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1964-06-10 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第57号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十日(水曜日)     午後一時三十分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       大坪 保雄君    仮谷 忠男君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       舘林三喜男君    寺島隆太郎君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    西村 関一君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         議     員 川俣 清音君         議     員 稲富 稜人君         農林事務官         (農地局管理部         長)      小林 誠一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稲富稜人君外一名提出衆法第  四四号)      ————◇—————
  2. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案稲富稜人君外一名提出林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  3. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、当委員会としては林業基本法案あるいは社会党森林基本法案が最終的な審議法案ということになっておるわけですが、まずお尋ねしたいのは、政府としてせっかくお出しになった林業基本法案に対して、これを成立させたいという熱意がないように見受けるわけですが、この点は農林大臣としてどういう御意思ですか。
  4. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 どこから御判断になったか存じませんが、政府熱意がないということはございません。御承知のように農業基本法もございますし、あるいは漁業沿岸漁業振興法もできております。林業のほうについても、せっかく私ども提案しておりますし、社会党熱意を持って、社会党案出しておるような情勢下でございますから、私のほうといたしましてもぜひ御協力を得て成立さしたい、こういう気持ちを持っております。
  5. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 熱意がないのではないかという判断は、ひとり私だけの独断的な判断でなく、たとえば当委員会全体としても、どうも政府としては、特に農林省としては、通したいのか、通したくないのか、わからぬじゃないか。基本法である以上は、林業基本法ですからして、所管林野庁所管ということになると思うのですが、少なくとも政策基本をなす宣言法国会に出す以上は、農林省全体の責任熱意において、これが成立を期するという気がまえだけは必要じゃないかと思うわけですが、どうも林業基本法林野庁所管であるから、林野庁だけでやればいいじゃないか。林野庁の中でもいわゆる技官官僚といいますか、そういう諸君にまかせておけばいいというような気配が決してないとは言えないと思うのです。ですから責任の衝に当たっておられる農林大臣としても、池田三選の問題なんかで多忙であると思いますが、国会の会期が今月二十六日まであるわけですからして、国会に対して提出した法案に対しては、最後まで委員会に対しても熱意を披瀝して、十分取り組んでいくという気魄が、大臣はもちろんでありまするが、農林省政府委員諸君にもこれが充満しておらぬと、どうもこっちもまじめに取り組むという熱意に欠けることになるので、その点を特にお尋ねしたものです。
  6. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 御注意たいへんありがとうございます。実は御承知のように、林業基本法案提案が少しおくれました内部事情を言いますと、法制局などでもいろいろ法律がたまっておったものですから、あまり権利義務関係のないような法律だからということで、審査が実はおくれておったのでございます。しかしそういうことでは困ります。内閣提出期限ども大体きめておるけれども、延ばしてもひとつ提案してもらわなくてはいけない。法制局にも、内輪話でございますが、厳重に早く審査をして、今国会成立するのに間に合うような余裕を持って審査を終わらしてもらいたい、こういう事情でこの法案も出すことになったわけでございます。でありますので、初めの提案が少しおくれました。その後におきまして、衆議院を通していただいたいろいろの法案が、また重要な法案でありましたので、そういう関係でこれは提案がおくれたので、だんだんあとあとになってきておりますけれども熱意においてはいまお話のような気持ちで私どもも臨んでおりますので、なお一そうこの気持ちを強めて、委員会の御協力を仰ぎたいと思っております。
  7. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 当委員会としては、政府案はもちろんですが、社会党基本法あるいは民社の基本法等についても、これも重要視いたしまして、すでに和歌山県あるいは北海道における地方現地調査あるいは意見聴取、昨日はまた当委員会において、中央の関係者から参考意見聴取したわけです。地方調査によりましても、昨日の参考人意見聴取を通じましても、基本法のそれぞれの持っておる問題点、あるいは性格等についても、意見がいろいろ出されておるわけです。したがってきょうは、特に政府がお出しになった基本法中心として、重要な諸点だけに限定して大臣から答弁をお願いしたい、そういうふうに考えておるわけです。  第一の点といたしましては、社会党といたしましては、御承知のとおり森林基本法案という法律体系で策定して提案したわけでありますが、政府案林業基本法案ということになっておるわけであります。したがって国の森林政策、あるいは林業政策というものは、それぞれ確立される必要があるわけでありますが、特に政府として、森林政策基本を置いて、林業政策あるいは必要な国の施策を進めるという順序を度外視して、単に林業基本法案という形で提案されたその趣旨、その点についてわれわれとしては了解に苦しむ点があるわけでありますので、この点について大臣から率直な説明を願いたいわけです。
  8. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 御承知のとおり日本において、森林というものに対しての価値づけといいますか、重要性につきましては、いろいろ批判はありますけれども幕府時代からあるいは明治になりましても、非常に重要視されておったわけであります。でありますので、森林に関して森林法という法律が、明治の半ばころでございますか、制定されております。これは公共的、公益的制限をして、その見地から森林施業に関して必要な事項規定しておる、こういう面で一口で言いますならば、国土保全に関する基本的な問題が、森林法中心的な考え方であって、そういう考え方が、あるいは方途が盛られておる。こういうふうに私どもは見ておるわけでございます。でありますので、国土保全に関するような、大きな森林基本に関する方針は、森林法規定されておりますので、それに譲りまして、森林のもう一つの面、資源としての林業といいますか、そういう面の基本的なものを林業基本法案規定しよう、すなわち経済政策に関する問題をこの法で規定しよう、こういうふうな分け方をしたわけでございます。もっとも森林法の中でも、沿革的に含まれております森林生産とか、森林組合あるいは林業改良助長に関する事項、こういうものは、分類すれば今度の林業基本法基本施策の下に入れらるべきものだ、こういうふうに思います。でございますから、考え方といたしまして、従来の森林法と今度出しておりまする林業基本法と一緒にして、社会党案のような法律をつくっていく、こういうことも一つ考え方だと思います。私のほうといたしましては、森林法は相当よくできておりまするし、国土保全中心とした規定がそれに盛られております。経済面中心とした林業基本法提案して御審議を願う、こういうような事情でございます。
  9. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それでは政府としても、現在ある森林法というものは、これは法律の名前は実体関係があるようでない場合もあるが、それでは森林法わが国森林基本法という、そういう態度でこれを扱う、これを基礎にした今回お出しになった林業基本法、そういうような関連を持たせて施策を進めるということなんですか。
  10. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 いまの森林法国土保全ということを中心として規定されていますから、見方によっては森林の持つ大きな面の基本法だ、こういうふうにも考えております。しかしその半面経済面のほうにおいて、最近の情勢にマッチさせるべく林業基本法ができたのでございますので、この二つが森林に対する基本的な法律だ、こういいうふうに解釈いたしますが、ウエートからいいますならば、やはり森林法考え方中心として、それに半面であるところのものを林業基本法で補っていく、こういうふうに私どもは理解していったらいいというふうに考えております。
  11. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 大臣はまだ森林法内容をよく検討しておられないので、それで政府委員森林法のほうがむしろ基本的なものであるという御答弁、うのみではないと思いますが、そのまま信用して受け取っておるようですが、われわれの認識では、現在の森林法をもって、これがわが国森林全体を規制する基本法であるということは、どうも断定することはできないと思うのです。特に現在の森林法は御承知のとおり、国有林野はこの森林法の規制を受けていないわけです。森林法は厳存しますが、一方において国有林野法というのがあって、そして森林法、さらに国有林野法あわせて、国全体の森林政策というものが進められておるわけですから、少なくとも基本法であるとするならば、たとえば国家が企業的な経営をしておる、あるいは国土保全とか、国民保健のために国有林野経営をやっておるとしても、しかし国土の中に占める森林、原野の面積が全体の七〇%以上に及んでおるということを考えた場合、国土の総合的な利用高度利用というようなことを考えた場合においても、森林法基本法であるとするならば、これは国有林全体を包括した確固たる森林基本法というものがなければいけないのじゃないかというふうに考えられるわけです。ですから森林法国有林野法との関係、あるいは今度お出しになった林業基本法とのこの相関性というものを、この際政府として明快にしてもらわぬと、なかなかわれわれとしても積極的な審議ができないということになるわけです。もう一度その点についてお伺いしておきたいと思います。
  12. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 森林日本国土の七割以上を占めておるということから考えましても、国有林も含めた一つ基本法でやってしかるべきではないかという考え方も、一応そういうふうに私も考えられないわけではないと思います。ただ現行法律体系からいいまして、森林法森林に対して、日本国土保全するということを中心として規定されておる。それから今度の林業基本法は、経営面経済面からの基本的なことを規定しておる。それと国有林との関係はどうか。国有林が相当部分を占めておるのでございますけれども、これは一つ管理方法あるいは所有の方法、こういうことでございまして、非常に、重要な役割り国有林が演じなくてはならぬと思いますが、しかし基本的におきましては国有林におきましてもやはり国土保全治山治水関係というようなことに、中心を置かなくてはならぬということでありますならば、やはり森林法考え方の中に、経営の主体は違っておっても、その中に考え方は含まれてもいいのではないかと考えるのであります。いずれまたその経営面において林業生産を合理化し、経済化していくということになれば、今度の林業基本法との関連において国有林もそうであらなければならない、こういうふうに考えられると思います。でございますから、一括してそういうものを含めて全部、大基本法的なものに規定していくということも、これはもっともな考え方だと思いますけれども、いまの関係からいいましても、先ほど申し上げましたように、森林法林業基本法との関連において、国有林経営といいますか、進めていくべきだ、こういう形からいいますならば、国有林野法律に基づいてこれを経営していく際におきましても、いまの森林法あるいは林業基本法案趣旨に従ってやっていくということで調整がとれていくのではないか、こういうふうに私は考えます。
  13. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえば森林法にしても国有林野法にしても、これは宣言法ではないわけですね。いわゆる実体法なわけです。それを、母体になる法律実体法であって、それから派生した林業基本法というものがこれが宣言法であるということになると、いわゆる親子関係といいますか、母体はこれは実体法である、それから生まれた林業基本法というのはこれが宣言法であるということになると、法律の発想から見てもこれはちょっとおかしいじゃないか。ですから森林法国有林野法というものは、これが森林全体の基礎をなす法律であるとするならば、それを受けた林業基本法というものは、それもやはり実体法としての性格を具備しておったほうがいいじゃないかというふうにも考えられるわけですが、その関係に対して大臣としていささかの矛盾も感じておられないかどうか。
  14. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 大臣の御説明を補足させていただきます。森林法につきましては、いま大臣の御説明がございましたように、明治の中ほどに特に国土保全治山治水、その面の政策重要性に基づいて立法された法律でございますが、自来日本林業政策としては、その政策中心国土保全森林資源の維持、培養ということに置いて進めてまいったわけでございます。それから一方国有林野法につきましては、これは明治の初めに置かれました国有林についての、特に管理の面についてこれが規定をされた。国有林のその成立過程からいいまして、特にその点の必要があったという沿革を持っております。ところで近年の木材の需要、供給の状況、それから林業従事者所得の状態、そういう面から、林業というものを人が経営する経済として、これを見ていく必要がある。しかもこれから将来にわたって林業経済政策をここで確立しないことには、林業従事者の地位の向上所得の増大もはかられなくなる。これは結局は農林漁家の全体の問題の中の、また林業の面の重要なポイントだということで、そこに政策の力点を置くことになったわけでございまして、したがって将来に対して林業生産の面での総生産を増大するとか、生産性向上していくとか、あるいは林業従事者所得向上をはかるとかいうことに、国が責任を持つ。そういう意味で、いままでの国土保全中心のその基調を、経済政策の面に転換していく。これは政策の相当大きな転換であるという意味で、これは基本法たる名を失わない、こういう考え方でございます。言うまでもなく国土保全の面につきましては、将来に向かってますます重要性を帯びてまいりますことは言うまでもないことでございますが、この法律の第一条についても、あわせて国土保全に寄与するためというふうに規定しておりますのは、そういう趣旨に出ているわけでございます。そういう意味で、森林法はこの自由な林業生産の場に対してこれをチェックしていく、公共的、公益的機能という森林の使命からいいまして、これをチェックしていくというような関係的位置に立つということになるわけでございます。
  15. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 私が大臣にお尋ねしたのは、現在の森林法並びに国有林野法実体法としての性格と目的を備えておるにもかかわらず、林業基本法というものは宣言法であるというところに、矛盾がないかということを大臣にお尋ねしておるわけです。その点なんです。ですから、大臣を補佐される答弁ばけっこうですが、質問者質問趣旨十分頭に入れて、その矛盾があるかないかという点に対して答えてもらいたい。
  16. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 私は宣言法実体法との区別ということをよく承知していませんが、森林法も、ここに出しておる林業基本法も、一つ基本法としての実体法だというふうに私は見ておるのでございます。実体法との区別といえば、実体法手続法というふうなものがありますが、森林法森林経済面における手続法ということでなしに、やはり一つ実体法ではないか。しかしその内容につきましては、非常に宣言的規定といいますか、権利義務ということをあまりはっきりさせなくて、宣言的な方針を述べておるという点が非常に多いと思います。基本法としてそういう傾向はどうしてもあるかと思います。森林法に基づいての林業基本法ということでなくて、森林法という一つ国土保全の面を重視した基本的な法律である。それに経営面経済面基本的に処理して考えていくというような面から、林業基本法出して御審議願っておる、こういうふうに御了解願えないものだろうかと私は考えているわけでございます。
  17. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 私ども森林法基本で、林業基本法がそれに基づいたものであるとは言っていないのです。ただ林業にしても、森林生産力の基盤として、それに依存しなければならぬということは、これはもう否定できないと思うのです。ですから、たとえば森林経営ですね。林業との相関関係というものは、やはり今回の基本法の中において明確にしておかぬと、国民としてもわからぬと思うのです。ですから農林関係の類似の法律としては、かつての農業基本法にしても、大体構想は今度の政府林業基本法と類似した点が非常に多いわけです。それから昨年成立いたしました沿岸漁業振興法にしても、これは法律の名称は振興法でありますが、内容の前半が宣言的なもので、後半が実体法的な、混同した性格を備えておる特徴があったわけです。ですからそういう点に対して大臣としてのお考えをお尋ねしておくわけです。  次にお尋ねしたいのは、実体法的な面もあると言われても、このままでは実際用をなさないわけです。林業基本法の文句を何回唱えてみても、たとえば第三条の国の施策のそれぞれの事項にしても、あれだけの条項だけで直ちにこれが実施できるということにはならないと思うわけです。したがって基本法成立されるという場合には——これは予測できませんが、宣言法的な法律成立した場合においては、それを受けた実施法というものがすみやかに用意され、実施に移されなければいけないわけです。これは現在の政府農業基本法においても、その欠陥がだんだん表面化しておるわけですから、この際政府林業基本法案関連する今後の具体的な実施法、あるいは現行法においてもこの基本法関連して、根本的な改正を要するようなものも幾つかあると思うわけでございますから、かりに政府案林業基本法成立を見るとしたならば、政府としてはこれに対してどのような関連法あるいは現行法改正というものを用意されておるか、その点についてお尋ねしたいわけです。参考までに、社会党としては、社会党森林基本法に対しては、十七の法律制定あるいは現行関連法改正というものを、当初から明らかにしておることを申し上げておくわけでございます。
  18. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 御趣旨は私もそのとおりと思っております。基本法であり、宣言的なものでもありますし、また実体法でもございますけれども、このままですべてに適用して当を得ておるというわけにはまいりませんので、これを補完する意味におきまして、あるいは一つ一つ政策実施する場合におきましても、もっと手続的な法律あるいは実体的な法律、こういうものも必要になってくるかと思います。御承知のように農業基本法に基づいてのいろいろな法律等出しておるわけでございますから、そういう意味におきまして、これを補完し、あるいはこれを、実際に政策面実施する場合に、いろいろな事態が出てくる、そういうものに対処して逐次関連法律出したり、あるいは手続的な方途も講じていかなくてはならぬ、こう思っています。それではどういうのを考えているかということになりますと、いま私も具体的に申し上げるほどその方面にまだ検討はいたしておりませんが、いまお話のような必要は当然ある、こう考えております。
  19. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これは非常に重要な点ですから、大臣が直ちにこれこれということが表明できないとすれば、これは林野庁長官から、この政府案がかりに成立した場合は、直ちにこれこれの法律は必要である、あるいは現行法関連法においても、これらの法律に対しては根本的な改正等が必要である、これは提案者として提案と同時に当然配慮しておくべき筋合いのものですから、この点に対して長官でよろしいですから、御答弁を願いたい。
  20. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 その点につきましていろいろ検討をしておるわけでございます。そのうちの一つとしましては、入会い林野権利関係近代化をはかって、その活用を進めていくということ、これはまず最初に取り上げてまいりたい、こういうふうに考えておりますが、すでにこの国会でもこれに関連して考えております、提案をしてその方針をきめたいと考えておりますものは、たとえば農林省設置法改正の中で、国有林野管理審議会、これは将来に対する国有林野活用について、いろいろその取り扱いの適正を期していくという考え方でございますし、それからさらに、思いつくままに申し上げますと、林業改良指導員なりあるいは専門普及員なりの処遇の改善をはかるための法案を、地方自治法改正の中へ提案をいたしまして、そういうすでに具体化に入ったものもございます。なお今後検討中の問題につきましては、またこの法案成立を見てよく検討いたしたい、こう考えております。
  21. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 ただいま入会い林野関係法律をつくりたいというお話ですが、当委員会においては当初、今国会農林省からの提出予定法案として、これは必ず出しますという説明を受けておるわけです。それが全然この国会提出になっていないわけです。これらはやはり、基本法ももちろん重要であるが、この際林政の発展ということを考えた場合、国民権利にも非常に重大な関係のある問題等については、何をおいてもこの種の法律案は速急に出して、すみやかに国会審議を受けるべきであったと思いますが、これが提案されなかった理由はどこにありますか。
  22. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 入り会い権の問題は、御承知のとおりに旧幕以来の権利関係の問題でございまして、入り会い権そのものの法的な解釈につきましては、いろいろ問題がございますし、そういう問題を整備しまして、そしてその権利近代化をはかっていくということにつきましては、いままでに十分検討はいたしましたが、なおさらにその万全を期して進めていきたい、こういう考え方でおりますために、この国会では間に合わなかったわけでございます。
  23. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 社会党政府の役人を持っていないわけですが、森林基本法提案と同時に、次のような法律関連法として制定あるいは整備する必要があるというふうに考えておるわけです。これは参考になると思います。国土高度利用促進法案国有林野事業法案国有林野事業特別会計法改正国有林労働者雇用安定法案保安林整備法案、これは現在の時限法を根本的に恒久法にするという点であります。治山治水緊急措置法根本改正森林計画法案林道法案造林法案入会権近代化法案森林組合法案、これは根本改正であります。山村振興法案林業改良助長法案木材公営市場法案農林漁業金融公庫法並びに林業信用基金法等根本改正狩猟法改正、主たる点でありますが、これらの現行法律あるいは新たに法律制定する必要があると認めて、社会党森林基本法成立する暁には、直ちにこれらの法案関連法あるいは実施法として国会提出するというかまえでおるわけですから、権力を握っておる政府が、せっかく林業基本法をお出しになって、何ら具体的な実施法に対しても用意がない、かまえがないということに対しては、先ほど私が大臣に指摘しましたとおり、一体真剣に基本法を今国会成立させたいという熱意がありやいなやという点になってくると思うわけです。ですから、この点についてもこの国会政府案が通るということはなかなか考えられぬことですが、政府として国会に内閣提案という形で法案をお出しになる場合には、単独法の場合にはもちろん政令、省令の案も同時にお出しになるとか、宣言法的なものであれば実体法を用意して明らかにするということだけは、今後の問題にもなりますが、やはり大臣としても責任を持って進めていただきたいというふうに考えますが、この点はいかがでしょう。
  24. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 いまお述べになった社会党関連法案といいますか、そういうもの等、いずれも十分検討に値するものだと思います。私のほうといたしましても、この法案が通りますならば、それぞれ必要に応じて、逐次これに関連し、あるいはいまお話のような実体的な法律というものも整備していきたい、こういうふうに考えております。
  25. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、基本法政府案におきましても林業の見通しという事項がありますし、社会党としては林政の基本計画というものを基本法の中で明らかにすることになっておるわけですが、この基本法において長期計画、見通しよりも計画のほうが当然であると思いますが、政府としては基本計画とか長期計画とかいうことばを使うことさえも避けたいような御意思のようですが、長期計画を立てる場合は当然、林業だけ切り離した立場で長期計画というものは立ちがたいと思うわけです。特に森林を主体とする土地の利用区分だとか高度利用の問題から発しましても、あるいはまた国民経済的な発展を考えた場合においては、当然国土の総合開発計画の一環としてどう扱うか、あるいは政府国民所得倍増計画の中において、森林あるいは林業の発展というものを長期的にどう判断するかというような点は、当然これは長期計画あるいは見通しといえども具備しなければならぬと思うわけでありまして、特にこの点について国土の総合開発の現在の長期計画あるいは所得倍増計画の一環として、森林並びに林業の長期計画というものをどのようにかみ合わせて、そうして林業の従事者あるいは森林の所有者、経営者あるいはその労働者等の地位の向上所得の格差是正をやるかということについて、これはやはり計画ですから何らかの数字というものが基礎になければいかぬと思いまするけれども、それらの基本計画あるいは長期計画に対する政府の用意された構想というものを、この際示していただきたいわけです。
  26. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 計画というか、見通しというか、いろいろ議論がございますが、内容は同じようなものでございますけれども、再々申し上げておりますように国が管理しておるもの、国有林野等については計画でずっとできるかと思いますが、全部国が管理しているというものではございませんで、民間の森林等もありまするので、そういう面から計画ということばでなく、見通しということばでそれを策定することに相なっておりますけれども、その長期見通しと国土総合開発の関連はどうかということでございますが、林業基本法政策化していくと申しますか、こういう点につきましては、もちろん国土の総合開発あるいは地域開発に非常に至大の関連といいますか、相当深い関連がございますので、当然国土総合開発の構想あるいは計画、見通し等を、この林業基本法案の第九条でございますか、そういうものに対する見通しの中に繰り入れていく、関連を持たせて策定していくということに相なろうと思います。所得倍増計画につきましても、これは林業従事者等の所得の倍増をも含めての所得倍増計画でございますから、それぞれの立場において、たとえば農業なら農業の面におきましていろいろ計画を立てましたが、その関連が思うようにいっていない点もございますが、当然林業関係におきまして所得倍増計画の中にも繰り入れなくてはなりませんし、こちらの計画の中にも倍増計画との関連において妥当な見通しの策定をしていく、こういうことに相なると考えております。それの具体的問題はどうかということでございますが、具体的見通しはまだ実はできておらないと思いますが、幾ぶん見通しという点についてのことでございましたならば、事務当局から答弁させます。
  27. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 森林計画については、現行森林法に基づいていわゆる全国森林計画というものを、毎五年を一期にして策定するということになっておるのです。これは先ほど言いましたとおり、国有林を除いた森林に対する五カ年を一期とする長期計画ということに相なっておりますが、しかし国の全体計画を立てるということになれば、やはり国有林も含めた総体の森林に対する、いわゆる森林生産力向上発展というものにどういう長期的な期待を持つか、ことばを変えれば、わが国森林の成長率をどういうふうに高めるのか、蓄積をどういうふうに高めていくかということは、これは国民経済上から見ても重要な点であると思うのです。ですからこれらの計画、特に国土保全の問題について、国土の荒廃を防ぐというだけの防衛的な目的ではなくて、特に最近の水資源の開発、高度利用重要性というもの、国民経済の発展に不可欠な原動力になるわけですから、水資源の開発確保、高度利用ということになれば、これは当然森林との間における、あるいは林業との間における相関性というものは、重要なことになるわけです。だから日本経済の発展あるいは工業化の発展、それから国民生活の水準の向上という点から見た場合に、水の問題を一体森林あるいは林業の面からどういうふうに考えるか、これは国土開発計画あるいは所得倍増計画の中にも、その点はあらわれてきておるわけです。ですからその点が不明確であるということにはならぬと思う。具体的な緻密なものはいまの政府にはできないことはわかっておりますが、しかし大筋としての計画、構想というものは、その策定当時から明らかにされて、特に所得倍増計画の場合には、農業部面等については中間的な手直しさえしているわけですから、こういう点がまだわからぬとか未定であるということにはならぬと思うのです。ですからこれらの国土全体の開発の方向における位置づけというものに対する明確な所信を示してもらわなければならぬと思うのです。
  28. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 もちろん民有、国有林をあわせて見通しというものは立てておかなければなりません。その点につきましていまお話がありました水資源としての森林は非常に重大であります。これは山くずれとかなんとか、そういう国土保全と別個の意味において一つの水源でもありまするし、ため池の役割りもいたしますし、あるいはその水源が適当に川のほうへ水を供給していく、こういうような作用もいたしておるのでございますから、水資源森林としての林野をどういうところにどれぐらいを確保していくか、こういうことはもちろん一番大事なことだと思います。またそれに関連して、林業面におけるいまお話がありました蓄積をどれぐらいにし、伐採を三十年なら三十年目ぐらいに切りかえていくということにすれば、どういう伐採量によって蓄積を更新していくかというような面も、もちろん大事な面だと思います。そういう面におきましての概算的な数字等は、林野庁のほうでも持っておると思いますが、その考えがないわけではございません。ただ具体的にこの法案が通ってからの計画、見通しは、いまどういうふうになっておるかということになりますと、あまり的確に申し上げる数字は持っておらない、こういうふうに先ほど申し上げたのでございまして、大きな面につきましては考えを持っておるわけでございます。
  29. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 森林の持つ保水上の役割りというものは、それ以外に求めることばできないわけですし、日本のような狭小な国土においては、地勢の関係上、雨量は世界的に多いわけですが、その雨量を土地に保持させるという時間的な余裕というか、条件がないわけです。ですから利根川とか信濃川のような長大な河川にしても、水源地において相当の降雨があると、それが海洋に注ぐまでの時間というものは非常に短いわけです。中小河川なんかたちまち数時間にして海に流出してしまうわけですが、大陸諸国においては何カ月もたたなければ、海洋に水源の雨量が注がぬというような事情があるわけですから、そういう場合に、国土の水の保有という面における森林の持つ使命というものを、軽視してはいけないのじゃないかと思うわけです。こういう点は林業の中だけで解決できないと思うのです。やはり全体の森林政策国土計画の中で調整をとってやるということにならなければならぬと思いますが、そういう調査とか研究とか判断というものが、農林省の中において林野庁中心にできておらぬということは、いささか残念だと思うわけですが、それではどこでやっておるかということになるのです。経済企画庁で幾らかはっきりわかるものか、どこでわかるのか、その点はどうなんです。いまの政府は何もわからぬということなんですか。
  30. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまのお話の点につきましては、この前の保安林整備臨時措置法の一部改正でも申し上げたかと思いますが、資料は経済企画庁あるいは科学技術庁、それから重要流域における都道府県のそれぞれの所得倍増計画の基礎資料、そういうものが基礎になって、各水の需要量と供給量というものを策定して、今年中に必要な水源涵養保安林を中心にした面積を出したい、そう思っております。
  31. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、政府林業基本法においては、特に林業従事者の社会的な地位の向上あるいは所得の増大という点が強調されておるが、一体政府案でいうところの林業従事者の定義、これは狭義に解釈もできるし、広義に解釈もできるわけですが、一体林業従事者なるものの範囲をどの程度までに固定しようとしておるか。これは法案審議上も重大な点ですから、この点について少し具体的に説明を願いたいと思うのです。
  32. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 林業従事者の範囲といたしましては、山林所有者である者はもちろんであります。さらにその山林所有者の経営する事業に雇用される労務者、その他技術者を含んだものと御理解を願いたいと思います。
  33. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 山林所有者あるいは森林経営者、その従事者というのは、つまり家族経営の場合には所有者、経営者があってその家族従事者というのは、農業の場合にも同様だと思いますが、雇用によって山林で働く労務者ということになるわけですね。その範囲は主として山林というものが前提になった従業者の範囲ですか。この基本法では、たとえば立木あるいは素材を原料とした製材とか加工とかいう事業というものは、当然これは林業の中に入ることになっておるわけでありますが、そうするとそれらの従事者というものは対象にならないということですか。
  34. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 この法案林業従事者という場合に、いまのお話からいきまして、まず林業の範囲をきめないと明確でないようなことでございますが、林業の範囲は、種苗生産から始まって植林、それから伐採事業、これを一応林業の範囲と見ております。それですから家族的な労働でそれに従う者はもちろんですし、それから企業的な林業に雇用される労務者はもちろんですし、それから製材等の加工についてはいわゆる林業の範囲に含めて考えていないけれども、しかしこの加工流通の関連事業については、やはりその発達改善をはからなければ、林業経営自体がうまくいかないということで、法案の対象にはしておるということであります。
  35. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 もう一回繰り返すと、たとえば森林の所有者、それから経営者、経営に従事する家族従事者、それから雇用によって事業に従事する労働者、これは当然入るわけですね。事業的にいえば、たとえば立木の伐採とか、造林、育林、搬出の事業であるとか、そういうものは、全部この事業に従事する者は従事者として入るわけですか。
  36. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  37. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それを原料にして製材するとか加工するとか、それらの事業の経営者、従事者というものは、この基本法にいうところのいわゆる林業従事者の範疇に入らないわけですね。
  38. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 この林業の概念規定は、いま申し上げたように理解をしておりますので、それで林業従事者という場合には、いま例示されましたとおりでございます。それからいまの加工以下の流通過程の分については、いわゆる林業従事者というふうには規定しないけれども、しかしそれの発達改善を同じウエートで考えておるということでございます。
  39. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 製材とか加工とか、そういうものはこの基本法では、いわゆる流通の改善とか価格安定であるとか中小企業の育成とか、そういう面では関連的に保護育成しなければならないが、人間を相手にした従事者の所得向上とか、社会的な地位を向上させるという場合の対象にはならない、これは間違いないですね。
  40. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 それはいまの御説のとおりでございます。
  41. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうするといま長官から説明のあったそれぞれの事業に雇用関係のもとに従事する労働者が、従事者の範囲に入るということになれば、特に労働者の雇用の安定というものを別にうたってあるのはどういうわけですか。
  42. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 特に最近の山村の人口の流出の現象にかんがみまして、林業従事者としての労務者を確保する必要がある。しかもできる限り訓練された技術者を確保する必要がある。そういう意味からいいまして、林業従事者としての労務者の雇用の安定は当然はかられなければならない、こういう考え方を持っております。
  43. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうすると森林の所有者でもない、経営者でもない、家族従事者でもない、いわゆる雇用関係で労働力を提供して従事する労働者は、これは基本法のいわゆる林業従事者の中には入るわけですね。あなたが入るということを言っているのだが、またその点に留意して、その従事者に対しては労働者としての社会的な地位の向上とか、雇用の安定とか、社会保障制度の適用等は、特に講じなければならぬという配慮で、基本法の中に、従事者の範疇には入るが、労働者としての雇用の安定というものを特段に配慮する、そういうことでこの政府基本法案の中には、特に労働者の雇用の安定というものをうたってあるわけですか。
  44. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 それはこの法案のたとえば第三条の一項の六号に規定しております。それから第四章の林業従事者の十七条、十八条において規定をしておりますとおりでございます。
  45. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうであるということがわかればいい。後日これは問題が起きるといかぬですから。長官、たびたび労務者ということばを使うが、これはどういうのですか。人種的な差別をしておるのか。いまの社会通念上、同じ国民を労務者呼ばわりをする思想、これは政府がそういう思想の上に立っておるからだと思いますが、従事者であれば従事者でもいいし、労働者であれば労働者でいいわけです。特に林業で、雇用関係で働く国民に対し、おまえは労務者であるというような扱いを国の宣言法で用いるということは、非常に問題があると思います。これは特に農林大臣にお尋ねしておきたいと思います。政府として林業で働く国民に対して一これは労働者でない、労務者であるというような考え方というものは、基本的な人権からいっても問題があると思うのです。意識的にそういうことばを使うことにしておるかどうかです。(「労務の提供者ということだ」と呼ぶ者あり)
  46. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 私もいま声がかかったように、別に区別して悪い意味で使っていると思いません。労務の提供とかなんとかいう熟したことばがありますので、その関係から労務者と呼んでいる場合があったかと思いますが、別に区別をして、封建的か何か、そういう意味での使いようではないと思います。労働者とか従事者というふうにいままでのきまったことばを使ったほうがいいと思いますが、ただ労務者と、労務を提供する人という意味で、特に他意があってのことではないと思います。
  47. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 他意がないとしても、これは問題ですよ。法律上は従事者の中に入るとすれば、この林業従事者という規定でいいわけです。それから労働者ということであれば、これは憲法あるいは労働法に規定された働く国民に対する一つの名称ということになるから、何もふしぎはないわけです。それ以外に労務者ということばを強調するということになれば、これは少し余談になるが、昨日日林労という労働組合の代表者が来て、月給取りの国有林の職員はこれは労働者であるが、それ以外の国有林で働いておる国民はこれは労務者である、労働者でないというような参考意見が実は陳述されておるのであって、この政府が育成した第二組合の代表者の発言と、それからそれを育成した田中さんとは言わぬが、林野庁長官の考えが一致しているということは、国会においても軽視できない問題だと思います。これは後段で国有林の問題に移りますが、政府として国民に対して、ある場合には従事者扱いをする、ある場合には労働者扱いをする、ある場合にはそれをいかにも卑下したような形で労務者扱いをするということは、これは問題があるです。
  48. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 それは決して区別をして申し上げたわけではございませんので、林業従事者というものを分解して申し上げた場合に、平易なことばとして申し上げたわけでございます。そこでこの法律ではこれをこのように表現しております。たとえばいまの十八条には「林業労働に従事する者の養成、」という表現を使っております。法律上はこういう表現であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  49. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、この政府案の第四条にも出てくるわけですが、この際国有林野の位置づけというものを明確にしておいてもらいたいと思う。その根拠は、たとえば国有財産法であるとか、あるいは国有林野法であるとか、あるいは国有林野管理規程というようなそれぞれの根拠がありますが、この林業基本法に言うところの第四条の国有林野の位置づけというものを、農林大臣としてはどうお考えになっておるか。
  50. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 林業基本法において国有林野をどう位置づけるかということでございますが、これは先ほど申し上げておりましたように、国有林野国土保全、こういうような大きな役割り、機能等につきましては、森林法あるいは国有林野法等、主として森林法によりまして規制されておる、こう考えております。林業基本法におきましては、森林一般の経済的な経営面等につきましての面を取り上げておりますから、その面におきましては合理的、経済的な経営を、この基本法によって国有林野についても行なっているという面を規制されている、こういうふうに考えます。
  51. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 国有林野の位置づけについて重要な、たとえば国土保全であるとか、あるいは国民保健の問題とか、あるいは先ほど言いました水資源の開発、確保の問題というようなことについては、何ら政府案林業基本法では任務を負わせていないわけですね。そういうことになると、これによって国有林野性格というものが大きく変貌するのではないかということも、国民は不安を感ずるわけです。したがってこの点については、特に大臣責任において、国民が納得できるような態度を明らかにしておいてもらいたいと思う。
  52. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私は、林野の持つ意義というものが、御説にもありますように、水資源の涵養という重大性を持っておりますし、あるいは治山治水面の国土保全という面も持っておりますし、あるいは国民の保健というような重大な役割りを持っておる。それを民間にまかしておくよりも、国のほうで責任を持って、そういう機能を十分保持、育成していくということが必要であるという意味におきまして、国有林というものがある、こういうふうに私は考えます。したがってその森林の持つそういう重大なる機能、それを国有林が果たす場合におきましては、森林法においてそういう基本的な問題も規定されておりまするから、国有林を含めて、森林法におきまして、そういう機能を十分発揮するように打ち出してある。そこでこの林業基本法は、森林の持つ経営面の点を主として規定しておりますので、国有林あるいは森林の持つ本来の国土保全面についての規定というものは、これからは除いてあります。でありますので、いまお話のように、そういう機能はもう捨ててしまって、経営面にのみ走るという誤解といいますか、認識を国民に与えるのは、どんなものだろうかというお尋ねだと思います。でございますが、そういう基本的な問題につきまして、決してこの林業基本法で粗末にするとか、それを阻害するというようなことはございませんので、その点につきまして、私どももさらにそういう本来の姿の認識を持ってもらうようにつとめたいと思います。そこで林業基本法の中にも触れてない面がないわけでもございません。第四条の二項でございますか、第一項にいろいろ書いてありますが、その二項で、「前項の場合において、国土保全その他公益的機能を有する国有林野については、」国有林野というものが、こういうふうに国土保全その他公益的機能を有する。こういうことを強調する意味におきまして、単に国有林ということではなくて、国有林の頭にこういう字句を入れておるというようなことについても、国有林の位置づけといいますか、機能というものを重視しておる、こういうことに御了解を願っておきたい、こう思います。
  53. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 ただいまこの条文の中では経営面だけを国有林については取り上げていると言うが、一体国有林経営とは何ぞやということになると、国土保全上の、たとえば保安林を中心とした林分そのものは経営でないかというと、そうではないでしょう。保安林もやはり国有林として、これは最優先的に経営しなければ、とんでもないことになるわけです。経済林的な国有林は、それは収益を目的として経営するわけですが、公共的な経営面とそれから経済性の経営面とが、これは両面あるわけですね。ですから国有林野についても、財産規定としては、企業林と、それから保安林等を含むところのそれ以外の林分ということに、これは国有財産あるいはそれを受けた国有林野法規定にも明確になっておるわけです。ただもうかる山だけを経営すればいいから、それだけを基本法に取り上げたということにはならないと思うのです。七百五十万ヘクタールに及ぶこの全体の国有林というものは、国家の責任経営しなければならぬと思うわけです。その経営の中における保安林の経営であるとか、国土保全上の事業というものは、やはり優先的な事業の経営として、責任を持ってやってもらわなければならぬわけでありますが、そういう点がこの基本法からは脱落しておるわけなんです。これは大きな欠陥だと思うのです。そう思わぬですか。
  54. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 経営ということにいたしますならば、いまお話のとおりです。保安林としても、あるいは国土保全その他の面におきましても、この森林をいかに育成していくかということでございますから、これも広い意味においてもちろん経営でございます。ただ、いまお話にもありましたように、経済的な資源としての経営といいますか、経済的な面をこの法案においては重点を置いておる、こういうことで申し上げたのでございますから、決して国有林の持つ公益的な面の経営をおろそかにするという趣旨はもちろんございません。ただこの法案そのものは、経済的な経営面中心として規定してある。したがいまして森林法あるいは国有林野法その他におきまして、公益的な面における保全といいますか、経営といいますか、そういう面は十分尊重といいますか、重要視して経営していくということは、これは当然のことだと思います。ただ二つの面があります。その経済経営面を主としてこの林業基本法規定している、こういうことでございますが、それによって公益的の面を粗末にするといいますか、無視する形ではないというふうに御了承願いたい、こう思うわけであります。
  55. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 ただ公共的な経営というものは、採算性から見て、それ自体の事業からは収益はあがらないわけでして、また国以外のものは絶対やらないわけです。全然利潤追求とか採算性のない、そういう国土保全的な事業を、国民の個々の責任でやれといっても、これはできないことですから、これは当然国家の責任において経営しなければならぬ。しかしそれは直接収支面の利益というものは出てこないか、その事業が及ぼす国民経済的な利益というものは、はかり知れないものが当然あると思うわけであります。ですからこういう点を、ただ当面の企業採算上の問題だけに限定して、これが経営的な部面だから基本法に取り上げる、公共的な部面は取り上げないというような形は、いやしくも基本法としての体をなさないというふうにわれわれは考えるわけです。  そこで次にお尋ねしたい点は、一体現在ある国有林、たとえば面積にして七百五十万ヘクタールですが、これが採算価値としては幾ばくの評価をしておられるのですか。
  56. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 現在の評価額で言いますと、ほぼ七千億になります。
  57. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 七千億ですか。そうすると一ヘクタール当たり幾らですか。
  58. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 七百五十万町歩でございますから、ヘクタール当たり十万円がちょっと欠けるということになります。
  59. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 国の採算としての帳簿価額はどうなんですか。
  60. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 これは昭和二十九年に再評価をいたしましたときの台帳価額であります。
  61. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これがですか。そうではないのじゃないですか。国有財産としての帳簿価額は、私の承知しておるところでは一ヘクタールが五千二百円、総額にして四百億程度ということになっておるのですが。帳簿価額ですよ。
  62. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いま先生がおっしゃいますのは、土地の価額だけを言っておられると思います。私が申し上げましたのは、立木その他も含めた価額でございます。
  63. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それでは四百億円というのは、これが土地価額である。結局七千億から四百億円を引いた残りの六千六百億円が、国有林の立木の価額ということになるのですね。
  64. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 先生のおっしゃいました四百億という数字につきましては、よく調査してみたいと思います。
  65. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 変ではないですか。一ヘクタール五千二百円で七百五十万ヘクタールということになれば、大体四百億になるのではないですか。こんな計算なんというものは子供でもやれるのです。
  66. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 その土地のヘクタールあたりの単価につきましても、先生のお説の五千二百円というのは、一応調査をしてみたいと思います。
  67. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 あなたのほうで調査しなくたって、帳簿を持っておるでしょう。国の財産として国民から委託されて持っておる帳簿の値段が幾らになっておるかということは、これは毎年法律に基づいて国有林の財産の現況というものは、報告書をつくって出すことになっておるじゃないですか。ですから再評価等をやった場合は、その年次によって金額が違ってくるかもしれぬが、たとえば昭和三十七年なら七年の時限の場合にはこうなっておるということは、これは毎年度報告しなければならぬことになっておるでしょう。だからどの年次でもいいのです。たとえば昭和何年の場合にはこうなっていますという答弁ができなければ、調査するなんということはおかしいです。調査なんというのはこっちがやることであって、あなたのほうは帳簿を握っておるのだから……。
  68. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 国有林野の全体の価額につきましては、先ほど私申し上げたとおりの価額が簿価になっておるわけでございまして、その土地の価額につきましては、ちょっといま資料を持ち合わせておりません。
  69. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 おかしいじゃないですか。私がヘクタール五千二百円で総体で四百億ではないかと言ったのに対して、長官はいま、それは立木を除いた土地価額であるという答弁が行なわれたのです。失言であればかまわぬですよ。何もどこまでも四百億でなければならぬというわけではない。だからたとえば立木と土地を区分して評価されておるとするなら、その内容というものはやはり明らかにされておらなければならぬと思うのです。
  70. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 いま林野庁長官のお答えしたのは、こうだろうと思うのです。土地と立木を含めての財産価額では七千億なんだ。そこで芳賀さんが一ヘクタールあたり五千二百円とすれば、土地だけの評価は四百億ではないか、それでそれを除いたものが立木の値段ではないかということだと思いますが、その四百億が一体いま手元にある調査では、土地の評価が四百億であるかどうか、いま一ヘクタール五千二百円で四百億になるかどうか、ちょっと資料を持っていないのでわからない、こういうふうに答弁しているのではないかと思いますが、なお調査させます。
  71. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえば土地ぐるみの評価であれば、それしかないというならかまわぬです。しかし立木と土地の価額が区分されておるということになれば、国民の財産を預かっておるのだから、その当面の管理者である長官であるとか、その責任者である大臣が、たとえば土地が北海道は何ぼとか、あるいは茨城県は何ぼということはわからぬでもいいが、国民全体から預かっておるこの山の評価額、あるいは帳簿上の価額というものは、総体において幾らである、立木において幾らである、土地においてどうであるというようなことくらいは、頭にないといかないと思うのです。これは一日三回めしを食っているのと違うと思うのです。国民に負託された財産の管理というものに対して、一体幾ら預かっておるかわからぬければ、これはおかしいじゃないですか。小さい問題でないと思うのです。国民から委任された財産の善意なる管理ということをおろそかにすると、管理も処分もでたらめになり、国民の期待にはずれた経営が行なわれるということになりがちだと思うのです。これは手持ちがないとすればやむを得ぬと思うのですが、これは何も持っておらぬでも、まず第一条というようなことで、頭の中に入れておいていただかないといけないと思うのですが、いかがですか。
  72. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 申しわけございませんが、この資料が見つかりましたから申し上げます。全体の固定資産といたしまして、先ほど七千億と申し上げましたが、七千七百五十三億でございます。それから土地は、これは先生のおっしゃるとおり四百三十九億でございます。それから立木つきの価額が五千八百五十六億、それ以外は建物、工作物その他でございます。
  73. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのば、これは農林大臣からはっきりしてもらいたいのですが、最近の国有林開放の動きに対して、政府として一体どうお考えになっておるか。その理由は、われわれの判断では、昨年七月政府が一日内閣青森県において東北を中心にして行なわれたわけですが、この一日内閣における池田総理大臣の発言というものが、今日の国有林開放の発火点となっておるということは、これはもう何人も承知しておる点ですが、総理大臣国有林開放の火をつけて、そうして一方においては農林大臣林業基本法を出すというようなことについては、これはまことに奇々怪々ということになるわけですが、一体政府としては、池田総理大臣国有林開放のあのような無責任な放言というものを尊重して、今後国有林経営やあるいは管理をやられるお考えであるかどうか。一方国民は、総理大臣のああいう発言を信用して、東北六県等が中心になって、国有林のうち保安林等を除いた以外の国有林は、これを全面的に開放すべきである、こういう声が一日一日大きくなって、これにまたあっちこっちからたきつけを持ち寄って特に与党の一部の議員の諸君が、どういう目的かわかりませんけれども、そういう法律をつくって、国有林を処分してしまうというような動きがまた非常に強いわけです。また一方関係府県の知事、あるいは特に全国の農業会議、あるいは全国農業会議所、これらが一斉に国有林開放の要求というものを大きく掲げまして、行動を展開しておるわけですが、こういう点については農林大臣として、もちろん政府を代表していかようにお考えになるのか、お尋ねしたいと思います。
  74. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 国有林開放ということばが、熟したことばかどうかわかりませんが、国有林につきましても、払い下げというようなことは前からやっておったわけでございます。しかし国土の総合開発とか、あるいは農業面から言いますならば、農業の体質改善を目ざす構造改善というような面、こういう面で国有林野活用をもっと大きくしていく、こういう面は出てきておると思います。そこで私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりまするところの国有林の存在価値といいますか、意義といいますか、国土保全その他公共的な面を持っているこの国有林でございますから、そういう面を阻害するようなことがあってはいけませんが、そういうことでない限り、あるいは国で所有しておったほうが、林業の面におきましても相当寄与できる、こういう面等もございます。そういう面をいろいろ勘案いたしまして、大体において農業構造改善あるいは国土開発上等に、国有林の払い下げでその方面に寄与したほうがいいという面がありますならば、具体的にこれを払い下げをするという方針は適当でないか、こういうように考えておるわけでありますけれども、これをむやみやたらと言っては、まことにことばが悪いことばでございますが、保安林とか国土保全以外は、全部これを民間に払い下げるべきだというような方針につきましては、私は反対でございまするし、政府といたしましても、そういう考えを持っておりません。あるいは法律案等を出そうという動きがあるというふうにも聞いておりますけれども、私もその法律を見ておりません。見ておりませんが、ただ何といいますか、安い値段で保安林と国土保全以外は、全部払い下げをすべきだということについては、私は反対でございます。そういう必要もないし、そういうことはあってはいけない、こういうように考えております。
  75. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 一体池田総理はどう考えておるのですか。当委員会に後日出席を求める必要があると思いますが、閣僚として、この池田総理の国有林開放に対する考え方は、いかようなものですか。
  76. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 池田総理の考え方も、大体私の考え方と同じだと思います。そうむやみやたらにといっては——私はことばの使い方はあまり上手ではありませんが、むやみやたらに開放するのだという考え方は持っておらぬと思います。やはり総理として国有林というものに対しての、先ほどから言っているような責任を持っておるのでございますから、そういう意味におきまして、私は池田総理も私の考えとほぼ同じではないか、こういうふうに考えております。
  77. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 この点は委員会池田総理の出席を委員会として求めることにしてもらいたいと思っておるわけですから、あえて農林大臣に追及することは避けますが、いまどういう動きかわからぬということを言っておられましたが、与党の一部の有志議員ということになっておると思いますが、衆議院の法制局に立法作業を依頼しておるわけです。その法律の名称は国有林処分特別措置法案ということで、立法作業をしておるわけです。これは衆議院の法制局に依頼しておるわけですからして、個人が恣意的につくっておるわけではないわけです。この法律案の題名から見ると、この際国有林を処分してしまおうというような、そういう発想から出ておるということがほぼ明らかなわけです。こういう動きがだんだん強くなっているということは、これは大臣承知しておられると思いますが、これと政府がお出しになった基本法との関係です。もしこの政府基本法が、たとえば今国会成立した場合に、この国有林開放の、与党が中心になるこれは、国会の一部の議員が動いているわけですからして、その動きというものはどういう影響を受けるか、それからこの国会政府林業基本法案成立しない場合に、この動きというものはどういうふうに展開されるのか、これはそういう政治判断ということになると思いますが、この点に対して大臣の的確な政治的な判断というものを聞かしてもらいたい。
  78. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 林業基本法をめぐり、あるいはいまの国有林のいわゆる開放というような問題をめぐって、林野問題がやかましくなってきておるおりでございますので、この法案国有林開放との関連はどうか、政治的な見通しはどうかということでございますが、私は林業基本法というものがこの国会で通過するということになりますならば、いまの一部において国有林を払い下げるというような考え方の動きは鈍ると思います。でなくて、これが通らないということになると、林業基本法よりもそのほうが利害関係が深いから大事だ、こういうことで、その方面の動きはあるいは活発化するかというような気もいたしますが、どうもちょっと見通しはなかなか私もここで明確な判断はむずかしいと思います。いずれにいたしましても、私は森林法があり、国有林に対しての基本方針をわれわれは持っておるのでございますから、それについて経済経営面林業基本法ができて、そうしてこの体制が整うということでありますならば、私は国有林の払い下げ問題等につきましても、最小限度といいますか、ほんとうに農業構造改善に必要な、あるいは国土総合開発面、あるいは畜産面等も関係ありますが、そういう必要な面にのみといいますか、そういうことに限定されるといいますか、そういうことに相なろうと思います。この体系が整わぬときに、向こうばかり進んでくるということになりますと、ちょっと私も反対の立場にありますが、困ると思います。そういう意味におきましても、この林業基本法をぜひひとつ通していただくように、よけいなことでございますが、私としては期待いたしておるわけであります。
  79. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえばこれが通る場合には、押えられるというわけですね。  一体この政府基本法のどの個所が、その押えとしての力を発揮するわけですか。
  80. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 この何条とか、どの部分ということを私は申し上げているわけではございません。林業に対する、森林に対する基本的な問題が、一応ここで一つの軌道に乗ってくる。すなわち森林法があり、あるいは国有財産法があり、国有林野法があり、あるいはここで経済経営面林業基本法というものが成立したということになると、大体森林に関する基本的な問題が軌道に乗ってくる。それであとは構造改善等に必要なものとかなんとかという、いろいろなものにつきましてのいまの払い下げの問題はあろうと思います。そういう問題は具体的にきめていけばいい問題であります。ところがせっかく林業基本法というものを出したけれども、まだこれが通らぬということになって、延び延びになっていますと、国有林問題等につきましても、この際一つ法律に基づいて、全面的な開放というようなことも進めようじゃないかというような、そっちのほうに機運が向いてきはしないかというような見通しでございます。これはほんとうの見通し的な見通しで、的確にここで申し上げる材料を持っての判断ではございません。そういう私なりの判断をしているということを申し上げておきます。
  81. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これは直接の関係はありませんが、たとえば農地被買収者に対する報償の問題等にしても、多年にわたって与党の議員の一部の諸君が強力に推進されて、まだ国会提案にはなっておりませんが、われわれの見通しから言うと、近い将来にそういうものが国会提案されることになるだろうと思う。われわれはそういうものに対しては、反対の立場を明らかにしております。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長   代理着席〕 たとえば報償法が出されるとして、報償すべき金額は、たとえば一千億であるとか二千億であるとかいうことは未定の問題にしても、それは法律をお出しになる関係の議員とか、それからたとえば自民党という政党が一千億、二千億の金を調達して報償するということではないと思うのです。その法律が無理に通れば、国民全体の血税でこれを報償するということに当然なるわけです。ですからその点は、政権担当者としては十分考えてもらわなければならぬと思います。おれの金を出すのだからいいじゃないかということであれば、また話は別としても、反対する国民からも血税を集めて、そうして農地被買収者報償という形で、血税をそれに充てるということになるわけです。しかしこれは金だけで済む問題です。貴重な血税ではあるけれども、これは金でおさまる。しかし国有林とか、森林の場合は、金でおさまるという問題ではないと思うのです。もちろんばく然とした開放に対する動きというものは、農村あるいは漁村等を主体にして、農漁村における住民の経済的な地位の向上をはかる、地方産業の発展に活用するということが目的であるが、これは裏を返せば、たとえば政府の農政の貧困とか、政治の貧困から発したしわ寄せというものが、農政の中で解決できない。最後の方法として、国民の共同の財産である国有林を処分することによって、農村、漁村における国民の窮状というものを、一時的に救うということにしかならぬと思うのです。ですからその経済的な困窮の原因というものは、たとえば農業政策の貧困にある、現在の政府の政治の欠陥にあるということであるならば、やはり農業政策なら政策とまっこう面から取り組んで、その政策の中で問題を解決するのが当然だと思うのです。それを国民の山を処分しなければ、当面の打開策がないというようなことは、政治の最終的な貧困ということになるのではないかと私は思いますが、赤城さんとしてはそうお考えになりませんか。
  82. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 私は、政治が貧困である、政策が貧困であるから、国有林の払い下げ問題が起きた、こういうふうには、考えておりません。この国有林の払い下げ問題が起きている原因等は、明治の維新当時でございますか、民有林——藩で持っておったものなどが民有林でなく、いわゆる国有林にほんとうに編入されて、こういうようないきさつがあったところにその声が大きいようであります、青森とかその他。そういうことでございますから、農業政策の貧困が国有林の払い下げ問題を惹起した直接原因というふうには、私は考えておりません。ほかの原因からこういう機運が一部にある、そういうふうに私としては見ております。
  83. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 しかしこの要求の指向するところは、農村、漁村における経済的な貧困というものを理由にして、これを解決するためには、国有林の処分を行なうことによって、あるいは農業生産の拡大をはかるとか、あるいは林業所得の増大を通じて、そうしてその地域の住民の利益を高めるというところに、開放要求のねらいがあるわけです。ですから、これは何も東京のような、大都会の人とか、一般の国家公務員であるとか、産業労働者の諸君が処分しろと言っているわけではないです。結局第一次産業部面に非常に断層がある。いろいろ政府は宣伝をするけれども所得格差というものはますます拡大する。どうもしょうがないじゃないか。結局目をつけたのが、この際国有林を処分して、それによって何とか当面を糊塗する以外方法がないじゃないか、行き着くところまで行き着いたような一つの打開策とした、そういう要求が底流をなしている。それにただ歴史的な分野として、明治維新当時こうであったということがつけ加えられただけであって、これはやはり否定することはできないと思うわけです。ですから、こういう動きが国民の一部にある、政党の一部にあるということを十分お考えの上に、今後林政というものを進めていってもらわなければならぬと考えるわけです。  そこで問題は、国有林国民的な経済利用というものを、国として怠った点があると思うのです。その点がやはり問題だと思うのです。たとえば国有林野法にしても、国民が相当国有林利用できる道を実は開いてあるわけです。たとえば部分林の制度であるとか、共用林野の制度であるとか、あるいは地元における総合的な国有林高度利用の要綱等を見ても、十分国民にPRして、こういうことがあるのだ、この道が開かれておるということがわかれば、現行制度のもとにおいても、第一次産業に従事する農村、漁村等においても、これを経済的に十分利用することが可能だと思うのです。そういう道はあるけれども、それをことさらに閉ざして、いかにもそういう道がないように国民に考えさしている。これこそ昔からの国有林の官僚性というか、封建制というものから脱却されていないと思うのです。この点はどうなんですか。国民国有林野から経済的な利益を与えるという場合は、何も権利の移動をしなければ解決ができない問題ではないと思うのです。部分林の問題にしても、最高八割以内までは国民の側が分収にあずかることができるという規定になっているわけでしょう。全部というわけにはいかぬにしても、共有林の契約を設定した場合においても、たとえば牧野等の問題は、モデル的な牧野の設定等については、国有林野事業の一環として、機関的な設備というものはこれを行なうことができるという道もあるわけです。ですから、農業と林業との関連から考えた場合、たとえば現在の農業基本法の第二十二条には、農業と林業との関係というものが出ておる。ですから、零細な農業と零細な林業経営と、これを総合した農林的な新しい経営というものを当然考えなければならぬが、やはり林業にしても、基盤というものを国が十分確保して、それに国民が参加して利用するという道を大きく開くべきでないかというふうにわれわれは考えておるわけです。われわれの森林基本法というものはそういう目標に立って策定されておるわけですが、この点は一体どう考えますか。
  84. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 その点は同じです。私どもも部分林あるいは共有林の活用というものを、いままでもはかってきておりましたが、これからも十分これははかっていくべきだと思います。問題は所有ではなくて、利用なんです。その利用面において、十分活用できるような方向へ持っていくということにつきまして、私も同感でございまするし、そういう線はなお進めていくつもりでございます。
  85. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そういう大事な点が政府基本法には載っておらぬでしょう。それでは部分林の政策に対しては、計画的に一体どうやるとか、共有林野問題等に対しては、これをとうふうに高度に進めて、そして第一次産業との結合の中でこの問題をどう発展させるかというような点が、その根拠としてどこに明らかになっておるわけですか。つづり方の文句のように、あっちこっちに少しぐらい書いてみたところで、何にもならぬわけですからね。特に今後、たとえば畜産農業を例にとっても、飼料資源というものは全く枯渇して、濃厚飼料の六〇%が輸入に依存しているということは、常に大臣も苦慮されておる点です。ですから農業と森林との関係を考えた場合において、やはり高度利用の立場から、現在の国有林だけに限定しないで、とにかく国土の七〇%を占める森林原野全体の活用というものをどうやるかということを国として考えないと、単に国有林だけを目標にして、森林の三分の二を占める民有林の問題を放置しておったのでは、基本的な問題の解決にはならないと思うわけです。ですから民有林の活用等の問題にしても、たとえば昭和三十三年に分収造林法というものを新しくつくって、民有林の所有者あるいは経営者とか、その地域におけるそれに依存しようとする労働を提供する従事者、この三者が民有林の分収方式のもとにおいて、民有林を広く活用するという道も開かれておるわけだけれども、さっぱりそれは前進していないのじゃないですか。そういう点を、この林業基本法の中で一体どういう方向を示して、これを実行する場合においてはどのような関連法実体法というものを制定してやるかということが、事前に明かにならなければ、単に基本法だけが成立すれば、このような開放の動きというものを封ずることができるなんということは、これは考えとしては甘過ぎると思うわけです。ですからそういう長期展望の上に立って、農業の政策との関連の上に立って、この政府林業基本法というものはどういう役割りを果たそうとしておるか、そういう点についてこの際できれば明らかにしておいてもらいたいと思います。
  86. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまの国有林野の農業構造改善についての利用につきましては、この法案におきましても第四条の第二項、それから第十一条にそれぞれ、国有林野で行なわれる部分林の設定と、あるいは地元施設としての事項規定をしております。なお将来に対する農業発展に関連しての国有林野活用につきましては、これはすでに農業構造改善について国有林野活用を進めていく方針を明らかにいたしておるつもりでございます。
  87. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 この点は大事な点ですから、農林大臣からも重ねて御答弁を承っておきたい。
  88. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 いまの活用の問題について、基本法方針規定等を欠いておるではないか、基本法では当然そういうことを規定すべきではないかというような御趣旨かと思います。いま御質問、御指摘の点にもありましたように、分収林、そういう面につきましてはすでに御指摘の法律のようなものもありまするし、実施しておるわけでございます。でございますので、特にそういうものを基本法規定しなくても当然やるべきことであるので、規定はいたしておりませんが、いま林野庁長官からも話がありましたように、部分的にはそういう意味のことはあります。たとえば第四条の二項には、「その所在する地域における農業構造の改善のためその他産業の振興又は住民の福祉の向上のため用いることを必要かつ相当とする国有林野については、これらの目的のため積極的に活用が図られるように努めるものとする。」とありますが、この意味は、いまお話のように共有林とか部分林地帯を中心として活用をはかる、こういう意味でございます。また第十一条等におきましても、「国有林野についての部分林の設定の推進、入会権に係る林野についての権利関係近代化等必要な施策を講ずるものとする。」とございますが、基本法でございますから当然やるべきこと、いままでやっておりますことを、こういう表現において規定しております。それを長期見通しの計画においてどういうふうにするかということにつきましては、先ほどから再々申し上げておりますように、この法律ができてから具体化いたしまするし、またこれについての関連法案をどうするかというお尋ねもございましたので、この基本法に対する関連法案、あるいは補完する意味法律等も整備して、従来やっていることをなお弧化していく、こういうつもりであるということは再再申し上げているとおりでございます。そういう意味におきまして、これから進めていきたい、こう考えます。
  89. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 どうもわれわれ社会党がりっぱな基本法を持っておるせいもあるが、かまえが弱いですね。宣言法だからお経の文句だといっても、たとえばこのお経だけ毎日繰り返して読んでみても、何も効果というものはあがらぬと思うのです。赤城さんも私も曹洞宗ですが、曹洞宗のお経なんか私どもは知りませんが、しかしお経の文句を知らなくても、その精神というものを体得して、それを実現する、実行するという意思があるかないか。発現するかどうかというところに問題があると思うのです。基本法に、ここにちょっと書いてあるからいいじゃないかといったって、これがどういうふうに行動としてあらわれてくるかというところに、かかって問題があると思うのです。だからいままでもそういう規定があったとするならば、国民全体の持ち山なんだから、これを国民全体の利益のために経営し、活用するということは当然なことなんです。その啓蒙とか宣伝とか趣旨の徹底というものは、これはどうしても欠けておったと思うが、この点は田中さん、どうですか。
  90. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 その点につきましては、先ほども御指摘がございましたように国有林野法等にその制度はありながら、それのPR等が足りなかったのではないかという点については、十分反省をしたいと思いますが、この林業基本法の立法の機会に、将来に向かって地元施設を利用するものの立場を強化するという方向で改善をし、広く農業あるいは林業等の地元の経済の発展のために寄与いたしたい、こう考えます。
  91. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そこで戦後約二十年たつが、たとえば戦後の緊急開拓をはじめ、これは食糧増産とか、人口の吸収という、戦後の復興的な目的のために国有林あるいは国有未開地、民有未墾地もそうですが、これが農地として造成され、あるいは農用地として活用されてきておるわけなんです。だから終戦直後のたとえば国有林野の面積と現在の面積というのは、相当縮小されておると思うのです。この点は、それでは国有林野中心として開放された未墾地というものは、たとえば所管がえ、所属がえされて、そうして農地あるいは農用地として活用されたわけであるが、その効果というものがどうであったかというような点については、これは林野庁としても調査されておると思いますが、農地局の管理部長も来ておられるので、こういう点についてはやはり国有林を処分すべきである、こういう一部の国民の動きに対して、処分した場合の結果というものは、過去の実績に徴して一体どうなるかということは、これは一つの事例として明確にしておく必要があると思うわけなんです。これは林野、農地両当局から、具体的な数字等をあげて説明していただきたいと思います。
  92. 小林説明員(小林誠一)

    ○小林説明員 お答え申し上げます。終戦後国有林野から開拓財産としまして所属がえを受けました面積でございますが、これは大体二十六万六千町歩、その中で売り渡しました面積が十九万五千町歩でございます。端数は省略いたします。そのほかに国有林野へ現実に開拓の用に供さないということで、お返しいたしましたものが約一万二千町歩でございます。現在約五万七、八千町歩のものを開拓財産として持っておるわけでございます。これらの所属がえを受けました土地につきましては、一般の買収を行ないました土地と一緒に合わせまして、それぞれ計画に従いまして入植、増反、それぞれの目的に従いまして売り渡しをいたしておるわけでございます。それぞれ売り渡されたものにつきましてどのようになっておるかということは、全体の面積についてはわかりますけれども、この林野の中でどれだけが開墾されたという内訳は持っていないのでございます。そういうことで現在開拓者の農地あるいは付帯地として利用されているものと考えておるわけであります。
  93. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまお話がございましたが、所属がえしました面積が三十八万町歩でございます。それから国有林野整備臨時措置法でいたしましたのが約十四万町歩、それから町村合併促進法と新市町村建設促進法でいたしましたのが三万八千町歩、合わせまして五十五万九千ヘクタール程度でございます。そして所属がえの分につきましては、いまお話があったわけでございます。それから林野整備あるいは市町村合併等で渡しました分につきましては、おおむね良好に管理されていると思いますが、中には必ずしもその当初の売り払いの趣旨に該当しないというものもないわけではございません。おおむねは売り払いの趣旨に沿って管理されているように見受けられます。
  94. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 先ほど小林さんから、この開拓財産からまた林野庁に一万二千町歩ですか、所属がえしたというようなお話がありましたが、あと開拓財産として五万五千町歩、まだ保有されているわけですね。これらはどのように処理するお考えですか。
  95. 小林説明員(小林誠一)

    ○小林説明員 この五万七千町歩の現在保有しております開拓財産問題についてでございますが、これは現在ほかの開拓財産と合わせましていろいろ調査をし、処分の促進をはかっておるわけでございます。見通しとしまして、まだ現実に確定したわけではございませんけれども、大体いまの見通しでは、今後増反者等に売り渡されるものが三万七千町歩ぐらいになるのではないか。あとの二万町歩が開拓財産に使えないものになるのではないだろうか。最終的なものではございませんが、見通しとしてはそういうことでございまして、それらの使えないものにつきましては、これは林野にお返しするなり、あるいは農地に介在する小さな土地等でありまして、林野庁のほうでこれはもう所属がえを要しないというものについては、不用地処分として自作農特別会計から一般に譲り渡すというようなことになると考えております。
  96. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 当時は戦後の緊急措置として未懇地の買収売り渡しとか、あるいは農地造成、開拓の施策が進められたわけでして、結果的に農用地不適地として、これを適正に処理しなければならぬ結果が生まれるのはやむを得ないとしても、ただ今後の問題として、国有林ももちろんでありますが、民有林を含めてこれを森林として国民経済的に活用する場合、あるいはまたその適地を選定して農業発展の部面に活用したほうが、国民経済的な利点が多いという判断は、これは随時行なわれるべきでありますが、そういう高度利用判断に立った場合、現在あるこの国有林あるいは民有林を合わせて、その面積の中で、たとえば農用地として、農地あるいは草地、放牧地等を含めてでもいいですが、それらの農業発展に活用したほうが効果的であると判断される適地というものは、総体でどのくらいあるという調査を行なわれておりますか。
  97. 小林説明員(小林誠一)

    ○小林説明員 たいへんむずかしい問題でございますが、この農地なりあるいは草用地として物理的に開発できる土地がどのくらいあるかということにつきまして、その問題は結局個々の土地につきまして、むしろそれを林地として利用したほうがいいか、あるいは農地として利用したほうがいいかという、比較判断の問題になってくるかと思います。ことに最近の開拓の問題といたしましては、地元の創意に基づきまして、主として増反者、帰農家の経営安定なり、あるいは構造改善に資するというような観点で、地元増反を中心にしてやっておるわけでございます。その発意がどこにある、またどのくらいの程度ができるかということについても、判断の資料にしなければならないわけでございます。そういう意味におきまして、現在の段階におきましてはそれぞれ、構造改善事業でございますとか、あるいは草地改良事業でございますとか、開拓事業でございますとか、そういう地元の創意に基づく問題につきましで、上がってまいりましたときに、都道府県なりあるいは営林局でそれぞれ、現地についてどういうふうに利用したらいいかということを御相談の上きめていたのが、いまの制度でございます。したがって開拓適地がどのくらいあるかということにつきまして、いまのところ計数的なものを持ち合わせていないわけでございます。
  98. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえば国土調査法等に基づいて、地籍調査、あるいは土地の利用区分等の計画が未熟であるということは、調査ももちろんそうですが、これは承知しておりますが、たとえば農地局の場合には開拓適地選定基準ですか、それはまだ生きておるわけでしょう。そういうものに照らして、たとえば森林を対象にして、国有林、民有林を問わず、農用地としてこれは適当である、基準に照らして適当であるというような調査は、これは行なっておるべきであると思う。これは当委員会で先般土地改良法の改正法案審議をした場合にも、資料として農地局長に要求したわけですが、これはまだ明らかになっておらぬし、提出もされておらぬのですが、困難な点はあるとしても、せっかく国のそういう規定があるわけですから、これに照らした場合、たとえば森林面積が全国で二千二百万町歩もあるという場合に、これが全部森林でなければならぬということでもないと思うのです。ですからそれを農業上に活用した場合と、現存する森林としてそれをさらに生産力を高めさして、国民経済的に活用したほうがいいか、これは判断にかかわる点ですが、たとえば農業の面から見ても、食糧にしても畜産物にしても、国内自給度というものはだんだん低下するような傾向です。多分に外国に依存しなければならぬ。林業を通じても毎年毎年需要が増大するのに、供給が追いつかない。結局外来に対する依存度がすでに三〇%以上になっておるというこの現状から見ると、農業の部面でも生産を拡大しなければならぬという要請は強いが、林業の面においてもやはりその要請は強いということになると、これは利用に対する価値判断だと思うのです。どっちに従属するということはなかなかできがたいと思うが、この際集約的に農業の生産森林の総生産をどう高めて、国内における自給度を高めるかということは、非常に大きな問題になるわけです。やはり国として土地の利用区分ができておらぬ、国土の完全な調査ができていないということは、まことにこれは遺憾な点ですが、大勢としてどうだというくらいなことは、皆さんおわかりにならぬわけでもないと思うのですが、どうですか。これは畜産局長としても直接の責任はないとしても、畜産問題で毎日頭をいためておるわけですからして、全部えさを外国に依存したほうがいいということを考えていないと思うのです。そうなれば飼料の給源をどこに求めるかということは、当然関係した問題になるわけです。これらを優秀なお三人からひとつそれぞれ聞かしてもらいたい。
  99. 檜垣政府委員(桧垣徳太郎)

    ○檜垣政府委員 農業全体についての、今後開発されるべき適地がどのくらいあるかという点は、非常にむずかしい問題であります。私も十分承知をいたしておりません。いたしておりませんが、私の畜産局の関係では、ただいまお話もございましたように、日本の畜産の発展に伴って、飼料の自給力が伴わないという現状でございます。今後もさらに畜産の需要ないし生産はふえる、またふやす必要があるという見通しのもとでは、国内における飼料の自給源をいかに考えていくかということは、非常に重要な問題であるというふうに考えておりまして、特に草食性の動物であります乳牛及び肉牛につきましては、畜産経営のあり方からも、またただいまお話がありましたような国民経済全体の立場からも、良質の粗飼料によって生産を合理的に行なっていくということが必要でございますので、そういう見地から完全なものではないのですが、将来土地改良法による長期計画の調査の前提といいますか、そういうことで、都道府県を通じました草地としての利用可能の面積というものを求めたことがあるのでございますが、その数字を集計いたしてみますと、大体全国で八十二万町歩程度の草地としての適地があるということでございますので、別途私どもが畜産の生産目標を家畜改良増殖法に基づきまして、昭和四十六年の畜産物の需給関係から求めました要飼養頭数というものを目標として掲げておりますが、それを基礎にして算定をいたしました場合の飼料給源、特に良質な粗飼料給源のために、どれだけの土地が要るかということをやった一つの試算があるのでありますが、それによりますと、昭和四十六年までにいわゆる草地の造成改良ということで、累積五十万町歩程度の事業を必要とする、それから既耕地において飼料作物の延べ面積を百万町歩程度まで伸ばす必要がある。現在大体五十万町歩程度でございますが、これを約倍の百万町歩程度まで伸ばす必要があるというような試算をいたしたものがございます。これはあと農林省の全体の生産の見通しなり、あるいは土地利用の見通しなりということに消化されておりませんけれども、私どもとしては一応そういうことを目標にして、今後の施策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  100. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 農地局のほうはどうですか。
  101. 小林説明員(小林誠一)

    ○小林説明員 先ほどの開拓適地選定基準というものが生きているのではないかというお話でございますが、これはこのたびの国有林を構造改善のためにどう使うかという場合に、物理的にこういう土地は農耕地として適当でないという意味から、たとえば傾斜でございますとか、あるいは土層でございますとか、あるいは土性、礫の含有度等の基準について、規定しているのでございます。あるいは一般の開拓パイロットにつきましても、同じようなものがあるわけでございます。一方また国有林につきましては、保安林とか一種林とか、いろいろあるわけでございます。それらを調整してどうなるかということは、非常に膨大な作業になるわけでございます。またそのほかの国土利用というものもあるわけでございます。農地局だけでできる問題ではありません。全体の問題としても、非常に長期間を要する問題であると考えております。現在のところ、そういう意味におきまして、全体として農耕適地はどのくらいあるかという資料は、ここで申し上げる数字は持たないのでございまして、まことに残念でございますが、この点につきましては御満足のいく御答弁ができないのでございます。
  102. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 ただいま檜垣さんから、ある程度数字をあげて説明がありましたが、たとえば諸外国の実例を見ても、ちょうどいま農林大臣赤城さんが団長になって、昭和三十年ごろ国会から私たち派遣されて、欧米並びに中南米の農業事情調査に行ったわけでございますが、たとえば山岳地帯のスイスにおいても、農用地の利用面積というものは国土の四三%に達しておるということを、われわれは現実に調査してきたわけですが、わが国の場合には、農用地が全体の二六%ぐらいしかないということですから、これは集約的に経営すれば、草地を含めた農用地の利用面積というものは拡大の余地はあると思うのです。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕 ただそれを七百五十万ヘクタールの国有林だけに求めるということになると、大きな問題があるわけです。むしろ千四百万ヘクタールに及ぶ、放置されたような状態に置かれておる民有林というものに対する国民経済的な利用をどうするかということが、大きな問題になるのではないかと思いますが、こういう点に対しては、一体農林省のそれぞれの当局としては、どういう判断の上に立っているのですか。
  103. 檜垣政府委員(桧垣徳太郎)

    ○檜垣政府委員 今後の国土利用という観点で、たとえば私どもの草地の改良造成を進めてまいるという場合に、その土地を国有林のみに求めるということでは無理だろう、むしろより広い民有林等をあわせ考えるべきではないかというお話でございますが、私どももまさにさように思っております。数字がコンクリートなものではございませんので恐縮なんでございますが、先ほど申し上げました約八十二万町歩の草地の造成改良の適地と思われる面積の中でも、出ております数字を分析してみますと、国有林に約十八万町歩程度の面積が入っておるのでございます。その他は個人有あるいは共有、公有、農協有、あるいは開拓財産——これも国有財産でございますが、そういうものが他の部分を占めておるのでございまして、お話のように国有林のみに草地の基盤を求めるということは困難であろう、またそういうことはできないことであろうというふうに思っております。なお今後それをどう進めるかという問題は、今回改正になりました土地改良法に基づきます草地改良の総合計画調査というものが進むはずでございますので、私どももその調査の中で問題を具体化していくように計画いたしたいというふうに思っております。
  104. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 先日民放テレビで、檜垣さんはなかなか男前よく写って、乳価問題ではどうもあいまいなことを言っておったが、特に飼料資源の確保の問題では、相当真剣な顔つきで語っておられたのを私も見たわけです。ある程度勉強されておると思うので、ひとつがんばってもらいたいと思いますが、民有林関係はあとに譲って、長官にお尋ねしたいのは、国有林は言うまでもなく国民の共有の財産ですから、これは国民的に利用するのは当然でありますが、先ほど部分林、共有林野の問題も出ましたが、国民が直接国有林に就業する、そこで働く。いわゆる国有林国民の就業の場として提供するということは、必要だと思うわけです。そうじゃないですか。ですから、国有林で働く国民である労働者に対して、一体国有林としてはこれをどういうふうに処遇するのかということは、国有林の任務からいっても大事な点だろうと思う。経営面で、部落林とか共有林野の設定をして、国民活用することはもちろんであるが、国有林自体が行なう事業に国民が参加して、自分の山で働く、就業の場をそこに求めるという場合には、これは十分積極的に配慮して取り扱わなければならぬと思いますが、こういう点にも、施策の上で欠けている点があるのじゃないかと思うわけです。たとえば昨日、第二組合の代表の参考人が言ったとおり、月給取りだけの職員の山である、それ以外は労務者だから、どうなってもかまわぬというような思想で、国有林の持ち主の国民に接するということは、これは不届き千万なことになると思うのです。ですから、月給制の職員はもちろんであるが、たとえば定期的な作業員あるいは臨時的な現場作業員が、自分の山で働きたいといって熱意を持って参加する場合、これは国として十分な配慮をする必要があるのではないか。そのために特に林業基本法で——それは従業者ではあるけれども、労働者でもある。労働者に対しては、政策を通じて雇用の安定をはかりますということをうたっておる以上、国有林で直接国民として、自分の山に参加して働いておる人たちに対して、政策的に雇用の安定であるとか、最低賃金の保障の問題であるとか、あるいは社会保障制度を適用する問題であるとか、こういう点は基本法を通じ、あるいは現在の国有林野経営の精神を通じて、一体今後どうなさるか、その点についてお尋ねしたい。
  105. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 国有林は、いまの地元施設制度等の運用を通じまして、地元の福祉に寄与すると同時に、またそこに賃金収入の道を与えるということで、この面でも地元の人々の福祉に貢献をしてまいったことと思います。それで国有林の直営事業その他国有林野で必要といたします労務につきまして、一般的には農家の余剰労力を活用して、造林なりあるいは伐木なり、そういう仕事をやってきたというのが、歴史的な経過でございます。それで今後におきましては、そういう林業政策のたてまえからいいましても、地元の福祉に寄与していくという意味で、その地元の人たちに、国有林でできるだけ安心して働ける、しかも気持ちよく働いてもらうというための国有林としての仕事の仕組みも、これがつながるように考えていかなければなりませんし、また一方、もろもろの厚生施設についても、改善をはかっていかなければなりません。また失業保険その他の社会保障の面につきましても、できるだけこれが適用されていくように配慮していく必要があると考えまして、すべて国有林に働く人たちのいろいろな面での改善をはかっていきたい、こう考えております。
  106. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえば現場作業員の問題についても、今後国有林としても、民有林としても、苗畑事業というのは非常に重要だと思うのです。樹種の改良とか、更新の問題があるが、とにかく成長の基本をなす苗畑育林事業というのは一番大事だと思う。たとえば林野庁の苗畑で働いておる婦人の作業員の一日の賃金は幾らですか、知っていますか。
  107. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 苗畑の婦人賃金を申し上げますと、これは平均でございますが、一日四百九十八円でございます。
  108. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それは高いほうじゃないですか。たとえば男子と女子作業員と区分するとか、総平均ではなくてもう少し……。
  109. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまちょっと——すぐお返事いたします。
  110. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 すぐわからぬですか。あなた方は現場作業員をどう考えておるのですか。これは労務者だからどうなってもかまわぬということでいるのか。給料取りの場合は、自分の給料はわかる。それぞれ長官にしても局長にしても自分の給料はわかる。また自分の周辺の高いクラスはわかっても、一番末端の、営々として働いている仲間の給料が幾らになっておるか、日給が幾らになっておるかということは、わかりづらいかもしれませんが、ここが一番大事な点だと思うのです。国有林の事業の底辺的な役割りを果たしている現場の作業員、定期的あるいは臨時的な非常に不遇な作業員の、林野庁がきめておる賃金がわからぬというのはおかしいじゃないですか。これは不勉強どころの問題じゃないですよ。あなた方、自分の給料はわかるが、きょうも太陽のもとで営々として苗畑で働いておる作業員が、一日八時間を一体幾らの賃金に甘んじて、熱意を燃やして働いているかということがわからぬようで、国民の山の経営はできないと思います。
  111. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 苗畑の作業の賃金でございますけれども、先ほど申し上げましたのは、まず女子の賃金だとお考えになっていただいてけっこうでございます。
  112. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 私の住んでおるところは旭川営林局の管内が多いわけですから、農業に限らず、林業問題にわれわれ委員会関係もあって関心がありますから、苗畑で働いておる皆さんにお会いする機会が非常に多いわけですが、昨年は旭川営林局においては婦人の一日の賃金は大体四百七十円程度なんです。私は聞いて、四百七十円というから、一時間にしてはちょっと高いような気もするが、一日一ぱい働いて毎日来て四百七十円しか渡らぬと言うので、一体長官はそれでいいと思って作業員の賃金をきめておるかどうかということを疑ったわけですが、そういう実情のわからぬという原因は一体どこにあるかということなんです。きのうもちょっと申したが、最近長官の勤務年限も短いでしょう。もとは三年は必ずつとめて、三年たてば全国区の参議院議員に出るから、三年つとめてないと交代時間がこないから、林野庁長官は大体任期三年という定評があったが、近ごろは吉村さん以降そのルールがちょっと乱れたように見えるわけです。田中さんも出るとすれば、来年選挙ですから、いまごろからやめてかからぬと、まさか前日まで長官をやって、さあ競馬というわけにもいかぬと思うのです。以前は三年たてば参議院に出るということで、長官の任期はわりと長かったが、それ以下の部長クラス、それから全国の営林局長の任期は、非常に短いわけです。最近は地方の営林局長の任期は平均一年くらいでしょう。そんなものではないですか。だから首脳部の在任期間が非常に短い。転々として回っておる。郵便集配人みたいにぐるぐる回っておるわけですから、現地の経営の実態がどうであるとか、長期計画がどうであるとかいうようなことはわからぬと思うのです。そういう点について現場作業員の賃金の問題と労働条件というものがどうなっておるか、適当であるか不適当であるかという判断は、責任者としてわからぬと思うのです。国有林経営長官の権限もあるが、地方の営林局長にまかされた権限も相当多いわけです。また営林署長にまかされた権限というものも相当あるが、やはり中心は営林局長だと思うのです。この局長が赴任して一年足らずでまた次に交代するということになった場合、現地において国有林経営を担当する局長として、一年ぐらいで十分仕事ができておるのかどうか、一体どうなんですか。そういう点に対して率直な意見を聞きたいと思います。
  113. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 在任期間の問題につきましては、これは仕事の性質から申しましても、あまり短い期間で移ることが好ましくないということは、お説のとおりでございます。それでそういう考え方で進めてまいりたいと考えております。  一方、賃金につきましては、先ほど申し上げましたのは昭和三十七年度の平均賃金でございまして、これはそれぞれの職種別、地域別の標準賃金と申しますか、そういうものが基礎になって、そうして団体交渉できまってまいる。またこれが調停なり裁定できまってまいる、こういうふうにして賃金の決定は行なわれておるということでございます。
  114. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 大臣、ちょっと座をはずしておられましたが、国有林の従事者に対して、賃金とか処遇は一体どうなっておるかということを、いま長官に尋ねておったわけです。これは私のほうは現地の事情をよく知っておるわけですが、たとえば全国の営林局、営林署管内に苗畑事業というものが盛んに行なわれておるが、この苗畑で働く従業員は主として婦人が多いのです。その賃金がどうかというと、昨年私が現地で働いておる人たちに確かめた金額は、一日四百七十円程度ということになっておる。最近、農村の臨時的な労力を雇う場合、田植えの場合には、北海道も内地府県も同じと思いますが、婦人の賃金で、車で送り迎えをして昼食を出して一日千円程度ということになっておるわけです。ですから農村におけるこういう、たとえば賃金の事情を見ても、労働力が非常に枯渇しておる。国有林事業においても労働力の確保ということがなかなかむずかしいと思うのです。しかし幾ら国民共有の山であっても、婦人一日の熟練的な労働に対して、四百七十円そこそこでいいのだというわけにはいかぬと思うのです。それは赤城さんの奥さんにしても、田中さんの奥さんにしても、四百七十円やるからちょっとやってくれと言われても——これは一番責任のある大臣長官だから、ほかの人より先に行って働いてもらわなければならぬが、四百七十円ではちょっと出かける気にならぬと思う。こういう問題が幾多あるわけです。国有林というものは国民利用する場であるし、特に労働を通じて国有林所得確保の就業の場としなければならぬ持ち主である国民もおるわけですから、そこで働いてくれる国有林の持ち主の国民に対しては、少なくとも一般の労働者と同一水準における処遇というものは、考えてもらわなければいけないのじゃないかというふうに考えるわけです。そこで、たとえば関連法の問題になりますが、社会党としてはこの三月に国有林労働者の雇用安定法案をすでに提案して、何とか与党自民党の諸君協力も得て、これを成立させたいというふうに考えておるわけでありますが、この種の法案は、われわれが議員立法として出すまでもなく、政府自身が国有林の現場作業員を中心としたそれらの諸君の雇用の安定、あるいは社会保障制度の適用の面を配慮して、法制化されるべきでないかというふうに実は考えまして、それで大臣が来られるまで、いま長官と質疑をかわしておったのですが、こういう点に対しては大臣としていかようにお考えですか。
  115. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 実態はいまお話のとおりだと思います。また私どももことしの予算編成のときに、林業従事者の給与等につきましても相当骨折ったのでございますが、たいへん格差というか、ほかと均衡がとれないような形でございます。いま関連法案のお話もございましたが、そういう意味において私どもといたしましても、山地、僻陬地における農業の実態あるいは林業の実態、これに伴う所得問題等もございますので、そういう面を調査して——調査する予算もことしの予算に盛られておるわけでございます。そういう調査等も待って、山地農業、もちろん林業中心とした、林業関連したものでございますけれども、そういう問題等につきまして前向きの措置を講じていきたいということで、せっかく検討中でございます。御趣旨の点は十分私たちも了解といいますか、頭に置いておるわけでありまして、そういう方向へ近づけたいと考えております。
  116. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 月給制以上の従業員は雇用関係は継続していくわけですから——。しかし待遇の内容がいいというわけじゃないのですよ。先般の公労委の仲裁裁定の結果を見ても、公共企業体現業関係の中では、林野の賃金水準が非常に低い。ですから、ある程度格差の是正も必要であるということで裁定が出たことは、大臣も御承知のとおりですがへもう一つは、持続的に雇用関係を結ぶことができない。作業の実態によって、たとえば先ほど言った苗畑の事業とか、あるいは造林の事業にしても、伐木の事業にしても、一年間定着してやるということはなかなかできがたい条件の制約があるわけであります。しかしその事業というものは毎年毎年、繰り返し繰り返し、将来何百年、何千年とやっていかなければならぬことですから、長期的に見ればその事業は持続性があるわけです。ただ季節的に休止されなければならぬという一つの特徴を持っておるわけですから、その休止中の賃金とか所得の面については、たとえば失業保険の制度に基づいて適用を受けられるような努力を、全林野の労働組合等が中心になって進めてきたが、これも長官はじめ当局側の諸君が冷淡で、なかなかむずかしいということになれば、失業保険制度に林野庁として国有林関係で負担すべき金額というものは、相当額に及んでおると思う。失業保険の制度から見て、雇用者であり、いわゆる経営者側の負担すべきもの、あるいは国家としてその制度に負担しなければならぬ金額というものは、計算すればわかるわけです。ですから、そういう失業保険の状態、雇用を断続的に繰り返していくよりも、その休止期間というものは事業の特徴上やむを得ないものである、しかしまた明年度のその季節には必ずその人たちに就業してもらわなければならぬ、雇用を再開して働いてもらわなければならぬということになるわけです。  そこで、これは新しい制度の問題でありますが、一年間のうち、たとえば六カ月、あるいは七カ月就業しても、その期間以外にどうしても仕事がない、失業状態になるという場合は、次の事業再開のときには、またその人たちの労力というものを供給してもらわなければならぬわけですから、その休業期間中を、一応次の事業再開に備えて待機するという形で、これを制度化したらいいじゃないか。そういうことになれば、その事業休業中の賃金、所得に対して、国は全額とはいえないとしても、就労しておるときの基本賃金に対してたとえば六〇%以上の休業手当等を支給する算定の基礎というものは理論的に出るわけですから、失業保険よりもさらに高度な制度を適用して、長期的に国有林野に就業する国民が、自分の持ち山に働くという意欲を持っておる場合の就業の場として、それを制度の中で解決するというようなことは、少なくとも近代国家においては、そういうことを制度化して実行に移すべき時代であるというふうに考えるわけです。ですからこの点は大臣としても、社会党提案国有林野労働者の雇用安定法案内容というものはお読みになっておると思うわけですが、議員提案法律であっても、あるいは野党が主体になって提案した法律であっても、農林大臣として、あるいは林野庁長官として、これらの新たなる制度に対しては真剣に検討を加えて、それが是である、当然であるというような場合においては、われわれは何も議員提出にこだわるわけではないわけですからして、むしろ政府責任でこれらの問題を失業保険制度より、さらに高度の社会保障制度、あるいは雇用の安定とか賃金の確保とかいうことで解決することは、必要であるというふうに考えるわけです。このことが国有林で行なわれれば、民有林関係の労働者のいろいろな問題等についても、次の時点でこれは解決ができると考えられるわけですから、この点については農林大臣として真剣な御配慮を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  117. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 私ども議員提出法律案だからということで、粗末にするというような考えは持っておりません。従来とも議員提出法律案で通過したものもございます。そこでこれが賃金とか雇用とか、あるいは社会保障的な面において、私どもも取ってもって十分政策に移さなくてはならぬ問題があろうと思います。政府といたしましても、そういう問題につきましては、国有林の経理面を考慮いたしまして、合理的に、そしてまた安定するような方向へ一そう検討を進めて、措置をとっていきたいとせっかく思っておる次第であります。
  118. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 たとえば昨年、旭川営林局管内に枝幸営林署というのがあるのです。その枝幸営林署に歌登担当区というのがあって、その事業所で働いておる作業員が、私は三十年国有林で働いておる、そして造林指導員という名前をいただいて一生懸命にやっておるし、農林大臣からも表彰をいただきました、しかし三十年たっても、私がやめるときには退職金ももらえませんし、共済年金も何ももらえません、三十年働いて指導員という名前をもらって、農林大臣の表彰はいただきましたけれども、やめれば老後の安定とか生活保障というものは何にもありません、こういう率直な話を聞いたわけですが、農林省所管する直接の事業体の中において働く作業員の場合においても、こういう問題が幾多もあるわけなんです。ですからこれを単に労働組合の要求だからけしからぬとかいうことではなくて、国自身の責任です。たとえば雇用安定法案の問題とか、常用作業員の定員化の問題とかは、すみやかに解決すべきであります。それでは国有林関係の失業保険の対象者となる定期あるいは臨時的な作業員の諸君に、この制度を通じて国家が負担する金額、あるいは経営者であり、雇用者としての役務で負担する国有林の負担額というものを総計した場合には、相当の金額にこれはなると思うのです。そこでその金額はどのくらいであるか、あるいは社会党提案した雇用安定法案に心づいた、労働が年間のある一部分休止された、再開されるまでは待機しなければならぬという者に対する、国が一定額の賃金を持続的に保障する制度をとった場合においても、社会党国有林野労働者雇用安定法案では、平年度において大体五億二千万あれば、これでもう安心した雇用体制というものができるわけなんです。ですから新たに五億二千万だけ負担するということではない。国として負担する失業保険の制度における負担額というものと対比した場合に一体どうなるか、こういう点は大臣のところまではまだ検討は進んでおらぬかもしれぬが、少なくとも林野庁長官としてはそういう検討はなされておるであろうと思いますが、比較論の上に立って、これはどういうことになりますか。
  119. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまの失業者退職手当は、三十七年度では約十一億でございます。いま先生のお話の金額と比較いたしますと、これはそのまま比較をするのはまた問題があると思いますが、金額としては十一億ということになるわけでございます。
  120. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そういう事情ですから、農林大臣としても十分責任を持って検討されて、国有林で働く国民というものは、自分の財産を守りながら、そこに就業の場を求めておるということを考えた場合、これを冷遇するということはいけないと思います。定期的、季節的な作業員は労務者であるとか、月給制でないからこれはどうなってもかまわない——そうは言わなくても、経営者、当局の思想の中に、そういう考え方というものが片りんでもあるとすれば、これは断じて許すことのできない点であります。働かないで、利潤だけ分配しているというわけではないわけですから、この点は信頼する農林大臣において、ぜひ何とか目鼻がつくような作業を長官にひとつ命令してもらって、期待に沿うようにしてもらいたいと思うわけです。いかがでしょう。
  121. 赤城国務大臣(赤城宗徳)

    赤城国務大臣 御趣旨の点は林野当局を督励して、そういう方向へ進めるようにいたしたいと思います。
  122. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 あと農林大臣には、明日でも民有林の問題に対する今後の国の管理とか、あるいは指導規制、あるいは高度利用の点をお尋ねしたいと思いますが、事務当局にその点に対してあらかじめ尋ねておきたいと思います。その根拠は森林法にあるわけですが、森林基本法提案を通じて、国有林を除いた民有林に対して、国家としてこれを高度に活用して、あるいは民有林の森林生産力の拡大とか、あるいは労働の生産性向上問題等も含めて、これは民有林であるから、自由放任にするということはできないと思うのです。もちろん森林法には、一昨年の改正によって、林産物の長期見通しの問題が新たに加わった森林基本計画が策定されて、それを基礎にして運営するということにはなっておるが、一体国として民有林というものに対して今後どういうような管理の態度、指導方針をとるか、その点を明らかにしてもらいたい。
  123. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 民有林に対する管理の態度といたしましては、その基本となるものとしましては、現在の森林法の中の地域森林計画でございます。それぞれ森林所有者といたしましては、地域森林計画の趣旨に即しながら仕事を進めていく、また都道府県知事としましては、その民有林経営につきまして勧告する、指導するという権限も与えられているわけであります。そういうルートを通じてこれの管理がなされる、こう考えます。いずれにいたしましても、この基本法の民有林業のにない手として期待するものは、まず熱意がある林業経営者、これをできるだけ国として助長し、指導してまいる、そういうたてまえになっておるわけでございます。仕事の中心はやはり林業構造改革というものを通じて、いまお話のありました生産性向上所得の増大等をはかる、こういうことであります。
  124. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 もう少し具体的に、たとえば林業基本問題の調査会の答申等を見ても、一つの民有林の特徴としては、一方においては森林の集中的な所有が行なわれておる、一方においては森林所有形態が零細化しておる、こう極端な特徴点があらわれておるわけです。特に大山林所有者なるものは、これは単に所有の集中化をはかることによって、いわゆる財産保持的な態度で利潤の追求をやっておる、こういう態度は、国民経済的に見て根本的に是正する必要があるということが指摘されておるわけです。それから零細な森林所有者の場合は、その零細な森林経営を通じて所得を追求していくということは、なかなか困難なんです。だから臨時的に不時の収入の必要上において、それを処分するというような欠点が一つはあらわれておるわけです。そうなれば、林業経営というものは一体どのような適正規模のもとにおいて、これが経営として成り立つかという問題は、やはりそれのおおよその尺度というものを定める必要があると思うのです。ですからこれの所有の集中化ということは、これは終戦後の農地改革と同時に森林改革も断行すれば、こういう弊害も残っておらないわけでありますけれども、制度的にいま幾ら山林を集中所有しても何も規制はないわけですから、個人の所有とか、あるいは法人の所有とか、パルプ会社の所有であるとか、こういうものが集中化したわけで、一体そういう所有形態というものを、森林の所有の移動というものを放任して、私権尊重ということだけでこれを放置すべきかどうかという点は、これは基本問題として重要だと思うのです。この点に対して政府として一体どう考えておるのかという点なんです。
  125. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 確かにお説のように、土地集中の上に財産保持的な林業経営が行なわれておるということがある反面、一方に非常に零細な土地しか持っていないというような、保有のしかたは非常に幅の広いものでございますが、しかしながら今日資本主義経済の社会でもございますので、この土地の集中についてこれを抑制するような制度、その他現に集中しているものを分散するというような施策を、民有林に対して考えることはいかがかと考えられます。それにいたしましても、大山林所有者等で、きわめて財産保持的であったり、家計に応じて切るという程度の山の経営しかしないというような山林所有者である場合、その一部を、それ以外の非常に熱意があり、しかも林地の保有が零細だという人たちの経営規模を拡大し、合理化していく対象地として、分収造林等の設定を考えていきたい。分収造林特別措置法によるところの知事のあっせん等の権限もでき得る限り活用しまして、そういう林地の合理的な経営の方向に持っていきたい、こういうふうな考え方を持っております。
  126. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 資本主義経済のもとにおいては、所有に対する規制ができないというのはおかしいのじゃないですか。それは現体制に忠実に承服しているということにしかならぬと思うのです。憲法においても、私権の尊重ということは当然うたわれておるわけですが、しかし所有の制限であるとか、移動の制限であるとか、公共的な利用とか、そういうものは国民的な意思、国家的な意思で規制を加えることは、何ら憲法上の侵害にもならぬ、所有権の侵害にもならぬと思うのです。ただ放任して、私権優先であるからやむを得ぬということであれば、戦後の農地改革なんかできなかったではありませんか。現在農地法第十四条の規定においても、国有林であっても民有林であっても、これが農地として農業発展のために、これが国民経済的に必要であるという場合においては、未墾地買収の権力的な介入はできることになっておるし、また問題は違うが、土地収用であるとか、公共的にそれを利用する場合の権力の発動というものは、随所に見られるわけです。だから森林というものの持つ国家的な任務とか、特徴というものを考えた場合、これは所有の集中化を防ぐことはできませんというようなことでは、これはとんでもないことになります。たとえば国有林の開放を行なったとしても、所有が個人に移った場合は、この財産権の処分というものは自由に基づくわけですから、そうするとまた集中化が行なわれるということに当然なると思うのです。ですから、たとえば地域によっても、またその樹種によっても違うが、森林経営の適正な規模というものは、おのずから明らかになるわけです。たとえば和歌山県の地方公聴会においては、個人経営として森林経営をする場合には、その面積は大体三十ヘクタールぐらいは最小必要である、こういう見解が末端の森林組合の代表から述べられておるわけです。ですから、個人経営の場合の森林経営の適正規模とか、あるいは共同所有による生産組合的な法人経営の規模であるとかいうものは、おのずから尺度というものは定まると思うのです。それを個人が恣意的に財産保持的な考えで森林を集中的に所有する、そうして森林の自然の生長だけに依存して、そうして利潤を追求するということになると、これはこのまま放任していいという問題ではないと思うのです。ですから、一定限度における所有の制限であるとか、あるいは国家的な方針に基づいた森林経営に対する国の指導であるとか、総体的には国全体の森林に対する国の管理の態度というものを、有権的にこれは明らかにしておく必要があると思うのです。森林計画というものがあったって、何もこれはまじめに実行されておらないじゃないですか。そうでしょう。都道府県の知事が区域の森林計画を策定して、農林大臣の承認を求めるということになっておるが、造林計画にしても伐採計画にしても、一体まじめに計画どおりこれが実施されたか。計画そのものがまた適当なものであるかどうかというところにも、問題があると思うのです。ですから、基本法というものは人を主体にして、国民経済的にこれが基本法律であるとするならば、やはり民有林に対しても国のこれを管理する態度というものは、所有権の問題をももちろん含むわけだが、国がこれを管理するということは、これは当然必要になってくると思いますが、この点に対する長官としての考え方、これは農林大臣よりあなたのほうが詳しいと思うのです。その点どうですか。
  127. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 いまも申し上げたと思いますが、個々の山林所有者の経営方針なり、またその経営のしかたについては、林業基本法趣旨からいいまして、それぞれ計画性を持たせる。それで個別経営計画といいますか、そういう一定の計画のもとに仕事を進めていくように指導する。それは言うまでもなく、先ほども申し上げました熱意のある森林の所有者であって、しかも計画的に進めていくためには、やはりそれなりの保有の面積が必要でございまして、その保有面積の合理化として、場合によってはその集団化という名前で保有される場合もございましょう。そういうことで、それぞれ計画的に仕事が進むように、そうして結局は計画的に収入が入ってくるというような、そういう規模で仕事を進めていくように指導していく、それが林業構造改善事業の大きなねらいでもあるわけでございます。それの上にありますものは地域森林計画でありましょうし、さらにそれが全国森林計画につながっておるというふうに考えていいかと思います。なおそういう地域森林計画に従って個別経営計画が実行されていくように、森林法では知事がそれを勧告する制度もあるということになるわけでございます。いずれにしても、この林業構造改善事業を通じ、民有林経営の仕事が、一定のきまった方向に沿って動いていくような指導を進めていきたい、こう考えております。  なおその保有の規模につきましては、いまもお話があったわけでございますけれども林業の場合には、所得の面からいきますと、山林所有者のほとんど大部分は農家でもあるということで、いわば農業収入の補完的なといいますか、補充的な形でそれが収得をされておる。今後もそういう農業との兼業の形での林業経営は続くと思います。そうしますと、そういう所得の面からの一定の規模を割り出すことも非常に困難だと思いますので、そこでそれぞれの保有の面積をいずれにしても拡大する方向で、その林地保有の合理化をはかりたい、こういう考え方でございます。  なおまたこの仕事の管理については、この法案にもございます協業の推進ということを非常に強く言っておりますけれども、その主体といいますか、そのにない手を森林組合に期待をいたしております。そういう森林組合の組織が、各森林所有者の仕事をそれぞれ協業の形で進めていくことを通じての、民有林経営の指導管理ということも可能かと存じます。
  128. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 社会党基本法によると、民有林の買い上げという規定があるのです。これは現在の民有林の現況を判断すると、収益性のあがる地域の森林は、ある程度経営熱意を持って行なわれておる。しかし瘠悪林と称する面積は非常に広大なわけですね。そういうものは個人の所有であっても、高度の利用とか、あるいは国立保全とか、たとえば水資源確保のような効用というものは発揮していないのです。だから、経営的に採算がとれるというような森林は別としても、ただ財産的にはこれは所有は個人がしておるが、効果を発揮していないというような林区については、これはもちろん所有者の意思にもかかわるが、それらの利用されておらない瘠悪林等については、むしろ積極的にこれを国の所有に帰して、国が経営するということでなければ、森林全体の生産性の拡大を期待することはできないと思うのです。ですからそういう場合に、民有林の所有の問題等についても、やはり制度的に検討する必要があると思う。ですから、たとえば百町歩とか二百町歩の所有、これをさらに圧縮するという考えはないが、たとえば三百町歩の所有としても、これが植栽してから始伐までに、三十年あるいは四十年かかるわけでしょう。三十年かかるとしても、これを計画的に皆伐方式で進めるとすれば、毎年伐採して造林していかなければならぬということになるわけです。それだけの経営を私有形態の中で行なうということは、労働力の問題とかいろいろあって、これは容易でないと思うのです。ところが中には何千町歩というような大所有者もあり、資産評価をすれば何百町歩という大森林所有者もあるわけです。こういう所有者は何も努力していないのですから、そういうところへ、たとえば森林公団によって国が直営の林道を設定しても、ただその個人の財産価値を高める、利益を増大してやるだけで、国民経済的な利益の増大ということにはならないと思うのです。だからここには困難であっても、所有に対する制限とか、あるいはその所有移動に対する制限の規定であるとか、あるいは生産面に対する国の権限を通じての命令の発動であるとか、権限の発動が根拠になければ、これは単に計画を立て、それを尊重してやるというだけでは、解決できないと思うのです。そうじゃないですか。この点に対しては社会党提案の代表である川俣さんからも少しわかるように、あまり長い時間でなくても、急所になる点を少し明快にしてもらいたい。
  129. 川俣議員(川俣清音)

    川俣議員 御質問にお答えいたします。御指摘のように、日本国土の中の土質が、耕作農業用に適しておるというところもあるし、林分として必ずしも適しておらないけれども、太くてしかも目のこまかい木をつくるということになりますと、たとえば木曽のヒノキのように、非常にりっぱな木をつくることになると、必ずしも土質のいいところを選ばないでもいいということになる。しかしながらこれは経済的にはなかなか成り立たない林業でございまして、木曽のようなところは生長が非常におそいところで、それだけにりっぱなヒノキができるわけですけれども、これは経済的にはなかなか成り立たない。したがいまして日本全国を林地として適当なもの、または適当であっても潤葉林としていいのか、広葉樹がいいのか、針葉樹がいいのか、どういう品種がいいのかという基本調査を待たなければ、林業基本政策はできない、私はそう思うのであります。したがって社会党は、まず第一に土地の利用区分を設定いたしまして、林業に適しておるところ、あるいは耕作農業に適しておるところに区分いたしまして、その区分に従って土地の利用を高めていくことが必要であろうということを基本にいたしまして、基本法をつくったわけでございます。これはたとえば政府基本法にいたしましても、こういう点が欠けておったならば、親切な林業政策は成り立たないし、親切な農業政策は成り立たないと思うのでございます。そういう意味で、まず第一に土壌、地域というものを設定して、土地の利用区分を設定して、そこに林分を侵さずに、将来の日本木材資源を確保すると同時に、これは水資源の確保になり、公益性の高い森林が生まれる。そのほか、耕作農業用として適当なところは、これを開放していくほうがいいのではないか。御承知のように昭和初年から、特に北海道は国有地を開放したのでございますが、明治六年の開放によって利権的にこれが非常に利用されたというところから、明治九年にあらためて開拓の実績のあがったものから、売り払いをしていくというふうに変えていったわけでございます。北海道の開拓もそのために、初めて実績があがったのでございまするから、単に国有林を開放する場合でも、一体ほんとうの耕作農業として適当であるのかどうか。
  130. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 民有林の所有形態について。
  131. 川俣議員(川俣清音)

    川俣議員 したがって、そういうことでありまするから、民有林の形態につきましても、面積でなくして、土壌も大いに加味していかなければならぬのではないか。林業自体というものは、私どもは企業経営が困難だ。なぜかというと、長年月を要する収穫でございまするから、その間に貨幣価値の変動、物価の変動によって、将来を見通すことは非常に困難であります。困難なところに経済性を発揮させるということはまた困難でございまするから、面積が大きいからいいのだ、面積が小さいからいいのだでなくして、その収穫を適時適宜に売れるという形態をとらなければならない。その当時の物価あるいはすべての経済に対応できる態勢というものをつくってやらなければ、民有林というものは成り立たないのではないかと思う。だから面積が大きければ成り立つということは私は間違いだと思うのでございまして、面積の大きい民有林がそれでは黒字かというと、必ずしも黒字ではないわけでございまして、面積が大きいから利益になるという考え方は、政府にあるかどうかわかりませんが、私は非常に疑問だと思うのでございます。  そこでまたこういう大きい面積をここに生ませるということは、日本の農業全体からいって、適当かどうかということも疑問になりまするので、私どもの案は林業の構造改善、これは林業だけでは成り立たないし、また牧畜だけでも成り立たない。小面積では成り立たない。そういう耕作農業、酪農、畜産業、林業の混合した農業でやっていくのが、林業のためにも、また農民のためにもいいのではないか。私ども基本法考え方は、土地ではなくして、農民、働く人を主体にして農業を成り立たせていこうというところに基本を置いておりまするから、民有林は成り立つのか成りたたないのかというと、私は成り立たない。そこで成り立たないならば、どうして成り立たせるか。それは林業だけではだめだ、こういう考え方で、構造改善としては、農牧林混合農業ということを明確にいたしておるわけでございます。政府案はそこへいきますと、構造改善とはいうものの、どういう構造改善をするのかということは、私どもにはなかなか理解できないのでありまして、これは質問によって、明らかにしていただきたいと思いますが、私は政府の案では、構造改善とことばでは言いますけれども、どういう構造改善かわかりません。その点では私どもの構造改善は、単に民有林でなく、農民の今後の経営すべき林業のあり方としては混合農業である、こういうたてまえをとっておるわけであります。これが一番現実に合った、しかも農業及び農民本位の考え方であるということを確信しておる次第であります。
  132. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 私の聞いたのは、民有林の国の管理をいかにすべきかという問題で、あるいは所有形態の問題にしても、民有林というものは所有者の意思によって採算的に経営される条件の森林で、これに努力しても採算性があがらない条件の林分が当然あるわけでございます。ですから、個人の努力では解決できない。しかしそれを他の用途に転用することはますます不可能であるという地域、これを瘠悪林と称しておりますが、そういうものはむしろ国が、所有者の意思にもよるが、積極的にこれを買い取って、そして国としての責任でこれらの生産性を高め、また効用を高めるということが必要である。そういう点が社会党森林基本法の国の買い入れという規定の精神をなしておるわけです。これは川俣さんにはっきり言ってもらいたかったのですけれども、私も提案者の一人ですからその点を明らかにしておきますが、それでもう一つ、きょうは時間もそう長くやる必要もないですが、森林法に基づく森林組合というものを一体このままでおくのか、今後どういうふうに根本的に改善して発展させる意思かという点を、長官にお尋ねしておきたいわけですが、特に問題は、森林組合の組合員規定の中に、森林所有者は、その地域の森林所有者というのは、これは在村であろうと不在であろうと、全部組合員の資格を持つわけです。ただその場合、森林所有者であるからといって、自分で経営する意思のない者までも組合員として包容する必要があるかどうか。何千町歩という不在山林地主を、森林組合の組合員としてこれを認める。この組合員は自分で森林経営は、組合員であっても行なわないわけです。ただ森林組合利用して、森林組合は組合員の所有する森林経営を委託あるいは信託されて、委託を受け信託を受けてそして経営することができるということが、森林組合の施設と生産と、これは森林組合性格が二様に分かれておるわけです。そういうことをいいことにして、不在大山林所有者が、森林組合にこの経営をおまえにまかせるからやってくれ、そういうことができる。森林組合もまた唯々諾々としてその経営の任に当たるということは、問題があると思うのです。それは森林法の第一条にも、森林所有者、経営者が協同して森林の総生産の発展に努力するとか、それから森林資源の保続的な培養につとめるとか、国民経済の発展に寄与するとか、ただし森林法によると、その森林の所有者、経営者の利益の増大ということは森林法は何もうたってもおらぬし、保障していないのです。何ぼ損してもかまわぬから、資源の保続に努力する、国民経済の発展に寄与する、こういうことになっておるわけですから、森林組合のたとえば構成の問題、事業目的の問題等について、この不労所得を絶えず追求しておる大所有者というものは、協同体である生産的な森林組合の正式な組合員として参加して、仲間に自分の山の経営をやらせるというようなことについては疑問を持っておるが、その点はいかがですか。
  133. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 大山林所有者であって、そして森林組合に仕事を信託なり委託をしておるという例がそれほど多いかどうか。現在のお説のような大山林所有者の中には、これをやはり企業的な経営体に持っていこう、そしてこれを明確な経営体を法人として、そうして在来のいわゆる家庭的な経営でなく、法人としてそれに経営をまかせる、そういうような経営のしかたのほうが相当に出てきておるようであります。それはそれなりの具体的な経営計画を樹立をして、そしてその施業の面で、機械化その他極力近代化をはかっていくとともに、そのあげられる収入については、雇用労働者との間で合理的な配分を考えていくような指導が必要でございましょうし、それから森林組合につきましては、これはこの林業基本法成立が得られましたならば、それの機会に、森林法についてもそれぞれの改正の措置が必要かと存じます。その中で森林組合についていろいろ新しく検討をし、見直す必要のある面が相当多いかと存じます。いずれにしましてもこの森林組合は、それぞれの組合員の山林の経営近代化された協業の形で積極的に進めていくというために、どのような点を改善をしてまいったらいいのか。そういう点を十分に検討いたしまして、新しい林業基本法趣旨に沿った経済的な林業経営が可能なように改変をしたい、かような考え方であります。
  134. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 私の言っているのは、森林組合というのは一体どういうものであるか。もちろん森林所有者あるいはその経営者、家族経営者従事者が参加するわけですから、大体農業の場合の協同組合と非常に性格としては類似点が多いわけです。ですからそれに参加して、森林組合というものが法人として事業を行なうわけですから、あなたの言う大所有者の法人化というのは、協同体である森林組合に加入して、その協同体としての法人の中で協同的に生産活動とか、いろいろな事業を行なうということとは、意味が違うと思うのです。ですから、私の言うのは、森林組合に組合員として参加して、その森林組合が協同的な生産活動を行なうということであれば、たとえば森林所有者は、参加した組合員は、高度な協同体としての活動をする場合においては、あるいはそれぞれ所有する森林というものは、お互いに出資の形なら形でこれを提供し合って、そうして協同的な高度の近代的な森林経営とか、林業経営というものが行なわれるということは、これは単に理想だけではないと思うのです。そういうところに協同体としての目標というものが当然あるわけだからして、それにもかかわらず森林所有者であるから、不在大所有者であっても森林組合員になれる。法律規定があるから、おれの山の造林とか伐採事業を森林組合、おまえやってくれというような形は、これは邪道だと私は考えるわけです。ですからこの林業基本法審議の機会において、現在の森林法規定あるいは森林法の中に基づいて行なわれる森林組合の今後の運営とか、性格づけ等についても、根本的な検討が必要でないかということを私は言っておるわけです。ですからこういうものはやはり除外するとか、準組合員的な扱いをするとか、どうするというような明確な規定というものがなければ、これはいけないと思うのです。その点についてまだ検討されていないとすれば、いま即時に答弁をしてもらわなくてもいいのですが、このようにして基本法との関連のもとに、特に森林法にしても、これは大臣が言われたとおり、むしろ森林法のほうが根拠法であるというようなことも言われたわけですからして、そうなるとさかのぼって、それでは森林法という制度、あるいは民有林というものを一体どうするかということに、これは当然ならざるを得ないと思うのです。  それではこの程度にして、明日もう少し質問が残っていますから、勉強といっては失礼ですけれども、大体予定される問題等については、整理しておいていただきたいと思います。この点だけちょっと答弁があれば……。
  135. 田中(重)政府委員(田中重五)

    田中(重)政府委員 先ほどお答え申し上げましたのにことばが足りなかったかもしれませんが、私が法人と申し上げましたのは、大山林所有者それ自体が法人をつくって、法人にその経営をゆだねていくという傾向が強い、こういうことを申し上げたわけであります。それから森林組合の脱皮といいますか、その前進については、いまお説の趣旨の点はきわめて重要な問題をはらんでおる、こう考えますので、十分に検討いたしまして、森林組合近代化のために推進をしてまいりたい、こう考えております。
  136. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 次会は明十一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会