運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-02-11 第46回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十一日(火曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君    理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君    理事 神近 市子君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君       大竹 太郎君    奥野 誠亮君       河本 敏夫君    四宮 久吉君       田村 良平君    千葉 三郎君       中垣 國男君    中川 一郎君       森   清君    久保田鶴松君       山田 長司君    山本 幸一君       竹谷源太郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局次長) 佐竹  浩君         大蔵事務官         (理財局証券部         長)      加治木俊造君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         専  門  員 櫻井 芳一君     ————————————— 二月七日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として横山  利秋君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員久保田鶴松辞任につき、その補欠として  山田長司君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山田長司辞任につき、その補欠として久  保田鶴松君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十日  福島地方法務局常葉出張所存置に関する請願(  野口忠夫紹介)(第三〇九号)  青少年凶悪非行及び少壮者狂暴犯行絶滅法制  定に関する請願赤城宗徳紹介)(第三五八  号)  鹿児島刑務所霧島農場移管促進に関する請願  (池田清志紹介)第四〇二号)  鹿児島地方法務局横川出張所存置に関する請願  (池田清志紹介)(第四〇三号)  福島地方法務局竹貫出張所存置に関する請願(  澁谷直藏紹介)(第四三二号)  印鑑法の制定に関する請願二階堂進紹介)  (第四九〇号)  は本委員会に付託された。     —————————————  本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三八号)  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第四一号)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案刑事補償法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、提案理由説明を聴取することにいたします。天埜法務政務次官
  3. 天埜良吉

    天埜政府委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  この法律案の要旨は、第一審における訴訟の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所職員員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点とするところを申し上げます。  まず、下級裁判所裁判官員数を増加しようとする点であります。政府におきましては、第一審の充実強化をはかるための方策として、数年来逐次裁判官定員を増加する等の措置をとってまいりましたが、その一環として、このたび特に裁判官の負担が重くなっている地方裁判所における事件審理及び裁判適正迅速化をはかるため、判事及び判事補員数の増加するとともに、年を追うて増加してまいりました簡易裁判所における交通事件処理円滑化をはかるため、簡易裁判所判事員数を増加しようとするものでありまして、人員充足見通し等を考慮した上、さしあたり判事判事補及び簡易裁判所判事員数をそれぞれ五人増加しようとするものであります。  次に、裁判官以外の裁判所職員員数を増加しようとする点であります。すなわち、地方裁判所における事件審理及び裁判適正迅速化をはかり、また、年を追うて増加してまいりました簡易裁判所及び家庭裁判所における交通事件処理円滑化をはかるため、裁判所書記官家庭裁判所調査官及び裁判所事務官員数をそれぞれ増加しようとするものであります。これら新たに増加しようとする裁判官以外の裁判所職員員数の総数は百三十五人であります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、刑事補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金算定基準となる金額は、昭和二十五年に定められたものでありまして、現在におきましては、低きにすぎる面も生じていると認められるに至りました。この法律案は、この際、無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が、未決の抑留もしくは拘禁または自由刑執行等による身体の拘束を受けていた場合に交付する補償金算定現行基準金額  一日二百円以上四百円以下を四百円以上千円以下に、また、死刑の執行を受けた場合に交付する補償金算定現行基準金額五十万円を百万円に、それぞれ引き上げまして、施行日以後に無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者につき、この改正基準による補償金が交付されるものとし、いわゆる冤罪者に対する補償の改善をはかろうとするものであります。  以上が刑事補償法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  4. 濱野清吾

    濱野委員長 以上をもちまして同案に対する提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に行なうことといたします。      ————◇—————
  5. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、法務行政及び検察行政に対する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。
  6. 坂本泰良

    坂本委員 昨年の八月二十八日の午後三時四十分ごろ、大分刑務所金属工場が火災になりまして、新聞等は「ガソリン火を吹く」「受刑者六人が重傷、あっという間に火の海」こういう五段抜きの記中が出たわけなんですが、この刑務所短期受刑服役者が二人即死をしているわけです。これは実際上は即死しているけれども、それをそのまま病院に持ち込んで、病院で死んだことになっているかもわかりませんが、一般即死と見ているわけです。その中には、わずか短期自由刑の六ヵ月、それが四ヵ月経過しまして、あと二ヵ月で出る。しかもその死亡者は、熊本県が一名と鹿児島県が一名ですが、熊本県の人は公務執行妨害ということで六ヵ月の刑でありますが、この実質は、県税の滞納で、県の吏員が差し押えをいたしまして、何かのいきさつでそのむすこが、やり方その他についてかっとしまして、からだにさわるか何かしたため公務執行妨害裁判になったわけです。本人は非常に恐縮して、弁護人をつけず、六ヵ月の刑で——前科も何もない、まじめな者が、そういう関係で、これは弁護人なんかつげれば当然執行猶予になるものですが、執行猶予もつかずに、しかも一審で服役しておる。これは悪質というのにはほとんど入らないような、また、まじめにつとめていた。そういうのがガソリンを浴びて黒焦げになって死んだ、こういうような事件であります。聞くところによると、この大分刑務所金属工場は、大阪かどこかの経営者が下請けか何かやっておるのであって、全く危険工場のような刑務所、そこでそういうような被害をこうむったのですが、刑務所のほうから十万円と、その工場経営している者から十万円、二十万円をもらっただけで、そのままであります。刑務所責任者警察が調べるにしましても、これも民間人だからやむを得ないと思いますが、刑務所の中であるから刑務所のそういう係の人が何とかうまいぐあいに処理されて、そうして被害の弁償なんかもたったの二十万円ではないかと非常に疑いを持っておるものですから、私も非公式に法務省のほうに、そのきょうだいが東京の大学におりますから、それとお願いに行ったような経過もあるわけですが、その後検察庁に送られて、その刑務所責任者看守部長ですか、これが調べられておる。それがいずれかに解決しなければ困難だ、こういうようなサゼスチョンを受けたわけです。そこで、そのとおりのことを本人に申しましたら、本人のほうから、やはり疑問を持って大分地方検察庁に本年一月二十三日に問い合わせをした。そうしますと、大分地方検察庁から熊本県宇土市本町三番地の佐本久臣というのですが、これはおやじさんですが、この人に対する返答は「本月二十三日付照会大分刑務所内でのガソリン引火事件の件については、未だ大分警察署から事件の送致に接しておりませんので、照会のように小野看守部長刑事上の責任者になっているかどうかも、当庁では事件を受理していないので皆目不明です。なお、本件については、大分警察署捜査中と思われますので、同署に照会して頂けば詳細判明すると思料します。念のため申添えます。」こういう回答が来たわけです。昨年の八月と申しますと、もう六ヵ月を経過しておるわけですが、それがまだ検察庁にもいっていない、こういうふうに考えられるので、この点について、どういう経過になっておるか、まず御説明をお願いします。
  7. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 事件の受理の状況につきましてまず御報告を申し上げます。  ただいまお尋ねの事件は、仰せのとおり昨年の八月に起こった事件でございまして、その後、所轄大分警察署におきまして、業務上過失致死傷事件として捜査をいたしました結果、昨年の十一月一日に大分地方検察庁事件を送致いたしております。その事件はやや捜査がおくれておるのでございますが、十一月から十二月、本年の一月にかけまして大分地方検察庁におきましては総選挙関係違反事件が多数発生をいたしましたので、ほとんど全検事がそれに取りかかっておりましたところ、一応一月をもって大体終わってまいりましたので、本月に入りましてから鋭意この事件捜査に当っておるということでございます。おそくも今月中には結論を出して事件処理をする、こういうふうに私どもは聞いておるのであります。
  8. 坂本泰良

    坂本委員 そうすると、大分地方検察庁のいま私が読み上げましたのは違うということですね。またガソリン引火事件では受理していないから皆目不明です、こう返事がきているわけです。十一月一日に送検されておるということになれば、これは内容が違うように考えますが、その点いかがですか。お見せしましょうか。
  9. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 その書面というのは検察庁で出したものでございましょうか。
  10. 坂本泰良

    坂本委員 大分地方検察庁というはんが押してあります。〔文書を示す〕
  11. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいまお示しの回答書は確かに検察庁の用紙で、大分地検の佐藤というはんが押してあるものでございますし、まさしくほんものだと思いますが、私どものほうに、正式に法務大臣にあてた報告書によりますと、事件が私のほうに参りましたのは、法務省で受理しておりますのは十一月九日でございますが、その報告書には、十一月一日に事件を受理した、こういうふうになっておりまして、この点、私のほうでもどういう行き違いでこうなったのか調査をいたしまして、後日御報告を申し上げたいと思います。
  12. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、刑務所から十万円の見舞い金、それから実際の工場経営に当たっている金属工場の社長ですか、責任者ですか、それから十万円の見舞い金がきている。それはどういうような関係でそういうものが出ているか、矯正局長、お願いします。
  13. 大澤一郎

    大澤政府委員 受刑者作業中にそれによりまして負傷し、あるいは不幸にして死亡いたしました場合には、死傷病手当金給与規定によりまして十万円ないし十二万円の手当金を支給することになっております。これはあくまでも見舞い金という形でございまして、国の施設に瑕疵がある、また公務員に故意過失等がございました場合には、国家賠償法によって成規手続によって賠償いたすことに相なるわけでございます。さような意味合いにおきまして、国なりあるいはまた関係工場会社から本人に交付されました十万円というものは、いずれも当座のお見舞いという形でございます。その後の捜査の結果によりまして、それぞれ故意過失がありということになりますれば、それによります賠償金損害賠償というものは別個に考慮すべきものと考えております。
  14. 坂本泰良

    坂本委員 そこでこの十万円を出した大阪かどこかの会社ですね。それの名前と、それとどういう刑務所との関係になっておるか、この点をお聞きいたしたい。
  15. 大澤一郎

    大澤政府委員 この仕事内容鋼鉄製折りたたみいす製作でございます。その製作委託会社大阪にございます明興金属工業株式会社でございます。この工場から刑務所が加工の委託を受けまして、工場機械器具等を同会社刑務所工場内に設備をいたしまして、それにこちらが労務を提供いたしまして製作に当たっているわけであります。
  16. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、その契約内容等はどうなっているのです。
  17. 大澤一郎

    大澤政府委員 設備等会社側がするわけでございます。それにこちらの受刑者が出役する。そうして賃金を支払うという形の契約をとっております。
  18. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、こういうような工場をつくり、あるいは工場に使用するような場合には、労働基準法適用を受けまして、相当厳格にその設備の点、あるいはまた労務に服する者については、危険の労務に服する場合には、その資格とか本人の承諾とか、こういうことが要るものと思いますが、実はきょうは労働基準関係の人を呼ぶのを忘れましたけれども法務省当局はそういう点をどうしておられるか。これは実は先般法務省予算説明を聞きました際に、私もちょっと聞いたのですが、以前の刑務所はかんぜよりをするとか、あるいはぞうきんをつくるとかいった生命に全く危険のない作業をやらせていたと思うのです。それがやはり化学工業機械工業をやることになり、そうするために相当の予算が組まれておるわけなんです。また、その拡張のために予算も組まれておるから、そういうことを法務省刑務所内でやるについては、やはりこれは一般労働基準法適用を受けて、その範囲内でやらなければならぬと思うが、その点どうかと聞きましたら、予算説明ではそういうことがわからぬものですから、これは一般的問題として、やはり実刑に服しておる者に対しても、そういういわゆる現代的工場、危険的な工場をやる場合には労働基準法に基づく処置をしなければならぬ。私はこういうふうに具体的に考えるものですから、具体的にどういうような方法法務省はやっておられるか、その一般的な問題と、さらにあわせてガソリン引火で二人が死亡するという問題が起きましたから、この具体的問題についての御説明を承りたいと思います。
  19. 大澤一郎

    大澤政府委員 まず、刑務作業におきまして従来行なっておりました、いわゆる紙細工のような危険の全然ない作業というものから近代的な一般社会における作業状況に変わってきて、危険度が増したという点はまことに御指摘のとおりであります。われわれといたしましても、受刑者作業を課する場合におきまして、その者が単に労働に服するということだけでは積極性がない。やはり刑を執行いたします場合に、その者が将来社会に復帰しました場合に、社会人として働くにふさわしいだけの技術なりあるいは労働習慣というものをつけて戻すのが矯正に課せられた任務と考えております。したがいまして、さような意味合いで漸次いわゆる紙細工、かんぜよりというような低格作業を廃止いたしまして、社会人と同じ程度の作業内府に切りかえつつあるわけでございます。それがこの明興工業スチールいす細み立て作業ということになったわけでございます。したがいまして、さような危険度の増大ということもわれわれとして十分考えておるわけであります。  そこで、労働基準法関係でございますが、国が施設をいたしまして、労働基準法そのもの適用は受けるものではないと考えておるわけでございます。しかし、この精神は十分くみまして、われわれといたしまして、安全世理指導の徹底を期しているわけであります。その安全対策といたしまして、昭和三十五年、三十六年に作業安全心得あるいは刑務作業安全管理要綱というものを定めまして、それぞれ安全作業の推進をはかっておるわけでございます。これに基づきまして、各刑務所におきましては、安全管理者あるいは危険防止責任者及び危険物取り扱い主任等を任命いたしまして、関係者相協力して過誤のないようにつとめておる状況でございます。  大分刑務所におきます本工場の具体的な対策といたしまして、昭和三十七年に、この工場のみではございませんか、大分刑務所工場全般につきまして、防火対策等についての査察方を依頼いたしまして、所轄大分消防署から係員がお見えになって点検を受け、一応安全の確認を受けておるわけでございます。その際に二、三注意を受けた点につきまして、消火器を備えつけよというような点の御指示を受けまして、直ちにそれの設備をいたしました。また、ガスの充満を防ぐためのモーターファンを取りつけるように御指示を受けまして、直ちにその御指示に従いましてモーターファンを取りつけたわけでございます。かように基準法そのものではございませんが、それの趣旨にのっとりまして、同じ手続をとりまして安全管理をはかっておるわけでございます。それ以来刑務所におきましても専門官が常に注意をしまして点検をしておりますし、また火気につきましては特段の注意を払って点検、監視をしていたわけでございます。さように刑務所の中におきましても、一般社会と同じ施設、また同じ方法指導監督をしておるわけでございます。
  20. 坂本泰良

    坂本委員 ちょっと説明が混同しているのですが、先ほどの説明によりますと、明興金属工業設備をして、それに対して刑務所のほうは労務を提供しているだけだ、こういうことですね。そうしますと、これはやはり民間明興金属工業ですから、これは刑務所といえども、その中の設備については労働基準法適用を受けまして、その検査その他を受けなければならぬ、私はそう思うのです。ただ国家の事業であるから、だいじょうぶだろうから何でもやるというわけにはまいらないと思う。その点をどういうふうにしておられたか。  それから専門官点検させていたとおっしゃるが、どういう専門官を何名くらい、どういう専門的な者を置いて点検させたか。それは設備をして経営するところの明興金属関係の者かどうか。そういう職務の点とそれから責任の分担の点、これを明らかにしてもらいたい。
  21. 大澤一郎

    大澤政府委員 刑務所内における作業実施主体はどうなるかという問題でありますが、われわれといたしましては、ただいまの明興金属のような形の委託作業におきましては、刑務所内に機械設備をする、あるいはある機械を持ち込むというような設備一切は会社自体に負担させまして、そしてそのもの所有権会社にあろうかと思います。しかし、それを一たん設備させまして、それから今度運営していくという主体は、やはり官である刑務所であろうかと考えておるわけであります。そしてそれに受刑者を働かして、その働かすことの指導なり管理ということは、やはり刑務所側にあるわけであります。その働かした者に対する賃金を計算しまして会社に納入させるという形でございます。したがいまして、作業全般管理運営ということは刑務所側責任において行なうべきもの、かように考えるわけであります。  次に、指導員の問題でございますが、刑務所専門官といたしまして電気なりの技官が配置されております。また仕事そのもの指導は、会社から嘱託としまして派遣してもらって仕事をしておるわけであります。
  22. 坂本泰良

    坂本委員 ただ抽象的に嘱託とか技官が何とかでなくて、これは金属工業ですから、どういう専門技官が何名くらいおってやっておるのか、まずその点と作業の点だけ……。
  23. 濱野清吾

    濱野委員長 坂本君に注意いたしますが、いま話を聞いていると、どうも答弁と質問が食い違っているようですが、時間がかかりますから、経営主体はだれなんだ、それから契約はどうなんだということをもっと明確にお聞きになったがいいと思います。
  24. 坂本泰良

    坂本委員 あとでなお詳しく調査しもらうことにしまして、いわゆる作業実施主体明興金属会社にある、運営主体刑務所のほうにある。そういたしますと、作業実施主体民間会社であれば、やはりその作業上の設備その他については労働基準法による許可その他が必要だと思うのです。労務を提供するとか、その製品をどういうふうにつくるとかいうのが運営であって作業実施主体会社ということになれば、これは刑務所内といえどもやはりそういう厳格な許可といいますか、そういうのを受けなければならぬ。したがって、そういうのを受けられたのかどうか。そういうのはむとんちゃくで、国がやるから漫然としてこの場合やっておられたかどうか、その点をお聞きしたい。
  25. 大澤一郎

    大澤政府委員 いわゆる実施主体会社であるというのではございませんで、機械器具会社設備させて、その作業を実施運営するのは刑務所でございます。そしていま特に御質問がございました、その機械設備そのものを個々的に労働基準局等検査を受けておりません。
  26. 坂本泰良

    坂本委員 どうも、もう一回これは調査をして、もう一回質問したいと思うのですが、次にお聞きしたいのは、刑務所製品をつくって会社に納める、そこで会社からとるその利益ですか、収益と、それから受刑者に働かせておるところの日当ですね、こういう点はどうなっておりますか。さらに、こういう特別な働きをするのですが、囚人として国家からやる金は幾らか、本人にやる金は幾らか、その点をあわせて……。
  27. 大澤一郎

    大澤政府委員 作業に従事しました受刑者に給付いたします報酬は、いわゆる賃金としてわれわれは考えていないのでございます。あくまでも作業賞与金という考え方で交付しておるのでございまして、作業収入とは面接の関係はございません。したがいまして民間会社のほうからとりまする人夫賃というものは、いわゆる同種産業賃金を基礎にいたしまして、刑務所特異性等を考慮して決定しているわけでございます。そうして就業者に交付いたしますのは、あくまでも作業賞与金という形で交付しておるわけであります。
  28. 坂本泰良

    坂本委員 大臣がおられなくて非常に残念ですが、現在の日本の刑事政策上においても、その刑においては応報主義あるいは教育主義をとりましても、刑事政策においては、自由刑刑務所に入れてやるということは、やはりこれは労働をさせて、そして改過遷善させてりっぱな人間にしてやるというのがその基本の目的であると思います。そうなりますと、危険な機械工場と同じようなのを刑務所内に設置して、そこに働かせて、そして働いた者に対してはわずかの作業賞与金を与えて、そして国家は、製作品に対しては普通の製品の価格を、原価計算をして取っておると思う。そういたしますと、私は現在の刑事政策短期——長期もそうでしょうが、自由刑に対する囚人に対するところの刑の本質的目的を誤った方法刑務所はとっているのじゃないか、こういうふうにも考えられますが、そういう点については、この危険な機械工場的なものに対して受刑者をその労働に服させるということについては、少しもそういう点については考えられなかったかどうか。さらにまた、そうさせるには、いかに囚人といえども本人の承諾をとってそのような作業に服させておるかどうか。また、そういうのは必要でないという何か法律の規定があるかどうか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  29. 大澤一郎

    大澤政府委員 受刑者の懲役刑に基づく作業に対して賃金を支払うべきかどうかという問題は、これは行刑上大きな問題でございまして、漸次世界的な行刑思潮は、懲役勤労に対してもそれ相当の賃金を支払うほうがいいというふうな考え方もあるわけであります。しかしながら、一面刑の本質論からまいりまして刑法に「懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス」という規定がありまして、いわゆる役務に服する義務がある。したがいましてこれに対する労働賃金は支給すべきでないという考え方が、いまの刑法上かねてからとられてきた考え方であります。しかしながら、われわれとして受刑者作業を課しながらただ苦役を与えるだけということでは、刑政の目的が達せられないので、やはりできるだけ勤労心を振起せしめるために、働けばそれだけの報いがあるという形で、作業賞与金というものを置いておるわけであります。決してわれわれとして賃金を支払うべしという考え方に立っておるわけではございません。特にまた賃金説をとるということは実際上不可能なことでございます。本人が、おれは文筆業をやりたい、それに特技があるとなれば、文筆業をやらせなければならぬ。また、おれは造船の技術があるから造船をやりたい、いろいろその人その人に特技がある。したがいまして刑務作業ですべての人が自己の特殊技能を発揮するような施設をするということ、これまた不可能なことでございます。したがいましてたまたま刑務所内で行なえる作業に技を持っておる人は、きわめて優秀な作業ができるが、そうでない者はできないというような不公平のことになるわけでございます。だから、賃金を与えるという立場をとりますと、やはりその者の得意の技能のある作業をわれわれとしてあてがわなければならぬ。きわめてそこが刑務所内で不公正な取り扱いということに相なるわけでございまして、大ぜいの収容者をかかえる刑務所といたしまして、その点公平をはかるという意味合いから、すべての作業を置くわけにいかぬとなれば、やはりそこに賃金というものを持ち込むことが不可能になるわけで、非常に困難になるわけでございます。さような意味合いで、われわれとしましては、一生懸命に働けば報いがあるのだという精神を振起するという意味合い作業賞与金を支給しているのでございまして、それにつきまして、それぞれの技能に応じまして一等工、二等工等の技能差を設け、またそれに勤惰とか刑務所としましての行状その他を加味いたしまして、その所内における行状の点を加味した賞与金の算定をいたしているわけでございます。しからば、それはどこに目標を置くかということに相なりますと、われわれとしましては、刑務所から出ていく、一銭の金もないということになれば、再び罪に陥るおそれがある。少なくとも一ヵ月程度の生活費は持って出なければ、またあすから路頭に迷うということになりますので、大体いわゆる生活保護法の定めております生活扶助費の一ヵ月ないし一ヵ月半を、平均大体在所期間が十五ヵ月でございますが、十五ヵ月平均勤めた者には、一ヵ月から一ヵ月半の生活保護法に定める生活扶助費相当額を持たしてやろうという勘定から逆算いたしまして、この作業の賞与金の金額というものを定めているわけでございます。  次に御質問の、作業の就業についての本人の自由意志という問題でございますが、これはやはり懲役刑に基づきまして、本人作業を拒否する権利はございません。したがいまして、われわれとしてその者の能力あるいは技術等を勘案いたしまして、またその者の注意力その他あらゆる点を審査いたしまして、その者の適性に合った仕事、また将来その者が社会に復帰しました場合に、どういう職業がいいかということを勘案いたしまして、所内における最もそれに適した作業につけるということに意を配っているわけでございます。したがいまして、このことが危険な仕事だからというので作業をやらしているわけではございません。危険の防止という点は、これはまた別個の問題としてわれわれは考えているわけでございます。この作業に就業せしめるという点につきましては、個々の個人的能力あるいは社会的の才能、条件等を考慮して決定するわけでございます。
  30. 坂本泰良

    坂本委員 そこでひとつ聞いておきたいのは、そういうように国家は、本人をいやおうなしに国家が認めた能力とかその他によってこの労働に服せよといってやらせる、そこで危険な作業をさせて、ガソリンがひっかかって火だるまになってまる焼けになっているわけですね。こういうようなのに対して、たった規則どおりの十万円の見舞金をやっただけで国家は済むと思うかどうか。さらにまた、明興金属は別個に考えて、そういう問題が起きたから十万円くらいの見舞い金でなくて、職工がそういうふうに死んだならば何百万円を一般工場であれば出さなければならぬ。それをたった十万円くらいで六ヵ月もほうっておいて、そういう点について法務省当局は何かやったかどうか、何かその方法について考えたかどうか。それからさらに、その危険な工場に、見たところでは国家がその工場労務に服さしておる。そして国家賠償というのが、その責任者が処罰を受けて、その上に訴訟を起こしてやれなんということでは、私は、いかに刑が確定した囚人といえどもそう人権を無視すべきものではないと思うのです。ことに私は痛感しましたのは、この間の法務当局の予算の際に、今後機械工場その他をどんどんつくらなければならぬから予算が去年よりもこれだけふえておる。もとの予算は相当あると思うのです。そういうことになれば、こういう事件が今後発生するということを予期しなければならぬと思うのです。私は、大分刑務所の問題はこのいい一つの実例であり、今後に対するところの行刑の方針を具体的に示したものじゃないかと思うのです。だから、ただ通り一ぺんの現在ある見舞金やその他でなくて、もっと法務省当局は考えなければならないと思うのですが、そういう点についてやられる気持ちがあるかどうか。明興金属等に対して、名前は見舞い金でも慰謝料でもけっこうですが、やらせる考えがあるかどうか、その点をお聞したいと思います。
  31. 大澤一郎

    大澤政府委員 受刑者二人が死亡いたしましたことにつきまして、われわれ決してそれをただ死んだというふうに冷たくながめておるわけではないのであります。なくなられた二人に対しまして心から申しわけない、きわめてお気の毒なことだとほんとうに考えておるわけでございます。決して十二万円なり十万円というもので事済みというふうには考えておらないのであります。ただ、国として責任を負います場合に、国家賠償法の規定もございまして、われわれとしてただ気持ちだけで出すということはいたしかねます。幸い検察庁事件送致になってお調べ中でございますので、その結果を待ちまして、十分遺族のことも考え、本人のことも考え処置いたしたい所存でございます。またその結果によりまして、明興金属に対しましてもしかるべき助言はいたす、かように考えておるわけでございます。
  32. 坂本泰良

    坂本委員 これは大きい問題だと思います。矯正局当局としても今後も考えなければならぬ問題だと思いますから、ひとつ事実をよく調査されると同時に、この哀れな二人に対してどういうふうに処置するかということも十分検討して、遺族に対しても相当のことをやらなければならぬと思うのです。訴訟を起こしてやるというのも非常に困難な点があると思いますから、これは私は行政処分の関係でできやせぬかと思うのでありまして、そういう点についてはあらためて大臣の所見も聞きたいと思いますから、それまでにひとつそういう点についても十分検討し、やっておいてもらいたい。また、いかにこの法律によって、憲法上保障されておるところの自由権、労働権を受刑者に対しては剥奪してやっていいといえども、しかしながら、ここに憲法上保障されておる人権を無視するわけにはまいらぬと思うのです。旧憲法時代でもそういうことについては十分考えがあったと思うのです。  私は昨年水害で北海道に参りましたが、帯広に参りますと、やはり囚人道路というのがあるのですね。あれは囚人がつくったりっぱな道路でいま残っておる。もう一つは、九州では三池炭鉱の問題がある。三池炭鉱にああいう大騒動があって、私は弾圧を受けて裁判になった労働者の多数の方々の裁判をやりましたから、そのとき三池炭鉱の経歴を調べました。何かといえば、三池炭鉱というのは最初は囚人が炭を掘ったのです。その炭を掘ったのはどうなったかと申しますと、三井鉱山株式会社というものが国家と結託をして、そして高い炭をほかに売ってどんどん利益を上げて、三池の関連産業というのがあそこにできているのです。それをよく調べると、最初は賃金がただで囚人を使った炭鉱なのです。そして三井という独占資本がもうけておる。そしてあまり炭鉱がもうからぬということになれば、労働者をいじめて、国家権力もそれに加担して、そういうようなことになっているのです。私は初めてあの三池炭鉱の明治から掘られた点を調べて、国家は、いかに囚人といえどもその労働力を剥奪し、その労働力によって一部の者にもうけさせてはいけない。北海道は帯広の道路ですから、多数の人が利益をこうむっておるでありましょう。そういう点も考えて、現在の刑務所機械工場の問題についても、よほど考えた刑事政策をやらなければ、改過遷善のために、労働は神聖なりという、労働によって間違った人間を真人間にしてやるという刑事政策が逆のほうになってくる、一部の者にもうけさせるということになる。こういうことを考えあわせると、これは慎重に考えなければならぬと思うのです。と同時に、不幸にもこのような工場労働を押しつけられて、そしてガソリンの火を浴びてまる焦げになって死んだ者に対しては、やはり国家としては十分の補償をしなければならぬと思う。刑務所が火災になって、そのとき焼け死んだ者に対するいろんなものもいいかげんなことで従来は放任してあると思うのです。この問題は、私はそう放任すべき問題じゃないと思う。ですから、私の質問はこれだけにしておきますが、ほんとうの日本の行刑の本質というもの、刑事政策目的を達成せなければ、私は日本の教育刑の目的の問題も達しないと思うのです。そういう点で、責任のがれでなくて、また当時の大分刑務所の二、三の人間を救うために、この大きい犠牲をむだにせぬように、ひとつ公平な調査と検討をお願いしまして、本日は打ち切っておきます。
  33. 小島徹三

    ○小島委員 関連質問で一、二点お聞きいたします。先般の予算を見ましても、いま坂本君の言ったように、囚人に技術的な面で修練を積ませるようにということで、いろいろな近代的な機械器具を買わなければならぬという予算が確かに盛られておったと思うのですが、いまの話を聞いておると、そこの機械設備というものは明興金属でやったのだということですが、そういうよそから借りてきたというか、よその機械設備でやっているというような例がほかにあるのでございますか。囚人仕事というものは、そこまでしなければならぬというほど、なかったのですか。何かほかのもので、政府で買い上げた機械設備だけで修練させるということはできなかったのでしょうか。
  34. 大澤一郎

    大澤政府委員 まず、民間機械を入れなければならぬということに対しましては、一例でございますが、印刷機を例にとりますと、大体刑務所の印刷技術というものは、まだ一枚一枚紙をさす形の機械でありましたが、最近初めて自動紙さし機の機械が入ったわけであります。これは私個人的のことでございますが、私が小学校に行くか行かぬころに最新式の機械としてできたのが自動紙さし機の機械であります。それが五十年近くたちまして、やっと刑務所にその機械が入ってきたという程度に、刑務所機械設備その他が非常におくれておる。したがいまして、本人たちが社会に出まして、印刷工でございといって就職します場合に、それはもうすでに三十年前の印刷工の技術しか持っていない、最近の新しい機械の操作方法も知らぬ、初めてお目にかかるということでは、本人に職業技術を与える上において欠けるところがある。したがいまして、日進月歩いたします機械設備というものを国で全部新しくしていくということは、これまた経済上不可能なことでありますが、大体四分くらいは、民間からのそういう機械の借り入れでやっておるわけであります。特に旋盤その他の工作機械等につきましても、刑務所にありますものは誤差が非常に多い。何ミリ、何分の一ミリというような精密な仕事が要求される現在、刑務所だけの機械でやりますと、とうていさような精度が出ないのであります。したがいまして、民間からさような機械を持ち込まして、そうして技術を与えながら作業をするという方法をとらざるを得ないのであります。さような意味で、相当数の民間機械刑務所内に入っておるという結果になっております。
  35. 小島徹三

    ○小島委員 持ち込むということばなのですが、そこがだいぶあいまいなんですが、一体借り入れるというのか。先ほどの話を聞いておると、何か民間明興金属から技術者を顧問とか嘱託とかなんとかいうことで入れてやっておるとおっしゃるのですが、そうすると、機械を借り入れただけでなくて、経営自体も会社がやるのですか。
  36. 大澤一郎

    大澤政府委員 ちょっとことばが足りなくて誤解を招いたかと存じますが、機械の無償借り入れでございます。したがいまして、作業経営主体刑務所であります。無償で業者から機械を借り入れるということになるわけであります。
  37. 小島徹三

    ○小島委員 そうすると、経営刑務所がやる、したがって労務管理ももちろん刑務所がやる、こういうことになるわけですね。とにかく完全な経営体制を整えているわけですね。
  38. 大澤一郎

    大澤政府委員 おっしゃるとおり、刑務所経営管理をしております。
  39. 小島徹三

    ○小島委員 そうすると、その経営自体について、あるいは労務管理で何か間違いが起きたということになると、刑務所自体が責任を負わなければならぬということになるわけですか。
  40. 大澤一郎

    大澤政府委員 刑務所責任を負うべきものと考えております。
  41. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちょっといま、技術者がどうとか、それはどういうことですか。それは雇いですか。
  42. 大澤一郎

    大澤政府委員 向こうからいろいろな技術指導嘱託として入ってきておるわけであります。したがいまして、刑務所工場担当者の指揮下に入りまして、ただ技術的に教えるという講師のような形でございますから、嘱託の形で技術を教えるということで入っておるわけであります。
  43. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、経営法務省でやっているなら、給料はどうなるのですか。
  44. 大澤一郎

    大澤政府委員 その者は無給でございます。
  45. 濱野清吾

    濱野委員長 ちょっと、将来議事の運営上、大臣がおいでになるとまたこの問題は坂本君が質疑するわけですから、明確にしておいてもらう必要があると思いますので、委員長から伺うのですが、先ほどあなたの御説で、労務を提供しただけだというお話と、いま小島君の質疑に対して、経営管理刑務所が扱っておるということと食い違いがあるのだが、どっちがほんとうですか。
  46. 大澤一郎

    大澤政府委員 経済的なテクニックにつきましては、私間違いがあるかもしれませんが、要するに、経済的にどういうことになりますか、機械器具を業者が無償で刑務所に貸し付ける、そうしてこれこれの品物をつくってくれというので、素材の提供もありますし、また一部素材の提供もございますが、大体素材を提供されまして、それを刑務所作業管理運営のもとにある製品をつくりまして、そして向こうに引き渡す。そのときに何名の人間を使ったということで、その人夫賃を国が業者から徴収する。こういう形でございます。経営といいますと、その工場内における損益ということは、これは国の計算でやっておるわけであります。しかし、そのものが一体よそに幾らで売れようが、そういうことまでの経営には刑務所はタッチしない。ただこの工場機械器具会社設備して、そして刑務所管理のもとに製品をつくり、業者にでき上がったものを渡す。その間に刑務所受刑者が五十人入った、一日幾らという形で払わせる。こういう形でございます。
  47. 濱野清吾

    濱野委員長 それでは、大臣が来てから、大臣は経理関係には明るいはずですから、そのときにひとつあらためて委員諸公の質疑を徹底的にやってもらうことにいたしましょう。
  48. 坂本泰良

    坂本委員 委員長、ちょっと一言。先ほど今後の調査についてお願いしておいたけれども、われわれの疑問は、そういうふうにしてうまく刑務所に取り入って工場経営していると、安くでき上がって利益を非常に受けているのじゃないかということを考えるのです。もちろんこれは法務省はそういう利益を考えないから、原価計算その他についても業者がばく大な利益を受けてはいないかと思うのです。そういうような点についても、製品の価格とか、それから刑務所が受け取っておる労務費等についても非常に疑問がありますから、そういう点をひとつ明確に調査をして御報告願いたいと思います。
  49. 濱野清吾

    濱野委員長 それでは大臣が御出席になったならば、この問題はよくお尋ねしていただきます。  それでは質疑を継続いたします。坂本君。
  50. 坂本泰良

    坂本委員 まず、竹内刑事局長にお伺いしたいのですが、先般委員会で近江絹糸の横領の問題についてお聞きしたわけなんですが、被告発人の丹波秀伯は五千八百万という金額の政治献金をした、こう公式の場所でも言っておる。そこで、それではどういう政治献金をしているかということについては、大阪の地検当局でその捜査がなかなか進まない。ですからその促進方をお願いして、一日も早く——これは政治献金を受けたというと、政治家全部がそういう金をもらっておるのかということになるし、そうでなかったら、これを明らかにしなければ、これは重大な問題だと思うわけでありますから、その究明をお願いしたわけですが、その後いかがになりましたか。
  51. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 近江絹糸の事件は、その後も引き続き捜査を継続いたしておるのでございます。いまお尋ねのような事項につきましては、捜査の秘密といいますか、公にいたすことははばかられる事項であります。しかしながら、この問題は前にも答弁をさせていただきました記憶があるのでございますが、徹底的に捜査をしていただきたいという考えでございまして、捜査の範囲も単に大阪だけではございませんで、東京関係にも調査を必要とする事項があるようでございます。そういう方面も徹底して捜査してほしいということを促進をいたしますとともに、そういうこともお願いをいたしておるのでございます。だいぶ事件が長くなってはおりますが、選挙等の関係もありまして、多少おくれた点もございますけれども、現地のほうにおきましては目下鋭意捜査を進めておるというふうに承知いたしております。
  52. 坂本泰良

    坂本委員 そこで私たちもそれを信頼しまして待っておるわけなんです。捜査の具体的にやっておられることは秘密ですから、われわれにわからぬ点はたくさんあると思いますが、どうも捜査を進めておられないように思う。そこで疑いが出ますのは、局長も御承知と思いますが、先般もその五千八百万のうちの二千五百万を野村証券から借りて会社に払った、会社は受け取ったという上申書なんかが検察庁に出ておる。さらにあとの三千万円についても、だれからか借りてそれを払っておる。そうすると、その被告発人の丹波秀伯氏は、もう示談で解決したのだからこの問題は検察庁は調べないのだ。そういうことを聞いたから、前回の委員会でもその点を申し上げましたら、示談は示談、刑事問題は刑事問題として強硬に捜査をする、そういう局長の御答弁だったと私は記憶しておるわけです。ところが、やはりそういうことがあるものだから、なかなか捜査は進まぬじゃないか、地検の係検事なんかもほとんど捜査をしていないのじゃないかというふうにも考えられるわけなんです。そういうことがありまして、今度は十二月の二十三日に近江絹糸が株主総会を持ちました。そしてその議案は第一号議案から第三号議案までありますが、第一号議案で損益計算書並びに利益金処分案承認の件、それから第四号議案として退任役員に対して慰労金贈呈の件、こういう議題で総会が開かれておる。この四議案の退任役員に対する慰労金贈呈の件というのには丹波秀伯氏、それから元警視総監であった江口氏、これは取締役ですが、この人たちの慰労金贈呈がここに入っておる。二十三日に大阪の国際ホテル七階で第八十七回定時株主総会が招集されまして、そしてその総会においては、高見という人が社長ですが、やはりこの丹波秀伯氏なんかと同じような関係じゃないかというので、その会社被害の弁償を受けたというその上申についても、これは検察当局も疑問にしておられましたが、われわれも疑問にしておるわけなんです。その総会の際に、午前十時には社長が議長席に着いたが、その社長はタコ配等でさらにまた告発を受けておるわけです。それでそういうような社長は議長としての資格はないというので議長不信任案が出てそれが可決された。それから今度十二時ごろになって大阪府警から機動隊が一個分隊ですか、三十名ですか武装してこの会場の廊下に並んで、株主は三百名余りおったのですが、それを見ただけで一般の人はびっくりするわけですが、それが議長席のうしろに幕か何かあって、そのうしろに行きまして、行ったら不信任を受けた議長が出てきて、わずか五分間くらいでこの四つの議案が可決されて、そして退職金、慰労金の件について取締役会一任ということになりますし、さらにまたそれか重役会では社長一任となっておる。これに対しては、株主総会決議不存在確認請求事件というのが大阪の弁護士の代理人で訴訟を起こされておるようですが、その問題は別にしまして、私たち、普通の株主総会に武装警官が出たなんてことはいままで聞いたこともないわけです。これは江口氏、丹波氏なんかの慰労金の問題もあるし、一気かせいに可決されたというような事実から反対に推測しても、何か神聖であるべき警察を利用してそういうことをやったのではないか。府警のほうでは、そういうようなことは具体的な問題を知らずにやられることもあるかもわからないのですが、あるいは丹波氏その他の何かの方法によって——いろいろ話は聞いておりますが、武装警官が出動した。これは裁判にもなっておるようですが、そういうようなことを考えますと、やはり丹波氏が何やら民事上の賠償をしたのだ、大阪地検なんか調べもしない、調べる気もないようだというようなことをいろいろ言っておるのがどうも一思い当たるような気がする。そうして結局は公平であるべき警察権までも使っておるのではないか、こういうようなことが推測されるわけです。その点について、警察庁のほうから日原刑事局長もお見えになっておるようですが、もしもそういうように民事の関係刑事事件を隠蔽するためにそういう問題を起こして利用するということになれば、これはゆゆしい問題ではないかと思うのです。もしもそういうようなことになったとしますと、五千八百万もの金が政治献金されたというのがほんとうかうそか、免れるためにそういうことを言っているのじゃないかということも考えられるわけでありまして、これはどうしても政治献金というなら政治献金をやったか、実際あるならこれを捜査してもらうし、なかったらないというところの確実な捜査をしてもらわなければならぬと、私たちもこの点について非常に疑問を持ちましたから、明らかにしたいというのが、これを検察、警察の国政の問題として取り上げておるゆえんでございますから、そういうようなことが十二月の二十三日にありましたのか、あわせて捜査がどうなっておるかということをお聞きしたいのです。
  53. 日原正雄

    ○日原政府委員 警察のことがお話になっておりますので、私から一言御説明をいたしたいと思います。  十二月二十三日大阪市の国際ホテル会議室において開かれました近江絹糸の定時株主総会で、開会直書と同時に、この総会に株主として出席しておりました松葉会員と認められる二、三十人の者が、議長不信任あるいは流会せよというようなことで騒ぎまして、議事を一時中断いたしました。さらに第一号議案が可決されると同時に、議長席、役員席に詰め寄りまして、うち数人が議長席、役員席の机、いすをひっくり返したり、あるいはいすを取り上げる等の暴行をいたしました。机、いす等の器物九点を破壊いたしまして、株主総会の議事の進行を不能に陥らしめた。この件につきまして、大阪警察会社側の要請に基づきまして、東警察署員を中心とした捜査員を派遣いたしまして、会場におきまして、松葉会の中央支部員立花外二名を暴力行為等処罰に関する法律違反の現行犯として逮捕いたしました。その後共犯者として七名、合計十名の松葉会員を現在まで検挙いたしております。この件につきましては、これは株主総会における松葉会員の暴力事件として捜査中のものでございまして、現在までの捜査段階では、お尋ねの告発事件とは関係があるということは聞いておりません。私どもは、これを単なる暴力事件として処理をいたしてまいっておるつもりでございます。御心配のようなことはないと思います。
  54. 坂本泰良

    坂本委員 こんなのを知ってやられたらこれはたいへんだと思うわけですし、私たちも長年弁護士をしておりますけれども執行吏が強制執行に行って、警察に何回も要求してもほとんど出てこずに、民事問題は民事問題で解決してくださいといって、やったことがないのです。家の取りこわしの事件なんかもやったことがないわけです。株主総会なんかは、やはり総会荒らしというのは戦前戦後を通じておるわけなんですが、この三十人も出動してやるという以上は、何か株主と称して松葉会が入ったとしたならば、凶器でも持ってやっていたか。あるいはまた、要請があったからといって、直ちに武装警官三十名も出動させぬでも、何もその日は流会にしてでもして、あらためてやることもできるのですから、そういうようなこともせずに、要請があったからといって直ちに出動したという、その点を非常に疑問に思うわけなんです。もちろん、いろいろな凶器でも持ってその総会に——三百名も集まったそうですから、まぎれ込んだといえば、それは総会を開いて五分間で一潟千里に全部可決する前に、もっと株主についてこれを適当な方法があったと思うのです。それを警察官が出ていって、そして議長席のうしろに三十名も行って、そして不信任を受けた議長が出てきて一潟千里に二号、三号、四号議案を五、六分で異議なし、可決ということで可決する、そこに非常な疑問を持つわけです。警察権の発動をされるについても、もっと近代的に善処する方法があっただろうと思う。暴力団が出てきて、凶器を持って、そうして一般の良心的な株主に妨害を加えるとか、あるいは議事の運営に妨害を加えるとかいうふうにするのなら、これは別ですけれども、何かいすを二つ、三つゆさぶるか投げるかして机をたたいたというくらいの程度で、武装警官が三十名も出動していく必要性があったかどうかという点について非常に疑問に思うわけですが、そういう点について刑事局長いかがでございますか。
  55. 日原正雄

    ○日原政府委員 この十二月の株主総会には、東京の松葉会員多数が乗り込んでくる、凶器の有無はもちろんわかりませんであったと思いますが、多数乗り込んできて、不法事犯の発生のおそれがあるということが、各方面の状況からあらかじめ入手されておりましたので、まあそういう不測の事態に備えるという意味で、一部警察官を待機させ、会社側の要請に応じて、暴力行為が発生したというので、総会に入って検挙を行なったというふうに聞いております。
  56. 坂本泰良

    坂本委員 そのあらかじめ入手されたというのが非常に疑問に思うのです。やはり松葉会といえば、私たちもよく本体は知りませんけれども、相当の暴力団かもわかりません。しかしながら、そういうのが出動してくるということが入手されたら、事前の方策がもっとあると思うのです。それを総会を十時にやって、そうして議長が不信任になって、休憩になって、二時間後にその武装警官が来たところにおいて一瀉千里に総会で議決した、そこに非常な疑問が持たれるのです。これは一般の株主総会でも疑問が持たれると同時に、ことにわれわれが問題にしております五千八百万の政治献金と称しておる人の退職金、慰労金を議決する総会であるというのが、ここに関連をするものですから、非常に疑問を持つわけなんです。あるいは一方の、ある一部の者の運動かあるいは依頼によってされたのではなかろうかという疑問がそこに出るわけなんです。そうしてなお、あと捜査についても、七名逮捕されておるとおっしゃるけれども、暴力団がほんとうに、そういう逮捕して調べるべく、何か凶器でも持って非常な危険性があったかどうか。いすをゆさぶったぐらい、机をたたいたくらいで一カ月も一カ月以上も逮捕しておくというようなことについても、非常に疑問を持っているわけなんです。そういう点をかれこれ根本の五千八百万の問題と総合して考えると、これはもしかしたら一部の者の依頼によって、神聖であるべき警察官を、そういうことを知らずにやったのじゃないかというような疑問があるわけです。近江絹絲というのは、御存じのように、十数年前大騒動をやりまして、やはり刑事問題が起こって、そうしてそれがおさまってきて、また同じような問題がここに起きているのじゃないかというふうにも考えられますし、それに関連して政治献金だなんていわれたら、これはよほどこれを糾明して明らかにしてもらわなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。竹内刑事局長には前から一生懸命やってもらうようにお願いしておるのであります。警察官の出動について、松葉会が来るということを入手しておった、そうしてその総会に行って、総会は一気かせいに可決させた。その二時間前にあばれた二、三の者を逮捕してまた七名も逮捕する、こういうようなことは何か一方的に偏しておるのじゃないか、こういうふうな疑問がここに持てるわけなのですが、そういう点についてほんとうに公平に大阪府警はやっておるかどうか、これは警察庁としてもぜひひとつ公平に調べをされると同時に、あわせて基本の政治献金の問題を私は早急に明らかにしてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、お二人の御所見いかがでありますか。
  57. 日原正雄

    ○日原政府委員 この近江絹絲の事件につきましては、一部警察側に告訴が出ておる部面もございまして、また地検で捜査しておることは大阪府警もよく存じておるわけでございます。ただ、やはり総会において暴力行為等処罰に関する法律違反の事犯があるということになりますれば、それを取り締まるのが警察のたてまえでございますので、事犯の内容は別問題といたしまして、やはりその現行犯についてはこれを取り締まるというたてまえで処置をいたしておるわけでございます。また警察が出動いたしますにつきましては、お話しのように一方的な一つの側の要請ということでなしに、そういう事犯が起こるおそれがあるかどうかということは、客観的な資料でみずから判断をして処置をいたしてまいっておるつもりでございます。
  58. 坂本泰良

    坂本委員 その要請はだれがしたかわかりますか。
  59. 日原正雄

    ○日原政府委員 事前の配置につきましては、これは先ほど申しましたとおり警察自体の判断によっていたしたわけでございます。それから総会における要請につきましては、これは会社側の要請によるものでございます。
  60. 坂本泰良

    坂本委員 会社側のだれがしたのですか。
  61. 日原正雄

    ○日原政府委員 直接の話は聞いておりません。
  62. 坂本泰良

    坂本委員 会社側の要請があったから行った。株主総会というものは会社側の要請だけでなくて、株主が主なんですよ。ですから松葉会から三十人も来ておるというなら、まず、それを排除するような方法をとって、そうしてそういうのがいない正常なところにしてから株主総会をやればいいんですよ。そんな排除も何もせずに、そうして議長席のうしろに集まって、そこに不信任を受けた議長が入ってきて何千万円あるいは何億円以上になるかもしれませんが、その慰労金を会社は出すことを可決した。その方法は取締役会に一任するということを一気かせいにやらせるところに私は非常に疑問があると言うのですよ。まずそういうことがあったら、それはピストルとかそういう凶器を持ってきているというなら非常手段をとらなければならぬけれども、それなら会社は開会なんかせずにその前にやるべきだと思うのです。そういうのが起きたからという口実で出てきて、そうして違法と思われるような、また株主から不信任を食った議長が出て議事をやらせる、可決されるということを援護したというふうにも具体的には見られるわけなんです。その点を私は非常に遺憾に思うと同時に、それがこっちの五千八百万という政治献金に関連するのですから非常な疑問を持つわけです。そうしていすをこわしたり、机をたたいたりした者に対して一カ月以上もまだ逮捕しておる、これもまた非常に疑問になるわけです。これは暴力行為等処罰に関する法律の改正案が出ておりますが、私たちが反対しておるのは、これを乱用されると困るというので反対をこの前もしてきたわけなんです。それだから、そういうようなほんとうの暴力団を取り締まる法律でなくて、それを口実にして、一会社の内部にいろいろ紛争があるかもしれません、近江絹絲なんか、私なんか外部では、十数年前のような内部のあれがあるのじゃないかと想像はしますが、具体的には知りません。知りませんけれども、一億二千万も使い込みがあって告訴事件が起きておる。さらにまた株のタコ配その他で告発事件が起きておるというような、その会社に対してそういうような株主総会が強硬にとられた。強硬にとられた中に武装警官が三十名も行っていたということについて、私は警察の発動について、その点だけでも私は非常に遺憾に考えて、そうしてもっと暴力行為を取り締まるためならば、総会なんか開かせずに、その前に、暴力団がかりにいましたならば、それを排除してやるべきが警察の職務じゃないか。それを逆に一方の議案を五、六分で強行させるような、具体的には援助するというふうに見られる。これはそうすると、だれか一部の人からの依頼によってやったものじゃないか、こういうふうに誤解、間違っておる者は誤解する、あるいはほんとうかもわからぬ、こう思うわけなんです。ですから、その点についてもっと公平にひとつ警察庁は指示してやるべきである。少なくとも、人に傷害を与えたものでない者に対して一カ月以上も逮捕するというようなことは、何かほかに、その裏に隠謀でもあれば、これは別ですけれども、単にそのこと自体について暴力行為等処罰に関する法律を適用してやるというのは、ほんとうにこれはその法律を乱用するものじゃないかというふうに、私たちが反対する一つの理由となっておる、そういうことになりはしないか、こういうふうにも考えられるわけなんです。そういう点について御所見いかかですか。
  63. 日原正雄

    ○日原政府委員 私どもが総会へ入りましたのは、警察官が入りましたのは、株主総会で暴力行為等処罰に関する法律の現行犯の事犯が行なわれておるということで入ったわけでございます。それから私どもはこれを暴力行為等処罰に関する法律違反ということで考えておるわけでございまして、それならば事前に暴力団員が入ることがわかっておれば、それを入れさせないような方法、予防措置を講ずればよかったじゃないかというようなことも言われるかと思いますが、これは暴力団員でありましても、もし株主でございますれば総会に出席することができるわけでございます。また、そこで何も暴力行為等の法律造反の行為がなければそのままでいくわけでございますが、あくまでも私どもはその現行犯としての処理をいたしてまいっておるつもりでございます。
  64. 坂本泰良

    坂本委員 それは現行犯としての処理については遺憾な点も私はあると思うのですが、総会を武装警官の前で開かせるということは、そうして会社が要求しておるところの不法な議案を通過させるというところに、私はいかに現行犯のために警察官が出動したといっても、これはどうも遺憾じゃないかというふうに考えるわけです。ですから、あるいは一部の者の要望その他によってやっておるかもわかりませんから、その点についてひとつ十分公平な捜査をしてもらいたいと思います。
  65. 小島徹三

    ○小島委員 関連してちょっとお伺いしますが、松葉会といえば東京の団体だと思うのですが、それが数十人も、とにかく汽車貨か、飛行機貨か知らぬけれども、使って、向こうに踏み込んで行って、総会荒らしをやっているということについては、並み並みならぬ何かの理由があるのじゃないかと私は思うのですが、それについて、先ほどの話を聞くと、松葉会員が多数総会に乗り込んできてあばれるだろうといううわさというか、何かそういうあれがあったから、警察のほうでも注意しておったとおっしゃつたのですが、そういううわさがあったということはたいへんなことだと思うんですよ。これは東京での話が大阪警察にわかっていたということであるなら、何らかのあれがあっただろうと思うのですが、それは一体どういうことですかね。ただ松葉会があばれ込んでくるそうだということじゃないと思うんですよ、問題は。いま坂本君の言うのを聞いていると、相当のいきさつがあるようだから、背後関係があるのじゃないか。最近における暴力団というものは政治にまで入り込んでいる。それが経済界にまで入り込んでいる。こういう状態を黙って見ているということになると、これは政治も経済も全部麻痺してしまう。だから、これを単なる総会荒らしというように見ることはあまりにも軽々しく取り扱い過ぎると思うのです。従来から総会荒らしというものはあった。しかし、それは一部の、いわゆる総会屋というものが金をもうけるためにやっておった手段であったが、今度のように初めから金をもうけるということよりも——おそらく松葉会の団体というものはそういう経済的に金をもうけるというようなことを考えている団体ではなかったような印象を受けているのですが、そういうものが何十人も乗り込んでくるということになれば、その背景があるはずだと思うのです。そういう背景を徹底的についてもらわぬと今後の社会秩序というものは乱れてしまうと思うのです。今日、すでに暴力団というもが政治に対して関与してきている。新聞なんかをごらんになりましても、民社の諸君に対しましていろいろなものをよこしている。松葉会じゃないでしょうけれども、そういうものをよこしている。この問題は、単に一つの近江絹糸の総会が荒らされたという問題じゃなくて、もっと突っ込んだ徹底した捜査と徹底的な取り締まりをやってもらいたい。そうでなければ、この問題はどんなところに影響してくるかわからないと思いますから、その点は十分ひとつ注意していただきたいと思います。大体乗り込んでくるという話が最初に警察のほうにわかっておったということなんですが、ただうわさだからというようなことではないと思うのですが、話せる程度でよろしゅうございますから、どういうことがあったのか聞かしていただきたい。
  66. 日原正雄

    ○日原政府委員 これは情報としていろいろな方面から入手しております。単なるうわさの程度ではなしに、各種の情報を手に入れて、離れたところへ用意しておいたわけでございます。それから、現在この背後関係につきましては、ただいま松葉会員だけを逮捕いたして取り調べております。捜査中でございます。ただこの暴力行為等処罰に関する法律違反の共犯という関係においては、まだ捜査は延びるかもしれませんが、いまのところ松葉会員だけを逮捕、取り調べになっております。
  67. 小島徹三

    ○小島委員 まだ捜査中の事件でありますから、私はこれ以上お聞きしようとは思いません。ただお願いしておきたいことは、単なる経済問題に対して暴力団がとにかく関与してくるというようなことは、今後ともおそろしいことになると思いますから、ひとつ徹底した調査をお願いしたい。  武装警官が入って総会で——これをたまたま武装警官がやれと言ったのではないでしょうから、会社がどんどん総会を進行したのでしょうから、何も警察責任ではないのですから、私はそれはそれでいいと思うのですが、要請があった以上は出動するのは差しつかえないと思うけれども、一面においていま坂本君の言ったようなことも起こるわけでありますから、徹底した捜査をお願いしたいと思います。
  68. 濱野清吾

  69. 山田長司

    山田(長)委員 ただいまの問題は、昨年この法務委員会でわが党の猪俣議員及び坂本議員等も質問の衝に当ったてくださったのでありますが、これはやはり司法の威信にもかかわることでもあるし、もう一つは政治家全体の名誉にかかわることと思うのであります。人つくりを盛んに池田さんは唱え続けるが、こういう問題の解明がなされないとすれば、これは幾ら叫んでも意味のないことと思うのであります。  昨年、この事件内容については、近江絹糸の取締役である丹波なる者が一億二千万円の金を持ち出して社外に使った、こういう株主会の告発による横領事件として問題になったわけだと思うのであります。それで問題になることは政治献金としてなされた、政治献金がなされた中に議員が三、四十人名前があげられている、こういう状態なんだから、この問題はやみからやみに葬られるぞ、こういうことを言っているという話を耳にするわけです。こういう大ぜいの人たちが関係しておれば、司法権の発動というものはないのかという、そういう危惧の念すら持たれる。大阪朝日がかなり大きな記事として扱っているにもかかわらず、その後その記事が出なくなってしまった。そういうこともいろいろ取りざたされる理由になっていると思うのでありますが、法の威信のためにも、そういうことが言われております今日においては、一年有余にわたってこれが明白な結論が出ないということではなくて、もっと早く結論が出てこなければならぬと思うのです。その点、どうも結論が出ないでいることによってわれわれも不可解なこととして取り扱う事態になっているのですが、私は、個人のことを申し上げてたいへん恐縮ですが、党の綱紀粛正のほうを担当している一人として、政治献金であると言っている以上、どこまでも究明しろということでありますので、どういうところにおくれている理由があるのか、この点刑事局長にお伺いしたいと思います。
  70. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 どういう点に捜査がおくれておるかという御質問でございますが、はっきり申し上げますと検察庁警察捜査でも同じでありますが、犯罪捜査には刑事訴訟法に従ってやるという制約があるわけであります。嫌疑があれば何でも引っぱってきてかってに身柄をとめて、そうして幾らでも長く置いてやるといったような野方図なことは絶対許されないのでございまして、それは申すまでもないことでございます。そういう関係が一つありますことと、もう一つは犯罪に関係のないことを検察官が根掘り葉掘り——それはいろいろ社会的にそれが非難さるべき事柄でありましても、事が犯罪に関係のないことでありますならば、これに深入りをすることは、これまた検察官の職務として許されないわけでございます。犯罪に関係があるかないかということを調べるのが検察官の仕事でございます。そういうような点が真相を明らかにする上において時間がかかっておる点でございます。先ほどもお話がありましたように、この捜査のさなかにおいて、総会荒らしとしては非常に規模の大きい、従来われわれが考えておるような総会荒らしとは違った形の総会荒らしが行なわれたということがここに出てきたわけでございまして、この総会荒らしの真相というものもできるだけ徹底して究明すべきだと思います。そういうふうに両者相待ってこの事件の真相というものがわれわれ捜査官の手でどこまで明らかにし得るかということはむずかしい問題ではございますけれども、その点を鋭意捜査をいたしまして、事件の真相の解明に当たりたい、その間に出てきましたいろいろな事項につきまして、犯罪と関係のないものはみだりに公にすべきものでないことは繰り返し私申し上げておるとおりでございまして、検察官におきましても、山田先生の御心配になっているようなことはひとしく真剣に心配をいたしておるのでございます。御信頼を賜わりましてひとつ捜査をさしていただきたい、こういうふうに考えております。
  71. 山田長司

    山田(長)委員 実はこの問題につきましては、大阪地検及び特捜部担任の検事等にもお会いをいたしました。それでそのとき五千八百万円の政治献金という額は丹波なる者は認めた。これは私がお会いしました検事みずからも言われておったわけです。金額的にまで政治献金として認められているにかかわらず、しからばその政流献金はだれにやったのかという段になると、口を封じてしまって言わない、こういうことを言われました。そうすると、横領した金額まで認めておりながら、それが口をがんとして封ずればこれは追及せられないのかということになると思いますが、このことはまことに困ったと言っておられました。これは鋭意捜査をされていることはよくわかるのでありますが、もう一年有余にわたります。私は去年の五月、六月それから七月、さらに十二月と、この問題については当局をたずねました。その間全く理解のできないのは、もし一般の場合、これが横領した事実を認めたというような場合があれば、私は当然身柄の拘束というふうなものがあり得るだろうと思う。この事件については五千八百万という額を政治献金として認めておりながら、そのままにしてあるというところがどうも理解ができない理由なんです。その点それは認めておって、そのままにしてあって、これがこのまま続く場合にどういう方法になるのですか。これは捜査上のことだからなかなかそれ以上詳しいことは言えないと言われればこれっきりのことでありますが、政治献金がしてあるというところに、政治家としてのわれわれが、あなた方にもっと早く明らかにしてもらわなければならぬという理由があるわけなんです。これは一体どういう事情なんでしょうか。
  72. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 いまお尋ねの点がちょっと私にもわからないのでございますが、五千何百万かの命を政治献金したということを認めたというふうに主任検事が言っておるということでありますが、私の承知しておるのはそうじゃないのでございまして、それじゃおまえどういうふうにして承知しておるのかということを申し上げなければならぬ筋合いになりますが、これはただいま捜査中でございますので遠慮さしていただいておるのでございまして、ただその点は、いま山田先生のおっしゃるのと私の承知しておるのとは少し食い違っておるように伺ったわけでございます。しかし、捜査がなかなかむずかしいことは山田先生もいまある程度は御了解をいただいてくださっていると思うのでございますが、それならば山へぶつかってしまうと、それで手を引いてしまうべきであるかどうか、事件によりましては、そういう場合にいいかげんなところで見切りをつけてしまって処置をするという手もありましょうが、この事件につきましては、大阪地検当局は何とかもっと真相を究明して多年にわたる近江絹糸の紛争事件に終止符を打ちたい、ただし、これは刑事事件捜査としてどこまでその目的を果たすかどうかわかりませんが、そういう考え方のもとにやっておるのでございまして、この方向でいって山にぶつかって、それから先へ進めないということになりますと、また違った道から進むとか、いろいろなことを捜査官としてはくふうをしてやっておられると思うのでございまして、そういう点をるる申し上げて、なるほどというふうに御了解を願うのも一つの方法かとは思いますが、何さま刑事訴訟法にも命じておりますように、捜査は秘密に行なって、関係者の信用、名誉を棄損しないように、またそれを言うことによって捜査の妨げにならないようにしなければならぬと法律に定めてあるのでございまして、何と申しましても御信頼を願ってやるよりほかないのでございます。どうぞひとつそういう意味で御了解を賜わりたいと思います。
  73. 山田長司

    山田(長)委員 当初の告発の内容を見ますると、一億二千万の横領ということのようだったのですが、漸次それが調べられるに従って金額的にはかなり政治献金、脱税、タコ配等を含めて内容は変わってきておるようです。このタコ配の問題等について、これは当然それが事実とすれば新たな分野から犯罪捜査の糸口が切り開かれていくものだと思うのですけれども、タコ配等の問題についてはその後どんなように進んでおるのですか。これはなかなかむずかしくていまの段階では言えないということであれば、これはもうやむを得ないと思うのですが、どうなんですか。
  74. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 相当深く捜査を進めておるというふうに御了解を賜わって、この段階ではお願いをしたいのでございます。詳しいことはもちろん申し上げることは適当でないというふうに考えます。
  75. 山田長司

    山田(長)委員 犯罪が成立した後に弁償されたからといって、その犯罪が消えるものだとは思わないのでありますが、何か去年の選挙中に一部返済をした、そのことによってこの問題はもうたいした問題にもならないのだということが流布されておるやに聞くのでありますけれども、この点、弁償されたからといって犯罪が消えるということはわれわれに理解ができないことですけれども刑事局長の見解はどんなものですか。
  76. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 弁償があった場合に犯罪がそのために消えてしまうというようなことは、これはあり得ないことでございまして、すでに既遂になりました犯罪が、その後になって恩赦でもない限り消えるものでないのでございます。しかしながら、情状といたしまして、財産犯のような場合でございますと、財産の損害が弁償されたということは、これは一つの改俊の情と言いますか、損害がてん補されたという意味においてよい情状として考慮されるということは、これはいままで起訴、不起訴の段階においてもありますし、裁判の段階におきましても、それが原因になりまして執行猶予の恩典に浴するということもあり得るわけでありまして、それはあくまで一つの情状でございます。財産犯ならばすべて損害をてん補、弁解すればみなそうなるのかというと、そうではございませんので、やはり財産犯でございましても、弁償の仕方、したしたと称して実際はしてないというような弁償のようなものもしばしばわれわれは実例であうわけでございますが、そういう点につきましても、よく調査しまして、真にそれが正しい意味で弁償されたということになりますれば、情状として考慮することはあり得ると思いますが、ただ形の上で弁償ができたからといって、それが情状酌量の原因たる弁償ということになるかどうかは、個々の事件ごとにこれは判断すべきことでございまして、一がいには申し上げかねるわけでございます。
  77. 山田長司

    山田(長)委員 一部の弁済がなされて、この財源が限られた証券会社からの融資であったというようなうわさを耳にするわけですが、これが弁済の真相は刑事局長の耳に入っているのかどうか、事実がわかっておるならばここでお知らせを願いたいと思います。
  78. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 詳しいことは私は存じませんが、ある程度は報告を受けて承知をいたしておりますけれども、それとても、いま申しましたように、はたして弁償と言えるか言えないかという問題と関連がありまして、十分調査をしておる問題でございますので、この段階では申し上げることは差し控えたほうがいいと思います。
  79. 山田長司

    山田(長)委員 それでは理財局に伺いたいと思う。金融関係につきまして大蔵当局が検査をすることがあると思うのでありますが、この検査の計画と実施の状況、これらについて、一体どんなふうに検査をやっておるのですか。証券会社等についての検査です。
  80. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お尋ねの点は、証券会社に対する大蔵省の検査はいかなる計画のもとに行なわれておるかということだと存じますが、証券担当の証券部長が参っておりますので、証券部長からお答えいたします。
  81. 加治木俊造

    ○加治木説明員 検査は大体一年半から三年くらいを周期にして、あらゆる証券会社の財産、経理の状況あるいは業務活動状況検査することになっております。ただ、これは相手会社状況等にもよりまして、一年半なら一年半あるいは三年なら二年というふうに必ずしも機械的にはやっておりませんが、大まかに言えば、大体そういう周期でやっております。
  82. 山田長司

    山田(長)委員 聞くところによると、大証券会社の場合には大蔵当局の検査にも多少手心が加えられておるのではないか。いま一年半ないし二年くらいの間と言われましたが、大証券会社の場合においては、こんな期間のところはないのじゃないですか、どうですか。
  83. 加治木俊造

    ○加治木説明員 大証券会社の場合には、こちらの能力の関係もございますし、それから証券会社で共通した問題を持っていることは同じように検査いたしますけれども、大証券会社の場合には、一般の中小証券の場合と観点を変えて突っ込みの深い検査をしなくちゃならぬ、そういうこともございます。的確に何年に一ぺんときめておるということを申し上げかねますけれども、現在までの実績では大体三年に一ぺんの検査になっております。
  84. 山田長司

    山田(長)委員 最初申されたことといまの答弁とは、だいぶ違いがあるようです。  そこで株を証券会社委託した場合における証拠金というものは——どのくらいな額までは貸すものですか。
  85. 加治木俊造

    ○加治木説明員 どういうことでこざいましょうか、よくわからないのでございますけれども、信用取引の場合ですと、省令で定める証拠金率に達する証拠金を積まなければなりません。これは三割以上です。現金のないときは、代用証券でもって一定の掛け目の金額で換算して証券を持っていくということになっておりますが、御質問趣旨は信用取引のことでございますかどうか、よくわかりかねますが……。
  86. 山田長司

    山田(長)委員 私が尋ねることがちょっとことばが足らなくて苦労したと思いますが、信用取引のことをいま伺ったわけです。  そこで、これらのことについての大蔵当局の検査報告というものは、これは法務委員会の議を経なければ発表することができないのじゃないかと思うのですが、これらのことについて、それらの月日を申し上げれば、検査した書類を持ってきてここで御報告できるものですか。
  87. 加治木俊造

    ○加治木説明員 具体的な特定の証券会社検査内容について発表することは私限りではできかねます。大蔵大臣の承認を受けなければ、検査内容は、われわれ公務員の業務執行上知り得た機密に屈する重要なことだと思うのであります。したがって、私限りでここで御要請に的確なお答えをいたすことはできかねます。
  88. 山田長司

    山田(長)委員 そうしますと、私のほうで大体わかっていることについて、日時をあげて、この日の証券会社における支出の状態、このときに株を預けたのは事実であるか事実でないか、あるいはまた、払い込み通知等について、この日に出されているものがあるかないかというようなことを、伺った分なら答えられますか。
  89. 加治木俊造

    ○加治木説明員 これは内容によりますけれども、資本金の額とか従業員の数等は、これは営業の機密という部類に属さないと思うのでありますが、御質問内容によっては、営業の機密に属すると考えられるようなことが、ありますと、あるいは的確にお答えできないということもあろうかと思います。
  90. 山田長司

    山田(長)委員 私がいま抽象的なことを伺いましたが、これは竹内刑事局長にちょっと尋ねたいのですけれども、おそらく捜査当局においても、金融の関係のことあるいは証券業法の問題等にきまして当然お調べになっていることだろうと思うのでありますが、これらについてやはり今度の犯罪の問題というものがあるように、われわれはいろいろ調べてみた範囲において承知するのです。  そこで、これはたいへん僭越なことを申し上げるのですが、当局は十分お調べになっていることと思うのでありますけれども、どうもしろうとのわれわれは証券業法の取り締まりの規定につきまして十分な知識を得ることができずに困っているわけなんですけれども、もし信用で一定の額以上の金額を証券会社が貸すような場合、貸したような場合、それが長期にわたる場合、これらはどうも証券業法の範囲外だと思うのです。こういう問題につきまして刑事局長はどうお考えになりますか、一応このことを伺っておきたいと思います。
  91. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 これは大蔵省のほうで行政解釈権というものをお持ちだと思いますが、なお罰則の関係もございますので、私どものほうといたしましても一応の考え方を持っておるわけであります。それで、そういう意味で御説明をさしていただきたいと思います。  証券取引法の四十三条を見ますと、「証券業者が証券業以外の営業を営もうとするときは、大蔵大臣の承認を受けなければならない。」という規定かございます。この規定に違反をいたしますると、同法の二百五条の第六号に「第四十三条第一項の規定に違反して営業を営んだ者」という場合には三万円以下の罰金に処する、こういうことに相なっております。つまり、四十三条の規定に違反をして証券業者が証券業以外の営業を営んだ場合、この「以外の営業」の中に、ただいま御質問のような長期にわたって金を貸すといったようなことが入るかどうかということであろうかと存ずるわけでございますが、そういう金貸しのようなことをやった場合に、四十三条の違反ということになるかどうかという法律解釈の問題でございます。その点につきましては、二百五条の六号をよく見ますると、「営業を営んだ者」と、こういうふうに書いてございます。この「営業を営んだ者」という規定のしかたでございますが、これは一般抽象論で法律解釈を申し上げるわけでございますが、これは私どもは職業犯、営業犯とかいうふうに申しておる規定でございまして、営業を営むという職業犯の規定を書きます場合に、この二百五条のように営業を営むという言い方をする場合と、業を行なうといういい方をする場合と二つございます。このいずれの場合におきましても、反復継続の意図をもって行なわれるということが必要である。特に営業犯の場合には、それに加えまして反復継続して行なう意図のもとに金を貸し、かつそれが営利の目的に出る場合、これがつまり「営業を営んだ者」、こういうことに当たるというふうに解せられておるのであります。このことは、これは証券取引法についての判例ではございませんけれども、銃砲火薬類の販売営業に関するものとしましては、昭和三年の大審院の判例もございますし、薬事法の関係におきましては昭和二十八年の東京高裁の判例もございます。そのほか相互銀行法に関しましては、やはり東京高裁の判例もあるというふうで、まず大体判例、学説ともにただいま私が申し上げましたような解釈がいまは確定した解釈、こう申して差しつかえないかと思うのでございます。いまお話しのような証券業者が長期にわたって金を貸したという場合に、反復継続の意思でそういうことをやっておるか、それによって何らかの営利の目的を実現しようとしたかといったようなことが問題になろうかと思うのでございます。それによって犯罪になるかならぬかといったようなことが問題になろうかというふうに考えるわけでございます。
  92. 山田長司

    山田(長)委員 この事件は当局もまだ捜査中のようでありまして、なかなか明快な御答弁がいただけないのを非常に遺憾とするのでありますが、これは政治家だけでなくて、政治家に献金をしておれば司法当局も不活発になってしまうのだというふうな印象を与えるかのごとき時間的な余裕を与えてはいかぬと思うのです。これがためにいろいろ瞬間派生的なものが起こってきていると私は思うのですけれども、どうかすみやかに当局を督促してこの結論を出し、当委員会に御報告をしていただきますように御尽力願いたいと思います。どうぞよろしく頼みます。
  93. 濱野清吾

    濱野委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会