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1964-03-27 第46回国会 衆議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十七日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 田川 誠一君 理事 渡海元三郎君    理事 中島 茂喜君 理事 永田 亮一君    理事 藤田 義光君 理事 川村 継義君    理事 佐野 憲治君 理事 安井 吉典君       大石 八治君    大西 正男君       奥野 誠亮君    亀岡 高夫君       久保田円次君    登坂重次郎君       村山 達雄君    森下 元晴君       山崎  巖君    和爾俊二郎君       秋山 徳雄君    阪上安太郎君       重盛 寿治君    千葉 七郎君       華山 親義君    細谷 治嘉君       栗山 礼行君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務         局長)     西田  剛君         警察庁長官   江口 俊男君         警  視  長         (警察庁長官官         房長)     浜中 英二君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      後藤田正晴君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 政孝君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    鈴木  昇君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         自治政務次官  金子 岩三君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         消防庁長官   松村 清之君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      山根  治君         文部事務官         (初等中等教育         局初等教育課         長)      西村 勝巳君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 三月二十七日  委員武市恭信辞任につき、その補欠として鯨  岡兵輔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員鯨岡兵輔辞任につき、その補欠として武  市恭信君が議長指名委員に選任された。 本日の会議に付した案件  消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共  済基金法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)(参議院送付)  警察に関する件(ライシャワー大使傷害事件  に関する問題)  地方自治に関する件(地方公共団体の議員の身  分に関する問題)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  この際、赤澤国務大臣から、ライシャワー大使傷害事件の概要について説明いたしたい旨の申し出がありますので、これを許します。赤津国務大臣
  3. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ライシャワー日アメリカ大使刺傷事件について御報告申し上げます。  本月二十四日正午ごろ、ライシャワー日アメリカ大使が、大使館内において精神異常の疑いのある少年に刺されるという不祥事が起こりましたことは、まことに遺徳のきわみでありまして、ライシャワー大使をはじめ、アメリカ国民の皆様に深くおわびを申し上げる次第でございます。  大使の傷は、手術の経過も順調であるとのことでありますが、一日も早く全快されるようお祈り申し上げる次第でございます。  私たちは、今後重ねてこのような不祥事件が起こることのないよう新たなる決意を持ちまして、さらに治安の万全を期する所存であります。  今回の事件につきましては、目下鋭意捜査中でありますが、以下ただいままでに判明いたしましたところを御報告申し上げます。  まず最初に、この事件の概況を申し上げます。  本事件は、三月二十四日十二時五分ごろ、アメリカ大使館ロビー入口において、静岡沼津市に居住する塩谷功和という十九才の少年が、切り出しナイフを使用してライシャワー大使右大腿部を刺したという事件であります。  犯行の動機は、本人供述によりますと、最近近視が多くなったり、強制的に海水浴をさせられたり、男女共学を強制されたりすることについて、自分はこれを直す方法を知っているが、世間は取り上げてくれない、このためライシャワー大使を傷つけるようなことをすれば、新聞ラジオに取り上げられるし、世界各国にも知られるようになると考えたということであります。  被疑者は、本年二月二十四日、二十五日、二十六日にも連日上京して、大使館におもむいておるのでありますが、それは、大使館の所在を確かめ、またその様子を知るためであったということであります。  二月二十四日には、大使に面会する方法を尋ね、翌日、大使館受付係に、近視の矯正に関する嘆願書を手渡しておるのであります。  翌二月二十六日には、大使館からの連絡に基づいて、警戒中の警察官に発見され、約三時間取り調べを受けているのであります。  その後上京しなかった被疑者は、いよいよ四月には成年になる、未成年のうちならば、罪を犯しても罪は軽いだろうし、新聞ラジオに載る効果も大きいと考え、犯行を決意したと申し述べております。  そこで、三月二十三日に切り出しナイフを買い求め、さらに約一貫目の石を拾ってきたと申し述べております。  この石を用意したのは、大使館のへいを乗り越えるときに、落とし穴があるかいなかを確かめるためであったと申し述べております。  また犯行の期日は、暦を見て、三月二十四日が吉日であるので、この日の昼に定めたと申し述べております。  事件当日の状況でございますが、被疑者供述によりますと、三月二十四日朝、例の石をふろしきで包み、切り出しナイフを持ち、六時五十三分沼津駅売の列車で上京、新橋で下車、地下鉄で虎ノ門に至り、大使館に行き、石を構内に投げ落し、穴のないことを確かめたということであります。  その後被疑者は、大蔵省印刷局あたりで時のたつのを待ち、正午ごろへいを乗り越えて大使館構内に入り、本館ロビー入り口を入ったところで、かねてテレビ等で顔を知っている大使とすれ違った際、切り出しナイフをもって斜め後方から右大腿部を刺したということであります。  被疑者は、直ちにその場に居合わせた大使館員二名によって取り押えられ、非常ベルによって急を知り、大使館警備派出所からかけつけた警察官に引き渡されたものであります。  今日までの捜査の結果によりますと、被疑者は、かつて精神分裂症の疑い精神病院に入院したこともあり、また最近においても、入院の手続をとりつつあったようでありまして、本事件は、若干精神に異常のある少年による突発事故と思われるのでありますが、本人供述に前後矛盾する点もあり、被疑者供述裏づけを中心に捜査をいたしております。  このような次第で、特段の背後関係もないようでありますが、本事件の性質にかんがみ、さらに慎重に捜査を進め、真相の究明につとめているところであります。  本事件の発生後、私どもといたしましては、急遽臨時に国家公安委員会を招集し、事件内容検討し、とりあえず全国の警察に対して、この種事件連鎖反応を防止するため、虞犯者、危険な精神障害者等視察の強化及び外国公館その他の重要施設の厳重な警戒方を指示し、各都道府県警察とも警戒警備を強化しておるのでありますが、今後の警戒警備につきましては、さらに十分な検討を加え、虞犯者危険性のある精神異常者視察を一段と強化し、警護に関する的確な情報の収集及びこれが十分な活用をはかり、関係機関との緊密な連絡協調のもとに内外の要人などの警護を強化し、外国公館等重要施設警戒を厳にし、捜査用各種資器材の充実をはかる等、このたびのような不祥事件が再び発生することのないよう、その未然防止に努力してまいる所存であります。  なお、関係都道府県警察間の一そう緊密な連携をはかり、警戒警備活動に支障を来たすことのないよう配慮いたしたいと考えておる次第でございます。
  4. 森田重次郎

    森田委員長 本件の問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎
  5. 阪上安太郎

    阪上委員 ただいま国家公安委員長から、ライシャワー傷害事件についてのかなり詳細な報告がございましたが、私は、ここで警察当局にまず最初に伺っておきたいと思いまするのは、諸外国のこの事件に対する世論の動向を考えてみますと、かなり大きな反響が伝えられておるわけであります。現職の大使が刺されたという事件は、まことにこれはまれな事件である、したがって、その背後関係に重大な関心を米国民としては持っておるというようなワシントン筋あたり報道が伝わっております。また、大使を刺すほどの日米間の大きな問題があったとは考えていない、これは全く寝耳に水の事件だ、こういうような考え方も出ておるようであります。たとえ今度の事件が一人の頭の少しおかしい者がやったところの事件であって、この事件がその若者の自分一人の意思で決行されたといたしましても、日本国全体のあり方がやはり痛烈な批判のまとになっておるというようなことも出てきております。一国の大使に加えるこういった危害の理由がわからない、そうなってくると、日本民主主義あり方そのもの自体が大きな問題である、こういうような考え方も出てきております。いずれにしても、背後関係というものには、ただ単に右翼団体であるとか何であるとかいう、そういう考え方背後関係ではなくして、もっと広範な日本民主主義全体の問題としての背後というような考え方米国ワシントン筋ではとっておる、こういうことのようであります。  そこでいま報告にもありましたが、こういった事件に対する米国考え方が、主として背後関係そのものに大きな疑義を持っておるのでありますから、簡単に背後関係がなかった、こういうような警察当局考え方自体が私はおかしいと思う。背後関係というものを、ただ単なる暴力、テロ行為等に対する背後関係というような考え方に立っておるところに問題点があるのではないかと私は思うのであります。ことにこれを精神異常者と断定したところの精神異常者の自供に基づく裏づけなどをやっておるようなことでは、一体何をやっているのかわからない。そういった貧困な警察捜査考え方、あるいは警備あり方というものに問題がある。背後関係というのは、一体あなた方はどういうふうに考えておるか、警察当局からひとつ答弁してください。
  6. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 私たちが言います背後関係というものは、通常犯罪に関連しまして、それを使嗾した者があるとか、あるいは特殊な団体に入っていて、その一員としてやったとかいう直接の関連のある者に限ってこう言っているわけでありますから、ただいまのようなお話になりますと、精神異常者であると断定できませんけれども、そういうことを申し上げるのがどうかというお話もありますが、そうでございますから、そういう者がうようよしているというような状態がこの犯罪の一つのバックになっておるというような意味では、あるいは背後関係——普通は私たち言いませんけれども、そういう意味でおっしゃるものならば、確かにそういった面はあると考えております。ただいままでの捜査のところでは、この塩谷本人に対して犯罪を使嗾した者とか、あるいは協力した者とか、あるいは特殊な交友関係があるとかいう事実は出てないので、現在の時点では背後関係はない、こういう申し上げ方をしているわけであります。
  7. 阪上安太郎

    阪上委員 通常警察としての背後関係というのは、そういうことになるだろうと思います。  それならば政府のほうに伺いたいのですが、この問題について単なる警察事件として、警備責任上の問題等から考えてそういった責任がないのだという警察考え方に対して、政府は一体どういう考え方をお持ちになっておりますか、官房長官から御説明願いたい。
  8. 黒金泰美

    黒金政府委員 いま阪上さんのおっしゃいます非常に強い意味背景といいますか、こういう問題につきましては、政府全体として非常に遺憾に考えておりますし、いまおっしゃるように、その警備自体手落ちがあったかどうかというような問題のほかに、かりに精神薄弱者であり、あるいは異常者であった、これに対する手当が十分であったかどうか、あるいはいま御指摘になったように、日本民主政治といいますか、あるいは人命尊重といいますか、それがどうであったか、こういう点については政府全体として非常に遺憾であり、責任を感じておる次第でございます。したがいまして、この問題に対して政府が今後考えなければいけないことは、警察治安の狭い意味といいましょうか、警察の問題の改善ももちろんございましょうが、それ以外に厚生関係、あるいはいわゆる青少年問題等々、あるいは道義の問題もございましょうし、そういう全般の問題について、一そう心を新たにしてこの機会に全般的に再検討し、考え直して対策を立てたい、こう考えます。
  9. 阪上安太郎

    阪上委員 御案内のように、日本の国論あげていま当面する東京オリンピック大会等に対処しようとしている段階でございます。こういった場合に、一興常青少年であったとはいえ、こういう事件が防止されることなく発生するということにつきましては、私は諸外国に与える影響は非常に大きいのではないかと思うのであります。日本に行ったならば、いつどこでどういう目にあうかわからぬというようなきわめてはずかしい印象なり考え方を与えるということは、オリンピック自体に対して与える影響だってかなり大きなものがあると思うのです。こういう点で、いま黒金さんから御答弁をいただきましたが、背後関係というような警察専門用語を使う概念でなくして、いまおっしゃったように広い意味において治安対策というものを進めていかれる必要があるのではないか、こういうように考えるわけであります。こういった社会的な背景というものの中にも、やはり警察が果たさなければならぬ任務もあると思うのです。たとえば防犯というようなものの考え方に立ったときに、もっと広範な観点に立たなければいけない問題が多分にあるのではないか、こういうように思うわけであります。ぜひそういう方向で善処していただきたい、かように考えます。  そこで、次に私は警備責任の問題について御質問申し上げたいと思います。  政府あるいは国家公安委員会発表等によりますと、全く警備責任というものはなかったんだ、こういうようなことになっておりますが、はたしてこれでいいかどうか、私は大きな疑問を持ちますが、警備責任はないんだということにつきましては、治外法権との関係もあろうと思います。この辺で、こういった問題については、やはり明確な結論を出しておかなければいけない問題ではなかろうかと思うのです。われわれは遺憾なことであり、まことに申しわけないわけでありますが、同時に日本国が、治外法権の場所において行なわれた事件に対して一体どこまで責任を持つのか。あまり単価になることもどうかと思うのです。こういった治外法権との関係におるわが国の警備責任というようなものは、やはりこの際明確にしておきたい、こう思うのです。これについての見解をひとつ公安委員長、それとも警察庁長官等から承りたいと思います。
  10. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 本会議の席でも申し上げましたように、警備警護に関する全責任警察当局が持っておるわけでございます。ただ、ただいまの御質問の中に、大使館治外法権区域になっておりまして、そこで日本警察当局との接触の問題が出ましたが、それに先立って、やはりこういう犯罪が行なわれない予防措置というものも警察責任でございます。ただ、そういう予防措置が十分とってあればこういう事故も起こらなかったと考えられるので、いまこれは鋭意検討中でございまするし、将来に向かってはこういうことが起こらないように及ぶ限りの知能をしぼって努力いたしたい、こういうように考えております。
  11. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、警察庁長官に伺いますが、この犯人は二月の二十六日の午後二時三十分ごろ大使館付近をうろついておったということが明らかになって、そうして同少年を張り込み中の刑事任意同行を求めて調べた。そのときに、ひどい近視眼で云々と、先ほど報告がありましたようなことを自供しておる、こういうことなんであります。これは十二分に要注意者として監視を怠ってはいけないところのすでに具体的な事件が出てきておるわけなんです。それから同時に、このときに、前にすでに一回大使館を焼こうと思って火をつけたというようなことも自供した。その正しいか正しくないかは、裏づけはいまはなはだ問題だと思いますが、そういうことになっておる。それから同時に、三月二十四日に午前六時過ぎ自宅を無断で外出したので、母親胸騒ぎを覚えた。それで、あとを追って行ったところが沼津駅に行き、そうして沼津発の六時五十三分の上り列車に乗り込んだというので、鉄道公安に直ちに連絡をした。ところが公安がさがしてみたけれども、乗客が混雑しておって発見できなかった、こういうことを言っておる。そこで、この問題についてはぷつっと切れてしまっておる。こういったことから見て、やはり警備上の責任というものが出てくるのではないか。私は何かぼやっと全貌から見て、そういう感じがするわけなんです。一体警察は、精神異常であるか何であるかは知りませんが、こういった行動を行なっておる少年に対するところの監視はどういうふうにやっておるのであるかということがひとつ問題になると思うのです。それから鉄道公安との連絡連携というものは一体どうなっておるのか。ここでもしまじめに警備責任を果たしていこうとするならば、そういった者が上京しておるということになれば、当然警視庁なり何なりの方面へ連絡をとって、警察のほうでは前にもそういう例があったので、直ちに米国大使館というものがすっと頭にくるはずなんです。そういったところのきわめて微妙な点がどうも手抜かりがあったように私は思うのですが、この点はどうですか。
  12. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 私が昨日まで報告を受けておる限りにおいてお答えいたしますが、二月の二十六日に任意同行を求めて、赤坂署連れて行かれて調べられておる事実がございます。これは二月の二十四日と二十五日と二十六日にあらわれています。二月の二十四日には、大使館の別館と称しておりますが、旧満鉄ビルに来まして、大使に面会するにはどうしたらいいかということを聞いております。それは、しかるべき内容のものならば守衛に言って、受付係かなんかに行かれればよかろうということを教えられておりますが、その日はそのまま帰って、翌日近視眼をなおしてくれというような意味嘆願書を持って、これは守衛に案内されて受付まで行って、それを渡して帰っております。そのときに、ただいま話に出ませんでしたが、その前の月の一月二十日に、大使館Aアパートという大使館内にあるアパートの廊下の、これはぼやといいますか、壁、床等十五坪くらいを焦がしたという火事でございますが、そういうことがあった。そのときに、どうも犯人らしい者を見たという人が四、五人ございまして、そのうちの一人が、きょうあらわれたのはあのときの男ではなかろうかという疑念を持って警察連絡をいたしました。そこで警察は、その日は嘆願書を置いて帰ってしまったものですから、きのうも来、きょうも来たなら、おそらくあしたも来るのではなかろうかというで張り込んでおったところが、はたして二十六日にあらわれた。そこで、職務質問をかけて赤坂署連れて行って三時間ばかり調べましたことは、先ほど申し上げたとおりでありますが、その際こういうことを言っております。本人は、一月二十日の放火については絶対にそういうことはないということをその際は否認しております。しかし、そこで使われたガソリン等のことから、本人が買うたならばここで買うたと思われるところの沼津油屋について調べたら、そういう若い男が買いにきた事実はないということ、及び目撃者があれじゃなかろうかと言ったのは、さすがに半信半疑でございまするから、これは五分五分だという証言がありましたが、他の四人は、どうも違うように思うという証言をしております。要するに面通しでも否定、本人も否認、それからいまいった外部の油屋さんに対する照会もなまぬるかったと言えばなまぬるいのですが、一応そういうことはなかったということになる。  さらに本人母親に電話をかけて聞いたら、一月二十日は、功和うちにおりました。そのころは金も持っていなかったので、東京に行くはずはないということで、一応近親者からのアリバイ証言というのは、普通の犯罪の場合はどうかと思いまするけれども、この場合は、それまでやったかどうかということを疑うのにそう的確な根拠もなかったものですから、アリバイも一応立ったとして、それじゃ少し頭も弱いような気もするから、連れにきたらどうだといったら、向こうから、いや、連れにくる余裕はないから送ってくれということで、その日は帰した、こういうことになっております。それが事実関係でございまして、今度の事件を起こしましてから、あれも実はやったのだということを曲っているとか言っていないとか、支離滅裂なことを言っておりますから、いろんな報道が行なわれておりまするけれども、私の手元には、まだ放火をその少年がやったと断定するだけには至っていないことになっております。それで、そういう放火をやったということがわかれば、もちろんそこでつかまえるのですが、そうでなくても一応怪しんだのだから、そのことを沼津のほうにきちっと、この少年についてあとを気をつけておいてくれ、こういうことをやるべきじゃなかったろうかということは、現在私たちも、その点は手落ちといえば手落ちになるのかなという気持ちです。これは、さらに、いやそういう時点には、そういうことは普通しないということになるかもしれませんけれども、ひとつの疑点として残ります。と言いますのは、この人間が今度の犯行を犯しまして、沼津のだれだれだということをわれわれ聞きまして、すぐ静岡県のほうに照会しましたところが、静岡県としては、そういう者が居住しておるということの事実だけはもちろんすぐわかりましたけれども、そういうのが精神に異常のある者だとか、過去において警察注意の対象になった者であるというようなことについては、これはそうなってなかったわけであります。これは、素行調査等方法をとっていない現在におきましては、何らかの犯罪を犯すとか、あるいは家人から、うち子供はこうこうだという訴えでもないと、そのすぐそばに住んでおる警察といえども、特別な視野に入ってなかったという点でございまして、この点は将来におきましても、こうした人物については、何とか警察視野の中に入れておく必要があると思いまして、この事件を契機になお研究したい、こう思います。  それから事件を起こしました日の鉄道公安官との関係でございまするが、これは、こちらに関することでないものですから、特に申し上げていなかったわけでございますけれども、本人が前の日に一貫目もある大きな石を自分の部屋に持ち込んだりなんかしておったから、母親としては胸騒ぎというか、母親子供の性行をよく知っておるものですから、心配をしておったところが、朝早く出たものですから、あとを追っかけて出ております。そして、本人が六時五十三分の電車に乗り込んだので、母親も続いて追っかけて乗ろうとしたのですが、その際は乗りおくれた。それですぐ届け出ればよかったと思いますが、一番ここでしっかりしているのは、長男、これは電気器具商をやっております。うちに一ぺん帰って、長男にどうしたものだろうかということを相談しておりますが、それはやはり鉄道に頼んで、途中で押えてもらったほうがいいということで、もう一ぺん沼津駅に帰りまして、鉄道公安官室に、これは八時ちょっと前、七町五十五分くらいだと私は聞いておりますが、あの電車にむすこが乗ったが、むすこは凶暴性があるからひとつ手配をして、保護をしてもらいたいという申し入れをした。それから鉄道公安室は、すでにもう八時ですから、熱海の次、あるいは小田原あたりまで行っておりますが、そこで横浜の公安室と東京公安室に連絡をし、なお乗っておる電車の車掌にも連絡をした。ところが込んでおったために、これは捜索したといいますけれども、結局電車の中でも、横浜でも東京でも発見されないままにそこで終わっております。それから警察連絡があったかどうかということになりますが、これはどうも連絡がなくて、普通の家出人というような取り扱いで、汽車の中で発見できなかったら、これはやむを得ないということで、そこでしり切れトンボになっておるというのが事実のようでございます。いま申し上げたのが私の知っております洗いざらいの事実でございますから、その間に、この事件を参考に、いまの公安官との連絡方法の義務づけなり協定なりというようなこととか、あるいは精神的におかしい者について、警察視野に入れる方法とか、あるいはその以前に、根本的にはそういう者を病院なり何なりに監置療養させることの必要性というようなことを、いろいろ考えなければならぬのじゃなかろうか、こう思います。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 この二つの事実を考えてみても、警察警備責任が全然ないんだ、全くないんだと言い切れないような面も多少出てきておると思います。過般来から問題になっておりました吉展ちゃん事件とか、こういった誘拐事件、それから善枝ちゃん殺しというような事件のときの捜査のミスというものは、この前に十分追及されておるはずであります。ちょっとしたささいな問題を放置しておくことによって防犯ができないというような場合も出てくるわけであります。そのために、犯人逮捕等の捜査も非常に支障を来たす。それが取り返しのつかないことになってしまって、永久に迷宮入りしてしまうというような事件も、数多く残っておるはずであります。そういった小さなミスがあったということはいなめない事実だと思います。  そこで、そういった程度の事件であるならば、これは警備責任はないんだ、警察責任はないんだというような考え方に立っておられるのでありますが、そういたしますと、警察責任がないのに、この事件に関して国家公安委員長が高度の政治責任をとってやめた、こういうようなことになってきておるわけなんであります。私は、これは非常に不可解に思うのであります。警備責任がないのに警備上の責任警察上の責任がなかったのに高度の政治責任を感じてやめなければならぬのが国家公安委員長である、こういう論理というものは私は非常に間違っておるのじゃないか。ましてや国家公安委員会というものは、そういった警備上の責任というものは私はないと思う。非常に広い意味で解釈すれば別であるかもしれませんけれども、直接にはそんなものはない。もしそういう責任があるとするならば、当面の警視総監あたり責任をとるべきじゃないか。ところがその警視総監も責任をとらない、警察庁長官責任をとらない。それから高度の政治責任であるならば、内閣総理大臣が責任をとるべきである。それもとらない。そうして全然直接の責任者でないところの公安委員長責任をとっておる。しかもそのとり力もおかしいのであって、国家公、安委員会というものはこれは合議制の機関であります。それであるがゆえに、内閣総理大臣の直轄ではあるけれども、管轄下には置かれておるけれども、指揮監督権というものは内閣総理大臣は持っていない。したがって、この公安委員会というのは、会計検査院のごとく憲法でもって保障されておるところの立場にはないといたしましても、国家行政組織法その他に基づきまして、やはり合議制の機関としてこれが認められておる。それならば国家公安委員も全部やめたらいいじゃないか。そういうこともやらない。前にもこの種の事件がありました。浅沼委員長暗殺事件のときにもこういう問題がありました。その当時の国家公安委員長である山崎さんが自発的にやめております。聞くところによりますと、あの事件の直後、国際信用上のたてまえからでありましょうけれども、早川国家公安委員長黒金官房長官、前尾幹事長、原警視総監等がこの事件につきましての責任問題で協議をしておる。こういうような筋の通らぬことをやっておっていいのかどうか、こういうことであります。何かこの種の問題が起こってくれば、責任をすべて国家公安委員長という責任をとるべき立場でないところの者にぶつけてしまっておる。もちろん警備責任等の明白な責任があれば別であります。当然そこまでいくかもしれません。そういう場合には、少なくとも警視総監が責任をとるべきである。それもやらない。高度の政治責任というたてまえに立つならば、内閣総理大臣が責任をとるべきである。それもやらない。また公安委員長がやめる場合にも、国家行政組織法から考えてみても、公安委員長だけの責任ではないはずだ。合議制であるならば、全公安委員責任をとるべきである。そういうこともやらない。これは、明らかに内閣のこういった場合におけるところの責任回避の常套手段だと私は考える。こういった問題について黒金官房長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  14. 黒金泰美

    黒金政府委員 先ほど阪上さんに申し上げましたように、私どもは、政治的に見まして、まあこれはいかなる事件がございましても、また必ずしもその原因結果、因果関係について法律上責任があろうとなかろうと、結果につきまして政府責任を負う、これは事柄上当然だと思います。したがいまして今回の問題につきましても、実は昨日ですか一昨日ですかの公安委員会におきまして、その時点においては行政上の責任はないようにお話があったということを承っておりますが、そういうような問題はさておきまして、政府として、その因果関係は別といたしましても、政治的に責任を負うべきものだと考えております。ただその場合に、じゃ一体どういう責任をとるべきか、私ども内閣が総辞職する場合もございましょうし、あるいはまた特に御関係の深い国務大臣が御辞任なさる場合もございましょうし、あるいはそういうこともなしに、将来に対して強い決意、有効な対策を立てまして、そして今後そういうことが二度と繰り返されないように、そういうことで終わる場合もございましょうし、そのときどきの状況、また影響、世論等々から考えて政治的に判断すべきものだと存じます。  今回の場合におきましては、先ほど御指摘がございましたが、私は実は早川国務大臣にお目にかかっておりません。おりませんが、治安をおあずかりになる、一番治安関係の深い国務大臣としては、これは第一義的には政治的な責任でございますから、御本人の御判断で辞意を表明された。私どもといたしましても、今回の問題は、いま御指摘になりますように非常に反省すべき点は広く、警察だけというように私ども考えておりませんけれども、とにもかくにも国内の治安の問題でございますし、そうしてこの影響が、国際的にも、先ほど御指摘になりましたように、影響するところも大きゅうございますから、一番治安に御関係が深い国務大臣としてそういう御決意をされましたものを内閣としても了として辞表を受理したような次第であります。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 いま黒金官房長官が言われたような考え方、そこに私は問題があると思うのです。御案内のように、憲法六十五条では、これはもう私が言うまでもなく「行政権は、内閣に属する。」ということは明記されております。しかもその憲法の趣旨は、その場合内閣というのは、個別責任をとる国務大臣の集合体でないという考え方が、これは学説の一致するところなんです。しかしながら、かといって個別責任を全然とらなくてもいいということでもない。しかし個別責任をとるということは、その国務大臣が何か非違行為をしたり、不道徳な行為をしたり、そういった行為に基づくところの責任ということであるならば、これは個別責任をとるでありましょう。旧憲法との相違はそこにあるのじゃないか。したがって行政上の責任であるならば、これは連帯責任である。その最高の責任者は内閣総理大臣である。これは議院内閣制のたてまえからいっても明確なんであります。その場合に連帯責任ということを考えずに、ただ単に一人の、私をして言わしめれば、ていさいは明らかに治安責任者であるという形はとっておるかもしれませんけれども、行政責任、連帯責任をとらずして、そういった安易な考え方で糊塗していこうという考え方自体が憲法の精神に大きく反する考え方じゃないか、私はそう考える。繰り返して言うようですけれども、国務大臣が個別的な責任をとるという場合は、全くこれはもう個人的な問題です。それ以外の問題についてはやはり連帯責任だと考えられる。その場合に、内閣は総辞職をしなさいという言い方もいたしません。わが党におきましても、直ちに内閣不信任案をぶつけていこうという考え方をとるという意味でもない。意味ではないが、全くこれは一国務大臣である国家公安委員長がやめればそれでいいのだというような安易な考え方は、私は許されないと思う。会計検査院のような、憲法でもって例外規定を設けられたものについては、これは別だ。それ以外のも一のについては、これは当然やはり内閣総理大臣、これが最高の責任者であり、その責任をやはり連帯して持たなければならぬ、こういうところに在来とも大きな間違いを私はおかしているのじゃないかと思うのです。ただ謝罪をすればそれで内閣総理大臣としてはいい、責任をとってやめるのは国家公安委員長でいいのだ、こういう考え方は、私は将来とも非常に事柄の判断を誤っていくのじゃないか。もし警備責任があるとするならば、むしろ公安委員長責任をとる以前に、警視総監は責任をとるべきだ、あるいは警察庁長官責任をとるべきだ。しかし警備責任がないということであるならば、ことに治外法権の場所において行なわれた事件である。そこへ入るまでの外におけるアメリカ大使館に対する警備責任というものは出てくると思いますけれども、そういったふうに考えていくならば、警備責任がないという考え方も一つの考え方であると思うのです。そういう観点に立って今回の措置をせられたということであるならば、高度な政治責任ということになれば、これは当然内閣総理大臣がとるべきじゃないですか。こういうようなことを平気でいままで何回か繰り返しているということに対して、私は非常に疑問を持つのです。なぜこれは連帯責任をとらないのですか。
  16. 黒金泰美

    黒金政府委員 だんだんのお話でございますが、私ども一国務大臣が辞職なさったということで責任が終わったというふうには決して考えておりません。いまお話がございますように、こういう不幸な事件が起こりまして、この結果は政府全体の責任でございます。ただその責任の遂行の方法といたしましては、内閣が総辞職する場合もございましょうし、また一番御関係の深い国務大臣がおやめになる場合もございましょう。しかし、そういうことは具体的なそのときどきの事情、政治判断で一がいには言えないことだろうと思います。ただ、しかし内閣としては、一番先にお答え申し上げたように、このよってきたるところは一警備のみの問題でございますれば非常に問題がございましょうか、そういう問題につきまして心を新たにして、そうして二度とこういう事件が起こらないように全力を尽くすことが責任を果たす道だ、かように考えておるのでございます。  実は、これはお聞きおき願いたいと思いますが、きょうは閣議におきましてもいろいろ議論が出ました。議論が出ましたということは、こういう外国使臣の問題ではございませんが、何回も不祥な事件が起き、そして警察当局としても今後全力を尽くすと言いながらなかなか実効が上がらない。こういうことからいたしまして、何らか現行法の制度自体にも、運用にもどこか欠ける点があるのじゃないか。この際不幸な事件ではございましたが、ライシャワーさんのように非常に日本人から親近感を持たれておる、こういう方にこういう不幸な事件があった。警察は全力を尽くしておってもこういう点で力が足りないのだということならば、制度の改正あるいは運用の改善につきましても国民皆さまの御協力を得て改善ができるんじゃないか。こういういい機会に、ひとつ警察当局としてもよく虚心たんかいにといいますか、従来のいきさつ等々にかかわらずにほんとうに真剣になって考えていただきたい、かような意見が非常に強うございました。公安委員長におかれても、よく検討して、ほんとうに今後こういうことが起こらないようにしていきたい、こういうような決意。これをほんとうに実行に移すことも、私は責任をとる非常に大きな道だと考えております。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、黒金さんは、現在の機構における警備体制その他に欠陥があるのじゃないかということ、これは大いに御検討願ってしかるべきだと思う。しかし、現在の体制下において責任をとって警察行政が行なわれている、こういうことなのであります。そういう理論になってくると、やはり今回の事件背景というものは、ただ単なる警備だけの問題ではないということ、むしろウエートの置き方としては、警備以外の問題、日本の全体の民主化の問題からきている問題だと思うのです。そういった行政責任をとるということになれば、高度な政治責任をとるということになれば、公安委員長責任を食わすということはおかしいのじゃないですか。それをやめさすというようなところに持っていくということで終わってしまう責任のとり方ではおかしいのではないか。それでは、将来そういうことについて十二分に注意して万遺憾なきを期する、いつもそういうことを言われるのですが、それをやることが結局行政責任である、そういうことになれば、何も人がやめるとかなんとかということによって処理しなくてもいい問題じゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、それが早川大臣の不行跡とかあるいは破廉恥とか個人の問題においてあるならば、これは別でありますけれども、そういうことでないということは明白でありましょうから、そうすれば、どうもいつも常套手段でもって、ああいう事件が起これば公安委員長責任をとらしてやめさせるんだ、こういう安易な考え方では、そのこと自体いつまでたって日本治安の体制というものは整っていかないんじゃないか。また警察官にとっても不安でしょうがないでしょう。警備責任よりも、これはほとんど通常の場合の警備責任としては考えられない問題だ。あるいはほかに原因がある、社会的ないろいろな欠陥がこれの原因をなしているんだということになった場合、その責任警察官なりあるいは公安委員なりあるいは委員長なりがしょっていかなければならぬという考え方、それは、そういう事件が発生したからやめなければならないのだ、それが手落ちだった、ほったらかしにしておいたからそういう事件が起こったんだということならば、むしろそっちのほうを担当しておる責任者が責任をとるべきだ。その場合、いろいろなものが重なってきますので、内閣の連帯責任だとという考え方をやはりこれは明白に打ち出すべきだ。それがどうも出方が鈍いですよ。私はこういうところに大きな問題があると思う。重ねて長官の見解を伺いたい。
  18. 黒金泰美

    黒金政府委員 まあいまのお話の点承っておりまして、ただやめるだけで事が済むものじゃない、ほんとうに実効ある対策を立て、ほんとうに実行して、そうして国民一人一人が身体財産に安心できるように、そういう体制をつくれとおっしゃることはごもっともでありまして、そのために全力を尽くしたいと思います。ただいま申し上げましたように、責任の問題の一番の究極は、そういうふうに今後二度とそういうことが起こらないように、警察のみならずあらゆる方面で改善、全力を尽くすことにあると私思っておりますが、しかし一つの考え方としては、やはりもっと御関係の深い方が政治的な御自身の御判断から、この際自分が辞職することによって責任を明らかにしたほうがいいと御判断になり、今回の国際的情勢その他から見まして、その御意向を了とした次第であります。先ほどお話がありましたように、その辞職だけでもって全部が終わったとか、それで内閣の責任が済まされたということは毛頭考えておりません。内閣全体の責任として、厚生省にもあるいは総理府にもあるいは文部省にも、あらゆる方面にわたってこういうことがないように、すでに全力を上げてやっておるところであります。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 まあやり合っておっても時間がかかりますが、要するに内閣の連帯責任という考え方でこういった責任の問題を処理していかるべきだということを私は申しておるのです。やめるとかやめないという問題だけではないということを申し上げたい。この点は、やはりいままでの考え方よりもう一歩進めて、内閣は憲法の精神に沿うような考え方になってもらいたい、こういうことなんです。  そこで、公安委員長にお伺いしますが、早川前公安委員長は、公安委員会を開いて、そうして自分の出処進退を明らかにされた、こういうことなんですが、この公安委員会に出席したのはだれとだれとだれですか。
  20. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 事件の起こりました翌日、一昨日でございますが、集まられたのは小汀利得委員と安井英二委員、それに委員長の早川公安委員長であります。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 そういたしますと公安委員会を開催する条件の最低限度でもって行なわれた、こういうことなんですね。三人ですね。
  22. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 委員長を含めて三人でございますから、公安委員会で何らかの議決というものをやりますには三人要るわけです。委員長のほかに。だから、とりあえず緊急に開かれたために、そこで議決をしたとか決裁をしたとかいう結果にはなっておらないと思います。お三人だけで大臣室で話し合われたことでございますから、私内容は存じませんけれども、法的にはそうだろうと思います。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 決議であるとかなんとかという問題じゃありませんで、ただ了解を求めるとか意見を聞くとかいう形において行なわれたんだと思う。しかしながら、こういった重大問題が発生しているときに、かりに公安委員会を開いて事を決しなければならないというような問題が起こったときに、いまのような形態では許されないと思う。この間行なわれたような公安委員会というものは成立しないと思う。  そこで、私は伺いたいのですが、公安委員はいま一人欠員になっておりますね。そうすると、ほかの委員はどこに行っておったのですか。
  24. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 御指摘のように、ただいま金政公安委員の後任は欠員になっております。だから四人でございますが、あと二人の公安委員は、一人は永野重雄委員、一人は名川保男委員でございます。永野公安委員は、御承知のように富士製鉄の社長でございますが、現在訪米経済視察団の副団長として渡米中でございます。名川委員は、弁護士さんでございますが、その用で香港、台湾のほうを、五、六日でございますが、回っておられました。それで、普通の公安委員会の開催日は木曜でございます。木曜でございまするから、水曜の晩までに名川委員が帰ってこられないと、永野さんはアメリカですから帰れませんので、三人にならないということで、特に名川公安委員は水曜の午後こちらへ帰るという予定で日程を組んで行っておられた。そこで、緊急に一日繰り上げてやるということになりましたから、こちらからこういう事態を連絡いたしまして、できれば帰ってもらいたいということにしたのでございまするけれども、飛行機その他の物理的な関係でどうしても間に合わなかったという事情でございまして、普通でありますれば、三人そろうということを特に考慮してやっておられたようでございます。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 国家公安委員長に伺いますが、いま言ったような公安委員の体制であります。明らかに金政委員の後任が見つかっていない。一名欠であるというもとにおいて、しかも定例公安委員会だけには出られるような措置は一応講じておる、こういうことでありますけれども、しかしながら公安委員会が決裁しなければならぬ、いろいろな事件が突発的に発生してきたときに、公安委員会はこれを何らきめられないというような情勢のもとに置かれておるというようなことでは、一体公安委員会の任務なんというものを何と考えているんですか。わかり切ったことでしょう。物理的であろうと科学的であろうと、わかり切ったことです。そういった事態を考えて、ほんとうに公安委員がまじめに公安委員であることを認識しておるならば、やはりそういう行動はとれないだろうと私は思う。交代していくとか、時期をずらすとかいうことによって、少なくとも三名は確保されておる状態のもとに置かれていなければおかしいんじゃないか。それを物理的か科学的か知らぬけれども、電報を打てば、今日のことだから飛行機ですぐ帰ってこられるんだというような考え方で運営されておるというところに、公安委員自分に与えられた職責の大きさというものをあまりにも自覚していない。突発的な事件が次から次に起こったときに、公安委員会で処理しなければならないときに、一体どうするのですか。委員長、どうです。
  26. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 その問題は、私の一番懸念しておるところでございます。実はさっき官房長官からも話がありましたが、閣議でもライシャワー大使事件を非常に討議いたしたわけでございますが、私も御案内のとおり、時間がないものですから、まだ今日まで公安委員の諸君にお目にかかってすらいないわけでございます。定例日は来週の木曜だそうだけれども、責任上私は一日も早く委員諸君にも会って、そして私は委員長としての職責を果たさなければならぬと今日考えております。できれば明日でも臨時に集まってもらって、そしてあの件につきまして、私は新委員長として、その委員諸君がどういう感触を持っておるかも聞かなければなりませんし、今後のことにつきましてもお互いに協議しなければならぬ問題が多々あると思いますが、いま阪上委員が言われますとおりに、公安委員が少しゆるんでおるのじゃないかという意味にとれる御発言があったわけであります。公安委員は、申すまでもなく全国の公安について、極端に言えば毎日、しかも二十四時間責任を負わなければならぬという重大な立場にある方々でございます。こういった点につきまして、私は委員の諸君とも会ってこの人たち考え方もただし、そして公安委員会の今日の立場というものを明確にいたしまして、今後の反省の資料にするとか、あるいは新しい考え方を見つけて何とか処置をしなければならぬ、こういうふうに考えております。私もあなたの考え方と同じ憂いを持つ者でございます。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 新国家公安委員長にお伺いするのは、事情がよくわからないでしょうからどうかと思いますが、ただいまのような問題点については、ひとつ十分に検討していただきたいと思います。同時に、これは私非常にがんこな考え方でありますけれども、こういった責任委員長が背負ううという形——そういった場合が出たときは、むしろ国家公安委員の全体責任という考え方が出てこないのは私はどうもふしぎでしょうがない。なぜこの公安委員長だけが責任を持つのか、合議体として処理されていっているこういった国家治安の問題について、なぜ委員長だけが国務大臣であるからというだけの理由で責任を負うのか、そんなことは関係ないと私は思う。負うならなぜ国家公安委員会全体の責任という形で出てこないか。今回の場合、公安委員長責任を負い、公安委員会が全責任を負うべきだという論ではありませんけれども、私は、今度の場合は内閣が全責任を負うべきだという考えを持っておりますが、公安委員会が責任を負うという場合に、委員長だけがやめればそれでいいのだという考え方、連帯責任感のないところに私は大きな問題があると思う。この点についての見解を伺っておきたいと思う。
  28. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 おっしゃったように、私もこの問題についてもあわせて検討してみたいと思います。それから前委員長がおやめになりましたのは、やめるように強要したわけでもなんでもありませんので、これは早川前委員長個人が自分の政治判断に基づいて決然としておやめになった。この責任につきましては、先ほど申しましたようにこれで終われり、今後は戒めますからという一片の答弁で終わるべき性質のものでありませんので、私どもは決意を新たにして、こういうことが再び起こらぬための措置を責任ともからめて十分検討したいということを申し上げておりまして、今後の推移を少し見守っていただきたいと思います。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 この責任問題というものは、ただ単に早川さんがやめただけで解決した問題じゃない。いろいろな意味における責任というものが残っておるという黒金官房長官ないし国家公安委員長の御答弁でありますので、私は了とします。どうか、やはりそういう考え方で問題の処理をしていただきたい、かように思います。  次に、多少小さな問題でありますが、この少年が病院に入りたいとして行ったところが、ベッドがなくて入れなかったという問題が出てきておりますが、厚生省の方が来ておりましたら、その状況を簡単に説明してください。
  30. 若松栄一

    ○若松政府委員 今度のこの少年精神病であったかどうかということにつきましては、私どもといたしましては、現地の衛生部を通じて調査いたしました。すでに新聞等でも報道されておりますように、数日間入院いたしまして、その間に医師が診断をいたしまして、精神病の疑いを持って治療するようにとすすめたそうでございます。しかし、家族ががえんじなくて入院しなかった、その後入院を続けなかった。その後外来でも治療を続けるようにと言いましたが、それも結局続けなかったということで、私どもとしては、この患者がどのような病状であったかということについて正確な判断を持っておりません。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 それで伺いますが、こういった異常青少年ですね、これに対して強制入院というようなことができるようなことになっておるのかどうか、イエスかノーでもけっこうです。
  32. 若松栄一

    ○若松政府委員 精神御生法という法律がございまして、この法律の規定で、精神障害者がみずからを傷つけ、あるいは他人を傷つけるおそれがある場合には、申請によりまして、知事が指名します鑑定医が鑑定を行ない、その結果によりまして強制収容を行なうというたてまえになっております。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 こういった精神異常者というものは、鑑定の結果にもよるでしょうけれども、全国的に見てどのくらいの数になっておりますか。
  34. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在五万三千名がこの強制措置によって入院いたしておりまして、月々およそ二千名前後がこの措置で収容されております。
  35. 阪上安太郎

    阪上委員 そういった鑑定の結果、入院させなければならぬという者の全部が入院させられるのですか、どうでしょう。
  36. 若松栄一

    ○若松政府委員 この問題は、非常にむづかしくございまして、どの程度の対象があるのかという把握が第一困難でございます。私ども、本年度精神衛生実態調査というものを全国的な規模で行ないまして、もちろんサンプルをとって調査するわけでございまして、それを全国に引き伸ばして推計をいたしております。その結果によりますと、精神障害者というふうに非常に広い意味にとりまして、精神病者あるいは精神病質者、あるいは高度の精神薄弱者等をひっくるめまして、約百二十四万人と推計したしております。この中で入院を要する程度の者は約二十八万人あるという推計をいたしておりますが、この数は推計でございまして、つかんでいる実数ではございません。
  37. 阪上安太郎

    阪上委員 かりに二十八万名を現在の時点において入院さすということになれば、ベッドはありますか。
  38. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在わが国の精神ベッドは約十四万床足らずでございまして、所要量の半分程度でざごいます。現在一万床程度が年々増加いたしておりまして、私ども、四十五年を目標に二十一万床まで至急増床したいということで、現在努力中でございます。
  39. 阪上安太郎

    阪上委員 黒金官房長官に伺いますが、ただいまのような状態です。どういうように措置されますか。
  40. 黒金泰美

    黒金政府委員 私、どうも大臣でないものですから、十分なお答えができないのでありますが、いま公衆衛生局長からお話のありましたようなことをもっと突き詰めて推進する、あるいはまた家庭内におきましても、入院できない不幸な人に対しましても、これに対する何らかの援護と申しまするか、監視と申しまするか、こういう措置を講じていきたいということで万全を期したいと思いますが、どうも詳しくは所管でないものですから、わかりません。
  41. 阪上安太郎

    阪上委員 厚生省にもう一つ伺っておきますが、諸外国へ参りますと、少年病院というものが公営でもってつくられておる。この事実は御存じだと思うのです。カナダへ行きましても、あるいはまた北欧三国等を回りましても、われわれの目に飛び込んでくる驚くべき施設として、みごとな施設として少年病院が各所に公営でつくられておる。こういうことは、あなた御存じだと思います。日本ではそういうようなものがあるのですか。
  42. 若松栄一

    ○若松政府委員 少年病院というものは、どのものをおさしいただきましたか私よく存じませんが、チルドレンズ・ホスピタルというものは方々にございます。そのチルドレンズ・ホスピタルというものは、通常小児科の各科の総合病院でございまして、もちろん精神系統の神経疾患も取り扱います。この病院は、そういうふうに一般の疾病を扱いますので、そのほかに、厚生省で児童局に教護院というものがございまして、一八歳未満の子供につきましては、非行少年あるいは非行のおそれある者については、教護院に収容いたしておりますし、危険のある成年者については、ただいまのようにできる限り精神衛生法で措置する方針をいたしております。
  43. 阪上安太郎

    阪上委員 なるほど日本を見ますと、小児科であるとか、婦人科であるとかという区分によって病院が通常やられておる。総合病院ももちろんありますが、しかしそういう概念じゃなくして、青少年を対象とする、いわゆる発育盛りのきわめて重要な時期にあるところの青少年を対象とする総合的な公営の病院というものが存在していないのではなかろうかと私は思う。院その他というものはまた特殊なものです。そういった施設が諸外国ではもう一歩進んでおる。だから、この推計二十八万人の入院を要するところの精神病者に対しても、これだけの措置じゃなくして、もっと広い意味における青少年対策の一環としての青少年病院というものが考えられてしかるべきである、私はこういうように思うのです。これは希望だけにとどめておきますが、黒金官房長官等も対策を立てられる場合には、ひとつ詰めてそういったこともお考えに置いていただきたい、かように思います。  いま一点お伺いいたしたいのですが、行少年対策がやはりこの問題の背景として大きく取り上げられなければならぬと私は思います。青少年対策について、青少年問題協議会は中央、地方を問わず盛んに力を入れておることは事実でありますが、どうもこれが単なる非行少年対策、要するに文字通り青少年問題協議会という形において行なわれておるのでありまして、問題青少年対策、ことばをかえていえば、そういう範囲にとどまってしまっておる。もっともっと広い意味青少年対策というものをこの際展開する必要がある、私はかように考えるわけであります。現在の青少年に大きな希望を持たして、そうして世界観を樹立させて、堂々と全世界に飛躍できるような青少年、そうして現在行なわれておるような問題青少年対策のごとく、何しちゃいけない、かにしちゃいけないというべからず主義の青少年対策ではなくして、与えるべきところのものは十二分に青少年に与えていく、こういうような青少年対策というものを推し進める必要があると私は思うのであります。今回の事件が起こりましてつくづく考えられるのは、わが国における青少年対策があまりにも貧困であるということでございまして、ああいった問題青少年対策だけでは、こういった問題の抜本的解決にはならないのではなかろうかと思う。ところがわが国の青少年対策を見ておりますと、きわめて貧困であるということでございます。こういった点について、やはり思い切って青少年対策を推し進める必要があろうと思います。青少年局を総理府の中に設けようという法案が出ておるようでございますが、こういったことと関連いたしましても、もう少し青少年対策政府は力を入れなければいけないのではないか。ほしいものがあっても、それを自分のものとすることができないような環境に置かれている青少年、あるいはけっこうな家庭に育っておっても、何の希望もなく漫然と生活をしているところの青少年、ましてや世界の青少年と交流、交歓いたしまして、そしてみずからの力で世界観を樹立して、日本の国は将来どうあるべきかというような高通な精神を持った一大青少年運動が展開できるような形に持っていかなければ、ほんとうの意味青少年対策でない。繰り返していいますけれども、問題青少年対策というようなところに小さくからを閉じて入っておるような対策では、とてものことにこういった種類の事件すら解決することができないのではないか、私はこのように考えるわけです。青少年対策について、もっと確固不抜のしかも東西古今を通ずるところの大運動を展開するような、そういうものをこの際やはり青少年対策として打ち出す必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに私は思うのです。そういったことをほんとうに着々実施することによって、あるいは早急に実施することによって、警察が取り締まり上非常に困難を感じ、行き詰まってしまっている問題を解決する大きな基因にもなるのではないか、私はこのように考えるのです。この点については、ひとつ所感を承っておきたい、かように思うのであります。
  44. 黒金泰美

    黒金政府委員 阪上さんの御指摘になりましたように、大体こういう問題は、病的なものをなおす、たとえば児童福祉関係におきまして、虐待されておる、あるいは異常な児童から始めていくということで、どうもそういうゆがめられたものの矯正から始まっていっておる。それが児童あたりになりますと、児童がもっとすくすくと健康な発育ができるように、ここまでようやくきておるのでありますが、青少年の問題につきましても、御承知のとおり、精薄の問題でありますとか、あるいは覚醒剤の問題でありますとか、こういうゆがめられたものをいかに矯正するか、いわば非行青少年対策から出発しましたことは御指摘のとおりであります。しかし、この協議会の活動を見ておりましても、たとえばユースホステル、これは決して十分とは申せませんが、これの整備充実とか、スポーツの振興でありますとか、こういった積極的な方面にも次第に力を発揮し始めております。いま御指摘のあった青少年局でございますが、青少年局の機構をつくっただけで、それで仕事ができたとは決して思いませんが、総合的なこういう機構をつくりまして、青少年行政の長期的な計画を立案いたしたい。それから、文部省でありますとか、厚生省でありますとか、各省にわたる行政でありますから、ここでほんとうに連絡、総合調整をとって、均衡がとれたいき方をしてまいりたい。また、各省にいままで所属しております仕事、これはなかなか所管を変えることはむずかしゅうございますが、どうこうということもないそういうような施設については、ここで所管いたしまして、この青少年局を幸いにつくることができますならば、これを契機といたしまして、いまおっしゃいますような矯正できる非行行少年というよりもっと進んで、次の代をしょって立てるりっぱな青年を育て上げるという方向に仕事をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 大体私の考えておりましたような御答弁をいただきまして、まことにありがたいと思っております。こんなことは、私どももう何回となくここで論議してきた問題であります。そして、青少年には、むしろそういう取り締まり的な面ばかりでなく、逆にもっと与えていく、また、青少年みずからが自分考え方によって一大行少年運動を展開していく、そして日本の将来をどう持っていくかということを青少年みずからが自分で展開していく、そういう運動を起こすようなものをつくり上げていくといいますか、アドバイスしてやる、こういう形でなくちゃいけないと思うのであります。この犯人少年を見ましても、これをよく検討して、——彼の自供から考えてみても、狂った考え方であるかもしれない、あるいは間違った考え方であるかもしれない。つまり、ぶっつけ方があまりにも間違っているということははっきりしておりますけれども、しかし、自分の目が悪いということを占領政策にさかのぼって考えているという考え方、それが正鵠を得ているとは言えませんけれども、考えてみれば、まことにいじらしい考え方であると思うのであります。そういった境遇に置かれているということではないかと思うのであります。したがって、非行少年になる以前に、もっともっとこういった精神異常者であるかどうか——まだ判明いたしませんけれども、あるいは先天的なものであるかもしれないけれども、そういった青少年に対してもっとあたたかい気持ちがあれば、あるいはああいう考え方に導く必要はなかったではなかろうか、一途に思い詰めさす必要はなかったではないか、こういうように思うわけであります。私どもも注意しなければいけませんが、政府青少年対策に何か一つ欠けているものがあるではないか、こういうように思うのであります。そういった点について今後ともぜひ善処していただきたい。これだけ希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  46. 森田重次郎

    森田委員長 消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案についての質疑は昨二十六日終了いたしております。  これより討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 森田重次郎

    森田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  48. 森田重次郎

    森田委員長 この際、田川誠一君、安井吉典君及び栗山礼行君から本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、本動議を議題とし、その趣旨の説明を求めます。  田川誠一君。
  49. 田川誠一

    ○田川委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨説明を行ないたいと思います。  まず、附帯決議の案文を朗読いたします。    消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案内閣提出第三一号)(参議院送付)に対する附帯決議   政府は、自治体消防が国民生活の安定と災害の防除に果たす役割がきわめて大きいにもかかわらず、消防力の整備が必ずしもこれに即応していない現状にかんがみ、左記事項について適切な措置を講ずべきである。  一、社会環境の複雑化に対処し、市町村が消防力の基準に基づく消防施設整備計画を推進できるよう、国は十分な財政措置を講ずること。  一、非常勤消防団員に対して、国は報酬及び手当の増額等その処遇を一層改善する方策を講ずること。    右決議する。  以上であります。  自治体消防も十五年の歳月を経まして、ようやくその基礎を固め、最近飛躍の時期に差しかかっているのでありますが、近代消防が高度の技術性と科学性を必要とするからには、人的な面とともに物的な施設面の整備充実をはからなければならないと思うのであります。  そこでこの際、第一に、消防施設の強化につきましては、消防施設強化促進法にのっとり、十カ年計画を樹立いたしまして、そして消防力の増強に当たってきたのでありますけれども、実情はきわめて不十分であるばかりでなく、逆に後退の傾向すら見られるのであります。このような現状にかんがみまして、市町村消防の充実、強化をはかるために、国は十分なる財政処置を講ずべきものであると思うのでございます。  第二に、消防団員の処遇改善につきましては、非常勤消防団員の処遇改善に関する中間答申にありますように、現行制度の実施以来の努力にもかかわりませず、現下の社会、経済事情に顧みるとき、その処遇はきわめて不十分な状態に置かれてありまして、このことが消防団員の確保対策にも大きな関連を有しているのでございまして、こういうような事情で附帯決議をぜひともっけたいと思うのでございます。  以上が本決議案を提出いたしました理由でございます。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  50. 森田重次郎

    森田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認めます。よって本案は、田川誠一君外二名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際金子政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。金子自治政務次官
  52. 金子岩三

    ○金子政府委員 政府といたしましては、本決議の趣旨を尊重いたしまして、善処いたしたいと思います。
  53. 森田重次郎

    森田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決されました本案に関する委員報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  55. 森田重次郎

    森田委員長 引き続き、ライシャワー大使傷害事件に関する問題について質疑を続行いたします。  安井吉典君。
  56. 安井吉典

    ○安井委員 このたびの遺憾きわまるライシャワー傷害事件につきましては、先ほど来の阪上委員質問によりまして、相当その中身が明らかにされたわけでございますが、黒金官房長官はすぐにお帰りにならなければいけない御予定があるそうでございますから、官房長官にお尋ねしたいことが実はたくさんあるのですけれども、これは非常に重要な問題だと思いますので、ただ一点だけしぼって端的に伺いたいと思うのです。  先ほどの質疑の中にもございましたが、この事件をめぐる責任問題でありますが、早川国家公安委員長の辞職という形で一応いまあるわけでございますが、二十五日の赤澤国家公安委員長決定後の黒金官房長官の記者会見の模様が伝えられております。新聞記事によりますと、黒金官房長官は、このたびの早川国務相の辞表提出はやむを得ないものであったということを前段にお述べになってから、そのあとにこういうふうに新聞は伝えております。「しかし行政責任についても閣内、党内になかなかきびしい空気もあり、私から赤澤委員長に伝えて善処方を協議したい。この点は新委員長の就任後初めての宿題になると思う。」こういう表現があるわけです。この行政責任の追及という意味は、警察庁の幹部、あるいは警視総監に対する行政責任の追及と、こういう意味合いを含めての御発言か、あるいはその他のことを想定されての言われ方か、その点、ひとつはっきりこの際お聞かせをいただきたいと思うのです。
  57. 黒金泰美

    黒金政府委員 一昨日の記者会見で、公安委員会が二十五日の朝ございまして、一応その時点においては、先ほど来お話がありましたように、行政的な責任をとらすことはちょっと無理だというような御判断があった、政府はどう考えておるんだというような質問がございまして、私どものところにいろいろ入ってきます空気と申しましょうか、いろいろな意見の中には、行政責任ありという意見もございます。しかし、公安委員会がある時点においてそういう御決定をなさったならば、新大臣がよく御検討になることでございましょう、こういうことを申した記憶がございます。
  58. 安井吉典

    ○安井委員 そのことは、つまり内閣の大番頭という立場の官房長官として、新大臣に対して、こういうふうな空気があるからこうしなさい、こういうような言い方で問題を投げかけるおつもりなのかどうか、その点をひとつ伺います。
  59. 黒金泰美

    黒金政府委員 私どもはそこまでのことはございませんし、また具体的に今回の問題というよりも、行政責任をどういうふうに考えるべきかという抽象的な問題として、やはり考える必要があるであろうというふうには考えております。また同時に、先ほどもちょっと触れたと思いますが、きょうの閣議におきましても、警察というものがいかなる立場にあるべきかというような点につきましては、いろいろ御意見もございました。今後一体どういうふうにやっていったら一番いいんだというようなことについて、新公安委員長が十分検討いたしたい、したがいまして今後公安委員長、あるいは公安委員会と申すのが正しいですか、あるいは警察庁とも十分御検討があることと考えております。
  60. 森田重次郎

    森田委員長 門司君。
  61. 門司亮

    ○門司委員 官房長官最初に聞いておきたいと思いますが、国会でこの事件についての報告を外務大臣にさしております。このことはどういう理由ですか。この事件自体の責任者というものは外務大臣ではなかったと思うのですが、この間の事情をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  62. 黒金泰美

    黒金政府委員 これは私どもの見解があるいは間違っておったかなと、実はいろいろとあとから考えるところもあったのでございますが、あの問題が起きましたときに、やはり国際的な影響、これを念頭に置いておったことも事実でございます。したがいまして、まあ外務大臣から御報告願ったほうがいいんじゃないかということで、国会対策等とお打ち合せをいたしまして、外務大臣に御説明を願ったわけでありますが、その後におきまして、むしろ総理がいいんじゃないか、先ほど阪上さんがお話しになりましたように、これは治安だけの問題でもない、国際的な問題だけでもない、あらゆる点にわたる問題なんだというような御見解からいたしまして、総理がよかったんじゃないか、実は私自身もいま反省をいたしておりますところでございます。反省とまでいきませんが、とつおいつ、どっちがよかったかなと実は迷っておるのでございます。御批判としては謙虚に承っておきたいと思います。
  63. 門司亮

    ○門司委員 どうも私どもも議場で実は奇異な感じがしたのです。一体外務大臣が何の用があってこういう事件の説明をしなければならないかということ、私はこの点はやはり内閣の考え方の上に一つの大きな誤りがあるんじゃないかということを言わざるを得ないのです。しかし、ここでいまあなたを追及してみたところでしょうがないと思いますけれども、少なくともこういう事犯について、事犯の直接の責任者というのなら公安委員長が説明をすべきであって、外国に対する配慮というものがあれば、これは総理大臣でなければならない。これは間違いないのです。どっちかでなければならないということで、将来この種の問題については、対外的な関係もありますし、国会も、報告した人に質問しないで、質問の場合にはほかにいくという形で妙な関係を持っておりますし、いまの官房長官お話で、時間もございませんから一応切っておきたいと思います。  それからその次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、過去に日本にこういう事件が二つあったわけです。一つは明治二十四年でありますか、当時のロシアの皇太子のニコラスが来たとき、警備の津田三蔵がサーベルで刺したという事件、それからその次は日清戦争のときに、講和大使といいますか、交渉大使というかわからぬが、とにかく李鴻章をピストルで打ったという小山六之助の事件、二つあったわけです。これらの事件と今度の事件について、内閣はどう考えているか。あのとき内閣がとった処置と、今度の内閣がとった処置と、私はいささか違うと思うのですが、こういう過去に二つの事件があって、あとのは明治二十八年で、前のは二十四年でありましたか、かなり時間的に経過もしておりますし、国際情勢も多少変わっておろうかと思います。それから国内情勢も非常に大きく変わっております。私は必ずしもこれを一律に議論しようとは思いませんが、その当時内閣がとった外国のそうした高官の諸君に与えた危害についての日本の何と言いますか、謝罪ということばはどうかと思いますが、そういうものと、今度の事件とに私は多少開きがあるように感ずるのですが、官房長官はどうお考えになりますか。
  64. 黒金泰美

    黒金政府委員 どうもいまのお話でございますが、私ども実はあまりに古いと言っては恐縮でありますが、まあ憲法も旧憲法時代——あの当時はたしか陛下がわざわざいらしていろいろ御慰問になるなど、いろんなことがあったように承っておりますが、私どもといたしましては、やはり今度の事件につきまして、比較すべきものは浅沼委員長事件でありますとか、新憲法になってからの事件をおおむね頭に置いて考えておった次第でございます。
  65. 門司亮

    ○門司委員 私が聞いておりますのは、そういう事件自体じゃないのです。これはやはり外国の、少なくとも一国を代表した大使ですね。したがって、さっき申しましたように、時代が変わり、憲法が変わり、社会情勢が変わっておることは、現実の問題としては現象的には間違いない。しかし基本の問題として、外国の高官であることに間違いがない。そうするなら、やはり国の態度というものは、おのずから外国の高官に対する儀礼もありましょうし、というようなことは、何ぼ時代が変わったからといって、そんなに変わるものではないのじゃないかということが考えられるのですが、その点についてのいまの御答弁で、どうも国内の事犯と同じような考え方で処置するんだというようなことでは、私はやはり日本の外交に対して——ことさらに何もアメリカだからどうこうというわけじゃありません。いろいろな方面にこういう事件が起こらぬとは限らぬと思う。そういう問題については、もう少しやはり対外的に日本責任を負うというような謙虚な態度が必要じゃなかったかと思うのですが、総理大臣のこの間の答弁を聞いてみましても、遺憾の意を表するということは再三言われておりますけれども、それなら具体的にどういう処置をとったかというと、大臣がおやめになったということだけで、あとの処置は何もない。こういう点につきましても、私はもう少し誠意のある答弁を実は願いたいのでありますが、もし答弁がございましたならば、ひとつこの機会にしておいていただきたいと思います。
  66. 黒金泰美

    黒金政府委員 事件が起こりまして直ちに外務大臣がお見舞いに参りました。また、私も総理のお使いで病院に参り、また国会中で席を離れられなかった関係上、夕刻総理も見舞いに参っております。同時に私どもは、私の談話といたしまして、非常に遺憾であり、日本国民はこのような事件を最も嫌悪しておる、国民全体として日米間の良好な外交関係、親善関係がそこなわれないことを切望しているものと確信する。また同時に国内に対しましても、政府はこういうことが今後絶対に起こらないように万全の措置を講じたいので、ひとつ国民の皆さんも御協力賜わりたい、こういう趣旨の談話を出し、また総理からジョンソン大統領あてに、また外務大臣からラスク国務長官あてに、遺憾の意を表し、お見舞い申し上げ、そしていま申し上げたように両国間の親善関係がそこなわれないことを国民全体が切望しておる旨の、総理からは親電、外務大臣からは親書、これを武内大使に送りました。武内大使は、あれはちょうど夜でございましたが、電報が着きまして、直ちに国務省に電話をすると同時に、翌朝直ちにそういうものを持ちましてラスク国務長官に会いまして、いろいろとお話を申し上げ、これに対してジョンソン大統領からも、アメリカ国民が親善関係をそこなわなくて済む、このようなことを確信しておりますというような懇切な電報も参りましたし、私ども率直に申し上げまして、アメリカでの新聞論調その他比較的平穏に受け取ってくれておるようでございます。ライシャワーさんの病床の写真等も掲げまして、比較的穏やかに扱ってくれておるように思います。けさ外務大臣から御報告がありましたが、世界各国におきましても、まずまず穏やかな受け取り方をしてもらっておるようである。一、二の国は別でございます。そんなふうに承知をいたしております。
  67. 門司亮

    ○門司委員 これでやめますが、私がなぜそういう質問をするかというと、かつてのケネディ事件のときも、池田さんが行くとか行かぬとかいうようなことがあって、多少批判があったと私は思う。そういう何かしら内閣には大国意識のような変なものがあるのではないかと思うのです。やはり外交の上にこれがもし障害になるということがあっては——卑屈になってはなりません。しかし、一面非常にこびるような低姿勢の反面、何か大国意識のようなものがあって、ケネディ事件等に対しても、もう少し謙虚なものがあってもよかったのではないかという気がするのでありまして、これ以上私は質問を申し上げませんが、この点ひとつ内閣としても気をつけてもらいたいということを申し上げて、官房長官に対する質問を終わりたいと思います。
  68. 安井吉典

    ○安井委員 先ほどもちょっとお尋ねだけしたのですけれども、閣内やあるいは党内でどういう御意見があるか私も知りませんが、ただ警察法を知らないしろうと論議がずいぶんあるのです。つまり警察法の中で国家公安委員会がどういう立場で、その委員長がどうであって、警察庁長官がどうであって、自治体警察という本質の中で警視総監がどう置かれているか、そういうものに関してのしろうと論議の責任論というものが私はずいぶんあるのではないかと思うわけです。だから、政治責任だとか、法律責任だとか、行政責任だとか、いろいろなことばのあやで問題が出されていると思うのです。ですから私は、これはやはりきっちり折り目のついた法律的な解釈の上に立った措置が当然なされなくてはならないと思うのです。そういう点、そういうしろうと論議にはもちろん黒金官房長官は鋭い明察をもって対処されるだろうと思うのですけれども、ひとつ要望だけしておきます。  続いてお尋ねを進めてまいりたいと思うのですが、いま大胆がお見えになりませんので、厚生省からいまおいでいただいております関係もありますので、精神異常者対策ですか、そういうような面について初めに少しお尋ねをしたいと思います。  こういう事件は、これはライシャワー大使に対する問題であったものですから、こういうふうに大きく報道されているわけです。しかし現実には、精神異常者ということばが当たるのかどうかわかりませんけれども、そういうような人たちによるところの事件というものは相当多いのではないかと思います。ですから、やはり野放し状態を一日も早くやめなければならないというふうなことが当然出てくるわけでありますが、問題はその見分け方、どういうふうにして判別していくかということであります。やはりできるだけ早めに発見をしてそれ相当の措置を講じていく、こういうことでなくてはならないと思うのでありますが、そのためにどういうふうな対策をお持ちになっておりますか、それをひとつお伺いしたい。
  69. 若松栄一

    ○若松政府委員 私どもが精神病者に対する扱いをやっておりますのは、精神衛生法という法律に基づいてやっております。そして先ほど申し上げましたように、放置しておきましてはみずからを傷つけるか、あるいは他に害を与えるおそれのある者について、知事が鑑定医の診察の結果によりまして、もしそのおそれがあれば強制的に精神病院に入れるというたてまえをとっております。この現状は、現在のところ約五万三千人程度はこの措置によって収容されております。この措置が行なわれる経路はどうかと申し上げますと、おおむね通報によってこの仕事を行なっているわけでございます。通報はどういうところからくるかと申し上げますと、大体一番その患者を見守っております家族あるいはそれを診察する精神病の医師、それらの人が気がつくことが一番多いわけでございまして、現実には、昭和三十七年度の結果では家族あるいは医師と協力して届けられる者、通報される者が四万二千人ございました。  そのほかに精神衛生法の規定によりまして通知の義務の課されておる者がございます。たとえば警察官は、警察官職務執行法の規定によりまして、精神障害者またはその疑いのある者を保護した場合においては、直ちに、もよりの保健所長に通報しなければならないことになっております。また、検察官は、精神障害のある被疑者について不起訴処分をしたとき、または精神障害のある被告人について裁判が確定したときは、すみやかに、その旨を都道府県知事に通報するという規定がございます。もう一つは、矯正施設——拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院というような矯正施設の長が、精神障害またはその疑いのある者をその収容所から退所させる場合には、やはり都道府県知事に通報しなければならないことになっております。  このようなルートによりまして、現在私ども把握いたしました者を専門医による鑑別を加えまして収容するという方策をとっております。
  70. 安井吉典

    ○安井委員 いまの法律で、家族にも通報義務はあるのですか。
  71. 若松栄一

    ○若松政府委員 これは家族というよりは一般の人ということになっておりまして、「誰でも」ということになっております。これは条文を申し上げますと、「精神障害者又はその疑のある者を知った者は、誰でも、その者について精神衛生鑑定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる。」 ということになっております。この規定は、実際には家族が一番たくさん利用しておるわけでございます。
  72. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、おっしゃったような法律はあっても、現実につかまれているのは推計でずいぶん大きな数にのぼっているにかかわらず、実際はどこにいるのかわからないというのが実情じゃないですか。ですからもう一つ現実に何のたれべえがどこそこにいるという実態をつかむ方策が伴っていないということになるのではないですか。
  73. 若松栄一

    ○若松政府委員 実はこの法律の目的がもともと精神障害者等の医療及び保護を行ないまして精神障害の発生を予防する、そうして国民精神的健康の保持及び向上をはかるということが目的でございまして、犯罪あるいは危害の防止を目的とするものではございません。したがって、私どもはこれらの通報に基づきまして保護の措置を行なうわけでございまして、強制隔離といいましても、これは本人の保護ということが基本にあるわけでございます。したがって、この措置を行ないます職員といたしましても、各保健所に一あるいは二名という程度の職員でございまして、これが一保健所が十万の人口を管轄しておりますので、保健所みずからがそれらのケースを把握するということはきわめて困難でございます。したがって通報に基づくということを活用せざるを得ない。したがいまして、現在私どもといたしましては、今度の事件等にもかんがみまして、できるだけそれらの情報をキャッチし得る立場にある方々の協力を広く求めたい。そういう意味警察等の連絡をよくし、あるいは児童相談所、福祉事務所あるいは民生委員、児童委員あるいは教師等の方々とも積極的に今後連絡をとって、それらの情報の把握につとめたいと存じております。
  74. 安井吉典

    ○安井委員 いまの法律が社会保障的な保護立法だったことはよくわかります。だとしても該当者が漏れていて、せっかく国が十分にしようという保護措置があるにもかかわらず、漏れたままにしておくということであっては、これは片手落ちの保護行政になってしまうわけです。ですから、単に犯罪関係があるという問題提起だけではなしに、やはり保護行政という立場からもそういうような該当者を一日も早く正確に把握する、そういう努力が私は必要でないかと思うのです。  そこで犯罪捜査の面から警察庁長官に伺いたいのですが、そういうような問題につきまして警察としてどういう御努力を今日までされてまいりましたか、それをひとつ伺います。
  75. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 ただいま厚生省からお答えになりましたように、官が警察官職務執行法によってそういう者を保護した場合には、保健所に届け出なければならぬという義務があるわけでございますから、保護をいたしました場合は通報しておるわけでございます。ただ今回の少年につきましては、取り調べはもちろん三、四回やっております。頭が少しのろいなという感じを持ったそうでありますけれども、いわゆる保護ということを一回もしていないものですから、したがって通報もしてないということでございます。
  76. 安井吉典

    ○安井委員 いまのこの問題については警察庁側の御答弁もありましたけれども、いずれにしても、できるだけ早いうちに把握するということがなくては、きょうは社会保障的な立場よりも、むしろ犯罪捜査というふうな面から問題を持ち出しているわけでありますけれども、こういうような事件は今後あとを断たないということになるのではないかと思います。何か新聞などの報道によりましても、大使館のぐるりを一年間に十四、五人くらいの浮浪者あるいは変質者といいますか、そういうような人たちがうろついている。そういう事態を警察自身が知っているというふうな新聞の記事もあります。アメリカ大使館のまわりにはそういう集まりやすい雰囲気があるのかどうかしりませんけれども、そういうような事態があるようですし、それからいままでいろいろな犯罪があった場合も、変質者によるところの犯罪というものが相当多いように思うわけです。それだけにやはりこの問題には真剣にお取り組みになるという姿勢がなくてはならないと思うのですが、いかがですか。
  77. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 安井委員のおっしゃるとおり、私たちとしては、変質者が野放しにされているという状態が一番こわいわけでございまして、その点から、犯罪予防という点からもそういうものを捕捉する方法を考えなければならぬと思うのです。ただ、このことがすぐ戸口調査というようなことに結びついていくか、あるいは保健所に対する通報義務と同じように、そういうものは一応警察へ届けてもらうということにするのか、そのやり方はいろいろあると思うのです。それはまかり間違うとやはり人権に非常に影響のある問題でございますから、方法につきましては、私ここでこういう考えだということは申し上げられませんけれども、とにかく何らかの方法警察視野に入れなければならぬという考えは持っております。
  78. 華山親義

    ○華山委員 関連。変質者のことにつきましてお伺いいたしますが、私の経験によりますと、現代のことでございますから、人権を尊重するというようなことはもちろん必要でございますけれども、私どもが見まして、変質者だというふうなことが明白であり、私が役所の仕事等をやっておりまして、しばしば脅迫に来る、あるいは短刀あるいは硫酸を持って来るような事態が起きましても、警察のほうではなかなかこれを精神病院等に入れるという措置をとりません。こういう点非常にむずかしい問題だと私は思いますけれども、そういうことにつきまして、もちろん人権じゅうりんにならないような意味で適当な精神の鑑定をするなりそういうことは必要だと思いますけれども、そういうことにつきまして、何かものごとが起こらなければ警察というものはその人を処置することはできないようになっているのでございましょうか。
  79. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 現在の警察の発動のたてまえは、いまおっしゃったようなことになっておりまして、まことに残念でございます。われわれ自身におきましても何とかしてもらいたいと思うのがよく参ります。ただ、先ほども申し上げたように、警察におきましては犯罪を犯した者、あるいは保護の点でいきますれば、自傷ないし他傷のおそれのある者ということにしぼられておるものですから、常識的には当然そういう者はおそれはございます。ありますけれども、そういう何らの徴候というか、少しでも行動に出ない限りにおきまして、ただ徴候があるとして精神医のほうに送るというわけになかなかいかないわけでございます。したがいまして、私の記憶します最近における唯一の事例は、バスの中で女の車掌に注意をされて、恥をかかされたということで、帰ってから数回にわたり、覚えてろというような電話をかけたのがおりましたが、これなんかは明らかにどうも精神異常の傾きがあるということで、これは強制的に都知事におきまして鑑定をしまして、そして現在精神病院に入院させておるというようなことになっておりますが、そういうやり方を、何ら行動に出ない前に大いにやったほうがいいものかどうかということにつきましては、ただいまここで、いまからそういう者を見つけ次第やりますということを申し上げるのはちょっといかがかと思いますので、差し控えたいと思います。
  80. 華山親義

    ○華山委員 今度の例におきましては、ライシャワー大使にああいうふうな不幸なことが起きたのでありますけれども、具体的にあの人はあの事前に警察なりあるいは厚生省等の関係精神病院に収容することができたものでございましょうか。
  81. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 二月二十六日に、一月二十日の放火事件について取り調べました際に、先ほど申し上げたようにアリバイ、証人その他の関係で容疑が晴れて釈放したものですから、これは保護処置をとっておりませんけれども、あの状態で、もう少しこちらのほうに頭が変だという確証がありましたら、そのときに保健所に連絡をする、そうすると保健所のほうで精神を鑑定されまして、おそらく監置されておったのではないかと思います。
  82. 華山親義

    ○華山委員 人権の尊重はもちろん必要なことでございますし、これが乱用されるようなことはもちろん慎まなければなりませんから、非常に注意してやらなければならないと思いますけれども、こういうのをどうして警察や保健所等でほっておくのだろうというふうに思われる事態が多い。やはり危険のあるような人には、これは人権を重んじながら適切な処置をすみやかにとるようなことをお願いしたいと思うのでございます。また、私の経験によりますと、警察のほうで処置をした精神異常者というものを、精神病院等に収容した場合に、非常に臆病でございまして、人権じゅうりんになるおそれがあるということから、常態に戻りますと、これはベッドの数によるのかもしれませんが、すぐ精神病院から出す傾向がある。そうして間もなくまたその人がいろいろなことをやり始めるという事例も私は見ております。そういうことの関係もございますし、人権尊重のこともございますから、むずかしい問題と思いますけれども、ひとつ丁寧に、ある場合におきましては勇気をもって、精神異常者というものは処置していただきたいと思います。
  83. 大石八治

    ○大石(八)委員 関連して。先ほど警察庁長官から経過の報告がありましたけれども、その中で、朝、母親公安官に届けて、六時何分の汽車に乗ったからというお話の中に、凶暴性があるからということばがあったと思うのです。そして公安官に届けて押えてくれということがあったという報告がありました。公安官のほうは横浜及び東京連絡したが見当たらなかったので、単なる家出人というような解釈でそのままにそこで切れたというふうに聞きましたが、そういうことはございましたか。
  84. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 私はそういうふうに聞いております。
  85. 大石八治

    ○大石(八)委員 実は運輸省の方がおりませんので質問にならないわけですが、この事件がたまたまこういうことになりましたのでそう言えるのかもしれませんけれども、凶暴性があるということをつけ加えて母親公安官に言ったとすれば、いわゆる混雑をしてその場では見えないということはあり得ることだと思うのですが、そうすれば、私どもの解釈であれば、当然警視庁なりその他に連絡をしてその問題を引き継ぐことが妥当のように考えられます。また、今度の事件の結果から考えれば、警察のほうからいえば、そのときに連絡してもらえばということは必ず考えられると思うのであります。鉄道のほうと警視庁、警察との間には、きのうあたり公安委員会と消防との間に協定を結んではどうかというような緊密な連絡のこともありましたけれども、おそらく公安官と警察の間はもっと緊密なものではないかと実は思うのですが、その点は制度的にはどういうことか。私はしろうとですが、警察のほうと鉄道の公安官の関係は制度的にはどうなっているのですか。
  86. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 鉄道公安官警察官との相互の協力の関係でございますが、刑事関係につきましては一般的に捜査の協力協定というものがございまして、平素から緊密な連絡をいたしております。ただ、本事件の場合には、先ほどお話に出ておりましたように、確かに危険性があるのだという届け出があったようでございますが、鉄道公安で発見ができなかった。おそらく家出人の保護という観点で処理をせられたのじゃないかと思いますが、そういうことで警察との連携がうまくいかなかった。こういう点につきましては、将来、この事件を大きな教訓として、私どもも刑事関係のみならず、そういった家出人等のうち犯罪を犯すおそれがあるといったものの程度までについては、やはり相互の通報ということを両者の間できめて改善をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  87. 大石八治

    ○大石(八)委員 いま、おそれのあるということについては連絡し合わないという制度、と言ってはおかしいのですが、制度になっているのですか。
  88. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 もちろん、犯罪を犯すおそれがあるということであれば連絡することになっておりますが、先ほど私が申しましたのは、多少舌足らずで申しわけございませんでしたが、単純な、何と言いますか、家出人といった程度をやや越えておるという程度のものであれば連絡をする、こういうふうに改めていきたい、こういうことであります。
  89. 大石八治

    ○大石(八)委員 長官の報告では、母親から、狂暴性があるということをつけ加えて届け出られて、取り押えてもらいたいという願いだったそうであります。先ほどから官房長官なり委員長に対する質問で、行政責任の問題が出ておりまして、行政責任の問題が警察庁なのか警視庁なのかということに多少限定されておるようでありますが、もう少し考えれば、その責任の大きさは別として、警察のほうに連絡をしなかったことというのは、いまのことばだけ聞いていれば、狂暴性があるから取り押えてもらいたいという頼みがありながら、それを見えなかったということで、そこでぷっつり切れさしたことに、やはり何か問題がある。あなたのほうにこれを言ってもしょうがなくて、これは公安官のほうに質問すべきことのようでありますけれども、事態がこうなれば、警察のほうにそのときに知らされて、沼津の男ということになれば、おそらく対処置が常識的にできそうだと実は思うのですが、先ほどから行政責任とかあるいは政治責任とかいう問題が出ておりますけれども、この場合はその男にだけ限られているようでありますが、運輸省等の関係で考えると、もう少しそこらの問題はこまかく考える必要があるのではなかろうか、こういうふうに思います。だれに返事をしてもらったらいいのかわかりませんが、その問題についてはどういうふうに警察庁はお考えになっておりますか。
  90. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 私からお答えする筋合いではございませんけれども、たまたまこの問題が起こりましたときに参議院の予算委員会で私も同席しておりまして、運輸省が答えておったことを知っておるものですから、便宜御参考のために申し上げますと、連絡しなかったことはまことに遺憾である、いまからはああいう場合はよく連絡をさせるようにいたしますという答弁でございました。
  91. 安井吉典

    ○安井委員 私は、なおこれから若干事件そのものについての扱いについて警察庁並びに法務省のほうにお尋ねをしたいのですが、ただいまの精神異常者対策の問題でちょっと締めくくりに申し上げたいのば、やはり阪上委員もさっき指摘いたしましたように、ベッド不足の問題を何としても解決をしなければいけないという大きな問題があると思うのです。アメリカなどは全部の病床の五〇%くらいが精神病者のためのものだというふうな話を聞くだけに、日本のそういう施設がきわめてお寒いものであるという実態を思わざるを得ないわけです。けさの新聞の投書欄にも、異常者野放しの現状は困るが、しかしそれを精神病院のほうに送られても、その精神病院自体が医師看護婦が非常に手不足で、普通の病院よりもいろいろ劣悪な条件の中にあって経営が成り立たないではないか、そのしわ寄せだけを病院のほうに寄せられても困る、これはお次者さんからそういうような投書があるようであります。ですから、この問題の背景というのはきわめて根が深いわけで、非常な広範囲から問題の解決を見出していかなければならないと思うわけでありますが、これは民務局長の分野だろうと思うのですが、この投書についてはどういうふうにお考えになりますか。
  92. 若松栄一

    ○若松政府委員 御指摘のように精神病床につきましてはわが国は非常に立ちおくれております。わが国ではある程度衛生上の立ちおくれがございまして、結核対策に非常に大きな重点を置きまして、結核ベッドは現在世界的にもすぐれておりますが、精神病床につきましては、現在人口十万に対しまして十七程度でございまして、これはアメリカ、イギリスその他の欧米諸国に比べまして格段の低さでございます。しかし、この十数年来この方面に非常に努力をいたしまして、現在では年々約一万床ずつふえておりますので、逐次改善の速度は高まっておると申し上げていいと思います。
  93. 安井吉典

    ○安井委員 とにかく厚生省の立場も、この事件を契機としてひとつこれまでの仕事について見直していただきたい、そのことを最後に一つだけ要望を申し上げておきます。  それではもう時間もだいぶおそくなっておりますので、詰めて、警察庁のほうにお聞きしておきたいことは、まあ不可抗力と言ってはなんですけれども、治外法権の地域の中に起きた事件だし、それからまた、犯罪が起きるまでの段階でも、あれ以上手は打てなかったというふうな御発表のように伺うわけでございますが、どうでしょうか、この放火事件から刺傷事件までの全体的な経過の中で、いま反省されまして、警備の点でもう少しあのときこうすればよかったというふうな点、つまり全体的な経過の中で、放火事件にも、もう少しさかのぼってということになると思うのですが、警備について不十分であったのではないか、この点はこうすべきではなかったか、こういうような点について、一応お考えをお聞きしておきたいと思います。
  94. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 私どもは、今回の事件を不可抗力であったというふうには断定いたしておらないのでございます。ただ、一昨日の臨時の公安委員会で、私から詳しく経過を報告申し上げまして、今日までの段階においては大きなミスがあったというふうには言えない。しかしながら、これらの点については、なお捜査の進展とあわせて、どこに落ち度があったか、なかったかといったような点は十分調査をいたしたい。こういうことを申し上げたのでございます。したがって、現在もこまかな点について、技術上の観点から検討をいたしておるのが実情でございますので、その点あらかじめ申し上げておきたいと思います。  私どもが検討しておりますのは、まず第一点は、事前に情報がなかったのでございます。その点についてはたしてどうであろうか、これが第一点。第二番目は、アメリカ大使館前の警備派出所の勤務の態様がどうであったろうかということ。第三番目は、投石を事前にいたしておりますので、その投石後の捜索と言いますか、実況検分と言いますか、それらの観点がはたしてどうであったか。第四番目は、放火事件捜査、及びその後の警察の検索の線内に入っていなかったのでございますが、それらとの関連はどうであるか。  こういう点について当初から検討しておるのでございますが、いままでのところは、大きなミスがあったとは私自身実は考えておりません。しかしながら、欲を言えば、いまわかっておる限度では、投石事件の際に、やはり通常の常識では、大きな犯罪をやるという者が、大使館の中に落とし穴があるかどうかを調べるために一貫目の石を投げ込むということは、ちょっと考えられない。そこで、当時実況を見に行った警察官が、へいの中になるほど石が投げ込まれた、これは事実でございます。ところが、これは何も器物がこわれたわけでもなんでもない。これは犯罪にはならないというふうなことで、いたずらではなかろうか、こういう考えを持ったとすれば、これまた常識的ではなかろうか。しかし、欲を言えば、その際に、一月の二十日にやはり放火事件があったわけですから、相当広い範囲にわたって大使館の外をもう少し検索をすれば、あるいは犯人がひそんでおったのが発見できたかもしれない。私は率直にこう思っております。この点は、いまの考えでは欲を言えばこういう程度に考えておりますが、なお詳細はもう少し検討を加えたい。  いま一つは、放火事件捜査でございますが、これは目撃者の五人のうち四人までが違うということになりますと、本人は頭も弱いようだしということになれば、これを逮捕して強制で調べていくというのはまずちょっと無理ではないか。したがって、そういう点でも、これまたいまから欲を言えば、何とかもう少し徹底してやれなかったものであろうか、こういうような気持ちがいたしております。しかし、いずれにいたしましても、いわゆる行政上の責任といったような観点から見ますと、取り立てて追及しなければならぬという程度には私自身いままだ考えておりませんが、将来なおよく検討いたしたい、こう考えております。
  95. 安井吉典

    ○安井委員 警備局長から四点にわたって反省といいますか、そういうようなもののお話があったわけでありますが、どうもきびしく自己批判をしてみるという態度が十分でなかったような気がするわけであります。何しろこれは国際的にも大きな波紋を呼んだ事件でもありますし、しかもまた、これと同じような事態が将来起きないとも限らない。こういうようなことでございますので、過ぎた問題でございますけれども、ひとつ真剣に経過を反省していただきまして、再びもうこんなことがないように態勢を固めていただきたいと思うのです。  あとまだもう一つ案件があるそうでございますので、先を急いで、法務省のほうに伺いますが、起訴はいつごろになる見込みですか。
  96. 山根治

    ○山根説明員 二十六日に事件の送致を受けまして、捜査が緒についたばかりでございますので、どういうふうに捜査いたしますか、まだ確たることを申し上げる段階には立ち至っておらないわけでございますが、本人少年でございます。成年に達する期間が四月の二十日にまいるわけでございますので、これを家庭裁判所に送りますか、あるいはどういうように捜査いたしますか、まだ確たることを申し上げる段階にはないと存じます。
  97. 安井吉典

    ○安井委員 四月二十日が成年に達する日だということを一応頭に置いて、成年に達してから送ろう、こういうふうな考え方もお持ちなんですか。
  98. 山根治

    ○山根説明員 昨日勾留の請求をいたしましたものですから、十日の満期になるのが四月四日でございます。もう十日延長することができますから、さらに十日間の延長をいたしますと、四月十四日が満期になります。そうしますと、少年でございますので、家庭裁判所にその時点において送るということになるわけでございます。この事件をどういうふうに扱いますか、まだわかりませんけれども、こういう重大な事件で、精神障害の点があるようでございますので、刑訴法に基づきまして精神鑑定の留置、鑑定留置と申しておりますが、そういう処分をする場合もあると思われるわけであります。そういたしますと、鑑定留置の期間が、これは定めがありませんけれども、一カ月も要するということになりますと、成年に達するということになるわけでございます。
  99. 安井吉典

    ○安井委員 その精神鑑定は何日間あれがあって、何日ころ結論が出る、そういうお見込み、一応のお見込みを持っておられるわけですね。
  100. 山根治

    ○山根説明員 鑑定留置につきまして、どのくらい要しますか、ちょっと現在のところわかりません。ただ実務として、一般的に精神鑑定をいたします場合には半月あるいは一月くらいを要するんじゃないかというふうに考えております。一般論として申しますと。
  101. 安井吉典

    ○安井委員 鑑定の結果、刑法上のいわゆる心神耗弱者というふうな判定が下るか下らないかわかりませんけれども、そうなりますと、この人の刑というものはごく軽いものになるような気がするのですが、その点いかがですか。
  102. 山根治

    ○山根説明員 心神喪失ということになりますと、刑法の三十九条によりまして、これを罰せずということになっておりますが、心神耗弱ということになりますと、刑を減軽するという規定になっております。したがいまして、結果はどう出ますか、それによって多少違いがあることは、刑事責任としては違いがあるであろうということは言えると思います。
  103. 安井吉典

    ○安井委員 もう時間が過ぎておりますので、最後に警察庁長官に、外国公館に対する警備をこれからしっかりやっていただかなくてはならないと思うのですが、それについての心がまえと申しますか、それをひとつ伺っておきたいと思います。
  104. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 先ほど国家公安委員長から今後の対策というところで触れられましたとおり、これを機会に警戒を十分やらなければならぬ。こう考えまするが、現存におきましては、とりあえず応急の策として相当数の警戒をやっております。しかし、何といいましても東京じゅうに百十五カ所もそういう種類のものがありますから、恒久策としてどういうことをやればいいかということは、これを機会によく考えまして、現在におきましてもいろいろ案を練っておるわけであります。わがほうの警戒を厳重にいたしますと同時に、大公使館自身としても、たとえばへいを高くするとか、あるいは守衛の数を増すとか、あるいは数を増さないけれどもいままで以上に出入につきましては厳格な見張りをするとか、いろいろあると思いまするが、何ぶんおとといのきようでございますから、こうやれば絶対に妨げるという名案をここにお示しできない。現在におきましては、多少オーバーな点もあるかもしれませんが、それができるまでは、応急的に外部的に警察官だけの警戒を強くしようという現状でざいます。
  105. 森田重次郎

    森田委員長 門司亮君。
  106. 門司亮

    ○門司委員 警察側にこの機会にちょっと一つ。時間が非常におそくなってほかの問題もございますので、聞いておきたいと思いますことは、今度の犯人精神病者と断定しておるように私ども承知いたしておりますが、しかし、犯行の事実から見ますと、先ほどからいろいろ御質問のございましたように、かなり計画的であって、しかも知能的であるとも考えられる節がある。したがって、この精神病者と考えられておりますのは、一体お医者さんの、法医学的の精神病者であるのか、社会通念における精神病者と一体警察は断定しておるのか、どっちなんですか。
  107. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 私どもは、将来精神鑑定の結果が出れば別といたしまして、現在の段階で、精神病者と断定をいたしておりません。ただ精神に異常がある疑いがきわめて濃い、こういう考え方捜査をしております。したがって、供述内容等も前後矛盾撞着しておりますけれども、おっしゃるように、何と言いますか、少年うちにやれば罰が軽いとか、相当考えたようなこともございますので、犯罪の性質上当然私どもとしては背後関係というような点についても十分捜査をしなければならぬ、こういう考えでやっております。精神病者の疑いがきわめて濃い、こういう考えを持ちましたのは、一つには警察官の調べる際の相手方の応対、考え方、こういうような点が一つ。いま一つは、本人が昭和三十六年の四月に病気になって、学校を一年休学いたしております。これはやはりそういった脳の関係、こういうことになっております。そうして三十七年になりまして、どうも家庭の中で少しあばれるといったようなことで沼律の精神病院に入っておる。十日間で出ておるけれども、これは医者について調べましたところが、治療はやはり三カ月を要するのだ、しかし家庭のたっての依頼で退院をさせた、こういうようなことがあり、またその当時の診断のカルテ等を見ましても、精神分裂または精神病、破瓜型、こういうことになっておるのでございます。こういった既往の経歴、また最近二月の末に静岡の駿府病院に母親がどうも容体がよくないので入院させたいというので医者に相談をしております。ところが医者はベッドの関係で収容できない、こういうようなこと、これが一つ。いま一つは、小学校から中学校、高等学校までの間における学校の成績の推移、これ等を見ますと、小学時代はきわめて優秀、性質も温良でございますが、毎年毎年成績が落ち、性格が変わってきておる。こういうようなことであります。これらの点から精神が異常を来たしておる疑いがきわめて濃い、こういうように考えたのでございます。
  108. 門司亮

    ○門司委員 詳細に御説明をいただきまして、かつての本会議でもそういうような報告が実はなされたのでありまして、あらかじめ承知しておるのでありますが、ただ、この種の問題は往々にして非常に大きな問題のように取り上げられる。そうしてしまいには大体気違いだった、しかたがなかったというようなことで、一面これは悪く言えば警察の行政責任をのがれようとする気違いだからしょうがないじゃないかというようなこと、一面また社会の通念としては、あの事件は気違いがやったんだということで社会も何というか、社会責任をごまかすということばは悪いかもしれませんが、そういう形に追いやってしまって、結局、国民全体の反省というようなことに何にも役立たないというようなことになりはしないかというようなこと、もう一つの問題は、連鎖反応を非常に気を使っておいでになるようであります。その点はもっともだと思いますが、そういう角度から見て、気違いだからしかたがなかったのだ、どうだからしょうがないのだということになると、結局連鎖反応というようなものがまた出ると考えられる。私どもはそういう点を警戒するからいまお伺いするのであって、そうすると、こういう結論、いまのところはまだ法医学上の気違いと考えておるわけでもない。社会通念からくる一いまのお話を聞くと、社会通念上からいうと、気違いだということで新聞にもそういうふうに書かれ、一般もそういうふうに認識しておりますよ。そういうことについて、わからない、これから調べてわかるのだということに警察側は考えておるということでよろしゅうございますね。私はその辺をはっきり聞きたかったのですけれども、警察は社会通念上の気違いと見て取り扱いをしておるのか、法医学上の気違いとして取り扱っておるのか、これは非常に違う。社会通念上から常人でないと言えば、ほとんど全部、一体常人ということはどういうことか基準がない。ものさしがない。だから見方によると、ある意味においてはみな気違いだ。だからそういう点は特にこの種の事件については、社会通念上から人並みはずれたことをやったからあれは気違いだろう、正気じゃとてもそんなことはやらぬだろうということで、しかし、そのものさしはなかなかない。結局、警察の態度、警察の判断というものがこの種の問題には大きく社会に影響するわけでありますから、それで私は聞いたのですけれども、どういうことですか、その点は。
  109. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 いろいろの観点から御心配をいただいておるようでございますが、私たちの考えとしては、単に社会通念上の気違いというか、頭が変だという程度じゃなしに、断定はできないけれども、医学上の精神異常者じゃなかろうかということを、先ほど来吊し上げたような理由から考えております。しかし、そのことは、気違いがやったのだから警察責任が軽いとか、気違いじゃない者の場合が重いとかいうような考え方は毛頭持っておりません。言いわけをしたくないのですけれども、気違いであった場合、しかも気違いであり、こちらのほうの視線に入らなかったということが、気違いでなくてああいう行動に出るのについてはある程度の理由があるものですから視線に入っていいのですけれども、そうでなかったために入っていなかったということを申し上げただけで、行なわれました結果につきましては、常人であっても気違いであっても、わがほうの責任について差があるとは考えておりません。
  110. 門司亮

    ○門司委員 その辺なんですよ。実際気違いであったと断定され、あるいは気違いであったと考えられることがあれば、たびたび申し上げておりますからこれ以上私は質問いたしませんけれども、もう少し処置のしようがあったと思うのです。警視庁では一度も二度も手をかけて、沼津警察では何も報告してなかった、連絡がとれてなかったということです。もしこれがかりに警察連絡がとれておれば、家族の人も汽車に乗ると同時に、公安官だけに通知しないでやはり警察にもそういう話があろうかと思います。その点は警察側をここで責めてもしょうがありませんから、ひとつこの事件の結末についてはっきりして、社会の諸君が、世の中の諸君がみんな納得し得るような結論を出すことに努力をしていただきたいということを、ひとつ希望だけ申し上げておきます。
  111. 森田重次郎

    森田委員長 田川誠一君。
  112. 田川誠一

    ○田川委員 私は、質問ではありませんが、今度の事件に関連して資料をひとつ提出をしていただきたいと思います。主として文部省関係でありますが、委員長に資料を要求していただきたいと思います。  その一つは、青少年の道徳教育のことでございますが、政府の道徳教育に対する方針とその実施方法で、どういうふうに実施されておるかということ。  それから二番目には、道徳教育について一部の教育者方々からだいぶ抵抗があるようでありますが、政府のやろうとしております道徳教育についての教育者の反対の動向と申しますか、どういうような反対が行なわれておるかということです。  三番目には、青少年の道徳教育についての世論の動向、何か調べてありましたらその世論の動向をお示しいただきたい。  四番目には、ちょっと専門的になるかもしれませんが、テレビの番組、そのうち教育テレビ、日本テレビ、この二つのテレビ番組のうち、八月から最近までの月間のテレビ番組の番組表、そして、その表につけて三つ区別していただきたい。それは、教育番組、教養番組、普通番組。  以上四つの点につきまして、委員長から資料を提出するようにひとつお取り計らい願いたい。
  113. 森田重次郎

    森田委員長 それでは取り寄せることにいたします。     —————————————
  114. 森田重次郎

    森田委員長 次に、地方自治に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。門司亮君。
  115. 門司亮

    ○門司委員 私は、この際まず自治省に対してその見解をお聞きいたしまして、それからさらに防衛庁に対して二、三のことを確めたいと思うのでございます。  お聞きいたしますことは、事件内容をはっきり申し上げておきますと、昭和三十九年三月十一日の福島県議会の本会議における事件でございます。福島県会議員の鈴木某が、福島県の四倉沖における自衛隊の航空演習に関連して質問をいたしました場合における発言の内容について、これが懲罰に付されたという事実であります。  そこで、まず最初に私が聞いておきたいと思いますことは、この懲罰事犯の前に自治省の御意見を伺っておきたいと思いますことは、御承知のように、自治法に定めてあります懲罰動議の定員の数というのは、議会議員の八分の一以上でなければならないということになっておる。この改正をいたしましたときに、むろん私どもは反対をいたしてまいりましたが、与党の多数でこれが通過をいたしておる。しかしこの規定は、このままであってよろしいかどうかということであります。私は、いままでこの種の事件で、関連がなかったから差し控えておりましたが、実は県の名前を、私は茨城であったか栃木であったかはっきり覚えておりませんが、八分の一だというから、懲罰に対しては十五名以上の賛成がなければ動議を出すことができないというような条例をこしらえた県があったと私は考えておる。これでは、八分の一と書いてあるからその上は幾らでもいいのだということになると、そういうべらぼうなものが出てくる。そうすると、今日の政界分野における革新陣営というか、この方面の議員は非常に少ないのであります。そうなりますと、多数を持っている会派においてはいつでも懲罰動議を出せる、少数派は、どんなことがあっても懲罰動議が出せないという結論が出てくる。懲罰に関する限りにおきましては、これをむやみに行使することはいかがかと思いますが、少なくとも議員の身分に関することが一方的に法律で押えつけられておるというようなことについては、議員の身分の取り扱いの上について非常に不公平があると思う。ほかの動議なら別ですよ。しかし、懲罰動議に関する八分の一というものについては、私はいささか疑問を持っているのでありますが、議員の身分の取り扱いの上にこういう規定が妥当であるといまもお考えになっているのかどうか、この点をひとつはっきり聞いておきたい。これは、できれば政務次官か大臣からその所信を明らかにしておいていただきたい。
  116. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 この点は、御承知のように、昭和三十一年の地方自治法の改正の際になされたものでございますが、自治省といたしましては、この規定を現在改めるという考えは持っておりません。
  117. 門司亮

    ○門司委員 改める考えはないと言っておるが、そうすると、今申し上げましたような議員の身分上の取り扱いがきわめて不公平であるという点については、一体地方議会の議員の身分をどうお考えになりますか。一方は、たとえ間違っていようとくねっていようと、ことばはどうかと思いますが、柄のないところに柄をくっつけてでも懲罰動議が出せる、そうすれば議決が行なわれる、議員はそれに服従しなければいけない。一方は、片方にどんなに悪いことがあっても懲罰動議が出せないということ、これは議員に対する身分上の取り扱いで非常に大きな不公平だと思う。これらの問題について、私は、地方議会におきましては往々にしてこういう事件が起こりがちだと思うのです。それはなぜかというと、身近な事件でありまする関係から、結局感情に走っての議論が私は非常に多くあると思う。国会の場合は、わりあいに法案を中心にいたしておりますから、そういう問題はわりあい少ない。しかし地方議会の場合は、直接本人のいろいろな地理的関係その他のことから、ややともすれば激高しやすい。したがって、こういう言論による懲罰動議というものが発生してくる。いわれなきものまでも結局懲罰に付されるという危険性が出てくる。これは、議員の身分の保障のためにも、この規定はいま改正する必要はないとおっしゃておりますけれども、一体議員の身分の取り扱いについて不公平があってもよろしいという法律がどこかにございますか。私は、自治の本旨とは何ぞやということが言いたいのであります。少なくとも性比の公正な選挙で出てまいっておりまする市民の代表が、いわれなきことによって懲罰に付されるということがあってよろしいとは考えられない。したがって、この自治法の改正はぜひ私はすべきものだ、またなされなければならないのだということが考えられる。ただし、これらの問題が乱発されるおそれがあるからということが出時改正の最も大きな理由だったと私は考えておる。しかし、これらのことは議員の良識によって運営の妙を得れば、別に何らの問題はないと思う。地方議員というものは悪いものだというきめつけ方をすることは私はいかがかと考える。だから、いまでも改正する意思はないというお話でありますが、改正する意思がないというならば、この議員の身分の取り扱いについてこういう不公平があっていいか悪いかということ、不公平があっていいのだという理由をこの際ひとつ明らかにしてもらいたい。
  118. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 御指摘のような、運用上につきましてはいろいろと配慮しなければならない点があると思います。お話しのように、この限度を非常に高く定めまして、議員の身分を軽視するような運用の結果になるようなことは、私どもも望ましいことではないと考えておるわけでございます。いろいろ先生のおっしゃいますように、検討すべき問題点はあろうかと思います。が、ただいまのところ、自治法のこの規定を改正するという考えは、先ほども申し上げましたように持っておらないわけでございます。
  119. 門司亮

    ○門司委員 私は、考えがないだけではなくて、もう少しはっきり理由が聞きたいのです。だから、もし事例があるなら——かつてこれは修正した事項であります。途中で直した事項であります。これを以前にさかのぼって、どういう事例があったからこうしなければならないのだという、いわゆる法律の実態に沿ったもし事例等があるなら、その事例をはっきりしてもらいたい。私はそうしないと、この問題についてだけは非常に気になるのです。これは、さっき申し上げましたように、国会と違って、地方議会というものはおのおのの議員のはっきり言えば地盤もくっついておりますし、地理的関係等も同じようなところに住んでおる。したがって、利害関係というものがかなり錯綜しておる。そこで、どうしても言論の中にも多少の激越なことも言われるかと思う。同時に非常に感情が高まってくる、これがこの中に使われてくる。そうすると、必ず多数のものが少数のものを自由に懲罰に付することができる。これは行政罰でありましても、この中には、御承知のように議員のほんとうの身分に関係する除名も含まれておりますからね。気に入らぬ議員は、いつでも出せば、これは除名ができる。こういうことになりますと、私はとんでもないことになると思う。だから、少なくともいまの答弁だけで、そういう考え方はないとおっしゃっても、あとで、もし局長がそういうことなら、大臣にひとつ、あるいは次官からも御答弁願えますなら、ひとつ次官からもこの点を明らかにしてもらいたい。地方議員というものはそういう過酷な取り扱いをしてもいいという、これが民主主義だというなら民主主義の原則をもう少しはっきりしてもらいたい。少なくとも議員は、住民の輿望をになって住民の意思を議会に伝え、住民の福祉のために戦う場所は議会であります。その議会に出ることができないような処置が講じられる。いわゆる出勤の停止があり、はなはだしいときには、いまの懲罰のために除名もできるというおそろしい規定であります。これは、私はできるだけ公平にこの問題を取り扱う必要があるのじゃないか。かりに少数の人がこれを乱用するといたしましても、多数の人がこれを制止することはいつでもできるのでありますから、ちっともこわくはないのであります。多数決でものをきめる場合におきましては、どんなに少数の人が提案いたしましても、これをいつでも否決することができる。だから取り扱いとしては、これは全く片手落ちの法規だと私は考える。乱用しようにも乱用しようがないのであります。多数決でものをきめるのでありますから。だから、自治省の答弁にはどうしても承服するわけにはまいりません。まずこの事件が起こった以上は、この事件内容がそういう言論から来る。私は、いかにも感情的の取り扱いを受けた処置のように考えられますので、その本論に入ります前提としてこのことを聞いておきたいと思います。
  120. 金子岩三

    ○金子政府委員 地方議会の懲罰の問題でございますが、確かに問題があることでございまして、これはいよいよ事件にぶつかってみると、いま門司先生の申されておるような現実の問題で非常に問題になる規定だと思います。十分ひとつ検討いたしたいと考えますので、御了承願いたいと思います。
  121. 門司亮

    ○門司委員 それじゃ、皆さんの話し合いで、きょうはあと二時から本会議もあるそうですから、この程度で後日に質問を譲らしていただきたいと思います。委員長にお願いしておきます。
  122. 森田重次郎

    森田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたしたます。    午後一時三十七分散会