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1964-02-27 第46回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十七日(木曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 三田村武夫君 理事 神近 市子君       一萬田尚登君    大竹 太郎君       亀山 孝一君    河本 敏夫君       四宮 久吉君    田村 良平君       千葉 三郎君    中村 梅吉君       馬場 元治君    島上善五郎君       山本 幸一君    横山 利秋君       志賀 義雄君  出席政府委員         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局総務課         長)      辻 辰三郎君         検     事         (刑事局青少年         課長)     桂  正昭君         判     事         (最高裁判所事         総務局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         総務局総務局第         一課長)    長井  澄君         専  門  員 櫻井 芳一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三八号)  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第四一号)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び刑事補償法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  前回に引き続き質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 この裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、主としてこれに含まれる少年問題について、定員の問題やら現状をお伺いしたい。私は実は全くのしろうとでございまして、初めて本委員会先輩同僚諸君の御指導を受けるわけでありますが、それにしても、先般家庭裁判所鑑別所を自分で見まして、いろいろと調査をしてまいりました。しろうと調査でございますから、あるいは的を射ていないかもしれませんが、これはひとつ御了承願って、しろうとしろうとらしく懇切な御答弁を願いたいと思います。  まず第一に、私は家庭裁判所へまいりましていろいろなことを体験をいたしました。それでその裏打ちをするために鑑別所へ行って、いろいろと事情を聞いたり見たりいたしたのでありますが、それをもとにしてこの少年問題を考えてみますに、各委員会でも取り上げているようでありますが、あまりにも少年問題が各省で多岐にわたり、総予算の中から見ますと、三十七年度では二百二十五億くらいの少年問題の予算があるわけであります。二百二十五億の青少年問題の予算といたしますと、金額としては決して少ないとは私は思われない。ところが、その二百二十五億を厚生省、労働省、農林省、総理府、法務省、建設省、警察庁、文部省、運輸省から最高裁というふうに、ばらばらになっておりまして、その予算の実効をあげることはほとんど皆無であると痛感をいたしました。かりに三十九年度法務省の青少年問題の予算をこの間いただいた表で調べてみますと、たとえば青少年観察充実強化として百七十七万円も増額があると麗々しく書いてあるわけであります。他の省の予算項目、いわゆる重点事項別予算額調べてみましても、百七十七万円というスズメの涙ほどの金を増額がされましたといって麗々しく出しておる省はまず私はないのではないかと思います。少年感化活動充実として五千七百八十八万円、少年鑑別業務充実として千五百七十六万円。何とこれはお粗末なもので、恥ずかしくもなくよう法務省は出しておくなとさえ痛感をいたしたものであります。こういうようなことで今日の国内の話題であります非行青少年対策推進強化としてここに重点項目として出されておるということにつきましては、初めてこの法務の青少年問題に触れます者といたしましては、今日まで一体どういうことになっておるのであろうか、これは一体重点項目ではないのではないかとさえ痛感をされたわけであります。大臣がお見えになりませんから、事務官の皆さんにそんなことを言ったところで、これも予算委員会と同じでどうしようもないのでありますが、しかし念のために担当していらっしゃる方にお伺いをしたいのでありますが、少なくとも重点項目別予算調べとしてわれわれの前に提示されたこの非行青少年対策というものが、物価の高騰にすら追いつかないようなかかる金額増加で、一体重点項目として法務省がお出しになったことは、全然これは認められないもひとしい思うのでありますが、どういう経過でこういうことになっておるのか、一体どのくらいの要求をされたものであるか、念のためにお伺いをいたしたいと思います。
  4. 大澤一郎

    大澤政府委員 私、法務省全体予算を担当した者ではございませんが、少年対策といたしまして、矯正局で所管しおります少年院あるいは少年鑑別所予算につきましては、御指摘のとおりに、決して重点施策と大きく申し上げるほどの金額ではございません。矯正局所管といたしましては、年々少年院あるいは少年鑑別所に入所します少年の数が過去数年来ほぼ一定しておるわけでございます。われわれとしまして、少年院経費といたしますと、収容に要します経費あるいは所内で教育いたします経費ということが中心経費になるわけでございます。何分にも入所の人員というものが年間大体一定しておりまして、在所人員少年院については約九千ないし一万名、少年鑑別所が二千名余りという数字が過去数年来ほぼ横ばいでございますので、予算につきましては、内容の充実という点に主として配慮を置いているわけでございます。金額的にはそう大きな増加はないのでございます。ただし、少年院につきましては職能訓練充実あるいは鑑別所につきましては鑑別の徹底ということで、それぞれ人員増加及びそれに要します訓練経費というものの増額をしておるわけでございます。全体的に、われわれとしましては人員の数が変わりませんので、大きな変化はないということに相なるわけでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 あなたは事情を御存じで言っていらっしゃると思うのでありますけれども家庭裁判所を視察したときの感じは、まあ横山先生、いろいろ少年院へ送らなければならぬけれども、ここだけの話ですよ、少年院へ送ってはたしていいかどうか、普通ならば少年院へ送るべきだと思うが、少年院が必ずしもいいとは思われない。思われないには二つの理由がある。一つは、少年院教護指導人員等からいって、これはまあ送るべきかもしれないけれども、他の方法に回すという考え方がひそんでいる。それからもう一つは、少年院は子供が多過ぎて、いま送ったところでどうにもならぬから、少年院へ送るのを差し控えるという考え方が、いろいろな人の話を聞けば、裏にあるような気が私はいたします。  もう一つは、家庭裁判所裁判官増員があるるようでありますが、聞くところによりますと、もらった表からでも見られるわけでありますが、欠員がいま家庭裁判所に二十八名あるそうです。これは何も家庭裁判所だけでなく、高等裁判所で十名、地方裁判所で六名、簡易裁判所で二十七名、計七十一名くらいの欠員がある。それを今回増員をする。増員をするということは大いに賛成であるけれども、一体埋まるのか埋まらぬのか。なぜこの種の裁判官なり他の職員欠員状況にあるのか。どんどん逃げていく、また志望者がないということを解決しなければ、何ぼ数だけ増員したところで、これはから証文に終わるのではないかという感じが現地でいたしたわけでありますが、いかがですか。
  6. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点まことにごもっともでございまして、前会大竹委員鍛冶委員のお二方の御質問のときにも申し上げたところでありますが、裁判所といたしまして、いつも裁判官欠員には頭を悩ましておる次第でございます。ただ、一般的に申し上げますと、充員というのは、大体四月ごろに、つまり司法研修所から修習生が卒業してまいりまして、判事補になる、判事補が十年いたしますと、これまた四月ころに判事になる。こういう方法充員されるわけであります。これに対しまして欠員を生じまする事由は、大部分定年でおやめになる、あるいはおなくなりになる――これはきわめて例外的でございますが、定年でおやめになる事例が一番多いわけでございます。そういたしますと、前会申し上げましたように、つまり誕生日がまいりますと定年でおやめになるということになりますので、四月に充員いたしましても、それから一年間に逐次また欠員ができてまいる、かような関係に相なるわけでございます。今年度におきましても、昨年の四月には、完全にとは申し上げられないわけでございますが、相当程度にほぼ充員いたしておったのでございます。それから一年間定年で次第におやめになって、ただいま御指摘になりましたようなここに七十一名という欠員ができたわけでございます。お手元の表は昨年の十二月一日現在でございますので、それからさらにまたこの三月末までにはなお若干の欠員がふえるわけでございますが、そういうものがまとまりましてある数になりますと、それに対しまして、私どものほうといたしましては、司法研修所を三月卒業いたします者の中から裁判官志望が七十名足らずあるように聞いておりますので、そういうものでまず第一次的には埋めるわけでございます。それからまだそれでも十分でない部分が若干ございますが、御承知の簡易裁判所判事につきましては特別選考というものが認められておりまして、その選考試験をいたしまして補充する、かように考えておるわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 それは答弁になりませんよ。定員というのは年間を通じて認められておるのであるから、年度末ごろに欠員になるものは角度初めに定員以上に雇用しておかなければ、われわれが法として実行を命じるという場合においては、あなたのほうのやり方が悪いのであるから、もしそうであるならば年度初めに欠員を見越して実行定員をふやしておかなければ意味がない。年度初めには大体パーパーでありますからけっこうでございますというのはいささかお粗末な御答弁だと思いますが、いかがですか。
  8. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 裁判官資格が非常に自由でございまして、そのつど採用できるというような状況でございますと、確かにいま横山委員お話方法がとれるわけでございますが、結局司法試験を通りまして二年間修習を経た者という条件がございます。若い人を採るとすればこの卒業生に待つほかはない。いまお話のような点は、弁護士さんから入っていただくという方法ではまた事実やってもおるわけでございます。これは何どきでも別に時期を問わないわけでございますので、欠員ができますればすぐまた弁護士さんから入っていただくという方法は従来ともとっておりますし、今後も努力いたすわけでございますが、実際問題といたしましては、なかなか弁護士からお入りいただけないわけでございます。これは給与問題その他がからんでくるわけでございますが、そういう関係で入っていただけないものでございますから、実際問題として年間の途中に弁護士から入っていただくということにそう多くの期待はかけられない。でも実際上やはり十人程度の方は毎年入っていただいておるわけでございますが、そう大きな期待はかけられない実情でございます。それから年度初めに定員以上に採っておいて年間を通じてそういう定員になるようにするということは、これはちょっと法律のたてまえ上できませんので、その点はいたし方ないわけでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 何ですか、そうすると、私の言う年度初めに欠員を見越して定員よりも多く採っておくということはいけないことであるとおっしゃるわけですか。
  10. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 裁判官として採っておくわけにはいかないわけでございます。定員以上に採っておくということはできないわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 何法で、どういう規定でそれがでそれができないのですか。現行定員がたとえば百名だとすると、実行定員として百名をオーバーして採っていくということは違法であるとおっしゃるわけですか、なぜです。
  12. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは一般職の場合のように事務官と事務雇いとか、あるいは書記官書記官補というような場合には、ある程度相互の定員を流用すると申しますか、そういうことがある程度認められておるわけでございますが、裁判官につきましては、いま御審議をいただいておりますようにこういう独立の法律でできておるわけでございます。一般職のほうはこれもただいま御審議いただいておりますように、第二条で裁判官以外の裁判所職員の員数というように総数で押えられておりますので、総数をオーバーいたしません限りはある程度その間に流用ができるわけでございますが、裁判官につきましては、ぴたっと第一条ではっきり区分されておりまして、これをこえることは許されておらないわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 わかりました。そうしますと、あなたのほうの増員要求はこういうふうに解釈してよろしいか。増員がいつも満たされるということはあり得ないから、かなりの欠員が通常できるものと予定をして、本来これだけの増員は要らないけれども実行定員というものは常にそれを下回っておる、その下回っておる水準で業務が施行し得るという判断をしていらっしゃっての増員要求でございますか。
  14. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 そういう趣旨ではございませんので、私どもとしては定員一ぱい充員する、また充員する自信を持ってその努力もして、事実また充員もしておるわけでございます。ただ、その後たとえばおなくなりになったときに、それを補充するという関係におきましては、一般職の場合のように資格が非常にやわらかい場合にはすぐ、たとえば六月に一人なくなられた、たとえば自動車運転手が死んだ、それではまたそれを補充する、こうできるわけでございますが、裁判官の場合には、おなくなりになられた、すぐそれでは裁判官を補充しようといたしましても、結局は給源弁護士さん以外にはない。弁護士さんに声をかけてもおいでいただけないとやむを得ず欠員でしんぼうせざるを得ないということでございまして、たてまえはむろん常時定員充員しておるというたてまえで、そういう努力をいたしております。ただ、いま例に引きましたように、自動車運転手欠員になった場合はすぐ補充しやすいわけでございますが、裁判官の場合には、結局給源弁護士検事しかない。検事から来ていただくことはほとんど不可能でございますし、弁護士さんに声をかけてもほとんど来ていただけない、欠員のまま年度末まで待たざるを得ない、こういう実情でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 わかりましたが、そんなうまいことを言うたって、努力をするのは当然だけれども、実際問題として右から左に補充ができないとするならば、常に年間を通して定員一ぱい一ぱいということはあり得ない。そういう考えに立って、定員要求をするときには裁判官定員はかくかく、実態としてこういうことだから、いわゆる余裕定員というものを要求するということが実態に合う要求やり方ではないか、少しそういう点なんかも、そう言っては失礼ですが、各省に比較いたしますと謙虚過ぎるではないか、もう少し実態に合わせた仕事をしなければだめではないかという感じがいたします。これは意見ですから、あとでまとめて政務次官にお伺いをいたしたいと思います。  その次は、家庭裁判所いろいろ話を聞きましたら、まず少年院へ送ることについては差し控える雰囲気があるということであります。これはまことに遺憾な話で、少年院へ送るべき者は送るというのが正しいのでありますけれども少年院へ送っても、いまの施設、それから職員の少ないこと、いろいろな事情からいって、法の所期する――少年院は法がどこまで所期しておるかそれは別としても、今日の少年院は、法の目的とする矯正教育を授ける施設とするというような趣旨に十分でないという判断をしておるのでありますが、率直に本庁として、陰にひそんだ裁判官のこれらの判断について、現状少年院についてどういうふうにお考えでございますか。
  16. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これはたいへんむずかしい問題のように私どもも見受けるわけでございますが、一般にこういう少年をどういうふうにして処遇いたしてまいればいいかということは、従来からもいろいろ学者の間でも議論されておりますし、また実務家の間でもいろいろ検討されておるところでございまして、厳罰的な方向に持っていくか、あるいは保護的な方向に持っていくかということはいろいろ議論があるように承知しております。また保護的にいたすといたしましても、ただかわいがるだけでは少年の将来のために好ましいことではございませんので、結局、保護するにしても、ある程度そこに監督なり拘禁と申しますか、そういう関係施設なり処遇というものが必要であろうと思います。その際におきまして、ただいまお尋ね少年院というものが具体的に実際に現在少年に対してどういう効果をあげておるかということになりますと、これはまことにむずかしい問題でございまして、それぞれ少年によりまして、そういうところへ入りまして矯正されますことによって非常にりっぱになってまいる場合もあるようでございますし、またその反面におきまして、少しことばは妥当でないかもしれませんが、何らかの色がつくような形になる場合もないではないようにいろいろ聞いておるわけでございます。そうでございますので、結局、具体的な少年について、これは入れたほうがよくなるであろうかどうかというようなことの見通しをつけて送致をするわけでございますが、その判断に場合によっては誤りがある場合もないとは言えないかとも反省せざるを得ないわけでございます。結局一般的に申しまして、少年院に送ればいいか送らないがいいかということは、やはり具体的の事犯によってきめざるを得ないことで、一般的にはちょっと申し上げにくいのではないかと思います。あるいはお尋ね趣旨にぴったりしておらないかもしれませんが、一応その程度に申し上げます。
  17. 横山利秋

    横山委員 私の言っている質問とあなたの答弁と合わない。私が言っているのは、裁判官判断が正しい、これは少年院へ送るべきであると判断したときでも、裁判官の心理の中に、少年院が法の命ずるような施設、それから職員の数等が充実しておらないから、送るべきだと思うけれども、あそこへやったらいまだめだという判断を変える、そういう雰囲気があるのかというのが私の言っている質問の要旨です。
  18. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 私もそれほど遠いことを申し上げたつもりではなかったのでありますが、少年院に送るということを白紙的にきめまして、そうして現在の少年院というものをまた考えあわせて、やはり送らないでおこう、こういう考え方は必ずしもしないわけでございます。むろん、少年院というものがもっともっと充実し、あるいは職員ももっともっとふえまして、そうして理想的な形になってまいりますことは、われわれとしても大いに希望しておるところでございますが、これにはいろいろな関係もございましょうし、現在の時点においては現在の状況でやっていただくよりしようがないという、そういう前提に立ちまして、そういう少年院を実際問題として前提として考えまして、そうしてこの少年少年院に送ったほうがいいであろうかどうかということを考える。そういうふうな考え方の経路をとるわけであります。その理想的な少年院というものを、いまお話しの点は全然別個に頭に描きまして、もしそういう理想的な少年院があるとすれば送るであろうけれども、こういう御趣旨であろうと伺ったわけでありますが、これはそう申しましても、実際問題としては、それはそれなりに国のそれぞれの実情に適した少年院であらざるを得ないわけでございますから、一そうりっばになることはむしろ希望いたすわけでありますが、現在の少年院というものを考慮に置きながら、この少年は送らないほうがいいであろうかどうか、そのときには、やはり現在の施設であればあるいは送らないほうがいいであろうというような結論に達する場合もむろんあるわけでございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 何も理想的な少年院とまで言っておらぬ。法の所期する普通の少年院と言いますと、施設であり、それから職員であり、それから余後の条件である。だから普通のところまで上げなければならぬということを言っている。その次は家庭裁判所少年係判断審判が誤っておる。これは私もしろうと質問ですからそのように御存じ願いたいのですが、私が調べに行ったときに一つのケースがあります。それは家庭裁判所の特定の名前を出しますとなんでありますが、私との雑談の中では、これは先生のおっしゃるように誤審かもしれませんということを、きわめて個人的ではありますが言ったわけであります。問題の事案は輪姦であったか和姦であったかということなんであります。あとになって女の子の事情を客観的に調査をした人がありましたが、その人は和姦であることを言ったわけです。ところが、輪姦として処置をされて少年院へ行ったわけであります。気の毒だ。和姦にしろあまり感心することではもちろんないのでありますが、しかしながら、間違った感じがいたしたのでありますから、それはどうなるのだ、もし誤審であったらどうなるのだと言ったら、行った以上は少なくとも十カ月は帰れませんね、普通一年ですな、こう言うわけです。そうすると、本人は行っちゃった、家庭も、みっともない話でありますから、まあまあということになってしまった。ということは、家庭裁判所がもし誤審であったということになりますと、一体どういうような異議申請なり、措置がございますか。
  20. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは少年法の三十二条で抗告というものが認められておりまして、それで家庭裁判所の決定に対しまして、法令の違反あるいは重大な事実の誤認等がございますときには、その本人とか、あるいは法定代理人であるとか、あるいは付添人から抗告することができることになっております。この付添人と申しますのは、限定はされておりませんが、多くの場合は弁護士の方でございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 わかりました。家庭裁判所雰囲気及びそれに調査を受けた家族の着たちにおいては、輪姦であったか和姦であったかということについてあくまで争うということは、まあなかなかできないものでありますから、何とかそういう誤審云々でなくて、こういう事情もあるからすみやかにひとつ責任をとるから少年院から帰してほしいという陳情であったわけであります。しかしながら、一たん入った以上はもう半年ないし十カ月以内はとても全然だめなんです。それはもうそういう状況をしんしゃくするということは、あなたの言うように抗告以外にはないんだからだめです。こういうことになっておるのです。この点につきましては、むしろ調査をいたしました警察官、それから家庭裁判所における審判が、私はいささか不十分な点があるということを認めざるを得ないと思います。それにはまた別の意見も持っておりますが、時間の関係で次へ進みます。  今度は、矯正管区から法務局からあるいは拘置所からずっと回りまして、少年鑑別所へ行きました。鑑別所へ行って最初にしろうと痛感しましたのは、どうしてこういう名前をつけるんだろうか、鶏の雌雄鑑別ということが日本ではもちろん全世界に行き渡っておりますから、鑑別というとすぐそのことを感ずるのであります。どういういきさつで鑑別という名前を引用されたか知りませんけれども、これはもうすみやかに名前を改正する必要がある。ほかの方に聞いてみましたり諸外国の例を見ましても、かかる人権を侮辱したような名前をつけておる国はないのでありまして、いろいろ幾らでも名前のやりようがある。今日国の重大なる問題として青少年問題が議論されておるならば、まっ先にまずその名前から変える必要があると痛感をいたしました。この点についてはいかがでございますか。
  22. 大澤一郎

    大澤政府委員 われわれ平素聞きなれております者におきまして、特に奇異な感じはいままでしていなかったわけであります。そうでない一般の方々からさような鶏の雌雄鑑別法というようなふうに連想されるということを伺いまして、この点考えてみたいと思うわけであります。決してさような意味合いで考えておるものではないのでありまして、いわゆる心理学なりの学問の分野で資質鑑別ということばが学問的に使われておりますので、少年の資質鑑別という意味合いから鑑別所という名前がついたものと考えるわけでございます。その点なお適当なことばということがございますれば、一応考えてみたいと思っております。現に監獄法には、現行法律では監獄となっておりますが、実際は刑務所という通称になり、その刑務所ということにつきましては、従来監獄が非常にいやな響きを持っておったのが刑務所と直って一応ことばの音からくるいやな感じが抜けたわけでありますが、最近その刑務所ということばすらいやな感じを連想させるということで、この呼称につきましていま研究中でございます。同様な意味合いからいろいろ検討いたしたいと思っております。
  23. 横山利秋

    横山委員 第二番目に痛感いたしましたことは、鑑別所というところは何をするのであるかという点について、私どもにはよくわからなかったわけであります。鑑別所へ入っていろいろその仕事を聞いてみますときに、また雰囲気を見て直感いたしましたことは、これは拘置所だな、雰囲気及び入ってくる少年たちの気持、それからまあ職員諸君の立場を云々するのはいやでありますから言いませんけれども、大体の感じとしては、これは拘置所だなという感じをぬぐい切れないのであります。それは所内の少年たちの挙措動作、それから素性、それから習癖等から見ますと、あまりにも拘置所的性格が明確だ、明瞭であるという感じがいたします。本来少年院法に定められております第十六条の少年鑑別所趣旨といたしますものは「家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分の執行に資するため、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基いて、少年の資質の鑑別を行う施設とする。」 こう書いてある。ここには拘置所的性格は、「送致された者を収容するとともに、」という「収容」という意味においてあるだけである。この「収容」ということが矯正するという意味を一体含んでおるのであろうかどうか。少年を集めて、いやしくもまあ疑いをかけられた立場にある少年であるならば、そういう雰囲気が多少あっても差しつかえないとは思うにしても、あまりにも拘置所雰囲気ではないかということを痛感するわけであります。そこで私は、少年院少年鑑別所の区別というものが現状不明確であって、十六条にいう少年鑑別所が本来少年院法の中に入っておること自身に問題があるのではないか、今日鑑別所があれだけの仕事をしており、そうして一般社会からも、いわゆる少年の相談なり少年の資質の見定めなりの要求をあれだけたくさんされておる今日においては、少年院法からはずして、そうして少年鑑別所名前を変えて、指導センターなり、あるいは何か適当な単独立法をもってこの趣旨を生かすべきではないか、こういう感じがいたしたのでございますが、いかがでございますか。
  24. 大澤一郎

    大澤政府委員 少年鑑別所拘置所雰囲気があるという御指摘でございますが、なるほど現在の少年鑑別所は資質鑑別と同時に、やや刑事事件におきまする勾留の性格を帯びておるということはいなめない事実でございます。現に少年法で、検察官が少年被疑事件について勾留する場合は観護措置決定を請求されるという規定もございますし、現在の少年鑑別所はさような意味合いにおきまする未決勾留的な役割りを果たしておるわけでございまして、これは制度的に申しましていろいろ議論のあるところでございます。また、われれわれといたしましても、少年鑑別所につきまして、それぞれ少年鑑別所としての独自の作用を営む必要がございますので、現在の少年鑑別所の組織あるいはその運営につきましても単独立法ということを考えまして、少年法あるいは少年院法からはずしまして別個の独立立法体系をもってその内容をその性格に合った正確なものにしたいというので、作業中でございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 その次に感じました点は、家庭裁判所調査官が個室で調査をしております。その一人の少年を、また別な角度で少年鑑別所の技官ですかが調査をしておる。一人の少年裁判所の人と鑑別所の人とが同じように――まあ同じようなことではないかもしれませんけれども、やっておる。何でそんなむだなことをするのかというのがしろうと意見であります。私は常識的に、少年鑑別所がまず少年の資質をいわゆる鑑別をして、その結果を裁判所へ持っていって、裁判所がそれをもとにしてさらにそれに間違いがないか、つけ加えるべきものがないかということをやるものだと思っておったんです。そうしたら、そうでなくして、同時に並行してやっておる。そうすると、しろうと意見としては、それじゃ少年鑑別所よりも裁判所のほうが上級なんだから、あなた方が一生懸命にやったことはどのくらいなパーセントで通るんだと言ったら、数字を出してきまして、相当パーセント私ども意見が通らない、鑑別の結果が受け入れられないということなんです。それはしかたがないにしても、鑑別所がやっておるものを、結論も出ないものを何で家庭裁判所がやらなければならぬのかということについて非常に奇異に感じたわけであります。どうせやるんだったら一緒にやったらどうだ、そして調査官と鑑別所の技官とが合議して、家庭裁判所裁判官の最後の決断を受けたらどうだ、意見が合わなければ、意見が合わないままにお話し合いをして、私は少年院へ送るべきだ、私は送らないというぐあいにしてやったらどうか、こういうのでありますが、そこに少しどうもなわ張り争いというようなものが見られてしかたがない。そういう機構になっているんだからと、こう言うのでありますが、これは尋常普通のことでありますか、あたりまえのことでそういうことになるわけでありますか、私の意見しろうとでだめですか。
  26. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず裁判所側から申し上げたいと思いますが、これは確かに私どもあそこに参りまして、そうしてあの調査官がやっております部屋と技官がやっております部屋とございます。そういう状況を見ますと、決していま横山委員のおっしゃいましたしろうとの疑問ということでなくて、私ども――私も少年院法はそれほど詳しいわけではございませんので、若干しろうと的なところがあるわけでございますが、そういう印象を受けるわけでございます。ただ、これはいろいろ詳しく御説明申し上げませんと御理解いただくことがむずかしいかと思いますが、結局ごく大まかに申し上げますと、まず、調査官が調べております観点と、それから技官がお調べになる観点とは一応違うわけであります。これはその方面のことばで申しますと、調査官は社会調査というふうにまあ俗に呼んでおりまして、それから鑑別所の技官がおやりになるのは、これはいま御指摘になりました心身その他の状況鑑別、こういうふうに呼ばれておりますが、もう少しこの内容を御説明申し上げますと、調査官のほうは、その本人自体ということもございますが、同時に、たとえば本人家庭環境がどうなっておるか、あるいは本人自体につきましても、本人の過去の生活歴がどうなっておるかというようなこと、それからさらにどういう非行なり事実があったかというようなこと、つまりそういう意味の非常に幅の広い調査をするわけでございます。鑑別所の技官のおやりいただきますのは、どちらかと言いますと幅が狭くて、そのかわりかなり深い調査、つまり精神鑑定と言いますか、鑑別と言いますか、そういう方面の、つまり本人の精神状況ということに非常にしぼりまして、そのかわりそこを医学的に非常に深く専門的にやっていただくわけでございます。そうして今度調査官のほうはどちらかといいますと幅広く、つまり過去どういう生活をしてきたのか、あるいは本人家庭はどうなっておるのか、あるいは兄弟はどうなっておるか、それからどういう行動を常時とっておったのか、最後にどういう非行があったか、ずっと本人を取り巻きますところの社会的環境と言いますか、そういう点を非常に幅広く調査するわけでございます。それでその二つの調査の結果――この間にむろんいまお話しのございましたように連絡もいたしております。たとえば調査官の調査の結果でこういう先祖があるんだというようなことは、これは技官がお聞きになりましても当然おわかりになることでございましょうが、いろいろ調査官の調査の結果は技官のほうに連絡し、また技官のお調べになっておりますところを中間的にも伺っておるようでございますが、最終的には、この鑑別所の技官の鑑定、鑑別の結果と、調査官の社会調査の報告の結果と、それを家庭裁判所で総合いたしまして、そこで裁判官が最終的な結論を下す、つまり両方から出てまいりましたものを裁判官のところで総合して判断を下す、こういうふうな仕組みになっておるわけでございます。この仕組みをもっと施設の面でも端的にやるといたしますれば、そこに入っておりまする少年を一々家庭裁判所調査官室のほうに連れてきて、その調査官室で調べれば、その点は機構上は非常にはっきりしたようにもある意味ではなるわけであります。しかし、これはまた非常に、たとえば鑑別所の護送の手間をとらすというような関係もあって、むしろ調査官があそこに出向いて行って調べたほうが比較的人手のむだが省けるという意味で、どちらかと言いますと、なわ張り争いということでなくて非常に協調いたしまして、便宜鑑別所施設をお借りして調査官が調べておる。これは非常になわ張り的に言いますれば、調査官のほうに連れてこい、こう言えばいいわけですが、そうしますれば鑑別所のほうでも非常にたいへんであろうというようなところから、向こうへ出向いて行ってやっておる、こういう実情でございます。しかし、その間にさらにもっといろいろ総合的な方策を講ずるということは当然私どもとしても考えなければならないところで、いつも法務省のほうと御連絡はいたしておるわけでございますが、現在の実情は一応そういうことになっておるわけでございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 理屈を言えばもっともらしいけれども、受けるほうの立場に立ってごらんなさい。少年側の立場でいえば、同じことを聞いておる。これは技官の人は鑑別所で日常接しているのですから、鑑別所の諸君だって、家庭がどうの、あれがどうのというのは、調べるうちにちゃんと聞いておるのですよ。同じことを今度はこっちの人、今度はこっちの人というて、場合によれば少年もめんどうくさくなって、さっき言ったじゃないですかという話になるわけです。やるならば同時両方一緒にやったらいい。あるいは合議してやったらどうだ。もしそういう調査官が必要ならば、家庭裁判所から移して、少年鑑別所調査官を置いたらどうだ。こういうことも、めんどうくさくなくすなおに言えば言えるわけです。ですから、どうも受ける少年側からいってもおかしな話だ。それから鑑別所の技官の立場からいうならば、自分たちが一生懸命やったものは一〇〇%は受け入れてもらえぬ、ただ鑑別という狭い視野だからほかのことを考えてはだめだというならそれでもいい、いいけれども、自分たちの結論を見ぬうちにじゃんじゃん調べるのはいかがなものだろうか――こうは言いませんよ、諸君は私には。言いませんけれども、パーセンテージを見て、なぜ鑑別所の技官の出した結論が家庭裁判所で通らないかということをいろいろ聞いてみますと、そういう雰囲気がどうしても出てくる。自分たちも鑑別のみならずいろいろなことは知っている。その中に、知らなければできませんよ、こういう気持ちがある。この点について私は大いに改善すべき点があると思う。  その次に感じました点は、まあ区別はしておるものの、いわゆる悪質者と全く軽微な者との違いが明確でないというふうに考える。少年たちにしてみれば、練鑑帰りだというて肩身を広くするやつと、全く恥ずかしそうな顔をする者とあるそうですね。その練鑑に行ってきたということ自身、少年たちに対して非常な心理的影響を与えることはいうもおろかなことであります。だから私は、まず名前を変え、拘置所的性格も変える。単なる交通違反、と言っては交通違反に対する認識の問題があるからなにですが、人を殺傷したとか非常な悪質なことをした少年鑑別業務と、単なる軽微なもので鑑別所へ行った者との少年の区別というものは、もっとはっきり違えてもいいのではないか、こういう感じがしてならないのでありますが、その点はどうお考えでありますか。
  28. 大澤一郎

    大澤政府委員 御指摘のとおりに、鑑別所に入って箔がつくというような、いわゆるぐれん隊の仲間というものもございますし、またそれへ入ること自体非常な精神的ショックを受ける、偶発的な犯罪で鑑別所に収容せられたために大きなショックを受け、またそこで悪感化を受けるおそれがあるということもわれわれ十分考えておるところでございます。現在ではさような少年を、まず入所いたしますと二日間、それぞれ一人独居室に収容いたしまして、それぞれの調査をいたしまして、さような非常に悪質なものと申しますか、さような者と、それからほんとうの初犯で偶発的なもので、まださような悪感化を受けていないという者との二つに分けまして、それぞれ別個のむねに収容しているわけでございます。しかし、そのボーダーラインになりますと、そこらの判定というのは非常に困難なことでございますが、われわれといたしましては、一応それらのものを大きく二つに分けまして別個の処遇をするというふうに考えておるわけでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 なるほどむねは違うだろう。なるほど一応の区分けはしておるだろう。しかし、あなたもごらんになって御存じかと思いますが、区分けをしておるというような性格で区分けをしておるのではないのです。部屋が違うだけであります。それは職員の皆さんから言うならば区分けをしておるとおっしゃるが、私は、あれは区分けをしておるという立場ではないと思っております。思い切って区分けをすべきだ。そのためには、施錠の方法も一緒なのでありますが、そういうようなちょっとしたことの少年に対して、一々かぎをかって、そうして二重の錠がなければその部屋に入れないというようなことは、私は断じてすべきではないと思う。私は、おりしもきょうの朝刊を見まして、小田原の少年院長さんがマラソン競走に少年院の選手を出場させたとか、あるいは剣道をやらせておるとか、いろいろな苦心談が新聞に掲載されておりまして、非常に感を久しゅうしたのであります。単に少年院なり鑑別所職員、担当者のみならず、皆さんのほうでも、そういう気持ちをもっと法の中に、機構の中に生かすべきではないかということを新聞を見ながら痛感をいたしたのであります。この際ひとつ、この内部の少年の扱いについて格段の改善をすべき点が多いと思いますが、どうお考えでございますか。
  30. 大澤一郎

    大澤政府委員 ただいま小田原少年院の実例を御指摘願ったわけでございます。少年院におきまして、われわれ少年指導訓練にあたりまして、それぞれの少年の資質その他によりまして分類をいたしまして、さような形で、小田原少年院のような形で訓練をしていくという部類のことも、やはりそういうところに一カ所に集めましてその処遇をする。しかし、中にはおとなそこのけの凶悪な犯罪を犯した少年がある。また、それらが外部に出ていってまたそのような犯罪を犯す危険がある少年もございますので、その者は相当戒護力のある少年院に入れて訓練をするというふうに、その少年の犯罪あるいは素質等に応じまして処遇をしていきたいという考え方少年院はいま全国各管区ごとにさような分類をいたしまして処遇をいたしておるわけでございます。  鑑別所につきましても同様なことを考える必要があるのでございますが、大体収容期間が二週間から二十日間という程度でございます。その間、資質鑑別に大体いっぱいいっぱいの時間がかかっておりますので、生活指導というような面が第二になるわけでございます。しかし、御指摘のように、さような偶発的な少年であり、また犯罪歴がないというような者につきましての鑑別所のほうの戒護の状況というものにつきまして、さらに検討いたしたいと思う次第でございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 次は、鑑別所を回って所長以下職員諸君にこもごも意見を聞いたのでありますが、これは私が社会党だから当然言うようにお考えになるとまことに迷惑千万な話でありますから、そのつもりで聞いていただきたいのでありますが、作業の実情が、家庭裁判所から少年が送られてくるのは大体五時前後だ、それから着がえをさせて、いろいろ話をしてやると、大体六時、七時、八時ということになるのが恒常的な業務である、こう言うのであります。まあ毎日毎日でもなかろうと言ったのでありますが、いや、ほとんどこのごろの状況はそういうものなんです。他の依頼もありまして、とてもわれわれとしては普通の時間に帰るということは考えられませんと言う。それなら超過勤務はどうかと言ったら、月に大体百時間以上やって、もう予算をもらったら割り当てです。だから、自分が何時間やったかということ以前に、予算がきたらそれをみんなで仲よう――仲ようといったって三割もないのでありますが、仲よう割り当てるのが普通です、こう言うのであります。普通の超過勤務というものは、特別に本日超過勤務があるから超過勤務をするというのが普通でありますが、恒常的業務として七時、八時になっておるものについて、そういう割り当てをやらせておるということは、これはまことに私は、給与法の立場からいって遺憾千万だと思っておる。あなた方はその事情を御存知であるか。御存知であるならばなぜ改善がされないのか、この際はっきりひとつお答えを願いたいと思う。
  32. 大澤一郎

    大澤政府委員 この問題はひとり少年鑑別所だけの問題ではございませず、全国矯正施設にわたる問題なのであります。通常の事務職員につきましての事務というものは、超過勤務の状況等から見まして、必要ないときには直ちに打ち切って翌日まで持ち越すということができるのでありますが、いやしくも人を扱っている以上は、そのつどいかなる事態がありましても処理していかなければならぬというので、われわれといたしましても、所内におきます動作時限を常に検討いたしまして、職員の出勤につきまして早出、おそ出あるいは中おそ出というようなものまで認めまして、それぞれ改善を加えまして、勤務が過労にならないように努力しているわけでございます。  特に少年鑑別所につきましては、職員一人当たりの担当数が、全国平均で見ますと一・七人であります。刑務所あるいは少年院等の三人半から四人に比べますと、非常に負担率が低いのでございます。ただ、ここで問題になりますのは、少年鑑別所家庭裁判所等にそれぞれ付置されなければならないような状況にございますので、全国的に分散しておりまして、数が五十カ所あるわけでございまして、それに配分いたしますと、ある施設では少年が二人か三人しか入っていないというところにも、最低数の職員を配置しなければならない。そして多いところには勢い勤務過重になってくるというような状況であるのであります。そこで、しからば人員の配置、配置転換ということ、定員の適正な配分ということを考えてみるのでございますが、家庭裁判所から少年鑑別所に送られてまいります少年の数が、ある地方では常に一定しておるところもございますが、あるところは非常に多くて、あるところは非常に少ないというふうに、その数が一定しませんので、定員配置が非常にむずかしいという状況にあるわけでございます。したがいまして、東京、大阪等につきましては、相当職員の勤務が過重になってくるということを考えておるわけでございまして、その点、長い間の定員と実際収容数と勘案しまして、東京、大阪には重点的に増員をはかっておるわけでございます。  それから超過勤務も、さようなわけでやむを得ずどうしてもしなければならない超過勤務でございますので、その支給を完全支給に近づけたいというように努力しておるわけでございまして、予算の面におきましても、一般の事務官庁は大体月八時間から十時間という超過勤務の予算でございますが、少年鑑別所につきましては一人当たり二十八時間の予算を、普通の二倍、三倍という予算要求いたしまして、順次増額されまして現在二十八時間までふえてまいったわけであります。ただし、これでもまだ完全支給とは言いかねますので、われわれとしましては所内の動作時限の合理化という点でこの点を解決していきたい、かように考えております。
  33. 横山利秋

    横山委員 大体法務省裁判所関係につきましては、私も多年の経験でありますが、労働運動という問題についてはあなた方の考えもあり、なかなか正常なかっこうではやれないか、あるいは、全然やれないかというような状況であります。しかしながら、だからといって放置をいたしておきますと、うっくつした気分が出てくる。そのうっくつした気分というものが、少年なり刑務所に入っている人たちに対して、どうしても当たっていくという気分になるか、あるいは他にアルバイトを見つけるか、何か人間というものははけ口が必要なのであります。したがって、今日法務省なり最高裁なりの関係のところの職場を回ってみまして感じますことは、もの言えるなら言えるようにしてやらなければならぬ。もの言うだけでも、人間というものはそれで一つのはけ口になるわけであります。ものを言うわけにもいかぬ、組合をつくるにもつくれない、また組合をつくったところでどうしようもない。だから組合をつくれば、今度は非常に先鋭的な立場にならざるを得ない。どっちかを選ぶ雰囲気というものが、私は法務省及び最高裁の関係職員の諸君の中には渦巻いておると思うのであります。あなた方は、役所が特別な役所であるからがまんをしてもらいたいということにいつも話がなっているのだろうと思うのでありますが、こういうような状況では、私はあまり長続きしないか、あるいは運営の実績というものは容易に上がらないだろうと思う。俗説でありますが、法務大臣になった人は落選するとか、法務委員は落選率が非常に多いとか、こう言われておるのもまことに私は、ずっと回って見まして、なすべきところあまりに多いにかかわりませず、これをみんなが一致してやらない。新米がそういうことを言っては失礼でありますけれども、あなた方の立場としてもなすべきことずいぶん多いのに、まあなんと貧弱な話ばかりが山積しておることよということを痛感するわけであります。これもまた意見でありますから、ひとつ十分にお考えを願いたいし、あと政務次官から総括的な御意見を承りたいと思います。  その次に、入ってみまして痛感いたしましたことは、道路交通違反の少年が非常に多いということであります。これは一体どういうことであろうか。一説に伺いますと、法務省としては少年の年齢を引き下げて、この際十八歳にしようという御意見があるそうでありますが、私はこれはとらざるところだと思うのであります。方法としてはいろいろあるだろうと思うけれども、直接の現場における私の気持ちは、こういう道路交通違反の少年につきましては、先ほど申した区別をすることも一方法であります。第二番目に考えましたことは、愛知県でも、県警や自動車学校と連絡をとりつつやっておるのでございますが、少年につきましては特別な交通訓練学校なり委託なりのことも一つ方法であります。それからまた、ある人の意見としましては、少年については特別免許制度にしたらどうかという意見もございます。いろいろ各方面の御意見はございますけれども、あなたのほうでは、何か伝え聞くところによりますと、交通事犯に関しては少年法の年齢を引き下げる、そういう御意見があるようでありますが、どういう考えでそういうことをお考えなのか、その点の経緯並びに今日のお考えを承りたいと思います。
  34. 桂正昭

    ○桂説明委員 ただいま御質問の点でございますが、道路交通違反の少年の数が非常にふえておるわけでございます。これは少年事件全体がふえておるわけですけれども、そのうちでも非常に著しくふえておると認められるのが道路交通違反の少年でございます。そこで、この道路交通違反の少年についての家庭裁判所における処分の状況をいろいろ見ますと、不開始処分が非常に多いのでございます。約八〇%というふうにお考えいただければいいと思います。そこで、そういう状況では野放しに近いのではないかという御意見があるわけでございまして、そういう角度で見てまいりますと、不開始処分になりました理由を見ていきますと、現在少年法で認めておりますところの保護処分の種類は、これは御案内のとおり少年院送致、教護院または養護施設送致、それから保護観察所の保護観察ということでございますけれども、それが交通違反の少年に対する処遇として適しないのじゃないかというふうな考え方があるわけでございます。そこで問題になってきますのは、これだけ多数の事件が起こってきて、それを野放しにという状態では困るわけであって、これに対しては何らか適切な手を打たなければならないということでございますが、それと関連して数が非常に多いということで大量処理ということが一つ考え方として出てくるわけでございます。そこでそういう大量処理にたえ得る方法ということで一つ方法として考えられたのが、新聞紙上等に出ておりました、検察官が先議権を持って刑事処分相当の事件につきましては家庭裁判所を経由しないで刑事裁判所に起訴するという方法でございます。それとあわせて、現在少年法では罰金刑につきましては、これに対して換刑処分と申しまして労役場に留置する言い渡しを認めていないわけでございますが、そのために、かりに少年を罰金刑に処しても、換刑処分がないために納めなくてもいいのだというような考え方が出てくるわけでございまして、そういうことでは困るわけだから、罰金を取り、かつ換刑処分を認めるという形にして実効のある方法をとる。これによって法律違反、進んでは交通事故の防止に努力したいという考え方でございます。こういう考え方と別に、ただいまお話のありましたように年齢引き下げという考え方があるわけでありますが、この考え方のもとは、免許につきましては、軽車両でございますと十六歳、普通の車でございますと十八歳から免許を与えておるわけでございまして、そういう免許を与えている以上は、これに対して責任をとるということを認めていいのじゃないか、こういう考え方でございます。こうした考え方につきまして私ども最高裁判所家庭局といろいろ話し合いをしておるわけでございますが、最高裁判所家庭局のほうの御意見としては、検察官が先議権を持つという形をとることは少年法の体系を変えるという形になって非常に好ましくないのだという御意見でございます。年齢を十八歳に引き下げるという点についても、これもまた同じような趣旨で好ましくないという御意見でございます。そこでこうした野放しといわれる状態を何とかなくす方法考えなければいけないわけでございまして、そういう点で、非常に多数にのぼっている少年を対象としながら、そうした野放しの状態をなくしていく名案はないかということで、さらに相談を続けているというのが大体の現状でございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 その問題についての私の意見も申し上げたいのでありますが、時間の関係で別の機会に省略いたしたいと思います。  そこで政務次官に、いままでの質疑応答を通じてあなたの御意見を聞きたい点がございます。私は、いままで少年に関する最高裁判所なり法務省に関する措置というものが、予算上にも、あるいは鑑別所を例にとっていろいろとただしましたけれども、きわめて不十分な点が多いと思うのであります。のみならず、これもまたしろうと意見でありますから、先輩各位にはひとつ御了承を願ってお話をしたいのでありますが、各省を回ってみまして感じられましたことと法務省関係との比較をいたしますと、裁判官あるいは弁護士あるいは非行少年というもので、一人一人の責任分野は明確ではあるけれども、総合的に協力して一つの問題を社会的にアピールをし、そして解決をしようとする雰囲気が非常に少ないセクションだなということが痛感をされました。これは業務実態からいって、裁判官は一国一城のあるじで独立をして仕事をして他に容喙をさせないとか、そこでその結果として孤塁にかたまるという雰囲気がある。裁判所なりあるいは法務省なりが、いいにしろ、悪いにしろ――悪いにしろと言っては語弊がありますけれども、全体的に一つのテーマを出して、それに向かってお互いに切瑳琢磨しつつ世論に訴えて問題をどんどんと推し進めるという雰囲気が非常に少ないところだなということを私は痛感をいたしたのであります。おそらくや、私が質問いたしましたような点は多くの方が質問をせられておる。あなたのほうも、もっともだ、そうしたいと思うと言われておると思うのです。しかし、言いまた聞きしたことが、しっぱなしに終わって、いつもいつも同じ質問が繰り返されているのではないかという気がするわけであります。一例を申して恐縮ではありますけれども、こんなことが一つの例になるならばと思って、やや思いつきのようなことでありますが、先般来感じておりました点を申し上げるのでありますけれども、各種の問題についてわれら与野党にかかわらず一致できる一つ雰囲気をつくり上げる方法は何かないものかと思っておりますけれども各省には大体いわゆる別系統の新聞があるわけであります。提案機関があるわけであります。私が法務委員になりまして、しろうとだから何か勉強の方法はないかと思っていろいろ専門員に聞いてみますと、むずかしいものばかり私のところに届けてくるのであります。しろうとに当面の問題がわかるものは何かないかと言ったら、そういうものはこちらのほうにはありませんというお話であります。もっともそういうことなんでありましょう。弁護士さんなり刑法なり何なりの理論的論争の問題で、どうも私どもしろうとにはよほど勉強しなければすぐにはついていけないような性格のものであります。しかし、現実に鑑別所なり少年院なりのいろいろの問題を解決いたしますためには、それは何にもなっておらぬのであります。そんなことを言っては失礼でありますけれども、むしろ、そのことが政治の場としては大事だと私は思うのであります。そういう意味合いで、私は思いつきでありますけれども法務省なり最高裁なり、あるいは別の民間団体なり弁護士なり、あらゆるるものを通ずるPR機構というものを考える必要があるのではないかということを痛感いたしました。これは思いつきでございます。私の聞きたいことは、各種のさまざまな欠陥なり是正しなければならぬ点があるにもかかわりませず、大きく推進をできないことは、何か協力一致これをやるというあれがないのではないか。この間ある弁護士さんに聞きましたら、大臣が、銭のない人が裁判をやる、その予算が足らぬので、五千万円か五百万円か知りませんけれども、何か今度予算をお出しになったそうですか、非常に評判がいいという話であります。そんなことくらい、まあ失礼な話でありますが、各省であるならばいまに始まったことではなくて当然にやっておるべきことではないか。何をいまさら自慢することがあるかと言ったのでありますが、横山さん、あんた認識不足だということだった。そんなことがたいへんな好評で迎えられておるならば、なさるべき多くのことがたくさんあるではないか。それをみんなで一緒にやる一つのムードづくりというものが欠けておるということが私のしろうとの得た結論であります。政務次官の御意見伺いたいと思います。
  36. 天埜良吉

    天埜政府委員 ただいまの横山さんのお話、実は私も法務政務次官になりまして、例に引かれました少年の非行の問題等について、そういうような点でもっと世間に訴え、世間と一緒になってこれを推進するような方法はないものかというようなことを考えたのであります。そういう点について全く横山委員に私も同意見でございます。これらの点については、そういう考えを持って十分に推進することのできるようにしたいということを考えておる次第でございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 これで終わります。いささか思いつきのようなことではありますが、私も実は社会党の教育宣伝局長をいたしておりまして、こちらのほうを例にとってのものの考え方のように思われるかもしれませんが、私がそれだけを強く主張したとおりになっても困るのであります。また、かりに実現をいたしましても、その運用なりあるいは法務省や最高裁との関係につきましても、多くの議論のあるところでございますから、これは一例として申し上げるにとどめたいと思うのであります。しかし、意見の分かれるところは分かれて大いによろしい。それを社会にアピールさせればよろしいのでありますから、問題提起のベースが前向きのところで何か社会に対しても問題提起をして、それによって大いにそれぞれがハッスルして、一致するところを推進をするという何かがなければ、各種のこれらの問題については、言うばっかり、聞くばっかりに終わるという感じを、私の率直な意見として申し上げたのであります。  以上で終わります。
  38. 小島徹三

    ○小島委員 関連して一言。先ほどの少年の交通違反の問題ですが、少年の交通違反の中に相当程度親の責任とか、あるいは雇い主の責任があるのが多いのじゃないかと思うのですが、一体少年の交通違反で、どの程度少年のつとめ人の交通違反があるのでしょうか、おわかりになったら聞かせてください。
  39. 桂正昭

    ○桂説明員 実は統計を持っておりませんので、あまり正確なことを申し上げられないかと思いますが、昨年の暮れに、私どものほうで交通違反少年の摘出調査をやったわけでございますが、そのときの統計等を見ますと、ある程度監督者、あるいは雇い主と言いますか、そういう人たちに責任があると認められる事犯が出ております。
  40. 小島徹三

    ○小島委員 そういう雇い主に対して責任をとらせる方法考えられないのですか。
  41. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 便宜私からある程度お答えさしていただきたいと思いますが、先ほど小島委員のお尋ねになりました、交通違反の少年の中にどの程度働く人たちが含まれているかという点でございますが、これは私どもも非常に関心のあるところでございます。正確な統計をいま申し上げるわけにまいりませんが、大体八割程度はいわゆる勤労少年でございます。よくマスコミなんかでいろいろ伝えられておるところを見ますと、いわゆるカミナリ族が横行して、あれがいわば少年の交通違反だという何となしの印象を与えておるのでございますが、実際はそうではございませんで、いわゆる勤労少年が非常に多数を占めておる。これもまた正確な統計は出ないわけでございますが、たとえば原動機付自転車という、非常にちょっとした手軽なものを乗り回した場合の事故、事故と言いましても結果にあらわれた事故ではなく、たとえばはっきりした免許を取らずに、そういうものをやったという式のものがかなりの多数を占めるわけでございます。そういう場合、かりに本人はそういうものに乗って出前に行きたくなくても、雇い主が言うものだからつい行っちゃった。こんなものはだれでもある程度乗れるものでございますから、そういう問題も、これも統計的には申し上げられないのでございますが、こういうものがあるようでございます。そういう場合に、家庭裁判所といたしましては、できる限りは雇い主とか保護者を呼びまして、そういう人たちに戒告を与え、あるいは誓約書を取るということをいたしておるわけであります。さらに進みまして、雇い主なり保護者を処罰していただくということまで本来は考えるべき問題ではないかと思うのです。この点につきましては、たとえば家庭裁判所と検察庁等と御連絡をしてやるという道があるわけでありまして、連絡しませんでしても、検察庁のほうでも自主的におやりになることも考えられるわけでありますので、また連絡することも考えられるわけでありまして、そういう点につきましては、将来とも十分連絡を密接にしてまいりたい。なお、制度的にもいろいろ検討してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  42. 濱野清吾

    濱野委員長 神近市子君。
  43. 神近市子

    ○神近委員 いま横山委員から練鑑のことが問題になったようですけれど、四、五年前委員長も御一緒だったかしりませんが、超党派で調査に行ったことがあります。最近の情勢を聞きますと、一歩も改善されていないということで、そのときも相当論議を呼んだと思うのです。一歩も改善されないような状態ということは、どういうことなのかということが一つ疑問点であります。  それから横山委員が繰り返し、しろうと見解だ、しろうと見解だということをおっしゃっていますけれど、この法治王国のようなところにはまり込んで、新しい空気というものの入り込むすきのないようなところに、やはりしろうと考えは十分御参考になさるべきだと私は考えるのでございます。私もしろうとという意味で、弁護士でもなければ法律の勉強をした者でもないから申し上げるのですけれど、なるべくたくさんのしろうとが出てきて、がっちりと固めていらっしゃるところに批判をする、あるいは批評をするということは必要なので、しろうとの言うことだからと思ってばかになさらないように、そして参考にもならない、何かかってなことをしゃべったというふうに考えないでいただきたいということを最初にお願いしておいて、私の同じようなしろうと質問に入ります。  この間刑事補償法の提案があったときに、私は、第一番に予算に盛られているところの金額が六百数十万とかいうような金額なので、びっくりしてその一問だけそのとき申し上げてみたわけでございます。そしてそれは予備費の中から出すというふうなお話があった。これは法務省自身の予備費の中からお出しになるか、それをたくさん出す見込みがあるという意味ではなくて、どういうふうにお出しになるか。刑事補償法を見ると、たいへん親切によくできているのですけれど、それでもいろいろ疑問のあるところが出てくる。その予備費というものは一体どういうような引き出しができるのか、ちょっとそれを伺っておきたい。
  44. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、法案の御審議に際しまして、お手元にお配りしました刑事補償法の一部改正に関する参考資料、これの第十一表にいままでの実績が出ておるわけでございます。これによりますと、昭和三十六年度におきましては四百九十四万七千八百円の刑事補償金が支払われておるわけでございます。予算は最高裁判所裁判所関係のほうに入るわけでございますが、三十八年度裁判所に入っております刑事補償金の予算は五百八十四万四千円というふうに出てきておるわけでありまして、今回一部改正法案が法律として施行されました場合には、金額が相当上がりますので、三十九年度予算におきましては一応千二百万円の予算を組み入れていただいておるような次第でございます。
  45. 神近市子

    ○神近委員 その参考資料の十表でありますが、十表のところの人員の点で、これは二十六年に一番無罪確定の人が多いのであります。そして三十七年になりますと、五百人足らず、二十六年には三千六百八十三人というふうになっております。そういうように無罪に確定する人たちが急に減ったということは、裁判が非常に公正に行なおれたということにあるのか、それとも終戦に近いほうに人権の問題がみんなに、裁判官の方にもその人権の問題が大きく作用して、こういうふうなたくさんの無罪の人を出したのか、そこらのことはどういうことからこういう大きな変化が起こってきたのですか。あまり長くないときにそう人員が少なくなるということはどういうところからきたのですか。
  46. 辻辰三郎

    ○辻説明員 この点につきましては、前回の当委員会におきましても、大竹先生から御質疑があったのでございまして、そのときは竹内刑事局長が参っておりましたので御答弁した次第でございますが、しかとした結論ということは出ないわけでございますけれども、まず考えられますものは、現在の刑事訴訟法が昭和二十四年に施行になっておるわけでございまして、従来の刑事訴訟法とたいへん立て方、考え方が変わってまいりまして、当時の検察官あるいは裁判官、特に検察官でございますが、どういう程度でどういう起訴をするかという起訴の基本的な考え方なんかにも相当まだ考えが固まっていなかった。多少問題があっても裁判所のほうに一応判断を仰ぐという意味で起訴をするという考え方もあるいはあったかと思われるのでございます。その後、刑事訴訟法も施行後十数年を経まして、この法律のもとにおける起訴のしかた、検察のあり方ということも固まってまいりましたことが一つと、それからやはり検察官そのものが十分法律になれてまいりまして、あるいは人員が除々にではありますが充実してくる。そういう結果、起訴が精選されてきたということがまず大きな原因ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  47. 神近市子

    ○神近委員 それで同じようなことなんですけれど、この中で三十六年、七年にいきますと、補償を請求する人が非常に少なくなるのです。急に人員が少ないし、また三十七年にはゼロになっているのですけれど、三十六年には百人以下になっている。請求するということも、みんなが自分たちの権利というものに考え方が非常に薄くなったというふうなことを物語っておるのじゃないですか。終戦直後は人権の擁護ということをみんなが非常に喜んでそれを迎えたけれども、あまり無視されることが多いので、これは補償を求めるということももうどうでもいいやというようなことになっておるのか。もう少し方角をかえれば、結局この補償をもらうというようなことをするよりはまあかせいだほうがいいという考えなのか、どっちにあなた方は考えていらっしゃいますか。
  48. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま御指摘の点でございますが、しかとした結論はこれも出ないわけでございますけれども、もともと刑事補償法のたてまえが、請求を待って、請求があったときに支給するというたてまえになっておりますので、やはり請求しない方が相当あるということに基因しておるということがまず第一点であろうと思うのであります。  第二点の、終戦直後においては人権の権利思想が非常に意識されて、その結果多かったのではなかろうかという点につきましては、私どもしかとしたそういう結論が見出せない、実情がわからないと申し上げるほかしかたがないと存ずる次第でございます。  なお、三十七年は統計が未集計でございますので、全然なかったというわけではございません。
  49. 神近市子

    ○神近委員 現在刑事補償は大体どのくらい請求が出ているか、おわかりでありますか。
  50. 辻辰三郎

    ○辻説明員 現在裁判所に何件係属しておるかは、私ども現在はわかっておりません。
  51. 神近市子

    ○神近委員 有名な事件で吉田石松という人、がんくつ王といわれた人がこの間補償をもらいましたね。あのときだれでも感じたことは、非常に金額が低いということ、五十年以上、人生をほとんどそのために奪われた人が、死の直前にただ四百万か幾らの金をもらわれたということで、みんな非常に心を打たれて、かわいそうだなということはみんな考えたのでありますけれど、似たようなケースがいま幾つか起こっているはずであります。そのために非常に長い間苦労をしたというようなケースが、目立ったケースが幾つか出ているように私たちは、感じられるのですけれど、それはあなた方のほうでは口にすることはできないのですか、どういうケースであるということは。
  52. 辻辰三郎

    ○辻説明員 この刑事補償法の請求は、無罪の裁判が確定しました後に請求が問題になるわけでございまして、かりに現在再審を請求中であるというような事件では、まだ刑事補償には至りませんで、再審の請求の結果再審が開始されまして、しかもその結果無罪になり、それが確定した、こういう場合にこの問題が起きるわけでございますので、いま御指摘のような事件があるかどうか私はっきりわからない次第でございます。
  53. 神近市子

    ○神近委員 私の頭にきているのは、おっしゃるとおりにまだ審理中で再審の過程にありますけれど、背、私どもがまだ女学生のときに大逆事件という事件があったのです。この坂本清馬という人はいま八十二歳なんですよ。かなり老衰しておられるから、あしたにもどうかというふうな老齢になっていられる。それがまだ再審が遅々として進んでいない。こういうことを考慮に――年齢だとかその人か送ってきたところの、これもほとんど一生でしょう、われわれが女学生時代からでありますから。ですからこれを考慮に入れるというような、再審のスピード化というふうなことはできないのですか。
  54. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまお尋ねの点でございますが、先般吉田老のときにも、当時の名古屋高等裁判所におきましては、御本人が非常に老齢であられるということを考慮しまして特別の計らいで非常に手続きを進めたというふうに、これは仄聞しておるわけでございますが、ただいま神近委員御指摘の大逆事件関係の事件につきましては、これは私、直接にいま詳細な資料を調べて持ってまいったわけじゃございませんが、聞いておりますところによりますと、東京高等裁判所では、その御本人の年その他も考えまして非常に審理を急いでおられるというふうに承知いたしております。具体的にどういうふうに期日がきておるかということまで申し上げます資料を持っておりませんけれども、当然そういう点は裁判官もお考えになっておやりになっておるものと考えるわけでございます。しかし、その結論がどう出るかということはむろん別問題でございます。
  55. 神近市子

    ○神近委員 この大逆事件が、日本の軍国主義時代に巻き起こされた非常に怪しげな事件だということはもう歴史的に証明されているのです。それで私はほんとうに親切な審理が行なわれるならば、これは無罪になるのではなかろうかというようなことをだれもかれも描いているわけなんです。それで万一これが無罪ということになったときに、この再審を請求していた人は二人でありました。坂本という人が本人であって、一人は相続人か何かの女の人がやっておる。万一これが無罪になったというようなときには、この二人には補償を請求する権利があるわけですね。
  56. 辻辰三郎

    ○辻説明員 刑事補償法の二条の二項にかような条文がございます。「死亡した者について再審又は非常上告の手続において無罪の裁判があった場合には、補償の請求については、死亡の時に無罪の裁判があったものとみなす。」こういう規定ございますので、あくまで理論上の問題として申し上げますと、再審請求中に、再審を請求いたしましたいわばなくなったもとの被告でございますが、なくなったあとに無罪という再審の裁判があったといたしますと、その裁判で無罪の裁判がありましたときに補償の関係におきましては死亡なさったというふうに考えまして、その相続人に補償の請求権が移る、かような仕組みになっております。
  57. 神近市子

    ○神近委員 このいま再審を請求している人は二人なんです。だけれども、このときは十何人か死刑になっていますよ。有名な幸徳秋水とか管野スガというような人もその中に入っている。この人たちはいま出てきていないのですけれども、もしこの二人がかりに無罪ということになったときに、あとの犯罪に参加したと思われて死刑になった人たちの遺族、その遺族はこれを請求するのにやはり再審を請求してからでなければできないのですか。それともそのケースがつくり上げであったということがはっきりした場合には、この人たちも無罪ということになるのですか、どうですか。ちょっとそれを。――いまお打ち合わせがあったようだけれども、あまりはっきり言うなというようなことだったかもしれないけれども、そういうあまりひきょうなことは……。私は非常な悪意で皆さんをいじめようというような気持ちで言うのでなく、国民がみんな疑惑を持っていることを解明したいので、私はあとからそれに食いついてどうするということはありませんから、はっきりお考えを述べていただきたい。
  58. 辻辰三郎

    ○辻説明員 再審の請求がありまして、再審のそれに対して開始決定がかりにあるといたします。そしてその結納無罪の裁判がある。こういうふうにいたしました場合には、その再審を請求したその者についての判断でございまして、再審を請求しない者につきましてはまだ判断がなされていないというふうに考えております。問題はその人、当該個人個人の再審事件の問題であると承知いたします。
  59. 神近市子

    ○神近委員 そうすると、その二人を除いたほかの人のほうなんですが、やはり遺族の人たちが相当困っていらっしゃるというふうなうわきを聞くのですけれでも、そうなると、この二人が無罪ということが決定すれば、ほかの人たちはまた特別にこれを遺族の人が起こさなければならないということになるわけですね。そうしてその場合、この二人のケースで事実調査が十分に行なわれていれば、わりに早く再審も済むということになるんじゃないですか。そういうわけにはいかないのですか。
  60. 辻辰三郎

    ○辻説明員 仮定論と申しますか、理論の問題として申し上げますと、やはり別個に再審請求をなさるべきものと思います。事実問題として、ただいま御指摘のように、その問題を事件にしてすでに審理がなされておるということでございますと、あるいは早く済むかもしれませんけれども、これは具体的な場合によらないと何ともお答えしかねることと存じます。
  61. 神近市子

    ○神近委員 いま横山委員質疑で、何か七十一名の裁判官欠員があるというようなことで、私、そのとき横やりを入れたかったのですけれども誕生日がくるたびに退任者が出る。この間、やはり訴追委員でも同じようなお方が一人お出になったのですけれどもね、最高裁の方で。その誕生日がきてということよりも、年度のかわりというようなとき、年度末とか年度の初めとかいうときに予想を立てて補充していく。それは法律を改正すればできるんじゃないですか、人員不足の問題も……。日本の裁判が長くかかるということは有名なんですよ。これをあなた方ががっちりと手を組んで改善して、もっと裁判というものを、ほんとうに国民のためを考えるならばスピーディにやるということが必要じゃないかということを私は考えている。それは裁判をしたらいいと言うと、必ず言われる、いやもう裁判に引っかかったらどろ沼に足を突っ込んだようなものでなかなか片がつかない。そういうようにあなた方は不信を買っていらっしゃる。それを何とか打開しようというようなことを法文化するとか、あるいは法律の改正に向うとかいうようなことを、だれも反対する者はないと思うけれども、その裁判の長くかかるということに人員の不足ということが原因なのか、あるいは日本の裁判制度の機構というものが帝国憲法時代の余韻をもって非常に不合理にできているのか、どっちとお考えになりますか。
  62. 津田實

    ○津田政府委員 ただいた御指摘定年が生年月日の前日、応当日の前日にくるということには、いまの法律の制度のもとにおいてはなっておるわけであります。御指摘のようにこれは一定の期日、たとえば三月三十一日ということにいたしまして、それ以後の定年の人は翌年の三月三十一日まで定年がこないというような立法措置をできるわけであります。その点につきましては、法務省といたしましても検討をいたしていないわけではないのでございますが、伸ばすという点と、それだけの期間判事定員を充足し得るという意味におきましては、確かに、そういう利点があるという面があるわけでありますが、一面から申しますと、三月三十一日なら三月三十一日に何十人かの判事が一斉に定年で退任をするということになりますと、そこにある種の混乱がないかというような問題につきましてもいろいろ検討を要するわけです。なるほど四月一日以後におきまして、新しく修習生から何十人かの判事補を迎えることができるわけですけれども判事補が直ちに従来の定年になる裁判官の補充として使えるわけではないのでございまして、そういう意味におきまして、定年をある一定の日にきめるということが、はたしてそういう問題についても欠点がないかどうかというようなことをいま法務省でも考えておるわけですが、この点につきましては最高裁当局でもお考えだというふうに考えておるわけでございます。  なお、裁判官充員が非常に困難であって、充員の見通しを考え増員の措置を毎年行なうようにしておるというのが現状でございます。したがいまして、根本的に裁判官の数をふやせれば、現状の訴訟手続のもとにおきましても、裁判の促進がある程度できることはもう間違いないのでございますが、先ほど来御議論もありましたように、やはり何と申しましても裁判官になり手が少ないということが一番問題であり、弁護士から裁判官になる人があまりないというようなことから、幾ら定員増加しても充員ができないというのが現在の実情でございます。したがいまして、これに対しましては、御承知のように内閣に臨時司法制度調査会が置かれておりまして、すでに一年半余を経過いたしております。ここにおきまして、いろいろな角度からこの問題を審議されておりますので、臨時司法制度調査会の結果によりまして抜本的な方策が講ぜられることを私ども期待いたしますし、その審議の結果によりまして、私どももできるだけの努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  63. 神近市子

    ○神近委員 ちょっとおっしゃったことに矛盾がありますね。この四月一日に新しく七十人、八十人というものを採用しても、それはかわることができないとおっしゃったけれども、それはそうでしょう。まだ未熟な人でありますから、すぐに使えないということはわかります。それならば七十人でもあるいは八十人でも欠員にしておいたら、それが効果があるかということをやっぱり比較なさらなくちゃならないと思うのです。  それからも一つ裁判官になりたがらないという理由の中に、いつでも給与が低いということが持ち出される。これはもう通則のようになっているけれども裁判官というものが非常に好ましい、そして人道的にもよい仕事ということになれば、何もその日の生活を考えなくちゃならない家庭の子供ばかりが志望するということでもないでしょうから、何か給与のほかに裁判官というものがいやがられる理由があるのではないかということが考えられる。さっきから法務官僚というのはどうもこちんとしていて、たとえば年功序列式にエレベーターを上るような垣根をつくっていらっしゃる。そのために有為な志望の人たちが集まらないのじゃないか。その点、その機構の中で言ったところでだめでしょうと思うのですけれど、一つも批判としてお考えになっていない。なぜ有能な青年が、弁護士のほうが金がもうかるということ以外に、裁判官を志望しないかということをやはりお考えになるべきだと私は思うのです。機構の中に若い俊才を受け入れるムードというか、あるいは気持ちというか、そういうものがあまりに欠除しているのじゃないかと私には考えられるのですけれど、これはしろうと見でございますから、おまえさん、それは違うよというようなことがあるならば承りたい。
  64. 津田實

    ○津田政府委員 確かに弁護士から裁判官になり手が少ない、あるいは司法修習生修了者は弁護士になる人が多くて裁判官あるいは検察官になる者が少ないということは御指摘のとおりであります。その理由につきましては、それが何であるかということにつきましては、やはり御指摘のとおりはなはだ複雑なものがありまして、単に待遇のみでないということは私どもも十分理解しておるのであります。先ほど申しました臨時司法制度調査会におきましていろいろ御議論が出ておりますうちにも、やはり裁判所なら裁判所の空気になじめないという意味において裁判官を志望しないのではないかというような御意見も相当あるわけであります。そういうような点につきましては、やはり私どもといたしましては、制度の問題もさりながら、やはり裁判所の制度以外の面のあり方というような面についても裁判所自体において考慮するところがなければならないというふうに考えておるわけでございますが、法務省といたしましては、制度の面でできる限りそういう弁護士にならないで裁判官になろうというような制度に改善していただきたいということが現在の考え方でございますが、抜本的なものにつきましては、先ほど申し上げました臨時司法制度調査会で十分結論が出されると思いますので、その結論を得ました上で逐次実行に移したいというふうに考えておる次第でございます。
  65. 神近市子

    ○神近委員 時間があまりないので、この問題はまた別のときに質問するかもしれません。  いま一つ、子供の問題がいま出ましたけれでも、これは新聞等でも御承知のとおり滋賀県の余呉村の子供たちの問題であります。五才と六才の子供が村じゅうを焼くほどの火事の火つけに見立てられて、そしてたいへんかわいそうな八年間を過ごしてきたという問題があります。これには幸いに私がつけたのだという犯人が出てきて、いまのところ、それを調査したところが、大体にこの岩間という男が真犯人ではないかということが警察で認められかけている。これもまだ最終的な決定でないから、仮想の上に立ってお尋ねしなければならない。なぜ私がしきりにこういう仮想の上のことをお尋ねするかというと、ここでは御披露しませんが、一、二同じ似たようなケースをかかえているのであります。一人はまだ服役しているというふうな状態で、それも何とか再審をお願いするというようなことになるのではないかと思うのでこれをしきりに気にするのですけれど、この子供たちが村八分で、一家族は敦賀に移住しております。その村を出るときに、村の人たちから非常にいじめられて、杉の木を百本、あるいは三反八畝の土地も村に提供して敦賀に出てきた。これは五つと六つの子供が罰せられてはいませんよ、もちろん罰することはできない。だけど警察が少なくともこれが犯人だということを発表したことが村の人たちのこういうようないきり立った態度を起こしたということで、これはだれが補償してやらなければならないか、かわいそうに、五つか六つのときには非常にいい子供であったのが、今日十四才になって非常に陰気なおびえた子供になっているということ、鑑別所の逆のケースでありますけれども、自由にされていても何かのどに引っかかったものがある。これはもしこの岩間という男が真犯人となって子供たちが無罪であったということがはっきりすれば、どこにこの補償を求めなければならないかということ。  それからもう一つ、これは裁判の問題でもお尋ねしようと思ったのですけれど、再審なら再審、あるいは拘留とか服役をさせて、新しい材料で無罪だというふうなものが出てきますね。その場合、その裁判長というものに対する評価というか、あるいは罰則というか、あるいは待遇の方面から、どこかで間違った判断をした裁判長に対して多少の罰というか、心理的罰か物質的罰か地位的罰か知りませんが、そういうものを加える規定があるのかどうか、いままでそういう場合をどういうようにやっていらしたか。これは非常に時間的にかけ離れた裁判なら、その人は――まだこの子供の場合は、その近くに警察官はいられると思う。それに対する扱い方というか、そういうものはあるのですかないのですか。たとえば大きな裁判で有罪ときめて、その人が無罪になったときに、裁判長に対する非難というものはいささかも行なわれていないのかどうか、それを承りたい。
  66. 辻辰三郎

    ○辻説明員 まず裁判所関係以外のことについてお答え申し上げます。  ただいま御指摘の滋賀県の火事の事件でございますが、これは岩間という被疑者でございますが、これにつきましては検察庁のほうで最近事件を受理いたしまして、現在この事件を捜査いたしております。まだ結論が出ていないわけでございます。したがいまして、ただいまのお話、仮定論として、かりに御指摘の小供さん二人が全然関係なかったということを前提としてお答え申し上げる次第でございますが、その場合に、これまた御指摘のとおり、この子供さんにつきましては有罪の裁判を受けたわけでもございませんし、身柄を拘禁されたわけでもございませんから、刑事補償の適用は全然受けないことになるわけでございます。それでは、そのほかに何か損害の賠償ということが考えられるかということになりますと、結局、国家賠償法というものの対象になるかどうかという問題でございまして、国家賠償法の対象になりますのは、当時この子供さんを調査した関係の警察職員に故意または過失がある。しかもそれが公権力の行使になっておって故意、過失があるということになりますと、理論上はこの警察官の属しておりました地方公共団体、これが国家賠償法上の賠償責任を負うという理屈になると思います。
  67. 神近市子

    ○神近委員 それは刑事補償法に類する額ですか、ずっと低くなりますか。
  68. 辻辰三郎

    ○辻説明員 国家賠償法に基づく賠償でございます。同じく法律でございますから、刑事補償の場合も法律に基づく賠償でございますし、国家賠償法の場合も法律に基づく賠償でございます。金額につきましては、国家賠償法は、加害者と申しますか、まず故意、過失があったということが前提でございます。刑事補償法の場合には故意、過失を問わず一定額を補償することになりますけれども、国家賠償法のほうは故意、過失があったということが前提になるわけでございまして、故意、過失があるとなりますと、これは全損害の賠償をするということで、法的な場合の全損害の賠償になるわけでございますから、刑事補償の場合より通常の場合はなお多い額になることが多いと思います。
  69. 神近市子

    ○神近委員 さっきから不良少年の問題で非常に論議が行なわれておりますけれど、こんな罪のないかわいらしい、いまだって一生懸命勉強して、そうして世間を肩身狭く暮らしているそういう人たちに、何か奨学的な――もう八年間というもの、小学児童であったときにかわいそうな状態で、心の中は泣きながら学校に行って、そうしていまの状態を見れば、そんなに悪くならないような勉強をしている。せめてそのあとの生涯、ここで心を引き立ててあとの人生を間違いなく暮らすことのできるような奨学的な意味の補償がされるかなというようなことを感じているわけです。それで特別にこの問題を持ち出したのですけれど、じゃ、少なくもそのときの百本の杉の木あるいは三反八畝の田地、そういうものは補償してもらえるのでしょうね。
  70. 辻辰三郎

    ○辻説明員 具体的な事情を存じませんので、ただいま御指摘の杉の木その他田地というものが、当該警察官の公権力の行使に当たった場合の故意、過失と因果関係があるかという問題に帰着するわけでございますので、事実関係がはっきりいたしませんと何ともお答えしがたいと存じます。
  71. 神近市子

    ○神近委員 これで私の質問は終わりますけれども、もしこの真犯人が決定した場合には、その土地の警察あたりに何か親切な指示をしていただいて、この二人の子供たちが八年間泣きの涙で学校へ通ってきたということを考えて、この子供たちの将来のために、いままで頭を下げて世間を渡ってきたのが、頭を上げて渡ることのできるようにしていただきたい。それをお願いして私の質問を終わります。
  72. 濱野清吾

    濱野委員長 この際おはかりいたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十八分散会