日程第七 所得税法の一部を改正する法律案(   内閣提出)  漁業災害補償法案内閣提出)及び漁業災害補   償法案(角屋堅次郎君外十一名提出)の趣旨   説明及び質疑  電気事業法案内閣提出)の趣旨説明及び質疑    午後二時三十七分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  大平外務大臣ライシャワー大使傷害事件に関しての発言
  3. 船田中

    議長船田中君) 外務大臣から、ライシャワー大使傷害事件に関し発言を求められております。これを許します。外務大臣大平正芳君。    〔国務大臣大平正芳登壇
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本日、午後零時過ぎ、アメリカ大使館事務所の玄関において、外出されようとしたライシャワー日米国大使が一暴漢に襲われ、右ももに負傷するというきわめて不幸な事件が発生いたしました。大使は直ちに虎ノ門病院において所要の処置を受けられておりますが、幸いにして、現在までのところ、経過は良好のように承っております。  私は、政府を代表して、直ちに同大使病院に見舞い、衷心より遺憾の意を表するとともに、武内駐米大使をして、米国政府に対し、深甚な遺憾の意を表明するよう訓令いたしました。  犯人は十九歳の一青年でありますが、直ちにその場で逮捕され、目下警察において取り調べ中であります。  このような暴力行為は、日本国民の最も嫌悪するところであり、その絶滅を期するため、政府としては今後一段の注意と努力を傾ける所存であります。  私は、ここに、政府及び国民にかわり、ライシャワー大使回復の一日も早からんことを祈念いたしますとともに、この不幸なできごとによって、日米両国の伝統的な友好関係がそこなわれないことを心から希求するものであります。  右、御報告申し上げます。(拍手)      ————◇—————  鉄道建設審議会委員選挙
  5. 船田中

    議長船田中君) 鉄道建設審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際その選挙を行ないます。
  6. 小沢辰男

    小沢辰男君 鉄道建設審議会委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  7. 船田中

    議長船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。  議長は、鉄道建設審議会委員山花秀雄君を指名いたします。      ————◇—————  公定歩合引上げに関する緊急質問  (小松幹提出
  9. 小沢辰男

    小沢辰男君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、小松幹提出公定歩合引上げに関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  10. 船田中

    議長船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  公定歩合引上げに関する緊急質問を許可いたします。小松幹君。    〔小松幹登壇
  12. 小松幹

    小松幹君 私は、日本社会党を代表して、今回日銀によって実施された公定歩合引き上げに伴う政府の考え方をただすとともに、今日の日本経済問題点をあげて、政府の具体的な施策をお伺いいたしたいと思うのであります。  公定歩合引き上げについては、金利を国際水準にさや寄せするという見地から、池田内閣は常に一貫して、一律的金融引き締めはしないと、こう言い切ってまいりました。公定歩合を上げて一律的引き締めをするというよりも、選別融資等によって量的規制をもって実施しようとする策をとってまいったのでありますが、衆参両院予算委員会の総理並びに大蔵大臣の発言も、この線に沿って、一律的引き締めはしないということに終始しておるわけでございます。ことに大蔵大臣に至っては、公定歩合引き上げは下の下であるとまで、数次にわたって放言しておるのでございます。そうして日銀の公定歩合引き上げの措置を退け、その実施を今日まで引き延ばさせてきたのでございます。言うならば、政府は、高度成長政策の道連れに、低金利政策にしがみついて、公定歩合引き上げを押えてきたのでございます。しかし、それが突然、今回の公定歩合二厘の引き上げに踏み切ったということは、一体何を意味するのでございましょうか。円の交換性の回復とともに、その信用を守り、国際収支の逆調を戻す、こういう説明をされておりますけれども、この一律金融引き締め政策への転換は、あるいは池田内閣金利政策の変更を意味するものではないかと思うのであります。はしなくも、このことによって高度成長政策の破綻を暴露したものであるとも解釈されるわけでございます。(拍手)  私は、この際、総理並びに大蔵大臣の、食言とまで受け取れるところの態度の豹変、政策転換の真意をいま一度承りたいと思うわけでございます。  公定歩合引き上げは、他の金融引き締め政策と並行して早期に実施することが、引き締め政策の実効をあげるのにまことに効果的であったと考えられるのであります。しかるに、政府は、この引き上げを渋り、日銀の早期実施意図をくじいて、三カ月にわたってこれを押えてまいりました。昨年の十二月、本年の一月、二月と、その引き上げの機会はあったのでございますけれども、この機会をやり過ごして、公定歩合引き上げにはまことにタイミングを失したという感もするわけでございますが、ついに三月十七日、日銀総裁のたっての説得で、しぶしぶに池田総理のオーケーによって二厘引き上げがきまったのでございます。いつもながら、金利操作タイミングのまずさと、オーソドックスな金融政策の発動を渋る池田内閣の措置は、一体どういうわけでございましょうか。これは、低金利政策にこり過ぎて、こだわって、そして金融の流動性というものに目をはずしているから、こんなに低金利政策にこだわって、タイミングをはずすのだと思うのであります。すでに、池田さんが最も例を引き、また指向している西欧諸国においても、フランスにおいても、オランダにおいても、イタリアにおいても、最近は英国においても、公定歩合引き上げられ、高金利時代成長政策が実施されています。公定歩合の操作をもっと有効適切に働かせることはできなかったのかどうか。この辺について大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。  ある電気化学会社の社長のことばを私はここで引用いたしますが、低金利政策をやってきた池田内閣が、ここで二厘引き上げに追い込まれたのは、結局政策の貧困という以外にはない、高度成長をあおっておいて、いきなりいまになって二厘を引き上げるとは、まさに池田内閣は無責任である、という批判を新聞紙上いたしておりますが、これは私は、公地歩合引き上げの犠牲に供せられた国民の声でもあると思うのでございます。国民の実感としては、公差歩合を上げたとか下げたとかいうよりも、高度成長政策の犠牲がいろいろ形を変えて国民にのしかかってくることについて、まことに不満を感ずるものでございます。  池田内閣高度成長政策は、すべてが、まあ何とかなるだろう、やってみなければという式の膨張政策をとって、不均衡拡大をはかってまいりました。国際収支の不均衡は、この膨張政策の中に当然はぐくまれておる現象だと思うのであります。日銀信用の膨張、さらに年々歳々の財政の膨張、外資借り入れ金の膨張、これらが果たす政治的な影響は、私は、物価を騰貴させ、今日の国際収支の逆調を招いたものの最大の原因であると思うのであります。これらの膨張政策のもたらすひずみを、池田さんは、すべて池田式経済金融政策をもって処理しよう、しかも、この池田式金融政策を強引に押しつけることによって解決しようとはかってきたのであります。これが大きな間違いでもあり、破綻を呼ぶものでもあったと思うのであります。  このたびの公定歩合引き上げの措置も、過剰投資から生まれた生産力の膨張に基因する輸入増加にあると思うのでありますが、これを食いとめるためにとられた短期決戦の措置でもあると思うのであります。これはいみじくも大蔵大臣が、公定歩合引き上げとともに、短期決戦だということばを使っておりますが、まさに短期決戦の気がまえで、過剰投資等の一切の過去の経済政策のしわをここで一挙に金融政策で解決しようとする荒療治的な発言でもあったと思うのであります。しょせん、これも高度成長政策の失敗のしりぬぐいにしかすぎないと思うのであります。  総理にお尋ねいたします。あなたの経済成長政策は、もはやこの辺で政策転換をはかり、安定均衡の成長、犠牲とロスをつくらない均衡成長政策に切りかえるべきだと思うが、いかがなものでございましょうか。御所見を伺いたいと思うのであります。  英国では、公定歩合引き上げなどによって成長と停滞を繰り返しておるのだということで、ストップアンド・ゴーと批判されております。しかし、日本の場合は、財政においても、日銀信用の膨張においてもゴー・アンド・ゴーであります。しかしながら、池田さんの金融政策だけは、ストップアンド・ゴーではなくて、バック・アンド・ゴーと批判さるべきものであると思うのであります。(拍手)「山高ければ谷深し」などという文学的な経済企画庁の報告書も出たこともございますが、全く行ったり戻ったりの変則的な成長政策をたどってきたわけであります。池田経済政策も、もはやこの辺で終止符を打たれたほうがいいのではないか、というのが国民の大かたの心理であります。だから、池田さんはオリンピックまでなどといわれておるのは、この辺のところがあるのではないかと思いますが、池田さんのお考えを承りたいと思うわけでございます。  次に、現状の国際収支の逆調でございます。これはたいへんなことだと思うのであります。池田内閣は、成長安定ムードの中に国際収支の見方もまことに楽観的な見方をしております。輸出入の数値の結果を、その数だけを見て、どうにかなるというような考え方で対処しておりますが、現在、日本の貿易は構造的な変化をたどっておるのでありまして、それがむしろ経常収支構造的赤字を増加している最も大きな原因になっておるわけでございます。手持ち外貨等の状況の悪化も、この国際収支の逆調に沿うて危険になっているわけでございますが、政府はこうした危険に対してもきわめて安易な考え方を持っておるのでございます。経常収支の赤字は資本収支で補えばよろしい、もし足らなければ外貨で借金をしてこれを埋め合わせればよろしい、というバランスを考えているのみでございます。  最近は、長期資本の助けにインパクトローンを入れたり、あるいは短期資本確保のため、ユーロダラーの出ていくことをいわゆる金利引き上げによって引き止めをはかったり、またIMFのスタンド・バイ・クレジットの取りつけによって、まことしやかに外貨はとんとんに調和しているのだというような言い方をしておるのであります。最近また、IMFゴールドトランシュ一億八千万ドルをこれに加えて、計算上では外貨の手持ちはいいのだというようなから手形みたいなゴールドトランシュを入れておるということも、まことに池田内閣の、借金でも何でもいい、形式的にとんとんになればいいんだという安易な考え方に立っておる証拠だと思うのであります。本年、三十八年度の経常収支の赤字は八億ドルに達しようとしております。資本収支の黒字を加えても結果として総合収支は赤字になり、外貨の手持ちが一億ドル以上の減少を見るということは必至でございます。  政府は、安易な数字や、あるいは国民だけをごまかすようなこのバランスによって赤字の原因を究明せず、構造赤字の改善もせずしていくということは、まことに私は日本の国際収支の危機に際してとるべき処置ではないと思うわけであります。総理大臣国際収支に対する考え方を承りたいと思うのであります。特に、構造的赤字に対してどんな考えを持っておるのかを承りたいと思うわけであります。  昨年の初め、金融引き締めが解除され、貿易規制の手をゆるめて以後、わずかに半年たたずして、国際収支の逆調を再び招いたということは、国際収支の天井が非常に低くなっているということでございます。景気の波も大きな波でなくして、いいときはちょっとで悪いときのほうが長いというように、日本経済のボトルネックもいよいよ圧縮されてきたという感がするのでございます。しかも、この要因は、国際収支の原因でありますが、その中でも国際取引における産業上、市場上の構造の変化が決定的な作用として働いているということに気がつかなければならないと思うのであります。通産大臣にお伺いしますが、日本の貿易のいわゆるマーケットの上における国際収支構造赤字というものにどのような対処をしていくか、お考えを承りたいと思うわけであります。  最近、ここ一、二年の間に、企業間信用の膨張が非常になされてまいりました。すなわち、三十七年四月より今日までの大蔵省法人統計によりますと、売り掛け債権売り上げ高をはるかに上回っているということであります。三十八年四月から六月の法人企業売り上げ高は十三兆五千八百八十八億円でありますが、割引手形を含む売り掛け債権の残高は十四兆二千八百八十五億円となりて、売り上げ高よりも売り掛け金のほうがはるかに多いということは、信用膨張が非常になされておるということであります。現在では十五兆以上の企業間信用があるといわれておりますが、不健全な融通手形や、百数十日をこえるような手形が含まれているということを考えると、企業間信用は私は相当問題点があると思うのでございます。ことに企業間信用は金融緩和したときには解消されるのが常識でございますが、この三十七年から三十八年の時期にわたっては、景気がある程度上積みになっても、異常な企業間信用の膨張を示して、擬制市場を拡大してきているわけでございます。  政府は、この企業間における信用の異常な膨張、擬制市場の拡大に対して、一体どのような判断をし、具体的にどのような対策を講じていこうと考えておるのか、このままほうっておくというのか、あるいは手形の乱発、あるいは不健全なる長期の手形の振り出し等に対して規制する考え方はあるのか、ないのか、大蔵大臣並びに通産大臣の明確なる御答弁をお伺いしたいと思うのであります。  現在、日本の企業は、過去の設備投資が生産化し、企業採算上からも操業度を絶対に落とされない状態になっていると思うのであります。さらに、国際競争力やシェアの拡大などによって、生産拡大あるいは企業拡張自分自身の中に強く迫られてきているものが現在の日本の企業でございますが、現在、設備投資意欲も決して衰えておるわけではありません。特に生産者在庫投資も必然的に増加をいたしております。このようなときにおいて、公定歩合が二厘も引き上げられたというこの一連の金融引き締め政策は、企業にとっては非常な重圧であると思うのであります。しかし、企業としては預貯金の手元流動化や、あるいは企業間信用の拡大などによって、とにもかくにもこの苦しい、いわゆる引き締めの苦境を抜け切らねばならないのでございますが、中小企業にあっては、この抜け切りが非常に困難な事態に遭遇しておると私は考えるわけであります。  政府は、この中小企業に対していかなる指導をなし、手当てをなして健全なる中小企業の育成をはからんとしておるか、金融引き締め政策に伴う中小企業対策についていかなる策があるのか、通産大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。  昨年の末から今年にかけて、中小企業の倒産は非常にふえております。昭和三十八年度では千七百三十八件、負債額では千六百九十四億円と、非常に倒産の額が上がっておりますが、不渡り手形もこれによって非常に多くなっております。四、五月が日本の経済の危機だともいわれておりますが、公定歩合がこのときに二厘引き上げられたということは、中小企業の犠牲がますます過大になるということもまたわれわれは考えるのでございます。政府は、これら中小企業の倒産に対して、何らかの積極的なる策を持っておるのか、この点について通産大臣にもお伺いいたしたいと思うわけであります。  次に、今回の短期貸し出し金利引き上げたということは、長期金利割り安傾向が強められたと思うのであります。このまま放置しておけば、金利体系アンバランスを生じてくると思います。長期資金の確保もなかなかむずかしくなってくるようにも考えられます。公社債の起債にあたっても、長期金利引き上げは考慮されなければならないというような段階になったと思うのでありますが、政府は、長期金利に対して一体いかなる考えを持っているか、お伺いをしたいと思います。政府は、政府保証債発行条件ともからんで、この長期金利引き上げを考えておると思いますが、大蔵大臣の御意向を承りたいと思うわけであります。  さらに、大蔵大臣は、先般二月六日の大蔵委員会において、三十九年度の起債額は規模として五千億程度にしたいということを言っておりますが、公定歩合引き上げられた今日、起債環境が変わってまいりましたが、やはり以前と同じように予定どおりこの起債を五千億やるつもりはあるのかどうか、特に政保債地方債電力債一般専業債の確保ができるのかどうか、これを数字的に大蔵大臣は説明してほしいのであります。  次に、株式市場対策であります。現在のように株式市場が低水準のときに、公定歩合が二厘も引き上げられましたことは前例のないことであって、三十二年のときに二厘引き上げられましたが、そのときは株価は過熱の状態でありました。今回は、そのときと違って、一昨年以来株価がまことに不振で、低調をきわめておるときであります。株価の回復、向上は望むことは非常にむずかしい段階にこの公定歩合引き上げが行なわれたのであります。株式需給アンバランスという構造的なもの、ないしは金融引き締め政策等の結果によって、株価に対してはまことに先行き不振を投げかけたようなものだと私は考えておるわけでございますが、政府は、今後の株価回復対策についてどのような意見を持ち、どのような対策を持っているか、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うわけであります。  先般、大蔵大臣は、共同証券に対し買い出動を裏から強く要請いたしました。しかも軽率なことには、大臣の口から共同証券の株の買い出動を発表してしまって、一波乱が株の間に起こったわけでございますが、政府は、共同証券におんぶしてそのお先棒をかつぐ程度の株価対策しかお持ち合わせがないのかどうか、大蔵大臣にお伺いをいたすわけでございます。  しかも、大蔵大臣の口から株の大口買い占めを指示するような、まことに軽率な発言をしたということは、この辺の株価に対するものの判断がきわめて低調であり、策がないのであると私は考えるものでございます。大蔵大臣の軽率な態度にもよりましょうけれども、もとは株価に対する考え方が全くないのであると批評されてもしかたがないと私は思うのであります。しかし、かりに共同証券あるいは四大証券が株の買い出動を始めたとしましても、すでに二回発動しましたが、作為的に買いささえが行なわれたとしましても、株式市場はなかなか好転しそうもありません。株式市場は現在一千億からの余裕金をだぶつかしておるわけでございます。共同証券の買い、あるいは協調融資あるいは増資等によって共同証券が買いささえをしようとしても、その資本量はたかだか三、四百億円程度であります。この三、四百億円程度の共同証券の買いささえは、これは反応の底が見えておるわけでございまして、あまり大きな期待は持てないと私は考えるのでございますが、政府、大蔵大臣は一体どのような考え方を持っておるのか、お伺いをいたしたいと思うわけでございます。  特に、明年度株式増資の希望は六千億に達しております。三十八年度の実績は四千三百億円の株の増資でございますが、来年度は四割増しの増資がきております。いまの不況のときに、この増資六千億を行なっていけば、いよいよ市況は低落を深めるばかりで、立ち上がることもできないというようにもいわれております。政府は、これに対して来年度の増資調整をやるのかやらないのか、このまま見過ごして企業の増資を認める腹かどうか、この点を大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うわけでございます。  次に、輸入担保率の問題でございます。政府は、三十七年の十二月輸入担保率引き上げましたが、今度十五ヵ月ぶりに再び引き上げて、しかも、輸入を規制することとして、消費財方面においては三五%の新担保率を適用して、しかも、これを恒久化しようとしております。このような担保率の適用は、ガット十一条国の適用国では、日本がただひとりこの担保率というものを持っておるわけでございます。これは他の国から見れば、関税引き上げにかわる輸入障壁とも見られないわけにはいかないと思うのでございますが、この点について政府、通産大臣はどのように考えておるのか、お伺いいたしたいと思うわけでございます。  以上をもって、公定歩合引き上げに伴う政府の経済政策を問いまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般、日本銀行の公定歩合二厘引き上げに伴いましての御質問でございますが、この引き上げの是非は御質問にならないようでございました。しかし、この問題は、いまわが国の生産の急激な上昇、輸入増加等から考えまして、昨年の十二月に預金準備率引き上げ、一月に日銀窓口規制をしておったのでございますが、生産の増強、輸入増加は必ずしもやみません。したがいまして、八条国移行に伴いまして、私は、今回の措置は非常に上できであったと考えておるのであります。また、担保率引き上げについてガット云々とか言っておられますが、この担保率引き上げ公定歩合の二厘引き上げにつきまして、ロンドン市場ニューヨーク市場世界各国とも日本のとった措置は非常にタイムリー・ヒットであると好評を受けておるようでございます。(拍手)したがって、御存じのとおり、公定歩合操作につきましては、あらかじめ質問するのが変で、答えることもできない問題であります。弾力的に、臨機応変にしなければならないので、今回も日銀あるいは大蔵省においてその措置をとったと思うのであります。  御質問の第二は、高度経済成長をやめていくのじゃないか。私は、十年所得倍増という政策は、まあ八年半か九年にでき上がる予定でいっております。いままでの所得十年以内の倍増政策を変える気持はございません。  また、低金利政策を放棄したとおっしゃいますが、私はここで申し上げたい。池田内閣が成立いたします前は非常に高かった。すなわち、昭和三十四年十二月、私が内閣を組織して、初めて日銀公定歩合の引き下げが行なわれるまでは日歩二銭、すなわち、年七分三厘でございました。それをずっと上げたり下げたりして、そうして先般までは一銭六厘、五分八厘四毛であったのを一銭八厘にしたのですから、組閣当時よりまだ二厘低いのであります。しかも、きのうのある新聞には、一年間これを動かさないということが載ったようでございますが、公定歩合というものはそういうもんじゃない。大蔵省の意向として新聞に載っておりますが、大蔵大臣、どういう意味ですかと言ったら、大蔵大臣は、関知しないと言っております。これは新聞に載っておりましたが、公定歩合なんかいうものは、弾力的に、随時適切にやるべきものでございます。したがいまして、外国の例をおとりになりましたが、カナダは過去三年半のうちに十五回公定歩合を動かしております。あなたのお話しになっておりますイギリスは、十二回動かしております。日本は七回、西ドイツは六回、アメリカは五回、フランスは三回、イタリアはたびたびおやりになっておると言っておりますが、イタリアは過去三年半一つもやっておりません。しこうして、いまイタリアは年に十億ドル以上の赤字でございますから、最近公定歩合引き上げが論議されておりますが、日本銀行の公定歩合操作は、私は、各国のうちで中庸を得て、しごく適切な方法でございまして、決して低金利政策を放棄したのではございません。(拍手)われわれは、あくまで国際競争力を強めるため、また金融の正常化のため、低金利であるほうが絶対に必要でございます。イギリスは、先般上げたと申しましても、いまイギリスの金利は五分でございます。上げて五分。日本は六分五厘七毛、ドイツは三分でございます。六分五厘七毛の金利を払うのと、三分の金利を払うドイツと国際競争力にどれだけ影響いたしましようか。われわれは、金利の下がることが、日本国際収支のためにも絶対必要でございます。しかし、幸いに、日本国民の努力によりまして、国際収支は非常に変化をしてまいりましたが、たびたび申し上げておるがごとく、日本国際収支は大体予期どおりで、国際信用は日に日に高まっている。私は、八条国移行に際しまして、一銭八厘程度のものはこの際必要であり、また十分であると考えまして、今回の日銀措置大蔵大臣措置はしごく適当であると、国際的にも、自分も考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇
  14. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 小松さんにお答えをいたします。  画一、一律的な引き締めを行なわないと言っておったものが、なぜこのように二厘も大幅に公定歩合引き上げたのかということでございますが、このおおよその問題に対しては、いま総理大臣からお答えをしたとおりでございます。  この公定歩合は、御承知のとおり、日銀が中央銀行としての中立性を保ちながら、機に応じて適切な処置の一つとして行なう金融調節手段でございます。御承知のとおり、十二月にはもうすでに預金準備率引き上げを行ない、なお、一月には窓日規制も行なっておるわけでございます。総理の施政方針演説にも、私の財政演説にも、金融引き締め基調にありますが、機に応じて適切なる処置をとります。とこう言っておるのでございます。総理がいま申されたとおり、公定歩合に対して質問をしても、私からお答えができないということは御承知のとおりでありますから、その間の事情は御了解願いたいと存じます。  それから第二点には、国際収支逆調の問題について御質問がございましたから申し上げます。  政府見通しは、御承知のとおり、今年三月末、すなわち昭和三十八年度の国際収支につきましては、特別借款一億ドルを返済して、九千九百万ドルないし一億ドルの赤字を予想をいたし、発表をいたしておるわけでございます。三月末の期末外貨準備は十七億六千四百万ドルでございますが、私が国会においてお答えをいたしておりますとおり、インパクトローンユーロダラーの流入等もございましたが、大体三月末には外貨準備高十八億ドルの現状で越年をするという見通しでございます。その上に、なお、八条国移行を契機にしまして、統計にはすでに入っておりますゴールド・トランシュ分一億八千万ドルを加えますと、二十億ドルに近い期末外貨準備高で越年をするわけでございますので、当面、国際収支には不安がないといったことは間違いないと考えております。  ただ、国際収支長期的な見方につきましては、御承知のとおり、経常収支赤字資本収支の黒字でまかなっておるというのが日本状態でございますので、貿易の振興を第一に考え、特に貿易外収支の改善を早期にはかることによって経常収支の黒字基調を確立しようと、いま鋭意努力をいたしておるわけでございます。  第三点は、企業間信用膨張しており、特に手形の増発、また手形のサイトの長期化、不渡り手形の乱発等の問題に対して、一体どう考えるかということでございますが、手形法、小切手法等は非常に古い状態でありまして、現状に対処して、一体これでいいのかという問題は確かにあると思います。この手形法及び小切手法等の改正の必要ありと考えまして、これらの問題に対しては、法務省当局に検討をしてもらっておる次第でございます。  なお、公定歩合引き上げを行なって、中小企業に対する金融はどうかという問題でございます。これは通産大臣から詳しくお答えをいたすと存じますが、大蔵省、通産省としましても、十分意思の疎通をはかりながら、昭和三十八年度の第四・四半期の政府三機関の資金量を大幅に増額しておることは、戦後二回目の大幅であるということを考えても、おわかりになるとおりでございます。しかも、三十九年第一・四半期には、中小企業向け政府資金による買いオペレーションを二百億円行なうとともに、四月中旬に期限の到来する分のうち、百五十億円の期限の延長をはかっておるわけでございます。  なお、それだけではなく、公定歩合引き上げの直後、日銀総裁を招致いたしまして、全金融機関あげて中小企業対策に努力を要請して、日銀の了解も得ておりますので、政府金融機関一体となって、しかも、公定歩合引き上げというようなものを契機にして、まじめな意味で健全な経営をしておる中小企業にしわが寄らないように、万全の体制をとっておる次第であります。  なお、その次には、株価についてでございます。  株価に対する御質問が非常に多いようでございますけれども、御承知の通り、政府株価に対する態度は、株価そのものには絶対に干渉をしないということが原則であることは、言うをまたないわけであります。政府株式市場に対して関心を持つものは、言うまでもなく、投資家保護が第一であります。第二は、これからからの八条国移行後の国際競争力を培養しなければなりません。日本の現状から考えまして、資本市場の育成強化ということは、私が申すまでもなく、重大な関心を持つものでございます。戦前六一%の自己資本比率が、今日三〇%を割り、もうすでに二五%を割り、二〇%台に近づいておるという事実を見るときに、資本市場の育成がいかに重大であるかは、あえて私が申すまでもないわけであります。その意味において、株式市場の育成強化をはかっておるわけでございます。  共同証券の力は一体どのくらいあるのかという御質問でございますが、こういう質問があるので、ちょろっとお答えをするということで、まあいろいろ御批判があるわけでございますが、共同証券は、御承知のとおり、政府関係機関ではありません。また、特殊な会社でもありません。証券取引法によって自主的に設立をせられた証券業者でありますが、しかし事実は、御指摘になったとおり、あのような証券市場状態においてつくられた共同証券なるものでございますので、これらの問題に対しては、私は、絶対に干渉しないということでおります。しかし、せっかくの御質問がございましたから、私が知り得る範囲の御答弁を申し上げるといたしますと、共同証券は小さな資本金しか持たないものでございますけれども、日銀、またその他の都市銀行、他の金融機関、また経済界もあげて株主になるような方向になっておるようでありまして、資本金の多寡等の問題でこの共同証券の力を評価すべきでないというくらいに大きなものであるというふうに聞いております。  それから、増資の調整を一体どうするのか、こういう問題でございます。増資の問題につきましては、御承知のとおり、民間金融機関、及び業界が自主的に判断をしてきめる問題でございますが、これらの問題に対しては、政府機関の間でも慎重に考慮をし、推移を見てまいりたい、このように考えるのでございます。  もう一つは、政府保証債の消化は一体できるのかという問題でございますが、財投計画では昭和三十八年度千八百八十二億、三十九年度二千五百億の民間公募債及び借り入れ金を予定いたしておりますが、もうすでに御承知のとおり、昨年の十一月、十二月の消化ベースで大体三十九年度も予定をいたしておりますので、公定歩合引き上げ等があったことによって、起債市場が逼迫する、民間資金の調達が二千五百億円できないというような状態ではないというふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣福田一君登壇
  15. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  まず、質問の第一点は、国際市場構造変化にいかに対処するかという御質問と思います。御案内のように、日本は軽工業が大体五〇%、重化学工業が五〇%の輸出と相なっておるのでありますが、この軽工業につきましては多種多様化、あるいはまた高度化というような措置を今後とっていきたいと思います。また、重化学工業化を順次進めまして、そうしてこの重化学工業のパーセンテージが輸出市場において占める割合を増加するように措置をいたしてまいりたいと思います。  次に、信用膨張手形期限の延長についての対策でございますが、これにつきましては、中小企業関係では支払遅延防止法等の運用を強化いたしますと同時に、今回、公正取引委員会並びに中小企業庁が連絡をいたしまして、親企業に対しても調査をいたし、さらにまた下請企業についても調査をいたしまして、そうして適宜適切な措置をもってこの不渡り、あるいは倒産等の防止に処するようにいたしたいと考えております。  次に、中小企業に対する影響と対策の御質問でございますが、これはただいま大蔵大臣からも御説明がありましたが、買いオペレーションを行ないますと同時に、政府関係の中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金等の三機関の一・四期における貸し出しワクの増大をはかるということをいま考えております。  また、歩積み、両建てを順次減らしていくというやり方によって、中小企業に対する影響をできるだけ是正する方針でございます。さらにまた、中小企業関係の予算は、予算が成立いたしましたならばなるべくすみやかに実行いたしまして、中小企業に対してできるだけ救済の手を差し伸べるような措置を講じたいと思います。  次に官公需の確保等をはかりまして、中小企業に対してできるだけ機会を与えるように努力をいたしたいと思います。  次に、不渡り手形倒産の問題でございますが、この問題につきましては、不渡りが起きましたときには、その不渡りによる連鎖反応をできるだけ最小限に食いとめるように措置いたしておるのでありまして、大蔵大臣からも、各銀行に対してそういうような趣旨の通達をいたしていただいておりますが、われわれといたしましても、各通産局をして、そういう問題が出たときにはすみやかにその内容等を調べ、そうしてこの連鎖反応的な倒産が起きないように金融機関に適当な金融をするように、できるだけ努力をいたしております。  また、金融面におきましても、先ほど大蔵大臣が述べられたような措置を講じておりますが、下請代金支払い遅延についても、先ほど申し上げましたとおりの措置をいたしております。ちなみに、いまの不渡り倒産等を見てみますと、一月は百九十八件、二月が二百三十八件でございますが、三月は第一週が五十六件、第二週が五十八件でありまして、大体まあ二月あるいは二月をいささか上回る程度で、件数はその程度になるのではないかという見通しを立てておりますが、しかし決してこれは喜ぶべき現象ではもちろんございませんから、できるだけそういうことのないように措置をいたしたいと考えております。  次に、輸入担保率引き上げについての御質問でございます。これは総理からも御答弁がございましたが、イギリスあたりでも、日本というのは全くうまい制度を考えておるものだと言ってほめておられるくらいでありますが、今回のこの輸入担保率引き上げにつきましては、なぜこれをやったかと言いますと、公定歩合引き上げをやりますと、とかく思惑輸入が起きるのであります。そこで今度の場合におきましても、輸入担保率引き上げまして、思惑輸入の防止をはかったわけでございます。したがいまして、これによって原材料に大きな悪影響を与えることをおそれておりますので、ただいま実情によって担保率の引き下げができるように、すでに調査を始めております。  次に、それが中小企業に大きな影響を与えはしないかという御質問でございますが、これについては金融その他の措置で、悪影響がないように努力をいたしたいと存じます。(拍手)      ————◇—————  日程第一 社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案内閣提出
  16. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案    〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  17. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事澁谷直藏君。     —————————————    〔報告書は本号(その二)に掲載〕     —————————————    〔澁谷直藏君登壇
  18. 澁谷直藏

    ○澁谷直藏君 ただいま議題となりました社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における社会福祉事業振興会の資金に対する需要の増大にかんがみ、現在行なわれている国の出資だけではその需要に十分こたえることが困難となりましたので、政府出資金のほかに、新たに資金運用部資金の融資等を受けられるよう振興会が社会福祉事業振興債券を発行することができる旨の規定を設ける等、所要の規定を整備するものであります。  そのおもな内容を申し上げますと、まず第一点は、社会福祉事業振興会は厚生大臣の認可を受けて社会福祉事業振興債券を発行できることとすること、  第二点は、社会福祉事業振興会は、毎事業年度社会福祉事業振興債券及び長期借り入れ金の償還計画を立てなければならないものとすること、なお、施行期日は昭和三十九年四月一日とすること等であります。  改正案は、一月二十九日本委員会に付託され、三月十九日、質疑を終了し、直ちに採決の結果、原案のとおり可決すべきものと議決いたした次第であります。  なお、本案に対し、地崎宇三郎君外二名提出にかかる、畠山民主党、日本社会党及び民主社会党三党共同の附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  19. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  20. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 中小企業指導法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案内閣提出
  21. 船田中

    議長船田中君) 日程第二、中小企業指導法の一部を改正する法律案日程第三、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案日程第四、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。     —————————————  中小企業指導法の一部を改正する法律案  中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案    〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  22. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。商工委員長二階堂進君。    〔議長退席、副議長着席〕     —————————————    〔報告書は本号(その二)に掲載〕     —————————————    〔二階堂進君登壇
  23. 二階堂進

    ○二階堂進君 ただいま議題となりました中小企業指導法の一部を改正する法律案外二件について、商工委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  まず、中小企業指導法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、中小企業指導センターに対して追加出資を行なうに際し、資本金の規定を整備すること、及び都道府県では習得困難な高度の技術に関して同センターが研修を行なうこと等の改正を行なおうとするものであります。  次に、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  中小企業信用保険法の一部改正は、中小企業信用力を補完して金融の円滑化を促進するため、特殊保証範囲の拡大、保険の限度額の引き上げ等の改正を行なおうとするものであります。  中小企業信用保険公庫法の一部改正は、当公庫に対して追加出資を行なうに際し、資本金の規定を整備すること、及び監事の権限に関する規定の改正を行ない、もって信用保証機能の拡充強化をはかろうとするものであります。  次に、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、当金庫に対する政府の追加出資に関する規定の整備、貸し出し範囲の拡大、外国為替業務の新設及び保護預かり業務、代理業務の拡大等の改正を行ない、もって当金庫の業務の拡充をはかろうとするものであります。  この三法案は、去る二月十日及び十二日にそれぞれ商工委員会に付託され、二月十一日及び二月十四日福田通商産業大臣より提案理由の説明を聴取し、二月十五日より質疑に入りました。その詳細は会議録に譲ります。  三月十九日、質疑を終了し、採決に付しましたところ、中小企業指導法の一部を改正する法律案、及び商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決し、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案は多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。  修正要旨は、監事の権限に関する改正規定につき、監事が直接主務大臣に意見を提出することができるように改めるものであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  24. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 三案を一括して採決いたします。  日程第二及び第四の委員長の報告はいずれも可決、第三の委員長の報告は修正であります。右三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  25. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、三案は委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  日程第五 揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出
  26. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 日程第五、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案日程第六、関税定率法等の一部を改正する法律案日程第七、所得税法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。     —————————————  揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案  関税定率法等の一部を改正する法律案  所得税法の一部を改正する法律案    〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  27. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長山中貞則君。     —————————————    〔報告書は本号(その二)に掲載〕     —————————————    〔山中貞則君登壇
  28. 山中貞則

    ○山中貞則君 ただいま議題となりました揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案のおもな改正の内容は次のとおりであります。  まず第一に、今回政府は、実施後三年目に入っている総事業費二兆一千億円の現行道路整備五ヵ年計画を改定して、新たに三十九年度を初年度と吊る総事業費四兆一千億円の新五ヵ年計画を策定し、道路輸送需要の増大に対処いたそうとしておりますが、これに見合い、計画遂行に必要な特別会計の財源を確保充実するため、一般財源の拡大投入のほかに、揮発油税の税率を一キロリットルにつき二千二百円引き上げて二万四千三百円にするとともに、地方道路税の税率を一キロリットルにつき四百円引き上げて四千四百円といたしております。  第二に、現在、未納税で所定の場所に揮発油を移入した者は、移入した日から十日以内に所轄の税務署長までその移入申告書を提出することとなっておりますが、事務手続の簡素化をはかるため、税務署長の承認を受けた場合は、これを月まとめにすることができるよう改めております。  なお、税率の引き上げに伴い、昭和三十九年四月一日現在において、製造場及び保税地域以外の場所で合計五キロリットル以上の揮発油を所持する製造者または販売業者に対し、手持ち品課税を行なうことといたしております。  次に、関税定率法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、開放経済に向かうわが国経済の最近における情勢の変化に対応する等のため、関税に関する世界の動向にも留意しつつ、関税定率法、関税暫定措置法及び関税法の一部についておおむね次のような改正を行なおうとするものであります。  まず第一に、御承知のとおり、わが国の現行関税率表は昭和三十六年に全面改正を行ない、次いで貿易自由化の繰り上げ等に伴い、一昨年及び昨年の二回にわたり部分改正が行なわれて現在に至っているのでありますが、今回、さらにその後の経済情勢の変化等に伴い、関税率の調整を必要とする八十二品目について税率の引き上げまたは引き下げを行なうほか、従価税率から従量税率への切りかえ、従量従価選択税率への切りかえ、関税割り当て制度の廃止または採用等の措置を講ずることといたしております。  また、これらの品目のうち、鉛及び亜鉛については、その価格の安定に資するため、一定の安定価格帯を設け、この上限または下限をこえて実際の輸入価格が動くときには、従量税を自動的に増減させるいわゆるスライド関税制度を採用するほか、豚肉の国内卸売り価格が、畜産物の価格安定等に関する法律に基づいて定められる安定上位価格をこえて騰貴している場合には、輸入される豚肉について、期間を指定して、安定上位価格を上回る価格について関税の減免ができるようにするとともに、農薬用物品等の製造に使用される粗糖の関税については、一定の条件のもとに、一キログラムにつき二十円の軽減税率を適用することといたしております。  なお、さきに申し上げました品目のほか、本年三月末に期限の到来する暫定税率適用品目のうち、バター、小麦、マンガン鉱等四十五品目については、現在の暫定税率をなお一年間延長し、除虫菊エキス、発電機、ボイラー等二十一品目については、基本税率に戻すことといたしております。  第二に、国産原油の円滑な引き取りを確保するため、国産原油を引き取る石油精製業者に対しましては、割り高な国産原油の引き取りによる負担増加の補てん措置として、その者が輸入原油について納付した関税のうち、揮発油にかかるものを還付する制度を新設いたしております。  第三に、イラク、ナイジェリア等の国より、わが国からの輸出物資の輸入と見返りにわが国に輸入を強く要請されていることにかんがみ、デーツシロップの製造に使用するナツメヤシの実並びに落花生油の製造に使用する落花生を新たに減免税の対象に加えております。  以上のほか、本年三月末に期限の到来する重要機械類等の暫定免税規定等の適用期限を一年延長するとともに、関税法の端数計算に関する規定を合理化の方向に改正する等、所要の規定の整備をはかっております。  以上が改正の概要でありますが、本案につきまして、田澤吉郎君外二十三名より修正案が提出されました。  修正案の内容は、国内果実生産者に対する影響を考慮し、原案において五〇%に引き下げられているバナナの関税率を、なお一年間現行どおり七〇%の税率に据え置こうとするものであります。なお、この修正により、昭和三十九年度において約二十一億円の増収が見込まれております。  以上の二法律案及び修正案につきましては、慎重審議の後、去る十九日、質疑を終了し、各案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して堀昌雄君より、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案、並びに関税定率法等の一部を改正する法律案に反対の旨、民主社会党を代表して竹本孫一君より、揮発油税法及び地方道路税法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案に反対、関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成の旨の意見がそれぞれ述べられました。次いで、採決いたしましたところ、まず、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案は多数をもって原案のとおり可決されました。次に、関税定率法等の一部を改正する法律案につきましては、修正案は全会一致をもって、また修正部分を除く原案は多数をもって、それぞれ可決され、よって、本案は修正議決いたされました。なお、念のため本修正に対する政府の意見を聴取いたしましたところ、田中大蔵大臣より、やむを得ない旨の意見が述べられました。  最後に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、中小所得者を中心としてその税負担の軽減をはかるとともに、あわせて税制の整備合理化を行なおうとするものでありまして、おもな改正の内容は次の諸点であります。  すなわち、まず、基礎控除を一万円引き上げて十二万円に、配偶者控除を五千円引き上げて十一万円にするほか、扶養控除のうち、五万円の控除額の対象となる年齢区分を、現在の十五歳以上から十三歳以上に引き下げ、その対象を拡大するとともに、十三歳未満の扶養控除額についても、現行より五千円引き上げて四万円といたしております。  また、専従者控除について、青色申告者の場合は二万五千円、白色申告者の場合は一万五千円、それぞれ現行より引き上げるとともに、給与所得控除についても、定額控除を一万円引き上げて二万円に、控除の限度額を二万円引き上げて十四万円にいたしております。  また、生命保険料控除については、支払い保険料の全額が控除される限度額を現在の一万五千円から二万円に、その控除の最高限度額を現在の三万二千五百円から二万五千円に、それぞれ引き上げるとともに、住宅または家財について支払った損害保険料について、新たに損害保険料控除制度を設け、その控除の限度額を、短期の火災保険の場合は二千円、長期の建物更生共済等の場合は五千円といたしております。  さらに、退職所得の特別控除額について、現在の在職期間の年齢区分を廃止して、一律に勤務年数一年につき五万円とすることにより、退職所程控除の一そうの充実をはかっております。  次に、譲渡所程の特別控除について、現在の十五万円の定額控除方式を免税点方式を加味した方式に改め、所得三十万円までは全額を控除するほか、三十万円から四十五万円までの所得についての控除額を引き上げて優遇する反面、短期保有の資産の譲渡による所得については、投機的行為を制限する意味において、半額課税等の方式から除外いたしております。  また、寄付金控除制度についても、控除対象限度額及び税額控除額を引き上げております。  以上のほか、勤労学生控除の対象となる勤労学生の要件、申告書の公示限度、芸能法人の受ける報酬または料金等についての所得税制を、実情に即するよう所要の改正を行なっております。  なお、本改正案につきましては、当初案のうち、別表第三、給与所得所得税源泉徴収額表の数字中、一部に計算上の誤りがありましたため、政府よりこれを修正いたしたい旨の申し出があり、去る十九日本院においてこれを承諾することに決しましたが、単なる事務上の誤りで、しかも大蔵省自体の再計算によって未然にその措置がとられたとはいえ、三十九年度予算案自体は、歳入面の計算違いが論議される以前にすでに本院を通過しており、事務上の計算違いとして看過するにはあまりにも重大な問題といわねばなりません。大蔵大臣からも本委員会において遺憾の意を表明されましたが、事、大蔵省の事務能力に対する国民の信頼感にも悪影響を与えるおそれもあり、大蔵省当局の猛反省を望むとともに、今後かかる誤りの絶対に発生しないよう、電子計算機の取り扱い当事者の一そうの習熟をはかる等、万全の措置を講ぜられるよう、委員会としても強く要望しておきます。(拍手)  なお、本改正案による所得税の減収見込み額は、初年度において約六百四十九億円、平年度において約七百三十七億円とされております。  本案につきましては、中山税制調査会会長より参考人としての意見を聴取する等、慎重な審議を続けました。おもなる論議の内容は、三十九年度税制改正の基本的態度、租税負担率、自然増収と減税規模、税制調再会の答申と政府案との相違点、所得税の課税最低限、給与所得控除、配偶者控除、専従者控除、損害保険料控除、源泉徴収制度等でありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  次いで、本案に対しまして、金子一平君外二十三名より修正案が提出されました。  修正案の内容は、損害保険料控除のうち、長期の建物更生共済等の保険料について、最近における当該保険契約の状況並びに短期保険との権衡等に顧み、本制度の適用要件としての契約期間を、原案の十五年以上から十年以上に引き下げるとともに、その控除限度額を原案の五千円から一万円に引き上げようとするものであります。  なお、この修正による減収額は約二億円と見込まれますが、さきに御報告申し上げましたとおり、関税定率法等の一部を改正する法律案中、バナナに対する五〇%の関税率を七〇%に引き上げる旨の委員会修正がなされ、これにより約二十一億円の増収が見込まれますので、予算の執行上別段支障がないものと思考されます。本修正案につきましては、国会法第五十七条の三の規定に基づき、内閣の意見を聴取いたしましたところ、田中大蔵大臣より、この修正が農家の住宅対策の一環として行なわれるものであることを考慮するときは、やむを得ないものと考える旨の意見が述べられました。  かくして、本案並びに修正案につきましては、去る十九日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して平林剛君より原案に反対、自由民主党を代表して砂田重民君より修正案及び原案に賛成、民主社会党を代表して竹本孫一君より修正案に賛成、原案に反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。次いで、採決いたしましたところ、修正案は全会一致をもって、また、修正部分を除く原案は多数をもって、それぞれ可決され、よって、本案は修正議決いたされました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  29. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 三案のうち、日程第五及び第七の両案につき討論の通告があります。順次これを許します。日野吉夫君。    〔日野吉夫君登壇
  30. 日野吉夫

    ○日野吉夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただい左上程されました揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案に対しまして、反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)  御承知のとおり、本法律案の内容は、道路整備五ヵ年計画の改定に見合って、ガソリン税の税率を一〇%引き上げようとするものであります。  私が本法律案に反対いたします第一の理由は、ガソリン税の引き上げは、物価抑制政策に逆行し、かえって政府みずからが物価上昇ムードをあおる結果になるということであります。  申すまでもなく、最近の諸物価の値上がりは異常なものがあり、昭和三十五年以後急速に上がり始めまして、ごく最近におきましても、三十七年度六・七%、三十八年度実績見込み七・二%、三十九年度におきましても四・二%を見込まざるを得ない実情であり、低所程者階層の生活を著しく圧迫いたしておりますことは、本国会においてしばしば繰り返し指摘されてきたところであります。このような事態に対しまして、ついに政府も、公共料金の値上げを一年間停止する方針をはじめ、物価抑制策に取り組まざるを得なかったのであります。さらに、独占大企業製品の価格規制とあわせて、大衆必需物資の間接税の引き下げを行なうことによって、政府が進んで物価抑制、値下げへの方向を強力に推進することが必要なのであります。  しかるに、政府は、これらの問題には目をおおい、ついにガソリン税の引き上げなどにより物価上昇ムードに火をつける役割りをみずから果たそうとしているのであります。ガソリン税及び地方税における軽油引取税の増税は、トラック、バス、タクシーなどの公共料金ばかりでなく、ガソリン需要の大半を占めている中小企業などの運送費の上昇に直接響くものでありまして、これを契機として一般物価上昇を助長することは火を見るよりも明らかであります。(拍手)一触即発のインフレ気がまえに対して、政府みずからがガソリンを注ぐものといわなければならないのであります。(拍手)一方で公共料金一年の値上げ停止をきめながら、一方では料金の値上げにはね返るガソリン税の引き上げを行なう政府の無定見、無方針は、これはまさにあきれざるを得ないのであります。  第二の理由といたしまして、今回のガソリン税の引き上げは、中小企業及び農業の経営者を著しく圧迫いたすものでありまして、経営を破局に導くものといわなければならないのであります。口では幾ら中小企業や農業の近代化を唱えても、これでは欺瞞政策以外の何ものでもないと言わなければならないのであります。(拍手)  わが国のガソリンの消費構成を見ますると、トラック、バス、タクシーなどの営業運送業者が一九%、官公需要が三・五%、残りの大部分は一般商店や中小企業者の自家用小型トラック、三輪車など、農家の農耕用機具などが使用しているものでありまして、しかも、運送業者の大部分も中小企業者であることから考えるならば、低所得者に対する冷酷な増税といわなければならないのであります。(拍手)さなきだに、景気整調過程における矛盾のしわ寄せを一身に浴びて経営困難をきわめているとき、これに加えてガソリン税の値上げの追い打ちをかけられては、弱小な中小企業者はとうていその負担にたえられないところといわなければならないのでございます。(拍手)  さらに、政府は二千億減税のかけ声のもとに、ことしの税金が昨年より〇・七%高くなったということであります。三十九年度の税は、国税、地方税合わせて四兆四千二万三十一億円であり、予想国民所得十九兆八千九百五十億円の二二・二%に当たるのでありまして、昨年の二一・五%に比較するならば、まさに〇・七%の増税になる結果が出てまいっておるのであります。(拍手)税調が二〇%前後と答申しているのも無視して、かかる不徹底、不公平な減税こそ、国民を納税への非協力者に迫い込み、税の抜け道を考えさせていることは、国の前途に暗影を投げかけているものといわざるを得ないのであります。よしんば、所得税、法人税などの直接税で少しばかりの減税があっても、ガソリン税の引き上げによって減税分を帳消しにして逆に増税された結果になることは、政府の看板に偽りありと申さなければならないのであります。(拍手)  ここで特に強調いたしたい点は、農業関係に使用するガソリン税は、これをこの際全廃して、農業経営の育成と近代化促進を助長すべきであるということであります。目的税たるガソリン税が農機器にまで一律に高率課税されることは、いかなる観点からしても不合理といわなければならないところであります。(拍手)航空機や特殊化学工業にはこれまで一貫して免税措置をとりながら、急速な近代化を必要とする農業用ガソリンに対しては相変わらず高率課税を続けることは、施策の適正を欠くものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  反対理由の第三点は、税負担の現状から見て、基礎的物資に対する消費税としてすでに著しく高率であるということであります。  揮発油税は元来国の一般財源と考えられておりましたが、昭和二十九年目的税とされて以来、相次ぐ増徴によって現在に至り、揮発油の小売り価格に対する消費税の負担は、関税をも含めて考えた場合、六〇・五%となっており、たばこの六五・一%に次ぐ高い税負担となっておるのであります。ガソリン税は、三十九年度において、税率一キロリットル当たり一万一千円から一万三千円に引き上げられて以来、毎年のように引き上げられて、現在では一キロリットル当たり二万六千円と、二倍以上にもなっているのであります。これは諸外国と比べましても、アメリカの三二・四%は別といたしましても、決して低過ぎる水準ではありません。西欧諸国が流通税や消費税などの間接税中心の体系をとっていることと、さらに国民所得の高さを考え合わせまするならば、実質的にはわが国の負担がはるかに高いということになるのであります。税調も、引き上げについては、道路整備計画が一般財源によりまかない得る限度、及び税率引き上げ国民負担に及ぼす影響等を十分考慮しつつ慎重に検討すべきであると結論しているのも、この点に関してであります。  第四点は、無原則的な道路計画が狂ってきた結果、従来の長期計画を変更しなければならなくなり、そのしりぬぐいをガソリン税引き上げで行なおうとする政府態度についてでございます。  予算編成の過程において最大の問題は、新道路整備五ヵ年計画の改定であったことは特徴的であります。この計画は、ガソリン税の増徴を条件として、現行二兆一千億から四兆一千億に改定せられたのでありますが、そのほか、港湾整備五ヵ年計画あるいは第五次公営住宅計画など、主要な公共企業長期計画が相次いで改定されているのであります。このように明年度予算において主要な長期計画が中途から相次いで改定されねばならなかったことは、第一に、当初計画の未熟さであり、加えて、経済の無原則的高度成長が計画自体を非現実的なものにしたことであります。道路計画においても、自動車の増加、交通量の地域的構成の変化など、計画が役に立たなくなったからであるのであります。第二には、三十七年度から目立った建設工事費の増額や地価の高騰であります。第三は、長期計画に確実な年次計画がないままに漫然と超過遂行を行なってきたためであり、そのために、予算がふくらんでも相当部分が単価に食われ、あるいは予算が満額となっても残工事が生ずるということが明白になった結果の改定であるのであります。これらは、計画自体のずさんさ、無責任さを証明するだけでなく、政府が積極財政とオーバーローン政策をてことして高度成長政策を推し進め、その破綻によるみずから招いた結果といわなければならないのであります。これらの根本問題を解決することなく、いたずらにガソリン税の引き上げにそのしわ寄せを行ない、表面を糊塗しようとするような行き方では、再び同じ誤りを繰り返すにすぎないのでございます。  以上四点にわたり反対の理由を述べたのでありますが、最後に、特に強調いたしたいのは、一つの政策の誤りは、単にその政策の誤りにとどまらず、各方面に連鎖反応を起こし、悪影響と悪循環を起こして、次々と誤りを積み重ねていくということになるのであります。とりわけ、本法案は国民生活と密接な関係を持つ物価問題につながることであり、政府は一瞬の体面にこだわることなく、国家百年の大計を立てるため、いさぎよく本案を撤回されることを要求いたしまして、反対討論を終わるものであります。(拍手
  31. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 金子一平君。    〔金子一平君登壇
  32. 金子一平

    ○金子一平君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案につきまして、修正案並びに修正部分を除いた政府原案に対し、また、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案に対し、賛成討論を行なわんとするものであります。(拍手)  まず、所得税法について賛成を理由を申し上げます。  申すまでもなく、税制は民生安定の根本につながる問題であります。したがって、さきの総選挙におきましても、わが党はいち早く国税、地方税を通じて二千億円の大幅減税を公約に掲げたのでありますが、今回の所得税法の改正は、この公約を完全に実施するために、税制改正の重要な一環として行なわれていることであります。すなわち、今回の税制改正は、国税、地方税を通じて平年度二千二百五十六億円、国税においては千三百七十六億円に及ぶ大幅な減税を実施せんとするものでありまして、その額は公約をはるかに上回るものがあるのでありますが、このうち所得税の減税は、平年度実に七百三十七億円に達するのであります。野党の諸君は、国税の自然増収六千八百二十六億円に比べて減税の規模が小さいと批判されるのでありまするが、三十九年度の実質的増加財源は、国税の自然増収から前年度剰余金の減少分を差し引いた四千八百九十億円でありまして、これに対する減税の割合は一七・一%に当たっております。この割合は昭和三十二年度以降においての最高の割合であります。しかのみならず、今日の日本が直面する本格的な開放経済体制に備えて、公共投資の拡大、社会保障の拡充、文教及び科学技術の振興等々、産業並びに生活基盤の強化のために要する緊急な多額の歳出要請を満たしながらも、他方において、このような規模の減税を実施しようとすることは、財源の許す限り最大の減税を行なったといっても過言ではなく、野党の諸君の批判は片手落ちの議論であり、当を得ていないといわざるを得ません。(拍手)これ賛成の第一の理由であります。  第二に、今回の改正は、国民生活の安定、向上をはかるために中小所得者、中小企業者を中心として大幅な所得税負担の軽減をはかっていることであります。すなわち、基礎控除の引き上げによる減税は二百二十二億円、配偶者控除の引き上げによる減税は五十一億円、扶養控除の引き上げによる減税は百二十九億円にのぼり、また、給与所得者に対しては、給与所得控除の引き上げにより二百二十六億円、事業所得者に対しては、専従者控除の引き上げにより三十二億円のそれぞれ減税を行なっております。この結果、課税最低限についてみますと、たとえば、夫婦と子供三人の給与所得者の場合は、現在の四十二万八千円から四十八万五千円に引き上げられることになり、また、青色申告の事業所得者に対する減税は、年間所得七十万円の場合には二六・一%、五十万円の場合には実に六五・九%の負担の軽減となっているのであります。この一例を見ても、今回の所得税の減税が給与所得者及び事業所得者にとって著しい負担の軽減をもたらし、民生の安定に資すること大なるものがあることは明らかであります。  また、改正案は、その他の特別控除額についてもきわめて適切な引き上げ等を行なっておるのであります。すなわち、退職所得の場合の控除額の改正、生命保険料控除の引き上げ、あるいは損害保険料の控除制度の創設、譲渡所得の場合の定額控除制度の改正等々小額所得者の負担の軽減をはかっております。  これを要するに、今回の改正は、国民生活の安定とその向上を期するため、もっぱら中小所得者と中小企業者の負担の軽減をはかることに重点を置いたものでありまして、きわめて適切妥当な措置であると確信するのであります。  なお、修正案につきましては、長期損害保険契約の大部分は農業協同組合が実施している建物更生共済でありますので、農家の住宅対策の一環としてまことに時宜を得た修正と認めるものであります。  以上申し述べました理由により、私は修正案並びに修正部分を除いた政府原案に対し全幅的な賛意を表するものであります。  次に、揮発油税法及び地方道路税法の改正案について申し述べます。  日本経済の最近の飛躍的な発展に伴い道路の整備をはかることは喫緊の急務でありますが、今回の改正案は、この財源を揮発油税及び地方道路税の税率引き上げに求めんとするものであります。これは現在の財政事情と税負担の現状に顧みまするとき、健全財政を貫く大方針を堅持する限り、まことにやむを得ない措置考えられるのであります。野党の諸君は、この増税が直接物価に及ぼす影響について云々されておるのでございまするけれども、従来の増税の経過から見て、その影響はさまで大きくなるものではないと見られます。また、逆に道路整備の拡充が輸送コストの低下及び能率の向上をもたらし、ひいては生産の向上によるコスト引き下げとなるというような、直接的な、あるいは間接的な利益も考えられますることから勘案いたしまして、この程度引き上げはやむを得ないものと賛成をするものであります。  以上をもって、私の討論を終わります。(拍手
  33. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 只松祐治君。    〔只松祐治君登壇
  34. 只松祐治

    ○只松祐治君 私は、日本社会党を代表し、全国の働く人々の願いを込めて所得税法の一部改正案に反対の討論を行ないます。(拍手)  自由民主党、池田政府は、口を開けば、国民経済成長に見合って減税を行なってきたといい、本年はさらに国税、地方税を合わせて平年度二千億に及ぶ画期的な大減税を行なったと、鳴りもの入りで宣伝を行なっています。はたしてそうでしょうか。私がノーと答える前に、国民がこぞってノーと答えるでございましょう。税金は重くこそなれ、決して軽くなどなってはいません。複雑で難解な税法、去る十九日本会議に再提案になった所得税法の別表修正に見られますように、わが国最高の専門家をもってしても算定困難な課税体系とその方式を利用して、善良な国民を欺くにこれ以上のものはありません。すなわち、政府は、本年度の経済成長率を実質七%と低く見積もりながら、三兆二千五百五十億円と、前年比実質一五%をこす大規模な予算をつくり、その財源として六千八百億円という、戦後最大の自然増収といえば何だか聞こえはよいようですが、実は国民から大増税を強行しようとしているのであります。当然のことですが、租税負担率ははね上がり、敗戦経済から脱し切れなかった昭和二十八年度を除けば、最高の二二・三%という高い負担率となっています。これは、御存じのように、政府の任命した税制調査会ですら、わが国の租税負担率は二〇%程度が適当であると述べたことを無視しているばかりでなく、わが党代表の質問に、戦前の一二、三%程度に引き戻すことに努力すると言明したことと全く相反するものであります。このように、租税負担率が増大の一途をたどり、ついに二二%をこしたことは、アメリカの極東戦略に奉仕する防衛費の増加、独占資本のための産業基盤強化の公共投資や、まさに倒れようとしておる朴かいらい政権のてこ入れのための対韓賠償など、平和と生活の向上を希求する国民に関係のない不急不用な費用が増大してきているためであり、われわれ国民の断じて容認することのできないものであります。(拍手)  次に反対いたします理由は、所得の減税があまりにも過小であり、実質上の減税ではないということであります。  すなわち、三十九年度の予算編成に際して政府が見込んだ租税の自然増収は六千八百億円をこえており、そのうち、所得税における自然増収は二千億円に達しております。それに対し、三十九年度税制改正による所得税の減税は、たった六百五十五億円にしかすぎません。これは大蔵省事務当局、税制調査会でも論議されていることでございますが、最近の物価上昇はまことに急速かつ大幅なものであります。給与所得者は、今春の賃金闘争にも見られるように、必死になって物価上昇のあとを追いかけていますが、その給与や賃金の名目的水準が物価上昇に追いついていくのはなかなか困難なことです。農家や中小商工業者のような事業所得者の場合も同じでありまして、物価上昇によってその経営は苦しくなり、名目所得水準を物価上昇に追いつかせるのに四苦八苦いたしております。したがいまして、物価上昇を追いかける形で国民の名目所得が上がり、それに対して租税負担も上がるという悪循環が繰り返されているわけです。  そこで、政府は、物価の上昇を押えるということが第一の責務となってまいりますが、もしその上昇を完全に押えることができないならば、物価上昇に見合っただけ課税最低限を引き上げて、租税負担を調整することが緊要なこととなってまいります。したがいまして、今回のような政府のいう減税、実は税の調整は当然の措置でありまして、ことさらに減税と呼ぶ必要はありません。減税とは、文字どおり国民の租税の負担を軽減することでありますから、物価上昇に見合った税制の調整にとどまらず、さらに進んで真の減税措置を講じなければなりません。政府の今回の税制の改正は、減税減税と口先で唱えながら、実際は所得税を中心に税負担を重くしていく最も悪質なやり方であり、われわれは、かかるごまかしの政策国民とともにきびしく弾劾しなければなりません。  第三に反対をいたします理由は、今回の改正は、所得税課税の原則に反しているからでございます。  申し上げるまでもなく、所得税課税の大原則は、生計費には課税しないということであります。この見地から昭和三十九年度所得税の改正を見るならば、夫婦二人に子供三人の標準世帯の課税最低限は、四十二万八千四百七十二円から、四十七万一千三百七十七円に引き上げられ、青色申告で四十二万、白色で三十六万円となっておりますが、これでは、生計費に課税しないという原則が完全に見失われています。総理府統計局の全国都市世帯の消費支出調査によりますと、昭和三十七年度において、調査世帯人員数は四・二九人であって、しかも年間を通ずる消費支出額が四十六万三千円に達しております。この世帯人員四・二九人を五人に引き直し、また、昭和三十七年度から三十八年度への物価上昇率約一四%を織り込んで修正すれば、実に標準世帯の年間生計費は約六十一万二千円になります。これは政府統計局の家計調査の数字から導き出されておるのであります。政府は少なくとも六十万円まで課税最低限の引き上げに努力すべきであり、日本社会党所得税課税最低限を六十万円に引き上げることを主張いたしているのも、この理由からであります。改正案はこの当然の主張を全然無視いたしております。  さらにわが党が反対する理由は、所得税がますます大衆課税の性格を強めてきていることにあります。  最近、池田内閣所得倍増政策の結果、所得の格差はいよいよ拡大してまいりました。したがいまして、それは当然に本来累進課税である所得税の課税対象から低所得層がだんだんに除外され、所得税納税人口が次第に減少してくるのが自然の成り行きでございます。ところが、前に申し述べましたように、課税最低限が不当に低いために、年々所得税納税人口が激増してきています。三十九年度は税制改正によってもなお二千万人をこし、昭和三十五年度の一千三百八十万人より約六百万人、昭和三十年度の一千九十七万人の約二倍にも増大してきております。試験地獄をようやく終えて、やれやれと一息ついた学生の六一・四九%は、今度はまた税金地獄にとりつかれることになるのでございます。税額も当然にふえて、三十五年度の三千四百六十二億円から、三十九年度は七千七百二十億円と、わずか五年間で倍以上にもなってまいります。納税者数も税額もふえてなおかつ減税ということは、いかなる学説に基づくものでありましょうか。  さらに重要なことは、所得税納税人口の激増ということは、地方税、すなわち住民税の所得割りへはね返ってくることであります。三十九年度の地方財政計画を見ましても、政府は住民税の自然増収を二千三百億円という過大な額を見込んでおりますが、これこそ、国税における所得税の増収と見合いになっていることは明白であります。したがいまして、政府は、国税及び地方税を通じて、まず所得税の課税最低限を大幅に引き上げて、所得税納税人口を大きく減少させるという措置をとることこそが最も大切なことであります。  最後に反対する理由は、昨年度、税制調査会の答申から、配偶者控除、扶養者控除、また専従者控除を行なわず、本年もまた答申を無視して、給与所得控除を行なわず、九十四億円を削り取り、現在でも多きに失する証券配当などの租税特別措置に回したことは、遺憾きわまりないことであります。税制調査会でさえ、幾たびか、現在の所得税は、戦前や諸外国に比較して重く、特に中小所得者の負担が重いと、その軽減を勧告してまいっておりますが、このように税調の答申さえ実施されない結果、所得税は、重いだけではなく、きわめて不公平になってきております。租税負担の原則が激しく侵され、事実上崩壊し去ろうとしていることは憂慮にたえません。特に、労働者、農民、中小企業者などのいわゆる勤労所得者に対する課税とその徴収は、まことに峻厳苛烈なものがありますが、株式の配当や預金利子、有価証券や不動産の投機的売買など、不労性所得に対してはたいへんにおおらかなものであります。たとえば、夫婦、子供三人で年間五十万円の給与所得者は、所得税、住民税を合わせて五千七百三十二円、事業所得の青色申告者は九千四百四十円でありますが、配当所得者は、所得税は一銭もかからず、わずかに住民税が三百円課せられるだけであります。同じく百万円の所得のとき、給与所得者は、所得税、住民税を合わせて八万七千二百二十一円、青色申告者は十万五百五十七円でありますが、配当所得者はわずかに二千三百十八円、利子所得者は四万八千七百五十円にすぎません。しかもこれらはすべて分離課税でもあります。全く、腹立たしさよりも、嘆かわしさを覚えるのは私一人だけではございますまい。ほとんどの国民は、この課税の実態に目をふさがれて知りませんが、働かざる者や資産家にこれほど都合よく、額に汗して働く善良な国民に限りなく重いこの課税の実情を全国民がほんとうに知ったときに、いかなる事態が生起するか、予測しがたいものがあります。  あやまちを改めるにはばかることはございません。政府は、すみやかにこの誤った税制を改め、近代税制の大原則である負担の公平と、所得の多い者、不労の者に累進的に課税する本来の税制に一日も早く立ち返ることを強く要望いたします。  なお、所得税法の改正にあたっては、当然に、生活困窮者や、所得税を納めることさえできない二千万人をこす低所得者のために、間接税の大幅引き下げをあわせて考慮すべきであることを付言し、国民のだれもが求めてやまない真の税制の確立にまた各位もひとしく御賛同を賜わらんことをお願いして、私の反対討論を終わります。(拍手
  35. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) これにて討論は終局いたしました。  三案を一括して採決いたします。  日程第五の委員長の報告は可決、第六及び第七の委員長の報告はいずれも修正であります。三案を委員長の報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、三業は委員長報告のとおり決しました。(拍手)      ————◇—————  漁業災害補償法案内閣提出)及び   漁業災害補償法案角屋堅次郎   君外十一名提出)の趣旨説明
  37. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出漁業災害補償法案、及び角屋堅次郎君外十一名提出漁業災害補償法案趣旨説明を順次求めます。農林大臣赤城宗徳君。    〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  38. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 漁業災害補償法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  漁業は、申すまでもなく、自然の影響を受けることの多い産業でありますが、特にわが国の漁業は、その大部分が沿岸漁家等の経営基礎の脆弱な中小漁業者によって営まれており、これら大多数の漁業者の経営は、気象または海況の変化、漁業資源の変動等によって常に不安定な状況に置かれているのであります。このため、従来から災害対策金融対策等の諸施策が講ぜられてきているのでありますが、これらの諸施策に加えて、漁業共済の事業による漁業災害補償の制度の確立が必要とされていたのであります。  政府といたしましては、昭和三十二年度から、漁業共済事業について試験実施調査を行なってきました。そして本制度の基礎研究調査、漁村に対する啓蒙普及、共済金の支払い財源の確保等について助成措置を講じてきましたが、この漁業共済事業に対する試験実施調査は、このたびこれを打ち切りまして、昨年施行されました沿岸漁業等振興法に規定している災害による損失の合理的な補てん等の具体的な施策の重要な一環として、ここに新しく漁業災害補償の制度を樹立することといたしたのであります。  この法案において定めている漁業災害補償の制度は、漁業協同組合等の協同組織を基盤とする漁業共済団体が行なう漁業共済事業及び漁業再共済事業により、中小漁業者の相互救済の精神を基調として、その営む漁業につき異常の事象または不慮の事故によって受けた損失を補てんするための必要な給付を行ない、中小漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に資することを目的とするものであります。もとより、この制度は漁業者の十分な理解と自主的な努力が前提となっているのでありますが、その健全かつ円滑な運営を確保するためには、漁業共済団体の支払い資金の確保、小規模な漁業者の共済掛け金の負担の軽減等の措置を講ずることが必要でありますので、この法案においては国がそれらの措置を講ずることを明らかにしているのであります。  以上述べましたような漁業災害補償の制度の適切な実施により、中小漁業者の経営の近代化及び高度化等、漁業経営の発展をもたらす基礎的な条件の整備が期待し得るのでありますが、政府といたしましては、この制度とともに、これまで実施してまいりました構造改善事業、漁港整備事業、金融対策その他の漁業施策をさらに積極的に進めながら、沿岸漁業等の振興を総合的にはかってまいりたい所存であります。  以下、この法律案の概要を御説明申し上げます。  第一は、漁業共済団体の組織についてであります。すなわち、都道府県の段階において漁業共済組合を、全国段階において再共済機関たる漁業共済組合連合会を設け、いわゆる二段階制の組織とすることとしております。漁業共済組合は、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会をその構成員とし、漁業協同組合系統組織の事業との相互連携を緊密にし、適正円滑な事業運営を確保することといたしております。  また、漁業共済組合は、相互の危険分散をはかるため漁業共済組合連合会へ当然に加入することといたしております。  第二は、漁業共済の事業についてであります。漁業共済組合は、その構成員たる漁業協同組合の組合員等のために、漁獲共済、養殖共済及び漁具共済の三種類の漁業共済事業を行なうこととしております。  漁獲共済は、海況の変化、資源の変動その他の事項により中小漁業者の漁獲金額が減少した場合に、その損失について共済金を交付する事業としております。  養殖共済は、養殖業を営む者が養殖中の水産動植物または養殖の用に供する施設の流失、損壊等により受けた損害について共済金を交付する事業としております。  漁具共済は、中小漁業者が漁業の操業中に漁網等の損壊等により受けた損害について共済金を交付する事業としております。  以上の漁業共済事業につきましては、漁業共済組合と漁業者との間に共済契約が成立したときは、漁業共済組合連合会と漁業共済組合との間に当然に再共済契約が成立することとし、その危険の分散をはかることとしております。  第三は、漁業共済基金についてであります。以上申し述べましたように、漁業共済の事業は、まず都道府県の段階で、次に全国の段階で二重に危険の分散をはかり、その事業経営の安定を期しているのでありますが、共済金または再共済金の支払いが円滑に行なわれるために、政府、都道府県及び漁業共済団体が出資する漁業共済基金を設置し、漁業共済団体に対する必要な資金の貸し付け、債務の保証等の業務を行なわしめることといたしております。  第四は、国の助成についてであります。漁業災害補償の制度につきましては、漁業共済団体の人件費等基幹的な事務費について助成してまいる所存でありますが、特に共済掛け金につきましては、小規模な漁業者の掛け金負担の軽減のためと、あわせて加入の奨励という見地から、純共済掛け金の一部を補助するものとしております。この共済掛け金の補助につきましては、特に規定を設け、本制度に対する国の助成の方針を明示いたしているのであります。  なお、この漁業災害補償の制度につきましては、政府は、今後における中小漁業者の漁業事情の推移と漁業共済の事業の実施の状況に応じて、共済掛け金率、共済責任の負担区分等に関して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする旨の規定を特に設けております。これは、この法律によりまずもって漁業共済団体の組織の整備と漁業共済への加入の確保をはかり、今後、漁業共済の事業の実績等に基づいて資料の蓄積とその分析につとめ、漁業災害補償の制度について検討を加える趣旨でありまして、これらの検討の結果に基づき本制度をより一そう整備してまいりたいと存じます。  以上が、漁業災害補償法案趣旨でございます。(拍手)     —————————————
  39. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 提出者赤路友藏君。    〔赤路友藏君登壇
  40. 赤路友藏

    ○赤路友藏君 私は、提案者を代表いたしまして、漁業災害補償法案について、その提案の理由と内容の概要を御説明申し上げたいと存じます。  漁業は、農業とひとしく、あるいはそれ以上に自然現象に支配されることの大きい産業でありまして、不可抗力である自然災害によって事業が壊滅し、あるいは再起不能の損失を受ける危険に常にさらされているのであります。しかも、わが国の漁業においては、経営規模が小さく、これらの災害に対する抵抗力の弱いものがきわめて多いのであります。  このため、災害によって漁業者がこうむる損失を補てんし、漁業の再生産を持続することのできる漁業災害補償制度を実現することは、漁業者の久しく切望し来たったところであります。こうした漁民の要望にこたえ、充実した漁業災害補償制度を確立し、漁業者を不慮の災害または不漁に基づく窮乏から解放することは、政府の責任でなければならないと思うのであります。  しかるに、農業においては早くから災害補償制度が実施され、不十分ではあれ農民を農業災害から守っているにもかかわらず、それよりも一段と条件の悪い漁業においては、昭和三十二年から漁業共済が試験的に実施された程度でありまして、今日まで災害補償制度は確立いたしておらないのであります。今般政府漁業災害補償法の制定に踏み切ったことは、漁民のために多とするものでありますが、しかし単なる共済制度の規定では無意味であるといわなければなりません。災害補償と共済との関係は、同一平面において論ぜられるべきものではありません。これを、意識的に混同せしめようといたしますならば、結果的には、羊頭を掲げて狗肉を売るということになるのであります。  以上申し述べました事態にかんがみ、画期的な漁業災害補償制度を確立し、漁業の健全な発展をはかり、漁業者を災害に基づく窮乏から解放することは、目下の急務であると存じます。これが、本案を提案するに至った理由でございます。  次に、この法律案の大要について御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的でありますが、漁業災害補償制度を確立し、沿岸漁業者等が異常の事象または不慮の事故によって受けることのある損失を十分に補てんして漁業経営の安定をはかり、もって漁業の発展に資することを目的とする旨を明記いたしました。さらに、この法律案において、漁業災害補償制度とは、漁業共済組合が行なう漁業共済事業、漁業共済組合連合会が行なう漁業再共済事業、及び政府が行なう漁業保険事業により、沿岸漁業者等の漁獲金額の減少または養殖水産動植物、養殖施設もしくは漁具にかかる損害に関して必要な給付を行なう制度であることをあわせて明らかにいたしました。これは、わが党が、この法案によって名実ともに兼ね備えた漁業災害補償制度の確立を願っているからにほかなりません。  第二に、漁業共済団体の組織でありますが、都道府県の区域によるものと全国の区域によるものの二段階といたしました。また、組合員たる資格を有する者は、県段階における漁業共済組合においては、組合の地区に住所を有する漁業協同組合及び漁業協同組合連合会とし、全国段階における漁業共済組合連合会においては、組合の地区内に住所を有する漁業共済組合とするとともに、両者ともに当然加入といたしました。  第三に、漁業共済組合の行なう事業でありますが、共済組合が当面行なうべき事業としては、漁獲共済、養殖共済及び漁具共済の三つとし、漁船保険及び任意共済事業については、なるべくすみやかに、この法律に基づく漁業災害補償制度の対象とするための必要な措置を講ずべき旨、附則で規定いたしました。  第四に、契約の方法についてでありますが、義務加入と任意加入の方法によることといたしまして、それぞれ必要な条項を規定いたしております。  第五に、漁業共済連合会の漁業共済事業についてでありますが、連合会が行なう共済事業は、共済組合が漁業共済事業によって被共済者に対して負う共済責任を再共済する事業とするとともに、共済組合と被共済者との間にこの法律の規定による共済関係が成立したときは、これによって連合会と共済組合との間に、当該共済契約につき再共済関係が成立するものといたしました。  また、連合会の再共済金額は、当該共済金額に通常責任共済金額の百分の九十をこえない範囲内で政令で定める金額といたしました。  第六に、政府の保険事業であります。政府が行なう保険事業は、共済組合が漁業共済事業によって被共済者に対して負う共済責任を保険する事業とし、共済組合と被共済者との間にこの法律の規定による共済関係が成立したときは、政府と当該共済組合との間に保険関係が成立するものとすることといたしました。  なお、政府の保険金額は、共済金額のうち通常責任共済金額をこえる部分の金額とし、政府の負担する保険料率は、異常共済掛け金部分とするものといたしました。  第七に、漁業共済基金についてであります。漁業共済団体に対してその業務に必要な資金を融通することにより、漁業共済事業の過渡的な収支調整をはかることを目的として、資本金十億円、うち政府出資七億円の漁業共済基金を設けることといたしました。  第八に、共済掛け金等の国庫負担についてであります。区画漁業等であって政令で定めるもの、及び総トン数十トン未満の漁船によって行なう漁業にあっては、異常共済掛け金部分の全額と通常共済掛け金部分の三分の二の合計額を、総トン数十トン以上百トン未満の漁船により行なう漁業にあっては、異常共済掛け金部分の全額と通常掛け金部分の二分の一の合計額を、百トン以上千トン未満の漁業については、異常共済掛け金部分の全額と通常共済掛け金部分の三分の一以内で政令で定める金額の合計額を国庫が負担すべきことといたしました。  養殖共済及び漁具共済においても、おおむねこれに準じて掛け金の一部を国庫で負担することといたしております。  また、漁業共済団体の事務費に対しても、その全額を国庫で負担すべき旨を規定いたしました。  第九に、漁業共済団体の行なう損害査定の公正を期するため、学識経験者をもって構成する損害評価会を漁業共済団体に置くことといたしました。  第十に、漁業共済を漁民にとって一段と魅力あるものとするため、共済限度額を高め、特約制度によって限度額率を九五%まで引き上げることができることにしたのであります。いま一つは、豊漁年における余剰金の一部を不漁準備金として積み立て、共済事故が発生した場合は、その積み立て金を優先的に取りくずすことができるようにいたしました。なお、積み立て金に対する課税及び契約者の共済掛け金率は、積み立て金額に応じて逓減することができるようにいたしました。  また、無事故優遇措置として、無事故継続年数に応じて掛け金の一部を払い戻すことができるものといたしました。さらに零細漁民の掛け金払い込みを容易にするため、漁獲共済及び養殖共済にかかる共済掛け金は分割して支払うことができるようにいたしました。  第十一に、政府の漁業保険事業の実施に伴う漁業保険特別会計の設置、基金の設立その他この法律の施行に伴い必要な事項及び関係法律の整理に関しては、別に法律で定めることといたしました。  以上が、この法律案提出いたしました理由と法案のおもなる内容でございます。何とぞ慎重審議の上各位の御賛同を賜わるようお願いいたしまして、説明を終わらしていただきます。(拍手)      ————◇—————   漁業災害補償法案内閣提出)及び漁業災害補償法案角屋堅次郎君外十一名提出)の趣旨説明に対する質疑
  41. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。白浜仁吉君。    〔白浜仁吉君登壇
  42. 白浜仁吉

    ○白浜仁吉君 私は、自由民主党を代表して、ただいま農林大臣から趣旨説明が行なわれました漁業災害補償法案について、池田総理大臣をはじめ、赤城農林大臣、田中大蔵大臣に対し、若干の質疑を行なわんとするものであります。  わが国の漁業は、漁獲高において世界第一の地位を占め、国民に対する食糧の確保はもとより、輸出水産物として貴重な外貨を獲得する重要な産業であり、国民経済高度成長の上に大きく貢献している事実については、すでに明らかなところであります。しかるに、従来わが国の漁業に対する施策が等閑に付されがちであったこともまた否定できないことであろうかと思うのであります。昨年の第四十三国会において、政府提案にかかる沿岸漁業等振興法の制定を見て以来、国策の面においても、ようやく漁業に対する認識が改められた感があるのは、当然のこととは申せ、同慶の至りであります。  わが自由民主党が、昨年総選挙に際し、沿岸漁業等振興法制定に引き続き、漁業災害補償制度の本格実施を公約したのでありますが、今回政府はこれを受けて、幾多の困難な諸条件を克服して、ここに本法の提案を見たことは、池田総理大臣がしばしば言明された農林漁業に対する画期的施策の一環として、心から敬意を表するとともに、関係各位の御努力に対して、深い感謝をささげるものであります。  まず私は、池田総理大臣にお伺いをいたします。  わが日本は、海洋国家として進まなければならない環境にあることは、申し上げるまでもないことであります。資源に恵まれないわが国が健全な発展を遂げるためには、国策の重要な一つとして漁業対策を忘れてならないことは、これまた申すまでもありません。漁業生産物による外貨獲得は年間三億ドル余、これをささえるもとは、また沿岸の中小漁業があればこそであります。したがいまして、これらの漁業を常に天然条件や国際関係等に縛られて、不安定な希望のない状態に放置しては、将来わが国民生活もまた重大な影響を受けるものと考えられるのであります。たとえば、わが国よりはるかに漁業依存度が低い英国においてすら、海洋立国の立場から、漁業経営者並びにその従事者に対して思い切った国の助成を行なって、漁業の経営維持をはかっているのであります。わが国においても、あるいは食糧、あるいは外貨、あるいは国際間の突発的変動等、幾多の問題を勘案し、高い政治的視野に立って、従来の理解ある池田総理大臣の漁業対策を一そう積極的に推進することが必要であると思うのでありますが、御所信のほどを承りたいのであります。  次に、法律案の内容を検討する場合、若干の問題なしとしないので、以下、農林大臣大蔵大臣にそれぞれ御質問申し上げます。  第一点は、法律案の題名と内容との関連性についてであります。  確かに水産業における場合は、農業における場合と異なり、この種制度には非常な困難性が伴うことはだれしも容易に理解できるところではありますが、法案の内容は率直に言って農業災害補償法と比較する場合かなり懸隔があると思うのであります。すなわち、本制度は漁業共済組合が行なう共済事業と、同連合会が行なう再共済事業により、漁獲、養殖または漁具にかかる損害に関し、必要な給付を行なうものとしておりますが、対象とする漁業者は、零細な沿岸漁業が中核となる関係から、国が相当手厚い助成を行なうことが必要であり、このことは、漁業政策の見地からも、また本制度の健全なる発展を期する上からも、重要なことであると思われるのであります。この点に関し、不十分な点なしとしないのであります。たとえば、ひとり団体が行なう再共済事業にゆだねるにとどまらず、団体が負担し得る共済責任部分とこれをこえる部分とに区分し、共済団体の負担し得る責任部分をこえる部分については国が再保険を行なうことが、共済経営の安定を確保するためには必要と考えられるところであります。  かような点に関し、農林、大蔵両大臣に御見解のほどを承りたいのであります。  このことについては、従来試験実施を行なってきたとはいえ、基礎資料に乏しい現在、直ちに制度として完ぺきを期することは困難なことも理解されることでありますが、近い将来においては、農災法の例にならい、制度を充実することが関係業界の切なる要望でもあるわけであり、この点についても御答弁をお願いいたしたい。  第二点は、共済掛け金及び事務費の助成に関する点であります。  共済掛け金については、漁業者の負担能力を十分勘案し、過重とならないよう考慮すべきものと思うのであります。この点法案においても相当な配慮がなされておることはわかりますが、さきに述べた再保険事業と同様の趣旨において、いわゆる異常危険部分については国が負担すべき道を開き、また事務費についても国が積極的に助成措置を講ずべきであると思われるのであります。農林大臣並びに大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。  第三点は、本制度の実施に関する点であります。  漁業者の相互救済の精神を基調とする本制度はたとえ制度的には整備されたものであっても、政府をはじめ地方公共団体の十分なる援助並びに指導はもとより、関係漁業者の真の理解と協力が得られなければとうていその実効は期待できず、制度の崩壊を招く危険すらあるのであります。すなわち、従来の試験実施において見られたごとく、加入が一部地域あるいは少数の漁業に片寄り、普遍的でなく、その上加入件数が少なく、危険分散の確保が期し得られないことが懸念されるのであります。この点特に留意すべきことはもとより、共済掛け金収入と共済金支払いとの時期的な食い違いを調整するための支払い調整基金の造成について、国及び関係団体の出資はもとより、都道府県の協力を得て共済金の支払いに不安がないようすべきであることが最も肝要であります。この点に関しても農林大臣の御理解と御所信のほどを承りたいのであります。  以上、述べましたとおり、若干の不満は残るとしましても、この際、関係業界は一致して政府案の成立を切望いたしておるところであります。  つきましては、政府案が一日も早く本院を通過できますよう議員各位の御協力を特にお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 白浜君の御質問にお答え申し上げます。  わが国の漁業は、お話のとおり、その漁獲高において、また魚の種類において世界第一でございます。しかも、全世界の海洋に活躍いたしまして非常な成績をあげ、われわれ国民の栄養源であるたん白質の補給または外貨の獲得に非常な貢献をしておるのであります。したがいまして、政府といたしましては、漁業につきましてはお話のとおり、従来にも増して積極的な方策をとりたいと考えております。  まず、大企業につきましては、いわゆる新漁場の確保あるいは国際漁場においての各国との協調によりまして、遠洋漁業を積極的に進めてまいりますが、御承知の生産性の低い零細漁業、あるいは経営が非常に困難な中小漁業に対しましては、私はさきに沿岸漁業振興法をつくりまして、いわゆる漁港の修築とかあるいは水産技術の振興とか、あるいは水産物の流通対策あるいは金融等につきまして、いろいろ努力してまいりました。零細企業の伸展をはかっておりますが、今回新たに漁業の災害に対しましての再生産確保し、そして経営の安定をはかるために、漁業災害補償法を提案いたしておるのであります。私は、沿岸漁業振興法とこの漁業災害補償法によりまして、これが十分な働きをいたしまして、わが国零細中小企業の漁業の振興に努力いたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  44. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。  御承知のように、この漁業災害補償法は、従来の試験実施の実績に基づいて今度制度化いたすわけでございます。そこで、漁業災害補償法の題目と内容等につきまして、いささか内容が不十分でないか。こういうような御質問でございます。確かに農業災害補償法と比較いたしますならば、御質問もありました再保険というような点におきまして違っておりますが、しかし、この実施の過程において検討していく、こういう意味におきまして、この法律の題名は農業と同じように漁業災害補償法と、こういうふうに題名をいたしたわけであります。  そこで、第二には、共済団体の組織の整備、あるいは漁業共済の加入の確保をはかっていきまして、その上におきまして、なお共済責任の負担区分、あるいは共済掛け金率等につきましては、御質問の点をも含めて所要の検討を続けていきたい、こう考えております。  なお、再保険の問題でございますが、共済団体が支払う共済金または再共済金の基金が不足した場合の対策といたしましては、御説明申し上げましたように、資本金五億円の漁業共済基金を設けまして、支払い基金の確保をはかっておりますので、これで対処していきたい、こう考えております。現在の段階におきましては、国の再保険という制度は、この法律では持っておりませんけれども、さらに検討を加えていくつもりでございます。  なお、御承知のように、一定経営規模以下の漁業者に対する掛け金の補助等も考慮しておりますし、また、事務費の一部に対しましても補助をする、こういう制度をもちまして、この法案を提出いたした次第でございますけれども、実施の過程におきまして、この題名に沿うような方向に一段と推進していきたい、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇
  45. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 白浜さんの私に対する質問は、共済団体の負担し狩る責任部分をこえる部分については、国の再保険を行なうことが必要であるという点が一点。共済掛け金の異常危険部分について国が負担する方途を講ずべきであるというのが二点。第三番目は、事務費についても国が積極的に助成を行なうべしという御議論のようでございます。以上について申し上げます。  漁業災害補償制度は、わが国の漁業の実情と、これまでの漁業共済に関する試験実施の実績に基づきまして、その制度化をはかることにしたものであります。まずもって漁業共済団体の組織の整備と漁業共済への加入の確保をはかり、今後の事業の実施状況に応じまして共済責任の負担区分、共済掛け金率等につきまして、御質問の点をも含めまして所要の検討を加え、その結果に基づいて整備をはかってまいる所存であります。しかし、本法案におきましては、国の再保険措置につきまして、昭和三十二年度以降行なってまいりました試験実施の実績その他の資料からは、まだ通常災害、異常災害という区分ができないのであります。農業共済のような超過再保険の方式をとることができないという事情もありますので、都道府県段階の共済団体が実施する共済事業を全国段階の連合会が再共済するという方式で実施をすることが適当だと考えられるので、特別会計の設置による国の再保険は行なわないことにいたしたわけでございます。なお、共済団体が支払う共済金には、再共済金の資金が不足する場合の対策といたしまして、資本金五億円の漁業共済基金を設けまして、支払い資金の確保をはかっておるのであります。  次に、農家共済の掛け金につきましては、経営規模が一定規模以下の加入者に対しまして、その経営規模等に応じまして、共済掛け金に対する国庫補助を行なうことといたしておるわけでございます。  また、漁業団体の事務費につきましては、その一部について国庫補助を行なうことといたしておるのでございますが、その経費の性質上、これを法律の規定に置かないことにいたした次第でございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)     —————————————
  46. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 角屋堅次郎君。    〔角屋堅次郎登壇
  47. 角屋堅次郎

    角屋堅次郎君 私は、日本社会党を代表し、ただいま赤城農林大臣より趣旨説明のありました漁業災害補償法案に対し、政府案の根本的な欠陥と問題点について、池田総理はじめ関係大臣に若干の質問を行なわんとするものであります。(拍手)  言うまでもなく、漁業災害補償制度の完全な実施が漁業経営の安定と近代化のための重要な基本方策であることは、いまさら言をまたないところであります。この意味で、農業共済事業が昭和三十二年十二月から試験実施が開始され、昨年十月の漁業共済制度研究会の答申を基礎に、今日ようやく本格実施段階を迎えんとしているのでありますが、農業災害補償法がすでに昭和二十二年十二月制定されたのに対比して、むしろおそきに失し、政府の沿岸漁業軽視の批判は免れ得ざるところであります。したがって、政府漁業災害補償法案は、かかる意味の謙虚な反省の上に立って、農業災害補償法に内容、予算ともまさるとも劣らない魅力ある共済制度たるべきことは、けだし当然のことでございます。しかるに、政府案は、多年にわたる関係漁業者の期待と要望を完全に裏切り、きわめて欠陥と問題点の多い内容であることは、まことに遺憾であります。  以下、ただいま趣旨説明のありましたわが党の漁業災害補償法案と対比しつつ、重点的にお尋ねいたします。  まず第一は、政府案の内容でははたして漁業災害補償法案の名に値するかどうかという点についてであります。  われわれの見解からすれば、漁業災害補償の制度は、その災害の態様から見て、農業共済と同様に、民間団体が自力でやれる限度を越える部分について国の再保険措置は当然必要であり、国と民間団体の両々相まって初めて災害補償の名に値するものになると考えるのであります。しかるに、政府案は、第一条「目的」、第二条「漁業災害補償の制度」、第四条「漁業共済団体の目的」等からも明らかなように、何ら国の再保険措置を制度的に考えておらず、若干の掛け金補助のみで民間団体の自力に期待しているのであります。政府は、何ゆえに今回の本格実施に踏み切るにあたり、国の再保険措置を断行し得なかったのであるか。いたずらに水産日本を口にし、漁獲高における世界第一位を誇っても、当面、問題の多い沿岸漁業等の振興にどれだけの誠意を有するのか、はなはだ疑わざるを得ないのであります。(拍手政府・自民党は、昨年秋の総選挙の際、漁業災害補償制度の確立を国民に公約したのでありますが、かかる片手落ちの内容では、明らかに公約違反ではないか、池田総理の率直なる御所信のほどを承りたいのであります。  この際、赤城農林大臣より、本法案作成過程における国の再保険措置の検討経過並びに附則第二条にいう検討条項の真意を端的にお答え願いたいのであります。この点で、わが党提案は、国の再保険措置を明確に規定し、所要の財政措置を積極的に講じておりますが、われわれの判断をもってすれば、政府が国の再保険措置をちゅうちょするのは、本法案の漁業政策上における位置づけを正しく理解せず、漁業災害補償をできる限り安上がりに済まそうとする財政的配慮が先行しているのではないかと考えるのであります。この点、田中大蔵大臣より、国の再保険措置は今後必ず実現するという立場で財政支出を予定しておるのであるかどうか、また、本法案の内容では、かの伊勢湾台風、チリ津波等の異常災害が相当広範囲に発生するような場合、漁業共済団体の運営はもちろん、漁業共済基金の資金量にも支障が生ずることが当然予想されますが、その場合の財政援助について、あわせ明確にお答え願いたいのであります。  第二は、国の助成措置についてであります。  わが党提案は、この点について、共済掛け金等の国庫負担の条文を設け、共済掛け金については、異常責任に対応する共済掛け金は原則として全額国庫負担とし、通常責任に対応する共済掛け金は力の弱い漁業者に厚く、力のある漁業者にはそれぞれ負担能力を勘案して国庫負担を行ない、また基幹事務費についても、先行投資的配慮を加えて全額国庫負担としているのであります。しかるに、政府案では、国の助成として第百九十五条に共済掛け金の補助のみを規定し、しかもその助成措置は、農災制度をはるかに下回っているのであります。さらに、事務費の助成を法律案に明記せず、行政的に若干の助成をするのみであり、これではさきに述べた国の再保険措置の欠除と相まって、政府漁業災害補償制度の確立に対する熱意なしと断じても反論の余地がないと思うのであります。(拍手政府は、口を開けば所得倍増計画の第二ラウンドとして、中小企業や農業等に革命的施策を講ずること常々称しながら、その内容がいかに空疎なものであるかは、最近の農政一つを見てもおのずから明らかなところであります。  この際、赤城農林大臣並びに財政担当の田中大蔵大臣より、国の助成に関する具体的な内容と将来の方針について率直なる御見解を承りたいと思います。  なお、田中大蔵大臣より、漁業共済団体の税法上の恩典措置について、他の災害補償制度を行なう同種のものより冷遇されているのはいかなる理由に基づくものであるか、あわせてお答え願いたいのであります。  第三は、漁業共済事業の運営等について、主として赤城農林大臣並びに田中大蔵大臣に、数点お伺いいたします。  第一点は、政府案に基づく今後の事業計画についてであります。  漁業災害補償法の究極の目標は、制度の対象となる漁業者が漏れなく加入することにより、危険分散による共済運営の安定はもちろん、逆選択やモラル・リスクの心配をなくすることであります。その場合の事業規模はおおむね、漁獲共済千五百億円、養殖共済五百億円、漁具共済百億円と推定されております。それからすれば、現在の試験実施の実績は昭和三十八年二月末現在で契約金額七十一億円程度であり、いまだその緒についた段階にあります。政府は半面五ヵ年間の事業計画をいかに考えておられるか。わが党の法案を実現すれば、加入率は五年後に少なくとも八〇%はこえるものと確信しておるのでありますが、政府の構想を承りたいのであります。  第二点は、組合が行なう漁業共済事業の種類についてであります。  この点について、政府案は、当面漁獲共済、養殖共済、漁具共済の三つを対象としていることにわれわれも賛成であります。しかしながら、今後総合的な運営を期するためには、漁船保険及び任意共済について検討を加え、特に任意共済はすみやかに本法の対象とすべきではないか、この点、政府の御所見を明らかにされたいのであります。  なお、その際、従来行なわれてきた試験実施、調査委託事業の収拾措置、特に試験実施に伴う赤字補てんの措置をいかにするのか、あわせお答え願いたいのであります。  第三点は、無事故戻し制の実施、不漁準備金の積み立て、損害評価会の設置について、簡潔にお尋ねいたします。  これらの点は、いずれもわが党案にあって、政府案にない条項でありますが、無事故戻し制は、農業共済にあって、なぜに漁業共済に採用できないのか。また不漁準備金の積み立ては、多年にわたる中小漁業者の強い要望であるにもかかわらず実現を見ないのはなぜか。さらに、損害評価会は、農業共済にあって、今回の政府案にないのは、今後加入の増加に伴う広範かつ多様な損害評価について、いかにして適正を期する所存であるのか。漁業災害補償制度の長期的な展望の上に立って、誠意ある御回答をいただきたいのであります。  第四は、漁業災害補償制度の整備充実と他省の政策との関連についてであります。  第一点は、沿岸漁業者の頭痛の種である水質汚濁問題であります。  最近の工業化、都市化に伴う水質汚濁が、下水道とその終末処理及びし尿処理の立ちおくれと相まって、優良漁場を荒廃させ、沿岸漁業者に多大の犠牲を与えていることは、まことに遺憾な事実であります。政府は、昭和三十三年に公共用水域の水質の保全に関する法律、及び工場排水等の規制に関する法律を制定以来、調査水域の選定、指定水域の指定を進めておりますが、実効は遅々としてあがらず、むしろ水質汚濁は拡大の傾向にあると考えるのであります。現在、関係漁業者の心配の種は、漁業災害補償制度が確立すれば、逆に水質汚濁防止がかえってルーズに放置されはしないかということであります。この点、水質汚濁防止の現状と将来の方針について、稲川通産大臣の御決意のほどを承りたいのであります。  第二点は、労働政策との関連についてであります。  漁船船員の労働条件は、漁業の特殊性を考慮しても、なお改善すべき点の多いことは識者のつとに指摘するところであります。漁業生産の不安定性を象徴する歩合給からの脱皮、有給休暇、長期契約、最低賃金制度の実施等、漁業労働条件の近代化と雇用の安定は、漁業災害補償制度の確立に伴う漁業経営の安定向上によってさらに促進されなければなりませんが、この点、大橋労働大臣の率直なる御所見を承りたいのであります。  これを要するに、漁業災害補償法案考える場合、われわれの強く主張したい点は、漁業災害の態様から見ても、国の再保険措置は必要不可欠の要件であり、名実ともに魅力ある共済制度として発展するためには、制度の対象となる漁業者の実態と能力に応じ、社会政策と産業政策とを調和しつつ、必要なる法制的、財政措置を先行投資的意味も含めて積極的に講じ、特におくれたる沿岸漁業の振興に大きく寄与すべきであると確信するものであります。この際、総括的な本制度に対する基本方針について、特に池田総理より明確に承りたいのであります。  以上、私は、政府提出漁業災害補償法案について、根本的欠陥と問題点を指摘し、われわれの見解も端的に表明いたしましたが、本法案の詳細については、いずれ委員会においても十分議論いたしたいと考えております。  いずれにせよ、政府案は、待望久しかりし関係漁業者からすれば、失望の念禁じがたく、農業災害補償法等と対比してみても、相当大幅な修正を必要とするものであります。もちろん、今日沿岸漁業等の振興と経営安定の道は、漁業災害補償法の整備をもって終わるわけではありません。当然、今後沿岸漁業の構造改善対策の強化、魚価安定対策金融対策その他各般の漁業施策と相まって初めてその全きを期待されるのであります。  時まさに日韓交渉は、われわれの強い反対の主張にもかかわらず、いまや重大な段階を迎えんとしております。本日の池田・金会談はいかなる性格を持つものであるか、また、池田総理の本会談に対する基本的態度はいかなるものであるのか、日本漁業の将来に重大な影響を持つ死活の問題であるだけに、この際明確にされたいのであります。  私は、ここに、池田総理はじめ関係大臣が直接漁業者に訴える気持ちをもって、以上の諸点に対し、誠意ある御答弁をされますよう強く要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  政府は、さきに沿岸漁業振興法を制定いたしまして、沿岸漁業の振興に資しておるのでございますが、今回漁業災害補償法を提案いたしまして、漁業の再生産確保、また漁業企業の安定、これをはかろうとしておるのであります。しこうして、御質問は、農業災害補償とこれとは一致しない、こういうお話でございますが、すでに御承知のごとく、農業災害と漁業災害とはその対象が非常に違っております。全魚類、また自然的条件に支配されることが農業以上と私は考えておるのであります。しかも、また、金額その他の点につきましても、米、麦とは違います。そういう事情がございまして、われわれは過去六年間いわゆる漁業災害につきましての試験をやってきたのであります。しかし、いつまでも試験をやっていくわけにはいきません。できるだけ早く再生産確保のために漁業共済団体の組織整備、あるいは漁業共済への加入の確保等をはかりまして、とりあえずいわゆる再生産と漁業の安定に資しようとしておるのでございます。農業災害とはその対象その他いろいろな点で違っております。今後十分研究をいたしまして、万全の措置を講じたいと思います。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇
  49. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 再保険制度を設けるつもりがあるかという御所見でございますが、先ほど白浜さんに申し上げたとおりでございます。現在のところ、国の再保険は行なわないことにいたしております。しかし、今後は、この事業の実施状況に応じまして、共済責任の負担区分等、御質問の点等をも含めて所要の検討を加え、その結果に基づいて整備をはかってまいりたい、このように考えます。  それから第二は、政府の共済掛け金補助だけであって、政府財政負担が不十分であるということでございますが、御承知のとおり、農業共済と違いまして、強制的加入は予定をいたしておらないものでございます。なお、この補助につきましては、漁船二十トン未満の漁業者に対して共済掛け金の二分の一とか、また、二十トン以上の階層につきましては、五十トン未満は三分の一、百トン未満は四分の一というようにいたしまして、農業共済との均衡をはかっておるわけでございます。  なお、漁業共済団体の事務費につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  第三点は、今後五ヵ年間の事業計画をどうするのかということでございます。本法案に予定をいたしております漁業共済事業は、新しい制度でございますので、現在の段階において五ヵ年計画を予測することはきわめてむずかしい問題でございます。まずもって漁業共済団体の組織の整備と加入の推進をはかって、必要な財政措置につきましても、そのつど確保につとめてまいることにいたしたいと存じます。  それから、昭和三十二年度以降行なわれました試験実施赤字補てんに対しての具体策でございますが、御承知のとおり、昭和三十二年度以降、毎年度、国庫債務負担行為によりまして、一定の限度を限って補助金を交付することにいたしておるわけでございます。補助限度額をこえない部分に対しましては、このような処置によって補てんをいたしておるわけでございます。  最後に、漁業者の経営安定に資するため不漁準備金制度等を設けるつもりはないかということでございますが、利益留保の準備金の設定を認めるという問題につきましては、他にも議論を誘発することになるわけでありまして、この意味におきましても適当でないというふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  50. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。  政府提案のこの法律案は、御承知のように、昭和三十二年度から試験実施をしたその実績に基づいて法案を提出いたしたのでございます。でございますので、非常に着実に、良心的に法案を出したということを御了解願いたいと思います。そういう実績から見まして、まだ共済団体の組織の整備が十分ではございません。あるいは、漁業共済の加入の確保をはかるのでございますが、これも十分とは申せません。こういう段階においての法律でございますから、万全というわけにはもちろんいかないと思います。  そこで、お尋ねの国の再保険について、この法案の立案過程でどのような検討をしたかということでございますが、共済団体が支払う共済金または再共済金の資金が不足した場合、この場合には、漁業共済基金を設けてありますので、これによって対処してまいることとしております。現在の段階におきましては、国の再保険制度が不可欠なものだとは考えておりません。しかし、お尋ねのように、附則第二条で、検討するという規定が設けてあるが、その場合に再保険を行なうことも考えておるのか、こういうお尋ねでございます。附則第二条の規定によりまして検討の対象といたしておりますのは、共済掛け金率、共済責任の負担区分等に関する事項でありますけれども、国の再保険措置についても、必要に応じて検討の対象に含めてまいることを考えております。しかし、国の再保険を実施するかどうかにつきましては、今後の事業の実施状況等に応じて検討すべき事項でありますので、現段階でそれをお答えするという段階ではございません。  農業共済関係と相当違っておる、こういう御指摘もございましたが、漁業共済は、漁業が多種多様でありますので、おのずから農業共済と違う面もあります。異なる方式をとらなくてはならない面もございますけれども、できるだけそれと歩調を合わせるということが必要だと思います。そういう意味におきまして、共済掛け金に対する国の助成等が少ないではないかということでございますけれども、小規模な漁業者の掛け金負担の軽減のためと、あわせて加入の奨励という見地から、共済掛け金の国庫補助なども計上いたしておる次第でございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇
  51. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 漁業は自然的条件に制約される面が多く、労働環境も違っておりますので、一般産業と比べ労働面においても特殊性があり、労働関係の近代化が特におくれている点は、率直に言って、否定できません。労働省といたしましては、労務管理の近代化のための努力を続け、また、労働基準法に基づく監督指導を強化いたしたいと考えます。特に労働災害の防止は重要でありますが、労働基準法に基づく監督指導を強化しつつありますと同時に、五トン以上の漁船については労災保険の強制適用実施しており、また、五トン未満のものにつきましても、近く全面適用考えております。  漁業労働者の賃金問題につきましては、請負給制がとられることが多い現状でありますが、今後、最低賃金制についても特に検討いたしたいと存じます。  なお、年次有給休暇制度は、漁業労働者についても当然適用になっているはずでありますが、それが十分活用されていない向きもあると思いますので、今後とも制度の趣旨の徹底をはかりたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣福田一君登壇
  52. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  水質汚濁を防止するため、公共用水域の水質の保全に関する法律に基づきまして指定された指定水域については、それぞれ水質基準が設定されておりまして、当省としても、従来から、工場排水等の水質が水質基準に適合されるよう、工場排水等の規制に関する法律を厳正に実施するとともに、その一そうの実効を期するため、水質汚濁防止設備に対する融資、水質汚濁防止設備の耐用年数の短縮、企業に対する技術指導等の助成措置の強化につとめ、さらには、関係試験研究機関を積極的に活用して、水質汚濁防止技術の研究、開発、普及に努力してきたところであります。今後ともこれらの諸措置を一段と積極的に推進して、水質汚濁による公害の防止につとめてまいる所存でございます。(拍手
  53. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  電気事業法案内閣提出)の趣旨説明
  54. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 次に、内閣提出電気事業法案趣旨説明を求めます。通商産業大臣福田一君。    〔国務大臣福田一君登壇
  55. 福田一

    国務大臣(福田一君) 電気事業法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  電気事業は、国民生活及び産業活動に欠くことができず、しかも、代替性の著しく乏しい基礎エネルギーを供給するものであって、国民経済の発展と密接不可分の関連を有するきわめて公益性の高い基幹産業であります。  近時、国民生活の高度化、近代化と産業活動の目ざましい進展に伴って、電力の需要は著しく伸長し、総エネルギー需要に占める電力の比重は非常に満まってきております。これに伴い電気事業には、豊富、低廉、良質な電気を供給することによって、日本経済成長をエネルギーの面からささえていかなければならない重大な使命を課せられているのであります。また、電気事業は、その生産する電力が直ちに消費され、この間に通常の商品のような在庫調整ができず、このため、常にピーク時の需要に応じ得るだけの設備を開発しておかねばなりません。一方、その送配電の技術的特質から重複設備によるむだを排除する意味で、地域独占の産業になっております。  このような特質を持つ電気事業をして、前述の国家的要請に応じて、常に適正なる電気の供給を行なわせるためには、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、電気事業の健全な発達をはかることが必要であり、このためには、いわゆる公益事業規制の措置がとられねばなりません。世界各国においても、その方法において若干の相違はあれ、いずれも政府による法的な規制を行なっている次第であります。さらに、電気はその物理的性質上、その取り扱いいかんによっては相当の危険ないしは障害を伴うものでありますので、保安面から電気工作物の規制を必要といたします。  このような電気事業に関する法的規制は明治四十四年電気事業法が制定されて以来、事業規制、保安規制の両面にわたって続けられてきたのであります。ところが、戦後、占領終了時における特殊事情のため、昭和二十七年にいわゆるポツダム勅令である旧公益事業令が失効し、一時的に無法律状態となり、これを救済するため、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律が制定され、これによってすでに失効した旧公益事業令の規矩の例によって法規制を行ない、また、電気工作物に関しては、さらに昭和六年制定の旧電気事業法の規定の例によって規制するという、法形式的には全く類例を見ない特異なものとなっております。しかも、その後十余年を経た今日に至っては、その内容においても目ざましい発展を遂げた電気事業の実態に適合しない多くの点が生ずるに至っております。  すなわち、電力の需給は、かつての不均衡からくる混乱状態から脱却し、国民経済の発展の正常化とともに相当の供給予備力を持つまでに安定し、電気事業に対する要請も電気の量を確保することから、供給する電気の質を向上すること、あるいは電気の使用者に対するサービスを改善することへと大きく変わってきております。また、電気事業内部においても、発送変電技術の著しい進歩に伴う設備の大容量化、新鋭大容量火力の開発による火主水従への転換企業間における格差の発生などの変化が生じ、設備を広域的に運用する必要性が非常に高まってきております。  このような電気事業の内外の情勢の変化に対応して現状に適合するようその法制を整備する必要性が生じたのであります。政府といたしましては、現行法制が前に申し上げたとおり特異な法形式をとっている関係上、その一部を改正することは立法技術的に非常に困難でありますので、現在の暫定的な法律を廃止し、新しい電気事業法を制定することが最も適切であると考えた次第であります。  なお、政府におきましては、電気事業法案の作成について昭和二十八年より検討を進めてまいったのでありますが、戦前に統合した公私常の電気設備の復元問題をはじめとする諸般の事情のため成案を得て国会で御審議をお願いするまでに至らなかったのであります。これらの問題もようやく解決しましたので、昭和三十七年五月に、電気事業法案策定に関する基本方針を検討するため、電気事業審議会を設置し、広く各界の有識者によって一年半にわたる審議を行なった結果、昨年十月にその答申を得たのであります。  政府といたしましては、その答申を尊重して事業許可、供給義務、料金規制、保安規制等の従来の法的規制に対し、第一には、企業経営の能率化と行政の合理化、簡素化の見地から事業規制及び保安規制を合理化するとともに、公益的立場から必要とされる監督権限を整備すること、第二には、設備の建設、運用における合理性の確保企業間における格差の是正等の電気事業の課題を解決する方途として、広域運営を推進するとともに、これに関する国の監督権限を整備すること、第三には、電気の使用者の利益を保護し、サービス水準を向上させる規定を整備することの三つの見地を加味して、この電気事業法案を作成いたしたのであります。  以上をもちまして、電気事業法案趣旨説明といたします。(拍手)      ————◇—————  電気事業法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  56. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。八木昇君。    〔八木昇君登壇
  57. 八木昇

    ○八木昇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、電気事業法案に対しまして若干の質問をいたす次第であります。時間の関係もございますので、問題を次の五点にしぼって、以下御質問申し上げます。  質問の第一点は、総合エネルギー政策の基本的なあり方に関してであります。  エネルギー産業は、すべての産業活動をささえる基礎産業であり、また国民生活に深いつながりを持つ公益事業でもあり、本格的な開放経済への移行を控えまして、その対策はきわめて重要であります。しかるに、政府のエネルギー政策は、行き当たりばったりでありまして、一貫性がありません。また総合性もなく、きわめて遺憾であります。石炭危機が深刻化いたしまするや、政府は、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの合理化政策を強行してまいったのでございますが、結果は、雇用の安定どころか、逆に若い労働力の激減と災害の激発をもたらし、企業の安定の基盤すら脅かしており、政策はすでに破綻に瀕しておるのであります。一方、石油につきましては、一昨年石油業法の制定を見ましたが、これもエネルギー総合政策の観点から制定されたというのではありません。むしろ、石油の自由化対策として便法的につくられたものでありまして、増大するエネルギー需要に対して、総合性も計画性もなく、十分な役割りを果たしていないのであります。電力につきましても、電気事業法の制定が過去十年間にわたり強く叫ばれてきたにもかかわらず、今日まで放置され、計画的な開発、需給調整がなされないままに過ごされてきたわけであります。  このように、政府の総合エネルギー政策の欠除は、結局、石炭、石油、電力の三大エネルギー産業のそれぞれに大きな犠牲を背負わせており、それぞれが、おのれこそ最大の犠牲者だと感じておるのであります。そうして相手方エネルギー部門に不信感を持っておるのであります。このことは、結果的には国民経済の発展に支障を来たし、また、公益性が強いがゆえに、国民生活へのしわ寄せを強めておるわけであります。  そこで、総合エネルギー対策の基本として、私は次のごとく考えるのであります。  第一には、エネルギー産業だけは、もはや私企業形態でやっていくのは無理ではないかということであります。というのは、国家的利益を経営原則とする営利私企業というものは存在し得ないからであります。エネルギー産業は、私企業形態を続けていくにはあまりにも公共性が強過ぎます。あまりにも国家資金への依存度が高過ぎます。そしてあまりにも産業経済に及ぼす影響が強過ぎるのであります。  第二には、国産エネルギーの優位性を確保すべきであるということであります。五千五百万トン体制と、石炭の場合申しておりまするが、五千五百万トン体制では、遠からず日本の総エネルギーの中で石炭はほんの片すみを占めるだけとなるのであります。安全保障の観点からも、国際収支の観点からも、石油一辺倒は危険であります。  第三には、価格の統一性を確立することであります。現在、三大エネルギーの価格は、それぞれのルートで相互に無関係にきめられております。これらは国民経済的見地に立って、同一の機関で統一された意思のもとにきめられるべきであります。  第四に、行政機構を統一すべきであります。石炭は通産省の石炭局、石油は鉱山局であります。電力は公益事業局、原子力は科学技術庁に属しております。互いになわ張りを争っております。これでは一元的総合エネルギー行政ができるはずはないのであります。この際、動力省の設置を考えるべきであります。  過般の産業構造調査会総合エネルギー部会の報告は、これらの本質的な問題点を全く避けておるのでありまして、この際、以上申し上げました諸点についての池田総理大臣のお考えを承りたいわけであります。  質問の第二点は、本法案は電発と九電力といういまの十社体制の是認の上に立ち、広域運営の強化促進をうたっておるのでありますが、それはごまかしではないかということであります。  もともと、電気というものはたくわえのきかない特殊の商品であります。生産と同時に消費しなければなりません。しかも消費する側の需要は、地域により、シーズンにより、その日の時刻により、著しい高低がございます。したがって、ピーク時の需要に応ずるために膨大な発電設備が必要であります。さらに加えまして、膨大な送電、変電、配電設備を要します。同一地域に幾つかの会社の送配電線が入り組んで存在するというような、そういうロスは絶対に許されないのであります。したがいまして、電気事業は、一つの会社ができる限り広範な地域を一手に受け持って事業を営むことが最も合理的であるという、そういう本質的な特質を持っております。電気事業の九分割は、再編成をめぐり当時の国会が議論沸騰し、容易にまとまりそうもない状況に業を煮やしました当時のアメリカ占領軍が、昭和二十五年、一片のポツダム勅令という強権によって日本発送電を解体し強行したものでありますが、その後二年もたたないうちに小型日発といわれた電源開発会社を設立したこと自体、九分割の矛盾を暴露したものであります。  矛盾の端的なものとして、電気料金の地域差問題があります。もともと全国一本であった電気料金が、九分割以後、各電力会社別に料金体系も金額も異なるということは、これは不合理です。電話料、鉄道運賃、郵便料金等はもちろん、米も一般の商品さえも今日ではほとんど全国一本定価の時代に、こういうようなことは私は許されないと思う。  電力需給面の不合理な点については省略いたしますが、これらの矛盾を百も承知の政府は、広域運営の促進強化をうたい上げておりますが、これはごまかしであります。なぜかといえば、各電力会社が原価主義、独立採算制をとる営利私企業であります以上は、自分の会社が損をし、他社をもうけさせるような、そういう広域運営をやるはずはありません。私企業間における広域運営は、すべてキブ・アンド・テイクでありまして、相互に利益になるケースに限られます。こういうことは、言われなくとも各社間で相互にやるのであります。広域運営のほんとうの目的は、その会社自身にとっては大いに損であることも、広域的な利益の立場からあえてこれを行なわせるというところにあるはずであります。しかるに、通産省当局は、広域運営といっても、各社間の相互利益の限界内のことであって、それ以上に出れば損失補償というむずかしい問題も出てくるからといって逃げておるのであります。したがって、この電気事業法案にも、広域運営についてのきめ手となるような条文はありません。電気事業者の協調義務などというような手ぬるい条文があるだけであります。  政府が本気で広域運営をやる気ならば、条文を根本的に改正強化するか、しからずんば、この際百尺等頭一歩を進めて、電気事業の全国一社化に踏み切ってもらわなければなりません。(拍手)イギリス、フランス、イタリアなど、いずれも電力は国有国営であります。これは電力の本質に由来するものであって、決してイデオロギーの面からだけではないのであります。ましてや、所得倍増政策の結果、産業構造上、国民生活上の地域格差が拡大しつつあるわが国の現状で、電力会社相互間の企業格差は、ますます広まりこそすれ、これが縮まる要素は一つもありません。  こういう状況のもとで、電気料金格差問題を今後どのように処理されるおつもりであるのか、あるいは広域運営の具体的推進についていかなる確信をお持ちであるのか、これらの点について総理の所信を伺いたいわけであります。  質問の第三点は、時間もありませんから簡単に内容を申し上げますが、電気事業審議会についてであります。  今回設置されます審議会は、具体的に何を審議させるのか明らかでありませんが、私は、ともかくこれをもっと権威あるものとして、電源開発、電力需給、施設、資金、料金問題等はもちろん、電気事業の体制そのものをも検討できるものとし、大臣の諮問に答えるだけでなく、積極的に建議することもできるものとすべきであると考えるのであります。発電施設は、昭和四十一年までに実に千二百万キロワットもこれからふえます。そのほとんどが火力建設でありますが、電力の量的、質的変動は実に激しいものがありまして、誤りなくこれらに対処するための権威ある審議機関の常設が望まれるのでありまして、この点についての通産大臣の見解を承りたいのであります。  質問の第四点は、電気供給規程や電気料金の認可制度についてであります。  この点については、従来の聴聞会を公聴会に名前を変えただけです。聴聞会というのは、世間ではこう言っております。「聞くもんかい」というあだ名があるのであります。単なる形式であります。結局は電気事業者の申請がほとんどそのまま通産大臣によって認可されてきたということは、これは実際の事実であります。この際、特に電気料金の決定制度に改め、鉄道運賃のごとく、これを国会承認事項とするお考えはないか、通産大臣からお答えいただきたいのであります。  最後に、河野建設大臣と宮津経済企画庁長官にお伺いをいたします。  一昨年の八年二十四日の閣議におきまして、両大臣は電力問題について発言をされたのでありまするが、当時、これは大きく各社の新聞で報道をされたのであります。翌日の日経新聞の見出しには、こう書いてあります。「電力再々編成せよ 河野建設相、閣議で発言」とあります。また、河野発言に賛意、東北電力料金値上げは一時しのぎ、宮津長官談とも書いてあります。記事の中身は次のようになっております。河野建設相が次のように発言した。「各地域別の電力会社で需給、料金がまちまちなのは国策上好ましくない。これでは企業長期的な見通しをもって各地に進出できない。新産業都市の指定に先だって電力の基本政策を確立する必要がある。各電力会社間の広域的運営を強化するだけではなく、根本的な電力再々編成を行なうべきだ。いまは電力業界のワク内で電力問題を考える時代ではない」と、こう書いてあるのであります。このとおりだと私は思うのであります。これに関連して篠田自治相は、九電力体制は占領時代のなごりであり、非能率的であると述べておられる。引き続いて、宮澤長官も原則的に賛成したと書いてある。福田通産相は、重大問題であるので、よく検討したいと述べた云々というのが、当時の新聞記事であります。しかるに、いまや、今回はそれから一年何ヵ月かしかたっておらないのに、閣議をするすると大した議論もなく通ったようであります。九分割体制を将来にわたって固定化するというのが、この電気事業法案であります。こういう法案が、いまここに提案されておるのでありまして、私はまことに奇怪千万と考えるのであります。この際、両大臣から心境激変の理由を伺いたい。(拍手)  なお、昭和二十五年当時の国会で再編成問題をめぐって非常に紛糾し、ついに業を煮やしてマッカーサー総司令部のポツダム勅令が出たのでありますが、その昭和二十五年の国会において、いまの福田通産大臣は、当時の松永案、すなわち九分割案反対の急先鋒として大いに活躍せられたことは、私ども関係者は、それから十余年たっておるけれども、決してまだ忘れてはおらないのであります。私あたりも当時非常にその活躍ぶりをたよりにしておったのでありますが、いまここに当時と全く逆の提案をしておられるが、明確なる、納得のいく釈明を承りたい。  以上が私の質問でありますけれども、焦点をそらさずに、的確に御答弁をいただくようにお願いいたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)    〔発言する者あり〕    〔国務大臣池田勇人登壇
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  エネルギー政策の基本は、国民経済の発展をささえるために、低廉にして安定的であり、しかも、国際収支あるいは雇用問題等を考えて行なわなければならないことは当然であるのであります。したがいまして、電力事業の経営体系につきましては、われわれは、米仏伊等もさることでありますが、やはりわが国の歴史的背景を考えていかなければなりません。私は、私企業形態の長所を生かしつつ合理化していくことが適当であると考えておるのであります。  また、電力事業に対しまする行政機構につきましても、私は、一つの行政機構で、電力その他石炭あるいは原子力等々を全部やっていくということはいかがなものかと考えております。この問題につきましては、臨時行政調査会につきましても、ただいま検討を加えていただいて、おるのであります。  また、料金の格差につきましては、私はお考えには賛成できないのでございます。今後は火力中心のものになってまいりますので、発電コストも大体地域差がなくなってくる、また、広域運営を改善することになっていけば、料金格差はだんだん少なくなっていくことを私は確信いたしておるのであります。(拍手)    〔発言する者あり〕    〔国務大臣福田一君登壇
  59. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  総合エネルギー政策の基本は、国民経済の発展をささえるエネルギーを低廉かつ安定的に供給することにあり、経済の最も合理的な運営をささえるため、消費者の自由選択をたてまえとしておるが、各種のエネルギーにはそれぞれの問題を持ち、また、長期的観点からエネルギー相互間の調整も必要であります。これについては、昨年末、通商産業省の産業構造調査会総合エネルギー部会から答申を得ており、現在その答申を尊重して施策につとめております。  まず、国産エネルギーの大宗である石炭については、出炭規模五千五百万トンを見込み、あらゆる合理化政策を推進しており、石油については、輸入先を多様化し、また、わが国の石油精製業の自主性を確保するための施策に重点を置いております。電力のピーク需要時に見合うための水力開発、将来の有望なエネルギーとしての原子力の計画的開発等も重要な政策であります。エネルギー相互間については、石炭と他のエネルギー源とをいかに調整するかという点に当面の問題がありますが、第二次エネルギーである電力、ガス等については、総合エネルギー政策の見地から石炭政策へ協力せしめ、また、それ自身の安定供給をはかるため、一次エネルギー源を多様化するよう指導しております。特に、昭和三十九年度から電源開発会社に石炭火力を建設せしめておるのであります。なお、過渡的措置といたしましては、当面の石炭需要を確保するため、電力、鉄鋼その他の産業に対し諸般の施策を講じている次第であります。  また、エネルギー産業を営利的私企業にまかせるのは無理ではないかということでございますが、エネルギー産業の企業形態については、基本的には、経済合理性に立脚いたしまして、能率的に国民経済の基本的原動力を供給するためには、どのような企業形態が適しているかということが問題であります。諸外国においても、その国の地域的、社会的特殊事情または歴史的背景によって種々の形態がとられておりますが、わが国の場合、現在の客観的環境及び過去における経験からいって、国営等の形をとるよりも、私企業の分割体制で、競争原理に立って合理化をはかることが、むしろこの目的に適合しているものと考えております。今日までそれぞれの私企業がエネルギー供給の使命に果たしてきた役割りもそれ相応に評価されるべきであります。したがって、いまのところ、企業形態を変更しなければならない積極的な理由は見当たりません。  次に、国産エネルギーの優位性について御質問でございますが、これについては、われわれは、安定供給の見地から、優先的なたてまえで施策を講じております。  また、エネルギー産業の行政機構の一元化に関しての御質問でございますが、いまのところ、木炭とまきについて農林省が、原子燃料の製錬部門だけで科学技術庁が分轄いたしておるのでございまして、その他の分は全部通産省が所管をいたしております。そうして総合エネルギー政策を円満に遂行するようわれわれは努力いたしておるものでございます。  次に、九分割体制から生ずる広域運営の問題と電気料金についての御質問でございますが、電気事業は、最も合理的かつ能率的な経営を行なって、豊富低廉、良質な電気を供給するという使命を持っております。現行の九電力体制は、企業間の格差など若干の問題はありましても、過去十年間に膨大な電源開発を行なっておりまして、今日の安定した供給状態をつくり上げており、電気料金も国際的に見てむしろ安いものに属しておるのであります。したがって、直ちにこの企業体制について変更しなければならない積極的理由は、われわれは考えておりません。しかしながら、最近電力設備が次第に大型化してきまして、発送電設備をより合理的に運用させるなどの必要性から、九社間の協調を強化し、電源開発会社を加えて十社で最も合理的な電気事業の運営をしようというのが、広域運営であります。この広域運営によって、問題の九社間の企業格差はかなりの程度まで緩和されると思われます。しかし、この広域運営にも、私企業体制を前提とする以上、個々の企業の採算を全く無視することは困難であります。この意味において、広域運営を強化することは、企業格差を是正する一つの手段であります。万能薬ではないと考えておりますが、現在よりは大きく前進いたすのでございまして、電気事業のあり方は、これによって電気事業運営自体が円滑化されるものと考えております。  また、電力会社間の料金格差は、九分割が行なわれましたときは、北陸電力と中部電力とは、北陸電力に対しまして二・二倍だったのです。ところが、今日は北陸電力と一番高い九州電力との差が一・五倍になっております。今後だんだんと火力が増加いたしますので、ますますこの電力の料金格差は是正されると思います。  次に、電気事業審議会を諮問の機関でなくて、建議することにしたらどうかというお話でございますが、ごもっともな御意見でございますから、取り入れたいと存じます。  なお、電気料金決定の制度について、公聴会を開くことになっておるが、これはどういうことにするのか、こういうことでございますが、われわれは、この名前を、聴聞会というのでやっておりましたが、今度は公聴会というのでやることにいたしております。  なお、御案内のように、電気事業は民間事業でございますから、したがって、この電気料金を国会で承認することは適当でないと考えております。しかし、電気事業の公益性ということを考えてみますと、その認可の基準については法律において明定することが必要であると考えて、そのように処置をいたしておるのであります。  なお、私が電力再編成のときにたいへん反対をいたした、こういうことでありますが、仰せのとおりであります。しかしながら、その当時の事情と今日は事情が変わっておりまして、今日はすでに九分割されて、先ほど申し上げたように相当な効率をあげております。そうして、ここですぐにこの九分割したものを一社化する、あるいは電発を入れて一社化をするということが、はたして電気事業全体に有利であるか、また産業経営上有利であるか、分割したものを一緒にしますと、なかなかこれが一社化するまでにはいろいろな問題が出てきまして、そういう問題もあり、広域運営を徹底すればその目的は十分に達し得るという考えに立って私たちはこの法案を提案した次第であります。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇
  60. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今回の電気事業法案は、旧来の電気事業に関する規制の方法を、時代に即した合理的な形に改めようとするものであり、私といたしましては、このような立法の趣旨から見まして異論はないので、了承いたしました。いわゆる電力再々編成の問題につきましては、非常に重大な問題でもあり、私はこの趣旨は何とか貫きたいと考えておりますけれども、いま申し上げましたように、非常に重要な問題でございますので、別途慎重に研究いたしたい所存でございます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 東北電力の値上げがございました後に、世論の刺激もあり、また一部に人事の異動などがございまして、東京電力と東北電力との間で、只見川の電力の利用をめぐりまして緊密な協力関係が打ち立てられることになりました。いわゆる広域運営が理想的に行なわれるようになりまして、その結果、両社とも電力の需給関係が非常に好転をいたしました。また開発資金も、特に東京側で相当の節約になりまして、今日両社とも経理は顕著によくなっております。この両社に関する限り、私は現在の状態が満足なものだと考えております。(拍手
  62. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  63. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 本日は、これにて散会いたします。    午後六時九分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         経済企画庁調整         局長      高島 節男君         厚生政務次官  砂原  格君         通商産業省公         益事業局長   宮本  惇君         運輸政務次官  田邉 國男君      ————◇—————