○横山利秋君 私は、
日本社会党を代表して、
中小企業、
農業、労働の三部面について、主として当面焦眉の急務の問題を焦点として、社会党の考えを明らかにしつつ、
池田内閣の
所信をただしたいと考えておるものであります。(
拍手)
まず、
中小企業問題であります。
開放経済のあらしには吹かれる、大
企業の圧迫には悩まされる、
金融引き締めは始まっておる、加うるに人手不足、
労働者はなかなか就職してくれない、
物価が上がれば賃金は上げなければならぬ、技術革新で新製品の対策が必要だ、流通革命はどんどん発展をする、まさに
中小企業の土台石をゆるがすような悪条件が重なりつつあるのであります。この事態を反省をされたのか、
池田内閣は、鳴りもの入りでいわゆる革新
政策を呼号されました。しかし、いま国会に提出された
中小企業関係
予算は、
増加したといっても、総
予算からいえば、何とわずかに〇・五%にしかすぎません。農林
予算も不満なものではありますが、それでもまだ七%であります。これで
中小企業に革新的
政策だなどとは、口が裂けても言えるものではないと私は考えておるのであります。(
拍手)
財政投融資は一二%、
政府はめんどうを見られたおつもりでありましょう。しかし、
中小企業は、深刻になりつつある
金融引き締めに非常な不安をみんな抱いています。公定歩合の引き上げがもはや必至であると各方面が見ていますが、もしそうなれば、ますます窓口規制と相まって、
資金難と金利高の両面から
中小企業にしわ寄せがくるでありましょう。すみやかな引き上げを主張する
日銀と、
政策転換の非難をおそれる
政府との問に、意見の相違があるようであります。申すまでもなく、公定歩合は
日本銀行の問題であり、
政府の容喙するところではありません。しかし、
政府の
経済政策破綻の必然的結果としての引き上げであり、
中小企業には、心理的にもかつ実際にも大きな影響のくることは必然であります。
政府は、陰に
日本銀行を牽制し、みずからの責任をたなに上げようとしているのでありますが、迫る公定歩合の引き上げと、
中小企業に与える影響及びその対策について、
大蔵大臣はいかに処置されるつもりであるか、明らかにしていただきたいのであります。
今日、
政府の行なう
中小企業金融の
実態はそのしりが抜けているということを、専門家である
総理や
大蔵大臣が御存じないはずはありますまい。全
金融機関の中で、
中小企業向け貸し出しは、
政府関係三公庫を合計いたしましても、三十七年七月で九%、三十八年七月には八・五%に下がっているのです。本年わずか、二割くらい貸し出し規模をふやしたところで、また、手形割引を新たに設置したところで、従来の例からいうならば、全くこれは、焼け石に水ということができます。すでに窓口規制をしておりますが、市中
銀行は、これをいいことにして、コストのかかる
中小企業のワクを少なくして、大
企業向けに集中融資をするであろうことは、三十二年の不況の例をまつまでもなく、必ずやると見なければなりません。現に、
全国銀行の
中小企業向け貸し出し実績は、三十七年七月で総貸し出し高の二九%だったのが、昨年七月には二六%に下がっているのであります。われわれが、歴年、声を大にして、
銀行法の改正をしろ、そして市中
銀行の
中小企業向け融資
比率をきめて、官民にわたる、
資金全体の流れの中から
資金を確保せよという声を、いつまで大臣は放置していくつもりです。どんな理由があろうと、しょせん、
銀行に気がねをしたり、大
企業のことを考える
池田内閣の実体を如実に物語っているものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
中小企業を泣かせています歩積み、両建ての禁止をわれわれが提起してから、いく久しいものがあります。たとえば五百万円借りて、三百万円はすぐに定期にとられて、そして毎月積み金が締めて二百万円近くになっている。結局幾ら借りておるのか、極端に言えば、一文も借りていないのに、元金五百万円の利子をいつまでも
銀行に納める。
中小企業の苦しさに便乗するこういうけしからぬやり方が、
金融引き締めを契機として、もっと重くなってくるであろう。昨年末ようやく大蔵省が重いしりを上げたのですが、いささかも実効があがっていないではないか。
金融機関にサボタージュをさせる
原因が
池田内閣や与党内にあるのか。歩積み、両建てを征伐するというなら、けじめをはっきりしたらどうでありますか。
大蔵大臣に伺います。あなたは、たいした案でもないのに、二、三年たたなければ実現できないような相銀方式とか全銀方式という自粛措置に満足して、責任を果たしたとお考えでありますか。この案を了承した理由をこの際承りたい。
公取委員長に伺います。あなたは、この方式だけでは満足しないとされているそうですが、その理由をはっきり承りたいのであります。
下請代金の支払い遅延と単価の切り下げが
開放経済と技術革新の本年の重大な問題の
一つであります。親
企業からは単価を下げよ、
合理化して生み出すか、それができなければ取引は中止だと問答無用ともいうべき高圧的な一律下請単価の
引き下げを押しつけられ、下請は無念の涙をのんだだけで、公取へ行くにはあとのたたりがこわい、団結して対抗するには組織が弱い、
労働者の賃金は上げなければならぬ、近代化するには、
政府資金は娘一人に婿八人、なかなか借りられぬ。
通産大臣は、この現状についてどうお考えでありますか。法の所期する、自由にしてかつ公正な関係は、親
企業と下請の間には断じてないのであります。この際、下請単価の適正化と支払い促進に画期的な措置をとる必要を認めませんか。下請を守るために下請関係法をつくり、かつ公取の機能を強めてこれを守るべきである。また、国会の附帯決議事項となっている紛争処理
機関について、
政府は団体組織法の一部改正でごまかそうとしていますが、こんなことで解決するものではありません。この際、
通産大臣は、下請
企業を守る方途を明らかにすべきであります。
また、地方
公正取引委員会が、深刻なこの問題について、何ら見るべき成果をあげていない理由は何であるか、
公取委員長に明らかにしていただきたいのであります。
これらは二、三の刻下の問題をあげたにすぎません。私の言わんとするところは、
池田内閣の
中小企業対策は、
中小企業の中で中以上の
企業に焦点を当てているにすぎません。また、団地や商店街を三十幾つおつくりになるそうでありますが、これとても、
農業構造改善事業と同じように、返上論や計画の遅延が一ぱいあります。これは結局、点をつかまえているにすぎないのであります。総合的な
中小企業対策、特に零細
企業対策に至っては、結局は商工会の職員のベースアップをするだけじゃありませんか。皆無といってもいいのであります。それは、
経済政策の中心が、国際、国内場裏で外国
資本と
日本独占資本との競争にいかに
日本資本を勝たせるかに目が向けられ、そのための大
資本の合併や近代化がはかられ、
中小企業対策もしょせんそれに奉仕するだけであって、
中小企業者のための
中小企業対策でないからでありましょう。(
拍手)
社会党は、この際、あらしの中の
中小企業のために、簡潔に次の八項目の提案をします。われわれは、この提案が今日の自由主義
経済の中でも可能なことであり、
米国をはじめ各国にも例があり、かつまた、中央会をはじめ各種
中小企業団体の賛同のもとに、
中小企業を長期にわたって発展させるのはこの大道であると確信し、この際、具体的ではありますが、
総理の答えをいただきたいと思うのであります。
第一には、
中小企業省を設置して、総合的な
中小企業政策を樹立、推進することであり、第二には、
銀行法を改正して、先ほど申したとおり、官民
金融機翼を通ずる
中小企業向け
金融を全体的
立場で把握し、確保することであり、第三には、国、県、市、公団、公庫の発注を
中小企業に確保するために、
米国の実例を参考にして、官公需の一定パーセントを
中小企業に振り向けること、並びに大
企業の
中小企業分野に対する不当な進出を防止するために、
産業分野を定めること、第四には、五人未満の
労働者を雇用する
中小企業にも、社会保険を強制適用するほか、最低賃金、厚生福祉の充実と、
予算の確保をはかり、
労働者が
中小企業に安んじて働く体制をつくることであり、第五には、零細
企業のために、
法人税率を
所得税率のように刻みをもっと多くする、そして
減税をする、事業税を撤廃する、固定
資産税の増税を取りやめる、税務行政の民主化をはかって、その焦点を大
企業のほうへ向けることであります。第六には、紛争処理
機関を設け、公取を
強化し、
中小企業とその団体がみずからの主張を公正かつ自由な競争裏に明らかにできるようにすること、第七には、
基本法に基づく関連法規を直ちにすベて国会に提出すること、第八には、
高度成長経済政策こそが、
中小企業に打撃を与えている真の
原因であることを反省し、
政策を転換して、計画
経済のもとに二軍
構造の解消を目標にして、
中小企業の安定と発展をはかること、以上の諸点の実現こそ輿に
中小企業者の努力とくふうを生かし、期待にこたえる革新的
政策であるのでありますが、心新たにして、不安におののく
中小企業のために、誠意をもってわれわれの提案にこたえられんことを要望したいのであります。(
拍手)
次は
農業問題でございます。
四年前制定されました
農業基本法は、
農業従事者の自由な
意思と創意くふうを尊重しつつ、
農業の近代化と
合理化をはかって、
農業従事者が他の
国民各階層と均衡する健康で文化的な
生活を営むことができるようにすること、それを目標にして発足しました。そして
農業構造改善事業がその中心的施策となっています。しかし、
国民所得に占める
農業所得は逐年低下しています。たとえば、
昭和二十五
年度が二〇%、三十
年度でも一九%でありましたが、三十七
年度は一〇%ではありませんか。これは
政府が昨年十二月発表した
農業及び農家の社会勘定によっても明らかなところであります。しかも、
池田内閣の
高度成長政策は、農村から若い
労働力と中年
労働力を引き出し、
農業に従事していますのは老人と婦人となり、
日本農業は著しく老衰化しているのであります。加えて
貿易の
自由化が促進され、海外の安い農畜産物の
輸入が急速にふえて、三十
年度に二千八百六十億円だったものが、三十七
年度になりますと、三千六百三十六億円の
増加です。
以上指摘した諸問題が重なり合って、全国の
農民は、
農業に未来をつなぐ希望を失い、混迷をしつつあるのであります。高度
経済成長のために
農業にひずみが生じたので積極的にこれもまた革命、革新的措置をやると言明せられた内閣が、国会に提出いたしました明
年度の総
予算に占める農林
予算は七%、食管繰り入れを引きますとわずか七%で、これでは戦後最低の農林
予算ではありませんか。この
予算からは、停滞し混迷していく
日本農業を未来のあるものに発展させることは期待できないと私は信ずるのであります。
日本社会党は、さきに
農業基本法を国会に提案し、さらに最近
農業憲章を発表し、農政の方向を
貿易の
自由化から農畜産物を除き、思い切った国土の利用、生産
構造の改善、価格の補償を行ない、
農民を人間として尊重し、そのために
資本と物資を十分に供給することを訴えてまいりましたが、われわれの提案を含めて、
池田総理に、この際、今日までの農政の基調を真に
農民の人権を尊重する
立場に置きかえて農政の転換をすべきであると思うが、
基本的なお考えを承りたいのであります。
農林大臣には具体的に四つの
質問をします。
第一に、食糧その他の
生活資源を安定した価格で十分に供給することは、
日本経済と国の独立の土台でありますが、その主要食糧を他国にたよるやり方は、国の
基本を誤るものと私は考えます。昨年十一月二十九日の
経済審議会農林漁業小委員会の報告によりますと、いま
池田内閣の進めています農産物の
貿易自由化が完全に実施されれば、食糧自給度は三十六年には八四%であったのが七二−七八%に低下するといっています。その結果、農産物生産額が二千百億ないし四千七百億も少なくなれば、
農民の
生活に及ぼす打撃はきわめて大きいのみならず、ひいては農産物の
輸入増加によって、
国際収支の
赤字に一そうの拍車をかけるでありましょう。社会党は、米麦とあわせて牛乳、果実、食肉、蔬菜などの
消費をふやし、
国民に西欧水準のカロリーと栄養を保障するために、国内産農産物の需要と供給の長期計画を立て、農協を通じて生産と出荷の計画化を行ないたいと考えています。そのためには、重要農畜産物を
貿易自由化から除外して保護していかなければなりません。農林大臣は、
自由化から重要農畜産物を除外して、最大限食糧自給体制を確立する意志があるかどうか、この際、明らかに
所信を承りたいと存じます。(
拍手)
第二には、
政府は
農業の
構造改善事業を実施して、二町五反の自立農家をつくることを目標にしています。この
農業構造改善は、全国どこに行きましても、
農民の不平、不満に満ち満ちています。
政府が思ったように進んでないことは、すでに御存じのとおりでありましょう。かつて
池田総理の宏池会が鳴りもの入りで指定し、全国的に農村三家として宣伝されました成田市豊住地区の
構造改善地区が、昨年十二月、四十五町歩を残して
農民から返上されましたように、まことにこれは深刻な問題であります。要するに、それは価格の補償のない農畜産物に膨大な借り入れ金をして生産をしてみましても、責任の所在が明らかでないのでありますから、肝心の償還計画が成り立たないのであります。社会党では、真の
構造改善を進めるためには、積極的に
農業共同化を考え、
基盤整備を全額国庫の補助で融資額をふやし、金利は三分五厘以下、償還は五年据え置き、三十五年返済、そして国の責任で農機具センターをつくり、農産物の価格の補償をすることがなければならないと考えています。農林大臣は、現在の
農業構造改善事業を再検討して、
農民の自立性を尊重しつつ、国の責任を明らかにして、
農民が安心して取り組めるように抜本的に手直しをすべきだと思うが、いかがでありますか。(
拍手)
第三に、
政府はいわゆる選択的
拡大と称して、これからの
農業は酪農、畜産、果樹だとして奨励しています。最近の飼料の値上げを行なう一方、アメリカの脱脂粉乳を八万五千トン
輸入、乳価が二回にわたり値下げ、これは全国の酪
農民の激しい怒りを呼び起こしています。バナナ、干しブドウの
輸入は果樹農家の不安の
対象です。国の責任で生産を奨励しながら、
輸入で生産農家に不
利益を与えて平然としているということは、無責任もはなはだしいといわなければなりません。(
拍手)
政府はこれらの諸問題を放置しておく気であるかどうか、農林大臣にお伺いしたいのであります。
第四、
政府は
農業に対し革命的措置をとるといって、今度新たに補助金を整理し、融資に
重点を置く道を開きました。しかし、借り入れのための有力な担保物件、主として農地を持たない零細農家には、この制度
資金は借りられないのではありませんか。したがって、
政府のこの融資対策は零細農すなわち貧農はほうりっぱなし、しょせん切り捨てに通ずるではありませんか。
政府は零細農に対する対策を放棄しているのではないか、零細農に対する
所信を明らかにしてもらいたいのであります。
最後は、労働問題であります。
労働者もまたことしは暗い一年だと思っています。
産業の合併、
企業の倒産、
物価の値上がり、米軍の一部撤退からの首切り、
産業事故の続出など、働く人々は、
生活と職業の不安から生命に至るまで、
経済政策のあおりを受けるであろうことを感じ、職場や家庭に根強い焦燥感が渦巻いています。
物価を上げたのは
労働者ではありません。
企業の倒産を
中小企業の責任に帰すべきでもありません。事故の続出は
合理化にきゅうきゅうとして人間を大切にしないことに根本
原因があります。
労働者とその組織が、これらの不安を
打開するために、団結して戦うことは、法に許されたことであり、むしろ、法以前の自衛措置とも言い得るでありましょう。今日の状態が続く限り、ことしの春闘は、総評、同盟
会議、新産別、中立単産を含め、なみなみならぬ事態に立ち至るであろうと予想されるに至っておるのであります。
総理に伺いたいのであります。あなたは、
労働者には革新的
政策というおことばを使いません。それは
労働者にはしわ寄せがいかないとお考えでありますか。それとも、しわ寄せがいくけれ
ども、自力で
打開しろとおっしゃっているのでありましょうか。あるいはまた、しわ寄せがいってもしかたがないとお考えなのでありますか。自由民主党の大会はいわゆる労働憲章案をたな上げにされました。私は、形ばかりの進歩性すら許さないこの結果にその本質をあらためて認識するのでありますが、労働大臣もまた昨年秋の日経連の大会で、不当な賃金アップを押えていく対策が必要だと述べ、暮れになると賃金
政策についての
見解を発表され、間接的な言い方ではありますけれ
ども、明らかに賃金の上昇を押えるべきだと発言をされたと私は考えます。今日、
池田内閣のとりつつある
政策は、アメリカの
ドル防衛政策には
協力する、国内においては賃金の上昇を押え、安い商品を維持し、国際競争力をつけて、海外
輸出を
強化するという昔ながらのソシアル・ダンピングの
原則と少しも違わないと私は考えるのであります。(
拍手)もし、そうでないとおっしゃるなら、また、生産性が、あるいは
経済力がヨーロッパ並みだとおっしゃるなら、賃金だけがヨーロッパの半分だと主張する
労働者の声に、この際、真剣に耳を傾けるべきではありませんか。(
拍手)
物価の値上がりに悩む
労働者、首切りの不安におののく家族のために、
日本経済の発展を誇示される
総理から、以上の点について、労働
政策の
基本的な考えをこの際承りたいのであります。
私は、次に、社会の底辺に呻吟する膨大な低
所得者のために、
総理と各閣僚の注意を促したいのであります。
昭和三十七年就業
基本調査、統計局のでありますが、年収十八万円未満の雇用
労働者は、何と八百八十六万に達しております。年十八万以下ならば、月の固定収入は約一万二千円以下であります。当時の
生活保護世帯の月支給額が一万二千円くらいですから、実際働いていながら、
生活保護世帯以下の収入であります。その後金額が若干は上がっているとはいえ、
物価も上がっているのですから、いまなお八百万の人々が人間を認めないような賃金で働いているのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
昨年八月、最低賃金審議会は答申を出しまして、現状の最低賃金が
産業別、地域別に不均衡が多く、金額も安く、締結後の改定がないために実効も薄い、業者間協定が多くて、
労働者の意向が反映されない等々の矛盾を認め、現状を改善するとともに、四十一年以降、根本的検討をすると発表いたしましたが、その後の
産業の激動と
物価の
高騰は、それまで放置することを許さない状態にあります。現在三百三十円以下の協定はほぼその五分の三、すなわち月に八千円以下の賃金であります。これではまさに本法は
物価高と求人難の今日、その機能を麻痺している、失っているといっても過言ではありません。
労働大臣に伺いますが、本法の改正をはかるとともに、雇用の現状とこの制度の全き
運営を期するために、すみやかに全国一律の最低賃金制定の作業を始めるべきだと考えますが、あなたの率直な
所見を伺いたいのであります。
次は、ILO条約です。八十七号条約批准のために、
日本の
政治、
日本の労働の各界が費やした時間、努力、経費はことばに尽くし得ないものがあります。しかも、問題はとっくに煮詰まって、まさに判断だけの問題、約束を履行するかどうか、信義だけの問題となっています。しかも、いまや
池田総理の決断と統制力にかかっているといっても過言ではないのであります。(
拍手)
総理にあらためてお伺いします。倉石忠雄という人は、いやしくも自由民主党の
機関であるlLO世話人会の代表ではございませんか。総評の責任者と文書の交換が行なわれ、書記長・幹事長会談が行なわれ、あなたとも連絡があるはずである、この事実について、いつまでもあなたは責任をとらぬつもりでありますか。もし、
総理であり、また総裁であるあなたが責任を持つ人であるならば、直ちに、これに基づく修正案を本国会に提出すべきことは当然なことではありませんか。(
拍手)そうでないならば、
政府・与党が倉石氏を通じて、
労働者と野党第一党の社会党に重大な背信行為をしたことになるではありませんか。一部の与党内の反対者に迷って、先ほ
ども話が出ましたが、
OECD加入を前にして、国際信義を無視して、
労働者を愚弄し、いささかたりとも野党に責任を転嫁するようなことは、断じて許し得ないととであると私は信ずるのであります。(
拍手)本日はあいまいな
答弁をなさるべき段階ではありませんよ。この際、
総理から、八十七号条約と倉石・岩井会談の結果について、イエスかノーか、明白な
答弁を要求したいのであります。また、ILOは近く
日本に調査団を派遣する模様でありますが、
日本政府はこれをすなおに受け入れる用意がございますか、あわせて
見解を伺いたいのであります。
次は、失業と雇用の問題であります。本年は、駐留軍労務者、炭鉱
労働者の離職をはじめ、
産業の激動、幾十万の出かせぎの
増加、求人難、中高年齢層の就職を含め、雇用の問題は実に国の重大な問題して、根本的な検討をしなければなりません。職業紹介の機能は麻痺状態ではないか、地方自治体のなわ張り争いがあるではないか、
中小企業の求人が全く困難かつ複雑ではないか等々問題は山積し、労働行政は深刻かつ激増する雇用問題を
うしろから追いかけてつじつまを合わせているのが現状といわなければならぬのであります。私は、
産業政策が雇用
政策に関係なく行なわれ、完全雇用の
基本政策がなく、
労働者の移動の受け入れ態勢不十分、広域職業紹介は名ばかりで、行政事務は旧態依然たる点を強く指摘いたします。労働大臣から、明
年度における失業見込みとあわせて、以上の点について、確信のある対策を明らかにされるよう求める次第であります。(
拍手)
防衛庁長官と
通産大臣に伺いますが、米軍の戦略変更によって多くの駐留軍労務者が失業の脅威にさらされています。われわれは、過ぐる国会に、駐留軍労務者の雇用安定法案を取り上げ、
労働者に安定した職業への再就職を保障するとともに、この間の雇用と
生活の安定をはかることを提案しておるのでありますが、法律による雇用主である
政府はどうお考えでありますか。今後予想される失業者数とその対策を、基地の縮小による地域
産業対策とともに伺いたいのであります。
最後に、私は、
産業と交通に激増しつつある事故と、労働安全の問題について聞きたいのであります。
一般的に、
合理化や近代化は
産業における災害を減少するものと考えられてまいりました。しかし、今日のそれが生産第一主義であり、もっと端的にいえば利潤第一義でありますがゆえに、災害は技術革新とともに質的な変化と重大災害となってあらわれてまいったのであります。
企業には社会的責任と人命尊重を強く
指導しなければなりませんけれ
ども、
指導に当たる
政府みずからが生産と利潤を第一義とするような
高度成長経済政策の修正を決意することがまず必要なのであります。しかしいま、私は、災害防止の
国民的世論を背景として、端的に次の諸点を主管大臣にただしたいと思います。
運輸大臣、明
年度国鉄
予算中における保安対策費は、
国民的要求にこたえられない
予算と断ぜざるを得ません。あなたはこれで国鉄事故の防止に今後の
政治責任を負うつもりであるか、明言されたいのであります。
労働大臣、今日の基準監督署の機構と人員は、数々の事例を引用するまでもなく、全く機動力がなく基準法のPR
機関にしかすぎないのであります・あなたはこれをもって全国の
企業の安全衛生を法の示すところに行なわしめる確信をお持ちであるか。
厚生大臣、激増する交通事故の中で、現場において適切な手術措置のよろしきを得たならば、三十八
年度、三十七万人に及ぶ死傷者の中で、死亡者の三分の二は救い得たであろうことは識者の一致した
見解であります。あなたはこの点について、すみやかに事故現場における救急体制の整備をなさる考えがあるかどうか。
また当面緊急の問題として、封建的なインターン制度の改革に対する
政府の怠慢を不満として、学生の願書提出ボイコットが発展しておりますが、インターンの身分と最低
生活保障の確立措置を善処されるかどうか。
通産大臣、労働災害対策の一元化と拡充は、三池、国鉄を境として天の声、地の声、人の声になっています。あなたはこの際各国の例にならい、鉱山保安行政を本来の専門家である労働省に移される決意をすべきであると思うがどうか。(
拍手)
以上、私はきわめて簡潔ではありますが、
政治の谷間にあって職場や店やたんぼで働く人々の苦しみと要望を、われわれの主張とともに明らかにいたしました。
総理以下各
関係閣僚は、国会を通じて、働く
国民諸君に誠意ある回答をせられるよう希望いたしまして、
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕