運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-07 第46回国会 衆議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月七日(火曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 三田村武夫君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       大竹 太郎君    岡崎 英城君       亀山 孝一君    河本 敏夫君       坂村 吉正君    四宮 久吉君       中垣 國男君    中村 梅吉君       服部 安司君    古川 丈吉君       田中織之進君    畑   和君       松井  誠君    竹谷源太郎君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君  出席政府委員         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      西田  剛君         警察庁長官   江口 俊男君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    長井  澄君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局給         与課長)    宮崎 啓一君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局主         計課長)    石川 義夫君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月七日  委員中村梅吉君、早川崇君及び松井誠辞任に  つき、その補欠として松澤雄藏君、岡崎英城君  及び重盛寿治君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員盛寿治辞任につき、その補欠として松  井誠君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す  る法律案内閣提出第九号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一二一号)  (参議院送付)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。三田村武夫君。
  3. 三田村武夫

    三田委員 暴力対策基本問題について少しばかり掘り下げて政府の御方針を伺い、また当委員会におきましても検討を加えてみたいと思うのでありますが、その前に、私が先般三月二十六日でしたか、当委員会資料提出を要求し、先般その資料をいただきました。この資料内容、またすでにいただいておる犯罪白書青少年白書その他の資料をつぶさに検討いたしました結果に基づいて、少しばかり計数的なことを事務当局からお尋ねしておきたいと思うのでございます。  それはどういうことかと申しますと、最近御承知のように犯罪件数が非常にふえてきております。いただいた資料によりましても、三十七年度の全検挙人員が五百七十三万四千四百八になっております。もちろんこの中には特別法違反、特に最近激増をしてまいりました交通事犯も入っておりますから、犯罪性質上からいいますと、そう凶悪な犯罪がこの数字のようにふえたとは言えませんが、しかしながら、かくのごとく犯罪が多くなったということはたいへん困った傾向でございます。そこで、私たちがいただいた資料をここで検討し、法案審議資料にすることはもとより必要でございますが、やはり当委員会といたしましては、公式にこの犯罪傾向統計などを委員会の記録に残しておくことが必要だと思いますので、まず事務的に伺っておきたいと思います。  最初にお尋ねいたしておきたいことは、いま申しましたように、犯罪総体件数が非常にふえております。そこの中で、当法案に直接関係があると申しますか、いわゆる暴力関係事犯検挙人員と申しますか、これが、いただいた資料によりますと、何か私は非常に不思議な傾向と言いますか、何か犯罪の階層が一応固定し安定してきたような気がするのです。たとえば、暴力犯罪として傷害暴行恐喝強姦殺人銃砲刀剣所持、こういった事件だけを拾い上げてみますと、三十三年が二十一万四千百五十五、三十四年が二十一万千七百七十一、三十五年が二十万八千八十一、三十六年が二十一万一千七十四、三十七年が二十万七千三百三十二。何か二十万前後で五カ年間数字が動いておりません。傷害暴行恐喝強盗殺人、こういう、いわゆる暴力行為に関連し、その事案内容が悪質と思われる事件につきましても、大体五カ年間同じような数字で並んでおります。これは非常に私は注目すべき傾向だと思う。警察庁長官来ておられますか。——警察庁のほうでもせっかく、最近この暴力事犯の一掃については御努力願っておるのでございますが、それにもかかわらず、五カ年間数字を見ると一つも減っていない。何か根強いものがあるような気がいたします。これが第二の問題。  第三の問題としましては、最近特に注目される少年犯罪、これはまさに毎日、新聞にあらわれてくる事案だけ見ましても、目をおおい、耳をふさぎたいような陰惨な気持ちがいたします。これも犯罪白書青少年白書等から数字を拾ってみますと、特に三十七年度では急増また急増してまいりまして、警察に検挙された犯罪少年、これは十四歳から十九歳まで、まあそこの中には十四歳未満刑罰法令に触れたいわゆる触法少年も含んでおりますが、百五万八千八百九十九人。ついに百万台を突破してしまいました。犯罪者率と申しますか、この統計によりますと、十歳から十九歳未満の者千人に対する比率は五十一・七人でありまして、千人のうちで五十一人は一応警察につかまっている、こういう数字になります。これは戦前傾向と比較してみますと、私はまことに憂うべき傾向だと思うのであります。戦前刑法犯すなわち刑法に触れて警察に検挙され、検察に送られていった者は大体年間平均五、六万です。それが三十七年度には二十二万七百四十九人でありますから、五倍。私が前に調べました別な統計から見ましても、昭和十一年を一〇〇として、戦前戦後の比率を調べてみますと、昭和三十年が五倍の五〇〇です。こういうまあ戦後十五、六年たって、社会情勢も一応安定したといわれる現在、なおかくのごとく犯罪がふえてきております。まことに重要なことで、私はこの委員会で現在審議中の暴力等処罰に関する法律、これももとより必要でございますが、もう少し根本的に掘り下げてみる必要があるのじゃないかということを痛切に考えている。いま申しましたこの最近の犯罪傾向について資料はいただいておりますが、冒頭に申しましたように、審議の進行上一応この機会に法務省事務当局刑事局長から、また同時に警察庁長官から、最近の犯罪傾向について、私がいま申しました三点、犯罪一般的傾向、それから暴力事犯といわれます凶悪粗暴化してきた犯罪傾向、さらにこれと最も密接不可分関係にある少年犯罪、この三つの点について、その動向、傾向、実態、そういうものについて検察警察当局から一応御説明願いたいと思います。
  4. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいま三田委員より最近の犯罪傾向につきまして、いろいろ内容を御解剖になりまして御質問がございました。私ども痛感いたしておりますのは、いまもお話がございましたように、犯罪総数において非常にふえたということが一点でございます。しかし、ただいま内容を御解剖になりましてお話がありましたように、そのふえました主因は、道交法違反等が、主として自動車の急激なる増加ということを主因といたしました犯罪が非常にふえておりまして、それ以外のものにつきましては、まあ大体横ばい的傾向であると思うのでございます。そういたしますと、非常に悪い傾向ではないかのごとく感ぜられますが、こまかい解剖はのけまして大きな趨勢で、そこで非常に注目すべきものがあるのでございます。と申しますのは、窃盗、横領、詐欺のごとき財物犯は大体人口比率などにいたしますと三〇%の減少をしておる。これは著しい事実でございまして、その原因は何かと申しますと、犯罪のことでございますから、いろいろ社会的現象複合原因の結果であると思いますが、大体におきまして戦後経済状態がよほど改善をいたしまして、国民生活もまだまだ不十分ではございますが、物質面生活が非常に向上安定したということが主要なる原因一つに数えてもいいのじゃないかと思うのでございます。しかし、それが三〇%も減少しておりながら、道交法違反などを除いた普通の刑法犯と申しますか、犯罪においてなお全体が横ばいで、減少していないということは、他の種類の犯罪で三〇%財物犯減少しているという大減少を穴埋めして、非常な増加のものがあるということをあらわしていると思うのでありまして、これが非常な重大な現象でございまして、それはいまもお示しがありましたような暴力的犯罪が非常にふえている、暴行傷害強姦強盗あるいは殺人等の、こういう暴力的犯罪が非常にふえたということをそこにあらわしておると思うのでございます。これは国政全体特に刑事政策全体から非常な問題でございまして、いまもお話がございましたように、これは一般国民道徳水準、また官庁的に申しますれば警察の取り締まり、そのほか社会的にいえば学校教育家庭教育、いろいろ社会全体の結果であり、ことにいま少年犯罪についてお話がございましたが、これについては特にそういう面が強調されるわけでございます。しかし、犯罪処罰に関する法律刑事法というものはその中において重要な一環を占めるものでありまして、特にその点に関しましても施策をすることが必要である。これで万事足れりというわけではございませんが、確かに刑事法立法が重要な一環をなすものでございますから、そういう意味におきまして、いまの暴力的犯罪が非常にふえた、これが近来の日本犯罪面においての特殊現象である。その現象のうらの、もちろん全面をカバーするものではございませんが、ことに町の暴力と申しますか、いろいろ暴行傷害あるいは脅迫等事件が頻発し、それもいまお示しがありましたような一つ固定化傾向をあらわしているというのは、いわゆる暴力団と申しますか、町の暴力団的のものに属している者が、銃砲刀剣類を持ちましての暴力、常習犯的の暴力、こういうことが著しく一つ傾向として見えるわけでございます。それから少年につきましては、だんだんに年齢の低下であるとか、これがいまのやはり集団的、と申しますのはいわゆる町の暴力的集団とのつながりも顕著に見えるようでございます。そういう点から今回の御審議をわずらわしております立法も、そういう重要なる対策一環としまして出しましたような趣旨でございます。なお個々の問題、いろいろ数字等につきましては政府委員よりお答えを申し上げたいと存じます。
  5. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいま大臣の御説明がございましたが、若干それにふえんさしていただきたいと思います。  仰せのように犯罪は特に道交関係交通違反が著しい増加示しておりますが、これを刑法犯という面から見ますと、若干の増加は見られますけれども、おおよそ横ばい状態に相なっているように思うのであります。刑法犯の中では、さらに暴力関係のいわゆる粗暴犯というものを取り上げてみましても、先ほど御指摘がございましたように、最近五年間数字というものは横ばいでございます。全く横ばいでございまして、その意味から申しますと、粗暴犯というものがある限界点に達しておるのではないかという感じが、これは量的に見ましていたすのでございます。今度はその内容性質の面から、それを犯す人の主体、それから手段、傷害の程度というものなどを、実際的にながめてみますると、やはり粗暴犯だけについて見ましても、犯す人は暴力団といわれておる団体構成員である、そういう人たち粗暴犯犯罪の相当な部分を占めておるということが、これはもう明らかに言えることでございまして、この態様を見ますると、やはり悪質危険な状態示していく傾向があるということも指摘せざるを得ないのでございます。特に今度は暴力団の主体的な面から見ますると、所属構成員の数というものはふえておるのでございます。いろいろな資料によりますと、団体数においても五千団体、その構成員は十七万人といわれておるのでございますが、この暴力団体は、最近のいろいろな社会事情の変化に伴いまして、組織を大規模化していく、活動領域が広くなっていく、これに伴いまして勢力争いと言いますか、そういう場合に起こってくる暴力事犯、こういうものをわれわれとしては率直に認めざるを得ないものでございまして、この勢力を増していく過程において起こってくる状態は、かつても申し上げたことがあるかと思いますが、ちょうど戦国時代のようなもので、理由なく実力勢力を増していく、こういうことになります。その実力行使過程において暴力事犯が起こってくるわけでありますから、この点から申しますと、やはり危険な傾向にあると言わざるを得ないわけであります。  なお、この構成員人たち累犯化傾向というものは、これまた非常なものでありまして、お手元に差し上げました資料をごらんいただきましてもわかりますように、三犯以上、五犯、七犯、十犯というような多数の粗暴犯前科を重ねておる者が、構成員の相当な部分を占めておるということが言えるのでございまして、実例によりますると、年齢三十四歳そこそこの者が二十一犯も前科を重ねておるというものがあるようであります。  さらにまた方法でございますけれども、これも資料の中に掲げておきましたように、拳銃とか日本刀とかあいくちとかいう、そういうきわめて危険な凶器を使っておるのでありますが、特に拳銃は、昭和三十三年に押収されました拳銃の数でございますけれども、百五十八丁といわれておりましたが、三十七年は二百二十六丁にふえておりまして、警察当局お話によりますと、拳銃一丁は子分二十人に相当すると言われておるくらいでございまして、拳銃がふえてくるということは、それだけ暴力団としては威力を増すわけであります。こういうのが暴力団から見た暴力事犯の実情でございます。  さらにまた少年の点について御指摘がございましたが、少年犯罪は、やはりおとなの犯罪と相呼応いたしまして注目を要する状態になっております。昭和三十七年に警察に検挙されました少年は、これは十四歳以下でありますために触法ということになっております者も含めまして、約二十二万といわれておるのでございますが、この少年たち犯罪特徴的なものは、刑法犯の中で凶悪粗暴犯としてのいわゆる暴力的犯罪が主になっておるということ、もう一つ交通事犯でございますが、この暴力事犯のうちでも、表でお示ししておりますように、暴行脅迫恐喝、わいせつといったような行為が非常に増加示しております。これも質的に見まして悪質、粗暴化しておることは、これまた目をおおうことはできないと思うのでございますが、特に私ども注目をしなければならぬと思いますことは、十四歳から十六歳未満のいわゆる年少少年による暴力犯罪が、これは激増ということばを使っていいと思いますが、非常に増加しておることが看取されるのでございます。これらの犯罪特徴としましては、少年犯罪が集団化していく。それから累犯少年が年々増加してきておる。それから学校に籍を持っておる在学少年犯罪増加しておる。それからまた、これは中流、上流とかいうことばを使いましても必ずしも明確ではないのでございますが、中流以上と常識上考えられます家庭の子供、こういう犯罪少年が非常に増加しておる。それから少年犯罪都市へ集中化する。こういったような傾向が看取されるのでございまして、もちろん、これらの少年の中には暴力団の手先に使われている者も相当あるのでございまして、こういう環境の中で少年犯罪というものは悪化の傾向示しておるというふうに私どもは思うのでございます。  以上が概略でございます。
  6. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 ただいま法務当局からお話しになりましたこととほとんど重複をいたすのでございますが、警察でどう見ているかという御質問でございますから、簡単に御説明を申し上げます。  最近の暴力事犯傾向につきまして、団体事犯としての傾向個人事犯としての傾向の二つに分けて考察いたしますると、まず暴力事犯団体としての検挙状況は、年間約十九万件、人数にして同様十九万余人でございます。このうち暴力団構成員による犯罪相当数を占めていますことは、あるいは御配付の資料にあるかと思います。現在警察におきまして把握いたしておりまする暴力団とその構成員数は、ただいまのお話のように約五千百団体、十七万余人でございまするが、構成員中におきましては犯罪前歴者が八三%を占めている状況にございます。これら暴力団構成員による犯罪検挙状況を見ますと、昭和三十二年を起点といたしまして、毎年増加傾向示しておりまして、その数はここ数年、年間約七万件、五万人余りに達しております。また、昭和三十八年中における罪種別検挙状況を見ますると、傷害罪が全体の二〇%、次いで恐喝罪の一八%、暴行罪の一二%等がそのおもなものであります。なお、最近の検挙事例を通じ、犯罪態様から見ました傾向といたしましては、凶器を使用した犯罪増加しているということや、暴力団相互間の抗争事犯多発激化を見ているということや、犯罪が広域化しているということや、犯罪手口が巧妙になっているということ、資金源開拓に伴う不法事犯がふえておるということ等が、団体としての暴力事犯特徴であろうと考えます。  次に、個人事犯傾向について申し上げますと、団体背景として行なわれる暴力団犯罪以外の一般暴力犯罪検挙状況は、ここ数年間年間約十二万件、人数にして十四万人を数えており、おおむねこれは横ばい傾向示しております。これを罪種別に見ました場合、昭和三十八年中の銃刀法違反は二万一千三百五十二件で、昭和三十六年以降増加傾向にあり、傷害罪及び暴行罪は、昭和三十八年中四万四千四百五十六件及び三万五千四百四十六件で、それぞれ前年よりも増加しており、依然として生命身体を脅かす悪質危険な事犯が多い状況にございます。  このほか、国民日常生活に密接な関係を有する街頭におけるいわゆる小暴力事犯というものの発生が目立っておりまするが、これらは地域的に特有の形で発生しておりますので、東京都、大阪府をはじめ、現在全国で二十四都道府県におきまして、いわゆるぐれん隊防止条例を制定しまして、その規制に当たっておる次第でございます。  次に、青少年犯罪暴力事犯関係につきまして申し上げます。少年による殺人強盗強姦暴行傷害脅迫恐喝等暴力的犯罪は、昭和三十年以降急激に増加を見ましたが、最近ではやや横ばい傾向にございます。昭和三十七年中におきまする暴力的犯罪少年数は五万人をこえまして、これは全刑法犯少年の二三%でございます。また、成人を含めました暴力的犯罪者総数の三一%を占めているのでございます。なお、警察では、街頭補導等によりまして非行の未然防止につとめておりまするが、凶器所持、あるいはけんか、不良交遊不良団体加盟等不良行為がございまして補導した少年は七万一千三百八十七人に達しておる状況でございます。  以上、簡単でございますが、警察から見ました現状でございます。
  7. 三田村武夫

    三田委員 ただいま審議中の暴力等処罰に関する法律改正案法解釈、その実体規定内容等については、同僚鍛冶委員から詳細にわたった質疑が行なわれましたので、私はその社会的背景とでも申しますか、一体法規制だけで済むのかという問題を掘り下げてみたいと思うのであります。  いま刑事局長の御説明警察庁長官の御説明で、大体暴力事犯もここ数年来おおむね横ばい傾向だということでございまして、私も資料を見ましてそうだと思います。しかしながら、戦前に比較いたしますと、確かに悪質な犯罪は数倍になっております。ここで二十万人と言いますが、二十万人で横ばいでふえていないからそうたいしたことではないとは言えません。なぜならば、二十万人といいますと、犯罪年齢構成と申しますか、それを考えますと、人口五十万の都市で男はほとんど全部一ぺん警察で調べられる。何かの犯罪に触れるということです。これは容易ならぬことなんです。これは全国にばらまかれておりますから、そう目につきませんが、日本全体の立場から見ますと、人口五十万の都市で、何か刑法に触れる罪を犯したということで、男は全部警察に調べられる、これは容易ならぬことだと私は思うのです。なくさなければいけません。石川五右衛門のせりふではございませんが、浜のまさごは尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ、財産犯罪についての問題は別といたしまして、生命身体に対する犯罪というものは平和な社会の一番大きな敵なんです。これをどうしてなくすかというところに刑事政策があり、また刑法の持つべき責任があり、第一線警察責任があるのだと私は思います。そういう意味から、何としても人身に対する攻撃生命身体に対する攻撃、こういう犯罪だけはなくしなければならぬ。なくすることが政府責任であり、任務だ、警察責任だ、こう痛切に考える。でありますから、そういう問題について私は少し立ち入って検討してみたいのです。大臣はいま参議院へ行かれましたから、この委員会に戻ってこられましたら、政府としての根本的な態度、方針——現在なかったら十分検討してもらいたい、こう思うのでございますが、この資料によりましても、一つ生命、自由、つまり人身攻撃に関する犯罪は、いわゆる欧米先進国と比較して、日本はイギリスの十三倍、西ドイツの三倍ないし五倍だ。これは自慢にも手柄にもなりゃしません。近代の文化国家は、ということばを政治の面において使うならば、少なくとも生命身体に対する自由、安全を保障することは私は最低の責任だと思うのです。同時に政府最高任務だ、こう思うのです。そういう点から、私はいまお示し暴力事犯対策についても、よほど掘り下げた対策検討が要るんだと思います。いただいた資料にもありますように、暴力団はどんどんふえている。なぜ暴力団がふえるのだ、なるほど資金源が豊富になるからかもしれません。資金源が豊富になっても、暴力的活動余地なからしめれば、私は犯罪がなくなると思います。どこかに犯罪を行ない得る余地があるのです。私は経済的条件だけではないと思う。刑事政策の面において、あるいは警察第一線の取り締まる立場において、必要なら必要なことをやってもらいたい。そうしなければ国としての責任は全うされない、こう思うのであります。この資料にもありますように、その点は、先ほど刑事局長が言われました暴力団のなわ張り争い、鳥取、金沢、岡山、広島福岡——広島なんか暴力都市広島市全体が恐怖のるつぼにたたき込まれた時代があったのです。これは実に恥ずかしいことだと思うのです。どうしてこのように暴力団がのさばっているのか、これは今度のこの法案の中にもありますが、この暴力事犯の自然の傾向としては、共犯、共同作業、一人でやるんじゃ妙味はないが、三人、五人、背後に大きな力を持っておるというところにその恐怖がある。これはまた犯罪を容易ならしめるおおうことのできない事実であります。こういう点をどういうふうにお考えになっておるか、刑事局の立場から、警察立場から、いま少し掘り下げて御説明願いたいと思います。  私はなぜこういうことを言うかと申しますと、これは何かのきっかけで激発する可能性と条件がある。このことが政治暴力に転化してこないとも限りません。民事の問題ではない、治安に関する問題は野党も与党もないと思うのです。人間としての安全を守るということは、われわれ自由な人間が住んでいる世の中においては当然なことなんです。そういった面においては徹底的に掘り下げてこの際考えていただきたいと思うのです。この間のライシャワー事件でもそうでございますが、かつての浅沼事件、すべての問題はどこかにそういうものがひそんでいる。私は思想的立場とか、社会、経済的な立場だけで理由づけたり説明したりすることはそう簡単に許されないと思う。そういう点についての刑事局長警察庁長官の御見解をもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  8. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 暴力犯罪の現況は、お話のございましたようにきわめて重大な社会問題だと私ども考えております。したがいまして、いま三田村先生から御指摘のありましたような事の重大性をまず認識することが、私は対策で乗り出す第一歩だと思うのでございます。その点を見てまいりますと、あまりに犯罪が多くかつ日常われわれ目につき過ぎているために、社会全般がこの暴力事犯に対する事の重大性について麻痺状態になっていると申しますか、あまり神経質に考えないような状態になっておるように見受けるのでございまして、この点が問題解決にきわめて困難な問題になっておるのじゃないかと思うのでございます。申すまでもないことでございますが、暴力事犯社会一つの宿弊ともいうべき病理現象でございます。したがいまして、われわれの肉体について申しましても、病状の自覚をまず持つことが必要なので、この自覚があればこそ治療に走ることもできますし、投薬もできますが、自覚のない病的状態というものはまことに危険な状態と申さなければなりません。社会の病理現象である暴力犯罪について、社会がまず自覚を持ち、事の重大性を認識するところから事は第一歩を踏み出さなければならぬと思うのでございます。  それにいたしましても、この病理現象は決して一カ所だけの悪いところから発生するのではなく、相互に関連して、複雑な社会機構の中でいろいろな問題に私は関連を持つと思うのでございます。大きく申しますならば、政治全体という一つの姿を見た場合に、この暴力対策というものは、政治全体の観点からも考えてみなければならぬ問題だと思うのでございますけれども、教育だ、裁判所制度だ、言うならば、裁判の遅延ということも暴力を助長するものの中に入っている一つの要素と思うのでございます。しかし、それだからといって、これらの原因をそういう社会的な原因のみに帰せしめて、法によってこれを取り締まり、秩序を立てていくというこの努力をわれわれといたしましては放置してはならないのでございます。そういう観点から、刑罰法令の適正な運用、改善、この法律に不備欠陥があれば、これを是正して、この事態に対処できるような法律をつくっていくことが、行政の当面の責任であろうと考えておるのであります。  政府は、昭和三十六年に暴力犯罪対策要綱を閣議決定いたしまして、その中に盛られましたもろもろの総合施策の一環といたしまして、現状の暴力犯罪に対する科刑がすこぶる軽過ぎる、これは警察検察の部面からも是正の措置を講ずべきであるし、もし法定刑にして不備なものがあるならばこれは是正していくべきであるということが要綱の一つの重要な事項になっております。この要綱に基づきまして、法務省刑事局といたしましては暴力団の徹底的な実態の調査等に乗り出しまして、その実態を見つつ考えられますことは、なるほど刑が軽い。これでは暴力団は簡単な刑で——、先ほど申しました前科二十一犯というような経歴を踏ましてしまったのは、言うなればわれわれのほうに責任があるのじゃないだろうかということを感ずるのでございます。このことは他面、矯正教育あるいは保護観察といったようなもろもろの改過遷善の施策というものがほとんど効果をあらわしていないということを示すのでございまして、その原因は何であるかということを突き詰めてまいりますと、いろいろ原因はありましょうけれども、少なくとも刑が軽いというところに大きな原因があることを発見するのでございます。そこで先年、昭和三十三年に暴力団対策としまして、凶器を持って集まる罪、集めた罪、こういったような立法をいたしたのでございますが、その後、いろいろな凶器の種類を所持禁止の規定を強化する等の処置を講じつつ、運用と相まってその強化をはかってきたのでございますけれども、最後に残ってまいりましたのは、この暴力団には前科者が非常に多い。前科者の集団であるこの暴力団構成員に対して何らかの手を加えていかなければならぬ、それには刑を重くしていく、そうして彼らを厳罰に処するというだけの目的じゃございません。この人たちから暴力団とのつなぎを切って、できるならば暴力団と縁故のないところに環境調整をいたしまして正業につくような方向示唆をしていく。この処置を講じてまいりませんければ、先ほど申しましたように、ただただ閲歴を上げるだけに終わってしまうのであって、暴力団の終局的な対策にならないということに気がつくのでございます。だからといって刑罰法令でむちゃくちゃに刑を高くするということは、法体系のもとにおきましても、人権を尊重していく立場からいたしましても、できることではございません。そうだといたしますと、暴力団犯罪で普通一般の人がやらないような加重類型とは何であるか、その加重類型を見つけましてこれに法定刑を引き上げるという形で問題の解決をはかるのがいいということになりまして、立法政策の面からいたしましてはそのような立場をとりつつ今日まで努力してまいったのでございます。  なおまた、犯罪白書のようなものも、こういった原因を科学的に探求しようという意図からできておるのでございまして、この犯罪白書からどういうものをわれわれはくみ取ることができるか。この犯罪白書の示すものにわれわれがじっと目をこらしまして、そこから新しい刑事政策を打ち出していくというような努力もいたしておるのでございます。これはわれわれ取り締まり当局立場から立法的な施策として考えておるのでございますが、なおさらに、第一線で取り締まられる警察の考え方、あるいはまた特に少年との関係におきまして、少年の問題を扱いますソーシャル・ワーカーの立場、あるいは教育の面、社会福祉の面等々、これは総合的に進めないと問題の解決を得ないのでございまして、そのような点につきましても政府といたしましては、関係当局の間で密接な連絡を保ちつつ、施策を一歩一歩積み上げてたゆまない努力をいたしてまいるほかない、かように考えておるわけでございます。
  9. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 警察といたしましても、ただいま法務省刑事局長のお述べになりました考え方と全く同様でございますが、暴力犯罪がはびこる、減らないということの現象的な原因一つには、私たちの努力が足らない、取り締まりの努力が足らないという点をつくづく反省いたしております。同町に、根本的な原因としては、やはり暴力犯罪がほかの犯罪に比べて割りが合うという面がありはしないか。強盗だとか、あるいは窃盗だとかというものにつきましては、被疑者について一人当たりどれくらいかということを計算していくと、絶対その犯罪というものは間尺に合わないということになりますが、暴力犯罪については、暴力団に入ることによって普通の正業につくよりもよけいな収入が得られるというような現象が方々にあるわけであります。しかも、犯罪を犯しても刑が軽くて、またすぐ箔をつけて出てくるというような点等が根本的には私は大きな原因一つだと考えております。  またもう一つは、理屈がなかなか通らないという世の中、あるいは裁判をしてもなかなからちがあかないというような状態におきましては、やはり実力というものが早道だという考え方が世間の一部にあるわけであります。これはやはりそういう考え方を改めると同時に、正規な救済の方法がいまよりももっと早くつくというような事柄等も、同時に検討しなければいかぬ問題じゃないか、こういうふうに考えております。  要するに、暴力犯罪が他の犯罪と同様に、やっても割りが合わぬ、やはり普通の仕事をきちっとやったほうがいいんだというような世の中、自分も人もそういうふうに思う社会というものが来ない限り、根本的にはこの犯罪というものはなくなっていかないと考えますが、当面の問題としては、私たちの努力も十分でないということを反省しまして、このほうにますます力を入れていきたい、こう考えておる次第でございます。
  10. 三田村武夫

    三田委員 暴力犯罪が間尺に合う、商売になる、確かに警察庁長官のおっしゃるとおりで、私は因った問題だと思います。テレビを見ておりましても、映画を見ておりましても、毎日出てくるものは暴力暴力、何かその暴力犯罪というものに皆さん麻痺してしまったような気がする。だが一面、その対象になるものは善意の国民、善良な国民です。たとえば先ほどお話しになりました年少者、特に十四、五歳、十六歳くらいまでの粗暴犯、近ごろ性関係、特に強姦に関する犯罪がたいへん多くなりました。私もこの問題はここに記録を持っておりますが、昭和三十一年かにこの委員会でもだいぶやりました。強姦罪は親告罪からはずすという法改正をやったのですが、それでもなおどんどん強姦罪が起こる。正千件の強姦罪は五千人の被害者があるということなんです。中には被害者に値しない者もまれにはあるかもしれません。しかし、そのことによって一生を失う善良な市民があるのだということを私は忘れてはいかぬと思う。しかも、これでそうたいした罪悪視されていないというところに問題がある。これはいま両当局が申されましたように、警察にも検察にも裁判にも、どこかに欠陥がありましょう。これは直さなければなりません。直すためには、警察のほうも自分たちの努力が足りないんだ、手が足りないんだという自省、反省もさることながら、これはこの点をこういうふうに改めてくれなければ困るのだということを、私は勇気を持って主張してもらいたいと思います。検察庁のほうでも、何ぼ起訴しても、裁判所に送っても、すぐ保釈してしまうのだ、保釈中にまた再犯をやる、こういうことで困るなら困るということを厳粛にどこか必要な機関に要請してもらいたい。こういうことになりませんで自分たちの間口だけで考えていますと、全体の問題が前向きに進行していかないと私は思うのです。せっかく法改正をやるなら効果のある有意義をやりませんと、意味がない。こういうふうに私は思うのでございます。たとえば最近の暴力団傾向でもそうなんです。警察庁長官が言われました、商売になるんだ、間尺に合うんだということでは一番困る。全く端的な話、暴力団に加わっておれば商売になるんだ。資金は麻薬の密輸入か何か知りませんが、あるいは借金の取り立てか何か知りませんが、暴力団に頼んで借金を取り立ててもらおうということが許されるからいけない。なくする対策を講じていかなければいけないと私は思います。  暴力団暴力団一般の通称になってしまいましたが、一体ここで暴力団というものは何だということをもっと法規範の面から社会規範の面から一般国民大衆に認識させることも必要だと思う。と申しますことは、私はこの資料を読んで頭が痛くなってしまった。犯罪白書青少年白書の中に実に詳細に重要なことが書かれておりますが、一体だれがどのくらいこれを読んでおるかということをしみじみと思うのです。これだけの資料を——青少年白書には定価がついておる。だれがこれを読むか。いま刑事局長警察当局からお話しのような、そういった重要な事案はこんな大部なものにしなくてもよろしい。こんな大部なものにしなくてもよろしいから、私はもっと一般の大衆に周知徹底せしむる方法をとってもらいたい。みんなが認識しなければ暴力団はいつまでたっても商売になりますよ。いつまでたっても間尺に合う。経済事犯、つまり財産犯罪がだんだん減っていくということは、勘定に合わぬから、商売にならぬから減ってくる。暴力団に関する限り商売になるから、間尺に合うからふえてくる。だから間尺に合わないようにするためには一般社会の認識を深からしめることです。こんな膨大なものを、専門家は見ますけれども一般大衆は見やしません。見たってわからぬ。もっと簡明に平易にこういったものをおつくりになって、必要なら予算もとって、それで一般に認識させる。学校の先生にも家庭の主婦にもPTAの役員にも、すべての者に認識させるということが私は必要だと思う。さっき法務大臣にここで申し上げようと思ったのですが、大臣が来られてから言うつもりです。そういう措置をとりませんと、これは思想をこえた、政治的立場、判断をこえた問題なんですよ。いつの時代でも、いずれの社会でも、暴力行為というものは間尺に合わないんだという世の中にしませんと、暴力事犯というものは絶えませんよ。幾ら法改正をやっても絶えない。そういうことを私は心配するのです。私一人であまり時間をとるとまた社会党のほうからいろいろ御意見がありましょうから……。いずれにしても、暴力団構成員前歴者調べが出ておりますが、八二%まで前科者です。これは商売になるからこう出てくるのですね。暴力団がだんだんふえてくるのだ。昭和三十四年は四千百九十二団体、七万二千八百六十人であったものが、三十八年の一月現在では、団体が五千百三十一、暴力団構成員が十七万二千七百十一人。十七万人もの暴力団員がわれわれの平和な社会に生存している。そして先ほど問題になった年少者、ますます凶悪化しつつある年少者は、やがて年次を経てまいりますとだんだんこの暴力団構成員の中に入っていく。いまは十四歳、十五歳、十六歳ですが、三年、五年たつと肩ひじ怒らした一人前の暴力団に養成されていくのです。しかも年少の犯罪者はどんどんふえていく。将来ますます暴力団の構成は、団体において量においてふえていくという傾向を私は見のがすことができないと思うのです。こういう問題に対してもっと抜本的なことを考えてもらいたいということが私の強い主張です。私は、一面において悲しみと一面において憤りを持ってこの問題を見る。これはどうしても政府一般人も、与党も野党も力を合わせて暴力犯だけはなくしたい、なくすることがわれわれの責任だと私は思う。資料を一々引っぱり出してやっているとたいへんでございますから、あまり多くのことばを費やしませんが、どうでしょうか、刑事政策の面から見た問題点、社会政策の面から見た問題点、文教政策の面から見た問題点、大体問題点をしぼっていくと三つあると思うのです。まだたくさん幾らでもありますが、特に一番必要なものは、池田さんの言う人づくりじゃありませんが、私の言うのは、人間形成の過程における社会環境——道徳教育とかなんとかいう問題を私は取り上げようと思うのじゃない。だけれども一体人間とは何だ、人間とは何だということは、小さな子供の時代から完全な民主社会構成員としての人間として育てていくことが必要と思うのです。これは一つの大きな文教政策でしょう。同時に社会環境の問題もある。こういった問題についてほんとうに真剣になってこの国会でも取っ組んでいかなければならぬ。記録を見ますと、同じことを何べんもこの委員会でやるのです。私自身も、いまここに唐澤さんおられますが、唐津さんが法務大臣のときにだいぶここで二人で議論したこともございます。岸総理大臣に出てきてもらってやったこともあるのです。だけれども、やったときはやっただけで、前向きに進んでいかない。私はこれじゃ意味がないと思う。  中青協の事務局長が来ておられますが、私も中背協の委員を一年やりましたが、私は歯にきぬを着せずに率直に申し上げます。これはお役所仕事に終わっては意味はありませんよ。中背協の問題も、こういう青少年白書をお出しになっておりますけれども中央青少年問題協議会の白書で、これは四百三十円か何かで定価がついていましたね。中背協が定価をつけたこういう資料を私は出版物でお出しになるというところとは思っていない。そうじゃないのです。青少年問題をどうさばいていくか、この根源、根本の問題はどこにあるのだ、どういう環境をつくっていくことが青少年問題の対策になるのだということを掘り下げまた掘り下げていくことが、私は中央青少年問題協議会の任務であり、また仕事だと思うのです。苦言を呈しますが、こういう資料はけっこうでしょう。けっこうですが、そうでないもっとほかの面があるのじゃありませんか。おやりになる面があるんじゃないですか。お役所になっては意味がありません。単なる行政じゃないのです。われわれ善良な市民によって構成された社会の内部にある疾患、竹内刑事局長ことばをかりるならば病根かもしれません。どうしてこれを手当てしていくか、医者はだれなんだ、薬は何だということが今日問題なんで、医者も薬もなしに、病気がここにある、ここにあると病気だけ振り回してみたって意味がないのです。この中にいろいろ対策がありますよ。対策がありますが、どこまでこれがおりておるか。大衆の中に、青少年の中に、家庭の中に、われわれが住んでおる地域社会にどれだけおりておるかということが私は根本の問題だと思う。こういう点どうですかね。中青協のいまおやりになっておる立場から、どういうことをお考えになっておるか、率直に伺いたいと思います。
  11. 西田剛

    ○西田政府委員 ただいま三田委員からいろいろお話がございましたが、中背協といたしましては、青少年の問題について、少年非行の防止という消極面、それから積極的に青少年を健全に育成していこう、この両面をかかえまして、青少年に関連のある十省に及ぶ仕事の総合調整をやっていくことが第一の仕事だと考えております。そのためには現状を認識して、いろいろな実態を調査していくことも仕事だと思います。それで、お話の白書はさような意味において出しております。  なお、お話がありましたが、一応中背協といたしましては、白書を千五百部買い上げて、各省に配付するほか、一般の研究者その他の需要もございますので、一応印刷局を通じまして、有料で販売もいたしております。例年は五千部ばかり出しておりますが、ことしは七千部以上になる予定でございます。  なお、これはお話しのように便覧的な要素がございますが、御承知のように中背協は中央でそうした仕事をやっておりますと同時に、府県には府県の青少年問題協議会というものが全部できております。また市町村にも七〇%にまでそれぞれ市町村段階で青少年問題協議会というものが設置をされております。そこで私どもは、それらの市町村にまでできておるそうした青少年関係者にこうした問題を訴えて、事柄によりましては地域的な問題として取り組むべき問題も非常に多いので、さようなもので、大いにこの多くの関係者の総力を結集していけるような方向で進んでまいりたい、かように考えております。  それからお話のありましたように、青少年の非行が最近非常にふえてまいっておりますが、そうした防止策につきましても、すでに白書等に示しておりますとおり、いろいろとあるのでございます。これは総理府といたしましても、たとえば少年非行の問題につきましては、一昨年暮れに、青少年犯罪が集団化しているという特色にかんがみまして、関係各省とも十分相談いたしまして、少年の非行集団対策要綱というものを作成いたしまして、まずもって事態に対する世間の認識を深めてまいりたい。そうして、そうした非行集団ができる基盤を社会的に排除していこうということをまずやってもらいたい。あるいはそうした集団は、子供がどうしてもグループづくりをしたいという気持ちは先天的に持っておるものでございます。先ほどお話のありましたような暴力団というような関係におきましても、昨今の教育では、家庭教育なり学校における教育で、何と言いますか、子供に自信のある教育が欠けておるという面もございまして、非常に強い団結の組織にあこがれるという面も二面ございますし、またそうしたものを育てるマスコミ界の現象もございますので、そういった面からいろいろ青少年に対する影響を排除してまいりたいというふうなこともやっておりまして、たとえばテレビにつきましては、昨年の十一月にマスコミ業界各界の方々のお集まりを願いまして、青少年とテレビ、マスコミとの関係ということで十数回にわたって御審議を願い、業界におかれましても事態を認識されまして、十分に自粛をしていただくという決意をしていただいておるような状況でございます。さような意味で、私どもは施策としてやっていく面がいろいろと多いのでございますが、国の施策を十分に浸透させていくと同時に、さらに府県の力も、また民間にはいろいろな多くの関係団体がございます。それらの力を十分に結集して、この問題に全体として取り組んでいけるような体制をつくっていくように進むべきだ、私どもはさように考えております。
  12. 三田村武夫

    三田委員 いま事務局長の御説明になったことは、私もずっとやってきたことだからよく知っておるのです。府県にあることも知っておるのですが、私はそれだけでいいかというのですよ。問題は、地域社会第一線におりなければ意味ないのです。たとえば民間の団体でBBSという機関がありますけれども、これは熱心にやっております。よき友になる運動、たとえば少年鑑別所から出てきた少年、こういう者とよき友だちになるという運動を熱心にやっております。   〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 やっておりますが、どこでもこういうりっぱないい運動を重視していない、これが現状ではありませんか。私はよく知っておるから言うのですよ。いまあなたのお話しのことは上から下までよく知っておる。だが、それが地についていないのですよ。一人保護観察に付せられた少年をまともな社会人として導くためにはたいへんな努力が要るのです。要るのですが、一人でも大切なんです。そういうことのために、熱心に自分の私財をさいて忙しい中でやっている学校の先生、あるいは会社の職員、こうした人がおるのですよ。そういった人の立場というものがあまりにも冷ややかに見られていやしないか、それを申し上げたいのです。今度青少年局もできるようですが、ひとつしっかり掘り下げてやっていただきたい。  時間を食いますから、きょうの質問は事務的な問題、あとまだたくさんありますから、留保しておいて、一応とどめますが、刑事局長に申し上げておきます。いま大臣、席をはずしておられますから、大臣に申し上げていただきたい。速記録を見せていただいてもいいのですが、治安対策と言いますか、暴力対策暴力をわれわれの平和の社会から除くということは政治の最高責任ですよ。だから、これはひとつ閣議でも重大な問題にして、みんなで研究していただきたい。いま事務局長の言われましたように、私も中青協の委員をして知っているのです。関係省十幾つあるのですけれども、ときには事務次官も出てくるときがある。ときには局長も出てこない、課長も出てこないこともありますよ。事務的な話をするだけで、ここで青少年問題について政府全体の機関がほんとうに機動力を持って動いておると私は思いません。閣議の議題にして、将来ほんとうに心配される青少年問題、やがては暴力団に編入、編成がえされていく可能性のある青少年問題、さらに現在現実に固定化されてしまった、警察庁長官説明じゃありませんが、商売になる、間尺に合う暴力団退治というものをどうするかということは、私は、真剣な政府の問題として、政治の問題として、行政の問題として閣議で十分検討してもらいたい、これを強く要望します。これは大臣にぜひ申し上げて話していただきたい。  さらに先ほどちょっと申しましたが、一番私がおそれるのはいわゆる政治暴力です。なぜそういうことを申し上げるかと言いますと、私たちの年配の者は、昭和三、四年ごろから日本のあの苛烈な、何とも言えない世の中に生きてきた経験を持っております。あるいは五・一五事件、血盟団事件、神兵隊事件、二・二六事件、こういう中にわれわれは生きてきた経験を持っております。こういう集団的な、あるいは直接行動というものは何らかのきっかけがありますと、どこで激発するかわかりません。激発してまいりますと、一挙にして社会体制がくずれてきます。一部の政治責任者の責任で済まされる問題ではございません。国民全体の問題なんです。戦争に負けて軍部の責任だけ追及したところで間尺に合いません。最大の被害者は国民なんです。政治暴力が発生をして、一部の政治家の責任を追及しても間尺に合わぬ。最大の被害者は善良なる国民なんです。だから、こういう問題については真剣に掘り下げて、一切の暴力がすべて間尺に合わぬという世の中にしてもらいたい。これをひとつ大臣に強く要望するつもりだったのですが、大臣がおられませんから、私のきょうの質問は、これで打ち切りではないのですよ、一応留保して、社会党のほうからの質疑もあるようですから、この程度にきょうはとどめます。
  13. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいまお話のございました大臣への伝言は確かに申し上げることにいたします。  先ほど御指摘の中にありました白書の活用の点でございますが、これはなるほど非常に大部なものでありますから、相当根気がないと読めないような資料でございますが、この要約したものをかなり広く皆さんに配っておりますし、その要約は、また英文にもいたしまして外国にも差し上げたこともあるわけでございます。なお、白書につきましては、私個人としましてもいろいろ意見を持っておりますので、さらに改善をしていきたいと思います。
  14. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。      ————◇—————
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。畑和君。
  16. 畑和

    ○畑委員 簡易裁判所の改正法案に関連をいたしまして、裁判所のほうにお尋ねをいたします。  まず最初にお尋ねいたしたいのは、この間横山委員から指摘がございまして、簡易裁判所で、いまだに二十年近くなるにもかかわらず、最初から裁判所法がきまっておるのに、まだ未開庁であるという独立簡裁が十一あるというような話だったと思うのです。これが措置に関しましては、またいろいろ御相談等する機会があろうと存ずるのでありますけれども、このおたくのほうで出していただいた簡易裁判所の新受事件数ですか、この資料によりましてお尋ねしたいのですが、これによると、事務移転というのがちょうど十一ありまして、おそらくその未開庁の分に当たるのだろうと思います。そうすると、未開庁の分は事務移転ということで処理されておることになりますか。
  17. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 いまお話のございました未開庁と俗に言っております中には、この前のお尋ねのときにも出てきましたように、一度開庁いたしまして、その後火災にあってその庁舎がなくなりまして、その結果その後開いておらないというのも含まれておるわけでございますが、いずれにいたしましても現在開いておらないということでございまして、それはいずれもここに事務移転という形で表示いたしておるわけであります。これは裁判所法の規定によりまして、前会もちょっと申し上げましたように地方裁判所の決議によりまして、管轄区域内の他の簡易裁判所に事務を移転することができる、取り扱わせることができる、こういうふうになっております。「事務の移転」というふうに裁判所法の三十八条の見出し等にもついておりますので、これによりましてそのように表示いたしておるわけであります。
  18. 畑和

    ○畑委員 そもそも初めからちっとも開庁していない。途中で火事で焼けたりした場合は、これは確かに事務移転だと思うのですが、全然初めから未開庁で、一度も裁判官も任命されたこともないし、建物もない、あるいは職員もいない。ただ裁判所法によって置くことになっておるということだけで、一度も開かれていないものが、事務移転の法規によってやられるのはおかしいと思うのですが、この辺はどうでしょうか。
  19. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これは何と申しましても、法律でその裁判所を置き、また開くことになっておりますこと、それを地方裁判所のいわば行政処分でもってやることでございますから、よほど重大な明確な根拠、理由のある場合でなければ、やってはならないというふうに私どものほうとしては指導いたしておるわけであります。中にはその表でごらんいただきましても、事件数の非常に少ないところ、むしろ大局的に考えれば、あるいは廃止するなり、事務移転するなりするほうが、能率の点から申しますればはるかにまさっておると思われるところでも、ただそれだけの理由ではいまのところそういうことはやらないように指導いたしておるわけであります。ただ、ちょっと庁舎敷地が得られないというようなところは、これはいわばやむを得ないということで、最初から得られなくて、もう今日で十数年ということはまことに申しわけないことでございますが、しかし、こういうやむを得ない場合に限ってこの三十八条を適用する。その場合は、やはりその事務はその近隣の簡易裁判所でやるほかないということで、さような扱いをしておるわけであります。
  20. 畑和

    ○畑委員 そのほかに法規がないからあそこでやったのでしょうが、初めからそもそも裁判所がないのに事務移転というのは——裁判所があって、そこで扱っておって、天災地変があって、あるいは人的、あるいは物的の関係で裁判所としてそこがやれないということになって、初めていままであった裁判所の事務をもよりの別の簡易裁判所に地方裁判所がやらせるように決定するということがほんとうの事務移転で、裁判所法三十八条でいう事務移転であって、どうもしっくり私にはわからないのですが、その辺は無理ではないのですか。
  21. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 まことに御趣旨ごもっともでございまして、本来から申しますれば、一度開いておりますところの事務を移転するのが事務移転の一番普通の形であろうと存じます。しかし、こういういわゆる未開庁といわれておりますところでも、法律上は、たとえば西成簡易裁判所なら西成簡易裁判所というものは、法律上観念的には存在するわけでございまして、そこの事務というものもしたがってあるわけでございます。ただ、それをやむを得ない理由ということでほかの簡易裁判所でやっておりますので、一番普通に予想された形ではないかとも思いますが、しかし、やはりこの条文の適用の中へはいるものであるという解釈でずっとやってまいっておったような次第でございます。
  22. 畑和

    ○畑委員 どうもその辺法律的に最高裁のほうが弱いと思うのです。ちょっとおかしい。怠慢がもとというか、この間横山さんが言われたとおりだと思うのです。しかし、それをいつまで議論していてもしかたがないから先に進みます。  そうしますと、簡易裁判所の判事の定員とか、そういった点では、これもちゃんと裁判所はあるようなことで計算してやっていますか、判事あるいは書記官その他の職員、そういった計算は。
  23. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これはいわゆる定員法上の定員と申しますか、予算定員と申しますか、そういうときには、必ずしもどこの裁判所に何名ということでもないわけでございまして、全体の事務量を見て、これだけの判事の数というようなことでいろいろ予算等は入ってまいることが多いわけでございます。そういう意味で、一応全体の裁判官の数をいただきまして、そして各地にその定員を配ると申しますか、そういうふうにいたします場合には、事務移転を受けております庁でそれだけの事務を持っているということで、その事務移転を受けております庁にそれだけの裁判官なり一般職の職員を配置しておる、こういうことになっておるわけでございます。
  24. 畑和

    ○畑委員 この表の中で、全部の事務の移転というのはあるけれども、それ以外に、横浜南が、民事のほうだけが全部事務移転となっておりまして、刑事のほうはちゃんとやっているわけですね。こういうのがあるのですが、一部事務移転ですか。
  25. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 この民事訴訟のみを移転するというのは、裁判所法三十八条によっておるものではございませんでして、裁判所法の附則のほうによっておるわけでございます。これは沿革的には、先年民事訴訟法の改正がございました際に、訴訟物の価額を当時十万円、最初の原案では二十万円まで広げていただく、こういうことでございまして、そういたしますと、自然簡易裁判所の性格もやや変わってくるのではないか、そういう点で、いわゆる特任裁判官の方にはあまり多くの部分を負担していただいては妥当ではないのではないかというようなところから、比較的大きな簡易裁判所にその民事訴訟事務を集めまして、そしてできる限り判事補等の有資格の裁判官に民事訴訟をやってもらう。こういうような弁護士会とのお話し合い等の結果、そういう案ができまして、国会で御審議いただいたわけでございますが、その際に修正になりまして十万円ということになりましたので、そうなりますと、そうその性格が変わるというほどのものでもないのではないか、しかしながら、やはりある程度は訴訟を集約的にやったほうが好ましいということで、若干の程度民事訴訟だけを集約するようなお話し合いになって、附則でそういうことになっておるわけでございます。それに対しまして、いま御指摘いただきました横浜南の、民事事件一般訴訟に限らず、その他の事件も含めまして事務移転いたしておりますのは、やはり三十八条を根拠にして地方裁判所でやったわけでございますが、当初これをいたしましたのは、建物が非常に狭隘でございまして、たしかこれは検察庁の建物の一部をお借りしておったものだと記憶いたしておりますが、そういうような関係で、全体の事務をやるのにはいかにも狭隘であるというところからこういう扱いをいたしたわけでございます。実はこの表を、三十八年はまだ集計ができておりませんので、三十七年で出しておりますためにこういうことになっておりますが、その後、本年の二月一日からこれは全部事務移転ということになったのでございます。その趣旨は、先ほど申し上げました、借りておりました庁舎がその後明け渡しを求められ、また建物そのものもひどい建物でございましたが、結局利用することができなくなりまして、さしあたり他に適切な建物もないということで、まことに恐縮なわけでございますが、結局今日では全部事務移転ということに横浜南もなっておるわけでございます。
  26. 畑和

    ○畑委員 それからこの表で不取り扱いということで、いま言った附則の三項により民事訴訟だけ取り扱わない、こういうことになっておりますが、この不取り扱いというのは、拾ってみますと、事務移転を除いても四十一件もあるわけですね。これは先ほど答弁がありましたように、最高裁の負担を軽くするということで簡易裁判所の取り扱いの民事の訴額を十万円以下ということにしたために、あまりなれている判事がおらぬということで、そういうふうな扱いをしたのでしょうけれども、何としても件数が少し多いのではなかろうか。五百七十の簡裁のうちで不取り扱いが四十一カ所もあるということは、本来の簡易裁判所の設置の精神と著しく違うのではなかろうか。   〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕 裁判所の便宜等からいえばなるほどそうかもしれぬ。しかし、そもそも簡易裁判所を設けた根拠というのは、簡便に迅速に、民衆に親しみやすい簡易裁判所としてそれを処理するというのが本来の設置の趣旨であることからいたしますと、どうもこれは不取り扱いが多過ぎる。かように思うのですが、これについてはどう考えておられるか、将来どうするつもりであるか。
  27. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 この点は前会もちょっとお尋ねがございまして申し上げたところに関連いたしますが、当初の政府原案どおりに法律が改正されまして、簡易裁判所が訴額二十万円ということになりました場合には、むしろもっと大幅に、百庁以上もこの事務移転をやって、そうして、大体からいうと、少なくとも乙号所在地あるいは場合によっては甲号支部所在地の簡易裁判所という程度に、この訴訟事務をやる簡易裁判所をしぼったほうがいいのではないか。というのは、必ずしも裁判所の一方的な考えではなくて、弁護士会等でもそういう御意見がかなり強かったわけでございます。それはやはり裁判官の素質というものと関連いたしまして、独立簡裁の各庁にまで相当な裁判官を配置することはとても困難であるから、むしろ比較的すぐれたと申しますか、そういう裁判官のおります甲号支部所在地ぐらいに民事訴訟事務を集めたほうがいいのじゃないか、弁護士会等でもそういう御意見が強かったわけでございます。ただ、何といっても二十万円に引き上げるのは適当でないということで十万円になりましたので、十万円であれば、これは従来の簡易裁判所とそう性格が変わるものでもございませんし、従来どおりで、若干そこにこういう規定も置いていただいてやってはどうかというので、むしろ非常に控え目な数字の調整になったというのが私どもの考えでございます。  そういう考え方の一つには、簡易裁判所は本来弁護士訴訟ということを前提にはいたしておりませんけれども、しかしながら、やはり民事訴訟となりますと、調停なんかと違いまして、どうしても弁護士さんをわずらわさなければならぬ面が非常に多いわけであります。そういたしますと、弁護士さんの全然おいでにならないところの簡易裁判所は、むしろかえって不便なわけでございます。御本人のほうも、証人等で御出頭になりますときは近くのほうが便利でございますが、依頼いたしますときは、やはり弁護士さんのおられるところまで出ていって頼むということになりますれば、むしろそういうところでやってもらったほうが、必ずしも国民一般の側から見ても不便ではない。こういう声が多いわけでございまして、そういう面から最近も日本弁護士連合会のほうから、簡易裁判所のことについてはある程度整理というか、そういう意見が出ておるわけであります。私どもも、やはり一面では調停とか略式とかという簡易な事件もございますので、そういう点とにらみ合わせて妥当な範囲で簡易裁判所というものを維持してまいるということで、つとに法務省のほうと御相談いたしまして検討を続けておったわけでございまして、できればこの国会にでもお願いできたらということでいろいろ準備したわけでございますが、まことに申しわけないことでございますが、私どものほうの準備が十分できませんで、結局今日こうしていろいろお尋ねをいただいておることになっておるわけであります。そういう点では、かなりそういう方向の空気が一般的に出てまいっておるということは申し上げられるのじゃないかと考えておるわけでございます。
  28. 畑和

    ○畑委員 弁護士あるいは裁判所あるいは検事——民事訴訟の場合は別ですけれども、刑事の場合は検察官、そういう方面からいうと確かに仰せのとおりだと思います。私自身も弁護士でございますので、この法案ができた時分に、かえって遠くてやっかいだ、どうせ弁護士は大都市に集中している、依頼人も結局弁護士のところに相談に来る、それで裁判所は離れたいなかに行かなければならぬということで、弁護士が代理をする事件についてはそのとおりだと思うのです。しかし、簡易裁判所を置いた最初の精神というものは違う。しかも簡易裁判所というものは本人訴訟でもできるし、それが最も本来であるところのものなんです。簡易な事件であるというので、弁護士でなくても本人でもいい、弁護士でない人が簡裁で代理をすることもできるわけでありますが、そういったことは役所のほうや弁護士のほうの見方からすれば、確かに統廃合という空気があると思います。現にある高裁の長官が管内の簡裁を統廃合するというようなことを地方紙か何かに発表してちょっと問題になった例が、仙台高裁だったと思いますがございます。しかし、これは相異なる要求がからみ合っているというところにむずかしさがあるのだろうと思います。本来の簡易裁判所設置の精神からいうと、それは逆だと思うのです。したがって、最初の簡易裁判所の制度そのものに無理があったのだ、今度は根本的に考え直すのだということになればわかる。また簡易裁判所のほうも弁護士を強制する、弁護士なしではいかぬということになれば、そのとおりでよろしいと思うのですが、その点がはっきり整備されておらぬ段階なので、そういう点から申しますと、当事者の利便ということに徹底すれば、やはりできるだけ簡易裁判所は置き、そこで事件を扱うということにすべきではなかろうかと思います。これは政策の問題ですから、一々あななのほうで答弁してもらえなくてもしかたがないので次に進みたいと思います。  一体簡易裁判所の判事予算定員はどのくらいですか。それからそのうち独立簡裁が幾人、これは区別しておりますかどうか。
  29. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の判事の定員は七百十名でございましたが、先般国会で御審議いただきまして通していただきました改正法によりまして、五名の増員を認めていただきましたので、結局、現在といたしましては定員は七百十五名ということになっております。独立簡裁の数は二百八十くらいであったと思います。
  30. 畑和

    ○畑委員 この七百十五名の定員のうち実人員はどのくらいですか。
  31. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 手元に持っております資料が少し古くて恐縮でありますが、昨年の暮れの統計によりますと、二十七名の欠員ということになっておりまして、当時の現在員が六百八十三ということになっております。
  32. 畑和

    ○畑委員 なかなか裁判官になり手がない、それでこれだけ欠員があるのだと思いますが、これはひとつ至急に充足していただきたい。それでなくとも病欠などが相当多い。胸が悪くて相当長期にわたって休んでおるというような独立簡裁の判事がおることも私は知っております。しかし、やめてもらうといったって、そうはいかないし、そのためにほかの簡裁あるいは地方裁判所から転補で行っておりまして事件関係がさっぱりはけないというような実情にあるのでありますけれども、いま承るところによると、すでに定員に対する実員が不足しており、さらに病気等によって実際には非常に隔たりが大きいわけであります。この点は裁判官の待遇等の問題にも関係して、いま臨時司法制度調査会等においていろいろ対策を考えてもらっておると思うのでありますが、これをひとつ至急に充足するように配慮願いたいと思います。  それから簡易裁判所の書記官あるいは事務官その他の職員でございますが、これは独立簡裁になりますと、いろいろな仕事をたくさんやる、裁判事務もやれば普通の行政事務もやる、こういう面が非常に多いというように私どもも見受けます。中には廷吏などもおらないで廷吏のかわりをしなければならないというようなこともあるわけであります。その点で独立簡裁の職員は、ひまのようだが、また逆になかなか苦労も多い、こういうように思います。それで話等聞きますと、本官が事務官で、それでほかの仕事を兼務しておる。こういったようなのが非常に独立簡裁には多いようでございますが、その辺はどうなっておるのですか、ひとつ聞きたいと思う。
  33. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 それでは独立簡裁の裁判官以外の職員の配分について御説明申し上げます。  大体独立簡裁と申しましても、東京都内にございますようないわゆる独立簡裁は、相当人数を持っておるわけでございますが、それ以外のいわゆるいなかにございます小さい一般的な独立簡裁を例にとりますと、大体裁判官以外の職員と申しますと、庶務課長、これは書記官が本官でございます。庶務課長で書記官の仕事をやっておられる方が一人、それから書記官の仕事をしておる専従の方が一人、それから事務系統は事務官が一人、あとタイピストが一人、それに廷吏、あるいは地方によりましては廷吏のかわりに守衛というのが配置されておりまして、大体五名で裁判事務それから一般行政事務を運営しておる。大体そういう状況であります。
  34. 畑和

    ○畑委員 場所によると、いまもちょっと申しましたが、廷吏がおらぬ裁判所があるようですが、そういうことはありませんか。
  35. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 場所によりましては廷吏がいないというふうな地方もございます。そういたしますと、そういうところの法廷における廷吏事務を一体だれがやるのかという問題にたちまちなってくるわけでございますが、事務官に廷吏の併任の発令をいたしまして、事務官が廷吏の仕事をやることもございます。あるいは場所によりますと、実際は廷吏でございますが、発令上は事務官というふうな肩書きの方もおるわけでございます。
  36. 畑和

    ○畑委員 そういうことで事件数が比較的少ないというようなことなのか、あるいは一人で幾つもの仕事を兼務するというようなことになって、独立簡裁の事務を処理しておる。非常にしわ寄せを受けておると私は思うのです。こういった下級裁判所、特に独立簡裁の職員等の給与その他については、ひとつ配慮を願いたい。  ついでに聞きますけれども下級裁判所と上級裁判所との間の予算の配賦ですね、それはどのくらいの割合になっていますか。たとえば高裁と地裁をとってみたらいいのですが、予算配賦は一人頭がどのくらいの割合になっておるか。
  37. 石川義夫

    石川最高裁判所長官代理者 予算が一人当たりはどういうふうになっておるかというお尋ねでございますが、予算の……。
  38. 畑和

    ○畑委員 庁費だ。
  39. 石川義夫

    石川最高裁判所長官代理者 予算の執行の問題だと思いますので、三十八年度の例をとってお答えいたします。  普通、庁費は高等裁判所は一人当たりが一万七千四百円、地方裁判所は一万五千六百円、若干の差はございますが、そうたいした違いではございません。
  40. 畑和

    ○畑委員 聞くところによると、高裁と地裁で一人頭が四対一の差だというような話を聞くんだが、そういうことはないですか。
  41. 石川義夫

    石川最高裁判所長官代理者 そういうことはないと存じます。
  42. 畑和

    ○畑委員 ところが、私ら地方裁判所あるいは簡易裁判所等に行ってみましても、たとえば冬に参りますと、暖房施設などが全然ひどくてどうしようもない。最近はだいぶ改善されてきましたが、十年以上前あたりのときはひどかった。東京の地方裁判所あたりは非常ないい環境で暖をとっておるけれども、地方に行きますと、炭もろくすっぽない。調停員などは、火ばちもなくてオーバー着たままで調停員としての職務をやっておる。こういうような状態で、予算配賦等が非常に簡裁あたりは虐待されておるというような感じを私はずっと持ってきておる。いま高裁と地裁の一人頭の庁費の配賦等がたいした違いがないような——一人当たり一万七千円と一万五千円の違いだ、こういうような話なんだが、もっとはるかに違いがあるのじゃなかろうかというような感じがいたすのであります。その点で非常に地方の下級裁判所人たちはしわ寄せを受けておると思うのですね。それからまた、その他のいろいろな厚生施設なども、独立簡裁などはさっぱりない。東京あたりの大きなところだと、安いものも共済組合の関係でいろいろある。そういう点で、えらいいなかにいきますと、その点不利益があるというふうにぼくは見るのですが、その点はどう考えておりますか。
  43. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 計数的のことは先ほど主計課長からお答え申し上げましたとおりでございますし、なお御必要がありますれば、さらに詳細な数字を申し上げたいと思いますが、一般的な問題といたしまして、ただいまのお尋ねについて私どもの考えておりますところは、これは庁費がそういうふうになっておりましても、建物等の関係は、これはいわば順番に逐次新営ができていくわけでございますから、大都会でも相当ひどい建物に現在しんぼうしてもらっておるところもありますれば、地方のほうでもかなりりっぱな建物を建てていただいておるところもあるわけでございます。  しかし、そういう役所の関係のことはともかくといたしまして、何と申しましても、都会におりますれば、いわば文化的な生活ができるわけでございますが、それに対しまして、地方のほうはどうしてもいろいろな、むしろ裁判所の内部の問題よりも、いなかでございまして、いろいろ娯楽施設もないというようなことで、これはどうしても不利益を免れないわけでございます。そういう点では、できる限りいろいろ人事の交流その他によりまして、そう不自由な生活を長い間してもらわなくてもいいようにということは、心がけておるわけではございますけれども、この点は、実際問題といたしましては、なかなか十分には参りかねるわけでございます。ただ、一般的な方針といたしましては、できる限りそういうところにおいでになる方に不利益を与えないように取り計らっておる次第でございます。
  44. 畑和

    ○畑委員 そういった人員の問題に関連いたしまして、また一つお尋ねいたしたいのですが、タイピストですね。これは簡裁あたりは一人ぐらいしかおらぬが、地裁くらいでは相当おる。こういったタイピストの定員がやはり充足されておらぬというふうに聞いておるのですが、その点どうですか。
  45. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 タイピストは、現在定員によりますと約千四百名ということになっておりまして、昨年の暮れの調査によりますと、八十名ばかりの欠員があることになっております。千四百名の中の八十名前後ということでございますから、そう数字的には大きな数字ではございませんが、これは定員法のときにもいろいろお尋ねを受けまして、お答え申し上げたところでございますが、これはもう現地の裁判所といたしますれば、欠員というようなことは考えられない。それで一人でも欠員ができたらすぐにでも埋めたいわけでございますが、ただしかしながら、いろいろやはり試験なんかもあります関係で、どうしても欠員ができてから充員までに若干のひまがかかる。こういうようなものが全国の裁判所では、トータルをいたしますと、このくらいの数字になってまいっておる。それぞれの裁判所では、おそらく一名あるところと全然ないところということでございますが、何と申しましても、全国にきわめて多数の裁判所がある関係で、そのたまたまできました欠員をトータルすると、こういうことになるということでございます。  それからなお、タイピストとして定員上計上されておりますのが千四百名ぐらいでございますが、そのほかにタイピストとして長年勤務されて、事務官等に昇進されておられる方もあるわけでございまして、こういう方も実際上はタイピストの仕事をしておられるということになりますので、実際の戦力と申しますか、その点ではこれよりもう少し上になるということでございます。
  46. 畑和

    ○畑委員 東京地裁の例をとれば、定員が三十三名あるそうです。ところが実人員は二十六名だということです。そのうち病欠とか、女だから産休とか生理休、そういうのを入れると、十名ぐらい足りなくなってしまうということです。それで最近非常にタイプの仕事が多い。判決なども最近だいぶ簡略化してきたけれども、そのかわり今度はそれを補充するような準備書面をそのまままる写しということになって、かえって判決よりも分量が多い。それでしょうがなくて、タイピストじゃなくて、ほかの事務官が準備書面の引き写しなどをしておる、こういうような話を聞いております。結局仕事の量がどんどんふえてきている。それなのに人が足りぬということになるわけですが、この人が足りないのは、いま言った試験制度や何かやるから充足がなかなかできないのだ、こうおっしゃるけれども、給料が低いのじゃないでしょうか。役所のほうはほかの民間あたりに比べて給料が一般には安いかもしれないのだけれども、それを何とか高くするようにして、それで人員も早く充足しないと、非常なしわ寄せをこの人たちがこうむるということになる。この辺はどういうふうに打開するつもりか、ひとつ承りたい。
  47. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 一応私からお答え申し上げたいと存じます。先ほど東京地裁の例をお引きいただきましたが、いま手元に東京地裁の計数を持っておりませんので、御指摘のとおりであるかどうか、ちょっとはっきりいたしませんが、私最近大阪の裁判所から転任してまいったわけでございますけれども、大阪の裁判所等におきましても、タイピストの欠員の場合がございました。そういたしますと、私どもが判決を書きましても、その判決の浄書と言いますか、でき上がりまでに日数がかかるというようなことで、いろいろ所長なんかに話して聞いてみますと、これは確かにいま御指摘のとおり、一つにはそういう採用の面接試験とかいうような関係もございますが、またもう一つには、いまお話しの給与の問題でございまして、何と申しましても、これは技術者でございますから、幾らでもレベルを下げて非常に能力の低い人を採る気になれば、これはあるいは多少給与が悪くても来ていただけるかもしれませんけれども、そうかといって、一分間に何語という、それの能力が非常に低い者だとか、あるいは誤字、脱字がやたらにあるという方では、やはり目的を達成しませんので、やはりある程度の能力を持った方に来てほしい。しかし何と申しましても給料のほうは公務員一般に共通でありまして、全体的に言えば民間の大きな会社よりは給料その他の待遇がよくございませんので、そういう関係でなかなか来ていただけないという面も確かにあるわけでございます。そういう点はできるだけいろいろな施設その他の準備もしていただきまして、十分来ていただけるようにしたいというので鋭意やっておるのでございますが、現状はお話しのような面も若干あることはいなめない事実でございます。
  48. 畑和

    ○畑委員 タイピストに限らぬのですけれども一般の民間に比べて非常に給与が低いということが充員難ということに結びつくと思うが、ほかの官庁に比べて裁判所のタイピストの給与はどうなっていますか。
  49. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 裁判所のタイピストは一般行政官庁のタイピストと同じでございまして、いわゆる一般職給与表の行政一表の準用を受けております。したがいまして、裁判所のタイピストの給与水準が一般行政官庁のタイピストの給与水準と比べて低いということはございません。
  50. 畑和

    ○畑委員 タイピストのほかにも、ボイラーマンなどが非常になり手がないらしい。これは一々聞いてもしようがないから、そういう点についてもできるだけ充足をはかるようにしてもらいたい。ことにこういうボイラーマンというのは、やはり民間のほうが相当給料が上だと思う。安いからなり手がない。その辺は裁判所だけの問題ではなく、役所全部の問題だろうけれども、ひとつせいぜい大蔵省と話し合いをして、そういった給与の引き上げ等についても精力的にやってもらいたいと思う。  それから次に一つお尋ねいたしたい。それは簡易裁判所にも関係があるから申しまするが、昭和三十六年度でしたか、代行書記官について、裁判所法によると、これが当分の間ということになっておったわけです。当分の間は一体何年続くのだということで私どもやかましく申しまして、そのために法案など出したことがあるわけです。当分の間というのは、何年何月何日にするというような法案を逆にわれわれ社会党のほうで提案をして促進を迫ったという経験が三年くらい前にあるのですが、しかし、だんだんと改善はされて、その間何回かにわたって書記官補から書記官に相当数の組みかえがなされておる。私も言い出した一人でありますから、この点充足してきたことは非常に喜ぶべき現象だと思う。そこで話に聞きますと、大蔵省との間の話も幾たびかされて、大体ことし限りでそういった代行書記官の制度は実際上なくす、そして書記官補自身をなくする。こういうような話になっておるということも聞いておるのですが、その辺の事情について承りたい。
  51. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 いま畑委員から御指摘のございましたように、結局書記官への組みかえという問題は、書記官以外の職種の者、つまり代行書記官あるいは事務官で代行書記官を併任いたしまして、併任官職である代行書記官の仕事を一〇〇%やっておるというような形で裁判事務が運営されておるのであります。それはやはりおかしいではないか、つまり制度と実態とのそういうギャップと申しますのは、予算上の定員が実際の裁判事務の必要性を十分カバーしていないというような観点から、いま申しましたいわゆる代行書記官の仕事を行なう、あるいは併任の形でやっておられる方を、予算と現実を合わすというような観点から、三十七年度予算以来裁判所側では三年計画として組みかえを実施してきたわけでございます。それの経過を簡単に申し上げますと、昭和三十七年度におきましては九百三十四名、三十八年度予算では千六十六名、この間成立いたしました三十九年度予算では六百九十四名、合計いたしますと二千六百九十四名、大体二千七百名近い人員が、従来の代行書記官あるいは事務官から書記官のほうに組みかわってきたわけであります。そういたしますと、本年度予算で六百九十四名組みかわりますと、残数の書記官補は、下級裁で二百名、最高裁に三十九名おりますから、最高裁を合わせますと、全部で一直二十九名という数字が書記官補として本年度予算には存置されておるわけでございます。しかし、書記官に昇任させる場合に、大体本筋としては、書記官研修所の養成部というのに入所させまして、その方が大学の法学部を出ておれば一年、その他の学歴であれば二年間養成部へ入れて、ここで研修をして書記官にするというような方法をとっておりますから、現在その書記官研修所の養成部に入っておる人員が大体二百三十人ないし二百五十人おるわけでございます。そういたしますと、本年度におきまして六百九十四名の組みかえを実行いたしますと、現場には書記官補というのは事実上いなくなる。おるとすれば、それは書記官研修所に入所中の諸君で、いわゆる一線の戦力として働いておる方じゃない。そういうふうな形になりますから、一応事実上いわゆる現場には書記官補という人員はいなくなるということでございます。
  52. 畑和

    ○畑委員 そうすると、いま二百三十名ぐらい特別研修に行っている。それがちょうど二百三十九名残るものに当たるのだけれども、それがいま言った特別研修を終わって試験に通りますと、書記官になれるわけですか。
  53. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 この六百九十四名につきまして、この対象者を選ぶ場合に、現実に代行書記官の仕事をしておる人たちだけが対象になるわけではございません。と申しますのは、絶えず裁判部と事務局の人事の交流がございますから、たまたまある時点におきまして裁判事務をやっていないで事務局で仕事をしておるという人でも、その時点の少し前には公判事務をやっていたという方も、事務局と公判部の人事交流の結果、かなりありますから、この六百九十四名をどういう形で実行するかという問題につきましては、現に代行書記官の仕事をしておる方、現に書記官の仕事はしてなくても過去においてそういう仕事をしておったり、あるいは矛、ういう資格を持っておるというふうな方々を対象にしまして、そういう対象者から希望者を募りまして、その中から六百九十四名の人員を研修いたしまして、書記官に昇任さして、この組みかえの実行をするというふうな段取りになっておるわけでございます。
  54. 畑和

    ○畑委員 どうもちょっとわからぬのだが、三十九年度の予算で六百九十四名の組みかえをする、なおそれでも本年度は二百三十九名が書記官補として残るわけですね。
  55. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 そういうことでございます。
  56. 畑和

    ○畑委員 そして、それは来年度どうなるのですか。
  57. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 ですから、残っておる二百三十九名というのは、近い将来——これは現在入っておりまして、今後も書記官研修所の養成部が続く限り、やはり毎年二百三十名は養成部におりますから、その数字はいわゆる現場の戦力とは関係ございません。現在のたてまえからいきますと、養成部に入所しておる間の身分は書記官補という身分にしておりますが、これは研修所で養成する場合に、本人が書記官補の身分を持たなければ研修ができないということでございませんから、その数は事務官のほうへ組みかえる方針であります。
  58. 畑和

    ○畑委員 そうすると、現場には書記官補というものはいなくなるということになりますね。
  59. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 この六百九十四名につきまして組みかえを実行しますと、現場には書記官補は事実上いなくなるということになります。
  60. 畑和

    ○畑委員 それならばいいのですが、事務官にして、事実上裁判の補助事務を扱わせるということにはなりませんか。
  61. 宮崎啓一

    ○宮崎最高裁判所長官代理者 書記官の事務を補助する場合に、現在のたてまえは書記官補が書記官の事務を補助する、裁判所法第五十八条にございます裁判所事務官が、上司の命を受けて、裁判所の事務を補助するという形になっておりますから、現在書記官の事務を補助している職種としては、裁判所書記官補という一般職種もございます。それから裁判所事務官あるいは事務屋という官職もあるのであります。
  62. 畑和

    ○畑委員 問題を他に変えて、一、二点質問いたします。  簡易裁判所の調停委員は、いま全国で何名おりますか。
  63. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 調停委員総数は一応五万六千名くらいということになっておりますが、ただ、実際は農地調停委員とか宅地建物調停委員とか鉱害調停委員というように、それぞれの分野の調停委員の数を合計いたしましたものがその数でありまして、実際にはこれを二つくらい兼ねておられる方もたくさんおいでになりますので、そういう意味で、現実の人間と申しますか、現実に調停委員でおいでになる方と申しますと、約二万二千人くらいということになるわけでございます。
  64. 畑和

    ○畑委員 そういった調停委員の選考、任命のしかたはどういうふうにしてやっておりますか。
  65. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これは最高裁判所の規則がございまして、その規則の規定に基づいて任命しているわけでございます。民事調停規則というものと、それに基づく調停委員規則というのがございます。この二つの規則の趣旨によって実際には選任が行なわれているわけであります。
  66. 畑和

    ○畑委員 この選考というか、推薦はだれがするんですか。
  67. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これはいろいろな分野によりまして必ずしも一様ではありませんが、たとえば弁護士の方の場合には弁護士会から御推薦をいただいておりますし、なお規則の上で、たとえば農地調停の調停委員については、その裁判所所在の都道府県知事の推薦を受け、鉱害調停事件の調停委員につきましては、通商産業局長の意見を聞く、こういうような扱いになっておるわけであります。
  68. 畑和

    ○畑委員 ところで、この選考、任命が必ずしも妥当でないような傾きがあろうと思う。どうもとかくのうわさがあるような人がたまにはなっておるのでありまして、また、調停委員になると箔がつくというところから、なりたい人がいるらしい。いろいろな方面に頼んでならしてもらうといったようなことで、その辺若干弊害の面があるようであります。この辺はひとつ十分注意してもらいたいと思う。また、場合によっては裁判所の事務局長あたりの推薦でなったりするような人もいるらしいような話を聞いているのでありますが、こういう点はよほど注意してもらわぬと、問題になると思う。  同時にまた、調停委員の心がまえというものについて、ときどき調停委員が集合して、調停委員の協議会があるらしいのですが、そういうところでどうぞ話をして、教育をしてもらいたいと思います。気をつけているようでありますけれども、中には私宅で会ったりするようなこと、また当事者が調停委員のところへたずねていくような者も、知らずにたずねていくようなこともありましょうが、そういうのが間々あるようです。調停委員立場というようなことについてひとつ教育をしてもらいたいと思います。  次に聞きますけれども、この調停委員の職業別とか年齢別とか、こういった資料がございますか、あればひとつ……。
  69. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 先ほどのお話の調停委員の選任のことにつきましては、従来とも十分心がけて注意してまいったつもりでございますが、なお一そう御趣旨に従いましてやってまいりたいと存じます。また、いわゆる研修と申しますか、調停委員の方々のいろいろやり方についての打ち合わせ等につきましては、裁判所のほうとしても協議会を開いておりますし、また日本調停協会連合会あるいはそれぞれの各調停協会等でもいろいろくふうをし、集合をしたり、あるいは印刷物をつくったりして、その方面の努力をしておられるように承知しております。  なお、最後にお尋ねのございました職業別の点でございますが、数の上で一番多いのは農業の方でございまして、これが一万四千名、実数で申しますと六千人ぐらいでございます。一万四千名と申しましたのは、いろいろ二つか三つ兼ねておられるので、そういう数になるのでありますが、実数で申し上げたほうがおわかりいいかと思いますから、以後実数で申し上げますが、農業が約六千人ということでございます。それから商業の方が約二千八百名、会社員の方が二千五百名、それから弁護士さんが約二千四百名、官公吏が約千九百名、その他教員とか医師とか、水産業とかいろいろございますが、大きなものはそういうものでございます。  それから年齢別の点でございますが、年齢別では、四十歳までの方が二百五十人ぐらい、それから四十歳から五十歳までの方が約千五百人、五十歳から六十歳までの方が約五千四百人、六十歳以上の方が約一万三千人というようなことになっております。かなり六十歳以上の方もおられるわけでございます。
  70. 畑和

    ○畑委員 いま職業別並びに年齢別の数字を出していただいたのですが、それによりますと、職業別では農業が一番圧倒的に多いのでありますが、農家人口のわりあいには一番多いような感じがするのです。  それで、職業別は別としまして、年齢別を拝見しますと、だいぶお年寄りが多い。これはどうしてもお年寄りで御隠居さん式な人でないと、なかなかひまがない。こういうような関係で多いのだと思うのですが、特に六十歳以上一万三千人、こういう数字ですね。四十歳までがたった二百五十人しかいない。こういうことなんでありますが、これはもう少し是正できないものか、もっと若返らすわけにはいかぬのか。ひまがない、あるいは財的に働かなくちゃならぬので、そういったひまがないというようなことからこういったことになるのかとも存じます。しかし、いずれにしても少し老化現象に過ぎるのではないか。中には四十代くらいの者でも、いわゆる鉄道員とかなんとかいう人は一日おきに休みの人も相当おりますし、そういったところから比較的若い人も選ぶというような方針も加味したらいかがかと思うのですが、どうでございましょうか。
  71. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 先ほど御説明申し上げましたことにちょっと不正確な点がございますので補足させていただきますが、先ほど申し上げましたのはいわゆる地方裁判所、簡易裁判所の民事調停の調停委員の方のことでございまして、そのほかに御承知のとおり家庭裁判所の家事の調停委員というものがおられるわけでございます。これが一万八千人ぐらいおられるわけでございますが、これも、やはり農業の方が数の上では一番多いわけでございまして、三千二百名ということになっております。商業が千七百名、弁護士さんが千六百名、それから会社員が千七百名、官公吏が千五百名というので、先ほどとかなり似た数字でございますが、そこに若干こちらのほうが農業よりも官公吏とか会社員の方が占める比重が大きいように考えるわけでございます。  それで年齢の点でございますが、いまちょっと手元に家庭裁判所の調停委員年齢が見当たらないのでございますが、しかし、おそらく大数的には先ほど申しました地方裁判所調停委員のほうとそう違いはないのではないか。そういたしました場合、確かにお話しのとおり実は私どもといたしましても、率直に申しまして、老化現象と言っては非常に失礼でございますが、もう少し若い方にも来ていただきたいということがほんとうの念願でございます。しかし、これまた先ほどお話のございましたとおり、何と申しましてもかなりの時間を食う仕事でございまして、しかもそれに対して報いる日当というものは、一般的に見ますればそう大きな額ではございません。また日当を目当てにしていただくということでは調停委員としてはあるいは間違いではないかというような気持ちもあるわけでございまして、そういう点で、ほんとうに一つの公の制度として協力していただくという方にお骨折りを願いたいというふうに考えますと、どういたしましても、現在社会第一線で活躍しておられる方は、弁護士さんは別でございますが、弁護士以外の方ではどうしてもなかなか来ていただけない。自然に、ある程度地位も高くなって、会社なんかでも相当上のほうの地位になられますと、かえって会社を抜け出すことも比較的やりやすい。それから大学の先生なんかでも御協力いただいている方がかなりございますが、そういうようにいろいろそういうところをねらいまして、やっていただくということにならざるを得ないわけで、これは全くお話のとおり、私どもとしても、むろんお年寄りも非常にけっこうではございますけれども、若い方にもぜひ来ていただきたいということでやっておりますけれども、現状は、やはり先ほど御説明申し上げたような数字になっておるわけでございます。今後も、その点につきましてはできる限り若い方にもお願いするように私どものほうとしても努力いたすつもりでございますし、そういう点についていろいろ御協力いただけますればありがたいと考えておるわけでございます。
  72. 畑和

    ○畑委員 その調停ですが、調停係判事さんがいらっしゃるわけだけれども、実際にはどうもほとんど立ち会いしておらぬですね。弁護士が一人でも入っておればよろしいのですが、しろうとだけ二人の調停委員で、法律的なことはさっぱりわからない。ただ何とかなりませんかということで両方聞くだけで、いつになっても発展しない。そういう事例が非常に多いと私は思うのです。やはり、そういう点ではもっと判事が事件に関与して、若干法律的なことも頭に入れて配慮をして、それを基礎として調停委員とも相談して調停の実効をあげる、こういうことにしなければいかぬと思うのです。ところがどうもほとんど、最後の締めくくりができました、あるいは不調です、というようなときに初めて調停委員会に裁判官が出てくる。こういうような状態——裁判官ももともとほかの自分の事件を持っておって、それで調べをしておる、仕事が多過ぎるという点がここにもあらわれてくると思うのです。裁判官ばかり責めるわけにいかぬけれども、しかしそういう状態です。私はその点むしろこの調停には相当の力を注ぐべきだと思う。調停でおっつくのが相当ございます。熱意のいかんによっては相当おっつくのです。ところが、ほったらかしでおきますと、なかなか五里霧中で、しろうとだけで方針も何もきまらぬものだから、それで不調が相当多い。あるいはしろうと考えで無理な押しつけ方をする、こういったような事例がある。中には調停委員が裁判官かと思っておる当事者が相当おるのですよ、ちっとも出てこないから。やはりそうではなくて、適当に出てきて指図をして、相談をしてやると、事件がうまくつくのではなかろうか。そういう点で、結局仕事の量も大いに関係があるけれども……。したがって、そういうところはどんどんひとつ要求をして、調停判事が片手間にやらずに、きょうは調停の日だということになると、一人で何件も預かっていましょうけれども、それを適当にうまく回って、それを専門にやはり片づけるという配慮が必要だと思うのですが、ほかの仕事をやりながら、呼ばれてようやく調停の終わりに出てくる、こういうことが現状的に非常に多いのじゃないか、この辺はひとつうまく指導してもらいたい。同時に、人員あるいは予算不足は、どんどんそれを要求してやるべきだ。いままでもうずっと聞いてきたのですが、私は、この前の法務委員会のときも痛切に感じたのですが、どうも最高裁判所は少し予算の取り方がへただ。われわれ法務委員会はいつでもバックアップするから、そういう点ではもっと心臓強く超党派でどんどんやってもらいたい。どうもそういう点でほかの官庁に比べて少しおとなし過ぎる。裁判官上がりの人がほとんどだからどうしてもそういうことになるのかもしらぬけれども、そういう点をぜひ今後とも気をつけて、心臓強く要求すべきは要求しなくちゃいかぬ。結局、しわ寄せを受けるのは下級の裁判官でありあるいは職員である。こういうことになりまして、事件数が非常に最近多くなっているわりあいに、人員は、書記官の人員も事務官の人員もふえていない。二、三割しかふえていない。それなのに事件は何倍にもなっている。こういうような状態です。当然こういうことは要求すれば通らないはずはないはずだ。それが少し努力が足りないというか、心臓が弱いというか、そういう関係で常にわり食っているのは最高裁じゃなかろうか。アメちゃんが来ているときはちょっと調子がよかったけれども、それが引き揚げたらもうどうしようもない。昔のあれに返っちゃった。司法省でやっているときのほうが、むしろ予算関係を獲得するのにはよかったんじゃなかろうか。最高裁判所になって別になってから、どうもその辺がかえって悪くなったのではないか、こういうふうな感じがわれわれはいたすのです。そういう点で、きょう質問をしたところは、みんな結局人と予算ということにぶつかる案件です。  まだほかにもたくさん私質問したいことがあるのですが、できるだけ簡易裁判所に関することについてだけきょうは質問したわけです。時間もだいぶたちますからこれだけで終わりますが、最後にひとついま言ったことに対する態度を裁判所のほうから伺いたい。
  73. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 たいへんおしかりを受けますとともに、また激励をしていただきまして、私どもといたしましても、今後予算の面につきましてはなお一そうの努力をしたいと考えております。  先ほどの定員の問題につきましては、これは確かに事件が相当伸びておるわりに一般職の職員もそれほどふえてはおらないという御指摘もある程度はもっともでございますが、しかし、またこれはどういう事件が非常にふえたかということも関連いたします。すなわち、比較的事務的な、内容の少ない、たとえば略式事件というふうなものが非常に大幅にふえたというふうなことで、結局訴訟事件のふえの率はそれほど大きくはないということも、定員の獲得の場合に若干いろいろな問題となって出てまいっておるわけでございます。しかし、それにいたしましても、もう少しさらに定員がふえますれば、なお円滑に事務が遂行できるということも確かに一面真理であると考えております。  予算全体といたしましても、逐年かなり大幅に増加してまいっておるわけではございますけれども、しかし、各方面からいろいろそういう御批判なり御激励をいただくわけでございまして、本席には主計課長も参っておりますし、さらに来年度の予算のときにはなお一そう私どもといたしましても資料を整えまして、十分大蔵当局と折衝して御期待に沿うようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  74. 濱野清吾

    濱野委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、来たる九日開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時十六分散会