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1964-06-16 第46回国会 衆議院 法務委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十六日(火曜日)    午前十一時開議  出席委員    委員長代理 理事 三田村武夫君    理事 小島 徹三君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       上村千一郎君    大竹 太郎君       坂村 吉正君    四宮 久吉君       篠田 弘作君    田村 良平君       中川 一郎君    森下 元晴君       神近 市子君    松井 政吉君       竹谷源太郎君    志賀 義雄君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  平賀 健太君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      中村 治朗君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月十二日  委員神近市子辞任につき、その補欠として阪  上安太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎辞任につき、その補欠として  神近市子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び裁判所司法行政に関する件(執  行吏及び競売制度問題)      ————◇—————
  2. 三田村武夫

    三田委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が所用のため出席できませんので、その指名により私が委員長職務を行ないます。  法務行政検察行政及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 きょうの政府委員あるいは説明員はどなたであるかまずそれを……。
  4. 三田村武夫

    三田委員長代理 最高裁判所中村民事局長が出席しております。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 ことしの四月十日の新聞によりますと、一昨年春、警視庁が摘発した差し押え物件の競売をめぐる東京地裁執行吏合同役場不正事件で、贈収賄談合罪などに問われた東京都中野区大和町一二四、長田憲麿ら同地裁執行吏六人東京都新宿区荒木町一五、高橋仙吉ら競売ブローカー十一人の計十七被告に対する判決公判は九日午後、東京地裁刑事一部で開かれ、竜岡裁判長は刑の言い渡しをいたした。こういうことが書いてありますが、この判決はその後控訴、上告等があったのかどうか、また確定されたのかどうか。そしてもし確定したものであるならば、この事件の概要を御説明願いたい。
  6. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 この事件につきましては、被告人のほうから控訴して現在東京高等裁判所係属中でございます。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、まだ確定はしておらない、こう承知していいのですね。
  8. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 最近における執行吏犯罪について、法務省刑事局昭和三十九年四月七日に調査したところによると、大阪千葉熊本東京奈良、大津、熊本、徳島、長崎等において執行吏犯罪裁判所係属中もしくは最近に判決が確定された。こういうのでありますが、その中に、昭和三十七年第四号、東京地検、森山某外十六名、収賄、これが一審に係属中とある。この事件が、いま私が読んだ四月十日の新聞に掲載された十七被告全員有罪判決があった、この事件であるかどうか。
  10. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 いまの事件係属中でございますから内容には立ち入りませんが、昭和三十六年二号の千葉地検事件大島某外五名、虚偽公文書作成行使、これに対しては三十七年四月九日千葉地方裁判所懲役一年、二年の執行猶予として確定しておる。また熊本地検の三十六年三号の事件中島某公務員職権乱用、業務上横領、恐喝、収賄、これに対してはやはり三十六年四月二十日熊本地裁において懲役八月、二年の執行猶予、これは確定しておる。こういうふうにして確定した事件が、いま読み上げた十件ばかりのうちに四つ、五つあるのですが、そのうち、三十六年の熊本事件、それから三十七年の事件奈良地検伊藤某外四名、これは収賄ですが、この事件、同じく三十七の熊本の番号は七で吉富某、これはいずれも確定しておるのですが、このいずれかもし材料があれば簡単に御説明願いたいと思います。
  12. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 昭和三十六年の熊本地裁被告人中島平八郎事件は、有体動産競売期日の延期に関連いたしまして、債務者から競売人一名に旅費、日当、宿泊料として約一万円を支払わせて職権を乱用したという事実、それからもう一つ有体動産競落人二名から安い値段で競落する機会を与えられた謝礼として供与するものであると知りながら金四万円を受領して収賄した、こういう事実でございます。それから同じく昭和三十六年の千葉地方裁判所における被告人大島三男事件は、有体動産執行にあたって競売調書虚偽の事実を記載してこれを行使したというもの、それから前と同様三回にわたって合計約二万円の収賄の事実であります。それから三十七年の奈良地裁伊藤雅男事件は、やはり競売事件に関連いたしまして合計四万円の贈与を受けたという事実でございます。同じく昭和三十七年の奈良地裁における被告人寺口正平事件は、不動産競売に際しまして金五千円の贈与を受けたという事実でございます。昭和三十七年の熊本地裁御船支部被告人吉富事件は、やはり競売調書に、仮装競売実施しまして虚偽内容調書記載をやった、そしてこれを行使したという事実、それから不動産競売実施競売人らに談合、教唆し、かつ競売人から謝礼として現金二千円を収受したという事実、そのほか不動産競売事件に際して同じような謝礼の趣旨で五千円ほどを収受した、こういう事実でございます。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 これらはいずれも公務員として悪質な、虚偽公文書作成もしくは行使あるいは債務者債権者等から収賄する、競落人から金をもらうというようなものでありますが、これは刑の量定についてとやかく申すのは遠慮したいところでありますが、いまここにあります、またいま御説明を願った判決はいずれも執行猶予なんですね。普通の公務員のこうした犯罪ならば、なかなか執行猶予もつかないのが常ではないか。いずれもいわゆる初犯であること、あるいは何らかの情状が別にある、こういうことかと思うのでありますが、もし情状があるとすればどういう情状があったものか民事局長ひとつ御承知ならそれをお話しいただきたいと思うであります。
  14. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 刑の量定に関することでございますので、具体的事件において裁判所がなぜそういう執行猶予をしたかということについての根拠というものは私どものほうにはわかっておりませんが、一般的に考えられることと申しますと、まず第一に比較的収賄金額が少ないということ、それからもう一つ考えられますことは、この収賄金額が低いことに関連いたしますが、競売に関連しておそらくいろいろな名目でそういう金銭の授受がなされておるのだろうと思うわけでありますが、それがある意味では普通社交的な儀礼として収受される金銭の額とあまり大して違いがないというようなところから、執行吏のほうでそれを収受するのにさほど抵抗を感じないというような事情もあったという、競売特有事情も関連しているのかと私は推察しておるわけでございます。具体的な事件について、それ以上どういう根拠に立ってそういう執行猶予判決をしたかということは、私としては御説明申し上げることができない次第でございます。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 刑の量定についてとやかく私も申し上げたのじゃない。しかしながら、一般的な理由としていま説明なり御意見の開陳がありましたが、これは私たちから見ると、執行吏というものは裁判所に所属しておるいわば身内のものだというような同情もあるのじゃないか。もう一つは、待遇が非常に悪い、非常に気の毒だ、社交的にいつもつき合っている競落人等からちょっと儀礼的にもらった、こういうふうな感じもする。要するに執行吏が非常に所得が少なくて生活にも困るというような同情が、ことに身内でもありますし、裁判官の主観の中に入ってきやしないかこういう点をいかがお考えでございますか。
  16. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 私の考えといたしましては、執行吏裁判所の職員であるというようなことが刑の量定なりあるいは執行猶予の面に反映しているとは考えておりませんが、ただ現在の競売実情というようなものも、事件の審理を通じてだんだん事情がわかってまいりますと、どうも執行吏に対して厳罰を科し切れないという面があるいは出てくるのじゃないかということを憶測するわけでございます。  それからもう一つ、給与が非常に低いために執行吏がそういう収賄のようなことをやるのもやむを得ないのではないかという考え裁判官にあるのではないかというお尋ねでございますが、私はその点は、それほどそういう刑の量定についての深いしんしゃく事由にはなっておらないように推測しておるわけでございます。と申しますのは、これらの刑事事件を起こしました執行吏経済状況を逐一調べたわけではございませんが、御承知のように執行吏収入というものは各地方地方におきましてかなり区々でございます。これらの収賄事件を起こした執行吏が、特にその中で低い収入しかあげておらないということはないように私は拝見しているわけでございます。そういうような事情からいたしまして、特にその点が裁判官同情を買って、つまり生活上の理由に基づく収賄であるというような考えから、刑の量定にあたってそのようなしんしゃくをしたということはまあないのではないかと、これは全くの推測でございますが、そのように考えておる次第でございます。
  17. 竹谷源太郎

    竹谷委員 御答弁はそのように執行吏生活にも困るので同情が入ってくるというようなことはないという御推測、まあ最高裁判所としてはごもっともな答弁でありますが、これを見ると二種類あるのじゃないか。東京千葉大阪や、こういうところでは相当執行吏収入が高いのであるから、それにもかかわらずそういう現金を収受するということは非常に悪質である。非常にいなかにでも行って、月に一万円も収入がない——もっとも一万四千円か保障は受けますけれども、そういう低いところではどうも同情すべきものがあるのじゃないかと思いますから、私は一律に生活上の苦しさに同情してということではないと思う。そうだとすれば、収入が相当あるのにこういう悪いことをしているというのは、非常に公務員としてあるまじき行為ではないかと考える。  今から四、五年前だったと思いますが、私、ちょうど仙台の自宅に帰っておりましたときに、午前十一時半ごろに突然山奥温泉場から電話がかかってきた。そうしてきょう十一時ごろ執行吏競売屋一緒にやってきて、ヒメマスを養殖しておったそのヒメマス競売した。これは仮差し押えだったのでありますが、仮差し押えをしておくのには、えさその他非常にかかる生きものだというので、これは特別の規定があって、仮差し押えにもかかわらず競売をして、その売得金供託をして、この供託金の上に仮差し押えを行なうということが許されるようでございますが、この電話を受けながら条文を見てみると、その規定らしい。そこで三十万で何百万尾かいるヒメマス競売する。それは時価百万以上三百万ぐらいするのじゃなかったかと思う。それが三十万円で競落されてはたいへんだ。そこで、自分はいま現金がない、銀行も十一時過ぎてしまって、土曜日でどうにもならない、そこで手形を出すから、何とかそれで私のほうに落札をしてくれ、それはまかりならぬということで、とうとう三十万で一緒についてきた塩釜かどっか漁業地帯競売屋競落をした。それでいろいろ私、電話で助言したのだが、それが全部うまくいかずに、競落になって、競落になったところが、即座に競売屋から百万円で買えとかなんとか吹っかけられて、そして結局六十万で買って、三十万は損をした、こういう事態が起きておる。これは執行吏競売屋結託をして、現金調達の余裕なく、山奥ですから、そこには銀行の支店もたしかないところです。銀行まで行くには、そこからまた五里か十里下がってこなければならぬ。そういうふうになりますと、債務者はどうにもならない。突然やられて——もっとも競売の日にちやなんかも、期日の通知があり、あるいはそれを忘れておったか、気がつかないでおったかなんでしょうけれども、そういうようなことがありますと、どうも何かそこに競売屋執行吏の間の内々の連絡があるのじゃないかこういうような疑いもできて、日本裁判所は世界においても最も公正な裁判官で組織されている、りっぱな裁判が行なわれていると、一応世界的にいっても評価は低くないと私は思うのでありますが、裁判で白黒がきまりましても、結局は、民事等の場合には執行が非常に重大な権利義務関係を及ぼしてくる。それを行なう者は、むろん請負制度みたいなものであるが公務員である。これが競売屋結託をしたり、あるいは債権者債務者談合したり、収賄をしたりする。こういうことになると、日本裁判そのものが非常に信用を失墜する。これは末節のようであるけれども、事実はきわめて重大である。それによって、裁判は公正であっても結果は不公正な結果を来たす。非常に重大な問題ではないか。しかるにそれに対する裁判は、みんな執行猶予つきで、まあ内輪だからかんべんをしてもらう、こういうようなことでは、日本裁判の威信上これは重大な問題ではないか。この点は私ばかりじゃない、みんな当法務委員会委員諸君もそういう考えの人が多いと思うのでございますが、こうした事態に対処して、最高裁判所一体執行吏制度をどういうふうに持っていったらいいかについて腹案等があればひとつお伺いいたしたいものと思うのです。  執行吏制度改正に関する従来の経緯を調べてみますと、昭和になってからでもいろいろな調査機関が設けられ、あるいはいろいろな研究がなされておるようでありますが、昭和の初めに、司法省に強制執行並びに競売に関する法律改正調査委員会というものが設置され、昭和六年には、強制執行法調査要目というようなものができてみたり、あるいは昭和二十五年には、最高裁の企画のもとに民事裁判官会同研究会が設けられたり、ずっとこのようにしていろいろな研究調査がなされておるようでありますが、これらによって何かある程度の草案なり腹案ができているものがあれば、差しつかえない限度でひとつ御発表をお願いいたしたいと思います。
  18. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 ただいま竹谷議員の御指摘の点、裁判所が、内輪だから執行猶予をつけたという点は、ちょっと私ども承服しかねるわけでございますが、それ以外の点につきましては、まことに御指摘のとおりでございます。現在、執行吏執務状況あるいは執行吏の行なう競売等に関連していろいろな批判があることは、私どもも重々承知しております。執行吏執行が不適正に行なわれるということであれば、せっかく裁判してもその結果は何にもならぬ。これが一国の司法制度に大きなひびを与える原因になるという点は、まことにそのとおりでございまして、私どもも十分それは認識しておるつもりでございます。ただ、現在の執行吏による競売のシステムをどういうふうに変えていけば、そのような欠点として指摘されているようなものが是正されるかということになりますと、かなりいろいろむずかしい問題が起こってくるわけでございます。先ほど御指摘にありましたように、現在の執行吏制度をどういうふうに変えていくかということにつきましては、すでに昭和二十九年ごろから検討は重ねられてきております。のみならず、すでに戦前におきましても、この執行吏制度というものができた当初から、執行吏制度の問題は、これをどうすべきかということが絶えず検討されてきたわけでございます。それにもかかわらず、現在に至るまで明治三十三年にできました執行吏制度がそのまま残っておるというところに、この制度改正の非常にむずかしい点が如実に示されておるように私ども考えるわけでございます。この執行吏制度による弊害として一般指摘されております点を抜本的に是正するためには、何と申しましても現在の競売制度あり方そのものメスを加えて、そういういろいろな不適正といわれる点が起こるような原因を根本的に除去しなければならないということが、当然対策として考えられるわけでございます。その場合に、執行手続の面においてこれをどういうふうに是正していくかということも考えられますし、一方におきまして、執行吏制度という特殊な公務員制度による執行運用されているというこの制度あり方自体に対してメスを加えるということも考えられるわけでございます。数年来この一つの点について法務省法制審議会のもとで問題として取り上げられまして、自来検討を重ねてきておる状態でございますが、そのうち手続の面に関する点については、かなり案も具体的に固まってきているように私どもは聞いております。ただ、制度の面につきましては、これは大体の考え方といたしまして、現在の手数料制度のもとにおける執行吏という特殊な公務員による執行運用ということに、先ほど申しましたようないろいろな欠点原因が胚胎しているのだということでありますと、この手数料制度による執行吏という制度そのものを根本的に切りかえて、普通の俸給制公務員にして、裁判所なら裁判所の組織の中に完全に取り入れてしまう。そうして監督も厳重にするし、運用についてきびしい規制を行なっていくというような方向をとらなければいけないのではないかという考えが非常に強いわけでございます。そのような俸給制による公務員制度というようなことに切りかえることがはたして可能かどうか。どこまで可能か可能とした場合に、その結果としての形はどうなるかというような点に関連いたしましては、いろいろこまかい問題、むずかしい問題が非常にからまっておりまして、その検討に手間どっておるというのが現在の実情ではないかと私ども承知しておる状況でございます。
  19. 竹谷源太郎

    竹谷委員 執行吏制度に関するあなたの御答弁を要約してみると、執行吏純然たる俸給制度公務員にしていく、そうして債権者依頼者からの手数料で食っていくという制度ではなくしたい、こういうのでありますが、私も執行吏はりっぱな裁判所に付属する公務員として、そうして裁判に要する経費は、これは裁判所はいろいろなものを原告もしくは被告から納めさして、公法上の収入として扱っておるのでありますが、執行に関しましても、手数料もしくは使用料として徴収をして、そうして俸給俸給として別途に出す。こういうふうにでもしなければ、いまの弊害が直らぬのじゃないか、こう思います。執行吏制度に関する意見として、昭和一十八年に法務省が調べた裁判所執行吏あるいは日弁連、検察庁、大学の教授等意見をここにまとめたものがありますが、これはそれぞれの立場でいろいろ意見があるようでありますが、結局、現行制度を維持するという考え方も相当ある、また改正しようという考え方もあって、両方半々ぐらいでなかなか結着がつかないのであろうと思うのでありますが、何しろ大事な裁判執行というものを半分公務員、半分私企業みたいな形では絶対にうまくいくはずはないのではないかと私は思うのです。これはひとつ早急に最高裁として研究調査の上、りっぱな執行吏制度を早急につくってもらいたいものだと思います。  そこでいま法律規則を見ますと、明治二十三年に執達吏規則というものができて、執達吏役場区裁判所に所属すると書いてある。それからまた執行吏事務処理規則というものが別にあって、これは地方裁判所に事務所を設けるというようなことが書いてあり、地方裁判所監督を受けるように書かれておる。こういうようにして法令そのものにもまだ執達吏というようなことばも生きておる。これに関しては、一体最高裁はどういうふうにこれをやるつもりか。いつまでもこうして、名前の上でもはっきりしないような、二つの法律が衝突するような法律が現存しておる。いま区裁判所に所属しないで、地方裁判所に所属しておると思うのですが、しろうとが見てわかりにくい。執達吏執行吏と両方併存しておる現行法が存在している。これはどういうわけですか。
  20. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおり最初の執達吏規則というものが、法律の形といたしましてはそのまま残っておりますが、戦後裁判所法施行に伴いまして、執達吏執行吏名前に改めると同時に、この執達吏規則との関連をつけまして、その点については形の上では矛盾のないようなたてまえにはなっておるわけでございます。
  21. 竹谷源太郎

    竹谷委員 これは早急にひとつ法令を整理して、もっとはっきり執行吏制度そのものをどうするかそういうことの決着を見るまでは、現在のこの乱脈な法令をそのままにしておくつもりか。それとも執行吏制度一般に関する改正のきまらない前においてもこれを整理してもっとはっきりさせる。また意見のあまりない、改正することに一致をするような点は改正をして、執行吏制度に関する法制を整備したらどうかと思いますが、この点については最高裁判所はどういう考えを持っておるか。
  22. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 立法関係のことは私どもの所管のことではございませんので、私から申し上げるのはあるいは越権かもしれませんが、ただいま御指摘の点につきましては、当然裁判所法施行の際に、旧執達吏規則にありましたいろいろな現在存在しておらないような区裁判所とかあるいは執達吏というようなものは、読みかえの形で処理されておるわけでございます。ただ、形として執達吏規則というものがそのまま残っておるという形の悪さというものはございますが、しかし、いま申し上げましたような読みかえという形で、その点のつながりは一応できておるわけでございます。
  23. 竹谷源太郎

    竹谷委員 執行吏を任命してから再教育というか、精神的にまた行政手腕等についても十分訓練を与えて、りっぱな執行吏としての職責を遂行できるような、そういう研修制度はどうなっているのかお尋ねをしたい。
  24. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 執行吏研修につきましては、私ども何とかして実施したい、それによって執行吏の資質の向上、それから精神面における訓練ということをしたいということは、かねがねから考えておるわけでございますが、はなはだ微力でございまして、まだ研修実施するための予算的措置ということは達成できておらない状態でございます。ただ、執行吏研修につきまして一つ問題がありますのは、かなり長期間現職の執行吏を一カ所に集めて研修をするということは、現在の手数料制執行吏のもとにおいては、その本人の収入の面に響くという点もございますし、また、その間執行事務が停止するというようなことがあり得るわけでございます。そういうような実施上の難点もあるわけでございまして、なかなかこの研修ということはやりにくいものがあるわけでございます。
  25. 竹谷源太郎

    竹谷委員 裁判内容を実現するところの執行というものを取り扱う大事な執行吏が、任用のときにはある一定の資格条件を備える者を採用するのでありましょうが、独立して職務を行なう、むろん裁判所監督を随時受けはいたしましょうが、債権者その他の依頼によって独自に執行に当たって、そして自由職業のような形になる。そうなりますと、どうも不勉強になり、またいろいろな旧套になずむ、あるいはいろいろな誘惑に負けるということになる関係から、純然たる俸給制度公務員でさえも研修が必要だから、なおさらこの自由職業的に職務を行なっておる執行吏は、精神的な面でも事務的な面でも特別な教養と研修が必要だろうと思う。それを怠っているというところに、制度の問題は第二義といたしまして、この執行吏に関する世の批判を受けるような事態が起きるのではないか。これは当局の重大な責任と言わなれけばならぬ。予算がないと言うが、予算を取ればいい。また人が足りないということでありますが、執行吏の人員が実際全国で六百人くらい、非常に少ないと思う。これをもっと充実するなり、あるいはもっと待遇をよくするように持っていくなり、そしていろいろな執行吏職務執行上必要な物的設備について、政府から補助をするという制度を設けるなり、これはどうも執行吏制度に対する熱意が非常に足らない。その結果こういう事態が起きているので、単に制度の問題ばかりではなくて、執行事務の運営の上において、裁判所なり政府のほうに非常に手落ちがあるのではないか。最高裁判所のこの事務を扱う責任者としまして、民事局長はどうお考えですか。こういうふうに全く自由放任されたように、公務に従事する者が研修も受けない、ろくな監督も受けないという状態においては、いろいろな忌まわしい贈収賄事件やあるいは文書偽造や不正なる強制執行が行なわれるということは、これは自然発生的に出てくる。その責任はあげて裁判所法務省当局にあると思うのです。あなたはどういうふうに責任をお感じになりますか。
  26. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 執行吏のいろいろな不正ということにつきましては、私どもも非常に遺憾に感じておって、これを何とかしなければならぬということは常に考えておるところでございます。御指摘執行吏研修というような制度をつくって、そしてこれを強化して、執行吏の資質の向上をはかるということは、まさにおっしゃるとおりで、これはもうできるものなら何とかして実施したいというようにわれわれとしても考えておるわけであります。ただ、現在あるやり方といたしましては、各高等裁判所管内別に執行吏裁判官、弁護士の方を集めて執行事務協議会というのを開催しておりますが、その席上におきまして、いろいろな執行上の問題について議論をして、執行の事務が適正、円滑に行なわれるように意見を交換するという機会がございます。それはまあ竹谷議員の御指摘のような研修制度とはほど遠いものでありますけれども、ある程度の役割りは果たしておるわけであります。それをさらに進んで研修制度ということは、これはもちろんやるべきだという気はいたしておりますけれども研修の具体的なプラン、それからそれに関連する費用の問題ということになりますと、技術的になかなかむずかしい問題が出てくるわけであります。と申しますのは、何と申しましても執行吏そのものが、先ほど竹谷議員の御指摘のありましたように、いわば手数料収入その他の収入というものを基礎にして、自分の責任において執行事務を運営しているという形をとっているところに、いろいろなそういう研修にしてもその他の問題にいたしましても、実施上の困難というものが付着してくるわけでございます。したがって、やはりこの点を徹底してやろうと思えば、どうしても現在の手数料その他の収入に依存して執行吏役場を経営し、経費も全部まかなっていく、そういう体制そのものにメスを入れなければ、やはり抜本的な改善向上措置というものはとりがたいのではないだろうかこれが私どもの感じでございます。
  27. 竹谷源太郎

    竹谷委員 執行吏制度の根本的改正ということは、なかなか事、慎重を要して簡単にはいかないと思いますが、しかし、執行吏研修してりっぱな執行事務執行させるということは、わずかの予算でこれはできることであると思います。また、収入手数料に依存しているから、招集して仕事を休ますということは収入を減らすことになるとおっしゃいますけれども、これはほかの公務員でもそうでございますけれども研修等の場合には、研修のために家庭を離れて宿泊をして一カ月なり半年なり研修を受けなければならぬという場合には、それだけの手当は当然出るのであって、これは公務員でございますから、公務のために研修をする場合には、そういう費用をもちろん国家で持って差しつかえない。だから本人に財政上の負担をかけずに研修することは可能である。これは来年度からでもぜひこの研修費をとりましてやっていただきたい。そうすれば、単に事務能率の上からばかりでなくて、精神的に非常な違いがくると思う。ただ自由職業の弁護士のように自由にやるような気持ちで執行吏執行事務をやっておったのでは、これは精神的に非常にだらけて、そしていろいろな不正事件も行なう、依頼人や競買人から金をもらったって平気でいるというような、精神的な道義的な退廃を来たすのは当然でございまして、これはぜひ来年度からはこの研修の費用をたんまりととって、りっぱな執行事務が行なわれるようにやる責任が当局にあると私は考える。そういう熱意を持って民事局長は来年度の予算折衝に当たられるかどうかその決意をひとつ承りたい。
  28. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 研修制度の必要性ということは、私どもも痛感しておることは先ほど申し上げたとおりでございますが、ただ竹谷議員の御指摘の点、一般公務員の場合に研修制度というものが行なわれておりますが、その公務員俸給制公務員であるがために、その間の俸給はもちろん支給されるような形になっておるわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、執行吏はそのような形の給与を受けていない。いわば手数料とその他の収入という、法律で定められた収入に依拠してその採算において執行事務を遂行しているというような形になっておるところが、どうもいろいろな点において支障を生じてくるようであります。私どもといたしましても、そういう支障にもかかわらず研修制度実施できるものかどうかということは、さらに検討して、できればそういう方向に進みたい、研修実施したいという考えでおることは、ここではっきりと申し上げることができると思います。
  29. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それは金さえ出せばできるのでありますから、来年は十分の費用でぜひやってもらいたい。熱意を持ってこれが実現できるようにお考えを願いたいと思うのであります。  次に、手数料が月額一万四千円ぐらい以下の場合には、国家が最低収入を保障するような制度があるようであります。法定額があるはずです。その法定額よりも少ない収入しかない執行吏は、六百二、三十人の執行吏のうち何人ぐらい普通あるのであるかお調べがあったらお知らせ願いたい。
  30. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 執行吏の年間手数料が法定の基準額に達しないときは国庫からその不足金の支給を受けることができると書いてありますが、その基準額は政令で定められることになっております。そして現在の基準額は年額十九万一千円でございます。このいわゆる国庫補助金を受けておる執行吏の数でございますが、これは執行吏の数が本年の四月一日現在で三百四十二名でございます。そのうち昨年度におきまして国庫補助金を受けた者の数は合計十三名でございます。
  31. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この三百四十二名だけですか。そのほかに執行吏代理とかああいうものはどうなんですか。
  32. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 執行吏代理は、執行吏収入から手数料の一部を受け取るというような形になっておりまして、これは国庫補助金の対象になるものではございません。執行吏だけが国庫補助金の対象になるわけでございます。それで執行吏代理の数は本年四月一日現在で二百八十二名でございます。
  33. 竹谷源太郎

    竹谷委員 このパーセンテージからいうと、執行吏全体のごくわずかの数の人が法定基準額に達しないというのではありますけれども、年額十九万円ということでは月二万円にも足らないのであって、とうていそれでは生活困難であろうと思う。ことに執行吏となっている人々は大部分は相当の年齢で、多数の家族を擁している。そういう人たちが月額一万五千円や一万六千円ではとても食っていけない。そこに非常に問題がある。法定基準額が大体低い。したがって、法定基準額以下で国庫から補助を受けている人は十三名にすぎないけれども、三万円なり四万円かかる今日の生活費を、半分以下ぐらいが十三名なんだから、それ以上、生活し得る程度までの人は何十人、百人もあるいはそれ以上もあるかもしれぬ。こういう人たちが生活に苦しむようでは、やはりいろいろの不正は絶えないので、去年ですか手数料を少し引き上げたようでございますが、この引き上げ額は他の公務員等のベースアップに比べて非常に低いと思われるので、これはどれくらいまで引き上げる必要があるか何割ぐらいを引き上げれば公務員のベースアップに追いつくかその御見解を承りたい。
  34. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 最初の国庫補助金の基準額の点でございますが、この補助の基準額が現在年十九万一千円というのが非常に低いと言われることは、そのとおりでございまして、私どももこれは最低生活の保障金額といたしましても低いというふうには考えております。ただ、この補助基準額の増額の問題につきましてはいろいろむずかしい問題がございまして、結局、執行吏の現在の収入全体との問題に波及してくる問題でございます。と申しますのは、この補助基準額というのは、一応これは執行吏手数料その他の収入は、一般公務員の場合で言いますと俸給にかわるものでございます。したがって、国家公務員に対する給与という性格を持っておるわけでございます。したがって、その給与がいかにあるべきかということは、その他の公務員との比較においてある程度制約を受けてくるという要素があるわけでございます。現在この国庫補助金の増額についての隘路となっております点は、一つ執行吏の任命基準というものが比較的低いところに置かれておる関係上、その執行吏の給与面からする最低保障の金額考える場合におきましても、その任命基準の低さということが一つのマイナスの要因になっているように私どもには考えられるわけでございます。  それからもう一つ、国庫補助金が与えられますのは、執行吏手数料の額がこの金額に満たなかった場合に与えられるわけでございます。執行吏収入手数料収入以外の収入もあるわけでございまして、その収入との関係、その収入をトータルしたものがどうなるかというような関係も加わってきますので、単純に手数料収入と基準額との差額だけで事を律することはちょっと問題があるのじゃないかというような点もございます。さらに、執行吏の最低給与というものを保障するとしておきながら、他方においては執行吏収入そのものについては、法律上上限はございません。ですから、あれは非常に——非常にと言うと語弊がありますが、相当多額の収入がある執行吏もあるわけでございます。そういうように、執行吏収入がかなりアンバランスであることから、一方において上限を定めないで、最低の保障の額を上げるということについては、給与という面からする他の公務員との比較からすればどうであろうかというような問題も出てくるわけでございます。そういうようないろいろな問題がありますために、この基準額の増額がなかなか容易に実現しないような状況でございまして、私どもも苦慮している次第でございます。  それから、手数料の増額の点についてでございますが、手数料は御指摘のとおり昨年平均二割五分の割合で増額となりました。この手数料増額の二割五分という数字は、大体におきまして物価水準の変動ということとにらみ合わせて、大体その水準並みに手数料の増額をしたというように承知しております。それで、この手数料増額につきましては、この前手数料増額の法案が国会で審議されました際にも問題になったことと承知しておるのでございますが、手数料の性格をめぐっていろいろ議論があるわけでございます。手数料は、国民の国家に対する執行という行為の請求に対する一つの負担と言いますか、対価と言いますか、そういうような性格を持っておると同時に、他面においてはそれが執行吏の主たる収入ということになる。したがって、手数料というものは、執行吏の給与という性格を持つと同時に、他面においては、国民に対する国家の給付行為の対価的な性格を持っておるわけでございます。純粋に給与の面からしてこの問題を考えるわけにはいかない面が、その片一方においてはあるわけでございます。そういうようないろいろな問題がありまして、手数料の増額は大体物価水準に応じたベースアップということになると私は了解しております。それで、この手数料の一五%、昨年度は約二五%の増額でございましたが、これが一般国家公務員の給与のベースアップとかなり顕著な差があるではないかという点は御指摘のとおりでございます。ただ、この点につきましても、先ほど申し上げましたように、執行吏収入手数料の面だけでなく、それ以外のいわゆる立てかえ金収入というものがある程度のウエートを占めておるという要素を考慮しなければなりませんし、それから執行吏の現実の収入に影響を与えている大きな要因として、執行事件の減少ということがございます。この執行事件の減少のために、執行吏収入がそれほど伸びないという点もあるわけでございます。しかも、この手数料の定め方は、御承知と存じますが、差し押えの場合、あるいは競売の場合も、債権額によってスライドするという形になっております。したがって、債権額が経済上の要因によりまして一般的に上がってまいりますと、手数料の割合に修正を施さなくても、それに見合うだけの収入増ということは一応見越されるわけでございます。したがって、一件当たりの執行吏手数料の増加という点だけを取り上げてみますと、これは二五%ではなく、相当の増額になるわけでございます。そういうような執行吏手数料の問題に対しましては、複雑な要素がからみ合っておりますので、単純に二五%の増額ということだけで、一般公務員のベースアップにおける割合というものを平均して比較するということは、必ずしも執行吏収入の実質をつかむということには適当ではないのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  35. 竹谷源太郎

    竹谷委員 あなたのお話を承っても、収入のアンバランス、あるいは法定基準額が低過ぎるというような問題とからみ合わせて、やはり手数料、そういうものは行政事務で国家に納める、そして公務員が特別な個人的な収入なしに執行するということがあたりまえなので、根本的には執行手数料は国に納める、国は俸給を受ける公務員としての執行吏を使うというのが一番妥当じゃないかと思うのです。それに至るまでのいろいろな不正を防止し、りっぱに職務執行していかせるために、研修をやらせるなりあるいは法定基準額を引き上げる。収入のアンバランスを是正する意味で、管轄区域を広げて事件数を多くする。あるいは地域的に収入の少ないところは、広い地域で事件がまれなのですから、旅費額を多くするとか東京都内のような場合には、旅費額は少なくても、事件数が多いから事務量が多いということもあって、根本的な改正前においても、収入のアンバランスをできるだけ是正し、しかも執行吏には十分の所得が得られるような当面の応急対策は幾らもあり得ると思う。私は抜本的な執行吏制度改正を早急にやってもらいたいが、それ以前においても、日本裁判の権威を保ち、また国民の権利利益を擁護する意味からも、そういう応急的な措置も急速にとってもらいたいと思う次第であります。  ちょっと先に戻るようでありますが、執行吏代理は、これは執行吏に頼まれて代理をするのでしょうが、競売屋執行吏代理をやるのじゃないですか。そうなると、この執行吏代理などの仕事はまことに怪しげなものになってしまう。そして事件を一起こしやすい。執行吏代理というのは一体これはどういう人から採用して、裁判所がその資格を定め、また適任かいなかを調査の上これを承認あるいは許可するなら、免許か何か手続があるだろうと思うのですが、どうなっておるのですか。
  36. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 執行吏代理の選任につきましては、執行吏事務処理規則第十条に規定がありまして、一定の要件を具備することを要求いたしております。大多数の執行吏代理につきましては、裁判所がその適格の認定をするわけでございます。そして、認定された者で初めて代理に選任できるということになっております。それが不適当であれば、いつでもその認定を取り消すことができるということになっておりまして、執行吏代理の選任そのものについての法的規制としては一応できておるわけであります。現実に執行吏代理にどういう者が選任されているかということにつきましては、私どものほうでは一応学歴とか前歴とか調査したものはございますが、それ以上詳しい資料は持っておりません。しかし、競売屋執行吏代理に選任されたというような事実につきましては、私どももまだ聞いておりません。
  37. 竹谷源太郎

    竹谷委員 時間も進みましたので、最後にもう一言お尋ねしたいと思います。  俸給を受けない、依頼者から手数料をもらって生活をする執行吏につきましては、俸給関係はそうであるが、公務員たることには変わりない。そこで恩給あるいは共済年金、そういう制度はどうなっておるか。また、健康保険、傷病——これは場合によっては債務者等から危害を加えられる例がなきにしもあらず、傷病手当のようなものはどうなっておるかそういったような付帯した待遇はどうなっておるかお伺いしたい。
  38. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 恩給につきましては、執行吏独自の恩給という制度がございます。これは執達吏規則の二十一条に規定がありまして、さらに戦後、訴訟費用等臨時措置法六条で、これに関連する規定がございます。この恩給は、一応先ほど申し上げました国庫補助基準額を基礎にして計算されるわけでございます。この恩給は恩給法等の恩給でございまして、現在の国家公務員共済制度の上に立った退職金とか共済年金というようなものとは全然性格を異にする、古い恩給による恩給の残存でございます。それ以外の関係で、国家公務員共済組合の関係につきましては、これは現在の執行吏は国家公務員共済組合には属することはできないということになっております。ただ、法律では国から給与を受けない者は共済組合の組合員になることはできないわけでございますが、ただし書きで、政令の定める場合には例外として組合に属することになっておりますけれども執行吏の場合は例外として組合員となり得るという形にはなっておりません。したがって、共済組合の組合員になることは現在ではできないわけでございます。
  39. 竹谷源太郎

    竹谷委員 時間もなくなりましたから、最後に私、希望を述べておきたいのですが、繰り返し申し上げましたように、ひとつ執行吏制度に関しては根本的な、りっぱな結論を出して、早急にりっぱな執行吏制度をつくってもらいたい。第二は、応急の対策として研修制度、これはぜひ豊富なる予算をもって来年度から実施してもらいたい。それから法定基準額を引き上げること、また手数料増額等によって、執行吏が食っていけるような所得が得られるような制度をつくってもらいたい。以上を切望いたしまして、質問を終わります。
  40. 横山利秋

    ○横山委員 議事進行について。  いまお話によれば、大臣及び刑事局長の出席をこちらにかねがね求めておるわけでありますけれども、一向に御出席がないわけでありますが、一体両院のうち、本委員会はかねがね理事諸君の話し合いによりまして円満な進行をしてきたわけでありますが、そういう進行をしたことで、大臣並びに政府の官僚どもがいい気になって甘えてしまって、そして本委員会の真摯な要求に対して何ら顧みないということはきわめて遺憾に私は考えるわけでありますが、本委員会に大臣及び各局長がわれわれの要望に応じて出席をなさるということについて、委員長はどうお考えでございますか。
  41. 三田村武夫

    三田委員長代理 いま横山君の議事進行に関する御発言ですが濱野委員長も横山君の御発言どおりよく了承しておりまして、委員長からもしばしば大臣及び関係局長に出席を要求しておるのです。しかし、御承知のとおり参議院の法務委員会も、会期も余すところわずかですし、衆議院から送付された重要法案をかかえまして連日審議に入っておる。そうして法務大臣及び関係局長の出席を要求し、審議を進めておる関係上、一両日大体のめどのつくまで参議院のほうに必要だということで、本委員会に出席してないように了承しております。御趣旨はごもっともですから、委員長とも相談して、当委員会に必ず出席するよう取り計らうことにいたします。
  42. 横山利秋

    ○横山委員 私ども野党としては、本国会において法務大臣に対して不信任案を提出いたしました。これはまあ与党の諸君にも、この中に賛成者がおったようでありますが、遺憾ながら形の上ではだめであったわけであります。一国会において一大臣に対して不信任案が出るというのは、それだけの理由があるわけであります。その理由があることを、国会において否決をされたから何とも思わぬということでもありますまいが、どうも大臣は委員会に対し軽視の雰囲気がある。そしてこの委員会におきます大臣の答弁を見ておりましても、委員諸君の質問に対しても、何か戦前的感覚とでも申しましょうか、あるいはこちらの言うことを聞いてそれに真摯に答えるというような雰囲気がないのはまことに遺憾であります。しかも法案をわれわれが協力をして、とにかく他の委員会に比較してまれに見るごとく通過をしておるわけです。通過をするにはするだけの、私どもとしては善意にしろ、いろいろな意味にしろ、協力があるからでありまして、それが法案が通ったら、何ぼ衆議院が要求したところで、参議院に法案があるのだからおれは出ない、参議院から要求があったら出る、衆議院から何回要求してもおれは出ない。こういうことは遺憾千万だと思うのでありますが、きょうは代理の委員長でありますから責任ある御答弁を聞くわけにいきませんけれども、しかし代理といえども本日は全責任を持っておられる。かくも理事会及び委員会において爆発をしたことは例がない。しかとこの点を委員長は濱野委員長なりあるいは政府当局にきちんと伝達をしてもらいたい。御返事を承りたい。
  43. 三田村武夫

    三田委員長代理 よく了承いたしました。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つの問題は、やはり理事会で問題になりました暴力団犯罪に関する小委員会の問題でございます。  本件は、すでに法律が通ります前、理事懇談会において、最初の発言といたしましてはまさに四月二十五、六日ごろの話であります。いまや六月十六日でありますから、二カ月近くまでこの問題が放置されておる。自由民主党の諸君に聞けば、だれ一人としていなむ者がない。それにもかかわらず、だれ一人としてそれに対して一生懸命になってくれる人がない。これは一体どういうことなのでありましょうか。私どもは、委員長はじめ与党の理事諸君並びに委員諸君の道義的な気持ちをも考えまして、そうかそう言ってくれるならもう少し待とうと言ってきましたが、いまや国会は終わりまであと十日しかありません。そうしてきょうの理事会においては、三田委員長代理は、おれは全責任を持てないからおれに言ったってだめだ。小島理事に聞いてみれば、おれは大賛成だ、こうおっしゃる。ほかの委員の皆さんに聞いてみても、だれ一人として反対する者がないのにかかわらず、三カ月近くまで放置されるには放置される理由があると私は思うのです。いいかげんなことではこれは放置される筋合いのものではない。何か根深い理由があって暴力団犯罪に関する小委員会が設置されないのではないかといまでは疑わざるを得ないのです。いかなる理由があるのか、それを率直にお聞かせ願いたい。
  45. 三田村武夫

    三田委員長代理 小委員会をつくることについては、これに反対するいかなる理由もないものと了承いたしております。したがって、この次の理事会には小委員会設置の件をはかって、そのように取り計らうよう委員長に伝達いたします。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 もはやそのことばは聞き飽きたわけであります。本日でも理事の諸君がここにみなおるわけです。これが今日まで放置される何か根深い理由があると私は思っておるわけですが、いまここにいらっしゃる方は、与党を代表して小島理事、野党を代表して私、細迫理事、民社の、理事じゃないけれども、オブザーバー、みなおるわけです。ここできまらないことはないわけです。きめてください。採決してください。それが今日まで放置されるには放置される理由が何かあると私は思います。それで放置される理由は、私は、言うならばそれはやはり与党内部に巣くっている一つの問題があると私は思う。私は、先般暴力団犯罪に関する小委員会設置についての理事会におきまして、暴力団が政治的な進出を試みておるということをいろいろな事象をあげて述べました。そして、それは言うまでもなく与党の中に潜在勢力として残っているということを喝破いたしました。それがこの一カ月有半にわたって与党をして踏み切らせない最大の理由だと私はにらんでいる。そうでないとおっしゃるならここで採決してください。だれ一人として反対をする者はないのですから、ここで暴力団犯罪委員会設置をきめてください。きめられない理由があったら言ってください。
  47. 三田村武夫

    三田委員長代理 先ほど横山君に申し上げましたとおり、設置をせざる理由はないものと了承いたしております。したがって、次回の理事会にはかって設置の手続を進めるようにいたします。御了承願います。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 進めるようにいたしますというのは、委員長にはからなければ困るという考えがあってのことのようでありますが、委員長は、初めから私は大賛成だと言っている。委員長は、先般の現地調査においても、次の理事会には何とかすると私に約束をいたしました。それがきょうなのです。きょう委員長がいないのであります。委員長は政治的にも知性並びに道義性豊かな人でありますから、委員長が反対する理由はないと思う。ですから、どこに御相談なさらなければならないのか自由民主党の政調会なり、自由民主党の隠れたる右翼潜在暴力に御相談なさらなければならないのかそれがおるならばやむを得ないと思いますが、だれ一人として今日反対した者がないならば、委員長の了承を得ているのですから、ここで決定してください。
  49. 三田村武夫

    三田委員長代理 横山君に申し上げますが、この小委員会を設置することについて、何かその背後にこの設置を拒むような御発言がいまありましたが、そういうことはございません。したがって、先ほど来申し上げますように、次の理事会においてこの点を取り計らって小委員会を設置することに進めます。御了承願います。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 委員長の御趣旨はよくわかりました。決して委員長に言っているわけではありません。けどれも、くどく言いますが、そのことは何回もだれしも聞いているのです。あなたからも、小島理事からも、委員長からもみんな聞いているのです。きょうだめだという理由は何かありますか。
  51. 三田村武夫

    三田委員長代理 きょうだめだという理由じゃございませんが、委員会には委員会を進める順序と手続があります。でありますから、この次の理事会で理事にはかって、どういう構成で、小委員会の委員を何人にしてということを理事会にはかりたいと思います。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 くどく申して恐縮ですが、それではいまから理事会を開いてください。みんな構成ができておりますから、もう委員部の中には試案ができておるわけですから、その試案の中身について問題があるということはいまだ聞いていないのであります。いまから小休止をして理事会を開いて設置をしてください。きょういかぬという理由はないはずですから。
  53. 小島徹三

    ○小島委員 横山君の希望ですが、きょうは与党の理事も三人欠席しておりまして、たとえばこの次には、私も委員長代理三田村君もとにかく設置には賛成で、委員長が幸い賛成でありますということでありましたならば、与党の大部分が賛成なのでありますから、そうすれば社会党はもちろん横山理事は賛成でしょうから、それでできるのです。きょうは本委員長がいないのですから、この次にするということにしたということで、この辺でこの話は打ち切りにしてもらいたいと思います。
  54. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 さっきのことに関連して。  去る四月六日に私が法務大臣と法務省刑事局長に質問いたしました。その内容は、下山事件は来たる七月五日で十五年の時効になる。この真の犯罪原因がまだわかっていない。しかも検察庁は、私がこの委員会で聞きましたところ、やはり今日でも他殺説をとって捜査を続けている、こういうことでした。それで私のほうから死体検案書並びに秋谷教室の物質鑑定書、この二つの書類を出していただきたい、こういうふうに申しました。どういうふうになっておりますか調べた上で御返事いたしますということでした。それからもう二カ月余りたっております。あまり返事がないので、この六月の初めになりまして委員会前の理事会などで懇談をしているときに、特に濱野委員長から委員部に対して刑事局長に催促させました。ところが、そのときの委員部からの返事は、どこにあるやらわかりません、ただいまさがしております、こういうことなのです。もってのほかの言いぐさです。その後も委員部のほうから聞いたが、まだ出てこない、こういうわけです。  もう一つ、近くジャーナリズムのほうでこの問題を取り上げます。七月五日の時効になる前に、これがほったらかされていることをきっと数種のジャーナリズムで取り上げるだろうと思います。当法務委員会としては、この問題をたびたび取り扱っているのに、ジャーナリズムからそういうことを言われて法務委員会で締めくくりをしなかったということでは法務委員会の権威にもかかわります。全然問題を知らなかったのなら別ですけれども、いまもって返事がない。あなたはきょう一日委員長かもしれないけれども、その一日委員長になった手前、きょうすぐ——参議院に刑事局長来ていて、こっちに来ないということだ、けしからぬことだ。小島君催促したのではないのかね、横山君が呼ぶことになって催促していたのだから。それならそれでとにかく刑事局長にしかと申し入れてもらいたい。約束しますか。
  55. 三田村武夫

    三田委員長代理 志賀君の発言、しかと了承いたしました。
  56. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この次に答弁させますか。
  57. 三田村武夫

    三田委員長代理 承知しました。  先般の理事会決定によりまして、裁判所における競売制度及びその実情等について調査することとして、その下調べを調査室に命じたのでありますが、一応の結果が報告できるとのことでありますので、この際、その報告を求めます。専門員唐橋勝好君。
  58. 高橋勝好

    高橋専門員 命によりまして、東京地裁で行なわれております不動産競売実情について去る五月一十五日調査いたしました。その経過並びに結果を御報告申し上げます。  この種競売をめぐる不祥事件調査の御命令がございましたので、私たち調査室の係員は、まず、この種事案の実情がどうなっているかということを書面の土で知りたいと考えまして、関係法規を調べることはもちろん、去る昭和三十二年当時における東京地裁における競売をめぐる各種の問題の実情につきまして当時の競売裁判官であられた鉅鹿義明並びに山本実一の両判事がジュリストその他の法律雑誌に克明にその状況を御報告になり、問題点を指摘しておりますので、それらを調べた上で、東京地裁に参りまして、その様子を見ると同時に閥係帳簿書類を調査したのでございます。その調査はまだ完結したわけではありませんが、今日までに調査した結果得られた結論を先に申し上げますと、先ほど竹谷先生が御指摘になりましたような、なれ合いの競売事件とかあるいは鉅鹿判事なり山本判事が御指摘になっておるような一部の競売ブローカーないし競売屋によりますところの競売の妨害とか大がかりななれ合い競売というような不正事件は、私たちの目では認めることはできませんでした。しかしながら、関係法規の面に照らしてはなはだどうかと思われるような二、三の実例を認めたのでございます。以下この点について申し上げたいと存じますが、なお、この調査に関連しまして、裁判所当局に資料の作成方をお願いしたり、あるいは警察庁等に調査をお願いした事項がございます。それらの資料のうちまだ回答が来ておらないものもありますので、それらの点は後日追完させていただきたいと存じます。したがいまして、これから申し上げます事項は、一応の中間報告にすぎません。さような意味でお聞き取りくだされば幸いと存じます。  競売につきまして、御承知のように、競売法や民事訴訟法の強行執行編に種々のことが規定されており、種々の見地から分類することができますけれども、これを大別いたしまして、動産に対する競売と不動産に対する競売の二つに分けて考察を加えるのが相当であると考えます。すなわち、競売の目的物件による区別であります。もっとも、もう一つその根拠法規によりまして民事訴訟法に基づく競売すなわち強制競売と、競売法に基づく競売、すなわち任意競売の二つに大別することもできるのでありますが、任意競売におきましても、強制競売におきましても、競売のやり方はむしろ同じでございまして、それほどの特異性はなく、目的物件が動産であるか不動産であるかによって、競売の手段方法が大きく違うと考えられますので、以下この二つについて申し上げることといたしますが、いま便宜その特色の一、二を指摘しますと、その第一は、動産の競売におきましては、競売の主体は執行吏であり、裁判所はほとんど関与することはありませんが、不動産の競売の主体は執行裁判所すなわち裁判所であり、ただ、その手続の一部を執行吏に命じ執行吏に行なわせているにすぎず、この点において両者の間には大きな相違があります。それからその第一は、競落の時期の問題でありますが、動産につきましてはその場において即時競落の決定されるに反しまして、不動産におきましては後日裁判所競落許可の決定をすることによって競落が決定することになります。したがいまして、競売場における競買の申し出は単なる競落希望価額の申し出、すなわち競買申し出の意思表示にすぎないということになります。その第三は、競売手続執行される場所の点であります。動産の競売は、原則として競売の目的たる動産の所在地、すなわち裁判所外で行なわれるのが原則でございますが、不動産の競売は、執行裁判所において行なうことが原則とされております。すなわち裁判所構内の建物の中で行なわれるわけであります。その第四は、競売価額の問題であります。競売の価額につきましては、動産の場合にはいわゆる最低競売価額、すなわち予定額はなく、競買希望者の任意の競売の申し出によるわけでありますが、不動産におきましては、まず競売手続としまして裁判所が鑑定人をして目的物を鑑定させまして、その鑑定価額を最低競売価額として、その上でせり上げの方法による競売が行なわれるわけであります。もっとも競買の申し出がございませんと、手続を中止いたしまして、次回にはその最低競売価額を引き下げてさらに競売を行なうことになっております。  なお、競売における実際のやり方並びにその根拠法規につきましては、お手元に差し上げました資料に書いておいたとおりでありますが、いまその概要について説明申し上げますと、最初につづってございます「有体動産、不動産の競売手続の概要」という印刷物が強制競売並びに任意競売根拠法規とその手続説明でございます。この関係を理解しやすいように図面にしたものがその次の資料になるわけでございます。図面の符号についてはそれぞれ一応の説明がつけ加えてありますので御参照いただきたいと存じます。  しからば事件数はどれくらいあるかということが次の問題でありますが、それにつきましては、第三表の「昭和三十七年度不動産競売既済事件の終局区分別件数表」というのがそれでございまして、そこには全国並びに東京地裁、大阪地裁に係属した事件の数字が示してあり、その状況が明らかにされております。なお、昭和三十七年度中に終結いたしました事件のうちで競売が何回目の手続で終わったか、すなわち、第一回目の競売競落までの一連の手続が終わったかそれとも先ほど申し上げましたように競買の申し出人がないために最低競売価額の引き下げを行なったかもし行なったとすればその回数如何ということを、回数を一回、二回、三回、四回、五回というふうに区分して示し、その実情を明らかにしてあります。なお、引き続きまして、昭和三十八年度における有体動産に対する強制執行事件の件数表が掲げてありますが、昨昭和三十八年度における新受事件数は、全国で十三万一千件余りになっております。  次は、問題の競売ブローカー、競売屋またはこれに結びつく暴力団員その他による不正事件に関する資料でありますが、ここには二つのものを掲げております。その一は、今年四月九日東京地方裁判所におきまして、執行吏代理森山某外十六名の者に対しまして、贈収賄事件、涜職事件判決が行なわれましたので、その判決の概要を摘記したものを掲記してございます。これはそのすべてが有体動産競売にからんで便宜な取り扱いを受けたいという趣旨あるいは便宜な取り扱いを受けたという事後の謝礼の趣旨におきまして、執行吏あるいは執行吏代理に贈賄したという贈収賄事件でございます。  その二は、先ほど竹谷先生が御指摘になりました「最近における執行吏犯罪について」と題するものが掲げてございます。これは時間の関係で詳しいことは省略させていただきたいと存じます。  以上によって資料の説明を終わり、結論に入らせていただきますが、私たちがこれらの資料を見、また先ほど申し上げましたように東京地裁の構内にございます執行吏の役場と申しますか不動産の競売が行なわれております現場に行ってみまして、まず概括的に次のことを発見看取したのであります。すなわち、五月二十五日朝十時ちょっと過ぎに参りますと、すでに相当数の者が室内あるいは屋外に参集しておりましたが、比較的平穏の状態でございました。そこに集まっていた人の多くは競売に関する仕事を商売にしていると思われるふうさい、態度の人のようでございますが、それ以外の方も見られます。すなわち、不動産ブローカーとかあるいは競売ブローカー、不動産屋及びその事務員またはその関係者のように見受けられました。次に、法規によりますと、競売はせり上げの方法によることになっておりますので、競売実施に当たっては当然数人の者から事件の呼び上げにしたがいせりの声がかかるものと期待しておりましたのですが、現実にはそういう姿は一つも見られませんでした。おそらく当事者間で何らかの話し合いをいたし、話をつけて競売場に臨んだか、あるいは競売場に参りまして、その競売場の内外で競売開始前に何らかの話をつけてしまったのではないかと思われたのでございます。と申しますのは、当日競売が行なわれる予定表に書き出された事件は十八件でありますが、うち三件その日になりまして取り下げられておりました。あとの事件については、競売が行なわれたのであります。十一時になりますと、執行吏とその介助者が入ってまいりまして競売手続を開始したのですが、競売が始まりますと、相当多数の者がそれぞれグループをつくってぞろぞろと出ていったのであります。おそらくこれらは、もう競売延期かまたは中止の話をつけたか何かで現実には競売に参加する必要がないので帰るのだというように見受けられました。なお、当日競売が行なわれた残りの十五件中、競売が行なわれ落札までいったものはわずか四件で、その余の十一件は競売の申出人がなく、競売中止となりました。  いま申し上げましたような事情から、私たちは次のような疑問点に到達したのでございます。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、本来せり上げの方法であるべきこの競売手続におきましては、当然競争者があればそれぞれ声をかけて最低競売価額、すなわち執行吏が最初に呼び上げた最低競売価格をせり上げていくはずでございますが、当日落札になった事件全部が、すべて参会した人の中の一人が、執行吏事件の呼び上げ、最低競売価額の告知と同時に、もう落札者の入るべき場所と定められております囲いの中に入りまして、係の者に保証金を積む手続をし、競買の申出人は自分一人であって自分が落札者であるというような態度をとっているのであります。この競買申し出の保証金は、法律によりまして、競落価額、すなわち申し出価額の十分の一とされておりますから、たとえばある不動産につきまして百万円というのが最低競売価額、ないし競買申し出価額であり、それ以上の申し出がなかったといたしますと、その者は申し出価額の一割を保証金として積まなければなりませんが、その十万円を納める場合には、執行吏におきまして、他に競買の申出人がないので、その競売手続が一応終了したことを確認し、その者が競落人になったという合い図をして後初めて右の囲いの中に入るものと思われますにもかかわらず、すべての事件において申出人が黙ってその囲いの中に入りまして、すぐに十万円の金を積む手続をしていたのであります。この人たちは結局、ほかに競落人すなわち競争相手がいない、自分だけが競買申出人であるということを確信し、これを前提としているような態度に思われたのでございます。そういうことが法規上はたして正しいものであるかどうか相当の疑問なきを得なかったのであります。  次は、そういう競落人の席に入る人は、すべて非常に場なれがしておりまして、競売屋または競売ブローカーあるいは少なくともそういうことを商売にしていると思われる人のように見受けられたのでございます。私たちが手続終了後係員に対し競落人名前を聞きますと、この人たちはどうも係の人が顔なじみのようであるにもかかわらす、債務者本人となっていたのでございます。すなわち、競買の申し出をした者は依頼者本人の名前を使っており、代理人であることの証拠がございませんでした。したがって、ほんとうにその揚に臨んで競買の申し出をした者は何人であるかということは記録上明らかになっていないように思われるのでございます。後に申し上げますように、私たちがあそこの常連と思われるような者の何人かを関係帳簿書類から書き出してもらい、その者が、先日警察庁の係の方がこの委員会において御報告になった例の暴力団員としてのリストに載っているかいないかということを調べていただこうと思いまして、一応昨年度中に二回以上競買人すなわち競落人になった人を指摘し書き出してもらったのでございますが、その一覧表によりますと、一番多いので二十一回、以下十八回、十五回、十回となり、それから二回というのが最低になっておりますが、この二回というのがはたしてほんとうの二回であるかそれとももっと多いのであるかということは、いま申し上げましたように、実際上はこの種競売屋などが競買の申出人になっているにかかわらず、帳簿の面では債務者本人名義になっている等の理由によって、帳簿面にはその真の姿があらわれていないのではないかという疑問を持った事例が幾つかございます。  次は疑問の第三点としまして、競売ブローカーと執行吏との間における涜職事件、すなわち競売手続をめぐる幾つかの事件によってかねて承知しています事柄との関連におきまして、当日見た限りにおきましては、そういよううな露骨ななれ合いないしは不当な様子は見られませんでしたけれども、今後さらにこの調査を続けたい、こういうように考えております。  なお、御参考までに申し上げておきたいことがございますが、それはこれらの調査を通じまして、私たちは六十三人ほどの競売関係者の名前を知ることができたのでございます。昨年度におきまして二回以上競落人になった者、あるいは東京地裁に起きました執行吏をめぐる競売関係涜職事件その他に名を出しておる者、それから東京地裁管内において有体動産競売に関与しております新霞会という古物商ないし競売ブローカーの団体のメンバー等がそのおもなるものでございますが、そういうような人々の中に暴力団員がいるかどうか何らかの関連があるかどうかということでありますが、この点についてはまだ回答が来ていませんんが、それが来次第資料を作成しまして、この報告の一部に加えたいということであります。御了承賜わりたいと存じます。  以上をもって報告を終わることといたします。
  59. 三田村武夫

    三田委員長代理 以上で専門員の報告は終わりました。  質疑の通告がありますのでこれを許します。横山利秋君。
  60. 横山利秋

    ○横山委員 先般理事会で、この問題について資料を要求し、かつまた調査をお願いいたしましたところ、いま御報告がございました。まことに聞けば聞くほど、この競売に関する問題が全国的にまさに律々浦々と言っていいほど正常なかっこうでなされているとは言いがたいと痛感されるばかりであります。一体この種の問題に裁判所はいかなる責任、いかなる職名の人が責任があるか法務省はどういう監督責任があるかその点をまず法規土明らかにされたいのであります。
  61. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 監督責任という点につきましては、執行機関が裁判所であるか執行吏であるかということによって若干違ってまいります。お尋ねの場合は執行吏の場合だと存じますので、執行吏の場合について申し上げますと、執行吏は所属地方裁判所監督に服するということになっております。したがって、直接の監督責任者は地方裁判所ということになると思います。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 法務省裁判所それぞれ責任の分野を明らかにしてもらいたい。
  63. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 私からお答え申し上げますが、執行事務の運営そのものについての責任は、裁判所ひいては最高裁判所になるかと思います。現実の運営面においては、法務省のほうは所管外でございます。立法等の問題は法務省の所管でございます。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 私は先般「ジュリスト」の、いまちょっと話が出ましたが、お二人の克明な不動産競売の実態並びに競売業者の実態の印刷物を読みまして、まことにかかる状態がすでに一裁判官あるいは一人はどなたでございますか克明に整理をされ検討されたということが、責任ある各関係各所においてこの状態がそのまま放置されておるということ自身が不可解きわまるような気がいたします。いまの専門員室の調査を見ましても、明らかに談合が公然として行なわれておる。そしていろいろな角度において、えんきょくな御報告はされておりますけれども、たいへんなたくさんの問題が内部に伏在をしておるという感じがしてならぬのです。先ほど竹谷委員の質問に対して、人がない、銭がないというお話がありました。そんなことはどこの省だって同じように言えることであり、問題は、この問題の重要性というものをどれだけ認識をしておられるかどうかということにかかると私は思います。それで、これはもう氷山の一角だろうと思うのでありますが、こんなに執行吏犯罪が続出しており、しかもその談合が白昼公然として行なわれ、だれが買ったのやらわからぬとか、あるいは前に、中には暴力団の存在がわかっておる、そして正義感に燃える裁判官がいろいろ努力をしておるということがわかっておりながら、単に銭がない、金がないということで一体放置され得るものかどうか。私は先ほどのあなたの答弁を聞いておりまして、これはもうこの人にいろいろ言ったってだめだ、私はこういう感じすら実はしたわけであります。これはより高い次元において、裁判所なりあるいは法務省なりが全力をあげて、この問題について徹底的な追及をするという姿勢の問題になるんじゃないか。銭がないのはどこだって同じことなんですから、要するに姿勢の問題だということを痛感いたした次第でございます。ですから、最初にこういうことを言っては恐縮でありますが、委員長にひとつお願いをしたいのであります。  先ほどの御答弁状況においては、これからいろいろな質問をするわけでありますが、事務的な問題の改善策にしかならないと私は思います。根本的に、これから追及いたしますもろもろの問題を含んで、法務大臣なりあるいは最高裁長官なりがまさに全力をあげて、かかるばかげたことが白昼公然と行なわれておるということを退治する政治的判断、決断というものをしてもらわなければ、お役人にここでいろいろどうだこうだと言ったところで、これは根本的な問題の解決には進まないと思う。事は単に私が言うまでもなく、理事会において満場一致決定し、理事会の決定をもって専門調査員に調査を命じたわが法務委員会の権威にも関することでありますから、この点について委員長に、この問題の扱いは、単に質疑応答にとどめないで、そして法務大臣なり最高裁なりにきちんとした処理をさせたいと私は痛感をいたしておるのでありますが、質問に先立って委員長の御所見を伺いたいと思います。
  65. 三田村武夫

    三田委員長代理 ただいまの御発言、そのとおり了承いたしまして、しかるべく処置いたします。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 私はたくさんの資料なり調査なりというものを読みまして、その中に一番問題としてたくさん含まれる一つの事例をあげて、そこから入っていきたいと思います。  「今ここに、典型的な実例、昭和二七年図第一五五号事件をあげよう。昭和二七年四月二二日強制競売申立。債権者、都内某相互銀行。申立債権額、元本十八万八百円。競売の目的物、家屋一棟。鑑定人の評価額、二五万円。同年五月二〇日。競売開始決定。第一回競売期日、同年七月二二日。申立債権者の申請により、期日変更。第二回競売期日、同年九月二日。競売中止。第三回競売期日、同年一〇月七日。A会社(代表者B)二五万円で競落。翌日競落許可決定。同年一〇月一四日債務者即時抗告(理由記載なし)、同年一月一九日抗告棄却。同年二月七日A代金不払により、再競売となる。第四回競売期日昭和二八年三月一〇日。競売中止。第五回競売期日、同年四月七日。C、Bを代理人として、二〇万円で競落。翌日競落許可決定。同年四月一〇日債務者即時抗告、同年八月七日抗告棄却。同年同月一二日債務者特別抗告。同年九月一六日特別抗告却下。同年一〇月四日C代金不払により再競売となる。第六回競売期日、同年二月一七日。D、Eを代理人として、五五万千円で競落。翌日競落許可決定。同年一一月二一日債務者即時抗告。昭和二九年一月二三日抗告棄却。同年一月二八日債務者特別抗告。同年三月一五日特別抗告却下。同年五月一日D代金不払により再競売となる。第七回競売期日同年六月四日。F、Bを代理人として、二〇万二千円で競落。翌日競落許可決定。同年六月一二日債務者即時抗告。同年八月一日抗告棄却。同年九月二五日F代金不払により、再競売となる。第八回競売期日、同年一一月五日。B本人として、一二万八千円で競落。翌六日競落許可決定。同年一二月二日B代金不払により、再競売となる。第九回競売期日昭和三〇年二月一一日と指定。利害関係人に期日通知書送達ずみ。B同年二月六日代金支払により所有権取得、同年二月一〇日、引渡命令をうける。右の内、Cを除き、他は全部競売ブローカーであることを、御承知願いたい。かような事件は、うんざりする程あるのである。」  これはうんざりするほどある中の一つだそうでありますが、これを見ますと、全く競売というものがおもちゃになっておる。そして競落をする、代金不払いをする、そして再競売にする、競落が許可決定をする、抗告をする、不許可になる、特別抗告をする、また再競売、どんどん、どんどんおもちゃにして、結局最後はだれもやらぬようになる。そして再競落、再競売といううちに不払い、価格を下げる、おもちゃにしておいて、一番最後にほんの少ない金で落札をする。こういうことが全く商売道具に使われて、これに踊っておる裁判所なり執行吏というものが何らの対抗策もないということが痛感されるのであります。いまずっと読んだだけでは、十分にこの事案の内容がおわかりにならぬかと思いますが、私の言わんとすることはおわかりであろうと思います。こういう事件がうんざりするほどあるという。この調査に対してどういう感じを持たれますか。
  67. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の文献につきましては、私も読んだことがございます。従来執行をめぐるいろいろなブローカーの活動によって、執行が適正に行なわれていないという実情については、いろいろな資料等がございます。それらの資料から見られるところも、大体弊害として措置されている点は、ただいまお読みになったような点だと承知しております。こういう事態が現在の競売制度をゆがめておるということは、まことに御指摘のとおりでございます。それではそれを漫然と放置しておる裁判所なり執行吏がけしからぬではないかというおしかりでございますけれども競売ブローカーのそれらの処置というものは非常に巧妙でございまして、法律規定で定めてあるところを最大限に利用してやってくる形になっております。裁判所にしても、執行吏にいたしましても、法律規定に従って競売強制執行実施するというたてまえに立っておりますときに、その裏面にはどういう目的があり、どういうような意図があるかわかりませんが、一応合法的な形できておるものを押えるということは、実はなかなか困難なのでございます。いまお読みの文献を書かれました裁判官の方々も、その実情に対して何か運用上チェックできることはないかということで三、三の試みをされたのでございます。その試みをされてある程度の効果はあがったかに見えたのでありますが、結局、見るべき効果をあげるに至らずして終わってしまったという事情がございます。これらのことをいろいろ見てまいりますと、やはり私どもといたしましては、運用の面でそれらを押えるということについても限度があるのじゃないか。やはり事は競売制度のあり方に関連するものでございまして、それに根本的なメスを入れて、そういうようなブローカーも活動する余地をなくすような方向に持っていかなければいけないのじゃないか現在のところはそういうように考えておる次第でございます。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 裁判官というものが良心的に運用で自分の正義心に基づいて何かやろうとしたということは、裁判官が本来そういうことをなさるべき責任ではないように私は感ずるわけです。むしろ、あなた方自身が、だれか一生懸命やってくれたけれども、どうもうまくいかなかったのですと、他人事で言われることが、私には気に食わないのです。もしも法律上、向こうは法律を全く運用しておる、自分のほうも法律を順守しなければならぬから、それじゃどうしようもないですよということでなく、法律改正することによって是正されることが必要であるならば、これは暴力法みたいな妙なものに一生懸命にならずに、もっとこういう方面に改正をされる必要があるはずだと私は痛感をします。  それからこまかくなりますが、その人の話を二、三、あなたはお読みだろうと思いますが、同僚諸君のために読みますと、「競売業者はこの日報を買入れて、それにより競売事件の大要を知りうるのでありまして直接競売業者が公告を見て不動産競売事件を知ると云うことは少いようであります。尤も第一回の競売新聞公告をするのでその新聞で知り切り抜きをして手控に貼付けたのを見受けることがありますが、第二回以後は新聞に出しませんから日報による以外は判らないと思います。裁判所の掲示板の公告も何処にあるのか知らぬ人も多く在るところを知っていても平時は金網で戸を締めて錠が掛っていますからどのようにして開けて貰うのか開けて貰っても沢山一緒に公告してあるのでどれが何時公告に出たのか素人には一寸判らないだろと思います。先日或る記録を見ていましたところ、右のような裁判所の公告は一般人に公告が判らないから不適法だと云うことを抗告理由として書いていたのがありまして、抗告審ではそのようになっている証明がないとして抗告理由を認めなかったようでしたが、苦笑した次第です。」私も裁判所の前へ行って、金網が張ってあって、そこに白いペラペラの薄い紙がぎょうさん張ってあるのをときどき見ます。あれが公告をしたのだ、それで裁判所なり役所は責任を果たされたのだ。そして裁判所も、そういうやり方では不適法だといった訴えを、そういうことはそのようになっている証明がないとして抗告理由を棄却した。こういう官僚的なやり方というものはどう思いますか。
  69. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 公告のやり方について問題のありますことは、ただいま御指摘のとおりでございます。法律考えておりました公告というのは、文字通り裁判所の掲示場に公告すべき書類を張り出して、そこへ来た人がすぐ見られるという状態にすることが、おそらく法律考えておったところだろうと思うのでございますが、実際問題といたしましては、公告すべき書類というものが相当多数ございまして、これを掲示場に全部張り出していって一般公衆の目にさらすということは、実際問題としては不可能でございます。そこで公告掲示場には一応先ほど御指摘のありましたような金網を張ったところにかけてありますが、あの金網は紛失を予防するためのものでございますけれども、そこに書類を掲げてありまして、その中身は別のところで見たい人は見られるというような形で処理するというのが、現況としては精一ぱいのところというのが実情でございます。
  70. 横山利秋

    ○横山委員 それならあなたの言っておられることは、金網はないも同然だ。金網をかけて、中に何かぎょうさん何だかわからないようなものが束になってくぎにひっかかっています。そしてそれで法律上の公告が済んだ、みんなに見せるのはとても不可能なことだというなら、してないも同然じゃないですか。そして特定個人にしか見えないようなしかけになっているのじゃないですか。それでもって裁判所は、公告がなされておる、法による手続が行なわれておる。そしてそういうようなのは不適法だと言ったやつに対して、そういうことの証明がないから棄却する。それからみすみす少数の競売ブローカーにだけ情報が出るような仕かけになっているのじゃありませんか。
  71. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 御指摘の点はごもっともだと思うのでございますが、金網は先ほど申し上げましたように紛失予防のためでございます。特定の人にだけしかその中身を見せないというわけではございませんので、この金網の張ってある中の公告書類を見たいという者に対しては……(横山委員「金網の中に何が張ってあるのかわからぬのに、見たいという人がありますか。」と呼ぶ)その点は、あるいは御指摘のとおりかもしれませんが、しかし、あそこに公告が出ている、一体どんな内容の公告であるかということを知りたいという方は、裁判所構内にそういう公告番数を全部閲覧できる施設がございますので、そこで見ることは見られるわけであります。
  72. 横山利秋

    ○横山委員 それなら、金網はあなたの言を待つまでもなく不必要なものですよ。金網なんというものは、あれに競売の公告だけが出ているならわかるのですよ。けどれも、ほかのものも全部ついているのですから、それで金網をかけてかぎがかかってあるのですから、それはまるきり何の意味もないじゃありませんか。そこに何が書いてあるか見たい人はどこかに行ってくださいということ自身が、矛盾撞着しているのじゃありませんか。裁判所では、そこの金網に公告してあると言いたいのでしょう、ほかの閲覧場所は——それが公告だ、法律に基づく公告だと言い張るのですが、金綱が法律上の立場における公告だというつもりでしょう。それは何の益もない。何の意味もない。こういうことを私は言っている。ものの考え方です。
  73. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 御意見が分かれるかと存じますが、金網は先ほど申し上げましたように、公告書類の紛失を防止するためのものでございます。紛失されたということになりますと、それは公告していなかったということになるわけでございまして、紛失予防のための措置として、金網はどうもやむを得ないのではないかと私ども考えておる次第であります。ただ、先ほども申し上げましたように、公告の目的は、一般公衆がその公告書類の中身を知り得るというところにあるかと思うのでありますが、その最も容易な例は、掲示場に全部張り出して、見ただけですぐわかるというようなやり方が、一番公告の趣旨に合致したやり方であると私どもも存じますけれども、先ほど御説明申し上げましたような事情で、それが実際上不可能でございますので、公告の趣旨を生かして、精神を生かして、見たい者には見られるという状態に置いてある。それは裁判所によりましては、金網を守衛に言ってあけてもらって中身を見ることも可能なような措置をとっておるところもございます。そうではなくて、別の部屋で見たい者に同じ内容の書類を見せるというやり方をやっておるところもございます。これは意見の分かれるところかと存じますが、現状においては、公告制度の趣旨を生かす一番妥当な方法としてやっておるというふうに私どもは理解しておるわけであります。
  74. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ次のところを読みます。「午前十時と同時に執行吏競売事件記録を競売場に出し一般の閲覧に供します。法規の上では一般に閲覧させることになっておりますが、閲覧の時間になるとこの記録は競売業者の奪い合いとなるのです。競売業者は競売期日外は記録が裁判所にあっても見ることができませんのでこの機会に記録を見て賃貸借関係、公租公課関係競売物件の具体的な事柄を鑑定書、賃貸借取調報告書、公租公課証明書について調べて自分の手控に記入する訳です。それですから閲覧と云っても時間がかかり業者が見るだけで一杯で一般の人は見る時間はなく、業者がいるところへ一般の人が手を出したりすると凄味のある目で一にらみされ、思わず手を引込めるのが落ちでしょう。」これはどう思います。
  75. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 先ほどの御質問に対して、私の説明に漏れがございましだが、公告は新聞公告も併用してやっております。すべてがすべてというわけではございません。事件によって新聞公告をやっておるという補助手段も一応使っておるわけであります。  それは別といたしまして、ただいま御指摘の、実情がそういうふうになっておるということは非常に遺憾なことだと存じます。ただ先ほど専門調査員の方から御説明がありましたように、不動産競売の場合は、東京で申しますと、十時に記録の閲覧が開始されます。その記録の閲覧は、たてまえとしてはだれでも見られることになっておるのでございますが、実際上、いわゆる不動産業者、競売ブローカーといわれる人たちが、それらの記録をいち早く取って見ておるというようなことで、なかなか気の弱い者は自分でそれを見るということは困難な実情だということは、そういう現象はあろうと私ども考えておりますが、それを是正する方法といたしましては、結局、競売場における現実の競売開始前の記録の閲覧のところにおいて、何か組織的な閲覧方法と、執行役場の職員がそこに出張って閲覧の順序その他について指示してやるというような方法でしかその問題はなかなか解決困難じゃなかろうか私どもはそういうふうに考えております。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 たよりない話ですね。もうばからしくて私は再質問ができぬような気がいたします。執行吏が行って、あんた今度の番だ、あんたは今度の番だなんてやらなきゃやれんだろう、こんなことしか解決方法がないと思いますなんて、もう少しこの機会に私どもの質問に対して実情を、私どもと同じようなことを言っておらないで、何かじゃあ思い切ってひとつ考えてみますと、同じベースで同じ土俵に立って考える気持ちになってください。何か一生懸命抗弁これつとめて、もう解決方法がないんだと言わぬばかりの話ばかり聞かされたんでは、私はうんざりしますから。そういう気持ちで一緒になって、本委員会で理事が集まってひとつ何とかしようという気持ちになっているから、あんたもその気になって、こうしたらいいだろうという気持ちになってこの問題に当たらなきゃだめですよ。  その次は、「抗告で抗告状に抗告理由の書いてないのは全部といってよい位で背後に競売業者又は事件屋(三百)が居ると見れば間違いはないようです。抗告状に理由を書かないのは大審院が理由を書かなくとも、これは抗告の要件としていないから抗告は適法だと、大正十三年四月二十二日決定して以来この種の業者に悪用されているのであります。何といっても百円貼って抗告状に理由を書かないで出しても執行停止の効力があり、業者は五千円位抗告手数料が儲かるようですから、競売業者は抗告様々です。その上に競買するため預った談合金とか保証金とかの名義で一度受取った金は競落できなかった時でも、彼等は刑事問題にならない限り返さないのを常識にしており、尚その上抗告中は自分の力で延びているようにいって毎月延期料を取るのでありますから、競売業はやめられないようです。このことは吾々はその被害者から常に聞かされることであります。そして引延し料の如きは別段引延しに努力しなくとも競売期日毎に債務者から取上げ私の調べた事件では、三十五万円の債権で競売されているのに五回に引延し料を十七万円も競売業者に絞り取られたのがありました。全く嘘のような話ですが溺れる者はわらでもつかむの例えで、業者はこれをよいことにしてうまいことを云って金を取り債務者は何とかして貰う積りで金を都合しては払いずるずると深みに引込まれるのでしょう。」問題は法律的な問題です。ここはどうですか。
  77. 中村治朗

    中村最高裁判所長官代理者 その抗告状に理由を書かないでもいいという大審院の決定に従ってそのように実際行なわれておるということは、そのとおりでございますが、そういう現在の法規上のたてまえを悪用してそういうことをやってくることに対する対処の手段としましては、先ほど申しましたように、やはり手続及び制度の両面から、すなわち抜本的な改革、これは立法論になりますが、そちらのほうで解決しない限り抜本的な解決はつかないのじゃないだろうか。そういう見地から先ほど竹谷議員の御質問にお答えいたしましたように検討を続けておるわけでございます。先ほど私の答弁が非常にことばが足りませんために誤解をされましたことを非常に残念に思うわけでございますが、私どもといたしましても、現在の制度がこれでいい、打つ手がないからやむを得ないとして放置しておるわけでは決してございません。ただ抜本的な改革ということをしない限り現象の一、二をいじってもどうにもならないんじゃないか。だから事は抜本的な改革の問題だ、そういう角度から立法上の措置について法務省に御協力申し上げて検討を進めておるような状況なのでございます。
  78. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま強制執行競売手続につきまして、現在の実例についていろいろ欠陥の御指摘があったわけでございますが、最高裁民事局長からもお答えございましたように、現行制度運用と申しましても、これは限度がございますので、やはり制度自体の改正の必要があるということで、法務省に設けられております法制審議会におきましても、ここ数年来、強制執行競売制度改正の問題を検討いたしておるのでございます。その検討の項目といたしましてはずいぶん多岐にわたっておりまして、多くの問題があるわけでございますが、その中の一つの大きな問題点が執行吏制度をどうするかという問題なのでございます。これもまだ最終的な結論が出ておる段階ではございませんけれども一つ意見としまして、執行吏制度をやめまして裁判所の恒久制度にする。裁判所の職員として執行官というものを置いてはどうかという有力な意見があるわけでございます。現在執行吏あるいは執行裁判所の権限に属しておりますものの一部をこの執行官に移すという大体の方向になるわけでございます。そうなりますと、この強制執行競売関係法規の全般に影響が及んでくるわけでございます。  それから、なお問題点は、ひとりこの執行吏制度だけではなくて、手続にも幾多の問題があるわけでございまして、まず私ども常識的に考えましても、たとえば不動産の競売を動産と同じようにセリでやるというようなやり方が、はたして一体合理的なのかどうかということもございます。それから、根本的に、これは債務者がその意思に反してやられるというところに一般の不動産の売買とは非常に違った特色がございまして、いろいろの障害が出てくるわけでございます。先ほど刑事犯の問題も出ましたけれども競売期日の公告がはぎ取られる。債務者としては非常に残念なことでございますので、債務者がそれを持っていくこともあり得ましょうし、だから金網というようなことになると思うのでございます。それからまた、建物か何かでございますと、現にそこに債務者が住んでおる。なるほど引き渡し命令という制度はございますけれども、はたしてこの債務者が、買い受けてもすぐ出てくれるかどうかその点に非常に不安がある。そういうわけで一般の人はなかなか近づきにくいという点で、ひとり競売ブローカーの介在ということだけじゃなしに、一般的な条件が非常に悪い。そういういろいろの悪条件があるわけであります。これを合理的に、債務者にも債権者にも最も有利に売却するにはどうすればいいのか手続き自体にもいろいろ問題がございまして、法制審議会におきましても鋭意検討中なのでございます。相当検討を始めまして時間がたっておりまして、改正案が早急にできませんので、はなはだ申しわけないと思っておるわけでございますが、法務省におきましても、できる限り早い機会にこの改正案をまとめまして御審議を仰ぐという考えでおるわけでございます。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 法律上の問題と、それから現在においても是正を即刻なし得る問題と両方あると思うのですが、次に申し上げるのは、現在においてもあたりまえの方法で改善される方法がある。それは「競売が始まりますと競売業者は右図に示す斜線部分に集結します。そして人垣を作り、人垣の中でも旧顔のような者が前に出てよい場所を占めます。このような人垣を作ることにより競売業者以外の者は前方に出ることができないような態勢を作ります。この人垣は業者以外は素人衆は勿論弁護士と錐もこれを突破することが出来ず後から突入しようとでもしたら人相の余りよくない業者の連中がギロリと凝視するので大抵の者はブルブルとして後へ戻ります。それでも前の方へ出ようとすると腕を持って廊下の方へ引張り出していたとかです。」それから、「又競売するには保証金を競買申立額の一割を予め提供さして競り合いさせますが、業者の中には札束を新聞紙に包んだ儘とか財布の儘とか布呂敷に包んだ儘執行吏の前に出し執行吏はそれをその儘認めて競り合いさせているのを時折り見掛けたことがありましたが、このような保証の提供の仕方は、相手方に保証金を真実提供しているかどうか判らせないのであるから、私は違法だと思います。」とか、「又業者の中には債務者所有者が買戻、競買流しに応じないときは、競落許可決定が確定すると代金払込みをしなければならなくなるので、これを引延すために債務者所有者の了解を得たり、得なかったりして債務者所有者名義の印を作りそれを用いて抗告をする。そして抗告審で審理中に買手を不動産業者又は新聞広告で探して売付け抗告を取り下げて代金払込をする業者もあります。今年の六月中にこのような事件が一件あって、本人の知らないうちに無断で他人の名義で抗告するとは無茶なことをするものだと驚いています。競売業者は他人の依頼により右に述べたようなことを業務としてやっていますが、業者の云う通り金を出すと頼んだ通りに仕事を普通の場合はしますが、依頼者が思うように金を出さなくなると信義も何もなく、儲かる方の話に移って行き、彼等の節度と云うものはないようであります。従って金の在る内だけ親切で、金の切れ目が縁の切れ目で幾ら金を払っていても完全に金を払わない限り何時他へ廻されて売られるか判りません。若しそのことでうるさくでも、こちらで云おうものなら、反対に嚇かされると云う具合で、彼等の事務所は全く社会の暗黒街の一部分とでも云えるのではないでしょうか。」  この詳細をきわめた報告を見ますと、裁判所という社会を明るくするための正義感に燃える灯台のもとで全くでたらめが行なわれている。よくもこれで裁判所というものが社会の信頼を集め得るものだと私は驚嘆せざるを得ないのであります。大体国民一般にとりましては、裁判だとかなんとかいうものはうるさいものだ、またむずかしいものだ、裁判所へ行っても何か圧迫感があるものだという感じがありますけれども、そこには正義がある、そこでは理屈が通るという感じをまた一般国民は持つわけであります。その社会を明るくするための灯台のもとで白昼公然堂々とかかることが横行しておって、ときたま正義感に燃える一裁判官が努力をして多少の光を与えたところで、あなたの言われるように、どうやらなってしまう。それを法務省法務省のほうで、多年研究をいたしておりましてなんという、そんな間の抜けた答弁を今日されているようでどうなろうかという感じが私はしてなりません。この機会に、次会までに、法務省法務省で、現在このような問題についての検討すべき問題とその実情、現在検討しているもの、今後検討しようとしている問題点、そうしてその改善の方向、そういうものをメモ書きでもよろしいから提出してもらいたい。それから裁判所のほうは裁判所のほうで、現状における改善点——現状において私が言うことは、ジュリストに載っているわけでありますから、あなたもお読みになって、これらの指摘を受けている問題についていかなる改善が行なわれ、今後いかなる改善をしようとするのか場合によれば法律改正の問題を含んでもけっこうでありますが、現実における改善をすべき点、その方向というものを提出してもらいたい。こういうふうにお願いをしておきます。  競売業者がめちゃくちゃをやっておる。全部が全部ではもちろんありませんが、少なくとも、この文章を見ましても、全く大多数の者がそういう雰囲気に染まっているということも、原因の中に、執行吏がき然たる業務をしていないという点については見のがすわけにいかない。また、執行吏監督する立場にある役所というものが、き然としてその執行吏を指揮し、指導しているとも私は思えない。この点については、執行吏の問題については、また後日に譲りますけれども、本日は時間もあまりなくて、質問をしておってもいかがかと思いますので、この問題は裁判所並びに法務省から提出される誠意のほどを待ってあらためて質問をいたしたい。
  80. 三田村武夫

    三田委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後一時十七分散会