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1964-05-20 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       大坪 保雄君    加藤 精三君       小枝 一雄君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    寺島隆太郎君       中山 榮一君    野原 正勝君       八田 貞義君    藤田 義光君       細田 吉藏君    三田村武夫君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    野口 忠夫君       松浦 定義君    湯山  勇君       稲富 稜人君    小平  忠君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 五月二十日  委員中山榮一君、松田鐵藏君、楢崎弥之助君及  び小平忠辞任につき、その補欠として八田貞  義君、寺島隆太郎君、山崎始男君及び中村時雄  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十九日  国内産牛乳による学校給食事業法制化促進に  関する請願唐澤俊樹紹介)(第三七五九  号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八〇八号)  同(松平忠久紹介)(第三八〇九号)  同(福永健司君外十二名紹介)(第三八七二  号)  同(小川平二紹介)(第三九一六号)  同(下平正一紹介)(第三九一七号)  同(中澤茂一紹介)(第三九一八号)  同(原茂紹介)(第三九六七号)  肥料法期限満了後の措置に関する請願唐澤  俊樹紹介)(第三七六一号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八一〇号)  同(松平忠久紹介)(第三八一一号)  同(小川平二紹介)(第三九一九号)  同(下平正一紹介)(第三九二〇号)  同(中澤茂一紹介)(第三九二一号)  同(原茂紹介)(第三九七〇号)  農作業中における傷害事故保障制度の確立に関  する請願唐澤俊樹紹介)(第三七六二号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八〇六号)  同(松平忠久紹介)(第二八〇七号)  同(小川平二紹介)(第三九一三号)  同(下平正一紹介)(第三九一四号)  同(中澤茂一紹介)(第三九一五号)  同(原茂紹介)(第三九六九号)  山村振興法制定に関する請願唐澤俊樹君紹  介)(第三七六四号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八一二号)  同(松平忠久紹介)(第三八一三号)  同(小川平二紹介)(第三九二二号)  同(下平正一紹介)(第三九二三号)  同(中澤茂一紹介)(第三九二四号)  同(原茂紹介)(第三九七三号)  林道亀淵線のつけかえ工事施行に関する請願(  福井勇紹介)(第三七八八号)  海草天草人工栽培増産法に関する請願河野密  君紹介)(第三九五六号)  酪農経営安定対策に関する請願松平忠久君紹  介)(第四〇六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  肥料価格安定等臨時措置法案内閣提出第一五  六号)  農林水産業振興に関する件(市乳価格及びレ  モン自由化に関する問題)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。   〔赤路委員委員長発言議事進行」と呼ぶ〕
  3. 高見三郎

  4. 赤路友藏

    赤路委員 定数を一応よく数えてください。
  5. 高見三郎

    高見委員長 定数はあります。  肥料価格安定等臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。  通告があります。これを許します。芳賀貢君。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、現在の法律によりますと昭和三十九肥料年度需給計画を、年度開始前の七月中に決定して公表することになっておるわけですが、この準備についてはどの程度にするのか、昭和三十九肥料年度需給計画について。
  7. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 現行の二法が七月に失効いたしますので、来年度需給計画につきましては、現在の二法に基づく需給計画の作業は目下進めておりませんが、しかし法律が成立いたしました場合に備えて、需給見通しに必要な資料収集等は行なっております。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、現在の肥料二法は七月三十一日まで効力があるわけですからして、当然現行法に基づいて新しい肥料年度開始前に、三十九肥料年度需給計画肥料審議会意見を徴して決定して、公表しなければならぬという.ことになっておるわけですが、当然、これは現行法が延長されるか、あるいは期限一ぱいで廃止されるかは別として、やはり法律の現存する範囲内において、三十九年度肥料需給計画というものを政府責任で明確に立てる必要がある。この点について七月一ぱい現行法失効するからしてという安易な考えで取り扱うことは、これは不当な態度だと思うのです。ですからこの点について農林大臣責任のある答弁をお願いいたします。
  9. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりで、いま法律があるのですから、法律に基づいて進めていくつもりでございます。現に近く肥料審議会も招集いたしますが、これは本年度需給計画等について修正すべき点がございますので、そういう点などもはかりたい。それから三十九年度の問題につきましても、いま資料集収中でございます。もちろん現行法ができておるのでありますから、現行法のもとでものを進めるわけであります。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと三十九年度肥料計画というのは、これは現行法規定に基づいて必ず期日内において決定して公表する。そのことに間違いはないのですね。
  11. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行法律失効する前に——失効するかしないかわかりません。失効はいたしますが、そういう手続をとるべく進めております。もし失効してしまうということになれば、三十九年度需給計画そのもの一つの何といいますか、過去のものというか、そういう形にはなりますけれども、需給計画をつくるように準備は進めておるわけでございます。
  12. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもおかしいですね。現在の法律では、翌肥料年度計画を立てる場合には、年度開始前に肥料審議会意見を聞いて、そうして計画決定して、農林大臣はそれを公表するということになっておるわけですから、当然七月末で現行法失効するとしても、現在の法律規定によって、明年度肥料需給計画というものは明確に立てなければならぬですね。その後に法律失効し、あるいはいま審議中の肥料新法がもし成立したとしても、現行法に基づいて策定された三十九年度肥料需給計画というものは、これはやはり有効な需給計画として尊重され、処理しなければならないと思うのですが、せっかく需給計画を立てても、今度は法律失効した、新しい法律ができたから、すでにきめた需給計画というものは、これは無価値なものであるということにはならぬのです。そうじゃないですか。法律が継続しても変わっても、国内における生産された肥料販売とか処理とか、あるいは輸出等事情が、法律の改廃だけによって大きく変化することにはならぬじゃないですか。問題は現行法に基づく硫安価格等決定については、これはどうしても肥料年度開始前にきめるということは現行法にもうたってありませんから、この価格問題の取り扱いは、この法律失効後にどうなるか。あるいは審議中の新法が成立した場合には、それに準拠して価格問題等を扱うことになるとしても、需給計画に関しては法律がなくなったから、変わったから、これは無価値なものであるということにはならぬと思うのです。ですからこの点をこの際明確にしておいてもらいたい。
  13. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 法律が変わったから無価値なものになるとは私は申し上げません。しかし新法ができますならば、新法に基づいて需給見通しというものをつくるということになりますから、そのほうへ移るわけであります。でありますので、この法律の成立ともにらみ合わせながら、現行法に基づいては現行法需給計画を立てるべき準備はいたしております。この法案見通しとの関連においてやっているわけでございますので、もし需給計画ができたという場合にこれは無価値だ、こういうふうには申しているわけではございません。もちろん価値あるものでございますが、新法が成立しますならば、新法に基づいた需給見通しに移行する、こういう形になるかと思います。
  14. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは準備準備中というのですが、七月一ぱいに、明年度肥料需給計画現行法規定に基づいてこれを策定する、樹立する。それは政府行政責任でしょう。しかし七月一ぱい現行法失効する。それだからして、その後の取り扱いについては、かりに現在審議中の肥料新法なるものが成立した場合には、この法案には需給計画というものはうたってないわけです。単に需給見通しなるものがある。しかも硫安会社が行なう、輸出会社が行なう硫安の譲り受け計画を立てる場合には、農林大臣通産大臣が策定した肥料需給見通しに基づいて立てられなければならぬということが書いてあるだけであって、この点が現行法政府案との大きな違いになる。正面に需給計画を立てなければならぬということは何もうたってないのです。輸出関係する場合の条項に、ただそれがちょっと姿をあらわしているだけですからね。その点がわれわれとしては理解できないわけです。もう十カ年にわたって、毎年肥料需給計画というものを策定して、これに基づいて行政的な運営が行なわれてきている。ですからたとえばこの法律期限が切れて、新しい制度が生まれた場合においても、すでに策定した三十九年度需給計画というものは、いまの大臣答弁によりますと、それの名前は、計画という名称は需給見通しと変わっても、内容現行法に基づいて策定された三十九年度肥料需給計画を、そのまま新しい制度に移行させて、三十九年度肥料需給計画に基づいた施策を進めていく、そういう答弁ですか。
  15. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大体内容は同じものだろうと思います、需給計画需給見通しは。ただ形の上で、需給計画というものはいまの法律に基づいているものであるし、需給見通しというのは御審議願っておる新しい法律に基づいたものでございますから、新しい法律が成立するということになれば、いまつくる準備をしておりますが、その需給計画というものは需給見通しという形でつくられる。その計画名前をつければ需給見通しという形のものになる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  16. 芳賀貢

    芳賀委員 これは法案審議の中で重大な問題ですから、繰り返して言うようですが、いま国会の中の空気では、現在の法律が、肥料に関する制度が全然なくなったほうがいいという議論はほとんどないわけです。ですから具体的には、現在提案されておる肥料新法なるものを十分審議して、これをどういうふうに処理するかという問題と、もう一つ現行法国会においてさらに延長する措置を講ずべきかという、大まかに言ってこのいずれかの方法にいくと思うわけです。ですから、法律が全然なくなるということをいま考えて論議する必要はないと思うわけです。現行法が延長になれば、そのまま延びていくわけだから問題はないのです。もしかりに現在の肥料新法なるものが、このまま通るかどうかはわからぬと思いますけれども、成立した場合においては、現行法と性格的にも質的にも非常に変わってくるわけですから、その場合に、第一に肥料需給計画というものは、現行法と次の次元における制度との間において不可分の関係にあるわけですから、現行法で策定した需給計画というものを、次の制度でどういうように受け継いでこれを処理するかということが、当然重要な点になるわけです。大臣の御答弁によりますと、もし新法が通った場合には、いまの政府案では需給計画というものは条文には出てこないけれども、内容的にはそれを受け継いで、たとえば需給見通しという中にそれを取り入れて、継承して処理していきたいというふうな趣旨だと理解しておるわけですが、それに間違いはないわけですね。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりです。
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、ちょうどいまの制度が十年たっておるわけですが、これは肥料二法といわれて、肥料価格需給に関する安定措置と、もう一つ化学肥料産業合理化、それと輸出振興の形で輸出会社運営できる、いわゆる根拠の二つの法律がここにあるわけです。そこで先日来この法案審議において、同僚委員質疑等を聞いておりますと、現行肥料二法が、ややもすると十年間における化学肥料工業合理化促進を阻害する要因となった役割りを果たしておるというような答弁が、これは経済局長あるいは軽工業局長からしばしば述べられておるわけです。そうすると肥料合理化法案なるものは、肥料合理化を抑制するための法律であったかということに当然なるわけです。われわれとしては、肥料合理化というものが先行して、それによって適正な運営が行なわれ、肥料コストが低減され、したがって低廉にして豊富な国内肥料供給されるというふうに考えておったわけです。ところが肝心な合理化法の果たした役割りというものは、むしろ肥料産業合理化を阻害する役割りが多かった、そういうことが政府当局から述べられておるわけですが、これはまことに理解できない点です。十年間にわたる肥料合理化法の果たした役割りというものは、はたしてそういうものであったかどうか、これは運営の衝に当たっておる政府当局として、その評価大臣から直接述べてもらいたいと思います。
  19. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行肥料二法は、豊富低廉な肥料需要者消費者供給するということを中心としてできておる法律でございますけれども、この低廉豊富な肥料供給する過程におきまして、こういう場合には肥料製造業者合理化をせざるを得ないのです。そうでありますから、この法律というものは合理化に非常に寄与してきておる。ようやく輸出などもふえるようになったし、そういう増産もできてきたし、企業そのもの合理化してきた。私はこの二法が合理化に寄与してきたことを強く認めておる一人であります。
  20. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると大臣と両局長の見解は違うじゃないですか。
  21. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 大臣のおっしゃったとおりでございまして、肥料二法が合理化促進してきたことは、私どもるる申し上げたとおりでございます。ただ現在の価格決定方式等において、すべて合理化メリット価格の引き下げに向けられたというようなことは、ややメーカー側合理化意欲に対して水を向けた面があるということを申し上げたわけであります。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。この肥料二法というものは、これは国内における肥料価格に関する法律だけではないのです。その前提となるのは、いわゆるア系肥料化学肥料産業合理化して発展させ、その成果の中から国内における必要な肥料供給あるいは価格の長期的な安定をはかる、こういう目的のために肥料二法というものが十年間運用されてきておるわけです。ですから肥料合理化法なるものが、十年に及ぶ間にわが国の肥料産業にどういうような貢献をなしたかということは、やはり正確に評価しなければならないと思います。今度の政府案によると、合理化の任務は果たしたということで、この合理化関係についてはいささかも触れていないでしょう。輸出肥料会社については、この政府法案にも載っておるが、現行のいわゆる肥料合理化の面についての立法的な役割りは十分果たしたということで、それは取り入れてないのです。ですからその成果というものをやはりまじめに評価しないといけないと思うのです。これは通産省の倉八局長からも明確にしていただきたい。これはただ単にあなた方が肥料価格決定方式肥料産業合理化を阻害したとか、そういうことだけを宣伝強調しておるというようなことは誤りだと思います。
  23. 倉八正

    ○倉八政府委員 先生の御質問に対しては、農林大臣及び経済局長から申されたとおりでありまして、われわれとしても、肥料メーカーを担当しております通産省としても、肥料二法が非常に合理化成果をあげて、そのために農民の方々に対する肥料供給が、低廉でしかも豊富にできたというメリットは大いに認めます。全くそのとおりでございます。ただ一つ合理化をした過程におきまして、価格について、いまのバルクライン方式というものが、あまりメーカーのほうにしわが寄り過ぎたのではないかという感じがいたす。そのために合理化をさらに続けていこうという意欲が、幾ぶんか減ってきたのではないかという考えがあるということを申しておるわけであります。  それからあとのほうの芳賀先生の御質問の、合理化が完了したから、もう合理化の問題については、今後政府としてもタッチしなくともよいというようなおことばでございましたが、そういうことは毛頭考えていないのでありまして、化学工業の規模として日進月歩のように新しい技術が開拓されていきますし、また自由化した場合は、海外からの大きい競争に日本がそのままさらされるわけでございますから、好むと好まざるとにかかわらず、合理化というのはさらにいまよりも進めていかぬといけぬし、それからこの法律に書かなくても、政府としましては、その合理化の面につきまして、ある場合には財政資金の面、ある場合には税の面におきまして、さらに一段と合理化を進めていく所存でございます。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 問題は国内肥料価格決定の場合、いわゆるバルクライン方式による加重平均価格であるからして、合理化メリットが全部その価格面に吸収されて、企業者の利潤あるいは資本蓄積というものはできなかったということを、あなた方は強調されておると思う。私の聞いておるのは、この十年間に及ぶ肥料産業発展の中において、この合理化法というものはどの程度貢献をなしておるのか、この評価はやはり厳密にしなければいけないと思うのです。たとえばこの合理化法によっても、第三条では「通商産業大臣は、硫安工業合理化促進するため必要があると認めるときは、肥料審議会意見を聞いて、硫安生産業者に対し、生産設備及び技術近代化企業形態の改善その他の措置を講ずべき旨を勧告することができる。」もう一つは第四条では「政府は、必要があると認めるときは、硫安生産業者に対し、硫安工業合理化促進するため必要な資金について、融通のあつ旋その他適切な措置を講ずるものとする。」わずか三条と四条にしか合理化の点はうたってないが、しかしこれを足がかりにして、政府としてもできる限りの合理化促進あるいは設備近代化等によって、国の助長あるいは資金のあっせんとか、政府機関からの融資、あるいは租税特別措置法に基づく税制上の優遇措置、こういうものは常に講じてきておるわけです。ですからこれらの立法上の措置、行政的な措置に基づいて、いまの肥料産業というものは、肥料二法ができた当時の昭和二十九年あたりから見ると、異常な発展を示しておる。ですからそのことは、たとえば化学工業の中に占める肥料生産性、あるいはその企業全体の生産性の問題であるとか、あるいは化学肥料生産部門の質的な変化の問題にしても、あるいは硫安生産形態というものがこの肥料二法に基づくと、価格決定等についても必ず合成硫安によってということになっているわけです。しかし最近の生産内容を見ると、主体は合成硫安であるが、副生硫安あるいは回収硫安の占める量がだんだん高まってきておるわけです。したがって合成硫安よりもコストの面においては、回収あるいは副生硫安のほうがコストは非常に低廉であるとされておることは、これは言うまでもないわけです。そういうような事情変化が生じても、現在まで毎年政府決定しておる肥料価格は、これはあくまでも最高販売価格ですから、これ以上高く売ってはならぬということで規制しておるわけです。この十年間の取引の実態というものは、常にこの最高販売価格取引されておるのですけれども、それ以下で売ってはならぬということにはなっていないわけです。ですからそういう点を考えた場合に、単にメーカー側の一方的な発言を尊重して、いかにも合理化メリットが全部農民の側の利益として吸収されてしまった、それが肥料工業発展阻害要因であったなんということは、これはあまりに当を得ない判断であり、発言だと思うわけです。だからこういう点をメーカー側発言したり流布することは、これはそう気にすることもないが、政府当局としてそのことを強調して、現行法失効させて、新しい内容の貧弱な法律を出す根拠にするということは、これは当を得ないと思うのです。こういう点に対して農林大臣としてはどうお考えなんですか。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行法法律として需給関係を安定させたり、あるいは合理化が進んだという効果は、十分認めております。そういうことを否定いたして、新法を提案しておるわけではございません。現実の状況が、現行法律として効果は相当あげてきた、その上げてきた土台の上に立って、新しい事態に即して新しい法律を御審議願う、こういう考え方でございますから、現行法律の二法の果たした役割り、こういうものを十分認めての上での法律の提案でございます。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 次に法案内容に若干触れますが、現行法と新しい法案と比較した場合、今度は肥料生産者消費者であるところの農民側において話し合い、協議によって取引価格をきめるということになるわけですが、これはもちろん力関係によって左右される問題です。たとえば取引の状態が買い手市場である場合は、これはやはり消費者側発言が相当強く反映する取引価格にきめられると思うわけです。たとえは従来の国内価格輸出価格とを見れば、これは世界的にそういうことになっていますが、どうしても国内価格のほうが価格的には局水準になっておる。ですからメーカー側としても、価格の高い市場に有利に製品を処理する場合においては、国内における需要が止まって取引されることを常識的には望むであろうというふうにわれわれは判断するわけです。しかしそれ以外の大きな理由があって、むしろ内需向けよりも輸出のほうがメーカーとしても有利であるという、国民にわからぬような理由がある場合は別ですが、常識的に現象町から見ればやはり国内価格が高いのだから、その場合には両者の力関係ということになれば、当分の間は買い手市場的なそういう相対的な関係というものは続くであろうということを考えれば、これは法律そのものが相当弱くなっても、あるいは法律がなくなっても、急激に肥料の値段が高騰するということはあり得ないと私は考えるわけです。この判断大臣としてはどうお考えになりますか。法律根拠か強いほうが農民としては安心できるか、それを弱めた場合、あるいはなくした場合の相対的な関係というものは、取引の上にどう反映するか、その判断を聞かしてもらいたい。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 価格の問題でございますが、いま御指摘のように力関係ということもあると思いますけれども、現状は御承知のように非常にアンモニア系統の肥料増産されて、四割くらい輸出いたしておるわけでございますから、需給関係から見まして非常に供給力がふえている、こういうことは売り手側の弱みだと思います。供給が減っておるということになると、買い手側がどうしても弱い立場に立ちますけれども、いま供給が非常にふえている。ところがいまお話のように輸出のほうは安いような状況だから、どうしても国内のほうで高くするような傾向がありはしないか、こういうことでございますが、そういう面も考えられないわけではございません。御承知のように法律におきまして、輸出につきまして需給見通しに基づいて認可をする。そういう形で輸出を調整して、そして内需を優先するような方途をとったわけでございます。でございますので、いまの法律のように非常な強い統制のもとで、政府が押えておったほうが、安心感といいますか、需要者にとっては安心感があるのではないか、こういう御者心見のようでございましたが、確かにそういう面もあろうと思います。しかしながら現在のように供給力が非常にふえた。したがいまして輸出の面を押えて調整して、そして内需を優先するという形にいたしまするならば、供給は十分内需に回るわけでございますので、その点につきまして押え方、統制のしかたが緩和されたけれども、私は需要者に不利になるとは考えられません。もし価格の面において、そういう事態が起きるというようなことでありますならば、法律にできておりますところの是正命令とか、あるいは調停というような形で、需要者が不利におちいらないというような措置をとっていくつもりでございますので、新法になったから不利なものにおとしいれられるのではないかということはなかろう、私はこういうふうに考えております。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほども申しましたが、需給見通しという非常に消極的なものを、新法で打ち出す理由はどうなんですか。一年間の需給計画というものは、十年ずっと続けて毎年度きておるわけですから、そこに大きな欠陥というものはなかったと思うのです。ですから、従来の成果から見て、需給計画というものによって内需の優先確保とか、また輸出についても、それは輸出会社が一手に買い受けて、そして統一のある輸出業務を行なうわけです。そういうことになると、これは計画に基づいた運営というものは、決して行き過ぎにはならぬと思うのです。ただ肥料懇談会ですかの昨年末の意見書等を見ると、需給計画なんかつくらぬほうがいい。それから見通し内容も公表しないほうがいいとか、何か悪いことをしているような、そういう懇談会の答申案というもので、非常に奇異の感に打たれたわけですが、この点は現行法によっても、需給計画を公表しなければならぬことになっておるが、公表すべきでないと大臣判断した場合は、関係者だけにその内容を文書で通達すればいいという規定も配慮されておるわけです。したがってこういうことを考えた場合に、やはり肥料需給計画というものは明らかにして、内需に対して優先的な安定措置を講ずるという場合においては、当然これは肥料を消費する側から、年間の肥料需要がどのくらいであるかということを明らかに計画的に表面に出させて、その必要量の確保ということは、生産面においても当然政府メーカーを指導してやらなければならぬと思うわけです。現行法には生産命令とかあるいは譲渡命令を勧告の形で出せることになっておるが、今度の新法案にはそういうものはうたってないが、せめて国の年度需給計画のごときは、明らかにするという必要が当然あると思うわけです。これができないという点がどこにあるのか、その点を大臣から明らかにしていただきたいと思います。
  29. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げましたように、需給計画需給見通し内容は、大体私は同じだ、こう御承知を願ってもいいと思います。ただたてまえが、現行法律においては強度の統制をいたしておりますので、ことに出荷指示とか、あるいは生産指示とか、あるいは調整保管命令、こういうものをやるためには、これは見通しということでなくて、需給計画に基づいてやるというふうにしてなければ、たてまえ上ならないわけでございます。ところが御承知のように生産命令も出荷命令も出したことはない。調整保管等については、ここ数年その必要もなくなったように、供給力がふえてきておるようなわけでございます。でございますので、需給計画というようなものに基づいて、生産、出荷、調整等を押えていくといいますか、措置をとっていく必要はない、こういうふうに考えておるところの段階に入ってきたわけであります。でありますので、内容は同じでありますが一たてまえからいいますならば、需給計画というようなことでなく、見通しというのは、御承知のように価格決定等につきましても、両当事者の話し合い、こういうようなたてまえでございます。そういうたてまえから、たてまえ論として見通しというようなものにしていく、こういうことでございます。でございますので、私は少したてまえが前の法律より変わってきておるので、そういう点からたてまえの調整というか、たてまえの一貫性という形から、この需給計画というようなものが、需給見通しというような形になっておると御了承願いたいと思います。  またこれを一般に公表するかどうかという問題がございます。これは価格を協議する場合に、その根拠がなければなりませんから、当事者にはこれを見せるといいますか、その必要が普通生ずることは大体当然だと思います。ただ一般的には御承知のように商売といいますか、技術等の——最近におきましては機密というものがいろいろあるわけでございます。ほかの会社の機密を盗むというようなスパイ戦が、非常に盛んのような時代でございますので、そういう機密にわたる面は、商売の道義上といいますか、企業の道義上ちょっと出しにくい問題と、それから国際競争がございまして、やはり日本の商品、日本の肥料をできれば——これは入札でございますが、高く売りたいのは私どもとして当然だと思います。そういう面におきまして国際的な面等もありますので、機密にわたる面もないわけではないと思いますので、そういう二点から、これを一般には公表しないというたてまえになっておるわけでございます。でございますので、たてまえ論からそういう結論が出てきておると御了承願いたいと私は思うのでございます。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 現在まで十年間公表しても差しつかえなかった。弊害が起きなかった。どうしても差しつかえがあるという場合には、公表を避けて、関係者だけに文書で通達すればいいということに、現行法ではなっておる。要は生産計画に基づいた生産、あるいは消費とか、輸出をやるとかいう点等、この需給見通しというものは、政府の行政の努力というものがそのに介入しないで、生産とか需要の動向が大体どうなんだろう、推定でどうなるかという、単に趨勢をその年度にとって、大体この程度ということであって、この中身は同じだと言われるが、実態は違うと思うのです。ですからそうではなくて、肥料というものは必要生産だと思うのです。一年間に農民がどのくらい、どのような種類の肥料を必要とするか、その必要にこたえて、肥料生産というものは内需面においては十分確保してもらわなければならぬということになるわけです。このことはやるというのですから、そうなればやはり国内需要に対してはどのくらい、たとえば種類別に三十九年度需要があるかということを事前に明らかにして、それにこたえ得る生産体制というものはどうするかということは、これはもう生産と消費の関係で一番必要なことだと思うのです。それをあいまいにして、内需優先でございますと言っても、現在の制度から見ると、大きな欠陥が出てくるわけです。問題は国際競争の場において、三十九年度はどの程度輸出力があるかということが事前に公表されたような場合、国際市場においてもし不都合があるとすれば、それらの点は計画の中においても適切な措置はできると思うのです。われわれの言うのは、国内肥料については需要にこたえた生産というものを、これを十分やっていかなければならぬのではないかということになれば、肥料というものは無計画に使うわけでないですから、明年度肥料需要はどのくらいであるかということを、これは農民である生産者団体から徴して、計画というものは立てられておるわけですから、特に現行法では前三カ年の肥料年度における消費の動向というもの、あるいは農業の事情変化等を参酌してきめるということになっておるのだからして、従来どおりの需給計画を計上しても、いささかも心配はないと思うのです。それを何か需給計画とか長期計画といえば、社会党の言うようになってしまうとか、資本主義の経済の中でそういうことはうまくないというような考えが強いようなんですが、十年の歴史を持っておる肥料制度ですから、新法が非常に骨抜きになっておることは大臣も御承知のとおりですが、せめて需給計画くらいは看板に出す必要があったと思うのです。いかがでしょうか。
  31. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまでも特に一般に公表というわけでなくて、しばらく関係者には通知を出すという形で、現行法でやってきたわけであります。今度の法律でも、公表を禁止しているというわけではございませんで、関係者等に通知をする。でございますから、国際競争力とか商売に差しさわりがあるのでは困ります。差しさわりないような関係におきましては、当事者等にも通知し、その当事者の通知で一般にもわかってくるというような形は、これはあり得ると思います。何も厳禁しておるということではございません。  それから計画ということで、何も計画を立てればみな社会主義経済ではないかというふうに考えておりません。すべてやはり一つ見通しといいますか、そういう計画という名前は使わなくても、あるいは計画という名前を使ってもけっこうです。いまあらゆる面において、見通しというものを持っていかなければならないような段階に入っておると思います。でございますので、根本的に何もそういう見通しとか計画というものを拒否するということでなくて、むしろそういう計画を立てて、あるいは見通しを立ててやっていくということが、私は自由主義経済におきましても、重要なことだと考えております。そういう立場であることもひとつ御了承願いたいと思います。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 農業基本法にしても、私たち社会党の立場からは、これは長期生産計画で、そういう計画性というものを前面に出して農政を進めるという立場をとっておるし、政府の場合には基本法にしても、その他の制度にしても、大体見通し程度で終わっておるわけです。しかし自由主義経済の中においても、最近は計画経済とは言わぬが、それを逆に経済計画ということはが最近出てきているわけであります。やはり経済あるいは生産に対する計画性が必要であるということは、これは否定できないと思います。ですから、そういう客観的な経済の諸事情の中において、何も古くさい見通しなるものを引き合いに出さぬでもいいじゃないか。これは問題点ですから、この程度にしておきます。  次にお尋ねしたいのは、現行法におきましては、需給計画ア系肥料全体に対して策定されておりますし、価格面決定については、合成硫安だけに限っているわけです。今度の法案によると、これは特定肥料というのを政令で規定しておりますし、これはほとんどア系肥料全体を品目的にさすと思うのですが、今度は両当事者間で価格折衝をやることになるわけですからして、法案にうたうところの特定肥料全体に対して、肥料生産者と農民側において話し合いをして、取引価格をきめさせる、こういう考えですか。
  33. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 法律の二条でいっております特定肥料は、硫酸アンモニアのほかに、価格安定をはかることが特に必要と認められる肥料を政令で定めるということになっております。さしあたりは従来どおり硫酸アンモニアを取り上げて価格をきわめていく、こういうことになると思うのでございますが、将来何らかの事情で必要が出た場合、たとえば現在ア系合成硫安の値段がきまりますと、尿素の値段もきまる。また塩安の値段も成分価から取引上おのずからきまる、そういうことで、合成硫安についてきめておるわけでございますが、そのほかについても、カリとか過燐酸につきましては、これはもう全部が輸入でございますけれども、国内ではほとんど安定した事情でございます。フレートとか、外国の輸出価格の変動がある場合に若干の移動がございますけれども、最近ではおおむね安定してまいっておりますので、直ちに政令で定めてやるという必要も、目下現行法のもとでも感じていないのであります。しかし将来特別な事情でもあれば政令で定めていく、こういうことでございます。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 現在は最高販売価格硫安について国が公定するわけですけれども、これはいいですが、今度の場合は、両当事者間で話し合いで取引価格取引の条件をきめるということになっておるわけでありますけれども、硫安以外は相談してはいけないということにならぬでしょう。政府にそういう規制力はないでしょう。硫安はもちろんきめておる。あわせ同時的に生産される。いまの肥料生産形態はそうでしょう。最近は特に硫安よりも尿素の消費量のほうがふえておるわけです。ですから同時に、硫安についても話し合いで値段をきめるということになって、硫安の価段が建て値になって、尿素はそれの大よそ比価幾らぐらいということになると思いますが、その尿素等についても、これは法律に基づいて話し合いできめるということは、一向に差しつかえないじゃないですか。硫安だけはやりなさい、それ以外のものは政府が必要と認めない限りやってはいけない、こういうかた苦しいものではないと思うのですが、その点はどうなんですか。
  35. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 独禁法の適用を排除してやる場合には、政令で定めなければなりませんが、相談してはいけないということはないわけであります。必要がありますならば、われわれもしいて、尿素は両当市者でこの法律に基づいて価格の取りきめをやってはいかぬというようなかた苦しい考えは、持っているわけではございません。現在は一応合成硫安最高販売価格をマル公できめておりまして、それで一応値段も、ほかのものが大体安定し、きまっておるということでございますので、そう痛切な必要を感じない、こういうことでございます。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 政府が必要を感じなくても、農民の側で必要を感ずる場合があるでしょう。そういう場合に、今度は相当大福に自主性を持たして、政府責任が後退しておるわけだから、いやでもおうでも当事者間で話をするということになれば、硫安だけはやれ、それ以外はやってはいかぬということにはならぬでしょう。ですから当事者の間で、硫安も必要であるが、あわせて尿素等についても同じように、これは特定肥料として政令でおきめになるわけですが、政令で定められた特定肥料というものを必要なものは全部列挙しておいてもらって、その品目についてはやはりこの法律根拠にして話し合いをして、適正な取引価格をきめる、取引条件をきめる、こういうことで、どこか新しい道を開かないと、古い道路の幅は昔どおり、今度は道路が悪くなっても直してやらぬということではいけないと思うのです。こういう点はもう少し積極性のある態度を示したほうがいいと思うのですが、どうですか。
  37. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 特に当事者が硫安だけでよかろうというような考え方があるのでございますけれども、私どもといたしましては、政府の指定する特定肥料についても取りきめを締結することができるということにしてあります。もちろん硫安がきまれば、尿素とか塩安の成分比もいまのお話のようにきまってくるわけでありますが、価格がどれだけだということが話し合いできまっておれば、一般の農家や消費者にはわかりいいわけでございます。ですから、しいてこれをとめることを考えているわけではございません。そういうものまでその際きめていく、こういうことが望ましい、こう思います。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は結局価格問題の折衝だけではなくて、たとえば年間の種類別の肥料はどのくらいかという点についても、これは消費者である農民の側からも、それにこたえる生産業者の立場からも、数量というものは一番大事なことになると思う。政府はどうもおそろしくて触れられぬと言うが、当事者は数量とか価格というものは一番大事なことになってくるわけです。ですからむしろ新法でいくという場合は、当事者間において年間の生産目標とか、需要の目標というものを定めて、輸出分については明確でないとしても、そういう点は政府のほうで十分指導して、重要な肥料についてはこういう機会に相互の話し合いの中で適正な取引価格をきめるというように、ぜひこれは持っていくべきだと思うのです。  次にお尋ねしたい点は、肥料生産業者あるいは肥料を使う——農民的な考えかもしれませんけれども、われわれはどうも生産者といえば農民を表現するような観念から抜け切らぬわけですが、この法律では肥料をつくる者が生産者ということになっています。そこで話し合いの場合、法律によると、両当事者あるいはいずれか一方が団体交渉をする態勢になった場合には、話し合いを進めることができるということになっておるわけです。しかもその話し合いをする場合には、需要並びに生産の分野において、一定量をこえた条件でなければならぬということになっております。この点の満たされる最低の条件というものは、製造業者側あるいは・農民側の場合はどの程度のものをいうか、その点はいかがですか。
  39. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 メーカーの場合は、個々のメーカーが相寄りまして、相寄ったメーカーのトータルの生産量が、国全体の生産量の五〇%以上を占めておれば、当事者たる資格が出る。それから需要者側の場合は、全購連がすでに取り扱い量におきまして六、七〇%程度になっておりますので、これは全購連が当事者になり得ることはもちろんでございます。五〇%というのが相当比率になるわけであります。したがってほかの取り扱い業者団体は、五〇%より以下でございますから、それらは単独には当事者になれない。全購連が当事者になってメーカーと協定を結ぶ場合に、ほかの団体はそれに参加することができる、こういうことになるわけであります。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 そうしますと需要者側を代表するものは、いまのところ全購連ということになるわけですね。全購連が需要者を必ず代表するかどうかという根拠はどこにあるのですか。
  41. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 現実に取り扱い量におきまして、農家が買う肥料の五〇%以上を扱っておるという事実、実際は七〇%くらいになりますが、それは農家にとっては非常に大きなことであります。代表とか非代表とかいうことでなくて、現実に農家の要求によって肥料の買い付けをやっておるわけであります。またメンバーが個々の農民でございますから、全購連が単独で当事者になり得るということは、当然考えるべき筋合いではないか、こう考えております。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 内需の予定量の五〇%以上に達する、それだけのメーカーの数をこちらが選定するわけですか。
  43. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 需要者が選定するわけではございません。メーカー側が相寄って総生産量の五〇%以上を生産している生産業者が集まった場合名前をあげて言いますことは差しさわりがありますけれども、たとえば東洋高圧、三菱化成、日産とか、いろいろな会社がございます。そういうもののトータルした生産壁が、日本全体のメーカーが二十数社ございますが、その総生産量の五〇%をこえる場合、その幾つかのメーカーが当事者たり得る、こういうことであります。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合は、メーカー側というのは結局硫安工業会が主体となって行為をするということになるのですか。
  45. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま農林経済局長のお答えしたとおりでございますが、その場合の主体というのは硫安協会とかあるいは塩安協会というのが主体になるのではございませんで、総生産の半分以上の量に達した個々のメンバーが集まるというのがこの法律規定でございます。したがって団体自身がその協定の対象にはなりません。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合は、どこが主体になってカルテルの形成をやるのですか。自然発生的にそのメーカーが五〇%以上の数量を持って集まればいいということになるとしても、どこか中心になってそういう体制を整えるものがなければできないと思う。需要者側は組織的に全購連とか県の経済連というものがありますからこれは間に合うとしても、その点もう少し明らかにしてもらいたい。
  47. 倉八正

    ○倉八政府委員 事実問題として申し上げますと、各二十数社あるのがわいわい言いましても、意見がまとまりません。したがって現実問題としては、たとえば硫安協会の会長が中心になりまして、こういう法律によってこういう協定をしようという、いわゆる音頭とりということになるかと思います。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、私たちは必ずしも新法を支持しているのではないのだから深入りをしたくないが、需要者側において、相手にだれでもかまわぬというわけにはいかぬのでしょう。証し合いというものは、自己を有利に導くという態勢は必要なのでしょう。その場合需要者側において、いわゆる相手を選定して話し合いをするということもできると思うのです。法律上これはできないという根拠はないでしょう。たとえば東洋高圧とか、そういう会社を相手にして面し合いをしましょうという呼びかけはできると思うのです。この点はいかがですか。
  49. 倉八正

    ○倉八政府委員 たとえば全購連がある特定のメーカーだけを想定して取引するということは、これは法律的には自由でございまして、それはここでいう協定とはちょっと違いまして、それは実際の、より掘り下げた取引段階だろうと思います。たとえば東洋高圧の硫安を何トン買おうとか、あるいは日産のものをどれだけ買おうというのは法律的には自由にできますが、それはここでいう協定ではないのでございまして、実際の取引上の問題だろうと思います。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 この法案の第二条に出ておるが、「その双方又はいずれか一方が」云々ということにきまっている。ですから、たとえば需要者側だけが全購連なら全購連を中心にしてそういう体制ができるという場合でもいいわけです。一方が共同の体制を整えて、他の相手方に対して、これは価格決定に対する取りきめの十五日前に交渉ができる、折衝をすることができるわけですね。これは法律上からもできるのじゃないですか。
  51. 倉八正

    ○倉八政府委員 ここでいうこの協定の場合は、メーカーの集まりの比率というのが、集まったメーカー生産量が全生産量の五割以上でなくてはいけないということになりまして、全購連の協定はそれを相手に協定するということでございますが、いま先生の御質問の、個々にやるという場合にはこの法律でもできますし、ここでいう協定とはちょっと違うかと思います。個々にどの会社からどう買うとか、あるいはあなたのところのトンの値段をどうしようというのは、それは取引の問題でございまして、ここでいう協定というのは五割以上の生産を持つような人が集まりなさい、それと需要者が話し合いまして、その価格を協定するというのがこの規定でございまして、個々の場合のそういう取引は、これは協定という範疇よりも、むしろ取引の実体というふうに申し述べたほうが適当かと思います。
  52. 芳賀貢

    芳賀委員 それではもう一歩掘り下げると、結局需要者側は農協の共同体で一本にまとまる。ですから相手方に対しては、この生産の全量を買う必要はないのですからね。需要者はいわゆる内需と称されるその範囲のものが手当てできればいいわけです。その場合、法律改正——これは改正じゃない、現行法廃止の上は、内需の価格決定の場合、バルクライン内の加重平均というものが阻害要因だということを強調しているのだから、向こうさんの言いなり次第になれば、全メーカーが参加するわけですね。価格交渉の場合には総平均的な、あるいはそれ以上の主張が生まれることは火を見るよりも明らかです。自主性があるからそれに従う必要はないでしょう。ですから需要者側においては、そこまでやる力があるかどうかわからぬが、私どもであれば、とにかく従来のコスト実績というのはわかるわけだから、そうすると肥料価格を有利に導く場合においては、従来はバルクラインの範囲内におけるメーカーは、いずれの会社であるということはだれでもわかるわけだから、そういう会社を相手にして交渉をすれば、一番妥当な交渉ができるわけです。だから一社一社と話をするわけでない。必要量を満たされる、コストの比較的安い、そういう会社をあらかじめ選定して、その数量は生産量の五〇%をこえるものという形で交渉はできると思うのです。できないとなると問題になるので、では国内価格をつり上げるために法律をつくるのかということに当然なるのです。具体的なことになりますが、この点を明確にお答え願いたい。
  53. 倉八正

    ○倉八政府委員 それは形式的にはそういうこともできるかと思いますが、ただそれもある特定のところだけをピックアップして、そこだけが協定を結ぶ対象だということは、法律の問題というよりも、安定した形で供給ができるかどうかというようなことにもなりますから、だれが加入した、どことどこの会社が加入して協定を結ぶかということは、一つ消費者の問題でありますし、一つ供給者の問題でございますから、そういう問題につきましては、やはり十分双方の意見が反映するような協定に持っていったほうが、一番よかろうと私は思います。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 それは政府、自民党でも、中国に対して政経分離の方針でいっているでしょう。だれでも同一条件で話し合いに応ずるということは、いまの政府、自民党でもやっていない。それを当てはめるわけでないが、需要者側の利益というものを、交渉とか取引の中で有利に導かなければならぬということであれば、やはり相手の選定ということも考えなければいけないと思う。それは需要者側の態度いかんにかかる問題です。バルクラインがけしからぬということばかり言えば、こっちも対抗手段としてやれるということが、政府の説明の中ではっきりしていないと、何でもかんでも製造業者に押しつけられて、それに承服するということになると思う。ですから認定される条件について、価格が妥当であるかないかということは一体何をいうわけですか。この思想というのは、これは安過ぎても承認しないのでしょう。当事者が話し合って、これでいいですといっても、政府は、これはあまり安過ぎるという場合には承認しないのでしょう。そうじゃないですか。
  55. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 あまり高過ぎてもあまり安過ぎても、つまりあまり高くて農家の経済に著しい影響を与える、あるいはあまり安くて生産者側の企業自体が立ちいかぬような価格は、もちろん是正しなければならぬと考えております。  それから先ほどからお話のありました点でありますが、二つの点があります。軽工業局長から申し上げたのでありますが、需要者側は協定を必ずしも結ぶ必要はない。自分のほうへ有利と思われる企業だけをピックアップして、取引の相手にすることができる。これはこの法律が別にそれを規制しているわけではございません。第二段の問題としては、先ほど御質問でおっしゃったように、需要者側もある幾つかのメーカーに対して、協定をつくろうじゃないかという呼びかけをすることは、もちろん規定は排除しておるわけではございません。それによって相手が応ずるかどうかという問題は、おっしゃるとおり相手側の態度いかんでございます。そういうふうに解釈いたしております。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから協定の場合、カルテルに参加するかしないかは当事者の任意ですから、それを強制するような場合は承認しないということになるでしょう。この契約から、この排除条項というのがここにあるから。ですから相手方の選択権があるということを明らかにしておかぬと、これは常に乱用する必要はないが、どこかよりどころがなければ、こんなものはあってもなくても、どうしようもないじゃないかということになると思うのですけれども、こういう点は農林大臣としてどうお考えになりますか。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 分析すると、二つの面があるのではないかと思います。需要者がどこから買ってもいいではないか、これはどこから買ってもいいと思うのです。どこを選定してもいい。ただし価格の協定をする場合には、需要者の団体と生産者のカルテル的な団体ができるわけです。それは全需要の、生産量の二分の一以上を持っておる人が集まらなければ、価格の協定を結ぶところの資格は出てこない、こういうことでございます。ですから売買や選定についてどこを指名し、どこをやろうということは、現実の契約面において自由にできると思います。私はそういうふうに理解しております。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると問題は五〇%以上、それぞれ数量を扱うことが資格条件ということになると、これは一対一ということになるのですね。たとえば二対二とか二対一ということにならぬわけですね。半分以上の数量でなければならぬということになれば、残りは半分以下ということになるわけです。ですから、たとえばこの肥料販売業者、需要者は、全購連が需要者を代表するということになる。たとえば系統的には全国肥料商連合会というのがある。これは結局参加はできるが、アウトサイダーとしての取り扱いをするわけですか。ですから当事者だけで協定した価格というのは、当事者間の力の及ぶ範囲の、取引になるが、いわゆるアウトサイダーに対する規制というものはやるのかやらないのかです。
  59. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 アウトサイダーに対する規制はやらないことにいたしております。いまの資格認定の場合でございますが、これは五〇%以下、二〇%くらいの取り扱い量でございますから、単独としては協定の当事者たる資格はございません。しかし全購連が協定を結ぶ場合に、それに参加して、つまり全購連と一緒になって当事者たることはできるわけでございます。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、具体的な価格交渉をやる場合に、政府は、要求があった場合は必要な資料の交付、あるいは交渉が順調に進むような助言的なことを交渉の過程においてやるわけですね。交渉が成立しない場合には、次に調停に乗り出すということになっております。この調停というものはどのような内容なんですか。
  61. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 調停で、仲裁とかそういうことをやるわけでございませんが、まず両当事者の言い分、主張を十分問いて、政府側が持っている資料に基づく判断、あるいは政府側のある判断として妥当なもの、あるいは無理ではないと思われることを整理、調整いたしまして、意見を調整する。それぞれ両当事者の旨い分をよく聞いた上で、意見の調整をすることが、まず第一であろうと思います。   〔委員長退席、坂田(英)委員長代理着席〕 それで両者とも納得のいく線が出れば、それで調停は一応成立するわけでございますが、それでもなお意見の調整ができない場合は、政府自身の第三者としての判断を加えた調停案で、まず両当事者を説得する努力を続ける。それで納得されれば調停はでき上がる、こういう段取りであり、内容になっております。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 価格決定上、調停といっても有権的な根拠はないでしょう。あくまでも努力を続けて、当事者が納得できるように努力する。成立しない場合には、調停案でもそれを応諾させるということはしないのでしょう。それでは困るじゃないですか。その場合、取引というものはどういうことになるわけですか。肥料というものは季節的に使うわけですから、交渉が長引いて値段がきまらなければ、肥料は出すとか出さぬというものでは必ずしもないでしょう。春肥にしても秋肥にしても、必要な時期に必要量は確保しなければならぬ。しかし値段がきまらぬから、引き取りができないとか、受け渡しができないというものでは、性格上ないでしょう。だから交渉が難航する場合には、必要量を必要な時期に取引するということは、行政的に指導して、従来どおりやらすわけですね。そうして価格については、時間が長引いても、納得のできるような交渉を進めさせる。ただ現物の引き渡し、価格決定というものは、同時的にできない場合がある。そういう場合に適期に肥料を渡されるようにするということが、この法律根拠あるいは運営からいっても重要な点ですから、これは間違いないわけですね。
  63. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 その点は、調停が長引き、あるいは話し合いが長引くという場合等におきましては、従来の例からいいましても、肥料審議会最高販売価格の諮問をいたしましても、答申をいただけなかったということは、最近毎年のように続いておったわけでございますが、その際にも当事者間で、暫定価格での取引が事実上行なわれている。そのあとで政府が一方的にマル公をきめて公示したということがしばしばある。長引いた場合は、これは暫定的ということで、取引そのものを不円滑にするようなことは起こらないと考えておりますが、万一調停がどうしてもできないという場合が起きた場合には、需要者は個々のメーカーから直接の取引で値段をきめて、安いところから買っていく。どういうふうになりますか、そのやり方はいろいろあると思いますが、そういう事態は起こり得ると思います。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 話がつかぬから、安いところから個々に買うといっても、安くきまらぬから、話が進まないのでしょう。安くきまれば、話は長くかからない。だから難航した場合、必要な時期に必要量が確保されないと、これは農業生産にも重大な支障が及ぶわけだから、それはそれと切り離して、価格については政府が努力してきめさせる。その場合きめ手がないですね。これは大臣も乳価の中央調停で経験されている。いまの酪振法で中央調停機関を設けて調停することになっている。しかし当事者の話し合いがどうしても成立しない場合は、調停という一つの有権的な行為によって応諾させるきめ手がないので、乳価の中央交渉も非常に難航して、大臣も苦労されたわけです。この点については、これは非常に欠陥があるから、酪振法等の改正の場合には、きめ手があるような根拠をつくらなければならぬということは、大臣もしばしば言われておる。そういう苦い経験を経ながら、今度は肥料法案の場合は、もう一回その経験を繰り返すというようなことは、愚の骨頂だと思うのです。政府があらゆる調査を行ない、報告を徴して、これが妥当であるというのが、いわゆる調停案だと思う。あくまで自主的にこれをきめるのが望ましいが、どうしても調整がつかぬという場合は、最終的にはこれは政府の調停案を示して、そうしてたとえば一週間以内とか十日以内に両当事者がのまない場合には、その時日を経過したらこれはのんだことにするぞというくらいの力がなければ、これはいかないと思うのです。これはやはり法案の欠陥だと思うのですね。これは大臣から聞かなければ……。大臣は乳価問題でも苦しんでいるのですよ。また同じことをやる必要はないでしょう。あなたは畜産局を担当していないでしょう。
  65. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 調停の執行力でございますが、確かに乳価の例もございまして、大臣からも、こういうこともあるからそれでだいじょうぶかということを、私どもに念を押されたわけであります。ただ乳価の場合と情勢が非常に違うということは、よく御承知のとおりでございます。一方では全購連という、七割ぐらいの取り扱いをする大きな中央団体がある。メーカー側も従来からかなりまとまった動きもできる団体で、実態的にはそういう相違が非常にあるわけでございますが、それと政府としては輸出の調整権という権限を持っておりますし、また調査権を持って、従来の蓄積もございます。資料を相当整備しておりますので、説得するだけの材料はかなりそろえられるという見通しを持っております。そういうことから、政府としては場合によっては非常な努力が要ると思います。農林省、通産省、両省にもまたがるのでございますから、場合によっては非常に努力を要することはあると思いますけれども、これをまとめることは可能である、こう考えておるわけであります。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 もし法律が通れば、松岡さんと倉八さんがおるからだいじょうぶだというかもしれないが、といって、いつまでもあなた方は局長でいるわけじゃないでしょう。あるいは長官になるかもしれない。とにかくだれがやってもこれは失敗したということにならぬように、新しい法案を出す場合には考えてもらわなければいかぬ、こう思います。いまの農協の体制というのは弱いですからね。これは経済局長が御存じのとおり、農業協同組合だからといって、これは必ずしも農民の利益を完全に代表しているかというと、そうじゃないでしょう。これは後刻資料を求めますが、連合会あるいは単協において、肥料二法に基づいてこの価格が公定されておるのですから、扱っても損はないですね。そういう制度の保護を受けて、たとえば農業協同組合の行なう事業の中における肥料取り扱いにおける利益の度合い、経営の利益全体の中に占める肥料取り扱いの利益率というものはどの程度であるかということは、あとで資料を出してもらえばわかります。ですから、やはりその体制あるいは体質がどうであるかということ等も考えないと、これは高くてもきめる気があればいつでもきまりますからね。だから、全購連なら全購連がほんとうに農民の立場というのを代表して——これは何も利己的な立場に終始しろというのじゃないですよ。貫くものは貫くという、そういう質的な力というものがあれば心配はないが、とにかく安易なる気持ちできめればいい、量的にどれだけのマージンがあるというだけでやられては、大臣が何も調停権を出す必要はないかもしれぬが、そういう安易な道だけを見通しとしてだいじょうぶきまりますということでは、ちょっと困ると思うのです。ですからそういう場合には、やはり大臣も心配されておったとおり、きめ手というものを法律根拠づける必要がぼくはあると思うのです。これは大臣から承りたい。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話のような点も私もずいぶん考えたところでありますが、この場合には、御承知のように価格がきまった場合に、不当あるいは妥当を欠くという場合には、是正命令があるわけでございます。いまのお話は価格がきまらないで調停にかけた場合、その調停できまらない場合どうするか、こういうことでございますが、調停におきましても、政府の調停の価格というようなものは調停中に出せるわけであります。それを両方がのまないというわけで時期が来てしまったということでございますが、わきのほうに是正命令がありますから、そのときにかりにその値段ではきまらない、しかしメーカーのほうが力が強くて高い値段できめてしまった、そうすれば横から是正命令でそれを直すという、刀でもありませんが、あまり切れる刀でもないけれども、刀を持っておりますから、牽制はできる、こういうわけで、私は調停がきまらないままで終わってしまうということは、まあない率のほうが多いのではないか、こういうふうに思います。また調停できまらないでおる場合に——きまる場合はどっちかというと安いより高くきまってしまった場合だと思いますが、その場合にはいまの是正命令でチェックしますから、そういう意味で牛乳でも苦労して、この面でもずいぶん私も考えたのでございますが、是正命令という一つの横のあれがありますから、ひとつこれでやってみていいのではないかというふうに考えております。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、いま大臣の言われた是正命令というのは、調停を努力してやってもととのわなくて、何らかの価格がきまったのを是正するために出す場合ではないと思うのです。立案者の考えはそうじゃないと思うのです。そうであれば、これは調停案を有権的にのませたほうがいいのです。調停案ではきめ手がない、あと是正命令でちゃんと直せるというのではおかしいのです。だから是正命令を発動する場合の条件というものは、調停がととのわなかった場合の事後処理としてやる場合とは、ちょっと違うのじゃないですか。これは局長、どうですか。
  69. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは違うのです。私も違う面で申し上げているので、価格が不当あるいは妥当を欠く場合に是正命令が出る。調停の場合は価格がきまらない場合に調停に入るわけですから、それできまらないというわけでございます。しかし片一方に是正命令というのがあるのですから、まあ俗に、そういう商取引はなかろうと思いますが、調停にかけてもきまらない、きまらないで、かりに高い価格で、おれはこれでなくては承知しないというようなことで、調停が不調になっておるという場合がある、そういう場合に、政府は調停の指示価格というものは持っているわけですから、もしそういう価格できまってしまえば是正命令を出すぞ、こういうことになれば、やはりこっちの調停の指示価格というようなところに落ちつくのが大体の筋道ではないか、私はこう考えて申し上げたのでございまして、是正命令の場合と調停の場合とは別個の場で行なわれることでございますから、それは御指摘のとおりでございます。しかし是正命令があるということは、調停がきまっていく一つの牽制になる、こういうふうに考えるわけでございます。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、政府の調査権あるいは報告を徴するというこの点です。これは、やはり価格交渉をやる場合に、政府から提示する資料根拠になるわけですね。現行法の場合には、肥料価格をきめる場合には、生産費あるいは数量、いろいろな調査をする場合に相当強い態度で報告させておったわけですが、今度の法案に言うこの調査あるいは報告というものは、現行法における調査、報告と内容は同じものであるかどうか、その点はいかがですか。
  71. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 現在二法に基づいてとっております報告あるいは調査でございますが、これは生産数量、在庫数量、出荷数量等の数字と、もう一つ生産費の調査でございます。最初の生産数量、在庫数量等はわりあい単純な数字でございますが、生産費につきましてはこれはなかなか複雑でございます。おおむね生産費につきましても、現行法と同じような調査をいたす予定でございます。ただ、いままでのようにあまりに念の入った面もあるかというような感じも持っておりますので、簡素化できる面は簡素化したい、そういうような考えを持っております。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の制度は、これは政会の第九条に載っておるわけですが、「農林大臣及び通商産業大臣は、左の表の上欄に掲げる者に対し、それぞれ同表の下欄に掲げる事項について、法第十五条第一項の規定により報告を求めることができる。」肥料生産業者に対してはいま局長の言われたとおり、肥料生産数量、在庫数量及び出荷数量、肥料販売数量及び販売価格肥料生産費、それから肥料販売業者に対しては肥料の購入数量、在庫数量及び出荷数量、肥料の購入価格肥料販売数量及び販売価格、こういうものが規定されて、さらに調査権の場合には立ち入り調査ができるということが今度の法案にも載っておるわけです。ですからこの報告を徴する場合に、やはり現行法に掲げる報告事項の規定については、全面的に報告させるということにしなければいけないと思うのです。あまり簡略にして、それで十分だということになるのでしょうが、これだけやっても、私も昭和二十九年、三十年には当初の肥料審議会に出たことがあるわけですが、なかなかこういうものを政令でうたってもいい資料は出ないのです。それを今度は、松岡さんの考えではもうちょっと簡略にするというのでしょう。そういう簡略にされた権威のない報告がされた場合、当事者が価格交渉をやる場合に、重要な資料として権威がないものになると思うのです。これを報告させる場合は、権威のある資料を整えるためにも、従来同様の内容を盛ったものを報告させる、それぞれ生産業者販売業者も報告の義務があるということに明確にしておかなければいかぬと思うのです。
  73. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 御趣旨はごもっともかと思います。私どもは生産数量とか在庫数量、販売数量、そういうものはわりあい単純な数字でございますから、従来どおり問題なく継続いたしますが、生産費については御趣旨ごもっともでございますが、連続性がそこなわれるようになっては困る。ただたとえば工場の、これは農業の場合と違って工場の設備が同じでございますから、改造した場合は別といたしまして、農地の利用などとやや違ったわけでございまして、それを毎年同じことを繰り返して調査する必要はない。変わったときに調査すればいい。個々の要素の値段は変動があると思いますが、これはむろん政府が査定する場合が多いわけでございます。それはそれで別途の調査ができる。そういうふうに変動しないものまで、一々詳細に報告をとり、あるいは立ち入り検査するというような煩瑣なことはやることはない、こういう趣旨でございます。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 企業上あるいは生産要素の中でやや固定した部分については、これは毎年毎年同じことを繰り返して調査をやらなければならぬ煩瑣は避ける点があるかもしれませんが、しかし化学肥料企業の中における肥料生産というものは、全体の企業の中ではだんだん割合が低くなっておるわけですね。また尿素と硫安との関係等においても——ですから、これは単純なコスト調査と違って、この企業全体の中におけるものは、原価の分配というものをどうするかなんということは非常にむずかしい点ですから、一定の基準に基づいて制断されるよりほかしょうがないと思うのです。ただ政府資料に基づいても、最近回収硫安、副生硫安が相当量、量的に生産されておるわけです。これは化学産業全体の構造的な変化の中から必然的に生じてくる製品ですから、これを押えるということは当然できないと思うのです。ですから、これは二十九、三十肥料年度当時と三十七年あるいは三十八年の計画内容と比較しても、相当大きな変化をたどっておるわけです。たとえば三十八年の計画によれば、合成硫安計画面からいうと百四十七万トンで、これは全体の硫安の六五%、回収硫安が五十一万トンで二五%、副生硫安が二十三万トンで全体の一〇%、こういう割合を示してきておるわけです。従来の法律合成硫安だけを対象にして価格算定等をやってきたわけですが、現実にこの回収硫安が五十万トンをこす、さらにまたふえるというようなことになれば、この点を度外視した価格交渉とか、それからこのコスト上の判断というものは、これを除外してはなかなか適切でないと思います。ですから今度の場合は、これは自主的にやるのではあるが、こういう点に対しては政府としてはどういうような扱いとされるか。
  75. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま御指摘にありましたように、回収硫安がどんどん出てくる、今後もますますふえることは、当然の事実でございます。それでこれを価格決定にどう織り込むかということでございますが、いままでのバルクラインの方式におきましても、回収硫安というのは一番安い合成硫安と同額だとみなしまして、それで価格方式をつくっておるわけでございます。この原価計算自体が、まだいまのところ非常にわかりにくいものでございますから、合成硫安の二十一工場の中の最も安い合成硫安価格と同じだということにみなしまして、価格決定する。したがってバルクラインということが非常に下がってくるわけであります。したがいましてこういう組織がずっとできておりますから、今度の交渉におきましても、こういう方式で両者がお進めになるか、あるいは合成硫安をきめられまして、そうして回収硫安をそれよりも何割引きなら何割引きと、こうおきめになるか、その点は今後の研究問題として、また両者もいろいろ御研究になっておるようでございますから、いずれということではなくて、回収硫安については合成硫安よりも常識的には安いということだけは一致しておりますから、価格決定におきましてもそういうことを念頭に入れて交渉されるだろう、こう思います。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 次に輸出会社関係ですが、今度の新法によっても、現在ある輸出会社というものは、結局法律上継承されることになるわけです。その場合、従来から問題になっている点は、輸出に生ずる赤字というものは、内需価格にこれを転嫁しないということで、十年間法律が運用されてきたわけですが、今度はそういう根拠というものが一応なくなったわけです。しかしこれは肥料の製造業者から見れば、やはり同一経営の中において、絶体に内需と輸出分を経理を区分して、一方の損失だけを処分するということは、なかなかできないと思うのです。ですからそういう場合、輸出赤字の不転嫁の原則というものを今後法律運用の中でどうやるかということは、これは一番農民の立場から見ても心配の種だと思うわけです。ですから、これを一体どういうふうに政府としては処理するかということを、この際明らかにしてもらいたいと思う。従来は輸出会社メーカーから輸出用に買い取る価格については、これは政府が公定した最高販売価格というものを基礎にして経理を行なって、ある時代においては赤字たな上げをやった時期もありますし、その後は税制の中において、租税特別措置法で償却年次を早めるとか、また赤字を繰り越し欠損処分が一喜ぶとか、いろいろな道が講ぜられておるが、今回の場合には、そういう特別措置というものは、輸出会社の面についてもあまり配慮されておらない点もあると思う。ですからこれらの点については、今後どのようにされるのかという点について、詳細に述べてもらいたい。
  77. 倉八正

    ○倉八政府委員 こういう硫安会社をつくる必要性ということは、先生も十分御認識していらっしゃると思いますから、お答えする必要はないと思いますが、いまの前段に御指摘になりました最高販売価格輸出価格とみなして、実際の手取り価格との差をいわゆる輸出赤字として積むという方式は昨年の一月一日からやめております。したがいまして従来いわれた輸出硫安赤字というものはございません。ただ実際さっきも御指摘のありましたように、いま輸出が高くなってもまだ四十四、五ドル前後、国内マル公が五十ドル十九セントくらいですから、まだ相当あるのではないか。この赤字の不転嫁をどのようなやり方でするかということでございますが、われわれといたしましては、いままでずっととってきていました方式は、輸出の赤字というのは国内には絶対転嫁しない、企業内の経理の操作あるいは企業合理化努力によって、それを吸収するということを一貫してとってきております。今後の問題としましては、観念的に言えることは合理化メリットが出た、その場合に農民のほうにもそのメリットを供与するし、それからメーカーもある程度メリットをもらう。そのメリットがある場合には輸出の赤字の助けにもなるというふうに、われわれとしましては考えておるわけでございます。したがいまして、そういう意味におきまして、輸出の赤字が即国内に転嫁しまして、その分だけ国内価格農民の購買価格にはね返るということは考えておりませんし、またそういうことは絶対さすべきではない、こういうふうに考えております。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 これは倉八さんにちょっとお尋ねしておきますが、世界的に肥料価格形成を見ると、国内価格はイタリヤの場合は四十ハドルくらいで、あとはみんな五十ドル台、輸出価格はそろって三十数ドルということになっておる。共通な点は国内価格が高い、輸出価格が安い。どの国もそういう方式をとっている一番の原因はどこにあるのですか。自国の農民肥料を高く売って、輸出は安くする。ですからむしろ表面からながめれば、輸入したほうがその国の農民は有利だということにもなるわけです。国際的に自国の肥料価格は高くて、輸出価格はそろって安い。そうして競争しておるという根源は、どこにあるのですか。
  79. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま御指摘のように、例外なく輸出は安いのでございまして、ドイツにおいては去年の七月の終わりまで補助金を出しておったし、イギリスはまだ続けておるということでございますが、各国がそういう態勢をとりましたのは、輸出面から言いますと、大体二つの原因というふうに従来から言われております。  一つは、肥料というものはできるだけ自給自足をしたい。そうして安定した供給をはかるというのが、各国の一番の大きい政策だろうと思います。したがいまして日本がかつて大正三年まで、外国のいわゆる窒素カルテルにじゅうりんされまして、ある場合には安いものが入るけれども、ある場合にはべらぼうに高いもの、あるいは時期的に来なかったという苦杯をなめたと同様に、外国も自給自足したいということがありまして、そういうことで肥料工業を非常に起こしたわけでございます。  もう一つは、これは肥料工業と申しますか、化学工業の特性でございまして、必ずしも化学工業だけに及ぶかどうかは別としまして、特に化学工業にはその傾向が強いのは、装置工業を一たび起こしますと、それをフルに動かすというのが一番重要な点でございまして、たとえば十の設備を持ったほうが一番安い肥料ができる。その場合に国内には六しか行かない。それなら十なら十の設備を持って六をつくったと仮定しますと、非常に生産費が高くなるわけでございます。したがいまして外国としましては、いま言いましたような第一の理由から装置工業を起こした。ところが装置工業を起こしてみると、大きいプラントにならぬといかぬ。大きいプラントになるのが一番コストが安い。ところが国内需要は限られておる。したがいまして残るものにつきましてはいわゆる比例費をかせいで輸出すれば、結局国民経済的に見れば得だということで、それが一つの大きな意味のダンピングというふうになったと思います。それからいまもっと違ってきましたのは、特に昭和三十年にイタリアとドイツ、アメリカにおきまして、アンモニアの非常に画期的な方法が改良されまして、三十一年ころからとたんに世界が過剰生産状態になりました。ところが需要国というのがまだ施肥の向上を見ないで、それについてこなかった。したがいまして特に三十年の後半に非常に価格が暴落したわけでございます。したがいまして日本におきましても、農民に安い肥料供給するには、大きい施設を持ったほうがいい。ところが国内肥料需要にも限度があるのでございまして、輸出には安く出さざるを得ない、こういう何か宿命的な立場に追い込まれてしまったというのが、日本及び世界の現状であろうかと思います。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 約束の時間ですから、きょうはこの程度でとどめますが、都道府県別の肥料の消費実績、これは協同組合系統、つまり全購連から連合会等を流れていくその系統と、それから商業組合系統の都道府県別の肥料の消費実績、これを資料としてお出し願いたいと思います。昭和三十六、七、八年の三年くらいのものを、できたらなるべく早めにお願いします。
  81. 坂田英一

    ○坂田(英)委員長代理 この際暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  82. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  市乳価格及びレモン自由化に関する問題について質疑を行ないます。質疑の通告があります。これを許します。芳賀貢君。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日の閣議で牛乳の値上げが決定されたのですが、その経緯と政府の所信はどうであるか、まずお伺いいたします。
  84. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府としては、消費者価値上げの抑制の立場にあるのであって、牛乳価格の引き上げは極力抑制すべきであるという強い態度で、勧奨をいたしておったのでございます。ところがこれを押える手もなかなかないうちに、地方的にはどんどん値上げをしてくるというような面が非常にふえてきておりまして、大きい業者に対しましては値上げを押えておったのでございますが、中小業者等において地方的に値上げなどを約束したものが出てまいりました。そこでもしどうしても値上げを押えることができない、こういうことであるならば、生産者のほうへその値上げの多くの部分が還元されるといいますか、生産者の価格が上がるような形になって、そうして供給力がふえるというようなことになるならば、最小限度の値上げというものは、認めるとか認めないとかいう権限はないけれども、実際問題としてそれを容認するということもやむを得ないような状況ではなかろうか、こういうふうに考えておって、さらに折衝を続けておったのでございます。たまたま昨日の閣議の席上で、私のほうからではございませんが、企画庁のほうから、どうも押える手というものがないということならば、生産者のほうへ大部分の金、大部分というわけではありませんが、生産者のほうでは二分の一ということを要求しているようでございますが、いままでの配分の実績を下らない程度において生産者のほうに還元されるということであるならば、やむを得ないのではないかというような話が出まして、農林大臣考えはどうかということでありましたので、私のほうといたしましては、その趣旨では賛成だが、その前に値上げをするなということで折衝中なんであります、こういうことで折衝の経過を話したので、実はきのう認めたというふうな記事にはなっておりますが、別に反対の発言もなかったものだから、そのまま認めたようなかっこうになってしまったので、私のほうとしてはまだ折衝中だ、こういうことであったわけでありますけれども、事実上きのうの話から急速に値上げが認められたようなかっこうに進んできてしまいました。そういう経過と段階でございます。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は相当大きな関心を持たれておるわけですが、従来も政府としては、市乳の値上げ問題等については有権的に押える根拠がない、全く放任したような態度で今日に至ったわけなんです。その間に各地においても値上げが実際に行なわれるような事情が進んで、既成事実を認めるような形で、昨日の閣議で、一合について末端価格二円の値上げを認めざるを得ない、こういうことになったことは、政府としては権威のない態度だと思うわけです。しかし問題は、消費者の世論等をわれわれが聞いても、重点を、市乳価格の構成の中において、たとえば生産者の原料価格メーカー側の処理加工者、あるいは末端の販売店、小売り店の分担すべき経費、この配分というものが市乳の構成の中において適切なものであるかどうか、さらにまた生産者が市乳を提供する段階から家庭にまで配達される流通の経路においても、内容を根本的に改善する必要があるのじゃないか、こういう点はしばしば指摘されるわけでありますけれども、政府として明快に積極的に処理したという事例はほとんどないわけです。ですから今回の場合にも、各地においてこれが議論されたり、あるいはまた世論の注意を浴びておるときですからして、もう少し政府として指導的な立場というものを確保して、そうして適切な処理をすべきであったのじゃないかというふうに考えるわけですが、この点については農林大臣としてどうお考えですか。
  86. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 折衝の過程におきまして、すなわち値上げをするなという過程におきましても、またそれ以前におきましても、いま御指摘のようなことにつきましては、いろいろな措置、あるいは指導を講じてきておったわけでございます。現在におきましては、値上げするといたしました場合の配分、これは自主的な交渉によって決定されるものではございますけれども、しかし牛乳の価格には従来とも配分率があったのでございます。でありますから、改定前の配分率を下回るようなことはないようにというふうにいたしております。また学校給食でございますが、学校給食に回しておる牛乳等につきまして、末端であるということで値上げするということにいたしますると、父兄の負担、あるいは父兄の負担が現在のままであるとするならば政府の補助が相当ふえなければ、苦痛を感ずるわけでございます。そういう意味から考えましても、現行価格を改定しないようにという点、あるいはまた流通過程で、こまかくなりますが、入れもの、容器等につきましても、びんの大型化をするように、たいていの家庭で五合ぐらい以上飲むというのが多いのでございますから、五合びんなら五合ぴんということにいたしまするならば、その経費も省けるわけでございます。あるいはびん以外の容器の開発を検討させまして、その実施にもつとめてきておりますけれども、それを進めることとか、それから配達でなくて店売りの場合等には、小売りの方面でも相当の値引きを行なうような措置をとるべきではないか。あるいは月ぎめの大口需要者につきましては、適正な値引きを行なうべきではないか。こういう関係の指導といいますか、そういう面等におきましては、小売り業者の代表等も呼びまして、そういう話も実はさせておるわけでございます。問題はもっと根本的な問題にあろうと思います。再再この委員会におきましても御指摘がありましたり、私どもも酪農関係につきまして根本的にもっと深く検討して、酪農が生産者としても成り立つようなものに検討を加えていかなければならぬ、こういうことを、御指摘にもありまするように、また私どももそういうふうに答弁いたしておりまするし、検討いたしておりまするが、そういう面におきまして、生産者のほうの生産意欲も、また生産していく上においての収入面も確保できるような方面、消費者の面におきましては、生産者から消費者へ渡る価格が非常に高くなっていっておりますから、そういう経費等も省け得られるならば、消費者の方面にもそう高いものでなく供給ができるというような方法も、さらに検討したならばあり得るのではないか、こう考えまして、そういう検討も続けておるのでございますけれども、当座といたしまして、夏に向いておる現在、末端の消費者面の価格を上げたいというような動きが強く出てきておりましたので、それにつきましては第一段階としては自粛を要望いたしましたが、上げるということでありますれば、最小限度一合について二円限度、できるだけ上げない面を拡大していくべきではないか。それから流通面等におきましても、十分考えていくべきではないか。そうしてまた上げたものの配分につきましては、改定前の配分の率を少なくとも下らざること、生産者のほうにより多くの値上げ分が還元されるように、こういうような指導といいますか、勧奨をいたしてきておるわけでございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日の閣議の発言等を見ても、重点は値上げをする場合は、これはその主体を生産者乳価に置くべきである、こういう発言が、宮澤長官はじめ農林大臣はもちろんでしょうが、主体をなしておると思う。それで現実にいま脂肪規格三%の牛乳価格は、これは家庭配達で一合びんで十六円ということになっておるわけです。そうしますと、一升にするとこれは百六十円の価格になっておるわけです。ところが一方、市乳供給店の生乳の生産価格というのは、一升について六十五円、一合にすると六円五十銭という取引価格になっておるわけです。そうしますと現状においても、生産者の価格の約三倍に近い価格で、市乳の末端価格というものが決定されておるということになるわけです。こういう点は、諸外国の市乳の価格構成を見ても例がないのです。生産価格と流通段階における経費の分野というものは、大体五割、五割くらいのところが高いほうの限界だと思うのです。日本の場合には非常に構成比が、これは不当に生産者に犠牲を負わしておるわけです。ですから、そういう事情を閣議においても認識されて、今回やむを得ず価上げする場合においては、一合について二円、一升について二十円ということになるわけですからして、この配分は生産者を中心に行なうべきである。メーカーについては従来も市乳の取り扱いにおいて、相当の利潤をあげておるからして、この利潤をもってむしろ乳製品の経営面をカバーしている傾向が強い。また販売店等についても、市乳の需要が一〇%も年間に伸びておる事情の中において、むして一店当たりの取り扱い量が一割も減っておるということは、販売店の組織体系の中において、過当競争が激化しておるのではないかと思うのです。こういう実情を無視して、単にメーカーあるいは販売店を重点にして値上げを容認するということは、これは不当である、こういう意見が昨日の閣議を支配したと思うわけであります。ですからこの際政府としても、現在の普通牛乳一合十六円の価格というものは、生産者、メーカー、小売り店において、どういうような価格の配分が行なわれておるかということを、まず明らかにしておく必要があると思うわけです。そうでないと、生産者がせっかく犠牲になって寄与しておるにもかかわらず、値上げのしわ寄せば全部これは生産者の恣意的な要求が強いから値上げが行なわれたというような誤解が生じやすいわけです。担当の農林大臣として、こういう点はやはり消費者に対しても内容を明らかにして、そして政府責任において、流通段階における不合理というものをすみやかに是正して、その成果というものが生産者及び消費者にふえんするというような行政を、ぜひ進めていく必要があると思うわけであります。したがって今回二円値上げが行なわれた場合、一体生産者を中心にして価格体系を是正するというのであれば、はたして生産者に対してどのくらいの割合、あるいはメーカー販売店に対してどのような配分というものを、政府が指導的に行なう考えであるか、その点を明らかにしてもらいたいわけです。  この際前例でありますが、昭和三十七年の三月に市乳が一円値上げされたことがあるわけです。このときの政府の指導方針というものは、一円値上げした場合の二分の一、いわゆる一合五十銭、一升五円は、これは生産者乳価を全面的に是正すべきである。生産者乳価全体に対して、この一円の値上げの半分の一升五円というものを是正に向けるべきである、こういう通達が、これは当時森君が畜産局長の時代でありますが、そういう行政的な指導を行なったことが実はあるわけです。ですから今回の場合も、政府として具体的な指導ができない、有権的な措置がとれぬということではなくて、前例もあることですから、農林省として、たとえば二円値上げする場合においては、そのうちどれだけを重点的に、生産者に対して乳価の全体的な是正を行なうべきである、残りをメーカーあるいは販売店について、これを是正すべきである、こういう具体的な指導方針というものを打ち出して、これに協力を求むべきであるというふうにわれわれは考えるわけですが、大臣の御意見はどうですか。
  88. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まさに御意見のとおりなんです。非常に安い生産価格が、末端において高い消費者価格になっておる、これはどうしても是正しなければならぬと思います。しかしそれにつきましても、恒上げがメーカーのために寄与する値上げでは、私はもう絶対に有権的な力を持っておらぬ制度であっても、これは認めるわけにはいかぬ問題と思います。そこでいまのところ折衝している、あるいは向こうのほうから話している面につきましては、二円価上げ、二円のうち八十銭が生産者、小売りのほうがなかなか強うございまして九十銭ほしい、こう言っている状況でございます。メーカーのほうは三十銭。前には小売りのほうが七十銭、メーカーのほうが五十銭という率であったわけでありますが、今度は小売りのほうが九十銭でメーカーのほうは三十銭、こういうようなことで折衝を畜産局長にもさせておるのであります。生産者のほうが二分の一であればいいのですが、いまのところは八十銭ですから、二分の一までいっておりません。小売りのほうが非常に強い主張をいたしておりますので、いまの段階ではそういう折衝過程である、こういうように御了承願いたいと思います。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 そうしますと昨日の、生産者に対して一合八十銭、メーカーは三十銭、小売り店九十銭、これは農林大臣が、このような配分が妥当だという案を示したのではないのですね。新聞では、農林大臣がそのような配分案というものを示して、それに対して企画庁長官はじめ、いやそれは不当である。生産価格というものをこの際是正することを目的にした値上げでなければ、これは認めがたいという強い発言が行なわれたという意味の報道をしておる新聞が多いわけです。その点はどうなんですか。
  90. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 話はいまと違うのです。生産者に還元されるようなことであるならば、認めてもいいではないかというような発言が、経済企画庁からあったわけです。ですから私も、それはそのとおり賛成だということを話したのですが、折衝の過程や、向こうから話が出ているのは、二円上がるという場合の配分が八十銭、九十銭、三十銭、こういう配分になっておるということを私きのう認めたわけではないのですが、新聞には認めてしまったような大見出しで出てしまったのです。いま私が申し上げたような経過を話しておる、それが新聞に出たのです。ですから私のほうは、新聞記者にもこういうことは言っておらなかった。ですからあとで、農林省関係の新聞記者諸君には、ほかではそういうことを言っているが、農林大臣がしゃべらぬのはけしからぬということを言われたのですが、私はそこで経過を言ったわけで、そこではきめたとかなんとかいうものではなかったものですから、ほかのほうで私が経過を話したものがそういう趣旨で出たものだから、それで認めてしまったような形で報道されました。しかし私はきのうはそう言ったので、何も経済企画庁長官が、農民に返るのが少ないじゃないかと反駁したというわけではなくて、農民に返るのが先だというような話が出て、経過の点において、私がそういう経過をちょっと口ばしったのがああいう記事になった、こういう実情でございます。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも政府の中でも池田派の発言というのは、あまり当てにならないのですね。総理大臣にしても、革命的農政と言っても実際はあまりやっておらない。直系の宮澤君にしても、昨日の新聞で見ると、農林大臣よりもむしろ農政に熱意を持って、あくまでも生産者中心でなければならぬと、あなたの言えないようなことを企画庁長官が言ったような印象を与えておるわけです。ですからそれに力を入れる必要もないわけですね。やはり農林大臣として制度的に押えようがないから、有権的な措置がとれぬということでなくて、過去においても三十七年の一円値上げのときには、その半分は生産者乳価を是正するために配分するという方針を立てて、これを局長通達で流して、全体の乳価に対して是正さした経過があるわけです。ですから今回のこの市乳値上げを機会にして、生産者乳価を是正するということは、単に市乳分の生産者乳価だけを是正するということにはならぬと思うのです。現在市乳供給県の一升六十五円という価格は、これは単に市乳の部分だけということにはなっていないわけです。したがってこれは原料乳も合わせて生産された牛乳の全量に対して、この際適切な価格是正をやるということは当然なことになると思うわけです。この点が明確にされないと、いや、市乳の分だけしか上げないのだとか、原料乳はそのまま放置するとか、あるいは昨日の報道によっても、学校給食に用いる牛乳の生産価格に対しては値上げしてはならぬ、こういう全く不統一な態度が見えておるわけです。ですからこれは生産者乳価を今回の市乳値上げを機会に是正するということであれば、当然生産される生乳全体の価格構成というものをどうするかということが、非常に大事な点になると思いますが、この点はどうお考えですか。
  92. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの値上げを要望している面は市乳の問題でございますが、この配分等につきましては、生産者に一番重きを置くという考えでございます。したがいまして飲用乳ばかりではなくて、原料乳のほうにも値上げの効果が及ぶように配慮していくというつもりでございます。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の関係で要点だけ申し上げますが、次に、一般の市乳供給についても、最近はいわゆる白ものといわれる普通牛乳が、非常に供給数量が減ってきているわけです。そうして同じ白ものでも加工牛乳であるとか、あるいは色ものと言われるフルーツ牛乳とかコーヒー牛乳とかいうものの供給量がふえておる。これは消費者の要求がそういう傾向を示しておるのではなくて、むしろメーカー生産あるいは販売方針のもとにおいて、利益率の低い普通牛乳というものの流通がだんだん減るような形が作為的にとられて、そして利益率の高い加工牛乳であるとかあるいは色もの牛乳というものが、市場をだんだん占めるような形が出ておるわけです。それは決して食料行政の上からいって好ましい状態ではないと思うのです。普通牛乳の鮮度のいい良質なものを潤沢に供給してもらいたいというのが、消費者あるいは家庭の一番強い要望だと思うのです。それが満たされない形で、単に利潤追求の形で販売政策とか生産政策がとられておるということになれば、これは非常に問題があると思うわけです。こういう点については、流通面は農林省だけの力では及ばぬとしても、政府全体の責任において根本的な是正を行なうということはできると思うのです。こういう点についてはどうお考えですか。
  94. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 白い牛乳とコーヒー牛乳とか加工したような色のついた牛乳と両方出ておりますが、確かに白い牛乳でないようなものが出回っております。しかしここのところは、私ども調査によりますと、その率といいますか、白でないほうがふえているという傾向ではございませんが、率が安定しているというのも適当なことばかどうか知りませんけれども、そういう形でいま出回っているようでございます。しかしこれは実際栄養面から言いましても、家庭の要求から言いましても、白い加工等でないもののほうが好まれるし、必要でございますから、そういう面に配慮を加えるようなことは、これは流通消費関係の問題としてもいたさなければならぬ問題と思います。その他流通方面におきましての、さっき申し上げましたように、店先売りというようなものの値引きとか、あるいは容器の問題とか、あるいは毎日の配給でなければ隔日に配給するとか、流通面において改正を加えて、消費者需要者にサービスできるような面がまだ多々あろうと思います。そういう面につきましても一そうくふうをこらしていきたい、こう考えます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 結局きのうの話にもありましたが、いまのように一本一合びん入りを、家庭が寝ておるうちに家庭に配達しなければならぬ、こういう生活様式とか販売様式はもうとるべきではないと思うのです。すなわち市乳を飲用するような家庭は、ほとんど冷蔵庫を備えておるわけですから、何も毎朝毎朝、家族の者は寝ておる、牛乳配達をする人だけが夜起きて配って歩かなければならぬという問題ではないと思うのです。それで先日も当委員会において総合食品の小売り市場法を審議した場合には、まず東京都に二十カ所小売り市場ができる場合も、当然飲用牛乳等は扱うべきでないかということを、わが党の同僚から発言したわけですが、それに対して政府委員のほうからは、いやそれは市乳等については系列化されておるから、特別の系列のものだけを市場で扱うわけにいかない、こういうような熱意のない答弁が行なわれておる。ですからせっかく小売り市場を公営的なものを設置するということになれ、は、そこへ食品を買いに来た場合、たとえばリットルびんの容器等に入れておけば、それを一緒に買いものかごの中に入れて持ち帰って冷蔵庫に入れておけば、少なくとも三日くらいは変質しないで新鮮なものが飲めるわけです。ですからそういう点は流通機構の改善とか、小売り市場を公営的なものを設置するという場合においては、家庭の主婦が市場まで出かけて、そうして低廉な牛乳を買って帰るというような、そういう生活上の慣習をつくってもらうということも、これは政府の立場から指導、宣伝する必要があると思うのですが、何もそういうことはやっていないのですね。その点はどうお考えですか。
  96. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 小売り総合市場等の問題につきまして、政府のほうからいまお話のとおりの答弁があったように聞きましたけれども、私はいまお話のように、そういうところで白い生牛乳を買い出しというわけではないが、店に来てその場で売れるような方法などは講ずべきだと思います。大体小売りの総合市場などの設置の目的がそういう趣旨なんですから、私はそういうことはやっていいと思いますし、またやりたいと思っております。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、学校給食用の牛乳です。これは国産で四十万石一応三十九年度で予定されておるわけです。そうするときのうの閣議の話を総合すると、学校給食に提供するこの四十万石の生乳については値上げをしてはいけない、値上げをさせませんということを、話し合いの中で取り上げたというふうに伝えられておるのですが、これはどうお考えですか。農林大臣としては、他の牛乳はこの際値上げをするが、この四十万石の牛乳価格については、あくまでも生産者の負担、犠牲においてこれは動かさぬという考えか、その点は一体どう考えておるのか。それからこれにあわせて、小林厚生大臣と思いましたが、側上げをしないかわりに、学校ごとに生乳の簡易殺菌設備というものを設ければ、これは一設備について十五万ないし十六万でできるのだから、これは国の負担で学校へ備えて、そうして直接生産者の牛乳を学校へ持ち込んで、そこで簡易殺菌をして、そうして学童に飲用させるほうがいいのじゃないか、こういう発言も確かにあったわけです。これは新たなる一つ発言であって、われわれ注意しておる点でございますが、この学校給食用の生産者乳価は上げないという点と、学校に直接簡易殺菌設備というものを速急に設けて、学校において殺菌処理を行なって生徒にこれを飲用させる、これはつながりがあるわけですけれども、この点に対する政府の方針の概要というものはどういうことになっておるのか、伺いたい。
  98. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 学校給食のほうを値上げしないというのは、学校給食の消費者のほう、飲むほうの値上げをしないということです。生産者のほうは、別に生産価格を上げないでおくということを言っているわけではございません。全体から見て、生産者のほうは、上げるべきものは上げなくてはならないと思います。消費者の問題だけです。  それからいま衛生関係法律や何かありまして、殺菌なども低温殺菌以外にやらせないという形になっています。それで生産者の組織の問題もありますが、生産者が直接学校へ売りに来るというのは、組織がもっと強化される必要もあろうと思いますが、それは別といたしましても、そういう面から見て、殺菌の方法なども簡易に目的が達するような方法があるならば、そういう機械等も据えつけるようにいたします。これは国で全部やるという、そこまで深く考えての検討ではございませんが、そういうものを据えつけて、生産者が直接学校給食に牛乳を提供する、こういうような方法なども講じていくことが一つの方法ではないかということで、その点について私どもも賛成でございます。これにつきましてはいろいろ予算面だとか補助という形でどういうふうになるか、学校当局や厚生関係当局とも相談し、また財政当局とも相談していくべき問題として残っておるわけでありますが、方向としては私ども賛成でございます。やっていいことだと思います。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 いまのお答えによると、学校給食用の生乳価格については、別にこの分だけ押えるというのではなくて、一般の牛乳価格が上げれば、これは当然同じように是正される。ただその消費者価格を上げないということであれば、学校給食用の牛乳の負担というものは、国の負担と一部の父兄の負担ということになるわけですね。消費者負担を上げないということは、父兄の負担すべき分は負担増はさせないということだと思う。そうすると牛乳の値段は上がる、父兄の負担はふえないということになれば、その値上がり分はだれかが負担しなければ解決できないということになるわけです。結論は言うまでもなく牛乳価格の上がった分だけは、国庫負担分がそれだけふえるという解決方法しかないわけです。これはあたりまえのことを聞くようですが、念のために伺っておきます。
  100. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現実に学校で飲むものは、十六円なら十六円ということで、二円上げません。父兄の負担もふえないし、国もいま補助している率でよろしい。メーカーのほうでがまんしてもらうほかないのです。加工なり何なり一そういう考え方で進めておったわけです。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは生産者値上がり分はメーカーに負担させる方針だけはっきりすればいいわけだからね。そういうふうに理解しておきたいと思う。  あと残った質問はあとにしますが、この簡易殺菌、これはわれわれは、生産地帯における飲用牛乳の殺菌処理は、実情に応じて、必ずしも低温殺菌でなければならぬということはないのじゃないか、高温殺菌も併用すべきであるということをしばしば主張しておるわけですが、今日まで主として厚生省が食品衛生的な立場から、これに反対してきたわけです。それを今度は厚生省の親玉の大臣が進んで、学校給食用は生産地帯においては政府が学校に簡易殺菌設備を十五万ないし十六万投ずればできるのだから、そこへ生産者の牛乳を持ち込んで、高温殺菌の簡易処理を行なって飲用すれば、これは中間経費もかからぬし、殺菌の固定的な費用も少なくて済むわけですが、これは大きな前向きの発言だと思うわけです。ですから、思いつきで閣議でちょっと言ったので、あと考え直して取り消すということにならないように、十分農林大臣としても耳にしておるわけだから、これを今後すみやかに政府の方針として、具体的に実現、運営できるようにしてもらいたいというふうに考えるわけですが、せめてこの点だけはこの機会に明らかにしていただきたいと思うのです。  残余の質問は、お帰りになってから継続することにいたします。
  102. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 従来なかなか厚生省で聞かなかった問題を、厚生大臣がやろうと言うのですから、けっこうなことです。そういう方向へ進めていくには、非常にいい手がかりができたわけであります。お話のような線に進めていきたいと思います。
  103. 高見三郎

    高見委員長 暫時休憩いたします。    午後二時二十九分休憩      ————◇—————    午後三時四十七分開議
  104. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  市乳価格及びレモン自由化に関する問題について、質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  105. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどの大臣答弁で概要は理解できたわけですが、具体的な問題について、現在の市乳の配給価格が一合十六円ですが、その場合、生産価格、それからメーカー価格、小売り店価格価格構成の内容がどうなっているか、この点を明らかにしていただきたい。
  106. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 折衝中の配分のことは、先ほど私申し上げました。従来の配分がどうなっているかということにつきましては、事務当局から……。
  107. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 十六円の建て値になっております普通牛乳の家庭配達の場合の各段階における価格でございますが、東京を基準で見ますと、生産者の受け取り価格が六円三十銭、約三九・四%に当たります。これにメーカー段階での経費が四円十銭加わりまして十円四十銭、メーカーの部分で占めますものが二五・六%。小売りが十六円で販売ができた場合を仮定いたしまして、五円六十銭のマージンということでございまして、全体に占めます比率が三五%に相なっております。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 配分率は、前回の五月六日の当委員会において、局長からも四〇%、二五%、三五%の現在の価格配分になっておるという説明がありましたが、ここで問題は、生産者手取りの六円三十銭あるいは六円五十銭ですが、これは必ずしも市乳に該当する乳代が六円三十銭ないし六円五十銭ではないと思うのです。これは市乳を供給する地域の会社に売り渡す取引価格というものが、六円五十銭ということになっておるわけですからして、市乳の価格算定をするという場合、結局厳密にこれを区分すると、市乳分の乳価というものは決して六円五十銭の割合ではないと思うのです。そのことは、たとえば北海道を中心とする原料乳の生産地帯の取引価格は、三十九年度の原料乳の価格告示に基づいて一升が五十五円ですから、一合にすると五円五十銭ということになっておるわけです。その関連の上に立った場合、市乳の生産者手取り分が六円三十銭あるいは六円五十銭というのは、告示した場合には妥当な数字ではないというふうに考えられるわけですが、その実際の市乳に相当する生産者乳価の価格というものはおよそ幾らであるか、この点を明らかにしていただきたい。
  109. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 生産者手取り価格六円三十銭と申しますのは、芳賀先生もお話しになりましたように、関東地区あるいは東京におきましても、農家の売り渡します全量が市乳になるものではない。一部は乳製品の加工原料としていく場合がある。そういうものを込みにいたしました混合乳価であるということはお話のとおりであります。この混合乳価としての取引が行なわれております場合に、用途別にその価格を区分することはきわめて困難でございまして、市乳の場合にはどういうパーセンテージになるかということは、ちょっと私どもも計算の基礎を持ちませんし、この席で申し上げるわけにもまいりません。従来の取引の慣行から見まして、混合乳価を厳密に区分するということは、季節的にも市乳向けと原料向けが変わっておりますし、非常に困難だと思います。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 その事情がわかるから、あえて尋ねておるわけです。そうすると、あくまでも生産者の乳価を混合乳価である、用途別に区分してはおらぬし、現在の取引の様態というものは混合、つまり一本価格で行なわれておるわけですからして、たとえば二円の価格引き上げが行なわれた場合、それを生産者に配分するということになれば、混合乳価ということになれば、牛乳全体にその値上がり分というものは及ぼさなければならぬということに当然なると思うのです。そうなると、たとえばメーカー側の主張という点を大臣が述べられましたが、その場合には二円値上げの中の八十銭分というものを、これは生産者の手取り価格の中で加算するということになれば、混合乳価ですから、全体の乳価にそれを及ばす方法というものを明確にしておかぬと、後日混乱が起きるのではないかと思います。この点はやはり農林省あるいは畜産局の立場で明確にしておいてもらわぬと、後日の処理の紛争、混乱の種になるのじゃないかと思うのです。
  111. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そう思います。生産者の全部に及ぼさなくてはならぬ。ただ私、技術的にこまかいことはよく承知しておりませんが、濃淡の差はあると思います。あると思いますが、これは全部に及ぼすという方針でおります。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、特に畜安法に示された三十九年度価格というものは、一合二円ではなくて、一升二円だけわずか値上げを大臣が告示されたわけで、この点は当時畜産審議会においても議論された点なんですが、原料乳価については一升二円しか上げない。今後改定はされるとしても、市乳については、これは生産者、メーカー、小売り店もあわせてありますけれども、その十倍の一升にすれば二十円の値上げを認めるということになりますと、これはやはり乳価の価格構成上、大きな問題が伏在しておると思うわけです。この点は単に市乳価格を手直ししたということだけでは済まないと思うのです。やはりこの機会に根本にさかのぼって、乳価の体系というものをどうすべきであるか、あるいは取引の条件というものをどうすべきであるかということを、政府として取り組んでもらう必要があると思うのです。やはり絶好の機会というものはあまりないのですから、こういう値上げの機会に、一合にすれば二円ですからわずかなものですけれども、一升とすれば二十円ということになるわけですから、これは決して少額なものではないわけです。この機会に農林大臣として、現在の乳価の諸条件に対して再検討を行なうとか、メスを加えるという決意というものを明らかにしてもらいたい。
  113. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 原料乳はいまお話のように二円上げてあります。しかし今度どういうふうな配分になるかは別といたしまして、かりに一合八十銭とすれば一升八円でございます。これの配分関係を飲料乳と原料乳とどういうふうにするかということは、さらにメーカーとも折衝させて、畜産局長のほうからそういうことについてメスを入れるという、何といいますか、再配分といいますか、そういうことにつきましてはよく指導して、適当なところでおさめるように局長からも折衝させるつもりでございます。
  114. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、二円価上げする場合の配分というものは、やはり従来の価格形成上の矛盾を是正する機会になるのです。そうなれば、先ほど大臣が言われたとおり、生産者に対して二円のうちの八十銭ということになれば、従来の実績的な六十三円とみなした場合、四〇%の配分ということになると思いますが、それでは非常に不十分だと思うのです。少なくとも、繰り返すようでありますが、三十七年の一円値上げの場合、農林省の方針として、一円のうちの二分の一の五十銭、つまり一升五円について全面的にこれを生産者の手取り価格を値上げすべきである、こういう通達を出して、それによって実行させた前例があるわけです。だからこの際二円値上げするということがやむを得ぬとすれば、値上がり分の少なくとも二分の一の一円分は、当然生産者乳価の是正のために配分すべきである。これは単に私どもが当委員会で指摘するだけでなくて、先日の閣議においても、あるいは消費者の声を聞いても、今日の牛乳の生産事情あるいは物価事情等を検討した場合は、やはり生産者に生産意欲を高めてもらわなければならぬわけですから、そういう場合やむを得ざる値上げというものであれば、そこに重大な値上げの根拠がある場合においては、これは協力できるという声が多いと思うのです。それにこたえる意味においても、メーカーあるいは販売店だけにそれが配分されて、生産者に対しては名目だけの配分で終わるようなことがあってはならぬと思うのです。ですからその場合は、少なくとも二分の一相当分は当然生産者に優先的に配分できるような形をつくらない限り、二円値上げは認めないというぐらいの決意と熱意がなければ、問題の処理はできないと思うのです。この点は必要であれば、農林委員会の決議等によって国会の意思を明らかにしてもいいわけですが、やはり責任農林大臣として、そのような方針でお進めになれるかどうか、明らかにしてもらいたいわけです。
  115. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの二円の半分ということまではたしていけるかどうか、これから折衝いたします。いまのところでは御承知のように小売りのほうが九十銭を主張しているものですから、生産者のほうに八十銭ということになっているようであります。メーカーのほうは初めから三十銭ですから、これは非常に少ない。実際折衝している結果、打ち明け話をしてみますと、三十銭ぐらいだから、値上げしなくてもよかったのだというようなことで、もう少し時間をおけば値上げさせないでも済んだような気もするのです。それくらいに生産者のほうは、生産というか、メーカーのほうは押えています。小売りのほうとの関係は、まだはっきりいたしておりません。しかし私は趣旨としては、いまのお話のようにぜひしたいということで、局長も非常にその点を強く押しているわけでございます。二分の一になるという約束はできませんけれども、その方向に極力勧奨いたすつもりでございます。
  116. 芳賀貢

    芳賀委員 小売り店の場合においても、現在の消流機構とか販売機構だけを守るというだけの主張であってはならぬと思うのです。これは昨日の閣議でも指摘されたとおり、市乳の消費量は前年に対して一割五分、ところが一販売店当たりの取り扱い量は、むしろ前年に対して一側減っておるということは、それだけ販売店が乱立して、結果的には過当競争になっておるということになるわけです。そういう状態の場合、幾ら販売店にマージンをふやしてやっても、乱立、過当競争が繰り返される限り、これは販売店においてもこれでいいということにはならないと思うのです。ですからやはり販売機構、消流機構全体に根本的な改善を加える。その場合の方法としては、繰り返すようでありますが、大臣の言われるようにリットルびんというものを使用するようにするとか、あるいは二合びん、三合びんを用いるとか、容器等についても必ずしもびん装でなければならぬというわけではないと思うのです。そういう点はやはりメーカー側においても十分努力する必要がありまするし、消費者の側においても反省して、どうしたならば生産と直結した消費構造というものが実現されて、そうして中間経費の節減によって、消費者としても低廉な、新鮮な牛乳を飲用することができるし、また生産者の側においても中間経費の合理化等によって、農家の所得もふえるということになるわけですからして、根本的な問題は消流機構です。販売機構の根本的な改善に消費者も協力してもらわなければいかないと思うのです。その方針がきまらなければ、幾ら販売店に配分率を高めてやっても、問題の解決はできないと思うのです。むしろ生産に重点を置いて、少なくとも半分は生産者にこれを配分する、残り半分についてメーカー販売店において適切な配分を行なうことによって、この二円の値上げというものがもし行なわれる場合においては、効果的なものにしなければいかないというふうに、われわれは考えておるわけでして、これがやはり政府の方針だと思うのです。だからこの点はくどいようでありますが、農林大臣としてももう少し前向きで片づけることにしてもらわぬといかぬと思うのです。
  117. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府としての刀は持っていませんが、方針はそのとおりでございます。でありますから、その方針に沿うて極力そういうふうに持っていくように督励して、そういうふうにいたしたいと思います。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 これは法律上の明らかな根拠がなくとも、行政上メーカー等に対してもきめ手はあると思うのです。行政的に畜産とか酪農なり乳業関係を行政面で扱っておられるわけですから、政府が適切な方針を出して、それに関係者が協力しない場合は、法律上の直接の根拠がなくても、何か有効適切なきめ手というものは、やる気であればあるのです。あまりえげつないことは避けたほうがいいかもしれぬが、何も方法はないということはないです。これは局長においても研究されれば、半分だけ生産者に配分するくらいの方法はあると思うのです。必ずやらすだけの……。ここでどうやるかということはあえて聞きませんが、十分大臣と相談して、期待に沿ったようにしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  119. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 大臣からお答え申しました線で、私も指導に努力をいたしたいと思います。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 次にもう一点だけ申し上げますが、この制度上の問題です。先般も申し上げたとおり、酪農振興法についても根本改正を行なうべきであったのを、これは大臣の食言みたいなことになりますが、与党もこれは不満足で、ちょっとていさいが悪いからやめたほうがいいのじゃないかと言われて、すなおに酪振法の改正はおやめになった。政府が出さないというものを、立法府のわれわれが内閣提案でなければならぬとは考えていないわけですから、深追いはしないが、この点についても再三にわたって大臣あるいは畜産局長から、酪振法の根本改正を行ないますということを国会において言明しながら、それをしないということは、やはり一種の食言だと思うのです。これをここで追及するわけではありませんが、それだけにいろいろな重要問題に当面した場合、立法上の根拠がないということで、政府はいつも責任を避けておるわけです。ですから、立法上の根拠が必要であるとするならば、たとえば酪振法の改正にしても、あるいは畜産物価格安定法の根本改正等を行なって、特に市乳分野については、制度上の根拠というものが全くないわけです。ところが原料乳並びに乳製品の分野においては、制度上の根拠あるいは体系が一応できておるのです。同じ牛が生産する牛乳が、半分の原料乳のほうは、これは制度上の根拠がある。半分の市乳については根拠がないなんというのは、全くおかしいと思うのです。したがってこの点については、やはり生産される生乳全体を法律の対象にして、それが用途として原料乳に回り、あるいは市乳に回ることは、これは国民の需要にこたえるのですからして当然のことですが、用途がいずれに分かれても、製品化されても、飲用に向けられても、同じ生産された牛乳の最終的な処理については、同じ法律の体系の中でこれは処理するのが当然だと思うのです。ですから、この点はすみやかに畜産物価格安定法等の改正を行なって、まず生乳を法律の対象にする。そうして用途別にそれによって生産された乳製品あるいは処理された市乳等については、適正な消流機構を通じて、末端の消費者に対しても、適切な価格の範囲内において市乳というものが飲用されるようにしなければいかないと思うのです。これは一日もすみやかにやらなければならぬ問題であると思いますが、この際農林大臣から、この制度の改正についての御所見を伺っておきたいと思います。
  121. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 原料乳と飲用乳とを区別してやっていくというのは、私もおかしいと思います。やはり生乳全体として、どういうふうにするかという問題を検討していきたいと思います。こういうふうに考えて、その点につきましても検討を命じておる次第であります。でございますから、生乳全体としての基礎に立って考えをまとめていきたいと思っております。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 本日はこの程度にして、あとは市乳値上げの今後の成り行き等については、大臣の本日の答弁を通じて熱意を期待していきたいと思います。
  123. 高見三郎

    高見委員長 湯山男君。
  124. 湯山勇

    ○湯山委員 私はレモンの自由化の問題につきまして、農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。今回のレモンの自由化につきましては、すでにいろいろなうわさが飛びまして、そういううわさは農林大臣にも入っておると思いますけれども、私はそういうことについてではなくて、生産農民の立場に立って、今回政府のおとりになった態度、特に経済閣僚懇談会に列席しておられて、農林大臣のおとりになった態度、そういうものについて非常に疑問を抱いております。そういう生産者の立場からお尋ねをいたしたいと思います。  この経済閣僚懇談会の議題は、消費者物価安定対策が議題であったと聞いております。しかしながら消費者物価の安定という立場から考えてみまして、レモンがどれだけの重要さを占めておるか、いま政府資料によって見ましても、国民平均消費量は一個の半分にも足りません。こういうものは特定の限られたところでしか消費されていないわけで、いま一般国民大衆の消費者物価の安定対策として、レモンを自由化しなければならないという理由はないと思います。ことに緊急輸入の条件は、国内産のものが非常に高くて、それでは国民生活に影響が大きい、そういう場合に、それよりも安く手に入るものを輸入する、こういうことはあり得ますけれども、そういう条件にもかなっていない。つまり消費者物価の安定対策とレモンの自由化とは直接のつながりは持っていない、こういう判断ができると思います。第二は、それについての検討がきわめて不足である。現在農林省の局長のお持ちになっている資料も、大急ぎで府県に対して、調査を依頼して集計したものであって、決して実情をつかんではおりません。このことも、こまかいことは申しませんけれども、ともかくも事務当局で慎重に検討して、こうやったならばこういう影響がある、これに対してこういう対策がある、こういうことを十分見きわめてのものではない。だから資料も非常に不完全でございます。対策についても、従来バナナ等の場合は七〇%をそのまま据え置いた、こういうこともありますし、砂糖の場合にもそれぞれ特別な立法をもってその対策を立てている。今度の場合はそういうことも何もなされていない。ここにも一つ問題があると思います。またこのことが単にレモンだけではなくて、あとで申しますけれども、ミカンなりリンゴなり、その他の果樹生産者に精神的な心理的な大きな影響を与えている、そういうことの検討もなされていない。さらにまた大臣はこの一月の日米経済閣僚会議におきまして、レモンの輸入量はふやしていくけれども、自由化はしない、こういうことを申されまして、このことは、当委員会でもそういう意味のことをおっしゃっております。それからその懇談会に出ておられたと思いますけれども、河野建設大臣農林大臣当時、レモンの自由化は向こうがミカンの輸入を認めた、それと見返りで認める、こういうことをこの委員会でもはっきり申しておられました。したがって赤城農林大臣も河野農林大臣も、従来から国会で明らかにしておられた態度を、急に全く突然変更されて、これに賛成された。これらのものは、ただ単にレモンの生産農民だけではなくて、開放経済後指向しておる政府のいまの政策、特に農産物についての自由化というものは、慎重にしなければならないということを繰り返しいっておられた政府のやり方としては、私どもどうしても納得ができない。こういうやり方に対して、いま私の手元に参っておるだけでも、怪文書というのか、あるいはその裏面の暴露といいますか、そういうこともあるのかという、驚くようなこともたくさん参っております。つまり一つ一つのそういうことを申し上げるのではなくて、そういうやり方が非常に疑惑を招いている、これは私は否定できないと思います。そういういろいろなことがある。つまりいま緊急な物価対策としてやらなければならないという条件はそこにはない、従来言ってこられたことと間違っておる、それから検討も十分されていない、影響もあまり考慮されていない、そういう状態でなぜ一体ああいう抜き打ち自由化をやらなければならなかったか。その抜き打ち自由化に、生産農民の立場にお立ちにならなければならない農林大臣が、なぜ賛成をされたか、このことについてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  125. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 レモンの自由化につきましていろいろな宣伝をされていることは、私も承知しております。むしろ逆宣伝のほうが多いと思います。しかしそれでなくて、純粋な意味におきまして、レモンを自由化すべきでないのをしたではないかという詰問的御質問だと思います。この間の閣僚懇談会は、もちろん消費者物価の対策に触れたのでございますが、根本は国連におけるいろいろな自由化の問題等についての懇談会であったわけであります。率直に申し上げまして、初めから何を自由化するとかなんとかいう話があったわけではございません。その話の過程におきまして、レモン、 コンニャク、ノリ、こういうふうな問題が出まして、ノリとかコンニャク等につきましては、国内対策を講じなければ自由化というものは無理だ。しかしレモンにつきましては、前に一度自由化もしたこともある、それをまた取り消したこともあるけれども、現在の状況において、日本の国産のレモンと輸入するレモンとの競争というものを比較するのには、比較にならぬ対象ではないか。こういうようなことから、国内対策はあと回しにいたしましても、自由化しようではないかということできまったわけでございます。  そこで調査が足らぬということでございますが、これは前にも自由化したことでありますから、調査は私のほうとしても十分いたしておったわけでございます。それから内閣といたしましても、何も自由化しないというわけにはまいりません。国際条約その他国際機関に加入しておりますたてまえ上、国内に対しましての影響を考え国内対策を事前に講じ、あるいは同時に講じ、あるいは事後に講じつつ、影響の少ないものは国際社会において自由化する、こういうことで消費者物価対策という問題と自由化対策という問題が一緒にその席で議題になりましたので、自由化という方面から自由化いたしたわけでございます。  そこでその自由化につきましては、このレモンは自由化の種類としては相当前から出ておったわけでございますが、しかし前の状況もありますので、慎重にいたしておったわけであります。そこでいろいろ申し上げる前に、一つ前提として申し上げますと、日米合同会議の際に、レモンを自由化してくれという話がアメリカのほうからありました。前に河野農林大臣時代にも一部を取り消したことがあります。私はその際、国際会議におきましても、それでは日本の温州ミカン等の輸入制限を撤廃するという態度を、アメリカ側がとらなければならないぞということを念を押しておきました。しかしこれは単なる自由化の問題と違いまして、温州ミカンの問題は植物防疫の問題でございます。植物防疫の関係で、日本のミカンを入れても被害がないというようなことであれば、これはもちろん自由化いたしますということになっておりましたので、単なる取引的な、レモンをこっちで自由化するから、温州ミカンを自由化せよという問題と、もっと違った意味におきまして、植物防疫という関係一つ含めての問題だったわけでございます。でありますけれども、それはいまおっしゃったとおりに、私もそういう進め方をしてきたのでございますが、自由化を進めるという意味におきましてレモンが俎上に乗りまして、その際に私どもの立場として、どういう意味で賛成したかということでございますが、いまから申し上げますと、栽培面積が少ないからということで私は言うわけではございませんが、栽培面積等につきましても約百四十四ヘクタールでございますから、百四十四町歩くらいでございます。生産量は約千二百トン、栽培農家戸数は三十五年の調査によると二千戸こういうふうに推定されております。そこで一農家当たりのレモンの栽培面積はどのくらいかといいますと、県平均で二アールから七アールですから、二畝から七畝くらいで、かんきつ類生産農家の一戸当たり栽培面積に比較いたしますと非常に少ない、こういう実情でございます。まあ実情を申し上げました。  それからわが国で最も栽培面積の多いのは広島県、ここでのレモン栽培農家のうち、農業粗収入でどれくらいレモン収入の割合があるかというと、一〇%程度でございます。その程度の農家が七三%、それから五%に達しない農家が九〇%以上を占めているという県が大部分であるということ、それから自由化いたしますと、価格について正確な予想は困難でございますが、現在為替の割り当てをして、むしろ現在が独占的な形で輸入しております。これはあまり感服しない問題だと私は思います。それは別にいたしましても、レモンを自由化した場合に、栽培農家の反当粗収入がかりに半分になった——数字が誤っておるかどうか知りませんが、七、八円くらいのものが七、八十円あるいは百円くらい、十円くらいのものが百円近くなっておるという、いろいろな価格のあれもあると思いますが、これが約半分になったと仮定しまして、ほかの果樹栽培の場合の反当粗収入と比較いたしました場合には、温州ミカンよりは下回ることになりますが、その他の果樹の平均から下回るということにはならない、こういうような推定の計算もございます。  また今度は国内産のレモンがどうなるかということでございますが、私は自由化いたしますると、輸入のレモンの値段も下がると思います。これが自由化した場合に独占的なものになるというようなことを言っておりますが、私はそういうことはあってはならないと思います。趣旨に反しますから。通産大臣とも話しておりますけれども、そういうことはさせない、こういうように考えております。そこで大体国内のレモンの質といいますか、これが輸入のものと非常に違っております。ですから輸入のものが相当下がるのにスライドして、それと同じくらい下がるというふうには私ども見ておらないわけでございます。国内のものは国内の用途として、国内価格においてある程度下がりましょうけれども、それの販路といいますか、それは私はある程度考えられる。相当あるのではないか。すなわちいろいろ推定をいたしておりますと、輸入の価格についての予測は困難でございますが、輸入コストに適正なマージンを加えた額その他の事情を勘案して推定すれば、二百円から三百円の価格の出現が予想される、こういうふうに見ております。その場合、国産レモンの価格はどうなるかというと、従来の趨勢から見まして、百円から百五十円に値下がりするのではないかと考えます。しかしこのような値下がりをした場合でも、農家の庭先価格は七、八十円あるいは百二十円から百三十円にとどまるというような見込みで全くその質が違っておりますから、そういう意味において、自由化して下がったから、そのままの下がりぐあいで国内のレモンの価格が下がるというふうには見ておらぬ。  こういうふうないろいろな点から、レモンを自由化した場合におきまして、日本の国内でレモンを栽培しております農家、これはごく少数であったといたしましても、これを無視することは私は当を得ていないと考えています。でありますので、無視はいたしません。これは慎重に考えて、栽培農家に対する影響もある、こういうふうに見て、影響は避けられないといたしましても、その影響の幅あるいは程度、これが国内物価対策の必要性という問題と、自由化という問題も一つの要請でございますから、その要請その他を勘案いたしまして、この際自由化の品目として取り上げるということであるならば、突然でございましたが、私といたしましてはこれは賛成しても差しつかえない。また賛成後において、いま申し上げました私どもの予想以上に国内生産農家の問題が生じてくる場合におきましては、当然それに対する対策は講じていかなくてはならぬ、こういうふうに考えてはおりますけれども、この間の会議におきましては、以上申し上げた状況のもとに自由化に賛成いたした、こういう事情でございます。
  126. 湯山勇

    ○湯山委員 農林大臣もまた国務大臣でございますから、農林大臣という立場を離れた御意見もあることは、それはあってもいいと思います。しかしながら今日農業基本法体制の中で、果樹を伸ばしていくのだ、畜産を伸ばしていくのだという中で、一体果樹生産者に不安を与え、少なくともそれに悪影響を与えるというようなことは、これは農林大臣としてはおとりにならない立場であると思います。いまの御説明を聞いても、なお私は一そう納得できないのは、かつて自由化したことがある。それは昭和三十一年の十月であったと思います。その当時も国内のレモンの生産というものは、そんなに多くございません。しかしそれが自由化されたために、どれだけ安くなったかというと、一番極端な場合には、一貫目三円、これはお聞きになったと思いますが、一番ひどいところでは四キロ程度ですが、それが三円というようなことになって、輸入レモンを使ってふろに入ったとか、国内産はもう全然だめだというので、木を切ったというような例もございます。そこでこれではいかぬということで、三十三年の三月でございますから、二年足らずで再び自由化を取りやめた。こういう前歴があるわけで、こういう従来の経過を御存じであれば、これはいまおっしゃったようなことはおっしゃったこととして、なお慎重にもう一ぺん検討するという態度を、農林大臣としてはおとりいただけなかったのかどうか。これが私の一つの申し上げたい点です。  第二の問題は、生産者戸数、三十五年の統計と言われますが、それよりもいまだいぶふえております。それから生産量も、いま大臣がおっしゃったのよりは相当多い。これは少なくともそれよりも多いことは間違いありません。なお大臣は耕作面積についておっしゃいましたが、ただ耕作面積が幾らだということだけでは、これはそういう結論を出す材料にはならないと思います。農林省のほうでお調べになった統計によりましても、現在レモンの耕作面積は百四十四ヘクタール、ところがその中の成園、未成園、これを分けてみますと、農林省の調査によれば、成園はその半分の七十六ヘクタールしかありません。つまり半分は、その自由化がやまってから後の新値になっておるわけです。この新植の部分、まだ成園になってない部分、これらはこれからどんどん期待を持って伸びていこうとしておる状態である。なおそれ以外にレモン新植の計画に、いまおっしゃいましたように、現在のところレモンの栽培というのはかなり引き合いにかかりますから、新柄の計画も相当ございます。そういう新値の計画大臣は全然おつかみになっていらっしゃらない。聞くところによりますと、一千町歩以上新値しようという計画もあると聞いております。それらに対して、今度の自由化というものは、つまり現在農林省でお調べになった面積の半分に当たる未成園は、これはもう青枯れのような形になるおそれがある。これから伸びていこうといっておったレモンは、また他のものに転換しなければならない。そうすると昨年のミカンは、相当新植が多かったために、わせ温州等においては値くずれがいたしたことは大臣も御存じのとおりでございます。そういう現在ミカンをつくっている人たちも、将来に対しては必ずしも楽観はしていない。そこで今回のような措置が、そういう抜き打ち的な措置が、ミカンの栽培は米に比べてもいいのだ、野菜よりもいいのだ、ミカンは自由化しても、いまいいのだからたいしたことないだろうというようなことで、いつ自由化されないとも限らない。ことに生産者代表が池田総理大臣に会ったときに、レモンの自由化は当然だ、将来オレンジ、それからジュース、これらも自由化するのだ、これははっきりおっしゃったと、生産者がほんとうに会ったわけでありますから、述べております。こうなってまいりますと、いままで政府のとっておられた態度は、まことに生産者に対して大きな不安を与えるものだということになるわけで、申しましたように、そういう不安を与えておるし、それから総理はそういう発言もしておるし、さらに耕作面積、それらについての内容的な検討もされていない。そういう検討をする余裕を置いて、また対策を立てて、踏み切るのならば踏み切るべきであって、今度おとりになった措置というものは、いかにも軽率ではないか。それでいまのように不安を与えている、こう思いますが、それについてどういうふうにお考えでしょうか。
  127. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話のようにオレンジとか、あるいはグレープフルーツ、その他にこれを及ぼすところの突破口だというふうに考えられれば不安だと思いますが、私はそういうつもりでございません。これはレモンはレモンとして取り扱ったわけで、これでほかのものまで及ぼすところの前提条件だ——池田総理が言ったかどうかわかりません。私は聞いていません。しかし私はそういうことはしないつもりでございます。  もう一つは、私は先ほど言いましたように、国際商品としてのレモンと日本のレモンの栽培というものと、関連がないわけでございませんが、これは相当質的に違っておりますので、私は国内のレモンならレモンとして、これは成り立つ道がある。また果樹とか酪農というものは選択的拡大のものでございますが、何から何まで、果樹なら果樹を全部保護していかなければならぬということではございませんと思います。そこでレモンはそれでは保護しないかということでございますが、これも保護しないわけではございません。しかし計算上、十分の計算が成り立っておらないではないかということでございますが、私どもの計算からいえば、現状の価格は、粗収益等を考えましても、いろいろ計算させておるのでございますけれども、反当で二十一万千二百五十円くらいになってます。それでかりにこれが二分の一になったということになれば、約十一万円でございます。これをほかのものと比較してみますと、ミカンにおいては十七万二百十一円です。ナツミカンが八万四千二百五十三円、カキが七万九千九百七十一円、桃が八万九百九十七円、ナシが十万三千七百八十一円、ビワが六万四千九百四十五円、こういうことでございますから、私は自由化しても、レモンならレモンとして成り立つ、こういうような計算を持っています。特に収益を多くするということから考えまするならば、自由化しないで押えたほうがいいと思います。しかし押えておくことによって、現実は独占価格的な要素を持って、相当高く消費者に売っておるというような状況にも見受けられております。そういう意味におきましては、私は生産者の立場というものも考えて、生産者の立場としてやっていける。また三カ年ほど試験調査もいたしておりまするから、この試験調査の結果も勘案いたしまして、これからの推移によりましては、なお生産者対策も考える。こういうことから、私はこれは自由化しても差しつかえないのではないか、こういう観点から賛意を表した、こういう事情でございます。
  128. 湯山勇

    ○湯山委員 それは大臣、まだまだ実情を御存じないと思うのです。ミカンの産地とレモンの産地というのは大体重なっていまして、ナツミカンの場合には必ずしもそうではありません。ですから、レモンをつくるほうが、ミカンよりも有利だという条件がなければ、新植はミカンに変わります。ところがいまおっしゃったようにミカンの場合、反当十七万以上ある。レモンの場合、半値になれば十一万程度に下がる。それだけの開きができれば、もはやレモンをつくるのはばからしいから、ミカンにしようということになる。これは明らかなことです。ただレモンの場合、需要国内産の四倍あるいは五倍ある。そのせっかくの国内需要を外国産のものの市場にする、これは私はどうしても了解できない。レモンの増産計画をお立てになったことは、農林省おありにならないと思います。それからいまの品質改良、あとで熟させるという指導、そういうこともこれは自主的にやっているのは相当ありますけれども、政府が試験場とかなんとかいうところで積極的にこれと取り組んだということは、遺憾ながらまだ聞いておりません。もし政府のほうでやっておられるのであれば、これはこうだからこうだと、その結論が出るまで待つということも、これは決して大臣として主張できない問題ではないと思います。それをなさらないで、ただ、いまのような簡単なお考えでそれをなさったのでは、農民はたまらない。いま大臣は、ここでグレープフルーツとか、あるいはオレンジとか、あるいはオレンジジュースのようなものの自由化はしない、それはそれで別だとおっしゃいますけれども、それでは同じような問題が出たときに、大臣はどんなことがあっても自分はそれは阻止するという御決意と自信がおありでしょうか。その点は私は農林行政担当の大臣として、ここで明確にひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  129. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 レモンの場合は前にも自由化したこともある、それをまた戻したこともある、こういういろいろ因縁つきのものでございますから、私どもといたしましても軽率に自由化したわけではございません。その間におきまして、相当いろいろ検討をして、いつかは自由化しなくてはならぬと思っておったときに、たまたま話が出ましたから、私もいままでの検討の結果を考慮いたしまして賛成すべきだ、こういうことで賛成いたしたわけでございますが、いまのオレンジだとか、あるいはグレープフルーツ、こういうものにつきましては、私は敢然としてちゃんと押えてゆきます。レモンの場合は、私はむしろ賛成のほうに向いたわけでございます。
  130. 湯山勇

    ○湯山委員 敢然として職を賭してでも阻止されるということでしょうか。というのは、大臣のお人柄に疑問を持つわけではありません。しかしこの一月、日米経済閣僚会議でああいう発言をなさっておる。いま自由化しない、そして事務当局に自由化を前提とした検討を命じたというわけでもないのです。今度の場合、ただ大臣の直感で——その当時検討したと思います。そのときの結論は自由化しない、ただ輸入量はふやす、これが結論であった。それが今度の場合突如として変わってきた、ここに問題があります。農林大臣のお立場としては、むしろ技術的な問題、それから成園、未成園の関係、これからの新植の計画、そういうのを検討した上に立ってなさったのではないということも、いまはっきりしたわけですから、そういうことがあって、前にもやったことがあって取り消した、今度またそういう簡単な抜き打ちでやった、またやり直すというようなことだと、これはいまのように大臣が敢然として阻止すると言われても、これはなかなかああそうですかと引き下がるわけにまいりません。もう一度ひとつ御決意を明確にしていただきたいと思います。
  131. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げましたように、レモンの場合は前に自由化して、それを取り消したようないきさつもありますから、私はレモンについては、これは自由化する品目のほうに相当強いウエートを持ってきておることも承知しておりましたから、自由化するについてのいろいろな面を検討しなかったわけではありません。検討をして頭に置いたわけでございます。
  132. 湯山勇

    ○湯山委員 それは一月ですよ。
  133. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一月の場合は輸入量を増加する、これは温州ミカンと取りかえよう、こういう考え方で、日米経済閣僚の話のときにもそういうふうに言っておった。ところが植物防疫の問題ですから、植物防疫の問題と、そういう尾ひれのついてないレモンという問題とをやるということが、なかなかむずかしい。植物防疫の問題を抜きにして、これはこれとして進めています。あまり害がないのだから、君のほうでも輸入しろということは、それはそれとして進めておりますが、レモンの問題につきましては、事務当局にも相当検討させて、事務当局のこれはやったほうがいいというような考えを、私もかねがね聞いておりました。しかしこれはいろいろな政治的な問題もあったらしい。らしいので、事務当局も純理的にはやったほうがいいということだけれども、なかなか苦しんでおったようです。ですから、私もいつかの機会にこれはやらなければならない問題だと思っておったところへ、たまたまああいう話が出ましたから、これはこの機会に賛成してよろしい、こういうことで踏み切ったことでございます。したがって、レモンの場合はそういういきさつでございますが、オレンジとかグレープフルーツの問題は、私は自由化はよろしゅうございますと、そう簡単に言うわけにはまいらない。これにつきましては私といたしましても、自由化なんという場合には相当筋を通して、させないように努力いたしたいと思います。
  134. 湯山勇

    ○湯山委員 なお農林大臣にも結論的にお尋ねしたいことがありますけれども、通産大臣にお尋ねいたします。  通産大臣は、いまレモン自由化の張本人だということです。それで、それはそれとして、通産大臣がそういうことをおっしゃったのは、どういう理由なんでしょうか。興業等のことを通産大臣はお考えになって——いま赤城農林大臣も、それは別荘あらわれた資料は、あらゆる新植あるは成園、未成園、そういうことについて検討はなさっていらっしゃらない、消費者物価にこのことが影響があるということは考えない、それとは別な観点で賛成した、こういうことなんです。通産大臣がこれについて御提案になったのは、一体どういうお立場からでしょうか。それから、もしそれが生産農民に重大な影響を与えるというような場合に、通産大臣は一体それについてどういう責任をお持ちになられるか、この二点をお尋ねいたしたいと思います。
  135. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 レモンの自由化の問題は、御案内のようにもう二年前、私が通産大臣に就任した時分から、やってはどうかという話がしばしば出ておったことは御存じかと存じますが、われわれといたしましてはこれをやるにあたっては、レモンジュース問題が起きたときもございますし、いろいろありましたので、やはり慎重に考えねばならない、こう思っておったところであります。ただしかし今日のレモンの市価の実情を見ますと、われわれの見ておりますところでは、国内のレモンが大体三十円ぐらい、それから国外から来たサンキストが七十円から九十円程度の高値を維持しておる。だんだん高くなってきている。こういうことは、レモンというものは相当高級食料品という見方もありますが、しかしいまでは紅茶等で相当みんな飲んでいる。家庭でも健康のためにレモンをずいぶん食べるというようなことでありますし、あまり高いということは好ましくない。だからこれは自由化をやったほうがよろしい、こういう観点に立ったわけでありますが、その場合に農家に対して影響があったらたいへんではないか、その点を考えたかどうか、こういう御質問かと思うのでありますが、私、農業のことでございますから、これは農林大臣の御意見に従うよりしかたがないとは思いますがしかし私自身も全然知らなかったわけでもないので、いまのレモンが三十円くらいしておりますと、もうすでにりっぱに成熟した木からは反当相当の収入があがっているということなんです。それからこれからはレモンを——非常に日本人は健康問題について注意するとか、食生活が変わってまいりまして、植物性、特にレモンとかオレンジとかいうものを食するようになっておりまして、需要は実は海外からの輸入で毎年どんどんふえるような傾向にあります。私はこれからも需要はふえるのではないかと思っております。しかも反当の収入は、桃とかカキなんかに比べると、倍以上の利益があがっておる。これはまだ木になっていないうちは何も利益はございませんが、そういうような実情であるということであれば、一応やってもいいのではないか。私がなぜこういうことを申し上げるかというと、その場合何か影響があれば、これは考えなければいかぬと思うのですが、そのときたまたまノリの問題やコンニャクの自由化の問題が出ました。しかしノリとコンニャクは御案内のように、日本国内で消費するもののうちで七割も八割もが国内でつくっており、あとは海外から輸入するということになっております。レモンの場合はその逆になっておりまして、海外から輸入するのは八割ぐらい、国内はせいぜい二割ぐらいということになっております。しかしいずれにいたしましても自由化のときに、ノリなどを自由化する場合にも、国内生産者のことを考えなければいかぬのではないか、この対策がないうちは自由化できないということでありました。ノリはことしはかなり不作で、何か天災融資法まで適用したというような経緯にありますけれども、レモンの場合はいまのところはわりあいにもうかっておるというと失礼ですが、利益があがっておるというようなこともございまして、実は農林大臣もそれでいいとおっしゃるし、私も農林大臣の御意見でいいと思います。私としては消費者物価の面から考えてみても、この際レモンだけは自由化していいのではないか。ただしほかのものにつきましては、われわれは農林大臣と同意見でございまして、そう簡単にやるわけにはいかない。日本としては国連の貿易開発会議の問題に関連して、いわゆる一次産品の問題がいま世界的に大きくクローズアップされておるわけであります。そういうときにおいても、日本の農業の問題を特に考えて処理をしなければならないという意見を、農林大臣自体も申し述べられておりますし、私らもそういうことを言っておるわけでございまして、私たちとしてはこれ以上にそういうものについて自由化をやろうという考えはないということでございます。
  136. 湯山勇

    ○湯山委員 農林大臣と若干御答弁の違う点は、通産大臣のほうは、いま家庭でも紅茶その他でレモンを相当消費しておる、だからこれの値段を下げるということは、消費者物価対策としてやはり重要なことだ、意味のあることだというようなことでしたが、通産大臣、失礼ですけれども、いま日本でレモンを一年間に一人当たり平均どのぐらい消費しておるという計算をなさったことがございますか。
  137. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 はなはだ不勉強でございますが、ございません。しかし農家のお方などはまだあまりあれですが、都会においてはレモンはもうほとんどどなたもお使いになるというような状況に、順次なりつつあると思っております。
  138. 湯山勇

    ○湯山委員 私はほかは存じませんけれども、院内の三階に喫茶室がありますね。あそこで一日一個ないし一個半だそうです。それからいま輸入しておる総量を割ってみますと、一人当たり消費は半個に足りないのです。そういう状態です。ことにいま輸入しておる人たちが五〇%ロスがあると言っております。これは問題ですけれども、そんな計算をしたら消費量はうんと少ないのです。だから消費者物価対策には何の意味もない。ことに緊急輸入というのは、大臣いつも言っておられるように、国内はうんと高くて、輸入したものはうんと安い、その国内の高値を調整するためにやるのでありますが、今度のようなものは例外中の例外で、そういうことをなさるというのは、非常にやり方が不明朗だ。抜き打ちです。そこに問題があると思います。それでさっきいろいろ大臣にも申し上げたのですが、不明朗なうわさがずいぶん飛んでいます。独占するのではないか。独占ではなくても、何か二、三社で特定のところと契約してしまうのではないか、あるいはどこかから提携したジュース工場を持ってくるのではないか、こういういろいろなうわさが飛んでおります。しかし通産大臣はそういうことについては、そういうことのないようにするということを育っておられますが、一体そういうことについてこの機会に明朗な——独占すれば何の意味もなくなるわけですが、独占をさせないという確信がおありですか。寡占というようなこともさせないという自信がおありでし上うか。自由化してはそういうことはできないと思いますが、いかがでしょうか。
  139. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 まず最初の御質問でございますが、これを自由化してみんなが食べる量は、非常に少ないのではないかということでございますが、私はその意味ではあまり明らかにいたしておりませんでした。しかしこれを自由化した場合に、その影響がどういうふうにくるかということでございますが、いままでのレモンの問題は、御案内のように大きいところが四社くらいございまして、あとは九十ばかりの小さいところがあって、四社か五社がかなり寡占的なことをやっていたという姿に、いままでの姿はなっております。そういう人たちが今度はレモンが買えなくなるということでございますと、商売ができなくなりますから困るのでありますが、私はそういうことがないように、厳重にこれに対して申し入れをしております。しかしいまあなたのおっしゃったようなうわさもありますので、いまどういうことかといって確認をいたしておる段階でございまして、日ならずして明らかにされると思うのであります。その結果を待ちまして、われわれとしてもまた考えるべきことは考えなければならないと思っておるわけでございます。それならばなぜ初めからそういうことのないようにして、そういう確認をしてからやらないかという御質問があろうかと存じますが、そもそも自由化というのは、もうあなたもおわかりのように、だれもが同じ値段で物が買えるという姿が自由化であって、そういうような寡占とか独占体制をつくるのが目的ではございません。いままでのはむしろ大体そういう形様にあったわけでございますが、それを自由に買えるようにしたいと思って、かげんをいたすわけでございます。それではお前はそういう自信があるかということでございますが、これは事態を明らかにした上でないと、はっきりとお答えを申し上げるわけにはいきませんが、極力そういうことがないように努力はいたしたいと思っております。
  140. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの自由化対策ですけれども、バナナの場合は関税を据え置きにしたが、今回のレモンの場合はそういうことも何もされてない。そこでこういううわさもあるのです。アメリカとの場合はもうしかたがない。ところが台湾とか中南米の場合は、いまのように関税を七〇%据え置くというような一策が立てられておる。これは相手を見て日本はやっておるのではないか、国際的な影響もはなはだおもしろくないのではないか、そういうような心配もあるのですが、これはどうなんでしょうか。もう一度申し上げますと、バナナの場合は自由化にあたって特に七〇%という関税をきめたわけであります。それから今度五〇になるのも七〇に据え置いて、国内の果樹生産者を保護するという処置をおとりになったわけです。レモンの場合の一〇%は、自由化を前提としてのものではなかったはずです。にもかかわらず、それをそのままにして自由化したというのは、相手がアメリカだからそういうことをしたので、これが台湾だとか中南米なら相当上げるのではないか。つまりアメリカに対しては非常に弱いので、そこでさっきのようにオレンジとか、グレープフルーツ、ジュース、これらも言われれば結局やってしまうのではないか、こういう心配もあるのですが、これはいかがでしょうか。
  141. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは色めがねをかけた見方だと思います。しかしそういうことがあっては困ります。いまのバナナの場合は、何も東南アジアだからというわけではございませんで、七〇%ですかの関税を五〇%にして、だんだん下げていくということで政府提案をいたしたわけでございます。そうすると私は、バナナが自由化されたからリンゴの価格が下がったという、直接の因果関係はないと思います。間接にはあると思います。そういう関係でリンゴの生産業者のほうから、バナナの関税をだんだん低くされてはかなわぬ、それでなくても輸入がふえてかなわぬ、こういう関係がありますから、東南アジアとの関係ではなく、国内対策として、もとの七〇%に据え置くようにいたしたのであります。これは東南アジアとかアメリカとの関係でなくて、国内の果樹の増産対策といいますか、維持対策といいますか、そういう面から出ておるのでありますから、決してアメリカとか東南アジアとかの観点から、バナナの関税の問題を取り上げているわけではないのであります。  またいまのレモンの問題ですが、これは国内的な競争力というのはあまりないと思います。いまのバナナとリンゴのような、それほどの国内的な競争力というものはあまりない。国内のレモンはレモンとして、栽培がある程度自由化したために値段が下がるというようなことがあってもやっていける、こういう立場だと思います。いまのように温州ミカンとの比較でいいますると、もし半分になれば、温州ミカンのほうが採算がとれるということでございますが、これもいまからの見通しでございますから、半分になるかどうかということにつきましては疑問がありましょうけれども、競争力からいいまするならば、バナナとほかの果物との競争力で比較いたしまするならば、オレンジというようなものの競争力は非常に弱い、こういう関係でございます。でございますので、これが生産のほうに非常な影響を及ぼすということでありますならば、また従来三年間試験調査をした結果に基づきまして、これは適当な対策を講じなければならぬ、こう考えております。これは据え置いて検討いたしたいと思います。
  142. 湯山勇

    ○湯山委員 これはやはり大臣のお考え、若干その点では不十分だと思います。というのは、バナナと国内の果物との関係は相当大きいのです。これは台湾でコレラがありまして、台湾バナナの輸入がストップしたことがありました。そのときに国内の果物がずいぶん値上がりして、初めてみんなこれだけの影響があるのかと見直したことがあるのです。決して大臣の言われるように、そう影響のあるものではないというものではありません。またレモンの場合に——バナナの場合はこっちで競合するバナナはないのです。しかしレモンの場合は、入ってくるレモンと同じレモンがこちらにあるのです。そういう意味での競合をもっと——それは数は少ないにしても、耕作者にとっては大きな影響があります。この辺の検討もさらにやっていただきたい。  時間がありませんから、私は通産大臣にさらにお尋ねいたしたいのですが、通産大臣は十四日にこういうことを述べておられます。それはレモン自由化が国産等に悪影響があるならば、次回経済閣僚懇談会で割り当て物資に戻してもいい、ただ総務会に対して、これは自民党に対してですが、自由化撤廃を正式に採択してもらいたい、こういう御発言をなさったということです。それはそれとして、いまのレモンの自由化については暗い影がずいぶんうわさされておることは、これは御存じのとおり、それについてはそういうことのないようになさる、それはそれでけっこうです。私どもの立場から言えば、もし通産大臣農林大臣が予想しておったよりもはるかに大きい生産者に対する影響、これはレモンの生産者だけではなくて、心理的な影響を全果樹生産者に及ぼしておることは、大臣お見えになる前に申し上げましたが、とにかく相当大きな影響を与えております。そこで通産大臣なり農林大臣なりがお考えになっておるよりも大きい悪い影響が出てきた場合には、この自由化を取りやめなさる御決意がおありになるかどうか。これはかって三十一年にはそういう悪影響が出て、レモン四キロが三円ぐらいに下がりました。そういうときに、ついに三十三年には自由化をやめた例があります。それから砂糖も、これは大臣関係なかったかと思いますけれども、各閣僚の間で自由化を一応何人かで決定して、新聞にも発表になったものを取りやめた例もあります。それからずっと以前にはコカコーラですか、これを一部自由化ではありませんけれども、輸入を認めるという決定をしておったのを取りやめた例もあります。これは当然生産者を守っていく、また農林大臣のお立場からいえば、何といっても果樹、畜産を伸ばしていく、そういうことに対して悪い影響が出てくるというような場合には、敢然としてこれはお取りやめになる、こういう御決意がおありっにてなでしかるべきだと思うのでございます。そういう影響があった場合、お取りやめになる御決意がおありになるかどうか。両大臣にその御決意をはっきりお聞かせ願って、それで満足いけば質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私はずいぶん検討の結果、自由化に賛成したのでございますから、自由化を取り消すという態度はとりたくないと思います。ただ、いまからの推移から見まして、生産者にどんな影響があるかということにつきましては、われわれのいままでの検討におきましては、私はそう大きな影響というものは考えておりません。しかし推移によりましては、どういうふうになるか、まだ慎重に検討してみなくてはならぬと思います。でございますから、方針といたしまして、すべての方針で、さいぜん申し上げましたように、自由化というものを全然やらないというのは、孤立化する日本の政策ならば別でございますが、世界経済の中で自由化するということを進めておる以上は、私は自由化というものはしなくちゃならぬ。自由化をする場合に、やはり国内の関税対策とか、国内の保護対策、これを事前にするか、同時にするか、あるいは事後にするか、こういうものと相まってやっていくということは、これは私どもの方針でございますから、そういう対策につきましては考えますけれども、いまの自由化したものをいろいろな事情があるから、ここで取り消すというようなことについては、私はちょっと考えられない問題でございます。そういうふうに御答弁申し上げます。
  144. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 方針といたしましては、農林大臣と同じでございます。御案内のようにこの問題は、経済閣僚懇談会において決定をいたしております。したがいまして事態がどういうことが起きるかということで、こういうことが起きたときにもう一度そこへかけてきめる。これは一人でやったわけではないのでございます。私としましては、そのとき新しい事態が出た場合に、そのときに考えよう、こういうことにいたしたいと思います。
  145. 湯山勇

    ○湯山委員 時間もあれでしょうけれども、私は、以前にそういうことを取り消した例もあるのですから、予期せざる影響がある、それからどうしてもやめなければならぬという事態があったときには——レモンの自由化というのは、率からいえばわずかなものです。それをするしないで、日本の国内の開放体制がどうこうされるという性格のものではありません。だからそのときにはやはり生産者の立場に立って、国内の農業の立場に立って——それからいまおっしゃった中ではやはり消費者の立場は重要です。そういう立場に立って、外ばかり見るのではなくて、そういう立場から取りやめる、再検討していまおっしゃったように対策を十分やって、それでもいかぬ場合には取りやめる場合もある、これは常道ではないでしょうか。しかしそうならないように努力するというなら、それはそれでけっこうです。しかしとことんの場合の腹はそこでなければ、さっきおっしゃったように、つい軽率にやって、グレープフルーツもやった、オレンジもやった、やった以上はあとへ引けないのだ、こういうことになることを農民心理としては心配しておる。この一面もお考えいただかなければならない、こういうことですから、もう一度御答弁願います。
  146. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お気持ちはよくわかります。ですから私は先ほど申し上げましたように、いろいろな対策とともにこの自由化をして——あるいは対策があとになることもあります、こういう方法をとっていきたいと思います。またどうしてもこうしてもというような場合には、何も意地を張る必要はございません。しかしいま通産大臣が言われましたように、これはみんでいろいろな検討をした結果きめたことでございますから、軽率に一人だけで、どうでもしようがないときにはこれをどうするというようなことは申し上げかねますけれども、しかしにっちもさっちもいかないときまでがんばるという気持ちはございません。
  147. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいた農林大臣が申し上げましたとおりでございます。
  148. 高見三郎

    高見委員長 次会は明二十一日午前十時から開会することといたします。なお明日は午後一時から農林水産委員会、商工委員会連合審査会を開会する予定であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会