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1964-05-28 第46回国会 衆議院 法務委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十八日(木曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長代理 理事鍛冶 良作君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       大竹 太郎君    坂村 吉正君       四宮 久吉君    田村 良平君       本名  武君    中川 一郎君       古川 丈吉君    森下 元晴君       神近 市子君    中嶋 英夫君       竹谷源太郎君  出席政府委員         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君  委員外出席者         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 五月二十六日  委員寺島隆太郎君及び服部安司君辞任につき、  その補欠として坂村吉正君及び本名武君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三四号)(予)      ————◇—————
  2. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長所用のため出席ができませんので、その指名によって私が委員長の職務を代行いたします。  民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。前会に引き続き質疑を行ないます。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 前回は大体一般的な質問をいたしましたので、きょうはその条文について二、三お尋ねをいたしたいと思います。  第一番目でありますが、この手形訴訟の主要な内容をなしておるものは証拠方法制限などであります。その制限についてお尋ねをいたしたいと思います。  それで第一でありますが、証拠方法書証のみに制限をいたしておる、これは四百四十六条でありますが、制限をいたしまして、証人尋問を排しているのであります。まずその理由からひとつお聞かせを願いたいと思います。
  4. 平賀健太

    平賀政府委員 手形訴訟の非常な特色は、ただいま仰せのとおり証拠方法制限でありまして、証拠調べ原則として文書だけに限りまして、しかも文書を提出してする心書証のみが許されておることはただいま仰せのとおりでございます。証人をやめましたのは、旧民事訴訟法におきまして、またこれと同じような制度を持っておりますドイツ、オーストリアなどにおきましても同じでございますが、要するに証人を許しますと審理が非常に二長引き、手形訴訟を迅速に結論を出すという趣旨と合わないということからきておるのでございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 それで、書証でありますが、書証範囲と申しますか、そういうものはどういうふうにお考えになっておりますか。
  6. 平賀健太

    平賀政府委員 書証は、ただいま申し上げましたように、手持ちの文書を提出して立証するという制限がございますけれども、その文書種類については別に制限がないわけであります。ただ一つ考えられますのは、ただいま仰せのとおり証人は適当な証拠ではないわけでありますが、証人尋問にかえまして供述調書のようなものをつくりまして出す。これは証人が認められないという原則に対する脱法を行なうことでありまして、そういうものは証拠能力がないという解釈になると思うのでございます。特に証人禁止趣旨を免れるために、証人となるべき人の陳述を聞きまして、それを書き取りまして出す、そういうことは許されないと思うのでございます。そうでない限りは文書はいかなる文書でもいい。ただ性質上おのずからこれは限られますけれども、文書種類については制限はないと思います。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 それでこの書証との関係でありますが、たしか旧民訴においては証拠方法書証一本にしぼっておったと思うのでありますが、訴訟の迅速な処理という面からいうならば、むしろ旧民訴のようにやるべきであって、当事者尋問も、いまのようなお話ならばやめたほうがいいのではないかと考えられますが、いかがですか。
  8. 平賀健太

    平賀政府委員 私どものほうの立案の段階におきましても、ただいま仰せのような意見がございましたが、文書、特に一番基本となりますものは手形が一番有力な証拠方法でございますが、手形成立を否認されるというような場合に、ほかの文書によってその成立立証できる場合もございましょうけれども、それではやはりどうしても立証が不十分である、そういう場合には本人尋問だけを許すことにしてはどうか、文書真否については補充的に本人尋問を許すことにしてはどうかという意見も出まして、結局、そちらのほうがいいだろうということになりまして取り入れたのでございますが、どれにつきまして直接の参考としたわけではございませんけれども、ドイツ民事訴訟法におきましても、最初文書だけであったのでございます。ところが、その後改正によりまして、この法律案にもございますように、文書真否手形呈示に関する事実については本人尋問も許す、なお、そのほかに手形請求原因たる事実以外の事実、主としてこれは抗弁事実については本人尋問を許すということでドイツ民訴はできておるようでございますが、そこまでは広げる必要はないだろう、旧民訴現行ドイツ児訴の中間ぐらいのところでこれを落ちつけたわけでございます。文書真否手形呈示に関する事実については本人尋問を許す、非常に限られた範囲におきまして本人尋問を許しましたので、手続がそう遅延するということもないだろうというわけでございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 えらいくどいようでありますが、そういう書証一本でやるということならばそれでわかるのでありますが、せっかく当事者尋問を許したというような立場に立つならば、この文書真否及び手形呈示だけを尋問事項にするということばどうも割り切れない気がするのでありますが……。
  10. 平賀健太

    平賀政府委員 ドイツ民訴におきましては、いま申し上げましたように、手形請求原因たる事実、これは文書のみに限っておりますが、その他の事実、抗弁、再抗弁、こういうふうなものについては本人尋問を許しているのでございますけれども、どうも本人尋問だけでは実際問題としてなかなか心証がとれない、原告側で申し出ました本人原告自身尋問を受ける、あるいは被告自身尋問を受ける、それぞれ自分に都合のいい供述をするということがございまして、裁判所としてはなかなか心証がとりにくいのじゃないかということが考えられます。そういう関係で、ドイツ民訴のように抗弁事実なんかにつきましても本人尋問を認めるということになりますと、かえって裁判がしにくくなるおそれはないかただ文書真否につきましては、これは手形訴訟の生命でございます。これだけは本人尋問を許したほうがよかろう。ところが本人尋問と申しましても、普通の手形、これは個人振り出し手形ということもございますけれども、大体法人が振り出す場合が少なくない。そういう場合には代表者を呼んで、代表者本人ということで尋問を受けるわけでありますが、手形行為の実際を担当しているのは必ずしも代表取締役なり、法人代表者とは限りません。むしろ事実関係をよく知っているのは使用人である場合もあり得るわけなんでございます。でありますから、本人尋問と申しましてもこれはほんとうに補充的なものであります。本人でその点が立証できればということなのでございまして、本人尋問してもあまり役立たない場合もあり得るわけなんでございます。ある場合においては気休めになるようなおそれもなきにしもあらずで、あくまでこれは補充的なものでございます。そういうわけで精神はやはり文書のみに限る。本人尋問というのはほんとうにこれは補充的なものだということなのでございまして、立証文書のみに限ったのとあまり違わないのじゃないか。実際の運用におきましてはそういう結果になりはしないかと私ども考えておる次第でございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御説明で触れられましたから、その辺にして、この当事者本人という観念についてであります。そういたしますと、いま会社の問題をお出しになりましたが、たとえば何々会社社長の何がしといって振り出してある手形につきましては、いまお話がありましたように、実際は社長印専務が預かっていた、そうして専務振り出しをするというような場合、いわゆる専務本人には入らないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  12. 平賀健太

    平賀政府委員 それは四百四十六条の三項でございますが、「当事者本人ハ訴訟ニ於テ当事者代表スル法定代理人」、専務取締役会社代表権があればこれはよろしゅうございますけれども、代表権がない取締役でございます場合には、これは尋問できないということになるわけであります。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 もちろんむすこおやじ名前を書いて振り出したような手形には、当然むすこは入らないということになるわけでございますね。
  14. 平賀健太

    平賀政府委員 おやじ名前を書いておりますれば、おやじさんが当事者本人ということになるのでございます。むすこは入らないわけでございます。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 その次は証拠調べ嘱託を禁止しておるのでございますが、これは当事者尋問を許しておるというこの法律趣旨からいたしますと、当事者尋問をする場合においては嘱託を許してもいいんじゃないかというふうに考えられるのでありますが、その点はどうですか。
  16. 平賀健太

    平賀政府委員 この本人尋問は先ほど申し上げましたように補充的なものでございます。やはり嘱託本人尋問をいたしますと、それだけ訴訟が遅延するということになるわけでございます。これもやはり認めないということにしまして、できる限り早く結論に達するようにという趣旨でございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、この嘱託当事者尋問は許さないのでありますが、通常いわれておる臨床尋問というようなものはどうされるわけですか。
  18. 平賀健太

    平賀政府委員 それはできるわけでございます。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 それからいま一つ証拠についてお聞きしたいのでありますが、民訴の三百二十七条によりますと、文書真否については筆跡または印影対照によって立証することになっておりますが、今度のこの規定からいいますと、書証以外のものは出せないのでありますので、筆跡または印影対照による立証というものはできないように思うのでありますが、その点はいかがですか。
  20. 平賀健太

    平賀政府委員 これは書証に関する規定が、やはり一般的にはできるようになるわけでございますので、筆跡印影対照は許すわけでございます。その趣旨でございます関係で、四百四十六条の二項におきましては、二項の後段でございますが、「対照用ニ供スベキ筆跡ハ印影具フル物件ニ付亦同ジ」、筆跡印影対照を許すのであるから、その対照の用に供すべき物件提出命令を出したり、あるいは送付嘱託をすることはできない。当事者が所持しておるものを提出することは認める。提出して立証手段に供することは可能であるわけでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 これは所持しているものといっても、文書になっているものでなければ許されない。たとえば判の実物を出すというようなことは許されないのですか。
  22. 平賀健太

    平賀政府委員 それは所持しておる印鑑を出すことは可能でございます。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 書証のほかは許されないという……。
  24. 平賀健太

    平賀政府委員 それを出せという命令を出したり……。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 人が持っているものを出せというわけにはいかない、こういうわけですか。
  26. 平賀健太

    平賀政府委員 自分の持っているものを証拠として提出して対照してもらうということは可能でございます。
  27. 大竹太郎

    大竹委員 それでは仮執行宣言についてお聞きしたいのでありますが、これは職権で仮執行宣言がつけられるようになっておりますが、これは民事訴訟当事者主義と申しますか、そういう面と非常に矛盾するように考えるのでありますが、その点はどうお考えですか。
  28. 平賀健太

    平賀政府委員 現行法におきましては、御承知のとおり原告側は仮執行宣言を求める申し立てができることになっておりますが、裁判所はその申し立てに拘束されずに、自由裁量でもって仮執行宣言をしたり、しなかったりすることができることになっておるわけであります。ところが、手形訴訟を設けたそもそもの目的が、迅速な解決を与える、証拠方法を非常に制限した迅速な手続によって、できるだけすみやかに権利者救済を与えるという趣旨でございますので、これは職権で仮執行宣言を付する、裁判所裁量を認めないということにしたわけでございますが、ただいま、これは弁論主義原則に反しないかというお尋ねでございますけれども、そもそも手形上の権利者がこの手形訴訟を選ぶということ自体が、すみやかな解決を求めればこそ、そういう為替訴訟手段を選んだわけでございますので、権利者の意思に反するわけではございませんし、職権で仮執行が付せられるという手形訴訟の道を選ぶ自由というものが原告側にあるわけでございますので、口頭弁論主義原則に反するということには相ならぬだろうと思うのでございます。
  29. 大竹太郎

    大竹委員 次に、執行停止の問題でありますが、民訴の五百十二条ノ二でありますが、原判決の取り消し、または変更の原因となるべき事情について疎明するというように、これよりも非常に厳格になっておるわけでありますが、この点についての……。
  30. 平賀健太

    平賀政府委員 現行手続の上におきましては、敗訴当事者が上訴いたしまして、担保を積めば執行が直ちにとまるというたてまえになっておるのでございます。そういう関係で、せっかく手形訴訟で迅速に結論を出しまして、仮執行宣言をつけましても、敗訴しました被告のほうで異議申し立てをして、担保を積んで、それで執行がとまるというのでございましては、手形上の権利者に迅速な救済を与えるという趣旨が貫かれないことになるわけでございますので、こういう執行停止には他の場合と違った制限を付しまして、執行停止をしにくくしたわけでございます。手形の信用を高めるためにはこれがやはりどうしても必要である。手形訴訟というものを認める以上は、手形金請求事件についてそういう特別の訴訟手続を認めるのと同じ根拠に基づきまして、執行停止を困難にいたしたのでございます。
  31. 大竹太郎

    大竹委員 次は四百四十四条の手形訴訟訴訟物についてお聞きをしたいのでありますが、この規定によりますと、「手形ニ因ル金銭支払請求及之ニ附帯スル法定利率ニ依ル損害賠償請求」こうなっておりますが、御承知のように手形法の五条では、一覧払いまたは一覧定期払い手形につきましては、法律上の約定利息を認め救い、そしてまた手形に記載することができるようになっておりますが、いかがですか。
  32. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいま仰せのとおり、手形法によりますと、一覧払いまたは一覧定期払い手形利息約定を記載することができることになっております。これは四百四十四条の規定で申しますと、手形による金銭支払い請求というこのなかに利息金請求も含まれるという考え方なのでございます。手形から直接生ずる請求権という意味におきまして、この手形法五条にも書いてあることでございますが、この利息請求権手形による金銭支払い請求権の中に入るという考え方でございます。そうなりますと、これに附帯する法定利率による損害賠償請求というのは、これは約束手形などについてよく例がございます。手形呈示期間内に呈示をいたしまして、支払い請求いたしますと、当然約束手形振り出し人は、満期後の法定利率による法定利息支払い義務を当然負うことになるわけでございます。その場合の法定利息手形による金銭支払い請求権に入るわけでございます。ところが、その呈示期間内に呈示しないでおいて、呈示期間経過後に呈示をする、あるいは裁判所請求をする、そういう場合にはこれは遅滞におちいりますけれども、それは厳格に申しますと、手形上の請求権、それは手形法には規定がないわけで、一般原則によりまして、やはりさらに法定利率年六分の遅延損害金支払義務を負うということになるのだろうと思います。厳格に言いまして、手形法上の請求権の中にそれが入りません関係で、特に四百四十四条の後段におきまして、これに附帯する法定利率による損害賠償請求というのを付加したわけでございます。それも実質的に申しますと、呈示期間内に呈示があった場合の満期後の法定利息と実質的には同じでございまして、法律上の性格は違うとも言えるのでございますが、実質的には同じものでございます。手形金請求と実質的に同じものという意味でこれだけは請求ができるのだということでもってここに書いてあるわけでございます。先ほど仰せ手形法五条に規定してございます手形に記載されました利息約定、この約定に基づく利息請求、これは手形による金銭支払い請求の中に含まれる、そういう解釈でございます。
  33. 大竹太郎

    大竹委員 そういたしますと、その面の心配はないと思うのでございますけれども、規定の上からいきますと私のような疑問も起こるわけでありますので、「之ニ附帯スル法定利率ニ依ル損害賠償請求」というその前のほうに、むしろ手形上で示された利息またはこれに附帯する法定利率による損害賠償請求、というような規定のしかたをしたほうがはっきりするのではないでしょうか。
  34. 平賀健太

    平賀政府委員 四百四十四条で「及」といたしましたのは、手形呈示期間後に呈示いたしまして、手形上の主たる債務者遅滞におとしいれて、その遅延損害金請求ができることになるわけでありますが、遅延損害金請求だけを目的とする訴えは認めないという趣旨でございます。手形上の遅延損害金が付帯的に請求する場合にだけこの遅延損害金支払い請求を認めようという趣旨でありますので、「又ハ」といたしますと、遅延損害金請求だけが認められるということになってしまいまして、それはやはり困りますので「及」ということにいたしたわけでございます。
  35. 大竹太郎

    大竹委員 そういたしますと、当事者間に損害賠償特約があるというような場合におきましては、当然特約による請求権というものは手形訴訟の上では認められないということに考えてよろしゅうございますか。
  36. 平賀健太

    平賀政府委員 手形外特約によりまして遅延損害金約定がなされておりましても、手形訴訟では請求できないということでございます。
  37. 大竹太郎

    大竹委員 次に手形訴訟手続について二、三お聞きいたしたいと思うわけでありますが、この規定によりますと、訴状に記載することを要するというふうに書いてあるのでありますが、これは口頭またはそれに準ずる手段による手形訴訟というものは全然認めないという趣旨であるかどうか。また、あとから原告書面によって追加というか補充するということは許されない趣旨でありますか。
  38. 平賀健太

    平賀政府委員 これは仰せのとおりでありまして、訴状に記載しなくてはならない。訴状を出した後に口頭または書面手形訴訟をやってくれということは認めないという趣旨でございます。それはやはり、黙って訴状が出ますと、これは一応通常訴訟でということになります。通常訴訟でやったのを途中で手形訴訟に変えるということは認めない。被告のほうでも、訴状送達を受けますと、これは手形訴訟でやられるのだということで応訴の準備もいたしますので、最初から手形訴訟訴状によってやっていくというたてまえにいたしたのでございます。こうすることが手続を簡易化するという根本精神にも合うのではないかということで、これは旧と同じでありますが、この点は従来の制度を踏襲いたしたのでございます。
  39. 大竹太郎

    大竹委員 次に、手形訴訟から通常訴訟に移る場合の問題でありますが、この選択権原告にだけ与えられているのでありますが、これは職権でやるというようなことをお考えになっておるのか。職権でやることの道を開いておいたほうがいいのではないかというようなお考えがあれば伺いたいし、また、場合によっては被告側にも考えてもいいのではないかというふうにも考えられるわけですけれども、その点はいかがですか。
  40. 平賀健太

    平賀政府委員 職権で与えるというような必要は、たとえば手形訴訟ではいけない請求手形訴訟でやってきたというような場合には、何か職権でやったほうがいいような感じもするのでございますが、これは普通釈明権の行使で裁判所がサゼスチョンすることによってある程度まかなえばしないか。四百四十四条で、手形訴訟でいける請求範囲が非常にはっきりしておりますので、手形訴訟でいけないような請求をしてくるということは普通考えられません。そうなると考えられる場合としましては、どうも原告側立証ができない、このままいけば敗訴になるよりほかはない、通常訴訟に移して十分証拠調べをすれば原告請求が認められるかもしれぬというような可能性がある場合に、あくまで原告ががんばって、いや手形訴訟でやってくれと敗訴になるのはわかっているのにがんばるというような場合だろうと思うのでありますが、これはしかし原告の責任でありまして、原告が希望しないのに裁判所職権通常訴訟に移すというような必要はないのではないかと思われるのでございます。  それから、被告申し立て権が与えられますと、これは被告としては、できるだけ裁判が延びるほうが一般的にいいわけでありますので、通常移行申し立てをいたしまして、訴訟でもって引き延ばすという機会を与えることになります。それゆえこれを被告側に与えるということは不適当である、せっかくの手形訴訟がそのためにだめになるということになりますので、被告側にこの移行申し立てを許すということは好ましくないと思うのであります。
  41. 大竹太郎

    大竹委員 いまの被告側に与えるのは、非常に訴訟が長引くのでおもしろくないという一応のお考えはごもっともだと思うのでありますが、そうかといって、それの判決があってから異議申し立てることができるということになれば、当然通常手続になるので、そういう面から見ますと、この場合非常にまれであるかもしれませんが、むしろ被告にも与えて、通常手続でやったほうが、判決があって異議申し立ててやるよりは早くなるのじゃないか、そういうものの考え方はどうですか。
  42. 平賀健太

    平賀政府委員 手形訴訟判決が出ますと、仮執行宣言がつきます関係原告側は直ちに強制執行ができることになるけであります。異議申し立てがすぐできはしますが、とにかく手形訴訟判決によって強制執行ができる、そして一応の満足ができるというところにやはり一応のねらいがあるわけであります。被告側移行申し立てをすることができるということになりますと、手形訴訟判決ができなくなるということになるわけでありまして、その関係から、被告移行イニシアチブを与えるそういう制度にすることは、この判度趣旨とは合わないというふうに考えております実。
  43. 大竹太郎

    大竹委員 原告のほうにイニシアチブを与えるということはわかるわけでありますが、被告通知あとですることになっております。被告が知らぬうちに通常訴訟に移すことができるようになるわけでありますが、そういたしますと、非常に被告に不利な場合もあると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  44. 平賀健太

    平賀政府委員 四百四十七条におきましては、二項で、訴訟通常手続原告移行させました場合には、直ちにその旨を被告のほうに通知するということにいたしまして、被告にそれを知る機能を与えております。ただ問題は、被告が全然争っていない。訴状送達を受けまして、答弁書を出すことになるわけでございますが、答弁書を出さない。それから第一回の期日にも出てこない、全然争っていない。そういう場合に、たとえば第一回の期日におきまして、原告通常訴訟移行するという申述をいたしますと、これは直ちに通常訴訟移行するわけでありますが、その場合に、被告がそれまで全然争っていない場合には、この通常訴訟移行したという通知被告に到達する前でも、直ちにその日の口頭弁論を閉じまして判決ができるということを二項でやっておるわけでございまして、これは被告にとっては非常に抜き打ちのような感じもするのでございまして、ただいまの御意見非常にごもっともで、これは法制審議会におきましても、この点、いろいろ問題になったわけでございますけれども、もしこの場合でも、その日は口頭弁論を終結できない、必ず被告側通常手続移行したという通知をした後でなければ日賦弁論を終結することができないというごとになりますと、これは、手続が遅延することはもちろんでございますが、現行制度のもとにおきましても、たとえば第一回の弁論期日被告は不出頭で、答弁書も出していない、その他準備書面も何も出していない、全然争っていないということで、第一回の期日に直ちに口頭弁論を終結いたしまして、いわゆる欠席裁判ができることになっておるわけであります。ところが、手形訴訟にしたために、口頭弁論を直ちに終結して欠席判決ができない、なお終結するにしても、これは手形訴訟として終結しなければならぬということになりますと、被告側はさらに異議申し立てをして延ばすということが可能になってまいりまして、現行手続よりももっと被告側に有利になるといいますか全然争いもしないし、弁論期日に出頭もしない、怠慢といってもいい、その被告側に有利に扱われる結果になりはしないか、それでは現行制度よりももっと権利者に不利益になるではないかということになりまして、弁論期日においても、直ちに訴訟通常手続移行して、弁論の終結ができるということにいたしたわけでございます。ただ被告がそれまでに全然争っていない、書面でも口頭でも争っていないという場合だけに、これば限定したのでございまして、そうすれば、被告のためにもそう不利益なことにならぬだろう。一たんこういう規定ができますと、被告側としましても、手形訴訟訴状送達がございますと、答弁書あるいは準備書面を出して全然争ってない、あるいは口頭弁論期日までに出頭して争わないと、いきなり通常手続による弁論を終結されて、不利益な判決を受けて、異議申し立てばできない、控訴しかできないということになるぞということを十分覚悟するということになるわけでございますので、こういう規定を置きましても、被告側に不利益ということに相ならぬだろうということでもって、こういう規定に落ちついたわけでございます。
  45. 大竹太郎

    大竹委員 次は四百五十条のただし書きに関連してでありますが、訴えを却下した判決に対しては控訴することになっておるのでありますが、これは普通の観念だと抗告にするべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  46. 平賀健太

    平賀政府委員 これは控訴ができますのは、一般訴訟要件の欠缺、たとえば原告訴訟無能力者である、訴訟能力の欠缺がある、あるいは被告側も同様でございますが、訴訟能力が欠けておるのに訴えを提起した。いわゆる一般訴訟要件が欠けております場合に、訴えの却下の判決をするわけでございますが、これは通常訴訟の場合と同じでございます。その場合は、これは控訴ということにいたしたわけでございます。そのほかの場合は、訴え却下の他の場合と申しますと、手形訴訟に適しない請求について訴えを起こしました場合には、これは訴えの却下になるわけでございますけれども、その場合は控訴を認めないということにいたしておるのでございます。四百四十九条の規定でございます。でありますから四百五十条の訴えの却下というのは、一般訴訟要件の欠缺の場合の訴えの却下の場合でございます。これにはやはりいまの控訴を認めて、訴えの判決ではございませんので、異議というのは適当でないということでこういうふうにしたのでございます。
  47. 大竹太郎

    大竹委員 それで最後に異議申し立てでありますが、これは通常の控訴とどこが違うのでありますか。
  48. 平賀健太

    平賀政府委員 控訴の場合は、上級裁判所訴訟係属が移る場合、移審の効力が生ずるわけでございますが、異議申し立ての場合は同一審級にとどまるわけで、手形訴訟手続口頭弁論終結直前の状態に訴訟状態が復する。下級裁判所と上訴裁判所という違いが全然ない。同じ審級で判決前の状態に手続が復するというところが違いないのでございます。
  49. 大竹太郎

    大竹委員 そうすると、たとえば異議申し立てた場合においては、たとえば裁判官は同一人でよろしいのでありますか、その点はどうですか。
  50. 平賀健太

    平賀政府委員 裁判官は同一人でいいわけでございまます。
  51. 大竹太郎

    大竹委員 それなな判決はどういうような形式で出しますか。
  52. 平賀健太

    平賀政府委員 これは四百五十七条で規定をいたしておりますが、判決手形訴訟判決と同じ結論であります場合には、手形訴訟判決を認可するということでございます。それから結論がまるで逆の場合は取り消しということになるわけでございます。一部変更の場合は、その部分を取り消すというようなことになってくるわけでございます。
  53. 大竹太郎

    大竹委員 それから第四百六十二条でありますが、これはこの前に私ちょっとお聞きしたときに御説明をいただいたのでありますが、手形について支払い命令の場合には、もし異議申し立てがあった場合には手形訴訟によるのだ、その旨を付記するようになっているというお話でありますが、支払い命令異議がある、そのときの御説明だと、まあ二日でも延ばすために異議申し立てる場合が非常に多いということを言っておられたと記憶しておりますが、そういう面からいたしますと、むしろ支払い命令異議を言って手形訴訟でやりますと、またその判決について異議申し立てる。もちろん、先ほどのように仮執行の問題はございますけれども、訴えを早く処理するという面から考えました場合には、かえって通常手続に移したほうがいいんじゃないでしょうか、その点はどうですか。
  54. 平賀健太

    平賀政府委員 四百六十三条の手形支払い命令は、ただいま仰せのように、債務者側で異議申し立てがあった場合に手形訴訟手続でやってもらいたいというとき、この手形支払い命令ということにしてもらうわけで、原告側の都合で、どうもこれは問題になりそうだ、手形訴訟でやるよりも、むしろいきなり通常訴訟でやったほうが早いんだという見込みのときには、手形訴訟による旨の申述をせずに、通常支払い命令申し立てをすればいいわけでございます。これは債権者側に選択権を与えておるわけでございます。どちらでもいけるということなのでございます。
  55. 大竹太郎

    大竹委員 次に、管轄の問題でちょっとお聞きしたいのでありますが、債務者の住所はもちろんでありますが、支払い地の管轄を認めておる。そうすると、非常に広範囲に全然債務者関係のない土地ということになるわけでありますが、それではあまりにも管轄が広過ぎるというように考えられるのでありますが、その点はいかがですか。
  56. 平賀健太

    平賀政府委員 手形における支払い地の記載は手形の要件になっておりまして、手形に署名する人は、自分手形を取得した際に支払い地はどこだということがわかっておるはずでございますので、こういう制度ができますと、支払い地で訴えを提起されるかもしれぬということを覚悟の上で手形を取得するということになります関係で、必ずしも手形上の義務者にとって不利益とは言えないのではないか。全然予期しないところに突如として訴えを提起されるということにならぬのじゃないかと思うのでありす。これも実はいろいろ考えたのでございますが、旧民訴もこうなっておりますし、ドイツ民訴でもやはりこうなっておりまして、この点も旧法を踏襲するのが適当であろうということで支払い地の裁判籍というのを認めたわけであります。
  57. 大竹太郎

    大竹委員 いま一つこの管轄についてお聞きしたいのですが、そういうように、もちろん予期しない場所ではないのでありますが、一般的に見て手形の所持人を保護するという立場に立っておると思うのでありますのが、そういう面から見ると、権利者の住所地というのも認めるならば非常に訴訟の敏速ということが考えられると思うのですが、その点はどうですか。
  58. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいまの点非常にごもっともだと思われるのでございまして、現に各地の商工会議所から手形訴訟制度を新設してもらいたいという要望がありました際には、手形権利者の住所地の裁判籍を認めてくれという要望が非常に強かったのであります。これが手形上の権利者の保護ということにもなります関係で、それも一応考えられたのでございますが、しかし、そうなりますと、今度は手形上の義務者が全然予期しないところで訴えを提起される。とにかく手形が転々しまして、たまたま権利者となった者の住所にだれでもかれでもひっぱってきて、そこで訴えるというわけで、これはあまりに原告側に有利過ぎて被告側に不利益ではないかそこまでは行き過ぎであるというので、そこは思いとどまったのでございます。
  59. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、さきに異議申し立てがあった場合の判決の問題がございましたが、御説明の中に、第一審としてやるという御説明がたしかあったように思うのであります。そういうことからいたしますと、判決の形式は、原告請求を棄却するとかあるいは被告は幾ら幾ら払えという判決になったほうが、何か形がいいような気がするのでありますが、その点はいかがですか。
  60. 平賀健太

    平賀政府委員 この手続は、支払い命令督促が現在そのようになっておるのでございます。支払い命令に対して異議申し立てがありました場合に訴訟が係属するということになりますが、その場合は支払い命令を認可するとか取り消すとかいう判決にいたしております。それにていさいはならいましてこういたしたのでございますが、これは異議申し立てがございますと、口頭弁論終結前の状態に戻りまして、もう一回裁判をやり直すというところからいきますと、やはりただいま仰せのようなことにするのがいいように思われるのでございます。しかしながら、これはやはり仮執行宣言がついておりまして、手形訴訟判決がすでに執行力を持っているわけでございます。これをまた原告請求を認容する、あるいは請求を棄却するということにいたしますと、前の判決が御破算になりまして、新しい判決、これがまた新しい債務名義になるというような関係もございます。それよりもやはり認可する、あるいは前の判決を取り消すという行き方のほうが、実質的に見ましても、手形訴訟判決執行力の問題もございまして、そういうことにいたしたわけでございます。それから手続の形式は督促手続のところにならいまして、そういうことにいたしたわけでございます。
  61. 大竹太郎

    大竹委員 これで質問を終わります。
  62. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は明二十九日開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会