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1964-06-12 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十二日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       大坪 保雄君    加藤 精三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       吉川 久衛君    小枝 一雄君       坂村 吉正君    寺島隆太郎君       野原 正勝君    藤田 義光君       細田 吉藏君    三田村武夫君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    湯山  勇君       稲富 稜人君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         林野庁長官   田中 重五君         労働基準監督官         (労働基準局         労災補償部長) 石黒 拓爾君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月十二日  委員西村関一辞任につき、その補欠として山  崎始男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として西  村関一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稲富稜人君外一名提出衆法第  四四号)  農林水産業の振興に関する件(北海道における  集中豪雨による農作物の被害状況等)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案稲富稜人君外一名提出林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 先般来他の同僚委員各位から、政府林業基本法及び社会党、民社党各党基本法案につきまして、ほぼ問題となるべき質問が出そろったように思います。私はそういう点から、重複を避けまして、法案そのものには触れないで、むしろこれに基づく先般来の和歌山北海道現地公聴会、あるいは中央参考人意見聴取等に見られる意見等を勘案しつつ、林業政策及び林業政策あり方森林政策及び森林政策あり方、及び当面する林政の問題と、これに関する事項についてお尋ねを申し上げたいと思いますので、大臣及び政府委員のほうから、明確な御答弁をわずらわしたいと思うのであります。  第一にお伺いしたいことは、国有林野民有林野等に対する行政指導機構は、再検討の必要があるのではないかと思いますが、大臣の御所見はいかがでありますか。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いままでも国有林を大体主として、民有林にも関係しての行政機構でございますが、今度の林業基本法等が通過するということになりますならば、国有林民有林を通じて、森林政策といいますか、あるいは林業行政といいますか、そういう面につきまして一段と推進をしなければならぬ問題が多いと思います。したがいまして行政機構等につきましてもなお検討を加えて、それに即応するような機構にしていくほうが適当であろう、こういうふうに考えております。具体的にどうこうということはいま腹案は持っておりませんけれども腹案としてはそうすべきだ、こう考えております。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 これは昭和三十七年三月八日、当委員会において森林法の一部を改正する法律案に対する附帯決議が、三党共同提案で採択されました。その際に「中央及び地方森林審議会委員については、広く人材の参加を求め、森林計画制度運営を民主的にすること。」ということが決定され、これには林業労働者代表等も加えるべきであるということが織り込まれておりましたが、先日和歌山等公聴会において聞くところによりますと、中央にも地方にもそういう事例がないそうであります。いやしくも三党の共同附帯決議でありますし、また林政の基本問題を今後方向づける基本法でありますから、当然今後における審議会運営、その構成について、先ほど述べたような当委員会附帯決議を尊重され、これを実行されることが必要だろうと思いますが、その点いかがでありますか。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 附帯決議趣旨に沿うて実行するように指導をいたしたいと思います。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 次に、これは従来他の委員からも指摘されましたが、林野庁性格は、ややもすれば国有林を管理する管理庁とも言われるほど、国有林経営に重点が置かれ、従来しばしばこの点が指摘されておるのであります。それが悪いというのではありません。ただ一方民有林対策等も重視され、並行していかなければならないと私どもは従来指摘し、そのための改善を求めてきておったのでありますが、それがなされないから、公社論のようなものが出てきたり、あるいは地方農政局への民有林関係分離論等が提起されるのではありませんか。したがって私がいま述べたような機構等について検討を加え、すみやかに現状を打開されることが必要ではないのでありますか。いやしくも林業基本法政府が提案された以上、林野庁機構性格が、このままでよいとはお考えになっておらないことは先ほどの御答弁で明らかであり、御用意もあるようでありますが、林業基本法に見合った適正な機構が必要であり、機構と法と関連法と三位一体において、初めて成果をあげるものと言わねばならないのでありまして、これはいまさら申し上げるまでもないと思いますが、さらに具体的に農林大臣の御構想でもあれば、この際お聞かせをいただきたいと思います。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私もお話のとおりに考えています。国有林公社論というのがありますが、電電公社あるいは鉄道等のような、機械的にまた短期間にものを解決する問題と違いまして、につきましては多年を要するものでございます。でございますので、こういう公社論一つの論でございましょうが、公社にした場合などを考えますと、利益を主として伐採の方面等に主力を置いて、造林というような面などがとかくおろそかになるおそれがありはしないか、こういうふうに感じておりますので、私は、いまのように国で国有林を管理し、あるいはまた農林業の大きな柱としての林業について、国が相当責任を持って育成していく、こういうことが必要だろうと思います。そういう意味におきましては、現在の政府が扱っておる制度がいいと思います。ただお話のように、先ほども申し上げましたように、国有林を主として管理しておるという傾向は非常に強いのでございます。もっとも民有林につきましては、私有でございますので、どこまで入り得るかという問題もございますけれども林業基本法などが成立するということになりますならば、国有林民有林を問わず、日本の林業政策林業行政をつかさどる林野庁といたしまして、非常に責任範囲も広くなりますし、所掌の範囲強化される、こう思います。でございますので、具体的にどうこうということは、いままだ研究が私としては足りませんが、そういう趣旨に沿うて行政機構等強化していきたい、こう考えております。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 次に森林組合あり方についてお伺いいたしたい。森林法昭和二十六年に改正をされまして、当時私もその審議参画をいたしたことを記憶しておるのでありますが、その第一条が根拠法となって、現在森林組合系統組織が発足し、今日まで十有二年の歳月が流れておるのであります。しかるにこの間わが国農山村の特に最近の著しい変貌、これに即応する協同組合体制の姿が必ずしも一致しておらない。したがって協同組合よりもなお弱体な実情にある森林組合としては、その活動組織状況等を見ましても、先般の長野県大門の組合長のようなりっぱな組合長はごく少数であって、大部分のものが休眠状態を続けておるとさえ言われておる。三千の組合のうち、半分は休眠状態で、あとの半分がやや動いておるというふうにも言われておるほどであります。一体その原因はどこにあるのか、これに対する対策をどう考えおいでになりますか、伺いたい。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府委員からなお答弁させたいと思いますけれども、いま御指摘のように森林組合につきましては、非常にいい組合と、また休眠状態といいますか、植林をする場合の補助をもらうときに急遽つくったというようないきさつなどもある組合もありまして、非常にすぐれた組合と形だけの組合、こういう組合があろうと思います。組合等は、従来の町村合併前などにできたままであるようなところもございますので、この組織拡大していくといいますか、広範囲に広げていくということも一つの方法だと思います。あるいは協同組合農協との合併という問題もございますが、必ずしも基盤が同一というわけでもないので、一般的に協同組合との合併ということは言いかねますけれども、場所によっては合併をしてたほうが適当であるというものもないわけではないと思います。そういう面につきましては、具体的に合併などを勧奨するところもあろうと思いますが、一般的にはそういう方針でいけるとは私は考えておりませんが、具体的な問題ではそういうふうに考えられます。  なお私よりも、政府委員のほうが直接そういう面の指導をいたしておりますので、その方面からまた答弁いたさせます。
  11. 田中重五

    田中(重)政府委員 不振の原因は何かということでございますが、第一の原因としては、組合員である森林所有者の規模が非常に零細だということが一点。その次は国の林業政策として、その資源維持的な面からの指導、そういう面もあると存じます。その経営がやはり財産保持的といいますか、そういう経営のしかたに一番根本的な原因があるかと存じます。そこで今度の基本法のような考え方で、林業経営を人が経営する事業として見直していく。そこに着目して進めていくという観点から、森林政策をもう一度見直す必要がある。すでにそういう方向森林組合大型化をまずはかる。それでその森林組合合併助成について、ここ数年これを積極的に促進をしてまいりまして、またその組合の行なう事業をできる限り活発化する必要がある。各森林所有者経営をできるだけ計画的に、かつ企業的に進めていくための協業の面での事業強化、そういう面を今後ますます重点的に進めていくということで、いま補助助成をやっておりますけれども、今後森林組合、これはそういうような観点から、森林法における森林組合位置づけ施設組合にしろ、あるいは生産組合にしろ、その位置づけを十分に検討いたしまして、これの相当な改革を企てる必要がある、こう考えております。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 たとえば先般の和歌山現地公聴会の際に、農林協同組合論が提起されています。私は当時森林法の中で、森林組合組織することに参画をした際に、山村等において看板組合をつくることは、いたずらに弱い農林業者組織力を分散さす結果になりはしないか。そういう面から、十数年前のことでありますけれども、相当御忠言を申し上げたことを記憶しておるのであります。まさに事態はそのとおりである。先ほど赤城大臣がおっしゃいましたように、地域によっては農林協同組合といったような一つ構想考えてしかるべき段階があるように思う。そのためには森林法自体を再検討していかなければならず、農協法自体にも問題があるでありましょう。ただ長官の言われたような大型化を望むところは、大型施業計画を協業化していくという実態だけでは、私は組織論としての本質に触れておらないと思うのであります。もっと詰めて御検討になる必要があるということを指摘申し上げておきたい。先日来の公聴会でも明らかになっておるように、巨大山林地主を除けば、全部農民なんです。そこに問題があるわけであります。林野庁の末端の一つのセクショナリズム的な考え等がもしありとするならば、払拭していかなければならぬ。そういうために、組織の分散があってはならない。謙虚に御反省になって、今後の対策に遺憾なきを期せられたいと思います。  たとえば農協の場合と違っておりますことは、同じ森林組合組合員の中に、千町歩も五百町歩も持っておる大山林地主があるかと思えば、一町やあるいは五町の零細所有者組合員になっておる。農協の場合には、こういう大きな組合員資格差異というものはありません。むしろ森林組合創設意味というものは、協同組合の精神に私は大体似ておるものだと理解しておる。だとするならば、弱い者が資金的にも、事業的にも、人的にも協力をして、一つ成果をあげていくという思想に立たなければならない。ところが実情を見ておりますと、このような千町歩だとか、あるいはそれに近いような大山林地主は、森林組合を通じて材木を売るなどということは好んでおりません。実際またその必要も、彼らには力がありますから、ないのであります。そういう点においても、同じ森林経営者であっても、組合員たる資格に大きな差異がある。これは農協との構成の大きな基本的な差であります。これらの点について、いわゆる巨大山林地主地主として、別途に対策を立てる。零細な者は零細な者で、一つ区分をしていくという一つ考え方もあるでしょう。しかし私もどちらがいいというふうな結論に達しておりませんが、一つのヒントとしては申し上げて差しつかえないと思う。  いま一つの問題は、行政区域に合体をいたしましても、現在大パルプ会社あるいは材木を取り扱う大崎礼と、太刀打ちにならないと思う。手数料の面でも、三段階手数料を取っておる。商社は一本で、電話一つで買い付けもやるから、それは動かない。ところが協同組合なり森林組合の場合は、せっかく話がついても、いいときにはついてくるけれども、ちょっとまずければはずれてしまう。そういうことで商機を逸するということもあり得るでありましょうし、いわゆる強大な機敏な商社に対抗していくためには、今後森林組合が、本来の施業対策の面から共販体制の面にまで、林産物等を通じて行なっていく場合には、よほど組織構成運営について検討を加えれば、このような巨大化しつつある商社パルプ会社に対して、組合員利益を有利に守っていくことは、困難な実情にあるということを指摘しておきたい。そういう点を十分御検討になりまして、今後の対策に遺憾なきを期せられたいと思うのであります。これ以上は申し上げません。大臣も、具体的にはないが、一つ方向も先ほど示されております。むしろ事務当局のほうがおざなりではないか。平面的な考え方を持っておられる。もっと農業協同組合との差異、あるいは相手のパルプ会社製材業者や、あるいはその他の商社に太刀打ちできるような姿勢はどうあるべきか、構成はどうあるべきかという点について、もっと突っ込んだ検討が必要であるということを申し上げておる。そういうことをおやりにならないことが、名は林野庁であっても実際において欠けるところが、民有林対策等、あるいは民有林を背景にして持つ基本的な林業者組織であるものに対しても、認識と対策が欠ける結果になることを私は申し上げておきたいと思います。  次に伺いたいのは、昨日も同僚芳賀委員から厳重に要求されておりますが、私どもはまだいただいておりません。それは実効のある関連法整備、あるいは既存法律の改廃、行政手段の充実というものが、この林業基本法と一体とならねばならないことは、同僚委員からもしばしば指摘され、昨日も、それが出ない限りにおいては、われわれは審議を進めるわけにはならぬという強い要求があったはずであります。その点について御準備はいかがでありますか。
  13. 田中重五

    田中(重)政府委員 林業基本法の成立の暁に、ただいま準備をいたしておりますものに、まず入り会い権整備をはかり、その近代化をいたしまして、その入り会い集団の権利の関係を新しい所有権あるいは利用権、そういうものに改変をいたしまして、そうしてその上に立って粗放に利用されておる入り会い山の活用をはかってまいりたいという考え方で、入り会い権整備考えておりますのが一つございます。  その次は、ただいまお話のございました森林法の一部改正考えております。その改正部分につきましては、これもただいまお話のございました森林組合に関する改正につきまして、特に森林組合の中の生産森林組合について、これがその発生の経緯からいいますと、やはり入り会い山の変化したものが多いわけでございます。主席森林組合が今後その活動強化するように、小機能集団として活躍ができるような位置づけ、かつ既設森林組合との関係、そういうものを明確にしまして、今後の森林組合強化対策の一環としたい、こういう考えでございます。  その次は、種苗法の一部の改正考えております。種苗法につきましては、これは特に品質の管理の面から優良品種登録制度、これを検討いたしたい、こう考えております。なおそれに付帯をいたしまして、種苗生産、流通についてのはっきりした制度考えることにいたしまして、それの需給調整協議会あるいは苗木の検査制度、そういうものを考えてまいりたい、こういう考え方でございます。  さらに森林病害虫等防除法、これも一部改正といたしまして、この病害虫防除をさらに強化をするための対策としまして、発生予察、それから共同防除、これについて市町村長の義務づけによる防除対策強化、そういう血を考えていきたいという考え方でございます。  それから森林国営保険法の一部改正でございまするが、この面につきましては、特に保険対象、これを現在火災、気象災に限られておりますのを、病虫獣害、そういうものに拡大をしていこう。  以上が、特に今後基本法に基づいて、急速に進めていきたいところの拡大造林の面の技術の革新とあわせて、造林推進のための施策として考えているわけでございます。さらにただいまも大臣からお話がございました国有林事業経営の面についても、組織についての改善をはかるために、民有林行政国有林経営、これの責任を明らかにする。林業行政の全般の明確化責任体制を明らかにするように、そういう考え方改正検討してまいりたい、こういう考え方でございます。なおその場合、国有林野事業経営のほうは、現在特別会計法によって進められております。国有林野事業が本来の国有林事業、それからいわゆる民有林政への協力、そういう事業をあわせ行なっております。それを経理の面で明確にいたしまして、本来の事業協力事業との区分ということについての特別会計法改正、そういう点を検討してまいりたい、こういう考え方でございます。なおその他検討中のものがありますが、当面ここで申し上げられるのをいまお答えしたわけでございます。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 労働大臣おいでになったようでありますので、民有林関係林業労働者の問題について、荒筋のお尋ねを申し上げ、こまかいことは労働省関係政府委員の方にあとお尋ねいたしたいと思います。  御承知のようにわが国林業労働者の数を把握することは、その実態がなかなか把握しにくいことになっておりますが、臨時的、短期的な雇用者を含めた林業雇用労働者としては、大体五十万ないし七十万程度と推定されておるようであります。このうち国有林に直接雇用されております者は、事業最盛期で約十七万人程度といわれております。これら林業従事者に対する社会保障制度適用状況を調べてみますと、労災保険加入率は六七%、失業保険加入率はわずかに七%、こういう状況でございまして、同じ林業労務者国有林に働く場合と民有林に働く場合におきましては、国有林では一〇〇%に両者に加入しておりますし、民有林の場合はただいま申し上げたような状況であります。この民有林雇用労働者を五十万人と一応仮定して計算した場合に、このような加入率の低い原因をいろいろと私なりに検討してみました。つまりそれは第一点は、保険制度家族従事者適用されない場合が多いことである。第二点は、農林水産業の場合には原則的に強制適用または当然適用対象から除外されておることである。第三点は、常用労働者が比較的に少ないことである等々に起因しておると思われるのであります。そこで問題となるのは、林業従事者、特に民有林就業者に対する労災保険全面加入料率引き下げ及び失業保険の当然適用について、労働大臣の御所見を承りたいのであります。いかに対処されんといたしますか、この際明らかにしていただきたい。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 民有林業につきましては、農業水産業とともに失業保険制度強制適用を行なわず、たとえば雇用関係が明確であること、離職率が五〇%以下であることなど、一定基準を定めまして、この基準に該当することを条件といたしまして、任意加入を認めるたてまえと相なっておるのでございますが、これはこれらの産業の労働者が、おおむね季節的に一定期間しか雇われないということ、またその雇用関係が必ずしも明確に把握できないということなどの理由によるものでございます。かような実情のもとに、これらの者に対しまして失業保険強制適用を行なうということになりますると、技術的にもいろいろ困難な点がございまするし、ことに保険財政過重負担が予想されまするので、現状におきましては現行どおり任意適用といたし、その加入認可にあたりまして、雇用実情に即応したような運営をはかるようにいたしてまいりたいと考えております。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 現状について御答弁がございましたが、将来、近き将来においてこれをどうするかということが問題なのであります。いま私ども審議をいたしております政府提出林業基本法社会、民社両党からのおのおの基本法を出しまして、連日熱心に審議をしておるのであります。つまりどのような法律を成立せしめましても、問題はいまのような状態では山村にとどまる者が少ない、林業に従事する労働者が群をなして去っていく、こういう中にあって、はたして林業基本法が成立したとして、何ほどの価値ありゃと言わざるを得ない。そういう面から私は問題を指摘しておるのであります。たとえていうならば、建設業の場合は一人親方の左官等も、すべて強制適用になっておるではありませんか。農林業の場合には不当に差別されておるということは明らかでございます。建設業等に準じて、広く家族従事者等適用対象にすべきだと私は思うものでありますが、この点について労働大臣は前向きの姿勢においてどうお考えになりますか。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 問題はいろいろな角度から考えられると思うのでございます。労災保険につきましては、仰せのごとき線で努力いたしたいと存じますが、失業保険につきましては、先ほど申し上げましたるごとく、ただいま強制適用を行なわずにおるということは、保険財政という点から、過重保険料負担を強制的にしいるということが、林業経営に対してはたしてできるかどうかという点に、私どもは問題があると思うからなのでございます。どうしても失業保険というものを認めます以上は、保険料によって保険給付を支弁するということがたてまえでございまするから、現在の状況のもとに強制適用をするということになりますと、勢い保険料が高くならざるを得ないのでございます。この保険料に対して、現在の経営がたえ得るかどうかという問題でございます。この点につきましては、林業自体経営合理化ということによりまして、失業率を減らしていくか、あるいはその保険料を捻出するか、そこら辺に問題があるのではないかと思うのでございます。もとより私ども社会保障制度の拡充につきましては、当然考えなければならぬ事柄だと思っておるのでございますから、今後ともこれらの点につきまして農林当局とも十分に協議をいたし、今後の対策を相ともに考究してまいりたいと考えます。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 労働大臣から御答弁がございましたが、保険財政上の問題ということが、主たる難点だということであります。だといたしますならば、いま私が取り上げておりまする労災保険保険料率の問題についてでありますが、同法施行規則の別表に記載されておりますまきをつくる者、あるいは炭をつくる者は三%、木材伐出業は実に八%、その他の林業に従事しておる者は一・八%となっておりまして、総じて林業労働者につきましては高率に失するきらいがあるのであります。これはどう是正されるか。これを是正させていくならば、いわゆる雇用者負担も軽減されますし、また被雇用者負担も軽減されていきまして、勢い適用拡大されていくではありませんか。私が申し上げたいのは、特に木材の伐出業が水力発電施設の新設事業、いわゆる一般的にダム工事といわれておるものと並んで、最高の料率であるというところに問題があることを指摘したい。最近林道も徐々ではあるが整備をし、また機械化も伐出等についても、あるいはその他の面においても近代化が進んでおりまして、労働災害の危険率というものは、昔日のような実情ではないと思います。したがってすみやかにこのような実情に即して料率の改定をなさって、初めていま大臣がおっしゃったような社会保障の拡大を、しかも農山村の一番底辺において、冬季間は失業する、春二カ月の造林期を過ぎれば、あとの下刈り期までは仕事がない、こういうような人々に対して、大きく社会保障の適用範囲拡大し、ひいては林業のにない手を確保していく一端になるのでありませんか。そういう点を私は労災保険の面で第一点に申し上げておるのであります。いま一応最近の実情に即して、料率の改定を御検討になる御意思はございませんかどうか、伺いたい。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 木材伐採業に対しまする労災保険の料率は、林業災害が逐年減少に向かってまいりましたので、昭和三十七年に料率を下げまして、八分三厘から現行の八分にいたしたところでございます。現在の状況におきましては、保険収支といたしましては、大体とんとんになっておるような状況でございまするが、労働省といたしましては、特にこの事業が災害多発の業種であることに着眼をいたし、昨日本会議で可決いただきました労働災害防止に関する法律案の中におきましても、今後の災害の全般的減少をはかりまするとともに、災害多発の業種と認められまする林業につきましては、特に災害防止のための特定の団体をつくりまして、今後一そう災害防止対策を徹底してまいりたいと考えておるわけでございます。したがいまして、これによりまして大体われわれは五年間に、災害率を半減程度まで進めてまいりたいと存じまするので、災害の減少に伴いまして逐次料率を引き下げてまいるつもりでございます。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣もILO等でお忙しいようでありますので、次に失業保険の問題について一点だけお尋ねをいたし、こまかいことは事務当局あとで伺います。  一般民有林業雇用されております者は、失業保険の場合、当然適用から除外されて、任意包括適用ということになっておる。先ほど大臣の御答弁のとおりです。しかも任意包括適用によって加入をしようとする場合は、労働大臣の認可を受けなければならないということになっておる。その認可にあたって、年間を通じて、先ほども大臣がおっしゃいましたように、継続的に企業活動を行なっており、かつ労働者離職率が五〇%以下であることという条件がつけられております。これは職業安定局長通達に基づくものでありますが、これに対して関係団体は多年にわたって、これは実際適用ができない結果になるではないか、包括適用とはいうものの、実質的にはできないではないかというので、この改正を要望しておることは御承知のとおりであり、政府においても昭和四十一年を目途として、実施を検討しておられるということも仄聞をしておりますが、国有林労働者については当然適用の道が講ぜられておるこの失業保険を、民有林労働者のみが任意包括適用のままに——今日林業基本法審議が行なわれるのに、今日までこのような不均衡を放置したことは、私は当を得ておらないと思うのであります。あとでこの点は農林大臣にもしかと申し上げたいと思っておりますが、なぜ当然適用にできないのでありますか。当然適用に当然すべきであります。なぜできないのでありますか。
  21. 大橋武夫

    大橋国務大臣 失業保険を当然適用にいたしておりません理由は、農林水産業における失業保険経営が困難であるからなのでございます。年間の離職率五〇%以下であることを条件といたしておるのでございます。このことは当然適用とされておりまする業種のうち、特に季節的労働者の多い東北、北海道地方の土建業における離職率との均衡をはかって定めたものでございまして、これを緩和いたしまするときは、保険給付額が非常にふえてまいることになりまするので、保険財政上重大な問題が生ずるおそれもあり、この基準を緩和するという考えは、ただいま当局としても決意いたしておらないのでございます。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 この離職率五〇%以下ということなるものは、職安局長通達であります。でありますから、これは別にそう困難な問題ではない。ただ国の保険財政の面から、国家支出がふえるのではないか。また他の類似的なものにもこの種のものが範囲拡大されたときに、ちょっと対策上、財政上問題が出てくるということはわかりますが、しかしそれをやらなければこの問題は解決つかぬですよ。現在一方においては同じ林業従事者であって、国有林に働いておる者は当然適用を受けておるのですから、同じ林業に働いておる者が、なぜ一方においてそういう不均衡な取り扱いを受けなければならないのでありますか。それは当然労働行政の面からも、また農林省当局も抜かっておると思うのです。何をしているのですか、あなた方は。この不均衡の是正くらいできないで一体どうしますか。私をして言わしめますならば、先ほど来申し上げておりますように、なるべく協業を促進するとか、あるいは作業の繁閑を利用いたして継続的にこれを就業せしめるくふうをこらすとか、いろいろそこに施策を講じていきますならば、就業率五〇%という問題は解決するはずであります。それに近い対策が私は講ぜられるはずだと思う。でありますから、まず一応労働大臣に伺いたいことは、もっと前向きの姿勢で——林業労働者の季節性というものは、これは天に支配される問題であります。冬季間の積雪時におきまして山間で働いておれば、これは当然少なくとも三カ月は離職せざるを得ません。そしてあとの二カ月程度のものは、これはまたいま申しましたように造林のときあるいは下刈りのとき、また伐出等の場合におきまして、例外が出てくるでありましょうけれども、それをうまく組み合わせていきますならば、これは労働省のほうを責めるのは少し当を失しておると思います。あとで農林省に伺いたいと思っておりますけれども、相互に連絡をとられて、一番下積みの人々をどう救い上げていくか、法の対象にしていくかということについて、あたたかい配慮があってしかるべきだと私は申し上げておるのであります。いまの大臣の御答弁では、積極的な御意図が伺えません。もっと実態に即するように運用の面において検討し、進んでこの職安局長通達を是正する、ないしは撤廃をする、こういう考え方に立って御善処願いたいと思いますし、ついででありますから、いま一点だけ申し上げておきますが、地方の職業安定所の窓口等では、農林業については雇用関係の存否の判断が困難だという理由をもちまして、事実上の加入を渋っておる傾向がございます。よく現地をお調べください。私どもはそういう実態を存じております。なるべく押えていく。保険財政が増大をしていくということは——無限に増大するわけではございませんが、なるべくこれは押えていくというのが、行政指導方針のように見受けられるのであります。そういう点において、いよいよますます失業保険対象から遠ざかっていきつつあるのが、現在の民有林林業労働者の悲しむべき実態であることを記憶にとどめられまして、さらに真剣な前向きのすみやかなる検討をわずらわしたいと思いますが、この点、しつこいようでございますけれども労働大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 足鹿委員のお述べになりました事柄につきましては、私どももまことにお気持ちはよく了解できるところなのでございます。ただ労働省の立場といたしましては、全国の失業者のためにできておりますこの失業保険制度を堅持していくということが、非常に大事なことでございまして、保険制度の基礎を危うくするようなおそれのある事柄につきましては、十分慎重に取り扱っていかなければならぬと考えておるわけなのでございます。したがいまして私ども保険制度を維持しながら、できるだけ適用範囲を広めていきたい、こういう限定された立場で当たっておるということを、御理解いただきたいと思うのでございます。もとよりかような範囲につきまして、できるだけ広い範囲にわたってこの恩恵を及ぼすということは必要でございますので、今後ともお話の点を十分頭に置きまして、善処いたしたいと存じます。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの労働大臣の御答弁は、私は納得できません。あと事務当局にさらにお尋ねを申し上げてみたいと思います。  そこで先ほどの農林当局に対する質問に戻りますが、関連法を七つばかり用意をしておるということでございます。けっこうであります。大いに関連法整備充実していただくことに何ら異存はございませんが、たとえば前々国会から問題になっております山村振興法というのがある。これは衆議院の本会議において三党共同提案によって議決をしようという話がしばしば出て、いろいろな当時の政局等の動きによって、そのままになって今日になっておる。ところが議員立法によってこれを提案しなければならない実情と聞いておる。山村振興法といい、入り会い権整備法の問題にしろ、とにかく肝心な問題についてはどうも進行がはかばかしくない。当然ある程度の意見の一致を見た山村振興法の構想でありますならば、これは国会の総意と受け取って、政府提案としてこの林業基本法関連法として、最も重要なものとしてまっ先に手をつけられなければならないものが、農林省でもこれがなかなかうまくいかない。どこへ行ってもなかなかうまくいかないというような、そういう実態を私は重視したいのであります。種苗法もけっこうであります。あるいは会計法の改正もけっこうであります。保険法の改正もけっこうでありますが、問題の実態は奥地山村振興、そこに関連法の重点は大きくあると私は考えておるものでありますが、それが政府提案にならないということは、政府の熱意が足らないのか、政策に貧困さがあるのか、あるいは大蔵省当局の理解が全く山村に対してないのか、そういう点について私は画龍点睛を欠いておるのではなかろうかと思う。農林大臣のこの点についての御所見と御決意がございますならば承りたい。私ども山村振興法のごときものは、最善を尽くされて政府提案にさるべき性質のものであると思います。いかがでありますか。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 山村振興法について私どもも非常に重要視いたしておることは、申し上げるまでもないと思います。でありますので、実態をさらに深く検討していこうということで、予算等におきましても調査費を置いておるわけでございます。しかしそれを待たずしても、実は出してもいいのでございますが、何しろ国会の法律案が非常に多くて、林業基本法も、御協力願っておりますが、延長国会におきましてもなかなか衆議院のほうを通るというまでにいっておらぬような実情でございます。こういうことで法律案が非常に多いということが一つ。それから、まあ林業基本法をまず御協力願って、そうして山村振興法というものにわたっていきたい、こういう考え方を持っておりましたので、事務的に、あるいはこの国会の法律の通過の見通し等から見て、あまり多くの法律を出し得ないような状況でございましたので、今国会におきましては山村振興法を政府提案としては見合わしたわけでございますが、決してこれを軽視しておる、こういうことではございません。手続的な関係から少しおくれておるわけでございます。でありますので、政府といたしましては調査をさらに深くいたしまして、ぜひ山村振興法を出したいという意思を放棄しておるわけではございませんが、本国会には政府提案としては間に合いかねる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御答弁、私は不満でありますが、時間の問題もありますし、少し先へ進みます。  次に伺いたいのは、国有林野等の払い下げ方針についてであります。構造改善事業との関係において、昨年の十月に方針がきまった。それまではきわめてあいまいであった。この点は先般行政管理庁の農業構造改善事業運営に関する行政監察結果に基づく勧告にもはっきり出ております。その中で特に私は、今後農業構造改善事業国有林をいかに活用されるかという点について、その勧告等をどう具体化されるかという点を伺っておきたいのでありますが、この勧告には、農業発展の遅滞性に応ずる構造散華中業の進め方についてという条項において、現行の実施基準は弾力的運用の幅は若干あるにしても、立地条件が悪く、経済力の乏しい山村地域及び農家の無業化と工業化による影響の多い都市近郊地域においては、その基準による構造改善事業の実施に困難を伴うことが少なくないのであるということを指摘しておるのであります。これは政府機関においてすらも指摘をしておる。したがってあなた方においても準備もされ、若干改善もされておることは、この勧告においても認めておるのでありますが、さらに勧告の第二に、農林統計による経済遅滞区分という条項を見ますと、たとえば山村は立地条件が悪く、経済基盤が弱く、作目の選定がむずかしく、農家の負担力も低い云々と言っております。われわれがまさに従来指摘しておったとおりのことを指摘しておるのであります。よほどこれについては思い切った今後のあり方というものを定められて、実施される責任があろうと私は思いますが、今後の方針を承りたいのであります。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 同じく構造改善の仕事をするといたしましても、山村地帯におきましては、負担の面におきましても、あるいは事業の遂行上におきましても、一般的なものより非常にハンディキャップといいますか、不利な状況にあることは、御指摘のとおりでございます。そこで山村地帯におきましては、国有林の活用という面も、構造改善の中に当然入れていかなければならぬと思います。国有林野法におきましても、地方の、すなわち林野の所在する地方の農山漁村の産業の用に供するというようなことについての規定等もございますが、そういう意味におきまして、地元農業の振興のための国有林の活用ということにつきましては、御承知のように最近農業構造改善事業あるいは開拓パイロット事業、またことし特に予算で相当進めてきた草地造成事業等によりまする農用地の造成あるいは樹園地の造成、この方面に新たな活用措置が必要になっておりますのに対応いたしまして、去年の六月ですか、方針を決定しまして、この線に沿って推進することをはかっております。なおいまの農業構造改善事業等の進展に対応しまして、要すれば適地選定基準改正等、なお弾力的なあるいは適地的なものでなければならぬ面を考慮いたしまして、所要の改善措置はもちろん講じていきたい、こう考えております。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 払い下げの問題につきましてはいろいろありますが、国の施策に呼応するものとしては、次に草地の造成と国有林野との問題、あるいは民有林との問題、それとの利用権の問題等があるでありましょう。しかしこの問題は前の土地改良法の際にも触れておりますので、深くは申し上げません。今後の開拓と国有林の問題とをどのように考えておられるかということであります。開拓が失敗した。したがってそれは何か開拓者の責任であるかのようなふうに世間はとっておるようでありますが、開拓者は死にもの狂いの努力をしておる。開拓の成果が十分にあがらないということは、政府の開拓政策や、それに関連する施策が不徹底であるからでありましょう。開拓そのものの必要を否定するようなことがあっては私はならぬと思うのでありますが、この点少し混同が起きておるのではないか。したがって林野との調整問題も後退の一途をたどっていく。新規入植は認めない、既存のものを間引きをする。何か開拓が罪悪を犯しておるかのごとき政策の転換が行なわれておることは遺憾であります。この際、やはり開拓の問題については、食糧の自給の立場からも、われわれは重視していかなければならぬ。しかしそれはわが党の森林基本法に示すがごとく、林牧浪合経営の新しい視覚に立ち、しかも協同化を主軸としたものでなければならぬことは申し上げるまでもございませんが、そういう開拓の関係についてどのようにお考えになっておるか、特に草地との関係について伺いたい。
  29. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 開拓につきましては、お話のように非常にまずくいっておるところもございます。しかし非常によくいっておるところ、特に農業の先駆をなしておるというか、そういうよくいっておる開拓もあるのでありますから、開拓そのものを否定したり、開拓が開拓者の罪というか、欠点によって、開拓行政そのものを否定するような、責任を転嫁するような考えは持っておりません。そういう意味におきまして、いまお話がありましたような開拓の点につきましても、草地造成等に関連し、あるいは畜産等との関連に基づいて、国有林を活用するというような面がさらに私はあると思います。でありますので、適当にそういう面を活用する方途等も進めていかなければならぬと考えます。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 この国有林払い下げの問題に関連しまして、近時観光資源の開発と称し、あるいはそれに関連する施設に、国有林の利用または払い下げを求める向きが多いように承知しておるのであります。この場合、払い下げまたは利用の対価はいかにして定められるのでありますか。公正な立場において、対価を定める基準は何でありますかを明らかにしていただきたい。私は観光開発と自然及び自然に基づく資源の保護は、必ずしも一致しないと思います。最近の登山をする人たちが、いかに自然の風致や植物や物に対して心なき行為をしておるかということは、毎日の新聞にたくさん出ております。でありますから私どもは、国民のいこいの場として、ほんとうの明日のエネルギーのために必要な休養と観光を兼ねた観光資源の開発には、異論を持つものではございませんが、えてしてこれは利権的なものとからみやすい傾向もなしとしない。そういう点において、対価を定める基準を明らかにしていただくと同時に、観光開発と自然及び資源を保護していく場合における調整、基本の方針をあれば明らかにしていただきたいと思いますし、これに関連してひとつ資料がございましたら伺いたいのは、観光等に関する払い下げ、または利用に関する申請がどのように出されておるか、また予定されるか、資料があれば御提示を願いたいと思います。
  31. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいまお話のございましたように、観光開発ということであると思いますけれども、具体的にはリフトの敷地であるとか、あるいは宿泊施設の敷地であるとかというようなものの表面積の貸し付け申請というものがございます。そういう場合に、その必要性、利用度、あるいは森林の経営の面との関係等、いろいろ勘案をいたしました上で、必要最小限度の貸し付けをきめようとする場合の対価といたしましては、いまお話ししましたように普通は貸し付けでございますから、貸すわけでございます。そこでその貸し付けの価額をきめる方法としましては、やはりその地帯のたとえば相続税課税標準価額であるとか、あるいは固定資産税課税標準価額であるとか、あるいはまた近傍類地の売買価額であるとか、そういうようなものを厳正に調査をいたしますと同時に、また金融機関あるいは不動産研究所、そういうところの評価等をも十分に聴取をしまして、そういうところから最も適正な地価というものを判断をして、その地価をもととした貸し付け料をきめまして、そうして貸し付け料を徴収する。対価はどうかということになりますと、そういうことで進めているわけでございます。  なお、大臣がお見えになりましてから、現在行なわれております営林局ごとの国有林管理協議会というのがございまして、今度農林省の設置法改正でそれを制度化する予定でございますが、そういう審議会、これは名前は協議会から管理審議会、こういうことになります。これは営林局ごとに置かれるものでございますが、そういう国有林野を貸し付けしたり、またその一つの目的によって貸し付けするとか、売り払うとか、また先ほど来お話の出ました農業構造改善事業に使うとか、その他要するに国有林野を活用することについてその目的、それから相手方、それから貸すなり、売るなりするとして、国有林経営との関連の調整なり、あるいはその貸し付け料なり、あるいはその価額なり等につきまして、御判断をいただくための機関もございますので、十分に適正を期してまいりたい、こう考えております。
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 先日来各委員からも質問がございました流通問題について、この際伺っておきたいのでありますが、私は角度を少し変えて申し上げてみたい。現在出回っておる年間の材木といいますか、これは大体五千六百万立米と聞いておりますが、大体その程度ですね。このうち、先ほどから問題にしておりますいわゆる森林法に基づく森林組合の系統の共販の取り扱い高というものは、百万立米程度であると聞いております。しかもおかしいことには、この森林組合員が販売しておる量は、三千五百万立米に及んでおると承知しておるのであります。自分たちのつくっておるものの三十分の一しか、自分たちの系統共販の実績がない。全体の五千六百万立米に比べるならば、六十分の一程度のものしか取り扱っておらない。いかに現在の森林組合というものが弱体であり、きわめて弱い時代であるかを物語っておると思います。それはそれといたしまして、このような実績では、あなた方は流通の正常化をどういう機構を使ってやろうとするのか。先年河野農林大臣のときに、材木の価格が、高騰したときに、国有林の大量の放出があった。国有林による調節も可能でございましょう。しかしあくまでも山林の経営生産物の共販を目的とした、その面を通じての林業従事者の福祉の向上と所得の向上を目ざしておる団体が、このような状態であって、一体流通正常化の基本の流れは何に求めようとしておられるのでありますか、まことに遺憾千万と言わざるを得ません。こういう実情が出てきているのは、何に原因するかを私なりに考えてみますと、これは農協の場合でも同じでありますが、組合に売ると全部金額が明瞭になる。税務署がちゃんと課税の対象にされるから、あまり好まない。これは人情の機微とでも申しましょうか、そういう問題が横たわっておる。また先ほど述べましたように、手数料が高い。三段階手数料を取りますから、商社が対抗的に出てくればとても太刀打ちになりません。こういうようなものが相累積して、系統組織の弱点と相まって、一方商社の強力な命令機構、商機に徹した敏速な商業活動とは太刀打ちにならずして、いわゆる需給の本流というものは、大手商社や一連のその業者たちに握られておるのが現状でありませんか。最近木材の気配がやや弱いということは私も認めますが、もし木材が高騰に高騰を続けていくような場合に、やはりこれは大きな問題になろうかと思います。何を通じてあなた方は、そういう需給の調整の力を培養していかれようとしておられるのか。おそらく現在の森林組合を改組拡大をし、あるいはその活動強化していくことに求められておると思いますが、そういう点について大臣はいかにお考えでございましょうか。まことに農業の場合よりもさらに輪をかけたこの事態をいかに対処されますか。
  33. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 流通関係は、におきますると同じように、生産関係とも非常に密接につながっておると思います。そういう意味におきましてこの林業基本法等におきましても、造林、伐採等を相当計画的にやっていくようなふうにいたしたい方針でございますが、それが一つ。また伐採したものの流通関係につきましては、いまお触れになりましたが、森林組合等において、団体的に取引を正常化していくような方針を指導していきたい、こう思います。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 もう少し力を入れた御答弁があるかと思っておったのですが、まことに簡単な御答弁で、ちょっと拍子抜けしたのですが、簡単でも決意さえあればけっこうでありますから、よろしいといたしましょう。  大臣に次に重大な問題を一つ伺いたいのでありますが、国有林の場合は、計画的な植えつけ、造林、計画的な管理、計画的な伐採というふうに、きちんとうまくいっておりますが、民有林の場合は、幼齢林、伐採適齢林、過熟林というふうな、三つの範疇に分けて考えた場合に、幼木林や伐採適齢前に売っておるのが零細林業経営者でありましょう。逆に過熟林になるまで財産保持的に維持しておるのはふところぐあいのいい、大面積を持っておる人々に多いことはいなめないと思います。これは経済の実情からしてそうなると思うのであります。そこで先ほども申し上げましたように、現在の分布というものはどうなっておりますか。民有林の幼齢林あるいは伐採適齢林、過熟林の面積的、地域的分布というものはどういうふうになっておりますか。私が流通問題で取り上げようとしておるのは、このような過熟林を何らかの国の行政指導あるいは法律規制等によって、これを随時伐採搬出をし、市場の流通を円滑にする必要があるのではないか。そういう対策が、国有林においてはある程度打ち出されておりますけれども民有林については私有財産の問題等もございまして、そう簡単にはいかないとは思いますが、この過熟林等の伐採を適正に行なわしめることによって、流通対策の一貫としなければならぬと思います。この点について何らかの措置を講じられる用意がございますか。重要な問題でございますので、農林大臣から御所見のほどを承っておきたい。
  35. 田中重五

    田中(重)政府委員 確かにお話のとおりに、零細所有者は比較的若い林齢の所有者でございます。大山林所有者になるほど、高齢の林分の所有者でもあり、また天然林を所有しておる場合は、大体において大山林所有者であるということは言えるわけでございます。そこで今度は地理の面でこれを見ますと、どうしても大きな山林所有者の場所は奥地にある場合が多いし、ことに天然林の場合にはそのとおりでございます。そういう意味からいたしまして、それが伐出できるような搬路の拡充、これは生産力の増強の面からいいましてもまさに必要でございますから、そこでそういう搬出施設、その他生産体制整備の国の側からの助成の面は、これは進めていく必要があるかと思います。  それから一方、この基本法の中で特に考えております計画的に経営していく。先ほどもお話がございました家計上必要なときだけその限度で切るということでなく、一定の標準伐期齢に達したものは、計画的にこれの伐採を進めるとともに、あとに新生林分を育成していくという転業、これを指導していく必要があるので、その面から個別経営計画の普及と推進、これを進めていくことによって、標準伐期齢以上のものを極力伐採することによって、林分を置きかえていく指導を進める必要がある、こういう考え方でございます。現在若くしてこれからなお生長しようとする標準伐期齢以下のものの伐採は、過去の経験にかんがみましても漸次減っております。また適正伐期齢級未満のものを許可制で伐採しておりました時代でも、必ずしもその申請は計画量を満たさなかったということもございますし、今後林業経営趣旨が山林所有者に徹底してまいりますれば、若いものを切るというようなことは、指導と相まってこれは減ってまいると思いますが、特に御指摘の大きな山林所有者の標準伐期齢以上のものの温存、これに関しては計画的な経営を進めさせることを指導することによって、その更新をはかってまいりたい、こういう考えでございます。
  36. 足鹿覺

    足鹿委員 指導をもって足りるのですか。現在は木材が高騰しておる段階ではございません。いまわれわれが直面した事態が、木材が非常に上がりつつあるというような状態、そういう場合には、これは一つの大きな問題になると思うのです。あなた方は、安易な道を歩んでおるんじゃないでしょうか。足らなくなる。外材だ。年間四億ドルの外材を入れる。しかもこれは資料としていただきたいが、国内には過熱林は相当な分布面積を持っておると思う。そういうものをこれから指導してやりますというようなことで、木材の流通を円滑にして、需給を調整していくことが、はたして可能でしょうか。だからこれは農林大臣の御所見を承りたい。腹のすわった——小手先の対策では私は解決がつかぬと思う。行政指導で目的を達成できるということが確約できますならば、あえて私はこれ以上申し上げません。もし実績があがらない場合にはどうされますか。問題はいたずらに外材の輸入をもって事足れりとするまでもなく、もっとこのような国内におけるところの需給を円滑にするに足る施策を一つ一つ掘り下げて、これに適正な施策を加えていってこそ、流通問題が円滑になり、木材価格の問題も適正化していくと思うから申し上げるのであります。
  37. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 なかなかむずかしい問題で、私もどうという方法はございませんが、かりに方法を考えるとすれば、伐採命令を出す。しかしこれは私有林でございますから、命令を出しても聞かぬという場合があろうと思います。それには何か財政的な裏づけというものがなくてはならぬ。あるいは政府が買い上げる、そういうような形で命令を出すとかいうような方法はあろうかと思います。そういうようないろいろな方法はあろうかと思いますが、この点についてこういうふうにやればいいというような案を持っておるわけではありません。しかしいま申し上げたようなことも、木材が高騰した場合の一つ対策として考えられるものであるかとは思いますが、それをやるということを申し上げておるわけではありません。
  38. 足鹿覺

    足鹿委員 さっき私が要求した資料はもらえますね。
  39. 田中重五

    田中(重)政府委員 先ほど御要求の資料は提出いたします。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 これはやればやり得る法律の根拠もありますし、可能なんでありますが、どうも政府にその勇断というか、施策が欠除しておることを遺憾に思います。とにかくもっとちゃんと法律に基づいてやり得ることはきちんとやっていく、こういうことを私は強く申し上げておきたいと思います。  そこでこの間も現地公聴会に参りまして私どもが気がつきますことは、新しい山林地主の出現ということであります。それはバルブ会社であります。北海道の王子製紙の材木育種場を見学いたしました。そのりっぱな施設を私ども拝見して、会社は会社なりに御努力になっておることは率直に認めますが、それとは別に全国のこれらの巨大パルプ会社が持っております山林面積は現在幾らになっておりますか。資料があったらあとでお示しを願いたいと思いますが、北海道における王子製紙が、万四千町歩と、あすこで御説明があったように思います。これには次々と造林計画が進められておるということで、そういう面においては私はあえてとがめる筋ではない。ただ問題は、パルプ会社が買うまでのその山林の所有者は、おそらく零細経営であったと思う。政府は、農業に限らず、林業についても適正規模林家をつくっていくのだ、何でも自立経営のものを育成強化していくのだと言いながら、実情においては巨大パルプ会社等の手によって、次から次と自立林家がつぶれておるという矛盾を、いかにお考えになるかということを私は申し上げたい。冷厳な資本主義の一つの原則の前にあなた方が、ことばの上で自立林家をいかように叫んでも、それはしょせんは実効を伴わない結果になるのではないか。したがって私どもが言うがごとく、もっと農業林業、すべてを協同化を前面に出して、その力をフルに活用する以外には、基本的な施策としての施政は私はないと思う。一つ覚えのように、自立林家をどこまでもやっていくのである、こういうあなた方のうたい文句そのもの、自立していく農家ができれば、私はあえてそれには反対ではありませんが、しかし以上指摘したように、私どもの地域にもパルプ会社がありますが、どんどんパルプ会社の所有地の標木が立って、そうして零細林業経営者は廃業をしております。全国にそういう事例はあろうと思いますが、この矛盾を私は指摘しておきたい。いかに自立林家の育成ということが困難であるかということを私は申し上げたい。と同時に、今後これらの新しい山林地主ともいうべきパルプ会社等の山林対策等については、どのような構想で対処されるのか、これを明らかにしていただきたい。  同時に、資料を求めたいのでありますが、農林中金等がパルプ会社に関連産業融資として、短期及び長期融資を今日までしておると聞いております。百四、五十億くらいあるのではないですか。よく私も数字を明確に知っておりませんが、御調査の上、各社別、目的別の融資の実績をもしいただけたらいただきたい。要するに私がそういうことを、資料を要求し、申し上げるという意味は、パルプ会社農林業経営者の資金ともいうべき農林中金の金を使って山を買い、材木を買う、そうして系統森林組合はこれとの太刀打ちに負けるという、まことに矛盾した姿が現出しておるからであります。農林中金というものは、元来農林業者の資金なんです。それが関連産業という形でパルプ会社に、短期資金がおそらく大部分だろうと思いますが、場合によっては長期資金の施設資金も出ておると思います。そうすると農民は、自分たちの蓄積した資金が、自分たちの組合との競争相手に供給をされて、しかも自分たちの系統組織が負けるという、悲しむべき事実になってあらわれてきておる。この矛盾をどう処理するかということであります。これも一連の系統団体対策の問題に通ずるわけでありますが、この点について御所見があれば承っておきたいと思います。
  41. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいまお話のございましたパルプ会社の土地集中といいますか、土地集中であるか、あるいは立木の集中であるかはまあ別といたしまして、ふえておることは御説のとおりでございまして、いまお尋ねがございましたので申し上げますと、三十七年度現在でパルプ大手十二社の分収契約で造成されている面積が五万四千ヘクタール、それからその所有林となっておりますのが二十五万六千ヘクタール、こういうことになっております。林業行政の面から、パルプ会社等の所有林の拡大について、特にこれを積極的に助長していくというような考え方はないわけでございますけれども、まあパルプ会社としては、そのパルプ原木確保の長期的な見通しに立って、この原木の資源を保有したいというような動機に出ているものと考えられます。一方、この林業の基本対策におきますところの自立林家の考え方でございますが、現在の考え方といたしましては、まあ山林の所有者に農業をも経営するところの零細な所有者、これが大体山林所有者のほとんどを占めておる。いわゆる農林家でございます。そのほか山林の大集中といわれる大山林所有者があります。国有林があり、公有林がある。そこで自立林家という考え方を立てるにいたしましても、それぞれ農家であるということで、農業収入の補完的な意味での林業収入ということになるということにいたしますと、まあ林業だけの自立林家を農家の中からつくっていくという考え方も、あまり現実とそぐわないという考え方に立っておりますので、そこでこの法案にも所得の増大ということばで言っておりますような次第でございますが、それはそれといたしまして、大山林所有者、このパルプ製造業者の林地の集中といいますか、保有に対して、いかなる考え方を持っておるかというお尋ねに対しましては、まあその会社経営の原木確保という面からは、そういう将来の原木不足という見通しに立っての山林確保であり、会社の経営方針だろう、こう考えるわけですが、林業政策の面から言いますと、そういう山が、やはり合理的な近代的な経営のもとに計画的に生産され、そうして拡大造林が行なわれていく。そこに林業経営近代化が、その場所でもまた行なわれていくということについては、やはりこの基本対策趣旨にもとるものではないという考え方でございます。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 あなたと押し問答する、議論をする意思はありませんから先へ進みますが、この問題はなかなか新しい問題を提起しておると思います。十分に御検討あってしかるべきだということだけを申し上げておきたい。  関連産業としての製材業の問題、あるいは製材規格の問題等を若干申し上げて、御見解を承っておきたいと思いますが、関西と関東とでは、御存じのように木材規格が違う。これはこの前の法案の審議の際にも、去年もおととしも私は申し上げておる。この木材規格の統一をするということは、製材業その他の近代化合理化のためには、必ず付随する重要な問題だと思うのですが、なかなか解決がつかない。これは長い歴史と慣行の上に立っておりますから、容易ではないでしょうが、いまどのような段階にありますか。将来の見通しはどうでありますか。  また町工場として、町の周辺なりあるいは村落等に施設されたいわゆる零細製材業者が、最近臨海工業地帯を卜して、中小企業の集団化方針にのっとって、木工団地等の形成が進められております。通産省は通産省なりに、その助成指導に当たっておるようでありますが、これは林業問題とは切り離せない、一番素朴な形でつながっておる関連産業であろうかと思うのであります。この集団化、近代化に対して——中小企業の範疇に属する。したがって通産省から県庁では商工部関係に入りていく。林務部関係は全くつんぼさじきだ、こういうきらいがあるのであります。もっとこれらの点については、休業政策の関連事項として、総合的に今後育成強化をされなければならないのではないか、かように思うのでありますが、実情は、主管省が向こうにあるために、農林省が従たる立場に置かれておることはやむを得ないといたしましても、さらに一歩を進めて、積極的な強力な育成指導対策を、総心的に講ぜられる必要があろうかと思いますが、内容としてはいろいろな問題があります。時間もありませんし、省略をいたしますが、この点、いかがでありますか。
  43. 田中重五

    田中(重)政府委員 まず規格の問題でございますが、これはお話のとおりに関東と関西で規格が違うとか、そういうことのほかに、現在の規格自体が非常に種類が多く、複雑である、こういうような実態が、木材の代用品としてのいろいろな商品の進出の中で、ますます木材の取引を不利にしておるという面もございまして、そこで木材の、特に製材の規格を現在よりもずっと簡素化をいたしまして、そうして取引の合理化をはかることを考えているわけですが、それにはやはり建築基準法におけるまた建築の規格の問題等もございまして、正直に申し上げますと非常にむずかしい問題でございます。しかしながら日本の農林規格、これを今回建築用材について申しますと、一般用材についてできる限り扱いやすい、生産者にも消費者にも喜ばれる規格に改正をするということで、現在検討に入っております。そういう段階でございますが、今後の木材の需要についてその便宜をはかり、そうして利用されやすいような企画をつくっていく、こういう考え方であるわけでございます。  それから町工場等の零細な製材工場、これが集団化して団地をつくるという傾向が、お説のとおりにいまぽつぽつ各地に見られるわけでございます。これはやはり原木の入手、それからそれの加工、さらには加工から生じた廃材の処理、それから製品の販売、そういう面でいろいろな利益が得られるという判断で、いま団地化が進んでおります。私どもといたしましても、木材の確保、流通の面の合理化を、この林業基本法で重要な政策と考えておりますだけに、これをむしろ指導、助長していきたいという考え方でいるわけでございます。零細であるだけに、先ほどお話のございました零細森林所有者は、森林組合というものを通じて団結し、そうしてその適正な取引をすることができるようにするのと同じような意味におきまして、その製材工場の団地化、そうしてそれの共同組織によるところの取引化、原木の入手という面で近代化されていくことを望むわけでございます。ただそれがちょうどいまお話もございましたが、中小企業であるという面からの通産省の指導、それから原木の入手とその流通という面からの農林省の指導、両省の所管にまたがっているという点に、むしろ業者にいろいろな迷惑をかけているという面が確かにございます。これはお説のとおりでございますけれども、この点につきましてはやはり中小企業一般という面からの指導と、それから林材業の発展という面からの指導があるわけでございますから、両方の指導方針の調整は十分にはかりながら、この対象業者が発達、改善できるような方向へ持っていくことに、組織その他の面でも改変を加える検討をいたしたい、こう考えているわけでございます。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 次に入り会い林好の問題について、先ほど関連法構想を若干承りました。数年前から有名な小繋事件が東京都立大の戒能教授の手によって取り上げられ、大きな世論を巻き起こしておることは御承知のとおりであります。これを要するに戒能教授の見解なり、取り組んでおられる考え方というものは、農民が自分の権利として山林管理を主張することが認められなければ、農民は山からの締め出しを食い、流民になるほかはないのだ。政府が建築用材、まきその他の必要品の採取権を認め、これを近代化し、部落の入り会い地の合理的利用を援助することが、農業に大きな希望を与えるものであると言っておられる。まさにそのとおりだと思います。日本には公簿面積千五百万町歩の山林がありますが、それがまだよく利用されておらないことは申し上げるまでもありません。たとえばその山林の一%、せめて十五万町歩なりとも利用を強化して、酪農用の牧草地に変え、乳牛を飼ったらどうか。酪農を成功させるには、旧入り会い地の開放が必要である。ただし個人ではなくして、あくまでも部落の集団経営であるということを戒能教授は言っておられます。小繋与件はこのような考え方に立った戒能教授が手がけられ、自分の手で自分の権利を守ろうとしておる農民に救いを与えようとして努力をされたわけでありますが、農民が山の主人になっていくということ、そして自分で山の開発ができるかどうかという大きな問題を投げかけておると私は思います。そういう考え方から入り会い椎をどう理解するか、いずれその法律が出た際に私ども検討してみたいと思いますが、農林大臣の御所見があれば承りたいことは、入り会い権については個々のケースがございます。また慣習やその淵源によって変わっておりまして、一律には判断できない面があろうかと思います。しかし言い得ることは、あくまでも国や県が行なうのではなくして、地域の山村民自体の判断によるべきことを原則とし、農山村民の相互に食い違いがある場合には、行政庁がそれをなくするような助力をしても、権力的に見解を押しつけるべきでない。われわれはそういう基本的考え方に立って、入り会い権問題に対処すべきであろうかと思いますが、農林大臣の御所見がございましたならばこの機会に承っておきたい。
  45. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 入り会い権につきましては、いまお話のように古い慣習がございます。慣例法とでもいうべき慣習がございますし、淵源もございます。あるいはその形態につきましても、共有的なもの、あるいは総有的なもの等がございまして、権利関係につきましては非常に研究を要する面もありますし、複雑な面もございます。でありますので、これを近代化するといっても、画一的にこれを分割するというようなことは考えるべきものではないと思います。やはりその慣例あるいは事情等に即応して解決していかなくてはならぬと思います。ただ入り会いが、従来は薪炭林あるいは採草林としての入り会いでございましたが、だんだん薪炭林としての機能も変わってくると思います。そういう意味におきましては草地造成とか、畜産とかいうような森林の有効利用、また森林資源としての問題、こういう方向に向いていかなくてはならぬと思います。しかし結論的に申し上げますならば、いまお話のように慣例、淵源、その他土地の事情といいますか、入り会いの権利を持っている人々の主体性を尊重して解決をはかっていかなければならぬと思います。
  46. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点だけ農林大臣に伺って、あとは労働省がおいでになっておりますからそちらに伺います。  先ほど大橋労働大臣に私がお尋ねをいたしました点について、農林大臣にお答えを願いたいのでありますが、これは先日の和歌山における現地調査会の際にも、民間林の林業労務者の給与の実態の御報告がありました。大体出来高制と日給制がとられており、ほとんど出来高制になっております。したがって労働は、重労働中のまたさらに重労働になっておる。定額部分の日給部分は、わずか三〇%程度であるように聞いております。しかも伐採で平均千円曲後、造林で八百円前後という状態であり、就労日数は年間百五十日から二百日程度である。社会保障は、一般産業と同じ形で適用されておりますのは労災保険だけ、こういうことであることは、先刻の労働大臣とのやりとりでお聞きのとおりでございます。これに対して林業基本法を御提出になったあなた方としては、民間林業労働者の福祉向上のための現行の健康保険法、あるいは失業保険法、労災保険法等の適用について、先ほど指摘したような実情に沿わない面が多々あるのでありますから、これを労働省なりあるいは厚生省等、関係省と熱心に協議、連絡をされて、適用改善をはかられなければならない責任が私はあると思うのであまりす。その点について先ほど労働大臣からは、まことに前向きの御答弁とは聞き取れない、現状維持的なお話しか承ることができませんでした。一体今日まで農林省当局としては、林業のにない手がどうだとか、農業のにない手がどうだとうたい文句だけはなさいますが、現行の社会保障に照らして、りっぱな失対法、労災法、健保があるにもかかわらず、なぜ七十万人の民間労働者がその適用対象になる機会を失っておることを今日まで放置されたのか。現在国有林で働いておる労働者の労働条件なり、待遇等についても問題のあることは私は知っておりますが、他の委員からこもごも述べられましたので、重複を避けて申し上げませんが、このような不均衡は許さるべきではない。事務当局でどういう折衝をし、どういう点が難点であって、こういうところで行き詰まっておる。しからば大臣間においてこれをどう解決するかという、その程度の努力の経過があってしかるべきだと思う。先ほどの御答弁をお聞きになっておって、農林大臣としてこの問題にどう対処され、一番どん底でしかも重労働にあえぎ、集団的に山を捨てて他産業へ走りつつある労働者に、わずかなともしびを与えることをお考えになるかどうか、この点を農林大臣にお伺いをいたしたい。まだ十分に大臣折衝がないとするならば、事務当局にまかせることなく、あなたがみずから買って出て、この問題の解決をはかっていただきたい、かように私は思うものでございます。ここに労働省の事務当局おいでになりますが、あえてくどくど申し上げません。なぜ失対関係が七%の加入率であるのか、私どもには納得がいきません。一番社会の底辺で苦しんでおる人々が、その法律の恩典を享受できないということは、わずかな財政上の問題で云々すべきではないと思います。その点を十分労働省当局もお考えになって、先ほど来秋が労働大臣に申し上げた点についても、十分事務的に検討され、前向きの姿勢で今後農林省と折衝をされることを私は期待いたしますが、農林省としてこの問題に対処される御決意を持ち、農林大臣みずからがこの問題を解決していくくらいの熱意があってしかるべきだと思いますが、その点をあえてお伺いをいたしまして、大臣は時間がないそうでありますから、大臣質問はこの程度にとどめます。
  47. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 結論的に申し上げる前に申し上げたいのは、これは御承知のとおりでございますが、農業労働あるいは林業労働の性格から、いままで何としても臨時的あるいは季節的、こういう関係がありましたので、いまの失業保険関係あるいは労災関係等につきましての適用が、十分でなかったということはあろうかと私も思います。しかし最近、常用的にもなっていまするし、また農林関係だけがこういう社会保障制度の中に入りにくいというような状況であってはいけないと思います。でございますので、結論的に申し上げますならば、私といたしましても、林業労働者等の地位の安定のためには努力いたし、また社会保障的な制度から除外されないように、またできるだけその方面の救済措置等が適用をされるように、関係労働省とも話し合いを進めていきたい、かように考えております。
  48. 足鹿覺

    足鹿委員 農林省の事務当局と労働省に、先ほど労働大臣お尋ねをした問題の中身を少し申し上げたいのですが、話し合われたことがあるのですか。
  49. 田中重五

    田中(重)政府委員 この問題につきましては、民有林においても非常にやかましい問題に以前からなっておりますが、労働省との間で失業保険適用について改善されるように常時話を進めております。
  50. 足鹿覺

    足鹿委員 労働省当局に伺いますが、昨日の新聞によりますと、労災保険改正に関する小委員会の結論が出ております。要するに「試案では労災保険料は、使用者の全額負担となっているため、経営者団体、審議会の使用者側委員の態度は微妙なものがあるが」云々とずっと経過が述べられ、川村小委員長試案によって、「現行制度は鉱工業五人以上の事業所は強制、建設業など事故多発業種は全面強制適用、商業、サービス業などは任意適用となっている。これを昭和四十一年以降全業種、全労働者適用する。大工、左官などの一人親方(使用者でもあり、同時に労働者である立場のもの)、零細規模事業主にも、特別に任意加入を認める。」こういう趣旨の試案が提示をされております。また非公式に昨日私が大橋労働大臣と話した際には、当然適用の問題については四十一年度を目途として現在検討をしておるという話がございました。しかるにきょうの正式の私の質疑に対する答弁においては、そのような御答弁がございませんでした。非常に残念に思いますが、いまさら私の申し上げることをこれ以上繰り返す必要はなかろうかと思います。ほんとうに理解ある立場に立って、山林労働者の福祉の向上と生きた社会保障制度の運用という角度から、負担の軽減、適用制限の撤廃、その他万般にわたる配慮をされることを今後積極的になされたいと思いますが、現時点におけるあなた方の具体的な考え方と近き将来の見通しについて、この際明らかにしていただきたい。
  51. 有馬元治

    ○有馬政府委員 先ほど労働大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、労災保険は別といたしまして、問題は林業のみならず、農業を含めた第一次産業のいわゆる季節労働者に対する失業保険適用の問題でございまして、五人未満の小規模事業所の適用の問題も別個にございまするが、第一次産業の場合は、雇用実態、就業の形態が非常に違っております。毎年循環解雇という形で、年間を通じて雇用が継続していくという形になっておりませんので、これはいまの失業保険制度から言いますと、任意適用になっております。そして先ほど御指摘のありましたような三つの原則を立てて、認可基準をつくっておりますが、その基準一つ失業率五〇%という点を掲げておりますけれども、現在の失業保険制度は三・六%の失業率でもって、初めて千分の七という保険料率を設定しているわけであります。したがいまして現在、農林業のようないわゆる季節に左右される雇用形態の場合に、保険がはたして成り立つかどうか、認可基準をつくって保険適用したことに、そもそも問題があるのではないか、こういう御批判が非常に最近強くなっておるのでございます。私どもも数年前までの状況を見てみますと、大体保険の受給者のうちの十数%が、そういった季節労働者の受給者であったわけですが、最近この利用が非常にふえまして三〇%をこえる。すなわち三分の一までがそういう受給者になってきておるわけです。したがいましてこのまま放置いたしますと、先ほど大臣が申しましたように、保険財政が危殆に瀕する、これは当然のことでございます。しかし日本の現状が、農林水産業等においては、季節労働という形で稼働がなされておりますので、これを失業保険から全部追い出すということはできにくい事情にございますので、現在のところは先ほど申しましたような認可基準でやっておりますが、今日では将来を見通しますと、このこそくな方式でだんだん適用を広め、受給者がふえていくということになると、急速に保健財政が悪化して、破綻を来たすという事態が考えられますので、私どもとしましては農林省当局とよく御相談をいたしまして、現在のようなこそくなやり方でやる方法はもう限界にきている、こういうふうに考えておりますので、何らかの根本的な打開策を考えていくべきではないか、かように考えておる次第であります。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点だけ、長官なり労働省の方にもお聞きを願って、御意見があれば聞きたいのでありますが、これは山林労働者の唯一の組合であります西日本山林労働組合協議会の副議長の坂本寿治という人の公述資料でございますが、その資料の中にこういうことを言ておる。先ほど私が申し上げたように、雇用実情として、賃金は日給制が三〇%、出来高制が七〇%という実情であるにもかかわらず、出来高制廃止の主張ができないのが実態である。川上村山林労働組合というものをつくって努力をしてきておるけれども、この出来高制をいきなり日給制に切りかえるということもできない実情であるという率直な意見でありました。それで就労日数なりあるいは日給等については、先ほど申し上げたとおりでありますが、健保は山林の労働者として全国最初に、昭和三十五年一月から被用健保の適用を受け、現在に至っておる。失保は昨年七月の法改正によって、被用労働者に対する特例給付ということで、山林労働者にも適用の道が開け、県連参加五組合約千二百人が本年二月一日、受給資格を得たと言っております。ところによって、いわゆる山林労働者が結束をして努力をすれば、曲がりなりにもこういう社会保障の適用を受ける道も現在までありますが、何しろ分布が広く、そして点在をし、結集力に乏しい現在の民間山林労働者としては、一万程度組織力しかない、こういう実情のようでございます。したがって昨日も林業労働者の問題について同僚委員から質問がございましたが、私はこのように労働者みずからが努力をしていけば、一応の暫定措置として、ある程度現行法によって救われてきておる。根本的な対策はぜひやらなければならぬという労働省の当局の御見解でございますが、農林省当局はこの問題について特に配慮され、力を入れて、いまの労働省の担当の有馬職安局長さんの御答弁にありましたように、早急にこの問題を解決をされ、そして必要によっては当委員会にその経過等も随時報告されまして、この本題の解決に全力を注がれんことを私は強く要請いたします。過日の参考人の公述にもるるありましたが、要ば森林というものを対象とした政策から、山村の住民、林業従事者、つまり林業労働者、人にその政策の転換が行なわれつつあるときにおいて、現行法の盲点ともいうべき問題の解決一つなさずして、いわゆる林業のにない手を口にし、林業従事者の確保などは及びもつかぬことであります。人なくして、何の林業の振興がありましょうか。その点を特に私は強調いたしまして、林業基本法といい、関連法といい、いたずらに空名をほしいままにしないように、十分の御努力をされんことを強く要請いたしまして、質問を終わる次第であります。
  53. 湯山勇

    ○湯山委員 関連して。いまの足鹿委員の質問に関連して、一点お尋ねしたいと思います。それは第一次産業に従事している人の、循環的な失業に対する失業保険の問題でございます。具体的に申しますと、林野で国有林に働いている人には、半年間雇用に対して三カ月間の失業保険が実施されていると承っております。ところが同じような種類にある、いま足鹿委員も御指摘になりましたが、民有林等の労働者に対してはそれが適用されていない。それから同じような問題は、水産業にもございます。たとえば漁期の制限がありまして、この制限も国がつけている制限なんですけれども、それによって年間三カ月なら三カ月出漁できないというようなものに対して、これは失業保険が現在ほとんどつけられていない。ところが労務者が足りないものですから、何とかしなければならないというので、その期間失業係険でつなげないかというようなことで、ずいぶん努力しているのですけれども実態を申し上げますと、県へ参りますと県は、半分以上、いまおっしゃったように五〇%以上働いたのだから、失業保険対象にはなる、希望があれば入れられるのだ、こういうことですけれども、実は政府のほうの指導で、来年失業するときまっているものを入れるのは——これはいま局長の言われた財政の問題だと思いますけれども、はっきり失業するときまっているものを入れるのは、ちょっとぐあいが悪い。そこで半数ずつでも雇用を継続した形にして、二年に一回失業する、こういうふうにしてもらえば失業保険対象にする、こういう指導が行なわれているのです。いまおっしゃったのは、現行法では入れるようになっている。しかしそれでは保険財政が危殆に瀕する、こういう説明ですけれども、実際指導面においてはその法律が守られていない。そのために山村労働者あるいはいまの漁業の労働者たちは、非常に困っている。またその経営者においても、労務者が確保できないというので困っています。これは指導の行き過ぎではないか。たとえいまおっしゃった三〇%になっておろうが、あるいはそれがもっと大きくなろうが、法律で許されて、そして使用者も労働者も一致して希望しているそれを、行政指導によって拒否するというような事態は、私はあってはならないと思いますけれども、現実にそれがあります。これは一体どういうわけなのか。いまのようなお考えでもって、そういう指導をして排除している。これだと、いま足鹿委員の御指摘になった以外に大きい問題がありますので、関連してお尋ねしたいと思います。
  54. 有馬元治

    ○有馬政府委員 私ども先ほどから保険財政の面から非常に慎重にすべきだ、現在の制度としては慎重にすべきだ、こういう結論を申し上げたわけですが、先生が御指摘のように現在の保険制度は、こういった季節的に失業をするような、毎年予定されて失業事故が起こるようなケースは、保険事故として考えていないわけなんです。予定された失業というものは、大体これは保険事故として保険数理的に計算するということは非常にむずかしい。毎年五〇%の失業率であれば、保険は成り立たないわけなんで、もともと不測の事態に備えるのが保険制度でございますので、初めからおかしいといえばおかしいのですが、実情実情ですから、私どもとしましては、まあまあということで今日までやってきたわけなんですが、それもお客さんが十数%のときはよかったわけですが、三割をこえて、三分の一になりますと、これはもうこそくな方法ではどうにもならない、こういう事態になってきておりますので、根本策を何とか考えなければいかぬのではないか。現在の制度の運用でぎりぎりまできている点は、私どももよく考えて運用上はやりたいと思いますが、これをこのまま広げていきますと、結局保険経済は破綻を生ずるということで、抜本的な解決策を考えるときにきているのではないか、こういうふうに情勢判断をしておるわけでございます。したがいまして現地当局がいろいろな形でいまの、われわれデカンショ保険と言っているのですが、半年働いて九十日保険をもらう。九十日の保険料をもらうためには、数字的に言いますと十一年間掛け金をかけてもらわなければいかぬ。それを六カ月で九十日もらうお客さんが、三分の一を占めるということになったために、保険経済がおかしくなってきた。それはもう当然のことなんで、もともとおかしいお客さんではなかったか。それをこんなにルーズにやっていいのか、こういうことがやはり一般の労働者から出てくるわけです。したがってこれをこのままの形で、まあまあということでやっていったら、これは非常に大きな非難が出てくるし、財政も破綻するということで、先ほど申しましたような根本策をひとつ農林省当局とも相談したい、かように考えておるわけでございます。
  55. 湯山勇

    ○湯山委員 申し上げたい点は、おっしゃることはよくわかりますし、それはそうだと思います。ただ法律のもとでは平等でなくてはならない。不公平であってはならない。ところがいまのように初めの間は黙認という形か、あるいはどういうことがあったにもしろ、認めておって、いまこういうふうな状態になってお互いに、山林の経営者も困っている。労働者も困っている。いまこそそういうのがほしい。これは林野庁長官もよく、あとのほうでも関連して私が後日お尋ねしますが、そういう非常に労務がなくて困っている、人員の確保ができない。いまこそ必要なときに、実はこれからはおまえたちだけは適用しないのだ、これは法の適用として不公平だ。そこで抜本的な改正ができるならば、それまでは従来の方針でやっていただき、来年抜本的な改正ができれば、それからけじめをつけられることにつきましては、私は申し上げることはありません。ただ法律適用が、時期によって、あるいはその他の条件によって不公平だ。これについては了解できませんので、あるいは御答弁があれば御答弁いただくし、御指摘申し上げただけで、この際は終わってもけっこうです。
  56. 有馬元治

    ○有馬政府委員 従来の認可基準は、従来どおりに運用してまいりたいと思います。そうして根本的な対策を並行的に考えていくということにいたしたいと思います。      ————◇—————
  57. 高見三郎

    高見委員長 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  この際、北海道における集中豪雨による農作物の被害状況等について、政府委員から発言を求められておりますので、これを許します。中西官房長。
  58. 中西一郎

    ○中西政府委員 北海道に起こりました集中豪雨の被害の概況と、今後の対策についての心組みについて、簡単に申し上げたいと思います。  最近の風水害状況等をおしなべて申しますと、五月の二十一、二十二両日に北見地方、それから五月二十四日には帯広地区、六月三日ないし四日に函館、六月四日ば札幌、同じく四日に北見地方ということで、若干の風水の強度なものがあったようでございます。  その被害につきましては、五月二十一、二十二日の両日の分は、現在のところではおおむね八千万円程度、五月二十四日の帯広の分は百万円程度は、六月三日、四日の分は軽微であるというふうな情報を得ておりますが、これはおしなべて申しましたが、農水産物についての作物の被害であります。特にひどかったと思われますのは、六月三日と四日の両日の雨でありますが、沿海地区の山ろくで二百三十ミリ、内陸で百ミリというような雨が降っております。田畑の冠水が約五千町歩、流失埋没面積四百町歩というような情報を得ております。  別途北海道庁からも情報が参っておりますが、それによりますと、農地の流失埋没が七百二十町歩、冠水面積二万五千町歩、被害はおおむね十億円というふうに聞いております。特にその中で、千歳川の増水によります長沼町の農地の約四千町歩が湛水しておるというふうな情報が入っておりますが、ここが中心のように思われます。ここではポンプ約二百台を動員するとともに、その他応急排水の工事をやっております。その後六月十一日現在では、四千町歩の湛水がだいぶ減りまして、三百五十五町歩程度の湛水に減ってきておるというふうに聞いております。すでに植えつけした水稲が全滅した関係もありますので、再植えつけを行なう必要があるといわれております。そのほかに橋が一カ所、排水樋門の破損が二カ所あるようであります。さらに農林省の直轄代行事業の被害でございますが、約二億円程度の被害が直轄代行十二地区にわたって生じておるというふうに、いまのところ調査ではなっております。  この対策は、いままでの累次の災害におきまする場合と同様の措置をとるわけでございますが、農地等の施設災害復旧については、農林水産業施設災害復旧暫定法がございます。もう少し実態を調べまして、必要があれば査定官を派遣する等の段取りをつけていかなければならないと思います。また農業災害補償法による保険金の問題も当然起こってまいります。いずれにしましても、以上申し上げましたのは中間報告でございますが、さらに調査を進めまして必要な施策を講じてまいりたい、かように考えております。以上でございます。
  59. 高見三郎

    高見委員長 ただいまの報告に対し、質疑の通告がありますので、これを許します。本名武君。
  60. 本名武

    ○本名委員 ただいま北海道の災害について中間報告があったわけでありますが、今年は非常に珍しく、北海道だけが災害がないと思ったところが、先月末からいま報告のあったようなことであって、非常に遺憾に思っております。ところがいまの報告を聞きますと、被害の実態とは相当かけ離れているようであります。委員長にお願いをいたしますが、すみやかに実態を調査して、本委員会において詳細に検討し、対策を立てるようなお計らいをお願いしたいと思います。  あわせて、この機会にちょっと参考までに申し上げますが、対策の中でいろいろな方法があろうと思うのです。直接政府責任において助成、融資その他の手段があろうと思いますが、これは被害の程度に応じてなさるのでありましょう。特に再播をいたしましても、あるいはその他の病害虫発生等も考え、また再播をしないまでも、相当減収が起きるという結果においての被害というものも、面積が広いだけに相当起きてくると思うので、その点の調査も十分していただきたいと思うわけであります。  さらにまた今回の北海道の災害は、大なり小なり今日まで各地にあった災害で論議されたことでありますが、私は人災が相当あろうと思っています。きょうは出ておりませんから詳しくは申し上げませんが、公共事業、特に護岸、築堤の工事の計画及び施行において、非常に矛盾があったために、被害がより以上に大きくなったということ、しかもその被害というものは大体において山村僻地が多く、また被害を受ける者はほとんどが農業者であるというこの特色を考えて、私はこの人災に対して建設当局にこの機会に後日いろいろ意見をただし、またわれわれの考えを申し上げたいと思います。  それからもう一つは、よく論議されることでありますが、いわゆる水資源の利用に対してわれわれは反対するものではないが、電源開発が、ダムを守り、また調整の名において相当の放出をいたしますが、この放出に非常に矛盾がある。たとえ自然的な原始河川であっても、従来の洪水のときにはどうやら被害は少なくて済んだが、川をそのままにしておいて放流を思い切ってむちゃなことをやるところに、たきな被害が起きた。しかも冠水やあるいは埋没程度ではなくて、完全な流失がある。農家は十数町歩の土地を全く皆無にして、いままで平地であったのが六尺、八尺下のがけ下に土地をながめなければならない。これはとても作並のことてはない。そういうような災害が今次の災害の特色であろうと思います。  そういう点も十分調査され、そのような原因を除去する。公共事業の計画実施にあたっても、あるいはまた電源開発その他のいわゆる水利用の上からも、根本的に対策を立てることをこの機会に農林省も真剣に考えて、次回の委員会においてこの論議をいたしたいと思いますので、委員長におかれてはどうかその詳細な報告を当局に求められて、近い委員会にこれを議題にされんことをお願い申し上げます。
  61. 高見三郎

    高見委員長 農林省いいですね。
  62. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 ただいま官房長から北海道の被害の状況は報告させていただきましたが、御報告のうちにも申し上げましたようにまだ十分なものでもないし、御要望のありましたように、できるだけ早くと申しますか、急いで被害の実態を調査していただき、なお政府としてそれに対するとるべき措置の案をまたお話を申し上げたいと思います。それと同時に、電源開発等による人災——御指摘になりましたように人災と考えられるような部分につきましては、今後十分これは連絡をし、慎んでいかなくてはならぬと思いますので、各省との関係を十分とっていきたい、かように考えております。いずれまた調査を終わったら、御報告させていただきたいと思います。
  63. 高見三郎

    高見委員長 次会は来たる十六日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十五分散会