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1964-05-14 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十四日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 長谷川四郎君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君    理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       大坪 保雄君    加藤 精三君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    舘林三喜男君       野原 正勝君    藤田 義光君       細田 吉藏君    亘  四郎君       石田 宥全君    角屋堅次郎君       久保田 豊君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    湯山  勇君       稲富 稜人君    小平  忠君       中村 時雄君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         食糧庁長官   齋藤  誠君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 五月十四日  委員寺島隆太郎君、栗林三郎君、野口忠夫君及  び中村時雄辞任につき、その補欠として坂村  吉正君、石田宥全君久保田豊君及び小平忠君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田宥全君及び久保田豊辞任につき、そ  の補欠として栗林三郎君及び野口忠夫君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  肥料価格安定等臨時措置法案内閣提出第一五  六号)  農林水産業の振興に関する件(米穀の需給関係  等)      ――――◇―――――
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  肥料価格安定等臨時措置法案を議題として、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、きょうは差しかえではありますが、社会党の農林委員として、主として農業立場から、本法案に対する質疑農林大臣に向かっていたすつもりでありますから、ひとつそのつもりでお答えをいただきたいと思います。  産業政策ないしはその他の点からの本法案に対しまする質問は、いずれ合同審査があろうと思いますから、その機会に詳しく申し上げたいと思いますので、この点もお含みおきをいただきたいと思います。  そこで、きょうは主として六つの点について、特に農林大臣としての御見解を承りたいのでありますが、時間の関係で、この六つ全体に触れられるかどうかわかりませんが、おもな点だけ御質問をいたします。  まず第一に、農林大臣にお伺いいたしたいのは、政府提案理由の説明によりますと、大体肥料需要が非常に変わってきた。つまり、肥料、特にア系肥料生産能力が非常にふえて、そして内需をまかなって、しかも四割以上は輸出をしなければならないようになった。さらに、価格合理化によって非常に下がってきた。こういうことで、二十九年に現行肥料二法をつくった当時とは事情が全く変わってきた。つまり、もう二法のような厳格な国の需給計画をつくり、さらにそれに基づいて生産指示とかあるいは調整保留指示ということをして、内需優先をはかる必要はなくなった。また価格についても、国がマル公価格をきめてその上昇を押える必要がなくなった。だから、今度はこの二法の期限が切れるものを機会に、新法によって肥料政策の転換をするのだ、こういうお話であります。しかし、私から言わせると、なるほど肥料事情は非常に大きく変わってきている。しかし、日本農業という立場、さらに池田さん流のことばをもって言えば、日本農業をこれからいわゆる革命的に前進をさせるという立場からしますると、ア系肥料、特に硫安等農業に持っておる重要性というものは、一つも少なくなっておらぬ。しかも、この肥料需要が変わってきたということが、むしろ農業にマイナスを大きく来たすような条件のほうがかえって大きくなっておると思われるのであります。にもかかわらず、肥料二法を今回廃止して、それとは全く違った今回の新法のような、いわゆる新しい肥料政策をとろうとする、こういうことに対する農林大臣基本認識はどこにあるかという点をまず第一にお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 内需優先され、また価格が低廉で、量が十分充足されるということでありまするならば、原則として、その目的が達せられるならば、強い統制を置かなくてもいいのではないか、こういうふうな観点に立っておるわけであります。お話のように、世界的に見れば、世界的にはアンモニア系統硫安系統肥料が不足であります。しかし、日本におきましては、輸出のほうをチェックして、そして現在の二法の目的が達せられるようであるならば、強い統制が必要でない、こういう観点からこの法案を提出いたしました。こういう立場でございます。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 少なくとも農業観点から見ますると、私は、その認識は逆じゃないか、さか立ちしているのじゃないか、こう思うのです。第一に、日本農業は、御承知のとおり、非常な零細な農業であります。したがって、当面問題になっている一番基本の問題は、この零細な農業の中で、土地の生産力並びに労働の生産性を統一的に上げていくことが一番基本の問題であります。この観点からすると、肥料というもの、特にア系肥料の持っておりまする、農業生産力向上に対する重要性というものは、一つも少なくなっておらない。むしろ、これからは、政府の言うような農業高度化といいますか、あるいは米も、あるいは果樹、高級野菜、あるいは自給飼料の増産、あるいは林産の近代化、こういうようなことを考えてみます場合には、いわゆる肥料生産力拡充に持っております技術的重要性というものは、一つも減っておらぬ。むしろふえておる。こういうことの基本的な認識を私は十分持っておらなければならぬと思うのであります。  さらに第二の問題としては、農業経営費の中におけるいわゆる肥料費比率というもの、特に肥料費の中におきまするア系肥料、特に硫安等比率は、確かに下がっております。しかし、それは反面においては何かというと、農機具とか飼料とか農薬というものが、非常な比率でもって増していったということであります。しかし、その中で技術的に一番重要性を持っておるものは、何といっても肥料でありまして、そういう意味においては、肥料はなるほどそうたいして金額的にはふえておりませんし、比率も下がっておるけれども、農業経営費の中における肥料比率というものは、経済的にも経営的にも本質的に下がっておるものじゃない、こういうふうに思うわけであります。  さらにもう一つの点は、いま現実に問題になっておるのは、農家所得向上農業所得向上という面であります。こういう面に持っております肥料重要性というものは、一つも下がっておらぬ。むしろ、内需を拡充して、確実に農民手元に届ける、肥料価格を引き続いて下げること、これが今日の農業所得を上げる道であります。御承知のとおり、いま農業は、人の問題その他でもって一つ危機に到達しております。そういう危機を前向きに打開していく、技術的にも経済的にも経営的にも基本的な資材だと思うわけであります。一方、なるほど肥料事情は変わった、輸出依存度が大きくなったということは、何かといいますと、あとで詳しく申し上げますが、これは要するに、輸出赤字国内農家に転嫁する危険性が大きくなったということであります。輸出に対する依存度が非常によけいになったということは、農家にとって決してのんべんだらりと安心のできものではないと思う。さらに今度は、ア系肥料工業内容が非常に転換してきた。つまり、ガス源ということが中心になった。そのガス源にいたしましても、あとで私は詳しくこの点について触れますが、たとえばこれからは合成硫安ということよりは、あるいは回収硫安なり粗製硫安なり、こういうふうなものの比重が増してきておること、並びに同じア系肥料でありながら、合成硫安よりやや高度の尿素であるとか、あるいは高度化成であるとか、こういうものの比重が増してきておるという点。そしてもう一つは、ア系肥料工業の中でいわゆる非農業部門、たとえばラクタムであるとか、その他の工業用原料生産といいますか、操業度が非常に高くなっておることは御承知のとおり。しかし、これらの要素は、悪くすれば、そのほうにおきますところの、いわゆる工業が当然負担をすべきところの負担というものを、農業肥料にぶっかけてくる危険性が現に強くなっておる。しかも、それは場合によりましては、非肥料部門比重が非常に高くなったということは、これが肥料全体の需給にも大きく作用する要素になってきつつあることは、御承知のとおり。こういう点から見ると、なるほど肥料事情は、その規模におきましても、その環境においても、あるいはその内容においても、大きく変わったことは事実。しかしながら、これを農業観点からとらえれば、特に農業政府のいま意図しておるような方向へ前向きにやっていくという場合においては、ここで今度の新法のように、肥料政策の全般的な緩和、もっとはっきり言うならば、肥料をやっておる独占資本がもうかるような方向、自由にやれる方向へ切りかえるということは、少なくとも農業観点からいえば間違いじゃないか、こう思うのですが、これは農林大臣として、あなたは、当面日本農業をどうするか、特に前向きに、いわゆる池田さん流に言えば、革命的にこれを改革していこう、改良していこうという立場に立ってみると、肥料事情の変更ということに対する農林省なりなんなりの立場が、農民なり農業立場を離れて、肥料独占資本に頭を下げたかっこうになっておるんじゃないか。そういう条件の中で、いわゆる池田さんの言う農業の革命的な前進であるとか、あるいは改良であるとかということは、むしろそういうことが実現するどころか、阻害される要素に、今度の新法なり、その新法の中に盛られました新肥料政策というものは、そういう結果をもたらすように私は思うのですが、この点について、農林大臣としてのあなたの御見解はどうですか。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 肥料、ことに硫安系統肥料が、日本農業にとって、また世界の農業にもそうでございますが、非常に重要性を持っておるということに対しての認識といいますか、それは、別に私は、その認識を軽く見ておるというようなことはございません。重要性につきましては、お話のとおりに考えております。ただ、その重要性は重要でありますが、農民にとって、これは全部の農民が使用する資材でございますが、それが需要を充足し、またその価格の面において低廉な価格で入手するということに、目的といいますか、最終的なめどはあろうと思います。そういうめど確保されておるといたしまするならば、その統制の方法が変わってきたといたしましても、あえて差しつかえないのじゃないか。いまの二法を相当緩和した統制の形でやっていくということに、別に私は、異議を持たぬといいますか、目的を達するならばそれでけっこうじゃないか、こういう立場からでございまして、決して、この法律を提案いたしたから、肥料重要性、いまそれぞれお述べになったようなことを考えないでやっているということではございませんし、また独占資本に奉仕するということではなく、やはり消費者需要者立場も強化いたしまして、話し合った価格で配給といいますか、供給する、また、それに対して、適当でないということでありまするならば、是正の命令も出すようにいたしておることは、御承知のとおりでございます。あるいはまた、調停というような制度も設けております。でございますから、目的を達するならば、私は、いまのままでなくてはならぬというわけじゃなくて、前進していくということも適当な方途じゃないか、こう考えております。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは見解相違といえば見解相違ですから、これらについて、これから一々具体的にお尋ねしてまいります。  今度の新法で、農業側にとって一番心配になりますことの一つは――一番ではありませんけれども、心配になりますことの一つは、従来のいわゆる内需確保優先ですね、この原則がくずれやせぬかということであります。二法におきましては、御承知のとおり、国が責任を持っていわゆる需給計画を立てる。それに基づいて、いわゆる生産指示調整保管指示をする。しかも、輸出につきましては、これまた輸出計画なり、それに基づいて、しかも一つ一つ、一件一件について、硫安については政府がこれを承認を与えるということになり、また、硫安以外のア系肥料についても、御承知のとおり、輸出貿易管理令に基づいてこれまた承認を与えて、つまり、内外ともにいわゆる需給調整というものを、内需優先ということをやっておったわけなんです。今度の法案によりますと、なるほど輸出に対しまする関係は従来とほとんど変わっておらないのであります。しかし、内需に対しましては、これはいわば政府責任を解除したと言って差しつかえないのであります。  そこで、私は具体的にお伺いをいたしますが、新法では、政府需給計画を立てることをやめて、需給見通しだけ立てる、しかも、これは政令に譲っております。一応この需給見通しについては、硫安だけでなくて、ア系肥料全体について立てるということになっております。しかし、この国内のやつを一応数字的に立てたって、それでもって全国的に、農民手元から見た場合に、いわゆる需給の安定というものははかられるものではない。ここで私はお伺いいたしますが、今後のいわゆる政府のこの問題に対する介入権は、二条その他では、大体において価格だけの問題です。そうしますと、国内における需給計画というものは、生産者団体販売業者団体契約できめるのですか、どうなりますか。その場合において、この実施については、これは政府はどういう責任を負うのか。同時に、これがうまくいかなかった場合においては――これは両者間の取りきめとすれば、契約になる。契約違反ができた場合においては、これは具体的にどうなる。契約違反というのはいろいろあり得ると思います。いろいろのケースがある。この場合における政府責任はどうなるのか。結局、今度の新法によりますと――従来のは、輸出内需もともに政府責任を持ってこれを統括しておる。今度は、輸出外ワクだけは従来どおりしておりますけれども、内ワクははずしてしまった。それでもって、国内の全国的な需給のいわゆる計画的な運行といいますか、これが支障なくいくとあなたはお考えになっておるかどうか、この点をまず第一にお伺いをいたします。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話のように、需給計画というものは、需給見通しというふうに変わっておりますが、内容においては、需給計画とあえて変わっておらぬものでございます。ただ、いまもお話ありましたように、そういう需給見通しのもとに輸出承認をいたすことにいたしますから、その面から、内需確保される、こういうことになろうかと思います。いまでありますと、お話のように、内需輸出と両面でありますが、今度の案によりますれば、輸出承認することによって、その中において、内需というものの確保、こういうことが需給見通しのもとからでき得る、こういうふうに考えておりますので、内需を粗末にするという考えはございません。また、現在、出荷命令とかあるいは調整保管、こういう規定もありますけれども、出荷指示をいたしたことは現行法におきましてもない。これは需要者団体において相当調整もいたしております。でございますから、いまの契約両者の話におきまして、時期的あるいは地域的の調整というのは十分できる、こういうふうに考えております。適当な場合におきましては、政府としてもこれに対しまして相当強い発言力を持って指導していかなくちゃならぬと思いますが、私は、両者契約において十分目的が達する、こういうふうに見ております。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間があればこの点もう少し深くこまかく突っ込みたいのですが、もう一点だけお伺いしておきます。  そうしますと、内需については、政府生産者団体といわゆる販売業者団体にまかしたというかっこうですね。外ワクだけはやっている。なるほど必要な在庫なり何なりは国内にあるでしょう。しかし、これを地域的にまんべんなく、しかも時期的に――非常に時期的なものを持っておりますから、どうそれをやるかということは、非常にむずかしい問題です。それに対しては政府は何も責任を負わぬですか。行政指導でやるだけだ、こういうのですか。それがうまくいかなかった場合には、これはだれが責任を負うか。問題が出てくるのは、第一に、その場合に、うまくいかなかったほうの原因が生産者団体のほうにあるとすれば、もし取りきめをするとするならば、これは消費者販売者団体のほうからいえば契約違反ですから、はっきりこれは損害の賠償なり何なり請求をしなければならぬ、こういうことになろうと思います。こういう点については、そういう民法上のあれにおいてはどこの責任ですか。これは農民のほうは農協へ頼んでおいた。ところが、うまく荷さばきがいかなかったために、時期に来なかった。それでもって引っ込んでおれといわれたって、引っ込めませんよ。そういう問題。いままでは少なくとも政府法律的にもはっきり責任を持っておった。ところが、これを今度ははずしてしまった。両方の契約にまかした。これでうまくいくと思いますか。それで特にもしうまくいかなかった場合、責任なり補償の問題が出た場合、これはまああとでこの点も触れますけれども、たとえば全購連の場合には、これはある程度しりぬぐいができましょう。硫安協会はできますか。あとでこれはまた問題になりますが、今度のいわゆる自主的取りきめという中に、商人団体肥料商団体なり何なりは、どういうふうにかみ合っていくかということは問題です。しかし、おそらく実際には肥料商といえどもこの肥料を扱うことに当然なろう。そういう場合のいろいろアンバランスが出て、農民に迷惑をかけたというような場合――またこの法律の中には、特に差別的な待遇をするなとか、あるいは取りきめに対するいわゆる参加ないしは脱退の自由を不当に拘束するなとかいうのがあります。これはどういう意味かわかりません。これはあとでお聞きしますけれども、そういう系統の連関から見ましても、場合によっては、このいわゆる取りきめに参加をしない団体や個人が出てくるかもしらぬ。そういういろいろのケース考えられるわけですが、そういう場合の責任なり措置なりに対しては、どういうふうに処理されるつもりかということが一点。特に今度は内需については、比産者団体消費者団体にすべての責任をぶっかけるのかどうか。いわゆる自主的取りきめの対象として、この需給調整という問題が現実にあるのかどうか。これに対して政府は、この法文で見ると何ら不介入、したがって無責任責任もとらない、介入もしないという態度をとっておるように思いますが、それでいいのかどうか。それで日本肥料需給が、現実農業立場から見てうまくいくのかどうかということが非常に大きな心配になるわけですが、この点については、ひとつ大臣の大局のお考えなり何なり、あるいはそれで足りなければ、それぞれの担当局長のこれらに対するお考えをこの際お伺いしておきたいと思います。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 冒頭にお話もございまして、私から申し上げましたように、肥料生産状況等が、現在の二法制定当時と非常に変わって、日本としては幸いに供給力相当ふえております。そういう中で、需要者団体といいますか、代表する者、あるいは肥料商も入っております、こういうものと生産者との間において契約された問題は、これは正しく履行されなくてはならぬと思いまするし、私は履行されると存じます。ただし、いまのお話のように、それが履行されない場合の責任はどうかということでございますけれども、それにつきましては、政府といたしましても、この法律をつくっております以上、こういう問題につきましては、最終的には政府が保証するというようなかっこうといいますか、形になっておると思います。法律をつくった者の責任者としての立場があろうと思います。法律上にそういう法文がなくても、行政的に政府がこれに対して相当強く是正したり、指導をしたりしなくちゃならぬ、こう考えております。  なお、こまかいといいますか、一々の御質問がありましたことにつきましては、政府委員のほうから補足して答弁をさせます。
  11. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 補足して申し上げます。  需給調整のやり方でありますが、いま大臣からお話がありましたように、現在の国内供給力需要を四割ばかり上回っておるわけであります。その四割を輸出しておるということでございますから、必要以上に内需を食い込んだ輸出が出ないようにチェックしてまいり、そこで全体として内需確保するわけでございますが、毎月メーカー在庫あるいは需要者団体在庫をとっておりますので、その在庫状況によって、必要によっては、よけい在庫を持たせるための輸出のチェックもやる場合があると思います。そういうふうにいたしまして、時期的にも地域的にも、国内全体として豊富に在庫を持っており、生産が順調にいっておりますならば、大体調整目的は達し得ると思うのであります。  個々売買契約につきましては、いま硫安協会はどうだというお話でございましたけれども、需要者団体個々メーカーとの間の私法上の契約でございますから、直接にはそれぞれの当事者の問題でございますが、こういった全体としての調整は、かりに地域的に問題が出た、あるいは時期的にちょっと問題があるというような場合には、もちろん政府としては在庫なりそういうものをつかんでおりますので、それによって指導を加え、調整をいたしたいと思います。今日までのところでは、二法のもとにおきまして、生産指示とか出荷指示は、いまより供給力の足りない時代でございますが、その当時においても発動したことはございません。調整保管につきましても、三十二年ころまで政府指示したことはございますが、その後六、七年というものは実施いたしておりません。全購連が自主的にやっておるわけでございます。全購連はそれだけの能力と任務を持っておるわけでございますから、それでほぼ十分に達成できると考えておるのでございます。
  12. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この問題はもう少し突っ込みたいのですが、それじゃもう一点だけお伺いいたします。  そうすると、今度のあれでは、国内需給調整については、政府行政責任は負うでしょうけれども、法律上、経済上の責任は負わぬ、これが一点ですね。そして契約は、いわゆる業者、つまり販売業者代表個々メーカーですか。そうすると、硫安協会という団体共同契約ではない、こういうことになりますね。したがって、そこから出てきたいろいろのトラブルについての責任は、もしメーカー側にあるとすれば、メーカー側が全購連なり何なりに対して責任を負うということになりますか。-ところが、それで片のつかない問題が多々出てくると思います。かりに九州で、ある月に、ある工場が、二万トンの硫安の受け渡しの契約をしておった。ところが、その会社は、御承知のとおり総合多角化しております。たとえばアンモニアのほうのラクタムなり、あるいはニトロ何といいますか、あれのほうが非常に値がよくなったので、そっちのほうへアンモニアを回してしまって、こっちのほうが切れたということもありましょう。同時に、硫安よりは尿素のほうが非常にいいから、そっちへ回して、硫安は出せないという場合もありましょう。その場合には、おそらく行政措置としては、ほかの地域からこれを回すということになりましょう。それで一応やるということになる。そうすれば、それに対する輸送費なりあるいはその他の諸掛かりというものは、非常にふえてくる。その場合の輸送費なりその他の諸掛かりというものの負担なり処理はどこでやるのですか。そういうことに対する取りきめということがなければ、いまのお話のように、大体契約は、全購連なり何なりと各個々の会社とがこの需給についてのあれをやるというだけでは、これは相手は要するにいまの企業体ですから、もうかるほうをやるのは当然です。行政指導でやっても、その行政指導どおりいくかどうかということは、この法律では少なくとも責任がありません。前のように生産命令なりあるいは調整命令なりを伴った需給計画そのものがなければ、単なる需給見通しというだけでは、私はうまくいかないと思う。この点については具体的にどうなるのですか、はっきりお答えいただきたい。
  13. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 現行の二法のもとにおきましても、政府内需確保に対する責任は、もちろん行政上の問題でございます。少し理屈になって恐縮でございますが、私法上の責任ではないわけでございます。それで、いまのような事態は、現行二法のもとでも起きなかったのでございますが、かりにそういうことが起きるという前提で考えてみましても、大体需要者団体個々メーカーとの契約は、前もって相当期間にわたる契約になっております。その間に、硫安生産計画を変えて尿素に転換したり、あるいはカプロラクタムに変えたりするというような事態が起きましたならば、もちろん、それは事前に政府はわかりますから、必要な調整ができるわけでございますが、かりにそういう事態が起きまして、運賃や何かの関係ができました場合にも、それは全購連があらかじめメーカーとの契約をしておったことでございますので、メーカーのほうとしては、その契約を履行する民事上の責任と義務を持っておるわけでございますから、当然メーカー側負担となる性質のものでございます。
  14. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると、その場合のあれは個々メーカーですね。いわゆる硫安協会その他ではないというわけですね。大体はっきりいたしました。なお、この問題についてはいろいろありますけれども、ほかの問題のほうが大事ですから、次に移ります。  大臣にお伺いいたしたいと思いますが、政府なり農民側に立たれて、今度二法を廃止して、新法を実施した場合には、少なくとも国内肥料価格は上がらない、あるいは今後の合理化の進展によって下がるというくらいの見通しはお持ちだろうと思う。しかし、私どもがいろいろ検討してみますと、どうも下がるという可能性はない。むしろ、非常に上がってくる危険性のほうが非常に多い。この点について、大臣は、どういうふうにこの新法下における国内肥料価格が――これは一般物価が上がるから、それに応じて上がるなら差しつかえありません。これはしようがないでしょう。しかしながら、そうではなくして、一般物価の上昇とは違って、肥料新法の実施によって私どもは非常に肥料が上がってくるというふうに見ておりますが、大臣はどうこの点を見ておられますか。
  15. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 肥料価格が上がるということならば、私はこういう法律は出さないつもりです。出した以上は、私は肥料価格を上げない。政府の是正命令がありますから、それによって肥料価格を上げない、なお合理化を進めて、むしろ下げていく、こういうことにいたしたいと思います。でございますから、話し合いの上において上げるようなことになりますならば、私は、調整におきましても上げないようにするし、またもしそういうふうにきまった場合には、是正命令で上げない、こういう方針でございます。せっかく法律を出す以上はそういう方針であります。
  16. 久保田豊

    久保田(豊)委員 非常にりっぱな心がまえでして、私どももぜひそうあってほしいと思う。しかし、これは大臣一人の心がまえや気持らじゃそのとおりなるものじゃありません。今度の肥料価格決定の仕組みというものが、いままでと全く変わってきた。この仕組みというものはある程度客観的なものです。この客観的なものの中を動くいろいろな経済的諸要因によって、私どもはどうしても上がると見ざるを得ないと思う。  そこで、私は具体的にお伺いいたしたいと思う。いままでの二法のもとでは、御承知のとおり、少なくともバルクライン方式によって、生産費方式というものをちゃんと法律できめております。そしてさらに、政令の付録でバルクライン方式というものをはっきりきめておる。つまり、一番生産コストの安いものから国内需要を満たすものをとって、その加重平均をとってこれを価格にする、いわゆる最高価格、それ以上は認めない、そうしてそれ以上のものを売れば罰則の適用がある。こういう強いマル公方式、しかも数ある肥料工場のうちの最低生産費を基準にいたしましてマル公方式をとって、肥料価格が上がることも押えてきた。それに合理化効果がだんだん入りまして、御承知のとおり、十年間に百三十九円幾らですか、これだけ下がった、こういうことになっておるのであります。しかし、今度はこれが新法では生産者と販売者の共同による自主的取りきめという方式になっている。この自主的取りきめの基準というものは、法律には一つも書いてありません。きめてありません。生産費を基準にするのか、あるいは何を基準にするのか、全然きめてないじゃないですか。普通いわゆる経済的な常識で言えば、今後取りきめについてのメーカー側の持っている基準はどういうものかということになれば、これは一番悪い場合は、いわゆる大きなカルテルができたわけですから、このカルテルの最高コストというものをとる公算があることは当然です。そしてこれは最悪の場合ですが、力関係で、なかなか政府もそうさせないでしょう。しかしながら、まずまずよくいって、二十一工場あるうちの全工場がもし生産費主義をとるとしても、全生産費の加重平均をとるよりほかにはなかろうと思う。これが私は最低の業者側の出す基準ということになろうと思います。これは経済の常識になります。こういうことになってくればどうなるかといいますと、この自主的取りきめにあたって、業者団体が出してくる基準なり最高の生産費ということになれば、三十八年のやつはありませんが、三十七年の統計で見ましても、最高のものは九百三十五円八十四銭、これは一番能率の悪いところ、最低のものはどうかというと、これは七百三円九十二銭、これだけの差が出てくる。いわゆるバルクライン方式によって、一番能率のいいのを下から積んでやったのは御承知のとおり、昨年は七百四十三円九銭、ことしはこれが少し動いている。ところが、全加重平均は七百七十八円六十二銭なんです。こういうように変わってくる。この点について、これは両者の自主的取りきめということになれば、おそらく私は、力関係で、よくいって全工場の加重平均生産費というものが基準になって、これに何かが加わってきまるということになると思う。政府は、さっきお話しのように、これが不適当な場合には、いろいろな形において介入をするということになっている。介入の基準は何かというと、この介入の基準も法律には何ら明定してありません。単なる行政命令一本でいけるものかどうか。こういう点を考えてみると、少なくともこれからの全体の取引価格は、全体の工場の加重平均の生産コスト、これに平均利潤であるとかその他いろいろな適当利潤というものをプラスしたものになる公算が非常に多いと私は思いますが、そうなってくると、これは年々の合理化のメリットをどういうように織り込むかということはほかの問題であります。少なくともこういうことになると、肥料というものの国内価格は、現在よりは相当上がってくるというように断定せざるを得ないのですが、この点についての大臣のお考えはどうですか。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かにいまの価格決定方式でありますところのバルクライン方式はとっておりません。それはたてまえといたしまして、肥料製造業者需要者団体との話し合いできめるということになっていますから、したがいまして、どういう方式できめろということを指示することは、たてまえ上まずいので、その方式は指示しておりません。しかし、御承知のように、政府生産業者に対していろいろな調査権を持っておりますから、資料は十分備えておるわけであります。ただ、需要者団体等におきましてもそういう資料がほしいということでございますけれども、一般企業の機密にわたるものはちょっと出しかねますが、政府といたしましては、調査権に基づいてその資料を持っておりますから、そういう資料に基づきまして、先ほど申し上げましたように、価格の決定が妥当を欠くという場合には、是正あるいはその他の改善をしていくということによって、価格の上昇を押える、こういう態度で進みたいと思っております。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それじゃもう一度突っ込んでお聞きしますが、政府は従来どうりバルクライン方式による生産費を基準にしてやるというのですか、それともいわゆる全工場の加重平均コストを基準にとるというのですか、どっちですか、はっきりお伺いします。
  19. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろな基準のとり方があろうと思いますが、結論としては、上げないというところで押える、こう思っております。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)委員 結論としては上げぬというふうな、そんな無責任な答弁はありませんよ。はっきりした基準がないじゃないですか。ですから、政府は行政方針として、法律では書かなかったけれども、今後この法律の運用については、従来どおりバルクラインの生産費基準を土台にして、バルクライン方式による平均加重コストをとっていくのか、あるいは全体の工場についてのあれをとっていくのか、少なくとも合理的な基準としてはこの二つしかないと思う。これは御承知のように、ここが一番農民側と生産者側との争点です。全体の加重平均ということになれば、ずっとぼけてしまう。そして業者側のほうでは、バルクライン方式を守っておられたのでは、いわゆる合理化メリットをみんな持っていかれてしまうから、うまみがないといって反対している。しかし、これはあとで話しますが、うそです。決して合理化メリットがなかったわけではない。私どもははっきりわかっている。少なくとも硫安については、この点のどっちをとられるのか。いろいろ基準のとり方はありますが、結論としては上げませんじゃ答弁にはなりません。もう一度はっきり答弁をしていただきたい。
  21. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 バルクラインというものも、一つの大きなものさしとして、上げないということはその結果でございます。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これはバルクラインも一つのものさしだ、全加重平均も一つのものさしだ、ほかのものもものさしだ、ものさしを幾つか使って、ちゃんと正確にものが切れるわけはありません。ものさしは一つであってこそ、初めて正確なものが出てくるのであって、幾つかものさしがあって、違ったものさしで、あっちを上げたりこっちを上げたりしても、家もできませんし、着物もできませんよ。ですから、どこのものさしをお使いになるかということを、私はしつこいようですが、もう一度はっきりお答えをいただきたいと思います。あるいは大臣がお答えしにくければ、局長でもけっこうです。
  23. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 先ほど大臣からお話し申し上げましたように、自主的な話し合いで値段をきめるということでございますから、政府が事前にどういう方式できめろと言うことは、もちろん自主的な話し合いの意味がなくなるわけであります。そういう意味で、一定の方式はきめないわけでございます。しかしながら、政府としては、いろいろな資料を収集いたしまして調査いたします。それによって、どれだけが妥当であるか、バルクラインが妥当であるか、あるいは総平均が妥当であるか、その中間が妥当であるか、これはメリットの配分などの問題があろうかと思います。その辺はもちろん当事者の話し合いの中においても問題とされるところであろうと思います。話し合いの中では、もちろん生産費がこの点で上がったとか、この点では下がっておるだろうとか、いろいろな論議があって、その上での話し合いがあるわけであります。それで話し合いがつけば、できるだけそれを尊重いたしたい。また、価格を論ずる場合に、生産費だけの要素でも必ずしもきまらないと思います。これは需給の実勢ということが問題だと思います。また私どもとしては、現在の需給の実勢はだんだん下がる方向にある、こう考えておるわけでございます。内需を十分確保いたしますれば、そういうことは当然話し合いのベースに加わってまいります。政府がいろいろな資料に基づいて判断をいたします場合にも、生産費だけでなくて、需給の実勢というものも考慮に入れて、妥当なレベルはどこにあるかということをきめてまいりたいと思います。
  24. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それは私も、生産費だけで価格をきめてよいとか、話し合いがきまるものではないくらいなことはわかっております。需給の実勢ということの見方も、またあとで問題にしますが、いろいろほかの要素もありますが、しかし、いずれにいたしましても、そういう点何かはっきりした尺度がなければ、あれもこれもみんな考えて適当なところにきめますというようなことでは、結局これは強いほうに負けるんですよ。いままでのやり方はみんなそうですよ。こういうかっこうで、いままでなぜいわゆる肥料業者がこのバルクライン方式にあれだけ反対してきたかというと、ものさしがはっきりしておるから、ごまかしがつかない。ですから反対してきた。ところが、それを今度は一気にものさしをとっぱずしてしまって、あれもこれもいろいろ考えて適当なところできめます。結論としては上げません、こう言ってみたところで、いまいろいろ数字をあげてお話ししたように、私はそんなことではだめだと思います。少なくとも政府は、価格決定についてだけは、実にはっきりした、至れり尽くせりのような介入のあれを規定しておる。その介入権をいわゆる発動させる場合、調停の場合でも何でもそうですが、あるいは禁止命令、廃止命令、あるいは変更命令、その他援助、助言をする場合でもそうでしょう、そういう場合において、はっきりしたあれを――決してコスト主義にだけとらわれているわけじゃありません。しかし、これだけは、私は、政令事項なり何なりではっきりしたことがぜひ必要だと思うが、どうでしょう。私は、政府介入なりあるいは自主決定の場合の基準となるべき諸要素、それの取り方等については、はっきり政令事項に規定することがぜひ必要であると思います。ただ私は、必ずしも、すぐバルクライン方式を従来どおりのものをそのまま固執しろと言っているわけではありません。ありませんけれども、そこを、今のお話のようなごまかしで、どっちでもとれるようなやり方では、私は困ると思う。この点について、ひとつ大臣なり局長のはっきりした――そういう点は政令事項に明確に規定するかしないか、この点を明確にしてください。
  25. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 あらかじめ介入する場合の基準というものを具体的に――もちろん数字とか算式はございませんが、考えるべきファクターを相当具体的にきめるということは、それだけ自主的話し合いというものの意義をなくしてしまうということでもございます。しかしながら、大体の考え方といたしましては、とにかく合理化が進行いたしまするならば、一般論といたしまして、その合理化のメリットを最も妥当に配分していく、そういうことであろうと思います。値下げにも向けるべきであるし、合理化の努力を払った企業にも帰属させる、また、それが将来の合理化への足場になるわけでございますから、そういう考え方、それは当事者も十分承知の上で、お互いの立場を理解の上で、話し合いを進められると思うのであります。政府も同じような考えで、介入する場合はやるべきものであると思うのであります。
  26. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ちっとも明快でない。相変わらずぼやっとしている。合理化のメリット、メリットと言うけれども、この次のことは、合理化内容にちょっと入っていきます。私は、少なくとも政令事項で――もちろん数字を入れてどうということはない。要するに、諸要素をどういうふうにとるかということは、現行二法の付録のバルクライン方式みたいにはっきり――そういうことは困難でしょう。それは私も認めます。認めますけれども、しかし、少なくともこれは、尺度に盛るべき諸要素というもの、その盛り方だけは抽象的にでもきめておくことはぜひ必要だと思う。この点については、またあとで同僚の委員からそれぞれお話があると思いますので、時間がありませんから、この程度にいたします。  さらに、合理化のメリットをどう繰り込むかということです。これはこれから非常に複雑になる。私が第一にお伺いしたいのは、合理化メリット。従来は硫安だけについて、しかも合成硫安回収硫安なりあるいは副生硫安について、一定の数字でもって、これをいわゆるバルクライン方式で調整して御承知のとおり出した。ところが、そのメリットというのは、大体において十年間で一六%、百三十四円幾らですか、大体そんなものです。だから、平均すれば一年に一・六、大体十四円程度のメリットのあれをやってきた、合理化メリットを繰り込んできたということです。しかし、これは硫安だけを見るから、そういうことになる。硫安の中でも、こういう回収と副生分がこれからうんと増産になります。本年度は大体七十二万トンくらい、それからあと、四十一年ごろになると百万トンをこす、こういうことになります。さらに鉄や石炭がどんどん進んでいくとすれば、これはある試算によりますと、昭和四十五年には、鉄の排ガスだけですか、あれだけでも、硫安換算で六百二十万トン近くの増産が可能だという、これは推測ですから、当たっているかどうかわからぬ。さらに石油の分を考えたら、これはなお大きなものになろうと思う。これをどの程度織り込んで、いわゆる価格の値開き、一般の合成と開いているかということを見ると、現在は大体において、回収のほうが一かます当たり十六円安、それから副生のほうが三十二円安、こういうことになっておる。しかし、これはおかしいと私は思う。これは最初から商慣習でこうなっておるということです。ところが、大体回収なり副生の場合の原料コストというものは、ただにひとしいものだ。ただ、そういうものをやる場合の設備費なり総諸掛かりをこれにどうかけるかによって、これらの値段というものがきまってくるのです。これはらようど小麦粉とふすまみたいな関係です。アロケーションのしかたによってどうでも変わってくるものです。これを従来どおり十六円あるいは三十二円というのは商慣習です。これに何ら合理的な根拠はないのです。これがどんどんふえておる。これはおそらく内需優先で回すことになろうと思う。しかもこういうふうな値開きができたのは、これは私が言わぬでも御承知のとおり、N分が二十一に足りないものが出るとか、あるいは色がついているとか、あるいはくさみが多少あるとか、いわゆる全く商慣習的にこれだけ値開きをやっている。ところが、最近ではこういうものが質がよくなっておる。N分についてもほとんど二十一を下回るものが少ない。特に色とかにおいについてはだんだんとれておる。しかも、使用方法はどうかというと、単肥は少なくなって、複合になっている。複合の場合は、硫安でも回収でも副生でも変わりがない。こういう状況になってきているときに、これを従来どおりバルクライン方式としてそのまま織り込むということは、どうしても納得できない。これはもう一度合理的な再検討をすべきである。この点はどうかということが一点。  それからもう一つ、尿素や塩安や高度化成生産比率なり、その他がずっと増してきております。これの値開きなり何なり、これもやや商慣習的なものがあって、決して合理的なあれではないと思う。特に尿素が一番大きな要素をなしますけれども、これは非常に比率が増してきております。生産比率から消費比率が、国内でも外国でも急速に増して、今後ますますふえてくると思う。これともう一つの原料である炭酸ガスは、ざっくばらんに言ってただみたいなものではないですか。ただとは言えないとしても、施設その他の総諸掛かりは別として、もとはただみたいなものです。それを価格相当織り込んで、要するに尿素価格なり何なりというものを見ておるということです。それからいままでのところは、大体合成硫安に二・二倍をかけて、それから適当額の値引きをするということでいっている。最初は宣伝のために四〇%ぐらいといって、いまは二〇%。一かます百円内外、ところが、これはもっと落とし得る可能性があると私は思う。今日のように回収硫安だけでなくて、尿素なりその他のやや高度の肥料形態をとったものと総合的に考えなければならぬ時代になって、尿素その他いわゆるメリットを従来どおりにしているということは、非常に不合理です。この点を根本的に再検討する必要がある。  もう一つ要素、御承知のとおり、ア系肥料アンモニア工業といいますか、肥料工業の中で、そういう硫安部門なりア系肥料部門の持っている比率というものは、だんだん下がってきた。そのほかの工業用硫安が非常によけいになってきております。したがって、この面からも、もう一度硫安合理化、メリットなり何なりというものを再検討する必要がある。現にいま御承知のとおり、ラクタムとかあるいはその他の工業用のほうが非常に景気がよくなって、生産制限をしておりますから、どんどん値が上がってきておる。大体四万円くらいにはなりそうだ、こう言っている。そうすると、場合によっては、硫安がそっちにどんどん流れていって、そっちの値が上がってそっちでもうけて、そしてこっちは従来どおりにしているという関係になっております。逆にそっちが悪くなれば、こっちで肥料のほうによけいかけるという問題も出てくる。こういう点について、肥料生産形態が高度化し、多角化してきたについては、従来のメリット方式というものは無意味になってきていると思う。私は、これについてどうしても根本的な再検討をしなければならぬ段階にきていると思う。特にこの点が、私は、農民立場からいえば、一番大事なポイントではないかと思う。従来のいわゆる合理化メリットはこういう点を見ておらないと思うのです。この点についてはどう考えるか、これもはっきりしておいていただきたい。
  27. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 農林省だけでお答えできない部分につきましては、軽工業局長からお答えしていただきます。  いまあげられました回収硫安あるいは副生硫安の問題にいたしましても、尿素、塩安の問題にいたしましても、この二つにつきましては、原価計算上、費用の配賦の問題は非常にむずかしい問題でございます。したがって、いまは、久保田委員は商慣習でとおっしゃいましたが、商慣習で実際に格差をきめられておるわけですが、原価計算上は、一つの約束で算定上の値段を見ておるわけであります。これは確かに問題のあるところであります。御指摘は、むしろ、現在のバルクライン方式に対する批判を含められておると思うのであります。これらの点は、バルクライン方式あるいは生産費方式でいくことの技術的な困難さを非常に痛感させるのでありまして、しばしば御指摘がありますように、現在の硫安工業は非常に多角経営になっておりますから、合成硫安につきましても原価計算がきわめてむずかしくなっております。まして、こういう回収、副生硫安あるいは尿素、塩安等の問題につきましては、その辺について、先ほど来性格論とか妥当論とかいうことがございましたが、その面からいいまして、原価計算方式あるいはバルクライン方式だけに依存することの危険性があると私どもは考えておるのでございます。  それから、経営の中での硫安の問題でございますけれども、これも確かに御指摘のような問題があるのでございますが、硫安の専業的メーカーと兼業的メーカー、つまり多角経営をやっているメーカーとに分けて分析いたしますと、専業的なメーカーは非常に業績不振でございます。兼業メーカー、多角経営のメーカーのほうが配当率や収益率も割合いによろしいということで、必ずしもいま御指摘のような問題とはちょっと違った面があるのじゃないかと思うのであります。この辺は通産省からお答えいただきますが、いずれにいたしましても、回収硫安、副生硫安が増加し、またこれは低コストと考えられます。それから尿素、塩安等にまた広がるというようなことは、農林省としても歓迎すべきことでありますし、そのための値段のきめ方につきましては、従来のバルクライン方式にとらわれることなくて、メーカーと利用者との間において、これは商慣習上の商品としての性質と、それから消費者農民にとっての実際上の使用価値、こういうようなものから、メーカー側の計算上の問題、両々相まって十分論議されてきめられるように、むしろ、今度の新しい法律のほうが、その点におきましては柔軟なやり方ができる、こう考えております。
  28. 倉八正

    ○倉八政府委員 通産省の関係の分についてお答えいたします。  いまの回収硫安生産費ですが、回収硫安というのが最近非常に伸びまして、これもまた世界的な傾向になってきたのでございますが、これはナイロンの発展、それからエクスランとか、そういうアクリル繊維の発展のために、アンモニアを利用しまして回収硫安をつくるわけでございます。しからばこの回収硫安のコストはどうなるかということは、非常にむずかしい問題でございまして、たまたま四、五年くらい前に、会計の専門家に依頼しまして、原価計算の調査をやらせたわけでございますが、非常にむずかしくて、できないということでございます。しかしながら、常識的に見まして、硫安のコストよりは少しは低いだろうということで、通産省、農林省としまして、回収硫安合成硫安の最も安いものに類するという推定をとりまして、いまそれに基づいて価格計算をやっておるわけでございます。今後の問題にしますと、アンモニア系の工業の全体の問題になりますが、この回収硫安につきまして、そういう面からも検討をしたいとは考えております。  なお、最後に御指摘になりましたアンモニアの多方面における工業化の問題でございますが、これは、できるだけほかの用途に使ったほうが硫安のためにもずっと得でございます。と申しますのは、アンモニアのような装置工業でございますから、フル生産させたほうが――これはフル生産させる場合には、硫安にも持っていくし、あるいは農薬にも持っていく、あるいは繊維原料にも持っていく、こういうふうに、なるべく総合的に、多角的に使用したほうがずっと効率がある、こういう産業上の見地から見まして、われわれとしましては、多角化を奨励しております。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そういうそれぞれの部門の特にコストの計算が非常にむずかしいということは、これは技術的によくわかるわけなんです。しかし、そうだからといって、そういう点はぼやかしておいて、常識的に適当なところで手を打ってということになりますと、こういうアンモニア肥料工業硫安工業の質的変換が行なわれたことが、農民には一つもプラスにならないのであります。農林大臣としては、あるいは農林省としては、これは専門外のことかもしれませんけれども、しかし、この点をもっと厳格におやりになるということがぜひ必要であります。いまの御答弁だと、いわゆるバルクライン方式とか生産費方式だけよりは、いまのように自由にきめたほうがいいということでありますけれども、自由にきめるということになれば、自主的の取りきめになれば、こういうわからない点はわからないままで肥料にしわ寄せされてくる危険が非常に多いから、この点を明確にしろということを申し上げておるのであります。この点はひとつはっきりしておいていただきたいと思うのであります。  それに連関して御質問をしたいのは、政府は要するに業者と両方の自主的取りきめに対して資料の提供を求められております。その資料はどういうものを出すのか、聞いたところによると、生産費そのものの資料というものは出さぬのだ、それに対するいまの原単位のあれがどう変わったとか、合理化メリットがどう変わったとか、そういうものだけを出して、あとはおまえのほうでそれぞれ議論してきめろ、こういうことになりそうです。これではいまのような複雑な結果になって、これは幾ら論議をしたって、結局私は結着というものはつかないと思う。したがって、このいわゆる提示する資料、その基礎になるのは皆さんのほうの調査であります。その調査は何かというと、報告の徴収と立ち入り検査である。こういう簡単なもので、まさか業者はほんとうのコストについての調査を出すはずがありません。これは常識でわかっておる。いままでもそうです。また、ちょっと簡単に行って入ってみたところで、こんなことはわかるわけがない。したがって、この点については、通産省、農林省それぞれの立場は違いましょうけれども、よほど徹底したものを出さなければ、政府のものさしというものができるわけがない。この点も、今度の法案というものは、かっこうだけはできておるけれども、最後になるとしり切れになる。そして、あとは適当にということになれば、農民が損して、価格が上がるにきまっている。私どもは、大臣の絶対に価格は上げないという御答弁を信じたいのですが、こういう肥料業界の質的な転換なり、それの技術的な内容というものを検討し、さらにそれを基礎にして、いまの全体の農民肥料独占資本との力関係というものを考えてみると、ここにどうしても肥料は、現行二法よりは、今後においては上がらざるを得ない。もちろん、普通の物価の上昇によって上がる部分はやむを得ませんけれども、いわゆる割り高にならざるを得ない、こう私どもは判断せざるを得ない。これは議論をしてもしようがないことですから、そういうむずかしい問題を内在しているということを、農林省としては農民立場に立ってしっかり把握をして、これに対する適切な政令の整備なり行政措置なりというものをこの際とっておいてもらわないと困ると思う、この点を申し上げるわけであります。  これに連関してもう一つ伺いをいたしますが、今度のいわゆる自主的価格とりきめをするこの相手は、二条二項にいうところの「相当比率を占めていること。」こういうことになっておる。聞くところによると、生産並びに消費ともに五〇%以上のものを占めておる団体をいわゆる交渉の当事者にするということですが、そうですか。
  30. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 そういうように考えております。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、いわゆる生産者団体としては、硫安協会ということになりますか。それといわゆる販売者としては全購連、この二つしかないように思うのですが、どうですか。
  32. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 まず販売者のほうでございますが、ほかに中肥連といいますか、商人系の団体がございます。これは二〇%かそこらでございます。それは単独でとりきめの当事者になることはできないわけでございますが、全購連が当事者になった場合、それに参加することはでき得る、こういうことであります。それからメーカーのほうは、私のほうから申し上げるのは少しあれですが、メーカーのほうは、必ずしも硫安協会という形でなくて、やはり硫安生産量の五〇%以上を占めるメーカーが集まれば、当事者たる資格ができるわけでございます。
  33. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまの販売業者代表のほうはわかりました。結局現実には全購連以外にない。そうすると、生産者代表はどうなるのですか。もう少しはっきり説明願いたいと思います。
  34. 倉八正

    ○倉八政府委員 生産者のほうは、団体というのではなくて、硫安メーカーというのは、御承知のように、合成硫安が十五社ございます、回収の硫安も含めまして。その中の五〇%以上のシェアを占める人が集まりまして、そこで協定をして、全購連をはじめとする需要者とここで価格交渉する、こういうことでございまして、協会そのものではございません。
  35. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、シェアが自家生産のうらの五〇%以上というのですか、それとも全体の硫安生産の五〇%に達するようなものが、十五社の中から集まって別団体をつくって、それが交渉相手になるということですか、どうですか、その点もう少しはっきりさしてください。
  36. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま久保田先生御指摘のあとのほうでご、ざいまして、たとえば、具体的に申し上げれば、いま硫安を十五社で二百万トンちょっとつくっておるのでございますが、その二百万トンをつくるのに十五社がおる。そのうらで、たとえば十社集まれば五割を占めるというならば、その十社というのが一つの協定を結ぶ、こういうことでございます。
  37. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、そこでまた問題が複雑になってくると思うのですが、いまの十五社のうちで、百万トンの連中が集まればいわゆる交渉団体ができる。そうすると、そのあとの百万トンをやる連中が別の団体をつくった場合、これも交渉団体になりますか。あるいはそれはアウトサイダーとして、生産者のほうとしてはどういう扱いになるのですか。
  38. 倉八正

    ○倉八政府委員 観念上から言えば、いま久保田先生御指摘のとおりでございまして、たとえば十社が集まって五割五分を占めた。それが一つの協会をつくって、この法律に基づいて協定をやる、残りの四割五分を持っている五社か六社というのは、いわゆるアウトサイダーでございまして、観念上はそういうことになりますが、ただ、今度の法律目的が、価格というのはなるべく一本化したほうが、農民のためにもなるし、安定するだろうという意味で、われわれの行政指導方針としましては、なるべくそういうアウトサイダーというのはないほうがよい、できるだけ加入していただきまして、全購連ならば需要者の方と御相談願って価格々きめる、こういうふうな方針で進みたい、こう考えております。
  39. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、片や全購連、それから全肥連ですか、要するにそれは協定に参加ができる。しかし、交渉の相手にはなれないということですね。大体どうなんですか。
  40. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 単独では交渉の当事者になれない。しかし、全購連と一緒に参加して交渉の当事者になることはできる、こういうことでございます。
  41. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、まず生産団体の中において行政指導がうまくいって、全部が入ればこれに越したことはないが、そこで国内価格を一本にとりきめになるのですか。いわゆる全体の共同とりきめになって、それを各参加者がそれぞれ守るという格好になるのですか、それとももっと違った内容のとりきめ方になるのか、この点はどうですか。
  42. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 これはどういうふうにとりきめなければならないという内容的基準はないわけでございますが、大体合成硫安なら合成硫安については、基準価格を一本にきめるという方法もございますし、そのほかに、限月の価格をきめる、あるいは合成硫安価格をきめ、さらに回収硫安、副生硫安価格をきめる、これはいろいろなきめ方がございます。協定としては、当事者がすべて了承するならば、一本で――商品ことには一本でございますけれども、商品別に、合成硫安だけきめないで、合成硫安をきめれば、回収硫安もきめ、副生硫安もきめる、こういうやり方はできるわけでございます。
  43. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもいまの点にも、少しこまかく考えてみると、いろいろな疑問がわくわけです。この点はいずれまた他の同僚委員あとでこまかくお聞きをすることになろうと思いますが、先を急ぎますから、この程度にやめますが、まだまだいまの当事者団体と、要するに、とりきめの対象団体とそのとりきめの内容、それの波及する効果その他については、いろいろの点で相当疑問があるようですから、この点はなおあとでこまかく御研究の上、御答弁をいただきたいと思います。  その次に、大きな問題に移ります。もう一つ、私どもの新法に対する大きな心配は、農民立場農業立場から見ると、いわゆる輸出赤字国内に転嫁される危険が非常に強くなってきているという点であります。これについては、二法では、御承知のとおり、はっきりバルクライン方式をとって、しかも、輸出赤字国内に転嫁しない、輸出会社のあれは、未収の売り掛け金としてでしたか、何かで積んでおいて、別途処理するということにはっきりなっております。ところが、新法では、この点が何ら規定がない。そこで、これは形はいろいろあるでしょうが、これに対しては、どうしても国内に転嫁される危険がある、私どもはこういうふうに見るわけですが、この点はどうですか。
  44. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 まあこれはなにのほうから申し上げたほうがいいと思いますが、まず全体の実勢としては、これは内需を十分に確保すれば、先ほど来問題になっておりますように、現在の価格より、実勢だけを取り上げて申し上げますと、上がる可能性はまずないということは申し上げられると思うのであります。赤字を転嫁するかしないかという問題、一つの目安になりますのは、現在の、つまり、三十八肥料年度の基準価格一つの目安でございます。おそらく今年もまだ合理化は進行しておりますから、これより上がれば、合理化が進行してコストが下がったにもかかわらず、値段を上げたということで、赤字の転嫁があったというようなことが考えられると思います。そういう意味で、さっき大臣は、現状より上げることはやらないとおっしゃったと思うのであります。そこで、今後、合理化が進捗してコストが下がった場合、その合理化された面をどう配分するかということが今後の問題。むしろ新たに赤字が転嫁されるということよりも、今後合理化されるものの、合理化されてコストの下がった部分の値下げと、それから企業に帰属させて将来の合理化にさらに使わせる、その配分の問題になると思うのです。もちろん、それはいろいろ御意見はございますけれども、いままでの経緯から見まして、赤字の転嫁の問題というのは、大きく考えますと、そういうように考えられると思います。
  45. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもはっきりしたような、一向にはっきりしない御答弁であります。そこで、過去は御承知のとおりです。十年間に二百三十億の赤字が一応出ている。これを整理をして、負担すべきものとして、それで百何億ですか、これの処理は、結局は、政府が税金の面で、あるいは特別の財政投融資をして、その利率メリットで赤を穴埋めしたという経過であります。しかし、この状況は、今度はそういう保証がなくなったわけです。おそらくそういう措置は今後はとれないだろうと思います。そうすると、目先は、いまのところは、御承知のとおり、非常に国際的に肥料もいい、強調しています。がしかし、いま合理化メリットをどう配分するかというふうなお話でしたけれども、いまのところ、国内価格は五十一ドル見当でしょう。まあ国際の輸出価格というのは、四十ドルないしは四十四ドルあたりで、大体四十二、三ドルというところでしょう。そうすると、はっきりいって現在まだ七、八ドルの赤字になるはずです。こういうことでしょう。そうすると、それは年額にすると、これは出方によって違いましょうけれども、いまのようにどんどん出ていけば、少なくとも二十億や四十億程度の赤字はいやおうなしに出てくる。これをどこでどう消化するんですか。いまのようなメリットの配分でどうするんですか。出てくるものははっきり出てくる。それをどこでどう処理するかということです。これと連関して、今度は、輸出会社に対する各メーカーの売り方が従来と変わるんじゃないですか。売り方が、譲渡価格面については変わってくるんじゃないか。この点を連関さして、ひとつはっきり御説明をいただきたいと思うのです。
  46. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま御指摘の赤字問題については、総論的には農林省の経済局長からお答えされたとおりでございますが、実際に事例をもって御説明いたしたいと思います。  現在、久保田先生御指摘のマル公というのが五十一ドルちょっとでございますが、その中で、輸出する場合は、包装費関係あるいは輸送費の関係で二ドル五十は少なくとも要ることは、十分御存じのことだと思います。現在、外国からの引き合いというのが四十五ドルとか八ドルとかいうふうに上がりまして、マル公に近くなったのでございますが、たとえばこれを先般の契約しました四十四ドル五十というようなふうにしますと、いわゆるメリットを引いた赤字というのは四ドル、これは硫安を八十万トン出しますと、三百二十万ドル、約十一億円、こういうことに計算上はなるわけでございまして、この十一億円というのは、硫安会社の売り上げ高の〇・二%ないし〇・三%でございます。われわれとしましては、昨年の一月一日から、いわゆるFOB仕切りということでやりました。この仕切りというのは、メーカー硫安輸出会社に売る場合には、いわゆる内地港船積み価格、こういう制度をとりまして、形式上は赤字を生じないということにしたわけでございます。ただ、実質的な問題につきましては、いま御説明しましたように、〇・二%ないし〇・三%でございまして、各会社の合理化によってそれを吸収しろということにしたわけであります。  それから、後半の御質問のメリットの問題でございますが、メリットの問題は、この赤字を抜きにしまして、たとえば今度の合理化によってその値段が一かます何円下がるであろうといわれる場合には、そういうものを配分するのをどうするかというのが、今度の価格決定の中心問題になろうかと思います。理想的な形は、農民も潤い、それから企業家も潤う、そうして肥料が安定するというのが、私は理想的な形態だろうと思いますが、今後はそのメリットをしからばどう両方に分け合うべきだろうか、帰属させるべきであろうか、こういうのが価格交渉の一つの焦点になるだろうと思います。
  47. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大体それでわかったわけですが、要するに、現在は、大体肥料の国際環境が日本にとっては非常にいいわけですね。しかし、これがいつまで続くかということは非常な疑問です。これはことしの特によかったというのは、欧州の去年の寒波で非常に減産になったということ、その他いろいろ響いてこうなっている。しかし、これはおそらく二年ないし三年続いたらせいぜいじゃないかというふうに思われるわけです。なるほど国際的な需要は、中国なりソビエトの需要がスムーズにいくようになれば、相当ふえるということはわかる。あるいは東南アジア一般の肥料需要も、傾向としてはふえてくるということはわかる。しかし、御承知のとおり、アメリカあたりでは、これは実現するかどうかわからぬけれども、スタンダードがトリニダードに千二百万トンの新しいプラントをつくってやる、あるいはUSスチールが二千万トンのプラントをつくってやるというような計画も、どの程度になるかどうか、実現するかどうかわからぬけれども、こういうのもある。ソ連のほうは、御承知のように、七カ年計画で三千万トンのいわゆる増産計画をすでに始めている。中国は、現在のところ、二千五百万トン程度でしょうが、これとても、計画はまだ明らかになりませんけれども、おそらくはいまの状況から見れば、この点についてできるだけ早く増産に踏み切ってくるということは、これも必至であります。また同時に、インドその他の各低開発国が、自国の尿素なり何なりの工場をどんどんつくっておりますから、これが動き出してくると、これの保護ということも出てくる。欧州もおそらくは黙っちゃいませんので、これもだんだんやってくるということになってくると、これは東南アジア市場、共産圏を含めて、日本のように、アメリカにおべっか使って――おべっかというとぐあいが悪いから、おべっかでなくて、遠慮をして、向こうで買いたい、こっちも売りたいというのを、ああだこうだというへ理屈言って、売らないというような態度をとっておれば、これは、国際価格というものはますます下がってくるにきまっている。しかも、日本で片方においてのいわゆる合理化計画は、現在が五十一ドルでしょう。これが三年後か四年後には四十六ドルですか、これにしようという。それがどうも現実にうまくいくかどうかということは、過去の実績から見て、いまのようなやり方では、合理化の方針では、なかなか実現は困難だ。よくいって、もっとずっと低いところにとどまって、あまり国内のいわゆる生産者価格というものは下がらないということになる。三年ないし四年先には、肥料輸出によるところの赤字というものはますます強くなってくる。いまのお話では、結局各肥料会社を合理化をして、その合理化の生んでくる利益の中でこれをしょわせるのだ、こういうことになってくると思う。はたしてこれができるかどうか。もう一つは、なるほど硫安工業が多角化して、繊維原料であるとか、樹脂原料であるとか、そういうものは、いまのところは、先発的なものですから、まだいい。しかし、これとても国際的な競争がひどくなってくるということになると、私は、いまのようにはたしてあれがうまくいくかどうかということが、負担能力が、そういうところで消すだけの能力があるかどうかということは、非常な疑問になってくると思うのです。そうなってくれば、どういう迂回経路をとってくるかわかりませんけれども、いろいろな形をとって結局国内価格に転嫁されるということは至だと思う。ことしは幸いに皆さんにとっては非常に神風ですよ。国際価格がうまくいって肥料がどんどん出る。これならうまくいくだろう。ことしのようなことがいつも続くとは限っておらぬ。柳の下にいつもドジョウはおりませんよ。過去十年間は少なくとも柳の下にドジョウがおらなくて苦労してきたのです。ことし一年うまくいったから、あるいは来年くらいうまくいくだろうということで、これからの肥料工業全体や国内価格の問題を律する、そして対策なしということでは、私はこれはだめだと思う。どうしても今度のような構想の肥料政策の中では、さしあたりはあまり国内には、また政治的にも、そんなことはできぬでしょう。肥料二法が取っぱずされて新法ができたとたんに、赤字が全部こっちへおっつけられた、ほかのやつから上がって肥料がうんと上がったといったら、これはたいへんな話になりますから、これは池田内閣つぶれますよ。ですから、そんなばかなことは実際にできないでしょうけれども、幸いに神風と一緒になってあまり支障はないかもしれませんけれども、それは一時の話であり、うわべの話であります。基本肥料構造の国際環境そのものが、日本にとってますますひどくなってくるに違いない。せっかくいままでここにぴしゃっと一本あったかんぬきを今度は抜いたのですから、そのしわ寄せがどこにくるかというと、国内にこざるを得ない。これを従来のような形でやるか、あるいは違った欧州式なやり方でやるかは別として、農林省のほうで考えるのか、あるいは政府全体で考えるのかわかりませんけれども、何らかの対策をいまのうちからぴったり立てておかないと、現在の新法だけでいけば、必ず二、三年後には輸出赤字国内に転嫁ということは出てくる、こう思うのですが、これに対して、これは大臣にひとつお伺いしますが、だいじょうぶ、そんな赤字はかぶさりませんなんということは、おそらく言えぬだろうと思う。いま対策を持っておられなくてもいい。いいが、新法をやろうという以上は、その保証がない限り、新法はなかなか、へいそうですかといって農業立場から承認はできないはずです。これに対する大臣のお考えはどうですか。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ事務当局から御答弁申し上げましたが、将来の見通しの場合に、赤字はどうなるかということにつきまして確たる保証はございません。確たる保証はございませんが、もしもそういう場合には、私は赤字を転嫁しないような措置をとりたいと思います。
  49. 久保田豊

    久保田(豊)委員 措置をとりますと言えばそれまでの話ですが、やはりこれを実施する以上は、いまのうちから農林省としては特にこの点について政府部内において声を大にして――いまのところはあまり心配はないから、まあまあ当分このままで目をつぶっておけ、そしてそのときになったら何とか措置をとればいいではないかということでは、実際には措置がとれない。ですから、これはいずれ通産大臣にもはっきりお聞きするつもりですが、特に農林大臣としては、この危険は、いま私があげましたような事実や大勢から見て、一、二年というよりも、二、三年後にそういう情勢になることは必至です。ですから、いまのうちからこれの実施にあたって、こういった点について少なくとも政策的な用意くらいはしておいてもらわないと、これはあぶなくてとてものめません。まあ出たらそのときになってから措置をしますというのではしょうがないと思います。この点についてもう一度大臣の御所見をお聞きしておきたい。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 従来の赤字等につきましても、昨年でしたか、一昨年でしたか、措置をとったわけでございます。そういう例もありますから、私は行政措置でこれはとり得るという確信を持っております。でありますから、そういう場合になりましたときには措置をとります。こう申し上げておいたのであります。
  51. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまの点については、もう少し突っ込んでお聞きしたいのですが、時間の関係がありますから、いずれあとでまた詳しくこの点について追及があることと思いますから、やめておきます。  その次のもう一つの問題は、今度の新法によりますと、これは大体において新型のカルテルができるわけですね。いままでの独禁法では、御承知のとおり、大体独禁法で認めておるカルテルというのは、公共的な性質を持ったものについての価格カルテル、これは認めております。それから合理化カルテル、不況カルテル、こういうものは大体において認めておるわけです。ちとそれ以外のものも最近はだんだん出てきておりますが、しかし、今度の新法によると、硫安協会は、非常に強い、特殊な一つの新しい型のカルテルをここで結成することになると思います。しかも、それが独禁法の適用除外になる、こういうことになる。どういう性格の内容のものかということを言ってみますと、これは国内的に見ると、強力な価格カルテルであることは間違いありませんね。しかもその価格カルテルは、カルテルの価格面における統制力、規制力というのは、直接ではないけれども、硫安だけではなくて、尿素その他にも間接的に及ぶという、非常に広範な一つのカルテル効果を実際上発揮をする、こういう性格を国内カルテルとして見ると持っておる。また同時に、今度は輸出面で見ると、これまた強力な輸出カルテルになっております。しかもこの輸出カルテルは、さっき言いましたように、いますぐの問題ではなくて、あとの問題として考えると、この輸出カルテルは、要するに国際赤字を国内に転嫁するという性格を持ったカルテルだと私は思う。これまた強力なる価格カルテルです。こういう点が二つの性格として出てくる。もう一つは、硫安工業そのものが非常に多角化してくる。したがって、つまり、肥料部面以外のアンモニア工業といいますか、さっき言いました繊維原料であるとか、そういうほうの活動力をささえる役割りをしておる。いまのところは、まだどちらかというとある程度まで肥料についてはプラス要因になっている。しかしながら、先々この部面において競争が激化してきまして、価格条件等が変わってくると、逆にこれが、この方面におきますマイナスというものを、農民というか、農業に転嫁するという性格を持ったカルテルになります。こういうきわめて新しい新型のカルテルが、今度はここに出現したと見て差しつかえない。これが適用除外になっているわけであります。こういう型のやつは、いろいろの型のカルテルが、だんだん独禁法が穴をあけられてできてきておることは事実でございますけれども、しかし、こういう三重の性格を持ったカルテルというのは私はあまりないと思う。これはこういう立場から見ますると、非常に零細な農民と、こういう強力な三重的なよろいを着たカルテルとでは、農民の力が弱くなることは言うまでもありません。その点では、農民にとって大きく力の関係を変化させるものであって、非常に不利になる。これが一つであります。  もう一つは、こういうカルテルができますと、ある程度輸出をかぶっております他の商品なり何なりにも、こういうカルテルがだんだん波及してくるのじゃないか、そういう危険性相当私はあると思う。そうなってくると、これは国民、消費者全般について、農民はもちろんでありますが、こういう点で、国内経済的な力関係において大きな変化を与え、国民、消費者全般なり、あるいは消費者としての農民に大きなマイナスになってくる危険性が非常に多いと思う。こういうカルテルまでいわゆる新法で認めて、現行二法をやめるということは、はたして今日の国民経済全体から見て、また農業前進ということから見て、とるべき策かどうか、疑うわけであります。また私どもとしては、消費者保護という基本的な立場から、こういう新型の強力カルテルが次々に出てくるということについては、どうしても賛成ができない。この点について、大臣なり局長あたりの御見解を聞かしていただきたい。
  52. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 輸出カルテルにつきましては、通産省からお答えいただきますが、この第二条で価格取りきめをやるためのメーカーのカルテル行為は、これは需要者団体と協定を結ぶ範囲で、また協定に基づいて行なう行為についてのカルテルでございます。したがいまして、需要者団体が了承し、協定に調印しない限り、カルテル行為ができないわけであります。その意味で新型カルテルとおっしゃったかと思うのであります。一般のカルテルは、メーカーならメーカーだけのカルテルでございます。相手方の了承を得ないカルテルでございます。そこで、これは要するに、完全に値段を自由にしてしまうか、それとも低位にしてし九も安定させるかという問題になってくるかと思うのであります。安定させるためには、やはりそこで競争をさせる、とにかくメーカー同士で血みどろに売りの競争をやるという形にするか、それともやはり需要者団体メーカーの間で話し合って安定した価格をきめるか、こういう問題で、そのために話し合いをし、協定を認めなければならない。協定を認めるには、共同行為も認めなければならない。したがって、カルテルをその協定のできる範囲内で認めようというのが趣旨でございます。御趣旨のように、農民立場を弱くするとか、そういうことにはならないと考えられるのであります。
  53. 倉八正

    ○倉八政府委員 先生御指摘の第二点の輸出カルテルについて、お答えいたします。この輸出についての協定というのは現行法にもございますが、これの存在価値というのは、大体二つに要約できると思います。  一つは、御承知のように、非常に輸出が激化しておる。それからまた、先生さっき御指摘のいいアドバイスを受けましたが、国際環境の峻厳な要請が目の前に控えておるじゃないか、こういうことで、秩序ある輸出をするには、輸出の面についての何らかの協定はこれは必要だ。特に相手が全部例外なしに一本体制をとっておる国ばかりでありますから、必要であります。  もう一つは、私は広い意味内需確保だと思います。と申しますのは、さっきも御指摘にありましたように、輸出が非常に安ければ、全部国内に売るような機運が出ますので、せっかく価格ができましても、絶えず国内価格もフラクチュエートする。そうすると、安定した供給もできない。それからまた逆に、輸出が非常に高くなりますと、何かメーカーといたしましても輸出に出したがる。そうして広い意味のフラクチュエートする原因をつくる。そういう意味におきまして、輸出につきましては、外的にも内的にもこういう何かの協定が必要だろうということで、従来から設け、今後も継続していきたいということであります。  最後の点の、他産業からアンモニア工業を通じて硫安が悪い意味の影響を受けるであろうという御指摘でありますが、これにつきましては、そういうことがないように、われわれといたしましては、できるだけ多角化しまして、ある特定企業が企業の売り上げ比率をできるだけ下げまして、そうしてワン・クッションを置いて、直接そういう悪い影響が企業にこないようにしたいというのをいま大きい政策として進めておることは、御存じだろうと思いますが、今後もこの政策を継続していきたい、こう考えております。
  54. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がもうぽつぽつきましたので、この点もう少し突っ込んで議論したいと思いますが、いずれあとでまた深くやろうと思いますから、やめておきますが、もう一点だけ最後に質問をいたしたいと思います。  これはいままでも大体二十九年以来、御承知のとおり、いわゆる肥料二法で、硫安工業合理化ということに非常に金をつぎ込んできた。千六百何がしか全部でいっておるようです。その中で、大体二割くらいが財政資金、こういうことになっておるようです。今後も、去年でしたかの決定で、大体百何億ですか出し、さらにその中の四〇%は財政資金でこれをやる、こういうふうにして、全部ではありませんけれども、これは一部の国民負担をしょってやっておるわけですね。こういうのでありますが、合理化方向ということが、現在政府でお考えになっておるような方向でいいかどうかということは、私は再検討を要する問題ではないかと思う。いままでの行き方というのは、二十一か幾つか工場があるのを、どれもこれも落とさずに全部合理化をしていこう、その合理化方向は、いわゆる経営の多角化ということ、これによって硫安工業そのもののウエートを下げて、そうしてあとのほうでもってこれの補強策を講じていこう、大体それで進んでおると見て差しつかえない。現在もこれから先も大体そういう方針ではないだろうかと推測をしておるのであります。あるいは違うかもしれません。しかし、これでは、いまの状況からいって間違っておりはせぬか。この際、いいかげんな、能率の悪いものは無理して多角化せず、落とすものは落としたほうがいいと私は思うのです。転換をはかるなり何なりということをしなければ、いつもひょろひょろしたものを全部引っぱっていったのでは、世界のこれからのいわゆる肥料業界にいつまでも太刀打ちできないのではないか、こういう点が第一点であります。  それから、いまある程度設備制限をしながらやっておるということでありますが、この制限をある程度撤廃して、思い切った大規模の設備をつくらせないことには――全部が全部というわけにはいきませんけれども、そうしなければ、いまのように千二百トンだ、二千万トンだ、こういうものが出てくる段階になってくると、いままでのようなせいぜい三十万トン、四十万トンというものではないのです。大体において十万トンか十五万トンのひょろひょろしたものをつくって、行政的に法律的に縛ってみたところで、これはなかなかだめじゃないか。ですから、大規模にこういう点は転換する必要があるのではないかということを第二に申し上げたい。  第三は、とにかくいままでの固体燃料、液体燃料から流体燃料へということでありますが、これも日本では国内に原油が十分ない、あるいはガスも十分出なくて、しかもコストは高い。アメリカあたりでは、たとえば天燃ガスにしても一立米当たり二円五十銭程度です。日本では安いところで五円五十銭、現在では平均して七円というところでしょう。こういう高いものを使って、小規模のものでやっておったのでは話にならぬ。日本硫安工業というものは、いま世界で二番ですが、これは量的に足して結果がそうなるというだけであります。私は、どうしてもこれから先は、考え方としても、製鉄の廃ガスとか石油の廃ガスというものを利用したところの、いわゆる多角的な直接生産というものを組織することがぜも必要ではないかと思う。さっきもちょっと触れましたが、製鉄でも、資本主義ではアメリカに次いで二番目になった。これが四十五年度には四千六百万トンになる。そこから出てくる廃ガスを、自分のところで使ったあとの残り部分だけでも、ある計算では、硫安に換算しても六百二十万トンくらいの硫安生産ができる。石油もいま四千何百万トンですが、四十五年度には一億トンになるのじゃないか。そうすると、石油精製なり石油化学なりというものは、相当廃ガスが出てくることは当然だろうと思う。これは計算のしかたによっては非常に高いコストになりますが、計算のとり方によっては、歩掛りのやり方によっては、そう高くなくて済む。こういうものを中心にした大規模なものを考えるという方向に、この合理化方向というものを切りかえることが、どうしても必要なんじゃないかというように私は考える。特にいまのように合成硫安にだけ重点を置かずに、回収硫安なり副生硫安の大増産、そして品質改善という方向に切りかえていくことがぜひ必要だと私は思う。これは農林省の関係ではありませんから、通産の場合にもっと詳しく私は論議したいと思いますが、こういう点では、農林省の立場からいっても、現在あるひめひめした肥料工場だけにとらわれることなく、そういう点では大きな目を開いてやる必要があると思いますが、これはひとつ農林大臣というよりは、内閣の一員として、そういう点で合理化方向を切りかえる必要があるのじゃないか。一気にはいきますまいが、そう考えるのですが、どうですか。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 合理化方向を、経営の多角化といいますか、そのほかになお、非能率的なものの転換とか、大企業化して合理化するという方向については、私は賛成でございます。具体的にどういうように持っていくかは別といたしまして、私はその趣旨は賛成であります。
  56. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま農林大臣からお答えしましたとおり、そういう新しい方向をとるということについては、方向としては、われわれとしても非常にりっぱなものであって賛成であります。  ただ一、二の問題点だけ言わせていただきますと、方向としては全くおっしゃるとおりでございますが、たとえば弱小企業の整理ということになりますと、何が弱小かということが非常にむずかしいのでございまして、ちょうど足鹿先生も審議会に長くおつとめになっておいでになりますが、たとえばいままでやっておりましたバルクラインでも、毎年順位が変わります。去年一番だったものがことし三番になってみたり、あるいは去年十二番くらいのものが二番になったりするわけでございます。と申しますのは、工程の合理化を化学工業がやりますと、すぐ追いつくわけでございます、ただ、その場合に、いま一番悪いといわれております某工場の計算は、生産工程では一番いい工場でございますが、たまたまそこの労働者が定員よりも一・八倍多かってみたり、あるいはまたまだ減価償却が終わっていない、あるいは金利負担にたえないということで、一番高い工場になっております。ところが、工程から見れば、これは日本では特殊の最優秀な生産工程を持っておる工場でありまして、たとえば具体的に申し上げますと、こういうことがございますから、これをどうやって整理するかということは非常にむずかしいので、これは今後の重要な検討事項としてひとつ考えてみたいと思います。  それから、大規模な設備をつくって、今後大いにそこに集中生産してやれということでありますが、これは非常に構想としてけっこうであります。ただ、第一の問題とも関係いたしますが、いまわれわれで考えておりますのは、今後アンモニアの増産をする場合には、どこかに集中的にやらせてはどうか、こういうふうなこともいまわれわれの中で討議しておる段階であります。  最後に、このガス化は、いわゆるコークス炉ガスあるいは石油に転換したらどうかということでございまして、石油の転換ということは、もうほとんど八割以上終わりまして、今後は主として重油なり原油への転換を進めていくつもりであります。ただ、コークス炉ガスすなわちCOGにつきましては、いろいろ日本には問題がありまして、いまCOGをやっておるところは、例外なしに代表的な悪い企業になっております、というのは、COG自体の量の問題、あるいはそれのエチレンをどうするかというような総合的な利用の問題になっておりますから、今後の大きな行き方としては、やはり原油転換ということを進めていくと同時に、最後に御指摘になりました回収硫安あるいは副生硫安については、これははっきり申し上げてよいと思いますが、今後われわれとしてはどしどし進めていくつもりであります。
  57. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ちょうど時間がまいりましたから、これでやめますが、最後に、大臣に総括的に御意見を承りたい。  いま申し上げましたように、今度の新法では、私は、農業という立場に立って考える場合は、むしろ、旧二法よりは後退と見て差しつかえないと思います。したがって、私どもの希望とすれば、こういう後退をして、農業がこれから非常な困難を克服して、前向きに活路を開いていかなければならないというときに、農業にとっては一番大きな影響力を持つ肥料政策は、こういう新法のように後退するのではなくて、むしろ、現在の二法というものを拡大して前向きにやっていくということが適当じゃないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、少なくともこの新法の運用については、農林省としては、よほど各般の点についてこまかい配慮と、き然たる見通しを持った強い政策を貫いていきませんと、この新法の結果としては、結局皆さんきらいでしょうが、肥料独占あるいは価格独占というもので、農業が食いものになってしまって、せっかくいろいろお考えになっておる農業のいわゆる革命的な近代化といいますか、こういう方策が、むしろ、こういう点から基礎をくずされていく危険があると思います。したがって、これの政令の制定なり――これは大体において法律に基づく政令事項というものは四つくらいのようですが、あるいはそれの制定等につきましても、あるいはこれの実際の運用という点についても、よほど農林省としては、従来の二法以上にしっかりした考え見通しをもってやっていくことがぜひ必要だと思いますが、この点についてひとつ大臣の御所見を承って、私の質問を終わりにいたしたいと思います。
  58. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現行法よりも、いま提案しております法案は、確かに一面弾力性があるといいますか、そういう面が非常にふえておると思います。したがいまして、行政指導といたしましては、現在よりも一そう慎重にしていかなくちゃならぬ、御趣旨に沿うような方向で私も進めていきたい、こう考えております。      ――――◇―――――
  59. 高見三郎

    高見委員長 次に、農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  最近の米穀需給関係等について、質疑の通告がありますので、これを許します。石田宥全君
  60. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣は何か時間の都合があるそうですから、要点だけを御質問申し上げたいと思うのでありますが、三十九年度産の生産者米価並びに需給関係を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、現在の食管制度と予約制度というものは、農家が作付をする前に、米価についても、また米価を中心とするもろもろのいわゆる付録事項といわれておるものについても、あらかじめ農民にこれが知らされるということがたてまえなのであります。米価の決定いかん、あるいは先年すでに問題になりましたモチ米加算のような問題については、あらかじめ作付の心がまえをきめなければならない、そういう関係で、すでに田植えが始まっておる段階において、まだ本年度の米価がどういう決定が行なわれるか、全然予測できないわけであります。そういうことであってはならないと思いますが、政府はどうも年々国会の論議をはずして米価の論争が行なわれるようなやりくりをやっておられるようであります。私は、国民生活にこれくらい大きな影響を持つ米価の決定というものは、やはり国会である程度論議されることが望ましい、こう思うのです。そこで、まず第一に、本年産の米価について、いつごろおきめになる心がまえであるかということを承りたいと思うのです。
  61. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米価の決定時期につきましては、御承知のように、いろいろ問題がございまして、作付前に決定したほうがよかろうということで、そういう制度をとったこともあります。それからまた、実際に政府に売り渡す時期にきめたほうが、いろいろ労賃とかその他の統計などから見ましても、最も適正な価格にきまるのじゃないかということで、収穫に最も近いころにきめたほうがいいのじゃないかというような、いろいろな議論もございます。現在におきましては、特に国会を避けているわけではございませんが、ここ数年六月ごろに決定いたしておりましたので、ことしも麦の価格が六月中にはきまります。米のほうも六月中に米価審議会を招集いたしまして決定いたしたい、こういうつもりでおります。
  62. 石田宥全

    石田(宥)委員 議論をするつもりはありませんけれども、でき秋にきめるという考え方もありますけれども、予約制度を決定した際には、やはり植えつけにあたって、その年の米価がどうきまるかということによって作付に手心を加えることができるようにという趣旨で、これは予約制度がきめられたのです。私はその審議に参加しておりますから……。ですから、私は、やはり現在の食管法と予約制度のもとにおいては、植えつけ前に定められるというたてまえを守るべきだと実は考えております。これは議論はいたしませんが、少なくとも六月中におきめになるということなら、これはやむを得ない。しかし、早場田植えは始まっておるけれども、まだ大部分はこれからでありますから、これからでももっと早くきめられなければならないと考えておるのですが、別にこれについては御答弁を要求しません。  次に、先ほども触れたように、米価の決定いかんというものは、単に生産農民だけではなくて、全国民の生活に非常に大きな影響をもたらすものでありますが、先年、河野さんが農林大臣時代に、米価審議会を非公開にされたわけです。これは大臣の一存で行なわれたことでありますが、いま申し上げたような事情から申しますると、これはむしろ公開をされて、生産農民にも一般国民にも、米価がどのような状況のもとに決定されるかということをよく知らせる必要がある。何か非公開にして、秘密会議にして、どんな論議が行なわれたかわからない、どういう需給事情のもとに生産者米価が定まり、消費者米価がきめられるかということの論議が、全く国民から遮断された中で行なわれるということは、これは適当であるとは考えられないのでありまして、やはりこれはまず第一には国会においてある程度の論議をやる、次に米審というものは公開の場において行なうべきであるということを考えるのでございますが、ことしの米審から、大臣、ひとつ勇断をもって公開で審議を行なわれるように要望をしたいと思うのですが、御意見を承りたいと思います。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 静穏の中できまりますれば、公開が非常にいい姿でございますけれども、従来とかくなかなか静穏でもなくて、いろいろ大臣がかん詰めになったこともありまして、そういう関係から、非公開にいたしたわけでございます。国会はこれはほんとうに公開の席でございますが、審議会は冷静に資料を検討してきめるという意味におきましては、私は、非公開のほうが適当ではないか、こう考えます。ただ、非公開であるからといって、資料とか議論の要点等を外に発表しないというようなことはまずいと思いますから、できるだけ資料とかあるいは議論の内容等は発表をし、また世の中の批判も仰ぐというようなことはすべきだと思いますけれども、せっかく非公開にしておりますので、審議会は非公開でやっていくつもりで、いまのところ考えております。
  64. 石田宥全

    石田(宥)委員 くどいようでありますけれども算定方式ですね。政府も、ようやく方式としては、八〇%バルクラインによる生産費及び所得補償方式をとってこられたようでありますが、いろいろ議論もあるようでありますけれども、これは従来どおりおやりになる方針かどうか。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 生産者米価の算定方式につきましては、従来どおり生産費所得補償方式といいますか、そういう方式を踏襲していきたい、こういうつもりでおります。
  66. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体私どもの計算によりますと、最近のパリティの上昇、労賃の上昇で参りますと、石当たり一万七千円以上というように計算されるのでありますが、さらにいわゆる付録事項としての予約加算、それから時期別格差、それに予約減税、あるいはモチ米加算、こういうものについて、最近地方に出てまいりますと、いま申し上げたようないわゆる付録的な問題などについて、どう定まるであろうかということを早く政府は明らかにすべきではないかということ、また野党として、それはやはり政府に明らかにさすべきであろうという要望が強いのでありまして、この機会に、これらの問題についても所見をただしておきたいと思います。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 予約加算につきましては、だんだん減らしてきまして、昨年は石当たり五十円に削減いたしました。米価審議会あるいはその他の議論におきましても、減らしていく、こういうことでありましたので、実は三十八年産限りで予約加算を廃止するということを閣議で決定いたしておりますので、三十九年産米につきましても予約加算はつけないという方針でございます。ただ、よけいなことをしゃべりますと、いつも最後の決定のときに、これがもめます材料といいますか、になることは御承知のとおりでございますが、いまそういう方針でおります。  また、時期別格差につきましても、逐次段階を減らしていくということで、昨年もそういう方針できめまして、そこで、三十八年産米につきましても、時期別格差を縮減いたしました。三十九年、ことしの産米につきましても、さらに期を短縮して、各期につきまして二百円ずつ引き下げるということについて閣議の了解を得ておるのであります。しかし、この点につきましては、私は、米の需給状況等、特に端境期の対策等もありますので、これにつきましては考えるところがありまして、閣議の了解はありますが、いずれまた、閣議でよく相談したい面を持っております。
  68. 石田宥全

    石田(宥)委員 次の予約減税とモチ米加算です。これは作付のやりくりがありますから……。
  69. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 予約減税は引き続きやっていきたいと思います。臨時法でありますが、ことしもやったように、三十九年度についてもやりたいと思います。モチ米加算はまだやることにきまっておりません。
  70. 石田宥全

    石田(宥)委員 こまかな点は別に議論はいたしません。  次に、需給関係について伺いたいのでありますが、昨年は史上三番目の豊作だといわれたのでありますが、本年の一月一日から配給要綱を変更されて、配給の量をだいぶ減らされたのであります。昨年の十二月までと、一月一日からの配給要綱の改正というものは、どこをどういうふうに変えられたか、これは長官でけっこうです。
  71. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 一月から改正いたしました主要な点は、従来配給限度数量として、十キロの配給ワクの中には、準内地米と、それから徳用米を入れていなかったわけでございますが、これを十キロの配給ワクの中に入れるということにいたしたのが主要な改正であります。
  72. 石田宥全

    石田(宥)委員 昨年の政府の統計によると、いわゆる史上三番目の大豊作ということでありますが、にもかかわらず、いま御説明になったように、配給量を減らされておる。さらにその後、また減らされておるわけでありますが、はたして統計面における史上三番目の豊作というものが、事実そのような豊作であったかどうか、国民はここに非常に疑いの目を持っておるのです。よく新聞などでも出ておるわけですが、大豊作だというのに米が足りなくなったということは、一体どういうわけかという疑問を国民は持っておるわけです。これは一体どういうふうに考えておられるか。
  73. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 生産統計につきましては、統計調査部で実施いたしておるわけでありますが、本年の状況から、この統計が過大であるかどうかということがよく言われるわけでございます。しかし、統計につきましても、長年の経験を経て、方法もだんだん精度が高まってきておりますので、われわれとしては、この数字に間違いがない、こう思っております。
  74. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただ、これは大臣にも長官にも指摘をしておきたいと思うのですが、統計というものが、以前とちょっと変わってきておる。これは否定できない。私はこまかな問題を出しませんけれども、私どもは事実を把握しておる。それから作付転換が、水田の宅地や工場敷地への転換の面積が、これは統計にあらわれたよりも大きいのじゃないか。これも事実です。これは統計というのはずっと前のものが出てくるからはっきりしてない。そういう点で問題がある。  それから、これは指摘だけしておきますが、最近、農民は米づくりというものに関心が薄らいできておる。要するに、稲に対する愛情がなくなってきておる。反当たり一俵減収になってもたいしたことはない、一週間土方にいけばそれはカバーできる、こういう思想が全国にびまんしておる。そういたしますと、いま大体三百四十万町歩でありますから、一反当たり一俵ずつ減収くらいが、大体私は推定数字としては妥当なところであろうと思うのですが、そういたしますと、大体三千四百万俵減収になるのです。こういうものがどうも統計の面にもはっきり出てこないのじゃないか。そういうととろが米不足というものがあらわれてくる大きな原因であろうと考えるのです。ですから、私はこの問題で議論をしようと思いませんが、あるいはまた一部の地方にあるうまい米づくりというものも、去年のような天候のもとでは、下等米を多くし、そうして減収をもたらした問題の一つなんです。こういうふうな要因がたくさんありまして、それに対する大事な問題はあと質問をいたしますけれども、これらの問題をやはりちゃんと踏まえて食糧の需給関係に取り組まないと、これはとんでもない問題になるのじゃないかということだけを指摘しておきたい。  そこで、次にお伺いしたいのでありますが、最近国民の米に対する需要相当伸びておりますが、一体どの程度伸びておるか。これが国民一人当たりの需要の伸びという面と、それから昨年と一昨年の政府手持ちの各月残高、なかんずく七、八月の手持ち残高の数字をちょっと出してもらいたい。
  75. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 昨年度の内地米の残高について申し上げますと、昨年度は五月が二百七十二万一千トン、六月が二百十九万トン、七月が百六十七万四千トン、八月が百十四万一千トン、九月が六十二万四千トン、十月が百十九万七千トン、これはそれぞれ月初、期首の持ち越しで精米で換算したものでございます。  一人当たりの需要の伸びでございますが、これは実はいろいろな統計資料から推定する以外にはございません。現在あります調査といたしましては、食糧需給表によるものと、国民栄養調査によるものと、家計調査によるものと、この三つが主要な資料になっております。  そこで、需給表に基づきまして一人当たりを見ますると、三十五年から申し上げますと、三十五年度が内地米、外地米を含めまして九・五キロ、三十六年が九・七キロ、三十七年が九・八キロということになっております。国民栄養調査でこれを見ますと、三十五年が十・五キロ、三十六年が十・六キロ、三十七年が十・三キロ、それから家計調査で見ますると、三十五年が八・三キロ、三十六年が七・九キロ、三十七年が七・五キロということになっております。  ついでに政府の売却量を見ますると、三十五年が五・四キロ、三十六年が六・一キロ、三十七年が六・八、三十八年が六・七ということになっております。  なお、これらの資料につきまして、食糧庁内部で、個別に見たいわゆるミクロ的な調査と、全体から見ました一人当たりの消費量というのをいろいろ検討いたしましたが、大体三十六年を境にしまして、横ばいないし微減の傾向にあるというふうな一応の分析をいたしたわけでございます。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 三十八年度の食糧需給表、それから国民栄養調査、家計調査の数字はまだ出ておりませんか。
  77. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 これはまだ出ておりません。
  78. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、伺いますが、微減の傾向だとおっしゃるけれども、これは一年ぐらい微減したからといって、そういう傾向にあるかどうかということは、私は問題があると思うので、これは需給関係状況が変わっておるからですが、そこで、最近の米不足という問題について、先般来これが週刊誌などに取り上げられてまいりましてから、大臣は記者会見で意見を述べ、長官もまたやはり意見を述べておる。長官は、米の需要が伸びたのは、米が安過ぎるからだ、こういうことを言っておりますね。これはもちろん消費者米価をさしていられることだろうと思うのですが、これについての意見を承りたいし、それから、大臣が記者会見にあたって、最近の米不足は、犬が非常にたくさんになった、犬がたくさん米を食うようになった、それから残飯を粗末にするからだということをしゃべっておられるですね。これで国民は非常なショックを受けておる。これは終戦直後の食糧難時代を思わせるような発言をしておられる。私は、これは大臣ともあろう者が、こういうふうな国民にショックを与えるような発言はすべきではないと思うのです。そういうことから、最近のやみ米の値上がりというものが著しくなってきておると思うのでありますが、その発言については、長官も大臣もこれは責任を負わなければならないと思うのですが、長官が安過ぎるから米の需要が伸びたんだという発言に関して、ここで考えを明らかにしておいてもらいたい。次に大臣の意見を聞きたい。
  79. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 どこに出ていたか知りませんが、私そういうことを言ったことはありません。犬がふえたからなんていうことは言ったことはないです。だれかがそういうことを言ったような記憶はしていますが、記者会見か何かで私から言ったことはありません。私は、都市の人口がふえた、たとえば七十一万も三十七年度に農村から出ているといいますが、そういう面で需要がふえたというようなことは、言ったことがあります。どうも犬が食べるからというのは覚えないのですが、何かの間違いじゃないでしょうか。それもあったかと思いますが、それがポイントじゃありません。
  80. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 私も、いまの需給と直接結びつけて、消費者価格がどうだということにつきましては、どうも申し上げたこともないようなことでありますが、申し上げたような意味がもしこういうことであれば、こういうふうに私は思っております。つまり、最近におきまして、だんだん食糧事情が安定化してまいりましたのに応じまして、これは事実としまして、政府の買い入れ比率は年々高まってまいりました。また、それに応じて売却比率もまた高まってまいっておるのでありまして、そういうことで、いまでは生産量の過半あるいは需要量の過半が、政府米に依存するというふうな状況になっておるわけでございます。これらの状況の中には、もちろん、従来の流通事情というものが、だんだん政府米への依存度を高めるという結果になってきておることにつきまして、価格問題というものが、やはり一つ要素をなしておるのじゃないかというような意味で、申したわけでございます。
  81. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣は言った覚えはないとおっしゃるけれども、閣議後の記者会見でしゃべっておられるということを四大新聞全部取り上げているのです。ちょっとおかしいですね。それは四大新聞全部取り上げております。地方新聞も、共同通信から流れて地方紙も書いておるのですよ。これはあんまりそうとぼけないほうがいいですよ。
  82. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 とぼけちゃいませんよ。まじめになってそういう話をするべき問題じゃございません。犬が食べているから、米の需要が多くなったなんということは、それは幾分はそういう点もあるかもしれませんが、記者会見で話すような問題ではなくて、あるいは記者の中からそういうことを座談的に言った人があるかもしれません。そうかねくらいは言ったかもしれません。とぼけておるわけではありません。  それから、さっき残飯の問題を答弁しませんでしたが、これは米を粗末にしているのじゃないかという意味では、食堂などでも米をよけい残しているということで、さっきお話のように、生産者が米に対する魅力を少し失っていると同じように、消費者のほうも少し粗末にしていやしないかということは、何かの機会に言った覚えがあります。新聞に出たのも、実は私も読んでいないのですが、言ったこともないものですから、いま初めて聞いて、そうでしょうかなと思ったので、とぼけたのではございません。
  83. 石田宥全

    石田(宥)委員 ところが、その記事のときに、やはり配給量については六・七キロを確保するということを言っておられるのです。だから、それはみな関連しているのです。一体六・七キロが確保される自信を持っておられるのですか。
  84. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 持っております。
  85. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、いま長官から聞いたのですが、政府の売却量は三十八年度は六・七キロ、三十七年度は六・八キロ、ところが、食糧需給関係で、これはやはり政府の調査だけれども、三十七年度が九・七キロ、三十八年は九・八キロになっていますね。国民栄養調査ではいまお話のように十・六、十・五というふうになっておる。三十七年は微減して十・三キロになっている。そのほか、消費者世帯家計調査でも――これは政府の資料ですよ。政府の資料でも現実に十キロ以上食べておるのです。そういう状況の中で、六・七キロを確保するということ、これは一体国民にどういった影響を与えるか。私は、そういうところに政府の食糧政策の矛盾があると思うのです。現実に十キロも食べておるのに、六・七キロ確保しますと言ったって、国民は安心しませんよ。私はあとでも少し詳しく申し上げますけれども、だから、最近の食糧危機というようなことが叫ばれると思うのです。要するに、国民に対して十分米をまかなうことができなくなったということは否定できないと思うのですが、どうですか。
  86. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先ほどの六・七とか六。八というのは、これは内地米だけのことについて申し上げたのです。それから政府の売却量自身は一般家庭配給に対する売却量だけを申し上げたのであります。国民栄養調査になりますと、これはもちろん外食も入っておりましょうし、あるいは米を原料にしたいろいろなものが米換算で入ってまいりますから、これは当然開いてくることになるわけでございます。したがいまして、大体政府の売却量が従来のような形でほぼ安定し、全体の売却量自身についても、一人当たりの消費量の傾向に大体即した実績に推移しておるということでありますれば、われわれといたしましては、生産需要と相関連いたしまして、ほぼ安定状況になっておる、こう了解しておるわけであります。
  87. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう官僚的な、そろばんをはじいた議論だから、間違うのです。要するに、人口構造が変わってきて、食構造が変わってきている。そういう結果が、ことしのような問題が起こっているのです。だから、あなた方、あまり机の上でそろばんずくでものを考えられるということであると、とんでもないことになるおそれがある。最近のやみ米が非常に上がったということで、実は私はきょう質問しようと思ったのじゃないのですけれども、国会対策のほうで、地方から出てくる人たち、それから国会議員で地方へ帰って戻ってきた人たちが、地方でやみ米が上がってたいへんだという意見が毎日出てきている。そこで、きょう私に質問をやれということで、いまからやるわけだが、地方のやみ米の実態はどうですか。
  88. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話のとおり、従来の売却量の実績なりを勘案しながら、売却量というものを毎月決定いたしております。そういう関係で、先ほど申し上げましたように、自由流通米が多少減少して、それに見合うものが政府の売却買い受け需要というような形で上がってきた面が、抑制されるというようなことになっているわけでありますが、そういう関係は主として都市にあらわれております。地方におきまするやみ米の価格につきましては、大体食糧事務所を通じて調査しております結果によりますと、若干微増はいたしておりますが、都市に比べてみますと、はるかに安定しているというふうに思っております。ただ、やみ米の価格につきましても、一部旅館あるいは外食用の業務用のものについての面があるようでありまして、たとえば旅館地帯とかあるいは観光地帯とかというようなところでは、多少上がり方が高いという面も、地方においてはあるようであります。都市におきましては、三月ごろから確かにやみ米が上がってまいりまして、たとえば東京で申し上げますと、現在におきましては百七十円、大阪で百六十円、福岡で百四十円というふうな価格に現在なっております。しかし、これも一時の、いわゆる不足ムードと申しますか、そういうようなムードによった面もありまして、最近においては大体横ばいの観を呈しているというように観測しております。
  89. 石田宥全

    石田(宥)委員 皆さんの政府の統計というものは、どうもあとあとと追っかけているから、観察を誤まっているのです。最近は都会はあまり上がっていないのです。ところが、都市周辺の農村地帯が上がっているのです。食糧庁長官は不勉強ですよ。実態を知っていない。なぜそうなっているかというと、これは都会の商人が買いあさりをして上げたのです。ごく最近はちょっと停滞していますが、都会よりも農村が上がっている。たとえば群馬県だとか、埼玉県だとか、栃木県だとか、愛知県だとか、都市の周辺が上がっている。これは否定できない。だから、もっと実態を把握していないとたいへんなことになります。机の上でいろいろな数字をいじくり回しておるということは、食糧庁行政に携わる者としては、これは不勉強なんです。もっと勉強しなさい。  それから次に、需給関係との関連で、輸入の問題についてお尋ねしたいと思うのであります。政府は、輸入によって米不足の緩和をはかろうということを発表しておられるのでありますが、今日までの外米、準内地米の買い付けの状況は、きょう新聞を見ますると、台湾から七万五千トンほどの契約ができて、きょうあたり調印される模様だということが報道せられておるのでありますが、それをも含めて、国別で大体の買い付けの状況をひとつ承りたいと思います。
  90. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 準内地米の現在までの買い付け状況を申し上げますと、加州米につきましては、七万二千トン買い付けまして、これは大体四月から七月ごろまでに内地に到着することになっております。スペイン米は、二万八千トン買い付けることになっておりまして、これも買い付けを了しまして、五月、六月で入ることに予定いたしております。これに加えまして、台湾米の輸入につきましては、例年十万トン程度入ったわけでございますけれども、本日、いまお話がありましたように、第二期作米につきまして、七万五千トンを買い付けることに決定いたしたわけでございます。これも大体五月から七月ごろまでに輸入されるものというふうに予定いたしております。
  91. 石田宥全

    石田(宥)委員 買い付けばいま御報告のとおりかもしれませんが、順調に輸入ができなかったといわれておるのですが、それは従来はどういうところに問題があったのですか。たとえば準内地米について、四月になってから、三月二十一日にさかのぼって実績割り当てをやったために、東京の米屋の中では、準内地米の割り当てがゼロになった店が出ておるわけです。これは一体どこに原因があったのですか。
  92. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 例年でありますと、台湾米の交渉が二月ごろから始まりまして、これに応じて逐次入ってまいったわけでございます。ことしは、台湾との交渉が非常におくれまして、本日やっときまったという状況になりました関係上、準内地米についての配給量は、四月以降に集中するというふうな結果になったわけでございます。
  93. 石田宥全

    石田(宥)委員 まあ、台湾の事情は了解できるのでありますけれども、その他の関係も、たとえばスペイン米にしてもカリフォルニア米にしても、買い付けばできたけれども、予定どおり輸入されないのではないかという見方があるわけですが、これはどうですか。
  94. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 これは全部買い付けを終わっておるわけでありますから、もう船もきまり、確実に到着する予定でございます。
  95. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも台湾米の事情は、国交関係があったからだけれども、その準内地米というものは、非常に大きな役割を果たしておるのですが、それに対する政府の対策が迅速に行なわれなかったのではないか、こう考えられるのであります。これは台湾の米がきまって、台湾の米が入るということになれば、これは近いことでもあるし、そう心配はなかろうと思いますけれども、中には、東京都ではこういううわさが一時もっぱら立ったわけです。これは業者の中からも出、それから市民の中にも出ておるのですが、ことしはオリンピックがあるので、オリンピックに備えるために、上質米は政府がこれを保管してあるんだといううわさが相当流れておる。われわれは、いまの米の需給の実態から見て、上質米を保管しておくなどということは不可能であるという事情を知っておるけれども、かなりこれは根強く流布されておりますね。そういう誤解を生むような事実があったかどうか、また、事実そんなことはあるのかどうか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  96. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 そのような事実は、情報も私は必ずしも聞いておりませんが、事実は全然ございません。先ほど申し上げましたように、徳用米、準内地米を配給のワクに入れましたゆえんのものは、本年はいわゆる特選米、一、二等の米の供給量が減りました関係で、徳用米、つまり下位等級米が逆にふえた、そこで、この需給の中に入れたわけであります。品質的に多少下がったというふうなことから、あるいはそういう憶測が出ているかと思いますが、上質米を確保し、配給に回していないというようなことは全然ございません。
  97. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、大臣にひとつ伺いたいのですが、これは新聞にも数回出ておるわけですが、日本の米不足ということを知ったからでしょうが、中国で、日本が米が足りないようならば、中国から日本に売ってあげましょうか、先般、価格も加州米よりも安くあげましょう、数量も指定して言ってきておるわけですね。ところが、二、三日前の新聞報道でありますけれども、一部の日本業者が、中国に延べ払い方式で輸出をしたいということを政府に要請した。ところが、外務大臣は、延べ払いについては、外貨事情で当分これは許可できないということを言っておるわけです。そういう輸出関係、外貨の事情から考えるならば、いま中国から、しかも加州米よりも安く、品質も悪くないはずですから、そういう米を買われる心がまえはあるかどうか。これはひとり国民食糧の関係だけじゃなくて、国の経済全体から見ても、外貨事情から見ても、重要な問題だと思うのですが、これは閣議でもお話があったことであろうと思いますけれども、どうでしょうか。
  98. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 別に閣議には話はありません。それからまた、正式といいますか、ルートを通じて中共から米をというような話も受けてはおりません。間接にある人からちょっと聞いたことがありますけれども……。しからば、いま買うか買わないかという問題でございますけれども、きょうの七万五千トンですかで、大体輸入計画国内需給計画に見合ったものになってきておりますので、いまのところでは、特に新たに輸入をつけ加える、こういう要はないように見ておりますので、いま買うというような考えは持っておりません。
  99. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほど長官が答弁されましたように、去年の八月は政府の手持らが六十二万四千トンしかなかったのですが、配給量は五十三万トン以上必要だという状況のもとで、東京では政府手持らは二日分しかないというようなこともいわれたわけですが、ことしは先般来、先ほど申し上げるような事情で、かなり危機感というものが起こっておる。昨年はまだ国民の間に米不足というようなことが全然伝わっておらなかったので、比較的平穏に過ごすことができたと思いますけれども、ことしはそういうわけにはまいらないと思うので、そういう点についての配慮を――さっき長官が答弁されたように、ただ算術計算で数字を合わせればいいんだというような、最近の米の需給状況、そういうような実際の動きを理解していないような需給計画を立てておられると、これはたいへんなことになるおそれがあるのです。そういう点について、一体特別に配慮が行なわれておりますか、どうですか。
  100. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 私のほうも、何も数字だけですべてを判断いたしているわけではございません。毎月、各県食糧事務所から具体的な配給の事情、売却の状況等を考えまして、地域的、時期的に調整を加えていくということでございまして、従来の配給実績については、十分これをまかなっていくことが可能である。むしろ、いまもって一貫して、消費者に対する配給量については何らこと欠いていないわけでありますし、消費者自身からもそういう不安感というものはないというふうに情報も得、また、私もそのように理解しております。ただ、一部の流通米というものは、確かに政府に集まり、あるいは生産量としても前年に比べて減ったということから、政府への買い入れ希望に回ってくるために、抑制されたというような面もあると思いますが、これは主として業務用の米でございまして、一般家庭配給に対する所要量ぐらいのものは、もう十分確保することができるわけでございます。先般、端境期における対策といたしましても、輸入米の早期繰り上げということを農林大臣の御指示によりましてやったわけでございまするので、そういう面の措置によっても万全を期しておりますが、いずれ端境期におきましては、どうせ新米が出回ってくるわけでありますから、量的な問題ではない、むしろ操作上の問題であるというふうに考えておるわけです。したがって、それらの点についても十分、去年の例もありますから、配慮いたして、万全のかまえをとっていきたいと思っております。
  101. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、都内における割り当ての方法ですね。これはいつごろから商人に対する割り当てを購入実績の五〇%、それから人口割りの五〇%というふうに割り当て量の制限を行なわれたか。
  102. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 食糧庁といたしましては、当該県におきます全体の売却量をきめて払い下げるだけでございまして、その後の各業者別の割り当て、あるいは卸からさらに小売りの割り当て等につきましては、すべて県と食糧事務所の計画でやっておるわけでございます。したがって実績で配給したり、あるいは配給人口を加味してやったり、あるいは配給人口に実績を加味してやったり、それは地域地域によりまして従来から行なわれておるわけであります。ただ、最近になって特にそのような点が出ました点は、従来は大体すべて実績割りというようなことで対処できておりましたものが、先ほど来申し上げますように、実績の少ないお米屋さんが、人口割りで配給してもらいたいというような傾向も出た関係で、人口割り、実績割りというようなことが特に関心を呼んだことと思いますが、食糧庁としてどういう割り合いでやれというようなことは、全然指示いたしておりません。これは現地にまかしております。
  103. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣伺いますが、あなた、常識的に判断されて、従来の実績割りの半分、人口割りの半分で、一体食糧が順当にまかなえるとお考えになりますか。
  104. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 やはり実績に近いものでないといかぬと思います。
  105. 石田宥全

    石田(宥)委員 ところが、東京都では、いまお話があったように、東京食糧事務所と都とそれから卸商の三者の間に、三十八年度実績の半分、そして人口割りの半分、そういう割り当てをしております。いろいろの資料を私持っておりますけれども、これはまた同時に、その割り当てというものが非常に複雑になっております。時間がないから、こまかいことは申しませんけれども、どうも公平な配給になっておらないと思われるのです。これはいま申しましたように、食糧事務所と都とそれから卸商、そういう三者の間に決定をされるのだが、あまりにも手続が複雑で、多少の手心を加えられてもわかりにくい面はあるけれども、少なくとも大臣がいま答弁されたように、やはり実績に近いものでなければこれはまかなえるものではないと私は考える。ところが、実績の半分、人口割りの半分、それでは米不足というものがやはりはっきり出てくると思うのです。これはやはり食糧庁がそれにタッチしていないはずはない。長官は知らないと言うけれども、もし知らないでやらせておったとずれば、やはりこれは食糧庁の責任だ。そうじゃないですか。
  106. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま申し上げましたように、われわれといたしましては、制度のたてまえ上、消費者から一定の量が小売りに集まり、小売りから卸に集まるということであれば、もちろんそれに基づいてやるというのが一番筋道だと思います。ところが、事実は必ずしもそういうふうな状況でなくここ二、三年来推移いたしました関係上、大体従来の実績を中心に売却をいたしておったわけであります。ところが、実績だけでやりますると、従来自由流通米に依存しておったとか、あるいは比較的一般家庭配給に回す扱い量が少ないような小売り業者から、売却の調整によりまして、その間多少の従来の扱い量と異なるようなものが出てくる結果になりまして、そこで、人口割りを加味しろというような声が出てきたわけであります。したがって、これらの卸間の問題あるいは卸から小売り間の問題、これはやはり現地のそれぞれの状況に応じてやっていただくことが必要であるという意味で、私のほうから特にどういう実績割合でやれ、人口割りは幾らでやれというようなことは指示しておりませんし、今後も現地にまかせたほうが実態に即していけるのではないか、大体は実績でいくのが私も一番妥当である、こう思っております。
  107. 石田宥全

    石田(宥)委員 その結果、非常に不公平な配分が行なわれるということになると、これはやはり問題があろうかと思うのですが、最終的にはだれが責任を負うのですか。東京都ですか。
  108. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 配給の計画あるいはそれの指導については各地方庁が負う、食糧事務所は物の面において責任を負う、こういうことになります。
  109. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう割り当てが行なわれる結果、あるところでは一人当たり七・一キロというところがある。ところが、あるところでは六・三二キロ、こういう開きが現実に出てきておるのです。そうすると、それぐらいの開きが出てくるということになると、これは末端の小売り商人としては大問題なんですね。三千人の配給人口を持っておるところでは、この開きでは一カ月三十俵から五十俵の開きが出てくる。甲の店では五十俵ちゃんと保有しておける。ところが、乙の店では一俵も持たない。そういうところから、小売り店が数軒店じまいをしなければならないというような事態も起こった。これはこういうところがらきているのです。そうすると、それは食糧庁や農林省の責任じゃなくて、東京都の責任だ、都知事の責任であって、食糧庁はそういうものの責任は負わなくてもいいということですか。
  110. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 いまの御質問の中に、小売りの扱い量が一人当たり違っている、これは、現在の消費者段階におきまする購入量というのは十キロを限度といたしておりますけれども、実際の購入は各世帯ごとに非常に違うわけであります。また、地域によっても違うわけであります。たとえば団地を扱っておるような小売り商というのは、一人当たりの売却量はおそらく非常に少ないと思います。これは当然各世帯の購入量をそのまま反映するわけでありますから、その小売り商としての扱い量に差が出てくるのは当然だと思います。ところが、これをならせという要求があるところは、むしろ従来のその少ない額、率を平均化して、それだけ扱い量をふやして、これを業務用に回すとかいうような関連も、その間あるのではないかと私は思うのです。逆に、従来ほとんど業務用米に流して、業務用米が非常に多かったというようなところは、確かに実績が多かったという点もあるかと思います。そこで、これらの今日非常に食糧の事情の変わりました際におきまして、一義的に一定の方式でやるというよりも、むしろ従来の実績を中心にやることが必要である。いま東京都におきまする配給量が少ないために、店をしまわざるを得なかったという御意見がございましたが、これは三月の何日かに新聞紙上で報道された記事に基づいての御質問かと存じますが、われわれもさっそく東京都を通じまして実情を調査していただいたわけでありますが、このような事実はないということが明らかになっております。第一線におきましては東京都が指導の面に当たり、物の面においては食糧庁が当たるという関係でございます。
  111. 石田宥全

    石田(宥)委員 長官のほうはもうちょっと質疑をしますが、大臣は都合があるそうですから……。  いま長官の答弁をお聞きだと思うのですが、大体配分については東京都が責任を負う、その量については食糧庁が責任を負うということだけれども、私は、いま長官の答弁されたような、店を休まなければならなかったという事実を否定されておるのですが、これは私は新聞によって言っているのではないのです。私は現地に行って調べてきた。現実にあったわけです。その根拠は、いま申し上げたように、あるところの小売り商に一人当たりに七・一キロ配給をもらうし、あるところでは六・三二キロしかもらっていない。この開きが、小売り店舗で三十俵から五十俵の開きがある。こういろことがやはりいま指摘したようなところにしわ寄せになっておるわけです。配給はあくまで都に責任を負わせておって、食糧庁は責任がないということは、私は、もしそういうたてまえになっておるとすれば、どこかにこれは欠陥があると思う。食糧危機といわれるような事態のもとに、このような不公平な配分がそのままに行なわれておってよろしいというわけにはいかない。これはやはりもっと公平に――ある地域の人は買いに行ったけれども、米がなかった、米屋は店を閉じておった、こういう事態が四件か五件だからたいしたことはなかったようなものの、これはやはり大きな問題になるので、もしそれがたてまえだというならば、そのたてまえについて検討を加えられなければならないと思うのです。国民はひとしく平等の権利が保有され、確保されなければならない。ですから、この点はきょうこまかなことを大臣を引きとめておいてここで議論をするつもりはありませんが、私はやはり欠陥があると思う。それで、そういう事態を、あとで長官と少し議論しますけれども、そういう点については、やはり大臣責任においてもっと公平に行なわれるように、ひとつ御考慮を願いたいと思う。ひとつ意見を承っておきたい。
  112. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 もちろん、公平にいかなくゃならぬと思います。ただ、食糧庁長官もお答えしておるように、悪平等的な公平でなくて、やはりいままでの実績というようなものに順応して公平にという意味で、御答弁申し上げたと思います。でありますから、地域内において非常にでこぼこがあるということは、これは非常にまずいです。しかし、地域的に言えば、その地域全体については同じような扱いがされておるのではないかと思います。しかし、地域と地域の境目において、いまのお話のような不公平的に考えられる面が出てくるかと思います。これは食糧庁長官から申し上げましたように、そういう配給面については都が責任を負うけれども、物の面においては食糧庁として、農林省として責任を持っておるとお答えしたのでございますから、御質疑のようなことにつきましては、なお一そう調査をしまして、適正にいくように、ことに消費者の面については私ども強い責任を持っておりますから、そういう面に一そう注意をしてやるようにしたいと思います。
  113. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、食糧庁のお調べになった米の購入の状況、販売、消費の状況という調査資料を持っております。それは長官の言われたような面もある。けれども、従来の実績というものの中には、昭和三十八年度にやみ米を多く扱った人の分については、これは実績として出てこないんだという、こういう言い方については、私は異論がある。なぜかというと、去年まではやみ米のほうが、東京都内で一俵当たり大体百五十円くらい高いのです。ところが、公定マージンは現在は二百九十五円で、去年若干動いたようだけれども、やみ米が高いということと、それからその高さが百五十円程度だ。それからマージンとの関係を見ると、やみ米に依存するほうが有利ではないのです。だから長官の言うような議論というものは私は成り立たないと思うのです。それから地域的には、これは農林省の調査でも出ておるように、やはり業務用米の相当量が平均的に消費されておるところ、これは地域的に、それから業態別にいろいろありますけれども、そういうものをも勘案して、なおかつ形式的に実績の五〇%、人口割りの五〇%ということについては、私は納得がいかない。これはやはりどうしてももう一度検討をしなければならないと考える。いまのように責任体制が明らかになったわけでございますから、そういうたてまえにおいて再検討をすべき問題だと思うのですが、どうですか。
  114. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 二つ問題があるようでございまして、一つは、消費者に対する公正配給という面においては平等でなければいけないと思いますが、現状におきましては、ほとんど十キロということは満ぱい、消費規制の意味はほとんどないといってもいい性質のものになっておるわけでありますから、購入者の側におきましては差が出てくるのはあたりまえであります。しからば、小売り業者について平等に扱うということになりますれば、これは購入者、小売り業者に平等にということは必ずしも必要ではないのではないか。大きいものもあれば、小さいものもあるし、扱い量自身についても、一人当たりは消費者のいまの実情をそのまま反映した購入量をあらわすわけでありますし、配給統制、登録、必要量を記入して、その限度において配給するというたてまえになっておるわけでありますから、これはおのずから、いまの食管制度の配給組織がある限りにおいては、私は問題は全然ないと思います。ただ、食糧事情が緩和されて、配給規制という意味がほとんどなくなっている現状におきまして生じたいまの現象でございますから、したがって、従来の実績というようなものは、一つの中心になって考えていくのが、私は実情に合っておるのではないかと思います。ただ、都市におきまして非常に人口の移動が激しいとかいったような場合に、人口の移動量も加味しなければならない。また、配給の秩序がある程度乱れまして、従来やみに依存して、ほとんど配給米を買っていなかった、おそらくそれらのものは一般家庭配給というよりも、業務用にむしろ流通米が流れたものが大部分ではないかと思われますけれども、そういうことを考えてみますと、一率に何割であるとかなんとかということよりも、一応実情に合わせて、公正に配給される食管制度のもとにおける配給統制のとおり実現され、運営されれば、一番問題ないわけでありますから、そういう方向でいま配給面の秩序の正常化ということについて指導をいたしておりますが、実情に合わせたようなことで今後も指導してまいりたい、こう思っております。
  115. 石田宥全

    石田(宥)委員 いまのような制度が公平に運営されれば問題はないのですよ。その具体的な計算のしかたや何か長官御存じですか。知っておられるとすれば、あまりにも複雑で、いろいろな面でさじかげんを加える余地が多過ぎるのです。都の一部の人たちと卸業者の人たちの間に、手心を加える余地が多過ぎるのです。だから、現状のような割り当てをしていけば、どうしても非常な無理が起こってくる。だから、そういうことのないように十分監視をするというか、監督をするというか、これは当然責任があるのだから――私はこまかなこともずっとやろうと思ったけれども、こまかなことに触れませんけれども、大きくいえばそういうことなんです。組合もああいうふうに二本立てのような形になっておるということから、なおさらそこに変なボスなどの介入する余地があるということなんで、そういうことのないように、やはり食糧庁の責任において目を通して、改むべきは改めて、不公平にならないようにすることの配慮が必要であろうということなんです。これはもういまでもわかっておるとおっしゃるかもしれないけれども、あるいはわかっておるかもしれないが、わからない面もあるようです。ですから、そういう点について、ひとつ不公平にならないように、いままで不公平な点があったならば、それはひとつ是正されるようにつとめていただきたいということを申し上げておきます。
  116. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 公平であるということはもちろんのことでございますが、結局米屋が一般消費米の扱いと業務用米を扱っておるということから、いろいろ問題が生じておることは、私も十分承知いたしております。そこで、何よりもまず配給秩序の正常化ということに現在は重点を置きまして、食糧庁としても、食糧事務所を通じ、あるいはみずから小売り、卸等につきまして適時監査を行なって、それらの公正を期するように努力していきたい、こう思っております。
  117. 高見三郎

    高見委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十八分休憩      ――――◇―――――    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕