運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-08-10 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第68号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年八月十日(月曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君    理事 芳賀  貢君       加藤 精三君    倉成  正君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       田邉 國男君    内藤  隆君       中川 一郎君    亘  四郎君       有馬 輝武君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       野口 忠夫君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁長官   松岡  亮君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月二十四日  委員伊東隆治君、大坪保雄君及び舘林三喜男君  辞任につき、その補欠として金丸信君、倉成正  君及び田邉國男君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月二十八日  委員加藤精三辞任につき、その補欠として三  池信君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池信辞任につき、その補欠として加藤  精三君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員寺島隆太郎辞任につき、その補欠として  丹羽兵助君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員金丸信君及び丹羽兵助辞任につき、その  補欠として黒金泰美君及び大橋武夫君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員大橋武夫君及び黒金泰美辞任につき、そ  の補欠として丹羽兵助君及び金丸信君が議長の  指名委員に選任された。 八月一日  委員丹羽兵助君及び亘四郎辞任につき、その  補欠として浦野幸男君及び渡邊良夫君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員浦野幸男君及び渡邊良夫辞任につき、そ  の補欠として丹羽兵助君及び亘四郎君が議長の  指名委員に選任された。 同月七日  委員倉成正辞任につき、その補欠として岡崎  英城君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員加藤精三君及び栗林三郎辞任につき、そ  の補欠として倉成正君及び有馬輝武君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員倉成正君及び有馬輝武辞任につき、その  補欠として加藤精三君及び栗林三郎君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  議事に入るに先立ちまして、一言報告を申し上げます。  長らく本委員会委員でありました寺島隆太郎君が、去る七月三十一日突如永眠いたされました。本委員会に席を同じくするわれわれにとりまして、まことに痛恨にたえないところであります。  ここにつつしんで哀悼の意を表します。
  3. 高見三郎

    高見委員長 この際、赤城農林大臣より発言を求められておりますので、これを許します。赤城農林大臣
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ごろの池田内閣の改造にあたりまして、不肖私、引き続き農林大臣仕事をすることに相なりました。  前任中、当委員会各位からあるいは委員会全体といたしまして、私の農政推進する上におきまして、いろいろな御教示を賜わったり、あるいはまた御協力推進をいたしてくださいましたことにつきまして、このお礼をも兼ねて、重任のごあいさつを申し上げたいと思います。  農林水産政策につきましては、すでに曲り角どころか、壁にぶつかっているというような批評もあるくらいに、難問題が相当山積いたしておると思います。この解決につきましては、まことに微力でございますが、熱意を持って当たるつもりでございますので、引き続き一段の御協力、御鞭撻のほどを心からお願いする次第でございます。  農業政策全体につきましては、昨年度に四つの柱といたしまして、土地基盤整備農業構造改善流通価格対策金融制度改善、こういう問題を掲げて、その端緒といいますか、ある部分につきましてはその糸口をつくりつつ今日まで参っておるのでございます。しかし、われわれの考えておる、また各位におきまして憂慮しておる問題の推進が、なかなか思うようにいかないのは御承知のとおりでございます。私といたしましては、この考え方をさらに推進するつもりでございますが、特に最近の農業あるいは漁業労働力一転出といいますか、農山漁村を離れていく傾向が非常に多いことはいなめない事実でございます。三十七年度に七十万からの人が出ましたが、三十八年度の最新の統計によりましても、六十数万の人々が出ておるような次第でございます。こういうようなことでございまするというと、やはり農業と他産業との所得格差を是正し、あるいは生活水準均衡を得せしめる一方におきまして、食糧をまかなっていかなければならない農山漁村といたしまして、この解決をする上に非常に難局に直面しているという感じがいたします。でありますので、依然として生産基盤強化拡大をしていく、そうして近代化の線に沿わしめるというような政策は、非常に基本的な問題でありますけれども、従来手をつけておったことに対しまして、さらに強化することが必要ではないかと痛切に考えておるようなわけでございます。どうしても自立経営規模拡大できるような方向——私は再々申し上げておりますが、自立経営規模拡大というものが、個人の経営拡大と同時に、共同によっての拡大ということも当然考えていかなければならぬというふうに思うのでございます。そういう意味によりまして、量的には、農村を離れて、しかも土地を直接残っておる人に売り渡すのにはちゅうちょをしているというような向きもございます。そういうような場合におきまして、第三の機関を設けるか、あるいは第三の機関でなく、ほかの現在の機関に扱わせるかということはまだきめてはおりませんけれども、そういう第三者の機関によって、土地を売り渡してもいいというような希望を持っている人から、第三機関において土地を買い求めて、しばらくこれを保有しておくというような形で、経営規模拡大しようという者に分配するといいますか、売り渡すというような方向で第三の機関を設けたらどうだろうか、そうして経営規模拡大に資するというような形を考えて、その方向を進めておるわけでございます。  同時に、これは農林水産関係だけの政策としては離れているかもしれませんが、最近の兼業農家の増大、しかも兼業農家が収入を得るという点においては、これはまあ欠くべからざる一つ兼業という形をとっておるのでございますから、これを私は否定する気持ちは持ちませんが、ただ、他産業における受け入れ態勢が充実して安定しているということであるならば、そのほうに出てもよろしい、思い切って出てもいいというようなものも私はあると思います。でございますので、そういう受け入れ態勢等を整えて、一面においては他産業に出て、安定してそこに仕事を求めていけるということであるような方途も講じながら、後継者といいますか、農業維持していこうという者の経営規模拡大に力を尽くしたい、こういうふうに考えております。  同時に、従来の農林水産基盤整備ということは、強力に推し進めていきたい。特に畜産との関係もありますので、山村地帯等における自給飼料の資源としての草地造成、これを大きく取り上げて、経営規模拡大方向へ持っていきたいと考えておるわけであります。  なお、質的に申し上げますならば、やはり何といたしましても、耕地の質がよくなる、すなわち、集団化とか、あるいはその他これに関連しての圃場整備でございますが、そういうところに力を入れたい。しかし、何か貫くものがないと、せっかくいいものでもそれに進んでいきませんので、全国的に農道及び林道整備をしていく、こういう機運とともに、各町村でそういう方向へ進めていく体制を誘導するといいますか、ともに政府としてこれでひとつ線を貫いていこうじゃないか、その線が相当出てきて、農道林道等ができてくるということになりますならば、その周辺の圃場の整備というようなことも促進され、質的にそういう改良がなされていく、こういうふうに考えておりますので、私はそういう方向を進めていきたいと考えておるわけでございます。  第二には、流通価格対策でございますが、価格対策内外諸般情勢から非常に重大であることは、私から申し上げる必要もないと思います。この点につきまして、やはり生産性の向上といいますか、これを推進しつつ、そしてまた自給度維持あるいは増そうというものと、あるいはそれほどやりたくてもなかなかでき得ないというようなものの、いろいろな選別といいますか、こういうものはあろうかと思います。しかしながら、とかく農業基本法等におきまして、食糧自給度といいますか、生産を増すということが、おろそかにされているのじゃないかというような疑念も、一般の農家等において持っておらないとは限りません。そういう疑念あるいは誤解等を払拭して自給度を増すということが、非常に困難な情勢にございますけれども、自給度維持していかなければならぬというようなものについては、これを各方面からその方向裏づけをしていくといいますか、維持強化をしていかなければならぬというふうに考えておりますけれども、同時に、流通対策につきましては、むずかしい問題でございますけれども、依然として生産者は安く売り、消費者は高く買っているというような状況がなかなか除かれません。これは、私は、一つの安定があればいいので、一つの安定で、その差が非常に少ないような形で、従来機構の改革等に手をつけてきましたことをまた推進いたし、また価格対策も講じていきたい、こう思っております。  それに畜産の問題でございますが、これは本委員会等におきましても、畜産問題等につきましてもっと掘り下げて対策を講じろ、こういうような御意見もしばしば聞かされておるのでございますが、私もそのとおりに考えております。そういう意味におきまして、草地造成等は、もちろん自給飼料面を増す点におきまして重大な問題でございますから、そういう面に力を入れると同時に、加工乳という関係ももちろん大事でございますが、飲用乳関係における対策が少しおくれておるようなふうに感じております。でありますので、飲用乳を中心としての価格対策、あるいは流通対策、あるいは学校給食等における消費拡大というふうな面を考え、また飼料の面におきましても、いま輸入飼料にだいぶ依存しております現状といたしまして、やむを得ない面が相当ございます。この濃厚飼料を全部切りかえろといっても、これは無理と存じますけれども、できるだけ粗飼料等草地造成等による問題の推進によって、飼料問題等につきましても十分考えていかなければならぬというふうにいたしております。  そこで、いろいろ政策を実行する上におきまして、先立つものは金といいますか、予算の拘束が相当あるわけでございます。御承知のように、概算要求が昨年度の三〇%以内というような申し合わせもございます。農林関係におきましてはなかなかそういうことでやっておったのでは、考えの何分の一か何百分の一かぐらいを行なう程度になってしまうことを私はおそれておるのでございますから、そういう意味におきまして、予算の面におきましても、私は、十分農林関係については考慮を払わせなくちゃならぬし、払わなくちゃならぬじゃないかと、これからのいろいろな折衝やその他の面におきましても考えておるわけでございます。  特に、予算の面と同じように重大性を加えてきました農林漁業関係の金融問題でございます。昨年度相当この金融問題には手を加えまして推進いたしたつもりでございますけれども、まだまだ意に満たない点が相当あります。そういう面の改善等につきまして、これもまたいろいろむずかしい面もございますが、その解決をはかっていきたい。またワク等につきまして、十分な資金量をもって政策を行なっていくところの裏づけにしていくという意味におきまして、そのワク等につきましても考慮をいたしておる点がございます。そういう面におきまして、金融財政方面から、ことに金融方面等にはなお十分力を注いで、私どもの考えておることが実行できるように、あるいは農山漁村人々の期待に沿うていくような方向へ邁進していきたいと考えます。  冒頭申し上げましたように、そういう気持ちがあっても、力足らざる面も自覚いたしておりますし、反省いたしておる面もございます。しかし、非常に大事な農林水産の問題をあずかっておるわれわれでございますから、極力力を尽くしたい、こう存じますが、同時に、前から非常に貴重なる御意見やらあるいは強い御協力を賜わっておりますところの当委員会皆さん方一段の御鞭撻を、かってでございますがお願いいたしまして、この農政推進いたしていきたい、こう考えますので、どうか前にも増して御指導と御鞭撻とを深くお願いいたしまして、ごあいさつといたします。(拍手
  5. 高見三郎

    高見委員長 なお、去る七月二十四日就任せられました新政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。舘林三喜男君。
  6. 舘林三喜男

    舘林説明員 一言あいさつ申し上げます。  先日、農林政務次官を拝命いたしました舘林三喜男でございます。  わが国の農業は、ただいま農林大臣からもお話のありましたとおりに、重大な転換期に面しているおりから、まことに責任の重大なるを痛感いたしている次第でございます。何ぶん農政につきましては全くしろうとでございますので、皆さん方委員の方々の格別の御指導を前次官の丹羽先生同様賜わりますように、心からお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  7. 高見三郎

    高見委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  昭和三十九年産生産者米価山陰北陸地方における豪雨による農作物被害状況並びに市乳値上げに伴う配分等に関する問題について、政府当局から順次報告を求めます。齋藤食糧庁長官
  8. 齋藤誠

    齋藤説明員 三十九年産米価につきまして御報告申し上げたいと思います。  去る当委員会におきまして、米価審議会諮問並びに答申につきまして、米価算定考え方を御報告申し上げましたので、その後の経緯につきまして、私から申し上げたいと存じます。  今回の米価内容におきましては、従来の生産費所得補償方式によって算定いたしました内容のものと、それから本年度の特別の措置として臨時加算額を加えたものと、合計二つの要素から構成いたしておるのでありますが、最終的には一−四等を平均いたしまして、一万五千一円ということに決定いたしたわけでございます。  そこで、その内容のおもな点について申し上げますと、まず、従来の生産費所得補償方式におきまして、先般当委員会報告しましたその後におきまして、最終的な決定段階改正いたしました主要な点を申し上げます。  第一は、生産費所得補償方式におきまして、従来都市の製造工業労賃算定いたしまして、それを農村労賃評価する際に、物価差を設けておったわけでございます。この物価差につきましては、最終的に、これはいろいろ物価差があるとかないとか、あるいはなくてもあっても思慮すべきであるとか、いろいろの論議がありましたけれども、今回の考え方といたしましては、所得均衡をはかるための政策的措置といたしまして、物価差適用しないということで算定いたしました。これが第一点であります。  第二には、製造工業賃金をとります際に、これは全規模製造工業賃金をとるという意味におきまして、従来は一人以上の雇用労働者を持つ全製造規模賃金について算定しておったわけでございますが、今回の算定にあたりましては、五人以上の従業者を持つ製造業についての賃金をもって評価がえの賃金とすることにいたしたわけでございます。これが第二点でございます。  それから第三点は、製造工業賃金内容部分におきまして、若干の改正をいたしたわけでございます。  その第一は、賃金の中に、従来ともいろいろ福利厚生費的なものを評価すべきではないかといういろいろの論議があったわけでございます。この福利厚生費全体をとることについては、これは賃金内容が異なり、性格を異にいたしておりますので、その中で、特に現物給与に該当するものについて、いろいろ論議が集中したわけでございます。そこで、今回の改正におきましては、労働の対価として見られる福利厚生費の中に包含されている現物給与のみにつきまして、これを賃金として評価対象にする、こういうことにいたしたわけでございます。これにつきましては、従来これに関するいろいろの論議がありましたものの、なかなか正確な資料がなかった関係で、これを用いることにつきましては、算定上難点のあったものでございますが、これを今回取り入れるということにいたしたわけでございます。  なお、この製造工業賃金をいま申し上げましたような改正をいたしましたことに関連いたしまして、生産費調査対象農家につきましても、最終的には若干の修正をいたしたわけでございます。  その一つは、従来、販売農家生産費調査というたてまえで、一俵以上販売する農家の全生産費について生産費調査計算をいたしましたわけでございますが、今回の最終の改定にあたりましては、これを五俵以上販売する農家生産費について米価算定の基礎にするという措置をとった次第でございます。これにつきましては、逆を言えば、四俵以下の販売農家というものは、全販売量の一%にも満たないような数字であり、かつまた、自給農家販売農家との判別も、ときによって非常に変動する可能性もあるというようなことも考えまして、五俵以上の販売農家生産費をとる、こういうことにいたしましたわけでございます。なお、これに関連いたしまして、一俵以上の生産費と五俵以上の生産費格差というものについては、現状においては、そう大きな開きもないということもあわせ参酌してきめておるような次第でございます。  それから第四点は、予約概算金については、利子控除を先般の政府諮問案には盛っておったのでございますが、これもいろいろ論議があるところでありまして、奨励金的な性格もあるという意味で、概算金利子控除を最終的にはやめるということにいたした次第でございます。  こういうような考え方によりまして、従来の生産費所得補償方式によります計算では、結局、昨年度価格に比べまして千二百四十七円増加するということになりまして、米価といたしましては一−四等平均包装込みで一万四千四百五十一円、それに今回の特別の措置といたしまして五百五十円の臨時加算金を加えまして、そして平均といたしましては手取り一万五千一円ということにいたしたわけでございます。なお、これの中には、この加算金をつけることに伴いまして、予約申し込み金というのは、これは本年度においては加算金の中に含めて落としております。これは、二年でそういう予約申し込み金は落とすという従来の政府方針どおり、そのような整理の措置をとった次第でございます。  以上が本年度米価決定経緯でございます。  なお、この前すでに報告したところでございますが、時期別格差につきましては、本年度については、従来、昨年度同様に、本年度限り据え置くということを申し上げたわけでありますが、最終的にもそのような措置をとりました。来年度以降については、やはり米審の意向もありまして、適正米価方針を継続してまいりたい、かように考えております。(「歩どまりは」と呼ぶ者あり)  歩どまりにつきましては、前年度と同様にいたしております。(「予約減税は」と呼ぶ者あり)  予約減税につきましては、いろいろ予約減税内容も変わっておりますが、またその効果も変わってまいっておりますが、現状においてはなかなかこれを廃止するという方向には行き得ないような事情で今日に至っておりますので、われわれとしてもそういう方向でなお検討してまいりたい、こう思っております。
  9. 高見三郎

  10. 中西一郎

    中西説明員 本年七月の上旬から以降続きました山陰北陸豪雨関係被害状況と、それに対します対策進捗状況を御報告申し上げます。  まず、被害の概況でございますが、全体として、現在われわれの手元で推計を含めまして二百億円をこえるのではないかというふうに考えております。その中で施設関係公共土木あるいは農地農業用施設共同利用施設開拓者施設その他湛水排除等も含めまして、現在までに集計しておりますところでは、約百六十六億円でございます。そのほかに、農作物関係調査が、これは昼夜兼行で進めておるところでございますが、四十億円前後になるのではないかというようなこととあわせまして、先ほど申し上げました二百億円になんなんとする被害ではないかということを考えております。  特に今度の災害にはいろんな特殊性も見られるわけでございますが、それらに対しまして対策としましては、農地農業用施設あるいは林道、さらに漁港、治山海岸等を含めました公共土木関係あるいは共同利用施設でございますが、有線放送被害も相当ございます。それらの被害に対する対策としましての激甚法適用は、総理府災害対策本部等とも若干の詰めを必要といたしております。できれば今週中に激甚法適用の政令を出すという段取りにいたしたい、かように考えて取り進めております。  それから災害復旧にあたりまして、原形復旧にとどまらないで改良復旧をするということについても、いろいろ要望等がございますが、そういう線で現在の法律の範囲内でできるだけのことをしていこうというふうに考えております。  また、治山関係で、採択基準八十万円を下げたらどうかという要望もあるのですけれども、八十万円の規模緊急治山事業というのは、非常に小規模のものと現段階ではなっております。三十五年ごろにきめました採択基準でございますので、規模としては、非常に小さな規模もこれで採択し得るのではないかと思っておりますが、なおそれでも漏れるところにつきましては、県単地方の単独の事業をやることになろうと思います。それに対する起債の裏づけあるいは交付税関係での特別措置というようなことにつきましても配慮いたしまして、自治省に連絡をいたしております。大きな筋としてはおおむね了承がついておると考えておりますが、中身の詰めをいたしておる次第でございます。  それから天災融資法の発動でございますが、これは当然発動いたさなければならないし、また、激甚法の第八条の関係で、激甚法適用にも該当するというふうに考えておりますが、先ほど申し上げましたように、数字詰めがまだ完了いたしておりません。数字詰めまして対象県等をきめていくわけでございます。さらに、天災融資法自体としましては、特別被害地域市町村の検討をも進めておるわけで、若干の時日を要するわけでございますが、急いで結論を出したい、かように考えております。  そのほか、災害に伴いまして各種の御要望が出ておりますが、いずれにつきましても、従来の災害対策に準じまして、それぞれ措置してまいりたいと考えておるわけでございますが、地元の要望としましては、天災融資法の本法の根本的改正とか、あるいは第三紀層地帯の地質とか地形についての根本的調査というような根本問題の指摘も出ておりますが、そういうことにつきましては、当面の間に合いませんけれども、今度の被害を契機としまして、一そう検討の度合いを深めてまいりたい、早めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  以上、簡単でございましたが、災害の概況と対策進捗状況を御報告申し上げました。
  11. 高見三郎

  12. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 六月二十六日の当委員会におきまして、飲用牛乳の販売価格の値上げにつきましての経緯と、それに伴います生産者乳価の引き上げに関します経緯の御報告以後におきます事態の進展状況について、簡単に御説明を申し上げます。  小売り価格の値上げにつきましては、当時なお未定の状態にありました北海道、鳥取、島根、鹿児島及び宮崎の五県につきましては、北海道が六月十一日から、鳥取、島根、鹿児島の三県が七月から、それぞれ普通牛乳、加工乳の二円値上げを実施いたしております。宮崎県については普通牛乳一円、加工乳について二円の引き上げを行なっております。  次に、小売り価格の引き上げに伴います生産者価格の改定の実情でございますが、これは御承知のように、非常に多くの乳業者がおりますため、全面的に把握することはきわめて困難なのでございますが、いわゆる大手四社の動きといいますか、大手四社を中心とします生産者乳価の引き上げに関します動向で、代表させて御報告をさせていただきたいと思います。  大手四社につきましては、六月分からの生乳価格の引き上げにつきまして生産者団体との交渉に入ったのでございますが、大体七月の十日から二十日の間に価格の改定についての交渉に入った模様であります。そのメーカー側が提示をいたしました生産者乳価の引き上げの額は、北海道、東北につきましては一・八七五キログラム、つまり一升当たり三円の値上げ、宮城、秋田につきまして五円、福島、長野、愛媛も五円、それから関東、新潟について六円、北陸、東海、関西、中国について六円、中国のうち鳥取、島根について三円、高知について市乳用六円、加工三円、佐賀について市乳用十円、長崎については市乳用八円、大分市乳用十一円、宮崎については市乳用四円、加工一円というような提示を行なった模様であります。これに対しまして、乳業者、生産者間で乳価交渉が妥結いたしましたところは、正式に調印を終えたと報告のありましたものが北海道、東北の諸県でございまして、その他の地域につきましては、最終的な調印の段階まで進んでおりません。概括的に申し上げますと、九州については、新しい乳価についての交渉は相当に進捗しておる状況のように見受けられます。中部、四国についてもある程度進捗が見られるのでございますが、近畿、東海、関東のうち、東京近傍の二、三県を除きます諸県等の地域については、この交渉の進捗状態が正確に把握できない。メーカーごとにそれぞれ進捗状況についての見解を述べておりますが、一方生産者団体の見解と相違があるようでございます。都道府県においても、その実質的な進捗状態の把握は正確にはむずかしい段階のようでございますが、表面的にはいまだ最終の調印に至った県は少数である。  なお、今回の乳業者と生産者との間における新乳価の交渉にあたりまして、酪農振興法に基づきます都道府県知事のあっせんの申し出が行なわれました府県は兵庫県一県、それから調停の申請が行なわれました県は、栃木県の一農協から調停申請がありましたのと、静岡県の生産者団体からの調停申請と、二県の事例があります。なお、これらの諸県におきましては、県知事のあっせんないし調停の事務に入っておるのでありますが、兵庫県については、一部あっせんによる妥結を見た事例もございますが全県的にはなおあっせんが継続中であります。静岡県の調停につきましては、農林省といたしましても、現地における話し合いによる解決の促進ということについて指導を加えつつある段階でございます。  以上が、前回当委員会で御報告申し上げました以後の飲用乳価格引き上げに伴います生産者乳価の価格交渉の全般的な概要でございます。
  13. 高見三郎

    高見委員長 質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。足鹿覺君。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、山陰北陸地方を過般襲いました豪雨被害について、先ほどの官房長の報告等を中心に若干の質疑をいたします。こまかいことにつきましては災害対策特別委員会において行なう予定でありますが、特に農村関係に重点を置いてお尋ねをいたしますので、答弁のできない点は、災害対策本部等とも連絡をとられて、でき得る限りの御出席を願いたいと思います。  そこで、今度の災害の特質についての根本対策は後日に譲るという先ほどの御報告でありますが、それでは困るのであります。と申しますのは、今度の、特にこれは山陰地域でありますが、新潟地震の三倍以上の人命を失っておるという特殊事情があることは、御承知のとおりであります。どこからこのような被害が起きたか、とうとい人命を失うような事態になったかということについて、いろいろ現地を調査をし、対策も練っておられると思いますが、主として、私は現地の者の一人として申し上げたいことは、農家が山くずれによる大きな被害を受けておる。同時に、人命がそれによって失われておるのであります。新潟地震においてすらも三十有余名というのが、百名をこえておる。こういう事態は重大な問題として、農林省としてもその被害の特質に即応した今後の対策を立てるべきだと考えておりますが、この点について十分御認識を持って対処しておられますかどうか、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
  15. 中西一郎

    中西説明員 お話の点、おことばのとおりに考えております。先ほども若干触れましたが、採択基準の問題あるいは関連工事の範囲を広げるというようなことで、できるだけ緊急にし得る事業の範囲を拡大いたして、応急措置を講じてまいりたいと考えております。そのほかに、県の単独の事業によります小災害部分につきましては、これも放置するわけにはまいりませんので、地方債の発行、それに対する地方交付税の裏づけ問題等を別途折衝いたしておるということもつけ加えたわけでございます。  先ほどの説明で、最後に簡単に触れてしまったのですけれども、第三紀層地帯の特に花こう岩の風化土壌という地帯に被害が多発しておるというようなことにもかんがみまして、これらの地域につきましては、三十七年度から荒廃の地域の予知のための調査をいたしておりますが、これらをさらに継続実施するのは当然でございますが、先ほどのお話のとおりの被害にかんがみまして、十分この根本的調査に留意して、対策を取り進めていきたい、かように考えております。十分おことばの線で努力いたしてまいりたい、かように考えております。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 九月の台風シーズンを目睫に控えまして、現地の人々は、再びこの惨害が出はしないかというのでおののいておるのであります。と申しますのは、現行法の矛盾といいますか、山がくずれてくるという想定のもとに、避難命令を出しておるわけです。ところが、幸いにしてくずれてこなかった。しかし、もうきわにきておる。この次、秋の台風でもきたら、また流されるのです。これはもう必至だというにもかかわらず、その移転先の決定、敷地の提供、あるいは移転費の助成、資金の融通というようなことについて、全く現行法の盲点といいますか、被害があって初めてこれを救済をするような盲点になっておるのであります。  そこで、数年前に、これは鳥取県の米子市の実例でありますが、今度の避難命令を出した地帯は、島根県の地続きでありまして、花こう岩地帯であります。そこで、水路の関係等を考慮いたしまして、水路の方向を変えるとか、縦横十文字にコンクリートの防災工事を行なうということに大体話がついておったのであります。ところが、民有林でありますために、その被害を受けることを想定される農家と山の所有者は関係がないために、横やりが入って、それがお流れになっておるという事実があるのであります。これは当然林野庁所管においても、民有林において何らかの措置がとらるべきものであろうと私は思うのであります。林野庁はどうしましたか。帰りましたか。——そういう問題があるのですよ。この前、二、三年前の台風の際に、その周辺一帯が山くずれをいたしました。幸い現在残っておるところは、県なり市の当局が防災工事を行なおうとして、設計もできた。ところが、所有権をたてにとったために、そのままになって現在に至っておるのであります。そこで、解体移転を——もうあぶなくておれませんから、解体をしようということになりました。ところが、広島の建設局はかろうじて六分五厘の融資をしようという程度でお茶を濁しておるのであります。やはりこれは農家自体の問題でありますから、また人命にかかわる問題でありますから、被害があったらこれに手を加えるというようなことではなしに、民地たると官地たるとを問わず、災害の未然防止のために、民有林対策について遺憾なきを期してもらいたい。国有林であるならば当然でありますが、その点については、林野庁当局の御答弁を求めたいし、専門的な立場から答弁を求めたいと思いますが、これらの点については、災害対策本部等とも十分御連絡になって、そして秋の台風シーズンまでに、最も危険と思われるものに対しては、解体を促し、移転先の敷地を提供し、改築費の措置を、農林省としても、農家自体の問題でありますから、建設省と連係の上、対処される御用意がありますかどうか。私は、ことしの災害の頻発の状況から見まして、また九月前後には大きなのがくるのではないか、かような心配を持っておるのでありまして、現地の人々もその心配におののいておる実情でありますから、十分その点も御勘案になって、少なくとも当面防災事業の実施と、それから移転を希望する者に対するところの措置を具体的に検討していただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  17. 中西一郎

    中西説明員 お話しのような危険が寸前にあることが予知される地域あるいはその地域にある住宅をどうするかというような問題が、非常に深刻な問題であるということは、よく了承いたしております。適切な例でありますかどうか別としまして、現地との話し合いの過程で、それに関連しました二、三のことを申し上げますと、例の伊那谷の崩壊に際しまして、農林省の災害復旧予算を自治省に移しかえまして、それで集団移住したというようなケースも過去にございます。そういうことが必要な地点、あるいはそういうことの手法で対策が立ち得るような地点が現地にあるかどうかということは、それぞれの県当局と連絡しまして、調査を実はいたしております。また住宅の問題としまして、なかなか農家のほうでそれに同調といいますか、してこないというような話も聞くのですけれども、集団住宅をこの際建てて、それの実施等にも十分な配慮をいたしまして、危検地帯での建築という危険なことを繰り返さないようにしようじゃないかというような考えも実はございます。鍋田干拓地あるいは岐阜県の一部等で伊勢湾古風のあとに対処したような手法でございますけれども、そういうことが可能ならば、農林中金その他の資金の手当も、このようなことを柱にして考えたらどうかというようなことを考えております。まだいずれの場合につきましても、県当局からこの地域についてこうだというような提案がきておりません。いずれそういう御提案が出てきましたならば、現地に即して措置をしてまいりたいと思っております。  民有林の治山の問題、先ほどお話がございましたが、やや専門的な部門のお答えを必要とするかと思うのですが、先ほど来採択基準あるいは単独事業というふうに分けて申し上げたのですけども、おおむねはそれで対処し得るのではないかと考えておりますが、なお専門的に十分検討いたしまして、別の機会にお答え申し上げたいと思っております。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 採択基準問題等で、県あるいは市町村等と連絡をとってやるというこでありますが、現地から出てこぬというお話でありますけれども、現地では扱いかねておるのです。出してみたところで、いまのところではどうにもならない、やはりこういう気持ちがあるから、何とか自分たちの力の範囲内において、市の当局で善処をしよう、いままでの例から見まして、こういうことではないかと思うのです。ですから、そうではなくして、もっと具体的、積極的な方針を打ち出されて、そうして災害の未然防止というところに重点を置かれる必要がありはしないか。これは事務的なことではなくして、いやしくも人命に関する問題でありますから、最も迅速に、的確に、だれが見ても危険だと思われるような地帯のものは、今度避難命令を出したようなところについては、いわゆる国なり県なり市町村が一体となって、移転を促進をする、あるいは防災事業の徹底した仕事を行なうという措置が私はとられなければならぬと思うのです。いささか御検討にはなっておると思いますけれども、手ぬるいような印象をいまの官房長の答弁で受けたのでありますが、そうでなければしあわせでありますが、具体的にありますか。
  19. 中西一郎

    中西説明員 従来も、災害のときには、いま申し上げたようなことについての連絡をそれぞれいたしておるのでございますが、今度大臣自身の御視察の日程もございますので、そういう際に、農林省のそれ相当の責任者から同様の観点からの現地の指導をいたす手はずをいたしております。できるだけのことはいたしておるのでございますが、なお、おことばのような線も十分体しまして、現地の指導に遺憾なきを期したい、かように考えております。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 もう少し具体的にお聞きしたいのでありますが、一応お認めになったようでありますから、よく御検討になって、すみやかに施策を講じていただきたいと思います。  次の問題は、今度の山陰北陸被害を見ますと、直轄河川等の大中河川ははんらんを免れております。どちらかと申しますと、小河川、特に県費支弁にもならない準用河川が決壊をして、私の居住地であります米子市のごときは、商店街が水びたしになった。水田、畑地は全部やられた。こういう実情にあるのであります。これを見ますと、上流はかんがい用水であり、下流は排水路を兼ねるといったものであります。これは土地改良法の際にもずいぶん私どもは議論をしたところでありますが、実際問題として、土地改良法の対象でやるのが妥当なのか、あるいは排水路と下水道との関係において処理するのが妥当なのかわからないような実情のものが、相当あることを十分お認めになってしかるべきだと思うのです。これらの準用河川あるいは小河川のはんらんが予想以上に被害を与えておる。これは従来の国の河川対策がこれは建設省の所管でありますから、農林省に申し上げても意味がありませんから、これ以上は申し上げませんが、災害特別委員会等でさらに申し上げたいと思っておりますが、とにかく私の申しますのは、農業用水路あるいは市の下水路と言っておるものの、どっちが重点なのかわからないようなものが、大きな被害を出しておる。これらは当然農林省としては建設省と連絡をとられて、そしてあとう限りの対策を講ずる必要があるのではないかということを指摘しておきたいのであります。これらの点については、お気づきになっておって、どのような対策を講じられようとしておりますか。この点を伺っておきたいと思います。
  21. 中西一郎

    中西説明員 災害以降、現地に指導官を各省から出しております。さらに本月になりまして、緊急査定の段取りで各省から査定官も派遣をいたしております。それらの場合、いま御指摘のようなケースの場合には、関係各省の査定官なり指導官が相寄りまして相談をいたします。そういう意味で、災害があって、今後の対策についてどこの省がやるのかよくわからないというようなことのないことを期しておりますけれども、なお御注意がございましたので、現地に対しましても十分その点配慮するように指導いたしたい、かように考えます。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 十分その点は御留意になって、公式的な措置におちいらないように、実情に即した対策をぜひ講じてほしいと思います。当局にその御熱意があるようでありますから、現に災害査定官等ももうすでにお見えになっておりますし、それらの点を総合して対策を立てられるときには、官庁間のなわ張りとかあるいはそれに基づく一方的な施策に終わらないように、また本格的災害シーズンも近づいておるわけでありますから、十分に御配慮をお願いいたしておきたいと思います。  第三点といたしましては、被害農作物被害対策についてであります。現在、二百億のうち約四十億程度が農作物被害だというふうに言っております。しかし、水稲等につきましては、湛水期間の短かいものは見直してきつつあることは、愁眉を開く事例だろうと思いますが、一番被害の著しいものは畑作物であります。特に夏蔬菜等は全く目をおおうような惨状であります。わずかに残っておりますものは、葉たばこ等が四〇%程度の下葉をつんで、これから本格的な収穫に至ろうといろときの豪雨でありますので、これはまあまあ若干被害が免れる点もあったと思いますけれども、それも予想以上の被害であります。これは専売公社に別な機会にお尋ねをいたしたいと思っておりますけれども、以上の水稲なり葉たばこは、国において災害補償の制度がありますから、まず一応曲がりなりにも当座の手当てはできると思いますが、水稲の概算払いはすでにもう査定を終えて行ないましたか、いつごろになる予定でありますか。
  23. 中西一郎

    中西説明員 再保険金の概算払いにつきましては、現在用意はいたしております。各県からの申請がありますれば、受け入れる準備はしております。あとの夏蔬菜等のお話がございましたが、これにつきましては、先ほどの四十億の中にはまだ十分集計されておりません。主として水稲の査定が進んでおるのが現状であります。したがいまして、被害額が若干ふくらんでくるのではないかという見通しを持っております。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 若干どころではないですよ。これはもう急激に——報告を御聴取になって集計されれば、予想以上の被害に私は達すると思うのです。今度の被害の特色は、この第三点は、畑地の災害補償制度のない畑作物に激甚な被害を与えておる、壊滅的な被害を与えておるという点であろうかと思います。早急にこれは園芸局等も手を打たれて、対岸の火災祝しておるようなことではなしに、もっと現地を督励をなさって、そうして被害の実情、実態を把握される必要が私はあろうと思います。  そこで、伺っておきたいことは、いま申しましたように、水稲と葉たばこを除いては、何らの災害補償制度がない。そこで、勢い天災融資法に基づく融資以外にはいまのところ見当たらないわけです。実際問題として、私ども現地でいろいろと相談を受けるのでありますが、困っておることはこういうことなんです。畑作は多種多様でありまして、特に蔬菜のごときは、激甚地指定を受けたときのいわゆる融資限度額をどの程度に押えるかということも一つの問題になろうかと思います。去年の長雨に基づく冬作物は、八〇%以上の被害を受けたものに対する特例措置が講ぜられました。がしかし、今度の畑作の場合は、この冬作物どころの騒ぎじゃありません。反当十数万円もあげるようなものが全部やられておるわけでありますから、その限りにおいては、畑作農家には致命的な打撃を与えておるわけであります。そこで、実際問題としては、農協等は賦課金を賦課徴収しようというやさきであります。一方災害救助法が発動されておりますから、県民税、市町村民税あるいは国税等の減免措置が講ぜられておる際に、いかに営農指導が必要とはいえ、賦課金を取ることの是非ということについて議論をしておるわけであります。市町村民税や県民税、国税の減免が考えられる際に、たとえ農協が自主的な今後の営農指導をするにしましても、それをこの際強行して取ることはどうか。取るものは取って、出すものは出すという考え方もあるが、これは相当慎重を要するのではないかというふうに私どもは考えておるのであります。というのは、一方、市町村民税を減税にした場合には、これは特交金の対象になります。ところが、系統の農業団体あるいはその他の団体の場合は、賦課金を全廃すれば、だれもその穴を埋めてくれるものはありません。そうしますと、それを見るという立場に立って、営農指導員等の給与等を考えた場合に、大きな穴があいてまいります。これをどう措置するかということは、具体的な問題として農業団体の営農活動の面からいっても、私はなおざりにできない問題であろうかと思いますが、この点等について関係当局は、昌谷さんですか、何かお考えになっておりますか。困った問題が一つ起きておるわけであります。これが一つと、いま一つは、蔬菜等の、葉たばこを除く畑作物等に対する激甚指定の条件、融資条件といったようなことについて、どういうふうに御検討になっておりますか。また将来対策を立てようと考えておられますか。この点を二点明らかにしていただきたい。
  25. 中西一郎

    中西説明員 営農指導等に関します賦課金の徴収をどうするかというような御指摘でございました。お話のように、国税、地方税等については減免の措置がございます。地方税については特に特別交付税でその負担関係を調整するという制度がございます。農林省の観点からしますと、農業改良普及員の活動費その他につきましては、それだけ仕事がふえたというような場合に、若干予備費を計上いたしたような経過もあるわけでございますが、今回の被害についても同様のことが必要かどうか、目下検討、調整をはかっております。  お話の、その補助金の体系の中に入っていない団体固有の指導のための経費をどうするかというような点については、制度的には、それの対処のしかたとしましては、天災融資法が考えております融資のワクが、御承知のように経営に必要な営農資金ということになっています。そういう意味で、天災融資法の十五万円というようなワクの中でそれが対処していただけるものであるというふうに考えるわけです。さらに、保険金の支払い等がありますれば、これもまたそういう意味での財源にもなっていくのではないか。現段階で農林省としまして、それらの営農指導費の賦課金を取るか取らぬかというようなことに突きささっていって行政指導いたすというようなことは、事務的にも非常に困難な点が起きると思います。融資あるいは保険金というような点で対処していただきたいという趣旨でございます。  それから長雨等に関連しました裏作の特例等に関連して、今度の野菜等の被害天災融資法適用の基準との関係についての御発言がございました。この点につきましては、天災融資法としましては、すでに御承知のように、農作物に表裏あるいは種類別というふうな限定をいたしておりません。そういう意味合いで、年間の農業収入のうちの三〇%あるいは五〇%というような被害があったというようなことでやるわけですが、現在の私どもの感じでは、被害の総額からいいますと、おそらく激甚法適用になることは間違いないだろう、そういう意味で、融資ワクはふえると期待していいんじゃないかと思います。特別被害地域でございます例の三分五厘適用の地域の決定の場合、やはり現在の体系からいいますと、年間所得に対する被害の率ということで、農作物の中で特定のもの、蔬菜なら蔬菜あるいは果樹というものを取り出して被害額を算定していくということは、非常にむずかしいのではないかと思います。裏作等につきましてはそういう特例をやりました経験もございますけれども、果樹、蔬菜等につきましては、それぞれ年間生産されるものです。その辺の区分けは非常に困難ではないか。実ははなはだ事務的な答弁でおそれ入りますけれども、そういう感じがいたします。なお検討させていただきます。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 むずかしいことはよくわかりますが、たとえば去年の冬作物の八〇%というときに、あれは末端に入れましたものが十五万円ですね。ところが、私どもの調べたところによると、いろいろな過程を経て末端へ届く金額としては、九万円ないし九万五千円しか出てないです。そこで、十五万円貸してもらえるものだと思って申し込んだところが、九万円ないし九万五千円しか借りられない、しかもややこしい手続を経てやっと借りられるようになったらそういうていたらくだというので、農家は非常に失望をしております。今度もまたその手ではなかろうかというような危惧も抱いておるようであります。  そこで、私は念を押すようでありますが、冬作物の場合の八〇%というものに対して十五万円であります。冬作物といいますと、これは麦、なたね等で、最近の価格状況から見まして、蔬菜等に比ぶべくもありません。蔬菜をとったあと冬作物をやれるのではないか、こういう中西さんの御答弁でありますが、それは確かに何かはやれましょう。しかし、夏作が本命でございまして、その夏作は春から温床を準備し、そこで育苗し、本圃に定植し、いよいよこれから収穫が始まろう、また最盛期に入ろうかというときにやられておるわけでありまして、いまさらこれはほんの部分的な被害だということは、時期的に見るとそういうようにお考えになるようでありますけれども、これをとったあとにはたして何ほどの期待すべき次の作物がありますか。これはあとに麦かあるいはそれに類するようなものを植える以外には、実際問題としてはもう八月を過ぎて処置ないのです。ですから、それは本作であって、水稲の場合の水稲並みに見るべき性質のものだろうと思うのです。特に私がこのことを申し上げますのは、私どもの地域における畑作地帯というものは、畑作といえば全くの畑作地帯なんです。ですから、ほかにないのです。それで、さなきだに困っておる人々は、先を争っていろいろな土方人夫等に出て、ようやく賃金収入を得ておるというのが実情であります。ですから、私は、別に金を貸すということで災害救済になるとは思っておりません。思っておりませんが、去年の冬作物の実例から見ても、十五万円がまともに末端へおりないという実情だけは、この際私は明らかにしておきたい。そこで、そういう実情の中にあって、そして今度の災害に対して貸し付け限度額をどの程度に押えるのか。また、いま述べたような限度がかりに三十万ときまっても二十万ときまっても、それが実額でおりるような強力な指導を私はこの際要請しておきたいと思うのです。どうも政府災害対策というものは、金を貸すということ、農作物の場合には災害補償法関係以外にはない、それすらも、かゆいところには全く手が届かないという、そういう企図でやられたことではないでしょうが、実際問題としては不十分な末端への浸透になってあらわれておることを遺憾に思います。どこからそういうことになるのか、私どもよくわかりません。それはおそらく県に割り当てが来、その割り当ての中でいろいろなワクを設けるようですね。このワク、このワクとこうやっておる間に、バランス上、限度額の十五万円というものが十万を割るというような実態になるようであります。意図してはおられないかもしれぬが、そこに何か画一的な——災害対策ともあろうものがそういうことでは困るのであります。申し込んだ以上にでも実際はその安い金が使われてこそ、初めて災害対策の価値があると私は思うのでありまして、そういう点については少し実情を把握されまして、限度額を冬作物以上に引き上げるということ、それから引き上げた限度額が末端にまで被害農家にじかに融資できるような措置を責任を持って講じてもらえるかどうか。これは政務次官もおいでになりますし、これ以外に農家に対する直接的な救済の手のない対策でありますから、特に御考慮の上、確たる御答弁をお願いしたいと思います。御善処を願いたいと思います。
  27. 中西一郎

    中西説明員 お話しの中で、十五万円借りられると思ったところ、いろいろな経過で九万円あるいは九万五千円しか借りられなかったというようなお話がございます。そういう例もあることを聞いておりますが、制度としましては、従来の天災融資法の場合は、貸し付け額は二戸当たり十万円、重複して被害がある、去年も被害があって、ことしも被害があったというような場合に十五万円、さらに激甚法適用になれば二十万円というふうな三段階に実はなっております。当該農家がそのどのケースであったかというようなことも問題になり得るわけでございますけれども、それを離れまして、去年災害があって天災融資法で金を借りて、ことし災害があってまた借りるというときには、同じ十万円、十五万円の中で差し引き計算をするというようなことはいたしておりません。したがって、まるまる金が借りられるはずなんでございますけれども、当該年度の償還分等は、これは末端の指導法でございますけれども、差し引くというようなケースはあるようでございます。いずれにしましても、限度額の中で、農家が必要だと思っておる金額が十分借りられるようにいたすということは大切なことであると思います。そういうふうに指導を徹底させたいと思います。  ただ、先ほど申しましたような現在の三段階の貸し付けワクをこの際改定するというわけにはまいりませんので、他方、自創資金のほうで、本年度から従来の一戸当たり三十万円——これは累積のワクでございますけれども、その三十万円というワクを、災害農家については五十万円に広げまして、そういう意味で、昨年度に比べますと、災害があった農家については二十万円の範囲内で自創資金の増加ワクの利用ができるというシステムになりまして、新潟地震あるいは山陰豪雨につきまして、それらの制度を適用することにしまして、徹底させておるわけでございますが、そういう点で改善の道が開けておるというふうにも考えております。繰り返すわけでございますけれども、それぞれの融資ワクが末端で十分に利用、活用されるように、事務的な段取りは十分進めたい、かように考えます。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、一点御質疑を申し上げて終わりたいと思いますが、いままでの御答弁を聞いておりまして、誠意のほどはわからぬではありません。しかし、もう少し煮詰めた明確な答弁がほしかったと思うのであります。いまの段階では官房長の御答弁以外にはいただけないということを残念に思いますが、この点は私は多岐にわたっては申しません。現在ある法律が的確に生かされないでおって、新しいことを次々とやってみましても効果がないと思うのです。ある法律を的確に末端へ流す、それによってある程度救済の目的が達成できるということでなければならぬと思う。その上なお新しい事態が起きたときには、またさらにそれに即応していかなければなりませんが、私は、現在あるものが十分に徹底しておらないから、このような質問を申し上げざるを得ないということだけは申し上げて、新政務次官におかせられましても、ひとつ十分私の質問の趣旨を御理解になって対処されんことをお願いいたします。  最後に、水稲の概算払いの点を申し上げましたが、島根県の一地方は全部どろ海になって、これはもう収穫皆無です。私どもの地域にもございます。一村全部収穫皆無あるいはそれに近い状態が出ておる。そうしますと、新制度が発足して、大体において五、五あるいは七、三の割合で、共済組合と県連合会が被害を通常部分については分け合うということになっている。そうしますと、これは超異常災害でありますから、格別どういう取り扱いに新制度の上でなるのか、私は存じませんが、少なくとも三割ないしは五割というものを末端の共済組合において危険負担をしておった場合には、どういう取り扱いになるのでございますか。支払い金に事欠く。そこで、先般の新聞を読みますと、概算金を出す前に、一応この融資機関から金を借りてやるというようなことが一部に載っておったようであります。ですから、私は、共済基金から市町村の借り受けができるようにしなさいということは、この前の制度改正のときにしばしば申し上げた。その趣旨は了としておられるけれども、今日なおそれが実現しておりません。貨し付け機関とは、一体どういう貨し付け機関対象にして指導しておられるのか。おそらく勧銀その他であろうと思いますが、それではとても利息が高くて問題になりません。基金であれば一銭一厘で借りられるわけであります。目に見えて、今度の山陰北陸豪雨による収穫皆無地帯あるいは全村がほとんど被害を受けた地帯においては、こういう問題が続出してきておると私は推察するのでありますし、私の地方でもそれを目撃しておるのであります。まだ災害の傷がいえずして、なま新しい問題でありますから、そこまで当局者が気がつかず、とにかく応急措置に追われておるのが現状でありますが、日を追うに従って、この制度上の欠陥は表面化してくることを私は指摘しておきたい。すみやかに政府は共済基金から末端市町村共済組合あるいは共済団体に対して融資の道を開くような措置をこの際講ずべきであろうと思いますが、これについての御所見がありましたならば承りまして、将来すみやかにその措置を講じられる意思があるかどうか、その点も政務次官関係当局からの御答弁をお願いしておきたいと思います。
  29. 久宗高

    ○久宗説明員 単位組合の手持ちがふえておりますのは、改正でよく御存じだと思います。非常に大きな災害になりました場合に、理論的には払えない部分が出てまいる可能性もあるわけであります。これにつきまして基金から融資をしたらどうかということで、さような御提案も改正のときにお話があったようであります。御承知のとおり、連合会段階におきます利息金につきましても、あのような非常にむずかしい段階になっております上に、この段階でさらに単位の組合につきましてそのような措置にいますぐ踏み切るわけにまいらないと思うわけでございまして、もちろん、新制度の運営と関連いたしまして十分な検討をいたしたいと思っておりますが、直ちに融資の道を開いてということには、正直に申しまして踏み切れないわけでございます。ただ、組合におきまして手持ちが相当ふえておりますので、平均的に申しますと、非常に大きな削減をしなければならないといったような事情は、ケースとしては非常に少ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 これでやめようと思ったのですが、いまの久宗さんの御答弁は少しおかしいですよ。趣旨としてはそういう方向に行くのだ、しかし、いま踏み切るわけにはいかぬという御答弁なら了承いたしますが、これはかねがね当局もそのとおり了承しております。しかし、これはなかなか検討を要するのだという答弁が従来あったが、新任局長、あなたはそれをくつがえされようとするのですか。現実にそういう事態が新制度によって起きておる。だから、他に融資の道を求めて応急に措置されることは私はやむを得ないと思う。しかし、次の段階に備えては、この制度のつながり上、欠陥のあるこの基金を、市町村に共済資金が多く認められた新しい制度の運営上、当然関連して検討さるべき性質のものだと私は思うのです。このことは一言も触れないで、少しいまの答弁はおかしいではないですか。
  31. 久宗高

    ○久宗説明員 その問題につきましては、改正の当時、さらに検討いたしますということになっておりますので、検討を続けるわけでありますが、現段階においての措置がとれないということを申し上げたわけでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 では検討されますね。私が指摘したとおりの事態が起きておるのですし、どうせ秋また台風が来ますよ。このお客さんは来てもらっては困る、ぜひお考えを願いたいのですが、どうもそういうわけにも参らぬ。どこが見舞われるかわかりませんが、やられることがあるのではないかという心配がある。ですから、これは早急に検討されるべき性質のものだと私は思うし、それがなされておれば、いわゆる高金利のものを借りる必要はないのです。だから、それを応急に金融機関から借り入れをするということについては、利子の差金くらいは政府がめんどうを見てやりますか。それはまるまるその機関が損をするのですか。連合会がプールをするのですか。国の特別会計で何らかの措置をするのですか。そういう点をあわせて御検討願えるのでしょうね。
  33. 久宗高

    ○久宗説明員 金融機関の問題のお話は、掛け金の徴収に関連いたしまして、掛け金の徴収の時期、こういう時期に災害がございましたので、共済金の仮渡しをいたそうといたしますと、若干のギャップが出るわけであります。二カ月間の猶予といったような問題がありますので、先般行政指導によりまして、その間の調整をいたそうとして出した通牒をたぶん意味しておられるのだと思います。制度自体といたしましては、先生もよく御存じのように、末端の組合と基金とをいかに調整しますかという問題につきましては、連合会の不足金という大問題もございますので、いまは検討させていただきたいと考えておるのでございます。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 政務次官の総括的な御答弁をお願いいたしまして、私の質問は終わります。
  35. 舘林三喜男

    舘林説明員 足鹿委員の御発言につきましては、去年の農災法の改正のときからしばしば論議されたところでございまして、事務的な答弁はいまの局長の答弁のとおりでございますが、先般からのお話もありますので、十分今後検討させていただきたいと思います。
  36. 有馬輝武

    有馬委員 いまの足鹿さんの災害の問題に関連いたしまして、ほんのわずかな時間質問させていただきたいと存じます。昼食を抜きにして、しかもあと国政調査に出かけられる前でございますので、その点を十分勘案いたしまして、簡単に質問をさせていただきたいと存じます。  なお、これはわずか三町村ぐらいの問題でございますけれども、全体の中のやはり三町でございますので、そういった意味で、特定の問題について国政全般の審査の中に持ち込む点についてもお許しをいただきたいと思うのでございます。  と申しますのは、鹿児島県の熊毛郡南種子町で、今度の長雨あるいは高温によりまして、またそれに引き続いて参りました十一号台風によりまして、早期水稲が八二%程度の被害を受けておりますので、これに関してお尋ねをいたしたいと思うのであります。もちろん、この大きな、それこそ天保以来の被害だと言っておりますが、被害を受けて、ただぼう然としているのでもなく、また国の施策だけにたよろうとしているのでもございません。この早期出穂に対しましても、災害の発生当時から災害対策本部を設けまして、町当局なり、農協なり、あるいは農業委員会等は適切な措置をずっと講じてまいっております。たとえば肥培管理の適正な指導なり、あるいは病虫害防除の徹底なり、あるいは水稲二期作の奨励なり、あるいはこれにかわる、たとえばサヤエンドウの栽培を行なうなり、あらゆる施策を講じてまいっておりますが、にもかかわらず、いま申し上げましたように、大きな被害を受けております。その原因は、ただいまも申し上げましたように、苗しろ時期におきます高温災害によります不時出穂、それから六月中の長雨による浸水、冠水による被害で、大体金額にいたしまして普通の平年作の場合においては三億二千八百万ぐらいのものが、二億三千三百十六万もの被害を受けておるのであります。これはさらにその後の収穫後の状態を見てまいりますと、せっかくもみにしましたものが、すってみますと、ほとんどなくなってしまうというような状況でありまして、たとえばいま申し上げました高温でありますが、降水量が大体三月の初旬で平年では二十三、ミリのものが、三十九ミリ、これがずっと三月、四月、五月続いております。それから降水量にいたしましても、たとえば六月は平年が三百六、ミリのものが、六百九十三ミリも降っておるというような状態でありまして、その結果——ここに私は七日の日に手に入れた現物を持ってまいりましたが、もうほとんど苗のうちに出穂して、それがこういった形でほとんどしいらになっておるのであります。これでは幾らすりましても、八〇%とかなんとかいう状態ではなくして、ほとんど収穫皆無でありまして、その結果、ここにも写真を持ってまいりましたが、稲をそのままたんぼの中で燃やしておる状況であります。こういう状態でありますので、県当局のほうでも、たとえばつなぎ融資等について配慮を加えておりますが、やはり国自体としてこれを見ていただくということが緊急なる措置だろうと存じます。  そういう意味で、私、時間を節約するために、まとめて御質問をいたしたいと思いますが、官房長と経済局長、それから農政局長もお見えでありますので、これに関連して御答弁をいただきたいと思いますが、共済制度の最高度の適用、これが第一点、それから補償金の早期概算払い、これが第二点、それから特別災害地域としての指定と、これに伴う大幅な融資、これは前の法律百二十五号によります特例措置、これは四月から六月までの麦、なたねに関する特例措置となっておりますので、これの水稲との関連、どのような措置をとられるのか、それから自作農維持創設資金の割り当て、その他災害に基づく諸融資制度の活用、こういった点について早急に措置をとっていただく、この点についての農林省としてのお考え方を官房長、農林経済局長、農政局長から具体的にお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  37. 中西一郎

    中西説明員 お話の南種子町その他三カ町村でございますかのことしの長雨以来の被害に、さらに高温の関係、十一号台風ということで、水稲の被害が非常に大きかったというお話につきまして、もう少しわれわれとしては県当局とも資料を詰め合わせていきたい、実はこう思いますが、とりあえず、いま御質問の中でお答えできる点をお答えいたしますと、天災融資法の特例措置を定めましたのは、麦となたねについてでございます。そういう意味で、水稲の早期出穂が五月ごろから問題になっておりましたけれども、そのこと自体としては、特例措置適用はございません。当時心配いたしまして、さらに苗しろを再仕立てをする、田植えのし直しをするということの注意を十分いたしておったわけでございますが、大体そういうような大きな被害なしにその後は推移したというふうに考えてきておるわけです。  いま申し上げましたのは、主として九州本土の関係でございますが、そういうような全体の動きの中で、いまお話しの南種子について特別の被害があったということでございます。したがって、そういう問題として県当局ともっと詰めていきたいのですけれども、災害の場合のいろいろな融資制度が公庫関係にもございます。あるいは自創資金というような特別の措置もございますので、お話しのようなケースについて天災融資法を発動するというのは、非常に困難ではないかという感じがいたします。そういう意味で、そのほかの融資の体系の中で、実態に即して対応策を考えていきたい、かように考える次第でございます。
  38. 久宗高

    ○久宗説明員 いま官房長から申しましたように、御関係の三町村につきましての具体的な数字と関連するわけでございますが、共済関係といたしましては、御承知のような制度の改正になっておりまして、かような場合の仮渡しにつきましても、従来よりは県のワクがはずれておりますので、このようなケースにおきましても、もちろん計数によりますけれども、御要望に沿えるのではないかと思っておるわけでございます。ただ、実際の数字がどうなっておりますか、ただいま私ここで承知しておりませんので、正確なお答えができないわけでございます。
  39. 有馬輝武

    有馬委員 中西さんの、そういった場合天災融資法はどうもというふうな答弁が、私は合点がいかない。確かに麦、なたねについても、私たちは現地を見てまいりまして、その実情についてお話を申し上げ、あのような措置をとっていただいたわけです。そのケースと今度の場合とはほとんど変わらないどころか、むしろ被害は上回っておる。にもかかわらず、そういった措置が講じられないという理由がわかりませんので、その点を明らかにしていただきたい。明らかにするんじゃなくて、むしろ、それでは有馬の言うとおり検討してみましょうということなら話はわかるのですが、どうもということでは合点がいきませんので、その点をいま一度お聞かせをいただきたい。  それと農林経済局長にお伺いいたしたいことは、早期水稲の場合、晩稲を待って措置するというようなことが例年行なわれておりますが、そういう措置を講じておりますと、タイミングを失することが大きいと私は思うのです。そういう場合には、やはり早期の場合は早期として一応処理していくということがあってしかるべきだと思うのでありますが、この点についてお聞かせいただきたい。  それから、これはどちらの所管かわかりませんけれども、官房長、経済局長からお聞かせをいただきたいと思いますが、特に鹿児島県は水稲がこういった形で壊滅状態になっておりますと、どうしてもあとのカンショにたよらざるを得ないのでありますが、こういう時期にこそ農産物価格安定法によるところのイモ類の支持価格決定を急ぐべきだと私は思うのでありますが、この点についてもあわせ中西さんのほうから御答弁をいただきたいと存じます。
  40. 中西一郎

    中西説明員 先ほどの第一点の、天災融資法の発動が非常に困難であると申し上げたことについてのお話がございました。天災融資法をざっと申し上げて、全国的に少なくとも二十億程度の被害があるというのが一つの発動の要件になっています。そういうような観点でなかなかむずかしいのじゃないかと申し上げたのですが、当該地域につきましては、南九州を含めまして天災融資法を長雨に関連して実は発動いたしております。そういうような意味で具体的な個々の農家について、あるいは具体的なそれぞれの市町村におきまして、いままでの融資のワク等の範囲内で措置し得る分も相当あるのではないかというふうに運用上の期待を持つことはできると思うのですけれども、十一号なりあるいは長雨なりという被害を含めましても、その被害金額が通常の発動の基準にはとうてい及ばないので、先ほど御答弁申し上げたような次第でございます。しかし、具体的なケースにつきましては、被害の実態と合わせまして県当局とも十分打ち合わせを詰めてまいりたい。少なくとも非常に困窮しておる農家をそのままに放置しておくということはどうしてもできませんので、十分実態に即してやってまいりたい、かように考えます。  それから農産物価格安定法の値段を早くきめろというお話でございましたが、いずれにしましても、だいぶ前からイモあるいはでん粉の値が低目に推移しておる。これを早急に当面どう助けるかということが懸案のままできております。ある時期に五万トンばかりの賢い上げをいたしました。その後の問題も残っております。それらとあわせまして、新しい明年度の支持価格をどうするか、でん粉の値段をどうするかということも、一連の仕事として当然考えなければなりませんが、現段階では昨年のイモ、でん粉の需給事情からきますいままでの事態をここでいかに好転させるかという意味合いで、支持価格以前の問題がまだ残っておると思います。そういうことを中心にいたしまして、適正な価格が支持されるように配慮してまいる、これが基本方針である、かように考えます。
  41. 久宗高

    ○久宗説明員 ただいまの早期の扱いにつきましては、いま問題になっております地域の具体問題でございますので、一般問題としてお答えするのは適当でないと思います。個別にあとで御説明させていただきたいと思います。
  42. 有馬輝武

    有馬委員 個別にということでありますので、それじゃ個別に参上いたしますから、ここで申し上げました趣旨を十二分に生かしていただきたいと存じます。  なお、中西さんから御答弁のありましたイモ類の問題については、それ以前の問題というおことばがございましたが、あげ足をとるようで恐縮でありますけれども、それ以前の問題があるから、早期に決定していただきたいということなんです。それ以前の問題については、これは場をあらためて徹底的に論議しなければならない問題でありますが、農林省の見通しのまずさという点については、イモ作農家が圧倒的に多数を占める鹿児島県だけではなしに、熊本にしても、千葉にしても、茨城にしても、埼玉にしても、とにかくあの措置については大不満を持っておるのでありますから、昨年の八月の末のあの措置に対して何らかの救いを伸ばす、そういう意味で、支持価格決定を急ぐ、こういったことが一番大きなささえになると思うのであります。そういう意味で、ぜひこれは前向きに御検討いただきたいと思いますが、この点については政治的な配慮も非常に必要でありますので、政務次官のほうからお答えをいただきたい。といいますのは、とにかく世界的な砂糖相場の高値が相当続くんだという前提のもとに自由化の措置がとられましたが、御承知のような暴落でもって、国内の甘味資源というものは非常な打撃を受けておりますので、政府としては当然これに対する措置を講じなければなりませんけれども、でん粉の三万五千トン、第二次の五万トン、あるいは近く三万トンというようなことで、政府買い上げが考慮されておるようでありますけれども、こういったことではとてもささえになりませんから、やらないよりはましですけれども、ことしのイモ類というものは、特にカンショは、昨年の四十円を上回った、あれからはるかに暗い見通しになっておりますので、それを少しでも救うという意味合いにおきまして、農産物価格安定法の支持価格決定を急いでいただく。大体出盛りを過ぎてから支持価格決定してもらってもほとんどささえになりませんので、ぜひこの点について政治的な配慮を加えていただく。この点についての政務次官の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  43. 舘林三喜男

    舘林説明員 イモ類につきましては、農安法の規定によりまして、支持価格生産量とも見合わせなければいけませんので、大体十月ということに予定しております。しかし、いま御質問の趣旨等もありましたから、十分政治的にその価格等につきまして配慮いたしたいと思っております。
  44. 高見三郎

    高見委員長 午前の会議はこの程度とし、午後はおおむね二時より再開いたします。  この際、休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  45. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際、農協の問題について、若干お尋ねしておきたいと思います。  七月三十日、新聞等によりますと、全購連の総会がありまして、この総会は全購連の三十九年度事業計画を決定する総会であったわけでありますが、そのとき、たまたま総会の席上で、会員から緊急動議が出まして、現在全購連が経営しておるえさの直営生産工場五工場並びに地下たびの生産を主体としておるゴム工場、この六つの工場を全購連の直営経営から分離して、新たに株式会社を六会社組織する、そうしてこの新会社の設立に対して全購連のこれが関係の資産の譲渡等を行なうという緊急動議に基づく決定が行なわれたことを新聞で承知したわけでございます。これは判断としては、協同組合の内部的な事業についてでありますから、外部からとかくの批判とか介入をすべきではないかもしれませんけれども、しかし、農林省としては、従来農協に対する適切な指導というものを一貫して堅持されてきておるわけでございますので、中央における連合会の工場経営事業というものが、全く直営方式から分離されて株式会社方式に移行するということについては、単に全購連の六工場だけがそういう形態に変化するということだけではとどまらぬと思うわけであります。この波及するところは、やはり農業協同組合の所有する工場の今後の運営、あるいは今後組合員である生産農民の当然の要請にこたえて、農協事業の中で、こういう生産あるいは加工事業等が工場経営の形で行なわれるということは、これは当然の要請ということになるわけでありますけれども、これらに対するあり方についても、今回のこの問題は相当波及するところが大きいと思うわけであります。したがって、これらの問題については、当然農林省としても事前の連絡あるいは適切な指導という立場から、十分関知しておられると思うわけでございますけれども、この経過並びにこれからの農協の行なう工場経営等の問題について、一体農林省としてはどのような判断と指針を持って対処するお考えであるか、それらの点についてまず明らかにしてもらいたいわけであります。
  47. 昌谷孝

    昌谷説明員 ただいまお話しの全購連の直営工場の分離の問題についてでありますが、実は私どもも、かねがね、全購連の経営の一そうの合理化という見地から、当事者が検討しております次第については聞き及んでおります。すなわち、昭和三十六年からであったと思いますが、そのような問題をかかえまして、全購連といたしましては、理事会の専門部会のようなものを設けて、すでに過去三年有余にわたって、それら全購連工場の今後の経営のあり方を御検討されておったわけであります。最近に至りまして、本年の五月ごろであったかと思います。一応理事会の方針としては、責任体制を確立し、企業としての能率を発揮するという要請と、それから系統としての飼料の計画的な確保という点、そういった二点を十分配慮した上で、工場を分離することが内部の事務管理上望ましいという方向で、理事会の方針がきまったようでございます。ただ、問題が、いま芳賀先生も御指摘のように、いろいろ関連する多くの問題を含んでおりますので、事を非常に慎重に運ぶという趣旨で、自来ブロック会議その他の段階で、会員各位にそのねらいとするところをよく御納得いただいた上で問題を処理したいという方向で、そういう地方的なブロック会議等の機会での御相談と申しますか、趣旨の徹底がはかられておったのが、去る総会までの経過だと承知をいたしております。そのためと申しますか、したがって、去る七月の総会におきましても、まだ議題として正式に持ち出すという段階までは熟しておらぬという御判断であったわけであります。会員の一部から、基本的な方向だけでもこの際確認をしておくようにという緊急の動議が出て、確認をせられたというふうな経過と聞いております。  御承知のように、全購連の扱っておりますえさの配合飼料で申しますれば、全体の配合飼料の中で、全購連が扱いますものが最近では約三分の一を若干こえておろうかと思います。その中で直営工場が生産いたしますものは、おそらく全購連が扱っておりますえさの中でも、さらにその三割を若干下回った程度のものが直営工場生産部分、したがって、全購連のえさ事業というものを円滑に運営することを考えます場合には、直営工場生産部分はもちろんでございますが、しかし、直営工場だけのことを考えておるわけにはまいりませんので、その全体の全購連の扱います配合飼料生産なり供給なりの全国的な需給関係、あるいは工場の立地関係等も十分今後考慮に入れて、そういったいわゆる協力工場と直営工場との相互のあり方等も、判断の要素としては入ってまいったことだろうと思います。そういう意味で、私どもといたしましては、工場を分離して責任体制を確立し、経営の合理化をはかる、そういう基本方針でございますから、その方針そのものにつきましては、御承知のように、たいへんに事業規模拡大をして、直営工場の何倍という数量のえさを扱っておられる。えさだけを見ましても、そういう状況の全購連であります。全購連自体の経営方式の問題をいかに善処していくかという問題なんですから、私どもとしては、特に具体的な弊害でもあれば別でございますが、特別にそういう弊害が認められません限りは、私どもとしても、会の自主的方針で、自主的にこの問題が会の効率発揮をする上に最もよろしいんだという方針でございますれば、特別に私どもとして監督の立場からは、特に問題を指摘するような点はなかろうかと考えております。いわば会の自主的な決定にゆだねるのが至当な問題ではなかろうかと考えております。ただ問題としては、私どもとしては、そういった観点と同時に、また全購連全体の資本の構成の問題なり、あるいは事業規模、事務管理というような問題を含んでおりますから、もちろん、その点でも今後とも御相談に乗り、いい意味での指導は続けてまいりたいと思います。要は、こういう基本方針そのものは非常にけっこうなことであります。会の自主的な御決定にゆだねるのが穏当ではなかろうか、さように考えております。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は、今後新設工場を設けて、その会社の性格というものは、たとえば農協あるいは連合会の全額出資によって株式会社を経営するという、そういう形も従来あるわけですが、現在まで連合会の直営生産工場として運営したものを、直ちに今後は株式会社に移行させるというところには、相当の事由ですね、必然的なものがなければならぬと思うわけです。ただ全購連の取り扱っているえさの総体の数量が、全国のその消費量に対して三〇%程度の影響力を持っている、しかし、その中で、直営生産のえさというものは、またその扱いの三分の一程度にすぎない、こういう説明でありましたが、それだけの理由で会社に移行させなければならぬということにはならぬと思うのです。従来の直営生産の工場というものは、たとえば連合会あるいは単協の全体の経営の中において、総合的な運営というものが困難である、むしろこれは切り離して独立の企業として協力的に経営さしたほうがいいというような価値判断というものがなければ、抽象的な考えだけで全部株式会社に移行さしたほうがいいということにはならぬと私は思います。ですから、なぜえさ工場を、しかも一工場ずつの会社にするか、あるいはゴム工場というものを会社にするかという主要な目的というものを、経過の中からわれわれとしても認識しないと、今後は工場は全部株式会社にしたほうがいい、けっこうな御趣旨であるから賛成ですという局長の発言のようなことでは、われわれとしては承服できないわけです。ですから、これらの点についても、農林省というものは、農協の育成発展に無関係である、無関心であるということであれば、他人のやることですから、けっこうでしょうというようなことで済むが、しかし、これは政府としても、農林省としても、生産農民の経済行為あるいは生産行為をやる場合の基礎的な組織体であるということを規定して、これが育成助長に当たっているわけですから、人さんのやることはけっこうですということではこれは相済まぬと思う。だから、もう少し内容に立ち入った説明を願いたい。
  49. 昌谷孝

    昌谷説明員 先ほどお答えいたしました中にも、一部触れたつもりでおりましたけれども、全購連当局がそういう工場の運営方針を是なりと判断をいたしました主たる理由として私どもが承知をしております点を申し上げますと、まず第一に、そのことによって各生産単位としての工場の生産上の責任体制を一そう確立することができる、それから企業意識に徹して、専門的な生産管理、合理的な事務管理といったようなことが一そう徹底できるということ、したがって、全体としての経営の合理化、あるいはコストの引き下げ、品質の管理等、そういったことに徹した、いわば経営のそういった理念をいま以上に確立をし、より合理的、より合目的的なえさの生産の一翼がになえる、そういう点に着目をしてこの分離の問題を考えられたと承知をいたしております。  なお、配合工場、えさ工場につきましては、先ほど申しましたような意味で、直営工場と協力工場を通じての操業度の安定、あるいは地域的な供給の分担の明確化等をすることが、やはり直営工場と協力工場という二様のものをもってやっておるよりも、一そう全購連のえさ事業全体の発展のために、またそれぞれの工場の機能発揮上好ましい、こういう点に主として判断が行なわれたように聞いております。  また、明石のゴム工場につきましては、在来の生産の主力であります御承知の地下たび、これの農村向け供給ということは、今後とも引き続き重要な業務としておやりになるわけでありますけれども、しかし、時勢の変化とともに、それ以外の新しい製品の分野を開拓いたしますとかいうようにして、あるいは同じ地下たびにいたしましても、農村向けと並行して、新しい需要分野を開拓していくとか、そういう主として新しい需要面の開拓という点について、系統の直営工場であることよりも、分離したほうが、なおそういう目的を追求するのに適切な事業形態であろう、かような諸点に着目をされて、その利点を強化してこのような案ができたのだというふうに聞いております。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、従来直営方式でやってきたこの事業が会社に移行する場合の理由として、たとえば経営上の困難性がある。たとえば全購連なら全購連の事業全体の中の一環として工場経営をやっておるわけだから、総合的な運営の中で工場を経営するということは、経営能力の問題としてもやはり困難性がある。あるいはまたえさ部門だけを切り離して採算を考えた場合は、やはり農業あるいは畜産との密着の上で、えさ工場の部分では特に利潤追求をしないということを一つ経営方針としてやる場合には、えさ工場から期持した利益というものは上がらぬわけです。しかし、低廉なえさを生産して、それを生産者に供給をするということは、他の利潤追求のえさ会社に対しては大きな牽制の作用はするわけです。だから、その部分においては利益は上がらぬとしても、全体に及ぼすサービスあるいは効果というものは、これは相当のものがあると思うわけです。ですから、そういう点にやはり農業協同組合が行なう生産工場の存在価値というものがあるわけであって、場合によっては、これを徹底した場合には、えさ部門では計画的に、赤字が出ても他の利潤の上がる部分からこれを補てんして、総合経営の中において調整をはかる、こういう利点もあるわけです。それを今度は全く切り離して企業意識に徹するということになれば、他の利潤追求の企業会社と同様のかまえで事業をやれということに当然なるわけであります。これは会社自身の企業本位の経営を条件としてやらすということになれば、そこで生産された製品の価格あるいは供給の態度というものは、従来の総合的な経営の中において、特に畜産農業に対してえさ部門の重要性というものを勘案して利益追求を行なわないという経営でやってきたものが、今度は企業意識に徹するという方式で臨む場合は、これはやはり他のえさ工場、えさ会社と同調するということに結果はなると思うわけです。そういう企業意識に徹するという考え方が現在の農業協同組合の経営の本質であるということになれば、これは非常に問題があると思うわけです。ですから、そういう点を農林省当局としていかように判断して、これを指導し、あるいは助長をはかるかということが、これがやはり農政上の問題になると思うのです。ですから、これらの点が明らかにならなければ、独立採算で企業意識に徹すればその会社は赤字は出さぬだろうということだけでは、これは切り離して考えることができないと思う。その辺に対してはどう考えておりますか。
  51. 昌谷孝

    昌谷説明員 先ほど申しましたように、全体としての経営の合理化と申しますか、農協でございますから、農協の使命に徹してすべての経済事業が行なわれますことは、直営の場合であれ、全額出資の場合であれ、基本的には相違が起こるまいと私は思います。ただ、そういうことで、部分的な独立採算と申しますか、経営意欲と申しますか、そういったものをさらに責任体制の確立と相伴って喚起していこうということでございますから、農協が全購連の使命としてやっております、安くて、しかも品質のいい飼料農家の皆さんに供給するということを、より効率的に、より合目的的に追求しようというその結果の手段として、こういう経営方式を採用されるということでございますから、その点では、御心配のようなことは起こるまい、また、そういうことで別に全購連のやりますえさ購買事業が後退するわけでもないと私どもは判断をいたしております。  なお、全購連の考えておられます独立後の工場の運営のしかたにつきましても、原料の調達等、大量であることがより効率的な部門については、引き続いて全購連が担当をされ、ただ、それを配合飼料として混合、加工される段階で、それぞれ独立された会社が、他の協力工場と同じような方法で、いわば委託加工というような形で、その全購連の目的に従って、全購連の希望に沿った製品をより効率的に生産をしていくということでございますから、そういう意味で、全購連のえさ事業が前進こそすれ、後退するとか趣旨がぼやけるというようなことは、まず考えられないというふうに思っておる次第でございます。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 局長の言うのは、全購連のえさの取り扱いの数量とか金額は、これによっては変化はない、減らないということを主張されたいのでありましょうが、問題は、そのことによって末端の組合員である農民に及ぼす影響、利点というものは、どうなるかということをやはり論議しなければならぬと思うわけです。  私たちも独自の立場でいろいろ調査検討はしたわけですが、しかし、この新会社ができるとしても、たとえば、現在の濃厚飼料の給源はほとんど外国からの輸入に依存しておるわけですが、全購連としては、アメリカを主体とした地域から原料であるえさ、いわゆる単味の買いつけは全購連が行なう、そうしてサイロの建設等を行なって、その輸入した単味飼料の貯蔵等を行なって、そうしてたとえば新設の会社、あるいは全国的に散在する県の連合会、あるいは会社等に対してその原料を供給する役割を受け持つ。ですから、この原料飼料の取り扱いということになれば、これはやはり全購連の事業として、それにまた必要な利潤というものが追求されておるわけですね。だから、それを今度は新会社に利潤を加算した一定の価格で原料を供給する、そうして製造された製品については、一定の価格でそれをまた買い付けて、そうして全購連の供給面の事業として、これを全国の連合会あるいは単協を通じて供給するということになるわけですから、そういう限定された原料の確保あるいは製品の処理ということの中で、新会社の果たす役割りというものは非常に幅が狭いわけですね。そういうことになると思うわけです。そういう中で一体企業意識に徹してやるということになっても、どれだけの期待が持てるかということになると思うわけです。  それから従来の総合経営の中において、えさの製造事業というものは乱脈をきわめておったかどうかということも、これは農林省として十分監査、監督されておると思うわけです。連合会の事業の中にもいろいろな部門があるとしても、それぞれが全部独立した会社方式になって企業に徹しなければやれないかどうかということになるわけです。これは単に工場経営の問題だけではないと思うのですよ。すべての事業部門というものを分散、分解させて、いわゆる利潤追求に徹した企業意識でやれということになれば、農業協同組合の事業の必要性というものはなくなると思うのですよ。全購連にしても、むしろ全購連株式会社にしたほうがいいかもしれぬし、全販連にしたところで、全販連株式会社でやればいいわけであって、何も民間の企業と農協の事業であるということの性格的な差異というものはなくなっていると思うのですよ。一体こういう点をどう考えておるのかということなのです。やはりあくまでも資本主義体制に同調していかなければ、事業というもの、組合企業というものはやっていけないんだというふうな最終的な判断の上に立つて、そうすべきであるという考えを農林省当局として固めて、それを指導上の指針として進めていく考えであるかどうか。その点はどうなんですか。
  53. 昌谷孝

    昌谷説明員 先ほどもお答えいたしましたとおり、全購連が各種の系統購買事業をいままで手がけ、それをだんだんりっぱなものとして完成をしておりますことは、肥料の問題であれ、・農薬の問題であれ、あるいは生活資材であれ、いろいろそういった育成段階のやり方、あるいはそれぞれの購買事業段階ごとに、当局者としてたいへんに御苦労な過程を経てこられたわけであります。えさにつきましても・今日のこの段階に至るまでの経過においては、全購連といたしましても、みずから工場を持ち、またそれで足らざるところをあるいは協力工場というような形で補う等々して、単味の原料の大量加工だけでなく、配合飼料としての品質なり規格の保持統一といったような角度から、いろいろ非常にけっこうな成果をあげてこられたようなわけです。そこで、その過程におきまして、他の部門とのどんぶり勘定であっても、それぞれ内部的には経理もはっきりしておることでございますから、特にいまのままで続けることが著しく不当であるとか、あるいは適当ではないとかいうことではないだろうと思います。しかしながら、全購連の当事者が考えておりますように、より一そう効率的な、より一そう幅の広い購入飼料の全購連を通ずる確保ということを考えていく場合に、この段階で直営工場主義を固執するよりも、むしろ、全体としての全購連の扱うえさの品質管理、また計画的な調達といったような点から見て、より効率的にできるという、このえさの現段階に着目しての具体的な一つ改善案だろうと思います。先生のおっしゃるように、一般的抽象論として、農協が直営工場を持つことがよいか悪いかという議論になりますと、これは商品の品質により、また系統の内部における扱われ方の段階のそれぞれの状態によって、いろいろ利害得失があろうと思います。一般論として、私どもとしては、およそすべての農協の事業を、あるいはこの種の事業を、会社にするほうがいいか悪いかという議論を全購連当局ともしたことがございませんし、また聞いたこともないわけでございます。えさ事業の今日の段階からさらに飛躍的に次の発展を期そうということになりますれば、むしろ、直営工場よりも、こういう形で委託加工方式のものにしていくほうが、経済効率としても高い効果が期待できる。全額出資でございますから、高い効率が期待できるということは、結局ひいては全購連の全体の事業の経済性を高めることにもなりますし、またそのことが利用者、組合、あるいはひいては農家の皆さんの利益にもつながると思います。そういう意味合いで、私どもとしても、全購連のこの段階における発展のための一段階を画する、ものごとを合理的に発展させようという意味での一つの案ということで、特に組合内部の自主的なそういう御意図を私どもがとやかく申し上げるような筋合いの問題ではない、さように考えておるわけであります。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば連合会からこの工場経営のような生産あるいは加工事業をなくするということは、結局全購連の場合には、単に商品の流通階段における事業を行なうということにすぎないのです。これは経営からいうと一番安易な道なのです。やはり工場経営ということになりますれば、資本装備の問題、あるいは技術革新の問題、あるいは原料の買い付け、製品の販売処理の問題等、これはやはり他の同類の企業と相当強い競争場裏で真剣な経営をしなければならなくなるわけなのです。そういうことがいまの協同組合の体質的な問題として耐え得られない、経営的な能力がない、資本的な力がないということで、あきらめてこれを放棄する、その形として第一段階には、これを工場分離という形で処理するというふうにわれわれは的確な判断をしておるわけなのです。だから、生産面の事業を放棄するということは、商品の流通面のあっせんという事業だけであるとすれば、たとえば、これは全購連だけではありませんが、いまの府県の連合会の経済事業等を見ても、ほとんど有力なメーカーの生産した商品を一定のマージンだけを確保して、そうして次の末端の段階にそれをトンネル方式で流してやるということだけにすぎないことになるわけです。そうなんですよ。それ以外のものがあるということであれば、ここで指摘してもらいたいと思います。ですから、これは一番困難な問題であっても、農業協同組合の行なう生産加工等のいわゆる工場の経営とか、それから生産的な企業の発展ということをこの際放棄するかどうかということは、非常に大切な問題だと思うのですよ。単に安易にでき上がった商品だけをトンネル方式で流さして、全国の段階、都道府県の連合会の段階において一定のマージンだけをかせいで、そこで収支のバランスをとってやればいいのだということであれば、何のために協同組合の存在の特質があるかということに当然なると思うのですよ。これは全く資本主義に屈服した形だと思うわけです。そういう安易さを、農林省が、そうやりなさい、けっこうでございますということになると、これは農林省そのものもだいぶおかしくなってきたんじゃないかというふうにも考えられるわけです。だから、私は最初から言っておるように、えさ工場だけを会社にするという問題ではないのです。今後農業協同組合が行なうこれらの生産的な企業というものを放棄したほうが安易な経営ができるということだけで、組合経営というものを考える場合には、これは取り返しのつかないようなことになるんじゃないか。そういうことを念頭に置いて、なおかつ会社経営でやりなさいという指導を農林省としてとるのであるかどうか、そういう点をこの際明確にしておいてもらいたい。
  55. 昌谷孝

    昌谷説明員 再々申し上げておりますように、私どものほうから積極的にそのような方向をとったほうがよかろうという指導をいたしておる筋合いではございません。またそういう筋合いのものでもなかろうと思います。初めからお答えいたしておりますように、全購連がいまやっておられますえさ事業のより合目的な展開ということでお考えになった内部の事務管理上の一つの案で、私どもとしては、それが全購連がになっております総体としての農協の中での役割りを果たす上から見て、著しく不都合であるとか、あるいは合理化、使命の後退を意味するというようなことであれば、またそれ相当の御注意も申し上げる必要もあろうかと思います。先ほど来申し上げましたようなことでありますれば、そういった懸念もあるまいということで、自主的な御意図でおやりになったらよろしかろうというような態度でおるわけでございます。やはり全国の系統組織が購買事業で結集をしておやりになるということの、何といってものがすことのできない本質的なねらいは、大量処理と申しますか、大量仕入れ、それから全農家に対する平均的な品質なり価格なり供給の時期なり等、私企業にまかしておったのではなかなか期待できない。そういうときどきの相場なり原料事情なりによって、品質やら供給の時期やら価格やらが変動が来るというようなことを、全購連の力で平均的にならして供給する、そこらあたりが全国一円の購買事業を進める場合の最大の利点であり、また見のがしてはならぬポイントであろうと思います。そういう意味合いで、この工場を全購連が自分の経営の内部で直接運営いたします場合と、いま考えられておりますような形で、それぞれを一応分離した独立の企業体として扱う場合とでは、原料の扱い、また製品の規格なり生産の計画なりの問題、すべてこれ、全購連が自分の、あるいは組合農家の欲する事情とあわせて供給するという点では、何ら劣るところがない。それで、そうすることによって、より効率的、経済的な供給が可能であるということであれば、マイナス面がなくて、プラス面だけがあるというふうに、私どもはこの意図を説明を受けております。それを著しく疑うだけのものではないように思います。その意味で、私どもとしては——もちろん、こういった全国の農業団体の連合会でございますから、それ相当の民主的な手続を経た意思決定が行なわれるべきことは、これは論をまちません。そういったしかるべき民主的な意思決定の方法に従って、その案が採択されてまいります場合には、私どもとしても、特にこれをどうのこうのと申し上げる筋合いのものではなかろう、かように考えております。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は、やはり末端の構成員である生産農民の利益にそれが合致するかどうかという点だと思うのです。単に組合経営というものがこうすればうまくいくということだけでは済まない問題だと思うのです。  もう一度繰り返して言うようですが、たとえば最近の購買事業を見ても、全購連指定の各種の大メーカーがあるとすれば、それは直接その府県の経済連なりあるいは末端の農協に商品を持ち込むわけなんですよ。それから府県の経済連の場合も、経済連指定の各種のメーカーがありまして、これが直接その傘下の単協にその商品を持ち込むわけなんです。連合会が直接仕入れをして、購買事業を末端との直結で行なうということでなくて、まずメーカーを指定する。そのメーカーは、自分の機動力で末端の農協にこの商品の売り込みを行なう。そうしてその契約した数量と金額というものを今度はメーカーのほうから連合会に報告して、それが連合会の取り扱いの数量、金額ということになるわけなんです。だから、連合会は自身何にも仕事をやらぬ——と言ってはおかしいですが、結果だけの報告を伝票上に記載して、その取り扱い数量あるいは取り扱い金額に対して、一定のマージンを契約に基づいて確保する。こういう近代的な、非常に能率的な経営というものが、大半行なわれておると思うわけです。もしそうでないというのであれば、局長から明らかにしてもらえれば、これは私の不明のいたすところですが、私どもの見る範囲では、一般の農協系統の、特に全国段階から、あるいは府県の経済連から末端に対して行なう購買事業というものは、そういうシステムをとっておるということは、これは明らかに言えると思うのです。それが近代化された農協の経営の姿であるということになれば、それも一つの道かもしれぬが、そういうことだけで各連合会の事業が十分であるということにはならぬと思うのですね。そういうことを十分お知りになって、その最も安易な、効率的な経営をやれということで指導した結果、そうなっておるかどうか、これらの点はどうなんですか。
  57. 昌谷孝

    昌谷説明員 私が問題として考えておりますことも、先ほど来御説明いたしておりましたところでおわかりいただけるかと思いますが、いま芳賀先生から御指摘のようなことに堕してしまうのでははなはだ好ましくない。えさの本来の問題につきまして言えば、原料は全購連が引き続いて一括調達すること、それからまた、つくるべき配合飼料の品質管理なり価格関係なり、あるいは経営の地域的な調整なり、そういったことを全購連のひいては全国農家の自主的な判断のもとに追求していくということについて、その追求のしかたを一歩合理的にやろうという御趣旨であるように承知しておりますので、自主的におやりになるなりそういう方向であれば、特に私どものほうからとやかく言う筋はないということを重ねて申しておるわけであります。数多くの購買事業をやっておられる中に、先生御指摘のような、全購連あるいは県段階の連合会の扱い量が、そういう名目的な形で扱われておるものが数少なくないという実態にあることも、私どもも見聞きいたしております。そういうことになっていくことを是としてこの問題が考えられておるとすれば、私どもとしても御一考をいただかなければならぬ点であろう。あくまで、先ほど来申しましたような意味で、生産なり価格なり、また工場の供給すべきそれぞれの供給先の分担なり、それらについて自主的な一つの総合的な全国計画のもとにこの事業が行なわれることについては、何ら後退を意味しないということをるる説明を聞いておりますので、私どもとしても、それならば、そういうふうに考えておるわけであります。先ほど申しましたように、いろいろ品物により、また、それぞれの品物の農家に入っていきましたいままでの経過なりによって、なかなか一挙に理想の形に行きがたかったり、あるいは行こうとしても、いろいろと既存の配給ルート、製造ルートの関係からいって、必ずしも全購連当事者が企図いたしておるとおりのことになかなか実現が見にくい、理想を隔たることほど遠いというような段階の購買事情も確かにございます。しかし、要は、そういうことで、品質なり価格なりあるいはその全国的な需給なりの関係で、やはり全国の組織が農家の代表として物を調達するということの利点が、何らかの意味で貫かれているということが一番大切なことであろうというふうに私ども考えておりますので、この辺のところは、先生の御指摘のようなことを、私どもも十分今後の農協の指導上の非常に大切なポイントとして考えながら、やってまいりたい、さように思っております。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 結局、農産物あるいは農民が消費する生活物資あるいは生産資材の流通機構というものが、いまの協同組合あるいは連合会の運営の形の中で、私が指摘し、局長も肯定されたわけでございますが、そういう関連で結びついておるということになれば、これは今後もやはり問題がいろいろ出てくると思うわけです。そういうことだけであるならば、たとえば全国の連合会とか府県の連合会、それから末端の単協という、農協のこの組織上の三段階制なんというものは必要ないと思うのですよ。大企業はすでに系列化されて、そうして協同組合との流通面のつながりというものは、メーカーのほうがむしろ単協に密着して経済活動をするということになれば、第二段階、第三段階とあっても、その上部段階における連合会というものは、単に形式的なトンネル的な役割りしか果たしておらぬ。それぞれの段階において度合いの差こそあれ、結局農民の負担というものは付加されるということになれば、金融関係もそうですが、現在の三段階制等のあり方についても、これは徹底的に究明する必要があると思うのです。今回の工場分離というものは、単にそれだけのものではなくて、この波及するところが非常に大きいし、むしろ、現在の協同組合の内部的に包蔵されたる一面というものを外部に露呈さしたということにもなると思うわけです。ですから、この機会に、われわれとしても相当慎重な態度で農協を今後育成、発展さして、これが唯一の農民の生産あるいは消費面の活動のよりどころであるということで、使命を果たしてもらいたいという考え方の上に立って、問題を取り扱っておるわけです。  最後に、この問題の一つの事例として、北海道の問題を申し上げると、北海道では生産工場の問題は、ホクレンがビート工場の経営をやっておるわけです。それからでん粉の合理化工場とか、畜肉の加工工場とか、えさ工場もやっておるわけです。これは全部総合的な直営生産工場という、そういう形態に分かれておるわけです。それから会社方式というのは、羊毛とかあるいは繊維関係の北紡株式会社というのがあって、これは北海道の連合会あるいは単協の出資ですからして、内容的には農協の全額出資ということになっておるわけです。ですから、この二つの形態を比較して直ちに同列に論ずるわけにはいかぬが、たとえば北海道のホクレンといえば、全国の経済事業連としては最大のものであると思うわけです。しかし、この中にも、部門的にこれを分解すると、やはり経営上のいろいろな問題を包蔵しておるわけなんです。たとえばこのホクレンが行なう事業の主要な利益を上げておる部門ということになれば、筆頭はビート工場です。その次が政府に売り渡す米の販売手数料、それから肥料の取り扱いによる取り扱い手数料、これが総計して大体十億程度に及んでおるわけです。それ以外の工場経営等の生産部面においては、残念ながら利益は上がっておらぬ。それから米以外の販売事業等についても、利益はそう上がっていないということになっておるわけです。ですから、この三本の事業というものをはずしてしまうと、北海道のホクレンというものは、直ちに経営が相当苦しい状態になるわけです。他の府県の事業連も大同小異だと思うのです。いままではビート製造にしても国の制度に守られてきておって、米の販売手数料にしても、やはりこれは食管法の庇護のもとに置かれておる。肥料の取り扱いにしても、従来は肥料二法のもとにおいて相当安定した事業をやることができたということになっておるのであって、これは、農協自身の経営力とか能力のしからしめるところでこれらの事業が相当成果をあげておるということにはならないのですよ。国の保護、助成政策というものが相当バックをなして、こういう取り扱いの事業面では経営上、収支上から見ると相当の利益を上げておる。しかし、これが他の必要な事業部門の赤字あるいは経営困難な部門に対して相当補強的な役割を果しておることも事実なんです。ですから、やはりそこに総合的な事業経営の妙味と有効性というものがあるわけですね。ところが、会社方式でやっておる北紡の場合は、羊毛の自由化等が行なわれた昭和三十六年以前は、これは相当優秀な成績をあげて、おったわけですが、羊毛とか繊維の自由化というものが行なわれてからは、全くこれは国内における大メーカーとの競争なんということはできる力のものではないですから、直ちに経営不振に陥って、この会社というものは一体どうするのかということに実は直面しておるわけです。ですから、こういう点は、やはり各地域において、会社経営の場合と、総合的な農協事業として直営方式でやる場合の長短というものは、おのずからあるわけですから、これを割り切って、企業意識に徹するためには会社方式にしたほうがいい、そのほうが利点があるということだけで断定することはできないと思うのですよ。この点は単にえさ工場だから——単純な企業ですからね。トウモロコシとかマイロを買いつけて、それを粉砕、配合すればいいわけですから、これはだれがやったって、精密な工業じゃないから、うまくいんとかいかぬとかいう問題じゃないのです。ただ、原料の仕入れの方法とか、製品の販売処理の問題とか、あるいは工場内部における経営の効率というものはどうなっておるかという、他の類似会社との比較の上においてこれは判断すべきものであるというふうに考えるわけですが、こういう単純な工場経営さえも、現在の農協連合会の能力では経営が困難である、至難であるということになれば、やはり協同組合の生産工場等の企業能力というものは全く劣悪であるということを天下に表明することにもなりかねないと思うわけです。そういうことで、今後農林省としても、十分この問題に対しては検討を加えて、これは自主的にやることだからどうもしょうがないといえばそれまでですが、そこに至る道程についての判断とか指導とか、移行する場合の踏み切りについても、相当積極的な農林省としての助言とか、指導的な役割というものは必要であるというふうに考えるわけですが、この点について局長としてどうお考えですか。
  59. 昌谷孝

    昌谷説明員 前段お触れになりました北海道の連合会における経済事業の諸種の現状につきましても、私どもとしても、これが農協としての理念追求と経済行為というものとが相両立していかなければならぬわけでございますから、今後も、その経済性なりあるいはまた農協としての合目的性なりというもの、その両者を踏みはずさないように発展していくように、各種の指導なり助言をいたしたいと思います。  製糖工場の問題にいたしましてもそうでありますけれども、広い範囲の組合員をかかえて、その一部の組合員に直接的な恩恵を及ぼすような事業を、広い範囲の組合連合会が傘下の事業として持つことが、はたしてどうかというような議論があの工場の建設過程にも、私どもの内部でも、あるいはまた北海道の農業関係者内部でも、いろいろと御討議が行なわれ、そういった点の十分の反省の上に、あのホクレンの直営工場が生まれた経過を思い出すのであります。全購連の今後のえさ事業の発展というようなことを考えます場合にも、やはり全購連のえさ供給シェアが全国的に広まれば広まるほど、そういった問題を、今後組合員相互間の一つの経済事業面での経済的な恩典の均霑度といったような観点からも、また十分慎重に見ていかなければならぬ面が新しく出てくるであろうと思います。いずれにいたしましても、組合が単位組合のままで経済行為をやることと比較して、連合会をつくって、より広範の一つの力を養いながら、より有利に購買をし、より有利に販売をしていこうというのがそもそものねらいでありますから、私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、その趣旨が具体的に生かされるように、今後全購連その他あらゆる組合におけるこの種経済事業の発展のお手伝いをそういう着眼点からやっていかなければならない、さように考えております。おそらく直営だからだめときまったわけのものでもありませんし、また会社にすればしただけでよくなるわけのものでもないと思います。整促過程におきましては、各種の付帯的な経済事業、系統事業を分離することが、ひところ系統農協の一つの典型的な整促の進め方の手順として論議された時代がありますけれども、私どもといたしましては、先ほど来申し上げましたような系統事業の経済事業の趣旨からいって、そう一律に形式的に分離がいいとか分離が悪いとかいうようなことを観念的に論ずべきものではなくて、それぞれの扱い商品の系統内部における比重の度合い等々を十分考えた上で、目的に最も接近できるように御指導申し上げるのが私どもの任務かと思います。そういうような方向で、今後とも先生のただいまの御注意の点を生かしてまいりたい、さように考えております。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これに関連して、先般の全購連総会において、会員のほうから緊急動議としてこの問題が提起された。これは新聞によりますと、香川県の経済連会長の宮脇君が動議を提出したということになっていますが、たとえば農協にしても連合会にしてもそうでありますが、行なっておる事業あるいは組織の変更の問題であるとか、あるいは新会社を設立する問題とか、外部に対する出資額の決定の問題であるとか、あるいはまた現有資産の譲渡あるいは処分の問題等を総会に付議する場合は、これはやはり理事会でその方針をきめて、総会招集の通知にその案件を明らかにして、そうして総会の場で十分これは審議して決定を行なうべきが筋道ですが、そういうことが行なわれないで、突如として総会において会員側のほうから、これらの重要な変更あるいは決定に関する動議が出て、そして議決されたということは、これは全く農協の総会における問題処理の上からいって、異例なことだと思うのです。こういう点は単に形式論だけではなくて、たとえば農協法等から照らしてみても、全く非合法であるということは言えぬとしても、こういう異例な措置を総会においてとるということに対しては、やはり後日問題があると思うのです。この点は、先ほどの工場の経営方式の問題よりも、むしろ農林省としては、農協法に基づいた農協あるいは連合会の運営のあり方から見ても、やはり若干の問題はあるのじゃないかと思いますが、この点についてはどうお考えですか。
  61. 昌谷孝

    昌谷説明員 先ほど申しましたように、いま御指摘の動議は、ブロック会議をずっと積み重ねてこられた経過で、組合員のほうから、総会の議題としてこの問題が提出せられなかった趣旨にかんがみまして、会の基本方針がぐらついておるのではなかろうかというような意味で、この際会員全体が基本的な方向だけの確認をいたしたいということで、基本方針の確認という趣旨で緊急動議が出され、全会一致でその緊急動議の内容とする基本方針が是認せられたという経過と承知をいたしております。したがいまして、全購連当局といたしましても、この総会における緊急動議が議決されたからといって、そのことをもってあの工場分離の必要とする諸手続が総会で済んだというふうにはだれも考えておりません。これはあくまでこの問題の進展過程における組合員から出た意思決定ということで、この意思決定を、具体的な全購連のそういう事業計画なり資産の内容の変更なりという、所定の総会の議決を必要とする諸手続として消化いたしますためには、当然あらためて成規の手続によって議題を整理して、臨時総会なり何なりを開いて、あらためて議決をしなければ、当然次のステップには進まないということは、関係当事者もみな了承をいたしておるようであります。私どもも、当初、そういう緊急動議が出て議決をせられたということを聞きまして、あるいはその点が混淆しておりはしないかということで憂慮をいたしましたけれども、責任者からただしましたところ、いまのようなことで、これはこれとして基本方針の確認にすぎない。必要な諸手続はあらためて臨時総会等によって積み上げを重ねていくということを当然のこととして、全購連当事者も予定をいたしておりますので、その辺は御懸念はなくてよろしいかと思います。私どももその点は十分今後とも注意をしてまいりたいと思います。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題はこの程度にして、またいずれ機会を見て詳しくお尋したいと思います。  もう一点は、飼料問題ですが、最近、アメリカのCCCからマイロを延べ払い方式で買い付けする、そういう動きが相当強いようであります。いずれにしろ、国内の飼料事情からいえば、相当長期的に外国に濃厚飼料を依存しなければならないような状態から直ちに脱却することは不可能と思いますが、今回のCCCに対するおよそ六千万ドルといわれておりますこの借款の問題等について、特にこれは農林省の中でも畜産局あるいは農政局、経済局等が関係を持っておる問題ですが、これに対して担当局長から、一応いままでの経緯と、今後のこれに対する取り扱い方針について、当委員会に明らかにしておいてもらいたいと思うわけです。
  63. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 最近と申しますか、昨年の夏ごろから、アメリカのCCCが手持ちをいたしております農産物のうち、マイロについて、GSM方式、延べ払い決済方式によって、それを順次回転をすることによって、ある期間の間における資金の国内調達をはかっていく、そういうことによって、日本国内におきます農畜産関連産業の長期施設のための投資等に充てたいというような構想が、日本商社の中で考えられまして、アメリカのCCCなりあるいはアメリカ農務省なりの担当者との間で接触が行なわれてきたのでございます。この問題に関しまして、通常の輸入及びその決済方式に従わないものでございますから、政府におきまして、そのような輸入方式について何らかの行政的な処理を要するわけでございます。でございますから、その前提として、このようなGSMマイロの回転方式による輸入を行なうということが、国内の飼料流通の面におきまして混乱を生じますとか、あるいはそのことのために輸入飼料の自由な競争が阻害をされるというようなことを避けることと、さらにこのような方式による利点は、当事者の意思にもよりますが、できる限り公平な処理をすべきであるということ、さらに調達されます資金の使途については、農畜産物の流通なり加工なりあるいは農畜産物に関連する所要施設に適切に投資されるというようなことを確保する必要があるというような観点から、農林省内で関係各局の間において取り扱い上の協議を進めてまいりますと同時に、政府部内におきます他の省との関係もあり、むしろ、この問題の有権的な処理は農林省外にあるはずでございますので、それらの省との間で、この取り扱いその他をどうするか、基本的な方向についてはただいま申し上げたような考え方でございましたが、その取り扱いをどうするのかということを現在協議中であるという段階でございます。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国内で不足する飼料を低廉、良質なものを正常な貿易の形で確保するということは、当然必要なことなんですが、ただ問題は、CCCというのは、いわゆるアメリカの余剰農産物の処理機関であって、アメリカの政府機関ということは当然言えるわけです。その向こうの政策上設置されたCCCから、条件がたとえば三カ年の延べ払いであるからして、延べ払い期間中の金利等も、国内の資金確保の場合よりも、条件としてはそのほうが有利であるというようなことだけで、長期的な余剰農産物の買い付けをやるということについては、やはり問題があると思うのですね。これは決して絶対けしからぬという筋合いのものではないと思いますが、やはり正常な貿易の形の中で、国内においてどうしても充足できないものについては輸入をするということは必要なことであるが、最近農産物関係の自由化等が無計画に進められて、国内における農業というものは相当強度な圧迫を受けておるわけです。だから、畜産農業の面についても、濃厚飼料についてはほとんど七割程度も輸入依存というような形では、正常な畜産の発展ということにはならぬと思うのです。ですから、単に条件が有利であるからCCCのえさに飛びついて取りきめを行ないたいというようなことは、ほんとうに日本の畜産農民の立場を考えての意図であるかどうかということも明らかにしておかなければならぬと思うわけなんです。そこで、これはまだ必ず実行されるというものではないと思うわけなんです。われわれの承知した点では、アメリカのGSMのルル氏、課長クラスの人物だそうですが、この男の書簡等をたよりにして問題を進めておるようですが、現在このCCCのマイロを買い付ける借款を希望しておるメーカー等はどの程度のものであって、その金額とか、政府としての取り扱いの方針とか見通しというものは一体どうなっておりますか。
  65. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 私どものところまでこのGSMマイロを回転方式によって輸入いたしたというふうに申し出募ります商社の数は約十五社でございまして、それが輸入いたしましたマイロの供給先別にそれぞれ三つのグループになっておるようであります。その希望として申し出てまいりました総額はほぼ一億一千万ドル程度の金額に相なっておると承知をいたしております。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この十五社に対して農林省としてはどういう扱いをしようとしておるわけですか。
  67. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 農林省として最終的にどういう扱いをしようとしておるかということをお答えするほど、政府方針も確定をいたしておるわけではございませんが、この方式による輸入を希望してまいっております各商社については、それぞれ従来マイロの輸入の実績を持っております。またそれぞれの販路を持っております。同時に、この方式により期待をいたしております資金の投資の見込みといいますか、そういう非常にコンクリートなものではございませんけれども、投資についての計画といいますか、プロジェクトを持っている。そういうような観点から、そういう点に着目いたしまして、政府といいますか、飼料行政の立場から、先ほど申し上げましたような見地から、支障のない範囲内でこの問題を承認してしかるべきではないだろうかというふうに考えまして、芳賀先生も御承知のように、政府飼料の三十九年度におきます需給計画の基礎になりました全体の需給の見通しの中で、マイロの輸入量をおおむね九十七万トン程度、九十六万六千トン必要とするというふうに考えておりますので、三カ年延べ払いということに相なりますとかりに三十九年からスタートいたすにいたしましても、自今の三カ年間にはおそらく三百万トン以上のマイロの輸入を正常な姿のもとで必要とするであろう、そういうことでございますから、一年約百万トン程度ということの平均を考えますと、このGSM方式による輸入量がその過半を占めるということは適当でないということで、おおむね四割、四〇%前後の数量に押えることが、飼料輸入としては適当であろうというふうに考えまして、それらの基礎的なデータに基づきまして、各社別に、政府の内意として、GSM方式による輸入及びそれによる資金の造成並びに投資に関する指導方針というものをきめてまいりたいというふうに思っておる段階でございます。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私どもの調査した範囲では、たとえばCCCの在庫にしても、すでにえさ関係ではトウモロコシはそれほど何年も過剰在庫ということにはなっていないのですね。単にマイロが一年間ぐらいの輸出余力があるということを承知している。そうすると、これもアメリカにとっても、外国のえさ、農産物の最大の市場は日本ですから、わが国の場合は世界のあらゆるえさというえさを買いあさって集めてくるわけで、六百万トン近くも輸入しなければならないという時期がすぐくるわけですね。そういう中においても、マイロはCCCの在庫は一年ぐらい分しか余剰がないということになれば、向こうさんはこれはむしろ売り手市場ですからね。アメリカのCCCは、アメリカ国内の余剰農産物を処理するための農業政策の一環として、これは設置された政府機関ですが、日本のおかげでだんだん余分なものがないということになると、これは売り手市場ということになるわけであって、特にCCCの余剰農産物であるなら、価格面においても格安ということにはならぬと思うのです。しかも、もう一つの問題は、たとえばマイロを配合飼料に用いるわけですが、これは少なくとも三〇%程度を混入した場合には有毒であるという報告とか、資料というものが出ておるわけなんです。配合の許容量は大体二五%程度にとどむべきであるということも専門家から指摘されておるわけですから、このマイロだけに飛びついて、三年間の延べ払いが有利であるということで、利益本位にこういう契約を行なうということは、畜産政策上もやはり問題があると思うのです。そういう点はやはり畜産局長として十分検討されておると思うのですね。これは進めるべきほどのものじゃないのじゃないですか。むしろ、世界の生産市場の中から、優良低廉なえさを選択して、正常な取引の中でこれを買い付ける、輸入するということのほうが妥当な方法だというふうにわれわれは考えておるわけであります。イデオロギー的にわれわれはこれを扱うという考えはないが、これは積極的に政府が推奨して行なわすべき筋合いではないというふうにわれわれは考えておるのです。
  69. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 芳賀先生の御質問の中でお触れになりました点、若干申し上げてみたい点がありますが、CCCというのは、私から説明するまでもなく、アメリカの商品金融公社あるいは会社とも訳しておりますが、アメリカで生産されます飼料農産物に対する生産物金融と同時に、金融の対象になりました農産物の保管、さらに保管後における所有権取得、いわば買い取りを行ないまして、それを国内及び輸出市場に放出するという機能を営んでいる法人でございますが、このCCCの放出、処理いたします農産物の中には、いわゆる狭義の余剰農産物の性格のものもございます。ただいま申し上げました機能上、集荷保管される性質のものもあるのでございまして、今回問題とされておりますGSMマイロは、これは通常処理をいたしておりますCCCのマイロを対象として考えておるのでありまして、いわゆる狭義に余剰農産物の処理という形で取り扱っておるものとは別の性質のものでございます。現在わが国に輸入しておりますマイロも、CCCからの通常処分のマイロを入れておるわけでございまして、今後私どもがこの方式について検討をいたしたいと考えておりますものも、やはりそういう通常処理の中で、マイロのほとんど大部分、一〇〇%に近い輸入ソースがアメリカでございますから、そのうちの限られた数量について、マイロその他の飼料輸入の自由競争あるいは輸出ソースの自由選択ということを害しない範囲で考えてまいりたいというふうに思っておるのでございます。でございますから、先生のおっしゃいますように、このことのために非常に弊害が起こるというようなことでございますれば、私ども飼料行政上承認をするわけにはまいらぬのでございますが、本質的に通常輸入の継続ということは、これは当然考えられることでございます。また、その通常輸入に対する代金決済の方式としての有利性が認められる限りにおきましては、あえて反対をすべき性質のものと思えないのでございます。  また、政府として特にこの方式による輸入を推進する考えはおかしいのではないかという趣旨の御質問でございましたが、政府として、輸入商社による自由な商業活動としての有利な条件に対して、これは弊害のない限り私どもは政府として措置をすべきものと思いますけれども、特に推進をするというような考え方は元来持っておらないのでございます。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは農林省の中では経済局所管ということになると思うのですね。これを承認するということになれば、大蔵省あるいは通産省のそれぞれの合意というものが必要になるが、経済局長としてはどう考えておるのですか。
  71. 久宗高

    ○久宗説明員 ただいま檜垣畜産局長から申し上げたと全く同様に考えております。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 同様といっても、畜産局長は、日本の畜産との関連、しかもほとんど濃厚飼料については国外に依存しておるというようなやり方というものは、これは変則である。しかし、この五百万トン以上の外国に依存しておる飼料給源を、直ちに国内の飼料自給度の向上によって短時日に解決することはできない。しかし、これ以上外国に飼料の給源を求めるということは、これは政策上も問題がある。こういう点については、午前の赤城大臣の留任のあいさつの中にも述べてあるわけですが、何でもかんでも外国のえさに飛びついて、しかもそれがもうかればいいという主義でやられてはたいへんなことになる。そういう場合、一体日本の国内の農業政策あるいは畜産政策との関連において、利益のあるものであれば、国産の自給度の向上を抑圧しても、外国のえさを買い付けなければならぬか、自由化に同調、便乗しなければならぬかということは、政治的にも大きな問題になるわけです。目先の利益だけに幻惑されて、長期的に外国とのえさの取引というものを進めるということは、次第に外国依存のかまえというものを強めることになるわけであって、こういう点は農林省としては反省しなければならぬと思うのです。通産省あたりは、貿易政策上あるいは自由化を進めるという政策上の立場から、われわれは賛成でないとしても、進めるという場合と、農林省がこれに対処する場合との姿勢というものは、おのずから異ならなければならぬと思うのです。しかも、マイロというものは、家畜のえさとして家畜に与えれば、家畜はこれをえさとして消化はするが、一定の限界を越えれば、家畜に対しては有毒であるということが証明されておるわけです。安ければえさを買ってきて、家畜が死んでもかまわぬという態度ですね。この利益追求の形でえさを取り扱うということになれば問題があると思うわけです。そういう点に対して、経済局長として全く檜垣畜産局長と同意見というのはおかしいでしょう。人間の顔も違うし、人格も違うのに、意見が全く異ならぬということはおかしいと思うのですよ。ニュアンスの差ぐらいあったっていいんじゃないですか。その点についてどうお考えになりますか。
  73. 久宗高

    ○久宗説明員 芳賀先生の、この問題について吟味すべき問題として御指摘になりました問題は、農林省といたしましても、この問題を取り扱います場合に、当然検討すべき問題といたしまして、数年になりますが、各局におきまして相当突っ込んでここまで検討してまいった問題でございます。ただ、飼料の需給体制が、先生の御指摘のような形で、当面外に相当依存せざるを得ないというような状況にございまして、かつ、マイロの需給関係から申しますと、当然にある程度外国のえさに依存せざるを得ないという中におきまして、現実に入ってまいりますものをいかに有利に処理したらよろしいかという観点で、ここまで煮詰めてまいったわけであります。したがいまして、かりに、今回の一応の考え方といたしましては、先ほど畜産局長から申しましたように、年間にいたしまして四〇%程度のものをこういう方式でやるといたしましても、あとの六〇%のものにつきましては、それと異なる観点で臨むべきだという考え方で処理をいたしておるわけであります。  経済局といたしましては、これのいわば総括的な取り扱いをいたすわけでございますが、手続的に申しますと、やはり標準外決済という問題になりますので、所管から申しますと、通産省におきまして取り扱います際に、こちら側から意見を出すという形になるわけであります。その意見を出すのにつきまして、数回長い期間をかけまして畜産局とも話をし、一応の考え方を規定いたしたわけでございます。このような意味におきまして、現在の段階におきまして、農林省内部におきまして各局間に異論がないという意味で、畜産局長と同感でございますと申し上げたわけであります。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは私どもが調査した経過からいうと、まず三井物産が昭和三十七年ころからマイロの問題を取り上げて進めておるわけですね。そのあとで全購連が一枚名乗りをあげて、最終的に日本飼料工場会が仲間に入りたいということで、畜産局長の言われた合計十五社ということになるでしょう。これは、全購連は先ほども論議したように、農民の組織体ということになっておるのだからして、まさか利潤追求だけでこの問題に乗り出したわけではないと思うのです。よその利潤追求の会社がそういう条件で延べ払いでマイロの買い付けができるとすれば、農民資本の全購連としても、一役を買ってもこれは当然じゃないか。全購連だからいかぬというわけにはいかぬわけですね。農林省から見ても、おまえも仲間に入ってもいいだろうということで扱っておるかもしれぬが、ただ問題は、国内におけるえさ問題というものは一体どうするか。あるいは飼料関係の設備を借款分で強めるということも目的の一つになっておると思うが、たとえば借款の金利が四分五厘程度でしょう。それに手数料が何がしか加算されて、五分以内の資金コストということなんですね。それが非常に有利だということらしいが、それならえさ行政、えさの施策というものを進める場合に、飼料関係生産施設あるいはサイロ建設等によるところの貯蔵施設、そういう飼料生産あるいは製造の積極的な施設をやる場合に、たとえば生産者による実需者団体等がそういう施設を積極的に行なうというような場合には、やはり政策的にそういう資金とか低金利の条件の資金というものを必要量提供する、そうして少なくとも国内の施策よりもアメリカのものに依存したほうが有利であるというような、そういう外国依存の間違った考えはやめさせるようにしたらいいじゃないかと思うのです。利潤追求上比較すれば、国内の資金コストがたとえば八分以上である。CCCにたよれば五分以内ということになれば、企業意識からいえば、それはアメリカのCCCの延べ払い方式のほうがいいという計算になるかもしれぬが、そういうことだけに徹するということは、これは非常に危険なことになると思うのです。それがまた国内における飼料政策というものをおくらす原因にもなるわけですね。だから、大所高所からこれを見た場合、目先の利益だけでそれを奨励するとかあっせんするとかいうことだけが、農林省の行なう仕事ではないと思うのですよ。長期的な展望の上に立って、やはり明確にすべきところはするという態度でもってやってもらわぬと、結局日本政府農政というものはいかに貧弱であるかということがわかるわけなんです。そういう点に対して一体どう考えておるのですか。何でも外国にたよればこれからもいいということでいくのですか。
  75. 檜垣徳太郎

    ○檜垣説明員 飼料加工業の合理化という問題は、これはもとより私ども、日本の畜産の発展、農業の発展のために一つの重要な課題であろうと考えておるのであります。そういう見地から、従来も飼料工場の合理化のための投資等につきましては、開銀資金の導入等につきましても、私どももあっせんの労をとってまいっておるのでございますが、何ぶんにも日本の国内におきます資金事情あるいは金利の水準というような問題は、にわかに急速な改善ということは期待しにくい事情にあるのが事実だと思うのであります。そういう情勢のもとで、一面外国からの輸入飼料についての延べ払いによる低金利の資金が利用できるというチャンスにあたって、これを外国依存を拒否するという態度でその受け入れを拒む、あるいは受け入れについて不承認の立場をとるということは、私は必ずしも現実の問題として適切でないというふうに思っておるのであります。今後、ことにこの工場諸施設、工場でありますとか、あるいはサイロでありますとか、港湾の施設等は、いわば一般の企業的施設であるわけでありまして、こういう企業的な施設についての資金については、国内における資金手当てに努力をいたすことはもとよりとは考えますが、外資といいますか、これは延べ払いによる円資金ということになるわけでございますけれども、それらの資金を導入する、そうしてこれに充てるということも、拒否をすべき性質のものではないというふうに考えておるのであります。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 拒否とかなんとかいう問題じゃなくて、たとえばアメリカのCCCによる延べ払い方式にしても、たとえば日本の主として共産圏諸国等に対する延べ払い方式による貿易振興の方式にしても、主体はどこにあるかということなんですよ。マイロの問題にしても、アメリカの政策として、こういう条件を付してアメリカの農産物の処理をやっておるわけですから、これは向こうの政策でしょう。日本の政策としてこれを進めておるのじゃないんじゃないですか。向こうはこの政策を進めることによって、自国が有利になる。自国農民はこれによって利益を亨受できるということで、こういう政策を打ち出しておるわけですね。したがって、わが国が主体的にこの政策を打ち出して向こうを了承させるということとは違うわけですから、その利益の度合いということになれば、政策を立てて進めておる国のほうが、それが実行されれば有利だということは当然でしょう。だから、日本の場合には、貿易振興一つの方法として延べ払い方式を採用するということで、こっちはまたいつているわけですから、向こうの主体的な政策に便乗し、同調しなければならぬというところに、わが国の農政の貧困さというものがあるわけで、有利であればそれに飛びついていいというものじゃないでしょう。この申し込みをしている会社の中でも、たとえば全購連が農民を代表するえさの実需者として、施設拡大するとか、あるいはサイロを建設するとかいう場合においては、アメリカに依存して金利の安い資金を確保するということよりも、たとえば農林中金にしても、政府資金にしても、そういうものを積極的に投入して、そうして畜産の発展あるいは畜産農民の利益のために施策を進めるということができないことはないと思うのです。それは三井物産とか営利会社の飼料工場会の言うことを何でも聞かなければならぬことはない。少なくともこの種の問題は、やはり生産者である農民の意思に基づいて行なわれなければならぬということになると思うのです。だから、こういう点は、やはり政策の基本の上に立って十分検討して、慎重に扱ってもらいたいと思う。そうじゃないですか。これは政務次官からも、就任早々ですけれども、今後発展する重要な問題ですから、単にCCCのマイロの問題だけじゃなくて、これからの日本の畜産の問題とか飼料政策を一体どうやるかということに関連のある問題ですから、政府の姿勢というものをこの際明らかにしておいてもらわぬと、軽々にわれわれもこれを論じ、いいとか悪いとか言えないと思うのです。
  77. 舘林三喜男

    舘林説明員 午前中に農林大臣から、今後の政策を打ち出す場合に、主として畜産につきましては、自給飼料の確保ということを特に強調されたわけでございます。今後におきましては、あるいは草地造成とか、あるいはまた麦とかトウモロコシの増産ということももとよりやらなければならないのでございますけれども、何ぶん畜産が非常な勢いで伸展しておりまするために、今日におきましては、飼料の大半を輸入に仰がなければならぬということは事実でございます。しこうして、GSMの延べ払いにつきましても、これはアメリカのほうで不利な立場で犠牲を払ってまでやるということは、もとよりありませんでしょうが、さような立場でアメリカとして有利であることは申すまでもありませんが、問題は、日本の受け入れの側といたしまして、不利かどうかということによってきまるわけでございます。先ほど畜産局長がお話申し上げましたとおりに、今回のは金利の条件から申しましても、また支払いのその他の条件から申しましても、日本全体として、日本の立場から申しますと、必ずしも不利ではない。それはまたイデオロギー的にそれが介入されておるものもありますし、日本の今日の資金コストから申しましても、この程度ならばいいだろう、現にCCCからマイロは毎年度買ってきておる実情でございますので、今度この延べ払いを受けることによって特別の不利はないだろうという立場で、いま畜産局長が説明したとおりでございます。しかし、お話のとおりに、先ほど農林大臣も申し上げましたように、自給飼料の安定確保、自給度の確保というのは、もとより第一義的に必要でございますので、今後芳賀委員の御趣旨に沿いまして、ひとつ全力をあげてその方向に進めたいということを農林省としても考えておるわけであります。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは本日はこの程度にして、次会、来月の委員会に、また問題の進展等もあると思いますから、それまで保留しておきたいと思います。特に今回の場合は、三井物産にしても、これはやはり政府といろいろな相当のつながりがあるでしょうし、日本飼料工場会にしても、実権を握っているのは河野無任所大臣ですから、農林省としても、これに反対してだめだなんということは毛頭言えないと思うのですから、大勢としては、そういういろいろな諸般の情勢に押されて実行するということになるというふうに、見通しとしてはわれわれは持っておりますが、いま政務次官の言われた、・今後のわが国の畜産あるいはえさ対策というものをどう進めるかということについて、やはりこれを明らかにして、これの問題もやはり並行して処理すべき筋合いだというふうに実は考えるわけですが、次会に保留して、きょうはこの程度にします。
  79. 高見三郎

  80. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、この際、三重県の熊野灘に原子力発電所を設置するという問題が本年早々から爼上にのぼっておりまして、しかもこの問題は、最近非常に現地側では重大な、いわば政治問題化してきておる。こういう事態にありますので、この際、この問題を取り上げて、政府並びに関係各省のこの問題に対する御見解を端的にお伺いをしておきたいというふうに考えます。  三重県の熊野灘に原子力発電所を誘致をしようという問題は、これはもちろん科学技術特別委員会の参考人招致の議事録等によりますと、東京電力あるいは関西電力、中部電力、それぞれ社長、副社長クラスの参考人を呼んだ中で、中部電力の副社長の三田さんが、三重県の熊野灘に原子力発電所を設置しようというまでに数年来、中部電力管下のいろいろなところの現地調査をして、熊野灘あたりがいいのではないかということで爼上にのぼってきた経緯について、意見を述べております。私もその議事録等については十分承知をしておりますが、当初、中部電力と三重県との間では、熊野灘に三カ所の候補地を設定した。ところが、一カ所の大城池については、関係市町村の猛烈な反対があって、特に地元側のところに非常な関係者の反対があって、ボーリングさえもできないという事態でございまして、あと二カ所については、別にボーリング調査をしたから設置をするということに決してなるわけではないのだ、ボーリング調査はとりあえずやらしてもらいたいということで、城ノ浜と芦浜のボーリング調査をやられて、先月の二十七日の段階で、田中知事と中部電力の三田氏との間で、候補地を芦浜に最終的に一本にしぼったという経過になっておることは、御承知だと思います。しかも、この問題が提起されましてから、関係町長あるいは関係議会、関係地元の漁業者、農業者、あるいは中小企業者、あるいは一般の方々、異常なこの問題に対する関心を示しまして、おそらく何千にのぼる人々が東海村の見学に行ったり、あるいは原子力開発株式会社の第二号の爼上にのぼっております敦賀あたりの状況調査に行ったり、あるいは中央では関係各省のそれぞれのエキスパート、学者の方々を呼んで、全漁連あるいは三重県漁連が中に入って、いろいろ意見を聴取する、あるいは現地側にも学者を呼び、いろいろな形で勉強もする、実に第一線においても、この問題については真剣に取り組んできたことは、これまた御承知かと思うのです。先月二十七日に最終的に芦浜に候補地がしぼられる段階から、特に南島町を中心にした漁業者あるいは一般の人を含めて、決定数日後に三千隻からにのぼる海上デモが大々的に行なわれるというふうなことが、御承知のようにございました。また今月の七日には数千名が津に集まり、さらにあすは五千名以上が津に集結をする。しかも、私今月の早々に南島町に参ったわけでありますけれども、とにかくぜひ原発の話をしてもらいたいということで、各地で強く要請された。たまたまその中で、神前というところでぜひと頼まれたものですから、予告のない形で、夜、原発の話をしたのですけれども、有線放送でちょっと通告しただけで、われわれが立ち会いのときにも集まらぬほどの八百名以上の人たちが、老若男女を問わず、私の話に集まるという真剣な姿であります。これは神前だけでなしに、方座に行っても、古和浦に行っても、ぜひひとつ原発の話をしてもらいたいということで、もちろん、南島ばかりでなしに、私は以前に海山町にも、長島町にも、関係方面のそういう町村にも参りましたが、どこに行っても、たくさんの人々が集まってきて、この問題に対してどう対処するかという真剣なかまえで、この問題を見詰めておるわけであります。しかも、この問題に関しましては、今後どう推移するのかということが非常に大きな問題であります。  ことに、農林水産上の立場からも問題を考えなければならぬのは、言うまでもなく、熊野灘というのは、全国有数の優良漁場であります。三重県は、海外に輸出して百数十億の輸出額をあげております真珠の主産地であります。志摩から南勢、南島、さらに問題の熊野灘一円地帯、これは真珠の養殖、母貝を含めて、そういう養殖地帯であります。さらにノリ養殖、カキ養殖、最近の沿岸漁業の構造改善で、養魚漁業等もどんどん取り入れておるわけでありますし、漁船漁業としてもまことに優良な漁場として、今日まで全国的に名をなしてまいったことも、重要なこの問題を考える場合の一つの問題点だと思います。  そこで、原子力発電そのものをどう受けとめるかという問題については、私は二月十五日の予算委員会で本問題を取り上げたときにも、率直に申したのでありますけれども、今日電力エネルギーという立場から、従来の石炭、火力あるいは水力といういろいろなものの今日までの経過から見て、原子力発電というものを新しい電力エネルギーのエネルギー源として導入してこなければならぬであろうということについて、われわれは否定をするわけではございません。しかし、問題は、日本の場合には、国際的に原子力発電というのは、アメリカにしろ、イギリス、フランス、西ドイツあるいはソ連、各国でそれぞれ試験段階から経済ベースに乗せようということで、いろいろ努力をされておる経緯等もありますけれども、日本の場合は、原子力開発株式会社が東海村で第一号を着手して、近く操業する、あるいは第二号を敦賀で取り上げよう、さらに関東電力が福島に設置をしよう、あるいは関西電力が福井県に設置しよう、中部電力がいま取り上げております熊野灘に設置をしよう、これらのもの全体を合わせて、昭和四十五年にはできれば百万キロワット以上の原子力発電というものを日本で生み出していこう、こういう段階でありまするから、いわば経済ベースに乗る一歩手前の試験段階、こういう発展段階であろうと思うのです。そういう発展段階の中で、現地側の漁業者を中心にして非常に強い反対のあるこの原子力発電というものを、はたして熊野灘で強行する理由がどこにあるのかということが、現地のこの問題を受けとめる人々の非常に深刻な問題提起に相なっておるわけであります。  この際、まず原子力局長にお伺いしたいのでありますが、従来から原子力問題については、外国にまで数年間行かれ、主として原子力問題に取っ組んでこられたベテランの局長が、最近かわって就任されたわけでありまして、われわれも、今後の原子力行政というものが正しく行なわれていくという立場から、局長の今後の手腕に大きな期待を寄せるわけでありますけれども、当面の原子力プランというものの進め方、基本的な考え方というものについて、まず冒頭にお伺いをいたしたい、こういうふうに思うわけです。先ほどの点は、若干経過的にお話しをしましたけれども、そういう問題はあとでまた具体的に触れてまいりますから、やはり原子力計画の今後の基本的な考え方というものからお話を伺いたいと思います。
  81. 村田浩

    ○村田説明員 ただいま角屋先生から、わが国が原子力の研究開発及び利用を進めるにあたっての基本的な考え方をまず示せ、こういうお話でありますが、昭和三十年に成立いたしました原子力基本法にも明記されておりますように、わが国の原子力研究開発及び利用は平和目的に限って進めるということを、まず内外に第一に宣明いたしておるわけでございます。したがいまして、原子力の平和利用をどのようにして将来の国民経済の発展等に寄与するように持っていくかということが、根本にございます。  ところで、原子力の平和利用を進めますにあたって、最も大きな関心を払うべき問題は、先生のお話の中にもございました安全性の確保の点でございます。といいますのは、わが国の原子力の平和利用を進めます際に、いささかでも安全性に疑いがある、あるいは何か不安全なことが起こるということでありますと、平和利用というものは進め得ないわけであります。これをエネルギーの面で申しますと、先ほどお話の中にございましたように、原子力研究開発利用の中心的な基本政策を立てていく機関でございます原子力委員会としましても、将来のエネルギー政策という点から見まして、昭和四十六年ごろから以降十年間には相当な規模の原子力発電所を国内に建設していかなければならないだろう、こういう見通しを立てておられます。そういった規模は、大体昭和三十六年に制定されました長期計画の中に示されてございますが、施設の能力といたしまして、大体六百万キロワットから八百五十万キロワット程度の規模の原子力発電所を昭和四十六年以降約十年くらいの間につくっていく必要がある、こういう考え方がまず第一に出ておるわけでございます。  ところで、このような規模の原子力発電を昭和四十六年以降十年間にわが国内で建設いたしまして、しかも、これが技術的にも安全、経済的にも他の発電施設に比べて安く発電していくというようにいたしますためには、そこに持っていくまでに、やはり相当の研究開発、さらに経験を経ていく必要がございます。そういった点で、四十五、六年までただ手をこまねいて見ておりましたのでは、りっぱな原子力発電所の建設はできませんので、それまでの間にある程度の規模の原子力発電所をみずから建設し、運転する、そういう経験を持つことが大切である、このような考え方のもとに、大体昭和四十五、六年ごろまでに百万キロワット程度の原子力発電所を建設するのが最も適正な計画と思われるという趣旨が、昭和三十六年に正式に委員会決定として出されておるわけでございます。この長期計画に出ております考え方に沿いまして、原子力発電株式会社はもとより、電力会社各社におかれましても、自分の域内における発電計画の一環として原子力発電所の建設を計画され、そうして現在のところ、私どもの手元に出されております計画は、合計いたしますと、ただいまもお話がございましたように、大体原子力委員会で必要であろうと見られた規模の原子力発電所の建設が行なわれるということになっております。先ほどお話しの中に、原子力発電所の建設といいますか、運転といいますか、こういうものが、諸外国として見ても、現在まだ試験段階であるのではないか、こういうお話でございますが、経済的に最近石油をたきます重油専焼火力というものは、非常にコストが安くなっている。そういった非常に安い新鋭火力と比べましたときに、原子力発電の発電コストがどうかということで考えますと、ただいまの見通しでは、やはり昭和四十五、六年ごろまでは期間がかかるだろう、こういうことでございまして、技術的な面では、すでに原子力発電というものは非常に進んできております。ごく大まかに、現在世界じゅう全部合わせますと、小型の動力炉もございますけれども、数を言いますと、約百基が運転あるいは建設もしくは計画中でございます。その百基のうちの三十数基が現在すでにそれぞれ動いております。その中には、もちろん非常に小さな動力試験炉というようなものもございますけれども、規模の大きなものでは、たとえばイギリスにありますものですと、一基で二十五万キロワット程度の発電ができる。アメリカでは一基で二十万キロワット、イタリアでも一基で二十万キロワット発電できるもの等が、それぞれ現に運転を開始しております。いずれもこれらの発電所は、技術的に何らの危険もなく、順調に運転に入っておる状況でございまして、技術的な面で、まず実験しないとどうこうということは言えないのではないかと思っております。  もっとも、原子力発電所と申しましても、いろいろの形式の原子炉がございます。私がただいま申し上げましたのは、主としてプロトタイプ、すでに技術的には確認された型の炉でございまして、それは主としてアメリカで開発されました軽水型動力炉というものと、主としてイギリス及びフランスで開発されました天然ウラン炭酸ガス冷却型の動力炉、この二つでございます。先ほど私が申し上げました原子力委員会の長期計画でも、この昭和四十五年までに百万キロワット建設するのが適切であるということとあわせまして、この百万キロワットを達成するのに適切な原子炉の型につきましても、大まかにこれを申しておりますが、それはただいま申し上げましたような軽水型あるいは天然ウラン炭酸ガス冷却型というように、技術的に世界的に評価されておる型のものをまずわれわれのところで運転していくということが望ましいのではなかろうかというふうに示唆いたしております。  これらを見ましても、原子力平和利用、特にその中心であります原子力発電計画を進めるにあたりまして、まず第一に技術的安全性の確保という点を考えておりますことは、おわかりいただけるかと思います。
  82. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 答弁される方にたいへん恐縮ですけれども、時間の関係もありますので、私もできるだけ今後簡潔に一お尋ねいたしますが、ひとつ答弁のほうも、もちろん重要な問題でありますから、問題によっては説明も長くなりましょうけれども、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。  いまの原子力発電所の安全性という問題は、これは私、過般の予算委員会でも取り上げたときに、前任者の局長は、原子力発電所の安全性は、採用する原子炉が安全であるかどうかという問題と、その原子炉を採用する地点が原子力発電所として十分安全性を確保できる立地条件を持っておるかどうか、これらが総合されて、原子力発電所がその地点にできる場合に安全であるということが言える、そういう意味の答弁をされておりました。問題は、いま局長は、採用する原子炉の考え方というものについてお触れになりましたけれども、熊野灘という地帯、これは御承知のように、最近では伊勢湾台風の大災害を受けておる。その前には昭和二十八年の大災害を受けておる。こういうふうに相当大型な、歴史的にも相当規模の大きい災害を経験しておる。さらに津波の関係では、御承知のチリ津波で、熊野灘、志摩方面にかけて相当大きな災害を受けたことは御承知のとおりですし、またさらにさかのぼると、昭和十九年には南海地震によって、いま爼上にのぼっております南勢、南島方面を含めまして、相当な死傷者を出すという大きな被害を経験しておるわけです。したがって、この地帯は、地震においても、津波においても、台風においても、災害の頻度から見て、非常に大型な災害というものを経験しておる。そういう地帯に、いわゆる海べに、冷却水として相当大量の海水が必要だということもあるでしょうが、海岸地帯に原子力発電所をつくる。私も東海村の原子力発電所については視察に行ってまいりましたし、構造の大要については説明も受けてまいりました。専門家でありませんけれども、ある程度のことは判断できると思うのですが、二、三十年の間に大規模災害を受けたこういう海岸地帯に原子力発電所をつくった場合に、台風にも十分乗り切れる、あるいは地震にも十分乗り切れる、あるいは津波にも十分乗り切れるということが言い切れるかどうかという問題が、地盤の強度とか、いろいろな問題も含めてありましょうが、そういうことがやはり関係地域としてはたいへんな判断の問題の一つだと思うのです。さらでだに、最近、新潟地震における石油タンクのああいう爆発や火災の問題もありましたし、あちこちで予期せざる——予期せざるというのは、一般の人が言うことであって、ある意味では当然予期されなければならぬ、そういう科学の発展に伴うところの大きな災害が惹起しておるわけです。いわゆる採用する原子炉の問題と、その原子炉を誘致する地点の問題の中では、地点的には、災害の頻度というものは、やはり相当大規模なものが何回となく起こっておる。そういう地点が、はたして第一期の、いま四十五年を目途とした百万キロワットの中で、短兵急に設置をしようという、そういう爼上にのぼるべき地点であるかどうかということは、私は非常な問題だと思うのです。私どもは長い目で見て、第一期計画を経過し、第二期計画を経過し、そして外国から原子炉を導入するということではなくて、原子力研究所あたりでいま盛んに研究を進めております国産原子炉、日本の自然的立地条件を勘案した国産原子炉の開発というものが十分できてくる段階と見合って、三重県の南部海岸地帯にもあちこちのいろいろなデータから見てどうであろうかという時期、その時点で考えるというほうが適切ではないか、率直に言ってそういう感じを持っておるわけです。それらの問題については、これはやはり具体的な地点の状況というものを精査しなければ、にわかに答弁しがたいということになるでありましょうけれども、そういう問題が一つの大きな現地側の問題点として提起されておる。この点いかがですか。
  83. 村田浩

    ○村田説明員 原子力発電所を建設するという計画が具体化しますためには、設置者といいますか、所有者としましては、まず政府に設置の許可を求めなくてはなりません。その他の手続は、前回前局長からるる説明があったと思いますので、省略いたしますが、その場合に政府のほうで審査しますのは、原子炉そのものの持ちます技術的な安全機構等の信頼性とあわせまして、その原子炉が置かれます立地条件、これを両方組み合わせて検討いたすわけでございます。したがいまして、理論的には、どういうところでは絶対に原子炉ができない、どういうところでは原子炉は絶対安全だということは言い得ないたてまえになっておりまして、両者の組み合わせで、そういう条件のところで、なおかつ完全に安全が確保できると見られる機構を備えました原子炉であるかどうかということを審査していただくわけでございます。したがいまして、設置者としましては、そういう慎重な安全審査に役立てられる資料を詳細に整えまして提出して、政府の安全専門審査会に御検討願うわけでございます。私、最近中部電力のほうで、三候補の中の一地点に大体候補地をきめたいと考えておるという旨の連絡は受けております。これは現段階で申しますと、このような建設計画を具体化し、政府に設置許可の申請をいたしますために、必要な現地の詳細なデータをまずとらなくてはならぬ。そういうことのために、まずどこでもいいからとるというわけにはいきません。御指摘のように、地質構造の調査も当然必要でございますし、地表から非常にかたい岩盤までがどのくらいあるかというような問題、あるいは気象条件、海象条件、これらが一年間を通じてこの場所ではどういうような条件であるかということも詳細に調査して、そういうものを組み合わせた設計というものを検討して、それの設置許可を願い出るという手続になるわけでございますので、私どもとしましては、現段階において中部電力が芦浜地区を候補地に選ばれましたことは、そういった意味での中部電力の計画を一歩進めるための必要上おきめになったものと了解しております。政府の立場からしますと、ここでいろいろ詳細に調査されたもの並びにその調査の結果と技術的な安全機構との組み合わせを十分考えまして、でき上ったものを御提出になる、それを私どものほうで慎重に審査いたしまして、はたしてそれらの条件のもとにおいても安全であるかどうかを審査決定をする、こういうことに相なる次第でございます。
  84. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま気象条件その他の問題についても触れられたのでありますが、私は熊野灘のあの地帯を見ますと、山が海岸に迫っておる。リアス式の海岸で、入り海が非常に多い。そこで、真珠が得られ、カキあるいはノリの養殖が得られ、あるいは養魚漁業が発達をする。したがって、海岸地帯に沿うてそれぞれ漁村がずっと連なっておるという地帯であります。経済的な開発からいえば、よく三重県では陸の孤島ということばを使っておりますけれども、漁場としては非常に発達しておる地帯です。こういうリアス式の海岸、しかも山が海に迫っておる地帯で、尾鷲を中心にして全国でも指折りの多雨地帯であることは、御承知のとおりであります。そういう地帯で、原子炉から一定の許容基準で放射能が放出されていく。東海村のようなところは関東平野でありますから、放出される放射能というものは大かた拡散されていくでしょう。しかし、ああいう地帯の地形で、気象その他の時期的な差異はありましょうけれども、放射能というものが滞留条件というものを持たないかどうかということが一つ問題になる。かりに滞留条件を持つということになりますならば、これは多雨地帯でありますから、雨とともに地上に降ってくる。農作物に、飲料水に、そしてまた海に、こういうことの中で、遺伝的にも地域住民にいろいろ影響を持ってくるという危険性が絶無であるかどうかというふうな問題等についても、やはりこういう開発の場合には真剣に考えていかなければならぬと私は思うのです。それらの点もやはり十分に解明されなければならぬ。ややもいたしますと、火力発電所にしろ、あるいは原子力発電所にしろ、そういうものが来れば、道路がよくなるであろう、その関係町村に固定資産税が入るであろう、観光客も一部来るであろうというふうな甘い観測のもとに、十分な科学的な精査もせずに誘致しようという空気が出てくるわけであります。しかし、二百五十億も三百億もかけるような投資でありますから、一たんだめだということになって、これをぶちこわすわけにはいかない。一億や二億のものであれば、県も若干泣きましょう、国も若干助成をしましよう、会社も泣いてくれということで、施設をぶちこわすことも可能であります。しかし、多額の金をかけたものをぶちこわす、これはなかなか至難であります。したがって、そういうものをつくるという場合には、地域産業に対する影響はどうかという問題もありましょうし、安全性はどうかという問題もありましょうし、また自然的条件から見て、長い目で見て、その地域住民に十分保健上の確保ができるかどうかということも、真剣に考えなければならぬと私は思う。そういう点では、あの地帯の地形、そしてまた全国指折りの多雨地帯という面から見て、原子力発電所をあそこに設置するという場合、保健上あるいは地域の農産物やいろいろなものに対する影響というものがどう出てくるのかということについても、単なる地盤とか、あるいは原子炉の採用の安全性だとか、それだけでなしに、そういうものを含めて十分に精査する必要があると思う。これらの点はいかがですか。
  85. 村田浩

    ○村田説明員 原子力発電所の安全性に関しましては、御承知のとおり、いわゆる平常時における放射能放出の問題と、それから非常な災害が起こって、そのために重大な事故が発生したという場合と、二通り考えなくてはいけないわけであります。平常時の問題につきましては、ただいまお話の中にもございましたように、原子力発電所もある意味では火力発電所と似た機構でございますから、タービンから出ます蒸気を冷やす、いわゆるコンデンサー用の水を、海岸に接しますときには海からとるわけであります。この海からとります水が、冷却水としてコンデンサーを冷やすわけであります。海岸地帯に原子力発電所を設けますことが比較的多いのも、日本的な立場で申しますと、水をたくさん得られるということが一つあるわけであります。この冷却水は御承知のとおり、タービンから出ました蒸気をコンデンサーの中でまぜるのではなくて、鉄管を通じて冷やして、それから出てくるわけでございますので、入りますときに比べますと、出ますときは水の温度が確かに若干上がってまいります。しかし、放射能の面におきましては、二段階離れたところにあるわけであります。つまり、原子炉の中が一番放射能が強いわけでありますが、原子炉の中を流れます——軽水型原子炉でありますと、その中に水がございます。その水はいろいろ型がございますけれども、最も簡単に申しますと、蒸気になりましてタービンを回す、そしてコンデンサーが冷却されて、また水に戻る、これが原子炉に入る、こういうサイクルをやっておりますが、この水そのものにも、事故がありましたら別でございますが、そう大きな放射能は普通の場合は入ってこないわけであります。さらにその水は管壁を置いて冷やす海水でございますから、その海水のほうに放射能が著しく入ってくるということは、通常の場合そう考えられないわけでございます。しかし、にもかかわりませず、ごくごく微量には海水中に含まれているいろいろな來雑物が、誘導放射能を帯びて出てくるということはあり得るわけでございますので、その点で海水中に含まれます水の放射能許容水準を押えて、それが政府がきめておりますそれ以下に十分おさまるように設計いたすことに相なっておるわけであります。そのほかに、通常時におきましても、発電所内でいろいろと作業いたします上に出てくるごく少量の放射性のものがございます。これは量的にも非常に少量でございますし、ただいまの海水のようにどんどん動かしている間じゅうあとから出てくるものではございません。大体間歓的に出てくるものでございますので、これらは発電所内に設置する処理施設によって、十分にこれまた安全な範囲内におさめてから処理するということになっております。したがって、このように平常時に原子力発電所から出てまいります放射能の、この場合液体につきましては、政府が定めております許容水準以下のものしか出てこない、そういうふうに規制いたしておるわけであります。それで、この場合の規制の基準は、国際的にも最も科学的によりどころがあるとされております国際放射線防護委員会の定めました基準、それを一応基礎としまして、わが国の場合は、その中でも、その基準というのはかなり幅があるわけでありますが、その幅の中で大体一番きびしいところをとりまして、日本の基準といたしておる次第であります。平常時におきまして、この原子力発電所から出てまいりますただいまのような廃水あるいは液状の放射物質によりまして、周囲の住民その他海産物等に放射能の問題を起こすということは、通常はあり得ないのではないかと考えております。その問題は、万一非常な大きな災害が起こったときにどういうことになるかということでございますが、そういう災害は起こらないように、十分あらかじめ設計いたして建設するわけでございますけれども、にもかかわらず、人間のやることでございますから、万々一のことを考えておかなければいけないことは御承知のとおりでございます・その意味におきまして、かねがね原子力委員会では原子炉安全基準部会という専門部会を置かれまして、この安全基準部会では、原子炉を設置します際の立地条件等につきまして、原子炉立地審査指針及びそれを適用する際の判断の目安となりますものを、この五月の二十七日に正式にきめまして発表いたしてございます。設置者はこの場合で申しますと中部電力になろうかと思いますが、中部電力のほうでは、この原子力委員会が定められました原子炉立地審査指針並びにその適用に関する判断の目安を十分取り入れられまして、そうしてその設計をやられ、申請をされてくる、こういう手順になるものと考えております。
  86. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま原子力局長のお話では、平常状態においても冷却水の中にやはり放射能というものは含み得る、こういうお話であります。中部電力の話等では、設計上はそういうものは全然出ないのだという話をしておる人もあるわけであります。私どもは、設置するために、科学的な通常考えられることを隠蔽する必要はない。私は、やはりこういう原子力発電所の問題を考えるお互いの立場は、科学の問題は正しく科学で判断する、それがお互いの判断する基準だ。現実に出ておることを設置するために隠蔽する必要はないし、出ておることは明らかに出ておる。それが一定のリミットの範囲内でおさまるかどうかということがやはり問題だ。災害の場合の問題というのは、一つの心配の種ですが、同時に、私は別の角度から、先ほども熊野灘の優良漁場の問題を提起したわけですけれども、いま局長のお話の中で、海水を使って、これが冷却の作用をなして、海にまた放流される。大体二十五万ないし三十万キロワットの原子炉の場合においては、毎秒三十トンぐらいの海水が放流されるというふうに私どもは聞いておるわけであります。冷却でありまするから、大体海水の温度より五度ないし九度高い、あたたかい海水というものが、二十五トンないし三十トン、コンスタントに海に流されていく。これは放水口を地先から東海村の場合にはどれだけ出しておるとか、あるいは新しく設置する福島ではどう出しているとか、敦賀ではどう出しているとか、いろいろあるでしょうけれども、そこからあたたかい海水がコンスタントに流れてくる。この五度ないし九度高いあたたかい海水によって、熊野灘漁場にどう影響を与えるか、これが一つの問題点だ。放射能を含む含まぬという問題は、いわゆる魚の中に放射能を含むということが明らかになってくれば、熊野灘の魚は、大阪市場においても東京市場においても魚価ががたっと下げられてしまう、そういう危険性を持ってきますけれども、あたたかい海水によるところの影響はどうかということが、やはり一つの問題になると思う。東海村に私参りましたが、あそこはいわゆるずんべらぼうな海岸であって、ほとんど漁場価値のないところです。ところが、熊野灘の場合には、しばしば言いますように、優良漁場です。真珠等を含んで年々数百億という生産をする優良漁場です。こういうところであたたかい海水がコンスタントに三十トン近く流れてくる。三十トンというのは、御承知の愛知用水の兼山の取り入れ口で取り入れる毎秒の水の量が三十トンですから、やはり相当の量です。しかも考えなければならぬことは、二十五万ないし三十万キロワットのものをたとえば三重県の場合芦浜に一つだけつくって、将来これを全然つくらぬかというと、そうじゃない。やはりここに一つつくれば、それに付設して五十万キロワットをつくるか、あるいは六十万キロワットをつくるか、将来さらにそれに付設してつくるということが予想される。あたたかい海水によるところの影響は、毎秒三十トンだけにとどまらぬということを想定しなければならぬ。そうなってくると、リアス式の海岸地帯の中へあたたかい海水が入ってくる。真珠の避寒漁場がある、ノリがある、カキがある、あるいは漁船漁業がある、定置がある、こういうところの中にかりに影響が起こったという場合には、お手あげになってしまう。お手あげになった場合に、どういう対策があるかといったって、事実漁場価値がなくなったから集団的にほかへ移るということは、町場でも今日生活をやるのにやりくり算段がなかなかむずかしいというときに、漁業経験を長く積んできた諸君が、集団移住というものを軽々にできるものではないということであって、漁場に対する影響というものをやはり考えていく場合に、単に二十五万ないし三十万キロワットの冷却水を二十五トンとか三十トンだけの前提で考えるのではなしに、将来の展望としてはさらにふえる場合があるということもあわせ考えていくということになると、これはたいへんな問題としてやはり真剣に検討しなければならぬ。田中知事は、最近の漁業者を中心にした強い反対運動、これに対して、今後芦浜を中心に精密調査をして、もし漁業に対して甚大な影響がある場合には、他の条件が整備しておっても、建設を中止するということを言わざるを得ない事態になっている。そういうことを新聞記者との会見の中でも言っておる。しからば、精密な調査とは何か。たとえば毎秒二十五トンないし三十トン、五度ないし九度のあたたかい海水を一年間放流する試験というものができるか、膨大な経費をかけなければこれはできないことになる。さらにそれが二つも三つも含んでくる場合の調査というものができるか、これはより膨大な経費をかけなければできぬ。そうなると、精密調査とは一体何をやるのかということがさらに問題になってくる。そういうことで、この優良漁場に対して原子力発電所が放射能を含むという場合の影響、あるいは放射能を含む場合とは別のケースとして、温水によるところの漁場に対する影響はどうか。プランクトンの発生に対してもその影響は出てくるだろうというふうにいわれておる。そのように相当な影響が出てきた場合には、二、三百億もかけたところの施設をぶちこわすわけにはいかないというときには一体どうするか。それは知事が腹を切るというだけではおさまらぬ事態になってくる。そういう問題を考えてみると、これはやはり水産行政をあずかる水産庁としても、この問題については十分真剣に考えてもらわなければならぬ。現に三重県の場合には、御承知のとおり、四日市のコンビナートを中心にして、伊勢湾の北部地帯では、くさい魚で漁場はほとんど価値がない状態に追い込まれてきておる。これは北西ばかりでなしに、最近数カ月来、志摩の安乗の沖合いにおいては、コンビナートの廃液を海上投棄しておる。これを海上投棄した場合、海底のほうまでコールタールを流したようになり、エビを取ったり魚を取っても、それがくさい、網をかけると網がぼろぼろになってしまう。こういうわけで、数カ月来廃液の問題が提起されておる。それからぼくの郷里の豊浜、これは四日市といま問題を提起した志摩の安乗のちょうど中間ですが、ここでもやはり先月の二十三日からくさい魚が出てまいりまして、エビを取ってもタコを取ってもカレイを取ってもくさい、そういうことで、全面的に操業を中止してしまった。試験船が出ていって、あそこのところは非常にくさい、ここのところはこの程度だというようなデータを試験場に送ってきておる。こんなことは、ぼくらの子供の時分、いやそれ以前からでも、いままでかってなかったことである。そのような沖合いにもくさい魚の問題が出てきておる。尾鷲に火力発電所を誘致して、これがだんだんと操業を正式に本格的にやるようになれば、海上汚染の問題がやはり提起されてくるでありましょう。そこへこの原子力発電所の問題が今日出てきておる。そうなると、三重県は全国でも有数の水産県だといわれていた地帯でありますけれども、北西しかり、南西にも問題が提起されてきておる。熊野灘の火力の問題は、今後やはり漁業上に影響を持ってくるでしょう。そこへこの原子力発電所という問題がどかっと熊野灘の中心部に据えつけられる、この漁業に対する影響というものをいいころかげんに考えて、こういう問題がきめられるということになると、もし影響が出てきた場合には、とんでもない政治問題に発展をしてくるということを考えなければならぬと私は思う。でありますから、私は冒頭にも申し上げましたように、今日昭和四十五年を第一期に計画するような百万キロワットの計画の爼上の中では、こういう優良漁場、災害頻度の高いところで、何も強行してでも実施しなければならぬという情勢ではなかろう、慎重にこの問題については検討すべきではないか、こういうふうに今日までも申し上げてきておるわけなんです。一体漁業に対する影響という問題を水産庁はどういうふうに受けとめておられるのか、この点を長官からお伺いしたい。
  87. 松岡亮

    ○松岡説明員 水産庁といたしましては、最近各種の原因で水質が汚濁し、あるいは非常に水が悪くなってまいっておりまして、そのために優良な漁場がだんだん失われてきておるということにつきましては、非常な関心を持っておるのでございます。ただいまお話のありました熊野灘は、確かに優良な漁場でございます。ここに原子力の発電所をつくりました場合に、どういう影響が出るか、その他の条件でどういう影響が出るかということにつきましては、まだ三重県当局から報告がございませんので、詳細は承知いたしておりませんが、一つは放射能の問題がございます。しかしながら、それよりも、おそらくは冷却水の放出によります水の温度が上がること、これによって海況が変化して、魚族の回遊なりあるいは生息の状態が変わってくる、こういうことがおそれられるわけでございます。ただいままでのところでは、いま原子力局長からお話がございましたが、中部電力としては調査する地点をきめたという段階のようでございますから、おそらくこれから本格的な調査をして、それで、そこに設置することの可否を決定するのは今後の問題ではないかと思うのであります。したがいまして、私ども率直に感じますことは、三重県当局が、いま非常に漁民なり関係者が心配しておることにつきまして、まだ十分な回答を与えてない、あるいは納得するだけの説明をしてやってないのではないかということを心配するわけであります。それらの点につきましては、今後の調査、また学識経験者、特に海洋学者なり生物学者等の意見も聞きまして、駿河の場合に県がそういう措置をとっておりますが、それと同様に、十分生物学的あるいは海洋学的な検討を加え、それでその面からどういう影響が出るかということを明らかにし、非常にむずかしいことだと思いますけれども、それと同時に、必要あればどういう措置をとるかということを十分考えて、漁家の心配がないようにする必要があると考えておるのであります。
  88. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最近の関係地域のこの問題に対する非常な過巻きのような動きというのは、私は、今後の動向というものを地元の選出の議員として憂慮しておるわけであります。先ほども申し上げましたように、三千隻からの海上デモというのは、これは自主的な大衆運動として行なわれておるわけであります。政党が全然これに入っておるわけではございません。数日来の動きも先ほど申し上げましたが、そういう中で、南島町の場合には、リコール直前に町長、助役が辞任するという事態まで出てきておるわけであります。  私は原子力局長に聞きたいのは、昭和四十五年を目途に、とにかく百万キロワットの原子力発電所を満たそうというプランではあるけれども、中部電力が何が何でも熊野灘に絶対置かなければならぬという状況ではないと私は思う。熊野灘が地域の強い反対があってどうしても置けないという場合もありましょうし、いろいろ調べてみた結果、やはり危険性をはらんでいるという問題もありましょうが、これはどうしても熊野灘というのは譲れないということではなかろうかと思う。熊野灘が諸条件を整備する場合は別でありますけれども、第一線では知事と中部電力の副社長との間で話をして、芦浜ということに候補地をしぼってきた。これは政府一つのゆるぎない方針のもとに出てきたのだから、どうゆさぶってみても動きはとれないのじゃないか、そういう心配を持っておる諸君がございます。私は、そういうことは絶対ない、何も政府は熊野灘の芦浜というところは絶対一歩も譲れぬという気持ちではない、また中部電力がここで強行しなければならぬという権限もないはずだというふうに申し上げておるわけでありますが、原子力局長としてそういうことではなかろうと私は思う。いかがでありますか。
  89. 村田浩

    ○村田説明員 原子力委員会が長期計画で計画を立てておりますのは、先ほども申し上げましたように、約百万キロワットという設備能力の大きさだけでございまして、それをどこにどうということまではきめておらないわけでございます。ただ、計画には書いてございませんが、一般的な電力界の情勢からしまして、これら百万キロワットを実際に建設していかれる、そして運転していかれるのは、日本原子力発電株式会社と、さらに将来最も原子力発電に依存されるであろう電力中部三社であろうというような推定はいたしておりましたけれども、しかし、どこがどこにどのくらいのものをつくって、それが合計百万キロワットというような、そういう形で政策をきめておるわけではないわけでございます。実際に原子力発電所をつくります設置者としましては、それぞれの電力会社が責任を持たれる現在の仕組みでございますが、その際に、特に設置を予定される地元の方々の十分な御理解と御納得の上でございませんと、このような新しい計画を進めていくのにはいろいろな点で問題があろうかと思います。そういった点につきましては、私どもとしましては、電力会社のほうと地元のほうで十分話し合われ、御相談、御協議なさいまして、種々の観点から御納得のいったところで計画を進めていただきたい、このように思っております。
  90. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今度の芦浜の問題というのは、非常に政治的に問題なのは、紀勢町と南島町の両方にまたがる地所なんですけれども、紀勢町町議会が賛成をしたというので、紀勢町の地所だけをきめて、南島町側は町議会が反対をしておるということで、南島町側のところは保留にしておる、こういう形をとっている。ある意味では持久戦でもって既定の事実をつくっていこうという、そういう気持ちがしないわけでもない。しかも数日前に、東海ラジオが夕方の六時からラジオ放送で、田中知事や、中部電力の副社長や、あるいは地元の出身だという東海ラジオの役員の人や、そういう者でラジオ放送をやっておるのを、私、非常に重要な問題でありますから聞いてみた。そのときに、名前をだれということは言いませんけれども、参加した座談者の中に、実はこの問題で原子力発電所と原子爆弾とを間違えて考えておるのが反対運動の中に相当多いのじゃないか、だからPRをする必要があるというような、非常に現地のこの問題に取っ組んでおる真剣な姿というものを無視した座談の放送がなされておるわけであります。私はそれを聞いて非常に憤慨したのです。先ほど来申しておりますように、この問題については、指導者あるいは関係者の方々は東海村にも行き、あるいは学者の意見も聞き、本でも調べ、あるいは東京での会合を持ち、地域での会合を持ち、実に真剣に取っ組んで、どう受けとめるかということについては真剣に考えておるわけです。それを原子力発電所と原子爆弾とを混同しておるというようなことを、社会の公器であるラジオ放送を通じて、集まった人のだれかが言うなんということは、実に無責任だと私は思う。かりにそういうものが一人、二人あったとしても、そういうことを口にすることによって、この問題に真剣に取っ組んでおられる人を冒涜するということは、私は絶対に許されぬと思うのです。  時間の関係もありまして、私は、いずれこの問題については、今後の推移と関連をして、科学技術特別委員会なりあるいは関係委員会で、さらに問題の進展いかんによっては取り上げたいと思いますけれども、先ほど来申しておりますように、三重県の熊野灘に原子力発電所を設置するという問題は、その地点の自然的条件、災害の頻度、並びにこの地帯が全国でも有数の優良漁場である、こういうふうな各般の情勢から判断をされて、単なる地域開発という名のもとにおいて、いろいろな諸条件というものが科学的に十分精査されずに強行されるというふうなことの絶対にないように、私は強く政府に対して要請をしておきたいと思います。  最後に、政務次官から、いままで取り上げてきた問題につきまして、お考えを承りたいと思います。
  91. 舘林三喜男

    舘林説明員 ただいま角屋委員から、中部電力の内定と申しますか、あるいはまた一応の候補地としてきめております芦浜の原子力発電の周辺の方々の真剣なお気持ちにつきまして、詳細に御説明いただきまして、まことにありがとうございました。やはり周辺の方々のお気持ちは、私わかるような気がいたします。やはり日本人としては、原爆と原子力発電とは直接関係ないにいたしましても、放射能に対する警戒心という点からいったら、さような警戒を持つことは当然のことでございまして、私は、地元の周辺の方々が過大に恐怖されておるのではなくて、当然のことだと思います。また公害の問題につきましても、海上公害につきましては、三重県の伊勢湾一帯は非常に公害が激しいところでありまして、さような意味で、コンデンサーから出る水につきましての心配ということも、私は当然のことだと思います。したがいまして、先ほど原子力局長が申し上げましたように、安全性が確保されるということにつきましても、単に科学的に安全性が確保されるということはもちろんでございますけれども、さらに安全性につきまして、地元民の理解と協力とがどうしても必要じゃないか、納得が必要じゃないか、かように考えております。したがいまして、先ほど水産庁長官も言われましたように、コンデンサーから流出する温度につきましても、水産庁といたしましては、どれだけ魚族に対して影響があるかということにつきましても、安全性の問題と関連いたしまして、十分検討させていただきたいと思います。
  92. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 政務次官、長官、局長の質問に対する答弁、必ずしも私満足できませんけれども、時間の関係もありまして、質問はこの程度で終わりたいと思いますが、いずれにしても、原子力発電所の三重県の態野灘の設置問題をめぐりましては、非常に大きな問題として、現地側で大きな渦巻きを生じておるような事態でありますので、この問題については、政府部内、各省関係局においても、三重県の熊野灘設置問題というものは、地域住民の動向、意向というものも十分判断をされて——私の気持ちからすれば、今日、第一期計画の中で、この問題を強行する必要はない、こういう気持ちを強く持っておるわけでありますが、今後、この問題については十分中央においても現地の事情に適正な判断を加えられまして、われわれの気持ちが今後の施策の中で現われますように強く要望して、質問を終わります。
  93. 高見三郎

    高見委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会