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1964-05-27 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十七日(水曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 辻  寛一君 理事 内 藤 隆君    理事 永山 忠則君 理事 八田 貞義君    理事 石橋 政嗣君 理事 田口 誠治君    理事 山内  広君       岩動 道行君    佐々木義武君       壽原 正一君    高瀬  傳君       塚田  徹君    藤尾 正行君       保科善四郎君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君    大出  俊君       村山 喜一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備局         長)      後藤田正晴君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君         検     事         (保護局長)  武内 孝之君         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君         検     事         (入国管理局次         長)      富田 正典君         公安調査庁次長 宮下 明義君  委員外出席者         内閣調査官         (内閣官房内閣         調査室長)   石岡  実君         検     事         (大臣官房営繕         課長)     住吉 君彦君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 五月二十七日  委員渡辺栄一辞任につき、その補欠として濱  地文平君が議長指名委員に選任された。 同日  委員濱地文平辞任につき、その補欠として渡  辺栄一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五九号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山内広君。
  3. 山内広

    山内委員 法務省設置法改正内容につきまして、順次お尋ねしていきたいと思います。その前に、昨日行なわれました田口委員質疑並びに応答を聞いておりまして、若干この問題について補足してお尋ねしておきたいと思うのです。  まず、その第一点でありました公安調査庁の職員の二百名の増員に伴いまして、いろいろその理由を詳細に御説明がありました。私は、そのときの説明並びに大臣答弁を聞いておりまして、非常に奇異な感じを抱いたわけであります。この池田内閣が、最近いろいろな民生の安定を主張し、経済の伸びを謳歌して、いろいろ国民生活が安定してきておる。本来ならば、あの終戦後と違いまして、もう戦後ではないのですから、いろいろ右左台頭すべき原因がだんだんとかえってなくなるはずにもかかわらず、最近非常に右左勢力が伸びて、そして御提案のよう理由から二百名の増員を出しておる。そのことが、私にはどうしても理解がいかないのであります。大臣は、この左右勢力が最近非常に伸びている原因をどういうふうにお考えになっておるのか、このお考えをまずお聞きしたい。
  4. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 その原因につきましては、人々によっていろいろ観察もございましょう。先日も申し上げましたが、いわゆる右翼という方面におきましては、左翼勢力の蠢動、拡充、こういうものに対して憂慮し、むしろ焦燥を感じている、こういう気持があるようでございます。それからまた、政治一般につきまして不信の念もあるのじゃないか、そういうよう気持が合わさりまして、いわゆる破壊活動的の右翼勢力が伸びるということがあるよう考えられます。それから左翼勢力のほうにおきましては、国内における共産党や、またこれと同調すると申しますか、同じよう考え方を持っておる団体というか、組織が、相当強い意欲をもってその勢力の拡大をはかり、その希望し、庶幾する目的の到達のためにいろいろ活動をする。それからいわゆる国際共産勢力もこれを支援する、助長する。こういう活動がなかなか盛んでありまして、一向衰えない、考えようによればますます盛んになる、こういうことが原因であろうと考えておるのであります。
  5. 山内広

    山内委員 ちょっと最初のほうを聞き漏らしましたが、右のほうの台頭は、左が伸びたから、それが刺激となって伸びた。それから左のほうの勢力は、共産主義活動が活発になって伸びた。せんじ詰めればこういうお考えでございますか。ちょっと理解のしかたが誤ったかもしれませんが……。
  6. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 それと右のほうにつきましては、一般政治に対して信頼しない。信頼しないのが、私はいいとか悪いとか、正しいとか批評するのじゃございません。そういう感じを持ってやっておる点があるんじゃないか、それがますます右のほうの破壊的活動がふえる原因ではないか。いまのお話の点にこの一点をつけ加えたいと思います。
  7. 山内広

    山内委員 私は、いまの大臣のお考えには批判的なところもありますけれども、そういう原因の把握をされておるならば、この右左暴力によって世の中を変えようなんという、こういう極端な考え方に対して、観察の充実といいますか、定員をふやす、そういう療法をとるということの一点に注ぐよりも、まずこの原因となるべきもの、そういうものの根本を除くというお考えに立たないで、きのうの御答弁では、この次も二百名ふやすんだ、どんどん定員は毎年二百名ずつふやさなければいかぬ、非常に定員増加だけを大臣は主張されておるわけです。こういうことでは、決して右左の極端な破防法の適用を受けるよう人たち勢力をくずすわけにはいかぬと思う。もっと原因にメスを当て、この原因を取り除くということ、このことをお考えにならなければ、いたずらに定員だけふやしても、何にもならぬと思うのです。この点についてのお考えはいかがですか。
  8. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 原因を取り除くために努力すべし、これはごもっともでございますが、そればかりやるというのは、私は賛成しない。どろぼうがある、犯罪を犯す者がある、原因を除け、だから警察なんかはどうでもいいとはいかないのであります。いろいろな社会不安を起こすようなものをなくすために、歴代多くの政府努力しておりましょうが、遺憾ながらそこへいかない。だから、やはり警察制度も要りますし、またそれも充実しなければならぬ、やはり私は両方が必要であろうと思います。医者は要らない、健康さえよくすれば病気にならぬでいいじゃないかといっても、健康をよくさすばかりではいかないので、病気になったら医者を使って直さなければならぬというよう考えでございまして、お考えはもっともでございますが、同時にこういう方面も必要である。  それからまた、私は毎年二百人ふやすということは申し上げてない。それは登記の事務のほうの話でございます。
  9. 山内広

    山内委員 何も私はいま警察制度をなくせ——こういういろいろな犯罪のあることも認めておるわけで、そこまで言っておるのではない。けれども、少なくともあなたは右翼台頭政治不信だ、そこから出ているという原因をお考えになっておる。そうしたら、政治をどうして国民の信頼をつなぐようにするかという努力が、一面になされなければならない。警察官が多いということは、決していいことじゃない。特に世の中がどんどん進んで、民生が安定して生活が保障されてくれば、警察官がだんだん減っていって、将来は警察官がいなくてもお互いの社会秩序が守られていくよう方向に向けていくのが、政治であり、私ども理想でしょう。現実においては、確かに大臣の言われるとおり、私も、警察官がなくてもこの秩序が守れるとは思っていない。またふやす必要のあるものは、たとえば交通事故ように、これはますますふえていく。望ましくないけれどもふえていく。これに対処しなければいかぬということも、承知しております。けれども、あなたのほうは、法務省という立場からお考えになる。だけれども大臣という立場政治全般から見たら、こういう右翼左翼台頭していくこの政治あり方根本にもう少し力を注いで、そうしてこういう定員増はできるだけ少なくしていく、こういうお考えに立たれるのが妥当なのではないか、こう思うのです。しつこいようですけれども、もう一度……。
  10. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お説のとおりでございまして、警察官増員公安調査庁増員などがない国情にしたいというのが、われわれの念願でございます。それについては、むろん政府努力が完全だとは申し上げませんが、相当努力をいたしております。犯罪方面におきましても、暴力犯罪は非常に増加いたしましたが、財物犯——窃盗、詐欺、横領、一言で言えばお金についての犯罪というものは、戦前よりも三〇%も減少しております。この理由は、私は、犯罪などというものは、社会の総合的な原因結果と考えまして、政府経済政策、言葉をかえれば近年自民党が政権を担当いたしておりましたが、そういうことから減ったとは、一〇〇%原因をそこに持っていくものではございません。しかしながら、政府経済政策もよろしきを得まして、国民努力によって、日本経済の進展はすばらしいものでございます。生活程度の向上はすばらしいものでございます。私、自分のことを申し上げておそれ入りますが、昭和三十五年に安保騒動が起きまするや、自民党の一代議士といたしまして、社会保障に大いに力を入れるべしといって、私どもは力を入れたことはいろいろございますが、生活保護にしましても、三十六年度の予算から画期的の増加をいたしました。三十五年の基準に比べますと、三十九年には三十五年の八〇%以上基準も伸びておる。そのほかいろいろそういう点はございます。欠陥はございます。まだまだ低所得者層に対しても施策は不十分でございますが、それには相当努力いたしております。生活保護は私一人で上げたのじゃないが、われわれも努力しまして、党は全力をあげて社会保障にも力を尽くしたのであります。また、社会保障ができるためには財源が要るのでございます。ただやりたいやりたいと言ってできるものじゃない。要は何を実現すべきかということと同時に、実現し得る手段を備えなければならない。それは何かと言えば、経済の発展でございまして、日本経済が発展して、増税をしなくても、むしろ減税をしてもなお社会保障その他ができるよう財政状況をつくり出す、これが党是でありまして、池田首相も始終言っておりますように、経済繁栄目的じゃないのだ、これで国民生活を改善向上するためにやっているのだ。そういう点も、昔の富国強兵時代と違いまして、私は一種の、大げさに言えば哲学的進歩だと思う。国の行政目的もはっきり考えて、そういうふうに相当努力をしております。そのほか、いろいろ努力もしております。むろん努力が完全だとは申しません。まだわれわれは大いにやらなければならぬと思いますが、私どもはそういう原因を除くためにも努力をいたす。同時に、まだまだ社会の病根は除けませんから、それに対する対症療法としましていろいろ手を尽くし、また両方で進みたい。お説のごとく、その根本を改善するということは、もちろんわれわれは第一に希望するところでございます。
  11. 山内広

    山内委員 あまり立ち入った議論はしたくないのですけれども大臣がいまお話しのありましたとおり、閣僚として努力もされ、生活も安定し、伸びて、本来ならば右左台頭がもう余地を与えないように、その方向国民生活は向いているにもかかわらず、現実の面として非常にふえておる。この矛盾をどういうふうにとらまえ、考え、そしてこの矛盾した右左台頭原因のほうをもう少し探らぬことには、私は非常に不満があるわけです。大臣、そうお考えになりませんか。非常に生活もよくなった、社会保障も充実してきたと言われる。本来ならば、右左勢力がもう伸びる余地がないでしょう。ですから、そこに政府右左台頭に対する原因理解のしかたが足りないし、努力が足りないと思うのです。私、きのうの御説明を聞いていても、人だけふやそうという印象が、非常に強くするのです。二百名が法務省のほうの定員であるといお話であれば、これはまたあとで議論を申し上げたいと思うのですけれども、確かに大臣は、公安調査庁定員も、二百名では非常に少ないのだ、しかし、こうこうこういう理由で、そのために必要だということを言われておるのです。時間があればお聞きしたいと思いますけれども政府では、今度法制審議会の答申を待って刑法の全面改正をお考えになっておるようです。この中にも、新たに今度国家の機密を漏らすということでスパイ罪を設けたい、こういう考えもあるようです。しかし、このスパイ行為はいいことじゃないのです。人に知れないようにそっと悪いことをやるのですから。この公安調査庁仕事は、国の安寧秩序を破るよう人たちを未然に調査しておこうというのですから、大義名文は明らかでありますけれども、きのうの説明にあるように、気どられないようにいろいろ情報を内偵するのでしょう。そのやり方を私は正しいとは思わない。一日も早くそういうことの必要のない世の中をつくり、そういう破壊分子をこの世の中から駆逐してしまう、そういう社会秩序を盛り立てていくことが、やっぱり政治理想だと思うのです。そういう意味で、右左のこういう暴力を用いる者の台頭原因をもう少し究明して、それの抜本的な対策をお立てにならないと、定員だけでもってその内容を探ってやろうということでは、私はうまくないと思う。これは公安調査庁次長、きのう答弁をされたので、その点で何か一言ありそうですから、私の考えに反対だったら、ひとつ御答弁願いたい。
  12. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お考えに全く賛成ですが、そういうことは、日本政府努力だけでできるならば、世界はすぐ平和になっていると私は思うのです。いまの左翼勢力というものは、一体どういうことを考えておるのか。マルクス・レーニン主義でも、資本主義が欄熟したら、そこで共産革命が起こると言っている。生活がよくなるとかいうことですぐおさまるような、そうでない思想が、御承知のよう世界のうちには有力にございます。だから、いま生活がよくなろうがなるまいが、そんなことは手段として、悪く言えば、根本的に日本を共産化しようという国際勢力があることは、認めざるを得ないのであります。われわれの考えでは、大きな資本国民生活全体のために活用して、国民国家の総所得をふやす、総生産をふやす、そして分配資源を多くしまして、結局国民全体の生活のレベルを上げる。そうすると、一部の人は、それは独占資本への奉仕だ、そんな社会はやめなければならぬ、ひっくり返さなければならぬ、日本革命をやらなければならぬ、こういう勢力があるのでございます。これは日本国内だけではない、世界相当の力を持った強い国に本拠を持ち、そうして世界を通じて運動が行なわれているというような事態でございまして、これはなかなか日本政府のみの責任、その努力が足りないからであるということではないと思うのでございます。私どもは、政府努力し、国民も自覚されて、少なくとも日本国内にはそういう不安がないように持っていきたいのでございまして、まだまだわれわれの努力が足りないと思いますから、大いに努力をしてまいりたい。その道筋におきましても、うまずたゆまず、お話ような問題の解決に進みたいが、ただお話のごとく、これは政府施策が一つ足らない、一つ悪い、それだから起こるというような問題にあらずして、いわば世界の大問題は、みなこれに根源している。ソビエトがいま少し平和共存主義ムードになったら、世界が喜んだり、そういう一喜一憂する根源にはそれがある。それがなければ、世界は安心しますでしょう。しかし、平和ムードを出しているが、それが本気かどうか、まだまだこれに対して疑問を持っている人もある。世界軍備競争なんか、みなそれでございます。その軍備競争をやっている人の考えが正しいか正しくないか、批評するのではないが、共産侵略が、軍事侵略も必要ならば、可能ならばやるのだという前提に立って、自由主義社会は、その防衛のために大軍備自由主義全体として持っております。共産陣営からいうと、大きな圧力である、それだからおれのほうも持たなければならぬ、いつまでたっても大きな軍縮もできない。なかなか禍根は大きいので、これは世界全体がひとつ協力して、大いにこういうことがないようにしたい、これはわれわれの念願でございます。なかなか日本政府の独力では急にいかないというのが、現状でございます。しかし、そのほかの民政方面につきまして、経済その他の方面について極力努力をし、また国内秩序維持その他につきましても、十分に努力をしてまいりたい。ただ、その努力の及ばざることをわれわれはおそれているという次第でございます。
  13. 山内広

    山内委員 この問題は、これ以上議論すると長くもなりますし、私、大臣とは若干考え方を異にしておりますから、後日あらためてその機会を取りつけたいと思います。  次にお尋ねします。破防法の発足によって、いままで処置された件数はどれくらいになっておるか、右左に分けて、できればちょっとお知らせいただきたい。
  14. 宮下明義

    宮下政府委員 公安調査庁におきまして、破防法に基づいて、破防法五条あるいは七条の規制処分の請求をいたしました件数は、いままで一件もございません。
  15. 山内広

    山内委員 このことは、やはり片方では国家権力を維持するというあなた方の仕事と、国民の権利を守るという制約された部分、この間のかね合いで慎重におやりになって、いまのような結果が出ていると私は思うわけです。そのことは私けっこうだと思うのですが、ここで考えなければならぬのは、今度公安調査庁は二千十五人になりますね。これだけの人員と、それから膨大な予算を使用しておるわけですが、それでいま十何年もたって、これまで一件の処罰もない。単に情報だけがうず高く積まれておる。これは喜んでいいのか悲しんでいいのか、こういうものが一体必要なのか必要でないのか。私ども外部から見ておると、さっき私が大臣にいろいろお尋ねしたように、抜本的な対策にこれだけの予算が使われたら、もっと早く大臣の御答弁のあったよう理想社会に近づくのじゃないかという気もするわけです。この点についてのお考えはどうですか。
  16. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 なかなかそうはまいらぬのでございます。これは要するに、世界においてわれわれと違った思想、こういうものの勢力が衰えませんと、どこまでもその考え破壊活動をするということが、日本のみならず、ほかの国でも起こり得るわけでございます。一方、生活の苦しさ、政治の悪さからそういうことに共鳴をする人がないようにするということは非常に大事で、政府考えなければなりませんが、また、それはその立場のみならず、政治本来の目的として、人間の生活を安定向上する立場からも、当然やらなければならぬことでございます。しかし、そういう方面に若干の金を投じたからすぐなくなるだろう、これは遺憾ながらどこの国の状態を見ましても、これを変えて福利施設をやればいいというわけにはまいらぬだろうと思います。
  17. 山内広

    山内委員 一点だけちょっとお聞きして、この公安関係定員は終わりたいと思うのですが、きのうもだいぶ御説明がありましたとおり、左翼取り締まりには七八%の人員配置をしておる。右には、二二%。その理由もいろいろお話がありましたが、国会指摘もあって、今回は二百名に対しては、六・四の形で右のほうに重点を置いた配置をするのだ。右翼に二二%を配置するのが正しいのか正しくないのか、右、左の取り締まり重点をどっちに置くか、きのうもそのお話がありましたが、私ども外部から見ておると、いまの右翼というのは、いわゆる一人一殺主義で、変な者があったら、一人ずつ個々に監視をつけなければならぬ状態じゃないかとしろうと考えするわけです。かりに共産党が十万に伸びたといっても、いろいろ機関紙も出ておるし、いろいろな宣伝ビラも出ておる。そういうものから、この組織をつくるためのいろいろなニュースを出しておりますから、私は、その中からでもある程度どこに問題があるか、わかるような気がするのです。かえって右のほうが取り締まりがめんどうだし、情報はよほど十分にとっておらないと——この間のライシャワー事件は、幸いそういう関係はない精神異常者ということですけれども、前にいろいろ行なわれたああいう少年などの右翼のテロは、みんな一人一殺で、少数の者で計画を立ててやっておるでしょう。そうしますと、私は右の二二%、左の七八%というウェートの置き方は、どうも理解ができないのです。何かこれは国会でも議論になり、あるいはいろいろな新聞にも出ておりますけれども政治家の大物が右翼に対してはいろいろ資金も与えて、極端にいえば養っておる。そういうところに気がねをしてこういう右翼を見のがしておるような気もしないわけではないのです。この右、左の勢力の分け方、あり方というものは、一体これで正しいのかどうか、そのことについての御説明をお聞きしたいと思います。
  18. 宮下明義

    宮下政府委員 公安調査庁におきましては、左右を問わず、右でありましょうとも左でありましょうとも、いやしくも暴力主義的破壊活動によって民主主義を破壊しようとする団体に対しては、ひとしく調査を進めておる考えでございます。いま御質問がございましたように、あるいは時の政治権力に遠慮をするとか、そういうよう考えは、法律執行機関として毛頭持っておりません。ただいま今度の増員を振り当てても、左翼関係調査に従事する調査官が七八%、右翼関係調査に従事する調査官が二二%、公安調査庁は口ではそう言っているが、やはり左翼関係調査を重視しておるのではないかという御疑念を持っておられるように拝察するのでございますが、昨日も田口議員の御質問に対していろいろ御説明を申し上げましたが、左翼関係日本共産党にいたしましても、あるいは朝鮮総連にいたしましても、日本全国におおいかぶさっておる組織でございまして、その組織構成人員も膨大なものでございます。共産党の系列の地方組織、細胞に至るまで、この数も膨大な数にのぼっておるわけでございます。なお、共産党が本来の共産党だけで固まっておりませんで、共産党の周囲にございますいろいろな大衆団体に浸透をしてまいりまして、それを支配し、指導をしようという統一戦線戦術をとって共産党目的を達しようということを考えておる状況でございますので、左翼調査調査面というものは、非常に広いのでございます。ただいま御指摘がございましたように、私どもといたしましても、公然調査、公然資料に基づく調査研究ということを決して軽視はいたしておりません。ただ、公安調査庁調査官なりあるいは協力者提報だけにたよっておるわけではございませんで、公然資料分析検討等も併用いたしまして、左翼関係調査を進めておるわけでございますが、ただいま申し上げましたよう左翼団体日本全国におおいかぶさっております膨大な組織調査に対しましては、どうしてもこの程度人員を振り向けなければならないわけであります。  右翼関係につきましては、御指摘がございましたように、公安調査庁調査だけではなかなかこと足りないことを十分承知しております。したがいまして、私どもの基本的な方針といたしましては、右翼関係調査につきましては、より一そう警察当局と緊密な連絡をとりつつ調査を進めておるわけでございます。暴力主義的破壊団体に対する対策といたしましては、そのような行為に出る個人を刑事処分によって、刑罰によって処罰をしていく方策と、団体そのものの活動を規制する、あるいは団体そのものの存在を消してしまうという両面の対策があろうかと思いますが、公安調査庁におきましては、その後者の仕事をいたしておるわけでございますので、公安調査庁は、できるだけ、右翼関係団体が奥の奥底でどういうことを考え、どういうことを計画をし、どういう若い連中を育てつつあるか、このような事前情報を十分に取りまして、警察機関と連絡をとりながら右翼暴力右翼的な政治暴力の発生の防止を考えておるわけでございまして、いろいろ勘案いたしまして、ただいま申し上げましたよう人員の割り振りというところで、公安調査庁左右両翼の調査のバランスがとれておるというふうに存じております。もちろんこれは客観的な国内の情勢いかんによりまして、あるいは右翼関係暴力がより以上頻発するような情勢、徴候が見られますならば、その方面に対して流動的に公安調査官を振り向ける用意も、もちろんいたしておるわけでございますが、現在の国内情勢を見まして、このような方針を持っておりますので、御了解をいただきたいと考える次第でございます。
  19. 山内広

    山内委員 せっかくこれだけの努力をされておるのですから、これが右左のこういう極端な暴力をするよう団体の発生を除去するに有効に役立つよう施策があって、初めてこれは生きてくる仕事です。そういうことで、いずれこのことについてはまた御意見を聞く機会もあろうかと思いますから、きょうは、その点はこの程度にとどめまして、次に法務局の問題。これも二百三名の増員になっておりまして、公安調査庁と同じように、増員の中では多数を占めておるわけです。ところが、この前の通常国会でもやはり二百名を増員しておりまして、登記事務が非常に繁忙を来たしておるので、どうしてもこれを処理するという理由で、私どももその実態を認め、二百名の増員を認めたわけです。ところが、一年たってまた二百人、きのうの大臣答弁、またきょうのお話では、毎年二百名ずつふやす、これはたいへんなことだと私は思うのです。一体業務をもう少し簡素化するとか、あるいは地方自治体に移せるものは、そこの県なりあるいは市町村なりに委託するという考え方もあるかもしれぬ。あるいは機械を使用して、もっと迅速に処理されるような方法がないものか。無限に毎年二百名ずつふやすなんといったら、たいへんなことだと思わぬのですか。もう少しこの増員理由、将来の見通し、対策、そういうものを御説明いただきたいと思います。
  20. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 昨日も申し上げましたように、まだ相当二百人くらいの増員は続けなければならぬかと思います。それほど登記事務増加いたしまして、処理すべき人間は不足しておると思います。お話ように、人員増加以外に、簡素化で、つまり事務を簡素化して、いろいろな人手をとらないようなくふうをすべしということ、これはお話のとおりでございます。この国会に不動産登記法の一部改正の御審議をお願いいたしましたのも、その一つでございます。お説にありましたように、できるだけ機械化をしていくということも一つでございますが、ただ事務の性質上、機械化を応用、適用し得る範囲、限度はおのずから制限もございます。ただいま決して十二分にいっているとは申し上げませんが、いろいろ研究もし、その方法をとっております。それからまた、登記所の廃合ということも行なっております。場所によりましては、人員配置に比して比較的に仕事の分量の少ないところもございます。そういうものは統合いたしますれば、能率からいえば、簡素化されるわけであります。もっとも、この点は官庁事務の都合ばかりから判断するわけにまいりませんので、これを利用する国民の側からまいりまして、廃合されたためによけい遠方に行かなければならぬ、車馬賃、交通費をよけい使い、時間をよけいかけ、はなはだしきに至っては一泊しなければならぬということになりますと、官庁の事務経済化の反面、国民のほうには非常な迷惑をかけることにもなりますから、その点は双方の立場から考えまして、総合した結果、廃合が適当であるという場所にとどめまして、いわゆる無理な廃合をいたす考えではございまんが、能率の上、人手の上からは、やはりこれが一項目であるわけであります。そういうふうにいろいろと考えてまいりますが、何さま事務増加いたしまして、今後の確たる見込みが立ちにくいのでありますが、まだどのくらい増員しなければならぬとか、またいまの簡素化のためにどういう努力をしているかという点につきましては、政府委員から申し上げますが、どうもまだ引き続いて増員の御審議をお願いしなければならぬのではないかという考え方でございます。
  21. 平賀健太

    ○平賀政府委員 将来の見通しにつきまして、ただいまの大臣の御説明に補足させていただきたいと思うのでございますが、ただいま大臣の仰せのとおりに、年々登記の事務量がふえているのでございます。いまから十年前に比較いたしますと、現在五倍以上にふえているのでございます。なお、この増加の情勢がとまっておりませんので、今後も増加する見込みでございます。三十九年度におきましては、昨年度と同じように二百名増員を願っているのでありますが、少なくとも来年度におきましても、やはり同様程度増員を必要とするという状況でございます。しかしながら、いま仰せのとおり、毎年約二百名の増員ということは、たいへんなことでございます。国家財政の見地からも、おのずから限度があるわけでございます。この増員によってまかなえない部分につきましては、制度自体の改正、それから事務の合理化によりまして、これを補っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  22. 山内広

    山内委員 法務局の仕事内容からいってなかなか困難だとは思いますけれども、もう少し仕事を分離して、ある軽微なものは地方公共団体に委託するようなことは、できないものですか。
  23. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 そういうことは、私は一つの考え方であろうと思います。これは考究を要する問題でございますが、地方公共団体に移管しましたら、人を増さないで、いまの人手で地方公共団体がやれるか、決してそうはいきません。これは一つの専門的事務でございますから、専門的に係員をふやさなければならぬと思います。ふやしますとどういう結果になるかというと、いまの法務局の登録をやっております官庁の数よりは、はるかに数が多いわけでございます。これはへたをすると——へたをするとでない、へたをしなくても、非常な大増員に現状よりはなりはせぬかという点も考えられるのでございます。いま私どもは結論を申し上げる時期にはなっておりませんが、そういう点も一つ考えられる。簡素化になるか、非常な経費の増、人員の増ということにもなりはせぬか、こういう点も考えられるのでございます。
  24. 山内広

    山内委員 御提案になっている今回の案では、総体で五百八十六名の増です。そこで減員されるのは、大村の入国者収容所だけ二十四名の減員になるわけです。それは業務の減少に伴うものですか。これはどういう内容になっておりますか、ちょっと……。
  25. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいまの御質問に対しまして、お答えを申し上げます。  大村収容所の定員が二十四名の減になっておるのでございますが、この点につきましては、新規予算要求の際に、いろいろの経緯がございます。私どもといたしましては、入管行政全般として、どうしても事務量の増大、その他新しい問題に対処するため等々の理由に基づきまして、毎年相当増員のお願いをしておるわけでございます。しかしながら、やはり要求審査の過程におきまして、常に大村の収容所の定員の問題が出てまいるのでございます。従来は、やはりたとえば大蔵省のお考えといたしましては、過去の実績に基づきまして定員をきめるというふうな一貫した御方針がございます。そこで、昨年度におきましては、大村におきます収容所の被収容者の一日の平均を大体三百六十人に予定いたしました。それに必要な人員百五十八名を配置してまいったのでございます。しかるにその後、いわゆる不法入国者の集団送還を年々やっておるわけでございます。その集団送還が、比較的最近におきましては順調に行なわれておるわけでございまして、昭和三十八年度の収容実績では、結局平均百八十二人になったわけでございます。予算査定の場合におきましては、一時的な変動もございますので、一応一日平均三百六十人ということで予算定員を定められたわけでございますが、その後ただいま申しましたような事情によりまして、一日平均収容人員数が百八十二人に減ったわけでございます。それからまた、最近の送還の実績を見まして、昭和三十九年度における収容者のいろいろな変動等をも考えまして、本年度は一日平均二百二十人に予想されたわけでございます。昨年度は平均三百六十人に対しまして、本年度は一日平均二百二十人の収容平均数というものが一応想定されまして、このような収容人員の減少によりまして、入国警備官が十一名、一般職員、労務職員を合わせまして十三名、計二十四名の減員ということに相なりましたわけでございます。しかし、減員されまする二十四名につきましては、もちろん配置転換その他の措置を講じまして、本人の意向も十分考慮した上で、減員になりましても、それぞれの配置転換等によりまして収容できる予定でございますので、実際上は、きわめて多数の減員のごとく見えるのでございますけれども、そういった意味で大村収容所につきましては、二十四名の定員減を認めざるを得なかった次第でございます。ただし、他面羽田の出入国数の飛躍的な増加に伴う増員、それから後ほど御説明いたしますけれども、新しく三カ所の港出張所を新設する、そのために定員増が五名ございますし、また一般的に申し上げまして、資格審査業務が累年激増しておりますので、これに対処いたしますために入国審査官の六名の増員、それから舟艇二隻新造に対する要員といたしまして警備官の六名の増員がございますので、増員分を合わせますと、二十九名に相なるわけでございます。大村収容所の定員減と差し引きまして、純増が五名という結果になっている次第でございます。
  26. 山内広

    山内委員 よくわかりました。そこでこの五百八十六名の増員を、いただきました資料に基づいてずっとながめてみると、最初に申し上げたような、私ども立場から見ると、この辺のほうをむしろふやしたほうがいいんじゃないか、この辺はもう少しがまんできるのじゃないか、いろいろ考え方が出るわけですが、特にこの中で私ちょっとふしぎに思うのは、最近非行少年の問題が社会問題になってたいへんなことになってきておるわけですが、そこでこれは徳安委員長が会長をしておられます中央青少年問題協議会の発行されました本を実は見せてもらいました。その内容を見てますます驚いておるのですが、そこでいま思い出して私お尋ねしたいことは、よほど前ですけれども、ある用がありまして少年鑑別所に参りました。ところが、この狭い鑑別所の中に定員の倍近くも入っていて、重なり合っている。そういうことで、この所長さんに実情を聞いてみましたら、もういつでもこうなんだ、ふやしてくれないんだ、そういうことで非常に心配しておるのですが、こういうことから、せっかく鑑別所に入れても、十分な調査もしないうちにどんどん出してしまう、新しい者が入ってくる、そういうことで、鑑別所の実効というものはこれではあがらないという判定を、私実はしておったのです。ところが、今回の提案では、わずかに十名の増です。法務技官十名の増ということで、これは全国にどういうふうに割り当てるのかわかりませんけれども、まあ焼け石に水ではないかと思うのですが、そういうことで問題になってくる非行少年というもののあなた方の対策、そういうものが、この定員増の中からは出てこないわけなんです。そして公安調査庁のほうばかりが不当に出てきておる、そういう印象を強くするのですが、この詳しい御説明は要りませんけれども、この非行少年の対策について、あなた方はどうお考えになっておるのか、概念的というか、包括的に……。
  27. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 これは御指摘ように非常に足りないと思います。非行少年に対しましてどういう対策をとるかという点につきましては、正直に申しまして、この予算を編成する——いまより実は半年も、もっと前のことです、ますますその必要をわれわれは感じておりまして、その必要のうちで、いろんな面がございまするが、非行青少年に対しまして、非常に素朴と申しますか、どれも同じような少年だ、人間だ、どうしたらこれをよくできるかという考え方よりも、もっと科学的にその精神状態、精神の機能、性格、傾向、こういうものに対しまして、私はしろうとでことばが適当でないかもわかりませんが、もっと病理学的、科学的の検討を加えて、収容所内における処遇のしかた、また外における保護観察のしかた、こういうものが、いま飛躍的の進歩を見なければならぬ事態だろうと痛切に感じている次第でございます。そういう意味におきましては、御指摘ように、こういう増員ではとうていいけませんので、今後なるべく早い機会にほんとうに充実したい。こういう面が大事でございます。一つは実は充実しようと思っても、人がない。こういう方面を専門にやります人の養成というものが十分できておりませんので、急遽増員ようと思いましても、これはあらゆる——こういう犯罪ばかりじゃございません、精薄、精神病者すべての施設、またこれに対する対策としては、ことにこの方面の技術者と申しますか、お医者さんが足りないわけでございます。基本にはそういう点を考えまして、今後努力してまいりたい、かように存じます。
  28. 山内広

    山内委員 保護観察官の定員の問題もさることですが、これを補うために保護司というものを委嘱して、民間の好意のある方々にいろいろ仕事をしてもらっておるわけです。その内容を聞いてみますと、あなた方もう少しこの保護司というもののめんどうを見てやらなければ、何も実効があがらぬと思う。ほとんど無報酬でやっている。何か一件調査すると三百円かの日当がつくそうですか、こういうことでは、もう隠居さんの隠居仕事以外に、ほんとうにまじめになって青少年を保護してやりたいという人たちがやれない。しかも、聞いてみると、これはさっきの統計だかに出ておりましたけれども、保護司の平均年齢五十二歳ということが出ている。十五や十六の小さな子供を保護する人たちが、五十二歳のお年寄りで、何が理解でき、何が適切な指導ができますか。もう教育は古い戦争前の教育を受けた、そういう環境の人を、困るからということで一日三百円くらいの日当で雇い入れて、そういう青少年の保護をするのだ。名前は保護といったような実態をつくっておるけれども、実質は魂も何も入らない。りっぱな保護ができるわけはないと思いますが、この点についてどういうお考えを持っておりますか。
  29. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 保護司というもの、日本のすべていろいろ社会事業的のこういうものにつきまして、われわれ明治のころから考えますと、篤志家が篤志でもって無報酬でやるというスタートをとっております。またそこに非常な妙味がございまして、ほんとうに社会の経験を積み、また徳望のある人にやってもらう。これは月給で雇った人にはできない長所もございます。また、専門に俸給を出して、職業的の公務員のみでこれができるものでもないし、またそれには短所がございます。こういう民間の篤心家と申しますか、そういう人々にやってもらうのがふさわしい部面があると思います。一番いいのは民生委員、保護司であると思います。こういう考え方がございましたが、だんだん世の中も進みまして、そういう篤志家が身銭を切ってやるのだという状態ではいけない。それは全くそういう気持ちでやってもらうのでございますけれども、そんなに経済的に犠牲ばかり払わせて、たとえば円タクに乗っていく円タク代も自腹を切る、場合によっては自分が受け持っておる者を自宅に呼んで、菓子の一つもごちそうして話をする。それもすべて身銭を切ってやらなければならぬという状態では、非常に時勢にそぐわない。生活全体をささえるための報酬をとってやる専門的の職業公務員のほかに、いまの保護司的存在というものは、世の中としては一つの大事な方である、かよう考えておるのでございます。年齢の点のお話がございましたが、若い者は若い者でなければ気持ちがわからぬ、と同時に、また若い者では補導のできない面もあります。保護司の受け持っておる者には、いろいろ年齢の違う者もございまして、私ども年齢構成が特になんだとは思いませんし、またいまの保護司がちっとも役に立たないとは思わない。われわれが知っております方面でも、非常に効果をあげ、まじめに活動しておられる方もございますが、お話ように、手当と申しますか、これがたいへん少な過ぎるということは、私はまことに御同感であります。これはこういうことを思いつきを申し上げるにすぎませんが、去年増しまして三百二十円になったのですが、まずまず千円くらい出してやるのだという気持ちがしておったのです。いろいろ折衝しましたが、去年も増したのだからといって、やっと八十円増して四百円にいたしましたが、これではほんとうに不十分だと思っております。全く専門的の職業的の公務員ではないのですけれども、それにしても、もう少し手当はこの時勢の移り変わり、進運に伴いまして増したいと思って、決して現在で満足しておるわけではございません。これについては、皆さんから御声援もいただきたいと思うのです。
  30. 山内広

    山内委員 この問題についてもいろいろ見解もありますが、先を急ぎまして、今度御提案の中に、名古屋の刑務所と福岡の刑務所を移転されるわけですが、その中でこの資料を見せていただきましてちょっと気がついたのですが、今度名古屋の刑務所のほうは、敷地が約四倍くらいにふえまして、建物も約五割くらい大きくなった。収容人員も四千四十二名多くなる。そこで福岡の新設を見ますると、どうも名古屋のほうの一人当たりのといいますか、収容人員ですね、名古屋と非常に差があるわけです。建物についてもしかり。そういうことで、一体刑務所を建てる場合に、収容人員に対する一人当たりの敷地とか、建坪の基準というのが、あるのかどうか、そういうことを若干疑義を持ったのですが、ありましたら、その内容をお示しいただきたいと思います。
  31. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 ただいま御質問のございました刑務所の規格でございますが、われわれといたしまして基準をつくっておりますのは、各受刑者の入ります居房と申しますか、部屋の一人当たりの坪数、あるいはそれに伴います設備についての基準でございます。刑務所全体といたしました場合に、必ずしも各刑務所が同一ではないのでございます。われわれのただいま行なっております矯正の運営におきまして、最も効果的であり、また経済的であるべきだという観点から、それらの受刑者を、その性格、性情、あるいは罪質その他等から類別いたしまして、ある者は重警備刑務所、ある者は順次軽度の開放的な刑務所というふうな形で処遇をいたしますので、各刑務所につきましても、あるところは独居房のみを——のみということは不可能でございますが、独居房を非常にたくさん、あるところは雑居房を多くするというようなことにいたしますと、一人当たりの坪数というものが非常に違ってくるわけであります。それからまた、ただいま申し上げました処遇のうちで、開放的なものは付属の農場に出して農耕作業等を行なわしめるというようなことで、付属敷地等の必要となってまいることもあるわけであります。また、分類のために、その施設に付近の施設から集禁いたしまして、いろいろ性格調査をするというような設備も設けますので、各刑務所の個々につきましては、いずれも違っておるのでありまして、一がいに一人について何坪という基準は不可能でございます。さような意味合いで、名古屋、福岡等につきましても、それぞれ変わっていっておるわけでございます。個々についてのこまかい、何がどういうわけで、何が広くなっているということは、ちょっと資料を持ち合わせませんが、さような意味合いで、特殊性を持たせますために違ってくるわけであります。
  32. 山内広

    山内委員 敷地については、だいぶ広い敷地ですから、これは畑をやらせたり、自給自足という点はあると思うのですが、これについての基準はないものですか。
  33. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 名古屋刑務所が非常に広大な敷地を持っているのが、お目にとまったかと思うのでございます。元来、この名古屋刑務所の持っております敷地は、終戦前後を通じまして非常に食糧難の時代がございました。名古屋刑務所としまして、郊外の、今度新設地となりました三好に、荒蕪地をもらいまして、それを開墾して農場として使っておったわけでございますが、今回の移転にあたりまして、たまたまその敷地がございましたので、それを利用したわけでございます。福岡のほうは、御承知のように市街の中心地になりまして、他に敷地を求めなければならないというので、最小限度この程度必要というところで求めましたために、かようなふうに名古屋と福岡との敷地面積が、非常に違ってきているわけであります。名古屋の広い分につきましては、やはりそれ相応に農耕地等に活用していきたい、かよう考えておる次第であります。
  34. 山内広

    山内委員 何せ名古屋は十五万五千坪、片方は五万四千坪ですから、非常に違いますね。  では、時間も切迫しておりますので、最後に一つだけお伺いしておきたいと思います。入国管理事務所の、横浜に新設されているはずの、あすこなんですが、これは前に二年間問題になりまして、そしてこの前の国会予算も組み、建築にもかかり、もうでき上がっておるはずに私は思っておるのですが、いまどうなっておるのですか。その点をお聞かせいただきたい。
  35. 住吉君彦

    ○住吉説明員 お尋ねの横浜の入国者収容所でございますが、昨年の五月二十二日に着工いたしまして、昨年末に竣工いたしました。現在すでに開所しております。業務を開始しております。
  36. 山内広

    山内委員 私の質問は終わります。
  37. 徳安實藏

    徳安委員長 村山喜一君。
  38. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 法務省設置法の一部を改正する法律案の提案理由説明書を見てみますと、この中で法務省の性格的なものがはっきり出ていると思うのでありまして、大体検察庁であるとか、公安調査庁であるとか、一つの国家権力暴力的な措置機構を拡充するという部面と、それから刑余者等のいわゆる矯正、あるいは登記事務等によりますサービス行政というような部面と、二面的な性格を持って、今回も二つの点から提案がされていると思うのでありますが、この提案の趣旨、あるいは今日まで田口山内委員に対する大臣答弁を聞いておりますと、たとえば法務省人員等の増加は、これからもなおやらなければならないのだというよう説明をされているようであります。しかしながら、今回のこれらの増員五百八十六名獲得の中で、賀屋法務大臣が一番の力点を置かれたのは公安調査庁の二百名の増員で、他のものは、これが通らなければもうおいてもよろしいのだという気がまえで交渉をされたやに承っておるのでありますが、一体今回の提案をされました中で、何を強化しようとお考えになっているのか、その点をまず第一に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  39. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いずれの問題も重要視しておりまして、いずれの問題にも重点を置きまして要求をし、大蔵省とも折衝をいたしまして、案をつくりました次第でございます。
  40. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いまの答弁は、だんだんに明らかにしてまいりたいと思うのでありますが、この五百八十六名を増員することによってどれだけの行政効果を期待をし、そしてこの増員をすることによって国民の負託にどういうふうにこたえていこうというふうにお考えになっておるのか。この増員理由書、これらの内容説明を見てまいりますと、少年院の教化活動の充実であるとか、あるいは登記事務増加に対処するとか、そういうようなばく然たる説明であります。   〔委員長退席、内藤委員長代理着席〕 とするならば、これだけの人員をふやすことによって、いわゆる法務省の法的行政的な機能という面から見た面で、どのようなサービスが国民には期待ができるのか。さらにまた、この一面権力機構によるところの拡充によりまして、どれだけの国家の安全性が保障されるのか。こういう問題につきましては、そこに何らかの科学的な目標なり数値というものが示されなければならないと思うのです。そういうような点から御説明を願いたいと思いますが、すべての問題について大臣から答弁をするということは、非常に困難性もございましょうから、そこらは各担当の局長あたりでけっこうでございますので、ひとつ説明を願いたい。
  41. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 御質問にありましたように、各担当者のほうからお答えを申し上げたいと思います。  ただ一つ申し上げておきたいのは、どのくらいの効果をあげるかということでございますが、行政のことでございますから、数量等をあげまして、限度、程度をあげまして、具体的にお答え申し上げるのは、非常に困難な面も多いかと思います。同じ行政にいたしましても、現業庁のように、郵便あるいは公共企業体、電信電話でございますとか、あるいは専売公社におきましてたばこの製造をいたしますとか、鉄道等におきまして、鉄道の建設あるいは列車の増発、スピード、こういう問題に関しましては、相当具体的に申し上げられますけれども、行政部門に関しましては、そういうふうにはっきり申し上げかねる点もあるかと存じます。申し上げられるだけ、各担当者のほうより御説明を申し上げたいと思います。
  42. 平賀健太

    ○平賀政府委員 まず、法務局の関係の二百三名の増員について例示的に申し上げたいと思います。  先ほどもお答えいたしましたように、法務局の、特に登記事務は年々増加の傾向にございまして、いまから十年前に比べますと、約五倍以上に増加しておるというのが現状でございます。現在におきましても、なお毎年増加いたしておりまして、私どもといたしましては、登記事務というのが非常に判断を要する仕事でございます関係で、職員一人当たりの一日の適正処理件数というものを基礎にいたしまして、必要人員を数学的にはじき出すわけでございます。それを基礎にいたしまして、増員の要求もしておるわけでございますが、具体的には、人員の不足というものが登記の事件処理の遅延になってあらわれてくるわけでございます。地方のあまり事件数の多くないところでは、そう影響はないわけでございますけれども、大きい都市なんかにおきましては、人員の不足というものが登記事務の処理の遅延となっててきめんにあらわれてくるのでございます。不動産登記、商業登記なんかもそうでございますが、登記制度のたてまえといたしましては、登記の申請が出ますと、その日のうちに登記が済むというのが、本来のたてまえでございます。しかし、午後おそくなりまして登記の申請があるということもございますので、文字どおり即日処理、その日のうちに処理できないやむを得ない事情もあるわけでございます。しかし、理想を申し上げますと、その日の午前中に登記の申請が出ますと、午後には処理が終わる、午後に出れば翌日の午前中までには処理が終わるというのが、理想なのでございます。ところが、事件数の多いところにおきましては、それが二日かかり、三日かかり、四日かかる。場合によりましては、一週間、あるいはそれ以上かかるという登記所が実は少なくないのでございます。人員の不足は、こういうところにあらわれてくるわけでございます。人員を現状のままで放置いたしておりますと、ますます遅延の状況が激化していくという情勢にあるわけでございます。そういう関係で、これは一昨年百名、昨年二百名、本年度さらに二百名、こういう増員が行なわれることによりまして、さらに登記事務がいまより以上に遅延をするということを防止する、そういう効果があると思うのでございます。ところが、私どもといたしましては、現在でもなお遅延をしておるという現状でございますので、人員増だけではなしに、先ほど申し上げましたように、制度自体の合理化、それから事務機械なども導入いたしまして、さらに処理の遅延を取り戻す、迅速に処理できるようにいたしたいというのが、私ども考えでございます。
  43. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 検察庁の関係につきまして、お答えを申し上げます。  検察庁としましては、九十一名の増員をお願いいたしておるのでございますが、検察も行政の仕事の一環でございまして、行政効果を効率的に実施するということは、当然なことでございますので、この点は常に頭に置いて増員計画も立てておる次第でございますが、何と申しましても、裁判、検察という事務は、同じ行政——特に検察は、行政でございますけれども、他の一般の行政事務とやや趣を異にいたしまして、人数で仕事を割ってはじき出して事を処理するという性質のものではございませんで、検察の仕事は、御承知のとおり、申すならば一つ一つの仕事を非常にたんねんにやっていくべき性質の仕事だと思うのでございます。したがいまして、非常に人数が多くなればうまくいくという性質のものでもないと同時に、絶対数が少なければとうていその目的を達し得ないことも、これまた明らかでございまして、その策定にあたりましては、非常に苦心を要するところでございますが、今回の増員計画におきましては、二つの点を考えたのでございます。  一つは、裁判所の公判審理に協力をいたしまして、審理を促進していくというねらいでございます。そのために、わずかでございますけれども、検察官並びに検察事務官の増員をお願いしておるのでございます。公判が遅延しておるということは、ひとしく世上指摘せられておる点でございまして、そのことが、ひいては裁判の威信にも関する問題となっておるのでございますが、この責任は、ひとり検察官だけのものではございませんが、検察庁もまた、当事者の一人として責任の一端を負わなければならないのでございますが、現状を見ますると、検察官は、公判立ち会いだけをいたしておるのではございませんで、捜査と公判立ち会い、その他刑の執行等の、多岐な仕事をいたしております。そこで、公判にできるだけ精力を集中して、効果的な運用をはかりつつあるのでございますが、それにいたしましても、公判専従の検察官の数が足りませんので、裁判所の部に対応して検察官の専従の者をつくっていくという多年の計画の一環といたしまして、本年も相当数の検察官、検察事務官の増員を要求したのでございますけれども、話し合いの結果、検察官五名、検察事務官五名でございますか、程度にとどまった次第でございます。  それからもう一つの重点は、交通事犯に対する取り扱いでございます。この交通事件は、御承知のとおり近年非常に多くなっておりまして、数的に申しますと、昭和二十三年に道交法が施行されたのでございますが、この二十三年を基礎にして比較いたしてみますと、昭和三十五年が二十三年の十七倍の受理人員でございましたものが、翌年の三十六年には二十倍、三十七年には二十九倍、三十八年には三十倍という数字でございます。三十九年はおそらくもっと上回るのでございまして、人員から申しますと、六百四十万人になると思われるのでございます。しかし、これは受理人員でございまして、受理をいたしましたものを取り調べ、あるものは裁判所に回す、あるものは住居地に移送する。またそれに伴う罰金の徴収等の事務があるのでございまして、一件の事件が数件にまたがって取り扱わなければならぬ、こういうような実情でございまして、これをそういう事務の面から換算をいたしますと、約一千万という数字が、私どもの頭に浮かんでくるのでございます。このような事件の処理のしかたを見ておりますると、墨田の裁判所をごらんいただいてもわかりますが、はたしてこれが裁判であろうかというよう状況をよく人から指摘されるのでございます。これではいかぬ。やはり裁判であります以上は、裁判としての権威もなければならぬし、効果もなければならぬのでございますが、かように事件が多くなってまいりますると、抜本的な対策考えなければなりませんが、とりあえず事件が多いからといりて、処理が非常におくれてしまう。ことに検察庁の面において事件が渋滞する、こういうようなことになりましては、裁判の威信の以前の問題として、事件処理としてまことにゆゆしい問題でございます。そこで、これも年々増員をお願いをしてまいったのでございますけれども、本年におきましては、交通警察官の大増員とのにらみ合いもございまして、その数字から逆算をしてまいりますると、もっと大きな五百名に近い要求をしなければならぬのでございますけれども、実際の数字をまた見ますると、昨年に比べまして非常なひどい増加ということも認められない現状にかんがみまして、まずは八十一名という程度にとどめた次第でございます。かよう考えてみますと、これが非常に積極的に効果的にこの増員が役立っていくというふうには、私は決して思いませんが、消極的に、少なくとも国家機関の活動といたしまして、これでは見ておれぬというようなことにならない程度増員、まあかよう考えておる次第でございまして、何としても御承認を賜わりまして、実現をさしていただきたい、かよう考えておる次第でございます。
  44. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 矯正局関係につきまして、御説明申し上げたいと思います。  矯正局関係につきましては、少年院の教官五十名、少年鑑別所の鑑別技官十名の増員をお願いしておるわけでございます。  まず、少年院につきましては、最近におきます少年院の使命にかんがみまして、少年の積極的な教育という面に力を注いでまいりまして、少年の年齢、あるいはその者の性格、あるいはその者の将来における更生の必要性というような点から考えまして、まだ低年齢で学校教育も終わっていないというような少年には、学校教育に重点を置く、少年院に集めて、それを教育をする。また、将来職務につかなければならぬという子供に対しましては、その者の適性検査等によりまして、労働省にあります職業訓練と同じ程度の職業訓練施設を数カ所の少年院に設置しまして、その少年をそこで一カ年の職業訓練方式における職業訓練を実施せしめて、正規の技術を授けようというふうに、それぞれの少年の適性あるいは必要性に応じまして、その処遇を充実することにつとめてまいったのでございます。ところが、さような結果、少年院のさような指導教官の勤務が非常に過重になりまして、通常昼夜勤のあとは非番になるべきものが、非番が月に一回くらいはとれない。また、日曜、休日におきまする体育等の日曜行事を充実しましたために、日曜、休日もとれない者も出てくるというような、職員に非常な勤務過重をしいる結果になってまいりました。そこでわれわれとしましては、まずその単位を四十名ないし五十名、処遇の困難あるいは教育の効果というようなことを勘案しまして、五十名ないし四十名のクラス分けをいたしました。それに四名の指導教官を専従せしめて、それが交代で昼夜勤、非番、日勤、日勤という勤務状態で勤務していきますと、職員におきましても、非番がとれ、また日曜も休日もとれるということになりますので、少年院の処遇効果を強めるために、職員の過重勤務におちいることを避けるために、員数を計算いたしまして、教務課教官五十名の補充を得られればこの体制がとれるという結論に達しまして、五十名の人員を要求いたした次第でございます。これによりまして、過去、過重勤務をしいておりました職員につきましてのいわゆる非番解消、週休制の確立ということがはかられる。そうして少年の教育効果があがるという面から、増員をお願いしておる次第でございます。  次に、少年鑑別所につきましては、鑑別技官十名の増員をお願いするわけでございますが、先ほど御質問がございましたように、ある鑑別所では定員の二倍も入っておるじゃないか、これはいつのときの御調査かつまびらかにいたしませんでしたが、大体少年鑑別所の定員は、全国的に見まして、やや定員よりも現員は少ない。また、この少年犯罪というものが、何と申しますか、非常に地域に偏在してまいりまして、東京、大阪等の大都市に急増いたしまして、これらの地域におきましては、二倍とは申しませんが、定員の一割増くらいの収容を余儀なくされるときも、間々あるわけであります。現在、東京鑑別所では定員以下でございますが、ある時期に一斉の取り締まり等が行なわれました場合に、一時的にふえるというようなこともございますが、全国的に見まして、地域的に偏在いたしまして、少年鑑別所の技官の勤務負担というものは、非常にでこぼこができてきたわけであります。ある地域では、一日四人しかおらぬというような鑑別所もございます。ところが、あるところでは、定員をオーバーして非常に大勢の子供をかかえておるというところもございまして、全国的に見まして、ある鑑別所では非常に精密な検査もできるが、あるところではいわゆる簡易鑑別に終わらざるを得ないというような結果になりまして、鑑別に要する時間と——一人精密検査をいたしますと、大体われわれの調査では二十二時間四十分かかるわけでございます。それを鑑別の必要な部分だけにとどめてやりますと、七時間三十二分というようなことで、いろいろ事件数、あるいはその事件の精密な検査を要するもの、あるいは簡易鑑別で間に合うもの等を勘案いたしまして、全国平均をとってまいりまして、われわれがここで十名を増員していただければ、それを東京、大阪、横浜等の非常に繁忙な地域に配置すれば 大体全国的な平均がとれるというところで、十名の増員をお願いしたわけでございます。  以上が概略の御説明であります。
  45. 武内孝之

    ○武内政府委員 保護局におきましては、保護観察官二十二名の増員をお願い しております。この趣旨を申しますと、最近青少年犯罪都市集中化の傾向が顕著でありまして、ことに東京、大阪、名古屋というような大都市の青少年の保護観察の対象者の数が、ふえてきております。これに対しまして、保護観察官は、現在第一線の保護観察所に配置されております人員は、四百五十三名でございます。この人たちは、法律、社会学、教育学、心理学、精神医学、そういうふうな特殊な知識をわきまえていなければなりませんので、増員をしようとしまして本、、人的給源に非常に問題があるわけでございます。現在の事務量は相当負担過重でございまして、そのために、保護観察対象者と申しますと、家庭裁判所から保護処分を受けて来る者、少年院から仮退院で来る者、刑務所などから仮出獄で来る者、また普通の裁判所で保護観察付の執行猶予の言い渡しを受けて来る者、これらが対象者でございますが、保護観察を始めるにあたりましては、まず保護観察官が相手に面接しまして、十分家庭の状況、心身の状況、今後の生活設計を聞かなければなりませんが、現在の事務量では余裕がございませんので、以後に行なわれる保護観察の実施の上で十全を期しがたいうらみがあるわけであります。ところで、大都市における青少年の保護観察対象者はふえておるのでございますから、この際、少なくも比較的事件の多い東京、大阪、名古屋におきまして、青少年の保護観察対象者を対象といたしまして、当初二カ月間は保護観察官が直接相手のめんどうを見る、保護観察を実施いたしまして、その間に十分本人の動向を見まして、そうして保護観察方針を立てて、それから保護司の方々に、従来やっておりますようにケースの指導をお願いするように持っていきたい、こういうふうに保護観察への導入を強化する、インテーク・ワークの強化という点にあるのでございます。そのために負担量を計算いたしまして、少なくもこの三大都市には、最小限二十二名を配置いたしたいものと思うわけであります。
  46. 富田正典

    ○富田政府委員 入国管理局関係増員状況について、御説明申し上げます。  入国管理局といたしましては、先ほど局長の御説明がありましたように、大村関係が二十四名減員になりまして、その他が二十九名増員、差引五名の純増ということになっております。  御承知のように、入国管理行政と申しますのは、内政と外交のいわば接点のようなものでございまして、入国の際の取り扱い適否というものが、国際問題にも発展いたしますし、また、その適否というものが、国民の利益、あるいは公安上にもいろいろ問題になってまいるという性質を持っているものでございます。したがいまして、観光政策と申しますか、短期で入ってきて日本のためにドルを落としていただくというような入国者のためには極力便宜をお計らいし、気持ちよく入っていただく、こういう面の手当ても考えなければなりません。また、入国した後におきまして、与えられた在留資格に従って活動していただく。資格外に、観光客として入ってきた方に変なドルかせぎなどをやられては困りますから、その面のフォローもいたさなければなりません。そういうような入国を非常に合理化して、簡便にかつ気持ちよく入っていただくという面と、在留管理上の規制の面と、両方の要素があるわけでございます。今回の増員の二十九名の内容は、羽田入管関係の入国審査官の増員が、十二名でございます。これは近年飛行機の発達によりまして、入国者の数は、年々飛躍的に増大しております。その関係で、お客さんの増加に伴って、羽田の十二名の手当てが最小限度必要である。それから各港にやはり出張所を置いてございますが、今回は八戸、尼崎、坂出、こういう出入港の船舶の実績の多いところに対しましては、やはり出張所を置いて、そこの出入国事務、上陸事務の手当てをしなければならないということで、この三カ所に五名の入国審査官の増員が認められておるわけでございます。それから入国してまいった方々の在留期間の更新でございますとか、その他の在留審査業務も、入国者の増加に伴って非常にふえてまいっております。そのための入国審査官の増員が六名ということになっております。  また、舟艇要員、これは本来船の予算が認められれば人が認められるわけでございますが、従来認められておらなかったものを、本年度につきましては二隻について三名ずつ舟艇要員が認められて、合計二十九名の増員であります。  大体以上が入国管理局関係増員内容でございます。
  47. 津田實

    ○津田政府委員 最後に、内部部局関係の最後のものといたしまして、大臣官房に五人の法務技官を増員する。これにつきましては、職員の厚生に関する業務の充実強化をはかりますために、診療所関係の職員、すなわち薬剤師一名、看護婦四名を増員する、こういうことでございます。   〔内藤委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 宮下明義

    宮下政府委員 公安調査庁関係で、公安調査官二百名の増員理由につきましては、昨日来詳細に申し上げましたので御了解いただいたかと思いますが、一言つけ加えますと、昨日も申し上げましたように、公安調査庁調査対象といたしております左翼関係団体組織が次第に増加してまいっておりますし、なおその非公然化の傾向が強くあらわれておりますので、従来の公安調査庁努力にもかかわらず、だんだんに組織の面におきましても、活動の面におきましても、解明できない、わからない面がふえてきているのでございます。右翼関係におきましては、御承知のように、従来の右翼関係団体のほかに、いろいろ新しい右翼団体ができてまいりまして、それらの影響を受けました思慮分別が十分でございません若い連中が、突発的に暴力行為に出るわけでございますが、これらにつきましても、なかなか把握できない状況になってきております。私どもといたしましては、従来のわかっておる状況、解明度というもの、それからこの点まではやはり知っておかないといけないぞということをいろいろ内部で計算をいたしまして、右のほうと左のほうとお願いいたしておるよう増員の人数を計上しておるわけでございます。  御承知のように、カナダあるいはイギリス等におきましては、共産党員の数も日本よりずっと少ないのではありますが、これらの国におきましては、その国内における共産党員の組織あるいは活動等が、詳細に逐一わかっておるのであります。したがいまして、その前提の上に立って御承知のような安定した政党政治民主主義が発展しつつあると考えます。私どもといたしましても、暴力主義的破壊団体組織活動というものが、やはりある程度把握できるということでなければ、公安調査庁の使命が達せられないものという考え方を持ちまして、もちろん何でもかんでもということではございませんが、計上いたしました二百人の増員を合わせて千七百十人の調査官になりますが、これを十分に訓練をいたしまして優秀な調査官に仕立て上げまして、これで国家の御期待に沿いたいというふうに考えておるわけでございます。
  49. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ただいま各担当の局長、責任者からいろいろお伺いをいたしましたので、大体その必要性についてはわかってまいりましたが、問題は、今回重点を置かれたといわれるこの公安調査庁の二百名の増員に関連をいたしまして、現在、同じような使命を持ちながら活躍をしているそれぞれの行政機関があるわけであります。たとえば警察庁がやっている仕事内容、それから内閣調査室は、これは内外情報の収集、調査ということをやっているようでありますが、これらの内容的な問題をつぶさに答弁してまいりますと、内閣調査室なり、あるいは総理府の警察庁なり、あるいは法務省公安調査庁なり、これらの三つの機関は、任務的には一元化されているにもかかわらず、これがそれぞれの行政の機能を果たしているというかっこうのものが見受けられると思うのでありますが、ここで警察庁の警備局長がお見えになっていると思いますので、お尋ねをいたしておきたいと思いますのは、この公安維持の名前におきまして情報の収集をおやりになっていらっしゃることはお認めになると思うのでありますが、その調査の対象団体というものは、われわれが知るところでは、共産党は言うに及ばず、社会党等もその対象の中にあげている。さらに労働組合、民青、原水協、あるいは全学連、社青同、憲法擁護国民連合、こういうような民主団体も、その調査対象に入れ、さらにまた日中友好協会であるとか、あるいは日ソ協会という友好団体調査の対象、あるいはそのほか、母親大会であるとか、主婦連であるとか、婦団連であるとかという婦人団体、さらにまた地域職場の文化、演劇、音楽、映画のそういうサークル活動、これらのものや、あるいは共産圏諸国との貿易商社関係、さらに進歩的な出版社、印刷所関係、さらにまた、朝鮮総連や華僑総会、または共産圏の在日大使館等に出入りする人物、そのほかまあこれらの在日外国人団体、これらの多くのものについて、それぞれ情報収集活動を行なっておるというふうに聞いているのでありますが、それは事実であるのかどうかということをまず明らかにしていただきたいのであります。
  50. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御承知のとおりに、警察は、公共の安全と秩序を保持する、こういう責務が課せられておるわけでございます。その責務を達成するための一つの態様としまして、警備警察の分野で各種の情報活動をいたしております。その情報活動の対象でございますが、対象は、やはり責務の点から考えておのずから制約があるわけでございます。私ども現在の段階では、国際共産主義運動の日本への働きかけ、日本共産党国内における各種の動向、あるいは朝鮮総連の動向、こういったもの、また右翼団体についても、それぞれ暴力主義的なものがございますが、そういったものの動向、こういうものは、すべて情報活動の対象として調べておるのでございます。で、御質問の中に、各種の民主団体調査をしておるのではないか、こういうお話でございましたが、それらの民主団体につきましては、ただいま申しました国際共産主義運動の働きかけがどのようになっておるか、あるいはまた日本共産党のそれらの団体の中における浸透の状況がどのようになっておるか、こういう観点で、それに必要な限度について情報活動をしておるのが、現在の実情でございます。
  51. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますると、大臣、いま警察の行なっております公共の安全と秩序を保持するという立場からやっております警備活動、この内容と、法務省公安調査庁でやっております内容との間には、違いがありますか。いまの説明を聞いてまいりますと、同じことをやっておる、こういうふうに受け取っても差しつかえないのではないかと思いますが、大臣、その点はいかがでございましょうか。
  52. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 同じことで、違っております。警察は、公安秩序の維持、犯罪の予防と摘発の任務を負っておるのでございます。それですから、犯罪が起こりそうなものは、いわゆる破壊活動暴力による破壊活動はもちろん、その以外のものでも、みなこれをやらなければならぬ。そのためには、起こるもとの状況調査ということは当然必要なことでございまして、その限度に進んでおります。公安調査庁は、もっぱら破防法に規定がありますこの目的で進んでおる。具体的の調べる事柄が、両方が同じことを調べる、これはもちろんございましょうが、おのずから公の、一口に言えば公共の安全の維持だ、国の秩序の維持だと申しましても、そこでねらいと角度に相当の相違がございます。これはまあたとえを申し上げてはおそれ入りますが、たとえば経済企画庁と通産省があります。農林省があります。運輸省がございます。同じものを扱っておる。結局経済企画をいたしますためには、運輸であり、生産の手段であり、貿易であり、いろいろそういうことでございますから、物価にしましても、通産省がいろいろ考え、発言する場合もあり、調査もいたします。むろん経済企画庁もいたします。そういうふうに、申し上げれば、破壊活動の面におきましては、まあことばは不適当ですが、いわば基本的調査公安調査庁がしますが、一々の犯罪の予防、検挙という面は、これは公安調査庁は、協力はできるかもしれませんが、ことに検挙などには協力はとうていできない。そういうふうに、同じ対象であるのでありますが、おのずからその活動目的、分野が違い、機能が違う。それは別の角度で申し上げれば、生産活動、企業のあり方、産業構造、これは通産省のものだが、しかし、経済企画、全面的な企画の必要があるというような面から見ますと、経済企画庁のもの。破壊活動におきましては、基本的の傾向その他をつかむためには、公安調査庁が主になりましょう。しかし、これは御承知のように、個々の人を調べると申しましても、団体を調べる必要の意味からいくので、この人がどういう犯罪を犯すおそれがあるか、そういう問題が主ではないのであります。同じ人、同じ活動が対象にはなりますけれども、全体の秩序維持に必要なる情報を得る意味からいきましたならば、おのずからそこにニュアンス、目的の違いがある、かよう考えておる次第でございます。
  53. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もちろん破壊活動防止法にいう被疑者団体を対象にして調査を進めるのが、公安調査庁の任務でありましょう。しかしながら、われわれ国民の側からいえば、同じような職務内容を持ち、同じようなことをやっている、そういう内容的なものを考えた場合には、これは国民の基本的な人権との関係もあり、行政の効率という点からも考えなくちゃならない。そしてそれは一元化した場合に、一体どういうような不都合が起こるのかという問題も考えなければならない。今度二百名増員をいたしまして二千十五名しかないわけでしょう。これらの二千十五名の職員のうち、いわゆる公安職の職員というものは千六百五十五人、これが全国的にわたって調査活動を進める場合には、やはり警察のところに手足がないからといって、いろいろと警備担当の係官から情報を入手する。それに基づいて動かなければならない。私のところは鹿児島県ですが、鹿児島県は、十名くらいしかいないと思う。そういうよう状況の中で、一体目標をつかむことができるのかどうか。私も宮下次長から「内外情勢の回顧と展望」というような本や、「日本共産党の現状」、さらに「第八回党大会以後の日共の基本的動向について」というよう資料をいただきました。なるほどよく調べてあります。調べてはありますが、そういうよう内容は、現在の警察行政の中でできないのかどうか。われわれは、警察行政のあり方、そういうような警備活動というものがはたして警察本来の任務であるかどうかということについては、多少疑問を持っております。これらについては意見を持ってはおりますが、現に警察庁があり、公安調査庁があり、法律は違っていても、やっていること、なしていることはほとんど同じじゃないか。しかも主たる限界線というものがあるということを警備局長は答えておる。これは国際共産主義運動の立場から見て、共産党がこれらの民主団体にどのように浸透しているかという時点から調査を進めているのだということです。そしてその内容は、共産党であるとか、朝鮮総連であるとか、いわゆる共産党系諸団体と思われるものを中心にして活動しているということが、はしなくも説明がされたわけです。そういたしましたら、これは臨時行政調査会が言っておりまするように、この機構というものは一元化されてしかるべきものじゃないかという点を、国民は、ああ臨時行政調査会はなるほどいいところに目をつけた、こういうことで歓迎をするのではないかと思うのです。あなたは法務大臣でありますけれども池田内閣の国務大臣として、そういうふうに行政的な機構、機能が重複するような姿が正しいものであるかという点については、再度お答えをいただきたいのであります。私は、決して破防法の五条、七条の規制をやりなさいということを言っているわけじゃありませんけれども昭和二十七年公安調査庁が発足をいたしてから今日まで、破防法の被疑団体はあるけれども、適用団体は一件もないというこの現実の姿、この中から見ましても、国民はどうもおかしいと考えているのではないかと思うのです。しかもことしの予算は、二十二億三千九百余万円でしょう。そしてこの破防法対象団体調査費が、八億五千万円もある。そういう金をふんだんに使いながら——今度二百名増員することによって、大体二億円の調査費が予算的にもつくはずだと思う。それだけの仕事をやりながら、機構的に、人員の上において手足がないということで、他の調査機関にたよらざるを得ないわけです。国民は同じ団体であっても、きょうは警察から、きょうは公安調査庁のほうからという形で、取り調べと調査を受ける、あるいはスパイ活動を強要される、そういう形でいった場合には、これは一つの人権問題にも関連をするわけですから、一元化したほうが、基本的人権を侵害する率からいっても少ないわけであります。行政の効率からいっても望ましいというよう考えているのでありますが、大臣は、国務大臣としていかがお考えになるか、お答え願いたい。
  54. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 私は、むろん行政制度の歴史の専門家ではございません。警察制度というものはどうして発達し、公安調査庁的のものが各国でどうして発達したか、制度の沿革を考えると、おのずからそこでわかるものがあるのじゃないか。つまり国際的に破壊活動を支持するよう勢力がなかった世界と、ある世界の違いがあるわけであります。いまはそういうものがある世界であります。警察というものは、そういうものがない時代から発達しておるのであります。警察は、治安の責任に任ずるものであるから、むろんそういうものが存在して、その危険がある、直接に内乱、外患でなくても、そういうことに導くための予備的の行動で刑罰法令にも触れ、人間を殺傷し、いろいろ社会秩序を害するような行動などは、むろんそれは警察は出ますが、基本的にそういうふうな活動がない時代の犯罪の予防あるいは摘発と違った分野、違った必要が起こっているのが、近代の世界情勢であると思うのであります。それでありますから、相当な国には、警察機関と別個に、破壊活動調査し、場合によりましたら、日本破防法以上にいろいろ活動し得るような法制もあるかもしれません。そういうふうなものが発達しておるのでございまして、さきの例にもあげましたが、従来は、経済企画につきましても、別に経済企画庁的なものは要らなかったわけであります。昔は農商務省であったのが、農林省、商工省に分かれ、いまは農林省、通商産業省と分かれております。だんだんにこれが企画的なものが発達しまして、単純に産業行政そのものとして見るばかりじゃなく、高度に国家的に全体の産業行政のあり方考えるという行き方というものが、世界的に発達しておると思う。それと同じく、いろいろな破壊活動にしましても、当面の犯罪の防止、いろいろ刑罰法令に触れるような行為の起こることを察知して予防する以外に、そういうものの根源の破壊活動をするよう団体の国際的活動、それが国内に及ぼしまして、長い間の破壊目標があります。どういう企画をして、どういう人で、どういう組織で、どういうふうにやっているか、これは従来の警察の沿革からいって、むしろ外にある。関連はあるが、古い警察ではそういう目的ではやっていなかった。いまでもしいて制度に、その中に入れようと思えば入れられましょう。しかし、どっちが適切であるか。一機関が、目的が膨大に過ぎ、多岐に過ぎますと、かえって活動がうまくいきません。経済問題でもほかの問題でも、私は同様だと思います。そういうふうな状況でございまして、決してこれは重複にあらず、これはお話しのように、わずか全国に千七、八百人かそこらであります。一府県で何十人かであります。こういうことから、警察に協力を得て情報を得るというのは、いいと思います。その協力を得ないでやれば、ますます金が要るというわけでございます。これはやはり機構運用の妙味といっては行き過ぎた表現でございますが、機構運営上当然のことだと思うのでございます。それで、いまお話しがありました、両方から調べにくる、これはなるべくそういうことは迷惑がないようにしなければなりませんが、これがいまのよう根本が違いますから、そうして、ある程度は末端機関というものは、公安調査庁は少なくして、そして警察機関と協力して、その援助を得ていくというのが適当な態勢じゃないか、かように私は考えておる次第でございます。
  55. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣は、経済企画庁と通産省も同じようなことを取り上げている例をもってこの問題に対処しよう説明をされたわけですが、やはり経済企画庁は経済企画庁なりに、それぞれの設置の目的がある。通産省の場合も設置の目的があると思います。なるほど、そういうような意味からいえば、公安調査庁には、法律によって設置の目的がありましょう。しかしながら、これはやはり現実において行なわれているそういう活動国家権力に基づく活動なんです。いまの大臣説明を聞いておりますと、警察の現在やっている政治警察的な警備活動、こういうようなものは、いわゆる犯罪の予防、それを検挙、摘発、こういうようなものに限る考え方を、警察あり方としては主として持つべきである。現在、その警察官が非合法活動をやっている。たとえばスパイ工作のための獲得工作、あるいは投入工作、さらに潜入工作、あるいは侵入工作、介入工作、盗聴工作、盗窃工作、写真資料工作、こういうようなことばで言われているいわゆる警備活動が、これは本来警察がやるべき任務ではなくて、公安調査庁ような、こういう団体——やはりねらいは共産党であり、共産党のシンパグループでありますから、あるいは右翼団体でございましても、団体的な組織としてのこういう活動形態を調べるのは、公安調査庁が当たるべきだ。そして警察行政というものは、これはあくまでも治安の維持という立場から、刑法を主体に適用をしていく刑事活動、これが中心でなければならないんだという基本的な考え方をお持ちになった上での発言であるのかどうか、その点も明らかにしていただきたい。
  56. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 私は、大体そのとおりでございますが、そのとおりと言うと、ちょっと誤解を招くと思います。たとえば、物価の問題でも、経済企画庁は物価を扱います、通産省は産業行政をやればいいんだ、物価は考えなくてもいいという考えではいけないのです。それから警察は、犯罪の捜査をやるためには、関係事情というものを知らなければなりません。その関係事情を知るために、必要な限度で調べるということは、当然でございます。具体的な調査の対象になる人は、それは誤解のないように申し上げておきますが、あくまでも公安調査庁目的団体でございます。団体の行動や組織の運行を知るためには、人を置いて調査しなければなりません。そこは行き過ぎかといいますと、私は、その必要な限度では行き過ぎじゃない。それと同じように、基本的に破壊団体のいろいろな動向は、公安調査庁では調べますけれども現実にそういう団体が何をするか、非常なデモ行進をする、その陰で、ほんとうにこれが平穏に正しく行なわれるかどうかということを調べるためには、それを企画している団体及びその内部の人について、警察相当に調べられる必要があるのじゃないか。公安調査庁からもらった資料以外に何もできないということでは、実際動けないと思う。それですから、大体趣旨はお述べになったとおりですが、具体的の調査相当に交錯するものがあるということは、やむを得ぬし、また必要であると私は考えるのであります。
  57. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 やむを得ないということはわかるのです。必要であるということは、交錯する問題があるということはこれは必要であるという説明では、わかりません。なぜかなれば、きのうからの説明を聞いておりますと、具体的な個人、団体調査活動公安調査庁としては行なっている。だから、組織の中の人の協力を得て資料を集めます、あるいは日共の調査は今後十分に行ないます、調査団体以外は調査対象といたしません、こういう説明でありますから、先ほど警察庁の警備局長の話を聞いておりますと、捜査には限界がありますと、やはり同じようなことを言っておるわけです。同じようなものが行政の必要上やむを得なくて交錯する場合はあっても、それはかりに認めるといたしましても、そういうふうに交錯するものが必要であるという説明は、一体何でありますか。
  58. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 それは同じ人がやりましても、これは公安調査庁も、破壊活動をする団体活動について調査する場合もございます。しかし同じようなことは、いま行なわれるいろいろの運動等について、犯罪を起こすか起こさないか、こういう関係からも見る必要がありましょう。その場合に、必要な限度と認められることによってやられることは、私は必要であると思う。見方が違うし、そういうものは、たまたま競合することはやむを得ないし、また競合するからといって何もしないのでは、警察の行政の任務は達せられないのじゃないか、そういう意味で必要であると申し上げたのであります。
  59. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この問題だけをここで大臣とやりとりをいたしておりましても時間が足りませんので、この程度でおいて、またこれらの臨時行政調査会の一つの結論も出てまいりますから、そのときにわれわれの態度を明確にいたしてまいりたいと思うのであります。  内閣調査室、見えていますか。——ことしの予算が四億九千八百六十四万四千円、これは情報の収集及び調査費ということで、情報調査委託費というのが大部分であるようでございます。四億五千八百九十九万八千円、これはたとえばわれわれもいただいておる内外情勢調査会の国際情報資料、こういうような外部の団体に国際情勢、国内情勢、これらの調査委託をしているということであって、国家権力としての立場から、その権力保持の手段として、警察活動とかあるいは公安活動、こういうものはやっていないという立場をおとりになるのか。それとも、やはり警察庁なりあるいは公安調査庁と同じような、そういう諜報活動情報の収集活動というものをやっておいでになるのか。その点を明らかにしていただきたい。
  60. 石岡実

    ○石岡説明員 お答え申し上げます。  内閣調査室は、私から申し上げるまでもなく、内閣法に基づきまして、内閣の重要政策に関する情報等の収集、調査と、各行政機関の行ないますところの情報の収集と調査につきまして、内閣の重要政策に関するものの連絡調整に当たっているわけでございます。そういう観点から、現在行なっておりますところのいろいろの仕事の中におきましては、大ざっぱに申し上げますと、いろいろの各国から出てまいりますところの通信とか放送などをできるだけ迅速、正確に整理をして、これを報告するとか、こういう問題の論調を調査するとか、あるいはこれは世論調査とは違うわけでありますけれども、できるだけ短時間に一般の有識者のアイデアというような意味の有識者調査というようなこともいたしております。こういう問題は、もちろんいろいろの、たとえばNHKとか共同通信とかいうよう団体に、その調査を委託しておるわけであります。さらにいろいろの情報の収集の基礎的な問題と申しますか、民主主義の基本となりますところの民主主義とか、反民主主義、そういうふうな問題に関するところの基礎的な研究をするための民主主義研究会という団体がありまして、そこにいろいろの調査研究の委託をいたしております。それからまた、内外情勢全般にわたりまして、いろいろの分析判断をする、そういうふうな国際情勢研究会という団体に、そういうような諸種の状況判断の委託をいたしております。それとあと一つ、先ほど申し上げましたところの関係機関との連絡調整に当たるということもいたしておるわけでありますけれども、そういうふうな諸種の調査を各団体に委託をするための準備をいたしましたり、そういう出てまいりましたところの調査をいたしましたりするとともに、特に緊急な問題とか、特に機密を保持する問題につきましては、内閣調査室自体で情報を収集する場合もあります。しかしながら、国内の問題につきましては、これは先ほど申し上げました連絡調整という分野に入りまして、各関係官庁からの情報をいただくというふうなことで、重点は国外に置かれているわけであります。
  61. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 やはり性格的には秘密情報等の収集及び調査というものを、連絡調整的な機能の役割りとして果たしているということであります。だから、それはすべてが警察活動であるとか、あるいは治安活動であるとかいうことにはならないと思いますけれども、そういう性格も含みながらこれらの機関がお互いに存在をしているということでありますから、これらの問題は、行政制度のあり方の問題、行政責任の度合いの問題、そしてそれは権限と当然の責任が伴って行政効果が国民にはね返っていくような存在にならなければならないのでありますから、そういう立場からこの問題については検討をすると同時に、それをいかにして国民がチェックできるかという問題を考えていかなければ、民主主義の存在はあり得ないのでありますから、他日、そのような角度でこの問題については論じてまいりたいと思います。  そこで、次の問題でございますが、青少年犯罪増加という問題は、世界的な課題であります。そこで今回、矯正機関的なあり方から大臣がいろいろ施策を講じておられる、あるいは保護観察という立場から仕事をやっておいでになる、こういうような問題に対する取り組み方の力関係というものが、一体そのウェートの置き方がどういうふうになっているかということを調べてみますと、この保護観察の問題等につきましては、四十九カ所で六百五十九人が仕事に携わっているということであります。犯罪の予防、刑余者の指導、こういうよう内容でございますが、この増加人員公安調査庁の二百名の増員との比較をいたしてみますと、一割しかないということは、青少年犯罪増加に対処するあなた方の取り組みの姿勢というものが、積極的なものがないのではないか、消極的な姿勢しかないのじゃないか、こういうふうに受け取れるのでございますが、この点は、大臣は先ほど両方の面において勘案してあるという説明でありましたけれども、ここで具体的にあらわれてまいりました増員の数字等を見てみますと、そういう印象しか受けないのでありますが、その青少年犯罪増加に対処する大臣の心がまえというものは、どういうよう気持ちでおいでになるのか、伺いたいのであります。
  62. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 最近、犯罪増加が非常に世間の注目を引いておりますが、私は、これに三つの重点を置いて考えております。一つは、青少年の犯罪であります。第二は、暴力行為、暴力犯罪、第三は、交通事犯でございます。第一、第二、第三と申し上げるのは、別に重要度をつける意味で申し上げているのではないのでございますが、大体この三つは、少なくとも重要な焦点であると考えております。  ただいまの交通事犯と暴力関係の問題は、のけます。のけますが、この暴力関係は、青少年問題と内容が重なるところがあるわけであります。その意味におきましても、青少年の非行問題が世間で考えておりますように、いまは第二の国民ということばはあまり使われませんが、将来の社会を構成する構成員でございますし、非常に心配をされておる、またほんとうに心配すべきことであると存じます。それで、これはちょっとお許しを願いたいのですが、ほんとうにこの犯罪に取り組んでやるということで、三十六年には暴力犯罪対策を講じました。それ以後、内閣でも非常にこの少年犯罪につきましていろいろ機関も設けてなにしておりますが、ことしの取り組み方は、率直に申し上げまして、私も自分でも不十分だと思っております。もっと真剣に取り組まなければならないと、内々省内でもその話をしておるわけでございます。それで、これは法務行政というよりは、行政各部門における問題であります。ひとり犯罪としてのみ考える問題ではないのでございますが、私どもの領分としましては、犯罪の面が主要な受け持ちになっておるわけでございます。そういう意味におきまして、まず犯罪の防止には、再犯の防止ということが私どもの非常に大きな任務である。この保護観察ということは、非常にそこに重点を置かなければならない。それから一つは矯正と申しますか、少年院に入りまして、これも結局は再び犯罪を防止するという目的でございますが、外部の保護観察以外に、一定の収容所に入れまして、その気分、考え方、意識、性格まで変える、と言っては大げさでございますが、そういうものをため直す、また、将来社会に出て、正業について生活の資を得るということも大事でございます。そういう少年院の中におけること、外におけること、それからまたその取り扱いの前には、検察、裁判との関係や少年審判との関係がございます。こういう点について、さらにさらに検討を加え、進んでいかなければならぬじゃないか。非常に気持ちとしては重点を置いている次第でございまして、今回の予算あるいは人員の要求も、これで十分だというふうに自信を持って申し上げるほど十分なものはいずれもございませんが、この問題は、古くて非常に新しい問題として、今後ほんとうに取り組んでいきたい。それから、先ほども申し上げたのでございますが、もう少しこれが科学的に対策が進まなければならぬじゃないかという意味から申しますと、その意味におきまして、少年の犯罪というものは、教育が悪いのだ、環境が悪いのだということも問題でございますが、そればかりでなく、本人の性格、精神、性癖、あるいは精神病者まで至りませんでも、変質者的なもの、精神薄弱者というようなものに対しまして、これも一口にはそう申しますが、個々別々の個人個人に相違がある。したがって、対策も、従来よりもっと綿密に、緻密に、科学的に考えていかなければならない。それに対してはどうするか。先ほどもちょっと申しましたが、そういう方面の技術的専門家も足りませんで、もうその養成から始めなければならない。これはそういう学問を専攻されましても、普通のお医者さんとして相当な収入を得るということとは縁遠いよう方面でございますから、そういう面からも考えていかなければならないのではないか。今年の対策が十分でないということは、私は率直にそう感じております。今後ほんとうに力を入れてまいりたい問題である、かように思っております。
  63. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣がいまお話しになったとおりに、最近の青少年犯罪の特徴としては、年齢が低下している。その中で、在学少年の犯罪、非行の増加が見られる。しかも、この犯罪白書を見てみますと、いわゆる初犯者というのは大幅に減少をしつつある。人口対比率から見た場合に、少年の犯罪件数というものもやはり減りつつあるけれども、なお増加率そのものは、成人と比べた場合には、成人が二割減っているのに対して、五割前後相かわらず増加しつつある。こういうような報告を白書で述べているわけであります。これに対応するとらえ方は、もちろんすべての分野において総合的な施策を講じていかなければなりませんが、この中で、初犯者というものが大幅に減少をしているという傾向、そして保護観察等によりまして、いわゆる指導というものに非常に重点を置かなければならない段階にさしあたって、ここでわずかに二十二名くらいの増員では——いままで私が話に聞いておりますのは、一人の該当少年に対して指導面接をする時間は五十分くらいしかないということも承っているのであります。そういうような指導を、心理的にも、あるいは本人の性格的にも、適応した訓練というものをやらなければならない、指導をやらなければならない立場にある保護観察官というものが、きわめて低目に押えられて、そして二百名の公安調査庁の係官が増員になる、こういう姿を見たときに、法務省大臣考え方というものは、やはり国家権力に基づいた弾圧的なといいますか、権力的な機能というものに重点を置いて、そしてこういうよう犯罪者の指導とかあるいは予防、青少年の犯罪増加している世界的な課題に対応する姿勢がきわめて乏しいのじゃないかというふうにうかがえるのであります。したがいまして、これらの点は今後十分に対処を願いたいと要望を申し上げておきたいと思いますが、この中で、実は一昨日でありましたか、新聞にも出ましたのでお尋ねをいたしておきたい点がございます。  それは関東の松葉会と関西の本多会が結合をして、その裏には国会議員が介入をしているのではないかという記事がありました。これらの暴力団体は、博徒やテキヤが増加しているにもかかわらず、検挙人員昭和三十年から三十六年までの実績を見てみますと、ほとんど変わっていない。こういう状態にある。にもかかわらず、そういうようないわゆるテキヤ団体が全国的な大同団結をしていくという姿が見られる。しかも、この暴力的な傾向の中において、恐喝、暴行、傷害、脅迫という犯罪増加している。しかもそれは、個々に発生するのではなくて、団体的な形の中において発生をする。その中に青少年が投げ込まれて悪への芽を植えつけられていくという姿が今日見られているとするならば、これらのいわゆる団体の動きに対しまして、先ほど、今回は右翼団体に対して四、左翼団体に対して、六という形で増員をするということの説明がありましたけれども、いわゆる暴力団体と見られるようなものは、ただ公安調査庁のそういう一般的な調査事項の問題ではなくて、当然犯罪という立場から、検察庁あたりにおいて考えていかなければならない問題だと思う。と同時に、これは青少年の犯罪との関連もありますから、法務省として総合的な判断を下していかなければならないと思うのでありますが、この関東の松葉会と関西の本多会との裏に国会議員が介在をしているのではないかと新聞に報道された事実については、どういうふうになっているか、説明を願いたい。
  64. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いま御指摘団体が、どういう性格であるか、全面的に暴力団体であると断定してよいかどうか、私にはまだわかりません。と同時に、国会議員が介在しているという情報は、私は少しもそういう情報は得ておりません。暴力団体につきましては、暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正案につきましても、いろいろ議論がございました。暴力行為、そのうちでほんとうに国民に大きな不安を強く与えるものは、いわゆる暴力団体の構成員であるということは、多くの諸論もそうでありますし、私どももそう思っております。今回の暴力に関する法律の改正も、その考え方が多分に入っておる次第でございます。ただ、暴力団体そのものを規制の対象にするかというと、これがどうもとらえにくい。法の対象にいたしますためには、暴力団体というものが法的にはっきりした観念がなくちゃならぬ。苦心をしても、それができません。それからまた、各国の先例を見ましても、そういうとらえ方はできにくいので、とらえ方をしている国も後退をしているという状態でございます。これは暴力行為取り締まりに関する問題を御審議の委員会でも、たびたび申し上げたことでございます。しかし、暴力法の改正の御審議が済みまして、これが成案になりますれば、その法の適用、運用の結果として、暴力団的なものは非常な痛手を受けて、だんだんに解散しなければならぬという機運に立ち至るためにきわめて有力だろうと思うのでございます。検察陣におきまして——検察局はいまおられぬかもしれませんが、いやしくも刑罰法に触れるような行為があります場合には、決して遠慮しないで、十分に法を適用し、運用してまいる所存でございます。
  65. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 テキヤなり博徒の団体暴力団体であるという規定づけはできないかもしれませんけれども、その中に暴力犯罪を犯す者が多数あることは事実である。そういうような構成分子を含んだ団体が一堂に会合をし、そこに国会議員なりが花輪をおくり、お祝をする。そこにいままで国家権力暴力団が癒着をしておるのではないかという疑惑が、国民の中にある。そういうふうなことが新聞に出ている以上は、当然火のないところに煙が立たないと同じように、このような疑惑のにおいがするのではないか。この点について、検察庁は調査をいたしましたか、どうですか。
  66. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 検察庁は、そういう調査をするのは本来の任務ではございません。先ほど大臣が仰せになりましたように、検察庁の仕事は、犯罪の予防というよりも、犯罪が発生してから後の処理につきまして、法の適用を適正にするということでございます。したがって、そこにどういう団体の性格のものであるか、あるいはまた新聞に出ておったよう内容が実態に沿うものであるかというよう調査は、検察庁といたしましては職務の範囲外だと私は考えております。
  67. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これは警察担当になるわけでありますが、これらがいわゆる右翼団体といえるかどうか、そこら辺もわからないと思いますけれども公安調査庁は、この問題についてはどういうふうに分析をしておりますか。
  68. 宮下明義

    宮下政府委員 公安調査庁におきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、政治的な目的を持った暴力主義的破壊団体調査をいたしておるわけでございます。したがいまして、すでに存在しております団体が、新たに政治目的を掲げてまいりまして、しかもそれが暴力的な傾向がございますれば、もちろん調査の視野の中に入れるわけでございますが、ただいま御質問になっておりますようなもろもろの団体については、まだわれわれの調査の範囲内とは考えておらないのであります。
  69. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この点については、大臣は、そういうようなのは介在をしていないとさっき言い切られましたが、それは自分の権限外だから知らないということなんですか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  70. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 介在をしていないとは私は言わない。私は、そういうことを聞いておりませんと言ったのです。
  71. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その問題は、また他日取り上げる機会があるかもしれませんが、きょうはこの程度にしておきたいと思います。  次に、これは行管からも指摘を受けて、そして改善の意思もお持ちになっていらっしゃると思うのでありますが、犯罪者に対する処遇の問題です。これは出所時の給与額が二千円以下の者が六〇%である、それは釈放時の更生資金としては役に立たないということが、犯罪白書の中にもはっきり述べられておる。刑務所に入れられて、刑務所でいろいろな作業をやる。その作業収入というものが——これはそういうような収入を目的にする労務作業ではない、いわば教育的な意味があるということもわかります。しかしながら、今日刑務所に頼めば非常に安く上がるということで、いつか大分で焼け死んだ事件等が法務委員会でも論議されておったようでありますが、そういうような労働基準法あるいは労災法を無視したような作業というものが、一面においては行なわれておる。一面においては給食の状態なんかを見てみますと、三十八年で二十五円九十銭の副食費しか出していない。しかも、生活保護は三十七年で五十一円六十六銭だ、こういう具体的な例示も出されておる。大臣は「飢餓海峡」という小説をお読みになったことがあると思うのでありますが、水上勉氏の書いた「飢餓海峡」の中に出てくる刑余者に対するところの処遇、これらの問題に対してどういうふうにお考えになっているのか。また、具体的な対策をどういうふうに講じよう考えられるのか。その方針をお聞かせ願いたいのであります。  それと同時に、これは私の選挙区にある問題でありますが、昔吉松町というところの町役場の町長さんが、法務省の行政に対しまして非常に貢献をしたと思うのでございますけれども、町有財産を無償提供いたしまして、そして感謝状を時の大臣からもらっているようでありますが、作業所を開設したわけです。そこでは年間収益二、三百万円の作業収入、農業収入があるようであります。しかしながら、いま時勢が移り変わってまいりまして、そこは農業構造改善事業で大きな放牧による畜産をやりたい。ところが、法務省の刑務所の作業所がある。それが当該地域に入っている、何とか考慮してもらえないかということでもってきたら、代替地を見つけてきなさい、そうしたら、それによって考えましょうというわけです。代替地になるようなところをいまごろさがしてみても、それは見当たらない。昔の町長は感謝状をもらって、役場に額は一枚加わっておるけれども、いまの時勢から見た場合は、これはまことに困った問題だというのが、住民の声として出ている。これに対しまして、こういう固定した作業所のあり方——ここから得られる金額というものは、わずかなものであります。それよりも、国有林等の下払いとかいうような一つの作業を通じて、たとえば島なら島に国有林がある、そこに受刑者の中の成績のいい者を連れていって、そこである程度の作業収入が得られるようなかっこうのものをつくる、こういう形の中において、現在犯罪者に対する処遇がきわめて低劣であるという問題を同時に解決しながら、そういう地元の要望にこたえる方法をお考えになるのがいいのではないかと思うのでありますが、それらの問題に対する見解を、これは大臣お答えになりにくければ、担当の局長からでもけっこうでありますので、お答えを願いたいと思います。
  72. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 まず、作業賞与金がきわめて低額である、ただいま犯罪白書から御指摘になりましたが、われわれが作業賞与金というものについて考えておりますのは、いわゆる受刑者が刑を終わりまして社会に戻りました場合に、生活の不安に基づく再犯の問題であろうかと思います。生活不安であるがために再び罪を犯すという面から見る場合に、釈放後におきまする生活の問題につきましては、まずわれわれといたしましては、次に引き継がれますものが更生保護であり、また一般社会保障である、かように制度的には考えられるのであります。しかしながら、さように刑務所から釈放しまして更生保護あるいはまた社会保障というように移行していきます場合に、時間的なズレがあって、そこで生活に困って再び犯罪を犯すというというようなことで、それで作業賞与金というものが支給されることになるというたてまえになっておるわけであります。しからば、その金額が幾らになればいいかという問題になるのでありますが、ただいま御指摘犯罪白書の調査は、昭和三十六年度でありますが、大体一年何カ月の在所者の平均が出ておるわけでありまして、それが当時は二千円でございましたが、われわれとしまして、さような他の制度に移行していく場合のつなぎとしまして、おおむね生活保護の一カ月ないし一カ月半の資金があれば、他の救済方法に移行できる、そういう意味合いから、生活保護におきまする一カ月の給与額というものを目途に置きまして、昭和三十九年度からは、平均五千円の支給ができるよう予算的な措置を講じたわけであります。それで、われわれといたしましては、大体一月半を目途に要求してまいったのでありますが、三十九年度予算では、平均五千円の給与を目途として支給していく。そしてこれらの者が一時的な生活の資金にしまして、引き続いて就職する。それが不可能な場合には、一般社会保障に切りかわっていくというよう考えでおるわけでございます。  それから作業収入が大いに上がっておるということでございますが、企業的に見ました場合に、刑務所の作業の収入と申しますのは、これらの者の生活費あるいは給付その他をまだ十分にカバーするだけのものではございません。やはり職業訓練的な、また生活指導的な面がございますので、どうやら自分の、安いとおっしゃった食事をまかない、そして被服をまかなうのにまだ足りない程度でございまして、これを賃金的に見て作業収入金ということを考える段階には、立ち至っていないのでございます。  それから吉松の問題で、われわれとしまして、決してさような意味合いで、刑務作業というものは利益を目的とするものじゃない。結局その者の生活指導なり、あるいはまたその者の将来の生活に役立つような意味合いで刑務作業を運営しているわけでございますが、吉松の問題につきましては、かねがねお話のございますような話があったわけであります。現在鹿児島刑務所霧島農場と申しておりますが、荒蕪地でありましたものを開墾し、植林もいたしました。目下優良な受刑者がそこに移りまして、半ば開放的な処遇で農業に従事しているわけでありまして、われわれとしまして、決してかような場所に執着するわけではございません。お話しのありました場合にも、われわれとしてはかような処遇面で活用しているので、それにかわるようなところがあればいつでも移りたい。われわれとして、やはりかような開放的な農業に従事することも、本人の将来ということにつきましても必要な教育手段でございますので、あればお願いしたいということでございまして、その後具体的なお話もございませんので、そのままになっておるわけでございます。なお、また食糧費にも関係いたしますが、かような農場で生産いたしましたもの、これが所内自給という意味合いで相当低廉に用度に移しまして、収容者の栄養源にしているわけでございます。さような二つの目的で持っておりますので、かわるべきものがあればいただきたいというふうな目下の話し合いの段階でございます。むしろわれわれとして、その後何らかのお話があるかもしれないというふうに考えておるわけでございますが、そのまま何の話もないので、まだ停とんしておるという状況でございます。いままた、刑務作業として最も適切と思われる農林省等の山林業務に従事するという方法も、九州におきましては、五島列島にもかような作業場を設けまして、植林に従事しながら修練に励んでおるわけでございます。また北海道におきましても、さような開放的な処遇という意味合いで、さような作業場を設置しておるわけでございます。われわれとしましても、一つの土地を手に入れたからといって、決してそれに固執するわけではございません。ただいま申し上げました農業では、食糧の自給をはかるかたがた、かようなそれに必要なと申しますか、最も構外作業に合ったものの訓練の場というような意味合いで活用していきたい、かように思っております。決して一カ所に固執するというよう状態ではございません。  なおまた、食糧費につきましてきわめて低廉という御指摘がございましたが、ここ毎年二円、三円と上げまして、御指摘ように金額はきわめて低額でございますが、その栄養源につきましては十分注意いたしまして、必要なカロリー、あるいはまた必要な栄養素の摂取ということに努力しておるわけでございます。現在の刑務所等の食糧で欠けております点は、動物性たん白が粗悪であるとか、同じ動物性たん白といたしましても、牛肉、鳥肉というようなものよりも、鯨肉というような点で摂取しておりますので、いわゆる質と申しますか、その点において欠けるところがあり、また食糧は栄養があればいいというだけではなくて、やはり見た目にもおいしいものということも必要であります。そういう点において欠けておるかと思いますけれども、金額は少のうございますが、一般国民生活に必要な限度の食糧というものは、十分確保しておるつもりでございます。しかし、いま申し上げましたように、質の低悪ということもございますので、その点さらに努力いたしまして、改善に努めていきたいと考えております。
  73. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 話を聞いておりますと、必要な限度は幾らでも切り下げられて、生活保護は最低限の生活だと私たちは思いたいのですけれども、それ自体でさえも最低限の生活保障になっていないと言っている。にもかかわらず、その半分しか副食代はないわけです。そういうよう現実というものを考えた場合に、はたして犯罪者の処遇という問題はこれでいいのかということを、もっと基本的な人権という問題からも考えてもらわなければならないし、賃金、いわゆる作業賞与金的な性格の賃金というものが高過ぎるというようなことを、私は言った覚えはない。これはべらぼうに低過ぎるのです。だから、刑務所の囚人がやる作業を通じて、特定の業者あたりがもうかっているのじゃないかという声さえも聞いている。そういう点から再検討を願いたいということを言っているのですよ。まあ、その問題は一応それでおきたいと思いますが、最後に時間もありませんので、二点だけ質問をして、大臣からお答えをいただきたいのであります。  第一点は、地方を回りますと、検察庁の建物は、副検事がおるような建物でも、まことにりっぱな建物ができました。何人いるのかというので、中に入ってみると、副検事が一人いる。それに事務官が二人おって、三名あるいは四名というような小さな事務所もあります。しかしながら、ほとんどこれは鉄筋でつくられている。ところが、法務局の登記事務関係をつかさどるところは、これは市町村の建物を借りている分野が多いのでありますが、何十年もたって、雨漏りがしている。床はまるで抜けるよう状態になっておる。そういう中において執務をしておる。何とかこの問題を処理していただけないかということで、私も前から話をしているのですが、一向に予算がつかない。予算がありませんということで、県に一カ所くらいしかない。同じ法務省の管轄下にありながら、検察庁のほうはりっぱな近代的な建物が建っている。片一方は明治年間に建ったような建物で放置されている、こういうあり方では、私は片寄った行政じゃなかろうかと思うのであります。その問題は大臣の耳にはもちろん入っているだろうと思いますが、そういう住民にサービスを与えるような行政機関の問題については、もっとあなたのほうで考えていただかなければならないのではないかと思うのでありますが、これに対する見解をひとつお聞かせ願いたい。  もう一つは、人事院が行ないます上級職の採用試験を受けて法務事務官になる。ところが、検事の身分を持っている人が法務省には相当おりますので、法務省に入ってみても、上級職の公務員試験を受けて他の官庁に行ったら、課長なり局長になるのだけれども、一向になれない。いつまでたっても法務事務官で、存在を認められぬ。公安調査官になったら、これはいつまでたっても地方回り、こういう形の中で、行政職なり公安職のいわゆる採用後におけるところの昇任という問題が、検事の問題と関連をして、非常におもしろくない空気をつくっているやに聞くのであります。それらのいわゆる法務省の、これは行政機構のあり方といいますか、公務員制度のあり方という問題に触れていかなければならないわけでありますけれども、これらの問題については、どういうふうに大臣は認識をしておいでになるか、その点をお聞かせ願っておきたいと思うのであります。
  74. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お尋ねのうちの庁舎の問題でございますが、これはいかがでしょうか。少しお目にとまったところのぐあいの御判断じゃないかと思うのです。この間、私北海道に参りましたら、旭川の検察庁の庁舎が悪いとさんざん言われました。終戦のときに、何か武徳殿の建物の中にいる。実にひどい。裁判所はりっぱにできたが、検察庁は悪い、こういうような問題もずいぶん聞きます。また、逆の場合もございましょう。大体御承知のように庁舎的なものは法務省管轄内に多いのでございますから、それがみんな古くて困るというのは、これは私が四十年くらい前に大蔵省で法務省予算を担任しておりますときから、そういうことなんです。それで大蔵省のほうでも相当力を入れておりますが、何さま建物が多いものですから、順々にやっていくのがおくれて、たまたまできたものは、りっぱな鉄筋コンクリートのができました。ところが、その並びに古いのが残っておるという現象がどうも続きまして、相当営繕費をほかよりは大蔵省も近年奮発してくれるようですが、なかなかそれが全体に回りませんで、非常にちぐはぐな現象を呈しておることは、むろんあると思いますが、法務省の方針としては、検察庁だけりっぱにして、ほかはかまわぬという考え方はごうもありませんので、順次その老朽あるいは狭隘な状況でだんだんにやっていく。刑務所のほうは、その所在地の要望がある場合が多いのです。これもまた財源の関係などでいろいろときには前後が違っているよう感じがすることもあります。これは相当財源が要る。その土地からは財源があまりこない、片一方は十分くるというよう関係がありまして、前後する場合もありますので、現在御指摘よう状況は決してないとは申しませんが、検察庁の庁舎でもずいぶんひどいのもまだ残っておりますし、全体的に公平と申しますか、どれにも片寄らないで漸次改良をしていきたい、かよう考えております。  それから法務省人事等の問題でございますが、御承知のように、法務省仕事は非常に専門的で特殊なものでございまして、経理や人事の面におきまして、またいろいろな立法的な面におきましても、検事の経歴を持つ、その職業上の経験知識を持った人が要る場合が多いのでございまして、それで、それが一部を占めておるということは、やむを得ない状況でございます。それからまた、昇進は、一般法務省自体がほかの官庁よりおくれております。学校を出た年齢等で対比していただきますと、これは官庁ごとに相当な相違がございますが、法務省と外務省が一番おくれておるのであります。それだから、おれはおくれているというけれども法務省全体がおそい場合もありますので——場合があるじゃない、現在そういう事態でありますので、これなどは人事の展開、また職員の将来に対する希望等で、人事の当局者も非常に苦心をしておるところでございます。特に検事でないものを冷遇するなどという考えではない。それからまた、現在入っている人は、まだ比較的若いじゃないかと思います。いつから採用したか私も具体的に覚えておりませんが、比較的若いんじゃないか。いま、入って十年かそこらで課長になるなんていうことは、なかなかできない時勢になりました。他の省でも困難でございましょうが、いわんや法務省とか外務省などは、容易にそこにいかない。少なくとも五、六年はほかの省と違うのじゃないかと思います。人事につきまして人々が希望を持ち、したがって、職務に精励するという面につきましては、十分配意いたしてまいり、またそのための制度、また法務省として一番大きい問題として課せられておりますのは、法曹一元化の問題でございますが、各般の人事的の要素を配合しまして、できるだけすべての職員が将来に希望を持ちながら進み得るよう努力してまいりたいと存じます。
  75. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 法務大臣はつり合いのとれた形でやっていくんだという説明でありますが、私たちが現実に選挙区を回りまして、そして所在地には必ずあいさつに行く。行って、一つ一つ具体的にお前例をあげろとおっしゃれば、自分の選挙区だけは例をあげることができますというぐらい、現実にこの目で見て、その実情をよくわかっております。だから、何とかしてもらいたいということで要望申し上げると、いやあなたのところは予算がないからできません。一体それじゃどれくらい予算がついたのだと言ったら、もうきわめてわずかの数字しか言われないわけです。この点は、やはりいまのようなかっこうでいきますと、登記所というのは、官公庁の建物の中では一番おんぼろになっておるし、また荒廃をしていくんじゃないかと思いますので、この点については格段の努力大臣に要望申し上げまして、終わりたいと思います。
  76. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明二十八日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十六分散会