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1964-05-22 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十二日(金曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       大坪 保雄君    加藤 精三君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       舘林三喜男君    寺島隆太郎君       内藤  隆君    野原 正勝君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    松浦 定義君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君         参  考  人         (慶応義塾大学         商学部教授)  園  乾治君         参  考  人         (漁業災害補償         法制定期成中央         本部長)    片柳 真吉君         参  考  人         (北海道漁業協         同組合連合会会         長)      安藤 孝俊君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 五月二十二日  委員楢崎弥之助君、湯山勇君及び稲富稜人君辞  任につき、その補欠として山崎始男君、和田博  雄君及び玉置一徳君が議長指名委員選任  された。 同日  委員山崎始男君、和田博雄君及び玉置一徳君辞  任につき、その補欠として楢崎弥之助君、湯山  勇君及び稲富稜人君が議長指名委員選任  された。 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件漁業災害補償法案  (内閣提出第一二三号)  漁業災害補償法案角屋堅次郎君外十一名提出、  衆法第三五号)  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稲富稜人君外一名提出衆法第  四四号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出漁業災害補償法案及び角屋堅次郎君外十一名提出漁業災害補償法案、右両案を一括して議題といたします。  本日は、両案につきまして、去る十五日の委員会の決定により、参考人より御意見を聴取することといたします。  御出席参考人は、慶応義塾大学商学部教授園乾治君、北海道漁業協同組合連合会会長安藤孝俊君、漁業災害補償法制定期成中央本部長片柳真吉君、以上の方々でございます。  参考人各位には、御多忙中のところ本委員会に御出席くだされ、ありがとうございました。どうぞそれぞれのお立場より忌憚のない御意見を御開陳くださいますようお願い申し上げます。  なお、念のために申し上げておきますが、御意見開陳の時間は、お一人約十五分程度とし、御発言の順序は園参考人片柳参考人安藤参考人の順にお願いいたします。また御意見開陳後、委員により質疑が行なわれますので、あらかじめお含みおき願います。  それでは園参考人よりお願いいたします。
  3. 園乾治

    園参考人 私は、慶応義塾大学保険学経済政策学を担当しておるものでございますが、いたずらに年を経るばかりで、ここにまかり出ましても、一向法案の御審議参考になるような意見を申し述べることができないことをみずから恥ずかしく思う次第でございますが、しばらく御清聴いただきたいとお願いを申し上げます。  ここに御審議に相なります災害補償法と申しますものに関しては、まず、災害補償ということと災害保険あるいは災害共済という三つのことば、あるいは仕組み区別を最初に申し述べたいと思います。  災害保険と申しますものは、すでに皆さまも御存じのように、多数の人が集まりまして、財産あるいは一身上の身の上に災害が起こりましたときに、保険金を払うという仕組みでございますが、大ぜいのものが集まることが前提になっております。少数ではそういう保険仕組みは成り立たないというのが特色でございます。  次に、災害共済といいますものは、場合によると本質的に違うものだというような説をなす人もございますが、学同上から言いますと、保険共済との間には区別がない場合が少なくないのであります。しいて区別を述べますならば、一定の範囲の人が集まるのが共済である。しかるに、保険のほうでは、不特定多数のものが集まっているというようなことを述べる場合もございます。また、保険金あるいは共済金の金額が、共済の場合には保険よりもかなり低目であるというように申す場合もございます。しかし、いずれにいたしましても、多数のものが集まり、それらの人が保険料あるいは掛け金を払い、事故が起こりましたときに、保険金あるいは共済金を受け取るという形においては、何ら変わりがないのであります。普通の保険あるいは普通の共済事業と異なって、社会保険の領域においてもやはり共済というのがございますが、たとえば国家公務員共済組合、あるいは公共企業体職員等共済組合、その他の共済組合がございますが、それらの行ないます事業は、保険として行なわれるところの健康保険及び厚生年金保険と比べて何らの遜色がないばかりでなく、あるいは保険よりもさらに進んだ組織を持ち、規模も大きいものがあるわけでございます。それらの点を考えますと、保険共済との間には学問的な本質上の区別はないと言わなければならぬと私は信ずるものでございます。  次に、災害補償でございますが、これは現在ありますところの農業災害補償制度についてお考えいただいても十分わかりますように、かつてはこれらのものは家畜保険あるいは農業保険といわれたものを統合して成り立ち、それをしばしば改善をして今日に至っておるものでございます。そのように家畜保険あるいは農業保険を改めて農業災害補償法のもとで仕組みをこしらえたのでございますが、保険共済との区別は、保険あるいは共済の場合には、受益者給付を受けるものが大部分費用を負担する。それにかかわらず、災害補償制度においては、第三者がかなりの費用を負担するというところに根本的な差異があるものでございます。具体的に言いますと、災害補償制度においては、国が給付費の一部分あるいは事務費の大部分を負担するというたてまえをとっているのでございます。したがって、災害補償制度においては、受益者だけの費用を中心として財政が成り立つものでないというところに、大きな区別が見出されるものと考えます。  今回の漁業災害補償制度も、そういう意味災害補償であって、災害共済ではないというように私どもは受け取りたいのでございます。御存じのように、この農業災害補償制度ができます前には、昭和三十二年の十月から試験実施期間がございまして、すでに六カ年にわたっていろいろな経験を経ているのでございます。その経験基礎として今回の法案ができ、それに基づく災害補償仕組みができるものだと考えますが、そういう試験期の現在までの制度のことを申す前に、この制度漁業に関係して必要であるということは、すでに私がちょうちょう述べる必要もないことであろうかと思いますが、海上あるいは水上における漁業が、漁船、漁具あるいは漁獲、それから養殖の場合でございますと、養殖の施設あるいは養殖せられる動植物、そういうものに対して白帆的な災害がしばしば発生をいたします。そこで、漁業経営の安全がしばしば乱されるということに相なります。しかも、漁業経営者は、大資本の場合も少数はございますが、大部分のものが、そういう災害に対してみずから備えるだけの力を持っていないものが少なくないということであります。したがって、こういうような災害に対しては、個別に対策を講ずることができないから、大ぜいのものが集まって保険あるいは共済という仕組みによって災害対策を講じなければならぬというわけでございますが、この災害は、たとえば陸上における農業の場合と比較いたしますると、しばしば非常な大規模で、かつひんぱんに発生する、予測ができないような大きな損害をこうむることが少なくないという点であります。すでに先ほども触れましたように、農業保険家畜保険基礎といたしました現在の農業災害補償制度ができておるのでございますが、いま申しましたような、非常な経営の不安におちいることが少なくないところの漁業に対しても、ぜひ共済制度が必要だということは言うまでもないのであります。なお、共済制度をこしらえましても、これを利用する者が少ない。多数の者がこの制度に参加しなければ完全な災害補償制度運営ができなくなるのでありますが、いままでの試験成績によりますと、必ずしも収支の均衡はとれておりません。また、最切は参加者が少なかったのでありますが、だんだん参加者がふえてまいりまして、この制度を立てますと、当然多数の漁業者が参加するということになろうと思います。したがって、制度をこしらえました暁においては、十分にこの経営が成り立つということであります。ただし、私はこの十分にと申し上げましたことに、参加する組合員だけの支出によって十分に費用がまかなえるということを意味するものではございません。先ほども申しましたように、非常に大きな損害が不測の場合に起こる、思わぬところに発生するということでございまして、自力だけではなかなか収支のバランスをとるということは困難になってくるわけでございます。したがって、これをバックアップするところの支払い調整基金というようなものの必要が生じてまいります。政府その他の出資によりまして、通常の危険に対しても共済組合が負担することができないような大きな損害発生しましたときに、この支払い調整基金によりまして財源を提供するということが必要になってまいります。つまり、この調整基金の作用と申しますものは、一たん発生しました大きな損害を数年にわたって調整するという働きを持つものであります。大きな損害を数年に分割して、経営基礎を安定させるということがその目的であるわけであります。  なお、この上に国が再保険制度を設けるということは、きわめて大事なことになるわけであります。すでに申しましたように、漁業における災害は、思わぬ、非常に多額損害発生することがあるわけであります。しかも、その思わぬ多額損害というものは、毎年発生するのではなくて、数年に一度というような、いわば突発的に起こるのでございまして、それらに対しては、漁業共済組合が平常の準備だけでは対処することができないわけであります。大きな損害に対しましては、いわば超過したところの異常損害に対しましては、国がこれをバックアップするという必要がきわめて大事であります。これは制度発足当時、つまり、経営基礎が十分に固まっていないときにこそ、必要が大きいものだというように私は考えるのであります。政府の御提案になりましたものを拝見いたしますと、附則のほうで、あるいはこういう再保険制度を設けるというような御意思であるかとも、広く解釈すれば思われる節もございますが、ぜひこの制度を設けるということが、平常の危険に対する漁業共済事業運営にも大きに役に立つものだというように私は考えている次第でございます。  なお、この制度においてこまかい内容をそれぞれ申し上げなければならぬかと存じますが、平常の危険と異常危険の差別、それらのことに関しましては、保険技術上で一応の線を引くことができるものでございます。再保険制度によるということは、結局再保険料を払う、一部この再保険に対する責任共済組合のほうでも負担するというような意味からいいまして、再保険国家の助成を乱費するというようなことを防ぐことにもなろうかと思う次第でございます。  なお、申しおくれましたが、共済組合事業府県単位全国単位で行なう、府県単位共済事業に対して全国単位では再共済を行なう、それに対して、さらにいま申しましたような国の再保険がこれをバックアップするというような意味でございます。  この漁業災害補償制度は、わが国の重要な産業であるところの漁業経営の安全をはかるというために、きわめて重要な制度であるばかりでなく、国民食糧資源を十分に提供するという漁業の使命から考えましても、ぜひ災害補償制度が成立することを私は強く念願をしておるものでございます。特に他の産業と比べて、経営の自然的危険が大きいということに関しまして、災害補償制度の必要、それをバックアップするところの国の助力が必要である。国の助力は、単に再保険経営ばかりではない、あるいは災害共済事業事務費なり給付費の一部を負担するということも考え得られますが、いずれにいたしましても、仕組みとしてはぜひ再保険制度を、即刻ということはできないとすれば、なるべく早い機会に設けるということは、制度運営のために、あるいは漁業政策を確立する上において、また国民の福祉を増進する上において、きわめて大事なことであるように考える次第であります。  一応私のこの法案に関する意見開陳を終わりまして、あともし御質問でもありましたら、お答えを申し上げたいと思います。制限時間も終わりましたので、一応私の意見開陳を終わらせていただきます。(拍手)
  4. 高見三郎

  5. 片柳真吉

    片柳参考人 私は、漁災制度期成中央本部長といたしまして、両法案に対しまして意見を申し述べたいと思います。  まず、お礼を申し上げる次第でございますが、昨年の国会におきまして、当時におきましては、三派の共同修正沿岸漁業等振興法制定を見まして、現在実施中でございますが、この法案で掲げておりまするところの各般の沿岸漁業振興施策のうち、最も急を安し、かつ基本的な施策といたしまして、われわれ沿岸漁業者がかねてから待望しておりました漁業災害補償制度のすみやかな制定をしていただきたい、このことで、全国漁民大会開催等を通じまして強く御要望いたしてまいったのでございまするが、幸いにも、政府当局あるいは国会自民党社会党、民社党、各党におきましても、深い御理解と御関心を持たれまして、現在この国会政府並びに社会党の両方から漁業災害補償法案提案されまして、現在審議運びになっておりますることは、まことにありがたいことでございまして、厚くお礼を申し上げる次第であります。  非常に重要な施策でございまして、また法律のていさいを見てまいりましても、二百数十条の大法典でございまするし、また保険技術の専門的なこまかい問題も内部に包蔵しておるのでございまして、この制度をつくりますにつきましては、私も若干役人の経験もありまするが、少なくとも一年くらいの準備期間を要したと思うのでありまするが、われわれの要請を特にお入れいただきまして、政府当局、これを推進していただきました自民党水産部会皆さん方、並びに並行して提案をいただきました社会党各位に対しまして、非常な御努力の点は、重ねて深くお礼を申し上げる次第であります。  そこで、法案並びにその運用等につきまして、若干の意見を申し上げまするが、まず、各論に入ります前に、法案全体の体系といいまするか、あるいは構想と申しましょうか、この法案の基調的な性格につきまして、今後の御改正をいただく前提にもなりますので、一言触れてみたいと存ずるのであります。  漁業共済事業、これはただいま園先生からもお話があったような次第でありまして、漁業は、ちょうど農業あるいはそれ以上に非常な災害の危険にさらされておるものでございまして、したがいまして、営業的に保険として収支ペイするものでないことは、これはもう説明するまでもないと思うのであります。若干の漁具保険等を除きまして、これまで保険会社がいろいろの保険をいろいろやっておりまするが、漁業についてはさような民営の実績はないということからも御判定がつくと思うのでございまして、したがいまして、やはりこれは政策的に国の制度的かつ財政的の相応の援助がなければ成り立たないことは、申すまでもないと思うのであります。したがって、漁業共済事業が、究極的には、国とわれわれ民間とが一体となって行なうところの漁業災害補償制度として運営されなければならないという、この基本的考え方は、私は、今日までの国会における審議政府当局の御答弁等を通じまして、政府案におきましても、また社会党案においても、その考え方は同じではないかと思うのでありまして、片一方が右を向き、片一方が左を向くという性格ではない、同じ方向を指向しておるものと存ずるのであります。ただ、率直に申し上げまして、政府案におきましては、過去六カ年にわたります漁業共済事業試験実施に対する評価、あるいはこれに基づく実施への踏み切りにおいて、これは当局がきわめて慎重な態度をとられたことは理解できるわけでございまするが、全体のムードとしては若干消極的ではないかという感じを、本部長といたしまして、従来お願いをいたしました筋からも、さような感じを遺憾ながら持つのであります。もちろん、すでに明年度の予算も決定しておりまして、それとの関係もございまするが、漁業共済研究会答申にありまするように、試験実施の経緯に照らして、本事業は十分に成り立つ可能性があり、答申の指摘する基本的な方向に従って本事業本格実施に移し、漁業経営のための基本的制度一つとして、その発達を期することが必要であるという答申評価については、いま少しく積極的なお考えをとって制度化をお考えくださったならば、漁業災害補償法という名にふさわしい内容実体が盛られたのではないかという感じを持つわけでございます。それは、政府案の第一条の目的、第二条の漁業災害補償制度条項を見ますれば、一目瞭然でありまして、少なくとも、この一条、二条の目的なりあるいは制度条項の字句からは、災害補償制度に不可欠の制度でありまするところの国の再保険措置、すなわち、民間共済団体においてやれる共済責任限度をこえる分については、国が責任を持って措置するという、本事業に対する積極的な姿勢が、どうも本法案では見られないという観があるのであります。また、この制度に対するかまえといたしましても、相互救済の精神を基調として、すなわち、われわれ漁業者並びにその団体がまずみずから漁業共済事業をやることを骨子といたしまして、国はそれに対して、自分の事業ということではなくして、これに対して援護、あと押しをするというようなかまえでございまして、一部に言われておるように、内容実体とがどうもまだそぐわないという感じがいたすわけであります。しかし、このことは、漁業共済責任について、いわゆる通常、異常の区分を明確にすることが、現時点においてはいまだ困難である。将来漁業共済加入を増大させて、普遍的な加入をはかり、かつ実績資料を整備して、逐次改善して将来を期そうということで、この点はただいま園先生も指摘のように、必ずしも明確ではないと思いまするが、附則第二条の検討条項によって、その方向政府も示唆しておるということに私どもはとっておるのであります。私どもも、この制度ができました上は、従来のようなことでなくして、加入普遍化をはかり、逆選択の防止等につきましては、運営上最善を期してまいるつもりでございます。どうぞ今後政府におかれましても、前向きの姿勢検討を加えられまして、漁業災害補償法の名にふさわしい内容づけをしていただくように強く要望いたしたいのであります。  この点に関しましては、社会党の案におきましては、農災法に準じて、当初から災害補償制度内容を備えまして、特に法案第五章におきましては、政府保険事業という条章を設けまして、国の再保険制度を明確に規定しておるわけで、これは私ども本部におきましてかねてから研究して要望しておりまする線に近いものでございまして、したがいまして、まずまず、理想像ということばが適当かどうかわかりませんが、われわれの要請に近いものと見てよろしいと思うのであります。ただ、実際問題といたしまして、かような制度があすから直ちに具体的にこれが現実的な制度として運用されるかどうかの可能性につきましては、私ども多少のやはりいろいろな感じを持っておるのであります。すなわち、保険制度運営に必要な資料の整備が現在ではまだ足りるか足りないかという、そういう信憑度の問題が一つございましょうし、また過去六年間ではございましたが、過去の実績に対する見方もあろうかと思うのでありまして、これをにわかに一〇〇%習熟して、すぐさま全面的な災害補償制度としてスタートできるかどうかについても、やはりいろいろな御議論があると思うのであります。またわれわれ漁業者並びにその団体に対する過去並びに現在に対する評価等もございますので、理想的な形ではございますが、これを全面的に実施できるかどうかにつきましては、私どもといたしましては、にわかに結論を出しがたいような心境でございます。しかし、いずれにいたしましても、社会党案に盛られておる基本的構想は、われわれがかねてから要望しております構想に近いものでございますので、近い将来に政府案が到達しなければならない目標といたしまして、社会党案に深い敬意を表する次第でございます。  したがいまして、私は、率直にこの機会に申し上げておきたいと思いますが、政府案に対しましては、少なくとも最少限度修正条項といたしまして、法案附則第二条の検討事項をいま少しく、災害補償制度が近き将来に到達する目標として、もっと具体的にこれを規定いたしまして、すみやかにその制度が実現されるように特にお願いをいたしたいと思うのであります。したがいまして、もしも法案の第二条が修正の上通りました場合におきましては、政府はその修正の趣旨を十分尊重せられまして、国の超過損害保険制度並びに共済掛け金及び事務費国家補助にあらざる国庫負担内容とする、名実とも災害補償制度として確立するように、早急に御準備に入っていただきたいと念願をいたす次第であります。  以下、内容について、さらに若干の意見を申し上げて、お聞き取りをいただきたいと思います。  第一は、基金の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、なるべく早い機会に国の再保険制度の確立を要望いたすものでございますが、しかし、この制度がスタートいたしますと、その間におきましては、やはり相当予期以上の保険事故共済事故発生ということは、これは当然想定されるわけであります。再保険制度がない期間においてさようなことが当然起こり得るわけでございまして、漁獲共済はあるいは別といたしましても、特に養殖共済のごときにつきましては、事故が地域的に集中して起こる、被害率の振れも非常に大きいものがありますことは、殷鑑遠からず、本年度の千葉、宮城県等のノリの大不作に徴しても明らかなことでございまして、しかも府県共済組合も一割の共済責任を持つということにも本案はなっておりますので、はたして五億円の基金不足金が出た場合に、十分その不足金融資等の機能を果たすことができますかどうか、実は少なくとも養殖共済につきましては懸念を持っておるわけであります。おそらく当局におかれては、過去の試験実施の結果に基づいて、予想される最大の事故発生した場合にも、十分対処し得るという一応の設計にはなっておると存じますが、ただいま申し上げましたノリ等の昨今の状態から見ましても、五億円でいつの場合にも限るということについては心配があるのであります。かかる事態に対しましては、法律案第九十五条の規定による削減という措置もあるわけでございますけれども、これはできるだけ避けたいことは申すまでもないのでございますし、また、少なくとも制度出発早々から削減等の措置を講じますれば、今後の加入に非常な影響がありますことは申すまでもないのであります。したがって、かような予期以上の事故が起きた場合におきましては、これは基金の正常なる支払い機能をこえる問題として、国が責任を持って必要な支払い措置を確保するということが−現在再保険制度がない、異常、通常込みにしているものを対象にしている基金というたてまえからも、かような五億円で足らない場合においては、国の責任におきまして必要な支払い措置を講じていただきますことが当然だと考えるのでございまして、この点につきましては、御審議を通じまして十分明確にしていただきたいと存ずるのであります。  なお、将来、この基金は、事業量の増大に応じまして増額の必要がある時期が必ずくると存じておりますが、当初出発の際の五億円の基金についての政府民間出資の割合をそのまま踏襲することは、将来われわれ民間の負担力を考えますと、なかなかたいへんでもございまして、いつも政府民間で半々ということは、ちょっと苦しいような状況でございますので、今後増額の場合におきましては、政府において御負担をいただくということにつきましても、漁村の実情から、できるだけ御勘案をいただきたいと存ずるのであります。社会党案におきましては、十億円の基金のうち、七割を国が出すということでございますが、さような点も十分お考えをいただきたいと存ずるのであります。  次は、漁業共済限度額の問題でございまして、これもこの制度のきわめて重点事項であります。政府法案の百十一条によりますと、過去一定年間の漁獲金額を基準とし、その基準漁獲金額の九〇%以内で農林省令で定めた限度額率を乗じて得た金額としておりますが、具体的には省令できめることになっておりまして、現在私どもが承知しているところでは、いわゆる安定型が八〇%、普通型が七二%、変動型が六五%と定め、特に安定型の中で、最近漁獲金額が上昇傾向にあり、あるいは漁労設備の改善をなして非常に経費のかかったもの等については、特約によって九割まで引き上げることができるということになっておりますが、これは過去の農林統計によって、償却費分を除いた漁業経費は、安定型においては通常漁獲高の八割であるという統計的根拠に基づくものと聞いておりますけれども、御承知のとおり、最近は漁業経営の進歩もございますが、資材費、人件費その他の経費は、物価高の影響を受けまして、相当ウエートが上がっておるのでございまして、過去の統計の比率を機械的に運用することに問題があろうかと思うのであります。特に安定の強いものは、むしろ保険としては歓迎すべきお客さんでございますので、限度を上げても、安定度の強い漁業は強くこの制度に導入するということのほうが、むしろ保険経済からも適当ではないかと思うのであります。この限度がいままでは九五%ということで、全水共もやってきたようなことでございまして、これを低くきめることは、いま言った経費高の大勢とも逆行いたしまするし、またこれが低いことは、その後いろいろ聞いてみますると、共済に入るという魅力を非常に減殺をするようであります。したがいまして、この共済制度に対する加入意欲を低下させない意味からも、この限度額につきましては、ひとつ十分御検討をいただきたいと思うのであります。もちろん、限度額を上げますれば、共済掛け金の絶対額はある程度ふえてくることでございまするけれども、いま言った安定度の高いものは、むしろ本事業としては事業の安定化のためにも歓迎すべき筋合いでございまするので、予算の実行との関係がございまするが、事情が許しますれば、この限度を引き上げていただきたいと思いまするが、もしもどうしてもそれができませんような場合におきましては、同じく附則検討事項として、なるべく早い機会に、実態に合ったような限度の引き上げを、法制的にも、予算的にも、ひとつ早急に講じていただきたいとお願いいたす次第でございます。  なお、漁獲金額を決定する勘案事項といたしまして、魚価の動向ということが社会党案には入っておるのでございますが、これも私どもは理念としてはまことに同感であります。特に限度額をしげることもありまするけれども、八割とか九割とか、九五%を乗じたところの基本的な漁獲金額が過小に評価されますると、実態的には限度の実質的な引き下げにも通ずるわけでございますので、最近の物価高等の事情もございまするが、魚価の動向を入れることにつきましても十分御検討をしていただきたいと思うのであります。ただ、具体的に魚価の動向をつかむということになりますと、実際上の問題がいろいろあると思いまするが、理論といたしましては、そのようなことをお考えをいただきたいと存ずるのであります。  それから事務費の国庫補助の規定でございまして、政府案には事務費国庫補助に関することは、法律事項としては規定をされておらぬのでございますが、この辺もいろいろ理屈はあるようでございますけれども掛け金補助を法律化しておりますれば、これもあわせて法制化をしていただくことはたいした支障はないと思うのであります。  以上、大体の事項を申し上げましたが、さらに、社会党案では規定されており、政府案にはございませんところのいろいろな問題、たとえば共済掛け金の無事戻し制度共済掛け金の分割払い制度の拡充、共済加入者が損害防止等を行なった場合の費用の組合の負担の問題、あるいは損害評価制度の採用の問題、あるいは不漁準備積み立て金制度等の問題がございまして、いろいろ御審議中と聞いておりまするが、時間の関係上省略をさせていただきます。  ただ、これを通覧いたしますると、いずれも重要な事項でありまするが、内容的にはなお若干の検討の余地のある問題もあるようでありまするし、あるいはいま直ちにこれを実施しなくては絶対にそれは困るという筋合いでないものもあるようでございまするし、あるいは実際上の制度の運用面で片づけ得るものもあるかと存ずるのでありまするが、かような問題は後ほど御質問等がございますれば、それに応じましてお答えをいたしたいと存ずるのであります。  最後に、任意共済事業の兼営の問題について申し上げたいと存じますが、現在まで全水共が行なってまいりました任意共済事業、いわゆる建物共済、厚生共済等でございますが、私個人の考えといたしましては、やはり新しい制度をつくる際に、共済団体に行為能力としてはかような任意共済を同時に与えることが、法律的には私はむしろ正しいのではないかというような感じも持っておりましたが、いろいろな事情で、これは今回の政府案には盛られておらないのであります。保険事業性格から見て、国がバックアップしておるところの漁業共済と任意共済とを一緒にやることは、理論的には適当でないというような意見も、一部にはあるようでございますが、しかし、漁協系統が中核となっている新しい共済団体が、同じ漁村を対象にして行なう任意共済事業でありますので、これは一緒にやったほうが、むしろ、共済団体事業運営に弾力性、安定性を与えるのではないかと思っておるのであります。もちろん、勘定は別にいたしますが、任意共済事業と申しましても、御承知のように、当然これはコマーシャルベースに乗り得る事業でございますので、これをやることのほうが、むしろ弾力性を与えるという、私も農業共済の仕事をやりました卑近な経験からも、さような感じを持っておるのであります。この問題をおくらせておりますのは、さような理論的な問題よりも、むしろ、従来全水共が国の委託を受けて過去六カ年間行なってまいりました漁業共済事業試験実施過程において生じました赤字の処理をどうするかという、現実上の問題が解決されておらないところにあるようであります。もちろん、この赤字を新しく発足する団体が初めから継承するわけにはまいりませんし、そうかといって、全水共のやっておる仕事のうちから任意共済だけをピックアップしてやらせるということも適当でないというところからきたようでありますが、ただいま申し上げました事情から、ひとつ全水共の赤字の処理を清算が終わりました暁には、なるべく早い機会に、新団体におきましてあわせて任意共済事業が行ない得るように、早急に御改正をお願いをいたしたいと思うのであります。あわせまして、全水共が国の試験実施の結果生じました赤字でございますので、この善後措置につきましても、国において十分なる御配慮をお願いをして当然ではないかと存ずるものであります。  以上、時間が非常に長くなりまして、また口早にしゃべりまして、お聞きとりにくかったと思いますが、以上で私どもの思っております見解を申し上げた次第であります。  われわれ沿岸漁業者は、実際いま当院におきましてこの制度審議され、近くこれが成立をするということにつきまして、異常な関心を示し、率直に言って、一日千秋の思いでこの制度の実現を待望しておるようなわけであります。  冒頭にも申し上げましたように、政府案社会党案、いずれも最終の目標なり構想には違いはないと思うのでありまして、まず最小限度必要なる修正のもとに、他日本制度の完ぺきを期していただきたいというふうにお願いを申し上げまして、私の意見開陳を終わる次第でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  6. 高見三郎

  7. 安藤孝俊

    安藤参考人 私は、北海道漁業協組合連合会会長並びに北海道信用漁業協同組合連合会会長をいたしております安藤であります。  本日漁業災害補償法案の御審議にあたりまして、不肖私が私見を申し上げる機会を賜りましたことは、まことに光栄のきわみでありまして、厚くお礼を申し上げます。  なお、先刻来漁業災害補償制度確立につきまして、漁業共済制度研究会の委員であられました園先生と、漁業災害補償制度期成中央本部片柳本部長から、詳細御意見開陳がありましたので、私は、まずなるべく重複を避けまして、今国会におかれまして、全国漁民の永年の待望でありました、まことに画期的な漁業災害補償法案が上提せられ、現に御審議中でありますので、現地におきまして漁業協同組合経営に携わっておりました立場から、私見を申し上げたいと存じます。  まず第一に、政府提案漁業災害補償法案についてでありますが、政府当局並びに自民党におかれましては、漁獲共済及び漁具共済試験実施以来、長期間にわたり、幾多の困難な事情を克服せられ、ついに本格実施に踏み切られまして、全国漁民の要望にこたえられましたことは、なみなみならぬ御労苦の結果によるものでありまして、深く感謝申し上げるものであります。  同時に、社会党におかれましては、漁業災害補償制度の究極的理想像を示す漁業災害補償法案を、これまたきわめて御多忙のおりから短時間の間に取りまとめられ、御提案をせられましたことは、私ども政府案を土台として終局的に到達すべき目標を明確にお示し賜わりましたものとして、ここに心から敬意と感謝の意を表するものであります。  なお、この間、本件に対しまして、国会の諸先生方がきわめて御繁多のおりにかかわりませず、超党派的に漁業の超重要案件として、深い御理解と御同情とを賜わりまして、終始きわめて御熱心に御審議を賜わりますことは、まことに感謝感激のきわみでありまして、全国多数の漁民とともに、衷心より御礼を申し上げるものであります。  申すまでもなく、広範な海域にわたり、複雑な事情を持つ中小漁業者の営む漁業につきまして、異常の事象または不慮の事故によってこうむることのある損失を補てんし、その再生産の阻害を防ぎ、漁業経営の安定を期そうとする漁災法でございますので、初期といたしましては、その方法と手段におきまして、立場によりましては意見を異にすることは、結局免れ得ないところであろうと存じますが、初期の漁災法として、名実伴うまでは相当困難を予想されますが、全国漁民は本法の活用の上に万難を排する覚悟を持っておりますので、一日も早く本法案が可決成立いたしまして、本格的に実施せられ、その実績を徴せられて、すみやかに国の再保険等の実施を見、現下わが国の経済高度成長下のひずみのうちにある全国多数の漁家の経営安定のため、さらに進んでは、水産業協同組合法の目的とする漁業者の経済的、社会的な地位の向上をはかり、国民経済に寄与することができますよう、特段の御配慮をお願い申し上げる次第であります。  次に、漁災法案に対しまして論点となっておりました二、三の点につきまして、運営の面から考え方を申し上げてみたいと思います。時間の関係上、簡単に申し上げますので、御疑問の点がございましたならば、後刻御質問にお答えいたしたいと存じます。  御当局提案せられました漁業災害補償法案を拝見いたしますと、その内容は、ただいま申し上げましたような種々な事情のもとに立案されましたために、名実伴った本格的実施を見るまでのいわば一つの過程として、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会の共同組織を基盤とした共済団体の相互共済事業として出発せしめ、その運営の結果に基づいてさらに法案を整うために、超異常災害時に際しましても特別の処置を現在においては講ぜられず、ただ基金の一部出資と助成のもとに実施の面に強く漁民の奮起を促された形となっておるのであります。しかしながら、このことは、附則第二条において、将来漁業災害補償法としての補完を目途とし、現法案のごとく単なる経済的に微力な漁業者の相互共済をもって終局としないことを明らかにせられてありますことは、運営によって近い将来を明確に約束されたものと存じまして、私どものきわめて喜びとするところであります。  そのことは、御当局国会における法案の御説明や討議におきまして、漁業者の自主共済事業の進む度合いによって十分検討せられ、なるべく近い将来に、農業災害補償法と同様に名実伴うよう、すみやかに漁業災害補償法内容を整えられますことを明らかにせられましたが、何とぞ万難を排されまして、完全に実施に移されますよう、切にお願い申し上げるものであります。  したがって、本法案が当初から各条項を整えた行き方とは違うことを十分理解いたしまして、法の運用に当たる私どもは、総力を結集して万全を期する必要がありますので、一両年中に普遍的に、しかも合理的に加入を奨励いたしまして、漁業者個々もみずからの責任を痛感しながら、いたずらにあせらず、まじめに積み上げ方式によって法の目的に沿う実績をおさめることが最も肝要であります。また、そのことが本法の経過的立法としての使命を果たし、必然的に整備を促進し、成功に至る唯一無二の道と私は信ずるのであります。  ただ、公布とともに、全国漁民大衆に端的にこの立法の事情を知らしめ、合理的に加入を推進し、すみやかに実績を積み上げますためには、附則第二条に、将来の超異常時に対する国の再保険の意図が不明瞭でありますので、普及徹底に困難を感じますから、ある段階に達しました場合は、超異常災害時には国の再保険の道を考えるというような文字の表現がありますならば、初期における普及徹底に必要な漁業者の意欲をいやが上にも高揚する上に大きな効果があり、本制度の成功に至るゆえんであろうと思うのであります。それは先ほど片柳参考人からも説明がありましたので、私はむしろこれ以上申し上げることを差し控えます。  次に、本法案は、漁業協同組合組織をあげて、物心両面から積極的に漁業共済組合漁業共済組合連合会の活動に対しまして支援と協力をすることが、農業災害補償法の関係とは全く異なる特徴を持っておるのであります。つまり、本法により設立されます共済組合は、漁協系統の組織を基盤とする関係から、協同組合運動の理念と全く一致しますので、既存の協同組織、つまり、われわれが幾十年の努力を累積いたしましたところの協同組織網が、そのまま本事業推進の重要な協力の役割りを果たし得るのであります。  すでに北海道におきましては、この協力体制が整い、全国水産業協同組合共済会の火災、厚生の任意共済はもちろん、過去六年間の漁獲共済試験実施にあたりましても、相当の協力をいたしました体験があるのであります。すなわち、火災共済では初期以来十二年間で二十一倍の伸びを示しております。厚生共済でも初期以来八年間で二十倍の伸びを示しております。また漁獲共済、いわゆる試験をいたしました漁獲共済では、国の債務保証の限度があります関係から、私はこれを無理に加入することを差し控えておったのでありますが、きわめて慎重に推進したにかかわりませず、六年間で十一倍の伸びを示しております。このことは、協同組合の組織網が絶えず共済会の事業の推進にあらゆる機会を利用して援護した証左であろうと私は信ずるのであります。  なお、漁獲共済漁具共済及び養殖共済産業実施は、漁業協同組合系統本来の事業の拡大と安定とを期待できる、いわゆる相関関係にあることを注意しなければなりません。その二、三の例を申し上げます。  漁協系統が本災害補償法実施によっていかなる利益を受けるか。漁協系統が利益を受けることは、即漁家経済の安定に資するのである、さように考えまして、私はこれを拾ってみたのでありますが、まず漁協系統の基幹事業振興に対する効果といたしましては、漁獲共済加入いたしますと、必然的に所得の立証をする必要が生じてまいります。そのことは、生産物の共同販売事業の拡大となってあらわれてまいります。生産物の共同販売をいたしますることは、きわめて必要なことは理の当然でありますが、この振興がやはり勢力圏の半分くらいにとどまっておるということは、こうした一面の漁獲共済によって、きわめてすみやかにこれを補てんし得るものと私は信じます。また、共同販売の拡大によりまして、当然購買代金の回収を容易にいたします。今日北海道の例を申し上げましても、漁業者の消費財と生産財は年間約二百億円を使うのでございます。ところが、それをわずかにまだ三十億円しか購買できない。そのできない理由は何かと申しますと、販売事業を先に推進しておいて、回収を容易にしながら拡大をしておる。つまり、現金決済主義を可能にしながら拡大するということが、これは事業推進の要諦であるからであります。しかるに、この際、共同販売の拡充ができるという側面的な効果が出てまいりますと、この購売事業の難関は一応突破できるのであります。したがいまして、これができまして、販売面における価格の安定、消費面における中間の、極端に言えば、搾取の排除というものができますと、そこに当然漁家経済の安定が期待できまして、そこに資本の蓄積も容易になりますから、貯蓄の増強、いわゆる信用事業における基盤というものは日一日と強化されることは当然であります。そういたしますと、ここに北海道の例で申しますと、信漁連の貸し付けばまだ五〇%、半額しか所要の資金を貸しておらない。その他の金融機関あるいは悪質金融機関のところに行っておるわけでありますが、それがここ数年にして漸次漁業者の資金の需要に応じ得るというように出てくるわけであります。したがいまして、この事業がそのような反射利益があるということを私たちは深く銘記したいと思うのであります。  次に、漁協系統の副次的効果であります。ただいま申しましたのは直接の効果でありますが、今度は副次的効果があるかないかということであります。  それは、すでに御存じのとおり、全国的に漁業構造改善事業がいま推進されております。この漁業構造改善事業実施の基本前提となりますところの使命を果たすと私どもは信じておるのであります。つまり具体的に申し上げますならば、本来、漁村の構造改善は、当該漁村に対しまして総合的に調査立案を実施することが必要であります。しかし、現在実際としては、総合的に調査はいたしますが、立案いたしますと、そこに資金の問題が生じてまいります。その際、国や県の予算の割り当ての制約が出てまいりますために、残念ながら一部の実施にとどまりまして、総合的な調査立案ができましても、その実施に至りましては必ずしも万全でないということになる。でありますから、漁村全体の構造改善を行なって漁村の近代化をはかるということの期待に沿わない現状であります。このことは、勢い、構造改善として取り上げられないところの対象外の、つまり、予算のために省かれました対象外の金融に対して、だれか考えなければならぬという問題を残すのであります。そういう場合におきまして、勢い、本共済制度がありますと、系統金融を中心にいたしまして以上の不均衡を捕まえることになります。つまり、総合的に漁村の構造改善が推進されるのであります。まことに絶大な成果がここに副次的にあらわれてくることを私は確信いたしますし、また、そのことがなければ、漁村の最末端におけるこの現実というものが永遠に解消できないと私は存じます。それが副次的効果として私は大きな期待を持っておるのであります。  次には、このように漁家の経済活動が共済制度によりまして画期的に前進充実いたしますが、なお、現在全水共を中心として行なっております火災、厚生両事業を総合してこれを運営いたします場合には、先ほど片柳会長からも申されましたが、事業コストが著しく低下する。漁民の本事業の経費負担、つまり、漁災法に対する経費の負担というものは全くとらなくてもいい時代がくるのではないか。現に北海道におきましては、この火災、厚生の両事業が非常な勢いで普及発達いたしております。もうすでに全村加入の推進の時期にきておるのであります。でありますから、毎年赤字を出さないで、むしろ府県のほうにどんどん出しておる。このことは、私は、直ちに漁民の負担の軽減に通ずるものと思います。どの県におきましても私は同じことを期待できると思うのであります。  以上によりまして、漁民の長年の悩みでありました漁業系統運動を通ずる漁家の経済と生活の安定が、この漁災制度の誕生を契機といたしまして達成され、冒頭に申し上げましたとおり、必然的に漁民の経済力の強化に伴い、わが国経済の高度成長下におけるひずみの解消となり、国民経済に大きく寄与することができると信じます。  最後に、漁災制度実施に対しまする北海道漁民の立ち上がりの状態を一例として申し上げます。  全道漁家ともに非常な熱意を持ちまして、一日も早く国会通過を待望いたしております関係から、先般あらかじめ共済組合の設立に伴うところの出資等につきまして、全道の主要代表者を札幌に集めまして協議いたしました。これは各単協に割り当てる関係あるいは連合会が負担する関係を協議いたしたのであります。ところが、現在におきまして、中央から割り当てられました北海道民の負担割り当ては二千二百万円でありましたにかかわりませず、慎重審議の結果は、共済組合が充実しなければならぬ、やはり出資の是非ということはもちろんありますけれども、まずこの法案として通る限り出資をしなければならぬというところから、三千五百万円、一千三百万円の超過を承認、これを決議した。満場一致をもって、だれ一人これに反対を唱える者はなかった。本制度がいかに切実に渇望されているかは、この一事をもって十分御理解が願えるところと存じます。このことは、単に北海道に限らず、各県におきましても、各種事情を排しまして、同様の意向にあるということを私は伺って、非常に喜んでおるものであります。  なお、時間の関係で、これをもって私の卑見を申し上げることを終わりますが、長時間御清聴いただきまして、まことに感謝にたえません。厚くお礼を申し上げます。(拍手)
  8. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人の御発言は終わりました。     —————————————
  9. 高見三郎

    高見委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 多年漁業団体並びに関係漁業者の待望しておりました漁業災害補償法案国会の議題になりまして、特にこれは非常に重要法案ということを与党もわれわれも認識をいたしまして、衆参両院での代表質問を行ない、本委員会にかかりましてからも、大臣の出席を得て代表質問等を行ない、以来、私ども片柳会長からも言われましたように、社会党自民党との漁業災害補償法の将来目標とするところは帰一をするという、そういう認識の上に立って、いろいろ政府原案をもとにした修正の話し合い等を鋭意今日まで進めてきておる段階であるわけであります。  今度の本格実施という政府が踏み切る段階は、私は率直に言って、政府案を見ました場合に、いわば月足らずで生まれたという、産後の肥立ちの悪い法案内容になりましたわけでありますが、しかし、政府自身がいろいろな困難な条件のもとで本格実施に踏み切ったということの英断については、私どもも敬意を表しておるところでございます。先ほどから三人の参考人からそれぞれ御意見があった中で、真に漁業災害補償法の名に値する内容とするためには、やはり政府保険事業というものを、法律第二条の災害補償制度の中に、三本の柱の重要な一つとして加えなければならない、それに基づく所要な法改正が加えられなければ、真に名実とも漁業災害補償法の名に値しないという意見が、共通的に私は述べられたと思うのであります。  この際、漁業共済制度研究会に参画をしておられました園先生に、この問題と関連をしてお伺いをしたいわけでありますが、私は、昨年の四月に設置をされ、そして過去六年間の試験実施の経過を顧み、十分な検討の上に立って出されました漁業共済制度研究会の答申というものが、政府本格実施に踏み切る大きな原動力であったというふうに評価をいたしておるわけであります。園先生も御指摘になりましたように、やはり災害補償法、特に漁業の場合における災害の態様から見て、国の保険産業というものを加えていかなければならない。研究会の議論の中で、政府が、あるいは農林省当局が答弁をしておる中に、片柳さんも若干そういう意味のことを言われましたけれども、残念ながら、従来の試験実施の段階から本格実施に踏み切る今日の時点においては、国の保険事業を直ちに実施する体制には、遺憾ながら、資料その他の整備の状況から見て、困難な面があるのだということを、従来から説明をしてきておるのであります。私は、むしろ率直に言って、この過去六年間の試験実施の過程において、政府自身が、やはり漁業災害補償法の重要な柱として、国の保険事業実施をするのだという当初からの意図を持っておれば、やはり標本理論の中における母集団に対する必要な標本数、それが普遍的に、客観的にそれぞれの漁業種類別、地域別を持つためにはどれだけのものが標本として必要かということは、これは理論的にあらかじめわかるわけであります。したがって、試験実施の段階において加入してくるものの資料のみならず、やはり本格実施に備えての必要な資料の整備という意味では、加入の形をとらない漁獲あるいは養殖漁具等の、他のものについての系統団体等の調査を委託しながらでも、とにかくそういう本格実施の場合の、国の保険事業にすぐさま踏み切れるための資料整備というものを今日までの段階で十分にやっておれば、そういうことをいって国の保険事業踏み切りをちゅうちょするということに相ならなかったのではないか、こういうふうに従来の試験実施に対する政府のかまえについて批判を持っておるわけであります。しかし、そういう批判と同時に、今日までの試験実施の経過並びに今日までの統計調査部等の資料、こういうものをふんまえて、今日の時点において国の保険事業をすべり出す場合においても、必ずしも万全とは言えぬけれども、異常、通常を分けるための必要な最小限の資料というものは私はあると判断をしておりますし、それらのものについては、今後実施の過程を通じて補正をしていけばよろしい、こういうふうにも思っておるわけでありますが、国の保険事業という問題について研究会でいろいろ議論があられたと思いますし、また、これについては改善の基本方向として、漁業共済経営の安定を確保するため、漁業共済団体が負担し得る共済責任の部門とこれを越える部門とを区分し、その越える部分については国が超過損害保険を行なうことが望ましい、こういう答申の重要な見解を述べておられるわけでありますが、これらの点について、草間的な、専門的な立場にあられる園先生からひとつ御意見を承りたいと思います。
  11. 園乾治

    園参考人 お答え申し上げます。  研究会の答申は、皆さんもすでに御承知だと思いますが、この本格的実施に対して、従来の試験実施資料だけでは足りない、だからもっと別な資料を得て本格的にやれということを答申しておるのではございませんで、いままでの試験実施にあるところの資料をいろいろ研究して、その上でやれるということを答申している次第でございます。ですから、いまが本格的実施の時期には早過ぎるという意見ではないのでございます。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは園先生や会長であられた山添さんなんかも、そういう見解を強く述べられたように私ども承っておりますし、私自身も社会党案漁業災害補償法案を作成するにあたって、いまのような見解、そうしてまた、それは同時に今後の実施の過程を通じて十分補正していける、こういう観点に立って社会党案の原案の作成をやったわけでありまして、この点、政府附則第二条で当面を糊塗しようという姿勢には、私は問題があるということを従来の折衝過程でもいろいろ申し上げてきたところでございます。国の保険事業の問題については、研究会の意向としては、従来の資料内容でもって十分国の保険事業に踏み切れるという見解であったということは明らかにされましたので、この点についてはこの程度にとどめたいと思います。  片柳参考人に承ってまいりたいと思うのでありまするが、この漁業災害補償制度というものの漁業政策上における位置づけ、価値判断、こういうものでありますが、私は、今日の中小漁業、特に沿岸漁業の現状というふうなものを見てまいりますというと、いわばろうそくの灯がゆらいでおるという現状のように思うのでございます。そういうろうそくの灯がゆらいでおるような沿岸漁業の実情の中で、いろいろな沿岸漁業等振興法に基づく諸施策をやらなければなりませんが、この漁業災害補償法は、そういう状態の中で百燭光とは言わぬけれども、十五燭光か二十燭光くらいのやはりあかりをつける、そういう重要な役割りを果たすものではないか。と同時に、日本は水産日本ということを従来からいわれておりますけれども、いわゆる中小漁業の母体であるところの漁村、これがやはり国際漁業に出ていく人づくりの基盤でもある。したがって、中小漁業の母体であるところの漁村に明るい光を今後ともに投じていく、力強く諸施策をやっていくということが、国際漁業を含む日本の水産政策として、非常に重要な意義を持っておる。そういう面で、との農業政策を政府与党が受けとめる場合にも、われわれ社会党が受けとめる場合にも、やはりそういう大きな視野からこの漁業災害補償法の重要性というものの価値判断をしなければならぬのじゃないかというふうに思うわけでありますが、この際、漁業災害補償法の位置づけ、価値判断をどういうふうに考えておられるか、承りたいと思います。
  13. 片柳真吉

    片柳参考人 角屋先生の御指摘の点は、私も全漁連に参りまして約七年くらいになりまするが、いままで一番沿岸漁業で政治面で放置されておるのは、漁業者が魚がとれなければあきらめておるという、こういう感覚がそのまま放置されておるということが、私は大きな政治のマイナスではないかと思っておるわけであります。したがいまして、沿振法で幾多の政策が掲げられておりまするが、私は順位をつければ、むしろナンバーワンとして、少なくとも農業以上に災害、不漁の危険度が多いわけでございまするから、いろいろな政策を論ずる基盤、最小限度の基盤として、ぜひとも経常安定、少なくとも現状であれ再生産の保障ができるこの制度が、あらゆる政策の基盤ではないか。これができてますれば、先ほど安藤さんからもお話がありましたが、金融もおのずから円滑になるでありましょうし、さらに私どもが言っておりまするのは、単に経済面で漁業政策の基盤であるばかりでなくして、むしろ、食うに困って、台風がくるときもあえて危険をおかして海へ出るというのが、従来の沿岸漁業者の悲惨な姿ではなかったかと私は思うのでありまして、したがって、これはモーラルリスクがあってはなりませんけれども、台風がくる危険をおかしてまであすを食うために出るということもなく、そういう社会的な保障もこれで相当得られるんじゃないか。ですから、私は何燭光かわかりませんが、少なくともあらゆる政策を樹立する共通の最低限の基盤として、この制度はひとつ確立をすべきではないか、かように考えます。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 安藤さんにお伺いしたいのですが、第一線にあって、試験実施過程で非常に北海道の場合には大きな成果をあげてこられたお話等もあったのでありますが、安藤さんは、同時に全漁連の中枢的な、指導的な立場に立っておられるのでありますけれども、過去の実践を通じて、試験実施の経過については、農林省内にもいろいろ批判的な意見もあるようであります。これは漁業災害補償制度というものを実施した以降においても、一方においては政府の政策上の責任というものはやはりあると思いますし、同時に、漁業災害補償法の場合には、共済団体実施の母体であり、その構成は漁業団体である、こういう点から、試験実施中の批判というものが当たっておるかどうかということは別にして、やはり過去六年間の試験実施の中では、契約金額は昭和三十八年度の場合に約七十億であったと承知しております。本年度十月以降に本格実施に踏み切る場合の契約金額の大体の想定は二百億前後であるというふうに考えておりますけれども、将来中小漁業の本案の対象になるものを全面的に入れてくる場合には、計算の方法によっても違いましょうけれども漁獲の場合には千五百億、養殖の場合には五百億、漁具の場合に百億、約二千億前後の共済金額の対象が包含されてくるであろう、こういうふうにいわれておるわけでありますけれども、やはりそういう意味において、今後本格実施以降の共済団体、その構成である漁協側の、これからの本事業推進にあたっての指導的な方針、考え方、受けとめ方、こういうものについて、第一線におられる安藤さんの立場から、先ほどもいろいろお述べになりましたけれども、さらに御意見を承っておきたい。
  15. 安藤孝俊

    安藤参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  非常にむずかしい問題でありますが、私は体験を通じまして——テスト時代はもちろん、それから任意共済も大体共通しておりますから、それらの体験を通じまして、これからいかに本制度を生かしていくか、それを一日も早くいかに完了せしめるべきかということを目途としまして、いろいろ自分の心がまえを申し述べて御参考に供したいと思います。  私どもとしましては、漁業関係の仕事を進めていく、沿岸漁業振興を中心とした漁業関係の推進ということから、ほとんど漁業協同組合の事業と共通している感じ方が基盤になっているわけです。ただ漁災だけが特殊の性質を持っているんじゃないのだ、大多数の生活の困難にあえいでいるものをひとつまとめてきて、その上に進むところの方向を示しながら、そうしてゴールインさせるというところに経営者の責任があるのだ、さように考えておるのであります。したがいまして、大差はない、協同組合経営の理論と一緒だというふうに前提を置きまして申し上げたいと思うのですが、そうしますと、まず、北海道におきまして主として私は四十年ばかり運動をやっておりますが、漁連と信連のこれまでの成果と同様に、綿密な年次計画を立てなければならぬ。一体試験、テスト時代において、私は綿密な年次計画は必ずしもあったとはいえないと思うのです。今度は本格実施でありますから一とにかく漁連と信連の事業というのは、もう十カ年計画を持っておるのです。十カ年計画を持っておって、初期の貯金はこれまで、二年目はこれまで、三年目はこれまで、十年目はこうだという計画を立てまして、漁民に対する呼びかけと、それから私は信連会長が専務で、漁連会長はほんとうは借金の整理に兼務してやっているのですが、それをやりますと、十七億八千万円の借金がありましたが、これも十カ年計画を立てまして、皆様の特別な御配慮によりましてできた整備促進法によりまして十カ年計画を立てたけれども、私は二カ年を短縮する方針で——そうしませんと漁民が締まってまいりません。十カ年と言ったのでは十二年も十三年もかかります。そういう意気込みでやりましたから、それは本年三月末をもって十七億八千万円が九カ年で達成した。これは北海道がえらい景気がよくなったためではありません。借金を払いながら、しかもこれが団結の力で払った。これは一種の奇跡だったと思います。全く漁民の心からの団結の成果と期待しております。これを直ちに推し広げていけばいいわけです。直ちに推し広げまして、ただ単なる目先の利益を追わないという態度をとらなければならぬ。ただし、大衆は悲しいかな、目先の利益を追いたがるものです。目先の利益を追ってあすの理想を投げてはならない。生きるためには目先の利益を押えよという指導を行ないまして、漸次積み上げ方式でもっていって、そこで年次計画というものが実施に移されていくわけです。たいていの場合は、架空の念仏だというようなことで大衆はごまかされてしまう。それを情熱を持って、常に浜をかけ回るくらいの情熱がなければいかぬと思う。そうしますと、ここに年次計画が着々として実施に入る。一年、二年実施されますと、今度は全体がやるぞという元気が出てまいります。ですから、最初に年次計画を立てるにあたりましては、あくまでも慎重たるべし、ただ大言壮語の年次計画は大禁物。私は、非常にかたく年次計画を立てながら着々と進んでいかなければならぬ、さように考えます。そうしますと、これは一種の積み上げ方式でありますから、御批判を受けましても決して説明ができぬような募集なんか自分なりにしません。たとえば北海道の信連で、浜回りを私はいたしました。ほとんど初期におきましては貯金という意欲が漁民にないのです。けれども、私は二十四年、信連会長になって以来、ほとんど十年くらいというものは浜におった、それで、浜回りをいたしまして、漁業者の主人はもちろん、婦人と青年というものに対して呼びかけた結果、これはいつとはなしに貯蓄ができるということを覚えてきた。ですから、当時系統で四億しかなかった貯金が、今日百億になっておる。しかも、一方には借金をやはり着々返しつつあるということにもなっておるということは、やはり浜を回って歩くことがいいんだ。それから漁連のほうも、三百億の共同販売高になりますが、三百億の共同販売高になりますと、漁連の勢力分野は大体四百億ですから、もう少しで全共販体制というものが北海道にしかれるというふうになります。ですから、こういうことをそのまま漁業共済に十分応用できると私は確信を持っております。ですから、このこつを漁業共済の初期の困難な過程におきましても十分漁民に理解を持ってもらわなければならぬ、そうして決して目先の利益を追ってはならぬ、ここに全力をあげてかけ回ることだと思うのであります。各県の事情はもちろん違います。必ず各県の方は北海道は現象が違うとおっしゃるけれども、断じて違いません。私は青森の再建整備を間接にやっておったわけです。しかも、みごとに完成しておる。一年短縮でやった。そういうことは違いません。その県その県の立地条件に沿う、その他人情にぴったり沿う、そういうことでいけばよろしいと思うのであります。そういうわけでありますから、漁民の総力を結集することが先だと思うのです。そういうことで、ひとつ具体的には逆選択の防止をはからなければならぬ。漁民にそういうふうな指導をいたしますと、逆選択の防止が可能です。そうめんどうではありません。そうしますと、適正な加入をはかるために、まずいたずらに数にこだわってはいけない。計画的にやって、数はにこだわらない。しかも、私は中庸的なものをねらう。あまりにもすぐ利益になるものはごめんです。それは逆選択になりますから、できるだけ漁業種類ごとに地域的に中庸的なものをねらっていく、そうしてその幅をだんだん広げて、全体加入をつくるということがこの根本のねらいだと思う。そういうことで、私は数にこだわらず、中庸的なものを中心に逐次加入の拡大をはかっていく。そうして普及推進をはかりながら、漁災組合の運動にとどめないで、しかも系統運動の一環として取り上げる。したがいまして、北海道ではいままで漁連、信連がそこまで参りましたので、経費や何か非常に困ると思いますけれども、職員の当初の配置のようなものでたいへん困っておるはずです。国から補助をもらいましても、はなはだ失礼でありますが、満足ではございません。どれだけもらいましても、所期の職員の人員配置はできない。そういう場合は、連合会の両方が全力をあげてその欠陥を補てんする。したがって、先行投資の意味を持っておると私は思う。そういうことによりましてやりますと、そこに必ず系統あげての成果というものが出まして、そして初めて当局が御安心の上に、皆様に御提案申し上げて、直ちに完全無疵の漁業災害補償法にしようという御決意ができると思う。またそれがわれわれの責任である。単に当局ばかりにお願いしてはいかぬと思うのです。われわれは、とにかく現在の過程にまできたのでありますから、それに沿うような努力をしながら、無理も申し上げたいと思うのです。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もあり、あとまた御質問もあろうかと思いますので、いろいろお話の点は、恐縮でありますが、なるべく簡潔にお願いをいたしたいと思います。  いま安藤さんからもお話しのように、漁業災害補償法がいろいろ相談の結果に基づいて今度の国会ですべり出す場合、一方においては政府の政策的な責任というものをやはり充実させていく必要があるんじゃないか。同時に、受け入れ態勢にある関係団体、関係漁民の方々が、真にわれわれの事業であるという観点から本制度を受けとめて、さらに内容を充実発展をさせる、両々相まって、真に漁業災害補償制度というものがりっぱに発展をしていくものだろう、こういうふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。今度の政府案社会党案の対比の中で話し合いを進める場合に、一つの焦点は、冒頭に取り上げました、国の保険事業というものをはっきり本法の中に加えなければならぬ。次は、先ほど片柳会長が御指摘になりましたけれども漁獲共済の中における共済限度額という問題は、政府案では魅力ある共済制度という点から問題がある。ただ、いろいろ議論をしてまいりますと、安定漁業における特約の九五%、安定漁業の一般の場合九〇、それからさらに一般の場合の八〇、不安定の場合、変動の場合の七〇という団体側の要請の問題は、これは私は妥当な要請であるということで、いろいろ議論をしてまいったわけでありますけれども、ややもすると、九五という問題については、利潤部分を含むかどうかということが、農林省あたりの議論としては出てまいるわけであります。それと同時に、いわゆる経費という問題について、労働政策上の配慮というものをやはり考えていかなければならぬと私は思う。従来の漁船労働者に対するところの歩合給的なものを逐次やめていって、固定給の部分を拡大するんだ、将来は固定給というものに中心を置いた給与体系にしていくのだということになれば、漁に行こうが行くまいが、そういう賃金というものについての経費を考えていかなければならぬということであって、従来の漁業政策上の欠陥であった労働政策の面、賃金の面、それらを前提にして経費という観念は使用しなければならぬというふうに思うわけでありまして、そういう点等もからんで、いわゆる共済限度額というものをどう考えるかということになっていかなければならぬじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、さらにこの点、園先生からも御意見があれば承りたいと思いますし、片柳会長からもその点について御意見を承りたいと思います。
  17. 園乾治

    園参考人 限度額の問題を何十%にするかということは、かなり技術問題も入ると思います。結局限度額を引き上げると、掛け金率を引き上げなければならぬ、あるいは掛け金率を引き上げなければ、国庫の助成金と申しますか、負担金を出さなければならぬという問題にも関連してくると思いますが、後段にお述べになりましたように、漁業における経費の中に、漁業に従事する労務者の賃金というものが正当に加算せられていないという現状があれば、それを加算するということが、漁業経済の経営の安全あるいは健全化ということに役立つのだと思います。これは農業の問題とあわせて考えると、その点がよくわかると思います。ただし、現状が歩合制度を主とする、いわゆる賃金を主としないということでございますと、現状からにわかに遊離するということもいかがかと考えますが、本来労務者の賃金体系を確立するということは重要なことだと考えます。それを現状においてどの程度漁業共済制度の支払いのほうへ加味するかということは、私ちょっと具体案を持っておりませんが、大事なことだろうと考えております。  お答えにならぬ回答であったかと思いますが、一応申し上げます。
  18. 片柳真吉

    片柳参考人 私からもお答えいたしまするが、先ほども公述をいたしましたように、必要経費のうちには、利潤はもちろん入っておりませんが、さらに償却費も実は除外されているわけです。この辺もおそらく理論としては、償却費を必要経費に見るのが正当ではないかという議論も私は相当あると思います。そういう問題もありまするし、また私が申し上げましたような資材費その他労賃も上がってきておりまするし、特にいま御指摘のように、最近の労務問題、特に労働力の確保の点から、この問題が非常に大きな問題になってきておる。また船のいろいろな保健衛生設備の整備の問題も急がれております。したがいまして、私どもも、やはり九五にして利潤まで見るというところまで行かぬのではないか。ただ、私も専門家ではありませんし、具体的な積算をしたわけではありませんが、観念としては、そういう労務問題なり資材費の高騰という問題は、特に考えていくべきじゃないかというふうに考えております。
  19. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本格実施に切りかえていく場合に問題になりますのは、先ほど片柳さんからもお話が出ましたけれども試験実施中の赤字をどうするかという問題であります。私どもは、試験実施というのは、政府漁業災害補償制度をつくるための準備として、政府責任において関係団体の協力を得てやってきたのだからして、その過程において生じた負債というものが、一億五、六千万といわれ、あるいは農林省では、若干精算の方法にもよりますけれども、もう少し少ないのじゃないかという見方をしておるようですけれども、いずれにしても、この赤字については、これは十月以降発足を予定されておる共済団体がかりに一部でも受け継ぐというのでなしに、全然別個の問題として赤字処理をすべきである、しかも、これは国の責任においてやるべきだというように考えるわけでありますけれども、農林省の中の意見としては、試験実施中のいわゆる政府が考えておった設計というものが、それぞれの年次において必ずしも設計どおりにやられたともいえないし、したがって、いろいろ赤字が出てくる面については、少々は関係団体が泣いてはどうか、こういうふうな意見が若干残っているのではないかという感じが、率直に言ってするわけであります。私は、新団体が発足する場合に、先ほど園先生、また片柳先生からも出ておりますように、特に今後すべり出していく場合には、養殖等が伊勢湾あるいはチリ、二十八災というような状況になると、いまの政府の原案のような形では必ず大きな危険が生ずる危険性が多い。そういう危険性もはらんでおる本法の施行後の共済団体にそういうものを負わしていくという形は、絶対に避けていかなければならぬ、こういうふうに思うわけですが、この際、団体側として、試験実施中の赤字というものをどう処理していくかということについての希望を、片柳会長から承っておきたいと思います。
  20. 片柳真吉

    片柳参考人 希望といたしましては、かねてからいろいろすでに申し上げて御陳情もいたしておる趣旨でございまするが、いろいろ過去の経緯を見ますると、こまかい議論はあると思います。しかし、かような新しい制度がスタートすることでもございまするし、いままでのそれに相応する功績もあったわけでございますので、大きく見て、国の委託による試験実施性格に照らしまして、これはひとつ全額国において御善処していただきたい。並行してやっております任意共済部門においては、若干の黒字は想定されますけれども、これは対象も違いますし、また勘定も別にしておりますから、その任意共済のプラスを片方に使うということは、これは契約者の利害を侵すことにもなりますし、これはひとつ別にいたしまして、この全水共の赤字問題につきましては、高度の立場から政府にごめんどうを見ていただきたい、率直にさように考えます。
  21. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは片柳さん、それから安藤さんの供述になかったわけですけれども、四月から九月までの実施の問題であります。いわゆる四−九の実施問題、これは従来の試験実施中の条件から相手にシビアに加入を引き締めまして、そうして四月から九月までの実施については、これは政府はある意味ではタッチしてないという形になる。そういう形でこれが実施されていく。これはやってみてどういう結果が出るかということでありますけれども、私は農林大臣との質疑の中でも申し上げたのは、せっかく加入が上昇してきておる状態にあるのを、四月から九月までについてはシビアな条件で一たんレベルダウンする、こういうやり方は、非常に政策としてまずいのではないか、したがって、四月から九月までについて、従来の加入のカーブをそのまま押し上げたようなカーブで実施をするということを政府自身も認めて、それについても、もしかりに赤字が出るような場合については、新団体内容と無関係に、別個にこの問題も処理しよう、こういうことで、そういうカーブの上に乗って、新団体が新しい形ですべり出していくように、こういう意見を強く言ったのでございますけれども、四月から九月までのこの実施問題についてどういうふうに団体側として考えておるか、また御意見を持っておるか、この機会に承っておきたいと思います。
  22. 片柳真吉

    片柳参考人 私どもも、できればこの空白の期間におきまして従来の体制をむしろ堅持して、上向きで新団体に継承いたしたい、こういう考えは当然持ったわけでございますが、遺憾ながら、国の予算の面からいたしましても、ことしの三月でいわゆる試験実施は打ち切りになりまして、この法案が通りましても、新制度が十月でございますので、そこにやむを得ざる空白ができるわけでございます。この空白を放任することはできませんが、しかし、その結果あるいは起こるところの赤字の補償がないということになりますと、現実問題といたしましては、その間にどうも従来のように積極的に契約をするということは、いたずらに禍根を新団体に残すことになりますので、実はまことにこれは残念なことではありますが、最小限度必要なものについて契約をいたしたいというふうに考えております。しかし、この空白も、制度のギャップとしてできたわけでありますから、できればこの間に起きた赤字というものをもしも国がめんどうを見ていただければ、私どもは途中であってももっと前向きの姿勢に転換することができると思いますが、現状ではなかなか困難のようであります。ただ、現実問題といたしましては、いま北洋の例の鮭鱒漁業が始まっておりまして、漁具共済が一番さしあたりの問題でありますが、これはいままで民間にいっておったものをこちらへ切りかえたという経過もございますので、これはできるだけ従来どうりやってまいりたいということでいま契約をしておると思います。ただ、その結果、もしも赤字ができた場合においては、新団体が赤字を継承することはいかぬということになりますと、削減をせざるを得ないということになりますが、これもお話のようにことしのあれで削減してまいりますと、来年の加入に影響してまいりますので、さような事態が起きました場合においては、いろいろ母船漁業者もおりますし、相当有力な協力を得られる向きもあると存じますので、さような削減等が起こらないような措置をできるだけ考えてまいりたい、できるだけこれはつないでまいりたいということでやっておりますが、全面的に前向きにいまの加入を促進して新団体に受け継ぐということは、遺憾ながら赤字補償の制度がございませんので、御了承をいただきたいと思います。
  23. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、最後に、一点質問をして、その程度でとどめたいと思います。  今度の国会の会期終わりまでに、われわれといたしましても、内容をできるだけ政府与党の理解と協力も得て前進をさせながら、法律案を処理したい、こういう気持ちを強く持っておるわけでございますが、そういうことで、本法が内容充実が可能な範囲においてやられて成立をした場合の、十月までのいわゆる受け入れ団体としての準備の問題であります。漁業共済組合あるいは漁業共済組合連合会というもののおぜん立てもしていかなければならぬ。さらに政府案のままでいきますと、五億の漁業共済基金の中の残りのさらに半額は、関係団体で持たなければならぬ。こういうものについても、十分それを消化し得る体制にあるかどうかというふうな問題もあり、さらにまた、本年度十月以降、大体二百億前後の契約金額でいけるだろうという前提の上に立っておるわけですが、それは十分こなせるというふうな判断の上に立っておられるかどうか。本法がさらに前進した形で実施された以降における本格実施までの段階、あるいは本格実施以降におけるところの問題も含めてけっこうでありますけれども、そういう問題に対する団体側としての受け入れ体制、準備、心がまえ、こういうものについて、会長さんから最後にお答え願いたいと思います。
  24. 片柳真吉

    片柳参考人 御質問の点は、まことにごもっともな点でございまして、実は私どももおかげさまでほぼこの法案が通るであろうという見通しもできましたので、従来の漁災制度期成本部を推進本部というふうに実はやや体質がえをして、今後御指摘の線に沿っていきたいと思っておるのでございまして、すでに安藤会長からも北海道の情勢のお話がございましたし、各地方の本部も、今度はこの制度がほぼできましたので、今後は具体的にこの制度を軌道に乗せる推進本部に模様がえをしていきたいと思います。これはさっき安藤さんからも言いましたように、ずいぶんいままで急いで御無理も願ったわけでありますから、できました以上は、全国的に普遍的に加入ができるように、計画的に進み得ますように私どもも万全の策を講じていきたい。またその機運は私はすでにできてきておると思います。現在のところ、すでに二十県近いものは、少なくとも十月ころまでには府県共済団体も設立の見込みであります。したがいまして、全国連合会設立の条件もすでに予定数をオーバーしておりまして、また、当然加入ではないという点が違いますが、しかし、協同組合運動の一環でございますので、県におきましても全面的に単協が加入するように、今後においてもいろいろ努力していきたい、かように考えております。
  25. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。園先生に一問だけお尋ねいたします。  いろいろ学問的な面からの保険理論をお聞かせいただいたのですが、現在提案されておりまする政府災害補償法案は、災害補償的なものであるとお考えになるか、それとも共済制度的なものであるとお考えになるか、学問的な面から、一言でけっこうでございますから……。
  26. 園乾治

    園参考人 おそらく、最初に私が申し上げましたように、補償制度というものは、受益者費用を負担する部分がかなり少なくて、第三者、特に国家費用を負担する部分が多い場合を補償というというように申し上げましたので、その点からのお尋ねだと思います。今回の制度が、私の言う補償制度の名に値する制度であるかどうかというきついお尋ねでございますが、これは本質的な問題というよりも、量的な問題であろうかと思います。社会党の御提案のほうがより補償的だということ、したがってまた、政府の御提案のほうが保険的だというようにお考えいただいていいんじゃないかと思っております。学者として、はなはだあいまいもこたるお答えを申し上げて申しわけありませんが、これで……。
  27. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま園先生から御意見を承ったが、片柳さんにちょっと御意見を承りたいと思うのです。  るる意見をお述べいただいたわけなんですが、この意見内容を聞いてみますと、まことに苦心された内容でございまして、政府のほうへも社会党のほうへも顔を立てたようなかっこうになっておって、結果的には焦点がぼけてしまった、こういうふうに思うわけなんです。今度の災害補償法の一番の焦点は何かと申しますと、やはり国の再保険事業を盛り込むか盛り込まないかというところが、一番の焦点だと思うわけなんです。片柳さんの御意見の中にもございましたように、いままで試験期間六カ年を通じていろいろやってきた。そうして現時点においてはその可能性が云々というような御意見の発表があったわけなんですが、私の考えからまいりますと、やはり踏み切るべきは踏み切らなければ、いつまでたっても踏み切りがつかないのじゃないか。そこが問題の焦点だと思う。  そこで、お尋ねいたしますことは、もうこれだけ審議が進められてまいったわけでありますし、この法律案が通過いたしました場合、その後における全漁民を代表する団体として、非常に大きな責任が出てくると思う。政府をして再保険に踏み切らすだけの責任団体にかぶせられてくると思う。そういうふうにお考えになりますかどうか、その点一点だけ……。
  28. 片柳真吉

    片柳参考人 御指摘のとおりの責任感を強く感じております。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 ちょっと関連して、一点だけ……。  園参考人片柳参考人に伺いますが、園先生のお話を聞いておりますと、非常によく農災法等を御研究になっておりますし、問題点はちゃんと御存じになっておる。私ども農災法と取り組んで長いこと悪戦苦闘してきておる一人でありますが、名は体をあらわすということばがありますが、その農災法の名は体をあらわしておらないのです。そこに問題がある。今度の場合も同じような事態を生じやしないか。この点を私ども心配しておるのであります。いわんや、再保険措置検討事項として法律にうたわれておるというような状態であります。超異常ということに対しては、考え方によっては、超異常を再保険をして、国がこれに対して全責任を負うというたてまえは、形は再保険の形をとっておりますけれども、言うならば、これは一つ国家補償の形をなすものであります。名は再保険、特別会計で国が自動的に災害に応じて支出をしていくという現行制度というものは、非常にいい仕組みになっておる。そういう仕組みのものをこれに入れてこそ、名は体をあらわすということになるのじゃないかと私は思うのです。ところが、それが検討事項という形になって、近き将来において実現を見るという期待が持てましても、発足当時においてそれが明文化されない。もし暫定施行期間に超異常災害が続発した場合には、一体どうなるかという心配があるのでありまして、むしろ、強制加入に踏み切って、すみやかに国の再保険、つまり、農災にとられておるシステムと同じような——その中身はいろいろ検討を要するものでありましょうが、考え方としては、災害に応じて自動的に国の支出がこれに伴う、こういう形をとるべきものではないかと私はひそかに考えておる一人でありますが、やはり超異常に対する国の再保険、いわゆる国の補償という面を強く出していけば、当然強制加入の問題がそこに唇歯輔車の関係として出てくると思うのですが、こういう考え方について皆さんはどういうふうにお考えになっておりますか。ひとつ制度のたてまえとして伺っておきたいと思うのです。一度できた制度というものは、そう簡単に、直すんだと言っても、従来の事例から見て、なかなか直せません。やはりいま赤路委員から御指摘になったように、踏み切るときにずばり踏み切っておかないと、言うべくして実行はなかなかむずかしいと私は思う。ゆえに、あえて意見を付してお伺いをいたしておるわけであります。  それから、これは園先生に伺っておきますが、そうなった場合に、いわゆる災害補償制度性格について、農災法の場合においては市町村の公営の道を開いておる。それは相当期間を経ましたが、最近では公営の方向は漸次拡大されて実施されておるのであります。そうなった場合におけるこの災害補償制度性格というものは、やはり公共的な性格を強くして、公営の方向に進むべき筋のものではないかということが考えられるわけでありますが、そういった点について、制度のたてまえとして、いかようにお考えになっておりますか。農災法自体が現在十分なものとは言えません。しかし、いま申し上げたような姿勢において漸進的によくなりつつある、こういうことを感ずるのでありますが、この点についていかようにお考えでございますか、御意見がございましたならばお聞かせをいただきたいと思います。
  30. 園乾治

    園参考人 農業災害補償制度ができましたのは、たしか昭和二十二年だったと思いますが、その後数回制度の改正が行なわれて現状にきておることは、皆さまの御存じのとおりだと思います。そこで、この漁業災害補償制度が一ぺんに農業災害補償制度と同じところまでいくということは、ちょっと考え得られませんので、やはり漸進的な経路をたどるもののように私どもは考えております。そこで、最初はあまり満足がいかない制度であるかもしれないと思います。やむを得ないというふうに私は考えますが、しかし、できるならば最初から、たとえば国の再保険制度を持ったところの制度にしたほうがよろしいのだとは私も考えております。政治的なことは存じませんので、そういうことだけを申し上げておきたいと思いますが、災害保険制度であるか、災害補償制度であるかという名にとらわれるよりも、実際に漁業に関するいろいろな不可抗力的な災害に対して、漁業経営の安全をはかるということの実をなるべく早い機会実施することが望ましいというように私は考えております。お答えにならないかもしれませんが……。
  31. 片柳真吉

    片柳参考人 国の保険が、御指摘のように超過再保険として、国が全面的に見ていただきたいということは、私も同感でございます。同じ考え方でございます。  それからその制度ができる過程の基金が多く出ない場合は、先ほども一応申し上げたとおりでございまして、超過再保険の措置がないわけでございますから、予定以上になった場合においては、国の責任において適当なる支払い措置を講じていただきたいということも、先ほど申し上げたとおりでございます。  強制加入の点につきましては、これは御意見でありまするから、今後十分検討はしていきたいと考えておりますが、ただ、私の誤解かもしれませんが、社会党案におきましても、現に共済団体ができますと、漁業協同組合が当然加入はいたしまするが、この組合員である漁業者共済組合共済関係を結ぶかどうかは、これは一応申し込みに応じて、特別な理由がなければもちろん契約をいたしまするが、漁業共済関係は、やはり漁業者の申し込みに応じて成立するという点は……。
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 これは三段階ですか。二段階じゃないですか。
  33. 片柳真吉

    片柳参考人 ちょっとその点は私が間違っておるかもしれませんが、そういうふうに私は理解しております。  それからもう一つは、公営問題は特に御質問がございませんので、省略いたしますが、漁業協同組合が本体となってつくりますので、ちょっと先ほど安藤さんも言われましたような、できるだけ協同組合運動の線に沿って、実際上全部の組合が加入するというふうに基礎づけてまいりたい。それでもどうしてもいかぬという場合におきましては、あるいは当然加入ということもお願いすべきかとも思いますが、私どもは、いまのところは、十分全面的に加入できる自信を持っておるようなわけでありまして、またさように今後とも進めてまいりたい。ちょっとその辺誤解があるかもしれませんが、その辺が農業共済社会党案とは違っておるかと思いますが、十分検討したいと思います。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 私はふえんしようと思ったのですけれども、関連ですし、芳賀委員が本格的におやりになるでしょうから、一つだけ申し上げておきますが、やはり法案のたてまえは二段階制になっていますね。それで、いまの片柳さんのお話を聞きますと、まあやっていけるんだ、こういうことなんですが、農災の場合は、通常責任を今度三割までは市町村、末端におろしたのですね。異常災害のものについては県段階、超異常が国、こういう形に一応その是否は別として割り切っておるのです。現在の形としては、漁業協同組合連合会が事業主体になる場合には、県段階において通常被害を見るのか。そして全国段階で異常及び超異常災害に対する保険措置共済措置を考えるのか。その辺はひとつ問題があると思うのです。農災法の改正の際にも、片柳さんもわれわれと御一緒に御審議願った経験が昔からあるのですが、そういう点で二段階制という点について末端に重点を置くか、あるいは県段階で危険負担をプールしていく行き方がいいかということは、考え方としていろいろあろうかと思います。私は、県段階の行き方というものについて、現在の漁協というものの分布、農災の場合と違いまして、局部的、部分的でありますから、これは可能であろうと思うのであります。そうなった場合に、県連合会の共済責任の限界はどこまであって、そして異常及び超異常の際には、全国段階がどういう形でこれに乗り出してくるのか、共済責任を全うするのか、やはり運営上ともからんで、問題があるのではないかと思うのです。御検討願っておきたいと思います。別に御答弁はなくてもけっこうです。
  35. 高見三郎

    高見委員長 芳賀貢君。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人の皆さんから熱意のある意見を聞かしてもらって非常に参考になったわけでありますが、主要な点だけについてお尋ねしたいと思うわけであります。  ちょうど昨年の十二月六日に、漁業災害補償制度期成全国漁民大会というものがあったわけでありまして、私どもも熱意を持って出席したわけでありますが、この大会の決定事項は、すでに言うまでもなく、第一の柱が「異常災害に対する部分の負担については、国の責任をもって措置すること。」第二は、「通常災害部分についても沿岸漁業等の負担能力に応じて、掛金負担について助成を行うこと。」第三は、「共済団体の過渡的な収支調節のため漁業共済基金を設置すること。」第四は、「事業組織については、実質的に漁協系統組織が活用される組織を考慮し、必要なる事務費に対する助成を行うこと。」これが災害補償制度確立の最大の柱であったわけです。  今回の政府案については、先ほど意見があったわけでございますが、この一番大きな柱が政府案によっては欠けておるということになると、先ほど同僚赤路委員からも発言があったとおり、この最大の柱の抜けた、名前だけの政府の漁災法というものに対して、全国の漁民の意思というものは、これでやむを得ぬということになるのであれば、そういう骨抜きの、期待に沿わない法案が成立したとしても、これは全く期待はずれだからして、協力はできないということになれば、これは片柳さんにしても、安藤さんにしても、それぞれ最高の指導的な立場で苦労をなさってきたわけでございますから、この点について率直な御意見をお聞かせ願いたい。
  37. 片柳真吉

    片柳参考人 国の保険事業ということが一番大きな骨子でありますことは、先ほど申し上げたとおりでありまして、ただ、いろいろな機関等その他の関係から、近い将来にこの制度を必ず立ててもらいたいという附則をはっきりすることによって、われわれはとにかくスタートを切らしていただきたい。しかし、この附則第二条の実現が非常におくれましては、これはまこと意味がありませんが、われわれも努力いたしますが、早急に、一両年中にこれをひとつ実現していきたいということで、もちろんいろいろ意見はございますが、大体の傾向としては、そういう将来の期待がはっきり持ち得ますれば、この際、スタートを切って、むしろ諸般の準備を推し進めるということのほうが補完体制としてはよろしいのではないか、こういうふうに思います。
  38. 安藤孝俊

    安藤参考人 私も、芳賀先生の御質問に対して補足してお答え申し上げます。  先生がおっしゃるのは、一々ごもっともで、私はそれに対して反論を申し上げることは何もない。ただ、実際問題としましては、漁村そのものが持っております特異性が、人おのおの立場によって見解が異なってくるということは、絶えず漁業の宿命的な重荷になっているわけであります。したがいまして、私どもが当然だと思うことも、ある立場によっては全然否定される、そういうことが漁民の不幸を累積する、こういう原因になっておることは事実なんです。これは絶えず今後ともずっと続くと思います。よほど漁村が貢献できる時代に入ってまいりません限り、そうした漁業の持つ特殊性というものは、なかなか一般に理解されないということが続くと思います。したがいまして、あまり理想だけを先に言い過ぎますと、いつまでたっても自分の前進の入口さえもできない。私はいままで苦い経験をいろいろ見ておった一員でありますから、一応その入口をつくりまして、そこに将来の約束があるならば、断固として、われわれはみずからの責任において、自分たちの漁村の特異性というものは、安心がいけるものであるということを立証したいという情熱を持っておるわけであります。でありますから、一種のはやりことばで言いましたら、ビジョンですか、看板に偽りなしというビジョンをせめて持っておられるならば、われわれは経過としての——先ほど私が開陳申し上げましたときに申し上げたのですが、経過としての立法というものはやむを得ないじゃないか。そのかわり、われわれは必ず立証してみせるというような段階じゃないか。それをあまり政治を待ちますと、二年も三年も先になりまして、かえってとんでもない事態が起こってきて、経済の高度成長下で一そう困ったことを起こしてからでは取り返しがつかない。しかも、最近見ますと、工業の異常なる進歩の陰には、悲しむべき漁村の衰退がある。北海道や東北あたりにはわりにありませんけれども、工業が異常なる進歩の地帯における漁民の窮乏というものは、自然に漁業を投げなければならぬという事態も起きておる。そういうこともありますので、一日も早くやることをやってみて、そうしてそれらの人たちの苦難にわれわれは協力しなければならぬ、こう思い、しかもまた、みずから守らねばならぬと思っておるわけであります。でありますから、これはおっしゃるとおり、決して異論はありません。そういうことでありますけれども片柳会長が申し上げましたとおり、私ら前線に働く者としましても、理想像があるならば、この際ひとつ踏み切るべきだ。かつて私が漏れ承ったところでありますけれども、もしかりに漁業共済法案なんというものを出されたら、それはそれっ切りです。先ほどどなたかおっしゃったのですが、一たん立法されまして、それが実施に入ると、まずい場合、それは廃止をして新たなる角度から出ようなんということは、私は十年も二十年もかかると思います。でありますから、ここにひとつ理想を掲げて、約束を取りつげる限りにおきましては、失礼だが、取りつけるということばは当たりませんけれども、少なくとも表題に漁業災害補償法というものを掲げられて、それをどうも共済の限度でやめたということは、権威ある国家はおやりになるまいと信じ切っておるわけであります。でありますから、われわれの責めにおいてやり得るものは徹底的にやる。そうして御安心のいくようなものを立証しながら、ここ一両年のうちに——私は長いことを考えておりません。一両年のうちにはっきりした内容の整備に着手されていただきたい、さように存じております。
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど園先生から、保険共済あるいは補償に対する制度上の問題についても、明確な規定づけの御意見がありましたので、これを一つの尺度にして、政府案あるいは社会党案を照らした場合においては、これは優劣というよりも、社会党の案は、たとえば漁民大会の要求の最低の希望を満たす程度の内容であるというようにわれわれは考えておるわけです。決して、安藤さんの言われたとおり、社会党案はビジョンであるとか究極のものであるというわけじゃないのです。これは現在の農業災害補償法とやや同列な制度をつくるというところに、大きな出発点を置いたわけでございますからして、われわれとしては、現在の農災法に決して満足しておるわけではないのです。農災制度の到達すべき方向というのは、われわれは完全に国家補償に持っていかなければならぬということでやっておるわけでありまして、ですから、出発にあたって、少なくとも現在第一次産業の中において、農業漁業の置かれた地位というものを考えた場合、これらの制度をつくる場合においても、やはり国の責任というものが大きく介入しなければ、制度の効果というものが及ばないということは、これは言うまでもないわけです。したがって、この点に対しては、やはり皆さん方におかれましても、主権者の立場から、いま政府の行なおうとしておる内容の貧弱な、責任を全くのがれた、名前だけつけっぱなしで、体質はどうでもかまわぬというようなものに対しては、やはり的確な判断を与えておくほうがいいんじゃないかというふうに考えるわけです。  それで、具体的な点でありますが、第一に、かりに政府案がこのまま通ったような場合には、これはとんでもないことになるわけでございますが、仮定の問題になりますけれども、この政府案がこのまま通った場合、これに対する受益者といわれる漁民の皆さん方が、この制度にどの程度熱意を持って参加されるかということは、この保険の設計上あるいは経営上大きな問題点だと思う。もちろん、いろいろな点から予測された設計はされておると思いますけれども先ほど園先生も言われたとおり、この種の、政府案内容制度である場合は、保険経営上からいって、まず大多数者はこれに積極的に参加しなければならぬということが大前提になるわけでありますが、国が再保険さえもやらぬということになると、これは全く相互救済ということにしかならぬわけですね。その場合、はたして前提になる大多数者が進んで参加するという態勢が期待できるかどうか、この点は非常に大きな問題だと思うわけです。しかも共済の引き受け等についても、先ほど足鹿委員が言われたとおり、末端において漁業協同組合が相当積極的にこの制度に協力するという態勢にならなければ、問題の発展は不可能でないかと思うわけです。政府案における漁業協同組合の位置づけというものは、単に都道府県を単位とする漁業共済組合に漁協自身として参加する、あるいはその地域における漁業者は任意の立場で参加できる、こういったことにしかなっていない。それですからして、やはり地域における漁業協同組合が相当積極的に行動を展開するということに期待を持たない限り、共済引き受けあるいは実施の効果的な運営というものは、期待しがたいというふうに考えられるわけでございますが、この点については、過去六年間にわたる実験段階のいろいろな御経験等もあるわけでございますから、この点に対して御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  40. 園乾治

    園参考人 私ども研究会の委員として若干いままでの試験実施の結果をいろいろ検討はしてまいりました。それを大部分盛り込んで政府案ができているということは、ご御存じのとおりでありますが、その中の国の再保険制度というものが欠けているということであります。これについては、その必要をほかの参考人からもお述べになったと思います。繰り返して申し述べることも必要でないかと思うのでありますが、政府案社会党の案を比較してみまして、政府案は画竜点睛を欠くというような批判に価するか、あるいは再保険制度を設けるということが、十分の上にもさらに希望する、いわば隴を得て蜀を求むというような批判に価するかというのは、いろいろ立場があると思いますが、とにかく、できれば即刻ということになりましょうが、早い機会に国の再保険制度を導入するという必要は、だれも認めておることだと思います。即刻認めるということについては、財政支出をかなり伴いますので、それができるかできないか、私よく存じませんが、再保険制度の必要ということはいまおっしゃるとおりであろうと思います。
  41. 安藤孝俊

    安藤参考人 ちょっと芳賀先生誤解になっておられるようですから、先ほどの答弁に補足をさせていただきます。  ビジョンと申しましたのは、社会党案をさしておりません。政府共済法案というようなものを出されるということを私は陰ながら伺って、それはたいへんだ、それならむしろやめてもらったほうがいいのであって、将来を約束するようにビジョンを書かなければならないのならば、われわれは見解の相違、立場の相違から起こる苦難に対しては忍ばねばならないのじゃないか、それをさえもいけないというならば、遠い将来にかかっておそるべき事態になってからでは、間に合わぬということを申し上げたわけであります。社会党さんが御熱心に立案されましたことについては、満腔の敬意を持っておるわけであります。誤解のないように願います。したがって、いま園先生片柳会長が言われましたように、重複いたしましても、不明確なところは開陳の際にも申し上げております。大衆に呼びかけるときに非常に効果を落とす、わかりにくくしておりますと、共済内容だけしか知らぬということになりましたら、前進しません。  もう一つ、つけ加えて申し上げたいのですが、いまのままで一体大多数が入るかどうか。園先生に対する御質問で、私に対する御質問でないから、私が申し上げるのはおかしいのですが、私は、ある限界に達したらとまってしまうと思います。ある限界に達しましたら、当然そこに別な手、すみやかに理想の形態を整えないと、異常災害に対してとまってしまう、突発があったらとまってしまうと思います。私は、そんなことのないように、親の心子知らずというようなことのないように努力したいと思います。つけ加えて申し上げておきます。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点でございますが、政府案によると、それは参加者のそれぞれの負担と責任において漁業共済事業を行なうということになっておるわけですからして、加入の条件は任意加入ということになっておるわけです。ところが、農災制度の場合は、これは不十分でございますが、補償と保険と混合方式をとっておるわけです。したがって国が一定部分を補償するという前提があるわけで、これは客観的に見ても、農業者がこの制度に参加したほうが有利である、利益であるという判断は成り立つわけです。したがって、市町村の共済組合地域における資格者が二分の一以上参加した場合には、他の者は当然加入ということになる当然加入制をとったわけです。国が相当部分責任制度上負うということを約束して、そのかわり、当然加入制度を設けてあるわけですからして、多数者の参加という前提条件からいうと、当然加入の規定によって全部入っておるということになるわけです。今度の政府案の場合は、政府責任が介入しておらぬ。したがって、加入する場合にも、強制的な加入はさせるわけにはいかぬ。希望の人だけがお入りなさいということになると、共済引き受け等についても、多数者の参加というものは、この政府原案によっては大きな期待ができないことに当然なると思うのです。それを緩和するためには、やはり一つの希望を与えて、一年以内あるいは二年以内には必ず国の再保険制度というものが実現できるのだ、国のほうでも、一年以内、二年以内においてはやりますという、そういう将来にわたっての希望と約束が、この制度発足出時において確約されないと、それまでしんぼうせよといっても、いまの政府は何をやり出すかわからぬですから、この点をわれわれは一番問題点として指摘しておるわけです。  次にお尋ねしたい点は、結局国の再保険制度というものがないわけですから、そうなると、都道府県を単位にして共済組合、あるいは全国を単位とする連合会において負担し得る責任の限界というものは、おのずから定まってくるわけですね。これは保険経理上も一つの数理というものが出てくるわけでございますが、その場合、たとえば予測されないような大きな災害農災法からいうと異常あるいは超異常ということになるわけでありますが、その危険分散あるいは危険負担というものはどの程度消化できるかという点であります。安易な考えを持つと、一方において基金制度というものがあるから、この基金制度に依存して、先ほど園先生が言われたように、これが一つの調整的な作業を行なうこともできるのではないかという御意見でありましたが、政府案によると、そういう調整作業を基金でやらせるということにはなっていないわけですね。この基金性格は、農災法基金性格と全く同様なことになるわけでございますから、政府の考えておる制度によって、この基金を異常、超異常が起きた場合の責任分の支払いに向けて取りくずすことはできないと思うのです。ですから、制度上の問題として、基金との関係をどういうように結合させて、政府が再保険をやらぬその過渡的な段階において、これを処理するかというような点についても、参考人の皆さんから聞かしておいてもらいたいと思うのです。
  43. 園乾治

    園参考人 支払い調整基金は、通常の支払いの場合のアンバランスを調整する働きを持っておるものでありまして、超異常と申しますか、超過損害の支払いに対する調整の役をしておるものではないと思います。これは農業災害補償における基金と同じ性質を持っておると思います。ただ、金額が片方は三十億でありましたか、こちらの漁業のほうは五億、あるいはスタートのときには四億ということでありますから、かなりの差があるということでありますが、しかし、実際にその支払い調整基金の必要がどの程度かということになると、他の参考人がおっしゃったように、五億では足りないのではないかという懸念もあると思います。そこで、どうしても国の再保険制度が、超過した異常な支払いに対する安全弁と申しますか、調整をするものとして必要になってまいります。これはいまおっしゃったとおりで、なるべく早い機会に再保険制度を持たなければならぬというように私は考えております。しかし、これは先ほどもどなたか申されましたように、政府案附則第二条というものがはっきりしないから、それをはっきりさせて、近い機会に国の再保険制度を云々というようにする必要があろうかと思いますけれども、これは先生方のほうの御努力に待つということに帰着するのではないかと思っております。
  44. 片柳真吉

    片柳参考人 私からも簡単に申し上げますが、いま園先生の言われましたように、私どもが当初要望しております基金制度は、通常責任部分の不足分調整ということでありまして、今度できる基金とは多少違っております。再保険ができませんから、ことばを裏返して言いますと、いわゆる通常、異常もひっくるめた、全体をカバーする基金制度ということで、変形的な経過的なものだと思います。したがいまして、五億でできない場合は、相当大きな、いわゆる超異常的な事故が起こったときでありましょうから、五億で足りない場合には、先ほど言いましたように、ちょうど再保険を国の責任で持つように、特別措置として別途に国の責任において措置を講じてもらいたい。五億のファンドをベースにして融資をするという問題もあろうかと思いますが、これは融資でありますから、あくまで返すことになりますし、超異常危険に相当することになりますと、なかなか貸すほうも返す見込みがないということになりますと、融資も困難ではないかという問題もあろうと思いまして、その点、こういうような場合には、ひとつ国の責任において支払い措置をとっていただきたいということ一を強く要望しておきます。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、先ほど任意共済に関する御意見もありましたが、まあ引き合いは、やはり農災法にもまたがるわけでございますが、現在漁業関係は水協法による共済事業ということで、建物共済あるいは厚生共済事業が行なわれるわけでございますが、農業の場合には農協法による共済規定に基づいた共済事業農災法による任意共済事業と、両方の制度でこれは運営できることになっておるわけですね。これは片柳さんも御承知のとおり、農協の共済事業共済組合の任意共済事業の競合は、相当歴史的にもいろんな問題を惹起したことは御存じのとおりです。しかし、新しく漁災法が生まれる場合、漁業経営上の、当然それに付随する建物であるとか、あるいは従事者を中心とした厚生共済事業等は、やはりこの制度の中でも行なえるという道は開くべきであると思うのです。水協法でやっておるなら、これはやるべきではないとか、やらぬということは、当を得ないことだと思うのです。特に政府案の漁災法というものは、末端においては漁業協同組合の協力というものが不可欠なものになるわけでありますし、それから出発当初から経営面においてはそう楽観できない面が多々あると思うわけです。農業関係の任意共済事業等の例を見ても、どうして末端における、あるいは府県共済組合というものが、建物あるいは厚生共済を頑強に守ろうとすることは、この任意共済事業が併用をされることによって、やはり本来的な共済事業というものに対して、経済的にも資金的にも相当補完的な役割というものを果たしておる、あるいは社会制度的な役割も果たしておるということになっておるわけです。ですから、たやすく手離せぬということに当然なっておるわけです。特に漁業関係は、経営面から見ても、決して農業の関係よりも有利性があるということにはなっていないわけですからして、これもやはりあとで加えるということでなくて、発足当初から任意共済事業というものは行なえるということにしておかないといけないと思うわけです。どうしてもこれが必要であるとずるならば、当然——まあ、社会党のほうはどうだと言われると、附則においてすみやかにやるという程度で、そこを突かれると、こっちも少し弱い点がありますが、やはり体系としてはどうしても必要であるというふうにわれわれは考えておるわけでございまして、この点についても、学者の立場からの園先生の御意見とか、経営者の立場からの参考人の皆さんの御意見をもう一度聞かしてもらいたいと思います。
  46. 園乾治

    園参考人 農業協同組合の共済事業が一方的にあり、もう一方において農業共済組合共済事業がある。農業の方面ではいわば二本立てになっておるということは、いまお話のとおりであります。ところが、この漁業の面においては、水産業協同組合の共済事業というもの、これを経営する団体が、またここにあるところの農業災害補償事業も行なうということになると、そういう二本立てでない点において、非常にこちらのほうが円満な運営ができるし、また経済的な運営もできると思います。ただし、水産業の協同組合でいまやっております任意共済事業と、それからここに行なわれるべき漁業災害補償事業とは別個に切り離すというわけでありますが、もちろん、これは経理面において切り離すことは当然であります。しかし、同一の事業体がこれを経営することができないということだと、はなはだ不便であろうと思います。ぜひともこれは経理面における厳重な分離ということと、同一経営主体があわせ行なうと申しますか、並行して任意共済事業とこの事業とを行ない得るような方向に立法を持っていくというようにお願いをしたいと思っております。
  47. 安藤孝俊

    安藤参考人 園先生のお答えで尽きておりますが、むしろ経過的に申し上げたほう誉御理解願えると思います。  このことは、すでに漁災本部出発当初におきまして、関係共済会やすべてのものが集まりまして十分ディスカッションした結果、これは近い将来必ず一本にするのだ、向こうはそれをもってみずからその衝に当たるのだということで割り切っているわけであります。したがいまして、これは実施に入りました場合でも、責任の限界は明確にしますけれども、相互に助け合うということについては、やはり協同組合のいわゆる系統と同じですから、一緒に助け合うという度合いにおいては、むしろこれが第一線で助け合うという考えに立ちまして進んでおりますから、いま御心配のとおりです。それをほんとうに実施の上に具現いたしたい。しかもそれを法的に一日も早く具現することを期待しているわけです。
  48. 園乾治

    園参考人 ちょっとつけ足したいと思いますが、いままでの試験実施期の赤字、その後のこの四月から十月までの赤字の処理については、片柳先生からのお話がありましたとおりに処理していただくことをお願いしたいと思っております。それが今後の新しくスタートする事業の障害になるということははなはだ残念であります。ならないような御処置をお願いしたいと思っているわけであります。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、もう一点だけにとどめておきます。  先ほど来の皆さん方の御意見によっても、政府案附則第二条に最大の期待を寄せておられると思うわけです。これは私から言うまでもありませんが、この政府案附則第二条は一体何をいっているかということでありますが、これは「政府は、中小漁業者漁業事情の推移並びに漁業共済団体が行なう漁業共済事業及び漁業共済事業実施の状況に応じ、この法律に基づく漁業災害補償制度における共済掛金率、共済責任の負担区分等に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」片柳さんもかつて農林官僚であって、先輩ということになるわけですが、あなたの時代には、こういう何が何だかわからぬようなつづり方の文句のようなものは、しかも法律にのっとったということは御経験がないと思うのです。ところが、あなたの後輩なるものは間々、この法案だけではありませんが、どうも法案審議する場合にも、何を意図して何を表現しようとしているか、判断に迷うような、こういう名文句がときどき出てくるわけです。この問題は、この附則第二条があるから、これに最大の希望と期待をつなげば、たとえば国の再保険事業等の実現もはかってもらえるのではないかという御判断のようですが、どうですか、片柳さん、先輩として、この文句で安心だということになるかどうか。
  50. 片柳真吉

    片柳参考人 私も先ほど申し上げたつもりでありますが、私も頭が悪い関係ですか、実はこの附則第二条を見ても、共済責任の負担区分等で、国が保険事業をやるという観念は必ずしもはっきりしておらぬ。どうも絵にかいたようなものになってしまって、実体がつかめないという強い感じを持っておるわけであります。そういう趣旨で、ひとつこの点は、できるだけ国の保険事業、しかもそれはでき得れば長期再保険として国が保険をやっていくというふうに、はっきりこの点を修正をしていただきたい。そうしませんと、さっき安藤さんの言われたように、今後事業を進めるためには、ソフトフォーカスでは全然気合いが入りませんので、ひとつよろしくお願いしておきます。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は明確に言ってもらったのでわかりましたが、もう一つは、多年の実験の経過もあるわけでございますが、いま即時できないのではないかという意見、そういう現実論もあるわけですが、われわれは、出発当初からこの体系でいかなければいかぬ。園先生におかれましても、あとからよくするよりも、最初をよくして、運営上実力がついて、そうして国の責任をやや緩和してもいいのではないかということになった場合にむしろゆるめるのはいいが、最初全く骨のないようなもので、クラゲのようにふらふらしたものにあとから骨を入れるといっても、これはなかなかどうしようもないわけです。しかし、政府案は、これは何を言っておるのかわからぬから、期待が持てないが、もし一歩も百歩も譲って、即時実施にならぬとしても、一年以内にやるべきか、あるいは気長にがまんしても二年以内でなければならぬというものであるか、これは片柳さんあるいは安藤さんの立場から見た場合に、いつでもいいというわけではないと思いますが、皆さんの生きているうちに実現すべきものか、冥途に行ってからでもいいか、そういうものでもないと思うのです。だから余裕を置くとしても、たとえば一年以内で再保険の措置を講ずるか、最悪の場合でも二年以内とか、何かのめどというものは、立法上も明らかにしておかないといけないと思うのです。社会党案がそのまま通れば問題はないわけですが、皆さんも両方の間にはさまっていろいろな立場もあるわけですけれども、こちらもその点を御同情申し上げて、再保険実施をさせる場合、一年以内か二年以内か、そこら辺を明確にしておいていただけば、きょうの貴重な参考人の御意見基礎にして、当委員会においても、政府案社会党案があるわけですから、これをできるだけ審議を急いで結論を出していきたい、そういうふうに考えております。
  52. 片柳真吉

    片柳参考人 安藤さんからもお話をいたしましたように、私どもは、一両年ということを繰り返し申し上げておるのでありまして、私も法律の関係は最近はわかりませんが、もしも附則にすれば、二年以内とかいうふうに具体的におきめいただければ非常に幸いと思いますが、多少私どもの古い法律知識からしますと、検討事項に期限をつけるということは適当ではないのじゃないか。そうなりますれば、これはよけいなことかもしれませんが、附帯決議等で具体的な御要請をいただきますれば、私どももすこぶる励みになると思います。よろしくお願いいたします。
  53. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は長時間にわたり御出席をくださり、貴重な御意見をお述べになりまして、まことにありがとうございました。本案審議に資するところきわめて大なるものがあったと存じます。厚くお礼を申し上げます。  午前の会議はこの程度とし、午後は二時より再開いたします。  この際、休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  54. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案稲富稜人君外一名提出林業基本法案、右各案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告があります。これを許します。吉川久衛君。
  55. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は、本日は政府提案になる林業基本法案に対する質問を試みるものでありますが、本日は理事会の申し合わせもあるようでありまするから、限られた時間のうち、基本的な数点について、政府にお尋ねをいたします。  わが国の森林は国土の約六八%という大きな面積を占め、約十九億立米の森林蓄積を有しているといわれています。わが国の森林が、今日まで木材その他林産物の供給、資源の有効利用、国土の保全等、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与してきた意義は、大きいものがあります。  しかし、林業は、本来生産期間がきわめて長いこと等、他産業に比較して不利な自然条件のもとに置かれているばかりでなく、わが国の民有林林業は、その多くの経営基盤が零細、劣弱であります。また、これらの森林は、昭和三十五年十月二十六日の農林漁業基本問題調査会の「林業の基本問題と基本対策」の答申でも指摘されておりますとおり、所有者の資産保持的な性向等によって、生産力を十二分に発揮しておりません。さらに、最近国民経済の高度成長に伴い、木材の需要量は急増しております。すなわち、所得倍増計画の想定伸び率三・六%に対し、昭和三十六年度までの実績は八%となっております。また、外材輸入も増加し、このため、昭和三十八年度の外貨支払い高の第四位に当たる四億ドル、原材料関係では第三位という巨額なものを支払っており、国際収支の面でも大きな問題となっております。また、山村とその他地区との間に社会、経済、文化等の面の格差が拡大し、このためもあって、農山村からの労働力の流出は顕著となっております。  このような林業をめぐる情勢の大きな変化に対処し、これを克服するための抜本的な対策確立の要望は、農山村民をはじめとする農林業界のみならず、多くの識者によって指摘されており、林業基本法案提案が待たれていたのであると思うのであります。林業基本法案は、わが国林業の置かれている現状と将来の動向等を考えると、まことに時宜を得たものと思われるのであります。  そこで、まず最初に、林政の目標についてお伺いをいたします。  林業の営まれる場としての森林は、木材等を産出する一方、同時に、国土保全その他公益的機能を有しており、国民経済の発展、国民の福祉の増進に役立っております。しかも、これら森林の持つ国土の保全その他の公益機能の維持増進と、木材等の経済的供給能力の培養とは、表裏一体をなしており、それぞれ均衡ある総合施策を確立されることが必要であります。しかし、一部において、政府の最近の林業政策は、ややもすると森林の公益的機能を軽視し、経済的機能だけを重視しようとする傾向が顕著であるとの意見もあるのであります。そこで、最初に、政府の林政の基本的姿勢について、農林大臣の御所信をお伺いいたします。
  56. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 再々御答弁申し上げておりますように、森林の国土に対する寄与といいますか、貢献といいますか、あるいは国土保全の点におきまして、あるいは国民保険の点におきまして、あるいは気候を緩和するという点におきましても、非常に重大な機能を持っておることは、御指摘のとおりでございます。しかし、一面、林業を経済的に経営していかなくちゃならぬ、こういう要請も強いのでございます。そういう意味におきまして、経済的な経営というものに力を入れますけれども、本来の問題でありますところの国土保全、こういうものは一日もゆるがせにできない問題でございますし、この問題をゆるがせにして国土の保全に支障を来たすということになりますなれば、国としてその損害を回復し、補てんするのは容易でないと思いますので、政府といたしましても、この国土保全という本来の使命につきましては、十分政策的に、あるいは予算的に措置を続けてきておりますが、一そうなお強化するつもりでございます。同時に、森林の経済的効果によりまして、その経営がよろしきを得るということでありますならば、またあわせて国土の保全ということにも相なることと存じます。両々相まちまして、森林の持っておる意義といいますか、それを一そう高めていきい、こう考えております。
  57. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 林業基本法案は、森林の持っています、ただいま伺いましたような両者の機能のうち、主として木材等の経済的供給能力の培養の面について、林業を産業として発展させる施策を中心に規定されております。そこで、林業基本法案を主として林業の発展と林業従事者の地位の向上を目的とされた理由、それから、森林の国土保全等の機能の維持増進に関する施策はどう対処されるのか、また、林業基本法案と森林法は、法体系からいいましてどう考えたらよろしいのか、この三点についてお伺いいたします。
  58. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 森林の公益的面と経営的な面、その調整措置につきましての三つの御質問でございますが、一口にお答えするならば、国土保全的なものにつきましては、第三のお尋ねの森林法が中心をなしておると思います。御承知のように、沿革的に申し上げますならば、森林法は、森林に関する公共的、公益的制限及びその見地から、森林施策に関しまして必要な限りでの基準的事項等を規定しております。林業基本法案は、これと対照的に申し上げますならば、経済政策に関する基本的事項を規定する、こういうことでございます。しかし、いまの森林法の中に沿革的に含まれておりますところの森林の木材の生産、あるいは、森林組合及び林業改良助長等に関する事項は、林業基本法案の基本施策のもとに位置づけられる、こういうふうに体系的には考えられるわけでございます。でございますので、先ほど申し上げましたように、体系的に見ますならば、いまの森林法と林業基本法案とを十分に生かしまして、国土の保全と林業経営に寄与したい、こう考えております。
  59. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 次に、農業基本法は、その第一条の目標に、農業従事者が所得を増大して、他産業従事者と均衡する生活を営むことができるようにすることを目途といたしておりますが、林業基本法案は、その第二条、政策の目標に、林業従事者の所得の増大をはかるとしております。そこで、林業の場合、所得の均衡をうたわないのは何ゆえですか。政府の見解をお伺いいたします。
  60. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 もちろん、林業経営者にとりましても、他産業との所得の均衡を得られるようにいたすことは当然のことでございます。特に林業経営あるいは林業の従事者といいますか、労務者等におきましては、その点非常に他産業との格差の多い点があります。ただし、林業全体につきますと、個々的な所得というよりも、一つ経営体というような形が相当多いので、林業所得の観点だけからの他産業との均衡、こういうことは必ずしも適切ではない点もあるかもしれない、こういうふうに考えますので、特に農業基本法のように、所得を他産業と均衡を得るようにという規定は設けてありません。しかし、実質的には当然均衡がとれるようなものでなければならぬということは、申し上げるまでもないと思います。そういう意味におきまして、あの規定が入っておらないわけでございます。
  61. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 山村振興林業基本法案の関係をお伺いしたいと思います。  最近、山村地帯とその他の地域との問に、経済、文化、その他各種の面の格差が拡大をし、そのため、山村人口は地すべり的な流動を起こしております。もしこのままで推移するならば、山を守る住民がなくなり、これは山村地帯の荒廃のみでなく、わが国産業経済発展の桎梏となると思われるのであります。特に家ぐるみ離農、いわゆる挙家離村の現象が散発的ではありますが、各地にその数を増しております。このことは、農政調査会編「日本の農業——あすへの歩み」第二十五、第二十六号合併号、「挙家離村」、「朝日ジャーナル」四月十二日号、「広がる家ぐるみ離農」、その他、二月二十三日NHK総合テレビ「日本の素顔、廃屋の村」でも全国放送されております。人口流出に伴う林業労働者の不足は林業経営を側面から圧迫しております。一方、山村民の生活、文化環境の整備は、林業の安定的発展の一つの要素でもあります。また、山村の立地条件から、林業は山村のおもな産業であり、林業の発展が山村振興の一端をになうものであります。このように、山村振興は林業発展振興前提措置と思われるのであります。林業基本法案は、山村住民の生活環境の整備の措置等直接規定しておりませんが、この点について政府の見解をただしたいと思います。  また、別途山村振興法案というようなものを準備されておりますかどうか、伺います。
  62. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業のしわ寄せといいますか、そういう面が山間僻地の住民に非常に強く寄せられておるといいますか、こういうことはお話のとおりだと存じます。したがいまして、山村の振興ということには、あらためて一そう力を入れなくてはならぬと考えております。したがいまして、御承知のように、本年度の予算等におきましても、山間地の調査費を計上いたしまして、山間僻地の住民の実態あるいは向こうべき措置等について、十分調査研究をいたすことに相なっております。林業基本法案では、いま御指摘のように、特に規定をしていることはございませんけれども林業基本法案の趣旨からしますならば、当然山村の経済的、社会的後進性を是正するということも、法律の趣旨といいますか、特に規定は設けてありませんが、そういう考え方で進めていかなければならぬと思います。  それで、特に山村振興法案でも準備しているか、こういうことでございますけれども、私は、山間振興に対しまして、林業基本法の実施状況あるいは本年度予算等におきまして調査研究を続けることにしておりますことに基づきまして、立法措置等も検討していきたい、こう考えております。ただ、本年度におきまして、そういう法律を出すかということになりますと、本年度提案という考えは政府としては考えておりません。できるだけ立法措置等を検討して、山間僻地の経済的、社会的な立場をよくしていくことにしていきたい、こう考えております。
  63. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 次に、林業構造の改善事業性格、進め方、効果等について伺います。  わが国の民有林の大部分は、ただいままで申し述べましたように、きわめて零細であり、かつ資本装備もおくれております。林業の健全なる発展のたには、その経営規模を拡大し、生産性を上げる手段を導入する必要があり、そのため、林業構造改善事業を行なうものと理解するのであります。しかるに、一部において、この事業は零細林家の切り捨て政策であるかのごとき論議があるようでありますが、林業構造改善事業は、一部でいわれているように零細林家の切り捨てとなるのか、また、この事業はどのような形で行なわれるのか、それからまた、その効果の見通しはどのようなものでございますか、簡明にお答えを願います。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 林業基本法案は、零細な林業家を切り捨てる、こういうような考え方は全然持っておりません。零細な人々まで含めて林業の経営ができるようにしていこうというねらいでございます。したがいまして、零細規模等の場合に、あるいは分収造林の推進とか、あるいは国有地を売り渡しまして規模の拡大をはかるとか、あるいは生産の共同化を強力に推進する等のことによって、零細林業家もこの中に含めて、総合的に進展するような考え方でございますので、決して零細林業家を切り捨てるというような考え方は持っておりません。
  65. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 次に、農業基本法第十五条は自立経営の育成ということをはっきり打ち出しておりますが、林業基本法案はこの点はっきりいたしておりません。林業の場合、将来の林業経営のにない手を法律に明示しないのは何ゆえか、政府の見解をお伺いいたします。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業ですと、御承知のように、いろいろな農業の形態がございますが、作物を相手にしておるということが非常に多いのであります。林業にいたしましては、将来にわたるところの何年かの森林資源を造成しながらやっていくという形になっております。そういう意味におきまして、林業経営につきましては、規模を拡大するということも一つ方向ではございますけれども、自立というよりも、林業経営として健全な発展をさせたい、継続して林業生産活動を行なうことによりまして、従事者の所得の増大をはかりたい、こういうことでございますので、一年限りの農業における作物と趣を異にしておりまして、長きにわたって健全なる発展をさせたい、こういうようなニュアンスの違いがございます。
  67. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 農業及び林業構造改善のための国有林の開放方針についてお伺いをいたします。  国有林野は、わが国森林面積の約三分の一、蓄積で約二分の一を占め、わが国林業の発展の上に大きな役割りを果たすことが期待されております。しかし、国有林はその成立の経過等からいたしまして、地方的、地域的に偏在しており、その中には、地域の農業及び林業の構造の改善に資するため開放することが適当なものも相当多いと思われます。しかし、この国有林の開放をめぐって巷間いろいろな動き、うわさがございます。国有林野の開放に関する政府の方針をお伺いいたします。  またこれと関連して、林業基本法案は国有林を活用するといっておりますが、活用と開放の相違点について、政府の見解をお伺いいたします。  林業の構造改善のためには、部分林を推進するほうが、財政の弱い地域住民にとって有利であるとの見解もあります。すなわち、地区の住民によって組織される協業経営体等が、国と契約に基づいて国有林野に造林し、伐採時その収益を分収する。部分林は、地代が不要な点、長期にわたる林業生産期間中に予想される各種の災害等による危険を分散し得る点等、有利な点が多い制度とも思われるのであります。しかし、現行の部分制度は真に造林者のためのものとは言えない点が多いのでございます。部分制度の改正あるいは推進について、政府の方針をあわせてお伺いいたします。
  68. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国有林の開放ということばが当たっているかどうか知りませんが、国有林を払い下げて農業構造改善あるいは林業構造改善あるいは地域住民の福祉のために寄与したいということで、国有林の払い下げということを推し進めていこうという方針を立てております。ただし、再々最初に御指摘がございましたように、森林の持つ意義、ことに国有林の国土保全に寄与する面等が非常に強いのでありますから、国土保全に支障のないような限度におきまして国有林を払い下げたい、こういうように考えて、それぞれの指示をいたし、また、各営林局等にその適否等を諮問するところの審議会を置きたいということで、組織のほうの改正案も提出いたしておるわけでございます。  そこで、開放あるいは活用というようなことばがある、林業基本法には活用ということばが相当使われておるが、この差はどうなのか。開放ということばが法律的に熟しておるかどうかわかりませんが、森林法そのものが、この国有林等のあり方等を規定いたしております。それから林業基本法案は、先ほども申し上げましたように、経済的な経営面に重点を置いております。そういう面から、林業基本法案等におきましては活用という字句を使っておりますが、これは所有権の移転ばかりでなく、なお、お話がありますような部分林、分収林等、所有権に関係なくして利用できるような面、あるいは入り会い林野の整備というようなことによる利用ということもありますので、広く活用ということばが使われておると私は了承いたします。  なお、部分林等につきましては、この活用をはかりたいと思いますが、それに対するいろいろな支障等が活用を十分に発揮させない面がありまするならば、これを排除いたしまして、是正して活用を十分していきたい、こういうように考えております。
  69. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 ただいまの最後の部分制度の改正、これについては特に格段の御留意をいただくことによって、あるいは国有林開放の問題とも関連をいたしまして、非常に意義のあることでございますので、十分御検討をいただいておきたいと思います。  次に、予算措置等についてお伺いをいたします。  林業は、本来その生産期間が著しく長く、かつ自然環境が粗悪である等、生産性の向上や林業従事者の福祉の増進をはかる上に、他の産業に比較して非常に不利な条件のもとに置かれております。このため、林業に対しては特に手厚い助成措置を必要と思うのでありますが、現状では全く不十分の一言に尽きると思われます。そこで、国は、林業基本法案第二条に掲げる目標達成のため、まず林道その他林業における公共投資等の充実はもとより、新たに林業構造改善事業その他の施策についての十分なる予算措置が必要であると思います。林業基本法の制定に伴って、政府は予算上どのような措置を行なわんとしておりますか、お伺いいたします。
  70. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 従来からも、林道とか造林事業の推進、あるいは機械の導入とか林業技術の普及向上等の各般にわたりまして、予算上も配慮はいたしてきております。特に三十九年度におきましては、林道、造林予算の拡充、林業構造改善対策の着手等のほか、金融、税制面におきましても金利の引き下げ等の措置を講じてまいっております。しかし、この林業基本法案の中にも予算的に配慮していくというような趣旨が強くうたわれておりますので、この法案が成立いたしまするならば、さらに一そうこの法案の趣旨に沿いまして、必要な予算措置につとめることにいたしたいと思いまするし、そのためには、林業基本法が成立することが非常に望ましいと考えております。
  71. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 林道は、広く林業経営のバックボーンを形成するのみでなく、農業振興に寄与し、また山村地帯唯一の交通路として、文化、経済面に果たしている効果はきわめて大きいものがあります。このことは、農山村地帯の市町村道、県道の前身が林道であったものが多いことからも裏づけられるのであります。現在、民有林林道開設事業に対し、政府は主として林産物搬出の意義を認めて補助しています。この補助率は、私人の林産物搬出による利益と建設費の差額に応じて決定されておりますために、林道が現実に果たしている機能に比較して、低い補助率となっていると思われるのであります。同時に、現地の実情を聞きますと、最近、労務費、資材費の値上がりに伴う開設工事費の高騰と、特に地元市町村の財政力あるいは地元住民の負担力の貧弱なため、その施行が困難となっているものが多いのでございます。そこで、現行の林道の補助区分はどのようになっておりますか。また昭和三十九年度より補助率等の是正が行なわれたと聞きますが、その実情はどうでございますか。林道開設の進捗率等についてお伺いをいたします。  ただいま理事のほうから連絡がございまして、都合で、本日の私の質疑の残余は次の機会に譲るようにということでございますので、私の質問はこれで終わりますが、後日また大臣並びに長官にお伺いをすることにいたします。
  72. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 林道の補助につきましては、また特別に配慮をいたしたのでございますが、それにつきましては林野庁長官からお答えいたします。
  73. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 お答えいたします。  林道の現在の開設の進捗率につきましては、全国森林計画に基づきまして、昭和三十八年度から四十七年度までの十カ年間に、国有林につきましては約一万三千キロ、それから民有林につきましては約三万七千キロというふうに定められております。それで、この民有林の計画量のうち、国庫補助の対象になる林道といたしまして二万五千キロということに相なりますが、これに対しまして、昭和三十八年度実績といたしましては、民有林は千三百キロ、それからいま申し上げました国有林につきましては、三十八年度は千二百キロということに相なっております。なお、三十九年度予定といたしましては、国有林並びに民有林の国庫補助分、その両方はそれぞれ千三百キロずつでございます。  それから、その次に、国庫補助の状況はどうなっているかという御質問でございますが、それぞれの開設基準に基づきまして、基幹林道につきましては六割五分、それから一号、二号、三号、四号、それぞれの基準によります区分に対しまして、六割、五割、四割、三割という補助率になっております。  なお、林道改良につきましては、幹線林道が五割、その他が三割、なおそのほかに山村振興林道がございます。これは三割でございました。これに対しまして、昭和三十九年度予算におきまして、その山村振興林道分につきましては三割でございましたのを三割五分、それからいま申し上げましたそれぞれの基準によって補助率を区分しておりますが、その基準につきまして、蓄積承るいは利用の面積、それぞれの基準を緩和することによりまして、三十八年度に対しまして三十九年度は約三%の補助率アップということに相なっております。  なお、いまも大臣から御答弁のございました改善等につきましても、林道融資の面でも三十九年度は改善を加えております。  以上でございます。
  74. 高見三郎

    高見委員長 松浦定義君。
  75. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 いま議題になっております政府提案の林業基本法並びに社会党の出しておりまする森林基本法、これらの問題につきましては、国有林野の持つ使命の役割りからいたしまして、非常に重要な法案であろうと思うわけであります。そこで、いま同僚吉川委員から御質問もありましたが、社会党が森林基本法を提案いたしております関係から、いま政府提案になっております林業基本法は、先ほどから大臣の御答弁もございましたが、関連法としての森林法並びに国有林野法等との関係につきまして、今度の基本法を出すに至りました理由等について、御意見を伺いたいと思うのであります。特にこの場合、関係の非常に深い農業基本法につきましては、相当長期にわたってこれの検討並びに審議をいたしてまいったのであります。でありますから、この林業基本法が今回提案されるに至りました理由につきましても、それらの意見も含めて、その経過を御説明いただきたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお話のように、国有林は、林業基本法に移りましても、あるいは一般的な林業の問題としても、非常に重要性を持っておるということは御指摘のとおりでございます。ただ、国有林の基本的な方向考え方等につきましては、再々御答弁申し上げましたように、森林法の規定がありますので、林業基本法案におきましては、経営面、廃業としての林業の発展ということに重点を置いたわけでございます。そこで、御承知のように、木材の輸入も非常に多い。すなわち、木材の需給構造等に相当な変化を来たしております。あるいは先ほどから吉川さんも御指摘のように、山村からの労働力の流出等も非常に多くて、挙家離村というようなところもございます。こういうように林業をめぐりまして情勢の変化が大きいのでございますので、やはり林業につきましても、産業としての林業の発展を考え、また山村地帯の林業従事者の地位の向上もはかっていかなくちゃならない、こういうことをかねがね考えておったのでございますけれども、いまの森林法との関係、その他森林関係の法律等との分野調整等もあります。考え方等におきましてもいろいろ問題がありましたので、提出までに相当検討いたしておったのでございますが、長引いたうらみはございます。しかし、いま申し上げましたような観点から、従来の森林資源政策を推進するばかりでなく、最近の情勢の変化に対応して、林業の基本的あり方を明らかにしよう、こういうことによってまた国土の保全にも十分役立てたい、こういう考え方から提案をすることに相なったわけでございます。
  77. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 いま大臣の御答弁ですと、産業としての基本法だということはよくわかるわけでありますが、森林については、やはりいまお話がありましたように、国土保全の機能というものも含めて、私は基本法というものの性格が名望ともに伴うのでないかと思うわけであります。もしいまのような御説明でありますならば、これは基本法というよりも、単独法的なものであってよろしいのではないか。農業基本法の場合も、多くの関連法案があるからずいぶん問題になりましたけれども、そういう轍を踏まないために、基本法なら基本法らしく、いまお話のありましたような国土保全その他の問題も含めて、その機能を十分発揮できるようなものでなければならぬ、こういうふうに実は思っておるわけであります。こういう点は、社会党が出しておる森林基本法とは非常に違っておるということを考えておりまして、今後いろいろ審議を進める場合において、十分ひとつこの公益的機能が発揮できるような問題についての御意見を承りたい、実はこのように考えておる次第でございます。  いま申し上げました社会党提案の森林基本法との相違点というような点について、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  78. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 社会党案政府提案との違いをごく大まかに申し上げますと。いま先生からお話のございました国土保全の面を、社会党案においては産業振興と同じウエートで並行させておられるという点が一点、その次は、国有林野事業につきまして相当具体的に、かつ詳細に規定をされているという点が一点、第三点は、社会党の案といたしまして、林政計画といいますか、森林計画といいますか、上からの計画制度を非常に重視されておられる点が、政府提案の、個々の熱意のある林業経営者の創意くふうを助長しながらその発展をはかるという考え方との対照点でございます。大まかに言いますと、そういう点でございます。
  79. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 国有林野というのは、決して私有のものではなく、国民全体の財産であるということについては、これはだれしも認めておることでございます。しかしながら、国土保全等の本来の役割りを果たすということになりますと、いろいろ問題が出てくるわけでありまして、先ほど吉川委員の御指摘の中にもありましたように、最近一部においてその開放運動が起きておる。これは先ほどの大臣のお話でありますと、こういう問題についても相当慎重な態度をもって当たらなければならないといったように聞き取ってはおりますけれども、すでに私どもの周囲には、そうした問題については相当突っ込んだ論議が進められておる、こういうふうに考えておるのであります。先ほどの御答弁で一応理解はいたしておりますけれども、いま一応申し上げましたような国民全体のものであるという立場から、この開放に対して、少なくとも一部のその地帯の関係者だけが中心になってこういう問題を起こすことについては、いささか疑問があると思うわけであります。われわれ社会党といたしましても、この開放問題の内容については、必ずしも全部反対をしておるわけではないのであります。そういう点については、本法案審議する過程において、重要な問題でありますし、あるいはいま申し上げました基本法ということになりますと、これと同時期にこうした問題が起こっており、あるいは最近見ておりますと、これが議員提出か何かの形で国会提案されるかのような風説も流れておるのでありますが、こういう点について大臣はどのような見解を持っておられますかをお聞きいたしたいと思います。
  80. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国有林野の持つ意味等につきましては、御説のとおりでございます。実は私も大事な問題だと思っていますので、国土保全の目的を離れて、あるいは利権等のために開放するというようなことにつきましては、厳に慎まなければならぬと思っております。でありますので、具体的な問題等につきましては、営林局に設けますはずの審議会等にはかっていきたい、こう考えております。でありますから、構造改善等のためあるいは公共の福祉のために開放するということでありますならば、それは積極的にやってよろしいと私は思います。また開放ばかりでなく、保安林等の買い入れ等もいたして国土保全の目的を達する、こういうように考えておる次第でございます。この問題につきましては相当慎重にやっていきませんと、いろいろ問題も起こしますし、森林本来の意義をなくする、こういうふうに考えますので、十分考えてみます。したがって、いま国有林開放の法律を出すのかということですが、政府といたしましては、そういうことは考えておりません。あるいは与党の議員提出というようなことがあるやには聞き及んでおりますけれども、これもはっきり私は承知いたしておりません。政府としては、そういう法律を出すことは考えておりません。
  81. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 いまお話しのように、政府としてはそういう意図はない、全くそのとおりだろうと思います。しかし、与党の議員提出によって出るかもしれない、こういうお話でありますが、実は昨日、ある一部のお方という言い方をしておいたほうが妥当かと思いますが、いろいろ中心になって、昨日も総会を開いて、国有林野処分特別指定法案というようなものを議員提出で出したいということを決定したということが、本日のある新聞に堂々と発表されておるわけであります。こういうことは、いま政府当局がせっかくこの基本法を出して、国民の世論の中で重大な国有林野の今後の長期的な方針を立てよう、いわば憲法的な法律を制定しようというときに、少なくともこういう問題を一これはやはり与党の諸君ではないかと私は思いますが、そういうことをおやりになることは、国会審議権に対する実際の責任を持つ人の行為であるかどうかということを疑わざるを得ないのであります。ですから、いま大臣のお話のように、そういうことがあり得るといったような考え方でなく、もしあった場合には、政府としてはこういう処置をするということでなければ、この基本法の名のもとに審議を進めるということについては疑問が出てくるのではないか、こういうように考えております。これはいずれお手に入ると思いますから、お読みになればわかると思いますが、こういう情勢の中でありますから、この開放問題につきましては、単なる一部の人のものでなくて、やはり国民全体に関係があるわけでありますので、先ほどお話しになりました関連法案を通じてまだ十分でない点を基本法の中で制定する、こういうお話でありますから、国民全体の生活に影響がある治山治水等の問題を考えてまいりますと、相当長い、しかも両面にわたって海岸に接続いたしております日本の状態からいきまして、少なくともこの山林というものにつきましては、相当重要な内容を含んでおるわけでありますから、この審議にあたりまして、いささかもこういう動きがこの法案審議の支障にならないように、政府といたしましてはひとつ十分善処されることを、この際、警告的な意見になりますけれども要請をいたしておきたいと思います。  次に、先ほどのお話の中にもありましたが、基本法を出さなければならぬというような事態に至っておる山村における地域格差は、大きく他の一般産業から見てはなはだしく出てまいっておると思うのでありまして、この環境整備等につきましても、この山村振興を推進することを今日の基本法の中ではどのようにお考えになっておるか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  82. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 山村の状態につきましては、私ども深い関心を持って調査を進めることにいたしておりますことも、先ほど御答弁申し上げたとおりであります。いま提出いたしております林業基本法案も、この山村振興の重要な一環としての意味を持っておるというふうに私は考えておりますので、振興のためにも十分この運営をはかっていきたい、こう思います。
  83. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 次に、林業構造改善事業についてでありますが、これは御承知のとおりに、農業構造改善事業が、今日三カ年過ぎていろいろ問題が出ておる。しかし、審議の過程においてはなるほどとわれわれも納得せざるを得ないような御意見も実は多かったわけであります。しかし、林業と違いまして、農業は、いろいろな意味で、この改善事業というものは、局部的あるいは地域的に要求を満たすようなことができるわけであります。しかし、林業構造改善ということになりますと、一般国民から見ましても、どういう地帯、どういう階層に対してこういうことをやるのかということについては、まだ私は十分理解がされておらないと思うのであります。われわれ地元におきまして森林近くにおりましても、その所有する人がいろいろの立場に立つ人が多いわけであります。どういう点に力を入れたらこれが林業構造の改善になるかという点については、なかなか十分私ども把握することができない。しかし、今度の法案の中で、この林業構造改善事業について規模の拡大をはかる、こういうのでありますから、今日までやっておられて、支障のあった点についての改善にもなるのではなかろうかと思うのでありますが、どのような程度の規模目標としてこれから進めようとされるのか、あるいはまた、先ほども御意見がありましたが、農業の場合と同様に零細林家の切り捨てになるような心配はないか、こういう点について重ねてお伺いいたしたいと思います。
  84. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、零細林家は、大きな経営規模を持っている者との競争関係に立っているというわけではございません。小さい林家は、林業とともに他の農業などを併存してやっているというようなものでございますので、構造改善事業をするからといって零細林家を切り捨てるというようなことは、そのこと自体から出てくる理由もないと思います。構造改善の内容等につきましては、なお御説明する機会もあるかと思いますが、一口で言えば、森林の樹木の生長というものは二十年、三十年先のことでございます。造林等によりまして継続的な生産活動ができるように、計画的に、そして林業所得を確保していけるような方向で構造改善を指導したい、こういうように考えておるわけでございます。
  85. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 すでに御承知のとおりに、終戦後の農地改革で農地については改革が行なわれまして、ある程度そうした一部独占的な農業経営者はなくなった。その中でやるのでありますから、非常にスムーズに私は進められ得る条件があったと思うのであります。しかし、林業の場合は、そうでなくて、従来のままの形でおるのでありますから、その地域においてすでに既得権を持っておる大山林地主が、いま御心配になっておるような点についての改善に、ある程度支障のあるような点が決してないというふうには私は考えないわけであります。こういう点をひとつ十分考慮の中に入れて、この改善の問題はやらなければならぬのじゃないか、こういう意味で御質問をいたしておる次第であります。なお、構造改善は現在の近代化に備えて行わなれるのでありますから、そういう林業家だけに行なうというのではなくして、やはりその職場におるいろいろな関係者においてもこれと同様な近代化、改善が行なわれなければならない、こういうように思うのであります。ですから、いままでずいぶんそうした事業の整備あるいは近代化等について問題になっておる中で、就業労働者等についての問題で、ときたま人員整理等にあらわれたような問題が出てくるのではないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、この基本法制定にあたりまして、そうした面については全然心配がない、たとえば整理をされた場合においても、配置転換を十分なされるといったような問題も、この中ではっきり決定されてまいると思うのでありますが、この点についての御意見をお伺いいたしたいと思います。
  86. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 林業関係につきまして、国有林の特に労働者について、林野庁といたしましても、雇用の安定、福祉の向上につとめて従来ともやってきております。あるいは給与等につきましても、相当考えてきておるわけでございますので、この林業基本法ができるから、それによってこういう労働者が不利な立場になる、あるいはやめさせるというようなことはございませんで、むしろ、こういう林業従事者の雇用とかあるいは生活面もよくしていくということにねらいがあるわけでございます。
  87. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 時間が三十分の予定でありますけれども、実質的には三時三十分までということでございますから、最後に一点だけお伺いして、あとは次会に譲りたいと思います。  入り会い林野の問題についてでございますが、林業基本法に関連いたしまして、特に入り会い林野の近代化法案といったようなものを提案されるようなお考えがあるかどうか、この点をまず一点お伺いしたいと思うのであります。なぜこういうことが必要かということになりますと、いま全国的にお聞きいたしますと、約二百万町歩の入り会い林野関係がある、こういうことであります。実は北海道にはあまりございませんけれども、私は、先般行なわれました長野県の八子ケ峰においての植樹祭の会場地帯へ初めて参りまして、非常にびっくりしたのであります。大臣もおいでになって、樹木そのものについてはいろいろお考えがあろうと思いますが、あのような広大な地帯が、入り会い権関係で今日まで放棄されておった。ようやく話し合いがついて——これもまあ植樹祭を行なうということを前提として話し合いがついたのではないかとさえ私どもは考えるのであります。あの地帯においてこれから植樹がやれることに実はなるわけでありますが、あのような地帯が今日まで放棄されておるという、そういう問題を含む入り会い林野の改善等については、これは本法案提案と同時に、思い切った制度の改革と申しますか、政府の方針を立てないと、今後ああいう問題が解決する時期というものを失するのではないか、こういうふうに考えておるのでありますが、との点についてはどういうような御方針を持っておられますか、お伺いしたいと思います。
  88. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 入り会い林野の権利関係等は非常に複雑でございます。これは幕府時代からの慣習による入り会い権もありますし、共有の入り会い権、総有的な入り会い権と、非常に複雑な権利関係になっております。でございますので、これを近代化していくという必要に迫られておることは、いま御指摘のとおりでございます。でございますが、これは権利関係が非常に複雑、むずかしい関係でございます。十分検討して法案等も出したいということで、目下検討中でございますので、今国会にはちょっと間に合わないかとは思いますが、研究はいたしております。
  89. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 詳細な点は次回にお伺いすることといたしまして、最後に、自由化対策の中で、現在外材が相当入っておるわけであります。その外材のうち、特に製材輸入が相当入ってまいりまして、その流通過程までにおける経過としては、おそらく特定の貿易商社等が独占されておる、こういうようなきらいがあるのではないか。したがって、中小企業的なそういう業者は、この木材関係を通じましても、相当倒産のうき目にあっておるといったようなことが随所に見られるというふうに私どもは聞いておるのでありますが、今後この外材輸入等につきましても——今日、米、南洋材等が相当重点的に輸入されておる、こういうふうに私は考えておるのであります。したがいまして、北洋材等の輸入とのバランスはどういうふうな結果になっておるのか、あるいはいま問題になっております日中国交回復とか日中貿易とかいうのは、相当重要な問題になろうかと思います。むしろ、これは与党の中にも、将来の経済問題を解決するためということでおやりになっておるようでありますが、やはり中材等の輸入等については今日全然考えておられないのか、あるいは状況はどうなのかというような点について、お伺いをいたしまして、私の本日の質問を一応終わりたいと思うわけであります。
  90. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 北洋材が現在の輸入総量の中でどういう位置を占めておるかというお話でございますが、大体現在の外材輸入は千三百万立法メートル程度でございますので、北洋材をソ連材という意味にいたしますと、二割弱ということかと存じます。  それから日中貿易につきましては、これはなお将来の問題として、私どもとしても十分検討いたしたい、こう考えております。      ————◇—————
  91. 高見三郎

    高見委員長 この際、委員派遣承認申請の件についておはかりいたします。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案及び稲富稜人君外一名提出林業基本法案の各案審査のため、各地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、衆議院規則第五十五条により議長に承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  つきましては、派遣委員の選定、派遣期間、派遣地は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、派遣地によっては、航空機利用の件につきましても、あわせて承認を求めたいと存じますが、この点についても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は、来たる二十六日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会