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1964-06-26 第46回国会 衆議院 文教委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十六日(金曜日)    午前十一時二分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 二宮 武夫君 理事 三木 喜夫君    理事 山中 吾郎君       木村 武雄君    熊谷 義雄君       谷川 和穗君    床次 徳二君       中村庸一郎君    橋本龍太郎君       松山千惠子君    川崎 寛治君       長谷川正三君    前田榮之助君  出席政府委員         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 六月二十五日  一、学校警備員の設置に関する法律案三木喜   夫君外八名提出衆法第二二号)  二、学校給食法の一部を改正する法律案二宮   武夫君外二十名提出衆法第三三号)  三、学校給食法の一部を改正する法律案(小平   忠君外一名提出衆法第五一号)  四、文教行政基本施策に関する件  五、学校教育に関する件  六、社会教育に関する件  七、体育に関する件  八、学術研究及び宗教に関する件  九、国際文化交流に関する件  一〇、文化財保護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件(へき地教育及  び文化財保護に関する問題等)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  3. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私はきょうは僻地教育の問題でまずお尋ねしたいと思います。私は鹿児島でありますが、鹿児島はたいへん僻地が多くて、実は毎年新学年度になりますと、教員異動の際にいつも問題が起きて、二、三カ月間はまともな授業ができない、こういう学校がたくさん出るわけであります。ことしの場合も、発令されていながら赴任を拒否をした新卒の教師が三十数人出たわけであります。こうした若い新進気鋭の諸君が僻地には行きたがらない、こういう現実があるわけであります。こういう実情というものは鹿児島だけでなくて、僻地教員確保という問題については、全国どこも同じ悩みを持っているのではないかと思うのであります。鹿児島の場合ですと、たとえばマムシというたいへん大きな問題があるわけで、東京都内マムシが出れば大きなニュースになると思いますけれども、私の郷里のほうではマムシ僻地に行けばどこでも出る、こういう問題もあるわけです。そこで現在進められております僻地教育振興につきましては、文部省としてもそれぞれの努力をされている点については十分わかるわけでありますが、今日のこうした年々僻地教員赴任しなくなる、むしろその数がふえておる、こういう大きな実態について、文部省としてはそれをどのように認識をされ、またどう打開をされていこうとしておるか、お尋ねしたいと思います。
  4. 福田繁

    福田政府委員 御指摘のように、この僻地教員確保につきましては、鹿児島県のみならず、全国的に僻地をたくさん持っております県におきましては、いろいろといままで困難な事情を感じておるわけでございます。したがいまして、僻地学校におけるいろいろな条件を整えるということももちろん必要でございます。また僻地教員については、他の平場教員よりもやはり優遇する必要があるというような観点から、いろいろ各府県教育委員会におきましては、僻地に行く場合におきましては特別昇給をさせるとか、あるいはいろいろな優遇策を講じておるわけでございます。もちろん住宅の問題もございますし、それからまた最近におきましては、特に若い優秀な教員確保するためには、僻地平場との交流ということをやはり本格的にやらなければなりません。そういう人事行政上の観点からも、僻地経歴のある者を、校長あるいは教頭に採用するというような、そういう方策を講じながら、できる限り僻地に優秀な若い先生一定の年限とどまって、教育に尽力してもらうというような考え方でもって、各府県教育委員会におきましても大体そういう方向で現在は考えておるわけでございます。しかしいま申し上げましたようなことだけで、現状満足しておるわけではございません。いろいろと今後におきましても僻地教員確保については、住宅の問題なり、あるいは待遇の問題ももちろんございます。あるいはいろいろの環境をできる限りよくしていくというような考え方もとらざるを得ないのでありまして、そういう各種の対策を総合的にやりながら、僻地に優秀な教員確保するというような考え方で、私どもも今後努力してまいりたいと思いますし、また各府県教育委員会におきましても、そういう考え方で現在やっておるようでございます。以上であります。
  5. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 努力はされておるが、現実はその方向にいっていないのが実情ではないかと思います。たとえばことしも鹿児島の新年度におきまして十島村ではとうとう行き手がいないということで、教師経験のない農協職員が数人集団的にかたまって行った。これが美談として報道されておるわけなんです。農協の若い男女の職員が意を決して渡って行った、その姿には、私は敬意を表するわけでありますし、その情熱をぜひ僻地に生かしていただきたい、こう願うわけでありますが、しかしそれはあくまでも美談であって、教育の水準を向上させていく、そして教育機会均等、あるいは差別をなくしていく、こういう根本からいきますと、きわめて離れている実態であろうと思います。そういたしますと、ことしの春、そうした全国的に見て、特に僻地教員の不足が大きく出た府県、その点を文部省としてどのように把握しておられるか。具体的におわかりであったら知らせていただきたい。
  6. 福田繁

    福田政府委員 いろいろ各種の困難な事情はあるようでございますが、全般的に見まして北海道などを除いては、それほど大きな困難はことしにおきましてはなかったようであります。もちろん鹿児島などで根本的な考え方として、将来に備えていわゆる地元教員志望者をできる限り教員養成大学に入れて、その卒業生を確保していくというようなやり方から考えているようでございます。私どももできる限りその地元の、あるいは離島でございますと離島の出身の教員確保するということも、根本的には必要であろうと思います。新潟とかあるいは九州の一部などでは、いろいろ困難な事情も聞いておりますけれども定数確保が非常に困難であったということは、これは北海道が一番事情が深刻であったようでございます。ことし定数法の改正によりまして、千数百名の増員をはかりましたけれども、その増員の大部分は僻地でございますので、その僻地のほうに確保ができなかったというようなことでございます。これは道の教育委員会自体も、これに対しては頭を悩ましておるようでございまして、北海道が一番事情としては気の毒であったということでございます。
  7. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 現地で採用をして育てていこう。これはわかるのでありますけれども、実際には現地の者を採用して現地に返す、こういうことになりますと、動けないという現実が出てまいるわけであります。そこでその点については必ずしもスムーズにいっていない、こういう感じがいたしますが、その点については将来ひとつ各面にわたって改善をして、僻地が僻遠であるために取り残されていく、こういうことのないようにひとつ努力をしてもらいたいと思います。  そこで、具体的な問題についてお尋ねしてまいりたいのでありますが、僻地教職員のための住宅施設につきましても、これは私は鹿児島のほうの問題にいろいろタッチしてみましてたいへん矛盾を感じたのでありますが、たとえば教職員住宅建設費補助は、坪当たり単価が四万円であります。ところが集会室のほうの単価は、鉄骨の場合で五万七千二百円、木造の場合で四万三千円、つまり集会室のほうが補助単価が高くて、人間が住む住宅のほうが単価が低い、こういう実態にあるわけです。つまり人間尊重でない姿というのがここにあるわけでありますが、これは文部省当局だけで片づく問題ではなく、財政当局との問題もありますが、ここらに私は姿勢の一つがあらわれておると思う。でありますから、ハブがおる、マムシがおる、しかも無医村である、台風の常襲地帯である、こういうところで苦労しよう。こういう場合に、集会室単価よりも低い補助単価で建てられておるのが今日の実態でありますので、これらはやはり矛盾として当局認識をされておると思うのでありますが、これが今後どのように改善をされていくか、あるいは改善方向にあるのかお示しいただきたいと思います。
  8. 福田繁

    福田政府委員 なるほど御指摘のように、集会室などの新築の場合におきまして、単価鉄骨で五万六千九百円、木造で四万三千百円、平均単価が四万五千百七十円になっております。これは御承知のとおり公立文教施設単価で、他のものとの関連でこういう単価になっておると思いますが、教員住宅の場合は、これは公立文教施設ということではなくて、やはり一般公営住宅などの単価等を参考にしてきめられたものでございますので、単価は四万四百円になっております。たいした差はございませんが、約三千円くらいの差があるようでございます。これらは将来の検討の問題でございますが、他の公営住宅等単価改定等とにらみ合わせまして、これはだんだん引き上げていくのが筋だと私は考えております。
  9. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次には、やはり僻地に行けないという悩み一つは、子弟教育の問題があるわけです。子供を残していかなければならぬ。残していくためにはどうしてもどこか預けなくちゃならぬ、たいへんな負担がかかるわけであります。そこで僻地に行く教員子弟のための宿舎の問題については、これは僻地のほうから非常な要求があると思うのです。また僻地に行く教員要求も強いわけでありますけれども、その点についていまのところそういう制度がないわけでありますが、検討されておるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  10. 福田繁

    福田政府委員 御承知のように、僻地などの子供一般の町の学校のような整った学校中学校教育あるいはまた高等学校教育を受けにくいような事情がいままでございましたので、そういう子弟のためにやはり中学校の段階におきましても、あるいはまたもちろん町に出て高等学校教育を受けるという場合も同様でございますが、寄宿舎の設備というものが必要であろうと思います。そういった見地から、特に三十九年度から中学校寄宿舎の建築の補助並びにその寄宿舎を設置した場合の運営費補助というものを新しくやってまいることに予算を計上したわけでございます。高等学校につきましてもごくわずかでありますけれども、そういう予算を一部三十九年度から計上しております。こういう問題については、将来私どもとしてはできる限り充実、整備をしていきたいと考えております。  いまお尋ねの趣旨はそうでなくて、逆に僻地のほうに出かける先生子弟のために寄宿舎を用意しているかというように伺ったのでありますが、その点については私どもまだ国の施策としては考えてはいない。これは各県の実情によりまして、そういうものが非常に多く必要であるということになれば、これはやはり何らかの措置を講じなければならぬと思いますが、検討問題だと考えております。いま直ちにこれを何かやるということはいまのところ考えておりません。
  11. 三木喜夫

    三木(喜)委員 関連して。いま川崎委員のほうから質問しましたことは、僻地振興という立場から質問しておられると思うのです。私もこの問題については、文部省まだ考えていないということなんですが、僻地教育を大いに振興しようと考えたときには、そこに行く先生子弟教育をどうするか、先生それ自体の給与の問題もあるいは生活をそこでなさる不便の問題も考えなければなりませんけれども、一番に気になることは子供教育です。僻地では高等学校教育、それから大学教育もできませんので、これはどうしても置いていかなければならぬ。そうすると、子供は親の監督から離れると、教育的に監督の方面からいえば捨て子したというようなかっこうですね。親は非常に気になっておるので、これはぜひ文部省でも考えてもらわなければいかぬ問題だと思うのです。  これと関連いたしまして、先般の委員会山中委員が言われた、外地におられるところの、公館につとめておるところの役人子弟ですね。この子弟教育の問題も、これは一貫して考えてもらう、こういうように私は関連してお願いしたいわけなんです。と申しますのは、先般外地につとめておる人の子供教育のために、在外日本人小学校をつくるという問題で、私ニューデリーに行きましたときに、藤本先生というのがちょうど赴任したところだったのです。その先生はやはり子供を置いてきて、自分教育のために外地へ来ておるのだけれども自分子供教育のためには非常に気にかかるということを言っておりましたし、やはり外地の、外務省から出ておられる役人子弟の問題については、各地に行きましてもこの問題は非常にやかましく言っておりましたから、これは関連してぜひここで、初中局長責任を持って考えるというふうにしてもらいたい、こういうふうに思います。その点どうですか。
  12. 福田繁

    福田政府委員 外地に在勤しております方の子弟教育については、これは非常に緊切なものがあると思います。事情はあるいは似たようなことかもわかりませんけれども、いままでのところ僻地勤務教員子弟のために、どこかでまとめて宿舎に収容して、そこで教育をしようという計画は、まだ私どもは県の教育委員会などからそういう御要望を聞いておりません。あるいは今後そういう問題が起きるかもわかりませんが、いままでのところはやはりそれぞれその居住地子弟教育をやるというのが多いようでございました。どこか県内の一カ所にまとめてそれをやるというような計画は、まだないようでございます。今後の検討問題かもわかりませんが、そういう意味で、私先ほど申し上げましたのは、今後そういう具体的な問題が出てまいりますれば十分検討いたしたい、こういうように申し上げたつもりでございます。
  13. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう一つ伺っておきたいのですが、先般の本委員会山中委員が、外地公館に勤務しておる人の子弟は、国立学校に付属の学級か学校かを設けてそこで収容したらいいじゃないか、こういうことを提案しておると思います。この点については考えてみるというお話でしたが、この点はどうかということ。それからいまの答弁で、県からこういうような僻地につとめる先生子弟教育をどうするかという問題については、あなた聞いていないとおっしゃるのですか。あるいはそういう企てが県であるということを聞いていないのですか。どちらですか。そういう要望は県の教育長あたりからないのですか。
  14. 福田繁

    福田政府委員 前の問題につきましては、これは私の所管でもございませんけれども文部省全体としてそういう問題は検討されておると思っておりますが、僻地教員子弟をどこかへ集めて、そこで宿舎に収容してやるということについての財源措置なり、あるいは具体的な計画を援助するということについては、まだ御要望がないわけでございまして、私ども具体的にはそういう計画は聞いておりません。
  15. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの三木委員の御質問の点ですけれども、これはないということはないはずだと思うのです。といいますことは、僻地教育関係の各県でつくっております全国僻地教育振興促進期成会というものがあるわけです。北海道なり鹿児島なりが中心になってやっておりますが、この全国僻地教育振興促進期成会要望事項の中では、いま三木委員の言われました僻地に行く教員子弟のためのそういうものをほしい、こういう要望が出ているはずなんです。ですからその点はひとつよく御検討いただいて、この問題については私は切実な問題だと思いますので、よろしく御検討のほどをお願いしたいと思っております。
  16. 二宮武夫

    二宮委員 僻地教育振興というのは、教育機会均等を十分に獲得をするための一つ立法化でございますけれども、私は文部省の皆さんは僻地教育実態というものを知っていないのではないかと思う。海を知らない子供、そういった学童が、どのように機会均等の面で優遇されておるのかという問題については、私はもう少し熱を入れなければ、僻地教育振興法をつくった当時の精神に反するのではないかというふうに考えます。  私の県であった例でございますけれども先生方の就職の率が非常に悪くなって、どこでもいいからとにかく早く就職したいということになりますと、一番先にAクラスの一番成績のいい組が僻地に行くのです。そうするとその地域では若い先生方がたくさん集まる。そして学年長などということで、先生方の編成をやる場合には、若い人が責任を持たされる。そうすると、その人は教育経歴が非常に短いものですから、ほかの人からいろいろ聞かれてもわからない。ついにその人はノイローゼになって山の中に逃げ込んで、三日三晩山の中をさまよって、村人が一緒に探し出したというような悲劇があるわけなんですけれども、こういう事態は日本のような地勢の中では全国にずいぶんたくさんあるのじゃなかろうかというように私は考えます。先ほど川崎委員からのお話にもございました建設費の問題でございますけれども、それについても私は文部省の熱意が足らぬと思うのです。公営住宅というものの考え方については、建設省はこの実態をよく知らないのです。あなた方が十分に指導しないと、専門家であるところの建設省が知らない。したがって公営住宅を請け負う業者は、ほかで見合うところの何かいいもうけになるような仕事を持ってこないと、公営住宅というものは引き受けをしない。これが業者の常識なんです。こういう実態地方にはたくさんあるわけです。こういう状況で、ございますから、単価そのものの見積もりに私は無理があると思うのです。  そこで、こういうような住宅建設あるいは教職員の配置、これについてはどうですか。調査の結果、全国的に見て、一ぺん僻地に行かなければ都市周辺あるいは平地の中には入ってこれないというような教育委員会指導人事異動の方針をとっておるような県があるように私は聞いておるのですけれども、一ぺんは僻地教育経験してもらう、それで初めて都市まん中教育ができる、何かにたよると、僻地に行かずに都市まん中にずっと長いことおる、こういう先生配備のし方というのは、僻地振興法精神から言いますと、ほんとう教育をやるものは人間である、先生であるという立場から考えますと、この点で私は手抜かりがあるのじゃないかというふうに考えるのです。全国的な考え方全国的な視野に立って、僻地教員配備について困ったのは、北海道である、こういうような文部省認識では、僻地教育振興なんというものを望むことはとうていできぬのじゃないかというように私は考えるのですが、どうですか。何か会合をやると僻地でやらぬのです。たいがい都市周辺会合をやる。先生方はみんな旅費をたくさん使って僻地からやってくる。そういうことで僻地先生方というのはたいへん冷遇視されておるというのが実態であるし、教育面においても非常に苦労があるというのが実態じゃないかと思うのです。そういう実態文部省はもう少し把握しなければ、地方教育委員会に対して指導、助言というものはできないと私は思うのです。地方教育委員会も、どうかすると僻地に行くやつはあんまりよくないやつが先に行くということになって、僻地教育ほんとう機会均等というものを与えられないような状況になるおそれがあると思うのですが、そういう全般的な僻地に対する考え方そのものに対して、この法律精神に基づいてほんとうにやられているかどうかというこの実態文部省はどのように把握しておられますか、その点ひとつお聞きしておきたい。
  17. 福田繁

    福田政府委員 二宮委員の御指摘になりました点につきましては、私どももちろん僻地学校の問題についてはさらに勉強していかなければならぬと考えておりますが、全国的に見まして、先ほど申し上げました教員人事などについて、僻地を非常に重要視しているという傾向は、最近の各県の人事にあらわれていると思います。私の記憶いたしておりますところでは、東北の各県、たとえば岩手、秋田、山形、それから新潟というような県、あるいはまた九州のほうで申しますと、宮崎、鹿児島、長崎というような県、それからまた四国の高知、愛媛というようなところでは、最近僻地教員確保するということとあわせまして、僻地経験者でなければ教員としては適当な教員とは言いがたいというようなことまで言って、できる限り一定期間僻地に勤務させるようなやり方をしておるようでございます。そしてまた、そういうところではできる限り僻地教員優遇をはかっていこうというような考え方で、赴任にあたりましては特別賞与を与えるとか、そういうことも考慮しているようであります。それ以外にも、もちろんあると思いますが、私の記憶しておりますのはそういう県でございます。
  18. 二宮武夫

    二宮委員 あと二つだけお聞きいたしますが、私は三十六年に東北地帯の豪雪に見舞われておる地域を回りました。雪でも降り始めると学校に行けない、したがって児童や先生も、お寺とかあるいは大きな家屋に合宿をして勉強をする、そういう地域をずっと回ってまいりましたけれども、そのときに、このような寒冷地に対する交付税態容補正というものが実際にあるということを、その地域の人は知らなかった。これは私は、文部省としてそういうような寒冷地における教育実態に即しての財源措置というものの指導につきましては、手抜かりがあったのではないかと思うので、その点について……。  それからもう一点は、辺地起債ということをこの前予算委員会でお聞きしたのですけれども辺地のものについては特別に起債が認められる、その五七%は需要額の中に算定をしてみてくれる、こういう恩典があるわけです。これは金を貸すのです。補助ならまだいいんだけれども……。それで、一応貸すとして、ところが、私はこれをうちの県に帰って聞いてみたところが、そういうもののお金の借り方、——スクールバススクールボート、あるいは発電機であるとかテレビの受像機であるとかいうようなものを買うのに、国からお金が借りられるという実態を知らなかった。近ごろになったらだいぶ出てまいったようでございます。これは五カ年計画で、五十億の財源措置というものは来年で終わるわけなんです。ことしは十五億あるわけです。これらが教育施設やそのほかにどのように辺地で利用されているかという、この辺地起債の問題を予算委員会でお聞きしましたけれども、これは時間が少なかったためにお答えをいただく時間もなかったように思っておるわけですが、この辺地起債というものを十分に活用すべきであると私は思います。あるいは寒冷地でどうしても学校に通学できなくなったときに、寄宿舎を持ったというものに対しては、特別に財源措置ができるようになっている。そういうような僻地教育寒冷地教育、あるいは非常に困った地域教育、孤立したところの教育というものを文部省が真剣に指導をし、考えてやれば、もう少し末端にまで浸透、徹底していなければならぬと私は思うのです。三十五年、三十六年、三十七年を比較して、このような雪の降ったために、住宅を提供するようなやり方をしておるものに対して、一体どれくらい利用するようになったかという数を、いまここですぐあげろと要求してもちょっと無理だと思うのですけれども辺地起債についてはこの前宿題として申し上げ、一応数をあげておいたのですけれども辺地起債の利用度というものはどうですか。これはもちろん学校だけに利用するわけではございませんけれども学校の利用について、こうした国が立てた一つの方針というものを十分に浸透、徹底をさせる必要があるのではないかと思うのですけれども、それらの利用状況というものはわかりますか。
  19. 福田繁

    福田政府委員 御指摘になりました点でございますが、私もまことに、こもっともなお話と思って承ったのでございます。いままで僻地のそういう問題について教育委員会なり町村側があまり知っていなかったということは、これは事実であります。おっしゃるとおりだと思います。最近、いろいろな起債の点、その他補助金等につきましても同様でございますが、だんだん僻地の方々もそういう手続あるいは事情については、全部ではございませんけれども、だいぶ明るくなってまいりました。ここ二、三年のことでございますけれども、それ以前はおっしゃるとおりにほとんど知られてなかったというのが事実であろうと思います。いまお尋ねの点につきましては、いまここに資料を持っておりませんから、具体的にお答えできませんが、これはまた取り調べまして他日お答えを申し上げたいと思います。
  20. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、時間の関係がございますので、能率的にいろいろお尋ねしたいと思います。給食の問題で少しお尋ねしたいと思います。  昨年の五月一日の統計資料をとってみますと、給食実施校は小中学校合わせて三千六百八十四、こういうふうになっておるのであります。ところが、僻地学校は総数でいきますと八千七百八十五校、こうなりますと四割五分に満たない、こういう実態であります。ところが、これは子供の体位あるいは子供の頭脳の発達、いろいろな面から見てみましても、僻地こそ給食の完全な実施ということが望まれるわけであります。でありますから、そういう点からいきますと、この四割五分にも満たない現在の給食の実施状態というのはたいへん遺憾だと思うのですが、この点についてはただ単に二分の一の施設補助費、そういうふうなことでやっていったのでは、これはそうした僻地町村の財政能力からして百年河清を待つ、こういうことになるのではないかと思います。その点について、特にこの点を推し進めていく施策をどうしておるのかということが一点。それから二点目は、そういうことであるならば、私は僻地学校における給食については、これは無償にすべきだ、こう思いますが、その二点についてお尋ねしたいと思います。
  21. 福田繁

    福田政府委員 おっしゃるとおりに、私ども僻地子供に対して給食を普及していきたいということについては同感でございます。したがって、従来からも僻地学校に対して施設設備の補助をやってまいったのでございますが、もちろんこれで十分なりとは考えておりません。また来年以後におきまして、特に僻地学校の御要望に応じてこれを拡大していきたいということは私ども検討いたしておるところであります。ただおっしゃるように、施設設備の補助率の問題がございますので、これは他の一般僻地補助と関連をするわけでございます。給食だけの補助率を非常に高く引き上げるということも非常に困難でございますから、実際問題としては他の補助金の補助率等々とあわせて検討しなければならぬ問題でございます。これは根本的には僻地振興という立場から特別な措置をするかどうかということにかかっておると思います。したがって、私はこの補助率の引き上げ等が検討されなければならぬと思いますけれども、それができない場合におきましても、僻地の町村に対する他の財源措置を十分講ずる必要があろうと思っております。そういう意味で、私どもは根本的に僻地のいわゆる貧弱町村の財政の底上げという問題を前々から自治省と相談してまいっておるわけであります。そういう方向で、現在は徐々に僻地町村のいわゆる交付税などの措置による底上げという問題を取り上げて措置してまいっております。しかし、補助率についても、やはりこれは将来にわたって根本的に検討すべき問題であろうと思います。給食につきましては、そういう問題と、それからミルクなどを、全面的に小中学校子供に飲ませるということは、これは当然なことでございます。そういう方向で、文部省としては大いに僻地学校に対しても、ミルクあるいは一般の給食も普及していきたい、こういう趣旨でいまいろいろと推し進めているわけであります。  無償の問題については、これももちろん希望としては、私どもそうありたいと考えております。しかし、これもなかなか重要な問題でございますので、将来の問題として検討させていただきたいと思います。
  22. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいまの補助率の問題でありますが、これは全国僻地関係の団体においてはいまの二分の一の補助率をすべて三分の二に引き上げてほしい、こういう要望が非常に強いわけであります。この点について自治省でも検討しておる、こういうことでありますが、これを少しでも引き上げていくことについて今日障害になっておるのはどういう点なのか、あるいはそういうものを引き上げることの可能性、そういうものについてどの辺まで進められつつあるかお答え願いたいと思います。
  23. 福田繁

    福田政府委員 この補助金の問題につきましては、自治省よりもむしろ大蔵省でございまして、大蔵省としてはなるべく補助金の補助率を引き上げたくないというのが前々からの考え方でございます。したがって僻地などの場合、あるいは産炭地などの場合、そういう特殊なケースに応じては補助率を引き上げてもいいんじゃないかというような交渉も前々からいたしております。しかしながらやはり他との均衡を云々いたしまして、財政上の理由で大蔵省はこれを納得しないわけでございます。そういう観点から私どもは、それじゃ補助金の率を引き上げることができないといたしますれば、いまのような他の財源措置を講じて、できる限り町村の財政力を底上げし、充実するという方向を考えなければならない、そういう点については自治省と十分協議をしながら、同じ歩調で進んでおるわけでございます。
  24. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 実はきょうは時間があれば大蔵当局も来てもらって少し突っ込んでやりたかったのでありますが、最終日で非常に時間もありませんので、この点についてはやむを得ないのでありますが、私たちといたしましても、これは各委員会において、いまのただ僻地教育だけでなくて、僻地全般の振興のためにこの点についてはひとつ努力したいと思いますが、文部省当局においても全力をあげていただきたいと思うのであります。  次に、教員の手当の問題で少しお尋ねをいたしてまいりたいと思うのでありますが、社会党のほうからも法案を今国会には出してあったのでありますけれども、十分な優秀な教員僻地確保する、このためにはどうしても僻地手当の支給割合を引き上げていくことが根本であろうと思うのであります。住宅の問題であるとかその他いろいろの問題もございますが、この僻地手当を引き上げていくことについて、現在五級地が二五%で一級地が八%、こういうふうになっておるわけでありますが、当然に僻地手当の支給割合を引き上げるべきである、こうわれわれは考えておるわけでありますが、この点について引き上げる意思があるのか、あるいは財政当局との折衝を進めておるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  25. 福田繁

    福田政府委員 僻地手当の引き上げの問題につきましては、あるいは当委員会で私申し上げたように記憶いたしておりますが、文部省としては、給与制度の根本的な改定あるいは再検討というような点になれば、これは十分根本的に検討してまいりたいと考えておりますが、僻地手当をいま直ちに引き上げるということは、御承知のように他の公務員についております隔遠地手当等とのつり合いの問題もございますし、この僻地手当は、いま御指摘のありましたように一級地から五級地につきまして八%から二五%、最高二五%までになっておるわけであります。これは定率でございますから、したがって本俸のベースアップがあればそれに応じて額もふえていくという仕組みになっておるわけであります。したがって僻地手当を、他の手当とのつり合い上も考慮いたしますと、なかなか引き上げるということは困難であろうというように私ども考えております。したがって、これは将来の給与制度あるいは諸手当の再検討のときには十分検討してまいりたいと考えておりますが、いま直ちにこれを引き上げるという考え方はいたさないわけであります。
  26. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 僻地手当は期末の勤勉手当の算定の基礎にいまなっていないわけでありますけれども、これを算定の基礎に入れるということについてどう考えておられますか。
  27. 福田繁

    福田政府委員 非常に困難かと思いますが、私どもは将来の問題としては、これは検討してみたいと考えます。
  28. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それから養護教諭の問題でありますが、小規模校がたくさんある。そのために幾つかの学校を兼務しておるわけであります。この点については前の国会においても本委員会において論議をされてまいっておるわけでありますが、三十何年でしたか、自民、社会、民社三党で三十八国会に決議案が出されておるわけであります。僻地学校における数校勤務の養護教諭の解消に努める、こういうことで決議案が通り、さらに事務職員の充実を期する、こういうことになっておるのでありますが、十分な解消がなされていないわけであります。特に僻地におきます養護教諭というのは、ただ単に学校の児童生徒の問題だけでなくて、無医村地帯が多いわけでありますので、そういう意味においては、これはただ単に文部省だけではなくて、厚生省等々とその点十分に協力をして、必ず置く、必置にする、数校勤務を解消するという点について抜本的な努力をなすべきであると思うのでありますが、決議以来、この点についてどのように進められ、また今後さらにどのように改善をしていこうとせられるのか、お示し願いたい。
  29. 福田繁

    福田政府委員 養護教員につきましては、御承知のようにこの前の国会におきまして、いわゆる定数法の改正に伴う措置として、五ヵ年間に約五千人の増員をはかってまいったのであります。その五千人の増員をするにつきまして、これは年次計画でいくわけでございますが、主としてこれは小学校に重点的に配置するという方針で進んでおるわけであります。事務職員につきましても、この五年間に同じく定数法の改正に伴って六千人の事務職員増員するという計画を進めておるわけでございます。それによって今後三十九年以降事務職員、養護教員については五千人、あるいは六千人の定数増をはかるという計画を持っておりますが、将来はその五ヵ年計画が終わった後に、私どもはさらに再検討してまいりたいと考えております。  ただ御指摘のように、僻地に養護教員を必置するということについては、これは供給の関係もありまして、実際上無理かと考えるわけでございます。と申しますのは、この養護教員自体は養成所を出ましても、なかなか僻地には若い先生は行ってくださらない。そういう点で非常に悩みがあるわけであります。またそういう地帯が無医村であると申しましても、養護教員で医者の代用をしてよろしいかという問題も、これは疑問なきにしもあらずであります。これはむしろ厚生省の施策に待つ以外はなかろうかと思っております。しかし少なくともできる限り僻地学校までも、だんだんに養護教員増員して配置していきたいという考え方は持っておりますので、五カ年計画に引き続いて、さらに私どもは十分整備をしてまいる考え方でいま進めておるわけであります。
  30. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 最後にひとつ。高等学校関係の僻地手当は、小中学校の場合ですと、いまへき地教育振興法の適用がなされておるわけでありますが、高等学校の場合は、これは特別措置ということになっておるのでありますが、この点もっと改正をされる方向はないのでありますか。
  31. 福田繁

    福田政府委員 高等学校は元来僻地にございませんので、僻地手当はついていないのでございます。しかしながら小中学校について僻地手当をつけましたときに、高等学校先生についてもできる限り隔遠地手当をつけて、そうしてこの隔遠地手当において僻地手当と均衡をとるようにという指導を、自治省と文部省と共同でやってきたわけでございます。現状はそれに基づいてやっているわけでございますけれども、必要な向きには隔遠地手当をもちろんつけておるわけでございます。
  32. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。
  33. 久野忠治

  34. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 最初に、ただいま川崎委員から僻地教育問題についてずっと質問がありましたので、それに関連して一つだけ文部省の態度をお伺いしたいのですが、先ほど福田局長の御答弁の中で、僻地教育振興のために、特に優秀な教員確保のために岩手、秋田の例あるいは宮崎等の例、鹿児島の例として幾つかあげられました中に、特別昇給あるいは特別な増俸、僻地赴任しておる者は一号上げるとか二号上げるとか、そういう措置をとっているところもある。それからもう一つは、僻地教育経験者でなければ将来教頭、校長等にはしない、そういう人事方針を打ち出して、僻地教育振興努力をしているところが出ておる、そういうこと、これはそれぞれの県教育委員会僻地に対する教員確保に苦悩した結果そういうふうになっておると思うのですが、文部省として僻地教育振興のためにできるだけそういうところには特別昇給なり特別の増俸なりをしてやれ、そして教員確保せよ、また人事の面でもそういう県の例は非常にいい方針であって、積極的に文部省としてもそういう態度だ、こういうことで強力な指導をされるお考えなのか、現象としてそういうことがありますというただ御報告なのか、その点をひとつはっきりお伺いしたいと思います。
  35. 福田繁

    福田政府委員 文部省が強力な指導をしなくても、各県は必要に応じてそういう措置をとっておりますので、したがって私どもとしてはそういう方針自体はけっこうじゃないかと考えるわけでございます。したがって財源措置等におきましてもできる限りそういう方針が貫徹できるように、これを認めて県と十分協力してやっていく、こういう体制を私どもはとりたいと考えております。
  36. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは僻地の問題についてはただいまお考えがよくわかりました。ぜひひとつそういう態度をさらに強く指導の面で出していただきたいと思います。  次に、実は私きょう大学急増対策に関連していろいろ質問を申し上げたかったのですが、時間がございませんので、これは次会に譲りたいと思います。  ここで先般行なわれました学力テストの問題についてちょっと御質問を申し上げたいと思います。今月の二十三、二十四日の二日にわたりまして、ことしも昭和三十一年以来行なわれております文部省の学力テストが、中学校の全部、小学校の二〇%ですか、これは指定が二〇%であって、小学校の場合も相当数が希望というかっこうで行なわれました。東京で保谷町の教育委員会がいろいろ検討した結果、行なわないという決定をして行なわなかったということもありますし、新聞等の報道によりますと、福岡でかなり行なわなかったところがあるということを聞いております。また六月二十四日の読売新聞は社説で学力テストを再検討せよというようなことも掲げておりました。学力テストにつきましては、その弊害について私どもはいろいろ指摘したい点がたくさんあるのですが、本日は特に一応学力テストそのものが純粋に学力の実態をとらえて、文部省がうたっておるように今後の学習指導方法上の改善とか教育課程の改善に資する、あるいは施設設備の改善に資する、こういうことで一応行なわれているということでありますけれども、いろいろ指摘されておりますように、今日高校入試あるいは大学入試等との関連もあって、そうでなくてもテスト教育というものに児童生徒が悩まされておる、父母も悩まされておる。これに拍車をかけるような現実がある。あるいはマル・バツ式のああいうテストであるために、ほんとう教育からだんだん離れてしまって、学力の実態調査して適切な指導をするという、そのことをもし純粋に善意をもってやったとしても、それが実際にああいうふうに行なわれたときには、社会的には全然違った方向の反応というものが出てきてしまって、そうして学力の実態が非常な準備教育等によってむしろゆがめられてしまう。そういうような弊害も相当指摘されておるわけです。また日教組の調査団がいろいろ報告しているようなことをここであげつらいますと、かえって感情的になってもいけませんから、私はあえてそれを持ち出しませんが、それにしても読売新聞すらこういう社説を、再検討せよというようなことを掲げておるような段階でありますから、ここはひとつあくまで日本の教育を正常に発展させるという意味で虚心にお答えを願いたいのですが、あの学力テストについては毎年いまのような方式で行なわなくても、あの目的を達成するためには年を何年かおいて行なうとか、抽出で行なうとか、さらに検討、くふうしまして、副産物としての教育をゆがめる面が本来の目的よりももっと大きな社会的な大問題になっていく、こういうようなことについては十分ひとつ検討の必要があろうかと思うのです。そういう段階に来ているのじゃないかと思うのですが、これについてぜひひとつ率直な文部省としてのお考えをお伺いしたいと思う。
  37. 福田繁

    福田政府委員 率直な答えをせよというお話でございますので、率直に申し上げたいと思いますが、私どもいわゆる中学校の悉皆学力調査、小学校の二〇%抽出調査を通じまして、この数年間やりまして、非常に貴重なデータを得たと考えております。そのデータ自身をいろいろ学習指導改善なり、具体的な指導方法に利用しておりますことは、ただ文部省が利用しておりますだけでなく、都道府県教育委員会あるいは市町村の教育委員会並びに学校などにおきまして相当活用されておることは、これは現実の問題でございます。そういう意味におきまして、私どもは非常に役に立っておると考えております。しかしながら一部世間にはいろいろこれについての御批判もあることは十分心得ておるつもりでございます。したがってこの学力調査自体がいろいろ何かテスト・ブームを生んでいるというようには私どもは考えておりませんけれども、これはあるいは見解の相違もあるかもわかりません。しかしながら高等学校への入試問題等と関連して、やはり都会の学校あるいは一部の学校におきましては準備教育というものが、これは父兄側でも非常に要望されるところでございますので、そういった点からいろいろとそういう準備教育が若干行なわれておることは、これはやはり否定できない問題でございます。しかし学力調査自体は非常に基本的な平易な問題を作成しておりますので、その準備をやりましても、ほとんど役に立たないような問題でございます。したがって私どもは学力調査自体をそれと結びつけるようなことは適当でないと考えております。しかしもともとその目的が学習指導改善なりあるいは教育課程の改正に必要なデータを得る、あわせて教育条件の整備をはかっていく、こういうことでございますから、永久にやろうという考えは毛頭ないわけでございます。当初からそういう考え方で進んでまいりました。したがって、ある時期にはこれは当然再検討していくべき問題であろうと思っております。ただそれ以前におきましても、内容的に毎年出題の傾向なり、問題自体を変えております。ことしもかなり昨年に比べて内容その他も変えまして、いままでのいわゆるマル・バツ式の問題から考える問題に、あるいは自由記入の問題に移行しておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、そういう改善をはかっていきますと同時に、また各府県教育委員会がこれについていろいろ改善、くふうをやっていきたいという意見もたくさん出ておりますので、そういう問題を十分参酌いたしまして、今後検討してまいりたいという気持でございます。
  38. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いま行なっておるものは必ずしも絶対のものであって、これを永久に続けるというようなお考えではない。それから伺っていれば、少しもの足りなかったのですけれども、少なくともやはり社会的に問題点が出ている。そういう点について目をおおうことはできないという点もお認めになっている点はこれは率直に認めていただいて私はたいへんけっこうだと思います。しかし、いまおっしゃったよりも、もっと現場においては深刻な悪いほうの影響も出ているということをぜひひとつ認識していただきたい。これを企画し、実行した文部省として、これは失敗だったというようなことをこの席で言えといっても、おっしゃらないだろうし、またそうもお思いにはなってはいないでしょうけれども、しかし、やはり読売新聞すら、別にこの新聞が絶対でも何でもありませんけれども、こういう社説を掲げるようなことは、やはり国民の中にそういう批判なり問題というものが惹起しているということをもっと深く認識して、行きがかりにとらわれず、早急、端的にひとつ検討をして、これ以上あの悪弊が広がらないように、今後は抽出するとか、何年置きにするとかという結論を急いでいただきたいと思うのですが、この点について文相に伺いたいのですけれども局長の答弁では不満だからというのではないのですが、事が重大で、国民が聞きたがっているところでありますから、政務次官がおいでですが、ほんとうはぜひ文相から直接伺いたいところですが、次官に再度伺いたい。
  39. 八木徹雄

    ○八木政府委員 御指摘のとおり、現在やっております学力テストが完ぺきであるとは思っておりません。しかし、失敗であったとも思っておりません。このテストを通じて指導要領に目的達成のためのデータを作成することができた効用というものは非常に大きかったと思っております。しかし、それがあったからいつまでも同じやり方でやるというふうにきめておるわけではございません。おっしゃるとおり弊害もあることを率直に認めます。やり方、問題の出し方等々検討しなければならぬ課題があるわけでございますので、昭和四十年度をどうするかということも含めてことしの予算編成期の時分には、この学力テストの活用方式、今後の運営のしかた等を含めて再検討をしようということで、局はもちろんのこと、省としても前向きでこれに対処する心組みでおるわけでございますので、いましばらく時をかしていただきたいと思います。
  40. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 次官の率直な御意見を伺って非常に期待をするわけですけれども、特にいまのような御意見を局長からも、次官からも伺ったわけですが、ところが一方に、あれをもっと固定化して、今後の高校の入学試験に使うんだというようなことも流れておるので、先ほど私が指摘したような弊害を一そう助長することにもなっていると思うのですが、おそらくそういうことばお考えになっていないと思いますけれども、ぜひいま御答弁になったような方法で、早急に、しかもできるだけ広く意見を徴して適切な再検討を加えるように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  41. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 関連して。学力をきめる要素は何であるかということと、それであるならば、それからくる学力の差というものは何から出てくるかということです。そしてこの統一一斉学力調査をやって到達度をはかり条件整備をやっていくのだ、こういうことであったわけですけれども、さきに山中委員が三年間の集約について資料を要求いたしておりましたが、まだ最終日のきょうも出ていないわけであります。このことは、繰り返し要求されている資料が出ていないということは、委員会を軽視していると思うのであります。そういう点からいきますと、私が言いました学力をきめる要素は何かということと、そこから出てくる学力の差というものが、そういうきめる要素の条件からいろいろ出てくるわけでありますから、その差をどうなくそうとしているのか、また具体的にやってきたのか、これは山中委員要求された資料が出ておればもっと具体的に、また突っ込んで本委員会において質疑もできたわけでありますが、たいへん残念でありますが、いまの点について御答弁を願いたいと思います。
  42. 福田繁

    福田政府委員 学力とは何であるか、これは教育学者などで興味を持っていろいろお考えがあるようでございますが、私どもはこの学力という場におきまして、もちろん学校教育の場でございますから、この学校教育によって子供が習得したあるいは体得した力というように端的に考えるわけでございます。言いかえますと、学習指導要領の内容によってきめられておりますところの各教科にわたっての到達度、その力を子供がどの程度に持っておるかということをはかるのが学力をはかる、こういうように考えているわけであります。そういった意味から申しますと、表現は悪いかもしれませんが、学習指導要領にきめられた知識、技能その他、それによって習得されるものを具体的にどうはかっていくかということがやはり学力調査一つの目的でございます。それに従って学力の差が、個人の差あるいは地域の差というようないろいろなものが出てまいりますので、そういうことによって各教科ごとの学習の指導改善をはかっていくということが一つの大きなねらいでございます。各学校におきましてもあるいは教育委員会におきましても、学習方法の指導あるいは研究に最近非常に力を入れておりますのはその点でございます。したがって国語なら国語、算数なら算数というものについて、どういう指導方法を講じたら子供の学力が向上するかというようなくふうをいたすわけでございます。文部省もそれをとらえて、全国的にそういう問題を研究したりあるいは今後学習指導改善をはかっていくのにどうしたらいいかというような、各教科の研究会等を通じてそれを実施しているわけであります。ただそういう学習指導改善ということのほかに、私どもとしては行政機関でございますから、したがってこの学力の差というものが何によって起こっておるかあるいは地域的その他いろいろな条件がございますので、そういう条件がはっきりわかってまいりました際には、できる限り格差をなくすような施策を講じていくということは当然必要になってくるわけでございます。先ほど来川崎委員の御質問がございました、たとえば僻地教育というものをとらえた場合には、その僻地の学力の向上という問題をひとつとらえましても、これは相当いろいろな施策を講じなければなりません。それにはまず教師指導力を高めるという意味において、教員の研修ということも必要でございましょう。また教員指導力を高めると同時に十分定数というものも考えなければならぬというような点から、この前の定数法の改正におきましては、僻地小規模学校をかなり重く見まして定数の改正をいたしましたことは御承知のとおりでございます。また財政的に申しましても、教材費などの配当の場合におきましても、かなり傾斜をつけて、重点的に僻地に教材費を配分するというような方法も、昨年からいたしております。これらもやはり教育条件を整えると申しますか、学力調査の結果、僻地教育をもう少し、そういう面から格差をなくすようにしていきたいという一つのあらわれでございます。そう考えておるわけでございます。あるいはまた理科教育にいたしましても、理科教育の設備というものがかなり大きなウエートを占めますので、そういう設備の充実をはかっていくという場合には、やはり学力の低いところを考えて理科設備の補助をするとか、あるいは教員の再教育をやっていくとか、そういう点をいろい私どもは考えて進めておるわけでございます。あるいはまた特殊教育におきましても、これはやはり考える面がかなりあるようでございまして、一例をあげますと、一般の学級の中で、特殊教育の対象になり得る子供を、そこで扱っていくよりも、やはり精薄の子供などにつきましては、特殊学級などをつくってやるほうがよりベターでありますので、そういった意味で、特殊学級を毎年一千学級以上計画的にふやしていくという計画も最近立てたわけでございます。これはことしから実施をいたしております。そういう特殊教育の面におき価してもこれを活用していくという考え方をいたしておるわけでございます。また、中学校から高等学校に進学する場合の育英奨学という問題につきましても、いままでは悉皆調査をやらなかったのでわからなかったのでありますが、悉皆調査をやって初めて、能力はあるけれども、家庭の経済的な事情が許さないというような子供がかなりいることがわかりまして、五%から約六%近い数になっております。そういう点については、育英奨学のワクをふやしていく、あるいは特奨を設けていくというふうな、そういう考え方で、育英奨学の面にもこれを活用していくということをやったわけでございます。  まだいろいろございますけれども、二、三の例をあげますと、そういう格差をなくしていくという観点からのいろいろな施策を進めておるわけでございます。まだ今後も、いろいろ検討し進めていくべき問題が多々あろうかと思いますが、そういう問題について、私どもは、この学力調査の結果をそういう面にも十分活用していきたい、こういうように考えております。
  43. 三木喜夫

    三木(喜)委員 初中局長に申し上げておきたいのですが、今後、当委員会で閉会中に審査をやる、そのときに、社会党から要求しておるところの資料に基づいて、川崎委員の言わんとしておるところも一ぺん出して質問をしていきたい、こういうようにしてもらいたい、こう思っております。あなたのお話では、美点をるるお述べになりました。しかしながら、弊害と食い合っておるところ、ここを検討しなければ、ほんとうの意味はないのです。それを閉会中にはひとつ真摯にやろうということを申し合わせておりますから、この点は後に譲っていただきたい、こういうふうに思っております。  私は、きょう、史跡や文化財保護に関してお尋ねしたい、こう思います。  たまたま二十五日の読売新聞の社説に、私の考えておることとぴったりの意見を書いております。文化財保護委員会の局長はこれを見られましたか。
  44. 宮地茂

    ○宮地政府委員 読みました。
  45. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その中には、国土開発につれて、美しい自然やかけがえのない文化財が、台なしにされておる、これが一つ。次は、この破壊はあまりにも非常識で、このまま放置しておくと民族の貴重な遺産である文化財が消えてしまう状態にある、こう述べている。第三番目、この張本人はだれか。それは建設省、自治体が張本人になっておる、このように書いてありますけれども、私がきょう質問したいのは、この張本人に文化財委員会の事務局がなっているのではないかという疑いを持っておるので、その質問をしたいと思うのです。   〔委員長退席、二宮委員長代理着席〕  文化財は御存じのように、過去の遺物ではなく、日本民族と文化の生きている財産である、とこう書いてある。そうした警告が出ておるのですね。局長、あなたはこれを読んで思い当たるところや、これはこうやらなければならぬと心にきめましたか。こういうように新聞に出されて、あなた方役人は一体何をしているかということです。どう思いましたか。
  46. 宮地茂

    ○宮地政府委員 文化財保護行政のうちで、記念物行政が、建造物なり美術工芸に関するものよりも保護が十分でない、立ちおくれておるということは、私ども痛切に感じております。読売新聞に出されております論説の趣旨は、一、二具体的な問題についてはいろいろ意見もございますが、文化財の保護をしっかりやるべきであるという趣旨と解しまして、まことに同感でございます。
  47. 三木喜夫

    三木(喜)委員 趣旨は賛成で、一、二意見がある。この意見はいずれまた後ほど聞かしていただきましょう。  私は端的に、私の足元に起こっておる問題についてあなたにお聞きしたい。それは先般六月一日に、皆さんに祝福されて、おそらく全国民が祝福して姫路城の落成を祝っていただいたと思うのです。この姫路城のりっぱに竣工した足元の史跡に、いかがわしい事件が起こっておることはこの前の当委員会において私は指摘いたしました。それは御存じのように、姫路城のすそにあるところの史跡の中に自動車学校をつくって、そして営利をやろうとしている。この営利は、あなたの説明では社会福祉事業、いわゆる養老院の施設を拡充するための資金を得るためにこれをやっておるのであって、私は、姫路市の意向も県の意向も十分聞いた上でこれを許可をした、こういっておるのだけれども、さて姫路市も県もこれについて賛成の意を表していないように思うのです。賛成の意を表したところの証拠があるのですか。それをひとり言ってみてください。
  48. 宮地茂

    ○宮地政府委員 姫路城の敷地内に、特殊法人白鷺園が母子寮等の改修の財源にするために、自動車学校を開設したい。御質問はこの問題でございます。これにつきましては、前回も三木委員の御質問にお答え申し上げたところでございますが、一応経緯を申し上げますと、市のほうからは三十八年七月十六日、県のほうからは三十八年八月十二日の日付で私のほうへこの問題についての申達がございました。市のほうは、内容は、将来の公園計画予定地であるということ、また閑静な場所にそういう自動車学校ができるということは、交通上の危険という点、それから騒音というような点があって、好ましいとは思わないという意味のものでございました。県のほうから参りましたものは、当該地は史跡指定地でもございますので、ここに永久建築を建てることはよろしくない、それから自動車学校等で排気ガスの被害もあるであろうから、好ましくないといったようなものでございました。  私のほうといたしましても、文化財行政をやります場合に、やはり地元の意向、地元の副申、これを中心に従来から考えておりますので、私のほうもこれを適当とは思いませんでした。ところがその後、この県なり市なりの考え方が当事者にも十分話が伝わっているのは当然のことでございますが、福祉法人のほうから、永久的な建物でよくないということであれば、自分のほうはもともと自動車業者ではないんだから、これは福祉法人の本来の事業をするための財源獲得の手段であるから、永久建物はつくらない、十年間という条件で暫定的なものでいきたい、それから排気ガス、騒音といったようなことについては、非常にたくさんの自動車をそこに置くというようなことではなくて、十五台の自動車を置いて自動車学校をやっていきたい、そういうような話も出たのでございましょう。その後県なり市なりの副申が参りまして、前回出したものについて、申請者のほうから別にまたあらためた申請が出てきたので、よろしく御検討いただきたいといったような内容のものになってまいりました。私のほうといたしましては、県なり市なりが申した点を白鷺園のほうで勘案して、県市と十分打ち合わせた上このようになったものかどうか、県、市にただしました。ところが県、市当局者は、そのように行政指導して、暫定的なものにしたいんだからよろしく御検討いただきたいということでございました。それで私のほうといたしましては、三十八年の暮れにこの許可をしたというのが実情でございます。  私のほうも、好きこのんで賛意を表したわけではございませんで、史跡保存という立場から見れば、私のほうもこれはよろしくない。しかしながら、この白鷺園は厚生省関係の事業でございまして、それから県のほうも、教育委員会でない知事部局のほうでは、この老人ホーム、母子寮、こういった公益事業をよしと認めて、これに補助金を出すというようなことになっております。私のほうとしましては、文化財行政だけを考えた場合は、もちろん私のほうはそういうものをつくられたくない。しかしながら、文化財行政とほかの社会福祉行政と、この調和をどのようにとるべきであるか、この辺私ども、この問題だけではございませんが、一般の公益事業をやる場合と文化財行政の両者の調和という問題は、常々頭を悩ませておる問題ですが、一応そういう暫定的な措置、しかも自動車の台数も少ない、そういうことで両者が歩み寄るのもやむを得ない、こういうように考えまして、許可をした次第でございます。  以上が経緯でございます。
  49. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その妥協の産物があやしいのですよ。あなたのいまの話では、厚生事業だからいい、こういうことがあなたの考えの中にあるのですが、厚生施設が自動車学校という特別の営利事業をやるのですよ。そこをあなたのほうはちっとも考えに入れぬと、申請者がそういうことをやっておるから、こういうことなんですが、それだったら自動車学校はどこにでもできるじゃないか。何も史跡の中につくらなくてもいい。しかし、論議はいいです。  あなたはこういうようにいまおっしゃったですけれども、もう一つ念のためにただしておきたいのですが、県市とも暫定的ならよいということで許可してくれということなので、三十八年の暮れにこれを許可した、こうなんですね。これは間違いないですね。県市とも、暫定的であるがこういうことで許可してもらいたい、こういうことだからあなたは許した、こういうのですね。
  50. 宮地茂

    ○宮地政府委員 誤解を生じてはいけませんので、もう少し補足いたします。  市のほうの文章は、当該地は本市都市計画に基づく公園計画予定地でありますので、よろしく御検討くださいというような案文でございます。それから県のほうは、本県文化財専門委員会がさきに難色を示した指示事項について若干の訂正事項等もありますので慎重に御審議くださいという文章になって十月に出てきたわけなんです。それが文章でございます。  私のほうとしましては、ただ文章を見るだけではなくて、この意味はどういう意味でございますか、前回は必ずしも賛成でないような副申であったのが、次にこのようになってきたのはどういう意味でございますか。それは、その間の文章はそうなっておりますが、関係者の申しますのには、市のほうは、そういうような書き方は、現状変更等を申達するときの例文的な文章のようでございますが、まあやむを得ないので許可をしても差しつかえないというような例文になるんだそうでございます。県のほうは、関係者に聞きましたところ、県の文化財専門委員会のほうではいろいろ難点があったが、それが先ほど申しましたように、永久的な建物ということは、十年と限れば永久的ではなくなる、それから排気ガスの被害等ということは、一台でも被害はあるのでしょうが、そう大きな学校ではなくて、十五台程度であればいいであろうということで、現状変更もやむを得ないという意味でございますということを当事者から聞きました。
  51. 三木喜夫

    三木(喜)委員 あなたは県の文化財保護委員会にも難色があったと言いますが、正式に文化財保護委員会を開いておりますか。——それは開いておるといたしましょう。しかしながら、あなたのおっしゃるところは、先がたからずっと言っておるように、地元も賛成であり、市長も賛成であり、そして県も賛成である、だから私は許した、こういう論理になるならば私はいいですよ。先がたからあいまいですよ。何です。あなた何を言うておるのですか。はたして地元が賛成だと言ったのですかということを私は言っておるのです。市長も、市議会も、県も、県の文化財保護委員会も難色があるけれども、建物がどうだのこうだの、そんなことは二の次ですよ。やってよろしいということを言ったかということだけ聞きよるのです。
  52. 宮地茂

    ○宮地政府委員 こういう現状変更をいたします場合に、賛成でございますか、あるいは反対でございますかという二つではないと思います。賛成でございますという中間に、現状変更もやむを得ないという意思表示があるわけでございます。したがいまして私のほうは、これは前々回からも三木先生に私は賛成とは申しておりません。やむを得ないということで許可しましたというふうに申し上げておりますが、県のほうも市のほうも、やむを得ないので許可もやむを得ないという表現が当たっておるのではないかと思います。
  53. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この経緯をめぐって君が勇み足をしておるか、あるいはだれかに押されてしまって、そしてこのように自主性のないきめ方をしたかどっちかということで、私は非常に疑義に思うので尋ねておるのですが、やむを得ないと言うて両方とも申請していったのですか。そうすると、イエスでもノーでもないその中間的にやむを得ないのだとあなたはおっしゃるのですか。両者ともそういうふうに申告してきたと言うのですか。
  54. 宮地茂

    ○宮地政府委員 文章の内容は先ほど申し上げたとおりでございます。したがって当事者にその意味はどうであったかとただしましたところ、当事者は、現状変更をやむを得ないものと考えるという意味でございますというふうに答えております。
  55. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういうばかな話はないですね。間違いかどうかわかりませんが、昭和三十九年六月二十四日現地からきたところの新聞を見ますと、姫路市市長公室長岩崎知弘氏が三十九年六月二十日付でこの新聞に抗議書を送っておる。その抗議書の中の部分的なところだけ読みます。「市長ならびに市当局は、自動車学院開設については終始反対の立場をとってきたものであって市長がこのような内意を市会議長に伝えるというようなことは全然虚構である。市当局が自動車学院の史蹟地利用申請に際して市は異議なしという副申書を添付して文部省に再提出した旨を記載しているが市当局は終始該地は本市都市計画に基く公園予定地であるから慎重に考慮されたい旨の副申を付しただけでなく、該地の隣接地には、市、県営住宅、国立病院官舎などがあり、交通上の危険、風致環境上、自動車学校の開設は好ましくない旨を申達しており、異議のない趣旨の副申書を添付したということは事実無根も甚だしい。」ということを——これは現地においてけんけんがくがくの論議を呼んでおるから、こういう言いわけになって出てきておるのです。それから県議会におけるところの金川社会教育課長の答弁を読んでみますと、こういうことを言っております。県の教育委員会においては、自動車学校の設置については終始反対の態度をとっている。この終始反対であるという両者の態度が出ておるにもかかわらず、その中間的なややこしいことをやってこれに許可を与えるということについては、現地には暗いうわさが流れておる。私はこれはどこかに問題があろうと思うのです。この問題を摘出するまで私はこの問題を追及したいと思うのですが、文化財保護委員会の事務局長においては、このことについては最初に申しました史跡や文化財を断固保護するという考え方でやったのですか。
  56. 宮地茂

    ○宮地政府委員 たびたび申し上げておりますように、私どもの使命は文化財を保護することでございます。でございますので、私どもの気持ちといたしましては、何人にも劣らないだけの努力をして、文化財を保護していくのが私ども責任であるという気持ちで行政に携わっております。  ところで文化財保護行政上私どもの力の及ばない不明な点ももちろんあると存じますが、一番むずかしい問題は、文化財行政だけの立場からでは、いろいろ公共的な事業、公益的な事業あるいは私企業にしましても、文化財行政をその他の行政あるいは所有者の財産権の尊重といった点からどのように調和させていくのかということが非常にむずかしい問題でございます。したがいまして私どもといたしましてこの白鷺園に対してとりました措置は以上のような点で、これに対していろいろ問題があればもちろん私ども責任と存じております。しかしながらこれをやります場合に、だれかに押されるとかあるいは、たびたび三木先生はおっしゃいますが、暗いうわさが流れるとか、何か奥歯に物のはさまったような表現でおっしゃいますことについては、私どもは何を先生がさしておられるのか、少なくとも文化財保護委員会においてはわかりません。私どもはやはり文化財行政をやります場合に、地元の意向を尊重し、また一つの事業をなさろうとする関係者の気持ちもくみ、私どもだけの立場から言えば、すべての現状変更は許可制ではなくて禁止とはっきり法律に書いてもらいたいくらいに思います。史跡指定地内に現状変更するとかしないとかいうことではなくて、初めからしてはいけないような禁止規定のようなものがあることを心から願ってはおりますが、しかしいろいろな事業との関係がありますので、法律的には許可制になっておる。したがって許可をする場合に、私どもとしては私どもなりにこれが正しいことであるというふうに考えまして、この問題を処理したわけであります。ただその問題を処理しました結果において、三木先生が御指摘になられる点が具体的にはわかりませんが、なおかつ私どものとりました措置がもう少しいい方向で解決できるというような方法があるとしますれば、それも十分考えていくべきであるというふうには思っております。しかし現在までとりました私ども措置は間違ってはいなかったと思っております。ただ前回でしたか三木先生が、姫路城の落成式に行くのであれば、この問題についても十分市当局の意向も聞け、地元の声も聞けというようなお話がございました。そこで私ども時間的にもあまり大ぜいの人の意向を聞くことができませんので、三木委員の御意見は、市長それから先ほど名前をあげられました岩崎市長公室長にも伝えました。ところで姫路市当局の私のただしましたことに対する答えといたしましては、姫路市としてはやむを得ないということで副申書も出したが、ただ一部地元の新聞の報道のような非常なもんちゃくということはない、関係地区の了解もとった。ただ自動車学校をやっておられる業者が五つか六つあるそうでありますが、それらの人々の間ではやはり同業的な競争意識もあるためだと思いますが、必ずしも全員が納得をしておるわけではないが、それほどもんちゃくはない、しかしそういうことではあっても、姫路市としてはかねてから史跡姫路城の整備計画を着々と実施したい強い希望を持っておる、だからできれば姫路城の全体整備計画との関連におきまして、いま御指摘になっておりますような白鷺園の問題も全体計画の一環として検討してみたい、検討してみるにやぶさかでないということを申しております。私のほうとしましても、一度許可したものだから、だれが何と言おうとそのとおり突っ走れというような行政指導はいたしておりません。市長のほうでもそういうことを検討してみるということでございますので、私のほうとしましても今後とも地元の意向を十分聞いて、この問題をただ許可したからそのとおり突っ走れということではなくて、検討もしてみたい、このように考えております。
  57. 三木喜夫

    三木(喜)委員 非常に文化財保護、史跡保護にいい心がけでやっておられるようでけっこうですが、私があなたに何を言っておるかわからぬ、このようにおっしゃるが、それはやがてわかってくるだろうと思うのです。それまであなた方が正しくやっておられたら、高みの見物で見ておられるから見ておってください。どういう問題が起こってくるか、その上でけっこうです。私はそういうことをここで解明する気持ちは持っておりませんけれども、非常に遺憾に思っておる一人です。何とかこれを解明したいと思っているやさきですから、こうだ、こうだということは簡単に言えない。しかしながら、いま言ったように、あなたの話では、法律で禁止せいとか、法律のところに逃げておる無責任な言い方がである。それから財産権を尊重するんだ、それから、他の人とのかね合いをどうするかということを考えるのだ、こんなことを言っておりますけれども、あなたは法の番人で、文化財保護という立場に立ってもらったらいいわけです。市長が考えたり、知事が考えたり、そういうことを考えてもらわなくてもいいのですよ。そうして財産権とおっしゃいますけれども、この財産権は、あれは国のものを払い下げになったのです。そのときに、いろんな自動車学校なんかやれっこないような誓約書がついておる。福祉事業をやると書いてある。それから派生したところの自動車学校というものは福祉事業じゃないですよ。金もうけですよ。あなたは財産を尊重する。なるほど財産を尊重する前提としては、これを払い下げたときの条件がちゃんとついている。国はそんなことに使ってもらいたくない。いいかげんなことを言って、だんだん拡大解釈して、これを広げていっておる。実態をあなた方忠実に見ておれば、いま言った文化財、史跡をしっかり保護しますという考え方がここへ出てこなければならない。それが出てきておりません。非常に遺憾に思っております。まだ言いたいことはありますけれども、私はもう少し調査して——これであなたの意向を聞きましたから、地元へ帰ってよく調査をしてみましょう。しかし局長、これだけは考えておってください。いま市も私があげました県も、これは絶対に反対ですと、こう言っておる。そのものが史跡の中でのうのうと一万坪かなんかの土地が自動車学校にのけぞって大手を振ってやっておる。建物はなるほど永久的な建物でないかもしれない。条件がついたかもしれない。みな反対の中でそういうことが——あんたも反対だった。そこに何もないというようなことが言えますか。私はことに問題があると思います。ちっと文化財保護委員会もこの問題を解明をしてもらいたいと思う。もっと検討してみてください。なるほど市長と話をしてくれと言ったことについては、あなたはされて、その話を聞きました。市長はもう一ぺん検討するにやぶさかでないと言って、あんたもこれを検討するにやぶさかでない、何も許可したから突っ走らせるものではないというふうにかなり反省的な、訂正的な意見が出ておりますから、私はこれ以上何をか申し上げることもございませんけれども、しかしおかしいということを世間は考えるでしょう。これだけはひとつ銘記しておいていただいて、後またこの問題について私が調べてきてからお聞きしたいと思います。きょうは皆さんたいへんおそくなりまして、御迷惑もかかるだろうと思いますから、これくらいにしておいて、文化財保護ということについて今後しっかりと腹をきめてやってもらわなければ困るということだけ申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  58. 二宮武夫

    二宮委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会