○小坂善太郎君 私は、自由民主党を代表して、
池田内閣総理大臣の
施政方針演説に関し、若干の
質疑を行なわんとするものであります。
池田総理が、組閣以来三年、内外の
情勢に対処して、
わが国の繁栄と民生の安定、国際的地位の向上について、着々治績をあげてこられましたことに対しては敬意を表するものでありますが、このたびの
選挙を契機として、心を新たにして、その重責を全うされんがためには、内外の
情勢に対する現状認識と、いかにこの
事態に対処するかという姿勢の問題があると思うのであります。私はこれらの点について若干の
質問をいたしたいと存じます。
まず、民主政治の確立と国会の正常化についてお伺いしたいと思います。
わが国の政治の進歩を考えまする場合に、政党を中軸とする議会主義の健全な進歩を考え、活力にあふれた民主政治のために、国会の正常化がなされなければならぬことは言うまでもありません。国会の正常化について、
池田内閣は、組閣以来、寛容と忍耐をもってこれに当たってこられたのでありまするが、この寛容と忍耐にも、もとより
一つの原則と
方針がなければならぬと思うのであります。われわれ自由民主党が、常にきびしい自己反省をいたし、
国民のための近代政党として前進せなければならぬことは当然でありまするが、一方、
反対党の社会党の中に根強く巣くっているマルクス主義に対して、これに妥協せず、議会主義に徹した進歩のたてまえから、これを説得する
態度が望ましいと思うのであります。(
拍手)けだし、国の
外交方針、防衛、教育、社会保障、
経済の仕組み全般にわたりまして、社会党がマルクス主義によるところの社会
革命思想を捨てざる限り、議会主義による正常なる国会運営は期待し得ないからであります。(
拍手)しかもなお、百年前にマルクスが資本主義の崩壊理論を述べたのでありまするが、それがことごとく誤りであったことが今日証明されているからであります。(
拍手)すなわち、今日の共産諸国の
経済の停滞、農業の不作、
人民の貧困な生活が、これを正直に証明いたしておるのであります。逆説的に言いますれば、今日、共産主義国は、マルクスがあれほど情熱を込めて非難した十九世紀の資本主義の方法をみずから推し進めているとも言えるのであります。生活水準を押えつけ、労働者から彼らの労働の所産を奪うことによって、労働階級から投下資本を搾取していると言えるのであります。
自由社会と共産社会の勝負は、ベルリンの土俵ですでに完全についております。労働者の天国と称せられる共産主義の国から命がけで西ベルリンへ逃亡する人々が、すでに四百万人をこえているという事実は、百年前のマルクスの理論が完全にくずれ去ったことを証明するものであると思うのであります。(
拍手)人口の四五%を農民層に持ちまするソ連が、食糧が不足して輸入しておるのに対して、人口の八%の農民層を持つ
アメリカにおいて、農産物に余剰を生じておるという事実を私は興味を持ってながめたいと思うのであります。(
拍手)この自由社会の進歩と繁栄の原因は、人間そのものが十九世紀以来絶えず進歩して、社会観念が変わり、資本主義が大幅に修正され、保守政治家の考え方が常に進歩しているからであります。マルクス時代の資本主義は修正され、今日
世界を繁栄せしめておりまするものは混合
経済ともいうべき新しい資本主義であります。フルシチョフ
首相もこのことを認めまして、一九六三年の党大会の
演説で、われわれも生産性の向上ということを考え、利潤を問題にすべきだと言っております。オスロに集まった四十二カ国の社会主義政党は、この新しい資本主義の進歩を認め、混合
経済の長所を認めつつ、社会主義の新しい任務と進路について、共同宣言を発しておるのであります。この
会議でただ
一つの
反対投票をしたのが実に
日本社会党だけであったという事実は、注目に値することと思うのであります。(
拍手)
このように
世界の進歩に逆行しながら、何の革新ぞやと思うのであります。
自民党を頭ごなしに保守反動ときめつけ、民社党を第二保守党などと冷評しながら、総評に言われれば、からだを張って国会に暴力をふるうことをあえてする、この今日の社会党の国会の運営に対して、切々たる信念を吐露し、
世界の大勢を説いて反省を求め、国会正常化に協力を望むことは、過般の総
選挙に際して
自民党に託されたる
国民多数の願いであると思うのでありますが、この点に関しまする総理の御所信を承っておきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、外交問題について御
質問を申し上げたいと思いますが、この際、私の見る今
年度の
国際情勢を申し上げ、総理の感想を承っておきたいと思います。
ケネディ大統領の暗殺は、平和な
世界にとって一大痛恨事であったと思われます。
平和共存と防衛の増強は両立し得る、米ソ間に、それぞれ相手方の力に関する誤算がない限り、
世界は平和であり得るし、共存は可能であるとする
ケネディ大統領の強力なるリーダーシップによって、一昨年のキューバ事件を契機といたしまして平和ムードが流れ出したことは、まことに喜ばしいことでありまするが、平和戦略に関する
ケネディ・ラウンドは、引き続きジョンソン
大統領の手によって行なわれるでありましょう。ソ連は農業問題の抜本的
解決のために、
原子力兵器の生産にかわって化学肥料工業に思い切った投資を行ない、ソ連も大砲よりバターへの
政策に変わりつつあるやに思われます。ジョンソン
大統領が
ケネディ大統領の
方針を受け継いで、
軍事予算の削減を断行するという事実は、フルシチョフ
首相のソ連共産党内における立場を強化し、
緊張緩和という大勢にプラスするものと思われます。そして、
平和共存を模索する米ソ両国の基本
政策は、本年中変わりないと思われます。西側では、イギリスで総
選挙が行なわれまするが、外交的には大きな変化はあるまいと思われます。ドゴールの
フランスは、
アメリカ、イギリスとの間に独自の道を進むでありましょう。しかし、米仏の利害
関係の
対立は基本的なものにならないと思われます。西独は従来よりも一そう柔軟かつ
現実的な
外交方針をとるものと思われます。中ソ紛争も急速な
解決策がなく、依然としてくすぶり続けるでありましょう。中共につきましては、このたびドゴール提案をのんだことで、中共の
態度の柔軟性は見られまするが、共産主義国としての公式論を払拭することは困難と思われます。ベトナムの
情勢も急には好転が望めず、ラオスも安定の道を見出しがたい
情勢にあります。インドネシアの
経済状態は、急に好転しそうにありません。マレーシアの問題の
現実的かつ合理的
解決の曙光が見えてまいりましたことはまことに喜ばしいことでありまするし、この点に関する
池田総理の熱意を深く買いたいと思います。アジアにおいても共産主義が一枚岩の団結の威力を失った今日、従来の東西
関係にかわって、
経済援助を主軸とする南北問題がより一そう比重を重くしていくものと思われます。
このように今年の
世界情勢の達観をいたしてみまするに、平和の希望はほの見えておりまするが、なお流動的であり、
わが国としてはこの
事態に対処して、常に
国民的利益に合致した
外交方針を機動的にとっていかなければならぬと思われるのであります。
社会党は、
日本が中立主義をとることが
世界平和並びに
日本安全への道であるということをいまもって変えておりませんが、中立
政策というものはあっても、中立主義というものはどこにもないのでございます。(
拍手)あるいはある国の圧迫に対しまして、自国の安全を守るために中立
政策あるいは非同盟
政策というものをとる国は存在いたしまするが、外交
政策全体を中立主義に置くものはほかにないのであります。(
拍手)また、
現実の
世界情勢から見ましても、
日本が万が一にも中立と称して東西の力
関係の外に立つときは、東西のバランスはアジアにおいては著しく破れまして、その結果、みずから求めて混乱を導入することとなるのであります。しかもなお、キューバ事件以後の米ソの間の平和ムードによって、共産側において従来目のかたきにしていたNATOを認め、ワルシャワ条約機構との間に不可侵の誓いが話し合われつつあるともいわれておるのであります。NATOと日米
安保条約というものは同種のものであります。したがって、今日この流動する
世界の
情勢下に立って、社会党の日米
安保条約観についても十分に御研究を願いたいと思うのでございまするが、総理のこの点に関する御感想を承っておきたいと思います。
このように、社会党の言う中立主義が非
現実的な幻想であることは、最近の
国際情勢に関していよいよ明らかでありまするが、さて、
フランスと中共との
関係が大きな問題として登場してまいりました。ことに気の早い論者は、だから
日本も中共を承認しなければバスに乗りおくれるということを言うのであります。
日本社会党の議論を聞いておりましても、大体この論旨でありまして、
国連におきまする中共の代表権問題と中共の承認問題とを混同して論じておるようであります。また、中共のみの問題を論じて、台湾における
国民政府の存在を忘れているやに思われるのであります。社会党の言うがごとき
国民政府抹殺論をなすことは、国家的利益を考える外交
政策としてまさに百害あって一利なきものといわなければならぬと思います。(
拍手)
ドゴール大統領の考え方にいたしましても、ここまでは考えておらぬと思われます。
フランスの考え方は、中共と
外交関係を結ぶ、台湾の
国民政府との
関係は従来のままにしておくということであって、二つの
中国論に強く反発しておりました中共が、台湾のことには触れないと伝えられ、
国民政府が今後どう出るかわからぬ
状態といわれております。
中国問題では
フランスとは比べものにならない
歴史的な経緯と利害
関係を持つ
わが国が、あたかも水鳥の羽音に驚くがごとく不用意な論議をなすことは、まさに
日本政治家の国際感覚を疑われてもやむを得ないと思うのであります。(
拍手)
言うまでもなく、今次大戦後に中華民国の蒋介石総統は、暴に報ゆるに徳をもってせよと言われ、この大声明のもとに
日本の将兵を安全に故国に帰してくれたのであります。また、賠償を取らぬと言い、分割統治を
反対されたとも伝えられております。なお、現在の国府は、台湾において一千百万人の人口を有効に支配しており、これだけでも
国連加盟国中、上位に属する国であります。今日の
国民政府が不遇な境地にあるということでこれを軽視したり、あるいはれんびんの情を持ったりすることは、もってのほかでありまするし、いささかでもそのようにとられる言動をなすということは、最も慎むべきことであると思うのであります。(
拍手)
日本は忘恩の徒であってはなりません。
今日の中共、国府の
関係は、第二次
世界大戦とそれに続く冷戦の複雑なる結果生まれた、従来の国際法をもってしては定義しがたい新しい
関係であると思うのであります。この点は非常に重要であって、ただ単に中共を承認しろ、代表権問題をどうするという議論が盛んに行なわれるのでありまするが、私は、この
関係は、いま申し上げたように、従来の国際法をもってして簡単に割り切れる問題ではない、その国の利益を十分に考えて
解決をしなければならぬと思うのでありまして、単純に、単独に、
世界の冷戦とその緩和ということを考えないで
解決できる問題ではない。すなわち、その国の利益に即しつつ
解決していかなければならぬと思うのであります。
国際法上どうであるかと言いますれば、
わが国は
国民政府を承認し、これと
外交関係を持っているのであります。
フランスは
フランスの立場でこの
関係を処理し、
日本は
日本の立場でこの問題を見ていかなければならないのであります。
わが国としては、国府と十分な連絡をとりながら、
国連の場と
世界情勢の推移の中でこの問題を
解決しなければならないと思うのであります。
わが国も
国民政府も、ともに自由主義をもって栄えている国であり、ともに栄えんとする友好国として大目的を同じゅうしているのであります。現在の中共の教条主義的ともいわれる共産主義をいかに防止していくかということが、また方法論において問題であります。民主的な自由主義の国が繁栄していることを、日華協力して示すことも必要でありましょう。自由な政治体制のよさを、事実をもって示すことも必要でありましょう。また、
貿易によって立つ
わが国が、隣接している中共と接触することの必要さも理解を求めねばなりません。
日本の好まない全体主義下にある七億の
中国民衆が、いつまでも今日のような窮乏をもたらす共産主義の体制下でがまんしているかどうかということは、
中国民族がすぐれた素質を持っているだけに、いつかは変化がくるものと信じたいのであります。
わが国と
国民政府は、このような
関係で、いかにすれば中共が平和愛好国として善隣の友好、繁栄を考えるに至るかという方法論について、ともに努力していかなければならないのでありまして、
日本と国府のあつれきはそのまま中共の望むところであります。ビニロン・プラントの問題に見られるように、片方に対しては延べ払い、片方に対しては現金取引というようなことで、感情問題を惹起し、あるいは周鴻慶の問題のごときでも、あれほどやっかいな問題になり、
日本の容共的行き方などと誤解を生みまするに至ったことは、最高政治指導者の接触の不足の問題として、はなはだ残念に思うところであります。このような誤解を与えたことにつきましては、大いに反省の要ありと思うのでありまするが、
政府は、その長期的な
見通しと所信を、説得力のある形で、無用な疑惑を生むような言動を極力避けながら、内外に表明し、国内世論の統一をはかってはいかがと思いまするが、総理大臣の御所見を承っておきたいと思うのであります。(
拍手)
総理は、アジア外交、
近隣外交を強調されており、私はこの点、心から敬意を表するものでありまするが、われわれがアジアの人たちと相互に持つ親近感と気安さ、あるいは説明を要せずして理解し合うこの感情は、大いに大切にしなければならぬと思うのであります。最近におきましては、一時いわれたアジアの孤児論は全く影をひそめ、特に
国連の中におきましてAAの諸国からわれわれは信頼され、重きをなしてまいりましたことは御同慶にたえません。私は、
国連におきましても、
日本ができるだけAA的な考え方で行動いたしまして、AAの人たちの気持ちを
日本の立場で表明することに心がけるのがよいと思います。このことは、ひいては対米、対欧外交に好影響を与えることになると信ずるのであります。従来
国連外交の強化を心がけてきたのでありまするが、今後はこれと並びまして
国連強化の外交が必要と思われるのであります。百十三の
国連加盟国中、AAの国の中で先進国と称される二十七カ国の中にランクされる唯一の国でありまする
わが国が、発足当時から加盟国数が二倍以上になった
国連を強化し、アジア・アフリカの人たちとともにアジア・アフリカの繁栄を求むる声を
世界の世論に強く反映せしむる努力をいたすべきだと思うのでありまするが、総理大臣の御所見を承っておきたいと思います。
日韓問題の
解決につきましては、総理は特に強い意向を表明されました。日韓交渉に
反対する社会党の諸君は、主としてこれを東西問題と見て、北鮮の側に立って
反対されるようでありまするが、私は
経済援助を主軸とする南北問題により重点を置いて見たいと思うのであります。ようやく独立した朝鮮が二分され、しかも、
韓国において指導者の懸命なる努力にもかかわらず、
経済、民生安定のために幾多の困難なる問題を内蔵しておりまするとき、これを単に遠くの
アメリカまかせでなく、一衣帯水の
わが国が、肉親のような気持ちで、まじめに、同じアジアの国の発展の問題として協力することは当然と思いまするが、総理の熱意のほどを承りたいと思います。
沖縄につきましては、われわれといたしましては、
施政権の復帰に至るまで最大限に
沖縄同胞の
経済、民生の向上開発に協力していかなければならぬと思うのでありまするが、この
予算におきまして十分な考慮がなされていると考えられまするか、
首相のお考えを承っておきたいのであります。なお、日米協議会、日米琉技術委員会が、字句などの問題でいまだに発足しないのは遺憾であります。
関係省を督促して至急に開かれるように御措置を願いたいと思います。また、マイクロ回線の問題も、いまだに料金が決定しないままに使用できないでおりまするので、この点も早急に
解決をお願いしたいと思います。
われわれの住むアジアにおきましては、いまだに低い生活と疾病が多く存在するのであります。この問題を自分のこととして
解決する気組みをわれわれは持たなければなりません。本
年度の
予算におきまして、平和部隊の構想が芽ばえてまいりましたが、青年技術者の純真な手によって、農業や中小企業、また医療機関の発達が大いに促進されることを期待いたします。なお、これらの国の一次産品の買い付けにつきまして、メーズとかマイロ、あるいは綿、砂糖というようなものの開発、輸入ということにつきまして、もう少しくふうの必要があろうと思われます。ことに、今年三月ジュネーブにおいて開かれまする
国連貿易開発
会議の問題は重要であります。そこで、ここでは主として先進国とAAとの間に一次産品買い付けが問題になると思われまするが、AAであると同時に先進国でありまする
わが国としては、いかなる
態度で臨まんとするか、総理の構想を承っておきたいと思います。
日本が伸びてまいりまするために必要な輸出増進、
経済外交の必要性は、いかに強調しても強調し過ぎることはないと思います。幸いにしてガット三十五条援用国は次々にこれを撤廃したのでありまするから、今後は、
わが国自体の輸出体制を整備していかなければなりません。外貨不足の声が聞かれるたびに、輸出の必要性があらためて出てくるようなことではいけないのでありまして、
国民全体が常に、輸出せんかなの気持ちを持つようにしなければならぬと存じます。しかも、
貿易外収支の赤字がふえており、海運国
日本といたしまして、自国船の積み取り率が非常に低下しているのは、この点に関する限り
政策の貧困といわれてもやむを得ないと思うのであります。海運
政策、観光
政策等、
貿易外収支の
改善策に対して
政府の構想を承っておきたいと思います。
なお、
国際収支を考えまする場合、それが資本収支によって黒字となっておる構造上の問題に関しましては、いつかこれを打開していかなければならぬと思います。資本収支は、状況によりまして、資本の流出または利子支払いの
増加等によって、急激に悪化することも考えられるのでありまするが、長期的な貝通しに立った
国際収支の
改善策があれば承っておきたいと存じます。
次に、国内問題に入りまするが、まず当面の
経済に関する諸問題、特に
物価と賃金の問題についてお尋ねいたします。
現下の
わが国経済が、開放体制への移行という国際的な
課題と、消費者
物価の
上昇、
国際収支の不安というひずみをかかえて、きびしい試練に直面していることは、何人といえども否定できない事実であると思います。これは
わが国経済が先進国型の構造に
成長発展する過程において、必然的に通過しなければならない
一つの道程であることは、総理の言われるとおりであると思います。しかし、この試練を巧みに、しかも、筋を誤らざるように克服することが、今後の恒久的発展の道を開く前提でなければなりません。
私が特に強調したいことは、
物価と賃金の
関係であります。この問題が、今後の
わが国の
物価の安定、輸出の増進、ひいては
国民生活の向上の成否を決する
一つのかぎであると言っても過言ではないと思うのであります。(
拍手)私はもとより、
わが国における賃金格差の是正の必要や生産性の向上による賃金水準の引き上げの必要を強く主張するものでありますが、しかしながら、生産性の向上は否定する、賃金は一律に二五%以上引き上げるというような、
国民の常識を無視した賃上げが通るならば、賃金と
物価の悪循環を招き、インフレに発展することは火を見るよりも明らかであると思うのであります。(
拍手)大いに生産性を高め、賃金もその範囲で適度に向上させるとともに、製品価格を引き下げて、消費者に還元するということが、自由
経済における賃金決定の大原則でなければなりません。(
拍手)現在の
わが国における組織労働者の賃金決定の過程を見まするに、
経済事情や生産性に
関係なく、スケジュール闘争によって毎年定期的に大幅な賃上げを続けており、それが惰性となっておるのが実情でありまして、かくては賃金格差の是正も困難となります。しかも、賃上げ闘争の中心に立つものは民間企業の労働者ではなくて、多くの場合に、
政府関係機関職員あるいは公務員の団体であるのであります。(
拍手)私は、公務員や公共企業体職員の給与
改善の必要性を大いに感ずるものでありますが、これが
わが国経済に及ぼす影響の重大性にかんがみて、真剣に検討すべき問題であるというのであります。私は、賃金
政策におきまして、業種別、規模別あるいは年齢別、性別、そうしたものにつきまして、
政府がこの統計を縦横に駆使して、賃金のあり方について長期的な
見通しを立てる必要があると思いまするが、この点に対しまして御所見を承っておきたいと思います。
いま
一つ、労働問題について承りたいことは、労働力の需給
関係についてであります。最近の消費者
物価の
上昇の
一つの要因は、生産性の低い部門、たとえば農業、中小企業、サービス業における労働力の不足、特に若年労働者の求人難による賃金の急
上昇にあるといわれております。したがって、今後労働生産性の向上とともに労働力の流動化と、中高年齢層の活用ということが非常に重要なことであると思われます。この点について一そうのくふうを願いたいと存じまするが、労働大臣の御所見を承っておきたいと存じます。
次の
質問は、
財政に関する問題であります。
昭和三十九
年度予算と
財政投融資計画は、与党たる自由民主党の公約を忠実に盛り込んで、しかも、
健全財政の
基調を堅持し、非常に内容の充実した
予算であることは確かであります。(
拍手)しかし、一部の論者はいろいろな角度から、若干の批判を加えておりまするので、私は三十九
年度予算に関連して、二、三の
質問をいたしたいと思います。
その
一つは、
減税についてであります。三十九
年度は国税、地方税を通じまして、平
年度計算で二千百億円以上の画期的な大幅
減税を断行することといたしております。このような大幅
減税にもかかわらず、一方において、消費者
物価の
上昇等から見て、所得税の
減税がなお不足であるとか、あるいは一方においては、開放体制への移行に対処する企業課税の
減税とか、あるいは合理化に対する配慮が不足しておるという批判もあるのであります。また、毎年の
減税にもかかわらず、
国民所得に対する税負担の率が高まっているではないかという批判も、一部の論者からはあるのであります。
そこで、私は、これらの批判にこたえるために、むしろ今後の税制
改正については、一定の
見通しと
方針のもとに、体系的に長期的に実行する必要があるのではないかということを思うのであります。二千億円以上の大幅
減税を実行いたしましても、部分的には不平不満はあるわけであります。しかし、それが一定の計画と目標を立てて、その一部の実行として理解されるならば、
国民の大多数は納得すると思うのであります。三十九
年度の
予算中にほ、このような意味におきましての長期計画の不足ということが、若干感ぜられるような気がいたしまするので、どうかこの三十九
年度中に税制
調査会におきまして、こうした問題に本格的にお取り組み願ったらいかがかと思っておるのでありまするが、御所見を承っておきたいと思います。
なお、
減税に関連して承らなければならないのは、綱紀粛正と行政機構の問題であります。
国民に能率よく奉仕する、いわゆるチープ・ガバメントの考え方を中央、地方を通じて、行政の能率化に反映させなければならぬと思います。臨時行政
調査会がこの意味でできておるわけでありまするが、これは一体いつごろ答申を出されようと考えておられるのか、また、これが答申をした場合には、どう扱おうとしておるのか、総理並びに山村行管長官の御意見を承りたい。(
拍手)
第二は、
財政の
弾力性の問題であります。三十九
年度一般会計
予算が大型となり、従来以上に歳入を一ぱいに見積もっているために、大きな災害等があった場合には、
補正予算の
財源に困るのではないかというようなお話が、いま河野君からございました。あるいはまた、後
年度の歳出
増加を
義務づけるような項目が多いので、将来の
財政の
弾力性を失うのではないかというような議論もあるのであります。これらをさらに突き詰めてまいりますと、将来公債
発行という不健全な
財政に追い込まれるのではないかというような心配もあるようであります。そこで私は二つの点について御
質問をいたしたいと思います。
まず私は、
政府の各省におきまして、道路や港湾やあるいは住宅、社会保障あるいはまた新産業都市といったような長期計画が次々につくられておるのでありますが、これに見合う長期の歳入見積もりというのがあるかということなのであります。もちろん所得倍増計画があるわけでありまするが、いま申し上げましたような
見地からいたしまして、各省庁の原局において、そうした長期計画をつくられます場合に、やはり歳入に見合った統一的な考え方の調整が必要であるのではないかということであります。この点につきまして
政府の御所信を承っておきたいと思います。
その第二は、公債
発行に対する考え方であります。一般会計の
赤字公債を
発行すべきでないということは、これは論をまたないところでありますが、道路のような社会資本の建設につきましては、その一部の
財源を公債に求めてもよいのではないかという議論もあるわけであります。有力にあるわけであります。私は、公債というものは一たび
発行いたしますときは、その限度を押えることは非常に困難になる。その意味で非常に慎重にしなければならないと思っております。かつて高橋是清さんが大蔵大臣のときに、満州国が生命線なのか、あるいは三億の公債
発行限度が生命線なのかということで、非常にがんばったのでありますが、とうとう押し切られてしまったことを思いますときに、やはりこの問題については非常に重要な、慎重な考慮が望ましいと思いますが、総理大臣、大蔵大臣の御意見を承っておきたいと思います。
次に承りたいことは、社会保障についてであります。
社会保障の充実が福祉国家建設のための大きな柱であることはいまさら言うまでもありません。三十九
年度予算におきましても、これらに大きな重点が置かれておりますることはまことに御同慶にたえません。私は、今後の社会保障の
課題は、現行の制度の内容をきめこまかく充実してまいりますると同時に、複雑にして非常なアンバランスになっております現行の仕組みを体系的に再編整備することにあると考えます。また、これは非常にむずかしいことでありますが、同時に非常に重要なことだと思います。この意味におきまして、三十九
年度予算に社会保障総合研究機関の新設が認められましたことは意義のあることと思うのであります。しかしながら、私はこうした研究機関の研究にまつまでもなく、
政府としては、ことに厚生省としては、総合的なこれらの社会保障の整備ということについて
一つの
見解を持たるべきであり、また、持っておられるのではないかと思うのであります。三十九
年度予算にも、児童手当の創設の準備とか、あるいは重度身体障害者扶養手当制度の創設とか、いろいろ新しい構想がつくられておるのでありまするが、今後の社会保障につきまして、各種保障や年金をばらばらなものでなく計画的に整備することを考えておられるかどうか、この点厚生大臣にお伺いしておきたいと思います。
次に、教育についてお伺いいたしておきたいと思います。
それは高校生の急増に対応する大学の拡充についてであります。特に二年後には非常に急増した高校の卒業生が一挙に大学の狭き門をくぐるわけであります。これに対処して大学の拡充をはかることは国として当然なことであると思います。この場合、国立、公立大学の拡充をはかることはもとよりでありますが、この機会に私学の思い切った振興をはかることも重要であると信ずるのであります。(
拍手)教育が公共的な事業であるとするならば、国はなお一そう積極的に私学を
援助すべきでありますし、大学志望者の急増する機会に抜本的な私学振興対策を確立すべきであると思いまするが、この点に対する文部大臣のお考えを承っておきたいと思います。なおまた、農業近代化の大勢に応じて、農業高等専門学校を新設すべきであると思います。この点についても御所信を承っておきたいと思います。なお一点、僻地教育の振興策についてもこの機会に所信を明らかにされたいと思うのであります。
次に、農業
政策につきまして若干お尋ねをいたします。
総理は、
施政方針演説におきまして、農業の思い切った繁栄策を強調されましたが、農業近代化の中心的な施策は構造
改善と思うのでありまするが、それには相当多額の資金を要し、その成否を決するのは国家及び地方公共団体の助成措置と長期低利資金の供給であります。三十九
年度予算におきましては、それらの施策が大幅な前進を見たことは喜びにたえませんが、ほんとうに革新的な近代化を進めるためには、なお一そう積極的な配慮が必要と思うのであります。そのためには、私は、国の資金のほかに、農協系統の資金を出そう効果的に農村に還元すべきであると主張したいのであります。(
拍手)農家から集めた農協系統の資金は、一兆数千億円に達しながら、農家への貸し付け金はその五割ないし六割にすぎないのであります。農林中金に預けられました資金の運用を見ましても、多いときには千数百億円の資金がコールに回されておる実情であります。私は、このような現状は、決して好ましいことではないと思います。農協系統の資金が農業振興に活用されない
一つの理由は、資金コストが高いからであります。中間
段階が複雑過ぎて経費がかかりまするために、そのため末端貸し出し金利が年一割といった高いものになり、農業生産にはとうてい利用できないものになっておるからであります。私は、この際、農協系統金融のあり方を再検討し、できるだけ低利で農民に資金を還元するように導く二とが、農業の近代化を促進する
一つの道であると信ずるのでありまするが、農林大臣の御所見を承っておきます。(
拍手)
次に、いま一点農林大臣にお伺いしたい点は、農業生産の選択的
拡大についてであります。今後の
わが国の農業の進むべき方向として、需要の伸びる農畜産物の増産を積極的に助長することが、農業基本法の
一つの眼目となっていることは言うまでもないところであります。その代表的なものは、畜産と果樹園芸であります。三十九
年度予算におきましても、これらの生産の助長と価格の安定には相当の配慮が払われておりまするが、全体的に見てきわめて低い比重を占めておるにすぎません。特に果樹の安定については、今後抜本的な施策を講じなければ、とうてい所期のような振興は期待できないと思うのであります。現在、バナナの
自由化の影響もあって、一部の果樹栽培農家は、
政府の施策に対してはなはだ失望しておるといっても偽らざることであります。私は、果樹につきましても、価格安定のための特別機構を整備するとか、需要の積極的開拓をはかるなど、効果的な対策の必要を痛感するものでございます。農林大臣のこの点に関する所信を承っておきたいと思います。
この際さらにお伺いいたしたいことは、多年問題点となっておりまする農地被買収者の問題についてであります。
戦後、
わが国が今日の繁栄を築いたことにつきまして、農地改革の際、快く祖先伝来の農地を譲渡した旧地主各位の協力のあったことを忘れてはなりません。農地被買収者に対しまして、国家として何らかの
報償措置を講ずることとしたことは、当然のことと思います。すでに
政府は、三十八
年度中に実態調査を実施中であり、近く完了するように承っておりまするが、私は、すみやかに必要な立法措置を講じ、この多年の問題に終止符を打つべきであると信ずるのであります。
政府は、この問題をどのように処刑する決意であるか、総理の御所信を明らかにされたいと思います。
次は、中小企業対策であります。
これも、三十九
年度は飛躍的な配慮が払われており、
政府の強い意欲は十分にうかがわれるのでありますが、最近の
経済情勢、特に金融の引き締めと開放
経済への移行等の事情を考えますに、中小企業が苦境に立つことも、一面考えられるのであります。すでに昨年十二月におきまする手形の不渡りは、一昨年の十二月に比べまして、二割方
増加しておるともいわれます。また、最近一部の地方では、中堅企業の倒産も伝えられております。私は、一部の論者の言うような三月危機などの心配はないと確信いたしますが、今後、細心の注意を払って、適時適切な対策を実行しないと、
経済調整のしわ寄せが中小企業に集中されることを憂えるのであります。このためには、
政府資金を動員して、
政府関係の金融機関の融資量を
増加すること、また市中金融についても、中小企業につきまして特別の配慮を払うように要請すること等が必要と思われまするが、私が特に要望いたしたいことは、中小企業者の手形割引に対する保証保険の思い切った拡充と、零細業者に対する無担保金融の実施であります。現存でも中小企業者の受け取り手形が高い金利を払って町の金融業者等によって割り引かれており、これが中小企業者の経費を大きく圧迫している例が多いのであります。今後金融事情が引き締まるにつれまして、中小企業者の手形割引が一そう困難になる場合も予想されるのであります。このような実情に対処して、中小企業者の手形割引に対する保証保険の制度を確立し、これを積極的に活用することが適切なる措置であると考えるのであります。
また、零細業者に対して
国民金融公庫から一定の限度において無担保金融の道を開くことも、実情に即したあたたかい施策であると存ずるのであります。三十九
年度予算におきまして、これらの点について若干の配慮がなされておりまするが、今後実情に応じてはこれを大幅に拡充することが必要と考えられます。通産大臣及び大蔵大臣の御所見を承っておきます。
さて、今日
わが国の高度
成長、
経済繁栄は
世界の驚異とされておるのでありますが、開放
経済への突入はまさに明治維新以来の第二の開国ともいうべき大事業でありまして、これに対しては並みたいていの覚悟ではおぼつかないのであります。一方、いわゆる安定ムードの中で
国民の心の秩序がゆがめられ、
凶悪犯罪や青少年の非行が社会に暗い影を投げております。悲惨な交通事故や人災といわれる災害が日ごとに報ぜられております。
経済成長の中にはなやかな消費文明がつくられつつある反面、不健康な生活が芽ばえつつあります。われわれの生活をささえるもの、国を繁栄させるものは物質のみではありません。心もまた大きな要素であります。
国民として喜びをともにするとともに、悲しみを分かち合う社会連帯の観念の醸成と、新時代にふさわしい
国民道義の確立こそが今日ほど必要なときはなく、また、これこそが自由民主党
政府に課せられたる重大なる使命であると申しても過言ではないと思うのであります。(
拍手)よい個人がよい社会をつくる。よい社会がよい個人をつくる。個人と社会の相互連帯こそがわれわれの保守哲学でなければならぬと思うのであります。(
拍手)われわれは社会機構のみを重視して、個人の尊厳を否定する社会主義者と、この点では明確な一線を画さなければならぬと思うのであります。(
拍手)
池田首相の言う人つくりの根本義もまたここにあると存ずるのでありますが、総理の御所信を承っておきます。
われわれは敗戦の廃墟の中から立ち上がって十八年、りっぱな今日の
日本を築き上げてきた
日本国民の優秀なる素質を信じたいのであります。清潔な政治を実行し、綱紀を粛正し、物心ともにバランスのとれた社会を築き、中小小業、農業の繁栄に心を砕き、
世界の中に対等に太刀打ちできる
日本の企業をつくらなければなりません。完全雇用と福祉国家の建設というビジョンを明確に描きながら進まねばなりません。
このたびの
選挙においては、
昭和年代に生をうけた同僚諸君が多数当選されてまいったのでありますが、しかも、いずれもがことごとく自由民主党に所属されることは、私の心を明るくするものであります。(
拍手)青少年の心をつかみ、婦人の気持ちをくんで、
世界の中に尊重されるあすの
日本人をつくり上げることは、われわれのつとめであると思うのであります。いまこそ自由民主党は、
政府は、大いなる前進をなすべきときであると思います。総理の一段の精進を期待してやまない次第でありますが、御所見あらば承って、私の
質問を終わります。(
拍手)