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1964-02-19 第46回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十九日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 坂田 道太君 理事 長谷川 峻君    理事 南  好雄君 理事 二宮 武夫君    理事 三木 喜夫君 理事 山中 吾郎君       臼井 莊一君    熊谷 義雄君       谷川 和穗君    床次 徳二君       中村庸一郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    松田竹千代君       松山千惠子君    落合 寛茂君       川崎 寛治君    實川 清之君       長谷川正三君    鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      西田  剛君         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (社会教育局         長)      斎藤  正君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房広報室長) 三枝 三郎君         警  視  監         (警察庁刑事局         参事官)    中原 英典君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 二月十七日  委員前田榮之助君辞任につき、その補欠として  河野密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として前田  榮之助君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件(青少年教育に  関する問題等)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  三木喜夫君。
  3. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私はこの前の文部大臣所信表明に対しまして若干質問をしたい、このように思っておるわけですが、とりあえず青少年問題についてお聞きしたいと思います。  文部大臣は、この前の所信表明でこのように言われております。教育普及発達の度を加えたということ、それから教育水準が世界に誇るべきものがあるということ、これは私たちも同感です。そして、「民族繁栄国家発展は、安逸と放縦の中から生まれるものではなく、高い理想を求めてあらゆる艱難に耐え、国家社会、人類に奉仕せんとする精神に満ちた国民一人一人の不断の努力によって築き上げられるものであります。」これも私賛成なんです。そこで、この二つの前提に立って、私たちは今度灘尾文部大臣に非常に期待するところがあるわけです。と申しますのは、ここに艱難に耐えるということが書いてあります。さて、文部省として艱難に耐える部面はどこかということです。さらにまた「国の未来を託すりっぱな日本人を育成するため広く国民の期待するところを的確に把握し、」把握するところはどこかということ、これを私は灘尾文部大臣にひとつお聞きして、少なくともこの青少年問題については、文部省も与党も野党も一緒になって解決をつけなければならぬ時期にきておるのじゃないか、こういうように思うのです。そこで、このような所信表明の中に、私は第一に青少年非行問題に対して、文部大臣はどういう姿勢でこれに当たるかということを述べてもらいたかった。いろいろ言われておりますけれども、そういう点に非常に空虚さを感じたのです。  そこできょうは第一に文部大臣に、艱難に耐えるところはどこであるか、的確に国民の期待しておるところをとらえとありますが、どのようにおとらえになるか、しかして青少年問題に対してどういう姿勢で臨まれるかということをひとつ所信として述べていただきたい、こう思います。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この前の所信で申し上げましたことについてのお尋ねでございますが、申し上げましたとおりということでございまして、別に変わったことはないのでございますが、人生を過ごしてまいります上に、われわれは幾多の困難にも遭遇するわけでございます。その間に処してりっぱな人生を過ごしていくためには、苦しいときにも理想を求めて、そうしてその苦しさに耐えて進んでいくという精神が必要ではないか、かように考えるわけでございます。また国家社会発展をはかります上にも、常にそのような心がまえを持ってお互いが協力して進んでいくということが大事な道筋ではないか、かような考えを持っておりますので、先般申し上げたようなことを私は考えておる次第でございます。幾多の困難が国家発展民族繁栄をはかります上においてもあり得ることである。またわれわれが自分生活を進めてまいります土においても、始終遭遇することでございます。そういうときによくその困難に耐え、これに打ち勝って進むというこの心持ちお互いに大事ではないかという心持ちでございます。  また、教育行政を進めてまいります上におきまして、申すまでもなく政府あるいは事務官僚独善であってはならないわけであります。やはり国民の多数の方の期待せられるところ、望んでおられるところを常に的確に把握することにつとめなければならぬ。いわば民意によって教育行政を進めていくという心がまえがきわめて大切なことではないか、われわれの独善に陥ってはならない、そういうような心持ちで申し上げたわけでございます。特にこの問題がこう、あの問題がああというふうなつもりで申し上げたわけではございません。私ども心がまえとしてそういうふうにありたいものと考えておる次第であります。
  5. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私のお伺いいたしましたのは、国民艱難に耐えということをおっしゃるのなれば、文部省としてもそういう心がまえがなければならない。特に私はいま艱難に耐えるところは青少年問題ではないかと思うのです。一番困難をきわめると思うのです。それとどういうように取り組んでおられるかということです。と申し上げるのは、ケネディ大統領大統領に就任いたしまして、政治家として正しかったことは、少年犯罪問題を根本的に解決するために、青少年問題を守るための動員計画というものを樹立した。そして一九六〇年代に生きるわれわれは非行少年の問題と取り組むためみんなで行動を起こす必要があると声明し、そしていろいろ施策を行ないました。そしてそれが着々と功を奏しておる、こういうことなんです。したがって私はきょう第一に申し上げたことは、文部大臣としてかなり長期の間この計画を腰を据えてやってもらいたいという希望を持っておるのです。これは非常に困難な問題だろうと思います。党内事情としても、あるいはまた外部からのいろいろな問題もあるし、予算を取る上においても問題があろうと思いますけれども、そういう点でいまお聞きしたわけなんです。青少年問題に対してどう取り組まれるかということをお聞きしたい。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いまさら申し上げるまでもなく、現在の青少年の問題、言いかえますれば青少年に通常のお互い社会生活調和のとれない諸君が少なからずある。ことに非行青少年と呼ばれる諸君が少なくないのでありまして、この点は何と申しましてもわれわれの将来を託する人たちの問題でありますので、お互いに一番心配しなければならぬ問題と心得ているわけであります。この点はひとり私どもだけではもちろんない、三木さんも全く同じ憂いをいたしておると思うのであります。この問題につきまして文部省としまして考えますことは、近ごろ盛んに用いられております人つくりということでございます。この人つくりの問題は文部省からいえば、文部省仕事のどれもこれもみなこれに関係しておると申し上げてもいいと思うのであります。ただ私考えなければならぬと思いますことは、人つくりということばがややもすれば若干語弊があるのじゃなかろうかと思うのであります。要はやはり各自がりっぱな人間として自分をつくり上げていく、また社会生活を送っていくという心がまえが一番大事なことであろうかと思うのであります。よそから何かの型にはめて持っていこうというような考え方はとるべきでない、かように私は考えるのでありまして、そういうような心持ちを起こさせ、そういうふうな自覚を持って前途に向かって進んでいく、そして社会調和がとれた生活をやってもらっていくように仕向けていくのが教育任務じゃないか、かように私は考えるのであります。この問題について私考えまするのに、ひとり学校教育だけの問題でもないと思います。学校は、これから伸びていく人たちをお預かりしておるのでありますから、この人たちのために、いま申し上げましたような心持ちでもって育て上げていくということが、何よりも大きな任務でございますけれども、しかし学校だけで解決のできる問題でもございません。それからまた家庭においても、子供学校に預けたのだからというような心持ち放任せられても困る問題であります。一番長い時間、小さなときから一緒に暮しておるのが子供のいわゆる家庭親たちでありますから、こういう方々も、子供育成には学校まかせにするということではなくて、やはり真剣に考えてもらわなければならぬ問題であります。また同時に社会全体と申しますか、一歩うちから外へ出る、一歩学校から外へ出ましたときの社会実情というものがどうであるか、こういう点を考えますとやはり社会実情の中にも、子供の健全な育成を妨げる、あるいは子供の健全な行き方から、悪い方向に引きつける、こういう要素もないとはもちろん言えない。したがってこの問題は、結局すべての方面において、学校においても家庭においても社会においても考えなければならない重大な問題であろうかと思うのであります。私はその意味におきまして、文部省としましては学校教育の面において、あるいはまた社会教育の面において、子供育成のためにいわゆる健全な人つくりのために努力することはもちろんでございますけれどもお互い国民全体の問題として、この問題とは取り組んでいかなければならないのではないかと思う。そういう意味合いにおきましては、国民全部の協力のもとに、この青少年問題と取り組んでいく、こういう心持ちを感知し、こういう心持ちをもって協力して前進をするということが最も重要な仕事になってくるのではないか、かように考える次第でございますので、私としましては文部行政をお預かりする者として、私の担当する行政部面について努力することはもちろんのことでございますけれども、他の関係方面方々とも御一緒になりまして、要するに国民全体の問題だ、このような方向で問題の解決をはかっていく、こういうふうに考えておる次第でございます。
  7. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私は皮肉な言い方かもしれませんけれども池田総理所信表明されたその直前におい、高校の三人組み殺人事件が起こっております。次に文部省道徳教育資料新聞に発表された二月初旬ですが、その直後また三人組み青少年連続強盗が起こっておる。このように政府ないしは文部省がそういう施策をいろいろ発表されるや、実際に子供はこのように暴走しておる姿が出てきたわけです。先般私は、一月十九日日立市の少年強盗殺人事件新聞に出ましたので、克明に検討してみたわけです。そうするとこういうことが結論としていわれておるわけなんです。私はそこできょ文部省に特にお聞きしたのは、その立場に立ってお聞きしたのですが、東京家庭裁判所少年部首席日野照彦氏が、もう非常事態ですということを言っております。刑事犯はおとな四十万に対して非行少年は二十万、交通事犯の七十五万を加えますと、百万人になるだろう。それ以外に警察に補導された者はこれの約五倍だ。そういたしますと、五、六百万人の青少年が悪の中にうごめいておるということになるわけです。そこで日野さんは、このように言われておるのだと私は思う。それから少年院、教護院がやはり十年前と同じことで、収容するところの施設もない。だんだん犯罪はふえてくる。保護観察官も月に三十件も事件をかかえておるし、費用といたしましても、一人当たり非行青少年に対しましては十五万から二十万の金がかかる。これではどうにもやっていけない、こういう悲鳴が出ておるわけです。それから警視庁のほうの姿勢はどうかということを私は結論として見ましたところが、二つ高校生集団強盗事件が起こりましたが、この二つとも関連性がある、したがってなぜ起きたかというこの二つ事件共通性について異例の追及を行なう、こういう非常なかまえです。これは防犯部長の渡辺さんがそういうように新聞で発表されておる。そこで人つくりを言われるところの本家である文部省がこの問題について感度を強く持って当たってもらいたい、私はこう思うのですが、この感度がもう少し私たちに感じるようなものでひとつきょうは答弁をしていただきたい。こういうように非常事態だと言い、あるいは異常の覚悟でこの問題に対処したいと両役所では言っておるわけです。そこで文部省に対しましては、これをどう考えるかということをまずお聞きしたかったわけです。そこでまずこの一月十九日の高校生三人の殺人問題について文部省ではどう受けとめておられるか、これを端的にお聞かせ願いたい。
  8. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 実はその件につきましては、私、家庭裁判所調査官の人に会った機会があるのでございますが、これは実は日立のほうで起こっておりますので、まだその調査官の手に入っていないというような事情でありますので、詳しく聞くことはできなかったのでございますが、今回あらわれました事件についてみますと、従来いわれておりました青少年非行が非常に特異な環境に育った少年諸君でなくして、経済的にもあるいはその他の条件につきましても、一見問題のないというような中流家庭少年の間に非常な困った事態が起こっておる。こういう問題は私のほうの仕事で申しますならば、一部には家庭における親の幼少のときからの過保護でありますとか、あるいは少年後期あるいは青年期にかけますところの指導あるいはしつけというものに対する関心というものが一つ問題になるのではないかというふうに考えておるのであります。私どもといたしましては、特に本年度家庭教育の問題につきまして、力を入れまして、成人教育の分野におきまして家庭教育的機能であるとか、あるいは子供のそれぞれの発達段階に応じますところの親の指導の問題でありますとか、そういうことをよく両親考え場所を拡充していきたい、かように考えておるわけであります。
  9. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いまの御答弁では、私は一文部省の取り組み方としてはどうも納得がいかないと思うのです。それと申しますのは、この問題につきましては私は各新聞の論調を読んでみました。そして全部集約してみて、結論を大体出してみたのです。そうすると社会教育局長として考えておられるこの家庭というのは特異家庭でない、こうおっしゃいますけれども特異家庭なんです。生活的には中流家庭ですが、みな特異家庭なんです。ここに焦点を合わして今後対策を立てなければいかぬのじゃないかと思う。それから過保護とおっしゃいますけれども、過保護のあり方はこの事件にはない。三人の高校生殺人事件には過保護の状態は出ていない。たとえて申しますと、Mという少年は、自分運転手を殺したということを父に手紙を書いております。しかしながら父は子供教育に対しまして非常に無関心である。それからYは、父は船長で不在である。それからSは、父は薬局店主ですけれども、別に過保護の様子も出ていない。私は無関心だということが当たるのではないかと思うのです。そういう家庭形態を、こういう事件が起こったときに新聞は非常に敏感に、しかも鋭く精密に調査をして、ここに原因があるのだということを的確に押えておりますのに、文部省社会局長がそういうような押え方をしてもらっておっては、一国の文教政策は立たないと思う。ケネディ大統領が、就任早々、これはたいへんだということでそれに取り組んだというような気がまえをやはり持ってもらわなければいかぬと思う。警視庁においても非常事態で徹底的に追及をやって、ここから問題点を抽出すると言っております。さらにまた、いま言いましたように非常事態だというかまえを持っておる役所もあります。御本家文部省でそういうようなとらえ方は問題があると思う。初中局長、この問題についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 福田繁

    福田政府委員 ただいま社会教育局長から申し上げましたように、この事件については私どもいろいろ考えさせられる問題がたくさんあると思いますが、新聞その他で承知いたしました範囲におきましては、やはり子供家庭教育と申しますか、家庭での子供の監督のしかた、そういう点に根本的な原因がありはしないかというように考えるのでございまして、家庭の過保護ももちろんございましょうし、あるいはまた放任という問題もこの事件には相当原因があるように思うのでございます。ただ、非常に指導のむずかしい年ごろでございますから、そういった点についてはやはり家庭学校とが協力してこういう事件の起きないように指導するのがよかったのではなかろうかというように思うのですが、その辺が残念ながらあとから考えますと抜けておったように私ども感じております。
  11. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私もいまのお考えなり御意見は賛成するところです。文部省として抜けておった、こういうようにおっしゃることは私は正直でいいと思うのです。お互いにこういうところでおざなりの答弁をして、おざなりの話で終わらしてしまう、いわゆる役所答弁でこれを終わらしてしまうのは私は問題だと思うのです。ただいま福田局長が、家庭に問題があるというのはそのとおりでございまして、この少年も、第二の三人組連続強盗事件もみな家庭に問題があると思います。しかも、その家庭が抽象的に問題があるというだけでなくして、親がみな無関心、あるいは片一方の親がないというのが大部分ですけれども家庭の問題としてとらえられ、そうして文部省として抜けておった、このようにおっしゃるならば私は正しい判断だと思いますので、その家庭に対して、しからばどういうような態度でいくか、これについて考えてもらわなければ、これだけの事件が一月十九日に起こり、そうして、また二月にもあとを追って三人組の強盗が起こる。そして二月の十日にはまた三人組の強盗青少年によってやられておる。連続三回起こっておるわけです。そこで、家庭対策としては、予算にも相当今度は重点を置いてやっておられるのですけれども、単に形式的な家庭教育ということだけでは済まされぬ問題ではないか、それについてひとつお聞きしたいと思います。
  12. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 私、お答えいたします前に、先ほど一見と申しましたのは特異経済状況のもとでなくて、生活の外見は豊かである。しかし、家庭における導き方というものについて問題であるということは、この事件に限らず、われわれが家庭教育の問題について専門家あるいは臨床的にそれを取り扱う人のいろいろな事例から判断されるわけでございます。ですから非行の問題につきまして特異家庭だけに起こっているというふうに判断できないので、やはり普通の家庭においても十分に注意しなければならないということが、やはり私どもがいろいろな学習活動を組む場合に必要であるという意味で申し上げたのでございます。でございますから、特異な場合に対する対策ということでなく、普通の家庭においても心を許すならばいつ起こるかもしれない問題であるということで、日常親たる者は注意しなければならぬということが教育の場面では大切だという意味で申し上げたのであります。  なお、過保護と申しますのは——過保護だけではありません。甘やかすに加え、放任ということがございますけれども、ただ、この青少年の問題の関係でいろいろな事例を見ますと、幼少のときに過保護であって、少年期になるとむしろ放任してしまうとか、そういう長い青少年育成の経過から見て、ある時期における過保護、ある時期における放任、いろいろなものが重なってくるということが専門家によって指摘されておりますので、その一面を申し上げたわけでございます。家庭教育につきましては、社会教育の面でやりますことは個々の事例をどう取り扱うかという指導法ももちろんございますけれども、やはり究極は両親がこの問題について考え場所というものを拡充する。いわば成人教育の一つの形態として両親教育場所というものを拡充し、それを深めていくということが根本的に大切だと考えるのであります。その意味で、私どもは本年全国社会教育課長を特に集めまして、この問題について研究集会も開催いたしました。現在各ブロックにおきまして指導者研究集会を開催いたしております。それから全国でこの問題につきまして特に力を入れております府県の実情というものにつきまして十分な討議もいたしました。明年度はさらに県の段階におきまして指導者のための研究集会を開き、また指導者のために必要な資料を編さんをして配付をするということとともに、全市町村においてただいま申しましたような両親教育の場を拡大するという意味におきまして、家庭教育学級の開設を助長しよう、このように考えておるわけであります。
  13. 三木喜夫

    三木(喜)委員 考え場所お互いに持つということも、これはけっこうだと思うのです。しかし今度の事件原因追及の中で一番大きな問題は、親がおって親がいないのと一緒だ、いわゆる親不在になっておるということです。家庭子供子供学校、この間に断層があるということもさることながら、その一番中心は親不在であるということ、それから親が自信を喪失しておるということです。これでやはり考え場所を求めるということだけでは、私は対策が微温的だと思うのです。もういままで長い間、これはあと警察庁ないしは青少年問題協議会の方からもお聞きしたいと思うのですが、だんだん犯罪がふえてきておるわけなんです。今日まで考え場所もあったはずなんです。それだのにどんどんと青少年犯罪集団化し、狂暴化してきておる。この時代に考えておる、考えておるだけではいかぬと思うのです。もうそういう集団の問題ははっきりわかっておるのですから、それに対してどういう対策をとるか、家庭に対してどういう対策をとるかという具体的なものになっていなければならないと思うのです。先ほどの社会局長の話では、そういう模範的なケース、あるいは研究会をやる、研究会はもう済んでおらなければならないはずです。今日までこういう子供ができてきておるのですから、いまから研究会をやっていてはおそいと思うのですが、しかしやらぬよりはましだと思う。しかし研究会というのは、現場にいってよくわかるのですが、その場限りなんです。そのときには調子のいいいろんなデーターを集めてきて、しかもやっておるように見せておりますけれども、その実済めば花火線香のようになってしまって、青少年の心底、心の底に食い込まないのです。これはよくお考え願っておきたいと思うのです。こういう研究会を幾らやっても私は問題の解決にはならないと思うのです。その点どうですか。
  14. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 お話の親の心がまえ、あるいは指導の具体的な事柄について考える、あるいは学ぶ機関をつくるという面だけを申し上げたのであります。そのほかに私ども関係しております仕事の中に、ただいまお話にありました非行化する集団から切り離すという仕事、あるいは積極的にいいグループの組織を拡大する仕事というようなことは、また別の面で子供会その他民間団体の助成あるいはそれらのジュニア・リーダー等の養成ということで、今年度も引き続きこれに重点を置いて実施していくつもりでございます。ただいまお話になりました親の自信喪失という問題は、私ども研究会におきましても、それから資料をつくる場合におきましても、重要な問題として取り上げております。なぜ自信喪失という問題が起こるかということは、やはり従来やってきた学習の内容等につきましても反省すべき点があるという事柄に立っておるのであります。家庭教育についてみましても、単に新しいこれからの家庭教育というふうに説きまして、われわれが自分の親からしつけられた事柄、それは時代の変遷によってもそう変化のないような事柄まで、単に非常に新しいことでなければならぬというふうに説くことはかえって誤解を招きまして、いたずらに若い世代と親との間の断絶感があるのだという前提に立ってものごとを考えます場合には、かえって導く立場にあります年長者の自信を喪失するということもあるわけでございます。研究会と申しましても、これらのいままでやってきました足らざるところの実績をよく振り返ってみるということを土台にして、さらに今後何を加えていったらいいかということをいま全国的に検討しておるのであります。それからお話にありましたように、特異家庭、片親あるいは欠損家庭あるいは大家族の場合、いろいろな場合につきましてもそれぞれどういう役割りを家族の構成員が分担すべきかということをよく考えてみる機会というものを持つことが必要だろうと考えておるのであります。
  15. 三木喜夫

    三木(喜)委員 社会局長、この事件の起こった学校を御存じですか。どういう種類の学校でしたか。
  16. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 二つとも私立の学校でございまして、私そのことは承知しております。
  17. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この事件の起こったのは、一月の十九日の殺人事件はミッション・スクールの子供なんですよ。そこで、このミッション・スクールの校長先生はこういうことを言っております。私の学校は修学旅行には模範的な学校で、家庭学校との連絡をよくとっております。しかしながら限界があります。どうしたらいいのだろうということを言っておられます。こういうような学校ですから、あなたがおっしゃるようなことは十分やっておるのですね。そうしてこの事件が起こっております。そこで、先がたから福田初中局長家庭に問題があると言われておりますが、そうすると、家庭学校家庭子供の断層というものは一体どういうことが原因になっておるのでしょうか。断層ができておるのです。それについて社会局長はどうお考えになりますか。
  18. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 どういう断層があるかということは、はなはだむずかしい問題でありますけれども、普通の家庭生活に引き直してみた場合に、むしろ不必要な断層感を持つこと自体に問題があるというふうに私たち考えておるわけであります。これは極端に申せば、いつの時代にも生活感情その他について年長者と若い者との間に開きがあることは事実でございますが、それが越えがたいものだというふうに考えること自体、そういうふうな心を持つことについては相当の問題だろうと思います。もちろんいろいろな意識調査というものは専門家によってかなりなされております。私詳細にそういうことを研究はいたしておりませんけれども、それはございますが、まず一般的な問題に引き直してみた場合には、普通の日常生活におけるしつけあるいは親と子の関係というものについてそう断絶感というものを前提としなければ親の教育ができないというふうには考えておらないのであります。
  19. 三木喜夫

    三木(喜)委員 新聞の論調の中にこういうことを書いておるのです。学校家庭との間の落とし穴、まず第一は進学の組と就職の組との断層、それからそれぞれのグループの悩み、それから青少年に対して何一つ解決がつけられないところのいら立たしさ、自分たちの価値基準すら持つことができずに家庭学校社会にこづき回されておる、新聞の論調ではこういうとらえ方をしております。家庭学校との間の落とし穴というものがこんなものであるということをお認めになりますか。さらにまた、個人的な原因としてこういうものも問題にする、こういうようにお考えになりますか。
  20. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 家庭学校との断層と申しますのは、おそらく形式的な問題でなく、いまお話のありましたように家庭と密接に連絡をとっておるところでありましても、なお伏在する問題があるという意味ではお話のとおりだろうと思います。しかしそれを踏み越えていく努力というものは一つの方法によってはなかなかおおい得ないものである。それはやはり学校家庭、あるいは近隣社会というものがそれぞれに青少年育成について自分の責任を感じて努力するということによって、そのすきというものを実質的に埋めていくという方向考えなければならないと思うのであります。
  21. 三木喜夫

    三木(喜)委員 同じく一月二十二日の読売新聞の論調では、血染めの十六歳とその背景ということで書いておるのです。福島県平市の常交タクシーの運転手渡部政勝さん殺し、の父はタクシー会社の重役で、中学校三年当時非常に腕力が強くて暴力団の仲間にも入っておった、そしてよその家に預けられておった、これがM家庭状況。それからYの父は船長で、ノイローゼぎみになって家出をし、手製のピストルをいままでつくってやっておった。警察の補導も受けておる。Sの父は薬局店主で、気の弱い子でSは家出をした、こういうようなことが背景としてあがっておるのです。そして学校放任主義でない、きびし過ぎるくらいであった。ただ子供にいま局長のおっしゃったように自制心がなったかということは言えると思います。それから学校家庭教育に非常に熱心で、勉強しろ勉強しろということはよく言っておった。服装もきちんとしておった。それにもかかわりませず、これらの子供は押えると爆発し、わがままであり、喫茶店に入りびたって悪のつながりもでき、そして手が切れないような状況になっておった。ここで問題になりますことは、高校生として要注意の人物であったことは事実です。もう一つは、Sなんですが、進学ノイローゼになっておったのも事実のようです。こうして新聞は克明に、非常にまじめにこの事件と取り組んで問題点を抽出しておると思うのです。いま話を聞いておっても、何かまた私たちは説教をせられておるようで、かくあるべしという規範だけを社会局長が言われておるような気がしてしかたがないのですが、一月二十七日の読売にはこういうようにあげております。同じくこの問題を取り上げまして、おそるべき高校生、これらの子供の問題になるところは、要素的に取り出してみますと、学校できめられた服装で殺人を平然とやっておるということ、しかも殺す理由がない。それからこれらの子供は言動や環境に共通のものがある。まず第一は三名とも長身でスマートでガール・フレンドができておる。これは悪への誘惑の第一の条件であるということを書いております。それから薬局、タクシー会社の重役、船長、みな中流家庭以上であって、経済的には裕福です。しかし二番目に、三名とも親なし子と同じ環境に育てられておる。三番目に、逮捕されたときに驚くかと思いましたが、これらの子供は平然と母親の前で、しかも親が非常におろおろしておるのに親を相手にしていないということですね。ここに平然ということが二つ要素が出てくるわけです。そうして、人殺しをしておいてさっさと深夜喫茶店に行って殺人の話を大声でやっておる。この三つの要素から、これらの子供は平然とこういうことをやっておって何ら動じていないということですね。それから中流家庭で裕福であるということで、金だけが、親子の間を結んでおる。私は問題がここにあると思うのです。それから親なし子同然であるということですね。これから親を相手にせぬというこの態度、これが出てきておると思うのです。それから四番目に、進学に非常に追われまして、そうして成績が非常に不良である。進学ノイローゼになっておる。これから、予算委員会で山中委員が言われました子供の劣等感、焦燥感というものがやはり子供の中にあると思うのです。こういうような問題を抽出してきたときに、家庭学校の断層というものの問題点がはっきりしてくると思うのです。それに家庭教育、一般的にこれだけでなくて、私の考えでは、こうした問題の子供というのは学校でもきまっておると思うのです。そういう子供を抽出してきてそれに対するところの先生の指導をどうするか、家庭との連絡をどうするか、問題を起こすところの基盤はもうきまっておると思うのです。冷静な子供にはそういうことはないのですからして、何かこういうような欠陥がある子供というものは明らかになってきます。それをどういうように持っていくかということがもう家庭との連絡の一番ポイントでなければならぬと思うのです。そういう点について今後学校教育というものの中で施策をやっていかねばならぬのではないかと私は思います。その点初中局長にお聞きしたいのですが。
  22. 福田繁

    福田政府委員 こういう凶悪な犯罪事件が起きます原因につきましては、いろいろ先ほど来お述べになりましたようなことが原因だと私ども考えております。その際に、先ほど来申し上げましたように家庭放任あるいは学校での指導ということが非常に重要でございますけれども、その指導につきまして、私ども考えますのは、いわゆる子供自分の行動についての是非、善悪、価値判断というものが一つ狂っているんじゃないかというような感じもいたすわけでございます。最近の消費ブームなどの影響もあるいは受けておると思いますが、人の物を持ってきてもそれは窃盗とは考えない。自分の欲望の趣くままに何かとってくる。それは自分の物だというような間違った考え方が傾向としてありはしないかというような点を憂慮いたすのでございます。警察庁などで調べました犯罪件数の中にはそういった窃盗事件というものが相当かなり多いのである。そういった点から申しますと、やはり人間としての行動の基準道徳的な価値判断というものを子供のときから十分持てるように学校でも家庭でもしつける必要があるのではなかろうかというように私ども痛感いたすわけでございます。とかく日本の場合におきましては、西欧諸国と違いまして、家庭でのしつけというものがむしろ学校にまかされるというようなしきたりになっております。ヨーロッパなどでは非常にカトリック的なきびしいしつけが家庭でも行なわれているようでございます。アメリカその他におきましても同様であろうと思いますが、そういった点から、やはり今後の学校教育も、家庭の協力を得ながらそういった点について子供指導しつけというものを十分行なうということが必要であろうというように、私どもは感じているわけでございます。
  23. 三木喜夫

    三木(喜)委員 こんな状況の子供教育の手が差し伸べられなかった学校の一般教育はできたわけなんですが、しかしほんとうの教育の手が差し伸べられていないわけです。そこでいま福田局長は、価値判断の基準ということで道徳教育というような問題になるように言われたわけなんですが、私はこのミッションスクールでそうした宗教的な情操というものは絶えず心にかけておっただろうと思うのです。さらにまた第二のケースの中にも、学校は私立学校でありますけれども、生徒たちの行動綱領というものをちゃんと掲げて、しかも精神教育というものを非常に重視している。しかしながら、そういう空理や空文や徳目、主義だけをこういうように羅列してみたところで、実態にさおさしたところの生活指導をやらなかったら、何にもならぬという一つの例じゃないかと私は思う。こういうミッション・スクールが精神教育を重んじぬはずはないのです。現に学校長は、私の学校では修学旅行においては模範的な学校である、しかも女の子より男の子がおとなしいのだと言っているにもかかわらず、こういう子供が出てくる。こういうことを考えてみますと、私は、道徳教育というもが空転しない配慮としては、これはあと道徳教育のところで申し上げたいと思うのですが、生活というものに根をおろさねばいかぬ、これは道徳教育の基準を審議した審議会におきましても、そういう要綱を出してくれている、それが一つ言えるのではないかと思うのです。  それからもう一つは、さきがたからずっと言っておりますけれども学校家庭、それから学校子供家庭子供の結びつきが非常に弱い。学力ということを非常にやかましく言うあまり、人間形成という問題が抜かされているのではないか、こう思うのです。だから、先がたの子供も進学ノイローゼになるとか、家庭では相当勉強せい、勉強せいとやかましく言っているけれども、しかしこういう状況になってきている。勉強だけでは人間の徳性というものは伸ばされない。何か勉強もこのごろは人間形成というものから離れた勉強になってしまっているのではないか、そういうことも原因としてやはり追及すべきではないか、こう思うのです。  それから教育に熱心であるけれども家庭教育はさっぱりだというようなことではいけないと思うのです。常に補導に力を入れて、そうして家庭訪問をする。PTAとしつけの問題の講演会を開く、こういうようなことをこの学校では校長さんも言っておられるそうです。それはけっこうですが、ちょうど文部省道徳教育を言われ、家庭教育を重視するというような、こういう公式的な言い方とこの学校も同じかっこうをとっているのです。ただ問題は三日間無断欠席して平市へこの三人の子供が行っておるけれども家庭から何の連絡もない、私は、ここに断層ができて、息が通うていないと思うのです。これがもしいままでにも通うておれば、こんな子供は出なかったと思う。ここに、子供の実態をつかまないところに教育の空転があると思う。だから、実態をつかまえて空転させないということと、学力、学力といって人間形成を忘れては困るということと、それから、ただ徳目だけを並べて、そして道徳教育なり人間形成ができるということでは、私はやっぱり問題が残ると思う。その三点について、初中局長のほうからも、あるいは社会局長のほうからも私は満足な答えが得られなかったと思うのです。その点について、もう一回お聞きしたいと思います。
  24. 福田繁

    福田政府委員 確かにその事件だけを考えてみますと、いろいろなことも言えるようでございますが、子供学校を欠席しておって家庭から学校に連絡がなかったというようなことも、確かに御指摘のとおりだと思います。そういう点については、やっぱり学校家庭というものはもう少し常時緊密な連絡があっていいのじゃないかというふうに私ども考えております。  それからまた、学校教育の問題になりますが、決して、私ども学力、学力というふうに、学力一点ばりで現在の中学校、高等学校教育が行なわれているわけではないと思います。やはり道徳教育子供のしつけというものを子供の日常の生活を通じて、あるいは子供の具体的な実践活動を通じて、そういう道徳教育というものをより高めていくという方向において人間形成を目ざしておるわけでございます。これは教育基本法も、御承知のように、終局の目的は人格の完成ということを教育の目標にいたしておりますので、学校教育としてはそういう点を十分考慮して行なわれておるわけでございます。  それから、いろいろ具体的な指導につきましては、やはり学校によっては不十分な点も多々あると思います。そういった点で、私どもとしては、今後学校での指導のみならず、学校の校門を一歩出たらもう全然学校とは縁のないものだというような考え方ではなく、やはり子供教育子供指導という問題を学校の校門の外にも推し広げていくという点からいろいろ対策考えなければならないと思うのでございまして、一般の生徒の指導あるいは一般的な教育の問題として考える場合にはいろいろございますけれども、特にそういった問題生徒についてのみ個別に指導するという場合には、やはり単なる学校でありきたりのやり方だけでは不十分である、学校だけではできない面もたくさんあります。そういった点から、そういう問題生徒等につきましては、学校が、とかく自分学校にはそういう生徒がいるということを、何と申しますか、事件が起きるまで陰すというような傾向も、学校によってはあるわけでございます。そういった点は、やはり問題を発生させる原因になりますので、昨年来、私ども警察庁関係の部局の方々とそういった点を相談しながら、警察のほうも教育的に今後協力してもらう。それから教育委員会、学校も警察に積極的にそういった問題生徒の指導については、あるいは補導については協力するということで、お互いに緊密な連絡をとりながら今後やっていきましょうというような申し合わせをいたしまして、通達を出したわけでございます。そういった方向で今後できる限りの手を尽くしていきたいという心組みでございます。
  25. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それで文部省考えはわかったのですが、徳目主義だけではいけないということ。しかし最後に福田局長が言われたように、そういうことで私たちは通達を出した、こういうことなんですが、通達を出しただけで子供がよくなるんだったらこれは非常にやりやすいのです。しかしながら先がたから申し上げましたように、学校家庭との断層で、しかもどこかに穴ぼこがあいておる。三日間も家庭から学校に連絡をとらなかったということは、肝心のときに穴があいておるわけなんですね。それではどのようにすればそういう連絡がうまくいくかということをお互い考えなければならない問題じゃないですか。通知だけでは私は事足りないと思うのです。  そこで、話を進めましてお聞きしたいのですが、この際やはり先生の実務形態学校での忙しさというものを検討される心組みはないかということをお聞きしたいのです。と申しますのは、こういう子供はわかっておる、手を差し伸べたい、しかしながらどうしてもその時間と教育にも限界があるということを言っておるのです。私は昨年の夏休みにずっと現場の教師、特に非行青少年をかかえて困っておられるところの中学校の教諭とずっと話をしてみました。そうするとこういう話が出るのです。これはぜひ聞いておいていただいて今後の施策の大きな材料にしていただきたいと思う。これは私が聞いた教諭だけではないと思うのですが、まじめに子供たちの補導をしようと思えば時間がない。そうして憎まれ者になる。普通にていさいよくその日を暮らしておけば、子供たちはだんだん悪くなって、そうして自分のからだは楽である。あるいは昇給もかなりするし栄転にも関連ができてくる。しかしながらほんとうにやろうとすればひまがないし、そうしてくたくたになるということを言うわけなんです。どんな実情かというと、ます朝——あなた方は進学だけを問題にしてない、こうおっしゃるかもしれませんが、現場では夏休みの朝から三年生の子供のいわゆる進学準備教育をやっておるわけです。準備教育をやりまして、そうして朝一時間日にその問題の子供が来ておると思って安心しておりますと、その次の時間にはいない。そうしてどこへ行ったかということを調べますと、昼になって帰ってくる。いわゆる町のぐれん隊がその学校のぐるりに誘いにやってきておる。それとの連絡に出てしまっておる。そうしてその終わりの時間にはちゃんと帰ってくる。そこから先は先生の手が行き届かない。なぜそういう者と連絡をとるのか、あたりまえじゃないか、そういう者と交際したら先生何で悪いんだというようなことを言ったりして、もうその辺は平気なんです。そこらはもう手が届かない、しかもそれをやっておると毎日くたくたになってしまう。そうして進学とこの二つをかまえてたいへんなことだというようなことを中学校の先生が言うわけなんです。これは私が聞いた中学校の先生だけではないと思うのです。かなりたくさんの人から聞きましたから。そういう点につきましてどういうように考えられるか。いわゆる教師のオーバーワーク、特に中学校の教師のオーバーワーク、非行青少年問題点を持った子供をかかえて、中学校の先生が非常にえらいということについてどう考えておられるか。
  26. 福田繁

    福田政府委員 御指摘のようなことも確かにあろうかと思います。私どもとしてもいろいろ現場の先生などの話を聞いてみますと、だんだん仕事もふえて忙しいという話をよく聞くのでありますが、もちろんそういう傾向にはあると思います。したがって、私どもとしては子供指導ということをやはり第一に考えますと、できる限り先生のそういう雑務などの手を省いて十分指導の手が行き届くようにしたいという趣旨もありまして、そういう観点から一学級の編制を、いま五十人でございますが、四十五人にだんだん減らしていこう、いわゆる学級編制の改善をはかっていきつつあるわけであります。それに伴っていろいろ必要な職員を増置するということを考えておるわけでございます。そういう方向でありますけれども、なかなか一ぺんには十分できませんので、今後の努力目標として考えておるわけでございます。ただ地方に参りまして、いろいろな先生の話を聞いてみまして感じますことは、それではかって六十人編制、六十人以上おった学級の担当教師と、現在の五十人以下の学級編制の担任教師と比べましてどうだということになりますと、かっての六十人編制のときのほうが生徒の指導ができなかったので、非行青少年が多いかというとそうじゃない。これはやはり時代の趨勢、社会的な影響というものをいろいろ考えなければなりませんので、決して以前のほうが多かったわけではないと思います。その六十人編制のときでもそういう非行青少年はおりましたけれども、現在のほうがさらに多くなっておるわけでございます。そういった点から、私ども方向としてはそういうおっしゃる方向考えてまいりたいと考えておるわけで、特に中学校段階は、戦後の六・三の制度ができまして、新しい学校の制度でございます。そういった面からいろいろやはり不十分な点があろうかと私ども考えております。  それからまた年齢的に考えまして一も、中学校の上学年、高等学校の下学年というのは、非常に指導のむずかしい時期でございます。そういった生徒の発達段階に応じた適切な指導を、みんなの先生が十分それを心得えてやっていただいておるかと申しますと、その点についてはやはり先生の指導についてのしかたももっと勉強し、くふうをしていただく余地があるのではないか、こういうような気がいたすのでございます。そういった点から、私どもとしては、今後全部の教師が生徒を指導するのに当たることは当然のことでありますが、特にそういう問題生徒などをかかえているところでは、重点的にそういう問題生徒の指導に当たれるような専門的なカンセラーというものを置いていきたい、こういうような考え方でおるわけでございます。ただ一ぺんにそれを置けませんから、現在の段階ではことしから手をつけまして、大体学校の中の中心的な先生に、そういろいろな角度からの専門的な指導のしかたを十分心得ていただくという意味で、講習会をすでに第二回開催して、現在実施中でございます。そういうことをやりながら、多くの先生方に十分問題生徒を指導し得るような指導のしかたを、いろいろ研究、くふうをしていただく、こういうような方法をとっているわけでございます。
  27. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いま福田初中局長の言われたように、きょうの新聞に「非行を防ぐ」ということでこういう記事が載っておる。先生には長期の講習をするとか、中、高六十二のモデル校をつくるとか、こういうことが出ております。なるほどそれを言われておるかと思うのですけれども、しかしこういうことをやればやるほど、先生の勤務量がふえてくるのですね。そして問題の焦点である三日間学校を休んで、家庭から学校に報告しなかった、その陰に問題は起こっておるのですね。そういうようなことのために何々をやれという、こういう講習会も必要ですけれもど、先生がひまをつくらなければいかぬと思うのです。幾らこんなことをしようとしても、ひまがなければ何にもならないので、一回文部省において中学校の先生の勤務量がどれくらいかという具体的な調査、三十四年でしたか調査をされたのを私たち持っております。これは後ほど別の機会に検討して申し上げたい問題がありますから、譲るとしまして、そういうことを実際調査する意図がございますか。それをやらずに、こういう事件が起こった上へ上へと上積みに仕事をかぶせていて、あるいは講習会をやるとか、あるいはモデル校をつくるとかいうことならば、ただいたずらにそのことだけで忙しくなる。  それから先ほど局長が言われて六十人のときは非行性の子供が少なかった、四十九人になったら非行性の子供が多い、だから四十九人になっても、そのくらいの人数の減らし方だけでは問題なんです。そんな減らし方だけでは……。それよりも勤務量というものを問題にしなかったら先生の手が行き届かないと思うのです。文部省でそれを取り上げる以上、学校教育の中でこれをどう消化するか、警察庁から来てもらっておりますから、警察庁警察庁考え方、青少年問題協議会青少年問題協議会考え方で一致すべきは一致すべきですが、学校教育の一番かゆいところに手が届くのはどこかという押え方をすると、やはり先生の勤務量ということが問題になってくると思う。先ほど申しましたように、非常に忙しくてグロッキーになっておるのが、いまの中学校の先生の状態じゃないかと思うのです。そういうことから解決をつけていかなければならぬと思うのです。そこで勤務量等について調査される意図がありますか。
  28. 福田繁

    福田政府委員 昭和三十四年でしたか、調査局のほうで調査をした資料が出ておりますが、私どもとしてはあれは最初の調査でございまして、これはもちろん全国的な調査でございますが、最初の調査であったために、調査の趣旨というものが十分徹底しなかったうらみがございます。したがってほんとうの勤務量というものが正確に出てこなかったというように私は判断をいたしております。したがってこの勤務量を調査する場合には、いろいろな条件が必要でございます。ほんとうに正確に本来の教育活動のみについての勤務量というものが主観的に正確に出てまいりますと、非常に私ども参考になるわけであります。そういった意味でいろいろな条件を考えながら、抽出調査でございますが、絶えず私どもはやっておるわけでございます。昨年も実はかなり広範囲にこれを実施いたしました。しかしこれは勤務量を調査していただく該当の人が、ほんとうに良心的に調査を報告をしてもらえませんと、本来の教育活動以外のものが全部その中に入ってくるという危険性もございます。そうしますと信憑性が薄れるという問題もありますので、そういう点をいろいろと苦労をしておるわけでございます。しかし実際に、はたして教育活動にどれだけの時間をさいておるかというような点は、私ども知りたいところでございます。したがって機会があるごとに、そういうものを断片的ではありますけれども、抽出調査をやって、大体の傾向というものをつかんで、それを参考にしながらいろいろな施策を立てていくということは、私ども基本的に考えておるところでございます。
  29. 三木喜夫

    三木(喜)委員 十年前の学生生徒の凶悪犯罪というものは、中学校三年生だといわれていた。五年前は二年生、現在では一年生だといわれておるのです。しかしこれは表にあらわれたのが一年生であって、問題は中学校教育の中にあると思う。しかもこれは義務教育ですから、この中で先ほど申しました三年生の補導主任の先生、これは非常にえらいということを申し上げましたが、もう一つ問題として申し上げたいと思うのですが、こういうことをお聞きになっていないかどうかということです。  これは中学校の卒業式に警官が立ち会わなかったらいけない、こういうところがかなりある。そして校長先生は子供が卒業してしまったらやれやれと思う。喜ぶべき中学校の卒業式に、警官を立ち会わさなくてはならぬということ、校長は事故が起こらなければいいということで戦々恐々としておる。これも自信喪失ですね。もう社会悪のためにといいますか、子供たちをだんだん悪くさせられたために、事なかれ主義で進んでいく、こういうことですが、いまこういう状況に学校があるということは、各方面の状況を聞かなければいけないと思うのですけれども、そういうことを文部省としては認識されていないのですか。凶悪犯の年齢が下がって、いま高校一年生が問題の学年だということ、これは中学校に根を持っておる。そして校長は、端的に言うとこういうような訴えをしておる。先生もこういう状況を訴えておる。こういうことなんです。そういうところから、文部省が勤務量の調査というのは信憑性を争うために非常にむずかしい、こうおっしゃるけれども、そういうことは、文部省としては、学校教師がいまそういう位置に置かれておるということを強く感じておられるかどうか、それがやはり根本にあると思う。その点どうでしょう。
  30. 福田繁

    福田政府委員 はなはだ遺憾なことでございますが、御指摘になりましたような、卒業式に警官に来てもらわないと卒業式があぶなくて開けないというふうな学校があることは、新聞にも報じられておりますし、私ども、地方に参りまして、そういう学校をよく聞くのでございます。これは非常に遺憾なことでありますが、何が原因でそういう状態になるのかということを、いろいろケースはございますけれども考えてみますと、やはり基本的に教師に対する生徒の信頼感というものが何か欠陥があるのではないかということが共通の問題として考えられるわけです。したがって、本来、恩を受けて、昔のことばで申しますと、三尺下がって師の影を踏まずというようなことでなくとも、先生に対する尊敬の念とかあるいは信頼感というものを当然生徒としては持つべきものだと思います。ところで、そういう状態の学校におきましては、やはり先生自体も反省する点があるのではないかということが、当該地方の教育委員会等の方々にお会いして聞きますとあるわけでございます。これは生徒ばかりを責めるわけにもいかない。生徒にももちろん悪いのがおるのですけれども、先生自体もやはりそういう点は十分反省をして、ふだんから信頼を持たせるような指導のしかたというものをすべきではないかというように思うのでございます。非常に残念なことでございますが、往々こういう学校が地方にございます。私どもそういう点については、教育委員会の方やあるいは学校の現場の方にもできる限りその問題の原因を究明して、ふだんから十分な指導をしてもらうようにというように申し上げておるわけであります。
  31. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう問題のとらえ方もあろうと思うのでのが、何が原因かというと、教師に対する信頼感がない、こういう点も問題にしなければならぬ点かとも思います。しかしながら私たちが把握しておるのは、進学できない子供ですね。教室にいたずらをして出ていくとか、あるいは机の中にたんつばを吐き込んで出ていくというのは、たいていみなこういう進学組でない子供たちですね。それから学校で進学組の子供が短刀で突き刺されたというような事件も起こっておるわけです。ここで、進学と就職組のあることが私は問題だと思うのです。就職組のほうへ先生の手が行き届けば問題ないのですが、行き届かないのです。この現状をもう一ぺん文部省としてはよくつかまえてもらわぬと、病原菌がどこにあるか、病体はどこにあるのかということ、それがつかまえにくいと思うのです。その間における教師の不信頼ということがそこで起こってくるわけですね。就職組の子供が先生に対して、進学組のほうばかりやっておるじゃないか、おれらのことは考えてくれぬじゃないか、そこから出てくるわけです。私は、進学というものに対するとらえ方というものも、先がたからずっと言っておりますけれども、問題としてとらえなければならない。それから校長がやれやれと思うというようなこの考え方も、ただ教師に対する不信頼ということから校長がやれやれと思うのでないと思うのです。校長は、私に献身的にやっておると思うのです。子供を、就職の問題にしても、進学の問題にしても、補導の問題にしても、これは死にもの狂いでやっておると思うのです。信頼、不信頼の問題を越えた問題があると思う。そういう一つの社会機構なり、いわゆる進学テスト、こういうような問題に最近重点が置かれておるということから、学校に問題が起こっておるところをやはりつかまえてもらって、それに対するところの応病与薬的な考え方を持ってもらわなければいかぬと思うのです。そこで、いま信頼感という問題が出ましたので申し上げたいと思うのですが、第一の問題はこれでおきたいと思いますけれども、これに対する高等学校の生徒の意見が新聞に載っておりました。私はそれを読んでみますと——いろいろなことを私がはしょってものを言っておるように誤解になったらいけませんので、みんな言ってみたいと思うのですが、子供たちの意見の中にこういう意見があるのです。都立高校生の意見、異常性格の彼らと自分たちとは紙一重である。だから、この子供は大丈夫だと思っておる子供がやはり連鎖反応的にそういうことを起こさぬとだれも保証できないということを子供たちが言っておる。それから、道徳とは何か、これは口先だけで人間尊重、自分を大事にせい、こういうことを言うけれども、いまの学校教育は、自を大事にするということは、勉強して摂生して入試におくれない、利己主義やらエゴに通ずるのではないか、からだをもって教えろ、こういうことを子供たちは言っている。これは教師もわれわれもあるいは文部省も十分に考えなければならぬことばだと思うのです。ただことばの上だけではどうにもならぬ、エゴだけでは困る、あるいはまた勉強せい、勉強せいだけではいけぬではないか、こう思うのです。それからもう一つの問題で、協力すれば非行化は防げる。子供たちが協力すれば非行化は防げる、これも私は問題解決の一つのポイントではないかと思うのです。それから、たとえ失敗してもわれわれはぐれない、こういうことを子供が言っておるわけであります。こういうように考えていきますと、今度の道徳教育の問題も私はいろいろ問題点があろうと思うわけなんです。  そこで、道徳教育なり幼稚園教育の問題に入る前に、第二の連続強盗事件の問題も一つお聞きしておきたいと思うのです。これは社会教育局長、私立学校だ、こうおっしゃいますけれども、どういう私立学校ですか。
  32. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 ミッション・スクールではない私立学校と聞いております。
  33. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この学校は、内容はどういう教育をやっておるかということも御検討になりましたか。
  34. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 学校教育の内容につきましては、私は存じません。
  35. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この学校では、先がたも申しましたように、学生航路羅針盤十則、座右の銘十則、「敬」と「信」という額を掲げておる。そしてその中の一つに、「胸に打つ、釘(くぎ)よりつらい後ろ指、さされぬように、」ということが書いてある。しかしながら、事実は敬も信も踏みにじられ、校長は、いままで心配したことはあったけれども心痛したことはなかった、今度初めて心痛した、こういうことを言っております。   〔委員長退席、上村委員長代理着席〕  ここでも私はことばや徳目の羅列だけでは子供教育はできないということをやはり感じるのです。  そこで、これは週刊朝日に書いておるのですが、連続強盗の問題につきましては、三十九年二月三日の夜、東京山の手で自動車を使い連続六件の強盗をやってのけた高校生三人組、十六歳の子供非行歴はない、「学校家庭も「どうしてあの子が……」という始末だが、彼らの心には暗い穴ボコがあいていた。」というぐあいに週刊朝日には書いてあります。これは私は非常にいい表現だと思うのです。先がたも穴ぼこという表現があったのですが、今度も暗い穴ぼこがあいておる、こういうように言っておるのです。これは一体どういう暗い穴ぼこがあいておったか、私は質問することを前もって御通知申し上げておるので御検討いただいておるのだろうと思いますが、この連続強盗の中にはどんな穴ぼこがあいておったのですか、問題点をどういうふうに文部省としてはとられておりますか。
  36. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 私は一般論といたしましては先ほどのお話の件と同じように、やはり家庭の親の指導あるいは加護という面に行き届かなかった面も一つの原因としてあったと思います。
  37. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この連続強盗事件が起こりまして、そうして警視庁にいたしましても、それから世の青少年補導に関係ある人はみながく然としたわけなんです。そこでこの二回の問題が起こったときにあらためてこの問題をみな見直したわけなんですけれども、いまのお話ではどういう事件の内容かということやらあるいはどこに問題があったかということを御検討になっていないような気がするのですけれども、どうですか。えらい突き詰めて悪いですけれども、これは問題点ですから。
  38. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 当該の事件についてお話のような検討はいたしておりません。
  39. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それなら私申し上げたいと思うのですが、A少年は赤坂のおばの家に下宿し、父は大学教授です。母親は病身。B少年は母は西銀座で小料理店をやっておばあさんと一緒に住んでおる、父親は二歳のときに生別しております。C少年はおばの家に住んで母親は築地の芸者さんをしておる。その家庭を私はことさらに洗い立てるわけではないのですけれども、みな親不在の穴があいておるわけです。それから性格的にこれらの非行青少年は気は非常にやさしいですけれども力がない、こういうことがいわれております。これは東京家裁の森田判事の判断です。それから少年非行社会全体のゆがみであり、学校教育の欠陥、ぐらつく家庭教育、結局おとなと子供との間の信頼感がやはりない。先がたあなたのほうから出ておりましたが、この点が問題としてこれは森田家裁判事からいわれております。  それから高校に入学、進学戦争の圧迫で、それによって子供たちが非常に心性が動揺しておる、こういう書き方をしてあります。そこで東京私立中学高等学校協会の生活指導主任会では具体的方策を検討中ということが、これも週刊朝日に載っておるわけです。  そこでもう時間がございませんのではしょりますけれども、この問題で週刊朝日も取り上げ、週刊読売も取り上げ、それから週刊新潮もこれを取り上げております。そうしてそれらの論説を要約いたしますと、詰め込み主義の教育ということが一つ問題になっております。それから社会全体で考え直さなければならないということをいっております。だから衝動的な反抗として片づけてしまうということにはあまりにも問題が多い、このように押えておるわけですが、私もこの第二の事件については第一の事件とあわせて、これは早急に対策を立てていかなかったらいかないのじゃないか、こう思います。  それから続いて第三の、連続強盗が起こっているのは二月十二日青少年の脅迫犯が続いている。東京千住でまた中学生ら三人の連続強盗、これは通行人から強奪をしておるのです。続いて代々木では長野県伊那市から乗用車を強奪して無免許の少年四人組が犯行をやっております。今度はそのいずれもジャックナイフを持っているわけです。前のときにはおもちゃのピストルだったのですが、今度はジャクナイフを持っている。ジャックナイフとかあるいはおもちゃのピストルとか、こういう凶器に対しての問題も取り上げなければいけないのではないか。この点について社会教育上どのようにお考えになりますか。
  40. 斎藤正

    斎藤(正)政府委員 そういうような凶器につきましては一応青少年問題協議会で問題になりまして、その追放運動ということをやって、これは多大の成果をおさめたのでございます。新聞で承知しているところによれば、業者がそういうものを店頭に売り出さないというような措置をとったというようなことが伝えられております。私どもはそういう凶器が青少年非行にかんがみましてたやすく青少年の手に渡らないようにしていただきたいと思います。また凶器でなくて、実際の青少年活動などで有意義に刃物等を使う活動もあるわけでございますから、もう少し基本にさかのぼればそういう凶器の存在いかんにかかわらず、そういうものをそういう方向に用いない、積極的な意味にだけ道具が役立つということがわれわれ団体活動を指導する場合のさらに根本的な問題と考えております。
  41. 三木喜夫

    三木(喜)委員 青少年問題協議会の事務局長がおいでになっておりますので、この問題について青少年問題協議会としてはどのように取り上げられ、そしてどういうぐあいになさろうとされるお考えがお聞かせ願いたい。いまの連続強盗事件が三件相次いで起こっておりますね、その点です。
  42. 西田剛

    ○西田政府委員 中青協のほうでは非行防止を含めまして青少年問題に関し関係の各省庁と連絡をとって、なるべく盲点がないようにということで対策を進ゆてまいっております。とりわけ非行防止の観点につきましては、昨年青少年問題に関する重点事項ということで、健全な家庭をつくるとか、あるいは非行防止のためのいろいろの措置をとるとかいうような項目をあげ、特に青少年犯罪が重大化しておる傾向に対処しまして、非行少年非行集団対策要綱を各省と御相談いたしまして決定いたしました。その線に基づいて各省でできるものはすぐやっていただきますし、また予算等を伴うものにつきましては三十九年度予算にできるだけ具体化していただくように各省にお願いをしているところでございます。なお刃物を持たない運動の実施要領を昭和三十五年に決定しまして、それを関係方面に流して徹底をはかっているような次第でございまして、最近におきましても婦人団体特に東京都の母の会等では刃物を持たない運動というようなことも最近は活発に取り上げて実践運動に移しておられる様子でございます。三木(喜)委員 警察庁からもおいでになっておりますが、警視庁はこの連続少年犯の問題を非常に注目されまして異常な関心を持ってこれを取り扱う、このように発表されております。私はさもあろうと思うのです。どのようにこれに対して警察庁としては対処されているか、お聞きいたしたいと思います。
  43. 中原英典

    ○中原説明員 お答え申し上げます。いま先生がおっしゃいましたように、とりわけ平に関連した問題とそれに引き続きました連続強盗事件、その後もただいま御指摘のように頻発をいたしておりまして、私ども一同心痛をいたしております。警視庁ともさっそく打ち合わせいたしまして、とりわけ平の問題と三人組の連続強盗事件は、警察の立場から重要なケースとして、その動機から解明をいたしたい。したがいまして、警視庁でも第一の事件は実は茨城のほうに身柄がございますが、そこに係官が現在参りまして、その当時の状況、それから東京の警視庁におきましては家庭の状況、学校関係を含めまして、これを一つのケースとして徹底的に調べてみたいということでやっております。なお一般的にはどうも議論の段階ではないように思いまして、警察の職分といたしましては、一つは抽象的になりますが、早期発見の体制、二番目は環境の浄化でございますね。今国会にも風俗営業等に関連いたしまして法案を提出いたしておりまして不日御審議いただくと思いますが、そういった環境浄化、あるいは少年の福祉を害する犯罪を徹底的に検挙する体制を立ててまいりたい。なお学校、職場等との連絡につきましては、先ほど文部省局長さん方からお話いただきました内容の中に盛り込みましてやっております。一つだけ申し添えますと、特に集団というものを警察としても解明をいたしまして、その集団の性格あるいは中心人物がどういう者だ、だからこれを解体する場合にどういうことを学校なり家庭裁判所のほうにお願いしたらいいかということを、具体的な調査項目を定めまして現在やっておるわけでございます。少し抽象的になりますが、そういう次第であります。
  44. 二宮武夫

    ○二宮委員 ちょっと関連して。青少年白書というのをいただいて通読をいたしまして感じますことは、どうも少年に力が入り過ぎておる、青少年の中に少女の部類が非常に抜けておる感じがトータルの上でするのです。年齢が非常に低くなっておるとかあるいは集団化しておるとか、都市に集中しておるとか、あるいは悪質化しておるとか、あるいは件数がふえておるとか、こういうトータルが出ておりまするけれども、私はやはりこういう問題が派生をする、うん醸される素地というものは、第一次産業が非常に不振であるとか、あるいは社会的な環境がそういうものをうん醸していくような苦しい状態にあるというような、こういうたくさんな問題があると思うのですが、特にこれを見て感じますことは、女性に対する犯罪といいますか、近ごろ非常に中卒の女性等については引っぱりだこなんですね。ホステスであるとかウェートレスであるとかいうものに対して非常な誘惑の手が伸びてくる。こういうものに対して、これは消極的であるかもしれませんけれども、やはり刑法に触れる問題をたくさんかかえておると思うのです。青少年問題がどうかすると積極面にのみ重点を置いてそういう面が少し欠けているという感じがするわけなんです。  そこで中原参事官にお尋ねいたしますが、このトータルは三十六年ですが、私は三十七年、八年ぐらいの男女別の犯罪件数、こういうものが明瞭にされなければならぬと思います。三十七年でも、あなたのところで一番新しいのでけっこうです。  それから義務教育としては、福田初中局長にお尋ねしますが、長期欠席というものに対する対策は非常にむずかしいんですけれども、粗漏になっていやしないか。それらに対する男女別の比率というものが、あまりにも凶亜であり粗暴であるために、男子に目を向け過ぎて、女性の虞犯少年、あるいは刑法に触れる若い人たちの行き方、こういうものに対する分析が足りないのじゃないかという感じがいたすのであります。それらに対してそこに資料がございましたらお示しをいただきたいし、なければあとでもけっこうです。義務教育関係特に中学でいいのです。小学校にはそういうものは非常に少ないのですから、中学生の家出少女というものは、東京などに出てくるならば何とか食える。実際に食えている。それをたとえば労働基準法であるとか、児童福祉法に違反をいたしまして、それを雇用しなければ店がやっていけない、そういうようなところに非常に集中して雇用されているというような傾向が近ごろ強くなっているような私は印象を持っているのですけれども、これらの分析というものが少し綿密に分析をされなければならぬと思うのです。そういうところにやはり総合的な一つの青少年問題としての行き方を検討してみる必要があるのじゃないかというふうに考えますので……。
  45. 中原英典

    ○中原説明員 お答え申し上げます。  手元に犯罪少年の性別がございませんが、御指摘の一部であります家出少年の性別だけで、三十七年分でお答え申し上げておきたいと思います。合計が男子で二万六百十二名、女子で一万八千九百八十四名、以上が家出の性別の内容でございます。犯罪少年の分は、申しわけございませんが手元に資料を持っておりませんので教字は申し上げられません。
  46. 福田繁

    福田政府委員 確かに御指摘のように青少年犯罪あるいは非行の中には、そういった少女の関係するものがかなりあるようでございます。数は多くございませんが、警察庁等で発表されました資料に基づきましても、いわゆるわいせつ行為、性犯罪というようなものの中には中学生、高等学校生徒それから小学校の上学年というようなものもかなりあることは事実でございます。そういった点は確かに最近青少年の肉体的な発達が非常に早くて、女子生徒につきまして見ましても、以前よりも初潮が二年くらい早まっているというような状態でございます。そういった点からやはり肉体的な発達に相応した精神的な面も学校教育としては相当考えなければならぬ点でございます。そういった観点から申しまして、私どもはそういう子供の、特に少年だけではなく、少女に対する指導というものを学校教育の中で十分ひとつやってもらうように留意はいたしております。しかしなかなか個々のケースについて見ますと、指導の手が届かぬというようなことがございますが、先ほど警察庁のほうから申し上げましたように、そういう場合多くグループがありまして、そういう悪のグループの中でいろいろな犯罪非行が行なわれているということでございますから、そういったグループの活動に対する根を絶つというような指導が必要であろうと思います。
  47. 二宮武夫

    ○二宮委員 青少年問題協議会事務局長にも参考意見としてひとつお聞きしておきたいのですが、近ごろの集団暴力等におきましてもピストルとかあるいは凶器などを自分が持っているということが一番ばからしい集団なんです。これは必ず女性に持たせる、女性に持たせて先行させていって、そうしてその場で受け取ってやってまた逃げる、こういうかっこうでやるのです。これは非常に頭がいいといいますか、盲点をつくといいますか、そういう点で積極的に悪いことをするやつだけを押えておいたらいいと考えておると、案外消極的な者が利用されて、積極性の者になお輪をかける、こういうような方向が非常に強くなってきておるわけでございます。昨日第四分科会でもお願いをしておきましたけれども、これは中原さんにもお願いしておきますが、民間協力というものがなけれび警察庁だけではなかなかこの問題は、解決できないのです。したがって私どもは民間協力の芽が出るように、たとえば青少年を守る会とか、あまりにも多方面にそれを広げて、あらゆる運動に推し進めるというのではなくて、建設的に民間の人々の協力を求めていく。やはりこういういき方をしていきたいと思うのです。  それから、文部大臣にお願いしておきたいのですが、これは文部大臣、義務教育に関する限りは非常に責任を持ってやらなければならぬ問題でございますけれども、なかなか根が深いのです。あらわれた面は簡単に指摘をされますけれども、根が深い。しかも多方面にわたっているのです。相当勇気を出して、閣内でもってこういう問題についての発言をされて、あらゆる方面に働きかけないとなかなか問題の解決は困難であると思う。指摘をすることはごく簡単ですよ。しかし、問題を多少でもよい方向に進めるためには、相当の勇気が必要であるし、ねばり強きも必要であると私は考えている。それをやらないと、これは単なる論議に終わってしまう傾向が出てくるのじゃないか、私はこのように考えております。したがって、これは先ほど三木委員からも指摘されましたように、党派の問題ではございません。そういうことを考えておってこの問題はとうてい根絶のできるものではない。同時にまた、社会問題として非常に大きく問題を広げて、強く協力を求めないとできない問題ですから、文部大臣、ひとつそういう点については責任を持って、特に社会教育という問題は、これは選挙のとき自民党の皆さん方もいろいろ言われるのですけれども社会教育というのは実に表面的にきっと並べるだけで、ほんとうに深く深刻に掘り起こすというねばり強さはない。財政的に予算分析は後ほどやりますけれども、見てみなさい。社会教育くらいてんてんと八百長に並べている費用はないですよ。ですから、ほんとうに重点的にやっていかないとこの問題は解決をしない。私はこういう感じを持っているので、一応関連して発言を求めまして、意見を申し上げておきます。
  48. 三木喜夫

    三木(喜)委員 警察庁にもう一つお伺いしたいのですが、いま二宮委員のほうから女子の犯罪件数とか家出の問題について御質問がありましたが、私は、最近出ました「政府の窓」の「最近の少年集団非行」、これは青少年問題協議会で出されているようです。それから三十八年七月に出ました「青少年非行防止と保護更生」、これは法務省です。これは青少年問題協議会のほうです。それから警察庁のほうもちょいちょいとその数字を出されておるわけなんですが、三十八年の刑法犯少年、あるいは犯罪少年の統計は出ていないのですか。九月までのは新聞で見ておるわけなんですが、その点どうですか。
  49. 中原英典

    ○中原説明委員 お答えいたします。  三十八年は暦の上で終わっておるのでありますが、集計がまだできておりませんので、現在三十七年までの数字はここにございますが、三十八年のは三月に全部まとまる予定でございます。
  50. 三木喜夫

    三木(喜)委員 数字はまだ出ないのですか。
  51. 中原英典

    ○中原説明委員 三月になります。
  52. 三木喜夫

    三木(喜)委員 三月ですか。数字の上で見まして、三十六年が刑法犯少年は十五万八千人、三十七年が二十二万七百四十九人。それから犯罪少年のほうは、三十七年が六十四万五千七百六十五人、こういうようになって、年々増加の傾向をたどっておるわけです。三十八年も警察庁のお考えでは増加するだろうという見通しを立てておられるわけなんです。九月の統計でこのように累次累年増加してきておるわけなんです。そういうことから今度の連続強盗集団強盗、これに対して異常な関心を示して検討してみよう、こういうことをお考えになっておりますか。どういうことですか。
  53. 中原英典

    ○中原説明委員 現在御指摘の一般の犯罪の趨勢、そういう背景のもとで特に私ども強くショックを受けたということは申し上げられますが、都会地においてある年齢層の者が急にふえておるように思います。とりわけあるグループの者は、さっき先生のおことばにもございましたが、深夜喫茶等をたまり場として非行がどうもたいへん促進されたように思いますので、そういう一般の傾向と同時に、当該事件の背景につきまして私ども非常に関心を持っておるわけでございます。
  54. 三木喜夫

    三木(喜)委員 内閣官房広報室の三枝さんがおいでになっておりますのでお聞きしたいのですが、国政モニターが報告され、何ぶんかの規制措置が必要であるというように言っておられます。ここでマスコミと青少年問題ということを取り上げておりますが、私たちはこの内容が問題だと思うのです。この内容について、どのようにそういうようなモニターを生かして規制措置をとるかということをお聞きしたい。
  55. 三枝三郎

    ○三枝説明員 お答えいたします。私どもにおきまして、モニターのテーマはそれぞれ関係方面と連絡をとりまして決定して、毎月一回モニターをただいまお願いしております。集まった報告につきましては、それをまとめまして、事前に連絡しました関係方面に参考資料として配布しております。したがいまして、広報室としては、民間のそれぞれの問題についての声を一応まとめて、それを関係方面に配付するという役割りをしておりますので、対策その他については直接タッチしていないわけでございます。
  56. 三木喜夫

    三木(喜)委員 特に今度は青少年問題について深い関係のある環境方面についてかなりモニターの問題が出ておるわけです。それについて、どういう点を改正したいとお考えになっておられるか。あるいは自主規制をしたいと考えておられるのですか、それを言ってもらいたいと思います。これは社会教育とも関係いたしますし、警察庁のお話とも関係があるが、あたなのところは調査されただけで、また別に警察庁のほうではそういう環境の浄化をはかりたいというし、社会教育課はまた別にしておられるのですが、お互いに連絡をとってやっていかぬことには、やったことが死んでしまうと思います。どういう連絡をとられておるか、あるいはまた、どうそれを改正したいとお考えになっているか、それをお聞きしたい。
  57. 三枝三郎

    ○三枝説明員 いま申しましたように、でき上がりましたものは、原則的には次官会議、閣議に出します。それから、いま御指摘のテーマにつきましては、青少年問題協議会の事務局あるいは文部省関係の局、その他関係方面に差し上げて、対策の基礎資料に供しておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、どういうような考えを持っているかということは全然検討しておりませんので、御了承願いたいと思います。
  58. 三木喜夫

    三木(喜)委員 警察庁のほうへそれをお渡しになりましたか。
  59. 三枝三郎

    ○三枝説明員 次官会議を通じて渡しております。
  60. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その問題について警察庁はどういうぐあいにお考えでありますか。いま浄化と言われましたが、モニターがすでにいろいろな声を出しております。それについてどう連絡し、どういう対策を立てられているか。
  61. 中原英典

    ○中原説明員 ただいまの問題でございますが、ときどき御連絡をいただきました問題につきまして、必要なのは各都道府県警察に連絡をいたしておりますが、実際の現場の活動といたしましては、主要なところに——これは総理府の西田局長さんのほうからお答えいただいたほうがよかいかと思いますが、少年補導センターというのがございまして、そこで関係機関とも十分連絡して、現在の法律のもとでできることは連絡をしながらやっていくというたてまえをとっております。
  62. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私の申し上げるのは、これは大阪の方の意見ですけれども子供の性格をゆがめるというようなものやら、性行を悪くするような環境については、深夜喫茶だとかそういう商売は自主的に御遠慮願いたいという声が強いのです。今度のモニターもその声で一ぱいです。それをどういう工合に受けとめられるかということ、具体的に言えばそうなんです。
  63. 中原英典

    ○中原説明員 どうも答弁がずれたようで失礼いたしましたが、結局法律に関連いたしますことは、そのつど各個の法律をもって御審議をわずらわす次第でございまして、現在とりわけ指摘されております深夜飲食店の一部につきましては、先ほど申し上げましたように、今次国会に御審議をお願いしておりますが法律として取り上げる分は、いまのところそれだけでございまして、あとは自主規制なり御注意なりということを事実上やることはございますが、法律上の問題は、今次国会には風俗営業等取締法だけの問題にいたしております。
  64. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この問題につきましては、同僚の長谷川委員のほうからまた後ほどいろいろな問題について御質問いたしますから、そのときに譲りまして、私は続いて文部省に対して、もう時間もございませんから、要点的にひとつお聞きしたいと思います。  過般、道徳の問題で指導資料なるものが出されておるわけなんですが、これについていろいろ省内でも意見があったようです。しかしながら、一番の問題点は、いまるる申し述べましたように、ただ道徳教育の項目だけ並べても、これが実際に生活に密着するかということが省内でも私は問題になったと思うのです。新聞にはそういうふうに書いてある。その点の御検討はどうなっておりますか。
  65. 福田繁

    福田政府委員 おことばの中にありましたことについて申し上げますと、小中学校で実施いたします道徳教育の教師のたゆの指導資料、これはまだできていないのでございまして、三月の予定でいま作成中でございます。その内容についてのお尋ねでございますが、もちろん道徳教育につきましては、やはりいまの学習指導要領できめられておりますように、生徒の実践活動を通じて道徳教育をやるというたてまえをとっておりますから、したがってただ徳目を並べるだけだというようなやり方ではもちろんないわけでございます。そのやり方について、省内で何か異論があったようなお尋ねでございますが、私どものほうとしては、この道徳教育指導資料をつくりますにあたりましては、教材等調査会のメンバーがいろいろと審議を重ね、十分慎重にこれを資料として作成したのでございます。したがってその専門的ないろんな意見というものは、審議会の中では出ておりましたけれども、省内においてそれについてかれこれ意見が出たことは、私としてはないと考えております。
  66. 三木喜夫

    三木(喜)委員 これは新聞の報じておるところですが、小学校五十六万部、中学校二十三万部で、合計七十九万部用意をして、教育委員会並びに校長にも一冊ずつ渡す、これに対して八十万部用意をしておる。これに対する費用が三千百三十九万円、こういうことになっておるのですが、これは間違いないですか。
  67. 福田繁

    福田政府委員 部数は私はっきりいまここで覚えておりませんが、小学校の全学級担任並びに中学校道徳教育を実施すべき先生、その先生には全部行き渡るような部数を作成するという予定でございますから、御指摘のような相当膨大な数になろうかと思います。
  68. 三木喜夫

    三木(喜)委員 論議はまた次の機会に譲ることにして、御質問だけしておきたいと思うのです。その道徳の指導資料を出される理由をひとつ言ってください。
  69. 福田繁

    福田政府委員 この道徳の指導資料を出すについては、昨年教育課程審議会でこの道徳教育の問題を文部大臣から諮問されました。その答申に根拠があるわけでございますが、その答申では、現在の義務教育学校における道徳教育というものが週一時間の時間を特設してやっておりますけれども、学習指導要領を十分こなして、現場の先生方が道徳教育についてやれるだけの資料もないし、また学習指導要領をこなして、これをそれぞれの具体的な教案、指導内容として実践に移すのに非常に戸惑っておるというような現状が多くの学校で見られるわけでございます。そういう現状に立脚しまして、道徳教育をやるには、先生方の参考書としてそういう指導事例などを盛り込んで、具体的な資料を豊富に提供すべきである、これは文部省のやるべきことだ、こういうふうな意味の答申をいただいたのであります。したがって、私どもとしてはその教育課程審議会の答申に基づいて、現場の先生が指導しやすいようないろいろな内容を盛った、古今東西にわたる説話とか、あるいは訓話、それからいろいろな物語、そういうもので適切なものを選んで、そういうものを参考にしてやってもらいたい、こういうような趣旨で指導資料をつくるわけでございます。もちろんその指導資料のみをもって事足れりというわけではございません。これはやはり現場の先生がそれを参考にしながら創意くふうを加えてやっていただく、そういう趣旨のもとにつくろうとしているわけでございます。
  70. 三木喜夫

    三木(喜)委員 理由は、道徳の時間に教師は何をやってよいかてんでばらばらであるからして、したがって一つの指針を与える、こういうお考えですか。
  71. 福田繁

    福田政府委員 指針といいますと少しことばが適当でないと思いますが、私どもとしてはいま申し上げたように、各学校の先生が現在の小中学校の学習指導要領の中での道徳の時間の扱い方に困っておられるというのが現状でございます。したがって、その道徳の時間では一体学習指導要領を学年別にこなして、具体的な教案なり指導の内容というものをどうやってつくっていくか、そういうことに非常にお困りのようでありますから、それに対する参考資料として提供しようというのが趣旨でございます。
  72. 三木喜夫

    三木(喜)委員 問題点文部省内でも慎重論とそれから反対論があったと聞くのです。それはどこが問題かといいますと、先がたからずっと言 ておりますように、教師がこういう一つの事例を与えましたときに、教科書的にこれがなる、あるいは国定的にこれがなって、親切にすれば親切にするほど、それを口移し的に子供に持っていくというような、子供を見詰めるという努力を欠くのではないかという意見が出たのじゃないかと私は思うのです。そこに問題があろうと思う。先がたから徳目とかあるいはお説教とか、あるいは標語とか、こういうものを並べてみても、あるいはそれをこういうぐあいに指導せいということをどんどん書いてみたところで、それに重点を移してしまって、肝心の生きた主体というものを見失うおそれがないか、これが文部省の中で論議になった、慎重論と反対論があった、こういうように私は聞いておるのですが、それはなかったのですか。
  73. 福田繁

    福田政府委員 文部省の中ではそういうことはございません。
  74. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうするといま申しました点につきましては、どういうようにお考えになりますか、主体を見失うということが往々に起こるということですね。
  75. 福田繁

    福田政府委員 御承知のように現在の道徳教育のやり方といたしましては、教科書は用いない。先生の説話になり、読みもの、資料、あるいは小学資料その他いろいろなものを用いながら、具体的な実践活動を通じて生徒に体得させる、こういうような指導方法をとっているわけでございます。したがってこのいまつくろうといたしております。道徳の読みもの資料につきましても、これは指導のしかただと思います。もちろんそれをまる暗記させるとかなんとかというようなことではなく、そういう具体的な資料に基づいて、それを生かして先生が使っていくということに指導方法としては意義があるだろうと私は考えるわけです。そういう面から考えますと、地方の学校の先生では具体的に資料が得にくい。そういう点でやはり読みもの資料も小学資料もともに先生としては欲しがっております。そういう点で一つの例を示したということにはなろうかと思いますが、子供に対してもできる限り広い経験を与えるということは必要なことであります。これは自主的なもので、別に押しつけていくというようなことではなく、小さいときの子供にはやはりできる限りの広い経験を与えて、その中から先生が経験を通じて、あるいは実践を通じて指導していくということが現在の指導方法としては一番適当ではないか、こういうように私ども考えています。したがって、いまの指導資料につきましても、できる限りこれを活用して十分な指導をやってまいりたい、こういうことを重ね重ね念のために申しておるわけでございます。
  76. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この問題の論議はまた後ほど別の機会にするといたしまして、続いて幼稚園教育の問題につきまして、灘尾文部大臣はこれを義務制にするということを言っておられる。なお文部省といたしましても、現在幼稚園教育振興計画を立てられて、六〇%以上の幼稚園を設立する、そして幼稚園教育を振興していきたい、こういう計画なんです。私は幼稚園教育文部省が重点を置かれ、力を入れられることにつきましては賛意を表するものです。これは先がたからるる言っております子供たちの問題を、幼児の性格形成期において解決つけようという考え方から、私はこれは非常に賛成し推進しなければならないと考えておるのです。ただ問題は、ここで私立学校からいま反対陳情がどんどんくるのです。これは一体どうしたことかということと、保育所と関連を持ってやれという初中局長と厚生省の局長でしたか、次官でしたか、そういう通達が出されているわけですが。保育所との関連を持ってやれということは、非常に困難な問題です。この点どうするのかということも疑問なんです。これをお聞きして、論議は後に保留したいと思います。
  77. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いわゆる人つくりと申しますか、そのためには幼児教育がきわめて重要な意味を持つ、小さなときからやはりそのつもりで育てていかなければならないということは一般に言われておるところであります。私もその意見に従いまして、幼児教育の普及、充実ということを考えていかなければならない、そのような考えのもとに、幼稚園の普及、充実ということを取り上げまして、今後これを推進してまいりたいと考えているわけであります。ただいま私が幼稚園を義務制にすると言った、こういうふうなお話でございますが、実はそういう意味で申し上げたわけでも何でもない問題は、別に結論を持っておるわけでもございませんけれども、義務教育年齢を、今日の子供の発育状況から見ましても、あるいはもう少し下げてもいいのじゃなかろうか。これは幼稚園に関連を持つ問題ですが、問題は。そういう意味で一つの問題として話をした程度でありまして、いま義務制をしくとかなんとかいうことをきめて、そうして進めておるわけでも何でもございません。同時にまた、かりに義務制をしくといたしまするならば、これは幼稚園の段階において考えるか、あるいは小学校の問題として考えるかというふうな、いろいろ検討すべき問題もございましょう。同時にまた、施設の問題を考えないで、ただ率然として義務制にするというふうなことも実情に沿わないと思います。まずもって幼児教育が大事であるということならば、文部省としては、現在ございます幼稚園教育を普及充実したほうがいいのじゃなかろうかということで、せっかくその方向に向かってやってまいろう、こういうつもりでおるだけでございます。  なおまた保育所との関係でございますが、御承知のように、もともと幼稚園と保育所とはその設置の目的というものが違っておると思うのであります。しかし実際の状況から見ますと、幼稚園の普及状況にもあるいは大ざっぱにいえば都市に片寄っているという面もございます。また保育所のほうはどちらかというと地方のほうにかなり普及してきておるという実情もあろうかと思うのでございますが、いずれにしましても幼稚園も置き保育所も置くというふうな考え方でいま進むということになりますと、地方の実際からいいますといろいろな意味でまた困る点もあろうかと思うのです。われわれといたしましては、とりあえず保育所は保育所としてその本来の機能を果たすために普及整備をはからなければなりませんし、幼稚園は幼稚園として、いま申しましたようなことをやってまいらなければならぬ。その間保育所におきましては、幼稚園で取り扱っております児童と同じ年齢の子供を扱うわけでございますから、幼児教育を普及する、充実するという立場からいえば、保育所においても幼稚園で扱うような年齢層の子供に対しましてはやはり幼稚園と同じような程度の教育がしてほしいものだ、こういうことで、厚生省とも、内容的な面におきましても、また今後の整備のしかたにつきましても、お互いに協調しながら進んでいこうじゃないかということで、現にやっておるようなわけでございます。
  78. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この問題についてはまだ問題はたくさんございますから、時間がきましたので一応これでおきまして、また後にお聞きいたしたいと思います。
  79. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十一日金曜日午後一時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会