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1964-05-15 第46回国会 衆議院 逓信委員会電波監理及び放送に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十五日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席小委員    小委員長 秋田 大助君       加藤常太郎君    上林山榮吉君       大柴 滋夫君    片島  港君       栗原 俊夫君    森本  靖君  出席政府委員         郵政事務官         (電波監理局         長)      宮川 岸雄君  小委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房郵政         参事官)    山本千吉郎君         郵政事務官         (電波監理局放         送部長)    吉灘  中君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     阿部真之助君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    前田 義徳君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   赤城 正武君         参  考  人         (日本放送協会         経営第一部長) 野村 忠夫君         専  門  員 水田  誠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  電波監理及び放送に関する件(放送関係法制に  関する問題等)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  電波監理及び放送に関する件について調査を進めます。  本日は参考人より意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、日本放送協会会長阿部真之助君、同副会長前田義徳君、同専務理事赤城正武君、同経営第一部長野村忠夫君、以上の方々でございます。  参考人各位には御多用中のところ御出席くださいましてありがとうございました。現在臨時放送関係法制調査会において放送関係法制等について調査を進めておりますが、当小委員会においても、これらの問題につきまして参考人各位より御意見を承り、調査参考といたしたいと存じます。  まず参考人より御意見を聴取した後、質疑を行ないたいと思います。阿部真之助君。
  3. 阿部真之助

    阿部参考人 放送法改正が問題になっておりまして、各方面から御調査になっていることは、われわれとしてもたいへんよき機会だと思うのであります。今日は特にお招きいただきまして、われわれの立場を聴取していただくということは、まことにありがとうございます。  ついては担当の赤城専務から詳しく御説明申し上げたいと思いますので、どうぞ御了承願いたいと思います。
  4. 赤城正武

    赤城参考人 お手元に放送法関係協会意見と、研究会をつくりましたその研究会の第一次報告書と、その第一次報告書のさらに追補という資料を提出してございますが、詳しくはそれに十分われわれの意見が盛られておりますので、それによって御承知願いたいと思いますが、一応NHK放送法改正に関する意見の概要につきまして、簡単に御説明申し上げたいと思います。  第一番目に、放送法制の体系をどうすべきかという問題がございますが、この問題につきましてわれわれは次のように考えております。  放送の社会的、文化的意義を考えまして、放送の使命を最も適切に果たし得るよう、放送法制電波法制から分離確立することが必要である、そのために法律体系は次の三つに整備するのが妥当ではないかというふうに考えております。  その三つと申しますのは、第一番目に放送基本法というものをつくりまして、この中には放送基本に関する事項及びわれわれが後に述べます放送行政委員会としての放送委員会等についてこれを定めてはどうか、第二番目には日本放送協会法、これは基幹放送としての日本放送協会に関する基本的な組織運営をきめる協会法という法律をつくる、第三番目には商業放送関係でございますが、商業等放送事業法という法律をつくりまして、私企業としての商業等放送事業に関する基本的事項をこれで規定してどうか、これが放送法制の体系についてわれわれが意見として持っているところでございます。  次に、しからば放送基本法の内容には具体的にどういうものを盛ったらいいかということでございますが、第一番目に放送基本計画放送の二系列、これをはっきり基本法の中に書くべきである、これは将来にわたる長期的見通しに立って、有限でありかつ稀少な放送用周波数を最も有効適切に利用し、放送を公共の福祉に適合させるようにするために、放送基本計画を策定すべきことを明らかにする必要があるのではないか。また、これとともに、わが国放送を、日本放送協会の行なう基幹放送と、商業等放送事業者の行なう放送の二系列といたしまして、それぞれの特質及び使命に応じて適切な位置づけを行なうことが必要である。第一番目に基本法の中にはこういうものを盛るべきである。  第二番目に、基本法の中に盛られるべきものは、放送用周波数割り当て計画でございまして、それを確立する必要がある。基幹放送としての日本放送協会商業等放送事業者に対する放送用周波数割り当て基本方針法律でもって定め、具体的な周波数割り当ては、この基本方針によって、後に述べます放送委員会規則で定める放送用周波数割り当て計画に基づいて行なわれるべきであるということを明確にする必要がある。  第三番目に、放送行政の確立でございますが、放送行政については、現在の電波行政から分離して、法律による行政の原則を確立するとともに、行政計画性中立性等を確保するために、一般行政権から独立した放送委員会を設けて、行政機構を整備する等必要な措置を講ずることが妥当ではないかというふうに考えております。これは基本法に関する問題でございます。  次に、日本放送協会に関する日本放送協会法の内容でございます。  第一番目に、日本放送協会の使命を明確にすべきである。日本放送協会の使命は、豊かで、質のよい総合的な全国向け及び地域向け放送番組をあまねく全国に普及し、放送に必要な調査研究を行ない、また対外的には国際放送を実施し、これらを通じて公共の福祉の増進をはかることにあることを明定すべきである。  第二番目には、日本放送協会業務でございますが、協会の本来業務については、原則として現行どおりとするが、任意業務については、本来業務の一そうの円滑な運営をはかるために、若干の条項の追加及び修正を行なう必要があるのではないかという意見を持っております。  第三番目に、受信料制度でありますが、協会放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会に対し、受信料を支払わなければならない旨を規定することといたしまして、また、こういうような規定になりますと、協会受信者との結びつきを一そう緊密にするために、必要な措置を講ずべきではないかという意見でございます。  第四番目に、日本放送協会の置局の問題でございますが、協会は、その使命の達成のため必要な放送局の設置に努力することを明らかにし、また、協会放送局に対する周波数割り当ては、放送用周波数割り当て計画との適合性及び技術的基準との適合性についての審査によって行なうべきものではないかという意見でございます。  第五番目に、放送協会組織でありますが、現行の経営委員会執行機関放送番組自律的措置財務等は、現行制度において円滑に運用されておりますので、こういう制度は原則として現行どおりとして維持するのが妥当ではないか。  以上が日本放送協会法に関する問題でございます。  四番目に、商業等放送事業、すなわち商業等放送事業法の内容とすべきことでございますが、これは一つの問題だけを意見として出しております。現在商業等放送事業者に対しては、現行のの無線局免許制を改めて事業免許とすべきではないかということを意見として出しております。  大体われわれの出しました意見の概要は以上でございます。  この際、この小委員会に陳述する機会をお与えいただきましたので、さらに二、三の問題点について御説明申し上げたいと存じております。  われわれの協会意見として出しましたものは、単にNHKを弁護するための意見ではなく、客観的に中正な外部の意見も十分お聞きいたしまして、この国民のものである電波をどういうふうに使うかということを底辺にして立論の根拠としたと考えております。問題点がいろいろ新聞その他あるいは調査会に提出されておりますが、それらの二、三についてさらにわれわれの意見を申し述べさしていただきたいと思います。  第一番に、NHK商業放送事業とを対等にすべきだという意見がございます。現行の放送法上、NHKに対しては、商業放送にないいろいろな義務が与えられております。NHK国民的基盤に立って、国民の要望に沿った公共放送を行なう公の放送機関であり、そのためにこそ、日本放送協会が特殊の法人として存在するのでありまして、このために協会運営の財源をも直接国民から寄せられる受信料でまかなっているわけでございます。そういう日本放送協会と、番組を売ることによってその利益を得る株式会社の商業放送とを対等にせよという意見は、根本的に比較できないものを比較せよということと全く同様であると考えられます。察するところこれは、具体的にいえば、電波割り当てにおいて同じ立場に立つべきだということを考えているのではないかというふうに考えられます。しかし、日本放送協会というものを、日本の国策として、公共的な企業体という形でつくることになっているならば、その企業体にふさわしい規定をつくりまして、これに基づく行政施策が行なわれることは当然であります。たとえば、日本放送協会は、全国あまねく放送普及させなければならないという義務を負わされておりますが、このためには、当然それだけの行政措置をしなければならない。端的に申し上げれば、十分なる周波数と、十分なる放送種類——番組を編成する上において必要な種類が与えられなければなりません。現在、御承知のように、ラジオでは第一、第二、テレビでは、総合、教育、それからFM放送についても、NHKの設立の目的である全国普及の立場から、当然これは、商業放送に対しては、別に法律に基づく当然の措置をとるべきであって、決してNHK商業放送が対等であるべきではないと考えております。両者は違ったものであって、遠ったルールで違った行政措置をすべきである、決して優劣を問うわけではないという見解を持っております。  第二番目に、放送委員会といいますか、放送審議会設置についてでございます。郵政大臣諮問機関として放送審議会を設置せよという意見がございます。これに対して、われわれとしては、現在の電波行政から切り離して、放送電波に関する限りは、違った行政機構が必要であるという意見を出しております。では、なぜそういうことを主張したかと申しますと、現在までの歴史を振り返ってみますと、昭和二十五年に放送法をつくって、日本放送の系列というものが、NHKという特殊法人商業放送二本立てとなりました。これに基づきまして、日本放送の大体の構図というものが固まってきておりますが、その間、数少ない電波放送に利用するという関係における行政措置というものを振り返ってみますと、いろいろな面ですっきりしない点がございます。今後こういう放送電波というものを、国民のために最も有効に使うべき放送行政を行なう行政組織は、はたして現在のようでよろしいかどうかということ考えなければならないと思います。これについてわれわれは、放送委員会というものを設けて、それを独立行政機関にしてはどうかという考えを持っているわけでございます。アメリカ軍占領下においては、こういう行政委員会がたくさんできましたが、現在は非常に削減されまして、いまは三つか四つか存じませんが、そのくらいしか残っておりません。しかし、放送行政というようなものは、やはりそのときの政府なり、一党一派あるいはその他の圧力によって動かさるべきものではなくて、長い目でもって、日本放送行政というものを確立して、それに沿って公正なる行政をやらなければいけないというふうに考えたのであります。  このような放送委員会を設置して、放送関係行政は全部この放送委員会にまかせという考えをとったわけでございます。  放送委員会組織その他については、協会意見の中に詳しく述べてありますが、こういう大事な放送行政というものが、一年ごとに、あるいは数カ月ごとに変わってしまっては迷惑するのは国民でございます。電波というものが紙のように幾らでもあって、新聞社のように自由に設立されるという状態ならばいいのですけれども、電波は有限でございます。そういう有限な電波を、目がさめたら国家的または国民的に必要な割り当て電波がなくなっているというようなことになりましたら、これはたいへんなことであると考えます。そういう意味合いにおいて放送委員会というものを設置して、それに放送行政をやらせたらどうかというふうに考えたわけでございます。  この委員会組織に対しまして、いろいろなマイナスの面がございます。こういういろいろな委員会組織をつくっても、いろいろな方面からの圧力なりあるいは働きかけが委員たちにあるのは当然でございすが、これは独任制行政長官に対するよりはよほど緩和するであろうと思います。また一方、この委員会組織というものが、非常に行政敏速性を欠くという反論がありますけれども、むしろおそくても公正で中立的な態度で放送行政をやってもらったほうが、将来の日本国民にとっていいのではないかと思います。そうして委員会には、準立法的な権限とか、準司法的な権限なども持たせようというわけでございます。準司法的といいますと、訴訟というか、対立した意見が起こった場合に、それを裁定する権限放送委員会が持ちます。また準立法的な権限というのは、放送委員会規則、これは省令に当たるようなものですが、そういうものを制定し得るということで、そこが放送行政の大もとになるという考え方でございます。  しかし、この放送委員会は、電波全体に対して権限を持っているわけでなく、ほかの電波に対しては郵政大臣権限を持ち、電波監理審議会なりが審議してよろしいと思いますけれども、放送に使用し得る電波に関しては、放送委員会がすべての権限を持つべきだということを考えているわけでございます。  このような考え方に立って、電波監理審議会から放送だけを切り離して、放送審議会を置けという意見がございますが、これはわれわれがいうような独立行政機関でなくて、従来の電波監理審議会と同じく、やはり郵政大臣諮問機関にすぎません。これでは五十歩百歩でありまして、ただ審議会を分離したというだけで、それだけでは現在の放送行政というものを本来の道筋に戻すわけにはいかないのではないかというふうに考えられます。  第三番目に、放送法NHK法二本立てでこれを組み立ててはどうかという意見がございます。これは商業放送関係者意見でございますが、この意見は、まず放送法というものをきめて、日本放送協会法というのは特別な法律にしてはどうかという意見でございます。これに対してわれわれの見解は、先ほど申し上げましたように、放送基本に関する問題を放送基本法というものできめる。それから、日本放送協会に関する問題は、日本放送協会法できめる。それから、商業放送に関する問題は、商業放送事業法できめるという三本立てで放送関係の全体をきめていってはどうかという意見でございます。二本立て意見というものは、あくまでもNHKというものは、わが国放送界における例外的な存在だという考え方があるのではないか。この法体系自体においてそれをあらわそうという考えではないかというふうに思います。  以上は、大体放送基本法関係に関するいろいろな意見の一部を申し上げましたが、NHKそのものに関する意見は、一番たくさん出ております。こういういろいろな意見が出てくるというのは、まあわれわれ冷静に考えましても、いろいろな利害得失がありますので、そういう考え方が底に流れているというふうに感ぜられます。  第一に出てくる大きい問題は、NHK分割論であります。これは分割の方法として、二つの分割論が出されております。一つは放送種別による分割論でございまして、ラジオテレビあるいはFMその他の放送というふうに種別によってNHKを分割せよという論であります。もう一つは、地方別分割論でございます。これはどの程度こまかく分割するか知りませんが、とにかく地方別NHKを分割してしまえという議論でございます。これらはまともに反論する必要はないかと存じますが、いずれの論をとりましても、総合的な放送番組をあまねく日本全国に受信できるようにするという日本放送協会の使命を根本から否定するものでありまして、また、事業経営合理化に逆行し、国民に過大な負担をかけることにもなりますので、非常に危険な考え方であり、絶対にとるべきではないというふうに考えております。  次に、NHKから娯楽番組を除いてしまえという意見がございます。NHKは教育、教養、報道番組に重点を置いて、ほかの番組にはあまり手をつけるなという議論でございます。娯楽番組NHKがやるのはけしからぬ、これはいたずらに商業放送と競争しようと思っているわけであって、NHKのような機関は娯楽などに手をつける必要はない。教育とか教養とかかたい番組をやっていればよろしいという意見でございます。これは相当根強い議論でございますがわれわれはそういう議論はおかしいということを言っているわけでございます。NHKの存立の基礎というものは、国民のための、国民に基づく、国民的基盤に立った一つの公共的な放送機関であって、これに基づいてNHK組織なり運営なりが行なわれていることは御承知のとおりでございま。そういう意味合いから言いますれば、NHK国民の要望に応じて放送番組をつくるべきだということは当然でございます。これを教育とか教養とかあるいは報道だけに限るということは、全くかたわの番組をつくれというのにひとしいのであります。やはり総合的観点において編成された番組を送るということが、NHK国民に対する要望にこたえる道であって、決して娯楽番組を軽視すべきではないと思います。  娯楽というと、何かむだなものだという考え方は、今日の社会生活を考えると、とうていとり得ません。娯楽というものは生活の必需品でございます。特に商業放送のない、NHKしかない地域、これらは商業放送としては、開局してもなかなか採算が合わないような山間僻地が多いと思いますが、これらの地域の受信者は、娯楽番組を聴視する恩恵を全く奪われてしまうことになります。そういうことから、娯楽NHK放送から落とせという考え方は、とうてい受け入れられないというふうに考えるわけでございます。  次に最も問題になっているのは、受信料性格に関する見解でございます。これはNHKの本質というものをどういうふうに規定するかによって受信料性格があらわれてくるのであって、こう考えていきますと、結局NHK性格というものは、国民的基盤に立った国民的な企業体であるというふうに規定すべきであって、これは政府のものでもだれのものでもない。会長は、NHKこそはまさに国民的放送である、ということをよく言っておりますけれども、まさに国民自身のものであると考えております。このNHK基幹放送としての業務を遂行するためには、多額の経費を必要としますが、しかしこれを国の税金によってまかなうということは絶対に避けなければなるまいと考えております。受信料を税金にせよという見解は、従来もいろいろな面で強く主張されてまいりましたが、税金ということにわれわれが最も反対している理由は、NHK事業が政府の交付金によってまかなわれている形になるからでございます。税金で徴収して、その金をNHKに交付するということになりますと、やはりわれわれの業務活動の基盤、つまり財政を政府に握られるということになりまして、ひいては言論の自由というものを守らなければならない言論報道機関である放送事業に対して、非常に危険な関係を生ぜしめやしないかということを考えるわけでございます。やはり番組というものは、憲法の保障する表現の自由のもとに、NHKの自主的な編集によって遂行することが最も必要であると考えております。それから見ても、受信料を税金にすることは非常に危険をはらむ制度であります。それではどこにその財源を求めるかということが問題になるわけでございますが、NHK国民的基盤に立つという企業体組織ですから、受信者はそういう公共的な企業体の社員的な性格をもってNHK放送を見たり聞いたりする権利を取得すると同時に、NHK業務運営に必要な費用を負担するという考え方をとったわけでございます。当然法律的にはそういうむずかしいことは何もいう必要はないので、協会放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会に対し受信料を支払わなければならないということになるわけでございます。そういう見解のもとに、契約という形ではなしに拠出金ということでNHK運営に必要な経費をまかなうということをたてまえとするのが一番妥当ではないか、そういうふうに考えたわけでございます。  すなわち、受信者が法人としてのNHKのそういう社員的な性格を持ってくるわけでして、それでは受信者意見をいかにしてNHK運営に反映していくかといこうとが次に問題になってまいります。しかし二千万にも達しようとするそういう聴視者の意向をどうして反映せしめるかということは、技術的に非常にむずかしく、全員を一堂に集めてどうこうしようということはとうていできません。そこでNHK組織をどういうふうにするかという問題が当然起こってくるわけでございます。  しかし、現在でもNHK組織というものは、国民といいますか、受信者意見を十分反映した組織であるということを配慮してございます。現在、経営委員会委員は、国会の承認を経て内閣総理大臣の任命になっておりますが、経営委員会受信者の代表、国民の代表として、各地区並びに学識経験者の十二名の委員をもって構成されており、NHK経営基本的事項について決定しております。それに基づいて会長以下執行機関がその執行の責任に当たるという制度になっておりまして、こういう意味で経営委員会制度受信者代表制度ということができると思います。  さらに、番組面におきましては、中央放送番組審議会地方放送番組審議会が法定されております。これはやはり受信者代表的性格を持って、NHK番組に対して、会長の諮問に応じ、それに答える、あるいは意見を開陳するということになっております。  ほかに制度的にこの趣旨を徹底さした大きいものを申しますと、御承知のように国会がNHK事業計画なり予算なりを審議して、承認しておりますが、これは全国民の代表としての立場から、NHKの予算なり事業許画を討議するというふうに考えられます。また、決算を国会に提出するというのも、事業計画なり予算なりが適正に執行されたかどうかを十分検討するために、国民の代表としての国会がこれを審議するのでありまして、さらに会計検査院がNHKの会計の検査をするというのは、国民的基盤に立って、NHKの会計が、国民の要望に応じた運営を的確に行なっているかどうかということを検査するというふうに考えられます。こういう形で受信者の意思の反映を行っているということから、受信料拠出金というように考えても少しもおかしくはないのではないかというふうに考えるわけでございます。  しかし、この場合、さらに現在以上に受信者の声を十分に反映して運営するということを、法的にも考える必要があるというふうに考えまして、たとえば現在受信者との座談会というものを、年に数百回催しておりますが、これを継続的に、あるいは計画的にやるということを法定してはどうかという意見を持っております。それから、年度の事業計画なり予算なりを決定したときは、放送その他を通じて十分受信者に報告し、決算についても、十分その内容を受信者に知らせる義務があるということを法律で定めてはどうかというふうに考えております。このことによって、先ほど申しました国会の承認その他いろいろな制度と相まって、NHK性格をこういう法律上きめられた一種の公共企業体と考え、受信者NHK放送を受信する権利と、それからNHK運営の費用の一部を負担する義務を持つというふうに考えてよろしいのではないかというふうに考えたわけでございます。  次に、受信料の使い道に関する意見がいろいろ出ております。これは非常に大きい問題でございます。これは、先ほど述べましたように、NHK国民全体の機関であり、受信料は、NHK業務の遂行に必要な経費を、NHKの構成員と見らるべき受信者から拠出したものと考えているわけでございます。このことから、NHK業務関係のない事業受信料を支出することは当然できないと考えます。しかるに、受信料を公的な負担金と考えて、これをNHK以外のものにも使ったらどうかということを、商業放送側は強く主張しております。研究施設に使えというのもその一つですし、また今後、非常な僻地に放送局を建てなければならないような場合に、その共通部分である道路などには使っていいのではないかとか、そのほか、いろいろな面で、NHK受信料というものをNHK業務以外にも使ってはどうかという意見でございます。もともと、受信料だけを経営財源として商業行為を一切行なわないNHKと、スポンサーによる広告料を収入源とする商業放送とは、設立そのものからして異なった基盤に立っております。それにもかかわらず、広告料収入に加えて、受信者から負担金を徴収しようということは、どう考えても無理な考え方ではないかというふうに考えております。このような公的負担金説は、NHK事業のためだけに充てられている受信料を、何とかして商業放送にも使わせようとするためだけの説明の道具ではないかというふうに考えられます。  本来、協会の予算というものは、一年間の事業計画に基づいてつくられるものでありまして、それを国会に出して、その承認を得て初めて具体的な受信料額がきまるというのが、現在の法体系でございます。協会業務遂行の基礎になるものが、そういう国会の承認によってきまるので、それ以外にこれを使うということになれば、予算外の支出にもなりますし、また一そうすることによって、受信者にはさらに多くの負担をかけなければならないというような結果にもなりかねない。これは受信料性格からいって、まことに論外な考え方ではないかというふうに思っております。  さらに、もう一つ、放送公団というものを別に設置して、これが受信料を徴収するという意見がございます。これは集金会社のような機関が集めた受信料を、NHKとその他の放送界全般に対する業務に分配するという考え方でございます。これも、協会分割論と同じような、協会受信料性格を十分理解しない、現実的でない意見であると思います。  受信料に関する性格並びに使い道に関してのわれわれの考え方は、以上でございます。  その次に、研究機関の独立論がございます。現在NHKには、技術研究所と放送文化研究所と、二つの研究機関がありますが、これらをNHKから切り離して独立させて、放送界全体に対しての研究機関にしようという意見でございます。  しかし、一つの企業体が付属機関を持つということは非常に必要なことでありまして、これを独立させては、研究機関としての機能を十分に発揮することはできません。また運営面からいっても、人員の交流の面からいっても、これを独立させるという意見は机上の空論でないかと思います。何も独立しなくても、現在、技術研究にいたしましても、放送文化の研究にいたしましても、その成果は広く一般に公開しており、しかも、研究について委託がありますれば、いつでもそれに応じて研究をやったり、技術援助をしているので、これを独立する必要はいささかもないと考えております。現在の運営で十分その目的が達成されておりまして、独立する必要は全くないというふうに考えております。  次に出てくる議論は、NHK業務範囲を縮小してはどうかという意見でございます。NHK業務範囲は、御承知のように現在の放送法でも、必要業務任意業務との二つの業務範囲が放送法にきめられておりますが、協会の行なう業務範囲を狭くせよということ、あるいは、特に郵政大臣の認可業務の範囲を厳格にして、NHK業務範囲を狭くしてはどうかという意見があります。  これは先ほど申し上げましたように、NHK業務活動を縮小さしてしまえという論議といろいろ通ずるわけでございますが、われわれは、むしろ今度の意見で申し上げておりますのは、社会的な進歩に基づきまして、将来の放送や受信の進歩発達に即応して、円滑に合理的にNHK業務が遂行されるようにすべきであるということを申し上げております。  受信者の負担を少なくするために、受信料は合理的に使っていかなければいけないということは当然でございまして、そのためには経営の近代化なり合理化なり、いろんな面で合理的な運営をしていく必要がございます。そのためには、単に放送番組をつくるというだけの仕事でなくて、その周辺の仕事も十分やりやすくするようにしなければ、経営合理化ということはできません。そういう意味合いにおきまして、放送関係のある特に必要な事業については、ある程度の助成なり投資なりを認めてもらえば、もっと受信料を合理的に使い得るということを言っておるわけでございます。  それからあと、いろいろ組織についての意見がございます。  経営委員会の地区制を廃止してはどうか、あるいは選任資格の範囲を拡大してはどうかというような意見がございます。この意見は、経営委員会の中へ商業放送の代表者を入れよとか、あるいは経営委員会の事務局を設置せよとか一執行役員の資格をゆるめて、たとえば新聞の関係者とか、あるいはメーカーの社長だとか、そういう者もすぐNHKの執行役員に送り込めるよう資格任命の基準をもっとゆるめよというような意見とか、現在、経営委員会が任命している監事を主務大臣の任命にしてはどうかとか、あるいは監事の事務局を置けとか、監事のうちの一人は少なくとも協会以外から選任せよとか、あるいは協会の収支予算を国会に対しては報告だけにして、郵政大臣の承認でよろしいというふうにしたらどうかという意見がいろいろ出ております。まあこれは一つ一つ違ったニュアンスがございますけれども、それらを通じてわれわれが考えておりますのは、こういう問題は言論、報道機関としてのNHKのあり方にとって、番組の自主性を守るということについて危険な意見が出ておるというふうに感じておるわけでございます。  その他県域放送の問題が出ております。ローカル放送は、いまの放送法上もローカル放送が義務づけられておりますが、現在われわれが考えておりますローカル放送の単位はどこに置くかということが問題になるわけでございます。やはりこれは現在の行政単位からいいますと、県を単位にした県域放送が一番基本のローカル放送の単位であるのではないかということを主張しております。もちろんある経済圏があり、社会的にいっても、経済的にいっても、もっと広域圏的な考え方を必要とする場合もあるわけでございますが、そういうものは数県一つのローカルも必要となってきます。しかし、基本的には、県域放送ができるようなローカル体制が必要であるということを主張しておるわけでございます。行政単位からいって県を単位にするという放送そのものが重要でありまして、たとえば選挙放送でもそうでありますし、あるいは災害対策基本法に基づく災害放送においてもそうでありますし、天気予報その他のローカル放送も県単位を必要とします。むろんさらにきめのこまかいローカル放送ということを必要としますけれども、経営の合理的な運営からいえば、まず県域を基本単位とするのがローカル放送基本的な単位である、そういうふうに考えておるのでございます。そのための電波割り当てなり放送局の設置なりが必要であるというふうに考えております。  第二番目に、これは国会審議でもいろいろ出てまいりましたが、いろんな大型番組を出してNHKはいたずらに商業放送と対抗しているのではないか、こういう点でNHKは少し行き過ぎているんではないかというふうな意見がございます。たとえば「花の生涯」とか「赤穂浪士」とか、そういう番組を制作して、いたずらに商業放送と対抗しているというふうにいわれております。これは言いわけがましくなりますが、「赤穂浪士」にしたところで、原価計算をしてみますと、直接費で約二百万円の経費を要しておりますけれども、これを視聴率から割ってみますと、五一%でございまして、三千四百万人人が一応見ているというふうに考えますと、聴視者一人単位の額でいきますと、非常に安い番組になっており、決してこれによってむだづかいをしておるということではないとわれわれは考えておりますし、さらに、これによっていたずらに商業放送と対抗しているとは考えておりません。娯楽放送も、先ほど申し上げましたように、健全な娯楽放送国民に届けて国民の要望にこたえたいと努力しているわけでございます。  試みに、商業放送の外国テレビ映画の単価を調べますと、大体一時間もので一本当たり二百万円、さらに貿易の自由化でもっと高くなろうとしている状態でございまして、それを「赤穂浪士」と一体どちらが効果的に受信者にサービスしたかということを考えますと、大型の番組を出して、いたずらに商業放送と対抗し、いたずらに受信料をむだづかいしているという論は、全く当たらないということを申し上げた次第でございます。  一方、放送センターの建設に対しましても、これは非常に大きいものを建ててむだづかいではないかという議論がございます。これは簡単に考えますと、比較にならぬのでございますけれども、まあ世界の放送事業体でNHKのように多くの番組を多くの媒体でもって放送している事業はないと考えております。BBCにいたしましても、第一、第二、第三の放送テレビは一波でございます。NHKはこれと違いまして、御承知のように、ラジオで第一、第二、テレビで総合、教育、さらに、FM、国際放送、カラー放送もやっております。これらの放送時間を全部集めますと、どうしてもこういう事業をやる上には、その番組を制作するセンターというものが当然大きくならざるを得ないと考えております。現在数カ所に分かれておりますスタジオなり事務所なりを総合的に一元化することによって、企業の合理化をはかり、受信料をより合理的に使うという将来の見通しのもとに、放送センターを建設しているわけであります。これらのいろいろな議論は、われわれの考え方を理解しないか、あるいは実情を知らないことによる意見であるというふうに考えているわけでございます。  最後に、以上述べられたいろいろな意見についてわれわれの意見を申しげましたわけですが、ここで非常に概論的に、NHK基本的な見解というものを結論として簡単に申し上げておきたいと思います。  まず、放送法制を考える場合に、非常に抽象的になりますけれども、一番大事なことは放送とは何かというところから問題を解明していかなければならないと思います。一言にしていえば、放送の持つ文化的な意義、あるいは社会的な意義、あるいは文化的、社会的な影響力、そういうものを考えなければならないということでございます。放送というものは電波そのものが問題になるのではなくて、電波にのせる番組が問題なのでございます。放送というものを考えるにあたって、まずこの放送の持つ社会的、文化的な意義の重要性を正しく把握するということが大前提になるというふうに考えております。  そこから、しからば放送の果たすべき重要な使命を達成させるために、わが国放送制度はいかにあるべきかまた、これを放送行政としていかに取り扱うべきかということが、その次に出てくる当然の問題でございます。ところが、現在の制度では、本来放送法に属する重要な事項までが電波法として規定されております。これは放送というものを文化的、社会的な意義に沿ってとらえていないためであって、単なる技術的な周波数として扱うという形になっているからでございます。技術的な電波としてではなく、その中に盛られている番組というものを基本にして考えなければ、放送行政なり、放送法の改正というものを論ずるわけにはいかないと考えております。そこから問題が出発しているわけでございまして、電波法の中には非常に重大なことが規定されていますが、事放送電波に関する問題は全部電波法制から分離して、放送法制の中に規定すべきではないかというのがわれわれの見解であります。  それから電波割り当てということが郵政省なりあるいは電波監理局の仕事でありますけれども、これは単なる電波割り当てではなくて、放送という重要な意義を持つものに有限かつ希少な周波数をどう配分するかということではないかと考えます。これが非常に重要でありまして、まず第一に国民の福祉に合致するための適正な配分が行なわれているかどうかということを考えなければならないと考えます。国民の立場からいいますれば、この高度の公共性を持っている放送が、全国あまねく普及され、国民の期待にこたえる豊かで質のよい放送が行なわれる必要がございます。  この国民的要望にこたえる放送をどう確保するかが放送法制上の大きな問題でございます。ここにNHKのような国民的基盤に立つ公共的な放送機関の必要性があると考えます。しかしながら、現在までに至ったこのNHK商業放送の二系列の秩序を根本的に変えてしまうという考えは持っておりません。商業放送NHKとは全く違った基盤のもとに、放送の多様化、広告媒体としての役割りを果たしてまいりました。こういう歴史的事実は、やはりこの上に立たなければいけない。このようなNHK商業放送の二系列による放送を認めながら、さらに放送をよりよく国民のために使うための規律を考え、これを新しい放送法制に規定していくべきだというように考えておるわけでございます。  以上が、たいへん長くなってお聞き苦しかったと思いますが、われわれの基本的な意見の概要であります。たいへんありがとうございました。
  5. 秋田大助

    秋田委員長 これにて参考人よりの意見の聴取は終わりました。     —————————————
  6. 秋田大助

    秋田委員長 これより質疑を行ないます。森本靖君。
  7. 森本靖

    ○森本小委員 ただいま日本放送協会のほうから今回の放送法制に関する意見があったわけであります。その中で放送基本法あるいは日本放送協会法商業等放送事業法という法体系についての意見が出されておるわけでありますが、これはNHK側にとりましては、ただいまの御意見についてはNHKとして当然なことであろうというふうに考えておられると思いますが、この法体系の問題については、また別個のところで私は論議することにいたします。またこのNHKの言われていることは大体何を言わんとしておるかということについては、私もこの報告書をずっと読んでおりますので、内容については十分承知をしておるつもりであります。しいて言えば、少し身がってなことばかり言っておるのじゃないかという点もなきにしもあらずでありますが、しかし、NHKとしては、NHKのあり方からするならば、大体妥当なことを言っておるのじゃないかというように考えますけれども、それは重要な問題でありますので、当委員会としてはいろいろの観点から審議していきたいと思います。  ただ、ここで私は、こういうふうな法体系の問題でなくて、NHK当局に聞いておきたいと思いますことは、NHKは今度の放送法制研究会報告書を読んでみましても、要するに現在のNHKの機構を守ろうということにきゅうきゅうとして、それに対するところの意見を集めることに非常に苦労しておるというふうに私なりに考えるわけであります。私はこういう法体系のあり方、それからNHKの機構そのものも非常に重要であろうと思いますけれども、特に今回こういうふうな意見を出されるときに、私が日本放送協会に一番要望したかったのは、NHK日本放送の中における中核として今日テレビなりラジオ放送をやっておるわけでありますが、その場合に、こういうふうな放送法制に関する意見を述べると同時に、今後の日本放送体系というものはいかにあるべきか、それは商業放送はこのようにあるべきである、NHKはこういうようにあるべきであるということは確かに出されておるわけであります。ところが、その中におきますところの肝心のラジオテレビあるいは中波、FMというものを今後一体どういういう形で日本においてやっていったほうが一番妥当であるか、要するにその中でNHKが演ずるところの役割りはどういう役割りであるか、民間放送が演ずるところの役割りはどういうものであるかというところの、この法体系の中の一つのビジョンはあなたのほうは出しておられるけれども、肝心の放送体系といいますか、そういうものについては、すべていわゆる放送委員会にまかせるような形の意見がでてきておるわけであります。そういうものに対するところの討議をNHKの内部において、この放送法制に関して学者の御意見も聞いておるわけでありますが、そういうふうな意見は戦わされなかったかどうか、それを聞きたいと思っておるわけであります。
  8. 阿部真之助

    阿部参考人 ただいまの御質問の趣旨については、NHKにおいても十分討議、研究しております。しかしながら、当面の問題は法の改正ということが主題になっておるので、ただいま御質問のような波が幾つ要るとかなんとかいう具体的なものを持ち出すと、いたずらに論議が複雑になってしまうわけで、それは適当の機会にわれわれの見解を述べさせていただいたほうがよかろう、かように存じておるわけであります。
  9. 森本靖

    ○森本小委員 私は、私なりに考えるのは、NHKが今回のこういうふうな放送のあり方について意見を述べるとするならば、一番長い日本における放送の経験者として、やはりその問題に触れるべきではないか。要するにNHKのいまの予算制度、決算制度、こういう機構は一番いいものであるから、これを残しておいて発展していかなければならぬということになると、これはあなた方のほうとしてはごもっともだと思いますし、また、われわれも、もっともであると考えるところも多分にあるわけでありますけれども、これはほとんど関係のない人が見た場合はいわば自画自賛で、自己保存にきゅうきゅうとしておるというふうにとられがちなわけであって、NHKが今回こういうところに対する意見を出して、しかも権威ある意見として出てくるものについては、いま言った放送体系のあり方というものに対して、長年のNHKの経験と知識によって出した場合に、大きな権威あるものになる、それをわれわれとしてはNHKに一番望みたい。  要するに、確かにNHKが長年の経験によってこういう法体系三つ出されたということについては、われわれも十分にこれを参考にして今後論議をしていきたいと思いますし、また十分参考になるわけでありますけれども、実を言いますと、こういうふうな問題については、これはわれわれのほうにまかしてもらっても、要するにこちらのほうでも十分にそれに対応するところの経験と知識は持っておるつもりであります。ただ、われわれが聞きたいのは、やはり放送体系というものをいかようにしていったらいいかということについて、NHKは一体どう考えておられるだろうかということについて、いままでも当委員会予算審議のときにもいろいろ論議をいたしておりますけれども、具体的なNHKのビジョンと申しますか、プランと申しますか、そういうものをまだ正式に聞いておらないわけであります。こういう機会NHK商業放送、さらにそれを含めていまのテレビラジオ、さらにFM、そういうものを新しい時代に一体どういうふうに適応していって、どういう放送体系を持っていったらいいかということについて、私はNHKの御意見をこの際お聞きしたい。  本来ならばそういうことを一番聞きたいのであって、この一、二、三の項は聞かなくても文書でも十分にわかっておりますし、御意見は十分に承知しておるわけでありますので、肝心の御意見をひとつお聞きしたいと思っておるわけであります。会長の言われるように、それよりか法体系が先だと言われればそうでありますけれども、また逆に言えば、放送体系のあり方のビジョンを描きながら、それに合わせた法体系考えられるわけであります。そういう意味で、放送体系というものをどう考えておられるか、これをひとつお聞きしたい。もしまだそれが言う段階でないというならば、質問はやめておきますが、これは副会長からでもけっこうです。
  10. 阿部真之助

    阿部参考人 どうもある意味において非常にむずかしい御質問なんで、われわれのビジョンというものは、この改正に対する意見の中にも十分盛ってあるつもりなんでございます。NHKということは、というものが常に国民的な基盤に立って、国民要望の上に立って、世界の進運におくれずにというばかりじゃなしに、むしろ世界の進運の先頭に立って——単に私のビジョンを言うならば、NHKの眼というものは、いまや国内ばかり見ているという時期から、もっと広く国際的の視野の上に立って、できるならば世界のNHKである、そこまで持っていくことにおいて初めて日本国民要望にもこたえ得るという時期に達しておるのではないか。いまや日本という国が、日本の国内ばかりに眼を向けておるのではなしに、広く眼を広げて、国際的にも貢献し得るような、そういうNHKでなくちゃならぬ。そのためには、ただいま赤城専務からも申し上げましたが、放送センターの規模が大き過ぎるとか小さ過ぎるというような論議が起こってくるということは、どっちかというと非常に私は視野が狭過ぎると思います。常に国内的なそういう観点からのみ論議されていることなんで、いまや科学の世界は宇宙に向かって進展している、そういう時代に、国内的の視野からのみものを考える、特に商業放送公共放送との対立もしくは並立というような、そういう狭い視野のみから問題を解決されるとならぬことでありまして、ただいまNHKの自分たちの立場のみを擁護するためにきゅうきゅうとしているというような御意見もありましたが、そんなけちな量見は持っておりません。どうかひとつ広い視野で御審議を願いたいと思います。
  11. 森本靖

    ○森本小委員 この報告書を読んでみますと、確かに随時随所に、いま会長が言われたように、NHK一つの主導権をとってやっていかなければならぬということは書かれております。書かれておりますけれども、それじゃ一体具体的に現在から将来にわたるところの日本放送体系というものをどうすべきかということについては、この内容には具体的な回答は出ておりません。だから私たちが一番NHKに聞きたいのは、日本における唯一の長年の放送の経験者である、それが一体いまの新しい時代に適応した、新しい科学に適応したところの放送体系というものはどうあるべきであるか、NHKNHKなりにそれをどういうふうに考えておられるのか。そこでテレビジョンの配分にしても、あるいは将来のカラーの展望等も考えた場合、そういう場合にテレビあるいは中波ラジオFM放送を一体どういうふうな形において持っていかなければならぬかということがわれわれとしては一番聞きたいわけであって、やはりいま会長が言われたようなことについては、われわれも政治家として大所高所から考えていかなければならぬ問題であって、それはまたそれぞれの意見の交換になるわけでありまして、私はそういうことよりも、何といたしましても、長いしにせのNHKというものの意見をみなが快く聞くということは、そういうことにあるのではないかということを考えるわけです。ところが、その肝心のことには、全部形式にこだわってしまって、内容は、会長、あなたは中に入っておると言われるけれども、中に入っておるのは、要するにNHKが、民放よりも主導権を持って、日本基幹放送としてやっていかなければならぬのであるということですべて入っておるわけであって、ただ国際放送についてはここではっきりNHKだけでやるべきであるということは明確にしておるわけですが、ただその他の放送をどういう形に持っていったほうがいいかということについては出ておらぬわけです。だからその御意見をひとつ聞きたい。これは当委員会でもしばしば論争してきておるわけでありますけれども、NHKからしかとした回答はまだあっておりません。だから、こういう機会がいい機会でありますので、これは速記録にも残るわけでありますから、NHK一つの展望というか、そういうものをお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  12. 阿部真之助

    阿部参考人 まことにごもっともな御意見でございますが、どうもこの機会に、具体的に、いま一つもしくはNHKが波をまた二つも三つも持ってこういうふうにしたい、ああいうふうにしたいというようなことを、私どもは希望は持っています、希望は持っていますが、それをここで具体的に持ち出すと、かえって論議がこんがらかってどうもむずかしくなると思うのでありまして、何かの機会にひとつ森本先生と……。いかがでございましょうか。
  13. 森本靖

    ○森本小委員 まあ会長からそういう御意見があるとするならば、私はあえてもう質問をいたしませんけれども、ただ私は、NHKが今度の法制調査会のことに対して真剣に論議を持っていくとするならば、いま言ったような現実の問題の立場に立って意見を申し上げるという点が、今度の法制調査会に対しては一番通りやすい意見ではないか、それをいま受信料の問題、あるいは放送法をどうするかというような問題が持ち上がっておるときに、NHKが法体系というものはこうすべきであるという意見を先行さしていった場合には、波はどうなるのだという意見が必ずしも出ないとは限らぬわけです。これは相当研究しているものなら別として、そうでない場合には、私はそういう意見も出てこないとも限らぬと思う。私はそういうことよりも、根本的にNHKが長い経験によって、日本放送界のビジョンについてはこういうふうな放送体系をやっていくべきである、それがためにこういうふうに法体系を変えていかなければならぬ、こういう論旨を持ってくるのが、NHKとしては一番妥当なあり方だし、また通りやすい意見ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。しかし会長が言うように、いまそんなことを言ったら混乱するからということであるとするならば、もうあえてそれは言いませんが、私のいま言ったことを、これは速記録にもちゃんと載っておるわけでありますので、ひとつNHKの理事者間においても十分にかみしめておいてもらいたい。そうでないと、私はNHKが今回せっかく研究せられた内容が、そういうふうに世間にとられがちな点が出てくるということを心配するわけであります。  それでは、そういうことでも一切NHKに対する質問は終わりになりますが、ただ一つだけ聞いておきたいと思います。四〇ページに、(付)と書いてあるからこれは付録ということになると思うのですが、有線放送業務の規制については従来どおり届け出制でやる、これはもっともあなたのほうには関係ないのだから、こんなことまで書く必要はなかったのだけれども、書いておるわけですが、これは具体的にどういう意味ですか、NHK意見は……。
  14. 赤城正武

    赤城参考人 この当時やはり有線テレビが問題になりまして、これはその放送内容からいいますと、無線でやるテレビをやはり非常に関連を持ってまいりますし、現在の有線放送業務規定によりますと、テレビ関係のそういう有線放送に対する規定が整備されておらない、やはりこれはラジオのほうの有線放送と同じような規制が必要とされるのじゃないかというふうなことで、この問題についても意見を出しておいたほうがいいのじゃないかということで、ここに書いてありますような意見を出したような次第でございます。
  15. 森本靖

    ○森本小委員 そういたしますと、これは現法体系をそのままに継承する、こういう意味ですか。
  16. 前田義徳

    前田参考人 ただいま御質問の点について、赤城専務の説明を補足さしていただきたいと思いますが、いわゆる有線放送という形の中にわれわれが理解するものは二つあると私どもは考えております。たとえば工業用あるいは学問で使う非常に限られた目的と範囲内での有線テレビというようなことは、従来どおりの方式に従ってよろしいではないかという根本的な考え方でございます。しかし、これについてもそれぞれの機関がそれぞれの立場から御検討いただければ、もちろんこれに越したことはないと思います。私どもがこの項で特に取り上げたいと考えておりますのは、たとえば最近の例では郡上八幡などは起こったいわゆる共同聴視を土台とする特別のテレビ放送、こういうものは関しては別個に法律的にこれを考える必要があるのではないか、したがってこの中でも、その次にただし書きの中でこういうことを私どもは考えているわけでございます。有線放送業務の規制は、放送法制体系とはまず別建てにする必要がある。したがってその意味で、原則としては従来どおりラジオテレビのいずれの有線放送業務についても届け出制をとるという考え方でございます。ただ、ただいま申し上げるように、テレビジョン共同受信施設を利用して行なう自主的な有線放送業務については、その社会的影響力が大きいことは当然でありますし、また放送用の周波数割り当て計画との関連がきわめて不可分的なものでございますし、また技術基準とも非常に関係してくる問題でございますから、これについては、国会におきましても、当委員会におきましても、特別の御検討をいただいて、特別の法律をおつくりいただく必要があるのではないかということを申し述べさしていただいているわけでございます。
  17. 森本靖

    ○森本小委員 ちょっとこの語句がわからぬのですが、ただ、テレビジョン共同受信施設を利用して行なうというこの意味は、要するに有線放送テレビの場合のテレビが共同受信設備であるという意味であるのか、あるいは現在の共聴アンテナの意味ですかね。
  18. 前田義徳

    前田参考人 前段は、従来の意味での有線放送でございます。私どもが特に特別の法制化が必要であるという意見を述べさしていただいている部分は、共聴を基礎として新しく発展してきたあり方についてでございます。
  19. 森本靖

    ○森本小委員 これはもしそういう意味だったとするならば、NHK関係のないこういう意見を出すというのは、よほど討議してからのことか、あるいは国会の論議を知ってからのことか、こたはちょっと私は非常に疑問に思うわけです。というのは、いまの郡上八幡の有線テレビについては、もともと共同聴視の問題から起こってきたことであって、いま電波監理当局としても、これを有線放送業務の規正に関する法律に当てはめるということは困難である、あれは「音声その他」ということがありますから、その項の「その他」ということで解釈をしておるようにとりますけれども、いずれにいたしましても、現在の有線放送業務の規正に関する法律でありますから、あの法律では非常に困難な状況であります。しかし、将来かりにこういう有線テレビというものがどんどん発達をしていくということになった場合に、一体現行の有線放送業務の規正に関するあの法律によってこれが規制できるかどうかということになりますと、とても規制ができない。それから、かりにそういうことが採算が立つかどうかは別として、大都会において有線テレビということを商業的にやり得る可能性も出てくるわけであります。しかし、あなたのいまの説明でありますと、そういう商業的な大都会における有線テレビというものは届け出だけでいいということになるわけであります。許可制になっていないのです。だから、こういうことを参考意見として出すのなら、もっともっと研究をして出してもらわぬと、ちょっと私はこの間これを読んでみて、大NHKともあろうものが、妙に、あまり内容を知らずに、自分のところのことだけを考えて簡単に書いたのじゃないかというふうに私は考えて、どうしてもこれは一ぺん聞いておかなければならぬ、こう思って聞いたわけです。
  20. 前田義徳

    前田参考人 実はこの問題は、去年の秋以前に約一年間にわたって検討いたしまして——これはおそらく書き違いじゃないかと思いますが、許可制が当然である。ただ、その書き方が二つに分けてあるというところに一つの問題があるかと思います。二つに分けましたのは、御承知のように数年前にできました電話と関連する有線放送のことをも頭に入れたものですから、その辺が非常に明瞭を欠く結果になったと思います。
  21. 森本靖

    ○森本小委員 だから、大体、有線放送の中におきましても、いまの音声の有線放送については、これはある程度届け出制でもいいと思いますけれども、現実に有線テレビということになった場合には、後段の項にあるように、新たに法律考えなければならぬということは、もうこれは大体識者間の一致した意見でありますので、これは、私が重ねて質問したように、あなたのほうの書き方から見ると、ラジオテレビジョンいずれの有線放送業務についても届け出制、ただし法律を制定した場合には、いわゆるテレビジョン共同受信施設を利用して云々とあるわけですから、わざわざ私がさっきのように共聴関係がどうかということを聞いたわけです。これは、いまNHK意見がはっきりいたしましたのでいいわけでありますけれども、ついでに電波監理局長に聞いておきますが、この前の私の質問のときにも、やはり法体系については相当考えなければならぬ、こういう意見があなたのほうからも言われておったわけでありますが、これは今度の法制調査会においてもあわして審議されておりますか、どうですか。
  22. 山本千吉郎

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  NHKのほうからの意見書もございましたし、あるいはほかの方面からの意見要望の中にも、ただいま御質問の問題がございますので、法制調査会といたしましては、その問題もあわせ審議しております。
  23. 森本靖

    ○森本小委員 それはこの間の問題点の中には出ておりますか。
  24. 山本千吉郎

    ○山本説明員 郵政省から出しましたものには出ておらないと思います。
  25. 森本靖

    ○森本小委員 電波管理局長、なぜこの中へこれを出さなかったのですか。これはほんとうにこまかいことまで書いてあるのだけれども、肝心の、いま言った有線のやつは、問題点が、ここここにあるというのが出てないわけです。実際は、しかし、これは当委員会でも相当論議したように、将来かなり問題になってくるわけです。だからいいのですが、それほど重視してなかったということなら残念なことでありますが、いま山本参事官の答弁では、これも審議しておるということでありますので、同時に答申が出されるというように解釈をするわけですが、大体そういうように解釈をしていいのですか。
  26. 山本千吉郎

    ○山本説明員 よろしゅうございます。
  27. 秋田大助

    秋田委員長 片島港君。
  28. 片島港

    ○片島小委員 一言お尋ねをしておきたいのですが、NHK意見書と民放の意見書というのにだいぶ食い違ったところがありますし、それから問題によっては平行線をたどっておるところがあるわけです。これは今度いよいよ結論づける場合に、関係者は非常に困るわけです。私は意見書をあなたのほうのをいろいろ拝見しますと、やはり一つNHK保守主義といいますか、NHK保守主義が一つあって、自分たちが大体基幹放送の本物なんだ。商業放送というのは、あとからできて、あれは別のものだといったような、ちょっと軽くいなした感じがし、また一般民放のほうは、何を言うか、おれのほうも公共性ということについては、これは電波はみな国民のものであって、同じことじゃないか、おれたちをちょっと下に見るな、対等だ、こういう考え方からみなきておると思うのです。  そこで番組の問題は、何か日本放送連合の高田さんあたりが中に入って、番組の向上の問題なんかいろいろやっておられたそうだけれども、何だか、最近の情報を開くと、もの別れとなって、どこか消えてしまったというようなことも聞いておるのです。  それから、どうせどちらをやっつけようといったところで、どっちもやっつけられるものではないので、どちらもが健全に発達していかなきゃならぬというたてまえからいくならば、放送法制の問題についても、また受信料性格の問題だとか——番組の問題は番組の問題でこの前からいろいろ共通の話し合いをやっておられたそうですか、そういうものを自分のところだけかってに、相手のことはかまわないで自分のほうの意見を出すということでなく、やっぱり話がまとまってもまとまらぬでも何回かは話し合いをして、そしてあなたのほうが先輩ですから、むしろあなたのほうから話し合いをして、こういう問題はどうだろう、こういう問題はこうやったほうがいいんじゃないかというようなぐらいの話し合いの場というものは持っておられてもいいのではないかと思うのですが、そういうことはいままであったでしょうか。
  29. 前田義徳

    前田参考人 実際上は、放送連合ができましてから放送連合の場で、番組関係の分科委員会もございまして、放送連合成立以来やっております。それからまた、それだけでも足りないというので、放送連合があっせんいたしまして、私どもいわゆる経営者間の話し合いというものも、最近数カ月とだえておりますが、番組問題あるいは労務問題あるいは財政問題その他について数次にわたって行なわれております。それから事務的にも過去三年ぐらいにわたってこの放送法制の問題について、レギュラーな会合ではございませんけれども、意見の交換は続けておりました。ただ、この段階に立ちまして、結局協調した案というものの成立が困難であるという現状のもとで、私たちも放送法制調査会から意見の開陳を正式に要求されましたので、その意味において私どもの見解をまとめたわけでございます。
  30. 秋田大助

    秋田委員長 ほかにございませんか。
  31. 大柴滋夫

    ○大柴小委員 これは質問じゃなくちょっと要望をしておきますが、一昨日公職選挙法の委員会がありまして、選挙の政見放送テレビでやるということで質問をいたしましたら、お役人のほうからは、技術的に経済的にむずかしいということがNHKのだれからか返事があった、こういうようなことでした。私が、昨年でありますか予算委員会のときに質問をいたしましたら、いずれもそういう返事でなくて、そういう方向に向かって努力をいたしたい、前田さんかあるいは会長かどっちか忘れましたが、そういう返事でありました。そんなことは理屈を言うまでもなく候補者は全部それを望んでいるわけです。それからいまラジオテレビの見る人と聞く人の差は相当あるだろうと思うのです。赤城さんが読んだ、国民のものであるとか、公共放送とか、いろいろの項から見ても、政見放送テレビでするということは、どこでも異論がないところだろうと私は思うのです。これにひとつ積極的に取り組んでほしいと思うのであります。大臣にも私のほうから言っておきましたけれども、それで、もし現在それが何か技術的に不可能だとしても、その不可能を可能にするにはどうしたらいいか、何年ぐらいでできるか、そういう取り組み方をするよう特にお願いをしておきます。
  32. 阿部真之助

    阿部参考人 ただいまの御要望に対しては、私どももかねがねそうありたいということは念願しておることなんであります。そのことに努力することにやぶさかではないのでありますが、今後も実現ができるだけ早くありたいことを望んでおります。何しろ各候補者がテレビを通して政見放送をするという例は、まだ世界のどこにもないことだろうと思うので、いよいよ実行する段になるといろいろ困難があるだろうと思いますが、しかし、われわれはそういう困難を克服して、できるならこの次の選挙ぐらいには実現するような準備と体制を整えたい、かように心がまえをしておることなんでありまして、まあその程度でひとつ……。
  33. 栗原俊夫

    ○栗原委員 私も一言だけお尋ねしておきたいと思いますが、先般当委員会でもお尋ねしたのですが、NHKが特殊な性格を持つ公共放送であり、国民のものである、そういう立場から受信料の問題も解決していく、こういうことですが、やはり民放のあり方とNHKとの間に私はどうしても両立しない根本的なものがあるように思うのですよ。それはやはりNHKを受信することのできる設備を持ったものからは受信料をいただくのだということになれば、本来的にはそういうものは四六時中スイッチを入れっぱなしでおる、入れずにはおれないというような放送内容を盛っていく任務、責務が、実際からいってNHKには課せられておると思うのです。片方の民放のほうのことですが、スポンサーはマスコミ・メディアとしての新聞報道は、発行する部数がいろいろ単価をきめる基準になると思うのですが、事電波になると、これは電波を発するからスポンサーが料金を払うのではなくて、やはり聞く、見る、この視聴率というものがスポンサーが評価をする対象になってくると思うのです。片っ方は四六時中スイッチを入れなきゃならぬ内容放送する責務に立ち、片っ方では視聴率によってスポンサーの料金をいただく。こういうところを一体NHKのほうではどんなぐあいに考えておられるか。これはほんとうに極限へいくというと、一方では受信設備をするから料金をいただく、したがって、もう電波を出してある限りその電波を聞かずにはおれぬという形の内容を盛り込んでいくということに徹すると、民放のほうヘスイッチを入れる時間はない。これは極論ですが、理屈の上ではこういうことになると思うのです。この点はどういうふうにお考えになりますか。
  34. 前田義徳

    前田参考人 なかなかデリケートでむずかしい御質問をいただきましたが、たてまえとしては先生のおっしゃるとおりだと思います。私どもといたしましては、先生の御指摘なさいましたように、まず第一に、全国どこでもNHKのものが聞いたり見たりできるような施設をつくらなければならない。同時に、お金をちょうだいする以上は、その法律的擬制あるいは法哲学論がどうあろうとも、実質的にわれわれの番組に関連を持たない限り、これを人間社会のフィーリングとして処置できない問題が起きてくるということは十分私どもは考えております。したがいまして、置局と並行してあらゆる種類番組内容を多様的に、そしてまた、社会的影響に対する公共放送としての責任を考えながら、ただ単に非常に低俗な興味で見ていただくということを目標としないで、しかし、低俗的ではないが非常にアトラクティブで魅力があっておもしろいということをも勘案して、実は約四十年にわたって努力しているわけでございますが、それがまだ理想的境地にまで到達していないということは事実でございまして、ここに現実的な問題が利害関係を土台としても出てきておるわけと思いますが、これに対しては、今後ともあらゆる努力を払って番組内容及び質の改善と多様性をさらに大きくしてまいりたい、このように考えておりますが、まことに先生の御質問の要点に対しては、完全な答弁にはならないかと考えますが、よろしく御理解いただきたいと思います。
  35. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは理屈ばかり言うと、ほんとうにNHK使命に徹すれば、これは民放の存立余地がなくなる境地が出てくるのではないかという理屈なんですね、理屈では。しかし、実際にはそうはならぬと思いますけれども、しかし、そういうところに片方は商業主義で立っていく放送事業として生きていくために、今度NHKにまともにぶち当たってくる、こういう形に具体的にはなってくると思うのですよ。そこで今後そういう問題をどういう形で解消していくかというような配慮も、新しいこういう一大転換をする段階において十分考慮される場面がなくちゃなるまい、このように考えるのです。金をいただく国民のものだと言われ、実際その要請にこたえて境地に達すれば、そういう議論議論としては出てくると思うので、この辺もおおらかな気持ちでNHKのほうでも十分考慮をしていただきたいし、われわれもまたいろいろとない知恵をしぼって相談もかけていきたい、こんなぐあいに思いますが……。
  36. 阿部真之助

    阿部参考人 ただいまの御質問、まことに適切な御質問だと思うのであります。当面の問題としましても、私はかように考えているのであります。  NHKといたしますれば、どの番組も聞くに値する、そういう番組を出したい。しかしながら、何千万の聴視者でございますから、その中には好みや嗜好みな違うのでありまして、そういう人はいろいろ商業放送やその他の番組を選択してお聞きになる、しかし、NHKをお聞きになった場合には、いつもそれに値する、そういう番組を出す。そこで特にそういうことでもって聴視率の競争をするとかなんとかいうことは、いたずらな競争は避けたい、かように存じておるわけであります。
  37. 秋田大助

    秋田委員長 ほかに質疑もないようでありますから、参考人に対する質疑はこれにて終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は来たる二十二日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会