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1964-05-21 第46回国会 衆議院 農林水産委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午後二時八分開議  出席委員   農林水産委員会    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       大坪 保雄君    加藤 精三君       仮谷 忠男君    小枝 一雄君       坂村 吉正君    野原 正勝君       角屋堅次郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       湯山  勇君    稲富 稜人君       林  百郎君   商工委員会    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 始関 伊平君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君       浦野 幸男君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    大石 八治君       海部 俊樹君    神田  博君      小宮山重四郎君    中村 幸八君       野見山清造君    長谷川四郎君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君    加藤  進君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  肥料価格安定等臨時措置法案内閣提出第一五  六号)      ————◇—————   〔高見農林水産委員長委員長席 に着く〕
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより農林水産委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例により、案件を所管する委員会委員長である私が委員長の職務を行ないます。  肥料価格安定等臨時措置法案を議題といたします。
  3. 高見三郎

    高見委員長 本案の趣旨については、すでにお手元に配付いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保田豊君。
  4. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この前は、主として農業の見地から農林大臣に私は御質問申し上げたわけですが、きょうは、主として肥料工業といいますか、そういう観点から御質問を申し上げたい、こう思うわけです。  第一に大臣にお伺いしたいのは、大臣は、ア系肥料工業というものの特質といいますか、こういった点をどういうふうに認識されておるかという点を、私は一つ伺いをいたしたいのであります。  自分の意見を先に言ってはぐあいが悪いのかもしらぬけれども、私から言わせますと、御承知のとおり日本肥料、特にア系肥料は、片方において国内の非常に零細な農業というものを一つの基盤にして、成長してきたものであります。しかもア系肥料工業そのものは、非常な装置産業であります。しかもアンモニア工業自体が、いま非常に大きな転換期にきているというところだと思うのであります。こういうのが一番国際的に非常に大きな輸出工業として、装置工業なるがゆえにそういう方向へ進まざるを得ない、こういう体質的に矛盾を持っておるものであります。この体質上の矛盾というものを、政策を立てる者、運用する者がはっきりつかんでおりませんと——特に現行二法のように、いままで肥料需給価格等に厳格なワクがはまっておる場合は、逸脱することは少ないと思う。今度はいわば新法になるということになりますれば、この厳格なるワクが実質上ほとんどなくなってしまう。そういうことになりますと、こういうア系肥料工業自体の持っている基本的な性格上の矛盾といいますか、こういったものが非常な災いをなす。特に通産省の従来の立場というものは、どちらかといえば国の農業との連携ということを軽く見て、主として輸出工業ないしは近代工業という観点からだけで、問題を処理しようとする傾向がいままで強かった。私はそういう点から見て、この機会にあらためて、日本のいわゆるア系肥料工業、あるいはさらに大きく言えばアンモニア工業自体特質というものを、はっきり政府が認識してかかるということが必要だと思うのですが、まずこの点についての確たる通産大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  5. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御説明をいただきました特徴は、私はそのままそのとおりであると考えておるわけでございます。そこで装置産業であるというところに、一つ特徴があるわけでございまして、装置産業でございますから、どうしても設備を動かしていかなければならない。動かすということになると、相当量肥料ができる。また硫安ができ、硫安ができた場合に、国内だけでは間に合わないで、国外にも出すようにしなければならないという特徴が、どうしてもここで出てくるわけだ、こう考えておるわけであります。
  6. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで私は第一に通産大臣にお聞きしたい点は、現在までのア系肥料合理化の結果、並びにこれからの合理化がどういうふうな方向をたどるのかという点について、はっきり大臣の御見解を聞いておきたいのであります。この点について、基本的な点だけでけっこうであります。私はこれについて、いろいろ具体的な問題を次々にお伺いをいたしますが、この基本点についてどう認識をされておるか、お伺いいたします。
  7. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はいままでの法律とかわって、この法律が一応成立した形において見たお答えをしたほうがいいのではないかとも思うのでありますが、いままでと変わっていきますことは、これはあなたも御承知のとおり、いわゆる内需中心にして、そして輸出産業として育てていく、そして価格の問題については需要者供給者と話し合いできめる、こういう基本線でございまして、いわゆる前のバルクライン方式による価格決定というものをとらないということでありますが、同時にまたもう一つは、両者が、需要者供給者の間で話をいたしましたときに、非常に不合理な価格が出る。たとえば輸出関係の赤字を国内に転嫁させない、こういう方針をとっておるのに、それが実現したというような場合においては、われわれ政府としてはこれを是正を命ずることができる、こういうことになっておるので、それを厳重に行なっていきたい。  それから、何といっても国内における需要を優先させるということでございますから——装置産業でございますから、ある程度はできる。できるうちで、国内はどのくらい必要だということになれば、それをまずリザーブしておいて、残りを輸出に向ける。したがって、輸出の量というものは認可でやっていくという形をとる。同時に輸出をやる場合におきましては、東南アジア等においては、みんな向こうの政府が一手買い入れのような形をとっておりますので、こちらも一応一手で売るような仕組みにしておく、こういうようなやり方をいたしておるのであります。  硫安自体についてはこういうことでありますが、しかしアンモニアというものが硫安だけに使われるかというと、そうではございません。その他の化学の面における原料にもなるわけであるし、硫安以外の肥料にも——硫安という名前がつかない。アンモニア系肥料ではあるが、硫安ではないというようなものにも使われている。こういうような特性がございます。そこで合理化をしていくという段階からいいますと、アンモニアというものをほかの方面原料にも使うようなことをしていくことのほうが、いわゆる合理化になる場合もあり得るわけでありますからそういう動きも今後出てくるであろうということは、想定いたしておるわけであります。
  8. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私の質問があまり抽象的であったので、お答えがいただけなかったようなので、それでは具体的に聞いてみます。  大体いままで二回にわたる合理化を、政府財政資金を相当出して——約千五百億近くもこの方面に対して、二十九年以来ずっと投資をしてまいった。それは御承知のとおりガス源転換ということが第一であります。さらにその次は、従来は合成硫安の増産を中心にしてきたのを、尿素高度化成あるいは塩安、こういうような肥料形態を変える方向重点を置いて、いままでやってきたわけです。これからの第三次計画は、さらにそれから一転しまして、むしろ合成硫安生産比率をずっと少なくしていく。そして尿素その他の、いわゆる肥料形態からいえばやや高度のものをどんどん進めていく。特に尿素中心であります。そういう形の上に、さらにもう一つ今度はアンモニア工業自体を伸ばしていく、こういう方向転換をしてまいっておるわけであります。政府の出しているこの第三次の硫安工業体質改善のための主要合理化工事一覧表というのを見てみましても、ほとんど肥料形態転換工事が大部分であります。その内容は、硫安高度化成方向が大部分であります。それ以上に、アンモニア多角的利用等工事というのが、重点を占めておるように思うのであります。たとえば第三次の合理化資金の総額が二百六十六億、そのうち百六億が開銀その他の融資でありますが、この二百六十六億円がこれからの三十八年度以降の合理化資金ということになっているわけです。その内容を見ますと、肥料形態転換に要する合理化資金が八十七億円、アンモニア多角的利用のほうに百七十九億円、こういうふうになっておるわけであります。したがって肥料内容というものが、少なくともア系肥料なりアンモニア工業というものは、ここに質が大きな転換をする、非常に複雑になるわけであります。したがってそういうところからくるあれはどういうことになるかというと、硫安比率というものが、肥料の中では非常に少なくなっているわけです。これは輸出の面についても内需の面についてもそうであります。それから尿素その他の比率が非常によけいになる。そうしてさらに今度はアンモニアの、いわゆる織物関係とか、あるいは合成樹脂関係とか、つまりそういうほうの原材料生産というものが非常な比率を占めている。しかもこれが一つの工場でいわゆる原生産をやっていかなければならぬ、こういう複雑な関係になってまいるのであります。  そこで私は第一にお伺いをいたしたいのは、今度の法案では、御承知のとおり肥料需給見通しの中には、アンモニア系需給見通しの中には、尿素その他も含まれております。しかし一番中心になる価格の問題については、合成硫安だけが問題になっておるわけであります。あとについては、全然これは無干渉だということになるわけであります。輸出の面については、輸出会社で扱うのは硫安だけだ、ほかのものは扱わない、こういうふうなことになるわけであります。これは少しおかしいのではないかというふうに思うのであります。とにかく四十二年度を三十六年度と比較してみますと、たとえば硫安は三十六年度は二百三十二万トン、そのうち合成が百八十二万トン、ところが四十二年度になりますと、硫安は百八十万トン、そのうち合成硫安生産は八十四万トンになる。尿素はどうかというと、三十六年度は百六十五万トン、それが四十二年度は二百四万トンになります。高度化成はどうなるかというと、三十六年度は生産が四十八万トンであります。ところが四十二年度は百八万トン、塩安は三十六年度が三十九万トン、ところが四十二年度になると五十九万トン、こういうふうになるわけであります。こういうふうになってきますと、今度の新法のように、需給見通しのうちには尿素その他を含めてありますけれども、しかしながらおもなる国の規制なり法の対象としておりますものは、硫安だけであります。硫安肥料の中の指導力というか、指導性というか、指導的規正性格を失いつつあるのが今日の現状であります。この点については、なおあとで詳しく申しますが、こういう際に今度の法案で一応需給見通しについてだけは、尿素その他を入れてあるけれども、この法律の一番のねらいでありまするところの、いわゆる需給調整なり、輸出調整なり、特にそれに連関する価格の問題について、これをはずした理由はどこにあるか。肥料工業がいま大きく転換しつつあるにもかかわらず、こういう一番重大な点を抜かしたところに、この法案のごまかしがあると私は思うのです。これはどういうわけですか。
  9. 倉八正

    ○倉八政府委員 大臣からお答えする前に、事務的にお答え申し上げますと、第一に、ここで肥料価格決定の際に、硫安ということを法律で指定する。法律に明記しまして、必要があればその他の肥料政令で指定しまして、価格の取りきめの対象にし得るという仕組みになっております。硫安だけを取り上げましたのは、現状におきましても、ここ二、三年内におきましても、あるいは慣例的にも、肥料中心である硫安の値段がきまれば、ほかのア系肥料は、いままでの格差、あるいは取引習慣によっておのずからきまる、こういうことになっておることも御存じだと思いますが、そういうことも前提にして、この硫安というのをここに明記したわけでございます。しかしその他の肥料をどうするかといういまの久保田先生のお話は、硫安ウエートというのがだんだん落ちていっている、今後高度化成なり、あるいは尿素というのがそれにかわっておる、その場合に、硫安だけ指定するのはちょっと時宜に適しないのではないかというふうな御質問でございますが、これについては政令にも書いておりますように、必要があればほかの肥料もここで指定するということになっておりますから、それは今後の情勢の推移を見た上で、そういう措置をとることもある、こう考えております。
  10. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それは確かに法も、必要あればほかの肥料も指定するということは書いてあります。しかしこの前お聞きしたときははっきり、当分というか何というか、法文にはこう書いてあるが、対象として縛るものは何かというと硫安だけだ、こういうお答えがあったから、いま申し上げましたように肥料工業全体が大きく転換する中に、しかもウエートが急速に落ちている硫安というものだけを対象にするということは、初めから不適当じゃないか。むしろウエートがどんどんすべての点から大きくなってくる尿素は、少なくとも当然取り入れなければならぬ要素ではないか、こう私は思うのです。高度化成については、いろいろ内容が複雑でありますから、すぐにこれも取り入れるほうがほんとうですけれども、むずかしい点がありましょう。しかし少なくとも尿素というものは、これを中に入れていかなければ、これからの肥料政策は骨抜きだ。半分だけ縛って、半分は野放しだということになると思います。この点についてはどうですか。農林大臣はどう思いますか。私はこれはあとで詳しく数字を申しますが、あと二、三年たてば硫安というものの比率はぐんと落ちます。そうしてほとんどア系肥料対象というものは、尿素なり高度化成なり塩安になってくる。これはきまりきって、る。そういう際に、一番ウエートが小さくなって細っているものを、従来の慣習上これだけ縛っておいて何になりますか。この点は農業政策から見ても非常におかしいと私は思う。この点はどう思いますか。
  11. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 硫安対象にしておりますけれども、決して尿素とかあるいは高度化成対象としていないのではない。硫安との成分の比で、価格決定におきましても、その他についても、計画見通し等につきましてもできるわけでございます。成分から割り出せるものですから、別に特に掲げておりませんけれども、対象としては、それを対象としてやっていくことはあえて差しつかえない、私はそういうふうに考えております。
  12. 久保田豊

    久保田(豊)委員 価格の問題については、あとでまた突っ込んで御質問しますが、たとえば今度のように、全購連と肥料メーカーのカルテルができる。これとの取引の一番中心の題目になるのは、何といっても法律に基づくものは硫安だけでしょう。ところが硫安国内のあれはどうなるかといいますと、政府計画によると、三十六年度は硫安生産が百八十二万トン、ところが四十二年度になりますとこれが八十四万トンに減ります。そうしてその需給関係を見ますると、内需のほうが三十六年が百四十六万トン、輸出は八十六万トン、ところが四十二年度になりますとこれが百二十二万トン、そうして輸出のほうが五十八万トンということになる。これに対照しまして尿素を見てみますと、生産は、三十六年度は大体百六十五万トンで、なお硫安より低いわけです。ところが四十二年度になると二百四万トンになっております。硫安よりもはるかに量的に大きくなってくる。しかもそのうちで内需が九十三万トン、それから輸出の面につきましても百十一万トン、こういうふうになっております。そのほかに高度化成塩安を入れれば、もっと肥料形態の高度化したものの比重がよけいになって、硫安というものはもう肥料の種類ではなくなっている。こういう変化をはっきり政府計画をしておりながら、今度の法案にはあえてこれをはずすという。そんなばかなことはない。特に農業政策観点から言うならば、私は非常な間違いであると思う。価格その他の問題についてはまたあとで突っ込んで御質問しますが、こういう数字をちょっと見ただけでこういう大きな変化をしている際に、肥料の主力になるものをはずしておいて、従来の、小さくなってだんだん重要性の少なくなるものを一生懸命押えてみたところで、どうにもならぬじゃないか。その押え方もいままでと違って、のらりくらりと逃げられるような押え方をする。これでは野放しにしたと同じことになるのじゃないか。農業関係としていいのかということを申し上げておるわけで、この点について大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  13. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は決してはずしてないと思います。たとえば輸出許可等におきましても、尿素などをはずしていくというわけにはまいりません。ですからそれを除外しているということではございません。硫安と同じような扱いでやっていくということに私は了解しておりますが、なお詳しくは事務当局からお答えいたさせます。
  14. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 いま大臣から申し上げましたように、輸出の面におきましては、この法律に基づきますのは硫安でございますが、輸出貿易管理令によって現に尿素等輸出規制をやっております。したがいましてその点においては変わらないわけであります。またその基礎になります需給見通しにつきましては、この法律にありますようにア系全体−硫安も、尿素も、塩安も含めましたア系肥料全体についての需給見通しを立てるわけであります。  最後の価格の点でございますが、価格につきましては、この法律では硫安その他政令で定める特定肥料となっておりますが、これはいま御指摘がありましたように、現行の二法のもとでは硫安についてマル公をきめておったわけであります。その方式を踏襲いたしまして一応硫安を取り上げて、あと成文化でおのずからきまるという面もありますので、さしあたりは取り上げないということで申し上げております。しかしながら生産や消費の構造が御指摘のようにだんだん変わっております。したがって今後の推移によりましては、政令で指定することによりまして、必要により取り上げることができるわけでございます。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもはっきりしないですね。とにかくもうア系肥料中心が変わってきたのですよ。これから変わることを政府が見込んで合理化計画を立てているのじゃないか。にもかかわらず、もう現実に中心になる、政府中心にしようという肥料をはずして、これからだんだんわき役になっていこうという硫安だけを押えるという考え方が、うまくいくかと言っているのです。そういう必要があったら、政令指定でやりますということでしょうけれども、初めからなぜ考え方を変えてやらぬかということを言っておるのです。この点については通産省のほうからもお聞きしたいが、もう一つ問題があるわけです。それはアンモニア工業が同じ装置の中で、同じ企業の中で、非常な大きな比率を持っておる。アンモニア工業という一つ企業の中におきましても、大体肥料の占める部分というのは四十五年度で二五%ぐらいでしょう。その中で硫安の占める部分というのは九%ない。もっと少なくなってしまっている。そういうふうに大きな変化があるときに、肥料だけは中心になるものが尿素なり高度化成なりに移ってきている。政府も移そうとしている。そういう政策をとっておる。その需給調整なり価格調整の際には、そういう変化をしていくものについて、なぜ政府は正しく貿易の面からも、国内需給調整、特に農業発展の面からも、ここの踏み切りをせぬのか。踏み切りをされると硫安資本家利益が薄くなることになるから、こういうところを突っぱねてしまって、だんだん中心でなくなるものを一生懸命押えてみて、これで肥料政策がなっておりますというかっこうだけつくることになりはしないか、こういうことを言っておる。おかしいじゃないか。この点はひとつ両大臣からもう一度はっきりとお答えをいただきたい。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど来農林大臣からも御答弁申し上げておりますとおり、必要があればそういうものを利用することになっておりますので、われわれとしてはこの趣旨に沿ってやっていって差しつかえない、こう存じておる次第であります。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 尿素その他を含んでおると御了解くださってけっこうであります。そういう意味で取り扱います。価格問題等につきましては、先ほど私どもの経済局長から申し上げましたように、政令の中に入れる方針で進みますし、あるいは輸出の面においては管理令もありますので、これは当然輸出認可という対象に入りますし、あるいは需給計画等におきましては、もちろん尿素等を入れないで需給計画見通しなんか立ててもあまり意味をなさないので、これを入れるということに御了解願ってけっこうです。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それではもう少し具体的な点で御質問申し上げますが、第一に今後の需給見通しで、大体において拘束力はなくなるわけだ。私がこの前も質問したとおり、輸出については、硫安については輸出会社を通ずるということですが、一つワクがある。また尿素その他については管理令に基づいて輸出をやるから、これによって外側のワクだけはできておる。   〔高見農林委員長退席二階堂商工委員長着席〕 内側のワクはみなはずしたわけだ。そこで二つの問題を基本点としてお尋ねいたしますが、一つは、たとえば硫安比率内需においても非常に低くなる。百二十二万トンにしかなりません。全体として四十二年度を一応目標として見ると、内需が大体三百五十万トンの中で硫安はわずかに百二十二万トンです。したがって約二百三十万トンというものは尿素高度化成塩安等であります。この需給計画国内ではどうやるか。硫安だけをある程度押えてみたところがどうにもならぬでしょう。ア系肥料全体についてバランスをとってやるという点については、具体的にどういうふうに処理される方針か、この方針をはっきりお伺いしておきたい。  もう一つは、こうして硫安比率をどんどん下げる。これはいわゆる独占の支配するアンモニア工業自体利益から割り出した合理化方針です。しかし日本農業の今日の技術的な諸条件、発達等から見て、硫安比率をこんなに下げてはたしてうまくいくのかどうかという点です。たとえば尿素のほうが窒素分は多いとか、高度化成のほうが非常に使いよいというけれども、これは日本農業の今後のほんとう発展からいうと、単肥と合成肥料、しかも合成肥料会社でちゃんとつくったほうがいいのか、あるいは農民がそれぞれの作物なり自分土地柄に合わせて、いろいろの肥料要素として自分で配合するほうがいい場合も相当ある。こういう自由の余地をほとんどとってしまって、尿素高度化成塩安というふうに——なるほど肥料としては非常に高度なものであります。硫安よりはいい。しかしながら日本農業のいわゆる技術的基礎という点から見た場合に、こういう肥料形態は必ずしも万全じゃないと思う。こういう点について農林省として——通産省はそんな百姓のことはわからぬでしょうが、こういう反省があったのかなかったのかという点も、私は一つの問題点にはなろうかと思います。もう一つ輸出の面から見ましても、共産圏あたりはこういう技術問題の解決はだんだんできると思いますが、日本肥料輸出先というのは、御承知のとおり大部分未開発地帯であります。こういう未開発地帯に、尿素とか高度化成とか塩安とかいうふうな——肥料そのものとしては非常に硫安に比べては高いものである、こういう高いものを、これを生かすだけの技術的な条件のちゃんと整ってないところへどんどん出していくということが、はたして得策かどうかということを私は疑わざるを得ない。こういう点について、日本肥料輸出需要先の農業事情の発展段階、こういうものと対照して考えた場合に、こういう肥料政策なり合理化政策というものがいいかどうかということは、私は問題になると思う。この二点について、要するに尿素あるいはこういう高度化成等を中心にした輸出構造自体にも問題がありますが、その基礎にもいま問題がある。こういう点を私は疑わざるを得ない。こういう点についてどれだけの御検討をされ、そうしてどれだけそういう点を準備された上で、こういう計画を立てられたのか、この点を私はお聞きしたいのであります。
  19. 倉八正

    ○倉八政府委員 やや技術的になりますから、大臣から答弁されたことを私から補足説明させていただきます。  ここに掲げられました数字で、いま久保田先生指摘数字というのは、生産能力という意味は、品種別の生産能力をこれに合わせるという意味ではなくて、将来の肥料の形態の見通し需要面からこうなるであろうということで、この数字が出ておるわけでございます。したがいましてもしもこの需要がいかないで、いま御指摘のように硫安内需が百二十二万トンではなくて、たとえば、六十万トンになった。すなわちいま御指摘数字、百二十二万トンが上がったという場合におきましても、日本肥料需要には何ら差しつかえないのでございます。と申しますのは、アンモニアを硫酸と一緒にすれば硫安になるし、炭酸ガスと一緒にすれば尿素になるのでございます。同じアンモニアを硫酸にくっつければ硫安が、炭酸ガスにくっつければ尿素ができるわけでございますから、したがいまして、将来の需要が不幸にしてこの見通しどおりにいかなくても、日本アンモニア系の窒素というのは、生産面からは絶対に心配はないのでございます。その点ははっきり申し上げられるわけでございます。  第二番の輸出の問題でございますが、輸出の問題も御存じのとおり、われわれのほうから塩安を買えとか、あるいは尿素がいいから尿素を買っていただいたらどうでしょうかというような要望ではなくて、みんな需要国から塩安を売ってください、あるいは尿素を買いたいから日本から出してくれぬか、こういうことでございまして、この硫安比率を下げるから将来輸出に何らかの不安があるということは、さっきの話とあわせまして、私は別にそういう心配は起こらない、こう考えております。
  20. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 いま通産省のほうから説明がございましたほかの点について申し上げます。まず需給見通しとその実施にあたりまして、尿素塩安が非常に大きくなっておるのに、需給計画自体がそうなっておるのに、硫安だけを取り上げては、実施がうまくいかないのではないかという点でございますが、先ほども申し上げましたように尿素塩安等につきましては、輸出貿易管理令で同じ需給計画ワクの中で、輸出の実施をいたしておるわけでございます。それから高度化成尿素等がふえてまいりましたことについて、農業上あるいは農政の遂行上問題があるのではないか、十分検討したかという点でございます。これは確かにしばしば問題になる点でございます。私どもも検討を続けて、特に専門家に集まっていただきまして、需要懇談会というものを組織いたしまして、その意見を常に聞いてまいったのでございます。その結果としての合理化計画における先の生産見通しが、ただいまあげられたようなものになっておるわけでございます。最近高度化成がふえてまいっておりますことについて、いろいろな批判もないわけではございません。ただ非常に銘柄がたくさんございまして、これは改良普及員等の意見を聞けば、農家としてはその土地に適した銘柄を選ぶことは可能でございます。また現在の農業から申しますと、御承知のように非常に労力が減ってまいっておりますので、高度化成のように、労力節約効果の非常に高い肥料を施用することは、他の面に若干の問題があっても、農家としては経営上むしろ有利である、こういう傾向で最近の高度化成の消費の増加ということは、生産のほうがつくり出したという見方もございますけれども、農家の需要がふえたから生産もふえたという見方をするほうがすなおではないか、こういうふうに考えておるのでございます。確かに硫安ウエートが低下しつつございますが、これにつきましては、いろいろ意見もございますけれども、硫酸根の肥料であるということで、硫安の施用の弊害が出る面がかなりございます。むしろ尿素転換したり、石灰窒素を施用したり、いろいろなくふうが行なわれておるわけでございます。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まあ一応農林省としてはこういうところで答弁をするのは、その程度の答弁をしなければしようがないでしょう、ざっくばらんに言って。しかしどうも私どもの見るところでは、もう少し日本ア系肥料として、硫安なり尿素なり高度化成なり、特にいまのところ、いまお話のように高度化成がめんどうくさくないものだから、だんだんよけいになる。ところが地質が非常に違うし、作物によっても非常に違うわけです。したがってわりあいに高いものを入れても、肥効の少ないという場合が非常に多いわけです。ところがもう扱うことがきまってしまうと、そればかりを農協なんかが押しつけてくる。一面において単肥をそれぞれの地質なり、作物に合わせて、生育樹種によって農民が自主的に配合してやるという技術がだんだん失われていく。そういうことをやったほうがはるかに安くて効果がある。多少手間はかかりますけれども、はるかに肥効があがって、作物がよくできるという場合が非常に多いのです。ところが片方においてこういう政策をとってどんどん尿素になり、それから片方で高度化成になって、そして銘柄はいろいろですけれども、それぞれ配合してしまってあるのですから、そういうものを押しつけられると——これはなるほど労力も非常に不足しておる。しかも労力の内容すら御承知のとおり老人と女になって、だんだん農業技術というものがある意味においては低下しておるわけです。それに拍車をかけるような結果になりはせぬかというふうに思うわけです。こういう点については、私はもう一度農林省としては技術的に再検討をすべきではないかというふうに思うわけです。さっき通産省のほうから、尿素であろうと、硫安であろうと、要するにこれは炭酸ガスをぶっかけるか、硫酸でやるか、それによっていつでも転換できるというが、そう簡単にはいかないと思うのであります。ですから、こういう比率合理化を進められることがいいかどうかという点についても、輸出の面なり、あるいは国内農業の面から見て、もう一度農林省と通産省はもっと真剣な突っ込んだ技術的な検討その他もやってくれることがいい。なるほど輸出のほうも、あなたの言うように向こうから買いたいというから尿素よけいに売ったのだ、高度化成をやったというが、これは注文取りが行ってちゃんとすすめていますよ。普通の硫安をとるより、こっちのほうがいいと言ってすすめるから、向こうはあまり知識がないから、買っているわけです。結局会社のエージェントみたいな者が一生懸命に売り込みをやるから、そういうことになる。これはきまり切った話です。私は特にそういう点から見て、もう一度そういう点で検討を要するのではないかというふうに思うわけです。  そこで具体的な問題に入りまして、今度の需給見通しにはア系肥料は全部入る。しかし全購連と肥料メーカーのカルテル、これとの契約の需給計画なり何なりは、この前のお話では各会社一つ一つやるのだということですが、こういう点が全般として地域的に時期的にうまくいく見通しですか。要するに国内需給計画については、政府は無介入ということでしょう、行政的には在庫その他を調べていろいろ指導するけれども。しかし契約の対象者はカルテルと全購連ではないわけですね。全購連と個々の肥料会社、こういうことになるでしょう。肥料内容比率がどんどん変わってくるときに、これが時期的あるいは地域的に運用がうまくいきますか。もっとはっきりいえば、百姓のほうは硫安をもらいたいと言っているけれども、硫安がないから尿素で間に合わしておけということが出ないかということです。硫安がほしいのだ、あるいは単肥で三つ、干して農協のほうで配合してやりたい、しかしめんどうだから高度化成をとっておけ、こういう押しつけがうんと出てくる危険性がありはせぬか。こういう点についてはどういう調整をするつもりか。また契約を指導する場合において、契約対象にこういうものを入れて、そして政府がどういう行政指導なり何なりをするつもりかという点を、もう一度はっきり確かめておきたい。
  22. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 現行の二法のもとにおきましても、政府が最高販売価格をきめた後におきます取引は、個々のメーカーと全購連あるいは商人系のそれぞれの個別の契約でございます。政府としては、行政上需給調整をやりますのは、全体として在庫の量を調整する、輸出調整する、そういうことに重きを置いてまいったわけであります。もちろん、たとえば豪雪等があります際には貨車の手配をするとか、行政上のいろいろな措置は伴っておりますが、その点につきましては今後も大きな変更はございません。いまの農家の望む品物——硫安でなくて尿素を望んでいるのに、その地点には尿素が十分にいかなかったとか、そういうことは尿素でも硫安でも、相当余裕を持って大量に在庫を持つというような、商売の技術的に必要な量を越えて十分たっぷりどこにも置いておくというようなことをいたしますれば、絶対そういう心配はないわけでございますが、それは地区的には間々あり得ることだと思います。しかし全体としては、現在は豊富にございますので、大体農家の要望に沿って——個々の農家の末端まで行き届くということはなかなか困難でございますが、現段階においては需要の計算をいたしますときに、事前に農業団体なりあるいは商人系統の需要見通しをよく聞いてつくっておりますので、大きな問題が起きるようなことはないと信じております。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私はその点に大きな不安を感ずるのは、ア系肥料工業内容が非常に多角化してきたわけですね。一つは、製鉄なりその他に基礎を置く硫安について見れば、回収硫安なり副産硫安なりが多くなってくる。生産は何で動くかといいますと、硫安なり肥料需給や何かで動くのではない、製鉄市況そのものによって動く、こういうことです。それから輸出のほうが非常に盛んになってきて、輸出の依存度がよけいになってくると、海外市場の状況によってこれまた非常に動く。もう一つは、アンモニア工業自体は、肥料と同じ要因によって生産が動くわけではありません。そうではなくて、ほかのいろいろな経済事情によって、この生産なり何なりが変動してくるわけです。その変動の要因が非常に大きくなっている。こういうふうにして、原料の面から見ても、需給関係から見ても、こういうふうに非常に複雑になっただけに、生産の事情というものは——価格の点はあとで触れますけれども、生産自体を動かす要因は、大体において非常に複雑になってきている。一つ方向ですべてが、たとえば増産なら増産というふうに全部が同じような方向で、その時期時期に動けば生産需給もうまくいくわけです。ところがこれからはそうじゃない。アロケーションの大きい、違った要因が作用してきて、このア糸肥料全体が大きな影響を受けるという状況になってきておるわけです。またそういう方向へいかせようとして、政府合理化方針を立てておられるわけです。そういう際に、今度のように大体において国内における肥料需給計画ワクを非常に大ワクだけ、外側の輸出ワクだけをこしらえておいて、中は適当にやれというようなかっこうでは、生産需給のアンバランスが——まだ現在はやや調整のついておる時期ですからよろしゅうございますけれども、経済情勢等が相当変化してくるという時期になると、これのアンバランスが必ず生産に響いてくる。その響いてきたものは、必ず需給計画に響いてくる。その際に何が指導になるかというと、会社利益ということが中心になりはせぬかということを心配するわけです。会社の採算という点から、この際は硫安をひとつ押えておけとか、あるいはこっちを押えておけとか、あるいはア系肥料を押える、こういうことになって、しかも装置工業ですから、操業度を落とせば価格は高くなる、こういう非常にむずかしい産業であるだけに、こういう新しい条件のもとにおいて、むしろ政府がこれに対してもっと厳格な統制を加えるのが——統制といいますか、干渉というか、介入というか、ことばは何でもいいが、ここらを調整しないことにはやっていけない時期が——そうしてそういうときに犠牲になるのは必ず一番弱い農民、こういうことになりがちであります。この点については今度の法案においては、政府はほとんど配慮してないじゃないか、私はこの点が不満なんです。こういう点についてどういうお考えがあるのか、これをお聞かせいただきたい。
  24. 倉八正

    ○倉八政府委員 これは大体二つの面から言えると思いますが、一つは、いま御指摘の回収硫安あるいは副産硫安というのは、それらの主産物の需要動向によって生産が伸びたり縮んだりする、したがってそれに全面的に依存するのはあぶないのではないかという久保田先生のおことばでありますが、理論的にはそのとおりでございます。ところがそれは絶対そういうことが起こらないと私たちが信じておりますのは、いまの鉄鋼の生産あるいはガスの生産、これは副産硫安の出てくる原料でありますが、それは一時的にはとまりましても、今後ますます伸びていくわけでございますし、それから回収硫安も、いま八割出しておるナイロンだって、いまから五年後にはいまの二・何倍になるわけでございまして、それから出る回収硫安の絶対量はますますふえていくということが一つだろうと思います。  それから他のもう一つの理由は、そのふえ方も国内需要をまかなう程度の量であるならば、ちょっと一時的に、たとえば不況がきて操短をしたというようなときに狂いがくるのでございますが、このア系肥料の大体四割三分というのが輸出でございまして、たとえばそういうときがきましたときでも、輸出をちょっと手心を——ちょっとということばはどうかと思いますが、輸出調整、農林、通産両大臣がそこでとめさえすれば、国内需要には何ら影響するところがない、こういうことで、われわれはそういう合理化方向なり見通しについては、確信を持っている次第でございます。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは議論になりますから……。見解の相違ということになればこれはしようがない。事実の発展方向をどう認識するかという問題になりますから、これ以上突っ込んでもしかたがないと思いますから、まず一時ここでやめておきます。あとで触れます。  そこで次にお伺いしたいのは、価格の問題です。この前農林大臣にお聞きしましたところ、今度の新法を実施しても、価格は絶対に上がらない。もし上がるようなことがあれば、そのときは何らかの行政措置でもって下げる。上げることは絶対にしないということを言っておりますが、通産大臣はどうですか。そういうお見通しで具体策がおありなのかどうか、その点をお聞きします。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれといたしましては御案内のように、肥料合理化のために相当な資金を出しておるのでありまして、そうしてそのメリットがだんだん加わってくる段階でございます。今後もまだそういう合理化資金を出しておるのでありますが、私はそういうことも考慮いたしまして、硫安価格はこれ以上上げないということははっきりお約束できると思っております。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ところで私はどうも御覚悟なり何なりはなかなかりっぱだと思いますが、今度のような価格方式をとれば、上がらざるを得ないというふうに私どもは思うのです。それはいままでは御承知のとおり生産費基準で、コスト基準でバルクライン方式をとって、しかもマル公という三つのあれがあったわけです。ですからこれは相当強力になる。そしてそれに合理化の効果が少しずつですけれども多少あがってきている。十年間に大体一六%。一年間に一・六%。金額にしまして大体十四、五円平均して見ると一帯に下がってきておる。こういうことです。   〔二階堂商工委員長退席、高見農林水産委員長着席〕 ところが今度は御承知のとおり自主的な団体交渉できめる、こういうことです。ところがこれに対しては、この前もお伺いをいたしたのですが、政府としては基準が何にもない。生産費だけでやろうとは私ども言っておりませんけれども、基準が一つもない。尺度がない。この前いろいろお聞きすると、いろいろのものさしを当てて、そして何とか適当なところへ落ちつける、こういうお話しですが、これはものさしを幾つか当てれば、はっきりしたものの重さなり長さというものが出てこないはずはないですよ。そこで、これは通産大臣に特にお伺いをいたしたいと思うのは、どういう形で——これは形は消費者と生産者の代表、つまり取り扱い業者の代表で自主交渉する。政府はこれにいろいろの、場合によっては介入をする、さらに資料の提供をする、こういうふうになっております。けれどもどういうふうにやるつもりですか。これは農林、通産両方で御相談しておやりになることと思いますけれども、この前お聞きしてもどうしてもはっきりしない。たとえば三十七年度を例にとってみますと、バルクライン方式でやれば大体においてこれが七百四十三円九銭、ところが同じ年に全工場の加重平均でやりますと七百七十八円六十二銭、それはつまり三十五円五十三銭高くなる。さらに最高の生産費をとるとすれば九百三十五円八十四銭、したがってバルクライン方式に比べると百九十二円七十五銭高くなります。一番生産費の安いところをとってみると、三十七年度では七百三円五十二銭になります。したがってこれはバルクラインのマル公よりは三十九円五十七銭安くなる、こういうことになります。この前も私は御質問申し上げたのですが、自主交渉ということになれば、片方がカルテルをつくってやった場合においては、かりに生産方式をとったといたしましても、そうして輸出の赤字の転嫁ということはないにいたしましても、落ちつく先は何かというと、全工場の加重平均ということになるのが、これが経済の通則であります。かりに生産者の裁定に譲って、要するに協定でやるといっても、カルテル内でできるのですから、そのカルテルの落ちつく先というのは、おそらくは生産方式ではないと思いますけれども、しかしそれにしましても少なくともマル公方式ではない。三十七年度を例にとってみますと、三十五円五十三銭というものだけ高くなっている、こういうことになるかと思います。政府はどういう尺度でこの介入をし、指導をし、あるいは場合によってはこれを変更を命ずるなり、調停をする、こういうことになっておりますが、どういう尺度でこれをお使いになるつもりですか。この前お聞きしたけれども、一向に明らかにならない。いろいろの尺度でやりますというだけの話なんです。幾つのものさしを使ってやるのだ、それもはっきりわからない。これでは価格は上がらざるを得ないじゃないか。これにいわゆる合理化メリットがどうか。この合理化メリットについてはあとでまたお伺いしますが、私はこれについて農林大臣のお考えはよく聞きましたが、通産大臣としてはどういう尺度でこの問題に対処されようとするか、これをお聞きしたい。
  28. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれとしては、三十八肥料年度における硫安価格というものよりは上げないということでありますから、ちょうどエレベーターみたいに、五階というと天井がちゃんときまっている。その中で動いても、これ以上にはエレベーターが上がるようになっていないのだから、上がらないだろう。上がったときはこっちが押えられていく、こういうことであります。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それはちょっとおかしい。そうすると三十八年の価格マル公価格でしょう。これが最高で、それ以上には絶対に上げないと言うのですか。では約束できますか。たとえば労賃その他物価が上がってくる。また片方において合理化効果があることは間違いない。間違いないが、合理化のメリットを組み込んでも絶対に上げない。もし上がりそうになれば、農林大臣ははっきり何らかの行政措置で、行政措置というよりむしろ財政措置を講じて、上げないようにいたします、こういうお答えでしたが、通産大臣として、ただ上げないと言っただけでは、これは上がりますよ。上がると見ざるを得ないじゃありませんか。経済の原則から見て、上がると見ざるを得ないじゃないですか。それはその際にははっきり農林大臣と同じように、財政措置を講じても上げないというのですか、どうですか。
  30. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれとしては、合理化がまだまだ進みますから、上げる必要はないと思っております。どうしてもそういう必要が生ずるというときは、考慮いたしてまいりたいと考えております。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それは上がらざるを得ないような事情も出ているじゃないですか、ここには。これは五月十日の日本経済新聞で、アンモニアの値上がりがもうすでに問題になっている。御承知のとおりいま九〇%くらいでもって、アンモニアを押えているでしょう。ですからアンモニアがいわゆる肥料関係ではなくて、ほかのほうで上がっておりますから、大体三万円、これで見ると大口向けが三万二、三千円程度、小口向けが三万五千円程度、これが四万円台に上がってくる、そういうことがすでに出ておる。同じ工程から出てきたアンモニアが、たとえば肥料のほうだけは上がらない、それでいわゆる工業用のほうだけ上がるということができますか。ここらについても私はこういう現象は、今後ずっと出てくると思う。ほかの要因もありますけれども、こういう要因が出てくると思うのですが、こういう場合にも絶対に上げない、上げる際ははっきり財政措置で上げませんと言うなら、これはわかります。合理化が行なわれますからと言うが、いままでだって合理化をやったって合理化を食っていく。いろいろな合理化の効果を減殺する要素もたくさん出ているじゃないか。いまのような政府の財政政策なり肥料政策をとっている限り、私はそんな合理化の効果より、それを上回るような経済要因が出てくるのは当然だと思う。その場合に上げない。上げないと言う以上は、何らかの財政措置を講じて、政府が穴埋めをしてやらなければ上がりますよ。もしそうでなければ、さっきから申しましたように硫安そのものは上げなくても、硫安比率が小さいですから、尿素高度化成も上げるというようなことは、どこでも出てきます。そういう道はちゃんと開かれておる。それでは百姓のほうは何にも利益にはなりませんよ。こういう点についてはどうなんですか。
  32. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま御指摘のように工業用のアンモニアが非常に堅調であるということは、御指摘のとおりであります。と申しますのは、いまのアンモニアの能力六百二十万トンというものがほとんど工業用が——最近工業用といいましても、結局それが肥料用の回収硫安に回ってくるわけであります。工業用が伸びまして、幾ぶんか上げぎみになっておることは事実でございますが、いま大臣お答えしまして、先般農林大臣からもお答えしましたように、そういう場合にはわれわれとしましては、たとえばアンモニアの増設をはかる。そのために財政資金をつけるとか、またたとえば硫酸の合理化をやるならやるとしまして、そういうことが起こらないようにするのが第一段階でございます。またたとえ起こりましても、こういう政治的、あるいは農民の資材として非常に重要な物資については、絶対上げないということを大臣が確言しましたように、われわれとしましてもその方向に進みたいというふうに考えております。  それならば第二の御指摘の、硫安はなるほどおまえの言うとおりになるかもしれぬが、その他のア系で不足分をカバーするのではないかという御質問でございますが、これはさっき農林省からも申し上げておりますように、価格硫安中心にしてきまって、あとは窒素パリティ分によってきまるわけでございますから、それによって硫安が上がるべきものを下げておる。その不足分、損した分を尿素とか塩安にかぶるということは、理論的にはなかろうと私は考えております。
  33. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは私はもう少し価格問題について突っ込んで質問を申し上げたいと思います。さっきお話ししたように政府合理化計画でも、硫安比率というものは非常に少なくなって、しかも尿素その他の比重が非常によけいになっている。まるで地位が逆転してしまう。しかも硫安そのものは、合成硫安は少なくなって、だんだん回収なり副生がよけいになる、こういうことになります。そこで第一にお伺いしたいのは、いま政府が基本にしようとしている硫安価格であります。この硫安価格について、原料は御承知のとおりだんだんと回収ないしは副生のほうへ移ってくる。むしろ現在の状況は原料面からいえば、合成硫安というものは要らない時代がきている。ほとんど副生と回収に依存していい、こういう情勢がきておると思います。この点が当然一気にはいかないけれども、自然にかかっていくということになると思います。その際に、これはこの前もお話ししましたが、慣習上副生なりあるいは回収は窒素分——合成の場合は二二とはっきりりきまっております。それより少し少ないのがたまたまある。あるいは色がついておるとかにおいがあるとかいうことで、慣習上一袋について十六円、三十二円という差があるわけです。しかし原料そのものから見れば、非常に安くできておると思うのです。これはそういう性質のものだと思う。政府はいままで回収なりあるいは副生硫安について、厳格なるコスト調査をやったことがあるでしょうか。非常にむずかしい問題です。むずかしい問題だけれども、やったことがあるのかないのか。もしあるとするなら、そのコストの内容をどのようなものか、ここで出してもらいたい。これは主として何に引っかかってくるかといえば、その性質なり、アロケーションの取り方によって違ってくると思う。これが価格になる。これはもともと廃物ですから。この点についてのコスト計算の調査をしたことがあるのかどうか。あるならその資料をはっきり出してもらいたい。この点は慣習上十六円、三十二円という差をつけておる。だから合理化が進んでいけば、それが進んでいく。しかし合理化といいましても、回収や副生の場合の合理化と、いわゆる硫安工業アンモニア工業そのものの場合とは違うはずです。こういう点についてのコストの調査を本気になってしたことがあるのかないのか、あるとすればどういうコスト内容になっておるのか、はっきり調査のデータをここへ出してもらいたい。そうでないと慣習上十六円、三十二円だけでは話にならぬ。もっとほんとうのコストの計算を正しくやれば、これはずっと下がるべきものだと思うのです。この点はどうなんです。
  34. 倉八正

    ○倉八政府委員 端的にお答えしますと、回収硫安生産コストは調査したことはありません。それは結果論でございますが、回収硫安のコストをどうはじくかということについては、いわゆる会計学者とか、そういう専門家に依頼したことはございますが、炭酸ガスをどう評価するか、それから一応カプロラクタムをつくって流れてきます例のよごれたアンモニアでございますが、それの評価をどうすべきかということについては、とうとうそういう学者の先生方も、とてもこれはできないということで、結果的には出た数字はないのでございます。これは外国の例も全くそうでございますが、しかしそれにしてもわれわれとしては、先生も御指摘のように、いわゆる大きい意味の副産物であるから、何か安かろうというようなことで、いま回収硫安につきましては、二十一工場の合成硫安の中の一番安いコストとみなして計算しておるというのが現状でございます。
  35. 久保田豊

    久保田(豊)委員 コスト調査は、私は技術的に非常にむずかしい問題だと思います。しかしやればやれないことはないと思う。これは会社は必ずやっておりますよ。外国の会社あたりがずいぶん安いものを出してくるという場合だって、計算なしに出すはずはない。会社は必ずわかっております。わからないはずはないと思うのです。  そこで私は通産大臣に決意を聞きたいのですが、ひとつ回収硫安並びに合成硫安のコスト調査をやる御決意がありますかどうですか。むずかしいことはむずかしい。それはわかります。わかるけれども、やってやれないことはない。しかもこれが肥料原料の大宗になる。その大宗になるものの調査が、むずかしいからやれません、慣習上こういうことで十六円、三十二円だけで値引きをしております。これだけでは話になりません。これはアンモニア工業全体の、特に肥料工業全体の基本に関する問題で、どんなにむずかしくても技術的にやれないはずはない。私は当然やるのが、この新事態に処する政府の基本的な責任だと思う。やる決意がありますかどうですか。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 前向きで検討いたしたいと思います。
  37. 久保田豊

    久保田(豊)委員 前向きで検討するだけでは、どうもお話にならぬ。これはひとつ具体的に進めてもらいたい。これは農林省にしろといっても、ちょっと無理でしょう。無理でしょうが、少なくとも通産省としてはやるべきで、そういうことをやらないから、あなた方は独占資本のお使い番なんといわれる。これは一番もうけどころです。ですからここは一番大事です。これは多少技術的に困難だとしても、やってやれないはずはない。会社はわかっておるはずです。わかってないはずはないのです。てめえがつくっておるもののコストが幾らになっておるかわからないで、商売をするばかはありませんよ。そんな重役は重役がつとまりませんよ。そんなことは会社はわかっておる。会社がわかっておるのに、政府がわからぬはずはないじゃありませんか。ですからこれは私はどんなことがあっても、この調査だけはしてもらいたい。そうしてこの回収硫安なりあるいは副生硫安中心になる硫安価格というものを、もう一度検討し直すということがこの際ぜひ必要だ。この点をやらなければ、合理化と言ったってたいしたことはありませんよ。この点をしっかりやっていただきたいと思います。  その次は尿素高度化成、これもいわゆるほんとうのコスト計算というのを、いままでにおやりになったかどうか。従来のあれでは御承知のとおり尿素価格は大体合成硫安窒素分の二・二をかけて、それから当初のうちは四〇%くらい引いたでしょう。現在は大体二〇%引きというふうなことを言っておりますけれども、大体において、だから百円引きくらいになっている。ところがこの尿素合理化というものを、いままででもずっと金をかけてきております。百九十億以上の尿素合理化資金というものをかけて、施設も大きくなって、生産量もよけいになっている。装置工業であってこれだけ合理化をやって、しかも尿素の一方の原料である炭酸ガス、これは安いものです。硫安ほど高くありません。これはただみたいなものです。こういうふうなものでもってつくって、しかも量がうんとふえてきている。これが要するに硫安合理化と、そこにいま言ったような一定の比率と同じメリットを今日まで持ってきているということは不合理です。そんなばかなことはありません。少なくともこのほうが生産もうんと増しているし、合理化もしっかりしている。しかも価格は一定の比率だけで、これも商慣習上つくった、こういうことを平素言っておるから、肥料ほんとう合理化はできない。さっきの輸出の場合でも、硫安で損をすれば尿素で取ればいいということになっている。あるいは国内の場合でも、硫安でたたかれても尿素のほうに余裕があるからこれでカバーできる。それならばなぜ硫安のほうをどんどん締めて、尿素に切りかえてくるかということさえわかりません。この点についても厳格なコストの調査をしたことがあるのかどうか。そしていまのような情勢から見て、肥料工業内容が変わってきておりますから、もう一度価格の再検討ということをコストを中心にして、もちろんコストだけではありません。ほかのいろいろな要素を入れなければなりませんけれども、一番基本になるコスト調査というものを政府は当然やって、いままでのような慣習上の価格差というものを、格差というものを、そのままにしておくということは私はいけないと思うが、どうですか。
  38. 倉八正

    ○倉八政府委員 尿素のコスト調査は毎年いたしております。それから今後の価格も、いわゆる基本的な態度について検討を要するのではないかということですが、これはまことにごもっともなことでございまして、尿素比率がだんだん大きくなっていく。それから製法が非常に日進月歩でございますから、その面につきましても、今後われわれとしても大きな検討の材料にしたいと思います。
  39. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それからもう一つ、これから主として問題になり、いままでも問題であると思いますが、このアンモニア工業そのものの中におきまするいわゆる硫安、それから尿素その他、それからいわゆるアンモニア工業、そういう面との比率が変わってきつつあります。この場合の三者を総合したいわゆる施設費なり、あるいは諸掛かりなり何なり、そういうものを主として施設費なり、設備費なり、設備投資なり、その他の要するに歩掛かりといいますか、こういうものを再検討する時期にきておると思うのです。これはやられておりますかどうですか。
  40. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま御指摘の点は、肥料二法が始まって以来毎年やっておりまして、そのやり方は比例配分比と申しますか、先生のおことばをもってすれば歩掛かりと申しますか、そういう方式でやっております。
  41. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それならいまの回収硫安並びに副生硫安、並びにこれはやっていないというからしょうがありません尿素、そしてそれ以外のいわゆる合成硫安、それからいわゆるアンモニア工業自体生産費調査の結果がありましたら、最近のものでけっこうですから資料としていただきたいと思います。委員長、お願いいたします。
  42. 倉八正

    ○倉八政府委員 こういう非常に膨大なものがございまして、一〇〇ページ以上にわたっているわけでございます。全部ありますが、先生の御指摘の要点だけを抜きまして……。
  43. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私はそういう点をもう一度どうしても検討しなければならぬ時期にきているように思います。ぜひ通産大臣としてはいま申しましたような点を御調査をいただきまして、そしてもう一度そういう価格の基礎的な要素についての再検討——私ども見ているところではそういう点が従来のしきたりといいますか、そういうものの上に安住をしているように思うのです。この点を再検討願いたいと思うのであります。  農林大臣がもうそろそろ帰られるそうですから、農林大臣に一点だけ御要望を申し上げておきたいと思います。それはいま申し上げたような肥料工業そのものが、非常な転換期になっております。へたにするとそのしわ寄せを農業が受ける危険が非常に多いと思うのであります。そこでこの前も私は御要望申し上げたのですが、本法に基づく政令が出るはずであります。四項目しか政令事項がこの法律の中にはありません。ありませんが、もし政令で指定することがいまできるとすれば、肥料中心がもうすでに尿素その他に変わっておるわけでありますから、これを当初から政令指定に当然すべきではないかということであります。もう一つ、業者の自主交渉の際には、政府は資料を提供するということになっております。この前の御答弁では、その資料の中には生産費計算というものが含まっておらない、合理化メリットがどの程度かということについての資料だけだ、こういうお話であります。しかしその合理化メリットというものは私に言わしむれば、従来のようにたとえば合成硫安合理化メリットがどのくらいになるか、あるいはあれがどうだということだけ出しても意味がないのであります。どうしてもいま申しました肥料工業全体の、かみ合っておりますすべての合理化要素なり、その合理化のメリットをどういうように配分するかということと関連をしなければ、いままでのような合理化のメリットの配分では、何も意味がないと思うのであります。そういう点、私に資料を出す場合に、資料の制約というものをぜひ含んだ、やはりそれを土台にした生産費調査、硫安だけでなく、尿素その他も含めた生産費調査というものがどうしても必要だと思うのですが、これをひとつ政令事項の中に入れるお気持ちがあるのかないのか、ぜひ私は入れてもらいたいと思いますが、この二点を御要望申し上げるわけです。どうですか。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘の点はよく事務当局に検討させまして、そういう方向でやりたいと考えております。なお検討を命じます。
  45. 林百郎

    ○林委員 関連して。農林大臣は時間で帰られるそうですから、二、三関連質問をさせてもらいたいと思います。  内閣提出の目下審議しておりますこの法案については、それぞれの立場の人がそれぞれの意見を持ち、質問していると思うのです。私はこの最終的な需要者である農民の立場から、大臣にお聞きしたいと思いますが、最終の需要者である農民の立場に立った場合に、このいま審議しておる法案は、現行二法よりどのような利点があるのか、あるいはこの現行措置法が取りきめがなくして空白になった場合に比べて利害得失はどうなるのか、ひとつ大臣考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行法において目的としておるところの、低廉で豊富な肥料需要者である農民の手に入るということが、現行法においても大体確実に保証されておるようなかっこうであります。でありますので、いまの法律における出荷あるいは生産命令あるいは調整、保管というような強度のものを持たぬでも、現行法律と同じように農民の安心感が持たれるということであれば、あえて強度の統制をする必要はなかろう、こういう観点でございますから、そういう面で単純化して目的が達せられる、こういうことのほうがいい、こういうふうに考えます。もう一つは、現行法がなくなって、空白になった。これは非常に不安感があると思います。何といたしましてもいままで二法にささえられて、低廉な、そしてまた十分内需が充足されてきたのでございますから、経過的に見ましても、何らの法律がないということでありますと非常な不安をかもし出す、こう思いますので、やはり提出をいたしておりまするような法律は必要だ、こう考えております。
  47. 林百郎

    ○林委員 現行法の国家統制でなくて、ただいま審議しているカルテル方式になっても、農民に豊富にして低廉な肥料が供給できるという条件は、どのような条件になったらそうなれるのですか。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一つ生産が非常に伸びまして、その四割程度を輸出に向けられるという需給状況でございます。もう一つは、現行法でなくても輸出面に認可制をとっておりますから、需給見通しのもとに輸出に対しての押えをすることによりまして、調整をすることによりまして内需が充足される、こういうことが第二点でございます。第三点では、直接の関係ではございませんが、価格等に対しまして、その他是正命令を政府において出すことに相なっております。でありますので、いろいろ調査の結果、両当事者の話し合いが不当あるいは妥当を欠くというような場合におきましては是正命令を出す、これが第三点でございます。第四点では、話がまとまらないときに調整、調停をする、こういうことでございますが、調停に対しての何ら制裁的な、最終結末をつけてやるところの方法がないではないかという点もあろうかと思います。しかし調整につきましては調停の一つ価格を指示するといいますか、そういうこともあり得るのでございます。結果において調停ができなくて非常に不当な、あるいは妥当を欠く、こういう場合におきましては、やはり最初に戻って是正命令を出すということになりますので、私はこういうたてまえで進めることが現段階においては適当ではないか、こういうふうに考えております。
  49. 林百郎

    ○林委員 どうも時間がないので、十分意見を戦わすわけにいかないのですが、大臣がいまあげました理由について私のほうからの見解をもう一度申し上げますが、それについてお答えいただきたいと思います。生産量が非常にあがってきて、需給関係がまるくなってきた、したがって一つ輸出内需を圧迫しないでできるようになった。これはまあ需給関係価格関係は区別しなければなりませんけれども、しかし大臣のいまの答弁によりますと、このことが価格にはね返ってきて、低廉な価格を維持することができるような一つの条件になったとおっしゃいますが、はたして輸出が増大することが、国内価格のコストダウンに作用するのかどうか。輸出が増大するということはやはり国際的な輸出カルテルの関係からいって、むしろこれは国内需要に負担がそれだけ増大することになるのじゃないか。こういう要素を一面に持っておらないかどうか。したがって輸出がふえるから、国内価格がかえって農民のために有利になるということは言えないじゃないか、この点が一つ。  それから豊富になったというのですが、豊富になればこれはコストダウンするのは当然です。またメーカーとしては長い間のいろいろの助成、それから租税上のいろいろの保護、それから合理化の推進、こういうことからいって、先ほど久保田委員は上がらないかと言いますが、私はむしろ下げるべきだと思います。上がらないかということを心配するのではなくて、国民に対してはメーカーは下げなければならない。下げなければならないし、合理化が進んでいるところに下げなければ、これは超過利潤は保証されますから、むしろ固定の償却が非常に進んで、これからコストダウンができる段階があるのに、その段階にカルテルを結成して超過利潤を保証するということになりますれば、国内需給関係が豊富になったから、本法によって値が下がる作用が起きるのだということにならないじゃないか。むしろ国内需要が潤沢になれば、値が下がる要因がある。値が下がる要因は、メーカーに対しては好ましくない条件である。メーカーに対して好ましくない条件がある場合は、メーカーはそれに抵抗する。メーカーがそれに抵抗する場合に、むしろ強力に押える措置こそが必要であって、そういうメーカーが、値が下がるのを値を下げないでカルテルで維持しようという要因がメーカーの中にあるときに、むしろ国家の統制を緩和して、当事者のカルテル方式にするということは、これはむしろ下げるべき価格——もちろん上がることはいけないのですが、むしろ合理化が進み固定の償却が進んでいるのですから、これからコストを下げなければならない段階に、それを下げさせない、それを国家のコントロールから離して、その意欲を当事者にまかしておる、野放しにしてしまう、そうして相手は全購連だということになれば、これは必ずしも需給が豊富になったということは、豊富になったことを理由にして本法を制定することは、生産農民に対する正しい価格決定の作用にならないじゃないかと思いますが、その点はどうですか。  それから是正命令をお出しになると農林大臣はおっしゃいましたが、どこの条項に是正命令を大臣はお出しになることができるのか、そうしてそれはどのような拘束力を、少なくとも二条と三条の関係についてどのような拘束力があるのか。おそらくこれは大臣はいま「その取決めの変更を命じ、又はその締結を禁止しなければならない。」ということだと思いますけれども、しかしこれはこの二条の条項を見ますと、非常なまるい条件で、行政的な弾力性が非常にある。「不当に害するおそれがないこと。」とか、それから「相当の比率を占めていること」とか、「その変更又は廃止」を命ずるときは、不当に害するおそれだとか、それからそういう必ずしも例示的にこの場合行政的な弾力性が厳格にきめられておらない。したがって不当に害するおそれというようなことがない場合はいいのだ、そういうように弾力性が、非常に幅が持たされているのじゃないかというように思うわけです。したがって大臣の言う是正命令というものが、必ずしも大臣の考えるような効力はないのじゃないか。もしそのようにお考えになるならば、ここは許可条項あるいは承認条項にすればいいのじゃないか。原則として取りきめることができるけれども、変更を命ずることができるのではなくて、承認を経て締結をすることができるというふうになぜしないのか、一歩進めてそういうふうに考えます。  それから調停については、これは大臣もうおわかりのように、相当期間にわたり努力するとか、それから双方またはいずれか一方から一定の申請があった場合には、特に必要があると認める場合とか、あるいはその調停は、どんな期間内に調停をなさなければならないかというような期限的な制限もなければ、たとえば翌肥料年度にわたっても調停権を発動するかしないか見ることもできる。また「調停を行なうものとする。」というだけであって、調停に応じない場合はどのような強制力が生ずるかというようなことも別にありませんので、これをもって大臣のおっしゃるような効力が必ずしも生ずるかどうかわからぬ。しかも必要な勧奨または助言を行なう、そしてさらにその上に調停ということになりますが、これは必要な勧奨または助言についても拘束力がないということになりますれば、これは必ずしも大臣の言うように価格の点について、生産農民の側に立ってコントロールすることができるという機能が、本法ではないように思いますけれども、その点についての見解を聞かしていただきたいと思います。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 需給状況が非常によくなったけれども、農民にとっては必ずしも安心感が持てないのではないか、こういうことでございますが、私は需給状況が非常にいいということは、量的に見ますならば、四割も輸出できるという状況にありますことは、農民も内需が相当充足されて、供給量がふえたということについて、第一に安心感も持てると思います。  第二に、しかしながら輸出が相当ふえるということは、決して価格面において低廉な価格輸出できるというのではなしに、むしろ農民に赤字の転嫁でもされるのではないかということになるのではないか、こういうお尋ねでございますが、この点につきましては、輸出の承認制というものを強く活用いたしますから、その点につきまして、量的に内需を不足させることもないし、価格の面におきましては、赤字の転嫁ということは避けますし、そういう場合にこそ、いま話が出ました是正命令が出ますし、また赤字という問題が、輸出価格国内価格との差を赤字ということに見ると当然赤字ということになりますけれども、輸出する価格生産コストによっておるということでありますならば、これは赤字というわけではなかろうと思います。しかしいずれにいたしましても、それを転嫁させない、こういうことにいたしますので、価格の面におきましても、農民にとって現在より不利なものになるということはないと思います。  第三に、カルテルを結成させて、そして下げるべき、すなわち合理化によってコストダウンさすべきものが、カルテルによって独占利潤といいますか、そういうものをかせぎ出すようなことになりはしないかということでございますけれども、このカルテルは、生産カルテルというわけではございませんで、独禁法の適用を排除したということは、価格の交渉面におきまして、一つのカルテル的な組織で、全購連でございますか、こういう農業団体と価格の交渉についてのカルテルでございますから、生産カルテルとして独占の利潤をかせがせるというような考え方はございませんので、御了承願いたいと思います。  第四番目に、是正命令はどの条項だ、いまの二条でございますか、それによるのでございますが、それをもっと強力にして、承認という制度で規定すべきでなかったかということでございますが、今度の法律のたてまえそのものが、生産者及び需要者との自主的な話し合いによって価格決定する、こういうたてまえでございますので、初めから政府が官僚統制的に承認を与えるというような形で出ていくことはどうかと思いますので、調停とか是正命令というような間接的な関係から押えていくべきだ、こういうふうな法律のたてまえでございます。  第五番目の調停に対する制裁の方法がないではないか、こういうことでございますが、現行法律におきましても、生産命令とかあるいは出荷命令を出しておるということはございません。ここ五、六年はなかったわけでございます。大体そういうような状況で進んできておりますので、この両当事者の協定で私は話がつくと思います。また話がつかぬ場合には、中途におきまして、行政的に農民のほうに早く時期的に肥料を回すような方法も、法的にはございませんが、私はそういうことはできると思いますし、またその他の面におきましても、是正命令とかその他いろいろ行政監督上の問題もございますので、そういう面からも農民に必要な肥料の入手、あるいは価格面において支障を来たすことをなからしめるように十分努力していきたい、こう考えております。
  51. 高見三郎

    高見委員長 林君、農林大臣の時間の都合がありますが……。
  52. 林百郎

    ○林委員 もう少しだけです。これは農林大臣、率直に言って、どこの国の例を見ましても、輸出価格国内価格の差はうんとあります。西ドイツなんかは、国内価格がトン当たり六十ドルですか、輸出価格が三十ドルくらいですから、これはやはり比例費部分輸出でまかなって、あとの固定の償却分は国内のほうに転嫁するのが通例でして、これは日本の国だけで輸出国内と幅を狭めても、しかも輸出部面でどう固定の償却分を含めての、いわゆる企業的に採算の合う値段で輸出するといっても、これは国際的なカルテルで競争しなければならぬので、そうはいかぬと思います。そこでその意味において、赤字対策のための将来の不安を解消するためには、やはり二条を承認制にすべきだ。これは変更を命じ、その締結を禁止しなければならないというのだけれども、その条項を見ますと、不当に差別的だとか、不当に制限しているとか、不当に害するおそれがあるとか、この不当ということも、これは時の行政庁のどのような行政的な判断にもよるわけで、これは別に審議会に諮問するわけでもなんでもないのですから、これはどうしても強力な承認制にすべきだと思います。そのことと、あなたが是正命令を出される前に、三条の必要な勧奨または助言を行なうとか、それから当時者が相当期間にわたり努力したが、その取りきめを締結することができず、またはいずれか一方の申請があって、特に必要があると認めたときには調停をするとか、こういう経過を経て当時者の締結のところにきて、そしてまたそれが今度は二条二項の一号から五号までの条件に触れる場合に、初めて是正命令を出す。だからその前には当時者の間にいろいろの交渉があったり、あるいは拘束力のない勧奨、助言あるいは相当期間の努力、あるいは特に必要と認めた場合の調停とかということがありますが、一たん業者間の取りきめがあれば、結局肥料年度にわたってずっと、一たんきまったカルテルの価格が変更されないで続けられるという場合が考えられるのじゃないですか。そうするとその間にメーカーのほうでは、メリットによって得た利益を保証するようなカルテル価格を続けていくことができることになるのじゃないですか。だから大臣の考えられている是正命令が、そんなに簡単に出せるものじゃない。しばらくは当時者の間にずっとまかされて、その間には一たんきまったカルテル協定が、場合によっては二肥料年度あるいはそれ以上にわたるかもしれない。そういうことも考えられるのじゃないですか。そのことをお聞きします。
  53. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 法律論にわたりますので私から申し上げますが、まず二条二項の是正命令でございますが、是正命令に従わない場合は独禁法の適用排除がなくなるわけでございます。したがって独禁法の違反になりまして、独禁法の罰則の適用があるということでございますから、違反のカルテル行為はできないわけであります。  この基準が抽象的ではないかというお話でありますが、認可にしました場合にも、これは認可のほうがむしろ自由裁量の幅がきわめて広くなりまして、行政の基準としては法律で明らかにしたほうがむしろ適当ではないか、こう考えております。  それから調停の強制力でございますが、これは御指摘のように強制力自体は調停にはございません。勧奨、助言等ももちろんでございますが、しかし勧奨し、助言し、しかもどうしても話し合いがつかないという場合、調停に入る。調停も万一成功しなかったというような場合には、もしも国内で値段が上がって農家に迷惑がかかるというような場合には、輸出調整権を発動するとか、そういう措置もとり得るわけであります。それから調停は大体成功いたすと考えておりますが、調停をやる場合にも、政府は必要な資料を整えておりますので、十分両当事者を説得するだけの材料をそろえてやり得る、こう考えておる次第でございます。
  54. 久保田豊

    久保田(豊)委員 農林大臣はよろしゅうございます。  それで通産大臣にお伺いいたしますが、この肥料輸出に対する依存度は非常によけいになろうと思います。そこで、なぜ肥料輸出会社の取り扱い品目というものを硫安だけに限って、尿素高度化成その他のものをはずしたかということです。輸出そのものは管理法でもって規制はしますけれども、なぜはずしたかということです。と申しますのは、政府計画によっても、これからは硫安輸出におきます重要性というものは非常に少なくなっている。今年あたりが大体八十万トンないしはちょっと上くらいじゃないですか。ところが政府の四十二年度の計画を見ると、硫安そのものは五十八万トンになっておるが、逆に尿素はどうかというと、三十六年度の九十二万トンが百十一万トンにふえている。こういうわけで、肥料形態の高度なもののほうの輸出が非常によけいになって、硫安そのもののウエートというものは、輸出の面でも非常に下がってくるわけです。その際に、この硫安だけを輸出会社という形で特に押えて、あとのものはそれぞれの生産者なりあるいは貿易業者の自由にまかせるという理由は、どこにあるかということです。もっとはっきり言えば、もしさっきの政府お答えのように、硫安価格というものが中心になって、ほかの尿素その他の価格格差というものは、一応商慣習上きまっておるということになれば、要するに硫安が国際的に下がって赤字が大きくなれば、尿素その他もずっと大きくなるはずであります。ところが硫安は、こういうふうに非常にウエートが少なくなってまいります。ですから硫安そのものの輸出の赤字というものはたいしたことはない一しかしそれ以外の赤字のほうが非常なウエートを持ってくるはずです。その際にこれのほうは野放しでありまして、依然として赤字のほうは政府がめんどうを見ないということでありますが、こういう仕組みにしたのはどういうわけか。私が最初にお話ししたように、硫安そのもののウエート内需の面においても、輸出の面においても、生産の面においてもずっと下がってくる。しかもその内容が回収、副生が中心になってくる。こういう段階でほかの尿素その他のもののウエートが、あらゆる面においてよけいになってくるわけです。その際に当然考えることは、輸出会社を残してああいう形で輸出の統制をしようという以上は、赤字のひどくなったものを入れなければ、実際話がおかしくなってしまう、こういうふうに考えるのでありますが、この点はどうですか。
  55. 倉八正

    ○倉八政府委員 この硫安のみを現在輸出規制しておりますのも、これは平たくいえば、従来からの一つの慣例でありますのと、硫安尿素というものは全く同じ会社でやっておりまして、輸出の場合でも、硫安が出せなければ尿素尿素が出せなければ硫安というような関係もありまして、いまのところ硫安を指定しておけば、その関連性において尿素というものも秩序ある輸出ができるのではないか、こういう考え方をとっておるわけであります。しかしこれにつきましては、ここに必要があればほかの肥料もすぐ指定することができる、こう書いてありまして、この輸出の面になりましたならば、硫安のみならず尿素についても、将来必ず指定する時期がくるだろうと私は考えております。
  56. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると、いまはやらないけれども、しかし近い機会にはやはり輸出会社が扱うようになる、こういうわけですか。
  57. 倉八正

    ○倉八政府委員 これは輸出の二つの面からだと思いますが、一つ輸出需要変化をもう少し見きわめるということ、それから相手の需要先であります。と申しますのは、いまはまだ御承知のように台湾は硫安一本であり、それから韓国が大部分硫安だという情勢でありますが、最近の中共の動きを見ておりますと、一番大きい輸出先は中共になると思いますが、最近だんだん尿素がふえてまいりまして、インドあるいはインドネシアもそれがふえてきたということになりますと、われわれとしてはもう少し様子を見まして、この尿素についても強化された一本の体制で進んだほうが、輸出振興の上からベターだろう、こう考えております。
  58. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで今度は少し輸出の赤字の問題に入りたいと思いますが、政府としてはどうなんですか。将来輸出をしても赤字は出ない見込みですか、それとも赤字が出るというふうに見ておりますか、どっちですか。しかもその赤字というものは、従来のように硫安だけに限ってみれば、この前あなたと論議をしたが、価格というものは、これはなるほど五十万トンかそこらくらい出て、その赤字だけではたいしたことはない。ところがあなたのさっきの説明では、硫安尿素の間にははっきり商慣習上のメリットがある。ちゃんと格差がある。したがって硫安が下がる場合は尿素も下がる。そのほかも下がる。下がる場合は下がる、上がる場合は上がる、こういうことになる。そうすると、やはり硫安が下がって赤字が出れば、尿素その他も当然赤字が出るはずです。そうしますと、たった五十万トン程度の赤字なら、なるほどいわゆる高度化した企業で吸収ができるかもしれません。しかし全体がこうして二百万トン以上のものが赤字が出た場合には、赤字の総額というものは相当大きなものになる、こういうことになろうと思います。しかも今度は輸出会社に対する各メーカーの売り渡し形態はFOB、つまりざっくばらんに言うと契約価格をそのまま乗せてやろうということでしょう。だから輸出会社は帳簿上のトンネル会社みたいなことになりますよ。そうして直結会社のほうに赤字をしょわせる、こういう考えです。ところが同じ会社が、いま言ったように硫安だけでなく、尿素その他も比重がよけいになってくれば、硫安が赤字になれば尿素その他も赤字になるということは当然考えられる。そうすると依存度が大きくなれば、さっき林君もそう言っておりましたが、これは非常に大きな赤字が当然いやおうなしに出てくるという理屈にならざるを得ない。この点を含めて、将来の輸出は赤字になるかならないか。いまの段階では赤字の幅というものは非常に少ない、ことしの特殊事情としてまあ御承知のとおりの状況で。しかしこれは長く続くはずがありません。せいぜいよくいって今後二年くらいの間はあまりたいした赤字は出ないかもしれませんが、しかしこの前申し上げたような世界の事情なりその他を考えてみると、当然もっと激しい輸出競争の時代、したがって安い時代がくるにきまっている。その場合はどうするかということですが、いまの二点についてだけあらかじめ……。
  59. 倉八正

    ○倉八政府委員 私は物の輸出をする場合は、赤字論というのは観念的にありとあらゆる物資についてあると思います。日本輸出で、国内市場、国内の市価よりも高く売っている物資は一つもないと思います。それで形を変えて国内にかぶってきていることは、観念上はどの物資についても同じでございまして、農産物の輸出でも、国内よりも輸出が高いものはないと私は思いますが、しかしこのアンモニア系輸出の問題につきまして、この赤字の問題をどう考えるかということでございますが、従来の赤字のように、国内マル公とFOBとの差即赤字ということになりましたら、今後の赤字はいまのような輸出価格だったら必ず続きます。これはほかの物資と同じでありまして、それを否定するのはかえっておかしいと思いますが、そういう意味での赤字だったら続きます。しかしながらその赤字を国内の農民価格にどうかぶせるかというのが、問題の中心だろうと思いますが、私たちとしましては、その意味の赤字は農民の価格にはかぶせないという措置をはっきりとるつもりでございます。たとえば国内合理化によりまして、この前もあなたのほうの芳賀先生でございましたか、実例をあげて言われまして、合理化メリットによって十円下がった。そのメリットを従来は全部農民のほうに差し上げておった。ところが今度はそのメリットを半々で分けるか、あるいは四、六で分けるか、そういうことは別としまして、メリットを幾分メーカーに還元していただく。その還元していただいたそのメリットが、はっきり申し上げれば、合理化メリットと言おうと、それから輸出によって差損ができたのを幾分かメリットとしていただいたと言おうと、それはことばのニュアンスの相違だろうと思いますが、そういう意味におきまして私たちは、それは合理化メリットの中に入れさしていただくという意味において、農民に対して赤字というのは転換させてはいけないと思いますし、またそういうことをさせないつもりで、この法律を運営していくつもりでございます。
  60. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そういう考え方、その点についてはまたあとでもう一度触れますけれども、それ以外に、いま国内では価格は大体五十ドル見当でしょう。最近輸出は強くなったといっても四十四ドル見当、その間に二ドル半ないし三ドルの輸出メリットとでもいいますか、そういうものがあることも事実。それにしましても、硫安について、これはそういうだけであって、さっきのお話のように硫安尿素その他の間のいわゆる価格差というものが、商慣習上いまのようなかっこうであるならば、二百万トン以上全体としてア系肥料輸出されるわけでありますから、それに対する赤字というものは相当膨大なもので、いまのような合理化メリットで吸収ができるのかどうかという点が問題です。かりに合理化——その合理化というのは主としてア系肥料そのものの生産性が、コストが下がるという面もありましょう。しかしあなたのこの前のお話では、その面よりはむしろアンモニア工業面の多角化によって余裕が出るから、そのほうで大体吸収をするというお話。しかしアンモニア工業自体も、これはなるほどいまの段階ではまだ相当もうかる部面。ところがこれとても開放体制下においては、逐次国際競争なり何なりというものはひどくなってくる。いまはわりあいこれは有望な面。ところがこれはだんだん国際競争なり、国内競争がひどくなってくれば、今度はその面で赤字が出ないとは限りません。その場合にはどこでこの赤字の全体の処理をするのかということが、当然問題にならざるを得ない。そうすると、そこで処理ができなければ、これはどうしたって国内価格に何らかの形でお伺いをして、国内の農民価格に、ぶっかからざるを得ないと判断せざるを得ない。ことし一年、二年のことを言っているのではない。なるほどアンモニア工業はまだまだ初期の段階ですから、いまのところは大体において農業利益というか、そこまでは言えないまでも、非常にいい。いいけれども、これは安心できるものではない。みんなこの面をねらっているでしょう。あなたのほうの合理化計画を見ると、ほとんどこの点に重点を置いている。要するにアンモニア系肥料合理化をするという政府資金のほうでも、むしろそのほうに重点を置いている。肥料直接のものだけではなくて、アンモニア工業の多角化のほうに重点を置いていることは、さっき話したとおり。これで先々まで安心ができるというめどは私はないと思います。国外の肥料価格の状況はここ一、二年はいいでしょう。赤字幅は少なくて済むでしょうけれども、しかし今後先々を考えてみれば、赤字幅はますます大きくなるというふうに判断せざるを得ない。しかもあくまでア系肥料全体についてそういうことが言えるわけです。もしそうでないとすれば、尿素なり何なりのいまの慣習格差というものの中に、相当の隠し利益というものが入っていると見ざるを得ない。あるいはそれを国内でやるか。ですから私はその点をいまついたわけです。この点はどうなんです。どうしても私どもとすれば、今度のような法律の体制では、赤字はどうしても国内価格にぶっかけるほかはないような条件が、逐次いま醸成されつつあると思う。いまちょうどいいところです。そういうことがなくて済みそうなときですから、この前も言ったとおり、いわば政府にとっては肥料二法をやるのに、いまちょうど神風が吹いたようなときですけれども、神風に便乗するのはいつまでも続くものではない。おそらくはあと二年ぐらいたつと神風が今度は魔風になって、今度は百姓のほうがいじめられるということにきまっている。この点をどういうふうに処理するつもりか、お伺いしたい。
  61. 倉八正

    ○倉八政府委員 赤字の心配をなくするのは輸出しないことが一番いいと思いますが、しかし現状におきましても、国際収支をできるだけふやすために輸出をする。あるいは大量生産によってコストを下げるという意味におきましても、設備を持たなくてはいけない。そうすれば何がしかの輸出をしなくてはいけない。その赤字が出る。それをどうするかという四段か五段のことになると思いますが、その場合に私たちのほうとしましては、まず大きく考えられることは、できるだけ肥料のその当該企業における比率を少なくしまして、たとえば一番典型的な例は、鉄鋼会社における副産硫安の問題だろうと思います。八幡のごときは、二千五百億円の売り上げのうち、わずか五億円か六億円くらいの副産硫安しかありませんから、そういうのは全く農民のために奉仕してもいいという考えだろうと思いますが、そういう意味におきまして、できるだけ肥料比率を、この生産の中の営業比率を下げるということが、一番の問題だろうと思います。そういうことでどんどんほかの石油化学なんかやらせているのが一つと、またこれと直接関係ありますアンモニアにつきましても、アンモニアの有効利用というのは今後無限に広がってくると私は思いますが、そういうアンモニアを利用しまして、そのアンモニアの副産物あるいは併用によりましてこのコストを下げていく、しかも営業的にゆとりを持たせる、究極的にはこういう大きい柱が私は二本あるだろうと思います。そのことに向かってわれわれとして進んでおるのが、先般閣議決定いただきました百六億の資金であり、また石油化学の育成対策だ、こういうことで、ほかの産業、他の同じ化学工業の関連産業と総合的にやってこそ、ほんとう意味合理化を進め得る、したがって赤字がたとえ出ましても、そこで吸収していける、こういうふうに施策を進めていくつもりでございます。
  62. 久保田豊

    久保田(豊)委員 通産大臣にお伺いしますが、なるほどいま局長のお話のようで、気持ちはわかる。気持ちはわかるけれども、どれもこれも、特にこのアンモニア工業自体の面というものは、非常に新しい面ですから、要するに当分の間はいいです。いいけれども、これは開放体制下になってくると、そんなことはなかなか長くは続かない。そういう場合に、ただ、いま局長の言ったように、製鉄の場合の副生硫安との関係というのは、これまた特殊です。大体においてアンモニア工業全体として見ればこれが主になって、三つの部面に足を置いてやるのが中心になる。そのときに二百万トン以上の全体の赤字が、うまく吸収できるかどうか。十二億や十三億なら、この前のように、局長の見込みのように、硫安だけの赤字でそれはできるでしょう。しかしいままで硫安だけでも少なくとも一年間に五十億ももっとも、赤字が一応会社側からいえば出る。こういう段階で、それがほとんどすべてのものにわたって出るということになったら、もっと膨大な赤字だ。そんなものが単なる合理化で吸収できるとは私ども考えない。そこでどうするかという点をお聞きしているわけですが、この点について大臣としてのお考えをお聞かせいただきたい。
  63. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど来局長が御説明いたしておるところがわれわれの考え方でありますが、しかし問題は、これは見通しの問題でございます。久保田委員も仰せになっていられるように、これは一、二年はだいじょうぶだ。われわれは二、三年はだいじょうぶだろう、こう言いたいところでありますが、しかしその間において事情が非常に変更すれば、これはまた私はそのときに考えなければならないと思う。いまの段階においてこういうふうに、工業にいたしましても、あるいは産業にいたしましても、非常に急激に変化をいたしておる段階においては、われわれが予測しない問題もあり得るわけであります。そのときにはまた、政治でございますから、硬直的にものを考えていく必要はない。皆さん方からの御意見等もお伺いしながら、新出態に対処していくというのが、これが姿であろうかと思うのであります。したがって一応いまの形においては、われわれとしてはこの法律でもって対処し得る、こう考えておるわけでございまして、将来長きにわたって絶対にもうこのままでいいかどうかということになったならば、非常な不安があるということでは、われわれとしてもここで絶対不安がございませんということを申し上げることはいたしかねると思うのであります。そのときはそのときで処理をいたしたいと考えております。
  64. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまのは将来の不安ではないのです。もうすでに現実の輸出の赤字であることは間違いない。ただその赤字の幅が大きいか小さいかというだけが問題なわけでして、要するに赤字が相当額出てくることは間違いないのですから、この点については、まあ将来そういうことになったら、農林大臣とのお話で、そのときになったらまた考えましょうでは、ちょっと私ども国内需要農民としては不安でしょうがないということですから、この点についてさらにもう一段とお考え願いたい。そのもとになるのは、合理化によって幾らに下がるかということです。局長のいまの考えでは、四十二年までに四十三ドル、こういう数字が目標です。しかしいままでも何回か、二回にわたって合理化計画をやりましたけれども、現実にそのときに目標とした価格に下がったためしがない。そうしていまでも約五十ドル、目標からいえばもうすでに四十五、六ドルに下がってきておらなければならぬものが、いまだに五十ドル台にあるわけです。この四十三ドル目標というものは、できるのかどうなのか。これもさっきから私は申し上げているように、硫安といいますか、アンモニア工業全体が非常に内容が変わっていますから、その諸要素のとりようによって四十三ドルというような数字も、私は決して不可能ではないと思う。ですから私は、その点についての政府の調査なり何なり等をはっきりして、もう一度基礎をやり直さなければ、四十三ドルなんという数字は出てきっこないと思うのです。私は、そういうふうな硫安工業というか、アンモニア工業自体内容的に変化しているわけで、その変化した状態に応じたコスト調査なりコスト計算をもう一度やり直ししなければ、四十三ドルという数字は絶対出ない。よくいって四十七、八ドルという程度に落ちつくのではないかと思うのですが、この辺に対する政府見通しというか、御見解はどうですか。
  65. 福田一

    福田(一)国務大臣 四十三、四ドルという目標をつくったときと今日とでは、物価の問題とか、あるいは賃金の問題とか、いろいろ変わっております。そういうことが変わりがなければ、こういうところまでいける、こういう目標を出したわけでございます。したがいまして四十二年度までに必ずそこまでいけるかどうかということは、なかなか私ここで明言をいたしかねる。実をいえばそういう数字は私から、私のときに出しておるわけではないのでありまして、どういうふうにしておやりになったかも知らないのでありますが、実際にそういうことを言われたことは事実のように承っております。私は今後においてもだんだん下げていくつもりで、だんだん合理化がされていくと思いますが、いまのような輸出コストでございますれば、四十三、四ドルになれば、もう逆にもうかるでしょう。もうかる時代が来ると思います。しかしこれが四十六、七ドルであったらどうだろうか。そうなればまだやはりもうかるのではないだろうかという感じが私はするわけでありますが、これはとり方の問題だとおっしゃる。確かにそのとおりなんです。前の二法案でも、バルクライン方式をとるときに、いろいろコストを出してみたのだけれども、総掛かり費をどうかけるかとか、大体硫安工業というものが、その会社生産価格の中で一五%のところもあれば、三〇%のところもある、五%のところもある、非常に違っておるのです。ですから実際問題として、出し方がなかなかむずかしい。一定のフォーミュラをつくることが非常にむずかしいわけでございますが、といっても、大体常識的なフォーミュラのつくり方はあると思うのでありますが、そういう意味からいって、いま合理化を順々にしていけばだんだんコストは下げ得る。先ほどもあなたの仰せになったとおり、アンモニア工業というものはどんどん伸びていくということになれば、相当大量生産利益も出てくるわけでありますから、私はまだまだコストを下げ得ると考えておるのであります。だから価格の問題にいたしましても、私が申し上げたように一方においては物価高であるとか、一方においては賃金の上昇であるとかいうことはあっても、大体これは吸収して、この天井はもう現在以上には上げないで済む、こういう見通しをつけておるわけでございます。
  66. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは局長にお伺いしますが、さっきも申しましたように、アンモニア工業自体内容が非常に多角化している。従来はどういうふうな、コスト計算なり、あるいは目標を置く場合に、原則としてどういうふうな総掛かりの割り方をやっておるのですか。というのは、生産比率中心にしてやるのか、あるいは販売高の比率中心にしてやるのか、あるいは投資額を中心にしてやるのか、一つの基準ではないと思いますが、ここが一番問題だと思います。そうでないというと、四十三ドルとかなんとかいうことが問題にならなくなってしまう。この点は技術的な問題ですから、大臣にお聞きしてもしょうがないですが、この点をやらないと次の質問大臣にできませんから、聞いておるわけなんです。
  67. 倉八正

    ○倉八政府委員 販売高の比率によって割り掛けておりました。従来は御承知のように八割五、六分が肥料用であります。残りがわずか一五、六%でございます。それにつきましては販売高の比率によって割り掛けていたということでございます。
  68. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は時間がないそうでありますから、これで大臣に対する質問を打ち切りますが、こういう基礎の問題について明確な文字と政府方針なり、調査なりというもので裏づけをしてやらないことには、かりにこの新法を運用するとしても、幾ら法律の面をやってみたって、私はどうにもならぬと思う。ですからさっきから御要望申し上げたような、基礎事実についてもっとしっかりした調査なり、もう一度再検討して——アンモニア工業全体が非常に変わってきているのですから、それの検討なくして、今度の新法みたいなことをやると、これは私どもに言わせると、結局合理化をした利益というものは、ほとんど会社利益を増すということにだけしか役立たぬようになる危険性が非常に多いと思うのであります。私はほかにまだいろいろありますけれども、時間がありませんからぼつぼつ打ち切りますけれども、さっきから繰り返し申し上げておるように、そういう基礎のはっきりした調査なり再検討をした上で、この肥料工業なり肥料新法の運用ということをはかられないことには、少なくとも国内の農民からいったら、一つもプラスになりません。通産省としてはやりにくいところでしょう。これはある意味においては、ざっくばらんに言えば会社側の非常に痛いきんたまに触れるところです。ですからなかなかいやがると思います。いやがると思いますが、これを押し切ってやらぬことにはどうにもならぬと思うのですが、 この点について大臣のお考えはどうなんです。
  69. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は御趣旨のような問題が起きたときにも、何もそう経営者のごきげんばかりうかがうというような考え方で、行政をやるつもりはございません。
  70. 林百郎

    ○林委員 関連して。私は通産大臣に率直にお聞きしたいのですが、この法案を見ますと、農林大臣通産大臣の両方の名前が出てきて、どっちが一体おもで、どっちが一体主導権を握るのか、わからないのです。結局この法案の中で一番生きるのは、カルテルが届け出ればそれで効力が発生するというのは、これはもう届け出制ですからいいわけですね。ただ届け出があった場合に、是正命令が出し得るというのですけれども、その是正命令を出す場合、「農林大臣及び通産大臣は、」とあるのですが、二人はどっちでも出せるというのですか。またどっちか意見が違う場合はどうなるのか。
  71. 福田一

    福田(一)国務大臣 協議の上で決定をいたします。
  72. 林百郎

    ○林委員 協議の上なら、どうして協議の上と書かないのです。かりにいまの池田内閣の農林大臣はそういう立場をとるかどうか別として、若干生産農民の側に立って考えたい、通商産業大臣肥料メーカーの立場に立ってやりたいというような考えをかりに持ったとします。お持ちになるかどうかは別としても、所管ですからついそうなると思うのです。そういう場合、二人とも是正命令が出せるということになりますと、どうなるのです。しかも二条二項の一号を見ますと、「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」ということになりますと、どっちかの理由で是正命令が出せる。ところが農業のほうはおそらくこれは生産農民の側だし、肥料工業というのはメーカーの側です。われわれがここで心配しているのは、この法案がメーカーの合理化による利得を、価格をコストダウンするということでなくて、そのメリットを依然として価格カルテルで維持しようとすることと、それから輸出による赤字が生産農民に転嫁されないかということを心配しているわけです。そうすると肥料工業のメーカー側と農業生産農民の側とが利害が相反している場合に「農業又は肥料工業の健全な発展」、一方は農業の立場から是正しようとすれば、それは肥料工業の立場にならない。一方では農林大臣農業の側に立とうとすると、今度は通産大臣肥料工業の側に立とうとすれば、結局はこれは半身不随になって動かぬ。ことばではいかにもりっぱな是正命令が出せるとかなんとかあるけれども、これは出せないので、実際の効力が出るのはこの法案の中で業者のカルテルだけだ、こういうことになりませんか。どうでしょう。
  73. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういうことにはならないと思っております。共管という形はいろいろの法律にございます。そして運用されておる。政府は単一であります。お互い各大臣が話し合いをしてやっていくという例は、この法律だけではございません。そしてそれは運用されておるのであります。私たちは全体の問題を考えながら、しかも資料はちゃんとそろえて話をすれば、そこに話がつかないということはないと思います。それをやる場合には両大臣名で出すわけであります。
  74. 林百郎

    ○林委員 そうするとこれは両大臣の命令で出すわけですか。両大臣の連帯の責任において出すということになるわけですか。
  75. 福田一

    福田(一)国務大臣 そのとおりでございます。
  76. 林百郎

    ○林委員 わかりました。その点についてはあなたは内閣の一員ですから、国務大臣の連帯性ということは私もことばではわかりますけれども、実際は農林大臣が、農民の側にどの程度立つか知らぬけれども、ある程度その方面の考慮をする。通産大臣はメーカーの側に立つ。両方が協議して、協議がととのわなければ是正命令が出せない。そうすると届け出制だから、届け出の業者からの締結されたカルテルの届け出だけがものをいう、こういうことになるのじゃないかと思いますが、あなたにそう言って、私のほうが農林大臣より権限が上位でこの法案を運行しますと言えないでしょうから、これ以上あなたにその点についての質問は打ち切ります。  それからもう一つ、この点で問題になるのは、貿易の自由化がありますけれども、自由化により外国の肥料日本に輸入されるということについては、所管大臣のあなたとしてはどのように考えておりますか。日本肥料工業に影響があるのかないのか。あるとすれば、どのような影響があるのか。どこの国からどのような影響が考えられるのか。あるいはいまの段階ではそのようなことは全然考えないでいいのか。まず大臣からお聞きした後、局長からなりお聞きします。
  77. 福田一

    福田(一)国務大臣 事務的に局長から説明させます。
  78. 倉八正

    ○倉八政府委員 お答えいたします。どういう影響があるかということでございます。それは非常につかみにくい問題でございますが、考えられることは、たとえばアメリカあたりが回収硫安日本に安く持ち出してくるだろうというおそれは現にあります。まして最近、石油会社がいろいろなところでアンモニア工場をつくっておりますが、その場合どういう影響があるかということでございますが、それが本格化してくれば、日本肥料というのは、非常にこれもフラクチュエーションが大きいと思います。ある場合には——何十万トン入ってくることは、私は絶対なかろうと思いますけれども、絶えずちらちらオファーがありまして、日本がたとえば五十ドルしておる場合、向こうが四十何ドルということがありますと、日本肥料市場というのは——これはあくまで私は観念論て申し上げておりますが、その場合には日本価格というのがフラクチュエートする可能性が非常に多かろうと考えられます。主としてアメリカだろうと思います。
  79. 林百郎

    ○林委員 そうするともし西ドイツやそういうところからの輸入は、ガットの関係からいってどうなるのか。アメリカからの輸入の場合は、国内のメーカーのほうへ安いという影響を及ぼすかもしれない。一方西ドイツのほうはガットの関係で、国内価格も相当高いものですから、それが日本に入ってくる場合には、ガットの関税で高めるということになれば、日本国内価格より下回しで入るということは考えられませんから、その辺のEECの関係とアメリカの関係について、何か差異を考えられておるかどうか、その影響を聞きたいと思います。
  80. 倉八正

    ○倉八政府委員 アメリカ及びEECの関係は、ガットの関係においては全く同じであります。たしかあれはガットの十何条でございましたか、いわゆる生産——日本は世界で有数な生産国であります。それがもしもEECの六カ国あるいはアメリカが明らかにダンピングだということで輸入したらば、それはガットの規定によって、堂々とガットの場においてそれを差しとめ要求をすることができるわけであります。それはアメリカとEECについても同じであります。
  81. 林百郎

    ○林委員 最後にもう一点だけ聞いておきますが、先ほども農林大臣に聞いたのでありますが、経済局長のほうは、この是正命令を出す場合の基準条項が相当自由裁量の幅があるけれども、これは許可条項にしても、同じような自由裁量の幅の相当広いものが出てくるのだ、だからこういう自由裁量の幅のある条項があっても、それは許可条項にしても、あるいは是正命令についての裁量条項にしても、変わりないのだと言うのでありますが、そのように是正命令を出すについて相当幅の広い自由裁量の範囲がある。またそれが許可の条項にしても同じようなものが出てくるのだと言うなら、むしろ許可にしておいて、万一の場合には強制権を持つような処置を講じておいたほうが現在の置かれている情勢からいえば適切ではないかと思いますが、その点大臣、どう思いますか。
  82. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のようにこの法律案は、両者の話し合いということをたてまえにいたして、それで価格をきめさせるということであります。それが非常に不合理であった場合には、是正をするということであります。しかし不合理かどうかは、やはり一定の数字的な基礎がなければなりません。だからそれに照らしてみて、われわれがこれは不合理だ、こう考えた場合には、是正命令が出せるのでありますから、運用は十分できるものと考えております。
  83. 高見三郎

    高見委員長 これにて本連合審査会は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会