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1964-06-10 第46回国会 衆議院 文教委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 長谷川 峻君 理事 南  好雄君    理事 二宮 武夫君 理事 山中 吾郎君       熊谷 義雄君    谷川 和穗君       床次 徳二君    中村庸一郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       松山千惠子君    川崎 寛治君       鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生  芳郎         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (調査局長)  天城  勲君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 六月九日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として細  谷治嘉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員細谷治嘉辞任につき、その補欠として川  崎寛治君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月六日  宮崎大学工学部応用物理学科設置に関する陳  情書(第五二五  号)  国立産業芸術大学設置促進に関する陳情書  (第五二六号)  義務教育施設整備促進に関する陳情書  (第五二七号)  小、中学校養護教員及び事務職員の配置に関  する陳情書  (第五二  八号)  私立大学国庫補助金増額に関する陳情書  (第五二九号)  義務教育費国庫負担完全実施に関する陳情書  (第五三〇号)  義務教育における国庫負担金増額に関する陳情書  (第五三一号)  教育施設等整備費国庫負担金増額に関する陳  情書  (第六四五号)  小、中学校及び高等学校特殊学級就学奨励費  規定に関する陳情書  (第六四六号)  義務教育学校学校図書館設備充実等に関  する陳情書(第六  四七号)  義務教育費国庫負担法に基づく教材費国庫負  担限度算出基礎増額に関する陳情書  (第六四八号)  新潟大学歯学部設置に関する陳情書  (第七二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二九号)(参議院送付)  学校教育に関する件      ――――◇―――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑通告がありますので、これを許します。上村千一郎君。
  3. 上村千一郎

    上村委員 教育職員免許法の一部を改正する法律案につきまして、要点の若干につきまして御質問をいたしたいと思います。提案理由を拝見いたしますると、「高等学校教育の振興を図るため、教科中特別の事項に関する高等学校教諭免許状制度を設けるとともに、小学校中学校高等学校及び幼稚園教員とこれらに相当する盲学校聾学校及び養護学校各部教員との職務の類似性にかんがみ、上級免許状を取得する場合に必要な在職年数について、これらの教員在職年数を同様に取り扱うこととする必要がある。」こういう提案理由になっております。この在職年数を同様に取り扱うという後半の部分につきましては、これはきわめて、従来もぜひこの点は必要であるということをあらゆる階層におきまして痛感をいたしておる際でございますので、取り立ててこの点に質問を申し上げる点もございませんが、前段の点につきましては多少確かめておきたい点もございますので、その点に集中いたしまして質問をいたしたいと思います。  まず第一に、現行免許法と今回新設される資格試験との関係はどうなっておるのか。なお、この免許特例高等学校限定した事由はどこにあるのか、この点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  4. 小林行雄

    小林(行)政府委員 現在の教員養成制度は、御承知のように大学で行なうというたてまえをとっておりますし、そして教員免許状免許法の四条にありますように、教科の広い分野にわたって大学で定められた単位を履修した者に免許状を与えられるということになっておるわけでございますが、そのうち高等学校教科科目の中で特に技能に関する特殊の分野につきましては、大学教育では必ずしも十分な教育ができません。また養成の面から申しましても、その必要数を充足することができないものがございますので、特にこうした特殊の分野のものに限って、試験によりまして教員資格を取得させるような特例を設ける必要があるというふうに考えて、今回の御提案を申し上げたわけでございます。  高等学校限定いたしました理由は、小中学校の場合と高等学校の場合と比較いたしますと、教科科目高等学校ではこまかく分かれてまいっておりまして、また実際高等学校教育は相当深い専門的な事柄を教育するということになっております。特に技能に関する事項指導につきましては、御承知のように専門的な知識技能が必要とされておりますので、そういった面から、また実際に教育の時間数も非常に多くなっておりますので、高等学校に限って担当教員のそういう養成をはかる必要がある。養成と申しますか、要するに資格試験によって免許状を与える方策を考える必要があるというふうに思いまして、今回の御提案を申し上げた次第でございます。
  5. 上村千一郎

    上村委員 高等学校においては免許教科の区分を今後も細分する考えがあるのかどうか、この点をお尋ねしておきたい。
  6. 小林行雄

    小林(行)政府委員 現在の同等学校教科を見てまいりますと、非常に領域の広いものと、必ずしもそれほど広くないものと二種類あるわけでございまして、特にたとえば社会とか理科のように指導領域の広い、広領域教科があるわけでございます。先生専門性を高めるということから考えますと、この広い領域教科について科目を別々に分けるほうがよいという意見も確かにございます。しかし、実際問題といたしまして、その広い領域の中の科目もそれぞれ関連するところが非常にあるわけでございまして、密接な関連を持っておる点がございますので、教科の中で科目を独立させて、独立の教科にしていくということについては、さらに時間をかけて研究する必要があろう、そういうふうに現在の段階では考えております。教員養成審議会等でも、今後の問題として検討してもらっておるところでございます。
  7. 上村千一郎

    上村委員 今回の試験文部大臣が行なうという理由はどこにあるのか、お尋ねしておきます。
  8. 小林行雄

    小林(行)政府委員 この技能に関する事項についての高等学校教員資格試験は、文部大臣が行なうということにいたしておりますが、これは御承知のように、一つには技能に関する特殊な分野のものに限ったものでございますし、もう一つは、各大学でこの試験を行なうというようなことになりますと、一つ基準をつくりましても、全国的に凹凸を生ずるようなことも考えられますので、全国的な一つ水準を維持するという点から考えまして、文部大臣が統一的にこの局等学校教員資格試験を行なうということが最もよいというふうに考えたわけでございます。
  9. 上村千一郎

    上村委員 将来中学校も含めて全教科についてこういう試験制度を行なう考えがあるかどうか、お尋ねしておきます。
  10. 小林行雄

    小林(行)政府委員 戦前の教員免許令の時代には、御承知のように、資格試験によって免許状を与えるという制度がございましたが、戦後は教員養成のたてまえが変わりまして、すべて大学において教員養成をやるということに変わったわけでございます。免許制度全体の問題として、今後この資格試験を行なうかどうかということにつきましては、現行免許法のたてまえをある程度変革するようなことになりますので、もちろん文部省としてもそういう意見社会にあることは存じておりますが、制度全体の問題として検討しなければならぬと思います。中学校を含めて全教科についてそれをやるのがいいのか、あるいは特殊な科目限定するのがいいか、いろいろ考えるべき点が出てまいりますので、免許制度全体の問題として検討をすることにいたしたいと思っております。  今回御提案申し上げておりますのは、高等学校教員に限って、しかも、特に先ほど来申しておりますように、特定技能に関する狭い分野限定したものでございますので、ただいまお尋ね中学校も含めて全教科についてという点とは直接関連を持っておらぬわけでございます。
  11. 上村千一郎

    上村委員 この免許状に一級、二級の種類を設けていない理由はどこにあるか、お尋ねしておきたいと思います。
  12. 小林行雄

    小林(行)政府委員 現行免許状は、御承知のように普通免許状一級、二級という級別をいたしておりますが、これは御承知のように、大学教員養成をいたします場合に、修業年限、いわゆるスクーリング年限によりまして、一級、二級の種類を分けまして、それぞれ相当の免許状を与えておるわけでございますが、今回のこの免許状につきましては、要するにそういった修業年限というようなことを基準にいたしませんで、特別の技能に着目して行なわれる試験でございますので、そのスクーリングによる差等を設ける必要がない、と同時に、また試験によってその技能程度を区分することも困難であろうというふうに考えまして、従来のような一級、二級の種類を設けないことといたしたわけでございます。
  13. 上村千一郎

    上村委員 普通免許状あるいは臨時免許状以外に、新しく技能に関する免許状種類を設けてはどうか、こういう意見もあるようでございますが、これに関連してどういうお考えを持っておるのか、政務次官お尋ねしておきたい。
  14. 八木徹雄

    八木政府委員 御承知のとおり、教員養成制度全般について根本的に考え直さなければならぬ時期が来ておる。さきに中央教育審議会に諮問をいたしまして、その答申を得、それから後に教育職員養成審議会が建議もいたしておることでございますので、教員養成制度全体の、その答申に基づく検討を加えておるときでございますので、いまおっしゃった問題も抜本的な改正をやる過程の中で検討しなければならぬことではないか。答申を受けてから後相当な年数がたっておるわけでございますから、その抜本的な改正をなぜいままでやらぬかという御議念が当然あると思うのでございますが、ただ単に教員養成制度だけではなくて、大学全体の問題管理運営、目的、性格等々たくさん懸案の問題解決しなければなりませんので、これだけ先に取り上げてやって、あとのものはあとだというわけにも参りませんから、それが延びておるのでございますが、文部省としてはことしの夏くらいにはこれらの大学制の問題全体を、答申を尊重しながら何らかまとめ上げたいと思っておりますので、それらの問題解決と同時に、いまおっしゃる点につきましても抜本的な解決をはかるように努力をいたしたいと思いますが、いま直ちにそれではこうしますということは申し上げかねることを御了承願いたいと思います。
  15. 上村千一郎

    上村委員 免許事項法律で定めないで省令で定めておるという理由はどういう点にあるか、お尋ねします。
  16. 小林行雄

    小林(行)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、今回の高等学校教員資格試験は特別の技能に関する分野についてのことでございまして、これは御承知のように大学ではそういった先生養成について現状期待ができないということに基づいて制度考えたわけでございまして、技能に関する特殊の事項ワクの中で弾力的に措置し得るようにしたいということで、今回の法律の中にはそれを規定しないのが適当であろうというふうに考えたわけでございます。ただしあくまでも技能に関する事項ワクの中でございまして、いま直ちにこのワクをその他のものに広げる考えはございません。
  17. 上村千一郎

    上村委員 本年度はどのようなものについて実施するおつもりか、お尋ねしたいと思います。
  18. 小林行雄

    小林(行)政府委員 これは、本年度予算で認められましたのは柔道、剣道並びに計算実務ということになっております。
  19. 上村千一郎

    上村委員 計算実務具体的事例を、この際お示しをしていただきたいと思います。
  20. 小林行雄

    小林(行)政府委員 計算実務は、高等学校教科では商業の中の一つ科目でございます。この範囲がいろいろございますが、珠算による計算方法、あるいは利息なり割引料計算、それから度量衡、外国貨幣計算、それから売買損益計算福利年金計算、それから企業損益計算、税金の計算有価証券関係計算経営財務に関する計算、それから最近の計算機による計算というようなものを含めて、計算実務というふうに考えておる次第でございます。
  21. 上村千一郎

    上村委員 この試験方法、内容並びに実際にはどのようにして行なうのか、受験資格はどの程度か、この点についてお尋ねします。
  22. 小林行雄

    小林(行)政府委員 試験先ほど来申しておりますように全国的に統一的な試験を行ないたいと思っております。試験の具体的な方法でございますが、人物試験学力試験を行なうわけでございまして、筆記試験実地試験口述試験、いういう三つの方法人物学力並びに実務について試験を行ないたいと思っております。実際には大学先生その他学識経験者に依頼をいたしまして、試験問題をつくってもらうということを考えております。  なお試験のさらに詳細な方法なりあるいは成績の評価法等については、ただいま申しましたような学識経験者に委嘱をいたしまして、具体的な方法検討してもらいたいと思っております。それから受験資格高等学校卒業というのを一つ資格にいたしておるわけでございます。
  23. 上村千一郎

    上村委員 そうして試験が行なわれて、その試験合格者に対する免許状授与は一体だれがするのか、それから試験合格者教員として採用されるのか、この二点についてお尋ねをいたします。
  24. 小林行雄

    小林(行)政府委員 免許状授与につきましては、他の普通免許状あるいは臨時免許状と同様でございまして、府県知事または府県教育委員会が行なうことにいたしております。文部大臣合格者に対して合格証書を与える、この合格証書を持ちましてそれぞれの府県教育委員会免許状授与願いを出せば免許状授与されるということにいたしております。他の免許状の場合と全く同じような方法授与されることにいたしたいと思っております。
  25. 上村千一郎

    上村委員 次に、多少御方針に関連をいたすので、政務次官お尋ねをいたしておきたいと思いますが、この教員資格試験等実施することによりまして免許基準水準が低下するのではなかろうか、こういう心配をなされる向きもある。なお大学教育による教員養成の原則に対する特例的なものであるから、かかる教員資格試験実施は最小限にとどめていくべきものではなかろうかというような御意見もあるようです。なお、特定の希望があれば教員になれるということになっておるが、この人格形成の面がおろそかになるおそれがあるのではなかろうか、こういういろいろな御心配とか御意見とかあるようでございます。これにつきまして文部当局のお考えお尋ねいたしておきたいと思います。
  26. 八木徹雄

    八木政府委員 おっしゃるとおりわれわれが一番気をつけなければならぬのは教員資質向上ということであります。次に抜本的な改正を行なおうとする場合にも、資質向上、需給のバランスの維持ということが中心課題になると思いますので、その意味で今回の特例的なやり方が全体のレベルダウンになるというようなことになってはたいへんでございます。そういうことにならないように努力をいたしたい。その意味で今回のこの特例は、言うならば実技者というところに限定をいたしまして、範囲を幅広く広げようという意図はございません。あくまでも実務教育という点に限定をしてひとつやろうといたしておるわけでございます。またいまお説のとおり実技が上に出てまいるために一般教養というものがおろそかになりますと、これまたやはり問題であるわけでございますが、もちろん実技を持ち一般教養をも十分備わっておるということを前提条件にして採用がなされるということになるわけでございます。ただ特定の場合における実務教育ということでございますから、実技が主体になっておりますけれども、そのことによって全体の教員資質が下がるというようなことはあり得ない、またそういうことのないようにこれからも行政指導を通じて努力してまいりたい、こういうように考えるわけでございます。
  27. 上村千一郎

    上村委員 いま政務次官のおっしゃったことを丁といたしまして、そして右のような心配をなさる向きもあるわけでございますから、十分注意をされましてこれが実施に遺憾なきを期せられたい、こう思うわけでございます。  次に、この別表三及び別表第五の改正により、従来の特殊教育学校各部教員在職年数も通算することができるのかどうか、こういうことについてお尋ねいたします。
  28. 小林行雄

    小林(行)政府委員 今回の改正によりまして従来特殊教育学校初等部中等部高等部各部在職年数を、それぞれそれに相当する小学校中学校高等学校または幼稚園教員免許状をとるのに必要な在職年数に換算することができることにいたしたわけでございます。
  29. 上村千一郎

    上村委員 私の質問は最後の一点を申し上げまして終わりたいと思いますが、従来別表第三において二級免許状上進する場合にのみ特殊教育学校教員在職年数を通算することとしていたが、その理由はどこにあるか。
  30. 小林行雄

    小林(行)政府委員 免許状は、御承知のように一面教育専門制ということをうたっておるわけでございまして、先年この免許法改正のときには、その専門制確立という見地から普通学校在職年数普通学校教育免許状上進の際にのみ認めるというたてまえを実はとっておったわけでございますが、今回の措置は、この専門制にあまりにこだわりますと、一面へんぱな扱いを生ずる事態になってまいっておりますので、その専門制確立もさることながら、現状それによって被害を受けておるような方々を救済する必要があろうということに着目をいたしまして、今回この別表改正することにいたしたわけでございます。
  31. 上村千一郎

    上村委員 この教育職員免許法の一部を改正する法律案は、社会的な御要望によりまして改正を御提案された点は十分了察するわけでございますが、従来におきますところの全体的な体系と申しましょうか、秩序と申しましょうか、そういうものとの関連を十分考慮されて、そうしてこれが実施につきまして万遺憾ないことを御要望しまして、私の質問を終わらしていただきます。      ————◇—————
  32. 久野忠治

    久野委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますのでこれを許します。川崎寛治君。
  33. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 試験地獄というのは、これはただ単に教育問題ではなくて、まさに社会問題ではないかと思うのです。そこで私は本来ならばきわめて大きな政治問題として大胆の御答弁をお願いしたいのでありますが、いま特別委員会のほうにまいっておるということでございますから、根本的な問題については後ほど大臣にまた質問いたしますことを保留しておきまして、政務次官並びに大学局長お尋ねをいたしたいと思います。  先般の当委員会におきまして、非行少年問題を特に中山委員のほうから質問されたわけであります。その際私は幼稚園教育問題関連をいたしましてお尋ねしたのでありますが、そのことは、りっぱな、りっぱといいますか、いい幼稚園に入るためには幼稚園に入るための受験勉強が必要である。こういうことの根本は何かといえば、将来社会でいい地位を獲得をするためには有名ないい大学に入らなければならない。いい大学に入るためにはいい高等学校に、いい高等学校に入るためにはいい中学校に、そのためにはよい幼稚園に、そしてそのためには幼稚園準備教育を、こういうふうな形になっておるわけであります。なぜこういうことになっておるかという点について初中局長答弁をしたわけでありますが、この答弁は少しも基本的な点には触れていないわけであります。ただ通達でそういうことのなくなるように幼稚園保育所との総合調整をはかっていくのだ、はからせるように統一通達をやっておるのだ、こういうことで通達であたかも問題解決をするような答弁をいたしておるわけであります。しかしこれは今日の社会全体の問題でありまして、入学試験なり大学入試制度の改善、こういうことを大きな問題として政府も取り組んでまいっておることについてはよく存じておりますが、そこでお尋ねいたしたい点は、今日の試験地獄の根本的な原因は何であるか、この点ついて政務次官お尋ねしたいと思います。
  34. 八木徹雄

    八木政府委員 非常に答えにくい課題だと思うのでござ、ますが、社会風潮全体が、たとえば官界に入ろうとあるいは経済界入ろうと、いわゆる有名校を卒業しておる人がリーダーになりやすいような、そういう環境があるということ、これがやはり有名校に殺到するゆえんでないか、だから自分の子弟にそれらのリーダーになりやすいような近道を選ばそうという風潮が自然に生まれてくる、こういうことになるのではないかと思うのでございます。もちろんそれらの有名校がなぜできたかということは、歴史的な経過等もあるわけでございますが、そういう風潮が望ましくないということは言うまでもないことでありますし、文部省といたしましてもそういうようなもののないように、いわゆる格差是正努力をするということをいたしておるつもりでございますけれども、しかしただ単に文部省だけが、そういうふうにいわゆる精神的な訓話、指導をするというだけのことで問題解決することができるものではございませんので、今後とも国全体の政治社会全体の機構のあり方というものを含めて、そういう風潮のなくなるように努力をしてまいらなければならぬのではないか、それは大学全体の責任であると同時に、国民全体の認識の問題にもかかってまいると思いますので、今後とも気長くしんぼう強く努力をして、そういうような風潮のなくなるようにしむけていく以外に問題解決方法はないのではないか、このように思うのであります。
  35. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへんのんびりとした答弁でございますが、気長にやっていけば解決をする方向に進んでいくと思われるのでありますかどうか、この点をお尋ねいたします。
  36. 八木徹雄

    八木政府委員 気長にやりたいということではない、気長にやるような、いわゆるそれだけの熱意といいますか、それだけの努力をしなければ解決できないぐらいに大きな社会問題になっておるという意味でございます。われわれが意識的に気長にやろうというのではなく、なるべく早く実効をあげるように努力をしなければならぬが、しかし一本のカンフル注射問題解決ができるというようなものではない、もっと根深く横たわっておる課題ではないか、それだけに国民とあるいは政治も一体になってそれをするように努力する以外に、そう簡単に解決できないのではないかということを申し上げたのであります。われわれは一日も早くそういうことのなくなるように、われわれの立場に立って努力を払うことは言うまでもないことであります。
  37. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 もう少し突っ込んで尋ねしますけれども、それであるなら試験地獄の根本的な原因が何かということについてのただいまの御答弁はきわめてばく然としておりまして、つかみどころがなくて、どこが原因であってどこをどう直そうとするのかという点については全く触れていないのでありまして、ただ精神的な姿勢の問題を言っておるだけでございます。そこで有名校入ろうという今日の試験地獄の根本的な社会的な原因、あるいは日本の社会構造の変化、そういうものをどう把握をしてどこをどう直そうとしておるのか。つまり問題の所在はどこにあり、それに対して文部省文教政策の面で受け持つ面はどこか。つまり政治全体の問題である、こういう答弁をされておりますけれども、それであるならば内閣が、あるいは政府全体が取り組む問題の所在というものと、文教行政の面において受け持つべき面とに分けて、ひとつ御説明願いたいと思います。
  38. 八木徹雄

    八木政府委員 やはり一番問題になるのは、最終の大学教育問題社会に一番身近で、一番問題とするところであると思います。有名な大学に入れるためにいわゆる有名な高等学校に行くということになると思うのであります。その前提として義務教育にまたよりいいところへ入りたい、こういうことになると思うのであります。その意味で最後の大学入試制度というもの自体に問題があるのではないか。そういう観点に立ちまして、すでに御存じのとおり文部省としては大学入試の根本的な問題解決するための一つの手段として、能研テストをいま実施しておる。そこから何らかの解決策を見出すように努力をいたしたいということで、これでやったらいいというまだ完全なる結論は出ておりませんが、能研テストのところでそれが実効があがるように検討を加え、努力をし、勉強しまして、そこから問題解決をはかってまいりたい、このように考えているわけであります。
  39. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 一足飛びに能研テストに逃げ込んだわけでありますが、その問題はもう少しあとに残します。  それでありますならば、少し観点を変えまして、池田内閣が高度経済成長政策の中で人的能力開発政策というものを大きく打ち出してまいったわけでありますか、その人的能力開発政策というものと今日の試験地獄というものの関連をどのように把握をされるか、お尋ねをしたいと思います。
  40. 八木徹雄

    八木政府委員 人的能力開発政策というものと試験地獄というものがストレートでつながっておるとは思っておりません。日本がりっぱな国として企業が興り、福祉国家が建設されていく課題の中で、当然りっぱな能力を持った人間を養成し登用していくということが必要である。その意味が人的能力開発政策の基本的な考え方ではないかと思います。そのような人間をつくり上げていくということの中に、現在の教育のあり方というものがそれに付随してあるわけであります。それは決して特定学校に入れなければ能力開発ができないということではないはずでありますけれども、しかし長い歴史と伝統というものの上に、父兄の側からいうならば、自分の子供はこの学校に入れたほうがより能力開発ができるという先入観があるわけでございますから、そのことが有名校に殺到して試験地獄が生まれるゆえんになっておろうと思うのであります。われわれの立場といたしましては、個々の学校の力というものを均衡化していく努力、いわゆる学校差というものをなくする努力を重ねていく、そしてその間において父兄の理解を深めていく、そして人的能力開発政策というものが、特殊な学校に殺到することのないように、あまねくすべての学校においてそれができるような環境をつくっていくというようなことによって、問題解決が生まれてくるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  41. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 平均化し、学校差をなくしていく、こういう御答弁であったわけでありますが、たいへんいいと思うのです。ところが現実には、今日の試験地獄の中で、あるいは大学入試制度の改善の方向において、さらには能研テストの進められておる方向において、学校差をなくすといういまの御答弁と食い違う、むしろ逆の方向に進んでいくという問題点につきましては、これは後ほど触れてまいりたいと思います。この点はただいま次官の答弁されたような方向には少しも進んでなくて、むしろ逆に格差は拡大されつつある、こういう私たちの観点でありますし、その点については後ほど触れたいと思いますが、そこで端的にお尋ねしますが、今日有名校、つまり学歴偏重というものが私たちの社会の中にあり、非常に大きな社会の病根としてあるわけでありますけれども、この学歴偏重の実態を打破するには、ただ単に学校差をなくすというような、百年河清を待つというふうなことでは解決しないと思う。端的に、今日の社会の中にあります学歴偏重をなくすには、どうしたらいいか、お尋ねしたいと思います。
  42. 八木徹雄

    八木政府委員 学歴偏重を学校教育の場だけでなくするというわけにまいらぬのではないか。現実の問題においては文部省努力の中に学校差をなくすというのが実効が上がっておらぬ、こういうような川崎先生のほうのお話でございますけれども、そういうことではないと思うのであります。国立学校の場合には、その施設、設備の面においても、教員の配置の面におきましても、いわゆる学校差のできるような行政措置というものは一切いたしておりません。それをなくすという努力を積み重ねておることは間違いないのであります。   〔委員長退席、上村委員長代理着席〕 ただ問題は、現在あるものは、昔からの伝統に対する評価、現在の力に対する評価というものに対して、父兄の側に先入観がある。その父兄の側の先入観で、たとえば東大に行かなければだめだといったようなそういうもので高等学校の最優秀な連中がその有名校に殺到する。その結果として高等学校教育の中で一番能力の高い連中が特定校に入っていったために、結果としてその特殊な学校出身者が社会に出たときに優秀な成果をおさめるがごときかっこうになっておる、こういうことだと思います。だから決して学歴偏重というものを文教政策の上で打ち立てる、あるいはそれを認めておるということではないのでありまして、学力偏重的なものがあるとするならば、それは学校自体にあるのではなくて社会にある、こういうふうに言うべきではないか。前段で申し上げましたように、学校学力偏重ということを持っていったゆえんのものは、決して逃げるわけではありませんが、文教政策が間違っておったということだけで片づけられない社会全体の問題として考えなければならぬものがあるのではないか。今後それぞれの企業家があるいは役所が人を採用する場合に、特定校でなければ人をとらないといったような風潮がもしあるとするならば、それを排除することによってそういうものもないように努力しなければならぬと思うのでありまして、それはみんなの、内閣全体の共同責任であり、あるいは父兄全体の考え方の一つの改善に待たなければならないのではないか、こういうふうに思うのであります。
  43. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に、いまの問題は確かに社会全体の問題でありますし、一朝一夕に片づく問題でもなく、全体的に解決をしてまいらなければならぬと思いますので、この点についてはこの程度にしまして、では具体的に大学の入学試験制度の改善について、どのようにしていかれようとしておるのか、その基本方針をお示しいただきたいと思います。
  44. 小林行雄

    小林(行)政府委員 現在の入学試験、これは年々行なわれておる入学試験につきましては、毎年試験問題等につきまして、大学関係者、高等学校教員その他学識経験者が集まりまして、毎年入試に関して研究会を実施をいたしております。この結果によりまして、改善すべき点については通達文部省から出して、大学関係者の注意を喚起しておるわけでございます。ただし、これは先ほど来お話のございますような、直接いわゆる入学試験地獄をそのまま解消するというわけのものではございません。そういった面からはできるだけやはり高等学校関係における生徒に対する進路指導を徹底してやってもらうということが必要であろうと思います。と同時に、やはり最近の大学入学志願者の漸増の傾向から申しまして、必要な高等教育機関をふやしていく、規模の拡大をするということも必要であろうというふうに考えておるわけでございます。なお、これとあわせて、やはり育英奨学の方途も学生の数に応じて漸次増加していく、拡充していくということが必要であろうと思っておる次第であります。
  45. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 三十七年に中教審が答申案を出しまして、大学入学試験についてというような答申案を出しておられるわけでありますが、その答申案に基づいて文部省としてはどのような措置をとられてまいったのでありますか。
  46. 小林行雄

    小林(行)政府委員 中教審の答申入学試験に関する、入学者選抜に関する技術的な、制度的な問題として、要するに高等学校卒業の段階において、やはり大学進学に適しておるかどうかということを評価する必要があるということで、進学適性のテストをする必要があろうということを言うておられますので、この勧告によりまして、御承知のような能力開発テストを三十八年度から開始いたしたわけでございます。すでに三十八年、三十九年とやりまして、ただこれは非常に影響するところが大きいものでございますので、三年間はいわば試験的な段階ということにいたしまして、その結果を十分検討いたしまして、なるほどというふうに納得できるような結果が出ましたならば、やはり大学当局者でこれを入学試験制度の改善の方策として採用してもらうようにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  47. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいま御答弁のように、技術的、制度的な改善、こういうことになっておるわけでありますが、この点が一番大事だと思うのです。それは先ほど次官も御答弁になりましたように、大学入試制度全体の改善という問題、つまり試験地獄をなくすという、そういう社会的な問題には発展し切れない、つまり背負い切れない大きな問題がありますので、この際には中教審の答申といたしましては、そういう政治的、経済的、社会的な要因というものについては触れずに、ただ技術的、制度的にこの問題を扱おうといたしておるわけであります。そうして能力開発研究所を設置をして、能研テストでやっていこう、こういうことになっておりますが、問題はここから出発をすると思うのであります。ということは、政治的、経済的、社会的な、そういう根本的な要因にメスを入れることなく、ただ単に制度的、技術的な面だけの改善をやろうとしておる。しかもそのことがあたかも入試制度の改善であり、合理化をされていく方向であるというふうな錯覚を起こさしておるわけでありますけれども、しかし現実的にはそれが入試制度の改善ではなくて、しかも先ほど次官が言われたような学校の格差をなくすというものではなくして、後ほど能研制度その他で御質問をいたしてまいりたいと思いますが、現在進められておる能研テストというものが進路指導だ、こういう形で実際にはお前はどこの学校に行け、お前はどこの学校に行け、こういうこうが合理化だ、試験地獄をなくする方法だ、こういう簡単な技術的な非常に小手先の問題にすりかえられていく、むしろ能研テスト自体が学校差をつくり、有名校あるいはそうでないというところの格差をつけて、そういうものの合理化をしていく、こういう方向に現実には進んでおるわけであります。そこで中教審の答申案自体もそういう政治的、社会的な要因というものに触れないのだ、こういうことで制度的、技術的な答申をいたしておるわけでありますが、そのことの危険性をどのように認識をされておるか、根本的な点についてお答えを願いたいと思います。
  48. 小林行雄

    小林(行)政府委員 私ども能研テストにつきましては、先ほど来お答えいたしておりますように、一つの入学試験制度の改善の方策として、よい、信頼度の高い結果が得られるならば、こういった客観的なテストの結果を大学で取り入れてもらいたいというふうに考えておるわけでございまして、しかしそれが将来入学志願者の意思を無視して方向を決定するとか、そういうようなことにはならぬと思います。ただし先ほども申し上げておりますように、入学試験に対する教育政策的な改善策としては、やはり社会的な要望、個人的な要望に応じた高等教育機関の規模の拡大、それから高等教育機関を単純なものでなしに、いろいろなバラエティーのある、そういった高等教育機関の充実というようなことが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。ただし御承知のように、戦後新制大学に変わりまして、要するに従来のエリート養成指導養成というものからこの高等教育が非常に社会化されてまいりまして、大衆化されてまいったわけでございまして、当然そこに志願者の増加というものが出てくるわけでございます。これを一がいに押えるべきものとは私ども考えておりません。ただし先ほど来のお話のように、現在の学歴社会というものの弊害もございますので、その弊の是正には、やはり単に教育機関だけでなしに、政府全体として、社会全体として考えるべきものと思っております。
  49. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この中教審の答申の中でも触れておるわけでありますけれども、大学入学者選抜制度の改善については、統一的な入学試験制度あるいは入学資格試験制度、無試験入学後の淘汰方法、こういうものについても検討してみたのだ、こういうことをいっておりますが、ただいまの三つの問題について見た場合、文部省としてそれをそれぞれどういうふうに評価しておるか、お尋ねをしたいと思います。
  50. 天城勲

    ○天城政府委員 私からこの点についてお答えいたします。私、ちょうど中教審の仕事を所管いたしております局なものですから、審議の過程を存じておりますので、申し上げたいと思います。  いろいろお話がございますように、入学試験問題解決するにはいろいろな多角的な方法考えなければならぬわけでございますが、技術的な選抜制度につきましても、世界で行なわれているいろいろな制度がございます。また日本でも過去においていろいろな制度が用いられた実績がありますので、それらについて中教審におかれては実情あるいは各国の制度等を調べて答申にあるような方向がいいということになったわけでございますが、何と申しますか、他の制度、たとえば入学資格制度とかあるいは統一入試制度あるいは無試験入学制度、これを考えました場合に、日本の学校体制との関係でなかなか問題があるわけでございまして、一言でこれはこういうふうにだめだ、これはこういうふうにぐあい悪いということをなかなか簡単に申し上げかねるわけでございますけれども、たとえば無試験入学後の淘汰方法というようなことは、学校の規模、定員、あるいは日本の社会においては、淘汰したといっても、その後の処置を社会がどう受け入れるかというようなことを考えると、アメリカでしばしば行なわれたり、ヨーロッパの国で行なわれているような、途中で淘汰するという方法は日本の場合にはむしろ適当でない。それから入学資格試験制度、この問題は一種の国家検定のようなものを考えられておるわけでありますが、御存じのとおりイギリスのGCEとかフランスのバカロレア、あるいはドイツのアビトウアの制度等がこれを具備しておりますが、これはそれぞれの学校との結びつきで出てくるわけでございまして、日本のような学校制度ではちょっとこれは結びつきにくいわけでございます。統一的入学試験制度、これはかつては旧制高等学校は統一試験をやったこともございますが、いまのように全国いろいろの種類大学を通じて統一の試験ということは、これは日本の現在の教育制度の場合には無理だ。一部分だけやるということも考えられるかもしれませんけれども、全面的な統一試験というものはやはりいろいろな学校種類がある以上は無理だ、こういうようなことがいろいろこの段階で検討されたわけでございます。したがいまして、答申にありますような方向がいい。ただ、ここで一言申し上げますが、能研テストがオールマイティだということをここで申しているわけでは決してございませんで、問題は、高等学校から大学への生徒の進学あるいは授受という非常に重大な問題について、高等学校大学が手を握って協力してこの問題解決するという体制が、非常に大事だということを基本、前提に答申はいっておるわけであります。能研の構想もその中で生かされてまいりますし、将来の入学選抜制度の改善につきましても、能研一本やりであとは何にもないというようなことは申し上げておりませんで、むしろ高等学校時代の成績の重視とか、あるいは単なるアチーブでなくてアビリティの問題も見なければいけない、あるいは大学の受け入れ体制における——ここにも出ておりますが、入学指導制度と機能、それから高等学校における進路指導制度と機能と、この両者の連係というような制度的な問題も触れておるわけでございます。  少し余分なことを申し上げたかと思いますが、ここで出ておりますいろいろな制度検討については、いま申し上げたような経過でございます。
  51. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの子供を持っておる父兄のほんとうの気持ちといいますか偽らない気持ちというものは、高等学校へ行った、大学に行きたい、出したい、こういう場合には全部大学に入れてもらいたい、そのかわり、ここで出てきておる三番目の問題になるわけでありますが、入れてもらってそのかわりひとつ中できびしく選抜をしてもらって、勉強しない能力のない者は落ちていく、ふるわれる、こういう形にしてもらいたいというのが母親なり父親なりあるいは本人たちの希望であろうと思います。しかし実際には、先ほどから現実はと言われておるように、学歴偏重の社会でありますし、そういう伝統があるし、現実には学校差というものが厳然としてあるわけでありますので、その点はきわめて現実に即さない。そのことがこの答申の中に出てくる結論の方向であろうと思うわけであります。ところが問題は、やはりアメリカ、ソ連等における高等学校を卒業して大学に入っておる者の比率、そういうものからするならば、日本は大学生が多過ぎる、こういうことには決してならないとも思いますし、高等教育というものの円満な発展のためからしますならば、私はこれはそういう方向に制度的には進むべきではないかと思います。ところが、それが現実に学校差があるから押されて、どうしてもそういうふうにならないのだ。これはまた後ほど御質問したいと思いますけれども、そういう今日の進められております文教施策の全般的な面において、一つの方向というものを大きく見通そうとしても、その前に、はだめなんだ、こういうことで現実に妥協している。だから有名校に入るということはもうやむを得ないことなんだ、こういうことで常に現実に妥協せざるを得ないというのが根本の問題だろうと思います。ですからその点については、これはここで早急に結論を出せということを要求をいたしましても出ない問題だと思いますが、やはり将来の方向としては、あくまでも学歴偏重をなくし学校差をなくしていく、そのためには旧帝大、旧国立大学、さらには新しい地方大学というものの差が今日制度的にもむしろ進められておりますので、そういう点については後ほど御質問をしたい、こういうふうに思っておりますが、そういう根本の問題があるということを私たちは大学入試制度の改善の中でよく見きわめておかなければならないと思うわけでございます。  そこで次にお尋ねいたしたい点は、そういう中教審の答申に基づいていろいろと制度の改善ということが進められ、その中の一つとして能力開発研究所というものが昨年から発足をし、能研テストが行なわれてまいっておるわけでありますけれども、能力開発研究所というものはどういうものであるか、ひとつ正式に、この委員会においては御説明をいただいておりませんので、御説明をいただきたいと思います。
  52. 天城勲

    ○天城政府委員 能力開発研究所は中教審の答申に基づきまして、その趣旨を実施するために昭和三十八年の、ちょっと日にちを正確に記憶しておりませんが一月でございますが、財団法人として設立された機関でございます。この能力開発研究所は中教審の答申にもございますように、問題高等学校大学、この両者が大学入学という学生の授受に関して協力することが基本的に大切であるということで、この法人を構成する場合にも、高等学校側、大学側の両者の代表によって理事を構成しよう。なお、教育行政上の重大問題でもあるということで教育委員会、それから文部省からも参加する、なお学識経験者も加える、こういう形で財団法人として発足したわけでございます。ここの仕事は本来が研究所と銘打っておりますように、中教審の答申にある高等教育を受けるにふさわしい在学者の学力資質、これらのものを客観的に判定する、あるいはその方法を研究するということを基本的な考え方に持っておりまして、その研究調査の機能がテストの実施という形にあらわれることを期待して研究所という名称をとったわけでございます。この制度入学試験の、入学選抜制度の改善ということに非常に影響するところが大きいものでございますし、ことに高等学校側、大学側の従来のしきたりや意見も持っておりますので、やはり試験期間を置いて、この間に両者の納得いくものをつくり上げていこう、こういう考え方で昨年度第一回のテストを実施いたしたわけでございます。このテストはいろいろございますけれども、大ざっぱに申しまして学力テスト、それから進学適性能力テスト、この二つを中心に実施いたしていこうとしておりますし、昨年も実施いたしたわけでございます。その間の調査の、あるいは研究のしかたでございますけれども、テストの具体的な問題の作成につきましては高等学校側、あるいは大学側、その他の研究者の協力を得まして、各種の面から最も妥当と思われる問題の作成にあたり、特に進学適性検査のごときは、過去に文部省実施した実績もございます。それらの調査結果あるいは新しい外国の研究等を加えながら昨年度第一回を実施したわけであります。これが、本年の三月の各大学入学試験が行なわれたわけでございまして、その各大学における入学試験の結果と能力テストの受験者の関係につきまして、現在大学を中心に追跡調査を行なっていただいているわけでございます。その追跡調査と申しますのは、大学入学のときの試験の成績と能力テストの関係、あるいは進んで高等学校時代の学習成績、さらに将来は大学入学後の学習との関係、こういうものの関係を多角的に調べていく、そうして能研テストの中身を改善すると同時に、大学側が従来やっておった試験というものが一体どういう意味を持ってくるか、あるいはどういうような裏づけが証明されるかというようなことも検討いたしまして、入学試験制度の改善に資していこう、またこういう方法で御納得のいったところで実際問題に使っていこう、こういう考え方で始めているのでございます。ごく簡単に申し上げますとアウトラインはそういうことでございます。
  53. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私の質問が悪かったので、たいへん全般的な御答弁をいただいたのでありますが、現在能力開発研究所というのは財団法人で設立をされておるわけでありますが、この予算と機構的な面をまずお尋ねしておきたいと思います。予算とそれから職員の構成、さらにはこの中の作業を行なっていく行ない方、つまりテストをやるために問題製作委員会等もあるわけでありますが、職員の任命といいますか、それをどういうふうにやっておるか、さらには文部省とこの能力開発研究所との関係、こういった点についてお尋ねしたいと思います。
  54. 天城勲

    ○天城政府委員 三十八年度の例で申し上げますと、こまかい数字は別といたしまして、大体一年間の経費は一億二百万でございます。これにつきましては国からも若干補助いたしております。これは当初研究所ということを申し上げましたけれども、基礎的な研究をするためにその研究の費用として三百万国から補助をいたしておりますが、その他の経費の収入はテストの受験料収入によってまかなっておるわけでございます。  それから機構でございますが、理事会のもとに事業部と庶務部と研究部という三つの組織を持っておりまして、庶務部は一般の庶務でありますが事業部のほうがテストの実施のほうをいたしております。研究部が研究と問題の作成をいたしております。ここには必要な職員がございますが、特にいまお尋ねの点は研究部のほうのことじゃないかと思いますが、研究部のほうは現在専任の織員はまだ充実しておりません。しかしながら在来から高等学校側、大学側あるいは研究者の協力を得るという体制でおりますので、むしろ外部の方々の御協力を得ることにかなり重点を置きまして、分野別に幾つかの委員会を構成いたしております。いまちょっと資料が手元にございませんが、これらの人間を合計いたしますと、大体各分野の専門家百五十名くらいは御協力をいただいておるわけでございます。これは能研が財団法人でございますので、財団法人から委嘱というかお願いいたしておるわけでございます。研究部のほうは特に学力の面、それから進学適性能力の面、それからいまの追跡調査の面、この三つにそれぞれ専門を置きまして、文部省は研究や調査をいたしております立場でありますが、文部省所管の財団法人として認可いたしております。先ほど申しましたように、基礎研究の面で十分とは申しませんけれども、補助金をこの団体に交付しているわけでございます。
  55. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと三十八年度で見て一億二百万という予算で運用されたということでございますが、国の一般会計の中の三百万、そういたしますと、あと残りの九千九百万というのは受験料であった、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  56. 天城勲

    ○天城政府委員 大体そうでございますが、こまかく申しますと八千四百万が受験料収入でございます。その他は国庫補助とそれからあとは借り入れ金で実施しております。
  57. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはたいへん赤字で苦しんでおるというお話だそうでありますが、財界からの寄付はございませんか。
  58. 天城勲

    ○天城政府委員 事業を営むについてはまだどこからも寄付をいただいておりません。
  59. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 文部省との関係はもう少しお尋ねしたいのでありますけれども、実はアメリカのエデュヶーショナル・テスティング・サービス、ETSのあれをまねておるのだというふうにいわれておるのでありますが、しかしそのETSの本部、支部を合わせれば二千五百人からの人員をかかえてやっておるそういう本格的な研究所というものに値する、そうした構成からしますならば、ほんのわずかの十数人あるいは二十人をこしておるのですか、そういうもので専門的にやる体制はないわけです。それが能力開発研究所というたいへん大それた名前をつけてやっておる。ですから、この点は少し羊頭を掲げて狗肉を売るたぐいではないかと思うのであります。むしろもっと率直に単なるテストの機関なんだということでその性格をもっとここではっきりすべきだ。そうでないと、私はこれはたいへんな錯覚をみんなに起こさせてまいると思います。その内容につきましては後ほど順を追ってお尋ねしてまいりたいと思いますが、このテストを進めてまいるについて文部省はノータッチであるかどうかお尋ねしたいと思います。
  60. 天城勲

    ○天城政府委員 これは最初から申し上げておりますように、高等学校大学と行政機関で協力してこの仕事をしようということでございますので、文部省文部省の立場から参加いたしております。教育委員会側も参加しております。
  61. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、教育委員会側も参加いたしておると言われましたが、もう県の教育委員会は参加ではなくて実施機関なんです。そういう点からいたしますと、頭のほうはなるほど開発研究所という一つの財団のかっこうをつくって、文部省も参加をしてやっておる、こういうことでございますが、実際に下のほうは、たとえば県段階で言えば、鹿児島の場合には鹿児島県の教育長が能力開発研究所の鹿児島支部の支部長であって、調査課長が副支部長である、実施するのは調査課員である、こういうことになっておるわけです。そういたしますならば、これは決して文部省と別個に自主的にというものではなくて、明らかに文部省がそういうテストをやっておる、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  62. 天城勲

    ○天城政府委員 同じことを繰り返して恐縮なんでありますが、高等学校側と大学と行政機関との協力体制でございますので、それぞれの立場でできること、それから分担すべきものを持ち寄っておるわけでございまして、いまお話のように、鹿児島の支部あるいはその他の県にも同じケースのものがたくさんございますけれども、テストの実施という段階については行政機関が分担するのが一番やりいいわけでございますので、実施の面についてお願いしておるわけでございます。一方、高等学校側につきましても、高等学校の校長会その他各府県高等学校の協会を通じまして高等学校側におけるいろんな意見をここに反映させていただく、   〔上村委員長代理退席、委員長着席〕 実施上の問題についても協力するという体制をとっておりますし、追跡調査につきましては、これは大学側に全面的にお願いいたしている、こういう形でございますので、それぞれの立場で協力し合っているということを繰り返して申し上げます。
  63. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的な能研テストの実施の面についてお尋ねしたいと思うのでありますが、これはやはり能力開発研究所が昨年発足をして具体的に第一回の実施を行なって、それ以後ことし七月、来月の四日には第二回目のテストを行なう、こういう段階に至っておりますので、そうした実施面について、私はどうしても能研の町長と、それから実務をやっております事務局長、この責任者に来ていただきまして、文部省文部省の立場での御見解もあるでございましょうが、実施部門の責任者においでいただきまして、私は能研テストの問題につきましては後ほど突っ込んだ質問をいたしたいと思いますので、この点についてはひとつ委員長のほうでお取り計らい願いたいと思います。
  64. 久野忠治

    久野委員長 ただいま川崎君の御要望の件につきましては、次回の理事会において協議いたしたいと存じます。
  65. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 関連してテストの問題で、次の機会でいいのですが、文部省から資料を出していただきたいと思うので、一つだけ御質問しておきたい。  いま大体テスト、テストで幼稚園から大学に至るまで子供が追いまくられている。幼稚園でも入園試験がある。小学校中学校では一斉学力テストを強行されている。高等学校から大学はこの能研テストがある。それから大学に入ると、会社の採用試験で追いまくられている。だから、テストがあって教育がないというようなことをいう評論も出てきているわけなんで、したがってこの問題については、文部省においてはこのテスト制度について確固たる指導方針、将来の見通しを持って、そうして指導行政をされない限りについては、弊害だけが残るのではないかと思って私は非常に心配をしているわけであります。そういうことで、この全体のテストの制度のあり方について再検討すべき段階にあると思うので、次の機会に調査局長あるいはもっと責任者からひとつ報告をしていただきたいと思うのは、この六月二十三日、二十四日にも一斉学力テストを実施されることになっております。もうすでに三カ年実施をされて教育界を混乱し、非常な犠牲も出している。そのほうの分だけは文教行政にプラスがないと私は非常に遺憾なことであると思うのですが、その学力テストを実施するときに、この文教委員会大臣とわれわれの質疑応答の中でテストの目的を明らかにされている。その一つは、僻地その他あるいは都市、農村に対する教育条件の格差を解消する資料にしたい、いわゆる教育条件の整備、それから指導要領についての再検討の資料にしたい、さらに進学の程度を調べて、その後の先生指導の資料にしたい、そういうふうなことを説明されてテストを強行されている。その後そのテストの結果に対してどれだけの行政的な処置をされているのか、もしされていないとすれば、一億、二億の金をかけて子供をテストに追い込むような、現代のテストの中でむだな金を使うことがいいのかどうか、その三カ年間のテスト実施の結果、これだけのプラスが文教政策にあります、こういう処置を行政上予算化している、ということを報告をしていただきたい。次の委員会にそれをお願いをしておきたいと思うのであります。これはどの中央新聞の読者からの投書の欄を見ましても、テストに追われて業者からはテストの教材その他を多く買わされて、負担が重くなっておるとか、子供はテストに追われてほんとうの実地の勉強よりもそっちの方向に顔が向いておる。先生のほうはそのために一般の指導要領に基づいた正当な教育よりも、テストの成績をあげるためにほとんど半分そっちにいっておる。こういうことを盛んに書いております。もしそれを実施するならば、もっと文部省で現在の教育についての的確な正当な指導を厳重にしてもらわなければ困るということを要望いたしておる、これはもう各新聞にあります。そういうことから私は申し上げるのです。それから地方の教育長の意見を聞くと、小中学校学力テストは、それがおのずから子供にわかってくる。成績の悪い三分の一以下の人は劣等感におちいって子供がだめになっている。上の三分の一の者は優越感を感じて刺激を得て、さらに勉強するかというと、むしろ安心感を持つだけであるというふうなことを私に報告しておるのです。そういうことを含んで、いま川崎委員から大学への能力テストの問題関連をして質問があって、次の参考人の問題もあると思いますが、テスト全体の中で混乱をしている子供、それにどういう指導をし、いままでの実施の結果どれだけの有効な成果をあげ、予算化をし、文教方針に変更を加え、修正を加えておるか、それを的確に御報告願いたい。そういうことを報告しないで、国会の中で非常な疑問の中でテストを実施されて、そうして各地で教育界を混乱させ、犠牲を出しておる。さらにまた六月二十三、二十四に実施する段階にあるので、文部省の責任があると思うので、次の委員会にその点の報告をしていただきたい。これはいま次官がいなくなって、文部大臣もいないので、おそらく責任者は天城調査局長だと思うが、それをお伝え願って、次会にその報告をしていただきたいと思います。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 昨年やりました能研テストの受験者の総数、各県ごとの受験者数、ことしの受験者数、それをひとつ資料で出していただきたいと思います。
  67. 久野忠治

    久野委員長 次会は来たる十二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会