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1964-03-18 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十八日(水曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    大坪 保雄君       加藤 精三君    亀岡 高夫君       吉川 久衛君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    舘林三喜男君       内藤  隆君    八田 貞義君       藤田 義光君    川俣 清音君       栗原 俊夫君    栗林 三郎君       東海林 稔君    高田 富之君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    中村 時雄君       林  百郎君  出席政府委員         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  久宗  高君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月十八日  委員楢崎弥之助君、野口忠夫君及び松浦定義君  辞任につき、その補欠として高田富之君、栗原  俊夫君及び川俣清音君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員川俣清音君、栗原俊夫君及び高田富之君辞  任につき、その補欠として松浦定義君、野口忠  夫君及び楢崎弥之助君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(乳価及び繭糸価  格問題等)      ————◇—————
  2. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  昨日に引き続き、乳価及び繭糸価格問題について質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 農林大臣出席がありませんので、主として事務当局に質問をいたしたいと思います。  畜産局長にお尋ねしますが、昨日も当委員会において、三十八年度乳価、特に中央調停にかかっておるところの調停審議会作業経過等報告を一応受けたわけでありますが、これはわれわれとして十分了承できない内容でありますので、あらためてもう一ぺん——政府中央調停に付した場合の基礎的な条件というものが当然あると思うわけです。ですから、三名で構成されておる中央調停審議会のその作業を大体いつごろまでに終わらせるのか。当事者間の合意成立すればまことにけっこうであると思いますが、成立しがたいことも、これはもう最初から予測されるわけでありますから、そういう場合には、調停審議会として、いつごろまでに調停を打ち切って、そうして独自の立場勧告文を出すとか、あるいは農林大臣報告するのですか、その点はどういうことなんですか。
  4. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 昨日もお答え申し上げましたように、調停という両者の合意に至るまでの仲介的な努力ということが本質でございますために、いつまでというふうに期限を切って調停に付しておるわけではございませんが、現在のような調停を継続した形がいつまでも続くということは、生乳取引円滑化という意味からも適切ではなかろうということで、私どもも、しかるべき時期には、調停成立、不成立にかかわらず、調停結論を出していただくということを要請いたしたいと思っております。その点につきましては、本日、昨日のお話もございまして、農林大臣とも御相談を申し上げたのでございますが、農林大臣の意向としては、大体本月中に、調停について成立いかんにかかわらず結論を出すというようなことで、調停委員のほうに要請いたしたいというようなお考えをお持ちでございます。
  5. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうすると、まだ半月ばかり余裕があるわけでございますが、御承知のとおり、いま調停の事案になっておる乳価問題は、三十八年度産の生乳価格に関する問題ですし、畜産物安定法によっても、四月一日から三十九畜産年度に入るわけですから、結局時期をあまり延ばすということは、新しい畜産年度にまでまたがるということになって、生産者の側から見ると、非常に不利益を受ける点が甚大だと思うのです。特に十月以降の会社側値下げ通告というものは、御承知のとおり一方的に行われたわけですし、特に今年度の場合は、大臣の指導的な意思も加わって、中央調停審議会にこれをかけたという実態になっておるわけですけれども、あまり時間を延ばすということは、これは非常に後日に禍根を残すことになるわけです。しかも全国生産者は、決して会社側の一方的値下げ通告に納得しておるわけではない。結局は、四県から出されておる中央調停の結果というものがどうなるかということに、最大関心と期待を寄せておるわけですから、これが不成功に終わった、単に作為的な時間かせぎだけに終わってしまったということになると、これは政府責任も重大だと思うわけです。この点に対しては局長としても苦慮されておると思いますが、少なくとも明日予定されておる大臣の当委員会出席にあたっては、大臣としての態度を明らかにして、責任を持ってこれを解決する、そういう意思表明があってしかるべきと思いますが、この点に対して局長としてどういうような補佐を行なおうとするのか、その点を明確にひとつ。
  6. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 昨日の当委員会におきます中津先生お話もございましたし、また差し迫ってまいりました問題でもございますので、農林大臣には昨日の御質疑あるいは御意見をそのまま私としては報告を申し上げ、十九日の委員会大臣出席の際は、大臣の所信の御表明をいただくというふうに申し上げてあるわけでございます。私が大臣に対してどのように補佐するかは、畜産局長として私の所管に関することでございますので、私の考えの及ぶ限り、大臣には忠実に補佐をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  7. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 昨日の局長答弁の中に、交渉の過程において会社側が強力に主張をしておる点は、支払い能力の問題であるということに触れられたが、一体政府の側から見て、二円値下げ復元するということが、メーカー支払い能力に重大な影響を与えるというように考えるかどうか、その点いかがですか。
  8. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 現在調停進行中でございますために、私どもから決定的にその問題に対する評価なりあるいは見解を申し上げることは、問題があるかと思いますが、下期におきます業界の収益というものは、必ずしも良好な成績ではないということは言えるのではないかと思います。これは他の製造業一般でありますとか、あるいは食品業の中におけるそういうような相対的な比較においては、そういうことは言えるかと思います。ただ、あまり立ち入って申し上げるのには、調停の結果を待たないでは言えない点がございますが、支払い能力あるいは採算の面での困難性業界主張しておる、共通して言っておるということは事実でございますが、これは企業者としての経営立場からの主張であります。私どもからいえば、経営追加支払いあるいは復元支払いというようなことが困難であるということ自身に、いわば巻き込まれて政策を考えたいとは思いませんで、むしろ、経営といたしましては、長期の乳業経営あるいは酪農の発展とともにあるべき企業というような立場からいけば、業界の言う、経営上の理由からする、支払いが困難である、追加支払いあるいは復元についてゼロ回答というような態度は、ちょっと理解いたしかねるという見解を持っておるのであります。
  9. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 その点は大事な点ですが、メーカー側が強力に主張しておる、支払い能力関係復元できないという主張は、政府としては同意しがたい、了承できない立場にある、態度としてはそういうことですね。
  10. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 業界の申しておることを了承しますれば、これは調停は打ち切るべき、あるいは不可能な状態判断すべきでございますが、さように判断もいたしませんので、調停もお進めいただいておりますし、私どもも問題の解決になお努力をしたいというのは、業界の言うことに私どもとして全面的な了解をするわけにまいらないからであります。
  11. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次に、四月一日から現在よりも二円価格を引き上げるという通告が代表的なメーカーから一せいに出ておるわけです。これは会社によっては、生産者のほうで二円値下げ復元を迫っておるわけです。会社側はなかなかそれに応諾しかねるということで対立しておるわけですけれども、それを二円値上げをするというメーカー側主張というものは、これはメーカー自身から見れば、そういう判断に立っての行為かもしらぬが、生産者のほうから見ると、すでに二円値下げされておる、それを二円値上げするということは、もと価格に戻すということと同じだという判断も自然に成り立つわけですね。だから、これは復元値上げかということは、将来に関しても非常に大事な点ですが、この点は、政府としてはどういう判断で対処するつもりですか。
  12. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 御承知のように、おおむね乳価は四—三月ないしは四—九月及び十—三月というような取引契約を結んでおるのでありまして、四月以降ほとんどのメーカーが現行の生乳取引価格に一・八キロリットル当たり二円の価格の引き上げをやるという通告を行ないましたことは、私どもとしては、四月以降の新しい取引契約内容をなす新乳価オファーであるというふうに理解をいたしております。
  13. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それは値上げとは考えないわけですね。
  14. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 とにかく現に取引されております価格の中には、紛争状態にありますものもございますし、また紛争状態ではないという、少なくとも外見上といいますか、形式的には通常の取引状態が行なわれておるところもあるわけでございますから、新乳価オファーメーカーからされましたものを見ますと、それは正常な取引状態にあるものと比較をする、その比較論から言えば、値段としては確かに二円上がるわけでございますから、これを値上げと呼ぶということも、場合により必ずしも不適当でないのではなかろうかというふうに思います。
  15. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それはいま二円値下げに対して調停に入っておるわけですね。だから、いずれかの結論が出ない限り、生産者側が二円値下げを応諾ということにはなっていないでしょう。ですから、先ほどの局長答弁からいくと、メーカー側主張が正当とは思っておらぬ。だから、長引いておるけれども調停をずっと進めておる。調停が完全に成功しない場合にも、政府として行政的な権限によって事態解決をはかる決意があるということを言われたわけです。そうなると、復元の時期を十月にさかのぼるか、あるいは一月からになるか、二月になるかは別として、いずれにしても、復元というものは実現させるということに対しては、われわれもいまの局長答弁理解したわけですが、二円復元したということになれば、この引き下げした分が二円今度は加算されて、四月からということになれば、復元した価格と同じことになるわけですね。ですから、四月以降は、復元した価格と同様の取引をしたいということを、事前にメーカー側生産者側通知を発したと同様なことになるのじゃないですか。
  16. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 御承知のとおり、紛争状態になっておりまして、現在調停中のものは、昨年の十月から三月という昨年の契約期間における取引価格についての意見の不一致といいますか、合意が得られないという状態を取り上げておるわけでありまして、四月以降の新乳価メーカーからの提案というのは、三十九会計年度といいますか、四月以降の新しい契約に対する価格提案でございますから、現在の紛争対象になっております価格関係とは、期間的に違うというふうに私ども理解をいたしておるわけであります。
  17. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 だから、値上げになるかならぬかということをぼくは聞いているのですよ。新しい契約の更新というものは四月一日からですが、それはいいのです。価格計算上から言えば、いま紛争調停に入っておる。ですから、何月から復元ということになると、まだ未定の問題として、三月一ぱいまでの年度内において相当の期間さかのぼった復元ということが実行されるというふうに、われわれは局長の熱意ある答弁から察知しておるわけです。二円復元すれば、結局五十三円のものが五十五円になるわけでしょう。ですから、会社側は二円値上げするというのは、いま二円下げたその価格に二円加算するという、そういう内容のものであるから、そうなれば、復元価格と新価格というものは、同一価格ということになって、新しい年度に入るのじゃないかということを私はお尋ねしておるわけです。
  18. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 私の理解が十分でないのかもしれませんが、四月以降の新しく提案された額は、あくまで新年度取引価格についての提案であります。紛争として継続しておりますものは、三十八年度の十—三月の取引価格に関する紛争でございますから、これの解決いかんということと、新年度価格提案という問題とは、私は別個の問題ではないかというふうに考えております。
  19. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 実質は同じでしょう。たとえば五十五円を十月に二円下げて五十三円になっている。これを復元すれば、また五十五円になる。会社側値下げした分に二円加算するという通知を出しておるから、その価格は加算すれば五十五円でしょう。だから、復元すれば五十五円になる。提示した新価格が五十五円ということになれば、価格面においては値上げをしたことにならないのではないかという、当然のことを私は言っておるわけであります。
  20. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 昨年の十月以降二円の値下げ通告をいたしまして、内容はいろいろでありましょうが、先ほど申し上げましたように、現在生産者団体の側においても、十月以降の取引価格について妥結合意を見たというような事例もあるわけでありまして、また一方、まさに問題になっております紛争状態のところもあるということでございますから、私は、値上げであるか、復元であるかということは、受け取り方によって違うと思いますけれども、これを統一して考えれば、四月以降メーカーが現在支払っております価格に対して二円の追加をして支払うということは、新年度の新しい契約の中における取引価格提案であるというふうに理解する以外にはないだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  21. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 簡単な問題なんですよ。五十五円だったのを、二円下げれば五十三円になる。会社側としては三月末までは二円値下げでいくという一方的な措置に出たわけだが、農林省としてはそれは了承しがたい。ですから、赤城農林大臣が、指導的な立場から知事に対して、紛争あっせんを申請した十一件の今後の措置については、中央調停の道があるから、そうやったらいいでしょうという指導を行なったわけですね。しかし、そのうち四件だけが中央調停に持ち込まれたということになるわけですが、この中央調停の結果いかんというものは、やはり全国生産者関心を持っておるわけです。だから、十月までさかのぼって復元されるか、あるいは二月にさかのぼるかは別として、とにかくある程度さかのぼって復元させるということは、あした大臣言明されると思うが、復元というものはもとに戻すということだから、それは五十五円になるということですね。そうすると、昭和三十八年度畜産年度の末期においては、五十五円に復元されたということになれば、新年度にそれが移る場合も、会社側がいま下げた価格に二円プラスするということは、これは五十五円になるということだから、復元されれば、結局同様に五十五円という取引価格になるのじゃないですか。だから、それであれば、これは実質的な値上げとは認める必要はないだろう、そういうことを言っているんですよ。何もこっちはあなたを困らせるために言っているのではないのです。普通の算術で勘定していいのです。
  22. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 現在調停を進めております結果がどうなるかということは申し上げる段階ではございませんが、かりに三月以前にさかのぼってといいますか、十月−三月の間における紛争対象となっておる取引価格に、調停による復元措置が取られるというようなことが実現いたしました場合には、三十八年度における最終の月をとりますと、三月ということになりますが、三月と四月との価格が同一水準取引されるようになるというような事態も起こり得るということについては、先生のおっしゃったことも私ども理解ができるのでございます。
  23. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それでは次に、三十八年度値下げの問題を考えると、いろいろ原因があるとしても、一番大きな問題は、畜産物価格安定法に基づく、農林大臣原料乳に対する告示というものが不当に安過ぎるということに、最大のよりどころがあると思うのです。御承知のとおり、三十八年度告示価格は一升五十三円ということになっておるわけです。たとえば北海道とか東北の、主として原料乳地帯といわれる地域は、十月以前は大体五十五円の取引が行なわれて、十月から二円値下げの五十三円という価格にいまなっているわけです。ですから、メーカー側から見れば、農林大臣告示価格というものは一升五十三円ということになってはおるのです。制度的に見れば、五十三円まで乳価を下げても、これは合法的である、そういう考え方が強いわけですね。これがたとえば昨年の審議会、一昨年の審議会いろいろ答申等において、二様に分かれたことは御承知のとおりです。ですから、政府があまりにも不当に低い価格決定するということは、絶えずメーカー側に対しては大きな利点を与えておるわけですね。値下げの根拠をそこに与えておるということになるわけです。ですから、もし昨年かりに一升五十五円に告示価格がきめられておったとすれば、それは五十五円以下に一方的な通告価格を下げることはできないと思うのです。こういう点については、やはり政府として、十分過去二カ年間の推移というものは反省する必要があると思うわけです。特に二十三日には三十九年度乳価とか乳製品、あるいは食肉決定審議会も開かれるわけでございますからして、それに対処する腹がまえとして、過去二カ年間にわたる、たとえば乳価にしても、食肉等にしても、農林大臣決定した価格というものが、いかに実情から離れた不当なもので、これが生産者を苦しめ、会社側を利しておるかということに対しての局長判断を伺いたい。
  24. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 三十七年度、八年度、それぞれ畜産物価格安定等に関する法律に基づきまして、畜産物価格審議会答申を受けて、他の畜産物安定価格とともに、原料乳基準価格告示されたわけでございます。その価格水準につきましては、法律の本来の趣旨に沿って設定されたものというふうに私ども理解をいたしておりますので、御批判はございましたが、原料乳の行政的な下ささえ価格としては、私ども農林省としては、適当な水準であったのではないだろうか。もちろん、下ささえ価格でございますから、それ以上の取引を禁止するとかいう性質のものではございませんで、また乳製品の市況その他に基づきまして、畜産物価格安定法に基づく基準価格をこえて適切な価格が形成されることも想像もされますし、またしかるべきことだというふうに思うのでありまして、従来告示されました基準価格水準が著しく不当なものであるというふうには考えておらないのでございます。
  25. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうすると、たとえば三十八年度の一升五十三円というものは、これはいわゆる法律で示すところの、生産者に対しては再生産を確保できる正当なものであった、そういう判断の上に立っておるのですか。五十三円であれば、工場渡しで十分再生産ができる、農家の生産費を償い、あるいは自家労賃についても均衡のとれる、そういう保障がなされる価格であったと、いまにおいてもそういう判断に立つわけですか。きめる場合は、将来一年間の経済動向とか物価動向には、まだ十分確認できない要素が残っておるとしても、一年間たった経過に立ってものを判断した場合は、これは最初きめるときは妥当と思っても、一年たった今日においては、やはりこれは正当なものでなかったというふうな反省もあり得るわけです。ですから、一年たった現在、もう来年度値段をきめようとしておる今日においても、三十八年度の五十三円というものは適切なものであるというふうな認識の上に立っておるということなんですか。
  26. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 これは私から申し上げるまでもなく、芳賀先生のほうがお詳しいのではないかと思いますが、原料乳基準価格は、毎年度年度の始まる前に畜産物価格審議会意見を聞いて、農林大臣において決定告示をするということに相なっておるわけでありまして、その際、法律の定めるところによりまして、原料乳生産条件なり、あるいは需給事情その他の経済事情を考慮いたしました上、これらの再生産を確保することを旨とし、そういう法律上の基本的な要件規定があるわけでございますから、それに基づきまして、算定の手段としてはいろいろと議論のあるところでございますけれども、これらの条件の変化というものを見届けまして決定をいたすのが、たてまえに相なっておるわけでございます。したがいまして、現在の時点に立ちまして、来月から始まります三十九年度原料乳の下ささえ価格である基準価格というものを決定するのに、現在の五十三円をもって、十分なものであるか、あるいは適当なものであるかということは、本日ここで明らかにする用意はございませんけれども、私どもとしては、生産条件等にも変動があるということは、作業過程でもうかがわれますので、その点について基準価格決定について留意すべき事項として、審議会諮問を申し上げ、御答申をいただくということに考えておりますので、ここで五十三円が現在の時点に立って、現在から将来にわたって妥当あるいは十分な価格であるかどうかということは、言明を避けさせていただきたいと思います。
  27. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 あなたが畜産局長として考えておること、あるいは桧垣徳太郎個人としてどう考えておるか、これはどちらでもいいですよ。局長としては言いづらいとしたら、善良な桧垣徳太郎個人として、一体五十三円というものに対してはどういう判断を持たれているか、それはいずれの立場からでもかまわないです。
  28. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 この席で個人的なことを申し上げるのはあまりに重大な問題でございます。お許しを願いたいと思いますが、畜産局長としては、来週に控えました畜産物価格安定審議会に対して、現在の時点に立って最も妥当な価格水準を得られるごとき留意事項というものを伺って、その御意見を尊重しつつ、明年度の適当な水準をあらためて設定をいたしたいというふうに思っておるわけであります。
  29. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 個人としてはどうなんですか。かまわぬですよ。個人として言ったって、それで責任を追及するわけではない。あなた個人としてどう思っても、いまの自民党政権下においてあなたの思うとおりにいかぬ問題が多いですからね。それは役人の立場でやむを得ぬ点がある。善良な一主権者の国民としてあなたはどう考えるかということは、どこでも言えるのじゃないですか。それくらいの度胸がないと大事な問題を扱えないですよ。いかがですか。
  30. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 個人的な立場でこの間頭について言明といいますか、感想を言えということは、私はどうも十分理解いたしかねるわけでございまして、当然私はここへ政府職員として出席をいたしておるわけでございますので、政府職員立場からは、審議会諮問を申し上げる以前に申し上げるわけにはいきかねる。ただ、その作業をいたします過程で、先ほど申し上げましたように、現在の時点に立って、明年度の適切な価格水準を設けたい、そのために、あらためて価格告示をいたしたいという気持ちで進めておりますということだけ申し上げます。
  31. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次に、たとえば畜産審議会で従来問題になっておる点は、指定乳製品価格をきめる場合、原料である乳価乳製品相関関係、これをどうするかということが、これはまだ未解決になっておる。審議会としては、一日も早く原料のある資料を用意して、当然乳製品価格についても明確な算定の根拠というものを決定すべきであるということが指摘されておるわけですが、今回の審議会の場合は、乳価乳製品価格上の関連をどういうふうに扱っていくつもりか、その点はいかがですか。
  32. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 指定乳製品安定価格決定いたします法律上の要件としましては、これも申し上げるまでもないのですが、生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮してきめるということに相なっておりますから、従来は、これも御承知のとおり、過去において実現されました乳製品価格というものの、基準期間内における著しい低価格の場合あるいは著しく高価格の場合は捨象いたしました平均的変動計数の範囲内で・安定価格をきめる、もちろん、その際、経済条件の変動に関する指数を用いて修正するというような方式をとっておったのでございますが、昨年の審議会におきましても、原料乳価からの積み上げ方式を考えるべきではないかと思うが、当面は政府の示した参考方式でよろしかろうというような御答申をいただいたのでございます。これは方法論の問題でございますので、いろいろ議論のあるところかと私は思います。政府は従来二年間にわたりましてそういう算定方式を用いましたのは、やはりそのことは、乳製品の商品としての需給実勢というものを反映する方式として、私は、これは決して不適当な方法ではなかったというふうに思うのでございます。積み上げ方式ということになりますと、これは一つは、積み上げ方式ということが、そういう一定の安定帯価格の中で、市場の条件によって上下する自由な取引というものが認められる、またそういうようなことによって需要と供給との関係の調節機能を果たさせるというようなたてまえから考えますと、積み上げ方式自身に理論的に問題はないであろうか、あるいは第二の点といたしましては、積み上げ方式をいたします際に、それぞれの積み上げ項目についての一般に納得のできるようなデータ、客観的な資料というものがそろうだろうかどうだろうかというような点も、一つの技術論としては起こってくるのではないかと思うのでございます。しかしながら、これは方法論の問題でございますから、私としては、固定した観念を持って審議会の御意見を伺うということは避けることが妥当ではないだろうかというふうに、目下のところは考えております。
  33. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 局長はずいぶん用心深い答弁をしておるが、あまり用心し過ぎると、答弁内容がわからなくなるのですね。ですから、本来の特徴を発揮して、なるたけ率直に答えてもらいたいと思うのです。何も畜産局長になったからといって、相手に意思の通じないような答弁をするのは、必ずしも役人の答弁技術が評価されるということにはならぬでしょう。むしろ、率直に自己の考えを相手に伝えるということが最も優秀な答弁ということになるのです。  そうなると、いまの相当慎重を期した答弁から察知すると、乳価乳製品価格上の関係は、乳製品のたとえば一定期間の平均的な価格というものをまず押えて、それから逆算して、いわゆる原料である乳価をきめるという、そういう考えに変わりがないということなんですか。
  34. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 私がいまお答えを申し上げましたのは、昨年の答申については、御承知と思いますが、乳製品基準価格決定するにあたっては、原料乳からの積み上げ方式をとることが適当ではないかというような付帯的な御意見がついておったのでございますので、そこで、原料乳基準価格水準というものがかりに決定をいたすということにいたしますれば、それからの積み上げの乳製品基準価格というものを考える方式が示唆されたものと私ども理解をしておるわけです。そういう乳製品基準価格の算定の方式も決して考えられないわけではない、しかし、それが考えられるについては、理論的にも若干疑問がある点がないでもない、またそういう積み上げをする各項目の客観性という点についても、なお御議論の余地があろうかということでありますけれども、そういう御答申もございましたので、私としては、いわば過去の需給均衡的な価格経済条件で修正したもの、それから積み上げ方式に基づいたものとを審議の御参考のためには供して、そして御審議を願ったらというふうに考えておるということを申し上げた次第であります。
  35. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 乳製品というのは製品ですから、製品原価というものを明らかにするということになれば、その中に占める一番の要素がやはり原料代ということになると思います。ですから、これを全く度外視して製品原価を明らかにするとか、それによって価格決定をするということは無理だと思うのです。ところが、昨年も一昨年も、法律に定められておる原料乳価格指定乳製品価格算定にあたっては、実際は最大の要素としての関係があるのであるけれども、いままでは関係がない形で乳製品価格がきめられておるわけなんです。これはたとえば審議会としても、こういうやり方は変則であるという点を繰り返して指摘しておるのですが、政府側としては、なかなか自信の持てるそういう資料はまだ整わないとか、コスト計算の基礎的なものはまだできておらぬとか、そういう弁解が毎年繰り返されておるから、やれないというものをいまここでやってみろというわけにはいかないから、価格算定に対しては、原料価格から積み上げ方式で、いわゆる所要の原料価格に製造経費とかあるいは適正な利潤というものを加算したものが、製品の原価ということに当然なるわけですから、そういうことにすべきであるが、いますぐできないというのであれば、すみやかにこれをやりなさいということを指摘しておるわけです。これは三年もたってまだできないというのはおかしいですよ。
  36. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 ただいま申し上げましたように、私としましては、現在畜産局の持っておりますデータの範囲で、いわゆる積み上げ方式による試算というものも審議の御参考に提出をいたしたいと思っております。ただ、それがはたして審議にたえるほどのものであるかどうかは、審議会において十分御検討願い、御審議を願いたいと思っておるのです。  多少私見になりますが、私は、乳製品基準価格決定について、積み上げ方式をとることが最も妥当なのであるかどうかについて、若干の疑問を持っておるのであります。それは一種の固定的公定価格主義をとるのであれば、これは行政価格決定の原則として、コストによるということが方式として一般的なものだと考えます。ところが、これも申し上げるまでもないことなんですが、指定乳製品安定価格は、最低のささえになります基準価格と、それ以上の上昇を押える上位価格とがありまして、その間にいわゆる価格安定帯というのが置かれておるわけでございますので、その場合の基準価格設定が、コスト積み上げ方式というものでささえなければならないのであるかどうか、そのことが最も妥当なのであるかどうか、若干の疑問を持っておりますし、また、過去においてもそういう疑問があったのではないかと思うのであります。しかし、それは方法論の問題でございますから、それに対する、安定価格の持っております本来の意味に即した積み上げ方式の一種の修正作業方式というものも、あるいは考えられるかもしれないということで、私は先ほど申しましたとおり、従来の需給均衡方式を経済条件によって修正したものと、二つの案を、必ずしもいずれに偏するというような考え方でなく、御審議を願ったらというふうに思っておるわけでございます。
  37. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 何も公定価格にせよとはだれも言ってないでしょう。そういうことを言った人はありますか。そういう議論はだれも展開していないのですよ。ですから、たとえば指定乳製品価格にしても、安定下位価格と上位価格に分かれておるでしょう。このつながりも明らかにならないのですよ。それでは、乳製品基準価格というものは、いわゆる乳製品の下位価格につながるものであるか、上位と下位の中心的な価格につながるかということに対しても、政府としては明らかにすることができないでおる。ですから、たとえば原料乳価格というものは、先ほど局長の言ったとおり、それはあくまでも生産者に対して再生産を補償できるぎりぎりの最低価格の支持であるということであれば、その最低価格原料価格として、それによって製造された乳製品の、国家が支持すべき最低のいわゆる下位価格というものは幾らになるかという、これは計算できないことはないでしょう。一番しているのは会社ですよ。会社の中で、原料代が幾らであって、製造経費が幾らであって、利潤がどれだけ出たかということがわからぬ会社はないでしょう。あなたにしたって、以前肥料課長をやっておって、二十九年に肥料二法ができたとき、硫安等については厳密なコスト調査をやって価格算定をやった。あなたは実際仕事に取り組んでいるじゃないですか。硫安の場合にはそれができて、乳製品の場合にはそれができないということにはならぬわけですね。乳製品のほうが原始的な企業ですから、なおわかりやすいです。私の言っているのは、いまのような政府の需給均衡価格であるならば、まず乳製品価格というものを先に想定して、それから会社の利潤と製造経費を差し引いた残りを乳価という、そういう逆算方式で、いままでの原料乳価格算定というものはやられておるわけです。だから、これは不当に安過ぎるのですよ。いいですか、逆算方式ですよ。これは審議会会長の馬場さんに頼んで、どうしたならば逆算方式でもっともらしいところの乳価の算定ができるかということを依頼して、そういうわれわれとして納得できない算式というものを用いようとしておるわけだ。われわれはそれを認めないですよ。そういうでたらめな不当な算定方式を採用する農林省の案に対しては、同調することができないということで、われわれは常に審議会の中において、少なくとも米価算定と同様の一貫した算式を用いて価格決定はやるべきであるということで、そこから答申が二様に分かれておるわけです。だから、いつまでも乳製品価格からの逆算方式で乳価をきめるというやり方を続けるとするならば、これは、審議会も無意味なものになるし、畜産物価格安定法自身が、むしろ生産者を苦しめる法律ということになると思うのですよ。もうこれは二年猶予したのですからね。今度の場合、やはり製品原価をどうやって計算するかという正常な算式と、それによって得られる乳製品価格を明確にできるような資料を、当然審議会に出すべきではないか、こういうことなんです。
  38. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 乳製品価格の算定の方式として、原料乳の与えられた価格水準を出発点として、それに加工経費その他の経費を加えて乳製品価格を算出するということは、理論的には先生のおっしゃるとおり可能なはずであります。ただ、肥料の例をお出しになりましたので、私も、よけいなことと思いますが、御承知のように、肥料工場というものは、非常に数少ない工場でありまして、また、その製造原単位等についても、化学的な合成の仕組みがベースになっているということから、一種の機械的な記録がかなり正確でございます。その点が違うのでないかと思われるのでありますが、乳業工場につきましては、規模において大小いろいろに分かれ、また乳製品工場が、御承知のように全国に三千三百というような数多い分布をしておる。また、資本の構成等もきわめてばらつきが大きいというようなことから、理論的に可能な方式であるにしましても、行政の実行上の問題としては多大の困難を伴うということは、私は双方の価格にタッチをいたしまして、非常に痛感をいたしているのでございます。しかしながら、畜産局としても、乳製品の加工経費についての調査もいたしておりますので、われわれの用意できます範囲で積み上げ方式による一つの考え方も、審議会の審議の資料として出したいということは、ただいま申し上げたとおりでございまして、これはたまたまと申しますか、芳賀先生には審議会委員もお願いを申し上げておりますので、審議会の席上で、また私どもからできる限り詳細に御説明申し上げたいと思っております。
  39. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 次に、きのうちょっと触れられた問題ですが、酪振法の改正を今国会に提案されるという説もあるし、あるいはできないのじゃないかという説もあるのですが、担当局長としては、いつごろまでを目途にして改正案を出すつもりでおるか。中身は別にして、一体いつごろまでに酪振法の改正法案を出すつもりか。その点はどうなんですか。
  40. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 酪農振興法の改正法案の提案につきましては、私どもとしてはできる限り早い時期に提案をいたしたいということで、政府内部の意見調整につとめておるのでございますが、現在の段階では、確たる時期を言明するほどの見通しを持ちませんが、私の気持ちとしては、四月上旬中ぐらいには国会提案になるように、それを目標に努力をしたいというふうに考えております。
  41. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これは中西官房長から当委員会に対して、政府農林省関係の予定提出法案の説明があったときに、酪振法の改正については、相当早期に提案する、内容等においても、現在の酪振法の内容の整備強化、特に紛争解決とか調停の問題とか、それから政府のこれに対する権限の強化の問題とか、こういう点が改正の一点、それからもう一つ、国産牛乳の学校給食に関する所要の規定をこの酪振法の改正の中に加えるという、この二点を目的として改正案が出る、実はわれわれもこれを期待しておったわけです。中身は不十分でありますが、国会審議の中で十分なことができるわけですが、出てこないことにはどうしようもないわけですね。今月中に出ないということはまことに遺憾でありますが、それでは四月上旬には間違いなく、提案になるわけですね。
  42. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 四月上旬提案を目途として努力をいたしたいと考えております。
  43. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 われわれの聞くところによると、特に学校給食の関係については、この規定を酪振法に加えるという改正については、三十九年度の学校給食関係の予算確保に関連して、この分の改正はやりませんということを大蔵省に一札入れておるという説がある。そういうものを一札入れてあれば、ここであなたがいつ出すと言っても、出せないことになるのですが、そういう事実はどうですか。
  44. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 予算の折衝過程におきまして、学校給食の計画的実施に関し、酪農振興法の一部改正をもって国の基本的な政策の方向を明らかにしたいということは、予算折衝の際に、農林省としてその意図を表明いたしましたが、それに対し大蔵省が、そういうものは反対であるということは、確かに予算折衝の際に事務的に聞いておりますが、大蔵省も当時から現在も反対ということを言っておりますけれども、その反対を私どもが了承するという意味の一札あるは口約その他のことは一切ございません。
  45. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 提案する場合に重大な支障はないですね。
  46. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 これは申し上げるまでもないことでございますが、政府提案の法案は、政府内部の意見一致が得られませんと、提案することが不可能でございますから、著しい障害があるかないかということを、直ちにあるとも、あるいは著しい障害はございませんというふうにも、申し上げるわけにはいかないと思います。
  47. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。あなたは政府の役人でしょう。部内の者が——だから私は心配して、障害があるのかないのかということを聞いておるわけです。四月上旬に出しますということになれば、重大な障害はないのでしょう。一番心配になっておることは、とにかく酪振法の改正の中に学校給食関係事項を入れませんという一札をとられましたとかいう説、そういう説も伝わっておる。そういうものを一札入れてあるとすれば、法律上の有効、無効は別として、農林省としては動きがとれぬということになるのですね。そうであればそうだとか、どうしても政府としていまの内閣のもとでは出しかねるということであれば、議員提案の道があるわけだから、こちらから強力な法案とか改正案を出すこともできる。ただ言を左右にして時間稼ぎをして出さないで終わったということになると、国民に非常な迷惑をかけるわけであります。その点に対して、やはりこれは責任を持って——所管の局長が何とも言いかねるということは問題だと思うのです。
  48. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 私、所管局長として、四月上旬提案を目途として、酪農振興法の改正を本国会に出したいという決意には変わりはございません。また、酪農振興法の改正の中に学校給食の計画に関する規定を設けないということについて、大蔵省に一札とられた、あるいはそういう口頭の言質をとられたというようなことは、絶対ございません。
  49. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 それは支障があるように感じたら、ちゅうちょしないで当委員会報告をして、善処を求めるようにしたらいいと思う。これはあなたのことだからやれると思うが、老婆心ながらその点を発言しておきます。  それから、あと数点簡単に質問しておきますが、昨年政府が指定畜肉の肉豚の価格を枝肉一キロ二百六十円と不当に安くきめた関係もあって——一昨年は二百五十円です。それで、豚の飼育が急激に減退して、国内生産だけでは消費に見合うだけいかぬ、供給不足ということになって、緊急輸入をやったことはわれわれも承知しておりますが、肉豚の三十八年度における緊急輸入は、現在までにどのくらいの数量に達しておるか。さらにまた、牛肉等の輸入も一部行なわれておるように承知しておりますが、その数量はどうなっているか、それと大体の価格、詳しいことはあと資料でもいいですが……。
  50. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 三十八年度におきまして、豚肉の価格が需給の関係で非常に暴騰をいたしました。そのために、外国からの豚肉等の輸入が行なわれたわけでありますが、豚肉に関しましては、昨年の七月以降年があけましてことしの一月末まで、合計いたしますと、約九千七百トンの豚肉が輸入されております。牛肉につきましては、数量としては五千トンの輸入交渉をいたしたのでありますが、現実に輸入されましたのは、実は一月以降の数字は私現在明らかでありませんが、昨年の十二月末までに約千五百トンの輸入が行なわれたのでございます。価格水準につきましては、輸入ソースによりまして若干違いがありますが、最も代表的なアメリカの豚肉については、キログラム当たりCIF価格で計算いたしまして大体三百十円から二十円というように記憶いたしております。もっとも、これは品質格差とか、あるいは品質格差のうちに入るかと思いますが、冷凍格差その他の問題を度外視しての価格でございます。牛肉につきましては、これも品質によって一がいに言いかねるのでありますが、国内価格に対比いたしまして、これは品質格差を考慮いたしまして二五%ないし三〇%くらいの価格差がある。これは関税賦課以前の価格として、大体そういうような水準のものが入ってきているということであります。
  51. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 なお、詳しいことは委員会に資料をお出し願いたいと思うのです。  そこで、これは申すまでもない点ですが、法律に指定されておる畜肉輸入は、事業団の業務として扱うことになっておるわけですから、いま局長報告されたものは、事業団として適正に扱ったものと思いますが、間違いないでしょうか。
  52. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 畜産物価格安定等に関する法律によりますれば、指定食肉が安定上位価格をこえる、あるいはこえるおそれがある場合には、畜産振興事業団がみずから輸入した食肉を市場に放出することによって、価格の安定をはかることができるという規定はございますが、食肉の輸入は、法律的に畜産振興事業団がもっぱら担当するということになっておるわけでもございません。昨年の輸入につきましては、非常にこの価格の上昇が急速でございまして、むしろ民間輸入による貿易活動、商業活動というものに期待するほうが、市場に対応する対応のしかたとしては敏速であり、かつまた、コストとしても低いコストでやれるというような利点も考えまして、畜産振興事業団みずからの輸入はやっておらないのであります。
  53. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうすると、豚肉も、これは事業団は全然経由しないわけですね。どうなんですか。
  54. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 昨年の三十八年度におきます牛、豚肉の輸入については、事業団は全然経由をいたしておりません。
  55. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これは檜垣さん問題ですよ。あなたは、輸入畜肉については事業団の扱う業務になっておらないということを言われたが、これは法案審議の場合においても、法律で指定した畜肉については、国内の需給安定と価格調整を目的として事業団がこれを扱うということになっておるわけです。これは非常に大事な点であって、当委員会の審議の中においてこれは明らかにされておるところです。それを豚肉九千七百トン、牛肉千五百トンが三十八年度においては全然事業団の扱いになっておらない、民間業者に単に輸入させたということになると、これは重要な問題だと思います。そういうことを全然知らないでこれをやったのか、知っておりながらあえて行なったのか、その点はどうですか。
  56. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 事業団が、指定食肉が上位価格をオーバーする、あるいはオーバーするおそれがあるという場合に、みずから輸入を行なって、価格の安定のために売り渡しができるという規定のあることは、十分承知をいたしております。おりますが、昨年の豚肉の価格の上昇、あるいは牛肉は指定食肉にはなっておらないのでございますが、その価格の上昇等の急激な勢いに対処するためには、民間輸入による敏速な供給増をはかることがむしろ具体的に適切であるという判断で、民間輸入にまかせたのでございます。
  57. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 これは非常に問題が大きいのです。きょうここで短時間で議論する小さい問題ではないですから、いずれ農林大臣出席した機会に、制度上の問題からいっても怪々に扱うわけにはいかないから、この問題はじっくり時間をかけて——そういう政府みずからの脱法的な行為、この品物不足とか価格高騰に便乗して、一部の業者に利益を与えるようなやり方をしておるということは、これは断じて認めるわけにはいかないですから、きょうは時間が足りないですから、あらためてじっくり、この問題については政府責任を明らかにしてもらいたいと思うわけです。  次に、お尋ねしておきたい点は、これは昨年の予算委員会あるいは農林、文教合同審査会においても取り上げた問題ですが、学校給食用の脱脂粉乳の輸入の状態、これもいろいろ問題がありますが、ここで明らかにしてもらいたい点は、これは日本の政府として、学校給食会を通じてアメリカのCCCから買い付けしておるわけですが、これを買い付ける場合の品質の規格とか、検査の規定とか、検査実施の場所であるとか、確認の方法等については、何らかの取りきめというものが根拠になって行なわれておると思うわけですが、どういう契約に基づいてこれをやっておるか、こういう点がまだ不明になっておるわけです。たとえば人間の食糧用としてこれを買い付けているものであるか、あるいは動物用食糧としてその規格品を買い付けて輸入して、それを国内においては人間の食糧として用いることにしてあるのか、そういう点が全く不明なんです。これを十分ただすためには時間が足らぬが、基本的な点だけをこの機会に明らかにしてもらいたい。
  58. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 学童生徒に対します給食用の脱脂粉乳の輸入につきましては、所管といたしましては、これも御承知と思いますが、文部省において所管をいたし、実務は学校給食会が行なっておるわけでございます。でございますから、実は不勉強というおしかりがあろうかと思いますが、私からは詳細については責任のある御答弁がいたしかねるのでございます。  私ども承知いたしております限りでは、学校給食会がアメリカのCCCから輸入をいたします脱脂粉乳は、アメリカの国内における規格Aのもの、つまり、人間の食糧用のものを契約して輸入しておるというふうに承知をいたしております。それから検査につきましては、これは厚生省の検査が行なわれておるのでありますが、たしかこれは特殊公益法人であったと思いますが、乳製品検定協会にも委託をいたしまして、製品の検査をやっておるというふうに聞いております。
  59. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 そうすると、買い付ける規格は、アメリカの国内規格Aという規格になっておって、そのアメリカの国内規格Aなるものは、アメリカの人間用の食糧ということになるわけですね。それは間違いないですか。脱脂粉乳の容器がアニマル・フードという表示で入ってきているのも相当あるのです。ですから、アメリカの人間用の脱脂粉乳をわざわざ動物用と表示された容器に入れてくるというのは、ちょっとおかしいと思うのですよ。こういう点がいままで明らかにされていないのです。いま局長の言われたとおり、アメリカの国内規格Aなる脱脂粉乳は、アメリカの食品の製造あるいは検査の規定からいって、明らかにこれは人間用のものであるということが明確になれば、国民の疑惑は解消されます。ところが、そういうことにはなっていないと思うのです。一〇〇%動物食糧でないとしても、相当の数量は動物食糧の脱脂粉乳が輸入されておる。この事実は、われわれとしては確認しておる点ですから、論争の余地はない。そういうことであるならば、検査とか確認がどういう状態で行なわれておるか。たとえば厚生省がこれに関与しておるとすれば、わが国の厚生省の役人は、アメリカの買い付ける個所においてそこで立ち会って、確認してパスしたものをこっちへ買い付けておるのか、そういうことは全然やらないで、向こうまかせで、向こうで送ってきたものだから間違いないということで引き取っておるか、そういう点は一体どうなっておるのか。
  60. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 これも私の責任のがれではございませんけれども、文部省の監督のもとに給食会がやっておることでございますから、どうも私が完全な意味の責任を持ってお答えいたしかねる点でございますが、私が聞いております限りでは、日本側がアメリカの国内に行って、製品の検査をして買い付けるというようなことはしていないようでございます。日本の港へ着きました場合に検査をしておるというやり方のように聞いております。また、アニマル・フードと書いた包装に入っておるということを私も話としては聞いておりますが、容器の表示が、中身が人間の食糧として不適なものであるという表示であるとすれば、これは不適格品の輸入であるということになると私も思いますが、聞くところによりますと、アメリカの人間の食糧用規格のものも紙袋詰めのものが多いために、輸送中の品質の変化等から、カンに詰めかえるという要求をいたしておるそうであります。その際、中身とカンの表示とが違うというような場合もあるのではないかという話は聞いておりますが、あえて私はその点についての弁護をするという気持は持っておりません。
  61. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 とにかく占領政策時代に、アメリカの援助物資という形で、そういう食糧が、家畜のえさであろうが、無差別に送られた時代はあったが、いまの取引は、こちらから正当な対価を支払って、食糧としての商品を買い付けておるわけですからね。何もただもらっているわけじゃないでしょう。だから、商品の選択の自由は買い手側にあるのだから、向こうが何を送ってきても、アメリカが送ってくるのだから間違いはないだろうという判断で買い付けるというやり方は、まことに不当だと思うのですよ。しかも、中学生、小学生のわれわれのかわいい子供たちにそれを与えるということになると、なお問題だと思うのですよ。あなたの答弁だと、これはあげて文部省並びに厚生省の担当する事項であるから、農林省は関知しておらぬということだが、それでは済まぬと思うのです。ですから、これもきょうは明確にならぬ点があるが、これは人道上の問題からいっても大事な問題です。たとえばフランスの農業基本法の場合には、基本法という名前ではないが、これにはたとえば外国から食糧の輸入をやる場合、その目的が人間の食糧として生産されたものであれば、フランスの国内にそれを輸入しても当然国民の食糧に供給することができるが、輸入先の国において人間の食糧以外の製造目的で生産された食糧については、フランスの国内に持ってきてから、たとえば日本がいまやっておるとおり、えさ用の脱脂粉乳をアメリカから買ってきて、日本の国内では人間用の食糧であるというようなことは認めない、そういうことをやったものに対しては、国家として厳重な罰則を科するという基本的な法律があるのです。そのくらいよその国においては人間尊重の基本的な制度とか精神が充実しておりますが、日本の場合は、いまの政府のやり方は、そういう一貫性がないのですよ。安上がりであれば、動物のえさでも何でもかまわぬ。アメリカが送ってくれるのであれば絶対安心してやれる、そういう考え方の国はないのです。これは楢垣さんに説教するわけではないが、いまの政府態度というものは、そういうような、まことに不当な政治というものを行なっているわけだから、この点については、いずれ近い機会に、文部大臣、厚生大臣あるいは農林大臣、さらに総理大臣も必要だと思いますが—あなたは政府の役人だから、そういう話は聞いておるけれども、自分の所管ではないからやむを得ぬということでは済まぬと思うのです。あなただってやはり一介の正義心というものがあるでしょう。だんだんあなたは円熟したというか、かどが取れて、もとの野性味がなくなったのではないですか。こういう点は、やはり今後自分の国の学校給食をやる場合は、まず自国で生産された、新鮮な、優質な国産の牛乳を子供たちに与える。政策的にやるわけだから、政策需要というものは、あらゆる需要に優先するのでしょう。それをいまの政府態度は、学校給食に峯面的に振り向けた場合には、一般の消費に支障を来たすから、簡単にふやすわけにはいかぬというのです。こういう態度なんです。それは間違いなんで、政策需要であるならば、まず優先的に学校給食に全量を消費しても、年間三百二十二万石で間に合うわけだから、それをまず優先的に確保して、そうして一般の国民が使用する場合にどうしても足りない分については、外国から優質、低廉なものを選択して買ってくるということをしない限り、問題の解決はできないと思うのです。この点はどう考えますか。
  62. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 外国からの輸入脱脂粉乳は、現在相当多くの量が学校給食に供せられておるわけですが、それを国庫の生牛乳に切りかえて国内の酪農振興に資する、また、一面児童生徒の保健衛生の向上に役立てるということは、先生のお考えと全く同様に考えておるわけであります。ただ、確かに学校給食に対します生乳の供給は政策的需要であるということは、お話の限りにおきましては、私も認めるにやぶさかでないわけであります。しかしながら、わが国の酪農振興を進めていくという立場、あるいはそれの前提としての需要の増進をはかっていくということでありますれば、一般の市民の牛乳需要という問題に著しい障害を起こしますことは避けるべきである。将来長きにわたりまして、やはり一般の市民の要求をいたします需要に対して、必要な量を供給をしていくということが、また酪農振興という政策の上からゆるがせにできない問題であるということを考えておりますので、政策的需要であるということのために、一般の市乳の需給関係に混乱を起こすということは、私は適切でないというふうに考えておるのであります。
  63. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 何も混乱は起きないじゃないですか。どこに混乱を起こすのですか。たとえば三十八年度が石数にしておおよそ千四百万石の生産でしょう。これは前年度に比べると、大体一三%程度の生産の伸びを示しておる。ですから、政府の施策のよろしきを得れば、年間一五%程度の生産の伸びの期待は十分達せられるのですよ。所得倍増計画でも、十年間で畜産は三倍、牛乳は五・七倍の生産の増大の期待を持っておる。たとえば昭和四十一年度は小中学校の子供の数が千五百万人台になるわけです。ですから、給食日数を年間二百十五日と文部省が言うように見るとすれば、一合ずつ給与するとしても、おおよそ三百二十万石の数量があれば、これは完全給食ができるわけなんですよ。ですから、そういうものを政策的に確保しなければならないということであれば、適切な施策を講ずれば、あるいは一五%の伸びを二〇%に上げることもできると思うので。ただ問題は、価格政策にしても、あるいは飼料政策にしても、常に生産を仰圧するような施策だけが講ぜられておるわけです。国内の生産を阻害して、そうして国内の需要の伸びを——えさにしても、乳製品にしても、一般の主要食糧にしても、ほとんど輸入依存の方向に切りかわっておるでしょう。自由化がそれに拍車をかけておる。ですから、学校給食用に国産牛乳を使えば、需給関係が国内において混乱するなんていうことは、どこかよそへ行ってあなたがしゃべるならいいですが、いやしくも国政の場においてそういうことをしかつめらしい顔をしてしゃべるということは、これは穏当を欠くですよ。またあなたの良識をみんなに疑われるですよ。ですから、そういう間違った考えは、これはまず畜産局からやめてもらわないと、そういうことをおくめんもなく世間一般に流布されては、みんなが迷惑をするのですから、この点は厳重に注意してもらいたいと思う。  最後にお尋ねしたい点は、畜産とえさの関係です。これは不可分な問題ですが、たとえば三十九年度政府扱いのえさの価格等についても、輸入ふすま、専管ふすま、増産ふすま等に対しては、食管法の一部改正の中でそういうことを実現しようとしておるわけですが、政府扱いの飼料の値段を引き上げるということをこの予算の中においても明らかにされておるわけです。聞くところによると、これは檜垣畜産局長、あなたがピーターソン方式という新たなえさの価格算定方式でそれを計算した結果は、どうしてもふすまの値段、えさの値段を上げなければならないということで、上げる方針であるように聞いておるのですが、これはまことにわれわれとしては了承できない点である。政策的に国がえさの輸入あるいはえさの製造を行なって、そうして畜産の振興あるいはコストの引き下げに努力しなければならないにかかわらず、ピーターソン方式なるものによって、えさの値段を上げるというような政策を講ずることは、これはまことに逆行したやり方だと思う。ピーターソンが、価格値上げになるなら、牛乳や豚肉もピーターソン方式でやったほうがいいのじゃないですか。その点はどうなんですか。
  64. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 三十九年度政府操作の飼料売り渡しに関しましては、三十九年度の予算の編成の際、飼料の売り渡し価格水準をどういうふうに考えるかという際に、私どもとしましては、もとより飼料は畜産の生産資料でございますから、その価格の安定なり低廉を期待する気持ちは、私どもとしても言うまでもないところだったのですが、これはもうすでに前回、参事官からも説明をいたしたはずでございますが、飼料需給安定法の全体の仕組み自身が、御承知のように、政府操作の飼料を量的に操作することによって、飼料全体の需給及び価格の安定をはかるということになっておるわけであります。そこで、その売り渡しの方式も、原則としては一般の競争入札方式による。また、事情によって指名競争入札方式をとる。また、独特の理由のあるものについては随契を認めるということにいたしておりますが、その価格決定にあたっては、国内の飼料の時価その他の経済事情をしんしゃくして、畜産業の経営を安定せしめることを旨として定めるということを言っておりますので、非常に常識的に言いますと、国内の操作飼料が一般のえさの水準よりも高ければ、これは需要が伴なわないということで、量的操作を困難にする。安過ぎますれば、これはそこに需要が殺到いたしまして、あるいは見込み需要的なものが殺到するということによって、数量が限られたものでございますから、全体の飼料の流通に阻害を来たすというようなことになりますから、結局政府の売り渡し価格というのは、全体の需要に対する貢献と、それから価格の安定の貢献を期待することはもとよりでございますが、結論において、他の一般流通の飼料との均衡のとれた価格であるべきであるということに私ども考えておるわけです。そういう考え方から、異常に高騰いたしました時期をはずしまして、トウモロコシ、大豆かすの、飼料成分との均衡価格をはじいて、予算化をしたということでありまして、私どもは、どうもいろいろ御批判はいただいておるわけでありますが、この価格のきめ方としては、ものの考え方としては、誤っておらないというふうに思っておりますが、結論として、現行の価格に対し値上がりになるという結果になったことは、私どもとしても、必ずしもこういう状態をかまえてつくりだしたという気持ちではなかったのでございます。
  65. 芳賀委員(芳賀貢)

    芳賀委員 ちょうど約束の時間ですから、これできようはやめますが、この際、資料として、いわゆるえさ価格決定に用いたと思いますが、ピーターソン方式なるものの資料と、もう一つ、ピーターソン方式によってえさの価格が上がって、そのえさを用いた牛乳とか畜肉の価格が下がるという、そういう相関関係を明らかにした資料を、当委員会にすみやかにお出し願いたいと思います。これは委員長のほうからそういう指示をお願いいたします。
  66. 桧垣政府委員(桧垣徳太郎)

    桧垣政府委員 予算の際に飼料価格水準を算定いたしました算定方式につきましては、参考資料として提出をさせていただきたいと思います。
  67. 高見委員長(高見三郎)

  68. 高田委員(高田富之)

    高田委員 端的に二、三お伺いいたしたいと思うのですが、先般来、新年度繭糸価格の決定に関しましては、蚕糸業者、各関係者から相当強い要望がありまして、われわれもおそらく最低五千円くらいのところにきまるのではないかと予測しておりましたところ、四千円から五千五百円というようなところに決定になりました。昨日も何か御質問があったようでございますが、これは私どもの予想をたいへん裏切ったものでありますので、どういうわけでこういうふうに最低が予想外に低いところにきめられたかについて、簡潔でけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  69. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 昨日も久保田委員の御質問にお答えしたわけでありますが、養蚕関係から見まして、貫二千五百円程度がほしいというような御意見が非常に強かったわけでございます。私も、実現する価格としましては、この程度はぜひ必要だと考えるわけでございますが、御承知のとおり、きめますのは、最低価格と最高価格をきめる関係になりますので、かりに二千五百円と申しますか、糸にいたしまして三十万円ということになりますと、いまつくっております糸なり繭は全部政府に買えという結果になるわけです。これは最低価格の場合にはさようなことはできないわけでございまして、さような意味で四千円というラインを考えたわけでございます。それはもちろん最低価格でございまして、それを一月も早くさような形できめましたにつきましては、昨年の六月に非常な価格の暴騰がございまして、内外の市場が極端に荒廃してしまったわけでございます。したがいまして、さような事情下におきましては、いまの段階で来生糸年度の最低価格水準を名目的に非常に上げました場合に、現在の価格が当然この影響を受けまして、上がらざるを得ないわけでございます。特に問題になりますのは輸出関係でございますので、輸出の阻害になりました場合には、かえって現実に六、七月に形成されます生糸価格、これが農家に一番直接的な影響を持つわけでございまして、それが下押されるような事態は最も好ましくない。特に増産をお願いしている段階でございますので、よけいにそういう点は気をつけなければならぬという考え方に基づきまして、約一月早く四千円というラインをきめたわけでございます。  それにはもう一つ事情がございまして、現在におきます輸出関係が、昨年度承知のとおり非常に激減いたしております。特に一月、二月というところの数字も、例年に比べまして、はなはだしく落ちているわけでございます。実際にはすでに採算圏内に入っておりますので、この三月以降相当長期的なお話のできる時期に輸出が伸びるということが、現在の滞貨を懸命にさばいていく方法の一番重要なポイントというふうにも考えますので、両者を勘案いたしまして、四千円というラインをきめたわけでございます。  これによりまして、御承知のとおり、繭にいたしますと貫二千円の水準ということになるわけでございます。最低価格といたしましては、これを割るようなことは、私どもといたしましても絶対したくないと思うわけであります。最低価格としてはその辺でがまんしていただきたいという気持であるわけであります。
  70. 高田委員(高田富之)

    高田委員 そうしますと、局長は、いまの話ですと、最低は一応四千円ということに押えたけれども、大体期待する価格としては五千円程度のものを期待しておるというようなお話で、そこへ持っていくために、もし現在五千円というようなことにした場合には、むしろ異常に値が上がり過ぎて、輸出ができなくなるだろう、そのためにかえって反落するだろうというような御心配のようでありますが、もしそういうことだと受け取ってよろしいとしますと、おかしいのは、いままでの去年の売れ行きの状態を見ますと、五千円以上、五千五百円から六千円程度でありましても、かなりの輸出があったわけでありまして、昨年の七月ごろから十二月ごろまでにかけまして、月々七千俵からの糸が出ておるわけですね。ですから、安定すれば売れるのであって、五千円に上げたら売れなくなるとかなんとか、そういうことではなくて、安定さえすれば売れるのじゃないか。また、去年の絹業会議のときの外国のお話を聞きましても、五千円くらいまでけっこうだという話が出ているというようなことでもあるのでありまして、そういう点では、ちょっとその見通しがおかしいんじゃないかと思うのですが、そう安くなければ売れない、ちょっと上げればすぐ売れなくなるというような御懸念は、一体根拠はどこにございますか。
  71. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 その点は御指摘のとおりでございます。何円でなければいけないとか、何円は高過ぎるという点を、長期にわたって申し上げることは適当でないと思います。ただ、暴騰いたしました過程で経験いたしましたことは、ある水準になりましてから、特に一昨年の秋ごろから、貿易の数字はもちろん前に約束したものが続いて出てまいりますので、月々の数字は落ちておりませんけれども、先の約定ががたんと落ちた時期がございます。それがずっと続きまして、あの暴騰につながっておるわけでございます。そこで、年間を通じて申しました場合に、来生糸年度の年間を通じて考えました場合には、たとえば需給均衡価格というようなことで、いろんな計測をいたしておりますけれども、二十八、九万というような数字でけっこう売れるというような計数が出てくるわけであります。しかし問題は、これはある経過を経まして、と申しますのは、非常に市場関係を史上最高の値段で荒らしてしまいましたので、機屋の転換でございますとか、いろんな問題がございますので、さような荒らしました市場の内容をある程度調整した上におきましては、現在の長期的な需給関係から見まして、糸が三十万、キロ五千円というようなところでも決して無理でないと私も思うのでございますけれども、何ぶんにも六月の暴騰によります内外の市場を荒らしました実態は、相当なものでございまして、さような点から、いま一足飛びに飛び上がれないというのが実情だと思います。  特に問題になると思いますのは、現在、昨年の六月以降棒下がりに下がりました価格がほぼ底値に近い感じを与えておりまして、やっと四千円というところに底が入ったかということがほぼ内外に確信されるところにきておるわけでございますけれども、問題は、三月、四月、五月という具体的な三カ月を経まして、やがて六月、七月の来生糸年度の一番大事な時期に差しかかるわけでございますから、実はこの三カ月をいかに賢明に処理していくかということが非常な問題でございまして、現在すでに相当の滞貨をかかえておりますので、これとの関連で、へたをいたしますと、一番養蚕農家の心配しております値段の問題よりも、むしろこれで糸がさばけていくのかどうかといったような問題にぶち当たるおそれもなしとしないというふうに考えられるわけでございまして、さような意味におきまして、現在の段階で申しますと、三月、四月、五月といった場合におきます輸出はいま直ちにきまる問題でございませんので、数カ月前から非常に多角的な交渉が行なわれまして、それが実現されて物が出てまいります関係もございますので、この段階で、内需がかりに四千円よりもずっと上のほうで引き合いがあるといたしましても、そのレベルに全部のものがいってしまいました結果、そこに輸出価格との間に大きくギャップが出まして、その結果、三、四、五に輸出が一、二、三で経験しておりますような形でかりに出ないというようなことになりますと、これは具体的に相当大きな負担が新生糸年度価格におおいかぶさるおそれがあるわけでありまして、さような点を考慮いたしまして、最低価格を四千円ときめたわけでございますが、お話もございましたように、実際の実現価格というものにつきましては、昨年も海外からもお話の出ましたように、少なくとも四千五百円から五千円のラインにまず持っていって、そこが十分固まれば、つまり実需がそれについてくれば、またさらにそれより上にいく可能性もあるし、またいってもかまわない。そういう意味で、最高価格は三十万に押えませんで、三十三万までのゆとりをこの過渡期においてとったわけでございます。  なお、競争国の関係がございますけれども、たとえば中共が昨秋あたりから相当ヨーロッパ市場に進出いたしましたような事情がございます。詳細は必ずしも十分把握されておりませんが、この点につきましては、現在の四千円よりも低い価格で若干のオファーがあったというようなニュースも聞いております。しかしながら、これにつきましては、一番高く売りたいのはむしろ中共であろうというふうにも考えられますので、何もその価格が国際価格決定的な水準であるとは考えておらないわけでございますが、当面具体的な算出から出発して考えます場合に、この段階におきましては、これを必ずしも無視してやるわけにいかないというふうに考えておるわけでございます。
  72. 高田委員(高田富之)

    高田委員 そういういまの御議論、必ずしも全面的に賛成はできないのですが、いずれにしましても、五千円くらいのところへそういうふうな方法で持っていけるだろうというふうな見通しのようですが、ただいまのお話にもちょっとありましたように、昨年から今年の春にかけまして、中間買い入れで行なった八千俵ですか、手持ちもあるし、いままでの低迷した状況等から見て、いまおっしゃるとおり、一、二月だいぶ売れておらないというようなことから、養蚕家としますと、こういう思ったより低い値段をきめられた。そこへもってきて、そういう不安材料もあるというようなことから、非常に生産意欲をそがれますし、そのことは実に大きな問題になるのじゃないかと思うのですが、根本は、そうでなくても、あれを引き上げましても、労力不足その他でいやがりますから、必ずしも思ったように増産ができません。そういうときでもありますので、何とかいま局長のおっしゃるように、繭の出盛り期には相当な値段に持っていけるというような気持ちを持たせるには、ここでやはりある手を打たなければならないのじゃないか。この四千円にきめたということでは、むしろマイナス的な心理的な影響もあるので、やはり何か別の手を打つ必要があるのじゃないかと思うのです。それをいまの中間買い入れをしたものなんか、重しのようになっておりますものを取り除くというような措置をあわせておとりになれば、あるいはそういうもので明るい気分になるのじゃないかと思います。それはいま法律的にどうなっているかわかりませんが、それを政府で肩がわりしてしまう、買い上げてしまう、たな上げしてしまうというようなお考えはないのですか。
  73. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 政府が昨年十二月に中間買い人れに乗り出しましたときの考え方といたしましては、ああいう超非常時でございまして、非常に高いところから下がっていく過程でございますので、普通の状態では底値が示しにくい。したがって、政府といたしましては、中間買い上げは、必ずしも下値をささえる本来の役目ではございませんで、輸出生糸の確保という形のものではございますが、同時に、それがああいうような場合におきましては、政府の意図と申しますか、あるいは下値ざさえの気がまえと申しますか、また実際にはある程度意味を持ちます下値ざさえの様相を持ちまして、相当早期にあれを発動したわけでございます。一万俵ということでやっておるわけでございますが、いまのお話の、現在の滞貨を政府が引き取るつもりはないかという問題につきましては、いまのような措置をとりまして、来生糸年度価格をきめて、そして三、四、五月の期間にも過渡的な混乱を避ける意味で、四千円を堅持するということを明らかにした上で、なお若干検討を要しますと思いますのは、輸出関係の事情でございます。  生糸プロパーの需給関係から申し上げれば、相当買い控えを内外ともいたしておりますので、すでに内需におきましては十分な買い気がついておりますけれども、国外の需要につきましては、従来の経験から申しますと、これだけ底値がきまり、採算の圏内に入っておって、当然ここで相当長期なお約束ができるべきはずだというふうに判断しておったわけでございます。若干これは国別に、特にヨーロッパにおきまして事情があるようでございまして、たとえばイタリアの場合に、ちょうどこちらと同じような引き締め問題がございましたり、あるいはスイスの場合のように外貨問題がございますように、また予想外に昨年の高値が影響いたしまして、ちょうどたまたま合繊ラッシュとぶつかりまして、機屋がそういう方面に転換しておりまして、急速にいますぐ生糸に返ってこられない、若干そこに時間がかかりそうだといったような問題もあるようでございまして、その点で、三月期になりましてもまだ輸出の引き合いが必ずしも動き出さぬ、こういった経緯がございますので、その帰趨をはっきり見きわめたいわけでございます。早急な期間にその問題につきましての見きわめをつけます場合に、若干時間がそこにかかるということになりましたならば、さらに何らかの措置が必要になるのじゃないかと考えておるわけでございます。ただ、そこでねらいます点は、あくまでもやはりその段階におきまして、輸出が若干予想しましたよりも先に延びるというような場合に、それをいかにして持ちこたえるか、その持ちこたえ方の結果が、あまりその事態に対してよりも強過ぎる措置をとりました場合には、また価格を引き上げ過ぎてしまうおそれがあるわけでございます。その点も考慮いたしまして、先ほど申し上げたような、具体的には六、七月におきます現実の糸価の形成に対しまして、養蚕家も納得できるし、製糸も大体これでけっこうだという数字のところに、両団体で話し合いを進めて持ってまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。その判断といたしましては、大体三月末から四月の上旬にかけてそのような判断をしなければならないと考えております。
  74. 高田委員(高田富之)

    高田委員 そうしますと、そういうことをやることは考えられるといえば考えられるでしょうが、いずれにしても、たな上げに——一応保管会社に出してありますものを買い戻しをしまして、六月ごろに製糸のほうでそれを放出する、そして繭相場をたたくというようなことはあり得ないことではないわけなんで、そういうことを心配するわけです。そういう不安要素を取り除くには、やはりいまのうちに、早い機会にこれをたな上げしてしまうということは、特別差しつかえはないのでしょう。輸出のほうの見きわめとかなんとかおっしゃるけれども、むしろ、生産量もことしは去年より幾らかずつふえる見通しでもあることでありますし、そういうものをこの際政府としてたな上げをしてしまうという措置をとったほうが、かえって所期の目的のように価格を堅実にささえていくということにもなるし、生産意欲を旺盛にするということにもなりますので、いいのではないかと思います。その点は、もう少しはっきりした態度をおとりになったほうがいいのじゃないですか。
  75. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 その問題がポイントだと思うのでございます。私どもの一番いま検討しておりますのは、その問題でございまして。いずれにいたしましても、この三十九生糸年度におきまして、糸の値段と繭の値段が、将来について製糸もそれでやっていけるというものを出し、養蚕家もこれならやはりおもしろいからやっていこうというお気持ちになれるようなところに持っていきたいということが根本でございます。  いまの滞貨の問題につきましては、そのようなことの必要のために、その滞貨をある程度いまの市場から決定的に切り離してしまうということが必要になるかもしれません。現在のところは、保管会社に預かってもらっておりまして、ある水準になりますれば製糸家がそれを引き出す可能性があるわけであります。幸いにして輸出も伸び、その結果、全体の水準が問題なく上がってきて、そして引き出してきてそれが売れるということになれば、これは満点でございますが、かりにそういうことにならぬ場合でございます。その全部かあるいは一部につきまして、特に海外市場が買い付いてくるのに若干時間がかかるということでございますれば、私は、やはり現在の市場から完全に隔離することがあるいは必要になるかとも思うのでございます。もちろん、十二月にあれを発動いたしましたときには、必要があればいつでも出すというかっこうにして、あれは店を開いたわけでございますが、御指摘のような問題がございます。ただ、隔離するということが必要だといたしますと、その方法といたしまして、政府がいま直接買うという方法がございません。やはり九条二ということによって、間接的に保管会社を通じて買い入れるということになるわけでございますので、直接的にそれを政府がいますぐ買って切り離してしまうという措置が実はないわけでございます。ただ残されております問題は、現在それを自主的に預けております製糸家対養蚕関係、あるいは製糸自体の採算の問題、あるいは将来の問題、特に上値押えの問題、その四つぐらいを考えました場合に、そのストックについて、製糸プロパーとして見ても、これを何らかのかっこうでいまの市場から決定的に隔離したほうが、蚕糸業全体のためによろしいという判断をもしされれば、道は開かれるように思うわけでございます。さような点がむしろ自発的に検討されることが最も望ましいのではないか。対養蚕関係から申しますと、対外的にもそう思いまして、政府側としての正式意見を実はまだ言ってないわけでございます。かような場合にもし製糸がさような踏み切りをなさるとすれば、この生糸をある段階でいまの市場関係から完全に隔離してしまう、あるいはよく御指摘のございます上値押え、生糸をいまの蚕糸業の仕組みの中で政府がかりに持つというようなことも、一つの方法じゃないかと思うのでございます。  そこで問題は、さような点でもっとそれを早くやったらどうかという点につきましては、先ほど申しましたように、政府が直接買う方法が許されておりませんのと、もう一つには、現在のストックの内容につきまして、これが、全部の中小の製糸がいわば天災とかそういう自然災害によりましてストックをかかえたという形よりは、ある程度それぞれの企業におきます六月以降の経営方針とも関連して、多少の片寄りがあるわけでございます。さような点で、一般点な国の措置といたしまして、たとえば援助的に動くということが客観的に非常にできにくいし、また必ずしもそういう措置が妥当ではないのではないかというふうにも考えられますので、さような点を考慮いたしまして、製糸の自発的なと申しますか、考え方がなるべく早い時期に固まるように話を進めておるわけでございます。その際の判断といたしまして、私ども多少迷っております点は、いまの輸出関係の需要が何ゆえにそういうように停滞しているのかにつきまして、少し需要者側の様子につきまして大きな変化がございますので、それの判断をしっかりつけてみたい。それで、あまりそれが時間がかかるというようなことであれば、相当の措置が要るし、そうでないとしますと、いまへたに上げますと、普通の形で出るものが出なくなる。そういった判断をどちらかに踏み切るべき相当重要な段階にきているのじゃないかと思うわけでございますが、若干の時間が要るのではないかというふうにも考えておるわけでございます。
  76. 高田委員(高田富之)

    高田委員 そういうことであれば、ひとつ早急に業界にもそういう見解を明らかにして、考え方をはっきり出させることが必要じゃないかと思うのです。われわれ考えますと、おそらくそういうことを希望しているのが大部分だと思いますし、養蚕側はもちろんであります。製糸側に例外もあるだろうと思いますけれども、それはわずかだと思うのでありまして、やはり早急にその意向を取りまとめられて処置する。もし政府が直接的に買う方法がなくても、間接でもやれるということになればそれでいいのでしょうけれども、本来ならば、多少制度を変えてもその程度のことがやれるような仕組みに直す必要があるのじゃないかと思うのです。せっかく最低値をきめましても、そこまで下へ落ちてくるまでには手持ちの糸が一本もないわけでしょう。法律があっても、実際に機能しないわけで、下値のところには無制限に買い入れる金の用意を持ち、上値のところには大体押えられるだけのものを持つということで、初めてこれは意味があるわけです。ですから、そういう点で、ここらで制度も変えて、せっかくあるいまの八千俵なら八千俵を時価でぽんと買い上げられる、足らなければもう一万俵買い上げられていくということができるのでなかったら、いま一、二月売れないのですから、何か思惑的に出さずにおいて、一定のところへきてすぱっと、去年のような暴騰をやらかすということがないとも限らない。もしそうなったときに打つ手がない、こういうようなことの繰り返しになるのでは、これは何にもならないと思うのです。ですから、去年の暴騰の経験から、そういうことを学んで、制度自体にメスを入れなければいけないのじゃないですか。去年六、七月の大暴騰をやったとき、蚕糸局は何をやったのですか。どういう措置をおやりになったですか。
  77. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 いまの高値押えのものをとる方法といたしまして、現在の九条の二の方法によりますと、国際価格との関連を厳密に規制されておりますために、ある一定の基準でなければ発動できませんので、またしかも、そういう水準を割るような事態は望ましくないわけでございますので、間の抜けた要塞みたいなことで、そこへなかなか敵が来ないわけでございます。そこで、審議会におかれましても、別途、そういうまとまって買うのではなくて、ぼつぼつでも買える制度を組み入れたらどうかということが、御答申の中にも出ておりまして、研究はしておるわけでございますが、たまたまいまの段階では手持ちがございませんので、手持ちをつくる、またそういうチャンスのあります場合には、ぜひそれを心がけなければならぬということで、実は九条の二をああいう形で発動したわけでございます。お尋ねの六月の段階につきましては、昨日も申しましたように、いろいろ法制的には手はあったわけでありますけれども、むしろ事実関係で、本来打っておかなければなりません手が先行しておりませんでしたために、法律的に許されておる手段を使おうといたしました場合に、かえってそれによって事態を混乱させるおそれのほうが強うございましたので、非常に残念でございましたけれども、あれは見過ごさざるを得なかったわけです。その後におきまして必要な処置を、それを契機にブレーキをつけたという経過でございます。
  78. 高田委員(高田富之)

    高田委員 そういうことで、ああいうところからやはり相当の教訓を学んで、こういうことは今度は二度とさせないというための制度的なことも、十分ここらで考えないと、同じことをしょっちゅう繰り返すのではないかと思うのです。大体製糸家も小さいのが非常に多い。織物屋も小さいのがもちろん多い。貿易商の数は大小さまざま。中の一、二の大きなところは、また巨大な商業資本力を持ってやるわけですから、業界全部束になってもかなわないような大手が出てきて、商売的な立場から、投機とか流通利潤とか、こういう立場から活動するわけですからたまらない。だから、これを安定させるには、そういうふうな機構それ自体に何らかメスを加えるとか、あるいは少なくともそういう大手商社を押えられるだけの資本力を持って、国家自体が市場に立ち向かうか、どっちかですね。制度でぴしっと国策的な輸出会社でもつくってしまって、そこでやるとか、もしそれがなかなか容易じゃないということなら、政府自体が相当の資本と、それから金や糸を持って、市場操作においても、そういう連中を押えられるだけのものを持てばだいじょうぶだと思うのですがね。さしあたってはどうなんでしょうか。たとえば常時糸ならば年間三十三万俵ならば、その一割とか二割とか持っていなければ——この前は十万俵から持っておって、あわてて売ってしまったわけですね。安くたったっとまたたく間に売って、一年間でなくなってしまった。あれだって非常な教訓だと思うのです。あの教訓から深刻にわれわれは学ばなければならぬ。政府なんかも深刻に学ばなければならぬと思うのです。ですから、あまり憶病過ぎるのではないかと思うのです。至るところにおいて、こんなに下へ下げていたら、そんなに下へくることはないですからね、やはり下値でもって買って出る。いまはないですから、下値を高くしておいて買ってしまうようなかっこうにしておいてやるくらいの度胸を出しても、おそらくいままでの経験からしますと、失敗することはないのじゃないかと思うのです。売れるのです。現に外国では五千円で買うと言っているのですからね。やはりこの際、そういうことを考えますと——大体蚕糸局の伝統的な考え方は、いまの次官の大澤さんのときでしたか、数冊の本にして出された。あれは根本的に再検討を要するのです。あの考え方というものは、要するに、日本の蚕糸業というものはだんだんだめになっていくのだ、需要は傾向的に減っていく、だから、生産はふやさないで、価格を安くすることによって生き延びる以外にない、考え方自体がこういうのでしょう。それはもうその後の歴史によって全部くつがえされて、需要がふえていくということになった。そうすると、ふえていくということは、結局高級品にしてふえていくわけですから、価格の面はわりに安定さえしていれば、そう価格の問題については問題にならないということも明らかになってきた。そうすると、いままでの伝統的な蚕糸行政に対して、相当根本的にメスを加えた、制度的にもかなり思い切った改革をして、業界全体に安定感を与えていくということがないと、伸びないのじゃないかと思うのです。昨日もいろいろ御質問があったようですけれども、今度のあれでいきますと、いまの構造改善事業なんかやって——私ともの付近なんかでもやっておりますが、養蚕なんかを取り入れたところに行って聞いてみますと、取り入れはしたけれども、どうもやっぱりふえないのです。ただ、労力が非常に足らないですから、省力的にやれるようなところは残してやっている。そうでないところはむしろやめてしまうというふうな傾向が出ておりまして、そういう点を考えますと、いままでのような、政府が全然生糸を持っていないというような状態はよくないと思うのですよ。だから、そういうような点についての制度的な改正について、早急に考える必要があると思うのです。これは、さっきの八千俵の問題はたな上げにしましても、大蔵省あたりで多少難色でもあるのですか。大蔵省あたりから財政的な見地から、依然として蚕糸業についてはそういうふうな改正を望まないというようなことがありますか。
  79. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 対大蔵関係では、六月以降中間買い入れをやりました場合にも、今度の場合にも、やかましい制約と申しますか、意見の食い違いは必ずしもございませんでした。と申しますのは、むしろ、いま御指摘のございましたような制度全般の組みかえと申しますか、根本的な検討が必要だということは、財務当局も言っておりましたし、私どもも実はそこを考えておるわけでございます。先ほどお話のございました糸を政府が抱きかかえることについて、私どもは何もちゅうちょしないのでございます。ただ、最高価格を越えました場合に、政府が相当の物を持っておりましてぶっつけるということにつきましては、政府がそういう物を持ちました場合に、的確にああいう暴騰時のものを押えることが行政技術的にできるかどうか、この点につきましては、相当吟味が要るのではないかと率直に言って感じておるわけでございます。当然政府のやることでございますから、一定の価格をきめて、その段階になれば、当局の恣意がそこに入らないような形で出してしまうということにならざるを得ないと思うのでございます。そういうようなことで、実際には十分実需のついた価格水準の訂正というような問題がありました場合でも、物は出さなければならないといりようなことにもなりましょうし、ほんとうに昨年の六月のようなときに持っておれば非常に有効だったと思うのでございますが、それを一体どの段階で出すかというようなことにつきまして、これも行政官庁でその時期を適当に判断して介入できるという実態ではおそらくないのじゃないかというふうにも考えまして、若干政府が持ちました場合に、はたしてそれが有効にうまく矛盾なく調整できるかどうか、多少疑問を持っているわけでございます。もちろん制度のたてまえがそうなっておりますので、理論的にも当然価格を押えるための生糸は持たなければならぬし、また持つことについてちゅうちょはいたしませんけれども、現在のところの気持ちを率直に申し上げますと、昨日も申し上げましたように、あの六月の経験からは、そういう暴騰をされてくる基礎が、製糸業と申しますか、蚕糸業自体に非常にございまして、たとえば糸の売り方というようなところに相当問題があったように思いますし、そのことは、需要はあるのだから大丈夫だといままで言ってきたわけでございますけれども、需要がありましても、それと生産の結びつくところに非常な隘路がございまして、その辺に糸価暴騰、暴落の相当大きな原因があるのではないか。この点の究明がいままでほとんど十分できておりませんでしたので、いま急拠そこのところを調整いたそうとしておるわけでございます。
  80. 高田委員(高田富之)

    高田委員 いまのうまく操作できるかというお話ですけれども、これは行政庁が商売人になったようなつもりで、物を見て売ったり買ったりは無理だろうと思うのです。そういうことを期待したら間違いをおかすと思うので、むしろ常識的にきめられた法的なワクに忠実でありさえすればいいと思う。それで相当な役割りを果たせると思うのです。かえっていままでの歴史ではそれと逆なんですね。法律的にきめてあるものに思惑を加え過ぎたから、たとえば政府の運用十九万円ときめてあるのに、実際に高過ぎるのだ、高過ぎるのだといって、十九万で無制限に買い上げればとまったものをわざわざ下げているのですね。それからせっかく二十三万にならなければ売れないと書いてあるものを、そこまで上がらないだろうといって、十八万で売っちゃった。そういうことをしたことがいままでの歴史上の失敗なのであって、法律をまっ正直に判断して、十九万になったら無制限に買い上げるということでいけば、それ以下には下がらなかっただろうし、十万俵よりよけい買ったかもしれないが、それは間もなく二十三万で売れただろうし、やはり商売人のような考えで張り合うつもりでやることはないと思う。理論的なもので、きめられたそのとおりまつ正直にやるという態勢があれば、全体に安定感——いま制度はあっても信用がないですね。はたして四千円まで下がったときに無制限に買うだろうか、怪しいものだ、こういうことになります。だからまず第一は、やはり何といっても、制度をぴしっとしたら、それが確実に実行されるということが根本だと思うのです。  それからもう一つ、こういう点はどうなんですか。これは話が別になるかもしれませんが、輸出商は大体聞きますと、普通の場合でも、従来から国内の時価相場よりは若干安く安くと売っていくのだ。これは外国との競争もあるのでしょう。そういうような穴埋めから、清算のほうでそれを埋め合わすというようなことで、大きく投機的に出てくる傾向があるというのです。もしそれがほんとうだとすれば、そういうことを何とかカバーするように機構的に何かを考えなければいけないのではないか。ほかの場合でも、輸出産業なんかの場合は、内需の価格と輸出の価格というものを切り離される場合が間々あるわけです。そういう場合に、その損失を全部輸出商がひっかぶることはあり得ないわけですから、何らかの方法でこれを調整する機構を考えなければならないのではないか。また、競争相手の一番大きいのは中国生糸、向こうはきちっとした体制でやっておるわけですから、こちら側としても、もう少し国家的に全体の見地から見た、合理的な機構で対処していく必要があるのではないでしょうか。この点はいかがですか。
  81. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 まさにその問題がございまして、それが六月暴騰の相当大きな原因になっておったように思うのでございます。ただ、普通の輸出産業でございますと、いまお話のございましたように、たいていメーカー段階で内需と外需のプールをいたしまして、普通国内よりも低く売らざるを得ないような場合が多うございまして、そういう形で調整いたしまして、場合によりますと、輸出義務制というものをメンバーにしながらやっていくのが普通の輸出産業のかっこうだと思います。生糸の場合は、特に三十四、五、六年とずっと棒上がりに上がってまいりました場合に、非常に変則的な形が出てきまして、製糸のほうが、実需に回しましたよりも、とにかく棒上がりでございますので、確実に商業利潤が上がりますものですから、どんどん取引所のほうに向いて糸を回してしまう、そういう傾向が数年続いたわけです。そうしますと、輸出関係者といたしましては、特別なルートのある方は別といたしまして、清算取引所で逆に現物を得なければ得られないというような、非常な変則のかっこうになりました。しかも、その場合には外国との競争関係がございますので、さらにそれを低く売らざるを得ない。そのカバーをメーカーが負ってくれないから、どこかで取らなければならない、こういうことになります。しかも、それは清算でカバーをとろうと思えば、棒上がりだから取れるわけであります。そういうようなことがだんだん大規模に行なわれまして、そういったものがからみ合って、どうも六月の暴騰の相当大きな根拠になったように思うわけでございます。ただ、これにつきましては、そういう棒上げの状態というものは、あれを最後にもうなくなりまして、現在棒下げでございますが、ある意味でノーマルな状態に対処して、これからのアップ・ダウンがノーマルな形をとるといたしますと、とてもそういう冒険的な輸出はできないわけでございますし、製糸といたしましても、だんだん実需から離れて清算取引のほうばかり向いていくことはできなくなりますので、両者から歩み寄りがございまして、つい最近でございますが、輸出関係者も、ああいう形で全部のリスクを負って生糸輸出を担当するといっても、カバーの取りようがないので、手をあげてしまいました。その結果、輸出関係者としては、とにかく客観的に見て国内と国際価格にギャップがある。そのギャップを自分たちだけで埋めることはとてもいかぬので、製糸のほうから適当な荷物を渡してもらえれば、それを手数料を取って出していく普通の輸出の形に帰りたい。その場合に、輸出関係者の中に過当競争があったのでは困るわけでございますが、それもしないという意思表示がございまして、現在、製糸の方たちと輸出関係者の間でそういうお話が実は相当進んでおるわけでございます。もちろん、これは制度的に考えますと、本式にそういうものを取り上げますと、先ほど御指摘にもございましたように、組合で全体の生産の計画を立てて、内需、外需の割合をきめ、供出の負担関係をきめていくのが普通だと思いますけれども、現在の製糸の段階におきましては、非常に多数の企業がございますし、その間に非常に大きな格差もございますので、いま直ちに供給者側である製糸がある態勢をとって、これは内需、これは輸出、価格差はこういうふうに調整するというところまで、いきなり制度的に踏み込もうとしても、若干の無理があるわけでございます。しかしながら、たまたま輸出関係のほうで過当競争にたえ得なくなりまして、また同時に、輸出はどうしてもせざるを得ないという問題から、そういう歩み寄りをしてまいりまして、製糸の一部の方との間で、それをいかに具体的に処理するかが検討されているわけでございます。だんだんその問題を拡大してまいりまして、ある程度軌道に乗るというめどがあれば、これはやはり制度化することが、先ほどお話のございました相手方にも強烈なものが出てまいりましたので、そういう意味からも必要になってくると思うのでございます。このお話し合いは相当段階まで進みますと、当然製糸の中でどの範囲でそういう問題をやるべきか、あるいはすぐ機構でもつくってやるべきか、あるいは養蚕との関係をどうすべきかという問題に発展するわけでございますが、私といたしましては、いきなりこれを制度的に取りつけるよりは、実態そのもののほうを、せっかくそういう機運が出ておりますので、お話に乗りながら指導してまいりまして、最終的な形はある機構にまとめ上げる必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  82. 高田委員(高田富之)

    高田委員 最後に、もう一つだけお伺いしますが、最近は中国とソビエトの間の貿易がうまくいっておらないために、いままで中国のほうから絹織物がたいへんいっておったわけですが、それがほとんどいってないということでありますので、これにかわって、日本あたりに対して、ソビエト側からも相当輸入したいというような希望があるのじゃないかと思われます。聞くところによりますと、最近二、三、ごく小口の何かが東棉あたりにあったらしいですね。しかし、これは開拓のしようによっては、この機会に相当大量の——いままで中国から買っておったものは、おそらく三万俵近いのじゃないかと思うのです。ですから、日本の対米輸出の半分から三分の一くらいですか、その程度のものですから、できればこの際積極的に話し合いをやって、安定した市場として、ソビエトとの間に絹の貿易関係を開くということが必要だと思うのですが、検討されておりますか。どうでしょう。
  83. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 両国の事情が計数的につかみにくいわけでありまして、実は中共が秋からヨーロッパ市場に相当出ておるということは、断片的には入ってまいりますが、それが一体どの程度の規模で、どういう背景をどの程度持っておるか、正確につかめておりません。ただ、考えられますことは、一応私どものわかっております問題といたしまして、中共からソビエトのほうに相当の糸と織物が行っておったわけでございますが、両者の関係がまずくなります以前からも、糸は五九年を境にいたしまして、五九年、六〇年、六一年、六二年と四年間にずっと急減しております。そうして、それにかわりまして、織物のほうは、若干ふえております。そういう形になっております。これはおそらくソビエト等におきまして、七カ年計画の際に自給態勢がある程度できたのではないかと思われるわけでございます。そういうことで、従来中国から出ておりました糸と織物の比率が相当変化しております。それからあとが急にことしの問題になるわけでございますが、そういうものが全部消えてしまってヨーロッパのほうに回っているのか、その辺のところが実は非常に問題があるわけでございます。と申しますのは、糸そのものとしても数年前から急激に減って、ソビエトのほうに行っていないのでございます。そんなことでもございまして、中共がヨーロッパ市場に出てまいりましたことについて、それがソビエトのほうとの貿易関係がどのくらいの問題でこちらにきているのかにつきましては、若干意見の分かれるところでございます。また、中共自体のヨーロッパ諸国に対します輸出につきましても、昨年の十月にこちらで糸価対策がごたごたしておりまして、相当まとまって商談ができましたので、こちらにショッキングに伝わったのであります。数量的に見ますと、年度により非常にフレがございまして、特に昨年が多かったとは言えない事情がございます。一昨年が少なかったために、昨年の伸び率が相対的に多かった。一時心配したわけでございますが、絶対量から申しますと、必ずしも従前とまるで違うという伸びではないようでございまして、その辺の問題がまだ十分解明されておらないのでございます。また、御指摘のように、いままでとは相当違うかっこうで、少し長い契約などをいたしておりますが、相当ストックを持ち、意欲的にヨーロッパ市場に出ていく意図も十分考えられますので、私どもといたしましては、やはりこの三者の関係を十分考慮に入れて、今後対策を講じなければならないというふうに考えております。  ソビエトからの注文は、お話の出ましたように、一部ございましたけれども、これは恒久的なものなのか、さらにもっと拡大するものなのか、見通しがついていないわけであります。この点は、ことしの後半の糸のやりとりによりまして、ヨーロッパ市場にどの程度中共が出ておるか、こういうことが漸次判明してまいると思っております。いずれにしましても、さような問題を取り上げました場合に、こちらといたしましては、当然輸出態勢の整備が必要だと思いますし、またある段階におきましては、かりに価格について申し上げれば、中共の場合におきましても決済上の問題がございますということから、現在四千円を割ったオファーが出ていると先ほど申しましたが、これは決して好んで出しているわけではございません。こちらの価格が低迷しておりますために、それに下押されて出している価格というふうに思われます。したがって、日本側の糸価態勢が整備しまして、しかるべき糸価に上がってまいりました場合には、当然中共側の糸価水準もそれに追随して上がる。その場合に、いつでも価格差の問題が起こるわけでありますが、これは価格の格差というよりは、むしろ輸出態勢の問題なり輸出の内容の問題で調整を考えていくのが、穏当ではないかというふうに考えております。
  84. 高見委員長(高見三郎)

  85. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 局長から懇切丁寧に御答弁願っておるわけですが、時間もありませんので、質問に対して要点だけお答え願いたいと思います。  三十九年度の蚕糸対策は、予算を通じて増産の方向へ踏み切った、こう言われておるのです。が、この点はいかがでございますか。
  86. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 昨年就任いたしまして、すぐ糸価の暴騰にぶつかりまして、全体計画との問題と関連いたしまして振興審議会を開きまして、いろいろ御意見を伺いまして、私どもとして、やはり六月の暴騰の一番基礎に、需給の著しいアンバランスがあって、しかも、行政が必ずしもそれにフォローしていなかった点があるというふうに考えましたので、はっきり増産に踏み切るという形で、問題を処理してまいりたいという態度を明らかにしたわけでございます。
  87. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 実を申しますと、三十三年の混乱のあとやめた須賀さん、それからいまの次官の大沢さん、これは、生糸というものがいよいよ葬式を出す段階なんだ、化学繊維にやられる、桑も金をくれるから抜けという、こういう方向に行って、蚕糸業は輸出産業ではないんだというようなことまで、かなりな書きものでやったわけです。その後、農民の中にも、あるいは製糸の中にも、仕事をやっている以上は、縮小再生産でなくて、やはり拡大再生産、すなわち増産の方向を何とか打ち出せと政府に迫ってきたけれども政府のほうはむにゃむにゃやっておって、一向に増産するとも言わず、減産するとも言わず、わけがわからない間に過ごしてきたのが、今日までの蚕糸業の実態です。それをこの際増産に踏み切った。それもけっこうだと思うのですけれども、ただ単に昨年の六月の暴騰が需給のアンバランスということだけでなくて、少なくとも今日まで低迷を続けておった蚕糸業の基本方針を増産に踏み切った根拠は、昨年の六月相場だけで手がけられる、そんな簡単なものではないと思うのです。増産させる以上は、需要の展望がなければならぬ、こう思います。  そこで、お聞きいたしますが、需要の展望について、内、外、こう分けて、ひとつあまり時間をかけずにすぱりすぱりと言ってください。
  88. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 これはすでに基本法ができました際に、あらためて基本法に基づきまして、需要の長期通しを各商品についてやったわけでございまして、その際に、従来の横ばいという考え方を訂正いたしまして、二割ないし四割増ということで、四十六年までの見通しを立てているわけでございます。年率にいたしまして三%の増は確実になるというのが、客観的な見通しとして現在政府がとっている態度でございます。
  89. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 生糸と化学繊維、合成繊維との競合関係については、いまどのような見解になっておりますか。
  90. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 その段階での考え方といたしましては、化学繊維がむしろ非常に食い込んでくるのじゃないかという気持ちが非常に強かったように思います。また、そういうような計数をはじいたように思うわけでありますが、その後の経過からしまして、もちろん食い込みはございますけれども、それはむしろ、従来考えておったような形で用途が食われるというよりは、そういう繊維の発達によりまして、新しい組み合わせによりまして需要が開拓できる、そういう見方が漸次強くなってきているように思います。ただ、心配になりますのは、用途のほうの競合ではございませんで、具体的に申しますと、たとえば急に化繊がああいう角度で大きく伸びてまいりますと、機屋、糸から製品にいたしますところ、そこが蚕食されてしまう、あるいは撚糸部門というものは決定的な部門なので、そういうものに取られてしまいまして、糸が製品になっていく過程にむしろ不安がある。需要そのものにつきましては、従来考えておったほどそんなに神経質に考える必要はむしろないのではないか。問題は、むしろその以前にあるのではないかというのが、最近の私どもの気持ちでございます。
  91. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 そうしますと、一時三十三年以後に農林当局で考えた、化学繊維、合成繊維との競合関係で、生糸が負けたのではない、需要の点では心配はないんだ、ただ加工関係、特に織物に入っていく加工の関係において、その手段の奪い合いという関係で問題はあるかもしれぬけれども、最終需要自体には、たとえ化繊、合繊ができても心配はないんだ、こういう考えにあらためて今日ただいまではなっておるわけですね。
  92. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 大事な点を抜かしましたが、価格がしかるべき価格だという前提があるわけであります。価格を抜きにいたしまして需要があるという考えがあっては困るということでございます。
  93. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 それはこれから聞いてまいります  そこで、具体的な需要の面ですが、今日まで内需、外需、こういう内面を持った生糸なんですが、特に内需の中では、めいせんとかいうような、言うならば、あまり高級な織物ではないものに、かなり生糸が使われておった。そこで、やはり価格関係ともからむわけなんですが、めいせんをつくるのには高過ぎる、こういう議論も出る場合もあります。一方には、高級織物をつくるのには、この辺の生糸の価格は決して高くないという議論が出るのですが、今後の政府の基本的な生糸の需要の面で、今日までの歴史にめいせん等もあるのだから、これでも使えるような価格でいくのか、そうではなくて、生糸というものは、希少価値を認めて、高級織物のほうへ需要面を決定的に開いていく、こういう方向をとられるのか、この辺の方向はいかがですか。
  94. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 大衆的な消費といわゆる高級ものとを非常に極端に対比して、かつて議論しておったやに思うのですが、必ずしもそうではございませんので、いわば高級ものと申しましても、所得の増によりまして、その高級ものを使用する階層の範囲が相当ふえております。現在の生糸の絶対量から判断いたしますと、単に高級ものだけをねらうということだけでなくて、もう少し広い意味の高級品の需要というものにも、むしろ供給が足りないというふうな感じで見ております。したがって、従来の高級品をねらうのはいけなくて、大衆品をねらえというようなことは、むしろ逆でございまして、そうではなくて、やはり生糸独自の味というものを品質的にも生かしていくことによって、いわゆる非常に局限された高級品に限定されないで、もう少し広い層の階層が使う衣料として、独自の分野を持っておるという確信が非常に出てきておるのではないかというふうに考えます。
  95. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 具体的にお尋ねしますが、たとえば生糸がある価格にくる。めいせん業者等々から、この値ではわれわれは企業がやっていけぬというような声が上がったときに、そういう圧力には屈しないだけの自信がありますか。
  96. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 生糸を使用いたします衣料の種類によりまして、また産地によりまして、それは白紙で現にあるわけではないのであります。三十三年のああいう経験と昨年のああいう暴騰と、非常に両極端の経験を経て、蚕糸需要も変わってまいっておりますし、産地の需要も変わってまいっております。さような現実の上に立って、展望としては、先ほど申しましたような点で処理してまいりたいと思っております。
  97. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 そこで、初めて増産に踏み切った。農業基本法をつくるときには、近い展望を立て、増産傾向であったというけれども、予算的に具体的に増産に踏み切ったのは、今度が初めてだと思うのです。  そこで、増産をはかるための根本対策ですが、いろいろありましょうが、ほんとうに局長は一切をかまえて、少なくも蚕糸に関する限りはおれが農林大臣だというつもりで、増産をはかる根本対策をずばり一発言っていただけませんか。
  98. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 それは労働を徹底的に削ることだと思います。これは従来その点が非常に歯切れが悪く、要するに、経営面積の拡大、桑園の拡大はいいとか悪いとか、そしてねらいは生産性だといった形で、御説明をしてきたように思うのです。それがどうしても関係者の気持ちにぴんとこないということで、数年間、何か行政といたしましては、非常に歯切れの悪い、また業界政府の間に何かもやもやとしたものがあったわけでございます。私がいま増産と申しておりますのは、ここ数年の大きな変動を経過いたしました農村におきましては、私どもが説教いたしませんでも、徹底的な省力化で経営が成り立つような経営ということは、農家の方は経験的にはっきり知っておられるように思いますので、さような意味で、増産と申しましても、ただばく然と面積をふやしてやろうという方はまずいないという考え方であります。
  99. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 どうも局長は落第点です。これは確かに省力もその方法の一つであるけれども、増産をはかるただ一つの方法は、引き合う値段で安定してやるということですね。価格政策ですよ。それを言わなくては、一生懸命局長はやってくれているけれども、ほんとうの背骨が抜けている。省力飼育ということは、その引き合う値段を形成する中の大きな一つです。したがって、低くても引き合うように持っていく、その手段としては、ただいまおっしゃるのが、大きな手段でありますけれども、やはり大前提は、引き合う値段を確保してやることが増産の根本である。引き合わなくてもやっているところはあります。私はよく農民に言うのですが、あなた方は残念ながら宿命的養蚕農民だ。火山灰土、軽覆土で、ほかのものをつくればひでりになって一コロになる。したがって、しようことなしに、ひでりがあっても、桑なら根が深いからひでりにかからない。しようがないので桑をつくる。これはもうかるとかもうからぬとか、あるいは引き合うとか引き合わぬではなくて、しようことなしにやる養蚕農民である。そういう部分があるのです。あるけれども、だから幾らでもいいのだということでは政治じゃありませんよ。これはやはり引き合う値段で安定さしてやるということで、引き合うように、養蚕農民以外でもやろうという意欲が燃えるような政策を立ててくれぬと、増産はできない。この点どうですか。いまひとつ腹を変えてお答え願いたい。
  100. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 全く同感でございます。
  101. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 そこで、その引き合う値段の問題なんですが、先ほど来、また昨日来、引き合う値段についていろいろ論議されておるわけですが、引き合う値段をきめても、お客が買ってくれなければだめなんだということにはむろんなります。なりますが、少なくとも今日希少価値を持ったおしゃれの繊維として着る生糸は、率直に言えば、価格はあまり最終利用者は問題にしておらぬと思うのです。絹を着ることを誇りとすることは、安い絹では誇りにならぬのです。ダイヤモンドでも、安いダイヤは誇りではなくて、高いダイヤをはめるのが誇りなんだから、絹を着て誇りとする人たちは、値の高いほうが実際はいいわけですよ。値があまりに不安定だから、その加工部門を担当する人たちは、不慮の損害を受けてはかなわぬから、扱いにくくなる、こういうことだと思う。だからあまり値段のことを言わず、安定した値段にしてくれということを絹業界では言っているわけです。  そこで、引き合う値段、まず繭について申しますが、ことしの最低価格一キロ四千円というと、一俵二十四万円ですが、その中で加工費を幾らに見、繭の生産費を幾らに見て、このようなものが決定されたか、御説明を願いたいと思います。
  102. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 二十四万円を出しますプロセスといたしまして、生産費をはじきましたその生産費の結果において、どのくらいになるかということでやるわけでございますが、本年度におきましては、生産費の計算がまだ終局的に固まっておりませんでしたので、推定という形でやったわけであります。これは結果から申しますと、八対二。従来考えておりました生産費の中の二割が生糸の加工費、八割に相当するものが繭の生産費という形になります。それを二十四万円というふうにいたしました場合に、まだ確定的な生市費ではございませんですけれども、八割五分というリミットを少し割るのではないか。まだ最終的に出ませんので、数字は申し上げませんが、大体そういう見当ということであります。
  103. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 二十四万円を八対二の概算で割ると、その結果から出てくるのは、加工費が四万八千円、繭のほうで受け持つ分が十九万二千円ということになるわけでありますが、十九万二千円ということになると、十六匁の糸目の出るなま繭で、百貫ですから、一貫目千九百二十円。このうちに養蚕農民の労賃というものは、八時間換算でどのくらいに見ておりますか。
  104. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 生産費の数字を出しまして、それからいろいろな事情を勘案して、二十四万円というものを別に出しますので、私のほうでこまかい数字を持っておりますのは、生産費もとのほうの数字の基礎になるものであります。これは自家労働として評価いたします場合に、御承知のとおり、農業臨時雇い賃金を基礎にいたすわけでありますので、しばしば安いというようなお話が出るわけでありますが、本年度やってみますと、ここ数年の相対関係では、むしろ農業臨時雇い賃金が非常に上がりまして、一般のたとえば三十人以上のいわゆる製造業における臨時雇い賃金よりも、絶対額といたしましては大きくなるような数字が出ております。労賃の値上がり率としては一%程度になる数字が基礎になってたしか出ておったと思います。
  105. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 具体的には、八時間換算で一日幾らに当たるんですか。
  106. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 八時間換算といたしますと、いまの二十四万円の基礎ではございませんが、日額にいたしまして、臨時雇い賃金は、男子で六百七十六円、女子で五百五十六円でございます。
  107. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 もちろん、いろいろな数からはじき出すわけでありますが、農業基本法で、農業担当者は他産業と格差のないようにする、そういうときに、日額——日額というと、実際は養蚕で働く場合には、八時間換算にすれば、これは一・五六になりますよ。率直に言って、養蚕の臨時雇いはこんな値段では雇えません。これで農林省が雇ってくれれば、私は全部引き受けますよ。群馬の養蚕の人たちをお願いして、これでもってまかなえますか。まかなえないような数字を、実際に雇えぬような数字を並べて、それを基礎に、農民が汗水流してつくったものを計算されたのでは、いつになったらうだつが上がりますか。これは何とか直らぬですか。
  108. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 生産費を基礎にいたしまして、価格の検討の基礎にいたしますが、各商品についてもいつも出る議論でございますが、私どもといたしましては、自家労賃の評価をいたす場合に、特に米のような、政府が全部買い取ってしまうようなものと違いまして、しかも最低、最高をきめる基準でございますので、農村におきます現実の賃金関係を基礎に置いて、統計を使わざるを得ないと思うのです。現実にある農家で、たとえば上簇期のことで数千円かかる。そういう問題は現実にございましょうけれども、それとそれに投下されました労働に対して、平均的にどういう数字をかけるかという場合に、やはり現実に生産費調査その他の中で出てまいりましたものを使わざるを得ないわけでございます。それは御自分で使った労賃の評価でできるわけでございまして、人を雇いました場合には、もちろん雇った人が現実に支払いましたものが当然計算の中に入ってくる。だから全国的に平均で申しますと、感覚的に非常に違うというお感じをお持ちになると思います。
  109. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 お話は一応わからぬでもありませんけれども、ほかからいろいろ計数をかけ合わせて数字を出してくる。もちろん、それはべらぼうに高いものもありますよ。しかし、われわれはそれを主張しようとは思っておらぬのです。しかし、出してきた数字が一人も雇えぬというような数字では、それはちょうどまん中にいくとか、あるいは下から四割のところにいくとか、こういうことならばまだまだ話はわかるけれども、具体的にはこれでは一人も雇えぬというような数字を、ほかからいろいろと引用してきて使いましたというのでは、これはどうも話にならぬと思うのです。現実にはこういうこでは一人も雇えません。  それからいま一つ、自家労賃を具体的に計算するにいたしましても、こんなことでは、農業基本法にのっとってこれから構造改善事業をやって、主幹作物に養蚕をするのでは、指定を返上いたします。群馬でモデル地区になった城南村なんというのは、そのことで返上してしまっているのですよ。これはだめです。養蚕をやりたいけれども、食っていけないような養蚕ではどうにもならぬ、こういうことなのです。いま一般農民が要求しておるのは、少なくとも一日八時間換算で千円にはなりたいものだ、こういうことを要求しているのです。これはそういうことを基礎に——まあ、どこにどういう数字があるかわからぬけれども、そういうことを基礎に、やはり繭の生産費の計算をして、そうして最低価格決定をやっていただきたい。もちろん、これは農民の一つの強い要求であり、われわれの要求でもあります。この上にさらに、これを買い入れた製糸工場が適正な労賃を払って、そして適正な利潤を加えて生糸価格をつくる、少なくともこれが最低価格でなくちゃいかぬ。それで売れますよ、安定すれば。それが幾らになるかわかりませんが、すでにいろいろ質疑をした人たちは、おそらくそういう計算をしていけば、最低少なくともキロ五千円にはなるだろう、一俵三十万円にはなるだろう。三十万円で売れなくはありませんよ。三十万円で高いから買わぬというのは、一つもないのですよ。たまたまそれより下がっていくから、もっと下がるかもしれぬというので、買い控えているだけで、三十万円は高いから買わないのじゃないのです。こういう点は、ひとつしっかりと当局でも腹をくくっていただきたいと思うのです。  そこで、私お聞きいたしますけれども、おそらく御答弁は、具体的な数字はわかりませんと言うかもしれませんが、国際市場で生糸の相手国はやはり中共だと思います。中共が今日キロ四千円を割ったオファーを出しておるというけれども、少なくともこれはコマーシャル・プライスじゃないと思うのです。中国といえども、十分一人一人に生糸の労働の価値を、特にああいう国で付加して積算して、そんな値段が出てくるとはよもや思えませんですが、この点に対する御見解はどうですか。
  110. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 その点の前に、先ほどの点で、二点だけはっきりしておきたいと思うのです。  私どもよく食い違いますのは、今度の価格の議論について明らかにしておきたいと思うのでございますが、最低価格即現実に形成される糸価という点が、これは蚕糸業界で話をいたします場合でも、いつもお話が食い違うのでございます。私どもが一番今度の場合で頭を使いましたのは、あるいは希望をいたしましたのは、実現をされるべき価格がしかるべきところにいくということとの関連で、最低価格考えざるを得ないということでございます。特に六月以降がああいう異常の事態のあとでございますだけに、しかるべき値段にいくプロセスが非常に問題なので、そこをぜひわかっていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、生産費でございますが、生産費とこれも同じ問題でございますが、最低価格をきめますときに、現実に農家が価格として自分で腹にお持ちになる場合の数字との関係でございます。これがやはり違ったものを御議論しておるのではないかという気がいたしますので、私どもといたしましては、やはり生産費生産費、計算は計算といたしまして、やはり現実には農家がそれで、一番最初にお話が出ました、引き合うという感じが、現実の価格の形成されるときにできるように持っていきたい。もしそれを割りました場合に、そういうことにならぬ場合に、特にたとえば最低価格で買わねばならぬという事態、そういう段階でありますと、これこそまさに農家は一番増産の意欲を失う心配があると思います。特にことしの場合、それが大きなかなめだと存じまして、多少用心深い措置をとったのでございます。その点おわかりいただきたいと思います。  それから中共の問題でございますが、これはお説は私どももそう思うのでございますが、いま出しておる値段は、たまたま本家のほうがぼやぼやしておりますので、それに下押されてやっている価格で、決してそれが向こうの望んでいるような価格ではございませんし、またそれの出せるような実態の価格ではないと思います。ただこわいのは、生産費はもっと高いはずでございますが、ああいう特殊の経済で出せる組織でございますので、そういうことは常に念頭に置かざるを得ない、こういうふうに思っております。
  111. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 お話、よくわかっているのです。ただ、私たちの立場から言えば、ある意味においては最低価格即最高価格でいいという考え方を持っているわけなんです。実を言えば、あなたは幅のある価格、こういう立場に立って御議論なさる。われわれは最低価格即最高価格でいい。しかし、それはどこまでも引き合う価格でなければならぬ。こういう立場に立つから、ちょいと食い違いが起こるわけなんですけれども、そういう点はひとつお考え願いたいと思います。  私たちの考え方は、そういう意味でほんとうにかかった原価をすぱりと出して、これで引き合うものかどうか、とれないところはあらゆる技術指導もし、構造改善をして、なおかつこれで引き合う生産ができないところには、それは不適地であるという立場に立って、そのときこそ、構造改善によって新たなる選択的拡大の方向を指導すればいい、こうぼくらは思っている。この点はひとつ十分考えてみてもらいたい、こう思うのです。したがって、ほんとうに引き合う価格を積算して最低価格が出て、これ以下には下がらぬのだ、こういうことになれば、当局の考えでは、そんなことをやると、これは政府が買わなければならぬ場面が相当出てきはせぬか、そういうことになってはいかぬ、こういうお考えがあるかもしれませんが、繭の生産者のほうにしてみれば、それは政府が買おうと商人が買おうと、引き合う価格で買ってもらえれば、それで生産者は安定してくるわけです。ただ問題は、そんな値をきめて売れるか売れぬかという問題が常に起こってくるわけです。そういう価格を設定して売れるか売れぬかということですが、これは先ほども言うとおり、最低を五千円、一俵三十万円、こういう値を設定して、これ以下には下がらぬのだということになれば、これは決して売れなくはなくて、その安定した生糸を安心して使おうという需要というものが、ここではほんとうに展開されるのではないか、このように思うわけです。  三十三年のときに、私、ちょうどあの暴落のあと、アメリカに行く機会を得ました。あのときは最低価格が十九万円でした。われわれがアメリカへ行っているときに、十七万五千円に浜糸が下がっておったのです。なるほど一万五千円最低価格より安い。安いから買うと諸君は思うだろうけれども、われわれは買わぬ、なぜかというと、なるほど十七万五千円は安いけれども、あすは十六万円にならぬという保障はどこにもない、これでは何にもならぬではないか、だから、十九万円以下には一歩も下がらぬのだという保障があれば、どんどん買い進みます。こう言っておる。こういう点をむしろこちらから当局に理解していただきたい。こういうことを申し上げたいのですが、この辺の価格観というものはどうでしょうか。
  112. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 使うほうが工業関係でございますので、原料についてあしたまた下がるかもしれない、変わるかもしれないということで、価格水準もさることながら、やはり底値がしっかりするということが大事だと思うのでございます。そういう意味で、今度の措置も、その点を多少重要視いたしまして、そういうことで低迷しておりますのを時間的にもっと早くはっきりさせたいということで、ああいうラインを引いたわけであります。ただ、価格水準につきましては、これはもうたびたび恥をかいておりますが、数年前にはこれはたいへんな価格だと思ったものが、それよりあとでもちゃんと売れているということもありますので、たとえば何千円でなければいかぬというのは、軽々には言えぬと思います。ただ、ことしに限って多少そこにこだわっておりますのは、やはり昨年の六月のような事態なかりせば、当然今日三十万以上で内外とも十分売れていると私は確信するわけでございます。やりました結果、非常に影響が多うございまして、機屋も相当変わったりしておりますし、そういうことで、いま一ぺんに立ち上がれない。したがって、ステップを多少踏まないとあぶないというだけのことでございまして、そこをしんぼうすれば、あとは、価格自体は必ずしもこれでなければならぬというものではなくて、ステップさえ誤らなければ、十分実需がついてくる、そういうふうに考えております。
  113. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 そこで、価格形成の問題なんですが、制度的には最高、最低価格をきめてもらいました。しかし、具体的な価格形成は、今日清算市場を中心に行なわれておる。しかも、その清算市場に昨年の六月にはああいう大暴騰が起こった、こういうことですが、あの清算市場の形成する価格というものが、実需と密着して、実勢を反映して価格形成をやっているかどうかということに対する見解をひとつお伺いいたしたいと思います。
  114. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 これはあるべき形の取引所と、それから現実の取引所を分けてやらざるを得ないと思います。ただ、経過から申しますと、非常なつらい経験でございましたが、三十三年、三十四年のあの底から数年間棒上げに上げて、昨年の暴騰——三十七年にも一回暴騰がございましたが、そのような水準の訂正の過程におきましては、確かに取引所は、ああいういわば広い価格形成の場がございましたことが、外国の圧力にも抗して、日本側におきます価格水準の自主的な訂正に相当意味があったと思うのでございます。それからまた、これはもう釈迦に説法で恐縮でございますけれども、ああいう一ぺんに原料をとらなければならない産業といたしましては、これをヘッジする機関が当然要るわけでございまして、さような意味の役割りを果たしてまいりましたし、その場合において、少なくとも蚕糸関係者だけでなく、その他の要素が、場違いが入ってという、いろいろな批判もございますけれども、さような参加があって、初めてヘッジが可能であるというふうに思うのでございます。ただ、いかにも残念なことは、しかるべきブレーキが、まことに私どもの行政の怠りで、ついておりませんでしたために非常な間違いを犯したわけでございますが、それさえつけて調整していきますならば、やはり現在の段階におきましては、あのような一般的な、広い意味の価格形成の場があってよろしいはずだと思うわけでございます。  ただ、現実の運用におきまして、糸価が形成されます場合、どちらかと申しますと、あれは結果が映るところでございまして、糸価のほんとうの形成の基礎になる製糸家の糸の売り方なり、あるいはそれからあとの段階が十分調整されておりませんために、そういうことが隘路になりまして、非常に大きな価格変動になって現実にあらわれる要素を蚕糸業の中に持っておりましたので、そのために取引所が若干行き過ぎたような形に見えるのではないかというふうに思っております。
  115. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 そこで、私は取引所についてはまるでしろうとなんですが、清算取引がなくて、実物取引だけで、生糸の価格形成というものがはたしてできないものかどうかということについての見解はいかがですか。
  116. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 現在の段階では非常に困難だと思います。これは昨日も建て値制の問題が出たわけでございます。合化繊のような、ああいう形の、非常に企業体が少なくて、独占ないし寡占の体系が、本来の形としてできておりますならば、これはあるいは取引所の必要なくしてできるかとも思いますけれども、そういう寡占的な状態でもございませんし、それから原料関係がああいう形で非常に農産物と結びついておりまして、そういう変動もございますし、一時に大量に処理しなければならぬというようなことになりますと、やはり本来のそういう価格変動をカバーする機関がないと、現実の価格形成そのものもできないのではないかというふうに思うわけであります。
  117. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 いま一つしつこく聞いておきますが、他にいろいろ方法があって、清算市場は閉鎖したほうが日本の蚕糸業を安定して伸展させていくためにいいんだという方向が出たら、度胸よく清算市場をやるくらいの決意は持てますか。どうです。
  118. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 そのようなことが可能になりますのは、つまり、生産が完全に組織化された場合ということでございまして、そういう場合には、むしろ度胸と申しますより、必要がなくなるわけでございます。ただ、いまの段階ではそれはちょっと考えられないように思っております。
  119. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 まあ、これは私も勉強が足りませんから、ここで局長をこってりとやっつけるだけの知識がございませんので、話を変えてやりますが、昨年六月のときに、当局として打つ前提の手が打ってなかったので、手をこまねいて見送るよりはかなかったというが、打つ手が打ってなかったという、その打つ手というのは何だったのですか。
  120. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 二つございまして、製糸家に対して、生糸の売り方についてしかるべき指導をしておらなかったという問題が一つと、もう一つは、取引所自体につきまして、ああいう異常な事態、つまり、現物と清算が非常に離れるような、そういう保険つなぎの作用という、本来のレーゾンデートルがなくなるような事態になって、自動的にそういうものがチェックされるような措置が確実に打ってなかったという点でございます。もちろん、私の就任する前に、そういうようなお話を、取引所当事者に対して、相当強く局として要請しておったわけでございます。事務的にそれが必ずしも熟さないうちにあの事態になりましたために、取引所自体が、そういう暴騰に対しまして自動的にチェックが動き出すという態勢になっておらなかったわけでございます。
  121. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 これは三十三年に暴落をし、政府が下値をきめておるにもかかわらず、下値を割っていったときにも議論したのですが、繭糸価格安定法で、最高値、最低値をこえて売買契約をした場合には処罰云々という規定がございますね。これは現実の実物の取引にのみ適用するのですか、ああいう清算取引の場には何ともする方法がないのですか、この点はどうなんです。
  122. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 これは現物、清算ともに問題になるわけでございますが、ただ、現実に禁止価格そのものが実効を持ち得るかどうか、むしろ、その前の措置がどの程度できているかによってきまるのではないかというふうに思います。
  123. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 これは法によると、政令で云々というので、こういう政令は、政令としてできておるわけですか。
  124. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 政令もございますけれども、繰り返し申しますように、他の分野でそういうような価格統制が行なわれていないのに、しかも産業自体にこの価格形成は非常な欠点がございますので、単に一片の法令で禁止価格を守らせるということが事実上できないために、発動がちゅうちょされたわけでございます。
  125. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 実は大澤君の局長時代ですか、臨時措置で買った五十万俵を十八万円で売るという問題のときに、両清算市場が停止したことがございますね。したがって、繭糸価格安定法で上値、下値が法律によってぴったりきまっておるのに、その上下で堂々と取引が行なわれておるものを、どうも実効があるからないからといって、これに手をこまねいていていいんですか。実際からいえば、金があるだけ下値は買う、現物をもって上値を押える、これが経済行為として上値、下値を守っていく正道であろうと思います。しかし、現実には上値は現物がないですから、これを行政措置で押えるほかしようがないと思うのです。しかも、清算市場で最高値をはるかかなたで飛しょうしておるのに、あれよあれよと見ておる。これはどうも行政としてはおかしいのであって、そういう取引をやるところは停止をする、このくらいの行政措置がなぜできないのですか。
  126. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 これは商品の性質にもよると思うのでございます。ああいう種類の需要を持った商品でございますので、一定価格、非常な狭い幅の中に入れなければいけないかどうかという問題が一つございます。それから事実また相当な幅で需要がふえまして、しかも実需がついて水準を定着いたしておるという過程にございますので、かりにこれを最高、最低でそれを越えたら、たとえば禁止してしまうという方法をとるといたしますと、たとえば上値は望ましい価格よりももっと相当上のほうにでも置いておきませんと、それを越えたら禁止だというような措置は、少し強過ぎるのではないかと思うのでございます。したがって、さようなことが法制には理論上出ておりますけれども、私どもの行政の運用といたしましては、先ほども繰り返し申しますように、生糸の変動の今日までの原因のほうにメスを入れないで、むしろ結果だけ追い回しておったような感じがいたすわけでございます。原因のほうに深入りすることは、非常に困難ではございますけれでも、私といたしましては、原因のほうに少しでも肉薄いたしまして、その範囲内で今度はそこがある程度除ければ、場合によりますと、たとえば上下の幅ももう少し狭いものにし得るのではないか、またそれを越えた場合のペナルティにつきましても、あるいは禁止価格というかっこうではなくて、もっと経済的なそれをチェックする方法があるのではないかというふうに思います。どうもいまのところ、その原因のほうが全く手がついておりませんでしたので、いきなりその結果を追う手段を、しかもそれを強めていくということに、若干疑問があってちゅうちょしておるのであります。
  127. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 あの昨年の六月の暴騰が、実勢に応じて起こってきた暴騰ならば、それはそういう議論もされていいと思うのです。そうしてまた、実勢に応ずるならば、ああいう暴騰が起こるはずはないと思うのですよ。また、実勢に応ずれば応ずるで、その間何とか手を打つ方法もあると思います。あれはまさにギャンブルの典型的なものだと思うのです。そうしたギャンブルをする仕手を守るために、法でちゃんときまっておるものを見送る方法はないと思う。堂々とやってのけていいのですよ。
  128. 久宗政府委員(久宗高)

    ○久宗政府委員 あの六月の事態が、事前の準備も十分でなくてできなかったことは、非常に遺憾に思います。責任を感じておるわけであります。ただ、あの場合、もし禁止価格を発動し、あるいはもっと強烈な手段として取引所を停止いたしました場合に、これは往々にして起こることでございますが、そういう準備なしに、ある具体的に進行しております取引をとめました場合には、むしろ事の次第から見れば、罰せられると申しますか、いけないほうが、むしろ有利な形になってしまうのが往々ございます。おそらくあの場合におきましても、むしろああいうものを防ごうとした力が、それによって阻害される、ああいう暴騰を激成した側が、その停止措置によってむしろ利益するという結果になったと思われるわけでございます。これは、その後、秋でございましたか、他の取引所で問題が起こりました場合のある措置がとられた結果から検証いたしましても、全くそういうことではなかったかと思います。
  129. 栗原委員(栗原俊夫)

    栗原委員 それはあそこまで行ってしまった玉の取り組みの姿を見ると、そういうことになるかもしれません。しかし、問題は、最高、最低価格をきめた以上は、たとえ清算市場においても、これを乗り越えてはならないのだという厳とした姿があるならば、ああいうべらぼうなことは出ないと思います。したがって、今度いろいろと手を通じて、ああしたことがにわかには起これぬような段取りはしたように聞いておりますけれども、いまのような繭糸価格安定法の行使について柔弱なる態度をとっておると、何らかの方法でまたやってきますよ。そうではなくて、たとえ取引所で形成される値段であっても、最高、最低価格を越えてはならぬのだという厳たる態度をやはり示すことが、私は大事だと思うのですよ。そうしてまた、そのことが、蚕糸業全体を守っていく重大なところである。こういう立場に立って、私は、でき得ればそうした清算市場などというものをストップしても、りっぱな価格形成のできる手段方法を考えていただきたいし、そうしてまた、最低価格についても、いわゆる原価の何割下ということではなくて、原価で最低価格を構成して、これ以外には売らないのだというような、生糸に対するプライドというか、一つの自信を持った蚕糸業政策というものをぜひ築き上げていただきたい、このように心からお願いして、私の質問を終わります。
  130. 高見委員長(高見三郎)

    高見委員長 次会は明十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会