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1964-06-09 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第56号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員   委員長 高見 三郎君    理事 坂田 英一君 理事 谷垣 專一君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    大坪 保雄君       加藤 精三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    坂村 吉正君       寺島隆太郎君    野原 正勝君       藤田 義光君    細田 吉藏君       角屋堅次郎君    川俣 清音君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       野口 忠夫君    松浦 定義君       湯山  勇君    稻富 稜人君       玉置 一徳君    中村 時雄君       林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学農学         部教授)    倉沢  博君         参  考  人         (全国森林組合         連合会常務理         事)      喜多 正治君         参  考  人         (全国木材組合         連合会常務理         事)      吉田 好彰君         参  考  人         (長野大門森         林組合長)   古川保津美君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      今村 暁夫君         参  考  人         (日本国有林労         働組合中央執行         委員長)    熊井 一夫君         専 門 員  松任谷健太郎君     ――――――――――――― 六月九日  委員八田貞義君、野口忠夫君及び小平忠辞任  につき、その補欠として亀岡高夫君川俣清音  君及び玉置一徳君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員川俣清音君及び玉置一徳辞任につき、そ  の補欠として野口忠夫君及び中村時雄君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月六日  農業構造改善事業推進に関する陳情書(第五五九号)  急傾斜地帯早期指定及び特別助成措置に関する陳情書(第五六〇号)  野菜の生産及び価格安定対策に関する陳情書(第五六一号)  米の時期別格差金現状維持に関する陳情書(第五六二号)  政府放出飼料値上げ反対に関する陳情書(第五六三号)  肥料二法の期限満了後における措置に関する陳情書(第五六四号)  同(第五六五号)  同(第五六六号)  国有林民主的利用に関する陳情書外二十四件(第五六七号)  農林漁業対策に関する陳情書(第五六八号)  国内産牛乳による学校給食制度確立に関する陳情書(第五六九号)  農畜産物及び飼料価格安定等に関する陳情書(第五七〇号)  甘しよでん粉政府買入れ措置に関する陳情書(第六六三号)  林業基本法案成立反対に関する陳情書(第六六四号)  林業基本法案成立促進に関する陳情書(第六六五号)  農林業生産基盤整備事業に対する国庫補助率引き上げに関する陳情書(第六六六号)  山村振興対策確立に関する陳情書(第六六七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法第四〇号)  林業基本法案稻富稜人君外一名提出衆法第四四号)      ――――◇―――――
  2. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案稻富稜人君外一名提出林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。  去る五日の委員会の決定に基づき、本日は参考人から御意見を聴取することといたします。  御出席参考人を御紹介申し上げます。東京大学農学部教授倉沢博君、全国森林組合連合会常務理事喜多正治君、長野大門森林組合長古川保津美君、全国木材組合連合会常務理事吉田好彰君、全林野労働組合中央執行委員長今村暁夫君、日本国有林労働組合中央執行委員長熊井一夫君、以上の方々でございます。  この際一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には非常に御多忙のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。御意見御開陳の時間は、お一人おおむね十五分程度とし、その順序は、かってながら委員長におまかせ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、まず参考人各位から御意見を御開陳願い、しかる後委員諸君の御質疑にお答えくださるようお願いいたします。  それではまず、倉沢参考人からお願い申し上げます。
  3. 倉沢参考人(倉沢博)

    倉沢参考人 私、東京大学倉沢でございます。  意見を申し上げます。最近とかく林政の混迷があちらこちらで心配されるというような状況がしばらく続いておるようなわけでありますが、このたび皆さまの御努力によりまして、林業の進むべき新しい道を示されようとする機運に至りましたことは、直接的には山間の奥深く日夜営々として林業従事をしておられますところの方々にとりましても、またわが国林業の将来にとって、さらに広く国民経済発展にとりまして、まことに大きな喜びであろうと信ずるものであります。その意味で、私も一日も早く基本法成立が見られますよう強く希望しておるような次第であります。  さて、法案に対する私の意見でありますが、話がやや理屈っぽく抽象的になって申しわけないのでありますけれども、私は大学にいる者という立場から、主として法案政策理念といいますか、政策体系的な見方といいますか、そういった総括的なものに触れて申し上げまして、関連して二、三の個別の問題にも触れるということにしたいと思います。  まず、三法案を拝見いたしまして、私、第一に気がつきましたことは、政策目標の中に、大きな点で一つの共通点があるように理解されることであります。それは若干のニュアンスの差はありますが、林業政策国民経済の総循環と関連づけようとされている点であります。   〔委員長退席谷垣委員長代理着席〕 すなわち、三法案ともに、その政策目標の中で、林業生産の増大と林業生産性向上をばかり、林業従事者の所得と地位向上をはかろうとされておるのでありまして、このことは、当然国民経済発展の中の林業発展を策しておられるものと私には理解されるわけであります。実は私も、特にこの点を新しい政策視点であるとして重視するものであります。なぜかと申しますと、このように国民経済発展の中の林業発展ということを考えるということは、その理論的な帰結といたしまして、林業におけるところの労働生産性を重視するという考え方を導入することになるはずであるからであります。政府案は特にこの点に焦点を合わせて整理されているのではないかと私には見られるのであります。ともかく林業政策の新しい基本目標に、林業労働生産性向上という問題がつけ加えられているということは、また必然でもあろうと私自身考えておるのであります。しかしながら、このように申しましても、法の具体的運用関連法律整備充実など将来の問題に関連しましては、私なりの意見がないわけではありません。そこで、基本的な問題だけについて申しますと、次の大きな項目としての二点になります。  大きな項目としての第一点は、林業政策あるいは林業というワク内で考えての問題であります。それは特に林業のような土地産業にあっては、労働生産性の重視が土地生産性軽視となってはいけないということであります。ここで土地生産性というのは、林業では従来森林生産力とされておるものであります。確かに顧みますと、明治以来のわが国林政は、大体土地生産性一辺倒で推し進めてくることができたと言えます。それは、その間の林業の発達の歴史が、略奪的林業から次第に完備された採取へ、そして栽培採取へと、だんだんと林地の集約利用、すなわち、土地生産性向上という方向で発達してきておるのにまさに照応しておるからだと思います。しかしながら、現在新しく基本法が制定されようとするいまの段階からすれば、政策理念として、この労働土地二つ生産性は、当然考えられなければならないと私考えるのであります。変なたとえ方ですが、私は車の前輪と後輪のような関係にあるのではないかと考えております。すなわち、労働生産性前輪にもたとえられるものでありまして、政策のかじをとる方向を定め、機動性を増すものである、そして後輪は、土地生産性が後輪に当たるものと考えておりますが、後輪は政策を支え、それを推進する力となるものである、こういうふうに私なりの考え方をしておるのであります。そういう見方から基本法というものの性質を見ますと、基本法前輪であるところの労働生産性を取りつけるという性質のものであって、さらに後輪たる土地生産性をもそれに合うよう一そう整備するということであるべきであると信ずるわけであります。  こういうふうに見てまいりますと、この点に関連しまして、二、三申し上げたいと思います。  その関連第一点は、基本法森林法との調整を十分にとるようにということであります。元来、私は、造林投資森林適正配置計画、その他土地生産性的な投資は、林道投資とともに、林業生産全体にとりましては、生産基盤拡充であると考えております。これらの拡充投資というのは、元来が長期投資でありまして、なかなかに経済合理性を貫きにくいものでありますがゆえに、特別に手厚い国の指導助成が必要であり、また地域的かつ自主的な計画整備される必要が大きいものであると考えております。この点については、従来の政策を見ますと、森林法がそれなりにこれを担当してきておると思うのであります。そこで、やはり基本法案の線に即しますよう、この点が十分調整整備され、もって林業政策の両輪、二つの輪がところを得て作用できるよう運用されることをまず切望する次第であります。  この生産性関連して第二点は、構造改善事業についてであります。この場合、特に流域内の小規模の森林経営者が相集まって、なるべくある程度の造林団地を形成できるように指導することが大事かと存じます。さらにそれらが累積しまして、やがてはその流域産地形成にまで発展できるようにするという考え方、こういう土地生産性がやがては労働生産性向上に即応できるように、きめのこまかい指導が必要ではないかと思います。  さらにまた、その際に、国有林の活用につきましても、地元の造林希望者には大きくその門戸を開くことが望ましいと考えております。ただし、地元民に土地買入れなどの負担を負わせるということはせずに、むしろ土地国有のままで造林経営に専念できるようはかるべきだと考えております。  生産性関連しましての第三点は、技術研究方法でありますが、もちろん、技術研究においても、土地生産性労働生産性向上に適合するような方向で引き上げる、こういうような角度から今後開発されていく必要が十分あると考えております。  さらに、この生産性関連する第四点は、政策基本目標労働生産性視点が入ってまいりますと、それはまた当然労働者福祉施策が一そう充実されることが必要となるということを意味しております。  以上が、大体基本的な林業政策の問題の生産性に関する問題であります。  さて、大項目といいますか、基本的な問題の第二項にあげまするのは、林業政策というよりも、むしろここでは森林政策といったほうがいい面の問題であります。およそ森林公益的機能が大きいということは、いまさらここで言うまでもありません。ただ、従来、このような公害防止とか、公共福祉増進に対する政策が、ともすれば産業政策としての林業政策混同あるいは結合されてきたというような見方がされます。しかし、このような混同結合も、略奪的林業が広く存在したといとような林業段階におきましては、十分意味があったと思うのであります。しかしながら、林業政策という概念が、すでに申し述べましたように、整えられようとする現在におきましては、この森林公益性の面での施策は、その本来の公害防止公共福祉増進という、いわば森林政策という次元から、一段と整備強化され、そして林業政策社会性をその面から補強するという形に結びつくことが、きわめて必要ではないかと考えているわけであります。  以上、総括してもう一度申し上げますと、客観情勢の変化の中で、久しく混迷停滞せざるを得なかったと見られますところの林業政策が、この際すみやかに方向づけられ、また機動性を増すことができますよう強く期待するとともに、基本法というものの運用関連法立案整備というような将来の問題に対しまして、私がただいままで申し上げてまいりましたような点、特に政策体系のバランスを失することがないようにということを強く希望いたす次第であります。  以上をもって終わります。
  4. 谷垣委員長代理(谷垣專一)

    谷垣委員長代理 ありがとうございました。次に喜多正治君。
  5. 喜多参考人(喜多正治)

    喜多参考人 私、全国森林組合連合会喜多でございます。御承知かと存じますが、森林組合と申しますのは、林業者及び林業従事者、私ども一口にこれを林業従事者ということばで表現をいたしておりまするが、これを母体といたしまして、市町村、都道府県、それから全国団体系統的に組織されておる団体でございますので、私は、林業従事者という立場におきまして、これから若干意見を申し上げたいと存ずる次第でございます。  すでに農業におきましては農業基本法がございます。漁業におきましても御承知沿岸漁業等振興法がございます。ひとり林業にはこうした基本法がございません。まことに遺憾のきわみでございます。農業漁業よりも、ある意味ではさらにおくれているともいわれますところの林業におきまして、第一番にこうした基本法が考えられなければならないというふうに思われますにかかわらず、事実はまさに逆でございます。これは一体何によるのか。私どもは実は以前から、この点を最も重視いたしまして、声を大にして基本法ないし基本的対策確立を叫んでまいったわけでございます。しかもまた、その内容といたしまして何を考えるべきであるかという点につきましても、私ども内部対策委員会なり全国会長会議、さらにまた全国代表者大会等々におきまして、検討検討を重ねまして、系統といたしましての意見を取りまとめ、国会の諸先生、さらにまた農林関係の御当局にも御説明を申し上げまして、これが実現方を強く御要請申し上げてまいった次第でございます。しかるところ、今回政府当局をはじめといたしまして、社会党、民社党におかれましても、基本法案を御提案相なりまして、林業にもようやく農業漁業と同様の深い御理解を示されるに至りましたことは、私ども森林組合関係者といたしまして、まことにありがたく存ずるところでございまして、心から敬意と感謝の意をまず表する次第でございます。  この私どもの気持ちから御推察いただけることだと思いまするが、私ども基本法案早期成立、これを心から念願いたしております。ぜひ、先生方の深い御理解によりまして早期成立いたしますように、まずもってお願い申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。  ただ、この際、あわせて申し上げておきたいことは、だからといって、私ども、現在提案されておりまする法案につきまして、決して万全のものだというふうには考えていないのであります。欲を申しますると、その内容につきましてもう少し具体性があってほしいものだというふうに思いまするし、また、これは少しことばが過ぎるかもしれませんけれども、その内容がどちらにでもとれるというふうなあいまいさがあるものもございます。無条件で賛意を表するというわけにはいかないわけでございますけれども、まあしかし、全体を通じて見ますと、林業構造改善推進といったような、多年私ども念願しておりました点にも、相当強く触れておりまするし、やはり法案林政の大きな前進だといってよいのではないかと考えまするので、この際、ぜひこれが成立をこいねがうものでございます。と同時に、私どもは、皆様方の御理解によりまして基本法成立し、これに基づきまして基本的な対策実施されるという段階におきましては、前に申し上げました法案抽象性あるいはまたあいまい性、こういった点がはっきりと林業発展という線に沿いまして解決されることを特に念願いたすものでございます。  これを具体的に申し上げますならば、私ども念願は三点に集約されるのでございまして、私どもといたしましては、これは最も基本的な私ども念願でありますだけに、系統全国会長会議におきましても論議を尽くしたものでございます。   〔谷垣委員長代理退席委員長着席〕  まず、第一点でございますが、少なくともこの政策基調という問題になりますと、これは右顧左べんせずに、育林生産中心といたしますいわゆる林業そのもの産業的発展、これに置いてもらいたい。これは、農業基本法がその目標農業そのもの発展においておるのと全く同一でございます。あまりにもこれは当然のことでございます。しかしながら、なおかつ、私どもは第一番にこの点を強く主張しなければならない。と申しますのは、もし実施段階におきまして、この基調がぼかされるという――よくこうしたことがあるのでございますけれども、もしもそうした場合におきましては、林業従事者は、農業従事者と別扱いされたんだ、いわばまま子扱いだというふうな考え方を持つことになるのでありまして、せっかくの基本法も白眼視されるというふうなおそれがあるからでございます。そうなれば、せっかくの法律もついにから念仏ということになりかねまじきわけでございまして、重ねて申し上げるわけでございますけれども、われわれは、ただ政策基調を、農業基本法と同様に育林生産中心とする林業そのもの、これの発展に置いて考えてもらいたい、このことが私ども系統全部の一致した強い念願だということをまずもって申し上げたいのでございます。  次に、第二点でございますが、林業従事者地位向上をはかることに重点を置いてもらいたいということでございます。林業生産発展ということも、このことなくしてはとうてい考えられないことでございます。この地位向上をはかるというためには、林業の自然的、社会的、さらにまた経済的不利の是正が必要でございますけれども、その中でも経済的不利の是正、これが一番の問題でございまして、私どもは、まず自主的にこれが解決をはかるべきだというふうに考えまして、その基盤をつくろうということで、目下全国にわたりまして、森林組合拡充強化五カ年計画というものを樹立いたしまして、協業化の推進、また官行外事業共同化の徹底、さらに基本的な経営基盤確立といったものを目ざしまして、これが推進につとめつつあるのでありまして、これが達成されました暁におきましては、かなりな成果をもたらすものだというふうに信じておりますけれども、ざっくばらんに申し上げまして、これはなかなかいばらの道でございます。私ども力一ぱいがんばっておりますけれども、この機会に、諸先生のあたたかい御声援のほどを心からお願いを申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。ただ、経済問題のうちで、価格問題だけは私どもの手に負えないのです。特に林産物価格の問題でございまして、私どもは、この林業生産が可能なようなそういった価格がぜひ必要だ、また生産用の資材の点につきましても、やはり合理的な価格というものが必要だ、これらの点を考えるのでございまして、ぜひそうした意味での価格安定が期せられますように、具体的な措置につきましての御検討をお願い申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。  なお、これらと関連いたしまして、外材の輸入につきましても慎重に対処していただきたいというふうに思うのでございます。輸入円滑化ということもよく言われるのでございますけれども、すでに貿易は自由化されておりますし、輸入は年を追うて激増するのみでございます。私どもは、国内需要量、これに対します国内生産量、その他各般の情勢を参酌いたしまして、むしろ輸入調整をどうするかという問題を具体的に検討していただきたいというふうに存ずるのでございます。  ところで、最近全国至るところで、林業労務の不安定という問題が大きく浮かび上がっております。現象形態の上からだけ見ますと、この問題の解決が一番急がれることでございまして、これに対しまして私ども森林組合の果たすべき役割りの重大さを実は痛感いたしております。すなわち、個々の零細なる経営組合にまかせ、合理的な姿で協業化すること等の方法が考えられるわけでございまして、現にこうした形をとりまして、うまくやっておるというふうな進歩的な組合も出現しつつあることは事実でございます。もとより、農林当局においれましても、こうした方向の助長に力を尽くされることとは存じますけれども、特にこの点は重要事項だということで御考慮をお願いいたしたいというふうに存ずる次第でございます。ただ、ここで申し上げたいことは、こうした森林組合の新しい方向づけという問題の――すでに申し上げましたところのいろいろな問題、特に林業そのもの発展をはかる、さらにまた林業従事者地位向上をはかる、こうした基本的な問題につきまして、当局のほうでもしっかりとこの点を確認していただきまして、実施に移していただくという裏づけがあってこそ、初めてその効果を発揮するというのが当然でございまして、こうした裏づけのない森林組合の孤立的な活動では、意味がないということは申し上げるまでもございません。こうした意味での、いま申し上げました第一点、第二点、これに対する御配慮を特にお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  さて、第三点といたしましては、山村住民福祉向上の問題でございます。ぜひこれについても具体的な考慮をはらってもらいたい。これは林業発展と並びまして、われわれ系統の強い念願でございまして、このためには、広く山村環境整備して、住みやすい境地を築いてほしい。具体的に申し上げますならば、林道網整備拡充、これが第一番でございまして、さらにまた、各種の文化衛生施設整備等々ももちろん必要でございましょう。社会の谷間に置かれたとも言うべき、最も恵まれない環境にあります山村住民のために、ぜひ考えていただきたいものだと念願する次第でございます。  以上三点は、当初申し上げましたように、私ども系統の強い要望を集約いたしたものでございますけれども、このほか、国有林野の問題にも触れておきたいというふうに存ずる次第でございます。私どもは、国有林のあり方につきましては根本的な検討を加えまして、国土保全はもとよりのこと、広く国民経済及び地域経済、これに寄与できるような改革を断行されたいと考えております。国有林野林産物供給源といたしまして、需給及び価格の安定に資する、これは当然でありますが、その所在地域におきます林業者経営改善、民主安定というために、積極的に開放その他の措置をとられることを強く要望するものでございます。  ともあれ、以上の諸点が基本法に基づきます政府の基本的な施策として実現することを心から期待し、かつ願望いたす次第でございますが、その第一歩といたしまして、今回御提案に相なっております基本法案早期成立いたしますことを私ども熱望いたしております。このことを重ねて申し上げて、意見の開陳を終わることといたします。何とぞよろしくお願いを申し上げます。      ――――◇―――――
  6. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 途中でありますが、この際、委員派遣承認申請の件についておはかりいたします。  先般来の凍霜等による長野県下の農作物の減収状況調査のため、現地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、衆議院規則第五十五条により議長に承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、派遣委員の選定、派遣期間等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ――――◇―――――
  9. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 それでは引き続いて、次に吉田参考人
  10. 吉田参考人(吉田好彰)

    吉田参考人 私、全国木材組合連合会の常務理事をやっております吉田でございます。  今回、政府提出及び社会党、民社党から林業基本法提出されておるわけでございますが、先ほど他の参考人からも御意見がございましたように、究極の目的におきまして、この国土の六七%を占めておりまする林地の高度利用、それから林業生産の増大をはかりまして、他産業との格差をなくなしていく、他方林業従事者の所得を増大して社会経済に寄与せしめるという大きい目的につきましては、三案とも同様であろうと思います。この林業の重要性ということがここに新たに認識されまして、将来の林業のあり方に対しまして新しい国の目標が打ち出されたということにつきましては、林産業界すべてが感謝の意を表しておるものでございます。そうして、従来とかく軽視されがちでありました林業の産業的部面というものが大きく取り上げられたことにつきましても、今後の林業推進に大きな役割りを果たすものと考えております。  その意味から、林業基本法におきまして、国の施策として取り入れらるべき事項が掲げられておるのでございますが、いずれも現在の林業の実態を把握した適切な施策と考えられるのであります。特に三案とも、林産物の需給と価格の安定対策、これが必要であるということを強調されておりますので、この基本法制定にあたりましては、根本理念として、生産と流通は車の両輪をなすものであって、その機能を両々相まって完全に発揮せしむべきであるというお考えのもとにこの案が立てられたものと思うのであります。したがいまして、この基本法の対象は、従来の狭義な林業というものに限定されることなく、流通加工の部門を通じて総合的施策が講ぜられるものと理解し得るのでございまして、真に林業を近代産業の域まで引き上げていく、そのためにはぜひとも経過せねばならぬ道をここで示されたものというふうに考えられまして、特に大きい意義を感ずるのでございます。なお、需給及び価格安定の問題につきましては、後刻触れさせていただきたいと思います。  次に、国有林の問題について申し上げたいと思うのでございます。  三案とも、国有林のあり方については、基本法の一つの大きい眼目として取り上げられております。特に国有林の使命と性格についての分析の結果があらわれてきていると考えられるのであります。国有林の有する国土保全役割りを強調されるとともに、国民の国有林として山村経済により協力せしむべきであることを明示されたことは、国有林の真の価値を国民に知らしめる点から申しましても必要なことと思います。  いま一つ、国有林に対しては、木材業界としては、その経営規模、技術、供給量、いずれの面から見ましても、わが国最大の林業経営者としての立場から、指導役割りを果たしていただきたいというのが願望でございます。昭和三十六年の木材価格の異常変動の現象にも見られましたように、木材業界にとっては需給の安定が望ましいのであります。需給の安定を得ることにより、また生産をも安全せしめるゆえんと考えるのでありまして、基本法におきまして、国有林の持続的な供給とこれによる需給と価格の安全を重要な施策として取り上げられておることは、最も適切な指示といえると思います。もちろん、現在の国有林経営については、種々批判すべき点があると思われますが、それらの点につきましては、先ほど述べました根本的な理念に基づきまして、なおよく検討の上、この目的に沿う運営が望ましいのでございます。  その意味から、国有林の活用と経営の合理化ということが強く要望されるわけでございますが、農林業の構造改善のために積極的な活用を進めるにあたりましては、国土を最高度に利用することを原則として実施に移さるべきものと考えます。先ほども述べました、国有林の有する経済的な使命を放棄してまであるいは国有林の開放とかいう問題は、林材業界にとっては重大な関心事でございます。特に需給の面から申しますると、最も大きい供給者であり、しかも計画生産をなし得る国有林というものが、その面からくずれ、したがって、需給の関係から申しましても、不安定の度を増すということにつきましては、非常な問題でございまして、政府とされましても、この点につきましては慎重な態度で善処していただきたいと思います。  次に、木材需給関係から見た意見を申し上げたいと思います。  木材は、最近の需要構造の変化によりまして、需給関係にも大きな移動が出てまいりました。特に代替品の進出等によりまして、木材産業としましても対策の必要なことを認めておるわけでございまするが、とは申しましても、木材需要の絶対量は増加の一途をたどっておるのでございまして、昭和三十八年度においては約千四百万立方メートルの外材の輸入を行なっております。これは総需要量の二割をこえる数字でございまして、また国際収支の面から申しましても、約四億八百万ドルという膨大な外貨をこれに使っておるわけでございます。これらはあらゆる点から考慮すべき問題でございますが、これにつきましても、現在の需給関係から申しますれば、この外材の輸入なくしては木材の需給のアンバランスを招来するばかりであるという状態でございます。一方、これに対しまして、供給について見ましても、林業基本問題の答申で指摘いたされましたように、森林の財産保持的傾向というものは、これは遺憾ながら否定することはできないのでございます。この供給量の不足による価格の異常変動、これがまた外材の思惑輸入を招来するというような悪循環を示しておるのでございます。これを是正するためには、国内生産をあとう限り増大いたしまして、計画生産推進していくということが、最も適切であろうと思います。木材業界といたしましては、価格の一辺倒な値上がりを喜ぶものではございません。需給と価格の安定、しかも現在の木材の需給の状態からいきますれば、外材といえども価格の下落を示すという要因は少ないように思われます。したがいまして、生産につきまして外材の影響がよく論議されるわけでございますが、外材といえども上昇を示す気配にある現在におきましては、これに対抗し得る木材生産というものも決して不可能ではない。ただ、現在の生産費の高騰その他の面から申しまして、非常に困難な面はあると思いますが、森林所有者、林業経営者、木材流通業者を通じての機構の体質改善と申しますか、流通面の合理化をはかることによって、この困難な面を切り抜けていく、これが開放経済下における林業及び木材業のあり方であろうというふうに考えます。  そこで、木材需給の安定を得せしめる最大の目標は、国有林、民有林を通じて計画生産を行なわしめるという点でございまして、最近林業界におきましても、企業的林業というものの推進をはかって計画生産を進めるというような動きもあらわれてきたことは、従来の林業界に珍しい動きであるというふうに考えるのでございまして、このような制度をさらに推し進めていく。ただ、これがためには、金融、税制その他の面について、法にもうたわれておりますような適切な施策が必要であろうというふうに考えます。  また林業基本法においては、生産、流通を通じての企業の合理化、近代化があらゆる面から要望されておるのでございます。木材業界においてこれを阻害する要因として、業者及び設備の過剰と共同事業に対する認識不足というような点をあげることができると思います。これは業界自体においても解決すべき問題ではありますが、これをさらに早く進めるためには、国としての行政指導を行なう必要がある。木材業界におきましても、すでに協同組合による共同仕入れ、共同販売の実施あるいは金融力の強化等によりまして、相当の効果をあげております。また進んで木材団地の結成というような点にも意を注ぎまして、近代化、合理化を進めんとしておるのでございますが、これに対して積極的な助長、推進対策が必要であるというふうに考えるのでございます。しかるに、従来の林業行政というものは、生産偏重と申しますか、これら林産行政に対する考慮が薄かった点は、木材業界の伸展をも阻害いたしてまいったのでありまして、これが林業基本法制定にあたりまして当然是正さるべき問題であろうと思います。基本法におきましては、国及び地方公共団体は相協力するとともに、行政組織の整備林業団体の助長等の施策を講ずるということがうたってございますが、この条文がから証文にならぬような実際の施策というものが必要であろうと思います。  これを端的に申し上げますと、現在中央、地方を通じて言えることでありますが、林産行政は、農林、通産両省の行政の谷間にあると申しましても過言ではございません。したがいまして、これがために、木材産業に対する金融、税制、指導、それらのものが二元化しておるという実情は、木材業界が常にその是正を要望しておった問題でございまして、戦前戦後を通じまして、この生産の転換は林業基本法制定以外にないというふうに考えるものでございます。したがいまして、これらの問題に対しましては、林産組合法というようなものの制定まで考えていただきたいというふうに存じます。また、ただいままで申し上げたいろいろの問題点、これは林業基本法の範囲内においてやればやり得ることであるというふうに考えます。  私たち、林業基本法というものは、生産、流通を通じての将来の林業のあり方に対する宣言法の性格を持っておるというふうに考えるのでございますが、このあとに続くべき施策または関連法規、これの実施こそ大きい問題でございます。それなくしては、せっかくの林業基本法も絵に描いたもちに終わるということになるのでございまして、これに対する業界の期待は非常に大きいのでございます。あらゆる林業団体の中におきましても、木材業界というものは、特にこれらの点を取り上げまして、林業基本法の制定とその後の施策推進政府としても重大な決意を持って臨まれることを希望いたしまして、私の意見を終わらせていただきます。
  11. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 次に古川参考人
  12. 古川参考人(古川保津美)

    ○古川参考人 大門森林組合長の古川保津美でございます。  私は、昭和十七年より現在まで二十余年にわたりまして、単位森林組合の職員並びに役員をいたしまして、森林組合経営に当たり、民有林経営の経験を経てきたものであります。  今回、林業経営につきましての基本法案が国会で審議されておりますことは、森林組合経営立場にあります者といたしまして、心からなる敬意を表する次第でございます。  私は、長い間みずから歩んできました民有林経営の現地にあります者の立場から、法案の中に特に御配慮をいただきたいと思います二、三の点につきまして、少しくその考えを申し上げ、お願いをいたしたいと思うのでございます。  森林組合が民有林のにない手でありますことは、どの角度から見ましても認められるところと存じます。組合の因子をなしております組合員の構成は、その所有形態がきわめて零細でありまして、また農業経営者と同一の組合員がその大半を占めております。したがいまして、その経営が粗放的な姿を示しておりましたことは事実であります。しかし、近年国の政策推進組合活動の効果によりまして、いわゆる財産保持的な形態から経済林業に急速に推移いたしつつありますことも、また事実でございます。しかしながら、山林所有者が経済効果の上がりますよう林業経営に意欲を持ちましても、所有形態が零細なるために、その技術も低く、またまちまちでありまして、その林地の効果を十分にあげ得られない実情であります。  これらの諸点を合法的に少しでも解決する方策に、森林組合の委託事業がございます。森林組合が零細な所有者にかわりまして、造林事業からその販売に至りますまで、事業を合理的に担当しまして、その労務関係、資金関係解決していく、さらにその零細所有形態を団地ごとに協業化しまして、その事業を行なうために機械化、能率化する、さらに林産物の共同販売を行なう等、いわゆる林業近代化をはかろうとするものでございます。私の組合では、組合員の約六割がこの委託に現在なりつつあります。現在の民有林におきましては、この方策は十分その効果をあげ得るものと思うのでございますが、これらを行なうのに、森林計画をもとといたしまして、個人経営計画確立する必要がございます。また、確実なる労務組織や、これらに関連した資金の確保も絶対必要条件でございます。森林組合がそれだけの仕事を行ない得る力がなければなりません。民有林経営の急務とされます自家労力以外の労務者の確保には、個々の所有者がこれに当たることはすでに困難な段階にきておる。森林組合が労務班を組織しまして、より以上すぐれた技術と完全なる労力を投入しまして、より以上合理的な経営が必要である。また、その努力をしておりますのが全国民有林の実態であろうと思うのでございます。  現在の森林計画は、森林全体の姿は詳細に調査計画されますが、山林所有者個々の計画は立てられません。いまの森林計画を一歩前進させまして、個人の経営計画を立てますことは、これからの林業経営におきましてぜひ必要でございます。個々の計画樹立によりまして、協同化の基礎もはっきりしてくると思います。この計画樹立を今後どこでやるかは別といたしまして、私の組合では、ことし個人経営計画を樹立したいと思いまして、計画を進めております。これには相当の時日と経費を要します。また協業化につきましても、一団地を協業化しようといたします場合、数多い山林所有者をこの方向に歩調を合わさせ、それぞれ異なる林地の立地条件を検討しまして、みんなの納得のいく協同経営体をつくりますことは、これもまたなかなか容易な仕事ではございません。これらにはもちろん国や地方公共団体等の力が必要でございますが、その末端の仕事は森林組合みずから行なうのが必然であろうと思いますし、一番実情に沿うものと思います。これらの仕事は現在の森林組合のすべてが行ない得るものではありませんので、どの組合でもみずからこれらの仕事を率先して実行し、その効果をあげ得るような、強力なる国の措置をぜひお願いいたしたいのでございます。  さらに、ここで問題なのが労務問題でございます。その実情を申し上げますと、いま一般に使われておりますチェンソー、ブッシュクリーナー、集材機等は、すべて重労働でございます。夏はやけつくような炎天下にブッシュクリーナーで下刈りを行なう、チェンソーで立木を伐倒する、また寒気りん烈たる冬の雪の中でも除間伐もしたり、集材機も動かさねばならない。これらの困難なる作業を行なうのには、相当の労働条件が必要となってまいります。しかるに、国有林労務者と比較いたしますと、民有林の労務者には何一つとして完全なる身分保障等が実施されておりません。きわめて特定の組合に失業保険が適用されているのみでございます。したがいまして、年年民有林の労務者は他産業に転出し、さらに機械化等に必要な若いたちは、林業から逐次離脱しつつある実情でございます。私の地区の林業労務者の平均年齢は三十八歳でありまして、さらに年々その平均年齢は老齢化しております。これは私の地区ばかりでなく、全国的な林業労務者の実情であろうと思います。こうした実態の中におきまして、前述の協業、機械化等を実施いたしますためには、民有林林業労務者にも失業保険、社会健康保険、農林共済等が完全に適用し得るような状態を、国におかれましてすみやかな措置をお願いいたしますとともに、機械化のための技術労務者の養成等の強力な措置をもお願いいたしたいのでございます。  また、山林所有者がその経営に魅力を持ち、特に零細団地の共同化等を推進いたしますために、立木価格の安定が必要でございます。そこで、個々に処分することの不利を補うために、共同販売等を行ないまして、よりよい価格の維持につとめていますが、長い年月を要しましての木材の価格が、少なくも再生産にその所有者が十分意欲を持ち得るような価格の安定策を講じていただきたいと思います。  この立木価格の維持等に関連しまして、林道の開設がございます。現在の民有林林道の開設は、その受益面積、蓄積等に強い制約がありまして、開設がなかなか困難でございます。これらの規制をもう少しく緩和していただきまして、いわゆる多目的林道の形態としていただき、さらに一般開設林道にも補助金を増額していただき、林道が民有林の動脈となりまして、その開発と立木価の維持等に一段と役立ちますよう、国の措置をお願いいたしたいのでございます。  いまや基本法が制定され、長い間原始的産業といわれておりました山林の経営が著しい発展を遂げ、そのにない手としての林業従事者社会生活の進歩をなし、その地位向上がはかられ、あわせて国民経済の成長発展がなされようといたしますとき、民有林の推進役たる森林組合の責任の重大なるを強く感ずる次第でございます。  山は四季それぞれの移り変わりによりまして、その起伏する姿と大自然の中に、われわれの心のかてを与え、全国民に観光の美を楽しませ、さらに国土保全の重責をになっております。この山々も、その経営に当たるもの、特に民有林におきましては、ただいま申し上げましたような数々のむずかしさを内存いたしております。この森林組合が、林業発展林業従事者地位向上に十分役立つ強力なる活動を行ないますには、少なくも以上申し上げ、お願いをいたしましたような施策が必要でございます。  私は、二十余年間、山と取り組んできました体験の中から、そのにじみ出るような民有林経営のむずかしさと、強い忍耐の必要なることを痛感いたしながら、いまこそ声を大にいたしましてお願いをいたす次第でございます。何とぞこれらの施策の実現を期待いたしますがゆえに、国会の諸先生方の御理解によりまして、一日も早く基本法成立をお願いいたす次第でございます。  はるばる長野の山奥から、私は参考人といたしまして、国会の委員会に出頭いたしまして、親しく現地のなまの声を諸先生方にお聞きいただけましたことは、まことに喜びにたえないところでありますが、基本法成立によりまして、これらのお願いが一日も早く実を結ばれますよう、あわせてお願いいたしまして、意見の陳述を終わらせていただきます。
  13. 高見委員長(高見三郎)

  14. 今村参考人(今村暁夫)

    今村参考人 今村でございます。  ただいまから林業基本法に対する私の意見を申し上げます。  まず第一に、林業全体に対する方針については、近年曲がりかどにきたといわれておるおりから、森林に関する基本法が国会に上程され、審議されるに至ったことは、まことに喜ばしい次第と存じております。  いまや林業は、単に資源維持的な思想や消極的な生産保続的な考えでは済まされません。日本経済のゆがめられた成長過程の中で、必然的に解明されなければならない課題が林業政策であります。  政府案基本法目標の中でも述べられているように、林業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、林業生産の増大を期すること、他産業との格差を是正することも当面の大きな問題点であると思います。しかしながら、社会党の森林基本法の第一条に述べられているような、森林本来の持つ公益的機能目標の中で明らかにし、それと企業としての林業の位置づけを明確にするという態度は、ゆるがせにできないことです。  次に、政府案政策に取り組む態度の問題について申し上げますと、全体を通じて総花的であり、振興法的であり、どこに政策の重点が置かれているか、明確でありません。私ども労働組合立場から申しますと、今後林業問題を論ずる場合においては、林業労働者の位置づけを不明確なままにして他を論ずることは許されないと思っております。この意味において、社会党では、雇用安定法を提出し、林業労働者の新しいあり方について具体的な施策を提案しているのでありますが、政府案基本法では申しわけ的に林業労働者の問題に関心を示しているにすぎません。私どもといたしましては、政府が将来どのような形で林業労働者の問題に対処していこうとしているのであるか、その誠意を疑わざるを得ないのであります。  この点について、国有林労働者立場から申し上げますと、私たち全林野労働組合に結集いたします約六万の現場労働者は、低賃金、こま切れ雇用の劣悪な労働条件のもとに置かれていますが、この人たちは決して日雇い的な臨時労働者ではありません。国有林に親の代から働いており、勤続年数二十年以上の人も少なくありません。そしてこの人たちは長官、局長の永年勤続表彰を受けていますが、林野庁当局はみずから直営直用事業を放棄して、冬山事業を廃止する等の手段により、毎年六カ月ないし九カ月くらいの雇用期間に据え置きまして、毎年毎年、採用、解雇が繰り返されておるため、何年勤務してもまとまった退職金ももらえず、失業保険の中に退職金が埋没するという現実であります。この点について、政府は本基本法審議にあたりまして、意欲的な誠意を示していただきまして、社会党案の森林基本法第十三条に示してあります方針に従い、再検討をお願いしたいと存ずるところであります。  次に、国有林野の管理、経営のあり方について申し上げます。私は、現在の国有林野事業に多くの批判と意見を持っておるものであります。  その第一は、国有林野事業は国営企業としての使命を果たしていないということであります。現在国有林は約二千三百万立方メートルの立木を生産していますが、この約七割が立木処分で売り払われ、残りの生産量についても請負事業が多分に導入され、直営直用の事業は一定量に限定されているということであります。この点は国有林の使命である木材価格の安定、需給の調整役割りを大きく制限しています。というのは、立木段階で直営事業をやめてしまった場合、一部の業者を潤すだけで、最末端の消費者が安い国有林材の恩恵を広範に受けるということは不可能になるのであります。  次に、国有林野の硬直的な予算制度と経営方針、人事問題について申し上げます。  現在の特別会計は、単年度収支均衡予算を前提として運営されていますが、昭和三十五年の特別会計法の一部改正により、毎年度の利益の二分の一に相当する額を持ち越し現金から特別積み立て金引き当て資金に組み入れられることになりました。この引き当て資金は、本来、森林開発公団、農林中金へ林政協力として支出する資金源でありますが、このほかに、この特別会計の中で保安林買い入れあるいは買い入れられた保安林に対する治山事業等も行なうというふうなことを考えますと、二重の林政協力を行なっているということになり、この特別会計法は、一部改正以降、単年度収支均衡の欠陥の上に、さらに毎年一定額の利益金が林政協力のために凍結される結果となり、企業的業務勘定と行政的業務勘定がこん然一体となっております。したがって、この点は社会党案の森林基本法の十二条に述べられるごとき国有林野特別会計の改善が必要であります。  さらに、経営方針とこれにつながる人事問題について述べますと、近年の林野庁の行なう経営方針は、現場第一線に働く技術者の意見を全く顧みることなく、天下り的に経営方針が強行され、それぞれの林地に適応しない増伐体制がとられております。これを人事機構より見ますと、署長は局長の顔色をうかがい、局長は長官の顔色をうかがうというような、常に上部の動きを見なければ何一つできない現状であります。これは多分に長官、局長、営林署長に至るまでの短期間の任期と、腰かけ的な、ことなかれ主義による方針が、悪循環的に流れていることに基因しているものである、こういうように考えるものであります。この点は、林業技術者として林業百年の計から見ますると、はなはだ残念なことであるこういうふうに考えているところであります。  次に、国有林野の使命について、政府案の第四条を批判しつつ意見を申し述べたいと思います。  この条文を読んでみますと、どこに国有林の使命があるのか、全くわかりません。まず、国として民有林林政に対する施策と、国みずからが事業を遂行する国有林野事業の経営方針がこん然一体となっており、さらに国有林公益的機能に対する位置づけが抽象的で、国営企業としての林業生産の増大に寄与する方針も、林業構造改善との関連でどのように活用されるのか、明らかでありません。また、二項にいわれている農業構造改善との関連づけがどの範囲にまで及ぶのか、明らかでありません。これを一項と二項で関連づけて読むならば、最近特に激しくなった国有林開放要求にも応ずる姿勢があり、それがしかも、林業構造改善農業構造改善と、産業の振興、住民の福祉向上のために用いる国有林野まで開放の対象になり得るような印象さえ受けます。したがって、ここでいわれている活用とはどのような意味を持つものであるか、明らかにされなければなりません。もしこの部分があいまいなまま政府提案の基本法成立するならば、政治権力の圧力による一方的な解釈により、国有林野がなしくずし的に売り払われる結果となります。したがって、ぜひこの部分に対する見解は明確にしておくべきだというふうに考えます。  さらに、この際、私たちの国有林野開放要求に対する考え方を明らかにしておきたいと存じます。  私は、現在の国有林野経営方針に多くの批判を持っております。したがって、現在起こっておる国有林野開放要求に対しても、理由なしに否定するものではありませんが、戦後の未墾地の所属がえ、特別法による売り払い等の実績から見て、賛成し得る条件は見当たりません。さらに、農業構造改善事業自体、平坦部においてもあまり成功しておらず、まして国有林所有地域が成功するかどうか、はなはだ疑問であり、同事業の持つ零細農締め出しの性格、果樹、酪農への選択的拡大に対する生産物の価格保障等を考えた場合、政策的にも賛成いたしかねます。  また、特に私が現在の開放要求に問題を感じておりますのは、多分に政治的な影響により、利権につながる不明朗な話を仄聞するからであります。過去の例にも見られますように、結局は財力のある大きな山持ちが吸い集めてしまう可能性が大きいことであります。したがって、私は、現在行なっております開放要求が真に農民のためになるとは考えられません。私は、林業は、その長期生産性と、一定規模以上の集団経営で初めて新しい技術が取り入れられることと、奥地の林分の開発は、国営ないし公営でこそその成果が期待できる等のことからして、農用林を除いては、将来林業は国営であることが最も適当であると考えます。ただし、現在のような国営企業を想定しているものでは決してありません。  最後になりましたが、私たち全林野労働組合が昨年全国四カ所にわたり調査いたしました結果を発表して参考に供したいと思います。  まず、国有林は明治時代に政府によって一方的にきめられたので、地元民は締め出されたという感情が残っております。開放については、立地条件から、農耕地より林業地として、地上立木を含めて安い価格で開放してほしいという要求もあります。しかし、はげ山はもらっても造林する資力がないと言っております。  またもう一つは、部分林、共用林の設定地、分収割合に対する不満など、地元施設の充実を望むとともに、地元特売の薪炭材などに対する増量の要求が強いこと、なお、これらの要求が充実されれば国有林の開放は望まないとも言っております。  さらに、立木、素材の売り払いが地元を素通りして県外や大きい業者に多くなされるため、地元の木材関連産業が発達せず、国有林の収益が地元に還元されないことに対する不満があります。  また、国有林関係の賃金が安い上に、造林の事業等に半ば義務的に出役させられることや、最近請負事業が多くなって、地元外の人が入ってきて仕事を取ってしまうことに対する不満というふうなことがございました。  以上、林業基本法に対しまして、労働組合立場から所要の意見を申し上げましたので、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  15. 高見委員長(高見三郎)

  16. 熊井参考人(熊井一夫)

    熊井参考人 ただいま御紹介にあずかりました私、日本国有林労組合の中央執行委員長をしております熊井でございます。  日本国有林労組合と申しましても、あるいは先生方には御存じでない方もあろうかと存じますが、私たちは、昭和三十四年の暮れに、国有林に働くところのいわゆる月給制定員内職員をもって、労働条件の向上あるいは林野の民主化運動をやろう、こういうような立場に立ちまして、労働組合を結成したわけでございます。  本日は、先生方におかれましてはたいへん貴重なる時間を拝借させていただきまして、私たち日林労の考え方を述べます機会を得ましたことを、たいへんうれしく思っている次第でございます。  私たち、この林業基本法につきましての考え方につきまして、かいつまんで申し上げてみたいと思います。  何と申しましても、日本の林業は、他の産業と比較いたしまして、その生産性の問題なり、あるいはまた利用の集約的な合理化の問題なり、また国有林、民有林を問わず、林業労働者全体の雇用の問題なり、あるいは所得その他労働条件の問題等、きわめて低位であるわけでございます。したがいまして、私たちといたしましては、かねがねこの林業のあるべき姿というものをはっきりとしなければならない、こういう角度から、林野当局に対しましても、さまざまな形において要求を重ねてまいりましたけれども、いずれにいたしましても、御承知のように、日本はその全面積の三分の二強を占めるような大森林面積があるわけでございますが、たとえて言うならば、昭和三十八年度におきまして、何と四億ドルに当たる外材を輸入しなければならないような実態にございます。このことは、一口に申しまして、国有林、民有林を問わず、過去の林業政策の貧困を物語っているのではないか。こういう点を考えるならば、何と申しましても、国有林、民有林を問わず、林業の正しいあり方、位置づけ、百年の計というものを早急に確立する意味におきまして、当林業基本法的なものについては早期にこれを確立しなければならない、こういうような観点に立っております。  さて、今回政府並びに社会党、民社党、それぞれ林業基本法あるいは森林基本法という角度から出されておりますが、その点につきまして集約いたしますと、いわゆる林業生産の拡大並びに生産性向上林業従事者の所得の増大、こういうような点を主張しておられるわけでありますが、これらにつきまして、それぞれ三党に対する考え方を私は申し上げたいわけでございますけれども、時間の関係上、政府案についてのみ、しかもその問題点についてのみ、私の考え方の一端を申し述べさせていただきたい、かように考えております。  まず第一に、政策目標にも書いておりますが、要するに、国有林、民有林を問わず、非常におくれている林業というものをどのように打ち立てていくか、こういう点でございます。政府案で言うならば、いわゆる総生産の拡大並びに生産性向上等を通じて、他の産業との格差を是正したい、こういうことを言いながら、私の考え方がひがみ根性でなければ、ただのつけたり的に林業従事者の所得増大ということを言っているのではないか。いわゆる総生産なり生産性において他の産業並みに格差を是正するなら、この政策目標の第一点に、林業従事者、とりわけ林業労働者においても、他の産業との格差の是正、あるいは都市の労働者との所得の均衡確保、こういう点をなぜ主張しないのか。この点から考えると、この林業政策目標なるものは、ややもすると森林所有者あるいは森林経営者に重点が置かれているようなきらいがあるのではないか。総生産向上生産性向上もけっこうでありますが、それと同時に、林業従事者林業労働者についての他産業との格差の是正をやっていただきたい、かように考えます。今日林業労働者は、民有林、国有林を問わず、他の産業と比べまして、賃金はもちろんのこと、すべての点において非常に劣っております。したがいまして、こういう点につきましても、政策目標の中に、はっきりと他産業との格差是正という問題を従業者あるいは労働者の中にも適用してもらいたい。これがまず第一点でございます。  第二点といたしましては、林業従事者の所得の増大ということをうたっておりますが、林業従事者と一口に申しましても、そこには森林所有者もあれば、林業経営者あるいは労働者もおります。この森林所有者なり経営者なり労働者は、それぞれ異なった基盤なり立場にございます。したがいまして、いわゆる労使問題の関係といたしまして、絶えず分配問題をめぐって紛争や対立の種になっているわけでございまして、これから考えますと、いつの場合でもそうでございますが、労働者は絶えずしいたげられた形になっております。したがって、林業従事者、とりわけ林業労働者の所得の問題と同時に、分配の問題の規定づけも明確にやっていただきたい、こういう点を特にお願いしたいと思います。また、民有林関係労働者につきましては、非常に所有の零細性、あるいは林業がもたらすところの長期性並びに低利性、こういうような問題等がございます。政府案によりますと、いわゆる森林組合を通じて作業の共同化、あるいは国有林の活用、こういうものをただ羅列的に並列いたしておりますれども、もっと具体的に、いわゆる総生産を高めるためには森林行政をどうするかという点についての根本的な立場視点というものが欠けているのではないか。私に言わせれば、こういうようなことでなくて、もっと森林組合中心としたところの経営の集約化、集約的規模の拡大並びに経営の合同化、こういうような点を中心に、これに対しまして政府も財政的にも組織的にもさらに積極的な指導なり助成を通じて、まずいまのような林産業者が中心になった林業政策林業事業ではなくて、法的な機関でございますところの森林組合というものを中心にこの基盤確立いたしまして、それを中心にいたしました林業の再生産の拡大を行ない、同時に、労働者の処遇の改善とか格差是正、こういうものを積極的にやっていただかなければならないのではないか。いかに私たちが、また政府がこういうことを書きましても、今日は農村の場合と同じく、労働者はもう林業はいやだということで山村から離れております。したがいまして、林業基本問題を考えるならば、まず、そのにない手となり、働き手となっておりますところの労働者の処遇というものを相当高くはっきりと書いていただき、またそういう施策をやっていただきたいと特にお願いいたしたいと思っております。  次に、国有林問題でございますが、確かにこの案を見ると、国は企業的に経営し云々ということから始まりまして、林産物の需給調整価格安定ということをずっとうたいながら、後段で国有林の問題につきまして、林業の構造改善のために積極的に活用してもらいたい、活用すべきである、こううたっています。一体国有林というものはどうあるべきかという定義が非常にぼやけている。一方では企業採算をうんとやれ、一方では地元に活用利用をやれ、こういうように国有林本来の目標なり使命がぼやけてしまっているのではないか。この点もう少しすっきりとした国有林のあり方というものを定義づけるべきではないか、かように考えております。  今日、すでに御承知のように、国有林は、他の先進諸国でありますところのアメリカにおいても、イギリスにおいても、フランスにおいても、非常にふえております。ひとりわが日本だけが国有林が毎年毎年縮小されておる。そのことを考える場合に、そこには非常に問題があるのではないかと思いますが、何はともあれ、国有林というものは、何と申しましても、国土の保全と林産物の需給調節その他一般国民に対する公益的な事業、こういうものをあわせ持った主たる目的があるわけでございまして、そういうような点から考えるならば、ただ単に利用だとか活用ということでなくて、もっと逆に、重要な民有林地につきましてはいわゆる買い入れ方策とか国有化、こういうものをとっていくことがより正しい姿ではないか、かように考えております。  したがいまして、私たちは、今日、林業、特に国有林は、国の社会資本としてきわめて貴重な財産でございますので、あくまでも国有国営の路線の姿に立って国有林というものを経営しなければならない、かように考えております。しかしながら、私たち国有林労働者立場から考えましても、国有林は一体これでいいのかという点を反面反省するならば、ここにもやはり若干問題点がございます。なぜならば、木を植えてから、いわゆる造林、手入れあるいは伐木、造材、販売、立木処分、治山、林道、すべて国有林の一連の経営計画というものが、地元民なり、あるいはそれに携わるところの労働者なり、あるいは地方公共団体意見を聞き、十分勘案しての国有林経営計画なり利用方法がなされていない、ここにやはり問題点があるのではないか、かように考えております。したがいまして、私たちは、もっと、国民の山としての国有林はいかにあるべきか、そういうような点に立って、地元民なりあるいは利用者、労働者、消費者、その他各階層の意見を聞いた国有林経営というものをやっていただかなければならない、かように考えます。  そのためには、現在の林野庁内部におけるところの機構も直してもらわなければならぬ。たとえば現在林野庁というものは、御承知のように、行政と企業というものが全く混合しております。そうして国有林野事業特別会計のあり方も抜本的に改正をしなければならない幾多の問題点がございます。こういうような組織的な改正なり再検討の問題と同時に、これに携わる林野当局の管理者も、従来の事なかれ主義ではなくて、もっと国民の山としての責務に立って管理経営をやっていただかなければならない。一部のパルプ資本なりあるいは一部の利権屋のための国有林経営であってはならない、かように考えております。また、いわゆる国有林従事する労働者、いわゆる私たちも、ただ国有林に対しておのれの意見のみ、権利のみを主張いたしまして、いわゆる義務的な問題についてはあまりにも軽視しているようなきらいがあるわけでございまして、賃金はよこせ、手当はくれ、こういうことを主張しながら、いざとなれば生産性向上運動反対だとか、あるいは機械化反対だとか、合理化反対だとか、こういうような反対のための反対は考えなければならないわけでございまして、労使ともに、国有林の正しいあり方について、いわゆる前向きの姿勢に立って検討し、その対策を樹立しなければならない、かように考えているわけでございます。  次に、国有林開放の問題でございます。要するに、この問題は、政府国有林活用の問題と関連してか、国有林のいわゆる払い下げ問題が相当クローズアップされておりますが、私は結論から申しまして、この国有林開放については反対をいたすわけでございます。なぜならば、何と申しまして、国有林は、統計的に見ましても、明治の初めのあの官民区分当時の国有林は千六百二十三万町歩もあったわけでございますが、今日の段階ではわずかに七百五十万町歩と半分以下になっておるわけでございます。しかも、減っていい悪いは別といたしましても、国有林千六百二十三万町歩から民間に払い下げた山がどうなっているかということを私はもう少し考えなければならないと思います。その山は、払い下げた直後、いわゆる立木一代限りで、林野としての経営はなされていない。粗放な経営となり、森林としての価値のない山として今日おかれております。このことは、古い話を例にとるまでもなく、たとえば昭和二十三年以降、そうした未墾地買収だとか所属がえだとかいうことで、約六十万町歩の林野が払い下げられておるのでございますが、これまたそれ以前と同じように、ほとんど利用価値のない山としてそのまま捨ておかれております。このことは何が原因しているかと申しますと、何と申しましても、森林が持つ長期性の問題あるいは低利性の問題、また買い入れた民間団体におきまして、林業技術者もいない、財政能力もない、あるいはそういうものが非常に希薄である、こういうような点から、山はもらっても、立木一代限り、あとはそのまま。こういうような形態であるならば、ほんとうに国民の財産あるいは社会資本として貴重な森林として、非常に大きな問題があるわけでございまして、私たちは現在の国有国営の姿というものを肯定しながらも、反面地元民がなぜ国有林の開放を叫ぶか、その内容を十分謙虚に反省しなければならない、かように考えております。何と申しましても、地元民におきましては、国有林は村にあってもその利用がほとんどなされていない。ここに国有林の開放が東北地帯を中心に起こるわけでございますが、いずれにいたしましても、所有権の開放ではなくして、国有林野事業に支障のない限りの意味合いにおいて、国有林の利用権の開放というものを積極的に行なうことは、まことにけっこうなことであろうと思います。けれども、所有権は、時の流れによってあるいは為政者の主観によって、国有林を右左に動かすことは慎まなければならない問題ではなかろうか、かように考えております。  さて、最後に一言、時間も過ぎておりますが、林政審議会について申し上げたいと思います。御承知のように、これに類似したものが、現在農林省林野庁のほうに中央森林審議会という形においてあります。農林大臣の諮問機関といたしまして、国の森林に関する重要事項を審議する中央森林審議会がございますが、この構成メンバーは二十七名になっておりまして、学識経験者十七名、政府関係が十名、二十七名で構成しておりますが、この問題について、私たちは、かねがね林野当局に対しまして、従来の傾向としても、こういう審議会で審議をするにあたっては、ひとりいわゆる政府のお役に立つような――簡単に言うならば、現在の中央森林審議会は元農林省の高級官僚によってのみ独占されております。そこにはわれわれ労働代表もいなければ、零細山村民の代表も一人もいない。したがって、私たちは、かねがねせめて一人くらいは労働者代表も中央森林審議会に加えてもらいたいという主張をしてまいったわけでございますが、ナシのつぶてで、こういうような実態でございます。ここにも林政審議会は十五名と書かれておりますが、この審議会の構成も、学識経験者というきれいなことばによって、いわゆる政府側に都合のいい人、そういう要人だけの委員十五名によって構成されるということのないように、ひとつ林野を幅広く、民主的に林政を打ち立てる審議をされるためには、労働者の代表も農民の代表も消費者の代表も学識経験者も、すべてこの林政審議会のメンバーとして加わって、民主的にして明るい国有林野、民有林野行政ができるよう、先生方の格段の御配慮をお願いいたしまして、私の意見にかえさせていただきます。
  17. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 以上で参考人各位の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  18. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  19. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 あとで同僚委員からたくさん質問があるようでありますし、時間の関係もありますので、数点にしぼって簡単にお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、倉沢先生にお伺いいたしたいのでありますが、御承知の農林漁業基本問題調査会で、林業の基本問題と基本対策というのがいろいろ議論されて、答申をされました。先生もその経過については十分御承知かと思いますが、そこで林業のにない手という問題について、家族的林業というものの評価というものを相当認めて、そういう家族的林業の評価の上に立った答申がなされたというふうに見ていいんじゃないか。ところが、林業のにない手として、やはり企業的林業というものが林業のにない手だという主張も一方にあり、いま申しましたような答申に基づく、家族的林業というものを育成強化をしなければならぬという考え方もあるわけであります。こういう問題に対して、先ほど先生のほうで、林業基本法において、従来の土地生産性というものからさらに労働生産性を十分重視をした方向にこの問題が進む点で、非常に大きな意味を持っておるという意味のお話がございましたけれども農業と違いまして、言うまでもなく、林業の場合、わが国の場合には国有林あり、公有林あり、さらに部落有林もあれば、私有林もある。これは歴史的ないろいろな経過がありまして、今日そういう形をとっているわけであります。しかも、いま世上では、先ほど来参考人それぞれの立場から御意見がございましたけれども、非常に政治的な動きとして、国有林の開放問題というのが提起されてきております。私は、国有林、公有林、私有林というものの明確な位置づけと使命というものを林業基本法の中では十分明らかにされていかなければ混迷を生ずるのではないか、政治的な動きによって、林政問題が百年の大計から見て禍根を残すということは、これは絶対に避けなければならない、こういうふうに思うわけであります。先ほどの先生のお話では、国有林の開放問題については非常に慎重な御意見のようでありまして、むしろそれは所有権というものを移動するのではなしに、いわゆる国有林の土地を利用した造林その他の関係で、従来いうところの部分林、共用林、こういうような形において考えるべきものではないかというふうに私は拝聴したのでありますけれども、こういう国有林、公有林、私有林を通じての今後の発展方向というものについて、林政立場から、先生の御意見はどういうところに置いておられるのか、この二つの点をお伺いしたいと思います。
  20. 倉沢参考人(倉沢博)

    倉沢参考人 第一点は、基本問題及び基本対策で、基本問題調査会の審議の際、林業の将来のにない手というような考え方が出てきたその中で、家族経営林業、企業的林業ということばが出てきたが、これをいかに考えるか、こういうふうな御質問だと理解しているわけでありますが、私は、実は家族経営林業というのを、私なりにいわゆる農家の経営する――現に存在しているわけでありますが、農家が経営する森林経営、こういうふうに理解しているわけであります。でありますから、結局大体森林経営と申しますのは、そもそもがほかの業をしておりまして、そこでその業がある程度安定し、労力的にも資金的にも余剰が出てくるというような条件のところで、森林のような非常に長い投資が具体的には可能になってくるわけであります。そうしますと、頭の中で考えた非常に形式的な家族の労働がいきなり運転し出して森林経営ができるというような考え方は、なかなか私にはつかみにくいのであります。その意味で、私は、この家族経営林業ということばを、むしろ安定的な農家、森林経営を安定的に包括した形で考えて、一つのにない手のイメージにしておるわけであります。  第二点は、しからば企業的林業というのについてはいかに考えるか、これは第二点といいますか第一点の第二項になると思います。この点については、いろいろ議論があるところでありますが、私は、現在、比較的大きな規模の森林経営が企業的に行なわれているとは考えておりません。ただ少なくとも一定の大きな規模での生産手段を持ちまして、また資金もある以上は、少なくとも社会的な責任として企業化への方向をとらなければならないのではないか、その努力が大規模の経営者には必要ではないか、こういうふうに考えております。その努力は一体いかなる方向にされていったらいいかということになると、やはり計画的な生産とか、労務管理を近代化して労働条件をよくしていくとか、そういうような形が考えられるわけでありますが、それらのことをやるには、これは私自身の個人的見解でありますが、単に森林だけを経営しているという形態では、なかなか容易でないように見受けられるのであります。そこで、私の頭の中にある企業的林業というのは、これもまさに現段階ではそう数多いものではございませんが、一定の数の労働者を使いまして、一定の機械設備等生産設備を持って、自己の森林計画的に回転しながら、生産性及び生産量を増大していくという努力をしている形態にならなければならないということであります。そのようなふうに、現実からはいささか遊離しますが、少なくとも目標としてはそのような形が考えられはしないか、こういう形を大規模経営の一つの目標として、いわゆる企業的林業というものが置かれたのではないか、こういうふうに理解しております。  第二点は、国有林についての問題、公有林についての問題、私有林についての問題、こうあると思います。これらは総括すると、実にたいへんな大問題になりますので、国有林について、先ほど若干申し上げましたが、国有林については、その使命は非常にいろいろ考えられておりますし、私自身もいろいろ考えつつあるところでありますが、少なくとも国有林というものは、世界的に見ても、いずれの国においても重要な存在として保護されているわけであります。したがって、それらのことは詳しく調べなければなりませんが、さしあたり、現在日本で起きている国有林開放というような考え方について申し上げたいと思います。  私自身の考え方によりますれば、ただいま起きているような国有林開放というような運動が、いわゆる全国的あるいは一般的な形で起こるということについては、いささか疑問を持っております。なぜかならば、林業の行なわれる山間部における国有林、公有林、私有林というようなものの配置は、それぞれ違っております。しかも、人口の分布もそれぞれ違っていると思います。また、そこにおける農地のあり方なども違っているわけであります。そういうような、いろいろな条件の違うところの国有林の地元部落村があるわけですが、そういうそれぞれの違った条件の地元の方々が、一せいに国有林開放という形で出てくる、そういう考えに統一されるということは、おそらく一般理論的にはあり得ないのではないかというふうにさえ考えているのであります。したがって、国有林の開放といいますか、そういう問題点は、むしろ局部的に起こってくることで、開放ということばはおかしいのですけれども国有林を民間に使わせろという要求は、場所によっては起こるのも当然のようなところもあるいはあると思います。そのようなところは、おそらく地元の農家の方々森林を使うという意欲が出てきておるようなところであって、そのような意欲を国がいかに誘導したらその地元の農家の安定に資せられるかというような考え方のもとに、国有林の活用という問題が慎重に考えられなければならないのではないか。それも先ほど申しましたように、森林経営というのは、そう一朝一夕にできるものではなくて、でき上がったときにこそ農家の安定に資せられるものでありまして、一朝一夕にできるものではない。その間は、やはりなるべく農家に負担をかけないような方式をとって、現在の国有林の部分林制度を農家のほうに有利な形に改善するとかいうようなくふうを重ねながら、地元の農家の安定をはかっていくということが、国家の財産を預かっている国有林の一つの立場ではなかろうか、こういうふうに見るのであります。したがって、一般的な国家の財産を一般的に開放するというような、非常にラフな、粗雑な考え方は私には理解できないのであります。  それから公有林でありますが、公有林というのは、もともと地元部落のものであった土地でありますが、それらが町村の所有、そして一部は町村の経営になり、また一部は地元の人たちの直接の利用になっているというような一定のバランスの関係で、現在の公有林の中身が分かれていると思います。町村の経営になっている分はいわゆる直営林ということになるのでありますが、直営林のあり方について、従来はともかく基本財産造成という、前の町村制のころの思想からずっと引き継いできておりますが、私の個人的な考え方によれば、町村財産として営々築き上げてきました町村の直営林というものの中には、地元の町村の人たちが従来からやはりその町村の山林をつくるのに非常に労力をつぎ込んでいるのではないかと思います。それはやはり町村の山林であるから出て働くのだという関係が多くの町村にあったわけであります。そういうようなこともありますし、もともとが各部落のものであったということになれば、やはり町村の一般的な財政としていきなり考えるのではなくて、そこからの森林の収入は、いわゆる町村住民の福祉というような関係に主として回されるようなことが必要ではないか。そういうようなくふうがされるならば、町村の直営経営というものは、きわめて町村民に歓迎された形で包括されるだろうと思います。  それから残りの町村所有林の部分、つまり、地元民に従来も利用させているというような部分があるわけです。これらの部分については、町村が率先して資金のあっせんとか、あるいはいろいろな技術のあっせんというようなことを行ないまして、いわゆる林業の構造改善と申しておりますが、そういう方面の土地利用の高度化ができるように、町村の側も町村民の立場に立って、利用者の立場に立って考えてやらなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えております。公有林については以上です。
  21. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 さらにお伺いしたいと思いますが、時間の関係もありますので、次に移らしていただきます。  国有林問題について、倉沢先生の御意見の点、この問題は非常に政治的に動いておりますけれども、きわめて慎重に対処すべき問題を含んでいると私も思っております。  喜多さんにお伺いいたしたいのでありますが、喜多さんは森林組合の代表でありますので、全般的な問題がたくさんありますけれども、これからの林業の構造改善の問題について伺います。先ほど非常にじみではありましたけれども、古川さんのほうから、第一線の長い経験を通じて、零細な森林所有者の協業の問題というようなことについて、森林組合の果たしてきている役割りを貴重な御意見として承りました。私有林所有の形態というものを見ますと、大きいのも一方にありますけれども、九割近いものが五ヘクタール以下という零細な形であります。こういう形の中で林業の構造改善を推進していく場合、具体的な問題として、先ほどもちょっと倉沢先生にお伺いいたしましたけれども喜多さん自身としては、これからの構造改善というものを考える場合に、私有林のにない手の適正規模の概念は、そう一挙にはいかぬと思いますが、日本の場合には家族的林業が大体中核にならなければならぬのか、あるいは従来から存しておる企業的林業が柱になっていくという思想――しかもその企業的林業で部分的に模範的経営としているものも私ども若干知っておりますけれども、大半は財産保有的性格というものが非常に濃い。そういう点で、今後の構造改善の場合のにない手という点で、森林組合立場から、どういうところに柱を置いてやっていくのが日本的な条件においてよいのか、こういう問題について、少しく御意見を承りたいと思います。
  22. 喜多参考人(喜多正治)

    喜多参考人 林業の構造政善の事業と関連いたしまして、将来の林業のにない手ははたしてどういった姿のものであるべきかというお尋ねであったと思いますが、端的に申し上げまして、私は、現在の林業経営の形態は、御指摘のように、零細経営が圧倒的多数を占めておると思うのです。そうした現実のもとにおきまして、にない手は、これは森林組合である。森林組合が、その圧倒的多数を占める零細経営、これをできるだけ、ことばではよく協業と言いますけれども、いろいろな姿における生産の共同、さらにまた、もっと手が広がれば伐出までいくわけですけれども経営の共同といいますか、そこまでいけば非常によいのですが、ともかくも、森林組合中心になりまして、零細なものをまとめた姿で合理的な経営をする、森林組合がそういった意味で、要するに林業経営のにない手であるべきである、そういうように考えるわけです。そこで一方、企業的経営があるけれども、一体どうなんだというお話ですが、これにつきましては、いま先生からも御指摘がございましたけれども、大多数のものは財産保持的性格を持っておると思うのです。そのままの姿ではこれは意味をなさないのです。ですから、これは国なり行政機関の指導等々を待ちまして、やはり本来の企業としての性格がほんとうに発揮できるように、いろんな面での合理化、近代化が必要ではなかろうか、そういった面での指導が非常に必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  23. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 吉田さんにちょっと伺います。  さっき外材輸入の問題が需給関係の現状と対比して少し出たと思うのですけれども、南洋材、北洋材、あるいはそういうものを入れる場合の港湾施設等の問題、あるいは先ほども参考人の中で御意見が出ましたように、すでに四億ドルをこえているということで、国際収支の関係の一つの大きな比重を占めている。吉田さんの立場とすれば、木材生産の需給が定安をし、価格が安定をするという立場であり、喜多さんは外材輸入については非常に慎重な御意見である。これはまあわれわれからいえば、国内生産のバランスがとれるだけの十分な自信があればもちろんいいと思うのですけれども、なかなか伐採を惜しむ傾向等も一部あって、重要な木材価格の高騰となり、国民経済的な立場からそうもいかぬという問題が出ている。十分国内で自給できるならば、やはり国内生産に重点がいくということが必要だと思うのです。外材関係について、さらに具体的に、南洋、北洋、いろいろな輸入先の問題がありますが、御意見があれば、この際承っておきたいと思います。
  24. 吉田参考人(吉田好彰)

    吉田参考人 お答えいたします。  外材の問題につきまして、国内で自給できるならば事実望ましい、これは当然のことであります。しかし、現在の森林生産の事情から申しまして、早急にこれを自給し得るということはちょっと申し上げられないと思います。すでに千四百万立方近い外材が入っておる現実を見まして、それは近い将来においては不可能だ。したがって、需給のバランスをはかるためには、外材の輸入も適正にはからなければいかぬというのが私の意見でございます。そうしてその外材の中におきましても、日本の生産材をもって利用し得ない部分もあるわけです。あるいは外貨は払っておりますが、ラワン材のごとく、ベニヤとして九千万ドルぐらいの外貨を獲得しておるというような外材もあるわけでございます。したがいまして、これらの輸入につきましては、収支のバランスということももちろん大切ではございますが、国内生産との見合いにおきまして適当な輸入をはかっていくべきだと思います。ただ問題は、これらの外材輸入につきまして、現在のところ、政府指導あるいは施策、これに対する調整等の措置が行なわれていない。行なわれていないと言うと語弊がございますが、なかなか自由競争下においてはできにくいというような事情もございます。また、それには業者の過当競争というものが非常なガンをなしておる。そういうものに対しまして、これを何らかの方法、たとえば輸入を受け持つ部門、需要者の部門というものが協議、協約するというふうな方法も考えまして、不利な輸入は行なうべきではないと思います。ソ連材についても同様なことが言えるのでありまして、これらの態勢につきましては、内地では木材業界においてある程度の調整はできておるのでございますが、これも必ずしもソ連との貿易収支の面におきまして完全に目的を達しておるとは言えないのでございます。今後も通産、林野の間におきまして、それらに対する適切な施策指導というものが必要であると考えております。
  25. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 最後に、今村さんにお伺いしたいのでありますが、先ほど今村さん、熊井さんの両参考人から、最近の国有林の開放問題について、強い批判的な立場から反対の意見がございました。ただ、国有林の現在の全国的な分布状況が、地域によっては国有林の面積がほとんどないところ、また相当の比重を占めているところがございます。問題は、基本的には、国有林として国の所有しなければならぬ位置づけをどういうふうに考えるか、公有林、私有林としての役割りをどういうふうに考えるかという大きな視野から見ると、一方においては国有林をさらに積極的な買い上げをやってまいらなければならぬという地域がどんどん出てくる。同時に、反面、国有林の偏在的比率の非常に高いところにおいては、先ほど参考人の御意見に出ましたように、部分林あるいは共用林、こういうような国有林の地域における活用、この問題を配慮してまいらなければ、率直に言って、今日の所得倍増計画の破綻の中で、奥地山村における地域産業というものは、山に相当な比重を考えなければならぬという立場から見て、今日の国有林野事業の、先ほど参考人として意見を述べられました批判的な問題の改善をやっていくということは、一つの問題として重要な点だと思います。だから、林業基本法というものが、われわれの意見も取り入れて将来成立するような場合においては、国有林、公有林、私有林を通じての全般的に双方の位置づけ、それに基づくところの合理的な再配置、大きなことばで言うと、そういうことになりますが、これは今日の私有権の非常に確立している段階の中で、そういうことを言ってもなかなかむずかしいことでありますけれども、長い目で見て、そういう気持ちというものが必要ではないかという感じを展望として持つわけであります。この際、今村さんのそれに対する意見を――これは先ほどの意見からすれば、答えははっきりしていると思うのでありますけれども林政全体という立場から見ると、そういうことが展望として考えられなければならぬのじゃないかという感じがする。  もう一つは、林業を考える場合、何と言っても、基幹労働力が、国有林、公有林、私有林を問わず最近だんだん減少傾向にある。いかに絵をかいてみても、現実にそれをささえていく基幹労働力が喪失していくということを考えなければならぬ。そういう面では労働力の確保、しかも優秀な労働力の確保ということが重要な根本的な問題になる。そういう点で、まず国有林において十分な雇用の安定がはかられなければならない、模範的な雇用形態を確立し、それが民有林にも及んでいくという形をとらなければならぬと思うのです。こういう労働力の確保、雇用の安定という問題について、先ほど具体的にお話がございましたけれども、さらに御意見を承りたいと思います。
  26. 今村参考人(今村暁夫)

    今村参考人 私どもといたしましては、真に農民の方々が考えておりますような農用地あるいはその付帯した地域については、開放することは賛成であります。しかも、従来欠点とされております利用権の開放というものを十分やっていくならば、農民の方々にも御納得がいただけるのじゃないか、こういうふうな考え方に立っているわけであります。しかしながら、基本的には、林業というものは長期性、長期の生産過程を要しまして、その経済性というものも、長期間の見通しに立たざるを得ないわけでございますので、そこにはやはり資本の集中、あるいは技術の革新化というふうなものが大々的に行なわれていかなければ、木材の保統的な自給というふうなことは不可能になってくるのじゃないか。こういうふうな観点からいたしますなら、先ほど申し上げましたような原則的な立場に立ちましては、やはり国有が望ましい形ではないか、こういうふうに考えておるわけです。  それから優秀な労働者の確保は、先生がおっしゃいましたように、当然日本の林業そのもの発展させるためには、労働者自体がほんとうに愛着を持つ林業でなければならぬ、こういうふうになってまいりますので、さしより、最初から一般の林業労働者を含めてということは、たいへんむずかしい問題だと思いますけれども、やはり国有林労働者というものは一つの模範的な形で考慮していく過程の中で、全林業労働者地位向上していく、こういうふうなことが私ども念願としておるところでございます。  十分ではございませんけれども、そのようにお答えしたいと思います。
  27. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 芳賀貢君。
  28. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 この際、参考人の皆さん方、特に森林組合関係、それから全木連並びに労働組合代表の皆さんに二、三お尋ねしたいと思います。  第一に、森林組合の代表のお二人でございますが、先ほど来皆さんの貴重な御意見を聞いたわけですが、基本法政府並びに社会党、民社党からそれぞれ三案提出されて、審議しておりまして、その法律案に対する御意見を伺っておるわけですが、ただ、この三案の中で、社会党案は森林基本法ということになっておるわけです。名前は違っても中身が変わらなければいいじゃないかということにもなるかもしれませんが、これは重大な法案上の相違点であります。それで、特に森林組合の御両氏にお伺いしたいわけでありますが、森林組合の場合には、これは森林法の規定に基づいて、森林組合というものが設立されておるわけでありますが、この森林法と、たとえば政府案林業基本法との関係――社会党案にはこれは問題がないわけですが、森林経営林業経営の相関性というものを、たとえば民有林を主体とする森林組合経営者の皆さん方はどういうふうにお考えになっているかという点であります。特にお伺いするのは、森林法の場合には、森林所有者あるいは森林経営者の所得の向上とか、あるいは社会的な地位向上をはかるという規定は全然ないのです。森林の保続的培養あるいは森林生産力の増進をはかって、もって国民経済に寄与させるというのが森林法の目的ということになっておるので、森林所有者あるいは経営者の利益を擁護するということは、現在の森林法の規定においてはどこにもないわけです。そこにやはり日本の林政全体の貧困さというものがあるわけです。ですから、特に森林組合を代表する皆さんの場合には、現在の森林法と、たとえば政府案に御期待を持っておられるとするならば、政府案林業基本法との関連性というものがどうなるかということは、これは無関心でおられない点であるというふうに考えるわけです。ですから、この点についての御意見をまず伺わしてもらいたいということであります。  それからもう一つは、政府案林業基本法は、多分に森林経営あるいは森林経営中心とする生産者の利益擁護ということに対しては全く冷淡であるということは、参考人の皆さんも十分御承知のとおりだと思うわけです。ですから、たとえば森林の産物であるところの立木の販売あるいは素材の販売というものは、森林経営者にとっては最も所得につながる点でありますが、これらを農業に比較した場合、農産物、畜産物の販売をする場合の価格の算定、価格形成上にこれを対比した場合に、どういうような価格の算定評価が行なわれる場合において、いわゆる森林経営者としての所得の増大を考えることができるか、これはなかなかたいへんなむずかしい問題でありますが、経営を通じて所得が増大され、拡大再生産のほうに発展できるという保証がなければいけないと思うわけですが、この点が政府案においては非常に不十分であります。これに対する御意見を伺いたいと思うわけです。  それからもう一点は、これは農業を通じてもあるいは林業を通じてもそうでありますが、いわゆる自立経営、個人経営の場合においても、ほとんど自家労働力というものが全く不足して、農業の場合にも七五%がすでに兼業化しておるような状態ですから、林業経営の場合においても、特に森林経営の場合において、労働力を自家で保有するということはなかなか困難なことになると思うわけです。経営面積の大小にもよりますが、自立的な森林経営をやるということになれば、多分に他給労働力に依存しなければならぬということになるわけです。そういう場合、先ほど参考人各位の御意見もございましたが、たとえば労働力を他に依存する場合、森林組合との間において協業班というものを労働提供者の側においてつくっていただいて、そうして作業を進めてもらいたい、それに付帯した問題としては、たとえば失業保険の問題であるとか、あるいは労災保険の適用の問題であるとか、当然ではありますが、最低賃金の問題であるとか、雇用の安定の問題であるとか、そういうものが不可避的に条件が整わなければ、農業林業の要求する部面に現在もう労働力というものは確保することができないわけです。その場合、われわれが奇異に感ずることは、労働力を確保するという場合は、労働を提供する相手の社会的な地位を十分尊重しなければならぬということにはなるわけですから、その場合、協業班というようなことも言われましたが、一体現在の社会制度のもとにおいては、労働者が団結して労働組合を国の保護のもとにつくって、そうして正しい労働力というものを提供する、こういう社会条件というものが現在尊重されておるわけです。そういう場合に、森林組合として労力を確保する場合、労働組合をつくって労働力を提供してもらいたいということをどうして回避なさるか、その点がわれわれとしては理解できないわけです。これは農林省の指導がそういうことになっておるのか、皆さんみずからが、労働組合をつくられたらたいへんである、そういうことで、ことさらに意識的にこれを回避されておるのか。この点は、やはり今後山林労働者の雇用の安定というようなことが基本法に明確になっている場合においては、重要な問題になるわけですから、この際、従来の認識が誤っておるとすれば、それを改めてもらう必要があると思うわけでありまして、他給労働力を確保するという場合には、社会的な前提条件をどうするかということを森林組合自身も方針としてきめてもらわぬと、林業のにない手であると言っても、これはなかなか困難な事態になるというふうに私は考えられるわけです。  それから森林組合の場合には、これを分けると、施設組合生産組合という二つにこれは分けることができるわけですね。この施設組合の場合には通念上の森林組合ということになるわけですが、生産組合の場合には、その主たる目的は森林経営という点に重点があるわけですね。その場合、生産組合の設立の要件というものは、その組合員の三分の二以上は常時その森林経営、その事業に従事しなければならぬ、組合員の三分の一以上がその組合組合員でなければならぬという規定がありますが、この常時三分の二以上森林経営あるいは事業に従事するということは、これは決して森林所有者でなければならぬという資格条件ではないわけですね。森林経営の事業に直接参加する個人がこれは生産組合組合員になれるわけですからして、そういう場合は、これは組合に加入して、いわゆる経営の中に自分の労働力を提供して、そうして生産組合としての機能をみんなが発揮するということに当然なるわけです。そうなると、これは法律上の規定からいった場合も、これが政府基本法にいうところの林業従事者であるか、あるいはまた林業労働者であるかという規定の問題が出てくるわけです。われわれ基本的には林業従事者の中には当然労働者も包括されるという、そういう基本的な考えの上にわれわれ社会党としては立っておるわけですが、個人の場合、直接森林組合というものを経営されて、特に私が言った生産組合の場合の、常時その組合の事業に従事するそれらの諸君というものを、基本法の場合には一体従事者として扱うべきか、労働者で扱うべきか、どういう判断に立っておるわけですか。これは提案した政府から聞けば一番わかることでございますが、まあ御意見をお述べになる機会ですからして、これらの点についても意見を聞かしてもらいたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、先ほど言ったとおり、森林法というものは、その所有者あるいは経営者に対して恩恵を保障していないということになっておりますから、結局その森林計画というものは明確に立てられても、これを尊重して忠実に実行するなんということはなかなかできがたい障害が多々あるわけです。したがって、国内のたとえば国有林、公有林、私有林というものを大きく分類して、その蓄積の状態あるいは生長量、あるいは経営の熱意いかんというものを分析した場合においては、どうしても私有林の場合は蓄積においても生長量においても劣っておる。これは全国的な傾向です。そういうことになると、今後森林の総生産を拡大する――林業生産というものは、森林生産力の発展基盤にしなければ林業発展は期することができないわけですからして、そういう場合の障害というものがどこにあって、それを除去するためには、どういうふうに国として公共的な投資あるいは公共事業を進めるかというような点についても、率直な意見を聞かしてもらいたいと思うわけでございます。  それから第二の質問ですが、これは全木連の代表の方にお尋ねします。会長はおそらく衆議院の松浦周太郎君だと思いますが、特に全木連として今回の政府林業基本法に期待を持たれておる点はどの点であるかという点であります。たとえば政府案によりますと、第三条の国の施策の中にそれぞれ各号が列挙してありますが、この国の施策の中のどのような点に全木連として御期待を持っておられるかという点であります。  それからもう一つは、従来われわれは木材業界からしばしば聞かされる点でありますが、どうも国有林にしてもあるいは民有林の立木や素材の提供の状態を見ても、原木高で製品安であるという泣き言を盛んに聞かされておるわけであります。この原木高で製品安であるという経済的な考え方というものは、今後この基本法を通じて皆さん方はどういう方向にこれを解明されるかということであります。原木高ということは、原木の立木や素材の現在の販売価格をさらに引き下げるという主張にしかならぬと思うわけですね。製品安であるということは、製品の価格をもっと高度に引き上げるという必要に通ずると思うわけでございますが、原木高の製品安という、この経済的な思想的根拠をこの基本法政府案に求めて解決するということになれば、これは先ほど言いましたとおり、森林所有者、あるいは森林経営者、あるいはこの森林で働く労働者に対しては犠牲をますますしいるというようなことにも政策的になりかねないと思うわけでございますが、この点に対しに率直な御意見を聞かしてもらいたいと思うわけです。  もう一つは、従来木材の加工、これはパルプ産業も入れてそうでありますが、国有林に対する態度というものは、国有林が国民共有の山であるということを忘れて、一部の木材業者とか独占的なパルプ産業の私有物であるような考え方が非常に強いわけです。これは現在の政治権力との結合の上に、そういう思い上がった認識が出ておるわけでございますが、今後この基本法あるいは森林法の精神というものを十分お互いに尊重して、森林あるいは林業の拡大発展をはかるということになれば、もう少し謙虚にわが国森林発展をどうするか、あるいは林業発展というものが国民経済全体にどうしたら寄与するかという点についても、相当御協力を願わなければならぬと思うわけであります。もうからない森林経営だけ人にやらして、その生産された立木や素材をたたいて安く買わなければならぬというような恣意的な考え方では、これは総体的な森林あるいは林業発展を期することはできないというふうにわれわれ考えておるわけです。ですから、この点において、たとえば造林事業の問題にしても、立木の育成の問題にしても、あるいは国土保全上あるいは国民保健上、国有林の持つ使命あるいは森林全体の持つ使命に対して、それに依存する木材業者としてどのような協力、貢献をすることによって、みずからの事業の発展を期するというお考えであるか、この点に対して御所見があれば聞かしておいてもらいたいと思うわけです。  それから第三の質問でありますが、これは日林労の熊井さんにまずお尋ねしますが、われわれが率直に見たところ、同じ林野庁の職員あるいは労働者が何も二つの分かれて労働組合をつくらなければならぬという必要性は毛頭考えておらぬが、しかしこれは憲法あるいは基本的な労働法規に基づいて、自由意思によって労働組合がつくられておるのだからして、それをとやかく言うわけではありませんが、特にお尋ねしたい点は、日林労の場合には、林野庁内における月給制の定員職員以上の者だけでしか労働組合をつくらぬということでありますが、そういうことになりますと、全体の国有林野で働いておる、それ以上条件の悪い、定員外の臨時的な職員、あるいは常用の作業員とか、あるいは季節的な作業員、これらの諸君がほんとうに国有林の持つ使命であるこの企業的な面のささえをなしておるわけですが、あなたのほうはただ行政職員と同じように、月給取り以上のものでなければ組合に入れないとか、相手にしないということになると、たとえば政府案にしても、労働者の雇用の安定ということを申しわけ的にうたっておるわけでありますが、一体国有林全体の企業的な生産の場において、一番劣悪な条件のもとで苦労して、そうして最も貢献しておる諸君の雇用の安定とか、労働条件の改善というものに対しては、一体どういうふうなお考えを持っておられるかというような点に対して、組織上の方針がもしあれば、この際、参考までに聞かしてもらいたいと思うわけです。  それから、そういう限定された範囲内で労働組合がつくられた場合、一体林野庁の企業的な性格と、農林省の中における一般の行政面を担当する他の各局の職員、従業員等との相違点がどこにあるかという点、行政職の職員の場合には、大体首脳部は局長とか部長というものがおりますが、これらの諸君は行政的な任務を担当する関係もあって、所属がえが早いわけです。局長を一年くらいやればまたほかの局長になり、部長を一年くらいやればまた他に転ずるというようなことがひんぱんに行なわれておるわけです。ところが、林野庁の国有林経営ということになると、一年交代くらいで局長がまたかわったとか、部長がかわったとかどうとかいうことになると――とにかく造林は、植樹をしてから主伐期に入るまでには少なくとも四十年くらいの年月がかかるわけです。そういう場合に、企業の責任者としての部署にある者たちが、他の行政職員と同じように転々として職場を変えるというようなことになった場合に、一体国有林経営というものはどうなるかということについては、全然御批判がなかったようでありますが、これは給料取りだからしようがない、一般の行政職員と同じだからそれでもいいんだというようなお考えでおられるかどうか、その点に対して御意見を聞かしてもらいたいと思うのです。  それから第三点は、労働組合というものは、経済的な要求を実現するための団結体でありますが、しかし、その労働組合であっても、たとえば国有林従事しているときは、将来に対して、経済的な問題だけに限定しないで、やはり方向としては、一つのビジョンというものを持って差しつかえないと私は考えておるわけです。先ほどもちょっと触れられたようでありますが、たとえば国有林経営の実態というものを言われて、国有国営というあなたの御発言は、国有林の機能というものはあくまでも国営方式で維持して、その事業は国の直轄事業としてやるという御意思の表現であったか、あるいはわが国森林全体に対して将来は国有国営的な方向に持っていくべきであるというような御意思であったのか、その点に対して、御意見があれば聞かしてもらいたいと思うわけでございます。  それからもう一点は、あなたの組合では相手にしないところの、いわゆる国有林の季節的な作業員とか、全然身分的な保障のない大多数の劣悪な条件にあるところの国有林労働者の諸君に対して、雇用の安定とか社会的な条件の向上であるとか、そういう全体的な保障や向上をはかる場合の改善策というものに対してお考えがあるかどうか。たとえば社会党といたしましては、すでにことしの三月七日に、これは参議院に国有林労働者の雇用安定に関する法律案というものを提案いたしました。そうしてこの法律の実現によって、いわゆる季節的な国有林労働者すべてを含めて、雇用の安定と最低賃金の保障あるいは将来における社会的な保障というものが、一般政府職員と同じような形で保証される道を講ずるということで、われわれは国会にこれを提案しておるわけですが、そういう人たちは仲間に入れないという日林労の立場から見て、この種の法律というものを必要であると考えておるか、いやそういうものは要らぬ、おれたちさえよければいいというように考えておるものか、そういう点についてもお聞かせを願いたいと思うわけであります。  それから全林野の今村さんの場合には、三案の中では社会党案が一番妥当であるという御意見がありましたので、それ以上私が繰り返してお伺いすることは、わが党案をなれ合いで宣伝するようなことになる場合も考えられますので避けて、以上の問題を三つに区分したわけですが、時間があまりありませんので、それぞれ関係参考人の皆さんから率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  29. 古川参考人(古川保津美)

    ○古川参考人 私からただいまの御質問の労働関係についての面でお答え申し上げます。  労働力につきまして、自家労力が不足いたしますために、ほかの労働力にたよらなければならないという実情は、御指摘のとおりでございます。私も先ほどこの内容について少しく申し上げたのでございますが、現在民有林の労働力確保ということにつきまして一番問題になっておりますのは、いかにして年間労務が継続されるかという点でございます。したがいまして、林業労務に携わってもいいという希望者がございましても、はたしてそれが半年仕事があるのか、一年間仕事があるのかということがはっきりしないのが、民有林の林業労務の現地の実態でございます。ここにおきまして、先ほど御説明申し上げましたように、一番問題となってまいりますこの労働力を確保いたしますために、私有林あるいは公有林のいわゆる個別計画を樹立いたしまして――これを現在は五年くらいに私の地区では考えております。森林計画から個々の一筆調査をいたしまして、個人の意見も十分聴取いたしまして、その林地が最高度に効果があがるような方法組合技術員と話し合いをなしつつやります、したがいまして、これが集計いたしてまいりますと、地域内の全民有林につきまして、年間新植がどのくらい行なわれ、あるいは下刈りがどのくらい行なわれ、それに要する労働力というものはかくかくになってくるということがはっきりしてまいります。なお、そのうち個々に自家労力でそれがまかないつく人もございますので、それ以外の他労働力を希望されるものを集計してまいりますと、ここに年間の地区内の林業労務がどのくらい必要であるかということが確立してまいります。これを私どもは考えまして、そうした集計の上に立って労働力を確保したい、これが現在考えておる一つの点でございます。そこで、この労働力につきまして、民有林の立場におきましてはきわめて矛盾した問題が出てまいります。民有林の関係には地区外から労働力を導入するとなりますと、かえって非常に高いものにもなりますし、地区外から労力を提供された方も不便でございますので、できるだけ地区内の労力を考えておるわけでございますが、この場合に、一方では山林所有者であり、一方では労力の供給者であるという人が大半を占めておるのであります。したがいまして、高額な賃金をお支払いいたしますと、山の収入に影響してくるという、利害がちぐはぐな関係が出てまいります。これらの調整を、森林組合といたしましては、賃金も妥当な線であり、立木価も適正な立木価があがるようにというふうに、現在苦慮を払いながら、いま申し上げましたような労働力の確保を考えつつあるところでございます。いろいろな悪条件のもとに労働力が少なくなりますので、これを補充するために、能率化するために、機械化を考えまして、十人の労働力で二十人、三十人の生産効果があがるような方法を現在考えつつあるわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、地区内の五年間ぐらいの年間の労働力の確保が見通しがつきまして、それにマッチいたしました労務者が確保されましたならば、その人たちが希望されますならば、労働組合の結成等も私どもは決して干渉しておるものではございません。  以上、簡単でございますが、労力の点につきましてお答え申し上げました。
  30. 吉田参考人(吉田好彰)

    吉田参考人 まず第一点の、政府提案の林業基本法のどこに大きい期待を持っておるかという問題なございますが、事林産、いわゆる木材の加工流通の面におきましては、政府案社会党案も民主社会党案も、同じような方針のもとに取り上げられておるのでございます。特に政府案の第三条の四号に、「林産物の需給及び価格の安定並びに流通及び加工の合理化を図ること。」という点がまず施策として掲げられておるわけでございまして、この点は、従来の森林法その他に欠けておりました点がこれによって補われ、またそれに付随いたしまして、政府案も十五条、十六条におきまして、価格及び流通の問題が取り上げられております。同じく社会党の提案によりまする森林基本法においても、同様の問題が二十四条、二十五条で取り上げられております。このような点は、林産の流通加工部門の合理化ということも、林業の最終段階におきまして林業振興のために必要であるというような考慮から、三党こぞってこのような問題をお取り上げ願ったというような意味で、私は政府案にこだわらず、林業基本法成立を期待するものでございます。  次に、原木高と製品安の問題についてお話がございました。ただいま申しましたような根本の部面から申しまして、確かに木材業界におきましては、採算割れの状態というものが続いております。しかし、これは生産面におきまして、一部に財産保持的と指摘されますような生産状況によりまして、生産が思うように需要にマッチしない、そのために起こった現象でありまして、またそれと付随いたしまして、木材業界におきましても、非常な過剰設備であるとか、流通面の不合理もございます。これらの点を是正していくべきがこの基本法の示す方策であるというふうに考えております。これがためには、木材業界といたしましては、協同組合等の組織の強化、合理化等によって何とかこれを克服していきたい。木材業界といたしましては、その生産のもとというものは林業生産にあるのでございまして、これをつぶしてまで木材業をやっていこうという意向は毛頭ございません。もとあっての産業でございますので、そのような林業生産に大きな負担をかけてまで価格をたたこうというような考え方はないことを申し上げておきます。したがいまして、国有林等につきましては、国有林が最も大きい生産者であり、計画生産をなし得る実力を持っておる。しかも適正な市場価格によって、これを国家の方針として一つの価格を定め得られるというような点に最も大きい期待を持っておるのでございまして、したがいまして、国有林に対しても、同様、国有林の負担を増加すべきであるというような方策は持っておりません。したがいまして、木材業界といたしましては、森林経営者等の協力によりまして、なおこの上合理化、コストの引き下げをはかっていく、これが大きなねらいでございまして、このような方向に向かいまして、林業基本法のあらゆる施策が統一されるということを希望するものであります。
  31. 熊井参考人(熊井一夫)

    熊井参考人 芳賀先生のほうから、いわゆる国有林労働組織問題、特に私たちが主張しておりますところの組織の二分論ということで、いわゆる定員内月給制職員だけがよくなって、作業員のことは考えないんじゃないか、こういうようなことについての質問なり意見が出されておりますが、私たちは、いわゆる自分たちだけがよくなろう、こういうような姿勢でこの組織をつくるとか、日林労を結成する、こういうようなことでは決してないわけでございまして、まず私たちの理由につきましては、これは直接基本問題と関連しておりませんので、簡単に申し上げますが、要するに、今日の国有林、民有林、あるいは国有林にありましても、月給制なりあるいは作業員のいわゆる労働条件の位置づけというものがきわめて低位にある、悪い。こういうことは、林業全体の位置づけがこれまた低位に置かれておりまして、それとの関連において、国有林、民有林ともに、全体的に林業労務者というものは非常に不遇な立場にある。しかし、これに対しましては、国有林、民有林の位置づけと同時に、また一面では、いままでの労働組合の運動過程も、これまた反省しなければならぬ点があるのではないか。こういうような内部的な問題、その他、月給制の職員と作業員は、御承知のように、置かれている立場とか、あるいは労働内容、業務の実態、それぞれ異なっております。たとえば一例を申し上げるならば、建設関係において、監督をやる人とそこに働く一般の従業員とが一緒になって、はち巻きを締めていろいろと運動をやることが適切かどうか、こういうことになると、これまた疑問である。これがいいか悪いかについては、たとえば総評内においても一番強いりっぱな組合であるといわれております民間の炭労におきましても、職員と作業員というものはすっきり分かれております。立場が異なっておりますので、すっきり分かれた上で連合会組織をつくっている。また官公庁においても、国鉄においては、同じ国鉄労働者とはいえ、おのずから基盤が異なるところの動力車と一般の国鉄の駅員とは、いわゆる国労と動力車労組と組織を異にして、組織の二分化をやっておる。このような例から見ましても、私たちの場合、決して月給制だけがよくなるというような立場ではなくて、おのずからよってくる基盤なり、置かれている条件その他から考えまして、これは発展的に組織を二分化いたしまして、平和運動と権利闘争、こういうような共通なる問題については、職員と作業員が協議会を持ってやっていこう、協議会という広場でやっていこう、こういうような基盤をつくっているわけでございまして、決して自分たちだけがよくなる、作業員のことについてはかまわないというようなことではないので、その辺誤解のないように御認識願いたい、かように考えております。  次に、いろいろと質問が出ておりますが、一点と二点は関連をしておりますので、特に作業員関係についてどうかという点がございますが、作業員問題について一言触れるならば、むしろ国有林の作業員の場合におきましては、御承知のように、きょう一日雇われても、国家公務員法なり公労法のワクに縛られます。いわゆる日雇いであろうと、常用であろうと、月雇いであろうと、定期であろうと、すべて国家公務員のワクに縛られてさまざまな規制をされております。しかも賃金は、国家公務員という名のもとに適当にたたかれる。こういうような形ではなくて、作業員というものは、要するに国家公務員のワクからはずして考える。最近討議されておりますが、ILO批准の問題その他に関連いたしまして、こういう作業員というものはいわゆる国家公務員のワクからはずして、労働三法の適用を行なって、その作業員と、現在ございますところの、労働三法の適用を受けている民間の林業労組と相連絡提携し、あるいは合同して、発展的に二分化をしなければ、国有林の作業員が民有林の作業員の足を引っ張る、あるいは逆の形においてお互いに小ぜり合いをするということは問題があるということで、私たち、法的な立場からも、今後の先生方の改善策というか、御検討をお願いしたい、かようにこの際申し上げるのであります。  それから林野の国有国営の姿でありますが、要するに、何が何でも国有林は国営でやらなければならないという規定はしていないわけでございまして、何と申しましても、国土の保全なり、国民全体に及ぼすところの林産物の需給調整という問題を中心にして、そういうものの対象林分については、これまた国有国営という姿が適当であろう。具体的に言うならば、たとえば新潟を含めて東北七県においては国有林が多いわけでございます。こういうような地域については、地元施設その他利用県の積極的な活用も必要でありましょう。また関西以西になりますと、山は荒れております。こういうような地域については、逆に国土保全という立場に立って、積極的な保安林その他の国営の姿というものをもたらす。こういう国有林の分布というか、国有林の姿というものを、もう少し具体的に場所的に検討して、そのあり方を評価すべきではないか。ただ、現時点におけるところの国有林の姿を、直ちに売り払うとか、あるいは活用するということについては、先ほど申しましたように、もっと慎重にやるべきじゃないかと思います。  最後に、社会党が提案されておりますところの国有林労働者の雇用安定促進法についてどう思うか、こういう点でありますが、この点につきましては非常にわかる点がございまして、私たちもこの点については相当共鳴をしておりますけれども、この際、先生からのそういう御質問でありますが、それではなぜこの国有林労働者の雇用安定をやったのか、国有林になぜしぼったか、なぜ民有林、国有林合わせて林業労働者の雇用安定というもの、いわゆる林政というか、そういうものを大きな視野に立って打ち立てないか、国有林が優先するということは、森林一家につながる問題ではないか。しかし、流れる思想についてはよくわかります。これは、国有林労働者も賃金その他不安定でございますから、当然考えなければなりませんが、並列的に問題になっておる民有林労働者については、ここでは一般的な文章で書いておりますけれども、これは並列的に作業員なり労働者の雇用安定あるいは労働条件の向上というものを積極的に出していただくならば、日林労としては、全面的にこの問題については運動するというか、皆さんとともにやっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 高見委員長(高見三郎)

  33. 川俣委員(川俣清音)

    川俣委員 時間がないそうですから、簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  第一は、特に学識経験者の参考人としておいでになられました倉沢さんにお尋ねをいたしたいのですが、次には全員の方にお尋ねをいたしたい。まず、倉沢さんにお尋ねをいたしますが、一体、森林についてどうあるべきかということの研究が日本においてまだ十分でないのじゃないかという感じを非常に強く受けるわけです。そういう立場から、具体的にお尋ねをいたしたいのですが、いまここに三案が出ております。私ども森林基本法政府と民社党の林業基本法というものが出ておりますけれども、どれが一番適切だとお考えになるか、これをお尋ねいたしたいと思うのでございます。なぜかというならば、政府が長い間かかりまして農林漁業基本問題調査会というものをつくって、膨大な経費をかけて、学者を動員いたしましてつくりましたものが、実態に合わない答申であるということで、これがあまり利用されないと申しますか、この説が受け入れられない状態でございます。そういうさなかにおいての案が三つ出たわけでございますから、いままでの御研究立場からいたしまして、個人的な見解あるいは学界の意見も加えられてけっこうですが、どれが一番適切だとお考えになっておりますか、この点をひとつお尋ねいたしたいと思います。  と同時に、この三案の特徴がどこにあるかということ、皆さんにわかに参考人としてここにおいで願ったので、御検討が十分でないかと存じますが、三案のおのおのの特徴はどこにあるかとお考えになっておりますか、これもお伺いいたしたいと存じます。
  34. 倉沢参考人(倉沢博)

    倉沢参考人 たいへんむずかしい質問を受けたわけでありますが、私も、産業としての林業というものの特殊性について、決して軽々に考えておるものではありません。そういうことは十分考慮しておるのでありますが、まず第一の点については、私の意見陳述の中にも若干あらわれておるかと思いますが、技術的に非常に特殊な林業生産の過程ではあるけれども、経済の現在の段階に立って、労働生産性の問題を持ってこざるを得ないのではないか、そういう立場をとったわけであります。そういう立場から見ますと、私は、政府の案がそれをかなりはっきり出しておるというふうに見たのであります。政府の案がそれをはっきり出しておるということを見たがゆえに、政府原案からものを見ていったわけであります。その結果、政府原案でいくとすれば、将来の問題として、しからば森林をいかにするかという考え方をもう一度考えて、つけ加えていかなければならぬのではなかろうか、それは主として森林法林業基本法との関係を慎重に検討していかなければなるまい、こういうふうな意見を陳述したつもりであったわけであります。  第二に、このような点については、私どもの学界のほうでも実は二論あります。それは比較的若い層といいますか、それと比較的お年寄りの方の二つの層がありまして、大体お年寄りの方はいわゆる森林一辺倒的論をはかれておるわけであります。そして若いほうの極論するところは、その森林技術も何とかなるだろうというような、かなり楽観的な説をはかれる。そして私どものようなちょうど中年の者は、少なくとも経済の発展の前向きでものを考える、しかしながら、森林技術の発達現状というものから見れば、たとえば労働生産性というような問題を前面に持ってくるにしても、あまりまた一辺倒になると危険である、こういう学説をとっておるわけであります。結論といたしましては、私の意見陳述にありましたように、労働生産性という立場をとった政府案をとるということであります。しかしながら、それには意見をつけましたように、なるべく近い将来、森林法との関係を十分検討してほしい、そしてその関係整備してほしい、こういうような付帯意見をつけて申し上げております。
  35. 川俣委員(川俣清音)

    川俣委員 ほかの参考人の方はどうですか。――それでは参考人から参考意見が聞けないのですから、もう少し突っ込んでお尋ねしたいと思います。  少なくとも社会党の案は、将来の構造改善について触れておるわけでございます。これが非常に特徴だとお考え願いたい。すなわち、林業だけではなかなか成り立たないであろうし、しかも現在の林業をになっておられる人々は小面積を持っておられるので、これを拡大するということは、日本のような領土の狭いところではなかなか困難である。しかしまた、林業農業だという立場をとりまして、あるいは土地生産事業だという立場をとりまして、林業と同じ農業の部類に入る耕作農業あるいは畜産農業と一体的に経営すべきだということで、農牧林混合農業という構造改善の形を出しておるわけでございます。これが私どもの最も特徴とするところでございます。  もう一面は、一体、林業というものが成り立つのかどうか、あるいは成り立たせるとすれば、国民経済に大きな犠牲を払わせるのではないか、こういう疑念も解決しなければならないという考え方をいたしておるわけでございます。  今日、私どもは、土地の財産的保持について強い批判を加えながらも、この持つ意義をも理解いたしております。というのは、日本の森林資源が今日まで保存されてまいりました大きなものは、やはり財産的保持をしておったということで資源が保持されておるのだ、これによっていま、単に保持者ばかりでなくして、一般国民経済がかなり寄与を受けているんだという考え方をいたしますれば、必ずしも財産保持にだけ批判を加えるのは妥当を欠くのじゃないかという考え方もいたしておるわけでございます。それはかつての御用林がいま木材の供給源として大きな役割を果たしておるという点を見ましても、あるいは藩政時代の林業政策の恩恵にいかにわれわれが浴しているかということを考えますると、形だけの財産保持的な持ち方について批判を加えながらも、考えなければならぬという考え方を持って、この案ができておるわけです。  また、林業自体がなかなか経営困難だというところから、国の助成と申しますか、援助がなければ林業は成り立たない。この助成をする必要があるのだという点を強調いたしております。これは単に林業者のためばかりでなくして、公益的な事業であるから、国の助成、補助は当然加わらなければならないということを強調いたしておるわけです。そのために、いままでのオーソドックスな林業学者のような意味だけではなしに、国の補助、助成と申しますか、国の援助を強調しなければならないという意味で、単に個人の経営にまかしておくだけでなしに、国の援助というものが必然加わらなければならない特質を持っておるのだということを強調して、特に公益性を強く打ち出しておるゆえんです。もちろん、そのものずばりの公益性もありますけれども公益性を強調することによって、国の援助と申しますか、国民の援助が当然加えらるべきものだ、こういう意味が私ども基本法の基本になっておるわけでございまして、これだけ申し上げますならば、どっちの案がいいかという御判断ができるかと思って、つけ加えたのでありますが。ひとつ承っておきたいと思います。
  36. 倉沢参考人(倉沢博)

    倉沢参考人 私は、説明を聞きますと、まことにけっこうなお考えのもとにできているとは思います。しかし、森林からも現在木材を現実に生産している。いわゆる生産の形になっておるのが一番国民にとって目立っておるわけです。そういう意味から、まず木材生産という立場から国民に納得してもらう、それを先に考えなければならないのではないか。しかる上で、森林という特殊性の関係を裏から補強していくという立場を私はとるという立場から、今度の意見開陳では、政府案に賛意を表した次第でございます。
  37. 喜多参考人(喜多正治)

    喜多参考人 ただいまの川俣先生のお話、まことにごもっともでございます。私はそれぞれ基本法案に特色があると思うのであります。私は、意見発表でも申し上げましたように、出ておりまする基本法案は必ずしも全面的に賛成ではございません。多少ずつ問題点があると思うのです。どちらがいいかと言われても、にわかに結論は出ませんが、ただ、いまの川俣先生のお話の中で、国の助成の問題にからみまして、公益性の強調、これはけっこうです。私考えますのに、少なくとも林業は、第一次産業の中では最も恵まれない、日の当たらない性格を持っておると思うのです。したがって、農業なり漁業なりと比べまして、ある面ではむしろそれ以上の助成が必要でなかろうかと思うのでございまして、さらに公益性の問題を強調すればなおさらでございますけれども、そういう意見を持っております。
  38. 吉田参考人(吉田好彰)

    吉田参考人 社会党案と政府案との重要な差は、国土保全その他の公益的部門に関連する部門が大きいと思います。これは私たちは軽々にこの場でお答えすることができないのでございますが、政府案におきましても、これらの点を無視されているわけではございません。あわせて、こういうような表現あるいは物足りないところがあるかと思いますが、この点に触れられておるのでございますが、現在のところにおきまして、森林法基本法との関連をいかに調整し、両方の機能をいかに発揮させつつ進むかということに、私たちの重大な関心があるわけであります。  それともう一つ申し上げておきたいことは、社会党案の中で特に私たちが御同意申し上げておりますのは、十五条で森林計画制度の強化改善という問題を取り上げまして、これはいわゆる木材の計画的な生産をするというような意味からも重要なことでございまして、政府案には判然とした例示はございませんが、このような精神によって今後の生産をされることが望ましいのではないかと思います。
  39. 古川参考人(古川保津美)

    ○古川参考人 私はどの法案を拝見いたしましても、それぞれ特徴があるものと存じますが、賢明なる諸先生方のことでございますので、うまくお話し合いをしていただきまして、われわれ山村民の期待にこたえていただけるものと御期待を申し上げております。
  40. 今村参考人(今村暁夫)

    今村参考人 労働組合的な立場から、私、社会党案を支持いたします。
  41. 熊井参考人(熊井一夫)

    熊井参考人 確かに三党とも個々の問題についてはかなり異なっておりますけれども、共通な地盤というものがこの法案にはあるのではないか、こういうように見受けられますけれども、いずれにいたしましても、国土保全林業かあるいは労働者対策、こういうような点については、いろいろと問題がある点があるわけでございますが、この基本法なるものを運営するにあたってのいわゆる実施法というか、今後たとえば労働者をよくしようといっても、具体的に労働者の位置づけなり、どうしてよくするか、こういうような具体的な実質的なものがない。こういう点から見ると、まだまだ社会党案なり民社党案においても問題点があろうかと思うのでございますけれども、いずれにしても、姿勢は前に向いているのではないか、こういうような点に立って、さらにこまかい点についての先生方の御配慮をいただきたい、こういうことをひとつお願いをしたいと思います。
  42. 川俣委員(川俣清音)

    川俣委員 もう一問だけ。私どもはさらにこういう点についてほんとうは意見をお聞きしたかったのですが、森林の持つ効用の一つとして、鳥獣保護まで入れておるわけでございます。こういう点は、ほんとうは政府案が考えるべきであったので抜けておる。抜けておるというより、われわれのほうが先行したのでありますから、おそらくついてくるであろうということを期待して、実はつくったのでございます。  もう一点は、何と言いましても、今後各産業の技術と競争しなければならぬときに、単なる作業員というような取り扱いをしたものから、機械化に前進するならば、それに対応できるような教育が必要であろう、そういう意味で、技術者をさらに養成しなければならぬであろうという立場をもとっておるわけでございます。すぐれた技術革新の行なわれている各産業と競争しなければならないわけでございまするから、それに対応できるようにおくれた教育制度と技術訓練の中にあります日本の森林全体を、もう少し技術的にも高めていかなければならないであろうということが、基本にならなければならないという考え方を出しております。したがって、民有林にそれらの教育を委託することは困難でありましょう。あるいは文部省にそれを委託することも困難な情勢でありまするから、みずからの事業をやるものが率先してこれらの技術教育をしなければならない。技術教育を終わった者に対してはそれ相応の待遇をしていかなければならぬであろう、こういう意味でその点を強調いたしておるわけでございます。すなわち、このことが今後の民間林業の育成にも非常に大きな役割りを果たすであろう。そのことが国有林の使命でもある。御承知のように、今日の国有林は、国有林野経営規程というものがございまして、これが林業のいわゆる憲法だといわれておるわけでございますが、残念なことには、国有林野事業特別会計というものに押えられて、これらの憲法がなかなか活用されないでおるわけでございます。そういう意味で、国有林野管理規程というものをもう少し法律化して、これは農林省の訓令みたいになっておりますのを法律化して、国民全体がこれを守っていこうという法律化する必要があるというのが大体私ども考え方でございます。すなわち、現在の行政機構が果たすべき役割りを果たしておらないので、それを法律化して強要していこうというのが私どもの立法の趣旨でございます。おそらく経営規程については、ここにおられる方は何人も賛成であろうと思う。経営規程を十分今度の政府基本法に織り込んでおるかというと、非常に遠慮がちでございます。遠慮がちということよりも、特別会計法に束縛を受けて前進できなかったのではないか、あるいは規則に支配されておるところから脱皮させようというのが基本法でなければならないという考え方でございます。すなわち、民有林に対する協力、あるいは指導、あるいは価格調整ということが使命でございます。先ほど参考人から、生産者としては価格の不安定が一番林業経営の上に大きなネックになっておるということをお話しございました。もっともだと思います。しかし、どうして一体価格の安定をはかるかというならば、これは直接統制をするか、間接統制をするか、あるいは間接的統制の需給あるいは価格安定の役割りを果たしております国有林の蓄積が相当なければ、需給及び価格調整役割りを果たせないのじゃないか。こういう点からもいたずらなる開放については、いたずらなということばはどうかわかりませんけれども、どうも山を見ずして山に登るがごとき感じをいたすので、私どもはあえてこれを強調したのでございますが、この点を参考人にお聞きすることは無理かと思います。短時間の間にわれわれの法案をごらん願うということ自体が少し無理なのでございますから、無理でございましょうが、そういう意味だということをおくみになりまして、ひとつ――もちろん、できないことよりも、政府案成立することが望ましい、政府案成立することよりも、社会党案が成立することが、林業界にとりましても、森林にとりましても、山に緑をなすところの森林も、社会党案が通るならば喜んで成長するだろうということを大いに期待をいたしておるわけでございますから、そういう意味でひとつ御支持願いまして、達成できまするよう、これは何と言いましても民主政治でございますから、皆さんの御支持を得まするならば、国会が成立させることよりも、私は国民が成立させてほしいということを願望いたして、質問にかえるわけでございます。
  43. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 足鹿覺君。
  44. 足鹿委員(足鹿覺)

    足鹿委員 もう他の同僚委員からの御質疑で尽きた面は省略をいたしますので、特定の人を名ざしましてたいへん恐縮でございますが、長い間末端の森林組合経営に御苦労になってまいられました長野県の古川さんに最初お尋ねいたしますと同時に、全森連の喜多さんにもお伺いいたしたいのでありますが、今度の林業基本法制定を期に、ものから人へという一つの流れが出てきておることは、これは各党案に出ておりまして、その意味におきましてはまことに私どもけっこうだと思うのであります。しかしながら、にもかかわらず、過般和歌山県の公聴会に参りました際に、山村の悲惨な生活環境が指摘され、また北海道においても、同様の事実に基づいて山村における生活環境の改善等がきびしく要望されました。また林業従事者の状態につきましても、全国七十万と称せられる山林労働者の中で、組織をされておる者は国有林労務者の約五万、民有林関係で約一万、こういう実態でありまして、しかも山林労働者は、非常に労働条件の劣悪な場合が多いことが指摘されました。その際聞いたのでありますが、賃金は日給制が大体三〇%、出来高制が七〇%というふうに聞きました。現在の実態からしては、出来高制の廃止は主張できないような力関係なり情勢にあるということでございました。また、日給額については、所によっては五百円程度の低いものもあるが、記録によりますと、伐採で日給千五百円、造林で九百円から千五百円ということです。それも地域差が相当あって、必ずしもこのようにはいっておらない。また就業日数にしても、年間百五十日から二百五十日、特に人工造林地帯では、例外なく多雨地帯でございます関係上、就業日数が著しく低下しておる。しかも、一般産業と同じ形で適用されておりますものは労災保険だけである、あとの失業保険の問題にいたしましても、健保にいたしましても、不十分である。健保の場合は、昭和三十五年の一月に日雇い健保の適用を受けて現在に至っておるが、雇用関係確立されておらないために、ほとんどその適用を受けておらないのが実情である。また失業保険の場合は、昨年七月の法改正によって、日雇い労働者に対する特例給付ということで、山林労働者にも適用の道が開けておるけれども、組織をしたところだけ、奈良県の一部にしか適用されておらない、こういう実情でございます。いわゆる森林経営者経営意欲を低下し、またそれをになって立つ林業労務者の置かれておる労働条件、または社会保障の面においては、そういう劣悪な条件にある。今度の機会に、先ほどから同僚委員からも指摘されておりましたように、政府がほんとうに林業従事者に、人間に重きを置くという思想を一つの柱としておるならば、この劣悪な状態というものを改めていくような関連施設も必要でありましょうし、またそのためには、的確な実態の把握も、政策の基礎として必要であろうかと思われます。  そこで、長野県の実情等について、この際少し承らしていただきまして、これに対してどういうふうにしたらいいかということについて伺いたい。一つの提案としましては、これは京都府のものでありますが、要するに、農林水産の事業を営む者が当然適用事業主となるように法律の改正が必要になってくるでありましょうが、その間にやはり行政指導の面において、いま私が指摘したような点で、農林業労働者森林組合農業協同組合、農事組合法人、土地改良区等の事業主と雇用関係をもっと明らかにして、そして社会保障の適用を受けるようにしていかないと、私は、ほんとうの森林労務従事者の確保もできないし、その人々のしあわせが確保できないのではないか、さように考えるのでありまして、それらの点について末端で苦労しておいでになります古川さんから、これらについてどういう措置をとっておられますか、またどういうことを期待しておられますかをひとつ伺わしていただきたい。  それから、これは全森連の喜多さんに伺いたいのでありますが、どうも林野庁は私どもに最近の林野六法もくれておりませんし、私も勉強が足りないのでありますが、あなた方のよって立つ組織は、私は昭和二十六年にその審議に参加した一人でありますが、森林法によって現在の系統組織ができておる。その第一条を見ますと、「森林所有者の協同組織の制度を定めて、」云々となっております。つまり、現在あなた方の組織しておられます協同組織は、その森林法の中の一部であって、その後十数年の歳月が流れて、いま指摘したような、きわめて労働力の確保の困難な実情すらも起きてきている。また、森林経営意欲が低下してきておるというような実情が各地に起きてきておる。そういう状態の中にあって、先ほど倉沢先生も御指摘になりましたが、私は、宣言法としてこの法案がかりに提案をされているならば、当然過去の制定を見ておる法律の改廃、あるいは新しく関連法としての実体規定というようなものが、すみやかに調整あるいは立案をされてしかるべきであると思うのでありますが、そういう点では、現在の全森連系統組織を見ておりますと、どうも十二年の歳月は経ておりますが、全森連自体の性格は、事業団体というよりも、中央会的な組織、機能が強まっておるのではないか。実際の森林生産物を販売し、しかも有利にこれを販売していくというような機能を果たす面においては、言っては失礼でありますけれども、不十分であるのではないか、かように思うのであります。県連の場合といえどもあるいは同様ではなかろうか。末端における森林組合としては、先ほど古川さんのお話のように、委託経営等を相当積極的な立場で意欲的におやりになっておるそうでありますが、私はけっこうなことだと思うのであります。それらを受けていくならば、連合会も中央団体も、もっとその運用等においては時代に即応して、不利を補正していくための実際活動が必要になってくるのじゃなかろうか。これは林業基本法と直接関係はありませんが、ただ単に私ども法律を制定することをもってのみ満足しておりません。法は人が運用するものであり、かつ、団体との関係というものが、私は今後の大きな問題になってくると思うのでありますが、現状でよろしいのでございますか、その点について承っておきたい。  それから、ついででありますので、吉田さんに一つだけ。木材団地のお話が先ほど御公述の中にございました。私の地方にもこれを奨励して、境港に大きいものが一つできました。ところが、奥地においては森林の大中の所有者がみずから山林を持ち、みずから製材業等を営んでおりますが、これが都市周辺に参りますと、昔の町工場的な存在になっておる。これは中小企業庁所管で、近代化、合理化をするための集団化が行なわれておりますが、一方においては林野庁にまたがり、一方においては中小企業庁にまたがる。つまり、行政庁の所管が二つに分かれております関係上、必ずしも関連産業として十分な措置が講じられておるとは考えられない面もあろうかと思います。そういう点は、私は必ずしも現状では十分でないと思いますが、奥地等における森林経営者みずからが行なっておるものはしばらく別として、そのような中小企業者、零細企業者、昔の町工場に毛のはえたような関連産業を営んでおる人々に対して、全木連としてはどのような施策を求めて、林業関係とあわせて関連産業の発展を期待されますか。そういった点について御意見がありましたならば、具体的に承りたいと思います。  以上です。
  45. 古川参考人(古川保津美)

    ○古川参考人 お答えいたします。  ただいまお話のございましたように、林業従事者が劣悪なる条件のもとに比較的低い生活標準の中で生活しておりますことは、御指摘のとおりでございます。ここで問題になってまいりますのは、労務者に対します保障制度でございますが、ただいま失業保険のお話がございましたけれども、一般林業労務者で失業保険の適用を受けております森林組合が、長野県に四つしかございません。これは御承知のごとく、改正されました失業保険の中で、任意包括制度という制度の中で、ようやく一般林業労務者も認められるということになっております。これがほかの職種と同じように、五人以上の従業者のおります事業場では入らなければいけないのだというふうに規定されておりますならば、失業保険があまねく一般林業労務者に適用されるわけでございますが、この任意包括制度の内容は、その事業場が年間五〇%以上の失業者を出すようなところでは適用させない、こういうふうに規定されております。したがいまして、この林業の特殊性を考えていただきますならば――私の地域の例をとりますと、過去数年来年間八十町歩ないし百町歩にわたります新植を行なっております。これに要します膨大な労力が必要でございますが、この造林につきましては、時期を失しますと苗木もいたんでまいりますし、またきわめて活着も悪くなってまいります。特に山林所有者から組合が事業の委託を受けましたような場合に、その所有者の期待にこたえるような仕事をしなければなりませんので、きわめて短期間に膨大な労力を投入いたしまして、早くこの植林事業を終わらせなければならぬ、こういう実情もございます。したがいまして、延べ二千人、三千人にわたります労力を――十人か二十人で仕事をしておりますならば長い期間作業があるわけでございますが、家族ぐるみ労力をかり出しまして、一挙に地区の全住民がこぞってこの造林事業を終わらすというようなのが例でございます。これはおそらく長野県などにおきましては、私の地区ばかりでなく、御承知のように、長野県は寒冷地でございますので、雪解けと同時にもう木を植えなければならないというような実情でございます。したがいまして、雪解けを待ちまして元ごしらえをしなければならない、すぐそのあとから植えなければならないというような忙しい仕事になってまいります。この仕事が終わりますと、それで仕事が一段落してしまいます。その次にまいりますのが下刈りでありますが、下刈りも、御存じのように、夏から秋にかけて下刈りをしておったのでは何にもなりません。適期にこの事業を終了させなければなりませんので、これまたいま申し上げましたように、仕事のできる全労力をあげまして、短期間に終わらせてしまう。したがいまして、年間の労力は、相当労務関係はございましても、いま申し上げましたようなふうに、短期的に仕事を行なわなければならない林業関係の必然的な条件がございますので、仕事が切れてまいります。したがいまして、失業保険を希望しました場合に、職業安定所等から調査に参りますが、労働者名簿を見ますと、植林の時期には二カ月、三カ月続けて出ておった、下刈りの時期にも出ておったが、その間は仕事が中断しておるというのが実情でございます。したがいまして、これは失業者とみなされますために、年間五〇%以上の失業者を出しておるような事業場は適用しない、これが任意包括制度の内容でございます。したがいまして、私の組合ども、ようやく昨年からこの適用を受けることができまして、現在は一般林業労務者が失業保険の適用を受けておるわけでございますが、この制度をぜひ一般的な失業保険制度に切りかえていただきたいと思うのでございます。これを切りかえていただかないことには、一般林業労務者は、いま申し上げましたような内容もございまして、なかなか失業保険の対象にならないわけでございます。したがいまして、身分保障もつかないから、なかなか林業労務者にもならないという実情を繰り返しております。  なお、そのほかに、健康保険、ひいては農林共済等に労務者を加入させることができますならば、これまた林業労務者の確保に非常に役立つわけでございますし、大きな魅力があるわけでございますが、御説明申し上げましたときに少しく申し上げてございますが、健康保険並びに農林共済、失業保険、ともに御案内のごとく、事業主が半額を負担しなければなりません。したがいまして、力の弱い森林組合等におきましては、思いながらも、健康保険、農林共済等を適用させることができないという実情が数多くの組合にございます。失業保険におきましては、いま申し上げましたような制約がございますが、健康保険と農林共済等につきましては、労務者が希望し、また事業主がその負担にたえられますならば、これは加入することが現在の段階ではでき得るわけでございますが、森林組合の力の弱いところでは、ただでさえ職員の給料さえも十分な支払いができないというような組合におきまして、一般林業労務者の掛け金というようなものがなかなか支出できないというのが実情でございます。したがいまして、先ほど来申し上げました個人経営計画の樹立、林業労務者の確保、これらの一連した事業に関連いたしまして、森林組合の力をいまより以上に強くすることが、現在の段階で一番急務と私は考えておるわけでございます。これにつきましては、森林組合の力がどうすれば強くなるかということにつきましては、これはまた諸先生方にいろいろと御研究をいただきたいと思うわけでございますが、組合が大きくならなければいけない。森林組合の合併等もございますが、これらの点につきましては、今後よろしく諸先生方の適切なる御指導と御協力をお願いいたしたい次第でございます。
  46. 喜多参考人(喜多正治)

    喜多参考人 足鹿先生の御質問の第一点は、古川さんからお話がございましたが、非常に林業労働者に対しますあたたかいお心づかい、私どもほんとうに感謝を申し上げたい気持ちでございます。ちょっと付加さしていただきたいと思うのでございますが、この問題、非常に私どもも重視いたしておりまして、何らかの方法がとれないものかと、お話しの失業保険の当然適用、この点に関しましていろいろ私ども検討いたしました結果、実はこのほど林野庁の御当局と厚生省の御当局と私ども入りまして、会談をいたす機会を持ったわけでございますが、厚生省必ずしも冷たい態度ではないのであります。ただ問題は、いまの現状では、法にかなった数字が出てこないという点を非常に強調するわけです。そうでございましょう。しかし、この点につきましては何か方法がないものかと思って、いま林野御当局とも御相談申し上げているところですが、どうもやはり何か特別な政治的な御配慮でもいただかなければできそうもないような感じがいたすわけです。ぜひひとつ、足鹿先生にもこの上ともこうした問題につきまして御尽力のほどをお願い申し上げたいと思う次第でございます。  それから第二点の、私ども森林組合の、ことに全森連の現状をごらんになりましての御批判でございますが、御批判といたしましては、全森連の性格は、事業団体というよりも、むしろ中央会的な指導面が強くなっているのじゃなかろうか、むしろ末端の組合のいろいろな活動を受けて、事業面をもっと活発にしてはどうか、こういうふうな御質問だったと思うのでございますが、まことにごもっともと思います。私どもの連合会の性格といたしましては、中央会的な指導面はもとよりのこと、事業団体としての面もございます。いわば全購連、全販連、さらにまた中央会を一緒にしたようなかっこうの団体でございまして、そこで、御指摘の事業面を伸ばすために、実は今年度の事業計画もいろいろ心を砕きまして、たとえば事業面の中での重点でございます販売の面につきましては、パルプ、木材等々ございますけれども、特にパルプの面に重点を置きましてのいろいろな計画、さらにまた購買の面では、最近林地でも肥培を相当いたしますので肥料、それから林業近代化のための機械、さらにまた薬剤等々の扱いにつきましても、いろいろ系統を通じまして徹底いたしたいというふうに考えております。さらに、これらを円滑に、しかも末端まで浸透するように進めまするために、駐在制度等を新しく考えてまいりたいというふうなことで、事業の面にもうんと力を入れたい気持でございますので、この上とも御指導、御鞭撻のほどをお願いいたしたいと思います。
  47. 吉田参考人(吉田好彰)

    吉田参考人 簡単に御回答を申し上げます。  木材団地の件につきましては、各港湾都市を中心といたしまして各地で進められております。そして御指摘のように、これの所管が林野庁あるいは地方においては商工課というようなところでございまして、その間の連絡がうまくいかない、あるいは地方的には起債等のめんどうな問題も解決できないというような点が見受けられるのでございます。これらの点につきましても、この基本法の制定を機といたしまして、中央において立てられました画一的な政策が実現されるようなことを希望いたします。  それから全木連といたしましてどのように考えるか、団地の問題をはらみまして、各協同組合あるいは進んではコンビナート式の近代化ということも考えまして、木材利用の振興、価格の安定あるいはコストの引き下げというようなことまでも検討をいたしております。何分にもそれらに対する指導あるいは助成等はまだ不十分でございますので、それらの目的を達成するまでにはまいっておりませんけれども、徐々にその方向に向かって努力していきたい、こう思っております。
  48. 高見委員長(高見三郎)

  49. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 時間がまいりましたので、一言だけお伺いしまして、責任を果たしたいと思います。  森林基本法といい、林業基本法といい、一番問題は、やはり国土保全と日本の森林の総生産を上げるということと、あわせて個々の持ち主、林業従事者の総所得を引き上げる、この三つだと思うのです。  そこで、現在の国有林及び公有林を除きまして、私有林に関しては、経営の成り立つような大きな面積を所有されておるのはほんとうに微々たるものでありまして、ほとんどが零細所有者であることは、先ほどおっしゃったとおりであります。そこで、その成り立つくらいの面積を所有されておる方は、とうてい家内労働ではやれない、山林労務者を雇わなければならないわけでありますが、家内労働でやり得るようなものは経営が成り立たない、そういう矛盾が出てくると思います。しかも、山林労務者を獲得することが非常に困難であることは、先ほど来の参考人のいろいろな質疑に対する御答弁にもあったとおりであります。ましていわんや、ここ十五年、二十年先の見通しを考えますと、ほとんど山林労務者の獲得が困難をきわめるのじゃないかという想像が立ち得ると思います。しかも、これは農業と違いまして、土地改良をするわけにいきません。そういうようなことで、いよいよそういうことが困難になるわけでございますので、将来のイメージとしては、先ほど喜多参考人のおっしゃいましたとおり、森林組合がこのにない手になるより方法がないのではないか、しかも、それは公益性にかんがみて、相当国からの基礎的な補助、あるいは現在のような融資制度ではなくて、思い切った融資制度を打ち立てなければ、森林組合がこのにない手になることができ得ない、こういうように考えまして、民社党の基本法をつくったつもりでございます。こういうような意味で日本の総生産を引き上げ、国土保全に役立ち、しかも山林に従事する人々の総所得を増加するというような意味におまきしても、そういう観点しか帰結するところがないのではないかと考えるのです。  なお、もう一つ、ついでにつけ加えまして、国有林の開放その他もやかましくいわれておりますが、たとえそれが利用権の開放であっても、就業日数の増大をしていくと申しましても、個々には相当な資本が要るわけであります。個々の林家でそれだけの資本はあり得ない。したがって、こういう問題も、森林組合があわせて経営することによって雇用を増大していって、先ほどの話ではありませんけれども、季節季節に要ります労働をまんべんなく雇用できるようなくふうを森林組合がやっていくべきではないだろうか、これが第二点であります。  第三点は、したがって、そういう観点からいたしましても、国有林の開放という問題はそういう観点に沿うた形でなければならないのであって、一般的に言えば、慎重に取り扱うべきであり、なおますます必要なところには拡充していくべきではないか、こういうことを思うのでありますが、これにつきまして古川参考人喜多参考人倉沢参考人並びに熊井参考人から、簡単でけっこうでございますが、御意見を承りたいと存じます。
  50. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 本会議が始まりましたので、時間の関係上、御答弁はできるだけイエス、ノーの簡単な御答弁でお願いしたいと思います。
  51. 喜多参考人(喜多正治)

    喜多参考人 御質問というよりも、御意見でございますが、私、全く同感でございます。非常に森林組合を高く買っていただきまして恐縮でございますが、それだけに私ども任務の重さを痛感するわけでございます。関係各方面の御援助、御協力をいただきまして、その御趣旨に沿うように努力したいと考えております。
  52. 熊井参考人(熊井一夫)

    熊井参考人 先生のお話はまことにごもっともと思います。私も同感でございます。
  53. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 本会議が始まりましたので、この程度にとどめます。  参考人各位に対しましては、それぞれきわめて貴重な御意見をお述べいただき、林業基本法案等の審査の参考に資するところまことに大なるものがあったと考えます。この際、当委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。     ―――――――――――――
  54. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 おはかりいたします。  前回の委員会において、内閣提出林業基本法案外二案の審査のため、当委員会から現地に派遣されました委員を代表して、私から報告をいたしたのでありますが、この際、現地における会議の速記録を当委員会会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は明十日午前十一時から開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十分散会      ――――◇―――――   〔参照〕    農林水産委員会現地調査会記録      ――――◇――――― 第一班の現地調査会記録 一、期日及び場所  昭和三十九年五月二十九日(金)  和歌山市(興紀相互銀行会議室) 二、案件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稻富稜人君外一名提出衆法第  四四号) 三、出席者  (1) 派遣委員       団長(農       林水産委       員長)  高見 三郎君(自民党)            小山 長規君( 同 )            谷垣 專一君( 同 )            本名  武君( 同 )            赤路 友藏君(社会党)            西村 関一君( 同 )            芳賀  貢君( 同 )            稻富 稜人君(民社党)  (2) その他の農林水産委員            足鹿  覺君(社会党)            中澤 茂一君( 同 )            森  義視君( 同 )  (3) 政府出席者         林野庁林政部林         政課長     黒河内 修君         林野庁業務部長 若林 正武君  (4) 意見陳述者         和歌山県西牟婁         郡町村会副会長 坂本新次郎君         京都大学農学部         林学科教授   半田 良一君         和歌山県森林組         合連合会会長  横矢  乾君         和歌山県木炭協         会会長     三前 歳三君         和歌山県木材協         同組合連合会会         長       柏木 永一君         紀州林業懇話会         副会長     海瀬栄一郎君         奈良県山林労働         組合連合会書記         長       坂本 寿治君         和歌山県二川森         林組合協業労務         班       沢本 鎌造君     ―――――――――――――    午前十時三分開会
  56. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) それでは、現地調査会を開催いたします。申し合せによりまして、私がこの会議の座長をつとめますので、よろしくお願いいたします。  まず、私から派遣委員を代表いたしまして、一言ごあいさつ申し上げます。この会議におきましては、内閣提出にかかる林業基本法案、日本社会党所属議員の提出にかかる森林基本法案、及び民主社会党所属議員の提出にかかる林業基本法案について、各界の代表者の御意見を伺うことになっておりますが、御意見をお述べいただく前に、この会議の開催趣旨並びに運営方針等について申し上げたいと存じます。  まず、この会議は先ほど申し上げました三法案の審査の参考に資するために、衆議院農林水産委員会が、成規の手続によって和歌山県、北海道において、それぞれの現地の御意見をつぶさにお聞きするために、開催されるに至ったものであります。各法律案につきましては、いずれも林業発展に伴い、今後のあるべき方向、あるいはその基本施策を明示し、もってわが国林業推進をはかろうとするものでありまして、今国会における重要議案であります。したがいまして、各議案の提出以後は、本会議における趣旨説明の後、農林水産委員会に付託され、目下当委員会において鋭意審査中のものであります。  御意見を陳述される方々には、本日は御多用中のところこの会議に御出席くださいまして、厚くお礼を申し上げます。以上の趣旨をおくみ取り下さいまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ下さるよう、お願いいたします。  それでは、まず本日の出席者を紹介いたします。私が衆議院農林水産委員長高見三郎でございます。私の左側に自由民主党の小山長規君、同じく本名武君、同じく谷垣專一君、私の右側が日本社会党の足鹿覺君、同じく芳賀貢君、同じく赤路友藏君、同じく中澤茂一君、同じく西村関一君、同じく森義視君。それから、私の左側自由民主党委員の隣が民主社会党の稻富稜人君であります。  本日、各界を代表して意見を述べていただく方々を御紹介申し上げます。ただいまお見えになっておりませんが、向って左側が皆さんの側から申しますと、右側から京都大学の農学部教授半田良一先生ですが、間もなくお見えになります。その次が西牟婁郡町村会副会長の坂本新次郎君、県森連会長の横矢乾君、県木材協同組合連合会々長柏木永一君、県木炭協会々長三前歳三君、紀州林業懇話会副会長海瀬栄一郎君、奈良県山林労働組合連合会書記長坂本寿治君、二川森林組合協業労務班沢本鎌造君、以上の方々であります。  次に、出席されております方々に、あらかじめ申し上げておきます。この会議の運営につきましては、会議開催要領を理事会において決定し、すべて衆議院における委員会運営についての議事規則、議事手続に準拠して行なうことにいたしております。つきましては、議事の整理、秩序の保持は、団長であります私が行なうものといたし、傍聴につきましても、報道の任に当る方々、その他の方々で、特に団長の許可を得られた方々のみ、この会議場にお入りになっておるわけであります。傍聴の方々もその点を御了承の上、静粛にお願い申し上げます。  なお、念のため申し上げておきまするが、発言をされる方々は、かならず座長の許しを得て発言していただくことといたしております。また、この会は説明会ではありませんので、御意見を陳述される方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知を願っておきます。  次に、会議順序を簡単に申し上げますと、まず、各意見陳述者から順次御意見をお述べいただき、そのあとで、委員の側から質疑が行なわれることになっております。したがいまして、時間の関係上お一人おおむね十分程度にお願いをいたしたいと存じます。また、発言の順序は座長においてきめさせていただきます。  それでは、まず坂本新次郎君。
  57. 坂本新次郎君(坂本新次郎)

    ○坂本新次郎君 全国で山林の多い辺境の町村が、相寄り相はかりまして、山地の産業を起こし、住民が住み得るようにせねばとの願いから、十年前全国奥地山村振興協議会を結成して、会長三浦一雄先生中心にして、陳情運動を続けてまいったのでございました。が、昨年一月でございましたが、急に三浦先生はなくなられて、その後発展的に解消いたしまして、新たに福田赳夫先生を会長にわずらわし、山村振興連盟として発足、自来山村振興法の制定方をお願いし、本日も東京虎の門の共済会館で、全国から各関係町村の代表者が出席して、大会を開いているのでございます。今国会では与野党をあげて、林業の憲法ともいうべき林業基本法案を御提案、重要法案として御審議を賜わっておりますことは、大旱に慈雨をまさに得ようとする寸前であり、その成否は、ただいまお見えくださっておられる高見委員長さんをはじめ、御熱心な、かつ、有力なる国会議先生方の御高配のいかんにかかっているかを思いますとき、私は今までのことを顧みまして、胸一ぱいでございます。  政府当局、自由民主党、社会党、民主社会党におかれては、奥地開発、林業振興について深い御理解とその必要性、重要性を御認識いただいて、御尽力くださることに対し、心から敬意と感謝のまことを捧げる次第でございます。  御承知のとおり、奥地山村と都市との地域格差は、経済の高度成長に伴い一そう大となり、地理上、環境上、離農離山する住民漸増し、特に青少年が男女の別なく転出また転出で、父祖伝来の農林業に携わる者が、老令化の一途をたどっておる現状でありまして、このまま放任するがごときは許せません。一日もゆるがせにすることのできない問題だと存じます。「田園まさに荒れんとす。帰りなんや、いざ、帰りなんや、いざ」と昔の人が言っておりますが、「森林まさに荒れんとす。国策樹立、救わなんや、いざ、救わなんや、いざ」今日だと存じます。  すでに、離島振興法、漁業振興法の制定があり、それに対する対策があり、農業基本法があって、農業構造改善事業が着々実施、成果をあげつつあることを思いますとき、林業基本法は勝手な言い分ではあるかも知れませんが、むしろ遅きに失しているうらみがありまして、私どもは、私どもの微力を嘆かざるを得ない次第でございます。  つきましては、この国会において基本法だけは、会期も迫り、きわめて御多忙のこととはお察ししますが、政府社会党、民社党の各案については、林業発展と、林業従事者地位向上と、国土の保全を期せられるという重要なねらいどころは、相通ずるものがあるとうかがわれますので、願わくは、小利を捨てて大道について、ぜひとも成立されるよう、伏してお願い申し上げる次第でございます。  その上、さらにこの法律ができましたあとは、この法の運用上可及的すみやかに林道の開設につきましては、積極化するようの道をお考えいただき、造林事業の推進林業の協業化、機械化、森林組合の育成強化等々に関し、それぞれ適切な関連法案を御制定くださいまして、奥地山村の開発に、地域住民が少しでも落ちついて生活が安定し、ひいて国家のため、その使命を果し得られるように、方途を講じていただきたく、御認識を賜わりとう存じます。  実は、一昨日の五月二十八日の本県全県下の町村長大会で、「本国会で林業基本法成立を強く要望します」との決議をいたしまして、当路の方々に、きのう打電をいたしまして、お願いをいたしておる次第でございます。どうぞ、この熱情をおくみ取り下さいまして、なお、山村振興法についても、あわせ全国の各市町村で熱望いたしておる次第でございますので、御配慮いただきとう存じております。よろしくお願いを申し上げまして、公述を終ります。
  58. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 半田先生がお見えになりましたので、お願いいたします。  次は、半田良一君。
  59. 半田良一君(半田良一)

    ○半田良一君 一言林業基本法案に関しまして、私の考えを申し述べさせていただきたいと存じます。  申すまでもなく、林業の産業としての発展は、戦後ようやく軌道に乗ったばかりでございまして、まだきわめて幼弱であり、かつ、その生産流通関係には、多くの点で非近代的な残りかすがつきまとっております。過去十年来の著しい経済発展は、木材需要の大幅な増大と、価格の上昇をもたらし、これが山村における林業経営確立を促したということは、確かでございます。しかし、経済成長の結果もたらされた近年における山村労働力の急速なる流出は、逆に経営基盤を危険に瀕せしめておると思います。  また、他方では木材の流通加工業者は、戦後景気の波に乗って、その数を激増しましたわけでありますが、流通機構における抜本的な改革をなし得ませんでしたために、近年は外材輸入の圧迫のもとに、ようやくその苦悩の色を深めてきております。すでに、農業においては、さきに農林漁業基本問題調査会の答申がありまして、時を移さず農業基本法の制定を見、農政の方向を示したわけでありますが、林業の場合には法案提出を見ないままに、すでに三年余りを経過しております。しかも、この間農林業をめぐる経済情勢の推移は、ますますきびしさを加え、林業生産流通構造における矛盾は、ますますあらわになり、他方では都市ないしは近郊農村と山村との生活条件の格差が、ますます拡大してまいっております。  このたびようやく林業基本法制定の気運が熟しまして、政府案及び社会、民社両党の提出法案が上程審議される運びになりましたことを、心から喜んでおる次第でございます。もちろん、この三つの案は提出理由の説明にも見られますように、発想においては、かなり趣きを異にするものがあることは争えませんが、ただいまも申し上げましたような林業の現実についての認識という点では、共通するところはきわめて多いわけであり、個々の条文の検討を通じまして、今後合意に達することも、さして困難ではないかと存ずるのであります。  今、三つの法案を逐条対比しながら、その優劣を論ずるということは、それほどの意味もあるまいと思いますので、ここでは、さきの農林漁業基本問題調査会の答申に依拠して作成されたと思われる政府案を、主として念頭におきながら、若干の点について考えを述べてみたいと思います。  まず、第一に今後いわゆる林業の経済的機能の側面については、この基本法にあり、一方、林業公益的機能については、森林法に規定されることになるわけでございますが、現実の森林は両者の機能をあわせ持つ場合が少なくないわけでありますから、二つ法律の間の調整には、十分留意を払う必要があるのではないかと思うのであります。  第二に、林野には農業的、もしくは、畜産的利用の方法が部分的地域的ながらも存在するわけであり、これがしばしば林業的利用と対立いたし、それぞれの産業の生産力の発展をはばんでおる事例が少なくありません。林業に関する具体的な施策を打ち出すための前提といたしまして、国民経済ないしは地域経済立場から、総合的な土地利用区分を策定することが必要であると思います。  第三、林業は他産業とは異りまして、生産期間が三十年ないし五十年にわたる長期の生産業だという特性がございます。これは本質的に、林業を経済的な採算になじみがたいものとしております。学界の一部には、産業としての育林業成立に、非観的見解を抱く者もあるほどであります。そのような非観的意見に、そのまま同調するわけではございませんが、少なくとも造林保育の実行につきましては、国の責任において大幅な助成措置と、監督措置が必要であろうかと考えております。  第四、林業のにない手に関しましては、これまで各種の議論が繰り返えされているわけでありますが、現実には中小規模の農林家が、所有面積についてもかなり大きなウエイトを占め、また、さきの農林業センサスの結果などに見られますように、かなり積極的な経営意欲を示しているという実情を、認識すべきであると存じます。さきの林業基本問題に関する答申では、このような認識に基づいて、家族経営林業という一つの構想を打ち出したわけでありますが、林業生産力の拡大という見地から見ましても、また、山村地域住民、すなわち、農林家の所得向上という視点から見ましても、これらの中小規模林業家の保有している林野の合理的利用及びその経営確立という方向を、特に助長する必要があろうと存じます。この点に関連しまして、さらに、次の若干の点を指摘しておきたいと存じます。  第一に、部落有林野の権利関係の整理、国有林、公有林の活用などを促進し、農林家の営む林業経営の土地基盤の拡大をはかることが必要かと思います。  第二、林野の保有においては、おしなべて、いわゆる分散的所有が特徴でございますが、今後経営を近代化し、林道そのほかの土地に付属した資本装備を充実していこうといたしますならば、今よりも、まず、所有の分散性を是正する措置が前提になると思います。  第三、林業技術の低さにかんがみまして、その開発向上をはかることは、特に必要であります。その場合、その方向といたしましては、なかんずく、林家の経済循環の中に定着し得るような技術の開発に、重点を指向すべきであろうと思います。かつての林学に示されておりましたような法正林の保存のみを追及するような思想は、再検討されるべきであろうかと思います。  第四、中小規模農林家の経営には、可能な限り林木の集約利用過程を包含すべきであろうと思います。ただ、立木売りであろうと、素材売りであろうと、いずれを問わず、流通市場の不完全性が経営確立の阻害要因になっている場合が多いわけであります。その意味で、生産者がみずからの共同によって流通条件を改善しようとする努力、たとえば、森林組合の経済活動などを、より積極的に助長すべきであると思います。  第五、林業の協業化に関しましては、さしあたり土地所有の分散性を克服するということが、きわめて大きいと思いますが、将来資本装備が充実し、技術向上していくという動向にも対応しまして、規模拡大のための協業化という可能性が、次第に増大していくであろうと思います。  これが、林業の中小規模の農林家に関する点でありますが、林業の行なわれる場合は、申すまでもなく山村でございますが、山村は一般に生産物の商品化、労働力の雇用の面で、都市近郊農村に比し、著しく劣った地位におかれております。その意味で、山村における基幹産業である林業の振興をはかるに際しましては、林家以外の地域住民の所得の増大と安定及びその生活内容向上にも直結するよう、常に配慮が必要かと存じます。特に、山村地域住民の所得構成におきまして、林業労働所得が大きな比重をもつという点から見まして、労働者の雇用の安定、福祉向上に意を用いるべきであると思います。そのためには、森林組合による労務班の結成など、雇用者側の経営管理態勢の近代化を推進することが一方では必要でございますし、他方では労働者の側からの自主的な組織の結成の気運がある場合には、それについての指導助言をし、正常な労使慣行の樹立に努力すべきであろうと考えます。  第六に、木材の流通に関しましては、多数の中小規模の流通加工業者から、建築業者を経て消費者に至るという一方の系列と、商社などの大規模の供給者から、大口利用者に至るという他方の系列とが併存している実情であります。近年外材輸入の増大などによりまして、あとのほうの比重が徐々に高まっており、その圧迫のもとに流通加工業者相互の間に、過当競争がますます激化している実情であります。生産者側における共同販売態勢の整備と歩調を合わせまして、今後流通業者の共同化をも推進し、仕入れ、販売条件の改善をはかるとともに、それを通じて価格を安定化し、安んじて加工技術向上へ努力することを可能ならしめるごとき基礎固め、言いかえますならば、流通業者を産業資本として確立させるという構想が必要であろうと存じます。  いろいろと、全般にわたって私の考えを申し述べましたが、最初にも申し述べましたがごとく、今回の基本法案が出てまいりました背景にかんがみまして、この法案のできるだけすみやかな成立が、林業関係者の方々のみならず、私ども林業に関しまして研究従事している者といたしましても、きわめて必要であろうと考える次第でございます。以上で、失礼いたしました。
  60. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、横矢乾君。
  61. 横矢乾君(横矢乾)

    ○横矢乾君 私は結論から申し上げます。政府案社会党案並びに民社党案として、それぞれ林業に関する基本法案が今国会に提案され、鋭意審議を続けられておりますことは、私どもまことに喜びにたえません。各党案それぞれ基本的考え方に特色があり、差異があることは承知いたしますが、ただ、林業発展と、林業従事者地位向上をはかり、林業の近代化を特に促進していこうとすることにつきましては、ひとしく目標を一にしておると考えます。したがって、現在発展成長する日本経済の中で、経済的にも、文化的にも取り残されて、いわば、今日まで政治的に全く忘れられていたのではないかと申しても過言ではない林業及び林業従事者、ひいては山村地域住民が、あげて待望しておりましたこの基本法案が、本国会において、願わくは党派をこえて、すみやかに成立させていただくようにお願いを申し上げます。  かく結論を申し上げまして、この法案が円満に調整成立されるものと前提して、以下数点私の意見を申し述べさせていただきます。  その第一点といたしましては、この法案で示されるところの林業、あるいは、林業従事者と呼ばれております者、その林業そのものについて見ますと、範囲等は必ずしも明確ではありません。たとえば、第一次産業としての林業、及びそれの従事者と、これと関連ある流通加工等の事業、それぞれに対して、具体的施策にあたっては十分に明確にして、諸方策を打ち立てていただきたい。なぜならば、このことは次に申し上げることとも関連いたしますので、よろしく御賢察をお願いいたします。  第二点は、林業を振興し、林業従事者の近代経営を盛んにするということは、何と申しましても、その根本は価格の問題だと思います。法案には林産物の需給及び価格の安定をはかると示されておりますが、今日外材が無制限に輸入されております。しかも、国内材を圧迫している状況から、われわれははだ身に感じますことは、この価格の安定をするということが、真に生産者の所得を将来保障し得る価格安定を、国が強力に考えてくれるのであるかどうかという、この点に大きな不安がございます。生産コストを引き下げる、生産性向上するために、生産基盤整備、さらに技術向上や、機械化が進んだとしましても、なおかつ、三十年、四十年の長期にわたる林業生産が、そのいつの時点においても、一応生産者が生産所得を保障していただける価格安定対策というものを、強く国で打ち出していただかなければ、林業意欲も、林業の近代化への意欲も大きく阻害されるおそれがあります。特に、林業及び林業従事者の範囲が、広義に加工流通まで含まれるとするならば、ことさらに生産者はこの問題を心配をいたします。なぜなれば、業者の価格安定への希望が、必ずしも一致し得ないからであります。このことを、特にお考えいただきたいと存じます。  第三点といたしましては、林業団体整備についてであります。林業構造の改善事業等、具体的政策実施されるについて、これを受けて推進するに足る林業団体として、当然森林組合が強化整備されていかなければならないと考えますが、今日の森林組合の状況は、まことに残念なことではございますが、十分だとは申せません。森林法の改正によって、森林組合が協同組合として改組されて今日に至るまで、その拡充強化につきましては努力をいたしておりますが、実態としては特に弱い組合がなお多いのでございます。それはなぜかと申しますと、これは特に本県の特殊事情にもよることではありますけれども、大山林家が少数で、大半の面積を所有していること、そのほかの大多数の零細な山林所有者は、それぞれの地域で農協、漁協等の共通の組合員であることでございます。森林組合の行なう指導及び経済事業等について、大山林所有者である組合員は、むしろ組合を必要としない点が多い。零細な組合員は林業施策の中で受ける利益が、今日まではきわめて薄い。日常生活面での組合利用は、農協等で事足りるという点で、森林組合がせっかく経済事業団体として改組しながら、中途半端に苦しみつつあるのは、そうした理由であります。  そこで、この基本法施行後の具体方策として、森林組合関係法を改めていただきまして、農協等と同じく信用事業をも行なわしめるようにして、山村という地域にあっては、森林組合が農協と一体化し得る地ごしらえをしていただきたいのであります。農業構造改善事業等も、現状のままでは、山村では進むる方途もございません。林業構造改善事業が進められても、今日の森林組合では中に不十分なものがあって、受けて立つことができない実情であります。これでは、せっかくの林業基本法も、山村住民にとって遠いところのものになるおそれがありますので、ぜひ、この点についても御研究をお願いいたします。  第四点といたしましては、林業技術向上施策についてでございますが、林業の栽培技術と申しますか、育林技術について農業、特に園芸、畜産等の今日の技術の革新的な進歩に比しまして、林業そのものの持つ特殊性もありましょうが、林業技術のおくれを感じないではおられません。特に、本県に流行しております松食虫対策一つにしましても、今日その決め手がない実情であるのは、すでに御承知のとおりでございます。この点一つについて見ましても、国、県が一体となった技術向上への、総合的な、しかも、思い切った対策をお願いいたしたい。  最後に、あらゆる施策に先行して、生産基盤整備、特に林道の整備を急速に推進をしていただきたい。申すまでもなく、労働力の問題、協業化の問題、経営規模拡大等の問題、すべての具体的施策に先行して、この基盤整備がもっと強力に、国費をもって先行することこそ、本基本法の成果をあげ得る、大きな事業だということを信じて、このことを申し上げて、私の意見を終ります。
  62. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、三前歳三君。
  63. 三前歳三君(三前歳三)

    ○三前歳三君 私どもといたしましては、農業農業基本法があり、漁業漁業振興法がありますように、林業にも何とか早くこの経済発展に対すべき、国の政策保障と、施策等をはっきりさせていただきたい、それを強力に実施していただくような方法を期待していたのでございますが、このたび、この法案が御提案御審議いただくことになりましたことは、まことにありがたい次第で、喜んでおる次第であります。この上は、先生方の御尽力によりまして、一日も早くこの成立をお願いする次第でございます。  この機会に、私は木炭の生産関係する者として、業界の事情を少しく申し上げて、法案御審議の場合の御参考にしていただければ、まことにありがたいと存じております。  木炭が斜陽産業だと言われるようになりましてから、だいぶん月日がたっておりますが、固体燃料が液体燃料になり、さらに気体燃料にと、時とともに変ってまいりまして、文化の進むにつれて、これは当然であるとは存じますが、しかし、一方わが国としては、木炭はやっぱり家庭燃料、あるいは鋼工業用等の窯業として必需品でございますので、当然生産されてまいらなければなりません。また、他面全国の状況を考えてみますと、家族をも含めて数十万人の方々が、年令的にあるいは資金の関係や、また生活環境やらにしばられて、転業もできないで、木炭の生産によりほそぼそとした収入に、その生活を大きくたよっておるというのが現状であります。何と言っても、山村では木炭は大切な現金収入でありますので、やめることができない。したがいまして、私たちはこれらの人々に安心して木炭の生産をしてもらうとともに、何とか人並みの生活ができるような道を講じていただきたいと、かように願っておる次第でございます。  つきましては、まず私は第一に、広葉樹の構造を改善するというようなことでも考えて、製炭地域を造成することができないのかどうか、ということを思っております。当面、林業では木材の増産ということが期待されておりますので、極力樹種転換をして、針葉樹とか、あるいはその他早生樹種の植林を奨励されていることは当然のことではございますが、山がけわしいとか、あるいは土質の関係等で植樹がしにくくて、広葉樹のところもたくさんございます。私は、かようなところのうち適当なところを将来製炭地として利用できるように、御対策願えないものかと考えております。  本県には、備長木炭と申しまして、ほとんど純粋炭素からなる、世界で最もよい硬質の木炭が生産されているのでありますが、ただいまのところでは需要も多く、将来私たちは増産ということは期待はできませんが、それにしても長く、ある程度これの生産を継続したいと思っております。また、この技術はぜひ保存してまいりたいと考えておりますが、この備長木炭の生産する一部の地方で、択伐生産ということをやっております。これは、炭材のうち製炭に最も適当な太さのものを切って、細い木を残し、あるいはまた、優良樹種を大切に残して、不良なものを切り倒すというような方法をするわけですが、かようにいたしますと、だんだん優良樹の山となってまいります。さらに、皆伐いたしますと二十年以上もかからなければ、次の製炭はできないのでありますが、この方法によりますと、八、九年ないし十年ぐらいで、また製炭ができるようになります。さらに、常に多少の木を山に残しますので、治山、あるいは、治水という点からも、大へん効果があると存じております。これは、なかなかよい方法のように思うんですが、伐木とか集材等に手数がかかりますので、あまり広く行なわれておりません。本県では戦前にも、また戦後にも一時この択伐に奨励金を出していただいたことがありますが、財政上の関係で、ただいまでは中止されております。何とか国のほうで、かようなことをお考えいただけないのかと考えておる次第であります。  次に、林道の整備拡充の問題でございまするが、道さえつくれば開発できる未用林はまだたくさんございますし、木材の蓄積も非常に多うございますので、基本政策のねらいは、林道を拡充するということで、ある程度目的が達成できるのでないかと存じております。木炭につきましても、年々よく窯業などで中共炭の輸入問題が話題になっておりますが、やはり炭が少ない。炭が高いということが原因でございます。生産地が次第に奥地になってまいりますので、生産も思うようにまいりませんし、また、コストが高くつくわけでございます。ついては、何とか早く道をよくし、あるいは、搬送施設に御援助いただきまして、こういう問題を解決したいと存じております。  次に、私は製炭者の災害補償の問題をお願い申し上げたいと思うんですが、木炭の生産従事する人々は、一般に想像もできないような危険をおかして労働を続けております。しかし、非常に零細ではございますが、大部分の人々は製炭経営者であるというような理由で、すべての災害補償制度から除外されて、どういう災害の場合でも、みずからの力で処理しなければならないという、恵まれない境遇におかれております。私たち、本県では昭和二十九年県下の製炭者を統合いたしまして、県木炭協会を設立したのでありますが、最初からこの製炭者の災害共済制度を論議してまいりまして、ようやく昭和三十二年に、事業としてはじめて災害の見舞金制度というのを実施いたしまして、今日に至っております。しかし、微力でございますので、まだこれはしるしだけで災害をこうむった人々の再起にはほとんど力になっておりません。つきましては、国のほうでお取り上げいただいて、全国的な製炭者の災害補償、あるいは災害共済制度というようなものを実施していただけないかどうか、願っておる次第でございます。  このほか、協業等による生産の合理化とか、あるいは、価格の安定等の問題もございますが、陳情めいたことばかり申し上げて恐縮なんですが、何とかこの国会でこの基本法を御制定いただきまして、これらこまかいことでも、お取り上げいただけるような態勢をお整えしていただきたい、かように願っている次第でございます。
  64. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、柏木永一君。
  65. 柏木永一君(柏木永一)

    ○柏木永一君 林業基本法案は、林業関係者が多年要望いたしてまいった法律でございまして、今なお原始産業を続けております林業経営を合理化していただき、林業需給の円滑をはかっていただき、林業経営計画確立して、林業態勢を強化していただくことが、最も林業の最良政策であろうと思います。つきましては、私は木材生産加工の立場から意見を申し上げまして、お取り上げをお願い申し上げたいと存ずるものでございます。  その第一点は、本基本法が適用をいたしますのにつきまして、林政の平均化をお願い申し上げたいと存ずるのでございます。林業生産と、林産物の流通とを、その大きな柱の二つとして、林業経営されなければならんのでございます。そうした、総合した林業基本法でなければならんと存じます。すなわち、種苗の育成、森林の造成、木材伐採、搬出、加工、流通等の事態に至るまで、種々の事情が密接に関連しておりますので、有機的に一本化していただくことが、最も必要である林業政策と存じます。現在審議されておりますところの基本法案は、林業生産を主といたしまして、林産物の流通の面が、加工生産のものを従として取り扱っておる感を私は抱いておるのであります。したがいまして、基本法はどこまでも一貫したものでなければならないということを御審議の御参考になさっていただきたいと存じます。  第二点は、木材の関係組合の育成強化についてでございます。木材関係組合は、当然農林省の主管行政下におかれるにかかわらず、林業法規に明確なる規定がないために、地方庁におきましては林務部課に、あるいは商工部課等に分れております。本省におきましても、農林省と通産省とに分れて行政の谷間に呻吟しております。したがって本格的な指導を受け得ない現状でございます。よって、何らの裏づけも、何らの指導も、何らの予算措置も講じていただけない、冷遇されて、きわめて弱体なる団体でございます。林産物の流通加工、流通政策林業の振興にきわめて重大なものであることは、申すまでもないことでございます。この点に立脚いたしまして、木材団体の所属を明確に徹底していただきまして、指導の根源を明らかにして、予算措置を、あるいは指導措置を講じていただきますよう、念願をしてやまないものでございます。  第三は、森林計画生産と、需給の調整でございます。森林計画生産は、まず民有林の生産計画樹立からはじめなければならんと存じます。現在の民有林は、人手が非常に少ないために、きわめて放任性を帯びております。その大と言わず、小と言わず、思い思いまちまちの状態であります。何らの計画性を持っておらない状態でございます。特に、小面積を所有されております森林地帯は、全くの思いつき生産でありまして、種苗の育成とか、森林の造成管理に何らの計画を持たずに放任され、原始産業としての姿を今もなお続けておる状態でございます。  林業は、長期計画企業でありますために、それに計画性を持たすということについては、幾多の困難がありますが、現在の自由経済のもとにあっても、いつまでもこれが放任は許されないと思います。これが、木材加工流通計画にも重要なる悪影響を与えております。したがって、加工計画に幾多の問題点を残しておるのであります。  さらに、わが国山林面積の三〇%を占めると言われております国有林行政においては、画期的な再編を検討していただきたいと思います。国有林こそ、木材需給調整の主役でなければならんと思います。民有林の伐採量の少ないときには、国有林の伐採をもってこれに充当して、木材価格の安定と、需給の調整をはかるべきだと存じます。私たちから見ました国有林行政は、国有林自体の収支の均衡という点に重点をおかれまして、そうした木材需給及び木材の価格安定の面について、お考えをなさっていただくことが少いということを、まことに残念に思っております。つきましては、これらの点につきましても、基本法に織り込まれるよう、御配慮をいただきたいと存じます。  第四番目は、外材の輸入と、外材製品の輸入の抑制でございます。わが国の製材産業は、各種の需要のもとに、ただいまでは異常に発達を遂げたのでございます。と申しますのは、設備の改善とか、いろいろなものが加えられまして、高度化されてきつつあります。その反面、戦争中に乱伐されましたために、木材資源が減少の一途を辿っております。ために、外材の輸入によって需給のバランスをとっておりますような現状でございます。しかも、それが最近多量に輸入しなければならない状態下になることになっております。しかし、輸入されつつありますところの外材は、時期的にも、質的にも、不統一でありまして、特に最悪の木材が輸入されておることが多々あるのでございます。したがって、わが国の消費に向く適性品を生産することにつきましては、非常なる困難性を感じつつあるありさまでございます。これを改善し、そうして、円滑に外材輸入の適性化をおはかりいただきたいと思います。  さらに、世界の先進国は自国の木材を、自国において製品として、わが国に輸出せんとする計画を進められております。近い将来においては、製品がわが国輸入となってあらわれることは明らかな事実になってきております。かくなります上は、中小企業でありますわが国の製材業が、直ちに倒産をしなければなりませんので、社会的に見まして、ゆゆしき問題であろうと存じます。したがいまして、外国の製品輸入につきましては、制限を加えていただくと同時に、その輸入品に対しましては、まことに僣越ではございますけれども、関税を課していただくような処置をとっていただきたいことを懇願して、こうした事柄につきましても、基本法に織り込んでいただくことを、念願いたしてやまないものでございます。  以上の四点を申し上げまして、私たち林業関係者一千万人は、林業基本法の制定を一日千秋の思いで待っておるものでございます。どうかすみやかに、本日御来県いただきました各位におかれましては、すべてを超越して、わが国林業振興のために、すみやかに御制定されんことをお願い申し上げまして、私の愚言を終わらしていただきます。
  66. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、海瀬栄一郎君。
  67. 海瀬栄一郎君(海瀬栄一郎)

    ○海瀬栄一郎君 では、ただいまよりはじめさせていただくことにいたします。  まず、このたび林業基本法案をば、今国会において成立されるように、いろいろと御努力くださっていますところの諸先生方、本席にお出でいただきまして、その方々に対しまして、私たちは厚く御礼を申し上げます。なお、本日は非常に御多忙中にもかかわりませず、この和歌山におきまして調査会を開催くださいまして、直接私たち現地の者の声をお聞き取りいただける機会をつくっていただきましたことにつきまして、地元林業経営者の一同を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げたいと思う次第でございます。  従来わが国林業政策は、とかく国土保全、それから、資源保存政策、そういうものに偏したきらいがあるように思います。ところが、今回先生方のなみなみならん御努力によりまして、林業を産業として発展さすことについて、いかにしてこれが近代化をはかろうかとする、この法案ができあがりましたことは、私ども林業経営者といたしましては、その地域、または、規模のいかんを問わず、長年これを待っておったところでございまして、何よりの喜びとするところでございます。  林業は、他の近代産業と異りまして、その生産過程が著しく長期にわたるものでございます。そうして、その間にありまして、いい物を安くつくろうとするならば、その育成にたえず努力することが何よりも必要でございます。その点から見ましても、この林業発展と、その従事者の地位安定と、それから、向上をはかるためには、林業の憲法とも言わなければならない適切な基本法を早く確立していただきまして、単に国だけでなくして、私たち民間も相協力して、わが国のために、その目的を達成するように努力することが、何よりも肝要だと考えております。もっとも、この法案ができましたと言いましても、あすの日から直ぐ、それでは打って変ったような林業ができるのかというようなことは、それはとうてい無理なことでありまして、決して私たちは、そういうようなことは期待いたしてございません。  さて、目下御審議いただいておりますところの法案を私たちが拝見いたしますと、どの案とも林業発展を、何とかして早く強く促進しようとしておられます点は、私たちが深く敬意を表するところでございます。もちろん、われわれ林業経営者は、林業のもつその特殊性、今さらこういうことは、申し上げなくてもわかっておりますが、その特殊性にかんがみまして、これが社会性公益性の要求に応じながら、この現下の開放経済界におきまして、やはり国際競争に耐えて、国民経済の基礎的資材でございますところの木材、その生産事業を今後も何とかして引き続き経営いたしまして、その生産性向上をはかりながら、かつ、林業生産の拡大を遂行するために、この基本法案の趣旨にのっとりまして、産業としての林業経営を、さらに積極的に推進する覚悟をもっております。したがって私といたしましては、今国会においてぜひともこの基本法成立することを切望いたしますとともに、はなはだ御無理なお願いとは存じますが、このせっかくの今日皆様のお出でいただいた機会でございますので、もし、お差しつかえなければ、本席でも成立方をお約束いただいたら、何よりも私たち安心し、喜びとするところでございます。なお、進みましては、この基本法だけではなくして、これが関連立法の早期成立をも強く期待しているものでございます。  その次に、その具体的施策をいたしますにつきまして、関連法律を御成立していただきますことにつきまして、特にお願いを申し上げたいことが数点ございます。  それは、まず第一に林政審議会に対する民間林業経営者が、多数参加できる機関としていただきたいということでございます。  第二に、林道網の画期的開設を促進していただきたいということ。  第三に、林業の再編制度を確立するとともに、事業体の法人化の促進をしていただきたいということ。  第四に、これは仮称でございますが、この際林業生産基盤拡充基金とでもいうようなものでも、ここに創設していただきまして、それによってこの林業の拡大生産推進していただく、この四点でございます。さて、これからこの諸点につきまして順次説明させていただきます。  まず、林政審議会でございますが、他の産業にありましてもこれは同じでございますけれども、特に林業にありましては具体的な施策をいたしますにつきまして、その林業の持ちます特殊性から、実情の正確な把握が何よりも大事なことは申すまでもないことでございます。しかしながら、残念ながら今までのこの種の審議会におきましては、とかく経験者として民間の経営担当者の参加が、十分でなかったというように思われるのであります。しかし、今回は産業立法というような事情でございますので、林政審議会委員を御選定していただくにあたりましては、学識経験者として、民間林業経営者が、かなり相当数参加できまして、法制定の適確な正常化がなお一層可能ならしむるよう御配慮くだされたいのでございます。  第二に、林道開発の画期的な促進と、補助率の大幅な引き上げをお願い申し上げたいと思います。と申しますのは、林道開発のわが国の現状は、林道網の密度は今さら申すまでもないのでございますが、欧州先進林業国のそれと比較いたしますときに、わずかに十分の一に過ぎない、すこぶる貧弱な状態であります。そうして、その十分の一という数字の中には、木馬道のようなものまでも含まれておるわけでございます。愚言でございますが、私の家はここから約五十四キロ東南のほうにございます。そこからここへ参りますのに、約二十キロの山道を車でやって来るんでございますが、その時間が驚くなかれ一時間半かかります。そうして、あとの三十四キロを一時間でやって来るわけであります。こういうことは後ほど申しますが、そういうような状態、それがわが国山村の道路でございます。この原因は何であるか、それはもちろん欧州の国々に比べまして、わが国の地勢が非常に急峻だからでございます。また、雨が非常に多うございます、そういうような関係から、石積みとか、擁壁とか申しまして、工事が非常に割高であることが一因ではございましょうけれども、それ以上に従来公共投資がどうしても、先ほどから皆さんが申しておられましたように、都会に偏重いたしまして、農山村に不十分であったということによるんではなかろうか。また、工事をいたすことにつきましても、常に相当額の地元負担金に悩まされ、しかも、その負担金たるや一時に支払う。しかも、これを償却するにつきましては相当の年月、短かくて十五年、長きは二十五年という償却年月日をそこに要せられておるのでございます。ことに、個人経営者の場合におきましては、そういうようにして出しました経費を、実際上経費として税制上控除されることがほとんどないようなありさまでございます。このようなことが重なりまして、今日のようなことになったのではないかと思います。もし、現状のまま放置いたしたならば、先ほどから皆さんのお話にありましたがごとく、ただでさえ開いております都市と農山村民の所得格差、並びに生活条件の格差が、ますます大きくなりまして、やがては農山村民の激減になるという、重大な結果をこの際一層助長することになるのではないかと考えられる次第でございます。  さらに、別の面から考えますと、現在わが国は、すでに年間四億ドル、それは輸入額の第三位に位置しますが、その四億ドル、邦価に換算いたしまして千五百億円にも達するという外材を輸入いたしています。この数字は、ちょうど国有林の年間の生産高となり、しかも、その石数は千五百万立米と推定いたします。この数字は、ちょうど国有林の一個年の生産高に相当するわけでございます。そのような、莫大な数字でございます。  今この金額のほぼ四年分に当る約十六億ドル、約十六億ドルを林道に投入いたしましたならば、林業生産基盤拡充基金と先ほど申し上げましたが、その活用と相まちまして、国内林道網の密度は、たちまち二倍に急増いたしまして、これによりまして国内材の生産は、たしかに飛躍的に向上するのでないかと思います。その結果は、やがては輸入材に相当する部分の大部分は、加工、輸出に振り向けることができまして、逆に外貨獲得に貢献するところが多いものと信じます。よって、この際林道開発に対しますところの国家投融資、並びにその条件をここに大幅に引き上げていただきまして、外貨事情の好転と、私たち農山村民の生活の向上を期せられんことを切望する次第でございます。  第三に、政府案の第十一条にいわれております経営の近代化についてでございますが、それに関しましては、私といたしましては、特に現在欠けております林業の体系制度の確立と、それから、先ほどから経営規模の拡大とか、いろいろ申されましたが、その一つの方法といたしましても、事業体の法人化等がまず先決要件ではないかと思うのでございます。けれども、現行の税制下におきましては、この二つがとうてい実現不可能になっております。そういうことにするためには、かなりのそこに支障があるわけでございます。これら障害をぜひとも排除するように御努力いただきたいと思うのでございます。  次に、林業は本質的に生産基盤が非常に長期にわたっております。そうして、一生産期間の間に、平均二回の相続というものが普通統計上の常識でございます。そうして、その都度税金支払いのために、経営計画をやむなく破壊せざるを得ない状況でございます。このようなことでは、とうてい林業経営の近代化、経営の健全な発展とか、特に計画的な生産向上というようなことは、望めないと思うのでございます。この点につきまして、何ぶん諸先生方の特別な御配慮をお願い申し上げたいと存じます。  最後に、第四といたしまして仮りに林業生産基盤拡充基金制度の創設、これをお願い申し上げたいと思います。先ほども申し上げましたように、林業は植林から収穫まで、他産業に類を見ない長期を要し、その結果としては、その収入の変動は通例非常に激しいという状態でございます。そのために、林道開発とか、造成などの生産基盤確立を、直接に実行していくということはなかなか困難な状態にございます。この点につきましては、国等にも従来いろいろめんどうを見ていただいておるわけでございますが、私ども経営者は何とか自分たちの力を結集いたしまして、この国の態勢に協力するように参加しなければならないと考えております。そのためには、この際特別基金制度というようなものを創設し、これを立法化していただいてはいかがかと考えておる次第でございます。  この制度を少しく具体的に申し上げますと、この基金は特殊債券を発行いたしまして、立木を売ったときの収入のごく一部をもって、林業経営者にこの林業生産拡大準備金としてこの債券を買い入れさせまして、この資金にも政府において利子補給をした上、低利にして、そのような方々の林道建設とか、造林に利用させたらいかがかと存ずる次第でございます。このような基金制度は今新しいわけではございませんで、聞くところによりますと、スエーデンやフランスというようないわゆる西欧の林業先進国では、程度の差こそあれ、すでにある程度この制度を実行して実績をあげているのでございます。  以上のような点でございまして、何とぞこのような点に鑑みまして、本基本法案を日本の林業全体のため、また、日本の国の生産性をあげるために、また、これに従事しているところの従事者の地位と所得の向上をはかるために、一日も早く皆様御相談の上で、御成立していただきまして、私たちに光明を与えていただくように、特にお願い申し上げます。
  68. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、坂本寿治君。
  69. 坂本寿治君(坂本寿治)

    ○坂本寿治君 主として山村の住民という立場と、働く者の立場から御意見を申し上げたいと思います。  多くの参考人方々もおっしゃられましたけれども山村の振興というものが、国内施策の中で取り上げられております歩合が、今まで非常に少なかった、そういう点から考えますと、林業基本法ができて、その中でいろいろその問題についてもお考えいただいておる、その点では私たち双手をあげて歓迎する気持は一ぱいです。  細部についてはいろいろございますので、逐次申し上げたいと思いますけれども、前提といたしまして、ある県で公団林道ができましたが、その公団林道は住民が以前から利用いたしており、小型乗用車ぐらいなら十分通れる広さを持った道路を拡張して、有料林道にしたわけでございますが、それ以来、急な患者ができて、お医者さんを迎えて来なければならんというようなときにでも、また、配給米を運ぶトラックにも、タクシー代の三分の一に近いような高率な通行料が取られるようになって、多くの住民の的になった。そういう実例がございます。また、ある地域では有料林道ができましたとたんに、その起点に搬出用の索道がクモの巣のように張られた。結局有料林道が無言のうちに抵抗を受けた、ボイコットをされた、そういう実例もございます。限られた例をあげたに過ぎませんですけれども、このような実例が示しております日本の林政の姿勢が、政府がこのたび御提出いただいた林業基本法案に、大体そのままで受け継がれているのではないか、そういうふうに私は考えます。  よく言われるわけですが、塩一カマスと、尾根から尾根まで見渡す限りの山と、昔々御先祖が交換をされた。そういうようなことだとか、借金のカタに強引にむしり取られた、そういった実例が示しておりますように、現在の日本の大山林地主の成立の過程は、はなはだ不明朗なものがあるということが、秋田先生あたりからも言われておりますけれども、そういった人たちの、財産保持だけにきゅうきゅうとして、生産性向上を阻害し、また山林住民の山林業を拒否しておる。そうして、それらの人たちの生活を圧迫しておる。そういった事実にメスを入れることなくして、また、山林住民が安心をして、文化的な生活を享受できるような、そういう態勢、具体的な施策を考えられない限り、人の問題を通じての林業の基本的な振興はあり得ないのではないか、私はそういうふうに考えます。赤城農林大臣は、このたびの林業基本法案の提案に対して、林業労働者山村住民の流出を憂えられております。また、林業従事者の所得の増大をはかることが、安定的な林業発展の方策につながるものであるというふうにも、おっしゃられておるようであります。  法案内容は、労働者福祉には通り一ぺん触れられてはおりますけれども労働力の流出理由の根源を究明して、その基本対策を樹立しようという態度がはなはだ薄いのは、まことに残念でございます。参考人の人選についてでございますけれども、団長から御注意がございましたので質問はできないようでございますが、御承知だと思いますけれども、和歌山県には全国で二番目の全県的な山林労働組合の連合会が、昨年の三月にできました。はじめに五百人ぐらいしかおりませんでしたけれども、現在では千三百人の組織人員によって、だんだんと活発に動いております。この厳然とした事実に目をそむけられて、ほんとうに多くの考える山林労働者の代表を、山林労働者意見を代表する者を参考人として選ぼう、そういう前向きの姿勢が見られなかった。沢本さんが隣りにいらっしゃいますけれども、沢本さん御本人がどうこうという意味ではございませんで、そういう姿勢にまず問題があるのではないか。こういう点は質問できないそうでございますけれども、私たちの立場で今後明らかにしてまいりたい、そういうふうに考えております。  政府案の一条乃至二条のことでございますが、一条では国土の保全のことが、あまり十分に考えられていないのではないか。自由的な考え方で処理されているのではないか。また、荒廃林でありますとか、瘠悪林を国によって積極的に開発しようと、公共利用につとめようと、そういうことについても、もっと積極的にお考え願う必要があるのではないかというふうに考えます。  三条の一号ですが、先ほどからも参考人からの意見がたくさんございましたように、林業は非常に長期を要します。そういう長期を要する特殊な立場にあります林業森林計画については、政府原案では一年毎に国会にいろいろなことを報告するんだ。あとで出てまいりますけれども、そういうことだけではだめだと思います。やはり長期的な計画を立てられて、それを明らかにされる、そういう必要があるのではないかと思います。  第二号の構造対策の問題ですが、機械化や合理化が、いわゆる反社会的な方向で進められている、そういう事実がございます。チエンソーを素材業者の方が買って来られた、十五万円もするものを買って来て、お前に支給するんだから、使わせるんだから、今まで日当千円を出しておったけれども、八百円しか出せない、そういった事業主もございますが、そういうような方向林業の機械化や合理化をもし進めようとするのであれば、それは大きな間違いだ、まさかそんなことは考えておられないでしょうけれども、実例としてそういう考え方をお持ちの方がいらっしゃるんですから、その点についても十分に御配慮いただきたいと思います。また、大山林地主がいわゆるこれも反社会的に経営するのを放置いたしますれば、これもそのこと自体が生産性向上を妨げるし、山村住民福祉その他についても大きなマイナスになるのではないか、そういった意味で、林業構造改革も十分お考えいただきたいと思います。  第六号の林業労働従事する者の養成確保、福祉向上ということでございますけれども、ここで端的に政府案林業労働者が流出してしまって、だんだんとさびしくなってくることを防止しようというふうに考えられていると思うんですが、その点もまた後で十分述べてみたいと思います。  国有林の問題でございますけれども、これは十一条の問題とも絡むわけですが、まず四条の一項、二項の中で、どうも現在盛んに唱えられておりますいわゆる国有林の解放がにおっておるのではないか、そういう疑念が持たれます。国有林の解放、あるいはやむを得ないかも知れません。そのことによって、ほんとうにその付近の地域の住民の方々福祉に、直接につながるものであれば、もちろん結構でございますけれども、しかし、今までの実例は大企業が優先をしてしまっていたり、または、関係の高級官僚のいろいろなうわさの種になった、そういう実例も日本中あちらこちらで聞くわけでございます。そういう点をなくすように、十分に姿勢を正していただきたい。  解放の問題でありますとか、いわゆる立木処分の推進、請負制度の推進、そういったようなことが、直営生産念願をいたしております現地の国有林労働者の心からの願いに反して、強硬に推進されようとしているというふうに私たち聞かされているわけでございますけれども、民主的な労使関係林業の中にも打ち立てなければいけない、国はもちろん、そういったことについて強力な施策を講じられる責任がある筈でございますけれども、そういう施策を進められることが、言い方はおかしいですけれども国有林労働者の雇用の安定などについて、もっと明確にしていただけませんと、どうもおかしいのではないか。いわゆる国有林が赤字だ、赤字だということを言われておりますが、企業的な業務と、行政的な業務との、これは言葉は変てこでございますけれども、いわゆるドンブリ勘定といったものが原因しているのではないか。国有林労働者の犠牲によって、公共的な業務が続けられているのではないか、そういうふうに考えられます。先ほどの立木処分や、請負制度の問題でございますけれども、そういうことを推進されることが、国によって臨時工政策を進めているというふうに見られても、仕方がないのではないかというふうに考えます。  第五条の地方公共団体の問題です。ある県で聞いたことですが、林務当局が県有林を何とかして高く売るのが、県民に対する奉仕であるというふうに言明をされました。労働条件がどうであっても、そのときの県民が、ある地域の人たちが非常に大きな失業の不安にさいなまれておりましても、そういうことを考える前に、少しでも高く売って、少しでも多くの額を県の一般会計ないし特別会計の中に投入することが、県有林の存在理由である、そういうふうに言われました。第五条をそういうような考え方で進められようとするならば、それは全く間違いではないかと、そういうふうに考えます。  先ほど申し上げましたけれども、八条で毎年報告をされることになっておりますが、これと合わせて三十年、五十年という非常に長期間を必要とする林業でございますから、長期的な計画を立て、それも毎年報告されるのと同じように、また、社会党案にありますように、国会に報告するだけでなしに、国会の審議を経る必要があるのではないかと思います。  第九条の林道の開発の問題でございますが、冒頭にも申し上げましたような、ああいうやり方で林道の開設を推進されるのであれば、私たちは、これは反対せざるを得ません。林道が眠っている森林資源を新しく開発する、そういう任務を持っていることは十分にわかりますが。それと合せて、それと同じくらいのウエイトを持った、その付近の山村住民の生活環境向上させる面にも、積極的に貢献される姿勢をとっていただきたい、こういうふうにお願いいたしたいと思います。  十五条の中に出てまいります外材輸入の問題でございますが、先ほどから多くの方々から御発言いただきましたし、また、国会でも生産に対する御質問の中で、今日お見えの半田先生からも、いろいろ御心配があったようでございます。輸入増によって、非常に不安定な産業である林業製材業に大きな影響を与えている、その影響が必ずしもいい影響ではないという事実があることに、はっきりと目を向けていただきたいと思います。そういったことから、今後輸入を進められるならば、輸入を進められなければ、増大する林産物の需用に応えられないという判断が正しいのであれば、輸入計画にあたっては有機的で、弾力的な調整をはかっていただきたいと思います。また、右の問題に関連をいたしまして、輸入を進められるのであれば、日本の林産物の国際的な競争力をまずつくることが必要ではないか、このためにも一部の大山林地主によって占有をせられている、しかもそれが財産保持的に看板のように大事にされている。そういう山林の所有の形、管理の形、そういうところまで考えを及ぼしていただけるように、お願いを申し上げたいと思います。  木材企業の問題ですが、私営でありますと、地方の木材ボスの利益だけが追及される。そういったことで、零細製材業者などから苦情があることが、あちらこちらで聞かされるわけですが、そういったことを除去するためにも、公営の木材市場を開設するということに、踏み切っていただけるように、お願い申し上げたいと思います。  十七条、十八条の問題でございますけれども、第四章では林業従事者を、林業経営に携わる者と、林業労働に携わる者、その二つに分けて取り上げていらっしゃるようですが、第十八条の林業労働に携わる者の問題でございます。ここにいろいろ書いておられますけれども、これだけでは政府も、国会も、また、私たちも心配をいたしております林業労働者山村住民の都会への流出、そういうことが防げないのではないか。もちろん、ここにあげておられますことは大事でございます。しかし、一方行き詰まる封建制、文化的な後進性、広範な意味での労働条件の劣悪さなどを排除して、山村社会環境、生活環境をぜひ改善していただく、そういう林業の範疇だけでなしに、国が総力をあげての、いわゆる奥地山村振興の方策を進められない限り、十八条で企図されることが空文に帰してしまうのではないか、そういうふうに考えます。  私どもの県では、成人式をお盆にやるより仕方がない、そういうところがございます。一月十五日には、どっかへ勤めに出てしまった人が帰って参りません。お正月にも雪がたくさんありますから、帰って参りません。お盆にはそろそろ凉みがてら、お墓参りに帰って参ります。その機会をつかまえて、成人式をやろうじゃないか。奈良県だけでなくてどこにもあるような実態ではないかと思います。  最後に、十八条の社会保障の拡充等の問題でございますけれども、六年前に私たちは失業保険や、そのほかいろいろな問題について、中央に陳情に参りました。健康保険の問題についても陳情いたしました。ところが、当時の厚生大臣にこういうふうにお答えをいただきました。「私の県にも、私の選挙区にも山林があって、林業労働者がたくさんいるはずであるけれども、あなた方みたように失業保険をよこせ、健康保険をよこせ、そういったことを今まで聞いたことはない。どうもおかしいじゃないか。何とか奈良県だけに、せっかく来たんだから、奈良県だけに、あなた方が言われるようなことが適用できるような、そういう方法をあなた方で考えてみたらどうですか。」そういうふうに言われました。六年前の政府のお考え、現在の政府のお考え、その間には大きな開きがあるというふうに確信をいたしまするけれども、もし、そういう開きが六年の間にできてまいっていないのであれば、これははなはだ残念なことだと言わなければならないと思います。  林業団体整備のところでございますが、これは七条とも関連いたしますけれども、先ほど申しましたように、第四章の林業従事者というものを、政府案では林業経営従事する者と、林業労働従事する者、この二つに分けて考えておられるようでございます。その二つを包括して林業従事者と呼んでおられるようでございます。そういうことであれば、第二十条の後段にあります林業に関する団体整備につき、林業に関する団体の中には、当然山林労働者団体である労働組合も包含されるのではないか、そういうことであり、そういったことについても、十分に整備について必要な施策を国が講じていただけるならば、これは非常にありがたいことだと思います。ぜひ、そういうふうにお願いいたしたいと思います。もちろん、私たちは政府や、そのほかから、外からのお手伝いをいただかなくてもいいように、組織の面ではお手伝いをいただかなくてもいいように、一生懸命になっておりますけれども、二十条をそういうふうにはっきりと解釈をせられて、今後山林労組の自主性を真剣にやっていただくならば、これに過ぎることはございません。  昭和三十七年の三月に、森林法の一部改正案が出ましたけれども、そのときの衆議院農林水産委員会から出された付帯決議として、五番目に民有林労働者の安定的確保のため、労働条件の改善、社会保障制度の確立等、その福祉並びに所得の向上をはかること、六番目には、国有林事業の運営にあたっては、直営生産を堅持し、従業員の身分の安定、労働条件の改善に努めること、七番目には、中央及び地方の森林審議会の委員については、広く人材の参加を求めること、森林計画制度の運営を民主的にすること、というのがございまして、当時それを提案された委員の方の御発言によりますと、中央及び地方の森林審議会の委員については、広く人材の参加を求め、森林計画制度の運営を民主化することということについては、たとえば、林業労働者でもって組織されておる団体の代表、あるいは小規模林業経営者の代表等を、現在の審議会の中に全然加えていないような人も、含めるようにしてもらいたいということが、付帯決議として出されておるのであります。  はじめの、民有林労働者の問題、次の国有林労働者の直営生産の堅持による雇用の安定ということにつきましては、すでに触れたとおりでございますが、森林審議会の中にも、中央の林政審議会の中にも、三十七年三月に付帯決議として御確認をいただいたその精神を十分に生かしていただく措置を、一つ講じていただきたいということをお願い申し上げたいとともに、各都道府県の現在の森林審議会が三十七年三月のそういう付帯決議にもかかわらず、何ら改善されないで昔のままになっております。そういうことについても農林水産委員会、国会の方でもはっきりとメスをお入れいただければけっこうでございます。  以上、いろいろな点について申し上げましたけれども、日本の林業が当面しているいろいろの問題の解決には、具体的な点が示されていないだけでなくて、先ほどから触れましたように、かえって後退させる心配もある程度あるように考えます。私は、政府案と民社の方から出されました案は大体同じだと思いますが、社会党から出されております森林基本法案につきましても、私が今申し上げましたような中で、林業新聞その他でも論ぜられておりますように、近似点がたくさんございまして、そういった意味で改めてもらわねばいけない点も出てくるわけでございますが、比較をいたしましたときに、森林基本法案のほうが数等内容においてまさっている、そういうふうに考えます、ということを結論といたしまして、終りたいと思います。
  70. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に、沢本鎌造君。
  71. 沢本鎌造君(沢本鎌造)

    ○沢本鎌造君 いろいろと御意見を承りましたが、一番最後に、今、奈良県の坂本さんの御意見の出されたとおり、私たち労務者は、林業生産のにない手として一方でどうしてもはずすことのできない労務者であります。その労務者の地位向上、生活の安定ということを織り込んでいただいておる法案で、これはまことに期待してやまなかったものでございます。ところが、今こちらで申されたように、法案というものは、どの程度までの、私たちに解釈をしていいもんかということがあったんです。それの第一点として申しますと、私は一協業労務班の代表でございますが、協業労務を行なうにいたしまして、協業労務そのものは、一定の地域内に経済的に引き合うところの数量、それのある地域に所定の加工施設をすることによって、経済的にあるいは技術的に成り立つものでございます。政府は、一番林業施策のうちの盲点であり、一番しにくい、言いかえますれば、足手まといになるという零細所有者の森林が、これが、統計で見ますと、六〇%位あるそうです。人にして。それを、ま、何とかして生かさなかったならば、先ほどから申されたところの林業関係を持つ者の恩典というものは置き去りになる。そのために協業ということを打ち出されておるものと考えますが、その協業の具体的なやり方については、あるいはここで私の駄弁かも知りませんが、政府の力で、損も得もなくやれということであれば、それはゆけるんですけれども、そういうもんじゃない。それは、どうしても先ほど申し上げた技術的にも経済的にも、その間にあってわれわれが労務賃をいただくにしましても、見のがすわけにはいかない。そのためには、まず協業を行なうべき全国林野に対して、その零細あるいは中小所有者のその森林形態、所有形態を、あるいは経営内容をそろえて、これで一つの基盤をつくる。これがなくては協業というものはその上に伸びない。大きな山林家は協業以上に自分で事業をやってございます。協業の政府の目的にされてあるところは、小さい、ちらちらの蓄積も異にする、技術も異にする、経営内容も異にするところに、それを伸ばしていけるというところを望まれているものと思いますが、協業そのものは文字で見るような簡単なわけにはいかないと思います。そこで、この協業をする手段をつくるためには、現在国において行なわれているところの森林計画、これは一つの文書的なものはできあがっております。これを各所有者、経営者がまとめられるような方法、まとめてもらうような、この協業に協力してもらうということを、政府の力で推し進めていただくならば、先ほどから各公述人が申されるように、産業としての林業は長期生産であって、非常に他産業の列に並ぶのに大きな宿命的な、因縁的なものがあるということを私らにしてみましたならば感ずるので、この林業基本法をこしらえていただいたならば、国の一つの山の憲法である以上、この中へその協業の基盤策定についての地区の調整をしていきますことは、国の力でなければできない。長い間でこれをなし遂げてもらって、その間に協業が伸びていくということになったならば、この法案の目的であるところの協業の促進と、ひいては山村民、われわれ労務者の将来切実に生きていくところの道であろうと、こう考えますので、まず基盤調整をしていただき、方法を強力に、施業計画を立てていただきたい。これが一点であります。  その次に、山村の近代化であります。これはまことに言いあらわしの広汎なことばでありまして、近代化とは一体何であるか。まあ、人がなくては何ものも進まない現在の中で、山村民が減っていく。他町村へあるいは工場へ出ていく状態は、近代化が成り立たないからだ、近代化が及んでないからだ。まず大きなウエイトを占めるのは、先ほどから申し上げましたところの所得の格差是正、都市山村の所得格差是正、これさえ進めば山村民の足どめができるかというように普通は考えられますが、この近代化と申します中には、われわれが何の不安もなく、将来の楽しみを持ってその山村に生きていけるようになること、それが近代化であろうと思います。その近代化に所得の格差だけを増大してもろうただけでは、山村にとどまらない。何かそこにも一つ物足らないところが私たち山村におって実際に感ずるのであります。その地域の近代化というものを一つ入れて、衣食住が安心してやられる中で、地域の近代化というものを一枚加えなければ、若い者は出てゆく。女が出ていったら男も出る、嫁さんが来んからおれないというようなかっこうで、後継者がどんどんなくなっていく。われわれの労務者の班のうちに、まだ青少年として将来を頼める者は一人もない。もうしかたなしに山村も事業をやる上においては、賃金をまず格差がないような方法にしてどうやらこうやらついていって、その足どめをしているわけですが、その足どめに困っているのは世帯根性を持った中年層、老年層が中心です。ある労務班においても六―七〇%までは中老年者でございます。そんな関係から申しますと、この近代化に対して、ただ所得の増大だけではとどまらないということを考えまして、まず近代化に協力をしていただきたい。  しからばその近代化と申しますと、これは抽象的に何になるか、まあ、いろいろ専門的に言われることばにはどんなことばがあるか知りませんが、私らの感ずるのは、まず都会、あるいは相当人の寄っている部落、山村がとびとびして大きな声でわめいても隣りに聞こえんようなところに住んでいる住民、その間におけるその淋しさというものを除き、そうして、一人前の部落、あるいは楽しみをともにできるというような地域の中で住めることが、近代化の生活だ、こう簡単に考えておりますが、それには山村を出て来なければ、そういうことが今はできないというわけではない。まず第一点としましては、交通の便をはかってもらって、都市あるいは集団部落に住んで、この山村には仕事だけをしに行く、これができるためには、まず道路の拡充、運搬機関の整備というようなものを何とか強力に進められて、山奥におっても下におるんと同じ気分だ。まさかの時には半時間、一時間で医者にも手を握ってもらえるんだというような所で住む、ある催しものがあるとすれば、今晩山の仕事を終わってちょっと行ってこようかというような便もあれば、それは道のできたことによって、その奥まで近代化の血筋が通ることになる、とこう考えますので、近代化の一つとしては、道路を拡充させて、その道路の上を走る交通機関の整備、それをしかもあまり料金の要るようなことではつまらない。まず相当のセーブをいたしまして、町の人にはただで見せるんなら、こちらは出ていく交通費くらいはただにしても見せてもらえるような、あまり料金の要らないそういう機関をこしらえてやっていただきたい。それは近代化に伴う、近代化ということの、山村を都市に引きつけるような役目を果たすと考えるのでございます。  第二点としましては、山で寄り合って話なんですが、山村労働力の老化ということは、もうそういうむずかしいことは言わないでもよい、どうも山の仕事ももうわれわれ一代きりだなあ、これからは若い者は出て行くし、だれも嫁の来てがないから、町へ行って嫁もろうて、また苦労したら田舎へ来るだろう位なことを言うて、もう子供を出しとくんだというようなことで、親も承知、子も承知で、だんだん田舎は衰弱していっております。その残ったものの話では、何と言ってもわれわれは今後こうして働ける間は働いて労賃をもらっていくが、働けなくなったらどうなるんだろう。憲法に保障されたことに対しての疑いも生じてくるわけです。ところが、そのうちにはまず今は社会保障制度というものが非常に進めてくれてあるから、われわれも働ける間は働いて、働けなくなったら何とか政府で食えるような方法にしてくれようかいと、まあ、最後はさびしい話になるわけです。まず私たちとしましては、そんな中で生きているものでございまして、この基本法並びに基本法を肉づけるところの諸法規の完成、最悪の場合は社会保障制度でもって生きてゆける方法くらいが最後の詰と考えておるほどのまことにあわれな実態でございます。どうか道路の整備と、その上を走る車の管理、しかもそれがあまり金のかからない、今も申しました、公団道路はせっかくできたが、これはどうも一般向きの利用にならないというような国の策ではもってのほかでないか、かように考えておるわけでございます。私たちはこんなに申しても、これには相当金がかかる。バスを運転しても相当に費用がかかるんだから、君らは賃金を払わないかんというようなことになれば、そこに近代化に結びついて大きな隘路が出てくる、こう考えます。  で、第三点としましては、賃金でございます。いや賃金はどうでもよい、近代化がある山村は衰微しない、とこう申しますが、やはり賃金です。その賃金、これが今の事務化された木材界の中で、木材の企業者のおかげでわれわれは生きている。その生きているわれわれが、木材が外材のために非常な不安を感じ、場合によっては、大事にしておる親方がたたみそうだ、あるいは縮小しそうなというようなことを耳にするたびに、まことに遺憾に思うのでございます。で、この外材に対しては、なるほど日本の国内生産材が国内の需給の均衡にこたえられないから、外材が入れられることであり、まことにけっこうなことであると思いますが、一面、われわれ林業企業者も考えていただきたい。外材が入るまでに、日本独自のひとり相場で、木材がほかの生産品に比べて非常な率でもって高騰した。それにうちょうてんになったところに外材がきて、だんだん横ばい、下売りというようなかっこうになってきているので、その自由化になって、およそ世界のレベルの売価に落ちつくものと考えるのでございます。その世界相場の材木価格の中で、われわれの賃金を考えてもらうのには、多少いろいろな企業利益などのことを考えていただいて、われわれにその尻をもってくるようなことのないように、賃金に都市と均衡の取れないことのないように、していただきたい。それは私たちがどちらにそのことを申し上げてよいのかそれはわかりませんが、およそ関税をかけて外材を圧迫するとか、あるいは国内生産材を増産し、あるいは林業生産性を高める施策と相まって、外材に対抗できるように、本案が通る暁にはなるとは思いますけれども、とりあえず外材の中にあって内地材が安いから私たちの賃金が上げられないんだ、もうおれとこの製材工場はやめるんだ、……というようなことから失業が目の前にぶら下ってくるようなことは、一番命取りに考え、恐怖を感じておるものでございます。そういう中で、外材で引き合わんのだからと言って下げられて、そんなら、それで働いておられるんかというとそうではありません。一定の賃金がなければ、所得がなければ、われわれ労務者は飢えるわけです。まことにやっかいな立場に追い込まれるんじゃないかということが、木材価格の変動に非常に恐怖を感じておるわけでございます。  ちょっと、間へはさみまして申し上げましたが、その近代化の中に、労働者の安定生活、その中に、今の保障制度よりもう一つお願いしたいことは、失業保険です、今、奈良県の坂本さんのお話では、奈良県では強力にこれを進めておられるように聞きました。かねてこのことを聞いた私たちは、去年の十一月に、本県の農山村の中堅青年層の研修会が県において催されました。道場で一週間立てこもりの研修を受けたわけです。そのときに、林政課長、知事を囲んでいろいろ話したところが、質問のときに、何とか質問をまとめて見よということでまとめたときに、「林業労務者の失業保険というものは、これはどうなるものか」と言って質問をしました。ところが、それには、失業保険法の第八条の一項とかで、「その他の事業」になって、「申請すれば、これは被保険者になれるんだ」、こういうお話でございました。まことに法規そのものはできてあってありがたいんですけれども、申請をして入れてもらうというまでにはどういうことをしたらいいのか、そして、県下にそれの加入者、それに入る者はどれほどあるかと聞いてみましたところが、指折るほどしかないわけでございます。これではどうもならないわけです。われわれはせっかく失業保険法という法がありまして、その中に入れりゃ入れられるワクが少しすいてある。その中に入れてもらうのに申請をする方法がないものか、先進の奈良県は相当積極的にやっているらしいから、林政課長さん一つそれに骨折って、本県の林業労務者のために、どうか一つ骨を折ってください、ということをお願いして、その係員が出てきてああやこうやという相談も一、二回受けましたが、まだそれに対する回答はきてございません。それというのも林業労務者は、何かとその仕事の内容がそれに入れにくいといいますか、まあ絶対入れられない、植林事業なんかも、植栽なんかもあるらしいけれども、その他の事業のほうに造林なんかも入るんじゃないかと思いますし。詳しいことは専門の人におまかせするといたしまして、われわれ労務者といたしましては、何も考えずに、そういうある法律を、それに恩典を受けさしてもらいたいということをただ一言つけ加えて、社会地域の近代化の、一つの安定した生活をするための骨になるように、この失業保険をわれわれに浴びせてくれるような法案をつくるようなことにしてもらいたい。これは奈良県だけということではない、和歌山県にも現にその声がある、あるが、まだ聞いてもらえないという実情にございます。まことに残念に思います。力説していただきました坂本さんに感謝いたします。  それから、以上は申し上げましたとおりでございますが、今後、国会でこの最初に申し上げました林業基本法というものの施業計画、これは、国有林は、私かつて国有林のことを少し教えてもらいましたが、国有林は、自分の土地で自分が計画を立てて自分が経営するのだから、まず経営は私らから見れば、少ない和歌山県の国有林でございますが、うまくやってくれておると思っているわけです。国有林労務者はけっこうなもんだ、それには嫁があるかもわからん、というほどです。ところが民有林はその所有形態はまことにさきほど申し上げましたとおり区々でありまして、この施業基本計画が、さきほど申し上げましたように基盤ができておるということは、民有林の国有林に見ならうところの施業期間に相通じ、ひいては、国土の保全と、山村住民にも相通ずるということになるということでございますので、この近代化に伴うこの地盤ならしは、全般の林業の振興に通ずることと思います。また山村も近代化をし、山村の振興がおのずと副産的にその中に生まれてくることを期待しておるものでございます。これが国の立法によって、具体的に協業班のできる基盤をつくる方法をこしらえてもらうならば、まことに民有林の施業案は統一され、われわれその下に賃金をいただくものの永久の安心した基盤ができる。そこに林業基本法というものに大きな期待をかけておるものでございます。  どうか諸先生方の御努力によりまして、遅きに失する林業基本法をどうか通過させていただいて、山村民、われわれに通ずるところの悩みを解消していただきたいことをお願いして公述を終わらしていただく次第であります。
  72. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 以上で御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  73. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) これより委員から質疑をいたしますが、委員の皆さまに申し上げておきます。ただいままでに私の手元へ質問をしたいという申し入れが七人ございますので、できるだけ質問は簡潔にお願いいたしたいと思います。足鹿君から一つ……。
  74. 足鹿委員(足鹿覺)

    足鹿委員 それでは、先ほど来、参考人の皆さんから貴重な御意見をお聞かせいただきまして、たいへんありがたく拝聴いたしました。実は、皆さんに、こういう機会に、全員からもっと突っ込んだ御意見をさらにお聞かせいただきたいと思うのでありますが、他の委員からもお尋ねがあろうと思いますので、御指名を申し上げまして、たいへん恐縮でありますが、半田良一参考人、横矢参考人、坂本参考人の御三方に私は若干お尋ねを申し上げたいと思います。  半田参考人にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、また、横矢参考人にも同じ趣旨でございますので、御両氏からこもごも御答弁いただきたいのでございますが、今回の林業基本法は、政府及び社会・民社両党からも提案がなされておりまして、ごらんいただいておると思います。まあいずれにいたしましても、宣言立法でありまして、そのもの自体を食うわけにはまいらないことは先ほどの公述によっても明らかであります。つまりこれには関連立法を必要といたすのでありまして、それについて先日来、いろいろと有益な御意見をお聞かせいただいたわけでありますが、最も関連立法として急を要する問題としましては、政府においても、奥地開発道路整備促進法の検討もあり、奥地山村振興法の検討も行なわれておるように聞いておりますし、私ども社会党といたしましても、全部で十七の関連立法を計画予定しておるのであります。細かく申し上げることは避けますが、その中で一番問題になりますのは、半田参考人からお述べになりました、生産性向上の問題に関連をして、土地利用区分による施策推進の問題があろうかと思います。特に、国有林・民有林等の問題との関連が出てまいりまして、いいことはわかっておりますが、なかなか、これを具体的に推進するということについては、問題が多く横たわっておるのでありますが、これについて、特に半田参考人から、具体的な御意見を承ることができましたならば、お聞かせをいただきたいと思います。  それから、労働力不足対策と人づくり対策についての御提案がございましたが、坂本参考人の御意見にもありましたように、労働力の不足対策と人づくり対策との問題は、表裏一体化するものであろうと思うのでありまして、そういう点において、農村においてもなかなか労力不足、一面においては、人づくり問題が難航しておる。山村においてはさらにむずかしい問題だと思うのでありますが、これについても林業のにない手としての人づくり対策に対する御構想がございまして、先ほど若干お触れになられたのでございますが、さらに突っ込んだ御意見がありましたならば、承っておきたいと思います。この二点が半田参考人への私の主としてのお尋ねであります。  それから、横矢参考人に伺いたいのは、特に、価格の安定を強調されました。私どももまったく同感でありますが、今度の政府基本法の構想によりますと、その価格安定のねらいが、やや明確を欠いておる点を御指摘になっておるようであります。私どもも同感であります。つまり、林業生産者としての価格安定は生産費所得補償方式に基づくものを御要望になったようでありますが、さような点について、御算定に対する御意見がございました。ただ単に流通問題だけではこの問題は解決がつかないと思うのであります。これは最近の農畜産物価格が非常に暴落、あるいは動揺して、困っている面がありまして、長期にわたる林業生産物については、特に価格安定の問題は重要かと存じます。その点について、具体的な御意見を承ることができますならばお聞かせをいただきたい。  なお、今後、組織上の問題として、森林組合と農協との調整の問題にお触れになったようでありますが、それは、森林組合の現状は、行政区域ごとに統一合併の方向がまだ出ておらないように私ども承知をいたしております。農協よりもだいぶん遅れているように思いますが、やはり経済力の分散、組織力の散逸を避けて、やはりある程度、規模を拡大していかなければ、役場のすみや、農協の片すみに看板をかけておる森林組合も相当見受けるわけであります。また堂々たる組合も一面にはございますが、やはり、組織力の強化ということが必要であり、組織の分散は好もしくないと思うのであります。そういう面で農協が一方大型化していく上において、どうこれとの調整をお考えになっておりますか、先ほどの御公述に触れておられましたので、その点の御構想を一つ承りたいと思います。  最後に、坂本参考人に伺いますが、全国山林労働組合を代表しての御発言であったように思いますが、全国山林労働組合の組織の現状はどういう現状でございますか。都道府県における組織の現状は特にどうであるか。審議会に対して、昭和三十七年の森林法の一部改正の法律案につきまして、私から、自由民主党、日本社会党、民主社会党の共同提案にかかる附帯決議を提案いたしました際に、先ほど御指摘になりました、「中央及び地方の森林審議会の委員については広く人材を各界に求め、森林計画制度の運営を民主的にすること」という条項を付し、特にこれについては、註釈を加えて、政府当局も了承しておるのであります。ただ問題は、先ほど御指摘になりましたように、全然、これについて、構成メンバーに加えておらないようなお話がございましたが、要求があっても加えておらないのか、また要求がないために、自然にこれが、先ほど御指摘になったような形になっておるのか、今後、これらの点については、附帯決議の実効ということは、行政的に可能な点をわれわれは指摘しているのでありまして、一事が万事でありますので、しかとその実情を承っておきたいと思います。いろいろとお尋ねをいたしたい点がございますが、特に、その点について詳しく、坂本参考人からのお話を聞かしていただければ幸いかと存じます。以上であります。
  75. 半田良一君(半田良一)

    ○半田良一君 ただいま御質問のありました点でありますが、まず第一に、土地利用区分の確定に関する問題でございます。これはきわめて重要でありまするが、まだ、利用区分の科学的根拠に関しましては、研究上進んでいない点がございます。私も明確なる提案を持っておるわけではございませんが、現在の段階におきましては、国全体及びそれぞれの関係地域におきましての農業者及び林業者、そのほかの関係者を包括いたしましての、たとえば、審議会というふうなものを通じまして、そういうけっこうな組織をつくることによりまして、そこで、利用区分に関する方法を策定するというふうなことが考えられるのじゃないかと思います。それ以上の具体的な点に関しましては考えておりません。  それから、第二の人づくりの点でございますが、特に私は、中小企業の認可というものが現在まで林業に関しまして、技術的にある意味ではおくれておった点は認めなければならないと思いますが、近年それが急に林業の高度化の方向に対しましても関心を高め、また経営力をふやしてきておることは事実であると思います。それに関し先ほどもちょっと触れたわけでございますが、林業技術の開発方向、そういうふうな経営に定着したような規格に持っていくという点と合わせまして、技術教育の点も考えなければならないと思いますが、特に人づくりという点に関しましては、ある程度長期的な見通しのもとに、先ほど坂本参考人からお話もございましたが、協業化の方向へのさらに発展がある程度将来にも見通されるということを念頭におきまして、そういうふうな協業化の推進力になり得るような形でそういう教育を進めることが必要ではないかと考えますが、それについての格別な具体的な提案というものは持ってございません。
  76. 谷垣委員(谷垣專一)

    谷垣委員 半田先生にお伺いします。先ほどの技術の開発の問題についてでございますが、私聞き落したのかも知れませんが、経営循環の中に定着する技術の開発という御発言があったかのように思いますが、そのことの意味をもう少しお聞かせ願いたい点と、もう一つは、協業の推進をするあり方について、経営規模と言われましたか、規模の拡大と言われましたか、そういうお話がございました。当然、問題は協業であればそういうことですが、それをもう少し現状の中小の林家の現状に即しつつ、どういうふうなことをしたらその中に含めていけるか、この二点を、先ほどの質問と連関がございますので、お聞きをいたしたい。
  77. 半田良一君(半田良一)

    ○半田良一君 ただいまの第一の点につきましては、私は、農林家の経営循環の中へ定着しているというふうに申し上げたわけでございます。具体的には、中小企業の林家というものは、申すまでもなく、農業の一面においてはかなり営んでおるわけでございます。ところが、従来の林業技術というのは、概して、間断的に収入が入るような形で進められているわけでございます。しかもそういうふうな間断的な作業方向のままで、進歩というものが考えられていたように思うわけでございます。今後の方向といたしましては、特に、農業を一方で営んでいる農林家が林業を担当、林業の重要な担当者であるという点にかんがみまして、農業林業の両面を通じて、労働力が合理的に消化されるような形、それに所得が継続的に獲得されるような形というような技術を考えるべきだというふうに考えているわけでございます。  それから第二の協業の問題につきましては、これは、たとえば社会党の案によるものですが、政府案と違った点かと思いますが、私の感じといたしましては、いわゆる大規模生産の有利性というふうなことを追求することだけのための協業というものは少し先の話になるんじゃないかと考えております。そこで、現在さしあたりの協業化というのは、むしろ土地所有の分散性を克服するというための手段としてこれを推し進めていかなければならないじゃないかと思っております。しかし、たとえば林道経費が経営内に定着して活用されるということは、ある程度技術が進んだ段階になってまいりますと、そのときに、いわゆる大規模の有利なものを少しでも目標にするような意味での協業化というようなことが必要になってくるのではなかろうかと考えております。この点に関しましては、林業基本法が、どの程度の恒久性をもって考えられるかということにも関連してくると思うわけでございますが、比較的近い将来と申しますか、当面の問題といたしましては、私は、土地所有の分散の克服というような点を現実に考えております。
  78. 横矢乾君(横矢乾)

    ○横矢乾君 第一点の価格安定対策のことでございますが、この法案の中に、「価格安定並びに流通及び確保の合理をはかること」、というふうに示されてございます。この中に、われわれが心配するようなことはないのだというふうには考えていいのだとは思いますけれども、実際、今日、林業の近代化と申しますか、財産的に持っている山を、経営者が近代経営をやっていく、産業としての近代化をはかろうとするならば、少なくとも山そのものの収支は、最終的にプラスでなければならないことがたてまえでございます。ましてや零細な山林家に林地を拡大させる、ないしは協業させる、そしてそれに造林をさせ、技術を取り入れて経営をさせていくという最終的な目的は、所得がそこで残るものでなくてはならない。この価格安定というそのことの中に、そうしたものがはっきりと具体的に何か将来にわたって示してもらいたい。ということはこれの価格生産者所得補償方式をもって今日やっておられる。食管法をとやかく申されますけれども、その米自体、農家が安心してつくれるということは何かというと、やはり価格が安定されているということ以外にないと思うのです。今日国が七割を持っておる山林の中で、原材料を自給できるということは国にとっても、個々の林産物というのはきわめて米以上に大きい資源だということも考えられると思います。価格安定対策というものに対する考え方が、もう少し、われわれ山村に住んで、今、高い苗木、高い肥料をやりながらでも、この造林を進めていこうとするものの将来の不安をなくする、胸をたたいて心配するなという価格安定対策というものを出してほしい。これが考えておることでございます。一番問題は、外材が今日のように押しまくってきまして、このことによって山を伐り止めにしておる。労務者は失業しておる。これが本県における山間部の実情でございます。このことをよく先生方も一つ御了解をいただきたいと思います。  それから、第二点の森林組合の問題でございますが、農協が合併を促進して経営規模を拡大している現状で、森林組合もまたともに合併を促進して経営の範囲を拡大しようとして努力をしてございます。しかし、遺憾ながら、森林組合そのものの現在の組合員とのつながり関係等における内容が、拡大をしましても、極端なことを申しますと、ゼロ・プラス・ゼロは幾つ集めてもゼロなんです。そうした形が森林組合の部分に現実にあるわけでございます。そこで、私は極端に申しますと、どこの地域にも森林組合があるなんていうこと自体がおかしいので、むしろ平坦地・都会地等の森林組合などは組合を必要としないんじゃないか。もちろん山村というものを中心にしまして、ここの地帯における森林組合が、農業協同組合のごとく、地域組合としての性格を十分に持って、そして経済活動をし、今後の構造改善事業のにない手になれる力をつけてやって、そしてでき得べくんば――そうした山間地帯においては、農業が十分の二であって、林業が十分の八というウエイトを占めている。所得の中でもそうです。林業労働収入が農外収入のつまり大半を占めておるんです。大部分を占めておる。しかもこれが八対十のごとき状態にあるという現実でございますので、でき得ればそうした地帯の協同組合は、森林協同組合であって、むしろ農業部門、森林部門あわせてやれる協同体であったほうが、将来の林業政策実施の上においても大いに力になるんじゃないか。むしろあらゆる団体が分立分散するという形を私は考えておりません。統合強化をするという考え方で、何か法的にそうしたもののできる段取りをしていただきたい。これが私の言う、いわゆる森林組合を農協などと同じようなやはり事業のやれる基盤にそろえてほしいという理由なんです。そろえれば合併ができる。むしろ、農協と森林組合が一体になった山村地における地域協同組合というものの性格が強化される、こういう考え方でございます。また森林法の中では、東京や北海道に住んでいましても地域内に山林があれば組合員になれる、こうした組合員を含めての組合法ということになりますので、法的の扱いについては十分研究をしていただいて、何かそうした面における森林組合のもう少し組織の強化ができますような方法にお願いをしたい。これが私の考えておることであります。
  79. 坂本寿治君(坂本寿治)

    ○坂本寿治君 足鹿さんの御質問は二点ございますが、詳しく申し上げるようにということでございますけれども、あまり時間をとってはいけないと思いますから、やや、詳しく申し上げます。  まず、全国の、主として民有林のことをおっしゃっておるんだろうと思いますが、山林労働組合の組織の現状についてということでございますけれども、今年の三月一日に徳島市で開きました西日本山林労組の第三回の定期大会で、名称を「全国山林労組」こういうふうに改めました。私はその副議長でございますが、議長は、全林野の大阪地本の山下委員長議長に就任しておられます。なぜ、名称を「全国」というようなことに改めたかという点でございますけれども、ことしの大会までは、民有林では大体奈良県を中心にし、国有林では大阪地本と四国地本の範囲を中心にして、その三つをもってはじめはつくりましたけれども、先ほど申しましたように、和歌山県に昨年の三月に県連ができた。徳島県と高知県にも昨年の六月にできた。それができる前にはもちろん単位組合があったわけでございます。それから九州には今のところまだ手がついておらないわけでございますが、山陰の各県、山陽の各県、兵庫県、三重県というようなところにも単位組合がございまして、そういったものを統轄をいたしておりましたが、その後、明らかにだんだんとなってまいりました点は、静岡県の千頭地方にも民有林の山林労組があって、しかも県の林務当局が非常な関心を寄せておられる、また、静岡大学でもそういった点についていろいろ基本的な調査を進めておられる。そういうことが明らかになってまいりました。長野県にもはっきりとある。それからまたずっと北のほうでございますが、北海道あたりでも民有林の、または道有林の山林に携わる労働者の組織が徐々にではありますけれども組織化されつつあります。秋田県もその例外ではない。というようなことがだんだん明らかになってまいり、しかも私たちとの交流がこれもまた徐々にではありますけれども、進んでまいりましたので、名称を改めて、そういうようなところにも、東日本の地域にも組織の拡大をはかっていきたい、その理由などについては申し上げる必要もないかと思いますが、とにかくそういったことで進めていきたいというようなわけでございます。この中で、はじめにも申し上げましたように、主として民有林労組についての御質問だというような判断をいたしまして、奈良県連の実態から申し上げますが、奈良県連は昭和二十一年に結成をいたしました。当時、吉野地方、吉野地方だけでなくて、たとえば奈良市の春日山の実にあります民有林に携わる人たち、そういう人たちまでも含めまして、一万一千何人という組織でございます。しかしそれはいわゆる戦争中の組織が名前だけをかえて横すべり的に山林労組と改めたというような実態でございまして、旧軍隊の古い物でありますとかそういったものを配給してもらう機関として存在価値が認められていたにすぎないようなものも包括されておりましたので、そういったものも徐々に脱落をいたしまして、現在は千五百ないし千七百人位しかおりませんけれども、まあ正味のところだけ残った。しかもその正味と申しますのは半田先生が先ほどからお触れになりました専業としての山林労務者が主体でございますけれども農業との兼業山林労働者も若干交っている、そういう状態でございます。昭和三十五年の一月九日からまず単位組合の大多数に日雇いの健康保険が適用せられ、去年の四月七日でしたか、国会の幕切れの一、二分前に決めていただいた失業保険法の一部改正によって、日雇労働者に対する給付の特例という形で山林労働者に失業保険法が適用せられましたので、直ちにそれを八月一日から適用しまして、今年の二月一日から受給がはじまりました。ほかの県ではこの二つの問題についてはまだ完全には消化をしていただいていないようでございます。個々の組合の実態につきまして一々申し上げていたんでは時間がかかりますので、これだけに省略いたしておきます。あとで足鹿先生には資料をお渡し申し上げたいと思います。  和歌山県連でございますが、さきほど申し上げましたように、去年の三月にたしか白浜ででしたか結成をいたしました。県御当局の統計によりますと、当時、山林労働者は八千人と称せられておりますけれども、なかなか奈良県よりも地域が広く、また奈良県のように紀の川上流と、熊野川上流の森林地帯が密集しているそういう地形的な条件でなくて、有田川、日高川、古座川というようなあまり大きくない川があり、その上流に林業地帯がある。そこの地帯に参りますにも、コの字型と申しますか、Uの字型に、奥から海岸まで帰ってきて、またさかのぼっていかなければいけないというようなところで、なかなか討究が進みませんですけれども、その中でも竜神村や十津川村の人の組合が大きく古くいろいろの活動をしていただいております。  徳島県と高知県のことでございますが、私もおじゃまいたしました。徳島県の池田町に集まって結成をいたしました。徳島県の県連には八組合、六百五十人。その中では那珂川の上流にあります入谷の六組合が結成をし、そこに五百人ということで主勢力は那珂川上流で占められているような状態でございます。  高知県のほうでは山林労組が散在をいたしております。今のところまだ私の手元にある資料でははっきりとはつかんでおりません。  そのほか、三重県にも交流をいたしまして、奈良県に接する地方に主としてできつつあります。  兵庫県にありますのは山崎営林署の奥のほうの山路町または波賀町、そういった所に組織がございます。  岡山県では、大佐町という所に労農組合という組合がございまして、やっていただいております。  鳥取県のほうでは智頭林業地帯のほうに昨年できました。  愛知県のほうには、さきほど申し上げませんでしたけれども、一番東のほうの端の佐久間に近い所で三百人位の組織が去年の十一月にできました。やや活発な動きを見せており、またそのほかの県下の山林地域に対しても、ここを出発点として呼びかけの手を広げていくことにいたしております。そのほかいろいろございますけれども、とにかく組織についてはそういったことでございますけれども、私たちが知る範囲では、元の西林協の範囲内では岡山県が一番賃金が低いのではないか、一人前の荒くれ男の賃金が五百円だ、そういうことも聞いております。これは、昨年の夏聞いたことでございますけれども、若干上っておりましたにしても、それでもなおかつ私たちが考えると非常にびっくりするようなそういう低賃金で呻吟をしております労働者がおります。その労働者がしかも国有林にもおるということを聞いております。  第二点の、森林審議会のメンバーに加っておらないとぐずぐず言っているけれども、これは要求しないからではないかということでございますが、残念ながらそのとおりでございます。実は、三十七年の三月に足鹿先生にいろいろお骨折りをいただきましたことにつきましては、間接に第五項の民有林労働者の問題、第六項の国有林の施業生産推進する問題、この二つについては、はっきりと付帯決議をつけていただいたということを聞かされましたけれども、第七項の森林審議会そのほかの問題につきましては、参考人としての今日呼び出しを受けるための勉強中にはじめてわかったことでございまして、まことにその点は残念でございますし、申しわけないと思っておりますが、そういうことはありますなれば、私たちも不勉強でございましたけれども、今後はいろいろと直接に早くお教えをいただきたいというふうにお願いをいたしておきます。(笑声)  それから、つけ加えますけれども、そういうことがございました場合には、委員会でせっかくお骨折りをいただいたのでありますから、私たちも負けないように努力をいたしまして、いろいろ県当局とも直ちに交渉をはじめたいと思います。交渉の経過につきましてはあとで報告いたしまして、お骨折りを、御助力をいただくことになろうかとも思いますけれども(笑声)その節はよろしくお願いをいたしたいと思います。
  80. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 時間がありませんから、一、二お尋ねをいたします。これは、どなたかはわかりませんけれども、大体、県の町村長の代表の方、あるいは森林組合の代表の方にお答え願いたいと思います。その一つは、林業というものを企業的に経営する場合の適正規模の問題ですが、和歌山県の場合は、私たちの資料によると、林野の面積が非常に多い、三十五万五千町歩ということになっている。大体、全体の蓄積量は二千四百万立米、一年の成長量が七十一万立米ということになっておるわけですが、この森林面積に比べて非常にその蓄積も少ないし、年間の成長量も低いということは、これは本県の民有林の特徴があるのではないかというふうに考えるわけです。ですからこれは農業と違って直ちに成長量をあげることはできないと思いますが、この林業というものを農業と比較して、自立経営あるいは専業という形で経営するためには、大体この適正規模というものを、どの位の面積において求めた場合において可能であるかということについてお伺いをいたしたい。  第二点は、この農業基本法にも林業関係が出ておるわけですが、今度この森林基本法あるいは林業基本法が審議されておるわけですが、農業林業という関連を、たとえば和歌山県・奈良県等の条件も同じだと思いますが、どういうふうな結びつきにおいて、農業林業が併用された経営というものが行なわれてきておるかということ、この点が第二点です。それは、この和歌山県の農業というのはですね、水田が三万町歩、畑地が二万町歩、この五万町歩を七万六千戸の農家が経営しておるわけです。特にその所有形態は三段歩未満の農家が全体の三〇%、三段歩から五段歩までが二〇%というふうになっているのですが、五段歩以下の農家は全体の半分以上ということになっているのですね、しかも三段歩未満は全体の三〇%以上ということになると、これはまあ純然たる大技術県であるということになるわけでありますが、この零細な農業経営している人たちが林業経営というものにどういうふうな関連を持っておられるかということ、そういう点に対して特徴になるような点を一つお聞かせ願いたいと思います。  それからもう一つは、これはまあ全国的に同様の傾向にあるわけですが、民有林の場合は、大所有者の数が非常に少ないということ、零細所有者の数が非常に多いということになるわけですが、大所有者の場合は、先ほども意見があったとおり、財産保存的な考えで十分この経営面において熱意を発揮しておらないという点があるわけです。ところが零細所有の場合は、林業だけに依存しているがあまり所得があがらんということになる、特にこの際、大所有者の財産保存的な態度というものを、いわゆるその森林といえども国土である以上、国民経済に寄与する方向に活用しなければならない。こういう点を、国家的な立場、あるいは国民経済的な立場から考えた場合に、どういうふうにこれを取り扱ったらよいのか、財産権に対する侵害とかいう問題ではなくして、日本の森林経営林業経営という立場から見た場合に、それらをどのようにお考えになるか、いろいろまだお聞きしたいことがありますが、この三点について森林組合の横矢さん、あるいは町村代表の坂本さんにお聞きしたいと思います。
  81. 横矢乾君(横矢乾)

    ○横矢乾君 お答えいたしますが、きょうは実は、こんな質問がございますとすれば、かなり資料もさげてくればよかったのですが、資料がないので大ざっぱに考えていることを申し上げます。一の経営規模でございますが、本県の林野面積は非常に広いですけれども、御承知のように海岸線の山というものはまったく瘠悪林の地帯で、おそらく林業経営ということは将来国がうんと力を入れて、もう一ぺん何とかしないとこれではほんとうに経営上の山になるかということはむずかしいと思うんです。しかし川奥のいわゆる林業地帯というのは非常にやはり適地であって、紀州林業の本場であると思います。そういう中で、あるところのまあわれわれのような地帯で考えますと、人によって、場所によって、適正規模のつまり自立林家としてやっていくためにどれだけの面積が要るかということについて、いろいろの角度があるかと思うんです。しかし、私は私の村の森林組合員に対してはたえず自分の村なれば三十町歩あればいけるという、それはもちろん植林可能地がそうでございまして、植林不適地というのはきわめて少ないのです。非常に条件がいいし、林地としてはいいのでございますから、三十町歩の面積があれば、それは林家としてやっていける。少なくとも、ほかの産業、農業、一般農業と比べても、所得が、劣らない所得が平均すれば上るとこういう考え方をしております。これはきわめて根拠がある、数字的に何を試算してきたかと、効果的にはどういうことになったかという事柄についてはもう資料は持ってございませんから、簡単にそう申すわけでございますが、そういうことで、たえずまあ進めておるわけです。  それから農業林業との関係でございますが、これも平坦地、海岸地帯における農家が林業というものをあわせておるといいましても、これは山を持っておるのであって、山の所得そのものが農家経営にプラスになるということは、これはなかなか少ないと思う。しかし、一たび奥地に入ります林業地帯というものは、農業収入というものはもうきわめて少ない。極端なことを言えば、もう年間の飯米をつくるのが精一ぱいで、しかもそのつくっている作目は米、裏作はほとんどないという位の地帯が多いのです。そのあとの農家の所得は何によるかというと、シイタケを栽培するとか、最近いろいろなことをして苦労しておりますけれども、主体はやはり林業労働でございます。で、林業労働で植林あるいは撫育、伐採、搬出等の労務をしながら、年間所得を得ておる、で、この人たちの持っておる山林面積というのは、御承知のようにきわめて平均が低いのです。三町ないし五町です。こういうのはまだいいほうでございます。そこで私ども農業というものはこういうことで、結局、五町なり六町なりの零細な山林は、子供の嫁入りとか、入学とか、何かのときに処分をして使う、そのための山だという位で、先ほど先生のお話にございましたが、年々の所得の中で対象になるという経営は十分にできてないわけです。しかしこれからの経営のしかたというものについては協業等、あるいは林地の拡大をしましてですね、せめて農業の中で飯米をつくる、自分の山を自分の労働賃金で生活をしながらでも、やはりそのことが将来差し引き残るという山の経営自体と山の考え方でございまして、長期あるいは低利なやはり林地取得資金、撫育資金、そうしたものが農家兼林家に流れてきたらですね、私はそういう面について希望が持てると思うんです。そしてこれがせめて一農家三十町歩が専業林家であるとして、せめて十町歩位の山を平均に経営させると、そして片一方で五段、六段の農地を持つというような農家ならば、一応安定した経営ができる、またできる公算が今後進んでくると、ま、こういうふうに信じておるわけでございます。  なお、大山林家の問題でございますが、大山林所有者が最近非常に研究をされまして、経営を近代化的にやられておる。労使関係をうまくやっておられることは実情でございます。しかし私どもはなおかつ将来にわたって山間に住んで、山を少なくしか持ってない者に、何とかもう少し山の経営規模を拡大させるためには、そうした大山林家の山の部分をですね、分収林なり、いわゆる地上権の設定なりをしていただいて、それが地元の農家の経営山林としてもっていけるような部分までも、まず考えていただくようなこともお願いをせねばならん。また国有林等についてもこういう点については、払下げあるいは部分林の設定というようなことも考えていただく、その反面先ほど申し上げましたように造林、撫育に要する長期、低利な融資をしていただいて、その融資をもってまあ効率的に育ててゆく、栽培をしていく、つまり林業を、ただ単に今までのじゃなくて肥料もやり、管理もするいわゆる栽培をしていくような林業というものを進めていきたい。そうするためにも長期低利の融資もあわせて考えていただかないと、たとえ部分林を設定してやろうという考え方が出ても、国有林の払い下げが出たとしても、やる農家自体のほうでは、自分の物にするという経営資金、資力というものはもうすでに今日ない、こう申してもよいと思うわけでございます。まあそういうことで、お答えとしては不十分かと思いますので、また他の公述人から述べていただくことにいたします。
  82. 坂本新次郎君(坂本新次郎)

    ○坂本新次郎君 ただいま横矢参考人からのお答えで大体尽きると思うのでございます。この和歌山県に山地の多い町村が四十四カ町村でございます。その町村の全面積のうちで、七〇%以上の山林面積を持っております町村が、二十五ございます。その二十五の町村がいわゆる山村の振興ということで苦労をいたしております。今の御質問の、専業がどの程度あつたらできるかということでございますが、これは、その町村によりまして、三十町歩あればよいというのもありましようし、あるいは、その土地のいかんによりましては二十五町歩でもよいのではないかということも考えられまして、はっきりしたお答えはできかねる次第でございます。しかし、大体申し上げますと、専業のこの山林家というのはごく、県下のどこの町村でも稀な数でございます。おもなものはこの農業林業とを兼ねてやっておりますところの、いわゆるこの兼業農家、兼業林家でございます。ただしかし兼業でありますので、ただ林業農業だけでなくて、そのほかいろいろの副業をやっております。それでどうにかこうにか生活をしのいでいるというような現状でございます。たとえば、シイタケとかあるいは谷川の水を利用してのワサビとか、あるいは、傾斜地を利用しての茶であるとか、あるいは近ごろ、リナロールと申しますが、芳樟というのをやって山地を利用するとかいうようなことをいたしまして、農家林家の収入をはかっていっておるわけでございます。そういうようなことでございますので、近ごろは、この耕地を放棄する者が山奥では多いのでございます。耕作権を放棄するような現状でございます。都市へ都市へと自分の家を捨て、あるいはその耕地を捨てて出ていくというようなことでございまして、この対策といたしましては、これは、梅でもつくろうかというような現状でございます。  それは、近所の人とか、あるいは親類縁者などがこれをやるというような実は離山離村の者が多うございまして、町村の行政をいたしますにつきましても、非常に困っているのが実情でございます。  それから、もう一つは、私、協業のことをさきほどちょっと申し上げたのでございますが、まあ、山林を持っておられる方で、何とかしてこの土地は、この地方に住んでおるところの者たちを何人か一つ貸してやってくれんかというようなことをいたしまして、林野庁の方がお出でくださったときにも私伺ったのでございますが、私の山村におきましてはこの田舎でせっせと働いております者が、少しでも山に植えてつくりたいと言うが、しかし土地がない、というような者のために、何とかしてそういうようなことで、ごく零細なものでも寄ってたかって一つここで植林をしようじゃないかということでありますれば、それに対する何らかの方法を得て、そうして十人なら十人、二十人なら二十人が寄って、そうして協業で植林をし、あるいは下刈りをし、あるいは間伐をするというようなことで、村に落ちつかせるようなことを考えていきたいものだということを申し上げたのでございますが、そういうことで何とかして協業化をし、機械化をし、あるいはこのつくるというようなことによりまして、山村におれるようにしたいということを考えておる次第でございまして、ここで、きめ手はございません。こうして山村をりっぱに開発していくのだ、発展さしていくんだというきめ手がないことを、はなはだ遺憾に存じておる次第でございます。
  83. 森委員(森義視)

    ○森委員 海瀬さんにちょっとお伺いしたいのですが、林道の問題につれて外材の問題の研究をしておられるわけですが、これを読んで見ますとですね、ま、外材がどの程度日本の国家に、貿易などに役割りを果してきておるか。それでその林道をですね、政府の国家資金によってつくり、根本的に生産をあげる、こういうことによって、むしろこちらから輸出するようにしようじゃないか、こういうふうな考え方ですが、御承知のように、今後開放経済体制に向っていく中で、今おっしゃられるような方法だけで、外材との競争ができなければ、もっとその具体的なこの点について何かあればお伺いしたいと思います。
  84. 海瀬栄一郎君(海瀬栄一郎)

    ○海瀬栄一郎君 お答えいたします。私、先ほどことばが足りなかったのですが、現在の日本の道路網を見ましたときに、大体、林道としてやっておりますのは、規格といたしまして、幅員三メートルです。それがいいほうでございますが、二メートル位な林道が多いわけであります。したがいまして、それを利用いたします際に、非常に、林道はありますけれども出材費に非常にかかっている。集材をするにつきましても、機械化が非常にむずかしい。集材しに入れるにつきましても解体をして入れなければならない、そういうような状態になっているわけです。そういうような状態でございまして、もしそれを少なくとも四メートル五〇以上の林道に拡幅いたしましたならば、そこへ大型のトラックが入るわけです。そのトラックが入りましたならば非常にそれが積載量がふえまして、同じ運び出すにつきましても、安く早く運び出されるわけです。それで木材は御存知のように、その小さな道を出してきまして、一回それを落しまして車へ積みますと、石当りどうしても五十円ないし八十円かかってある、しかしそれは小さな道を出てきて今度はバタ公で出して、トラックに積んでいくことになると、もうそれだけで百五、六十円かかります。ですからそういうようにして道路の悪いということは、そういうような副次的な問題でもいろいろ問題がありまするから、単に延長だけではございません。拡幅していただきましたならば、そこで生産性が上がってきます。そしてそれだけ、上がっただけが、地元へももちろんよくなりまするし、外貨の面においても競争力が出てくるんじゃないか、そうしないで今のような林道網のような状態でございましたならば、いつまでたってもこの状態が解消できないんじゃないかということが一点でございます。つまり、日本の今の林地の状況を見ますと、大体、日本の林地は総数で二千五百万町歩ございます。そのうちで人工林として利用可能な林地は、大体千二百万町歩か千三百万町歩だと思います。ところが現在の日本の人工造林は七百万町歩でございます。泣きとうなります。結局おそらくこのあとの所は、相当有利なところがほかにあるわけです。ところが残念ながらそこには林道がないわけです。ことに今のようないい林道はございません。そしてその地帯にありまするのはブナ、いわゆる使えば使える濶葉樹がある。ところが道がないために、その木を伐って出そうといたしましても、非常に高くつきまして、出材費が高くつきまして、逆算方式では山元には何も残らない、むしろ赤字になる状態でございます。そういうような状態でございます。ところが、最近、農林省のほうのどなたでしたか、ソ連のほうに参られまして、日本へ帰ってこられた話では、ソ連におきましては針葉樹が非常に余っておるわけでございますが、向うでは内装材としてのベニヤ、それから修整材というものが非常に不足しておるわけです。で、そういうものはむしろ向うでは濶葉林を要求しておる。で、そういうふうな点から申しましても、日本としては、そういうような潤葉樹を有利に利用いたしまして、輸出材に向け、要るものは要るとしてもまたその反面にそういうもので外貨を獲得してはどうか。ことに濶葉樹は最近のビル建築ブームによりまして、パルプ材としても相当価格さえよければ、歩どまりの点において有利になっておる。問題は結局林道の問題であります。現在ただ単に年間、これははっきりと存じませんが、先生方よく御存知と思いますが、日本の林道に投入される金高は五十億円じゃなかったかと思うんですが、どんなものでしょうか。その位です。おそらく微々たる数字だと私は思うのでございますが、かりにそれを三倍にいたしましても、輸入材が一割でございます。それだけ投入いたしましても、今よりももう少しそういうものが有利に出てくるんじゃないか。やがては、人工造林ができるのじゃないか。そうするとひるがえって考えますれば、やがてそれは日本の国の生産性が上がってくるんじゃないか。そういう何かもう少し先の夢を見たい。そうすれば、そう悲観する必要がないじゃないか。たとえばこれはよその例でございますが、デンマークが、ヒレフスキーホルスタインではあの一級の土地をなくしたわけでございます。そしてその時に非常にデンマークは苦境に立ちました。しかし国民政府が総力をあげまして、貴重な人間の力をもちまして、あのマンメーといわれる人工の土地をつくりました。それは決して肥沃な土地ではございません。そこであのりっぱな農業国として栄えておるわけです。やはりただ単に金をほってはいけない。山は、やはり林地というものは、近代化工場における機械設備だ、工場設備だと思います。これを改良して有利に利用すれば、今までできなかったことも案外できるんじゃないか。それは投資でございます。しかし、やがてはそれはみな生産としてふり返ってくるんじゃないか、というようなことを考えると、いかにも、この四億ドルという外貨がもったいない。それはいろいろなイメージがある。しかし日本の今まで近代化産業で示したあの能力を活用しまして、何とかしてこの外貨を獲得できぬものであるか、ま、こういうふうに思うわけです。以上お答えになってございませんでしたが、どうぞそのような点でございますので、何とぞ先生方の御協力をお願いしたいと思います。
  85. 稲富委員(稲富稜人)

    ○稲富委員 簡単に御答弁を願います。それは、今の御意見の中に、半田参考人の御意見の中にもこの金融の問題が出たのでありますが、林業というものは、ほかの産業より一番この循環度のおそい利用度でございますので、これに対する融資は最も低利であり、長期でなければならないと思いますが、あなたが経験をされましてどの位の長期であり、どの位の低利にしたならば、妥当なこの林業として経営ができるか、こういう点がありましたら一つこの際参考に承りたいと思うのであります。  もう一つのことは、時間がないのでいずれ書面をくださっても結構でありますが、柏木参考人と半田参考人の御意見の中に、木材の流通機構の問題が非常に重要であるというような御意見がありましたが、これを一つ、具体的にどういうことが流通機構にしたらいいかというような案がございましたら、今日はもう時間がないかとも思いますが、何かの機会にお教え願えれば非常に参考になると思いますので、この点を柏木参考人と半田参考人にお聞きしたいと思うのであります。
  86. 半田良一君(半田良一)

    ○半田良一君 お答え申し上げます。はじめの運用資金の利子及び長期短期の問題でございますが、どの程度の低利ということはこれははっきり出せないと思いますが、大体の林業の利回りは、人工林の場合でありますと、まず地価のとり方によって変ってまいりますが、まず六%ないしはその前後というところかと存じます。まあその当たりに考えましてまあ妥当な利回りが、妥当な貸し付け利子がつくれるものだと承るわけです。たとえば、伐調資金の場合の四%というようなものが一つの目安にもなろうかと考えるわけでございます。  それから、これは林業生産期間そのもの、たとえば植栽から主伐に至りますまでは、まあ四十年というふうな数字があがってくるわけでございますが、今後、生産方法が集約化いたしてまいりますならば、たとえば、借り出す方法によっては、かなりの収入をあげていくということも期待されるのではないかと思います。むしろ技術の開発につきましても、そういう方向を考えるべきかと思うわけでありますが、そのように考えてまいりますならば、一応二十年据置という位の線が考えられるのではなかろうか。まあ、今全くその点につきまして十分研究しておるわけではございませんが、そういうふうに考えております次第でございます。  それから流通の問題につきましては、私いま、格別にまとまった案というものを持っておりません。森林組合の協同販売体制と、技術業者の協同組合組織との間での取り引きの合理化という程度のことしかいま考えていないわけでございます。さらに機会がありましたら申し上げることにいたします。
  87. 海瀬栄一郎君(海瀬栄一郎)

    ○海瀬栄一郎君 私に対する御質問は金利と、今半田先生のお答えにもありましたが、貸し付け期間の問題だと思います。この金利の問題というのはこれは日本の近代産業のゆゆしい問題でございますが、ことに林業ではゆゆしい。と申しますのは戦前でございましたか、ウイン大学のワグナー教授がこちらに見えられたが、それで私質問したのでございます。それは何かと申しますと、聞けばウインの辺は林道網が非常に発達しておる、それから撫育管理も相当濃厚にやっている、それに労賃も非常に高いじゃないか、それでよくやってゆけますね、その秘密を教えてください、こう申し上げました。討論をいたしました、話をいたしました。その時に、何と言いましたか、最後に、これは何か原因がある、先生のほうでは金利は幾らでございますか、こういうお話をしたのでございますが、これはいろいろ、場合によっていろいろあるそうでございますが、非常に安いんだそうでございます。場合によっては戦争のあとの乱伐のあとでございましたならば、その復旧のためには無利子であるというふうなことでございました。そういうことでございまして、私ら経営者にとっては安いほどいいのでございますけれども、それにもおのずから程度がございますので、まあ、昔からよく言われますように、やはり三分とよく言われますが、まあその程度、三分程度が一番望ましいのではないか。それ以上の利回りになるかも知れません。ある程度そこには妙味が企業としてなければならない。でまあその程度にしていただければ、かなりの明るい見通しがあるんじゃないかと思うのでございます。  それから次はこの期間の問題でございますが、これは一次林分、二次林分、三次林分によってもちろん違います。一次林分の場合は早く濃密な手入れもいたします。密植いたしましたならば、間伐収入も上ってくる。ところが二次、三次となりますと、報告をごらんいただけたと思いますが、尾鷲の林業のように、もう三次林分になりますと、非常に瘠悪化してまいります。そうして成長度も薄くなりまして、そして間伐収入が上がりますが、二十五年ないし三十年。現状においてはそのような状況でございますので、そういうことを勘案していただきますと、まあ私らが希望をいたしますのは、二十五年ないし三十年の据置だ。そしてそれからやっていく。しかしそれ以上早くなるとすれば、やはり得ですから。要らん金利を払う必要がないんですから、それは自分らのものはぜひにという人について力を入れさしていただく、でその施肥の技術についてもまだ未開拓でございます。こういう面は、特に林業技術というのは農業に比べておくれております。林業の試験研究機関に対する大幅な投資を今後特に皆さま方にお願いをしておきたい。そうして確立した技術のもとに誤りのない方策で、自信をもってやれるような確たる方策を早くきめていただきたいと思っておるわけでございます。この点についてよろしくお願いをいたします。
  88. 赤路委員(赤路友藏)

    赤路委員 一点だけお願いいたします。ここは紀の川をはじめ川がたくさんあるんですが、一つこれ以上川の水を少なくしないようにお願いをいたしたい。おわかり願えると思います、それだけ言えば。
  89. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) これにて質疑は終わりました。以上で本現地調査会を終了いたしますが、今回の派遣議員団を代表いたしまして、一言、ごあいさつを申し上げます。  意見陳述者の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、本案審査に資するところきわめて大なるものがあったと思います。厚くお礼を申し上げます。  またこの会議開催のために、格段の御協力をいただきました和歌山県御当局をはじめ、地元関係団体、大阪営林局の方々に対しましても深甚の謝意を表する次第でございます。  これにて散会いたします。    午後一時五分散会      ――――◇――――― 第二班の現地調査会記録 一、期日及び場所  昭和三十九年六月二日(火)  札幌市(日本生命ビル内会議室) 二、案件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稻富稜人君外一名提出衆法第  四四号) 三、出席者  (1) 派遣委員       団長(農       林水産委       員長)  高見 三郎君(自民党)            小山 長規君( 同 )            池田 清志君( 同 )            加藤 精二君( 同 )            足鹿  覺君(社会党)            角屋堅次郎君( 同 )            東海林 稔君( 同 )            中澤 茂一君( 同 )  (2) その他の農林水産委員            本名  武君(自民党)            永井勝次郎君(社会党)            西村 関一君( 同 )            芳賀  貢君( 同 )            松浦 定義君( 同 )            小平  忠君(民社党)  (3) 政府出席者         農林政務次官  丹羽 兵助君         林野庁林政部長 丸山 文雄君  (4) 意見陳述者         北海道大学農学         部教授     小関 隆祺君         全林野労働組合         北海道評議会議         長       田村  武君         北海道農業協同         組合中央会参事 鈴木 善一君         北海道木材協会         副会長     伊藤 健夫君         北海道森林組合         連合会副会長  櫛田 徳一君         北海道町村会副         会長      小林栄三郎君     ―――――――――――――    午前九時開会
  90. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) それでは、これより現地調査会を開催いたします。  申し合わせによりまして、私がこの会議の座長をつとめますので、よろしくお願いいたします。  まず、私から派遣委員を代表して、一言ごあいさつ申し上げます。  この会議におきましては、内閣提出にかかる林業基本法案社会党所属議員の提出にかかる森林基本法案及び民主社会党所属議員の提出にかかる林業基本法案について、各界の代表者の御意見を伺うことになっておりますが、御意見をお述べいただく前に、この会議の開催の趣旨並びに会議の運営方針等について申し上げておきたいと存じます。  まず、この会議は、先ほど申し上げました三法案の審査の参考にするために衆議院農林水産委員会が成規の手続によって、和歌山県、北海道において、それぞれの現地の御意見をつぶさにお聞きするために開催されるに至ったものであります。  各法律案につきましては、いずれも林業発展に伴い、今後のあるべき方向あるいはその基本施策を明示し、もってわが国林業推進をはかろうとするものでありまして、今国会における重要議案であります。したがいまして、各議案の提出後、本会議における趣旨の説明及び質疑の後、農林水産委員会に付託され、目下鋭意審査中のものであります。  御意見を陳述される方々には、本日は御多忙中のところ、この会議に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。以上の趣旨をおくみ取りくださいまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  それでは、まず本日の出席者を御紹介申し上げます。  私が衆議院農林水産委員長高見三郎でございます。私の右側に小山長規君、本名武君、池田清志君、加藤精二君、自由民主党の委員であります。左側に日本社会党の足鹿覚君、芳賀貢君、中澤茂一君、東海林稔君、角屋堅次郎君、西村関一君、永井勝次郎君、松浦定義君、これが日本社会党の議員の方々であります。なお、右側に民主社会党の小平忠君、  以上でございます。  次に、本日の各界を代表して意見を述べていただく方々を御紹介申し上げます。  山林労務者代表、全林野労働組合北海道評議会議長田村武君、農業代表、北海道農業協同組合中央会参事鈴木善一君、林産代表、北海道木材協会副会長伊藤健夫君、森林代表、北海道森林組合連合会副会長櫛田徳一君、町村長代表、北海道町村会副会長小林栄三郎君、学識経験者として北海道大学教授小関隆祺君、  以上の方々でございます。  次に、出席されております方々にあらかじめ申し上げておきます。  この会議の運営につきましては、会議開催要領を理事会において決定いたし、すべて衆議院における委員会の運営についての議事規則、議事手続に準拠して行なうことにいたしております。  つきましては、議事の整理、秩序の保持等は座長であります私が行うものといたし、傍聴人につきましても、報道の任に当たられる方々、その他の方で特に座長の許可を得た方々のみこの会場にお入りになっておりますわけでございます。傍聴の方々も御了承の上静粛にお願い申し上げます。  なお、念のために申し上げておきますが、発言をされる方々は、必ず座長の許しを得て発言をしていただくようお願いいたします。  また、この会議は説明会ではございませんので、御意見を陳述される方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじあ御承知おきを願います。  次に、会議順序を簡単に申し上げますと、各意見陳述者から順次御意見をお述べいただき、そのあとで委員の側から質疑が行なわれることになろうかと思います。  したがいまして、時間の関係上お一人おおよそ十分程度にお願いをいたします。  また、発言の順序は座長においてきめさせていただきます。  それでは、まず学織経験者として小関隆祺君。小関先生、十分と申し上げましたが、十五分ぐらいになりましてもけっこうでございますからどうぞ……。
  91. 小関隆祺君(小関隆祺)

    ○小関隆祺君 時間があまりございませんので、簡単に御意見だけ申し上げたいと思います。  お手元に意見が配付されておると思いますけれども、まず一番最初に、林業基本問題という問題の設定の仕方ということで、この基本法との関連についてお話ししたいと思います。  私は、林業の基本的な問題は何かということについては、実はまだ十分わかっていないのではないかという感じを持っております。これは私だけじゃなくて、私たちのように林業経済の研究をやっている者の中で、これこそ林業の基本問題だというような定説というのはむしろないのじゃないかと思っております。そういう意味で、林業基本法あるいは林業基本法ということばの使い方には若干の疑問を持っております。  たとえば、林業基本問題が数年前に提出されたときに、木材の需給問題というのが非常に問題になりました。そこで、需要はどんどん伸びていく、それにもかかわらず供給がそれに追いつかないというような状態の中で、木材の需給問題を解決することが基本問題ではないかという議論が行なわれました。  この点に関連して考えてみますと、確かに国内生産による木材の供給ということは不可能でございますけれども、しかし、外国との開放経済の中へ入ってまいりますと、木材の需給問題というのは、ほんとうに林業の基本問題になるかどうかということになると、少し長期的に見ると、そうではなかったのじゃないか、基本的な問題の一つではあったけれども、それに限られる問題ではなかったという感じが現在いたしております。  たとえば、林業所得という観点から見ましても、確かにいろいろな矛盾がございますけれども林業経営している人間の大部分が農民であるという観点に立って、林業自体でもって農民の所得という問題を十分に解決することができないのじゃないか。そういう観点から言いますと、最初から林業所得問題というのは重大な問題ではあるけれども、日本の林業にとって基本的な問題であったかどうかということについては非常に疑問を持つわけでございます。  そこで、基本問題の取り扱い方でございますけれども、これは、たとえば高度成長経済の中において、国内で木材の供給が十分に行なわれないという日本の高度成長を阻害する要因に林業がなるんじゃないか。したがって、林業生産力を高める必要があるのじゃないかというような観点からの基本問題のとらえ方があるのではないかと思うのです。それはさっきも言いましたように、需給問題に端的にあらわれた問題に言えると思います。  それからもう一つは、林業生産を行なうという人たち、林業従事者ということばで表現されているようでございますけれども、そういう人たちの生活を全体として向上させなければならぬ、所得を高めなければならないという観点からの問題があります。この点から言うと、端的に言うと、木材価格が高いほうがいいということになります。  しかし、もう一つ全体の消費者の立場から考えますと、必ずしも木材の価格が高ければいいという問題ではない。やっぱり安いに越したことはないという問題がございます。ですから、生産者の立場、あるいは消費者の立場、あるいはもっと大きな資本の立場というような観点から考えたときに、基本問題が全体として一致するということは考えられない。むしろ矛盾した存在として出てくるのが当然ではないかというふうに考えております。  したがいまして、私は林業基本問題というものを長期に検討するということは非常に大切だとは思いますけれども、立法の形で基本問題を持ち出させるということは非常にむずかしいというふうに考えております。  また、提案されました三つの法案を読ませていただきまして、私が感じたことは、基本法という名前で出ておりますけれども、実際は現状からそんなに離れていない、現状の矛盾を調整するという性格でございます。でありますけれども、矛盾を調整するという範囲であって、むしろ現状に即した林業の振興政策というものがうたわれてもいいんじゃないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、私は名前にとらわれずにこういう形の振興政策が立法化されるということについては、もちろん賛成の立場でございます。反対する理由はちっともないと思います。  ただ、掲げられている事項は、いずれも目標といいますか、そういうようなものが掲げられておって、これはそういうようなことがうたわれることはたいへんけっこうであるし、今後のいろいろな行政手段を採用する場合に非常に有効な推進力になることは疑いを入れないわけでございますけれども、それにはおのずから限界があるということを考えなければならないと思います。しかし、限界があるから何もやらないでもいいというわけには、もちろんいかないわけですし、基本法ができた以上は、それに見合うような実行手段が十分に用意されなければいけないのじゃないか。法案を読ませていただいた感じでは、たいへんけっこうであるけれども、一体実際は何をやってくれるんだろうというような感じをみんながもつのじゃないかと思います。そういう意味で、法律成立いたしまして、そして実際の段階に入ったときに行政手段がそれに伴うかどうかということのほうがむしろ問題であって、私としては、うたわれた目標に沿って十分な実施手段が、あるいは行政手段が用意されることを、特に要望いたしたいと思うわけでございます。  農業基本法というものも数年前にできておりますけれども農業基本法を読ませていただきましても、私たちたいへんけっこうだと思うのですけれども、実際に農政の中でとられた手段というものはいろいろございますけれども農業基本法が日本農業の構造を根本的に変えたというふうには、実は理解できない。むしろ社会全体の、たとえば、労働力流出というような別な条件が農業をゆり動かしているのであって、そのゆり動かされた農業がその面で農業基本法をつくって調整されているか、消化されているかというと、必ずしも調整されていないのじゃないかというふうに私たちは見ているわけです。そういう観点から、法案成立しない前からこういうことを言うのは何でございますけれども、うたわれたことができるだけ実効のある、効果のある行政措置が伴って施行される、そのことがいまから一番望まれるのではないかというふうに考えておるわけでございます。それが基本問題と基本法に対する全般的な考え方でございます。  それからもう一つ、中へ入るといろいろございますけれども、特に、重点的に二つの点だけ、そこに書いてありますように、林業生産の担い手というものに対する考え方を申し上げます。それからもう一つは、林業資本の生産性、あまり使われないことばのようですけれども、そのことが非常に重要ではないかというふうに私は考えますので、この二点について申し上げたいと思います。  林業生産の担い手でございますけれども、こういうような基本法をつくって、国がそういうことをしなければならない、あるいは政府がいろんな手厚い援助を与えるといたしましても、実際林業生産を行なうのはこれをやる人なんであって、その人たちの自主性の確立こそが一番問題であろうと思うのです。自主性の確立があってこそ、それに対する援助手段が有効になってくるということであって、まるまる基本法に寄りかかって林業経営をやるということは間違いだ、よくなっても悪くなってもみんな政府のせいだ、国のせいだというふうなことがないのが一番大事な問題ではないかと思います。これは抽象的な考え方の問題でございますけれども、具体的に法案の中に入って林業生産の担い手について考慮いたしますと、大規模経営ということと小規模経営というものがどちらが将来の林業の担い手として代表的なものになるか、あるいは選手になるか、そういうような議論がしばしば行なわれているように思います。その点は基本法案の中では若干ぼかされているのではないかと思います。私はぼかしているということについて、いろいろ政治的な配慮があると思いますけれども、ぼかさざるを得ないのがほんとうではないかというふうに考えます。林業は一般に大規模経営に有利であるというふうに考えられております。また、そういう面も確かにあると思うのです。しかし、ほかの産業の生産のように、たとえば大工場で工業製品をつくるように、大規模であればなるほど原価が安くなる、飛躍的に安くなる、非常に能率が高くなるというものではないわけです、林業というものは。で、規模を拡大することによる有利性というものはほかの産業に比べて非常に小さい。そういうことがまず一つ問題になる。もちろん大規模林業は大規模林業として十分特徴を持った経営がされなければならないと思いますし、その方向に進むべきだと思いますけれども、大規模が小規模経営を駆逐してしまうというような考え方は現実問題として成立しないのではないか、そういうふうに考えます。そういう意味で大規模経営とともに小規模の経営、これは家族的な経営、これは家族経営林業ということばで従来言われておりますけれども、そういうような経営はよかれあしかれ非常に長い期間日本林業の中に残存しているのではないか。そうしますと、やはり小規模なら小規模林業の中での有利な運営というものを考えていかなければならぬ。それを大規模林業と小規模林業のウエイトをどっちを高くするかというようなことではなしに、やっぱり、残っているものは見守っていかなければならないのじゃないかと思います。その中で、小規模経営があまりにも零細である場合には非常に能率が悪いし、意味がないのではないか、経営規模を拡大したいという考え方でございます。この点についてはもっともな考え方で、できれば拡大したらいいと思います。しかし、私有財産の独占性というものを認める資本主義社会において、ほかの人の所有のものをおれによこせと簡単にいきませんし、また、伝えられるところの割り引きという形もそう簡単にいくものでもないと思うのです。私としてはそのどちらも軽視してはいけないのじゃないか、そういうふうに考えます。それは林業の総生産を高めるとか、あるいは生産性を高めるというような観点からいっても、私は必ずしも大規模経営が有利だとは思わないし、あるいは大規模が不利だとはもちろん思いませんけれども、決定的な影響は及ぼさないというふうに考えます。  それともう一つは、林業の範囲を離れて林業従事するところの人たちの生活を考えた場合に、社会的な問題として、やはり片一方を切り捨てるというわけにはいかないのじゃないか、その点をはっきりしていただきたい、行政の運営の面ではっきりしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、それと関連いたしまして、森林所有者の非常に多くの人たちが農業と二重にやっている農民でございます。この人たちは農業林業によって一つの独立の家計をもっておりますし、ある程度の所得規模をもっているわけでございます。その場合に農業基本法はどちらかと言いますと、林業をめぐった形、耕種農業と畜産でもって自立農家をつくっていくという動きも出しております。しかし、私は、ある地域、たとえば山村地帯の非常に森林の多いような地帯におきましては、農業構造改善のような考え方の、たとえば作目の一種として林業を考える、樹木を考えるという考え方でもけっこうだと思います。その場合には林業農業に対して従属的な立場を持つわけでございますけれども、そういう経営もあっていいんじゃないか、全面的にそうなるということではなしに、そういう場所もあるし、そういう時期もあるのではないか、そういうものも重要視していただきたいというふうに考えるわけでございます。  それから、同じく担い手に関連いたしまして、素材生産業について若干申し上げたいと思います。  基本法の中では林産業というものと、それから、本来の林業というものについてかなり書いておられますけれども、その間をつなぐところの素材生産業については、林業のほうに含まれていると考えますけれども、あまり積極的なあれができていない。素材生産業については、北海道の場合には素材生産業の専業者というのがほとんどございません。これは、ほとんどが製材工場であるとか、あるいは所有者みずから素材生産するとか、あるいは請負に出してやってるとか、という形で行なわれておりますけれども、私は、素材に関する面では、大規模による有利性というものは十分出てくる、植栽林業、育成林業ではなしに、実際的な林業の面で素材生産について大規模の有利性というものが当然出てくる、あるいは生産の有利性も出てくる、そういう観点から言いまして、これは抹殺すべきではなく、むしろ育てるものではないかというふうに考えております。加工という面と、それから素材生産という問題、たとえば製材業を考えてみてもわかると思いますけれども、非常に違う性質のものでございます。あるいはまた、育林業というものと素材生産もかなり違う性質のものでございます。そういうものは将来は社会的な分業という方向に向って進むだろう、また進むべきであるというふうに考えております。  それから、同じように林業生産の担い手として国有林を考える必要があると思うのですけれども国有林は、農業構造改善あるいは林業構造改善のために活用することがたいへん問題になっておりますけれども、私は、国有林については企業会計制度の原則を採用して現在運営されておりますけれども、これは趣旨そのものとしてたいへんけっこうなんですけれども、その中に、たとえば畜産あるいは保安林というようなものをたいへんたくさんかかえておる。保安林臨時措置法などにおいて保安林の改良をずいぶんやっておりますし、それからみずからも従来から持っております。そういうような公益的な面を負担しておるわけでございます。この点はやはり切り離す、あるいは勘定科目として切り離すことでもけっこうでございますけれども、切り離さなければ国有林としての企業性というものを確立していかないのじゃないか、そういうふうに考えておりますけれども、切り離して林業として確立することが重要だと思います。  それから、ちょっと飛びましたけれども、活用の問題につきましては、私は、一般論として国有林開放を論ずるのは間違いではないかと思っております。それは地域的に、場所的に問題になることである。ある地域、ある場所において、その地域の全体の経済の中で、林業はどういうふうに位置づけられるか、あるいは農業はどういうふうに位置づけられるか、その中で国有林はどういう役割を果すかというような観点からこそ問題にされるべきであって、全国的な観点からは問題にされない。かりに、農業構造改善なり林業構造改善の中に、国有林を開放するとか活用するとかということを全面的に推し進める場合には、片手落ちになるのではないか。と申しますのは、大所有の内地農山村でございますけれども、大面積所有の山がございます。これはある意味では、その地域に行きますと、国有林と同じような性格をもって地元の住民の農業的な利用、あるいは林業的な利用をしている例がございます。  こちらのほうはこれとして、国有林だから簡単に開放できるんだということで着手するのは非常に不合理ではないか。日本全体の林業構造改善問題として、国有林問題は地域的な問題にすぎないというふうに、ちょっと誇張でございますけれども、そういうふうに考えております。もちろん、その範囲の中で農業活用あるいは林業活用を十分なされることは、これは当然だと思います。そういう意味でこの趣旨に反対ではございませんけれども、地域的な問題として、これは軽視するのじゃなく、重要視する必要がある。全国的なだけが問題じゃないのじゃないか、そういうふうに考えております。  それから、ちょっと時間が超過しておるようでございますけれども、最後に、林業資本の生産性ということについて申し上げたいと思います。  これは、いろいろな問題が林業の中にございますけれども林業全体を通じて一番問題なのは、実は林業に投下されている資本が非常に少ない。端的に言いますと、社会全体の資本の量というものが一定しておるわけですけれども、その中で林業のために投下される資本が少ないということが一番大きな問題じゃないか。それは林業の総生産力を高めない原因になっておりますし、それから、生産性を高めることもできない原因になっているというふうに見ているわけです。それは大きな経営も小さな経営もその点では変わらない、対面積当たりの資本の投下量、あるいは労働の投下量というものを計算した場合に、大きいほうが多いか、小さいほうが少ないか、それは必ずしもはっきりしたことはわかりませんし、それから、その中で労働生産性というものがどちらが高いかということは必ずしも証明できないと思います。全体として、やはり大きいのも小さいのもひっくるめて、資本が不足なんだということが非常に重要な問題だというふうに考えます。その原因はいろいろございますけれども、一つは林業に投下された資本の能率が非常に悪いということ、林業生産の一つの基本的な特徴でございますけれども、資本の生産性が低い、そういうことではないか、つまり収益が低いということばで代表してもよろしいと思いますけれども、そういう問題として林業がある。したがって、ほかの産業、ほかの部門に投下される資本が林業のほうに移動してこない。林業自体の中で蓄積される資本も林業の中へ再投下されずに、林業以外のところに流れ出ていく。たとえば山に木を植えるよりもニコニコ投資をしたほうがいいとか、ビルを建てたほうがいいとかいうケースが現に行なわれておる。宅地業者なんかも、ずいぶん山林所有者が山林の中から利益を出して経営しているという人がいるということを聞いております。それは収益性が低いからだということなんです。そういうことが一番問題なわけです。それですから、林業の一番短期的にも長期的にも思うのですけれども、大事な、重要な問題は林業に対して資本が流入してくるような政策をすることが必要である。それがたとえば補助金という形でももちろんけっこうでございますけれども、いろんな形で林業に流入してくるような政策をとる必要がある。そういうふうに考えます。そのあとで、特に林業資本が収益性を高めること、生産性を高めるような社会投資が必要なんじゃないかというふうに考えます。  一例をあげますと、これは一つの例でございますけれども、林道というようなもの、これは林道というものは道路でございまして、森林の中についているだけのものでございます。この道路がもしも公道のような形で、社会投資の形でもって普及していったならば、林業の収益性あるいは林業資本の生産性というのが非常に高まってくることは間違いない。山村の地域振興もございますけれども森林に投下された資本の生産性を飛躍的に高める社会投資ではないかというふうに考えます。これは一つの例でございますが、そういうふうに、私は将来直接投資されるやり方と、資本の収益性を高め、あるいは生産性を高める関接的な投資社会投資としていろんな形で投資がなされる。それが林業基本法ができてきた場合に集中的にとられるべき重要な行政手段、あるいは行政目標ではないかというふうに考えております。(拍手)
  92. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) ありがとうございました。  それでは、次に田村武君。
  93. 田村武君(田村武)

    ○田村武君 私は全林野労働組合の北海道評議会議長として、きょうのこの林業基本法の審議のための現地調査会に参考人として御招聘をいただきまして、林業関係労働者を代表して意見を申し述べる機会を得ましたことを心から感謝申し上げます。  林業基本法を制定し、森林の持つ公益的、経済的意義を具体的に明らかにして、国家百年の大計として林業経営に対する国の施策の大綱を国民の前に明らかにすることは、私たちも多年にわたって提唱してまいったところでございまして、今国会において具体的審議の段階に至りましたことは、私たちのたいへん喜びとするところでございます。  しかしながら、この基本法政府提案の林業基本法案、日本社会党所属の先生方の提案されました森林基本法案、民主社会党所属の先生方の提案されました林業基本法案の三法律案として別個に提案され、御審議に入られているのでありますので、私は北海道の林業従事する労働者としての立場で、以下若干の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  初めに御了承いただきたいわけでありますが、連絡の手違いから、お手元に差し上げてあります陳述要旨、これと私の話の内容が変わります。この点をあらかじめお許しをちょうだいしたいと思います。  まず、私は、基本法において森林の持つ国民生活上の位置づけを明らかにし、これに基づいて森林に対する国の施策の大綱をできるだけ具体的に示されるべきであると考えます。すなわち、森林が国土の保全、国民の保健、及び国民経済において果すべき重要な使命を考えるときに、林業経営の基本理念は、いかにしたら森林の持つ幾多の効用が国民に享受させ得るかということを施策中心としなければならないと考えるのであります。  第二は、森林の持つ公益的機能と経済的機能の調整の点から考えまして、現在の原始的森林所有権に基づく林業経営で、施策目標たる国土の保全、国民保健を中心とする公益的機能と木材の持続的供給など、国民経済上重要な使命を果し得るかというと、それは不可能と考えざるを得ないのであります。  したがって、森林は国が管理し、林業は国営を基本として、国民の福祉林業労働者の生活の安定的向上をはかることと、木材の持続的供給を目的とすべきと考えます。  第三は、国有林の意義と使命を具体的に率直に国民の前に示す必要があると考えます。したがって、基本法の中にこの点をできるだけ詳細に規定すべきだと思います。国有林は本来国民共有の財産であり、その利益は国民すべてが享受できるように運営されなければならないのであります。現在でも森林としての公益的使命はその全部を国有林において背負っていると言っても過言ではないと思います。北海道の場合でも全国有林面積三百九万町歩のうち、保安林として四十八万六千町歩、自然公園等として四十六万八千町歩、実に全面積の三分の一はこれらの用に供せられておるのであります。  しかしながら、一方経済的利用の面からながめますと、決して国民全体の利益に奉仕しているとは言えないと思います。地元民の利用、あるいは地元の公共的利用等にきわめて冷淡であり、木材の売り払い等においては、地元の中小業者等の保護、育成なども制約があり、紙、パルプ等利益にのみ奉仕しているがごとき印象を与えています。このような実情を地元農山村民は肌に感じとっていると思います。したがって、国有林を怨嗟する声も強まり、国有林設定当時の因果関係も合わせまして、東北、南九州等を中心国有林開放の声が非常に大きくなってきたものと考えられます。この問題については、時間の制約等もございますので、省略をさせていただきますけれども、ともあれ、国有林の公益的使命、並びに林業の持つ経済的脆弱性を乗り越えて国民経済発展に寄与すべき重要な国有林の基本的意義を国民の前に明確にすると同時に、国有林経営も国民のこの負託に十分にこたえ得るように体質改善をする必要があると考えております。  第四に、私は、国有林野経営の基本的態度について意見を申し上げたいと思います。  現在、国有林経営国有林野経営規程に準拠しているものでありますが、経営規程によると、経営の目的は国土の保善、その他国民福祉の増進をはかることを旨として、経営の方針は森林基本計画に従い経営推進すべきことが定められております。しかるに、この基本計画は全く財政的裏づけがないのでございまして、一時的な政治、経済情勢の変動等のしわ寄せを受けて無原則的に変更を余儀なくされるのが多々見受けられるのでございます。もちろん、経済変動の中で国有林野事業の経営計画が超然としていられるものではないことは当然とも言えましょうけれども林業の特殊性、特に生産の非常な長期性ということから、他の産業のように、長期の展望に大きな影響を与えずに臨機の措置をとるということは不可能に近いのであります。結局、一時的な変更は、それがきわめて部分的なものであっても、全体的長期計画を根底から破壊する結果になるおそれがあると考えるのであります。したがって、林業の特殊性というものを十分御検討いただきまして、生きている経済の変動あるいは政治情勢の変化によって基本計画を無原則的変更をなし得ないよう、財政的裏づけを含めて基本法において明らかにする必要があると考えるのであります。  なお、国有林野事業の目的を完遂し、公益的機能を果すために、特別に要する経費及び国有林野以外の林業の振興及び地域産業の振興等、林野行政に要する経費などは、国の一般財政資金をもって充当することが必要であると考えます。  第五に、林業労働者の生活の安定と向上について申し上げたいのでございます。  私は、現在日本の全労働者の中で林業労働者ほど恵まれない環境の中で最もきびしい労働従事している者はないと考えます。しかし、これらのほとんどのものが季節雇用であり、賃金は地場賃金という名において、すべてが労働力の需給関係のみで決定されるという全く前近代的な賃金形態というのは、他のいずれの産業にも見られないところでございます。林業を現在の原始的形態から近代産業に脱皮、発展させるためには、何をおいても林業労働者に明るい生活の展望を与え、林業を魅力ある職場にすること以外にないと思います。こういう観点から、私は、林業の中で最も進んでいる、というよりは、進んでいなければならない国営企業である国有林労働者の実態を申し上げたいと思います。  まず、雇用を期間別に見てみますと、いわゆる定員内職員を除きまして、約七万の現場作業員が国有林に雇用されているわけでございますけれども、このうちの通年雇用のいわゆる常用作業員と称する者は一万一千五百、定期作業員という六カ月ないし十一カ月の雇用の者が三万八千五百、このほかに月雇いといって一月更新の雇用期限で六カ月ないしは八カ月の雇用されている者が一万八千三百、八カ月以上の雇用を受けている月雇いの作業員が四千二百、四カ月以上六カ月未満の者が一万一千、三カ月以下のものが五千、合計七万、こういうような内容でありまして、国有林野事業の実質的な担い手である現場の基幹作業員のほとんどが、このような不安定な他産業における臨時工的雇用であるということがわかっていただけると思うのでございます。  次に、この人たちの賃金について申し上げますと、主要職種の昭和三十八年四月から十二月までの全国平均について調べてみますと、造林手が一日七百十三円、育苗手、苗をつくる人でありますが、四百十六円、土工が七百三十二円、炊事手四百九十六円、集材手千百三十九円、集材機運転手八百五十円、こういう状態であります。これを月収に換算してみますと、土工で月一万七千五百円、育苗手においては一万一千円程度にしかなりません。他産業においては、中小企業といえども中学卒の初任給は一万円を越えるというような現状のもとで、この実態を見るときに全く矛盾とする以外にないと思うわけであります。こういうような実態では、いかに純朴な林業労働者といえども職場に魅力を感じて勤労意欲に燃えるというわけにいきかねると思うのであります。私たちはこのような状態を改善し、人間としての人並みの生活を要求して努力してまいったのでございますけれども、進歩は遅々として牛の歩みにも及ばないのが現状であります。  しかも、林野庁当局においては、こういう時代の趨勢に逆行して、労働条件の切り下げや請負事業の積極的導入などますます職場を不安におとしいれるような動きが顕著にあらわれてきているということは、これまた重要な問題であります。この基本法の中には林業従事者福祉向上ということを大きく取り上げられているようでございますけれども、私たちはさらに明確な表現を期待をいたしますと同時に、関連法案として日本社会党所属議員の方から提案をされております国有林労働者の雇用安定に関する法律案の並行審議を特にお願い申し上げたいわけでございます。最も進んでいるべきはずの国有林労働者にしてこのような状態でありますから、全く組織化されていない公有林、私有林労働者労働条件については推して知るべきでありましょう。さらに、私有林等の林業労働者には失業保険の適用すら除外されております。何とぞ御出席の諸先生方の御努力を賜わりまして、一番条件の悪い者がいつでも損をして泣き寝入れをしなければならない、こういう状態をぜひとも改善していただきたいと存じます。  六番目に労働に関する諸法律の完全適用についてお願い申し上げます。  失業保険については、すでに申し上げましたが、私たち労働者の命を守るというために制定されておりました労働基準法においても、私たち林業労働者には基準法のその骨格であります労働時間と休日、休暇の規定を適用除外としておるのであります。このことは、基準法制定当時の状況、現在の林業技術的革新あるいは時代の進歩等々、林業労働者をこれらの労働基準法のほんとうの中心的部分を適用除外する何の理由が存在するでありましょう。私たちは、林業を真に近代産業に脱皮させるための安全管理の面を含めて労働基準法の完全適用について、早急に結論を出していただきたいと存じます。  なお、労働賃金の中間搾取を禁じた職業安定法の規定につきましても、原始的形態をとどめております林業の雇用関係の中にまだまだ根深く温存していることも見逃すことができません。世間周知のことでありながら、黙認されているのが現状であります。これらの諸点の改善、あわせて林業の近代的労務管理、近代的労使関係確立の一日も早からんことをこいねがうわけでございます。  以上、私は、林業労働者立場から、基本法に対する期待と意見を申し述べましたが、三案についていろいろと検討させていただきまして、社会党の提案をしております森林基本法が私たちの期待に一番こたえてくれるものと考えられます。したがって、この社会党案を中心にいたしまして、林業労働者の生活の安定、向上を出発点として、林業が国民全体の福祉向上を約束し得る近代的経営基盤確立する施策の大綱を明らかにし、私たちの危惧を払拭してくださいますよう諸先生方の慎重な御審議をお願いいたしまして、私の意見の陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  94. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 鈴木さん、どうぞ。
  95. 鈴木善一君(鈴木善一)

    ○鈴木善一君 私は、農業経営関連において意見を申し上げます。  最初に総体的な意見を申し上げまして、最後に五点ほど具体的な問題を申し上げます。  農業構造改善事業進展に伴いまして、経営規模の拡大のホープとして国有林野の開放、活用の促進に対する農民の要望が全国的に高まっております。本道におきましても、国有林野が全地域の四〇%にも及ぶ三百九万ヘクタールに達していることもあって、これが開放、活用促進に対してはとりわけ強い要望を持っております。国におきましても、昨年次官通達をもって農業構造改善のための国有林の活用に関する方針を明らかにしたが、この通達は、国有財産及び国有林野法などの規制もあって、国有林農業的に活用することについてあまりにも制約が多過ぎるのであります。このため、現在国会に提出され、本日ここに提示された林業基本法案内容については、われわれとしてもきわめて重大な関心を持たざるを得ないのであります。もとより、この法案林業の基本的な生産促進をはかることを目的とするものでありますが、本道における林業経営者は十三万五千名であります。でありますが、林業の専業経営者は、現在三百十一名にすぎません。すべて農山村地帯における農業経営者が兼業の形で行なわれているのが実態であります。林業生産振興と農家経済の安定とは密接不可分の関係にあります。しかも、わが国産業の伸張をはかるため、農業構造の中で畜産部門を高度成長させることが要求されておりますが、特に本道といたしましては、酪農の振興が最大の急務であって、酪農経営において飼養の多頭化とともに、飼料の需給の安定と合理化が生産性向上の大きな条件であります。このにめ、国有林等を農地または草地として一そうの高度活用をはかる必要があります。  このように、特に本道においては林業生産農業生産は密接不可分の関係もあり、林地の利用促進にあっては、農林双方の生産振興をはかるという観点から高度活用を進めるという配慮を十分はかられたいのであります。本法案におきましても、このような点を十分配慮願いたいのであります。また酪農生産振興上、農業協同組合または農業生産法人などによる牧野経営の必要あることにかんがみ、本法案にこのことについても配慮をいただきたいのであります。  また、これら次官通達にしても、この林業基本法案にいたしましても、林野の活用をはかることについて、単に利用地域圏を設定することに基調を置いておりますが、主要収益圏を設定するのみでは、真に林野の農地または草地の高度利用は期しがたいのでありまて。したがって、前述の内容を強く取り入れることが困難な場合には、次の諸事項を内容とする農業者の国有林野活用に関する立法措置確立いたしまして、林業生産振興と農用地拡大の相互調整考慮し、これを的確に運用することを強く要望いたしたいのであります。  第一点に、国有林野を農用地の造成、農業経営安定のための林地としての利用、及び地方公共団体が公用地造成の用に供する場合には積極的に国有林の林地をこれに開放し、利用してみることであります。また、開放した国有林野については、その利用目的に反しないよう適当な管理方式を考慮願いたいのであります。  第二点は、開放促進に伴う調査、測量などの必要経費に対する予算上の措置、売り渡し代金の返済についての資金的な措置について考慮願いたいのであります。なお、森林資源培養のために実施する民有林の造成について、長期低利資金融通の措置を十分配慮願いたいのであります。  第三点は、国有林の売り払いまたはその利用について、国土の保全上必要なものを除くほか、当該地方における農業生産法人、その他地方住民を構成員とする農業生産の共同組織、農業協同組合に売り払いまたは利用が適用するよう措置を講ぜられたいのであります。  第四点は、農業構造改善の必要上、道有林並びに民有林を提供する場合において、その代替地の必要ある場合には、これを国有林から提供できるよう規定を設けてほしいのであります。  最後に、政府の付属機関として林政審議会を設置し、法律の施行に関する重要事項を調査、審議し、所管大臣の諮問に応ずるとともに、審議会の構成の中に農林関係団体の代表を入れた構成とするようお願いしたいのであります。  きわめて簡単でありますが、以上で意見を終わります。(拍手)
  96. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 伊藤健夫君。
  97. 伊藤健夫君(伊藤健夫)

    ○伊藤健夫君 私は、木材関係立場から、若干意見を申し述べさせていただきたいと思います。  最初に、目下の急迫した林業事情からいたしまして、基本法の必要性を痛感しているものでございます。この法案林業振興に対してきわめて重要な法案でございますので、他に優先して御審議をいただき、本国会において成立されますことをお願いいたす者でございます。  意見の第一点といたしましては、法案における林業の範囲の明確化の問題でございます。従来の資源政策基調とした林業政策を不十分として、新たな角度から産業としての林業の振興のために、それぞれ基本法が出されたのであります。このような産業政策への転換の原因は主として大きく変化した木材事情にあるのでありまして、林業生産性を拡大し、増大し、他産業との格差を是正することが大きなねらいであります。この法案の趣旨には全く私は同感であります。法案には生産政策と需給及び価格の安定、流通、加工に関しましてそれぞれ取り上げられておりますが、法案から受ける感じは、林業の範囲に林産物の加工、流通等の業態が包含されているという点が不明確のように受け取られます。この点を審議の過程におきまして十分に御審議をいただきまして、明確にしていただきたいと存ずるのでございます。林業を経済事業として振興するためには、林業生産林産物の流通を重要な柱として、林業を担当する事業を総合して基本方策を講ずることが肝要であります。それゆえ、林業の範囲は、林業の種苗の育成から森林育成、木材の伐出、林産物の加工、流通等の状態に至るまで、それぞれ事業が密接に関連して有機的に一環をなすことにその特性があるのであります。従来の資源育成に重点を置かれました政策のみでは林業が産業としての真の力強い進展が見られなかつたのは、このような広い意味での林業を対象とすることに不明確な点があったのもその一原因ではなかったかと考えます。  第二点は、林業行政の強化刷新の問題であります。木材業界はそのほとんどが中小企業者であります。また、業界は諸種の悪条件のもとに打開すべき幾多の問題と真剣に取り組み、林業の一環としての安定、発展に努力をしておりますが、国がこれまで木材業に対し見るべき発展策、助成策を取った事例があったでございましょうか、また、どれだけの国の予算措置がされたでありましょうか、ほとんど皆無に近いのではないかと思います。昨年林業信用基金が創設され、保証制度が発足されたのでありますが、民間出資は予期以上の出資を見たのであります。これを見ましても、木材業界がいかに国の施策を待望しているかがわかると存ずるのであります。これまでの木材関係は行政の谷間にあるとか、行政の孤児であるとかいわれております。今回の基本法成立を機に林野行政の中に林産行政の本然の姿を明確にし、強化刷新することが、今日わが国が当面しておりますむずかしい林業事情を解決する道であると存ずるのであります。  第三点は、北海道の木材事情と国有林とに関連する事項であります。本道の木材林産業の特徴といたしましては、その原料の大部分が国有林、道有林の供給に依存しております。供給量は今後漸減の傾向にございます。また業界の構造は造材、製材、パルプ、合板、坑木、繊維板等の多様の業種があり、しかも、企業規模が大中小存在し、いわゆる複雑構造を呈しております。これをいかに調和し、ともに振興するかが問題でございます。そのうちでも、特に製材業に関しましては、工場数、施設ともに多く、原料不足のため、原木入手の過当競争をいたずらに繰り返し、その他の悪条件のため、日増しに経営状態が悪化の傾向を呈し、それぞれ経営の不安にさらされている現状でございます。製材工場の長期安定方向については、特に業界自体でも委員会を設け、工場の整備、近代化に対する方策を検討いたしております。業界自体も真剣でありますが、国、道の施策に待つ面も多いのであります。このような実情でありまして、転換期にあります本道の木材業界は、今次の基本法の制定により関連して施策される措置に大きな期待を寄せているのであります。  次に、当面施策を要する問題点につき、その項目を申し上げます。  第一は、木材生産事業の合理化であります。  第二は、木材需給の調整。  第三は、木材価格の安定。  第四は、木材流通の改善。  第五は、木材金融制度の確立。  第六は、経営の改善、近代化。  第七は、輸送の円滑化。  第八は、木材高度加工に対する試験、研究機関の拡充。  第九は、労務の確保、労務災害の排除、防除、技術者の養成訓練機関の設置。  第十は、林産物輸出の振興。  第十一は、外材輸入、木材団地計画の促進。  第十二は、木材規格の簡単化と検査の民営移行への検討。  第十三は、木材団体強化とその助成策。 等でございます。詳しいことは時間の関係上省略いたしますが、幾多の問題を含み、この林業基本法による関連した施策を待望いたす次第でございます。  なお、国有林関連する事項につき二、三申し述べ、御検討をいただきたいと思います。  その一つは、経済的に経営する国有林野は、当然今次の基本法案の趣旨によって運営されると思うのでありますが、経済林を主とした企業経営する面の業務は公社等の特殊法人に移行し、生産性向上と能率化の形態を検討することが必要な時期ではないかと考えます。  第二は、木材の需給と価格の安定のための役割りは、本道の場合は国有林の機能を十分発揮すれば、きわめて効果的な結果が期待できるのであります、これらに対し経営方針を明確にし、弾力的な措置をとるようにされたいのであります。  第三は、国有林森林資源の育成事業は一段と積極的措置をとるべきものと思います。国有林が木材原料の供給源として果たす役割りはきわめて大きいわけでありますが、近年は供給の漸減の傾向にございます。これは過去の大水害による資源の喪失のための結果もありますが、北方の土地利用からも森林の合理的経営はきわめて適合していることは、世界の北方諸国の現実がこれを示しております。この際、当面の経営収支にあまり拘泥せず、森林資源の維持、培養、造成には積極的な投資を行ない、将来完全に原料供給源となることを期待するのでございます。  第四は、国有林野整備活用の問題でございますが、最近、国有林野の開放が各地で叫ばれております。国土の高度利用の上から必要な国有林野整備活用することに異議のあるものではございません。しかし、過去の本道における林野開放による開拓地の造成や林野整理の結果を見ますと、広大な未利用牧野の原始状態が残された例がきわめて多いのであります。今後は十分慎重を期し、前轍を踏まぬことが肝要と考えます。  第四点は、木材関係団体法の制定に関することでございます。林業を経済事業として発展させるためには、当然木材関係団体整備強化をはかることが肝要でございます。現在、協同組合がありますが、真にその活動の実績をあげている組合は、残念ながら少ない現状でございます。とは言え、孤立した単独企業の発展には限度があると思います。どうしても同業種の協同体による企業活動により大きく産業としての力を発揮して、他産業との格差を是正し、経済のにない手になるには、その業種の実情と円滑に適合し、かつ近代感覚を持った団体の組織とその育成助成策が必要でございます。林業団体法を今回の基本法関連法として制定すべきであると考えるものでございます。この団体中心として諸政策推進することにり、林業は産業としての伸展を具現し、森林組合と相関連して、農業、水産業、畜産業とともに国の基幹産業となるものと信ずるものでございます。  第五点は、林道の積極的開設促進の問題でございます。申すまでもなく、林道というものの拡充完備は林業の前提条件であります。もちろん、林地資源の完全搬出をいたしまして、原料の供給源を補うことが、利用面で刻下の急務ではありますが、現在はきわめて多目的効用となっております。したがいまして、国家の積極的な投資が必要でございます。林業政策の最重要基本政策として取り上げていただきたいと存ずるのでございます。  以上、簡単に申しましたが、繰り返し本基本法の制定を優先的にお取り上げいただきますことを再度お願い申し上げまして、私のつたない意見を終わらせていただきます。(拍子)
  98. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 次に櫛田徳一君。
  99. 櫛田徳一君(櫛田徳一)

    ○櫛田徳一君 私は北海道森林組合連合会の意見を申し述べたいと存じます。  これまでのわが国林業は、森林法一本によって規定し、運営されてまいったのでありますが、森林法は、国土保全、水源涵養保育等、森林の公共公益性を重視し、森林計画も主として資源政策の観点から立案された面が強く、いわゆる森林というものを対象とした法律で、林業立場に立った、経済政策視点を置いた、いわば人を対象とした法律とは言えなかったと思うのでございます。しかるに、林業はその固有の性格とも言うべき生産の長期性や、林業経営の多くは零細な規模であり、また一般に生産基盤がきわめて脆弱でございまして、他産業に比べ著しく不利な条件に置かれております。最近の国民経済の目ざましい発展により飛躍的に増大した木材需要に対応できないばかりでなく、開放経済体制下における外材輸入のインパクトと農山村からの労働力の流出、生産の諸資材の高騰等生産をめぐる大きな情勢の変化によりまして、林業者経営意欲が非常に低下してまいりまして、造林面積のごときは全般に減退の傾向にあるのでありまして、このままでは林業の正常な発展は期しがたい現況となってまいったことは、皆さますでに御承知のとおりであります。  そこで、森林組合系統におきましては、昭和三十四年の農林漁業基本問題調査会の発足当初から、従来とられてきた資源政策推進するのでは十分でなく、今日の産業、経済、社会構造の一大変革に即応した産業としての林業確立及び林業従事者の所得等地位向上を目途とした基本政策の新しい目標を示すところの基本法制定が刻下の急務であることを、政府に対ししばしば要請するとともに、関係団体と相提携いたしまして世論の喚起につとめてまいったのであります。そして、われわれはすでに機熟したと見ました昨年の十月に、第七回森林組合全国大会におきまして林業基本対策確立について要望決議を行ない、その後、関係方面と接触を密にして極力系統の意思を反映せしめることに全力を傾けたのでございます。また、さらに一月三十日には、全国都道府県森林組合連合会長会議を開催いたしまして、林業産業的発展を期して、真に林業生産者の立場に立った基本対策確立されたい旨を決議し、関係方面へ強く要望いたしたのであります。また、去る四月十三日には全国森林組合代表者大会を開き、林業は、農業漁業と同様第一次産業としての特質を有しており、まず、育林より素材生産までの一貫した過程に施策基調を置き、林業経営の合理化と安定によって林業従事者の所得が十分確保されるよう具体的新施策考慮するとともに、山村環境整備改善により、広く山村住民福祉向上を期すべきであるとの系統の総意を結集し、それぞれ関係筋へ再度要望いたした次第でございます。  幸いに、このたび当局において林業基本法を策定し、本国会に上程されましたことは、むしろおそきに失したきらいはあったとは言え、全国林業者の待望久しかっただけに、われわれといたしましてまことに欣快にたえないところでありまして、関係各位の御労苦に対し衷心より賛意を表するものであります。  なおまた、日本社会党、民社党でも林業に重大関心を示され、それぞれ独自の基本法案を上程して林業発展に多くの示唆を与えていただきましたことは、まことに感謝にたえない次第であります。しこうして、法案内容を見ますのに、かなりわれわれの要望を取り入れ、産業立法としての性格を打ち出し、構造改善及び生産増強による林業の安定的発展林業従事者の所得を増大して、経済的、社会地位向上に資することを最大目標とし、そのための諸施策を講ずるにあたっては、国及び地方公共団体はその責任において必要な法制上、財政上等の適切な措置を総合的に講じなければならないと規定しており、さらに、国有林野事業についても林業政策上的確な位置づけを行ない、その基本的あり方を明らかにしております。なかなか見るべきものも少なくないと思うのでありますが、ただ全体を通じて見まして、林業関連産業の区分が明確を欠き、何としても、生産中心の焦点がぼけており、価格の安定に対する考え方も不徹底ではっきりしないうらみがあると思うのであります。しかし、ともかく本法案は宣言法でもあり、多少の不安はありますものの、いまやわが林業界のすべてを基本法待ちの姿で、一日の延引も許されない状態でありまして、今後の関係法律の制定の際に十分われわれの意のあるところを御審議願い、特段の配慮がなされることを深く期待いたしまして、このまま本法案が今国会においてぜひとも可決成立しますよう、この際、委員先生方のさらに一段の御努力を本道十三万林業者を代表いたしまして衷心から懇請申し上げ、簡単ではございますが、私の陳述を終わらしていただきます。(拍手)
  100. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) ありがとうございました。  最後に小林栄三郎君。
  101. 小林栄三郎君(小林栄三郎)

    ○小林栄三郎君 私は、北海道町村会を代表いたしまして、町村の立場から先生方に陳情申し上げたいと考えるわけであります。  私たち町村は、経営者の身近におり、その生産のにない手でもあろうかと考える。したがって、経営の合理化と近代的発展に強い関心を持っておるものでございます。町村長の立場といたしましては常に念願いたしておりますことは、地域住民の生活の安定と社会福祉の充実であります。したがいまして、私たちの基本的の念願は、その生産性向上を通じ、地域住民の所得の安定と格差の是正であります。林業についても強くこの点に思いをはせておるのであります。したがって、これが実現を期するのには、どうしても林業構造改善事業を採択いたさなければならないと信ずるのであります。以下、この林業構造改善事業の目的を達成するのに重要と私が考えておりまする数項について陳情申し上げたいと思います。  林業構造改善の問題、これは、新聞紙上等において林業基本法を制定いたし、この基本法と同様に、構造改善事業実施されようとしております。私たち数年前に農業基本法が制定されまして、農業構造改善事業実施をいたされました。しかし、この農業構造改善事業実施において幾多の問題に私たちがぶつかったのであります。したがって、林業基本法が制定されまして、林業構造改善実施するという段階におきましては、これらを参酌をいたしまして、慎重に、効果的に実施すべきことだと私は信ずるのであります。したがいまして、うち、数項申し上げまして、事業実施にあたりまして御配慮を願いたいと思います。  事業の実施にあたりましては、いろいろな林業資金の導入を見ることと存じまするが、事業実施者が資金の重圧によって事業の中断を見、苦しみを増すというようなことであってはならない。いやしくも林業の長期性に見合う合理的な資金を導入するということに思いをいたされたいと思うのであります。  次は、林業は、今日大企業は別でありまするけれども、大体において家族的に、あるいは公共的に実施されてきたということは、先生方承知のとおりであります。したがいまして、事業実施にあたっては、実施者の自主的な計画に基づいて、決して押しつけがましいものであってはならないということでございます。  次は、実施すべき地域というものとそれ以外の地域との関係をよく調査をいたしまして、調和のとれるものでなければなりません。実施される、そのことにおいて他に害を及ぼすようなことであってはならないと考えるのであります。  第四番目に、木材価格の安定でございます。私申し上げるまでもございません。植栽から生産に至るまで、実に数十年と言えば語弊がございますが、二十数年の長きにわたって物心両面にわたって、この生産から苦労をいたしてまいっておるのであります。したがいまして、林業構造改善事業の中には、この価格の安定というものについて十分なお見込みを必要とするものであります。  さて、構造改善につきまして、経営の面につきましていささか申し上げたいと思います。  まず、先ほど申し上げましたように、ほとんどが私有林の零細性を持っておるところのものが多いのであります。したがいまして、能力、労力もまことに少なく、かような経営でありまするがゆえに、これらのものに対しましては、国有林というものを積極的に活用することに思いをいたさなければならぬと思うのであります。すなわち、農地法に基づくところの転用の制限というものを緩和すると同時に、国有林野の部分林に対しまするところの融資の道を講じまして、これら零細な経営者に対しまして、十分なる援助をいただきたい、こう考えております。  次は、生産基盤の問題でございます。まず、林業と申しますれば、林道の開設は最も急務であろうと考えるのであります。この問題につきましては後ほど申しあげることにいたしまして、構造改善にとって重要な問題は、拡大造林にいたしましても、林道小団地にいたしましても、林道、これらに積極的な開発が行なわれますよう、十分な資金導入の措置を講じていただきたいと存ずるものであります。  次は、資本の整備をいたしまして、高度化するという問題であります。大企業は別にいたしまして、現実の小中の企業者は原始的な林業を脱皮することができないでおります。これは、林業機械あるいは林業施設というようなものを導入いたしまして、生産されることに高度化の財政措置を講じていただきたい、かように考えておるのであります。最も遺憾に存じますることは、樹苗の早期の育成でございます。一回植えますと、これが二十年、二十五年をたたなければ生産されたものから所得をあげるということが困難でございます。私は、早期の樹苗を育成いたしままして、すなわち、二十年を十年に短縮する、こういうようなことが私は林業経営を近代化する道であると、かように考えております。国におきましても、わが北海道におきましても、林業技術はだんだん進められておるのでありまするが、いまもってカラマツが一番短期なものであるというような技術であるとするならば、隔靴掻痒の感を有するものであります。これに対しまして、技術的に私はしっかりと御研究を願って、地域住民の所得増大に寄与するようにお願い申し上げたいと思うのであります。  次は、労働力の不足がございます。私は協業を推進したいと考えておるのでございます。協業によりまして、林業の機械化の利用をいたしまして、あるいは改善事業の中にそれを取り入まして機械化をしてこの協業をなさしめるのには、私は森林組合こそが最も大事な機会だと考えておるのであります。しかるに、今日の森林組合はわずかにその経営をたどっておるというような姿にすぎません。かような状態であってはならぬのでありまして、私は、この林業基本法ができ、構造改善をやろうとするならば、協業の推進と同時に、森林組合というものを強化をして、そうして特段の森林組合に対する御配慮をいただきたい、こう思います。これが林業構造改善に対する問題であります。  次は、林道の問題でございます。林道事業の積極的な実施林業生産基盤整備に直接つながるものであり、その果たすべき役割りは私が申し上げるまでもございません。先生方特に御承知のとおりでございます。北海道におきましては、公道、林道ともにその密度は非常に低いのでございます。私は、北海道のために申し上げたいと思いますが、これらの問題は産業格差のための非常な隘路となっております。公道はもちろん、林道においてもそのとおりであります。すなわち、公道について全国平均からながめますならば、一ヘクタールあたり国の平均は二五・九七メートルの公道を持っております。しかるに、北海道は、面積にいたしまして、平均が六・九五メートルの公道しか持っていないということでございます。これを考えてみまするときに、全国の四分の一にすぎないという実情でございます。さらにこの公道というものが平たん地が多くて、山地には少ないということ、いかに山林、森林の事業をやっておる人たちの苦労が多いか、これもまた林道で私は見たいと思いますが、全国平均が三・〇八メートルになっております。ところが、北海道の平均は一・二七メートルであります。そのうちの公有林が一・六九メートル、民有林はたった〇・五メートルにすぎないのであります。いかに本道の林業家がこの林道というものに対して苦労をしておるかということを先生方にお認め願いまして、すなわち、林産生産基盤整備することはもちろんでありまするけれども、林道に対する整備、これらに対するところの融資の道を講じまして、あわせて高率な補助を北海道に対してはお願いをいたし、財政措置をお願いをいたす次第でございます。  次は、公有林の問題でございます。自分が町村長をやっておりますから、公有林のことを申し上げることははなはだ口はばったいのでありますが、しかし、公有林が民有林に対して大きな役割りを持っておるということを御承知を願いたいのであります。北海道の市町村林は二十六万八千ヘクタールございます。民有林百七十万ヘクタールの一六%弱の面積を占めておるものがありますが、現在、公有林は道庁の計画による経営計画を上回るだけの造林実績をあげておるのであります。すなわち、われわれ町村は公有林に対するところの一つのにない手といたしまして、今後の公有林経営については積極的にその近代化をはかって林業の増産に邁進いたしたい、かように考えておるのであります。すなわち、公有林につきましては、林道の融資というものが非常に少ないのでございます。起債を求めようといたしましても、なかなか自治省により押えられ、したがいまして、特別に林業に対するところのワクというものがございません。私は、先生にお願いを申し上げまして、北海道には林業経営をいたしまする町村の起債に対しましては、特別ワクを設けまして、本道林業の発達にお骨折りをいただきたい、かように考えておるわけであります。  次は、国有林の問題であります。重要な構造改善事業の成果を期するためには、国有林の活用を積極的に私は促進しなければならぬと思うのであります。で、林業農業構造改善事業において、市町村の計画に基づいたものは、すべて国有林がこれに協力をして活用するということであります。国有林野については、その市町村を対象として活用をはかる、国有林それ自体ばかりでなく、すなわち、民間の林業でありましても、あるいは公有林でありましても、これらと合わせて国有林経営という問題について私はお考えを願いたいと思うのであります。その一つといたしまして、市町村道と林道に隣接しておる個所におきまして造林地以外の平坦地であるならば、これをすべからく市町村に経営をゆだねる、こういうような考え方が私は至当ではないかと思います。あるいはまた、牧野採草地等に必要な、いわゆる農業構造改善を進めてまいります上に必要な国有林は、すべからく市町村の公有林といたしまして、これをそれぞれの共用林といたすこともよろしいでしょう。制限林といたすこともよろしいでしょうが、ある程度の制限を加えることも、これはやむを得ないといたしましても、真に本道林業の発達をはかろうとするのには、国有林はそこまでお考え願いたいと思うのであります。さらにまた畑用の民有林にかこまれておる国有林は、すべからく権利を放棄する。維持をされておるところのまん中の国有林は、これを市町村にまかしまして経営させるということが、私は非常な大きな役割りになるのではないかと考えておるのであります。もちろん、治山治水対策等についても強化については特段の御配慮をいただきたいのでありますが、大きな面積を持っておる国有林を真に生かしていくということが大事な問題だと、かように考えるわけであります。  以上、林業に対しますところの基本的な私の考え方を申し上げたのでありまするが、町村の立場から、地区住民の考え方から申し上げまするならば、林業に対しまする限り、今日まで立法化されたものがございません。まあ森林法というものがございますけれども、直接われわれに関係するところの法律というものはございません。ここに、私は、すべからく林業の基本的な政策を立てられる上におきまして、この法律をすみやかに立法化されまして、われわれ国民に、林業に対しまするところの恩恵を与えていただきたい。  以上、申し上げまして、時間が長くなりまするから、簡単に、省略さしていただきます。ありがとうございました。(拍子)
  102. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) 以上で御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  103. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) これより委員から質疑をいたします。足鹿覺君
  104. 足鹿委員(足鹿覺)

    足鹿委員 若干の質疑を皆さんにいたしたいのでありますが、他の同僚委員からもそれぞれあろうかと思いますので、私は、主として田村さん、鈴木さん、小関さんに、できれば櫛田さんにもお伺いいたしたいと思います。  今回の林業基本法並びに社会、民社両党から出ております法案、つまり三法案を先刻来御検討いただき、その問題点について、特に皆さんから御指摘いただいたわけでありますが、今回の政府林業基本法案の特徴とでもいいますか、それは農業基本法と比較してみまして、若干趣を異にしております点が二つ三つあると思うのであります。この点について伺いたい。  第一は、政策目標について、林業の総生産の増大を政策目標にうたっております。また、そのことは一体何を意味するのか、私どもまだ十分審議に入っておりませんので、審議の過程を通じて明らかにいたしたいと思っておりますが、たとえば、所得政策の面におきましても、林業従事者の所得の増大をはかるということをいっておるにもかかわらず、農業基本法農業従事者の所得が増大して、他産業従事者と均衡する生活を営むことができることを目途としておると第一条で規定しておるにもかかわりませず、政府林業基本法案は単に所得の増大をはかると規定しておるのみであります。これは、当然、政策目標を明らかにする意味からは農地法と同様な規定が必要ではないかと考えますが、小関さんなり、森連の櫛田さんなり、この点については特に伺っておきたいと思います。  なお、先ほど、櫛田さんはこのまま法案成立を望むという意味の御趣旨の御発言がありましたが、私がいま指摘いたしましたように、相当問題点が政策目標の点についてもあると思うのであります。やはり最大公約数を得て大きく修正を必要とするのではないかと私どもは考えておりますが、その点等についても御所見を承りたい。特にこれに関連をいたしまして、資源立法から産業立法への方向を今度の基本法は持っておるという点は、各参考人から共通して御指摘になりましたが、しからば、林業が産業として成り立つためには、林産物価格の問題が当然出てくると思うのでありますが、主要農畜産物については、不十分ながら米については生産費・所得補償方式があり、また、葉たばこについて適正な収益を得さしめるための価格決定と、国が明確に算定方式を示しておるものもあるのであります。そういう点と比較いたしまして、もし、他産業との所得の均衡、あるいは林業としての所得の増大をはかるとするならば、価格政策というものは林産物等については基本的にどうあるべきかといったような点についても、小関参考人の御意見を承りたいと存ずるのであります。  それから、いま一点御両氏に伺いたいのは、先ほども小関参考人からも御指摘がございましたし、他の方々からもございましたが、関連立法の点であります。本法は、宣言立法であって、関連立法を伴わない限り、そのこと自体が直ちに成果をあげることは困難と言わねばなりません。したがって、政府にも関連法の考えがあり、私ども社会党は十四の関連立法を考えておることは御承知のとおりでありますが、そこで問題になりますのは、現在、山村において発生しております問題、すなわち、山地と他地域との格差、人口流出等の問題は、経済、産業、文化等にわたって、もろもろの原因について生じておる国の全般的な経済政策あるいは福祉政策、あるいは地域振興政策の対象となるべきものであると思われるのであります。  そこで、林業基本法視点として、問題の所在は異りますが、むしろ、地域の総合開発の視点に立つ点が強調されなければならぬという論もあるのであります。私どもはそういう意見を一面持っておりますが、しかしながら、いままで申し上げましたように、林業の振興発展の前提要件としての山村社会環境整備から始まる総合的な山村振興に対する対策が緊要であろうかと思われるのでありますが、その点について、小関及び櫛田両参考人に御所見を承っておきたいと思うのであります。  それから、これは田村参考人と鈴木参考人にお伺いをいたしたいのでありますが、先ほど、国有林のあり方について、両参考人から相異るような御意見が開陳されたように聞きとったのであります。国有林の開放の問題については、ただいまお手元に、衆議院の農林水産委員会調査室からお配りをいたしました資料をごらんいただきますと、三党の、政府及び社会、民社党の比較が出ております。で、政府林業基本法は、「国有林野の所在する地域における林業構造の改善に資するため積極的にその活用を図るようにするものとする。」ときわめて簡単に触れておるだけでありますが、その点については、社会党、民社党の両党の案はもっとこれを掘り下げて規定しておるのであります。たとえば社会党の場合、「国有林野事業の使命の達成に支障を及ぼさない範囲内において、当該地域における林業者林業経営の規模拡大に資するため、その者に国有林野を使用させることによりその活用を図る等必要な施策を講ずるものとする。」法第十条でありますが、こういうように相当明確に規定しておるのであります。そういう点で、相当最近国有林野の開放問題が別な角度からも論じられておりますが、国有林の開放のみをもってしては、国土の高度利用という立場からは、政策としての目的は達成できないと思うのであります。そういう点から、民有林等についてどのようにお考えになっておいでになりますか、特に、鈴木参考人に伺っておきたいのであります。国土の高度利用の観点から、立地条件に応じた利用方法を十分検討して開放すべきであると私どもは考えております。この点は、小関参考人の御意見と大体意見の一致を見ておると思いますが、ただ単に構造改善事業であるというだけのことで売り渡すということでは、これはほんとうの目的は達成できないではないか。特に戦後の国有林の開放の多くが未墾地開放等でずいぶん行なわれましたが、しかし、所期の目的を果たしてどの程度達成したのかという点については、相当疑問があるし、現実にその矛盾は明らかになっておると思うのでありまして、そういう点等について、特に田村参考人の御意見を伺っておきたいと思うのであります。  それから、ついででありますので、先ほど、木材関係は伊藤さんでございますか、伊藤さんの御意見、いろいろと有益な御意見なり、御要望があったように思いますが、木材の加工部面等に対するいろいろな盛りだくさんな御要望がございましたが、木材加工部門で大きな比重を有する製材業は、木材の商品価値を高めるものとしまして、役割りがきわめて大きいことは御指摘のとおりでありまして、製材産業の健全な発展、木材需給及び価格の安定、木材取引の合理化、林業の振興に及ぼすところはきわめて大きいと思います。この点私どもも同感でございます。製材産業の現状は大体が中小企業であり、自己資本も少ない単純作業のために、製材単価に占める原木代の割合が大きい。最近特に原木の値上り、需給の逼迫、それに基づく輸入材の増大というような、いろいろな経営上苦しい問題が出てきておりまして、この点は、林業従事者の所得の安定をはかろうと思えば、いわゆる林産物価格の安定をはからねばならない。原木は高いほどよろしい、しかし、木材加工部門からは原木はできるだけ安いほうがよろしいと、相矛盾したものをこの法案において解決するということは、なかなかこれはむずかしい問題であろうかと思うのでありまして、そういう点について具体的な提案がございますならば、この際お聞かせをいただければ幸いかと思います。  私の伺いたいのは以上でございます。
  105. 小関隆祺君(小関隆祺)

    ○小関隆祺君 私に御質問ありました点、三点だと思うのですが、第一点の林業従事者の所得の問題でございますけれども農業のほうでは、確かに他産業と均衡のとれた所得というものを目標に掲げております。林業の場合、そういうことが載せられなかった理由としては、たとえば、説明書とか新聞に報道されたものとか何とか読みますと、林業従事しておる人たちの多くは農民であって、農業林業とあわせて行なっていると、その場合の林業所得と農業所得が合わさって農家の所得ということになる。そういう意味で、林業でもって他産業との均衡のとれた社会的な水準に達する所得を達成するということは、ひとつうたいにくいのだと、ことばは正確でありませんけれども、そういうようなことが言われておるわけです。私はその点では確かにそうだと思います。ただ、少数でございますけれども林業だけでもって、生計を営んでおる林業家というようなものもあるわけです。そういう人たちについては、当然僕は、やっぱり他産業と均衡のとれたといいますか、社会的な水準の所得が具体的には目標になるんじゃないかというふうに考えます。表現するかどうかは別といたしまして。それから、林業従事者の中に非常に多数の林業労働者が含まれておるわけでございます。この林業労働者についても、専業労働者と兼業労働者とございまして、なかなかむずかしいのでございますけれども、賃金の高さというものはどうやってきめるかという問題がございますけれども、われわれのほうから言いますと、社会的な水準の賃金の高さというものがございます。林業労働者というものはいろいろ種類がございますけれども、たいへん筋肉的に強い労働というものもございますけれども、そういう社会的な水準という、これははっきりいたしませんが、そこまで賃金を与えるような林業経営というものがなされるべきだというのが、具体的に法律実施段階に移したときの目標になるのではないか、兼業労働者の問題はこれは兼業労働者の形でいつまで続くか、それは兼業単独としてなるか、あるいは林業経営者あるいは農業経営者に分化していくかというような、そういう分かれ方があると思うのですけれども、非常に言いにくいのじゃないか、林業だけでやっておるのじゃないわけですから、表現としてはしにくい。しかし、やはり雇用を安定していくということ、林業労働者の場合は、専業労働者はもちろんそうですけれども、兼業の場合は雇用の安定ということが条件になって、その中である水準の賃金を得るような施策が必要でないかというように考えます。  それから第二点の、林産物価格政策でございますけれども、これは大変むずかしいことでございまして、農業のような価格維持政策、あるいは生産費の補償政策というものが林業の場合には大変とりにくいのではないかと考えております。しかし、それ以外の方法、たとえば、これは思いつきかもしれませんけれども、ある機関をこしらえて木材をプールする役割りを果たさせる、高いときには放出し、安いときには買い入れるというような機関があれば、ある程度やれるのじゃないかというふうに考えております。もちろん、そういう価格政策が必要だということは申すまでもないと考えております。自然に放置するわけにはいかないのじゃないかというように考えるわけです。ただ問題なのは、消費者の立場生産者の立場は、これはお米の場合はもちろんそうですけれども、木材の場合も問題になるわけです。そういう場合に、従来やっぱり市場価格から木材の立木の価格が途中の運搬費から逆算される形式でやられております。理論的にある程度必然的なことですけれども、そのために立木生産費を補償しないという問題が出てくると思います。その点についてどの程度の高さになれば補償するかという計算のやり方はいろいろあるでございましょうけれども、なるべく生産費を補償するような高さまで引き上げていく政策というものが、やはり現在の段階では必要でないか。これはただ地代として土地所有者にだけ吸収されるという可能性はございますけれども、その点は別な手段を講じて、林業従事者全体について価格向上というものの恩典が入るようにしたらいいんじゃないかというように思っております。大変具体的にむずかしいことだと思います。そういうようなことでしか考えられないのではないかと思います。  第三点の、山村社会環境整備ということだと思いますけれども、これは私たち基本の立場から、林業生産性が非常に低いから、生産性が高まるような政策をとるべきではないかということを申し上げてきておるのです。そういうことも含めまして、山村という地域社会における経済あるいは社会問題その他いろいろな生活問題について、環境をよくするような具体的な施策というものは必要ではないかと思います。しかし、必要ではないかと思いますけれども、具体的に立法化してやる場合、やはり、さっきも言いましたように、具対策としてはいろいろな問題が法律の中に実際規定として表現することがむずかしいじゃないかと思いますので、行政の運営ということにおそらくゆだねられるのじゃないか、その際に、やっぱり国の財政の大きさ、地方の財政の大きさ、あるいは国民全体の資本の大きさと言ってもいいと思いますけれども、そういうものとの関連で、なかなか山村に対して具体的な施策が浸透しにくいという条件がございますので、やりにくいでしょうけれども、具体的な実体規定をいろいろ法律の中に盛り込むというお話がありました。しかし、何よりも一番大切なのは、山村において林業が収益性の高い産業になるということが必要だと思います。そのために環境整備だということかもしれませんけれども、また、逆に言えば林業生産が高くなれば、山村環境がよくなるということは言えるわけで、生産性を高めるような社会投資が必要でないかと思います。代表的なものには、さっきも申し述べたように林道投資だと思いますが、林道という形にとらわれることなく、国の道路政策として強く進めるべきではないか、このように考えます。
  106. 櫛田徳一君(櫛田徳一)

    ○櫛田徳一君 生産の増大は何を意味するかというようなことでありますが、北海道の民有林を見ますと、生産力を十分発揮していないということが言えるのじゃないかと思いますが、最近の統計によりますと、蓄積でも民有林は一町歩当たり百立方米に満たない。しかし、道有林、国有林は三百ないし四百立方米もある。こういったようなことで、森林の姿がもう正常でない。これを育林操作を効率にやりまして、そして、持てる土地の生産力を十分発揮さすということのために、どうしても国の施策がその方面に向かっていろいろな助成の道を講じてもらって、少なくとも年々収入できる、あるいは二、三年に一回は収穫があがる、こういったような計画的な、しかも資産をふやしていくというやり方でないと、産業として発展していかぬじゃないか、こういうように思うわけです。どうしても、もう少し蓄積を少なくとも国有林や道有林に近いものにまず持っていくという施策をしていただきたいと思います。  それから、山村環境整備ですが、これは、最近のように非常に経済、文化が進んでまいりましたけれども山村には及んでいない。及んでおるのは非常に少ない。したがって、そこに生活する人たちが十分なそういう経済社会の進歩の恩恵を受けていない。それが何によるかというと、北海道の、先ほども指摘されました道路の問題が非常に多いと思うのであります。林業経営をする上からいきましても、道路は人間のからだにたとえれば、血管みたいなものであって、どうしても必要なわけでございますが、その中でも、国道ないしは道道、町村道と続いてずっと一貫した道路の整備が必要で、そういった基幹林道については、少なくとも、動脈に匹敵するものは国ないしは道の全額負担によって道路を開設していただきたい。道路が十分発達しますれば、文化の恩恵にも浴し、それらのことが山村にも及び、環境整備されて、そして安定した生活ができる、また百年の大計である林業のような長期生産にも腰を落ちつけてやれる環境になるのではないか、こういうようなことが考えられるのではないかと思います。その点をよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、価格の問題でございますが、北海道は、特に道有林、国有林が大部分を占めて、ほとんどが独占企業というような姿でありまして、木材相場というものは、この払い下げいかんによって影響されております。それによって維持されておると考えてもいいんじゃないかと思いますが、民有林も非常な影響を受けるわけでございまして、国有林の払い下げにある程度の調節を今後考えてもらわぬと、木材価格が下ったとかあるいは上ったとか、こういったでこぼこだけを直すということでなしに、民有林の企業採算を考えて、国有林、道有林の調節作用を十分機能を発揮していただきたい、その中でも、特に国有林の特別企業会計をしいておって、しかもそれが弾力性が非常に乏しい、観念の収支均衡をはかるのみであるということで、たとえ木材価格が下っても伐採を続けなければならない、また上った場合でもやはり計画どおりの作業を続けていく、こういったようなことでは民有林は非常に影響が大きいのであります。しかも道有林、国有林の量が圧倒的に多いのですから、どうしても民間はそれにゆがめられるということでありまして、これが逆に言えば、内地府県よりも北海道のほうが、消流なんかのそういう需給調節ないしは価格の調節機能を発揮しようと思えば一番しやすい所でありますから、民有林のことも考えまして、そういった政策をとっていただきたい、かように思うわけです。よろしくお願いいたします。
  107. 足鹿委員(足鹿覺)

    足鹿委員 このままの成立を望むというお話ですが、問題点は、いま小関さんからもやはり実体規定を必要とするところは規定すべきであるという御意見がございました。先刻、このまま早期成立を望むということですが、それでよろしいのでございますか。
  108. 櫛田徳一君(櫛田徳一)

    ○櫛田徳一君 実際の具体的な関連法において十分その点を明らかにしていただければいいんじゃないかと思っております。とにかくいま一番われわれが待望しておるのは、この国会にどうしても成立さしていただきたい、あまり多くの希望を持ち出し過ぎて、これで流れるようなことがありますと、これはまたいつのことかと思うので、したがって、多少の不満はがまんして、ひとつどうしても通していただきたい、こういうことでございます。
  109. 鈴木善一君(鈴木善一)

    ○鈴木善一君 私に対する質問は、民有林の関係だけですか。
  110. 足鹿委員(足鹿覺)

    足鹿委員 いや、国有林のあり方と国土の高度利用の観点、農業との関係
  111. 鈴木善一君(鈴木善一)

    ○鈴木善一君 いまの国有林野の払い下げの問題については、国土の保全から最小限のものは残して、それ以外のものは農業構造改善事業のため払い下げをしてほしい。もう一つの関連といたしまして、民有林あるいは公有林の問題についても、その地域における農業構造改善上必要なものは開放してほしい。と申しますのは、北海道の現在の農業経営規模ではどうしても理想的な近代化は困難であろう、当然、経営規模の拡大が迫ってきておるわけであります。そういうような面からそのように考えたいのでございます。国有林、民有林でそのように開放したという場合において必要な措置として、さらにこれらの地帯に対しては、国有林を開放して、やはり林業の育成をやるべきじゃないかと、このように考えております。
  112. 田村武君(田村武)

    ○田村武君 私は、先ほども申し上げましたけれども森林の持つ公益的な機能、さらに経済的な機能というものを、その調和の中で国民全体がその効用を享受するという立場から考えますと、これはどうしても林業というものは、国管国営というものがその究極の目標でなければならない、こういう考え方を持っておるわけであります。したがって、その面からも、現在の国有林開放というような動きについては反対の立場を表明するわけでありますけれども、しかし、ただ単にそういう基本的なことで申し上げておるわけではございません。で、まず、林業を分けまして、一つ、土地生産業、ここだけをとらえてみますと、農業林業というのは基盤を同じくしておる産業と考えざるを得ないと思うのです。そういうことから考えますと、国土の高度利用、こういう点から考えますならば、原始的な土地の所有権、こういうものから離れて、ほんとうに国家的見地、国民の見地から、この国土の利用区分というものを考え直さねばならないということになるのではなかろうかと考えるわけであります。しかしながら、そこには私権というものが存在するわけでありまして、これをいまの社会体制の中で極度に制限をするということは望み得ないことかもしれません。そこで、それでは次善の策として考えてみまして、国の所有する国有林をほんとうに言うところの国有林開放によってその地域住民がその恩恵に浴することができるのであろうかどうか、しかも、そのことが国民全体の目から見て受け入れられるような内容のものであるのかどうかということがこの問題の焦点になると思うわけです。で、そういう点から考えますと、今言われております国有林開放というのは、これは北海道においては、その様相を異にしておるわけでありますが、全国的に一つの運動としていま起っておるものを私ども横からながめて見ますと、非常にこれはそういう国民の福祉を増進する、あるいは国民経済を伸張させるための林業基盤の強化というようなものではなくて、きわめて政治的な立場でそういう問題が論ぜられているような感じがしてならないわけであります。  さて、北海道の状態を見ますと、まず、戦後、自作農の創設特別措置法というものによって緊急開拓が実施されました。その後、国有林整備臨時措置法が出まして、これにより国有林野整備もあり、さらに、町村合併促進法あるいは新市町村建設促進法、こういうような法律によって、それぞれその財源として国有林が町村に開放されるというようなことがあるわけでありますけれども、まず、戦後の緊急開拓によって実施されたものを見てみまして、実は、きょうその詳細について意見として申し上げたいと思ったわけでありますけれども、この点まことに遺憾でございますけれども、こういうものの内容というのが、各関係官庁等に行ってその資料等の提示を求めまして、われわれ一般国民にわからない仕組みになっておるのであります。で、私どもが、自分で見たり、あるいはいろいろのものを見たり、聞いたりして感ずるところでございますと、この戦後の緊急開拓というのは、全く失敗であった。極言するならば、失業者をつくるために行なわれたのだと、こうも言われておるようであります。そういう点で、その詳細を知りたいと思っても、国民はわからない。まことに遺憾だと思います。  ただ、知り得る限りにおいて、いろいろと調査いたしてみましたところ、昭和二十三年から三十三年までの間に開拓用地として取得された面積は七十六万八千町歩程度のようであります。このうち、国有地は四十五万九千町歩ほどでありまして、そのうちの国有林野から所属がえをいたしましたものは、約十二万九千町歩のようであります。こういうことで開拓用地として所属がえということになったわけでありますけれども、その後の入植状況等を見てまいりますと、昭和二十年から三十三年の間に、四万一千六百戸ほどが入植をした。しかしながら、この間、大体三十三年までの間に離農する者も非常に多くて、入植戸数の約三二%に当たる一万三千戸ほどが離農しておる。しかしながら、その定着率というのは六八%程度で、その面から見ると、案外いいようにも見えるわけであります。ところが、三十四年以降現在までに、この状態というものがさらに相当悪化しておる。しかも、定着したとはいえども、定着したように見える開拓農家が、その農家としての経営内容等々は、これはまことにお話にならぬ、いわゆる貧農以下のものというのが多いということも言われておるところであります。しかも、この入植した以外の、そのまま来利用牧地、あるいは荒廃原野として放置されているものも、その面積は非常に広大であるようでありますが、そういう点についても、あまり詳細に私どもが知り得る状態にはならないわけであります。  それから、国有林野整備臨時措置法による整備は、約六万三千町歩のようでありますけれども、これもすでに整備が行なわれて、所有権が町村にいって、その代金すら決済が終わらないうちに、もうすでに山林資本家のほうに所有が移っていったとか、あるいは、直ちにその立ち木だけが切って利用されてしまって、学校になったとか、水道になったとか、こういうような例のほうが非常に多いようであります。いまに至るまで、その町村の固有財産としてのいわゆる機能を十分果たしているというのは、数がきわめて少ないようであります。その面からとらえてみまして、まあ、学校になった、水道になったといってもいいではないか、これはその町村の住民の福祉に直接つながっておる、いいではないか、それはそのとおりだと思います。しかしながら、それは国有林のもつ国家的使命、こういうものをそこなわない程度に行なわれるということであるならば、これはまた別でありますけれども、しかし、そういういわゆる有効に利用し得る国有林を地方公共団体の財源として与えるというようなことが、国有林経営をそこなわないということには私はならないと思うのです。と同時に、そういう地方公共団体に対する財政補てんというのは、国の一般財政計画において十分行なわれるべきものであって、これが国有林野の開放という形でなされるというのは、きわめてごまかしではないか。いつでもこの原始産業である国有林というようなものにしわ寄せがくる。ひいては、国有林に働く労働者の生活がいつまでたっても安定しない、賃金も上がらない、こういう結果になって、悪循環をしておるというように私は考えるわけであります。町村合併促進法、新市町村建設促進法に基づいて処分されたものは、約七万町歩のようであります。これにつきましても、現在に至る売り払った林地の状況というものは、緊急開拓あるいは国有林野整備、こういうようなものにおいて行なわれたものと大差がないものでないかと、このように考えるわけであります。  そこで、北海道における国有林の開拓の問題でありますが、現状を見ればわかりますように、里山には太政官時代に取得されまして、仕組みが決定されました民有の山林がずうっとあるわけであります。これはもうきわめて平たんな飛行場になるような所が広大に連なっておるわけであります。しかも、鉄道沿線から一キロ、二キロというような立地条件の所にこれがずうっとあるわけであります。そこから数キロ、数十キロと離れた奥に国有林がある。その中間が開拓地として昔からかんがいされておるわけであります。ほんとうにクマかシカか、そういうものしかいないような山奥を緊急開拓として国有林を開放する、こういうことで営農というものが成り立つわけがないということは、目に見えておるにかかわらず、行なわれておる。また、いまも行なわれようとするならば、これは全く過去のあやまちというものをいままた繰り返すようなことになるわけでありまして、この点は、ほんとうに慎重に御検討いただかなければならない問題だと思います。  それから、私たちは、何が何でも国有林の開放というようなことに絶対反対という立場をとるものではありません。ほんとうに地域住民が農業構造改善事業等々のために利用し、また活用して、それが地域住民の、ひいては国民全体の利益になるというようなものについて、反対するなんていう考えは毛頭ないのであります。しかしながら、そういう点で考えますならば、現在の国有林野法の中にあります部分林、あるいは共用林野という制度の活用、これこそ、地域農民の福祉を直接向上させることに一番近道だということを信じておるわけであります。
  113. 伊藤健夫君(伊藤健夫)

    ○伊藤健夫君 私に対する御質問は、森林所有者が売り払う価格とそれを買い受ける木材業者との間に、価格に矛盾があるのではないかという問題ではないかと思いますが、木材業、特に、製材業から申せば、製品の価格を十分考慮した原料価格であってほしいというのが希望ではございます。しかし、いろいろ考えまするというと、根本的な考えとしては、やはり、木材の需給のバランスというものをまずしっかりするということが前提でございますし、また、森林所有者側におきましても、幾多の改善する事項があるのではないか。たとえば、林道の問題とか、あるいは公益関係のものをただ単に森林所有者だけの負担にするとか、そういう問題をもっと違う面で負担したらどうかというような面、森林所有者のほうにもいろいろな考え方、あるいはやり方があるのではないかと思います。また、木材業界におきましても、企業を合理化するとか、近代化するとか、いろいろな問題が施策をされなければならぬ。コストの切り下げの問題もあると思います。  要するに、木材業と言い、原料を供給する森林所有者と言い、それだけで産業をやるわけではなくて、私ども考え方としましては、森林所有者も、それを活用する、販売する者も一緒になって、最終需要者である国民に必要な品を適期に適当な安定した価格で供給するという同じ立場に立って仕事をしていくんだ、企業を振興させていくんだという考え方に立っております。したがいまして、今回の基本法におきましても、私たちは、そういうことを考えて、あえて加工あるいは流通の問題もその法案の中に入れていただいて、産業としての振興をともにやっていく。そのことが、結局製材業者であるとか、あるいは森林所有者ということではなくて、国民の福祉と言いますか、経済振興と言いますか、そういうものに役立つのではないか。それを同じ立場でやらなければ、やはりバラバラにやってはいけないのではないか。  しかし、この問題は、そう簡単に片づくものではないと思います。というのは、どの社会にも、やはり経済企業におきましては、一番重要なのは価格問題でございます。とはいえ、これは簡単に解決するものではないと思います。おそらく将来に向かって、価格をどうするかということがお互いに考え方を出し合って、相争うなり、あるいは論争しながら、安定線を見つけていくというのが実情ではないかと思います。  したがいまして、この基本法からいろいろ導き出される施策の中には、やはり両者を入れた価格の審議会が、そういったような、何と申しますか、お互いの意見だけを主張しないで、公正な面から国民の最終需要者の立場も考えた価格が一体どこにあるべきかというようなことを審議する機関等も必要ではないかと思います。そういうことをやることによって、この産業としての大きな意味林業基本法が生きてくるのではないかというような考え方を持っておるのでございまして、木材業界からいえば、一番先に述べましたような点が主張されますけれども、大きく考えますと、やはりそういうことが全体としての林業の振興ではないかというふうに考えますので、御了承を得たいと思います。
  114. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 ただいま関係参考人からそれぞれの立場から、皆さまの御意見を求めております三法案について、貴重なる御意見をお聞かせいただいたわけでありまして、この際、数点についてお伺いいたしたいと思います。  私は、林業政策上の問題というのは、申し上げるまでもなく、日本の場合で言えば、国土の七割を占めておる山の問題をどう国民的な視野から従来の問題があればそれを検討して、さらに国民経済全体の立場から前進させるかということを考えることが必要だと思います。特に開放経済体制の中で木材の需給というものを考えます場合に、残念ながら、今日の状況では、日本の木材需要というものは、相当に上向きであり、それを国内生産では十分カバーできないという現状にあることは御承知のとおりであります。また、田村参考人、その他からも述べられましたように、やはり、山は下流地帯の耕地と違って、治山、治水、こういう単に林業関係者だけでない、一般国民に公共的に非常に影響のある大きな役割りを果たしておる点も、これもやはり忘れてはならないというふうに思います。したがって、林業基本法あるいは森林基本法というものを考えるにあたりましても、やはりいま申しました公共的な意味における山の治山治水、さらに、資源開発あるいは国民福祉というふうな点等をいかに地域的にも、あるいは全体としても調和させてやるか、こういうことが必要だと思います。  そこで、まず、学者であられる小関先生にお伺いいたしたいのでありますが、今日、歴史的ないろいろな経過を経た国有林があり、道有林があり、私有林があり、しかも、私有林の場合で言えば、零細なものが非常に多い。一方においては、大山林地主といわれるような巨大な山を持っておる者もある。しかも、巨大な山を持っておる階層の中には、もちろん、国民経済に寄与するために、企業的経営ということを熱心に研究し、また努力しておられる人々もありますけれども、相当部分は財産保有的な性格を持っておる。今日の木材需要の中で、国民経済に寄与するという意味において、十分な役割りを果たしていない、こういう問題もかかえておるわけであります。  私は、山の問題は、今日特に農業にも多くの問題をかかえ、あるいは山間部にも多くの問題をかかえておる中で、今後、開放経済体制の中で、国土総合開発という観点から、山以外のものに利用することが、国民経済全体の立場から必要であるというものについては、これは、国有林であれ、公有林であれ、あるいは私有林であれ、地域住民のために、これをやはり活用していくということは積極的に考えていかなければならぬ。それは農牧林の混合経営であれ、何であれ、そういうものについては十分考えていく必要があると思いますが、問題は、林業経営という立場から山を山として経営していく場合に、山の持つ、いま言った公共的な面、資源開発の面から見て、今後の構造政策というものをどういうふうに発展させていったらいいのか。国有林のになうべき役割り、あるいは公有林の受け持つべき位置づけ、あるいは私有林の中で、特に大山林地主、あるいは零細な経営というふうなものをどういうふうに前進させていくことが必要なのか。将来のやはり長い展望の中においては、個人的な経営を主とするような方向にいくのか。あるいは公有林、国有林的な公共的な性格のものを発展させていくのが林業全体として望ましいのであるか。こういう将来の方向の問題について、つまり、山以外の利用の問題については、国土総合開発の観点から、今後ともにやはり考えるべきものは積極的に考えるという立場を保持しながら、林業経営という面から見て、将来の発展方向というものはどういうふうに考えていく必要があるのか。私は、むしろ、そういう点については、いわゆる林業政策としての公共性、資源開発、しかも、資源開発という場合には、やはり、計画生産という面から見て、何と言っても、やはり公共的な性格が伸びてこなければならぬじゃないか、こういう感じを持つわけでありますけれども、これらの点について、まず、学者の立場から小関先生の御意見を承りたいと思います。
  115. 小関隆祺君(小関隆祺)

    ○小関隆祺君 たいへんむずかしい問題を御質問いただきまして、困惑しておりますが、将来の林野所有というものがどういう方向発展すべきであるかというお尋ねのようでございますけれども、お話のあれでは、公益的な機能、それから計画生産というような観点から言えば、公的な所有ないしは経営が望ましい方向ではないかというふうな御意見をお持ちのように思うわけでございます。  それは、非常に主観的と言うと語弊がございますけれども、価値判断の入ったある考え方の上に立った上で、そういう考え方が出てくるのでございまして、全く別な立場をとると、また全く別なことになるんじゃないかと思います。  私は、各経営形態というものが、お話にありましたように、歴史的な経過の中でつくられた歴史的な所産であるということをまず確認しなければならない。  それからもう一つは、資本主義社会の中における私権の問題であります。これはもちろん、公益のために、制限はある程度受けますけれども、そのたてまえを維持する場合、ここで極端なケースとして森林を全部国有化して、国有林野として経営すべきだというような考え方は、ちょっと相当な飛躍ではないかというように考える。それは、社会主義社会になった場合、共産主義社会のような事態が前提された場合はまた別でございますけれども、資本主義社会で私権を尊重しなければならないという立場の中で、そういう方向での政策というものはとり得ないのではないか。とるべきだとか、とるべきでないとかということではなしに、とり得ないのではないかというふうに考えているわけです。  で、お話のように、公共的な使命、公益のための機能を果たすべき使命、あるいは計画生産――元来、林業計画生産すべきものでございますが、そういう意味で、あるいはまた、大森林所有者が売り惜しみをすると、高度成長のブレーキになっているというような見方も一部にございますけれども、そういう意味からも、森林所有というものを公的なものにしていったらいいじゃないかという考えも含まれていると思いますけれども、かりに、そういうことが認められたとしても、私権を制限してやっていくということは、事実問題として非常にむずかしい。資本主義体制の中における国有林森林所有というものはどういうものであるかということは、ここで理解できない。かりに、そういう方向へ進もうとしても、革命的な手段がなければなされないんじゃないか。これは全森林を補償して、いきなり買い上げるなんていうことにならぬと、どうにもならない問題です。これは御質問の趣旨とたいへん離れた極端な議論でございますけれども、そういうようなことが、国有化にしろ、公有化にしろ、必然的についてくる問題。ですから、私は、歴史的な所産であるところのこの所有形態は、よきにつけ、あしきにつけ、そう大幅に変更できない、われわれが生きている年代、十年、二十年、三十年というような先を考えたら、どんな世の中になるかわかりませんけれども、おそらくできないのじゃないか。  それから、所有を移す、あるいは経営を移すということではなしに、事実において、公共的な、あるいは公益的な機能を森林にどうやって発揮させるか。それから、計画的な生産をどうやってやらせるかということ。これは、さっき、私、一番最初にお話しましたように、森林基本法というものが現実に即した政策である、矛盾の調整政策であるというふうに私は受け取っておるわけです。  そういう意味から言うと、所有の調整というものに大たんに踏み切ることは、やってももちろんいいんですけれども、限られた部分しかできない。そうすると、目標にありますような公益的な機能を十分発揮させるということ、あるいは計画生産をやらせるということは、その面で、民有林なり公有林なりを指導していくより仕方がないではないか。もちろん、大きな森林所有に小さな森林が併合されていくとか、あるいは逆に、入り会い林野なんかが小さく分割されていくというような集中の方向と分解していく方向とがあるわけですから、将来の形としてどうなるかということも、実はそう簡単に予想できない。現状とそう大幅に変わらないんじゃないかということだけしか言えない。  それからまた、どうあるべきかということにつきましては、むしろ、現実的な問題処理としては、いま申しましたような所有にはあまり触れられないで、そういうような機能を十分発揮させるような諸政策をとるべきではないかというふうに考えております。
  116. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 論争するつもりはありませんが、いま出ておる、たとえば国有林開放という問題は、将来の林業政策としての展望の中で、いわゆる国から民間へという一つの問題を提起している。それが長い目で見て、林業政策上から見て、誤りのない方向であるのかどうかという点と関連して、私はお伺いしたかったわけであります。と申しますのは、田村参考人からもお話が出ましたように、戦後、国有林なんかを、町村合併あるいは新市町村の建設あるいは緊急開拓というふうなことで、ある程度の面積を活用したけれども、現実には所期の目的を達成していない、こういうことは、経過として明らかであります。今後、政治的であれ、何であれ、出ておりますところの国有林開放というような問題の取り扱いを誤るということになると、これは国家百年の大計を誤るというふうなことにも発展しかねないのであって、やはり、この問題については、慎重な態度で山の問題を知らざる者が政治的にこういう問題を軽々に取り扱うのではなしに、衆知を集めて、林業政策の将来の展望はどうかという立場から、この問題自体についても取り上ぐべきじゃないかという配慮でちょっと申し上げたのであります。したがって、この点については、深く論争するつもりは毛頭ございません。  次に、順序でありますので、お隣の伊藤さんにお伺いしたいのでありますが、たいへんじみでありましたけれども、貴重な、しかも適切な御意見を承わったわけでありますが、ただ、御意見の中で、国有林野事業のコーポレイションの問題、公社化の問題について、簡単にちょっと触れられたのでありまして、これは、こういう問題が数年前に提起されたことはございます。ただ、この点については、小関先生のほうからも国有林野特別会計のあり方という問題について、やはり企業的な面と保安林のような企業的な面を含まない問題については、別個の取り扱いの中でやるべきじゃないかという意味の御意見があったかと思うのでございますけれども、そういうことは別にいたしまして、いま簡単に触れられました国有林の公社化という問題については、どういう立場からそういう問題を提起されたのか。なお、私どもは、数年来、この問題の提起について、問題検討をやったのでありまするけれども国有林関係の深い田村参考人のほうからも、こういう問題に対する御見解というものについてお伺いしておきたいと思います。
  117. 伊藤健夫君(伊藤健夫)

    ○伊藤健夫君 公社等の特殊法人に対する経営をやることを検討する時期ではないかというふうに申し上げましたけれども国有林関係といろいろ密接な依存関係にある私ども業界といたしましては、現在、国有林関係自体でも、あるいは業界自体でも、その経営をどういうふうにしたらもっと合理化できるかというような問題がきわめて切実な問題になっております。  今度の基本法は、林業を資源的な問題から産業的な問題への切りかえと申しますか、こういう問題からいたしまするというと、やはり、国有林を含めて、そういったものを大きく検討する時期ではないか。したがいまして、民間企業と国有林事業、特に、北海道のような場合では、その依存関係をもっと密接なと言いますか、能率化と言いますか、合理化と言いますか、そういったような方面に持っていって、官と民との一番いいところをとったやり方、能率化といったような問題が当然考えられてもいいのではないか。ただ、私ども、それでは、具体的にどうしたらいいだとか、ああしたらいいだとかということは、まだ申しかねるのでございますけれども、民間関係では、たとえば生産事業であるとか、あるいは適材適所の配分であるとかというような問題を、もっと官民一緒になったやり方でやることが適当ではないだろうか。それにはやはり公社とか何とかというような、特別な、官民ともに相寄って知恵を出し合う、あるいは合理化ができ上がる組織というもので、経営面を担当することが考えられるのではないかという面から、いますぐやるとかやらぬとかという問題よりも、そういうことをやっぱり検討して、民間にもいろいろ御研究の結果を発表してもらったり、あるいは、民間の意見を聞くなりというふうな方向にいくのが、やっぱりこの機会ではないかというふうに考えて、一言申し上げた次第でございます。御了承得たいと思います。
  118. 田村武君(田村武)

    ○田村武君 私は、この国有林経営林政から分離する、経営面を純粋な企業経営というもので、公社化――まあ、簡単に公社化という表現を使うわけですが、こういう形にしたらいいではないかということは、これは反対でございます。  なぜ反対かといいますと、林業というものの経済的な脆弱性、これを純粋な企業体として持っていった場合に、これを乗り越えてどういうように経営発展させるのか、これは非常に問題だと思います。で、こういう点から考えまして、戦後、特別会計法が制定されて、企業会計に移っていったわけでありますけれども、このときもほとんど戦時中の乱獲、乱伐というもののあとを受けて、これを特別会計が受け継いだわけでありまして、その当時の特別会計の苦労というものは、これはもうたいへんなものであったのは事実であります。しかも、公社化というものの伊藤参考人のただいまのお話も、具体的なものでありませんので、私もそれに対する具体的に反対の立場を表明し得ないわけでございますけれども、ただ、概念的に申し上げますと、この林業というものの経済的脆弱性というものから、純粋な企業経営という形での独立した公社化というものは、維持できないのではないかという考えを持つわけであります。  もう少し具体的に申し上げますと、現在の特別会計における企業経営としてのあり方、これに問題があるのではないかと思う。ほんとうにこれが企業会計として運営されているかどうか。現状は運営されておらないと思う。全く一般会計の中の一つの事業と何ら変わるところがないような形で運営されておりまして、たとえば国有林が重大な被害を受けました十五号台風、これは世界史上初めての森林の大被害というようなものが起きて、しかも、その被害のほとんど全部を国有林が負ったわけでありますけれども、このときにおいてすら、自分みずからが企業経営によって積み立てておる剰余金を立て直しのために使うという自由すら許されない、こういうような状態でありまして、いまの特別会計制度の運用は、特別会計という名に何らふさわしくない状態にしかなっておらないと思います。  それから、経営面でありますけれども、これも経営の根幹は、何と言っても人であると思います。幾らりっぱな機構をつくっても、これはひっきょう人に帰すると思います。ところが、国有林の現状を見ますと、この経営を担当する人、いわゆる林野庁の高級幹部の人たち、この人たちのいろいろな取り扱い等を見ますと、一般行政官庁における非現業の行政官庁における人事の管理等々と何ら異なることがないということは明瞭であります。長年その道でもって苦労し、ほんとうに努力してきた人が、五十そこそこになって、たとえば営林局長が一年か二年でもってもうやめてしまうとか、あるいは林野庁の長官が三年ごとに交代するとか、こういうことは、一般の企業経営においては考えられないことだと思うのです。経営担当者が全くその場その場の、ことばは悪いと思うのですけれども、その場その場の腰かけと言いますか、一つのたどる道ということで、ただ機械的にポンポンポンポン行く、こういうことで、植えてからほんとうに何十年もたたなければ収穫し得ない長期的な林業経営というものの中で、ほんとうにこれに情熱を傾けて、ほんとうに生死を賭してこの事業の発展というものに寄与する熱意が出てくるのかどうか、これはきわめて疑問だと思う。だから、結局、またことばが悪くなって恐縮でございますけれども、まあ、どうせ先は一年、二年、その間大過なく、だれでもそうだと思う。こういう点も十分に考えなければならないのでいなだろうか。これはただ営林局長、林野庁長官なんていうえらい人だけでなくて、現地の営林署長等々にしてもそうだと思う。ほんとうに自分が責任をもってそこの林をよくし、国民のために尽くそうとするときに、ただ何となく一般行政官庁の概念のように、いや署長より課長になったほうがえらいとか、課長より部長のほうがえらいだとか、何とかして早くそういう道をたどりたいというようなことだとするならば、こういう長期的な事業の経営なんていうことはできない。しかも、一般の事業経営において、そういうような経営者の交代なんていうものはないのではないか。これは明らかなことだと思うのです。  そういう点をいろいろ考えまして、財政的な面、そういうような行政的な面、あるいは行政機構の面、人事管理の面等々、これはひっきょう給与等の待遇の問題にも関連するのでありましょうけれども、そういう点を企業的な視点から解決すること、勇気をもってそういう点を解決すること、そのことこそ喫緊の要事でありまして、これをただ組織をいじって公社にしたらいいとか、ああやったらいいとかということは、これはあらゆる企業において末期的症状というものであろう、こう考えるわけです。(笑声)
  119. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 櫛田参考人にお伺いいたしたいと思います。  森林関係については、森林組合として全面的な指導立場にあられるわけですが、この機会に、むしろ、直接関係はあるのですけれども、ある意味では直接関係のない小林さんのほうから、協業問題あるいは森林組合の強化というような問題が意見として出ておりましたけれども、やはり北海道の場合でも、全国的に見ても五ヘクタール以下ぐらいの零細な所有の人々が相当大きな比率を占めておる。で、林業政策という立場から見れば、こういう零細な個別経営の所有は、一応所有として認めるにしても、経営という立場から、どうしてもやはり協業の方向というものを可能な限り促進しなければならないと思う。そこで、協業の助長というものを前提にして考える場合に、北海道でどういうふうな努力をしておられるか。あるいはまた、そういう努力をする場合に、隘路があるとするならば、国の施策あるいは道の施策というふうなことを通じての隘路は何か。そういうふうな問題について御意見があれば承りたいと思います。これが一つ。  それから、林業労働力という問題は、農業の場合もそうでありますけれども、若手の中堅的なエネルギーというものが、農山漁村から年々町へ都会へと放出されていっておる趨勢にあろうかと思います。そういう点で山林労働者、これは国有林、公有林、私有林を問わず、山林労働者労働力確保という点が、今日の北海道の場合にどういう状況にあるのか。また、その場合に、国有林あるいは公有林、私有林を通じて、特に櫛田さんの場合は、私有林の場合の賃金、労働条件、こういうものは、今日大体においてどういう現状にあるのか。こういう点についてもお触れを願いたいと思います。まず、この二点について。
  120. 櫛田徳一君(櫛田徳一)

    ○櫛田徳一君 本道の民有林は、やはり一般の民有林は、五町歩以下が七〇%近いというような非常に零細な規模であります。内地に比べれば、少し多いようでありますけれども、その生長量あるいは木材の価格、そういう面から見まして、実質的には内地より大きいということは決して言えないと思うのでありまして、どうしてもこの経営規模を拡大しなければいけない。しかし、先ほども触れましたように、規模を拡大しても、計画的な生産ができるように――いまでは、森林組合に入っておっても、一回植えて、その次に森林組合のごやっかいになるのは十年も十五年もあとに一回といったようなことでは、組合意識も喪失し、産業としての確立ということはむずかしいと思います。どうしても北海道では、少なくともそういうことを考えますと、一年に一回の収入が一町歩ぐらいを期待するとしても、二十町歩以上、三十町歩、できれば五十町歩ぐらいを目標にやるのがいいんじゃないかと思うのでありますが、その際に、一番困ることは、どこから森林を得るかということでありますけれども、これは、いま道庁で農家林の造成を大きな施策として取り上げられて、推進されておるわけでありまして、これに期待を持っておるのでありますけれども、それの資金の手当などが不十分である。その成果を十分にあげることがいま行き脳んでおるように思っておるわけであります。  それから、国有林の活用等も期待しておるのでありますけれども、これは、国有林は、民有林、それから公有林、その奥にあるのが普通でありまして、住んでおるところから非常に遠い奥地にある。したがって、直接活用するという場面はわりあいに少ないのではないかと思うんです。したがって、公有林等の活用、そういった場合に、その代替地を国有林に求めるということが、もしできまするならば、規模の拡大はわりあいに進むのではないかというふうに考えておりますが、まあ、要するに、その面と資金の手当ということで行き悩んでおる、こういうことであります。  それから、協業の問題でありますが、共有の形にする、経営を共同でやるということについては、どうもまだその方面の十分なる訓練もできていないというのでありましょうか、あるいはやる人たちのお互いの家庭の事情といいますか、人員構成、そういったものから見て、なかなかやりにくい。したがって、作業を共同でやるということが一番いいんじゃないかと思っております。あるいは森林組合経営を委託して、造林なども造林作業を委託するという方法がいいんじゃないかと思う。そうして、森林組合に労務班を置きまして、年間を通じてそれらの仕事をやっていく、こういう方向もいいんじゃないかと思っております。  その場合に、一番困ることは、造林の資金融資にいたしましても、二十年据え置きの三十カ年、これは制度があります。それの活用をだいぶんはかっておりますけれども、金利は毎年払う、こういうことであります。ところが、森林収入がないのに金利を払うということは非常に困難でありまして、でき得ますならば、森林収入があり出してから、金利を一括払うといったような融資条件の改善をはかっていただければ、森林組合が委託を受けて、そうして、造林なり、あるいは保育なり、いろいろと作業を共同でやっていくと、こういうようなことは可能じゃないか、こういうように思います。  それから、労働力の問題でございますが、これは、山林人口が年々減っておるということで、全国的な傾向でございまして、非常に困っておるのでありますけれども、われわれが扱っておる一般民有林においては、家族経営的なものが多いわけでありますから、農家の余剰労力を使ってやると、これでどうやらやっておるわけであります。  ただ、ここで機械化の問題でありますが、これは政府においてそれの援助をしていただいておりまして、機械化が進みますというと、あるところで調べたのでありますけれども、いままでの林業労働には非常に高年令の人が多かった。四十五、五十以上の人が主として働いておった。ところが、機械を使いますと、下刈りの機械とか、あるいは植穴を掘るとか、その他集材機を使うとか、こういった機械を導入することによって、労働に出てくる者が三十代の者が多くなった。こういったようなことで明るい希望を持っておるわけであります。ただ、この機械についても、もう少し選択させていただきまして、どういう機械――いまのところでは、セット方式といって、要らない機械も買わなければ補助がいただけぬというようなことになっておりますけれども、選択を自由にさせていただいて、その作業その作業に合った機械を購入することについても援助をいただければ、これもある程度の明るい見通しがある、こういうように考えております。
  121. 角屋委員(角屋堅次郎)

    ○角屋委員 鈴木さんと田村さんに。  鈴木さんは御承知かと思いますが、今度の土地改良法の一部改正を通じて、土地改良の中に、いわゆる採草放牧地関係、これを土地改良法の中に組み入れる、そして、これから土地改良については、土地改良事業の長期計画というものを立てる、大体十年、前期五カ年、後期五カ年というふうな、さらにきめこまかい分け方も注文しておきましたが、いずれにしても、そういう中で、国土総合開発の観点から、山を農業場にするという場合の一つの成長財であるといわれておる畜産関係に利用する、そういう観点から見ると、これは先ほど櫛田さんも言われましたように、またほかの参考人からも出ておりますように、国有林という問題の提起は片手落ちであって、やはりそういう観点から見れば、公有林、私有林たるとを問わず、考えていかなければならぬ。非常に安易に問題を提起しておる感じがあって、むしろ、地域産業の実態から見れば、これは関係するそれぞれの形態はありましょうけれども、そういうものを対象にした計画、特に北海道の場合は、畜産は今後非常に困難な問題を国際的には含みましても、一つの重要な柱にしなければならぬかと思う。そういう立場から、長期計画という中で、北海道の畜産関係の山手の利用という問題をさらに御意見があればお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。  それから、田村参考人に最後にお伺いしたいのでありますけれども、冒頭に申し上げましたように、国有林が、今後ともに治山治水あるいは資源開発というふうな点から、果たさなければならぬ役割りから見て、特に資源の開発という面では、今日の木材の国内需給という点から見て、過伐にわたってはならないと思いますけれども、しかし、国有林がそういう点で木材需給に大きく寄与する役割りは、これは当然になっていかなければならぬ。そういう観点からしますと、最近の国有林の場合に、あくまでもそういう面を十分に果たし得る直営生産というものを柱にしながらいかなければならぬかと思いますけれども、最近の林野庁の考え方は請負導入ということが相当に入ってくる形勢にあるわけでありますが、やはり木材需給に対して国有林が果たさなければならぬ役割りから見て、大きな役割りというものは、直営生産で果たし得る、またもしかりに、そういう点で若干季節的に余力があるならば、公有林、民有林の指導、助成にも当たっていくというような積極的なかまえというものが、私は必要ではないかというふうに思うのでありますが、いろいろお尋ねしたいことはたくさんありますけれども、この点だけをお尋ねします。  最後に、伊藤さんにも、この際、木材の関係でありますので、北海道の需給関係を見ますというと、やはり、全国的にそうでありますが、外材に依存する比率は、ある程度――ある程度というよりも、相当な比率を占めると思う。何かお聞きしますというと、アメリカのほうに知事あるいは林務部長が行っておるのも、そういう外材輸入の問題に関連しておるとかという話でありますが、外材輸入というものの受けとめ方、あるいは外材輸入をする場合のこれに対する第一線関係者としての意見というふうなものがあれば、お聞きしておきたいと思います。
  122. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 関連して、鈴木さんにちょっとお尋ねしておきます。  国有林開放の御意見のようですが、農業との関係で開放を求める大きな目標ですね。土地が必要なのか、立木が必要なのか。これがいま全国的な開放運動のいずれかということになっておる。ですから、立木は要らない、土地をもらって農地の造成あるいは草地造成の要に供するということが、農業拡大の線に沿ったものであるか。土地は要らない、立木だけ開放という形でもらえばそれでいい、そういう御趣旨であるか。この点を明確に言ってもらいたいと思うわけです。  具体的な点になりますが、農用地が足りないから国有林を開放して造成すべきであるということであれば、これはいまの制度においても、国が直轄で、直営で農地を造成して、でき上がったものを農用地として農業者に利用させるという道は、現在、政府施策が後退しておるから不十分でありますが、国自体においても、農地を造成させて、それを農業者が農業の部面に利用するほうがよいのではないかという意見が一つ出ているわけです。この点は希望するのか、しないのか。  それから、北海道の畜産農業を拡大するために、飼料資源が北海道においても不足しておるわけですから、飼料資源の開発あるいは確保が必要であるからして、その給源地を国有林の開放に求めるということであれば、これは、今年の国会で土地改良法の改正の場合においても、今度は草地の造成あるいは改良等についても、いままではやりませんでしたが、今度は直営事業として取り上げるということが、方針としてきまっておるわけです。ですから、国有林を対象にして、草地の造成あるいは放牧地を造成するということであれば、農家が自分で造成をやるよりも、むしろ、現在の制度の中では、国有林と共用契約を結んで、そうして、国が主体になって草地の改良、造成、あるいは牧野の場合には、国有林の特別会計において、共用林の契約に基づいて、基幹施設というものは、これは国がやって、そうして、共用の形で農家に高度に利用してもらうことになっておるわけであって、この点は、どうしても山をもらわぬければうまくないという考えかどうか、その点であります。  それからもう一つは、農業基本法の第二十一条では、林野の農業的利用ということがうたわれておるわけです。それがありますからして、今度の各党の三案の基本法においても、これを受けて、農業の改善事業の拡大等については、林業あるいは林野との関係において、これを有効利用するということになっておって、思想は農業基本法から発想しておるわけです。それで、その場合、林業的に利用するということであれば、所有権の移転でなくても、国有林との間において、部分林契約を結んで、地元農民が国有林における造林の作業とか、あるいは収益の配分というようなことで、りっぱに権利の移動を伴わなくて林業的な収益をあげる道というものは、国有林の共有財産の中に実現できるという道があるわけです。  それからもう一つは、和歌山県の調査会のときに出た意見は、これはむしろ国有林開放ということでなくて、巨大な少数の民有林所有者の林地というものは、財産保持的に放置されている場合が多い。そうして一方においては、多数の零細林地の所有者というものが困窮しておる。ですから、この大所有者と零細所有者の結合、あるいは農業林業とのそれぞれ零細経営の中における有機的な解決ということを考えた場合に、国有林の場合には、明らかに道があるが、民有林の場合には、むしろ、巨大な私有林所有者に対して、あるいは公有林もそうでありますが、地元農民が分収契約を結んで、そうして、私有林あるいは公有林の育林、あるいは収穫に至るまで、継続的な作業というものを進めて、そうして、主伐に入った場合には分収する、こういう道もあるわけですね。ですから、こういうことが方法としていろいろあるわけですからして、単に保安林関係だけを除いて、すぐ国有林を開放すると言っても、これはなかなか簡単にはいかないと思う。御意見としては十分承っておくが。  以上述べた点と、もう一つは、公有林あるいは私有林を農地に開放した場合は、それにかわるものとして、国有林をその農地に利用された公有林、私有林の所有者に与えるべきだという御意見については、これは問題があると思うわけです。  現在においても、保安林として必要な公有林、私有林の場合は、それは国が指定して、どうしても話し合いがつかない場合には、強権で保安林としての指定、あるいは経営を行なうわけでありますが、その場合には、指定された公有林あるいは私有林と国有林との間における交換というものができるわけです。そういう場合には、公益の目的で交換するわけですからして、私有林の価値の五倍以内において国有林との交換ができるわけですが、私益の目的で私有林と国有林との交換ということは、これは、国民の財産として国民一般から考えても、なかなか承知できがたい点でないかと考えるわけです。  鈴木さんは、農政の北海道における指導者ですが、林政の面に対しては、中央会長の高橋君の代理で来られたので、いささか準備不十分な点もあろうが、これは重大な点なんですね。他の五人の参考人の皆さんに比べると、あなたの考えは異色を放っておるわけですからして、これらの点について、この機会に率直な御意見を聞かせてもらいたいと思うわけです。
  123. 鈴木善一君(鈴木善一)

    ○鈴木善一君 それでは、いまのお二人の委員の御質問に対してお答え申し上げます。  私ども日本の食糧事情を見ますと、非常に暗たんたるものがあるんじゃないか。かつて、河野大臣のときには、食管制度の廃止等も提唱いたしましたが、もう今日では、端境期において食糧が欠乏しておる。外米を四十万トン入れなければならぬというような情勢、これは単に米を見て、日本の食糧事情が完ぺきだと考えた錯覚じゃないかと思う。日本のお米の生産量ぐらいのものの畑作農産物、麦、トウキビ、大豆、砂糖、あるいは雑豆、こういうようなものが輸入されて、国内の食糧をどうやらまかなっておるわけであります。さらに、最近は、日本の国民の食構造が変わりまして、だんだん畜産食糧をとるような方向に向かっておる。こういうような面から考えますと、北海道こそは日本の食糧の基地であると私ども考えております。  そういう面から、さっき第一番の質問がありました土地改良法の改正によって、これらの草地の改良をやるということは、非常に重要な問題だと思います。従来、日本の畑作振興政策を実際に提唱いたしましたが、そのような農業基盤整備するような施設はやっておりません。有線放送をやったとか、何か奥のほうに倉庫を建てたとか、このようなことで新農村が終わっております。いまの農業構造改善についても、その地域の住民全体が将来発展するようなかっこうにはなっておりません。北海道の段階でも、町村の一部落ぐらいであります。このようなことで日本の食糧事情が解決できるかどうか、非常に重要な問題であります。少なくとも現在八百万トン以上の食糧を確保しなければ、日本の食糧需給は困難であります。こういう面から酪農や畜産を入れますと、畜産の発展は非常に重要であろう。国民の食生活もそういう方向に向かっておる。こういう点では、今度土地改良法の改正によって、これらが単に農民が草地改良をするのではなくて、一〇〇パーセント国の費用でもって草地改良すべきじゃないか。なおまた、現在のような畜産の地域の情勢では、畜産物が非常にコスト高であって、これは将来海外との価格の対抗ができ得ないと思います。農業基本法にはきわめてうまいことを書いておりますが、実際にはまだ一つも行なわれておりません。農民の生産性が上がると、それをカットしようというような官庁の考え方であります。米にいたしましても、大豆にいたしましても、でん粉にいたしましても、乳価にいたしましても、そのような措置をとっております。法律はたいへんうまく、上手にできておりますけれども、実際に行政はそれに伴っていない。これが今日農民を経済不安におとしいれておる大きな要素だと思います。他産業との格差をなくして、農民を他産業と同じような生活をさせる、こういうことを言っておりますが、そのことはまだ全然できておりません。  今日の林業関係でも、私はそういうことが言えると思います。単に木材の増産政策である。先ほども出ましたように、林業に対する労働者の収入が安い。しかし、それを他産業並みの労働者と同じような生活に持っていくようなことはやられておりません。こういうふうな考え方では、先ほどいろいろ御意見がありましたが、そのしわ寄せが農民にくるわけであります。でありますから、兼業の農業者は一そううだつが上がらない。ただ、国内林産物を多く生産するだけだと思います。こういう点では、この問題についても、もっと皆さん方の考え方を十分に入れて、林業をやる農民がほんとうに生活できるようにお願いいたします。
  124. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 鈴木さん、私の聞いているのは……。
  125. 鈴木善一君(鈴木善一)

    ○鈴木善一君 それから、国有林野の払い下げの問題でありますが、あくまでも私どもが言っておるのは、府県とは違います。農家の耕地面積、経営規模拡大のための必要ないわゆる農地の造成をいたしたい、あるいはまた、畜産をもっと振興するためのいわゆる草地の造成をいたしたい、こういうような考え方であります。したがって、木材をもらうということが目的ではなくて、農地にいたしたい、こういうような考え方であります。  さらにまた、公有林や民有林に対して、それらの農業構造改善に使用した場合はどうするかという問題でありますが、その場合には、おそらく民有や公有の場合には、国有林の成果があがっておるんじゃなかろうかと見ております。計数的にはまだ調べておりませんが、そのように聞き及んでおります。したがって、これらの公有林、民有林が農業構造改善のために開放された場合は、その代替を国有林にひとつ肩がわりしていただきたい。  それからもう一点は、実際問題として、国有林が前にあって、奥地に民有林や公有林がある場合があるわけであります。そういうような場合におきましては、それをやはり代替するような方途を講じていただきたい、このように考えておるわけであります。  農家のために国有林を全面的に開放せとはあくまでも言っておりません。国有林自体が農用地にならない所もあります。  先ほど、田村参考人から戦後の開拓問題が出ましたが、私は、開放問題よりも、いわゆる開拓の方針が誤っておったんじゃないか。道内におる農家、あるいは道内の農家の二、三男に開放したならば、ああいうような結果にならなかったんじゃなかろうか。そのことがきょう論ぜられておりますが、私は、農業面から見ますると、そういうような従来の戦後開拓というのは、農業に全然経験のない者を持ってきた。道内にはずいぶん二、三男対策、あるいは従来の農家の農用地規模の拡大、こういうことを要請したのでありますが、そのことが全部、国有林を払い下げちゃいかぬ、国有地を払い下げちゃいかぬというような議論にはならぬのじゃなかろうかと思うわけであります。  以上で終わります。
  126. 伊藤健夫君(伊藤健夫)

    ○伊藤健夫君 私への御質問は、外材輸入の問題だと思います。  本道の場合、今後、木材原料の供給が漸減の傾向にあるということは明らかになりました。一方、需要は、経済の伸長とともに、上がってくる逆の現象もございますので、本州ほどではございませんけれども、本道の場合も、外材の輸入によって需給を調整しなければならぬという実情でございます。現在、南方材、あるいは北洋材等が入っております。これは、あくまでも需給の調整という考え方から輸入を考えております。しかし、それに付随するいろいろな施設が、まだ不完備なものでございますので、適量の輸入とともに、その関係施設の拡充ということも考えなければならないというふうに考えております。  現在、知事等がアラスカ方面に参りまして、アラスカ材の輸入についてのお話もいろいろございますけれども、私の承っておるところでは、まだ調査の段階にございまして、どの程度の具体性があるかということは、私としては存じておりません。ただ、問題は、輸入と申しましても、やはり、本道の木材のコスト、価格、そういうものとの関連もございまして、輸入ということもそう簡単な問題ではございませんので、やはり、この問題は、道内の木材事情とにらみ合わせて進めていくべき問題であるというふうに考えております。  なお、つけ加えますと、本道の木材資源は、いままではいわゆる木材の豊庫というふうに考えられておりましたけれども、現状はなかなか苦しいのでございまして、いわゆる簡単な増伐というような問題も、私ども立場から申しましても、いろいろな影響がございますので、そう大量にはできない事情にございますので、やはり、外材の輸入という問題は、北海道におきましても、重要な問題として取り上げられておるという状態でございますので、御了承願いたいと思います。
  127. 田村武君(田村武)

    ○田村武君 角屋先生の先ほどの御質問でございますが、国有林における直営生産の問題と木材資源の開発、奥地林地の開発というようなことを中心にお話がございましたけれども、私ども国有林野事業を直営でやってもらいたい、こういうことを全面に出して主張いたしておりますのは、林業の近代化、近代産業への発展という問題を、まず林業労働者の雇用の固定的安定、ここから出発させてもらいたい、こういうところが主張の要点であります。  そういうことから申しまして、国有林野事業を直営でもって実施しないで、請負業者に請け負わすということになってまいりますと、労務の固定、安定化という問題が非常にそこなわれるわけであります。もちろん、同じ国の事業でありながら、経営主体が片方は国の直営、片方は私企業の請け負いということになるわけでありまして、請け負いに付した場合には、林業全体の発展ということよりも、企業としての収益追求ということがどうしても先に立ちます。そういうことでありますから、その仕事の成果というものも、国が考えております直営事業を行なわないと、直営生産事業を行なうという目的にはそぐわない面がたくさん出てくる、こういうふうになると思います。そういう点から、私たちは、いろいろな制約のあるということも十分に承知いたしておるわけでありますけれども、可能な限り、国有林野事業は国の直営、労務の直用、こういう形でもってやっていただく。これが林業労働者の生活の飛躍的な向上というものに直接つながる。それを出発点として、林業経営全体が発展していくということになると思うわけであります。
  128. 本名委員(本名武)

    ○本名委員 時間がだいぶん経過いたしまして、重ねてお尋ねするのは恐縮でありますが、しばらくごしんぼういただきたいと思います。  本日は、非常に貴重な御意見を各参考人から承りまして、今後われわれの審議の上に役立ちますことを心から感謝いたしております。  基本的な問題について、私もいろいろお尋ねいたしたいのでありますが、時間もありませんし、また、各委員からそれぞれ貴重な御質疑がありましたので、省略いたしまして、私は、具体的に数点についてお尋ねいたしたいと思います。  第一点は、小関先生に伺いますが、先ほどのお話の中で、非常に傾聴に値するおことばがあったのであります。それは、林業生産のにない手としてその姿は一体どうあるべきか。特に経営規模の点について御指摘があったのでありますが、経営規模は拡大の有利性を認めない、認めないではなく、非常に少ないという御意見がありました。さらにまた、生産性を高めるためには、必ずしも大規模経営が適当とは思わないという御意見がありました。そこで、これについては、いろいろ論議のあるところではありましょうけれども、小関参考人は、経営規模のその大きさを一体どの程度にお考えになってこういうことを御発言なさったのか。  さらに、その規模に関連いたしまして、森林経営の近代化や合理化、あるいは将来の発展を期するためには、大小の規模にも関連して、一体どのような特色がそれぞれにあるためにこのような所論がなされたかという点についてお尋ねをいたしたいと思います。  私に対するお答えは、どうかイエス、ノー程度に簡単でけっこうでございます。  それからもう一つは、素材生産事業については、逆に大規模経営に有利性があるということをおっしゃったのでありますが、有利性があるとするならば、あくまでも従来の資本主義体制下における個人の創意と努力にまかせて、経営形態はそのままであっていいかどうかということであります。  さらにまた、その間における小規模経営者の林業生産者に対しては、一体どういう組織経営形態というものを想起なさって、こういうふうに御発言なさったか、有利性の点から御発言なさったかという点についてお伺いいたしたいと思います。  その次は、順序は狂いますが、伊藤参考人と田村参考人に伺いたいと思います。  国有林経営については、国会ばかりでなく、皆さま方も非常に関心を持っておられるために、いろいろな御発言があったと思いますが、冒頭御陳述のときには、私は、少なくともお二人の御意見は相反するように伺ったのでありますが、後ほどの委員の質問に対しまして伺っておりますと、ちょっとわからないところがあるので、これはイエス、ノーでけっこうですから、お二人から御意見を承りたいと思います。  伊藤参考人は、国有林の今日の特別会計における経営というものの欠陥を御指摘なさったその欠陥は、主として需給、流通の面からして改善されるべきじゃないかという御意見だと私は拝聴いたしたのでありますが、それならば、現在の特別会計の中で一体具体的にどういう欠陥があるのかということの御指摘をいただきたいのでありますが、先ほどの御意見で大体推察いたすことにいたしまして、その結果が、たとえば、特殊法人、公社のような組織に切りかえるべきだという御意見がありました。御承知のとおり、公社は、少なくとも現在の財政法上から考えますと、相当の欠陥が生じてくると思います。私は、必ずしも公社論に賛成するものでもなければ、反対するものでもありません。その反対しない理由は、特別会計がこのままで経営がなされるということには大きな疑問を持つ一人であります。けれども、公社論と特に御指摘なさった点は、一体どういう利点からであるか、その点を簡単に伺いたいと思います。  田村参考人は、冒頭におきまして、一般会計の中で、むしろ、積極的に、前向きで、国の責任で国有林野経営をなすべきだという御開陳があったのであります。後刻におきましては、それが、いまの特別会計はむしろ一般会計的な運営がなされておる、たとえば林野の歳計剰余金というものは、林野自体が自由に使えないという欠陥がある、こういう点は、一般会計的な運営であるからいかぬ。ここに私は、前段のお話と後段のお話とちょっと理解しにくい点があるのでありますが、ただ、お答えいただきたいことは、今日の特別会計の経営というものが、田村参考人のお考えでは、合理化すべき点があるかどうか、不合理があるかどうか、欠陥があるかないか。おそらく欠陥をお認めになったから、財政措置の上から、あるいは人の上からも欠陥があると御指摘になったのでありましょうが、それならば、どういう姿にすることが理想であるか、お考えの具体的なことを伺いたい。と申しますことは、初めに御発言があったように、一般会計で一切の責任を負うべきだと解釈していいのか。それとも、一般会計では不合理であるから、公社論も賛成いたしかねるけれども、一体特別会計はどういうふうにしたらいいのか。もし具体的なお考えがあったらお聞かせいただきたい。と同時に、現在の特別会計による国有林経営というものに幾多の欠陥、不合理があるということをお認めになっていらっしゃると解釈してよろしいかどうか、伺いたいと思います。  その次は、この三法案に盛り込まれております共通点の大事なところは、やはり林業を通じて林業の総生産を上げる、総生産を拡大するということ、さらにまた、林業生産性向上するということが、どの法案にもうたってあるわけであります。しかし、生産性を上げるということについては、ひとり林業ばかりではございませんが、特に林業におきましては、いかに機械化され、近代化されたと言っても、労働力というものを無視し、切り離して考えることは絶対にできないと思うのであります。そうなってまいりますと、私は、この総生産を上げる、生産性向上するということに対する経営者、所有者のみならず、労働者方々のこれに対する心がまえと申しますか、覚悟と申しますか、これが非常に大事なことになってくることは、ひとり林業ばかりではありませんが、特に林業においては、欠くことのできない問題であろうと思います。  ただ、田村参考人のお考えは、私が申し上げるまでもなく、雇用安定を前提として、労働優位のお立場からお考えになることは当然であると思います。私は、その点について、十分ではないかしれませんが、共鳴いたします。しかし、労働優位ということが、企業全体の上に生産性を上げ、総生産の実を上げることとの関連において、一体どういうふうにお考えになるかを承りたいと思うのであります。もし、御指摘のような欠陥があるとするならば、私は、むしろ、林業そのものの持つ投資効果あるいは収益率の低下というところに問題があって、働かれる方々にも悩みがあるであろう、だからこそ、この基本法をつくって、それらの問題を解決したいというふうに考えて、特に他法には見られないほど労働に関することばをあちらこちらに使っているわけであります。その点について、簡単に御意見を承りたいと思います。  なお、国有林関連いたしまして、政府案の中の第四条に指摘してありますとおり、今日うるさいいわゆる開放論については、われわれとしても、国有林の活用について、ただいま制度化するための準備をいたしております。後日また御批判をいただきたいと思います。  最後に、私は、林道について、特に小林参考人に伺いたいと思います。  先ほど来、他の参考人からも林業生産基盤整備する必要を強く訴えられたのであります。その中でも、特に、林道の整備については、御指摘のとおり全く同感であります。同感でありますが、ややもいたしますと、林業における林道と、御要請なされるいわゆる社会福祉のために、あるいは地域格差解消のために主張される道路とに関連して、非常に大きな問題が起きてくると思うのであります。すなわち、投資効果があがらない林業に対して道路をつけるためには、むしろ、それは、地域開発の上から、あるいは林道の性格を転換して、一般道路、一般産業道路ないしは経済道路として、公共事業費をもって林道を開発すべきであるという意味が当然出てくると思うのであります。その関係林業そのもの発展のための林道との関連は、ややもしますと、混同されまして、あたかも、公共事業に切りかえることによって、財政の投入が拡大されるという錯覚に立ったときに、はたして林道としてにのうほんとうの使命に阻害がないかどうか、欠陥が生じないかどうかということについて、経験ある小林参考人から御意見を承りたいと思うわけであります。  以上、数点について伺うわけでありますが、きょうは時間を経過してまことに恐縮でございますが、簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  129. 小関隆祺君(小関隆祺)

    ○小関隆祺君 経営規模の問題でございますが、簡単に申し上げたために、たいへん誤解の点もあったかと思うのですが、またさらに簡単にということですから、たいへんむずかしいのですけれども林業の場合に、生産の過程で自然力というものが果たす役割りが大きいわけです。生産期が長いということもございます。それからもう一つは、自然の条件に非常に制約されるということでございます。そういうようなことから言いまして、経営規模を拡大することの有利性というのは、計画化されるということ、あるいは収入の継続が保証されるということ、そういう点に有利性は当然出てくると思うのですけれども生産性を高める、単位当りの能率が高まるというようなことは、それほど大きな有利性というものは認められないのじゃないかというのが私の考え方でございます。たとえば、季節性の克服なんていうことも、そう簡単にできないというようなことでございます。それから、機械を導入しても、地形その他の関係で、機械の操作がものすごく悪い。  それで、適正規模ということばはお使いにならなかったのですが、適正規模に関連して、私は、林業の特徴というのは、いろいろな規模の経営ができるということ、大きな経営なら大きい経営なりの経営ができる、小さい経営なら小さい経営なりの経営ができるんだというところにあるのじゃないかと思う。そういう意味で、私は、今後、大規模経営も小規模経営も長く残っていくのだから、それぞれ大事にしなければいけないのじゃないかということを申し上げたわけです。  関連して申し上げますと、適正規模というのは、簡単に出てこないのじゃないかというのが結論でございます。素材生産にしても、大規模生産は、小規模林業に比べてずっと有利になりますけれども、そのにない手をどうするかということですけれども、これは、現在、いろいろなことを兼業したりしているのですけれども、兼業の形で素材生産をやっている造材業者の方がおるわけです。そういった経営の中から、機動性のある、資本装備をもった素材生産の専業者を育てるべきだと考える。小規模経営の素材生産の場合は、森林組合中心になって、小規模の不備をカバーしていく以外にないのじゃないかというふうに思っているわけです。
  130. 田村武君(田村武)

    ○田村武君 まず、最初の御指摘でございますが、私の意見陳述のときに申し上げたことが、一般会計をもって行なうべきでないかというようにお受け取りになられたということでございますが、私のことば足らずのためにそういうような誤解を生じたものと考えます。  私、意見陳述のときに申し上げましたのは、国有林野事業の重要な目的の一つであるところの公益的機能を果たすべき特別に要する経費及び国有林以外の林業の振興及び林野行政に要する経費などは、国の一般財政資金をもって充当することが妥当ではないか、こういう意味で申し上げておりますので、この点、一般会計を妥当とするという考え方ではありません。一般林政協力というような経費は、一般財政資金を繰り入れるべきじゃないか、こういう趣旨でございます。  それから、いまの特別会計制度の中に欠陥は多々あるかと、こういうことでございますが、それについては、端的にたくさんある、こう申し上げていいと思います。  それから、林業生産の増大の問題であります。これにつきましては、私どももこれを直結的に生産性向上、こう結びつけてもけっこうでございますが、総生産の増大ということについては、私どもも何ら異議を唱えるつもりはございません。もちろん、私どもも一体となってそういうような努力をするという考えを持っておるわけであります。ただ、問題は、その総生産の増大の中で、労働者に対する還元というものがどういう形で出てくるか、この辺が基本的なものの考え方の問題になろうかと思うわけであります。  それから、企業経営の中における労働分野の優位性という点に立脚しての議論の展開、こういうことでありますが、私ども労働組合労働者を代表する立場では当然だと思います。しかしながら、現在の社会体制の中であるいは諸種の情勢の中で、まず、労働あって企業経営というような考え方を持っておるのでは決してございませんので、これは経営労働、両者一体となってやはり生活の向上をはかっていかなければならぬ。こういう点についてはまことに同感であります。  以上で終わります。
  131. 伊藤健夫君(伊藤健夫)

    ○伊藤健夫君 公社ということばを、しかも具体的なことを申し上げずに私が使いましたものですから、たいへん重要視されて、いろいろな御質問を受けたのでございますけれども、私自身がいま公社にしなければならぬとか、そういう意味では決してございませんで、ちょっとことばが足りませんけれども、現在の国有林野経営を見ますると、いわゆる独自性が強く出過ぎておって、生産性向上とか能率化という問題をもっと強く出すやり方を考えるべきではないかという意味合いのことでございますので、御了承を得たいと思います。
  132. 小林栄三郎君(小林栄三郎)

    ○小林栄三郎君 林道と言わず、公道と言わず、全く少ないことは、先生もお認めになっておられるようであります。昨年四月に、衆議院におきましては、奥地等開発道路臨時措置法案を御提案になるということを私承ったのであります。しかも、本名先生は、その委員のお一人かと思います。私は、諸先生にこの臨時措置法案に御賛成を願って、少なくも本国会において通過をいたされ、北海道がその恩恵に浴するようにお願い申し上げたいと思うのであります。奥地の産業道路とは、林道はもちろんのこと、あるいは国道と言わず、開発道路と言わずでありまするから、開拓道路は、御承知のとおり、一〇〇パーセント国が支出をいたしております。しかしながら、それが選択には国がちゅうちょいたしておるようであります。したがって、本道のごとき奥地におきましては、このような臨時措置法によって、本道の奥地の開発をはかるということは最も重要な問題でございます。どうか、さらに、奥地等の振興措置法案につきましては、きょうおいでの諸先生の御賛成を得たい、かように考えておる次第であります。よろしくどうぞお願いいたします。
  133. 座長(高見委員長)(高見三郎)

    ○座長(高見委員長) これにて質疑は終わりました。  以上で、本現地調査会を終了いたしますが、この際、派遣委員団を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。  意見陳述者におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本案審査の参考に資するところきわめて大なるものがあったと存じます。  また、本会開催のため、格段の御協力をいただきました北海道庁、地元関係団体並びに札幌、旭川両営林局に対しましても、深甚の謝意を表する次第であります。  これにて閉会いたします。    午後零時三十分散会