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1964-06-05 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月五日(金曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 谷垣 專一君    理事 長谷川四郎君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君    理事 芳賀  貢君       池田 清志君    大坪 保雄君       加藤 精三君    仮谷 忠男君       吉川 久衛君    小枝 一雄君       坂村 吉正君    笹山茂太郎君       舘林三喜男君    寺島隆太郎君       野原 正勝君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    松浦 定義君       稲富 稜人君    小平  忠君       玉置 一徳君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月一日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員中山榮一君及び森義視辞任につき、その  補欠として宇野宗佑君及び野口忠夫君が議長の  指名委員に選任された。 同月五日  委員永井勝次郎君、西村関一君及び小平忠君辞  任につき、その補欠として栗林三郎君、原茂君  及び玉置一徳君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員原茂君及び玉置一徳辞任につき、その補  欠として西村関一君及び小平忠君が議長指名  で委員に選任された。     ————————————— 六月一日  供給過剰甘しょでん粉農産物価格安定法に基  づく政府買入れに関する請願池田清志君紹  介)(第四一〇二号)  農業構造改善事業推進に関する請願池田清志  君紹介)(第四一〇三号)  串木野市の大六野防災ダム建設費国庫補助に関  する請願床次徳二紹介)(第四一二三号)  同(上林山榮吉君紹介)(第四一四五号)  国有林野解放特別法早期制定に関する請願(  森田重次郎紹介)(第四一七一号)  養ほう振興法運用是正に関する請願福井勇  君紹介)(第四一七六号)  国有林野解放に関する請願池田清志紹介)  (第四二〇五号)  農畜産物の価格安定に関する請願池田清志君  紹介)(第四二〇六号)  土地取得資金及び自作農維持資金貸付条件緩  和に関する請願池田清志紹介)(第四二〇  七号)  昭和三十九年産なたねの基準価格に関する請願  (三池信紹介)(第四二二〇号)  同(井手以誠君紹介)(第四二八一号)米の需  給体制確立に関する請願山下榮二紹介)(  第四二四〇号)  奈良開発公社公営住宅建設に伴う農地買収  反対に関する請願森義視紹介)(第四二九  〇号)  国内産牛乳による学校給食事業法制化促進に  関する請願(林百郎君紹介)(第四二九七号)  農作業中における傷害事故保障制度確立に関  する請願(林百郎君紹介)(第四二九八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稲富稜人君外一名提出衆法第  四四号)  林業基本法案内閣提出第一五一号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 高見三郎

    ○高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出、森林基本法案及び稲富稜人君外一名提出、林業基本法案、右各案の審査のため、去る五月二十八日から四日間にわたり和歌山県に、また六月一日から四日間にわたり北海道に、それぞれ委員を派遣し、現地においてそれぞれ現地調査会を開催し、各界の代表者から意見を聴取いたしてまいりましたので、この際、私から御報告を申し上げます。  第一班の調査報告を申し上げます。  第一班の派遣地は和歌山県でありまして、派遣委員は、団長である私のほか、小山長規君、本名武君、谷垣專一君、芳賀貢君、赤路友藏君、西村関一君、稲富稜人君でありますが、さらに足鹿覺君、中澤茂一君、森義視君が参加されました。  会議は、五月二十九日午前十時より和歌山市にある興紀相互銀行の会議室において行なわれ、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介、並びに議事運営の順序等についてあいさつを行なった後、和歌山県西牟婁郡町村会副会長坂本新次郎君、京都大学農学部林学科教授半田良一君、和歌山県森林組合連合会会長横矢乾君、和歌山県木炭協会会長三前歳三君、和歌山県木材協同組合連合会会長柏木永一君、紀州林業懇話会会長海瀬栄一郎君、奈良県山林労働組合連合会書記長坂本寿治君、和歌山県二川森林組合協業労務所沢本鎌造君、以上八名の意見陳述者から参考意見の陳述を聴取し、質疑を行なったのでありますが、各陳述者の陳述及び質疑によって明らかにされた意見を以下発言順に、かつ個人別に概略御報告申し上げます。  まず、町村長代表坂本新次郎君は、数年前から国会に対し山村振興法の制定をお願いしてきたが、今国会では与野党あげて林業の憲法ともいうべき林業基本法案を提出され、重要法案として御審議賜わっていることは、山地の多い町村に住み、山地の産業を興して住み得るようにしたい願いを持つ者にとっては、心から感謝するとの前置きの後、奥地山村と都市との地域格差のため、離農、離村する者が相次いでおり、特に若い青年層の転出がはなはだしく、父祖伝来の農林業に携わる者は老齢化の一途をたどろうとしている現状を述べ、まず林業基本法案の提案はむしろおそきに失する感があるので、提案された三法案とも、林業の発展、林業従事者の地位の向上、国土の保全等、相通ずるものとうかがわれ、小異を捨てて大同について、今国会で成立されるよう切望する。なお、法の成立後は、林道開設の積極化、造林事業の推進、林業の協業化、機械化、森林組合育成強化等のため、それぞれ適切な関連法をすみやかに制定してほしいとの意見でありました。  次に、学識経験者代表半田良一君の意見は、林業基本法のすみやかな制定が必要であるが、次の諸点を検討すべきであるとして、第一に、政府の林業基本法案は林業の経済的機能を対象とするものであり、森林の公益的機能は森林法によるものであるが、二法の調整には十分注意すべきである。第二に、林地の農業的、畜産的利用と林業の確立とは、それぞれの産業の発展が阻害される場合もあるので、国民経済上または地域経済上、総合的な地域計画を打ち出す必要がある。第三に、育林は生産期間が長く、産業としての弱さを有しているので、造林の実行について融資等大幅な助成措置が必要である。第四に、林業のにない手としては、積極的に経営意欲のある多数の中小規模農林家が、家族的労力を中心とする自立林業経営の確立をはかる必要がある。特に小規模林家保有林野合理的利用経営をはかるため、部落有林権利関係の整理、国、公有林等の活用により、また分散的な土地保有を是正して、その経済基盤の拡大をはかり、一方、林家の経営循環内に定着するような技術の開発をはかり、林家の収穫物の集荷、販売の合理化のため、森林組合の行なう経済事業を強化すべきである。第五に、合理的な土地利用区分、適切な労使慣行の樹立等、山村の基幹産業である林業の発展を通じて、山村地域住民の福祉の向上に貢献するという視点を明らかにすべきである。第六に、流通市場の不完全性が林業経営の阻害要因となっているので、流通業者の仕入れ、販売の共同化をはかる等、流通資本産業資本として確立させるべきであるとの意見の陳述がございました。  次に、森林組合代表横矢乾君は、まず、林業に対する基本法は山村地域住民があげて待望しているものであるので、本国会において党派を越えてすみやかに成立させてほしいとの要望があり、第一に、第一次産業としての林業及びその従事者とこれに関連ある加工流通等の事業に対して明確な諸方策を樹立し、具体的施策を実施されたい。第二に、林業を振興し、林業従事者経営確立への意欲を盛んにするためには、国は生産者の生産費所得を補償する木材の価格安定対策を強く打ち出すべきである。第三は、将来林業構造改善事業が進められようとしても、今日の森林組合の実態では受けて立つには不十分なものが多い。そのために、森林組合に対し農協と同じく信用事業をも行なわしめて、山林地域においては、森林組合が農協と一体化し得る地ごしらえをしてほしい。第四に、林業技術は農業等に比較しておくれているので、この際、林業技術向上のため、総合的な、しかも思い切った対策が必要である。最後に、林業の発展のためには、あらゆる施策に先行して、国費をもって林道の整備を急速に推進してほしい等の意見がありました。  次に、木炭代表三前職三君は、第一に、山村においては木炭生産は現金収入の大きな道であるので、所の事情によっては、広葉樹の構造改善等を行なって、木炭生産地帯を造成すべきである。第二に、林業の基本政策のねらいは林道の拡充で当面大半の目的を達成できる。このため、林道の整備拡充と搬出施設の助成を強力に実行すべきである。第三に、製炭者の災害共済制度をぜひ国の手で早急に実施してほしい。最後に、林業基本法案の早急な成立を望むとの意見でございました。  次に、林産代表柏木永一君の意見は、第一に、林業基本法による施策は、林業の生産に偏せず、製品加工の各分野に公平かつ均等に実施してほしい。第二に、現在の木材関係協同組合は農林、通産両省の行政の谷間におちいり、本格的な指導、予算的措置も受けていないので、この際、林産行政強化刷新を切望する。第三に、森林の計画生産と需給の調整をはかられたい。特に国有林は木材需給調整の主役であるべきで、このため、収支に重点が置かれている国有林経営のあり方を改める必要がある。第四に、現在の外材輸入は、輸入の時期、質、輸入経路等にも一定の方針がない。わが国の消費に向く適品及び適正品の輸入をはかるとともに、製材品の輸入に対しては、劣弱中小企業であるわが国の製材加工業保護のため、関税を課すべきである旨の意見がございました。  次に、民有林代表海瀬栄一郎君の意見は、まず、林業基本法案は、林業を産業として発展させ、これが近代化をはかろうとするものであると理解し、今国会において成立を切望し、関連法の早期整備を期待するものであるとの前置きの後、具体的施策として、第一に、林政審議会民間林業経営者を多数加えて、法の適正、円滑な運用がより一そう可能となるよう配慮されたい。第二に、林道開発の画期的な促進をはかり、林道網を整備して国内材の生産を増大し、もって外材輸入を抑制するとともに、農山村民の生活の向上に資せられたい。第三に、林業経営の近代化としては、林業会計制度の確立と事業体の法人化等が先決であるが、現行税制下では実現不可能である。また、現行の税制下では、相続のために経営計画をやむなく中絶せざるを得ない実情にもあるので、これらの是正を切願する。最後に、長期間を要する林業の生産基盤の拡充を着実に実行するため、たとえばスウェーデン、フランス等西欧先進林業国で実績をあげている林業生産基盤拡充基金(仮称)の創設をお願いする旨の意見がございました。  次に、山林労務者代表坂本寿治君の意見は、第一に、政府の林業基本法案は、かつて林道ができたため住民の負担が多くなり、怨嗟の的になったような従来の林政の姿勢が受け継がれる制度であってはならないものと思われる。第二に、大山林地主の成立の過程は不明朗であり、その経営は財産保持的かつ地域住民の生活を圧迫しているので、民主的労使関係を樹立するための雇用安定を明記する必要がある。第三に、政府の林業基本法案の労務者の福祉対策は通り一ぺんである。またその確保対策も不十分である。これでは労務者の都市への流出は防げない。山林の持つ封建性、劣悪性の排除が必要であり、このためには、国の総力をあげて奥地山村振興の施策を立てて対処せよ。第四に、長期にわたる林業の施策は年々の施策を単に国会に報告するのみでは不十分である。林政長期計画を樹立し、国会において審議せよ。第五に、現行の林業の機械化、合理化の中には、労務者の賃金削減につながる反社会的な例すらある。第六に、政府の林業基本法案国有林開放がにおっている。開放にあたっては特にその姿勢を正せ。第七に、国有林の経営は、国有林労務者の犠牲によって収支のつじつまを合わせている。国有林労務者雇用安定対策もあわせて確立せよ。第八に、外材の輸入は国内林業に悪い影響を与えている。大山林所有者の排除、公営木材市場の開設等、国際競争力をつける対策を確立せよ。第九に、林業団体整備の一環として山林労働組合の育成をはかるべきである。第十に、都道府県は、その地方森林審議会山林組織労働者の代表を入れようとしない。新設の林政審議会には代表者が入れるよう要望する。最後に、目下国会において審議中の三法案の中では、森林基本法案が最もすぐれている旨の意見がございました。最後に、同じく沢本鎌造君は、第一に、零細所有者の森林を生かす道は協業である。協業経営の拡大のため森林施業計画を活用されたい。第二に、山村住民生活向上のため、都市と山村を結ぶ交通道路並びに交通機関の整備と拡充をはかるとともに、山村住民の老後の生活安定のため、失業保険をはじめ社会保障制度の充実をはかられたい。第三に、木材価格安定の施策を講じて、山林労務者の賃金が安定する措置をお願いする。また、民有林山林労務者にも失業保険制度の恩典が与えられるよう措置されたい。最後に、山林に生きる者としては、林業基本法案早期成立を期待するとの意見がありました。  以上で各意見陳述者の陳述を終わり、引き続き各派遣委員から陳述者に対し、主として土地利用区分具体的方法、林業のにない手としての人つくり対策、木材価格対策、協業のあり方、農協と森林組合の合併問題、自立林家あるいは専業林家経営規模、農業と林業の結びつき、財産保持的大山林地主に対する対策、山林労働組合の現状、地方森林審議会山林組織労務者代表の委員として参加問題等について熱心な質疑が行なわれ、それぞれ陳述者より答弁がありました。  終わりに、このたびの会議にあたり、和歌山県当局はじめ地元関係機関から賜わりましたなみなみならぬ御協力に対しまして、この機会に深甚の謝意をあらわす次第であります。  次に、第二班の調査報告を申し上げます。  第二班の派遣地は北海道でありまして、派遣委員は、私のほか、小山長規君、池田清志君、加藤精三君、足鹿覺君、角屋堅次郎君、東海林稔君、中澤茂一君でありますが、さらに本名武君、芳賀貢君、西村関一君、松浦定義君、永井勝次郎君、小平忠君が参加されました。  会議は、六月二日午前九時より札幌市日生ビル会議室において行なわれ、私のあいさつ、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営についての説明を行ないました後、北海道大学教授小関降旗君、全林野労働組合北海道評議会議長田村武君、北海道農業協同組合中央会参事鈴木善一君、北海道木材協会会長伊藤健夫君、北海道森林組合連合会会長櫛田徳一君、北海道町村会副会長小林栄三郎君、以上六名の意見陳述者から参考意見の陳述を聴取し、質疑を行なったのであります。以下、各陳述者の意見を発言順に、かつ個人別に概略御報告申し上げます。  まず、学識経験者代表小関降旗君の意見は、第一に、林業の基本問題を立法の形でとらえるのはかなり困難性がある。目下提案されている三法案は、いずれも現状の矛盾を調整するという面で、現状に即した林業振興策としての意義があり、賛成である。しかし、特に実施策が問題であり、実効ある行政手段を十分用意して施行されることを望むものである。第二に、林業の生産性、総生産を高めていく場合、林業は、他産業のようにただ単に大規模なるがゆえに有利性が増大するというようには考えられない。一方小規模経営も将来にわたって存立する意義がある。したがって、他の経営を侵すことなく拡大したり、農業に副次的な経営として地域的、時期的考慮を払って行なうことが必要である。すなわち、それぞれの経営の自磁性の確立をはかるようにしてほしい。一面素材生産は大規模等有利性が生ずるので、社会的な分業として育成する方向に持っていくべきである。第三に、現行の国有林野企業会計制度に現存する公益面に対する支出は、これを会計的に分離して、国有林野事業を企業として確立させるべきである。第四に、国有林開放の問題は、一つの地域の社会経済の中で、林業あるいは農業のあり方を確立し、その際、国有林の役割りを考えて、開放の可否を検討すべきであり、全国的な一般論として国有林開放を論ずるのは間違いである。このことは、大山林私有地の取り扱いについても同様と考える。第五に、目下のところ、林業全体に投下される資本はきわめて少ない。これは林業資本の能率が悪く、収益性が少なく、他産業部門からの資本の移動もないためである。将来の林業の発展のため、林業部門資本流入がなされるよう措置を講じ、社会資本の充実をはかる必要がある旨の意見でありました。  次に、山林労務者代表田村武君の意見は、まず第一に、基本法において、国有林の持つ意義、使命、特に国民生活福祉上の位置づけを明らかにせよ。林業経営基本理念は、いかにしたら林業の持つ効用を少しでも多く国民に享受され得るかという施策を中心としたものでなければならない。第二に、森林の持つ経済的、公益的機能を十分に活用するためには、森林は国有、国営を基本とし、国民の福祉と林業労働者の生活の安定的向上と、木材の持続的供給を目標とすべきである。第三に、国有林経営のあり方とも関連して、国有林に対する批判も多いので、この際、国有林の基本的意義と使命を国民の前に明確にするとともに、国有林経営を国民の負託に十分こたえ得るよう体質改善をはかる必要がある。第四に、林業の特殊性にかんがみ、国有林経営計画が一時的な経済、政治情勢によって変更されるような現状は改め、財政的裏づけのある長期基本計画を確立すべきである。また、国有林の持つ公益的機能の発揮のための経費、その他民有林林業振興のための経費は、国の一般財政資金をもって充てるべきである。第五に、林業を近代産業として脱皮させるためには、林業賃金の前近代性を排除し、林業従事者の福祉の向上をはかり、もって魅力ある職場とすべき措置を講ぜられたい。この立場から、社会党提出国有林労働者雇用安定法案成立促進を望む。第六に、林業の特殊性のため、労働に関する諸法律がまだ十分に適用されていない部分もあるので、これが完全適用とともに、近代的な労務管理労使関係の確立をはかってほしい。最後に、現在審議中の三法案では、社会党案を支持する旨の陳述がございました。  次に、農業団体代表鈴木善一君は、第一に、農業構造改善事業の進展に伴い、農業経営規模拡大の方途として国有林野開放促進を強く要望する。特に北海道の場合、畜産部門の高度成長のため、国有林野を農地または草地として一そうの活用をはかる必要がある。また、この場合、利用収益権の設定のみでは真の高度利用は期しがたいので、所有権の移転を考慮されたい。第二に、この際、国有林野を農用地に造成し、または農家の経営安定のための林地として利用する等、積極的に開放利用するため、国有林野活用に関する特別立法措置を講ぜられたい。この立法には、調査費等の予算上の措置、売り渡し代金の返済についての資金上の措置、造林のための資金融通の措置等を十分配慮するとともに、道有林、民有林を農業構造改善のため提供する場合は、代替地を国有林に求め得る規定を設け、また、国有林の開放の相手方としては、当該地方における農業生産法人農業協同組合等とされたい旨の陳述がございました。  次に、木材業代表伊藤健夫君の意見は、第一に、木材業界のほとんどが中小企業であり、しかも従来この部門に対する国の発展策、助成策、予算措置はほとんど見るべきものがなかった。当面する困難な林業事情を解決する道として、この際、従来育林を主体としていた林野行政について、生産、加工、流通に至る総合施策を確立し、特に林産行政強化刷新をはかられたい。第二に、北海道木材業界の当面する問題としては、一、木材生産事業の合理化、経営の近代化、二、木材需給の調整及び木材価格の安定、三、木材金融制度の確立、四、木材流通の改善、五、木材輸送の円滑化、六、労務対策、七、林産物の輸出の振興と外材輸入対策、八、木材団体の強化等である。第三に、国有林の経営の一つのあり方として、公社等の特殊法人に移行させる等、生産性の向上と能率化を検討する時期ではないかと思う。一方、予想される木材需要の増大に対処するため、国有林、道有林の木材供給力を増強する処置を積極的に講ぜられたい。また、北海道における国有林開放の例は、開拓地等事後管理の悪い事例も多いので、前者の轍を踏まぬよう十分慎重な考慮が必要である。第四に、林業を経済事業として発展させるため、特に木材関係団体の組織化と十分な助成策を講ぜられるよう切望する。また、林業関係団体法を関連法として制定されたい。第五に、林業振興の前提条件は林道網の拡充完備であり、これを林政の主要な基本施策として取り上げられたい等であり、林業基本法早期成立を望む旨の陳述がございました。  次に、森林組合代表櫛田徳一君は、従来の林政の基本をなす森林法は資源政策の観点からのものであり、林業を営む者の立場が対象とされていない。森林組合の系統としては、最近の林業をめぐる諸情勢の変化に対応するため、林業を産業として確立し、林業従事者の所得と地位の向上をはかるための基本法の制定を要望してきたのである。社会、民社の両党からそれぞれ法案が提出されていることに対して感謝している。目下審議中の内閣提出林業基本法案は、おおむね要望の内容が取り入れられているが、森林組合の立場から言えば、林業と関連産業との関係が不明確であり、生産者中心の焦点がぼけ、あるいは価格安定の施策方向が明らかでないと思われる。しかしながら、その早期制定は、ひとり森林組合のみならず、林業界あげての要望でもあり、明確でない点は国会審議の際明らかにしていただき、また今後不備な点は関連法の整備によることとし、一方国会会期の関係もあるので、このまま可決成立することを切願する旨の陳述がございました。  最後に、町村会代表小林栄三郎君の意見は、第一に、町村長の立場として、林業の生産性の向上を通じて地域住民の所得の安定と格差の是正を念願するものであり、このため、林業構造改善事業を推進したい。しかし、この事業は、今日まで実施されている農業構造改善事業実施の成果等にかんがみ、一、事業資金は林業の長期性に見合う合理的なものであること。二、事業計画は実施者の自主的計画によるものとすること。三、実施すべき地域とそれ以外の地域の関係を考慮し、調和あるものであること。四、木材価格の安定を配慮すること。その他、民有林経営の発展のため、林業経営の零細性の克服、資本の装備の高度化と近代化、労働力の不足に対処して森林組合中心協業促進をはかる等の対策を要望する。第二に、林道は林業生産基盤の整備に連なり、その果たす役割りは重大である。特に北海道の林道の開設はおくれている。この対策として林道融資の導入、高率補助の適用等、財政上特別措置の配慮を要望する。第三に、北海道の市町村有林林業生産の大きなにない手となっており、その振興対策、特に財政的措置が必要である。第四に、農業並びに林業構造改善の成果を期すため、国有林を積極的に地元市町村を対象として活用の道を講ずべきである等であり、地域住民の生活安定の立場より、林業基本法早期制定を強く要望する旨の陳述がございました。  以上で各意見陳述者の陳述を終わり、各派遣委員から、主として林業従事者の所得のあり方、林業経営のにない手、山村地帯と他地帯の格差是正、協業のあり方、労働力確保、国有林開放のあり方、国有林の経営改善及び公社への移行、木材価格、木材加工業の振興、林道整備等の問題について質問があり、それぞれ陳述者から答弁がございました。  以上をもって調査報告を終わりたいと思いますが、現地調査は、北海道当局、地元関係者多数の御協力により、きわめて円滑かつ真摯に行なわれた次第であります。この機会に関係者各位に対し、あらためて深甚の謝意を表し、私の報告を終わります。(拍手)      ————◇—————
  3. 高見三郎

    高見委員長 この際、参考人出頭要求についておはかりいたします。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案及び稲富稜人君外一名提出林業基本法案、右各案について、審査の参考に資するため、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人の選定及び意見聴取の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時十三分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  6. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案及び稲富稜人君外一名提出林業基本法案を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。松浦定義君。
  7. 松浦定義

    松浦(定)委員 提案になっております林業基本法が、いかにわが国林業資源確保のために重要な法案であるかということについては、前回の総括質問でも大臣にお伺いし、ある程度の御答弁はいただいたのでありますが、保留しました点が相当ございましたので、本日はその面について特にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  きょうは大臣がおられませんので、政務次官が大臣を代行していただき、特に長官からいろいろ御答弁いただけると思いますが、午前中に委員長から報告がありましたように、今回、法案の重要性からかんがみまして、地方公聴会を行なったわけであります。本長期国会におきましても、地方公聴会を開いたという法案並びに委員会はあまり数多くないわけであります。したがいまして、午前中の御報告の内容を聞きますと、公述人のそれぞれの代表意見、あるいはまた、その質疑の過程を見ましても、この法案がいかにこれからその内容の検討を要するかという点が多々出てまいっておると思うわけであります。したがいまして、自後各委員から御質問もあろうかと思いますから、時間の関係上、全体に触れることはできませんが、先般は大臣の御答弁を主としていただいたのでありますが、特に時間の関係から、非常にはしょった内容を持っておったわけであります。  まず第一点として、この基本法案の性格の問題で、当時大臣のお話にもありましたように、これは全くの基本法である、したがって、これの裏づけとしては、森林法並びに国有林野法等関連する法律があるというふうなお話でございましたが、その各役割りにつき、あるいは法域等につきまして、長官のいま一応の御説明を承りたいと思います。
  8. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 この林業基本法が提起をされました問題意識の中には、国民経済の成長発展に伴うところの木材需要の増大に対して、国内の林業生産がその供給の面で国民経済的要請にこたえていないという点、これに対して、国内の生産体制を各般にわたって整備をいたしまして、そして国内の自給度を高めていかなければならない。現在供給の不足ということから、価格の非常な高騰を来たしまして、そしてその結果として、開放体制との関係におきまして、相当な外材輸入を見ておるわけでございます。こういうような状態ではたしていいのかという、生産を増強していくという面から見ましたところの問題意識がございます。それからその次は、そういうような生産力といいますか、生産充実をはかって、自給度の向上を目途とするためには、生産の構造の状態を改善していく必要がある。御承知のとおりに、わが国の林野保有のあり方といたしましては、全部で二百七十万戸といわれております。その林家の九割にも及ぶものが五町歩未満の零細な保有のしかたである。しかもその林家は、またほとんどが農家でもあるというような状態からくるところの経営の非合理性といいますか、そういう面に問題があるわけでございます。それから一方大山林所有者につきましては、これは現在の状態はあくまでも財産保持的な山林の所有のしかたをいたしておりまして、企業的にこれを運営していくという状態にない。そういう面の是正をはかることによって、いま申しました生産力を増強していくという点に対応していく必要がある。それからさらに、いまも申しましたように、きわめて零細な林地の保有の状態であるだけに、この面から所得の点がきわめてまた劣弱であるというような問題もございます。いずれにいたしましても、そのようなもろもろの問題点の中から、林業というものを産業の部面で見直しまして、そうしてこれを経済ベースに乗せて、いまの諸問題の解決をはかっていかなければ、わが国林業の将来は、縮小再生産といいますか、その将来は憂慮されるというところに問題意識がございまして、要するに、経済の政策の面に立った今後の林業の政策を考えていくべきだというのが、その問題の提起でございます。  それに対しまて、現在の森林法は、御承知のとおりに、明治三十年に制定を見たのでございますが、その前年の河川法の制定、それからその後の治水の面の法律の制定とともに、いわば治水三法といわれた、そういう歴史的過程から見ましても、森林をあくまでも公共的、公益的機能を有するものとしてこれを規定いたしまして、それの機能の活用、それの機能の確保、この面から国土の保全、治山治水という面を重視いたしまして、そしてその目的を達成するために必要な限りでの基準的な立法規定をいたしておるわけでございます。この中に、その後、森林組合なりあるいは林業技術指導の面なりの規定が沿革的に加わってはまいりましたけれども、あくまでも森林の公共的、公益的機能を規定しているのが森林法の趣旨でございまして、そういう森林の機能を確保していくことについては、これは現在、さらに将来にわたって、言うまでもなく、ますますその重要性を加えているわけでございまして、それは将来とも重視をしていかなければならない面でございますが、一方の側面であるところの経済的な面で林業育成していくという面に着目をいたしまして、そういう趣旨から、林業基本法の新しい制定を提案しておるという次第でございます。
  9. 松浦定義

    松浦(定)委員 むろん、いまお話の問題については、二法その他の関係法律で強力にこれを推進することができるわけでありますが、基本法はあくまで基本法でありまして、いまのように財産運用の面を、企業的な面を強化するということでありますと、やはりもうかる国有林事業ということに実はなろうかと思うわけであります。したがって、この基本法審議し、あるいは結論を出すにあたりましては、相当そうした面を国民全体が理解するように十分考えなければいかぬのでないか。あとでお伺いしたいと思いますが、たとえば最近起こっております開放問題について、そういう考え方に便乗するような傾向がなしとしない、私はそういう心配もするわけであります。そこで、最近産業開発のいろいろな面で、国有林、それから民有林も含みますが、そういう林野地帯に対する構造改善といいますか、いろいろなものが着手をされているわけであります。したがって、森林、河川における災害等が激増してくる、こういう面がありますが、これはやはり国土保全の意味から、十分これに対して対策を立てなければならぬ。本法案の内容の中にも、多少そういう点については、国土保全ということについて触れておりますけれども、しからば、この目的あるいは政策において、どういうようにこれを進めようとしているのか、そういう点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  10. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 これをどういうふうに進めるのかという御質問は、国土の保全、したがって治山治水の面のことになろうかと存じますが、そこで、林業基本法におきましては、これは先ほども申し上げましたように、林業産業として見る、経済ベースに乗せて、これが発達改善されるように進めていこうという考え方でございまして、そのねらうところは、林業生産の増大なり、あるいは林業生産性向上なり、さらには林業従事者所得の増大なり、そういうことになるわけでございます。そういうようなそれぞれの目的が達成されること自体が、その結果として、また国土の保全あるいは治山治水の趣旨にかなうようになるという整理をしておるのでございまして、それから一方、森林法の面から申しますと、先ほど申し上げましたように、国土保全、治山治水の森林の公共的、公益的機能を確保するための必要な基準的事項をそれぞれ規定をしておるわけでございます。具体的には、これは現在の治山治水緊急措置法に基づくところの治山十カ年計画等によって、その保全の目的が十分に達成されますように進めているわけでございます。
  11. 松浦定義

    松浦(定)委員 むろん、この国有林は、御承知のとおりに、国全体の共有の財産でありますだけに、その影響するところは非常に大きいわけであります。特にいま説明されました国土保全ということになりますと、やはり下流で農業を営む人、あるいは中小企業、漁業にまで影響するわけでありますから、この問題については、私はもっと積極的にやはり重点政策を加えていかないと、この国有林というものに対する国民の信頼感というものが薄れてしまう。そういうことでありますから、十分この点については考慮を払っていただきたい、このようにつけ加えておきたいと思うわけであります。  そこで、先ほど申し上げましたように、前回質問をいたした関連もございまして、特に先般も公聴会等でいろいろ意見が出ましたが、どこへ参りましても、やはり山村農家、つまり林業農業との兼業をやっておる農家に対する所得の増大等が問題になるわけであります。林業構造改善という表現を使っておりますが、農業林業とは、確かにこれは私は相いれるべき性格だと思っております。したがいまして農業基本法が示すような農業構造改善というものが、林業構造改善の中ではたしてできるかできないか、こういう問題は、私は重要な問題だと思うわけでありますが、いま政府原案が考えておりまする林業構造改善というものは、どういうような考え方で進めようといたしておりますのか、法案の内容では、それをはかるために積極的な活用というような表現を使っておるのでありますが、その活用の範囲等についても、これは相当拡大解釈をする人もあるようであります。政府がほんとうに考えておるこの活用という即興について、構造改善とどういうふうに結びついていくのか、こういう点をひとつお聞きいたしたいと思います。
  12. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまの初めの御輿間でありますところの、農業という中で、農業林業はあわせ営まれ得るはずだというお話もございます。それからまた、その両方をどういうふうに考えているのかというお話がまず第一点のようでございます。  そこで、農業構造改善事業の中で、林業につきましては、農業基本法の二十二条で農家があわせ営む林業という規定が一つございます。この点につきましては、その趣旨は農業構造改善の上から、特に山村地帯の農業構造改善等において、いわば作物の一つとして、たとえばシイタケを考え、あるいはその他の山村で栽培の適当な林産物、そういうものを考えるという段階がございましょうし、それはさらに進んで松なり杉なりにいく場合もあるかもしれません。あくまでもそれは農家の作物の一つとして考えるということであるのに対しまして、林業構造改善の考えております趣旨は、これは先ほども申し上げましたような、林業産業としてその発達改善をはかっていくという趣旨にあるわけでございますし、そのねらうところは、林業の総生産の増大であり、生産性向上であり、所得の増大であるということでございますから、立脚する立場としては、それぞれの立場で考えられておるということになろうかと存じます。そういうふうに林業の構造改善につきましても考えてまいりたい、こう考えておるのです。したがって、この林業構造改善を進めていこうとする場合は、あくまでも熱意のある林業従事者、そういう人たちがまじめに林業改善をはかって、これを産業として大きく伸ばそうということになりますと、やはり相当に林野率が高く、またそういう林業経営の相当な萌芽というか、そういうものもすでに存在をしておるということも必要でございましょうが、特に林野率が高い、さらに民有林のその中に占める割合も高いというような地域で、その地帯のまず公共的な投資、特に必要なのは林道であると思います。林道等の積極的な開設をはかりながら、その林業経営のための適正な保有規模、この保有規模の拡大をするということを考えたり、あるいは近代化をはかるために機械化を導入する、あるいはまたさらに必要な造林の新しい技術を導入してまいるということで、そこの林業の構造の改善をはかってまいりたいということになるわけでございます。そういうような熱意のある、意欲のある林業従事者に対して、市町村あるいは地方庁、政府ができる限りの指導と協力と援助の手を差し伸べようという考え方に立っておるわけでございます。  そこで、林業構造改善の考え方でございますが、それに関連して第二の御質問であるところの、国有林活用についてどう考えるかということになるわけでございます。国有林活用につきましては、いま申し上げましたようないろいろな条件のそろっております林業構造改善の可能性のある地帯、その地帯で特に林地の保有規模の拡大、それを付近の入り会い山の利用であるとか、あるいは個々人間の林地の交換分合であるとか、その他、公有林野の利用であるとかいうこととあわせまして、そこに国有林野が近接しておるというような場合に、その国有林野のたとえば部分林方式によるこれが活用であるとか、あるいはまたそれの希望がありますれば売り払う場合もございましょう。あるいはまた希望があれば貸与する場合もあろうかと思います。ただ、私どもの考え方といたしましては、国有林野活用する場合には、とにかくそこにりっぱに林業経営育成されていけばいいことであります。そのことが林業従事者のためになるわけであります。そこで、いたずらに土地の零細な細分化ということに終わるような売り払いは、むしろ従事者のためにも避けて、部分林の活用ということが望ましいのではないかという考え方には立っております。しかしながら、その利用の方法については、その希望に応じて考えていくという考え方であります。
  13. 松浦定義

    松浦(定)委員 農業構造改善農業基本法の中から出てまいりまして、やはり自立農家を育成するということが主眼である。林業基本法でありますと、やはり同じく構造改善でありますが、いまお話しの内容は、個人を対象としないというふうに解釈ができるようになっておるわけであります。やはり山村であろうとも、先ほどからも数字がちょっと出ておりましたが、ほとんど兼業農家といったものが多いということでありますから、自立農家ということになると、やはり個人を中心にした構造改善というものの要請があろうと思います。そういう場合には、この構造改善に対する活用は、農業基本法の自立農家を育成するというような全く個人を対象としたものとは、違うのかどうか、こういう点を一応お聞きしたいと思います。
  14. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 ただいまの私が申し上げました御説明では、決して個人を相手にしないということではないのでございまして、熱意のある林業従事者、こういうふうに申し上げておるわけでございます。それで、そういう個々の林業従事者のために、その地帯の林業構造改善をはかっていこうということになるわけでございますが、ただ、先ほど来申し上げてもおりますように、とにかくその所有の規模が零細である。そこで、この保有規模をできる限り拡大をする方向でいろいろな措置を講じていきたいという考え方から、国有林野活用ということも出てくるわけでございますが、それにしても、やはり継続的な林業経営を考え、そうして計画的に収入が入るようにしていくというためには、個々の林業経営者の間で何らかの協業の形式等が望ましいのではないか。いろいろな林業経営上の作業を行なってまいります場合、そういう零細規模の林業従事者、そういう人たちの間で、それぞれに適した協業の形が考えられていいのではないかというふうな考え方でございます。  それからその次は、自立農家というような考え方に対して、それに相対応するような考え方があるのかという御質問かと存じます。それで、林業従事者のほとんど大部分が農家でもある。そこで、その農家の収入から見ますと、農業収入のほかに林業収入がある。農業収入の補完的な形で林業収入というものが得られていくというのが実情でございます。そういうような林業経営の状態は今後も引き続き存在するだろう。一方また林業経営の面では、農業と違いまして、相当な大規模な山林保有者というものもございます。そこで、大規模な規模の中には数千町歩に及ぶ保有者もございましょうし、あるいは五町歩に満たない保有者もある、非常な幅があるわけであります。私どもの考え方といたしましては、それぞれ保有の規模の長所を生かしながら、林業生産改善をはかっていく。したがって、一つ林業経営として、どの程度の適正規模の所得によるところの自立林業というような考え方はとっていないということでございます。
  15. 松浦定義

    松浦(定)委員 ちょっと時間の関係がございますから、長官にお願いしておくのですが、答弁のほうを少し短くしていただいたほうがかえっていいのではないかと思いますから、その点よろしくお願いいたします。  いまお話しの、自立林業というものは、農業と違ってなかなかむずかしい、これは確かにそうだと思います。したがって、いま数千町歩に及ぶものもあれば、五町ないし十町程度のもの、こういうお話でありますが、大体一戸当たりの保有面積といいますか、そういうものの規定がないと、活用する場合の限度がむずかしくなるのではないか、私はそういうように思いますが、片一方に数千町歩あるから、こちらにもまたそれと同じように何百町歩もそれに対して活用させるということが、個人の資格においては、いまの制度の中ではちょっとむずかしいのではないか。そういう点で、率直に言って、一戸当たりどのくらい山村農家として保有させたらいいかということは、地域的にも違うし、あるいは仕事も違うと思いますが、その点をひとつ明らかにしていただきたいことと、それからもう一つは、農業ならばやはり一年に二回も三回も収入の道があるわけであります。何毛作もできるわけであります。しかし、林業の場合は、木を植えればもう二、三十年収入がない。しかし、そのほかに流用するということになりますと、これは酪農あたりにして採草地、放牧地等にすればまた別でありますが、そういう場合の保有反別ということになりますと、また規模が大きくなろうかと思います。そういう点についても、やはり他産業との関係等が出てまいりますが、そういうような方針についてはどういうお考えを持っておられますか、お聞きした  いと思います。
  16. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 この程度の規模を適正規模にするということにつきましては、いま申し上げましたように、規定することはなかなかむずかしいわけでございます。いわゆる家族労働力に依存しておる場合が多いわけでございますから、そこで、そういう労力との見合いにおきまして、とにかく継続的に林業経営が行なわれる、そうして計画的に所得があるというような程度、そういう程度をまず考えながら改善をはかっていきたい、こう考えている次第でございます。
  17. 松浦定義

    松浦(定)委員 いまの御説明の中で、活用という範囲でございますが、これはやはり俗にいまいろいろ世論の中に出ております国有林開放ということにもつながろうと思うのです。この中から出てくると思うのです。先ほどのお話でありますと、一部開放する場合もあるというお話でありますから、開放という場合になりますと、これはやはりそんな個人を相手にするのではなくて、相当集団的なものになろうと思うのです。現在いろいろな動きの中の開放問題については、市町村有なりあるいはまたその他の団体有というようなものでもって開放運動がなされておるのでありますが、国有林をこれからの将来画期的な林業振興中心に置こうという構想の中で、この開放問題、あるいは活用の範囲が度を過ぎますと、やはり国有林というものがその主体性をなくしてしまうのじゃないか。特に日本のように非常に細長い地帯にあって、裏と表からその開放が進められますと、まん中に残るのは、先般も北海道で調査しましたが、大雪山のようなああいうところのものだけしか残らないといったようなことになってしまうと、やはり国有林としての価値というものがそこなわれるのじゃないか、私はこういうふうに思うのであります。率直に言って、いま申し上げましたような形で、この活用開放につながり、現在動きつつあるこの開放問題につきまして、政府としては、先般も農林大臣は、当然そういうことは考えていないということを言明しておるのでありますが、幸いきょうは政務次官がおられますので、この国有林開放の現在の動きに対して、率直な御所見を承っておきたいと思います。
  18. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 国有林開放については、非常に慎重に取り扱うべきである。もちろん、この国有林活用ということにつきましては、先ほど長官からお答えをしておるような次第でございますが、世間でいわれておりまする活用からもう少し広く前進いたしまして、開放ということばを使いますると、これはきわめて慎重に考えていかなくちゃいかぬ。と申しまするのは、国有林のみならず、森林が持つ使命は、非常に大きな役割を果たしておる。ただ、今日農業構造改善のための規模を拡大するとも、あるいは林業を構造改善によって拡大をしていこう、こういうこともけっこうであるし、また考えていかねばならぬことでございまするが、しかし、いま申し上げましたように、それと相まって、国有林開放ということは、私としては、きわめて慎重に考えていかなくちゃならない。特に先日来、いろいろの方面から、国有林開放ということが非常にやかましく言われております。また陳情等も受けております。これらの考えておりまする国有林開放というものが、全体の——松浦先生からの御意見にも出ましたように、言い過ぎかもしれませんが、便乗的なものがないわけじゃないのでありますから、そういう点を考えていかなくちゃいかぬ。たとえて申しますると、町村財政的に非常に困っておるから、町村開放してくれないか、地元にというような話がございまするが、市町村財政的に苦しんでおるから、国有林開放してその町村財政を助けるなんということは、私は理屈にならぬと思うのです。何となりますれば、これは非常に長期資本が寝ると申しますか、非常に長期を要するので、たださえ財政が苦しい町村が山を持って、そうして長くかからねば金にならないようなのを開放されて、造林して、それを財源に充てる、町村財政に充てるなんというのは、これは理屈にならないと私は思うし、またこういうことは政府としてはほかのほうで考えていくべきだ、私はそう思っておるのであります。  だから、活用につきましては、長官の申し上げましたように、これは十分考えていく。国有林事業使命との調整をはかって、そうして十分考えてはいきますし、また受け入れ態勢そのものが完備しておるかどうかということも慎重に調べてやりますが、一般にわかりやすく申しますると、ただいま御指摘になりましたような開放ということにつきましては、私は慎重に、便乗のようなことのないように考えていく、できることならば便乗的な開放は断じてやらないという方針を堅持してまいりたいと思っております。
  19. 松浦定義

    松浦(定)委員 次官の積極的な対策についての御意見には全く同感であります。しかし、私ども社会党としても、この法案を出しておる中で示しておりますように、必ずしも、この開放活用ということばを使っておりませんけれども、開放については絶対反対をするものではないわけであります。現在日本の農業者が非常に困っておる、山村が特に困っておるところから、これは何とかして平地農業と同じようにやっていきたい、そういうことは農業基本法の中からもずいぶん主張しておりますので、ときがあればこの問題については積極的にその態度は表明しておるわけでありますが、いま次官のお話にありましたように、われわれとしても、便乗されたり、あるいは一部の者に独占されるような開放は断じてならぬ。これは、やはり国有林の利用計画というものは、国土総合開発利用の一環として、ほんとうに困る者に対してやる、全く活用程度の範囲であるならば、これはわれわれとしても反対はしないのでありますが、たとえばこの活用を、先ほど申し上げましたように、拡大解釈をいたしますと、これは開放にもつながっていくのではないか、こういうことの心配がございましたので、いま積極的に政府の御意見を聞いたわけであります。それにいたしましても、最近の動きは、なかなかここだけの考え方ではどうにもならない点が出てまいるようでありますから、いまの次官の答弁を大臣の答弁として私どもも受け取りまして、この問題については全く遺憾なきような処置をすべきである、こういうふうにひとつ理解をしていただいておきたいと思うわけであります。  さらに、山村におきまする地域格差というものは当然出てまいるわけであります。先般も大臣にお尋ねいたしまして、この問題については、山村振興を基調として何とか善処をしたい、こういうお話でありますが、やはり零細な山村農家でありますだけに、これは非常におくれておりますから、この問題については、私は、積極的に優遇の措置をとってもらわなければならぬと思うわけであります。しかし、いままでに、この一例として申し上げますが、これは開放問題ともつながりますが、いま政府の考えておられる活用の範囲というものは、現にすでに終戦後全国的に入植計画を立てました開拓者によって、これは現実に行なわれておるわけであります。その開拓行政というものが今日不十分のために、そういう山地を切り開いて農業をやっておる地帯の開拓者はまことに哀れである。しかし、今度のこの活用がその上をいくようなものになってはならないし、あるいはまた逆に、そういう戦後開拓した地帯におけるものについては、こういう法律がないから非常に虐待的ではあるけれども、今度法律ができたから、これからのものはそういう轍を踏ませないということで、これから恩恵に浴する者だけが非常によくなるということになってもならないと私は思うのです。だから、こういう点については、私どもの体験いたしますところでは、現在入植しております開拓者、これはやはり山林あるいは原野地帯に入った者は苦しんでおる。既存の土地に入った者はどうにかこうにかやっておる。そういうことを考えてまいりますと、山林原野を開墾し入った開拓者が、いままでの法律の中ではいかに苦しんでおったかということがわかるわけであります。先般、私は、開拓問題で次官といろいろお話をし、大尉にも話しましたが、この問題を解決しなければ、林野の活用についてどのように政府がいまこの基本法の中での文章的な説明をされましても、現実の問題にそれを当てはめるということになると、それはいま申し上げたような問題があります。ですから、こういう問題について、今日までどういうような開拓、入植についての土地利用等が進められておったのか、あるいはいま申し上げましたように、これからの問題については、この問題を含めて、そして過去の入植者行政を含めて、今度の林業基本法の中では最大の努力をするし、そういうことは心配ないことになっていくのか、そういうことがこの法案の中で明確になっていかないと、基本法としては意味がないと思うのですが、この点をひとつ、特にこれは政務次官から承っておきたいと思います。
  20. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 まず、ことばの足らなかった点を補足させていただいて、お尋ねにお答えさせていただきたいと思います。  さきに私からお答えした開放問題でございますけれども、御指摘のありましたように、あくまで私どもの考え方は、無計画な、しかも特定の者が利益を受けるというようなおそれのある開放ということは、断じてやらない、慎んでいくということでございますので、十分これは考える。あくまで国有林は、農業構造改善林業構造改善の趣旨に沿った範囲の活用ということに重点を置いていくというのでございますから、先生の御意見政府の考えておりまする意見というものは、私は相違はないと考えております。また、これらのやることにつきましては、先回も御指摘があり、川俣先生からも強い御要請があったことを私は承知しておるのでございますから、十分考えてまいりたいと思います。またそのためにも、どうしても林業基本法を早くひとつ制定していただき、やはり林業構造改善の中において国有林活用されていくということもはっきりしてまいりますので、ひとつ法案審議のほうも十分御配慮願いたい、こう思っておるのであります。  次に、お尋ねの向きでございますが、山村地域格差是正をはかるため、環境整備、その他山村振興推進するべきである、特に前のものとあとのものとの関係をバランスのとれるようにしてやれという御意見であります。私はその御意見もっともだ、こう考えておるのであります。また、そうでなかったならば、せっかく今度林業基本法をつくってこれを通過さしていただきましても、意味ないものになってまいりまするので、先生のお考えのように運営をしていくことは当然だ、こういうように私は考える。また法律はそういう精神でおりますことを十分御承知願いたいと思います。そういう意味におきまして、山村においての入植者、開拓者、特に農業に携わっている人の入植の関係は、これは非常に慎重に考えていかなくちゃなりませんが、これらが林業に重要な地位を占めておることも、これは単に農業だというだけでなくして、林業との関係も私は大いに持っておるということを考えなくちゃならないと思います。そこで、今回提出をいたしました林業基本法そのものが重要な役割りを持ってくる。私は我田引水的な考え方とは思っていない。この国有林開放問題は、無計画な開放であってはならないので、あくまで活用をしていくんだ、それから山村におけるところの入植者、開拓者、前からのものもあとのものも一緒になって、そして新しい環境をつくっていくためにも、こうした法案をぜひともひとつ御通過願いたいという考え方であります。法の精神はそこにあることを御了承願っておきたいのであります。
  21. 松浦定義

    松浦(定)委員 活用拡大させないという慎重な御意見について、私ども全くそうありたいと思うわけであります。  そこで、この林業構造改善のために一番支障になるのは、やはり何としても現在所有されておる民間の民有林というものが相当問題になるのではなかろうか、私はこういう考え方を持っております。農地につきましては、農地改革ができまして、無条件で解放されまして、現在公平な立場で自作になっていそしんでおるという現状が一応見られるわけでありますが、その場合においてもひとしく問題になりましたのは、山林解放が同時に行なわれなかったことによって、今日農業の中でも非常な格差がある。今度こういう点に手をつけられまして、林業構造ということができますならば——そういう解放の対象にならなかった膨大な私有林を持っておられるものに対しては、政府として法律上規制することは、おそらくいまの場合はないと思います。しかし、これが構造改善ということになりますと、どうしてもそれを国土全体の中で見なければなりませんから、問題になると思います。たとえば、今日オリンピックで道路をやっておりましても、強制的に土地収用法でもってどんどんと家を追っ払って、どこへでも道路をつけていく。しかし、山だけはほんとうにこの法律に基づいて活用して、自立する農家、あるいはそういう地帯においてりっぱな事業をやろうとしておるにかかわらず、そういうものが依然としてある場合に、該当させる法律がない。しかし、林業基本法は必ずしも国有林だけの基本法ではないと思うのです。国有林基本法でありませんから、民有林に持っていってもこれは適用されると考えるが、しかし、強制的にこれをどうするということはできないと思うのであります。そういう点について、地方公聴会の中でも、何とかこういう点の活用に公平な配慮をしてほしい、もしそういうふうな地主が必要とするならば、国有林でもって代替をしてもらいたい、そういうような意見が出ております。しかし、そういうことも、先ほど長官のお話の中で、交換分合ということが出ておりましたから、私はそういうものに該当するのではないかと思いますが、一たび手をつけますと、まだ一般から開放運動を叫んでおるときに、実際取得をしておる、いままで自分の力で自分の土地を守ってきた、そういう私有林の人ですから、そうおいそれとそれに応ずるとは考えられない。しかし、そのことが、構造改善全体に対してばく大にその人を利せしめるということになるならば、この法律は決していい結果が出てこないのではないか。それなら、森林法だけでもけっこう間に合っていくということになると思いますが、そういう点についてどういうような考え方を持っておられますか、お聞きいたしたいと思います。
  22. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 ただいまのような御意見、先回、私も委員の先生の方々のお供をして公聴会の意見を聞いたのですが、そのときにも、ただいまのようなお話が出ました。また、林業構造改善がそれを推進するために、あえて特定のものを利するような結果になってはならぬということは当然と考えますので、これらの運営につきましては、事務当局も慎重に考えておるようであります。そういう点につきまして、事務当局が今後そうしたものにぶち当たったときに、どのように処理していくかという方針をここで当局者から御説明させていただきますから、御了承いただきたいと思います。
  23. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまお説のような大規模な山林所有者である場合、これもまた林業基本法の趣旨に沿ったにない手の一つとして、りっぱな近代的な林業経営を進めていくように指導をしてまいりたい。しかしながら、その山林所有者が依然としていわゆる資産保持的な保有林にとどまっておるというような場合には、そういう所有者の保有林野の一部について部分林等の設定をするように、それぞれ行政指導を進めてまいりたい、こういう考えでございます。
  24. 松浦定義

    松浦(定)委員 この問題は、相当拡大されて問題になろうと思いますので、本法案の中でずいぶん検討をしてからでないと、結論は出し得ないと思うわけであります。したがいまして、先ほど申し上げました現在持っておられる私有林保護は、極端に申し上げますと、自分のものとして一番りっぱな森林を持っておられるのですが、かえって国有林、あるいはまた公有森、町有林等もそうですが、立ち木は切りますけれども、植栽になりますとわりあい手が抜ける。しかし、私有林となりますと、そうでなしに、切るにも慎重に切りますし、あるいは育てる場合においても、苗を植える場合においても、国有林その他とは比較にならぬ努力をしておりますから、なかなかいまの部分林設定についてもいろいろ条件が出てまいると思いますが、こういう点、私は必ずしも私有林をそのままやるべきだ、そういう意味で申し上げておるのではないのでありますが、そういう人に迷惑がかからない斜度で国がやはり活用の方針を明らかにしていく考えであるかどうか。そういうのでないと、ほんとうにこの基本法というものが何のためにできたのかということになりますので、これはいずれまた議論は相当残っておろうと思いますけれども、慎重に取り扱っていただきたい、このように考えておる次第であります。  次に、林業に従事する労働者の問題でございますが、これは今日まででも相当農業従事者が季節的に労務に従事しておるわけであります。あるいはまた専従されておる人につきましても、それぞれ林業近代化等で配置転換等がなされておるのでありますが、先般もそのことについては善処をしておる、こういうお話でございましたから、これは詳しく内容についての説明は省くといたしましても、今度の林業基本法制定する場合において、これから従事しようとする人、あるいはまた現在従事しておる人、そうした者に対する待遇の改善といいますか、そういう点については相当配慮をされなければならぬと思うのであります。  そこで一番問題になるのは、農業についてもそうでありますが、たとえば季節的労務者を入れまして、それが帰っていくときには、従来ずいぶん問題になりましたが、最近は失業保険対象にすることができるわけであります。しかし、この林業の場合においても、そういう季節的なものについては失業保険対象に——私もこれはまだちょっと調査不足でありますけれども、全部対象になっておるのかどうか、あるいはこれからこの法案制定する場合において、後に起こるそれらを含めた雇用について、その点についてはどういう方針が立てられておるのか、この点を承っておきたいと思います。
  25. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまのお話ごもっともでございます。そこで、国有林について申しますと、いまの社会保障制度としての失業保険の問題は、これは十分に行き届いているわけでございます。それから民有林事業については、これはやはりその事業の季節性というような面から離職率が高いということがございまして、この適用を受けていない面がまだ少なくない。現在離職率五〇%未満というようなそういう実情からいいましても、林業について当然適用のほうへ任意適用から移行するような措置を考えていかなければならぬ、こう考えているわけですが、そのためには、また林業経営そのものについて、通年的な作業で、しかもお話のございました、労務者について雇用の安定があれば、当然そういう社会保障というところに持っていくわけでございます。したがって、林業経営の面からも研究し、一方また失業保険等の適用が当然受けられるように進めてまいるということが必要である、こう考えております。
  26. 松浦定義

    松浦(定)委員 いまのお話ですと、国有林従事者の場合は該当するが、民有林の場合は該当しない。しかし、私は、どこであろうとも、やはり林業に従事する者がそういうような国の法律の中で保護されないということはおかしいと思うのであります。それはやはり民有林の者の力がないからできないのか、あるいはまた国有林というものにはそれだけのことをするけれども、やはり民有林の場合はそれができないのだといったような、そういう通年的な問題が残っておるのか、この点はわかりませんが、もしそういうことが明らかであるならば、いろいろ問題がありましても、もう少し早くこれを取り上げて善処をされておると思いますけれども、この機会にこの林業基本法制定して、そういう民有林の所有者に対しても交換分合その他をあるいは強要しなければならぬ時代がくる。そういうときに、それに携わっている実際のにない手、この法案はにない手ということをいっておりますが、私は所有している人がにない手とは考えていない。実際にその運用に当たっているのがにない手と考えておりますが、そのにない手に対して、少なくとも国有と民有と差がつくということは断じていけないと思いますので、この点については、本法案審議の中ではっきりその方針を打ち立てていただきたいということを強く要請いたしておきたいと思うわけであります。  それから、現在の国有林事業の中で、直営でやっておられるのがたくさんあります。しかし、これが構造改善というか、近代化というか、最近承りますと、相当数これが請負に切りかえられている。いろいろな意味でそういう問題があるようでありますが、なぜ請負にしなければならないのか、直営でもってなぜできないのか、こういう点に何か問題がありましたら、簡単に御説明願いたいと思います。
  27. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 国有林野事業を請負に出すという場合は、事業の分量が平年よりもふえた場合であるとか、あるいはまたその事業が臨時的なものであるというような場合でございまして、請負にするというその一般的原則につきましては、組合側とも了解をつけて進めているということでございます。
  28. 松浦定義

    松浦(定)委員 組合と話し合いをして進められるということは当然だと思うわけでありますが、私のお聞きしているのは、直営ができなくて、これを請け負わせる、これはそうしなければ、結局損をするから、そうすることになるのだと思いますが、そうすると、請け負ったほうでは、これはもうけなければならぬ、こういうことになろうかと思います。そこで、直営の場合はなぜもうからないのか。従事する者は非常に安い賃金でやらなければならないのか。民間の場合はある程度これが満たされるということになるわけであります。満たされなければ、私は請負はやらないと思います。今日これはもう直営で当然やらなければならぬ仕事ですが、請け負おうというのには、そこに利潤があるから請け負うわけです。そこで、一番問題になるのは、そこに働く労務者だと思います。その働く場合には、直営でやるよりも、時間的にも、その他質的にも、相当強い労働に耐えるといいますか、そういうふうにしてでも何とか賃金とあわせてやっているのではないか、こういうふうに考えるのです。もしそうだとしますと、これはやはり労働基準から見ますと、違法的なことになる。しかし、そうしてでも生活のためにやらなければならぬというふうな労働者が出てくるわけであります。ですから、率直に申し上げますと、国がこの国有林というものを保護しておるのでありますから、乱伐するわけにもまいりませんし、損してでもやるということはできないと思いますけれども、少なくとも民間に請け負わせて、それによって過重な労働をしているような請負は適当でないと思うのですが、そういう傾向があるのかないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  29. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまお話のような、請負に出して、労働強化をやって、そして安く上げるというような考え方で請負に出しておるということはございません。
  30. 松浦定義

    松浦(定)委員 そうしますと、直営でやるべきを請負でさすということについては、やはり労賃の面からいっては何ら変わりがない、こういうふうに解釈してよろしいわけですね。
  31. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 直営の場合には、職種別、地域別にそれぞれ標準賃金がございまして、それによってそれぞれの作業員は格付けされる、そして給与を支払うということでございます。一方それの基準になるものは、やはりその地方地方の職種別、地域別の地場賃金がもとになるわけでございます。そういう意味では、請負に出す場合の請負の予定単価の積算にあたりましては、やはりその地方の地場賃金が基礎になるということでございます。
  32. 松浦定義

    松浦(定)委員 私の質問の本旨は、やはり近代化あるいはまた構造改善という名のもとに、整備をされる場合が相当あるわけです。そういう場合の配置転換についても相当苦慮をされておると思うのです。わりあいと簡単にそれができるのならいいのですけれども、相当組合の要求に対して無理をしていってやっているんだというふうに、私どもが受け取れる点がたくさんあるわけです。もしそんなにしてやるのなら、やはり請負をさせないで、直営でやれば、必ずしもそういうことはやらなくてもいいのでないか、そういうことをしてまで国有林の管理を無理をしなければならぬ状態ではないだろう、こういうふうに私は考えます。そういうことを言っておるのでありますが、この問題につきましては、やはりいま御答弁の点で、そうした配置転換等については万遺憾なきを期する、こういうことでありますけれども、直営とそうした請負の場合の問題については、まだ相当議論する点があろうかと思いますが、きょうは時間の関係もございますから、この点だけは保留しておきたいと思います。  最後に、もう一点だけ、現在の国有林野事業特別会計でありますが、これは行政経営とが一体となっております関係から、その勘定区分をやはりどうしても明確にして、行政にかかる勘定については国の一般会計の中から繰り入れるべきではなかろうか。昔から林野関係については独立採算制と言っておりましたけれども、今日の日本の現状は、やはり独立採算をやってやるというようなことでは、全体の国の予算の運営はできないと私は思うのです。また、そういうことをやり得ないわけなんです。たとえば国鉄が独立採算でやろうといたしましてもなかなかできないので、公社になって、いろいろの面もやはり国がめんどうを見る。その他いままででもそういう例があろうかと思います。たとえば米価の問題等につきましても、食管会計という名ではやっておりますけれども、これはやはり消費者に直接そういうことであるいは恩典を受けさしたり、迷惑をかけるのではなく、一般会計からやるというので、国も一千億を補てんしたという実例があるわけであります。いまの林野整備をし、基本法をつくって拡大をしようというときに、やはりそういう行政面については一般会計から繰り入れてやるのだというくらいに、国有林というものは国全体のものだという意識をやはり国民が理解をしてもらう、一つの例として、そういった点が妥当でなかろうかと思うのですが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  33. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまお話のございました国有林野事業の中で、一般会計からの受け入れによる財源によってやったほうがいい分があるのではないかというお話でございますが、そういう点につきましては、十分に検討に値する問題として、検討を進めておるわけでございますが、ただ、現在までは国有林野事業の蓄積されました経費その他でこれが支弁をされてまいっておるということと、それからそういうような事業が、やはり国有林野事業民有林への協力という意味でその必要があるという、累次の国会におきます法案成立等の際の附帯決議で要請されておるという面から、民有林協力をしてまいったわけであります。
  34. 松浦定義

    松浦(定)委員 以上で本日は質問を打ち切りたいと思います。
  35. 高見三郎

  36. 玉置一徳

    玉置委員 一つ二つ、参考にお伺いしておきたいと思います。  一つは、林野がはたして林業基本法にいうごとく、経営的に民間で小数の面積でやりまして、経営が成り立ち得るものかどうかということは、非常にむずかしい問題だと思うのです。それよりも、林野というものが国土の保全に対して持つ非常な大きな意義を考えますときに、ただいまも他の委員さんから御発言のありましたとおり、その他の財政のほうから持ち出しても林野というものを造営をしていくことが非常に必要だと思うのです。そこで、国有林野開放ということが、あたかもブームのように叫ばれております。そのこと自体を私はどうこう言うのではありませんけれども、国有林野をこま切れのごとく分散して分かつということが、木を切ってしまった後はあまり顧みられない結果を招くおそれがある。今日までの合併町村に対する払い下げのあとを見ますと、学校その他を建てますと、あと植栽はしておりますけれども、善良な管理者の形でやっておっていただいたような例は私はあまり見ていない。こういうような意味から考えましても、分収林と申しますか、あるいは利用権は分けて上げていただくことは、山村僻地の方々には大いによいけれども、全部土地ぐるみ分譲していくというやり方は、そういう大きな視野から見れば、若干危険ではないかということを非常に痛切に感じまして、このごろのようにいたずらに声高からかになっていくことに危惧を抱いておるのが私の率直な考え方です。私は、ますます国有林野を広めていっていただかなければならぬし、ましていわんや、個人的には成り立たないような小さい所有面積のものは、国有林のほうの会計でもって、所有権は認めながら、国土の利用として最高度に発揮できますような契約を所有者と結んで、こちらがそこら一帯を造営をして上げていくことすら考えなければいけないのではないか、かような考え方を持つわけでありますが、長官のこれに対する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  37. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまのお話は、私といたしましては全く同感でございます。それで国有林野林業的な活用の面におきましても、でき得る限り部分林で進めてまいりたい、こういう考え方でございます。それから一方、そういう零細の所有者に対して、国のほうが手を差し伸べてやるくらいにしたらどうかというお話につきましては、そういう経営方式はいわゆる官行造林と称して、長い歴史を持って、これは公有林野に対して進めてまいりました。これは特に公有林野が荒廃しておる問題だというところで、優先的に公有林野が取り上げられたわけでございますが、しかし、また一方、いまお説のような、民有林に対して国が造林の手を差し延べるということにつきましても、林業経営改善の面から十分に検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  38. 玉置一徳

    玉置委員 ましてや、国有林野開放一つの土地ぐるみの分譲をいたします場合、それがやがては大地主にひとりでに集中されるという可能性が、いままでの事例では非常に多うございます。そういう意味で、どこまでも山村僻地の方々が林野の経営によって働く機会、収入を得る機会を多くするというような考え方で進めていただきたいと思うわけであります。  その次は、部分林の設定でありますけれども、もう一つ飛び越えまして金融でございますが、先ほど申しましたように、なかなかペイしにくい問題である。四十年、五十年裸林に造林いたしますのに、ずっと支出ばかりがふえまして、長期にわたってしか所得の見返りがこないのが林野の性質でございます。いままでの金融もそういうことを十分考慮の上、かなり長くはなっておりますけれども、なお思い切った施策をやらないと、農業と同じような考え方でこれをやっていたのでは、そこに無理があるのじゃないかというような考え方を持つわけであります。したがって、なるべくすみやかにそういった金融のあり方につきましても、もっと思い切った考え方を示していただく必要をわれわれは感じておるのでありますが、これについての御所見をいただきたいと思います。
  39. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 この点につきましても、全くお説のとおりだと考えております。この造林を進めてまいる場合の融資等についても、三十九年度において若干改善をされました。しかし、決してそれで十分ではないのでありまして、さらにこの基本法成立を契機として、それの改善について十分な検討を進めてまいりたいと考えます。
  40. 玉置一徳

    玉置委員 なるほど国有林、官行造林等によりましていろいろな施策を講じていただいているものでありますから、伐採したあと植林は伸びておると思いますが、私たちの承知しております限りにおいては、山間僻地におきます伐採その他山林労働に従事する若い方々が、一般農業と同じもしくはそれ以上に少なくなりまして、四十歳あるいは四十五歳以下の若年労働力が微々たるものになってきたのじゃないか。あと十年、十五年しましたときに、森林は成長いたしますが、材木にするのには相当な問題が起こるのじゃないかと思われる。これは山林労務者のこれからの動向を考えましたときに、非常な寒心事だと考えるわけです。この方々はそれぞれ山林所有者の方々のもとで六カ月以上にわたりまして仕事をしておるわけでありますけれども、一定の雇用主で一年近くやるのじゃなしに、二、三の雇用主にかわっていっておることも事実だと思います。そこで、現在お残りになっておるこういう山林労務者を確保するとともに、今後とも若年労働者が希望を持って山林労務にいそしみ得るような対策としては、少なくとも退職手当、失業保険その他の社会保険を一般国有林野労働者の諸君と同じように当てがうようなくふうをしなければ、私は至難なことじゃないかということを心配いたします。そこで、何とかしてこれの実態に合うように行政的にごくふうをいただいて、山林労務者が今後とも将来に希望を持ちながら、山林育成に従事していただくような措置をごくふう願いたいと思いますが、これについて御意見を承りたいと思います。
  41. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 この点につきましても、全くお説に対しましては同感でございます。それで、そのために、まず林業経営を通年的に進めていけるように、作業の仕組みをいろいろ考えてくふうをするとか——言うまでもなく、機械化推進が必要でございましょう。仕事を通年的に持っていくことによって、そこに雇用の機会が一年を通じて得られるという形にまず持っていく必要があるかと存じます。そういう山村青年の働く場としてのおのおのの環境整備は、言うまでもなく、これは一般の社会政策としても必要でございましょうけれども、まず林業の面からいうと、そういうような仕事の面のくふうをして、一方また、森林組合がそういう仕事を協業というような形で受け持つ、そうして山林所有者の仕事を一年間にわたって進めていけるというような形に持っていくことが必要かと存じます。そういうふうになれば、一方また失業保険法などで排除されておるような面が改善されて、これが適用にも当然持っていけるというようなことにもなると思いますので、そういう仕事のくふう、それから諸制度適用への極力前向きの施策、そういう点については十分に検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  42. 玉置一徳

    玉置委員 最後にお伺い申し上げたいのは、森林組合の強化をはからなければならないわけでありますけれども、御承知のとおり、森林組合は基礎が必ずしも強固じゃございません。これに入っておる人々は、山村でございますので、田の三反前後を持ちながら森林労働に従事している方が多いと思います。また僻村ですから、農業協同組合そのものも決して強くはございませんけれども、森林組合よりは出資その他においてどこも大体十倍くらいの強さを持っておるのは事実でございます。そういうような意味で、同じ人間が両方にまたがって組合員となっております。ほんとうの山村僻地においては、森林組合農業協同組合の組合員は、八割以上、九割以上が両方にまたがっておりますので、森林協同組合というような形にいたしまして、それぞ基盤を強化していただくようなことが将来考え得られないかどうか、非常に希望もございますものですから、最後に長官の考え方をお伺いしておきたい、かように思います。
  43. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 確かにお話しのとおり、森林組合の組合員は、約九割程度のものが農業協同組合の組合員でもあるというような実態がございまして、またその地域についても重複しておるというようなことも相当あるわけでございます。そういう面で、それぞれの弱小の組合がむしろ一体になったほうがいいじゃないかというお考えも出てくるかと存じます。ただ、森林組合にいたしましても、農業協同組合にいたしましても、それぞれの理由で、それぞれの法律の根拠をもって設立されておるということがございますし、森林組合の場合で申しますと、森林組合としての必須事業があったり、あるいは森林所有者でなければならない、そういうようなことがあったり、それぞれ限定もございます。したがって、いわば団体の再編成の問題につながってくるわけでございますので、非常にむずかしい問題でございますけれども、十分に検討をいたしたい、こう考えております。
  44. 玉置一徳

    玉置委員 それに関連しまして、もう一言お願いしておきますと、森林組合の運営の主たる費用と申しますのは、事務所費であり、電話費であり、事務員費でありますが、これが僻村でございますので、同じ部屋に入ればその分がほとんど浮くのが現実でございます。運営面の指導職員というものは、これは事業費でありますから、幾ら要っても要っただけの効果があるわけですが、そうじゃなしに、いまの管理費のほうがやはり一番重要な部門を占めておるのが現状でございますので、こういうものが小さい村の中で三つも四つもあるというような形は、非常に不経済ではないかというように考えられますので、林野庁長官にこういうことだけをお願いして、意見を聞くということの無理であることは十分承知しておりますが、ひとつ将来実態に即して運営ができるような方法を考えていただければ非常にしあわせだと思います。お願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 高見三郎

    高見委員長 次会は来たる九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会