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1964-06-22 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十二日(月曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 辻  寛一君 理事 永山 忠則君    理事 石橋 政嗣君 理事 田口 誠治君    理事 山内  広君       安藤  覺君    岩動 道行君       高瀬  傳君    渡海元三郎君       保科善四郎君   茜ケ久保重光君       中村 高一君    楢崎弥之助君       村山 喜一君    受田 新吉君       永末 英一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官  志賀 清二君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 正孝君         防衛庁参事官         (人事局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (衛生局長)  軽部彌生一君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部会計課長) 大浜 用正君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    鈴木  昇君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤木  幹君         検     事         (訟務局長)  青木 義人君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         海上保安庁長官 今井 榮文君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   渡部  信君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 六月二十二日  委員野呂恭一君、前田正男山田長司君及び山  下榮二君辞任につき、その補欠として渡海元三  郎君、安藤覺君、楢崎弥之助君及び永末英一君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員安藤覺君、渡海元三郎君及び楢崎弥之助君  辞任につき、その補欠として前田正男君、野呂  恭一君及び山田長司君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 六月二十日  水戸対地射爆撃場早期返還に関する陳情書  (第七四四号)  青少年対策に関する陳情書  (  第七四五号)  防衛庁の省昇格に関する陳情書  (第七四  六号)  同  (第七四七号)  自衛隊における差別問題に関する陳情書  (第七四八号)  追浜米海軍航空隊施設返還に関する陳情書  (第七四九号)  追浜米海軍航空隊施設返還等に関する陳情書  (第七五〇  号)  未墾地報償に関する陳情書  (第七九六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一一七号)      ――――◇―――――
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。楢崎称之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一昨日の六月二十日に、時間が十五分間でございましたが、確認したものをもう一度ここで確認をして、先に進みたいと思います。  二十日に確認をした点は、来年度四十年度に福岡県に設置される第ニナイキ大隊の問題でございますが、大体有力候補地としてはすでに決定をしております本部、いわゆる指揮所設置は春日町である。それからあと四つ発射中隊については、久留米高良台、築城、芦屋並びに雁ノ巣を有力候補地として考えておられる。要する敷地面積は、一大隊について大体六万坪ないし九万坪である。そしてすでにその予備設置地元への了解工作は進められておる。それから要員については、関東にすでに置かれております第一ナイキ大隊要員と同じように考えられる。すなわち要員の総員は六百四十八名、本部が百十六名、一発射中隊について百三十三名、以上が考えられる。次に、この第二大隊要員訓練について、つまり派米要員についてお尋ねをいたしました。その点については本日お答えをするということでございます。  大体以上がおととい二十日に確認をした点でございますが、間違いございませんか。
  4. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そのとおりでございます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは要員派米状態について、お答えをいただきたい。
  6. 堀田正孝

    堀田政府委員 一昨日の委員会お尋ねのございました各年別、各月別の員数を申し上げます。  第二次ナイキ大隊集団訓練月別でございますが、昭和三十九年度は合計百十九名、御承知のように三十八年度、三十九年度、四十年度と三カ年にまたがっておりまして、土曜日お答え申し上げましたように、三十九年の一月から出発をいたしまして、四十年の十二月に帰ってくるわけであります。年度別に申し上げますと、三十八年度五名、三十九年度百十九名、内訳は五月八名、六月三十二名、これは正確に出した数字でございますが、七月以降は計画でございます。七月十一、十月八、四十年の一月三十、二月八、三月二十二、こういう計画でございます。それから四十年度は、これは計画でございまして、ただいま業務計画検討中でございますので、この業務計画で問題になり、検討の対象になります数字が、約二百名というふうに御了解いただけたらと思います。なお予算は、三十九年度ナイキ集団計画の経費は一千九百八十七万円、三十八年は八十八万三千円でございます。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは次に進みたいと思います。  このナイキ大隊の国内における訓練でございますが、どのような訓練が行なわれるのか。たとえば実射の訓練はどうなるのですか。
  8. 堀田正孝

    堀田政府委員 ただいま予定いたしております射撃訓練は、アメリカのフォート・ブリス及びマクガイヤの射撃場において実射訓練をするということになっております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは一年間に何回とか、そういう予定を組んでやられるのですか。
  10. 堀田正孝

    堀田政府委員 仰せのとおり、一年一回でございます。三十八年度は、すでに昨年の十一月に出発をいたしまして、一回実射訓練をいたしております。この部隊は、第一次のナイキ部隊でございます。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このアジャックスは、移動可能のやつ、つまり車両をつけて動かせるナイキでございますが、一度設置をしまして、そしていざというときには最も効果的なところに移動をして発射をするというふうになっておると聞いておりますが、そうですか。
  12. 海原治

    海原政府委員 ただいま先生指摘のとおり、このナイキ部隊は、一応それぞれの部隊に配備いたしますが、有事の場合には、もよりのあらかじめ予定されます地点移動をして、そこで発射するということが考え方基礎でございます。したがいまして、といたしましては、大体二十四時間で移動可能な状態に持っていくだけの車両というものを準備している、こういう次第でございます。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、この移動範囲というものは、あらかじめ、御説明のありました一発射中隊に要する敷地面積六万坪ないし九万坪の範囲内で移動をするようになるのでしょうか。それともそれとは関係なく、一たん有事の際はどこへでも移動するということになるのでしょうか。
  14. 海原治

    海原政府委員 有事の場合に移動が可能な際の敷地でございますが、これは先日申し上げました、いま先生のおっしゃいました六万坪という基準には必ずしも関係ございません。当時の状況によりまして一番よいと思われる場所をあらかじめ選定しておきまして、そこへ持っていくわけでございますから、平時に配備しておくだけの十分な基準というものが取得できないということも考えねばなりません。したがいまして、その辺のところは臨機応変な対策をとる、こういうふうに考えています。なお、有事の場合に移動を行なう余裕がない場合に、その場所において行動をとるということも、万一の場合としては考えられる。これもあらかじめ申し上げておきます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、一応設置予定地は、先ほど申し上げたような候補地になるわけですが、一たん有事の際はどこへ行くかわからないということになるのでしょうか。この中隊についてはこの場所が一番いいという場所はあらかじめ選定されて——それは機密上発表されるかどうか知らないが、あらかじめそれを選定されておって、いざというときにはそこに行くための訓練は、常時されるのですか。
  16. 海原治

    海原政府委員 有事の際に移動いたします場合に問題となりますのは、これも先般御説明したと思いますが、四つ中隊の受け持ちますそれぞれのレーダー範囲がございます。御存じのように、レーダーが主として攻撃の前提として使われますものですから、レーダーのいわゆるカバレージ、どういうふうに組み合わせした場合にそのレーダーが最も有効に働くかという、純粋に軍事技術的な検討というものが基礎になりますので、どこへでも行くというふうにはまいりません。したがいまして、かりに北九州防衛ということを考えました場合には、この四つ中隊がお互いに関連しつつ最も効果的な防御ができるような地点を選ばねばならない。したがいまして、これにつきましては、現実の問題といたしましては、あらかじめ図上で十分検討しておいて、これに従って有事の場合に配置する、こういうことに相なる次第でございます。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと私の質問で一点だけお答えがなかったのですが、そうすると、適当な場所をあらかじめ選定をしておって、そこに移動する訓練は絶えず行なわれるわけでしょうか。
  18. 海原治

    海原政府委員 当分の間は、まだそこまでの訓練は実施できない、こういうふうに考えております。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いずれその広範囲にわたる移動訓練が行なわれるということになりましょうか。
  20. 海原治

    海原政府委員 将来の問題としましては、いま先生指摘のような方向に持っていきたいと考えておりますけれども、しかし、そのためには訓練を実施する場所取得先決でございます。したがいまして、そういうような移動予定地取得ができ、その訓練が行なわれるというような条件ができました場合には、そういうことを常時やってまいりたい、こう考えておりますが、現実の問題としましては、ここ二、三年以内にそういうことが行なわれるというふうには判断いたしておりません。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ここ二、三年の間はそうかもしれませんが、二、三年を過ぎると、その移動訓練のための敷地と申しますか、あるいは通過のためのいろいろな事務的な折衝、そういったものがやがて行なわれるということになるのでしょうか。
  22. 海原治

    海原政府委員 将来のことでございますので、私からここではっきりお答え申し上げられないのでございますが、考え方としては、将来そういう方向に持っていきたい、こういうことを事務当局としては一応計画を持っております。こういう段階でございます。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは少しおかしいんじゃないでしょうか。役に立たせるためにアジャックスを持ってくるんだから、アジャックス最高度にその機能を発揮し得るようにやるのが当然で、将来のことば言えませんというようなことは、おかしいんじゃないでしょうか。最高度に発揮するように移動についても行なうということじゃないのでしょうか。
  24. 海原治

    海原政府委員 趣旨としてはまことにそのとおりでございます。ただ先ほど申しましたように、場所取得等になりますと、まずナイキ部隊を配置しまして、ナイキというのはどういうものか、地元方々の御認識をいただくことが、私どもとしては先決だと思っております。そういうことでございませんと、たとえばナイキ部隊のための演習場であるということになりますと、いろいろと、私ども考えていないような事態を想定されました反対運動等も起こってまいることも予想されますので、私どもといたしましては、まずとりあえず部隊というものを配置して、こういう部隊であるということを地元の方によく認識していただきまして、その後に、先ほど来御指摘のような訓練というものを、その条件ができるならば、そういう方向でやっていきたい、こういうことでございます。将来のことは、今日ただいまどうこうするということを申し上げられるような段階に至っておりません。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、ただいままでの答弁で結論をつけますと、一応常時設置場所はきめるが、一たん有事の際を考えると、そのための訓練が必要であるし、一番効果的なところに適時移動をする。そうすると、福岡県外にはみ出るのかどうか知りませんが、要するに発射場所というものは限定されずに、どこへでも行って発射をする、一番効果的なところへ行って発射するということになると思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  26. 海原治

    海原政府委員 一番効果的なところへ行ってということは、先ほど私が御説明しましたような四個中隊というものの相互関係において御理解願いたいと思います。これはあくまで四つ中隊というものが、三百六十度四方を考えまして展開する次第でございます。そういう四つ中隊相関関係において最も効果的な態勢をとり得るような場所をまず選定するということが、先でございます。これにつきましては、何分にも私どもは、まだナイキ部隊につきましての経験が浅うございます。したがいまして、今後十分レーダー相互関係あたりも勉強しまして、それを適地を選定いたして、それから先ほど申しましたようなところに持っていきたいというように考えておる次第でございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官お尋ねいたしますが、一昨日も地元了解を得るという態度で進められておるようでございますが、もし設置予定地町議会なりあるいは市議会なりが、議会として設置されては困るという反対の決議を行なった際には、どのようにお進めになるおつもりでございましょうか。
  28. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 この前お答えしましたように、まだ最終的に決定いたしておりません。したがって、仮定の問題となるわけでありますが、万一この点が一番いい場所であると内定した場合に、地元折衝に入るわけであります。いま御指摘のように、地元町議会その他が正式に反対された場合には、説得するよう努力いたして、何とかして合意に達して円満に設置いたしたい、こう考えております。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もし最終的に説得工作が成功しない場合は、国有地であれば、万やむを得ず設置に踏み切るということもあり得るわけですか。
  30. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 大体北九州防空体制その他広範の立場から御説得申し上げれば、おそらくは地元の方も御納得いただけるのではないかという考えを持っておりますので、そこまでは考えておりません。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの長官のお話を聞きますと、あくまでも了解をつけた上で、了解がついた上で設置をするというふうに承りましたが、それでよろしゅうございますね。  それでは先に進みたいと思います。聞くところによりますと、アジャックスはすでに生産を停止されておるというふうに聞きました。ストックはどのくらいあるか知りませんが、そのように聞いておりますが、間違いありませんか。
  32. 海原治

    海原政府委員 アジャックスといたしましては、一般生産は停止されております。ただ、現在アジャックスは、アメリカの本土の防空にはなお使用されております。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、これは発表できるかどうか知りませんが、アジャックスのたまは、一発射機について大体何発くらい用意されておりますか。
  34. 海原治

    海原政府委員 一発射機ということでございませんで、一応一個大隊単位お答えすることをお許しいただきますが、一個大隊といたしまして、実際に使用できるものといたしましては、七十二発を用意する予定でございます。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、一個大隊について一中隊九基置く予定でございますから、四個中隊だと三十六基、そうすると、発射機一基についていまお答えの七十二発であれば、一基について二発しか一応持つ予定になっていないことになりますね。
  36. 海原治

    海原政府委員 私が一個大隊単位と申し上げましたのは、その中隊現実に、いまおっしゃいました一基当たり二発が配置されるか、それと一部は予備として持つか、その辺のところは別個の問題でございますので、一応当初一個大隊を編成します場合には、七十二発を用意する考えであるということを申し上げたのであります。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、これは一たん有事の際に使うために置かれるのですから、使わないに越したことはないでしょうが、使う場合を想定しなくては話になりませんから、七十二発というのは、たいへん少ない数だと思います。一体米国にどのくらいストックがいまあるでしょう。
  38. 海原治

    海原政府委員 米軍の弾薬の準備状況は軍事極秘でございますので、私どもも詳細は承知いたしておりません。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、先行き全く不明、しかもこれは生産を停止されておるという状態でありますね。そしてこのアジャックス発射機ユニバーサル型ランチャーは、御承知のように、核弾頭をつけたハーキュリーズを飛ばせることができる併用型であります。したがって、これは現実の問題として第三次防とも関連がございましょうが、やがてこれはハーキュリーズを持ち込まなくてはならないという段階が予想されますが、どうでしょう。   〔委員長退席、 伊能委員長代理着席
  40. 海原治

    海原政府委員 アメリカにおきましてストックがゼロではないかという、まず御質問のようでございますが、アメリカにおきましては、先ほど申しましたように、現在州兵部隊装備になっておりまして、ほとんど全部ハーキュリーズにかわる予定であります。その後におきまして、現在持っておりますアジャックス弾頭というものはどうなるか、これにつきましては、いろいろの推測がございますが、私どもはこのアジャックスミサイルそのものが、全然補給されないものであるというふうには考えておりません。  その次に、発射機ユニバーサル型であるから、ハーキュリーズを持ち込むのであろうという御質問でございますが、この発射機そのものは、一般ユニバーサル型といわれております。しかし、この発射機を使いましてハーキュリーズ発射するためには、なお若干の補助の装具を使用いたしませんと、ハーキュリーズ発射できないような仕組みになっております。したがいまして、いまのユニバーサル型発射機を使って直ちにハーキュリーズを撃てるというものではございません。今後の問題といたしましては、これは第三次防において検討されることになると思いますが、一部におきまして、このハーキュリーズ普通弾頭のものを採用したいという考え方があることは、事実でございます。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、大体周囲の客観的な条件考えますと、アジャックスはもう生産停止ですから、しかも発射機は幸いにしてハーキュリーズも飛ばせる発射機でございますから、現実防衛庁の中で、三次防で普通弾頭ハーキュリーズ採用という考え方が有力にあるということを考え合わせますと、これはわれわれとしては、当然三次防においては、ナイキを入れる際にはハーキュリーズを、こうなってこようと思うわけです。  そこで時間が限られておりますから、問題を変えまして、昨年の十二月七日に、東京地裁の民事第二十四部古関裁判長係で係争になりました、国側を相手方とする下田さんはじめ五名の方々損害賠償請求事件判決がおりております。これは損害賠償請求事件としては、原告の敗訴になって、形式的には国側の勝訴になっておりますが、しかし、その判決の中に指摘をされておりますいわゆる広島、長崎の原爆は、これは軍事目標主義あるいは害敵手段制限をするという戦時国際法に違反するものだという断定が下されておりますが、被告でございました法務省のこの判決に対する御見解を承りたいと思います。
  42. 青木義人

    青木政府委員 あの事件におきまして、国側といたしましては、原子爆弾使用あるいは原子爆弾投下自体国際法違反ということは、その当時の実定国際法の面からは直ちに断定しがたいのじゃないかと思います。かように考えて応答しておったわけであります。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そのときはそういう抗弁を国がしておるのは知っております。出された判決についてどういう見解をとられておりますかということを聞いておるのです。
  44. 青木義人

    青木政府委員 現在まだ各国間の諸条約がそこまで進んでおりませんし、明確にいたした実定国際法規も現在のところないわけであります。また、この問題につきましては、いろいろと国際法学者の間においても、いまだにまだ定説がないわけでございます。したがいまして私ども、現在といたしまして、純法律論として国際法違反だというふうに断定するわけにはいかないのじゃないか、かように考えております。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いわゆる原水爆を禁止する実定国際法はありません。やっと部分核停の条約が成立したくらいです。しかし、その指向している方向は、当然明確になっているわけです。すなわち、国際法精神なり、いわゆる現実にある実定国際法条約の解釈なり、あるいは類推適用なり、あるいは慣習法なり、そういう法の精神、あるいは拡大解釈類推解釈からいくと、当然この判決は正当のものである、特に原爆の被害を受けた日本国民として、この判決は当然の判決であるというふうにわれわれは受け取るわけですが、国側はそうは受け取らないわけですか。
  46. 青木義人

    青木政府委員 もちろん核兵器使用ということは望ましいことではありませんし、また従来から、政府といたしまして、核兵器禁止ということを念願とされておることも、私ども十分承知しております。したがって、将来核兵器使用についての制限が、国際協定によって実を結んでいくということを念願といたしておるわけでございます。ただ私ども、先ほど申し上げましたように、その当時の実定国際法規から、直ちに国際法違反だ、こういうふうに断定できるかどうかとなると、相当問題じゃないか、かように思っておるわけであります。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、昨年の十二月七日のこの判決精神を尊重されますか、されませんか、国側は。
  48. 青木義人

    青木政府委員 私のほうは、訴訟をやっておる法律技術家でありますから、全般的な大きな見地から国政をどういうふうに考えてまいるかということは、私どものほうといたしましては、少しく任務からはずれるように感じますので、いまの程度でごかんべん願いたいと思います。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いわゆる事務担当だからそれ以上のお答えはできないということのようですから、池田内閣防衛の責任を持っておられます。あるいは核弾頭使用し得る兵器が続々と日本に入ってくることを容認されておる防衛庁長官としては、ただいまの論議をお聞きになりまして、十二月七日のこの判決池田内閣としては尊重をされますかどうですか、大臣のお考えを承りたいと思います。
  50. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 法的解釈から申しましても、国際的に議論があると伺っておりますし、法務省側の専門的な意見も、まだ最終的な結論は出ておらないようであります。しかし、その精神について尊重することは、私は当然と考えます。同時に、また、しばしば国会におきましてもお答えいたしておりますとおりでありまして、かりに第三次防計画におきまして、ハーキュリーズの性能という点から見て、採用とかりにきまりましても、核弾頭使用することは絶対にしてはならない。これは先般来国会におきましてお答え申し上げておるとおりであります。こういう点から申しましても、核実験禁止並びに核兵器使用禁止については、われわれ政府側としては一貫した政策を今後もかたく守っていきたいと考えております。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 聞かない点までもお答えいただきましたから、いまの御答弁に関連をしてお伺いをしたいのですが、自衛隊としては、自衛のための核兵器は持ち込んでも、憲法上は違憲ではない。ただ政策として持ち込まないのだ。そのようなお考えですか。
  52. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 法理論的には可能でありましても政策的にしないという見解は、二つの面から見る必要があろうと思います。私ども考えている、いままでとっております態度は、仰せのとおりであります。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私のいま言ったことばをよく覚えておいてください。自衛のためには核兵器も持ち込んでいい。これは違憲ではない。前段はそうです。政策上持ち込まないのだ。そうですか。
  54. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 前段の自衛という意味が、私はやはり厳格に解釈すべきではないか。この点でもう少し具体的な問題になりませんとはっきりお答えできませんが、抽象的に申しますと、そのとおりであります。法理論的には、違憲でない場合も当然考えられる。しかし、そういう場合でも、よしんば違憲でなくても、合法性があっても、合憲性があっても、政策的には断じてこれを使用してはならぬ、こういう考えでございます。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私があえて自衛のためと申し上げましたのは、いままで国側は、攻撃用の核兵器を持ち込むことは違憲だけれども、防御用の核兵器を持ち込むことは違憲でないというような御見解でありました。しかし、せんだっての予算委員会の論議を通じましても、防御用あるいは攻撃用といっても、そのときの環境なり条件によってこれはきめられることで、そういう定義をすることはなかなかむずかしいという御見解のようでしたから、結局は核兵器全般について、核兵器というものについて、自衛のためだったら、防御のためだったら、持ち込んでも違憲ではないということになると思いますが、それをいま確認しておきます。そうですか。
  56. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そのとおりであります。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、いままでの政府側見解がさらに一歩進んで、いままでは防御用の核兵器は持ち込んでもいい、違憲ではないということでございましたが、きょうの御答弁では、核兵器一般について、自衛のためと考えれば持ち込んでも違憲ではない、こういうふうに受け取れる。私はそれを一貫していままでずっと言っております。
  58. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま楢崎委員の御質問の最初の形容詞の中に、攻撃性を持たなければという条件つきでございました。そのために、私はそのとおりと申し上げたわけでございまして、あくまで自衛である以上は、自衛権の解釈は攻撃的な性質を持ってはならない、と同時に敵に脅威を与えるというものも含んではならない、こういう条件つきでございます。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、自衛のため、防御のためなら、核兵器を持ち込んでも遠慮ではない、こういうことですね。——では私が最初から言っていることと変わらない。  そこで、三次防で考えられるハーキュリーズは、普通弾頭であるから、これは持ち込んでも違憲ではない、かようにお考えですか。
  60. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 まだハーキュリーズ採用するかどうか検討中でありますから、仮定の問題になりますが、御質問の点は、ハーキュリーズの性能自体が、アジャックスに比べますとはるかに優秀であることは、御承知のとおりであります。しかし、これがあくまで核弾頭使用せず、しかも純然たる防空、防御用のものであるならば、違憲ではないと考えております。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのお答えでいきますと、ハーキュリーズは、核弾頭をつけ得ます。核弾頭がつけられたらこれは核兵器、つけないから、普通弾頭だから核兵器ではない、このような御見解ですか。
  62. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 実際問題として、また政策問題の面からいいますならば、防御用だろうが攻撃用だろうが、私は、核弾頭をつけるべきじゃない、またつけではならない、こう考えております。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、ハーキュリーズの場合は、ハーキュリーズ用の核弾頭がすぐつけられる状態にある場合には、ハーキュリーズ核兵器になるのですか。現実ハーキュリーズ核弾頭がついておって初めて核兵器になるのですか。それともつけられる状態にあった場合は、核兵器になるのですか。
  64. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 つけた場合に初めて核兵器になるわけであります。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうですか。そうしますと、つけられる状態にあるけれども、そばに置いてあるけれども、つけてないからそれは核兵器じゃないという御見解ですか。
  66. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そばにあるかないかで、それは大きな問題になると思います。そばにあれば直ちに核兵器になり得るわけでありますが、私どもは持ち込みませんから、その御懸念は要らぬと思います。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 核弾頭をいつでもつけ得る状態にある場合には、核兵器になるわけですね。
  68. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 核弾頭をつければすぐにこれは核兵器になることは、御指摘のとおりでございます。したがって、核兵器になり得る可能性というものと、核兵器であるかどうかということは、別問題であろうと思います。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、このハーキュリーズは、いつでも核兵器に転化し得る兵器であると解してよろしゅうございますか。
  70. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 転化する意思があれば、そういう可能性が出てまいります。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、その辺が大事であろうと思います。核弾頭がついておるから核兵器核弾頭がたまたまつけてないから核兵器ではない。私は、核弾頭がいつでもつけ得る兵器であれば核兵器である、このように思うわけです。その辺にいわゆる核兵器についてのごまかしがあるのではなかろうか。いまの時代ですから、核弾頭は瞬時に持ってこられる。では、福岡と沖繩の距離を考えてごらんなさい。ジェット機で何分かかりますか。ハーキュリーズをもし置いた場合、いざというときには、すぐ核弾頭を沖繩から持ってこられます。それでもこのハーキュリーズ核兵器ではないとおっしゃいますか。可能性を私は言っておるのです。
  72. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 核弾頭をつけない以上は、あくまで核兵器ではありません。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、このハーキュリーズにしても、あるいはF105にしても、核弾頭をいつでも積み込み得る状態にある、これは核兵器だと思うのです。ただそれが実動するかどうかできまらないと思う。つけ得る状態にあるものは核兵器である。たまがどこにあるかは問題でありません。北海道のすみでも、日本の国内です。日本の国内に核兵器のたまがあれば、私は、ハーキュリーズ核兵器になると思う。たまたま福岡と沖繩を比べてごらんなさい。距離的には近いです。だから、問題は、核弾頭をつけておるかどうかで核兵器になるかどうかがきまるのではなしに、つけ得る状態にあるということが、私は核兵器であると思う。そういう点で私は、このナイキアジャックス生産停止されておるし、今後このナイキ大隊を生かそうと思えば、当然将来三次防においてハーキュリーズ考えられる。これは完全なる核兵器の持ち込みである。このように思わざるを得ません。これはっけないから核兵器ではないという国側の御見解と対立するところですが、この点は、私は明確に指摘をしておきたいと思います。  なお、時間が四十五分と限られておりますから、最後に一点だけお伺いをいたしておきますが、板付基地の将来の見通しについて、まだ判然としないのでしょうか、その点だけ承っておきたいと思います。
  74. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 昨年末の日米の共同発表でおわかりのとおりでありまして、板付基地からの大規模な空軍の兵力移動がございまして、その際にいろいろ話し合った結果、米軍側といたしましては、訓練用並びに予備的な前進基地として今後も使用いたしたい、こういう話し合いで現在に至っておるわけであります。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、板付の性格は、今後とも当分変わらないということでございますか。
  76. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 機能なり規模はだいぶ縮小されますが、基地としての性格自体は変わっておりません。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 せんだってF104が新田原から飛んでまいりまして、非常に大きな爆音で、また105が帰ってきたかと市民はみんな騒ぎました。これはスクランブルの訓練をなさっておるのだと思うのですが、十月一日以降アメリカの102がスクランブルをやめて、その後の十月一日以降はスクランブルのために104なりあるいは86が板付を使うことになるのでしょうか。それとも全然使わずに、新田原あるいは築城からスクランブルに飛ぶ。所属は築城なり新田原にありましょうが、実際にスクランブル用の六、七機というのは、板付に常駐をするのでしょうか、どうでしょうか。
  78. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 十月一日以降は、新田原のわが航空自衛隊の104がスクランブルに当たりますから、米軍はこれに従いません。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いえ、私が聞いておるのは、スクランブルのために飛びましょうが、しかし、所属は新田原であっても、その新田原所属の104が、板付基地に常時六、七機所在するのでしょうか、それを聞いているのです。
  80. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 新田原に新しい104の部隊設置されますので、板付は使いません。
  81. 海原治

    海原政府委員 ただいまの大臣の御説明をちょっと補足さしていただきますが、F104のスクランブルは、全部新田原から実施いたします。新田原の部隊が枝付に参りまして、そこからスクランブルをするということは考えておりません。全部新田原の基地からスクランブル態勢をとります。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、せんだって104Jが板付に発着したのは、一応104Jで板付に発着し得るかどうか、訓練のために、避難とかそういうことのために板付を使われたのですか。
  83. 海原治

    海原政府委員 九州でスクランブルを実施いたしますパイロットにとりましては、九州及びその付近の飛行場の状況を十分に知っておく必要がございます。したがいまして、たとえばスクランブルに上がりました場合に、天候が悪くなってまいる、あるいは燃料がなくなってまいるということがございますので、パイロットには全部、104の使える飛行場には一応、いわゆる慣熟と申しておりますが、それになれるための訓練飛行を実施させますので、今後も間々板付に参ることはあろうか、こういうように考えます。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎委員 終わります。
  85. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 石橋政嗣君
  86. 石橋政嗣

    ○石橋委員 本日は、大きく分けまして、二つの問題についてお伺いをしたいと思うわけです。一つは、最近李ライン問題に関連いたしまして、いわゆる怪船事件以来、政府が非常に刺激的な放棄をとっております。これに関連する諸問題、いま一つは、昨年の十二月三十一日、いわゆるプレストン声明が出されました以後において、在日米軍の配置転換が行なわれておるわけですが、それによって起きてまいります諸問題、この二つについてお尋ねをしてみたいと思うのですが、海上保安庁の方来ておりますか。——それじゃ李ラインの問題から先に入りたいと思うわけです。  これに入ります前に、前に本委員会で私御質問をいたしまして、まだ回答をいただいておらない問題がございますから、その点から解明をしてまいりたいと思うわけです。  すでに申し上げたとおり、憲法調査会の第三委員会に参考人として出席いたしました元自衛艦隊司令の吉田海将が、証言いたしております。これについてのお答えを最初に願いたいわけですけれども、この吉田参考人のお話によりますと、李ラインに接近いたしまして、いわゆる漁船の保護という立場に立った訓練をやったことがある、こういうことを言われておるわけですが、この事実を確認されましたかどうか。あるいはそれ以後において、同様のことが行なわれた事実があるかどうか。これから最初にお答えを願いたいと思います。
  87. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いろいろ事実を調べたのでございますが、真相は、吉田参考人の発言とだいぶ事実が違っておるようでございます。問題が大半でありますから、少し具体的に申し上げますが、昭和二十八年の秋に、吉田軍司令を中心とした第一船隊が、日本周辺の巡航訓練の一環として、舞鶴から佐世保までの訓練航行を行なっております。航路が、対馬の南端の豆酸崎に向かって西進、同地域の沖合いで南に進路を変更して佐世保に達しております。純粋なる訓練の航海であったと認定されます。したがって、李ラインからはかなり距離的にも離れた海面を航行しておりますし、しかも、航行の時刻も午前一時ころであります。その前後に訓練行動の予定はなく、また実際やっておりません。その後の訓練でありますが、昭和三十四年、それから三十七年、二回ばかり対馬の東方の訓練が行なわれておる、これが事実でございます。
  88. 石橋政嗣

    ○石橋委員 吉田参考人の発言は事実と異なるとおっしゃいますけれども、憲法調査会というのは、御承知のとおり、非常に重要な使命を持っておるわけです。この調査会におけるいろいろな意見が集約されて、今度答申が出されようというわけです。いわば憲法改正という基本的な問題につながっておるわけです。そういう場所において、少なくとも元自衛艦隊司令ともあろう者が、事実と異なるような証言をしておるということになると、これは問題だと思います。先日も紹介いたしましたように、この委員会におきまして、大石委員が「日本の漁船団があそこら辺に出ているときは、やっぱり海上自衛隊としてはいつどんなことがあるかわからないから、絶えず近くにおって見張っているということもあるのでしょうね。ないものでしょうか。」こういう問いを発したのに対して、吉田参考人は「私の艦隊司令のときにはやったことがありますがね。ラインに相当近接して全艦隊が訓練行動したのでありますが幸いに漁船の事故も皆無でした。」明確に言っているのですよ。漁船の保護を目的として、名目は訓練ではあるけれども、ラインに相当近接して全艦隊は動いた。そうしたら、その間だけは無事故であった。こういう証言をしておるのですよ。だから、ときどきそういうことをやりさえすれば、そういう事故などというものは起きないのだと言わぬばかりの証言をしている。これが間違いだということならば、おそらくこの委員諸君は、間違いだと思ってないわけですから、責任のある者がそういうふうに言っているのですから、なるほどそういえば、そういうことをやればいいのだなというふうに間違った方向に引っぱっていかれるじゃありませんか。これは非常に問題だと思います。こういう不見識な、うそ八百の証言に基づいた憲法調査会の報告などというものは、信用できないということにすらなりますよ。もう少し責任のある発言をしてもらいたいと思うのですが、これはいま現役じゃないから、あなたに文句言っても始まらないかもしれませんけれども、憲法調査会における証言などというものは信用できないということを知った点においては、私ども意義があると思う。こんなでたらめを平気で言っている。しかも、自衛艦隊司令までつとめた男が、こんなでたらめを公の場で平気で言っている——いまの大臣の事実じゃないということになれば、こういうことになるのですよ。しかも、この認識の中には、この間申し上げたように、法律的にも疑義があるわけです。「私のやったのは一週間位でございますが、其の間事故は絶無だった。その時でも正当防衛の手段をとることはできたでありましょうけれども。」こんなことまで言っているのです。単なる訓練で出て行って、直接艦隊が攻撃されたならばいざ知らず、漁船に対して捕獲とかその他の行為が行なわれたときに、自衛隊そのものに正当防衛権がありますか。この点についてはどうですか。
  89. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 何と言いましても、いわゆる吉田参考人の陳述したケース自体が、十年前でございます。ちょうど海上自衛隊発足当時でございまして、いわば沿岸警備あるいは海上警備についても、相当いまと違っておった観念があったかもしれません。何と言っても十年前のことでありまするから、私ども具体的には詳細にそこまでは確信がございませんが、遺憾ながら参考人の答えている事実は、だいぶ変わっておるようであります。相当具体的に調べた結果でありまして、誇張した面もあるようでありますし、また具体的に少し事実とはずれた点もあったようでありまして、この点は具体的事実だけを申し上げたわけであります。なお、海上のいまの自衛権の問題でございますが、戦前の帝国海軍には、御承知のとおり、艦船服務規程がありまして、相当はっきりした明確な委任事項の権限が与えられております。艦長その他がいろいろと行動できたわけでございますが、現在はそういうものがございません。したがいまして、非常に厳格に、そしてまた慎重に取り扱うことは、石橋委員の御案内のとおりであります。
  90. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この点は事実と違っておったとかいうような問題でないわけですね。実際に行動を起こしております艦隊の最高責任者が、法律によって与えられておらない権限を自分が持っておるかのごとき錯誤に陥っておる。これはたいへんな問題ですよ。実際に正当防衛権を発動しようと思えば、海上における人命もしくは財産の保護、そういう目的を持って出動しておるという場合以外にないのです。しかもそういう目的を持って出動する場合というのは、総理大臣の承認を得て長官の命令でやらなければいかぬ。単なる訓練をやっているときに、正当防衛権というようなものがあるはずはない。こういう重大な法律的な基本のことをすら知らないで、のこのこ李ラインの近くで訓練をやった。重大な事態を引き起こすおそれがあるわけです。よもや最近の自衛隊の司令官にそんな愚かな人はおらないと思いますけれども、かつておったということは明確でございますから、厳重に、ひとつ明確にこの点は御指示方を願いたいと思います。   〔発言する者あり〕
  91. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 静粛に。
  92. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そこで問題は、海上における人命もしくは財産の保護という任務ですが、これは本来自衛隊が持っておるのではなくて、海上保安庁が持っておるものだと私は認識いたしておりますが、この点いかがですか。
  93. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 特別の場合以外は、おっしゃるとおりでございます。
  94. 石橋政嗣

    ○石橋委員 ところがいろいろこの点について自衛隊と海上保安庁との関係で、法律的にも、あるいは事実関係からいっても、疑問の点が多々ありますので、これをただしてまいりたいと思うわけです。  冒頭に申し上げましたように、最近、五月三十日ですか、いわゆる怪船事件というのが出ております。いまさら私から申し上げるまでもないと思うのですが、対馬沖の三ツ島北方二百メートル付近の海上に、えたいの知れない、おそらく韓国の船ではなかろうかと思われる怪船があらわれた。そこで海上保安庁から海上保安官五人が、この船に出向いて立ち入り検査をしようとした。ところが、自動小銃や拳銃を突きつけられて、やむを得ず退船をした、こういう事件のあらましだったと思うのですが、ところが、この事件が起きるや、閣議が再三にわたって開かれ、非常に強硬な措置が打ち出されているようなんです。私は、どうもここでふに落ちないのです。このような微妙な国際関係の問題を、事実も確かめないままにものすごく強硬な措置を講じようとしている。実際に閣議が開かれた六月二日ないし六月五日においては、確認されておらない事実がその後出てきておりますでしょう。たとえば典型的な例でございますけれども、実は海上保安官が乗り込んだ。私服で行っておった。しかも拳銃をかまえていって暴発までやっておる。こんなことは全然確認されないまま、強硬措置が先に出てきておる。私どもはふしぎでしようがないのですよ。こんな不見識なことが行なわれていいのだろうか。それからまだはっきりしてはおらないのですが、新たな情報も出てきております。たとえば、この船は韓国の税関に所属する船ではなかろうか、こういう事実すら言われておるわけです。保安庁としては、この一連の事実を確認しないままに、非常に強硬な線を打ち出してきたのは、他に意図があるのじゃないかと私たちは思うのですが、いかがですか。
  95. 今井榮文

    ○今井政府委員 他に意図があるかという点につきましては、全然そういう意図はございまん。先生の御指摘の六月五日の閣議に、運輸省として決定いたしました線を御報告申し上げて御了承を得たわけでございますが、私どもとしては、あくまでも当時の御報告申し上げました線、文書にもございますように、悪質な領海侵犯事犯に対応して、海上の警察権を厳正に執行するというたてまえで巡視艇に軽武装せしめるということを決定したわけでございまして、全く他に意図はございません。
  96. 石橋政嗣

    ○石橋委員 他に意図はないとおっしゃいますけれども、海上保安庁にないというならば、私は、政府、閣議にあったのか、こう言いたいのですよ。事実を確かめるという努力をしていなじゃないですか。これは国務大臣として福田長官もあとでお尋ねしますから、よく聞いておいていただきたいのですけれども、それではその後出てきたと思われる事実について一つ一つお尋ねしますけれども、最初この有田船長以下五人の海上保安官が立ち入り検査に出向いたとき、漁船をチャーターしておったということだけは、閣議以前において確認されておりました。私服で行ったということは、確認されておりましたか。漁民に化けて行ったということは、確認されておりましたか。
  97. 今井榮文

    ○今井政府委員 漁民の着る雨がっぱを着ていったということでございますので、一応漁民に扮装していったというふうには考えております。
  98. 石橋政嗣

    ○石橋委員 自動小銃並びに拳銃を突きつけられたということは確認されておったのですが、その前に日本側、この立ち入り検査に出向いた者が拳銃を擬して、しかも暴発をやっておったという事実は、確認されておりましたか。
  99. 今井榮文

    ○今井政府委員 その点は、後ほど出てきた問題でございます。
  100. 石橋政嗣

    ○石橋委員 こういう重要なものが確認されていない。向こうから自動小銃を突きつけられたような印象を、一般国民も全部受けておる。ところが、実際その後判明したのは、こっちのほうがさきに漁船に乗っていって、しかも漁民に扮していって、そうして拳銃を突きつけておって、暴発しておる。それに刺激されて、向こうは対抗的に自動小銃なり拳銃なりを突きつけてきた、こういうことがわかってきた。しかも、その際、日本側は拳銃を取り上げられていますね。ほかの漁船を通じて返還されておる、こういうこともはっきりしてまいりました。それからもう一つ、怪船怪船と、何かそれこそ密貿易船か海賊船かのように言われておる。ところが、これも事実をあまり発表したがらないようでありますが、正体は韓国税関監視船光明号かというふうに言われておる。第七管区の保安部長の話の中でも、怪船は税関艇または警察艇という推定は成り立つだろう、こう言っております。この点は確認されましたか。
  101. 今井榮文

    ○今井政府委員 当時の怪船の正体というものについては、まだ私どもとしては明確に把握いたしておりません。
  102. 石橋政嗣

    ○石橋委員 以上私の知る限りでも、その後続々と事実が出ておるのです。ところが、そういうものを何も把握しないうちに、非常に強硬な世論を巻き起こし、閣議はいち早く総理大臣の指示によって、こういった一連の不祥事件をなくすために海上警察を強化する必要があると指示をした。これを受けて運輸省でも海上警察強化策なるものをつくり上げて、現実に行動を起こしております。あなたが幾ら他に意図はないと言ってみたところで、やっていることを見ていますと、他に意図があるのじゃなかろうかと疑問を持つようなことをやっておるのです。事実も確かめない、外交的な折衝も持たないで、そうしておいて、さあ武器を積まなくちゃいかぬ、必要とあれば威嚇射撃もやらなければいかぬ、そんなことばかりが突き進んでいく。真剣にこの国際紛争を、日本側の有利という前提ではありますけれども、円満裏に片づけていこうという姿勢はないじゃないですか。とにかく力でやらなければいけない、あわよくば自衛隊でもまた引っぱり出していきたい、そういう世論をつくっておるじゃないですか。幸い福田長官は、しり馬に乗らないで、自衛隊は慎重に行動すべきだと言ったようです。しかし、実際のねらいはその辺にあったのではないかと勘ぐりたくなる。そこで最近打ち出されておる海上警察強化策なるものですが、どうもふに落ちないことがたくさんあるのですけれども、その前に一つ、立ち入り検査の際に、一見漁民と見間違われるような扮装をしていったということは、私は法律に違反すると思うのですが、いかがですか。
  103. 今井榮文

    ○今井政府委員 これは海上保安庁の職員の捜査の具体的な方法の問題だと思いますが、私どもとしては、従来でもそういうふうな点については、しばしばそういう方法を用いて捜査をいたしておるわけでございます。ただいまの怪船にいたしましても、私どもとしては、領海に入って奇怪な行動をしておるという意味で、あるいは密貿易船であるか、あるいは密入国のための何らかの連絡船であるかという、容疑が、相当濃厚でございますので、できるだけそれをつかまえて調査したいということで行なった行為でございます。したがって、私どもとしては、当然やり得るというふうに考えております。
  104. 石橋政嗣

    ○石橋委員 大体こちら側が漁船に乗って漁民に扮して行ったら、向こうのほうが、海賊と思うかもしれませんよ。法律に何と書いてありますか。あなた、いままでだってやったことがあると言うけれども、海上保安庁法十七条に何と書いてありますか。第一項は私は省略しますが、第二項において、「海上保安官は、前項の規定により立入検査をし、又は質問するときは、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帯しなければならない。」となっていますよ。向こうが、日本の官憲と明確に判断できないような形をとって行って、しかも暴発までやれば、特にこれが韓国側の公式の船であればなおさらのこと、間違って自動小銃を突きつけるという事態だってあり得るわけです。こちらに全然瑕疵がないわけじゃない。向こうに妙な思い違いを起こさせるような要因をこっちでつくっていっている。そうしますと、相殺されますよ。  ところで、閣議において強化策が承認されましたあと、黒金官房長官のごときは、生命財産保護のために応戦することもあり得るなんていう、全く不穏当なことばを使っている。海上保安庁に応戦するなんという権限がどこにありますか。この点……。
  105. 今井榮文

    ○今井政府委員 私どもとしては、海上保安官が職務を執行するに際しまして、正当防衛あるいは緊急避難という場合には、万一の場合にはやり得るというふうに考えております。
  106. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それはわかっいますよ。警察官職務執行法第七条が準用されていることくらいわかっています。しかし、応戦ということばによって受ける印象というものは、正当防衛や緊急避難という印象とは結びつきませんよ。また、正当防衛や緊急避難という問題は、こういう概念に入る問題じゃないですよ。船対船の応戦といったような形までが許されているというように私どもは思いません。  ところで、この強化策によると、武器をひとつ強化しなければいかぬというわけで、機銃や自動小銃やその他のものを積載するということが打ち出されているわけですが、保安庁のいまの巡視艇には、三インチ砲まで装備されておりますね。
  107. 今井榮文

    ○今井政府委員 おっしゃるとおり、大型巡視船には、三インチ砲が装備されております。
  108. 石橋政嗣

    ○石橋委員 四十ミリの機銃や二十ミリの機銃、それに三インチ砲まで、海上保安庁の巡視艇に積載することが、一体どのような法律根拠で認められておるのですか。私には納得いかないのですが……。
  109. 今井榮文

    ○今井政府委員 私ども見解といたしましては、海上保安庁の巡視船に武器を装備する問題が起こった当時に、法律的に種々検討を加えたのでございます。現在のところでは、御承知のように、自動小銃あるいは拳銃というふうなものは、保安庁法の第十九条におきまして、警察官と同じように武器を携行し得るというたてまえでこれを装備することができると思いますが、いわゆる固定した機関銃あるいはまた砲というふうなものにつきましては、私どもは、現在、第四条の規定で、要するに治安を維持するため必要な装備を有する船でなければならないという、いわゆる海上保安庁船舶についての規定がございまして、その規定によりまして、一応治安を維持するために必要な設備ということで、私ども考えておる次第でございます。
  110. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういう拡大解釈は許されませんですよ。あなたが最初に引用しました海上保安庁法第十九条、これが武器に関する規定ですよ。この規定には、「海上保安官及び海上保安官補は、その職務を行うため、武器を携帯することができる。」となっております。三インチ砲や四十ミリ機銃を携帯するわけではないでしょう。しかも、先ほどあなたが引用されました警察官職務執行法第七条というものが、頭になければいかぬですよ。それ以外に武器が使えるという場合はないのです。そうしますと、この準用規定というものが、四条から出てきますか。あくまでも陸上における警察官と同様の権限を与えられておる。しかも、陸上の警察官と同様の正当防衛権なり緊急避難の権限を与えられておる。船ぐるみ与えられておるという見解は、そこからいっても出てきませんよ。そうしますと、あくまでこの携帯ということが問題になる。これは陸上並みだという前提ですよ。海上保安庁が、みずから法律を犯すようなことをやっている。三インチ砲をあなた携帯してみてください。あれは携帯のうちに入りませんよ。しかも、警察官職務執行法第七条の関連で、どう説明されますか。四条を引っぱり出してきますけれども、どう説明されますか。全くおかしなことをやっておる。何か三インチ砲や四十ミリ機銃や二十ミリ機銃を乗っけることを正当化し、これを使用することを正当化するために仕組まれた芝居じゃなかろうか、こういうふうに推測する者が出てきたって、やむを得ないじゃないですか。事実も確かめないで、それ撃ちてしやまんというようなかっこうで、強化策ばかりどんどん先行するということになれば、反論の余地はないでしょう。私は、こういう不見識なことは取りやめていただきたいと思う。しかし、保安庁長官に属するというよりも、これは国務大臣、閣議というものに問題がある。だから、実際は、あした総理大臣にでも尋ねるのが筋かと思いますが、福田長官も聞いていただいて、おかしいとお思いになりませんか。あなたは、直接事実を確かめるという努力をされましたか。いま申し上げたように、その後新しい事実がどんどん出てきているのですよ。そういう事実を把握しないまま、海上保安庁に強硬な措置をとれ、もっと優秀な武器を積め、射撃の訓練ももっと強化せい、まるで勇ましいことばかり、あなたも加わった閣議で指示しているのですよ。たいへんな問題ですよ。本来強硬に出なければならぬ外交折衝の面では軟弱で、実際第一線で苦労している職員に、こういう危険を全部転嫁してしまおうとする、そういう姿勢が、いま政府に出ているのです。内閣に出ているのです。下部の職員は、非常に不安と不満と動揺を持っておりますよ。こんなことは許されてはならないと思います。私は、もう少し慎重に御検討願うことを、これは国の自衛の問題とも密接な関連を持っておりますから、防衛庁長官にひとつ御検討願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  111. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 李ラインの警備について、海上自衛艦を使ったらどうかという点は、この春にも実は本院の外務委員会で問題になりました。そのときもはっきり申し上げたのでありますが、相手方韓国が海洋警備隊、コースト・ガードを使って李ラインの警備を十年来やっておる。最近国防軍編入の問題が出て、これも流れましたが、やはり依然としてコースト・ガードである。そういう場合に、自衛艦を使うことはやはり不穏当である。それに相当するわがほうの海上保安庁の巡視船で警備に当たってもらうことが適当であるという考えを持っております。いまでもそのとおりであります。したがって、御指摘のこういう不祥事件の起こった場合に、まず冷静に事実を確かめることが大事なことは、全く同感であります。同時にまた、相手方を不要に刺激いたしましたり、また場合によりましては、もし日本の自衛権の発動云々を逆に国内的に悪用される悪影響すら考えられる場合には、なおさら私どもとしては慎重に行動せざるを得ないわけであります。慎重に事実を調査すること、並びにあくまで軽卒な行動をしてはならなぬ、この二点につきましては、全く同感でございます。
  112. 石橋政嗣

    ○石橋委員 自衛隊を出動させるというようなことには、あくまで慎重でなくてはならぬ。それは大原則です。それはいいけれども自衛隊は慎重にしておくが、海上保安庁のほうを自衛隊まがいに使おうなんという根性が、許されないと言っているのです。海上保安庁の権限、任務というものは、明確なんです。ここではっきり知っておいていただきたいのですが、海上保安庁法第二十五条には、「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と明確に書いてある。それを、自衛隊を使うことは慎重まではいいけれども、このワクをはずれて、海上保安庁に軍隊まがいのことをしいるというようなことを、あなたは知っておってか知らずか知らぬけれども、事実やりつつあるのですよ。これは下部の職員だってたまったものじゃないですよ。おれたちは軍人になるつもりで入ったのじゃないぞ、こういう気持ちが出てくるのは、必然じゃありませんか。それを、大砲を撃ち合う練習をやれと、まるで自衛隊まがいのことを強要しようとしているのです。しかもそれが、この李ライン、国際紛争を解決するための手段として何ら有効でない、ある意味においては憲法九条に明確に違反することにすらなる、武力による威嚇はいかぬのですから。自衛隊を使わなければ武力じゃないということは言えませんよ。保安庁にいかにも武力を持たせたようなかっこうに移していこうとしているのです。こういうことは、ひとつ厳重に戒めていただきたいと思う。大体この李ラインにあたっての特別哨戒などというものは、どちらかというと、従来裸の強みを発揮しているのです。武器を使わないという大前提があるから、向こうもそうそう神経をとがらせない。だから、韓国の警備艇の五十メートル近くまで追尾して、刻々日本の漁船にいまどこにおる、どこにおると情報も出せるのです。それを海上保守庁の船がいつばんと撃ってくるかわからぬ、威嚇射撃もよろしいなんという物騒なことを言ってる。これも保安庁で出したのでしょう。こんなことでは、向こうも安心ならぬから、近寄ってきただけでけしきばんでくるじゃありませんか。何の効果がありますか。裸の強みというものを私は、この際うんと出してもらいたいと思う。そうしないと、陸で考えているような感覚で海に臨んでいくと、不測の事故を起こすのです。海は荒れます。波もあります。しけのときもあります。そうしますと、お互いに接舷もできないから、確認もできない。意思の疎通をはかることもできないという事態が、どうしても出てくる。そこへもってきて、威嚇射撃のつもりでやっても、これがあたってしまう場合だってあるじゃないですか、命中率はあんまりよくないのですから。いま一生懸命訓練を強化しようなんといっていますが、波があって動揺が激しいために、あたっちゃうなんという場合だってありますよ。そういうことも考えないで、あんまり強いことばかりおっしゃるということは、だれのためにもプラスにならぬということをひとつ国務大臣としての長官、それから海上保安庁の責任者としての長官、明確に頭にたたき込んでおいていただきたいと思うのです。しかも、これは何も李ラインの特有に関してのみ出された強化策ではないでしょう。第一管区は、どうなるのでしょうか。
  113. 今井榮文

    ○今井政府委員 おことばを返すようでございますが、李ラインの、公海での漁船保護という観点については、従来の国際紛争を惹起しないというたてまえに立っているという方針は、全然変わっておりません。私どもが今回打ち出しましたのは、先ほどいろいろお話しがございましたが、現実に国籍のわからない船が武器を持ってわが領海の中に入って何かしようとしているという状況に対応するために、万々が一の場合にはわれわれとしてもある程度の対抗策を考えなければならぬというだけを考えておるのでございまして、李ラインにおける漁船保護については、従来の方針を一つも変えておるわけではありません。
  114. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなたはもう先に進んでそんなことを言っておりますけれども、事実を確認してなかったじゃないですか。こういう強化策が出てきてから、いろいろな事実が出てきたじゃないですか。漁船を借りていったとか、漁民と見間違うような変装をしていったとか、拳銃を擬して暴発をやったとか、そういう事実がないならば、いまあなたがおっしゃったことはある意味においては肯定できます。しかし、相手を刺激するようなことは事実やっておるのです。それが紛争の原因になっているのです。いささか慎重を欠いておったのですよ。だから、責任者をあなたは処分したじゃありませんか。そこへもってきて、確かに領海侵犯というおそれはありますが、どうも相手の、これも韓国の公船らしいという事実すらはっきりしている。ではこれを確かめる努力をしておられるわけですか。
  115. 今井榮文

    ○今井政府委員 怪船自体が捕捉できないために正確にはつかめないわけでございますが、怪船が切って逃げたいかりを上げまして、そういったいかりについていろいろ検討を加えるとか、あるいは漁民その他から情報を得るとか、あるいは貿易船から情報を得るというふうな努力は続けております。
  116. 石橋政嗣

    ○石橋委員 ここに怪船の写真も出ていますよ。これは六月十日の毎日新聞の朝刊に、怪船の写真が出ています。そうしておいて、「韓国税関監視船先明号か」と、これの照合はまだできないのですか。韓国側に問い合わせでもしておりますか。七管の本部長も、税関艇か警察艇だという推定は成り立つと言っているじゃありませんか。上のほうでこの事実をまだ確認してないのですか。どういう方法でいま確認する方法を講じておられるのですか。
  117. 今井榮文

    ○今井政府委員 いま申し上げましたように、われわれとしては、でき得る限り事実を確認するように努力をいたしておりますが、まだはっきりその税関船自体の船の写真をわれわれは持っておらないわけでございます。われわれとしては、事実を確認いたしておりません。
  118. 石橋政嗣

    ○石橋委員 だから、事実確認をわざとおくらしているような印象を受けるのです。相手は快速船か密貿易船かといってさんざん国内にデマを飛ばした手前、いまさら韓国の税関の船でしたと言ったのじゃぐあいが悪いという気持ちが、政府のどこかにあるのじゃないかということを私は言っているのですよ。一つも事実を確認する努力はしてないじゃないですか。何日たっていますか。政府が認めないから、新聞も遠慮して「か」とつけであるけれども、中を読んでみれば、自信を持って書いていますよ。しかも、公船だということは推定できるという七管の本部長の談話まで載っけていますよ。あなたがいままでの特哨と何ら変わらないのだと幾らおっしゃっても、これは通用しません。一般の国民は、そういう受け取り方をしておりません。さんざんあおられているのですから、一日も早くこういう事実は確認していただきたい。  ところで、答弁漏れが一つあるのです。いまの海上警察強化策なるものは、第一管区において適用されるのですかと聞いているわけです。
  119. 今井榮文

    ○今井政府委員 現在のところは、第一管区につきましては直ちに適用するというふうには考えておりません。私どもの適用の範囲は、大体対馬を中心にいたしまして裏日本日本海海域について、ある程度の高速巡視船の配置その他を考えておるわけでございます。
  120. 石橋政嗣

    ○石橋委員 こういうものが一般化されて、一管のほうにまで及ぶということになると、これはまたたいへんです。七管の大体警備区域というものは、日本政府とは仲よしの韓国だからまだいいですよ。いざというときに何とかなるでしょう。一管のほうはそうはいかないですから、より慎重にならなければならぬだろうと私は思います。  ところで、こういうふうな問題が出てきて、私どもにいろいろな疑問を起こさせる根本が、一つあると思う。これは防衛庁にも関係があるのですが、自衛隊法第八十条なんです。何でこんなものが出てきたのか、私どもとしてはふに落ちません。先ほど申し上げたように、海上保安庁法の第二十五条で「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と明確になっておるにかかわらず、自衛隊法八十条によって防衛出動なりやろうとするときに、防衛庁長官の統制下に海上保安庁を置くことができるようになっておる。こういうまぎらわしい規定があるから、日ごろから問題が出てくると思う。どうですか、この八十条はひとつ修正されて、八十六条並みにするという考え方が正しいんじゃないですか。陸上の警察官の協力義務、連絡義務というものと同程度に海上保安庁を扱うということが、法の精神からいっても正しいと思うのですが、この点、御検討になる意思は、防衛庁長官ございませんか。
  121. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 本日新しい御意見として承りましたので、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
  122. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ検討していただくことにして、私はまた後日この問題をやりたいと思います。とにかく海上保安庁は軍隊じゃないのですから、いざというときだって防衛庁長官の統制下に入って、何か海上自衛隊の一部として行動するかのごとき印象を持たせるということは、これはためになりません。外国に対してももちろん、国民に対しても、海上保安庁で働く職員に対しても、これは非常に不明朗な条文です。陸上の警察官と同じ、ただ海上において警察業務をやっているのですから、八十六条並みにひとつ海上保安庁を扱うように、至急検討を願いたいと思う。  最後に、海上保安庁に一言お聞きしておきたいのは、あなたのほうは、なぜ南極観測の輸送協力をおやめになったのですか。あなたのほうがいままでどおりやってくれさえすれば、何もぶっそうな自衛隊の力を借りなくて済むのです。新しい問題を提起しないで済む。特に最近のように、さあ武装せにゃいかぬ、高速巡視艇をつくらにゃいかぬ、そういうほうなら金は出すけれども、海上保安庁が南極観測の輸送に協力するにも、金も人員もめんどう見ず、これが政府の態度、しようがないから私どもお手をあげました、こういうことなんですか。
  123. 今井榮文

    ○今井政府委員 私どもとしては、輸送を直接担当するということは、政府の最高方針として防衛庁にやっていただくというふうにきまったわけでございますが、しかしながら、その決定の中で、海上保安庁は全面的に南極輸送の完遂について協力するということになっておりまして、私どもとしても、できる限り従来どおりの御協力をする、こういうことでございます。
  124. 石橋政嗣

    ○石橋委員 できるだけの御協力をするとおっしゃいますけれども、実際に今度協力の主任務は全部自衛隊に移るのですよ、この法案が通れば。これは海上保安庁のほうで、もう自分のところじゃできませんからごかんべんください、こういう意見に基づいて、やむなく自衛隊に移されたというふうに私ども聞いているのですが、そうじゃないのですか。自分たちはやる意思も能力も持っておるけれども、しかし、自衛隊のほうがやらしてくれ、やらしてくれと言うから、しょうことなしに自衛隊に引き継ぐ、こういうことですか。どっちなんですか。
  125. 今井榮文

    ○今井政府委員 これは、私どもが全然やる能力がないから辞退したというわけじゃございません。南極観測につきまして、私どもとしては従来担当もしてまいったわけでございますが、しかし、本来的にいいますと、海難救助なりその他に対する業務が本来の任務でございますし、したがいまして、私ども政府の最高方針の御決定に従って、船舶の設計であるとか、あるいはまた輸送についての従来のわれわれの経験上御協力申し上げることができる限度において、最大限の御協力を申し上げるという線にきまったのでございます。
  126. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私どもが聞いておるのと、ずいぶん食い違いがあるのですよ。海上保安庁においては、能力がないのだ。あなたは船を設計したり建造したりする能力も十分持っておるとおっしゃっておったが、そういう能力は保安庁にも文部省にもないのだ。だから、早く権限を防衛庁のほうに移してもらわないと、船一そうつくるにも困難しておるのだ。こういうふうに私ども聞いておるわけです。いま長官のお話のほうがほんとうだろうと思います。非常に参考になりました。これは保安庁としてはやる意思も能力も持っておったが、政府の最高意思として、今後は自衛隊にやらすというようにきまったから、それに従った、こういうふうに理解をいたします。保安庁はきょうはこれでけっこうです。  そこで、李ラインの問題に関しては、これで一応終わりまして、先ほど申し上げたように、昨年の年末に出されましたプレストン声明によって、在日米軍の兵力に変更がいまあります。これに関連していろいろお尋ねしてみたいと思うのですが、まず第一に、事実を確認しておきたいと思うのですけれども、プレストン声明というものを読んでみますと、結局は在日米軍の兵力を減らす、再展開する、こういうことに尽きると思うのです。具体的には、板付にありますF105戦闘爆撃機を横田に移す。横田に置いておりましたB57爆撃機を本国に持って返る。三沢におりましたF100戦闘爆撃機を、これまた本国に持って返る。それから立川にありますC124、これは輸送機ですが、これも本国に持って返る。具体的にはそういうものだというふうに理解しているわけですが、そのほかに何かあるのか。それからいま申し上げたものは、現時点において、どこまで作業が終わっておるのか。この点から御説明願いたいと思います。
  127. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 大体日米共同声明は、いま御指摘のとおりでございます。ただ、三沢のF100の分は、引き揚げたわけではございませんので、御案内のとおり、ローテーション・システムをつくりまして、常時一定の兵力を置くが、ただし従来のように家族も置いて常置するのではなく、ローテーション・システムをとっております。あとは大体御指摘のとおりでございます。  なお、作業状況といいますか、実施状況につきましては、事務当局に答弁させます。
  128. 海原治

    海原政府委員 実施状況の細部ということになりますと、たとえば板付におりましたF102要撃戦闘隊、これは撤収しております。F105の大部分は横田に移りましたが、残余のものが若干まだ残っております。これはこの月の終わりまでということでございますので、おそらくは二十日前後ころまで板付におるのではないか、このように考えられます。先ほど大臣が申されました三沢のローテーションの部隊というものは、最近到着した、こういうふうに聞いております。
  129. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この三沢のF100が基地に張りつけになって、ローテーショナルな部隊にかわるというのですが、このローテーショナルな部隊に属している飛行機の機種は、やっぱりF100ですか。
  130. 海原治

    海原政府委員 そのとおりでございます。
  131. 石橋政嗣

    ○石橋委員 非常に大きな配置の変更があったわけですが、これはアメリカの戦略の変更によるものだというふうに私ども理解しておるわけですが、その点、大臣、どういうような認識に立っておられますか。
  132. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 この点は、ヨーロッパのアメリカの戦略とも関連があるのではないかと存じます。基本的には、基地の問題、並びに移動性、機動性の問題、いろいろな点につきまして、ある程度の修正を加えられた、こう考えております。
  133. 石橋政嗣

    ○石橋委員 具体的に言うと、一つにはアメリカのドル防衛政策からきているということ、もう一つは一たん緩急ある場合に急速に大量の部隊を輸送する能力をアメリカが持ったということ、ここから転換が出てきたというふうに理解していいわけですか。
  134. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 最初のドル防衛の点は、明確な問題だろうと存じます。第二の点は、まだ最終的に判断がつかないようであります。具体的に例を申し上げますと、ヨーロッパのNATOの関係でありますが、ドイツ側の申し入れをいれまして、修正をいたしました。やはり一定の陸軍の米兵力は残置することになりました。相当の部隊の空中輸送その他については自信を持っているようでありますが、第二の点につきましては、まだそう決定的な段階まではきていない、こう考えております。
  135. 石橋政嗣

    ○石橋委員 ビッグ・リフト、クイック・リリーズ等一連の演習を大規模にやっておるわけですが、やってみた結果、完全に徹退する能力は持てない、こういうふうに判断したということかと思うのです。結局この輸送能力というものが今後高まれば高まるほど、なお縮減という方向にいくであろうと理解していいわけですか。
  136. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 傾向としてはそのとおりでございます。
  137. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そこで、こういった一連の動きがあるわけですけれども、ここで日本の立場でいろいろなことを判断しなくちゃならぬと思う。端的に言えば、在日米軍の戦力というもの、これは低下するものなのか、現状維持なのか、増強するものなのか。しかもこれも二つの立場から見なくちゃならぬと思うのです。一つは日本の直接防衛、もっと端的に言えば防空、こういう面で増強なのか、現状維持なのか、あるいは弱体化しているのか。もう一つは、アメリカの世界戦略、極東戦略の中で、いわゆる攻勢作戦能力といったような面で増強か、現状維持か、あるいは弱化か、二つの面があると思うのですが、この点、大臣はどういうふうに御判断になっておられますか。
  138. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 第一の点は、ちょうど共同声明発表の前に再三打ち合わせがございました。一部の兵力移動によって米軍の戦力は低下するものではないという明確な回答がございました。私どもも、それに同意いたしたわけであります。したがって、三つにお分けになりましたが、しいて当てはめれば現状維持、こういうような感じを持っております。  第二の点は、機動性につきましての利点もあり、同時に弱点もあるが、グローバルな世界戦略という点から見れば、未解決の点がまだ残っているというような感じがいたします。
  139. 石橋政嗣

    ○石橋委員 その辺少し突っ込んでお尋ねしてまいりたいのですが、まず最初にアメリカの世界戦略、極東戦略の一環としての日本の占めておる地位というものから考えてみたいと思う。自衛隊の専門家が攻勢作戦能力という表現を使っておりますから、それをそのまま使ってもいいと思うのですが、最近防衛庁内部のいろいろな書類が出ておりますから、これを引用して私やります。まず第一に、「国防」の三月号に、空幕の防衛部運用課長一等空佐黒江さんの論文が出ています。もう一つは空幕が非公式に漏れるようなかっこうで出したと思われる「防衛力整備に関する基本的見解」、こういうものをこもごも引用させていただきますから、そのおつもりでお答えを願いたいと思う。  黒江論文によりますと、攻勢作戦能力は増強される、強化されている、こういう判断を下しているわけです。この点で、防衛庁長官なり内局との間の意思が統一されているのかどうか、私非常におもしろいと思いますのでお尋ねするわけですが、黒江さんの主張によりますと、日本にF105が三スクォドロン、F100が二スクォドロン、沖繩にF105が三スクォドロン、フィリピンにF100が一スクォドロン、これは第十三空軍に属するものですが、こういうものと第七艦隊の兵力というものと組み合わせて判断するならば、逆にものすごく強化されてくる、こういう結論を下しているようです。この判断はいかがですか。
  140. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御指摘は「国防」の三月号と記憶しますが、黒江一佐の論文に関してでございます。これは私どもも調査いたしまして、従来の政府考え方と相当食い違う点もございますので、さっそく本人を取り調べたわけでございます。本人にいたしましても、率直にざっくばらんに申し上げますが、非常に忙しくて書きなぐったので、あとで十分原稿を推敲いたしたいと申し出たそうでありますが、それができなかった。同時に、「国防」の編集局長からも、遺憾の点を申し入れております。そういう手続の手違いもあったようでありますが、いずれにいたしましても、現職の幹部がそういう十分でない手続のために世間に誤解を与えるような印刷物が出るようなことは、きわめて遺憾でございますので、厳重に注意いたした次第でございます。
  141. 石橋政嗣

    ○石橋委員 予防線を張っておられますけれども、何か責任を問われて、幹部学校付にいわば左遷されたという情報も聞いております。しかし、そんなことで片づく問題じゃないですよ。しかも「国防」の編集者云々と言いますけれども、翌月号に訂正として出ておりますが、全面訂正じゃありませんよ。ただ「全面戦争を肯足したような著者の主観的表現になった部分などがあり、黒江氏にご迷惑をおかけしたことを探くお詫び申し上げます。」と言っているだけです。この部分だけちょっと何かぼかしていますけれども、何も座談会の記事でもなければ、あるいは責任は記者にありといったような文章でもないのです。本人の署名入りで堂々と一般国民に問われた論文と私ども理解しております。しかも、基本的な防衛の問題に関連して、ずいぶん突っ込んだ意見を述べておられるのです。これは一般公開なんです。町内で議論が戦わされたといったような問題ではないのです。それを不穏当なところがあるというようなことで済まされる問題ではない。そんなことならば、シビル・コントロールという根本の問題にまでなります。内部ではいろいろな意見がありましょう。しかし、対外的に、われわれも簡単に入手して読めるような形の中で、制服の責任者からあなた方と基本的な問題で見解を異にするというようなことは、左遷させてみて片づく問題でもない。これはあなたが幾ら予防線を張ったって、責任を免れる問題ではないのです。それでは、完全に現防衛庁の中でシビル・コントロールというものが名実ともに生きているのかどうかという基本の問題にすら入ってまいりますよ。防衛なんてわかりもせぬせびろどもが何を言っているかというようなかっこうで、どんどんこんなものが外に出たら、これはどうなるのです。  もう一つ引用しました「防衛力整備に関する基本的見解」だってそうです。私どもは、何もスパイ的に持ってきたわけでもなんでもない。ちゃんと入手できるのです。各党みんな持っているようです。  それはまたあとでゆっくりお尋ねするとして、それじゃこの運用課長時代に書かれた黒江さんの見方ですね。「攻勢作戦能力の上では、何の変化もないばかりか、むしろ或意味においては在日米空軍戦力増強の線すら生れてくるはずである、と筆者は判断するのである。」これはもう見解の相違だ、こういうわけですか。
  142. 海原治

    海原政府委員 ただいま御引用になりました黒江君のことばの中にも、いろいろな仮定が書いてございますし、結論として自分はそう判断する、こう言っていることでございますから、防衛庁を代表しまして、従来国会におきまして、私どもがどう考えておるかということは、私から申し上げておるとおりでございまして、それと異なる限り、私どもは全く、何と申しますか、そういう考え方は持っていないということでございます。
  143. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういう考え方を持っておるか持っておらぬかという問題よりも、これから私が入ろうとする問題のほうが重要なんですよ。持ってないと、それは黒江君のかってな一個人の見解だといって済まされるような問題じゃない。なぜならば、これからだんだん出てくるのですけれども、結局今後使用する兵器の主体が核兵器になっているのだという根底があるわけですね、黒江さんの考え方には。だから、いままでF100とプラスのB57と、これでやっておったものを両方持って帰ったって、F105でまかなえるどころか、逆に増強なんだという、こういう線が出てくる。根本はF105というものに対する評価が、問題になってくるわけです。あなた方は、F105が水爆搭載機であることは認めるが、水爆は持ち込まないし、使用させないのだからという前提に立ってものを言おうとする。ところが、この論文を一貫して流れているものは、核兵器を搭載するという前提に立っているから、飛躍的増強という線が出てきているのです。しかもそこからつながって、局地戦なんというものはあり得ない、必ず全面戦争になるという結論を出してきているのです。これは、意見の不一致でございますなどと言って片づく問題じゃない。そうお思いになりませんか。私は、黒江さんのほうが正直に言っているのだ、あなたたちが政治的な配慮をして、事実をひた隠しに隠して国民をごまかしているのだ、こう思う。非常に基本的な問題なんです。おもしろいから、少し引用させてもらいます。このF105について述べておられるのですが、「その持っている攻勢威力は、」「破壊的なものであることは疑いを差しはさむ余地はないのである。F一〇五が、そのスピードと航続力と搭載量に鑑みて、従来F一〇〇とB五十七が果してきた役割を革命的に更新したことははっきり言える。少なくとも今まで配備してあった旧式機のF一〇〇と交代し、またB五十七を本国に呼び戻したとしても、沖繩と日本に新装備された百五十機のF一〇五は一年前の態勢を上廻わる攻勢力を十分に確立したはずである。」こういうふうに言っております。それからこのF105の任務について「これら戦術戦斗機の任務は、明らかに攻勢作戦が主体であって、地上作戦協力等は副次的な任務とされている。敵の攻勢力が所在する飛行場、ロケット発射場等、およそわれに脅威を与えるであろうものを開戦と同時に破壊するため、これら戦術戦斗機は単機毎にそれぞれ攻撃兵器として軽妙に用いられるよう準備されていることは疑いのないところである。」みんなもうはっきり言っていますよ。「戦術空軍という名で極東に配備された攻勢力ではあるが、嘗て、局地戦というものが世界戦争に発展しないで存在するべきであろうと言われた時代はもう過ぎ去って、少なくともこのような大威力を持った部隊が出動するような事態は、もはや問答無用の全面戦であろうと推測することは、使用する兵器の主体が核兵器になりつつあることと併せ考えてみても、決して無理な憶測ではない。」「彼らが有事の日に攻撃を命ぜられるであろう個々の目標は、今、われわれに判らなくても、使用する爆弾が何メガトンで成功率が何パーセントであるかの数値をはじいて公算と統計の上から、さらに広い戦略空軍の攻勢力を背景にしたとき、F一〇五のパイロットたち一人一人が果す役割の総計で当面の共産陣営の力に対抗できるとの結論が出ていないことはないはずである。」ちょっと引用しただけでも、非常に重要ですね。まず、今後使用される兵器の主体が核兵器である。F105もその一環として、任務を持って日本に来ておる。だから、いざという場合には、いわゆる水爆なり原爆なりが搭載されて一目標目がけて飛んでいく。そこで必ずこれは局地戦ではなくて、全面戦に発展する。しかも、この攻勢作戦能力というものが、共産陣営の力に対抗する。はっきりしております。これも正直です。あなたたちが国民の前から隠そう隠そうとしていることを、全部はっきり言ってくれているのです。メガトンというからには、あの小さな戦闘爆撃機がメガトン級の威力を持つためには、原水爆を使わずしてどうしてできますか。これは処分して済むような問題ですか。一つ一つ反論しなければならぬでしょう、意見の不一致だというならば。私は、あなた方が言っていることと黒江さんが言っていることとどっちがほんとうじゃろうかと言われれば、黒江さんがほんとうのことを言っているのだと軍配を上げたいですよ。ほんとうのことを言ったから、けしからぬ、吹っ飛ばせ、そんなことで済むはずはないですよ。そうじゃないですか。そうじゃないというならば、そうじゃないという根拠を一つ一つあげていただかなければならぬ。アメリカは、確かに先ほど申し上げたように、一面においてはドル防衛という立場からどうしても海外基地の縮小をやらなければならぬ、そういうところに追い込まれております。だから、基地を閉鎖し、縮小し、あるいは旧式のミサイルなり爆撃機なりを本国にどんどん持って帰っておる。しかし、そのまま放置しておいたのでは、対共産圏という総合的な戦力に対抗しなければならないので、どうしたって穴埋めしなければならぬ。穴埋めするためには質で補う。比較的金をかけないでカバーするためには、質で補う以外にない。そういう考えに立ってF105が来る、ポラリスが配置される。あたりまえじゃないですか。そういう一連のアメリカの世界戦略の中で、日本における米軍というものの移動も起きておるのですよ。だれもが知っていることを、あなた方だけが一生懸命ひた隠しに隠しているというだけなんです。そうしなければ質量ともに低下して、いわゆる共産陣営に対抗できなくなるじゃないですか。いかがです。
  144. 海原治

    海原政府委員 先ほどから承っておりますと、先生は、どうも黒江君の言うのが正しくて、私どもが従来国会の各種委員会で申し上げていること、あるいは第二次防衛力整備計画を決定いたしましたときに一般の民間に発表いたしましたこと、そのほうが間違っているのではないかというような前提での御質問のように思うのであります。まず、その点をひとつ根本から御認識を御訂正願いたいと思います。私どもは、第二次防衛力整備計画をつくりました際に、明瞭に、私どもが対処する相手というものは、在来型兵器を使用した局地戦略を行なうものである。ある意味ではそれ以上のものには対抗できないのだということを、当時においても御説明申し上げてある次第であります。兵器が進歩してまいりますと、いろいろなものも積めるわけでございますが、そういうことを、何と申しますか、可能性として議論されることは別でございますけれども現実にそうなるのだということで前提を一つにおきめいただきまして、その後は、防衛庁の責任者が言うことはむしろ事実を隠しているのだ、こういうことになってまいりますと、向後何を申しましても御信用いただけなくなるおそれがございますので、その点は、私どもはあくまで政府委員といたしまして、政府見解を代表してお答えしておる次第でございますから、申し上げることにはうそはないということをひとつまず御認識いただくようにお願いいたします。  黒江君の意見は意見ででございますが、そういう考え方を持っておる人は空幕のスタッフとしては不適当であるということで、今回転任になったと私聞いております。かりに一人の人の意見が、一般の人々の、あるいは公の意見と違うということだけでもって、どういう処置と申しますか、処分ができるかというようなことにもなってまいりますが、私どもは、従来国会におきましていろいろ申し上げておりますところの、日本防衛力のあり方、またそれに基づいての具体的な三自衛隊の建設の手順、そういうものにつきましての意味につきましては、しばしば申し上げておるとおりでございます。これと違った考え方を持った人がおりました場合には、私ども仕事ができなくなりますので、航空自衛隊についての、そういう運営につきましての施策をいろいろ練られる立場からは排除したいというのが、今回の措置だと私は考えております。したがいまして、その論文の中に黒江君がいろいろ言っておりますことは、そういうことも考えられる、そういう立場から防衛というものを黒江君なりに解釈したものだというふうに私は考えております。したがいまして、国会委員会におきます御討議につきましては、私どもが申し上げることを根拠にひとつ御質問いただきたい、こういうふうに考える次第でございます。  核兵器が今後使われる唯一の兵器のように思われるという推論を出しておりますが、この点につきましても、先般の外務委員会で、一般には現在アメリカは、TNTに換算いたしまして約九百億トン相当の兵器をすでに持っております。これに対してソ連は、その二分の一ないし三分の一と申しますから、半分に見積もりましても四百五十億トン。さらにイギリス等を加えますと、少なくとも核兵器の数は、千数百億トンを現在持っておるわけです。こういうものが現実使用されました戦争というものは、私ども考えられない。ポラリス一隻の十六発のミサイルが持っておりますこのTNT換算の破壊量にいたしましても、第二次世界大戦で双方が使いました爆弾量よりももっと大きいわけであります。現にそれだけの核兵器を持っておるということが前提になりますと、この核兵器の撃ち合いというようなことは、まず考えられない。それが先般の核実験の部分的停止の条約に各国が賛意を表した基礎になっているのじゃないかというようなことも、当核委員会でも申し上げた次第でございます。したがいまして、私ども、あくまで核兵器使用しての戦争ということは、これは完全に人類の絶滅を意味するものだ、そういうものはあり得ない、こう判断いたしております。現にアメリカにおきましても、マクナラマ長官は、ことしの一月の二十七日の議会に対するステートメントの中で、はっきり言っております。累次の機会におきまして、今後われわれが対処するのは、少なくとも中級以下の紛争、そういうものに急速に対処することが必要だ、このためにはアメリカの力のみならず、各国自身の力というものが絶対に必要である、こういう考え方をしております。   〔伊能委員長代理退席、 委員長着席〕 私どもは、この黒江君の論文にありますような方向でものが進むとは考えておりません。この点は私どもが従来申し上げ、かつきょう申し上げるようなことが、政府としての見解でございますのみならず、防衛庁部内におきましても、大多数の者はそういうことで現在仕事を実施しておるという点を、この際御認識願うようにお願いいたします。
  145. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうはおっしゃいましても、実際に攻勢作戦能力、あるいは別の角度から言えば抑止戦力ということになろうかと思いますが、これの主体が核であるということは、お認めになりましょう。
  146. 海原治

    海原政府委員 抑制力の主体は何かという御質問でございますが、抑制力というものは、いろんな要素から成り立っておるわけであります。現に抑制力の主体が核であるということになりますと、たとえば朝鮮事変のときに核が使用されなかったということになりまして、核は何も意味をなしておりません。先般仏印の紛争のとき、数年前でございましたが、当時のアメリカのラドフォード統幕議長は、仏領インドシナにおいて核兵器使用すべきだ、こういう主張をいたしましたけれども、退けられております。そうすると、核兵器を持っておるといいうことは、決して抑止力になっておりません。私どもは、核兵器の持っておる抑制力の面と、通常兵器の持つ抑制力の面、こういうものが適当に調和されまして、核兵器、在来兵器、これが巧みに調和されまして、初めて一般的な戦争抑止兵器になる、こういうふうに考えております。したがいまして、私どもの二次計画は、そういう前提で、核兵器に基づく抑止力はアメリカに期待する、われわれはそのアメリカの抑止力のもとで地方的な抑止力を持ちたい、こういうことで進んでおる次第でございます。
  147. 石橋政嗣

    ○石橋委員 実際に現在、先ほど申し上げたように、アメリカは海外基地の縮小をはかっているわけです。それを補うものとして、核体系の中に組み込まれておる兵器というものを次々に配置しておるじゃないですか。F105もそうです。ポラリスもそうです。そういうものと代替させようという動きを示しておるじゃありませんか。これを攻勢作戦能力と見るか、あるいは抑止的戦力と見るかは別として、とにかく核兵器なり熱核兵器というものに、最も新しいものに主体を移しておることは、間違いないですよ。一面、ゲリラを含めて通常兵力を用いなければならぬ場面が出てきた場合は、これはさっき言ったように、緊急輸送というものに力を移しておるじゃありませんか。これは隠れもない事実だと思う。あなたがどう否定されようとも、アメリカとしては、着々とそういうふうにこまを進めておる。そうしなければ共産陣営に対抗できないという意識がある。あなたは、過去において朝鮮においても核兵器が使われなかったじゃないか、インドシナにおいても使われないじゃないかとおっしゃるけれども、使われなかったということと、今後絶対に使われないということとは、切り離さなければいかぬと思う。現にいまあなたも御指摘になったように、インドシナでも使えという議論が、アメリカの中で有力な者の口からも出ておる。朝鮮動乱のときにも、マッカーサーはじめ使うべきだという意見を持った者もおる。それを完全なシビル・コントロールのもとにおいて押えることができたという過去の事実が、今後においても絶対に押えられるということにそのまま結びついていくというふうには、私ども見ておりません。過去がそうだったから、将来も絶対一〇〇%安泰だというような議論は、私は飛躍だと思う。われわれとても、簡単に使えるものではないということは肯定します。また、最高責任者の恣意によって使えるというような場面も、そうそう簡単にあるものではないということも支持します。しかし、現実にあなたがいまあげたように、何百億トンという核を両陣営が保有する限り、いついかなる事態にどのような端緒でこれが用いられるかもわからない可能性は、常に現存しておる。そのときに備えて着々と配備をやっておるということは、まぎれもない事実なんですよ。  そこでもう一つ、これに重大な問題があるわけです。結局そのまま続んだほうがいいでしょう。「アメリカ大統領ただ独りだけが持っている「攻勢命令発動の権限」が行使される時には、これら戦術戦闘機の作戦なるものは、アメリカ戦略空軍の出動とタイアップした相互関連が必ずあると考えるのが当然であろう。」ということです。これでわれわれが見のがすことができないのは、攻勢命令発動の権限がアメリカ大統領一人に属しておるということ、これはまぎれもない事実ですね。戦略空軍とタイアップしてF105のような戦術空軍も使用されるという重要な問題です。これも危機は回避されましたが、あのキューバの紛争のときを思い出していただけばいいと思う。キューバの事件というものは、太平洋を隔てたカリブ海一帯だけの紛争ではない。日本の国民が知っておったか知らなかったかは別として、あの緊迫した状態の中で、在日米軍は一斉に緊急態勢に入った。日本自衛隊までが、一生懸命否定していますけれども米軍と一緒に緊急態勢に入った。危機が回避されたからよかったものの、あそこで一触即発、爆発しておれば、米ソがぶつかっておれば、日本の基地におるF100なりF105なり——その当時はF105はいなかったかもしれないが、黙ってじっとしておるという事態が考えられますか。一斉に飛び立ったでしょう。これは否定できないでしょう。カリブ海の周辺でアメリカとソ連とがぶつかったというときに、日本におる米軍は、あれはキューバの問題だからといってじっと動かぬ、そういう事態が考えられますか。一斉に飛び立つ。それに対してまた対応する勢力も、日本の基地を攻撃してくることが考えられる。そうなると、安保条約第五条によって、報復攻撃を受けたのがかりに基地に限定されておっても、これは日本の領土に対する攻撃とみなして、共通の危険とみなして、自衛隊もまた立つ、自動的に巻き込まれていく、こういう仕組みになっておるじゃありませんか。アメリカ大統領の命令によって、必然的に日本自衛隊も行動を起こす運命を背負わされているじゃありませんか。いみじくも黒江さんがこれを喝破している。これも、キューバのときには危機が回避されたから、今後も必ず回避されるといって逃げられる問題じゃないですよ。あれと同じような事件が、インドシナでまた起きるかもしれぬ、朝鮮で起きるかもしれぬ。朝鮮でといえば、先ほど引用しました「防衛力整備に関する基本的見解」という航空幕僚監部が昨年の八月二十三日に出した文書の中にも書いてあります。ちょっとそこだけ読んでみましょうか。いろいろと貴重な資料をいただきましてありがとうございました。「わが国をめぐる武力戦の契機と様相」という中の第二項目に、「極東、特に朝鮮に武力紛争等が起きると、その規模によっては後方支援遮断のため、海空輸送路を攻撃し、さらに状況によっては支援基点等攻撃を拡大することがあり得る」、ちゃんと認めております。キューバでなくても、今後朝鮮で紛争が起きても、インドシナで紛争が起きても、日本から米軍が飛び立つ限り、明らかに攻撃を加えてくる可能性がある。これが契機になる。これは空幕が出したものです。これも処分したんですか。これはもうだれが考えても、こういう制服の連中が軍事的にだけものを見ているから、それなりにその範囲で見れば、私はまともに言ってるいんだと思うのです。あなたたちは、それを一段上からシビル・コントロールの立場から押えていくんだ、こう言う。しかし、面従腹背です。何言ってやがるんだ、言いたいことをじゃんじゃん言って流しているじゃないですか。形の上でかりに左遷させた、それでシビル・コントロール健在だとあなたたちいばっておっても、だめですよ、言いたいほうだい言っているんだから。あなたたちはわからない。小さな軍事というもののワクの中でしか見ておらぬ連中は、そう思う。これは押えたことにならぬ。押えたという形が出るためには、あなたたちが国会を通じて国民に明確に答弁していることを、そのままそのとおりだと制服の連中に思わせることなんです。信じさせることなんです。そうじゃないんですか。形の上で押えたって、いざというときに役に立ちませんよ。これは最高の責任者は防衛庁長官です。防衛部の運用課長といえば、責任のある地位ですよ。そういう責任のある者が、あなたたちが国会で答弁をし、国民に説明していることを、何言っているんだという態度をとっているじゃないですか。そういうやつはけしからぬから飛ばした、だからシビル・コントロール健在だ、空論です。あなたたちが国民に示したとおり、この人たちをも説得し、納得させる、そしてその方向で動かせる、これがシビル・コントロールです。形式的なシビル・コントロールというものを、私どもは問題にしておりません。大臣、そうお思いになりませんか、いかがですか。
  148. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 現在の防衛庁並びに三幕というものが、形において三段階で生成してまいりましたことは、御承知のとおりでございます。したがいまして、シビル・コントロールの政治優先の問題は、きわめてむずかしい大きな仕事であることは御指摘のとおりでございます。その線に沿って歴代長官が懸命の努力を払ってまいっておりまして、私どもの信念といたしましては、一部あるいは局部的な、こういう世間に誤解を与えるような遺憾な事実が起こったことは、まことに残念ではありますが、根本的には、政治優先、シビル・コントロールは貫き得るものである、また今後もしなければならぬということをかたく信じておるわけであります。ただ御指摘のとおり、単なる形式ではいかぬ、実質的にもシビリアン自体が国防に対する深い掘り下げと強い信念を持って、またユニホームとも精神的にも十分な融合を遂げて、一つの統一した思想に持っていかなければならぬという御意見については、全く同感でございます。
  149. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは特に大臣に言いたいのです。内局にも責任があるかもしれぬが、私は、長官にもっと責任があると思う。最近の歴代長官は、私に言わせれば制服迎合ですよ。制服の喜びそうなことは、何でも金がかからない分はどんどんやっているじゃありませんか。あなたも新潟へ行かれるときに何か桜を五つつけて行かれたそうですか、これは形だけの問題じゃないのですよ。大体統幕議長や三幕の議長四つつけさせるということ自体、不見識ですよ。何ですか、あれは。階級章ですか。階級章だとすれば、法律違反じゃないですか。連中が四つつけたがるから、つけさせたら喜ばれていいじゃないか、これは明らかに迎合です。いろいろな形で出てきているのです。軍刀を持たせたらどうだ、天皇の栄誉礼を受けさせるようにしたらどうだとか、国防省の昇格の問題しかり、慎重に一つ一つ検討していかなければ、制服が喜ぶから、金もたいしてかからぬからというようなことで、そういうものを見のがしていくところにシビル・コントロールというものがぐらついてくる原因があるのですよ。何かわけのわからぬ階級章やら、あるいは地位をあらわすものやら、わけのわからぬ桜をつけさせてみたり、自分もつけてみたり、こういうものは改めていただきたいと思う。内局が幾ら一生懸命にシビル・コントロールという立場でやろうとしても、大臣がその意見に耳を傾けずに、直接制服と結びついて、こちらの意見をどんどん取り入れていくというようなことが起きちゃだめです。F104の生産のときもしかり、バッジの採用についてもしかり、きょうは時間がありませんから、バッジの問題もやりたいのですけれども、まことにみにくい。制服は純粋にものを考えているとばかり言えない面がありますよ。このバッジの問題について考えてみても、全部関係の業者に制服と同期の者、あるいは自衛隊の幹部であった者がみんな入っておって、それぞれコネを持っておるじゃないですか。こういうのをばしっと締めていくのが大臣のつとめであり、そういうところから真のシビル・コントロールも私は生まれていくと思う。けしからぬ文章を書いたから左遷させた、シビル・コントロール健在だ、そんなことを考えておったら、とんでもない間違いです。私たちも、自衛隊なり防衛庁なりを認めておらぬのだから、そんなところまで入る必要はないと言われればそれまでですけれども、そうは思わない。現にある限りは、やはりぴちっと押えていかなければ、たいへんな事態を招くことは、歴史が示しているのだから、このことをひとつ強く申し上げておきたいと思う。  こればかりやっていると時間をとりますから、もう一つ直接日本防空という面から考えてみたいと思うのです。  もう一度お伺いしますけれども日本防空という局面で見た場合に、今度の米軍の配置転換というものは、どの程度影響を持っておると判断いたしますか。特にF102を引き揚げるぞ引き揚げるぞと、ちょっと脅迫されていますね。F102が引き揚げた場合をも含めてお答え願いたいと思います。
  150. 海原治

    海原政府委員 おことばの中に脅迫ということばがありましたが、私ども別に脅迫されておりませんので、その点はひとつ御訂正願いたいと思います。  私どもは、アメリカのF102、従来日本に三スクォドロンおりまして、そのうちの板付におりました一スクォドロンは現に撤退しておりますが、これがいなくなるということは、航空自衛隊のF104、最も新しい要撃戦闘機でございますが、これの部隊の編成に見合うものである、こういうふうに判断いたします。したがいまして、別にF102がいなくなったからといって、直ちにどうこうというふうには考えておりません。先ほど楢崎先生のときでございましたか、大臣からもお答えがございましたように、板付におりました部隊が撤退しましたかわりに、新田原に編成されました104の部隊が、この秋からは具体的にスクランブルの任につく、こういうことでございます。逐次米軍の撤退と私どものF104の編成とが、いわゆる吻合と申しますか、ちょうどうまくかみ合いまして、日本防空の責任を果たし得る、こういうことで今後のことを進めておりますので、具体的にF102が引きましても、そのために格別の措置というものはございません。
  151. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、支障を来たさないというお話ですが、それでは二次防の中でひとつ考えてみたいと思います。二次防の兵器体系の中で、あなたがたはどの程度の総合撃墜率を考えておられたのですか。
  152. 海原治

    海原政府委員 総合撃墜率というきわめて専門的な術語のお尋ねでございましたが、実はこれは非常にむずかしいわけでございます。まずその場合には、反撃すると申しますか、防空戦等に使用されるこちらの兵器の状況もございますが、同時に、その対象となる目標の数であるとか、能力であるとか、これらがいろいろかみ合ってまいります。したがいまして、私どもは二次防をつくります際には、そういう総合撃墜率の算定はいたしておりません。ただ、先生がそうおっしゃいますのは、おそらく空幕という名前で出されました文書の中に、総合撃墜率云々ということばがございます。しかし、その文書自体が、これは何回も予算委員会等におきまして大臣からも御説明いたしましたように、あくまで幕僚の試案を参考までに配付したものでございます。そういうものに総合撃墜率——これは本来アメリカあたりで考えてみますと、軍事機密的な数字でございます。これだけの防空力をもって敵がどうなる、その場合の撃墜率が幾らということは、これはオペレーション・リサーチを十分にいたしませんと出てまいらない数字でございます。私どもは、まだそこまでの数字を持ち合わせておりません。一応こういう襲撃があった場合には、大体どの程度のものかという判断はございますが、それは先生が御引用になったような総合撃墜率と申すほどのものではございません。この点については、そのように御了承願いたいと思います。
  153. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これには航空幕僚監部というふうに書いてあるのですよ。私見だと言って逃げておられますけれども、明らかに航空幕僚監部という名前入りで出されておるわけです。まあ軍事専門的な立場からいけば、総合撃墜率というものを頭に置かないで、どういう兵器を採用し、どういうふうに配置をするかということをきめるはずはないと私は思う。あなたは否定されますから、否定されるならかまいませんが、この航空幕僚監部が出した文書によりますと、二次防においては大体二五%程度の目標を持っておった。ところが、実際には十数%台に現状はなっておる。これも一歩間違えば一〇%を割る危険すら持っておる。もう中身は読みません。そういうふうな内容でずっと取りまとめられておるわけです。この際、F104Jの配置と見合ってアメリカの戦闘機は撤退していくのだから、これは決して防空能力の弱体をもたらすものではないとあなたはおっしゃいますけれども、はたしてF104の配置だけでカバーできるのかどうか。それだけではないはずですね。ナイキがどの程度配置されるか、バッジがどの程度配置されるか、いろいろな条件が加わってくるわけでしょう。その防空能力の減退を防ぐために、いろいろなことを考えているはずです。さしあたり出てくる問題は、このF104の継続生産という問題が出てくると思う。F102の買い取りという問題が出てくる。それからさっきちょっと出ておりましたナイキハーキュリーズの配置という問題が出てくる。ボマークの装備という問題が出てくる。バッジの問題が出てくる。こういう一連の問題をどういうふうに処理して、防空能力の低下を防ごうとしておるのか。具体的な御説明がなければ、ちょっと計算が合わないような気がするのですが、いかがですか。
  154. 海原治

    海原政府委員 防空能力の具体的な見積もりと申しますか、価値につきましての御意見でございますが、これは実は先ほど申し上げましたように、非常にむずかしいのでございます。と申しますのは、先ほど申しました目標、すなわち敵襲の性格も非常に変わってまいります。たとえば爆撃機というのは、数年前までは、その爆撃機が目的地の上空まで飛んで、そこで爆弾を落とすということでございましたが、最近はむしろ空対地のミサイル発射機というふうに変わってきております。したがいまして、爆撃機一つをとりましても、従来のいわゆる爆弾を落とす爆撃機とミサイルを発射する爆撃機とでは、価値が非常に違ってくるわけでございます。常に攻撃側のほうが防御側よりは優先してビルドアップが出てきますことは、世界の歴史が示すところでございます。一例を申しますと、たとえば数年前のことでございますが、アメリカでも、ワシントン周辺の防空演習の際に、予想敵機に対して三割近くしか有効には防御できなかったというようなことが、雑誌に出ておりましたことを私は記憶いたしております。そのように、あれだけの金をかけまして、あれだけの防御網を持ちましても、完全にこれを撃墜することはきわめて困難、むしろ事実上不可能であります。したがって、一般的には、そういう防空能力としましては、いわゆる総合撃墜能力というものは、二五%から三〇%程度まで持っていけばいいという希望はございます。しかし、そこまで持っておる国がはたしてあるかということになりますと、これは非常に問題でございます。したがいまして、私どもにつきましても、先ほど申しましたように、いろいろな想定、前提というものは、各種の数値を入れましたオペレーション・リサーチをたんねんに繰り返さないと出てこない数値でございます。残念ながらまだそこまでの数値は持ち合わせておりません。ただ私どもは、二次計画に書いてございますように、あくまで日本防衛の基盤を養成するのだということが、目標でございます。それは、あの二次計画をつくりました当時、日本に展開しておりましたアメリカ軍というものを、言うなれば肩がわりをする、日本の空は日本の力で守るのだ、こういうことを考えた次第でございます。私、当時も事務的な取りまとめの責任者でございますが、ORをやりました結果、総合撃墜率が幾らになる、したがってこれこれのものを持たねばならない、こういう計算はいたしておりません。そういうことは、今後の問題でございます。私が先ほどから申しておりますように、具体的な数値というものを持ち合わせていないことは事実でございます。その空幕の文書と称せられるものにありますものは、先ほど申しましたように、あくまで一幕僚の私見でございますから、その文書もたしか正確なORにかけてみないとわからないということが、前提として書いてあったように記憶しております。その幕僚の一私見も、私の申しましたような一応の計算をとってみてそうなったというだけのことでございます。これは総合撃墜率というふうなもので考えられないものである、こういうようにひとつ御了解願いたいと思います。  具体的には、先ほど申しました将来の防衛のための基盤をつくるのだということで、たとえばいまのF102にいたしましても、これが全部引き揚げましても、104で従来102がやっておったようなことはやれる、こういう判断のもとに今後の部隊建設を進めたい、こういうふうに考えております。
  155. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そのORをまたなければわからないというのは、最後の分だけですよ。理想的な総合撃墜率としては五〇%、二次防の中ではじき出されたのは二五%、これはちゃんと書いてあります。ただ最後に、いまのような進捗状態でやっていくと、ORを待たなければならないが、おおむね一〇%程度以下にならざるを得ないと思われる。最後のところだけです。理想体としては五〇%、二次防の目ざしたものは二五%、これはもうちゃんとそのまま書いてあります。  ところで、この中でもう一つお尋ねしておきたいと思うのは、極東ソ連軍兵力の構成が変化するであろうということ、こういう分析をしている。大体のことを言うと、有人機といわゆる誘導弾、弾道弾との比率というものがずっと変わっていく、弾道弾のほうにウェートが移っていっておる、こういう見方をしている。具体的な数字は一九六五年で六対四、一九六八年で五対五、一九七〇年で四・五対五・五、ずっと弾道弾のほうにウェートが移っていきつつある、こういう前提で、こういう分析の上に立っていろいろなことを書いておられるのですが、この点はどういうふうに内局では見ていますか。
  156. 海原治

    海原政府委員 ただいまの、特定の国におきます爆撃機とミサイルの装備割合の変化の問題でございます。私どもは、そういうものを公にこうだと言って申し上げる程度の数字は、持ち合わしておりません。ただ、一般的にはそういうことになるんじゃないかということは、それぞれの幕僚がそれぞれの立場で持っておる数字はございます。しかし、そういうものと私どもの具体的な部隊建設とは直接関係ございませんので、まだ防衛庁として、庁としての判断ということをいたしたことはございません。
  157. 石橋政嗣

    ○石橋委員 とにかくいろいろな議論の前提になる分析の中で、いま言ったようなことがあげられているのです。それからもう一つは、中国の核開発が進み、近く第一回実験を行なう段階に達するであろう、こんなことまで書いてある。それで日本防空体系の中にも、核体系を組み込まなければいかぬのだ、そういう思想がちらちら出ているんですよ、あなたたちがどう言おうと。時間がありませんから、ほかの方もまたやっていただかなければなりませんので、きょうはもうこの程度にとどめますが、とにかく私が一番主眼にして申し上げているのは、さっきから言っているように、このシビル・コントロールなんです。  もう一つ、ここにありますいまの核兵器の問題で、これは防衛大学の学生のアンケートなんです。この中で、日本の核武装についてどう思いますか、こういう質問に対して、現在持つべきだというのが二六・三%、将来情勢いかんによっては持つことがあり得るというのが四六%を占めているんですよ。あなたたちが、自衛のための核兵器を持ったって憲法上違反にはならぬ、ただ政策的に持たぬだけだと言っている。政策というのはいつ変わるかわからぬのです。そんなことをここで言っているうちに、将来の自衛隊の幹部となる防衛大学では、どういう思想を持つような教育をしているか、いま申し上げたような数字です。もう少し国会答弁というものを通じて国民に説明されるものに権威を持たしていただきたい。裏づけがないのです。  きょうはこれで終わります。
  158. 徳安實藏

  159. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 石橋委員から本質的な質問がございまして、長官も幕僚諸君も非常に頭が熱いでしょうが、私は、ごく具体的な局地的な問題を二、三質問したいと思います。質問したいことはたくさんありますが、時間もありませんし、ほかの優秀な委員諸君がいろいろと質問したいと通告しておりますので、端的にお聞きしますが、これは長官、私は速記録を持ってきたのですが、二月二十日の当委員会で、従来の懸案である太田小泉飛行場の返還について質問し、お願いしたのでありますが、それ以来ちょうど四カ月たっておりますが、その間、太田小泉飛行場の返還について、いつ、どのような折衝をされ、米軍からどういう返事が来ておるのか、その点、ひとつ具体的にお伺いしたいと思います。
  160. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 太田小泉の問題につきましては、御指摘がございましたように、私どもも長年の懸案でありますので、何とかはっきりした形で解決をいたしたいと、数回実は米軍側とも折衝を続けております。現在までの見通しを申し上げますと、まだ結論は出ないので、まことに恐縮でありますが、渡良瀬川がやはり一つの有力な代替地、候補地であります。しかし、これもまた地元の方が非常に強い反対の態度をとっておられます。なかなかこれは困難の状態でありまして、むしろ地元側との話し合いを進めるというよりも、渡良瀬川のほうでは、絶対反対、強い反対の方が、私どもに陳情に来られました。われわれといたしましては、一応検討は続ける態度でありますが、これだけではいつまでたちましても解決になりませんので、まだ内容を申し上げられないのはまことに遺憾でありますが、現在の米軍施設、あるいは自衛隊施設、現存のもので何とか渡良瀬川以外に、代替地でかえられるものがあるかどうか、こういうように実は観点、立場をかえまして、米軍側とも実は数回折衝を続けております。もしできれば、まことに一番早い具体的な解決方法であると考えます。しからば、どこだということになると、これはやはり話し合い中でもあり、あるものは調査中でだめになったものもありますが、あるものはまだ望みを捨てないということで、具体的には申し上げられませんが、この方向でただいま努力中でございます。
  161. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 施設庁長官、いまお聞きのように、防衛庁長官は二月二十日以来数回にわたって折衝されたと言いますが、数回は何月何日にやられたか、ここではっきりお聞かせ願いたいのであります。
  162. 小野裕

    ○小野政府委員 正確な日数は覚えておりませんが、先般御追及がありましたあと、日米の施設特別委員会の席上におきまして、先方の議長と数回にわたってやりとりしておるわけでありますが、施設委員会は、大体隔週にやっておりますので、二月ごろから今日までに十数回あったわけでありますが、日のことはいまここで覚えておりませんが、最近まで数回にわたりまして繰り返し問答しておる、こういうことであります。
  163. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 その数回の日がいまわからなければ、あとで調べて——私はあとで申し上げますが、かなり現地ではもう悪い条件が出てきておるわけです。私どもいままであなた方を信頼すると申しますか、いわゆる御折衝の過程を了としてがまんしてまいりましたが、ここまできて、しかもこの国会冒頭に質問し、お願いしておいたにもかかわらず、半年近い日時を経てなおかつこれは進展しないとなれば、現地でももうがまんができない。いわゆる現地の革新的な勢力を中心に、あるいは演習の行なわれる日に飛行場にすわり込むとか、あるいはもうその他の実力をもってやる以外にないのだという気分が出ております。私どもは、いままでこれを押えてきた。とにかく政府もかなり真剣にこの問題には取っ組んでやっておるのだから、もうしばらく時をかすように言ってきておるのでありますが、きょう、そういう御答弁では、もう現地ではおそらくがまんできないと思うのです。おとなしい市町村の諸君ですら、今日では、このまま政府を信頼していては当てにならぬ、これは現地の実情から何かひとつ違った方法でなければ、太田小泉の返還は不可能であるという見解に達しておる。したがって、私は二月二十日にもかなりそういう空気があることを指摘しておったのでありますが、いまの防衛庁長官の御答弁でも、あなたの答弁でも、これは全然見通しがつかない状態です。となりますと、現地で具体的にすぐいろんな問題が起こりましても、これは私どもは責任を負えないのです。あるいは逆に私どもが先頭に立って、そういって実力行使的な行動を起こす以外にないと思うのです。ただ、いま福田長官から、いままで赤間遊水池をかわりにしようとしておったのだが、現地で非常に反対が強い、そこでいわゆる現存する施設に対して転換をしたらどうかという、これは初めての意見です。これは長官、私も思うのですが、おそらくいまごろあれほどの、何か特に距離的にも制約があるようでありますが、ばく大な土地を新しくさがすことは不可能と思うのです。現にいままで長くかかったのですから、最後の適地が赤間遊水池だったのですが、これもだめとなると、私は新しくさがすことは不可能に近いと思う。したがって、もうこれは、第二の方法としては、いまも長官がおっしゃったように、いわゆる自衛隊の施設なり米軍の施設の中で既存のものにさがす。これは現在の太田の使用状況を見ますと、不可能ではないと思います。毎日やるわけじゃない。一週間に一ぺんか月に数回、それもそう長い時間ではない。そうなりますと、政府の強力な要請とアメリカ軍の良識があれば、これは私は可能と思うのであります。したがって、もしいま長官がここで思いつきでそういう答弁をされたのではなくて、実際長官の責任でそういうことをなさろうとするなら、ここまで待ったのですから、あるいはまたある程度の時間は待てます。しかし、これもただ単に当委員会における質問に対するその場限りの答弁ならば、これは待てません。私は実は、きょうの長官の御答弁によっては、いま言ったように現地の諸君の意思をもう押え切れませんから、むしろ私どもが先頭に立って、返還に対する実力行使を含んだ強硬な措置をとる決意を持ってまいったのですが、いまはからずも福田長官の御答弁で、いままでなかった態度となかった法が出てまいりましたから、もう一回念を押しますが、長官、いまのあなたの御答弁をなるべく早い機会にやるという、米軍施設なり自衛隊施設によって太田小泉飛行場の使用の限度における代替ができて、あれを返還するだけの熱意をお持ちであるか、ここでひとつはっきりお示しを願いたい。
  164. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 太田小泉の問題は、実は昨年の冬あたりから、水戸射爆場と並びまして、この二つだけはぜひとも解決したい。もちろん全国的にたくさんございますが、特に数年の懸案でございますので、率直に申しまして、在任中に何とか片をつけたい、実はこの決意で施設庁その他を督励いたしまして努力いたしておるわけであります。もちろん、地元の困難、複雑な事情はよくわかりますが、同時に、地元方々も、日本防衛するというわれわれの立場についても、十分深い御理解をいただきたいと思うのであります。ただ反対だけでは問題は片づきませんので、非常に私どもも苦しい立場に立っておりますが、一日も早くこれは解決すべきであると信念を持っております。先ほど現存と申し上げたのは、そういう意味合いであります。栃木県ともおたくのほうと話がついて、遊水池でいいじゃないかということで引き受けたら、これは一番簡単に、実は昨年中にも解決したわけであります。御承知のように受け入れる側、移転先のほうで強い反対をされる。しかもそれがむしろ強まっておる。見通しがなかなかむずかしい。それだけでは何年かかっても問題は片づかないじゃないか。これはこれで検討段階ではあるが、立場を変えて、現存のものについて何とか代替できないかということを、実は具体的なものにつきまして、この春以来いろいろと折衝し、調査中であります。ただ、先ほど申したとおり、決定前に漏れますと、必ずいままではじゃまが入りまして、成立するものもこわれるという苦い経験を持っております。最後までがんばって、私どもは一日も早く解決したい考えであります。もうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  165. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 たびたび申しますように、新しい土地は、おそらくどこも不可能と思うのです。したがって、どうしてもあの飛行場にかわる施設が必要ならば、既存の基地以外にないと思うのです。それならば、私は、いまの使っておる実情から見れば、そう無理もないと思うし、また長官が心配されるように、既存の基地ならば、反対はございましても、これは現在使っておるのでありますから、しかもこれが核兵器とでもいうならば別ですが、簡単なものでありますから、私は説得力はあると思うのです。実は、先ほども言ったように、きょうは、どうしてもやらなければ、腹を据えたいと思ったのですが、一応長官の誠意も認められますし、新しいそうした提案もございますので、きょうはあまりくどくど申しません。ぜひそういった方法で——それならば、私は可能性があると思う。誠意を一応ここで了承しておきますから、ひとつ早い機会に具体的な解決をせられるように強く要望して、私の質問を終わります。
  166. 徳安實藏

    徳安委員長 村山喜一君。
  167. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、今回提案をされております設置法並びに自衛隊法の一部を改正する法律案の内容的な問題について御質問を申し上げてまいりたいと思うのであります。  まず第一点は、今回円資金をアメリカ合衆国政府に提供をする任務が大蔵省から防衛庁のほうに移されておるわけであります。相互防衛援助協定第七条第二項の規定に基づく円資金の内容を検討してまいりますと、これは交付金といたしまして、昨年度の比較をしてみますと、昨年は三億二千万円で済んでいるわけでありますが、ことしは約一億ふえまして四億一千五百四十万円という予算措置をしなければならない。これは在日米軍の軍事援助顧問団の経費に充当をする経費でありますが、御承知のように、アメリカの援助が漸減をいたしてまいりまするならば、これに見合うべきところの顧問団経費も当然減少をしていかなければならないのがたてまえであると思うのであります。その人員等を調べてまいりますと、これは外交官待遇を受けておりまして一級から三級まで分かれているようでありますが、それぞれ七十五名あるいは四十四名、さらに三十名、合計いたしまして百五十名程度のアメリカの軍事援助顧問団がおるわけであります。ところが、これがそういうような形の中で減少をしていかなければならないにもかかわらず逆に一億円もふえてきたということは一体どういうようなわけであるかということが第一の問題点であります。  さらに、この軍事顧問団の使用いたします日本人労務者は約百五十名程度おるようでありますが、これは国が雇用をするところの契約をいたしました労務者ではなかろうかと思うのであります。これはどういうような使用形態がとられているか、これの労働基本権的なものは承認をされているのかどうか、この点についてどのように状況が相なっているかを明確にしていただきたいのであります。
  168. 大村筆雄

    ○大村政府委員 まず第一段の御質問の点でございますが、相互防衛援助協定交付金が前年度に比べて増額になっておるのではないか、これはなぜかという御質問でございます。この交付金につきましては、ただいまのところ大蔵省に計上してございますので、中身等につきましては大蔵省の担当官より御説明するのが至当かと思いますが、適宜私からなぜふえたのかという件につきまして御説明申し上げたいと思います。この交付金の形容につきましては、前年度からの繰り越し額というものがございます。前年度の使用残を翌年度に繰り越して、それと交付金と合わせて財源として使われておるというのが実情でございまするが、三十八年年度は、前年度繰り越し額と、それから三億二千万の予算額と加えまして実行されまして、総額が三十八年度使用を終わりまして、三十九年度の予算編成にあたりましては、前年度からの繰り越し額はゼロとなっております。したがいまして、三十九年度の交付金四億一千五百万円をもって三十九年度の交付金をまかなわれる、こういう形になっております。したがいまして、使用総額におきましてはむしろ三十九年度のほうは若干減ってまいっておる、こういうかっこうに相なっておるわけであります。  第二段の労務の点につきましては施設庁長官より御答弁申し上げます。
  169. 小野裕

    ○小野政府委員 軍事顧問団に働いております日本人労務者でございまますが、この所要の労務者の提供については、現在は、この援助協定では、直接人を提供するのじゃなくて、それに要する経費を提供するというようになっておりますので、予算といたしましては、労務費ということで、三十九年度におきましても一億三千七百万円計上しておるわけであります。現実の姿といたしましては、実は、この労務費を提供して、その労務費によって直接顧問団が日本人労務者を採用するというのが本来の筋でございますけれども、実は、そのことがいろいろ支障がございますので、運用といたしましては、私のほうで駐留米軍のほうへ提供をいたします労務者のうちにそのほうへ振り向ける者をあわせて提供をしているわけであります。したがいまして、在日米軍のほうへ提供いたしました労務に関する経費は全額私のほうへ返還になるわけでございますが、実際には、いまのように、顧問団で働く労務者は百数十名のでありますが、駐留軍のほうで採用して顧問団に回すその関係の経費は、顧問団が日本政府から提供を受けました資金で米軍内部で決算をしておる。そういう形で、私のほうへは結局戻ってくるのでありまするが、顧問団に関する分だけは戻らないということになるわけでありまして、この点ではこの経費負担の点には何にも問題がございません。ただ、こまかく御議論なさいますならば、実際には金銭で提供をしておるものを変なかっこうでやっておるのじゃないかというお尋ねもあろうかと思うのでありますけれども、これは、日米両側にとりましても、また労務者本人にとりましても、米軍に提供しておる労務者全体を同じシステムの中で扱うことが諸般の点で便利だ、たとえば労働法規の尊重あるいはそうした方々の、裁判請求権、訴権の確保という点につきましても、私どもは、駐留軍に対して提供しておる労務者については、基本労務計画その他の規定によりまして保障しておるわけでございます。地位協定により保障されておるわけでありまして、このうちに入って働いていただくほうが好都合である、こういうことからそういう運用をしておるわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  170. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 第二の点は了承いたしますが、第一点は、この相互防衛援助協定が一九五四年の三月八日に発効いたしまして、そのときの付属書のGの5項によって、一年間の金額は三億五千七百三十一万円をこえないことに同意するということで、発足当時はそういうような金額で発足をしたわけであります。それから今日までの間にずっと経過的な流れがあるわけでありましょうが、昨年は予算的な措置は三億二千万円しかしていない、しかしながら、前年度からの繰り越し金があったから、それを一億四千万円程度よけい使った、ことしは繰り越し金がないので、それを四億一千五百四十万円にふやした、とするならば、一体いままでの経費がどのように使われ、その該当者の人員がどういうふうになってきたのか、それの積策的な根拠が明確にならなければ、こういうようなかっこうの中で、アメリカの援助が減少している際において増額をしなければならないという理由が明確にならないと思うのです。この資料は明日でも御提供を願っておきたいと思いまして、それ以上は触れませんが、次の問題点であります。  今回自衛隊法の百条の四を改正いたしまして、「自衛隊は、長官の命を受け、国が行なう南極地域における科学的調査について、政令で定める輸送その他の協力を行なう。」、こういうことになっているわけであります。これは、南極のいわゆる科学的な調査というものが、過去において第一次から第六次まで日本政府においても行なわれました。その中で、文部大臣を本部長といたします南極地域観測統合推進本部というものが生まれ、その下部機構といたしましてそれぞれ関係各省の責任者が幹事あるいはその他の委員となりまして参加をして、推進本部というものの構成員がきまっているわけです。そして、文部省にいわゆるこの実施本部の事務局が置かれて、大学学術局長がたしか事務局長になっていると思うのであります。これを今回は自衛隊がこれに参加をする、こういう形になっておるわけでありますが、そうなってまいりますと、南極地域観測統合推進本部防衛庁はどういう資格でいま入っているか、この点が、第一点であります。これは、それぞれ、総理府の場合には、日本学術会議を通じて学術観測の部門がございますので、そういうような科学的な調査という部面からこの問題を調査していかなければならない。外務省なり大蔵省、厚生省、農林省、通産省というようなものはそれぞれ関係がある。文部省の場合には、これは関係大学並びに大学学術局に大いに関係があるわけであります。運輸省は、気象庁、海上保安庁というようなものが関係がある。郵政省の場合には電波研究所、建設省の場合には国土地理院、こういうようなものが学術的にも関係が出てくる。予算的にも関係が出てくる。とするならば、防衛庁はどのような形でこの南極地域観測統合推進本部の中に入って、一体どういう目的のもとに参加をするという考え方をとっているのか、この点を明らかにしてもらいたいのです。いままでの第一次から第六次の成果をこうやって振り返りながら、今日の問題点として、南極におけるところの観測は何をなさらなければならないかというようなことが、国際的にも、あるいは日本学術会議のもとにおける南極特別委員会の中におきましても、そういうものがきめられておる。そういうものと一体自衛隊の任務との間にはいかなる関連性があるのか、これをやはり明確にしておかなければ、「輸送その他の協力を行なう」、「政令で定める」ということになってまいりますと、一体南極のそういうような科学的な調査のために自衛隊が今後においてどのような学問的な貢献をしようとしているのか、そこら辺が明確でありませんし、自衛隊の船を持っていくということになりますと、一体これはどういうことになるのか、そこら辺が非常に問題がありますので、明確にしていただきたいと思うのであります。
  171. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 南極地域観測の再開に関するお尋ねでございますが、これは、御承知のように、従来、第一次から第六次まで、主として海上保安庁の非常な御協力を得まして、その地域観測に必要な人的な要員並びに物資の輸送を行なってまいったわけでありますが、しかし、その体制にいたしましても、また本部の体制にいたしましても、これはいわば臨時的な暫定的な措置をもって行なってまいっておったわけでございます。御承知のように、三十五年に第六次の観測をもちまして一時中止することにいたしましたが、その後やはり学術会議等におきましてはぜひ政府の力で再開してもらいたいという強い要望がございました。これは三十七年に学術会議の勧告があったわけでございますが、その後いろいろと検討いたしました結果、政府といたしましても、御承知の太陽活動極小期国際観測年がございます等の事情もございますので、いろいろな準備が完了次第南極地域観測を再開するという方針をきめたわけでございます。その際に、従来この南極地域観測は、先ほど申しましたように、臨時的な体制でスタートをいたしましたために、観測者におきましても、また観測施設等におきましても、きわめて不十分でございました。相当いろいろな人的な危険等も予想されたわけでございますので、今後再開いたしましてさらに長期的にこの南極観測事業を実施する際にはできるだけ万全の措置をしたいということで、南極地域観測統合推進本部検討をいたしました結果、輸送等につきましてはそういった長期的な恒久的な体制を考えるということ、また、航空機輸送等につきましても非常に層の厚い自衛隊を今後使うべきであるということに結論を出しまして、昨年八月の閣議におきましてもそういった方向で決定をされたものでございます。もちろん、従来、第六次までの輸送等につきましては、先ほど申しましたように、運輸省の海上保安庁の非常な協力を得ておりました。そういった経験もございますので、今後の輸送等につきましても、そういったものは当然生かすべきであるということから、運輸省の御協力も得たいということを考えておるわけでございます。現在、統合推進本部は、御承知のように文部大臣が本部長でございまして、関係各省の次官等が副本部長になっておりますので、先ほど申しましたような趣旨もございますので、防衛庁の事務次官に副本部長に入っていただいております。それから委員にも防衛庁教育局長に御参加をいただいておるわけでございまして、今後の具体的な方針等についていろいろと検討をしていただいておるわけでございます。お尋ねの中にございましたように、南極地域観測は純粋に学術的な調査観測事業でございますが、それの輸送につきましては、適切な、また可能な方法をとることが南極条約ではっきり認められておりますし、よその国におきましてもそういった事例が相当多くございますので、わが国でも、要するに南極地域観測の的確性、安全性ということを考慮いたしまして、今後この輸送等につきましては自衛隊に御協力をお願いするということにいたしたわけでございます。
  172. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、新しくことしの文部省予算の中で南極地域観測再開準備費二十億、観測船建造費十七億というものをきめた。もちろん予算総則の中において各省それぞれ関係のあるところで移しがえをして使えるようになっておる。しかしながら、これは観測船としてつくるのだということになっている。ところが、自衛隊の場合にはこれは軍艦だという形になっているようであります。われわれは、軍艦をつくるためにこの予算が組まれたのじゃない、観測船をつくるために組まれたのじゃないか、こういうように考えるのでありますが、防衛庁は、この法律が通過した場合には、これを船ではなくて軍艦としてつくった、そして今後も使用をするという計画を立てておるのか、その点を防衛庁から承っておく。
  173. 堀田正孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。  まだ法律が通っておりませんので、自衛艦という名称では呼んでおらないわけでございますが、もし法律が成立いたしまして自衛隊の自衛艦としてこの船は使うという場合には、一応自衛隊に籍があるという意味で自衛艦というふうに私どもは理解いたしたいと思うのであります。しかし、推進本部の中にございます設計小委員会でいろいろおきめになりました設計の諸要目は、全部南極観測に必要な諸元をおきめになっておるわけでありまして、一般の自衛艦が備えておりますような諸要目は全然具備いたしておりません。したがいまして、自衛艦は輸送等は全然いたしていないわけでありますが、これは完全に南極に観測においでになる隊員の方たちを輸送し、その目的にだけ役立つものであります。
  174. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 実施本部は文部省にあるわけですね。そうすると、船の予算は文部省予算でついている。それを今度移しかえて、この法律が通れば防衛庁の自衛艦になる、こういうことになりますか。船籍はどこにあるか。それの監督その他の指揮をするのは実施本部がやるのですか。それとも防衛庁がこれについて責任を持つのですか。
  175. 小幡久男

    ○小幡政府委員 法律が成立をいたしましたあとでは、予算も防衛庁の経費に組みかえになります。したがいまして、防衛庁で建造いたしました南極観測船は防衛庁の所管に相なるわけでございます。
  176. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 先ほどお答え申しましたとおり、現在までの統合推進本部はいわば臨時的な統合機構でございますので、いよいよ再開になります際にはやはり恒久的な実施本部というものをその際考えるべきであろうと思っておりますが、南極観測に関する基本的な計画は当然従来と同様にこの実施本部考えられる。ただし、この砕氷艦の運航の具体的な計画については、防衛庁長官の指揮によるというふうになろうと思っております。
  177. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もちろん、南極条約によりまして、自衛隊その他軍の船を使うことができるということも条約に規定されておる。だから、自衛隊の軍艦が向こうに観測に行って協力をするということについては、条約上は別に差しつかえない。そしてまた、領土の主権なり、領土の請求権というものを南極においては条約によって放棄されている。そういうような点から考えましたならば、これは別に問題ないではないかということにもなります。しかしながら、南極におけるところの今日までの歴史を見てみますと、そこにはこの領土権の主張をめぐりまして相当な争いが行なわれている。過去においても軍事力を利用してアルゼンチンの海軍がイギリス隊の上陸を武力で撃退をした事実等があるわけです。そういうような点から考えてまいりますならば、この観測基地をめぐるところの問題、これは日本昭和基地ただ一つしか持っていないわけでありますが、ほかの加盟国の場合においては、イギリスが十三も持っている。あるいはアメリカが七つ、ソビエトが九つも持っている。こういうような事実があるわけですね。そうして、この中において、フランスの場合も、あるいはその他の国々においても、みんなそれぞれ軍艦ではなくて観測船という形をもって臨んでいるようであります。そうすると、過去においてそういうようないわゆる領土権をめぐって争いが行なわれた事実があることから見た場合に、いわゆる砕氷艦、軍艦という形で乗り込んでいくということがはたして正しいのかどうか。そして、これは自衛隊の手を借りなければ日本の国自体として南極の観測の再開はできないのかどうか。それにまた、観測部会が決定をいたしております学問的な科学的な内容というものまで一々お世話を受けなければならないような状態の中に巻き込まれるおそれはないか。こういうような点は、文部省としては、大学の学問の研究の自由を守るというような立場からいろいろ検討をされた結果、防衛庁が運送その他政令で定める協力をやるのだということに同意されたものだろうと思うのでありますが、それらについてはどういうような考え方をお持ちになっているのか、この際お聞かせを願っておきたいと思います。
  178. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 南極の地域観測が学術的な国際協力事業であることは御指摘のとおりでございまして、わが国が今後恒久的に継続しよう、また従来以上に充実拡大して行なおうというこの事業も、全く学術的なものでございます。ただ、先ほどお尋ねの中にもございましたように、従来とも各国それぞれ適切な可能な方法でこの観測隊の輸送を行なってきているわけでございます。南極条約におきましても、必要がある場合には、そういった軍隊、わが国で言えば自衛隊のようなものをそれに使用する、また要員、備品等も使用することを妨げるものでないということを明定しておるわけでございます。もちろん、だからといいまして、今後自衛隊の御協力によりまして輸送等を行ないますけれども、基地自体における観測なり調査というものについていろいい自衛隊のほうの御影響を受けるということは全くないというふうに考えております。したがって、輸送その他についての御協力を願うわけでございまして、それが恒久的な南極における地域観測の成果にまで影響が及ぶというふうには考えておりません。
  179. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 砕氷艦の問題は、文部省はけっこうです。  そこで、第百条の二でありますが、外国人の教育訓練をやる、それが今回新たに加わっているわけであります。これは自衛隊の学校その他において外国人についての教育を委託を受けた場合にやれるような道を開こうとするものであります。そこで、私は、憲法の問題にも関連をしてくるわけでありますが、日本自衛隊は、これは戦時国際法上交戦権を持たないところの存在として憲法上は存在をしておる。このことは、いままでも歴代の内閣なりあるいは防衛庁長官が答弁を国会においてされているところであります。そういうような特殊な自衛隊の存在であるにもかかわらず、その学校に入ってくるのは、これはいずれも東南アジアあたりの国から来るところのいわゆる軍隊の卵になる学生だろうということが想像できるだろうと思う。そういたしますと、戦時国際法上交戦権を認められていない日本自衛隊が、外国の軍人養成に手を貸さなければならない、また、手を貸すべきかどうかということは、憲法上これは問題になってこざるを得ないのでありますが、そういうような自衛の範囲内においてしか存在をし得ない日本自衛隊の学校において、外国の、いわゆるそういうような制限を持たない、憲法上も法律上も制限を持たない外国の軍人を養成をする、そういうようなことが憲法の精神からしてはたして妥当であるのかどうか、この点を防衛庁長官はどのようにお考えになっているか、明らかにしていただきたいのであります。  さらに、この学校は陸・海・空それぞれ設置されているわけでありますが、一体どこの国から日本自衛隊のどの種の学校に入って教育を受けたいという申し入れが来ているのか、いわゆるどういうような形で教育訓練をやられるのか、いわゆる陸上自衛隊でやるのか、あるいは海上か、あるいは航空自衛隊なのか、その学校の種類を明らかにもらいたい。
  180. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 現在までは、タイ国から、防衛大学を卒業した人を引き続いて海上自衛隊幹部候補生学校へ入校させたいという希望もあります。そのほか二、三照会も来ておりますが、自衛隊といたしましても、任務の遂行に差しつかえない範囲で、また、自衛隊法で定められました任務及び権限の遂行に必要な教育の範囲内で、要請のありました外国の軍人に対しましても受諾、教育をいたしているわけであります。私どもとしましては、あくまで、御依頼を受けました国とわれわれとの間の国際親善関係あるいは各国の国際慣行、こういうようなものから考えながらお引き受けしておる次第でございまして、なお、細部にわたりましては事務当局より答弁いたさせます。
  181. 堀田正孝

    堀田政府委員 ただいま長官からお答え申し上げました点につきまして、若干補足的に御説明申し上げますと、自衛隊法百条の二で、御承知のように防衛庁の付属機関である防衛大学校で外国人学生を教育することが許されております。この条文に基づきまして、すでにタイ国の学生を二名過去において教育いたしました。なお、防衛大学を卒業いたしました学生を、ただいま長官お答えいたしましたもように、海の幹部候補生学校に入って勉強させてほしいという照会を受けました。なお、タイ国の海軍の少尉が二人やはり幹部候補生学校に入って教育を受けるという要請をいたしております。そこで、現在のこの規定でまいりますと、防衛大学では許されるけれども、幹部候補生学校では教育を受けさせることができないということになっておりますので、国際親善並びに国際慣行の立場から、幹部候補生学校で一年間教育を受けさせることは差しつかえないのではないかということで改正を御提案した次第でございます。
  182. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 日本の国際親善という立場からやるのだというお話であります。日本は平和憲法を持っているという、この基本に立って国際親善という道が進められていかなければならない。そういうような軍事力に対するところの協力をすることによって日本が国際親善の道を進めていくのだという考え方は誤りじゃないですか。これは憲法を正しく読んでいけばそういうような立場に立ち至らなければならないはずです。それを、学生のみならず、今度は外国の軍人の職業訓練まで日本においてやっていく。しかもタイ国という一つの名前が出てまいりましたが、それはアメリカとの極東におけるところの同盟軍として存在をしている。そういうような自由主義世界を守る軍人を日本において養成をするということは、これはやはり平和憲法の考えている自衛権の範囲をはかるかに逸脱をして、国際親善には役に立たないという方向になると私は思う。そういうような点から考えていくならば、これは明らかに憲法と矛盾する政策である、こういうふうに考えるわけですが、これについてはまた他日触れてまいりますので、時間がありませんから次に急ぎます。  次はシビリアン・コントロールの問題でありますが、先ほど石橋委員からも触れられました現在の防衛庁設置法上の機構を見てまいりますと、総理大臣があり、そのもとに防衛庁長官がある。これはいずれもシビリアンであります。そして、そのもとに内局の機構がシビリアンの手によってつくられて、そのもとにおいて各幕僚監部が存在をする。こういう日本のシビリアン・コントロールの強い性格は、縦断方式を逆にした面において世界でも有数なものだということで説明をされているようであります。ところが、今度はこの各幕僚監部の中身を見てまいりますと、これは部長である幕僚長のもとに副長があり課長がある。そこには当然シビリアンがやるべき行政管理的な職務を制服がやっている。こういうような内容が一面においてあらわれていることも事実であります。そうなってまいりますと、これは縦断方式を強くした面だ、こういうふうに見られているわけでありますが、このようにいわゆる設置法上の系列は明らかにシビリアン・コントロールの非常に強い形をとっているにもかかわらず、現実的には均衡方式に基づいたコントロールがなされている、こういうようなことが防衛庁の場合には言えるのであります。そうした場合において、一体今日の自衛隊の制服に対する文官の優位性という問題はどういうふうにして確保し、ややもすれば一人歩きをするような制服をどのように統制していくかということは、防衛庁長官をはじめ内局のいゆる参事官あたりが最も気をつけなければならない点だと思う。そういうような点から、私は先ほど石橋委員が触れられた点を法令によって調べてまいりました。この前の新聞に出ましたように、防衛庁長官が戦闘服を着て五つ星をつけて現地に災害調査に行ったと書いてあるわけであります。ところが、これは、どの規定を見てみましても、シビリアンであるところの防衛庁長官がそういうような服装をしてよろしいという規定はどこにも見当らない。防衛庁長官は総理大臣のもとにおける最高の責任者でありますが、あなたの場合にはそういうような階級というものはないはずです。五つ星といえば、これは普通にいうところの元帥服だといわれておる。ところが、自衛隊法の三十二条には、自衛官の階級というのは陸将が最高でありまして、この陸将の階級章は規定によって三つ星ということになっておる。ところが、自衛隊法の施行規則の中におきまして、別表の中で、陸上幕僚長たる陸将等は四つの星をつけることができるような規定がある。これは階級章ではないはずであります。もう一つの星は職務章でなければならない。にもかかわらず、これが階級章であるかのごとく自衛隊法の施行規則においては例示してある。この施行現則それ自体が、自衛隊法の三十二条に定める階級に対しましては違反をしておる。こういうようなものをあなたがたがおつくりになっている。そして、あなたみずからもその五つ星をつけて、さも得意そうに回っておる。このように、法律を無視し、あるいは自分でつくった規則を無視する、そのような中に、いわゆるシビリアン・コントロールがだんだんぼけていく姿が今日においてあるのではないか。まず、あなたがつけて行かれた五つ星の根拠を承りましょう。それが第一の問題であります。
  183. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 シビリアン・コントロールがわが自衛隊の根本的な基礎原則でなければならぬ、御指摘のとおりであります。先般新潟の現地視察に際して私が着ましたのは戦闘服ではございません。便宜的に作業衣を着て参ったのであります。五つ星も長官であるとしるしてあります。私が就任以来感じておることは、いまの規定にむしろ不満足でありまして、実際に防衛出動あるいは不幸にして治安出動あるいは災害出動といったような場合に、いまのようなせびろではたして現地視察なりあるいは指揮督励等についてふさわしいものであるかどうか。就任以来なるべく時間をさきまして現地部隊を視察いたしましたし演習も見てまいったのでありますが、そういう点でなるべく近い機会にむしろ規定を改革いたしまして実情に沿うようなことも考えていいのじゃないか。あくまでシビリアン・コントロールの原則を維持しながらも、一つの便宜的な改正をしたいということで、いま検討を命じておるわけなのであります。私どもとしましては、原則はあくまでも守ります。しかし、同時に、実際の面に触れる場合も考えまして、実情に沿うものを考えて当然差しつかえないのじゃないかと考えておるわけであります。
  184. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 あなたがそういういわゆる旧軍隊的な権威主義というものによってみずからをまといながら現地に行って指揮しなければならないというような感覚をお持ちになっておるから問題がある。今日シビリアン・コントロールという問題は、そういう軍隊的な権威主義の価値というものを民主主義的な価値のもとに従属させる、これが本質なんです。あなたは国会議員である。国会議員の中から、今日においては防衛庁長官としての任務に当たっておいでになる。そうすれば、あなたの場合にはそのバッジもあるし、そしてまた、あなたのことについては、絶えず防衛庁の広報室等であなたの写真入りでそれぞれ広報活動をやって、隊員には十分知らしめてある。この防衛年鑑の中にも大きな写真が載せられているじゃありませんか。そういうような点から考えていけば、そうしてまた、あとからついてくる人たちがみんな長官として奉っているんだから、あなたがその五つ星をこれはしるしである、そういうように考えなくても、ああ福田防衛庁長官がお見えになったということで、隊員はすぐわかるはずです。それをわざとそういうようなのをつけて行かなければならないというところに、旧軍隊的な権威主義の、あなたのそういうような考え方が残っているわけです。これは、軍隊を民主主義的な価値のもとに従属させるという基本原則を、ややもすれば、外部から見た場合には明らかに見誤って、そうして、ああそういうような形で制服を養成しようとしているんだなということが国民の前には印象づけられてしまいます。そういうようなことは、あなたとしてはぜひ避けてもらわなければならぬ。そうして、規則にもないことをみずから長官が破っていく、そういうようなだらしのない行政家であっては困りますよ。あなたは長官として、そういうような規則はないにもかかわらず、そういうような服をつけて、しかもそういうような形をとっていくならば、階級章の上にまた自分でかってにそういうようなものをつけさした、こういうことになって、みずから、いわゆるそういうような元帥を僭称するといわれてもしょうがない。これこそまさに文官統治によるところの原則をみずからの手によって破ろうとする姿じゃありませんか。私はそのことを指摘しておきたいと思う。  そこで、私がお尋ねしたいのは、今日この自衛隊の充足率が、三十七年度末において、陸上においては八四・八%、海上においては九八・五%、航空においては九五・五%。統幕は一〇〇%でありますから、これはもう別に触れる必要もありません。ところが、これはいわゆる定年制の改正等が行なわれ、あるいは給与・待遇の改善が行なわれ、三十六年度よりも三千百七十四名と千三百一名と二千百五十九名、合計して六千六百三十四名ふえました。そういうようなことが防衛年鑑にも明確に書いてあります。ところが、その後、三十八年度末においては、陸上は八四・八%が八四%に下がる、海上においては九十三・五%に同じく下がる、あるいは航空自衛隊においても九四・一%に下がる。今回は、募集計画人員として三万二百四十七名、増員分が二千百七十一名であります。陸はゼロ、海は一千六百七十二名、航空が四百九十六名の増員でありますが、今日三十九年度の目標をどのように充足率を定めようとしておられるのか。これについての目標がなければならないし、また、それに対する計画がなければならないと思う。この目標数についてパーセンテージでお示しを願いたい。
  185. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 三十九年度における二等の陸海空募集人員は二万七千六百二十五名であります。なお、この目標達成のためにはちょうど三十九年度が適齢人口の最も減少する年でありますから、いろいろむずかしい不利な条件がたくさんございます。しかし、最近の募集状況を見ますと、充足状態もだいぶ改善してまいりました。われわれの目標は達成し得るものという考えを持っております。  なお、こまかい点は事務当局より答えさせます。
  186. 小幡久男

    ○小幡政府委員 先ほどの御質問中に、三十九年度の充足率をどこに置くかという御質問がございましたので、その点お答え申し上げます。  三十九年度につきましては、陸上自衛隊は八四%の充足率を目標にしております。海上自衛隊は九三・五%、航空自衛隊は九四・一%を目標としております。
  187. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、三十八年度末と同じ数字になる、こういうふうに見て差しつかえありませんか。
  188. 小幡久男

    ○小幡政府委員 充足率と申しますのは、一年間を平均いたしまして、大体そういうパーセントに当たるという線が充足率でございます。末の数字状況によって若干ふえると思います。それは、おそらくいまの計画では三十九年度末は二千名くらい増加するのではないかという方針で進んでおります。
  189. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、三十七年度末はそれよりはるかに高い数字が出された。三十八年度末、三十九年度末はいずれもこういうような程度でよろしいんだ、こういう考えでしょうか。
  190. 小幡久男

    ○小幡政府委員 三十七年度末の時点をとってみますと相当高い数字でございますが、年平均の充足率から申しますと、やはり陸上は八四、海上は九四・一、航空は約九四でございました。年平均から見ますとそう差違はございませんが、年度末にはこれ以上の数字になっておることは確かであります。
  191. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますならば、この充足率は、この八四%なり九三・五%、九四・一%というものが理想である、こういうふうにお考えになっておるわけですか。理想は一〇〇%ですか。
  192. 小幡久男

    ○小幡政府委員 理想はもとより良質の隊員を一〇〇%ほしいのが理想でございますが、大体いままでの募集の経過等を見ますと、その年度におきまして良質の隊員は大体どれくらい手がたく見積もったら集まるだろうかというふうな点を推しはかりますと、やはり八四とか九十幾ら、あるいは八六とかいう数字になりまして、これ以上の充足率を掲げることは容易でございますが、年度末になりまして予算を返すというふうなことになりましても非常に不経済でありますので、大体平時におきましては定員以下に充足率を見積もる、低いところに押えておくというのが過去における実情であります。
  193. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そうであるならば、増員をする必要はないでしょう。充足率がそういうような低い率で足りるのであれば、増員をする必要はないはずです。現在の人員をうまいぐあいに割り振りをしてやっていけばいいじゃないですか。二千百七十一名もふやす必要はないじゃないですか。
  194. 小幡久男

    ○小幡政府委員 三十九年度の制服の増員は海と空でございます。海と空につきましては、たとえば海を例にとりますと、軍艦ができれば制服が要るというふうに、装備と密着した予算の要求になっておるわけであります。これは欠かすことができません。また、陸のほうにつきましては、三十九年度につきましてはシビリアンだけでございます。この点はまたこれで必要な理由がございます。したがいまして、今年度の要求は、制服につきましてはそれぞれ装備と密着して必要な制服を要求する、しかも採れば採れる海と空でございます。陸を避けておりますので、この点は御指摘のようなことではないと思っております。
  195. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 三十八年度末も九三・五%、それから九四・一%程度の充足率、三十九年度も目標として同じことだ、こういうのであれば、充足率を向上させる必要はないわけでありますから、結局、充足率については、これはやはりその程度に、あるいはその程度以下になっても差しつかえないというふうにもとれるわけです。とするならば、増員分は、これは現在の分を回して、そして今日シビリアンがやるべき行政的な管理的な職務まで制服がやっているのが現実の姿の中では出ているわけですから、そういうような人員を回せばいいじゃないですか。その点はどうです。
  196. 小幡久男

    ○小幡政府委員 海や空の九三・五とか九四という数字ですが、一〇〇%の実現ということはなかなかやるべくして実際は慣行上とらないのでございまして、四、五%引いたところが通常われわれの一〇〇%。定員化にあたりまして余裕を持って人員をとるという思想から申しますと、大体一〇〇%というのは定員に対しまして九六か七というのが一〇〇でございます。したがいまして、海の九三・五とか空の九四というのは、まだ二、三%余裕がありますが、大体幹部について言いますと一〇〇%でございます。残りの兵隊でございますが、兵隊のほうは相当教育訓練を要しますので、やはり増員ということで、艦艇ができますとそのものに見合った数は年々とっていきませんと、実際装備ができても艦が動かぬということになります。したがいまして、九三・五あるいは九四あるいは九五というところはどうしても確保する必要があります。その。パーセントが一〇〇に足らないからといって、シビリアンで埋めるということも不可能であります。
  197. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は防衛庁長官お尋ねいたしますが、各幕僚監部の幕僚長が部長になり、副長あるいは課長がおってやっているのをずっと見てまいりますと、たとえば陸上の場合におきましては一室六部十四課、それから海上の場合においては五部十九課、航空幕僚監部の場合におきましては、これも五部十九課でありますが、こういうようなふうになっている。こういうようなのは内容的にはシビリアンがやるべき行政的な管理的な職務を制服がやっているという指摘を受けているわけです。とするならば、一体あなたは基本として文官がこれをコントロールしていく形というものはくずすべきでないというお考えをお示しになったいわゆるシビリアン・コントロールの形から考えていった場合には、こういうような制服の自衛官がそういうような行政的な事務をやる、そして第一線とはまた違ったところの仕事をするということに対してどう考えられるか。しかも防衛庁書法あるいは組織令を調べてまいりますと、内局の場合にはどういうふうにしてコントロールするかといえば、何々の基本に関すること、あるいは調整事務、人事、予算、装備品を手に握っている、そういうような手段をもってコントロールしているわけです。そして、あなたが出される指示権あるいは承認権、あるいは一般的な監督権、こういうようなものを補佐することによって統合各幕僚監部を制御していく、こういうような形をとっておられるようであります。ところが、それぞれの幕僚監部におけるところの機構を調べてまいりますと、内容的にはこれが具体化されたものをやっている。たとえば厚生課というのがあって職員の厚生に関する仕事なんかをやる。そこは制服の軍人がすわっていなくてもできることでしょう。そういうようなものはいわゆる文官にまかして、そして、人数が足らないというのであれば、制服はそこから出て陸海空にそれぞれ配置に着くという形が普通とられなければならない。特にこういうように充足率が悪ければ、そういうような方向において努力されるということのほうが正しい行政のあり方ではないか、私はこう考えるのですが、大臣、その点はいかがでございますか。
  198. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 募集と申しますか、充足率を高めるために努力することは当然でありますが、並行して、ただいまお尋ねの点、私も十分考える必要があろうと存じます。第一線のなかなかむずかしい充足の現状から考えますときに、中央の各幕において、むしろ余人をもってしても、いわば制服自衛官でなくても十分できる仕事も確かにあるわけでございます。その一つの解決方法として婦人自衛官というものをいま検討いたしておりまして、いわば婦人自衛官で十分なし得る通信、会計、庶務的なものは各幕においてもこれを採用いたしまして、そうしてなるべく第一線の各部隊の仕事に専任してもらうという体制を検討いたしておるわけであります。従来の募集とともに、御指摘の点は十分私ども必要と考え検討いたし、近く結論も出し得る予定でございます。
  199. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そうであるならば、そういうような形においていわゆる機構上の問題を考えていく。そうしてまた、充足率もさほど向上させなくてもいいという目安を置いておられるのであるならば、これは新規の二千百七十一をふやさなければならない積極的な理由が出てこないと私は思う。先ほどから担当局長の説明を聞いておるところでは、どうもふやしていくところの根拠がないように考えるわけですが、この点は長官からその必要性をお答え願ったほうがいいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  200. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 便宜私からお答えいたしますが、先ほど人事局長から、それぞれパーセントについて、たとえば九四というのが、その程度が適当と申しますか、若干一〇〇よりも低いところに落ち着くのが各国の例だというようなお答えをいたしました。これは、人事局長が申しておりますように、年間を通じましての充足率が結果から見ますと九〇何%になるということで、予算等につきましてもそういう組み方をいたしておるということでございます。しからば九四でいいということで九四の定員にいたしますと、ある時期にそれ以上こえた数を入れて、それがある時期に下がり、こう波を打った結果が九四になるわけですから、最高を九四に押えたのでは、また充足率が九二になるというようなことになるわけであります。理想的にはもちろん一〇〇でありますが、一〇〇以上入れるわけにはまいりません。一〇〇のところでなるべく満たして、その時期を長くしたい。しかし、除隊をすることもございます。個人的にやめることもございます。そういうことで、年間を通じまして何%かの目減りが出るということを申し上げたわけでございまして、したがいまして、いざ自衛官が出ますような場合に、現在九十何%で何%ゆとりがあるからその%を現実に使ったらどうかということは、これは実は不可能でございまして、その定員を見ておきまして、その定員を満たすまでに努力し、それがある時期に減りまして波を描いた結果がその九十何%になるであろうというようなことで、実際上の給与を支払います予算をそういうふうに組んでおるのでございます。それからまた、組織的に見まして、各幕僚監部等で制服がやっております仕事を私服でかえることができる、そういうものを第一線の部隊に出すべきではないかということで、一般論としてはただいま大臣のお答えになりましたようにごもっともなことと思いますし、現に今回陸で二百三十名増員をお願いをいたしておりますのが私服でお願いをいたしておりまして、これなどは、いまのように制服で占めておりますポストを私服にかえることによって、その私服要員を出すというふうな考え方に立っておるのでございます。しかしながら、一般的に申しまして、この充足率が低いしまた募集に非常に困難をいたしておりますというのは、先ほどお答えをいたしましたような二士の段階でございまして、幹部の段階では必要な要員がそれぞれ充足されておるわけであります。したがって、非常に直接関連的に申しますと、幕僚監部で仕事をいたしております幹部の要員を第一線に出しましても、直接のいまの二士の増員のむずかしさということに直接結びつかないという点もございます。そういう点で、方針といたしましては、二士の充足募集を努力いたしますと同時に、できるだけ、私服の要員で埋められますものにつきましては、御趣旨のような努力もしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  201. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 最後に二次防との関係お尋ねいたします。  ことしの予算その他を見てまいりますと、海上の場合には現有勢力が三十八年度末において二百十八隻、十一万五千三百四十九トンの艦艇を持っている。そして、飛行機は、二次防の計画で定められたものは二百三十五機の航空機を持つようになっているのに、現有が二百五十機ある。すでにその二次防を上回っている。こういう数字が出されておる。さらに航空自衛隊の場合におきましては、一千三十六機の二十四飛行隊、これが四十一年のいわゆる年度末におけるところの二次防の整備計画でありますが、現有においては一千五十三機ある。そして三十九年度の就役見込み数は一千百四十九機ある。しかも、三十九年度において百二十機購入の見込みだ、こう書いてある。そうすれば、三十八年度末において千二百十七機の飛行機がある。そういうような状態の中から差し引き計算をいたしますと、廃棄なり消耗をする飛行機というものが、百八十八機出る。これは航空自衛隊の場合、そういうような減耗率を考えていかなければならないという数字に相なりますが、それはどういうような根拠に基づいて、あなた方はそういうふうにやろうという計画を立てられたのか、その数字の根拠を承りたい。
  202. 海原治

    海原政府委員 二次計画の、ただいま先生御引用になりました年度の数字というのは、当初私ども計画をつくりました際に、一応こういうようなかっこうになっていくのじゃないかと見積もった数字でございます。現実には、例を海と空にとって申し上げてみますと、海上自衛隊の整備につきましては、この三十九年度分を含めまして二次防との対照をいたしますと、二次防計画におきまして予定しておりました船のうち、五隻ばかりがまだ着手されておりません。最も端的に申しますと、三十九年度末をつかまえまして、海の計画は五隻、約四千九百五十五トンになりますが、これが実現されていない。さらには航空自衛隊は、F104の部隊が、現在時点におきましてはいま二飛行隊ございますが、これが四飛行隊くらいはあるという見込みでございまして、そういうふうに現実のおくれがございます。船ができていくと同時に、古い船を逐次除籍していく、新しい飛行機ができてくると同時に、古い飛行機を落としていく、そういう操作がございますので、年度末のそれぞれの船とか飛行機の数字は、そういう操作の結果ちょっと変わってくるわけでございます。したがいまして、二次計画におきまして、年度末に飛行機が何機ある、船が何隻あるという場合の何機何隻と、現実のいまの時点におきます何機何隻とは、内容が違ってまいります。その間にどういうおくれがあったかと申しますことは、別途資料で詳細な数字を申し上げなければならないという事情をひとつ御了承願いたいと思います。
  203. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もちろん古いフリゲート艦と新造船とかえていくということはわかるのです。しかし、さっき私が申し上げました百八十八機の減耗、消耗率を見込んだ数字というものをお出しになっているのでしょう。それはどうでしょうか。なお尋ねなければならないのは、三十七年度で二百七十六億の予算増になっておる。三十八年度においては三百四億の増、ことしは二百七十八億の増、これは第二次防において計画をされた年平均二百五億というものをはるかに上回っておる。そういうようなことから考えていくならば、三十六年の七月の国防会議で決定をされた第二次防衛整備計画というものは、これは予想以上に上回りつつあるのではないかという印象を受けるのでありますが、それは一体どうしたことかということを聞いているわけです。
  204. 海原治

    海原政府委員 二次計画において予定しておりました経費を上回ったものが現実の予算としてついておるじゃないかという点につきましては、二次計画を作成いたします際に御説明いたしたところでございますが、あそこで推定いたしました数字は、毎年の平均増を百九十五億ないし二百二十億と幅をとってございます。しかも、それには人件費等の大幅なベースアップは見込まない、人件費等が大幅にベースアップいたしました場合には、それは別個に考えていただく。あるいは物価の騰貴等による推定も入っていない、こういうことを当時御説明申し上げた次第であります。したがいまして、二次計画に一応毎年度の推定予算を出しておりますが、これはその平均二百五億が増加された場合にどうなるという前提で実はつくっております。その数字との対照で申し上げますと、過去三カ年で合計四百九十五億というものが、二次計画において予定されました経費よりもよけい現実の予算としてはついている、こういう数字でございます。
  205. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その百八十八機は、どうしたのですか。
  206. 海原治

    海原政府委員 実は百八十八機につきまして、私は手元に資料がございませんので、後刻調査の上御報告いたしたいと思います。
  207. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 四百九十五億円というものは、金額的には二百五億円平均で組んであるものより、人件費その他物価の上昇率等の分を差し引いた残りの分として受け取ってよろしいのですか。
  208. 海原治

    海原政府委員 私の説明が不十分でございましたが、現実にベースアップ等がございましたために、それだけのふえであります。四百九十五億の中に、具体的な人件費の増がどの程度か、これは私の個人的な推算でございますが、三百四、五十億程度のものが人件費の増でないか、こういうふうに判断いたしております。もう一度申し上げますと、四百九十五億という増は、ベースアップを含みましてそれだけのものがふえている。したがいまして、この中には二次計画の細部資料で考えなかった、たとえて申しますと、隊舎の建てかえであるとか、あるいは弾薬の備蓄基準の変更であるとか、こういうものが若干ずつ入っております。しかし、その増額の大部分は人件費の増である、このように御了承いただきたいと思います。
  209. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 四百九十五億の中の三百四十億程度が人件費の増だと、残りは百五十億程度になります。そうすると、二百五億の計画より下回っている、こういうように見るのですが、そこの第二次防計画との数字はどういうふうに、あなた方は実質的に数字の上においてとらえておいでになるのですか。
  210. 海原治

    海原政府委員 先ほど申しました二次計画数字というものは、かりに毎年平均二百五億ずつ積んでいった場合にどうかという数字であります。それに対しまして三年間を合わせますと、四百九十五億というものがふえている。具体的に申しますと、たとえば三十七年度予算は、二次計画では千九百五十七億、こういうように考えておりますが、これが具体的には二千四十億でございます。三十八年度は、二次計画では二千百六十五億、これが現実予算としては二千三百五十一億。三十九年度が、二次計画では二千三百八十七億あるけれども、具体的には二千六百十三億、こういうふうな数字になっております。したがいまして、もう一度申し上げますと、この三カ年において二次計画で推定いたしました年平均二百五億というものを基準にした数字から見れば、四百九十五億程度のものがふえている、こういうことでございます。
  211. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それはおかしいですよ。三十七年度は二百七十六億ふえたんでしょう。三十八年度において三百四億、三十九年度は二百七十八億ですから、それの合計額八百五十八億円ふえているはずですね。それが四百九十五億しかふえていないのだ、こういう説明でしたね。ちょっとこの数字が合いませんので、きょうは時間がありませんのでこの程度でおきますが、後ほど数字を明確にしてもらいたい。  私の質問は、きょうはこれで終わります。
  212. 徳安實藏

  213. 保科善四郎

    ○保科委員 まず、防衛庁長官を通じて、私はひとつ感謝を申し上げたいと思います。  それは先般の新潟の大震災に対して、防衛庁がいち早く三軍を指導されて、そして災害の応急対策から復興の対策等に涙ぐましい努力をされておるわけであります。これはテレビ、ラジオ等を通じて、全国民がひとしく感謝をしているところであります。私も、これを拝見しまして非常に感激をしておる一員でございますので、国民の一員として、私は防衛庁長官を通じて厚く感謝の意を表したいと思います。  次に、私は、防衛の基本に関して二、三長官にその考えているところをひとつお伺いをいたしたいと思います。  その第一点は、国際共産党が世界赤化の政策を堅持する限り、私は、世界の真の平和は期待ができないと考えております。彼らは世界の赤化のために、われわれの考え及ばないような各種の手段を設けて、そうして世界赤化の政策を進めておるのでありますが、一昨年の十月のキューバ事件以後、フルシチョフ首相が自由陣営の軍事的優位を認めまして、熱戦を避けて、平和共存という面を非常に強調いたして、そしてそういうようなことを通じて、冷戦という一つの非常に強い政策に返ってきたと私は考えております。こういう事態の変化に関連をいたしまして、防衛庁日本の安全を保障し、自由民主主義を堅持するため、保護するために、一体どういう考え方防衛庁自衛隊を運営し、また防衛庁の政策を進めていくかという点について、この際はっきりしておく必要があるのじゃないかと考えますので、この点について長官の御所信をお伺いいたしたいと思います。
  214. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 まず今回の新潟地震に対し、自衛隊として当然なすべきことをなしたにかかわらず、非常な謝辞を賜わりまして、防衛庁、また自衛隊員を代表いたしまして、心から厚くお礼を申し上げます。今後も全力をあげて災害復旧に当たらせる覚悟であります。  なお、ただいま国際共産勢力は、世界の赤化革命という企図を捨ててない。したがって、一時キューバの危機回避によって、一つの平和路線的な米ソ間の話し合いを進めておる、一方冷戦も相当深刻ではないか、防衛庁はどういう考えでこれに処するかというお尋ねでありますが、キューバの危機回避につきましては、保科委員指摘されたとおり、私もちょうどキューバを去った直後でございました。当時のケネデイ大統領のき然たる態度、並びにその実力について、フルシチョフ首相が賢明にも危機を回避したことは、御指摘のとおりであります。これを機といたしまして、奇襲防止その他の真剣な努力が米ソの最高首脳者の間にも続けられたことは、まことに喜ぶべきことであると存じますが、同時にまた、東西間のみならず、南北間におきましても、質的にも非常に複雑な様相を呈してまいりました。特にアジアの形勢は、政治的にも経済的にも、また軍事的にも、きわめて不安定な要素がむしろ増加してまいりました。ベトナムの問題その他を中心とした現在の局地戦的な様相は、むしろ深刻化しておると私どもは見ざるを得ないわけであります。もちろんわれわれといたしましては、人類の破滅を意味するような全面的核戦争は、絶対に起こしては困る。また、米ソとも最高指導者は、この点は、人類のために高い立場から、その愚をおかさないと私ども考えておりますが、ただ、われわれの立場から申しますと、アジアの不安定、動揺から見て、いついかなる時期において祖国の独立なり安全というものが侵害されるか、これは何人も保障できないと思うのであります。直接または間接のあらゆる企図が、いろいろ行なわれておることも、御案内のとおりでありまして、われわれは、自分の祖国を防衛するためには、今後もあらゆる事態に、あらゆるときにおいて不測の変に処するために最大の努力をいたしまして、祖国の独立繁栄をはかってまいりたい。基本的には、アメリカとの日米安全保障体制というものを基盤といたしまして、陸海空の三自衛隊を総合的な安全保障の力として、今後も育成いたし、国民の御期待に沿いたいと考えておる次第でございます。
  215. 保科善四郎

    ○保科委員 ただいまの長官の御所見で、防衛庁が国際共産主義に対抗してやる基本的なお考えはわかりましたが、日本共産党は、近ごろはっきりとアカハタあたりに、一九七〇年の日米安保条約更新の時期を目標にして、日本の革命をやるんだということを豪語するような事態になりました。そして日米安保条約を解消するということを一つの目標にしておるわけであります。ところが、日本の安全保障は、日米安保条約というものを基本にしなければ成り立たないと私は確信をしておるのでありますが、こういうような共産党なり、それに類似するものの言動なり運動なりに対して、防衛庁はただ必要だというだけでは、これは国民を納得させることは非常に困難だと思います。もちろん、これは内閣自体としても大きい問題でありますけれども長官は直接戦争抑制力を握っておられる重要な仕事をやっておられるのでありますから、この点に関してもう少し具体的に御方針をお示し願いたいと思います。
  216. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいま、現安保条約の満期の期間を頂点としての、在日革命工作の問題をお触れになりました。しかし、御承知のとおり、日本共産党自体が、いわば中ソの確執から深刻な質的な影響を受けておることも、御承知のとおりであります。このように分裂的な傾向の中にも、毛沢東を中心とした、戦争を前提とした革命戦術、あるいはまたこれと対立的なフルシチョフの平和路線の共立論、こういうなかなか複雑な点も出てまいっておるところと存ずるわけであります。したがいまして、われわれといたしましては、一切の破壊勢力から日本の安全を守ることが、最高の与えられた任務でありますので、今後も、共産党のみならず、あらゆる破壊勢力の運動に対しては、瞬時も油断なく情報も集め、検討もし、そして日本の安全を守ってまいりたいと考えておるわけであります。なお、日米安保体制につきましては、遺憾ながら日本の独力だけでは、とうてい海津線の長い日本を守り切ることは不可能であります。祖国を守る基礎体制、世界どこの国でもやっておる集団保障制は、当然日本としてとるべき賢明な道である、こう考えておる次第でございます。
  217. 保科善四郎

    ○保科委員 次にお伺いしたいのは、駐留米軍が漸次減少するということも、大体アメリカの方針のように思われます。またマップの打ち切りということも、当然現実の問題として起こってきておるわけであります。こういう事態が逐次変化しておる、この事態に関連をいたしまして、自主防衛ということが強く叫ばれておるわけでありますが、防衛庁としては、こういう事態に対処して、自主防衛というのは一体どういうことをやるんだということを国民に明らかにしておく必要があると私は思うのです。そういう意味合いにおいて、こういう事態の変化に応じて、一体どういうことをやることが自主防衛であるかということについての長官の所信を、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  218. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 自主防衛という定義の問題でありますが、やはり二つの面があるのではないかと考えております。  一つは、精神的な面でありまして、やはり自国は自分の力で守るといったような、正しい意味の国防の認識の徹底化であります。これは、従来、政府としても、できるだけあらゆる機会に正しい認識を国民の方々にいただけるよう努力してまいりましたが、今後ともその点の努力を続けてまいる決意であります。  その二は、物的の面から見た点でありまして、アメリカのドル防衛を中心とした対日無償援助の削減ないし打ち切りは、昨年の春以来、太い線としてすでに日本に示されておったところであります。今般、訪米に際しましても、マクナマラ長官その他とも十分詰めをしてまいる考えでございますが、こういうドル防衛その他の要素からくる対日無償援助の削減あるいは打ち切りというものに対しましては、時間の問題でありますので、これにかわるべき国産の奨励ということが当然考えられてくると思うのであります。ともすれば、従来、いままで私ども検討した段階では、日本のいわゆる防衛産業に対して、計画性がなかったのではないか、こういう欠点を私どもは認めざるを得ないのでありまして、今後MAPがMASに転換せられる、さらにまた無償援助では日本が不利な場合、国内産業の技術あるいは経済の許す範囲で国内の産業に転化し、これを活用するのも正しい道である、適当な方法であると私も確信いたしております。ただ、それには一定の、できるだけの具体的な計画性、長期性を与える。御承知のとおり、日本では全工業生産の一%に及ばない〇・六%くらいの低い比率ではありますが、担当されている部門につきましては、きわめて重要な点もあり、平和産業とも密接な関係もありますので、今後物的方面、精神的方面と相並んで、こういう点につきましても計画性を与える、これを育成してまいる、りっぱなものを日本人の手でつくって切りかえていくということを考えておるわけであります。
  219. 保科善四郎

    ○保科委員 自主防衛に対するはっきりした見解をいま示されましたが、世の中には、この自主防衛というのは、日米安全保障なんかなくてもいいというような誤解を持っておる者もあるようであります。自主防衛というのは、日米安全保障条約を基本として、日本がほんとうにやるべきことをやって、たよりになる相棒になるということであると思います。これによって初めて極東における安全が保障される、こういうように確信をいたしておるのでありますが、それがためには、もっと国民に対してこういうような状況をひとつ十分に広報して、もっともっと、防衛庁としても、また内閣としても、こういういろいろな宣伝戦が行なわれておるのであるから、これに対する対抗策をとって、そうしてほんとうに日本日本の力で守るということをはっきりさせる必要があると思います。いま防衛生産の国産化に関する御意見がありましたが、これは、防御の最も重要なる戦争抑制勢力になるのに、防衛生産力の育成が、一番重要なる要点であると思うわけであります。そういう点から見て、いまの防衛庁防衛生産育成体制というのは、戦前と違って非常に脆弱になっているわけであります。陸海軍の工廠もございませんし、結局民間によっているわけであります。こういう観点から見て、やはり民間の意欲を造成するためには、何らかの手段を講じて、この生産力を保っていくということの方策が必要であると思います。そういう意味合いにおきまして、このF104の継続生産なりというものが、非常に重要になる。これはそういう点から見ると、現下直面している非常に重要な問題でございますが、これは一体どういうように進めておられるか。われわれが三十九年度の予算を編成するときに、継続生産をやるというように防衛庁がちゃんと声明しており、大蔵省でもそれを了承しているように私は伺っておるのでありますが、その後、一向具体的な施策は見えないのでありますが、それについて、長官のお考えをひとつ承りたいと思います。
  220. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 F104ジェット権の継続生産という問題でありますが、これは、私ども二十回近い——十数回に及ぶ検討の打ち合わせ会を終えまして、私どもとしても、これはわが国防衛のために十分適切なる戦闘機であると確信を持ちまして、残念ながらその間の時間が非常にかかりまして、十一月になり、したがって、大蔵省との事務折衝につきましても、時間的余裕がなくなりまして、われわれの考えておりました三十九年度にこれらの思想を織り込んだ予算という要請は、不可能になったわけであります。しかし、必要性は十分ございますし、また、自由陣営も、このF104をほとんど各国が採用しておりまして、大体二千機目標で、現在一千機をこしておることは、御承知のとおりであります。わが国としましても、新しい機種でありますために、最初はいろいろと予期しないむずかしい問題が起こりまして、最初の生産につきましては、大体三月くらいおくれる予定になったわけであります上が、その後、官民とも懸命な努力によりまして、あらゆる不利な条件を克服いたしまして、現在は生産は順調に進んでおります。大体二次防のわれわれの考え方は、昭和四十六年ころまでには七飛行隊、七スクォドロンを維持したいというのが、基本的な考えであります。それには、専門的な数字から見て、五十機程度の減耗補充が必要ではないか、こういう考えから、本年度はついに成功できませんでしたが、来年度予算に予算化する考えで大蔵省側とすでに折衝に入っておるわけであります。大蔵大臣側とも基本的には意見の一致を見まして、ただいま事務的にわが庁と大蔵省との間で、すでに来年度の予算に予算化をするという目標で打ち合わせが始まっておるわけであります。何とかいたしまして、少しでも、おくれを取り戻して、コストの点についても、また減耗補充についても、なるべく理想に近い線で解決いたしたいと考えております。
  221. 保科善四郎

    ○保科委員 いま長官の御説明でわかりましたが、いずれにしてもF104に従事しておる優秀なる工員なり施設なりは、この方針がきまりませんと、民間の犠牲においてこれを維持しなければならぬというようなことになり、たいへん生産の育成に支障を生ずるわけですから、どうぞそういう方向で強力にお進めを希望いたしておきます。  第三には、先ほど来いろいろ議論を聞いておりますと、シビリアン・コントロールについて何かしらん君子の食い違いがあるように考えておるわけであります。シビリアン・コントロールというものは、政治優位であって、事務優位ではない。長官が政治的に軍事の上に立って判断をして、これをコントロールすることである、私はそう思うておるわけであります。先ほど来、社会党の質問なんかを聞いておりますと、この点が混同されておるように思うのですが、この点を長官からはっきりここで言うておいていただきたい。
  222. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 基本的には、シビリアン・コントロールが政治優先であるということは、アメリカその他共通した基本的観念であると考えております。
  223. 保科善四郎

    ○保科委員 私の質問はこれで終わります。
  224. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、明二十三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開くことといたし、これにて散会いたします。    午後二時五十二分散会