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1964-04-28 第46回国会 衆議院 地方行政委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十八日(火曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 渡海元三郎君 理事 永田 亮一君    理事 藤田 義光君 理事 佐野 憲治君    理事 安井 吉典君       大石 八治君    亀山 孝一君       久保田円次君    武市 恭信君       村山 達雄君    和爾俊二郎君       秋山 徳雄君    阪上安太郎君       重盛 寿治君    千葉 七郎君       華山 親義君    細谷 治嘉君       栗山 礼行君    門司  亮君  出席国務大臣         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         議     員 永田 亮一君         自治事務官         (行政局行政課 倉橋 義長君         長)         専  門  員 越村宏太郎君     ————————————— 四月二十八日  委員奧野誠亮君、武市恭信君及び村山達雄君辞  任につき、その補欠として亀山孝一君、木部佳  昭君及び羽田武嗣郎君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員木部佳昭君及び羽田武嗣郎君辞任につき、  その補欠として武市恭信君及び村山達雄君が議  長の指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法等の一部を改正する法律案内閣提  出策三三号)  行政書士法の一部を改正する法律案渡海元三  郎君外九名提出衆法第四五号)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  去る二十二日付託になりました渡海元三郎君外九名提出にかかる行政書士法の一部を改正する法律案議題とし、まず提出者から提出理由を説明していただきます。永田亮一君。     —————————————
  3. 永田亮一

    永田議員 ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案につきまして、私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表してその提案理由並びに内容概要を御説明申し上げます。  まずこの法律案提案理由は、最近、行政事務がますます複雑化する傾向にあることに伴い、行政書士資質向上業務の適正な執行を確保することにより、それを利用する国民便益に資することを目的とするものであります。  次に、その内容は、第一に、行政書士業務範囲を明確にするため、行政書士が作成する書類の中に、実地調査に基づく図面類を含むものとすることであります。  第二に、行政書士資質向上をはかるため、国または地方公共団体行政事務を担当する公務員として在職したことにより行政書士となることのできる者の資格を取得する期間現行八年から十二年に、高等学校卒業者等にあっては現行五年から九年にそれぞれ引き上げようとするものであります。  第三に、行政書士業務の安定とその適正な執行を確保するため、非行政書士等の取り締まりに関する規定につき、所要の整理を行なおうとするものであります。  以上が行政書士法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 森田重次郎

    森田委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  5. 森田重次郎

    森田委員長 これより質疑に入ります。質疑通告がありますのでこれを許します。秋山徳雄君。
  6. 秋山徳雄

    秋山委員 ただいま提案になりました行政書士法改正案につきまして一つ二つにつきまして質問を申し上げたいと思います。  たまたま提案は三党提案でございますので、便宜上のこともありますし、当局側お答えをいただければ幸いだと思います。  一番先に尋ねたいことの一つといたしまして、現在行政書士というものの仕事というものが非常にふくそうしておることは事実でありましょうし、同時にまた簡易な書類その他になりますと、今日の状態におきましては各行政官庁の中に備えつけの用紙が多々ありまして、それをもって届け出を完了するということがままございます。そういうこと等から考えましたときに、考え方によってはもう今日の状態では行政書士は不要ではないかという論もあるような心持ちもいたします。しかしながら、現実の問題といたしまして、行政書士を業としていてそれを主として生計を営んでいる方々もまたかなりあろうかと思いますが、それらにつきましての、現在行なっておる人たち現況と申しましょうか、たとえば人数がどのくらいあってどうというふうなことがおわかりでしたならばお答えをいただきたいと存じます。
  7. 佐久間彊

    佐久間政府委員 ただいま行政書士として業務に従事しております者の現状についてのお尋ねでございますが、本年一月一日現在で行政書士登録者数は一万四千百五十三名でございます。そのうち現に業務を行なっております者は七千百二十九名、約半数でございます。
  8. 秋山徳雄

    秋山委員 ただいま御報告にありますように、現在業として行なっておる者が七千百二十九名でございますが、その方々が現在主としてどういうものについて依頼を多く受けておるか、その状況を承ってみたいと思います。私が知る範囲内におきましては、最近ではかなり少なくなっておるとは思うのでありますけれども、まだ手紙やあるいはむずかしい文書などになりますと、自分で書き行ない方々があるようでございまして、そういうものの依頼のほうがかなり多いような心持ちもいたしますが、これらについておわかりでございましたならば、主として依頼を受ける事件がどういうものであるか、こういうこともお示しをいただきたいと存じます。
  9. 佐久間彊

    佐久間政府委員 これらにつきましては、全国的な詳細な調査は私どものほうでいたしておりませんが、部分的に聞き及んでおりますところについて申し上げますと、行政書士依頼を受けております事務もかなり広範にわたっておる職務をいたしております。場所についてみますと、市役所におります者、警察署におります者あるいは保健所職業安定所におります者でございますが、市役所におります者につきましては、いろいろな戸籍関係届け出書でございますとか、あるいは農地関係申請書でございますとかというようなものにつきまして依頼を受けておることが多いようでございますし、警察署におります者につきましては、告訴状とか示談書とかいったような書類についても依頼を受けておるものが多いようでございますし、保健所などにおります者は、食品衛生関係の営業に関する認可の申請書等について依頼を受けておるものが多いようでございます。
  10. 秋山徳雄

    秋山委員 かつて臨時行政調査会におきましても、行政書士法をもう廃止したらどうかという意見があったように聞いておりますが、これらに関する報告がありましたかどうか。またこれに対しましての政府当局人たちのお考えがいずれにありますか、御答弁いただければ幸いだと思います。
  11. 佐久間彊

    佐久間政府委員 ただいま御指摘になりました臨時行政調査会からの意見でございますが、これは臨時行政調査会の第三専門部会から許認可事務につきまして調査をいたしました報告が出ております。これは中間報告でございまして、まだ調査会といたしまして最終的な御意見ではございませんが、それによりますと、官庁受付事務サービス向上、書式の簡略化等によって行政書士業務範囲は狭まりつつあるというようなことを書いてありまして、しかも行政書士資格が比較的軽易に取得でき、これに対する行政官庁指導監督もほとんど行なわれていないというようなことでありますから、行政書士制度については将来廃止する方向で検討すべきではないかというような意見が出ております。私ども考え方でございますが、確かにここに指摘されておりますように、官公庁の窓口事務サービス向上ということにつきましては、相当国地方公共団体で力を入れてまいっておりますし、一般国民便益のために、様式等につきましても、できるだけ簡略にするという努力をなされてきておるわけでございます。したがいまして、行政書士業務範囲が従来よりも狭まりつつあるということは、そのとおりであろうと考えております。ただ、先ほどお尋ねの中にもございましたように、事務によりましては、それに関する書類の作成につきまして、一般国民にとりましてはなかなかむずかしいというようなものもあるわけでございますし、かつまたある程度きちんとした図面類等も添えて出さなければならないというようなものもございますので、それらの分野におきまして、一般国民便益のために行政書士がなおサービスをしていくという余地は、今後も、残るものであると私ども考えておるわけでございます。したがいまして、それらの業務につきましては、行政書士業務が適正に行なわれてまいりますように、この法律につきましてなお改善を加えていくという今回の御提案の御趣旨は、私どもも時宜に適したものと考えておるわけでございます。
  12. 秋山徳雄

    秋山委員 最後に一つだけ承っておきたいと思いますが、今回の改正は、ここにも書いてありますように、行政書士資質向上をはかることが目的でございますと同時に、国または地方公共団体行政事務を担当する公務員として在職したことにより、行政書士となることのできる者の資格を得する期間現行八年から十二年にする、こういうことになりますと、五割延ばすことになりまして、考え方によりますと、かなり大幅な延長でありますし、問題があるようにも受け取れない限りでもないと思いますけれども、現在の公務員になる資格そのものからいって、今日はもうすでに高等学校以上を出た者がほとんどでございますので、実質的にはさしたる影響もなく、また高等学校卒業者等にあっては現行五年から九年にそれぞれ引き上げるとありますので、実質的にはそうたいした影響のないように受け取れるわけでございますがこれらについて政府のお考えはいかがでございますか承りたいと思います。
  13. 佐久間彊

    佐久間政府委員 行政書士資格の要件につきましては、ただいま御指摘のような制度に従来なっておったわけでございますが、最近行政書士業務もだんだんと専門化してまいっておりますし、行政全体が複雑になってきている状況でございますから、行政書士資質につきましても、それ相当な向上改善をはかっていかなければならないということは私どもも痛感をいたしているわけでございます。御指摘のように、今日では学制改革によりまして、大部分のものがみな高等学校を卒業してこの種の業務につくという状況でございますから、現行五年を九年に引き上げるということは、その点から見ますと、倍近くの延長のように考えられますけれども、実質は御指摘のように私どもはそうたいした影響はない、むしろこの程度引き上げが、かえって今日の時世からいたしますと、実態に即した適切な措置ではなかろうか、かように私ども考えているわけでございます。
  14. 秋山徳雄

    秋山委員 大体了解できましたので、質問を終わりたいと思います。
  15. 安井吉典

    安井委員 ちょっと関連して伺いたいのですが、この行政書士書類を書いてもらったときの料金の問題ですがこれはいろいろな書類によって違うでしょうし、どういうふうな仕組みになっているのかそれからもう一つ資格条件が何か上がったので、料金も少し上げなければいかぬというようなことになると、これはちょっと困ると思うのですが、そういう因果関係ができないような配慮というものも必要じゃないかと思いますが、その点いかがですか。
  16. 佐久間彊

    佐久間政府委員 行政書士報酬の額につきましては、法律の九条によりまして都道府県知事が定めるということになっております。そして行政書士は、その都道府県知事の定めました額をこえて報酬を受けてはならないということになっております。したがいまして、この行政書士が今回の改正に便乗しまして、当を失した額の引き上げを行なうというようなことは都道府県知事がチェックするという仕組みになっておりますので、御心配のようなことはなかろうと考えております。
  17. 森田重次郎

    森田委員長 他に質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑はこれにて終了いたしました。      ————◇—————
  18. 森田重次郎

    森田委員長 次に、地方自治法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。細谷治嘉
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 まず第一にお尋ねいたしたい点は、区長選任の問題についてであります。  地方制度調査会の三十七年十月一日の答申によりますと、いろいろな議論があったわけでございますが、一長一短がある。こういうことで今回はそれに触れないということにいたしておるようでございます。この答申を見ますと、一番基本的な点に触れないで、そしていろいろな点を答申は、書いてあるわけです。それをどうしてうのみにされたのか、まずお尋ねいたします。
  20. 佐久間彊

    佐久間政府委員 その点につきましては、前回大臣お答えになっておられましたように、この答申におきましては、基本的な将来長い目で見ての問題と、当面早急に措置をしなければならない改革二つに分けておられまして、今回の答申におきましては、当面早急に措置をしなければならない部分についてだけ答申をなされたわけでございます。政府といたしましても、首都現況にかんがみまして、この答申になされております当面早急にとるべき措置につきましては、これは他の基本的な長い問題は別といたしまして、早急に措置をする必要があるという考え方で、御提案をいたした次第でございます。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 昭和三十四年の知事選挙の際に、都の知事区長公選ということを公約されたことを御存じですか。
  22. 佐久間彊

    佐久間政府委員 承知いたしております。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 三十七年の九月に都制調査会のこの問題に対する答申があったかと思いますが、これはどういう態度で答申されておるか御存じでしょうか。
  24. 佐久間彊

    佐久間政府委員 都制調査会答申におきましては、区長選任方法につきましては、公選答申されております。
  25. 細谷治嘉

    細谷委員 三十七年度の二月に渋谷の区長選任に関して、裁判がなされまして野瀬判決、こういうものが出ております。これはどういう結論になっているか御存じでしょうか。
  26. 佐久間彊

    佐久間政府委員 野瀬判決結論は、区は区長公選にすべきであるという結論になっております。
  27. 細谷治嘉

    細谷委員 違憲であるという判決になっておりませんか。
  28. 佐久間彊

    佐久間政府委員 そういう御趣旨になっております。
  29. 細谷治嘉

    細谷委員 憲法九十三条第二項「地方公共団体の長、その議会議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体住民が、直接これを選挙する。」こう書いてあります。地方自治法の一条の二ですか、地方公共団体とは何かという定義がありまして、普通地方公共団体特別地方公共団体に分ける。特別地方公共団体というのは、特別区とかあるいは地方公共団体の組合及び財産区とか開発事業団である、こうなっております。その中で、開発事業というのはこれはずいぶん問題があるわけです。その他は全部やっぱり公職選挙法に基づく公選ということになるわけです。そうなってまいりますと、この調査会答申をそのまま受けて、しかも私がいま尋ねたような経過、しかも都知事は公約をしておる。こういうような中において、この問題に触れなかったということは非常におかしいと思うのですが、大臣の所見をお尋ねいたします。
  30. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 裁判所の扱いは、御案内のとおりに最終の最高裁公選にしないということは合憲であるという判決が出ておりまして、その前の地裁の判例を御指摘になったわけですが、この問題は私たびたび申し上げますとおりに、区長公選にするのがいいのか、それとも任命制にするのが統一して都政、市政をやる上に便宜なのか、いろいろ一利一害があって、議論されておることは御承知のとおりでございます。それで区のやります事務というものは、住民には非常に身近なことを扱うわけでございますので、そういった点では一見公選にしたほうが便宜じゃないかということも考えられぬことはありませんけれども、しかし東京都というのは御承知のとおりに最近急激にこういう膨大な町になったわけでして、都政のあり方というものにつきましていろいろな議論が当然あるわけなんです。いわばこういった問題を最終的に扱うのにはまだもう少し様子を見なければならぬ時期ではないかと考えられるわけでございます。  そこで、今度こういうふうに事務の再配分あるいは税源配分などをいたすわけでございますが、私どもはこれをやった上でなおしばらく推移をみたい、こういう考え方でおるわけでございます。いま、先ほどから公選にすることについて裁判所見解など一応お述べいただいておりまするけれども、いろいろな考え方があるということは私も承知いたしておりますが、目下過渡的な立場にあるということで、そういう判断をいましておるわけでございます。
  31. 細谷治嘉

    細谷委員 自治法が制定されて発効したのが二十二年五月一日です。それから昭和二十七年までは区長公選だったでしょう。そうじゃないですか。——そうですね。それから二十七年から今日まで十年以上経過している。当初公選であったものをわずか五年程度選任制に切りかえた。今日十一年たっておる。なお状況を見た上でということは私はきわめておかしいことであると思う。せんだってこの委員会でも意見がありましたが、もともと地方自治法の中において普通地方公共団体特別公共団体と分けてある。その特別公共団体の中に財産区を入れたり開発事業団も入れたり、そういう中において自治法精神というものをだんだんたな上げしていっておる。憲法ははっきり公選でなくちゃならぬといっております。知事も公約しておるのです。しかも二十七年に公選制をやめてからすでに十年以上を経過している。研究は当然なされておる。この問題についての実績も出ておるはずです。しかも当初は公選でいった。そういうことでは私は理解できないわけです。どうして公選をやらないのか。憲法ではっきり明記してある。はっきり遠慮ですよ。これは違憲でないという最高裁判決が出たという。これは見解でしょうけれども、悪法の原則公選なんですよ。それを特別区ということでくだらぬものを設けて、自治法公選制というものを踏みにじっておるのが現況じゃないか。重ねてひとつ御答弁を、願います。
  32. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 最高裁憲法を無視して見解は示さなかったと私は思います。当初公選でありましたが、途中で制限自治区に変わりましたのは、やはり都政一つの統制ある運営をいたします上において、非常にまずい面が出てきたからこそこういう措置をとったわけでございまして、いま私ども過渡的な見方をしております。と申しますことは、いまの段階では私どもが簡単に判断をいたしますよりは、やはりこういう制度調査会などで十分御研究を願って、そうしてその結論をよく尊重して善処したいという私ども考え方というものも見て、よく理解していただけると思います。調査会で御案内のような結論を一応出しておりますし、私どもはいまそれを尊重しておるわけでございますが、しかし今度大幅の事務の移譲をやったり税源配分などをいたしました上で、また何らかの変化があろうと考えるわけでございます。先にどういうことになるか存じませんけれども、そのときに私はこういった問題が再度議論の対象になると考えております。
  33. 細谷治嘉

    細谷委員 けさの新聞を私拝見いたしますと、この問題について一昨日ですか、区民大会か何か開かれて、ここにいらっしゃいます重盛たちが昨日官報長官にお会いしたようであります。私はまた聞きでありますから実情を存じませんけれども官房長官ことば——私は大臣ことばも逃げことばだと思っている。真剣にこの問題と取り組んでいる姿ではないのじゃないかと思っているが、官房長官ことばはもっと輪をかけておるそうです。そういう問題が出ましたかということばだったそうです。そうなってまいりますと、大臣ことばもきわめて消極的である。こういう自治法を制定してからわずか五年間で、発足した区長公選制というものをやめられて、それから十一年もたっておるのに、これから税源の再配分をやってその実績を見た上でということであります。政府の重要な一翼をになっておる官房長官も、そのことばでは全く無関心である。こういうことになりますと、これはやはり自治法精神憲法基本精神というものを、最高裁合憲といったということ——私はこれは遠慮だと思っている。憲法原則を踏みにじっている。そういうことだから自治法精神というものはだんだん薄れていく。しかも二十七年というのは、端的に申し上げますと、いろいろな地方自治の基本的な勧告が無視されて、地方自治の根幹がだんだん薄れようとする一つの時期なんです。そういう時期にこれがとられた、こういうことでありますから、これは大臣ことばも消極であるが、政府がそれに輪をかけておる。現在の段階において全く誠意がないのではないかと私は思いますが、いかがでしょう。
  34. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そういうことはないと思うのです。私はこの問題について都内でいろいろな議論が行なわれておることも承知いたしております。代表者方々にもお目にかかって、その主張も聞いたわけです。最高裁合憲だとかなんだとかいういまのおことばですけれども、つまり憲法に違反するとかどうとかということでなくて、最高裁が言っておるのは、これは憲法の問題ではなくて、別に立法政策の問題であるということをいろいろと見解を表明しておるわけでございます。そのことを私申したのでございます。それで先ほども申しますように、官房長官はどういうことを申されたか存じませんけれども、私どもも、個人のことを申しては恐縮ですけれども、私もずっと長い間東京都民で暮らしてきておるのです。ですから私は、東京実情というものをまんざら知らぬわけでもないのでございます。私が申しますのは、御案内のとおり、いま調査会答申が出たばかりでございますので、これを各般の状況からいろいろ御検討に相なった上での結論と私は判断いたしますので、今日の段階では、私どもがそれを基礎にしてものを考えていくということは、決して消極的ではないと考えておる次第でございます。
  35. 細谷治嘉

    細谷委員 この調査会答申を見ますと、意見二つに分かれておるわけです。住民の意思に基づいて処理することが効果をあげるゆえんであることを理由に、住民面接選挙に改めることが適当であるとする考え方と、それからもう一つは、都知事選任主導権を持たせることが適当であるとする考え方、現在は都知事選任主導権を持っているのではなくて、区の議会選任主導権を持っておる。それをもっと都知事に権限を持たして選任主導権都知事に与えよう、全く相反しておる意見がある、こういう実情の中において、三十四年に都知事は、区長公選にいたしますということを約束した。しかも都政調査会もやはり公選にすべきだということを主張しております。それを今日もう数年たっておるのに実現してない。これについて自治省は、そういう公選はいかぬのだということで押えた事実はありませんか。
  36. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 東現都知事選挙のときに、どういう形だったか存じませんけれども、そういうことを言われたということは耳にしております。ただいま御指摘のとおりに、この首都制度当面の改革に関する答申の中には二つの愚見があるのだということを明らかに言っております。私先ほど申したとおりでございまして、ただ都知事主導権を持たせるつもりでやったのが途中で御承知のとおりいろいろないきさつがございまして、結局議会都知事の同意を得て選任するという、いわば中途はんぱなようなことになったわけです。しかしこういう問題があればこそ、この問題を検討してもらうために地方制度調査会にお願いしたわけでございますので、その答申がこれになって出ておるわけでございます。私どもはこういう答申というものを基礎にいたしまして、ただいまのような判断をしてまいっておる次第でございます。
  37. 細谷治嘉

    細谷委員 私のただいまの質問は、知事が、区長公選にいたしますということを三十四年の選挙の際に公約をした、この公約は財政事情がどうだとかそういう問題じゃなくて、都知事がそういう公約をしたのを自治省でこれは法律改正すればできることなんです。そうでしょう。それがいまだにできていない。財政が悪かったとか、ほかの理由があるなら別として、公約はできないことはないのですよ。今日までできないということになれば、自治省が渋ったと理解する以外にないですが、行政局長そういう証拠はありませんか。
  38. 佐久間彊

    佐久間政府委員 都知事選挙の際に公約されたことは、私も聞いております。しかしこの問題につきましては、いろいろ世上論議がございましたので、先ほど大臣が仰せられましたように、政府といたしましては地方制度調査会に諮問をいたしまして、各方面の公正な御審議の上に判断をいたそうという措置をとられたわけでございます。
  39. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に的を得ておらないのですけれども、私はこの問題はやろうとすれば、決意すれば簡単だと思うのです。端的に言いますと、私は法律学者でないから、法律が何だとかいって、法律をこね回して言っているんじゃない。地方自治をやった経験から実感として、これはやはり憲法違反だ、自治を伸展させるゆえんでないという実感を持って私は、言っておる。現に法律学者も悪法の中において、最高裁合憲ぎりぎりだ、こういうふうに判断したんでしょうが、地方裁判所においてはやはり偉憲だ、こう言っておるわけです。そうでしょう。知事のやっていることは違憲じゃないのです。むしろ自治法基本精神憲法基本精神に沿ってやっておるその公約を、しかも財政的その他で不可能だという点はない。三十四年のことなんですよ。それをなお検討をして、いろいろな意見があるのでという態度は、これはどういうことばで表現なさろうと、やる意思がない。区というものは、特別地方公共団体という名のもとに、実際はそうでないものにしよう、憲法精神からもっともっと離れようという意図が、自治省当局にあるのではないかと私は確認せざるを得ないのですが、そうじゃないのですか。
  40. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 決してそういうことはございません。積極、消極という使い分けをなさいますけれども、消極的と言われますのはたいへん残念なのです。これは慎重ということばにかえていただくとたいへんいいわけでございます。大事なことでございますので、ただそうおっしゃいますけれども議論が分かれておって、いま、じゃすぐ公選でやるべきであるというのには少し早い、こういうことを私は申しておるわけでございます。いま自治行政を運営なさった御経験があるというお話でございます。どのクラスの自治体だったか存じませんけれども、しかし東京都だとて一つの市には間違いない。市が都という名前がついておるというだけでございます。ほかの市町村とはちょっと違いますけれども、やはりこれを任命制でやる意見があるということは、その背後には、一つの市には違いないのだから、やはりそうばらばらのことにしないで、市は市として一括して統轄したほうがいいのではないかという議論がひそんでおるとも私は考えるわけでございます。いずれが都政がやりいいのか、また終局都民の利益に資することになるのかということになりますと、やはりいまの段階では、私は慎重にこれを判断しなければならぬと考えますので、決して消極ではございません。そのようにひとつ御了承願いたいと思います。
  41. 細谷治嘉

    細谷委員 いささかくどいようですけれども、この問題は、自治という点からいって非常に重要ですし、都の将来にとっても非常に重要な問題であります。そういうことでありますからお尋ねしておるわけですけれども憲法公選と書いてありますね。遠慮だとか、違憲でないとかいう議論は別にしまして、一体憲法精神からいきますと、公選と、いまのような姿と、どっちが憲法精神に近いのか、行政局長見解お尋ねします。
  42. 佐久間彊

    佐久間政府委員 憲法には、地方公共団体の長は公選にするということが書いてございます。しかしながら、憲法で言う地方公共団体が、地方自治法で規定いたしております地方公共団体のどの範囲のものをさしておるかということにつきましては、いろいろ論議のあるところでございますが、今日の学者の通説も、また政府が従来からとっておりました見解も、憲法地方公共団体と申しますのは、地方自治法で言う普通地方公共団体をさしておる、言いかえますれば、その自治体が地方公共団体として一般的な普遍的な性格、機能を持っておるものをさしておる、かような解釈をいたしております。最高裁先ほど来御指摘になっております判決も、そのような見地から特別区につきましては、憲法上の地方公共団体ではないという見解を示しておられるわけでございます。しかし、憲法上の地方公共団体でないといたしました場合におきましても、その地方公共団体につきまして、できるだけその行政が民意に沿って、民意を反映しながら行なわれてまいることが憲法精神から、言うて望ましいということは、これは御指摘のとおりでございます。その民意の反映の方法を、直接長の公選ということにするか、あるいは他の方法によっていくかという点につきましては、これは憲法の問題じゃなくて、立法政策の問題だ、こういうのが最高裁判決の示しておるところでございまするし、昭和二十七年の改正をいたしました際も、当時の政府といたしましては、このような見解で行なっておったわけでございます。
  43. 細谷治嘉

    細谷委員 憲法のやつは普通地方公共団体だ、そしてこれは法律できめるのだ、できました地方自治法の中に、公共団体は普通と特別があるのだ、こういうふうに逃げておりますね。そういうところに今日の地方自治が危機にあるんだという批判が起こってくるのです。門司さんがずっと前に、どうも最近地方自治法の中に、特別区、特別地方公共団体というものを入れて、そうして憲法精神を踏みにじるという意味の発言をこの委員会でなさいました。先ほど申し上げたように、いろいろな特別地方公共団体をつくる、そういうことによってそこにいろんな予算、決算執行権を与える、税を与える、こういうことによって憲法地方自治精神というものが踏みにじられておるというのが現況であろうと思う。私はやはり二十七年を契機として、今日まで、この憲法地方自治精神というのが薄れていっているということはいなめない事実である、この段階においてやはり区長公選制というのをとって、ほんとうに住民につながった自治、住民福祉ということを期すべき自治省の基本的態度ではないか、こう思います。いかがでしょう。
  44. 佐久間彊

    佐久間政府委員 特別地方公共団体をつくりまして、本来の普通公共団体のあり方を曲げるようなことをするということはいかぬというような御趣旨の仰せにつきましては、私も同感でございます。特別地方公共団体をつくります場合につきましては、十分合理的な、根拠のある場合についてでございますから、その場合につきましても、できるだけ民意を反映する住民コントロールの方策を確保するという方向で考えていかなければならないということは仰せのとおりでございます。この特別区の区長選任方法につきましては、先ほど申しましたように、憲法には触れない、問題は立法政策の問題だという考え方をいたしておりまして、その立法政策の問題といたしましても、区政の現状から考えますと、公選にしたほうがいいじゃないかという御議論地方制度調査会にもございましたし、私どももそういう御議論のあることにつきましては、十分理解をいたしておるわけでございます。しかし、同時にまた、それにつきましての批判もあるわけでございますので、それらの点につきましては、なお慎重に検討をしてまいりたい。むしろ当面の改革と申しますよりも、当面の改革は、実施した上で、さらに将来にわたる根本的な問題として、利害得失を十分検討してまいりたい、そういう考え方をいたしておるわけでございます。
  45. 細谷治嘉

    細谷委員 よく例に引かれるわけでありますけれども、ニューヨークあたりにも特別区があって、これはやはり公選をとっておるのですから、私はやはり地方自治という精神からいって、ぜひ憲法精神に沿っていただきたいということを要望いたしまして、次に移ります。
  46. 華山親義

    ○華山委員 関連でございますが、ただいまの御質問の中で承りたいのでございます。  政治上の問題でございますが、東さんは自民党からお立ちになりまして、そうして公選ということを大きな旗じるしにして当選なすった。もちろんこれは自民党の了解を得て、公約の旗じるしになすったことと思うのでございますが、東知事はその後この公約の実現のためにどういうふうな御努力をなすったか、ひとつお伺いしたい。
  47. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 当時、いまの東知事が立候補いたしますときに、公選への努力をするということをおそらく言ったのではないかと思います。知事そのものに権限は私はないと考えておりますが、この問題は、私は平たくこう判断しておるのです。それは、もともと東京府の中に東京市があったわけなんです。ところが、こういういろいろな実情からいたしまして、膨大な市になってしまいますし、結局府そのものが市になったような形のものですから、いま東京都がやっておることは、昔の府がやっておったことと、市がやっておったことと、全部やっておるのが実情になっておるわけでございます。ですから、ただいよ細谷委員の御指摘になった意味というものは、やはり逆にいえば、東京都というものはいまや東京府内な性格にまたなってしまった、だから中の特別区というものは都道府県の中の一つの市的なものじゃないか、だからこれは当然住民の意思を十分反映させるためには、公選にするのがすなおな考え方じゃないかということもわからぬこともありませんけれども、私はこれについて、消極的ということじゃなくして、慎重に考えておる。と申しますことは、いま華山委員が御指摘になりましたように、知事がこういうことを、どういう考え方かしらぬけれども、少なくとも区の自治権というものを拡張していくという考え方は正しいと私は思うわけです。そういった意味で、ぱっと公選ということを口ばしられたのじゃないかと思うわけなんですが、そういった意味で、私はやはり今日の東京都というものを考えてこの問題もやはり前向きに進めていかなければなりません。しかしながら、私はこれは慎重に対処しなければならぬと思うということを申し上げたわけであります。
  48. 華山親義

    ○華山委員 私がお聞きしておるのは、東さんがどれだけの努力をなさったかということをお聞きしておる。それは自治省等に対してどれだけの交渉をなすったか、または委員会等におきまして自分の所信をどれだけ誠意を持って披瀝されたかという点をお伺いしたい。
  49. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 東さんは地方制度調査会委員として公選を極力主張されたようでございます。しかし、いまの段階で東さんの御意見というものがまるまる通らなかった、こういう状態であると考えております。
  50. 華山親義

    ○華山委員 そうしますと、東さんの言われた公約というものは、現在の段階において東さんがなおいいと思っておるけれども、通らないということは、東さんの公約は間違ったことを公約したということに相なるわけでございますか。
  51. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 知事が公約をなさったということは、そのときの東さんの判断でやられたことでありまして、そのことにすぐそのまま政府が責任を負う筋合いのものでも、自民党が責任を負う筋合いのものでもないと私は考えます。しかしながら、これはやはり一つの見方であるのでして、東知事としては調査会の中でいろいろ努力しておりましたが、大勢はこれを了承するに至らなかったわけでございまして、東知事としては一たんそういう考え方を腹に持っておられるからには、やはり今後もそういった御主張はあろうかと思います。
  52. 華山親義

    ○華山委員 私は、とにかく大東京都の知事が立候補する場合に、個人としてはそう思ったであろうというようなことを軽々しく公約することは絶対にいけない。しかもそういうふうな非常に大きな問題について、自民党がその公約をそのまま認めて言わせた、そういうことについて責任がある。そうでなければ、選挙というものは公正に行なわれません。それはやはり公約である以上は、その政党を代表して、とにかくそういう方向に向かってやるんだというふうなことでなければ、これはできないわけである。また東知事がとにかく一千万に近い都民に約束したことについて、これを実現することに一生懸命に努力しなければ、私は選挙というものはおかしなものだと思う。そういうふうなことで、これは政治の根本に関する問題だと私は思います。おそらく東さんは、これは私の意見でございます、私の個人の見解でございますと言って演説なさったのではないと思う。これは全体の政治の姿勢としてお考えを願いたい。  それから東さんがそういうふうな公約をした以上、これはどうしても近い将来に区長公選にするんだという体制が、私は自民党及び自民党に所属したる大臣考えとしてあっていいと思うのです。お考えはいかがでございますか。
  53. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 東さんが立候補されたのは、東さんは正式には無所属として立候補された。ただ私考えますのに、お互いにみな選挙のときにはスローガンを掲げるわけでございまして、東さんだっておそらく区長公選一本やりであの選挙に臨まれたはずではないと思う。おそらく東さんは、私考えますのに、都知事になったらいまの区への事務配分とか、あるいはただいま申しましたような税源の調整と申しますか配分、こういったことも当然そのスローガンのに入れられたでありましょうし、また自分がもしその立場になれば、今度は区長公選への努力をするというぐらいの御表現はあったと思うのです。私は東さんの肩を持つわけではありませんけれども、ただ公選一点ばりで当選したとは考えておらぬわけです。しかしその約束の中の一つである公選については、ただいま申しておりますような努力をやはり東知事としてはしていらっしゃると思いますが、それがいまの段階で実現しておらぬというだけでございまするので、それ以外のことは何もしなかったということは当たらぬと思います。東さんとしては努力はしておられると思います。
  54. 華山親義

    ○華山委員 くどいようですが伺いますけれども、推薦であっても公認であっても、自民党に責任があります大きな問題なのでございまして、このみぞをつくるとか、この川をどうするとかいうことじゃございません。政治の根本に関することで、これは公約なすった。それについて自民党は、その次もやはりこういう推薦でございますか、公認でございますか、よくは存じませんが、そういうふうにして出られた以上、何とかして東さんの公約されたことは実現してやろう、実現すべきだという責任を自民党としておとりになるべきじゃないか。そうでなければ、選挙というものは自民党の推薦でも公認でも意味がない。そういう意味におきまして、どうしてもこれは東さんの公約というよりも、自民党の公約と私は解釈した、これは都政の根本に関する大きな問題なんですから、私はその上におきまして積極的に、よくお話しになる前向きに、区長公選ということをできるだけ早くやる、こういう気持ちであっていただきたいと思います。この点につきまして、そういうふうな気打ちで前向きに努力なさるかどうか、ひとつお伺いいたします。
  55. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 東候補が当時公約いたしましたことについて、全部責任を負えということでございますが、私どもといたしましては、あえてこの分はもう取り上げないということではないのでして、先ほど申しましたように、ほかの問題についてはそれぞれだんだん実現を見る段階になっておるのではないかと思いますが、この問題は、いろいろ議論があるので、なおしばらく慎重に検討しておるということを申し上げたわけでございます。前向きでございますので、このことは御了承をお願いいたします。
  56. 森田重次郎

    森田委員長 重盛寿治君。
  57. 重盛壽治

    重盛委員 細谷さん、華山さんからだいぶ言い尽くされたので、私は簡単に申し上げますが、私は幸か不幸か知らぬが、東さんが初めて出られるときには社会党のほうの知事選挙対策委員長をやっておりました。東さんはなるほど無所属ではあったが、無所属のほうが票をいただくのに都合がよかろうということで無所属なのであって、そのときに私のほうも有田八郎という人を社会党公認として出した。そのときのお約束は単なる思いつきや何かじゃなかった。憲法精神にのっとって、当然東京都の特別区における区長公選すべきだという主張でありました。しかもそれが一番大きな柱で、その他のことは、もちろん住宅の問題、交通の問題などありましたが、みんな社会党の言うことと同じであった。過去の社会党ももちろん区長公選は同じであったが、それを私どもがやらなければできないという形でやったのが東さんであり、さらに細谷委員の言われるようにオリンピックがそうであります。そういう形からいきますならば、当然東さんとしては努力をしてきたと私は思う。努力してきた結果が今日実現をしないということは、一体どこに障害があるか。私は大臣の言うように周囲の情勢とか、これから時期を見てとか、そういうことは自治省自体がこれをむしろ押えておる。障害になっておるのはどこでもない、自治省ではないか、こういうふうに考えるのです。この問題に対して、自治省はそれならば、どういう努力をしたか、その点をまずお伺いいたしたい。
  58. 佐久間彊

    佐久間政府委員 先ほど来お話の出ておりますように、知事選挙の際にもこれが問題に取り上げられておりましたし、それからまた渋谷区におきまする先ほどお話の訴訟の問題も起こりましたし、かたがた都の行政の行き詰まりをどういうふうにして打開するかということについても、いろいろ世上の論議もございましたので、自治省といたしましては、この問題について真剣に検討して措置いたさなければならないということで、地方制度調査会に諮問をいたして、慎重御審議をいただいたということでございます。
  59. 重盛壽治

    重盛委員 それは誠意ある答弁ではありません。自治省は慎重にやったと言うが、慎重にやらないと考えている者は一人もありません。慎重におやりになったということが、ほんとうに慎重にやっているかどうかということの内容の問題です。あなた方御承知の、渋谷でああいう問題が起きまして、裁判で違憲じゃないかという問題が出て、このこと一つだけでも、こういう論理からいって、どうしなければならぬかということは、その一こま一こまで考えなければならない。たとえばその次に港区で警察官が乱入して大騒動になって、その間に一方的に自民党の区会議員だけで押し切って、いわゆる数できめてしまった。あるいは江戸川においても、最近においては練馬においても、区長を区会議員が選ぶという形の中では、汚職、贈賄、あらゆるみにくいことがつきまとっている。自治大臣は五十年の都民だと言われているけれども、私もちょうど五十年東京におりますが、そういう東京都民の一人として、みにくい姿をこういう席で申し上げたくはないが、そういう一こま一こまをとってみても、自治省が今日まで放置しておったということは、私は相当の怠慢と言わなければならぬ。そういう現実を無視して、これから調査いたします、考えますと言うが、先ほど細谷さんの言われるように、当然知り尽しているはずであります。もし知っていないとすれば、これは慎重に考えたということではない。そういう姿の上に立って、どうあるべきかということの答えは当然出ていなければならぬ。その点どういうふうに考えているか。たとえばいま申した港、江戸川、練馬、ああいうところのその後新しく区長をつくったところは全部みにくい問題を起こしている。それらに対してどういう処置をし、どんなお考えを持っているか、お伺いします。
  60. 佐久間彊

    佐久間政府委員 どういう措置をしたかというお尋ねにつきましては、先ほど申し上げましたように、地方制度調査会の御答申を一昨年の十月にいただきまして、その答申に基づきまして、今回の法律案提案するということにいたしたわけでございます。  なお、各区におきまして区長選をめぐりましていろいろ問題のありましたことは、私ども承知いたしております。率直に申しまして、現在の選任方法が最善の方法だというふうには私ども考えておりません。いろいろ欠陥があると思っております。しかし、これをどういうふうに改善していくかということにつきましては、地方制度調査会答申にも両説あって、結論を見なかったというふうになっておりますように、いろいろ考え方があるわけでございまして、その点につきましては、自治省といたしまして現在まだ結論を得ていない。地方制度調査会の御答申に従って当面はなお現状でいくということにいたすわけでございます。
  61. 重盛壽治

    重盛委員 私は権威ある地方制度調査会でありまするから、その内容と審議の過程には疑いありませんが、あなた方の答弁を聞いていると、みずからは自主的にどうしようということでなくて、地方制度調査会のいわゆる隠れみのの中に入って、みずからの自主的な判断は持っておらぬというように聞こえる。それで地方行政をつかさどる自治省として責任をとれるのか。私は、非常にずさんな考え方じゃないかと思う。同時に、こんなことは、何度も言うように、私は、法律的にどうということ、何条にどういうふうになっておるということを指摘しておるわけじゃない、これは常識じゃありませんか。大臣は、先ほど事務移譲をしたりいろいろして、そういう情勢の上に立って、さらに検討をしたい、そうだとすれば、こんな危険なことはないのであります。姿勢をつくるところから、まず区長公選なら区長公選をやってから、それからそこでひとつ仕事を委託していこう、譲っていこうということなら話はわかりますけれども、まずやってみて、その結果、また情勢を見て、ひとつ区長公選にしようじゃないかと、私の聞き方が悪かったかどうかしりませんが、聞こえるんだが、そんな仕事のやり方でいくことは、私はあり得ないと思う。やる前に、区長公選なら公選はやる、そのくらいの腹がまえがなくて、仕事だけやるというのならば、東京都も、自治省とどんな相談をなさったか知らぬが、きょうは時間がないので、別な角度からお尋ねをいたしますけれども、何か都としての責任を区へただ移譲して、まあ、やらしてみよう、やらしてみた結果検討しょう、これは全く無計画に近いやり方だというふうにいわなければならないと私は思いますが、その点どらお考えになりますか。
  62. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 決してそうではないと私は考えます。最初公選であったものが、御案内のような、いろいろなまずい面が出てきたものですから、いまのような、中途はんぱかもわかりませんが、一応妥協約な方法に変わったわけでございます。しかし、御案内のとおり、いまの選任制度のもとに、数個の区では、いろいろな不祥事件が起こりました。これはたいへん私どもは残念だと思っております。しかしこれに類することが、公選にしたらないのかというと、これも全然ないとも言えないわけですが、しかしながら、区には区の議員というものが、言うまでもなく公選選任されておるわけでございまして、それと都知事との間で、ただいまのような推薦を得て任命する、こういう形になっておるわけです。私どもは、何も計画なくして、いまの事務を移譲するとか、税源配分をするとかということを言っておるわけではないのでございまして、やはり一つ意見もあるということを申し上げましたが、東京都といっても、一つの大きい意味では市、つまり、自治体ですから、これを全部統括していきます上におきましては、やはりこの任命制のほうがいいぞという意見もあながち否定はできぬわけなんです。しかし、いずれ、だんだんこういうふうにいまの制度をとってまいりまして、そしてさらに都知事が、いまの東さんが候補のときに申しましたような、いろいろなことも次第に実現しきつつあるわけでありまして、いまそれで残っておりますのは、公選問題だけになっておるかどうか、私、存じませんけれども、それにつきましては、何も自治省で見解を示して、東京都に圧力をかけておるわけでも何でもございません。私たちは、すなおにこの実態を見まして、そしてそういうふうな経過を通じて、また、さらに以前のような公選制に返っていく方向を歩むことになるかもしれませんが、私たちは、いまの段階において、人為的にどうこうという指導をいたしておるわけでは決してございません。
  63. 重盛壽治

    重盛委員 どうも私が質問が悪いのかどうかしりませんが、それではもう結論へいきましょう。この問題は、私は、あとにまた保留をいたしておきます。  まずい面があったから、こういう制度にしたというが、その公選時代のまずい面のおもなるものを二、三あげてみてください。  それから最後に、お聞きしたいのは、大臣は、五十年東京に住んでおって、東京都民でこられた。そうだとするならば、なるほど過去においてまずい面があって、さらに今日の制度に返して、この今日の制度になってから、幾多のまずい面が出てきたわけである。そういう現実からいって、いままでは一東京都民であったが、自治大臣となられたあなたが、これは公選にすべきであるのかないのか、種々の情勢とかなんとかいうことは抜きにして、一体あなたのお考えはどういうふうにお考えになっておるのか、それを一言お聞きをして、きょうの段階は私は質問を保留しておきます。
  64. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 この席で私、いまの立場でやたらに私見を申し上げることは差し控えたいと思いますが、公選でまずいと申しました意味は、議員であれ市長であれ、選挙の場合に、いろいろ委員会でも問題になっておりますが、いろいろな問題が出てきておることは事実でございます。ですから、そういったことを申し上げたわけでございまして、どこで公選であった知事がどうか、あるいは、市長がどうかということは、具体的なことは私はここでは申し上げませんけれども選挙というものについてのいまここで議論をされておることの一面を私は申し上げたにすぎないわけでございます。  それから、後段の、君も長年の東京都民で、個人としてはどう考えておるかということを言われますと、まあ個人のことはちょっとこういう席で、速記のあるところで申し上げるのはいかがと思います。私は私なりの一つの見方はあるわけなんですが、そいつはここで私が私的な議論をすることは、ひとつ御容赦をお願いいたしたいと思うのです。
  65. 重盛壽治

    重盛委員 それはおかしいです。私は、東京都民個人として言えというのじゃないのですよ。こういうように長い間、五十年間東京に住んでおって、東京都民としてこの現実ははっきり把握しておられるわけです。しかも、今日自治大臣となったあなたが、公選制がよいのか悪いのか。そういう周囲の実情や、これからいろいろ積み重ねてやっていかなければならぬ、そのことはよくわかります。私は、そうじやなくて、あなた自身がお考えになって、この段階で自治大臣としてどうお考えになっておるのかということをひとつお聞きしておきたいというのです。
  66. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 東京都を特にあげて申し上げるわけでありませんが、自治大臣の立場としては、やはり市長の立場というものは公選できめられるべきだという判断に立っております。しかし、東京都自体は、いま都というけれども、市には違いないのでして、ですから、先ほど申しますように、東京都にも議会がもちろんありますし、区にも機会があるわけでございまして、これを一体化して、その間、各特別区と都との間に何ら間隙がないような、一体的な行政の運営がどうしてできるかという立場に立ちますと、やはり原則原則として、私は、いまの段階でいろいろ検討さるべきものがあるではないか。このことがいまの調査会のほうでもずいぶん詰められておるようでございます。ですから、私は、いまの段階で、いまの立場としては、いましばらく慎重に検討を加える時期であるという判断に立っておるわけであります。
  67. 重盛壽治

    重盛委員 それではどうも私は納得しませんから、非常に重要な問題でありますから…。
  68. 森田重次郎

    森田委員長 発言を抑える意味はありませんが、時間もまいりましたので、あとでまたゆっくりとひとつ…。
  69. 重盛壽治

    重盛委員 これで、質問は留保いたしておきます。
  70. 細谷治嘉

    細谷委員 私も、次に移ろうと思っておったのですが、いまの大臣のおことばに、どうも公選ということは、政治にギャップがある、間隙があるというようなおことばを聞いたんで、どうも大臣は、東京都のこの問題に限らず、しんから、知事官選という二十七、八年のころの背景をいまだに腹の中におさめておるんじゃないかと思いますから、私も、その問題を保留し、その他の問題もまた保留しておきます。
  71. 森田重次郎

    森田委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時十分散会