○村山(喜)
委員 私は、賃金問題で政府が介入すべきではないと思うのです。その基本的なかまえというものは、賛成であります。しかしながら、今日まで労働省は、
日本の経済の中において、労働者の賃金引き上げというものがコストインフレに発展をしていくおそれがあるというようなことは、述べておいでになりません。しかしながら、三月四日経済閣僚懇談会で発表したところの声明を見てみますと、春闘によるところの賃上げは、生産性向上に見合ったものでなければならない、こういう立場から賃金ストップの見解を明らかにしているわけです。それは、明らかにコストインフレ論に基づくところの
考え方が出されているとすれば、現在のこの春闘の賃上げをめぐるところの情勢の分析なり、あるいは対処のしかたというものは、すでに四日の日には、大橋労働
大臣が談話を発表されたときに、日経連はこの問題について、公労協
関係のストライキは断固としてこれを取り締まれという力強い宣言を一方では行なっている。こういう
状況の中で、コストインフレ論を柱といたします経済閣僚懇談会発表のこの見解、こういうようなものが、春闘に立ち上がっているところの労働者を非常に刺激をして、そうしていまではもう一方的に独占資本家の諸君の力だけでは押え切ることができない。五%といっておったものが、すでに二千円のところまでは認めようじゃないか、あの鉄鋼の回答に見られましたように、定期昇給まで入れたら三千二百円、こういうようなのは、これは他はまねをしないでもらいたいという発表をすぐする。こういうような形の中で、賃金引き上げだけは押えていくのだというかまえをとっておきながら、自分たちの力ではどうしてもやっていくことができないので、政府にそのかじをとらせよう、こういう意図が明らかに今日あらわれている。このような
状況の中で、あなた方が声明を発表されるということは、これは労働者に対してあんまりいい印象を与えていないことだけははっきり言える。労働者はそれを受けまして、
政府当局は独占資本の資本家階級の要求をうのみにして、自分たちに対しては賃金抑圧の態度に出てきている、こういうふうに受け取らざるを得ないのであります。ところが、そういうような形から発展をしていくならば、昭和二十七年には、労働者に対する分配率はいまよりも一〇%ほど高かった。ところが今日においては、十二年後においては、一〇%低くなっている。こういう客観的な資料に基づいて賃金引き上げの要求をしているわけです。このことは、同じく公務員
関係の場合においても、あるいは
公共企業体
関係の場合においても、同じであります。だから、私は、こういうように調停
委員会にいま付議しているのだから、その
結論が出るのを待たないで一方的に宣言をするということは、慣行にもとる行為である、慎重に考慮されたいという親心を示されるのであるならば、もっとそういうような労働者側の要求に耳を傾けながら、この問題についての
解決策を、労働
大臣が中心になって、閣議の中で意見を述べてもらいたいと思う。それには、団体交渉で話し合いを進めるということが一番いい。当事者間におけるところの話し合いがいい。これは賃金決定をめぐっての正しい
方法でありますから、そういうような
方法において話し合いを進める際に、当局側、この交渉の当事者側が、これだけについて
責任を持ち得る態勢をつくっていただかない限り、この問題についての
解決は私はできないと思う。一方的に労働者を弾圧していく以外に
解決の道はないというとらえ方をしておいでになるとしたならば、これは労働省の立場としてはおとりになるべきではないと思うのです。だから、そのような
解決ができるような
方法を、具体的な権限を当事者に与えていくという方向で努力される意思はないのか、その点を
大臣にお尋ねしておきたい。