○青木正君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
昭和三十九年度
予算三案の
政府原案に賛成し、
日本社会党の
組み替えを求むるの
動議に反対の意見を表明するものであります。(
拍手)
まず、
政府原案賛成の
理由を申し述べます。
申し上げるまでもなく、
予算は、国の生成発展と
国民の福祉増進を達成するため必要なる当面の施策を講ずるとともに、国運の前途に予見される障害を克服するために編成されなければなりません。
終戦後、国政担当の責めに任じきたりましたわが自由民主党は、豊かにして平和な
高度福祉国家の建設を目ざし、着々とその成果をおさめ、外は国際社会に重要な地位を占め、内は
世界の奇跡といわれる高度の
経済成長を遂げたのであります。その結果、
生産性は向上し、国際競争力は強化され、
輸出は年率実に一四%という顕著な
増加を示したのであります。また、
国民所得も、第一次
池田内閣成立当時の
昭和三十五年には、一人当たり三百五十四ドルでありましたものが、
昭和三十八年には五百ドルという、実に四割の向上を示したのであります。
しかしながら、
わが国の
国民所得や
消費水準は、いまだ欧米先進国に遠く及ばぬものがあります。また、最近の
経済成長が予期以上に急速であったため、若干のいわゆるひずみを生じたことも看過するわけにはまいりますまい。いまこそ、われわれはこれらのひずみを
解消し、安定した
経済成長のもと、さらに勇を鼓して先進国への道を一歩一歩前進すべきときと存じます。(
拍手)
すなわち、当面真剣に取り組まなければならぬ課題として、
国際収支の改善と
消費者物価安定の問題があります。
産業面におきましては、
生産性の向上からおくれがちの農林漁業と
中小企業の近代化の問題があります。同時に、
経済成長の谷間に恵まれぬ人たちのあることも忘れてはなりますまい。また、ややもすれば日々の生活に追われがちであったわれわれは、いまや次の時代に備え、文教の刷新に力点を置かなければならぬときと存じます。さらに、
民間投資に比べ、道路、港湾等の
公共投資が立ちおくれておることも、放置すべきではありますまい。
以上あげ来たった課題に
予算の裏づけをした国の施策を指向することこそ当面の急務と存ずるのであります。
他方、敗戦の壊滅状態から立ち上がり、ようやくにして成人の域に達したともいうべき
わが国が越えねばならぬもう一つの重大な試練があります。それは
貿易の
自由化、IMF八条国への移行、
OECDへの
加盟等、いわゆる
開放経済への
体制整備の問題であります。国際
貿易における機会均等、門戸開放、これは明治以来の
わが国の外交方針の基本でありました。
貿易立国をとらざるを得ない
わが国にとりまして、
貿易の
自由化は、もとより
わが国の基本的なあり方でなければなりません。しかしながら、現実の問題といたしましてはきびしい試練でもあります。三十年にわたる封鎖
経済という温室から出て、激しい国際競争のあらしの前にさらされるのであります。われわれはこれに立ち向かうため、この際、覚悟を新たにし、
わが国産業の国際競争力培養のため、万全の施策を講ぜねばならぬと存じます。
過般の衆議院総選挙にあたりまして、わが自由民主党が
国民の前に公約した
経済の
均衡ある健全成長、
消費者物価の安定、農林漁業と
中小企業の近代化、
社会保障の充実、文教、科学技術の振興、
社会資本の充実等の諸
政策は、前段申し述べましたような見解に立って、
生産力の充実を背景に、量とともに質の充実へと
経済全体の体質を改善し、民族の教養と知能を高め、堅実な生成発展を遂げるための諸条件を整備しようとするものであったのであります。
いまや、これらの公約が本
予算により
予算的にも裏づけられ、現実に実行に移されることになろうといたしておるのであります。
国民各位とともにわれわれの最も喜びとするところでありまして、私が本
予算三案に賛成を表明する根本の
理由は、実にここにあるのであります。(
拍手)
以下、
予算案の
内容につき、若干申し述べたいと存じます。
まず、
減税であります。明年度の
減税額は、国・地方を合わせて一千四百九十四億円、平年度二千二百三十八億円であります。実にシャウプ勧告以来の画期的な
減税というべきでありまして、
政府の英断に対し深甚の敬意を表するものであります。しかも、その
内容は、国税
減税額一千三億円のうち、六五%を
所得税の
減税に充て、
課税最低限の
引き上げ、中小事業者の負担軽減、給与
所得控除の
引き上げ等をはかっているのであります。また、
企業課税につきましては、
開放経済への移行に備え、
企業内部留保の充実、
固定資産耐用年数の短縮等、
中小企業の
税負担の軽減について格段の配慮が払われ、かつ
輸出振興のためにも税制上特段の
措置がとられているのであります。
次に、
歳出の
重点施策について簡単に言及したいと存じます。
第一は、農林漁業近代化の施策であります。
歳出全体の伸びが前年度比一四・二%となっている中で、農林漁業
関係費は三三%、食管
会計繰り入れ分を差し引きましても一七%増となっておるのであります。しこうして、施策の
重点を、農業基本法の線に沿って、
生産性向上のための
基盤整備や機械化の推進、畜産振興を中心とする選択的
拡大の促進、構造改善事業の
拡大強化、
農産物流通の改善、農業従事者の福祉向上等に置いているのであります。特に注目すべきは、農業
金融に力点を置いたということであります。すなわち、農業
近代化助成資金、農業改良
資金等の貸し付けワクが大幅に
拡大されたほか、農林漁業
金融公庫につきましては、前年度より二三%増の一千七十億円と飛躍的に
拡大されたのであります。しかも、三分五厘の低利
資金が四百四十五億円、その占むる割合は四二%と画期的な
措置が講ぜられているのであります。(
拍手)
第二は、
中小企業関係であります。
前年比四〇%増と、大幅に
予算が増額され、設備の近代化、
企業の集団化、協業化を一そう進めることになっております。税制の面におきましても、
所得税、
法人税、
地方税等、平年度六百億円に達する
減税が行なわれております。さらに
金融面では、
中小企業信用保険
公庫に対する出資を、前年度三十億円に対し、四十億円に増額し、
中小企業金融三
機関への
財政資金投入額は、前年比三百三十四億円増の一千六十七億円と、ここ数年その例を見ない
伸び率となっているのであります。(
拍手)また、
中小企業金融公庫についても、債券発行の道を開き、商工中金につきましては、三十億円の追加出資を行なう等の
措置が講ぜられているのであります。
第三に、
社会資本の充実であります。
わが国の
公共投資の立ちおくれは、
経済発展今後の盲点といわれておるのであります。明年度におきましては、
予算及び
財政投融資を通じ、新たなる計画のもとに、道路、港湾に最
重点を置き、さらに
産業用地の造成、水資源の
開発、新
産業都市の建設、生活環境の整備等につきましても、一そうの促進がはかられているのであります。その結果、明年度におきましては、国及び地方を通じて形成される
政府固定
資本は、約二兆八千億円と見込まれ、
民間投資に対し六八%という比重を占めるに至っております。この数字は、一昨年ころまでの四〇%台に比較いたしまして、画期的な前進と申さなければなりますまい。
第四は、
社会保障の充実であります。
福祉国家の根幹をなす
社会保障関係費は、毎年大幅に
増加され、
内容も着々充実の一途をたどっております。明年度も前年比二〇%の増で、
相当の改善が行なわれることになっております。かつ、新たに高度精薄児
対策や児童手当
制度創設の準備、国保世帯員に対する療養給付
引き上げ計画等も行なわれることになっておるのであります。さらに、住宅
政策につきましても格段の考慮が払われておるのであります。
第五に、文教と科学技術の振興であります。
明年度におきましては、前年比一八%増の
予算をもって義務教育の充実、公立学校の整備、社会教育の充実、育英事業の大幅な
拡充、科学技術教育と
産業教育の振興を行なわんとしております。また、科学技術振興のため、原子力
関係費や試験研究
機関を充実し、先進国の技術依存からの脱却を目ざしておるのであります。
次に、世上一般には、
内容はさることながら、
予算全体としてその
規模が適正なりや、また、その
経済的性格が妥当なりやとの議論が行なわれております。しかしながら、われわれの見るところをもってすれば、
歳出の一切が
租税その他の普通
歳入によってまかなわれ、
赤字公債の発行ないしは過去の蓄積を食いつぶすがごときことも行なわれていないのであります。したがいまして、私どもは、まさに
均衡を得た健全
予算と確信いたすのであります。(
拍手)
次に、
経済動向との
関係でありますが、要は
経済活動が過度にわたらぬよう慎重に対処することこそ賢明な態度と存じます。そこで、
政府はさきに
予算編成にあたりまして、景気に対し
財政の刺激を避けるとの基本方針をとり、現に
予算編成上この点に特段の配慮を行なっておるのであります。すなわち、
一般会計予算の対前年度当初
予算比の
伸び率は一四・三%でありまして、三十八年度の一七・四%をかなり下回っております。また、
財政投融資も、三十八年度の際の二二。六%を下回る三〇・八%となっているのであります。国及び地方を通ずる
政府の財貨サービス購入の
経済成長に対する寄与率も、三十八年度の三〇数%に比べ、三十九年度は二〇%と見込まれているのであります。
予算の
経済に対するかまえ方はかなり控え目と申さなければなりません。また、明年度
予算を
財政資金の
民間収支面から見ますと、三十八年度は三千七百五十億円の散布超過が見込まれていたのでありますが、明年度は前年度剰余金の受け入れ減等によりまして、一千二百億円確度しか見込まれていないのであります。
財政投融資計画における
政府保証横も、三十八年度の一千三百三十二億円に対し、明年度は一千八百十億円と五百億円近い増発が見込まれております。したがいまして、この面からも、市中
資金の吸い上げが強まり、
予算が景気に対し刺激的であるとか、
金融引き締めの効果を減殺するとかいう一部の非難は当たらないと存ずるのであります。
これを要するに、反対せんがための反対の御議論や御批判は別といたしまして、冷静に
検討いたしますれば、
政府の明年度
予算案は、
財政の許す限りにおいて最善を尽くし、当面の課題に対処して適切な施策を講ずるとともに、前途の試練に対しましても万端の
対策を用意しているのであります。
均衡ある
経済成長のもと、堅実に先進国への道を目ざすものとして、私はここに満腔の賛意を表するものであります。(
拍手)
最後に、
日本社会党の
予算の
組み替えを求める
動議につきまして、二、三の点をあげ、反対の
理由を申し述べます。
組み替え案によりますれば、まず、その
前提として、
政府原案は
防衛費と大
資本優先の
投資の
拡大に最
重点を指向していると指摘いたしております。この見解に対しましては、われわれは断じて同意いたしがたいのであります。(
拍手)すなわち、社会党はかかる誤れる見解に立ちまして、
歳出において
防衛費一千五百億円を
削減し、
租税特別措置の廃止により三千億円の
増収を行なうことを骨子として
減税、
社会保障などの施策に充て、かれこれ差し引き
歳入歳出の
規模を
政府原案より約五百五十億円
増加し、三兆三千五百億円としようとしているのであります。
まず、
防衛費でありますが、明年度の
防衛費の
一般会計に占むる割合は、わずかに八・五%、
国民所得の見込み額に占むる割合も、本年度同様一・三%であります。ごうも大幅の増額を行なっていないのであります。およそ、
世界各国、国の大小を問わず、国防費を計上していない国はただの一国としてありません。しかも、
予算額に対する国防費の割合は、
アメリカ五七%、イギリス二七%、西ドイツ三〇%、永世中立国スイスにおいてすら実に四〇%に達するのであります。
わが国の
予算が
防衛費に
重点を置いているなどとは、いかに考えても申しがたいのであります。(
拍手)自国の
防衛費を大幅に無力化し、ないしは無用視するがごとき政党は、寡聞にして
わが国以外にあまりその例を見ないのであります。(
拍手)まことに遺憾とするところでありまして、われわれはこの一事をもっていたしましても、断じて社会党の
組み替え案には同意いたしがたいのであります。
なお、社会党は
大衆の
減税を掲げておりますが、前に申し述べたごとく、
減税はわれわれも常に意を用いているところであります。わが党内閣は、
昭和二十五年以来すでに十三回にわたって
減税を行ない、
減税累計実に一兆三千有余億円に達しておりまして、しかも、その八割以上は
所得税の
減税であります。
大衆減税に対するわが党の熱意は断じて社会党に劣るものではなく、現に実行いたしておるのであります。
さらに、社会党は、本
予算案審議にあたりまして、
政府の
予算規模が大型であって、
経済をはなはだしく刺激すると、しばしば痛烈に
政府を追及しております。ところが、いま提出された社会党の
組み替え案を拝見いたしますと、驚くべきことには、何と
政府原案を五百五十億円も上回る三兆三千百億円に達しているのであります。(
拍手)これこそ、まさに
わが国経済をはなはだしく刺激する超大型
予算といわざるを得ないのであります。
予算審議にあたっての今日まで社会党が論じられました論旨と全く相
矛盾するものでありまして、われわれの理解に苦しむところであります。(
拍手)
以上をもちまして、
昭和三十九年度
予算三案につき、
政府原案に賛成、
日本社会党の
組み替えを求むるの
動議に反対の
討論といたします。(
拍手)