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1964-04-16 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十六日(木曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 谷垣 專一君    理事 長谷川四郎君 理事 本名  武君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    大坪 保雄君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    中山 榮一君       野原 正勝君    藤田 義光君       細田 吉藏君    栗林 三郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       西村 関一君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         議     員 川俣 清音君         議     員 稲富 稜人君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月十六日  委員石田宥全君辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月十五日  豊橋市高豊漁港海岸浸食防止護岸築造に関す  る請願福井勇紹介)(第二七九四号)  酪農経営安定対策に関する請願下平正一君紹  介)(第二七九五号)  国有林民主的利用に関する請願(楯兼次郎君  紹介)(第二九〇五号)  肥料二法期限満了後における措置に関する請願  (植木庚子郎君紹介)(第二九七一号)  国内産牛乳による学校給食制度法制化に関す  る請願外三件(荒舩清十郎紹介)(第三〇四  八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  林業基本法案内閣提出第一五一号)  森林基本法案川俣清音君外十二名提出衆法  第四〇号)  林業基本法案稲富稜人君外一名提出衆法第  四四号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出林業基本法案川俣清音君外十二名提出森林基本法案稲富稜人君外一名提出林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。
  3. 高見三郎

    高見委員長 提案理由説明を聴取いたします。丹羽農林政務次官
  4. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 林業基本法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  わが国林業は、今日まで、木材その他の林産物供給資源有効利用国土保全国内市場拡大等国民経済発展国民生活の安定に寄与してまいりました。  しかるに近時、わが国経済発展に伴いまして、林業をめぐって大きな情勢変化が見られるのであります。すなわち、木材需要増大開放経済体制下における外材輸入増加等木材需給構造変化が生じ、また農山村からの労働力の流出が顕著となるなどの趨勢がこれであります。申すまでもなく林業は、本来生産期間がきわめて長いことなど、他産業に比して不利な自然的条件を有するばかりではなく、林業経営の大部分零細規模であること、林業経営者経営意欲が一般的に低調であることなどの脆弱性を有しております。  これらを克服して、諸情勢変化に対応し、林業の総生産増大させ、他産業との格差が是正されるように生産性向上させるとともに、林業従事者所得増大させることにより、林業の安定的な発展をはかることが強く要請されているのであります。その要請にこたえるには、従来の資源政策を基調とした林業政策のみでは十分ではありません。さらに新たな角度から、産業としての林業振興に関する基本的な政策目標を明らかにし、これに基づいて諸般の施策を講じていくことが必要であります。このことは、林業のになう重要な使命にこたえると同時に、国民経済発展国民生活向上を念願する国民の期待にこたえるゆえんであろうと考えるものであります。これがこの法案提出いたしました理由でございます。  次に、この法案の主要な内容につきまして御説明いたします。  まず、第一章総則について申しあげます。第一に、以上申し述べましたような趣旨を明らかにして、この法律目的規定しております。次いで、国の林業に関する政策目標は、国民経済成長発展及び社会生活進歩向上に即応して、林業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、次の事項の実現をはかることにあるものとしております。すなわち、林業生産増大を期するとともに、他産業との格差が是正されるように、林業生産性向上することを目途として林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従事者所得増大して、その経済的、社会的地位向上に資することがこれであります。  第二に、この目標を達成するため、国は林業に関する政策全般にわたって必要な施策を総合的に講じなければならないこととしております。それらは(1)林野林業的利用高度化、(2)林業構造改善、(3)林業技術向上、(4)林産物需給及び価格の安定と流通及び  加工合理化、(5)近代的な林業経営担当者及び技術者養成確保、(6)林業労働に従事する者の養成確保及び福祉向上の六項目として明らかにしております。そしてこれらについての施策が画一的でなく、地域の自然的、経済的、社会的諸条件を十分考慮し、きめこまかく行なわれるべきものとしております。  またこれら諸施策を講ずるにあたっては、林業従事者等の自主的な努力を助長することを旨とすべきものとしております。さらに政府は、これら諸施策を実施するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じ、かつ必要な資金の融通の適正円滑化をはからなければならないこととしております。  第三に、国有林野事業につきましても、最近の社会経済情勢の推移に即応して、林業政策上的確な位置づけを行なうこととしております。すなわち、国は諸施策を講ずるにあたっては、事業企業性確保に必要な考慮を払いつつ、その適切な運営を通じて、重要な林産物需給及び価格の安定に貢献し、林業生産増大に寄与し、林業構造改善のための積極的活用をはかるようにするものとしております。その場合、国土保全その他公益的機能確保とともに、農業構造改善その他産業振興または住民福祉向上のための積極的活用をもはかるようにつとめるものとしております。  第四に、政府は毎年国会に、林業動向及び国が林業に関して講じた施策に関する報告並びにその報告にかかる林業動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならないこととしております。  以上が第一章総則の主たる内容でございます。第二章から第四章までにおきましては、林業生産増進及び林業構造改善林産物需給及び価格安定等並びに林業従事者について、必要な施策方針をそれぞれ明らかにすることとしております。  すなわち、林業生産増進及び林業構造改善に関する第二章におきましては、第一に、林産物需要及び供給並びに森林資源の状況に関する長期見通しを立てることとしております。次いで、この見通しを参酌して、林業の総生産増大生産性向上をはかるよう、林野利用高度化林業技術向上等林業生産に関する施策を講ずべきこととしております。  第二に、林業構造改善をはかるため、林業経営規模等による経営形態の差異を考慮して、必要な施策を講ずるとともに、小規模林業経営についてその規模拡大をはかることとしております。また林業生産合理化し、林業経営発展に資するよう生産行程についての協業を助長することとしております。さらに以上の施策を総合的かつ効率的に遂行するため、林業構造改善事業を推進することとしているのであります。  林産物需給及び価格安定等に関する第三章におきましては、重要な林産物について国内生産を円滑化し、外材輸入にも期待しまして、その需給及び価格の安定をはかることとしております。また林産物流通及び加工合理化をはかるため必要な施策を講ずることとしております。  林業従事者に関する第四章におきましては、近代的な林業経営担当者または技術者たるにふさわしい者の養成確保と、林業労働に従事する者の養成確保及び福祉向上をはかるため必要な施策を講ずることとしております。  次に、第五章におきましては、林業行政に関する組織整備及び運営改善林業団体整備についての方針を述べております。  最後に、第六章におきましては、総理府に林政審議会を設置することとし、その組織等につき必要な事項を定めております。なお林政審議会は、この法律規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣または関係大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議するものであります。  林業基本法案の主要な内容は、以上のとおりでございます。このようにこの法律目的は今後の林業の向うべき道を示すことにありますので、これに基づく具体的な施策につきましては、この法案趣旨により、とりあえず本年度においてもその一部について措置することとするほか、今後にわたって、法制上、予算上等措置を講じていく所存であります。  何とぞ慎重御審議の上、この法案をすみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。     —————————————
  5. 高見三郎

    高見委員長 次に川俣清音君。
  6. 川俣清音

    川俣議員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました森林基本法案について、その提案の理由と概要を御説明申し上げます。  現在わが国山林原野は、国土総面積の約六七%を占めております。これを有効かつ高度に開発することによりまして、国民経済の発展と国民の福祉の増進に寄与しますことは、国の重要な責務であります。  ところが現状をながめてみますると、山林原野の三分の一を占める国有林特権的支配を受け、健全な経営が行なわれず、地元住民の利用が阻害されております。地方公共団体の所有する公有林は、地方財政窮迫のしわ寄せを受けまして過伐、乱伐におちいり、粗放な状態に放置されております。私有林はどうかといいますと、山林所有者の大部分は零細な山持ちで、その過小経営資本不足のためにその山林を有効に利用できず、他方少数大山林地主地元住民の利用から隔絶された大山林を独占しておりますが、多くの場合その経営がきわめて粗放かつ前近代的であります。すなわち、国有、公有、私有いずれの場合も、森林所有権がすべてに優先して過度に重視され、その基盤の上にきわめて不適正な財産保持的な性格の濃い経営が行なわれております。このため林業生産の発展が妨げられ、木材需要の増大に対して供給が伴わず、木材価格が高騰し、しかもその価格の多くの部分が地代として山林所有者の不労所得に吸収され、他方では林業労働者山村農民及び中小産業者所得水準は著しい低水準に押えられております。山村における産業の発展が停滞し、山村と他の地域との経済的格差がますます拡大している根本的な原因はここにあります。このような事態を根本的に改めるため、森林に関する新しい政策の目標と原則を示すというのが、この法律案の骨子であり、提案の理由であります。  次に、その内容であります。  第一に、私どもは、国土は国民に与えられた天然の資源として、何人もこれを公共の利益に合致するように最高度に利用しなければならないという義務をになっていると確信するものであります。そこで、まず全国土を科学的に調査し、合理的な土地利用区分土地利用計画を定むべきであるというのが私どもの主張であります。このためには、国土高度利用促進法という法律の立法化が必要となるわけであります。こうして農業に利用すべき土地の区分と、林業に利用すべき土地の区分が明確になった上で、農業適地においてはわが党の農業基本法を実施し、林業適地においてはこの森林基本法を実施する、こうして国土の開発と高度利用を行なうということ、これがこの法律案の前提となる根本理念であります。したがって、この根本理念を貫くためには、土地に関する所有権利用権等権利関係にも、それに応じた改革を加えなければならないというのが私どもの立場であります。  第二は、森林というものの機能をどう考えるかということであります。森林の機能は、一つは国土を保全して災害を防止するとともに、さらに積極的に水源を涵養し、国民の保健、福祉を増進することにあります。これを森林公益的機能と呼ぶことができると考えます。もう一つは、産業としての林業生産力を高めて、木材等林産物の供給を安定的に拡大し、林業従事者の所得と生活の向上をはかり、もって国民経済に奉仕し貢献することにあります。これを森林経済的機能と呼ぶことができるでありましょう。この二つの機能はともに重要な機能でありますが、中でも前者の機能をまず十分に発揮させまして、その前提の上に立って後者の機能をも十分に発揮させることが、この法律案の目ざすところであります。この法律案の第一条におきましてこの目標を規定いたしております。最近自民党政府林業政策が、ややもすると森林公益的機能を軽視し、経済的機能だけを重視しようとする傾向が顕著に見えることはまことに危険な傾向といわなければなりません。  第三は、林政の計画性の問題であります。ただいま申し述べました森林公益的機能経済的機能を効果的に発揮させるには、国及び地方公共団体の行なう林政の施策が具体的にそれに即した事項に向けられなければなりません。これを規定しているのが第二条、第三条、第四条であります。そして第五条では、政府が林政審議会の意見を聞いて、森林資源及び林業に関する長期の見通しを立て、これに即して十年を一期とする林政基本計画を樹立し、国会に提出するということを規定いたしております。第六条では政府の実施した施策の結果の年次報告及び基本計画に基づいて、政府がこれから講じようとする施策の年次計画を作成して国会へ提出すべきことを規定いたしております。  また第十五条では、第五条の林政全般にわたる基本計画とは別に、現在も行なわれている森林計画制度強化改善して、個別の森林所有者または森林にかかわる使用収益の権利を有する者の森林施業森林計画に基づかせることを規定いたしておりますが、この場合も、各個別の林業者森林公益的機能経済的機能を十分に発揮させるように施業する責任を負うことは当然のことであります。この責任が効果的に果たされるように、第十五条第二項では、林業者林業労働者地方公共団体の長、学識経験者の代表で構成する地域林業協議会を設けて、その意見を十分に反映させるということを規定しているのであります。  第四は、国有林あり方であります。森林の二つの機能を効果的に発揮させるにあたって、国有林の果たすべき役割り、任務が特に大きいことは申すまでもありません。そこで私どもの基本法案では、第八条から第十三条にわたって国有林野事業あり方について規定いたしております。  まず第八条では、国有林存在目的について規定し、第九条では、この国有林存在目的を果たすために、国が経営することが必要な森林、あるいは国が経営することが適当な森林を国が買い入れて、国有林に組み込むことを規定いたしております。こうして国の林政の基幹となる国有林野を十分に確保しなければならないと規定いたしたのであります。その反面、第十条では、国有林野事業の使命の達成に支障を及ぼさない範囲内において、地元の林業者林業経営規模拡大に資するよう、林業者共同組織等国有林野のうちの適当なところを民主的に使用させることを規定いたしております。また第二十一条では、農牧林混合経営の発展を助長するため、国有林及び民有林のうちの農用経営地として適地である土地が、農林業者及びその共同組織によって取得あるいは使用収益権が設定できるようにするということを規定いたしております。  ここで一言触れたいと思いますことは、現在一部に、保安林を除いて国有林をすべて地元へ解放せよという要求が出され、これに対する政府の態度がきわめてあいまいであります。私どもは、国有林野事業の使命を脅かすような無統制な解放には反対であります。地元へ解放すべき適地は民主的に解放すると同時に、また国が必要な、あるいは適当な民間の山林原野を買い入れて、国有林野事業の使命が支障なく遂行されるようにしなければなりません。農業適地を農地へ転換するという原則は、国土高度利用の見地から見て当然のことでありますが、それは国有林にも民有林にもひとしく広く適用されなければなりません。農業構造改善のためという名目で、国有林にだけ解放の要求を向けることは、私有林大山林地主自己保全の策としか考えられません。また解放される国有林野は、地元民共同組織によって真に有効かつ民主的に利用されるべきであって、一部の者の利権に利用ざれることは許されません。こうした点について政府もまたすみやかに適切な方針を明示すべきであります。  次に、国有林野事業経営に関することでありますが、私どもは、その経営が最も効率的かつ民主的に行なわれるように、国有林野事業は原則として直轄直営を基本とすることとし、そして国有林野事業に従事する労働者の雇用の安定をはかるため、その常時雇用を促進することを規定いたしております。これは第十一条、第十三条に規定されております。また第十一条では、国有林野事業民主的運営を促進するため民主的な審議機関を設置すると定めておりますが、これによって国有林立木処分等を含めて経営民主化をはからなければならないという考えであります。第十二条では、国有林野特別会計制度改善について規定しております。これは企業的業務行政的業務勘定区分をして、企業的業務については単年度制を基本としつつも、同時に会計の長期的弾力性を持たせ、この勘定において剰余金の生じた場合は、これを原則として国有林資源培養のために還元していくという考え方であります。行政的業務の勘定については、国有林民有林にわたる保安、治山事業の勘定、民間林業の振興をはかる民間林業振興勘定国有林所在市町村振興事業勘定等が必要になろうと思いますが、これらは公共負担の思想によって所要経費一般会計の資金によるべきだという考え方であります。現状においては、民間林業への林政協力の経費をつくり出すため、国有林野事業で無理に剰余金をひねり出そうとして、国有林の伐採や立木処分がきわめて便宜的に操作されている傾向が見られますが、これについてはこの際根本的に改めなければならないというのが私どもこの法案の規定するところであります。以上が国有林野事業についての私どもの考え方の概要であります。  第五に、私どもの基本法案の中での重要な点は、林業生産を増大させ、しこうして林業経営共同化を推進するということであります。これについては、第十五条で現行の森林計画制度強化改善について規定いたしておりますが、すでに申し述べましたので省略いたします。第十六条では林道の整備について規定しておりますが、ここでは林道は森林資源の開発はもとよりのこと、山村における交通通信条件等改善及び観光開発産業開発等のためにもきわめて重要な役割を果たすものでありますことは明らかなことでありますので、その意味におきまして、林道の開設、改良、管理等についてその費用の国の負担を明確にすべきだという考え方に立っております。第十七条の造林の推進でありますが、ここでは、国の施策として造林の助成を強化するという一般的施策だけに限らず、特に地方公共団体の所有する林野及び私有林水源涵養林に対し、国みずから官行造林を強力に実施するということを規定いたしております。この場合は、現在森林開発公団が単なるトンネル機関として行なっている分収造林の業務は廃止されることになるわけであります。  第十九条では入り会い権の権利の近代化、第二十条では林業経営共同化を規定いたしております。この部分は、林業構造改善事業との関係でやや詳しく御説明を申し上げたいと思います。現在政府は、農業と並んで林業においても構造改善事業を推進しようとしております。このやり方は、零細山林所有者を分解させて山林を手離させ、それを上層山林所有者に買い取らせて、二十ヘクタール規模以上の自立経営林家あるいは企業林業を育成するという方法であります。これはいわゆる零細林業者切り捨てであり、農業における零細農切り捨てと同じ思想に立つ政策であります。この構造改善事業のために、政府は、金融政策としては上層山林所有者山林買い取り資金を融資したり、あるいは部落有林入り会い権を解体し私権化して、下層農民入り会い権上層農への兼併を促進したり、あるいはまた国有林野上層農に優先的に払い下げる等の方法で、自立経営林家及び企業林業を育成しようとしています。これは一言にしていえば、弱肉強食の原理を林政に露骨に導入しようとするものであります。こうした林政の方向には私どもは反対であります。  そこで私どもの森林基本法案の第二十条では、国が林業従事者生産共同組織を育成して、零細山林所有者もひとしくこの共同組織の中においてその経営を向上させることのできるように援助しながら、しかも共同組織という単位でみますと、林業経営の規模が大規模化され、進んだ技術や機械を導入して生産性の高い林業経営ができ、しかもその中で共同経営に参加している林業従事者所得水準も大幅に向上できるという、そういう経営の姿を目ざしておるものであります。また私どもの基本法案の第十九条は、入り会い権にかかる林野権利関係近代化するということを規定いたしておりますが、これも近代化された権利関係を直ちに経営共同化の方向へ誘導していくという考えに立つものでありまして、近代化された権利関係を分解させて上層への兼併と下層の切り捨てを進めるという政府の方針とは全く異なる方針であるということを特に申し上げたいのであります。  御承知のとおり、現在のわが国林業者の大部分はきわめて零細な山林所有者であり、この零細性をそのままにしておくことは林政の見るべき前進をはかることは不可能であると思うのであります。ところが林業経営零細性を打ち破るには、二つの道しかないというのが私どもの考えであります。一つは、資本主義弱肉強食の法則を使って、数多くの零細な経営切り捨て、その山林を兼併させることによって規模の大きな自立経営林家、もしくは企業林業を育成していく道であります。政府の構造改善の道がこれであります。もう一つは、零細な経営共同化の土俵の中で生かしながら、しかも全体としての経営単位は大規模化されるという共同経営の道であります。私どもの基本法案の目ざすところはこれであります。この二つの道のどちらが山村住民の利益に役立つか、どちらがより民主的であるか、この対決がいま日本の林業の前に迫られていることを私どもは確信いたしておるのであります。  なおまた林業経営共同化との関連で、なお本法の第二十一条の規定に注目していただきたいと思うのであります。わが国山村地帯においては、農業、畜産業林業は切り離せない相互関係にあります。大部分の山村の農家は、農業をやっていると同時に畜産もやり、また少しばかり山林も経営いたしております。この三つを合わせて山村住民の生計が維持されておるのであります。そこでこの三つを有機的に組み合わせて農牧林混合経営を発展させることが、山村経済の振興のためにどうしても必要であります。第二十一条では、この農牧林混合経営の発展の助長策として、国有林及び民有林のいかんを問わず、土地利用区分によって農用地として適当ということに判定された林野は、これを地元民に取得させるよう、あるいは使用収益の権利を設定させるよう、国の施策を講ずるというように規定しておるのであります。そしてこの農牧林混合経営もまた、できるだけ共同経営の形態をとれるように、国の援助と指導を強めるべきことはもちろんのことであります。  第六に、私どもの基本法案の重点は、木材等の流通を合理化して、需給と価格を安定させることにあります。第二十四条では、国内産木材等の供給の円滑化をうたっていますが、この点では、この法案は特に国有林が一定の木材の蓄積を持って、需給の動向に応じて弾力的に市場へ供給できる体制を考慮しているわけであります。また同じ第二十四条で外国産木材等の輸入の計画化及び調整をうたっておりますが、これは国内需給の状況に応じ、あるいは外材輸入を促進し、あるいは外材輸入を制限する等、その計画と調整の権限はあくまで国の手に確保し、またそれに伴い、港湾や貯木場の設備を政府の責任で整備すべきだという考えであります。第二十五条では、木材等の流通につきまとう前近代的な商慣行を改善するというねらいから、公営の木材市場を整備するということを規定いたし、それにあわせて森林組合もしくは製材業者等の協同組合の行なう購買、加工、販売の事業の発達改善をはかることを規定いたしております。  第七に、私どもの基本法案林業従事者の福祉の向上と山村振興を大きな重点といたしております。いままで私の申し述べました各条項の説明でも明らかなように、いわばこの基本法案の全体を通じて、最終的目標は、林業従事者の地位を向上して山村地域の格差を根本的に解消するというところに置かれているわけであります。具体的に申し上げますと、国有林野事業経営、林道の整備、造林の推進と林業経営共同化農牧林混合経営の発展助長等について、この基本法案で規定いたしておる内容は、すべて林業従事者の福祉の向上と山村の地域住民の所得向上を目ざしているものにほかなりません。さらに、それに加えまして、最終的な確認の形におきまして、第二十六条で林業労働者の雇用の安定、労働条件の改善、労働関係の近代化、社会保障の拡充等のために、国は必要な施策を講じなければならないと規定いたしております。これは現状におきまして、林業労働者が他の産業の労働者に比べて、労働行政、社会保障行政の諸権利を受ける水準がきわめて立ちおくれております。これを国の責任において大きく引き上げるという趣旨であります。また第二十七条では、山村の生活環境の整備のため、山村における交通、通信、衛生、文化等の環境整備、生活改善の措置を国が講ずべきことを規定いたしております。こうして林業従事者あるいは山村住民を人間として尊重し、その福祉を向上させるところに私どもの基本法案の最大の目的があるのであります。  以上が、私どもの森林基本法案のおもな内容であります。その他に林業行政組織の整備、林業関係の団体の整備、あるいは林政審議会の設置等についての規定もございますすが、これは法案を御一読いただきますれば明らかなところでありますので省略いたします。  最後に、この基本法案の関連法について御説明申し上げます。この基本法案が成立した場合、その中に盛り込まれている諸原則を実施するための各種の関連法の立法が必要となります。私どもの構想では次のようなものが必要と考えられます。  第一は、国土高度利用促進法案であります。全国土の調査に基づき、国土高度利用の目的に従って土地利用区分土地利用計画を定め、土地の利用をこの区分と計画に従わせます。またこのために必要な土地に関する権利の調整を行なうというのがこの法案の趣旨であります。なおこの法案は、森林基本法の関連法というよりは、むしろ、農業基本法及び森林基本法の前提となるべきものであります。  第二は、国有林野事業法案であります。その趣旨は、一、国有林野事業の目的及び意義づけを明確にする。二、国による民有森林の買い入れと、国有林野の民間への売り渡し、使用収益権の設定等について規定をする。三、国有林野事業の運営につき、直用直営の原則と請負導入の関連、立木売り払いの方法及びその他国有林野事業の運営の民主化に資するための中央、地方の審議機関の設置等を規定をする。四、国有林野労働者の福祉向上について規定をする等であります。  第三は、国有林野事業特別会計法の改正であります。その趣旨は、国有林野事業特別会計の内部において、企業的業務の勘定と行政的業務の勘定を区分してそれぞれの経理を明らかにする。なお、行政的業務の勘定では、国有林民有林庁通ずる保安林事業を含む治山事業の勘定、民有林振興事業の勘定、国有林所在農山村の振興事業勘定等を設け、その経費は原則として一般会計からの繰り入れによるべきことを規定する。企業的業務の勘定においては、経理に弾力性を持たせ、その剰余金は原則として国有林資源培養のために還元すべきことを規定する等であります。  第四は、国有林労働者雇用安定法案であります。これは国有林野事業に主としてその生計を依存している労働者の常時雇用の促進と降雪、積雪等により作業を休業する場合の特別休養手当の支給について規定をするという趣旨であります。この法案は、すでにこの国会にわが党から提案の手続をとっております。  第五は、労働社会保障関係法等の改正であります。これは労働関係及び社会保障関係諸法規について、林業労働者も他の労働者と同じ権利を受けることができるような改正を行なうというものであります。  第六は、保安林法案であります。これは保安林制度を確立し、その整備、管理の手続について規定するとともに、国による国土保全上必要な森林等の買い入れについて規定し、これを恒久法とするという趣旨であります。  第七は、治山治水緊急措置法の改正であります。その趣旨は、治山治水の事業の計画的実施のための措置を規定するとともに、その事業費の負担について責任を明確にするということであります。  第八は、森林計画法案であります。これは現行森林法のうちから森林計画についての規定を独立させるものでありまして、一、全国及び地方森林計画の樹立について規定するとともに、その計画と林業者の個別の森林施業計画との有機的関連について規定する。二、全国、地方森林計画の樹立及び実施については中央、地方の審議会の意見を聞くべきことを規定する。三、森林計画に基づく林業者の個別の森林施業計画の樹立及び実施については、地域林業協議会の意見を聞くべきことを規定するという趣旨のものであります。  第九は、林道法案であります。この趣旨は、一、林業総生産の増大と林業生産性の向上をはるための林道の整備開発について規定する。二、林道が、林業生産に対してはもちろん、奥地農山村の産業開発、観光開発、及び交通、通信条件の改善に果たす役割りにかんがみ、その整備開発の事業費の負担についての国の責任を明確にするというものであります。  第十は、造林法案であります。これは一、造林事業の促進をはかるための国の助成措置について規定をする。二、地方公共団体の所有する林野及び私有林の水源林に対して国の行なう分収造林について規定をするという趣旨のものであります。ことにこの第二の点は、官行造林を復活するという考え方に立つものであります。  第十一は、入会権近代化法案であります。これは、入り会い権にかかわる林野の有効な共同利用をはかるため、農林業者入り会い権を保障し、その権利関係近代化する措置について規定するという趣旨のものであります。  第十二は、森林組合法案であります。これは現行森林法のうちから森林組合についての規定を独立させてさらに拡充するものでありまして、一、林業経営共同化を推進するため、生産森林組合等の林業法人の組織について規定する。二、森林組合の行なう販売、購買、信用、共同利用施設等の事業を強化するための必要な事項について規定をするという趣旨のものであります。  第十三は、山村振興法案であります。その内容は、一、山村における交通、通信、衛生、文化等の環境の整備、山村住民の生活改善等のため必要な施策について、国の責任を規定をする。二、山村における零細な農林業者の所得の増大をはかるため、農牧林混合経営の発展を助長する方策として、国有地、民有地を通じて、農用経営地として適当な林野を円滑に取得または使用収益権の設定を行ない得ることとし、その開発について国の助成を行なうことを規定をするという趣旨のものであります。  第十四は、林業改良助長法案であります。その内容は、林業に関する試験研究機構の整備拡充、林業に関する技術及び知識の普及指導の機構と事業等について規定する。二、近代的な林業従事者としてふさわしい人材の養成及び確保のための教育、研修等の事業について規定するという趣旨のものであります。  第十五は、木材公営市場法案であります。これは、一、素材及び製材の流通の近代化をはかるため、木材産地及び消費地に公営木材市場を整備すべきことを規定をする。二、輸入木材の流通についても公営木材市場を経由させることを規定するという趣旨のものであります。  第十六条は、農林漁業金融公庫法、林業信用基金法等の改正であります。その趣旨は、一、造林等についての金融を円滑化し、その貸し付け条件を大幅に長期低利化する。二、生産森林組合等の林業共同経営に対する特別に長期低利な資金の貸し付け制度を新たに規定するというものであります。  第十七は、狩猟法の改正であります。その趣旨は、有害鳥獣の駆除とあわせて、有益鳥獣の保護培養についての措置を規定するというものであります。  以上、私どもの森林基本法案の提案の理由、そのおもなる内容、及びこれに付帯して必要と考えられる関連法案について、御説明を申し上げた次第であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決決定されんことをお願い申し上げ、私の提案の趣旨説明を終わります。     —————————————
  7. 高見三郎

  8. 稲富稜人

    稲富議員 林業基本法案提案理由を御説明いたします。  わが国の農林業従事者所得が他産業従事者の所得と比べて著しい低位にあることは、各位の御承知のところであります。このため去る昭和三十六年、農業基本法が制定せられ、曲がりなりにも農業部門における所得格差の解消と農業近代化一つ方向が示されたのであります。しかるに農林業中、最も困難な立場に置かれている林業及び林業従事者については、今日に至るもその安定的発展の方策、及び地位の向上について何らの方向が示されていないことは、遺憾のきわみであります。  わが国林業はその大多数が雰細経営であって、生産性が低く、投資と労働の投入の果実を長い年月を待って得られるようなゆとりはないのみならず、加えて、エネルギー革命の進行に伴って、薪炭の需要は急激に低下しつつあって、逐年収入はますます望み得ない状態になりつつあるのであります。一方、大山村所有のもとに働く労働者は、その所得が低く、不安定であるばかりでなく、名子制度、焼子制度等の封建的遺制はいまだ払拭されず、民主政治のもとにおいて人格の尊厳さえ侵されている事実が見受けられるのであります。かくて国民経済発展社会生活進歩向上に即応し得ないこれら農山村においては、みずからの生活に絶望して、部落ぐるみ村を捨てる事態さえ発生しつつあるのであります。  さらに経済の面から林業を見るならば、国民経済成長発展に伴い、木材需要はますます増大の一途をたどるものと見通され、近年外国産木材の輸入は著しく増加しつつあるのでありまして、三十八年度においては、その金額は四億ドルをこえる状態に立ち至り、国際収支に悪影響を及ぼすに至ったのであります。  わが国山林所有の現状は、三分の一を占める国有林を除いては、ごく少数の大所有者を除いては、九六%の大多数がいずれも零細所有者で、どちらかというと資産保持の色彩が強く、したがって一般に企業性に乏しく、山林経営はきわめて生産性が低いと言わざるを得ないのであります。かてて加えて近年の農山林における労働力の不足は、山林経営にとって新たな悪条件を付加してまいったのであります。かくのごとくしてわが国山林は、その全生産能力を発揮し得ないばかりでなく、ますます悪化する傾向にあるのでありまして、やがて国内林業は衰退におちいるばかりでなく、国内資源をみだりに放置する結果に相なるのであります。顧みますれば、明治維新によって近代国家への道を踏み出したわが国は、その当初において、国家財政農業及び林業の地租収入をささえとして工業を育所してまいったのでありまして、その結果、工業はいまや世界の驚異とさえ言われる発達を遂げた反面、農民や林従事者の大多数は国家政策の犠牲者として、いまなお不振な原始産業の従事者として捨ておかれて今日に至ったのであります。  以上の事実に思いをいたすならば、いまこそ国はその償いをする意味からも、農業林業近代化し、林業従事者所得を他産業従事者のそれと均衡させ、林業従事者の地位の向上福祉のために特段の施策を講ずべき責任があると思うのであります。  次に法案内容について御説明申し上げます。  まず第一章総則におきまして、政策目標及びこれを実現するための国及び地方公共団体施策について、七項目の列記によってその責任を明確に規定し、さらに財政上の措置に言及したのであります。すなわち第二条において、国の林業に関する政策目標は、国土保全を根幹とし、国民経済発展社会生活進歩向上に即応して、林業生産増大林業生産性向上により、林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従事者所得増大して、その経済的、社会的地位向上に資することとして、国の林業政策目標を明らかにしたのであります。なお財政上の措置については、第五条において、特に林業生産長期性及び林業公共性にかんがみ、思い切った低利かつ長期資金の円滑な融通措置を講ずるものとしたのであります。次いで第六条において、政府長期にわたる林業基本計画を樹立し、国会の承認を受けなければならないこととし、この基本計画には、森林資源の状況並びに木材その他重要な林産物需要及び供給に関する長期見通しと、保安林整備目標木材その他重要な林産物生産目標林業従事者所得動向及びその向上に関する施策目標等を定めることとし、この森林基本計画を根幹としてすべての林業施策を展開せしめていこうとするものであります。なおこの基本計画に基づき講じた年々の施策及び講じようとする施策は、毎年国会報告することとしました。  次に第二章に国土保全に関する一章を設けましたのは、林野に関する施策はすべて国土保全につながらなければならないという見地から、特にこれを重視したからであります。まず第八条において、国は他の法律による国土保全に関する措置と相まって、治山治水に万全を期さなければならない国土保全の責務を明らかにし、次いで第九条において、治山事業に関する費用は全額国庫負担原則を立て、また国及び地方公共団体の所有林野の払い下げもしくは使用権の譲渡にあたっても、いやしくも国土保全支障があってはならないことを条件とし、さらに第十条において、国は国土保全上必要のある場合は、一般に林野の転用につき必要な規制措置を講ずることとしたのであります。  次に国有林野事業について一章設けました。国有林野わが国山林の三分の一を占め、国土保全はもちろん、計画生産木材需要とその価格に対して調整的役割をも果たし得るものでありますから、鋭意これが経営に当たることといたし、さらに公益上必要な林野の買い入れ及び土地所有者または森林組合において施業計画に基づく施業を実施し得ない場合は、これを国有林野事業として積極的に施業する等の規定を設けるほか、国有林所在地域住民福祉のために、住民もしくは住民の団体に国有林利用権を大幅に与える道を講じたのであります。  林業生産について申し上げます。わが国林業は、国土の約六七%に及ぶ広大な林野を基礎として存立しているのであるが、三分の一の面積を占める国有林野及びごく少数の山林経営者を除いては、九六%を占める大多数の山林所有者はいずれも十町歩以下の零細所有者であって、どちらかというと財産保持的性格は強く、その林業経営の非企業的、非近代性は、飛躍的な発展を見せる国民経済の要請をこたえることがとうていでき得ないのであります。国土保全使命を全うしながらあわせて国民経済の要請にこたえ、林業生産力の飛躍的な増大をはかることが、今日わが国林業に課せられた課題であるが、このためには思い切った増産対策が必要であります。  このために国が立てた全国森林計画に即して、都道府県知事が地域森林計画を立て、これに基づき市町村長が、当該区域内の森林施業に関する計画を立てるとともに、この森林施業の実施について、森林組合とともにその責めに任ずることとしました。なお、森林所有者及び使用収益権利を有する者は、この森林施業に基づいて忠実に施業を行なう義務を第十四条にうたったのであります。なお、この森林施業に関する計画の実施を確保するために、小規模森林所有者の施業の協同化を助長するとともに、必要なる場合は、森林所有者にかわって森林組合が施業を行なうことができることとする等、必要な施策を講ずることとしたのであります。  さらに林業生産増大のために、林道その他林業生産の基盤の整備公有林野の分収造林の実施、造林に対する助成の強化、林業の機械化、林業技術高度化等による林業生産性向上林業に関する試験、研究機構の整備充実すべき規定を設け、次いで林業の協同化を推進するとともに、山林における国有林野その他の林野について使用収益権利の設定が円滑に行なわれるよう必要な施策を講ずることとしたほか、災害にかかる損害についても国において十分損失が補てんされるよう規定したのであります。  次に林産物需給及び流通の章について申し上げます。第一次産業は総じて流通面において不利を招くのでありまして、林業もその例に漏れないのであります。そこで林産物需給及び価格の安定、外国産木材輸入の計画化とその調整は国においてこれを行なうこととし、また森林組合、中小企業協同組合が行なう購買、加工、販売など事業改善木材市場の整備、取引の近代化についても、国において必要な施策を講ずることとしたのであります。  次に林業従事者の章においては、まず技術者の養成など教育事業の充実を規定し、林業労働者福祉については、都市工場労働者の就業構造と全く異なるため、現行の社会保障制度ではそのまま適用することができ得ず、山林労務者にはまことに不利益であるから、これら山林労務者の就業構造に合うよう法律を改正し、林業労働者にかかる社会保障の特別措置を講ずることとしたのでありまして、これらの措置と相まって、その雇用の安定、労働条件改善、労働関係近代化など、必要な施策を講ずることとしたのであります。また山林生活環境の整備についても、その置かれている地理的不利にかんがみ、交通、文化、衛生等の環境整備及び生活改善に必要な施策を講ずることにいたしました。  次に林業行政機関、林政審議会等に関して八カ条にわたって規定いたしましたが、その詳細は省略することにいたしますが、林業団体については市町村長とともに林業施業者の責めに任ずることにかんがみ、林業団体整備強化に特段の意を払い、特に必要な場合は森林組合と農業協同組合が統合を促進する措置を講ずる等、林業団体整備につき必要な施策を講ずることとしたのであります。  以上が提案趣旨法案概要であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことを希望いたしまして、私の提案理由説明を終わります。     —————————————
  9. 高見三郎

    高見委員長 引き続き、内閣提出林業基本法案について補足説明を聴取いたします。田中林野庁長官
  10. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 それでは政府提案林業基本法案提案理由につきまして、若干補足説明を申し上げます。  まず、この法律立案の基本的な考え方についてでございます。  さきに提案理由説明でも申し上げましたとおり、今日林業が直面しております問題は、木材需給構造変化山村からの労働力の流出等、林業を取り巻く諸情勢の著しい変化に対応して、林業の総生産増大生産性向上を目途にその安定的な発展をはかるとともに、林業従事者所得増大を期することであります。申すまでもなく、林業生産基盤としての森林は、同時に国土保全等、公益的機能をも有するものでありまして、このため、今後とも治山事業等を推進していくことが必要でありますが、今日林業が直面しております問題を解決していくためには、新たな見地から経済政策としての林業政策を確立することが必要であります。林業基本法は、このような新しい林業政策基本あり方を明らかにしようとするものでございます。また今後これによって林業発展がはかられるならば、ひいては国土保全等にも寄与し得るとともに、さらに林業産業構造上重要な地位を占めている山村地域産業振興のためにも貢献し得るものと考えるのであります。  次に、この法案内容につきまして御説明いたします。  この法案の全体の構成につきましては、総則、林業生産増進及び林業構造改善林産物需給及び価格安定等林業従事者林業行政機関及び林業団体林政審議会の六章からなっております。第一章では、この法律目的と国の林業に関する政策目標を明らかにするとともに、それを達成するための国の施策について規定し、またそれとの関係において国有林野の管理及び経営事業の位置づけを行なうほか、これら施策を年々具体化していく上に、政府国会年次報告等を提出すべき旨を規定しております。次いで第二章以下では、国が必要な施策を講ずるについて、特にその方針を宣明すべきものをふえんして規定しております。そして最後に、この法律の施行に関する重要事項を調査審議するものとして林政審議会を設けることとし、所要の規定を設けております。  以下各条項につきまして御説明いたします。  まず第一章総則でございますが、第一条では、この法律目的を定めております。それはさきに申し述べましたとおり、林業及びそのにない手としての林業従事者国民経済において果たすべき重要な使命にかんがみ、最近における林業の動向及びこれを取り巻く条件変化を考慮して、林業発展林業従事者の地位の向上をはかり、あわせて国土保全に寄与するため、林業に関する政策目標を明らかにし、その目標の達成に資するための基本的な施策を示すことであります。  次に第二条におきましては、国の林業に関する政策目標を定めております。すなわち、国民経済成長発展社会生活進歩向上に即応して、林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従事者の経済的、社会的地位向上に資することがこれであります。その場合、林業の安定的な発展は、林業生産増大を期するとともに、他産業との格差が是正されるように林業生産性向上することを目途とすべきこと、さらに林業従事者の地位の向上のため、林業生産発展を通じてその所得増大をはかるべきこととし、またこれらを実現するため、林業がその固有の自然的、経済的、社会的制約により他産業に比べて不利な条件下に置かれていることを考慮して、これを補正すべきこととしております。  第三条におきましては、前条の目標を達成するために国が講ずべき施策について規定しております。すなわち、必要な施策といたしましては、いわゆる林業政策の範囲にとどまらず、財政、金融、労働、社会、文教等、国の各般の政策分野にわたりますので、「その政策全般にわたり」といたしますとともに、施策は総合調整されて脈絡あるものとして講ぜられなければならないので、特に「総合的に」と規定いたしました。  同条各号について御説明いたしますと、第一号では、林業生産増進のため、林野林業的利用高度化をはかることを規定しております。この場合、国民経済発展に伴い、林産物の需要構造は変化し、木材需要が大きく増加してきたのに対し、薪炭需要は減少してきておりますので、生産の方も、このような動向に適合させ、拡大造林を推進することが必要であり、この旨を特に例示しております。  第二号では、林業構造改善をはかることを規定しております。わが国林業の特質としましては、林業経営についてみますと、一方では零細規模のものが多数存在し、他方ではごく少数の大規模のものも見られるのでありますが、いずれの場合にあっても、一般にはその経営意欲が低調なのが現状であります。総生産増大生産性向上、従事者の所得増大といいましても、このような状態のままでは十分にこれを達成することは困難であります。そこで林業経営規模等による経営形態の差異を考慮しながら、林地の集団化、機械化、小規模林業経営規模拡大等をはかり、林地の所有及び使用収益あり方を合理的なものとするとともに、経営あり方近代化し、もって林業経営の健全な発展をはかり、生産性の高い林業を実現しようとするのが、この趣旨であります。  以上申し上げましたような生産増進、構造の改善をはかる上に、林業技術向上は不可欠の要件であります。また特に林業におきましては、技術が立ちおくれているとも言われますので、第三号では、その向上をはかるべきことを規定しております。  さらに、林業生産林業構造に関する施策が講ぜられましても、需給及び価格の安定と流通及び加工の合理化がはかられなければ、国民経済の要請にこたえて、林業の安定的な発展をはかることは困難であります。よって第四号では、林産物需給及び価格の安定をはかるべきことを規定するとともに、生産者と需要者を結ぶ流通過程を合理化し、林産物の加工行程の近代化林産物利用高度化を進めるべきことを規定しております。  第五号及び第六号では、林業をになう主体としての人の問題について規定しております。林業経営近代化のためには、林業経営及び林業技術を担当する者に高い知識能力が要求されるとともに、特に最近におきましては、就業構造の変化によって、林業にこれらの人を確保していくことが次第に困難を加えてきております。よって第五号では、林業に関する教育、研究、普及の事業を充実する等、山村中堅青少年等の養成及び確保をはかるべきことを規定しております。このようなことは、林業労働に従事する者についても同様でありますので、職業訓練の事業の充実、就業の安定化、社会保障の拡充等の施策を講ずることにより、その養成、確保及び福祉向上をはかることが必要であり、これを第六号で規定しております。  以上申し述べました六つの事項によりまして、目標達成のための必要な施策を遺漏なく方向づけているのであります。  なおこれらの施策は、当然のことながら、地域の自然、経済、社会の各般にわたる諸条件の相違を考慮して講じなければならないものが少なくありませんので、第二項にその旨を規定しております。  第四条におきましては、国有林野の管理及び経営事業について規定しております。御承知のように国有林野は、わが国森林面積の約三分の一、森林蓄積の約二分の一を占め、その管理及び経営事業わが国林業に占める比重は、きわめて大きいのであります。したがって第一項におきましては、この事業と前条の国の施策との関係及びその方向づけを明らかにしているのであります。すなわち、国は前条第一項の施策を講ずるにあたりまして、国有林野の管理及び経営事業の企業的運営に十分考慮を払いながら、その適切な運営を通じて施策の遂行に資するようにするものとしているのであります。これを具体的に特記しましたのが、(1)国有林野を重要な林産物の持続的供給源としてその需給及び価格の安定に貢献させるようにすること、(2)奥地未開発林野開発等を促進して林業生産増大に寄与するようにすること、(3)林業構造改善に資するため積極的にその活用をはかるようにすることであります。  ところで国有林野役割りとしては、以上のような国の施策の遂行に資する面のみでなく、国土保全その他公益的機能確保をはかることや、地元農業構造改善等のために積極的にその活用をはかることもまた重要なものであり、第一項によって施策の遂行に資する場合にも、このことについて十分配意していかなければなりませんので、その旨を第二項におきまして特に規定しているのであります。  第五条におきましては、地方公共団体施策について規定しております。第二条の国の林業に関する政策目標は、同時に地方公共団体施策目標でもあり、両者が協力して初めてこれが達成できるのであります。そのため第三条で国が必要な施策を講ずべきことを規定しますとともに、ここで地方公共団体もまた国の施策に準じて施策を講ずるようにつとめるべきことを規定しているのであります。  第六条におきましては、第三条の国の施策を受けて、その実施のため必要な法制上及び財政上の措置と所要資金の融通の適正円滑化をはかるべきことをうたい、これを林業基本法施行の任に携わる政府の責務として規定しております。  以上のように国及び地方公共団体は、林業発展林業従事者の地位の向上のため必要な施策を講ずべきものとしているのでありますが、林業従事者みずからもまたそのために努力すべきことは当然であります。よって第七条におきましては、国及び地方公共団体は、その施策の実行上、林業従事者または林業団体がする自主的な努力を助長すべきことを規定しております。  また第八条におきましては、国が必要な施策を講じてまいります場合、その年々の実行を確保し、その責任を明らかにする趣旨から、政府は毎年国会に、林業の動向及び政府林業に関して講じた施策に関する報告と講じようとする施策を明らかにした文書の提出を行なうべきことを規定しております。また講じようとする施策を明らかにした文書は、広く学識経験者の意見を反映せしめる趣旨から、林政審議会の意見を聞いて作成すべきものとしております。  以上が第一章総則の内容でございます。  次に第二章は、林業生産増進及び林業構造改善についてでございます。  第九条におきましては、林産物の需要及び供給並びに森林資源の状況に関する長期見通しを立て、これを公表すべきことを規定しております。林業は、その生産期間がきわめて長く、需要の動向に即応して生産を行なうためには、長期にわたる適確な見通しを必要とするのでありまして、現在でも森林法にこのような長期見通しを立てるべき旨の規定が設けられております。これを今回林業基本法の一環としてここに規定し、政府地方公共団体施策を講ずる場合の指標とするとともに、林業従事者の参考として役立たせようとするものであります。なおこの見通しの適確を期するため、その作成には総合的な検討を要しますので、それを立てるに際しましては林政審議会の意見を聞くこととしております。  第十条におきましては、これを受けて、林業生産に関する施策について規定しております。すなわち、林業生産増進をはかる施策としまして、国は前条の長期見通しを参酌して、林道の開設その他林業生産の基盤の整備及び開発、優良種苗の確保、拡大造林の推進を旨とする樹種、林相等の改良、機械の導入等の施策を講ずることとしております。  第二項におきましては、災害によって林業の再生産が阻害されたり、林業経営が不安定となることのないよう、災害による損失の合理的な補てん等、必要な施策を講ずることとしております。なお災害の防止につきましては、治山事業国土保全政策の推進にも期待しなければならないことはもちろんであります。  次に第十一条におきましては、林業経営近代化してその健全な発展をはかることとしております。このことはさきに申し述べました林業構造改善をはかるための重要な一環であります。すなわち、林業生産性を高め、所得増大するには、高度の生産手段や技術を有し、継続的な林業生産活動を行なうことが必要でありますが、現在のように林業経営の基盤が脆弱でありますと、そのままで林業生産を円滑に行なうことは困難であります。そのため、まず林業経営近代化し、経営規模につきましても継続的な林業生産を行ない、それによって計画的に林業所得確保していくことができるような規模まで拡大していくことが必要であります。具体的には、熱意ある多数の林業経営について、経営形態整備経営計画の樹立等、合理的な経営方法の導入、機械化その他の資本装備の増大等の施策を講じますとともに、小規模林業経営につきましては、以上の施策のほか、規模の拡大に資するよう、林地の取得の円滑化、分収造林の促進、国有林野についての部分林の設定の推進、入り会い林野権利関係近代化等の施策を講ずることとしているのであります。  また第十二条におきましては、協業の助長について規定しております。林業経営脆弱性を是正してその発展をはかるためには、前条によって個別の林業経営規模拡大等をはかることが必要であるのは言うまでもありませんが、個別経営のみでは高度の生産手段や技術を有することには限度があると考えられるのであります。そこで個別経営を補うものとして、あるいはさらに個別経営と並んで生産行程の協業がぜひとも必要であり、それがまた個別の林業経営発展させるゆえんでもあると考えるのであります。ここで「生産行程についての協業」と言っておりますのは、現に森林組合がいわゆる労務班を設置して行なっております伐出等の施業の受託、共同利用施設の設置等を推進するほか、さらに地域の実情に応じて、生産森林組合、農事組合法人等による経営の共同事業を助長する等、生産行程のそれぞれに応じた協業の促進を考えております。  次に第十三条におきましては、林業技術向上について規定しております。すなわち、林業生産性を高め、林業経営近代化をはかるため、個々の生産技術及び経営技術を高めるとともに、その体系化を行ない、その成果をすみやかに現実の経営の中に導入することが肝要であります。そのため、技術の研究及び開発の推進、その成果の普及等の施策を講ずることとしております。  第二章の最後といたしまして第十四条は、林業構造改善事業の助成等について規定しております。小規模林業経営規模の拡大、その他林業経営の基盤の整備及び拡充、近代的な林業施設の導入等、林業構造改善に関し必要な事業は、それぞれ別個に行なわれましても、それなりの成果があることは当然でありますが、林業構造改善をはかる上で一そうの効果をあげるためには、これらの事業が一定の地域において統一的に樹立せられた計画に従い、有機的連関をもって総合的に実施されることが望ましいのであります。そこで国は林業構造改善をはかっていく場合に、特にこのような形で実施されます事業を促進することとし、このための指導及び助成等を行なおうとするものであります。  以上が第二章の概要でございますが、続く第三章は、林産物需給及び価格の安定と流通及び加工の合理化について規定しております。  まず第十五条は、需給及び価格に関する施策についてであります。すでに申し上げましたように、木材等重要な林産物について、長期的には需要の増大に応ずるように、今後林業生産増進していくこととするのでありますが、ここではさらに短期的にもその需給及び価格の安定をはかることとしているのであります。需給及び価格の安定とは、安定的な価格水準のもとに、需要に対応した供給をはかることでありまして、そのため具体的には、国有林材の長期安定的な供給及び必要な場合に応じた緊急の供給民有林材の円滑な供給を目途として、素材生産の円滑化、出荷の調整等の施策を講ずることとしております。また木材需給事情から見まして、当分の間、外材の輸入もまた必要と考えられるのでありまして、それが需給及び価格の安定の見地から望ましい姿で行なわれますよう、その適正円滑化等の施策を講ずることとしております。  次に第十六条におきましては、林産物の流通及び加工に関する施策について規定しております。生産者から需要者に至る林産物の流通過程を合理化するとともに、加工行程を近代化し、利用高度化してその経済的供給をはかることを目途に、森林組合、中小企業等協同組合等が行ないます林産物の販売、購買または加工に関する事業の発達改善林産物取引の近代化等の施策を講ずることとしております。  第四章におきましては、林業従事者について規定してございます。  まず第十七条におきましては、教育、研究及び普及の事業の充実等について規定しております。林業経営近代化といい、林業生産性向上といいましても、要はそれをになう人の問題でありますので、教育、研究及び普及の事業の充実等により、近代的な林業経営を担当するのにふさわしい者または近代的な林業経営にかかる林業技術に従事するのにふさわしい者の養成及び確保をはかろうとするのであります。  次に第十八条は、林業労働に関する施策についてであります。林業労働に従事する者の養成及び確保をはかることもまた前条と同様の趣旨から強く要請され、またその福祉向上をはかることが必要でありまして、そのため職業訓練の事業の充実、就業の安定化、社会保障の拡充等の施策を講ずることとしております。  第五章におきましては、林業行政機関及び林業団体について規定してございます。  まず第十九条では、以上申し述べましたような諸般の施策が円滑に実施されるためには、その施策全体について必要な整備をいたさねばなりませんので、国及び地方公共団体は、林業行政に関し、組織整備及び運営改善につとめることとしております。また国及び地方公共団体がそれぞれの任務に応じて必要な施策を講ずるのでありますが、両者は一体となって政策目標を達成していく必要がありますので、「相協力する」としているのであります。  次に第二十条では、林業団体整備もまた必要でありますので、これについて規定しております。第七条でも申し上げましたように、国または地方公共団体施策は、林業に関する団体の自主的な努力とも相まって講ぜられるのでありまして、これら団体の活動に期待するところが少なくないわけであります。  最後に、第六章林政審議会について申しあげます。以上の諸施策を講ずるにあたりましては、政府は責任をもってこれに臨むのは当然でありますが、さらに広く学識経験者の意見を徴し、その調査審議の結果を取り入れることも必要でありますから、林政審議会を設けることといたしたのであります。さきに申し述べましたように、第八条の講じようとする施策を明らかにした文書及び第九条の林産物需給等に関する長期見通しについて、林政審議会の意見を聞かなければならないこととしておりますほか、必要に応じ、広くこの法律の施行に関する重要事項につき調査審議を願うこととし、また林政審議会は、これらの事項に関し内閣総理大臣または関係各大臣に意見を述べることができることといたしております。このような林政審議会役割りにかんがみまして、これを総理府に設置することとし、委員内閣総理大臣が任命することとしております。なお、林政審議会の設置に伴いまして、附則で森林法及び総理府設置法の一部を改正することとしております。  以上が林業基本法案の概要でございますが、この法律の施行は、林政審議会に関する部分にあっては昭和四十年四月一日から、その他の部分にあっては公布の日からといたしております。  以上でございます。
  11. 高見三郎

    高見委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十五分散会