○松平忠久君 ただいま
趣旨説明のありました
経済協力開発機構条約の
締結について
承認を求めるの件に関して、私は、
日本社会党を代表し、おもなる点について質問をし、
政府の所信をたださんとするものであります。
質問の第一は、
OECDの性格についてであります。
この条約は、
欧州経済協力機構を改組して、
加盟国をふやし、低開発地域援助の仕事を加え、
加盟国の
経済の高度成長と、世界
貿易拡大の推進力たらんとするものであります。その、歴史的発展の
経過から見て、この条約は、第一に、共産圏の外側にある
加盟国が、その高度成長と
貿易の開放体制を推進し、共産圏と対立して優位な立場に立つこと、第二に、
アメリカのドル防衛のために、低
開発国援助にあたって
アメリカの援助の肩がわりを行ない、低
開発国を共産圏の影響から切り離して、自由諸国側に引きつけること、これを主眼とするものであり、大きな意味で
アメリカの共産圏包囲
政策の一環として役立たせんとする改組であったのであります。すなわち、軍事的に対共産欄包囲陣を続けてきた
アメリカは、ドル不足の
危機を切り抜けるための
一つの方法として、軍事費や対外援助費を削減せざるを得なくなったやさきに、ソビエトにおいても、あるときは徐々に、あるときは急激に、非スターリン化の
政策が行なわれ、対外的には戦争不可避論を引っ込めて、平和共存
政策を前面に押し出し、内政面でもマルクス・レーニン主義の解釈を都合のいいように改め、
国民生活の面で
アメリカに追いつき追い越すことをスローガンとして、
経済競争に重点を移しかえてきたのであります。この変化に対応するために、OEECをこの条約のような性格に改組したものがすなわちこの
OECDであることは、世間周知の事実であります。
しかるに、総理は、一月二十四日本院における平岡議員の質問に対して、
OECDが派閥
機構だとかNATOのかわりだとかおっしゃるが、それは
OECDの実体を御存じないからだと思います、こういうふうに答弁をして、この性格を否定いたしました。
そもそも、この条約が
締結されたその翌年、すなわち一九六一年三月二十二日、ケネディ大統領は対外援助教書を
提出しましたが、この教書において、低
開発国を共産圏の影響から守るためには、軍事援助だけではだめで、
経済援助が必要であると説き、その基礎は
OECDの創設によって築かれていると述べております。さらに、その年十一月、
OECD第一回閣僚
会議において、
アメリカ代表ボール国務次官補は、
加盟国の
国民総生産を九年間に五〇%引き上げるべきことを提案しましたが、この提案は、ソ連共産党第二十二回総会の
決定を意識し過ぎた提、案であるとの批判がスイス並びにスウェーデン等の代表からなされたために、年限を延長したいきさつがあります。さらに、その
会議において
議長をつとめたカナダの代表フレミングは、自由
社会の連帯性と
OECDの世界的使命を強調しましたが、そのことは、共産主義勢力に対応する旗じるしとして受け取られたことは今日常識となっているが、総理はこれらの事実を御存じないのかどうか、まず総理の認識の
程度を承っておきたいと存じます。(
拍手)
質問の第二点は、日本がこの条約に
加盟せんとする真の動機及び
理由は何か、また、何ゆえにこのように
加盟を急いだかということであります。
この条約の成立後、
政府は
加盟について
アメリカの意向を打診し、池田総理も一九六一年渡米の際に、ケネディ大統領にこれを持ちかけたけれども、時期尚早の答えであったようであります。自来二年間、事務的な、あるいは
政治的な折衝が進められて、総理みずからも、先年渡欧の際に、熱意を傾け
加盟に努力を傾倒いたしました。
一体、かように条約
加盟に努力してきた
理由は何であるか。条約の
内容を熟読しても、日本の負うべき義務ばかり多くして、日本の享有すべき権利はほとんどございません。ただ、皮膚の色も違い歴史も違う戦敗国日本が、欧米の先進工業国と肩を並べて話し合いができ、一流工業国のクラブに
加盟でき、国際的地位が上がるという満足感を味わうことと、情報
交換を行なうことがその効果であるようであります。
わが国において受け入れ体制もできていないのに、多くの犠牲を払って、
加盟を急ぐ重大な
理由は見当たりません。一昨年来、消息通の意向は、日本は
加盟を急ぐ必要はない、黙っておれば、先方からぜひ入ってくれと言ってくるに違いない、こちらから頼んで入れてもらうようなことをすれば、よけいな義務を背負わされるだけだという見解でありました。はたして今日はそのような結果になっております。総理や内閣の功名心を満足させるために
加盟を急いだとするならば、
国民の迷惑を顧みない行為として非難されなければなりません。(
拍手)総理の真意を問わんとするものであります。
第三点として、
OECD加盟によって、日本の外交、
経済にとり、将来心配になる点が多々ありますが、その中のおもな点について、逐次質問をしたいと存じます。
その第一は、海運問題であります。
OECDにおいては南北問題があり、これに関連して、
アメリカのドル防衛の片棒をかつがなければならないということがあるので、その運営には
アメリカの意向が初めから強く反映しておるのであります。すなわち、
アメリカは最初からシップ・
アメリカンの
方針を条約付属文書によって
加盟国に
承認をさせました。これに反して、日本は
加盟の交渉において、長期用船契約について五年間の
自由化延期を申し出たけれども断わられ、これを三年間に短縮したが、これもけられ、結局タンカーは二年間、石炭、鉄鉱石専用船一年間の猶予を認められただけであります。
さらに
政府を糾弾しなければならないことは、昨年の
国会において、五年間の日本の海運業を整備、統合する
目的をもって、うかつにも海運業整備臨時
措置法並びに関連法を制定したことであります。
政府は、
OECD加盟に際して五年間の延期を認めさせ得るとの観測があったのか、この整備法を出し、当時
政府もこのような答弁をいたしておりました。しかるに、終局において、
OECD加盟にあたって、この法律の
内容とは違った国家意思を約束してしまったのであります。外交と内政との不統一をまのあたり暴露したこの不始末の責任はだれが負うのであるか、まことに重大といわなければなりません。運輸省の試算によると、今後四年間に毎年二百万トンずつ建造し、かつ積み取り率を大幅に引き上げなければ赤字は解消しないといっております。しかるに、来
年度の計画造船は六十四万トン、一方海運の赤字は本
年度四億一千万ドル、来
年度は五億五千万ドルと逆にふえる見込みであります。総理は、一月二十四日本院において、
貿易外取引の赤字は四、五年のうちに解消できるようなことを答弁しましたが、海運関係だけでも初めから見当違いの法律を出して、見込み違いの
予算を計上して、一体どうやって赤字を解消するつもりであるか、総理のプログラムをお聞きしたいと思うのであります。(
拍手)このような前代未聞の外交と内政との不統一の責任の所在と、海運業整備臨時
措置法のあと始末と、赤字解消の具体的方法について、総理並びに関係大臣のまじめな答弁を要求します。
さらに、この際、昨年十一月十五日
アメリカ政府海事局から出された命令第二十一号についてお尋ねいたします。
太平洋航路の外国船の運賃が
アメリカ船より高いというので、これを下げさせる意図のもとに、まず必要な文書の
提出を命じたのがこの第二十一号命令であります。日本の海運会社十一社もこれを受け取っております。運輸大臣は、かかる命令に従う必要はないという
趣旨の
行政指導を行なったそうでありますが、そもそもこのような命令を外国の船会社に出せるような
アメリカの海事法そのものが、国際法もしくは国際慣行に違反し、
OECDの精神にも違反すると思うが、この海事法制定の当時において、
政府は一体いかなる
措置をとったか、いままたいかなる
措置をとらんとしておるのか、外務大臣並びに運輸大臣の答弁を求めたいと存じます。
わが
政府が、先進工業国の一流のクラブに加入できると思ってうちょうてんになっている間に、外貨は流れ出し、運賃の低下を迫られて収入減となり、赤字を増大するという事態が発生せんとしておるのであります。
政府の
政策に大きく一本抜けたところがあることは、
国民にとりまことに不幸といわなければなりません。
その第二は、対米輸出自主規制の問題であります。これは、明らかに
アメリカの要求に基づく日本側の規制であり、との条約において
アメリカが
留保していないとするならば、明らかに
OECD条約違反の行為であると思われるけれども、外務大臣はどう考えておるのか、見解を承っておきたいと存じます。
その第三は、
アメリカの要請に基づき、その肩がわりのために行なうところの低開発地域援助の件でございますが、この傾向は今後ますます増大するものと思われますけれども、この傾向に対し、
政府はその独自性を主張し、みずからの計画を立てて
加盟国をリードする自信と用意があるか、これもあわせて伺っておきたいと思います。
第四の心配は、
国際収支であります。本
年度すでに当初の予想以上の赤字が出ており、来
年度も大幅赤字になる予想であります。赤字の大きな要素は海運関係をはじめとする経常取引の赤字でありますが、まずその
一つである技術導入についてお伺いいたします。
技術導入は、今日まで約二千件に達し、年間一億ドル以上のロイアルティーを支払っております。しかも過当競争が激しく、値段をつり上げるのみならず、技術提供者から種々の
条件、制約を受けておるのであります。この点について、条約付属の
了解覚え書きにおいてわが
政府は
条件をつけております。しかしながら、最終的には完全
自由化を認めておるのであります。また、日本の制度ではこれを
資本取引としているけれども、
OECDでは経常取引としておわ、考えが違っておるのであります。したがって、今日
加盟国でこの
留保をしている国は一国もございません。この条約において、
加盟国が棄権をすれば、その国には適用されないというたてまえでありますけれども、しかし、この条約の精神から見て、早目にこの種の
自由化を迫られることは必至であります。
また、
貿易につき、日本の成長産業、たとえば造船業のごときは、
加盟国の造船業者が国際カルテルをつくって、日本の造船業をこの中に入れて、縛りつけてしまうようなことが考えられています。すなわち、有利な産業はこうして押えられ、弱体産業に対しては遠慮会釈なく圧迫してくるおそれが十分看取されるのであります。
しかも、昨日外務省筋が明らかにしたところによると、三月中旬
OECD事務局の
経済部長を団長とする予備審査団が派遣されて、
わが国の
経済の現状を調査し、
経済政策に対する勧告を
報告書の形で取りまとめる意向であるようでございます。しかるに、
政府においては、
貿易・為替並びに産業全般の
対策について、大蔵省と通産省の間に意見の違いがあり、したがって各省がそれぞれの立場において法律の手直しをする、こういうことをもくろんでおって、統一を欠いているように看取されるわけでございます。
政府は、開放
経済に対処するための準備が著しくおくれているこの際に、赤字解消を目途として為替、通商についていかなる作業を進めておるのか、それぞれ明らかにしていただきたいと存じます。
さらに第五点は、共産圏
貿易に対して
OECDが文句をつけてきはしないかということであります。通産大臣は、過般の
予算委員会において、横路
委員の質問に対して、中共
貿易の延べ払いのワクを三千万ドル
程度にきめたということを答弁いたしております。これは、ある国際機関が対共産圏
貿易の延べ払い輸出に一定のワクを設定するよう申し入れ、わが
政府もその要請に応じてワクをきめたことは明らかであります。
政府は、一体いかなる国際機関からこのような要請を受けたのか、また、その機関にいかなる回答を出したのか、関係大臣の答弁を求めると同時に、
OECDについても同様の懸念があるように思えるが、あわせてこの点についてもお答えを願いたいと存じます。
最後にお伺いしたい点は、
OECD加盟に決意された
池田内閣としては、よもやILO八十七
号等の国際的な約束をそのままにして、ほっかぶりをして、そしてこのクラブにのこのこ入っていくようなぶざまなことはなさらないと思うが、国際的感覚を全く欠除している方々も自民党の中にはおいでになるようなので、この際伺っておきたいと思うのであります。(
拍手)
本条約第一条には、
財政金融上の安定をはかりながら、雇用と
国民生活の向上を強調し、バランスのとれた成長
政策をとるべきことを要請しております。さればこそ、ただいまも外務大臣から
趣旨説明の中に言及されておりましたが、
OECDの下部
機構として労働
委員会を設置しておるのであります。この労働
委員会に参加しておる国際自由労連においては、昨年九月十三日付をもって、
OECD事務局次長に対して、日本
政府が真に
OECDに
加盟することを望んでおるならば、まずILO八十七号条約のごとき重要な国際約束の批准を済ませてから堂々と
加盟を申し込んできてしかるべきである、この点に関して日本
政府に厳重な警告を発せられたいと要請をいたしております。
政府は、
OECD事務局よりこの種の警告を受けているかどうか。受けていると思うが、その真相を明らかにするとともに、この点に関する所信を総理並びに労働大臣から解明していただきたいと思います。
いまや
政府は、
わが国の受け入た体制の整わないうちに背伸びをしてこの
加盟を行なわんとするものでありますが、そのしわ寄せは必ずや
国民大衆に及んでくるのであります。
政府は、この点について深い反省を加えつつ、まじめな答弁をしなければならないことを要求して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕