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1964-04-23 第46回国会 衆議院 法務委員会 第29号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十九年四月二十三日(木曜日) 午前十時十四分
開議
出席委員
委員長
濱野
清吾君
理事
鍛冶 良作君
理事
唐澤
俊樹君
理事
小金 義照君
理事
小島 徹三君
理事
三田村武夫
君
理事
坂本
泰良
君
理事
細迫
兼光君
理事
横山 利秋君
上村千一郎
君 大竹
太郎
君 岡崎
英城
君 亀山 孝一君 坂村
吉正
君 四宮 久吉君 田村 良平君
渡海元三郎
君 中川
一郎
君
長谷川四郎
君 古川
丈吉
君 松澤 雄藏君 森下
元晴
君 井伊 誠一君 神近 市子君 田中織之進君 畑 和君
松井
政吉君
松井
誠君
竹谷源太郎
君 志賀 義雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣
賀屋
興宣
君 厚 生 大 臣 小林 武治君
出席政府委員
警察庁長官
江口 俊男君 警 視 監 (
警察庁刑事局
長) 日原 正雄君
法務政務次官
天埜
良吉君 検 事 (
刑事局長
) 竹内
壽平
君
委員外
の
出席者
検 事 (
刑事局刑事課
長) 羽山 忠弘君 参 考 人 戒能 通孝君 参 考 人 (
弁護士
)
内藤
功君 参 考 人 (
同盟会議議長
代理)
片山
武夫
君 専 門 員 高橋 勝好君 ――
―――――――――――
四月二十三日
委員服部安司
君
辞任
につき、その
補欠
として渡
海元三郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員渡海元三郎
君
辞任
につき、その
補欠
として
服部安司
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件
暴力行為等処罰
に関する
法律等
の一部を
改正
す る
法律案
(
内閣提出
第九号) ――――◇―――――
濱野清吾
1
○
濱野委員長
これより
会議
を開きます。
暴力行為等処罰
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
及び
本案
に対する
竹谷源太郎
君
提出
の
修正案
を一括して
議題
といたします。 まず、
修正案
について
提出者
から
趣旨説明
を求めます。
竹谷源太郎
君。 ――
―――――――――――
竹谷源太郎
2
○
竹谷委員
私は、
民主社会党
を代表して、ただいま
議題
となりました
暴力行為等処罰
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
に対する
修正案
につきまして、その
提案理由
を御
説明
申し上げます。 このたび
政府
から提案されております
暴力行為等処罰
に関する
法律
の一部
改正案
は、最近における
ばく徒
、
暴力テキヤ
、
青少年不良団等
による
常習的組織暴力
の激増にかんがみ、これらの悪質な
組織暴力
から
一般市民
の
日常生活
上の
権利
、利益を保護し、もって
社会秩序
の維持をはかる
目的
を持ったものであることは、その
改正内容
、
委員会
の
審議
並びにその
提案理由
に示されているとおりであり、同法の
目的
がもっぱら
常習的組織暴力
の
取り締まり強化
に置かれ、いやしくも憲法上の
国民
の
基本的権利
や、
労働組合
の正当な
活動
を侵害する
意図
を持たないものであることは、きわめて明白であります。特に最近の
刑法事犯
中に占める
暴力団関係
の
犯罪
は、まことに憂うべき率を示しており、特に
銃砲刀剣
を用いた
悪質犯罪
が増加の一途をたどっていることは、
法治国家
として看過できない現象というべきであります。もしこのような事態をそのまま放置するならば、法治国としての
社会秩序
は乱れ、
犯罪
から
国民
の
権益
を守るべき
立法府
の
使命
は、その任をみずから回避することになることをわれわれは厳粛に自覚すべきであります。 同法が
提出
されるに及んで、一部にこれがいかにも正当な
労働組合活動
を制約するものであるかのごとき
宣伝
を行ない、これの
成立
を阻止せんとする動きがありますけれども、それは、この
法律
の
趣旨
をはなはだしく
誤解
ないしは故意に曲解したものであって、この
法律
の正しい評価を見誤ったものというべきであります。特に
反対論
の中で指摘されているような、
銃砲刀剣類
の中にプラカードや旗ざおが含まれるおそれがあるとか、
労働組合
の
活動家
が
常習者
として
適用
される危険があるとかいう議論は、あまりにもうがち過ぎた見方であり、不要の
危惧
と言うべきであります。すなわち
銃砲刀剣類
の
定義
については、
銃砲刀剣類等所持取締法
の現在の
規定
の
定義
によるものであることが明らかにされており、
旗ざお等
が含まれないことは明白な事実であります。また
常習暴力犯
の
常習
の
定義
も、習癖として反復してたびたび行なうということであることに、すでに
判例
で統一された解釈が確立されており、いわゆる
労働組合活動家
が同法の
常習者
としての
適用
を受けないことも明らかであります。わが党は以上の見地から、この
法律
が
労働組合
の一部等で
危惧
しているようなものでないことをまず認めるものであります。 しかし、われわれが
立法者
として常に留意しなければならないことは、
立法
の動機、
立法
の
内容
がいかに
善意
であり、かつ正しくとも、法の
運用
次第によっては、それが両刃の剣となって
一般
の
国民
の
権益
に若干でも危険をもたらす
危惧
が予想される場合には、それを絶無にするためのあらゆる
努力
を怠ってはならないことであります。 この観点から
政府案
を吟味するとき、
国民
に
一定
の
処罰
を加えることを
内容
とするこの
種法案
としては、必ずしも十分な配慮が加えられていない点を指摘しなければなりません。特に過去の
事例
において、
労働運動
に関連する
暴力事犯
が
本法
の
適用
を受けていることはまぎれもない事実であり、かつ
法執行者
としての現在の
警察
、
検察行政
も、必ずしもその
民主化
が完全に徹底されてはいないのであります。わずかの
事例
ながらも人権問題を過去に引き起こしている
実績等
も考えるとき、法の
運用
について
一定
の
規制条項
を
改正案自体
に織り込むことは、この点に関する
国民
の
疑惑
を解くためにもきわめて有益かつ必要な
措置
だと考えるものであります。 もとよりわれわれは、過去における
労働運動
に関連する
一連
の
暴力事犯
が、正常な
労働運動
であったとは毛頭考えておりません。したがって、それらの
暴力事犯
について
本法
が
適用
されたことを批判するものでもありません。なぜなれば、
刑法
上の
暴力
を伴う
労働運動
は本来邪道であり、
労働運動
の限界を踏みはずしたものであると考えるからであります。われわれは、そのような
暴力的労働運動
まで是認せよという
主張
は、まぎれもない
暴力肯定論
であり、
法治国家
のもとでは許されざる
主張
だと断じております。 われわれは、以上のような
基本認識
に立ちつつも、今日
国民
の一部に
政府案
に対して少しでも
疑惑
が存在するいま、われわれはあらゆる
努力
を通じてこの
疑惑
を解消する
措置
をとることが、
立法府
としての当然の
使命
であることを痛感するものであります。特に、一方において前述のごとき
警察
、
検察当局
の未熟が現に存在することを考えるとき、それらの
措置
は当然とられなければならないことだと考えます。 われわれは、この際
政府案
に対する
一連
の
危惧
が、かりに
誤解
や曲解に基づくものであるにせよ、それを軽視することなく、あくまで謙虚にこれを受けとめ、その
立法
について万遺憾なきを期する
努力
を傾注すべきだと考えます。その
意味
から、われわれは
政府案
に対する
危惧解消
について、単に
委員会審議等
をもってその解明を行なうにとどまらず、より抜本的な
措置
として、法それ
自体
の中に、正常な
労働運動
を制約するものでないことを明らかにするとともに、法の
目的
に反した
乱用
の禁止を法の中にはっきり明定すべきであると考えるものであります。この点につきましては、すでに
警察官職務執行法
第一条、
破壊活動防止法
第二条及び第三条、
政治的暴力行為防止法
第三条及び軽
犯罪
法第四条において
立法
の先例があり、この
法律
にこれを取り入れることは、
立法技術
上からも何ら差しつかえなきものと確信いたします。よってわが党は、この際
政府案
中に、
乱用防止
の
規定
一条を挿入し、もって
国民
の
疑惑
を完全に解消するよう
主張
するものであります。 以上が本
修正案
を
提出
する
理由
並びにその
内容
であります。何とぞ本
修正案
に御賛成あらんことをお願いいたします。
濱野清吾
3
○
濱野委員長
これにて
修正案
に対する
趣旨説明
は終わりました。 ――
―――――――――――
濱野清吾
4
○
濱野委員長
これより
原案
及び
修正案
について
参考人
から
意見
を聴取することにいたします。 ただいま御
出席
の
参考人
は、
戒能通孝
君、
内藤功
君、
片山武夫
君の三君であります。 この際、
参考人各位
に一言ごあいさつを申し上げます。本日は非常に御多忙のところ御
出席
いただきまして、まことにありがとうございました。御
承知
のように、
本案
はきわめて重要な
法律案
でありますので、本
委員会
におきましては、
本案
の審査に慎重を期するため、ここに
各位
の御
出席
をわずらわし、その御
意見
を求めることと相なった次第であります。つきましては、
原案
及び
修正案
について、
各位
の忌憚のない御
意見
をお願い申し上げます。 なお議事の進め方につきましては、お一人二十分
程度
において、
内藤参考人
、
戒能参考人
、
片山参考人
の順序で
意見
の
開陳
をお願いいたします。三人の
意見
の
開陳
が終わりました後、
委員
から質疑が行なわれることに相なっております。 それでは、まず
内藤参考人
にお願いいたします。
内藤功
5
○
内藤参考人
ただいま御紹介にあずかりました
内藤
でございます。私は
弁護士
としまして、
労働公安関係
の
事件
の
弁護
も若干いたしております
関係
から、その経験もまじえまして、
本法
案についての
意見
を申し上げて、
皆さん方
の
審議
の御
参考
にしたいと思うのであります。 私ば、まず結論から申し上げますると、
暴力行為等処罰
に関する
法律等
の一部を
改正
する
法律案
、及び
竹谷源太郎
氏
提出
の
修正案
については、いずれも結論的には
反対
せざるを得ないのであります。 その
理由
を申し上げます。まず
政府提出
の
原案
についての
意見
から申し上げます。 私は、
現行
の
暴力処罰法
――以下
暴力法
というふうに略させていただきますが、
暴力法
それ
自体
が、
立法者
の
意図
が那辺にあったにせよ、現実には過去において
労働運動
、
大衆運動弾圧立法
としての
役割
を果たしてまいりましたし、いまもなお果たしておりますし、そして今次の
改正案
は、そういう性格をさらに強めるものであると考える立場から
反対
するわけです。 わが国に明治以来
労働運動
が起きましてから、
治安警察法
十七条の、同盟罷業を誘惑、扇動した者を
処罰
するという
規定
が
取り締まり
にもっぱら使われておったのでありますが、しかし、これには
大正時代
からの
労働組合
の
反対
があり、さらに
政府部
内においても、
治安警察法
十七条の刑は比較的軽いので、もう少し重い、強力な
労働運動処罰法規
を要望する声まで出ましたところから、
大正
十五年の
帝国議会
で
治安警察法
十七条の
廃止
とともに、
暴力行為等処罰法
を同時に制定したことは御
承知
のとおりであります。したがって
暴力処罰法
は、その
おい立ち
からして
治安警察法
のかわりであり、
労働運動取り締まり
、
弾圧
をねらいの
一つ
とするものであったということは争いのない事実と思うのであります。
大正
十五年四月三十日に実施されましたこの
法律
は、同年八月十五日までの四カ月の間に、
全国
で同法による
起訴
が五十一件、そのうち
団体
の威力を示して
暴行
脅迫
したものが十一件、そのうち
暴力団
を背景としたものわずかに二件であります。これは、当時の
司法研究報告書
に出ております。
暴力団
をほんとうのねらいとしたものではないということをこれは示しております。
最高検
の現在
検事
をやっておられる関さんの著書である「
労働刑法概論
」を読みますと、「
本法
は合法的な
労働運動
や
小作争議
を取り締まるにあらざる旨を当時の
政府
は言明したが、しかるにその後の
本法
の
運用
の
実情
は、広く
労働運動
や
小作争議
の一切にわたりこれを行なっている。
本法
は
一般労働刑法
として特に重要なる地位にある。」こういうように
最高検
の関さんは述べております。 戦前の大審院の
判例
は、最初は「
小作争議
は常に必ずしも
違法性
なきものというを得ざるをもって
処罰
を免れず」としておりましたけれども、その後だんだん断定的になりまして、「
暴力処罰法
は、
暴力団
のみを目標となしたるものにあらずして、
労働争議
または
小作争議
の場合にもその
適用
あるものとす」というふうに変わってまいりました。
昭和
十年に発行された
長谷川劉検事
の
暴力法解説書
というものによりますと、
暴力法
を
運用
する場合には、平素から
団体
の内偵をやっておけ、主義、綱領に注意しろ、特高
警察
と
連絡
をとって、
思想加入団体
、
加入
の事情を調べて、
写真指紋
、筆跡も付加して
常習者名簿
、また
常習犯罪表
を整備しておくようにと書いております。これらの点から見て、
暴力法
は
労働運動
、
農民運動
の
弾圧法
としての
役割
を果たしてきたものと見るほかないのであります。 だからこそ、戦後
労働者
の
団結権
、
団体交渉権
、
スト権
が保障されますと、
暴力法
を
廃止
しろという世論が起こってまいりました。具体的な例は、戦後末
弘巖太郎博士
を
中心
として
労働法
の
立案
に着手した
労務法制審議会
、これは
政府
の
審議機関
でありますが、
昭和
二十年十一月二十四日答申しました
労働組合法案
については、第二条で、左の法令は
労働組合
のためにする
組合員
の
行為
に
適用
せず、としてありまして、
刑法
、
警察犯処罰令
、
行政執行法
、
出版法
と並んで、この
暴力法
をあげておるのでございます。また当時の
産別会議
第二回
全国大会
に提案されました
労働組合法改正要求案
においても、同様の
要求
が決議されております。これらの事実は、いかに
暴力法
が
警察犯処罰令
、
出版法
、
行政執行法
などのいわゆる悪法とともに、
労働運動
の発展、
団結権
、
団体行動権
の保障の上に有害なものとして
一般
に認識されておったかということを如実に示しております。最近においても、再び
現行
の
暴力法
はむしろ
廃止
すべきであるという
意見
が出てきておるのも、この
意味
から当然であると思うのでございます。現在
暴力法
が
労働運動
にどのように
適用
になっておるかということにつきましては、法務省の三十六年度版「
犯罪白書
」によりましても、三十年から三十四年の合計を例にとると、
暴力法
は
受理人員
の約二割、数として傷害に次ぐ第二位となっております。一部の人は、それはよほどひどい乱暴を
労働組合
がやったからやられたんだろうとお思いになるのも、題名からしてある
程度
無理からぬことである。しかし、
実情
はそんなものではございません。たとえば、
ビラ張り
ですが、
ビラ張り
が
暴力法
で
逮捕
、
起訴
されておる例が非常に多いのであります。
日本
の
労働組合
にとって、
職場
で自己の
要求
を
ビラ
に書いて張り、
一般
に
宣伝
をするということは、
団結権
、
団体交渉権
、あるいは言論、表現の自由の当然の範囲に属することであります。寸法や文字の
ていさい
も
一定
した
ビラ
を
職場
の
ガラス窓
などに張ったというだけである。これは
あと
で水などでちゃんと洗い落とせます。これを
器物損壊罪
、それから
暴力法
一条一項
違反
ということで
警察
が
逮捕
し、
検察庁
が
起訴
する。これは非常に
行き過ぎ
でございますが、これが
現行法
で行なわれております。
ビラ活動
も
違反
ということになったら、
一体労働連動
は何をやれということになるのでしょう。こういう
行き過ぎ
だと思われる
起訴
に対しては、さすがにここまではできないという一
審判決
さえ最近は出ております。具体的な例としては、三十七年一月の
国鉄労組
の
広島高裁判決
、三十八年九月の
名古屋地方裁判所
の
全電通労組
に対する
判決
、こういったものは明らかに
検察庁
の
行き過ぎ
を戒めて、
無罪
を言い渡しておるのであります。 もう
一つ
、
暴力法
のひどい
乱用
の例としては、
組合員
が同僚に
説得
する
行為
。たった十分間の
説得行為
を
脅迫
、
暴力法違反
で
逮捕
、
起訴
したという
事案
であります。これは、ある
京都
の
高等学校
の
組合
で、
教育委員会
の
人事異動
に反省を求めるために、新任された教師に対して、いまの労使間の情勢のもとでは当分の
間登校
を見合わせてほしい、そうしないと意外の
紛糾
が起こるから、ぜひそうしてほしいと穏やかに十分くらいの
間説得
をし、相手も了解をし、最後にお互いに握手をして別れたという
事案
です。これに対して
逮捕
、
起訴
をやる。これも
乱用
の例です。さすがに
京都地裁
は、本年二月二十三日に、この
程度
では
暴力法違反
にはならない、
脅迫
にならないという
判決
をしましたが、四年間この人は新聞に書かれたり、無実の罪を着せられるようなかっこうで、有罪のような
被疑者
として
宣伝
され、大いにその名誉を失墜した例があるのであります。これは
乱用
の極端な
一つ
の例であります。 次に、
経営者側
の不当な
団体交渉拒否
に抗議する
行動
が多く
暴力法
でやられております。最近の
経営者
の中では、
労務管理
の未熟のために、
団体交渉
で話し合えばいいのに、話し合いを拒否するためにこういう
紛糾
の起こる例が多いのであります。この
事件
は、
日本赤十字
の
中央病院
の
事件
であります。この
事件
では、
団交
に誠意がない
経営者
に対して
説得
をしたけれども、応じない。そこで数名が、
団交
を開けということを大きい声で
要求
したということが
暴行
、衝撃と疲労を
経営者
に感じさせたという。私どもから見ると非常に常識に反すると思いますが、それがこういうように
暴行
、それから
脅迫
、
監禁
であるという罪名をつけられて
起訴
されました。この
事件
は、昨年の三月十一日、
東京地裁
において
暴行
だけは認められたが、情状は非常に
経営者
のほうにも悪い点があるので、
罰金
一万円、
脅迫
も
監禁
も
無罪
という
判決
まで出された。これについて
検事
が控訴しませんでしたということは、
検事
がみずから
起訴
の
行き過ぎ
をこの
事件
では認めたことになるわけです。 このほか、例をあげれば切りがございませんが、時間の
関係
でこれだけをまず例として申し上げておきます。しかも
日赤事件
では、
院長
から
交渉場所
にいる副
院長
――
経営者
に対して、一、二時間では
監禁罪
にならぬから、もう少しがまんして、もう少し
監禁
の実をつくれということを言われて、
経営者
みずからが
犯罪成立
の条件をつくり出す
努力
をしていたという事実があるのであります。 このように、同じ
国家機関
である
裁判所
からさえ
無罪
の
宣告
、
行き過ぎ
の
宣告
をされるような
事案
についても
暴力法
が使われているということは、
労働運動
の中では
日常茶飯事
でありまして、
労働組合
の
活動家たち
は、また
労働事件
の
弁護
に当たっているわれわれ
弁護士たち
は、常に身にしみて感じているところなのであります。 ところで、今度の
政府提出
の
改正案
は、
立案者
がかりにいかに
善意
でございましょうとも、この
法律
ができてしまったならば、
あと
は野となれ山となれで、その
暴力法
の
労働運動取り締まり
の面を一そう強化するおそれがあり、私は
反対
するものでございます。 まず、
常習者
の
法定刑引き上げ
、
罰金刑
の
廃止
、この点でございます。
法務当局
の
説明
では、一条一項に掲げてある罪だけについての
常習性
を認定するのでなく、その他の
暴力的行為
の
前科
、その他
常習
を認定する
資料
は広く考えてよい、こう言われます。
常習認定
には、
判例
として、ほかに
資料
があれば十年間無
処罰
でもよいなどという
判例
もあります。御
承知
のとおり、
常習
の
認定権
は最終的には
裁判所
でございますけれども、
裁判所
に対して料理をして材料を出すのは
検察庁
でございます。
検察庁
にさらに
資料
を提供するのは、一年間に八億もの
警備予算
をもらっている
警備公安警察
でございます。特に
労働公安事件
につきましては、
警備公安警察
の
意見
、
判断
、
資料
がその最大の基礎であります。現在
労働運動
の
活動家
で、
闘争現場
での
警察
による
写真撮影
、
日常
の尾行、盗聴、
情報収集活動等
の対象とされていない人はいないくらいであります。
警察官
のデモなどにおける
写真撮影
、現認等の執拗さは、
労働運動
の中にある者はだれよりもよく体験いたしております。
警備公安警察
には、特に
組合
の
中心
的な
活動家
などの詳細なリストがつくられております。これは
会社側労務係
との
連絡
のもとにつくられております。
警備公安警察
は、
争議
の
中心人物
を
逮捕
しようとの念にかられるあまり、ときに
法律
的に無理な
判断認定
をしやすい傾向、主観的、
恣意的判断
の危険を持っております。たれを長期間拘束するため
常習器物損壊
でつかまえるときめれば、
一定期間
彼をマークして、挑発もして、ささいな言辞を
脅迫
とし、ちょっとしたからだの接触を
暴行
とすることさえ可能であります。それを数件
写真つき
で集めて、彼は
常習者
だという
資料
を添えて
逮捕令状
などを請求し、
逮捕
し、
検察庁
もこれに基づき
常習
で
起訴
することは可能であります。現に
労働組合
の
活動家
の中には、最近ある特定の
活動家
の中には、
前科
二犯あるいは
逮捕歴
数回という人がだんだんふえてまいりました。このことは、
労働組合
の
活動家
の
集中的逮捕
をねらっているという
一つ
の事実だというふうに、
労働運動
の
活動家たち
はみな言っております。一部の人は、
暴力常習者
が
労働運動
の
活動家
などとは考えられないではないかと言われます。一応ごもっともです。しかし、
労働運動
の
活動家
を長く拘束するために
暴力常習者
にでっち上げるということは、
本法
、特に
改正案
によって、さらにいまの
警察
の、
活動家
の中のさらに
中心
的な部分をねらっていくというやり方から見て当然やられると疑うに足る相当な
理由
があるのであります。またある人は、
常習規定
はいままで
労働運動
に
適用
されなかったから、今後も
関係
ないですよ、こうも言われます。しかし、
現行法
では、
法定刑
が
常習
の場合も
一般
の場合も同じでしたから、特に好んでこの
常習規定
を加えます積極的な実益は少なかったと思うのです。今度は
法定刑
が引き上げられまして、
罰金刑
がなくなります。
権利保釈
のみならず、
裁量保釈
にも
法定刑
が上がれば困難の度合いが加わるというのは、われわれ
保釈申請
をしょっちゅうやっていて痛感するところです。
勾留却下
も非常にむずかしくなり、取り消しや
勾留延長
の
却下
にも
困難度
が加わります。求刑、量刑も重くなります。
執行猶予
もむずかしくなります。
罰金
がなくなり、すべて体刑となるので、官公庁の
労働運動
の中でひっかかって
罰金
だという場合に――これはやむを得ざる場合もありますけれども、
罰金刑
がなくなりますと、免職をまずされるということになるでしょう。民間の
就業規則
の場合も
懲戒解雇
が多くなります。
裁判所法
の
改正
で単独でやれるということと相まって、これからは眠っていた
常習規定
がどんどん
労働運動
に
適用
されるというおそれをわれわれは持つものでございます。ある人は、
労働連動
には
適用
しない、
暴力
に
適用
するのだと言います。しかし、これは
一つ
の論弁であると私は思います。
労働連動
を
取り締まり
ます、
処罰
しますということをあからさまに書いた
法律
などは今日できるわけがない。
労働運動取り締まり
は、かりにある人がその
下心
を持っておりましても、巧妙に隠した形でつくるのが常でございます。
暴力法
の
改正案
は、
労働組合
の
活動家
をも
常習暴力者
としてつくり上げ、これを長期間勾留し、重い刑を科し、ひいては
職場
から放逐するという結果をねらい、もって
労働運動
の
中心
的な幹部、
活動家
を
組合運動
から切り離す
役割り
をどうしても果たすことになるでしょう。
立案者
の
皆さん方
の中には、そういう
下心
を持った人ばかりではなくて、非常に
善意
に
暴力
を追放しようという方もおられるとは思いますけれども、こういう
法律
は一たんつくったら、
労働運動
に関する限りは、
大衆運動
に関する限りは、
警備
、
公安警察
によってたいへん
乱用
されるのが常でありますから、そういうおそれのある
法律
に
労働組合
が
反対
し、また
労働組合
の
基本権
を守るために
弁護
をしておるわれわれが
反対
せざるを得ないというのは、その職責上当然であると私は考えております。 次に、
民社党竹谷先生
の
修正案
は、この
法案
の
乱用
のおそれを
危惧
し、何とか
乱用
されないようにしたいという願望はよく理解できるのですが、率直に申し上げて、この
程度
の条文を入れることでは、
法律
的にもほとんど
乱用
をチェックすることができないのではないかということを私は率直に申し上げたい。 軽
犯罪
法四条、破防法二条、警職法一条になるほど同様の
規定
がありますけれども、軽
犯罪
法はいまなお
労働組合
の
ビラ張り
、
ビラ
まき
活動
の
弾圧
にどんどん
乱用
されております。破防法二条は、訓示
規定
でございますけれども、破防法を根拠にして、
一般
の
労働組合
に対してまで公安調査官が
日常
活動
を調査しておる、調査費まで出して調査しておる、こういうことが進んでおるのであります。警職法一条というけれども、警職法では、相手が財産、生命、身体上の危険をもたらすという場合のみ
警察
権の発動ができるのに、そういう場合でないのにこん棒を振り上げ、あるいは実力行使をしたという
理由
で、これが
権利
乱用
であり、権限
乱用
であるという
判例
が、三十七年の五月に横浜地裁の全逓
事件
で出ておるくらいであります。こういうふうに
乱用
のおそれというものは、この一カ条をつけただけでは決して消えるものではないということから、遺憾ながら民社党の提案にも
反対
せざるを得ません。 最後に、私は、
警察
がいまの
暴力法
を
暴力団
に対してほんとうに使っていない、
現行法
さえ十分に使っていないという例を幾つか知っておりますので申し上げます。 三池闘争のときに、三池の
労働組合
でたくさん
暴力法
でつかまりましたが、三川鉱の正門に襲撃をかけ、目つぶしをし、そうして
暴行
、傷害を負わせた
暴力団
に対しては、
現行
犯
逮捕
はしませんでした。私たちは、しょっちゅう福岡の地方
検察庁
に、あれを
暴力法
で
現行
犯で取り締まってくれということを
要求
したのにかかわらず、あなた方の
資料
の出し方が足りないとか、あれはわれわれのほうでよく調べてみなければ
逮捕
するかどうかきめられないと言って引き延ばしをした例があります。 「主婦と生活」の
争議
では、女の方を含む
組合員
に対して
暴力団
が白昼公然たる
暴行
を行なったにかかわらず、所轄
警察
は容易に動かなかったという例があります。 安保デモのときには、これは
東京地裁
刑事二十部の証言に出ておりますけれども、維新
行動
隊の石井という人は前日に警視庁の公安刑事と相談して、田中稔男社会党代議士を
脅迫
することまで引き受けております。そうして協議をした上でこの
暴行
に及んでおります。私はその現場を見ましたけれども、
警察
署へ同行するのに、遠巻きにおまわりさんが囲んで、手錠をかけるでなし、車に乗せるでなし、ゆっくりあの坂をおりて
警察
署へ連れていったという、こういう寛大な取り扱いをしております。 三光タクシーの
委員長
の丸山君がある人間に殺害されたのに、
事件
発生一時間後に、
警察
署長はなぜか犯人には殺意がないということを言って
弁護
しておる。どうしてそんなことがわかるか。 去年の
日本
ロールの
争議
では、竹井組という
暴力団
が出てきました。そして、これは無抵抗のピケ隊に対し、焼け火ばし、焼けたまるい鉄棒を顔までくっつけて、そして
脅迫
しております。なぐるけるの
暴行
をしております。 司自動車
争議
では、
委員長
を
宣伝
カーから引きずり出してなぐるけるの
暴行
をしております。こういう
暴行
に対しては、
警察
は
現行
犯でつかまえたり、本気でやろうとしません。この
警察
の態度を変えないで
法律
だけ変えたとしても、どうしてこの右翼の
暴力団
、こういうものに対して厳重な態度をとることができるでしょうか。 私は、いまの
暴力法
改正案
というものについては、以上のような
理由
から、この
法案
がかりに出ましても、
警察
は真剣に使う態度は持っていない。むしろ真剣に取り組んでくるのは
労働運動
の
取り締まり
のほうであろう。これは十分なわれわれのいままでの経験上の裏づけから確信を持って申し上げる次第でございます。 以上をもちまして、たいへん時間が超過いたしましたが、私の
意見
といたします。(拍手)
濱野清吾
6
○
濱野委員長
次に、
戒能参考人
にお願いいたします。
戒能通孝
7
○
戒能参考人
私、右翼の
暴力
行為
あるいは
暴力団
の
行動
というものに対しまして憎しみを感ずる点におきましては、決して人後に落ちるつもりはございません。またこの
暴力
行為
に対しましては、特に厳格に
処罰
する必要があるということにつきまして、この
法案
の提案者並びに竹谷先生のおっしゃることに対して全く異存はございません。しかし、それにもかかわらずこの
法案
にどうしても
反対
せざるを得ないというふうに感じましたのは、これは
内藤参考人
のおっしゃったのとはいささか違いまして、私、農村の問題を
一つ
取り扱っている場合に自分で体験したことがあるからでございます。 私が
弁護士
を志しました動機となったのは、岩手県二戸郡一戸町小繋という小さな町の入り会い
関係
の
事件
でございます。この
事件
は、
大正
四年から今日までずっと五十年続いている
事件
でございますから、途中に起伏があるのは当然でございます。去る
昭和
三十年の十月八日午前十時ごろのことであります。部落農民の一人の山本満雄君というのが弟の孝君というのと一緒になりまして、部落の入り会い山であると彼らが考える小繋山に入りまして、その一部に入りまして伐木しておりました。これは自分の父、山本定蔵さんの家を新築する杉の木が必要でございましたので、それを伐木していたわけでございます。ところが、この小繋山につきましては、登記簿上の所有者鹿志村――いまは栄一さんでございます。鹿志村さんというのがいらっしゃいます。そして鹿志村家の代表者として鹿志村光亮氏というのがこの小繋山の監視に当たっておるわけであります。光亮氏は、山本満雄君が木を切っておるのをカメラを持参いたしまして写真にとったわけでございます。何回か写真にとっていたわけであります。そこで、山本君はこれに対しましてかねがね不快の念を持っていたわけであります。三十年十月八日午前十一時ごろでございますけれども、何で写真をとるかと言いながら、光亮さんの肩をちょっと突いたわけであります。光亮氏はちょっとよろよろところがりましたが、しかししりもちをつくには至っておりませんでした。しかし手に持っていた写真を満雄君と孝君とがさわりましたところ、その写真を手放しまして、そしてお供に連れておりました立山吉五郎という人に向かいまして、こいつらがカメラをとった、おまえ証人になってくれと言いながら立ち去ったわけであります。カメラは山本満雄君の手に入ったものでございますから、彼らはそのカメラをどうしようかと迷ったわけであります。ともかく自分のうちまで持ち帰って、そうして玄関の入り口にカメラを置いておきました。もちろんこれは、鹿志村光亮さんがとりに来るであろうという想定のもとに置いておいたわけです。しかし鹿志村さんはそのカメラをとりに参りませんでした。そこで満雄君のおばあさんがそのカメラをたんすの中にしまったのであります。 これが
起訴
されました。
起訴
理由
は強盗罪でございます。これは、私憤然たらざるを得ませんでした。だれが見ましても、これは明らかに領得の意思はございません。確かに多少のもみ合いはございました。そして光亮さんが肩を突かれたということは事実であります。突かれた拍子にカメラを持っていた手を放したということも事実でございます。そして満雄君がそのカメラを拾いまして、自分のうちに持ち帰ったことも事実でございます。しかし、これは領得の意思があって強取した
行為
であるというふうには常識をもっては判定することができないと信じております。しかるに、これに対して盛岡
検察庁
が
起訴
した罪名は強盗でございます。これが
日本
の検察官の考え方であります。 これは
労働運動
ではございません、
農民運動
でもございません。ただしかし、
一つ
の入り会い
事件
でございまして、部落の人々数十名、それが鹿志村氏との間におきまして長年にわたって争い続けている
事件
でございます。こういう
事件
でございますから、このような事態、光亮氏と山本君との間で起こったようなもみ合い事態というようなことは、たまには起こり得る可能性がございます。この場合、検察官は強盗といって
起訴
いたしました。
裁判所
はこれに対して何と言ったかと申しますと、
昭和
三十四年の十月二十六日の盛岡地裁
判決
によりますと、強盗は
成立
していない。しかし弟の隆君と一緒に光亮さんを突き飛ばしたんだから、彼らは
暴力行為等処罰法
違反
であるということになっているわけです。そして科せられた刑罰が、懲役十月
執行猶予
二年という刑でございます。この法務省刑事局の作成されました
暴力団
構成員による
暴力
犯罪
関係
事例
集というものの第二ページを見ますと、これはまさにくれん隊の強盗よりももっと重い刑罰でございます。現在の
日本
の
裁判所
は、ちょっと押して相手がよろよろとした。押したのでございますから、多少の
暴力
は入っています。多少の力が入っていると思います。力が入っていないとは私は申しません。しかし、しりもちはつかない
程度
に押したのであります。そしてカメラから手を離した、これが強盗罪で
起訴
されました。そして盛岡地裁におきましては、強盗は
成立
しないけれども、弟と一緒にやったんだから
暴力行為等処罰法
違反
にはなるというのでございます。そして昨年五月八日の第二審の仙台高裁
判決
によりますと、同様にこれは
暴力行為等処罰法
違反
になるというのが
裁判所
の考え方でございます。私、この考え方に対しましてはまさに憤然たらざるを得ません。 もちろん、私が小繋
事件
に関心を持ちましたのは、いままで申し上げたのは派生的部分でございまして、もっと基本的には入り会い権の問題、将来の山林の問題というものにつきまして私の考え方があったことは事実でございますが、私をして大学にいるより
弁護士
にならなければならないというふうに考えさせましたのは、まさにこの
起訴
のしかた、それから
裁判所
の
判決
のしかたでございます。決して私は突き飛ばすことがいいとは申しておりません。しかし、入り会い
事件
というものになってまいりますと、長年のうらみが積み重なっているわけでございます。五十年前におきまして、現在の小繋部落の人々の一部の祖父たちは、このためにぶったりけられたりされておりますし、中には首をくくって死んでおる人もございます。中には突き飛ばされて胸がヒエ立て棒にぶつかりまして、その結果一年たったら死んでしまった人もあります。夫婦別かれした人もおります。非常な悲劇がここに生まれております。いろいろなうらみが積み重なっているわけでございます。このときに冷静に、あたかも法務大臣のように、あたかも大学教授のように、あたかも裁判官のように、あたかも検察官のように
行動
せよということは、私は無理であろうと思います。これがいいとは申しませんけれども、私は無理であろうと思います。そしてちょっとした踏み越えがありますと、強盗になるわけであります。幸か不幸か入り会い山の争いというものは、
日本
にはまだ絶えておりません。それからまた、最近では林野庁が入り会い権の整理
法案
を準備するという話でございまして、入り会い権をなくそう、分割しようということでございます。そうなりますと、だれでもいい土地がとりたいということは人情でございますので、入り会い権の分割という問題につきましては、若干の争いが出てくるということはやむを得なかろうと思うのであります。ところが山でございますから、その山の中には丸太は幾らでもころがっております。それからなたあるいはかまというものを持ち込んでいる。そのなた、かまというものを手に持っているということはあり得べきことでございます。なたがちょっとさわった、よくはありません、かまがちょっとさわった、これはよくありません。これはやはり
銃砲刀剣類
に属しはいたしませんでしょうか。丸太でありましても、同じようにそれにちょっとさわった。丸太でけっこうであります。私はそれがプラカードとは申しません。丸太は山林にころがっているのであります。それがちょっとさわったということによりまして、結局最低限度におきまして懲役一年、悪くいけば十年というふうな重い刑罰を受けなければならない。けられた。負傷といい、傷害と申しましても、ちょっと皮がはげる
程度
でもけっこう傷害でございます。ちょっと血がにじむ
程度
でもけっこう傷害でございまして、竹谷先生の
修正案
をもっていたしましては、こうした場合に何とするという問題は含まれていなかろうと思うのでございます。また漁業の問題についても同じでございます。漁業権の問題につきまして漁民が争う、これは決していいことではございません。しかし、漁業権の争いというものは、必死な争いになることがございます。この場合に漁業権があるかないか、自分はここで魚がとれるかとれないかという必死の争いにおきまして、冷静に
行動
せよということは私は若干無理かと思うのでございます。確かにお金があり、教育があり、りっぱな地位にある方ならば、冷静に
行動
できます。だがしかし、農民であり、漁民であり、これは多くの場合に不幸にして貧しく、教育を受けておりません。激高するなといっても無理なことがあります。常に押えに押えている気持ちというものに対しまして激高感が生まれてくるというのは、これは残念ながら避けられないと思います。私としてはぐれん隊を救い、そしてまた
暴力団
を援助し、右翼の乱暴者を支援するようなことを申すのは、はなはだ心苦しい至りでございます。しかし現状におきまして、裁判官あるいは検察官、もっと進めば
警察官
というものが何を考えているかということを私たちは無視することができなかろうと思います。 かつてガンジーが独立運動をやった。不服従運動をやった。そのときに彼は法廷に行きまして、自分は法を破ったから有罪にされてもいい、しかしこの悪法を破ることに対しては自分は名誉だと思う。ところが裁判官はそれに対して、自分も悪法と信ずる、この悪法によってあなたを有罪にすることを自分は心苦しく思う、もしこの
法律
が
廃止
されたら一番最初に喜ぶのは自分であろうというふうに言ったということが記録にあるそうであります。
日本
の裁判官、
日本
の検察官、もっと進めますと
日本
の
警察官
は、そうした意識は残念ながら持っていなかろうと思います。やはり
労働者
をつかまえ、農民をつかまえるというほうに興味を持ち、そうしてぐれん隊に対しましては非常に甘うございます。残念ながら、この
事例
集を見ましても非常に甘うございます。中には人殺しをやりましても、傷害致死罪になりましても、懲役三年くらいで済んでいるのが多うございます。五年に至ることはほとんどないのじゃないかと思うくらいでございます。ぐれん隊同士の殺しならば、よほど悪くても五年でございます。
日本
の裁判官、検察官が持っているぐれん隊、
暴力団
に対する考え方というのは、ある
意味
において甘きに失するというふうにいままでの
判例
においては考えられているわけであります。 これに対して、
労働運動
、
農民運動
、あるいは
農民運動
とまで言えないような入り会い
関係
、漁業
関係
というものに対しましては、辛きに失するというふうに考えざるを得なさそうでございます。この点は、この
法律
の御
審議
につきましてはぜひ御検討いただきたい事実であります。私としては、この
法案
がいま成案になることはたいへん遺憾であり、ぜひともこれはお流しいただきたいと思っておるわけであります。(拍手)
濱野清吾
8
○
濱野委員長
次に、
片山参考人
にお願いいたします。
片山武夫
9
○
片山参考人
片山
でございます。私は
労働組合
同盟
会議
を代表いたしまして、今回のこの
法案
についての
意見
を述べさしていただきます。いま同盟
会議
は、
日本
に必要な社会正義の確立、そして自由にして民主的な
労働運動
を推進していくという立場に立っておりまして、今回
審議
中の
暴力行為等処罰法
改正案
及び
本案
に対する
竹谷源太郎
氏の
提出
にかかる
修正案
について
意見
を述べてみたいと思うのであります。 先ほども述べましたように、
日本
の情勢というものは非常にこんとんとしておる。特にわれわれは、文化国家建設のために
努力
を続けているものでありますけれども、その中でも社会生活の安定やあるいは平穏、こういうものを維持する必要を特に痛感するわけであります。そのためにも、いま指摘されたような職業的な
常習
的な
暴力団
の横行、こういうものは絶対に絶滅しなければならない、こういうふうに考えているものであります。 最近の
暴力
犯罪
の
実情
は、
資料
にもありますように、その数においても依然として増加の傾向をたどっておると思うのであります。いわゆる
暴力団
と言われておる幾つかの
団体
、この不良
団体
の数は五千数百というふうに聞いておりますし、その仲間が十七万以上というふうにいわれております。そして、その
関係
するところの
暴力
関係
事犯が毎年二十万件、驚くべき数字を示していると思うのであります。このことが、将来ある善良な青少年に大きな影響を及ぼしている事実も、これまた軽視できない重要な問題だろうというふうに考えております。特に、今回
提出
されました
銃砲刀剣
などを持ち出して公然と傷害
事件
を起こすような
団体
は、これはいかなるものであってもわれわれ社会人の敵であるというふうに考えますし、これを取り締まるということは当然のことだろうと思うのであります。そういうような立場から、いま
審議
されておるところの
暴力行為等処罰法
の
改正案
の
内容
を一応私も検討をしたわけであります。そして、次のように理解をしたのであります。 第一の問題は、一番危険性の多い
銃砲刀剣類
を用いた傷害罪を
一般
の傷害罪よりきびしくする、そして、それを一年以上十年以下というふうに刑罰の強化をはかったということであります。特に
銃砲刀剣類
についての
定義
は、厳然たる
規定
がされておるということであります。 第二の問題は、こういった
暴力事犯
が
常習
化している傾向が非常に強いのであります。そして、傷害、
暴行
、
脅迫
等を行なうものが、傷害
事件
を
常習
として行なったものは
常習
傷害として同じく一年以上十年未満、こういうふうなことで刑罰を重くしているという点であります。 第三の問題は、この刑の下限を懲役一年に改めた結果、
権利保釈
等の
適用
を受けられなくなった、こういった問題であります。 第四の問題は、こういったような悪質な事犯の処理を迅速にするという
意味
で、単独裁判官による処理を認めた、こういうことが今回の
改正
のおもなる点であろうと思います。 したがって、この四点は、憲法上の
国民
の基本的人権だとかあるいは
労働組合
の
活動
を侵害するという
意図
のないことは明らかでありますし、またこの点については、取り扱うものが十分注意をしなければならないものであるというふうに私はこの
改正
を理解しておるのであります。しかしながら、この
法案
はすでに前国会あるいは前回の臨時国会、今国会に再
提出
されております。比較的その
目的
が明らかでありながらその
審議
が非常におくれているということは、
一般
国民
はもちろん、われわれにも理解しがたいところでありますが、かりにこれが政争の道具やあるいは
法案
の取引に供されておるということであるならば、たいへん遺憾だというふうに考えておるわけであります。 次に、
竹谷源太郎
氏の
修正案
に対して
意見
を述べたいと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、われわれの理解する限りにおきましては、同
法案
の
目的
が組織的
暴力団
の
取り締まり強化
ということに目標を置いているものだというふうに考えておりますし、不幸にして
暴力行為等処罰法
の歴史を考えてみますと、私の記憶に誤りがなければ、戦前は治安維持法などとともに、この
法律
が合法的な
労働運動
や
小作争議
等にも数多く
適用
されておるというふうに思います。このようないろいろな社会情勢の変遷とともに、
立法
の精神や
目的
がいかに
善意
であったとしても、やはり法は人によって
運用
されるものであり、また社会情勢によって解釈に変化を伴うという危険があると考えられます。こういったような観点からするならば、この
立法
にあたっては万全を期する必要がある。特に正常な
労働運動
を制約しないということを明確にする必要があるのではないかというふうに考えます。そういう
意味
で、
竹谷源太郎
氏の
修正案
を付して私は賛成の立場に立ちたいと思うのであります。 最後に、この
法案
にいろいろ
反対
されている政党や労働
団体
があるというふうに聞いておりますけれども、われわれは社会正義を確立する、そしてあらゆる
暴力
を否定する、こういう立場に立っているものからするならば、これはたいへん遺憾であると思います。その
反対
する
理由
が、この法
改正
が
大衆運動
弾圧
のためであるという
意見
、あるいは特に明確になっているところの
銃砲刀剣類
の中に旗ざおやプラカード等が入っているのではないかといったような
危惧
があるように考えられます。また
常習
傷害重罰の
規定
は、
労働組合
の
活動家
に
適用
されるおそれがあるといったような
理由
に基づくものであるというふうに考えられるわけでありますけれども、今回
改正
の対象となっていない、これはむしろ第一条第一項の
規定
のほうに問題があるのではないかというふうに考えられるわけであります。したがって、この
暴力行為等処罰法
そのものに問題があるのであって、今回の
改正
点については、先ほど申し上げましたような
労働組合
等を対象にしないという明確な確認があるならば、この
改正案
の
趣旨
に照らして私は賛成したいというふうに考えているわけであります。 以上、簡単ではございますけれども、私の
意見
といたします。(拍手) ――
―――――――――――
濱野清吾
10
○
濱野委員長
これより
参考人
に対する質疑を行ないます。鍛冶良作君。
鍛冶良作
11
○鍛冶
委員
御
意見
の違うところは、お互いの
意見
ですからなんですが、簡単に
一つ
、二つお聞きしたいと思います。 まず
内藤
さんにお聞きしたいのは、いわゆる一括して
暴力
とおっしゃったが、私は
本法
を主として申しますが、
目的
のいかんにかかわらず
労働運動
の
弾圧
に拍車をかけるという、こういう大前提があなたの議論では出ているわけですが、それはどういうのですか。
暴力
の有無にかかわらず、
労働運動
を
弾圧
しようとしているのは
本法
である、こういう論断ですが、その点が明瞭でなかったと思いますので、まずそれから聞きたい。
内藤功
12
○
内藤参考人
いま鍛冶先生の御質問の中に、私が
目的
のいかんにかかわらず
労働運動
を抑圧する、こう述べたということを御前提の御質問のようでございますけれども、私のあるいは発言において明瞭を欠く点があったかもしれませんが、私の申し上げたのは、
立案者
の中にどういう
意図
が、
善意
の
意図
が含まれておりましょうとも、かような
法律
が一たん
法律
として生命を持ち、施行され、
警察
、
検察庁
その他の官憲によって行使されるにおいては、いままでの経験に徴して、
労働運動
を抑圧するという機能を果たすおそれがある、こういうことに正確にはなると思います。 そこで、
暴力
の有無にかかわらず、これが
労働運動
を抑圧するものだというふうに見るのかどうかという御質問でございますが、私がこれについてまず申し上げたいことは、現在この
暴力
というものは一体何であるかということにつきまして、これは学界におきましても、それから
判例
におきましても、いろいろな解釈があるところでございます。ここで私は、たとえばちょっと
資料
をもって申し上げるならば、
暴行
、
脅迫
がすべて
暴力
に当たるという見解もありますし、それから
最高検
のもとの
検事
をやっておられた神山欣治さんの著書「労働
刑法
提要」の九十一ページによりますと、有形力、無形力の行使のうち、無形力の行使については、強盗罪の手段の
脅迫
のように、相手方の反抗を抑圧する
程度
の
脅迫
まで含まれる、だから
脅迫
はすべて入らない。相手方の反抗を抑圧する
程度
の
脅迫
は含まれるが、
刑法
二百二十二条における
脅迫
のごとき無形力の行使は
暴力
の行使には該当しない。こういうような見解を、もと
最高検
の
検事
で公安を担当されておられた神山さんなどは言っておられる。このように、検察部内においてもいろいろな
意見
がある。そこで問題は、
暴力
というものを一体どういうふうに見るか。
暴力
というのは、さっき戒能先生が言われましたように、これは実力とイコールじゃない。何がしかそこに不法な要素、
法律
で取り締まるに値するだけの不法な要素が含まれたのが
暴力
だ、こういうふうに考えます。たとえば高等
裁判所
の
昭和
三十一年七月の電産大谷発電所
事件
などを見ますと、電産でピケを張っている、そこへスト破りが飛び込んでまいりまして、その人の洋服のそでを一回引っぱったというだけで
暴力
罪で
起訴
された。これを高裁は
無罪
にしましたが、その
理由
としては、そでを一回引っぱっただけでは
暴力
に当たらない、こういう解釈です。したがって私の申し上げたいのは、
暴力
というものの解釈
自体
、これは
判例
においても学説においてもいろいろな解釈があるわけであります。そこで、一体いかなる
暴力
のことを鍛冶先生がおっしゃったかわかりませんけれども、
暴力
ということばだけで
判断
してはいけない。ほんとうに
労働争議
を
判断
するには諸般の事情を要するということが三十一年の最高裁小法廷の
判例
でありますから、この点から見て、その
暴力
が不法な
暴力
であり、
労働組合
法が認めないところの
暴力
かどうかという点で
判断
をすべきだ、かように考えておるわけでございます。
鍛冶良作
13
○鍛冶
委員
それじゃ、わかりました。要するに
暴力
であると認めるが、あなたの目から見れば
暴力
でないものも
暴力
にする、こういうことですね。そうしてみると、あなたの見解と取り締まる者の見解が違うから、あなたがお気に入らぬ、こう考えるよりほかない、私はそう見たが、どうですか。
内藤功
14
○
内藤参考人
昔から、
弾圧
というのは一体どういうものか、それから
暴力
というものは一体どういうものか、これについて法廷におきましても、
裁判所
の見解、
検察庁
の見解、
弁護
人の見解、被告人の見解、これは立場上それぞれニュアンスが違うのは当然でございまして、検察官側が
暴力
である、
弁護
人側が
暴力
でない、これでこそ刑事訴訟が形として成り立つわけでございます。したがいまして、多少の見解の相違はあろうかと思います。
鍛冶良作
15
○鍛冶
委員
それから
常習者
に対するあなたの先ほどの議論ですが、世の中のことは、どうもあなたの言うようにそうそうこういうこともあるだろう、ああいうこともあるだろうと想像して心配せられたら、何事もできるものではない。
常習者
には
常習者
としての
判例
がございますよ。それを、いかにもどうも
警察
や
検察庁
で無理やり
常習者
をつくるのだ、しかも
本法
はそれをつくるための前提でつくる、こういう御議論のように聞いたのですが、あなたは少し杞憂にすぎませんか。世の中をそういうふうに考えたら、何でもそういうふうに見えますよ。私はもっと世の中というものはすなおに見る。ことに
法律
の解釈というものは、われわれはやっぱり常識で、何というのですか、第三者から見て最も多数説が通るものなんで、あなたのように、こういうこともあるだろう、ああいうこともあるだろう、そうすればこういうことになるかもしれぬ、それだからこれは
反対
だといったら、何でも
反対
せなければならぬことになるが、そうなると、どうしてもなければならぬおとなしい
法律
までも
反対
しなければならぬという議論が出ると思いますが、あなたはそうはお考えになりませんか。
内藤功
16
○
内藤参考人
いま鍛冶先生のおっしゃったように、私もできるだけ議論を正確にいたします必要から、多数の
判例
に従って、一体
常習
というのは
労働運動
にどういう場合に
適用
されるであろうかということを、
判例
を商売柄調べてまいりました。
昭和
十年五月二十一日の大審院の
判例
によりますと、時間的牽連
関係
のない
前科
でも
常習性
認定の
資料
となる。最高裁の二十五年三月の第三小法廷の
判例
によりますと、六年以上賭博で罰せられた事実がなければ習癖が消滅したと認めなければならないという実験則は存在しない。最高裁の二十四年の
判例
によりますと、十一年前の
前科
によって
常習
を認定しても差しつかえない。
昭和
八年の大審院の
判例
によりますと、数日間に数回も多人数を相手に賭博をした場合には、
常習
賭博罪が
成立
する。
大正
四年の九月十六日の
判例
によりますと、習癖さえあれば、ただの一同の
行為
でも
常習性
を認定し得る。最高裁の二十四年の
判例
によると、四月七日でございますが、
起訴
猶予処分を受けた者でも
常習性
の認定の
資料
となる。先生のおっしゃる多数の
判例
に従いましても、こういうふうに
常習認定
の幅というものがいかに広いものであるかということを私は考えるのであります。さらに、しかし最高裁はそうだけれども、実際に
運用
する機関がそこまでやるというのは、おまえは言い過ぎじゃないか、こうおっしゃる点は、私もよく反省はしてみますけれども、反省をいたしましてもなおこの見解は変わらない。たとえば
現行
の
暴力処罰法
についての
昭和
十年の
長谷川劉検事
の解説によりますると、
常習
検挙のためには、ふだんから特高
警察
と
連絡
をとって、
団体
の主義、綱領、構成員の思想を調べている、こう書いてある
あと
に、
常習
犯名簿として――ここに読むのを省略しますけれども、非常にこまかいファイルを調製、整備をしておくようにということがここに書いてあるわけであります。
労働運動
の場合は、
常習者名簿
という名前かどうかわかりませんけれども、明らかに警視庁その他の
警備公安警察
では、このリストがそろえられております。もしこの
暴力法
が改悪されまして、この
常習者
に重い刑を
法定刑
としてきめる。そうしてこれを
運用
するということになりますれば、
警察
におけるこのリストというものは必ず効果が出てくるであろう。そうでなければ、このような
改正
が出ないいまの時期において、政防法はすでに廃案になっております。それにかわるような治安的な
立法
が出てくるのではないか。そうして、この
法案
というものは、確かに
労働運動
を鎮圧する、抑圧するおそれがあるというこの
判断
とあわせ考えまするならば、私は鍛冶先生のおことばでございますけれども、やはりこの
常習規定
というものは、
活動家
に最も
乱用
されるということを申し上げたいのでございます。
鍛冶良作
17
○鍛冶
委員
あなたは、たいへんどうも議論の焦点になるようなものをお引きになっておやりになるから、そういうものが疑問でしょうが、
一般
にはそんなに
常習
は、あなたの言われるほどやかましいものではありませんよ。私はあなたを
暴力
の
常習者
とは認めるわけがございませんから、何らかの認められるものがあるからだと思いますが、私は杞憂にすぎないのじゃないかということだけ申し上げておきます。 それからいろいろの身元調査をやるとか、
団体
調査をやるとかいう御議論でしたが、これは戦前のいわゆる特高
警察
を夢みておられるので、われわれはその点は非常に変わっておると思うが、それでも間違ったものはないとは言わぬけれども、どうもあなたのさっきの御議論は、戦前の特高
警察
を前提にしての議論のようでしたが、それはいかがですか。
内藤功
18
○
内藤参考人
この点は、認識の相違かもしれませんけれども、現在でも
警察
、公安調査庁などにおきましては、むしろそれが仕事の課がございます。たとえば警視庁にはそういう公安課がございます。私ども仕事の
関係
上よく行きますけれども、ここで、もっぱら写真を朝から晩までよく調べておる係官もおります。それからある人の前歴をずっと調べている人もおります。こういう調査
資料
なしに、公安調査庁だとか
警察
の公安の仕事というものが一体できるものかどうかということは、われわれ常識で考えてもおわかりになることだと思います。従来でも、私の聞き及びますところでは、この法務
委員会
あるいは参議院の法務
委員会
で、公安調査庁、
警察
の身元調査、ファイルの作成、こういったものがたいへん御議論になったというふうに聞き及んでおりますが、これは専門の諸先生方にお聞きしたほうが早いと思うのですが、現在でも私の調べたところでは、
警察
、公安調査庁では基礎調査として、つまり調査対象として本籍、住所、氏名、生年月日のほか、経歴、政党
関係
、性格、思想、趣味、嗜好、交遊
関係
、血液型、指紋、写真、家屋の見取り図、財産状態、経済状態、異性
関係
なども調べましてカードに記入しておるということは、これはかつての東大ポポロ
事件
における
警察
手帳の発覚、これは公判で明らかになりました。それから島根県の
警察
の文書が発覚した。和歌山及び関西における
警察官
の
警察
手帳が発覚した。国鉄において、新潟
労働組合
を調査するための大学ノートが発見された。これらから法務
委員会
あたりでも問題になり、また法廷でもこの公安調査官に関する
事件
としましては、舞鶴
事件
、ポポロ座
事件
、こういったことで、いやがおうでも証拠とならざるを得ないわけです。こういう法廷の経験からも、私は記録及び実際の経験で知っておりますが、実際に行なわれておるようでございます。
鍛冶良作
19
○鍛冶
委員
それ以上は議論になりますから、それはやめましょう。 戒能先生にひとつ聞きたいのは、先ほど、なるほどあなたのお話を聞いておりますと、入り会い権問題で強盗として
起訴
された、記録を見ないから断定するわけにはいきませんけれども、あなたの
説明
を聞いただけでは、はなはだ
行き過ぎ
たやり方だとは思います。思いますが、これはあなた、
本法
と何の
関係
があるのですか。
本法
があるがゆえに強盗を
適用
したというのですか、それはいかがでしょう。
戒能通孝
20
○
戒能参考人
私は、検察権並びに裁判権のものの考え方がこういうものであるということを申し上げたのでございます。それで、
本法
が具体的に
適用
されたのは、これは強盗ではございませんけれども、
本法
はやはり
適用
されております。 それから、私ちょっと申し上げたいのは、
警備
公安経費でございますが、
警察
は国家予算のほうに出てまいりませんで、地方予算のほうに入っておりますので、私も正確に
警察
費としてどれだけ使われておるかは存じませんが、現在におきまして
警察
経費として出されております地方予算は、合算すると千億円をこえております。そのうち、一割の百五十億は年々
警備
公安経費として使われております。これが大体顔写真その他を集める手続になっております。とにかくストライキをやっている最中には、いわゆる
労働組合
の
活動家
のまわりには、顔写真をとる係の専属の
警察官
がついておるわけであります。それからカメラを用いて必ず隠しどりをしておる。これは顕著な事実でございまして、法廷なんかにしばしばあらわれておるのでございます。私は体験がございませんから、自分で語ることはできませんけれども、
内藤
さんはこの点をよく御存じだと思います。
鍛冶良作
21
○鍛冶
委員
それは、そういう
法律
があったから
適用
したと言われれば、なかったらいいという考え方です。いま問題になっておるのは、あなたの言われるようなことではないのです。この
法律
を
労働運動
に
適用
する、いま
内藤
さんが言われたようなことをあなたは別の方面でそう考えておると言われたが、それは裁判官の
判断
について特殊な場合です。 その次にあなたがおっしゃったのは、どうも
暴力団
に対しては
処罰
が軽過ぎるということ、それは私も認めます。認めますが、それゆえに
本法
の
改正
の必要があるのだとわれわれは解釈して、ぜひとも
本法
の
改正
はなくてはならぬと思っておりますが、あなたは、いままで軽過ぎたが、
本法
の
改正
をやったらまたなお軽過ぎるという御議論ですか。それはどういうところから判定をなさるのですか。
戒能通孝
22
○
戒能参考人
別に
本法
ができたから重くなるとは私は思っておりません。ただ、問題をはっきりさしていただきたいのでありますけれども、
暴力団
を保護する裁判官がいる。それは飯守裁判官です。これは、赤尾敏という人を確かにりっぱな人物だと、わざわざ新聞記者などを集めてインタビューされて、推奨されたことがございます。これは事実です。それから法務省の刑事局の井本台吉さん、これは前にいらっしゃいました局長でございます。これは有名な思想
検事
でございます。美濃部亮吉さんはこの井本
検事
につかまりまして、そうして何とかして治安維持法
違反
で調べようとしたが、美濃部先生あるいは有沢先生、脇村先生などが別に治安維持法
違反
でなかったことは事実です。それが戦後になってちゃんと
刑事局長
をやっていらっしゃる。問題は人的構成、裁判官、検察官の意識をどうするかということで、その上で
法律
が
適用
されておるものでございます。検察官、裁判官がどういう立場で
法律
を
適用
するかということが大きな問題だと思うのでございます。私はそれを申し上げたかったのです。
労働組合
となりますと、ある
程度
発言者がいるわけでございますが、農民の、しかも泥まみれになっておる農民でありますと、発言者がいませんので、むしろ私の実感としてとらえた声なき声を申し上げたのであります。
鍛冶良作
23
○鍛冶
委員
それは特殊のものです。人間の中でもいろいろありましょうが、
本法
のねらいは、
暴力団
を重くすべきものであるということだけは御認識を願いたい。 それからもう
一つ
片山
さんに聞きたいのは、この
法律
をこさえる
意味
は決して悪くない、これはなくてはならないものだとおっしゃるのですが、それならば、何もそんなに注意せぬでもいいじゃございませんか。何かこの
法律
をやるときに、特にいまの
改正
でそういう憂いができたというならば、こういう
修正案
をつけるということに
理由
があるのですけれども、そうじゃないんだ、
改正
が当然なんだ、あるべきものなんだ、それなら何も当然のことをやっておるのに、特に注意
規定
のようなものは必要ないと私は考えますが、あなたはその点ではいかがですか。 〔
委員長
退席、小島
委員長
代理着席〕
片山武夫
24
○
片山参考人
法律
の問題について私はあまり詳しく存じませんけれども、いま指摘されたポイントは、いろいろ多くの人たちが
危惧
をされておる点があることは事実です。そして、またそれを指摘しておる人があることも事実であります。したがって、その事実に基づいてやはり修正をされるということが、法をつくる立場にある人々にとっては親切なやり方ではないかというふうに私は考えまして、
修正案
を入れるべきであるという見解に立っておるわけです。
鍛冶良作
25
○鍛冶
委員
私、これでやめます。
小島徹三
26
○小島
委員長
代理 三田村君。
三田村武夫
27
○三田村
委員
参考人
の方々に基本的な問題点を一、二点お伺いいたしたいと思います。 第一は、今度の
改正
法を含めた
暴力行為等処罰法
が
労働運動
、
大衆運動
弾圧
の具に供せられるという御見解です。これは、私健全にして正常な
労働運動
あるいは
大衆運動
はどうしても民主社会においては伸長発展を期さねばならぬという念願は、人後に落ちないつもりでございます。同時に、ここでいま一番大きな課題になっておるものは、いわゆる町の
暴力団
、
参考人
の方方も申し上げるまでもなく御
承知
と思いますが、
暴力団
の数はすでに五千
団体
、人員にして十七万。御
承知
のとおり近ごろの新聞を見ておりますと、あるいは週刊誌を見ておりますと、目をおおい、耳をふさぎたいような悪質な事犯
事例
が毎日頻発しております。これをどうするかということは、民主社会の最高の課題だと私は思います。これは思想や政党を超越した問題でございまして、われわれが平和で安全な社会生活をするためには、人の生命、身体に対する害悪だけはどうしても除かなければならぬ。これは政治の基本的第一義的条件です。最高の課題であり、最低条件なんです。そのための今度の
改正案
です。私は
参考人
の方の意思をいろいろそんたく解釈いたしまして、どうもそれは納得がいきません。戦前の例も引かれております。私も実は
昭和
十一年以来政治の第一線に立った経験がございます。しばしば警視庁に検挙されたこともあります。東条内閣に反抗して、まる百日間警視庁の留置場におったこともあります。しかし、そのころの
日本
の法体系と、法体系の前提になる政治組織、政治の仕組み、法秩序、社会構造は新憲法によってすっかり変わってしまっているのだということは、聡明な
参考人
の方方も私は御存じないはずはないと思うのです。そうして、これを
労働運動
、大衆連動を
弾圧
する武器、あるいは悪用、
乱用
する武器に使われるとおっしゃいますが、いまやろうと思ったってやりようがありません。戦前の事態は、社会党の諸君は御存じと思いますが、問答無用です。
逮捕
状も捜索令状も何もありはしない。
行政執行法
というまことに便利な
法律
がありまして、いわゆる公安検束、保護検束で、いきなり問答無用で持っていくのです。私も現職の衆議院議員で百日間公安検束でやられました。いまはやれませんよ。たとえば、
現行法
では処分を現場でやりましても、立件条件が整わない場合は判事は
逮捕
状を出しません。
現行
の場合は、もとより証拠がそろわなければ
逮捕
状を出しません。
乱用
するにもしようがない。そのことは特に
内藤
さんあたりは御存じだと思います。私も、いま述べられたこと、戦前の
事例
、戦後の
事例
、絶無とは申し上げません。あったでしょう。どのような社会でも
行き過ぎ
はあります。あやまちはございます。そのあやまちを正すために、司法の最高権威として裁判がある。ここに民主社会の基本的構造があり、司法の権威が尊敬され、尊重されるゆえんがある。でありますから、私は一々述べられた
事例
に対して反駁的な、批判的なことは申し上げませんが、どのような社会でも比較されなければならぬ
事案
がある。もちろん
労働運動
の中、
大衆運動
の中に、これまた全然
行き過ぎ
がなかったとは私も申し上げる勇気はございません。また、
警察
、
検察当局
の
取り締まり
の態度の中にも
行き過ぎ
がなかったとは私申し上げる勇気はございません。両方ともあったでしょう。しかしながら、ここで
目的
としておるものはちまたに横行する
暴力団
です。この
暴力団
の対象になるものはほとんど大部分無辜の良民です。母親が十五、六歳の娘を連れて表を歩いておる、いきなり白昼公然とあいくちか何か突きつけて、林の中に遮れ込んで
暴行
を加える、これは正常な社会の姿とは言えません。そのこと一事が
一般
の善良な
国民
全体に及ぼす心理的恐怖というものは、政治家は真剣に考えなければいけないと私は思う。繰り返して申しますが、正常にして正当な
労働運動
の発展は、その成長をこいねがってやみません。そうでなければ、民主社会の経済の秩序は確立されない。しかしながら、
労働運動
、
大衆運動
の中のどこかに
行き過ぎ
の部分があったかなかったか知りませんが、そこに、たまたま何件か何十件か知りませんが、この
法律
の
適用
を見たということで、いま
国民
あげて要望し
要求
しておるところの最高の社会問題、政治的課題である町の
暴力団
の横行をそのままにしてほっておいていいという論理は成り立たぬと思うのです。ことに
刑法
の専攻であり、学的うんちくの高い
参考人
でありますから、私は率直に申し上げる。私たちも戦前、戦中、戦後を通じて苛烈、深刻な社会に生き残ってきた一人であります。どろ沼の中に生きてきた一人であります。どのような姿で
日本
が今日を迎えたか、このからだで
承知
しております。同時に私がここで申し上げたいことば、世の中で何が一番大切かというと、これは民主主義の原則で言う必要はありませんが、最大多数の最大幸福です。部分的なものを抽象してそのことのゆえに全体を律することは、例外を原則に戻すものであって、法の社会においても間違いだという
判断
を私はしております。いつでも例外は原則に戻しちゃいけない。この
改正案
がねらっておるところは、何べんも繰り返して申しますが、皆さんも御
承知
のとおり、ちまたにあふれるあの
暴力団
をほっといてはいけません。これも
資料
で御
承知
と思いますが、
昭和
三十七年の少年
犯罪
は、青少年白書に出ておりますが、ついに触法少年百五万になりました。これは
暴力団
予備軍と称しておりますが、こういう連中がさらに訓練され、訓練されて
暴力団
に編成され、その組織の中に、非社会的な
活動
、
行動
の中に存在していく姿は私は全く残念だと思う。そういう立場から私たちはこの
法案
の
審議
に臨んでおるのでございますが、繰り返し申し上げて御所見をお伺いします。 前の旧憲法当時の政治体制と新憲法下の政治体制は根本的に変わっておるということはお認めになりましょう。したがいまして、刑事罰にいたしましても、あるいは刑事法令にいたしましても、通用、
運用
の面においてそれこそ隔世の感がある。あのやろう、憎いからやっつけてやろうと思っても、やれない条件がいまの法体系の中に厳存しているんだということは御存じだと思いますが、これはいかがでしょう。
戒能通孝
28
○
戒能参考人
いまのお話に対しまして、私は原則的に全く同感でございます。そして、
暴力
行為
関係
の
処罰
が
暴力団
の
取り締まり
であるということは、私ももちろん心から望んでおります。しかし、現在の
刑法
は
暴力団
に
適用
されていないという事実がございます。現在の
刑法
を
暴力団
に対して厳格に
適用
すれば、実を申しますと、この法規は要らないのじゃないかと私は感じております。 先ほど裁判のお話がございました。確かに裁判は厳正でございます。そして、裁判は厳正であるのみならず、公開されておりますので、厳正でない場合には、その記録を検討する道がございます。このことは非常にけっこうでございます。しかし、検察ということは、何と申しましてもこれは行政でございます。一たん検察官によって
逮捕
状を出される、もしくは
起訴
されますと、その
あと
無罪
になるまで何年かかるかわかりません。私が現実に関心を持ちました小繋
事件
におきましても、すでに九年かかっております。今後何年かかるかわかりません。これは、ほかの問題が入ったからこんなに長くなっておるかと思いますが、しかし何年もかかります。大事なことは、無事の人といいますか、あるいは若干
行き過ぎ
があるけれども、そこまで訴追されるべき人であったかどうか、そういう人がそう長年の間
暴力行為等処罰法
違反
というふうなおそろしい罪名を着て暮らすことがあってはならないのじゃないかと思うのでございます。政治の立場をお考えいただくならば、現在の憲法の立場をできるだけ進めていただきまして、検察の場合にも、
起訴
される場合におきましても、不当な罪名といいますか、おそるべき罪名、おそろしげな肩書きをみだりにつけないようにしていただきたいと思うのでございます。 それから
逮捕
状の問題でございます。
逮捕
状は、現在におきましては、裁判官が発行するということになっておりますけれども、裁判官が発行する前に、実は書記官が
逮捕
状発行の型を大体つくっていくようであります。
裁判所
によりますと、裁判官が署名、捺印したときに
逮捕
状ができるんだから、型ができていく部分は、これは単なる浄書にすぎないとか、いろいろ
説明
をされます。しかし、裁判官が具体的に証拠を考量して、しかる後
逮捕
状を発行されるわけではないようであります。主として書面審理でございます。しかし、書面審理の形式を整えるのはむしろ書記官でございます。裁判官はほぼその書面を見てサインをすればいい。特に疑問のない限り、サインをすればいいというところまで大体準備ができているように聞いておるのでございます。この点は、
裁判所
書記官の諸君あるいは事務官の諸君がしばしば問題にされていることでございまして、これは
裁判所
の内部の問題でございますから、
裁判所
内部の公平審査の手続の記録を御検討いただきたいと思っているわけであります。 現在におきまして、
逮捕
状が非常に厳格な立場で発行されているというふうには、私は残念ながら感じることはできません。したがって、裁判官あるいは書記官、もしくはそれを請求してくるところの検察官なり
警察官
なりというものがどういう立場で
逮捕
状を請求するかということによりまして、
逮捕
される人というのはずいぶん違ってくると思うのでございます。
逮捕
されなくても済む人たちがずいぶん
逮捕
されているという実例は、たくさんございましょう。小繋の場合でございましても、農民で逃げる先のない人たちが
逮捕
されている。しかも、保釈もなかなかされなかったという事実もございます。逃げる道がないのですから任意出頭で十分だったと思いますけれども、なおかつ
逮捕
され、勾留されているという事実がございます。重い罪名がつけられて、それがいつまでも消えないでいるという状態のほうに問題があるのじゃないかと感じるわけでございます。 なお非行少年の問題でございますけれども、これは率直に申しますと、東京なんかにおきましては、わけても住宅問題と非常に
関係
があるということ、この点はなお御検討いただきたいと思うのでございます。 いささか余談になるかと思いますけれども、地方から東京に来る若い人たち、これが東京に来て感じることは、何といっても
一つ
のノスタルジアのようでございます。おかあさんは恋しいし、うちは狭いということだと思うのでございます。その結果深夜喫茶などに出入する。そのうちにいろいろな人たちに呼びかけられる、若干おごってもらうということになりますると、一日百円か二百円もらって、そして、お前これで働いてこいということになるわけでございます。現在のぐれん隊の大部分というのは、非常な低賃金
労働者
なのでございます。私ちょっと調査いたしまして、びっくりしたくらい低賃金
労働者
でございます。一日二百円くらいお金をもらいまして、これでお前暮らせということになってまいりますと、
あと
かっぱらいをしたり、いろいろなことをするようなことになってまいりますので、ほんとうにあたたかい気持ちで非行少年の問題をお考えいただくならば、少年、わけても郷里を離れて東京に来る、大阪に来る少年たちのために、もっと愉快な設備というものを、若干ぜいたくな設備をつくっていただくようにお願いしたいと思うのでございます。これは余談でございますけれども、政治の問題としてお願いいたします。
内藤功
29
○
内藤参考人
ただいまの御質問につきまして、若干私の見解も申し述べておきたいと思います。
日本
の政治形態が戦前と戦後でどのように変わったかというような問題は、私の専門外でございますので、この点は省きまして、先ほど私の申し述べた
労働運動
における
団結権
、
団体交渉権
、それから
争議
権の保障の点につきましてはどうかと申しますと、この点は明らかに
日本
国憲法においては、この労働三権というものが
権利
として勤労者に保障されているわけであります。だとすれば、
日本
国憲法の条規、精神に
違反
しますところの
暴力処罰法
というものは、これは当然
廃止
さるべきものである。
大正
十五年の政治形態のもとでできた
法律
は、もし政治形態がいま先生のおっしゃったように根本的に変わったという見解に立ちまするならば、この
法律
は戦前の遺物なのですから、当然ここで書き改めて、新たに
暴力団
だけを
取り締まり
、
乱用
のおそれの全くない
法律
をつくるということも可能であったにもかかわらず、これがいまなお存在している。ここのところに
労働運動
、
大衆運動
に対する
弾圧
の非常に不自然な不幸な根源が実はあると私は思うのであります。 申すまでもなく、
争議
権といいますのは、この
内容
として、
争議
行為
に対して刑罰を科せられないという
内容
は、歴史的にも一番基本的な
内容
であります。しかしながら、最高
裁判所
の戦後の
判例
は、最初の間は
暴行
、
脅迫
といえども常に必ずしも違法ではないというのが、
昭和
二十四年の板橋造兵廠
事件
の
判例
でございましたが、その後
暴行
罪、
脅迫
罪に当たる場合は、すべて
労働組合
法の刑事免責保障の
適用
がないというふうに、だんだんとこの正当性の範囲を狭めてまいっております。 このようなことを見てまいりますと、憲法三十八条という面から見ますと、戦前からえらい変わりようですけれども、この
法律
を実行する、最終的に保障すべき最高
裁判所
の
判例
でも、私をして言わしむれば、
争議
行為
はもともと思いものである、
争議
行為
に
暴力処罰法
は無制限に
適用
されるという戦前の考え方とたいして変化がないように私は思うのであります。 そういうところから、そういうおそれのある
暴力処罰法
は本来
廃止
すべきであるという
意見
が出てきておりますし、また
廃止
しないまでも、
労働組合
運動あるいは
労働組合
員の
活動
には
適用
しないということを、明確に解釈あるいは
立法
例において明記すべきであるという見解も出てくる根源があるだろうと思うのであります。 とにかく先ほど
戒能参考人
、それから
片山参考人
もこの点は一致しておりますように、戦前の
暴力処罰法
は、自由なる正当なる
労働運動
に
適用
するものではないという
政府
の言明にもかかわらず、
適用
されたということは、これは先生もお認めになるとおりだと思います。 そこで私たちは、やはりこの際、この
法律
がもう一度この
改正
一案によって、さらに
労働運動
などに対する極端な
弾圧
を企図して作用しないように、ここで十分警戒をして、できればこの
法案
はもとへ戻して、もう一ぺん
暴力団
の根源というものを、刑罰だけでなくて、探っていく必要があると思うのです。そこで、
暴力団
退治ということについては、本
改正案
が直ちに特効薬であるかどうかということは大きな問題です。まず根源を突き詰めなければいけません。根源でなくて、たとえばこの法務省の
資料
にも出ておりますように、七百九十九名のこういう
常習
犯の人をあげて、こういう悪いやつがいるというならば、そういう悪いやつは一体どういうふうにしてそういう
暴力団
の道に入ったのか、やはり人間的にこれを考えなくてはいけません。私は、
弁護士
として法廷に立ち、刑事
弁護
もやっておりますけれども、ほんとうの悪人というものはいないのです。いろいろ事情を聞いてみれば、
おい立ち
から、境遇、経験、その中で
暴力団
に入らざるを得ない、足も抜けないという事情もあるのです。こういうことを一方において根本的に考えなくてはいけない、それと相まって
法律
の
改正
を考えなくてはいけないのに、
法律
の
改正
だけ――それだけとは私はあえて申し上げませんけれども、それが非常に先行してしまって、そしてほんとうの根源である、どうしてそういう
暴力団
常習者
というものが出てきたかという社会的な根源――私の
意見
では、それはおそらくはっきり言うと経済政策の貧困であると思います。現在において正業につけない、
暴力団
に入っていたほうが実入りがよろしい、そこで足が抜けないということが
一つ
あります。それからもう
一つ
は、これはいつかの読売新聞にも書いておりましたけれども、ことしの二月に、
暴力
取り締まり
対策要綱を
警察
庁において御
立案
なされたときに、ある捜査官は、真剣に、日経連などを通じて一部の財界人からこれらの
暴力団
にお金が出されておることを何とか取り締まってもらわなければほんとうに責任が持てないと発言したということが、読売新聞の解説に出ておりました。私は、捜査官の中にほんとうに真剣にこれを考える人があれば、こう言うことは当然だと思うのです。そういう根源を考えていかなければならない。 それから
警察
が、これは私がさっきの陳述で申し上げましたように、特に
労働争議
に介入してくる
暴力団
が目の前で
暴行
しているのに、それに対していかに
現行
犯
逮捕
を渋っておるかというこの動かし得ない事実ですね。これなどからして、われわれは、こういう根本的な問題を解決しないでこの
法案
の
審議
を非常にお急ぎになるということについて、実は非常に疑問に思っておる、たいへん率直に申し上げるとそういうことになると思います。
三田村武夫
30
○三田村
委員
戒能参考人
の先ほどの御
意見
に対して、私は、冒頭に申しましたように、あげ足とりや反駁のための反駁論をやろうとは思いませんが、ただ
一つ
、
刑法
の
適用
でいいじゃないか、こういう御
意見
です。なるほどそうなんですが、
刑法
の刑では軽過ぎるのです。たとえば「十年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ
罰金
若クハ科料ニ処ス」こう書いてある。この
法案
の
審議
についても、社会党の諸君からいろいろ
意見
が出ましたが、もう少し検察、
警察
を督励し、
裁判所
を督励して刑を重くしたらいいじゃないかという御
意見
も出ました。私は、この御
意見
には必ずしも賛成しません。
警察
は
警察
、検察は検察、裁判は裁判、おのおの独立した機能と権限を持っている。いまの
刑法
の
規定
の中でも重く罰すればいいじゃないかという御
意見
は、御
意見
として伺いますが、現実はそうなっていないのです。たとえば、
昭和
三十三年から三十五年の三カ年間の
暴力事犯
第一
審判決
の統計を見ますと、傷害、
暴行
、
脅迫
、
銃砲刀剣
所持、
暴力
行為
、合わせて一年以上の刑に処せられた者は一万二千七百十二人です。一年未満――六カ月が一番多いのですか、二万八千五百三十三人、一年未満の短期刑のほうが三分の二以上を占めておる。だから三十四歳のある男が
前科
二十四犯を持っておる。三十四歳で二十四犯というと一体何だ、こういうことです。これなど、せっかく
刑法
があっても刑の効果はないのです。そこで、短期自由刑の最下限を引き上げませんと、
裁判所
はその刑罰法を忠実に
適用
し
判決
することが裁判官の任務でありますから、戒能先生せっかくの御
意見
でも、これは
裁判所
はやりません。ここに問題点が
一つ
あります。 それから
内藤
さんも申されました青少年不良化の問題、それから裁判構造の問題、これは戒能先生でしたか、私がかつて三十二年でしたか、当
委員会
の
委員長
をしておったときに、最高
裁判所
の機構改革法が出てまいりまして、そのときにたしか戒能先生に
参考人
としておいで願ったと思います。いまの
日本
の裁判制度は、私が申し上げるまでもなく実体法と手続法とチャンポンです。刑事実体法は大陸法、手続法は米英法、チャンポンだから非常に困難な点が出ております。根本的にこれを解決しなければならぬことは言うまでもありません。
内藤参考人
の、いまごろ
暴力
等
処罰
法の
改正
をするよりも別なことを考えたらどうだということも御
意見
のとおりで、
法務当局
もあるいはわれわれもその点は考えております。これは大体において
刑法
犯罪
でありますから、
刑法
の類型に入ってくるのは当然であります。
改正
刑法
草案の中にこれは入っております。そういう形において刑事法としての体系が整わなければなりませんが、いまの事態からいいますと、五年先か七年先か、その新しい
刑法
を
成立
、制定せしめるまで待っておられません。そういうことのために今回の
改正
は私たちは必要だと思っているわけです。 なお、いま
内藤
さん強調されましたが、決してわれわれは今回の
改正
法だけで事足れりと思っておりません。
政府
もわれわれもそれほど浅薄じゃございません。町の
暴力団
がどうやって発生してくるかくらいは、十分われわれも検討を加えております。経済の貧困にも原因がございましょう。社会構造の穴にも原因がございましょう。しかしながら、いまここにある悪はどうやって除くのだというところに問題の焦点があるのです。御
意見
は御
意見
として十分伺っておきますが、私たちがここで申し上げたいことは、この町の
暴力団
退治、いま
内藤
さんが言われました
暴力団
に財界から金を出している者があるじゃないかということ、その証拠が押えられたらこれは断固としてやりましょう。いままでにも断固としてやった例もあるのです。やらなければならないと思います。これをなおざりにするつもりは毛頭ございません。しかし、法治国ですから、すべて
法律
に基づいた処置をとることは絶対の条件だと思うのです。何でもかんでも、あそこに悪があるからあの悪をあばいてやれということは、それが右であれ左であれ、社会構造のどこに向けられてもよくないことだと思う。そうでなくて、
一つ
の刑罰なら刑罰の体系を整えて、そこの中で、もとよりそれは全部ではございませんが、できるだけのことをやっていくことは政治の任務であり、
政府
の責任だと思うのです。この点は、三田村個人の立場から申し上げてもよろしい。私の見解と御両所の見解と、その立論の根底において違うところがあることは私も認めます。しかしながら、私たちはこの
法案
を、今国会で三回目ですが、どうしても
成立
させなければならぬという政治上の責任が、われわれとして非常に良心的に大きな悩みになっておるということだけは御理解願いたい。正常な
労働運動
の
弾圧
に用いるとかなんとか、そういうことは毛頭考えておりません。しかしながら、いまあげられた例も、先ほど申しましたように、必ずしも全部正常な健全な
労働運動
、労働
行為
ばかりだとは私は申し上げる勇気がございません。かつての
小作争議
がどのくらい深刻な
争議
をやったか、御存じのはずです。私も現場にいて知っていますが、地主の家に火をつけて焼いてしまったり、
裁判所
を襲撃して屋根がわらをはいでしまったりした
小作争議
もございます。それは社会的条件がしからしめたのでありましょう。そういう時代といまの時代は違っているのだ。
内藤
さんが言われましたように、労働三権というものは憲法で保障されておる、この保障された労働三権は守らなければならない、健全な
労働運動
を守っていくためには、ごく少部分でも不健全なものがあれば、むしろ
労働組合
の主体性からいって当事者の側から改めてほしい。私は、これが
労働運動
に悪用され
乱用
されるというようなことは、もとより
政府
としても考えておりませんし、よくお話に出ます、
法律
は通ってしまえばひとり歩きをするという
意見
も、そのように思います。しかしながら、ひとり歩きはするが、為政者の独断でひとり歩きはいたしません。
日本
は権力国家ではないのです。民主国家です。権力国家ならば、権力者の恣意によってひとり歩きをいたしましょう。しかしながら、いまの民主社会における民主憲法のもとにおいては、ひとり歩きはしませんよ。
警察
は
警察
、検察は検察、
裁判所
は
裁判所
の独自の立場で、独自の機能と独自の責任でこの問題の運営に当たっていかなければならない。だからわれわれは、ちまたに横行する
暴力団
の手当てのために、これだけは最小限必要だというこの必要性からこの
法案
の
審議
に臨んでおるのです。それだけはひとつ御了承願いたいと思います。 これ以上議論をしようとは思いませんが、何か私たちが
参考人
の御
意見
を伺っておりますと、
労働運動
弾圧
のために、あるいは
大衆運動
弾圧
のためにこの
立法
に当たっておるような御
意見
がもしございましたならば、私ははなはだ遺憾だと思います。きょうの
参考人
の方々がお述べになりましたことは、この
委員会
の速記録に残ります。私たちの立場から、この
法案
の
審議
に臨む責任の立場から、御両所の御
意見
のままでそれだけを速記録に残して黙って見送るわけにはいかないという立場から、私は自民党の一人として、この
暴力事犯
に対する態度はいかにあるべきかという立場から申し上げたのです。御
意見
がございましたら重ねて伺っておきます。
戒能通孝
31
○
戒能参考人
暴力団
に対して厳罰にしなければならないということは、私も同感でございます。また、厳罰にしなければならないだけの
理由
があると私は信じております。この点は、私は三田村先生に全然異存がないのであります。ところが
裁判所
が
暴力団
に対してわりあい甘いということは、記録によってはっきり出ておると思います。先ほどおっしゃったように、三十四歳で二十何犯というようなことは、ずいぶん甘いということを明らかにしておるのじゃないかと思います。ところがその
裁判所
が、
労働運動
なんかになってまいりますと相当きびしゅうございます。いわゆる洗濯デモというようなものをやったとすると、これはあまりよいことではありませんが、大体一年半が相場ではないかと思っております。
暴力団
が踏んだりけったりする、時によるとあいくちを突きつける、こういうようなものでせいぜい三カ月ないし八カ月、石井一昌などでさえ八カ月くらいで出ております。ところが
労働運動
ということになりますと、やはり
組合
があるわけであります。
労働組合
が自分でストライキをやろうと決議してストライキをやっておる最中に分裂してしまって、そうして第二
組合
が第一
組合
の張っておるピケを侵して入ってくるというようなことがあります。そのときに、乱暴をしなければそれにこしたことはありませんが、しかし若干の感情が出てまいるだろうと思います。これは三田村先生、あるいはここにいらっしゃいます先生方のような紳士は、そういう感情をあらわしたら、これは非常にけしからぬと思われると思いますけれども、それまでを
要求
されるのは若干無理かと思うのでございます。やはり若干の感情というものは出てまいります。そうして、こづき回すということはやると思います。少なくともミミズばれができるぐらいのこづき回しはやると思います。ストライキが済んでしまえば働かなければならないのですから、足を折ってしまうということはしておりません。
暴力団
ですと、足を折る、胸を突き刺すということをやります。それにもかかわらず、
前科
何十犯という者が出てくる。これは、一体なぜ
裁判所
がそういうふうな軽い取り扱いをするのだろうかと私は私なりに感じて考えてみたことが一ぺんございます。私は、残念ながら監獄の中のことにつきましてはよく存じません。監獄の中の生活というものは全くの伝聞でございますから、間違っているかもしれません。監獄の方、刑務所の方にはたいへん不愉快な発言になりますが、
日本
の刑務所というのは、遺憾ながら犯人を教化改善するだけの設備がないように私は感ずるわけでございます。つまり裁判官はそれを知っている。だから、ぐれん隊を監獄に入れても教化改善されないということを知っておられる結果、裁判官は軽い刑を科するのではないかしらんという疑いを私は持つことがございます。 〔小島
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 むしろうかつに刑務所に入れられていると、彼らに教えられて逆に仲間の組織の中に入っていってしまう、むしろ悪者になってしまう。監獄は、遺憾ながら
犯罪
者を育てる学校だということを裁判官はうすうす感じている結果、軽い刑を科せられるのではないかという感じを受けるわけでございます。それでなければ、二十何犯というものがあり得るはずはございません。そうしてまた、再犯率が非常に高い。不幸にして
日本
の窃盗犯とか傷害犯、
暴行
犯の再犯率は非常に高いということは、裁判官が監獄の学校的機能というものに対して若干の
疑惑
を持っておられるのではないかと思うのであります。ところが
労働運動
か何かになってまいりますと、これは教育の必要はございません。ストライキがなければ普通の人間でございます。ただストライキがあった結果、若干激高するということがあるわけでございます。教育の必要もございません。ですから、これに対してはある
意味
におきまして平気で重い刑を科し得る。重い刑を科した反面で、
執行猶予
というものをつけてしまう。つまり重くしかつ
執行猶予
をすることによって、幾つかの将来の
活動
に対して警告を与える、見せしめをするというような心理作用が動いておるのではなかろうかという若干の推測をするわけでございます。私としても、
暴力団
に対しては重い刑を科していいと思います。それからまた、重い刑を科した場合におきましては、その
暴力団
員が二度と再び
暴力事犯
を繰り返さないように、監獄で十分な教育をし、そして更生施設も設けて、ある
程度
まで生活を保障するという道がとられること、そのことが望ましいんじゃないかと思いますけれども、いまはかなり早く出ている。なぜ一体
裁判所
はそういう軽い刑を科するのかということについて、私は疑念を持ちます。裁判官だって常識ある人間でございますから、まさか
暴力団
がかわいいからということは、特殊な人を除けばあるまいと思います。また
暴力団
に対して有力な
弁護士
がつくということもあるかもしれません。しかし、それがすべてではなかろうと思うのでございます。裁判官が一体なぜ
暴力団
に対して軽い刑を科するのかということについては、これは量刑の立場から御検討をお願いいたしたいと思います。ただ私、残念ながら監獄の実態については全く無知識、むしろ伝聞でございますので、これは心理的な分析にまで至っていないことをお許しいただきたいと思います。
三田村武夫
32
○三田村
委員
大体私の申し上げて御所見を伺いたい問題点は終わりました。こまかい点を議論しておると果てしがございませんから、この
程度
でとどめます。 終わりに、戒能先生も言われましたが、裁判官の問題、それから量刑上の問題――私も実は巣鴨の刑務所におったことがございますので知っておりますが、裁判官の独立性というものは私は尊重していかなければいけないと思うのです。裁判官はみずから良心に従って
判決
するということは、裁判官本来の
使命
ですから、どのような心理作川で
判決
が下されるといたしましても、裁判官の量刑の基準になるものはそれを規律する
刑法
です。その基礎法の定める刑が軽ければ、軽い
判決
をするのは裁判官の自由だと思う。これが一年以上十年以下にいたしますと、少なくとも一年以下の刑は科せられません。そこにいま戒能先生の御心配になりました、出たり入ったり、出たり入ったり、そのうちにだんだん箔をつけてますます町の
暴力団
の親分格になってしまうという最も好ましくないことをチェックしていく道があるのだということをわれわれは考えるのです。 それから刑の下限引き上げの問題については、
権利保釈
の問題もからんできております。これは、罪を犯した者といえども基本的人権は憲法で保障されております。これは当然考えなければなりませんが、
起訴
したらすぐ
権利保釈
で出てきてしまう。出たらその日から自由人になって、自由に
暴力
のちまたを横行するのでは何のことかわけがわからぬ。そのことによって被害者はさらに恐怖を感じ、近ごろは
取り締まり
の衝に当たっておる
警察
の家庭までもおどかしているくらいなんです。決して健全な姿ではないのです。そういう点に対する手当てもしなければならぬということが今度の
改正
法のねらいであるということも御了承願いたいと思います。 これ以上私は押し問答をやるつもりはございませんから、これにてとどめます。
戒能通孝
33
○
戒能参考人
ごもっともでございますけれども、私も、裁判官が私たちとあまり違った感覚を持っていらっしゃるとは
一般
的に考えません。ですから、
暴力団
に対して一年ないし一年半の刑罰を科するということは、普通そういう感じ方はされるのだろうと思います。ところが裁判官は、具体的に言うと、あまり重い刑を科していない、なぜ重い刑を科していないかという問題につきまして衆議院で特に御調査になったことがございましたら、私どもとしては
参考人
として質問をするのははなはだおかしゅうございますけれども、
理由
のごく簡潔なことだけ教えていただければありがたいと思います。
三田村武夫
34
○三田村
委員
これは、私のほうから釈明する問題ではございませんが、先ほども申しましたように、裁判官の心理がどのようにあるかということは、これは他の何人も干渉できない厳粛なる裁判、司法の独立でございます。これは聞くわけにはまいりません。調べるわけにはまいりませんが、出てきた統計によると、
昭和
三十三年から三十五年の統計で、先ほど申しましたように、
暴力事犯
で一年以上が一万二千七百十二人、一年以下、六カ月が一番多いのですが、二万八千五百三十三、これでは刑の
目的
を達し得ない。
暴力団
を一掃する処置のためにわれわれは別途なことを考えなければいけないということが下限引き上げの
理由
だということを申し上げたのです。
裁判所
の中のどういう心理で裁判官が
判決
を下すか、これは何人も、最高
裁判所
の長官といえども調べる道はないし、また調べてはいけないことだと私は思います。
戒能通孝
35
○
戒能参考人
別に私、そういうことを申したわけではございません。しかし、裁判官が特に軽い刑――おそらく
暴行
罪をやった
暴力団
に対して六カ月というのは非常に軽いというふうに三田村先生はお考えでしょうし、私も考えるのでございます。軽い刑を科する何か客観的な
理由
があるかということ、これの客観的な御調査をなさったかどうかということを伺っておるわけでございます。私の印象でございますけれども、これは、監獄に入れてもあんまり効果がないというふうに裁判官は考えるのが普通じゃないか。
日本
の監獄制度というものは、どこか欠陥があるのじゃないかということ、その欠陥があるということは、結局監獄公務員が、刑務所公務員が自分の
職場
に対して十分な関心を持てないところにある。つまり具体的に申しますと、個人個人の
意見
しか言えない、監獄公務員に対しましては
団結権
の保障さえないということと私は何かつながりがあるというふうに感じているわけでございます。これは議論になりますから、私としてはこの際失礼いたします。
三田村武夫
36
○三田村
委員
終わります。
濱野清吾
37
○
濱野委員長
田中織之進君。
田中織之進
38
○田中(織)
委員
参考人
に対するわれわれ野党側の質問は、できるだけ遠慮したいという考えでおったのでありますが、先ほど与党側の質問を伺っておりますと、
参考人
から
本案
に対して率直な
意見
を述べたことに対して、
原案
を支持する立場の与党としては、いわば黙って聞いているわけにはいかないという
意味
合いにおいて、相当
意見
の
開陳
も行なわれているようでございますので、私も、本来ならば、そういう
意味
で
参考人
の
意見
を支持する立場において、
本案
に
反対
の立場で
意見
を述べたいのでありますが、討論会ではございませんので、
意見
を述べることは差し控えて、二、三の点について率直に簡潔に質問を申し上げますから、時間も経過しておりますから簡単にお答えをいただきたいと思います。 まず
戒能参考人
にお伺いをいたしたいのでありますが、戒能先生は農村における入り会い権をめぐる切実なる問題に関連して、この
暴力行為等処罰法
がいかに
運用
されているかということについて、実例をあげて述べられたのであります。
内藤参考人
から、主として
労働争議
を
中心
にしての
本法
適用
の状況について述べられたのと合わせまして、私ども非常に傾聴いたしたわけであります。私は、この点は戒能先生がどうお考えになるか伺いたいと思いますが、
大正
十五年に
本法
を制定するときに、当時の
法務当局
が
労働争議
あるいは
小作争議
、それに加えまして、もう
一つ
、当時ほうはいとして起こってまいりました水平運動、
大衆運動
でありますが、これに対しても
本法
を
適用
しないということを言明していることは、先生も御存じのところだと思うのであります。ところが
本法
ができますると、いわゆる水平運動、現在の部落解放運動に関連をする
事件
について
本法
の
適用
がかなりひんぱんに行なわれてきておるわけであります。部落差別の問題についての理解というものは、なかなか現実社会にはないわけです。これは何人も否定することはできないので、現に内閣に同和対策
審議
会という強力なる機関を
政府
は設置して、この問題の根本的な解決のための施策を
審議
しているような段階でありますけれども、実際問題としては、部落問題に対してはなかなか
裁判所
、
警察
等
取り締まり
当局等においてはどうも理解がされていない。御
承知
のように、部落差別問題というのは、いわゆる封建時代の身分制の遺物である、少数の部落の人たちを今日なおべっ視観念のもとにべっ称もいたしておりますし、明治四年の太政官布告で、べっ称は法制的には除かれておるのでありますけれども、実質的に長い間社会から隔絶されたような形に置かれたことからくる社会的、経済的な条件を引き上げるということについて何らの処置をやっていないから、部落の後進性と申しますか、反社会性というものが今日なお残っておるところに差別
事件
というものが起こってきておるのが
実情
だと私は思うのです。 たまたま
暴力法
の
適用
が起こりました
事件
は、そういう
意味
で特定の部落に対して特定の者が差別をした。したがって部落の人たちにとりましては、それは結婚の問題に支障を来たしてくる、就職にも差しつかえるというようなことから、その差別者に対して非常な憤激を持って、まず
関係
者、差別者というものを呼んでまいりまして、なぜそういう言辞を弄したかというようなことの、いわゆる差別事情の確認会というものを行なうわけです。ところが、差別したということをなかなか率直に認めないものです。したがって若い人たちの中には、自分が差別された直接の被害者であるということ、おまえはどこそこでおれに対してこういうことを言って差別したではないか、こういうようなことから、差別者に対して、勢い、先ほどの小繋
事件
の場合のように、肩を突くとか手が触れる場合がございます。これが
暴力
行為
である、こういう形で処刑された
事件
が私の村にも起こりました。 それから西牟婁郡の日置川町に安宅という部落があります。ここはもと水平の行者といわれた栗栖八郎氏の生家のあるところであります。最近は非常に他の地区の人との間の融和がうまくいっているところでありますが、ここでたまたま問題が起こりました。町の
教育委員会
の諸君などが立ち会って、公務員が寄って確認会をやったときに、青年の諸君――これは模範青年です。町の青年団の役員もいたしておるし、町役場につとめておるというような諸君が、あまりにも白々しい否認をやるために、本人に対して威圧を加えた。これが
暴力行為等処罰
に関する
法律
で
起訴
されて裁判になったのです。私は、この差別
事件
というものは、特定の部落の大衆に対して与えるのでありますから、差別をされた被害者である部落の人たちが勢い何としてもやはりそういう差別者を憎むという気持ちは当然あると思うのです。それに対して、まず事実を確認して、別に差別者をなぐったからといって、あるいは罪に処したからということによって、これは差別問題がなくなるのではないのです。したがって、それは間違ったことだということについて反省があって、差別のない状態をつくり出すために差別者が積極的に進むことがこの問題の処理の重要な点だということで今日私どもも指導いたしておるのであります。そういう
意味
で、間々部落の人たちが問題の成り行きを知るために多数集まります。そこで強い声が出たということになると、
団体
または多数の威力を示して
暴行
、
脅迫
を加えたということで、
暴力行為等処罰法
を
適用
してきているというのが事実なんです。こういう形の
暴力法
の
適用
というものは、先ほど先生が述べられた入り会い権というような、部落の人たちにとっては深刻な生活に関連する問題についてたまたま出た。それは、ある
意味
からいえば多数の威迫ということになるかもしれませんが、そういうものにまでこの
法律
を
適用
するということは、明らかに
行き過ぎ
ではないか。そういう問題の性質から提案者がこれは
適用
しないということを言明したのは、そういう
一つ
の歴史的なものがあると思うのでありますが、現実にはそういう形が出てきている。私が国会へ出てから約十八年ばかりになりますけれども、この国会で取り上げた差別
事件
だけでも二十数件ある。 さらに
一つ
の問題は、高知県の興津に起こった、いわゆる差別問題から起こった子供たちの同盟休校。休校中に部落の子供たちの学力が低下したらいかぬということで、校長が認めて部落の集会所で分散授業をやるために、校長の許可を受けて借り受けていた三十脚ばかりの机、いすを
教育委員会
が撤去するという問題に関連して、二百五十名の武装警官が出てまいりまして、それでいざこざが起こった。それを
暴力
行為
だ、公務執行妨害だ、傷害罪だということで
起訴
して、これは裁判になった。私も特別
弁護
人として出たのであります。昨日
関係
者が上京してまいりました。今月の六日の日にそのことについては
無罪
の
判決
が下った。私は当然のことだと思う。ところが、そういう形で職権
乱用
をして、女、子供を入れても全体で三百名しかいないところに二百五十名の
警察官
を入れて、公安
検事
がみずから指揮に出てきた
事件
で、いわゆる被告になった人たちは、
裁判所
で
無罪
の
判決
は出ましたけれども、そういう形で、部落の人たちももみ合いの過程でけがをした者も何人かあります。診断書も出している。そういう被害者が
無罪
の
判決
が下っただけで何ら慰謝されることがない状態に置かれているということになれば、私は先日も
賀屋
法務大臣にも、そういう観点から出てまいりますと明らかに
乱用
しておるじゃないかと申し上げて、最後には
行き過ぎ
はあるだろうということを
賀屋
さんは認めましたけれども、これは、私重要な問題だと思うのであります。この種のいわゆる部落差別、従来から俗にいう水平運動等に対する――
労働組合
とか農民
争議
は事態がはっきりいたしますけれども、こういうような
事案
に対しても
本法
が
適用
をされていく。この問題の差別が
あと
を断たない限りは、こういう
事件
が私は起こらないという保障はできないと思うのであります。その場合に
政府
当局では、一条一項は何ら触れていないのだからというだけで答弁をそらすのでありますけれども、私は、やはり
改正
点も、それに部落解放同盟の常任の諸君があらゆる
事件
に立ち会うということになりますれば、勢い
常習者
という認定をされないとも限らないという心配が出てくるのであります。こういう点は、先ほどの
労働争議
とは別な立場で、農民問題に関連して先生は御
意見
を述べられましたので、本件についての、私がいま申し上げたことについて先生の御
意見
がございましたらまず伺いたい。
戒能通孝
39
○
戒能参考人
部落の問題は、私、東京に住んでおりますのであまり深刻に感じません。関西に参りますと、非常に深刻な問題があるようでございます。
京都
、大阪、特に
京都
などはそれは深刻な問題があるようでございます。 私も、実はある大学におきまして小繋の話をいたしましたときに、うっかり小繋部落、部落と盛んに申しました。ところが学生さんがそれを聞いていまして、憤然としまして、部落ということばは何かというふうに聞かれるわけです。差別的言辞があったというふうな抗議をされました。私は、その学生さんをその席でしかったわけです。人の話を聞かないで抗議するとは何だというわけでしかりました。そして押し問答いたしまして、私がその場で勝って、相手は自分も若干軽率なところがあったと言われました。しかし、私自身うちへ帰ってよく考えてみまして、部落ということばでそれほどの反応を学生が示すということは、やはり関西の部落問題、特に
京都
、奈良、和歌山というようなところの部落問題というのは非常に深刻なものがあるのじゃないかと思います。そして、部落ということばによりましてもう何十年間、何百年間ずっといじめつけられてきた人たちがいるわけでございます。その人たちが、場合によりますと
誤解
によって反応するということ、これはないという保障はございません。またあってもしかたがないのじゃなかろうかと思います。私は軽べつした気持ちはなかったわけでございますけれども、そういう環境をつくって、その環境の中に私もいるんですから、私はこの責任を分担しなければならないというふうに感じたわけであります。残念なことに、
日本
の
警察
あるいは検察官の中に、時には裁判官すら、部落民のくせに何だということを法廷で言われた方があるようであります。検察官、
警察官
の方になりますと、部落民ということになりますと、何か一方的なきめつけ方をし、部落民が悪いんだ、あるいはしいて事を荒立たせているという形で、大量の
警察官
を投入するということがあるように私も思えます。現にあったわけでございます。ですから、
暴力行為等処罰法
というものを本気になって
立法
される場合ならば、これは
一般
的に
暴力団
が悪いんだ。これは悪いから悪いんです。それは私は同感されると思います。
暴力団
が悪いんだということで、実は部落解放運動あるいは
労働運動
、
農民運動
までいっていない。しかし、考えてみれば
理由
はある。これは非常に高い地位におられる方には
理由
はありませんけれども、部落民として何代も何代もいじめられた人になりますと、部落民と言われるだけですでに憤然となるというようなこと。これは間違いだというわけにはいかない点があるということを私は感ずるわけであります。この点で、
立法
そのものを何か改める方法はないだろうか。部落解放同盟の方も、
銃砲刀剣
のたぐいを実際に使われたことはないと思います。「
銃砲刀剣
」というふうに厳格に
規定
をし、「類」というふうにしり抜け
規定
にならないようなことを考えなければならないだろうと思います。部落問題、労働問題は、本気で考える場合ですと、おそらくあいまいなことばを使うということが問題の根本にあるのではないかと思います。あいまいなことばは、
立法
当時におきましては、常に、そんなことはない、安心しろと言われたその領域に向かって発展していくのが
一般
的傾向である。残念ながら
暴力行為等処罰法
もかつてそうでございました、現在もそうであります。これだけは事実でございます。この点は
法律
の機能として、
法律
がひとり歩きしているという事実を前提として御検討願います。
田中織之進
40
○田中(織)
委員
部落問題は、東京にいる
関係
から具体的な
事例
にあまり接していないと断わられましたが、非常に深い理解を持っておられることに対して敬意を表する次第でございます。 特に
暴力法
の
適用
にあたって、もちろん、先生も言われましたように、
銃砲刀剣類
による傷害ということは、部落解放運動に関する限りは過去においてもありませんし、今後においてもあろうはずはないと私は思う。ところがこの点については、先ほど
内藤参考人
でございましたか、述べられましたいわゆる
常習認定
の問題に部落解放の専従者がひっかかる。しかもその点については、法務省
刑事局長
の答弁の中にありましても、
暴行
、
脅迫
、器物損壊、それから今度は傷害が入るわけであります。これを
一つ
のグループとして考えておる。そういうものをいわゆる
暴力
行為
という。したがって、
暴行
なり
脅迫
なり、器物損壊なりの各罪についての
前科
云々であるとか、そういうことについての
常習
というような問題じゃなくて、それをひっくるめたいわゆる
暴力
行為
の
一つ
のグループ、
暴力
行為
というグループの
行為
を繰り返す習癖性があるんだということを、従来の大審院あるいは最高裁の
判例
も、先ほど
内藤参考人
から述べられたように、そこに具体的に
事例
を示している。非常に広範な
常習性
認定の解釈をしているというところに、特に部落解放運動、
労働組合
あるいは
農民運動
の
関係
、あるいはその他の
大衆運動
の場合のいわゆる
活動家
というものがひっかけられる危険性がなしとはしないという私どもの
反対
と一致するんです。 私は、その点についてもう
一つ
伺いたいのは、
参考人
の三人の方ともに
暴力団
に対する
取り締まり
を厳重にやるということは共通しているのであります。この点は私も
委員会
で追及したのであります。
暴力
というのは、
暴力
行為
そのものが
目的
なんじゃないんです。
暴力
行為
によって金銭を得る。それによってなりわいを立てていくということが
暴力団
のそもそもの存立の
目的
であります。したがって、これは
刑法
上の
犯罪
からいえば、金を得るという恐喝が
暴力団
の最終的な
目的
だと思う。ところが、その点に今度の
改正案
においては触れていない。
暴力団
の
銃砲刀剣類
による傷害あるいは
暴力団
の
関係
者の中にいる
常習者
を
処罰
するということについてはそれぞれ
目的
を持っているし、
一つ
の意義があることは認めるけれども、これは
暴力団
対策と言われるけれども、
暴力団
の重要な問題をはずしているのではないかという観点から、私どもも皆さんと同じような立場で
反対
をいたしておるのでございますが、恐喝を入れなかったということについて、この点は
内藤参考人
からでも戒能先生からでもけっこうでございますが、御所見を伺いたい。 それから、ついでに私の質問点を、
あと
二つございまするので申し上げますから、逐次お答えいただきたいと思うのです。
現行法
の第一条の二項でございます。「
常習
トシテ前項ニ掲クル
刑法
各条ノ罪ヲ犯シタル者ノ罰亦前項ニ同シ」という
規定
がございます。それから、今度の新たに設けた一条ノ二、いわゆる
銃砲刀剣類
を用いての傷害罪、あるいはそれの未遂罪に対する
規定
、それから一条ノ三、「
常習
トシテ
刑法
第二百四条」云々のいわゆる
暴行
または傷害を加えたる者に対する科刑の点でございます。これは、当局の
説明
では、一条一項とは無縁なんだということを言われておるのです。私どももそういうように実は解釈するのです。一条の二項にいたしましても、これは「
常習
トシテ前項に掲クル
刑法
各条の罪を犯シタ」ということの場合のいわゆる
常習規定
でございます。これは
刑法
のそれぞれの罪の
常習
として当然入れるべき筋合いのものであります。また一条ノ二、一条ノ三を新たに設けたのでありますけれども、これは、一条一項と
関係
ないんだということを提案者のほうでは繰り返し
説明
をされるなら、無縁なものであるならば、何も
暴力行為等処罰法
の中に入れなくて、これは
刑法
の中へ入れたらいいじゃないか。確かに
刑法
改正
準備案の中にはそれぞれ入れているようであります。それかといって、いわゆる
刑法
の全面的
改正
ができるまでのつなぎ
立法
かと念を押しますと、必ずしもそのことの言明がないわけです。したがって、ポ勅が出て幾多の反動法令が
廃止
されたときにもこれが生き残ったように、この問題は、あるいは
刑法
の全面的な
改正
が行なわれた場合においても、従来の歴史的な経緯から見るならば残される危険性があるのではないかという点を
危惧
するのでありますが、この点について
参考人
の方々の
意見
を伺いたいのであります。 それから最後に、戒能先生が言われた
事件
は、最初盛岡の地裁でありますかの
判決
でありますから、当然これは合議制の裁判の
判決
の結果、強盗は
成立
は認めなかったけれども、
暴力法
の
適用
があったということで、合議制で陪席が二人ついている裁判においても、これはだれが考えても非常識な裁判だと思うのです。裁判批判についての与党側の別な
意見
がありますけれども、私らは、やはり
裁判所
の独立は、
立法府
の者として認めることにおいては決して人後に落ちませんけれども、やはり個々の裁判については、これはやはり批判の自由というものはあるというふうに考える。そこへ持ってきて、今度
常習
にいたしましても、あるいは
銃砲刀剣類
による傷害にいたしましても、下限を一年に引き上げて罰則は強化されておりながら、いわゆる合議裁判からはずされて単独裁判になった。この点は
内藤参考人
が触れられたのであります。私は、これらを見ますると、われわれが心配するところの
乱用
の危険性を裁判の最終的な結果においてもぬぐうことのできない危険性が出てくる。もちろん
権利保釈
も認められないということになりますから、裁判の迅速という一面の
理由
はわかりますけれども、やはり合議制でも問題になるような
事例
が出てきておるのにかかわらず、裁判のスピード化という一点だけからこれを合議制からはずすということになれば、きわめて重要な問題を含んでくるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点については、
参考人
の方々の御
意見
はいかがですか。
内藤功
41
○
内藤参考人
御質問が大体四点くらいに分かれると思いますので、私の考えているところを申し上げたいと思います。 第一に、この
法律
がほんとうに
暴力団
を取り締まるというのならば恐喝というものを入れてしかるべきではないかという御質問でございます。この点は私どももそう思います。恐喝というのは、古く英国の十九世紀末、それから二十世紀初めの
労働運動
の中で、団結をして団結の力を示して資本家から賃金値上げをかちとった、これが恐喝だといって
起訴
された
事案
があるやに歴史で読んでおりますけれども、しかし
日本
の
労働運動
では、恐喝だということできた例は私の聞いた範囲ではあまりない。主としてこれはやはり町の
暴力団
、悪質な
暴力団
のやることでありましょう。ほんとうに取り締まるなら恐喝が入っているはずだという御疑問はもっともで、同感であります。ただしかし、私はその一点だけから
暴力法
というものの本質が
労働運動取り締まり
法だというようには考えておりません。これは田中先生も大体御同様であろうと思いますけれども、私は、やはり冒頭に申し上げましたような
暴力法
の
おい立ち
、歴史、それから現在における
適用
状況、裁判においていかに検察官の
行き過ぎ
た
起訴
がとがめられて
無罪
の
判決
がなされた例が最近多いか。特に繰り返して申しますけれども、
ビラ
まきであるとか、あるいは
団体交渉
における相手方の不当な
団体交渉拒否
を拒否する言動でありますとか、あるいは
組合
活動
に対する協力を要請する
説得
でありまするとか、こういった
日常
の
組合
活動
にまで
暴力法違反
という名前をかぶせて訴追した例がいかに多いかということから、私どもは基本的にこの
法案
が
労働運動
抑圧
立法
であるという考えに立つのであります。このことをあらためて申し上げます。 もう一点は、
常習性
の問題につきまして、
本法
の一条一項というものと
改正案
の一条ノ二あるいは一条ノ三というのは別個だという御議論をされている向きがあるやに承る点であります。この点、私はいろいろ考えまするに、おそらくそういう議論をされる方の言わんとするところは、一条の一項は
団体
の威力を示してやるのだから、これは
労働運動
あるいは小作運動、
農民運動
あるいは部落解放運動というようなものに
関係
する条文である、しかし一条ノ二、特に一条ノ三については、これは
団体
の威力を示してということがかかっていないのだ、これは必ずしも
労働組合
運動その他の
大衆運動
を対象にしたものではないのである、心配は御無用だ、こういう御
意見
だろうと私は推定するのであります。しかし、私はそういうことは言えないと考えます。なぜかと申しますると、なるほど一条ノ三を見ますると、
団体
の威力を示してという構成要件ははずされておりますけれども、しかし、それだからといって
団体
の威力を示したものをこの条文から、つまり一条ノ三から排除するという何らの明文の
規定
もございません。つまり個人でやったものであろうと、
団体
の威力を示してやったものであろうと、両方入るというのでございますから、なお悪いじゃございませんか。私はそういう
意味
で、一条ノ三というものは
大衆運動
、
労働運動
を除外したものであると言われる向きがあると思うのですけれども、この考え方というものには賛成できないのであります。 さらにまた、関連いたしますけれども、一条の一項というものはいままで
労働運動
などに
適用
された
判例
が非常に多いけれども、一条ノ三に該当するような、あるいは
現行
の一条二項に当たるようなこういう
適用
はないではないか。この点は調べてみなければわかりませんけれども、この点についてかりにそうであるとしても、現在までのところは同じ
法定刑
であります。一項と二項は同じ
法定刑
です。したがって、ことさらに二項を使うという実益はおそらくないと思う。今度これが最低限がきまり、
罰金
がなくなる、
法定刑
が引き上げられるということになりますれば、これは
権利保釈
、
裁量保釈
のみならず、勾留期間の延長あるいは実刑の増加、
執行猶予
の
判決
が少なくなる等々が、
労働事件
にもしこれが
適用
されてきました場合には、長期間
活動家
が拘束をされて、
労働運動
に重大な打撃を与えることになるということを実は憂えざるを得ないわけであります。したがって、一条一項と二項の
適用
例が従来こうであったからといって、今度
改正案
が出た場合にやはり同じような調子で
常習
は使わないということには私はならないと考えます。 第三点としまして、
刑法
改正
との
関係
でございますけれども、この点については、私は一言だけ述べておきます。これは、たとえばある
裁判所
内部の人も
法律
時報などで指摘しておりまするように、従来
日本
においては、刑事法の中で特別刑事
立法
、この
暴力法
も含めまして、特別法についての
立法
についてはきわめて
審議
が早い。それから
国民
の
権利
を十分に保障するというような保障もないままに、十分に
国民
の世論に訴えるという形もなしにすみやかに通過するという例が多い。
刑法
改正
などに比べますと最も慎重にしなければならない特別法の
立法
というものが、とかく非常に早きに失する傾向があるのじゃないかという点は、
裁判所
内部の方からも批判が出ているところであります。
刑法
の
改正
という問題は、これは国の基
本法
に関する問題ですから慎重に討議すべきだ。私は最低限この
暴力法
の
改正案
をかりにやるにしても、
刑法
の
改正
と同じスピードで、
刑法
の
改正
の中にも
常習
傷害とか
常習
暴行
とか、そういうものが
政府
のお出しになった案の中にあるのですから、この中で一緒に
国民
が真剣に討論する機会を持ってやっていかないことはどうであるか。ことさらにその中から抜き出して、しかも従来
労働運動
に多く
適用
されたというそのおそれのある
法律
をかくまで急いでやるという点は、私は非常に疑問に思っておるところであります。その疑問は、先ほどから戒能先生、三田村先生の御議論もお聞きいたしましたが氷解いたしておりません。 最後に、第四番目に
裁判所法
の
改正
について、私は先ほど時間の
関係
で省きましたので、
意見
を申し上げておきたいと思います。
裁判所法
の二十六条の二項二号におきましては、短期一年以上の
法定刑
の
事件
は、原則として裁判官の合議体で行なうことになっております。しかしながら、今日この
暴力法
事犯については、その性質などにかんがみて通常審理が容易である、審理の迅速をはかる必要があるという御
説明
によって、これが
改正案
が出されておるのでありますけれども、審判の迅速をはかる必要があるのは何も
暴力
事件
に限ったことではありません。もっと迅速をばからなければならぬ事犯もほかにあるはずであります。これだけをことさらにあげられる
理由
がわからない。それから何よりも私どもが非常に心外に思うのは、通常審理が容易であるとしている点、これは
日常
法廷に私たちが立ち会っておるが、通常審理が容易であるでしょうか。 先ほど言いました
京都
の山城高校
事件
、これは三十四年にこの
事件
が発生して、三十九年の三月五日に
無罪
判決
が下るまで四年間、この審理はかかっております。なぜかと言いますと、これは、
労働組合
の
説得行為
を
暴力法
で
起訴
した。こういうものが一体違法であるかどうか、
暴力法
の
違反
に当たるのかどうかということを
弁護
人側も徹底的に争わなければなりません。
労働者
の
基本的権利
に関する問題は、
弁護
側として断固として争わなければなりません。こういう
事件
の場合には、審理が決して容易であるはずはないのであります。いろいろな訴訟手続による
反対
尋問、異議申し立て、証拠決定、弁論、論告、こういうものが非常に慎重に行なわれる必要こそこの種
事件
にはあるのでありますので、したがって一律に
政府
の御
説明
のように、通常審理が容易であるという一事によっては、この
裁判所法
の二十六条二項二号からこの
暴力
行為
違反
事犯を除くということの
理由
としてはまことに乏しいし、私どもは納得がいかない。原則としてやはり三人の裁判官によるほうが審営が慎重になるのでありますから、この
改正案
についても、以上述べましたような点から
反対
せざるを得ないのでございます。 以上、いまの御質問の点にまっ正面からお答えすることができたかどうかわかりませんけれども、私の感じていることをお答え申し上げます。
濱野清吾
42
○
濱野委員長
以上をもちまして
参考人
からの
意見
聴取は終了いたしました。
参考人各位
には、御多用のところ長時間にわたり貴重なる御
意見
の
開陳
をいただきましてまことにありがとうございます。
委員会
を代表いたしまして私より厚くお礼を申し上げます。 午前の議事はこの
程度
にとどめ、午後は本
会議
終了直後再開することとし、休憩いたします。 午後零時四十五分休憩 ――――◇――――― 午後三時二十七分
開議
三田村武夫
43
○三田村
委員長
代理 休憩前に引き続き
会議
を開きます。
暴力行為等処罰
に関する
法律等
の一部を
改正
する
法律案
及び
本案
に対する
竹谷源太郎
君
提出
の
修正案
について質疑を続行いたします。
松井
政吉君。
松井政吉
44
○
松井
(政)
委員
厚生大臣においでを願っておるのでございますが、おいでになりましたら、途中で切りかえまして、厚生大臣に関する部分をやらしていただくことの御了解をいただきたいと思います。 大臣並びに法務省事務当局に最初にお伺いいたしますが、本
法律案
の
提出
に関する技術的な扱いと経過について、最初にお伺いいたします。 本
法律案
は、三国会にわたって
審議
をされていることは御
承知
のとおりだと思います。前国会におきましても、長期にわたっていろいろ
審議
をされまして、前国会においては、本
法律案
の不備について、衆議院の段階で修正が可能か不可能か、議員同士で、修正するとすればどの点か、こういうことで、自由民主党から三名、社会党から三名小
委員
を選びまして、二週間以上にわたってその作業を続けていただいたのであります。その結果問題点になりましたのは、今度の
改正
にはされておりませんが、
現行法
の一条の
団体
と多衆の問題がそのままでいいかどうかということが第一点。第二点は、凶器いわゆる刀剣類をやはり明記するかしないか、明記したほうがいいのではないか、そういう点にしぼられて議論がされたのであります。第三点は、御
承知
のように破防法三条、三条にあるような訓示
規定
に類する憲法上の人権保障と、労働三法等に基づく
団体
行動
、
労働運動
等に影響のある部分、こういう問題について御議論されたことは御存じでございましょうか。そしてそういう議論がされて、大体衆議院の法務
委員会
としては、小
委員
の中では、現在の
改正
をされない部分について気に入らない部分があるとしても、
改正案
として提案された範囲において修正するとすればこういう点だという、あらかじめの
意見
の一致を見るところまでいったことも御
承知
でございますか。その間に会期時間切れとなって
本法
案は廃案になっておる。そういう経過をたどっているのに、その国会で議論をされたいろいろな意思とか
努力
されたことを
一つ
も考慮せず、三国会にわたって相も変わらず一字一句変わらない
法案
を出して、国会
審議
をいまのように長い間時間をかけて議論をしなければならないような形に
提出
をいたしたのは一体どういう
理由
か、この点についてまず大臣から、この点のいきさつ、経過、法務省の態度について明快なる御答弁をいただきたいと存じます。
賀屋興宣
45
○
賀屋
国務大臣 この前の
委員会
で修正につきましていろいろ御相談があったこと、私ども
あと
から
承知
をいたしておるのであります。たとえば
銃砲刀剣類
につきましてその範囲を明確にするとか、あるいは法の
乱用
がないように、いずれも御
趣旨
はまことに同感でございます。しかしながら、よく審査いたしますと、
銃砲刀剣類
につきましても、
規定
をしておけば一見明瞭なのでございますが、
法律
的の解釈としては現在で明瞭にして余すところはない。当然に
銃砲刀剣類
の
取り締まり
の
法律
による
規定
の範囲内であるということは明瞭でありますが、それと同じと書きますと、たびたび御
説明
いたしましたように、
銃砲刀剣類
の所持
取り締まり
の規則が
改正
されました場合には、そのまま
内容
が変更されるというかえって解釈上の疑点がある。また
乱用
の問題につきましても、
乱用
があってはならないという御
趣旨
は当然でございますけれども、そういう意思もないし
乱用
されたこともないので、いろいろ討議しまして、この御
趣旨
は同感であるけれども、
規定
の上に置くのはむしろ適当ではないのじゃないか。いろいろ
審議
しました末に、法の字句は前に
提出
しましたとおりに出すのが一番
法律
論として正確なんじゃないか、こういう結論に達した次第でございます。
竹内壽平
46
○竹内(壽)
政府
委員
ただいま大臣のお述べになりました事情のとおりで、今回の提案にあたりまして、いわゆる
修正案
なるものを考慮いたしておらないのでございますが、四十三国会におけるいきさつにつきましてお尋ねがございましたので、その点私の知っておりますことを申し上げますが、小
委員会
ができて正式に討議されたということは私は存じませんでした。ただし、有志議員、これは自民党の有志議員、社会党の有志議員の方々が私の案として案をおつくりになって、それが論議されたということは、私は案なるものを非公式に見せていただきまして
承知
をいたしております。その
修正案
の私案というものは、結局議場には提示されませんでしたので、正式なものかどうか私わかりませんが、その案によりますと、先ほどお話のございましたように、武器を用いるところの傷害の
定義
を入れるという問題、第二は
常習
犯の中にさらに累犯を加えて
常習
累犯という形にするという二点でございまして、もう
一つ
お述べになりました、今回の
改正
の対象になっておりませんが、第一条第一項について御議論があったかどうかということにつきましては、私はいま言ったようないきさつでありましたので存じておらないのであります。ただいま初めてその点を伺ったわけでございます。そうしてまた、その二つの点につきましては、いま大臣がお述べになりましたように、またさきの御
審議
の過程におきまして私からも御
説明
申し上げたと思うのでありますが、いずれも修正をしようという御意思の存するところはわかるのでございますが、その結果は必ずしも御期待に沿うような結果に
運用
上も解釈上もならないのではないかという疑念がございまして、やはりこれは
原案
のほうがよいということが私どもの結論でございましたので、今国会におきましては、やはり
政府
原案
の形で提案をした、さようなふうに私は
承知
しております。
松井政吉
47
○
松井
(政)
委員
続いて質問がありますが、厚生大臣がお見えになりましたから、最初に申し上げましたとおり、忙しい時間をおいでいただいたのでありますから、それを先にやらせていただきます。 どうもたいへん恐縮でありますが、いま
審議
いたしております
暴力行為等処罰法
案と、それからこれは厚生省の主管だと私は思いますが、精神病患者の
犯罪
、麻薬患者等の
犯罪
、これは麻薬は
暴力
の温床といわれておるのであります。それから最近も起こったようでありますが、睡眠薬
常習者
の少年の人殺しがございます。そういう
関係
について、厚生省として精神病、麻薬、睡眠薬
常習者
等の取り扱いについてどのような施策を施しておるか、御
説明
をいただきたいと存じます。
小林武治
48
○小林国務大臣 睡眠薬の
関係
でありますが、睡眠薬は一両年前に薬事法を
改正
いたしまして、睡眠薬は十四歳未満の者には渡してはならない、こういういわゆる毒物の取り扱いをし、なお十四歳未満以外の者でも、その者のその薬剤の使用について不安を持つ、こういうふうなおそれのある者については、薬局では売ってはならない。こういう
規定
によって一応対策が講ぜられておる、こういうことでございます。したがいまして、最近睡眠薬の話もぼつぼつ出ておりますが、それが十四歳未満の者であれば、たとえば年齢その他を偽って不法に手に入れるというおそれがございますが、さような扱いの結果、非常に減少しておるということでございます。 なお、終戦後非常に問題になりましたいわゆる覚せい剤の
関係
でありますが、これはもう覚せい剤の
取り締まり
法によって薬同等でも取り扱わない、こういうことになりましたので、通常の場合はこれは手に入らない。すなわち、医業をしておる者しかこれを手に入れたり用いたりすることができない。こういう状態になっておりますので、このほうの問題も大かた解消しておる、こういうことでございます。 それから麻薬の
関係
でありますが、麻薬の問題は、自分が麻薬の中毒になっておる者と、麻薬の密売等の手先というふうなことで密売に従っておる者、こういうふうに二つに分けられるのでありますが、これらも一昨年麻薬取締法で相当厳重に
取り締まり
刑罰を重科したということで、これらの問題は潜在化したとか、地方分散化したとかいうふうな
関係
もございますが、外にあらわれてくる事態は相当減少いたしておる。こういうことでございまして、たとえばいわゆる密売等に使われた二十歳以下の者は、三十六年には全体でもって二百二十六人、八・五%であったものが、三十八年にはこの人員は百七十七人、五・六%まで減ってきておる。こういうことで未成年者の密売に使用される者が相当に減少を来たしておる、こういう事情であるのでございます。それから中毒者の
関係
でありますが、これも二十歳以下の中毒者は、三十六年には約九十五人、全体の四・三%、こういうふうな数字が出ておったのでありますが、三十八年には若干減少して七十人で三・七%、こういうふうに中毒患者も二十歳未満の者はだんだん減少しておる、こういう状態であります。これは
違反
者と中毒者の
関係
でありまして、これらの問題については若干ずつ改善の徴候がある、こういうふうに申し上げられると思います。 それから精神病の
関係
でありますが、これはライシャワー大使の刺傷
事件
等もありまして、よくどろなわだというふうな批評を受けておるのでありますが、精神病の
関係
は、これは非常にむずかしい問題を含んでおるのでありまして、この実態が相当にはっきりしていない、こういううらみがあるのでございます。これは精神衛生法の
関係
にこれを
規定
しておりまして、自分が自殺をするとか、あるいは他人に傷害を加える、こういう心配のある者を取り締まる――取り締まるわけではありません、
政府
の力で治療を加える。こういうことで現在これらの
政府
の負担において収容治療をしておる者が五万五、六千人ありまして、これは全額国庫負担によって治療をしておる、こういうことになっております。それで、私どもの推定というか、調査で、治療を要する者は大体二十八万人くらい
全国
におる。しかし、そのうちいま病床の
関係
で入院治療をしておる者が約半分の十四万人、こういうふうな姿でありまして、入院以外の者がまだ十四万人くらい在宅でおる。こういうことになっておりまして、その十四万人のうちで五万五、六千人がいわゆる
措置
入院として
政府
の負担において治療をしておる。こういうことで、実態の把握が十分ではないではないか、こういうことがありますが、実は精神病につきましても、御案内のように
日本
の従来の慣習が、どちらかというと、いろいろの社会的、経済的の制約があるためにこれを隠す、こういうふうな傾向がある。これも人情として無理はないと私は思います。したがって、病人を通報するという義務が現在家族にもあるいは医療機関にもありません。したがって、どういう方法によっていま知るかというと、おもに
犯罪
あるいは不法
行為
を犯して
警察
あるいは
検察庁
の世話になった、その世話になった者は
警察官
または検察官が保健所に通報する義務があるのでありまして、精神衛生法上通報義務者はいまは
警察官
と検察官しかない。
一般
の友だちとか、学校の先生とか、あるいは家族とか、医者の医療機関には通報義務がない。現実がそういう姿になっておるのでありまして、私は、実はこういう状態はいまの精神病の状態からいって必ずしも好ましくない。したがって、これらの通報義務等についてもある
程度
拡張をする必要がないか、こういうふうな考え方を持っておるのであります。いまさようなこともいろいろ相談しておりますが、家族等についてそういう義務を課することは人権問題もあって、まだいまの社会通念からいえば適当でない、こういう説が多く行なわれておるのでありまして、せめて医療機関が手がけた患者について、精神病だという鑑定があるならばひとつ通報をしてもらったらどうか、今後の問題点としてそう
改正
をしたらどうか、こういうふうな考え方を持っておるのであります。いずれにいたしましても、精神病者の健康管理ということにつきましては、きわめて不十分な状態にあることは現実の事実であります。私ども、いまいろいろ精神衛生センターとかあるいは精神衛生相談所とか、こういうふうなものを設け、また設けつつありまするが、いままだ保健所等におきましてはこれらの専門家がきわめて少ない。精神衛生相談所等の医者も不十分で、また
全国
にもこれを専門にしている医者はわずかに二千数百人くらいしかない。こういう状態にありまして、これらの医者等につきましてもまだ非常に少なくて、欠陥が多い。こういうことで私どもは率直に言って精神病者対策はまだ非常におくれておる、こう言わざるを得ないのでございます。
警察
方面等におきましては、これらの病者の状態をよく把握する必要があるから、調べるとかあるいは医者から知らせろとか、こういうふうな話がありまするが、まだそこまでもまいっておらないのであります。実は届けさすということもなかなか困難な事情もあり、保健所の人員等も充足して、そして巡回をしてそういう者の相談に乗ってやる、こういうふうな方法をとるのが近いときにおける仕事ではないか、かように考えております。そういうことで、私どもがいま現実に正確に持っておるものは五万数千人の者を国の力で入院をさせておりますので、こういうものはわかりまするが、いま在宅の者でまだ治療を要する者が十四万人くらいある。こういうことでありまして、これらについては十分の
資料
と申しますか、リストを持つまでにまいっておりません。こういう現状でございます。 以上御報告だけ申し上げておきます。
松井政吉
49
○
松井
(政)
委員
状態はあらかたわかりましたが、精神病患者の場合、あまり気違い扱いすると人権じゅうりん問題等が起きてややっこしい問題にもなる可能性がありますけれども、ライシャワー大使傷害の問題から見ても、これはやはり自宅療養というのは、本物の精神病患者である限り自宅療法というのを解消するための方法を
政府
は完ぺきに行なうべきじゃないかと思うわけです。これはぜひそうやっていただきたいと思います。 それからこれは厚生大臣になりますか、
法務当局
になりますか、どちらでもけっこうでございますが、麻薬密売の媒介者と称されるたぐいは大体
暴力団
、何々組の
関係
の人が多いのじゃないですか。その統計がございましたら聞かしていただけませんか。
竹内壽平
50
○竹内(壽)
政府
委員
お話しのように麻薬
暴力
などということばがございまして、
暴力団
といわれる人たちが資金源を得るために麻薬を扱うということで、これは外国でもその例がございますが、
日本
でも顕著でございまして、麻薬のルートをたどってまいりますと、
暴力団
が介入しておる。その手によって売りさばかれておるという実態も浮かんでおります。ただいまその統計を持ち合わせておりませんけれども、これは顕著な事実でございまして、私どももそういう観点から、麻薬の
犯罪
を見ますときには
暴力団
の動向をもあわせて見る。こういう形で麻薬
犯罪
の防遏も
暴力団
対策の一環として考えておる次第でございます。
松井政吉
51
○
松井
(政)
委員
それは数字がわかったときに知らしていただければいいですが、密売の媒介者とそれから中毒患者、この中毒患者が当然よからぬ集団の仲間に入らざるを得ない形になるのじゃないかと常識的に考えて思うわけです。この中毒患者と媒介者を含めて起こってまいります
暴力
違反
というものは相当ありますか。パーセントでもいいです。
日原正雄
52
○日原
政府
委員
さしあたり手元にあります
資料
で、
暴力団
構成員による麻薬密売の介入事犯の検挙状況でございますが、昨年の一月から十月までに七百五十三件、六百六十四人に及んでおります。前年度に比べますと三割ぐらい増加の傾向を示しております。それから麻薬密売事犯の総数の中で
暴力団
構成員の占める割合でございますが、私どものほうの検挙のほうから見ますと約三割でございます。この構成比率も年々高くなってまいっております。
松井政吉
53
○
松井
(政)
委員
これは厚生大臣のあげ足をとるわけじゃございませんが、ただいまの御答弁と食い違いがあります。厚生大臣は年々患者も媒介者も減っている、ところがただいまの御答弁だと、事犯となってあらわれたのは三割も増加している、
暴力団
の
関係
も増加している、こういう御答弁です。これはやっぱり厚生省の統計と法務省の統計とは違うのでございますか。
小林武治
54
○小林国務大臣 私が申し上げましたのは実は青少年
犯罪
という
意味
で二十歳以下の者だけの統計を申し上げたわけであります。全体ではありません。
松井政吉
55
○
松井
(政)
委員
そうすれば青少年の場合は麻薬中毒あるいは媒介のほうは減っておる。そうすると、全体でふえておるということは、おとなのほうがふえておるということですか。そう解釈してよろしゅうございますね。
小林武治
56
○小林国務大臣 そういうことでございます。
松井政吉
57
○
松井
(政)
委員
それでは、これも的確に厚生大臣の主管であるかどうかわかりませんが、青少年の
犯罪
は逆に、
政府
がお出しになりました青少年白書を見ても
刑法事犯
がふえておるのですね。ものすごくふえておりますよ。
昭和
三十七年の統計を見ても、十四歳未満、十四歳-十八歳合計して虞犯少年と称される
犯罪
だけでも、凶器携帯、乱舞、いろいろありますが、九十三万、百万近い数字が出ておるわけですね。それからさらにまた特別法犯、これもかなりの数が
政府
の統計で発表されております。ところが、この青少年の
犯罪
と睡眠薬、麻薬、これは切っても切り離せない
関係
になってくる。それにつながる
暴力
、それの背景の
暴力団
、これがやはり
日本
における
暴力
対策の根本ではございませんか。そういう立場から、部分的に見て青少年の睡眠剤常用者それから麻薬患者、麻薬媒介は減っておるが、逆に全体の
刑法
犯はふえている。こういうことについて厚生省はどうお考えになりますか。厚生省はそういうものを
法律
で取り締まったり刑罰を重くすることではなくて、世の中の社会環境からこういう
事件
をなくするための施策を行なわなければならないのが厚生省だと思いますが、そういう点についてどうお考えになりますか。
小林武治
58
○小林国務大臣 これはまあお話のとおりでありますが、私ども麻薬の
犯罪
、中毒者を年齢別にみな調査をいたしておりますが、事実二十歳以下の者は、中毒者も密売
関係
者も減っておる。ただその方面だけは減っておる、こういうことははっきり申し上げられるのでございます。それから麻薬中旬者の
関係
も、全体としましても中毒者は減っておる。こういうことは言えるのでありますが、先ほど
警察
からお話の
違反
事件
というのは、全体としてはふえておる。したがって青少年でないおとなの
犯罪
が、麻薬に関する限りはふえておる。そういうふうに私どもは見ておるのでございます。それでいまいろいろの凶暴
犯罪
がふえておることは事実であります。こういう
関係
でなくてふえておるというふうに見ざるを得ないのでございます。全体としまして凶悪なものがふえておるということは、国全体のいわゆる青少年問題として対策を講じなければならぬ。こういうふうに思っておるのでありまして、これは広く見て厚生省所管と申すよりか、
政府
全体の問題として、内閣にも青少年問題協議会、あるいは文部省その他全体の問題として対処しなければならぬ、そういうふうに考えております。
松井政吉
59
○
松井
(政)
委員
御
承知
のように、青少年
犯罪
で一番多いのが道路交通
違反
ですね、間違いございませんね。その次が
銃砲刀剣類
ですね。これは
政府
の発表された白書にはっきり出ております。そうなりますと、そういう原因はどこからくるということを、対策上十分お考えになったことがありますか。
法律
も、刑罰を重くするとか、あるいは家庭の環境だとかいうことで
国民
にその責任を転嫁することなく、
政府
が政治、経済、社会福祉施策、教育、あらゆる面から考えて、一体どうしたらいいのかということの根本策を厚生省はお考えになっていると思いますが、予算を見ても、いろいろの款項目に基づいて出ておりますが、そういう問題について、やはり
法律
で刑罰を重くする形だけで処理できると思っておりますか。社会保障の面から、そういういじけた子供にならないように、それからいじけない青年をつくるための社会保障等の問題に力を入れるべきか、いずれに重点を置いてお考えになったことがございますか、その施策についてひとつお答え願いたいと思います。
小林武治
60
○小林国務大臣 青少年問題は
政府
全体の問題として考えなければならぬのでございますが、私どもの
関係
におきましては、児童福祉対策、そういうようなものを主として考えておるわけでありまして、からだの不自由だとか、頭が弱いとか、こういうふうなマイナスの
関係
の福祉というものを進めることも
一つ
の大きな仕事であるし、それからもう
一つ
の仕事は、子供を善導するためには、子供の家庭環境をよくするとか、あるいは子供に遊び場を与えるとか、あるいは子供が交通事故とかあるいは不良に走らないような健全な娯楽と申しますか、そういうふうな方面に力を入れて、私どもは児童館をつくるとか、広場をつくるとか、そういうふうなことを主としてやっておるのでございまして、教育方面ではなくて、たとえば学校が終わった子供が、そういうふうな悪の道に走らないような施策と申しまするか、子供の教養と申しますか、そういうことを担当いたしておるのでありまして、こういう方面についてはある
程度
進みつつあるというふうに思うのでありまして、
一般
教育問題とかそのほかの問題は、私どもの所管というよりか、別個の省でもって御担当になっておるので、私どもがやっておるのは、主として児童福祉対策というふうなことでこれに
関係
をしておる、こういうことであります。
松井政吉
61
○
松井
(政)
委員
これはいずれ法務
委員会
には総理大臣の
出席
を求めて、私のほうからも同僚が質問すると思いますが、要するに本年度の予算を見ても、それから青少年対策を見ても、青少年対策の部分がもろもろの各省に分かれてばらばらなんですよ。これはやはり青少年なら青少年対策、要するに教育上の問題から、社会福祉の問題から、
犯罪
防止の問題から一貫して取り扱うということはできないのですか。そこに、いまも御答弁になったように、私のほうは福祉対策だ、教育上の問題は文部省だ、それ以外のものは法務省だ、そういう形でもって予算もそこで分取り合いをやる。そしてこの線からこっちにくれば主管が違う。こういうことで完全なる青少年対策ができると思っておいでになるのですか。これは法務大臣と厚生大臣両方にお伺いいたしますが、いずれ総理
出席
のときに同僚
委員
が総理から明らかにしていただくと思いますけれども、こういうことでは
犯罪
をつくることを助けておるような気がしてならないのです。一カ所で一貫した施策というものがないのです。
賀屋興宣
62
○
賀屋
国務大臣 いまの点につきましては、いま各省にその所管の仕事が分散しております
意味
からの弊害と申しますか、摩擦と申しますか、そういう点を御強調になったのでございますが、一方、青少年問題だけを
一つ
の官庁、
一つ
の省でまとめますと、これはまた、ただいまよりよほどやりにくいことがたくさん起こると思います。たとえば厚生省で精神薄弱児、肢体不自由児の対策をなさいますときに、精神薄弱児にしましても、
暴力
犯罪
の危険がある者とそうでない者といろいろございますし、やはりそういうものは全体として考えなければならぬ立場がございます。また刑務所行政にいたしましても、少年院の問題にいたしましても、これを法務省から離しまして
一つ
の省が青少年問題を全部やる。これはなかなか実際は言うべくして行なわれないのだ。やはり施設に収容しましてやる場合は、
犯罪
をやりました者につきましては法務省所管に置いたほうが、特に少年
犯罪
、少年教育を何も
一つ
ところに置くよりは、このほうがいいんじゃないか。すべての行政にそういう面がございますので、要は各省に分かれましたものの
連絡
調整でございます。その
意味
におきまして、昨日でございましたか、御質問もありまして、特に少年省とか少年庁というものはございませんが、これは各省におきまして、各省
連絡
を遂げてやる
意味
できわめて熱心で、青少年問題につきましては、たとえば青少年の協議の
会議
も置いております。
暴力
につきましては、
暴力
一切を所管するというわけには参りません。
警察
は
警察
、刑務所は刑務所、少年院は少年院に分かれていきますほうが、行政系統でベターじゃないか。分かれる場合にむろん弊害、非能率もございますが、現状の行政系統としましては、ただいまのように各省それぞれの
関係
でやっていくほうがむしろベターである、こういう考え方で進めておる次第でございます。
松井政吉
63
○
松井
(政)
委員
厚生大臣、時間をとらせないという約束でございますから、この一問でよろしゅうございますが、要するに福祉対策と麻薬、覚せい、精神病分野、そういうものを主管する厚生省としては、そういう施策面を扱っており、それから麻薬の
取り締まり
を担当している厚生省として、いまわれわれが
審議
しております
暴力行為等処罰
に関する
法律
、すなわちわれわれは
暴力法
と言っておるのですが、この
法律
は、この
程度
の
改正
はどうしても必要なんですか、どうですか。その
意見
をひとつ
開陳
してお帰りください。必要なんですか。
小林武治
64
○小林国務大臣 私のほうの
関係
でありますが、いまの麻薬の
関係
は、これは厚生省と
警察
と一緒になってやっておる。そうして私どものほうは、主として専門的知識を持って密売組織を排除しよう、こういうことでやっておりまして、これに従事する人も三百人足らず、
あと
は大部分
警察
と協力してやっておる。こういうことでありまして、この方面におきましては、私どもはこの
法律
をきびしくすることとともに、これの
取り締まり
の組織を強化するということで、ある
程度
やれる。しかし、これが
暴力団
等の
関係
におきましては、私どもの手に負えるわけじゃありません。そういうものを私どもは摘発するというようなことはやりまするが、
あと
は
警察
にお願いする以外にない。こういうふうに考えておりまして、
一般
暴力
的な問題といたしましては、私の所管外でありますが、個人的
意見
を申し上げれば、私はやはりこういうものが必要だ、こういうふうに直していくことが必要だ、これは所管大臣としてでなく、私の個人的
意見
として申し上げるのでございます。
松井政吉
65
○
松井
(政)
委員
それでは先ほどの質問に続きますが、前国会の、公式、非公式であっても、修正はやむを得ないといういきさつは
承知
した、こういうことですね。それから国会が三国会にわたっておることももちろん御
承知
のことなんですね。何で法三条
程度
の短い条文の
法律案
が、これだけ真剣に
審議
しなければならないのか。それから重要なる
資料
をなぜ必要とするか。その本質を考えたら、三回目の国会ぐらいは与、野党すんなり通るような
法案
を出したらいかがですか。それだけの期間があったじゃないですか。ところが、
資料
を
要求
しても出ない。しかも、
あと
で質問いたしますけれども、法務省当局に働いていらっしゃるえらい人が、雑誌の論文にはっきりと
暴力団
対策は必要だ、そのためにこの
法律
は出すのだと明確にうたっているじゃありませんか。それでは
暴力団
取り締まり
に関する
法律案
を出したらいいじゃありませんか。前の三回の国会でなぜ労働
団体
が
反対
しておるかということは御
承知
でございましょう。いま知ったわけじゃございませんでしょう。なぜ国会が三国会にわたって、長期にわたって法三条
程度
の条文を論議しなければならぬかということも御存じなんでしょう。しかも前国会においては、
政府
の提案したものを
法律
にしなければならぬので、国会でもって公式、非公式に与、野党集まって
修正案
の作業までしたということも御存じなんでしょう。にもかかわらず、相も変わらず前国会と一字一句も変わらない
法律案
を出して、さらにこの国会の中で論議を長引かせる。時と場合によっては混乱を招くということ、法務省当局は一体何を考えておるのですか。これは少なくとも公式、非公式であっても、自民党、社会党は
修正案
で
法律
をつくろうと
努力
したことは御
承知
なんでしょう。にもかかわらず、
要求
した
資料
も出さない。法務省当局が
暴力団
対策は必要だ、
暴力団
対策のためにこの
法案
を出すということを論文として載せているじゃありませんか。それでいながら
資料
もつくらない。
資料
をつくる期間はありましたよ。三国会続いてやっておるのですから、一年以上われわれはやっておるのですよ。それで衆議院のほうで与、野党が一致した修正
意見
も取り入れることもない。一字一句変わらないというのは国会を侮辱した話じゃないですか。どういうわけでまたけんかをさせようというのですか。これはやはり
提出
技術について明確な回答をしてもらいたい。
賀屋興宣
66
○
賀屋
国務大臣 直接
暴力団
を取り締まる
法律
を出せというお話でございましたが、これはたびたび申し上げ、特に
政府
委員
よりは詳細に申し上げましたように、
法律
的に
暴力団
というものをとらえることは困難である。現状では
法律
的な
規定
が不可能である。相手をしっかりつかまえられないのにそれを法制化しまして対象としたのではやれない話でございます。
暴力団
というものをはっきり
定義
づけて、
法律
的の対象といたしましてやれればむろんやりたいのでございますが、その不可能な
理由
を御
説明
申し上げ、外国でもそういうふうに進みながら、結局それは不可能であって実益がないので後退をしたという例も申し上げておるのでございます。
法律
的な
規定
としてただいま以上に考えることができなかった。しかも、これによって事実上
暴力団
及びそれから出ます
暴力
行為
を押えることができるというわけでございますから、これはたびたび申し上げましたように、何も国会の意思を軽視するとか、そういうものではなくて、法制のたてまえから全くやむを得ないものでありまして、しかもこれで効果があるという考え方でございますから、何とぞさように御了承を願いたいと思います。 また、国会の意思を尊重して法文を直していくべきだというお話でございますが、そう申し上げてはおそれ入るのですが、国会として
修正案
をお出しになったことではございません。むしろ、そういう御意思なら、国会が修正なさることは御権能ですからできるわけですが、まだ与、野党完全に一致した案であるとまで伺うのは少しわれわれのほうでも
行き過ぎ
ではないかと思います。そういう寄り寄りお話があったという
程度
じゃないかと思うのであります。
修正案
提案もまだあったわけではないし、自民党、社会党その他完全 に一致したとも伺っておりませんので、御研究の過程でいろいろ御
意見
があることはもちろんであり、それも先ほど来申し上げましたように、決して軽視したわけではなく、いろいろ研究してみましたが、
法律
的
規定
の文句としてそれを入れるのはどうかという考え方でございまして、それでまた御
審議
を仰いでいる次第でございます。また、いろいろありますが、私どもは
原案
で結局は国会が御納得していただくのじゃないか。無理に押しつけるという
意味
ではなく、研究しました結果このほうがよろしい、こういうことになった次第でございます。どうぞさよう御
承知
願いたいと思います。
松井政吉
67
○
松井
(政)
委員
法務大臣はそのころのいきさつを御存じないかもしれませんから、いろいろ御答弁なさっていますけれども、そんなものではない。真剣に取っ組んだのですからね。それは理解していただきたいのですよ。 もう
一つ
お伺いいたします。これは竹内さんがお答えになったほうがいいかもしれませんけれども、御
承知
のように前々国会でしたか、浅沼
委員長
が刺殺をされ、岸さんが襲われたり、河上さんが刺されたり、いろんな
事件
のあったときに、自民党からも社会党からも民社党からも、右翼政治
暴力
に対する
取り締まり
法をつくったらいいじゃないかというので、三つの議員
立法
が提案されたことを御存じですね。その経過があるわけです。だからわれわれはむしろそのほうが重大だと思っています。あなたはこの
改正
をしてどうなりますか。ところがまた精神病患者であってもライシャワーさんの
事件
が起こっているわけです。それ以外にも右翼の政治的
暴力
が続いて起きておる。あの当時は嶋中
事件
も起きてにぎわしたのです。ですから、要するに右翼の政治
暴力
を取り締まる
法律案
ということなら話はわかるのです。その経過を知っていながらこれでごまかそうとする。これが第一点。 もう
一つ
、これは名前は申し上げませんが、おたくの、法務省の人がある雑誌にこういう論文を書いているのです。
犯罪
の
実情
を概観して、その数が戦前に比べてすこぶる多くなっており、かつ慢性化しつつある、こういうことを述べています。そうして当面の
暴力
犯罪
対策のうち最も緊要なことは、
暴力団
によって犯される
暴力
犯罪
の抑制防止であると論文に書いてある。そしてそのために有効な方法として、
暴力団
の解散等の規制
措置
が考えられるが、これは
法律
技術的に見て困難なので、
暴力団
によって犯される個々の
犯罪
に対する科刑を強化してということで、この
法律案
に結びついているわけです。ところが実際の腹は
暴力団
を解散させたいのです。そうじゃございませんか。法務省当局としては、現在麻薬からいろいろな
関係
を通じて社会に悪をなしておる
暴力団
、何々組といわれるものが根幹であることは間違いないのですから、答弁を聞いてもそのとおりおっしゃっているのですから、そうすれば、ほんとうを言えば
暴力団
を解散させたいのでしょう。この点をひとつはっきり答えていただきたい。
竹内壽平
68
○竹内(壽)
政府
委員
三党共同で右翼
暴力
に対する、いわゆるテロ防止というような観点からの
法案
をおつくりになって、それを国会の
審議
の場で議論されましたことは私もよく
承知
いたしております。当時のいきさつといたしまして、これは議員
立法
でするのがいい、三党の話し合いでするのがいいということで当時おつくりになりましたものでございます。私は
政府
の立場から申しまして、
立法府
としてまことに当然なことであり、私どもも賛意を表していたのでございますが、その
法案
は結局廃案になりまして、その後右翼
暴力
が絶滅したというわけではございませんが、そういう機運になってきてないというのが現状でございます。私どもはその当時から、やはり町の
暴力
、それから
暴力団
のいわゆる
程度
の高い
暴力
、前者はよく小
暴力
などと報道されておりましたが、この小
暴力
から大
暴力
――と言えるかどうかわかりませんが、この種のいわゆる町の
暴力
全般について手当をしていかなければならぬということを考えておりましたところ、
昭和
三十六年には閣議決定で
暴力
犯罪
防止対策要綱も決定いたしまして、それぞれ私どもの所管に応じてなすべきことが明示されております。その一環といたしまして、小
暴力
の問題もさることでございますけれども、いわゆる
暴力団
の
暴力
というものに焦点を合わせまして、
運用
の面でやれるだけのことをやり、かつそれでやむを得ないものにつきましては最小限度の
立法
措置
をとるということで、この案はまさしくその最小限度の
立法
措置
でいくという線で
立案
されたものでございます。
暴力団
につきましては、
資料
として私どもの考えておることを簡単ではございますが取りまとめて差し上げてありますように、
暴力団
という
日本
の社会に特殊な地位を占めておりますこの種
団体
の
暴力
的
活動
につきましては、これがよろしいなどと言っている人は一人もないと思うのであります。できるならばこういう
団体
を解散して、
一般
の善良な市民の中に溶け込ましてしまうというのが私は最も望ましいところであると思います。それをそうさせる方法としましてはいろいろ考えられるのでございます。私は大きな政治の問題について論ずる資格はございませんが、法制上の立場からのみ申し上げましても、
暴力団
そのものを対象とした刑罰
規定
を設けることも
一つ
の方法であろうと思います。この点につきましてはすでに御
説明
申し上げましたように、私どもとしては真剣に研究をしてみたのでございますが、いろいろ難点があって踏み切れない。そういうことになりますと、
暴力団
が一番犯す
犯罪
はどういうものかというところから、その中の一番悪質な形態の
犯罪
を重く
処罰
するということによって、刑罰の面から
暴力団
を追い込んでいく。そして彼らにその刑罰を契機として正業へ立ち戻る機会を与えていく。それに対して保護観察、量刑等の面からあたたかい手を差し伸べていく。両面相まって
暴力団
を自発的解散のほうへ追い込んでいくということがやはり刑罰の面から考慮されなければならぬ。こういう観点に立ちましてこの案を
立案
いたしたのでございますが、そういう
目的
に沿っておるものだと私は考えておりますけれども、いろいろ御批判もあるわけでございまして、大臣も先ほど申されましたように、私どもの行き届かないことが多々あることは私も自覚いたしておりますけれども、なおその
意図
しておりますことは、るる先般来申し上げておるとおりでございまして、ほかに他意あるものでは決してございません。
松井政吉
69
○
松井
(政)
委員
いま御答弁の
程度
なら、現在の
刑法
でやれるじゃないですか。この
程度
の
改正
で、あなたの高邁な理論を実践に移して、
暴力団
に対する
取り締まり
に取り組もうとする気魄たるや見上げたものがございますけれども、
目的
を達することができないじゃないですか。それならばなぜはっきりと、法務省が
暴力団
対策として
法律案
が必要だとするならば、要するに
暴力団
取り締まり
法なり何なり、あるいは
暴力団
による
暴力
行為
取り締まり
法だの、はっきり
誤解
のないよう、それから論議のときに疑義のないように、ほかの
団体
が心配しないような
法律案
を出したらいいじゃないですか。その
法律
的技術の研究期間がないとは言わせませんよ。三国会にわたって同じものを議論しておるのですから。なぜ出さないのですか。そしてこれで事足れりとあなたおっしゃっていることがどうしても納得できないのです。この
程度
ならば、幾たびも多くの同僚が質問なさり、あなたが答弁したように、現在の
刑法
でやれることじゃないですか。それをこういう
法律案
を出して、またしても
団体
等の心配を招いたり、それから
暴力団
対策ではなくて、別のものをねらっているんだという解釈が生まれてきたり、たいへんな混乱を起こしているのじゃないですか。法務省のほんとうの腹は、やはり
暴力団
を解散さしたいという腹を持ちつつ、
法律
で取り締まっていこうというわけなんでしょう。それならばなぜ相も変わらず三国会もこんな間違いだらけの、そして
誤解
のしやすいものを出して国会をわずらわしているのですか。それならば、あなたのおっしゃるとおり
暴力団
に対する対策ならば、
暴力団
による
暴力
行為
取り締まり
法くらい出したらいかがですか。
竹内壽平
70
○竹内(壽)
政府
委員
暴力団
という対象をはっきりさせますためには、仰せのように、その
暴力団
を対象とした
法律
ということが考えられるわけでございまして、その点は先ほども申しましたように、私どもとしては、及ばずながら外国の
立法
例等につきましても研究してみたのでございますけれども、これは
法律
的につかみにくいということで、これは御
説明
を前に申し上げたわけでございますが、ある国ではそういう
法律
は憲法
違反
であるという
判決
まで受けておるのでございまして、なかなかつかめない。そこでやむを得ずこういう
法律
にしたということを申し上げておるわけでございまして、何とぞその点は、われわれの
意図
が及ばなかったことは事実でございますけれども、何らかの私どもがほかに
意図
するものがあって、わざと混乱させておるように仰せになります点は全く心外でございまして、私どもはそういう考えはございません。
賀屋興宣
71
○
賀屋
国務大臣 たびたび申し上げているのですが、
暴力団
というものはどんなものでございましょう。これは
法律
的にきめて、どういうふうにつかまえるというのでございましょうか。親分がおって子分がいる。普通にいえばみんな親分子分ですけれども、それに解散命令を出したらどうなるのです。集まっちゃいかぬ。これは悪いことをしなくても人間が集まる場合がある。これが政治結社とか、いろいろメンバーがきまり、構造がきまり、
行動
がきまっている概念ですとやりようがあるのですが、
暴力団
なんて雲をつかむようで、規則があるものもあればないものもある。あるものは常々とえらそうなことを書いておりまして、実際はそんなことはしない。だれが団員だかはっきりわからない。解散命令を出したって、解散したんだかしないんだか、かってに酒を飲んで寄り合いをしている。実は私もやってみたのです。つかみようがないじゃないですか、どうつかんでやりますか。これができればけっこうですが、私も、
暴力団
というものを
定義
して、それをつかまえてやってみなさいと事務当局に幾ら言いましても、つかめないのです。いい案があれば伺います。こうして解散命令を出せばやれるのだということになれば、私はちゅうちょすることはないのです。そういう
意味
でありまして、だから
行為
によってつかまえるよりしようがないのです。だから、団員か団員でないかも、いよいよこれを実証するといったら困難な場合があります。おれは一度あそこに行っただけで、おれは団員ではないと言う。しかし、団員でなくてもこういう
行為
をやれば、
銃砲刀剣類
をもって傷害をすれば厳罰にしてもいい。そうすれば、団員であろうがあるまいが――事実は多くは団員でしょう。実際は
行為
そのもので押えられるから免れぬということになるのでありまして、団員であるか団員でないか立証していかなければ、同じ
銃砲刀剣類
をもってやっても、それにひっかからぬというのでは、かえって悪いのではないかと思うのであります。それで、これ以外に恐喝のお話が出ました。私も、自分の感じを率直に申し上げまして、これ以外に取り締まらなければならぬものがないというのでは決してないのです。これは最小限度にやったわけです。一方からは人権の尊重、自由の尊重ということが政治上重大な基本方針でございますから、むやみに刑罰法令の範囲を広くするわけにはまいりません。疑わしい者は何でもつかまえるとか、罰するわけにいかない。確かに悪い者だけ罰しなければならぬのと同じで、そういう重刑を科しますのにつきましては、十分に考えて、できるだけ最小限度にするということでいきました。政治的
暴力
のお話もございました。われわれはああいう
事件
が起こりますと、ほんとうに何とかしなければならぬと思いますが、それがすぐできないからといって、こっちの町の
暴力
のほうをほうっておいてもいいか、決してそうはいかないのでございます。このほうは
一般
国民
の
日常生活
に非常にたびたび、しばしば起こり、被害者の数も多く、有名人がやられたような場合のように一々新聞には多く出ませんでも、どんなに庶民生活の
日常生活
の上に不安であるかということを考えますと、私は、これは決してほっておける問題ではない。これがまだ抜けたところがあるかと仰せになれば、それは考え方によってはもっときびしく
取り締まり
たい対象があると思いますが、そこが少々足りないからこっちは要らぬというわけには参らないので、どうしてもこれはやらなければならぬ。そしてなお恐喝についても申し上げましたが、われわれ残っているものにつきましては、なるべく人権を尊重して、不当に刑の過重がないようにいろいろ苦慮し、十分に慎みをもって研究しながら、必要なものは、今後もその刑罰の網は、そういう考え方で広げていきたいと思う次第でございまして、何も他意あっていろいろやっているわけでも何でもない。私はそういうすなおな考え方であり、私は、
国民
の多数もこの考え方は了承していただけると思う次第でございます。
松井政吉
72
○
松井
(政)
委員
大臣の答弁、長過ぎます。時間がかかると、私が与党のほうから早くやめろとやられるのです。あなたの答弁が長いと私の質問ができない。少し短くしてください。 それから、あげ足をとるわけではございませんが、
暴力団
の
暴力
を取り締まる
法律
というのがなぜ憲法
違反
なんですか。
竹内壽平
73
○竹内(壽)
政府
委員
暴力団
ということばはよく世間で使われておりますが……。
松井政吉
74
○
松井
(政)
委員
あなたの理論の達者なところで、それでは
暴力団
とは何かという
定義
を先に
説明
して、憲法
違反
なら
違反
ということを
説明
してください。
竹内壽平
75
○竹内(壽)
政府
委員
暴力団
の
定義
が実は私にはできないのでございまして、世間でいわれておる
暴力団
ということで、いわゆる
暴力団
というふうに申し上げておるわけであります。世間でいわれる
暴力団
という
意味
は、
資料
にも書きましたようなふうに言い得るかと思いますが、これを
法律
的に、
暴力団
とは何かということを
規定
します場合には、非常にむずかしくなって、できないわけであります。憲法
違反
だと言ったのは、
日本
の
裁判所
が憲法
違反
だと言ったのではございません。アメリカの最高
裁判所
が憲法
違反
だと言いましたのを申し上げますと、アメリカのニュージャージー州の
刑法
でございますが、これには
暴力団
として知られている
団体
、ツー・ビー・ノウンということばをつかっておるのであります。これは世間でいう
暴力団
で、そういう
団体
を結成したり、そういう
団体
に
加入
したり、そういう
団体
で
活動
することが
処罰
の対象になっておるわけであります。これは、その世間で知られておる、というのでは
暴力団
という
法律
的な概念としてすこぶる明確を欠くではないか。
日本
の憲法でいいますと、ちょうど三十一条のデュー・プロセス、適正条項というのがございます。この適正条項に照らして、そういうあいまいな概念
内容
の
暴力団
ということで人を
処罰
するということは、アメリカ憲法の許さないところであるということで、憲法
違反
という
判決
をしております。
日本
におきましても同じことが言えるのでございまして、まず少なくともその
団体
は
犯罪
団体
でなければ、私はいかぬと思います。ところが、ばくちのようなものは許されない
行為
でございますから、それをもって唯一の生業としておるような
団体
がもしあるとすれば、これは
犯罪
団体
と認め得ると思いますが、そうではなくて、
団体
を組織しておるのは法人組織のものもあるようでございますが、生業としてはりっぱな土建業とか、くみ取り業とか、いろいろやっております。そのこと
自体
は
犯罪
団体
ではございません。ところが、そういう
団体
に入っております者は、必要があればすぐ
暴力
に訴えるということが、これが世間で知られておる
暴力団
でございます。そういうものを
法律
上違法
団体
だというふうに押え込むことは、すこぶる困難であるというところから、やむを得ず
行為
でとらえるという形をとったわけでございます。
松井政吉
76
○
松井
(政)
委員
御
説明
はわかりました。
暴力団
を解散したい
意図
を持ちつつも、やはり
一般
世間の概念として、ああ、あの組は
暴力団
だといっても、それは土建業とか、そういう職業の表札があり、法人が組織されておるので、法的に捕捉するのがむずかしい。こうおっしゃるのですが、それはわかりました。それならば、この第一条において「
団体
」というのは何をさしておりますか。
竹内壽平
77
○竹内(壽)
政府
委員
第一条は
団体
を背景としてやる個人の
行為
を罰するたてまえになっておりまして、この
団体
は、
法律
で認められた法人となっておるような
団体
ばかりでなくて、事実上の
団体
でもいいし、この
団体
というのは人数に制限があるわけではございませんで、要するに大ぜいの者を背景として、大ぜいの者をかさに着てやる
行為
を取り上げておるわけで、罰せられるのは個々の個人の
行為
が罰せられるわけであります。
松井政吉
78
○
松井
(政)
委員
そうすると、この第一条における
団体
というのは、
暴力団
組織をさして言っているわけではないのですね。(「総評を背景にしているのだ」と呼ぶ者あり)それでは、総評を背景にしているというならはっきり答弁してください。それならそれでいい。
竹内壽平
79
○竹内(壽)
政府
委員
団体
には何らの制限もございませんが、そういった
団体
を背景といたしまして
暴行
をやったり、
脅迫
をしたり、器物損壊をする、そういうものでございます。でありますから、この
団体
というのは
暴力団
であるというふうに限定して読みますことは、
法律
の解釈として適当でございません。これを
暴力団
というふうに申しますことは、いま申したような
理由
で適当ではございませんが、そういう
団体
を背景にして
暴行
行為
をするような人は一体どういう人であるかということを考えてみますと、やはり
暴力団
の人が多いであろう、こういうふうに思っておるわけでございます。
松井政吉
80
○
松井
(政)
委員
これは水かけ論になりそうですからやめますけれども、思っているということで
法案
をつくられてはかないません。でも、これはあげ足とりになる危険性がありますから。 そもそも、これは先ほど申し上げましたように、自民党、社会党で一ぺん修正してみようじゃないかという非公式の話になって、集まって相談したときに、この一条が問題になったのですよ。あなたの答弁を聞いても、この
団体
とはどういう
団体
をさしているかということになれば、これはあいまいなんですね。いま真剣に考えますと、この
団体
のところが一番問題があるわけですよ。だから今度あなたのほうが
改正
をお出しになるときに、この
団体
と多衆のところを
改正
して、そして解釈的な
改正案
が入れば私はだいぶ違ってくると思うのです。ところが、そこをそのままにしておいて、要するに疑問のあるところをそのまま出してきて議論するところに大きな問題があるわけです。だから、その作業をやる時間はあったと思うが、なぜそこまでの
改正
をお考えにならなかったかということがどうしてもわからないのです。申しわけございませんが、もう一ぺん、どういうわけでここの
改正
に手をつけなかったか、それをひとつ御
説明
願いたい。
竹内壽平
81
○竹内(壽)
政府
委員
何度も繰り返して申し上げますように、今度の
改正
のねらいは、
暴力団
といわれておる人たちの犯す
暴力
行為
について重い刑を盛れるように刑を加重するというところがねらいでございます。
現行法
の一条一項、いまお話しの
規定
は、
暴力団
の人たちも相当ひっかかっておりますが、御心配になっているような
労働運動
の際に
暴力
行為
に及んだ者に対しても、これは年間三百人
程度
でございますけれども、
適用
を見ております。そこでこの
規定
を重くいたしますことは、確かに
暴力団
対策の
一つ
でございますけれども、そういたしますと、皆さま方の心配を一そう大きくするのではないかということを考慮いたしまして、その点は触れないことにしたのでございます。いま
団体
の点がどうだこうだというなら、
大正
十五年にさかのぼって議論をしなくてはならないかもしれませんが、
団体
について、
暴力団
であるという解釈をしているとか、そんなことを申したところで何の価値もないことで、四十年来解釈というものは積み上げられてきておりますので、私が何と申しましたからといって、
法律
はひとり歩きをするというおことばがございましたが、そういうふうな形で解釈というものは客観的にきまっていくわけでございますから、それは私が何と申しても
意味
のないことでございます。しかし、なぜそれに手を触れなかったかといいますと、刑を重くするというのが今度の
改正
のねらいでございますから、この
団体
がどうだとか、多衆の問題をどうするかというようなことは、これはまた別途の考え方で検討するのは格別、今回の
暴力
対策としては、刑を重くするにはどういうふうにしたらいいかということが最大の関心事でございます。そういたしますと、刑を重くするには、それにふさわしい質の悪い
犯罪
を取り上げなければ刑を重くするわけにはいかぬ。質の悪い
犯罪
とは何かというと、普通の
犯罪
の中でも特に情状の重い類型のことを考える。でございますから、傷害罪ではありますが、特に武器を用いての傷害罪というのは重いわけで、そういう重いものを取り上げて、それに重い刑をつける。
常習
犯の場合につきましても、これは大体重い類型でございます。この二項のほうは三年以下で、
現行法
の一条一項と同じでございますから、これは重くしてもいいのじゃないか、
常習
犯というものの考え方から重くしてもよい。でありますから、二項のほうは
現行法
よりも
法定刑
を重くいたしましたが、もし
現行法
のとおりが正しいのだといたしますと、二項を重くする以上は一項も重くするという議論が当然出てくるわけでございます。先ほど申しましたように、一項のほうについては、いろいろ御心配の向きもあろうかと思いますので、幾ら
暴力団
対策といたしましても、
暴力団
だけが対象になるわけではない
実情
にあります点にかんがみまして、そのほうにはあえて――刑のアンバランスということもありますけれども、手を触れないで、二項と、いまの新しい武器を用いての傷害、この二点に限定をいたしまして
改正
をしたのでございます。そうすることによって、これは
暴力団
を対象とした
法律
だということが、私は条文の上でも
説明
ができるのじゃないかというふうに考えておるのでございます。
松井政吉
82
○
松井
(政)
委員
刑を重くすれば世の中の
犯罪
がなくなるというようなものじゃないと私は思うのです。だから、法体系からいって、
一つ
の
法律
の部分
改正
をやる場合に、どの
法律
でも冒頭にうたっているのは、
法律
の
目的
と
定義
だと思います。それから説き起こして、要するに刑を重くするかしないか、どう扱うかということを各条文に出しているのが
日本
の法体系じゃないですか。その場合に、刑を重くすることだけを考えて、そして法体系の一番大切な一条を、そのままにしておいたのだ、こう御
説明
をなさるけれども、その考え方がちょっと私たちと違うわけなんです。
竹内壽平
83
○竹内(壽)
政府
委員
法体系として第一条に
目的
を掲げ云々というおことばがございましたが、これは行政法などでは、ある行政
目的
を果たすために
法律
をつくるわけでございますから、この
法律
の
目的
は、こういうふうに第一条に掲げるのが常識だと思います。しかしながら、
暴力法
もそうでございますが、これは
刑法
の特別法でございます。
刑法
のような
規定
は、そのときそのときの行政
目的
を果たすために存在する
法律
ではございませんで、これは昔からある
法律
、言うなれば自然法的な
法律
でございます。したがって、その
刑法
の
目的
なんというのは、教科書を読みますと、ずいぶん
目的
のところがたくさん書いてございますけれども、
法律
にはそういうことはあえて掲げない。おのずからそれは自然法的な原理の上に立っておる
法律
でありますから、自然にそれはわかるわけであります。それからまた、体系体系と私どもも申しますが、これは
法律
の置かれております位置によっておのずから解釈に限定が出てくるわけであります。そのことは、一々これはこう解すべきものだとかいうふうなことを行政法では書く場合がありますが、
刑法
の場合でしたら、窃盗罪の章にある
規定
を入れれば、窃盗罪に関するいままでの
判例
、学説というものはすべてそれに乗ってくるわけでございまして、おのずから解釈にも
運用
にも限定がそこに起こってくる。そういう
意味
で
刑法
の体系ということが言われるわけであります。 それからまた、他の罪とこの罪との刑の問題、そういうものもおのずから
刑法
体系の中にそれぞれ占める位置によりまして解釈も、刑の幅もきまっておるわけであります。したがって、いまここで刑を重くしようという
意図
を持っておりましても、現状のままですぐ
法定刑
を上げますことは、それこそ
刑法
の全体系から見まして刑のアンバランスが起こってくるわけで、不都合が起こってくるわけで、そこで刑を上げるとすれば重い情状の特別の類型をつくってそれにふさわしい刑を盛る、作業としてはこういうふうに進めていきませんと、
刑法
体系上において正しい条文の形として取り上げるわけにはいかない。こういうことになるわけでございまして、この
暴力法
も
刑法
の特別法でございますから、その頭で、幾つかあります
判例
、学説等をすべて踏んまえまして、その解釈はすべてこの新しい
法律
にも
適用
されるという前提に立ちましてやっておるわけであります。それが
適用
されるのだということを法文に書かなくても、
適用
されるということが
刑法
の
一般
通則でございまして、そういう点を含めまして書いてあるわけでありまして、いま仰せのように、第一条、
目的
、というふうに書かなくてもその
趣旨
は明らかであるというふうに考えております。
松井政吉
84
○
松井
(政)
委員
これはたいへんなことです。昨日の質疑の中にもありましたけれども、
大正
十五年に最初
本法
ができたときに、その当時の司法大臣は、
小作争議
や
労働組合
、水平社運動に介入しない、それを取り締まるのではない、と答弁しているのです。記録が残っているのです。ところが、その後私は幾たびかこの
法律
に問われているのです。そのころは青少年期ですが、
労働争議
が起きて、お前
労働者
の出入り口に立っていろ、いまで言えばピケということばでしょう。立っておっただけで、この
法律
で何べん検束されたかわからぬのです、私自身が。だから当時の司法大臣が、この
法律
の
目的
はこうなんだという
説明
をはっきりしても、今度
適用
されるときになると、やはりその大臣の答弁した
目的
でない方向にこれが逆用されていくのです。それで悪用されてきている、歴史は。それだから私は言うのです。あなたはそういう経験がないかもしれませんが、私自身何べんもやられている。手も上げなければ、人にもさわらないけれども、この
法律
で検束されるのです。その当時検束されれば、御
承知
のとおり何の取り調べもなくて二十九日勾留です。たらい回しを三つ食へば冬が春になるまでわれわれはブタ箱です。その経験をなめてきたのです。だから、この第一条の
団体
とは何ぞや。そして、
暴力団
取り締まり
のために必要ならばなぜ
暴力団
を取り締まるのだということを明らかにしないのかとしつこく言うのもそれなんです。だから、この
法律
を
改正
して実際に
適用
されたときに、この
法律
ができるときに当時の司法大臣が記録に残した、答弁をしておるにもかかわらず、やはりみんなの心配する
大衆運動
や、
労働運動
や、民主的な運動にこれが
適用
されると考えなければならぬ。それを取り除くために、前国会において、非公式であっても議員同士が話し合って、第一条の
団体
とは何ぞやという解釈をしておくことが必要だという議論にまで発展したわけです。それをあなたのほうでお考えにならぬというのは、何べん答弁を聞いても納得いかないし、残念でしかたがない。現実はそうなんです。この
法律
はそうなんです。私ば国会に出て相当長くなりますけれども、自民党の人たちは社会党の
暴力
だとかいろいろやじられますけれども、私は懲罰に一ぺんもかかったことがございません。議運を六年もやっておりますし、常任
委員長
も長い間やらしてもらった、野党でありますけれども。しかし、そんな人の頭に手を上げるようなことをやったためしがない。ないが、私はこの
法律
で何べんも検挙されている。だから、そういう経験から推してこの
法律
に危険性がある。だから危険性のないように、安心できる条文はどうかということを、三国会にわたって
審議
をし論議をしているにもかかわらず、相も変わらず一字一句変えざるものを出してきた。これは与党の諸君でも、一字一句変えずに出すのは何と能のない話だなと私語を漏らす人たちもある。だから、法務省の考え方がどうしてもわからない。そして疑問を投げたまま
審議
を強行しようとしている。これが私にはわからない。何べん答弁を聞いてもそれがわからない。これは必ず悪用されるのです。
大正
のこの
法律
ができたとき、時の司法大臣の答弁、
小作争議
、
労働争議
、水平社運動等には
適用
しないという記録がいまだに残っているのです。残っているにもかかわらず、何にもしないわれわれがやられたのです。だから、もちろん
起訴
なんかされる道理がない、何にもやらないのですから。しかし、検束するときにはこの
法律
で検束されるのです。そして三つくらいたらい回しにぶち込まれたのです。何べんもやられているのです。だから、
労働争議
運動に
適用
しないというのはうそであって、
適用
されるのです。これは経験から申し上げるのです。そういうことが議論されておるにもかかわらず、相も変わらず同じ議論をさせるというのは、まことにこれは困った話だと思っておるのです。したがって私は、あなたはほかの行政法と違うと大言壮語されますけれども、国会の中における議員同士でも、第一条の
団体
という解釈で
改正
条文を入れたらいいんじゃなかろうかという議論もなさったことを私はたびたび言うのです。だから、そこではっきり、この
目的
と、その第一条のそこのところを聞きたいのです。だからどうしても残念でしかたがない。これは言い合いになりっぱなしになるかもしれませんけれども、そういう経過があるのです。しかも三国会にまたがっているのです。いろいろな議論をあなたは耳にしているはずですけれども、われわれからいえば陰謀だ。陰謀にもかかわらず、一言一句変わりないものを出してきて、また今国会末期に至るまで論議をさせようというのは、一体これはどういうわけか。われわれよりは、あなたのほうが理論的であり、頭脳明晰であり、
法律案
に明るいでありましょう。でありましょうけれども、しかしその点はどうしても納得できない。これは水かけ論になりますから答弁はよろしゅうございます。 それから次に、もう
一つ
お伺いしますが、特にこれも議論になったことですけれども、簡単でよろしゅうございます。
銃砲刀剣類等所持取締法
に定めるものに限るというように、問題になっておるここはうたえなかったのですか。
竹内壽平
85
○竹内(壽)
政府
委員
その点も
立案
の過程におきまして検討してみましたが、そういうふうに書きますことは適当でないということになりまして、この
原案
のようになったわけでございます。これは単に私どもがそう考えただけではなくて、法制
審議
会の
審議
の過程におきまして、そういうことで決までとってやったのでございますが、きわめて少数の方のそういう御
意見
でございまして、多数はそれに
反対
で、
原案
のようになったわけでございます。
松井政吉
86
○
松井
(政)
委員
それではもう
一つ
、破防法の訓示
規定
、そのことも考えられたのですか、これだけ聞かせてください。
竹内壽平
87
○竹内(壽)
政府
委員
破防法は罰則
規定
もございますが、同時に、主体をなしますものは破壊
活動
団体
の調査というところにございまして、それで調査の権限等を定めておるわけでございます。これは言うなれば
運用
法、手続法も入っておるわけでございます。そういう
法律
でございますので、その衝に当たります者の
運用
の中に、
乱用
にわたること、逸脱がないようにという、これは
立法者
の注意としてまことに当を得たものだと私は考えております。しかし、実体法は違うのでございまして、私は実体法の中に訓示
規定
を設けるということにつきましては適当でないというふうに考えております。
松井政吉
88
○
松井
(政)
委員
それでは急ぎますが、今度
常習
ということばが入ってきたわけです。ところが、従来
常習
ということばを使った
法律
は、
刑法
の
常習
賭博、それから
常習
強窃盗ということばが
法律
に使ってあります。それから
常習
麻薬取引、これも
常習
ということばを使っております。今回も
常習
ということばを使っておりますが、これもやはり反復してという
常習
で、反復は、どなたが聞いたかわかりませんが、同じ罪の反復をいうのか、罪名は違っても反復というのか、
前科
が異なる
犯罪
であっても、
前科
なるものを反復というのか。それから年数が二十年もたって同じ
犯罪
を犯したのを
常習
というのか、そこらのところをお聞かせ願いたいと思います。
竹内壽平
89
○竹内(壽)
政府
委員
年限で、あるいはその
前科
の回数で、あるいは別な罪によって
常習性
が認定されたり認定されなかったりということではございませんで、
常習
というのは、その犯人がある罪を繰り返しやる、そういう習癖があるかどうかということで
判断
をするわけでございます。したがって、何年前に
一つ
犯罪
があったから
常習
になるというふうな見方をすべきではございませんし、それからまた
前科
の回数が多いから
常習
になるというふうに認定すべき性質のものでもございません。要するに、
前科
とか前の罪とかいうものは、すべてそういう癖のある人間だという、その癖を認めるに足る
資料
かどうかということの
判断
の材料にすぎないのでございます。したがって、そういうふうに癖というふうに見てまいりますためには、窃盗罪と
暴行
罪というようなものは癖を認める
資料
にはならないわけでございますから、大体において
暴行
の
前科
なり繰り返しがあったという前歴なりというものが、今度の
暴行
の
常習性
を認める
資料
になるかならぬかということが検討されるわけでございまして、罪が違ってくると習癖を認めることは困難になってくるというふうに私ども考えております。
松井政吉
90
○
松井
(政)
委員
習癖の解釈はいろいろ議論があるだろうけれども、昨日の
松井
君の質問に竹内さんの答弁は、
常習
のところで、
暴行
、傷害、
脅迫
、器物損壊、それで拡大解釈するとすれば傷害致死
程度
だという
意味
の答弁をなさったように私聞いたのです。ところが、法制
審議
会においては、やっぱり兇器準備集合、それから傷害致死、建造物損壊、それから証人威迫、こういうものまでこの
法律
でいけば
常習
の
関係
は拡大されるのじゃないですか。そうなりますと、あなたの昨日の答弁は、せめて拡大されても傷害致死
程度
だというのは、これは間違いになりますか、いかがですか。
竹内壽平
91
○竹内(壽)
政府
委員
いまお話しのように、
委員
の中から質問が出ましたことは事実でございまして、そういう拡大になるじゃないかという心配をして私どもに質問があったと思うのでございますが、そのときの私どもの答えも、昨日
松井
委員
にお答え申し上げたと同じ
趣旨
で答えておりまして、大体その答えで、学者の方々もよかろう、こういうことになっておるわけでございまして、これはそんなに次々と拡大していくというようなことはございません。
松井政吉
92
○
松井
(政)
委員
私の心配するのは、こういう形でたとえば傷害致死や建造物損壊、それから証人威迫まで拡大していくということになりますと、これは公務執行妨害その他にまで拡大する危険性がありますから、この
常習
というところは、われわれとしては非常に大事になってくるわけです。だから、そういう
意味
で聞いたのですが、これはやはり非常にしぼられるというのが正しい解釈ですか。
竹内壽平
93
○竹内(壽)
政府
委員
おっしゃるとおり非常にしぼられる。ただ、傷害と傷害致死は結果的加重犯でありますので、傷害致死というのは傷害と同じでございますから、傷害致死は入ってくるだろうと思います。この点五つでございますね。
松井政吉
94
○
松井
(政)
委員
最後にいたしますが、これは直接この
法律案
に
関係
ございませんが、
暴力
並びに
暴力団
、そういう
関係
からどうしても見のがすことができないので、大臣も簡単に所見を述べていただきたいし、それから当局からも
説明
願いたいのですが、執達吏や執行吏といいますか、これは法務省のおひざ元だと思いますが、四月九日に汚職の
判決
がございました。その汚職の
判決
が下って、法務省のおひざ元でたいへんな
事件
を起こしているわけですが、その
事件
の事柄もさることながら、この執達吏、競売屋、談合屋、それといわゆる社会通念の
暴力団
、そういう
関係
というものは、御
承知
のようにずっとくされ縁があるわけです。そこでやはり汚職が起こってきた、有罪の
判決
を下さざるを得なくなってきた、こういう形になっているわけです。そうすると、法務省のおひざ元の機関まで談合屋、競売屋、
暴力団
とのつながりがあって汚職まで起こすということはゆゆしい問題なんです。そういう問題が一方に起きておるにもかかわらず、この
法律
で刑罰を重くすることによって
暴力団
取り締まり
がこと足れりと、こういうことにはどう理屈を言ってもならないのです。まずその辺の粛正と、きちっとしたかまえというものが法務省に必要じゃないですか。この
事件
についての責任、それから、こういう問題を起こした背後には町の談合屋、競売屋、
暴力団
の背景があることは明らかですから、そういうつながりについてひとつ責任ある答弁をお願いいたしたい。
賀屋興宣
95
○
賀屋
国務大臣 簡単にお答え申し上げます。そういうようなつながりで起こりましても、いやしくも法に触れるような場合におきましては、
検察当局
は今後も断固として、従来もそうでございますが、特に遠慮しないでやるつもりでございます。
検察当局
もその考えでございまして、たちの悪いものはなおさらきびしくやるつもりであります。
竹内壽平
96
○竹内(壽)
政府
委員
暴力団
の
活動
分野というものは、社会の谷間と申しますか、われわれの手が十分伸び切れないような谷間が社会にはできてくるわけでございますが、そういうところには遠慮なく水が流れ込むように
活動
分野を広げておるように思われます。その
一つ
の例が、いまの御指摘の執行吏の汚職
事件
にまで発展しておるのだと私は考えております。これにつきましては対策がなければなりませんので、いま大臣が仰せになりましたように、これが
犯罪
になるわけでございますから、厳正に摘発して
処罰
を求めていくことは当然でございますが、さらに執行吏制度そのものの中に内蔵する弊害もあると思いますので、ただいま執行吏制度全般につきまして、法制
審議
会で検討をいたしておるのでございます。
松井政吉
97
○
松井
(政)
委員
この
法律
はどうしてもわれわれは納得できませんけれども、
審議
で、だんだん質問その他で考え方は明らかになったと思います。大体こういう
法律
で三回の国会をわずらわすよりも、おひざもとの執達吏の粛正でもおやりになったほうがいいということを申し上げて、質問を終わります。
三田村武夫
98
○三田村
委員長
代理 神近市子君。
神近市子
99
○神近
委員
きょうは私は法務大臣にかなりいろいろお尋ねしたいことを持っていたのですけれど、五時半だかそこらまでしかおいでになれないというので、ひょっとしたら準備したものが飛び飛びになって、始末がつかないかもしれませんが、一、二お尋ねしてみたいと思います。 今日問題になっておりますこの
暴力処罰法
によって、今日の
暴力団
が徹底的に整理できる、あるいは退治できるというような信念を持っておいでになってこの
法案
が出ているのですかどうか、それを一点伺わせていただきます。
賀屋興宣
100
○
賀屋
国務大臣 たいへんお急がせいたしまして済まないのですが、ただいまの御質問、率直に申し上げまして、これだけで
暴力団
を全部完全になくする、ここまでは申し上げられません。いままで多数の方のお説がございましたように、
犯罪
は、いろいろな社会的の背景となる基礎的な原因もあり、直接の原因もございます。これは直接の原因に対して直接に向かう方法でございます。これ
一つ
でもってすべてとは申し上げませんが、これを実行いたしますれば非常に有力であり、社会の庶民生活に対しまして非常な安心を与える。これからは傷害
行為
につきまして
警察
方面でも、従来もそうでございますが、一そう決意を新たにしてやられますし、それからまた、これを刑務所、少年院等に入れましても、従来よりは長期にわたり、場合によれば
暴力団
が従来おります土地より他の土地の刑務所、収容所に入れまして、その根源を断つのに非常に有力な武器と申しますか、
暴力団
解消の武器になる、かように考えておる次第であります。
神近市子
101
○神近
委員
どうも私どもはさっきから御所感を承って、少し大臣は考え方が甘いのじゃないか。いまここに数字をたくさん支度しておりますけれど、ともかくお急ぎだというのでそれを逐一申し上げることができません。これは法務省でお出しになった数でありますから間違いはありませんが、大体三十五年の
暴力
による総受理数が八千八百九件、その中で
暴力団
によるものが三千三百五十八件、その他が五千四百五十一件、こうなっております。それから三十六年は総受理数が九千二百八十九件、
暴力団
が三千九百二十六件、その他が五千三百六十三件、こうなっておって、三十五年は三八%が
暴力団
、約六二%がその余の
犯罪
、こうなっている。それから三十六年は四二・三%が
暴力団
、そのほかのものが五七・七%、こうなっているのです。これは多少の出入りはあるかもしれませんが、ほかのところに鉄道の例がございますけれど、いまそれを出すひまがないのですけれど、大体この残余という件数は
労働組合
の人たちによると考えられているのです。
暴力団
とはっきりきまったものとそうでないものとの件数でありますけれども、こういう状態において、いま大臣がおっしゃったように、一部では――事務局には
あと
でお尋ねいたしますから、あわてないでいただきたい。私は大臣の御所見を承っているのです。それで、私はその点で大臣のお考えは少し甘いのではないかということを伺っているのです。
賀屋興宣
102
○
賀屋
国務大臣 今回の
法律
は、御
承知
のように
現行法
の一条の一項、今度の
法律
の一条、それから一条ノ二、一条ノ三、これは全く違うのでございまして、第一条と第一条ノ二、第一条ノ三は、いわば同じ家族に入るのじゃないのでございまして、別家族、たとえていえばアパートに隣同士に入っているようなもので、同じアパートにおりますが、むしろ別ものでございまして、第一条の文字が少しも第一条ノ二には影響がない。三もさようでございます。そういう次第でありまして、同じ
暴力
と申しましても、
銃砲刀剣類
をもってするような、また
常習者
がいたしますようなたちの悪い、
国民
から見たらよりおそろしい、よりいやなものに対して焦点が向けられておるわけでございます。そういう次第でございますから、悪質な
暴力
が非常にそこで減る。ただ傷害がありました場合だけでは
適用
がないわけでございます。
銃砲刀剣類
をもってやった場合、あるいは
常習者
の場合でございますから、そういう特におそろしい、いやがられる悪質なものに対する減り方は、私は相当に強く減るんじゃないか。かりに数は今度の一条ノ二や一条ノ三が
適用
のない分は減らないといたしましても、悪質なものについては相当に有力に減るんじゃないか、かように思うのでありまして、結果において御批判のような甘かったということがないように、
警察
当局やまた検察方面についても
努力
をいたすつもりでございます。と同時に、そういういわば直接の方法以外に、先ほども精神病の問題も出ました。私も、余分なことを言っておそれ入りますが、私の党で社会保障やまた政調会でやっております場合にも、いまの精神病者の
措置
入院なんというものは二、三年の間に私は一生懸命にやって、予算も十倍以上にいたします。そうしてこれを
措置
入院をせしめて、社会からその害を除く。相当にいろんなそういう方面も同時に熱心にやっていくということはむろん怠らないわけでございますが、ただ直接方法の刑罰を重くするということは、いわゆる
常習
犯や
銃砲刀剣類
をもってする悪質なものに対して特に効果があるのではないか、こう考えておる次第でございます。
神近市子
103
○神近
委員
そのお覚悟はよくわかりますけれど、この間私は、個人的なことは申し上げたくないのですけれども、大臣がお過ごしになった時代は二つに分かれておるはずでございます。昔、非常に
弾圧
の多かった時代を経て、そうして今日の民主主義の政治下の大臣におなりになっている。そういうところにお考えの開きがあるんじゃないか。たとえば、いまこの
法律
によってたくさんの人を刑罰に付して
悪質犯罪
をなくするんだというようなことをおっしゃったのですけれども、それに伴ってたくさんの人が――いまパーセントを申し上げましたけれど、ずっとはるかに高い数字がいま
民主化
で団結を持って、そうして
労働運動
をしている。いま
松井
委員
も申しましたけれど、これは例をあげて申し上げようと思いましたけれど、お急ぎだというので略しますが、何もしない人が引っぱられて、そうしていままでは保釈になることができた。だけれど、今度のそのそばづえを食って、保釈は一切許されない。そうして何年か裁判がかかる。職は失うというような状態になるということをお考えになりませんでしょうか。
賀屋興宣
104
○
賀屋
国務大臣 私はいまの説は
反対
で、逆ではないかと思うのでございます。もしも人権ということの尊重をいたしませんと、戦前は人権を尊重しなかったと私ははっきり申し上げるわけではございませんが、かりにそういう時代としまして、その観念でやるならば、たとえば
暴力団
体の
定義
でも、事務当局が
法律
的にいうと、
暴力団
体というものはどうもそこまで行ってつかまえてみぬと、固体であると思ったものが気体であり、液体であり、固体でない。はっきりつかみにくいといいましても、そんなことを言っておったんでは
取り締まり
ができないから、
暴力団
というものをきめてしまって、団員であるかどうか疑わしい者でも所属をきめてやってしまったらいいじゃないか、こういう観念が戦前的な考え方ではないかと思います。また恐喝の問題でもそうでございまして、恐喝はけしからぬ、あるいは資金源である。それは財産犯であろうが何であろうが、また恐喝をやるならばほかの建造物の破壊も取り締まれ、そんなことは言わないで取り入れてしまってやればいい。こういう考え方であるのが一方からいえば効果があるようでございますが、さようにおおまかに考えまして、一面そのために人権が侵害される、自由が不当に拘束されるということがあってはならぬ。法の刑罰の厳重な科刑は最小限度にとどめたい、これがかりに戦前、戦後を区別しましたら、そういう意思を御批判によっては尊重して、今回の
立法
もその
適用
範囲がきわめて制限されるようにいたした次第でございまして、できるだけ
乱用
がないように、あるいは不当介入がないように、そういう点に戦後の思想としまして、一部の人はあまりに憶病ではないかというほど忠実にまいったつもりでございます。労働
団体
のほうは、いまも申し上げましたが、第一条の一項の罪を加重するならばいろいろまた御心配もございましょう。一条に
関係
ない、全く別のことを今度
規定
したわけでございますから、一条の罪を加重するのではないのでございまして、
常習
と
銃砲刀剣類
を盛っただけでございまして、
銃砲刀剣類
を持っていない場合に、これこそ間違いなくやるような心配はないわけですから、私は御心配のようなことは起こらぬ。それは
警察官
でも何でも、ほんとうは
無罪
なのが間違いでつかまえることはないとは決して申し上げません。そういうことはあり得るのでございます。あり得ますから、検察制度があり、さらに裁判制度があり、裁判制度も覆審であり、
無罪
になりましたら刑事補償の制度もあるようなわけでございまして、全然ないとは申し上げませんが、今度の
立法
は、最もそのおそれの少ないものではないか、手段等も限定されております。それから罪を犯す者の資格も
常習者
と限定されておりますので、その御心配がないように、またそういう点に
立法技術
でも十分に注意をしてまいっておる、かように思う次第でございます。
神近市子
105
○神近
委員
大臣は雑誌なんかをお読みにならないかもしれないのですけれど、いま新聞や雑誌に――この間のケネディ大統領の暗殺の
事件
が起こっております。この
審議
の途中で
刑事局長
でございますかどうか、
暴力団
の
犯罪
をあげるのは非常にむずかしいというお話をしていらっしゃるところがあるんです。いま統計もどこか書いておりますけれど、お急ぎだと思うからそれは略しますけれど、アメリカの例を考えてみても、それから
日本
の検挙が非常にむずかしいというようなことを考えますと、どういうところにむずかしい点があるかというと、届け出をしない。たとえば会社とかあるいは政治家のような人、個人とかが、名誉のため、それからまた、
あと
からゆすりが同じようにくるかというおそれのために届け出がない。そのためにどうしても検挙がむずかしいんだというお話が出ていたんです。この前ちょっとそれも出たようでしたけれど、一体そういう対策ですね。私は実は法務大臣にその対策について少しアドバイス申し上げたいことがあるのですけれど、お急ぎだというので、そのことまで触れられないのですけれど、これはまた他日、関連の質問にでも申し上げたいと思います。 もう
一つ
、この間田中
委員
が御質問申し上げたときに、裁判のあり方あるいは検挙のあり方についていろいろ疑念が出たんです。ごく手近な例を申し上げますと、この前の安保
反対
運動のときに、文化人になぐり込んだ石井某という人が
警察官
の集まっているところに行ってビールを飲んで懇談をしたということ。この結果か、
暴力
行為
処罰
法にかかるというので、武器が石だとかあるいは砂だとか、棒だとかいうものによって乱暴が行なわれた。それから三井の場合もそうでございます。石灰を袋に入れたもの、あるいは何か香辛料を入れたもの、ガラスの粉、そういうもので目つぶしをかけ、そうして石を投げ、青竹でやった、そういうようなこと。そうすると、この
銃砲刀剣
の類にかからないから、その手段をちゃんと教えていて、そして自分たちはこれは
暴力
行為
でないからというふうにして、これを見ていることができる。そういうようなことがある。それから裁判になりましても、さっきも申し上げたように、
暴力団
よりも以上に
労働組合
の数が――いま数をたくさん持っております。いまあげませんけれど、それがあがっているというところを見ますと、何か法務大臣として、いまおっしゃったように非常におりっぱなお考えをこの末端までどういうようにしてその意思を通すことができるか、それに自信がおありでございますか。その点を承って、私の大臣に対する質問を終わることにいたします。
賀屋興宣
106
○
賀屋
国務大臣
暴力団
の
犯罪
につきまして届け出が非常に少ない、また検挙がむずかしい。これは偶発的のものでございませんで、いわば
常習
、俗にいえば商売にしているような連中ですから、
犯罪
を免れるということについてはいろいろ工夫もし、考え方もしているわけです。その一番おもなお礼参りなどもそのでんだと思います。今回の
改正
では、普通の場合の
権利保釈
ができないようになっています。これはお礼参りを防ぐことを直接の
目的
としてなったわけではございませんけれども、刑罰が最短期限が一年以上となりますために、いわゆるお礼参りの件は結果としてよほど少なくなる。このお礼参りがありますために、善良で弱気と申しますか、だれでも
暴力団
に対抗するだけの用意がある人はないわけでございますから、弱気でなくとも、それをおそれるということは人情として当然かと思うのでありますが、それが結果論としておそれるということがここに出てまいる次第でございます。そういうふうにおそれないで届けてください。これは新聞でもごらんのように、
警察
もそういう
宣伝
をうんとされております。私は、そういうことで現実に庶民が安心されるように
警察
も大いに力を尽くしてやることを希望し、またその決意を
警察
で聞かされておるわけでありますが、そういうふうに一方に
暴力団
の悪い
意味
の自己防衛をだんだんなくしていくということに力を努める次第でございます。 また、いわゆる
犯罪
を犯す凶器の範囲につきましては、心配すればいろいろあるわけであります。科学的のものを用いたらどうか、こういう御心配もこの
委員会
でも出ております。神近さんお話しのように、心配すれば幾らでもございます。しかし、先ほど申し上げたように、それをあまり広げますと、
労働運動
に
適用
するのではないか、旗ざおを持っておった、先がちょっととがっておった、だからこれはということになってもいけない次第でございまして、そこは、先ほど申し上げましたように、最小限度にして、ことに町の
暴力
に一番使われる
銃砲刀剣類
に限ったというのは、そういう配慮からでございます。
銃砲刀剣類
では小さい魚はのがれるじゃないかと言われれば、そのとおりでございます。大体町の
暴力
を防ぐのには、いまのところこれだけあれば大部分いけるんだ、とりたい魚はこの網の円ならば大体かかるんだ。それじゃこれでとり尽くせるかというと、この網にかからぬものがございましょう。またそこへいけば、ガラスを砂に入れてやるとか、短刀を持った悪質な場合もあるかもしれません。それまで広げるということが、一面から言ったら
行き過ぎ
の場合もあるので、最小限度にとどめる。むしろ用心し過ぎるくらいに私は用心しまして、
立法技術
のほうは自己抑制といいますか、大いに抑制してつくったものだと考えている次第でございます。
神近市子
107
○神近
委員
私は大臣のその
善意
はちっとも疑いません。でも、いま
銃砲刀剣類
による
犯罪
をなくするとおっしゃいましたが、私がお尋ねしたのは、
銃砲刀剣
では
犯罪
になるから、石だのあるいは棒とか目つぶしなら
犯罪
にならないというようなことを通謀する人たち、
警察官
ですか、そういう人たちに対する考慮はどうでございましょうかということを私はお尋ねしたのでございます。
賀屋興宣
108
○
賀屋
国務大臣 それはつまり悪い人はすぐ悪知恵を働かすわけで、法をくぐっていきますので、そこまで網の目を張りますと、かえって
行き過ぎ
ではないかという考え方が
一つ
でございます。そこいらの区別を徹底することは、
検察当局
はもちろんですが、ことに多数の
警察官
についてはその憂いがないように徹底して、この
法律
の
趣旨
を十分に通達いたしまして、
警察官
が
判断
を間違えることのないように十分徹底するつもりでございます。
神近市子
109
○神近
委員
きょう、
参考人
のおいでのときにこのことはちょっと問題になりましたけれども、この
法律
の題に使われておりますところの
暴力
、この
暴力
という文字をいろいろ字引きを引いてみますと、いろいろ解釈があるわけなんです。法に反するものはこれを
暴力
とするということ、それから静止しているものを動かす、引っ張る、あるいは動いているものを静止の状態に置く、こういうような、何かまるで相反するような、あるいは融和できないような
定義
が出ているんですけれども、この二つの解釈で、たいへんにこの
法律
の性格が違ってくると思うのです。局長は、どちらをお考えになっているのですか。それとも両方をごったに考えていられるか。
一つ
は、
法律
に
違反
するということ、これは漢和辞典ですか、それからもう
一つ
は、もっと別の字引きでございます。その
定義
をどちらをおとりになるおつもりか。
竹内壽平
110
○竹内(壽)
政府
委員
むずかしい御質問でありまして、私も十分お答えできないと思いますが、
法律
上の用語といたしまして、
暴力
行為
という刑罰の類型はございませんので、
暴行
とか
脅迫
とか器物損壊とか傷害とかというふうになっておりまして、
暴力
行為
ということばが
法律
の中に使ってありますのは、この
暴力行為等処罰
に関する
法律
と、労組法一条二項の
暴力
の行使ということばがございますね。こういう
法律
の中に
暴力
行為
ということばが使ってありながら、その実体は何も書いてないのでございまして、わかりませんのですが、この
暴力行為等処罰
に関する
法律
で取り上げております
暴力
行為
といわれておるのは、
暴行
、
脅迫
、器物損壊、
現行法
のもとではこの三つでございます。そして、この
暴行
が傷を結果的に発生しますと傷害になるわけでありまして、この傷害も当然この中に入ってくる、こういう
意味
で傷害をこの中に取り込みましたのでございますが、一応この
暴力
行為
処罰
法でいう
暴力
行為
とは四つの類型の
犯罪
である。まあ、こういうふうに私は理解いたしております。それから、われわれが取り扱い上、粗暴犯とかいうことばで
暴力
的な荒い
犯罪
を言います場合には、殺人とか強盗とか強姦とかいったような人の自由を害する罪や財産犯、要するに、その手段として
暴力
がふるわれると性格的に見られるそういう
犯罪
も粗暴犯という中には数えておりますが、
暴力
行為
という
刑法
上の概念としては、
法律
にこういうふうに書いてはございますけれども、中身は
暴行
、
脅迫
、器物損壊、これに準ずるものとして傷害、こういうことになるのじゃないかと考えております。
神近市子
111
○神近
委員
その点でこの問題の
法律
の解釈が非常にまちまちになるのではないか。やはりそれは最初に御決定になっておかなければならなかったことではないか。それで
乱用
ということが非常に起こっているんじゃないかというふうに考えます。この
法律
は、もう何度も繰り返されるように、十五年四月三十日ですか、この
法律
が制定されてから、そのときの大臣の答弁で、これは
労働組合
あるいは
小作争議
あるいは解放運動には使用しないという明言があったからでしょう、かなりの間
乱用
されなかったのが、三十二年ころから非常にたくさん
乱用
されるようになっております。それで、その一例といたしますと、これは鉄道のほうでありますが、鉄道の
労働組合
一つ
であります。ほかにたくさん
事例
があると思いますけれども、その例として
一つ
ここに出しているのですけれども、案件が二十件いま国鉄がかかっている。その中の十七件が
暴力
防止法でやられている、これが
一つ
の例であります。おそらくそれに類似する
法律
でやられたのだと思うのですけれども、そのストだの、ピケだの、さっき申し上げたように、立っているものを動かす、動いているものを静止させるというような状態から、こういうことになったのじゃないかと思うのですが、ピケだのストで集まっているというようなところにかなり使われている。いま鉄道のほうは十七件ですけれども、さっき申し上げたように、年間の検挙の中で半数以上が
労働組合
がかかっている。そういうことになっているようですが、この点で、一体責任はだれにあるのですか。これは大臣が、十五年の制定当時、絶対にこれには利用しないという明言があって、最近このとおりに、
松井
委員
が言われたように、立っていただけでやられたということ、それからもう
一つ
のケースが、いま
あと
で出てきますけれども、その場にいないのに、
委員長
であったというのでやられるというようなこと、これは一体どこに責任があるのですか、私、それを伺いたいと思います。
竹内壽平
112
○竹内(壽)
政府
委員
責任があるかないかのお答えを申し上げる前に、神近先生にひとつ正しく理解をしていただきたい統計上の数字がございます。それは、先ほどおあげになりました
暴力
行為
処罰
違反
の数字は、年間に約八千人から九千人が
処罰
されておりまして、そのうちで約三千から四千の人が
暴力団
といわれる人たちなんでございます。それで、その他の残りのものが
労働運動
に従事する人が
適用
を受けておるのだというお考えでお話がございましたが、そうじゃございませんで、労働
関係
で受けたものは三百人前後でございます。
あと
の残りは、
一般
の
暴力団
以外の人であり、かつ、
労働組合
の運動の際に起こった
暴力
行為
以外の
一般
の人の
犯罪
、こういうことになるわけでございます。その点をまず正しく御理解を賜わりまして、御質問を賜わりたいと思います。
神近市子
113
○神近
委員
ちょっと……。いま御
説明
の案件は、何件が
労働組合
関係
だとおっしゃったのですか。三百件とおっしゃったのですか。五千三百六十三件のうち、何百件とおっしゃったのですか。
竹内壽平
114
○竹内(壽)
政府
委員
正確に申し上げるなら申し上げてもよろしゅうございますが、大まかに申しまして、八千のうち半分が
暴力団
で、半分が
労働組合
だというふうな
趣旨
で御理解があったのじゃないかと思いますので、それを申し上げた。そうじゃなくて、残りのその他という中に入っております四千の中で、労働
関係
の
事件
というのは三百人前後でございます。三百二十人とか多いときはもっと多いのもありますが、少ないときもありまして、数年間の平均を見ますと、大体三百人前後の人が
暴力
行為
処罰
法で罰せられ、しかも第一条の第一項で罰せられておるのでございまして、その他の条文で罰せられた例はないのであります。
神近市子
115
○神近
委員
いま私が出した数字は、三十六年の九千二百八十九件、その中の
暴力団
の案件が約四千、
あと
五千数百の中の三百件くらいが
労働組合
、
あと
のそれは何ですか。
暴力団
でない人たちの傷害というのがそれほど多く起こっているというのはちょっとわからないような気がします。
竹内壽平
116
○竹内(壽)
政府
委員
傷害じゃございません。傷害は
刑法
犯で罰せられますから。いまあげております数字は、
暴力
行為
処罰
法の対象になっておる数を言っておるのでございます。
暴力処罰法
の第一条第一項でございますから、
団体
の威力を示しとかありますね。それの罪に問われた者が大部分でございます。大部分というのはほとんど九九%がそれでございます。その九千のうちで約四千が
暴力団
で、残りの五千のうちの三百が労働
関係
の方で、
あと
残りの五千に近い数字が
一般
の人ですね。これは
暴力団
の団員というふうに見られない、
一般
の花見の酒のときにできたできごととか、そういうような……。とにかく一億から人がおりますので、たくさんそういう
犯罪
があるわけでございます。
神近市子
117
○神近
委員
それじゃ、あなたはそんなにおっしゃるけれど、
一つ
の例をあげますよ。それは木更津の
事件
でありますけれど、木更津のデパートが非常に低賃金であって、そこでストが起こった。二十四時間ストをやったところが、この守衛の室に管理人を四人か五人入れて泊まらせておいたということで、二十四時間ストのときにデパートの品物がなくなった。それで
組合
としては、当然
組合
のせいにやられると思ったので、その管理人を守衛室から出てくれ、お前さんたちがこういうところにいるからこういうことが起こるのだから、それはわれわれのせいにされるのだから、管理人なんというのは守衛のほかにはいないようにしてくれというので、おそらく引っぱり出したか、なぐりはしなかったでしょうけれど、引っぱらなくちゃ出てこないでしょうから。ところがそれが
暴力
防止法でやられている。そういう案件が実際にはあるのですよ。だから私どもは相当の量がこれでやられていると思う。ほかにも数字はありますけれど、大体あなた方が
審議
の途中で相当多いということをおっしゃっていたことがあったように私は考えたのですけれど。
竹内壽平
118
○竹内(壽)
政府
委員
それは先生の
誤解
でございまして、
審議
の過程でもあまりないないということを繰り返し申し上げておるわけで、この数字は正確なものでございまして、
犯罪
統計によって出したものでございます。
神近市子
119
○神近
委員
それからいま大臣にもお尋ねいたしましたけれど、三池炭鉱
争議
のときに第二
組合
と家族が何かのいざこざのときに、石灰あるいは香辛料、それからガラスの粉、そういうものを使わせて、警官が三人ばかり高見の見物で見ていたということ。それから安保騒ぎのときに、参議院の入り口ヘトラックで乗りつけた
暴力団
が、あのとき武器は持たなかった。石だの棒だの青竹だの用意していた。それがどうも私どもには、その前の晩だか前の前の晩だか、警官の集合所に行って一緒にビールを飲んで雑談をしたというようなことがちゃんとわかっていれば、何か
犯罪
にならないようなことを教えてやらせているというような感じがするんだけれど、それほど
暴力団
と
警察官
なら
警察官
なりと意思の交通があれば、この間田中
委員
がおっしゃったように、
警察官
が
あと
で
暴力団
に行って加盟するということがあるという例をあげていらしたでしょう。そうすれば、そのことと考えあわせれば、かねてから相当交流があるんじゃないかということが疑われれば、こういう
法律
なんてほんとうに何の役にも立たないだろうということが考えられるのです。あなた方はりっぱな良心的な方ですから、そういうことは御想像できないでしょうけれど、この事実はお認めになるかどうか。それから安保の騒ぎのときのあの警官たちの
判決
はどういうことになって、どういう最終的な
判決
が出ているか、それがわかっておりましたら教えていただきたい。
竹内壽平
120
○竹内(壽)
政府
委員
いまお尋ねの中に、
警察官
が
暴力団
の人たちと事前に打ち合わせたとか、そういうお話がございましたようでしたが、その点は私どもは
承知
いたしておりませんので、私はそういうことはないと思っておりますけれども、その点は
警察
の御当局からお答えを願うことにいたしたいと思います。 それから、その
事件
についての
判決
の結果はどうなっておるかという点につきましては、これは調べればすぐわかることでありますが、いまちょっと
資料
を持ち合わせておりませんので、調査いたしまして後刻お答えいたします。
江口俊男
121
○江口(俊)
政府
委員
安保の騒動のときに
警察官
が飲んでいるところに右翼が来て、そこでいろいろ談笑したんだから、やり方を教えたんじゃないかというようなお話があったのでありますが、私はここに
資料
を持ちませんけれども、当時を振り返って考えてみますと、そういう事実はなくて、ともにビールを飲んだという話がある
委員会
に出ましたので、私が警視庁に調査を命じまして報告を受けましたところでは、いわゆる情報をとりに行ったところ、
警察官
のほうが何か右翼
団体
の事務所に行ったようでありますが、そこで連中がビールを飲んでおった。そしてあなたも一ぱいどうじゃということで、初めはそういう事実はないというようなことでございましたが、よく調べてみると、コップ半分飲んだとか一ぱい飲んだとかということで、帰ってきた事実はございます。しかしこれは……(「完全な調査をしていない」と呼ぶ者あり)完全な調査です、このことに関しては。そういう事実はありまするけれども、現在におきましては、情報をとっておくことは重要でございますから何らかの方法でとらねばいかぬ、しかし、とるについては、ただいま御指摘になったような
誤解
を招くような方法はやらないようにという指導をいたしております。
神近市子
122
○神近
委員
何かとりにいった人があべこべにとられるという昔からのことわざがありますね。それと同じだと思うのですけれども、もう
一つ
昨年の六月でしたか、山崎で丸山という
労働組合
の
委員長
が五つになる子どもの目の前で殺されています。その人が何か
犯罪
的な怨恨でもあったのか、受けるような
理由
でもあったのかと考えると、そういうことはなさそうですね。 〔三田村
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 そして殺されて、今日その仲間の人たちが、これもやはり
暴力団
ですけれど、
暴力団
ではないかというような目星をつけているのがあるけれど、これは
警察
で
一つ
も協力しない。そして調べようともしない。あるいは居住とかそのときのアリバイを探すということにも笑って取り合わない、こういうような事態があるわけです。それで私が懸念いたしますのは、この
暴力団
と一部の役人たちがもし手を組んでいるくらいだったら、これは何の効果もないんじゃないかということで、これをたいへん懸念して、そして他の方法があるのじゃないかということを私は考えるわけでございます。そのことはどういうことですか。やはり
警察庁長官
に……。
江口俊男
123
○江口(俊)
政府
委員
ただいまの川崎の
事件
につきましては、具体的に担当課長から
説明
させますが、
一般
的な議論として、
暴力団
と
警察官
との間にくされ縁があるのじゃないかということはよく言われることでございまして、一番われわれの残念なことであります。十五万人の職員でございますから、一人もそういう者は絶対おらぬということを私言いたいのですが、そこまでは言わぬにしても、私はいない、こういうふうに信じておるのでございます。それで、そのことを裏から言って、きのうも私お答えしましたが、
警察
が
暴力団
員として何のだれべえというような
意味
で一応把握しております数は、十七万名くらいあります。そして年々検挙いたしておりますのがこの三年間六万名近い、五万何千名ないし六万名という数字でございます。今回こういう
法律
をどうしても――私のところで出している
法律
じゃございませんけれども、御
審議
を願って
成立
させてもらいたいというふうに
警察官
全員が考えておりますのは、多少重複している分もありましょうけれども、かりに六万人ずつきちっとつかまえた分がきちっとした
処罰
を受けておれば、十七万人把握しているのは、かりに三年入っておるとすれば、重複さえいたしておらなければ、また新しいものができればこれは別でございますけれども、三年目にはゼロになっているという数字になるわけです。ところが、年々六万の
事件
をあげつつも、ちっとも
暴力団
としてわれわれが把握している数が減っていかないというのは、つかまえてもつかまえてもまた出てくるというところに一番の問題があるのでございまして、この点は十分御了承を得たいと思います。
日原正雄
124
○日原
政府
委員
ただいまお話しになりました
事件
につきましては、お話しのようにこれが犯人じゃないかというお話もございます。なるほどそれは
暴力団
とつながりのある者でございます。ただ、私どものほうは、もちろん容疑者の中へ入れて捜査をいたしておるわけでございますが、それから絶えず所在を確認して捜査をいたしておりますが、まだ直接
逮捕
するだけの疎明
資料
が得られておりませんので、十分な
資料
さえ得られれば直ちに
逮捕
できると思いますが、いままでのところではまだ得られておりませんので、捜査を継続中でございます。
神近市子
125
○神近
委員
法制
審議
会の議事録を見ますと、ずいぶん早くからこの
法案
についての御研究があっているようですが、この法制
審議
会の議事録に、多分竹内局長だろうと思う、頭のいい方ですから、竹内局長だろうと思われる方がそのときにこういうことを述べられております。
暴力団
の検挙が非常に少ないのはどういうわけかという疑問が出たときに、届け出がないということですね。ゆすられた人たち、会社なり個人なりからの届け出がないために、恐喝あるいは強要というようなことを
理由
にして検挙ができないとお答えになっておるのです。三年も四年もいろいろ論議をなさっていれば、そういうところに届け出、通報の義務を課すというようなことはお考えになれなかったですか。私、ちょっと考えさせられるのは、西ドイツの
刑法
の百二十九条というものを
資料
としてお出しになっているのですが、百二十九条の一項、その中に「その他これを支持し、若しくはその設立を勧誘する者は、軽懲役をもって罰する。」ということがある。その「支持し」というところですね。お金を出してやる、あるいはたとえばゆすられたからこれをやるということは、ある
意味
で支持するということにならないかということ。そしてもしそのこと自身が使えないならば、第二項なり三項なりで結社の自由の
乱用
を処分するという項目を入れることができないかということ、そういうことを考えてこれを
参考
になさったということがないのですか。こういう項目を置いておけば、ゆすられた者あるいは強要された者が必ず届け出の義務を果たすということ、これに
違反
した者を軽い罰にするというふうなことをお考えになれば、こんな無理な、いまこういう問題になるような
暴力処罰法
を
改正
しないでも、かえって効果はあがると思うのですけれど、そういうことは一ぺんもお考えになったことないのでしょうか。西ドイツの
法律
をお出しになっておるところを考えれば、あるいはお考えになったのじゃないかということが想像されるのですが、いかがですか。
竹内壽平
126
○竹内(壽)
政府
委員
いまお尋ねの点につきましてはいろいろと検討をいたしましたことは事実でございまして、まず第一の法制
審議
会における
犯罪
検挙がすこぶる困難であるという
趣旨
の点でございますが、これは私が述べたかどうかわかりませんが、私も同じような考え方を持っております。これは不可能だという
意味
ではございませんので、届け出を得られない場合が多いのでなかなか検挙がしにくい。かりに届け出がありましても、ほんとうのことをなかなか言ってもらえないのだということが、
暴力団
の
犯罪
の
一つ
の
内容
的な特徴になっておりますことを申したと思うのでございまして、そういう傾向がありますことは確かでございますが、だからといって不可能ではないのでございまして、先ほど
警察庁長官
がお述べになりましたように、年間六万人に近い者が検挙されておりますし、さきに、神近先生も御
承知
の
昭和
三十三年の
改正
であったと思いますが、凶器を持って集まる罪でございますね、あれなどをつくりましたために、
暴力団
同士の対峙してまさに血の雨が降ろうというような前段階において、この罪によって
逮捕
することもできるわけでございまして、
暴力団
の実態というものは、あの罪をつくりましてから以後においては、かなり中身がはっきりしてまいってはきております。しかしながら、
犯罪
検挙ということになりますと、
逮捕
するにいたしましても、
逮捕
するだけの
理由
を明らかにする疎明
資料
が要るわけでございまして、そういう点で難渋しておるということを申し上げたと思います。 それから、通報義務を課してはどうかという点でございますが、これはなかなか、だれでも
暴力団
におどされたり、あるいはなぐられたりして被害者になりました者はふんまんやる方ないものを感ずるのでございますが、だからといって、それじゃすぐだれ某にやられたということを申告してまいりますことは、その人その人の個人的事情もあります。ちっともこわくないという人もございましょうし、こわくて申告することさえもちゅうちょされるようなふうに被害を強く感じる人もありましょうし、そこはなかなかむずかしいのでございまして、
器物損壊罪
のときに、これは親告罪になっておりますが、この親告罪をはずしていただきたいという、
暴力
立法
の
昭和
三十三年のときに提案をしたのでございます。これは申告をさせることはなかなかむずかしいので、申告がなくても
警察官
が捜査に入っていけるという道を開きたかったのでございますが、これは御
審議
の結果、いけないということでございまして、現状のままになっておりますいきさつもございまして、なかなか申告を自由にさせることすらも親告罪についてはむずかしかったいきさつもございまして、これをさらに進んで申告をすべし、申告をしなければ罰を――軽い罰でありましても、罪をもって申告を強制するというようなことは、今日の時世と申しますか、こういう人権が尊重される時世におきましては、これは
取り締まり
ということだけを目標に置きますと、そういうことも考えられるのでございますが、しかし、
取り締まり
とともにまた個人個人の自由な意思というものも尊重していかなければならない仕組みになっております法制のもとにおきましては、やはりその点は人権上問題があるようでございまして、私どもとしては、そこまでは踏み切らないほうがいい、踏み切ってはいけないんだというような考え方をいたしております。
神近市子
127
○神近
委員
私、その点ちょっとあなた方のお考えが間違ってやしないかと思うのです。こんなに
国民
がみんな、大多数の
国民
が困っている。そして大体においてあげられるのはざこばかりで、大ものはなかなかあげることができないというのがいまの
実情
でしょう。そうすると、大ものをあげると、それはやはりいま申し上げたような、ゆすられた会社なりあるいは個人なりが、これを申告する義務を与えるということは、その人たちにもプラスだと思うのです。それは人権の侵害にはなりません。絶対になりません。そのゆすられたという、損害を受けたあるいは名誉を棄損されたというようなことを申告する、あるいはそれを義務化するということは、私は絶対に人権の侵害にはならないと思うのです。
国民
が大多数が迷惑しているのですから、そのうちのごく少数の個人がこれを義務づけられるということは、ちっとも人権の侵害にはならないし、かえってその人自身を助けることになると私は考えるのですけれども、その点はいかがですか。
竹内壽平
128
○竹内(壽)
政府
委員
申告をしたいというのをふさぐような道は許されないと思います。したがって、申告をしようとする場合に喜んでこれを受け取るというだけの態度を国としては示していくべきであると思いますが、申告をしなければならぬというふうに申しますことは、ある
犯罪
でございましても親告罪という
犯罪
がございますね。それなど考えてみますと、やはりその個人が
判断
をして、その個人の
判断
にまかせるという態度をとる場合があり得るわけなんで、この場合は、私どもの立場で申せば、先生が違憲でないとおっしゃっていただくのはまことにありがたいのでございますけれども、これは
取り締まり
の側からだけ見た場合でございまして、
一般
的に申しますと、そういうふうに申し上げることはいかがかというふうに感じております。
神近市子
129
○神近
委員
それからこれはやはり
労働組合
の問題に関しますけれども、二百二十二条の「名誉又ハ財産」という項目がありますね。たとえば私企業で労使の協定があるという場合、その場合に、こんなに物価が上がってどうしても生活が困難だ、協定はあるけれども賃金を上げてもらいたいというような場合、そういう場合に企業主の財産にこれは損害を与えるというか、あるいは低賃金であるというのでその人の名誉を棄損するというようなことにこれはなるのですか。この二百二十二条の……。
竹内壽平
130
○竹内(壽)
政府
委員
私はそういうものはならないと思います。これは社会常識でございまして、さようなことはないと存じます。
神近市子
131
○神近
委員
それから法制
審議
会の第二十四回の
会議
であなたこういうことをおっしゃっています。刑を加重した結果として
権利保釈
に影響を及ぼすのであって、それがこの
法案
改正
のねらいだとあなたはおっしゃっている。このねらいというのは、いま
暴力団
だけにこれが利用されているのであれば、そのねらいはよくわかりますよ。チンピラの人たちがやって、それを保釈を許さないということになって、ある
程度
改善するまでは拘禁しておくということはわかりますよ。だけれども、さっきあなたも実例をお出しになったように、
労働組合
その他、いま
松井
さんも言いましたように、何も手も出しもしない足も出しもしない人がつかまっている。また木更津
事件
のように、その場にいなかった
委員長
までがつかまって
暴力
防止法でやられているというような事態、そうすれば、あなたがねらいとおっしゃったのは、一体
暴力団
を保釈を許さないねらいなのか、あるいは
労働組合
の指導者たちを連れていって、そうしてこれを保釈を許さないというようなほうがねらいなのか、そのねらいが両方にとられる。もちろん、あなたは
暴力団
を保釈させないというのがねらいだとおっしゃるけれど、そばづえを食う
労働組合
の指導者、これはどういうようなことになるか。それはもう
労働組合
に絶対に、これは
労働組合
の正当な団結でありデモであるから、憲法二十八条ですか、それによるものであるということで割り切ればいいんですよ。だけれど、それは一向かまわないでおいて、そしてある数の件数が
労働組合
に用いられている。そのねらいと言われると、私たちは頭にくるのです。どっちがねらいなのか、
暴力団
のほうはつまであって、ほんとうのねらいは
労働組合
をつぶすためのねらいかということ、私はあなたを信用してますから、そういうことはお考えにならないとは思うけれども、ともかくこれで読めば、あなたのねらいというところは、ちょっと私どもには受け取りかねるというところです。
竹内壽平
132
○竹内(壽)
政府
委員
この
法律
の
改正
のねらいが
暴力団
の
犯罪
に向けられておるということは繰り返し申し上げておるのであって、そのほかに他意はございません。これははっきりもう信じていただきたいと思います。
神近市子
133
○神近
委員
それはもう耳にたこが出るほど伺っています。ねらいがどこにあるか。だけれど、そばづえを食うところのねらいを一体どう処理なさるかということなんです。
竹内壽平
134
○竹内(壽)
政府
委員
そばづえを食う場合があるということの御心配でございますが、この点につきましては、この
法律
の解釈のねらいというようなものを、法を執行します
警察官
、検察官それぞれに親切によくわかるように示達をいたしまして、過誤なきを期していくということにするほかないと私は思います。
法律
そのものでねらいを定めるというようなことは、ねらって実はねらいがはずれることもしばしばあるのでございまして、やはり
運用
でその点はカバーしていかなければならぬと思います。
神近市子
135
○神近
委員
その
運用
が一番問題なんです。私は、あなたが全部の裁判なりあるいは検挙者なりをなされば、あなたがそんな間違ったねらいをなさろうとは夢にも思いません。だけれど裁判官あるいは検察官というような人たちは無数でしょう。そしていま大臣がお帰りになったから大臣にはお尋ねできなかったけれど、ともかくもこの間も
定義
として、今日の
暴力団
は前時代からの遺物であるというようなことをおっしゃった。ところが遺物はたくさんいるんですよ。そう言ってはいけないけれど、官僚の中にどれだけ裁判の前時代の遺物があるか。
労働組合
の中では東の飯守、西の中村ですか、そういう合いことばさえあるというくらい悪質というか、あるいは
弾圧
主義の人がいる。検察官がいる。そういう何千といる人たちをどうしてあなたの意思によって、あるいは大臣の意思によって統一することができるか。そこに私どもがこの
法案
に対して非常な
危惧
を抱く
理由
があるので、官僚をどういうようにして制御するおつもりか、それを伺うのです。
竹内壽平
136
○竹内(壽)
政府
委員
それはいまおっしゃったような多数の警官、
検事
、裁判官を私どもが指図することはできるものではございません。したがいまして、私はこの条文そのもので、そういう過誤にわたるようなことが起こらぬように工夫するのが私は今度のこの
立法
の中で一番苦心をいたした点でございます。このことはもう前に申し上げたのでございますが、いまの
銃砲刀剣類
を用いてやる傷害、こういうものは
労働運動
の際等に
活動家
がそういうことをやったということで
処罰
をされた例がいままで一件もございません。それからまた、今度
改正
になりました
常習
暴力
行為
でございますね、
常習
傷害とか、
常習
暴行
とか、
常習
脅迫
、
常習器物損壊
といったような
常習
犯として
裁判所
の認定を受けたり、あるいは
検事
が
起訴
しますときにそういう罪名で
起訴
をした
事件
は一件もございません。こういう実態を見まして、この種の
改正
は
労働運動
の際に起こってくる
事件
には
適用
されることはない、こういうふうに私は確信いたしまして、この部分に限定をして
改正
をいたしたわけでございます。したがってこのことは私が幾らりっぱな指示を書きましても、指示は神近先生を納得させるわけにはいかないと思います。しかし、条文の上にそういう類型をとっておるということは、これは
法律
の条文といたしましては十分見ていただけることではないか、かように考えておるわけでございます。
神近市子
137
○神近
委員
どうも竹内
刑事局長
は信用しますけれど、私どもこの
立法
にあたりましてあなただけを信用するわけにいかないので、いろいろと文句を申し上げているのですが、もう
一つ
あります。やはりこの同じ年の
審議
会で、そのとき甲、乙、丙三人の方々が
修正案
を出されたのです。そうしてその
修正案
で三人の人が同じように出されたのは、下限といいますか、一年という
規定
は要らないのじゃないか、いままでどおりなり、あるいはいままでは五百円の
罰金
あるいは科料、それでいいじゃないかということで非常に
反対
があって、そうして採決をされているのです。そうすると、十人が
修正案
に賛成で、十人が
反対
。ところがその半々に分かれた採決を
議長
の投票が一票だとか、二票だとかというような議論があって、そうしてその場はどういうようにおさまったかはっきり書いてないけれど、その次の
審議
会では、これが今日の
提出
された
原案
どおりになったのです。それほど半数がこの下限を置くということに
反対
したのに、どういうわけでこれが
原案
どおりになったか、そこのいきさつを伺わしていただきたい。
竹内壽平
138
○竹内(壽)
政府
委員
仰せのように、この法制
審議
会刑事法部会の
審議
の過程におきまして、下限をつけることの可否が論ぜられまして、その賛成をする者と
反対
をする者とがあったわけでございますが、
反対
をされた方の中にもいろいろとその差異がございまして、全部が、同じ
意味
で
反対
をしたというのではございません。
罰金
、科料まで残しておくという
意味
で、つまり下限はそのままにしておいて、
現行法
どおりにしておいていいではないかという、上限だけを上げたらいいじゃないかという御議論の方もございましたし、
罰金
、科料はなるほどおかしい。しかし懲役刑については、懲役一年とか、懲役三カ月とかいう下限を設けないほうがいいという御
意見
の方もございまして、中には
反対
ではありますけれども、
反対
の
理由
は必ずしも一致しておらなかったのでございます。そしていよいよ刑事法部会で決をとってきめることになりましたときに、
反対
のほうが一人多かったわけであります。その場合に部会長は
委員
でございますから、一票を行使すれば――部会長は、
あと
ではっきりいたしましたが、自分は
原案
に賛成だということでございましたので、もし決をとるとすれば可否同数になるわけであります。可否同数になりますと、これは
審議
規定
によりまして、可否同数の場合は
議長
の決するところによる。こうなっておりますから、
議長
は
原案
賛成の方でございましたので、これは部会におきましても
原案
どおり可決される筋合いであったのでありますが、国会の場合と違いまして、
議長
はその採決に加わらないほうがいいだろうということで、御自分では決に加わることをなさいませんでした。その結果として九対十でありましたか、人数ははっきりしませんが、要するに一票の差で部会は否決のほうに、つまり
原案
を修正するほうに賛成がきまったわけでございます。ところが、今度は総会にまいりまして、その経緯を総会でるる部会長からお述べになりました。そのときにまた、破棄差し戻しと同じように、もう一回部会に戻して
審議
をするという方法もあるがどうかということで、これまた手続において議論がございました。ところが部会長から、いまの自分が決をとらなかったいきさつなども話されましたところ、それではもう部会に戻してみたところで、今度は決をとって、
原案
賛成ということで持ち込んでくるだけのことだから、むしろこれは、本来部会というのは予備審査のようにしてやらせる機関でございますので、総会そのものが論議を尽くして可否を決すべきであるということで、そこから総会でもう一回論議をいたしました結果、今度は圧倒的多数で
原案
が支持された。前の修正が否決されまして、
原案
どおりに可決された。こういういきさつになっております。
神近市子
139
○神近
委員
そこのところが非常に不明朗なんですよ。たとえばエキスパートならエキスパート、その中で最も権威のある人たちが小
委員会
に入るわけでしょう。そしてそのうちの半数が
反対
というのが無視されたというところに、私どもの疑問があるわけなんです。その半数の
意見
が――ともかく十人と十人にあのときはなっているけれど、半数の
反対
があるのに、それが少しも考慮されないということが、一体これはあり得ることですか。私ども、普通の場合でしたら、半分
反対
があればこれはちょっと考えなくちゃならないというように考えるのがあたりまえだと思うのですけれど。
竹内壽平
140
○竹内(壽)
政府
委員
これは決して無視されたわけではなくて、そういう半数の方が
原案
を否定する考えでございましたので、総会でも慎重にその取り扱いを検討した結果、総会みずからで検討してきめよう、こういうことになったのでございまして、少数
意見
が決して
理由
なく排撃されたり、
理由
なく押えられたりということではございません。
神近市子
141
○神近
委員
あなたのこの
法案
に対するお考え方が、非常にはっきりと支持しよう、そして間違いなしにこれが執行されるようにしようというお話で、まあなんですけれど、いまやはり
参考
書類の中に出ましたのに、三十六年の一月から三十七年の七月三十日までの統計ですけれど、東京が
暴力
防止法で四十四件、大阪が百三十五件、福岡が百十四件、こう出ているのです。
あと
奈良と和歌山のようなところは二件か三件、あるいは福島なんというのは五件、山梨なんかも二件か三件で、圧倒的に大阪と福岡が多くなったというところに、私がさっきからあなたにお尋ねしている、検察官なりあるいは裁判官なりの考え方の非常な差異があるという例があるだろうと思うのです。これはどういうふうにお考えになりますか、東京は四十四件であります。
竹内壽平
142
○竹内(壽)
政府
委員
これは、初めから計画的に検挙するということは、計画検挙などというふうに私ども申すのですけれども、本来
犯罪
検挙というものは計画的にできる問題じゃございませんので、絶えず検挙しようと思って目は見張っておりますけれども、一がなければできないことは、選挙
違反
をごらんいただいてもわかりますが、東京が常に多くて、その他の地方が常に少ないというものじゃございませんで、東京が多いときもありますし、少ないときもある。これはそのときの事情によりまして左右されますので、ある期間を限って調査をいたしますと、ときに東京が少ないこともあるわけでございますが、大体を申しますと、東京は
全国
の二割ないし二割五分の
犯罪
事件
が発生し処理されておるというのが常態でございます。その常態から著しい変化がございます場合には、何か事情があるのではないかということで、私どもは中身の検討をしてみるわけでございますが、いまの大体の基準に合っておりますと、ある期間をとって調べますとでこぼこはございますけれども、東京が特に
暴力団
について執行力が弱いということは私はないと思っております。
神近市子
143
○神近
委員
大臣が急いでお帰りになったので、ある場合関連質問を申し上げるつもりでございますから、きょうはこれで終わることにいたします。
濱野清吾
144
○
濱野委員長
本日の議事はこの
程度
といたします。 次会は明二十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後六時二十七分散会