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1964-02-12 第46回国会 衆議院 本会議 第7号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十九年二月十二日(水曜日)
—————————————
議事日程
第六号
昭和
三十九年二月十二日 午後一時
開議
第一
昭和
三十八
年産米穀
についての
所得税
の
臨時特例
に関する
法律案
(
内閣提出
、参
議院送付
) 第二
日本鉄道建設公団法案
(
内閣提出
)
—————————————
○本日の
会議
に付した案件
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
) の
趣旨説明
及び
質疑
日程
第一
昭和
三十八
年産米穀
についての
所得
税の
臨時特例
に関する
法律案
(
内閣提出
、参
議院送付
)
日程
第二
日本鉄道建設公団法案
(
内閣提出
) 午後一時十一分
開議
船田中
1
○
議長
(船
田中
君) これより
会議
を開きます。
————◇—————
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)の
趣旨説明
船田中
2
○
議長
(船
田中
君)
議院運営委員会
の決定により、
内閣提出
、
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
の
趣旨
の
説明
を求めます。
大蔵大臣田中角榮
君。 〔
国務大臣田中角榮
君
登壇
〕
田中角榮
3
○
国務大臣
(
田中角榮
君)
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
趣旨
を御
説明
申し上げます。
政府
は、今後における
わが国
の
社会経済
の進展に即応する基本的な
租税制度
を確立するため、一昨年、
税制調査会
を設け、鋭意
検討
を加えてまいりましたが、昨年末、同
調査会
から、最近における
経済情勢
の推移に応じて、
現行税制
につき、さしあたって
改正
を必要とする事項について、「
昭和
三十九
年度
の
税制改正
に関する
臨時答申
」を得たのであります。その後、
政府
におきまして、同
答申
を
中心
にさらに
検討
を重ねた結果、
昭和
三十九
年度
におきましては、
中小所得者
に
重点
を置いて
所得税
の
負担
を
軽減
するとともに、当面要請されている
企業資本
の充実と設備の更新を促進し、産業の
国際競争力
の
強化
に資する等のための
措置
を講ずることとなし、
国税
において平
年度
千三百七十億円
程度
の
減税
を行なうことといたしたのであります。これらの
税制改正
諸
法案
のうち、今回ここに
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
を提出した次第であります。 以下、この
法律案
の
内容
について、その大要を御
説明
申し上げます。 まず、
所得税
につきまして、
中小所得者
を
中心
とする
所得税負担
の
軽減
をはかることといたしております。すなわち、
基礎控除
を現在の十一万円から十二万円に、
配偶者控除
を現在の十万五千円から十一万円に、それぞれ
引き上げ
ることとするほか、五万円の
扶養控除額
が適用される
年齢区分
を現在の十五歳以上から十三歳以上に引き下げて、その範囲の
拡大
をはかるとともに、十三歳
未満
の
扶養親族
の
扶養控除額
についても、現在の三万五千円を四万円に
引き上げ
ることといたしております。また、最近における
給与支給額
の
上昇等
を考慮いたしまして、
専従者控除
について、
青色申告者
の場合は、
年齢
二十歳以上の
専従者
の
控除限度額
を現在の十二万五千円から十五万円に、二十歳
未満
の
専従者
の
控除限度額
を現在の九万五千円から十二万円に、
白色申告者
の場合は、その
専従者
の
控除額
を現在の七万五千円から九万円に、それぞれ
引き上げ
ることとするほか、特に、
給与所得者
の
負担
の現状に顧み、
給与所
程
控除
について、
定額控除
を現在の一万円から二万円に、
控除限度額
を現在の十二万円から十四万円に、それぞれ
引き上げ
ることといたしております。 以上申し述べました諸
控除
の
引き上げ
により、
夫婦子
三人、計五人
家族
の
標準世帯
を例にとりますと、
所得税
が課されない
所得
の
限度
は、
給与所得者
では、現在の約四十三万円までが約四十八万円までに、
事業所御者
のうち、
青色申告者
については、現在の約三十九万円までが約四十三万円までに、
白色申告者
については、現在の約三十三万円までが約三十七万円までに、それぞれ
引き上げ
られることとなるのであります。 次に、
退職所得
の
特別控除額
について、現在、
在職期間
の
年齢区分
に応じまして
控除額
に差が設けられておるのを、
年齢区分
を
廃止
しまして、一律に勤務一年につき五万円に
引き上げ
るほか、住宅または家財について支払った
損害保険料
について、
保険期間等
が十五年
未満
の
短期
の
火災保険
の場合は二千円を、
保険期間等
が十五年以上の長期の
建物更生共済等
の場合は五千円を、それぞれ
限度
としてこれを
課税所得
から
控除
する
損害保険料控除制度
を創設することとし、なお、
生命保険料控除
の
限度額
、
譲渡所得等
の
特別控除額
、
寄付金控除
の
控除対象限度額等
についても、それぞれその
引き上げ
をはかることといたしておるのであります。 その他、
所得税制
の
整備合理化措置
の一環として、
短期保有
の資産の投機的な
譲渡
による
所得
に対する
課税
について半額
課税等
の
方式
をとらないこととする等、所要の規定の
整備
をはかることにいたしたわけであります。 以上、
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
趣旨
を御
説明
申し上げた次第でございます。(
拍手
)
————◇—————
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)の
趣旨説明
に対する
質疑
船田中
4
○
議長
(船
田中
君) ただいまの
趣旨
の
説明
に対して
質疑
の
通告
があります。これを許します。
武藤山治
君。 〔
武藤山治
君
登壇
〕
武藤山治
5
○
武藤山治
君 私は、ただいま
趣旨説明
のありました
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
に対しまして、
総理大臣
並びに
大蔵大臣
に
お尋ね
をいたしたいと存じます。
池田総理
は、
施政方針演説
の中で、「
国民
の一人一人が働く
意思
とすぐれた
創造力
を自由に遺憾なく発揮し、豊かで平和な
生活
を営み得る
社会
をつくることは、
政治
の
究極
の
目標
である」と述べております。この
認識
は、与党、野党を問わず、
政治家
として共通の
目標
として
認識
をしなければならぬ点だろうと考えます。問題は、いかなる方法をもってこの
究極
の
目標
を実現するかというところに問題がひそんでおると思うのであります。
消費者物価
が年々
上昇
して
生活
を圧迫し、
実質生活水準
は停滞し、
金融引き締め
で倒産が続出するという
経済変動
の激しい今日の様相は、
総理
の言われる
政治目標
とはほど遠い現況ではないでしょうか。(
拍手
)もちろん
総理
みずから、「この
目標
を達成せんとする
福祉国家
の真の姿を実現する道は平たんではなく、困難が
予想
されます。」とも述べております。
池田総理
は、
経済成長率
に気を奪われ過ぎ、数字の
魔術師
のごとき
態度
で、
所得倍増論
をぶち続けてまいりました。しかし、
経済成長
が高ければそれでよいというものではないのであります。かのアメリカは、一九四八年から一九六〇年の十二年間に
国民総生産
を
倍増
いたしました。しかし、
倍増
の
内容
はどうかというならば、
実質的増加
がその五分の三、五分の二がインフレーションによるものであって、
国民
の
所得水準
というものが、この
国民総生産
の
倍増
に比例して
生活水準
が高まっていないというところに大きな問題があるのであります。五分の二の部分が、
貨幣価値
の下落、すなわち
物価騰貴
による
成長
であったのでは、
国民
が豊かで平和な
生活
などと、のんきなことを言っておるわけにはまいらぬと思うのであります。 今日、
わが国
の
財政政策
として考えなければならないことは、
物価騰貴
という
現実
にマッチした
所得倍増政策
でなければならないはずであります。かかる観点から、私は、
租税
の高
課税
に徹底したメスを入れ、
実質生活
の向上をはかり、
国民
の可
処分所得
を一挙に増大する
財政政策
が必要であると信ずるのです。しかも、
総理
は、
国際収支
の
逆調原因
を、
予想
以上の
経済
の
拡大
、すなわち輸入の
増加
だと
説明
し、「
需要面
の
要素
で特に行き過ぎた増大が見られたわけではありません。」こう述べております。すなわち、可
処分所得
が増大され、
有効需要
が極端に
拡大
されたために
経済
が混乱をしておる事態ではないことを、はっきり答弁いたしておるのであります。このことから、私は、当然
国民
の可
処分所得
の
増加策
をとっても
日本
の
経済
には決して支障がないと判断をいたすのであります。 すなわち、ここで
政府
の
減税
の
方針
を見ますると、昨年も一昨年も、
政策減税
と称して大
企業中心
の
減税
を行ない、
利子配当
の
所得者
に対する
優先的恩恵
を与える
政策減税
を行なってきました。私は、これこそまさに
主客転倒
の
減税
の姿勢ではないかと思うのです。
個人個人
が働く
意思
と
創造力
を発揮し、平和で豊かな
社会
をつくると
池田首相
の
施政方針演説
で述べられることが実践されるためには、何といっても
側人
の
生活水準
を高める大
減税
を行なわなければならぬと私は思うのです。こういう
立場
から、今回提案された
所得税
の
減税
は、
減税
の名に値しない、まことに不満なちょっぴりの
減税
でありまするが、
池田総理
はこれに対して、
所得税
の
減税
はこれで足れりとお考えになっておられるのか、
総理
の
所見
のほどを伺っておきたいのであります。(
拍手
) 第二に、昨年十二月六日、
税制調査会
から
所得税法
及び
法人税法
の
整備
に関する
答申
がなされました。その
答申
は、多くの
改善
すべき点を指摘し、
一般納税者
にわかりやすい
法令体系
にすること、
租税法律主義
のたてまえを根本として
法律
、政令、省令、通達などの
税法整備
の見地から
検討
を加えよという
趣旨
で始まり、非常に多くの点でわれわれに
改善
を迫る
答申
がなされておるのであります。この
答申
のどのように
総理大臣
は受けとめておるか。また、
答申
を実施するという
立場
に立つならば、いつごろからこの
整備
に関する
答申
を実施しようと考えておるか、
総理
の御
所見
を伺っておきたいと思います。 次に、
大蔵大臣
に
お尋ね
いたしますが、
田中
さんは、二月七日の
予算委員会
で、
歳入見積もり
について
有馬議員
から
質問
を受け、「従来のように、どうも
自然増収
が大きくなるから、初めから意図して低く見積もったのだというようなことでは困るので、
明年度
は
名目
九・七%、
成長率一ぱい見積もり
をしておる」と答弁いたしております。しかし、
財政当局
は、
編成作業
の当初において、三十九
年度
の
GNP成長率
一二%として六千五百億円の
自然増収
が算定されると発表されておりました。ところが、一二%の
成長率
で算定して六千五百億円の
自然増
が出るというのに、本
予算
では
成長率
九・七%と、より低い
見通し
にもかかわらず、
自然増収額
が六千八百二十六億円と逆に
増加
したのであります。まことに陳腐な
計算
であると私は考えます。そこで、
成長率
を一二%と見込んでの今回の
税収計算
をしたとも考えられます。その他について
大蔵大臣
は、九・七%で間違いない
計算
をいたしたと
お答え
になりますが、もしそうだとするならば、
財政当局
が年末に一二%を
基礎
にして
計算
した六千五百億円の
自然増収
は間違いであるのか、いずれが間違いであるかを明らかにいたしてもらいたいと思うのであります。さらに、九・七%を前提として確かに
目一ぱい予算
を計上したというならば、
財政当局
としてはおそらく一千億円もしくは二千億円
程度
の
補正財源
は当然
予想
しての
見積もり
だと思いますが、
大臣
は
補正財源
がどのくらい
予想
されるか、
予想
の額でけっこうでありまするから、明らかにいたしてもらいたいと思うのであります。 次に、
租税特別措置
が近年恒久化され、
既得権
となって年々
増加
の一途をたどっております。
昭和
三十九
年度
の
特別措置
による減収すなわち
減税額
は、
国税
でおそらく二千三百億円、
地方税
で一千五十億円を下らないと私は判断いたします。これらの
特別減税措置
を減らし、
所得税
、小
企業
の
法人税
、
間接税
の
減税
を大幅に断行すべきでありますが、
政府
は、
特別措置
を
拡大
こそすれ、
公平原則
を踏みにじる
態度
をとっております。今回も
輸出所得控除制度
の
廃止
と引きかえに、
名目
を変えて
特別措置
の
拡大
をしようといたしております。私どもは、
租税特別措置
を整理して、一そう公平な
税制
を実現せんとするものでありますが、なぜ
租税特別措置
の
整理縮小
をしないのか、できないのか、
大臣
の
所見
を承りたいのであります。 次に、
所得税
の
内容
に入ってまいりますが、
政府
は二千億円
減税
を
大幅減税
だと宣伝をされておりますが、
小幅減税
といわれた本
昭和
三十八
年度
ですら当初の
自然増収
に対して一六%の
減税
であるのに、三十九
年度
は一二%に低下しております。
一般会計予算
に対する
比率
、
分配国民所得
に対する
比率
、ともに前
年度
より本年は少なくなっております。
租税負担率
から見ましても、二二・五%と
負担率
は高まり、昨年より一%上回っておることも
皆さん御存じ
のとおりであります。
減税
とは一体どういうことなのでしょうか。
個人
の税額を前年より減らすということなのか、
所得増加
に伴う
増税
を緩和することなのか、
大蔵大臣
は
減税
の概念をどのように把握しておるか、明らかにしてもらいたいのであります。(
拍手
)特に問題なのは、
減税
の
内容
であります。現時点における
所得税減税
は、
物価騰貴
に対する
事後的調整
というべきであって、それはあくまで
事後的調整
にすぎないのであります。
昭和
三十九
年度
の物価高には何らの
対応措置
がなされていないのであります。これで
減税
と言えるのか。
物価騰貴
を調整するにすぎないではないか。
総理府統計局
の発表によれば、昨年の一カ年間の
消費者物価
は、三十七年に比べ七・六%の
上界
、三十七
年度
の六・八%を上回っております。しかも、本年一月の
騰貴率
は昨年十二月と同率の
上昇
であり、三十九年も
政府経済見通し
による四・二%にとどまるとは考えられない。かなりの
生活圧迫
をもたらす
消費者物価
の
上昇
となるであろうことは、やや確実であります。しかるに、
政府
は、
所得税減税
をわずか三十九
年度
六百四十九億、平
年度
七百三十六億円しか行なわないのであります。この
税制案
がいかに不妥当、不合理なものであるか、私は、以下具体的な点を二、三摘出して、
皆さん
の
検討
をいただきたいと思うのであります。
給与所得者
の場合、
納税人員
は前年比四%の増で、百五十万七千人の
増加
になり、低
所得者
が新たに
納税者
に加えられる
割合
は一そう
拡大
される傾向です。しかも、
課税最低限
は
お話
にならない低さであります。試みに
給与所得者
の
独身者
の場合、年にボーナスを二回、かりに四カ月
分賞与
をもらう若い人を例にとって考えた場合に、月給一万一千円余りで
所得税
がかかるのであります。
高等学校
を卒業して就職すると直ちに
所得税
をとられる。パーセントは、六四・五%の
人たち
が
納税人員
に加えられるのであります。
日本
と同じように
戦争
に負けた西ドイツはいかがでしょう。
独身者課税最低限
は二十五万九千余円ではないですか。
総理
は、
先進国家
の仲間入りをした
日本
、
自由主義陣営
の柱に加えられた
日本
と、口を開けば大いに
日本
の今日の
成長
を謳歌いたしますが、
戦争
に負けたドイツと比較をして、いかに
日本
の
国民
の
税負担
が重いかということが、この一事をもっても明らかであります。(
拍手
) 特にけしからぬのは、
わが国
の場合、
家族構成
が多くなるに従って、
先進
諸外国との開きがますます大きくなるということであります。
課税最低限
は、
昭和
三十五年と比較いたしましても、三〇%
程度
しか
増加
いたしておりません。この
増加率
は、
人事院調査
による
標準生計費
の
増加割合
を下回り、
生活保護家庭
における
扶助基準額
の
上昇率
と比較しても下回るのであります。しかも、
生計費計算
の
基礎
が、全く実情から遊離した
資料
を
もと
にしているといわざるを得ません。
税制調査会
の
資料
によると、
成年男子
一日当たり、主食三食で四十八円八十六銭、副食百一円十八銭、一日に百五十円四銭で三食を食べるという
計算
であります。
皆さん
の近所、知り合いの中で、三食百五十円四銭の
生活
をしておる人が何人おりますか。かような
現実
に遊離した
生計費計算
を
もと
にして今日の
課税最低限度
を
計算
するに至っては、まさにナンセンスといわざるを得ません。かかる
生活状態
を想定して
計算
した
消費支出金額
でも、一
世帯
五人
家族
以上の
家庭
では、
課税最低限
を上回る
生活費
であるということを
税調
もはっきり認めております。 以上のごとく、
政府
の
所得税課税方針
はまことに過酷であって、低
所得者
、中
所得者
以下の
人たち
に対してはまことに冷淡しごくであると断ぜざるを得ません。(
拍手
)私は
総理大臣
の責任なしとしないと思います。
税調
があるからと
税調
を隠れみのに悪用する向きもあるが、
政府
が
改善
を要望すれば一朝にして
改善
できるものであります。
総理大臣
の
所見
のほどを伺いたいと思います。 三十八
年度
税制改正
は、
所得税
二百七十七億、
租税特別措置
二百四十六億円と、
所得税
と
租税特別措置
の
減税
がやや同
規模
の
減税
でありました。これでは
所得税減税
が少な過ぎ、大金持ちや大
企業
にますます有利ではないかと
田中大蔵大臣
を当時追及いたしました。
田中蔵相
は、来
年度
は
所得税
を
中心
に
大幅減税
を断行すると、再三にわたり等介したのではないでしょうか。しかも、
税調答申
を値切り、
配偶者控除
、
扶養控除
を
税調
が二万円
引き上げ案
だったのを五千円に値切り、ついに
生計費
に食い込み、
物価騰貴
を調整することすら怠ったのが、本年の
減税方針
であります。今回
配偶者控除
、
扶養控除
をわずか五千円ずつ
引き上げ
たが、これは三十八
年度
で当然行なうべきものでありまして、三十九
年度
は
引き上げ
しなかったのにひとしいといわざるを得ません。 しかも、
政府
の
態度
でけしからぬことは、
国際競争力
の
強化
、
企業
の
近代化
という美名の
もと
に、
勤労者
、サラリーマンに対してはまことに納得のいかぬ今回の処置であります。それは
給与所得者
の
給与所得控除
の
引き上げ
についてであります。
定額控除
後の残額について
税制調査会
の
答申
は、五十万円まで二〇%、五十万円をこえて一〇%、
最高
十五万円の
答申
をしたのであります。この
答申
すら
政府
は無視し、四十万円まで二〇%とし、
最高
十四万円にとどめ、そのため
税調案
より
増税
になった
金額
は九十四億円であります。
日本
の
労働者
が自民党を支持しないから、あるいは
労働組合
が
社会
党を支持しておるからという偏見によって、かかる
勤労控除
の仕打ちに対しましては、公平なる
政治
と断じて言うことができません。(
拍手
)私は
大蔵大臣
に
お尋ね
をいたしたいのは、何ゆえに
給与所得者
の
控除
の
税制調査会答申
を守らなかったのか。これだけの
政府
の大
予算
の中で、九十四億円の
減税
を
労働者
から取り上げるゆえんは一体那辺にあるのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(「時間だぞ」と呼ぶ者あり) さらに最後に、時間だと御忠告もございますから、一問申し上げて降壇をいたしたいと存じます。 それは、
所得岩間
の
課税最低限
の
均衡
という問題であります。
標準世帯
、
青色申告業者
で
配偶者
が
専従
の場合を例にして考えてみますならば、四十三万二千六百七十円、
給与所得者
は四十八万五千三百六十九円でありまして、その差額五万二千六百九十九円もございます。
事業所得
の場合、
所得
の捕捉が正確でないというのでこの差を認めておるのか。
租税負担
の
公平原則
から見て、これだけのアンバランスをどうしたらよろしいのか、このまま放置してよいと考えるか、この点
大蔵大臣
の
所見
を伺って、時間の
通告
がございますから、降壇をいたしたいと思います。(
拍手
) 〔
国務大臣池田勇人
君
登壇
〕
池田勇人
6
○
国務大臣
(
池田勇人
君)
租税負担
の
軽減
をはかりますことは、
民主政治
の最
重点施策
でなければなりません。したがいまして、われわれは、過去十数年間、ほとんど毎年のごとく
減税
を実施してきておるのであります。ことに、最近の
日本
の
経済力
の
上昇
にかんがみまして、三十九
年度
は、平
年度
二千百八十億円という、いまだかつてない画期的な
減税
をすることにいたしたのであります。しかも、その
減税
の
内容
は、
所得税
、
住民税
を
中心
として行なっております。ただ、
国際競争力強化
のため、また、末長き
日本経済発展
のために、
企業減税
もある
程度
加味していることは御
承知
のとおりでございます。私は、いまの状況におきまして、
国民一般
の
基準生計費
を考えながら、今回の
税制
は最もよい
税制改正案
と考えております。 なお、次に、わかりやすい
税制
ということでございまするが、御
承知
のとおり、
負担
の
均衡
を正確にはかるというためには、文章その他がなかなかむずかしくなるのでございます。これは従来からいわれておることでございますが、われわれは、
お話
のように、できるだけ
一般
の方々に
税法
がわかりやすいように改めることを、いま
調査会
に諮問して
検討
を続けておるのであります。 ほかは
大蔵大臣
より
お答え
することにいたします。(
拍手
) 〔
国務大臣田中角榮
君
登壇
〕
田中角榮
7
○
国務大臣
(
田中角榮
君) 私から
お答え
いたしますものが四、五点ございますから、
お答え
をいたします。 その第一点は、三十九
年度
の
成長率
九・七%と見た場合、六千八百二十六億は過大ではないか、しかも、当初案一二%と
成長率
を算定した場合、六千億ないし六千五百億と言ったのに、いずれが正しいかという御
質問
でございますが、いずれも正しいのであります。出初一二%と見ましたのは、御
承知
のとおり、三十八
年度
の
経済成長率
が非常に低いものだと考えて、まだ未
確定要素
の
状態
において三十九
年度
を算定したわけでございます。ところが、御
承知
のとおり、三十八
年度
の下期、すなわち第三・
四半期
、第四・
四半期
の
経済成長率
が非常に高いので、しかも、いま御
審議
を願っております第三次の
補正予算案
をごらんになればおわかりになるとおり、今
年度
において
自然増収
がすでに二千億余見込まれるわけであります。そのように
経済成長率
が商いので、三十八
年度
の
基本ベース
が高くなりましたので、三十九
年度
の
経済成長率
を、三十八
年度
の八・一%より下げても、税の
自然増収
は多くなるわけであります。でありますから、六千八百二十六億円の
税収見積もり
は、
名目
九・七%、
実質
七%で、
積み上げ方式
によって算出したものでありますから、適正な
歳入見積もり規模
だと考えておるわけであります。そこで、ちょっと申し上げますと、
経済成長率
と
税収
との関係は、時期的にズレがございます。でありますから、三十八
年度
の下期の
成長率
の高い時代の
法人税収入等
が三十九
年度
の上期にずれ込みますので、このように見積もられることは御
承知
のとおりでございます。 第二点は、
補正財源
はあるのかということでありますが、
一般会計
の
予算
を組んで御
審議
を願っておるときに、
補正財源云々
を申し上げることはいかがかと思います。しかし、
災害等
に関しましては、御
承知
のとおり、三十九
年度
の
予算
に百億の
災害予備費
を計上してございますので、これによって対処いたしたいと考えておるのであります。 それからその次に、
租税特別措置
の
整理統合
、
廃止
について、どう考えるかということでございますが、御
承知
のとおり、
租税特別措置法
というのはいろいろ
議論
のあるところでありまして、
租税
の公平の
原則
から考えますと、できるだけ
整理統合
すべきであるという
議論
が存することは当然であります。しかし、
日本
のように、戦後の困難な
情勢
に対処して今日の
経済
を
拡大
してき、われわれ
国民
の
生活基盤
を確保してまいるには、ある時期において時間を限って特別な
措置
が必要であることもまた事実であります。御
承知
のとおり、三十九
年度
の
減税
を契機にして考えますと、IMF八条国への移行、
OECD加盟等
の
開放経済
に向かう特殊な条件がありますので、これらの
国際競争力
に対処する等のため
租税特別措置
が必要であることもまたお認めいただけると思うわけであります。これらの問題に対しては、
税制調査会
の
答申
をまちながら処置してまいりたいと考えます。 その次は、三十九
年度
の
減税規模
が小さいのではないかということでございますが、御
承知
のとおり、六千八百二十六億の
自然増収
を
見積もり
ましたけれども、三十九
年度
の特殊な事情として、前
年度
剰余金
の減が千八百余億になるわけであります。六千八百億から千八百億ないし千九百億を引きますと、四千九百億
程度
の
歳入増
であります。この
当該年度
における
歳入増
と
当該年度
における
減税額
との
比率
が問題なわけであります。この問題につきましては、十分御
承知
のとおり、一七・一%でありまして、
昭和
三十二年以降最大の
減税規模
であるということも御
承知
のとおりであります。 それから、
課税最低限
五人
家族
の場合が少ないではないかということでありますが、
減税
によりましては、四十七万一千円というふうに見込まれる
最低限
を四十八万五千円
程度
まで
引き上げ
ておるわけであります。ところが、五人
家族
においては、わずかその差が一万四千円しかないのでありますけれども、三人
家族
、二人
家族
、
独身者
によって見ますと、多いものは五万円も開きがあるわけでありますので、これらの計数に対しては御
検討
をわずらわしたいと思います。 もう一つ、
税制調査会
の
答申
を守らなかったということでございますが、御
承知
のとおり、
最高
限度額
三万円を
引き上げ
るようにという
答申
に対して、二万円の
引き上げ
を行ない、二〇%の
控除
率の適用範囲の
拡大
ということが
答申
にございましたが、これは見送ったということでございますが、これは
所得税
及び
企業減税
、
地方税
等の勘案もありまして、先ほども申し上げました開放体制に対処する特殊な事情もありますので、二千億
減税
という
政府
の当初の方計を、二千百八一億までワクを広げて前向きに対処したわけでありますので、これらを見送ったことは事情御了承いただけると思うわけであります。
税制調査会
の
答申
は二千三百八十億余でございましたけれども、これは輸出
所得
控除
の当然増徴分を引かない数字でありまして、
政府
原案ではこれを引いてありますので、総体的な結論的な数字から申し上げますと、
税制調査会
よりも約五十億上回る
減税
を行なっておるという事実を申し上げて答弁といたしたいと思います。(
拍手
)
船田中
8
○
議長
(船
田中
君) これにて
質疑
は終了いたしました。
————◇—————
日程
第一
昭和
三十八年業米穀についての
所得税
の
臨時特例
に関する
法律案
(
内閣提出
、院送付)
船田中
9
○
議長
(船
田中
君)
日程
第一、
昭和
三十八
年産米穀
についての所御税の
臨時特例
に関する
法律案
を議題といたします。
—————————————
船田中
10
○
議長
(船
田中
君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長山中貞則君。
—————————————
〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔山中貞則君
登壇
〕
山中貞則
11
○山中貞則君 ただいま議題となりました
昭和
三十八
年産米穀
についての
所得税
の
臨時特例
に関する
法律案
について、大蔵委員会における
審議
の経過並びに結果を御報告申し上げます。 この
法律案
は、
昭和
三十八年産の米穀の集荷に資するため、生産者が同年滝の米穀を、事前売り渡し申し込み制度に基づいて
政府
に対して売り渡した場合、同年分の
所得税
について、その売り渡し時期の区分に応じ、玄米百五十キログラム当たり、すなわち一石当たり一千七百五十円ないし一千百五十円を非
課税
とする
措置
を講じようとするものであります。 本案は、さきに参議院を通過して本院に送付されたものでありますが、慎重
審議
の後、昨十一日、
質疑
を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決いたしました。 以上、御報告申し上げます。(
拍手
)
—————————————
船田中
12
○
議長
(船
田中
君) 採決いたします。 本
法案
は委員長報告のとおり決するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
船田中
13
○
議長
(船
田中
君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————
日程
第二
日本鉄道建設公団法案
(
内閣提出
)
船田中
14
○
議長
(船
田中
君)
日程
第二、
日本鉄道建設公団法案
を議題といたします。
—————————————
船田中
15
○
議長
(船
田中
君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長川野芳滿君。
—————————————
〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔川野芳滿君
登壇
〕
川野芳滿
16
○川野芳滿君 ただいま議題となりました
日本鉄道建設公団法案
につきまして、運輸委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。 本
法案
は、
わが国
の鉄道交通網を
整備
することにより、
経済
基盤の
強化
と地域格差の是正に寄与する目的をもちまして、国鉄にかわって鉄道新線の建設を行なわせるため、新たに
政府
及び国鉄の出資によって
日本
鉄道建設公団を設立しようとするものでありまして、公団の資本金及び財源
措置
、公団の行なう業務、新線建設の決定
方式
並びに
政府
の監督等について、所要の規定を設けております。 本
法案
は、去る三十八年十二月二十日当委員会に付託され、本年一月二十九日
政府
より提案理由の
説明
を聴取、自来五回にわたって委員会を開き、慎重
審議
を行ないましたが、その
内容
の詳細は
会議
録によって御
承知
を願います。 かくて、二月十一日、
質疑
の後、討論に入り、自由民主党を代表して細田吉藏君より賛成、
日本
社会
党を代表して肥田次郎君より反対、民主
社会
党を代表して玉置一徳君より反対の討論が行なわれ、採決の結果、本
法案
は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第でございます。 以上、御報告申し上げます。(
拍手
)
—————————————
船田中
17
○
議長
(船
田中
君) 討論の
通告
があります。これを許します。油谷裕夫君。 〔泊谷裕夫君
登壇
〕
泊谷裕夫
18
○泊谷裕夫君 私は、
日本
社会
党を代表いたしまして、
日本鉄道建設公団法案
に反対の
趣旨
を述べます。 鉄道新線の建設は、国の産業開発、
経済
発展あるいは地域格差の是正のために、大きな役割りを果たすものであります。私ども
社会
党は、常に、
国民
経済
発展のために、計画的な鉄道交通網の確立に努力を傾けてまいったところであります。しかしながら、現状は、新線建設の必要数は三百三十一線であるのに、建設工事を進めている着二線はわずか四十八線で、着工予定の調査線は十五線の実情にあります。 このように、新線建設が意のごとくならない根本的な原因は、鉄道建設
審議
会の
答申
が指摘しておりますように、鉄道新線の建設は、
一般
国民
に与える有形無形の便益の増大と、国原
経済
に与える効果の多大なることにかんがみ、国家的な政策上の見地から論ずべきであって、
日本
国有鉄道の
企業
的
立場
からのみこれを論ずべきでないことを明らかにしております。したがって、矛盾解決の方法としては、鉄道新線の建設を、道路、港湾と同様に、
政府
の公共投資とする以外にないものと思量せられる、よって、今後の新線建設については、
政府
が公共専業として主たる財源を
負担
することが適当であると述べておるのであります。このように、その必要資金が、国鉄の現状からして確保できないのであります。したがって、その根本的解決策は、
政府
が、新線建設を公共事業として、主としてその費用を
負担
することにあります。しかるに、本
法案
は、この重要な点について何ら解決をしていないのであります。 次に、真に、
わが国
の
経済
基盤の
強化
と地域格差を是正するため、鉄道交通網の
整備
をはかろうとするならば、その根本的な方策と計画を樹立する必要があります。こんな常識的なことをあらためて主張する理由は、池田内閣が立案をいたしました
所得
倍増
計画の交通体系小委員会は、ローカル線については、特殊な線区を除いて、今後の建設を中止し、現存の路線も、
国民
経済
に非合理的なものは撤去をして、自動車にゆだねるべきである、また、
一般
に、新規投資について十分に特殊性を
検討
し、累を将来に残さないように注意すべきである、と書いてあります。このように、採算性を追求するあまり、従来、新線建設に積極的な意欲が見られないばかりか、今後も、その姿勢に不安なしとはいたしません。 本来、住民福祉向上に役立つよう、国全体の交通政策か、道路、鉄道、港湾、内航海運、航空、いわゆる陸海空と体系づけて、計画が立案されなければなりません。かりに陸上運送だけでも、鉄道、バス、トラックと、総合的な
立場
に立って、科学的な
検討
が加えられなければならぬと思います。今後の
経済
発展と地域の発展とも関連をいたしました十分な配慮がなければならぬものであります。いやしくも、世間から
政治
路線と指弾を受けるような、
政治
圧力によってそれが左右されやすい、場当たり的な無計画であってはなりません。 さらに、特に注意を払わなければならぬのは、道路、港湾については、すでに道路
整備
緊急
措置
法、港湾
整備
緊急
措置
法の立法化がなされ、一応五カ年計画の
もと
、その具体的推進には閣議決定などの条件を付して、十分とはいえないまでも、
政府
がその実施について責任を負う体制を整えております。しかるに、鉄道新線建設についてのみ、その立法
措置
に何ら触れておらないことは、問題解決の本質をぼかし、本
法案
は隠れみの的役割りを果たし、切実な
国民
の要望にこたえたものとは考えられません。 最後に、新線建設を具体的に促進する技術面から見まするに、新線建設の隘路は、ただいま述べましたように、国鉄か公団かではなくて、国鉄の技術陣をもってすれば、今日予定されております鉄通新線の建設は、決して不可能ではございません。むしろ、国鉄の技術陣の手にまたなければ、かえって多くの障害さえ
予想
されるのであります。せっかく長い経験を持つ国鉄工事要員を二分し、そのことは、不足を伝えられております工事要員の弾力的運用を失わしめ、公団役職員、特に管理者のみが
増加
する国家的むださえ生ずるのであります。 以上述べましたように、国鉄から新線建設を切り離し、建設公団を新設することは、組織の繁雑を来たし、効果的でないばかりでなく、法文の
趣旨
に合致しないものと考えます。私ども
社会
党は、
日本
国有鉄道が行なう鉄道新線建設の緊急かつ計画的な実施を促進するため、鉄道新線建設十カ年計画の策定と、その実施を要する国庫
負担
などについて必要な規定を設けようとして、鉄道新線建設緊急
措置
法を提出いたしました。
政府
案と対比して十分な
審議
を要請したのでありますが、討議不十分のまま、性急に
政府
案の成立を急ぎ、
日本
鉄道建設公団法によってすべてが解決するかのように世間を幻惑されるようなことは、
政治
的な責任からいって
もと
うていわれわれは容認できないのであります。(
拍手
)したがいまして、
日本
鉄道建設公団法に反対するものであります。 本
法案
も、やがて自民党諸君の数による成立を見ることでありましょう。願わくは、しょせん不可能と知りながらも、悲願にもひとしい
国民
の切実な要望にこたえるべく、
政府
・与党の再考を願って討論を終わります。(
拍手
)
船田中
19
○
議長
(船
田中
君) これにて討論は終局いたしました。 採決いたします。 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
船田中
20
○
議長
(船
田中
君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(
拍手
)
————◇—————
船田中
21
○
議長
(船
田中
君) 本日は、これにて散会いたします。
————◇—————
出席
国務大臣
内閣
総理大臣
池田 勇人君 大 蔵 大 臣
田中
角榮君 農 林 大 臣 赤城 宗徳君 運 輸 大 臣 綾部健太郎君 建 設 大 臣 河野 一郎君 自 治 大 臣 早川 崇君 出席
政府
委員 内閣法制局長官 林 修三君 運輸省鉄道監督 局長 廣瀬 眞一君 自治省財政局長 柴田 護君