○安宅
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております
日本電信電話公社法の一部を
改正する
法律案に対しまして、反対の討論をいたします。
私が反対する理由の第一点は、その必要性が全然ないということであります。本
改正案の審議を通じて明らかになりましたごとく、この投資条項の新設は、
日本船舶通信株式会社という既設の、しかも
公社みずから示唆してつくらせたという、そういう
会社に対する投資を対象としているのでありますが、なぜ投資が必要なのか明確でありません。
この
船舶通信株式会社は、御承知のとおり昭和二十七年に創立された
会社でございますが、今日まで赤字を続けております。ここ一、二年どうやら五分配当にこぎつけている現状でありますが、現状の経営
実態ではその前途に不安がないとは言えません。資本金一億円を倍額増資するに際して、そのうち七千万円を
電電公社が引き受けるというのは、まさにまるがかえと同様であります。かりに
船舶電話サービスが公衆電気
通信の
立場から絶対に必要だというなら、
公社みずからがその経営をやるのが至当であります。このことは赤字、黒字ということを云々する性格のものではないでしょう。しかし、私にはその必要性が理解できませんでしたし、本
委員会における審議を通じてみましても、積極的な解明も政府からは何らなされておりませんでした。
電信電話公社の膨大な
予算から見れば、七千万円の投資額はそれほど問題とはならないかもしれません。けれ
ども、私に言わせれば、この金は
電話を利用する全国民大衆の料金収入が充てられるのであります。その金が、積極的な理由も明示されることなく、一企業に投資されるということは、絶対に納得できないのであります。
次に、私が反対いたしたい第二点は、
電信電話公社が意図する投資条項の新設が、
船舶通信株式会社に対する投資だけにとどまらず、対象が拡大悪用されるおそれがあるということであります。おそらく、投資条項の新設は、サービス向上という名分を悪用し、新
会社の組織を通じて、電通事業の請負の拡大、
公社役務の民間
会社への肩がわり、そういう肩がわりなど、
電信電話公社法の第一条で言う公衆電気
通信による国民の利便の確保、公共の福祉増進の目的はもちろん、
公社当局が常に都合のいいときには口にしている電気
通信事業の一元的運営の
原則にも反すると思うのであります。
また、この投資対象事業は政令によって定めることになり、
国会での新たなる議決を必要としないことから、きわめて無責任な投資が行なわれる危険性があるのであります。この点国鉄、専売
公社における同様の条項は、本
改正案よりももう少し具体性を持った規定となっているのでありますが、本
改正案はそれが抽象的であるだけに、
公社の独善的意図の働く範囲が非常に大きいことをおそれるものであります。いや、これまでのあり方を見ても、またこの
改正条文そのものの抽象的な文章から見てもわかりますように、必ずそうなると断言してもはばかりません。
公社が扱う業務のうち、
委託できる根拠は、公衆電気
通信法第七条、第八条によるものであり、その思想はかなり限定されていて、国際電電及び
郵政省における
電信電話業務がその大半であります。しかしながら、この
改正案は、単に投資条項の新設のみでなく、
委託の範囲を拡大するねらいがあると思われるのであります。
委託に対する乱用をさせない歯どめがどこにもないことに、公共の
立場から大きな不安を感ずるものであります。
私が反対したい第三点は、その緊急性がないということであります。
電信電話公社は、昭和二十七年八月、
電信電話事業の合理的かつ
能率的な経営体制を確立するとともに、設備の拡充強化を促進し、サービスの改善をはかるために、公共企業体として発足したのであります。しかしながら、公共企業体の性格に対する理解が不十分であるため、十年以上を経過した現在、なお官営時代の制約が払拭されず、経営の自主性及び民主性の確保及び職員に対する待遇改善については、種々の問題を残しているのであります。現にこの問題がやかましくいま社会の問題として大きく取り上げられておるのであります。
私
どもは、かかる観点に立って、この
国会に
日本電信電話公社法の
改正案を提案し、経営
委員会の機能を拡充して経営の自主性と民主性を確保するとともに、
公社の収支
予算、事業計画及び
資金計画については、
郵政大臣の意見を付して
国会の承認を得るようにすること、電信の損失赤字を生じたときには、
予算の範囲内で相当額を政府が交付することなどの
改正を行なうよう主張しているところであります。緊急性を云々するならば、むしろこのわが党の
改正案をすみやかに成立させるべきであって、
公社の目的からは離反するおそれのある投資条項の新設をここに強行しようとすることは、本末転倒もはなはだしいといわなければなりません。
私はそのほかに言いたいことはたくさんあります。このような国民
一般を犠牲にして、
一つの資本というものを擁護するための実例は、数えれば枚挙にいとまがございませんが、この重大な
一つの例というものが今日強行されんとするにあたって、私は煮え返るような憤りを覚えながら、本
法案の反対理由の主たる内容だけを申し上げまして、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)