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野田(武)
政府委員 この前も石橋さんから
お尋ねがございましたので、私どもの態度をお答えいたしておきましたが、今度の
叙勲の問題は、これはかってに政令でやったものじゃございませんで、御承知のとおり、すでに昭和二十一年五月、二十八年の九月に、これを
閣議でおのおの
勲章の問題の
閣議決定をいたしております。しかも
叙勲につきましては、この前もお答えいたしておきましたが、
内閣の助言と承認により天皇の国事行為として
憲法上にも明らかでございます。もちろん新
栄典制度をつくりますという場合には、これは当然今後
法律によらなければならないということは、よくわかっております。しかし、いま申しましたとおり、昭和二十一年、二十八年におきまして、
閣議においてこれは承認いたしておりますので、その後歴代
内閣——これは決しておことばを返す
意味ではございませんが、社会党の
内閣の時代にも、その
閣議の決定に基ずいて、死んだ方に対する
叙勲はすべておやりになっております。すでにもう戦争終結後一万数千人に
叙勲いたしております。外国の方には、千何百名かの方にこの
叙勲が行なわれておりまして、これは歴代
内閣がこれをおやりになっております。そこで、いまの私どもの態度といたしましては、ことさらに旧
憲法の観念を生かすとか、あるいは旧
憲法の制度といいますか、
叙勲の
基準をそのまま持ってくるなんということは、毛頭ございません。しかし、今日までは、実は死没者に対する
叙勲その他については、大体旧令にならてやっておりましたが、ここで、やはり新しい
生存者叙勲制度を決定するにあたりましては、どうしても新しい角度からこれを検討して、いわゆる新
基準をつくるのが妥当だということで、今回の
叙勲基準を決定した次第でございます。その点は、決して旧
憲法をそのまま持ってきたという、旧
憲法の時代の
叙勲制度を直ちに持ってきたというものではございません。しかも、これには非常に段階があるんじゃないか、これが同じじゃないか、こういうおことばでございます。それも一つのお
考え方と存じますが、やはり同じ
仕事に携わっておられる方でありましても、やはり
国家公共のためにお尽くしになった方でありましても、三年、五年お尽くしになった方と、八十まで五十年も六十年もお尽くしになった方ということになりますと、おのずからその
内容について、
功労といいますか、成績と申しますか、そういうものが、おのずから三年、五年おやりになった方と五十年もおやりになった方というのは、やはりその間の差といいますか、お
仕事の
内容がやはり違っておりますので、これはひとり日本だけでございませんで、外国の
叙勲の制度も、ほとんど幾つかに分かれて
叙勲いたしております。
御存じのとおり、昔の
勲章だという
考え方は
——形は昔の
勲章でございますが、フランスのごときは、ナポレオン時代につくりましたレジョン・ドヌールというような
勲章、イギリスのガーター
勲章というものは、もうたいへんな年月を過ぎております。ただ形が悪いというのではなくて、私は
叙勲の精神とその
基準の
内容によって批判されるべきものであって、これは幾段階かあるからいけないというお
考えは、私は決して否定するものではございません、よくわかります。わかりますが、
人間社会においては、自然やはり五年ずっと
仕事をしたものと五十年
仕事をしたものの
内容は、多少私は違っておるんじゃないかというようなところで、自然にこういう幾つかの種類に分かれたと思っております。
また、いまの御要求になりました資料につきまして、午前中言ったのが夜中、私はこれは恐縮千万であります。これは実は
閣議にかけました
基準と、いまお手元に差し上げた
基準要綱というものはほとんど同じでございまして、これはどうも隠しても、こんなもの隠せるものじゃございません。あらわれるものでございますから……。例を引きますと、国際的な外交の機密
事項か何かやっておりますれば、これは何かごまかして隠そうということもできますけれども、
叙勲のごときは、内規を持っておりますが、現実に
叙勲をやりますときはあらわれてくるものでございまして、ことさらに石橋さんの御要求に何か隠そうという、そういう
考え方は毛頭持っておりません。実は打ち明けて申しますと、おそくなったのは、これはちょっと速記をとめていただきたいのですが、事情を申しますと
——御了解を得たほうがいいと思いますから。
叙勲の問題でずっと
閣議をやっておりまして、事務的に連絡をしましたことは聞いておりましたが、それはすぐ差し上げなさいということを言っておきましたが、事務的な連中がずっと各省と
会議をやっておりまして、時間的におくれたかと思っておりまして、決して故意に何か変なところを隠そうというような
考え方は毛頭ないということを明らかにいたしますと同時に、たいへん御要求の時間におくれましたことは恐縮千万であるから、おわびをいたしますが、その真意を決してことさらに隠蔽しようとかどうとかいうようなことでなかったということを、御了承願いたいと思います。