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1964-03-17 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)     午後零時九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    大石 武一君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       久保田円次君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤田 義光君    亘  四郎君       角屋堅次郎君    東海林 稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       野口 忠夫君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  久宗  高君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     —————————————  委員内藤隆君、三池信君及び楢崎弥之助辞任  につき、その補欠として久保田円次君、伊東隆  治君及び高田富之君が議長の指名委員に選任  された。 同日  委員久保田円次君及び高田富之辞任につき、  その補欠として内藤隆君及び楢崎弥之助君が議  長の指名委員に選任された。 三月十三日  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四九号)(参議院送付)  林業信用基金法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)(参議院送付) 同月十六日  国内産牛乳による学校給食制度法制化に関す  る請願外六件(木部佳昭紹介)(第一二六一  号)  同外一件(山田彌一紹介)(第一二六二号)  同外七件(大石八治君紹介)(第一二九〇号)  同外十八件(高見三郎紹介)(第一三四一  号)  同外二十二件(竹山祐太郎紹介)(第一三四  二号)  同外二件(久保田豊紹介)(第一四一八号)  同(神田博紹介)(第一四八二号)  同外一件(藤尾正行紹介)(第一四八三号)  同外三件(渡辺美智雄紹介)(第一四八四  号)  糖価引き下げに関する請願(西尾末廣君紹介)  (第一二九一号)  繭糸価格安定対策に関する請願井出一太郎君  紹介)(第一三〇〇号)  国有林野解放特別法早期制定に関する請願外  五件(伊東正義紹介)(第一三六七号)  肥料二法期限満了後の措置に関する請願外二件  (足鹿覺紹介)(第一五五一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八三号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八六号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)  林業信用基金法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)(参議院送付)  農林水産業振興に関する件(乳価及び繭糸価  格問題)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  いずれも内閣提出にかかる農業改良資金助成法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案、右三案を議題といたします。  これにて三案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  3. 高見三郎

    高見委員長 この際、稲富稜人君外一名並びに湯山勇君外三名より、それぞれ農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する修正案提出されております。
  4. 高見三郎

    高見委員長 順次趣旨説明を求めます。稲富稜人君
  5. 稲富稜人

    稲富委員 この際、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する修正動議提出いたします。  その案文を朗読いたします。   農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第九条に一項を加える改正規定中「総裁を通じて」を削る。  その理由は、現在の監事の機能を十分発揮することによりまして、監事責任体制を持たせ、公庫運営の目的を十分達成せしめたい、かような趣旨でございますので、何とぞ御賛成をお願いしたいと思う次第でございます。
  6. 高見三郎

  7. 湯山勇

    湯山委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対して、修正案提案いたします。  まず案文を朗読いたします。   農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第四条の改正規定を次のように改める。   第四条第一項中「千二百二十二億七百万円」を「千五百二十七億七百万円」に改める。   第九条に一項を加える改正規定中「総裁を通じて」を削る。  以上でございます。  簡単に修正案趣旨を申し上げます。  今回農林漁業金融公庫法の一部を改正する要点の一つは、従来政府からの出資増額されるたびにこれを法律によって改正していく、こういうたてまえをとっておりました。今回の改正では、今後予算措置がなされた場合には、その予算の範囲内において法改正を必要としないで出資増額が認められていく、こういうことになっているわけでございます。これは明らかに審議権の軽視でございまして、それでなくとも、とかく国会における審議権というものは狭められていく傾向にございました。特にこの法律においてこういう措置をとられるということは、私どもとしてはどうしても了解できないところでございます。  さらに、このことについて申し上げますならば、金融公庫法は、従来毎年出資増額が行なわれておりまして、その法案審議にあたっては、そのつど重要な附帯決議がなされております。法案提出されるたびに附帯決議がなされるということは、この法律運営あるいはこれに対して出される出資、それらについて、まだまだ農民要望審議過程における不備、そういうものが顕著に出ておるのでございまして、今後もし予算措置だけでこの法律が直接議題にならないということになりますと、附帯決議等を通じて改善されてきたこの資金の今日までの発展が、場合によっては中断されるのではないか、こういうことも心配されるわけでございます。まして、他の公庫と違って、たとえば地方公営企業等関係ならば二十数億でございますけれども、しかし、農林漁業金融公庫については、来年度も一挙に三百億をこえる出資がなされている。こういう大きな額を、ただ単に予算措置だけでやってよいかどうか。額の多い少ないよりも、国会審議を軽視するというところに大きな問題がありますけれども、額の上から見ても、この農林漁業金融公庫出資を、これを国会の議を経ないで単に予算措置だけでやる、こういうやり方には私どもは絶対承服できないところでございます。  なおまた、このことに関連いたしまして、条文の不備な点も四条一項にはございますけれども、これは後日に譲ることといたしまして、この修正案によって、修正案に出ております二項、三項、四項の一部改正、これらは全部削除されて、従来どおりの項目が残って、金額の点が千五百二十七億七百万円に修正される、こういうのが第一項の修正趣旨でございます。  次に、第二項につきまして申し上げます。第九条に一項を加える改正規定中「総裁を通して」を削る問題でございますが、これにつきましては、従来規定がなかったために明確でなかった、これを明確にするということで出されたのでございますけれども、明確にすることによって、総裁を通じなければならない、つまり、従来の権限が限定される、こういうことさえも考えられるのでありまして、これを削除して、監事の当然の役目として直接主務大臣意見提出する、当然だと思うわけでございます。これにつきましては、政府のほうもそのとおりだとわれわれの主張をお認めになっておられますので、こまかい説明は省略いたします。  なお、修正案の中にはございませんけれども審議過程を通じて明らかになりましたことは、農林金融改善していく、拡大していく、こういう政府の基本的な方針でありながら、名目的なものもあるにしても、実際金利引き上げになっておるものが幾つかございます。こういうことは、将来を見通しての体制の上から申しましても、金融のあり方から言っても、決して望ましいことではございません。ただ便宜上ランクをそこに入れるために金利め引き上げのような形をとったわけであるという説明ではありましても、それではとうてい納得ができないのでありまして、将来安くしていく、農林金融というものは、他の金融と違って長期低利原則でございまして、その大原則に反する改正は、たとえ実質が見送られておっても、承服できないところでございます。しかしながら、この点につきましては、いろいろ審議過程において御協議されまして、それについてさらに強力な対策をお立てになるということを承りましたので、その分の提案は省略をいたしまして、そのほうに譲りたいと思います。  以上の二点は、お互い議会を尊重するものの立場において、そしてまた、この公庫が正しく運営されていくために、どうか皆さん方全員の御賛成を切にお願い申し上げます。  これで修正案趣旨説明を終わります。
  8. 高見三郎

    高見委員長 以上で両修正案趣旨説明は終わりました。  両修正案に対する質疑もないようであります。     —————————————
  9. 高見三郎

    高見委員長 これより農業改良資金助成法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案並びにこれに対する稲富稜人君外一名提出修正案及び湯山勇君外三名提出修正案並び北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して討論に入るのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  これより採決に入ります。  まず、農業改良資金助成法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立
  10. 高見三郎

    高見委員長 起立多数。よって、本案原案の通り可決いたしました。  次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案並び本案に対する稲富稜人君外一名提出修正案及び湯山勇君外三名提出修正案について採決いたします。  この際、念のために申し上げておきます。稲富稜人君外一名提出修正案湯山勇君外三名提出修正案中、「第九条に一項を加える改正規定中「総裁を通じて」を削る」の部分は、その内容が全く共通であります。  採決の順序について申し上げます。まず両修正案共通部分について採決し、次に共通部分を除く湯山勇君外三名提出修正案について採決を行ない、最後に原案について採決することといたします。  それでは順次採決いたします。  まず、稲富稜人君外一名提出修正案及び湯山勇君外三名提出修正案中、右に共通する部分について採決いたします。  これに賛成諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立
  11. 高見三郎

    高見委員長 起立多数。よって、共通部分は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました共通部分を除く湯山勇君外三名の修正案について採決いたします。  これに賛成諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立
  12. 高見三郎

    高見委員長 起立少数。よって、共通部分を除く湯山勇君外三名の修正案は否決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正案修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  13. 高見三郎

    高見委員長 起立多数。よって、本案修正議決いたしました。  次に、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立
  14. 高見三郎

    高見委員長 起立多数。よって、本案原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  15. 高見三郎

    高見委員長 この際、坂田英一君外二名から、ただいま議決いたしました農業改良資金助成法の一部を改正する法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  順次趣旨弁明を許します。足鹿覺君。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を、自由民主党日本社会党民主社会党三党を代表して、提案をいたします。  案文を朗読いたします。    農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、農山漁村生活近代化を促進するため、特に農山漁家に対する住宅資金については、住宅金融公庫農山漁家向け貸付枠をさらに拡大するとともに、農家生活改善資金において住宅改良資金貸付対象貸付枠等を一層拡充する等積極的綜合的施策を講ずべきである。   右決議する。  以上でありまして、趣旨に対しましては、案文に記載したとおりで、別に蛇足を加える必要はないと思いますので、省略いたします。
  17. 高見三郎

  18. 坂田英一

    坂田(英)委員 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に関する附帯決議について、自由民主党日本社会党民主社会党の三党共同による附帯決議提案をいたしたいと存じます。  まず、案文を朗読いたします。    農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近の農業政策における金融の果す役割の増大に鑑み、政府長期低利資金がより円滑かつ潤沢に農林漁業者に供給されるよう審議会等において各種制度金融及び系統金融に綜合的且つ根本的な検討を加えその結果にもとづき適切な措置を講ずべきである。   なほ、当面の措置として農業政策綜合施策を強力に実施し得るよう左の諸点に留意し制度金融の拡充、系統資金源の活用に留意すると共に実施に当っては、貸付条件の緩和をはかり農民負担の軽減に努めるべきである。      記  1 政府は、農林漁業近代化に必要な長期低利資金が計画的かつ十分に確保できるよう、今後とも公庫に対する政府出資を大巾に増額するためこれに必要な予算措置を講ずること。  2 政府は、農林漁業金融公庫融資制度につき、今後さらに改善を図るものとし、改正法律案において当分の間五分五厘とされている果樹、畜産沿岸漁船等経営拡大関係資金及び土地改良、造林、漁港、電気導入等生産基盤整備関係資金金利は速かに五分以内に引下げるよう措置すること。    その他経営維持安定資金についても金利等貸付条件改善に努めること。  3 政府は、農林漁業経営の現段階に鑑み、自作農維持資金取得資金と同様の金利貸付限度額等貸付条件改善資金量の確保の措置を講ずること。  4 政府は、開拓者旧債処理について一層努力し、必要な抜本的措置を講ずること。  5 政府は、流通施設近代化農林漁業生産に与える影響が大きいことに鑑み、農林水産物流通近代化施設例えば農協市場施設等に対する金融措置を講ずること。  6 政府は、公庫資金に関する貸付手続簡素化に一層努力すると共に貸付後の営農指導に万全を期すること。   右決議する。  以上のようなことでございまして、特別の説明を申し上げなくともおわかりのことと存じます。何とぞ御賛同をお願いいたします。
  19. 高見三郎

    高見委員長 坂田英一君外二名提出動議について採決いたします。  坂田君外二名提出動議のとおり、両案にそれぞれ附帯決議を付するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  20. 高見三郎

    高見委員長 起立多数。よって、さように決しました。  ただいまの附帯決議について、政府の所信を求めます。丹羽農林政務次官
  21. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議でございますが、政府といたしましては、決議の御趣旨に沿って今後一そう努力してまいりたいと存じます。なお、このたびの農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案審議過程におきましては、農林漁業金融の重要な諸点にわたり御意見を伺うことができ、政府といたしましても、これに対し見解を表明してまいったところでありますが、さらに今回は同法案について附帯決議をいただきましたので、今後、御決議にありますように、農林漁業金融問題点につきましては、基本的な角度から慎重に検討し、でき得る限り御趣旨に沿うよう努力いたしたいと存じます。
  22. 高見三郎

    高見委員長 なお、ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  24. 高見三郎

    高見委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  25. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  いずれも内閣提出にかかる保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案及び林業信用基金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  26. 高見三郎

    高見委員長 林業信用基金法の一部を改正する法律案について、提案理由説明を聴取することにいたします。丹羽政務次官
  27. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま議題となりました林業信用基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  御承知のように、林業信用基金は、林業生産増大、その生産性の向上、木材の需給と価格安定等に資するための施策の一環として林業金融円滑化をはかるため、さきの第四十三通常国会において成立し、昨年六月二十七日から施行せられました林業信用基金法に基づいて、同年十月一日設立された林業金融債務保証機関であります。  その業務は、林業者等木材等林産物生産に要する資金種苗等林業生産に必要な資材の共同購入に要する資金等林業経営改善に資する資金民間融資機関から借り受ける場合に、その借り入れにかかる債務保証をすることでありまして、これによりまして林業者等受信力を強化し、林業経営に必要な資金の円滑な導入をはかろうとするものであります。このため、本制度利用者である林業者等のほか、政府及び都道府県基金に掛資することといたし、政府基金設立の際、初年度において想定いたしました基金総額の半額に当たる三億五千万円の出資を行なうことといたしたものであります。  木基金設立につきましては、法律規定に基づき任命せられました設立委員によりまして、基金の定款と基金業務運営基本的事項について定めた業務方法書とが作成され、これを広く出資資格者に示して出資の募集が行なわれたのでありますが、その結果は、民間林業者等出資は当初の目標を大幅に上回る四億五千四百万円余に達するという好調さであったのであります。  設立当時におきまするこのように順調な出資の状況は、民間林業者の方々の木基金制度に対する期待がきわめて大きいことを示すものと考えられるのでありまして、政府においても債務保証基金となる出資増加をはかりますとともに、今後における基金保証業務量増大に対応いたしまして業務運営円滑化をはかるため、基金業務執行体制を整備することとし、この法律案提出することといたしたのであります。  次に、この法律案内容でございますが、第一は、基金に対する政府追加出資規定を設けることといたしております。さきに申し上げました基金に対する出資増加のため、政府は本年度に引き続きさらに三億五千万円を基金出資することとして昭和三十九年度予算に計上しているのでありますが、これに対応いたしまして基金に対する政府追加出資についての規定を整備いたしたものであります。  第二は、基金の常勤の理事の定数を一人増加して二人以内とし、今後ますます増加する業務について分担執行体制を整えることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  28. 高見三郎

    高見委員長 両案に対する質疑は、都合により後日に譲ります。      ————◇—————
  29. 高見三郎

    高見委員長 農林水産業振興に関する件について調査を行ないます。  主として畜産蚕糸関係について質疑通告があります。順次これを許します。中澤茂一君。
  30. 中澤茂一

    中澤委員 御承知のように、昨年十月に、乳業会社が一方的に乳価値下げ通告を略農民に出したことから、問題が紛糾して、十一県で紛争を起こし、そのうちの三県が中央調停へ持ち込んで、何か仄聞すると、十数回の調停委員会東畑君を中心に開かれているそうですか、その経過について、一応畜産局長から説明をひとつ。
  31. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ただいま中澤先生から御質問がございました乳価紛争並びに調停の経緯について、概略を御説明申し上げたいと思います。  お話のように、昨年十月一日以降の生乳取り引きに関しまして、いわゆる四大メーカーをはじめといたしまして、中小乳業者におきましても、ほとんど同様に、十月以降の生乳価について一・八七五キロリットル当たり二円の引き下げ通告をいたしたことに端を発しまして、生乳取り引きに関する紛争が起こったのでございます。その生乳取引に関します価格条件の不一致というような点で、乳業者生産者団体等との間に折衝が行なわれたのでございますが、双方の意見の一致を見ない、あるいは妥結をしないというようなことで、都道府県知事調停またはあっせん申し出がありました件数が十二道県あったわけでございます。その後、道県知事のもとにおきましてあっせんないし調停努力が重ねられたのでございますが、中にはその後妥結に至った県もございますけれども東北の三県並びに群馬の一県、合計四県につきましては、中央調停申し出都道府県知事から出してまいったのでございます。本年の二月初めに、大体ただいま申し上げました青森、岩手、秋田の東北三県及び群馬のある乳業会社と、それから出荷団体との間の紛争について、中央調停申し出がございまして、その後、第一回の中央生乳取引調停審議会による調停が二月十一日に開始をされまして、その後、乳業者及び生産者団体からの事情の聴取、意見開陳等を聞くための会合、あるいは個別の調停のための折衝と申しますか、話し合い、そういうものを含めまして前後二十回に近い回数の調停努力が重ねられてまいったのでございます。調停委員は、お話に出ました東畑四郎氏、大月高氏、長谷川清氏、この王氏を農林大臣から指名をいたして、調停を委嘱いたしておるわけでございますが、ほぼ一カ月を越す間の調停委員努力にもかかわりませず、今日までのところ、乳業者農業団体との間に調停が成立するという機運が起こってまいりません。それは、主として、乳業者が十月以降の乳価について復元等農民団体要望に応じる余地がないという、かなり強硬な態度のために、調停成立機運まで達していないというのが現状の段階でございます。
  32. 中澤茂一

    中澤委員 その調停審議会に持ち込む前に、政府は一体いかなる処置で対処したのか、それをまず明らかにしていただきたい。
  33. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 当事者から調停が申し立てられましたのは、まず都道府県知事に対してあっせんまたは調停申し出があったのでございますが、それに先立ちまして、農林省といたしましては、八月の終わりに、乳業者に対して、十月一日以降の乳価について一升二円の引き下げを行なうということについては、生乳の取引関係に混乱を生ずるので、適当でないという考え方から、乳価引き下げ通告については慎重を期してもらいたいという要請を、当時の畜産局長からいたしたのでございますが、当時の乳製品の市況等から、この引き下げ通告を撤回することはできないという乳業者の態度は変わらなかったのでございます。その後、都道府県調停あっせん等が始まるにつきましては、私どもとしましても、都道府県知事あっせん調停努力が成功を得られるように、中央としてもこれに協力する必要があるわけでございますので、私どもとしましても、主として中央に事務所を持っております四大メーカーの首脳部に数度にわたりまして面接を求めまして、地方におけるあっせん調停の円満な解決ということについての要請をいたしたのであります。また、農林大臣みずからも四社の代表に会いまして、今後の酪農の健全な発達に協力をしてもらうというたてまえから、この乳価紛争の円満な解決について、乳業者側の理解ある態度をもって善処されんことを望むということを強く求めたのでございますが、その結果につきましては、ただいま経過で申し上げましたように、乳業者乳価復元に対する態度というものは、変わらなかったということで、そういう結果にありますことは、私どもはなはだ遺憾に思っている次第であります。
  34. 中澤茂一

    中澤委員 一体、少なくとも政府農業政策の基本的な方向である畜産の、しかもその大宗の酪農問題を、単に円満なあっせん調停乳業会社に要請した、そんななまぬるいことで、この問題が解決つくとお考えなのかどうか。かつて、あの四年前の大暴落のとき、いろいろ乳価問題について、御承知のように、農民の要求を入れるためには、政府がそれ相当の処置をして、昨年の復元工作でも、買い上げ措置をとらしてやった。しかも、国会でそれをわれわれが問題にしなければ政府はやらない。一体そういう消極的態度でいいのか、もっと政府は八月の申し入れを受けたとき、打つ手があったのじゃないか、その点については、一体どのような考え方で臨んでいたのでしょうか。
  35. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 乳価紛争につきましては、当事者間の理解に基づく合意というものがなければ解決はいたさないわけでありますが、そのような条件をつくりだすための農林省の努力は当然払うべきでありまして、農林省としましても、乳業者乳価引き下げの大きな理由といたしておりました、乳製品の市況が思わしくないということでございまして、事実、乳製品の市況は、バターを中心にいたしまして、畜産価格安定法に基づく安定下位価格というものを割る事態になっておりましたので、昨年十一月の末に乳製品の市況対策というものを決定いたしまして、最も市況の悪く、かつ、その回復についての見通しの乏しかったバターについての買い入れをすることを決定し、またそれで実行をいたし、現在まで約千二百トンぐらいになると思いますが、買い上げの実行をいたしてきておるのであります。同時に、当時すでに畜産振興事業団の手持ちになっておりましたバター六百トンを、価格引き下げることによって学校給食の用途に振り向けるということで、乳製品の在庫の市況に対する圧迫を除くということを決定いたし、これも現在学校給食に振り向けるための処分を継続して実行いたしておるのであります。またいま一つは、第三学期におきますなま乳の過剰傾向というものが察知をされましたので、当時予算上のワクとしては四万石のワクが残っておったにすぎなかったのでありますが、これを財政資金的な措置を講じまして、七万石のワクの増大をはかりました。合計、三学期のなま乳の学校給食量十一万石に増大するというような措置をとって、乳価紛争の原因の一つとなりました乳製品の市況の回復措置ということにつとめた次第でございます。
  36. 中澤茂一

    中澤委員 一体、どう考えてもわれわれはおかしいと思う。畜産事業団の設立にしろ、そういうことはすべて、いままでの国会審議過程においても、乳価の安定をはかるというのが目的でつくられた。しかも、いま聞けば、千二百トンのバター買い入れを現実に行なっておる。しからば、滞貨製品の買い上げを行なってやる、そのかわり値下げはまかりならぬ、一体なぜこういう措置がとれないのか。去年も復元のとき、御承知のように、政治問題にして、農林委員会でさんざん議論した結果、買い上げ措置をとるから復元しろ、こういう条件で去年も復元したのは、御承知のとおりなんです。買い上げ措置はとってやる、乳価のほうは値下げしたまま、政府は行政干渉できない。それならば、一体畜産事業団などをつくった意義はどこにあるのか。少なくとも事業団をつくった意義というものは、そういう乳価を値下げしない、その場合はメーカーのめんどうは国で見ましょう、そのかわり、農民乳価に対しては保護してやろうというのが、根本的な考え方じゃないですか。買い上げ措置はとってやった、復元は一つも要求しない、行政干渉はしない、それでは、まさにメーカーの救済機関ではないですか。われわれはそういう意味で畜産事業団というものを了承したのでもなければ、そういう意味で社会党はあれに賛成しているのではないのです。そういう事態ができたときには買い上げてやる、そのかわり乳価の値下げはまかりならぬ、これだけの強行措置がなぜとれなかったのですか。
  37. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ただいまも申し上げましたように、乳製品の市況の回復措置をとりましたことは、生乳の取引に伴う紛争の解決に資するという考え方はもちろん持ちまして、実行いたしたわけでありますが、制度上は、これはもう中澤先生も御承知のことでありますが、乳製品の買い上げをいたします場合に、その対象となり得ないものは、畜産価格安定法に基づく基準価格以下で当時生乳を買い入れしたという乳業者に限るわけでございまして、したがって、制度的には、畜産価格安定法に基づく原料乳の基準価格以上の価格で買っておるものは、これは制度として買い入れることがたてまえであるということでありまして、したがって、そのことで直ちに乳価引き下げに関する制度上の干渉というようなことは、法律上及び制度上ないわけであります。もし基準価格を割って生乳を買い入れるというような場合については、これは畜産価格安定法に基づいて農林大臣の勧告権というものがあるわけでありまして、したがって、私どもは、当時すでに都道府県知事調停あっせんという制度上の手続が進行いたしておりましたので、政府の買い上げということが、その乳価引き下げの撤回ということを条件として持ち出すというようなことをいたさなかったのでございます。ただ、こういう措置によって、年が明けまして以降、乳製品の市況も回復をいたしておるという事実がございますので、そういう事実に立って、現在中央調停の衝に当たっておられます調停委員の諸氏において、この問題の解決に努力をしていただいておる。また同時に、私どもも、この調停の成立ということに、調停審議会の事務当局としても熱意を持って、必要な実務的な協力をいたしておるつもりでございます。
  38. 中澤茂一

    中澤委員 先ほどのあなたの答弁を聞けば、市況が悪化したために、値下げをするんだ、市況が価格安定法にきめられたものを割りそうになったから、買い上げをしたんだ、さっきあなたはこういう答弁をしているわけですけれども、それなら、そのときが当然条件じゃないですか。市況が割りそうになるから、政府としては買い上げ措置はとってやる、しかしながら、乳価値下げはまかりならぬ、当然これは行政干渉すべきじゃないですか。市況が割らなければ買い上げ措置はとれないというその立法上のたてまえは、われわれもわからぬわけじゃない。しかし、そこは政治的な判断で、当然政府が干渉すべき筋じゃないですか。買い上げだけはいつもやってやって、そしてあとは町となれ山となれということなら、これはメーカー保護のために一体畜産事業団というものはあるのかということに結論はなるじゃないですか。しかも、国の相当な援助をもって買い上げをしてやる、その買い上げをしてやるものが農民乳価のほうへしわ寄せされたのをわれ関せずえんで、買い上げだけしてやるなんということは、私は意味がないと思う。当然それは、市況がこのままでは割るぞ、割るから、いま政府は緊急にこういう措置をとって買い上げしてやろう、そのかわり、君らの乳価の値下げはまかりならぬぞ、どうしてこういう措置がとれないのですか。昨年、御承知のように復元のときも、本委員会で二日も三日も議論をして、最後は、重政農林大臣が、じゃ、こうなれば、ひとつ買い上げを条件にいたしまして、復元をさせましょう、こういうことで、政治的に本委員会でもってさんざんもみ上げてやったという経過があるわけです。昨年のあの経過から見たって、買い上げをするときは、当然あなた方は条件をつけるべきじゃないですか。乳価紛争のいまの調停審議会なんて、あんなものは幾らやったって何の価値があるか。あれは政府の一つの隠れみのではないですか。調停審議会をつくって、そっちにまかしたから、そっちの結論が出るのをおれのほうは待っているんだ——隠れみのじゃないですか。それじゃ、政府の言っておる、将来は畜産が日本の農業の選択的な方向であるということと、一体どういう関係になるのですか。  それといま一つ、大体アメリカからの余剰粉乳の買い入れ、これが大きな市況圧迫になっているのじゃないですか。このほうは無条件にのんでおいて、そうして、そういう大きな市況圧迫の材料を片方につくっておいて、乳価は値下げしてくる、そのまず基本的な問題から本腰を入れて取り組まぬと、毎年毎年秋と冬になれば必ずこれを繰り返しておる。これじゃ、政府が将来は畜産であるなどと言って、農民はもう窮地に追い詰められているから、どこかに脱出の方向を求めようと思って、一生懸命に酪農に力を入れているのに、こういう乳価の不安定な状態も一年に二回ずつ必ず値下げ、値上げをやっておる、こういう不安定な状態に置いて、一体いいのでしょうか。そういう点においてはほんとうは——農林大臣がきょう日韓問題でだめだそうですか、なすことを見ておると、価格問題に関する限りは、すべてこういう不安定な中に置いているから、全日本の農民は混迷をきわめておる。豚がいいというから、一生懸命豚を飼ったら、また豚が暴落してきちゃう。一体そういう不安定な体制の中に置いていいのかどうか。これはあなたを責めたってあまり価値はないかもしれぬが、少なくともあなたが局長で、丹羽政務次官や大臣には、こうしなければいけません、ここで本腰を入れてやりなさいという激励をする立場にあるじゃないですか。そのあなたが、買い上げはバターを千二百トンやりましたが、どうも乳価のほうの値下げはなかなか市況が悪くてなんて、あなたは別に乳業会社の代表じゃないはずでしょう。それならば、断固としてこの値下げはまかりならぬという政治的措置が大臣を通じて可能であったはずなんです。それをやらないで、そうして調停審議会にまかせまして——こんなものを何十回やったって、何百回やったって、結論が出ますか、出ませんよ。それは酪農振興法の中で、審議会に対しての一つの強制調停権限というものを立法上与えてあれば、結論が出ます。これは知事でも出ます。しかし、法律の中に強制調停権限というものがない以上、何百回やったって、心臓の強いほうがおれのほうはだめだと言っておれば、これはおしまいですよ。そういうところへ政府は逃げたという形じゃないですか。何かうわさに聞くと、東畑君や何かきょうあすごろ煮詰まってくるというふうに聞いておる。しかし、煮詰まってくるということは、ただメーカー側の意見を聞き、農民側の意見を聞き、そこで適当に、二円はいけないから、どうだ一円くらいというような話には落ちつかないでしょう。調停審議会が結論を出したら、乳業者も服従する、酪農民も服従するという基本的な強制権限というものがない限りは、こんなものを幾らつくったって同じことですよ。それならば、いまできるただ一つの道は、昨年の復元のときとったような、買い上げ措置はやってやろう、そのかわり値下げはまかりならぬ、こういう行政干渉以外に方法はないじゃないですか。どうですか。千二百トンも買い上げて、まだ依然として、乳業メーカーに撤回しろとかなんとかいう政府の意思表示というものは、やっているのですか、やっていないのですか。
  39. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 中澤先生お話でございますが、乳製品の買い上げを条件にして行政カンショウをするという「カンショウ」という文字は、私はすすめすすめるという「勧奨」という字だと存じますが、そういうことも方法としてはあり得ると存じます。ただ、現在の酪農振興法の制度に従いますれば、先ほども申し上げましたように、一方では価格安定法に基づく基準価格以上の価格で買っておるものについては、乳製品の市況の悪いときには買い出動をいたしまして、乳製品の価格安定をはかってやるという制度になっておりますし、また紛争が生じましたときには、都道府県知事あっせん調停制度を開き、さらに二県以上にまたがる紛争になるおそれがあるという場合には、中央調停という道が開かれ、その中央調停については、立法の趣旨からいいまして、おそらく公平な第三者の調停行為による双方の理解合意というものを得る道として考えられておる仕組みだろうと思うのであります。そういう制度に基いて、本年度の紛争問題は解決をいたしたいというスタートからの考え方でございましたので、調停あっせん等の行為を加えて、行政当局としてそのあっせん調停の成功のための協力なり、またそのための勧奨なりはしたつもりでございますが、価格問題についての条件に関する直接の勧奨という形をとらなかったのは、ただいま申し上げましたような、制度に基づく秩序のある紛争の解決をすすめたいという気持ちからであったわけであります。  なお、私は、事務当局として一言つけ加えさしていただきたいと思いますのは、調停審議会委員の諸氏は、きわめて熱意を持ってこの問題の解決に当たっておられるのでありまして、その調停に強制権限が付されてないということから、一刀両断的な解決を期待することが困難であるという点については、先生のおっしゃるとおりでございますが、現在もなお調停努力を重ねられておる段階でございまして、その調停が何らの益も期待できないものであるというふうには私どもは考えていないということだけ申し上げさしていただきたいと思います。
  40. 中澤茂一

    中澤委員 これは一刀両断にできないと言ったって、たとえばいま乳業会社がやっているのは、時間かせぎをやっているのです。こんなものは四月を過ぎてくればどんどん生乳でもって売れ出してくるのです。そこで、その間をごてごてごねておれば、大体四月になる。四月になると、また足らないという事態が出てくるから、そのときには値上げするのだ、そういう考え方でやっておるのですよ。そういうものを相手にして、それは東畑君や大月氏はみな熱意を持ってやっているかもしれぬが、熱意を持ってやっているというのは、乳業会社の作戦の時間かせぎに乗っかっているだけなんだ、われわれに言わしたら。だから、政府は、むしろ酪振法の改正案を出そうとしておるのだから、今度は思い切って、この中に強制調停権限を入れたらどうですか。入れて提案しなさい。一日で通してあげる。強制調停権限を入れなさい。それを入れなければ、乳価紛争というものは、こんなものは絶対解決しませんよ。そのかわり、政府は一方的にいじめるのじゃなくて、買い上げは十分めんどうを見てやろう、そのかわり、ここで一刀を抜いたときは、快刀乱麻を断つごとく決定するのだ、そこまでいかなければ何の意味がありますか。おそらく、いま一円か一円五十銭の復元の問題は必ず結論が出てくるでしょう。そのときは、今度は生乳が売れるときに出てくるのですよ。二十回やろうが三十回やろうが、向こうは時間かせぎにやっている。現に某乳業メーカーの某部長は、なあに、だんだんやっていれば、そのうちに、いまにあったかくなってくれば、飲む乳はうんと売れますから、それまでごてごてやっていればようごわすよ、こういうことを言っているじゃないですか。そういう作戦をやっているのじゃないですか。そういうものに対して、いつまでも農林省がいまのような形で、調停審議会にまかした、この結論が出ればどうにかなるでしょう、一生懸命やっています——一生懸命やっているのはわかっていますよ。一生懸命にやったって、きめ手は何も持っていないということだ。しからば、いまの乳価紛争のきめ手というのは何があるかといえば、買い上げをやっているから、値下げはまかりならぬ、これ以外にきめ手はないじゃないですか。「カンショウ」ということばがどうとかこうとか、あなたはくだらぬことを言っているが、ことばは介入だろうが勧奨だろうがチェックだろうが、何だっていいのですよ。問題は、そこまで腹をきめてやらないと、これだけ伸び始めてきた酪農が、再び頭打ちになって下降傾向をたどっていくということです。そうなってくれば、またあわてて、生乳の売れる時期になれば、値上げだ値上げだといって——その値上げも、基本的な問題として、ああいう奨励金という形でいいのかどうか。それは、政府の安定価格によるところの下値のきめ方があまりにも低過ぎるから、ああいう形が出る。そこも、われわれは生産費・所得補償方式でどこまでもこれはやるべきであるという主張を持っているが、一応それは後退するとしても、ここできめ手だけは決定しておかなければいかぬ。それについて、政府は酪振法の改正をこの国会に出そうとしておるのですが、その中に強制調停権限を一項入れる意思があって、酪振法改正のねらいをつけておるのかどうか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  41. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 酪振法の改正につきましては、できる限りこの国会提案をいたしたいということで、事務的な検討を進めておる段階でございますが、まだ最終の案にまで到達をいたし  ておりません。したがいまして、その内容について御説明を申し上げる時期でないのでございますが、調停に関して強制調停を考える意思があるかどうかということでございますが、事務的にもかなりの時間をかけて検討してまいりましたが、現在の酪農振興法全体のたてまえというものが、生乳に関しましては当事者の自由な取引というものを前提としての制度でありまして、その自由な取引について、最小限必要な秩序を保持し、あるいはその取引の公正化をはかるということが、法律の要旨になっておるように考えられるのでございまして、それ以上にわたりますことは、これは現在の酪農振興法の根本的な法律の体系からはみ出そうである。強制調停制度というのは、他に例がないわけではございませんが、これらは紛争当事者というものをこえて、第三者でありますとかあるいは一般的な公益に対する危害のおそれがあるというようなものに備えまして、強制調停規定があるように理解をしておるのでございます。そういう制度と、乳価紛争の問題を考えました場合に、おのずから紛争の性質も異なった点がありますし、また調停の結果は、経済的利害という問題、したがって、個人の権益の問題に直接触れる問題でございますので、強制調停の方法が全く考えられないとは思いません。これは、強制調停に伴うその他の一種の個人の権利侵害に対する救済方法というものを別途に考えるということが伴いますれば、私は必ずしも不可能とは思わないのでございますが、現在の酪農振興法の改正という私どもの考えておる範囲内では、強制調停規定を入れるというような気持ちは、現在のところ持っていないのでございます。
  42. 中澤茂一

    中澤委員 持っていないとすれば、どうやってその乳価紛争——またことしの秋、十月起きる問題だ。どうするのですか。何もそういうきめ手を持っていない。そういうことは酪振法で考えないというなら、ことしの十月また値下げをやるですよ。きまり切っているのだ。年中行事じゃないですか。またこの十月、二円なり三円なり値下げやったらどうするのですか。これはもう自由取引だからしかたない——しかし、いまあなたにこういう議論をしたってしようがないが、自由主義経済だって公益論があるし、自由主義経済であってもいまコントロールしてない国がどこにありますか、日本だけじゃないですか。どこだって自由主義経済の中でコントロール方式をとっているじゃないですか。それならば、政府ははっきりとイギリスの乳業政策のような価格差補給金政策をとるならとるで、われわれは、それも確かに一つの政策のあり方だから賛成しますよ。すなわち、六十五円なら六十五円という乳価をきめたもので、十円下がった場合は、十円は政府が酪農民に補給金を出します。こういう方式ならこういう方式もいいですよ。一体、酪振法を改正するといって何を改正するのですか。強制調停は公益上の点からまずい、それはやる意思はない。そうすれば、またこの十月に——いずれ復元するでしょう。復元というか、四月から乳業会社はやるということは内々相談しておるようですから、それはやるでしょうが、この十月にまた値下げするのです。要するに、冬季間の生乳の売れないときは、農民の牛小屋の中で価格調整して、乳業会社の利益だけは完全確保していくという体制じゃないですか。そういう体制を、公益上もあるから強制調停はできないとか、公益上じゃないからできないとか、そういう考え方で問題に取っ組んでいては、とんでもない間違いだと私は思う。アメリカであろうがどこであろうが、ニュー・ディール政策とか、要するに、資本主義、自由主義経済の弊害に対しては、政府が強権を持ってコントロールをどこの国でもやっておるじゃないですか。だから、価格差補給政策をとるなら価格差補給政策をはっきりとればいいのです。下がっただけは政府が補給金をイギリスのように出しますと、これならこれでいいです。そういう方式をとろうとするのか、強制調停権限はあなたはやる意思がないとするならば、価格差補給政策をはっきりと酪農振興法の中で打ち出すのか、支持価格よりか下がった場合は、その差額は政府が補給いたします。そういうことを酪振法で考えるのか、いずれなんですか。
  43. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現在私どもが考えて準備を進めつつあります酪農振興法の改正は、それほど根本的な価格の調整制度というものを考えて準備をいたしておるのではございません。現在の酪農振興法のたてまえの中で、欠陥のあります部分的な生乳取引関係規定の整備と、それから生乳の学童給食に対します計画化の政府としての政策宣言規定の程度を立法化いたしたいというのが、現在の準備を進めております骨子でございます。私は、毎年冬季間における生乳の取引について価格上の紛争が起こることは、決して好ましいこととは考えないのであります。考えないのでありますが、その問題の解決といいますか、そういう紛争状態をなくすることについては、取引の慣行自身についても、やはり乳業者及び生産者団体の間に、新しい慣行が成熟をしてくるというような、そういう経済的なものの考え方というものが、取引相互間に理解され、それが正しい慣行として行なわれるようになってくるということも、一つの解決される方向ではないだろうかというふうに思っておるのであります。ただ、酪農業の振興のために、現在の酪農振興法なりあるいは価格安定法なりが十全のものであるかどうかは、それぞれそのときの酪農の発展段階、あるいは乳業の状態、あるいは農産物に対する価格制度として全体の方向が、農民の所得対策というようなものの中で、この問題が検討され、また、それについての行政的な可能性なり効果なりというようなものが突き詰められて、検討が加えられていくべきであろうというふうに考えておるのであります。現在の段階において、こういう方向を決定的に考えているというような段階でないことは、はなはだ申し上げにくいことでございますが、そういうふうに考えております。
  44. 中澤茂一

    中澤委員 そうすると、いまのところは、ただ何でも調停審議会におまかせだ、げたは調停審議会に預けたのだ、こういうことになるのですか。一体調停審議会はいつ結論を出すのか、政府は期限つきで幾日までに出してくれという要請をしておるのか、それがまず一つです。  それから、いまあなたの言った需給調整という考え方、これは学校の生乳給食、特に冬期間の生乳の売れ行きが悪いとき、学校給食に回す、こういう考え方の計画化というものは、一つの需給調整の方式を考えているわけですが、しかし、そんな事態ではないと私は思うのです。やはりもっと強い政府の意思表示と態度がなければ、毎年毎年この問題の繰り返しはきまり切っていると思うのです。だから、そういう需給調整で、はたして、十月からの乳価値下げというものは絶対に阻止できます。こういうことをあなたは確信を持っているのかどうか。酪振法改正を出すというからには、確信を持っているのかどうか。計画化をやって学校給食をやるのだ、そうすれば、本年度の予算で決定している四十万石というものを四月までに完全に需給調整で調整し得る、こういう確信を持っているのかどうか、この二点をひとつ明らかにしていただきたい。
  45. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 学校給食につきましては、一面において需給調整といいますか、需要の増進という形で調整的機能を持つことは、私は否定できないと思いますが、本来の考え方としましては、今後の学校給食の方向は、長期にわたりわが国の生乳の需要の増進をはかり、かてて加えて学童の体位、保健の向上をはかるという見地から考えておるのでありまして、季節的需給調整というような問題について、学校給食を実行することで完全であるというふうには私ども考えておりません。したがいまして、学校給食による需給調整の機能によって、いわゆる十月以降の冬乳価の値下げが絶対に起こらないということが可能であるというふうには私ども思っておりません。これは一つは、その時期におきます需給事情等が取引価格に反映するというようなこともございますので、あらかじめ本年の十月は絶対に価格について変動はないだろうというようなことの見通しは困難だと思います。
  46. 中澤茂一

    中澤委員 いま第一点の、一体どういう条件で、どういうことで、調停審議会に一切をまかしてげたを預けてあるのか、それからいつまでに結論を出してもらいたいという、はっきりした政府側の意向を伝えて要請をしてやっておるのか、この二点の答弁が落ちておるということと、それからあなたのいまの答弁を聞いていると、——われわれは、乳価値下げを防ぐために——学校給食の予算というものを社会党も全力をあげて大蔵大臣に要請したのも、すなわち、需給調整によってまず防ぐことを考えなければいかぬじゃないかという基本的考え方からです。それならば、先ほどの答弁の中にあったように、計画化をして、学校給食をやっていくというのなら、当然十月以降三月までの六カ月間に四十万石を、原料乳地帯、生乳の売れない地帯では、それを計画的に完全に消化をしていくから、値下げさせないのだ、そこで需給調整をやって、需給の均衡をとらして値下げを防ぐのだ、こういうことでなければならぬ。ところが、それもできない。いわば強制調停権限もだめだ。価格差補給金も出しません。それでは一体何をやろうとしているのか。乳価紛争に対しては何もやることはないじゃないですか。そういうことでしょう。どれもだめだというのでしょう。そしてなおかつ、四十万石の学校給食に対しても自信がないというなら、一体何のことですか。それでは農林省畜産局なんていうものはなくたっていいでしょう。自由放任のいまのやり方です。力関係でやれ、それが自由主義経済だ、そういう基本的な考え方でいくのなら、一体何をやろうとしているのですか。私はちっともわけがわからぬ。やろうとしていないじゃないですか。どれもだめでしょう。強制調停権限は公益上だめだ、こういう御意見でしょう。それで、価格差補給金を英国のように出すのか、これもだめだ、こう言う。最後に、われわれもしかたがないから、唯一の方法として、冬期間の市況悪化に対して学校給食、すなわち、消費の増大をはかって、乳価値下げを防ごうという考え方で、われわれ社会党としても大蔵大臣にも会い、農林大臣にも暮に数回会って、学校給食の問題には全力をあげて予算組みをやったわけです。それも有効に使わないというのでは、一体何のためにやったのですか。これはあなたをあまり責めてもだめだが、農林大臣に言いたいことだが、全然何もやらないということでしょう。乳価が下がれば下がったで、自由主義だから、力関係でやったらいいでしょう、そういう考え方じゃないですか。それでは、もう乳価紛争に対しては、農林省というもの、政府というものは一切知らぬ、かってにおやりなさい、こういうこと以外に結論は何もないじゃないですか。一体乳価に対しては何をやろうとしているのですか。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 関連。先月の二十七日の衆議院予算委員会において、私は、いま中澤君が質問したようないろいろな問題について、赤城農林大臣に、何を目標に調停審議会調停を続けているのかとお尋ねしたところ、質疑応答を通じて明らかになったことは、いわゆる四月から乳業者のほうで先手を打って復元を考えている。これはすでに明治は考えているのみならず、加算金の復元を通告している。だといたしますならば、現在調停審議会がいろいろとお世話になっておることは、遡及復元を目標におやりになっておるのですかと言ったら、赤城農林大臣はそうだと言うのです。どこがそれでは問題になるかというと、採算面等でなかなか問題があるようだという御答弁になっておるのですよ。これは大臣は少なくとも遡及復元を四月からはやると言っているのですよ。調停もへったくれもないのです。先月の二十七日に私が予算委員会でやったときに、大臣がそういうことをはっきり言っておるのです。あれからでももうすでに二週間以上の日子を経ているじゃありませんか。遡及復元自体に難色を示しておるのか、一体大臣が遡及復元を目標にして調停審議会を開いてもらっておるというのほうそなんですか。あなたは畜産局長としてこの問題をどう推進し、処理するか、その直接の担当者でありませんか。大臣言明が何ら権威がない。一メーカー、二、三のメーカーに全くけ飛ばされて、農林省畜産局の面目がどこにありますか。さっきからの質疑応答を聞いておれば、何らの進展もない。一体何事ですか。四月からはほうっておいても復元通告を出していますよ。そういう不見識な畜産局の行政指導というものがありますか。一方においては、おくればせながら乳製品の買い上げをやったじゃありませんか。買い上げをやった以上は、当然行政介入があってしかるべきなんです。おととしのあの重政農林大臣のときに、当委員会がこの問題を取り上げて、曲がりなりに毛遡及復元をしたじゃないですか。それすら毛できないということは、一体何事ですか。もう少し腰を入れてやってもらいたい。この問題は、大臣が来られ、そしてある程度の遡及復元の具体的な対策なりその成果があがらない限り、私どもは引き下がるわけにいかぬ。まことに遺憾ではありますが、こういう状態でありますならば、われわれの審議を何日でも続けますよ。他の法案、森林関係法案などは一日か二日あれば上がってしまいますよ。そういうことを問題にしているのではない。これだけ当面問題になっておる復元の問題すら片づけられない、一指も触れない、そういうことで、当委員会は、政府から出た法案審議してそれを通すだけが任務じゃありませんよ。いま生起しておる大きな問題と取り組んで、これを少なくとも前向きに解決するために、当委員会の任務は重大でこそあれ、政府のおぜん立てした法案を通すだけが任務じゃありませんよ。あなた方がそういう態度をとっておれば、三月一ぱい法案審議審議といって、われわれも協力しておりますが、そういう不誠実な態度を繰り返しておられるならば——日韓会談もあって大臣もお気の毒だと思って、きょうは事務当局に実のある質問をわれわれはしておるつもりなんです。もう少し中身のある——もしどうしてもいけぬのならば、この前言われたように、委員長においても、適当な、もっと中身のある話をする機会をつくられてしかるべきだ。公式のやりとりでは困るということがあるならば、別途にそういう機会をおつくりなさい。そうしてもっと、問題がどこにあって、これはどういうふうに処理すべきかということをお互いが謙虚に話し合おうじゃないですか。いまのような状態で酪農振興が聞いてあきれるですよ。もう少しはっきりしてもらいたい。先月からこの問題は東海林さんが取り上げておる。石田さんが取り上げておる。私が予算委員会でも取り上げておる。その後も、この農林委員会でしばしば問題になっておるが、一向らちがあかないじゃないですか。こうした公式の話ではまだ微に入り細をうがって調停審議会内容等話すことはできぬというならば、別に機会をつくりましょう。いかがですか。もう少し最大限度言い得る範囲内で御答弁を願いたい。あなたも張り切って畜産局長になられたのですから……。
  48. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先般の委員会におきまして、農林大臣が、現在調停を進めております調停の方針としては、四月以降のメーカーの乳価復元の問題とは別に、それ以前の引き下げられた乳価について、遡及復元の措置乳業者においてとってもらうことを目標としてやっておるのだということを大臣が申し上げたのでありますが、それは大臣の言明どおり、そういう目標で調停委員努力をわずらわしておるわけであります。それに対しまして乳業者の側、それから農業生産者団体の側の意見を求めまして、双方の意見に基づきます調停案に達するための努力を続けておるのでありますが、農業団体につきましては、昨年秋以来の諸種の状態から考えまして、ある程度の弾力的な調停については調停に応ずる用意があるという、ごく抽象的でございますが、意見が出されたようであります。それに対しまして乳業者の側からは、採算面と申しますか、会社の経理的な面から、三月以前の遡及復元ということについて、支払い能力という面からきわめて困難であるということで、弾力的な措置に応ずる言明が今日までのところ得られないというのが実情でございます。それ以上立ち入りましては、またごく微妙な点等については、実は私ども自身も調停委員の方々の調停努力に必要以上の干渉をするわけにもまいりませず、承知しない部分もあるかと想像いたしますが、現在の段階はそういうことでございまして、私どももなるべく早期にこの問題の解決をはかりたいということで、調停の側面的なといいますか、調停に伴います事務的な協力はしてまいったつもりでございます。  お話の期限を切って注文を出しておるかということにつきましては、調停の本質から申しまして、いつまでにというようなことも、むしろ調停の成立を困難にすることになるおそれもありますので、期限を切った調停の委嘱——法律上の委嘱でございますが、そういうことをいたしておりません。ただ、いつまでも放置するというわけにもまいるまいと思いますが、現在の事情から考えまして、相当の時期までにはこの問題については結論を出すようにいたしたいと思っております。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 この紛争が起きた県は十数県あるのです。その中で、最後まで解決がつかないで、去年の九月ごろ、大臣に、青森、岩手、秋田、群馬の人たちが、何とかしてもらいたいといって要請したら、農林大臣が、これはひとつ酪振法によって調停の申請をしなさい、そうすれば自分たちとしてもあっせんしやすくなるし、やりよくなるからということで、中央の調停審議会に申請をしておるのです。しかも、この四県は一番乳業メーカーとの対立がきつくて、従来もメーカー側にとっては手ごわい存在なんです。組織化がだんだん進んでいっておる。そこで、メーカー側としては、この酪農民の結束のかたい地帯に集中的に困難な事態を意識して発生せしめている疑いが多分にあるのです。ならばこそ、大臣やあなた方がおすすめになって、調停の申請をさせたのじゃないですか。そういう事態から考えてみても、桧垣さん、あなた方には責任があります。さっきの御答弁によりますと、支払い能力云々ということがありますが、先般の大臣の答弁にも、これに似たような、何か採算面等を非常に強調しておるようでございますと、乳業メーカー側がそういうことを言っておるようにおっしゃった。現在も支払い能力の問題ということをおっしゃるが、支払い能力というのは乳業メーカーのほうですか。支払い能力云々などというような乳業メーカーがこれにありますか。むしろ、地方の中小企業で実力に乏しい諸君といえども紛争をでき得る限り避けて、話し合いに応じて、復元はすでに達成されておるじゃないですか。若干の時間的なズレはあるにしても……。大手四社、その中でも特に頑迷といわれる乳業メーカーの連中だけが、いま述べたような四県を集中的に目ざして紛争をもつれさしておるのです。ですから、これは悪質ですよ。これが解決がつかないなんということでは、酪農行政はゼロですよ。われわれはこういう問題を看過することはできません。この問題は、当委員会が前委員長のときにも何日かかったかわかりません。これは党派の問題などをこえて、少なくともあなた方がこの問題を大臣を中心に、日韓会談も忙しいでしょうが、ケリをつけられなければ、われわれ当委員会としてはこの問題の解決のつくまで追及しますよ。この問題が解決しないということであれば、他の法案審議にもわれわれは考えざるを得ません。われわれは十数日成り行きを見ておった。少なくとも調停審議会が十数回開かれておる。その委員諸君努力をときには私的に会ってねぎらいながら、とにかく結論の出ることを期待しておった。ところが、いまだに何の気配もない。また、いつめどがつくともはかり知れないというような状態を聞いて、われわれはこのまま委員会でこの問題のケリをつけないで、他の問題に論議を進めるわけにはまいりません。ですから、しかと、こういう点で実は困っておるのだというようなことがあるならば、公開がお困りになるならば非公開の措置等を委員長において講じてもらって、きょうでなくてもけっこうですが、近い機会にそういう機会を持ってもらう、そしてこの問題に対しては大臣の出席も求めて、徹底的に問題の所在を明らかにし、解決を見ずんば、当委員会は前進できませんよ。そのおつもりでひとつ御善処を願いたいと思いますが、委員長におかれましても——この前のときは、この問題は、当委員会としても、他のほうで石炭の問題があってストップしたこともあって、臨時国会では片がつかなかった。そうして次の通常国会では、この問題は相当の時間をかけて、与野党とも一丸となってやったのです。そういう経過もあるこの問題でありますから、ことさらにこの問題にこだわって他の法案審議に支障を及ぼすというようなけちな量見ではありませんが、お聞きのような状態では当委員会の権威に関しますよ。桧垣局長さんも当委員会の意向をとくと大臣に伝えられると同時に、今後の対策をきめて、次の機会に大臣の御出席を願いたい。  同時に、委員長におかれましても、前委員会からの経緯を前委員長から十分お聞きになっていただきたい。これは延長ですから、われわれはここで桧垣さんの答弁をもつで満足するわけにはまいりません。前々からずっと継続した問題ですから、酪振法も改正する意図はない、この問題もさりとて現行法で処理する能力もない、そういうととで一体日本の酪農政策はどうなるのですか。私が予算委員会で申し上げましたように、屠殺件数はだんだん日を経るにしたがってふえております。政府は酪農振興を口にしながら、乳牛の屠殺数は記録にも明らかになっておりますようにふえております。そういうばかなことがどこの世界にありますか。ですから、この問題については、十分委員長としても今後の措置を御検討になりまして、当局とも十分お打ち合わせになって、最も効果的な委員会の持ち方を御考慮願いたい。御所見があれば、委員長にもこの際ひとつ伺っておきたいと思います。
  50. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 乳価紛争の解決につきましては、私どもも決してこれについて怠ったつもりはないのでございますけれども、御承知のような状態でございますために、解決に至っていないことをはなはだ遺憾に思っております。私どもとしましても、この問題については責任も十分痛感いたしておりますので、さらに今後の調停による解決を第一段の目標といたしまして、努力をいたしてまいりたいと思います。  また、本日のお話につきましては、大臣にもその旨報告をいたしまして、もちろん当然のことでありますが、大臣からの指示も仰ぎたいというふうに考えております。
  51. 高見三郎

    高見委員長 私から足鹿君にお答えいたしますが、御要望の点については、政府とも十分相談いたしまして善処いたしたいと思います。
  52. 中澤茂一

    中澤委員 丹羽政務次官、どうですか。一体どうするつもりですか。はっきりしてください。これは大臣がこなければ、幾ら桧垣さんの話を聞いたってとてもだめですよ、何にもやる気はないんだから。そんなら、大臣を呼んで、酪農政策の基本問題を本委員会でやらなければいかぬ。大臣が出るまでは本委員会は一切ストップです。こういうことではやりませんよ。何もやっていないということなんですから、政治的にどういう処置をやってこの紛争を解決するかということについて、政務次官からはっきりした責任ある答弁を聞いておかぬと、われわれ社会党はこの問題が解決するまでは本委員会には応じません。こういうだらしのないことをやっておるのなら応じませんから、それをはっきりと腹の中に入れておいて御答弁願いたい。
  53. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 乳価紛争、また今後の乳価に対する政府のとるべき措置等について、いろいろ御指摘があり、非常にお教えをいただいたわけでありますが、事務当局から申し上げておりますように、非常な努力は払ってまいりました。これはひとつ認めていただきたいのでありますが、結果的にはいいものがあらわれておりませんし、結論が出ておりませんからして、御批判を受けたり御叱責をいただくのも、甘んじて受けなくてはならぬと思います。  そこで、先ほどお話のありましたように、今日の政府のやっておりますようなことでは根本的な解決にはなっていかないと思うし、なおまた、今後いつまでもこうした乳価紛争というものは続くことも思われますので、今後いわゆる酪農振興政府が本気になって考え、真に酪農振興を考えていくというならば、当然この機会にはっきりと乳価紛争というものは今後ないような道を考えるべきだと私も思います。そういう意味から、十九日に大臣が出席をいたしまして、皆さま方に御質問を受けることになっておりますので、そのときまでに事務当局と大臣との間に意見をよく調整をとりまして、今後どういう考えで乳価対策、また当面の乳価紛争処理を解決していくかということ——もちろん、今日調停委員の方々の御足労をわずらわしておるということ、御苦労を願っておることは感謝いたしておりますけれども政府として当面の紛争問題はどうするか、そして今後乳価紛争が起きないようにどう処理していくかということを、十九日の委員会におきまして大臣から明らかにさしていただくようにいたしたいと思いますから、御了承を願います。
  54. 中澤茂一

    中澤委員 委員長要望しておきますが、十九日に大臣が出席しなければ、この問題はどうにも結論が出ません。そこで、理事会等でも御相談願いたいのですが、われわれは、十九日に大臣が出席すると同時に、もしそれまでに調停ができなかった場合は、調停委員の皆さんを参考人に招致して、調停の経過等を明らかにしてもらわなければならぬ。そしてもし必要があるならば、われわれ大蔵省を呼んで、農業問題のわからない大蔵省に対して——相当これらの基本的な問題について大臣と論争して、基本的なものをきめておかぬと、強制調停権限もやりません、すべてをやりませんということじゃ、毎年毎年こういうばかな紛争を繰り返していくということは、断じてわれわれは承服できません。われわれも国会対策委員会で明日相談しますが、この問題のケリがつくまでは、法案審議には社会党としては簡単に入れません。これだけははっきり申し上げておきます。委員長もそれをよく念頭に置いて処理されんことを切望して、時間でありますから、一応終わりにいたします。
  55. 高見三郎

  56. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 私は、繭糸価格安定対策と繭の増産対策、この二点にしぼりまして、いろいろ時間の関係もありますので、なるべく順序をつけて質問を申し上げますから、局長のほうでもあたたかい気持ちでひとつお答え願いたい、こう思います。  順序としましては、まず、わが国の輸出農産物の中で生糸の占める順位、同時に、国内総生産とこれが需要に対しまして国内と国外、それから輸出先におきましてアメリカと欧州に対する比率、まずこれをお示し願いたいと思います。
  57. 久宗高

    ○久宗政府委員 生糸の輸出関係でございますが、御承知のとおり、戦前におきます総体的な比率は、輸出の中で約半分程度のものであったわけでありますが、産業構造の変化に伴いまして、逐年落ちまして、終戦当時におきましては約二〇%というような比率を得たこともあるわけでございますが、現在におきましては、輸出総額に対しまして二・五%程度になっております。しかしながら、農林水産物の輸出の中で考えますと、これは水産物を含めますと大体二割程度でございますが、厳密な意味の農産物輸出総額に対しましては五〇%ということになるわけでございます。したがいまして、農産物の輸出総額の中では半分が生糸でございまして、順位から申しましても、当然一位であるわけでございます。  それから、生産されたものがどういう形で処理されているかということでございますが、生糸と絹織物を含めまして、大体四対六とお考えいただけば、ほぼ実情に近いかと存じます。つまり、四が輸出でございまして、内需の関係が六でございます。それから糸だけについて申しますと、二割が輸出でございまして、国内に八割のものが供給されまして、その中から輸出関係の絹織物が一部つくられるわけでございます。先ほど申しましたように、生糸、絹織物を全部合算いたしますと、大体四が輸出、国内が六という比重になるわけでございます。  それから輸出先でございますが、ヨーロッパの比重が次第にふえてまいりまして、三十八年の実績から検討いたしますと、ちょうど半々になります。米国が四七%、ヨーロッパが四七%、その他が六%、こういうような数字になっているわけでございます。これは近年ヨーロッパの需要が伸びましたために、かような比率になってきております。
  58. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 開放経済の条件がだんだん整備をされますと、特にわが国の農産物は大きな試練に必然的に立たされるわけです。養蚕は、御存じのとおりに民族産業として、とにかく農民が生まれながらにして養蚕というものは真剣にやらなくちゃならない。これは外貨の獲得の面から一つの伝統になっておるわけです。したがって、全国におきましても、各地区でいま養蚕はそれぞれ取り上げられておる。そういうふうな中に立ちまして、現在の国際収支をながめますと、なかなか楽観を許さない。先ほども指摘したように、いわゆる生糸の外貨獲得の功績というものは非常に大きいわけです。そういうふうな中に立ちまして、これからの国際競争の中に立たなくてはなりませんが、国内、国外に対しましての需要の見通しをひとつお話し願いたい。
  59. 久宗高

    ○久宗政府委員 この需要関係につきましては、三十三年、四年のああいう危機を経過いたしました際に、当時のデータといたしまして、やや悲観的な見方をせざるを得なかった事情がございまして、横ばいというような形でしばらく考えておったわけでございます。御承知のとおり、その後引き続きまして三十四、五、六と、二けたの経済成長が進みまして、国内需要におきましても非常に新しい分野が出てまいりましたし、国外需要におきましても、たまたまその当時EECの発足と関連いたしまして、これまた予想もつかない所得の伸びがございましたために、需要関係は著しく伸びました。逆に供給関係におきましては、これも思わざる労働力の流出によりまして、そこに大きなギャップができたわけでございます。したがいまして、現在オフィシャルに申し上げております需給の見通しといたしましては、先般農業基本法ができましたときに、各商品別に長期見通しを立てました際に、大体四十六年を目標といたしまして、現状より二割ないし四割の増があるだろう、年率にいたしまして約三%の伸びを考えたわけでございます。さような数字がいまの公式の見通しということになっているわけでございます。ただ、昨年御承知のとおり世界絹業大会の理事会がございまして、各国から需要者側が相当生糸の暴騰などがございましたので心配してこちらへ見えまして、その際、こういう種類の会合には珍しく価格の問題も出ましたし、また需要の見通しについての相当突っ込んだ議論があったわけでございます。その際、ほとんど需要者側の一致した御意見といたしまして、少なくとも価格が安定するならば、ここ数年来の経験から見て、世界的に言えば、年率五%くらいの伸びがあるということがほぼ確認されたわけでございます。私どもも、その数字には若干オーバーの点があるかと存じますけれども、現在私どもが公式に持っております見通し程度のものは当然に予想さるべきものと考えております。  ただ、国内、国外の関係でございますが、国内需要につきましては、ここ数年にわたりましてほとんど固い数字として二十万俵を若干上回る数字が続いております。このほうは問題がないと思うのでございますが、輸出関係におきましては、もちろん、これは昨年の暴騰の影響がございまして、たまたまいま短期的に若干問題がございますけれども、相当の輸出に対する努力といいますか、輸出体制に対する整備と申しますか、さようなことが伴わないと、簡単に需要があるから大丈夫というふうに割り切ってはならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、結論といたしまして、短期的には若干の問題があるけれども、長期的には需要の関係につきましては非常に楽観的に考えてよろしかろうというふうに思うわけでございます。
  60. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 いま局長の国内、国外に対しましての需要の見通しですが、確かに昨秋ISAにおいて、いわゆる世界の生糸の需要は年率において五%の伸びをする、しかも、それに対しましては価格を安定してもらいたい、ここが一番のポイントになるわけです。しかし、価格安定ということは、いろいろ考えてみますと、どこを基準にするかということが問題になるわけです。これは、そのときに生産費を割ってまでも安定しろ、こういうふうなことは言っておらないわけです。こういうふうな観点から局長の率直な考え方を聞かせてもらいたい、こう思います。
  61. 久宗高

    ○久宗政府委員 たまたまお話のございました昨年のSAの理事会で、集まりました諸外国の方々が、従来あの種の会議は主として流通部門がおもでございまして、大体におきまして、生産国からなるべく安くたたいて買いたいといった感じがしばしば出る会議であったわけでございますが、日本におきます農業事情が非常に変わりまして、どんどん労働力が流出していくというような事情が向こうにも伝わっておりましたので、また、イタリアないしフランスにおきまして、かつてそういう高度成長の中で自国の養蚕をつぶした国がございますので、その点を非常に心配いたしまして、日本の養蚕は大丈夫なのかという点を、むしろ非常に心配して皆さん見えたような感じがいたします。その際にも、こちらといたしまして、農業の一般状況から見て、相当高い水準にならざるを得ないということも、率直に申し上げたわけでございます。その点は、なるほど繭がなければ元も子もないわけでございますので、さような意味では、相当生産者の事情を十分考えて買うようにしよう、ただ、ああいう暴騰のあとだったものでございますので、そういう暴騰、暴落をされては、原則として利用する向きとしては非常に困る、その点については特に注意してもらいたいという御意見が出たわけでございます。したがいまして、私どもも、いわゆるああいう種類の商品でございますから、需要ないし購買力との関連を相当厳密に見る必要がございますけれども、さりとて、生産関係におきましてその生産意欲を全く失うような措置はもちろんとれない、また現に農家所得において占めておりなす意味合いも、地域によって非常にウエートの高いものでございますので、さような点も考慮いたしまして価格をきめてまいりたいという考えでございます。また、審議会の建議におきましても、その点が特に問題になりまして、特にここ数年来、どちらかと申しますと、多少へっぴり腰と申しますか、運用におきまして実情と離れた点も強く反省されましたので、その点審議会の御指摘もございまして、今度の価格決定におきましては、私どもの気持ちといたしましては、最低価格という特殊な性格もございますけれども、相当思い切って実際に近寄ったという気持ちでおるわけでございます。
  62. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 安定のうちで、いま局長が昨年の暴騰というようなお話がございましたが、これはいろいろな質問の順序の関係上、またあとで質問することにいたします。  繭糸価格安定法の中で、三月ですね。これは毎年標準生糸に対しましての最高、最低をきめるわけでありますが、今年度すでに審議会も開かれて、新聞では私どもも存じておりますけれども、一応今年度の決定しました最高と最低、それから繭の最低価格、これはどの辺できまったか、これをひとつお知らせ願いたいと思います。
  63. 久宗高

    ○久宗政府委員 毎年三月にきめることになっておるわけでありますが、御承知のとおり、昨年の六月の暴騰を高い山といたしまして、その後棒下がりに価格が下がってまいりまして、なかなかその底値がきまらない状態が続いておったわけでございます。それで、先ほどお話の出ましたISAの理事会におきましても、具体的な価格問題が出まして、四千五百円ないし五千円のラインで安定するならば、少なくとも相当の需要があるんだがという点が確認されておりましたわけでございますが、その下限であります四千五百円を割ってなおかつ底が固まらないという事情が、一月、二月と続いてまいったわけでございます。そこで、養蚕家の方々が、そろそろ春繭の準備にかかる時期でもございますし、また一つには、三十三年と違いまして、養蚕面のほうに問題が起こったのではなくて、主として流通部面の先のほうで問題が起こりましたので、養蚕家の方には、どういう事情で価格がそのように下がってきているのか、若干不安が醸成され始めてきておったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、そのような市価の先行き不安をまず徹底的な方法で排除したいというふろに考えまして、その一番具体的な方法といたしましては、六月以降に実施されます来生糸年度の最高、最低あるいは最低繭価というものの水準をはっきりそこできめるということが、内外に対して底値はここだということを明らかにする意味があると思いまして、さような意味で、一月繰り上げまして、実は二月中にでも開きたいと思ったわけでございますが、さような形で開いたわけでございます。そして具体的な価格といたしましては、生糸につきましては、最高価格は現行では三十万でございますが、それを三十三万、キロにいたしまして五千五百円でございます。それから最低価格は、現在は二十一万、キロ三千五百円でございますが、それを二十四万、キロ四千円というラインにきめたわけでございます。それと関連いたしまして、繭の価格でございますが、これは標準もので表示いたしますが、キロでいたしますと五百六円でございます。普通農家の方の、繭は貫当たり幾らだということで表現いたしますと、貫二千円ということでございまして、二千円のラインは絶対に確保したい、これを割ってはならぬという気持ちで、これをきめたわけでございます。
  64. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 ことしの価格が最低二十四万、それから最高が三十三万。二十四万につきまして、新聞なんかを見ると、局長が相当骨折ったということを私もちらっと聞いているわけですが、これはやはり審議会に出すのに、原案としては二十四万というものをそのものずばり最低を出したわけですか、あるいは審議会においてまあ二十四万というようなものが出たのか、この点はどうですか。
  65. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまのお尋ねでございますが、実は御承知かと思いますが、その前に、こういう事情でございましたので、蚕糸業関係者それぞれ心配いたしまして、総決起大会というものが二月の末に開かれたわけでございます。農家の方あるいは蚕糸業全般といたしまして、やはり生糸は三十万くらいのものにはぜひしたい、あるいは繭で申し上げれば二千五百円程度のものはぜひほしいという気持ちがあったわけでございます。これは私も全く同感なんでございますが・それが少し行き過ぎまして、最低価格を三十万にしろ、繭二千五百円というのを最低繭価にしろという決定が大会で持たれたわけでございます。さような経緯もございまして、私ども審議会におはかりいたしますのに、もちろん従来の形式を踏襲いたしまして、具体的な価格で、これについていいか悪いかという御返事をいただくのではなくて、価格はどうしましょうかというお尋ねのしかたをしたわけでございますが、いろいろな経緯もございますし、先の見通しその他につきまして考えました場合に、やはりその際は、政府のほうの責任におきまして具体的な案を提示する必要があろうと考えまして、審議会におきましては、原案といたしましてただいま申し上げたような数字をおはかりいたしたわけでございます。そこで、審議会におきましては、いろいろ御意見が出たわけでございますが、最終的には、価格そのものを表示することが困難だということで、大幅な引き上げをしてもらいたいという形の、抽象的な答申が出たわけでございます。その際にも、必ずしも全員の御一致ではなくて、一部にはそれにも反対せざるを得ない方たちもおったわけでございます。さような御答申を得まして、また、それに附帯決議といたしまして、要するに、みんなが安心してやれるようにしてくれという、強い附帯決議がついておったのでございますが、さような点も考慮いたしまして、政府の責任におきまして、ただいま申しましたような数字をきめたわけでございます。ただ、それをきめた気持ちを申し上げますと、四千円という最低価格、それと関連いたしました繭二千円というものが、それで十分だというふうにはちっとも考えていないのでありまして、ただ、先のことでございますので、これをかりに引き上げました場合、たとえば六月以降にそれが実施されるわけでございますが、今日の段階、つまり、三月段階におきまする価格を名目的に引き上げると、当然そういう連鎖反応が起こり得るわけでございまして、内需関係におきましては、現在多少価格が上がりましても、現在程度でございますれば不安はないわけでありますが、輸出関係は、御承知のとおり、多少微妙な形になっておりますので、今日の段階でそれが名目的に引き上がってしかもそれに、実需がついてこないという場合におきましては、かえってストックを累積するおそれがございます。さようなことがほんとうに一番問題になります。六月、七月に現実に繭が出てまいります場合の市価水準が、それによって不当な圧迫を受けるというようなことは、これこそ絶対に避けたいという気持ちがございましたので、かたがた輸出関係におきまして、すでに底値がほぼきまりかけておる。日本政府が一体四千円というラインをほんとうに守るのか守らないのかということが、むしろ取引の一つのポイントになっておったような事情もございまして、底値がきまりますならば、やや長期の契約が可能になるという見通しも考えられましたので、さような意味で四千円というラインをきめたわけでございます。また同時に、これも御承知のとおり、中間買い上げという制度を昨年十二月に初めて本制度としてとったわけであります。その際のラインが、やはり二十四万円というラインをめどにいたしておりますので、十二月以来、大体先まで四千円という床をきっちり張ってみる必要があるだろうということも考えまして、以上のような決定をいたしたわけでございます。
  66. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 いま中間買い上げの点がありましたが、これは順序としてそのときにまた御質問することにします。問題は、局長が二十四万円というものを政府案として出した、こう了解していいわけですね。そうすると、そこで審議会が非常にもめた。結論は出せずに、それで、最低価格というものは大幅に引き上げるべきだということを答申をして、そしてその後にきておる。そうすると、二十四万円というものが基準になったのだから、大幅に引き上げるということになると、やはり二十四万円以上にそれはやらなくちゃならなかったのじゃないか。というのは、全国の養蚕者の段階において、キロ五千円、一俵六十キロ三十万円というものを決議として要求しておる。当然そういうふうなかね合わせから、今後相当問題点が残ってくるということは、これはだれが考えてもわかるわけです。それがまた政府のほうへげたを預けたところが、政府のほうでは二十四万円にしちゃった。どうもそこがやはり養蚕農民がなかなか納得できない問題だろうと思います。その二十四万円にきめたということは、あるいは輸出の関係があるとか、どういうことがあるとか、こういうふうなことがやはり明らかになると、ああそうか、こう私は納得ができると思う。ただ、いまの答弁ではちょっとまだ納得はできないので、いま一つよく御答弁いただきたい。
  67. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のとおりの問題があるわけでございまして、実は生産費そのものにつきましても、ふだんでございますれば、それをきちんと計算いたしまして、何が何円というところで御意見を伺うわけでございますが、先ほども申し上げましたような、やや緊急な二つのねらい、つまり、養蚕家の安心感の最低限度のところをはっきりしておきたいということと、もう一つは、輸出の促進、両方からみ合いますので、数字も必ずしも十分じゃございませんでしたけれども、達観もしてこの程度ということがはっきりわかる程度の材料をもちまして御検討をいただいたわけでございます。特に四千円ときめましたにつきましては、一番考慮に置きましたのは、やはり輸出の促進であったわけでございます。それからむしろ逆に考えまして、つまり、輸出の促進をいまいたしませんならば、少なくとも不可避的に六月、七月の時期に現実の農家の所得に響きます。繭が出てまいりますその段階におきます糸価が抑圧されるおそれがはっきりしておりましたので、これをはっきり排除することが、むしろ一番いい方法であるという考え方をとったわけでありまして、逆に申しますと、四千円という最低価格をさような意味できめましたけれども、四千円の最低価格で繭にいたしますれば、かりに二千円というようなところで政府が買わなければならぬというような場面を持ちますことは、これは政策としても非常にまずいし、また、農家の所得の問題からいっても非常にまずいわけでありまして、むしろ、六、七月に現実にきまります糸価なり繭価が、しかるべき水準に行くぎりぎりの手段といたしまして、やはり現在の輸出関係を大幅に促進することがぜひ必要だ、こういう気持ちでああいう措置をとったわけでございます。  なお、その場合、それでは生産費との関係はどういうことになるのであろうかというような問題につきまして、八割五分を若干計数的には割るような計数になりますが、ほぼ本来の制度で予定しておりました最低価格の線をそう大きくはずれていないということも、私どもにそれに踏み切らせる相当大きな原因であったわけでありまして、繰り返して申し上げますように、考え方といたしまして、私どもといたしましては、最低価格ではございますけれども、やはり当然生産費との関連を十分頭に置いて、しかし、現実に農家に響きます本来のことしの繭価あるいは糸価というものをできるだけ、六月以降のああいう非常な事態のあとでございますので、養蚕家、製糸、その他関係者相寄って、しかるべき水準に持っていきたいということが真意でございまして、この点ぜひ農家の方にも理解していただきたいと思っておるわけでございます。
  68. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 糸価の推移のグラフから見ますると、三十二年度は最低価格が十九万、最高が二十三万になっており、今年度は先ほど答弁のあったように、最低が二十四万、最高が三十三万となっている。そうすると、三十二年から今日までまる六年になっておるわけでありますが、大づかみにいって、今年度までの六年間において大体三割弱ぐらいしか上がっていない。こういうふうなことは、一体繭糸価格安定法の中に立って、真の安定した最低価格のきめ方であるかどうか、これが一点。それから繭がキロ五百六円、そうすると、これを換算してまいりますと、一貫目二千円を若干下回るのではないか。それではたして再生産の意欲ができるかどうかということを私は非常に疑問に考えるわけであります。この点はどうでありますか。
  69. 久宗高

    ○久宗政府委員 三十三年以来の最低価格そのものの足どりにつきましては、御指摘のような問題があると思います。事実、最低価格が相当期間据え置かれたような形がとられた時期もあったわけでございますが、三十七年度に相当上げまして、しかし、その当時、三十四年、五年、六年と、御承知のとおり、実際糸価のほうは棒上げの状態でございましたので、実際糸価と安定帯との間にやや開きが出まして、実際的でないという御指摘がしばしばあったわけでございます。そこで、本年におきましては、値上げの——値上げと申しますか、最低価格の水準が、アップ率で申しますと、約一四二二%のアップ率になっておるわけでございますが、考え方といたしましては、そのようなアップ率というよりは、現実に現在の糸価をお考えいただきましても、約四千三百円台の経緯をたどっておりますので、それに対しまして四千円というのは、相当思い切ったと申しますか、現実に対する歩みよりというふうにお考えいただけないものかというふうに思うわけでございます。  それから最低繭価の問題でございますが、五百六円、貫二千円を割るのではないかというお話でございますが、厳密に申しますと、たとえば、三十八年は繭が悪うございましたので、一俵生糸をつくりますのに使用されます繭の量が若干多かったわけでございます。これは異常な形でございますので、かりにさようなもので換算いたしますと、二千円を多少割る数字が出るかと思うのでございますが、三十六年、七年、八年と、かりに三年間をとって計算いたしました場合には、少なくとも二千円を十数円オーバーするわけでございまして、三十七年だけとりましても、もちろんこれは二千円をオーバーするわけでございます。ごく常識的に申しまして、四千円の糸価というものは、平常時においては大体貫二千円ラインとお考えいただいてさしつかえないと考えております。
  70. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 私は、いま農林省の統計調査部でつくられたものでありますが、この表を見まして、三十七年度の主要農産物の家族労働報酬、これは一日八時間労働、その中で、繭をつくる上におきましての労働報酬は一日五百八十二円です。米が千三百九十二円。このほかたくさんございますけれども、重要なものばかり拾って申し上げたいと思います。大麦が四百七円、リンゴが千四百七十八円、ミカンが三千二百六十八円、それからお茶が千三十六円というぐあいに、あとたくさんありますけれども、こういう数字が出ておるわけです。養蚕がだんだん引き合わなくなって、逐次減少の一途をたどっておることは事実です。日雇い労務者がいまちょっと出まして一日幾らかというと、私は群馬ですけれども、八百円から千円ぐらいは日雇い労務者として出てもとにかく取れる、こういうかっこうになっております。しかも、この表の中で考えるべきは、三十七年度の取引のいわゆる現物相場ですね。これの原価はキロ大体四千八百円くらいになっておるのです。それでありますから、繭で換算をしてみますと、大体一貫目二千三百円くらいになる。それで、この時点に立って、一日これが五百八十二円という、こういう数字なんですね。そうしますと、これは八時間労働でございますから、いまの、ことしきめた二十四万円、一貫目二千円ということになると、これは実際問題として五百円をちょっと割るような形になっちゃうのですね。これで農家が実際に生産意欲が出るか出ないかということ、この点は局長どうですか。
  71. 久宗高

    ○久宗政府委員 最低価格と実際に実現する価格の問題がそこにあるのではないかと思うのでございます。いまの生産費で逆算いたしまして、家族労働報酬が大体五百八十二円でございますか、こういうものが出ましたが、昨年の実績、つまり、繭が非常によかった実績によりますと、七百円を若干オーバーした数字も出てきているわけです。ただ、いまのお話は、やはり私のほうは最低価格はもちろんきめておりますけれども、実際一番ねらっておりますのは、最低価格をきめたことによって、そのきめ方によって、またこれからの措置によりまして、現実にことしどういうような繭価が実現するかというところのほうに、むしろ重点を置いているわけでございまして、そういうものから得られる実際の家族労働報酬が少しでもいいように持っていきたいということから考えておるわけでございます。最低価格そのものにつきましては、やはりかりに生産費の何割とかいうようなきめ方をせざるを得ないわけでございまして、実際の家族労働報酬の問題と最低価格をいきなり結びつけて御議論いただきますと、ちょっとやりようがないじゃないかというような感じがいたします。
  72. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 私がこれを強く言うのは、何にしてもとにかくこれを局長がよく認識しておらないということ。そうすると、来年度きめるというときに腹がきまってこない。そこでくどいようだけれども、私がお伺いしておるわけです。この点はひとつ御了解願いたい。  これをいまひとつ私はほかの方面から確認していただきたい、こう思います。これは群馬県で例をとってみますと、群馬県は全国一番でございますから、総生産の大体二割も取っておる。群馬の平均の耕地面積は八反七畝なんです。そうして一反歩から繭収量はどのくらい上がるかというと、反収二十一貫なんです。そうすると、いまのように一貫目で二千円ということになると、反収四万二千円なんですね。四万二千円ということになると、八反七畝ですから、それにかけてみると三十六万五千円、こういう形になるわけです。これで要するに養蚕農家はやはり一年の生計を立てていかなくちゃならない。これでは実に、私どもは直接関係しておりますが、やはり気の毒なような状態です。こういうふうな観点から、ことしの全国の蚕業大会におけるキロ五千円という要求は、決して無理はない、非常に良識的なものだ。これをひとつこの際局長はぜひ確認をしておいてもらいたい。これでは、少なくも来年度は最低価格をどんなことをしたって五千円以上出さなくちゃならない、こういう気持になってもらわないと、養蚕農家はたまったものじゃありません。この点をひとつお聞かせ願いたい。
  73. 久宗高

    ○久宗政府委員 最初に申し上げましたように、糸で三十万、繭で二千五百円というのは私も同感だと申し上げましたが、現実に得られます糸価なり繭価が、ああいう六月の暴騰なかりせば、当然そこにいかなければならない、当然そのくらいほしいという気持ちは、全く同感だ、こういう意味なのでございます。ただ、たとえば決議でもございましたように、三十万を最低にしろということになりますと、具体的には現在つくりました糸なり繭なりを全部政府が買えという、少なくとも現実とは若干遊離いたしました内容を持たざるを得ないのでございますので、最低価格といたしましては、——もちろん、最低価格にするようなことはしたくないという気持ちが前提のお話でございますけれども、最低価格そのものをいまの水準に持ってくるということは、若干無理でないだろうか。しかし、繭価なり糸価なりをいまおっしゃったような水準に具体的に持っていくことは、当然すべきことだと思いますし、そういうふうに運用してまいりたいという気持ちにおきましては、私どももそういうふうに考えておるわけであります。
  74. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 最高と最低の安定帯価格は、私は少ないほどいいと思うのです。三十三年におきましては最高と最低が四万円の差なんですね。ところが、ことしきめたのは、二十四万と三十三万円ですから、九万円の差が出てきたわけです。こういうふうに離れてきたということは、何か理由があるわけですか。
  75. 久宗高

    ○久宗政府委員 もとになります絶対金額が上がっておりますので、若干それに従って幅がふくれるという問題があると思います。それもございますが、それとは別に、やはり昨年のああいう高騰のあとでございますので、最低価格をきめます場合にも、それから今後一年の生糸年度を通じての最高をきめます場合にも、若干のゆとりをとらざるを得ないということが頭にございました。ただ、幅があまり広いのは、通常の場合におきましては適当でないと考えますので、さような意味からいえば、いわゆる幅が少し広過ぎるのではないかという御批判は当然あると思います。ただ、これにつきましては、ああいう六月暴騰のあとの異常な事態でございましたために、たとえばこれをもっと縮めるという場合に、かりに最高をおろし、下も上げというというような形になりますが、最高価格について、じゃ三十万で押えてしまうかという問題につきましては、少なくとも軌道に乗りますならば、三十万をオーバーしていっても、実需がついてくるならば、それをあえて押える必要はないのじゃないかという点もございまして、さような意味で、最高にも若干のゆとりをとったわけでございます。それから最低につきましては、先ほど申しましたような、六月暴騰以降の非常に荒れました需要関係を頭に置きまして、その中でできるだけ、端的に申しますと、二十七万から三十万ぐらいの間に実際の実現価格がいくようにいたしたいという率直な気持ちを持っております。海外におきましても、大体その辺のところが一つの段階ではないかという気持ちがあるようでございます。
  76. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 どうも質問のほうよりも局長のほうの答弁が非常に長くて、きょうは何だかあべこべのような感じがいたします。私は、化学繊維もそれから生糸も、両方工場の中で商売をやっておるのです。だからよくわかるわけです。  そこで、問題をしぼりたいと思いますが、化学繊維がずっと伸びていくということは、安いからとかあるいは丈夫だからいいというばかりじゃないのです。問題は、建て値というものがある。だれが買っても安心して買えるわけです。ところが、生糸はそこに問題があるわけですね。だから、私どもとしますと、まさか米と同じように買うということはどうかと思いますが、少なくとも準じて考える必要があろうと思います。その理由というものは、要するに、輸出農産物のうちでは、日本がたよるところは生糸が一番大宗なんです。これは思い切って力を入れていいのです。そういうような点から、やはり局長として、こういうふうな点に対しましてはどんなような考え方を持っておるか、伺いたい。
  77. 久宗高

    ○久宗政府委員 どうもベテランに御説明するので恐縮なんでありますが、建て値制の問題は、私どももできますならばぜひとりたいという気持ちがあるわけでございまして、これも御承知のとおり、これのできます合化繊のような、企業体が寡占状態にございませんで、非常に分かれておりますので、一挙にそこに持ってまいりますのは非常に問題があるように思います。ただ、おっしゃっております意味は、さような形が最も安定的な糸の供給と結びつくという点におきまして、私どもも、さような糸の売り方につきましての指導と申しますか、行政が非常に従来おくれておりました。そのこと自体がまた糸価を不安定ならしめる相当大きな要因とも考えますので、今後の問題といたしまして、糸の売り方を含めました問題につきまして、行政の重点を移動してまいりたいと考えております。
  78. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 輸出について、中共糸との関係について御意見を聞きたいと思うのですが、一体中共糸の生産というものは、大体どのくらい大きな生産を持っておるか。しかも中共と日本の生産というものが、いまの時点に立っては、とにかく世界において相当な指数を占めておるわけです。そういうふうなことで、日本が独自性を持って輸出政策については考えていかなければならない。中共だってとにかくことさら安く売ろうというぐあいには決して考えておりません。そういうふうな時点に立ちまして、今後中共糸というものをながめたときに、一体どういうふうに考えるか、この点どうですか。
  79. 久宗高

    ○久宗政府委員 中共の生産事情でございますが、これにつきましては、必ずしもオフィシャルな最近の数字を確実につかむ方法がございません。ただ、従来の資料から推定いたしまして、およその見当は立っておるのでございます。私どもといたしましては、従来ヨーロッパ市場におきましては、昨年来相当進出をしております傾向にございますけれども、年々相当大きな振れがあるわけでございまして、昨年の秋以降の中共の進出というものが相当恒久的なものかどうか、まだ確実な情報が得られておりませんので、非常に見当の立てにくい状態にございます。しかしながら、御指摘のような競合関係は、今後さらに激しくなってくることが十分考えられますので、これにつきましては、私どもといたしまして、もちろん、生産の合理化その他を怠りなくやる必要がございますが、特に輸出関係におきます体制で、現在のばらばらな体制では非常に対抗しにくい問題がございますので、輸出関係におきましての一本化と言うと少し語弊があるかと存じますけれども、もう少し体制を整えて、製糸からの輸出関係のものの渡し方といったようなところを組織的に調整いたす必要があろうというふうに考えておる次第であります。
  80. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 三十三年において繭糸価格安定法を発動いたしまして、非常にこのときは効果があったわけです。そのときにおきましてはキロ二千五百円まで暴落をしたわけですね。その暴落したものを、このとき初めて価格安定法を発動して、政府が買い上げたわけです。その後ずっと見ますと、たとえば三十三年には最低が三千百六十六円、三十四年に二千三百三十五円、三十七年に二千八百三十五円、三十八年において三千五百円ですか、こういうふうなときにおいては、安定帯価格と実勢相場というのが合っていないのですね。実勢相場からいつも安定帯価格というものがずっと下に向かっているわけです。こういうふうなことじゃ実際に繭糸価格安定法が生きないことになるけれども、この点はどうですか。
  81. 久宗高

    ○久宗政府委員 いま御指摘のありました期間につきましては、まさにそういう事態があったように思うのであります。ただ、実勢相場のほうも、これまた非常に異常な時期でございまして、おそらく三年間棒上がりにずっと継続して上がっておるわけであります。さような点で、両方に少し異常な点があるのではないだろうかというふうに思うわけでございますが、たまたま昨年の六月を契機といたしまして、両方が合致する形になってまいりましたので、今後におきましては、すでに審議会からも答申をいただいておりますし、私どもといたしまして、さような実勢との乖離をできるだけ避けて、実勢に即応して糸価安定の運用をはかってまいりたいという気持ちを持っておるわけでございます。
  82. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 いま私が申し上げたように、繭糸価格安定法の中で実際の仕事ができないような形に結局なっておるのですね。そこで、三十四年におきまして、いわゆる日本蚕繭事業団、これに国として約十億ばかり出資しておるわけです。そうすると、国が十億も出しておいて、事業団の活動というものはないわけですね。実際の面でいままで眠っているわけですからね。その利子といってもたいへんなものになりますけれども、それには事業団の中に職員もおりましょう。みんなおりますね。そうすると、そういうふうなものの運営費ばかりに使われていて、今後一体どういうふうになるのだろう、われわれはやはりこれが心配です。だから、この点どうですか。
  83. 久宗高

    ○久宗政府委員 これは御承知のとおり、消防自動車みたいなものでございまして、火事が起こらないと出ないわけでございまして、事業団が非常に活躍するような事態がしばしばあるということは、むしろ避けなければならない点であると思うのであります。ただ、たまたまこの三年間棒上がりでございましたために、そういう問題が非常に目立ったわけでございますが、普通の状態になりますと、やはり実勢糸価がノーマルな形で下げていく過程におきましては、蚕繭事業団の仕事にいたしましても、特に最低価格の算定の仕方と関連いたしまして相当問題になるわけでございますが、ただ、私どもは、あくまで蚕繭事業団が現実に動かなければならぬような事態にしばしばなるということは、やはり非常に不安定な状態でございますので、むしろ蚕繭事業団が動かないような事態がノーマルな状態であるべきだというふうに考えておるわけであります。
  84. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 繭糸価格がいつも不安定というようなことで脅かされておるわけですけれども、私は、これをまた掘り下げてよく研究してみると、この繭糸価格安定法の中で、いろいろ国のほうでもって出資をし、補助金を出して、そして運営をしておるいろいろな団体があるわけですね。たとえば、いま言った蚕繭虚業団というようなものがある。それから輸出生糸保管株式会社というのも一つある。それから養蚕基金協会、こんなようなものがある。なおまだ日本絹業協会というようなものがある。こういうふうなものがみんなばらばらになって、せっかく政府がそこへ補助金なり出資をしていても、ばらばらの事業をやっているから、そこで繭糸の価格の安定というものが私ははかれないと思うのです。これを思い切って一本にして、そして私は、民間もここへやはり投資をしたほうがいいと思うのです。それで合体して、生糸がある斜度まで上がって、下がってきたというときには、その中間において買い上げる。これは九条の二に、中間買い上げというものは適格生糸に対してあるわけですけれども、これがなかなか活動してこない。むしろ、民間のものも入れて、そして思い切ってそこで運用させたらいいと思うわけです。ちょうど歯車がばらばらに動いているような形だから、ひとつがっちり組み合わせてやろう、こんなようなことも、要するに繭糸価格の安定をさせる一つの行き方じゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  85. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のようなことがありますと、特に、先ほどお話のございましたような、実勢と政府の安定帯との間に若干乖離がありましたために、よけいそういう点が目立ちまして、何らか中間的な安定を政府だけにたよらないで民間でもやろうじゃないかというお気持ちが、実は業界にも非常に強く出てまいっておるわけでございます。私どもも、この点が非常に注目すべき動きといたしまして注視いたしておるわけでございますが、ただ、御指摘のありましたような、非常に多数の欠陥がございまして、それがそれぞれ発生のときにはそれぞれの理由があったにかかわらず、今日見ますと、それぞれ中途半端で、問題があるではないかという点が確かにあると思います。またそれなるがゆえに、そういう問題まで頭に入れまして、いろいろ機構的にも統合をはかったらどうかといったような御意見が、業界にも相当あるわけでございます。ただ、私のほうの蚕糸局の考え方といたしましては、よくよく考えてみました場合に、糸価安定という一番基本的な問題につきまして、糸価安定制度の運用はもちろん必要はございますが、それはむしろ最低限度のものでございます。糸価そのものが、一体どうしてああいうふうに振れるのかといったような問題に、必ずしも行政の関心が向いていなかったと申しますか、そういう点に非常な反省があるわけでございます。ことに製糸の糸の売り方でございますとか、あるいは取引所の利用のしかたでございますとか、あるいは輸出のしかたといったものにつきまして、よくよく考えてみますと、実は相当大きな欠陥がございまして、さような点をまず相当調整いたしませんと、現在の糸価安定制度がそうでございますし、またいま構想されておりますいわゆる民間での中間安定のお考え方も、やはり糸価は動くものはしようがないといたしまして、それをある幅の中で押えつけようという形に実は結果においてなるわけであります。その点がもちろん必要ではございますけれども、それよりも、まず糸価の動き方の要素で、少なくともまだいろいろやる可能性があって、しかも従来の行政で手を抜いておりました点が、この六月の経験からいろいろ出てきておるように思うわけでございます。私どもといたしましては、それにまず力を入れまして、そうしてそのような過程で、結果においてある改革に及ぶ。機構から入ろうといたしますと、どうもポイントが抜けるのではないかといったような感じを率直に持っておるわけであります。現に輸出の体制の問題にいたしましても、当面の措置といたしまして、輸出のいわば一本化に近い形のものを製糸家との間でお話を進めていただくとか、さような指導のほうに努力を持っていっておるわけでございます。ただ、結果におきまして、さような措置が、最終的には、現在ばらばらにございます諸制度の改廃と申しさすか、統合と申しますか、さようなこととおそらく結びつくであろうと思うのでありますが、若干それは先のことになるんじゃないか、当面すぐには実は考えておらぬわけであります。
  86. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 時間もあれですから、なるべくひとつ簡潔にお願いしたいと思います。昨年キロ七千八百五十四円まで上がったわけです。そうすると、一俵四十七万一千円、ずいぶん上がったものです。これは史上最高ですけれども、ところが、たちまちにして暴落をした。これが上がった原因と暴落の原因を、ひとつ簡単でいいですからお知らせ願いたい。
  87. 久宗高

    ○久宗政府委員 基本的には繭と生糸についての需給の間の大きなバランスが破れておったというのが、基本的なものでございまして、現象といたしましては、取引所におきます過当投機がそれを非常に激成したというふうに思われるわけでございます。むしろ、その真因と申しますか、一番深い原因はということになれば、私ども蚕糸局のいまの見解といたしましては、やはり製糸家の糸の売り方にあったのではないかと思うわけでございます。すなわち、過去三十四、五、六と非常な棒上がりな形をとって、糸価水準が上がりましたので、現物を需要者に渡すルートとは離れまして、清算取引所のほうに生糸が流れる、こういう形が自然に激成されたように思うわけでございます。さような点から、たとえば輸出関係者が輸出に向けらるべき荷物をとろうといたしましても、清算取引所におきましてでなければその現物が得られないという、非常な変則な事態が生じておったように思います。さような場合に、特に国外には若干低い価格で売らざるを得ないというような事情もございまして、またそのカバーを清算取引所においてとる、こういった循環があったようでございます。これと一般的な騰貴の背景には、繭不足、生糸不足という問題が三つからみ合いまして、ああいう激しい価格騰貴が起こったというふうに理解しておるわけでございます。
  88. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 三つの要素の中で、一般の投機的な要素も非常に含まれておる。これはこういうふうなときには、もうわれわれがここで局長に尋ねなくても、すぐここで繭糸価格安定法の中に十条がある。法律でちゃんときめているのです。禁止価格をこえる契約禁止条項として、ここにこまかく書いてあります。こういうふうな処置を早くとらなかったところに原因がある。あのとき、これはたぶん上がるのは六月だろうと思ったのです。それですから、そのときに、局長のほうでよく——これはもういかぬというときには、いろいろ在庫なんかを調べてみるとわかります。買いだめなんか出てくるとすぐわかります。だから、そういうふうなときには、これを早く発動してもらいたい。これを発動したのですか、あるいはしなかったのか、この点はどうですか。
  89. 久宗高

    ○久宗政府委員 これは発動いたしませんでした。と申しますのは、基本的には、取引所におきます取引について、当然つけておくべきブレーキが十分についていなかったという事実がございまして、これは後に、九月にそれをつけたわけでございますが、さような中で、現に取りきめました取引があのような形でいきました際に、もし禁止価格を出しました場合には、その後の混乱がより多く、より複雑になるという考え方に基づきまして、あえてあの禁止規定を出さなかったと同時に、取引所にも直接取引を停止するという方法はとらなかったわけでございます。これはもちろん、その前に十分な事前の準備ができておらなかったという点におきまして、役所の非常なミスでございますが、その後、他の取引所におきましてさような問題が起こりました場合に、これを急激な措置をとったために、あと非常に混乱が長引いた事実もございまして、もしあの時期にあれを発動いたしましたならば、もっと大きな混乱が残ったんじゃないか、現在そういうふうに考えております。今後の問題といたしましては、取引所自体の自動的なブレーキが一応ついておりますので、糸価の安定につきまして、必要な場合におきましては、相当思い切った措置をとらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  90. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 暴落について……。
  91. 久宗高

    ○久宗政府委員 現在とっております非常事態の措置は、暴落に対しましても暴騰に対しましても、結局両建て証拠金という形で、経済的にそれをチェックする方法しかとっておらないわけであります。したがいまして、機能は、暴騰に対しましても暴落に対しましても、ともに同じような形でチェックが働くようになっておるわけでございます。しかし、先ほどお話の出ましたように、暴落の原因のほうに、まだ蚕糸といたしましてはいままで手がついておりませんので、そちらのほうをまず手をつけることが先決ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  92. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 これは先ほどちょっと触れましたけれども、暴落するときに、あの九条の二で、やはり中間でもって輸出の適格生糸を買い上げる——これはやったわけですね。そうしますと、私は判断をする時間が問題だろうと思うのです。この点をひとつお聞かせ願いたい。
  93. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまお尋ねの九条の二と申しますのは、輸出生糸の確保のために、特別に保管会社に買い戻す条件つきで生糸を入れさせるという制度でございます。そこで、本来のたてまえといたしましては、最高価格の場合に、吐き出すものがない場合に、市場にあまり影響させないで、あるいは特に輸出にあまり悪影響なしに政府がとる手段といたしましては、九条の二というものがあるわけでございます。先般六月以降の暴落の過程におきまして、すでに海外の機屋の採算から見てもいい圏内に入りながら、なおかつどんどんそれが下がっていくおそれがございましたので、それを十二月の段階で発動したわけでございます。当時の市価は御承知のとおり、たしか四千七、八百円しておったと思いますが、その段階におきまして四千円で店を開いたわけでございます。それでもうおわかりになっていただけますように、これは政令で非常な制約がついておりまして、へたな買い方をいたしますと、価格のつり上げになったり、あるいは国内の価格はよくても、国外の価格に対しましてそれが非常に高過ぎたりいたしました場合に、輸出を阻害するおそれがございますので、かってな値段で買えないわけでございます。さような意味で、十二月段階では四千円というととで中間買い値をやったわけでございます。その場合、私どもといたしましては、先ほどお触れになりましたような、暴落していく場合の一つのとりでとしての役割りをある程度果たしたものというふうに考えております。
  94. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 どのくらい買い上げて、また今後どういうふうに考えておりますか。
  95. 久宗高

    ○久宗政府委員 十二月段階で発動いたしましたのは、生糸にいたしまして一万俵を受け入れることにいたしたわけでございますが、現在まだ一万俵までは入っておりません。またその上に繭糸価自体の調整規定の発動がございますから、それとからんでおるわけでございますが、現在のところは一万俵の受け入れをしておるわけであります。ただ、大臣が予算委員会でもすでに申し上げておりますが、三月、四月、五月といったところ、つまり、生糸第一年度の最低はきめましたけれども、三月、四月、五月は一体どうなるかという疑念が若干あるわけでございます。これは最低価格をきめました四千円のラインは、この過渡期においても絶対に割らないということを考えておるわけであります。手段といたしましては、当然九条の二のワクの拡大が予想されるわけでございます。ただ、特にお断わりいたしておきたいと思いますことは、その発動の時期なり方法なりにつきましては、糸価の推移を見て考えたいと思います。つまり、不用意に発動いたしました場合には、ちょうど四千円をきめました場合と同じような意味で、現段階価格が名目的につり上がりますことが、輸出の阻害になるということがおそれられるわけでございますので、さような点を考慮いたしまして、一応判断の準備を整えておる次第でございます。
  96. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 十一条に繭価維持のための補充措置、こうしてありますが、これによりますと、農協連合会等の保管とかあるいは売り渡しに対しまして、いろいろの補助政策をやるわけです。そうなると、保管というような形になると、その施設が要るわけですね。たとえば乾繭をするためにどういうふうな施設をやるとか、こういうふうなことが最も大切と思いますけれども、こういう問題につきましては、この法律を生かしていくためにどんな考え方を持っておるか、あるいはいままでこういうふうな処置をしておるというようなことがあったら聞かしてもらいたい。
  97. 久宗高

    ○久宗政府委員 いま御指摘になりました条項の発動は、まだやったことがないようでございます。ただ、蚕繭事業団とも関連しての御質問と思いますが、さような場合の乾繭の施設でございます。理論的には、さようなものが当然用意されてなければならぬという問題になろうと思います。しかし、実際には戦前のような搾取、被搾取が論じられた時代と変わってまいりまして、現在においては、価格についてああいう比例配分的な協調が一応できる体制で考えます。さような場合の施設といたしまして、あらかじめ両方でダブるようなものを広範囲につくっていくということがはたして適当かどうか。すでに相当な経験を経ておられますので、養蚕家と製糸家の間で、あるいは政府が動きます場合のことも含めまして、そういう場合の繭保管についての具体的な申し合わせが、そろそろ相互に相当理解を持って話し得るくらいの経験を経てまいりましたので、私のほうといたしましては、特にそのために特別な、しかも膨大な施設をつくるということは、現在のところ考えておらないわけでございます。
  98. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 価格を安定させることが一番重要な点でありますけれども、私が一番心配するのは、不安定になってきますと、私どもの土地で一つ例をあげてみます。生糸の二次加工業者というものは、一つの製品ができるまでにはいろいろの工程を経てくるわけです。高ければ高いように不安なんですね。また、安くなると安くなったように不安定で、それを買うということを手控えるわけですね。そうすると、第二次加工業者はほとんど相場でもって仕事をしておる。これが大半を占めてくるわけです。これを一番心配するので、そういうふうな不安定が続くと、化学繊維に移ったり、あるいはウールに移ってしまったり、いまそれが出ているのですね。これが非常に心配の点なんですが、この点に対しましてのいわゆる需要増進対策ですか、ここらの点でさらにひとつお考えがありましたらば、お知らせ願いたい。
  99. 久宗高

    ○久宗政府委員 ただいま御指摘いただきました点は、一番弱い点でございまして、従来糸の売り方と申しますか、そういう点の努力が、他の繊維と比べまして格段に見劣りがするわけでございます。役所の指導もまた足りなかったわけでございますが、そこで、生糸そのものの宣伝とか、そういうものはいろいろやっておりますけれども、やはり他の繊維との関連から考えましても、やはりつくった製品をいかに売り込んでうまく買っていただくかという点の努力が、非常に足りなかったように考えますので、さような点を特に注意いたしまして、単なる需要の宣伝以上に、実際の糸を使っていただく場合の利便とか、そういうことにつきまして、真剣な努力を続けたいというふうに考えておるわけであります。
  100. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 今秋のオリンピックですね。これは業界のほうでは、受け入れ体制をやるために、産業界においては商工会議所あたりが中心になって、いま相当PRしておるわけです。工場の参観をこの機会にやらして、そして外貨の獲得をやる、これは非常に熱意に燃えているわけです。ところが、養蚕団体のほうもどういうふうに考えておるかわかりませんけれども、局長としてこのときは非常にチャンスだと思いますので、これを具体的にひとつやろうという計画でもあったら知らせてもらいたい。
  101. 久宗高

    ○久宗政府委員 これは全くいいチャンスでございますので、業界におきましてもいろいろなプランがございます。たとえば養蚕関係では繭を相当持ち寄りまして、それでシルクボックスというものを来た方に持って帰っていただけるような、全国的な運動というようなことまでお考えのようでございますし、また絹業協会その他におきまして、当然予想されるいろいろな催しなり、いろいろな準備が進んでおるわけでございますが、政府といたしましては、これについて私も予算を組みたいと考えたのでございますが、全体のオリンピック関係予算ということで統制を受けましたために、必ずしも所期の予算をとれなかったのは、非常に残念に思っておるわけでございます。ただ、考え方といたしましては、単なる商品としての生糸と申しますよりは、何らかこの機会に、その基礎になります養蚕でございますが、養蚕というのはこういうものだ、生糸というのはこういうものから出てくるんだという感じを多少とも来た方に見ていただくようなことができればという感じを持っておるわけでございます。
  102. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 なるべく急いでいきたいと思います。価格が安定してくると、必然的に繭の再生産というものに希望を持って入ってくる、そういう方向にわれわれがどうしても向けなくちゃなるまいと思います。  そこで、今度は、増産するためには、技術的な問題が非常に関連してくるわけです。人手が非常に少なくて、省力予算をどういうふうにするか、あるいは桑園の集団化をどういうふうにはかったらいいか、国の施策として、やはり養蚕農家に対して今後こういう政策をもってやるんだ、こういうふうなことがあったら、ひとづかいつまんでお示し願いたい。
  103. 久宗高

    ○久宗政府委員 増産に対します一連の施策につきましては、すでに相当年期を入れてやっておりますので、この際繰り返してお話しいたしますよりも、むしろ、この段階で最も力を入れようとしておりますのは、上簇期の労働力をいかに省くかという問題でございまして、これがことしの予算の一つの核になっているわけでございます。御承知のとおり、非常な努力によりまして、養蚕部面におきます省力化は各段階において非常に進歩したわけでございますが、残念ながら、繭の仕上がりますときの期の労働力のピークがまだくずせなかったわけであります。これにつきましても、一応めどがつきましたので、本年それを予算化いたしまして、一挙に相当の勢いの普及をはかりたい。この上簇期の労働のピークがもしくずれるといたしますと、これはいわゆる養蚕の経営拡大に結びつくものでございますし、さらに、従来名目的な労働時間が非常に少なくなったといわれておりましたものが、もっと実質的に農家の所得とも結びつく可能性が出てまいりますので、自然上族と申しますか、上簇期の労働を節約する、これに一番の力を使い、また予算としてもそこを一つの柱にいたしたわけでございます。  それから、それと関連いたしまして、普及員の問題があるわけでございます。従来技術の指導につきまして、多少特異な形をとっておりますために、人員の確保に追われまして、施策的に普及事業の質を高めることがいろいろな意味でできなかったわけでございます。最近の農家のレベルもどんどん上がっておりますし、どうしてもこの普及事業の質を向上いたしまして、またそれに筋金を入れる必要もございましたので、県の指導員関係につきましては、質の向上という考えから、普及手当というものをいま予算のほうにお願いをしておるわけでございます。  また、これと関連いたしまして、現在団体の職員のほうにはこういう普及事業の仕事を委託してやっていただいているわけでございます。普及手当というかっこうではこれとダブるかっこうになりますので、団体の職員のほうの活動強化費というものを初めてここに組みまして、これによりまして、実際の手当に見合うというふうなくらいにこれが感じとっていただけるような運用をはかってまいりたいということで、この二つの予算を出しているわけでございます。
  104. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 普及事業に対しましては、局長から、いろいろの職員の手当とかあるいは技術員の待遇問題についてお話がございましたが、これは農業改良普及員とほとんど変わりがございませんので、これらを同じに取り扱っていかなければならないと私は思うわけです。いま一つは、農業団体の職員でございますけれども、この点についての待遇問題につきましては、身分が保障されていないのですね。だから、この点は今後十分手厚い処遇をしていただきたい。これは私から特に要望しておく次第でございます。  構造改善事業がだんだん進んできますと、地域的に——地域的というのは、全国の視野から見たときの主産地の形成というものは、一体どういうふうにするかというような問題が出てくると私は思うのです。たとえば養蚕地帯というような問題も出てきます。これは非常にむずかしい問題ですけれども、もちろん、果樹というような地帯というものも、全国的に見たときにはそういうふうな関係に必然的に移ってくる。しかしながら、養蚕は、山村振興のためにどうしてもこれはやってもらわなければならないわけです。こういうふうなかね合わせを見まして、山村という地域的な問題、それから全体から見たときの地域的な問題、非常にむずかしい点でありますけれども、何かお考えがありましたならばお聞かせ願いたい。
  105. 久宗高

    ○久宗政府委員 現実の養蚕の動きを見ますと、いわゆる主産地化の傾向をだんだん強めておるように思われます。これを現実の政策の上でどういうふうにとらえるかは、実は非常に問題があるように思います。御質問の中でも、どのくらいの広がりという点を問題にされておると思うのでございますが、私どもといたしまして、かりにこれを相当大きな地域で考えるということになりました場合に、その中におきます他作物との土地利用者の問題とかございまして、予算という角度だけで取り上げるのではどうもまずいのではないか、やはり何らかの総合的な計画と申しますか、現在の構造改善事業よりももう少し幅の広いようなものがあって、それとの関連で考えるような問題ではないかというふうに思っておるわけでございます。  山村の問題が出たわけでございますが、これも実は本年度予算の編成過程でも問題になったわけでございます。この場合におきましても、その中で養蚕が非常に大きな役割りを果たすことは十分わかるわけでございますが、単独で養蚕の施策として持ち出すことがいいかどうか。ちょうどいま、構造改善事業におきましても、あるいは山村問題におきましても、そういうような計画的な検討が進んでおるように思われますので、そのようなものと関連いたしまして養蚕としてのあり方を考えてまいりたいというふうに思っております。
  106. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 構造改善事業の中で、壁に突き当たった問題を一つ実例を示しまして、今後の善処方を願いたい。  それというのは、構造改善事業において、養蚕の地域指定をやろうという村が出るわけです。ところが、それに対しましては、桑園の集団化をどうしてもやっていかなければならぬ。そうすると、必然的に交換分合をやるわけですね。ところが、御存じのように、基盤整備については国と県からの補助金もある。交換分合をするときに、一つの地域から集団地に来るためには、桑園がばらばらにあるわけですから、どうしてもその桑園を整理してこなければならないわけです。そうすると、桑を整理するために、それが対象になっておらない。補助金がそういうふうなところにも出れば、今度はひとつ構造改善事業もやろうじゃないかということになるけれども、そういうものがないために、壁に突き当たって、結局事業指定を返納したという例が、パイロット地区でございましたけれども、あるわけです。したがって、この集団化に対しましては、国のほうでやはり補助金か何かを出してやらなければなるまいと思うが、この点はどうですか。
  107. 久宗高

    ○久宗政府委員 ただいま御指摘の点は、私どもも実はよくのみ込んでおりませんが、いろいろ調べてみますと、どうも不合理の点があるように思います。ただ、他の構造改善との関連もございまして、現在農政局の関係者ともその問題について検討を始めておるわけでございますが、いま補助というようなお話が出たのでありますが、そういう形で考えられるのか。いずれにいたしましても、桑園を集団化いたします場合に、少なくともその個人の問題だけに限定できないように思われるわけでございます。現在の構造改善の中でその点が必ずしもきめられていないように思うわけであります。御趣旨のような問題は頭に置きまして、もう少し研究させていただきたいと考えております。
  108. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 稚蚕共同飼育施設が非常に普及されて、群馬県あたりでも相当数出てきたわけです。そこで、群馬県の予算の中で、三十八年度において約二億近い補助金を出しておる。そういうふうな形で県の財政も容易でないので、国のほうとして、この稚蚕共同飼育施設に対してどういうふうに考えておるか、あるいは補助金を出すとか、何かお考えがありますか、お示し願いたい。
  109. 久宗高

    ○久宗政府委員 稚蚕共同飼育関係につきましては、主として構造改善事業の中で三年までという前提がついておりますけれども、取り上げておるわけでございます。ただ、一般的な構造改善に乗らないような地区におきましては、結局近代化資金を利用していただくということになるわけでございます。その場合に、またたま今度近代化資金のワクが非常にふくらみましたので、さような問題につきまして、相当融資の面に裏打ちができるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  110. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 時間の関係もあるので、これで最後にいたします。  これは臨時行政調査会においてどなたが発言したかわかりませんが、蚕糸局を何か縮小するようなことが漏れ承れば出てきたわけです。きょうは大臣がおりませんから、これは政務次官にひとつお尋ねしたいと思う。先日の全国養蚕大会においては、政務次官も行きまして、私も行ったわけですけれども、蚕糸局の縮小は絶対にやらない、これは拡充してやるんだということを、威勢よくとにかく約束したわけですよ。私どものほうでは非常にこれを心配しております。政務次官として、大臣にかわって、そんなことはないのだ、安心しろ、こういうような御意思がたぶんあると思いますけれども、再確認をしてやってもらいたいと思います。
  111. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 今日養蚕そのものを斜陽のように考えることは、まことに認識不足と私は考えております。それと同情に、外貨獲得の面から考えましても、非常に重要な輸出品であります。なおまた、ときどき政府も方針を変えてきた過去はありますけれども、実際の面から考えまして、農家にとってはたいへん大切な養蚕でございますので、どの面から考えましても、養蚕を軽視するということは、ただいま私の申し上げましたように、適当な考え方ではないし、さような考えを持つことは許されないのでございますから、先回私の申し上げましたように、重ねて大いにひとつ養蚕振興をはかっていくように、また養蚕農家に将来大きな希望を持って、より以上増産に励んでいただくような意味からも、この場合、政府もうんと蚕糸業の強化をはかって、養蚕農家諸君に御協力を申し上げたい、こういう考えでございます。決して御心配のような方向には持ってまいりませんので、御安心願いたいと思います。
  112. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 質問を終わります。
  113. 高見三郎

    高見委員長 次会は明十八日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会