運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-03-25 第46回国会 衆議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 小澤佐重喜君 理事 坂田 道太君    理事 長谷川 峻君 理事 南  好雄君    理事 二宮 武夫君 理事 三木 喜夫君    理事 山中 吾郎君       臼井 莊一君    木村 武雄君       熊谷 義雄君    田川 誠一君       谷川 和穗君    床次 徳二君       中村庸一郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    松田竹千代君       松山千惠子君    三田村武夫君       落合 寛茂君    川崎 寛治君       長谷川正三君    前田榮之助君       鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君  委員外出席者         外務事務官         (情報文化局外         務参事官)   針谷 正之君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     木田  宏君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 三月二十五日  委員臼井莊一君辞任につき、その補欠として森  清君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十一日  学校給食法の一部を改正する法律案二宮武夫  君外二十名提出衆法第三三号)  産炭地域における公立の小学校及び中学校の学  級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関  する法律案米田勲君外四名提出参法第一一  号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正  する法律案内閣提出第八〇号)  文教行政基本施策に関する件(文化財保護に  関する問題等)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  大蔵委員会において審査中の国立学校特別会計法案について、大蔵委員会連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時三十一分休憩      ————◇—————    午後三時三十四分開議
  4. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。落合寛茂君。
  5. 落合寛茂

    落合委員 その国の残してある文化財によりまして、その発達、繁栄の程度がわかるといわれるように、事は簡単でありますが、その国の文化財というものがいろいろな意味で重要な観点にあることを私どもは知らなければならないのでありますが、十九日の大平外務大臣日韓会談に関する報告で、その発言中、文化財の問題につきましてこういうことを言っておられます。「韓国側は、わが国にある韓国文化財返還を主張しております。すなわち、国民感情として文化財は大きな意義を持っておること、文化財はその出土の地において保存し研究するのが今日の世界趨勢であること、朝鮮動乱によって韓国にあった文化財の多くが大きな被害を受けた事情等を強調」している。これは韓国が強調している。これに対して日本側としては——これは外務大臣の主観、発言でありますが、これらの文化財韓国側に引き渡す義務があるとは考えていないが、両国間の友好関係考えて、文化協力一環として、ある程度韓国側の要望にこたえたい、こういうふうに外務大臣が言っております。これは十九日の本会議でありますが、そのあと新聞で見ますと、それに引き続いて文部省文化財保護委員会が中心になりまして、これらの文化財韓国返還することに対して委員を任命されたりしまして、会議を開いているように新聞では報道いたしております。ちょうどここに文化財保護委員会局長さんが見えておいでになりますが、その会議の内容、経緯等をひとつ御説明を願いたいのです。
  6. 宮地茂

    宮地政府委員 日韓会談におきます文化財問題につきましての今日までの経緯につきまして、お答え申し上げます。  韓国側は、日韓会談の開始以来、請求権の問題の一環といたしまして、一九〇五年、これは明治三十八年に統監府が設置されたときでありますが、それ以降、日本の国にもたらされました韓国文化財の多くは不当不正な手段によって入手されたものである、そういう前提に立ちまして、その返還を要求しておるわけでございます。そうして特に韓国国民感情として、文化財は非常に大きな意義を持っておるから、文化財はその出土国において保有し、研究するのが今日の世界趨勢である。さらに朝鮮動乱によって韓国にあった文化財の多くが大きな被害を受けた事情等を強調して、その返還を要求しておられるような状況でございます。これに対しまして、わがほうといたしましては、韓国側の指摘されますこれらの文化財は、いずれも正式の手続によりまして購入したか、あるいは寄贈を受けたか、要するに正当な手続を経まして入手したものでございまして、韓国側返還すべき国際法上の義務もない。したがって返還する理由はないという態度で臨んできておるわけでございます。特に最近いろいろ漁業問題等会談が進捗しておるようでございますが、文化財関係につきましては、以上申しましたように、返還をせよ、わが方は、返還義務はないということでございますが、それはまあ一応別問題として、韓国側請求しております文化財について、はたしてそういう文化財わが国にあるのかないのか、どういう状況になっておるのかといったような、もっぱら事実認定と申しますか、情報交換というような意味で、韓国日本専門家会合が数回今日まで開かれております。これは、私のほうでは、私のほうの事務局課長とか、あるいは博物館部課長といったような、その道の専門家が出て、こういう会談をいたしておるのが、今日までの経緯でございます。
  7. 落合寛茂

    落合委員 あるのかないのかということをお調べになるというのですが、責任のある一国の外務大臣が、先ほど私が申し上げたように、本会議発言の中で、とにかく返すという義務はないけれども、まあひとつ返してやるのだ、こう言うのですから、ないものを返すわけにはいかないのですが、お調べの結果、もしそういうものがないという結論が出た場合には、どういうような処理をなさるわけですか。
  8. 宮地茂

    宮地政府委員 私の説明ことばが足りなかったかもしれませんが、向こうは返してくれ、わが方は返す義務はないということでございますが、それは一応別の問題にして、その返すとか返さぬとか、やるとかやらぬとかいうようなことは別にして、向こうが一応こういうものを返してほしいということを、リストを出してきておられるのであります。ですから、そのリストにあるその事実を、これは別にやるとかやらぬとか、戻すとか戻さぬとかいうような政治的な意図というものは働かす必要がございません。要するに、出てきておるリストについての情報交換を、事務的にやっておるということを申し上げたわけでございます。
  9. 落合寛茂

    落合委員 御承知のように、サンフランシスコ平和条約のときに、韓国日本に対して例の請求権——そのとき八項目を提示して、日本側がその請求を認めることを要求しておる。日本側は、これに対してどういう態度をとってきたというと、請求権として認め得るものは、確固たる法的根拠があり、事実上十分立証されるものに限るということを、そのときに日本立場として言っておるようでありますが、それだけのはっきりした一つの、こうならばこうだということになれば返すということを言っているとすると、返すものがあったに違いない。そのときに返すものはなかったのですか。  外務省の方おいでになっていますね。——それでは、外務省の方にちょっとお聞きしますが、外務省では、岸内閣のときにすでに、これはもう有名なことになっているのですが、日本にある韓国文化財を百余点ひそかに、国会にも何も話もせずに、返還して、それがわかりまして、国会で問題になっております。国民は非常に驚いたのでありますが、そういう一つのはっきりした事実があり、しかもサンフランシスコ条約のときのいろいろな問題もあるのですが、外務省にはおそらく記録もあると思いますが、このときどういう理由でこれを返還して、どういうふうないきさつでこれが向こうへいっているか、そしてまたその返したものはどういうものであるかということをひとつ御説明を願いたいと思います。
  10. 宮地茂

    宮地政府委員 岸内閣のときに百余点の文化財韓国に返したではないかというようなお話でございますので、その点につきましてお答えをいたします。  これは昭和三十三年のことでございますが、当時、御承知のように、在韓抑留日本人漁夫の送還問題といった、非常に困難でかつ緊急を要するような問題が当時の状況として一方にございました。また、日韓会談を円滑に進行させるなど、日韓間のいわゆる友好関係に寄与する点などを考慮いたしまして、当時、東京国立博物館が所蔵いたしておりました国有の文化財百六点を韓国に譲与いたしております。これは国内法物品無償貸付及び譲与等に関する法律、これの第三条第三号に、標本用物品等はこれを国以外のものに譲与することができるという法律規定がございます。その規定を適用いたしまして、標本用物品として先方に渡しました。これは当時、国立博物館が持っておったものでございますが、大正一年に当時の朝鮮総督府の事業として行なわれました発掘調査による出土品でございます。
  11. 落合寛茂

    落合委員 局長さんの先ほどのあれであげ足をとるようで変でありますが、問題を進めていく上においてお聞きしておきたいのですが、今度の委員会等会合で、朝鮮からそうしたものがきましたものがあるかないかということをまず調査するというふうななにですが、そうしますと、すでに岸内閣のときに、点数まで百何点ですかはっきりして、それを向こうへ、名前贈与という巧妙な名前になっておりますが、返したことは事実だとしてみると、そこにどうも私ども割り切れないものがありますし、サンフランシスコ条約のとき、請求権のときに、それほどはっきり、法的根拠があってしかも事実の裏づけがなければそういうものには応じるわけにいかないということまで言っておきながら、今回は、外務大臣が、とにかく返す義理はないけれども一国の友好のために返してやるという、非常に何か食い違った矛盾があるように感じられるのですが、外務省のほうから、そのときのもう少しはっきりした、贈与でもけっこうですが、向こうにそういう文化財を返してやったときのなにをひとつ伺いたいと思うのです。
  12. 針谷正之

    針谷説明員 お答えいたします。  ただいまお話のときの状況は、私たちも書類で調べる以外に手はないのでございますが、ただいま文化財局長さんからお話があったように、当時、第四次会談を開こうとするまぎわでございまして、あわせて、当時、抑留日本人漁夫の送還問題などが起こりましたので、この向こうの言ってきております百六点を向こうへ渡すことによって、少しでも友好な雰囲気をつくって、円満に日韓間の交渉を発展さしていきたいという気持ちで渡したと聞いております。
  13. 落合寛茂

    落合委員 そうしますと、今度外務大臣が返してもいいということを本会議で言っていられるのは、やはり今度の日韓会談の進展について、いわゆる一つの裏としてそういう方法をとろうというわけなんですか。
  14. 針谷正之

    針谷説明員 今度の会談を進めるにつきまして、正常な日韓外交関係の新しくでき上がることを祝福し、あわせて将来に対する文化交流のまず手始めとして、何がしかの渡せるものは渡したらいいのではないかという考えでやっております。
  15. 落合寛茂

    落合委員 そうすると、お祝いの引き出ものというわけですか、祝福というのは……。
  16. 針谷正之

    針谷説明員 いままでなかったところに、日韓間に新しく外交関係が正常化するというその際に際しまして、文化交流一環として渡すということで、その裏には、日韓間に新しく正常な外交関係ができることを喜ぶというような気持ちはあるものと思います。
  17. 落合寛茂

    落合委員 そうすると、今度は局長さんに伺うのですが、そういう委員会までこしらえて、そういう協議までなさることがあるとすれば、韓国からそういう文化財を持ってきたといいますか、これはまあ非常に微妙なところなんですが、そういうことばは使いたくありませんが、かつて韓国神功皇后が三韓征伐に行かれたこともありますし、加藤清正トラ退治に行ったこともありますし、いろいろな戦時状態にあったことがあるのですが、そのときに黙って持ってきたものなんですか、あるいはそのときに向こうから買ってきたものなんですか、今日韓国のものとして残っておる文化財の性質について、ひとつ御説明願いたいと思います。
  18. 宮地茂

    宮地政府委員 先ほども申し上げましたが、一応韓国側明治三十八年、一九〇五年でございますが、日本統監府が京城にできた年以後のものを、これは日本が不正、不当な形で持って帰ったり取ったものだから、返してくれということを言っておられるわけでございます。ところが先ほど申し上げましたように、一九〇五年以降のものは、わがほうといたしましては成規手続を経て、個人から購入したものもございますし、またそれ以外から購入したものもございます。また正当な手続寄付寄贈を受けたものでございまして、おっしゃるような不正、不当の手順で持ってきたものは何一つございません。ですから返す義務はございません、ということを申し上げております。  それから一九〇五年以前のものも、もちろん東京国立博物館等にはございます。しかしこれは一九〇五年以降と同じように、すべて成規手続を経て博物館に入ったものばかりでございます。
  19. 落合寛茂

    落合委員 そうしますと、今度御調査になって、そしてこれは向こう返還すべきものであるというものに対しての限界は、もし個人所有に移っておるとすれば、それは返さなくてもいい、いわゆる博物館等にある国の所有になっておるものは返すということになるのですか。
  20. 八木徹雄

    八木政府委員 先ほど来申し上げておりますように、先方請求権権利があるから返せといっておるわけでありますけれども、当方は、たびたび申し上げておるように、文部省外務省もすべて請求権の行使によって返す必要性はさらさらないという態度は一貫して堅持しておるわけでございまして、その意味で、いまの外務大臣お話というものも、あくまでも返還ということにはこたえる筋合いはないということが前提になっておるわけですが、ただしかし、両国の正常な国交回復ができ、そして文化協力ができるということになる、その意味合いから、先方請求に対してこたえるのではなくて、自主的な判断に従って、こちらでこの程度のものはあげたらよかろうと考えられるものをあげる、そういう心組みではあるということでございますから、向こうから請求されてそれに応ずるとか応じないとかいったような——応ずるというようなことではないのであって、その場合はあくまでも応じないという前提でございますから、その点ひとつ誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
  21. 落合寛茂

    落合委員 誤解どころじゃない、たいへんけっこうなんですが、向こうでそういうはっきりしたものがあるならば一これは皆さん承知でしょうが、今日の日本文化財の非常に大きな部分海外から入っているものが多い。これは目録を見てもそうなんです。でありますから、その海外から入っている古来からの文化財を返す、あるいは贈与するということになってきますと、日本古来文化財は非常に削減されることになる。でありますから、私考えますのに、もし贈りものとかあるいは引き出ものとかいう程度のお考えならば返さなくたっていいじゃないですか。そのかわりに少しチップをはずんでやったらいいじゃないですか。
  22. 八木徹雄

    八木政府委員 いま申し上げたように、こちらに必要だと思われるものをあげようという意思はないわけなんです。だから、向うから、これこれのものが一九〇五年以来いっているではないかといっているけれども、それにはとらわれないで、こちらとしてはあくまでも返すという義務はないという前提に立っております。だから、この際引き出ものというお話がございましたが、引き出ものという性格、俗にいえばそういうことになると思いますが、こちらが判断して、この程度のものはあげて向こうが喜んでくれる、そうして日本文化財がそれによって喪失されて迷惑をこうむるという程度のものでなければ、その程度のことは考えていいのではないかという、軽い——あくまでも返還しないというところに重い力点があるのであって、贈与するということははなむけ程度考えてみようという程度に御認識いただきたいと思います。
  23. 落合寛茂

    落合委員 それはこっちで考えていることでありまして、向こうにとってみれば、戦争のためにいつも攻め込まれてお帰りに持って帰られた、いわば強奪されたものであるから返せということをはっきりいっているでしょう。こっちでいまおっしゃるようなことを幾らいっても、向こうでは、当然おれのほうに請求する権利があるのだ、いわゆる戦利品として持って帰ったのじゃないか、だから返すのは当然だ、こうはっきりいっているのですよ。ですから、この食い違いをわれわれ国民としてはどう解釈したらいいでしょう。
  24. 針谷正之

    針谷説明員 この食い違いは確かに初めからございます。で、この食い違いを何とか両方で納得するような形で了解点がないかとやっておりますのがいまやっている話し合いでございます。
  25. 落合寛茂

    落合委員 それが日韓交渉です。これはおそらく私は、与党の自民党の方が私と同じ考えでいられると思うのです。そこに私は、何か日本外交の変な弱さといいますか、裏、今度の日韓会談なんかでも、われわれ見ておりますと、裏のことばかりで、表から堂々とやるというようなことがない。これ一つを見ましても、そこに日本外交というものはもう少し考えなければならないことがあるのじゃないか。こうしろうと考えで思うのですが、かりに、大平外務大臣の非常に大乗的な考えで、一つ引き出ものに返してやるというふうなこのことですが、国際的に返還ということが正当化されたという場合をひとつ考えていただきたい。これが前例になってどういう結果になりますか。すぐうしろの地続きに北朝鮮がある。北朝鮮だって南朝鮮と同じことに文化財をたくさん持って帰られている。それからそのうしろにおそるべき大国である中国がある。これは中国から黙っていただいて帰ってきたというものは非常な数あると私は思う。こういうことになってきた場合に、この連鎖作用、これをひとつ私どもはまじめに取り上げて考えてみなければならないから、単にこれだけの宝ものをひとつ返してやったら喜ぶだろうから、これが日韓会談のスムーズな潤滑油になるから返してやろうというようなそんな冗談の考えでやられたら、来たるべき、いわゆる国際的な正当化としての問題が非常に大きな問題になって起きてくると思う。これに対するお考えをひとつ伺いたい。これは実際外務大臣に聞きたいんですがね。あなたじゃ気の毒なんですよ。
  26. 針谷正之

    針谷説明員 外務大臣がいなくてはなはだ何でございますが、私たちの従来考えておるところを述べさせていただきますれば、日韓関係というのは、ほかのどこの国ともない特殊関係でございまして、これに基づきまして、文化財についての問題を処理したいと思っているわけでございます。これは返還でなくて、あくまでも向こう贈与するという形で、もし不当不法に取ってきたものを返還するという形でやるのでしたら、私たちは初めからできない仕事だと思っております。そういうことでございまして、中共との関係日韓との関係とは根本的に、バック・グラウンドが違いますから、中共との間にはこういう問題は起こり得ないというふうに推測しております。
  27. 落合寛茂

    落合委員 それはあなたのお立場として、外務省立場として当然のお答えだと思いますが、これが一つの事実として、簡単に贈与というような形をつけて正当化された場合に、実にたいへんな問題になるのではないかと思いますし、すでに私ある方面からそのことを聞いております。ですから、おそらくあなたがおっしゃるようなぐあいに、ああそうかといって簡単に引っ込む中国だとは思わない。きっとこれが大きな問題になる導火線になると思いますから、私は、この問題の処理は、ただ単なる日韓会談の大きな問題の中の一つの小さな部分とお考えになってはたいへんな問題になると思う。ですからこれは外務大臣にはっきり聞いておきたいのですが、大臣がいないので今度大臣のいるときにしまして、もう一つお聞きしたいのですが、国民——国民の一人一人でもいいですが、あの文化財向こうへ返した、どういう意味で返されたかということを国民から質問された場合に、ただいま皆さんお答えくだすったように、贈与というふうな形であくまでも説明していかれますかどうか、その点ひとつお聞きいたします。
  28. 針谷正之

    針谷説明員 あくまでも贈与したということで説明していくつもりでおります。返還するのではないということは、初めから私どもの貫いた考え方になっております。
  29. 落合寛茂

    落合委員 私は、そこに非常に考え方の違いが出てくるのでありまして、これは戦争のときに戦利品として取ってきたものだ、あるいは向こうから強奪してきたものだ。とにかく国民はみんなこれを承知しているわけです。国民承知しておりますよ。あくまでも言をかまえて、それを贈与とかなんとかいう、いわゆる外交的な便宜なことばを使って解決していかれようとする。ここに私は日本のいわゆる政治としてのある欠陥を思い出すのでありますが、はっきりとこれは戦利品だ、戦争に負けたのだ、だからしてその償いとして返してやるのだ。賠償金の場合だってやはり贈与ではないでしょう。賠償金でしょう。だからそういうふうにしてはっきりした態度はとれないものなんですか。これは大臣でなければなんでしょうが……。
  30. 宮地茂

    宮地政府委員 いまの落合先生の御発言はまことに重大な御発言だと思います。少なくとも戦利品として取ってきたり略奪したものは一つもございません。私ども韓国請求しておりますものを全部調べてみました。しかし何一つ今度の戦争で取ってきたり、また一九〇五年以降略奪したり取ってきたようなものはございません。不正不当なもので取ってきたものは何一つございません。先ほどから繰り返して申し上げますように、正規の手続を経て購入をいたしましたものか、あるいは正当な手続寄贈されたものでございます。その点は確信を持って申し上げておく次第であります。
  31. 落合寛茂

    落合委員 あなたがそういうふうに確信を持っておられるとすると、全部向こうから金を出して正当に買ってきたものですか。
  32. 宮地茂

    宮地政府委員 正当な手続を経て購入したものと正当な手続を経て寄贈寄付を受けたもの、そういうことでございまして、全部を買ったものというわけではございません。
  33. 落合寛茂

    落合委員 そうするとあなた方が委員会をこしらえて審査をその委員会でなさる。もし向こう返還といいますか贈与というか、その場合にその審査機関はどこでやるのですか。
  34. 針谷正之

    針谷説明員 審査機関はたぶん外務大臣その他政府でおきめになることだと思います。手続はまず専門委員会がやりまして——手続を申しますれば専門委員会及び文化財保護委員会、あるいは関係機関、それから最後の決断はやはり政府の決定ということになるものだと思います。
  35. 落合寛茂

    落合委員 この問題は最初から申し上げますように、単なる文化財としての限られた一部分の問題のようにちょっと考えるととられますけれども、ここにいわゆる国民道義に関する問題とか、あるいは国民の精神的な一つの道徳方面の問題とかいろいろなものを考えた場合にそこに非常に大きな意義があると思う。そうしてまた外交的には、連鎖反応的にいろいろな問題が起きてくる。それに対してもっと国として、あるいは当事者の外務省として、文部省としても、ひとつ緻密な機関をこしらえて、そうしてその上において万遺漏のないように取り扱ってもらいたい。いろいろな意味において非常にこの問題は重大問題だ、私はこう考えるから意地の悪い質問をするのでありますが、とにかくきょうは文部大臣外務大臣おいでになりませんから、ほんとうの責任のある当事者にもう少し突っ込んだ質問をして、私の考えを述べたいと思っております。きょうは私これで打ち切っておきます。
  36. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 関連してお聞きしますが、文化財保護委員会のほうでは、返還するものはないし、返還する意思はない、宮地局長はそういう御意見ですね。外務大臣法律義務はないが返還をすると本会議で明言しておるから、外務大臣の表現を取り消さないと、当の責任者の文化財保護委員会外務省の意見が違っているわけだ。外務大臣の意見を取り消さないとこれはどうにもならぬでしょう。
  37. 八木徹雄

    八木政府委員 先ほど落合さんからも議事録を中心にして御質問がありましたように、外務大臣が本会議の席上において答えているのは、「これに対し、日本側としては、これらの文化財韓国側に引き渡すべき義務があるとは考えていないが、日韓間の友好関係の増進を考慮し、文化協力一環として、ある程度韓国側の要望にこたえたいと考えております。」こういう表現をいたしておるのであります。返還をするということは一切言っておりません。また実際に言うはずがないのであります。それは終始変わらず不当に取得したものではないのだから返還する義務がないというのが、事実がそうでございますから、統一見解でございます。だからお返しをするということではないのであります。向こうがほしいというものについて、それでは考え贈与をしてあげるかどうかということをいま検討しておる、こういうことでございます。
  38. 落合寛茂

    落合委員 あなたはそうおっしゃるけれども、ここに速記録もありますが、外務大臣韓国わが国にある韓国文化財返還を主張している、返還に対するお答えなんですから、返す義務はないけれども、しかしながらこれは何かしてやらなければならぬ、それに対するお答えなんですから、返還をする必要はないとは言っていないのです。返還ということを認識した上での発言ですよ。
  39. 八木徹雄

    八木政府委員 先ほど落合さんが言われたのが前文であるわけですけれども向こう返還を主張しております。これは向こうの意見でございます。それに対して「これに対し、日本側としては、これらの文化財韓国側に引き渡すべき義務があるとは考えていないが、」こう言っているのです。これで否定しているわけです。否定しておるが、しかし「日韓間の友好関係の増進を考慮し、文化協力一環として、ある程度」のことをしたい、こういうことでありまして、否定してその上で、文化協力関係上ある程度のものを考えてまいりたい、こう言っておるわけでございます。ですからあくまでもその考え方贈与ということになります。
  40. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 世界の全部の慣行、たとえばフランスのルーヴル博物館にいってもギリシャから略奪した戦利品がたくさんあるわけですね。しかしフランスではそれを数百年、千年近くも保存しておるわけです。日本の場合については略奪したのではなくて、正当な手続をもって日本の国内に保存されておる。先ほど落合委員が言ったようにそういう慣行を今度裏返って簡単に贈与をする、何とかいう形ですれば、それは中国などからは中国関係のものはうんとあるのだ。そういうことですから軽々にこういう外交一つのアクセサリーか便法で、文化財の移動というものを、贈与がどういう形であろうが簡単にするということは、おそらくいろいろとあとに問題が残って理屈はいまいろいろ話をされましたけれども向こうでは返還の要求してきておる。したがってこっちではそうではないのだ、贈与だと言っても、向こうでは日本返還に応じた、国内的にそういう表現で宣伝することは明らかなんです。そういうふうな形の中で、せっかくそういう努力をしても向こうの民衆からは一つも感謝されず、日韓の改善にはならぬと思うのです。一部の為政者からはどうかしらない、アメリカは喜ぶかもしれないが、民衆からはむしろ恨みを残すだけだ。そういうことも考え文化財問題というものは世界の慣行を含んで、間違いのないように処理すべきだと思うので、いま落合委員も質問しておると思う。この問題は、文化財を保護する責任を持っておる文化財保護委員会の責任者は、贈与でも、どういう形でも、向こうに渡す意思はないと宮地局長は言っておるが、いま一度お答え願いたい。
  41. 宮地茂

    宮地政府委員 これは先ほど政務次官が日本側の基本的な態度をおっしゃいましたが、私はまだ基本的な態度を申し上げておりませんので、政務次官がおっしゃいましたことと同じことを申し上げさせていただきます。日本側といたしましては、韓国側請求によって文化財返還しなければならないという義務はない、そういう筋合いのものとは考えておりません。しかしながら返還ということではなくて、両国の国交正常化に際し、文化協力一環として、国有の文化財のうちからある程度の適当な文化財贈与してはどうであろうかというふうに考えております。
  42. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 あとのほう新しくつけ加えられたので、前は返還する何物もございませんということで打ち切っておるから、私は質問しておる。何も私は無理にあなたの答弁につけ加えて解釈を曲げておるのではなくて、返還する義務はないと答えたあとで、贈与する意思はあるということをつけ加えも何もしなかったから、したがってそういう意思はないと私は一応解釈してきたわけです。そこで外務大臣の本会議における表現が問題になっておるので、外務大臣が本会議であの中間報告をするまでに、外務省文部省及び文化財保護委員会でどの程度の話し合いをしたあとの、あれは表現なのですか。一応の話し合いはした結果あの表現をされておるのですか、外務省に伺います。
  43. 針谷正之

    針谷説明員 ただいま文部政務次官がおっしゃいましたような線は、初めから了解がついていたと思います。
  44. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 だれとだれですか。外務大臣文化財保護委員会委員長と文部大臣の三者の話をした結果なんですか、具体的に人を言ってください。
  45. 針谷正之

    針谷説明員 杉代表と文化財保護委員会委員長との間で話しております。
  46. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 文化財保護委員長と外務省のだれですか。
  47. 針谷正之

    針谷説明員 杉代表でございます。
  48. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 外務省の代表じゃないじゃないですか。官庁としての外務省の代表はだれですか。
  49. 針谷正之

    針谷説明員 杉代表は日韓関係に対しては全権の代表でございますから……。
  50. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そうすると日韓関係の懸案は全部杉さんに委任されている、外務大臣関係ないのですか。名前は全権だけれども、もっと行政的に解釈してください。
  51. 針谷正之

    針谷説明員 外務大臣関係しております。しかしただいま先生の御質問になった点については、杉代表と文化財保護委員会委員長お話しになったことがあると聞いております。
  52. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それは事実間違いないのですね。聞いておりますというと、また聞きもあるから一応明確に……。そういう話の上での外務大臣の表現であると私も信じております。ただこの問題はそういう世界文化財処理についての慣行からいって、贈与返還か何か理屈はついても、そう簡単に便宜的にするというものではなくて、文化交流というのはもっと前向きの意味の交流がやろうと思えばやれる。世界的なそういう慣行からいって、またこのあと北朝鮮中国、その他西南アジアを含んでの全体の前例をつくるものであるので、そう簡単に便法としてやるべき問題ではないと思う。その点について政府としては慎重に検討すべき問題であるので——今度の外交については、法的根拠のない贈与の形あるいは好意、そういう形で処理するものが今までの話を聞いていると多過ぎる。そういうことで慎重な態度をとるべきであるということを特に私は要望して、この文化財に関する質疑は終わりたいと思います。
  53. 落合寛茂

    落合委員 ちょっと関連して。いまの外務省の参事官のお話で、長い間苦労をし、話がついている、それで杉さんの名前まで出てきたのですが、文化財保護委員会宮地局長さん、そのきまったものはどういうものであって何点か、それをひとつおっしゃってください。
  54. 宮地茂

    宮地政府委員 先ほど外務省のほうもおっしゃいましたが、私のほうは返す義務はないけれども文化協力一環といたしまして何がしか適当なものを贈与するということ、これには賛成をいたしております。しかしどの程度のものでどういう品物をというようなことは、まだそこまで煮詰めて考えておりません。もちろん外務省のほうも何点やってくれ、これを贈与としてやってくれといったような御相談でもございませんので、私のほうは適当なものを贈与するというその考え方だけを了承しまして、それを検討いたしておる段階でございます。
  55. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 関連して。念には念を入れて確かめておきたいのですが、贈与という形でも軽々に行なうことは将来他の国に対して非常に大きな禍根を残すおそれがあるという指摘は、山中委員のおっしゃったとおりで、私も全く同感なんです。それはそれとして、なお念のためにお聞きしておきたいのは、日本側立場返還義務はない、これは国交正常化についての一つの親善友好を深めるものとして贈与したい、そういう考えはわかります。しかし韓国側はあくまで請求する権利があるとして、これを受け取るという態度をまだ改めていない。これの解釈はそれぞれがかってに解釈するのだ、なおこちらはこういう解釈だということで一方的に返還をしようとしているのか。あるいはあくまで合意が成り立って、それでは請求権があるから返還しろということは取り下げる、そうして好意としてありがたく感謝してこれを受け取る、こういうふうに話がまとまったら返すというふうに考えているのか、その辺はどうなんですか。先ほど外務大臣の速記録について、何か向こうの要求に応じてもいいというような表現なんです。そうなると非常にそこのところは問題だ、その点についてひとつなお念のために伺っておきたいと思います。
  56. 針谷正之

    針谷説明員 その点につきましては、両方の話し合いがついたとき初めて贈与という行為が行なわれることになると思っております。つまり向こうが不当に持ってきたもの、あるいは不法に持ってきたものとして奪い返すのだという考えでおります限りは、この問題は解決しない問題だと思います。この点ははっきりと一つ考え方をもってただいま話し合っております。
  57. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この問題についてはこれで打ち切りますが、ちょうど宮地局長がおられますので、この前に質問を私が申上げたことの続きで、明らかにしていただく問題が残っておった。それは国分寿の国有地の一部を売却するようなうわさが流れておる。これは一方では史跡に指定したところがいつの間にか荒らされたといって大騒ぎになっている中で、一部国有地を一方でまた売ろうとする、こういうばかげたことがあってはならないのではないかという質問をしたのに、そのことはまだ聞いておりませんので、至急調査をした上そのようなことのないようにしたいというお答えがあったのですが、その後それはどうなったか、ちょっとここにはさんで恐縮ですが、宮地局長がお見えになっておりますのでその点だけ伺っておきたいと思います。
  58. 宮地茂

    宮地政府委員 お尋ねの国有地につきましては、大蔵省のほうの管財局が所管いたしておりますので、さっそく、私のほうの記念物課長が所管でございますから、記念物課長を大蔵省の管財局に行かせまして先生のお話を伝え、そういうことのないようにということを要望いたしております。したがいましてそれが実現するときには——かりに実現するとしますれば、私のほうへ書類として相議が回ってくると思います。そのときは私のほうは絶対にそれに賛成いたさないという気持ちでおりますので、先生の御心配はないかと存じます。
  59. 久野忠治

    久野委員長 三木喜夫君。
  60. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 文化財のほうから宮地さんが見えておりますし、外務省のほうからも見えておりますので、この際文化財のほうは、この返還をめぐって贈与にするかどうかというような問題は別問題として考えていかなければならぬと思いますが、いま韓国文化財を保管しておる立場から私はお聞きしたいと思います。  まず一説によりますと、韓国韓国文化財返還問題として取り上げておるのは、約五百点ほどある、このように言われておりますが、実際韓国が対象とするであろうところのものは一体何ぼですか。点数で言ってください。
  61. 宮地茂

    宮地政府委員 向こうから出ております返還請求リストの内容につきましては、交渉中でもございますので差し控えさせていただきたいと思いますが、せっかくの御質問でもございますので、私のほうの国立博物館が所管いたしておりますもので、返還要求のリストに載っておりますものは、千点余りでございます。個人がお持ちになっておられたり、いろいろ他の省庁がお持ちになっておられるものは私詳細を存じておりません。
  62. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 韓国請求は大体五百点ということを聞いておるわけですが、そのうちで、個人の持つもの、あるいはまた国の責任でないところの場所、団体というふうなものの持っておるものを引きますと、かなり日本の側に韓国の言っておる分よりも残ってくるわけですね。そこでお聞きしたいのですが、この五百点という数はこれは間違いないですか。
  63. 宮地茂

    宮地政府委員 五百点という数字を私存じません。
  64. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 どこから出たのかわかりませんが、「韓国政府日本側に提示した返還要求のリストによると、総数五百点の多きにのぼり、古いものは慶尚南道の夫婦塚古墳からの出土品で、」云々ということですが、この五百点というものをいま文化財保護委員会局長は知らない、こういうことなんですか。
  65. 宮地茂

    宮地政府委員 先生のおっしゃいます五百点という数字は、私はどこから出た数字か存じませんとういことを申し上げたのであります。
  66. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私の言ったことがわからなければ、毎日新聞の三月二十一日に書いてあるこの五百点はどこから出たのですか。あなたが知らぬようなことを毎日新聞が知っておるというのはおかしいじゃないですか。しかしあなたが知らなければそれはそれでよろしい。  それから次に外務省にお聞きしたいのですが、いま重要な発言がありました。外交上一番問題になるのは、日本韓国文化財を強奪してきたということがいつもうやむやのままで、これが返還されたりあるいは贈与されたりしていくならば、このことはおかしいと思いますが、あなたは強奪でないということになればこれを贈与していこう、こういう基本線を持っておる、このように言われたですね。私も強奪でないというように韓国側との交渉においてはっきりさしてもらいたい。その点はいまはっきりしていないのですか。
  67. 針谷正之

    針谷説明員 韓国側日本へきたものは不当不法に持ってこられたものだという考え方はまだ若干持っておるようでございます。その点がそうでないのだというふうに話し合いがつけばけっこうだと思って交渉しておる次第でございます。
  68. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 けっこうだと思うと言っても、その返還品目についても両国の話し合いはかなり進んでおると思う。前提になるものがはっきりしないのにかなり進んでいるということを新聞が書いておるのは、これはうそですか。
  69. 針谷正之

    針谷説明員 進んでいるというのは、どういう標準をもって進んでいると言っているかはっきりわかりませんが、こちらからどういうふうにして向こう贈与するということについて、具体的にきまっているかという問題については、全然まだきまっておりません。
  70. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 「第六次日韓全面会談再開に伴う文化財委員会が二十一日午前十時から約五十分間外務省で開かれた。」として、この会合に出た日本側の代表、韓国側の代表があげてある。その中で「文化財関係日韓交渉は「日韓文化協力一環としてある程度の品目を贈与の形で韓国側返還する」との方針が政府部内ですでに固まっており、その返還品目についても両国の話し合いはかなり進んでいる。」こう書いてある。これは単なる新聞の憶測ですか。
  71. 針谷正之

    針谷説明員 品目について返還の話はまだ全然ついておりません。
  72. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうすると、この韓国との交渉の中で強奪でないということを明らかにするのはどの機会ですか。これは今後やりますか。
  73. 針谷正之

    針谷説明員 これはいつになるかは、いま予測はつかない次第でございます。
  74. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それは今後やりますね。あなたがそういうことを前提として言われましたから。
  75. 針谷正之

    針谷説明員 今後そういうふうに向こうと話し合いをつけていくようにしたいと思っております。
  76. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 話し合いをつけてから贈与の形でこの品目をきめる、こういうように理解していいんですね。
  77. 針谷正之

    針谷説明員 向こうがあくまでも不当不法に持ってきたものを返せということを主張する以上はこの話は進みませんから、向こうがこちらの言うように文化交流一環として贈与として受け取るということを納得した場合にはこの話が成立することになると思います。
  78. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 先ほど聞きましたからわかっているのですよ。強奪ということが取り消されない以上これは応じられないとおっしゃった。そのことは、間違いなく強奪であるということは取り消さす、そういう確信があるのですね。
  79. 針谷正之

    針谷説明員 これは相手と交渉する問題でございますから、はたしてそれに向こうが乗ってくるかどうかわかりませんが、少なくともこの日韓交渉を成立させるためには、そういうことになることと確信して私たち交渉に当たっております。
  80. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それでは宮地さんにお聞きしたいのですが、あなたは、日本にある韓国文化財というものは、そういう強奪をしたり、あるいは不当にこちらに運んできたものはない、正式のルートによってわが国に持ってこられたものである、こういうことでございますが、その不当に日本に持ってこられたというものは、調査されたとおっしゃいましたが、それは絶対ないですね。
  81. 宮地茂

    宮地政府委員 不正不当な手段でわがほうへ持ってきたものはございません。
  82. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そういたしますと、いま二つの、宮地さんが言われたことと、それから外務省のほうから言われたことから考えますと、この際韓国に対してのこの文化財等の問題は、先かた落合委員のほうから話がありましたように、これは道徳的には問題になってくると思う。この際、韓国との交渉において韓国のやり方がかえって不当だということを日本としてなぜ言えないか。これをはっきり言う必要がいまあるのじゃないかと思います。青少年問題がやかましく言われたり、あるいは日本の道義の問題がやかましく言われたり、あるいは戦争とともにこういう強奪だとかいろいろなことをやっておるというような印象が非常に強いのですから、この際これを明らかにして、その上で贈与の形でやってもらうことを私は希望したい。以上です。
  83. 久野忠治

  84. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 去る三月の十九日に、御承知のように本会議におきまして大平外務大臣から目下政府が鋭意進めております日韓会談についての中間報告がございました。それによりますと、漁業問題の話し合いがきまれば、早急に全面的妥結をはかろうとしているように伺ったのであります。しかしながら御承知のように現在朝鮮は南北に三十八度線をもって分かれておるのでありまして、南のほうの韓国とだけ一方的に会談を進めて、国交全般にわたって取りきめるということは、将来一衣帯水長く日本友好関係を結んでいかなければならない朝鮮全民族との円満な友好関係を結ぶ上に非常に大きな暗影を投げるのではないか、こういう点を危惧いたす次第であります。またおそらく朝鮮の方々は平和的に統一されることを希望していると思うのでありますが、その半分と日本が特殊な関係を固めるということが、この統一を乱すことになりはしないか、水をさすような作用を起こさせるのではないかということも憂慮をいたすわけであります。  そこで私は本日、この日韓会談の進行が及ぼす各種の影響のうち、特に文教委員会でありますから、六十万余という在日朝鮮人の方々のうちで、特に幼稚園、小中学校、高等学校、大学の、こういう時期に遭遇している朝鮮人の子弟、青少年の方々の教育の問題について、この際質問を申し上げまして、その実態を明らかにしていただき、また将来長きにわたる日朝両民族の恒久的な親善友好関係の樹立の上に特段の御配慮をわずらわしたいと思うわけであります。そういう立場からこれから御質問申し上げるわけですが、御承知のように、日本朝鮮関係はそれこそ悠久の太古から交流があったと存ぜられますし、特に明治、大正、昭和にわたっては、御承知のような特殊な関係にあり、さらにまた太平洋戦争中におきます強制徴用等で、日本に来られた在日朝鮮人の方も非常に多いわけであります。したがいまして、こういう方々に対しましては、いわゆる日本における一般外国人と異なる、特別な配慮をすることが当然と考えるのでありますが、このことは特に教育の面においても当然十分な配慮がなされるべきだと思うのであります。この点につきまして文部大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
  85. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 朝鮮の人たちの教育の問題でございますが、これにつきましては現在までも特別な配慮をいたしてまいっておると思うのであります。いわゆる国交正常化ができ上がりました後も、現在の朝鮮人に対する教育上の取り扱いと大きな差異はないだろうと私は思うのであります。ただ問題は、もう今後長く永久に日本に居住する、こういうふうな立場に立たれました方々の子弟に対しまして、何か特になすべき必要があるかないか、こういうふうな問題はあろうかと思うのでありますが、ごく大まかに申し上げまして、朝鮮人の子弟に対する教育上の態度としましては、私は大差はないもの、かように考えております。
  86. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまのお答えによりますと、従来も特別の配慮を払ってきた、その態度は現在進めておる韓国との国交正常化の後も変わらない、さらに永久に日本に居住されるような人については、さらに特別な配慮が必要なら考える、こういうお答えだったのであります。そこで、この際いまお話の従来の配慮というような点も明らかにしていただきたいと思うわけですが、戦後において特に具体的に在日朝鮮人の子弟の教育がどのように取り扱われてきたか。その形態にもいろいろあったように記憶いたしておりますが、そのおもな形態と、その後のいろいろまた変遷がここ数年間の間にあったと思いますので、経過と、そして現状はどのようになっておるか、この点ひとつ明らかにしていただきたい。
  87. 杉江清

    ○杉江政府委員 講和条約によりまして、朝鮮人が日本の国籍を離れました前後において、その取り扱いが違っておるわけでございます。それ以前におきましては、公立の学校に入るということを原則としながら、いろいろな便宜がはかられておりましたが、その後においては身分がはっきりいたしましたから、原則としては、従来のように公立の学校を普通に希望する者については、日本人と大差ない教育を行なう、こういう取り扱いをいたしてまいっております。ただ取り扱い上特に変わっておりますのは、例の朝鮮人学校、朝鮮人のみを収容する学校に対する扱いであります。これについては朝鮮人のみを扱う公立高等学校の存在は原則としてはない。ただ公立高等学校において行なう場合に、日本の教育法令に従って行なう学校またはその分校については、これはその特殊の事情に即してその存在を認める。しかし従来その教育内容において必ずしも日本の教育法令に即して教育が行なわれていないものもある、そういうものは認めない。そしてそういうものは正規の学校でなくして別の各種学校等に切りかえる。また各種学校においてむしろ扱わるべきものだ、こういうふうな指導方針がとられた時期もありました。またその後において、この各種学校において行なわれる教育の内容も、永住者に対して母国語による民族教育を行なう態度は必ずしも好ましいものではない、こういう観点から、現在においてはそういった朝鮮人のみを収容する、そしてそこにおいて母国語を用いていわゆる民族教育を行なう、そういう各種学校の新たな設置等についてはこれは必ずしも望ましいものではない、こういうような考え方で現在扱っております。大きな筋道のみを申し上げたわけであります。
  88. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私の聞き違いではないかと思うのですが、朝鮮人のみの公立高等学校と聞きましたが、高等学校は原則としてはない……。
  89. 杉江清

    ○杉江政府委員 高等学校と申し上げたのは間違いであります。公立学校一般であります。
  90. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それから最後の方針ですが、たいへん気になるのですが、母国語をもって教育する朝鮮人の方だけの学校の存在は望ましくないということをおっしゃっておるのですが、その民族が民族の母国語で教育をするというのは原則であって、ただ日本に住んでおるから、日本国民たちの中で生活する場合に、日本の生活に事欠いては困るから、日本語の教育も生活必需の教育としておそらくなされると思うのです。そういうことはそれぞれの学校にまかすべきであって、母国語教育をするのはよろしくないと、依然として植民地支配のときのような教育思想が流れているやに、いまのおことばでは聞こえるのですが、そうですがどうですか、真意を伺いたい。
  91. 杉江清

    ○杉江政府委員 朝鮮人で日本におられる方の多くは、これは帰国の意思はなく、大体永住を希望しておられる方であります。そういう方々が母国語による、しかも母国に帰ったときに必要と思われるような教育内容をやられる、こういうことは諸外国にもその例はございません。しかも現在日韓両国間において正規の外交関係は樹立しておりません。正規の外交関係を樹立している国の間においても、そういうような取り扱いは世界各国になされておらないのであります。そういうことから、そういう各種学校の新たな設置は望ましくない、こういうふうに考えてそのような指導をいたしております。
  92. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それは文部省の御方針であるかどうか、文部大臣にも伺いたいと思うのですが、これはちょっと重大なことだと思うのです。たとえばアメリカン・スクールでは英語の教育をしていないかどうか。また南米等に行っている在留日本人が、母国語や母国の文化というものを子孫に伝えたいということで、日本人学校をつくって、内地から先生を招聘して、私の友人等もそういうことで行っておりますけれども、そういう国でそういうことを圧迫をし、望ましくないこととして扱っているかどうか。あなたは例がないとおっしゃいましたけれども、これはずいぶんおかしいじゃないかと思うのですが、この点についていまの御答弁者並びに大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  93. 杉江清

    ○杉江政府委員 アメリカン・スクールその他諸外国のいわゆる各種学校と事情が違う点があると思います。一つは、いままで朝鮮韓国との間に国交関係を樹立していないという大きな相違もあります上に、朝鮮人の多くの方は永住を希望しておられる。片方はそうでなくして、近いうちに母国へ帰る一時滞留者が母国へ帰ったときに必要な教育が行なわれる、こういうふうに両者相当の相違があると思います。その差異に着目いたしまして、外交関係も樹立されていない現在、新たなるこの種の各種学校を設置することは望ましくない、こういうふうに考え、そのような取り扱いをしているわけでございます。
  94. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日行なわれておりますいわゆる朝鮮人学校、その実情から考えまして、私どもはこれが認可についてはよほど考えなければならない点があるように思うのであります。文部省といたしましては、認可の方針としていまのような各種学校というものがどんどんできるということは決して望ましいことではない、このように考えまして、方針をそのように定めておるわけでございます。
  95. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これは外国の方の民族教育というものに対しての考え方について、純粋な立場からでなく、現在国交が回復しているとかいないとか、あるいはその国の持っている政治形態なり社会形態、あるいは現在進めている日韓会談の進行上これがじゃまになるとか、いろいろそういう時の政治的な一つの配慮から出たことではないかという感じがいたすのであります。教育はそういうことに左右されるべきではなくして、本来、各民族がそれぞれ民族の自由な文化の発展、教育の振興をはかることについて、できるだけの保障をそれぞれし合うということであるのが常道ではないかと思います。この点は議論になりますか、私はいまの大臣並びに担当者の御答弁については納得がいかないのであります。おそらくそういう政治的な配慮から出ているということであれば、納得はしないなりに一つのそういう考え方に立っているという事実についてはこれを確認することができますけれども、この点についてはやはり本来の姿に返すべきであり、普遍的な人道の立場に立ってこの問題を考えないと、日朝両民族の百年、千年にわたる長い将来に非常な暗影を投げるのではないかという点を強く御指摘を申し上げたいと思います。この点は将来また議論する機会があろうと思いますから一応譲りまして、次に進めさせていただきます。  いま在日朝鮮人は大部分日本永住を希望されているというようにきめつけられておりますけれども、これはどういう根拠でそうおっしゃっているのか私にはわかりませんが、私の貧しい調査によりますと、大体六十万程度が現在日本におられる。そうしてその御出身地を見ますと、日本には南側のほうが近いですから、九〇%近くが今日韓国の領域になっておる南朝鮮の御出身と聞いております。したがって北のほうから来て日本におられる方はほんの一〇%をこえない。数は少ない。しかるに外国人としての登録の面から見ますと、その出身地はともかくとして、今日いわゆる韓国籍を名乗る者はそのうちのわずか二五%程度ではないかと聞いております。しかもこれは心から韓国籍を名のりたいという者ばかりでなくて、いま申し上げたとおり、南の出身でありますから、御両親なりあるいは親戚の者が南朝鮮、つまり現在の韓国におる。これと行ったり来たりする場合にやはり韓国籍を名のっておかないと非常に制約される、ほとんど行かれない。その他いろいろ職業上、特に商売上等いろいろの面で韓国籍を名のっているほうが差別待遇を受ける心配が比較的少ない。そういういろいろ副次的な理由のためにやむを得ず韓国籍を名のっておる者も相当あると聞いております。それらも含めてもなおかつ二五%程度、その他の方はどういう外人登録をしているかというと、ただ朝鮮という登録をされておる。この朝鮮ということは、暗に北の民主主義人民共和国のほうの国籍になりたいのだが、これは国交回復していないという理由からです。とにかく、ここは外務委員会じゃありませんから、外務省の方が来ていれば伺いたいのですが、朝鮮という登録になっているのがこの残りの大部分であります。こういうようなことを考えますと、非常に複雑な様相を呈していると思います。このことは同時に日本における在日朝鮮人の方々の団体なり、組織というものにも反映いたしております。居留民団というのですか、それから朝鮮総連合、こういう二つに大別されると思いますが、やはり総連合の組織のほうが、いまの実態を強く反映して多いように伺っております。したがってこの問題は非常にむずかしい問題でありますけれども、いまおっしゃった学校のうち、日本の学校に希望して入って、日本人同様の教育を受けている子弟もありますが、この居留民団系の学校、それから総連系の学校というふうに朝鮮人の方々の学校を分けることができるのではないかと思います。その種類、分布、人員、そういったものについてどのようになっているかお伺いしたいと思います。
  96. 杉江清

    ○杉江政府委員 まず朝鮮人のみを収容している学校、これには公立学校の分校と、私立学校法に基づくいわゆる私立学校とそれから各種学校、なおそのほかに無許可の学校もございます。まず小学校について見ますと、学校数は二十一校、これは公立の分校を含みます。在学者数は三千七百五十四名、それから中学校は三校、これも公立の分校を含みます。在学者数は七百七十四人、高等学校は一校で千九百十七人各種学校は三十三校で一万九千七十五人、こういうふうに一応私ども承知いたしておりますけれども、これは各府県に照合した結果得た数字でございますけれども、多分に推定が含まれておると思います。その意味でおおよその数だと御承知いただきたいと思います。  それからなお、いまお話しの北鮮系と南鮮系に分けてどうなるかということでございますが、これも多分に推定が含まれておりまして、正確な数字とは申し上げにくいのでございますけれども、一応私どもの把握している数字を申し上げますと、南鮮系は六校、在学者数は四千五十五人、北鮮系は五十校、在学者数は二万一千二百五十四人、不明のものが二校、二百十一人、計五十八校、二万五千五百二十人、こういう数字を持っております。この中には無認可の各種学校も一応含めて考えております。以上であります。
  97. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 多分に推定が含まれておるということを再三お断わりになっておるのですが、私がほんの学校関係の方から聞いた数字と合わせましても、非常に狂いがあるように思います。そしていま申し上げたとおり、六十万からの中の子弟ですから、その数は相当の数にのぼるわけですが、いまあげた数はまことに微々たる数ではないかと思います。これは大部分日本人の学校に行っているんだ、こういうあれだと思いますけれども、この数字については文部省としては積極的によく調査する意図がないのかどうか、この点をお伺いします。
  98. 杉江清

    ○杉江政府委員 私どもの努力いたした結果得た数字でございますが、おそらく先生のお持ちになっている数字は、いわゆる公立学校に入っている者全部を含めた数字ではないでしょうか。公立学校全部を含めた数字を念のために申し上げますと、小学校においては六万二千七百人、中学校は三万二千四百八十六人、高等学校は一万九百五十一人、これが全部の数字でございます。先ほど申し上げましたのは、朝鮮人のみを収容している学校だけを申し上げたわけでございます。
  99. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 さっき大体南鮮系と思われるもの六校、それからいわゆる北と思われるものが五十校ですか、という一応の数字を押えられておりますが、これについて扱い上具体的に差別されているようなことはありませんか。
  100. 杉江清

    ○杉江政府委員 御質問は日本人と朝鮮人との差別、こういう御質問ですか。
  101. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いいえ、そうじゃありません。南と北……。
  102. 杉江清

    ○杉江政府委員 南鮮と北鮮との差別でありますが、これは差別はないと言ってよろしいと思います。
  103. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 一応ないという方針ですね。
  104. 杉江清

    ○杉江政府委員 はあ。
  105. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 現物については、なおもうちょっと正確なデータを整えられることを要望します。  ただ、これは大臣にお伺いしたいのですが、現在韓国と国交正常化の話し合いを進めておるというのですが、いま申し上げたとおり、日本に在住されておる朝鮮人の方々の組織なりその国籍なりは、先ほど申し上げたような状況である。そうすると、この会談の結果の中に、その内容の中に、在日朝鮮人子弟の教育の問題について何らかの協定が含まれているのかどうか、あるいは一方的な統制というようなことが行なわれて混乱を引き起こすような危険を招くのではないか、こういう点はいま会談が進行中であって、微妙な点もあろうかと思いますが、できるだけ差しつかえのない範囲におきまして、憂慮にたえない面がございますので、率直に御答弁をお願いしたいと思います。
  106. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はこの会談に直接関与しておりませんので、現段階においてどういうことになっておるかつまびらかにしておりません。従来この問題についての話し合いは、南鮮、北鮮の問題を検討するというのではなくて、いわゆる永久居住権と申しますか、永久居住権を得た者の子弟の教育、これは主として義務教育の問題でありますが、これをどうするかという問題について話し合いが行なわれておるように承知いたしておるわけでございます。その意味におきまして、先ほど私は永久居住権を持った子弟に対しては、何かあるいは考えなければならぬことがあるかもしれないということを申し上げたわけであります。これらを超越いたしまして、現在日本に在住いたしております朝鮮人の子弟に対する教育一般について、どういうふうな考え方でいくかということについては、先ほどお答え申しましたように、いまの取り扱いを別に変えようというふうな考え方はいたしておりません。
  107. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 直接交渉大臣はタッチしてないということでありますけれども、これはやはり、もし文部大臣があまり深くタッチしない間に、相当重要な教育上の問題についての取りきめでも含まれますと、これはまたゆゆしい事態を起こす。すでに御承知のように、何回か流血の惨事を見るような事態も過去にあったわけであります。この点については、十分ひとつ慎重な御検討を願いたいということを要望いたします。  次に、現在の取り扱いをあまり変えないというお話ですが、私は現在十分な取り扱いがなされているならばそれでよろしいと思います。それを悪く変えないという意味でおっしゃっているのかもわかりませんが、まだまだ大きく改善をすべき事項がたくさんあるんじゃないかと思います。御承知のように、先ほどから再三申し上げてありますように、日本朝鮮との歴史的事情、今日の日韓会談先ほど来申し上げておるように、朝鮮の民族全体としてはきわめて複雑な事情の中で進められておるわけであります。しかし、これはおとなの世界のことでありまして、純真な、いま育ち盛りの在日朝鮮人の子弟の教育が、そういう政治的ないろいろな関係の犠牲となって、非常に虐待をされるとか、差別をされるとか、あるいは教育の機会を失するとか、こういうことであっては人道の立場からもわれわれとして許せないことでありましょうし、また将来への末長い日朝両民族の友好関係樹立、平和関係の確立の上にも大きな一つの禍根を残することになろうと思いますので、そういう立場から御質問を申し上げ、逐次御要望を申し上げたいと思うわけであります。  根本は、御承知のように、朝鮮の子供も日本の子供も、日本に住んでいる限り、日本の社会の中でいま生きております。同じように物を食べ、同じように遊び、そして学校に通って、暮らす、そこにできるだけ差別のないような姿が、われわれ人間一般として当然望ましいことではないか。特に文教の府としては、そういう点について十分な配慮をされ、日本朝鮮の将来の友好親善の基礎がそういうところから築かれますし、やはり民族としての相互の尊敬と感謝、あるいは信頼と友情というものが日常つちかわれるようにすることが非常に大事ではないかと思います。そういう観点から、まず第一に、在日朝鮮人の方々が、子弟の教育について、民族としての自覚——率直に言って、長い間植民地的な生活あるいは日本の軍国主義の犠牲というような非常に暗い過去をこの際投げ捨てて、そうして明るい伸び伸びとした民族としての自覚を持った子弟を教育しようとする、その気持ちは当然十分尊重さるべきだと思うのであります。そういう観点から、日本人の学校に入れるのではなくて、相当な経済的犠牲も顧みずそれぞれ独自の学校を建てて、そこで子弟の教育をしようと努力している涙ぐましい姿を私どもは見るわけでありますけれども、それに対して先ほどなるべくそういうのは望ましくないというお話があった。その線から出ていると思いますが、各種学校としての認可、こういうものもかなり申請が出ていると思うのです。ところがこれに対して先ほど率直にお話がありましたが、望ましくないと言うのですから、おそらく極力この認可をしないという方針ではないかと思います。しかし現に認可されている学校もあるわけです。いま前段申し上げたような精神からいきますと、無鉄砲な認可というような乱暴なことは申しませんけれども、やはり各種学校の認可については、認可の責任はどこにあるか、それから認可についての要件というものはちゃんと法律、規則できまっておると思う。そういうものに適合する条件を整えて認可を申請した場合に、これをいま好ましくないというようなことから押えるということがあれば、これはゆゆしいことだと思う。そういう点についてどのようなお考えを持っているか、再度ここでただしたいと思う。
  108. 杉江清

    ○杉江政府委員 各種学校の認可権は知事が持っております。各種学校につきましては、学校教育法の上におきましては、ごく簡単な規定のみにとどまっておりますことは御存じだと思います。学校教育に準ずる教育を行なうということになっております。その他の条件は規定されておりません。ただ認可の際の一つの基準といたしまして、省令である程度の事項を定めております。しかし法のたてまえがそういうようになっておりますので、もちろんその認可については広い見地から裁断の余地があると私どもは判断しております。先ほど申し上げましたように、まだ国交も回復されていない国民に対して、しかも多くが永住するという意思を持たれると考えられる方々に対して、母国語の教育を、いわゆる民族教育と称しておるようでありますが、そういうような教育を行なうことは各種学校として望ましくない、こういうふうに考えておる次第であります。
  109. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 文相の御所見はいかがですか。
  110. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私ざっくばらんに申し上げます。先ほど長谷川さんの仰せになりました御趣旨につきましては、私ども別に異論はございません。大筋としてそのとおりであろうというふうに考えます。ただ現在日本にあるいわゆる朝鮮人学校の実情というものは一体どうあろうかということを実は思うのであります。実は私どもはこれに対しまして、精密な調査すらできないような状態にあるわけであります。日本の学校制度のもとにつくられておる各種学校、監督権はそこの知事にあるわけでありますが、それが十分にそれらの学校の内情、実情というものを知り得ない状態であります。どちらがいいとか悪いということばは避けますが、私は、日本で学校を経営して日本で子弟を教育する以上は、それは朝鮮民族の理想、朝鮮民族の考え方というものを否定するわけではございませんが、しかし日本において、日本の制度によってできておる学校であります以上、やはり日本の社会というものと調和をする、お互いに協力するという関係がなければならぬ、何か治外法権でもあるかのごとき状態にぶつかることも必ずしも絶無じゃないと思います。そういうことでは困ると思う。どこまでもお互いにうち開いて、そうしてお互いに協力をして、子弟の教育をしていくという姿が望ましいと私たちは思うのであります。現在までの実情から申しまして、その点において私ども実は非常に不安を感じておる。そういうことでございますから、今日の段階における私どもの方針としまして、これは先ほどお話がありましたが、何も正常化の問題をやるとかやらぬとかいうこととは無関係に、学校の実情にかんがみまして、みだりにこれを許すわけにいかないのではないかというようなことを思わざるを得ないのであります。これが私は実際の状況であるように聞いております。そういうことがありますので、このような方針をとっておるというふうに実は聞いておるわけであります。願わくは、そういうお互いに対立するとか抗争するとか、あるいは実力行使をやるとかいうことでなしに、日本における同じような市民として行動してもらいたいと実は念願しておるわけであります。現状まさにその点におきましては私ども不本意な点が多々あるように思います。そういう点をひとつ御了承願いたいと思います。
  111. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 なぜ好ましくないかということについて、朝鮮人の方のやっておる学校についてお考えになったことを率直に出していただいたと思う。あるいはそういうところも、私も悉皆調べたわけではありませんから、ないとは言えませんけれども、また過去において、歴史的事情から戦争直後新しく解放されたという時期に東京におきましてかなり激しい事実がありまして、私当時教員組合の委員長をしておりまして、その間に入って円満な解決をするためにいろいろ努力した経験も持っております。そういう中で現に、決して治外法権だとか一切学校の中に入れないというのではなくて、この文教委員会で見せてくれと言ったら、喜んで、ひとつ見に来てくれといったような学校もたくさんあるのではないかと思う。この点で不必要な誤解や猜疑心の中で不幸に認可が得られない、あるいは学校法人としての法人格が認められない、こういうために非常に生活的にも窮迫しておるような御家庭も多いわけでありますけれども、そういう子供たちが通学に学割りも得られない。その他万般の非常な手かぜ足かぜをはめられたような状態の中で教育をされるということになりますと、そのこと自体が非常に危険な、爆弾を子供たちの純真な胸の中に据えつけるようなことになるのではないか、こういう心配をするわけであります。したがいまして、こういう点について相互に誤解があれば、あるいは非常に思い違いとか、極端なそれぞれの反感をそそるようなことがあれば、あるいは日本の国の法律をじゅうりんするようなことがもしあるということがあれば、これは問題でありますけれども、そうではなくて、日本の各種学校の設置の基準というか、再考の余地のある大まかなきめだとはいえ、規則もあるわけであります。そういうものにのっとって申請があった場合には、できるだけ親切にこれを取り扱って、いま言ったように原則的に望ましくないという御態度についてはぜひ御再考を願いたいと思うわけであります。  またこの際続けて幾つかの点を申し上げますと、在日朝鮮人の方々もそれぞれ税金等は日本人並みに納めておるわけです。そういう中で、子供について日本の子供に得られておるいろいろな補助あるいは援助というものについる一切除外されるということは、先ほど申し上げたとおり、同じ地域で同じように遊んでおる子供たち同士の間といたしましても、これは決して好ましいことではない。できるだけそういう点では平等に親切に扱う、特に日本の過去の歴史から見る反省からいたしますならば、この際ある意味ではざんげの気持ちのあらわれというようなものもあってしかるべきでありますから、こういう点について特段の配慮がなさるべきだと思うのであります。特に、いま申し上げた、教育についていろいろ援助をするという点についてお考えがないかどうか、この点をお伺いいた  します。
  112. 杉江清

    ○杉江政府委員 日本におられる朝鮮の方々の教育を奪うようなことのないように、あたたかい手を差し伸べるという御趣旨はごもっともでありますが、そういう意味において、朝鮮人の方々にはほとんど日本人と同じように、日本人の入る学校に入って、同じような教育を受けてもらう道を開いておる。そして多くの方々はそういう教育を喜んで受けておられる。そして、そこにおいては法律義務はないと考えられる日本人と同じような諸般の処遇をしておる。たとえば給食費にいたしましても、それから教科書の無償給与にいたしましても、これは事実上同様に扱っておるのであります。その他の点におきましても、ほとんど同じような扱いを行なっておる。そういう点から言えば、私は朝鮮人の方々に対する扱いとしては、相当思いやりのある扱いを、事実上行なっておるということが言えると思うのであります。ただ各種学校の問題につきましては、そういうふうな道をあけておるが、そういうふうな扱いを一方でいたしておるのだから、それと別に日本に永住される方々についての学校をつくって、いわゆる民族教育を行なうということはいかがなものか。諸外国においても、一般に正規の学校以外に、その国の制度によって、一つの学校組織によって教育を行なっておる例は私ども承知いたしておりません。そういうふうな諸外国の例から考えましても、この点、いまの日本の扱いは、あまりにもおおらか過ぎるようだというような見方もできるかと思うのであります。ことに、いまのような永住を希望される朝鮮人に、母国語による教育を行なうこと、これを日本人の学校制度の中に当てはめようとすることがそもそも無理ではないか。こういうふうに考えて、その点については消極的な考えを持って扱いをしておるわけでございます。繰り返しますけれども、一般の公立学校においては、非常に寛大と申しますか、ほとんど日本人と同じような扱いを事実上しているということを申し上げたいと存じます。
  113. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 しきりに永住永住ということが先ほどから出ているのですが、これは日本に帰化するという意思をさしているのか、そうではなくて、あくまで朝鮮人としての国籍、明確に朝鮮民族としての自分の祖国を持ちたい、しかし生活の基盤も日本にあることだから、そう一年ですぐ帰国するということにはいかないので、かなりの長い期間日本で暮らしたいという希望を持っているというものをさすのか、そこのところはどっちなのですか。
  114. 杉江清

    ○杉江政府委員 後者でございます。生活実態から見まして、長く日本におられると考えられる、そのような実態をさして申し上げておるわけであります。
  115. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 あくまで朝鮮人ですね。それではもう一つ、いまと関連しまして、進学の問題であります。これはもちろんいまお話のように、日本人の普通の公立学校に希望して入れてもらっている、そういう子弟については、当然進学の問題もある程度解決されていると思いますが、やはりいま申し上げたとおり、私と文部当局の意見がまだ基本的に一致しておりませんから、平行線をたどるようなことになりますけれども、やはり人道問題としまして、とにかく十二年なら十二年の教育課程を、特殊学校であっても、終えているとすれば、大学へ進むというような場合に、もちろん入学試験等は受けなければなりませんが、力があれば何らか進学の道を講じてもいいのではないか、こう思われますが、この点について公私立を問わず朝鮮人の高校からの生徒は入れるなというような御方針をとっているのかどうか、この点をひとつお尋ねいたします。
  116. 杉江清

    ○杉江政府委員 朝鮮人のみを収容する学校でもこれが正規の学校でありますならば、日本人のみの学校と同様な扱いがなされることは当然でございます。問題はいわゆる各種学校卒業者の扱いだと思いますけれども、その場合はこれはやはり日本人と同様にその資格はないのであります。ただこれが、大学入学に際して、外国において相当日本の国における教育と同じような教育を受けてきている者については、学校長の認定によって特別な考慮をする、そういう扱いをする道は法規上開かれております。しかしこれは外国においてその業を終えてきた者をいうのであって、いまのように日本に居住する外国人が日本の大学に入るときに、正規の学校でなくて、いわゆる各種学校という、そういう形の教育を受けてこられた方に入学資格を付与するというのと趣きを異にするわけであります。
  117. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 お考えが大体一貫しているように思います。要するに朝鮮人独自の学校は望ましくないというふうにごらんになっている。したがってそこの高等学校からくる者は大学の場合は締め出したほうがそちらへ行く数が少なくなる、こういうような政策的なことがその中に含まれているような気がするのです。私は無鉄砲なことを申し上げているのではなくて、何らかの形で高等学校から大学——大学といっても朝鮮人のほうが特殊の大学を持っているようでありますけれども、これは数は少ないわけで、日本の大学教育を受けたいという希望を遂げさせる場合に、それがストレートでいかないとすれば、何か資格をとらしてやるとか、そういう道はないのですか。
  118. 杉江清

    ○杉江政府委員 正規の高等学校であれば、朝鮮人のみの学校といえども入学資格はあるのであります。その点何ら差別をいたしておるわけでありません。各種学校であれば、日本人の各種学校卒業者も同様に資格がない。その点は何ら区別をいたしておるわけでありません。
  119. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その正規の高等学校というのは幾つあるのですか。
  120. 杉江清

    ○杉江政府委員 大阪に朝鮮人のみの正規の高等学校がございます。
  121. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 系統はどうですか。
  122. 杉江清

    ○杉江政府委員 私は実はよく承知いたしておりません。
  123. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 はっきり資格条件を整えても、系統によって認可をしなかったり、そういうことはないのですか。
  124. 杉江清

    ○杉江政府委員 大阪には四つばかり正規の高等学校がございますが、それについて両者の区別はいたしておりません。
  125. 木田宏

    ○木田説明員 ちょっとただいまの点について補足をして御説明さしていただきます。実はいま管理局長から答弁がございましたように、朝鮮人だけの正規の学校が大阪に四校ございますけれども、これはもともと日本人でありましたときに日本人として設立された学校でございます。朝鮮人が外国人としての資格に変わりまして以後、外国人だけのために日本に小中高等学校の正規の学校を設置するということは行なわずにきております。これは日本の学校制度のあり方という点から考えまして、やはり日本の学校として位置づけるべきではないかという基本的な態度があったからと私は承知しておるわけでございます。
  126. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 関連。正規の学校として認められているものと、認められていないものとの備えておる要件にはどういう違いがあるのでしょうか。
  127. 杉江清

    ○杉江政府委員 ただいま総務課長も言いましたように、朝鮮人のみの正規の学校というものは、これは経過的にそういうものが発生し、現在認められておるということでございまして、今後そういうものを認可するという趣旨ではございません。現在の朝鮮人のみを収容している正規の学校、それについては、私はかなり多くの問題があるように承知いたしております。正規の学校の新設に対する認可につきましては、これは学校教育法上要求される各種の規制がございます。  まず第一に、学校教育法その他の法令に規定しております条件を、その内容面、それから施設面について十分具備しておらなければならないわけであります。その点において、第一条の学校に対する規制はかなり厳重になっております。  各種学校につきましては、先ほども申し上げましたように、簡単に学校教育に類するものということでその内容を規定いたしておるにとどまっておるのであります。ただ、教員とか施設等につきまして、別に省令をもってその認可の基準を一応定めておりますが、すべてにわたって、第一条の学校と比べて、その規制は非常に薄くなっております。
  128. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 要するに、一貫して朝鮮人、特に私は総連系統の方が非常にたくさん学校経営を方々でやっていらっしゃると思います。そしてさっきの御答弁にありましたように、まだ認可をされていない学校、そういうものもあるというふうなお話がありましたが——事実あって、それはそれぞれ認可を熱望しながら、それぞれ手続をとっているんだけれども現在認可されていない、こういう実情にあるんじゃないかと思うのです。根本的にそういう学校は望ましくないんだというお考えに立っておりますから、これは一つの基本的な政策の問題になろうかと思いますが、私はこの機会に、やはりその考えはぜひ改めていただきたいと思うわけであります。もちろん日本の安寧、秩序を乱すような教育をするとか、そういうようなことがあれば、これは問題でありますけれども、外国人としてそれぞれの自国を持っている国民が、日本にいるからといって、それに応じた教育をするということについて頭からこれを否定するような態度、そしてそれが成人、あるいは現在の社会を構成しているおとなの世界ならともかく、いま育ちつつある純心な子供たちの中に非常に大きな暗影を落としているこの事態は、私はどうしても見るにしのびないものがあるのであります。もし具体的に反省を求めるような点があれば、それはそれとして十分御指導なさってよろしいと思いますけれども、どうかひとつ民族教育というものについても十分尊重をする考え方、そうして当然これは日本の気候、風土、人情、国情に合わすような教育も日本に住む以上はなさるでありましょうけれども、そういうことは当然そちらにおまかせすればいいことであって、むしろそういう考えがあることによって、将来に禍根を残すようなお考えについては、大きく改めていただきたいとともに、冒頭にもるる申し上げたとおり、在日朝鮮人の方々の出身地は非常に南が多いにかかわらず、韓国籍を名乗る者がわずかに二五%、そういうような実情の中で、ここで日韓会談を強引に押し進めて、そうして一方的な協定が結ばれる。特に私は教育の問題について何らかの制約が出てくるようなことがあれば、非常な不祥事を起こすというような意味から、この点について配慮されることを強く要望いたしまして、質問を終わります。      ————◇—————
  129. 久野忠治

    久野委員長 次に、義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  130. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 この前の質問に続きまして、時間もだいぶ迫っておりますから、若干だけ質問をしておきたいと思います。  本年度の予算の中で、小学校の義務教育関係の施設ですが、全体計画で九十二万坪に計画が圧縮され、なお中学校では校舎が四十八万坪に圧縮されて、本年度計画では、小学校が十六万坪の要求に対して十一万坪、それから中学校が十万坪の要求に対して七万七千坪になっておる。そうして本年度の負担として、小学校では二十一億、中学校では二十二億、合計四十四億円です。こういうことになってきますと、今度の法改正によりまして、幾ぶん義務教育諸学校の施設費に対する国庫負担が重くなってきたということも言えるわけですが、全体のワクがこういうぐあいに少なくなっていきますと、その法改正も私は意味がない。そこでやはり全体的なワクを多くとってもらわなければならない、こう思います。私が申し上げました全体計画、今年度計画、本年度負担、この各坪数に間違いはございませんか。
  131. 杉江清

    ○杉江政府委員 確かに当初要求と比べますと、相当の減になっております。その原因は、まず最も大きいのは、やはり負担対象率を私ども一〇〇として要求しておるわけです。十割の要求になっている。その点が一割の改善を見まして、八割を負担対象にする、こういうふうになりました点が一点。それから基準につきまして、私どもは相当大幅な引き上げを要求したのであります。その点につきましては、基準アップにつきまして、ことに特殊教室のアップについては、これは大蔵省の見解もあって、いまにわかにそこまでを現実補助の対象とする、そのようなことは基準としては高過ぎる、こういうお話があって私どももその点を了として基準を圧縮したのであります。この基準の圧縮は先会申し上げましたように要整備坪数に影響するところが非常に大きいのです。基準の引き上げそのものはそれほど大きく違わないのですが、要整備坪数ということになりますと相当大きく響いてまいります。ことに危険建物の改築の際にそのことが強く言われるわけでありますが、そういう点が響いております。  それからもう一つ、鉄筋補正といいまして、一応木造でいろいろな坪数の基準が定められておるのが、鉄筋にいたしました場合にはある程度の補正をいたすべき筋合いだと思いますけれども、これは実は十年来この点の補正が行なわれておりませんでした。私どもこれを実現したいと考えたのでありますけれども、何もかも一挙にやるということはあまりにも事業量が大きくなるということで、この点は妥協して今後の課題といたしたのであります。  そのほかにもいろいろありますけれども、おもな点は以上の点でございます。しかしそれにいたしましても従来に比較いたしますならば大幅な改善であります。たとえば基準の引き上げでも、これはいままで一人当たり基準になっておりましたのを学級単位基準に直したということは、今後生徒数の減を考えますと非常に大幅な実質的な引き上げになる。この点を試みに申し上げますと、三十八年度におきましても、この一人当たり基準を学級単位基準に直すということだけでおおむね三割の実質的な引き上げになる。これが四十三年度におきますと、これは推定でございますけれども、おおむね四割の実質的な引き上げになります。それからまた負担対象率の一割の引き上げでございますが、しかしこれは全体の坪数に対する一割のアップということは数字としてはかなり大きな数字になっておるわけでございます。このようにもちろんすべての点において私ども当初要求を実現することは望ましいし、そのように努力をいたしたのでありますけれども、しかし漸を追うて改善するということで妥協したのでありますけれども、ただいままでと比べれば相当大きな改善になっておるということを申し上げたいのであります。
  132. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 校舎については以上ですが、屋内体育場についても二十八億八千九百万円の要求が、その二分の一にも満たない十二億八千万円で最終的に決定しております。そうすると屋体について三分の一の補助をつけるということは、これは一つの進歩ですけれども、全体のワクが下がってしまうとこれもまた非常に効果が薄くなる。この点もやはり努力をしてもらいたいのです。  そこで僻地集合室あるいは統合校舎、危険建物、特殊教育の建物等、いろいろ問題点はこうしてお聞きしていくとあると思いますが、これは一応抜きにいたしまして、私がこれを総じて申し上げたいことは、今度のこの基準改定によって、現行基準では普通教室もとれないというのが実情ですが、これを十二学級の小学校の場合に当てはめてみて、どの程度拡大したかということと、それから危険校舎については、現行基準では危険校舎の改築ができないと言われております。それは文部省としてはどの程度危険校舎を推定しておるか、坪数を出してもらいたい。そうしてその新基準によってどの程度これができていくか、その計算をひとつしていただきたい。
  133. 杉江清

    ○杉江政府委員 まず新基準と旧基準の必要坪数の比較を十二学級において考えますと、現行の基準によって、これは五十人おるものとして計算した場合でございますが、それは五百十二坪になります。ところがこれは生徒数が減りますとこの基準が減っていくのでありますが、この最高の場合をとりまして五百十二坪でありますが、今回の改定によりましてこれが五百六十坪に上がるのであります。たとえ生徒数が少なくなりましてもこれだけの坪数は確保されるのであります。そのアップ率は九分でございます。  それから危険校舎の場合は、一応この新年次計画を立てるにあたりまして私ども詳細な全国の実態調査をいたしました。それに基づいた数字で要求いたしたのでありますけれども先ほど申し上げましたように基準がある程度切り下げられました。それがこの危険建物の総体の坪数にかなり大きく影響いたしてきているわけでございます。しかしながら、私どもが新基準によって四十三年度までに整備しなければならない総体の要改築坪数の整備はほぼできる計画になっております。もちろん昭和三十九年度のこの坪数は必ずしも十分でございませんが、全体の坪数は四十三年度における要改築坪数をほぼ充足できる、こういう計算になっております。
  134. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 当初幾らにこれを見積ってそして査定において幾らにこれを減らされたか、しぼられたか、そして五年計画によってこれを充足するとすれば、いまおっしゃる本年九十億を要求して四十八億に押えられるというようなことで、危険校舎の改築ができるかどうか、あなたはできると言うが、全体計画を聞きたい。
  135. 杉江清

    ○杉江政府委員 危険建物につきまして私どもの要求いたしました総体計画は二百二十一万四千坪であります。それが査定の結果は、いわゆる負担対象率を八〇%といたしまして、百四十万七千坪であります。ところで三十九年度の危険建物の改築の坪数は二十三万四千坪になっております。こういう状況でございますから、今年度の数字をもってしては、そのままでは五カ年間にこの全体の事業量を消化することは不可能でございます。したがって、今後この坪数の増に努力いたしたいと考えております。
  136. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いまの御説明によると大体十年かかるわけですね。そこで将来に向かってこれに努力してもらう、これで私はけっこうだと思います。  もう一つ問題は、いろいろ社会事情の中からも問題になってきておりますけれども、特殊教育の教室、この問題がやはりこの際、精薄児とかあるいは肢体不自由児等に対して非常に世論が高まっております。そういう現状にかんがみて、現在のこの予算では非常に少ないと思うのです。この点、今後どういうように努力していくか、その見通しをひとつ……。
  137. 杉江清

    ○杉江政府委員 その前にちょっと、先ほどの点補足説明申し上げますが、危険建物の改築のこの算定は、おおむね全体計画の六分の一になっているわけでございます。十分の一ではなくて、六分の一という計算がされておるわけでありますが、これを五年のうちにやりたいというのが私どもの計画であります。それは今後の増加によって、その消化は私どもは不可能ではないと考えております。  特殊教育につきましても、私どもは全国調査をいたしまして各県の設置計画を把握しております。この点については、私どもの要求は総体といたしまして九万四千坪であります。その査定の結果は七万六千坪でありまして、私どもの要求とそんなに著しく離れるとは必ずしも言いがたいと思います。ただ、負担対象率で一割削減を受けますから、その範囲において圧縮されるわけでございます。この査定によりましても、総体の坪数としてはほぼ必要坪数を充足することができるわけであります。
  138. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 時間が迫っておりますから、次に非義務制の問題に移りたいと思うのですが、この法案とは直接関係はございませんけれども、特に灘尾文部大臣が幼稚園教育を強調しておきながら、非義務制の予算が非常に少ない。三十三億要求して二十億にたり、特に幼稚園に対しては一億一千四百万円要求して五千万円になってしまった。これで非義務制のほうの要求が将来充当していくかということも心配するのです。その点について将来の見通しを聞きたい。
  139. 杉江清

    ○杉江政府委員 幼稚園教育につきましては、これを大いに充実強化するという方針で初中局と相談いたしまして、その基本計画に即して要求いたしましたのが、坪数としては七千四百六十五坪でございます。それが五千坪に査定されたわけでありまして、これは相当の減ではありますけれども、これによって幼稚園の拡充計画が阻害されるという程度にまで削減を受けたとは考えておりません。そうしてこの予算額におきましても前年度と比べて三倍以上にふえております。この点におきましては幼稚園は前年度と比べれば相当飛躍的な充実ということが言えると考えております。  その他高校危険とか、それから急増対策の工業高校の校舎、定時制の建物等につきましても、これは不十分ではありますけれども前年度に比べれば相当の増を見ているわけであります。そしてその上高等学校の寄宿舎については、特に僻地教育振興という見地から、僻地出身の生徒が入るための寄宿舎の整備の予算が新しく認められておるのでありまして、この点は非常に意義が大きいと考えております。
  140. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三倍になっておるというようなことですが、しかし幼稚園教育については特に新しい基準を設けて、何年間に整備をするというように打ち出したのですから、これでは、物とそれから教育振興ということが合いませんから、将来に向かってやはりこのほうの充実計画をやってもらわなければなりません。特に非義務制度全般についての計画で、これではいけないと私は思いますが、これで充足できるというようなお考えでは私は甘いと思う。その点ひとつ……。
  141. 杉江清

    ○杉江政府委員 もちろん本年度の予算では不十分でありまして、今後十分な努力をいたしたいと考えております。
  142. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 最後に、補助単価の問題です。三十七年度実績では、鉄筋では六万九千九円円、それから鉄骨では五万六千九百円、木造で四万二千二百円。三十八年度は鉄筋で六万七千八百円、それから鉄骨で五万一千九百円、それから木造で三万七千八百円です。三十八年度と三十七年度の実績を比べてみますと、実際と予算とでは、七、八千円、大きいのでは八千円ぐらいの開きがあるわけです。そこで三十九年度の予算を見ますと、鉄筋を七万二千五百円、鉄骨を五万五千円木造を四万八百円で押えておりますが、三十七年と三十八年の実績と予算の比がこんなに差があるのですが、三十九年度もまたかなりの開きがあろうと思うのです。そういう点も今後に向かってやはり考えていかなければならないのではないか。三十七年度でそれだけの開きがあったのですが、三十八年度で、この三十九年度予算と補助単価を比べてどんな開きがあるか、あなたのほうで押えておられる数を言っていただきたい。
  143. 杉江清

    ○杉江政府委員 三十八年度について見ますと、鉄筋コンクリート建物の実績単価は坪当たり七万五千円になっております。ところでこの中には、予算単価に含まれておりません特殊工事も一部含まれております。それを除外いたしますと、七万一千四百円になるわけです。だから、予算単価との開きは五%になるわけです。今年度約七%のアップをいたしておるわけでありますが、物価等もなお上昇するということを考慮いたしまして、この差がどの程度になるか今後の推移を見なければわかりませんけれども、かなり縮まるのではないかという期待を持っております。
  144. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 国立付属学校の予算単価は昨年度で七万五千円、そうすると本年度はこれは幾らにしておりますか。
  145. 杉江清

    ○杉江政府委員 いま正確な数字を用意いたしておりませんが、国立の場合は公立の場合よりもその単価が高くなっております。その理由は、やはり国立のいわゆる付属学校については、学生の教育の場という意味から、公立の場合以上によけいに施設を行なう必要があるのであります。そういうことを考慮いたしましてその単価を上げているわけであります。だからその差は現実にありますが、それはやはり合理的な差だということが言えると思います。
  146. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 おかしいですが、もう終わりにしたいと思います。全体を見てみましたときに中学校と小学校の補助を三分の一と二分の一というように差をつける、そうしてこれに対しての充足率は七〇%を八〇%にしましたけれども、実質二分の一を補助しない。さらにここの補助単価では国立は七万五千円に昨年度単価をきめておきながら、小中においては六万七千八百円、こういうように低い単価で押えているということになりますと、地方公共団体はいよいよもって義務教育二分の一国庫負担というようなたてまえがありながら、実質は三分の一からはるかに遠いものになってしまって、四分の一にも五分の一にもなってしまうというような事態さえ起こってくるわけです。そういう点を全体的に考えていかなければこの法律案が生かされない、このように私は思うのです。このことを最後に要望して、大臣もこういう点については、これは地方財政の逼迫しておるおりからでありますし、公立文教施設に対しましては地方では非常に重要問題と考えておりますし、政府に対して要求しておるところも非常に大きいのです。その点をひとつ考えて将来やってもらいたいと思いますが、大臣どうですか。
  147. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在までの公立文教施設に対する補助の関係が決して満足すべきものじゃないということは、私どももあなた方と同様に考えておるわけであります。また明年度の予算の内容につきましてはかなり改善はぜられたと思いますけれども、幾多の問題が残っておるということも私はよく承知いたしております。したがいまして今後ともに皆さま方の御協力のもとに一そう整備に努力いたしたいと存じます。
  148. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私らのほうで要望する点は、あとで附帯決議であらわしていきたいと思いますので、質問はこれで終わらせていただきます。
  149. 久野忠治

    久野委員長 他に質疑はだざいませんか。——なければこれにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  150. 久野忠治

    久野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  151. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よって本案は原案のとおり可決いたしました。
  152. 久野忠治

    久野委員長 次に本案に対し自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、三木喜夫君外七名から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず提出者から趣旨の説明を聴取することといたします。三木喜夫君。
  153. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いま委員長から申されましたように、三党を代表いたしまして義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の案文を朗読いたします。    義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府義務教育の重要性と地方財政の実状から速やかに次の措置を講ずべきである。  一、公立義務教育諸学校の施設の整備に必要な経費は小学校、中学校の別なく、その二分の一を国が負担するよう関係法を整理し、もつて義務教育費国庫負担法の趣旨にそうこと。  二、公立義務教育諸学校における校地の購入についても、地方公共団体その他の負担が加重しているので、起債措置を十分にすること。  以上であります。
  154. 久野忠治

    久野委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。  本動議を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、本動議は可決され、附帯決議を付することに決しました。  この際文部大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。灘尾文部大臣
  156. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの御決議のありました公立義務教育諸学校の施設整備のことにつきましては、御趣旨を尊重して今後努力をいたしたいと考えます。(拍手)
  157. 久野忠治

    久野委員長 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  159. 久野忠治

    久野委員長 次会は来たる二十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十八分散会