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1964-04-07 第46回国会 衆議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月七日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 田川 誠一君 理事 渡海元三郎君    理事 中島 茂喜君 理事 永田 亮一君    理事 藤田 義光君 理事 川村 継義君    理事 佐野 憲治君       大石 八治君    奧野 誠亮君       久保田円次君    武市 恭信君       登坂重次郎君    村山 達雄君       森下 元晴君    山崎  巖君       和爾俊二郎君    秋山 徳雄君       阪上安太郎君    千葉 七郎君       華山 親義君    細谷 治嘉君       松井  誠君    栗山 礼行君       門司  亮君  出席政府委員         警察庁長官   江口 俊男君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      後藤田正晴君         自治政務次官  金子 岩三君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備第二課長) 後藤 信義君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     山本  悟君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 四月七日  委員盛寿治辞任につき、その補欠として松  井誠君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松井誠辞任につき、その補欠として重盛  寿治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出第九二号)  警察に関する件(公安条例運用等に関する問  題)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    ○森田委員長 これより会議を開きます。  地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題として、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。千葉七郎君。
  3. 千葉七郎

    千葉(七)委員 私は、地方交付税法改正にあたりまして、地方財政計画との関連におきまして若干お伺いをいたしたいと思うわけであります。  地方財政計画に関する大臣説明によりますと、昭和三十九年の地方財政計画は「国と同一の基調により健全均衡財政を堅持しつつ、地方行政水準の一そうの向上をはかり、かつ、地域開発の促進と地域格差の是正をはかることを目標と」してこの地方財政計画を樹立したという御説明であります。もちろん、地方自治法の第一条、第二条、地財法の第一条、第二条によりますれば、大臣のこの説明は当然なわけでありまして、地方財政の健全なる振興、発展ということを目標にしなければならないわけでありますが、はたして、今年度地方財政計画書を見まして、大臣説明された趣旨に即応しておるかどうか、こういう点に私は二、三疑問を感ぜざるを得なかったわけであります。地方財政実態は三十六年、三十七年におきましては、必ずしも健全な状態ではなかったというように感じられるわけでありますが、まず第一に、三十六年、七年の地方財政計画と、それからこの両年における単年度決算額は一体どのように相なっておるか、地方財政計画に対して決算状況は、黒字であったか赤字であったかという点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 柴田護

    柴田政府委員 ちょっと御質問趣旨が明確にわかりにくいのでございますが、三十七年度について決算財政計画がどのような形になっておるかというお尋ねかと実は思うのでございますが、さように……。
  5. 千葉七郎

    千葉(七)委員 三十六年、七年両年……。
  6. 柴田護

    柴田政府委員 ちょっと三十六年度決算計画との差額につきましては持ち合わせておりませんが、三十七年度につきましては、歳入につきましては、純計決算におきましては二兆九千八百二十九億円、これに対しまして地方財政計画上は二兆二千八百五十一億円、差額は六千九百七十八億円であります。歳出におきましては、歳出の純計決算額は二兆八千八百七十四億円、地方財政計画上の額は二兆二千八百五十一億円で、六千二十三億円の増加と相なっております。  差額の非常に大きな点を申し上げますと、地方税につきましては千二百五十八億円の増加であります。これは地方税収入が当初計画を計上いたしました後において自然増収がありましたこと、その他超過課税等を全部含んでおりますので、差額が出るのは当然であります。交付税は二百九十三億円の増でありますが、この二百九十三億円につきましては、その後地方交付税補正予算に伴う増であります。地方財政計画は当初計画を立てまして、その後におきまして補正をいたしておりませんので、補正に関するものの増であります。また国庫支出金の八百九十五億円の増加、これは繰り越し事業関連するものだと思います。それから地方債が五百六十、五億円ふえておりますが、これも同じように地方債計画策定以後において生じた事由によって地方債増加した部に関するものであります。また繰越金が千二百六十億円違いますが、この千二百六十億円は地方財政計画上は単年度のものでございますので、繰越金は計上いたしておりませんが、決算上は繰越金が出てまいるわけでございます。したがって歳入面におきましては非常に大きく違いますのが地方税、それから繰越金、それぞれ千二百億円程度違うわけでございます。  それから歳出におきましては、給与関係費で千五百二十九億円違います。決算額は九千九百六十九億円に対しまして地方財政計画額は八千四百四十億円でありまして、その差額は千五百二十九億円であります。これは御承知のように、地方財政計画上は公務員ベース計算をいたしておりますが、実際の支出はそれとは異なった形で行なわれておりますので、その関係差額であります。この中にはベース関係のものとそれから施設関係の職員の増減、この両方が含まれておると思います。それから一般行政経費で千百六億円違います。この中身はいろいろございますが、単独事業であります出資金貸付金物件費その他の点で違うであろうと思うのであります。  それからまた投資的経費におきましては歳出決算額が一兆六百八十億円に対しまして、計画額は七千九百四十五億円で、差額が二千七百三十五億円ございます。そのうち大きなものは普通建設事業費の二千三百二十億円の増でありますが、これも事業の前年度からの繰り越し等関連するものであります。それから繰出金が四百八十七億円あります。積立金が二百四十五億円あります。これらは地方財政計画上は単年度収支を考えておりますので、地方財政計画上の計算には出てこないものでございます。したがって、この状態から判断いたしますならば、歳出入ともそれぞれ地方財政計画決算額とは違っておるわけでございますが、非常に大きく違っておりますのが、歳出面では給与関係経費、それから投資的経費、なかんずく普通建設事業費であります。歳入面では税とそれから繰越金関係でございます。  また昭和三十六年度におきましては、同じような計算歳出におきまして四千七百八十五億円計画額に対しまして決算額が多うございます。決算額は二兆三千九百十一億円に対し、まして、計画額は一兆九千百二十六億円であります。これも先ほど御説明申し上げましたと同じように、計画ベース決算ベースとの差異に基づくものがおもでございます。中身は、この違いは完全に説明がつくわけでございます。この両方の差から考えますならば、計画上の問題としては給与関係費算定がこれでいいのかどうか、運営上の問題がありはしないかといったような問題、繰出金が逐次ふえてまいってくる傾向にある、こういった点につきまして、なお計画策定上は検討を要するものがあろうかとは考えておる次第でございます。
  7. 千葉七郎

    千葉(七)委員 ただいまいろいろこまかく御説明をいただいたわけでありますが、いずれにいたしましても、計画と実際の決算額とが大きく食い違いをいたしておるというわけでありまして、したがって当初の計画と実際の地方財政状況というものは大きな食い違いがあるということは、これをもって見ても明らかなわけであります。そこであらわれました数字を見ますと、昭和三十七年におきましては大体この計画においても、それからこの実際の決算面数字を見ましても、どうやら全国総額におきましては収支が均衡いたしておるというふうに見られるのでありますが、しかしその内容は、さらに検討してみなければわからぬわけですけれども、三十六年と三十七年における赤字団体全国で幾らあったか。単位度計算において赤字団体が三十六年、三十七年にどういう状態になっておったかという点をひとつお知らせ願いたいと思います。
  8. 柴田護

    柴田政府委員 三十六年度実質赤字団体は四百四十二団体であります。三十七年度におきましては四百九十五団体であります。
  9. 千葉七郎

    千葉(七)委員 ただいまの御答弁によりますと、赤字団体がこの歳入歳出全国状況を見ると、大体それは均衡いたしておるというわけでありますけれども、その内容検討すれば、三十六年においては赤字団体が四百四十三団体府県赤字団体というのはないのですか、これは府県まで加えての計算でしょうか。それから三十七年においては四百九十五団体赤字を出しておる、こういうわけでありますが、この数字を見ますと、六年、七年と逐次赤字団体がふえておるというわけであります。そこで、三十八年度計画高決算見込み額はどういうぐあいになっておりますか。三十八年度計画高決算見込み額、さらにもう一つ加えまして、三十八年度決算状況、これは推定よりほかないと思いますが、その推定によれば赤字団体が三十七年度よりも増加傾向にありますか、あるいは減少の傾向にありますか。おわかりであったらお答え願いたいと思います。
  10. 柴田護

    柴田政府委員 三十六年度から三十七年度にかけまして、赤字団体がふえてまいっております。先ほど私が申し上げましたのは、府県市町村も含めての数字でございます。  また、御参考に申し上げますと、赤字額も三十六年度の百二十七億から百七十五億円、若干ふえております。しかし、逆に黒字額は六百四十九億円から六百十三億円というように若干減っております。差し引きいたしまして、御指摘のように赤が黒で埋まるものですから、総体は収支バランスがとれておるようなかっこうになるわけでありますが、赤字団体ごとに、黒字団体ごとに集計してまいりますと、いま私がお答え申し上げましたような状態になるわけでございます。三十八年度につきましては、この傾向がどうなるかということは、実は私も非常に心配をいたしておるわけでありますけれども最終予算が各地方団体できめられたばかりでございまして、まだ四月、五月と二カ月出納閉鎖期間があるわけでございますので、その結果を見ませんと、歳入の最後の徴収状況歳出執行状況がつかめないわけでございます。したがって、いまにわかにどうということは言えないと思いますけれども、三十七年度に比べますと、三十八年度は多少税収入のもどりがあるわけでございまして、ほぼ三十七年度大差ないかっこう推移をするのじゃなかろうかというように私個人は考えておりますけれども、正確なところはもう少し時間がたちませんとつかみにくいのでございます。
  11. 千葉七郎

    千葉(七)委員 ただいまの御答弁によりますと、大体三十八年度においても赤字団体が三十七年度よりも減るという見通しはない、かように理解をしてよろしいわけですか。
  12. 柴田護

    柴田政府委員 三十七年度赤字団体赤字を解消していくでありましょう。三十八年度にまた新たな赤字を出す団体がありはしないかというように実は考えるのであります。
  13. 千葉七郎

    千葉(七)委員 そうすると、三十七年度の四百九十五団体比較をして赤字団体が減るかふえるか、私はその点をお伺いしているわけなんです。
  14. 柴田護

    柴田政府委員 データを持ちませんので、何とも申しかねるのでありますけれども、大力の見通しとしては、大勢は大差ないだろう、四百九十五団体、多少変動はありましょうけれども、そう大きな変動を来たすことはあるまいというように思うのでございます。
  15. 千葉七郎

    千葉(七)委員 ただいまのお答えによりますと、四百九十五団体よりも多少変動がある、多くなるか少なくなるかわかりませんけれども、それ以下になるというはっきりした見通しはない、このように理解をいたしまして質問を進めてまいりたいと思います。  そこで、全国町村会のいろいろな調査の資料をいただいて、見たのでありますが、この全国町村会の調べによりますと、三十七年度の、ある町の基準財政需要額に対して一般財政財源決算額比較してみますと、需要額においては八千八百六十五万円、これは秋田田沢湖町の実態なのでありますが、一般財源決算額によりますと、一億一千七百十七万円でありまして、したがってこの基準財政需要額の積算とそれから決算額との比較を見ますと、決算額において財政需要額よりも二四・三%超過をしている、こういう実態であります。それからまた鹿児島県下の市町村実態を見ますと、三十七年、同じく基準財政需要額が八十四億九千四万円、それに対して決算額が二百七億三千九百七十八万円、大体これも秋田県の田沢湖町の率と同じでありまして、需要額に対する決算は二四・四%超過をしている、こういう実態になっているわけであります。こういう実態から考えますと、実際の決算状況比較をいたしまして、基準財政需要額計算が非常に低く見積もられているのではないか、こういう点が感じられるわけであります。その点に対しましては、当局はどういうふうに見ておりますか、お伺いをいたします。
  16. 柴田護

    柴田政府委員 お示しの数字が、基準財政需要額にあがってくるものに限っての比較でございますか、あるいは財政全体の一般財源基準財政需要額というものの比較でございますか、そこがはっきりいたしませんが、かりに後者であるといたしますならば、三割の税金は除外して計算しておりますので、このぐらいの差が出てくるのは、これはあたりまえと申すと語弊がありますが、まあまあそれはしょうがないというふうに思うのでございます。ただそれが個々の費目別決算額というものと需要額というものを計算してまいった結果こういうことになったということでありますれば、検討を要する問題があろうかとも実は思うのであります。ただ一般的に申し上げましても、決算額によります一般財源基準財政需要額との陶に三割程度の差があっても、そうびっくりすることはないのでございますけれども、その一般財源というのが、この前税法審議の際にも御指摘がございましたように、市町村民税につきまして、ただし書き方式の高いものを採用してなおかつそうだというところに、実は市町村財政問題点があるように私どもは承知いたしているのでありまして、したがってまたそういった弱小市町村につきましては、税制改正を行ないましても、減収補てん措置を講ぜざるを得ませんし、また地方交付税配分におきましても、財源傾斜配分を一そう強めてまいる、こういう方向をとってまいらなければならぬのではないか、そういうふうに考えまして、今回の改正法案では、基準税率を七五%に引き上げまして傾斜配分を強める一方、従来からやっておりました態容補正傾斜緩慢化と申しますか、十種地以下の態容補正係数傾斜差をなくするという方向で、三十九年度交付税算定を行なってまいりたい、このように考えて措置をいたしておるわけでございます。
  17. 千葉七郎

    千葉(七)委員 私案は町村長会からいただきました資料を忘れて持ってこないので、それ以上深くお伺いすることができなくなってしまいましたが、いずれにいたしましても、三十七年の実態、それから三十八年の実態を考えるときにおきましては、地方財政状況が決して好転をしておるというようには考えられないわけであります。三十九年は、大臣説明にもありますように、健全均衡財政を堅持して、地方行政水準を向上させる、こう言うのでありますから、おそらくそういう結果が出てくるのではあろうと思いますけれども、いままでのここ二、三年の地方財政実態をいろいろな面から検討してみると、はたしてことしの計画で、ことしの地方自治体財政状態が三十八年よりも好転するのかどうか、地方自治体健全性をこの計一画で貫き得るかどうかということに、大きな疑問を私は感ぜざるを得ないわけであります。あるいは、前年、前々年のような結果が、ことしも招来されるのではないか、このように考えられるわけでありますが、その点につきましては当局は、ことしは昨年と比較をして、赤字団体が絶対減少するという自信がもしおありになったら、その自信のほどをひとつここで表明していただきたいと思います。
  18. 柴田護

    柴田政府委員 三千五百有余にのぼります地方公共団体財政状態でございますし、私ども何らの税制措置も持たないわけでございますので、赤字を出さないかどうかということを確信を持って答えるというわけには実は参らないと思うのでございますけれども、私どもといたしましては、財政運営である以上は、収支じりが合うのがあたりまえであって、収支じりが合わないのはむしろおかしいのであります。したがって赤字のある向きにつきましては、すみやかに赤字計画的に解消するように、また財政運営にあたりましては、経費重点的配分に意を用いて、管理経費合理化をはかってもらいたいということは、従来からも口をすっぱくして言ってまいっておりますし、今後におきましても同じような方向で、さらにきめこまかく指導をいたしてまいりたい、かように考えております。  従来に比べまして、財政があまりよくなってないじゃないかという御批判がございましたが、義務的経費投資的経費歳出総額に占めます決算額をながめてまいりますと、義務的経費歳出中に占めます割合は、昭和三十一年度では四九・七%、投資的経費の占めます割合は二七・四%、こういう構成比が三十一年、度にあらわれております。その後この傾向は逐次是正されてまいりまして、昭和三十七年度決算におきましては、義務的経費の占める割合は四二・八%、投資的経費の占めます割合が三七%、つまり義務的経費伸びに比しまして、投資的経費伸びが非常に大きくなっておるわけでありまして、財政の構造的な形から申し上げますならば、地方財政の姿というのは、そういう意味合いにおきましては漸次好転しているということが言えるかと思うのであります。私どもは、財政健全性をどう考えるかということでございますが、やはりこれは収支じりだけの問題をとらえませず、やはり財政中身弾力性と申しますか、構造的意味における健全性といいますか、そういうものをつかまえていくべきじゃなかろうか。そうなってまいりますと、その進度は御指摘のように必ずしも早くないのでございますけれども、しかしながら年を追って合理化をしてよくなってきておるということが言えるかと思うのであります。三十九年度におきましても、その傾向をさらに助長をするように指導をしてまいりたい、かように考えております。
  19. 川村継義

    川村委員 いま千葉委員のほうから、財政計画等の問題についてお尋ねがあっておりましたが、私関連をして、この際一言御意見を聞いておきたいと思うのです。  三十七年度決算等をずっと見ておりますと、一般財源構成比がだんだん落ちておるのですね。これは私たいへんな問題ではないかという心配をいたしております。そのほか三十九年度財政計画策定内容をいろいろ検討してみますと、やはりこの際一般財源を強化するために、交付税率改正をする時期ではないか、こういうような考え方を持っているわけです。主税の伸びによってことし、三十九年度は、三十八年度繰り越しも合わせて八百億ばかりの交付税増額になるようでありますけれども実質は三十八年度配付された交付税額と、三十九年度に交付される交付税額というものは、そうたくさん財政計画の上にあらわれてきておるような差があるわけではない。そういう点を考えてみますと、非常に財政運営地方団体は窮屈な思いをしてくるのじゃないか。だから千葉委員からも指摘があったように、三十八年度も三十七年度より財政が好転したと思えないし、三十九年度だってやはりそういう心配が絶えない、こういうことになっていくのじゃないかと思いますけれども当局のほうでは交付税増額、いわゆる交付税率をこの際改めるというような検討は、全然なされておりませんか。その点をまず第一にお聞きをしたいと思う。
  20. 柴田護

    柴田政府委員 地方交付税率をどうするかという問題につきましては、地方財政全体の情勢と国全体の財政状況両方を総合的に勘案をして検討すべき問題じゃなかろうかというように、全般として私は考えております。しかしながら、その問題の前提として、今日の地方財政の姿をどうながめるかという問題があろうかと思うのでございます。私どもは過去の推移から考えてまいりますと、あるべき姿といいますか、理想からは必ずしも近くないかもしれませんけれども、先ほど来お答えを申し上げておりますように、逐年その構造的な形というものはよくなってきておるのではなかろうか。赤字団体が確かに昭和三十六年度に比べまして、三十七年度ふえておりますけれども、この中には潜在赤字が顕在してきたものもありますし、また投資的な経費需要の前に、いろいろ無理算段をした結果、足を踏みはずしたといったようなものもあるわけであります。したがって、この赤字団体のふえたということだけをもって、一がいに財政がどうかということを論ずるのは、やや早計じゃなかろうか。むしろ決算財政計画との検討というものを通じまして、財源措置としていままでなされてきたもの、それからこれからなされようとするものにつきまして、それが適切であるかどうかといったような問題を検討いたしてまいらなければならぬかと思うのでありまして、その上でもって判断すべきものじゃなかろうか。私どもは先ほど来お答え申し上げましたように、大きな特色としては、給与関係経費の開き、それから投資的経費の開き、繰出金増加状況、おおむねこの三つの問題を注目すべきものとして考えているわけでございますが、決して検討を怠っているわけではございませんで、全般につきまして、この辺でもう一ぺん再検討すべき時期にきておるということは考えますけれども、それをもって直ちにそれが交付税率の引き上げに結びつくかどうかということにつきましては、なお慎重に検討すべきものがあろうかと考えております。
  21. 川村継義

    川村委員 いまの御意見に基づいて、さらにひとつお聞きをしておきたいと思いますが、いまもお話がありましたように、いろいろの要素が考えられねばならぬと思います。その場合に、繰出金状況等も確かに問題でございましょうが、三十七年度決算から見ましても、非常に繰出金等が多くなっておる。こういうのは、私はやはりそう好ましい状況ではないのじゃなかろうかという考え方を持つわけです。  そこで、先ほど千葉委員からも御指摘があったのですが、決算財政計画の問題をちょっと考えてみると、私が先ほど申し上げましたような心配をやはり持つわけですが、三十七年度決算で、まず歳出のほうを見てまいりますと、給与関係費が九千九百六十九億、一般行政費が五千七百六十七億、公債費が一千八十七億、維持補修費が五百五十七億、投資的経費が一兆六百八十億、総計して三十七年度決算は二兆八千八百七十四億を示しております。ところが、これは三十七年度計画額に比べますと、六千二十三億という多くの支出増を示しているわけであります。これには先ほど局長から説明がありましたような、いろいろな要素があって伸びた、これは当然でありましょう。また、計画決算とが一致するということは、これはあり得ない、これも当然だと思います。しかし、その三十七年度計画決算を見てみると、六千二十三価というような大きな開きを示している。ということは、一体計画というものはどういう位置を占めねばならないか、こんなに大きな開きを示すような計画というものがあるだろうかという疑問が、まず第一に起こってまいります。しかも、三十七年度決算のいまの各経費による決算額と、総額を見ましても、三十八年度計画よりも上回っておるはずです。三十八年度計画総額は二兆六千三百三十六億、三十七年度決算は二兆八千八百七十四億だから、はるかに決算のほうが上回る。これは給与関係経費について見てもそのとおり、一般行政費について見てもそのとおり、投資的経費について見てもそのとおりであります。投資的経費昭和三十八年度計画は九千百四十三億、三十七年度決算が一兆六百八十億である。だから相当の大きな開きを持っているわけです。そうなると、一体三十八年度計画はこれでよろしかったのか。ただ単に三十七年度にこういう計画を立てた、その三十七年度計画はこれだけの財政需要伸びがある、これだけの収入の伸びがある、だから三十八年度計画はこうなります。三十六年度の当初計画はこうである、それにさらに歳入歳出の増を見るときに、三十七年度計画はこうである。三十八年度の当初計画が二兆六千三百三十六億、三十八年度の当初計画に比べてみるとことしは歳出の増がこれだけ必要である、歳入増はこれだけある、だから三十九年度は総計三兆一千三百八十六億の計画になります。こういうことの繰り返しで一体地方の財政指導ができるかどうか。私はこれが一つ大きな問題ではないかと思う。財政計画は、言うまでもなくその年度財政運営の指針となり、目標であるという。ところが、いま申し上げましたような結果をいろいろ分析してみると、全く指針ともなり得ない、目標ともなり得ない。地方公共団体に対して何らそういうような権威のあるものとはなっていかないのが財政計画の現状ではありませんか。繰り返して申しますけれども昭和三十八年度の九月における現計予算を見ると、三十九年度のいま皆さん方がお立てになっておる計画よりもはるかに上回っておる。たとえば歳出給与関係経費のことしめ計画額は一兆千二百二十五億である。ところが、昭和三十八年度の九月における現計予算は一兆千三百八十一億である。これはすべての項目にそれが当てはまるのですよ。それならば一体三十八年、昨年度地方団体は九月の現計予算においてむちゃくちゃな予算を組んだかというと、そうではない。おそらく押えに押えて、実態ぎりぎりの予算を組んでおるに違いありません。実態ぎりぎりの予算を組んだのが、いま私が申し上げたような昭和三十八年九月における現計予算額になってきておる。これは歳出を見ても歳入を見てもそうです。ところが、三十九年度計画は、その三十八年度の九月における現計予算よりもはるかに下回るような計画しかない、こういうことが出ておるわけです。歳出の総計において、昭和三十八年度の九月における現計総額は三兆三千七百十八億、三十九年度は、いまの計画は、三兆千三百八十六億で相当の開きがある。繰り返して言いますけれども、これでは財政計画をお立てになっても、地方団体財政運営の指針ともなり得ない、目標にもなり得ない。実態とは実に離れたところの形になってしまっているのではないか。ここに私は一つ問題があると思う。この点を皆さん方はどうお考えになっておりますか、ひとつお考えを聞かせておいていただきたいと思うのです。
  22. 柴田護

    柴田政府委員 非常にむずかしい問題でございます。御質問の際にあげられました計数自身はおそらくはそういうことであろう、私も三十八年度の現計予算のことは詳しく存じませんけれども、おそらくはそういうことであろうと思うのでございますが、ただ過去におきまする事例をずっと振り返って考えますと、決算額財政計画額に近づいていくということは、地方財政が困っておる証拠であります。財政がよくなってまいりますと計画額決算額というものは開いてまいります。それは、財政計画決算が近づくということは、結局財政計画決算を縛ってしまうようなかっこうになってしまう、かえってそれは地方団体の創意ある財政活動を阻害する面もありはせぬかということを考えるぐらいでございまして、一体にそういう場合には財政が苦しくなっておるのが大体現状であります。私どもは今日の財政計画が、いろいろな意味合いにおいて再検討する時期にきておるのじゃないだろうかということは、よくわかるのでありますが、このままこういう形がいいのか、あるいは別な形があるのかという問題につきましては、さらに検討すべき点が残されているだろうというふうに思うのでございます。ただ、従来からのあり方から考えますならば、財政計画中身の積算を通じまして、そこには、おっしゃるような全然指導性がないという意味じゃございませんで、中身算定を通じましてやはり相当の指導性を持っておるわけでございます。決算との比較において、中身のどこが違うのだということがまず問題にさるべきであって、総体の規模そのものにつきましては、長い財政活動の連続いたしております中の一年度決算ということでありますので、過去からの連続もありましょうし、将来の繰り越し分もあるわけでございますから、そういうものを捨象し去って、単年度としての財政全体の見通しを立ててきたわけでございます。その場合に、給与関係経費でございますとか、あるいは一般行政費中の膠着性のある経費でございますとか、投資的経費中身でございますとか、こういうところにつきましては、なおもっと財政計画を立てます場合に検討を加えていかなければならぬ部分があると思うのでございますけれども、しかしながら、たとえば一般行政費の中でも出資金貸付金というようなものになってまいりますと、歳入には同じように出資金貸付金の回収額が上がってまいりますので、規模全体としてはどうしても財政計画より決算額がふえてまいる、これは当然のことじゃなかろうか。問題はそういうところじゃございませんで、むしろ膠着性のある経費というものが、どのような形でもって決算計画が食い違っているか、そこをまず分析してみる必要がありはせぬか。でなければ、投資的経費に回されると期待いたしました財源がそのように回らない、あるいは地方団体の創意による財政活動を期待しておる財源が、そうはいかないといったようなゆがみが出てまいりますので、そこのところをもっと分析する必要があるだろうというふうに実は考えておるわけでございます。財政計画そのものにつきましては、現在のところその辺の分析から入っていきたい、そしていまの財政計画について改善すべき点があるものは、いさぎよく改めていきたいというふうに考えております。
  23. 川村継義

    川村委員 いまお話の点、わからぬではございません。ただ、私が言っておるのは、決算額計画額とが一致をするとか、そういう意味で言っているわけじゃないのでありまして、これは当然のことであります。ただ、先ほど申し上げましたように、毎年毎年の決算計画、次年度に立てられる計画等を見てみると、あまりにも開きを示しておるから、これではやはりその年度年度計画というものが、地方団体財政運営指導性を発揮するに乏しいのじゃないか、無意味なものになってしまっておるのじゃないか、これは言えると思う。ことし、三十九年度のこの計画を見てこのとおりに運営しなければならぬということは、地方団体ではつめのあかほども考えていない。またこれで地方団体の総計されたところの財政歳出歳入の総予算額というものが立つわけではない。先ほど局長からいろいろ話がありましたけれども、私が言いたいのは、歳出の面について先ほど私が申し上げたような姿が明らかに出てきておる。歳入の面で見てみますと、実はあなたがおっしゃたような問題点が含まって出てきておるわけです。そこで、そういう点でむしろ地方財政運営を非常に硬直させてくる結果になるのではないか、こう思っておる。そこで、歳入面で一つの例を申しますと、地方交付税のこれを見てみますと、三十七年度計画額は四千五百八十一億、三十七年度決算には補正等もありまして四千八百七十四億出て  おる。それが三十八年度計画では五千五百三億出ておる。ところがこの場合、三十八年九月の現計予算において地方はどれくらいの地方交付税収入を想定しておるかというと、計画よりもはるかに下回った五千二百九十八億出しておる。これは結局これだけの交付税が入るかどうかわからぬ、またあなたのほうのいろいろ指導もあったと思う、本年度は六千三百五十一億、こういうことになってきておるわけです。そこで、こういうような地方交付税の見積もりは、押え押えて予算を組んでいかなければならぬ。ところが歳出のほうを見てみると、どれもこれも必要なふくらましをしなければ予算が組めない、こういう結果が出ておりますから、非常に窮屈な、言うならば硬直したそういう予算編成というものにならざるを得ない一つの要因がここにもあるのではないか、予算編成の技術面からと、その収入の見積もり額の上から私はそう考えるわけです。ということは、別のことばで申し上げますならば、地方は収入の上では地方税の非常に大きな収入を期待しながら予算編成をする。地方譲与税は減っていく。交付税はいまのような形で少しばかりの伸びしか見せてこない。そうなると、一般財源が窮屈である。地方税は見積もりは多くしておるけれども、どうなるのかわからぬ。ところが投資的経費歳出は、いろいろと大きく迫られておる。こういうところに、いろいろの財政運営のゆがみを生じてくる原因があるのではありませんか。そういう点を考えていくと、初めのことばに返りますけれども、もうここらあたりで一つの結論として、交付税改正交付税額をもっと引き伸ばしてやる。そして第二には、地方財政計画そのものの立て方というものを再検討する時期ではないか。でなければ、先ほど申し上げましたように、財政計画は、せっかく苦労して歳入歳出見積もりを立てられても、地方団体財政運営のほんとうに指針となる、そういう指導の権威あるものとはなり得ないのじゃないかと私は考えられてなりません。いま一度お考えを聞いておきたいと思います。
  24. 柴田護

    柴田政府委員 地方財政実態計画額の開きは、どこに大きな問題があるかということにつきましては、先ほど来るるお答え申し上げておりますとおりでございます。それに関連をして、実は何と申しましても地方公共団体がいま非常に困っておりますのは、行政施設水準の早急な向上、こういう需要を前にして、投資的経費を充実して、早く施設水準を向上いたしたい、こういうことであろうと実は私は思うのでございますが、そのために、おっしゃるように多少財源的な無理をしても歳出を計上して、そして財源見通しがつけば執行していく。こういうような財政運営方針をとるところが多いのじゃないかと思うのでございます。それに関連しては、私どもは、一般会計の地方債のあり方につきましても、やはりこの辺で再検討すべき時期にきているのじゃなかろうか。ここ数年来、一般会計の地方債につきましては、公債費問題の解決の手段として抑制をしてまいってありますけれども、しかしそういう事情を考えまして、その対象になる地方団体が非常に財力の弱い地方団体である場合を考えますときには、やはり地方債運営についてはもう少し考え方を変えていかなければならないという考え方を持つわけでございます。十分まとまって、こうしなければならぬというところまで結論は出ておりませんけれども、そういう意味合いにおきましては、こういう問題もございますし、御指摘のように地方財政計画全体について、もう少し掘り下げて再検討する余地がないかといえば、これも先ほど来お答え申し上げておりますように、やはりあるのじゃなかろうかと私は考えておるわけでございます。しかしそのことから、直ちにそれが交付税率の問題に結びつくかといいますと、問題は若干残るのじゃないか。私どもといたしましては、できるだけ地方の団体財源としては税源を与えて、やりたい。特に都市財政等を考えますならば、やはり税源を与えるというところに都市の財政活動、行政活動が期待されるわけでございますので、そういう方向でものを考えたいのでありますけれども、しかしながら財政全体の見通し、国との関連あるいは国民の租税負担を考えてまいりますと、交付税の問題にも問題が及ぶかもしれません。しかしながら、そういう全体の検討を通じて一つの転機に立っております地方財政の現状に対処していくためには、ともかく全般的な検討が必要だろうということは私どもも痛感しておるわけでございます。非常にお答えがはっきりいたしませんので恐縮でございますけれども、要するに全般的に今日動いております地方行財政実態に立って、財政計画につきましても再検討を要することは十分承知いたしておりますし、全般的な見地からさらに再検討をし、合理的な方向に持っていくように進めてまいりたい、かように考えております。
  25. 千葉七郎

    千葉(七)委員 先ほどの局長さんの御答弁では、財政計画に対する決算状況は、あるいはまた赤字団体がふえておるというその内容は、この一般行政経費とそれから投資的経費とを比較いたしまして、投資的経費のほうが義務的経費よりも非常に割合が減っておって、義務的経費のほうがふえておる。そういう状態になっておるから、したがって赤字団体が全部ふえてまいっても、決して地方の行政水準が落ちたことにはならぬ。こういう御答弁のように了解をいたすわけでありまして、三十七年度決算においては従前の決算比較をして義務的支出のほうが四二・八%、投資的経費のほうが三七%で従来よりも減っておる、こういう御答弁と思いますが、そこでお伺い  をいたしたいのは、投資的経費が三七%、義務的経費が四二・八%でありますが、三十九年度計画を見ますと、投資的経費割合は全体の三六%になっておるわけであります。三十七年度投資的経費の三七%というのは、おそらく三十七年度の当初の財政計画では、これほどの割合は見ていなかったのではないか、かように考えられるわけであります。しかるに決算面にあらわれた投資的経費割合が三七%になったのだ、こういうふうに思われるわけですが、そこで三十九年度投資的経費三六%の見積もりは、おそらく当初の計画のこの割合ではとうていおさまらないだろう、そういうことが推測されるわけであります。そういうふうに考えてまいりますならば、ことしの財政計画というものは投資的経費のほうが非常に大きくて、しがって義務的な一般行政費のほうをこれからの予算の執行の経過においては大きく圧迫していくのではないか、このようにも考えられるわけですが、その点についてはそういう心配はないのでありましょうか。
  26. 柴田護

    柴田政府委員 私が先ほど申し上げました比率は決算面の比率でございます。計画面と決算面に、投資的経費につきまして先ほど来お答え申し上げておりますように非常に大きな開きがございますが、これは繰り越し事業事業が繰り越されていくわけでございますので、その繰り越し額が加算されてこういう形で決算面計画面の開きが大きく出てまいっておるわけでございます。それにさらに年度の途中で災害が起こります。この災害の復旧事業費の年度割の変動に左右される点があるわけでございます。計画面はさようなことを考えませずに、事業繰り越し関係を考慮に入れまぜずに、単年度限りの計算をいたすわけでございますので、投資的経費の比率もおのずから変わってくる、義務関係経費その他のいわゆる消費的経費におきましては、繰り越し財政関係が生じてくる度合いは非常に少のうございまして、投資的経費に大きく生ずるわけでございますので、そういう形になるわけでございますが、増減率から見てまいりますと、一般的な歳出の増減率は、三十八年の財政計画に対しまして三十九年度は一九・二%の伸びでございますけれども、その中で投資的経費昭和三十九年度におきましては二四・四%、最も大きな伸びを示しておるわけでございまして、したがってまたその構成率も計画ベースでは従来以上に高まっておるわけでございます。決算面はどうなるかと申しますと、おそらくこの構成比率というのもはもっと高い形に出てくるであろう。やはりそこには事業繰り越し関係等が入ってくるので、さような形におそらくなるだろうと存ずるわけでございます。
  27. 千葉七郎

    千葉(七)委員 お話しになりましたように、一般行政費、義務的な地方自治体としての費用と、それから投資的経費の比率は、一般行政費のほうがだんだんに高くなって、そうして投資的経費のほうの比率がだんだん低くなるということが、地方自治体の行政の本旨からいって、そういう形態になることが私は最も好ましい形であると思うのであります。したがって、そういう方向に地方の自治体の財政実態が進んでいくとするならば、これはたいへんけっこうなことでありまして、国におきましても、そういう方向に地方の財政を導いていくということが、国の方針でもなければならぬと思うのでありますが、ことしの計画を見ますと、私はそういう地方行政の本来の姿なり本来の本質なりを大きくゆがめられるおそれがあるんではないか、こういう点を感じ取るわけであります。というのは、投資的経費におきましては、本年の計画においては非常に増大をしておるように考えられるのであります。たとえば道路であるとかあるいは港湾の整備であるとか地域開発の問題であるとか、あるいはまた工業用水の問題であるとか、そういって方面に対しましては、非常に膨大な計画を立てておられる。これらの経費を総計いたしますと一兆一千三百七十一億円ほどになるようでありますが、その増大の割合は、昨年と比較をいたしますと、大体二〇%内外の増大を示しておりまして、金額におきましても非常に増額をされたわけであります。もちろん一般行政費におきましてもそれぞれ増額はいたしておりますけれども、しかし金額におきましては、投資的経費のほうが絶対的に多いわけでありまして、したがって住民の生活向上のための一般行政費のほうの金額と比較をするならば、これは比較にならないほど投資的経費が多い。しかもこの投資的経費の面におきましては、ただいま局長から、町村では投資的経費の増大を望んでおるからそういう結果になるんだ、町村がそういう点を望んでおるといったような御答弁があったのですが、私はそういう考え方は根本的に違っているんではないかということを感ずるわけであります。投資的経費をふやすということを町村自体が望んでおるといったようなことではなくて、むしろ投資的な面については、何と申しますか、強制とは言われないとしても、国のほうでそういう支出面を押しつける結果、この投資的経費がふえておるのではないか、こういうふうに考えられるわけでありまして、当然国の直轄の仕事でやるべきこの投資的な道路、港湾あるいは地域の開発、あるいはまた工場の水資源の確保とかいろいろな地域開発関係の仕事、こういった国のほうが直轄でやるべきことを地方の仕事として義務づける、そういう傾向が年々強くなってきておるんではないか、かように解釈されるわけなんですが、その点は地方の要請に基づいてそういう方面をふやしておるのかどうか、ここでひとつあらためてお伺いをしておきたいと思います。
  28. 柴田護

    柴田政府委員 いまやはり地方で一番問題になっておりますのは、立ちおくれた行政施設水準を引き上げろという希望であります。これは現実に市町村を歩いてみますればどこでもそういう要望が非常に強い。町村自身は増加を望んでいないとおっしゃいましたけれども、それはどうも、御趣旨は公共事業のようでございますが、確かに公共事業でやるべきものを単独事業でやっておるといったようなことは不合理じゃないかといった現象も見られないわけではございませんけれども、しかしながら、投資的経費に使い得る財源を非常に多くして、財政の弾力を強めていくという方向財政を持っていくべきであろうと私どもは考えておるわけでございます。その意味では同じ投資的経費と申しましても公共事業中心ではなくして、やはり単独事業というものの財源を充実していくというところに、創意ある地方自治の発展が期待できるのではなかろうかというように私どもは考えるのでありまして、従来とかく片すみに置かれておりました単独事業費の増加というものに極力努めてまいったわけでございます。本年度財政計画上の対前年の増加率では、恒常負担金を伴わない、いわゆる単独事業と言われますものの普通建設事業費の進捗率が一番高いのも、そういうところを考えたのであります。ただこの中には、御指摘のように道路関係経費が入っておりますので、その点は問題が若干残りますけれども、しかしながら、私どもといたしましては、この点における経費の充実それを同時に交付税にはね返していく、反映さしていく、こういう努力というものはもっとなさるべきだろうというように実は考えておりまして、今回の計画を策定し、交付税の単位費用等を改定いたします際にも、そのような方向に意を尽くしたつもりであります。もとよりまだ十分ではございません。将来ともそういう方向でやってまいりたいというように思うのであります。なお、公共事業費の超過負担の問題あるいは公共事業でやるものをほっておいて単独事業でやっておるといったような問題の是正、これについては御指摘のような事実も考えられますし、それについて是正の必要なことにつきましても私どもは同感でございますから、そういう方向で進めてまいりたいというように考えております。
  29. 千葉七郎

    千葉(七)委員 単独事業増加の率が非常に高くなっておるから、したがって地方の公共事業は非常に進んでおる、そういうことで、地方の財政水準がそれだけ上がる、こういうことでございまして、一応それはそう言えるだろうと思うのであります。しかしそれに対しまして、一般行政費のほうが——公共事業なりあるいはその他を含めて投資的経費比較して、給与費なりその他の一般行政費が非常に圧縮されておるのではないか、こういうようにも考えられるわけでございます。たとえば給与費等の算定の基準を調べてみますと、非常に低く押えられておるように感ずるわけであります。役場関係の職員の給与を見てみますと、町村におきましては町村長の俸給の基準が、三十八年度においては月額四万七千円、それから、これは特別職ですけれども、議員の報酬は、町村においては月額三千二百円、一般吏員の俸給は、地方公務員あるいは国家公務員と同じに押えられているのだそうですか、二万四千三百八十七円、こういうぐあいに——これは三十八年でありますから、したがって、三十九年の計画はもちろんある程度これよりは多くなっているとは思いますけれども、これをもってみましても、人件費、給与費等においては非常に低い標準に押えられておるような感じがするのでありますが、これは実際の給与されておる実態をとらえての計画であるかどうか、その点をお知らせしていただきたいと思います。
  30. 柴田護

    柴田政府委員 財政計画計算をいたします場合には、御承知かと思いますが、地方公務員がその学歴、経験年数をもって国家公務員であったならば幾らもらえるかということを前提として計算をいたしてまいっております。この調査は、たしか昭和三十一、二年のころに、全国的な調査をやって、それを是正してベースをきめまして、自今それに対しまして増減補正をやってきているわけであります。相当年数もたちますので、あるいはその間にそごがあるかもしれませんので、先年地方公務員の給与の実態調査をやっておるわけでございます。その結果が近くわかりますので、出てまいりますれば必要な是正と調整を行なわなければならないことが起こってまいるかもしれません。私たちは、先ほど三十七年度決算で、決算額計画額との間に差が千六百億出てまいっておるということを申し上げましたが、この給与関係経費の千六百億のうちで、約六百億近いものは給与改定に伴うものの差でありますので、実態上の差というものは約千億であります。この千慮が何に基づいておるかということにつきまして、実は二つ問題があると思っております。  一つは、人員の差——人員の差と申しますのは、施設がいろいろふえてまいっております。たとえば養護施設等、各種の福祉施設、あるいは庁舎が新築されたりしまして、それに伴います必要な人員の増加といったような人員の面、職員の数の面におきます相違、もう一つは、ベースの相違、この二つの問題が実はあろうかと思うのでございます。ある程度はわかっておりますけれども実態が明確にわかっておりません。したがって、三十七年度におきましても、従来の姿を踏襲してまいっておるわけであります。その実態調査が出てまいりますれば、必要な調整を行ないたいと思いますけれども、現在の給与制度のたてまえからまいりまして、財政計画の給与費の計算の基礎としては、国家公務員であれば幾らもらえるか、幾ら給与を支払うべきかということを前提として計算をしてまいっております。
  31. 千葉七郎

    千葉(七)委員 これはちょっと前に調べた給与ベースだから、したがって、低いのは当然だ、いま実態調査をやっておるから、その結果によって引き上げをするというお話でありますが、こういう前に調べた実態を基礎にして低い給与のままで計画を立てられると、そういう結果からも財政計画が意味のないものになるおそれが出てくるのではないかと言えるわけでありまして、実態に即した計画をぜひ立てていただきたいと思います。  それから、人員の話が出ましたが、大体県をはじめ、市町村におきましては、定員のほかに臨時の雇いとして、二割程度臨時の事務職員を雇用して仕事を進めておるというのが、いまの自治体の実態のようであります。しかも、臨時雇用の俸給等は、その額が基準財政需要額には算入にならない、こういうふうに聞いておるのですが、この臨時雇用の分は算入になっていないわけですか。
  32. 柴田護

    柴田政府委員 計画上は臨時職員の給与というのが従来あったのでございますが、数年前計画的に一般の職員の中に振りかえてしまったのであります。現在、計画上におきましては、そういう職員は残しておりません。
  33. 千葉七郎

    千葉(七)委員 臨時職員は算入していない、こういうのでありまして、これは非常に不合理だと思うのであります。実際に国のほうの定員に対する算定のしかたは非常に低いところへ押えておいて、それではとうてい仕事がさばき切れない、そのための臨時職員、こういうことになるわけでありますが、それを基準財政需要額に算入をしていないということは、これは非常に不合理だと思うのであります。そういうことが赤字団体増加傾向になってまいる大きな原因をなしておるのではないか、かように考えるのでありまして、この定員の算定については、もっと実態に即した計算をしていただきたいと思うわけであります。  先日、細谷委員からも指摘がありましたように、たとえば農業関係の行政費におきましても、人口十万の都市——人口十万の自治体といえば都市でしょうね。都市を標準として農業行政費の職員の基準を十六人、いま農業関係の仕事が非常にふえているときに、こういう定員ではとうてい仕事をさばき切れないというのは当然ではないかと思うのであります。私の郡は人口十万でありまして、町村が六つあります。しかも人口十万に対して十六人の割合ということになりますから、したがって、基準財政需要額算定の人員というのは、一町村当たりわずか二人弱しか割り当てにならぬ、こういう結果になります。たとえ小さな人口一万内外の村でも、農業委員会の仕事が二人や三人の職員で、いまの農業構造改善事業なり、あるいはその他の農業関係の仕事をさばいていくということは、とうていできないのが実態であります。したがって私は、農村地帯においては、そういう農業関係の職員の算定は人口十万というような、そういう実態に合わない算定のしかたはこれは改善をして、そしてもっと農村は、一万ないし一万四、五千というのは大きいほうの村なんでありますから、そういう村の農業行政関係の職員は、もっと実態に即した算定をしてもらわなければ、財政力の弱い農村の自治体市町村は、ますます財政的に困っていくのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。その点についてはどういうふうにお考えでありますか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  34. 柴田護

    柴田政府委員 最初にお尋ねがございました臨時職員の問題につきましては、給与関係経費の中ではそういう形で見ておりませんけれども財政計画といたしましては、一般行政費の中の物件費その他の諸費の中に突っ込み計算になっておるかっこうであります。したがって、この前の委員会のときでございましたか、細谷先生におしかりを受けましたけれども、清掃費等について若干まだ残っておる。しかしながら、単位費用の算定基礎といたしましては、そういうものはできるだけ早く払拭をすべきだというようにも考えております。  なお、実態の調査を待って直すべきものは是正するつもりでございますけれども実態に近づけるというところにはちょっと問題があるのであって、実態を見て、それはもっともであるという部分につきましては直すべきが当然だというように存じておりますので、そういう方向で努力していきたいと思います。  農業行政費の問題につきましては、市町村の農業行政に要します経費算定いたします場合には、何によるのが一番いいかということで、現在は農家数をとっておるわけでございますので、御指摘になりました二人というのは、これは都市でございますので、あまり農家がない。そこで、そういう形で単位費用を組んでいるわけでございますが、町村に参りますと、農家は当然にふえてまいります。それからまた、農家がふえることによりまして、人員も自動的に計算上はふえていくという形になります。また、段階補正係数も適用になっておりますし、小さな町村に参りますと、職員の経費というのは当然に割高になっていく、こういう計算もいたしております。具体例を持ちませんのでちょっとはっきりいたしませんが、農村地帯である町村のほうにいきまして計算をしてまいりますと、二人というようなことはないのでありまして、ある程度のまとまった人数というような形で計算されるということになるわけであります。
  35. 千葉七郎

    千葉(七)委員 人口十万の都市とは違うということでありますが、どういうふうに違っておるか具体的なことはわからぬということですけれども、私が申し上げた点を十分取り上げていただきまして、農村における農業関係の仕事が非常にふえておるのは、これはだれも否定できない事実でありますから、その点も十分ひとつ考えていただきたいと思うわけであります。  それから給与費の問題につきまして、もう一つついででありますからお伺いをいたしておきますが、特別職におきましては、市と町村の給与関係が非常に差額があるということであります。さっきもちょっと申し上げましたが、町村におきましては町村長が月俸四が七千円、それから市長は七万三千円と聞きました。大体三万円ほどの市長、町村長の給与の差額があるわけでありますが、あまりにもこの差額がひど過ぎるのではないかと考えられるのであります。それから議長比較を見ますと、市においては議長は月額二万四千円、町村におきましては四千二百円、まさに六分の一であります。それから副議長は市においては二万一千円、町村においては三千七百円、一般の議員においても、町のほうは三千二百円だそうでありますから、おそらく市においては一万七、八千円くらいになっているのではないかと考えられるのですが、これを見ますと、市と町村の特別職の開きがずいぶんあり過ぎるのではないかと考えられるのですが、その点は私の調査が間違っていれば別ですけれども、どういうふうに見られるのですか、ひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  36. 柴田護

    柴田政府委員 特別職全体のあるべき給与をどう考えるかという問題は、非常にむずかしい問題としてあるわけでございますが、財政計画計算をいたします場合には、大体過去における実態と申しますか、大体の平均値を使って、これに大体特別職の改定率——これは国家公務員の場合を参酌するわけでありますが、改定率等を使って単価を出しておるわけであります。市町村につきましては、実態の平均値をつかまえまして、県と同じ方法でございますけれどもやっているわけでございます。県の場合は、たとえば議員の場合等におきましては、都道府県の一般職の部長級の平均値という指導も行なっておりますので、その辺のところの平均値を基礎にして計算いたしておるわけであります。市町村につきましては、大体の実績を中心にして、その平均値をとっているわけでございます。特別職の給与をどう考えるかという問題は明確でありませんので、そういう方法をとらざるを得ない。したがって財政計画計算では、府県の場合には議長、副議長、議員、それから三役といったような形でもって報酬月額を計算していくわけでございますが、市町村の場合におきましては人口十万の市を中心にした計算、主として交付団体分のものについての計算をして、これを計算の基礎にしておる、こういう実情でございます。  御参考に申し上げますと、府県分につきましては、交付税の単価も財政計画の単価も同じ単価を使っております。議長が八万八千円、副議長八万三千円、議員七万一千円、知事十八万円、副知事十三万円、出納長十万円、こういった計算でございます。市町村分につきましては、議長は二万六千円、副議長二万三千円、議員二万円、市長は、財政計画は平均値を使って九万四千円、交付税計算では人口十万の市をとりますので、十万円、助役が財政計画では七万三千円、交付税では七万九千円、収入役は、財政計画では六万円、交付税では六万五千円、こういう計算で三十九年度の計数を計算いたしております。
  37. 千葉七郎

    千葉(七)委員 三十九年は私が申し上げた額よりもずっと改善をされておるようでありますが、それにしましても必ずしも市と町村の格差が適当かどうかということは、また別な問題になってくるわけであります。私の申し上げたのは、これは三十八年の計算がそうでありますから、それよりも改善されたということでありますから、それはけっこうなことでありまして、ぜひそういう差額があまり出ないように、ひとつ措置をしていただくように計画されたいと思うわけであります。  いずれにいたしましても、ことしの地方財政計画歳出の面を見ますと、この計画ではとうていおさまらないだろうということが、先ほど川村委員からも指摘されましたように、私も同じように考えるわけであります。たとえば公共投資あるいはその他の投資的な経費を見ましても、そういう計画を見ましても、とうていこの金額ではおさまらない。これはもちろんその計算の基礎になっておる単位費用等も低く押えられておる。その他の給与費あるいは一般行政費等につきましても、これからの物価騰貴を考えるならば、決して十分な児積もりは立てられていない、こういうふうに感ずるわけであります。したがって、本年度計画における歳出面は、とうていこの金額ではおさまらないということが感じられるわけであります。  さらに、それに対しまして歳入面を見ますと、歳入面については非常に過大な見積もりをしておるのではないかという点が考えられるのであります。もちろん歳出面におきましても、大臣説明によりますと、国と同一の基調によって健全均衡財政を堅持した、こういうことを強調しておるのですけれども、確かにこれは内容的に見ると、緊縮歳出計画になっておるように感ずるのでありますけれども、しかし、国と比較をしましても、歳出面が非常に大きいというふうに考えられるのであります。というのは、国の予算は昨年と比較をしますと一四・二%の増大であって、それに対して地方財政計画のほうは、三十八年と比較をすると一九・二%の増大になっておるわけでありますから、したがって、国の計画に準拠して緊縮財政を組んだということは当たらないのじゃないかというようにも感じられるわけでありまして、国の予算の状態比較をしても、この地方財政計画は現実に非常に膨張の計画でもありますし、さらにはこれを執行していく上においては、いままで申し上げましたような内容、たとえば計算の基礎となっておる単位費用等は、低く押えられておるというから、さらにこの歳出全体が大きくふくれ上がっていくのではないかということが一応考えられるわけであります。  それに対しまして、さきにちょっと触れましたが、歳入面は非常に膨大な過大な見積もりをしておるように感じられるのでありますが、たとえば地方税の収入の総額は一兆二千九百八億円でありまして、前年に対して二二%の増額、こういうことであります。ところが私ここで疑問に思うのは、地方税の増減というものは、大体国の税金に対しては一年ずれてあとからあらわれてくるというふうに考えられるのであります。たとえば法人税にいたしましても、あるいは事業税にいたしましても、地力の住民税にいたしましても、その所得割については、前年の所得が今年の所得制の課税の基礎になる、こういうように考えられるのであります。ところが住民税の所得別あるいは事業税等を考えますときに、三十八年の地方税比較してことしの地方税は三百三十八億円程度税制の上からいえば減税になっておるわけであります。この三百三十八億円減税になっておるそれを差し引いても、なおかつ二千六百億円ほどの増税になっております。したがって、先ほど申し上げましたように二二%も地方税が昨年よりも増額になるというふうに見ておる。この三百三十八億目の減税分を差し引いての計算でいくと、三十八年と三千九年の税の伸長率というのは実に二四・五%になるのであります。もちろんこれはガソリン税の引き上げ等もありましょうけれども、あまりに多く見過ぎているのではないか、このように考えられるわけですが、その点につきましてひとつ御解明を願いたいと思うのであります。
  38. 柴田護

    柴田政府委員 国税の三十八年当初と、三十九年度の国庫予算の見込みで申し上げますと、租税及び印紙収入の伸びは二六%であります。したがって、地方税の場合よりか四%多いのであります。地方税は法人関係の租税を除きましては、御指摘のように前年実績を基礎にしておるわけでございますので、伸びが低いというのはあたりまえだということになるわけであります。最近では法人関係の税の収入の占めるウエートは非常に高まってまいりました。県で申し上げますならば事業税、法人税割、それから市町村税でいいますと、やはり法人税割、それに国民所得の伸長によりまして、住民税関係の所得割の収入が非常にふえておるわけでございます。したがって国よりやや低いところの伸びを示しておるわけでございまして、このバランスを見ますと地方税の特色が出ておるのではないか。全体として算定の基礎は、所得制等につきましては三十八年の国税の課税見込み額のほぼ最終段階に近いものを基礎にして計算をいたします。法人につきましては国税の法人税と同じ基礎に立って計算をいたしますので、大体ベースが合っておるわけでございます。率も二六と二二でございますので、そう妙ではないのじゃないか、かように考えるのでありまして、経済の今後の推移を見ませんと、これが過大見積もりであるかどうかわかりませんけれども、経済企画庁の見通しによります経済見通しに立って計算をいたしますと、こういう数字になる、こういうことでございます。
  39. 千葉七郎

    千葉(七)委員 私の調べたところによると、昭和三十七年とそれから三十八年の所得関係伸びを見ると、法人においては一八%伸びておる、個人の所得は一一%の伸びである、こういうのであります。何で調べたのかちょっと忘れましたけれども、私の調べではそうなっておるのですね。ところがことしはこの地財計画によると住民税が二三%増を見込んでおる、こういうことになっておる。これではどうも過大ではないかというような感じがするのですが、いまの御説明によると、過大ではない、国の伸びよりももっと内輪に見ているのだ、とこういうのですが、一応それを御信頼申し上げることにしますと、いずれにしても、さきに私が指摘しましたように、歳出の面はぐんぐんこの計画を何割も上回る内在的な原因を含んでおるということが感じられる。それから歳入の面におきましては、過大な計画が立てられておるのではないか、そういうふうに感じられる要因が非常に多く含まれておる、こういう感じがするのであります。そういうことになりますと、今年度地方財政状態というものはまことに憂慮したければならぬ点があるのではないか、このように考えられます。したがって、昨年の赤字団体等が五百五十何団体ですか、それよりももっとふえるのではないか、むしろ健全な地方財政の実現という大臣説明に反するような結果が出てくるのではないか、かように、考えられるわけであります。したがって当局におきましては、その次々の地方財政の動き、推移等に十分注意をはらわれまして、地方交付税交付金の配分運営等に当たりましては、十分な配慮をお願い申し上げたいと思うわけであります。  まだお伺いしたい点もありますが、だいぶ時間もたちましたので、私の質問は一応これで打ち切っておきます。
  40. 柴田護

    柴田政府委員 御指摘になりました所得の伸びの率は、おそらくは所得そのものの伸びではないかと実は思います。  それからもう一つは、源泉徴収の、つまり給与所得の、昨年の年末に行なわれました十月からの公務員の給与改定に関連する一連の給与の動きというのが入っていないのではないかという感じが実はするのであります。よく計数の基礎を教えていただきませんとわかりませんけれども、それにいたしましても、かりにお示しになった数字が所得そのものの伸びでございますれば、税の場合におきましても超過累進でございますので、所得の伸び以上に伸びるのであります。国税もそうでございますし、地方税につきましても、市町村税につきましては国税ほどではございませんが、やはり軽やかな超過累進システムをとっておりますので、その面からこれをこえる税額の伸びということになってあらわれてくるというふうに思うのであります。私ども歳入を見積もります場合には、同じ気持ちで、つまり過大見積もりになるようなことのないようにつとめて努力してまいったのであります。しかしながら、経済の見通しを、経済企画庁で立てましたような形でみます限りにおきましては、こういう数字が出てまいります。将来どうなるかということは、今後の推移を待たなければなりませんが、私といたしましては、この程度の収入は徴収よろしきを得ればとれるのではないか、徴収の、歳入の確保につきましては十分指導してまいるつもりでございます。
  41. 森田重次郎

    ○森田委員長 午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十二分開議
  42. 森田重次郎

    ○森田委員長 再開いたします。  警察に関する件について調査を進めます。  公安条例運用等に関する問題について質疑の通告がありますのでこれを許します。松井誠君。
  43. 松井誠

    松井(誠)委員 私は公安条例をめぐる最近の警察行政についていろいろお伺いをいたしたいと思います。  実は私は、もう古くなりますけれども昭和三十六年の十月にも、一度具体的に東京都の公安条例の運用をめぐっていろいろお伺いをいたしました。ちょうどその前年に出た最高裁の、東京都の公安条例は合憲だという判決を契機にして、あの当時行なわれました政防法のデモに対する規制が非常にきびしくなった、人権問題を至るところで起こしたという具体的な事実がありましたので、そのときにちょうどお尋ねをいたしたわけでありましたが、今度もまた残念ながら、具体的には先月の三十日に行なわれました日韓会談反対を中心スローガンとするデモに対する警察当局の非常に行き過ぎた規制、そういうものについての具体的な措置から、公安条例の一般的な問題について、あらためてこの前お尋ねをしました問題と重複をできるだけ避けながらお伺いをいたしたいと思います。   〔森田委員長退席、永田委員長代理着席〕 きょうは警視庁の方がお見えになっておりませんので、こまかい具体的な事実はあるいはおわかりではないかもわかりませんけれども、大体のことはあらかじめ御用意を願いましたので、具体的な事実の有無から最初にお尋ねをいたしたいと思います。  御承知のように、三十日の、特に夜間のデモでありますが、話は横にそれますが、最近は、この前からの顕著な傾向なんですけれども、昼間つまり明るいときの警察の規制のやり方と、だんだん宵やみが迫ってきて、人の顔がわからなくなってからの警察の動きとは、全く違う。暗くなってからの動きというものは、非常に激しい。今度の場合も、いろいろ昼から問題がありましたけれども、特にひどかったのは夜のデモなんです。この議面の前を通って、それからあと虎ノ門を通って新橋で流れ解散をするという、これは正式な集団示威行進、いわゆるデモであったと思うのですけれども、このデモのときに虎ノ門の付近で非常に乱暴なできごとが起きた。これはこのあたりの、議面を通ってからあとのデモに対する警察の警備というものは、非常に常軌を逸しておったのです。デモの先頭に弊警察の車が立つ、そうして非常に明るい照明でデモ隊を照らしながら進んでいく、そうしてそのデモ隊の横には、デモが五列に並んでおれば警察も五列に並んで、つまり十列で道一ぱいふさぎながら、あたかも囚人を護送するような形で、デモに対する警備が行なわれた。こういうやり方自体が非常に非常識だと思うのですけれども、具体的な事実は、虎ノ門のところで、先頭のほうには社会党のデモがあり、わざわざその中に警察の車が入って、少しおくれて社青同のデモがあった。何かの拍子にその社青同のデモと社会党のデモとがつながって、そうしてしばらく行進をしているときに、その取り締まりの警察が、大体この辺が社会党と社青同との切り目であろうというように間違って認識をして、その行列を切れ、そうして突っ込めという号令が行なわれて、警察がそのデモ隊の中に割って入った。ところが、あにはからんやそこは社青同と社会党との切れ目ではなくて、社会党のデモのどまん中だった。そのために社会党の相当な年輩の人たちがひっくり返されてけがをした。ほかに何人もおる。そうしてその人たちが起き上がって、突然のことですので、一体どういうわけであるかということで聞くと、警察はこれを見て、なるほど場所を間違ったということで、警察自体も多少ろうばいしたようですけれども、こういう事実があったかどうか、そういう報告がなされておるかどうか、まずそのことからお伺いをしたいと思います。
  44. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ただいま当夜の事件につきまして、具体的な例をあげて御質問がございましたが、実は当日は御承知のとおり、午前中からの集会デモ等があったわけでございますので、昼間二名検挙し、夜は一名を検挙いたしております。  公安条例の運用の問題でございますが、もちろん公安条例は表現自由の問題と、公共福祉の問題とのかね合いであるといったようなことで、憲法上の問題としても争われておるというようなことでございますので、私どもとしては実は慎重の上にも慎重を期した運営をするように指導はいたしておるのでございます。  御質問の、具体的な事件につきましては、ただいま夜間になりますと警察官のほうもどうもむちゃをやる、こういうお話でございましたが、こういう点につきましては私どもかねがね注意いたしておりますが、同心にデモ隊自身も、夜間暗くなると、これまた非常に激しくなってくる。こういうこともございますので、夜間の場合にはできるだけ照明道具等によって明るくするとか、こういうことはやっております。  また囚人護送のように包んでしまったじゃないか、こういうお話でございますが、これは実は、私どものほうはかねがねデモ等をやれば、必ず乱暴をやるという団体なり人が、実はほぼ最近ではさまってきておるといったようなこともございまして、具体的には全学連等の場合はそうでございます。この場合には、できるだけデモが乱暴ろうせきにわたらないように両側を包んでいく、こういうことはやっております。  そういうことでございますので、当夜のことについては、私実は承知いたしておりませんが、社青同が最近統制があまりさいていないといったような実態もございまして、いろいろな事案を発生させておりますので、そういうことがあるいはあったのじゃなかろうか、その点はそういうように考えます。  それから社会党と社青同との間の切れ目について、間違ったのじゃないかというお話でございますが、この点については、実は私は承知いたしておりません。報告を受けておりません。
  45. 松井誠

    松井(誠)委員 どなたかおいでになっておる方で、その具体的な事実おわかりの人はおりませんか。
  46. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 聞いていないそうです。
  47. 松井誠

    松井(誠)委員 だから私はやはり警視庁の人に来てもらって、具体的な事実に基づいてお尋ねをしたいと思ったわけです。  それでは、その事実そのものについてはおわかりでないということになりますと、事実の真偽を確めるわけには参りませんけれども、しかし最近のデモで、これも皆さんあるいは事実を御存じないと言われればそれまでなんですが、いままでのデモ隊のけがというものは、多くは衣服がやぶける。足をけり上げられるというものが多かったわけですけれども、最近は何か申し合わせたように目にけがをする、目の回りに黒いあざができるようなけがをする。さらに目にあざができたことによって、あれはデモ隊に参加をしたのだというしるしがつくような形になる。これもそういう指導をされていないと言われるに違いありませんから、そういう指導をされておりますかというお尋ねはいたしませんけれども、これは決して偶然な一致ではないと思う。  それでは具体的な事実については、あとでだれかおいでいただけるとすれば、そのときにお伺いをいたしたいと思います。  もう一つ、この点についてもあるいはまだおわかりがなければあとにいたしたいと思いますが、ちょうど衆議院か参議院かの議面のところで一人逮捕をされた。この逮捕された理由は集団行進であって、集団示威行進ではない。にもかかわらず旗を高々とあげた、許可条件に違反をしておるということが理由になって逮捕をされたと聞いておりますけれども、その事実の有無については御存じありませんか。
  48. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 議面の前で一名検挙しておりますが、それは最終の梯団の百五十名ばかりが、日比谷公園を出発しました当初から蛇行進を行なって気勢を上げておったのでございますが、再三警告もいたしておりますが、それに応じなかった。しこうして午後の八時十分ころに、参議院の議員面会所の前の路上で渦巻き行進をした。こういったこともあったのでございます。そこで警察官がこれを現認いたしまして、蛇行進とか渦巻き行進をあおったということで一名検挙をいたしております。
  49. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと旗を上げるということが条件違反だという理由ではなかった。それ以外に条件違反の確認があったということですね。
  50. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 旗ざおをかまえて行進をしたという理由で——これは全部の理由でございません。そのうちの一つの理由として検挙した者もございますが、それは当日の昼のデモでございます。
  51. 松井誠

    松井(誠)委員 それは私の聞き違えかもしれませんけれども、その旗ざおを携帯をしてデモをした、それが条件違反だということでそうすると逮捕されたわけですね。
  52. 後藤信義

    ○後藤説明員 いまの点を若干詳しく申し上げたいと思います。  いまのお尋ねの件は夜の部でございますが、この被疑者に関します事実として私ども報告を受けておりますのは、こういうことでございます。日比谷公園におきます集会の後、七時半ごろに、これは幾つかの梯団になっておったようでございますが、そのうちの第六梯団のところに、いま問題になりました社青同に所属する人がおったようでございますが、これが約百五十名でございます。この人々と一緒に国会に対する請願行進に行ったのでございますけれども、日比谷公園の西門を出発すると間もなく蛇行進を始めております。そうしてシュプレヒコールをしまして、気勢を上げておるのでございます。これに対しまして警視庁の広報車から平穏に行進するようということを繰り返し警告をしておりますけれども、これを無視いたしまして、スクラムを組んで、日韓会談反対であるとか、あるいは池田を倒せといったようなシュプレヒコールをしばしば行ないまして、同時に激しい蛇行進を行なっております。この梯団の先頭に位置しておりました被疑者は、あらかじめ準備しておりました旗ざおを横にかまえまして、あるいは梯団に向かってもろ手を上にあげ、前後に振って、霞ケ関のあそこに巡査の派出所がございますが、あそこに至るまで約五百メートルの間でございますが、この間の蛇行進を指導しております。  それから午後八時近くになりまして、この梯団が衆議院の議員面会所前に差しかかりましたときに、ここで警戒をしておりました警察の部隊に対しまして、スクラムを組んで殺到し、激しい渦巻き、蛇行進を行ないながら、面会所のほうに進行をしております。その間被疑者はさらに先ほどと同様のシュプレヒコールを繰り返しておりますし、またその音頭をとって指導をいたしております。  なお、いまお話の、旗を振りながらさらにかけ足行進、蛇行進の指導をした、こういう状況でございまして、逮捕をいたしましたのは午後八時十分ごろ、これを現認しました警視庁の公安課の者がこれを逮捕したわけでございますが、いまお話のように、旗を振ったからという、そのことだけで、直ちに条件違反でこれを逮捕したということではございませんで、日比谷公園を出るときから、すでに条件違反あるいは道交法違反等の状況が出ておった、こういうことでございます。
  53. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、条件違反は単に一つではなかったというのでありますが、問題は条件に違反をした場合に、どういう場合に逮捕ができるのか。公案条例や警職法のたてまえからいって、条件に違反をしたという、そのことだけで逮捕はできないと思う。具体的に条件に違反した結果、どういう事態が生じてそれで逮捕するという、その間に何かの忠勧告が要するわけです。それは一体どういうことです。条件違反したからすぐに違法だということじゃないでしょう。
  54. 後藤信義

    ○後藤説明員 これは東京都条例の第五条にその規定がございまして、第三条第一項ただし書き、これは条件でございます。その条件の規定に違反して行なわれた集会、集団行進または集団示威運動の主催者、指導者または扇動者、これらはそれぞれ罰を受けることになっておりますので、ただいま申し上げましたように、本件の被疑者はこれらの条件に違反した集団行動の指導をした者である、こういうことでこの罰条にかかったわけでございます。
  55. 松井誠

    松井(誠)委員 東京都の公案条例の四条によりますと、条件に違反をする、そしてそういう者に対して、これは参加者の場合ですけれども、参加者に対して、公共の秩序を保持するためという、こういう文句が必要なわけですね。ですから、参加者に対しては、条件違反があったらすぐに犯罪を構成するわけではなくて、公共の秩序を乱したという具体的な事実というものがなければならない。これはそのとおりですか。
  56. 後藤信義

    ○後藤説明員 いまお話の件は第四条でございまして、これは一般参加者に対しましてもろもろの違反条件がありました場合に、これを規制するための警察官に対する権限の規定でございます。私が先ほど申し上げましたのは第五条でございまして、これは罰則の規定でございます。現行犯を逮捕いたします場合の罰則の規定は、東京都公安条例の第五条でございます。第四条は違反者に対するその行為の是正の措置でございますが、第五条のほうは罰則でございまして、その罰則のほうは一般参加者にはかけられておりませんで、主催者、指導者あるいは扇動者、こういうことになっておるわけでございます。
  57. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、いまの逮捕はこれは一般の参加者ではなくて指導者、こういうたてまえで逮捕された、こういうことですか。——その点は、それでわかりました。  それで私は具体的な事実を一つの柱にしてお伺いしたいと思いますのは、この国会開会中国会の周辺のいわゆるデモ、集団示威運動、示威行進というものは許さないという、そういう事実上の措置をとっておられるということがどうかという問題を中心にして実はお伺いをいたしたいと思うのです。  そこで最初に原則的な問題ですけれども、先ほど局長も言われましたが、集団行動というのは表現の自由という問題であって、重要な問題だ、しかも憲法上の合憲、違憲という問題について意見が分かれておる、だから取り扱いは非常に慎重にするということを言われましたし、私はそのとおりだと思うのです。したがって、念のために確認をしておきたいのですが、集団行動というのは、表現の自由として原則的にはやはり自由であるべきだ、公共の福祉という問題は別にしまして、とにかく原則的には自由であるべきなんです。これは昭和二十九年の二月、新潟県条例についての最高裁判決の打ち立てた原則でありますけれども、それは三十五年の最高裁の判決でも別に変更はされていない。これは当然なことだと思いますけれども、念のために、その点についてやはり原則としては自由なんだ、自由がたてまえなんだという基本的な立場は警察当局でもお持ちになっておると思いますけれども、その点から最初にお伺いをしたいと思います。
  58. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御質問の集団運動というものが、表現自由の原則に立っておるということは、私どももさように考えております。ただ同じ表現自由と申しましても、集団行進であるとか、あるいは集団示威運動といった場合の表現自由ということと、文章を書く、あるいは書物を出版するといったような意味での表現自由とは、若干そこに私は違うものがあるように思います。と申しますのは、集団行進なり集団示威運動というものは、なるほど表現自由の原則のワク内で行なわれるわけですけれども、しかしそれは物理的な潜在したところの力というものを背景にしておる、こういう点が文章等を書く場合の表現自由とは私は相当違うと思います。そこで、その物理的な潜在的な力が背景にあるということは、とりもなおさず、場合によるというと、それが群集心理あるいは過去の経験則といったようなことから、他の大衆に迷惑を与えるということも相当あり得る、こういう点が若干違うのではないか、こう考えておりますが、いずれにせよ表現自由の原則に立っておるのだということについては、われわれもさように考えております。
  59. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの局長の御答弁は田中耕太郎さんが書いた三十五年の判決をそのまま引用されておる、それが出たために実は警察当局は非常に高姿勢になったわけです。あの考え方は、集団行進や集団示威運動というものは初めからもう危険を持っている、いかなる場合にも危険を持っている、言ってみれば、元来それは禁止されるのがたてまえなんだと言わんばかりの表現をされておる。しかし先ほど申し上げましたように、集団行進、集団行動というものは、原則としては自由だというたてまえを変更するとは言ってない、言ってないけれども、事実において変更するがごとき口吻を漏らしておる、そこが私は問題だと思いまして、やはりいろいろな留保をつけ、いろいろな条件をつけるにしろ、やはり原則的には集団行動は自由だという大原則をもう一ぺん確認をすべきだ、そのことでいまお伺いをしたわけでございますけれども、この集団行動というものは原則として自由であるべきなのに、いろいろ問題はありますけれども、国会開会中は国会の周辺でのデモは許さないというのは、具体的にはどういう理由に基づいておるわけですか。あるいはデモは許さないというたてまえになっておると思いますけれども、そのたてまえそのものは絶対に例外のない形で運用されておるのかどうか、運用されておるとすれば、一体どういう理由でそういう運用をされておるのかということをお伺いしたいのであります。
  60. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 申すまでもなく国会は国権の最高機関であります。そこで、この国会内における審議に、いささかたりといえども影響を与えるといったようなことは適当でない、こういうような趣旨から、国会開会中はひとついわゆる集団示威運動という示威を伴う運動は遠慮してもらいたい、こういうことで、申請等の際に話し合って、相手方の協力を得て、現在国会開会中はいわゆる集団示威運動をやってない、これが実情でございます。そこで、私どもとしてはその際に、本来国会に請願をすることはできるわけですから、請願という名のもとに、しばしばいろいろの大衆的な運動の形になる場合が多いわけですが、請願は本来平穏にやるべき筋合いのものである。そこで、ひとつ示威にわたらないで集団行進——どうしても個人個人で請願するのではなしに、集団で請願するのだ、こういうのなら、ひとつ集団行進という形で示威を伴わないやり方でやってくれぬか、こういうことで具体的な相手方との話し合い、これで現在運用をいたしておるのでございます。
  61. 松井誠

    松井(誠)委員 相手方との話し合いで、集団行進は許すけれども、集団示威運動は許さない、許さないじゃない、遠慮してもらっておる、こういう答弁は実は三十六年の十月にもあったのです。しかしいろいろお尋ねをしておりますうちに、そうではなくてやはり禁止をしているのだということをその当時の三輪局長が言わざるを得なくなった。またもう一度そういう答弁が出るとは私は予測しておりませんでしたけれども、最初は御納得をいただいて、了解をしていただいて、話し合いの上で国会のまわりのデモは遠慮をしてもらっておりますという答弁でしたけれども、現実の運用はそんなものではない。初めから国会のまわりは許可をしないというたてまえになっておる。そういうことでありましたので、とうとう——これは三輪警備局長ではなくて、そのときに出席をされました警視庁の高橋幹夫という人ですけれども、「話し合いによって行なわないということは一つのケースでありまして、東京都の公安委員会といたしましては、先ほど申し上げた理由によりまして、国会周辺の集団示威運動は原則として許可しない、こういうことでございます。」という答弁にならざるを得なかった。それで現に東京都の公安委員会の決定では、国会周辺のデモについては、特別な取り扱いをする決定がなされている。ですから、国会周辺のデモは禁止をしている。これは現実の運用じゃないですか。
  62. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 三十六年のときに、警視庁の部長がどういう答弁をしておるか、いま初めて伺いましたが、私は従来から警察庁、つまり全国の統一的な公安条例の解釈見解としては、私がただいま申したような立場で、東京都の場合にも、国会については解釈をいたしておるのでございます。ただ国会の重要性ということから、現在の公安条例の上で、それでは話し合いをおれは聞かない、おれは示威をやるんだ、こういう届け出をしてくればどうなるんだ、こういう問題があろうかと思うのであります。その場合には、私どもの立場としては、警視庁の公安条例の三条の条件で、やはり国会の審議が何らの不安感なしに自由公正に行なわれるということを保障するという意味合いからも、国会の重要性にかんがみまして、実際上示威にわたらない、これは少しことばは悪いのですが、集団行進に毛のはえた程度、こういう程度までの条件をつけるということはあり得ると思います。  それからいま一点、公共の安寧を保持するために緊急の必要が生じた、それはきわめて明らかな事実であるといったときには、当該許可を取り消したり、あるいは条件をさらに変更する、こういうこともあり得ます。それからまたさらに、当初からも公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼす、これが明らかに認められるというような事態がかりに予想せられるとするならば、これは当初から許可をしない、こういうこともあり得る、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  63. 松井誠

    松井(誠)委員 集団行進を許しながら、集団示威運動を許さない。集団行進は、審議に差しつかえないけれども、集団示威行進は審議に差しつかえがいささかでもある。これはどういうことですか。
  64. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 集団行進は、文字どおりまさに秩序があるせいせいたる集団の行進、集団示威運動といいますと、威勢を示す、こういうことになるわけでございます。そこが根本的に集団行進と集団示威行進は違う。そこで威勢を示して国会周辺でデモをやる、こういうことになりますと、私は現在の国会の使命の重大性ということから考えて、これはやはり条件を場合によればきびしくつける、こういうことも当然あり得る。したがって、行進の場合と違う扱いということは、これは御理解が願えるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  65. 松井誠

    松井(誠)委員 私は理解できないのです。その点はまたあとでお尋ねをしますけれども、そうしますと、あなたの方針では、集団示威行進というのは、現実に行なわれておるような形で開会中は一切許可しないというのではなくて、場合により、ときによって許可をする、そういうように指導をされておるつもりなんですね。
  66. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 先ほど申しましたように、国会開会中は禁止をしておるのか、こういうお話でございますので、その点については、警視庁としては現在話し合いで事実問題としてやってない、こういうことを申し上げておるのですが、かりにその話し合いに応じない、そういう態度に出てきたときにはどういうようにするかという点についての見解を申し上げたのでございます。
  67. 松井誠

    松井(誠)委員 では、私さっきよくわからなかったのですが、その点はどうなんですか。話し合いということじゃなくて、許可申請をする、話し合いはしませんよ、却下するならしてくださいと言ったときには、一体警視庁はどうするのですか。
  68. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 集団示威運動という場合には、先ほど申しましたように、非常にきびしい条件をつけることになろうかと思います。
  69. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、デモそのものを禁止するというのではなしに、デモは認めるけれども、集団行進に毛のはえた程度のものならいいではないかという意味ですか。
  70. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 そうならざるを得ないという意味でございます。
  71. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、集団行進ならば審議に差しつかえがない、しかし集団示威運動にわたれば審議に差しつかえがあるというのは、具体的にはどういうことですか。
  72. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 それは、先ほど言いましたように、示威ということからくる当然の違いであろうと私は思います。たとえばこの国会の周辺で、国会開会中に赤旗なりあるいは長旗というものが林立する、その中において国会の審議をやれ、こういうことになりますと、これはやはり公正な意味での国会の審議というものが妨害をせられるおそれがある、こう考えるのでございます。
  73. 松井誠

    松井(誠)委員 集団行進で、かりに何万という集団行進が国会のまわりにある、しかしそのときには旗もなければ声も立てない、これなら審議に差しつかえはない。逆に言えば、百人か二百人でも国会のまわりに来て旗が立つと、それで審議に差しつかえる。これはおかしいじゃないですか。やはりそういう意味ですか。
  74. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 それは具体的に一つずつ言えば、示威といっても小人数の場合もある、示威を伴わない場合でも大勢の場合があるじゃないか、こういうお話だろうと思いますが、しかし少なくとも私どもが考える場合には、現在の大衆運動、そういう際における集団行進の実態、集団示威運動の実態から見て、国会の重要性とからみ合わせて、示威は御遠慮願う、どうしてもとおっしゃればきびしい条件をつけざるを得ない、こう申し上げておるのでございますが、率直に私の希望を申し上げることが許されるとするならば、私は国会の周辺というものは絶えず静穏にしておくべきである、こういうふうに考えておりますが、現在はそういう法制はないわけでございます。したがって、公安条例で許されている限度において、でき得る限度で国会の周辺の静穏を保持したい、これが私どもの念願でございます。
  75. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、集団示威運動なり集団行進というものは、それに参加をする人はどういう意図で一体やるのか。なぜそういう人たちは国会のまわりに来たがるのか、これはもう言わずして明らかだと思う。国会のまわりに来るのは、主として政府や自民党に対してものを言いたい。ものを言いたいけれども、自分ではものを言うという——具体的に本を書いたり、具体的にラジオを通してしゃべったりという、そういう手段を持たない。そういう人たちが、自分らの意見というものを国会に反映をさせたい。そのときに国会のまわりにやってくる。ですから、初めからそういう国会に対してものを申したいということが、この集団行動の基本になっておるわけです。言ってみれば、そういうことによって、政府なり国会なりがひとつ考え直してもらいたい。あるいはこのことを考慮に入れてもらいたいという願いがそこにひそんでおるわけです。そういうものを切り離してしまって、あそこにたくさん人間がいるなというだけの集団にしてしまったのでは、集団行動の意味が初めからなくなってしまうじゃありませんか。だから、あなたは表現の自由は尊重するというようなことを言われますけれども、表現の自由を尊重するならば、いまの取り扱いは少し行き過ぎじゃないかと私は思う。つまり集団行動というものが原則的に自由であるならば、それを制限をする、事前に制限するのがいいか悪いかいろいろ問題がありますけれども、かりに制限をすることがやむを得ないとしましても、原則として国会のまわりにはデモをさせないというこのやり方そのものは、このこと自体は最高裁では勝負はついておりません。私はまたあとでお伺いしますけれども、おそらくこの問題はこういう形では非常に行き過ぎだ、この問題をつかまえて、やはり裁判所の判断を仰ぐということがどうしても必要だと思う。なぜかならば、どういう集団であろうと、ともかくそれが旗を持っていくということ自体を禁止をしている。これは一体国会の審議に具体的にどう影響するのか、常識じゃ考えられない。先般流れた国会周辺のデモ禁止法という法案の要綱があります。これで見ると、国会のまわりの公正な審議を確保する、もう一つは議員の登院を確保する、これが国会周辺でデモを禁止する理由のように言っておる。しかし議員の登院が阻止をされるような大きなデモというのは、安保のとき経験したでしょう。そのときに経験したからといって、いつでもデモが安保のときのように発展するとは限らない。デモがあれば、いつでも安保のときのようだと考えておったのでは、非常に行き過ぎになると思う。私はそういう警察当局考え方がこういう形になってしまったと思うのですけれども、流産したデモ禁止法そのものも、初めから国会の開会中はデモは国会の周辺にはないんだということを前提にしておったのではないのです。むしろ国会の周辺にデモがあるということを前提にして——きょうは持ってきませんでしたけれども、そういうことを前提にして、それが非常に審議に差しつかえるときには差しとめるという措置ができる。むしろ国会の周辺にデモが来ることを前提にしたものです。悪評の高い法律でさえもそうです。あの流れた法律よりももっときびしい取り締まりを、公安条例の中でやるということ自体非常に不合理じゃありませんか。私は後藤田さんを持ち上げるわけじゃないけれども、あなたは先ほどから全面的にデモを禁止するという方針じゃないと言う。そうしたらやはりデモの規模やデモの相手によって、何がしかの条件の違いはあるかもしれない。しかし、いまのようにデモは一切禁止だ、旗をあげるのは一本でもいけない。日比谷から出てくるでしょう。そうすると旗を必ず取り上げる。その取り上げをめぐってしょっちゅういざこざが起こる。こういうことで紛争が起きるのはナンセンスだと思う。旗をあげることによって国会の審議が一体どれだけ乱されるというのですか。私がさっき、そこで旗をあげたためにつかまったという人の話を聞いたのは、そういう意味なんです。集団が行進をする。少なくとも自分らは一体どういう目的で行進をしておるのかというそのこと自体は大衆にわからなければいけないわけです。そのためにはスローガンの一本や二本はどうしてもあげなければならぬでしょう。われわれは一体何者であるかということを表示するために、少なくとも集団の先頭くらいには、われわれは何者であるという表示をしなければならぬでしょう。そういうことさえもいまさせないのですよ。そんなむちゃな話はないじゃないですか。私はあまり大きな声をたてるのはきらいなんですけれども、やはり私はこれは大きな憤りを感ずる。いままでのやり方について非常に行き過ぎがある。その点ひとつ警備局長再考願えませんか。
  76. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 国民の願望を国会に反映させる、これはきわめて当然のことだと思います。しかしそのやり方を国会に対する示威という形でやるのがいいのか、それともそうでなしに、駐在認められておりますいわゆる国民の請願権というもので自分たちの願望を国会に要望するのがいいのか、こういう問題もあろうかと思います。また警察としましては、デモがあれば必ず安保のようになると思っておって手きびしくやっておるのではないか、こういうお話がございましたが、デモにもいろいろの形があるし、いろいろな具体的な場合を私ども考えております。が、しかし、私どもの立場としては、やはり安保のような場合もあり得るのだ、こういうことを念頭においてやはり考えざるを得ない、この点も御了承を賜りたいと思います。  なおまた、現在のやり方を少し変える意思はないのか、こういうお話でございます。現在のやり方は、先ほど来申したとおりでございまして、私どもとしては現状においてこれを改めるということは考えておりません。ただ、具体的な場合の行政指導として、行き過ぎのないように十分戒心をしていく、こういうことは努力をいたしたい、こう考えます。
  77. 松井誠

    松井(誠)委員 公安条例の第三条によりますと、許可はむしろ原則としてしなければならぬというたてまえになっておるわけです。そうして許可をしない場合には、「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明かに認められる場合の外は、」という条件が——私はこれは違憲だと考えますけれども、東京都の公安条例そのものにさえもついておる。直接かつ明白な危険というものの存在が必要だというのは、これはもうアメリカにおいてですけれども確立をされた原則なんです。そういう原則に基づいて許可基準というものはあるわけです。きょうはデモがある、そのデモが国会の回りにくる。そうすると、一体事前に直接かつ明白なそういう危険というものがいつもありますか、ないじゃないですか。ですから、私はそういう具体的な条件がちゃんとくっついておるのにもかかわらず、もう一律に全部国会のまわりには行かせないというやり方はどこから見てもおかしいじゃないかということを言いたい。この直接かつ明白な危険というものはしょっちゅうあると考えるのですか。国会のまわりへ行けば必ず審議が乱される。議員さんは圧力を感ずる、一体それほど議員族というものは弱いんでしょうか、おかしいじゃないですか、これは。
  78. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 いつも直接明白な危険を感じておるのか、こういうことでございますが、私どもは過去の経験から、やはり現在の段階における各種大衆運動の集団示威というものには、非常に多くの不法越地の事態というものが発生をしており、またそれが発生するおそれがある、こういうふうに考えております。したがって、この種の集団行動というものが統制が十分きき、ほんとうに秩序を保って、しかもなお自分たちの目的を達成する、こういうようになることを私どもは望んでおるわけですが、遺憾ながら現在の段階では、やはりそういう危険性かある、こう考えておるのでございます。
  79. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、やはり最高裁の判決と同じように、集団デモというのはもう初めから悪なんだという考え方が頭にこびりついてしまったのです。だからもう許可が原則であるのにかかわらず、実は不許可が原則だというさか立ちの形の行政が行なわれてしまう、私は東京都の公安条例というものの立場に立ってみても、そして三十五年の最高裁の判決を是認する立場に立ってさえも——御承知のように三十五年の最高裁の判決は、このような公安条例というものが乱用される危険を持つということを言っておるのです。私は国会のまわりを原則として禁止しておるという措置そのものは、やみくもに一律に禁止しているという現状は、どこから考えても言いのがれできないだろうと思う。あなた何か場合によれば、何がしかの条件をつけて許しておるようなことを言っておりますけれども、そういうことはないですよ。だから私は、そういう意味で取り扱いを変える意思はないかということを聞いておる。くどいようですけれども、もう一ぺんお答えを願いたいと思います。
  80. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 先ほど来申しておりますように、公安条例によって原則として禁止をしておるというのではないのです。これはやはり現在のやり方というものは、申請の際に話し合って、そして協力を願って、集団示威の形でなしに、集団行進ということでやっていただいておる、こういうことでございます。しかし、それを聞かないという場合を仮定して私は先ほど来のお答えをしておるのでございます。現在、いわゆる禁止という形ではない、これは相互の話し合いでやっておる、こういうように私は承知をいたしておるわけであります。
  81. 松井誠

    松井(誠)委員 その点は警視庁の方がお見えになればお伺いをいたしますけれども局長も御存じだと思いますけれども昭和三十五年一月八日に東京都の公安委員会で決定をした、この条例の取り扱いについての成文化されたものがあります。それによると第二項に、「「集団示威運動」とは」途中は省略しますけれども、「公衆に対して騒音等により著しい迷惑を与えるような方法で行なわれるものをいう。」デモがいけないといわれる一番の大きな理由は、私は騒音だと思うのです。一般の公衆は、騒音だけでなしに、そこに大衆、かおるということ自体であるいは迷惑を受けるかもしれません。しかし国会というのは、そこのまわりに人間の集団があるということだけで、一体迷惑を受けるのですか。大きな声を立てれば、あるいはこの部屋の中まで聞こえてくるということもあるかもしれません、この前の三十六年のとき、三輪局長は、最初は主としてそういうことを言われた。しかし、それならば騒音が生じたときにその騒音を取り締まる方法はあるじゃないか、あらかじめデモは騒音を起こすものだとする既成観念がおかしいじゃないかということを言いましたら、しまいには、そこにたくさんの人間がおるということ自体がいけないのだということになるということを言われた。これは語るに落ちたと思うのです。そういう考え方で運用されておるということが間違いだと思う。だから、騒音等によって迷惑を受けるという場合に、国会は赤旗が立っておるために迷惑を受ける、これもあなたは審議権が妨げられると言いましたけれども、同じ決定の第四項の2によると、「国会の審議権の行使、裁判所の公判その他官公庁の事務が著しく阻害されることが明らかなとき。」のほかは許可をしなければならないというように、公安条例を具体化をした決定があるわけです。つまり著しく阻害をするということが必要なのだ。あなたが言われるように、あそこにデモが来たということだけでは審議権が乱されるという条件は、この公安委員会の決定そのものからいっても満たされぬわけです。少なくとも「著しく」ということを言っておる。これはやはり、直接かつ明白なという条件に縛られてこういう言い方にせざるを得なかったのだと思うのです。つまり、「著しく」という見通しがなければ、何でもかんでも禁止はできないのだということを、このことはあらわしておると思う。ところが、現実には「著しく」なんというものではないのです。もう初めから全面禁止なのです。あなたは話し合いによって納得をしてもらっておりますなんということを言いますけれども、これは実際はそうではない。ですから、われわれはいままでのように、何がしか頭を下げてお願いをしますということではケリはつかぬ。だから、ここでひとつ正式に裁判所の判断を仰ごうではないか、こういう条件でさえもあのときは却下をした。そのことが一体正しいかどうかということを判断を仰ごうじゃないか、そういうことを考えておるわけですが、「著しく阻害」というこの条件は、これは公安委員会の決定だから認めざるを得ないでしょうけれども、こういうものに照らして現実の運用はどうなっておるか、局長は御存じですか。
  82. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 お話のような点がございまするから、現在の公安条例のもとでは警視庁としては話し合いでやっておる、こういうことでございます。そこで、話し合いにきかない、応じない、いまおっしゃるように争ってでもと、こういうことになりますればどういうことになるかといえば、現在の公安条例のもとでは公安条例三条の本文もしくは三条第三項による処置があり縛る、こういうことを先ほど来私は申し上げておるのでございます。  なお、東京都の公安委員会の決定の第二項につきましては、これはちょっとお読み違いがあるのではなかろうかと思います。集団示威運動というのは、公共の場所で行なわれるものは一応全部入る、騒音その他のことは公共の場所以外の場所、こういうことを規定いたしておるのでございます。
  83. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの東京都の公安条例の二項の読み方については私のほうが間違いでした。それは確かにそのとおりだと思うのです。そうすると問題は、やはり現実に行なわれておるものが話し合いであるかどうかという非常に形式的な議論が一つ残ってくる。しかし、これは、あなた常識でわかるじゃありませんか。あとで警視庁の方が来ればもう一ぺん念を押しますけれども、高橋というそのときの警備部長は、禁止をしておるのだということを言っておるわけです。これは三十六年の十月十三日の地方行政委員会の議事録ですから、あとでお読みをいただきたいと思いますけれども、そのように最初は話し合いだということで逃げようとしておる。しかし逃げられなくなって正直に、禁止をしておるということを言った。私はこれは正直だと思う。しかし禁止をしているということ自体が公安条例の行き過ぎであり、乱用である。したがって、この公安条例の三条に基づく許可基準からいっても逸脱であるということを私はきょう主として言おうと思った。ところが局長は、なかなか回転がいいものですから、話し合いだということを言って譲らない。しかしこれは実際はうそなんですね。うそで、現実には禁止をされておる。  では、このようにお尋ねをしましょう。もし禁止をされておるとすれば、それは行き過ぎだと言わざるを得ないと思いますけれども、それはそれでいいですか。
  84. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 現在の公安条例の解釈として、禁止ということは行き過ぎであると思います。
  85. 松井誠

    松井(誠)委員 この公安条例の問題については、地方自治体の立場からもいろいろ問題があるわけです。つまり、これが条例という形式で制定をされる。デモ禁止法というものが国会で流れる。そうするとそれを、事実上公安条例の運用ということで目的を達しようとする。そのこと自体が非常に不法ですけれども、そういう問題とは別に、この基本的な人権にかかわる、表現の自由にかかわるものを国権の最高機関できめないで、つまり法律という形でやらないで、条例という形で現実に規制をし得るという、そのこと自体が非常に問題です。そういう意味でこの条例に罰則の規定を認めた地方自治法の規定そのものにさえも違憲論があるわけです。いわんや、あなたもさっき言われたように、この公安条例の運用、公安条例の存在そのものについて、合憲、違憲の問題はまだまだ残っておるわけです。最初に言いましたように、いまの警視庁の現実の取り扱い方からいくと、少なくとも乱用だという結論が出る。私はそういう可能性はずいぶんあろうと思う。いまの最高裁の判断をもってしても私はあり得ると思う。ですから、そういう問題であるだけに、私はこの公安条例の運用についてはもっと慎重であってしかるべきだと思ったのです。ところが実際には、この公安条例の運用について警察はだんだん高姿勢になってきておるわけです。一ぺんあなたもデモのときに視察をせられたらいいと思うのです。この前の政防法のときに私は自分自身で経験をしたのですけれども、あのときのデモの取り締まりの警察官というのは、デモ隊と同じ立場に立って、同じように感情をむき出しにしてやり合っておる。これは権力を持っておる者のやることではないですよ。私自身もあれは先生だけれども、気違い病院の先生だと言われた。これはちゃんと議事録に載っておる。今度のデモのことは、私は具体的に知りませんけれども、最近非常に、デモ隊に言うのは、ちょっと来い、一ちょうもんでやろうか、少し楽しましてもらおうじゃないか、どこかその辺のチンピラが言うようなことをしょっちゅう言うわけです。そういうことによって挑発をする。これはデモそのものが悪だというそういう警察当局考え方がずっと末端までしみ込んでおるということなんです。表現の自由は原則として許さるべきものだという、そういう考え方は消し飛んでしまっているということです。今度のデモの場合には、機動隊は第二と第四だそうですけれども、一体機動隊というものは、デモは悪なり、そういう教育をやっているのですか。まさかそういうことはないでしょうけれども。最近の、鉄かぶとをかぶり、警棒を持ち、いでたちをきちんとした警官が、ほんとに無防備なそういうデモ隊と同じ立場で、同じような次元でものを言ったのなら、一体どういうことになるのです。デモそのものを、最初私は囚人の護送だと言いましたけれども、囚人をあたかも護送するような、そういう感覚でものを見ておるのじゃないですか。ですから、われわれも今度は、そういうことを聞きましてもいやそういうことはございませんといって逃げられると思いますから、ひとつテープレコーダーでも持っていって、おい、ちょっと一丁もんでやろうかというのをほんとに録音してこようと思う。これを野放図にしておったら全く不必要なときに紛争が起きるということにならざるを得ないと思う。こういう現状は一体御存じですか。
  86. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 最近の警察のデモの取り締まりがどうも高姿勢ではないか、こういうお話でございますが、私どもは、何ぶんにも制服の警察官を大勢ああいう際に使う、しかも警察官の年齢も相当若いといったようなことで、相手方に挑発をせられないように、またこういったデモの取り締まりについては、慎重の上にも慎重を期するようにということで、平素から十分教育をしておるつもりであります。機動隊等について、特にこうしろといったような教育はもちろんやっていないのでございます。そういった私どもの努力がまだまだ足らぬ、こういうことがただいまのお話ではあるようでございますが、そういう点につきましては、もしそういう実態がありとすれば、私どもさらに一そう教育を徹底をしてまいりたい、こう考えております。  なお、最近高姿勢と、こういうおことばがあったのでお答えをいたしておきたいと思いますが、私は、最近のいわゆる群集の事件につきましては、早期、迅速、徹底ということでやりなさい、こういうことの指導をいたしております。つまり、違法行為を違法行為として見のがしてはいけない、これは結局は大きな問題に発展するおそれがあるものである、したがって、違法行為がある場合には、あくまでもそれは早目に、しかも処理をできるだけ早く、そして徹底してやれ、こういうことを申しております。と同時に他方、現在の警察は昔の警察とは違うのだ、これはやはり民衆の支持なくしては運営ができないのだ、したがって、そういう意味合いから警察のやり方についての、いわゆる民主的なやり方という点について、これはまた他方十分ひとつ配意をしてやれ、こういう両面からの指導をいたしておりまするので、その点この機会にお答えをさしていただきたいと思います。
  87. 松井誠

    松井(誠)委員 警視庁の方はお見えにならぬようですから私これでやめますけれども、最後に申しげ上ておきたいと思います。  いまの早期、迅速云々という原則はわからぬではありませんけれども、しかし、それは、逆に言えば、参加者が条件違反をする、そのときにはすぐに公共の秩序に危険が起きたというように早合点することはない。つまり参加者に対して制止をする、それに対して抑止をする。これについては法定の条件が要るわけです。ですから、何か参加者がジグザグをやった、参加者が何か少し歌を歌ったということだけで、この条件違反だということだけで、すぐ公共の秩序が乱されたというわけにはいかぬでしょう。ですから、そういう意味では、条件違反があればすぐにびしびし取り締まるというのが早期云々という原則の適用じゃ私はないと思う。そうじゃなしに、それこそまさに法律にのっとってやるとすれば、この法律がきめておる制止なり阻止なりという条件に合うかどうかという慎重な判断が必要だと思う。ですから私は、早期などということは決してほめたことではない。おくれてもいい。これがおくれたために取り返しのつかない事態が起きるということは現実にはあり得ない。それが取り返しのつかない形になるのは、逆に言えば不必要な挑発があるからだ。これからだんだんデモの季節になってまいります。ですから、そのデモの季節のときに、ひとつわれわれも、先ほど言いましたけれども、これは笑い話ではなくて、そういう非常に挑発的な警官の声を録音したいと思う。それを持ってこの国会でもう一ぺん私はやるかもしれない。そのときにひとつ後藤田さん、責任を取ってもらいたい。そういうことですから、これからあともひとつ慎重な運用をお願いいたしまして、質問を終りたいと思います。
  88. 後藤信義

    ○後藤説明員 先ほど先生からお尋ねのありました、社青同と社会党との集団の割れ目といいますか、そのつなぎ目に、間違って突っ込んだというあの件でございますけれども、ただいま私のほうで警視庁に問い合わせましたが、その事実がまだ確認されておりませんので、後刻事実を調査いたしまして、また次の機会などで御報告をさせていただきたいと思います。  それから、いま最後にお話しになりました点で、社青同にも関連いたしますけれども、条件違反者、直ちにこれが逮捕ということ、これはもちろん罰条から申しますと、そういう形にはなっておりますが、先ほど申し上げましたように、一応も二応も警告をいたしておるわけでございまして、そういう条件違反の行為はやめなさいということは何べんも警告をいたし、警告した上に、さらにそれを聞かないでやったということにつきまして、その指導者を逮捕した、こういうかっこうになっておるのでございます。
  89. 松井誠

    松井(誠)委員 ちょっと一点だけ。最後のつもりでしたけれども、いま、警告さえすれば、それで逮捕の条件ができるかのような御答弁ですけれども、そうではなしに、やはり公共の秩序を保持するためという目的があるのですから、条件違反だけでは公共の秩序の保持が乱されたということにはならならのではないか。つまり警告というのは逮捕の前提だということではなしに、その結果、やはり公共の秩序が乱れるような状況が現出をしたという、もう一つの条件がなければ制止はできないのではないですか。
  90. 後藤信義

    ○後藤説明員 これは第四条の関係ではお話しのように警告、制止あるいはその他の所要の措置ということでございまして、これは一般参加者に対してと申しますか、集団行動をなす人々全部に対してそういう規定が適用されるわけでございますが、第五条のほうは、条件に違反した集団行動等を指導すれば、それが直ちに犯罪になるというたてまえになっておるわけでございます。
  91. 松井誠

    松井(誠)委員 私がいまお尋ねしたのは四条についてお尋ねしたのです。五条と四条の問題については、先ほどの答弁でわかりましたから、そのことをいま問題にしたのではないのです。  それから、社青同と社会党の中に突っ込んできたというのは、その間にひっくり返された人間が何人かおるのです。たとえば、名前を申し上げますけれども、鈴木茂三郎さんの秘書なんか、あの大きな人がひっくり返された。あれは社青同でも何でもない。そういう人が何人かおるわけです。そういう明らかに警察に非のあるときには、警察は信賞必罰できちっとやってもらいたい。そういうことをやらないで、明らかに不法だということまで何か警官をかばうことが警官の士気を高めるのだという錯覚を起こして、そういう警察の非までもかばおうとする。ですから、警察はどこまでやったらわれわれの長官にしかられるか、際限もないということで、こういう挑発的態度が出てくる。ですから、事態がはっきりしたならば、それが明らかに行き過ぎだということになるならば、やはりちゅうちょなくしかるべき処分をやるべきだと思う。そうしなければ、一方的なやり方だけで運用がされておるものですから、警察は弾圧だという考え方がわれわれの中にしみ込まざるを得ない。このことは粕村長官のときから私は繰り返し育ったのですけれども、なかなかそれがいかない。ですから、明らかに警察が非である、行き過ぎだという場合には、相手がデモ隊であろうと何であろうと、きちっとした処分をとってもらいたい。このことを最後にお願いをして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  92. 永田亮一

    ○永田委員長代理 細谷君。
  93. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほど関連質問でお聞きしたいと思ったのですが、議面の前において示威行進をやった、そういうことが逮捕の原因になったということですが、当時の現況をごらんになっていらっしゃいますか、お尋ねします。
  94. 後藤信義

    ○後藤説明員 私どもここにおります者はだれも見ておりません。警視庁からの報告に基づいて先ほど御報告申し上げたわけでございます。
  95. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は当時議面の階段の中段において見ておったようですけれども、街路樹に沿うて歩いてきたのですが、若干それは騒々しくなったようでした。議面の前に国会議員が並んでおって、請願者がまとまって列が少し曲がって来たのです。そのときに、やあっと警官が割って入ったのです。ですからこれはむしろ挑発しているのじゃないかというように私には受け取れたのですが、その辺の報告は受けておりませんか。
  96. 後藤信義

    ○後藤説明員 これは先ほど私が申し上げましたように、私どものほうに報告がございましたのは、ただいまお話の議面の付近におきましては——第六梯団というのは日比谷公園を出るときからすでに相当な蛇行進をいたしましたり、あるいはシュプレヒコールをやったりして気勢を上げておったのでございますが、八時近くになりまして、この梯団が議面に近くなりましたときに、この付近において警戒中の警察部隊に対して、スクラムを組んで殺到し、激しい渦巻き行進並びに蛇行進を行ないながら議面のほうに進行した、こういう状況が報告されておるのでございます。
  97. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の目に映ったのは、第二会館のほうから曲がってまいりまして、そして衆議院の議面のほうに、曲がり角から蛇行したとか、そういう状況はございません。ただ、議面の前に請願者が来る際に列がU型に曲がった、こういう事実でございますけれども、その曲がった際には、もう警察官が四列くらいでさあっと入ってしまって、ほんとうのところは議員の目の前は六尺くらいしかあいてなかった。両方から警察の列が入って、端的に言いますと、ほとんどくっついてしまって請願者は二、三入も入れない、こういう状況になりました。その際に国会議員から、そういうことで警察が請願をじゃましているじゃないかという強い声がありまして、どけろ、どけろということでどいてもらったということがありまして、報告に書いてあるような状況じゃないのです。そういうところにやはり問題があるのじゃないか。何とかしてつかまえよう、そうして行列を乱そう、デモの勢いをくずそうという意図があるのじゃないかと、その報告の文章を伺いますと私には感じられる。
  98. 後藤信義

    ○後藤説明員 それは私のほうの局長からも、逮捕者が出ておることでもありまして、その状況は十分しっかりつかんでおかなければならぬという指示がありまして、私のほうでも念を入れまして、その逮捕の状況等につきまして、行き過ぎがなかったか、あるいは証拠関係に十分であるかどうか、そういう点についてはさらに突っ込んで聞いたわけでございまして、重ねてけさになりましてからただいま申し上げたような報告が手元に参ったような次第でございます。
  99. 細谷治嘉

    ○細谷委員 念を押して調べられたというのでしょう。大体においてイチョウ並み木の舗道の部分には警察官がずっと行って、そうして国会のかきねがありますが、かきねのほうはほんとうに人が一人横になって通るくらいしか余地がない。あの舗道は全部警察官が並んでおるのです。そうしてイチョウ並み木のL型側溝に沿って縦隊で来ているのですね。こちらのほうは車が通っておるのです。蛇行するというところはないのですよ。ですから、その状況は念には念を入れて調べたというが、私はこの二つの目ではっきりその間見ている。第二会館からおりた坂のほうは知りませんか、私の目に映った限りにおいては、いまの報告の文章はきわめて過大な悪質な書き方だと思います。
  100. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ただいまのお話は当夜における事実関係のようでございます。私どもは、いま後藤課長からお答えしておりますように、報告に基づいておるだけでございますので、お話の点も事実関係をさらに調べまして、適当な機会にお答えを申し上げたい、こう思います。
  101. 細谷治嘉

    ○細谷委員 事実関係を調べるということでありますが、そういう問題がありましたので、同僚である社会党の国会議員も、そういう行き過ぎが警官に起こらないように、また行列の中に起こらないようにというので、一時その中に入っていった。その国会議員が押し出されて、その押し出され方もかなり乱暴なものがあった。めがねをかけている人などは、めがねが完全に割れておるくらいに警察官に押し出された、そういうことであります。いまの文章を見ますと、もう曲がったところを完全に蛇行してきた、そうしてやっているという書き方ですが、蛇行する条件がないわけですね。しかも精査されたその報告は事実と非常に違っておる。こういう点は、公安条例というものに基づいて大衆運動を過度に押えつけようということから書かれた、事実とははなはだしく違った表現のようでありますから、よく調べてやっていただかぬとこれはたいへんなことなんです。
  102. 永田亮一

    ○永田委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会