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1964-04-23 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十三日(木曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 辻  寛一君    理事 内藤  隆君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       岩動 道行君    佐々木義武君       高瀬  傳君    塚田  徹君       綱島 正興君    野呂 恭一君       藤尾 正行君    保科善四郎君       前田 正男君    松澤 雄藏君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君      茜ケ久保重光君    稻村 隆一君       村山 喜一君    山田 長司君       受田 新吉君    山下 榮二君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制次長  高辻 正巳君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府総理副長         官       古屋  亨君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房賞勲部長) 岩倉 規夫君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎮男君         外務事務官         (移住局長)  白幡 友敬君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     卜部 敏男君         外務事務官         (移住局外務参         事官)     佐藤 正二君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 四月二十三日  委員湊徹郎辞任につき、その補欠として天野  光晴君が議長指名委員に選任された。 同日  委員天野光晴辞任につき、その補欠として湊  徹郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十二日  旧金鵄勲章年金受給者に関する特別措置法案(  参議院提出参法第四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び  薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一五九号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五六号)  在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外  公館に勤務する外務公務員給与に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  栄典制度に関する件      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由説明を求めます。総理府総務長官野田武夫君。内容とする人事院勧告がなされたのでありますが、政府といたしましては、その内容を慎重に検討いたしました結果、これを実施すべきであるとの結論に達しましたので、所要改正を行なおうとするものであります。  すなわち、第一に、寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当を統合し、寒冷地手当として一本化するとともに、現行法の題名を国家公務員寒冷地手当に関する法律と改めることといたしました。  第二に、それぞれの級地における寒冷地手当の額は、従来の寒冷地手当に相当する定率による支給額に、従来の石炭手当または薪炭手当に相当するものを加算した額とすることとし、その加算額についてはこれを増額して、たとえば北海道にあってはその最高額を二万七千二百円に、その他の地域にあってはその最高額を八千六百円に改定することといたしました。なお、新たに、これら加算額のない地域に豪雪があった場合は、二千五百円以内の額を寒冷地手当として支給することといたしました。  第三に、病気休職者等につき、新たに寒冷地手当支給することといたしました。  第四に、支給日後において、寒冷地手当支給されない地域から支給地域に異動した職員または支給地域の区分を異にして異動した職員に対し、寒冷地手当支給し、または返納させる措置を講ずることといたしました。  以上のほか、防衛庁の職員準用規定につき所要改正を行なうことといたしました。  この法律案は、以上の趣旨に基づきまして、国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律改正を行ない、公布の日からこれを施行しようとするものであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  3. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ります。      ————◇—————
  4. 徳安實藏

    徳安委員長 栄典制度に関する件について、調査を進めます。  本日は、先般政府において決定せられました叙勲基準等に関しまして、まず、政府より説明を聴取した後、質疑を行ないたいと存じます。総理府総務長官野田武夫君。
  5. 野田武夫

    野田(武)政府委員 叙勲基準につきまして、去る四月二十一日の閣議で決定いたしたのでございますが、その要綱を御説明申し上げます。  昨年七月十二日に生存者叙勲の開始についての閣議決定を行ないましたが、この叙勲を行なう基準につきまして、四月二十一日の閣議におきまして、その基本方針を決定いたしたのでございます。  その概要を御説明いたしますと、叙勲は、国家または公共に対し功労のある者に広く与えることを原則として、主として戦後における死没者叙勲の先例を参酌し、次の諸点に留意して作成いたしました。  以上であります。
  6. 徳安實藏

    徳安委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。永山忠則君。
  7. 永山忠則

    永山委員 私は、結論から申します。こういう叙勲につきましては、国民の納得するものでなくてはならぬのでございますから、政府はいたずらにその実施を急ぐことなく、広く世論を聞いて慎重に基準をおきめになるということを中心に、世論のあるところ等を加味いたしまして質疑をいたしたいと存じます。  第一に、総務長官は、本委員会が「栄典制度調査並びに栄典法案起草に関する事項」というのを調査事項にしておるということを御存じでございますか。
  8. 野田武夫

    野田(武)政府委員 前に、過去の政府におきまして、新栄典制度提案があったことも存じております。これが審議未了になりまして実現しなかった。そこで、その後の政府の中では、ことにいまの内閣におきましては、ことさら新栄典制度をつくるという考えはなくて、そうして御承知のとおりの閣議決定となったのでございまして、その間の国会内部における詳細のことはよく存じておりません。
  9. 永山忠則

    永山委員 国会におきましても、各党が新栄典法をつくり上げようということで協議をいたして、大体の方向は認めて、それが保管をされておるという事実も御存じでございますか。
  10. 野田武夫

    野田(武)政府委員 国会においていろいろ御論議になっておるというだけは聞いておりますが、直接成案ができたというようなことも存じませんし、経過の詳細は、私関係いたしませんものでしたから、あまり詳しく存じておりません。
  11. 永山忠則

    永山委員 国会では、各党もこれに対しては互いに話し合いでいこうという態勢も見えております。しかも、この委員会では、栄典制度調査並びに栄典法案起草に関する事項について調査をしようということになっているのです。それを委員会のほうへは何ら話もせずに、閣議で決定したものをここへ持ち出していま説明するというような、そういう非民主的なことは、これはいわゆる委員会を侮辱していますよ。こういうような考え方に対しては、私は厳に御反省を求めなければいかぬのでございますが、私は、時間の関係がありますから、御反省を求めて、ひとつこの点は院議を尊重して、国会を尊重する——あなたも国会議員なんですから、そういう信念でおやりにならなければいけませんよ。官僚に押しつけられて、そうしてただめくら判をつくという長官であっては意味がない。この点については、私は非常に義憤に燃えておるのですよ。しかし、長官だけではどうもならぬことでありまして、お出になったときはすでに閣議決定があったという情勢でございますので、この点に関してはやむを得ない点もあろうかとは存じております。  そこで、その次にこれを見ますと、大体「公務に従事した功労者について」となっておるのでございますけれども、実際は一定年限在職する在職年限によって自動的に叙勲がきまるというような情勢が、旧来のあり方だったのです。そういうことは意味がないのですよ。国会議員になったから、何年おったら叙勲する。それならば、農村で農業に二十年従事しておるからといって、何の叙勲をやりますか。在職しているから叙勲をするということは、旧来のいわゆる戦前の行き方ですよ。ことに私が申し上げたいのは、官吏——国会議員も一緒ですが、これを優位に取り扱うという理由が、どこにございますか。戦前官吏は天皇の官吏で、民間給与よりは低かったのでございます。そして政党のかわることによって首になる場合もあった。生活に対する安定というものに対して、必ずしも十分ではなかった。ところが、最近の国家公務員地方公務員は、民間給与と格差があれば是正するという人事院勧告もできるようになっている。共済制度もできておる。退職金制度もできておるのであります。しかも、国民の税金から給与をもらっておる。それが何年もつとめておったという年数でもって叙勲をするという考え方それ自体が、私は間違っていると思う。叙勲年限でやるんじゃない。その職におる者が、ほんとうに新憲法にいうところの民主国家道義国家の顕現に対して努力をした、尊敬すべきであるという人に対して、国会議員でありましょうが、官吏であろうが、あるいは民間人であろうが、それに叙勲するということに改めなければ、私は新憲法趣旨に即する叙勲ではない、こう考えるのですが、その点、長官の所見を承りたい。
  12. 野田武夫

    野田(武)政府委員 永山さんの御意見は、きわめて傾聴すべき御意見でございまして、大体私も同感でございます。そこで、今回の叙勲基準を決定するにあたりましては、十分永山さんの御意見と同じ趣旨を織り込んで、たとえばただいまお話のありました篤農家というような方には、もちろん叙勲する方針でございまして、今度は、決して役人であるとかないとかというところに差別を持っておるものではございません。もちろん官民広く対象といたしまして、その内容によってこの叙勲をきめたいという方針でございますから、いまお話しのような、機械的にただ年限というだけでその叙勲対象になるのではない。民間に対しましても同様に、各種各階層みなすべてを重要視いたしまして、その内容によって、功績のあった人に対しては叙勲したいという方針でございます。
  13. 永山忠則

    永山委員 民間についてはさようでございましょうが、ここに書いてある。「国会議員については、新憲法下国権最高機関構成者たる建前から、勲四等瑞宝章以上とする」こうある。これは国会議員になりさえすればやるということですよ。そうして一の(ハ)には「認証官等職務内容が特に重要と認められる職に一定年限在職した者に授与される勲章は、勲三等瑞宝章以上とする。」ということは、一定年限、すなわちこれは「認証官等」と書いてあるが、これは事務次官をさしておるでしょう。(「事務次官認証官でない」と呼ぶ者あり)認証官等ですから、等ということばがあるから、そこで事務次官がおるかおらぬか。なおここは上手に書かれても、新聞に発表されたものは、事務次官はこれを勲三等瑞宝章以上、国会議員は勲四等瑞宝章以上こういうことをちゃんとお書きになっている。だから、(ハ)にある認証官等というのには、事務次官は入っているのか、入っていないのですか。そうして、「一定年限在職した者」と書いてあるのですから、在職によってやはり勲章を出すということでしょう。民間側在職には関係ない。ほんとう篤農家のような者にはやる。ところが、国会議員役人に対しては、とにかくその職についたら、あるいはここの第一にある国務大臣あるいは衆参両院議長最高裁判所判事、これはその職についたら勲二等瑞宝章年限が長ければ一等にする。その職についたらすぐやるということでしょう。ついた人間に対して特別に功労のあった者にやる。この書き方は、こうおっしゃることじゃないのですよ。特別に功労のあった者とは何かという、どうしてそれを判定する、どの審議会にかける、そういうことも何もないじゃないですか。一定年限と書いてあるのだから、年数さえ来たらばやるんだ、そうして国会議員になりさえすればやるんだ、事務次官になりさえすれば勲三等だ、こういうことじゃございませんか。そうすると、長官の言われることは違うじゃありませんか。すなわち、国会議員行政官には、とにかくそれになったならばやる。そして年限を踏んだら上げてやるということであると考えるのですが、どうですか。
  14. 野田武夫

    野田(武)政府委員 最初の御質問であります事務次官になったらすぐ三等をやるということ、「認証官等」についてお尋ねでございましたが、認証官等には事務次官は入っておりません。事務次官には、一般職公務員の中に入っております。また、ただいま何か身分がなったらすぐやるのじゃないかというお尋ねでございましたが、ここにも明示してありますとおり、身分国会議員になりましたからといってすぐ勲四等になるものではございません。少なくとも国会議員は、一年以上経過しなければ差し上げないというのは、その間で国家予算その他重要な法律あたりの御審議を願うというようなことは、やはり国会議員職務として私は相当大事なことじゃないかと思っております。職務内容でございまして、ただ事務次官になったから何等というようなことなんか、全然考えておりません。したがって、内閣総理大臣といえども、内閣総理大臣になったら、その日すぐ勲一等ということではございません。やはり一定のある期間がありまして、その間で国家に対して功労があったということを前提といたしておりまするので、いま永山さんのおっしゃったように、何になったからすぐ勲章をやるという考えではございません。
  15. 永山忠則

    永山委員 それでは個々にいきますが、国会議員都道府県知事、六大市長は、在職期間により勲四等以上。在職期間により勲四等以上というのは、さっきの御説明では、国会議員は一年以上やれば勲四等やる、こういうように言われたのですが、一年以上やれば勲三等にしようと言われたのですか。さっきここへ配られた文と読まれた文は違っておるじゃありませんか。
  16. 野田武夫

    野田(武)政府委員 たとえ国会議員に当選されたからといって、すぐ勲章を差し上げるというものではございません。やはり一年間の審議というものは、その間の法律案予算案その他の重要な事項に御参加願う。たとえばよく一年以内におやめになる方もございます。そういう方は、やはり国会議員としての功績がない。その間あるかもしれませんが、あるならば特別詮議のほうで考えます。一応、われわれといたしましては、一年間を通して初めて法律案予算案について御審議を願って、やはり国家的功績を認める。そこで国会議員の方は二年間いたしますと大体旭四になりまして、四年で三等になります。一期おつとめになったということは、重要なお仕事をなすった、こういう考えでございます。それで六年以上は旭三になりまして、ここに書いてありますとおり、十年いたしますと二等、二十五年の永年勤続まで果たされた国会議員の方には一等を差し上げる、こういう考え方でございます。そこで先ほどお話になりましたが、従来と同じだというものではないかということは、たとえば戦前は、勅任官というものは在職七年で四等になっている。その当時、国会議員はどうかといいますと、大体十四年しなければ四等になれなかった。戦前のいわゆる定期叙勲と申しますか、そういう考え方と今回の叙勲基準というものは基本的に違っているのでございます。
  17. 永山忠則

    永山委員 いまのように、二年つとめれば旭四だ、四年つとめれば三等だ、六年つとめれば旭三だ、十年つとめれば二等だというように、年限でやっておるのはおかしいじゃないか、こういうのです。それならば、農村でも十年やった者は八等をやる、中小企業でも二十年やったらやるということにやったらいい。そういうように、その職にあるがゆえにということではおかしいじゃないかと言っているのですよ。それならば、一般公務員事務次官はどういうことになるのですか。はっきりこれをさせなければならぬことは、すでに毎日新聞にも、法制局長官各省次官在職期間により勲三等以上、こういうことを書いてある。そして国会議員都道府県知事、六大市長と同じように勲四等以上、基礎としてそう書いてある。だから、事務次官はどういうことになるのですか。
  18. 野田武夫

    野田(武)政府委員 国会議員に関して例をお引きになりましたので申し上げますが、何年以上と申したのは、つまりこの叙勲というものは、もちろん国家公共に対する功績でございます。したがって、大体叙勲というものは、いままでただ年数によって上がるとかということだけではなくて、その職務内容公共性がある、国家性があるというところに基本的な考え方がございます。したがって、やはり、国会議員を四年おやりになるということは、相当公共的な、国家的なお仕事を担当しておられる、こう考えまして、いわゆる三等ということにいたしております。そこで、いま御比較になりました事務次官はどうかという御質問でございますが、これは大体事務次官までには二十五、六年つとめておるものでございます。戦前でございますと、いろいろその間に叙勲のなにがございましたが、今回はそういう考えでございませんで、しかも大体事務次官は、二十五、六年目にこれを三等にするかせぬか。しかも事務次官になったからといって三等ということではございません。事務次官就任後の功績、こういうことはわりに厳格に考えておりまして、いま永山さんは非常に役人のほうに重点を置いているじゃないかと言いますが、むしろ私はできるだけこれは押えたいという考えでございます。しかし、二十五、六年、三十年つとめた者には相当の叙勲をしていいのじゃないか。と申しますのは、やはりそれだけの仕事をして、その間支障がなかった。それからこの基準要綱にも書いておりますが、特別詮議方法考えております関係上、その間に、どの方でも、いわゆる抜群といいますか、卓絶した功績の方には特別詮議をもって他の方法によって叙勲をするということで、弾力的に考えておりますことは、いま永山さんの御指摘になりましたように、官民であろうが、その間非常にいい仕事をしたということが顕著な者は、特別詮議によって他の方法において叙勲する、そういう考えでございます。
  19. 永山忠則

    永山委員 ですから、事務次官は大体二十四、五年になるから三等以上になるだろうということは、要するにこれも勤続年数ということを中心考えていかれるから、したがって、国会議員勤続年数の少ない者よりは上だという議論になるわけです。そこで勤続年数というものが、基準としてきめる重要なものに私はなるべきじゃないと思う。それならば、民間側のほうでも、各職場におる者を勤続年数というものを入れたらどうですか。勤続年数ということには、いわゆる国会議員であるとか、あるいは国家公務員であるとかというものは、国家のために非常により以上に公共性でつとめる、農村におる農村民公共性がないということはありません。いずれも国家のためにやっているのじゃありませんか。だから、勤続年数というものを国会議員あるいは国家公務員に入れるならば、一般民勤続年数を入れたらどうですか。そういう勤続年数中心にしてやるから、事務次官のほうは結論的には勲三等以上になる。国会議員は、何年以上出ておる人はもちろん勲三等になるでしょう。すなわち、言われましたように、四年以上出ておれば勲三等以上になるでしょう。けれども、それ以下は勲四等であります。そういうような年数で格づけをするということになってきますと、非常に大きな疑問が起きてくるのであります。憲法第四十一条に、「国会は、国権最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」こう明記されておる。さらに国会法の第三十五条には「議員は、一般職国家公務員最高給料額より少くない歳費を受ける。」、こう規定してあるのです。その点から見ても、事務次官より下の者ができるということは、妥当性を欠くということになる。だから、年数主義というものがきわめて妥当性を欠くという結論は、そこに出てくるのではないかということを私は特に御注意を申し上げて、これが再検討をされねばならぬというように考えるのですが、どうですか。
  20. 野田武夫

    野田(武)政府委員 お話よくわかりますが、永山さんにちょっと申し上げておきます。私どもは決して役人を何年やったという、役人を尊重しているのではないということの一つの例証といたしましては、いかに長く役人をやっておりましても、勲二等以上にはできないことになっております。国会議員はもちろん勲一等になります。そういう観点は、私ここでいろいろ御説明するまでもなく、実は自分自身考え方としては、この案には官尊民卑なんということは毛頭考えていないところでございまして、一般公務員諸君が努力されても、勲二等以上になれないということになっております。また、民間におきましても、私はお話のとおり今度生存者叙勲の選考をいろいろやっておりますが、第一の基準は、年限を問題にしてはいけないとおっしゃいますが、篤農家でも、一年、二年おやりになった方よりも、何十年おやりになった篤農家はどうしても叙勲したい。また、極端に申しますと、たとえば国鉄の機関士なら機関士をやっておられた方、こういう方をさがしております。これはやはり長い間おやりになったということは、非常に国家公共のためにお尽くしにはなったわけであります。やはり人間のやることですから、どうしても尺度と申しますか、基準というものは置くことになる。これはある程度の年限をおやりになった、しかも大過なくほんとう国家のためにおやりにおったという方には、それが農村であろうが、中小企業であろうが、また労働者諸君であろうが、一、二年おやりになった方よりも十年おやりになった方が、それだけ公共のためになっているわけです。したがって、この期間の算定というものは、決して何年やったことではなく、常識的に官民ともに、たとえば自治功労者でも、何十年おやりになった方はたくさんおられます。この方にはいままで褒賞もいたしております。また叙勲もいたしたいと思っております。ただ自治功労者で一年やったから、その人が大役を得ているから、こういう考え方で私どはも考えてはいけない。やはり黙々として衝に当たって、自治のために何十年おやりになった方、これは尊重すべき存在でありまして、こういう方は、公共のためにお尽くしになったというので、ある程度の尺度と申しますか、それにはやはりある程度の年限というものを相当加味するということは、やむを得ないのではないかと思います。そこで、鉱山の中で長くやられた方、こういう方には、やはりわれわれはどこかでさがして叙勲すべきだ、こういう考え方を持っております。ただ一律に年限でやるのではないかということでありますが、それは年限は相当加味しております。加味しておりますが、考え方の基本は、私は永山さんと大体同じではないか、そういう考え方で、私どももこの問題の処理に当たっております。
  21. 永山忠則

    永山委員 時間がございませんから、ひとつお考え願っておきたいのでありますが、あなたの御意見はわかりましても、役人あるいは国会議員のほうは、年限主義中心なんです。それから民間側は、功労主義中心なんです。本末を転倒している。やはり統一基準を置いて考えていかなければいけませんというのです。さらに人口主義、二十五万以上の市長とか、こういう人口主義をもって基準をきめていくということもおかしいです。また、常任委員長国務大臣と同一級に扱うべきなんです。こういうような点、非常に不合理なものが多々ある。ことに私は声を大にして言いたいのは、戦没者、戦傷病者、戦争犠牲者というものを、まず先におやりなさい。そうして民間側の部分は、広く意見を聞いて正しい世論意見を待って、おもむろに基準をきめていいのではないか。こういうことを御警告を申し上げまして、十分御検討願うということで、私はちょっと次の会合がありますので、質問を留保して終わりたいと思います。
  22. 徳安實藏

  23. 石橋政嗣

    ○石橋委員 政府は、四月の二十九日を期して生存者叙勲を行なおうとしておるわけです。これに対する社会党の態度は、さきに声明も出しておりますし、私も本委員会質問の中で明らかにしておりますから、すでに御承知だと思うのですが、反対の立場を明確にいたしております。したがって、このような不法不当な叙勲を行なうといたしましても、わが党の関係者はこれを断わるという態度も、明確にいたしておるわけであります。  私たちがなぜこれを不法不当とするかというこれについては、先日申し上げましたから、要点だけ言いたいと思うのですが、まず第一に、栄典制度法律によって行なわれなくてはならぬ。それが今回は閣議決定、政令事項としてこの重要な栄典制度の復活をはかっておるということが、不法なものであるという考えの上に立っておるわけであります。いま一つは、閣議決定、政令による実施という形をとりますので、勢い旧制度の復活であります。そうではないといかにおっしゃろうとも、昔の形がそのまま踏襲されておることは、はっきりしている。特に象徴的に勲一等ないし勲八等というような形で、ここに格差がはっきり打ち出されておる。しかも瑞宝と旭日の関係でいくならば、十六段階の刻みができるわけです。これは一種の身分的秩序を新しくつくり上げようという、あるいは身分的な差別をつくり上げようという思想にもつながっておるのではないか、こういうふうに私たちはとらえておりますから、不当なものと指摘をいたしておるわけです。いま一つは、国民のために行なわれるべき栄典制度というものが、国民の声を全然聞いておらないということです。国民の代表たる国会で、この問題について何らかかわりを持たない。栄典審議会というようなものをつくって、各界各層の代表を集めて、その中で議論もなされておらない。全く自民党内閣独裁の形で重要な栄典制度を処理しようとしておる。もってのほかです。ある意味では、旧憲法下におけるやり方よりも私はもっと悪いと思う。こういうものをどうして私たちが受けることができるか。したがって、一日も早く中止してもらいたいというのがわれわれの要求なのでありますが、認めないからといって、あなた方がどんどん進めておる作業を、かってにしやがれというわけにはいかないわけです。現実にもう目睫の間に第一回の叙勲を控えておるその段階において、かってにしろというわけには参りません。認めないながらも、あなた方がやろうとしておりますその叙勲の矛盾なり不当性なりをただしていかなくてはならぬと思う。本来ならば、所管委員会たる本委員会には、積極的に、政府はこのような基準をもって、このような方法によって叙勲を行なおうとするものでおりますという報告があってしかるべきです。それを、委員会から要求がなければ、そのままほおかぶりしていこうという態度自体、許せないと思います。  そこで、私は、一体どんな基準でどういうふうな叙勲をしようとするのか、やむを得ませんから、その点、基本線とははずれますけれども、ただしてみたいと思う。非常に納得がいかない。昨日、その基準を持ってきてもらいたいと、午前中に要求をいたしました。ところが、夜中に持ってきました。その持ってきたのを読んでみますれば、新聞にすでに報道されておるものすら捨てられておるのです。早く持ってきてくれと言ったのに夜中までかかるというのは、一体どういうことなんですか。この辺に不明朗さがひそんでおります。どこまでで発表するか、一生懸命相談をしたのでしょう。そして最小限のところを文書にまとめて持ってきたとしか考えられません。ほかにそんなにおくれる理由がございますか。私に持ってきたものをそのままきょうはプリントして、皆さんに配っていただいたわけです。それをあした委員会に配ってください、そのとき私はそう申しました。本委員会委員になぜそんなに慎重に検討して出さなければならないような基準なのか。すでに新聞に漏れているものすら、なぜ本委員会に配る基準要綱の中から削らなければならぬのか。こういった基本的な姿勢にまず問題がありますから、そこからお伺いをしたいと思います。
  24. 野田武夫

    野田(武)政府委員 この前も石橋さんからお尋ねがございましたので、私どもの態度をお答えいたしておきましたが、今度の叙勲の問題は、これはかってに政令でやったものじゃございませんで、御承知のとおり、すでに昭和二十一年五月、二十八年の九月に、これを閣議でおのおの勲章の問題の閣議決定をいたしております。しかも叙勲につきましては、この前もお答えいたしておきましたが、内閣の助言と承認により天皇の国事行為として憲法上にも明らかでございます。もちろん新栄典制度をつくりますという場合には、これは当然今後法律によらなければならないということは、よくわかっております。しかし、いま申しましたとおり、昭和二十一年、二十八年におきまして、閣議においてこれは承認いたしておりますので、その後歴代内閣——これは決しておことばを返す意味ではございませんが、社会党の内閣の時代にも、その閣議の決定に基ずいて、死んだ方に対する叙勲はすべておやりになっております。すでにもう戦争終結後一万数千人に叙勲いたしております。外国の方には、千何百名かの方にこの叙勲が行なわれておりまして、これは歴代内閣がこれをおやりになっております。そこで、いまの私どもの態度といたしましては、ことさらに旧憲法の観念を生かすとか、あるいは旧憲法の制度といいますか、叙勲基準をそのまま持ってくるなんということは、毛頭ございません。しかし、今日までは、実は死没者に対する叙勲その他については、大体旧令にならてやっておりましたが、ここで、やはり新しい生存者叙勲制度を決定するにあたりましては、どうしても新しい角度からこれを検討して、いわゆる新基準をつくるのが妥当だということで、今回の叙勲基準を決定した次第でございます。その点は、決して旧憲法をそのまま持ってきたという、旧憲法の時代の叙勲制度を直ちに持ってきたというものではございません。しかも、これには非常に段階があるんじゃないか、これが同じじゃないか、こういうおことばでございます。それも一つのお考え方と存じますが、やはり同じ仕事に携わっておられる方でありましても、やはり国家公共のためにお尽くしになった方でありましても、三年、五年お尽くしになった方と、八十まで五十年も六十年もお尽くしになった方ということになりますと、おのずからその内容について、功労といいますか、成績と申しますか、そういうものが、おのずから三年、五年おやりになった方と五十年もおやりになった方というのは、やはりその間の差といいますか、お仕事内容がやはり違っておりますので、これはひとり日本だけでございませんで、外国の叙勲の制度も、ほとんど幾つかに分かれて叙勲いたしております。御存じのとおり、昔の勲章だという考え方——形は昔の勲章でございますが、フランスのごときは、ナポレオン時代につくりましたレジョン・ドヌールというような勲章、イギリスのガーター勲章というものは、もうたいへんな年月を過ぎております。ただ形が悪いというのではなくて、私は叙勲の精神とその基準内容によって批判されるべきものであって、これは幾段階かあるからいけないというお考えは、私は決して否定するものではございません、よくわかります。わかりますが、人間社会においては、自然やはり五年ずっと仕事をしたものと五十年仕事をしたものの内容は、多少私は違っておるんじゃないかというようなところで、自然にこういう幾つかの種類に分かれたと思っております。  また、いまの御要求になりました資料につきまして、午前中言ったのが夜中、私はこれは恐縮千万であります。これは実は閣議にかけました基準と、いまお手元に差し上げた基準要綱というものはほとんど同じでございまして、これはどうも隠しても、こんなもの隠せるものじゃございません。あらわれるものでございますから……。例を引きますと、国際的な外交の機密事項か何かやっておりますれば、これは何かごまかして隠そうということもできますけれども、叙勲のごときは、内規を持っておりますが、現実に叙勲をやりますときはあらわれてくるものでございまして、ことさらに石橋さんの御要求に何か隠そうという、そういう考え方は毛頭持っておりません。実は打ち明けて申しますと、おそくなったのは、これはちょっと速記をとめていただきたいのですが、事情を申しますと——御了解を得たほうがいいと思いますから。叙勲の問題でずっと閣議をやっておりまして、事務的に連絡をしましたことは聞いておりましたが、それはすぐ差し上げなさいということを言っておきましたが、事務的な連中がずっと各省と会議をやっておりまして、時間的におくれたかと思っておりまして、決して故意に何か変なところを隠そうというような考え方は毛頭ないということを明らかにいたしますと同時に、たいへん御要求の時間におくれましたことは恐縮千万であるから、おわびをいたしますが、その真意を決してことさらに隠蔽しようとかどうとかいうようなことでなかったということを、御了承願いたいと思います。
  25. 石橋政嗣

    ○石橋委員 後段の問題から先に片づけておきますが、実は私が資料を要求いたしましたときに、わざわざ課長さんが持ってきていただかなくてもけっこうなんです。それこそ走り回りの人がぽっと部屋に届けてくれさえすればいいという意味だった。ところが、おたくの秘書官が、電話をいたしまして資料要求をいたしましたときに、それは長官の承認を得ておるのですか、こういうあいさつがあったことは事実です。あなたはそういう気持ちでなくても、下で仕事をしておる者の頭の中には、何か秘密にしなくてはならぬじゃないかという間違った印象を持っておることは、間違いないのでよ。こちらが閣議で決定した基準要綱をほしいとし言ったら、それは長官の承認を得ているのですか、そういうことをすぐ言った者がおるのですよ、電話を受けたときに、少なくとも所管委員会閣議決定できまった程度のものを出すのに、そんなぎょうぎょうしいことをしなければならないということ自体から出発していますから、夜中の九時半ごろ持ってきたことに私が疑惑を持つのは当然ですよ。それだけ申し上げておきます。  それから、いままで一万人以上の人たちに死没者叙勲をやっておる。そういう既成事実の積み重ねで生存者叙勲をやっていこうという姿勢に問題があると私は思う。端的に申し上げて、なくなった方に勲何等をやろうと、これはもう関係はありませんよ、あの世ではみな平等ですから。なまなましい人間にやろうとしておるから、問題にしているのですよ。文化勲章でも、これは単一級ですから、これまたある意味においては問題はないのです。しかも、新憲法の精神にある程度沿っておるという解釈をとれば、これは問題はない。ところが、今度は、先ほど申し上げたように、勲一等から勲八等までの者を、しかもなまなましい人間にやって、そうして身分的な差別をつくろうという、従来のものとはこれは根本的に違いますよ。いままで問題がなかったじゃないかということが、これからやろうとなされることを合理化することには絶対にならないということを、まず申し上げておきたいと思う。それで、先ほど永山委員からも指摘がありましたけれども、この基準を読んでみますと、結局のところ、勤務年限というものが根本的な基準になっているとしか思えません。これはどうしても納得がいかない。栄典、なかんずく勲章というようなものは、国家公共に対して功績のあった者に対してやるべきなんだ。これは理屈として、ある地位に何年間かおれば、これは結局功績なんだという考え方は、出てこないとは言いませんよ。しかしだからといって、功績というものの評価がむずかしいからといって、在職年数でくくってしまうというような考え方が、私は栄典制度というものを生かす考え方だとはどうしても思えません。どこに何年おったから何等だ、一貫して流れているものはそれですよ。私どもが本委員会で自民、社会、民社三党で試案をつくりましたときも、一番懸念したのはそれなんです。だから、三党試案の中で第一番目に勲章授与の基本原則としてわれわれが確認したのは何かというと、これは重要ですからちょっと読んでみます。「勲章は、法定の場合のほかは、国家社会に対する功労のみに対して授与するものであって単に人の社会的地位又は身分、若しくは勤務年限基準として授与してはならないこと。」これを三党試案の中で第一の原則にしたのですよ。この精神が生かされてこそ、私は栄典というものが生きてくると思う。それが今度は全然無視されています。何と弁明されようと、勤続年数中心主義ですよ。そうしてまた、特定の地位、そういうものについたら、自動的に叙勲というものが出てきますよ。これは承認できないです。功績の評価は、確かにむずかしい。むずかしいからこそ、国民各層の意見を聞くということが大切だ。一内閣が、どれをもってどのような功績がなんという評価はできっこないし、するとすれば、これはまことに越権行為ですよ。だから、再三申し上げるように、国民の声をどうして聞くか、そのことにまず栄典制度運用の基本を置かなくちゃならぬと私たちは主張しているわけです。これが勤続年数中心主義だ、あるいは特定の地位についたら自動的に叙勲が行なわれるということでないと、長官はあくまで強弁されますか。それからお聞きします。
  26. 野田武夫

    野田(武)政府委員 基準要綱をお手元に差し上げてありますが、これはやはり原則はあくまでも国家または公共に対する功労のある者、これを広く対象とするということにいたしております。そこで、いま勤続年限その他を云々というおことばでございまして、厳密にいいますと、たとえば日本の栄典制度を九千何百万を対象といたしました場合、この功労という標準の決定でございますが、私は石橋さんのおっしゃることは、理論的にはわかります。わかりますが、少なくとも栄典制度を動かすということになりますと、当然やはり常識的な考え方がそこに含まれてまいりませんと、功労の評価というものが非常にむずかしいのでございます。ざっくばらんに申しまして、一年でもその身分になったら、地位についたら勲章をやるというのじゃなくて、先ほど申しましたとおりでございますが、それならば、その身分で何年かやった者にどうして勲章をやるかという御質問と思いますが、これはやはり、まず国会議員の立場から考えますと、何と申しましてもこれは選挙によって国民に選ばれて、国民の代表としての仕事に当たる、これがすでに第一国家的な仕事に当たっている、公共のために国会議員は当たっているということは、明瞭でございます。その方がなられて一年間の業績を考えますと、やはりその一年間において、先ほども永山委員にもお答えしましたが、重要な法律案、一番大事な予算案、こういうものの御審議を願うという結果、その予算が成立し、法律案が成立したということは、これは卓絶した功績ということは別といたしまして、その方のお仕事としては、公共のためにおやりになった、こうわれわれは判断するのでございます。それが、その間に全然そういう基準を設けぬで、どれが一番功労者であるかはいろいろな人の意見を聞いてやれというお話でございますが、私はどんなに大ぜいの人が——まあそれは国民投票でもすれば別でございましょうが、これはおのおの見方でございまして、大ぜいの人がお集まりになりましても、公平にいくということはなかなか期待できない点もあるのじゃないか。これは私は決して大ぜいでおやりになることに反対というんじゃありませんが、なおかつ公平を保つことができるか、実情を見ますと、なかなか困難でございます。だから、たとえば先ほど篤農家なら篤農家を一つ拾い上げましても、やはり何十年間ししとして米つくりに当たっておられる、こういうことは、その方によって米の収入が何倍にならなくても、やはり農村の指導に当たるとか、あるいは食糧問題のために何十年おやりになりたということが、どうしても一つの基準——全部ではございませんが、一つの尺度になりはせぬか。だから、そういう点を勘案いたしますと、やはりそのお仕事によっての年限というものを全然無視することは、叙勲基準におきましても、なかなか困難でございます。そうかといって、その身分になったらやる、その地位を得たら即刻勲章が出るという考え方は一掃いたしまして、その地位につかれましても、ある年月はその働きぶりを見る。その年月以内にその方がその職を離れたという場合は、職責を全うしていない、功績がない、こういう考え方でございますから、それはそれなりに扱いをいたしていくということで、石橋さんの御意見は決して私否定するわけではございませんが、この栄典制度を運用いたしますにあたりましては、やはり年限というものを相当加味するということは、やむを得ない。これが、年限が基本であるということになると問題でございますが、これを加えて考えるということは、私は、実情からいたしましてやむを得ないんじゃないか、こう考えております。
  27. 石橋政嗣

    ○石橋委員 たくさんの人が集まって相談しても、公正な基準が必ずしも得られるとは限らないとおっしゃいますけれども、有能な人をたくさん集めてすら、そういう公正な、だれしもが納得するような基準ができないというならば、なおさらのこと賞勲部あたりの役人中心でやって、どうして公正な基準が得られますか。得られないですよ。そして一応の基準ができてくれば、いま申し上げたように、特定の地位についたら何等だ、何年つとめたら何等だ、こういうものしか出てこない。しかも、それもあまりくくることができないから、特例を設けますと言う。特例を認めればなお悪いですよ。政府与党のボスが一声かければぽんと上がる、こういう形が出てくるじゃありません。(「ボスじゃないよ。」と叫ぶ者あり)実力者と言いましょうか。事実そういうことをやっているのですからね。これで国民の納得のいくような、しかも国民の尊敬を集めるような叙勲が行なわれる道理がないですよ。特にこの、「国家又は公共に対し、功労のある者に広く与えられる」と書いておいて、あとはいま言ったように地位についた場合、勤続年数、そういうものを書く。ほんとうに最初に書いてある国家公共に対する功労のある者に対して広く授与するのだという基本原則を生かしていくならば、この功績というのはどういうものだ、どういう功績があった場合だ、こういうふうに形が出てこなければいかぬでしょう。ところが、一貫してそうじゃないじゃないですか。みなどの職に何年、どの職に何年、最も弊害のある栄典制度の復活がいま意図されておると断言していいと思うのです。あなたがあくまでもそうじゃないと言うなら、じゃ一つ一つお伺いしてみましょうか。第一番目の、「内閣総理大臣衆参両院議長最高裁判所長官の職にあって、成績のあった者に初めて授受される勲章はひとしく勲一等瑞宝章とし」、こう書いてある。ここにだけ「成績のあった者」ということがある。あとはないですよ、全部。総理大臣、衆参両院議長最高裁判所長官だけ「成績のあった者」というのを入れたのは、どういう意味であり、この場合の成績というのは、どういうことでございますか。
  28. 野田武夫

    野田(武)政府委員 いまこの成績と書いてありますのは、先ほども申し上げましたとおり、ただ総理大臣になったから勲一等だ、最高裁判所長官になったから勲一等だという考え方ではございません。しかし、総理大臣と最高裁判所長官とそれから両院議長というものは、やはり三権分立の新憲法の精神にかんがみまして、こういう分け方をいたしております。それから「成績のあった」ということは、いま申しましたとおり、両院議長となったからというのではなくて、その間のある程度の年月を経て、そうして大過なくやる。やはり両院議長の職責を果たすということを見ますならば、これは議長としての職務に対する功労を認める。その他のことについて成績と書いてないとおっしゃいますが、実は全部に当たって「成績のあった者」ということがほんとう基準になっておりますが、おそらくこの冒頭に書いてあるので、したがって「成績のあった者」を省いておると思いますが、それは全体そうでございます。
  29. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは基準ですから…。しかも重要な問題ですよ、成績があったかなかったかということが入るか入らないかということは。なければ、あとのやつは、成績は別になくても、つとめればいいのだ、大過なくやればいいのだな、こういう解釈をするのがすなおな解釈ですよ。ことさらにここだけあるから、あとは省略だとは書いてないのですから…。しかも、成績というのが問題なんです。総理大臣になったから必ずしもそのままやるのじゃないとおっしゃる。それでは、それぞれ総理大臣、衆参議長最高裁判所長官、何年おやりになったらということになるでしょう。この三者の場合、具体的には聞きませんよ。年数は同じに扱っているわけですか。
  30. 野田武夫

    野田(武)政府委員 おのずから違っております。
  31. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃもう一つ。この「成績のあった者」というのを、大過なくという思想がまた問題なんですよ。消極的な姿勢ですよ、積極的な姿勢としては、功績のあった者ですよ。ところが、長官さっきから大過なくということばが出る。これは年限主義の片りんをあらわすことばなんです。その職について、大過なくつとめれば勲章をやる。それじゃ、大過なくつとめたかつとめないかの判定を私は伺いましょう。どの議長とは申しませんが、国会の大混乱の事態を招いた、それを収拾するためには、議長がやめざるを得なかった、こういう事態が過去においてありました。今後もあるかもしれません。そういう人たちは、成績があったという判定の中に入りますか。
  32. 野田武夫

    野田(武)政府委員 それは議長をやっておる間に、一つのそのときの現象で混乱したということで、その人が成績がなかったということも判断できません。在職中の全部を検討いたしまして、そうして議長としての成績を測定するものでございまして、ただ一議会において混乱したからということだけがこの成績の全部ではございませんで、やはり全体の在職中の功績を、何と申しますか、通案しまして、そうして大体これは成績があった方だというようなことを判定するのでございます。一つの国会が非常に混乱したから、議長として全部の功績がなくなったんだ——あるいはそういう場合もあるかもしれません。私は、そのときの事情、つまり国会の混乱の原因、内容、処理の方法、いろいろなものを勘案して、そうして、成績があったかどうかということを判定するべきだと思っております。
  33. 石橋政嗣

    ○石橋委員 まあ過去にもありましたですよ。結局積極的な功績というようなものは全然なかったわけです。それどころか、大過なくもつとめなかったわけです。大混乱を招いて、与野党一致してこれは議長にやめてもらわなければだめだということがあった。あったと過去のことにするとひっかかりがあるかもわかりませんが、将来もあり得ることなんです。積極的な功績もなく、大過もなく終わってない。とにかく議長だけは何年か、何か月かつとめたという場合は、一体どうなるか。これは具体的な事例ですよ。この「成績のあった者」ということばが、いかにあいまいであるか、それ一つ説明できないじゃないですか。  引き続きお尋ねします。「国務大臣衆参両院議長及び最高裁判所裁判官については、ひとしく勲二等瑞宝章とする。」、こう書いてあります。ここで最高裁判所裁判官というのが入ってきているのですが、われわれは本委員会で検討したときには、これはあとに出てくる認証官と同格の扱いをいたしておりました。それを抜き出して裁判官だけここに持ってきたのはどういうわけか。もしそれが理屈があるとするならば、これといつも並んで評価されておる検事総長はどうなっておるのか。こんな問題も出てくるのですが、御説明をお願いいたします。
  34. 野田武夫

    野田(武)政府委員 これは先ほど申しましたとおり、国務大臣、それから両院副議長最高裁判所裁判官を入れましたのは、いわゆる新憲法の三権分立という思想から出ております。
  35. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あとの説明がないんですがね。
  36. 野田武夫

    野田(武)政府委員 検事総長は、裁判官並みに認証官として取り扱っております。
  37. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ、この認証官のところでお伺いしましょう。「認証官等」とあるからには、認証官にもいろいろございます。本委員会でいつも問題になるのは公使です。また、大使の中でもいろいろございます。こういった大公使、これを全部認証官にするには非常に疑義があって、再三本委員会で注文もつけておる。附帯決議までつけたことがございます。これは全部認証官として扱われるのでございますか。
  38. 野田武夫

    野田(武)政府委員 大公使は、ここに書いてあります認証官とは別に扱っております。
  39. 石橋政嗣

    ○石橋委員 しかし、これは「認証官等」と書いてあるんですよ。認証官を全部包括されて、そのほかに「等」があるんですよ。認証官の中の一部というふうには、どう見ても読めないんですがね。
  40. 野田武夫

    野田(武)政府委員 このことばでそういう誤解を受けるおそれがあるということは認めます。しかし、実際申しますと、大公使の中には、やはり二等になる人もいますが、三等の方もおりますので、別個に取り扱っておるのであります。これは実際のこととして申し上げます。
  41. 石橋政嗣

    ○石橋委員 少なくともこれは閣議決定基準ですからね。そういうあいまいなことではいけないんじゃないですか。「認証官等」とあれば、認証官は全部この中に入るとだれだって読みますよ。そうじゃなかったんだなんてあとで言ったって、トラブルを起こすだけじゃありませんか。そうしますと、会計検査院長とか人事院総裁、国立国会図書館長といったようなものは、やはりこの分類の中に入れられているわけですか。
  42. 野田武夫

    野田(武)政府委員 別にしてあります。そこに大公使なんかと一緒にしてあります。
  43. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうすると、この「認証官等」の中には入らないというんですか。
  44. 野田武夫

    野田(武)政府委員 ちょっといま間違っておりました。会計検査院長は、やはり「認証官等」に入っておりますが、それはやはり二等の人も三等の人もあるということになっております。
  45. 石橋政嗣

    ○石橋委員 またその辺があいまいなんですね。結局私がお伺いしているのは、会計検査院長、人事院総裁、国立国会図書館長というのは、この「認証官等」として扱われているのかという点です。
  46. 野田武夫

    野田(武)政府委員 いま御例示になりましたのは、その「等」の中に入っております。
  47. 石橋政嗣

    ○石橋委員 今度は一つ戻りまして、国会議員について書かれております(ロ)の項、これに関連して、今度は内閣官房長官総理府総務長官法制局長官、宮内庁長官、それから従来の例によりますと、東京高裁長官、両院事務総長、両院法制局長というような職があるんですが、こういうものはどこに含めて考えておられるのですか。
  48. 野田武夫

    野田(武)政府委員 いまの御例示の中の官房長官というようなものは、やはり国務大臣にならうというような項に入っておりまして、それぞれ「認証官等」におきましても、必ずしも二等にならない三等の人もありますので、大体いま各おあげになりましたものは、一応「認証官等」の中に入っておりますが、別に区分をいたしております。
  49. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、大学の学長、国家国安委員長、公取の委員長というようなものも、これと同列に扱っているわけですか。
  50. 野田武夫

    野田(武)政府委員 そのとおりであります。
  51. 石橋政嗣

    ○石橋委員 だんだんそうして明らかにしていけば、もうはっきりしてくるわけですが、とにかく特定の地位について何年かたてば勲何等かがもらえる、そういう思想で貫かれていることははっきりしていますよ。このことを私どもは一番懸念しているわけです。一体そういうことでいいのか。あらためて勲何等という格づけを与えて、いよいよ地位、身分といったようなものに差別を設けて、特権意識を植えつけるような、そういう意味のない栄典に終わってしまうじゃないか、こういうように私どもは思うわけです。本衆議院におきまして、過去においてはこういう決議すら行なわれているのです。これは三十年一月二十一日の衆議院本会議において満場一致可決いたしております決議ですが、とにかく勤労者、農業者、芸術関係者等に対して十分に考慮が払われなくちゃならぬ。従来の勲賞制度というものは、こういった分野が非常に不十分だ。今後適切な措置を講じてこの弊害をなくせという意味の決議すら行なわれている。目を政治家や役人に向けるんではなくて——この人たちは、もう社会的にある程度地位も確保し、それなりの恩典にも浴しているわけだ。その人にあらためて勲章をやる必要はないですよ。ほんとうに恵まれない層の人たちの中から、国家公共のために何か仕事をした、功績があったというような人たちを引っぱり出していく意味の栄典、こういう考え方に立たなければ意味ないと私は思う。ところが、そういった点では全然これは配慮されておりません。民間民間とおっしゃるけれども、結局民間人、特に高位の勲章をもらうような人は、いつの場合でもいわゆる財界人、実業家、そういうような人たちに限られておるのがいままでの例であり、これからもそうなるとおそらく想像されるのです。下のほうの勲八等か勲六等以下くらいはもらえるかもしれませんよ。しかし、いわゆる大別して民間人と言われる人たちが、その上のほうの勲章をもらえるチャンスなんというものは、皆無といってもいいと思う。こんな勲章にだれが敬意を払いますか。みんな政治家や役人がいい勲章をべたべたつけて歩く。みっともないだけですよ。もの笑いになる。これは真剣に、いまからでもほんとうにおそくない。私は、長官は野人である。そういう気持ちは一番ぴったりわかる人だと思うからこそ訴えるのです。見込みがなければ、こうしっこく言いませんよ。ほんとう国民の尊敬を集め得る栄典制度をあなたの時代につくり上げなければ、たいへんなことになると思う。特に一内閣が独断でこういうものをおやりになるという考え方には、私は与党の中にもずいぶん批判があると思う。こういう気持ちをくんで、誤りをひとつ早急に改めていただきたいと思う。  なお、若干の質問をいたしたいと思いますが、時間がございませんから簡単にいたしたいと思います。われわれの立場から言うと、憲法上認められないと考えております自衛隊の人たちも、当然この恩典に浴することになるのですが、いかなる格づけをお考えになっておるのか。上のほうだけでけっこうです。あるいはまた昔のように、大将が勲一等——いまで言えば陸将、海将、空将です。勲二等が中将、勲三等が少将、大佐、こういうふうなばかばかしいことは、よもやお考えになっておらないでしょう。しかし、何か考えているに違いない。統合幕僚会議議長は何等、各幕の議長は何等、こんなことを考えているのじゃないかと思うのですが、ひとつ腹づもりのほどをお聞かせを願いたい。
  52. 野田武夫

    野田(武)政府委員 石橋さんの御注意、私どももよくわかります。偉い地位につくとかなんとかいうのじゃいけないというので、私どもは身分、地位じゃなくて、やはりその職務の重要度ということを相当考えております。これは特に申し上げます。  そこでいまの、民間ではなくて、ほとんどこれは昔と同じように役人本位でやっているという鋭い御批判でございますが、私、どういうことばを使っていいか知りませんが、できるだけそれを避けさせるという強い希望を持っております。そこで、この席上ではまだ未定でございますから、例だけ申さなくちゃなりませんが、今度の第一回の生存者叙勲におきましても、むしろ地方の人をどうしてさがすかということに、実はこの数日かかっている状態でございまして、勤労者、農業従事者、中小企業の方々、自治功労者という方を全国的にいま調べております。それから、たとえば民生委員とか調停委員を長くやってお尽くしになった方、また女の方は看護婦とか助産婦をほんとうに古く何十年とおやりになった方、こういう方を相当の時間を費やして、いまでもまだ全国的にいろいろ照会しておる実情でござます。ただ民間はつけたりだというようなお考えは、私自身のやり方にもいろいろ御批判もありましようが、自分の考え方の基本としては、非常に遺憾に思っております。したがって、民間の、たとえば経済人にいたしましても、やっぱりその仕事内容でありまして、いかに長く経済界に活躍されておりましても、資本金が何百億でありましても、その重要度というものはおのずから違ってくる。もう金もうけだけやればいいということで何百億の資本になったのと、ほんとうにその産業が国家のためになる、社会のためになる、国際平和のために貢献する、こういういろいろなことを勘案すべきではないか。したがって、なかなかこの尺度というものがむずかしいのであります。御注意を得ましたとおり、石橋さんの御忠言を私はごもっともと思いますので、できるだけそういうふうに心がけたいと思っております。  なお、自衛隊のことをお聞きになりましたが、実はいまうしろに、どうしているのだと聞くくらいに、あまり重要視してないのです。打ち明けると、決して自衛隊の人を無視しているのではありませんが、自衛隊の人を特別に、大将とかなんとかに勲一等ということでなくて、やはり一般職公務員に準じて差し上げるということでございまして、いま私がどうなっているのかとうしろに聞くほど、何ら特別に私どもの論議になっておりません。これは自衛隊の方も、われわれ決して無視するものじゃございません。一生懸命にやっているその方々にどうするかというと、一般職公務員に準じて取り扱いをしたい、こう考えております。
  53. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういたしますと、統幕の議長も、各幕の議長も、これは認証官じゃございませんから、あくまでこの一般職のやつで考慮するのだ、こういうことでございますか。
  54. 野田武夫

    野田(武)政府委員 いまお話の自衛隊の方を特別に取り扱うことは考えておりませんから、お話のとおりでございまして、一般職公務員に準じてやります。
  55. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それから、この推薦の手続と授与の方法で私はちょっと疑問を持っているのですが、伝えられるところによると、勲一等以上の勲章は天皇が直接授与する、勲二等は総理大臣、勲三等以下は各省の大臣から授与されるというふうに聞いておりますが、これはそのとおりですか、推薦の手続とあわせて……。
  56. 野田武夫

    野田(武)政府委員 そのとおりであります。
  57. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、国会議員の皆さんの中には、勲三等をもらう人も勲四等をもらう人もおるのですが、この人たちはだれからもらうのですか。
  58. 野田武夫

    野田(武)政府委員 いまの勲一等の問題も、実は打ち明けて申しますと、いろいろな慣例もありますし、それから新しい勲章制度というので、まだこまかいところまで打ち合わせておりません。一応の概念はそういうことでございますが、実はきのうも、勲一等を陛下がおやりになるとすればどうするかということを官内庁と打ち合わせております。まだはっきり案ができておりませんが、国会議員のほうにつきましては議長が授与するとか、こういうことはまだ全部できておりません。
  59. 石橋政嗣

    ○石橋委員 最初は勲三等以下は各省の大臣からとおっしゃったから、代議士さんも、勲三等をもらう方は大臣のところに行ってうやうやしくもらうのかと思って聞いたわけです。考えただけでほほえましいのであります。時間がありませんから、もうやめます。  とにかくあやまちの第一歩を踏み出そうとしているのです。しかし、いまなら、まだあやまちを改める機会があるわけです。長官にあらためてお伺いしますけれども、いまからでもおそくない。法律によって少なくとも納得のいくような形できちっとやり直したほうがいいのじゃないかという気持ちをお持ちにならないかどうか、まずこれを第一にお尋ねいたします。
  60. 野田武夫

    野田(武)政府委員 生存者叙勲につきましては、昨年の七月二日の閣議で決定して、自来相当の時間が過ぎております。その基本は、何と申しましても叙勲を実施する場合には、公平を期すること、いわゆる公平無私にやるというたてまえでございます。したがって、長い時間をかけまして、どうすれば最も公正に、公平にやれるかということを非常に慎重に考えております。しかも内閣の助言と承認によってやる行為でございますから、内閣が全責任を持っておる問題でございますから、いま石橋さんの御心配のように、これが公平を欠いたり、不公正に行なわれるということは、これはもう内閣の責任になっておりますから、私どもはきわめて厳粛に、慎重にこれを取り扱っております。したがって、いままでにやりましたこの叙勲関係仕事というものは、その立場からやっておりますから、これを全部いままでのやり方を根本的に変えていくということは、私どもとしては責任上、いままでのやり方は、いま繰り返して申しますように公正にやりたいという心がけでやっておりますだけに、多少の足りないところがあるかもしれませんが、最善を尽くしてやっていることでございますから、この点は御了承を願いたいと思っております。
  61. 石橋政嗣

    ○石橋委員 内閣が独断でやって、幾ら最善を尽くしたつもりでも、納得のいく公正な叙勲が行なわれると私ども思っておりません。しかし、あなたの立場からそれ以上お答えできないとするならば、せめて公正を期するために、国民各界、各層の代表者を集めてきて栄典審議会というものをつくろう、ここで公正な基準を定めていただこう、この程度の御覚悟はありませんか。
  62. 野田武夫

    野田(武)政府委員 私どもは、いまの栄典審議会の問題もしばしば御注意を得ておりまして、もちろん考えたのでございますが、しかし、これはやはり内閣の助言と承認による国事行為である以上は、内閣自体がいわゆる全責任を負ってやるのが筋だという結論に達しまして、したがって、今日の場合は、審議会をつくる考えは持っておりません。
  63. 石橋政嗣

    ○石橋委員 内閣の助言と承認に基づく天皇の国事行為だから、内閣が全責任を持ってやる、思い上がりです。もう少し新憲法をじっくり読んでいただきたいと思う。そういう思い上がりがどこから出てくるか、私は不思議でならない。特にあなたのようなお方がそういうことをお考えになっておるとするならば、これはもうたいへんな間違いですから、もう一回私は新憲法を読み直しいてただきたいと思います。  最後に、戦没者叙勲について一言お尋ねをしますが、これはどういう功績に対して勲章をおやりになろうとしているのですか。
  64. 野田武夫

    野田(武)政府委員 これはこの前もお答え申したと思っておりますが、戦没者の二百万を対象としまして、約百万はすでに当時勲章授与の通知を出しております。これらの方は、全く自分の意思でなくて、国家の当時の命令によって、ほんとうに命をささげて国家のために尽くされたという一事に対しまして、私どもは永遠に感謝の念を持っております。この方々がみずから戦争を起こしたわけでもないし、国家の至上命令と申しますか、そういうことで自己の身命を賭して一身上の全犠牲を払っておやりになった方々でございますし、しかもこの百万近い方々には、すでにその当時勲章を差し上げるという約束をして伝達いたしております。それがまだ実際は勲章を差し上げてない。いわゆる国家がお約束したことを果たしたい。しかもこれらの方に対して、国民また国家としても、この国家のために命をさざけた方に対しての礼儀としても、そうやりたい、こう思いまして、生存者に叙勲を開始するならば、まずお約束した方々にこれを差し上げるのがほんとうじゃないか。あとの百万の方は、差し上げようと思っても、あの終戦のときのいわゆる混乱いたしたときでございますから、差し上げることになっていたのが差し上げてなかった。したがって、二百万の戦没者の方、もうすでに一部の方々には差し上げてあるのです。しかし、差し上げてなかった方々に対しては、少なくとも生存者の叙勲をやるならば、その前に、国家がお約束し、また国家のために犠牲になられた方々に差し上げるのがほんとうじゃないか、こういう気持ちで戦没者叙勲に今度踏み切った次第でございます。
  65. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私がお聞きしておるのは、戦争における武功といいますか、功績といいますか、そういうものに対して叙勲を行なおうとしておるのですかと聞いておるのですよ。新憲法において、明確に戦争放棄の規定がある。だから、金鵄勲章もなくした。いまはそういう世の中なのです。そのときに、戦没者に叙勲をしようというのだが、一体戦争において、国のためによく働いてくれた、いわば一種の武功というものを対象として叙勲をされようとしているのですか。それとも、殉職という行為に対して、叙勲をもって報いようとなさっておるのですかと、こう聞いているのです。
  66. 野田武夫

    野田(武)政府委員 それはつまりその当時のお約束は、その中には武功ということがあったと思います。今日、私どもが戦没者の叙勲考えましたのは、やはりその当時の戦争に対して、身命を賭して、国家のために犠牲になられた、これに対してわれわれは国民としてその霊に対する礼儀をもって、つまり非礼にならないように、お約束したことを果たしたいという考え方でございまして、いまのお話の、ただ戦争の武功だ、戦争の功績だということは、その当時は考えておったかもしれませんが、私どもといたしましては、その大きな犠牲に対して、国家の約束したことを、つとめを果たそう、こういう考え方でございます。
  67. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、疑問が出てくるのです。殉職というものに対して、栄典をもって報いる。一応の筋は通ります。しからば、なくなったということについては、大将も二等兵もないはずです。命に勲等の差をつけるべきじゃないと思います。すでに出しておる分はやむを得ないという理屈はあるかもしれませんけれども、一歩譲れば、それではこれから新しく出そうと言われる方には、みんな一律のものを差し上げる、こういうふうにならなければ、殉職に報いるということにはならないじゃありませんか。大将は、自分が好きこのんで軍人になったという要素が多分にあります。しかし、上等兵、一等兵、二等兵の方々は、自分が生業を持ち、妻子を養いながら、赤紙で悲痛な思いで行ってなくなった。ほんとうはこっちこそ報いなければならぬのです。それに、なくなったあとにまで何等何等というような差をつける。それが霊に報いる道ですか。もしその思想でいかれるならば、なくなったということについては、命に差はありません、同じように扱うべきが至当だと思いますが、この考え方はいかがですか。
  68. 野田武夫

    野田(武)政府委員 私は、いまのお話、わかります。わかりますが、先ほど申しますとおり、その当時、その方々には勲七等を差し上げますという、国家の名において伝達をいたしております。そこで、われわれは約束を果たしたいということでございます。それから同時に、あとの方々はやはり同じ立場で、同じ時期におなくなりになった。ただ、その伝達がその当時届かなかった、時間的におくれたということでございまして、この前の方にはそのお約束した勲章を差し上げて、伝達を受けない方には差別をつけていろいろするということも、これはどうも——前に伝達した方よりも今度は違った立場で勲章を差し上げるということは、これはその当時の事情を考えますと、なかなか困難な点も出てまいりますので、いずれにしても国家がこれらのお約束した方々に対してわれわれはそのお約束を果たして、同時にその当時果たせなかったほうの伝達してない方も、当然そのとき国家が果たすべきことを、時間的その他事務的の都合でそのことを果たし得なかったから、やはりそれを果たしたいという考えでございます。別にあらためて殉職されたということになりますと、この戦争全体を考えなくてはならぬと思っております。私どもは、その約束を果たす、しかも果たすべき約束を果たし得なかったというような考え方で、今度、前のお約束した勲章を差し上げる、こういう考え方でございます。
  69. 石橋政嗣

    ○石橋委員 もう時間がありませんからやめます。まだどうせ機会がありますから、本会議においても委員会においてもゆっくりやらしていただきますが、いまの戦没者叙勲についても、私はそういうすなおなものとは思っておりません。結局は、こういうでたらめな閣議決定などという形でやることに対して、国民の抵抗が強い。そこで何とか抵抗を少なく、ゆるめていくために、既成事実を積み重ねていく方法はなかろうか。思案の結果出てきたのが戦没者叙勲であり、第一回の生存者叙勲です。いわゆるOBの人たちに対してやろうという思想だと思う。そういう既成事実をつくっておいて、ほんとうにほしがっておる人たちに叙勲できる道を開いていこう、こういう考え方で、全くお添えもの、そういう形で出てきた戦没者叙勲、まことに霊に対して非礼きわまりない叙勲だということを申し上げ、あわせて戦争のいわゆる功績といったようなものを対象として叙勲を行なうということは、少なくとも憲法の精神には反するということだけを申し上げて、きょうは終わりたいと思います。
  70. 野田武夫

    野田(武)政府委員 ちょっと一言申し上げておきますが、生存者叙勲をやるために、つけたりに戦没者の叙勲をするんだということは、まあ石橋さんはどう考えるか知りませんが、われわれは毛頭そういう考えで戦没者の叙勲をするものではございません。われわれは、あくまでもこのとうとい国家の犠牲者、英霊の方々に対して最善の礼を尽くしたい。その例といたしましては、いままでなかったことでございますが、昨年八月十五日に日比谷でもって、国が主催いたしまして、英霊の合同慰霊祭も行なっております。私どもは、ただ生存者叙勲になるから、戦没者につけたりでつけなければやかましいからというような、そんな便乗的な、しかも作為的な考え方でやっておるものではないということをはっきりお答えいたしておきます。      ————◇—————
  71. 徳安實藏

    徳安委員長 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括議題として、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がございますので、これを許します。村山喜一君。
  72. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 先般質問をいたしました中でまだ納得のいかない点が残っておりますので、きょうはその問題について問いただしてまいりたいと思いますが、これは賠償部のほうから「賠償および経済技術協力履行状況総括表」というのをいただきました。この内容は間違いございませんか。このほかにはありませんか。
  73. 卜部敏男

    ○卜部説明員 間違いはありません。
  74. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私はまだ記載してないものがあると思う。それははっきり言いますと、ビルマの第二次協定がありますね。四十年の四月十六日から発効をして十二年間、四十年から支払いをする一億四千万ドル、これは書いてございませんね。
  75. 卜部敏男

    ○卜部説明員 お答え申し上げます。  この表は「賠償および経済技術協力履行状況総括表」ということになっておりますので、現に施行されておりまして履行しているものを載せているものでございます。したがいまして、ビルマの経済技術協力協定の発効が来年の四月十六日でございますので、これには入れてございません。
  76. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういうような角度からつくられた資料であればそれでもよろしいわけですが、これ以外にはないのかと言ったら、ないとおっしゃった、いまあるじゃありませんかということをぼくは言ったわけです。それで問題は、賠償部を廃止して経済協力局の下に置くというのですから、賠償と経済協力とのウエートが今後どのようになっていくかという立場から資料をお出し願いたいということで要請をして、お出しを願ったわけですから、現在履行をしているものだけが出されて、将来、それが出てくる可能性のある、現実に協定が結ばれて来年の四月十六日から効力が発効をする、そういうようなものまで、予定をされておるべきものまでこの中にお出しにならなければ、比較的検討ができないという結果になるわけですね。これを調べてまいりますと、賠償に伴う経済協力の内容は、総額七億四千六百六十万ドルであるようであります。これのまだ未済額が、このビルマの新賠償の分まで含めますと、一億八千万ドルということになりますね。その数字は間違いございませんか。
  77. 卜部敏男

    ○卜部説明員 この五億四千二百三十九万ドルに一億四千ドル加わりますので、六億八千二百三十九万ドルになると思います。
  78. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで先般大臣にお答えいただいた中で、私ははっきり記憶をいたしておりますが、対中国との問題は、これは賠償問題はすべて片づいたんだ、こういう御見解であるようでございましたね。そこで大臣にお尋ねをいたしますが、日華平和条約に基ずいて、蒋介石は日本に対して賠償を請求しない、こういうことになっておりますけれども、中国の、現在中共が政権をとって支配をいたしております中国との問題は、これはまだ戦争状態が終結をしていない今日の情勢の中にあるわけです。そういたしまするならば、将来の問題として、好ましい好ましくないにかかわらず、これらの問題は、いずれ中国との間に国交を正常化するという事態が出てくる。そのときには、その賠償なり経済協力の問題が出てこないものと判断をされて、賠償はすべて終わったんだ、もうすべて協定は終結をしたんだ、こういう御見解をお持ちになっているのかどうか。その点、大臣は先般そのように説明をされましたので、お答えを願っておきたい。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本政府としては、いま御指摘のような見解をとっております。中共政府がそれをどう受け取りますかは、これは別問題でございますが、日本政府としてはそういう見解でございます。
  80. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしまするならば、蒋介石との間に、台湾政権との間に協定が結ばれた。その支配している国内の中身は、これは台湾並びに澎湖島その他附属の諸島に限られないで、中国一円を網羅しているという見解に基ずいて、協定を結ばれたわけですか。その点はいかがですか。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日華条約の解釈につきましては、たびたび本院でも申し上げておりますように、日華条約の中の条項によりまして、たとえば戦争終結の問題とか、賠償の問題とかというようなものは、地域的限定がないものと日本政府は解釈をいたしております。台湾、澎湖島という地域的限定があると解釈すべき条項もございまするが、いま申し上げましたような点につきましては、地域的限定がないという解釈が、国際条約の解釈として通説でもございまするし、日本政府は終始そういう見解をとってきておりますことは、御承知のとおりです。
  82. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 当時はそういう見解をおとりになっても、国際的な情勢でそのような情勢解釈も成り立ったかもしれないけれども、今日の段階においては、池田総理大臣が国会の施政方針演説の中でも触れられましたように、現に六億五千万の人口を有し、中共政権が厳然として存在している事実については、これを事実として認識をしていくという立場から問題を提起されており、そういうような事態から考えてまいりました場合に、すべての賠償、経済協力、その他の問題は、中国については完結をしたものである。こういう認識の考え方で今後押し通していく自信がおありなのかどうか。その点、再度お尋ねをしておきたい。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日華平和条約の解釈といたしましては、歴代の日本政府は、ずっとそういう解釈できておるわけでございまます。それを中共政府がどのようにおとりになりますかは、これは別問題でございまます。私どもは、そういう解釈で終始いたしたいと思っております。
  84. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この賠償部を廃止して経済協力の中に繰り込んでいくという考え方の中には、いまのその中国問題がまだ明確に、今後の現実の問題として、これは賠償をすべきであるとか、経済協力をすべきであるとかという、そういう時点からの問題ではなくて、日本が満洲事変以来大東亜戦争に至るまでの間、中国において中国の民衆に対して甚大な被害を与えた。このことは歴史的な事実として残っているわけですね、だから、日中間の国交回復の問題の中においては、当然これらの問題がどのような合意点に達するかいなかは別といたしましても、その間において論議されてくるような形になってくる。そうした場合においては、賠償という問題は、将来において予見される情勢もなきにしもあらず。このようなことを考えてまいりました場合に、賠償の問題は片づいた、だからもうこれで経済協力の一環として賠償の問題も処理していくんだ、こういう外交的な方針が、今度の設置法の中においてとられようとしておる。しかも内容を見てみれば、まだ未済額が六億八千万円も残っている。経済協力の分は七億四千万ドル余りでありますが、そういうような情勢の中にありましては、はたしてそういうような機構を改革をされることが正しいかどうかということについて、どうも納得ができないのですが、この経済協力の一環として賠償の問題も進めていくんだという考え方は、このような未済額が残っている以上、まだ賠償部というものを存続させるべきではないかと私は思うのですが、その点は差しつかえないのかどうか、大臣のお答えをお願いしたい。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この前の委員会でも御答弁申し上げましたように、賠償の仕事は、道がつきまして、提出いたしました書類にも明らかにいたしておりましたように、順調な進捗を示しておるわけでございまして、これから新しく賠償の支払いの方法、それを担当するメカニズムの問題につきまして、それを変えなければいけないというようなことはわれわれは考えていないわけでございまして、従来きめて、その軌通の上で処理ができておりまするこのやり方で、残っておる賠償も消化できるということを確信いたしておるわけでございます。すなわち、賠償の仕事は、もう企画立案の段階でなくて、すでにきまった軌道の上を実施してまいるというにすぎない状況になったということが、今度の賠償部廃止の一つの理由でございます。  これから第二の理由といたしまして、わが国の特殊性として、経済協力一般の中で賠償が占める割合は、相当大きかったのであります。しかし、毎年の経済協力が二億七、八千万ドル程度になっておりますが、そのうちで、賠償のような贈与的なものが七千ドル程度でございまして、ウエートから申しましても、その他の一般の経済協力のほうがずっとウエートが大きくなってまいりました。賠償は期限がございまするし、これは順調に進んでおりますので、やがて経済協力一般のほうのウエートがだんだん大きくなってくるわけでございます。そういう趨勢もございますので、経済協力局の中で賠償実施の仕事を一緒に担当さすというようにいたしまして、この仕事を遂行する上において全然支障がない、そういう判断に立ったわけでございます。
  86. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 賠償部長お尋ねをしますが、タイ特別円、これはあなたのところで取り扱いをしておりますか。
  87. 卜部敏男

    ○卜部説明員 私のところで取り扱っております。
  88. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 アメリカとの間のダリオア、エロアの返済の問題は、どこで取り扱いますか。
  89. 卜部敏男

    ○卜部説明員 アメリカ局で取り扱っております。
  90. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 このタイ特別円の性格は、これはやはり賠償に準ずべきものだ、こういうようなとらえ方をして差しつかえないですね。
  91. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どういう仕事を賠償部に属せしめるかということは、その経済協力案件なりの性格というようなことではなくて、実際の事務処理が賠償と似たようなやり方をするかどうか、そういうもっと実際的な見地からきめておる次第でございます。
  92. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 実際的な仕事が賠償に準ずるから、賠償部で取り扱いをされているのだろうと思って質問をしているわけであります。賠償及び経済技術協力、並びに賠償に伴う経済協力の内容等を拝見をいたしますと、ここでしいて賠償部を廃止しなければならない積極的な理由が、私にはどうも納得がまだできかねるわけです。この点については、将来の問題としては経済協力のほうがウエートを占めてくるであろうということはいえるとは思いますが、現在の時点においてそのほうが正しいかどうかということについては、まだこれから新たに発効するビルマの第二次協定の分等も残っておる。こういうふうな状態の中でしかもその義務履行額はまだ半分にも達していない。四六・八%にしかなっていないという状況の中にあるわけです。こういうような状況を考えてまいりますと、まだ少し早いのじゃないかという気がするのですが、これは意見でありますので、これでやめておきます。  次に、あっせん所を廃止して、移住問題は事業団一本の姿で今後やられるようになったわけでありますが、これはいゆわる主務官庁として外務大臣が専管大臣として今後仕事をやっていくというたてまえは、いままでの二元的な方向によっていろいろな犠牲等が出ている状況から、歓迎すべき問題だと考えるわけです。しかしながら、この際あっせん所を廃止して、農林省のいままで担当しておったもの等も含めて外務省がやっていくということになります場合において、過去において発生いたしました移住者の処遇に対するところの問題点がまだすっきりしない形の中で、外務省としては解決したと言っておるわけでありますが、関係者の人たちは、まだどうも納得できないという考え方を持っておる。そういうような形の中で、今後の移住行政が過去のものにはふたをした上で行なわれるということになりますと、今後の移住行政の上において非常に問題が出てくるのではないかということを懸念いたしますので、先般質問をいたしたわけでありますが、その後ドミニカのトルヒーヨにあるハラバコアの移住に対する契約書というものを手に入れまして調べてまいりますと、その当時の契約条項が、いわゆる適地であるということを農林省の専門家が参りまして指定をして、現地に行ってみたら、政府指定の種目しかつくらせない。しかも自家用を認めない、そして適地以外にも草をはやしてはいけないとか、あるいは百タレアくれるはずであったのが五十タレアしかくれない。さらにドミニカのコロニア法によって、十年以上でないと所有権をもらえない。こういうことや、またいわゆる農業の環境的条件が悪くなって、そしてさいの川原のような石ころを耕さなければならないということで、当時写真等も私もらっておるわけでありますが、この契約書の中に、財団法人日本海外協会連合会が、移住者の責任に帰し得ない理由で入植が不可能になった場合には、その送還について一切の責任を負うということが出ております。これに基づいて送還はされてきた。ところが、当時海外の事情は、移住者にはよくわからないわけでありますから、この海外協会の連合会のほうから出てまいりました資料等に基づいて、内地にある財産を全部処分して持っていってそれをつぎ込んだけれども、それは全然ゼロになっておる。そして帰ってきたら生活保護を受けなければならない。こういう状態の中に追い込んでいったのは、そこの責任を持つという体制が当時なかったということ、そして移住者に一切犠牲がしわ寄せされてきた、こういうところに責任があるというようにわれわれも把握をしておるわけであります。そうなってまいりますと、今後、海外移住事業団を外務省がおつくりになって、移住あっせん所を廃止される、その行政的な責任というものは事業団の責任だということにすべて肩がわりをして、外務省の責任というものは、移住事業団がやったからだということで、今後の移住行政の責任をおとりにならないのではないかという懸念も出てくるわけでありますが、今後の処理方針と同時に、当時のこのドミニカから帰ってまいりました諸君には、見舞い金で片がついたのだという説明でありますけれども、この見舞い金で片がついたのかどうか。関係当事者の人たちとは、その後お話しになったのかどうか。移住局長のほうから御答弁をいただきたいと思います。
  93. 佐藤正二

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  いまのお話のドミニカの問題は、先生お述べになりましたとおり、非常に不幸な事態になりまして、いろいろ手違いもございましたので帰ってまいった次第でございますが、その後、御承知のとおり、就職あっせん、住宅あっせん、その他もう一度南米に行きたいという人には、南米に行かせるために渡航料を貸し付けたりいたしまして、大部分の方が安定した生活に入られたというふうに私は考えております。ただ、まだ二、三お困りになっている方もおられるようでありまして、事業団、それからわれわれのほうにも、ときどき御相談にいらっしゃいます。われわれも、十分にこの方々にはお世話をしたいと思っておりまして、われわれできるだけのことをやっているつもりであります。  それから第二点の、あっせん所を事業団に移しまして、移住の関係の責任を全部事業団に負わせるかどうかというお話でありますが、この点は、たとえばドミニカが例になったのでございますが、ドミニカに移住をさせるかどうかというふうな点については、当然外務省が責任をとってこれを決定するわけであります。そしてその移住先が決定したあとで実施をいたしますときに、実施段階において事業団がやる、こういうふうにお考え願ったらいいと思います。
  94. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これは本人の責めに帰すべき理由によって引き揚げてきたのであれば、これは国のほうとしては考える必要がないわけであります。けれども、これは当時、現地から南米のほうに転住をしたいということで申し入れがあったわけであります。それに対して大蔵省のほうでは、だめだということを飯島三男事務官が言明をして、そうしてやむを得ず転住ができないということで引き揚げてきた。そして今度再度ブラジルのほうに送る、このようなかっこうがとられておるところに、私は問題があると思います。国が移住政策として、政策の一環としてこれをおやりになる以上は、それについてはやはり責任をお持ち願わなければ、移住行政というものは発展をしないと思いますが、外務大臣いかがでありますか。
  95. 大平正芳

    ○大平国務大臣 移住の実務を事業団に一元化いたしていこうという政策をとりましたゆえんのものは、外務省が責任を回避するつもりではないのでありまして、移住事業団のまず第一次の責任体制を確立することが、第一だと思うのであります。事業団の移住事業実務の遂行が十分でないということに対する責任は、これは外務省の責任でございます。各段階におきまして明確な責任体制をつくり上げることが、村山委員の御指摘のように、仕事につきまして実のこもった責任の持てる仕事を残すゆえんであると私は思います。  それから現地の状況の調査でございますが、ドミニカ問題などというのは、移住の事前調査というものが不十分であったことから起こったことでございまして、したがいまして、移住政策の基本は、そこに一つあると思うのでございます。現地の公館並びに事業団に対しまして、特に力点を事前調査に置いてもらいたい、前車の徹を踏むことのないようにということを非常にきびしく注意いたしておるわけでございます。  それから第三点といたしまして、しかしながら人間のやることでございまして、そごが現実に出てきたという段階におきましての処理でございまするが、移住者に対して国が全的に責任を負うという体制にはなっていないわけでございます。われわれは行政当局といたしまして可能な限りのことはいたすわけでございまするが、本人の責めに帰する理由でなくて引き掲げなければならぬというような羽目におちいった例は、殷鑑遠からず、太平洋戦争のために多くの引き揚げ者があったのでございます。その場合に、その人たちに対して政府措置いたしましたことと、そして移住事業の失敗に基因した引き揚げ者の場合に甲乙をつけることは、政府としてはできないわけでございます。政府としては、特に新しい立法ができましてそういうことがやれる権能が与えられない限り、それはできないわけでございまして、与えられた行政権の範囲内におきましては、あらゆる本人のしあわせのために御相談に乗り、お力になってあげるように親切に配慮してまいることは、これは十分やるべきだと私は思います。
  96. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 時間がありませんのでやめますが、当時、引き揚げ者に対しましては見舞い金をお出しになりましたね。これは終戦直後外地から引き揚げてまいりました者に支給をされました国債の金額と見合うものであります。いま内閣に、今回も外地から引き揚げてまいりました者の調査会を設置をして、今後の問題等を処理していくように政府のほうで考えているようでありますが、そうなってまいりますと、もし将来において引き揚げ者に対する給付金が増額をされるということになった場合には、ドミニカから移住政策の失敗によって引き揚げて来ざるを得なかった人たちも同列に取り扱うということに、大臣のただいまのおことばからは推察できるわけでありますが、そういうふうに考えて差しつかえございませんか。
  97. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外地から戦争の終わったあと引き揚げられた方々に対しましては、国会法律を出しまして、引揚者給付金等支給法であったと思いますが、私どももその審議会委員として心配いたしたのでございますが、これはそれと原因が違いますので、ドミニカから引き揚げられた方々に、この法律によって交付公債を交付するというようなことはいたしておりません。これは行政府措置として可能な限り、たしかおとなの方は一万円であったと思いますが、心ばかりのお見舞い金を差し上げたということでございます。将来、しかし戦後処理の問題といたしまして、もっと大規模に調査機関が設けられて、そうしてあらゆるそういう引き揚げ者一般に対してどういう施策を政府としてとるべきかというような立法政策の問題といたしましては、こういう問題を取り上げるべきか、それとも別途処理すべきか、そのときの立法政策上の論議があるだろうと思うのでございますが、引き揚げ者の給付金制度によって支給いたしておるわけではないということです。   〔委員長退席、伊能委員長代理着席〕
  98. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もちろん引き揚げ者の給付金によって、国債を家族数等に合わせて支給をされた、その法律に基づかないことであることは知っております。しかしながら、それと見合うものであるという考え方ですね。大臣先ほど説明をされたわけです。そうして将来その問題から発展推測をすれば、それらの均衡を考えていかなければならないのは、これは法律の有無にかかわらず、政策的な問題だろう、そういうような立場から、ドミニカの移民政策というのは、その地域においては明らかに農林省の適地調査が間違っておる、そのために、しかも条件が初めの条件と違ってきて引き揚げざるを得なかったわけですから、先ほど大臣がお答えになりましたように、見舞い金というものも、同列の水準において——本人の責任において引き揚げてきたのではない、そういうようなことから考えていったら、同じように処遇をされる行政的な措置を今後においてもおとりを願うように、私は、この際要望を申し上げて、質問を終わります。
  99. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 田口誠治君。
  100. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 大体村山委員が法案の内容について総ざらい式に質問をされましたので、私は、それに関連をして、漏れておる面をお伺いをいたしたいと思うわけです。  それでいずれにいたしましても、日本の国としては、経済協力という面から、後進国に経済援助を行なって、そうして大きく貿易の面を期待をいたしておるわけでございますが、そういうことから考えてみますと、この低開発諸国に対する援助というものについては、大きな政治的、経済的、社会的な面があるわけなんです。そこで、私ここでお伺いをしておきたいと思いますことは、いまの後進国と言われる低開発国は、先進国の経済援助がなければ、これは私どもの希望しておるような、ひとり立ちのできる経済体制が確立できて、そうして貿易をどんどんとやれるような国にはならないのかどうか、ほっておいてはならないのかどうか、これをまずお伺いをいたしたいと思います。  それと申しますのは、ちょっと資料は三年ほど前の資料でございますけれども、後進国とそれから先進国との一人当たりの所得水準というものは、非常に違うわけなんです。これは私の調べた資料からいきますると、先進国の場合には千二百五十五ドルということになっておりまするけれども、後進国の場合の平均は百二十ドルということで、十対一ということなんです。こういうような実態の中において一人立ちのできる国づくりをするには、後進国にはどうでも経済援助を行なわなければならないのか、この点について、外務大臣として認識しておられる程度のことをお述べをいただきたいと思います。
  101. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その点非常にむずかしい御質問でございまして、つまり後進国といわれておる国々が産出する産品、特に第一次産品の値段が非常に強くて、国際市場でどんどん需要もふえるという状況でございますならば、援助の問題というのはそんなにやかましい問題にならぬだろうと思うのでございます。事実沿革的に申しましても、朝鮮事変、戦後の状況を見ますると、ああいう大戦争があった戦後は、たいへん第一次産品の需要が多く、値段も強くて、世界では、援助の問題というよりも、もう後進国が比較的潤った段階があったのでございます。ところが、その後世界が平和になってまいりまして、だんだんと一次産品の値段が弱くなってまいりまして、そしてこれを何か国際的に値段を維持せなければならぬ。ついこの間国会でも御承認をいただきました国際コーヒー協定というのが、後進国の外貨収入をふやすめに、普通の自然に形成される価格よりも高い水準に政策的に国際協定によって維持しようじゃないかというような、こういう段階におきましては、後進国の外貨収入の面から申しまして、国際収支の立場から申しましても、まず貿易ができるようにしてあげなければいかぬし、また有利な、低利な援助を考えてあげなければならぬ、そういうことになると思うのでございます。したがって、一般的に後進国というのはどうしても援助が必要かというと、それには条件があるのでございまして、そこの産品がよく売れる、高値で売れるという状況がなければ、やはり援助という問題はどうしてもつきまとってくるのではないか、私はそう思います。
  102. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私、時間がありませんので、一つ一つの国をあげることはできませんが、後進国といえば、大まかに言って、アジア、アフリカ、中近東、中南米ということになりまするが、そこで一つ一つの国をこまかく数字的に状況を調べてみたのですが、一口に申し上げて、いまここで申し上げました国々の経済状況から見まして、やはり後進国は、経済協力がなければ私どもの期待しておるような経済体制がなかなかできず、また日本の期待しておる、そうした国々へも貿易を盛んにするということが、困難であるように考えられるわけなんであります。それで対照して調べてみましたが、非常に先進国に比較して低所得です。それから貯蓄額が非常に少ない、低貯蓄です。それから投資も全く低い、低投資になっております。それから生産性を見ましても、非常に低い。こういう悪循環からいきまして、どこからかやはり援助を求めなければ、こうした国々と日本が貿易を再開して、そうして日本の品物をどんどん買ってもらうような経済力をここにつけるということができないというのが、実態であるわけなんです。そこで、もしこれが資金があったとしたらどうかというと、やはり資金が調達できても、いまの行政組織の不備、それから計画性、実施能力、こういうものが非常に欠けておりまして、技術者が非常に少のうございまするし、熟練労働者も不足しておりまするし、こういうような関係から、たとえ資金調達ができたとしても、なかなか経済発展ということを理想的に行なうことができないということであります。こうなりますると、日本の経済協力という面も、相当考えてやらなければならないと思うわけです。今日までなされた面について非常に不満な点のある国々はありまするが、一つ一つ申し上げておっては時間がございませんから申し上げませんが、こういうような状況下において、なお今後経済協力の面について政府が行なうとすれば、大体今日の日本の経済力の地理的な援助分布というようなものは、やはり考えておられなければなりませんし、現在もどういうような分布になっておるかということも検討の上に立ってやらなければならないわけですが、ちょっとこまかい内容になりましたので、こまかいところまでは、大臣から説明を受けなくとも、局長からでもよろしゅうございまするけれども、大まかな考え方としては、まず大臣からお答えを願って、分布状況については、ひとつ局長のほうから、なるべく詳しく説明をいただきたいと思うのです。
  103. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、非常に低所得でございますし、民族資本の蓄積というものも乏しい状況でございますことは、御指摘のとおりでございます。その上に行政能力、衛生状況、生産性の状況、教育水準も、もう問題だらけだと思うのでございます。そこでわが国といたしましては、いま経済援助と申しますと、主として資金、資材方面の援助を考えがちでございますけれども、実は日本が一番最初始めたのはコロンボ計画でございまして、一九五四年から始めておりまして、すでに四千名ぐらいの留学生を受け入れております。多数の技術者を現地に派遣しておりますし、技術センターもアジアの各地につくっておりますし、最近アフリカのほうにもつくりかけておるわけでございまするが、つまり広い意味の技術協力、これには教育、衛生、その他の協力も含めてやってまいっておるわけでございまして、それがどうしても資金の援助より先行して、あなたが御指摘のように、先行してやる必要が、相当長期にわたってそこに力点を置いてやる必要があるのではないかというように私は考えております。  それで、日本のいままでの経済協力の地域的分布は、何といってもアジアが先に力点があるわけでございまして、地域的な分布状況は、局長から御説明させます。
  104. 西山昭

    ○西山政府委員 御質問地域別の事情でございますが、通常後進国援助の概念の中に含めまする贈与と申しますか、たとえば賠償のごとく無償で供与するもの、それから技術協力のごとく、大部分の技術供与のごとく、無償で日本が後進国に人を派遣し、ないしは人を受け入れまして技術協力をやるもの、そういうものの贈与、それから直接借款と申しますか、たとえばインド、パキスタンのごとき国に円借を与えまして、信用供与をいたしております。それから五年以上の長期の延べ払いのもの、それからまた民間におきましても、長期の延べ払いの輸出をやっております。それからいろいろの国際機関、多角的な目的を持ちます国際機関に金を供与いたしまして、その機関が後進国援助に貢献しておる、こういうものを全部を含めまして、日本の地域的な配分を考えますと、一九六二年につきましては、アジア地域が五二・二%、中南米が三五・二%、それから中近東は六%でございまして、この内容は、アジア地域につきましては、先ほど申し上げました贈与につきましては、贈与のうちの九九%はアジア地区と相なっております。
  105. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 時間がありませんので、一つだけお伺いをいたしますが、援助と貿易ということを基本的にどういうふうにお考えになって、これからおやりになるつもりであるか。やはり援助を行なう場合には、貿易というものを頭の中に描いてやっているんだけれども、大体今日までなされておるものの中では、相当そうい点で期待のできないものもありまするし、それから私どもの考えでは、非常にむちゃな援助と考えられるものもあるわけです。日本としては、あくまでもこういう後進国に対する経済援助というものは、貿易と援助というものの観念の基本的なものを確立しておいてやらなければいけないと思うので、そういう点をどういうようにお考えになっておるか、この点一問だけ最後にお聞きいたしいと思います。  〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 それと同時に、援助をするといっても、金を貸す場合、欧米の諸国と比較して、日本は期限、それから利子というものが、相当高くあるわけなんです。そうしますると、これから先進国が各後進国へいろいろと援助を行なって、そうして貿易の面で利益を得ようとし、向こうにも力をつけさせようとすると、やはりそういう世界的な一つの国々のやっておるやり方と同じようなやり方をしていかなくてはならないのじゃないかと考えられるのですが、それが日本の場合には、期限と利子の面が欧州諸国の場合と違うわけなんです。これだけまずお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 貿易と援助の関係でございますが、本格的には被援助国の経済を安定させなければならないわけでございまして、それに輸出力をつけ、同時に輸入力をつけていかなければならないわけでございますから、援助をやるにいたしましても、その国の全体としての輸出力がつくように、したがってまた輸入力ができるように、そういう頭で考えていかなければいかぬと思うのでおります。最近は、御案内のように、国連の貿易開発会議でも、非常に貿易の問題が取り上げられておるのは、正しい方向だと思うのです。貿易が本体でございまして、それが本格化しないと、その国の経済はよくならないと思うのであります。単なる援助で注射をしておることが続くというような状態は、決して健全ではないと思うのでございます。したがって、援助をやるにいたしましても、その国の輸出入体制に力をつけるということを眼目にやるべきものと私は考えます。  それから第二点でございますが、わが国は御指摘のように非常に金利が高い国でございまして、ヨーロッパ諸国、アメリカ等に比べまして非常に金利が高いわけでございますから、同じ条件において経済協力をやるというのは、わが国は非常に困難な立場にあるわけでございます。したがって、利子のつかない金が全部または一部入った輸銀とか、海外経済協力基金とかいうところに、ロードがかかり過ぎるわけであります。つまり民間自体の力では経済協力が思うにまかせないという実情にあることが、わが国の特徴だと思うのでございます。すなわち、財政に非常にウエートがかかってくるわけでございます。これは決して健全な状態でないのでございますけれども、非常に資本市場が弱い関係上、金利水準が高いことがネックになっておると思うのでございます。これを早急に改善していくなんていうことは、言うべくしてなかなか行なわれがたいと思うのでございまして、私どもといたしましては、いまの段階におきましては、できるだけ政府資金を直接間接ちょうだいいたしまして、援助をふやしていく。そうして条件の緩和をいたしまして、先進諸国と歩調が合うようなぐあいにくふうをしてまいらなければならない、そう思っております。
  107. 徳安實藏

    徳安委員長 受田新吉君。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 最後に、一言二言お尋ねしておきたいことがございます。先ほどから質疑応答がされておるOECDの代表部をどういう陣容をもって構成するかということでお尋ねしたいのですが、特に経済関係の外交官を大量に送るというような意図があるかどうか、代表部の構成について御答弁を額いたい。
  109. 高野藤吉

    ○高野政府委員 お答え申し上げます。  OECDの構成といたしましては、現在のところ大使一名、参事官三名、一等書記官、二等書記官、三等書記官それぞれが三名、それから理事官、合計十六名を考えておる次第でございます。  それから経済関係といたしましては各省関係、農林、大蔵、通産、運輸それから経済企画庁、七名を考えております。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 相当大じかけな機構をもって対処されようとしておるその熱意について了承できるのでございますが、特に新しい機構として代表部をOECDに置かれる以上は、そこに実力を持った外交官を派遣して、能率を高めるような人的配置を十分考慮してもらいたい。その点を要望しておきます。  なお、今度の改正案で在勤俸の新しい規程がされておるのでございまするが、新設される地域の在勤俸の算定基準というものをちょっとお示し願っておかないと、数字だけ示して賛成してくれというのは理解できかねますから、一応算定基礎をお示し願いたい。
  111. 高野藤吉

    ○高野政府委員 在勤俸の算定につきましては、御承知のとおり、ドル建てになっておりまして、これはわがほうの在ワシントン大使館の在勤俸を基準に、すなわち大体九号俸、これは大学を出まして、初めて任官するという官補でございますが、これがアメリカにおける大学卒業者の給与を換算いたしまして、三百六十ドルでございます。これに従がいまして、三等書記官、二等書記官、一等書記官と上にいくに従いまして、日本における賃金の差を勘案いたしまして、だんだんふえているわけでございます。それから各地の差は、各国の物価指数及び国連における各国の物価指数等を勘案いたしまして、ワシントンを一〇〇といたしまして、物価の高いところは一〇五、一〇〇以上にいたしまして、少ないところは一〇〇以下、すなわち九〇何%、そういうかっこうで算定いたしておる次第でございます。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 海外移住事業団法が公布されまして、特に事業団の職員が海外に駐在をして仕事をしておられるわけですが、この人たちの在勤俸にあたる部分は、いまの三百六十ドルと比較すると、はなはだ低率である。これで移住事業団の業務を遂行するに支障はないか。いま少し移住事業団の職員の在勤手当について英断をふるわれる必要がないかと私は思うのです。移住事業団法ができた、しかしながら依然として移住事業が進捗しないというようなことであったならば、何のために事業団ができたかわからなくなる。まず、職員の待遇をよくして、大いに能率をあげて働いてもらわなければならない。この点、事業団の職員に対して、外交官とタイアップしてやる大事な仕事について、もっと処遇改善について熱意を示してもらいたいと思うのです。この点、関係金額を示して御答弁願いたい。
  113. 白幡友敬

    ○白幡政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、移住事業団の海外職員給与は、外務省その他国家公務員在外給与と比較いたしますと、低くなっております。私ども、この点は何ぶんにも事業団の成立が最近でございましたのと、過去における振興会社とか海協連その他との関係もございまして、とにかく大蔵省と折衝したのでございますが、今後ともただいまの御趣旨のとおり、この給与を上げまして、経済的な面から不満の起こらないように努力をいたしたいと思っております。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、よほど考えてあげないと、事業団をつくった、しかしながら能率が上がらないということになると、何のための事業団か意味をなさない。やはりそこで働く、推進力になる職員の処遇を外交官に準じた処遇をして、特に初任給などにつきましては、ひとつ大幅に引き上げて、活力を与えてもらわなければならぬと思います。大臣、よろしゅうございますね。
  115. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのような趣旨に沿いまして、検討してみたいと思います。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ最後に、韓国との交渉を盛んにやっておられるけれども、私は前から申し上げておるんだけれども、あちらさんの代表部はこちらにおって、向こうに代表部もなければ、在外事務所もない。こういうことでは、外交折衝をするのに非常に支障が起こる。大平さん、あなたはこれだけ熱心に日韓交渉に熱意を示しておる以上、在外事務所、代表部の設置ということについて、これは基本問題ですよ、基本問題さえも成功せぬというのでは、意味をなさぬと思う。どういうところに支障があり、また政府としての熱意が欠けておるのではないかという懸念に対して、お答えを願いたい。
  117. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、外交関係はやはり相互主義でいかなければならぬわけでございます。私どもも再三お話をいたしておるのでございますが、せっかく正常化交渉をやっておりますので、それも間もなくできるから、それまで待っていただきたいというのが、先方の言い分でございまして、もしそれより前に代表部ができますと、そこであぐらをかいてしまうのではないかという印象を国民に与えるということを懸念するので、十分お話はわかっておりますけれども、本格的な正常化交渉を進めさしてもらいたいというのが、先方のただいままでの反応でございます。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいです。大臣、いまの反応を伺ったんでございますが、これはやはり外交の基本問題ですから、向こうの代表部がこっちにあって、向こうにそれがないというこの片手落ちをまず解決するということは、外交交渉の基本だと私は思う。基本問題についても反応がいまのようにいいのが出ておらぬというのは、これは外交交渉のどこかに欠陥があるのではないか、基本問題の解決ですからね。これは大臣、この点日韓交渉の基本をなす問題として、もっと積極的にまずこの問題を解決するくらいの熱情をもって、しかる後に韓国交渉を進めていくというような、そういう順序と考えででもひとつ——代表部設置を平等に、片手落ちでないように実現するという努力を続けてもらいたい。よろしゅうございますか。
  119. 大平正芳

    ○大平国務大臣 十分意を体して努力いたします。
  120. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  121. 徳安實藏

    徳安委員長 外務省設置法の一部を改正する法律案に対し、三派共同提案により、内藤隆君外二名から修正案が提出されております。     —————————————     —————————————
  122. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、本修正案について、提出者より趣旨説明を求めます。内藤隆君。
  123. 内藤隆

    ○内藤委員 ただいま議題となりました外務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、この要点を申しますと、原案では移住あっせん所に関する規定を除き、施行期日を「四月一日」といたしておりますが、その日はすでに経過いたしておりますので、これを「公布の日」に改めるほか、一般職の定員に関する改正規定を「四月一日から適用する」ことといたすことであります。  何とぞ御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  124. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  125. 徳安實藏

    徳安委員長 これより両法案及びただいまの修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  外務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する内藤隆君外二名提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  126. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  127. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて外務省設置法の一部を改正する法律案は、修正議決すべきものと決しました。  次に、在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  128. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本案は可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました二法案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議がございませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  129. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  130. 徳安實藏

    徳安委員長 次会は、明二十四日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十分散会