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辻説明員 刑事補償法の一部を改正する
法律案につきまして、
改正部分の御
説明を申し上げます。
改正点の第一点は、第四条第一項中「二百円以上四百円以下」を「四百円以上千円以下」に改める点でありますが、この点につきましては、
現行法は、
無罪の
裁判またはこれに準ずる
裁判を受けました者が、未決の抑留もしくは拘禁または
自由刑の
執行等によります
身体の
拘束を受けておりました場合には、これにその日数に応じ一日二百円以上四百円以下の
範囲内で
裁判所が決定した
金額の割合によります
補償金を交付するものといたしておりますが、右の二百円以上四百円以下という
基準金額は
昭和二十五年に定められたものであり、現在におきましては低きに過ぎる面も生じているものと認められるのであります。ところで、右の
基準金額を引き上げますにつきましては、当時の
経済事情と今日のそれとの比較が正確に反映されたものでなければならないとは必ずしも考えられないのでありますが、試みに
昭和二十五年当時の
賃金及び物価の水準と最近におけるそれとを比較いたしますと、最近のそれはおおむね二倍
程度の上昇を示しておりますので、これを勘案いたしまして右の
基準を二倍に引き上げるといたしますと、四百円以上八百円以下となりますが、他面
現行法制定の際、
金額を決定するための
参考資料の
一つとされましたものと認められます
刑事訴訟における
証人日当の
最高額は、当時百二十円でありましたものが現在千円とされておりますことや、
常用労働者の
平均賃金が現在千円をこえておりますこと等にかんがみますと、右の
基準金額の上限はこれを千円とすることが適当であると考えられますので、右の
基準金額はこれを四百円以上千円以下とすることとした次第でございます。
次に
改正点の第二点は、第四条第三二項本文中「五十万円以内」を「百万円以内」に改め、同
項ただし書き中「五十万円」を「百万円」に改める点でありますが、この点につきましては、
現行法は、
無罪の
裁判またはこれに準ずる
裁判を受けました者が
死刑の
執行を受けました場合、すなわち
死刑の
執行後、
再審等で
無罪が確定いたしました場合でありますが、このような重大な事例は現在まで皆無であり、将来もあり得ないことと確信いたしておるところでございますが、この場合には、これに五十万円以内で
裁判所の決定した
金額の
補償金を交付し、なお、この場合本人の死亡によりまして生じました財産上の
損失額が証明されましたときは、その
損失額に五十万円を加算いたしました額の
範囲内で
裁判所の決定した
金額の
補償金を交付することとしております。右の五十万円という
基準金額も、
昭和二十五年に定められたものでありまして、今回
身体の
拘束による
補償の
基準金額が引き上げられるといたしますと、これをも引き上げることが適当であると考えられますので、これを二倍に引き上げて百万円とすることといたした次第であります。
次は、この
法律案の
附則関係でありますが、その第一項は、「この
法律は公布の日から
施行する。」といたしまして、
施行期日を定めたものであります。
次は第二項として、「この
法律の
施行前に
無罪の
裁判又は
免訴若しくは
公訴棄却の
裁判を受けた者に係る
補償については、なお従前の例による。」といたしておる点でありますが、これはこの
改正法が、その
施行後に
無罪の
裁判または
免訴もしくは
公訴棄却の
裁判を受けました者に対しまして適用されることを明らかにしたものであります。
刑事補償の
請求権は
無罪等の
裁判を受けましたときに発生するものでありますので、
改正法の
施行後にこれらの
裁判を受けました者につきまして適用することとしたものであります。
以上をもって御
説明を終わります。