○村山(達)
委員 私は自由民主党を代表して、ただいま
議題となりました
地方税法等の一部を
改正する
法律案と、
市町村民税減税補てん債償還費に係る
財政上の
特別措置に関する
法律案の両案につきまして、自由民主党から
提案をされました
修正案と、同
修正案にかかる修正部分を除く
政府原案に対し
賛成、日本社会党より
提案されました
修正案に対し
反対の
討論を行なわんとするものであります。
私が
政府原案に対し
賛成する点は、要約すれば次の三点であります。その
一つは
減税規模であり、その二つは
改正の内容であり、その三つは
減収補てんの
措置であります。
まず
減税規模について見ますと、その額は、一般
減税において平
年度八百八十億円、初
年度四百九十億円、
道路整備計画改定に伴う
目的財源充実のための
軽油引取税の増徴分を差し引いても、平
年度七百八十億円、初
年度四百億円の巨額にのぼり、その規模は戦後最大であります。
国民所得に対する国税、地方税を通ずる
負担率は二二・二%と、前
年度に比べ〇・七%の上昇を示していますが、地方
税負担の割合はほとんど変わらない点は、注目されてよいと存じます。
近時における
地方財政の
状況は、御承知のように、地方
団体の努力や国の適切な施策により、加えて経済の目ざましい成長にささえられて、漸次健全化の道をたどっていることは事実であまりすが、他面、
行政水準はなお低く、公共
事業や社会保障や文教などを中心とする
行政水準向上のための歳出増加の要請はきわめて強いものがありまして、
減税の財源もその余裕に乏しい実情にあります。また、多数にのぼる地方
団体の間におきましては、相当程度その
財政力に格差の存することも免れ得ないのでありますが、地方税の
減税は、その性質上、
財政力の低い地方
団体の
財政事情に制約されるので、地方
団体を通ずる
減税余裕額は直ちに実現可能な
減税額を意味せず、地方税はその意味で
減税の
弾力性に乏しいのであります。
昭和二十五
年度から三十八
年度まで、国税、地方税を通じて行なわれた
減税総額一兆一千億円の中にあって、地方税の
減税分が二千億円程度にすぎないのも、この間の事情を物語るものであります。
しかるに、このような実情のもとにおいて今回多額の財源を投じて画期的な地方税の
減税に踏み切ったことは、
住民負担の
軽減とその
地域格差の是正に対する
政府のなみなみならぬ熱意を示すものとして、高く
評価する次第であります。これが、私が
政府原案に対し賛意を表する第一の
理由であります。
次に、
改正案のおもな内容について見ますと、最もきわ立っているのは、
市町村民税所得割についてであります。
市町村民税所得割につきましては、古くは五つの
課税方式があり、逐年各
課税方式間の
負担の
均衡をはかるための努力が続けられ、三十七
年度において、
本文方式と
ただし書き方式の両
方式に整理統合を見るに至ったのでありますが、両
方式間においては、いまなお著しい
負担の格差が見られるのであります。実感を呼ぶために、具体的に
説明しますと、現存
ただし書き方式により
負担している
所得割の額は、納税者一人当たり平均で七千三百円程度でありますが、もし
本文方式の
準拠税率で
負担することが可能となれば、その額は三千二百円程度となるはずでありますので、裏から言えば、
ただし書き方式の納税者は本文
準拠税率の納税者に比べて二・三倍の
負担額にして四千百円程度
割り高な
負担に任じていることになるのであります。現在
ただし書き方式を採用している
市町村の数は二千七百余で、全
市町村数の約八割にのぼり、しかもその大部分は後進
地域に属する
市町村でございます。
ただし書き方式による納税者数は七百六十七万人で、全納税者の四割に及んでいるのであります。両
課税方式間で
負担の格差の生ずる原因を制度的に見ますと、その
一つは、扶養控除のやり方の違いによるものでありまして、
本文方式が第一人目七万円、第二人目以下三万円の
所得控除の方法によるのに対しまして、
ただし書き方式では一律にわずか六百円程度の
税額控除の方法によっているためであります。この控除方法の違いから生ずる
負担の格差は、納税者一人当たり平均三千円程度と推定されます。
格差を生ずる原因のその二つは、
超過課税によるものでありまして、制度的に見ますと、
現行所得割は本文、ただし書きとも
制限税率の定めがなく、また
税率適用上の
所得段階区分が
準拠税率の制度を採用しているため、
財政力に乏しいただし書き採用
市町村においては、あるいは
所得段階区分を細分し、あるいは超過
税率を設ける等により、とかく多額の
超過課税を行ないがちとなるためであります。事実、
本文方式市町村の
超過課税が五十億円程度であるのに対し、ただし書き
市町村のそれは二百億円程度に及んでいる実情にあります。経済成長の第二ラウンドにおける重大な課題の
一つが、
地域格差の是正にあることはいうまでもありませんが、
市町村民税所得割におけるこのような明白な
負担の格差の解消こそ、まっ先に着手さるべき現下の急務であり、
政府の
改正案もこのような
見地から理解さるべきものと存ずるのであります。
改正案は、三十九、四十の両
年度にわたる漸進的な
措置により、両
課税方式を
統一するとともに、過重な
負担を排除せんとするものであります。すなわち、まず三十九
年度においては、
ただし書き方式を
本文方式に近づけるための
経過的
措置を講ずるにとどめることとし、
現行の
税額控除を、第一人目四万円、第二人目以下三万円の
所得控除に改め、続く四十
年度において第一人目の控除額を七万円に
引き上げて、両
方式を完全に
統一するとともに、
準拠税率を
標準税率の制度に改めつつ、新たに一・五倍の
制限税率を設け、極端な
超過課税の解消を期しているのであります。しかして、両
年度にわたる
措置により、ただし書き納税者中二百五十万人程度のものが失格者として
所得割の
負担から解放され、その他の者にありましても平均で四割七分程度の
減税、
地域によりましては七割五分程度の
減税となるところもございます。
次に、
固定資産税につきましては、新
評価制度の実施に伴う
負担の激増を緩和するため、三十九
年度から四十一
年度までの三
年度間
負担の調整を行なうこととし、
農地については三十八
年度の
税額をこえないよう、また
農地以外の
土地についても三十八
年度の一・二倍の
税額をこえないよう
措置しているのであります。今回の新
評価制度は、長年の懸案とされていた
固定資産について各種
資産間や
地域間に存する
評価の不
均衡から生ずる
固定資産税の不
均衡を是正するための
措置でありまして、もとよりこれにより
増税を企図するものでないことは周知のとおりであります。したがって、
税率に所要の調整を加える等の
措置を講じつつ、
固定資産税の
負担を直ちに新
評価の基礎に立って実施に移すことも一応考えられるところでありますが、他面
負担の激増を避けることは、
制度改正にあたって常に意を用いなければならぬところであります。この意味において、今度の
改正案が家屋や償却
資産の
負担については新
評価に移行することとしながら、
土地について所要の調整
措置を講じているのも、新旧
評価の異動の実情に照らしてみれば、現
段階における妥当な
措置としてうなずけるのであります。
事業税につきましては、中小企業の
負担の
軽減をはかる
見地から、
法人事業税において
軽減税率の
適用範囲の拡張をするとともに、
個人事業税の基礎控除額を
引き上げ、電気ガス税については、前二
年度に引き続き、本
年度においても
税率を一%引き下げることにより大衆
負担の
軽減をはかり、
住宅建設促進の政策的要請に即応して、
不動産取得税における基礎控除等の
引き上げ、
固定資産税の二分の一の
軽減等の
措置を講じ、また
軽油引取税については、新道路
計画の発足に伴う
目的財源充実の
見地から、揮発油に対する
税負担のバランス等をも考慮して二割の
税率の
引き上げを行なう等重要な
改正を行なっているのであります。
以上のおもな
改正のほか、
市町村民税所得割における専従者控除額の法定化や
引き上げ、広く
住民税における
障害者等についての
非課税範囲の拡張、
不動産取得税における
非課税規定の整備拡充、
固定資産税における免税点の
引き上げ、
非課税規定の整備拡充、
中小企業者の特別償却
対象資産についての
軽減、外航船舶に対する時限的免税、産業用電気の使用に対する電気ガス税の減免
措置の拡充など、各方面において行き届いた、きめのこまかい
改正案が盛られているのであります。
以上、今回の
改正案はきわめて広範にわたり、その内容は現下の各方面の要望にこたえて
住民負担の
軽減合理化をはかりつつ、地方税制の体系的整備をも前進せしめるものであります。さきに述べた
弾力性に乏しい
地方財政の
現状をあわせ考えるとき、われわれは
政府の努力を高く買うものであり、私が
政府案に
賛成する第二の
理由もここにあるのであります。
ただ、
料理飲食等消費税につきましては、
政府案では、当分の間、
外人客の
飲食及び旅館における宿泊に対して免税することとなっております。しかして、その
趣旨は、
提案理由によりますと、今秋開催される
オリンピックを機とし、多数の
外人客の来訪が予想されるが、これらの者の
負担を少しでも軽くして
わが国における滞在の印象をよくし、またこれにより
外人客を一そう多く誘致せんとすることにあるようであります。しかしながら
政府案は、広く
飲食及び宿泊を免税としているので、その
適用を受ける
場所はきわめて広
範囲にわたるのであります。実際の調査は、
行為後相当
期間を経て書面調査の方法によらざるを得ないのでありますが、その際、
飲食代についても
外人客分と本邦人分の別、
飲食代と
遊興代の区分等を
誤りなく判定し、的確な税務行政の運営を期することは至難のわざと思われるのであります。もし事態がそうであれば、他面便乗者の発生も手伝って予期せざる多額の
減収を生ずるおそれもあり、またこのような事態の発生をおそれて執行の厳格をはかれば、煩瑣な
手続を要求することになるだけでなく、執行上の紛争発生のおそれなしとしないのであります。もしそのようなことになれば、本税
軽減の本来の
目的に逆行して、かえって
外人客の印象を悪くする場合すら予測されるのであります。したがって、この際はむしろ税務行政運営の実際面に重点を置き、旅館における宿泊及びこれに伴う
飲食のみを免税とするほうが、より
政府提案の
趣旨にかなうものと認められるのであります。また免税の
期間につきましても、今回の
措置が異例の
措置であることにも顧み、この際は
オリンピック開催期間を中心とした半年ほどの
期間に限ることが適当と認められるのであります。
政府案のような、広く一般
外人客の誘致を
目的とする免税制度を導入するかどうかは、今度の
措置の実績を見て、あらためてかかる
措置の政策的効果を判断した上でも決しておそくはないと考えるのであります。これが私が自由民主党の
提案いたしました
修正案に対して
賛成する
理由であります。
第三は、今回の
減税に伴う
市町村財政に対する補てんの
措置についてであります。
まず、電気ガス税の
減税分につきましては、たばこ消費税の
税率の一・六%の
引き上げという税源配分の方法によりその穴埋めをはかっているのでありますが、両税の
地域的な散らばり及びその伸長性から見て適当な
措置と考えるのであります。
次に、
市町村民税所得制の
減税に伴う補てんについては、二つの注目すべき
措置が講ぜられているのであります。
その
一つは、
地方財政法を
改正して、三十九
年度及び四十
年度における
減税額については、その
年度において
減税額と同額の地方債の起債を、また
減税年度以降五
年度間に限り、引き続きそれぞれ毎年二〇%ずつ逓減した額による起債を認め、これらの地方債を国が
資金運用部
資金で引き受けることとしているのであります。この
措置により三十九
年度から四十四
年度の六
年度間、
減税に伴う
市町村財政における収入減を緩和するとともに、
減税補てん債でカバーできない
減収額を逐次
計画的に
地方交付税と地方税の
自然増収の中に吸収せんとするものであります。すなわち、平
年度たる四十五
年度において三百億円の
減税に伴う
減収を完全吸収することを目途に、四十
年度の三十億円に始まり、四十一
年度から四十四
年度まで逐年六十億円ずつ吸収額が増加するよう仕組まれておるのであります。
所得割減税に伴う
減収補てん措置のその二は、
市町村民税減税補てん債償還費に係る
財政上の
特別措置に関する
法律案において
提案されているところのものであります。その案によれば、
補てん債にかかる元利償還金の三分の三は償還の年において、国の
負担において当該
市町村に補給し、その三分の一はその年の基準
財政需要に織り込むことにより普通
交付税でカバーしようとするものでありまして、これにより
減税を行なったただし書き
市町村の財源は完全に補償されることになるのであります。この
措置による国の
負担総額は六百億円とその利子額であり、普通
交付税でまかなうべき地方
負担分は三百億円とその利子額であります。償還金の地方
負担分のピーク時は、発行条件を利率六分五厘、一年据え置き七年元利
均等償還とすれば四十五
年度となり、その額は五十七億円程度となるのでありまして、先に述べた
減税に伴う
減収分と合しても三百五十七億円程度と見込まれますので、最近における
交付税の伸長
状況から見れば、この程度の額は十分吸収可能と認められるのであります。
以上申したように、
所得割の
減税に伴うただし書き
市町村の
減収額の補てんについては、まず国と地方の緊密な協力によりその
負担を分担し合い、またその地方
負担分については、将来の地方税、特に
交付税の
自然増収に逐次
計画的に吸収され、
減税を行なったただし書き
市町村の
負担をできるだけ少なくするよう精密な配慮が加えられておるのであります。換言すれば、このような配慮の裏づけによりまして、
課税方式の
統一という長年にわたる懸案の実現が初めて可能になったとも言い得るのであります。私が
政府案に対して
賛成する第三の
理由もここにあるのであります。
以上、
政府原案に対し
賛成の
理由を述べたのでありますが、もとより
政府原案によりましても幾つかの重要問題が将来の解決に残されておるのであります。
その
一つは、
減税に伴う
減収のうち
減税補てん債の起債に基づいてカバーできない部分についての
財源措置の問題であります。この部分の補てんについては今度の
改正案では、制度的には完全な保障を欠いているのでありますが、今次
改正の精神に照らせば、当然これら貧弱
市町村の基準
財政需要の
引き上げにより解決すべきものと存ずるのであります。
その二つは、
所得割について新たに設けられた
制限税率に関する問題であります。新
所得割においても一・五倍の
限度で
超過課税を行なうことが認められることとなりましたが、このことは決して
行政水準の低い貧弱
市町村が不足財源を補うため
住民に対し超過
負担を課することを是認する意味ではないのでありますから、このような
市町村に対しては、将来にわたりその
基準財政需要額の算定の合理化につとめるよう希望するものであります。
その三は、
固定資産税の四十二
年度以降における
負担調整の具体的
措置についてであります。さしむきの調整方法はまず適当であるといたしましても、新
評価に基づく将来の調整
措置の内容が不明であるため、納税者においても懸念する向きがあるようであります。
政府はすみやかに適切な
措置について検討を行ない、その
措置の方向なりとも明らかにすることが急務であると認められるのであります。
さて次に、日本社会党から
提案されておりますところの
修正案について
反対の
意見を申し上げます。
まず本
修正案は、
地方交付税率を
現行二八・九%から三一%に、たばこ消費
税率を
政府提案の二四%から三〇%に
引き上げ、また
固定資産税や電気ガス税の産業方面に対する
現行の減免制度、さらには国税における
法人税の
特別措置について、これを大企業に対する特権的な減免
措置とするたてまえから、これが徹底的整理を打ち出し、これらのことを前提としたしで
減税を行なおうとするものであります。しかしながら、国・地方を通ずる現下の
財政事情から見まして、いま直ちに
交付税やたばこ消費税の
税率をこれ以上大幅に
引き上げることがいかに困難であるかは、いまさら申し上げるまでもありません。また、いうところの大企業に対する特権的
特例措置は、実はコストの引き下げ、輸出力の増強、設備の近代化等、総じて
国民経済運営上の政策的要請に基づき、しかもそのときどきの必要に応じて弾力的になされた新設改廃の長年にわたる
経過の積み重ねから成っているものでありますから、いまにわかにこれを排除するがごときことは、さなきだに脆弱な
わが国経済の基礎に悪
影響を及ぼすものであり、
賛成しがたいのであります。
次に、
提案にかかる
減税案のおもな内容について見ますと、
住民税については三十九
年度から両
課税方式を完全に統合し、また
制限税率を一・二倍に引き下げ、その補てん財源を全額国の
負担に求め、
個人事業税については撤廃を目途としながら、さしあたり基礎控除額を三十万円に
引き上げ、
固定資産税については
現行評価額を据え置きつつ、
農地について
評価額を三分の二に引き下げ、電気ガス税については
税率を二%
軽減するとともに、家庭用につき
現行の免税点にかえ五百円の基礎控除を新設し、
料理飲食等消費税については、
飲食についての免税点を八百円に
引き上げ、また
軽油引取税の
引き上げについては、
物価値上がりにつながるものとして全面的に
反対しているのであります。
これらの案につきましては、中には将来の問題として傾聴すべき
提案も含まれておるのでありますが、
負担のバランスの点、
財源措置の点、地方税体系の点などから、現
段階における
改正案としては、率直に申して、総じて現実性に乏しいうらみをおおい得ないのであります。このような
理由から、日本社会党の
修正案に対しましては遺憾ながら
反対せざるを得ないのであります。
以上述べました
理由により、私は、自由民主党から
提案せられました
修正案及び同
修正案による修正部分を除く
政府原案に対し
賛成し、日本社会党から
提案された
修正案に対し
反対するものであります。