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赤松委員 基準法の十六条は、先ほど御指摘のように、損害賠償額を
予定する契約をしてはいけない、これははっきりしておりますね。ところが、実際にはある一定金額を積み立てて、そうして賃金から控除する場合があり得る。そういう事実があれば、基準局のほうとしては厳重にひとつ監督してもらいたい。さっそく全国的にそういうことがあるかないかということを調べてもらいたいことが
一つ。
それから、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を
予定する契約をしてはならないのです。ところが、実際は違約金を定める行為を就業規則の中でやっています。労働契約を結んでいるのです。基準法を十分知らない
労働組合は、そういう契約を結んで、そうして違約金を実際に払っている、そういうこともあり得るわけです。これもひとつ十分に調べてもらいたいということ。
それからもう
一つは、市民法の
立場からいっても、民法では賃金というものを非常に大事に扱っていますね。もちろんこれは生活手段ですから大事に扱ってもらわなくちゃ困る。いわんや、今度は労働法の見地からいえば、これは
一般市民法の権利と違って、この点はある
意味において金科玉条だ。そうして作業環境に随伴して発生する必然的な結果について、その
責任を経営者が全然負わない。全部労働者が負うのでしょう。過不足があった場合は、これは全部労働者の
責任ですよ、そうでしょう。経営者はその
責任を全然負おうとしない。たとえば車内販売を
禁止すれば、他の適当な措置を講ずればそういうものは発生しないのです。しかし、そういう努力は怠っているわけです。そうしてすでに労働力の限界を越えた労働を強制している。それに随伴して発生する結果について
責任を問おうとしておるわけです。現に問うているわけです。そうして不足分は賃金から引かれ、余ればそれに対して罰が加えられる、服務規程はこういう仕組みになっておる。現実にそうなっておる。そうなっておりませんか、天引きされているでしょう。賃金から控除されています。そこで、その賃金を控除するという問題が重大であるばかりでなしに、そこに発生するのは身体検査、所持品検査の問題です。何かチャージしていないか、取っていないだろうか、車掌を見ればどろぼうと思え、そんな極端なことはないでしょうけれども、何かふところへ入れないか、チャージしないかというので、しょっちゅう監視されておるわけです。その結果起きる問題は何かといえば、人権侵害の問題です。たとえば裸になってそうして検査をするとか、あるいは女子の場合はふろ場へ入れておいて、そこへ全部脱がせる。ある会社では、その検査は同性でなければいかぬというような服務規則もある。ところが、そうでなくて、男性がやってもいい、だれでもいいというように規定している会社もあるわけです。ところが、現実に女性はふろへ入れられて、そうしてまっ裸になって、ズロースまで全部検査される、異性によって検査されるという場合の精神的な圧迫というもの、これをどう
考えますか。これでは自殺問題が起きるのは偶然ではない。これは笑い話で済まされませんよ。お互いに子供を持った者として、たとえば
自分の娘がそういうふろ場へ入れられて、そうして全部脱がされて……。たとえば生理の場合などは、あるいはズロースがよごれておるかもしれない。そういうものを異性に見られて、女性として羞恥心や憤りを感じないものがありますか。それは重大な人権侵害です。だから、人権侵害が行なわれた時点においてこれを防止していく方法をとるのか、根本的にそういう人権侵害が発生しないように、車内販売を
禁止して、そうして経営者の
責任においてそういう問題の発生を除去していくのかという問題になってくる。これは、賃金の面については
労働基準局で
考えてもらわなくちゃならぬ問題であると同時に、運輸省としてもこれは真剣に
考えなければならぬ。また、人権の問題につきましては、
法務省としても真剣に
考えてもらわなければならぬわけです。
一体過不足金というのはどの程度出ているかというと、都市交あたりの調査によりますと、大体二百円から三百円程度だ。そんなものは当然予想されるものですよ。それがいやならばもっと人をふやして、一台の電車に二人でも三人でもふやせばいい。なるべく最小の人員で最大の
利益をあげようとするから、そういう結果が生まれてくる。この問題は人権の問題であって、思想の問題や党派の問題じゃないのですよ。これはたまたま神戸でバスの車掌が自殺したから社会問題になって出ているけれども、現実には
日本のあらゆる職場において、金銭を扱うところにおいては、随所でこういう事件が生まれている。私の調べたものによれば、東京の安田銀行などは、そういうことをやっておりません。そういう規定があったのを全部はずしております。だから、経営者が労働者を信頼して、そうしてチャージを防ぐような方法を講じていくということを常に
考えていかなければ、その作業に随伴して必然的に発生する問題を、
自分たちの事業改善をやらないで、あるいは設備改善をやらないで、労働者に全部
責任を負わせて、不足したら天引きすればいいのだという
考え方、そうして過不足金がないかな、あいつチャージしないかなというので、しょっちゅう身体検査をして人権侵害をしていくやり方、こういうやり方は、ひとつ
法務省と労働省、運輸省あたりで、三者一体になって、これは労働者の権利を守るというよりも、人間としての権利を侵害するということになりますから、私は、
法務大臣あたりもひとつ真剣に労働
大臣や運輸
大臣と相談して、
考えていただきたい。こういうことをやって、いま都市交あたりでこれは相当問題になっておるわけです。ところが、東京都あたりは実際はこれは実行しておりません。だから、実行してないということは、やめたって何も弊害が起きないということですよ。ところが同じ六大都市の中でもやっているところがある。それからはなはだしきに至っては、基準
局長の通達も出て、あるいは
人権擁護局長の通達も出ているのに、六大都市の交通管理者なんかは、私どもの監督官庁の運輸省から何も言ってこないから、こんなものは
法務省が何と言おうがへいちゃらだ、こういうので一向に
人権擁護局長の通達を尊重しようとしない。そういうことが現実に各職場で問題になっている。そういうことをやっておりますから、だんだん労働者自身が、
自分自身でこの問題を処理しなければ、経営者にたよっておったんじゃ人権が守れないということから、一そう労働運動というものは激しくなってくるのです。
賀屋さん、これは資本主義を永遠に維持するという
立場に立っても、こういう問題は真剣にあなた
考えてやらなければだめですよ。これは大いにあおって、アジって、扇動して、そうして労働者を左翼化していこうというのには絶好の題目じゃありませんか。私は、そういう運動を、これを利用して、そうして社会党なら社会党の勢力を伸ばすために利用する、そんな
考え方はちっともない。ちっともないから、ここで私はあなたたちに
質問をしている。これは先ほど言ったように、思想や党派や階級の問題ではない。人間それ自身の権利を侵害するという問題です。そこで、
一般的に全部いま身体検査をやめさせる。つまり警察官でも自由に身体検査できない、令状なかったらできないのですよ。それが特に市民法的な
立場でなしに、労働法で保護されておるところの、
憲法で保護されておるところの労働者に対して、平気でこういう人権侵害が行なわれる。しかも控除すべからざる賃金が控除されている。一番保護されなければならぬ、
憲法上優位に立っているところの労働者の権利が侵害されているというところに問題がある。ですから、時間がありませんから私はくどくど申し上げませんけれども、すでに
人権擁護局は実態調査をやって、そして具体的にこのような報告をここへ出してきている。そこで私は先ほどからも申し上げるように、ぜひひとつ
法務大臣あるいは労働
大臣、運輸
大臣、三者会談によって適正な措置を講じていただきたい。私が要求するのは、第一に車内販売をやめなさい、これは経営者の
責任においてやりなさい。そうすると運輸省は、なかなかそういうことはできません。なかなかそういうことを事業家に要求しましても、資金の問題その他がありましてなかなかできません。こう言うかもしれないけれども、私ども最低賃金法を最初に
国会に出したときもそうだ、こんなものは一律実施をやったら中小企業はつぶれてしまう……。ところが、池田首相自身が、もうぼつぼつ一律最低賃金制を
考えなければならぬ段階にきました、こういう
答弁をこの間江田君の
質問に本
会議でしている。だから、これはむずかしい、これを事業者に要求しても、一律実施はなかなかむずかしい、そんなことを言っておったら、いつまでたってもできやしない。それをやるものでなければバス事業をやっちゃいけない、やる資格がない、やる能力がないのだ、こういうようにびしっときめていけば、彼らはその設備改善の方法を具体的に
考えてくる。しかるに、そういう改善をやらないで、過不足金が生じたら労働者の賃金から天引きしちゃう、どうもチャージをやるらしい、あいつはどうもくさい、そういってしょっちゅう監視をする。そして今度は勤務が終わってあれしたときには、身体検査、所持品検査を受けなければ退勤してはならない、これが民主
憲法下におけるところの服務規程ですか。身体検査を受けなければ、所持品検査を受けなければ退勤してはならないと書いてある。ちゃんと書いてある。
人権擁護局が調べた中に書いてある。ほとんど全部書いてある。「出札員は係員の服装検査を受けなければならない。」「駅掌及び駅務員は係員の服装検査を受けなければならない。」「乗務員は係員から服装検査を受けなければならない。」「乗務員は勤務終了後、係員の服装検査を受け、出勤名札を受け取り、
許可を得た後でなければ退所してはならない。」ならない、ならない、ならないで、みんなならないだ。だから、身体検査をする以上は
——それは
法務省の
人権擁護局長はこういう通達を出している。通達を出しているけれども、幾ら通達を出して限界を越えないように、限界を越えないようにと言ったって、その限界自身をあなた示されますか。それならば一体限界点はどうなんです。どこまでが限界ですか。人権侵害の限界というのはどこなんですか。私が意地悪く
人権擁護局長に
質問したって、そんなことは
局長は答えられぬでしょう。答えろというほうが無理なんです。無理な、そんな限界もわからないような、わけのわからないような通達を出したって、何にもならぬ。むしろ抜本的にこの際は賃金から控除できない、それから身体検査をする必要のないように、そういう
条件をつくり上げていくということが大事だ。さしあたっては、労働省としては現行基準法の精神にのっとって、そうして不足金を穴埋めするために賃金から控除するというようなやり方については、厳重に
検討を加え、
結論を出して各事業所に徹底をさしていくという措置をとる。それから第二は、所持品検査についてはこれをやるべきではない。そして、私が先ほど言ったように、所持品検査や賃金から控除する必要のない作業環境を第一につくっていくことに全力を上げる、そこに力点を置いて施策する。そうすれば全体がよくなってくる。
それから、ついででありますけれども、たとえば名鉄電車あたりでは身体検査なんかはやっておりませんよ。ですから、もう作業環境を変えて
——名鉄ではバスも持っておりますけれども、それをやっておりません。だから、やっているところとやってないところがある。やってないところの経験を取り入れて運輸省あたりは
考えてもらわなくちゃならぬ。やってないということは、やらなくとも済むんですよ。やってないということはそういうことを
意味しているじゃありませんか。むしろ、やってないところのほうがいま多いんじゃないですか。やっているというのは全体の半分か四割五分くらいじゃないかと私は思う。しかし、これは電車、バスに限ってですよ。
日本全体の金銭を取り扱う作業場全体から見て、圧倒的な部分が、やはりこういうような慣習に従って依然として封建的なやり方を続けておるというように私は見ております。どうぞこういう点について運輸省も、労働省も、
法務省もひとつ十分な注意を払っていただきたい。私は、議員としての
立場から基準法改正のためにこれから努力していきたいと
考えております。
それからついでですが、基準
局長、これは
個人的な話し合いでいろいろあれしたのですが、労働省の基準局の人も、先生これは地方公営企業法でもってあれしたらどうだろうというような意見も述べられましたが、しかし、あれは事業法でありますから、あれでもってこれを規制していくということは私は非常に困難だと思うので、やはり労働基準法の面からこれを規制していくことが大切である、こういうように思うわけでございます。なお、
法務省のほうにおいても、この点について法の改正とかあるいは立法というようなことについても、ひとつ具体的に
考えていただきたいということを申し上げて、なお私の
質問は留保して、本日はこれで終わりたいと思います。