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1964-04-22 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十二日(水曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       大坪 保雄君    加藤 精三君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    中山 榮一君       野原 正勝君    藤田 義光君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         主幹)     荒巻與四郎君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君  委員外出席者         総理府技官         (北海道開発庁         農林水産課長) 青山  俊君         農林事務官         (畜産局参事         官)      吉岡  茂君         参  考  人 黒河内 透君         参  考  人 安部 義正君         参  考  人         (全国町村会         長)      河津 寅雄君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月二十二日  委員宇野宗佑辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田村元辞任につき、その補欠として宇野  宗佑君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第七号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。  去る十五日の委員会の決定に基づき、参考人から御意見を聴取することといたします。御出席参考人黒河内透君、安部義正君、河津寅雄君、以上三名の方々でございます。  参考人各位には御多用のところ本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べ下さるようお願い申し上げます。  まず参考人各位から御意見を御開陳願い、しかる後必要に応じて委員から参考人の御意見に対し御質疑を願うことといたします。  それでは黒河内参考人からお願いいたします。
  3. 黒河内透

    黒河内参考人 ただいま委員長から御指名のありました黒河内でございますが、農業基本法中核でありますところの土地改良、それに関する基本法である土地改良法整備関連して、国会審議の席にお呼び出しをいただきまして、私の見解を陳述する機会をお与え下さいましたことを、非常に光栄に存じます。もともと私は浅学でありまして、今回の改正法の詳細につきましては十分に承知をいたしておりません。その上何かと職務上の関係もございまして、参考人として出席いたすことはまことに申しわけないことに相なりはしないかと存じましたが、高見委員長からしかるべくできるだけのことを述べろというようなお話もありまして、それではということで参上いたした次第でございます。これから申し上げますことははなはだ粗末であり、また抽象的でありまして、御参考になることはあまりないとたいへん心配しておりまするが、せっかくのお呼び出しでもありまするし、また古くから土地改良行政に関与した関係者の一人として、でき得る限りお役に立つことを申し述べることが私の責務かとも存じまして、いささか私の愚見を申し述べたいと存じます。  御承知のとおり現行土地改良法基本的な性格、あるいは機構というようなものを大づかみに申し上げてみますと、任意の地域関係者が自発的に土地改良事業計画区域等を定めて、土地改良をはかるということが根底となっておるのでありまして、所定の場合に同調しない者に対して強制的措置を講ずるとか、国や都道府県等補助監督等を求め、あるいは国や都道府県がみずから土地改良事業を行なうことを求める道を開いて、円滑適正に土地改良を進めるために、土地改良法に所要の規定を設けておる、かように承知いたしておるのでございます。  そこでこの仕組みに対しまして第一に要約されますことは、国も都道府県も、すなわち国家が自発的に積極的に全国各地土地改良を企画し、推進をはかる制度となっていないという点であります。この点につきましては従来からいろいろと問題とされました。ことに開放経済体制に対応するように、わが国経済機構が大変革を行なって、その重要な一環として農業諸般関係、ことに農用地諸般関係改編整備されていくという場合に、これでよろしいかということが問題になっておりましたが、今回の改正案によりますと、国が確固たる土地改良長期計画を策定して、実施をはかることに定められており、また限定された範囲ではありまするが、国や都道府県が積極的に、自発的に土地改良事業計画し、実施する制度となっておりまして、非常な進歩であると存じます。自余の点はこれらの長期計画を立て、実施してまいりますと、いろいろ問題が生じてきまするので、その問題に対応していろいろ制度整備してまいることとなるかと存じます。したがいましてただいまあまり先走った見解を述べ、心配をするというようなことも、あるいは適切でないかと存じまするが、従来から問題にされていたことを若干申し述べまして、あるいは今回の改正案では十分に触れておらないことであるかもしれませんが、今後起きてくると思われる若干のことを申し述べてみたいと思います。  それはいわゆる末端における土地改良機構と申しまするか、農村における土地改良機構というものをどうしてまいるかということでございます。従来から土地改良区の性格任務等については、非常に論議があったのでありまするが、それを申し上げてみますと、区画整理とか、土壌の改良とか、小規模なため池その他の水利施設等改良維持管理等を行なうようなものから、あるいは旧水利組合とか、あるいは国営都道府県営等事業の全域にわたる促進、費用負担もしくは徴収施設維持管理等機能を果たすようなものまで、非常に種類が多く、事情の異なるものがあります。それを今日土地改良区及びその連合というような機構で処理することになっておりまして、この点については従来からいろいろ問題とされておったのであります。今後われわれが特に当面してくる時代を考えてみますと、全国的に区画形状、農道、あるいは護岸地下水をも含めて用排水関係改編を行なってまいるとか、あるいは周辺工場化宅地化等に伴う各種の被害の防除をはかっていくというようなことが考えられます。それに対応いたしまして、いままでのような土地改良区の制度でよいか、それとも何かこれにかわるべきものが考えられなければならないのではないかということが、従来研究されてきました。これまた今後おそらく問題になると思うのでありまするが、その場合にこれを当然市町村責務といたして、市町村がそれらの万般のことを処理するということにするかどうかという点が、第一に問題になろうかと存じます。もとより市町村が、地方の最も基本的な公共団体といたしまして、そのような機能を果たすようにいたしていくべきである、かように存ずるのでありまするが、しかしながら今日の市町村というものはすこぶる区域が広大でありまして、その各地事情は非常に異なっております。また住民の大部分が必ずしも農用地改善等とは直接利害関係を感じないのみか、むしろ商工業的な発展住宅地化等に力をいたして、土地改良に対する投資に非協力的であり得る場合も相当あると考えなければならないかと存じます。その上また河川法改正が成立いたしますと、市町村が一、二級河川以外の河川管理することになろうかと思います。この市町村が、一面においては土地改良中核体となることも利点はたくさんあろうと思います。しかしながらまた半面からいいますと、最も旧来からの水利関係上問題のある農耕地関係というものが、同一の人格によって、またことに投票権の大多数が農業者以外の者にあるという、そういう市町村理事者によって行なわれる場合に、これをそのままにまかせておくということについても、問題はなしとしないと存ずるのであります。そこで実際問題としてまた考えてみますと、相互によく知り合って、利害共通にするようなところで、しかも農業経営等各般関係をよく調整をはかって、そして土地改良を進めていくというような機構のほうが、中核体として適当ではないか、かようにも思うのであります。したがいまして流域別農用地関係者が自主的に総合的な土地利用中核体責任組織を形成するというような道を開いていくということも、今後研究さるべき問題になろうかと存ずるのであります。それにつきましては、あるいは旧来土地改良区のうちから、それに連合するもの、あるいは合併もしくは分割によって適当なものに改編していくというようなことが考えられてしかるべきではなかろうかという論議もありました。これらも今後研究さるべき問題であろうかと存ずるのであります。  また先ほど申しました旧水利組合、その他広い地域にわたる用排水関係等を行なう組織としては、今日の土地改良区のように直接農用地関係者組織員とする、そういう組織でよろしいかどうかということが問題であろうかと存ずるのであります。ことにその区域内には農用地改良に熱意を持たない小規模の経営者がはなはだ多く、従来の方式ではいろいろと困難が伴うし、あるいは直接の受益地でないと思われる従来からある用排水施設とか、あるいは水利系統というものをも合わせて転換し、改編整備を行なう必要がある場合が、今後ますます多くなってくるであろうと存ぜられます。したがいましていわゆる受益地という観念が、必ずしも明確でないであろうと思うのであります。したがって今後広範囲にわたる水利事業等につきましては、あるいは土地改良区の連合体とか、またある種類の説といたしましては農業水利公社といったような組織といたしまして、土地改良区等の出資とあるいは水利権設定等による方法といったものを兼ね合わせまして、適当な機構として運営していくことが必要であろうかと考えられます。今後農用地転用等が進むなど、事情変更等がある場合にも、その水利権を他に売却するとか、あるいは施設を兼用させる等の必要もあろうかと思います。またそれに適合した機構を今後考えていくということが必要となるのではなかろうか、かように存じております。  他方、いわゆる区画整理とか小規模の土地改良のごときは、多くは一応工事と換地処分が終了いたしますると、あえてその団体を存続せしめなければならないというものでもない場合がきわめて多いと思うのであります。したがいましてそのような場合につきましては、いままでの土地改良区というものとは異なったあるいは土地改良組合などと称せられるような簡易な機構といたしまして、そして設立及び解散を容易にし、その事業が終えたならば、前述いたしました中核体等に引き継いでいくような措置をも講じ得るような道を講ずることも、今後研究さるべき問題ではなかろうか、かように考えております。  なお今後全国各地におきましてますます工場誘致住宅地化等農用地転用を欲する向きが多くなってきました。また土地改良に熱心の度が少なくなる、あるいはことに転用等土地改良をやれば阻害されるのではなかろうかというようなことをおそれる向きもあろうかと存じます。かようなことをいろいろ考えてまいりますと、今後の土地改良に関する末端機構というものは、この実情に即して円滑適正に実施し得るように、制度整備をはかることが必要になってくるのではなかろうかということも考えられるのでございます。また実際問題として介在地等も共同に道路用排水施設護岸等施設しなければならない場合がむしろ多いかもしれない。あるいはいろいろな事情を考えると、土地改良区などは転用地等をも含めて、いろいろの関係を兼ねて行ない得るような組織とし、また場合によっては、介在地等についてもある共通道路とか、あるいは護岸とか、あるいは水利改良施設というようなものは、共通に強制しても行ない得るような道を開くことが必要となってくるのではなかろうかということを考えております。その点についての今回の改正がどの程度用意されておるかということにつきましては、詳細に承知しておらないのでございますが、今後の課題として研究されなければならない問題ではなかろうかとも存ずるのであります。特に広範囲の旧水利組合などというものは、工場等発展あるいは住宅地化というようなことにつれて、あるいは地方の開発上、水利権の一部を他に転用することを必要とするような場合、また周辺工場宅地等の造成による用悪水の防除の必要から、土地改良を必要とするというような場合も多々起きると思います。これらの点についても、いわゆる土地改良事業が他の事業を兼ね合わせて行ない得るような制度を開いて、適宜処理する道を開いていくことが必要ではなかろうか、かように存じておるのでございます。  また他面から申しますと、区画整理等小規模の土地改良の場合はいざ知らず、土地改良区のごとき中核体として存続すべき機構等におきましては、関係農用地の面積の三分の二以上の同意があれば、設立とか議決を行ない得るように改めることも、一つ課題として研究さるべき問題ではなかろうかと思うのでございます。また国営とか都道府県営等事業のごとき広区域土地改良事業の場合に、関係地域農用地関係者の大多数の同意を必要とする今日の制度、そのことについては、今後といえども趣旨としては尊重すべきものであろうと存じますが、前述いたしましたように、直接の受益地以外の土地との水利関係その他を総合いたしまして、切りかえ切りかえをやって改編整備を行なっていくというようなことをも考えてみますと、かような仕組みでいくことが必ずしも必要ではなくて、関連土地改良区の、つまり中核体となるべき土地改良区の同意を得て、それでもって受益地三分の二の同意にかえるとか、あるいは一部直接費用負担をする分については、その三分の二の同意を得るが、他の部分については適宜な処置を講ずるというような、何かその辺のくふうも今後研究さるべき問題ではなかろうかというふうな課題を従来とも持っておったのでございます。  ただいま申しましたように今日の土地改良法というものは、基本といたしまして受益者費用負担し、それを強制的に賦課徴収するということを前提といたしまして、基本の構造ができておると存ずるのでございます。しかしながら今後これをいろいろの方法を兼ね行なうとか、、あるいは受益関係等が不明確な場合があること等をいろいろ考え合わせてまいりますと、必ずしもかような直接賦課徴収前提のもとに、土地改良区その他の制度を組み立てるということを固持する必要もないのではなかろうか、これは逆に申しますと、いろいろまた弊害もあります。その利弊をこれから研究いたしまして、適当な措置を講ずることが必要ではなかろうかと存ずるのでございます。  最後に一言申し上げたいと思いますのは、国家補助、助成あるいは負担ということに関連をいたすことではございますが、土地改良受益ということ、あるいは土地改良の利益ということをいかに理解をしてまいるかということが、今後ますます問題になろうかと存ずるのであります。このことはおそらく国が土地改良長期計画をお立てになり、それを実施してまいるということになりますと、だんだん総合的に明確になってくると思いますので、これまたいま先走ってここで申し上げるということについてもいかがなものかと存じますが、従来ややもすれば土地改良の直接の効果、すなわち生産性の向上あるいは増産というものが、当該個人もしくは当該地域に及ぼす影響というものをもって、経済的効果と考えてきたと思われる節があります。私どもその点について非常な従来から疑問を持っておるのでありまして、一体国家が今後必要な土地改良を推進してまいるというのはどこに最大原因があるか、これはひっくり返して申しますと、国家的規模において土地改良を推進しなければ一体だれが一番困るのか、一番困る人はだれだ、それは当該土地改良関連する農業者諸君はもとよりそれを行なわなければ困ることは申すまでもないことではございますが、さらに大きく考えてみると、日本の国の輸出入貿易関係あるいは労賃の関係、その他各般関係から見て、農産物の価格の上昇、需給の逼迫、いろいろなことを総合してみますと、むしろ困る者はその方面にあるのではなかろうか、こう申しますと受益関係として最大なものはあるいは国家であり、消費者であり、あるいはその他一般公益といわれる向きにあるのではなかろうか、こういう点についての見解を今後はっきりしてまいるということが、土地改良諸般制度を組み立てていく上に、またことに国の長期計画実施していく上において重大なことではなかろうか、かように感じておるのであります。  それともう一つあわせて考えなければならないことは、従来ややもすれば土地改良事業というものを当該農耕地関係だけに限局して考えたのでありますが、しかし土地改良の中には、あるいは先ほど申しました工場とかあるいは住宅地化等がだんだん発展をしてまいりまして、そのために必要となってくるといったようなものが多々ありまして、今後そういう情勢にますますさらされてまいることがあり得ようかと存じますし、また今回の改正案にもありますように、当該土地改良によって広く他に直接の迷惑を与えている部面があるのでありますので、これは国営都道府県営市町村営等で行なう土地改良事業のほかにも、なおあわせて不当利得を生ずるもののないように、また農業者が不当に負担を、つまり他の原因者のものを土地改良関係する農業者だけが負担することのないように、たとえば道路法河川法等における原因者負担とかいったようなことに相通じたような一つ関係を考える。したがって私いままで申しましたことをもう一ぺん繰り返してみますと、土地改良事業というものを、いわゆる道路とか河川というものに共通したような一つ公共事業としてさらに検討して整備をするべき部分が、末端土地改良に至るまであり得るのではなかろうかということも申し上げてみたいと思います。  以上、いずれも申し上げました事柄は、冒頭に申し上げましたように、今後展開されるところの農村諸般関係の大きな改変におきまして、どういうことが現行土地改良法と対比して問題になるだろうかということを、抽象的に申し述べたのでございます。これから国が長期計画を立てて、その実施をはかる段階になると、それらの事柄が具体的に明確になろうかと存ずるのであります。したがいまして、重ねて申し上げますように、先走ったことをかれこれ申し上げることに相なって、あるいは私が参考人として申し上げる範囲を逸脱したことになろうかとも思いますし、あるいはいろいろまた御迷惑なこともあったろうかとも思いますが、今後の方向の一つ課題として、これを御参考にしていただければ非常にしあわせと存ずるのであります。まことに粗末な話でありましたが、一応これをもって私の申し上げることを終わりたいと存じます。
  4. 高見三郎

  5. 安部義正

    安部参考人 私、安部でございます。今回御提案になっております土地改良法改正案につきましては、農業者の久しい希望でございまして、私どもは去る三十六年に農業基本法が制定されるということで、地方土地改良連合会の御援助をいただいて、土地改良法改正要望をまとめまして、これを国会あるいは政府要望したのであります。幸いに自民党の政調会の中には、土地改良制度の小委員会が置かれまして、一昨三十七年の二月に第一回の会合が開かれましてから、回を重ねますこと十五回、昨年の二月に約一カ年を費やしまして、その間にまとまりましたものが、農林御当局からそれぞれの機関に折衝されまして、今回御提案になったわけであります。先般の政府提案理由の説明にもございましたように、昨年の通常国会、さらに臨時国会提案をされましたが、審議未了になりましたことは、私ども非常に遺憾といたしておるのであります。  御承知のように昨年の通常国会には、本改正案と相前後いたしまして、河川法提案がなされました。私どもといたしましては、予期していなかったのでございますが、この際に私は河川法改正案に対しまして、通常国会建設委員会農業団体責任者として、意見を申し述べたのであります。その内容は、ごく簡単に申し上げますと、河川の川床を中心とした管理の問題、さらに水利権の許認可の問題、第三に慣行水利権の問題、それから河川改修土地改良区とのいろいろ関連の問題、最後河川審議会問題等に触れたのであります。さらに昨秋、これは臨時国会におきまして池田総理が開会の劈頭に、農業に対します革命的施策を推進すると言われまして、農業者は非常に大きな期待を持っておったのであります。しかし三十九年度の予算を拝見いたしましても、それから基盤整備事業に対します補助あるいは融資等内容は、私は遺憾の一言に尽きるのではないかと考えておるのであります。  以上の理由のもとに、今回の改正案がほとんどそのまま提案されましたことは、農業者期待にいささかそむくものがございます。この改正案が相当複雑多岐にわたっている改正案であるということも承知いたしております。そこで私は以下、土地改良事業全般にわたる問題点なり、農業者要望事項というものを取り上げまして、皆様に十分な御意見をいただき、その上できるだけすみやかにこの改正案の御審議を念願してやまないものであります。  まず第一点に長期計画の問題でございます。長期計画につきましては今回法律の中に一章設けられまして、政府がその樹立の義務を負いましたことは、本法がいままでの手続法的性格から躍進したということにつきましては、敬意を表する次第であります。もちろん計画樹立にあたりましては、関係行政機関なり都道府県知事意見を聞いて、かつ農業基本法に示される諸施策遂行趣旨に沿って、計画的に施行されるものと思いますが、私はいままで土地改良関係のあります各特殊立法地域審議会にも関係しておりまして、これらの審議会が発足後二回にわたっていずれも会期の延長をいたし、すでに十二、三年を経過しておりながら、事業の進度と申しますものは審議会の要請とは全く相反した事情にかんがみまして、今回の長期計画実施に対する基本方針というものを明らかにしておく必要があるのではないかと思うのであります。  次の問題でございますが、事業に対する補助の再検討、これは御承知のように土地改良事業は、ただいまもお話がございましたように、その公共性というものが非常に論議されております。今回の改正案にはその御苦心のあとがよくわかるのでございますが、しかしあくまで三分の二以上の同意をとって、申請主義土地改良事業が成立するという考え方が先行して成案されておるものと私は考えております。そこで私は現在わが国の非常に枢要な土地改良区の施設、すなわちいままでの普通水利組合の仕事が主でございますが、これは戦前の地主中心時代組合から変わりましたそのもので、その内容はいずれも公共性が強く、その施設地域全般住民の生活とは切り離すことのできないものと言っても、私は過言ではないと思っております。しかし農地改革によりまして、耕作農民を主体にした土地改良区が生まれましたが、この耕作者がどこまでこれら公共的施設に対する負担が可能かどうかということが一つの問題になると思うのであります。それは一つ、排水問題を取り上げましても、また用水問題を取り上げましても、各土地改良区にはそれぞれ問題がございます。また最近の農業道路一つを取り上げましても、非常に大きな問題があるのであります。この農業道路の改修が、私はいまの農業近代化には一番近道ではないかと思っております。しかし皆様御承知のとおり、その補助率は本年度から五%上がった三五%で、その残りが耕作者に負担ができるでしょうか。こういう点は非常に私は疑問を持っております。  さらにいろいろの仕事の採択基準でございますが、これは基準を引き下げるということは、基本法の精神から申しましても、また山間地帯の農業者からも、この採択基準の引き上げということの要望はきわめて多いのであります。さらに今日盛んに実施されております構造改善事業の中の基盤整備事業と、農地局所管の基盤整備事業補助率の食い違いの問題、あるいは団体営だけで基盤整備が完了する地域農業者負担、あるいは国営、県営、団体営等をやらなければ、基盤整備ができないところの農業者負担の大きな食い違い等、これらの補助制度はきわめて複雑多岐にわたっておりまして、これらの補助制度を再検討を行なわなければ、農業者は非常に困っているのではないかということが考えられるのであります。  次に第三点といたしまして、公庫融資の改善でございますが、公庫融資の改善は、毎年各方面からいろいろの要望が出てきております。本年の一月には一部が改正を見たのでありますが、基盤整備につきましては都道府県営事業に対する据え置きと償還期間の延長がわずか延びました問題で、農業者要望しております金利の引き下げはほとんど見られなかったのであります。公庫というものは昭和二十六年に開設されております。その間に政府はいろいろと民間に対しまして低金利政策を叫んでおりますが、土地改良事業に対しましては依然としてそのままの現状ははなはだ遺憾であります。私はここにいろいろの地区の事情を拝見いたしますと、反当たりの償還金が非常に大きい地区もございます。したがいましてこれはある一定限度を越すものに対しましては、農業経営の安定上、金利の引き下げか、あるいは償還期間の大幅延長をするように、農業者事情も十分に考えてもらいたいということを希望いたすものであります。  次に四番目といたしまして、土地改良工事の特別会計の再検討でございます。これはちょうど三十八年度が特別会計が始まりましてから第七年度に当たったのでありますが、特別会計は当初七カ年完了で着工いたしましたが、いずれも完了いたしておりません。これは特別会計の制度ができましてから基本法も制定しておるたてまえから、受益者たる農民は非常に納得しかねている問題でございます。さらに国営かん排事業におきましては、事業費は一般は六割補助でございますが、この特別会計は五割八分の補助とそれに預金部の出資でまかなわれておりますが、預金部の金利が二回にわたって引き上げられている点は、当初の趣旨とも非常に異なっておるものでありまして、今日農業者は預金部の金利の引き下げか、あるいは国庫補助率の引き上げというものを強く要望しておるような次第であります。  次に五番目といたしまして、土地改良事業における起債の問題であります。これはとかく各方面で問題が起きておりますが、防災ダムあるいは湛水防除のような、各種の防災的仕事の府県営あるいは市町村営に対します起債というものが非常にうまくいきませんで、受益者なりあるいは事業の施行の当局は困っております。これらの仕事に対します起債というものは、何かスムーズにいくような特別の処置をお願いいたしたいのであります。  第六の問題は、土地改良事業の先行投資の問題であります。今日のように土地改良事業がいろいろとその他の仕事と関連が起きてまいりまして、たとえば水資源の問題は非常に急を要するというような場合に、あくまで一緒にやらなければならぬというような土地改良事業につきましては、農民はなかなかそれまでの負担ができませんので、先行投資の道を講ずるような措置をお願いいたしたいのであります。  第七番目の問題といたしまして、受益農民並びに系統団体の資金の土地改良事業への投入でございます。先ほど申し上げました長期計画実施にも関連があるのでありますが、土地改良事業農業の中で最も長期で低利で、しかも大量の資金を必要といたすのであります。去る三月六日当委員会におきまして服部参考人の口述に、昨年の暮れの農家の貯蓄は一兆五千六百億円に達したが、全国民貯蓄のわずか五%くらいにしか相当していない、しかも農家は自分の農業にはほとんど投資していないということを言われておりました。これは私も農家が自分の農業にとかく投資していないという事情はよく知っております。これはいわゆる投資をするシステムがないのではないかということであります。そこで私は元利を保証し、あるいは利子を補給することによって、受益地内の事業に投資して事業の促進をはかるようなシステムができれば、これがほんとうの農業基本法趣旨ではないかと存じますので、十分にひとつ御考慮を願いたいと思うのであります。  第八点といたしまして、事業費の受益者賦課につきまして、今回の改正案中では、これは一番重要な問題ではないかと思っております。まず賦課の相手方に対しまして、第三条に規定するもの、その他省令の定めるものとございますが、その省令の内容は私はよくわかりませんが、まず最近の農地の転用というものは、いろいろのいただきました資料から拝見いたしましても、非常に激増をきわめております。したがいまして土地改良区の組合員の脱退というものは次第に多くなって、残された組合員の負担はおのずから限度があり、したがいまして、一方においては各種の基盤整備事業の完成に相当の年月がかかり、事業効果は遅延するということで、土地改良区内の事情というものはますます複雑に相なっておるのであります。特に農用地農用地以外の土地につきましては、用排水なり、地下水、これに関連いたします施設、その他農道、堤防、防風林等に対しまして、その利害の相関連する場合におきまして、その利害を調整する機関というものもございませんし、それが市町村議会にまかされたような形、さらに土地改良区が数カ村にまたがっておるような場合に、一カ村でも不調に終わったような場合の調整等、いろいろな問題がございますので、これが行政処置には万全を期するようにお願いいたしたいのであります。その上、公共用地に対しましては負担の不可能な問題、あるいは団体営の仕事でも、市町村営以外には非農家からのこれらの負担徴収が不可能な問題等、数々の問題が残っておりますので、十分にこの点のお取り扱いには御指導をお願いする要があると思います。なお公共用地なり、利害不特定の地帯に対しましては、先ほどもお話がございましたように、この地帯の負担は特別交付金の考慮が当然なされなければならぬと思うのであります。  九番目といたしまして、土地改良施設に対する維持管理と水の問題でございまして、施設なりこれらの維持管理費につきましては、前項の事業費の受益者賦課について申し述べたと同じことが言えるのでありますが、特に土地改良事業をやって、最後の問題は管理費が非常に安くなるということが目的でございます。したがってさきに申しましたように、補助の問題、融資の問題、あるいは採択条件の問題等いろいろございますが、あくまで維持管理費を中心として、これらの問題が検討されるべきものではないかと思うのであります。別冊としてお手元に差し上げました土地改良施設維持管理基準策定調査に関する報告は、農林省の委託を受けまして、全国土地改良事業団体連合会がいたしたものでございます。その中に維持管理費の調査をいたしたものがございますが、調査の時点は相当古いものでございますが、地区ごとに管理費用というものが相当開いているということが十分おわかりになると思いますので、御検討いただきたいと思います。また水の問題につきましては、最近の水資源の不足問題、あるいは将来の売水制度問題等の検討の必要があるのではないかと思いますので、十分にお考え願いたいと思うのであります。  十といたしまして、農業用水と新河川法の問題でございます。農業用水の約七〇%は河川に依存されております。農業には長い間慣行水利権がありますことも皆さま方御存じと思いますが、河川管理権がいままで国なり府県にございましたものが、今後は小河川に対しましては市町村にも管理権が移されるという場合に、この水利権の許認可の問題等に対して、当然土地改良区と問題が起こってくるのではないかと思いますので、これらの点につきましては十分対策を講ずる必要があると思いますし、また一般に河川全体の川床の低下から用水障害を来たしておって、農業者はこの対策には非常に憂慮しておるのであります。  十一に団体の運営でございますが、委員会からいただきました別冊にも詳しく書いてございますが、現在の土地改良区の地区数は約一万三千余ございますが、そのうち約百町未満の地区は六〇%を占めており、さらに土地改良区が非常に数多く、地区が重複しているという点は、先ほどお手元に差し上げました基準策定の調査書に書いてございますが、これらの状態が非常に複雑になっております。一方、農林年金は、これは職員が強制加入されておりますので、農林年金に登録されている地区数は三十八年十月現在では約一二%に当たる千六百三十九地区、職員数が七千七百八十八人になっています。これが関係面積は、私の計算では大体土地改良区面積の中の約半分、百六十万町歩を見込んでおるのであります。したがいましてこの面積から申しますれば、曲がりなりにも半分の地区には専属の職員が置かれておるということが言えるのであります。しかし以上のような数字から見まして、団体の運営というものはもうそれぞれまちまちになっておりますので、これが指導は非常にむずかしいものと思いますが、さらに土地改良区には財産というものもほとんどございません。積み立て金も大部分が持っておりません。したがって、災害等の非常時には、常に国なり県にたよらなければならないような、こういう嘆かわしい現状になっております。そこで私は、この際企業合理化促進法の中に中小企業の診断という章がありますが、このような点をひとつお考えいただきまして、土地改良区の経営診断というものをいたしまして、これによって自力で更生できるもの、あるいは行政指導を要するようなものも十分に御調査なさる必要があるのではないかと思います。これは非常に土地改良区の数が多い関係もございますので、国なり県の行政事務の及ばないような数多い弱小土地改良区等に対しましては、幸い地方土地改良連合会機関を動員いたしまして、この経営診断を行ないまして、一部においては土地改良区の整理統合をする、一部においては土地改良区の徹底的指導を行なって、できるだけ土地改良区というものは数少なく、善導していく必要があるのではないかということを私は考えるのであります。  最後に、土地改良制度調査会の設置、これは私がいままで申し上げましたように、今度の改正案というものは非常に御苦心されてつくっておることも十分承知しております。農民もこれには非常に期待をかけておるのでありますが、土地改良事業にはまだまだ未解決の問題が山積しております。したがいましてこれらの問題を十分御理解いただきまして、さらに今後の事態に対処するために、土地改良制度調査会というような機関をつくりまして、次の改正に直ちに御準備願いたいということをお願い申し上げまして、私の意見を終わりたいと思います。
  6. 高見三郎

  7. 河津寅雄

    河津参考人 参考人河津でございます。このたび土地改良法の一部を改正する法律案を御審議いただきますにあたりまして、本委員会において参考人として発言の御指名を受け、現地において当面いたしております問題について意見を申し上げる機会を与えられましたことを、厚く感謝申し上げます。  土地改良事業実施いたしますにあたって、まず第一に問題となる点は、計画並びに調査、設計等の段階において、人件費その他諸経費が急激に上昇している関係上、その大部分は地元負担でありますために、事業計画以外に地元の負担が高くなる傾向にあります。また最近の農業土木の機械化、農作業の機械化などに関連して、設計等の場合にも技術能力が、数の上でも、質の上でも現地では不足してまいっております。これらの点について十分な措置を講じていただきたいと思います。  第二に、土地改良区の設立についてでありますが、土地改良事業計画実施については、あらかじめ資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならないことになっております。農業構造改善事業においては、全員の同意を得るように指導されておりますが、御承知のごとく最近のように兼業農家や出かせぎ農家が多くなりますと、新しく投資を好まない者が多く、さらに事業種類によっては、最近の地価の上昇によって、計画に賛意を表しない者がおる現状であります。したがって有資格者の三分の二という考え方を有資格の人員でなく、面積上の基準に改め、土地所有の大小と並行した利害関係をもとにした発言権を認める必要があるのではないかと考えます。また賛成をしない者の農地については、長期低利の資金を必要なだけ裏づけて、賛成者の側で買い上げる措置を考えるべきではないかと考えます。  次に、土地改良区の運営を強化するため、役員の責任をさらに強める措置が第十九条の改正で考えられておりますが、実はこの土地改良区の役員は苦労の多い仕事でありまして、現状では地区によってはなり手がないというようなありさまで、困っておるような状態であります。それがさらに「連帯して損害賠償の責に任ずる。」ということになりますと、いよいよもってなり手がないということになりはしないかと心配するものであります。土地改良区の運営のむずかしさは申し上げますまでもなく、地区内農家の階層分化によって、利害が以前のように統一しがたくなったことと、経費負担徴収がきわめて困難のためと考えられます。したがって役員の連帯保証というよりは、むしろ国の経済的援助を強化する方向で、土地改良区の運営の円滑化を考えていただきたいと考えるのであります。  第三に、国、県営事業費用の全部または一部を市町村負担させ、市町村は条例を設けて関係者から徴収するように考えられておりますが、経費滞納分等の赤字を市町村にしわ寄せするおそれが多分にありますので、市町村に責任を持たせる以外に、他の方法を考えていただくわけにはまいりますまいか。どうしても市町村に責任を持たせるということになれば、財政上の負担を絶対にかけていただかないような、はなはだかってなお願いですけれども考え方にしていただきたいと考えます。  第四には、土地改良施設の維持管理についてでありますが、最近のように工場群や住宅団地がどんどん農業地帯に伸びてまいりまして、用排水路や農道等に対し、関係農家以外のものの利用が高まっております反面、農地の壊廃や戸数の減少等で、農家負担は逆に高くなってくるといった状態で、現地では非常に困っております。またこのような施設の維持管理負担金の徴収等、土地改良区の経常的業務は年々増大してまいりましたが、それらの事務的経費や人件費等はほとんど市町村負担となりつつあります。したがって土地改良区が何とか継続して業務を執行している裏には、市町村がほとんどの場合てこ入れをしているといっても過言ではないと考えるのであります。逆に市町村にその能力がない場合には、土地改良区も運営に困る場合があり得るのであります。このような実態を十分に御検討賜わりまして、これらの問題に対する財政措置を考えていただきたいと考える次第であります。  以上申し述べましたごとく、土地改良事業実施につきましては、農業部門の所得格差の低下、兼業や出かせぎの拡大、工場や住宅の進出などがあり、一方においては農作業の機械化を中心として、土地条件が大規模な区画を必要とするのに、農家の階層的な利害が錯綜するなど、いろいろ新しい、しかもむずかしい条件があらわれていることに対処して、どのようにこれを推進したらいいかということで、現地の町村長としては苦しんでいる次第でありまして、制度上の改善をやっていただくと同時に、財政上の措置もこの際思い切って改善強化していただきたいと存じます。  なお全国町村会といたしましては、別途に要望事項を提出してありますので、よろしく御検討賜わりたいと存じます。
  8. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人各位の御意見開陳は終わりました。  これより質疑に入ります。なおこの際一言申し上げておきますが、黒河内参考人は現在土地調整委員長として政府委員でございますので、参考人に対する質疑は、陳述されました御意見範囲内でお願いいたします。角屋堅次郎君。
  9. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま黒河内参考人はじめ安部河津それぞれ参考人から、貴重な御意見が述べられたのでありますが、時間の関係もありますので、以上お述べになった御意見関連しまして、数点簡潔にお伺いをいたしたい。  まず第一点は、今度新しく設けられることになりました土地改良長期計画に関する問題でございます。これはもう今日までの審議の中でも政府のほうにいろいろお尋ねをいたしております。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長   代理着席〕 この機会に、特に安部参考人土地改良については、直接団体側の役員として今日まで事業の中枢的な役割りを果たしてこられた立場でもありますので——大体この土地改良長期計画は、政府の考え方によれば、十年間というめどにおいて基幹かん排、農用地造成、圃場造成、防災、大体この四つぐらいに分けて、土地改良長期計画を立てよう、こういうふうに考えているようであります。問題は、先ほど来お話のように、土地改良長期計画を立てるにあたりましても、実際の土地改良事業の推進というのは、申請主義、それと国営、県営の上からの計画を全体にはかって、そうして事業を推進する、二本立てになっているという点もありまして、長期計画はそれらの事業推進の性格から見て、どういうふうに計画樹立するかということが一つ問題点だろうと思う。御承知のように農林省といたしましても、三十五年にも調査をし、三十八年からさらに具体的な調査をやる。いま三十八年の調査については集計中だということでありますが、およそのめどとして、この土地改良長期計画事業予算というものは、土地改良団体あたりでは大体十年間でどれくらいのものを予測しておられるか、あるいはどれくらいにならなければ、今後の開放経済下における土地改良事業の実際の万全の対策というものはできないというふうに見ておられるか、もしそういう資料的なものがめどとしてあれば参考までにお聞かせ願いたい、こういうふうに思うわけであります。
  10. 安部義正

    安部参考人 ただいまの将来の長期計画に対します団体としてのめどという御質問と存じますが、私どもごくきわめてわずかな人数で、しかもきわめて微力でございまして、一部この長期計画内容は、現在農林省が調査をいたしております点をわずか承知いたしておりますが、私といたしまして、土地改良事業の中で、御承知と存じますが、約四割というものが維持管理的な仕事になっております。この維持管理的の仕事というのは、いままでの過去の施設が一体現在の時点でどのくらいの事業費になるかということを一応計算してみますと、これはまた皆さんによっていろいろ御意見が違うと思いますが、たとえばため池ならため池というものが一体どれくらいの金額になるかというと、これはこういう計算の仕方があると思うのです。ため池は大体全国で二十七万七千カ所ぐらいございます。ここにたまっている貯水量というのは約二十億トン、こういう計算が農林省ではできておりますが、いま団体営のため池の一トンあたりの工事費というのは、約四百五十円か五百円ぐらいになっておりますので、そうしますと大体ため池のいまの施設というものは一兆円を少しこしている施設ではないか、こういう計算ができます。その他揚水機等につきましては、約七十万馬力の揚水機があって、一馬力に対する工事費というのを一応三十万円ぐらいと見ますれば、三、七、二千百億円、こういうもので、大体土地改良区の施設というものは、最小限見積もっても私は三兆円は水田に限ってあると思います。そうすると大体一反歩十万円ということになります。この中でいま四割の施設の維持管理的な仕事が新しい長期計画に入るといたしますと、その分、耐用年数との関係がございますが、それが維持管理的なものとすれば、一応十年で締め切ってしまえば、その分の十年間の維持管理的の仕事がそれに加わるということ、それから新規の地区につきましては、これは先ほど申し上げましたように、私どもなかなかキャッチはできかねるのでありますが、大体いろいろと仄聞するところによると、全体で二兆円近くになるのではないか、こういうような金額を聞いております。したがって維持管理的な仕事と二兆円程度のものを十カ年にやるとすれば、大体年間の平均の事業費というものが出てくるのではないか、こういうふうに考えられますので、その長期計画にはいろいろと府県の御意見なり、あるいは政府の御意見も入ってくるわけでありますが、団体といたしましては、そういうような計算でやっていかなければ、なかなか細部の計算ができないのではないか、大ざっぱな数字でそういうようなあれをつかんでおります。
  11. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 御承知の所得倍増計画を昭和三十五年に立てて、昭和三十六年から十年間の土地改良計画費用の内訳として、土地改良三千八百二億、開拓千五百三十億、干拓千百二十九億、合計いたしまして六千四百六十一億という計画を立てたわけです。今日農地局の予算を見ても、公共関係の予算が大体八百億をこえておるというような関係から、しかも今度の土地改良法の一部改正で、草地造成を加えまして農用地造成という形が考えられておるわけでありますが、これから農用地の造成、われわれの考え方からいけば、単に既耕地の土地改良事業だけでなしに、積極的な農用地造成、特に畜産に見合う草地造成というものを積極的に進めるということを長期計画の中で考えていくとすると、総予算も、従来のトレースしてきた予算よりは相当ふえるだろうというふうに考えてみると、少なくとも一兆円以上、いまお話のように二兆円近くの予算というものを考えてこないと、この法改正に伴う積極的な土地改良事業の推進ということにならないのではないかという感じがするわけです。この点、黒河内さんは政府委員という立場もあられるようでありますけれども、何といっても今回の法改正で一条の目的のところ、あるいはそれ以降のところで議論として出ましたのは、黒河内さんのほうは公共事業性格というものを明らかにしていかなければならぬということを強調されて、われわれもその点では賛成でありますが、ただ一条の目的以降の改正の中で議論として残っておるのは、従来の生産政策的な土地改良性格というものから、構造政策的な土地改良事業性格に変わっていく、そうなると、それは公共的性格というものが強まっていくのか薄まっていくのかというふうな点が、いろいろ議論があるようでありますけれども、それは先ほどの陳述で御意見が出ましたので別にいたしますが、土地改良事業長期計画というものについて黒河内参考人として、今後の計画樹立にあたっての参考意見がありますれば、この際承っておきたいと思います。
  12. 黒河内透

    黒河内参考人 せっかくのお尋ねでございますが、長期計画そのものについて、ただいま政府でお考えになっていることについては十分承知しておりませんので、その点はひとつ留保していただいて、全く個人的な見解を述べさせていただきたいと思います。  私は長期計画というものを考える際に、でき得ればいまの十年という後における日本の国情というものが、もし土地改良を行なわなければどういうことになっていくかということを一つ前提として、そこに起きてくるところの姿というもの、そこまでに起きてくるいろいろの混乱、いろいろなできごとというものを想定いたしまして、それをどういう手段を講ずれば排除していけるかというようなことから、長期計画を立てていくことが最も実際的ではなかろうか、かように考えております。それではそれを実行する上において、農業者なり関係者の希望は一体どうなんだ、どこまでの負担能力があるか、あるいは都道府県市町村という公共団体は、どれだけの負担能力があるかというようなことも財政的にも考えたりいたしまして、そうして先ほども申しましたように、その土地改良をやることによって一番利益を受けておるものは一体だれか、それを行なわなければだれが一番困るかというようなことをも勘案をいたしまして、財政的措置を講じていきたいということになろうかと考えております。これはいま申しましたのは非常に理想的な考え方で、実際いろいろやりますのには調査の都合もありましょうし、また十年先を見通せといっても非常に困難な事情もあろうかと思いますから、もとよりそういう理想案どおり参る筋のものでもないし、ことに国家の財政事情もあろうかと思いますから、理想は理想として、現実の場合はいろいろ具体の材料で推認できる範囲ということに相なろうかとは考えております。さような意味で申しまして、ことに先ほど御指摘のとおり、私は、公共性ということ、ことに水利事業あるいは保全事業というようなものにおける公共性というものを、河川とか道路とかというものと本質的に違わないものではなかろうかというように個人的に考えております。道路などと比較してみて一体どこに相違があるのか、河川改修と比較してみて、どこに相違があるだろうかというようなことをも考えまして、相互の均衡というものは十分に尊重していかなければならないではなかろうか。それで受益ということを農耕地に限り農業者に非常に狭く考えていくということに、大きな問題点があるのではなかろうかというようなことをも考えて申し述べたのでございます。財政的な具体の数字あるいはその他についてこまかい——こまかいといっては非常に恐縮ですが、詳細なことについては御返答できないことをまことに残念と思いますが、これで終わらせていただきます。
  13. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 土地改良事業を推進する形として、国営があり県営がある。また国の場合には特定土地改良工事特別会計による施行があり、そうして第一線のやり方として団体営といわれておりますけれども土地改良区、あるいは農業協同組合、あるいは市町村、あるいは農業委員会、こういうやり方があるわけですが、第一線のにない手としては土地改良区というのが、土地改良中心的なにない手になっておる。  まず問題を分けて、安部さんのほうで、いままで団体側として事業中心的にやっておられて、国営事業あるいは県営事業、こういうふうなものを見ておって、その事業推進についての問題点というふうなものについてお気づきの点があれば、この機会にひとつ御意見を出していただきたいと思うのであります。
  14. 安部義正

    安部参考人 先ほども申し上げましたように、地区地区によっていろいろ事情がございますので、具体的に申しますれば、これは角屋先生の近くに、愛知県の宮田用水がございます。この宮田用水は例の木曾川から水を入れまして、現在約一万一千町歩ぐらいの受益者を持っております。これが今回濃尾用水として国営で犬山の付近に取り入れ口ができたわけでございますが、あれにくるまでの問題点というものは、常に木曾川の川床が下がってしまいました関係から、年々取り入れが困難になって、せきを改修するたびに上流へ上流へと上げている。そうするとこういうような仕事が、一方においては河川の改修というものは、どんどん川床を下げていくし、国営でやろうと県営でやろうと、そういう仕事というものが一部において農民が大きな負担を受けているという点は、国営でも県営でもいずれでも同じ負担だと思います。それからこの土地改良の中に約三十九の排水関係土地改良区が重複しております。これは例の日光川は非常に水位が高い関係から、全部ポンプ排水をいたしております。そうすると、これはいずれも団体営の事業として扱われているわけでありますが、これが国営受益地内でさらに団体営というものが重なって、農民からいえば排水と用水との負担が別々に取られているわけでございます。しかし土地改良区を運営するとすれば、それ以外の費用というものが全部農民にかかってくる。そういう重複している場合には、そういう問題というものが農民側に相当の荷になってかかってくるという問題が起きてまいっているわけであります。さらに事例をあげますと、東京の近くに現在水道の取り入れ口と統合しております見沼代用水土地改良区でございます。約一万四千町の区域でございますが、この中では、ほとんどの水路が県営で改修されております。この県営の改修の趣旨と申しますのは、非常に水路の地域が広いので、水路が漏るという関係から、下流は東京都の足立区まで受益地が及んでおりますが、この足立区内の間断かんがいをやらなければ用水が間に合わないということで、水路の補強をやったわけであります。しかしこれは県営でやりまして、下流からも負担金を取っているわけでございます。詳しく書いたものはございますけれども、満足にまず水がいっていない。その原因はどこにあるかと申しますと、上流の区域に陸田と申しまして畑を毎年毎年水田に切りかえている。したがいまして用水というものも非常に食い込むという関係から、同じ県営の中でも受益が下にいかないで、上流でほとんど用水を食い荒らされてしまう。それから、話がちょっと横にそれますが、この中では、たとえば浦和の水道のようなものはほとんど地下水でまかなっておりますが、この地下水の水源にも当然この改良区の水が浸透していると思います。そういうふうにして、その他の事情がいろいろ複雑になっておりますので、地区地区の例をあげませんと、ただいまの御質問のお答えがあるいは満足にできないのではないかと思います。
  15. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私、そういう意味で必ずしも御質問申し上げたのではなかったのですが、時間の関係もありますのでその程度にしておきます。  団体営といいますか、末端土地改良推進の機関として土地改良区、あるいは市町村農業協同組合農業委員会等ありますが、土地改良法の考え方からいけば、やはり土地改良区が中心的な事業推進母体だという考え方、そうすると全国を通じての機構の体制という中では、事業実施能力、技術能力等も含めてそういう陣容を持たなければ、相当長期にわたって大きな予算を必要とする土地改良事業の成果を十分にあげることはできない、こういうふうになろうかと思うのであります。その点で、第一線の一万三千近くの弱小土地改良区といわれるものに対する再建整備というようなことから、企業診断その他の御意見も出ましたけれども末端整備に伴う県、国、こういうものの機構について、さらにどういうふうに充実していく必要があるかということが、一つ問題点だろうと思います。団体側の意見として中央会構想というものがあるようでありまして、そういうことが一つ問題になるようであります。そうすると団体側の意見として農用地造成、未墾地造成、特に草地等については独立の機関をつくって、全国的な事業推進というものを計画的にやったらどうかというような御意見もあったやに考えるのでありますが、そういう問題等についても、先ほどの陳述では必ずしもお触れにならなかったのでありますが、お考えがあれば承りたいと思います。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  16. 安部義正

    安部参考人 将来の大きな長期計画をやるための中央なり末端機構の問題と思いますいが、これは私なりの考えは、農林省の方もここにおいでになりますが、とかくいままでの事業の進め方というものは、計画は非常に進めておりますが、たとえば農林一つ拝見いたしましても、私も昔農林省におりましたが、私がいた当時は非常に現地の指導に力を入れておりました。それですから、たとえば県営事業一つを見ましても、工事の段取りの指導から工事の施行の指導、さらに検査等、厳重にやっておったのでありますが、いまの姿はどっちかといいますと、予算を分けることは非常に合理的に分けておりますけれども、そういう技術屋の現地の指導というものが、非常に手薄ではないかという考えを持っております。したがいまして、なかなか技術者も不足しておりますが、農業の仕事というものは現地の指導というものに重点を置いてやるべきでありますので、国なり県というものができるだけ現地の指導に力を入れなければならぬと思います。それは私は、国営なり県営事業に対しては、いまの機構で十分にできるのではないかと考えます。ただ団体営の仕事になりますと非常に数が多くて、しかも農民を相手に考えておりますので、ほんとうにを手をとってやらなければならぬという関係から、先ほど河津先生のおっしゃったように、団体営に対しては計画費も満足につけておりません。それからこれに対する事業の指導というものに対してもあまり重点を置いていないという関係で、先ほどお話がございましたように中央会の構想というものも私ども持っております。これはあくまで技術を中心に、団体事業というものはもっと事業ができて、その事業も水の管理ということまでの指導をやるということになれば、これは相当大きな機構でなければできませんけれども、これらの点を十分に指導できるような機構というものは、当然考えていかなければならぬものと私は考えております。
  17. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農民負担の問題についての御意見が出たのでありますが、われわれは今日土地改良事業を推進するにあたって、土地改良機関事業については、全額国庫が見るという考え方を前提にして、いまの非常に複雑な補助金の補助率というものをもっと整理統合してはどうか。団体営についてもざらに八割程度にまで前進させたらどうかという気持ちを持っております。たとえば開拓パイロットで実施をする補助率の関係と、草地造成で他の部面で実施をする補助率の関係を見ても差があった。先ほど御指摘の特定土地改良工事と国営かん排事業の間にも矛盾があるように、現実的歴史的経過はあるのでありますが、やはり土地改良事業長期計画を立てて、これから強力に土地改良事業をやろうという場合に、そういう農民負担能力というものを前提にした補助率の合理化ということが当然考えられなければならぬ段階がきている。もっとわかりやすく整理統合する必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。この点は先ほど来御意見があったわけでありますが、特にその問題と関連して、土地改良施設の維持管理という問題がやはり重要でありまして、この点については、今度の法改正管理規定というふうなものを明確にし、また土地改良事業計画を立てるにあたっては、土地改良施設管理に対するところの計画というものをあらかじめ明らかにしなければならぬというふうなこと、そしてそれが一体だれに最終的に移っていくのかということも、予定者を立てるというふうな具体的なものが出ているのですが、問題は国営、県営等の土地改良施設というものは、やはり原則として国あるいは県が管理責任者になるとか、あるいは団体営等の問題についても維持管理について、償却その他も含めて必要な国、地方団体等が財政援助を考えるとか、そういう点で土地改良施設というものの維持管理というものが過重な農民負担にならない形において、十分財政的配慮というか、他の方法でやられるということが出てこなければならぬ、こういうふうにも思うわけでありまして、これらの点について、さらに安部さんのほうから御意見があれば、承っておきたいと思います。
  18. 安部義正

    安部参考人 先ほども比較的こまかく触れたわけでありますが、私はやはり維持管理費用は、できるだけ合理的に、かつ安くなるということが、土地改良事業の最終の目的と自分では考えております。したがいまして、先ほどお手元に差し上げました資料をごらんいただきましても、たとえば京都の巨椋池のごときは、反当たり四千円の維持管理費が取られている。それから、中には百円以下で維持管理費がまかなわれておる。しかもこれの中に入っている水利費は、反当たり約六百円ぐらいを見ております。そうしますと、そういう点に非常に不合理があるのじゃないかと思います。したがって先ほども申し上げましたように、いままでは国のベースで、国営では何割、県営では何割、団体営では何割というベースで仕事をしておりましたけれども、しかし今後における土地改良事業というのは、基本法の線に沿っていくということになれば、維持管理費の非常にかかるところ、あるいは維持管理費が安いところによって、いろいろといまの国の制度というものは変えらるべき筋合いのものではないかと思います。そうしませんと、あくまでも維持管理費が高いところは、永久に子孫代々まで高い維持管理費を払って、しかも米価というものはほとんど同じ値段で買い上げられておるという点で、非常に矛盾があると思います。したがいまして、そういう点で制度を十分考えていくということが、土地改良事業の最終の目的ではないかと思います。後進地帯というものは、いままでの政策では経済効果というものに中心を置いておりましたけれども、今日ではそうではなくて、やはりもっと後進地帯を救済してやるという形をとるべきではないか、そういうような姿で長期計画が進られるべきではないか、こういうように考えております。
  19. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの土地改良施設の問題については、たとえば道路の場合に、国道とか県道とか市町村道とか、いろいろありますし、また河川の場合でも、河川法改正で一級、二級の問題でランクがあるわけです。土地改良施設の場合も、施設の公共的な性格から見た重要度、あるいは先ほどもお触れになりました中にも、たとえば土地改良施設の中でも単に農業者ばかりでなしに、農業者以外にも効果を及ぼしていく、そういう点から市町村負担の問題も新しく出てきておるわけでありますが、そういう重要な土地改良施設についてはやはり格づけをして、その格づけに応ずる負担、これはやはりベースには農民負担の軽減という点に重点を置いたそれぞれの区分によるところの負担というものは、やはりやっていく必要があるのじゃないか。そういうことでやらないと、いま御指摘のように末端の農家の方々が地域によっては非常に過車な負担を受けなければならぬ。そういうことでは、必要があってもなかなか土地改良事業に踏み切れない、そういう問題も私は出てこようかと思われます。土地改良施設についての適正な格づけをして、その格づけに基づくところの農民負担以外の負担も考慮した適正な土地改良施設の維持管理をやっていく段階が、今後ますます必要になってくるのではないかというふうに感ずる一人でありますが、この点、黒河内さんから御意見がありますれば承りたいと思います。
  20. 黒河内透

    黒河内参考人 お話の点は一つの考え方であろうと思います。ただ格づけのしかたは、技術的にはなかなかむずかしいと思いますが、今後そういう努力をしていく必要があるし、ことに国営事業をいま頭首工だけでやっているとか、いろいろそういうような点をもう少し何かくふうをしてまいりますと、格づけが非常にやさしくなっていくだろう。頭首工だけやって、国営事業で格づけがどうだということならむずかしいと思いますから、むしろ水利系統を一体として、どこまではどういうことになるかといったようなやり方にしていく。今後また国営事業や県営事業などの考え方も大きく変わっていくのじゃないかと思いますが、まあいま即時にどういうことがいいかという具体案は申しかねるわけでありますが、非常に大事なアイデアだと思っております。
  21. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、いまの点は土地改良事業を推進した場合の土地改良施設のすべてについてやる必要があるかどうか、そういうことは問題だと思いますが、重要なものについてはやはりそういう考え方で考えていかなければ、今日まで実施していた土地改良事業施設の維持管理の現況から見ても、やはり考えていく問題の一つだと思うわけです。  時間の関係もありますので、最後河津参考人にお伺いしたいのでありますが、今度の法改正市町村負担という条項が新しく出てまいりました。第九十条の第五項、第六項にかけて、国営土地改良事業負担金です。さらに第九十一条の第二項、第三項にかけて都道府県営土地改良事業負担金等の問題について、市町村負担の条項が出てきているわけでありますけれども、先ほど市町村の財政負担ということに実質上ならないようにという御陳述があったわけでございますが、この点は自治省と町村会との話し合いでどういう了解点に立って、この条項については第一線としても改正について異議はないというふうになっておるのか。自治省との間でこれらの問題については当然お話し合いがあったろうと思いますが、そういう点について、もしそういう話の内容があれば、この機会に承っておきたいと思います。
  22. 河津寅雄

    河津参考人 昨年の二月に農林省のほうから町村会に参りまして、そのことのお話はあったかに聞いております。しかし昨年の十月から町村会の世話をさせられるようになりましたので、従来の関係があまりわかっておりません。それで皆さんのお力で、先ほどお願いしたように、農林省と自治省でよく御研究いただきまして、市町村負担が加重されないようにお骨折りが願いたいということでございます。
  23. 林百郎

    ○林委員 ちょっと関連して。河津さんに私もお聞きしたいのですが、今度の改正法で、国営土地改良事業負担金を都道府県に移譲し、さらに都道府県市町村に議会の議決を経てその負担金を移譲していく。そうすると最終的には国営事業負担金が、市町村議会の議決を経て市町村負担に転嫁されて、そしてそれに対する徴収の義務は市町村自体が負う。もう一つは、今度は都道府県改良事業についても、最終的には市町村の議会の議決を経て、その事業負担をまた市町村に転嫁することができるということで、結局土地改良事業で一番問題になる費用負担あるいは賦課金の徴収、こういうことが一番自治体の末端である市町村にしわ寄せされてくる、これは私の考えでございますが、そうして市町村がその徴収義務を負うということに対して、市町村としてはどういうお考えがあるのか聞かしていただきたいことが一つと、そして土地改良区が賦課金の徴収を、延滞金の徴収市町村に委託する場合がありますけれども、そういう場合に当該市町村土地改良区の組合員との間に、従来どういうような問題が起きているのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。ということは、結局この改正案によって私たちの考えとしては、末端市町村土地改良区の組合員との間の賦課金の徴収あるいは延滞金の徴収というようなことにからんで、相克、摩擦が末端市町村組合員との間に起きることが危惧されるわけです。その辺についてのお考えを聞かせていただきたい。
  24. 河津寅雄

    河津参考人 国営、県営の場合、御質問の市町村がかわって徴収するというふうにしなければならない、そんなふうに法律案はなっております。全市町村民が希望したような事業でしたら、これもやりいいと思いますけれども、先ほど黒河内さん、安部さんからお話がありましたし、私からも申し上げたように、必ずしも全市町村民全部の要望するようなことでないようなものを、市町村が県、国になりわかって徴収するというようなことは、なかなか言うにやすく行なうにかたいと思いますけれども、先ほど何とか他にいい方法がないでしょうかとお願い申し上げたのであります。しかし国費、県費を多大に使って土地改良をやる以上は、市町村に賠償義務が生ずることもやむを得ない面もあるような場合もあるかと思います。ただいまの答弁でよろしゅうございますか。
  25. 林百郎

    ○林委員 そうすると従来どんなような問題があってお困りになっていたか、具体的な事例があったらお聞かせいただきたい。またたとえば延滞金の徴収市町村に委託するようなことをされたことは、いままでないのですか。
  26. 河津寅雄

    河津参考人 私の経験ではありません。農業協同組合なんかはあったと思いますけれども、町村にはなかったと思います。
  27. 林百郎

    ○林委員 もう一つは、今度の改正によりますと、国営事業あるいは都道府県事業費用自体を、まず市町村が議会の議決を得て負担しておいて、そして徴収の権限を市町村が持つ、こういうような改正案内容ですけれども、これについては何かお考えがありますか。まず市町村費用分担を議会で議決してしまって、そうしてあとの最終的なしりぬぐいは市町村にまかせる。これは改正案でこれからやるところなんですが……。
  28. 河津寅雄

    河津参考人 不勉強のあまりまだ研究いたしておりません。
  29. 高見三郎

    高見委員長 東海林稔君。
  30. 東海林稔

    ○東海林委員 私はただ一点だけ、土地改良事業実施する場合に、関係者同意の点についてお尋ねしたいと思うわけですが、先ほど黒河内安部参考人からは、主として土地改良の広域性の関連においてお話がありましたが、河津参考人からは最近における農民の階層分化との関連においてお話があったわけでございます。そこで少し小さな問題ですけれども、実は今回の改正案の中で農用地の造成を目的とする土地改良をやる場合に、その区域内では山林とか雑種地等の農地以外の未墾地がある場合には、その所有者なりあるいは所有者にかわって土地改良に参加すべき耕作者、そういう関係人のこの分についてだけは、全員の同意という規定が新たに今度五条の三項に入っているわけです。そこで不同意の者があった場合には、六条で関係者が所有権の移転その他で善処するが、さらにそれでも解決しなかった場合には都道府県知事があっせんし、さらに最終的に調停案が出て勧告する、こういうふうになっておるわけです。この点について農林当局の御見解をお尋ねしたところが、これは形質の著しい変更も行なわれているし、さらには用途そのものまで変更する、そういう観点からして特に三分の二の同意でなしに、全員の同意ということにしたのだ、こういうことでありました。しかし私はたとえば畑をたんぼにするというような場合に比べて、確かに考えようによっては若干程度の差というものがありますが、やはり経済的な利用度を高めるという方法からすれば、そう実質的な差が考えられないという点からして、そういう一方は三分の二でいいが、一方は全員が同意しなければならぬという法律的な規制をしなければならぬほど、はっきりした理由がないのじゃないかというような点が疑問に思われる点の一つ。もう一つは、実際問題として、これは土地改良の実際に関係された方はどなたも経験すると思うのでありますが、いかなる土地改良の場合も、何人かの反対というものはえてしてあるわけです。それは一つは相当多額の経費を使って土地改良をやった場合の効果と投ずる経費との関係からして、経済的にどうもそろばんが間に合わぬように自分は考えるからいやだという人もあります。しかし中には、そうでなしに、たとえば関係者相互間における感情的な問題なんです。だれがしが中心になる仕事には、私は理屈抜きに反対だというような者もしばしばありまして、これが実際問題として非常に困る場合です。こういう場合を想定しますと、六条のようなこういう手続を経まして知事が勧告をしましても、これは最終的に裁定するというのならば別ですけれども、勧告程度でこういう場合の問題が解決するかどうかということは、私は実際問題としてもなかなか容易ではない場合も考えられる。そういう二つの点からして、私はこの改正点については若干疑問を持っておるというわけなのでありますが、こまかい点でございますから、あるいは御検討になっておられるかどうかもわかりませんが、この点につきまして御見解がございましたら、できれば三人の方からお伺いいたしたい、こう思うわけでございます。よろしくひとつ。——安部さんは何か御見解があると思いますので……。
  31. 安部義正

    安部参考人 私も現地で先生のおっしゃるような経験は積んできております。仕事そのものの反対ではなくて、感情的にいろいろ反対や何かの経験もございますが、いまおっしゃるような点も十分よくわかります。ただあまりその点の勉強をいたしてきておりませんので、はっきりお答えするのはちょっとしかねるのでございます。
  32. 東海林稔

    ○東海林委員 こまかい点ですからと思ったのですけれども、どなたか……。——ほかになければ河津さん、ございましたら……。
  33. 河津寅雄

    河津参考人 それは私、先ほどお願いしたうちにあったと思います。そういう場合には土地をある程度の価格で買い入れるために、長期低利の金を貸すようにしていただきたい、こんなふうにお願い申し上げたのであります。
  34. 東海林稔

    ○東海林委員 ありがとうございました。
  35. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人に対する質疑は終わります。  参考人各位には非常に貴重な御意見をお述べいただき、本案審査に資するところ大なるものがあったと存じます。まことにありがとうございました。  この際暫時休憩いたします。なお午後一時に再開いたします。    正午休憩      ————◇—————    午時一時七分開議
  36. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案について、政府当局に対する質疑を行ないます。西村関一君。
  37. 西村関一

    ○西村(関)委員 土地改良法改正案につきまして、審議が続けられておるのでございますが、農業基本法趣旨に即応いたしまして、社会的、経済的な諸条件の変化に適応するために、改良事業がより効果をあげ、事業の円滑化をはかっていくということから、本改正案提案されておりますことは、政府側から説明があり、また審議の過程において、その意図するところは明らかになってきておると思うのでございます。ここで私は、いろいろお伺いいたしたいのでございますが、時間の関係等もございますので、重点的に御質問を申し上げたいと存じます。  それは、午前の参考人意見開陳の中にもございましたように、土地改良事業は、水の問題と非常に関係が深い。特に、いま本院の建設委員会にかかっておりますところの河川法案との関連が、かなり大きいものがあると思うのでございます。この点につきまして私は過般、建設委員会におきまして、建設当局の意向をただしてまいったのでございます。丹羽農地局長にもおいでをいただいて、この問題についてお伺いをいたしましたが、どうも私は、建設当局、河川局長の建設委員会におけるところの答弁では満足ができない。農業者の立場から、特に土地改良という立場から、今度の河川法がいろいろな問題を持っているという点を指摘いたしまして、政府の答弁を求めました。これは両省の次官同士の間の覚え書きによって、この問題点はうまく調整ができているのだというようなお話がございましたが、どうも覚え書きだけで、はたして十分な満足すべき農業者の立場が守られていけるかどうかということに対しましても、私はいまなお疑問を持っているのであります。その点につきまして、もう一度この土地改良法の問題と関連をいたしまして、農地局長の御見解をお伺いいたしたいと思うのでございます。  その第一点は、河川法は治水を目途として立てられておるところの法律である。もちろん治水の立場から利水の問題も考える。そこには当然治水と利水の関連するところの、また利害の相反するところの問題が起こってくる。そういう点を河川法は治水の立場から取り上げておる。こういう点は河川の番人をもって自任いたします建設省としては、私は当然だと思うのでございます。またそのことの必要性も認めるのでございますが、しかし同時に、同じ河川、特に農業用水等におきましては、午前中の参考人意見開陳の中にもございましたように、農業用水の水の源は河川に依存するところのものが非常に多い。その七〇%以上は河川の水を利用しているというようなことも、午前中意見の開陳がございましたが、こういうような観点から、治水と利水の関係、利水と申しましても、電力開発でありますとか、あるいは水道でありますとか、工業用水でありますとか、いろいろな利水の方面がございますけれども、特に土地改良事業の中に占める農業用水の問題、こういう農業用水の問題から考えまして、この河川法におきましては建設省が河川管理者になる、そしてまた河川法によって設けられます審議会あるいは特別委員等の人選につきましては、それぞれ関係各省と意見の調整を行なって、委員の顔ぶれをきめるということになっているようでございますけれども、特に私は農業水利関係団体の代表者、たとえば土地改良事業連合会の代表者等をこの審議会委員に入れることが、どうしても必要だと思うのでございます。同じように、都道府県審議会におきましても、都道府県におけるところの農業水利関係団体の代表を入れるということが当然であると思うのでございますが、こういう点につきまして、所管が建設省でありますだけに、ただ単に両省の次官の覚え書きを交換するということだけでなく、この一つの点だけでも特にこれを入れておかないと、私はあとでいろいろな問題に差しさわりができてくると思うのでございますが、その点につきまして農地局長はどうお考えになっておいでになりますか。
  38. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 だんだんの御質問でございますが、まず第一点は、現行河川法は御承知のとおり、河川の流水を占用せんとする者は地方行政庁の許可を受くべしというような、明治スタイルの法律でございまして、これでは行政が動かないということで、在来いろいろの通達、指導要領、あるいは関係各省間の協議によりまして、河川が次第に利水と治水の問題が錯綜いたしてまいります世の中の実態に応じて、処理をいたしてまいってきておったわけでございますが、今回河川法改正するにあたりまして、そのような明治スタイルの法律か二、新しい憲法下の法律に直そうという相談なり、考え方の上に改正が行なわれたわけでございまして、農林省等も相談を受けたわけであります。もう一つ河川法時代の変化によりまして、昭和三十二年に特定多目的ダム法ができました際に、たとえば六条等で関係各省の協議の事項が入ってまいるというような形で、利水、治水を協議の上仕事を取り進めていこう、こういう法制を水資源開発促進法その他がたどってまいっておるわけであります。そこで今回の法律におきましても、先生御承知のとおり三十五条で河川管理上の許認可に関しまして、関係各省との協議事項を法律上相当明定をいたしておるわけであります。法律上明定いたすべきものは明定いたし、法律上の明定の必要はまあなかろうという部分につきまして、両省次官の覚え書きで基本的には処理する、こういう姿勢でまいっておる次第でございます。  第二の、今回の法律におきましては、河川の需要の調整等に関しましては特に第二款を設けまして、「水利調整」という規定を新しく設けられまして、これの運用は御指摘のとおり審議会にはかりつつ運用をされる、こういう法制に相なっておりますので、審議会の人選と申しますか、審議会に入る入り方が非常に問題だろうと存じます。そこで法律上は、中央に置かれます審議会では、「委員は、河川に関し学識経験を有する者、関係行政機関の職員及び地方公共団体の長のうちから、建設大臣が任命する。」ということになっておりまして、この相談等の際におきまして、当然農林省は関係行政機関でございますので、農林省が入ることは申すまでもございませんが、河川に関し学識経験を有する者につきましては、在来の諮問機関でございました河川審議会においても、農業代表は入っておるわけでございます。これが施行になりました際には、河川の利用の立場で、学識経験上最も適当な方を委員にお願いすることについては、建設省との間で全く問題のない前提に相なっておる次第でございます。
  39. 西村関一

    ○西村(関)委員 水の問題につきましては、特に利水の問題につきましては、国土総合開発法、水資源開発二法、特定多目的ダム法、工業用水法等の法律がございます。ただ農業用水に関するところの利水の法律がない。河川法一本で規制を受けるという点につきまして、農林省としてはざらに河川法の欠陥を埋める意味からも、農業用水法といったようなものをお考えになる用意はございませんでしょうか。あるいはもっと総合的な水法、ただ単に建設省所管の河川法だけではなくて、総合的な水の問題を取り扱うところの水法といったようなものを制定することが、より妥当であるというふうにお考えになりますか。あるいは他の利水関係法律と並んで、農業用水法といったようなものを将来考えていこうというお気持ちはございませんでしょうか。
  40. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 御承知のとおり昭和二十七、八年ごろから水に関します問題が、利水面で工業用水、上水道、一方、慣行水利に基づく農業用水等の関係で、治水のほかに利水の問題が非常に問題になりまして、経済企画庁に水制度部会というのが設けられまして、水の管理のあり方についてどうあるべきかということが相当深刻に、かつ熱心に討議されたわけでございます。その一つの流れの中には、在来の建設省の河川法中心にこの利水を取り込んで総合化をはかっていこうという流れと、そうではなくて別個に先生いまお話しになりましたような水の法律をつくって、所管等も総理大臣のところに置いて水全般を考えていくというような考え方と、二つ大きな流れがあったわけでございます。いろいろの審議が行なわれましたが、最終結論は出なかったわけでございますが、この討議の結論は、いま先生がおあげになりました特定多目的ダム法、水資源開発促進法、あるいは当時の河川法の六条の改正、あるいは今回の河川法改正の中に問題は関係各省の協議という部分を取り込むことによって、ばらばらにならずにそれぞれの利水サイドの意見が十分取り込まれて、総合的に行なわれるようにというふうな方向におきまして、すべての法制が走っておる次第でございます。私どもも現在のところ、そういう立場で関係各省の相談の上に、この水問題は非常に複雑でございますので、行政関係各省で行なっていくこの態勢に協力をいたし、したがって今回の新河川法につきましても単に反対というような立場でなく、協力的に取り進めてまいった次第でございます。  そこでいま御質問の第二の、そういうふうに水利用に関する法律が非常にできておるので、農業水利法を出す考えはないか、この問題につきましてはいろいろ検討いたした次第でございます。御承知のとおり、現在の日本の水の六割以上のものが農業用に使われており、これは慣行水利権として河川法上もみなし水利権として保護されておる。そこで現在の段階で農業水利の問題を考えますときに起こります問題といたしましては二つございまして、一つはその農業水利と他種水利との接点におきます相克矛盾を行政上いかに処理するか、あるいは法制上いかに処理するかという問題が一つ。もう一つは、農業用に利用されることにきまっておりまして、農業内部の水の配分を規制する法律をどうするかいなかという、二つの問題に分かれると考える次第でございます。  そこでまず他種産業との接点に関します水の問題は、先ほど申しましたとおり関係各省が積極的権限争議という立場でなく、相談の上でこれを調整していこう、こういう路線を走っておりますので、水資源開発促進法なり、河川法の今回の改正なり、あるいは多目的ダム法等の法制で処理をすべきもの、かように考えておる次第であります。  それから農業内部の問題につきましては、御承知のとおり昔から農業内部の水争いの問題も非常にございましたが、これはどうも私どもの検討の結果では、それを知事の裁定とか、あるいは一種の紛争処理の法制で処理するということは、問題の解決としてあまり本質的でない。したがってその後の社会の現実の動きも、水の不足は水源をつくることによって、あるいは水源から水を導水することによって、供給そのものを解決することによって、抜本的に農業内部の水の問題を解決する、これを基本線と考えておるわけでございます。土地改良法はしたがいまして、そういうように冒頭に先生もおっしゃいましたとおり、水をつくり出し、水を持ってきて、水の供給そのものを解決して、その上に農業間の内部の水の問題を解決する、いわば法制調停というような形よりも、実態的に技術も発達いたしましたこういう時代でございますので、いわば基盤的に水の問題を解決する。このことが問題の解決の本質である。こういう立場に立ちまして、土地改良法による水のクリエートといいますか、水の活用、是正、修正あるいは合口事業というような仕事を通じて、基盤的に農業内部の水は解決することが必要であります。またそれが正当の方法である。こういう立場に立ちまして、目下のところ農業内部の水調整のために特別の立法を考えるということについては、私どもいまのところ考えておらないわけでございます。なお各方面の御意見等も承りまして、やはりそういうものが要るという御意見等が強く出てまいりますようでございますれば、当然検討いたしたい。基本的にはやはり土地改良事業で水の根っこから解決していく、かような立場に立って、おる次第であります。
  41. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま丹羽局長の御答弁の中にもございました農業利水の問題と他の利水事業との接点になる問題点があるというお話でございましたが、それは河川法によりますところの河川区域の認定の問題、あるいは流水については私権が認められるかどうかというような問題、流水の使用権に対しまして、これが不特定多数の利益のためになるという前提のもとに、これが公共性の大小によって認定を受けるというような点から考えまして、たとえば電力開発ダムの建設等、農業用水との関係におきまして、利害が相反するような問題が起こってくるというような点等も、今度の河川法には農業者の立場からいろいろな問題が内包されておる。また上流地帯にあるところの国有林野の問題、あるいは下流、河口地帯にあるところの漁場の問題というような点とも関連をいたしまして、河川法には農漁業者の立場からいろいろ問題があることは、局長も御存じのところでございます。こういうような点等から考え合わせまして、数多くの事柄をお聞きする時間がございませんから、河川工事についてお伺いをいたしてみたいと思うのでございますが、農業水利事業を行なう場合には、河川に関しましては河川法によるところの許可を受けなければならないということがきめられておりますのに対しまして、建設省の行ないます河川工事につきましては、管理者が一方的な意思で行なうことができる、そういうことのために、上流、下流にあるところの農漁業者が、一方的な建設省の河川工事によって、影響を受けるという点が多々起こってくると思うのでございます。こういうような場合には、審議会意見を聞かなければならないということだけで、利害関係が相対立するというような側に対して、その意見が阻害されるという心配が多分にある。審議会意見を聞かなければならないということだけで、この問題がはたして解決できるかどうかという点が、私のいまなお心配として残っているところでございます。しかも河川工事は河川を安定し、公利の増進及び公害の防除がそのねらいでありますが、反面、河床、水位の低下による農業用水の取水の困難、ダム築造によるところの上流地帯の排水の不良というような、いろいろな障害や犠牲が与えられてまいりました事例は数多くあるのであります。これは私がいまさら申し上げるまでもなく、局長御所管の農地局において、こういう事例についての統計もあるわけなんでございますが、こういったような点から考えまして、一方的に河川の工事をやられるということが、ただ単に審議会意見を聞くということだけで、事前協議も不十分のままやられるというようなことも考えられる、こういう事態に対しまして、両省次官間に取りかわされました覚え書き、あるいはこの法案の中にありますところの審議会意見を聞かなければならないということだけで、このような農漁業者の立場、特にいまわれわれが審議いたしております農家改良事業と水の重要性という点から大きな影響があることを思うにつけまして、私はいまなおそういう点についての心配をいたしておるのであります。そうであればこそ、きょう午前中の参考人意見の中におきましても、特に安部参考人からそういう御意見の開陳もございましたが、こういう点につきまして、もう少し農林省の立場を、あるいは農業水利事業を行なう団体意見を聞かなければならないというだけでなくて、義務づけるような、そういう配慮がこの際農林省の側から強く打ち出されることが、とりもなおさず農業者共通の念願であろうと思うのでございますが、こういう点につきまして御見解を承りたいと思います。
  42. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 お答えいたします。河川工事は、いま御指摘のとおり公利を増進し、公害を除去し軽減する、いわばそのような不特定多数の人間の生命財産を維持するための河川の工事でございますので、私どもの考え方としては、この河川の工事というものは、やはり責任を持つ建設省が責任を持ってやるべき仕事である、これを利水側の立場で、たとえばやらせないとか、利水のためにやり方を極端に変えさせるということは、やはり問題ではなかろうかという立場に基本的に立っておるわけでございます。したがってまた、そういう性格のものでございますので、河川工事をやるのに、農利水者と法律上協議事項にするということは、法制的にもたてまえ的にも非常に問題があろうかという立場に立ちまして、法律上の協議事項にはいたさなかったのであります。しかし実態として、建設省のやる河川工事あるいは農林省のやる利水といいますか、土地改良工事で河川にかかわる部分、これは行政官庁として相互に密接な連絡をとって、事前によく知り合い、かつ問題点があれば究明しつつやるべきであるということ自身は、否定さるべくもない問題でございますので、お互いに事前によく連絡してやろうという趣旨のことを両次官間で取りきめをいたして、これはお互いに誠実に守ろうということにいたした次第でございます。御議論はあるかとも存じますが、河川工事そのものを利水官庁の協議が得られない限りやれないということにいたすかどうか、この点は問題点であろうかと存じまして、一応今回は私どもそういう立場に立った次第でございます。ただ十六条で、河川工事の基本事項という部分が、たしか前回の建設委員会の御意見で「基本計画」になって、それの準則は政令で定めるということに相なっておりますほかに、これは原案になったわけでございますが、第三項、建設大臣は、定めようとするときは、あらかじめ審議会意見を聞くという、一つの突っかい棒ですか、これも入れていただきまして、私どもといたしまして、いまの次官の覚え書きと、それから準則が政令事項であるということ、それから河川審議会意見を聞くという一つのスクリーンを通じまして、河川工事と農業への影響については、前向きの問題として慎重に処理してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 西村関一

    ○西村(関)委員 いま局長の言われました河川の工事については、基本的に建設省が責任を持ってやるべきものであって、農林省の立場からこれはやめさせるとか、重大な変更をさせるとかいうようなことは考えるべきでない、こういう御見解に対しましては私も同じ意見なんであります。ただ法律のたてまえからいいますと、農業水利事業の場合は河川法によるところの許可を受けなければならないが、建設省の行なうところの河川工事については、いまお話しになりましたような諸手続が、法律並びに政令による準則によって規制をされていく、農業者の立場も守られていく、こういうことではありますけれども、その点が両省間において、お互いに信義を守って、覚え書きの趣旨、精神によって、そういう一方的なことはやらない、こういう御答弁でございますから、私もその点はそれ以上追及することをいたしません。ただ工事の実施の準則、基本計画の策定、あるいは事前協議等の活用によりまして、先ほど来申し述べておりますような問題を避けていくことが、ある程度できるでございましょうが、河川工事によるところの農業者に及ぼす被害の救済につきまして、その救済規定が十分であるということは何もない。こういうところにも、今度の河川法改正案に大きな欠陥があるのじゃないか。河川工事をやられた場合に、いまお話しになりましたようなもろもろの手続を活用することによって、問題をある程度カバーしていくことができるでありましょうけれども、もし被害が起こった場合に、農業者が受けるところの被害をどのようにして救済していくか、これは国家賠償法の規定によって救済をするというような見解のようでございますが、現在までも他の事業によって農業水利事業が受けておるところの被害は非常に多い。またその紛争も、年々減っていかないばかりか、ふえていく傾向にある。こういう状態のもとにありまして、ただ被害があった場合には、国家賠償法の規定によって救済するということだけでは、本質的な根本的な解決にはならない。農業者の立場から言うと、泣き寝入りになってしまうような場合が、従来もあったし、今後もあり得るのじゃないかということを心配するのでございますが、この被害の救済につきまして、農林省としてはどういうふうにお考えになりますか。河川工事によるところの農業者に及ぼしました被害の救済について、どういう見解をお持ちになっておいでになりますか。
  44. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 新河川法の二十一条に、工事の施行に伴います損失の補償の一つの例示があるわけです。これをめぐりまして建設省ともいろいろ私ども話をいたしておるわけでございます。昨日も本委員会お話が出たわけでございますが、河川工事、たとえば取水路を掘ったり、しゅんせつをやったり、その結果第三者の施設に影響を及ぼした、あるいは第三者の施設を移動しなければならない、こういう場合には、当然河川工事者が負担するということは、建設省は明言いたしておるわけです。問題は、いま各地で起こっております問題は——そういう例でございますれば、つまり直接河川工事によって第三者の財産、施設が損害を受けた、これは国家賠償法も何もない、当然の一般原則の問題として、補償として処理されておるわけであります。いま各地で問題になり、私どもも苦慮いたしておる問題は、河川工事といいますか、ともかく現象としては河川の流況が変化をいたしまして、それが取水施設その他にいろいろの影響を及ぼしておる、この実例は相当あるわけです。この問題に相なりますと、二つに分かれまして、自然的な原因で流況が変化したものについては、河川管理者としてはとても負担を負わないし、また負う筋合いでもないという見解を建設省は持っておるわけです。しかし問題は、各地で起こっております問題は、この流況の変化あるいは河床の変化は、河川工事で洪水ダムをつくったからだ、あるいはあすこの水路を曲げたからだ、こういう関係でものを言われる場合が多いわけです。問題は、昨日も申し上げたわけでございますが、自然の流況あるいは河床の変化と河川工事との因果関係の問題がなかなか解明し尽くせませんで、前のように必要な河川の工事による補償工事の姿の問題とこれは明確には区別できないので、建設省がそれを一々補償をするという事態に至っておらないわけであります。建設省といたしましては、河床が著しく低下するような場合には、床どめ工事なり何なりは河川工事として当然やるということは言っておるわけでございますが、具体的な農業取水と河床の変化との関係につきましては、昨日もここで申し上げましたが、相当因果関係を詰めて、その詰めた形において建設省が補償すべき工事は当然補償してもらうということに相なるべきもの、かように私どもは考えておるわけでございます。
  45. 西村関一

    ○西村(関)委員 次に、河川法によりますと、新規の水利権を許可するにあたっては、利害関係者に損失を与えない場合に限って許可する、これが河川管理の原則になっているのでございますが、新規の水利権の許可によりまして著しい損失をこうむるものがある場合には、公益が著しく大きい場合及び損失防止の必要な施設を設置する場合でなければ、許可してはならないということになっております。ところがここで、公益性が著しく大きい場合であれば、既設水利権者で損害をこうむるものがあっても許可していく。たとえば発電所をつくる、上水道をつくる、工業用水等の施設をつくる場合に、これは公益性がまことに大きいという点から、既得水利権に影響があっても新しい水利権を与えていく、こういうことが考えられますが、ここでいうところの公益性というものは何であるか、これはひいては土地改良事業が公益性にのっとって行なわれておるものであるかどうかという問題とも関連をするのでございますが、この河川法で言っておるところの公益性の大小という点から考えると、どういうところに公益性の大小の基準を置いていくか、経済的な価値判断からいたしますならば、さきに申しましたような諸事業は経済的な効率が非常に高い。ただ経済的な判断からいたしますならば、農業は産業に比べてこの効率が非常に低いという点から、常に抑圧されておる。こういうことになってまいりますと、また農業用水は小規模なものが多いのでございまして、公益性の大小という名目のもとに農業水利が圧迫されるという懸念、つまり都会の大資本、大経営の利益優先のために、従来の農業水利権が圧迫を受けるというような点が非常に懸念されるのでございますが、こういう点につきまして、局長のお考えはいかがでございますか。
  46. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、改正前の現行河川法は、流水を使用せんとするものは地方行政庁の許可を受くべしで、地方行政庁がどういう立場で、どう許可するかということは、一切法制的に触れておらない。極端に申しますれば、役人の腹一つという法制でございます。それでそういうことであってはならない。そこで一つ河川に対して水利使用の要請がだんだんふえてまいりました場合に、これは農林省が強く主張して、ある程度突き抜けた線なのでございますが、意見の一致が原則、つまり意見が一致した場合に許可するという原則を一本突き抜かしたというと語弊がございますが、突き抜いておるわけでございます。しかし意見が一致しない場合に、では新規の許可は一切できないということにするかしないかというのが、相当の問題点になったわけでございますが、当然より高い立場におきまして判断して許可する場合がある。その場合に、許可する場合はどういうケースかということを詰めてまいりまして、それは法制上のたてまえとして、公益性が著しく大きい場合は許可するということになるのがまた当然であろう。それから水質防止措置ができれば、これは許可することは問題でない。そこで公益性が著しく大きい場合に限って全員——全員と申しますか、関係者意見が一致しない場合でも、許可ができるという法制に整理することは、現行河川法よりもはるかに前進した法律である、こういう立場に立った次第でございます。その際に、農林省としては、発電、水道に比べて農業が公益性が低いなどとは毛頭考えておらない次第でございまして、いろいろこの点について御懸念しての向きでお問い合わせ等もあるのでございますが、もっと自信を持って農業の水利の公益性を出していいのではないかという趣旨のことを関係者には申し上げておるわけですが、法制論といたしましては、公益性が著しく大きい場合は許可する、この法制をいたしまして、あと河川審議会意見、先ほど冒頭にございました河川審議会において公益性をことばのとおり比較、検討をしていただく。もちろん知事の意見も聞く仕組みに相なっております。二十三条等で許可する場合に、一級河川等については農林省にも協議があるわけでございます。いろいろな角度でチェックを働かしておるわけでございまして、公益性が大きいか低いか、この問題は、その河川における実態に応じて法律の文字どおり解釈をすべきものと、こういう前提で法案には対処いたした次第であります。運用にあたりましては、先ほど申しましたとおり審議会、いろいろの各種の協議がございまして、農業水利がこの法律の曲げた運用によって被害を受けるというようなことにはならないように、法律法律どおり処理したいというのが農林省の考えでございます。
  47. 西村関一

    ○西村(関)委員 局長が十分な配慮をして、そういう心配のないように、法律の目ざしておるところ、また所管建設省との話し合いの中で十分に解決できる問題だというふうにお答えになりましたから、私は局長の御答弁を信頼する以外にないと思うのでございますが、農林省が三十七年の十二月に調査せられました農業水利についての紛争の資料によりますと、三十七年はこの種の紛争が急増している。その半数が農業と他水利事業間との紛争である。また紛争発生の河川につきましても、三十七年の百十件について見ると、農業と他水利事業間における適用河川と準用河川の比較的大きい河川に四十五件も発生しておる。こういう状態でありまして、ほかの水利事業農業水利事業との間における紛争がいよいよふえていく。今度の河川法が施行せられるということになりますと、私はいまの局長の御答弁がありましても、なおこれらの点について、十分な農林省としての施策を用意していただかなければならないと思うのでございます。特にいま改正案審議いたしております土地改良事業の中のかんがい排水事業とほかの水利事業との関係を、十分に検討していただく必要があると思うのでございます。過去のこれらの紛争の過程において、どのような紛争の解決のための交渉がなされてきたかということも、農地局の調査で一応知らされておるのでございますが、まだ未解決の地区も相当に残っておる。農業と他の水利間において三十地区が解決をし、そのうち二十五地区については平均四百九十六日間もかかって解決しておる。未解決地区につきましては、発生年月日から三十七年の十二月末までの期間に、農業相互間の平均は四年九カ月もたっておる。まだ未解決になっておる。あるいは農業と発電との間における紛争につきましては、三年六カ月もかかっておる。汚濁水の問題については、五年五カ月かかっておる。こういう状態で、なかなか解決がむずかしい。ですから、事前の協議を十分にするということだけでは、全部解決がつかない。問題はなお尾を引いているのでございまして、将来こういう農業水利と他水利との間における紛争の解決については、十分な上にも十分な配慮が必要であると思うのでございまして、特に慣行水利権は、きわめて非近代的な要素を含んでおるとはいえ、農民の生活に結びついておる大事なものであるだけに、これが取り扱いにつきましてはなかなかむずかしい問題があると思うのでございまして、これは農林省においても頭を痛めておられるところだと思います。この慣行水利権の取り扱いにつきましては、河川法によりますと政令の定めるところによって届け出るということになっているようでございますが、農民の立場からは慣行水利権を守るという点については、農林省としては慎重な上にも慎重な配慮と検討が必要であると思いますが、この慣行水利権に対する農地局のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  48. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 慣行水利権は御承知のとおり、現行河川法でも勅令でみなし許可に相なっておるわけでございます。今回の河川法改正の際に、当初建設省は慣行水利権も届け出にしてもらって審査をし、かつ届けないものは何年先に失うというような原案でございました。農林省といたしましては、慣行水利権というものはそういうものでは絶対にないという立場に立ちまして、慣行水利権行政法規で取り消したり、なくしたりできるものではないという立場に立ちまして、これは相当大きな対立点でございましたが、最終的にはその法律効果には触れない。ただ届け出という規定が残っただけでございます。ただ届け出についての法律効果は何もございません。慣行水利権の効力に対する効果は、今回の河川法では何も付与しておりません。ただ先ほど水利調整の際に申しましたように、関係者みんなの意見が一致することを法のたてまえにいたしておりますので、新しい申請が出た場合に、関係者に通知するという規定がございますので、届け出をしておいてもらえば、必ず見落としなく通知が行く。そしてその上に権利が主張されまして、一方的に水利調整が行なわれることを防止する効果がございますので、私どもといたしましては、この慣行水利権の届け出は励行させたいと思っております。しかし届け出によって法律効果がどうこうするものではない、かように法律的にも相なっておりますし、厳重に建設省とも見解は一致いたしておるわけでございます。したがって、慣行水利権についての考え方はどうかということは、そういう交渉の経過にすでに一切あらわれておりますように、農林省としてはこれを全く強く尊重してまいるし、これがいたずらに安易に動かされることについては、絶対反対の態度をとって進んでおる次第でございます。
  49. 西村関一

    ○西村(関)委員 改良事業の中に占める水利の問題は、河川が一番大きなウエートを持っておるということについては、先ほども触れましたが、その次にはため池によるところの水利事業があると思うのですが、現在全国で農業水利に使われておりますため池はどのくらいございますか。
  50. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 いまため池の数を持ち合わせておりませんが、別途の調査でございまして、水源別に農業用水の補給源になっております状態を申し述べますと、先ほどお話も出ておりましたが、河川、湖沼が七〇・六%、ため池が二八・八%、約一七%は日本の農業の水を供給しておる。それから地下水が四・〇、渓流が三・七、天水田その他四・九、こういうような状態になっております。
  51. 西村関一

    ○西村(関)委員 いま言われたのは一七%ですか、ため池の占める重要性というものは相当なものがあると思うのでありますが、その中の多くのものが老朽ため池になっておる。どのくらいのものが老朽化し、またこれに対してどのような施策、予算措置が講ぜられておりますか。
  52. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 現在防災事業といたしまして、農林省でため池の補強の工事をやっておりますが、一応現在つかんでおります数字といたしましては、三十九年度以降において補強をしなければならないと認められますところの老朽ため池は全国で三千三百、そのうち継続事業といたしまして四十三地区がいま補強事業をやっております。新規事業といたしましては、総事業費十三億を使いまして、新しく三十九年度は個所を選んでそれをやりたい。継続、新規合わせまして、国費といたしましては六億六千五百万円を計上いたしております。
  53. 西村関一

    ○西村(関)委員 老朽ため池の改修について、改良区でもってこの事業をやっているのはどのくらいありますか。——時間がありませんので、また後ほどお伺いするといたしまして、この土地改良区の事業として老朽ため池の改修をやっておる農民たちは、深刻に水を要求するために、農民としてはかなりの負担をかかえながら、この事業をやってきておると思うのでございますが、どうも全体についてどの程度成果があがっているかということについては、私も十分に承知いたしておりませんけれども、たまたま私の触れました私の地元の改良区におきまして、この老朽ため池の改修に当たったのだけれども、依然として水がたまらないというようなことで、非常に困っておるというような事例もあるのでございまして、これにつきましては農地局としてはできるだけの配慮をして、農民の因らないようにしようというふうに言ってはいただいておりますけれども、現実に金は出したが、水がたまらないというようなことで、これは改良区の中身の問題、運営の問題、あるいは指導の問題等、いろいろ問題があるかと思いますが、これはたまたま私が触れた一例にすぎないのでありまして、これをもって全体を律することはできないと思いますけれども、こういううまくいってない改良区につきましては、政府としてはどういうふうな考えでおいでになりますか。うまくいってないのはおまえたちのやり方が悪いのだということでは済まされない。いま私の申し上げた事例につきましては、十分に考えて農民が納得するように配慮していこうと言ってはいただいておりますが、基本的にはこういう改良区に対しまして、どういうふうにしていったらいいとお考えになりますか。
  54. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 いわゆるため池補強事業につきましては、実は私ども基本的に防災事業として取り上げております。したがいましてため池が決壊いたしますということについては、最も懸念をいたしておるわけでございます。そこで決壊のおそれのあるものを老朽ため池事業として、補強工事をやっておるわけであります。先生御指摘の地区は、私も頭にあるわけでございますが、工事の粗漏等で決壊のおそれがあるということではたいへんだということで、厳重な調査をさせてみた次第であります。その結論といたしましては、決壊のおそれの問題ではない。そしてそれでは水はどうなのかという問題に対しまして、ため池の裏側の地甘の問題として水の漏水があって思うほどたまらない。それでは農業用に差しつかえるのかということについてさらに調べさせましたところ、水は当初の計画どおりにはたまらぬ、うしろ側で少しく漏るので少したまり方が減っておるが、農業用には使えるというふうに承知をいたしました。そこでその具体的実例の問題といたしましては、もし決壊のおそれがあるならば、万難を排して工事をしなければならぬと考えておる次第でございますが、そういうおそれのないケースでございますので、一種の老朽ため池事業よりも、用水確保事業としてお取り上げになるものがあるならば、御援助しようということを申し上げておったのでありますが、当初の計画どおりやれないのだから、国なり県なりの負担でというお話でございますので、現在のところまだ最終的な結論を見ておらないわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、今後とも県とよく相談をいたしまして、現地の紛争はできるだけ早く解決したい、かように存じております。
  55. 西村関一

    ○西村(関)委員 これは土地改良区の事業としてやっておるのでありまして、改良区の事業がうまくいってない一つの事例として私が申し上げたのでございまして、いま農業用水としては事足りておるという、局長はそういう御報告を受けておられるようでありますが、現地へ行って私が調べたところによりますと、従来の水は確保されておるけれども、しかしそれ以上の水がほしいので、改良区をつくってやったのだが、一向何にもならなかった、こういうことで、従来のような農業経営には差しつかえはないけれども、さらに成果をあげていこうとすると、入れた金がむだになってしまうというような苦情を、農民たちから聞かされておるようなわけでございます。そういう点等も他にも事例があるかと思います。私は一例として農林省の御見解を伺ったまででございます。  次に、事業の進度の問題でございますが、進度につきましては、なかなか思うように土地改良事業が進んでないというよう事例が多々あるようでございますが、当初の計画と十年もたった後の現在における事業内容とは、相当な変化が起こっておるのは、これは当然だと思うのでございます。そういうような点につきまして、今度の法案の改正におきましては、土地改良長期計画を立てなければならないことになっているのでございますが、これもまた一例をあげて申しますならば、いろいろ局長にも御苦労をかけております滋賀県の愛知川の問題でございますが、これはもう事業が開始されましてから十二年にもなり、当初の計画をそのまま実施に移すということは現状に即さないということは、これは申すまでもございません。こういう点について、他にも進度のおくれているところの事業につきましては、当初の計画を変更しなければならないところも多々あるだろうと思うのでございますが、そういう実態はいかがでございますか。
  56. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 御承知のとおり土地改良事業のうち、国営事業等でいろいろの理由で非常におくれておるものがございます。それでそれにつきましては、一つにはおくれてまいりました当初の計画の物価そのものの変更もございます。あるいは利用する方々の考え方も変わっておるわけでございます。計画の変更の手続が土地改良法にもございますが、積極的に情勢の変化に応じて計画変更手続をとって時代の変化に合わせるということを、むしろ意欲的にやっておりまして、古い地区につきましては、極端に申せばほとんど一ぺんないし二へん、大部分は一ぺんでございますが、計画変更を実行いたしております。
  57. 西村関一

    ○西村(関)委員 時代に即して計画を変更し、事業も効率を高めていこう、こういうことはまことにけっこうだと思うのでございますが、当初の予算額では十年もたちますと、とても当初の計画さえも実施できない。まして計画が変更される場合におきましては、ふえこそすれ、減ることはなかろうと思うのでございますが、そういう点につきましても年次計画と申しますか、各事業別に、国費の事業別にそういう年次計画をお立てになってお進めになっておいでになるか、いかがでございますか。
  58. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 毎年予算の要求をいたしますにあたって、あるいは配分を行ないますにあたって、当然この地区はここまで来ておるのだからもう二年であげたい、あるいはもう三年であげたいという立場で、個所別にそれぞれ計画を積み上げまして、予算要求をいたす。しかし当初要求をいたしたものが、必ずしも最終予算となりませんので、つきました際にもう一度それを見直して、もうそれぞれ目標の完了年度を定めつつ、当年度の予算をつけてまいる、こういうことをやっておりますのが実態でございます。
  59. 西村関一

    ○西村(関)委員 御事情がよくわかりますし、やむを得ないことだと思いますけれども、今度の法の改正によりまして長期計画を立てるという上からには、少なくとも国営事業につきましては長期計画をお示しになって、その年次計画に基づいて予算の編成等を行なうということが、当然ではなかろうかと思うのでございます。ただ、そのつどそのつど完成年度を見合わせながら予算を持っていくということが、必要やむを得ないということも私はわかりますけれども、しかしやはり指導的な立場に立ち、また責任の所在であるところの農林省としては、国営事業につきましてはそういう当初の計画に立って、年次計画を進められるということが望ましいのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  60. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 法の第一章の二の長期計画の立て方につきまして、先般来いろいろ御質問もございましたし、いろいろ申し上げましたが、御質問の中心はどららかといいますと新規事業中心がございます。私どもは事務的な立場では、新規事業のそこに継続事業を置いて、やはり全体を長期計画として考えたい、かように思っております。したがいまして、御承知のとおり国営事業等は長期を要しますので、いまの継続事業でもここ数カ年の問題は、当然この長期計画のベースに入らなければならないわけでございますので、個所別にそれぞれの進度を考えて積み上げられました総トータルの継続分と、それから新規の事業の問題をやはり総合して、長期計画として組み立ててまいりたい。それは全国別でありますが、継続事業は分解いたしますれば、当然それは地区別に積み上げの根拠として計画立案されていく、こういうふうに考えてまいりたい。その意味では先生のおっしゃるような立場に立って、この長期計画を考えてまいりたい、かように考えております。
  61. 西村関一

    ○西村(関)委員 これも一例として農林省の愛知川かんがい排水事業について、私も、局長御承知のとおりこれが完成については幾らか協力を申し上げてまいったつもりでございます。従来水没地区の人たちが、水没反対という旗を掲げて、ずいぶん長い間反対運動をやってまいる。これらの人たちが納得しないままに事業計画を遂行するということは、非民主的なやり方であるという立場に立って、私は水没地区の人たちの側に立って、本委員会におきましても従来から何べんもこの問題を取り上げて質問をいたしてまいりました。しかしまた全体の農業計画、特に農業基本法によるところの近代的な農業経営の上から、水の問題がいかに重要であるかということは申すまでもないことでございまして、この水が一日も早く供給されることを待ち望んでおりますところの愛知川沿岸土地改良区の農民たちの立場に立って、御承知のとおり反対をいたしておりました地区の人たちを説得いたしまして、また農林省や県当局の誠実を込めた働きかけによりまして、これらの反対しておりました地区の人たちも、条件をもっていままでの反対運動を打ち切るということで、協力の態度に切りかえましたことは、局長御承知のところでございます。こういう状態でまだいろいろ問題が残っておる。いまここで全体の問題を論議しておるこの委員会において、私は個々の具体的なケースを申し述べようとは思いませんが、まだ局長御承知の問題は残っておる。問題は残っておりますけれども、しかし一応いままで反対の根っこになっておりましたところは基本的には解決して、長い間の難問題でありました愛知川かんがい排水事業がいよいよ緒につこうとしておる、こういうときでございますから、本年度の予算の上から考えましても、この国営事業に対する予算の面においても、鉄は熱いうちに打たなければならないというたとえのように、もう少しく予算的な配慮があってしかるべきではなかったかと思うのでございますが、本年度はわずかに五億円しかついていない。こういうような状態では——これはいろいろな問題がございますけれども、この愛知川沿岸土地改良区の農民たちの要求に十分こたえ、また長い間水没に反対をしてまいりました地区の人たちのさらに強い協力を得るということには、まことに少ない予算ではなかろうかと心配をいたしておるのでございますが、こういう点につきまして農林省としては、なおさらにあたたかい親心をもって、水没地区の人たちに対する補償金の問題も、あるいはまたこの事業を遂行していく上の工事費の予算の問題も、もう少しあたたかみのある配慮をしていただいてしかるべきではなかろうかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  62. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 愛知川地区は二十七年に公示いたしまして三十年着工ということで、その後水没者の反対でなかなか進捗いたしておりませんが、関係の諸先生方の御努力によりまして、事態が非常に好転いたしておりますことは、私ども非常に感謝いたしておるところでございます。三十九年度の愛知川の事業の問題でございますが、あつものにこりたわけではございませんが、過去におきましては、この愛知川に当初計上いたしましてそれの使用ができないで、処理にいろいろ苦慮いたした経験もございまして、ことしは一応五億という点でスタートいたしております。全国的にいろいろの事情がそれぞれの地区にございまして、それぞれでまた当初に計画いたしましたような形で執行ができない地区も出てまいるケースがあるわけでございます。年度の中間におきまして全国的な関係を整理いたしますと同時に、愛知川におきますその後の進捗状態によりまして、できますならば調整を考えたい、かように考えております。なお愛知川の補償の基準の作業の問題につきましては、目下事業所を使いまして鋭意作業中でございますので、この点もあわせて御報告申し上げさせていただきます。
  63. 西村関一

    ○西村(関)委員 土地改良事業におきまして、草地の造成ということが今度は考えられておりますが、そういう点から私は当局と畜産局の見解も伺いたいと思っております。また基本的にはこの法の改正が、農業基本法における協業の問題とどういう関連を持っておるかというような点等についても、政府の御見解を承りたいと思っておりましたが、時間も相当たちましたので、本日はこれで私の質問を終わりまして、大臣なり次官がおいでになったときにさらに関連してお伺いをすることとし、本日はこれで私の質問を終わらせていただきます。
  64. 高見三郎

    高見委員長 湯山勇君。
  65. 湯山勇

    ○湯山委員 土地改良法の一部改正関連をいたしまして、従来特殊地帯の団体営の土地改良、こういうことがずっと計画的になされておりました。それとの関連をお伺いいたしたいと思います。  この農林省所管の特殊立法による地帯の事業につきましては、従来から非常に進捗状況が悪かったということが指摘をされております。そこでそれぞれ当初五カ年計画で発足したものが十カ年になり、先般さらにこれが延長されまして、その終期を大体農林省所管のものについては昭和四十年度にそろえております。そこで今回の土地改良法との関連で、一体これらの特殊立法地帯の対策、これらの特殊立法は一体どうなるのか、その辺の御検討がなされておるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  66. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 特殊立法は御承知のとおり各種ございまして、それぞれその終期がきまっておるわけでございます。終期が比較的早いものも、おそいものもあるかと存じますが、大体終期が四十一年の三月にそろっておるかと、かように存じます。そこで長期計画をつくります際には、先般申し上げましたが、四十年から十年くらいのことを考えたい。したがって一つには、この特殊立法計画がさらに延長される想定のもとでつくるか、あるいは大体昭和四十一年三月で切れるという前提でものを考えるか、検討課題でございますが、いずれにいたしましても、それぞれの地域にそれぞれの特殊な事情によって生まれました地域的な計画でございますので、この計画長期計画を作成します際に、当然尊重して検討すべき性格のものと考えております。
  67. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいまの御説明で、四十一年三月ということでございましたが、これは特に従来五年ずつで切っておったものを四年に切りそろえまして、四十年の三月に大体そろえたと思います。そしてここでそろえて、これらを一括して何らかの対策を立てていくというような説明が当時あったわけですけれども、今回の御説明の中、質問の中でも、この問題は出てまいりませんでしたので、それをお伺いしておるわけで、たとえば特殊土壌は、いまおっしゃったように二十七年から三十一年まで、三十二年から三十六年まで、それから三十七年から四十一年、これは四十一年までになっておりますが、他の積寒あるいは急傾斜、湿田単作、海岸砂地、その他四十年になっておるのでございますが……。
  68. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 私先ほど四十一年三月と申しましたが、三月三十一日でございます。年度で申しますと四十年度で整理されます。先生御指摘のとおり、特殊土壌地帯は四十二年三月ですから、四十一年度でございますが、そこで整理になります。
  69. 湯山勇

    ○湯山委員 それでこれらをどうしていくかという問題は、今度の法律長期計画と非常に関係が深いと思います。申し上げるまでもなく、これらの積寒地帯あるいは特殊土壌地帯とか、あるいは急傾斜地帯、それから湿田単作、海岸砂地、その他合わせますと、いろいろ見方はあるでしょうけれども、全体の耕地面積の九〇%以上に達するというようなことも言われております。ところがこれは御存じのとおり、議員立法でそれぞれなされたもので、当初の計画に比べて進捗が非常に悪い。これはしばしば私どもも指摘をいたしましたし、政府でも認めておられました。その原因は、一つ団体営の一般の土地改良の中で予算を組んでいる、それらの団体に特別な予算のワクを設けてやっていない、そういうところに一つ大きな問題があったということもしばしば言われておりますが、今日進捗状況を見ましても、やはり五〇%以上にほとんどいっていない。しかもこれがいまおっしゃったように四十年度で切れるということになれば、この土地改良法改正案が成立するまでの間は一体どうしていくのか、その期間がきたときにどうしていくのか、これらの点は一向つまびらかにされていないわけです。その点は一体どうするのか。いまおっしゃったような特殊立法地帯については、これを一本にしてどうしていくとか、これらを解消して、この長期計画の中に入れてしまうのだ、したがってそれらの特殊立法に伴う審議会を廃止するのだとか、これについていろいろな構想がおありでなければならないと思うので、その辺はどうなっているのか、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  70. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 前回申し上げましたとおり、長期計画関連いたしましては、何よりも全国的な基礎資料の取りまとめが先決であるという立場で、三十八年に総合土地改良調査というのを今後十年の間の規模、量の調査としてやったのでございますが、それの集計にいま精力を注いでいるところでございます。土地改良長期計画を立てます際の問題点として、特殊立法の計画、あるいは特殊立法のその地域事業の問題をどう扱うかということは、私ども十分承知いたしております。先ほども申しましたとおり、四十年末で一応切れておりますが、これは私どもが簡単にこの扱いを取りきめ、判断すべき性格のものではなく、各審議会もございますし、各法律もございますので、先ほど申しました基本的な計数の集計の過程と並行いたしまして、この問題はそれぞれの審議会あるいは関係の方々と御相談をして態度をきめたい、かように考えております。いま何らか一定の割り切りをやっているわけではございません。
  71. 湯山勇

    ○湯山委員 私が少し念を入れてお聞きしたい点は、特に四十年にそろえたという経緯がございますが、それには何らかの意図があって四十年にそろえた。そうでなければ。従来の慣例からいけば、四十一年にいくのもあるし、いろいろあるわけです。それを特に意図して農林省所管のものは四十年にそろえていった。それならば、それからあとどうするかということ、その当時も問題になりましたけれども、それがあまりはっきり御答弁はございませんでした。しかしながら今回は、はっきりこうして土地改良法提案されて、そうして長期計画樹立する、その長期計画というものは、しばしば局長のほうから御答弁になられたように、農政審議会は必ずこれに意見を述べる、それから関係行政機関、それから各府県、こういうものの意見があって、まとまったものを閣議決定するのだ、こういうことですから、そうなりますと、特殊立法にはそれぞれ別個の審議会があるわけで、その審議会がまた同じような長期計画も立てますし、そのつどいろいろなことの審議をしてまいっております。審議会というものは、その農政審議会と別個にこれらのそれぞれの特殊立法に伴う審議会があるわけで、それらがどうなっていくのか、どう調整されていくのか。これは方針としてはこの段階で明らかになっていなければならないと私は思います。そうでなければ、一体従来の特殊立法地帯はこれから長期計画の中でどうなっていくのか、それらのことが一切いまわからないわけで、二本立てなのか、あるいは一本立てでまとまっていくのか、こういうことも出てこないわけです。そういう意味合いからお尋ねしておるわけで、これはぜひひとつ明確にしていただきたい。
  72. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 私の記憶が間違っていたら後刻訂正させていただきたいと思うのでありますが、特殊立法が議員立法で各種できまして、そのうち特定のものが期限が到来した。そこでその扱いをどうするかということになりまして、党内でいろいろ相談が行なわれまして、これをそろえて一斉に処理をしょう、こういう形になり、三次振興計画が整理をされた、こう理解をいたしております。そこで私どもといたしましては、いま農林省の土地改良法長期計画を考えます際、役所サイドでこの特殊立法問題を割り切るということを適当とは考えておらない次第でございまして、この問題は長期計画作成段階におきまして、特殊立法そのものの今後の問題として、関係審議会なり関係の部門と相談をして、その処理をきめさせていただきたい。農林省だけでその扱いを一方的に整理することは適当でない、かように考えておる次第でございます。
  73. 湯山勇

    ○湯山委員 私はどうもわからないのは、端的に言えばこれだけ構造改善という新しい行き方に合わせて、土地改良法を抜本的な改正をなさった。そういう中で特に構造改善の中から、特殊地帯というものは取り残される要素を持っております。それぞれの地域は、たとえば湿田単作地帯にいたしましても、急傾斜地帯にいたしましても、あるいは砂地にいたしましても、生産性が実際は上がりにくい条件にある。そうすると、もしこれをこのままほうっておけば、構造改善、生産性向上の中では実は取り残されていく。ほうっておかれる条件を持っている。そういう条件を持っているところはまず考えていかなければならない問題で、構造改善をやっていくという、そういう基本的な考え方から、今回のような土地改良法提案されるにあたっては、実際には一つ一つをとれば地域の問題かもしれませんけれども、それらを合わせていけば、これは日本の全耕地の九〇%にも達するというような問題を解決しないで、そして新しい法律によって処理していこうということになれば、これらの地帯というものは立っていかないという心配も出てくるわけです。私はむしろこういう新たな土地改良法が出てくるときには、まずそういった他の機関審議会関連しておる問題を処理して、これはこう処理しろ、これはこう処理しろ、そこで全体としてはこういう形でいくのだ、こういう考え方が当然なされてしかるべきだと思うのですが、その点はいかがなものでしょう。
  74. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 私どもが三十八年から調査をいたしておりますのは、全国の一割とか二割とかいうその特殊立法地域以外を調査しているわけではございませんで、全国的にいかなる地区であっても、その土地で必要な土地改良事業は何か、湿田なら湿田において排水事業をどういう規模においてどういう形でやるべきかということを、全国に網をかけていま調査をいたしておる次第でございます。したがっていま私どもがやっております調査の結果から積み上げられますものは、先生にちょっとおことばを返すようでございますが、湿田地帯が取り残されるとかいう性格の調査ではないと存ずるのでございます。そこで問題は全国の九〇%のみならず、全国に網を張りまして、団体事業はどうあるべきか、ことに構造改善事業等も進行しておりますので、それらとの関係でどうあるべきかという角度での調査をいろいろやっておるわけでございます。したがって私どもの考えといたしましては事業量としては、いま四十年に限定されたこの事業量でなく、昭和五十年ころまでの事業量というものを一応網をかぶせて調査をいたしておるわけであります。その上に長期計画を組み立てたい、かように実態の問題といたしまして存じておるわけであります。ただ特殊立法という制度がございまして、それからそれぞれの計画がございまして、またそれぞれに審議会がございます。そういう私どもの全国に網をかけた調査もこの特殊立法にばらして、もう一ぺん組み立ててやったほうがいいというふうに整理をいたすか、あるいはそういうふうに全体的に整理するならば、特殊立法という形は必ずしもとらないで、特殊立法地域事業というものは、形においてそれぞれが事業を取り上げなくてもいいという判断に立つか、その辺のところは関係向きとそれぞれ今後打ち合わせをしたい、こういう趣旨でございまして、その急傾斜の事業いたしましても特殊土壌対策の事業にいたしましても、わが国の農地の全部に網をかぶせて全国的に十年間の事業量をとる、こういう実態にございます点は申し添えさせていただきたいと存じます。
  75. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの御答弁をお聞きして、これは局長にお尋ねするのはあるいは無理ではないかという感じもあります。おっしゃるとおりこの計画の中で、それらの特殊地帯を残しておくということでないことはよくわかります。ただ極端なところはそういうことになる可能性がある、そういう意味の御答弁で、やはり残る問題は従来どおりこういう特殊立法地帯、その審議会、それを残していくかどうかという問題、そうなった場合にいまの農政審議会——全国的な立場で考えていく農政審議会の結論あるいは審議の結果、それとこの特殊立法地帯、それぞれの持っておる審議会意見が分かれることがあると思います。その場合にいずれが優先するのか、その調整はどうしていくか、あるいは全体計画の中でワクをはめられて、その中でしか特殊立法地帯の審議会は動けないということになれば、それは一体どういうことになるのか、また今日までそういう特殊立法があって、それから特殊な審議会があって計画を立てた、しかし実際はその計画は予定どおりではなくて、ほとんど期待を裏切るような実績しか上がっていない。そういう審議会ならば、そういう特殊立法ならばこの際やめてしまって、そして今度の土地改良法による大きなワクの中で、それらをいままでのようなテンポではなくてどんどん進めていくのか、いずれかその結論をこの際聞かせていただきたいわけです。それは過去十幾年か、この特殊立法は実施されてまいりました。そしてその実績は御存じのとおりである。それならここでこれだけ抜本的な土地改良法改正されようとするときに、それについての態度がきまっていない。どうするかわからない。だということであれば、一体この点はだれに聞けばいいのか。だれに質問すれば明快になるのか。これはどうなんでしょうか。総理大臣を呼んで聞くのか、農林大臣に聞けばわかるのか、これは非常に大きい問題なんです。私どもはこの特殊立法の中には、単に生産性だけの問題ではなくて、それから後進地だけの問題ではなくて、急傾斜地帯の人たちはそのために特殊の病気さえ起こしている。もっと人道的な社会保障的な見地から見ていかなければならない、こういうことまで考えております。一体これはだれに聞けばいまお尋ねしたような点は明確になるのか、どうなんでしょうか、これは。
  76. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 くどいようでございますが、各種特殊立法を四十年まで延期してそろえて一応法案が国会に整理されました。したがってこの特殊立法を今後さらに継続するべきかどうか、この形においてさらに延長して事業を遂行すべきかどうかという問題は、ことに経過的に議員立法でありました関係もございまして、関係の方面と御相談をしてきめない以上は、農林大臣としても自分はこうするということはちょっと言いかねる性格事柄と私は存ずる次第でございます。そこで、あえて特殊立法に限らず、昨日来北海道の開発計画お話も出てまいりました。それから各種地域の開発の法律もございます。所得倍増の中間経過もございます。いろいろの御計画がそれぞれの分野にある。これらの無関係土地改良長期計画というものができるべき筋合いでもないし、またつくるべきでもない。それぞれの御意見を尊重しつつ、その総合の上に土地改良長期計画はつくるべきものということは、先般来大臣も答弁いたしておる次第でございます。したがって、おことばでございますが、いまこの時点でこの特殊立法地域における四十年度以降の扱いをきめなければ不十分ではないかという点は、もう少し長期計画の作成作業なり何なりと並行して検討を進めるということで処理させていただきたいと私どもは思うわけでございまして、その点はそれ以外にいまちょっと、農林大臣が参りましても、これ以上のことを申し上げかねるのではなかろうかと私は存ずる次第でございます。
  77. 湯山勇

    ○湯山委員 私はいきなりこういうことをお尋ねしたつもりはありません。そうではなくて、もうこの前、頭をそろえるとき、従来なら五カ年ずつ区切っておったものを、あるものは五年のままにしておく、あるものは四年にして、頭をそろえたと思うのです。そのときに何かの意思があったことは間違いありません。いま局長はこれについては何とおっしゃいましたか。とにかくそれらを一ぺん整理したい、そういう気持ちが動いたことは間違いないことです。そしていまそういう踏まえ方の上に立って全国的な長期計画を立てるのだ、そしてそれを積極的に進めていくのだ、こういう土地改良法提案されている。これも具体的な事実です。そうすると一体四十年で頭をそろえた法律をどうするのか。それは確かにおっしゃったように、法律ですから国会審議を経なければきまらないことはよく存じております。ただしかしこれだけの土地改良を進めていこうとする農林省として、その個々の特殊立法はどうしたい、どうしていくのがいまお考えになっておる土地改良を進めていくのに適当である、そういう一応の見通しはなければならないと思います。そうでなければ、何のためにあのときに当然五年であるべきものを四年で切って頭をそろえたのか、その意味がないわけです。これは非常に重要な問題なんです。団体のほとんど大部分がそれであるし、そして私は、このいま計画されておる土地改良が成功するかしないか、それは一にかかってこの特殊立法地帯の土地改良がどうなっていくかにあると言っても決して過言ではないと思います。そういう観点から、もう少しはっきり御答弁をいただきたい。しかしこれはいまここで申し上げてもできないことだと思いますから、相談しなければならない関係官庁があれば御相談をいただく。ただしかし地域総合開発とは意味が違うと思います。この特殊立法というのは、主として土地改良がそのねらいなんですから、東北開発がどうだとか、あるいは四国の開発がどうだとか、あるいは所得倍増計画がどうだからどうだとかいうことではなくて、直接土地改良と一番つながりが深い、すべてが土地改良といっても過言ではないのですから、それらと比較をすることは私は当を得ないと思います。少しきびしい尋ね方をしましたけれども、このことについてはだれか聞いていただけるだろうと思いましたし、何か政府のほうで明確な御説明があると思っておりましたのが、一向ございません。もう法案も大詰めにきましたので、特にきょうお尋ねしたわけです。ひとつよく御協議願って、明日なり安心のできるような御答弁をいただきたいと思います。委員長もいまの点御了承願います。  一応これで私の質問を終わります。
  78. 高見三郎

    高見委員長 芳賀貢君。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昨日の政府の答弁の不明確な分について保留してあるわけでございますが、北海道開発の第二期長期計画の中における土地改良法との関連土地改良事業、並びに農用地開発事業の八カ年計画内容についてでありますが、農用地開発の計画内容については説明を受けたわけでありますが、土地改良事業のいわゆる八カ年で面積において六十万ヘクタールのこの内容は明らかにされておりませんので、この点をきょうは明確にしてもらいたいと思います。
  80. 荒巻與四郎

    ○荒巻政府委員 昨日二期計画におきます土地改良の御説明が不十分でございまして申しわけございませんでした。ここで補足して御説明申し上げたいと思います。  二期開発計画におきまして約六十万ヘクタールの改良事業実施するということになっておりますが、その内訳は、国営かんがい排水事業につきまして十二万四千ヘクタール、道営土地改良事業十一万ヘクタール、道営防災事業につきまして六千ヘクタール、道営諸土地改良事業につきまして三万一千ヘクタール、団体土地改良事業につきまして二十九万八千ヘクタール、非補助融資事業が二万七千ヘクタールございます。これを合計いたしまして五十九万六千ヘクタールとなります。これをまるめまして約六十万ヘクタールと申し上げたわけでございます。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで内容がわかったわけですが、ここであわせて尋ねておきたいことは、先般農林大臣の答弁によりますと、土地改良長期計画は、政府の考えとしては十カ年の長期計画でいきたい。これは法律には出てきていない問題ですから、調整は可能と思いますが、北海道開発計画の場合には、北海道は二年目ですから、四十年度から土地改良長期計画に入るとすれば、北海道開発の八カ年計画の終わるのは、ちょうど所得倍増計画の達成年の昭和四十五年ということになる。そうするとたとえば土地改良が十カ年計画でいくとすれば、六年目に北海道の第二期計画は終わるということになるわけですから、それらの問題は今後土地改良法に基づいて、いま農地局長からもお話がありましたが、関連法律長期計画もそれぞれあるわけですから、これの計画内容とか達成年の調整は、どうしてもはからなければいけないと思うわけです。そういう点についてはこれはもちろん中心農林省ですから、農林省の意向が主体になるわけですが、そういう長期計画の相互間の調整というものを考えた場合、必ずしも十カ年計画でいかなければならぬとかというものではないと思うのです。たとえば治山治水の長期計画は十カ年計画ですが、これは前期、後期それぞれ五カ年計画でということで内容が明らかになっておりまして、土地改良が十カ年計画であってもこれを区分して、前後五カ年計画というものも策定可能であるというふうにわれわれは考えておるわけですが、この点は農林省並びに開発庁の長期計画の調整に対する考え方を参考までに述べてもらいたいと思います。
  82. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 いま長期計画十年を一応考えておるということは、先般大臣からも申し上げました正確度というようなことを加味いたしまして、前期と後期に分けて整備することも必要ではなかろうかということで、内々いろいろ議論をいたしております。ただ土地改良事業は御承知のように継続事業で、まだ五、六年かかる仕事が非常に多いものですから、先ほどのお話にもからみますが、あまり短いと新規のほうがなかなか入りにくいという関係もございまして、できれば十年くらいのものを考えたい。それからいままで全くやったことのない新しい仕事でございますので、各都道府県知事あるいは関係各省とのお話し合いも初めての経験に相なるわけでございますので、調整にあたっての基本的な考え方はどうかというお話でございますが、先般来大臣も申し上げていますとおり、いろいろの計画を尊重しつつ総合するという形で、具体的に詰めていくことをいま検討をいたしておる段階でございます。まことに申しわけないのでございますが、それ以上ちょっと具体的に申し上げる内容を持っておらないわけでございます。
  83. 荒巻與四郎

    ○荒巻政府委員 開発庁の二期計画につきましては、土地改良以外にも各種のものがございます。二期計画は三十八年から八カ年で終わることになるわけでございますけれども、そのうちに含まれます土地改良につきましても、全国の計画との関係を十分に農林省との間で協議いたしまして、そこを来たさないように努力していきたいと考えております。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会にもう一点お尋ねしておきたいわけですが、農用地開発事業の特に草地改良事業については、現在は草地改良事業実施要綱に基づいて事業が進められておるわけです。この実施要綱は御承知のとおり三十七年五月二十五日の農林事務次官通達に基づいてこれが進められておるわけですが、実施内容等については畜産局長が主管して進めるということになっておるわけです。この点は今回の土地改良法改正に基づいて、これらの従来実施された草地開発事業あるいは開拓パイロット事業等についても、実施要綱に基づいて行なっているわけですからして、これらの問題についての改正案との関連によって、今後どういうふうな適正な運用とか事業実施を行なっていくか、あるいは草地造成の指導とか管理方式等についても、たとえば農林省の内部においては、農地局あるいは畜産局等の担当の主管においてどういうふうに効率的に行なっていくか、これらの点についてはそれぞれ関係がありますので、畜産局、農地局あるいは北海道開発庁から考え方を述べてもらいたいと思うのです。
  85. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 私から先に申し上げますが、草地改良事業のうち、草地造成面積が大きく二千とか千何百とか、だんだん大きくなればなりますほど、その草地をどういうふうに利用するかということ、あるいは究極的には畜産立地の問題と非常にからみますので、草地造成の基本計画は畜産局が担当して御判断願いたい。それからそれに基づきまして、今度は草地改良調査計画という、やや具体的な計画段階に相なりました場合に、これも畜産局が中心になって御判断願うが、道路とか整地とか土木にかかわる部分は私のほうに相談をかけていただいて、私のほうも意見を申し上げる形で進めていく。したがって概括的に申しますれば、調査段階は畜産局に予算も計上して指導的に畜産局で行なう、そうして大規模調査が終わりまして、実行段階に入りました場合には、工事のうち土木にかかわる部分が大規模になりますと、そのウエートが高いものでございますので、農地局が担当をいたすというふうに内部で取りきめをいたしております。小規模につきましては、すでにある畜産の実態に応じて、いわば一種の地元増反的な草地の造成の面が強いものでございますので、工事等も牧道、牧柵等の比較的軽微なものになろうかと思いますので、これは畜産局で一貫して処理をする、こういうふうに内部で取りきめまして、三十九年度から——大規模は内地しかまだ実行しておりませんので、大規模の分の工事の実行面の予算は農地局に計上いたした、こういうことでございます。考え方としては草をつくるという物理的行為でなく、究極的に酪農として利用するという先決の問題がございますので、計画面は畜産局が責任を持ちかつ担当する、そういう体制で進みたい、かような実態でございます。
  86. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 先ほど農地局長から説明がありましたとおりでございまして、調査段階につきましては畜産局が担当して、大規模な工事につきましては、これは土木工事の占める部分が非常に大きゅうございますので農地局が担当する、そういうことで予算も三十九年度から計上いたしております。
  87. 青山俊

    ○青山説明員 昨日開発庁の長官からも御意見があったように、国営実施することが相当と思われますような大規模な地区、これは北海道にはかなりあるわけでございます。これらにつきましては国営実施することを考えてもらいたい。その際土地改良法なり要綱を実施できるように、農林省とよく御相談して進めてまいりたいと考えております。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま畜産局参事官から簡単な答弁があったが、草地造成の場合は基本農地局長が言われたとおり、家畜の飼料給源を開発、確保するというところに目的があるわけですからして、畜産局が主体になって基本計画を立てる場合も、たとえば所得倍増計画であるとか、農業長期発展計画に基づいて、畜産の長期的な増加目標というものが一応目標としてできておるわけでありますから、その畜産の拡大に対応して国内の飼料資源というものをどの程度に確保するのかということが、基本計画の主要なる点になると思います。たとえば、倍増計画によれば基準年に対して畜産の拡大が三倍の目標を持っておる。あるいは牛乳の生産等については五・七倍ということになっておるわけですから、現状においても家畜の濃厚飼料については六〇%程度が輸入に依存しておるという現状なわけです。これがさらに長期計画に基づいて拡大していくということになれば、急速に飼料資源を開発といいますか、国内における飼料の生産、確保の体制が必要になってくるわけです。方法としては、既存の畑作を家畜の飼料に転換する方法一つありますが、やはり未墾地あるいは草地の造成、改良事業というものは大きな役割りを果たすわけですから、こういう基本計画を畜産局が中心になって策定する場合、何を目標にして計画を立てる、こういう点が明らかにならなければ、これは農地局が基本調査をやるといっても見当がつかないと思うのです。だからもう少しまじめな内容的な答弁をしてもらわぬと、農地局長の言ったとおりでございますでは済まぬと思うのです。その点について、この際明確にしておいていただきたい。
  89. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 土地改良法が施行になりますと、この法律に基づきまして長期計画というものがつくられることになるわけでございますが、草地改良事業もその大部分土地改良法によってやるということになりますと、計画として将来の見通しを立てて草地改良事業をやる、こういうようになることはもちろんでございます。その場合の前提としては、どのように、何を目標に考えておるかということでございますが、御承知のように、現在飼料の輸入量について見ますと、三十九年度で五百四十万トン、これは現在の全濃厚飼料の四六%でございます。その四六%と申し上げましたのは、農家保有の飼料も入れてでございまして、流通の濃厚飼料ということになりますと、六〇%近くに確かになるわけでございます。特に乳牛というものを考えた場合は、草地改良というのは非常に大きな問題でございまして、政府全体としても大きな計画をもって進む、そういうことは当然でございます。それではその内容ということになりますと、当然私たちがいま考えておりますのは、家畜改良増殖目標、これは三十七年度から始まりまして、四十六年ということを一応目標としておるわけでございますが、その頭羽数というものを前提といたしまして、乳牛などにつきましては、一応七〇%というような自給率というものを考えておるわけでございますが、そういうものを一つの目標として考えたいということを考えておるわけでございます。なお実施の詳細につきましては、だんだん検討いたしまして詰めてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この改正が行なわれれば、昭和四十年度から長期計画を立てるということになるので、まあ一年間ぐらいの余裕はありますが、現在において畜産局として、実施要綱は三十七年に出されたわけですから、長期的な展望のもとにどういうような方向に向かって草地の造成事業を進めていくかという、おおよその方針というものはあると思うのです。家畜の増加目標に対応して、国内における飼料の自給度をどの程度に高めて、それを確保していくかということになると、一応の計算は出てくると思うのです。こういう点は法律審議の中で明らかにならぬと、単に土地改良法の中において、農用地開発事業、その中で草地造成をやるといっても、これは積極的に実行可能かどうかという不安が生ずるわけですから、その点をできるだけ、数字があれば具体的に説明していただきたい。
  91. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 先ほど申し上げましたことと関連いたしますが、数字のこまかい点につきましてはこれから詰めるのでございますが、畜産局といたしましては、家畜改良増殖目標の数字というものを前提といたしまして、自給率を考えていくわけでございます。その場合、具体的に申し上げますと、一応の目標といたしましては、既墾地につきましては百万ヘクタール、未墾地につきましては、草地改良になりますが、これは五十万ヘクタール、そういうようなものを目標にしていま考えておるわけでございますが、計画の進展につれましてさらにこれを詰めてまいりたい、そういうように考えておるわけでございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 牧野法という法律があるのですが、これは林野庁が主管しているわけですか。
  93. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 牧野法は、所管をしておるということばがいいかどうかわかりませんが、これは畜産局で事務を担当しておるわけでございます。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 牧野法の関係と今回の草地改良事業との制度上の関連、こういう点について政府としてどういう方針をお持ちになっておりますか。
  95. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 牧野法におきます牧野管理規程というのがございます。それからこれは、土地改良法のように、事業をやるために権利の調整なり事業の手続を進める、そういうようなものではございません。いまある牧野を市町村が条例によって管理するというものでございまして、この新しい土地改良法が施行された場合に、これに抵触するとか、これに違反するとかいうような性質のものではない、そういうように考えておるわけでございます。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると牧野を管理するというだけのものですか。牧野法に基づく牧野の改良とか、そういう点は当然必要なことになってくると思うのです。単に消極的に管理するということだけで終わる、そういう見解なんですか。
  97. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 これは牧野法の規制の面と土地改良法の規制の面が違うわけでございまして、牧野法の対象となる牧野でございましても、土地改良をするという場合は、この土地改良法に基づきます一定の資格者がそれぞれの手続をしてやる、そういうようになるわけでございまして、この法律が施行された場合は、当然この新法の手続によって牧野法に基づく土地改良をやる、そういうようになるわけでございます。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、牧野の改良事業というのがあるわけですが、その牧野の改良事業というものは、改正された土地改良法に基づく草地の改良あるいは造成事業の対象として行なうということになるのですか。牧野改良は、牧野自体の改良ということで行なうのであれば、結局牧野と草地の定義の問題にも触れると思いますが、そういう点はどう考えますか。
  99. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 私からお答え申し上げますが、牧野法というのがございまして、牧野という概念が牧野法上出てまいるわけでございます。この牧野法は、地方公共体が牧野について管理規程を作成しなければならぬ、そして牧野を適正に管理するという義務を課している法律でございます。内容的には、草刈りの制限とか、あまり家畜をたくさん入れないようにというのが、管理規程の内容になるわけでありまして、比較的古い法律でございまして、実質的にはいまあまり動いておらないと私は存じております。  そこで今度は牧野改良という概念でございますが、畜産局におきまして、今日のように草地改良事業が発達いたす前の段階におきまして、高度集約牧野造成事業——飼料用の牧草を非常に高い反収を持つような形において栽培をする草地造成事業を、高度集約牧野造成事業という名前を使っております。それからそれほど完全な造成事業でないもので、少し野草の中に牧草をばらまくという意味の改良牧野造成事業というのを、数年前からやっております。その後予算措置の問題としては、改良牧野の予算はなくなりまして、高度集約牧野の予算がずっと継続をいたしております。先ほど先生がおっしゃいました二十七年の要綱というのは、その高度集約牧野的に、いわゆる草を密集させて牧草を取る事業に対する補助要綱、補助のやり方を規定いたしましたものでございます。したがいまして牧野という概念は、いま言いました牧野改良という予算の面で出てまいりました概念、それから牧野法上に出て地方公共団体が牧野を管理する。ことに馬がありました時代中心にいたしました牧野改良から出てまいりました概念、一方、今度土地改良法のほうで草地改良事業と申しておりますのは、要するに田畑のほかに未墾地を畑にしたり、未墾地をたんぼにいたしましたりするのと並んで、先ほど申しました永年牧草を集約的につくる——集約的でなくてもいいのですが、永年牧草を植えて利用できる状態に造成する事業を、草地造成事業という形において整備をいたしておる次第でございます。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私がお尋ねしたのも、草地改良事業実施要綱は酪振法の必要に基づいて策定されておるのですが、そうなると、この土地改良法でいうところのいわゆる草地の造成改良事業と、牧野の概念規定から出発する改良事業というものは、これはやはり制度上統一されなければ、牧野の管理規程に基づくその対象の牧野なるものの改良事業をやる場合に、それは草地改良事業として今後は行なうことになるわけでしょう。そうではないのですか。
  101. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 地目が牧野でありましょうと、林野でありましょうと、雑種地でありましょうと、そこに牧草を植えて、家畜の飼養に供することができるような土地の状態に持っていく、これを草地改良事業として統一する考えでございます。
  102. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなるといわゆる農地法上の地目ですね。農地とか林野とか牧野というような地目の種類がありますが、そういうことになると、土地改良によって改良事業を行なった牧野といわれる現地目は、草地に地目変更が行なわれるということになるわけですか。
  103. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 登記簿上の地目といたしましては、田畑、牧野、雑種地、林地というような形で整理されております。農地法上は、農地、それから採草放牧地という形で整理されておる。これは別に登記簿上の概念ではございませんで、農地法上の性質であります。今回草地という概念を取り上げたのは、農地法上の採草放牧地というのは、草を取り、放牧をするが、その取った草を必ずしも家畜に食わせなくても、敷きわらにする、たんぼに敷き込むことを含む採草放牧地という概念で、その後畜産がいろいろ発達してまいりまして、家畜のえさとして使う目的で草を植える土地、これは酪振法にもありますが、主として家畜飼養の目的のために牧草を植えた土地を、草地という概念で規定しております。
  104. 芳賀貢

    ○芳賀委員 牧草であっても、家畜に投与した場合、その与えた牧草を全量家畜が飼料として消化するわけではない。大体三分の一くらいはそしゃくして飼料になるが、あとの三分の二くらいは結果的には敷きわらみたいなものになるわけであって、投与した牧草全量が飼料として消化されるかどうかということになると、これは非常にむずかしい問題となるわけです。ただその草地において採取された牧草なるものい、これが使用目的というものは、家畜の飼料として生産されるものであるということでやらないと、敷きわらと飼料の区分というのは実際問題としてできないでしょう。
  105. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 敷きわらということばがちょっと不正確なもので、あとでたんぼの中に敷き込むと言いましたが、正確に言わせていただきますと、酪振法の八条に、「主として家畜の放牧又はその飼料若しくは敷料の採取の目的に供される」とありますので、厩舎の中に敷く草は入る、たんぽの中に敷き込む草は別だ、こういうことであります。
  106. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後にもう一つ、林野庁が来ておりませんが、林野庁の事業として、モデル牧野なるものを設定しておる地域があるわけです。こういう点はおわかりですか。
  107. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 共用林野等について、そういうことをやっておるというのを聞いております。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 聞いておるのではなくて、それがモデル牧野として造成され、活用されておるわけだから、畜産局としても聞いておる程度ではいけないと思うのです。そういう基幹施設は林野庁自身がこれを行なっておるわけですからね。そういうような点についても、たとえば国有林の特別会計でそのような事業は積極的に行なわれるとすれば、畜産局というのはあまり予算を持っておらぬから、積極的な事業はできないと思うが、そういう国有林野の中にも適地を選定して、林野の特別会計あるいは事業の中で、そのような採草放牧とか、モデル的な牧野を建設して共用に供するということは、これは政策的にも非常に大事な点だと思うのですが、そういう問題については、畜産当局としては従来どういうふうな連絡とか促進をやっておるのか、単に聞いておる程度のものなのかどうか、いかがですか。
  109. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 草地の造成とも関連いたしまして、国有林の積極的活用、そういう面で現在畜産局と林野庁の間で種々話し合いを進めておるわけでありますが、そういう面についても畜産局としては積極的に取り上げたい、こういうように考えております。
  110. 高見三郎

    高見委員長 次会は、明二十三日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十一分散会