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満川参考人 私、
全国農業会議所の
満川でございます。私ども
全国農業会議所は農業者の
立場から、農業近代化の線を進め、農業
所得の向上につきましていろいろ努力しておるわけでございますが、日ごろ国会の諸先生には何かと御指導御協力を賜わっております。この機会に厚く感謝の意を表したいと思います。なお、本日は
地方税法の一部
改正の御
審議にあたりまして、農業
団体の
意見をお聞きくだされ、また私どもの要望申し上げたい点についてお聞きくださるというような機会をお与えくださいまして、心から厚くお礼を申し上げる次第であります。
さて、本
委員会におきまして御
審議中の
地方税法の一部
改正につきまして、私ども農業者、農業
団体といたしまして最も関心を持ちますのは、何と申しましても御案内のとおり
固定資産税に関するものでございます。つまり
昭和三十九
年度から新しく固定資産の評価がえを行ない、この新しい評価額に基づいて
固定資産税が賦課徴収されるというような、
固定資産税評価制度調査会の
答申もあるのでございますが、ことに農業者の最も関係の深い
土地、田や畑につきまして、売買実例価額を基準として評価する
方法によるという点でございます。もちろん現実の売買実例価額に直ちによることなく、当該売買実例の取引の事情をよく調べまして、特殊条件によるものを除きまして、おおむね正常な価格にするというふうになっておりまして、なお
農地につきましては、その取引の
規模なり
実態というものを十分に御勘案くださいまして、一定の修正を加えるというようなことでございますが、やはり問題は残るようでございます。
もちろんこの新しい
評価制度は、すでに
昭和三十七年の
地方税法の
改正に基づきまして約束づけられていたわけでございますが、農業者といたしましては、評価額は上がるけれども実際の税額は上がらないのだというような前宣伝が
相当あったせいもございましょうが、当時は農業者として別に動揺とか混乱はなかったわけでございます。
ところが実際にこの作業が昨年来
市町村の
段階で進められてまいりますと、この新しい評価方式が非常に多くの問題を含み、そればかりか、これによって評価される結果が、評価の大幅な増大となる、そしてはっきりとこれが税金に関係してくるというようなことがだんだんわかってまいりまして、農業者の関心は一そう高まり、かつ不安の色が非常に濃くなってまいったわけでございます。
こういうわけで、私どもの
全国農業会議所といたしましても、最も大きな農政問題としてこれを取り上げざるを得なくなりました。こういうことで、私どもの意のあるところは、すでに数次にわたりまして国会の諸先生にもお願い申し上げた次第でございまして、御案内のとおりでございます。すなわちちょうど一年前になりますが、
昭和三十八年三月五日に、
会議所では通常総会を開きまして、この農業者の不安を非常に心配いたしまして、
農地の評価にあたっては、その収益を十分に勘案して行なってほしい、それから宅地介在
農地につきましても、
農地として利用している間はあくまでも
農地として評価を行なって、農業経営上支障のないようにしていただきたい、また評価額の改定によって、税額が従来より過重にならないように、
税率について適切な
改正措置を講じていただきたい、こういうような点につきまして、一年前に御要望申し上げた次第であります。
しかしながら、次第に
市町村段階での新しい評価がえの準備作業が進んでまいりまして、問題はいよいよ深刻な様相を呈してまいりました。私どもは非常に心配したのでありますが、
全国農業会議所の会長と、全国農業協同組合の会長の両名が協議しました結果、これは非常に問題が多いので、新しい評価方式はこれを
昭和三十九
年度から実施することは見合わせてほしい、そうして
農地と農業用固定資産に関する
課税のあり方について、根本的な
検討を行ってほしい、こういうような
意見書を作成いたしまして、それぞれ
政府並びに国会方面にお願いしたわけであります。
幸いにいたしまして、これ以前、またこの後も、
政府におきましても、また国会並びに各政党におかれましても、いろいろ御心配いただきまして、いろいろと御
検討賜わったことは、私ども
承知しております。しかしながら、まだ当時は農業者の満足を得るような、安心のいくような結論が出ていないようでございましたので、やはり下から盛り上がる運動は、われわれ何ともいたすことができません。ちょうど昨年の秋、国会が解散になるときでございましたが、全国から農業
委員の代表者が集まりまして、わざわざ
固定資産税の評価がえに対してどういう態度をとるかというための
会議を開かざるを得なくなりました。先ほど申しました全国農協中央会会長、
全国農業会議所会長の連名の
意見の線を確認いたしまして、その実現の線について強くお願い申し上げたわけでございます。
以上のような、私がわざわざこういう農業
団体としての
経過を申し上げたゆえんは、この
固定資産税の評価がえにつきましていかに全国の農民が重大な関心を持っているか、しかも非常に不安の念を持っているかということでございます。特に農業者といたしましては、農業基本法の制定以来、まじめに農業をやっているならば、農業
所得が高まり、生活も楽になるというような
政策が行なわれるということを期待しているがゆえに、またそういう関心が強いがゆえに、具体的にこういった新しい評価がえというような形で出てきたことに対しまして、強い関心を持ったのでございます。
ところで、目下御
審議中の
改正案を拝見いたしますと、私ども感慨無量なものがございます。
一つは感謝の気持ちであります。もう
一つは、依然としてぬぐい切れない不安な気持ちが混然としているような感じがいたします。いずれにいたしましても、諸先生あるいは
政府の御努力によりしまて、三十九
年度から評価がえはするけれども、
農地等につきまして三十八
年度の税額で頭打ちする、あるいは山林とか宅地につきましても評価がえをするけれども、二割
増しで押えるというような
措置がとられまして、一応全国の農業関係者はほっとしておるのではないかと
考えられる次第であります。ただこの場合に、畜産振興が非常に叫ばれている今日でございますので、
農地の中に採草放牧地が入るかどうかということで、この点も私どもは、もしも
農地として扱われずに、そういう形になるならば、やはり問題が残るのではないかというように
考えますが、一応そういう点ではほっとしているところだろうと思います。
そこで、二点ばかり要望なり
意見を申し上げまして、特に諸先生方の御批判と御
検討を賜わりたい筋がございます。
その第一は、
農地等の
固定資産税につきまして、おかげをもちまして、評価がえはされるけれども、納税額については大なる変更はないということになったのでありますが、問題は新しく評価がえされる評価額の現実的な妥当性でございます。新
評価制度実施の御準備につきまして、自治省、都道府県、
市町村当局が、非常な努力と苦労をされていることにつきましてはよく
承知しているのでございますが、実際の評価にあたりましては、やはり幾つかの
問題点が介在しておるように見受けられます。たとえば評価のための標準地、基準地の選定をするにあたりましても、文字
どおりの標準的な、あるいは中庸な
農地を選ぶのが本筋と思いますけれども、
市町村段階でも実際はどちらかというと上級地あるいは中庸地のうちの上級地を選ぶという傾向が強いように聞いております。もちろん、どの
土地を選びましても、機械的に
農地間の
均衡をはかる、それだけならば差しつかえないと思いますけれども、こういうような結果が、事実上は全体の
農地が適正を欠いた割り高な評価がされるという懸念が残らないわけにはまいりません。また
状況類似地区の区分にいたしましても、極端な言い方をいたしますれば、一筆ごとに
土地の条件は違いますから、一筆ごとに地価は違うだろうと思います。それを人為的に集団区分いたしましてやっていくということ自体に無理があるということは、理屈上も言えるわけでございますが、私どもの
調査した、たとえば中国
地方のある県の町村でございますが、この点に非常に頭をいためまして、一町歩単位で六百何十地区というように区分している。非常に煩瑣なことでございます。それをいたしましても、やはりはたして適正な区分ができるかどうかということが問題であります。またこれが
課税台帳に登録される各農家ごと、各筆ごとの価額が適正公平を欠き、またこれが農家の
固定資産税にはね返るというようなことがありますと、やはりこの辺に問題が残ろうと
考える次第であります。
次に、売買実例価額と申しましても、そうざらに売買の例があるわけではございませんから、このこと自体に問題があろうと存じます。また正常な条件のもとにおける売買価格と申しましても、何が正常でない要素であるかということにつきましては、なかなか要素の発見に困難性があろうかと思います。結局はその
市町村の精通者の
意見とか、他の
地方の例などを聞いてきめていくということでございますが、この場合に
農地の正常価格というものが、はたして
農地を
農地として利用し、収益する場合の、
農地そのものに帰属されるべき正常価格として見るのか、それとも財産として売買する場合の価額を頭に描いて判断するのか、これによって大きな違いが出てまいる、だろう、こういうふうに
考えられます。
その他問題はいろいろあるのではないかと
考えるわけでありますが、いずれにいたしましても先ほど申し上げましたように、三十九
年度からは特別な
経過措置がとられるということで、一応問題は残りながらも、現
段階におきましては私どもは感謝の気持ちであります。
それから第二の問題でございます。第二の問題といたしましては、
農地等農業用固定資産につきまして、
固定資産税その他
国税を含めての税金はいかにあるべきかという税理論の問題と、農業
政策上の問題があろうかと存じます。
税制調査会におかれましても昨年の暮の
答申で、
固定資産税の基本的あり方について
検討を要する旨述べられているように伺っております。私ども農業
団体といたしましても、先ほど申しましたように、根本的な
検討をお願いしたいというふうに
考えているのでございます。私、学者ではございませんのでむずかしい理屈はわかりませんけれども、いろいろの統計を見ましても、
市町村税に占める
固定資産税の比重というものは、非常に大きゅうございます。農村部に行けば行くほど
固定資産税の比重は大きくなっているようであります。そこで、いまや農業基本法に基づいて農業生産性を高め、少しでも農業
所得の向上に資するよう各般の
政策努力が行なわれております今日、農業に関する
固定資産税については抜本的に
検討されてよいのではないかと存じます。つまり、私見にわたりますけれども、大幅な
減税措置か、あるいはこの際思い切って
農地等に関する
固定資産税は免除するといった
措置が講ぜられてしかるべきではないかというふうに
考えるのであります。現在、
農地等に関する
固定資産税は、収益税的な財産
課税となっているようでございますが、私どもは収益
課税であることが正しいと
考えるのでございます。しかも農業収益額のうち、
農地に帰属する部分に課されるべきものであるというふうに
考えます。こう
考えますときに、大ざっぱに大観いたしまして、現在の農業経営は決して容易なものではございません。農林省が国会に提出されました農業白書を拝見いたしましても、農業
所得はなかなか他産業従事者との
均衡がとれず、農村の若い青年は農業を捨ててとうとうと他産業に流出している
状況でございます。また一概に
農地価格と申しましても、それが農業の収益を生み出す生産手段としての価格というよりも、どちらかというと公共事業や宅地造成のための転用価格といったニュアンスが強いようであります。
農地価格の形成要因につきましても、十分に
検討が行なわれてしかるべき
段階にあるのではないかというふうに
考える次第であります。
農業者の
負担上最も大きなものの
一つであります
固定資産税につきましては、すでに欧米諸国では、たとえばイギリスにおいては免除しているようであります。ドイツ、フランス、またアメリカにおきましても、特別な
軽減措置をとっているということを聞いております。こういう諸外国の例も
参考にし、また農業の
実態に十分に考慮を払われまして、今後のあり方について根本的な御
検討をわずらわしたいと
考える次第でございます。
そのため、希望を
一つ申し上げさしていただくならば、農業に関する
税制、なかんずく
農地等農業用固定資産に関する
税制の根本的な
検討を行なうため、正式な機関を設置していただければ、まことに幸いであるというふうに
考えます。
税制調査会の内部におかれましても、あるいは外部におかれても、とにかく
政府が責任を持って御
検討なさるような
措置が講じられることを強く御期待申し上げる次第でございます。この点、本
委員会の御
審議の過程で何とぞよろしくお願い申し上げます。
以上、要するに私どもといたしましては、税金に関する問題につきまして、納税をすることを拒否するとか、反対するというような気持ちは毛頭ございません。むしろ喜んで
地方税にしろまた
国税にしろ納入できる農業、農業者になることを希望しているものでございます。それがまた健全なる国民
経済の発展上不可欠のことだろうと信じているものであります。
したがいまして、そうなるためには、以上申し述べました点につき格段の御配属をお願いする必要を認めるものでございます。
ただ
一つ、ここで心配になりますことは、
市町村自治体の
財政の確立に関してでございます。今後とも何かと農業者、農業
団体は、
市町村にお世話にならなければなりません。
市町村の
財源確保並びに健全なる
財政の確立に必要な
措置につきましては、別途十分な御配慮をお願いする次第でございます。
以上をもちまして、私の
意見を終わります。御清聴を感謝するとともに、失礼にわたりました点は、おわびいたす次第であります。