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1964-03-12 第46回国会 衆議院 大蔵委員会社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十二日(木曜日)    午後一時五十分開議  出席委員    大蔵委員会    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 吉田 重延君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       大泉 寛三君    金子 一平君       木村 剛輔君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       日野 吉夫君    社会労働委員会    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 田中 正巳君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       伊東 正義君    浦野 幸男君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       中野 四郎君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    岡本 隆一君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木  昇君    山口シヅエ君       山田 耻目君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (医務局次長) 大崎  康君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  竹下 精紀君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第九八号)      ————◇—————   〔山中大蔵委員長委員長席に着く〕
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより大蔵委員会社会労働委員会連合審査会を開会いたします。  本日連合審査議題といたします租税特別措置法の一部を改正する法律案は、大蔵委員会付託案件でありますので、先例によりまして大蔵委員長たる私が委員長の職務を行ないます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 山中貞則

    山中委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。河野正君。
  4. 河野正

    河野(正)委員 租税特別措置法の審議でございますけれども、特に社会労働委員会との合同審査でもございますし、したがって、私ども所管と深い関係のございます医療法の中の医療法人課税をめぐって若干の質疑を行なってまいりたいと考えております。  そこで、まず第一にお伺いをいたしたいと思いまする点は、医療法人制度は、昭和二十五年の第七臨時国会において医療法の一部を改正する、そういう形で立法化せられましたことは御承知のとおりでございます。もちろん、そのような立法措置が行なわれたわけでございまするから、それにはそういう法人格が出てまいりましたについての相応の理由と目的使命があるであろうということは、何人も否定することができないと考えております。そこで、まずもって今後の質問の関係等もございますから、厚生大臣に対しまして医療法人立法化されました目的使命について御所見を承ってまいりたいと考えます。
  5. 小林進

    小林国務大臣 医療法人は、お話のように昭和二十五年に医療法改正によって設けられたのでありますが、その趣旨は、私人による病院経営の経済的困難を、医療事業経営主体に対して法人格取得の道を開きまして、これによって資金集積の方法を容易にさせる、これによって経営難を緩和しよう、こういうところから出たものでございます。これができましてからいろいろのいきさつがありましたが、ごく最近、昭和三十七年末の数字で千八百二十五ということになっております。  なお、医療法人制度は、課税上の特例を設けることが直接の目的と必ずしもしてはいなかったと思うのでございますが、従来、法人となることが困難であった医療事業経営主体が、医療法人となることができるようになってから、課税上ある程度有利になった、こういうふうないきさつを持っておるのでございます。
  6. 河野正

    河野(正)委員 実は昭和二十五年の第七通常国会の中で、医療法人という新しい制度が誕生したのでございますけれども、その際におきまする立法精神というものが、いまの大臣お答えによりますと、非常にはき違えられておる、こういう感じを持たざるを得ないのでございます。と申し上げますのは、いま大臣答弁によりますと、医療機関経営が困難になる、そこで法人格を与えて資本集積をはからせよう、そういうような意味お答えをいただいたのでございますけれども、しかし本来の医療法人設立されました趣旨は、そういう医療機関経営困難を救済するというような意味ではなくて、むしろ当時終戦後のことでございますから、公的医療機関の整備というものも十分でない、しかもそういう不十分な公的医療機関を整備しようといたしましても、医療保障予算が非常に限られておる。そこで国民健康保持増進というような面についてこたえようとするならば、どうしてもここで公的医療機関の足りないところを補うという方策がとられなければならぬ。そういう意味でこの医療法人が、医療法改正という形で立法化されてきた。このことは、当時の国会における政府説明を見ても明らかでございまするように、事業永続性を持たせ、資金収集集積をはからせることがきわめて緊要である。その底意というものは、やはり公的医療機関に欠くるところが多い。その問題を解決するためには、どうしても予算が大幅に必要でございまするけれども、そういう予算面についても非常に圧迫を受けておる。そこで、何とかして私的医療機関についても資本集積をはかり、さらには資金収集を可能ならしめて、国民医療の向上をはかっていこうじゃないか、そういう方向でこの医療法人制というものが立法化されたと私は理解いたしますし、また国会における政府委員答弁もさようであるというふうに確信されるわけでございます。ところが、いまの大臣お答えを聞いておりますと、医療機関経営が困難だ、だからそれを救済するためにそういう法人格を与えてやっていこうというふうな制度が生まれた、こういう御答弁では、こういう点で根本的に食い違っている。これは後ほど私がいろいろ御指摘いたしまする問題と関連をいたしますので、その点はきわめて重要です。ですから、医療法人の誕生いたしました歴史なり使命なり、そういうものを的確に把握することが、今後私どもがいろいろ申し述べまする問題に非常に大きな影響を持つわけでございますから、あらためてその間の事情を明らかにしていただきたい。
  7. 小林進

    小林国務大臣 この法人をつくる当時、要するに、公的医療機関がまだ整備せない、また単なる私的医療機関では継続性がない、あるいはいまの投資がなくなれば病院継続性がなくなるというような事態も相当あったのでありまして、その継続性とある程度の公的性格を付与する、こういうふうな趣旨があったことは、私もお話のとおりだろうと思います。  それで、その後法人そのものにつきましては、たとえば農業法人の問題とか、民間のいろいろな企業においても法人のほうが事業経営がやさしいと申しますか、好都合と申しますか、そういうことでほかにも一般法人というものがいろいろできてきたのでありまして、また一般民間等におきましては、法人になることが税法上有利になるというふうなことも自然にあったのでございまして、これらもみな含めての問題であろう、こういうふうに思います。
  8. 河野正

    河野(正)委員 医療機関公益性というものは、いま大臣からちょっと触れられましたように、一般農業法人とかその他の法人とはおのずから本質を異にするものであることは、私は何人も否定することはできないと思います。そういう意味で、一般法人論医療法人法人論とを同列でお考えになることについてはいささか問題がある。そういうことでは、あとで関連いたしまする諸問題の解決には非常に問題が起こってまいりまするから、一般法人とこの医療法人というものは、本質的に非常に相違するものだというような点については、大臣も十分お考えになっておろうと思うのです。その辺の事情はいかがですか。
  9. 小林進

    小林国務大臣 これはお話のとおりと思います。
  10. 河野正

    河野(正)委員 そこで、この二十五年の第七通常国会におきまする政府答弁をめぐって、さらに若干ひとつ論議をいたしてまいりたいと思いますが、さきに申し述べましたこの医療機関永続保持、あるいは資金集積というようなことが緊要であるということで、医療法人というものが立法化された。それならば、この医療機関永続保持なりあるいは資金集積なり、そういうものを実際に実行していくためには一体どういう施策があるのかということになりますると、これはいろいろいま国会でも医療金融公庫法改正案等が上程されておりまするけれども、そういう金融上の問題もございましょう。一方におきましては、この医療機関永続性なりあるいはまた資金集積を行なうためには、一つとしては、相続税贈与税非課税扱いにする問題もあろうかと考えます。いま一つは、この法人税税負担の軽減の問題というものがあろうかと考えます。このような諸施策を実行して初めて資金集積が行なわれ、また、医療機関永続保持というものが達成されるというふうに私どもは理解をいたすわけでございます。このことは、実は昭和二十五年におきまする第七通常国会におきまする政府委員答弁によりましても明らかでございます。ところが、そのような国会におきまするお約束があったにもかかわりませず、そのことが今日実行されぬということになりますると、これは政府国会国民を欺瞞した、こういうことに私はなろうかと思いまするが、それにつきましてはどのようにお考えになりまするか、この際ひとつ率直に御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。
  11. 小林進

    小林国務大臣 私もいままだ勉強が不足で、その後の措置等につきましても十分心得ておりません。これらのことにつきましては、医務局長からひとつお答えいたします。
  12. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 医療法人制度ができまして、個人医業でございましたときには、その院長がなくなられたときとか、そうした場合にはその医業継続が不可能になってくるわけでございますが、法人格を得せしめるということにおきましてその永続性を持たし、また、単独では資金収集が必ずしも十分でない、それだからといいまして株式会社というふうな制度はちょっと医業にはなじまない、こういうふうなところから、また、公益法人にまでいくのもどうかというので、その中間形態考え医療法人というふうなのができて、それで資金収集を便ならしめる、こういうふうになったのだと私は承知しておるのでございますが、その際に、できますればお話のとおり相続税贈与税、また法人税というふうなものが、できるだけ有利になることが望ましいのは言うまでもございませんし、二十五年のこの医療法人制度ができました当時におきまして、ある程度そういうふうな相続税等につきまして措置がいけるものだ、こういうふうに考えておったのでございますが、この点が連絡が不十分でございまして、現在いろいろ医療法人の方々に御迷惑をかけておるというふうな点申しわけなく思い、昨年来相続税贈与税関係におきまして改善方を一部講じ、また今年、この法人税関係改善をいまお願いしておるところでございます。
  13. 河野正

    河野(正)委員 いろいろいまお答えをいただいたわけです。ところが、今日までの医療法人に対しまする政府の態度を振り返ってまいりますると、いろいろ公益性についてはあらあらお認めのようでございまするけれども、実質的には、二十五年に制定をされましたこの立法精神というものが、ことごとくじゅうりんをされてきた。まあ大蔵省等によりますると、内容等の問題についていろいろ反論もあろうかと思いまするけれども、しかし筋道としては、やはりこの二十五年に法が制定されました当時の精神が、ことごとくじゅうりんをされてまいったというふうに私どもは指摘せざるを得ないと思います。その一つの例として指摘いたしまするならば、先ほど医療法人立法化されました精神につきましては申し述べたとおりでございまするが、そのような形でこの医療保障に積極的に協力しよう、そういう意味で、医療法第五十四条におきましては、利益を配当してはならぬという配当禁止規制もあるわけでございまするけれども、そういう規制を受けながら、医療法人に対しまして私有財産を提供し、そしてさらに国の医療保障で足りない面について貢献していこう、そういう善意からこの医療法人というものが設立をされてまいったのでございまするけれども、ところが、昭和二十七年におきましては相続税法の一部が改正をされまして、そうして医療法人というものを個人とみなす、こういうかっこうになってまいりましたことは、あらためて御説明を申し上げるまでもないと考えます。そういたしますると、二十五年に医療法の一部を改正されて医療法人というものが立法化されたその精神というものが、もうこの昭和二十七年におきましては、相続税法の一部改正という形でじゅうりんをされる、こういう結果になってまいっておるわけです。まあ税理論の上ではいろいろ大蔵省の見解もございましょう。ございましょうけれども立法精神からいいますると、いま申しましたように、立法精神がことごとくじゅうりんされるというような結果になったことは、この事実が明らかに物語っていると思います。こういう経緯について、これはもう所管厚生省でございますから、私はまず厚生省にひとつ所見を承っておきたいと思います。
  14. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 昭和二十五年にこの医療法人制度ができました場合、その際に相続税贈与税の問題につきまして大蔵省と十分な話し合いができていなかったために、いまお話しの、二十七年に相続税法の一部改正の際、その他公益目的とする法人というものの一部として、この医療法人個人と同じ扱いをせられるようになりました。この点、われわれのほうとして、医療法人制度設立のときに必ずしも十分な了解ができてなかった問題だとは思いますか、まあ医療法人の中にもいろいろ種類があるとは思いますが、公益性の強い医療法人に対しまして個人と取り扱いが同一になったという点につきましては、必ずしも適切でなかった点もあるのじゃないないかというので、昨年この改正もお願いしたというわけでございます。
  15. 河野正

    河野(正)委員 この点私はきわめて重大だと思うのです。と申し上げますのは、今日政党政治責任政治でございますことは、もう私どもがあえて申し上げるまでもないと考えます。ところが、いま厚生省医務局長の答えを承ってまいりましても、政府間におきます十分な話し合いができなかったためにそういう事態が生じてまいった、こういうお答えでございます。今日、政党政治責任政治の中で、そのように政府の中でちぐはぐな行政が行なわれていることについては、私ども全で納得するわけにまいりません。こういう行政あり方は非常に問題です。特に今度の租税特別措置法の提案のしかたを見てまいりましても、これと同じようなケースをたどっておる。そこで、この問題が非常に紛糾しなければならぬという事態が起こっておると私は確信をいたします。こういう行政姿勢に私たちは非常に大きな問題があると思うのです。こういう姿勢は許されない。こういう姿勢が許されるといたしますならば、一体責任政治というものは何ものか、政党政治というものは何ものか、私どもは非常に大きな疑問を抱かざるを得ないというのが率直な意見でございます。こういう同じ政府のもとにおきます各省間の行政あり方がちぐはぐであっていいのか、そのために起こってくる混乱というものは、私は全部政府責任があると思う。こういう行政上のちぐはぐが各省間にあっていいのか悪いのか、この辺、厚生大臣いかがでございますか。
  16. 小林進

    小林国務大臣 行政上の連絡は十分とるべきでありまして、その点において多少の行き違いと申しますか、不十分な点があるように私も思います。
  17. 河野正

    河野(正)委員 そういうちぐはぐな行政あり方がいいというふうにお考えになっているのか、あるいは遺憾であったとお考えになっているのか、これはひとつ簡単でけっこうですから、率直にお答え願いたい。
  18. 小林進

    小林国務大臣 むろんよろしくない、遺憾である、こういうふうに考えます。
  19. 河野正

    河野(正)委員 実は二十七年におきましても、そういう立法精神じゅうりんをされるという経緯が具体的に起こってまいりました。それからさらに、今日、大蔵委員会の中で租税特別措置法の一部改正が審議されておるわけでございますけれども、その中でも、やはりそういう傾向が強く出てまいっております。そういうことを繰り返されますと、一体責任政治政党政治というものはどうなるのかというふうな疑問を持ちますがゆえに、特にその点を私はただしたわけでございますけれども、そういう行政指導は適当でないという厚生大臣の率直な意見でございますから、おそらくそういう遺憾であったという反省に基づいて今後はいろいろ行政の運用が行なわれるということを私は信頼をして、さらに論議を続けてまいりたいと思います。  いまのは立法精神じゅうりんをされた一例でございましたけれども、さらに、私どもがここで論議をしなければならぬ問題の中に、税法上いろいろ納得のできない矛盾した点が、この医療法人をめぐって非常に多いという点についてであります。まず一例でございますけれども法人税法について申し述べますと、その第五条、公益法人等の非収益事業所得非課税という項目には、次のごとく明示されております。すなわち、「左に掲げる法人所得収益事業から生じた所得以外の所得に対しては、各事業年度所得に対する法人税は、これを課さない。」こういうふうに掲げられておるのでございます。その中には日本赤十字社、社会福祉法人その他商工会商工会連合会、いろいろございますけれども、本日は医療法人をめぐっての論議でございますからそういうたてまえから申し上げますと、日赤ないし社会福祉法人経営いたします医療機関、こういう医療機関と実際のいまの医療機関との間にどういう差異があるのか、これをどのように御理解願っておるのか、この辺の御所見もあわせて承っておきたいと思います。
  20. 小林進

    小林国務大臣 いまのようなことはまた政府委員からお答えいたしますが、これは私の意見ではありませんが、医療法人あり方についていろいろ批評がある。これは、たとえば医療法人ができた目的に合うような運営がはたしてされておるかどうか、こういうようなことについても世間に、私は厚生大臣になる前からも、さようなうわさをいろいろ聞いておる。しかし、あり方についての問題を私はいまどうこう申すわけではありませんが、はたして設置されたときの目的に合致するような医療法人運営がされておるかどうか、すなわち、法人と私的の普通の個人経営との間にどんな差異があるか、こういうふうなことも間々問題になっておるということも私は聞き及んでおりますが、これらのことが、この扱い方について何らかの差しさわりになっておりはせぬかというふうな気もいたします。これは私の意見ではありませんが、そういう意見がしばしば行なわれて、しろうとの私どもも、そういうことを聞いたことがあるということだけ申し上げておきます。したがって、また逆に申せば、これらの医療法人公的医療機関、いまの日赤済生会等あり方の差、こういうふうな問題もありますが、これらのことにつきましては、また局長からお答え申し上げます。
  21. 大崎康

    大崎政府委員 日赤済生会とその他の法人たる医療機関との差異というふうなことにつきまして、私から御説明を申し上げます。  日赤特別法人でございまして、御案内のように特別法でできておるわけでございます。それから済生会社会福祉法人でございまして、その根拠法規社会福祉事業法によるものでございます。それから、そのほかの公益法人といたしましては、医療機関といたしましては民法三十四条の機関がございます。で、社会福祉法人民法三十四条の公益法人も、ともに積極的に公益目的といたしております法人でございまして、医療法人とは若干趣を異にいたしておるわけでございます。したがいまして、制度の立て方につきましても、二、三の点においてその立て方を異にいたしておるわけでございます。すなわち、公益法人につきましては、その設立についてはいわば自由裁量行為と申しますか、そういうふうな法理が働く分野でございまして、これは積極的に公益をはかるという意味監督規定も非常に厳重になっているわけでございます。医療法人につきましては、これは法律の定めた事項を備えれば許可をしなければならないということに相なっているわけでございまして、その間若干の相違があるわけであります。公益法人につきましては、いかなる公益目的を追求しているかということにつきましては、その法人によって違うわけであります。軽費医療ということを目的としておるものもございますし、学術の研究ということを目的としているのもあるわけでございます。それもおのおの法人によりまして、その公益目的を異にいたしておるわけでございます。  大体概略御説明申し上げました。
  22. 河野正

    河野(正)委員 いま御答弁になった第一の大臣の御答弁につきましては、異論がございます。それはどういうことかと申しますと、医療法人の中にもいろいろ問題のある病院機関がある。そういうことを言いますと、私は役人の中にもいろいろあると思うのです。ですから、一、二若干問題のある医療機関があるといって、それで制度が悪いということじゃないと思うのです。それこそ行政指導改善をするなり、あるいはまた、法の精神に沿うように御指導されることが、私は行政指導だと思うのです。最初からみんな円滑に運営ができるなら、何も指導機関というものは必要ないと思うのです。何も医務局長なんて要りませんよ。医務局長、あしたからやめてもよろしい。そうでなくて、やはり医務局長は、医務局長としての高度な指導力を発揮しなければならぬ使命があると私は思うのですよ。ですから、一、二問題のある医療機関があるから、そこで制度が悪いんだ、そういう判断のしかたは、私は非常に問題があると思う。この点は、ぜひひとつ厚生大臣のお考えを直してもらわなければならぬ。後ほどその点については御所見を承ります。  それから第二の大崎次長から承りました答弁につきましては、実は私はそういう意味でお尋ねをしたのではございません、もちろん、ことばが足りなかったと思いますけれども形式論でなくて、実体論として、一体日赤済生会と、それから一般医療機関とがどう相違しておるのか。もちろん後ほど基準——租税特別措置法を適用いたしまする基準等の問題にもございますけれども、いま済生会あるいは日赤運営の実態を見てまいりましても、必ずしも社会保険ばかりでない。しかも差額徴収をしておる事実がたくさんある。かえっていまの一般医療機関のほうが社会保険一本やりで、むしろ公的医療機関のほうが、差額徴収をする傾向というものは非常に強いと思うのです。しかも差額徴収をして、国民保険に逆行するような形で医療運営をやりながら、それが公益性が強いということについては私どもは納得できない。こういう現状の把握というものが、政府は非常に幼稚だと思うのですね。そういう現状というものを的確に把握される、その上に立って医療行政というものを実行されていくならば、私は何もたいして大きな問題は起こってこぬと思うけれども、ところが残念ながら、いまの医療行政の実態というものは、非常に多くの矛盾というものをはらんでおるわけです。こういう点については、私はぜひ考え方を改めてもらわなければならぬし、また十分御理解願っておかなければならぬ点だと思うのでございまするが、それに対しまするお答えをお願いしたい。
  23. 小林進

    小林国務大臣 御意見了承いたしました。
  24. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 病院運営につきまして、日赤済生会というふうなものが一般のほかの医療機関とあまり変わりがないではないかというお話、確かに、現在国民保険が実施せられまして、大部分の患者さんが保険で見てもらうというふうな点、またその運営におきましても、独立採算に近いような運営が行なわれておりましたりして差が少なくなっておることは、いい悪いは別といたしまして、やはりその本質に立て直しますように、われわれもいまから十分監督指導していかねばならないと思いますが、現状はそういうような点があることはいなめないと思います。しかし同時に、やはりその設立の本質でございますところの貧困者に対する医療、無料、経費医療といったようなことを済生会ではやっていられますし、また日赤等におきまして、さらにこれに加えまして災害の場合に出動するとか、ほかの外地に対しましての、たとえば沖縄に対しまして医療を進んでやっていただいておりますというふうなこと、またこれは公的医療機関全般の問題でもございますが、無医村に対しまして親元病院になってもらって、僻地診療所等の運営に当たってもらう、また瀬戸内海におきまして済生会が巡回診療船を運航してもらって、島々の医療に恵まれない方に対して医療を普及さしてもらっているとか、またさらに看護婦の養成というふうな問題、インターンの実地修練というふうなことにつきましても、命令というふうなところまではやっておりませんが、要請をいたしましてこの仕事に対して協力を願っている、こういうふうな点、やはり公益性がかなり高い仕事をやっていただいておる点もお認め願いたいと思います。
  25. 河野正

    河野(正)委員 なるほど災害時における出動とか、あるいは僻地医療とか、看護婦養成とか、いろいろやっておられる事実を私どもは否定するものではございません。ですけれども、それらのことは一般医療機関でもやっておるので、災害が起これば、人道上の問題として医師会でも出動いたします。それからまた、看護婦は今日絶対数が足りませんから、医師会でも金を出して看護婦の養成を行なう、こういうことで、決して日赤なりあるいはまた済生会等がいろいろ高度な公益性を発揮しておる——むしろ私は、差額徴収等で弊害が出ておる面のほうが非常に強いような気がする。これは私は、そういう医療機関を育成していただくことはけっこうですから、何もそういうことをいろいろ申し上げるのが目的ではございません。ただ、医療あり方ということについてもう少し考えていただく必要があるのじゃなかろうか、そういう意味で私は申し上げているわけでありますから、さらに追及しようという気持ちは毛頭ございませんけれども、私は、申し上げましたような点についてはさらに十分理解をし、その理解の上に立った今後の行政上の処置というものが必要であるということを強く強調いたしておきます。  それからさらに、医療法人公益性についての問題でございますが、この法人税の第十七条の税率を見てまいりましても、所得二百万以下が三三%、二百万以上が三八%、こういうことでございまして、株式会社等一般の営利法人と同様の取り扱いを受けておりますることは明らかでございます。そういたしますると、一般営利法人並みということになりますると、この医療法第五十四条との関連というものは一体どうなるのか、私は非常に疑問を持たざるを得ないと思います。この税率が一般の営利法人並みという点と医療法第五十四条との関連について、これは厚生省大蔵省、両者からひとつ御見解を承りたいと思います。
  26. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 お答えいたします。  医業というものが、全般的にいたしまして営利を目的として運営をしてもらいたくない、これは医業というものが患者さんを相手にしますので、その病気の患者さんという問題からいたしまして、まず、金を持っておられるか持っておられないかということにあまりかかわりなく患者を見ねばならないというふうな大前提がございます。これは応招の義務とも関連する問題でございますが、またさらに、その営利を目的としましていろいろ診療に当たるということは、人間の生命に関係する問題でもあり、さらに患者さんという弱みと医者という立場との関連とを考えましても、営利追求というふうな考え方は医業になじまない、こういうふうな考え方から医業全体に営利追求は禁止してある。したがいまして、医療法人につきましても先ほど御答弁いたしましたように、株式会社というふうな、営利法人というふうな立場はとりたくないというので、医療法人ができましたというふうな経過もあるようでございまして、したがいまして、法人で、営利の関係一つの特徴となりますような剰余金の配当というのは医療法人には禁止してある、こういうふうに考えるものでございます。ただ、医療法人につきまして、そのほかの営利法人と同じ法人税がかけられてあるのはどうか、こういうふうな問題でございますが、この点、いろいろ公益性の大小というふうな問題として議論がせられており、考えられておるのだと思いますが、現に相続税法の一部改正をせられておりますときにも、公益性目的とする法人というふうな条項において医療法人がとらえられておるような状態でございまして、公益性の大小というふうな問題でこの措置考えられ、また今度の改正法案におきましてもそういうふうな関連で処理をしておる、こういうふうに承知するものでございます。
  27. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほどお尋ねの法人税の税率の関係についてお答え申し上げます。  わが国の法人税の税率は、各事業年度所得に対しましては二通りになっておるわけでございます。一つ法人税法第五条第一項のいわゆる公益法人と、それから第九条第七項のいわゆる特別法人と、この二つの法人に対しましては二八%の一律の税率、それからその他の法人につきましては、年所得の二百万円までは三三%、それから年所得二百万円をこえる部分につきましては三八%、もっともこの二百万円の点につきましては、今度の法人税法改正案におきまして、三百万円に引き上げるように提案いたしておりますが、そういうふうになっておるわけでございます。この場合問題になりますのは、五条一項の公益法人について二八%の課税をすることになっておるのに対して、医療法五十四条によって、配当といいますか、剰余金の分配を禁止されております医療法人について、五条一項の公益法人並みの課税をなぜ行なわないかということにあろうかと思うのでございます。この点につきましては、先ほど大崎医務局次長からお話し申し上げましたように、五条一項法人医療法人とにつきましては、いろいろ御見解はあろうかと思うのでございますが、私どもが承知いたしておりまするのは、昭和二十五年医療法の一部改正国会審議の際に、厚生省のほうから、医療法人につきましては、いわゆる私企業としてやっておりまする開業医と同じような経営形態でやって差しつかえない、その意味で、民法三十四条のいわゆる公益法人とは違うんだという答弁になっておるわけでございますが、私どもはそういった点を考慮いたしまして、いわゆる公益法人収益事業に対しましては二八%の税率、それから医療法人につきましてはその他の法人ということで区別いたしておるのでございます。ただ、私ども医療機関の実態をよく承知いたさないので恐縮なんでございますが、先般来岡本委員から、いわゆる民法三十四条法人医療機関についての実態をいろいろお伺いいたしてみますと、それはどうもわれわれが考えておる民法三十四条法人医療機関としての内容といささか違うような気もいたすのでございまして、その点からいたしますと、われわれがこういうふうに区別しておる点については問題があるのじゃないかというふうな感じを持っておるのでございますが、ただ一部の点のお話だけでございますので、そういった医療機関につきまして、なおよく調査してみないとその実態が判明いたしませんので、先般岡本委員にもお約束申し上げたわけでございますが、そういった医療機関の実態を十分調査した上で、いままでわれわれが考えておった区別の基準がはたして適正かどうかということは検討いたしてみたい、かように思っておるのでございます。
  28. 河野正

    河野(正)委員 いまそれぞれお答えをいただいたわけですけれども、一向納得ができません。というのは、個々についてはいろいろ問題のあるケースもございましょう。私は法律論議、さらに一般論議からいいますと、医療法五十四条では、営利を追求してはならぬ、こういうふうに医療法人は明らかに規定されておる。ところが今度、税法上のたてまえからいくと、一般の営利法人と同様な取り扱いを受ける。これは、個々の問題についてはいろいろ問題もございましょうけれども一般論としては、いま申し上げますように、医療法の五十四条では営利を追求してはならぬ、したがってこの利益というものも配当してはならぬ、こういう法律上の規定がございます。ところが、税法のほうでは、いま言うように一般の商社並み、営利を追求する商社並みだ、こういうことになりますと、明らかに法律上非常に大きな矛盾があると思う。私はこれはちょっと納得できぬと思うのですが、そういう医療法では利潤を追求してはならぬ、一方ではもうけておるから取るのだ、こういうふうな法律上の矛盾をどのようにあなた方はお考えになっておるのか、これはひとつ納得のいく御答弁をいただきたい。
  29. 泉美之松

    ○泉政府委員 私どもといたしましては、お話のように医療法人は営利の追求を目的とするものではない、したがって、それが剰余金を生じましても分配してはならないことになっておりますことは承知いたしておるのでございますが、医療法人が営利の追求を目的としないといたしましても、もしそこに収益があがった場合には、その収益については、その性格は別段変わらないのではないかというふうに考えるのでございます。
  30. 河野正

    河野(正)委員 どうも納得いかぬわけですが、私ははっきり言うことをお許し願えば、もう税法上、医療法人というものは一般の営利を追求する商社並みだ、株式会社並みだとおっしゃるなら、五十四条というものは当然削除すべきじゃないかと私は思うのです。こっちでは営利を追求してはならぬ、こっちでは追求しておるから税金を取るんだと言ったって、それは話が合わぬでしょう。歯車がかまぬでしょう。それはどうも、個々の問題は別として、この法律上のたてまえは私ども納得するわけにいきません。片一方で営利を追求してはならぬといって法律規制しておいて、片一方ではもうけたやつには税金をかけるんだ、これは理屈が合わぬでしょう、合いますか、いかがですか。
  31. 小林進

    小林国務大臣 お話のように、矛盾といえば矛盾がある。それに昭和二十五年にこれができたのでありますが、その後医療の体制というものもすっかり変わりまして、もう数年前から国民保険になって、そして医療の大部分が保険だ、こういうことになってきておりまするし、また保険医療ですればその料金は政府がきめる、関与する、こういうことになってきておりますから、その当時とも情勢がだいぶ変わってきておりますから、こういうものもしんしゃくして私どもは、これはひとつ再検討したらどうか、こういうふうに思います。
  32. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、医療法人は営利の追求を目的としているものでないということは、私どもも十分承知いたしておるのでございますが、ただ、そこで収益が出ました場合にどういう課税をするかということになりますと、そこには、いわゆる法人税法五条一項の公益法人医療法人との間には性格上の差異があるのではないかというふうに考えて、現在の状態になっておることは先ほど申し上げたわけでございますが、ただそういうふうに分けていることにつきまして、いろいろ承ってみますと、医療行為の法律的な性格と医療行為の実態というものとの間にかなりの差があるようでございまして、そこにいろいろ問題があるように承知いたしますので、それらの点につきまして十分調査いたしまして、現在までのわれわれの取り扱いがはたしてよかったかどうかということを検討いたしたいと思っておるのでございます。  なお、御参考までに申し上げておきますと、わが国の法人税は、昭和二十五年にシャウプ勧告に基づきまして税制改正が行なわれました。そのとき法人税についての考え方が、いわゆる擬制説的な考え方をとりまして、法人税率はすべて一本であるということになりまして、昭和二十五年この医療法ができる当時におきましては、普通法人公益法人も全部三五%という一率税率であったのでございます。それがその後法人税率を四二%に上げ、その四二%が高過ぎるということから、昭和三十年に四〇%に下げるその際におきまして、普通法人公益法人との税率の差異が設けられることになりました。そして三十三年に普通法人については三八%と三三%、それから公益法人については二八%という、かなり大きな差異になって今日に至っておるのでございます。そういった経過の際に、いま申しました公益法人あるいは九条七項法人と、それから医療法人との関係について、なおよく詳細に検討すべきであったことかと思うのであります。その点の詳細な検討が尽くされないままに今日に至っておるというふうに見受けられますので、十分調査いたしまして、そういった点についての検討をいたしたい、かように考える次第でございます。
  33. 河野正

    河野(正)委員 厚生大臣は、私の質疑に対して、国民保険制度というものが非常に充実してくる、そうしますと、いまの医療そのものに公益性というものが非常に高まっていく、そこで当然課税問題については前向きで検討していかなければならぬ、こういうお答えだったと思うのです。ところが、いま大蔵省の御見解を承ってまいりますと、やはり一般論として医療法人の位置がどういう位置であるべきかひとつ検討してみたい、こういうことで、多少話が食い違っていると私は思うのです。頭をおひねりになる必要はない、食い違っていますよ。ですから、私が冒頭に指摘いたしましたように、政党政治責任政治でございますから、政府の中で、各省の間でそういう行政あり方に食い違いがあるということは望ましくないし、また先ほど大臣からも望ましくないというお答えをいただいておるわけですから、やはりこれは、政府として一致した意見行政の方針というものを決定していただかなければならぬ。ところが、いまそれぞれ御答弁を承ってまいりますと、なお若干の食い違いがあるようでございます。ですから、やはり私は医療公益性という点から検討が進めらるべきであって、この問題は、何も他との関連においていろいろ論議さるべき性格のものでない、こういうふうに私は考えます。厚生大臣は、さっきお答え願ったように前向きでございます。そこでひとつこの際、大蔵政務次官せっかく御着席でございますから、ここで大蔵省としての見解を明らかにしていただきたい。
  34. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 お答えいたします。  先ほど来、政府間に意見の食い違いがあるということはけしからぬというお話でございますが、この点につきましては、私も食い違っていてはいけないと思います。ただ、税の問題等につきましては、医療法人ができました当時、実は両者の間に話し合いが十分でなかったという点にそういう点があるようでございますし、また大蔵省といたしましては、先ほども局長が御答弁申し上げましたように、シャウプ勧告によりまする税法によって法人というものをすべて一緒に扱ったというようなことがございます。そこで最近は、医療法人ができましてからは、いま厚生大臣お話しのように、いわゆる医療機関の仕事というものが公益性を非常に含んでくる、それが重点化してくるということでございまして、そこで医療法人につきましてもそういう点を考慮いたしまして、純然たる公益法人でありまするならば、これを非課税にしておるということも御承知のとおりでございます。いま主税局長が申しましたように、いろいろそういうことで情勢の変化も参っておりまするし、さらに十分検討いたしまして、厚生省とも十分話し合いをつけまして、大蔵省考えに誤りがありますればこれは是正してまいりまして、不公平のないようにやっていきたい、こういうふうに考えております。
  35. 河野正

    河野(正)委員 それでは、昭和三十七年五月二十三日におきまする東京地方裁判所で行なわれた医療法人の中間判決、このことは政府に対しまする非常に重大な点でございますので、この点についてどのようにお考えになっておりますか、ひとつ厚生大臣からお答えを願いたい。
  36. 小林進

    小林国務大臣 私、まだ内容を検討いたしておりませんので、関係政府委員からお答えさせます。
  37. 大崎康

    大崎政府委員 医療法人法人相続税贈与税課税処分を受けまして、これに対しまして税法違反であるという旨の主張をいたしまして、目下判決が終局判決に至っておりませんで、第一次中間判決及び第二次中間判決が出ているわけでございます。その主張の大要は、相続税法六十六条第四項の規定によりまして、贈与税が課せられる処分が違法かどうかという点でございます。私、現在資料を持ち合わせておりませんので、第二次中間判決のその要点につきまして申し上げますと若干不正確な点にわたるかとも思いますので、後ほど調べまして御答弁申し上げたいと思います。
  38. 泉美之松

    ○泉政府委員 お尋ねの中間判決は、昭和三十四年に行なわれたものでございますが、これは医療法人設立いたしましたのに対しまして、税務署長が相続税法第六十六条第四項の規定に基づきまして贈与税課税いたしたのでございます。これに対しまして、医療法人側から、相続税法第六十六条第四項の規定は憲法に違反するという主張がなされたわけでございますが、これに対しまして、相続税法第六十六条第四項に規定する公益目的とする事業を行なう法人贈与税課税することは憲法違反ではないという中間判決があったわけでございます。ただ、先ほど厚生省のほうから御答弁がございましたように、まだ最終判決には至っておりません。そのような状態になっておるわけでございます。
  39. 河野正

    河野(正)委員 最終判決でございませんから結論は先になると思いますけれども、ただその中で承知されますることは、医療法人というものに対しまする公益性がかなり強いということが明らかにされたということを、私どもは注目すべき判決だと考えております。ですから、いずれ最終判決が出てまいりますれば、これは裁判のことですから明らかなことでございますけれども、中間判決によりましても、医療法人というものは公益法人民法法人にきわめて近いものだ、そのものずばりではないけれども、きわめて近いものだ、こういう実は中間判決が出てまいっておりますることも、やはり私は行政上相当尊重せざるを得ない点ではなかろうか、こういうように考えるわけです。ですから、それは最終結論でございませんから、一応そういうことを取り上げてひとつ今後の処置におきまする判断をやっていただきたい、このように考えます。  そこで、だんだん時間もございませんので具体的な点に触れてまいりたいと思いますが、いま私が取り上げてまいりましたように、医療法人というものが一般の営利法人並みという点に関連してでございますけれども、現行法の中でも、準学校法人というものは、わかりやすく申しますと和洋裁、ダンス、料理、いけ花、こういう事業を行なう法人でございますけれども、ダンス学校、料理学校、花嫁学校、いけ花学校、こういう学校法人というものも、御承知のように公益性があるということで減税措置を受けております。そういたしますと、大蔵省がしばしば税の均衡均衡ということをいわれるわけですが、私はその点は、大蔵省を尊重して均衡という立場からものを申し上げますならば、それならば一体医療機関とダンス学校、ダンス教習所、花嫁学校、料理学校とどっちが公益性が高いのですか。いまの医療機関は、厚生大臣からお答えになったように、国民保険のもとで国民医療保障というものに非常に協力をしている。そういう医療機関とダンス学校、ダンス教習所、花嫁学校、料理学校、これよりも国民医療に協力する医療機関が悪い処置を受けなければならぬ理由がどこにございますか。この点はどうですか、ひとつ厚生大臣大蔵省、それぞれお答えを願いたい。
  40. 小林進

    小林国務大臣 いまのようなことであれば適当でない、こういうふうに思います。
  41. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように法人税法第五条第一項第一号の中に、いわゆる各種学校も学校法人と並んで公益法人扱いを受けていることになっております。したがいまして各種学校の中で、お話のように料理あるいは洋裁、ダンスの教育をいたすものも、いわゆる公益法人としての収益事業に対してのみ課税されるという適用を受けているわけでございます。なるほど公益の点から申し上げますれば、医療法人とそうした料理、ダンス学校と比較にならないということはよくわかっておるのでございますが、ただ学校というふうに一律に書いてありますために、そこになかなか区別ができないという点は、私どもはなはだ遺憾に思っている次第でございまして、われわれといたしましては、そういった点のバランスからいいますと、そういった各種学校のうち、いま申し上げましたような種類の各種学校につきましては、公益法人としての取り扱いをすべきではないんじゃないかというふうに考えておるのでございまして、両者の間にバランスがとれてないということにつきましては、私どもも気がついております。ただ、その点につきましては、直すのは各種学校のほうを直すべきじゃないかというふうに考えておるのでございます。
  42. 山中貞則

    山中委員長 開会前に御了解をいただきましたとおり、厚生大臣社会保険審議会に約四十分間出席を許可しておりますので、約四十分間退席をお願いいたします。
  43. 河野正

    河野(正)委員 政党政治でございます内閣の閣僚から、そういうような準学校法人医療法人、この間にそういうアンバランスであるということは適当でないというお答えがあったわけでございます。そういたしますと、いま主税局長から、それならば片っ方をやめるというようなお話がありましたけれども、それはもう一つの今日までの行政運用ですから、とやかく申しませんけれども、むしろ私がこの際申し上げたいのは、医療法人については、先ほどの東京地方裁判所におきます中間判決にもございますように、公益性が高いという方向も出されておることだし、またいま現行法におきますアンバランスもあるわけですから、そういう意味からも、やはり医療法人というものも公益性が強いという形で今後とも行政上の運用をされることが望ましい、そういう意味で御指摘を申し上げておるわけでございます。池田内閣の閣僚からそういう形は望ましくない、こういう御答弁をいただいたわけですから、大蔵政務次官も、そういう形は望ましくない。したがって、東京地方裁判所におきます中間判決の方針に沿ってひとつ善処する、こういう前向きのお答えをいただきたい、かように考えます。
  44. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 お答えします。  主税局長も先ほど御答弁申し上げましたように、不公平であるということを認めております。私も、法律論は別といたしまして、常識論として見ますれば、やはり医療法人のほうが公益性が強いものだというふうに考えます。それぞれ税法はなかなかむずかしいものでございますから、税は公平に取らなければならぬという基本方針では進んでまいっておりますけれども、こさいにやってみますと、必ずしもすべてが公平に行なわれておるということのない場合もあるやに考えられます。したがいまして、ただいま河野委員の御指摘の御趣旨を十分検討いたしまして、ひとつ将来前向きに検討いたして、そうした不公平のないようにやっていくように努力いたしたいと思います。
  45. 河野正

    河野(正)委員 そこで今日まで政府の諮問機関でございます諸機関において、いろいろと医療法人に関します答申というものが逐次出てまいっております。その一つは、医療制度調査会の答申の中におきましても、この医業に対する助成策として租税制度に対します答申というものが出てまいっております。それによりますと、「医業に対する課税については、その公益性と公共性にかんがみ特別の配慮を加える必要がある。とくに、医療法人に関しては、大部分の財団について個人とみなして贈与税を課する点に問題があるので、この点に関して現行の免除基準を合理的に緩和する必要がある。社団および免除の措置をうけえない財団については、相続または、贈与財産の評価に特別の配慮を加えるほか、納税資金の調達方法について配慮する必要がある。また、法人税については、たとえば、各種学校を経営する法人等他の公益法人との均衡をも考慮して減免措置を講ずべきである。」このように厚生大臣の諮問機関たる医療制度調査会は、三十八年三月二十三日に答申をいたしているわけでございます。  そこで、これらの点については、厚生省としても当然尊重をせられなければならぬし、また今日までどのような答申を尊重するための努力をせられてまいったのか、この際ひとつお聞かせ願いたい。
  46. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 お話のとおり三十八年三月二十三日に医療制度調査会の答申が出まして、その中に租税制度の問題があるわけでございますが、それによりまして、まず相続税及び贈与税関係大蔵省といろいろ折衝しました末、租税特別措置法第四十条によりますところの大蔵大臣の承認基準、これに対しまして、従来よりも非課税の範囲を拡大していただきまして、相続税贈与税に関しての課税に配慮が加えられたのは御承知のとおりでありまして、さらに法人税につきましても、いろいろ折衝いたしまして、今回のこの改正法案の提案がなされているわけでございます。
  47. 河野正

    河野(正)委員 いま厚生省に対しまして、この医療制度調査会の答申に沿うてどのような努力がなされているかというような問いに対しますお答えとして、いま租税特別措置法の点が取り上げられてまいったわけですが、その租税特別措置法の一部改正に実は問題があって、ここで論議が重ねられているわけです。ですから、それが答申にこたえられる道であるかどうかということは、私どもがあえてここで申し上げる必要はないわけです。その答申に沿うてこの施策が行われておれば、われわれも満足するにやぶさかではありません。ですけれども、その答申に沿うていまのような租税特別措置法の一部改正という形でお茶を濁されるということについては、私どもは納得ができない。それがいまの論議の焦点になっているわけです。ですから、いまのようなお答えで私どもが満足できないことは当然のことです。これはもう重ねて申し上げませんけれども、そういうことでは問題にならないし、これはいままで私どもがいろいろ時間をかけて論議してまいりました中でも明らかでございますように、われわれ全くそういう方向では満足できない。これは後ほど結論的に申し上げますから、私はここでことばを重ねませんけれども、まずそういう方向では困るということだけを一応指摘いたしておきます。  それからさらに、税制調査会から、昭和三十九年度税制改正の要綱としていろいろ決定がなされております。その一つは、「開放経済への移行に備えて、企業の内部留保の充実と設備の更新に資するため、機械設備を中心に、固定資産の耐用年数を平均一五%程度短縮する。なお、有形固定資産について、取得価額の五%に達するまで償却を認めることとする等、減価償却制度について改善を図る。」それから相続税につきましては、「遺産から控除する基礎控除を二百五十万円に引き上げるとともに、贈与税についてもその基礎控除を四十万円に引き上げる。」さらに租税特別措置については、「医療法人のうち、その事業公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的な運営がなされるものとして大蔵大臣の指定するものについては、その所得に対する法人税率を二八%に軽減する。」こういうような税制調査会の答申も出てまいっております。その中で、相続税あるいはまた租税特別措置につきましては若干いま触れてまいりましたし、後ほど結論的なことを申し上げますけれども、その中で、特にこの固定資産の耐用年数を短縮するという問題については、どのようにお考えになっておりますか。これはひとつ厚生省大蔵省、両者からお答えをいただきたい。
  48. 大崎康

    大崎政府委員 主税局のほうからお答えをいただくほうが正確かと思いますが、法人税につきましては、固定資産の耐用年数を平均一五%程度短縮をするということでございますし、相続税につきましては、遺産から控除する基礎控除の引き上げ、贈与税につきましても基礎控除の引き上げを行なっておるように承知をいたしております。
  49. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  法人税法におきまして機械設備を中心に耐用年数の平均一五%の短縮をはかることにいたしておりますが、目下この機械設備の種類は非常にたくさんございまして、現在のところ耐用年数の別表で千種類あるわけでございます。その千種類につきまして、それぞれ代表的な業界と連絡をとりながら、それぞれ最近の技術革新の程度、陳腐化の状況、こういったものを判定しながら改定作業を進めておりまして、本月下旬までにまとめたい、かようなことで努力いたしておるのでございます。  それから、先ほど河野委員からお話しになりました税制調査会の答申というのは、これは自由民主党の税制調査会のほうでございまして、答申というのではなしに、税制改正大綱だと存ずるのであります。政府の税制調査会のほうの答申におきましては、いまお話しの耐用年数の短縮あるいは相続税の控除限度の引き上げ、贈与税の控除限度の引き上げはございますけれども医療法人に対する特別課税の点は政府の答申にはないのでございまして、これは自由民主党のほうの税制改正大綱のほうに入っておるものでございます。
  50. 河野正

    河野(正)委員 この点は、きょうここで論議するのが目的でございませんから、いずれ機会を見つけましていろいろ論議を重ねてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、この技術革新の時代でございますし、医療も非常に急速な進歩発展を遂げつつある情勢でございます。そこで、レントゲンにいたしましても新しいレントゲンがすぐ出てくる、あるいは医療機械にいたしましても、購入いたしましてもすぐ次に新しい非常に進んだものが出てくるというような問題等もございますので、こういう点については、いずれ具体的に別の機会にいろいろ論議を重ねてまいりたいと思います。  このように、いろいろ申し上げてまいりましたが、いずれにいたしましても、いまの医療法人に対しまする税制措置というものが必ずしも適切なものじゃない、いろいろ多くの矛盾をはらんでおるというような点が、いままで申し述べた中で私は全貌が明らかになってきたと考えます。そこで、結論的に申し上げますならば、この医療法人が、昭和二十五年の第七回国会の中で医療法一部改正という形で立法化された、その当時の精神に沿うてもろもろの税制措置というものが考えられなければならない、こう私ども考えるわけでございます。ところが、まことに残念なことには、ここが大事なことでございますけれども、今度提案をされておりまする租税特別措置法案によりますると、医療法人の中の一部がその適用を受ける。たとえばどういう実態のもとでお考えになっておるかわかりませんが、いま大蔵省考えておられます政令、あるいはまた基準等によって、どの程度の医療法人公益性が高いということで租税特別措置法の適用を受けるとお考えになっておるか、ひとつここでお答えをいただきたい。
  51. 泉美之松

    ○泉政府委員 今度新しく設けます租税特別措置法第六十七条の二の適用の対象となりまする医療法人につきましては、法律にございますように、財団法人たる医療法人、それから社団たる医療法人のうち持ち分の定めのないものといふうになっております。そこで、これは厚生省のお調べによりますと、昭和三十七年十二月におきまして医療法人が千八百二十五ございまして、そのうち財団たる医療法人が三百一になっております。持ち分の定めのない医療法人が幾らかということは、明確でないようでございます。で、私どもこれらにつきまして、それではどういう基準で政令を定めて適用対象とするかどうかということにつきましては、まだ政令の内容を検討中でございまして確定をいたしておらないのでございますが、一応の考え方といたしましては、租税特別措置法の四十条の承認基準がございます。その承認基準を基礎にいたしまして考えたらどうかという気持ちを持っておるのでございます。ただ、これは河野委員もお気づきのとおり、租税特別措置法四十条のほうは、贈与税、譲渡所得税を課税しない場合の基準でございますし、また六十七条の二のほうは、非課税でない、税率を軽減する場合の基準でございますので、両者の基準が同一であるべきか、あるいは四十条の基準に対して六十七条の二のほうの基準はゆるやかであってしかるべきかという点が問題であるわけでございますが、私どもとしましては、事柄の性質からいうと、六十七条の二のほうがゆるやかであっていいのではないかというふうに感じておるのでございますが、それらの点についてもいろいろ意見がありますので、今後厚生省とも意見の調整をいたしたいと思っております。  そういう点からいたしまして、いま医療法人のうち、どれだけの数のものに適用するということを明確に申し上げることができないのでございますが、少なくとも財団法人の三百一の中には、この適用を受けるものが相当多いというふうに感じております。そして、持ち分の定めのない医療法人、この数がはっきりいたしませんけれども、私どものほうで承知いたしておるのでも数十あるようでございますので、それらは当然適用を受ける場合があろうというふうに感じております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 実は今度租税特別措置法の一部改正が提案をされて、そうして医療機関の中で一種の公益性が認められるという形をとるわけですけれども、いまお答え願ったように千八百以上の医療法人がある。その中で、若干の財団である医療法人が適用を受けている。それから持ち分の定めのない社団である医療法人、それが全部適用を受けるんじゃなくて、また政令その他で基準ができて、その基準に応じ得るものが適用を受けるわけですから、持ち分の定めのない社団でも、その中では数が非常にしぼられていくというかっこうになってくる。いま私どもが承知いたしておりまする基準等によりますると、持ち分の定めのない社団の中で適用を受けるケースというものは、大体二例程度だというように私どもは現地から承っております。ですから、これは実際に基準ができてみないと、どれどれのどのケースが実は適用されるかというふうな最終決定が行なわれないと思うけれども大蔵省考えておる基準によりますと、大体持ち分の定めのない社団というものは二例程度くらいしか適用を受けない。そういうことになりますと、これまた医療法の五十四条と関連いたしてまいりますけれども、いま医療法人の実態は、私は九割と思うのです。そういう大部分のものが公益性がないということになるわけですから、公益性を否認されるわけですね。それならば、この特別措置法の改正が行なわれるとするならば、当然また五十四条の削除という問題が起こってくる、私はこういうように考えざるを得ないと思うのです。ですから、医療法の中で五十四条が明記されておりまする以上は、やはりこの医療法人租税特別措置法の適用を大部分受けるという形をとるのでなければ、私はこれはおかしいと思うのです。ところが、租税特別措置法のほうによりますと、ほとんどが適用を受け得ない。そうすれば、やはり繰り返すようなことになりますけれども医療法五十四条の条項というものがどうであろうかというようなことを、またここでも再検討せざるを得ないと思うのです。こういう点はどのようにお考えになっておるのか。もし大蔵省のほうで、いまのような基準で大部分の持ち分の定めのない医療法人というものが適用を受けるというようにお考えになっておれば、それは私は認識不足のそしりを免れぬと思うのです。それから同時に、持ち分の定めのある社団である医療法人というものが非常に大部分を占めておるわけですから、そういう持ち分の定めのある医療法人というものを今後どう取り扱っていくかという問題というものは、新しく当然起こってこなければならぬと思うのです。そういう点についてどのようにお考えになっておりまするか、率直にひとつお聞かせをいただきたい。
  53. 泉美之松

    ○泉政府委員 医療法人のうち、社団たる医療法人で持ち分の定めのないものが、新しい六十七条の二の規定の適用を受けるのがどれくらいかという点につきましては、私どものほうで租税特別措置法四十条の規定によって承認いたしましたものが五件ございます。それから、われわれの租税特別措置法四十条の承認をする場合は、譲渡所得のある場合に限られておるわけでございますが、医療法人設立するときに負債があります場合には譲渡所得が発生しませんので、そういった場合には承認が要らないのでございます。そういう場合にも該当する医療法人もかなり承知いたしております。それから、租税特別措置法四十条の規定が適用されましたのは昭和二十八年の四月一日以降でございますので、それ以前に設立されました持ち分の定めのない医療法人につきましても相当あるわけでございます。したがいまして、持ち分の定めのない医療法人はいまわずかに二例だというようなお話でございますが、私どもは、そうではなくて数十、相当あるというふうに考えておるのでございます。ただ、お話医療法人の中には持ち分の定めのある医療法人が多い、これは医療法人設立の際のいろいろな事情があったことと思うのでございますが、そういうことはお話のとおりでございまして、そういう意味では、持ち分の定めのある医療法人は六十七条の二の規定の適用を受けないではないか。御趣旨まことにごもっともと思うのでございますが、この点については、何ぶん持ち分の定めがございますと、持ち分の返還請求権を行使いたしますと財産を返さなければならない、あるいは解散の場合におきましてはその持ち分に従って残余財産の分配が行なわれる。もちろん医療機関でございますから、それを解散するということはなかなか問題のあることで、事実問題としてなかなか解散が行なわれ得ないだろうということは承知いたしますが、しかし、たとえば医療法人設立した人が死亡いたしまして相続が開始いたしますと、相続人の中には持ち分の返還請求権を行使して、自分は医療法人の中に入って医業をやっていくつもりはないから、持ち分の返還を請求するという人も出てこようかと思うのでございます。そういった点を考え合わせますと、持ち分の定めのある医療法人につきまして法人税率を軽減しますと、結局法人税率の軽減によって蓄積されました医療法人の資産というものが、その持ち分の返還請求によって個人に分割されてしまう、そこに問題があるのではないか。なるほど、医療法人としての医療行為としましては、別段そういった持ち分の定めがあるとか持ち分の定めがないとかいうことで医療行為の公共性に私は差異はないと思うのでございますが、法人格の点から、どうしてもそこに差があるのではないかというふうに感ずるのでございます。そういった点からいたしますと、租税特別措置法の六十七条の二の規定は、やはりここに一線を画さざるを得ないのではないかというふうに感ずるのでございます。
  54. 河野正

    河野(正)委員 要は、二点あると思うのです。第一点は、医療というものは非常に公共性があるかないかという問題が一点だと思うのです。これはもう厚生大臣もおっしゃっているように、国民保険のもとではあるし、公共性も高まるばかりだということですから、私はこの点はたいして異論はなかろうと思うのです、異論があるとすれば、あとでまた論争しなければならぬけれども。第二は、いま言った返還請求権あるいはまた解散という問題があろうと思うのです。ところが、一般法人と違って、医療機関の場合は、そう返還請求をしてあとの医療行為が成り立つものではございません。そういう実体論というものは私はそこで当然考えなければならぬ。たとえいまの法人税の税率というものが一般の営利企業並みだ、だからというようなことで医療法人というものが判断されるべきじゃないので、やはり実体論というものが中心にならなければならぬと思うのです。そういたしますると、持ち分のある医療法人でも、実質的には、たとえば理事長が病気でなくなるとかいう場合には、当然贈与税その他の問題が出てまいりますし、相続税の問題も出てまいりますから、そういう不測の事態というものが起こってくるまでは、持ち分があろうがなかろうが、実体というものは同じだと私は思うのです。だから私は、そういう持ち分があるといたしましても実質的には潜在的な持ち分であるというのが、実体論からいえば実体だと思うのです。形式論からいえばあなたのおっしゃるとおりかもわからぬが、実体論からいえば私はそれが実体だと思う。そういうことからも、私は、この持ち分のある法人といえども当然租税特別措置法の適用を受けることがきわめて望ましいというふうに考えます。そういう二点の問題点の上に立ってさらにどういうふうにお考え願うか、あらためてひとつお答えをいただきたい。
  55. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  お話のとおり、医療行為ということにつきまして、医療法人公益性を持っておることは私どもも十分承知いたしておるのであります。したがいまして、租税特別措置法四十条の規定で公益事業目的とする法人という中に入れまして、医療法人設立の際に贈与税あるいは譲渡所得税を課税しないという措置をとるわけでございます。また今回におきましても、租税特別措置法六十七条の二の規定を設けようとしておるわけでございます。したがいまして、デリケートなのは、純粋の営利追求法人でもない、さりとてまた民法三十四条の規定に基づく公益法人でもない、いわばその中間的な存在なんですが、それをどちらにくっつけてみるかという点にあろうかと思うのでございます。なかなかそこが、一律に扱うことがむずかしいのではなかろうか。そこで、非常に形式的なことを申し上げるようでございますけれども、やはり持ち分の定めがあるという法律的な性格を基礎にして、ここに差別を設けざるを得ないのではないか。したがって、もし租税特別措置法六十七条の二の規定の適用を受けようとするには、持ち分の定めのある医療法人から持ち分の定めのない医療法人になればその適用になるわけであります。ただ、その場合には、変更に伴いまして贈与税あるいは譲渡所得税の問題がありますが、この場合におきましても措置法四十条の規定の適用はございますので、それとの関連において救うことができるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  56. 河野正

    河野(正)委員 そこで私どもの言い分から言わしてもらうならば、医療行為というものに対する公益性というものが非常に高い、しかも医療法の五十四条では、利益の配当というものが禁止されておるというふうな医療法との関連からも、当然法人税等に対しまする税制措置というものは、非常にやってもらわなければならぬ措置だというふうに理解をいたしますけれども、いずれこの点につきましては、時間をかけなければ、なかなかおいそれと結論が出てくる問題でもなかろうと考えます。そこでしからば、いま返還請求権の問題等のおそれもかなりあるということで大蔵省で杞憂をされておりますので、現在持ち分のある社団が持ち分のない社団に移行するということになれば、もちろん基準その他はございますけれども、これは当然租税特別措置法の適用を受けることになろうと思うのです。ただその際に問題になりますのは、持ち分のある社団が持ち分のない社団に移行する場合には、贈与税等の問題が出てまいります。そういう問題が救済されるということになると、この際医療法人の形式についても一元化という方向が出てくるわけです。けれども、そこでまた移行はするが贈与税は取られるということになりますと、実際は利益の配当ができぬわけですからね。厳格に言えば、それは実際の原資はないわけなんです。ですから、この持ち分のある社団が持ち分のない社団に移行する場合の贈与税その他の税の措置というものは、お考え願えるものかどうか、これは話が非常に具体的になりましたけれども、ひとつこの際率直にお聞かせいただきたい。
  57. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、持ち分のある医療法人から持ち分のない社団法人たる医療法人になります場合には、租税特別措置法第四十条の規定によって、贈与税あるいは譲渡所得税を課税するかどうかということがきまるわけでございまして、あの基準に該当いたしますれば、贈与税も譲渡所得税も課税にならないということになるわけでございます。
  58. 河野正

    河野(正)委員 要は、その基準が問題になるわけですが、その基準に対してこの際格段の善処を願えるお考えがあるかということだと思うのです。
  59. 泉美之松

    ○泉政府委員 この措置法第四十条の基準につきましては、実は昨年の十月に、厚生省とわれわれとの間で話し合いがまとまりましてきまった基準なのでございますが、いまお話しのように、既存の持ち分のある医療法人から持ち分のない医療法人にかわるという場合に、従来の基準のままでいいか、それとも従来の基準のどこに問題があるのか、それはやはり医療法人の実態を見ませんとなかなか見当がつきかねると思うのでございますが、その実態を見ました上で、せっかく昨年の十月定まった基準でございますけれども、なお検討すべき点がございますれば検討いたしたい、かように考えます。
  60. 河野正

    河野(正)委員 これは実態に対しまするいろいろ公益性その他の問題があると思うのですが、いま大蔵省がお考え願っておりまする基準、その中にも、はたして公益性という立場からそういうことが適切であるかどうかという問題も多々ございます。これは一、二の例をあげて恐縮ですけれども、たとえば規模が大きくなければ適用を受けない。それなら大きいのだけが公益性が高いかというと、私は必ずしもそうではないと思う。これは量の問題だけではなく質の問題もあるので、非常に内容的に充実しておれば、病院だけがだだっ広くてベッド数が多いということだけが、私は必ずしも公益性ということではないと思う。いま大蔵省の御見解では、千平方メートルというような一つ基準もございます。ところが、いま申し上げますように、それなら千平方メートルというような規模が公益性が高いのかといいますと、私がいま申し上げますように、必ずしもそうではない面もある。そのような機械的に、量だけでそういう基準が設定されることについては私は納得いかない。これは一例でございますけれども、そういう問題がございます。  それから細部については、ここでいろいろ具体的に検討するということが目的ではございません。きょうは連合審査でございますから、大まかな点について究明することが目的でございますので、いろいろ申し上げませんけれども社会保険収入による収入というものが全収入金額の八〇%でなければならぬ。ところが、現在医療保険というものが、必ずしも完全給付という形ではございません。制限給付という形をとっていますことは御承知のとおりでございます。そういうことでございますから、そういう金額で締めつけていくことが公益性が高いんだというふうに相なっていくのかどうかということについても、これは異論があろうと思うのです。こういうように、細部につきましてはいろいろ問題のある点がございます。そういう問題等については、今後十分ひとつ国会とも話し合いの上で御決定を願うような御意思がございますか。
  61. 泉美之松

    ○泉政府委員 この措置法第四十条の場合の承認基準につきましては、お話のように一応医療施設として千平方メートル、すなわち約三百坪ということを基準にいたしておりますが、これはその最後のほうに書いてあるのでございますが、地域及び医療内容の特殊性その他特別な事由である場合には、この形式的な基準によるのではないということになっておるのでございます。お手元に差し上げておるものにはそれがついておらないかと思うのでございますが、そういうことにいたしまして、一つ基準であるというのでございまして、これが絶対的な基準であるとは思っておらないのであります。お話のように医療の公共性ということは、単にその規模だけではかることのできないことは私どもも承知いたしておるのでございますが、ただ規模が比較的大きければ、やはりそれだけに医療施設も整い、医療の担当者もおって、そして患者が来た場合に直ちにその患者の需要に応ずることができる、しかも高度の医療を施すことができるというふうに考えまして、一つのメルクマールにいたしておるわけでございますが、しかし、これだけによっていくつもりではもちろんございません。そのときのいろいろな事情があろうかと思います。ことに医療法人設立されました中には、昭和二十五年以降早目にできたような場合におきましては、必ずしもそれほど大きな施設でなかった場合もあろうかと思うのでございまして、そういった点につきましては十分検討いたしたいと思うのでございます。
  62. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ地域の実情等を勘案してというただし書きがあるということでございますけれども、やはり基準が定められますと、その基準というものが一応のものさしになることは、否定することはできぬと思うのです。ですから、その基準を設定する際に、やはりいろいろな意見を十分尊重しておきめになるということが、私はきわめて望ましいと思うのです。地域の実情その他によっていろいろ検討するんだというようなことは、必ずしも望ましくないのであって、むしろ私は基準の中でそういうことを御検討なさるほうが、行政の運用上も一番誤りがないというように考えます。  そこで、そういう基準設定については、国会意見等も十分聞いて、そうして最終的な決定をなさる御意思があるのかないのか。この点は、今後こういう問題を円滑に解決するためには、きわめて重要な要素を持っておると思うのです。そういう意味でひとつ率直にお答え願いたいと思います。
  63. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の点につきましては、もちろん国会の御意思を十分お聞きいたしまして考えたいと思うのでございます。ただ、行政の実情といたしまして、何らかの基準を設ける場合に、画一的な基準で処理するということはなかなかむずかしい問題でございまして、やはり個々の具体的ケースによって処理せざるを得ない場合もあろうかと思いますので、基準を定める際には、十分そういった点を注意して定めたいと思いますけれども、やはり画一的な基準で全部を処理するということは、なかなかむずかしいであろうと思いますので、行政の具体的な場合にあたりましては、若干の余地を残しておく必要があろうかと思います。
  64. 河野正

    河野(正)委員 ちょっと私のことばが足らなかったと思うけれども、私が御指摘申し上げておりますのは、そういう意味ではなかったのでございます。と申し上げますのは、もちろん一応の基準をつくりましても、それだけでなかなか行政の運用というものが適切にできるということではございませんから、そこで実態に応じて御検討になるという点はけっこうだと思うのです。ただ、その前に基準をつくるにあたっても、十分国会意見を聞いておつくりになってはどうですか、こういうことを私は申し上げたのであって、ただ基準は一応きめておこう、あとは結局地方の実情によって裁断をするのだからということでは困るという意味で申し上げたわけでございますので、特に国会意見も十分聴取した上で決定する、こういうようなおことばもございましたから、私どもは、われわれの意見というものが十分反映されて、そうして基準というものが決定される、こういうように理解いたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  65. 泉美之松

    ○泉政府委員 繰り返して同じようなことを申し上げて恐縮でございますが、十分国会の御意見がございますればそれを承りまして、基準を再検討いたしたい、かように考える次第でございます。
  66. 河野正

    河野(正)委員 そこで、だんだん時間もおそくなってまいりますから、結論的に申し上げますと、今日当委員会において審議をされておりまする租税特別措置法、特に医療法人に関しまする租税問題というものが、必ずしも現在の医療法人運営の面から見て適切な方策でないというのが、私の結論でございます。そこで、それを適切な方向としてどういう方向に持っていけば適切と言えるのかというようなことにつきましては、私が時間をかけて申し上げましたいろいろな点の解決があると思うのです。でございますが、この段階でわれわれの要求というものが、すべて一挙に解決されるというような段階でもないように仄聞いたしております。しかしながら、さればといってこれをそのまま放置することが、今後の国民医療のために適切であるかどうかということにつきましては、私大きな問題があろうと思います。そこで、やはり私どもが指摘をいたしてまいりましたもろもろの不合理、矛盾というものをすみやかに解決する形でこの税制上の問題も解決していただかなければならぬ、こういうことが私どもの言い分でございます。  そこで、大体結論は出たと思いますけれども、持ち分のない社団たる医療法人については、いずれこの租税特別措置法の適用が受けられる、もちろん基準の問題等がございますけれども。それからさらに、持ち分のある社団たる医療法人については、持ち分のない社団に移行をしたならば、これも若干基準の問題等で今後検討する余地はあるけれども贈与税等の減免措置が行なわれる、こういうふうに理解をいたしたいと思います。  それから、そういう問題を解決するものさしになります基準等については、国会意見を十分聞いてそして基準の設定に当たる、こういうふうに大体結論づけられたというふうに私どもは理解いたしますが、それでよろしゅうございますか。
  67. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のとおり、私どもそのようにいたしたいと考えております。
  68. 河野正

    河野(正)委員 そこで結論を申し上げますと、いまの二点が大体確認をされました。しかしながら、私はそれでこの医療法人問題のすべてが解決したというふうには理解をいたしておらぬわけです。そこで、なおいろいろございます矛盾、不合理などについては、私どももさらに論議を重ねていかなければならないと思いますし、また厚生省大蔵省としても、そういう面については前向きの姿勢で解決のための努力をしていただかなければならぬと思うのです。そういう意味で、ひとつここで、厚生省大蔵省は、政務次官からそれぞれ適切なお答えをいただいて、そしてそのお答えが私の満足のいくお答えでございますならば、一応私の質疑を終わりたい、かように存じます。そういう意味でひとつ明快にお答え願いたい。
  69. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 お答えします。  いろいろ河野委員からの御意見も共鳴する点が多いのでございます。十分ひとつ検討いたしまして、御趣旨に沿うように努力をいたします。
  70. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 医療法人制度設立目的、また医療法人の性格というようなものにかんがみまして、特にその公共性にかんがみまして、税制等につきましても、またその運営につきましても、そのあるべき姿へ近寄せるように努力していきたいと思います。大蔵省のほうにも十分折衝いたしたいと思います。
  71. 山中貞則

    山中委員長 滝井義高君。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 租税特別措置法の一部を改正する法律案医療法人の問題について、二、三お尋ねをいたしたいと思います。  前の人の質問を聞いておりませんでしたので、幾ぶん重複するところがあるかと思いますけれども、まずお尋ねしたい第一点は、持ち分の定めのあるものとないものとに税法上差別ができてきているわけです。これは一体いかなる理論的な根拠から、同じ医療をやっておる医療法人に対して、持ち分があるなしによって税法上の差別ができてくるのか。
  73. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほどお答え申し上げたのでございますが、医療法人につきましては、滝井委員御承知のとおり財団たる医療法人と社団たる医療法人があり、社団たる医療法人の中で持ち分の定めのあるものと持ち分の定めのないものとございます。それで、持ち分の定めがございますと、その持ち分の返還請求権というものがあるわけでございまして、したがって自分は脱退したいから持ち分を返してもらいたいと言うこともできますし、あるいはその医療法人を解散するときにおきましては、残余財産はその持ち分に応じて分配するということにもなるわけでございます。そこで、お話のように医療行為の公共性という点から申し上げますれば、それは社団法人たる医療法人であろうと財団法人たる医療法人であろうと、また持ち分の定めがあろうとなかろうと、それにかわりはないということは私は十分承知いたしておるのでございますが、ただ、その医療法人法律的な性格からいたしまして、いま申し上げました持ち分の返還請求権なりあるいは解散の場合の残余財産の分配請求権、こういうものがある場合におきましては、結局法人税率を軽減するということは、そういう医療法人についての法人税の負担を軽減して医療法人の内容の充実をはかるということにあろうと思うわけでございますが、その内容の充実をはかったものが持ち分に応じて分配されてしまうということでは、これでは法人税の軽減税率を設ける趣旨に合わないのではないか。そこで、はなはだ形式的な基準のようでございますけれども、持ち分の定めのあるものと持ち分の定めのないものとで区別せざるを得ない、かように考えておる次第でございます。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、利益が分けられる時点でおやりになったらいいんじゃないでしょうか。医療行為の結果がまだ分けられないうちにかけるのではなくて、それは医業を行なうという本質は同じなんですから。医療法人をつくった目的というのは一体どこにあったか、この医療法人をつくった目的を、まず厚生省から説明をしていただきたいと思うのです。
  75. 大崎康

    大崎政府委員 医療法人創設の趣旨でございますが、元来医業は公共性を持っておりますけれども、そのもの自体民法上の法人として積極的に公益を実現するという程度にも至りませんし、またもちろん非営利でございますから、商法上の会社というわけにはいかないわけでございます。したがいまして、その中間的な法人といたしまして医療法人制度というものが創設をせられたわけでございます。医療法人創設の結果、法人でございますから医療機関永続性ということがはかられますし、また個人ではございませんので資金を集めることが容易になる、こういうふうなことに相なるかと思います。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、永続性とそれから資金を確保するということが目的なんですね。こういう目的のためにできたのが医療法人なんです。そうしますと、それが持ち分があろうとなかろうと、その金がその医療機関に保持されておる限りは、これは税金を差別する理論的な根拠は成り立たぬわけです。これが、本人の持ち分に応じて財産が分けられるというその時点においてとらえるのならいいのです。ところがその前にやるということは、これは本来の目的を阻害することになるわけです。永続性を阻害し、資金を集めることを阻害するわけです。医療法人という同じ医療を順当に遂行するためにできておるものが、税金が医業を遂行する過程の中で差別ができるということはおかしいのです。だから、これは財産が分けられる、その果実が分けられる時点においてとらえられる方が合理的なんです。その前の段階で、まだどうなるかもわからない収入を差別をつけるというのはおかしいですよ。だからもし持ち分があろうとなかろうと、そんなことは医療という本質から見れば問題じゃないわけです。もしあなた方がこの理論を突っぱねていくならば、私は次の理論を言うことになるわけです。(「譲渡所得と同じ考え方に立てばいいんだよ」と呼ぶ者あり)だからそのとおりなんです。果実を分けるときにこれをやればいいのです。その前にやるというのは理論的に成り立たない。本来医療法人ができた目的を税制が阻害することになる。
  77. 泉美之松

    ○泉政府委員 おことばでございますけれども法人税は、各事業年度所得に対して課税いたすものでございます。したがいまして、残余財産の分配請求権なりあるいは持ち分の返還請求権を行使したときに課税すればいいじゃないかとおっしゃいましても、すでに事業年度が十年も何年もたったあと課税するということは法律上認められておりませんし、更正をするといたしましても、それは三年間しかさかのぼることはできないのでございまして、したがって、各事業年度に対する所得税をあとになって課税し直すということはできませんので、あらかじめ課税の区別をせざるを得ない、かように考えるのでございます。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 国会法律をつくるところです。だからそういう方向に改正したらいいわけです。今度だって、三十何%というやつを二八%に改正ができてきておるわけです。だから医療法人については本来が永続性を持ち、そしてこれは私的な医療機関なんですから、したがって資金を集めることが困難だから、できるだけ資金をその医療機関に蓄積しなさい、そして医療機関の前進をはかりなさい。しかし、それが五年たとうと十年たとうと、その持ってきた果実を持ち分に応じて分けたりあるいは他のものに転用するときには、これはかけますよ、これでいいのです。これは五年たとうと十年たとうと、同じなんです。当然そうすべきなんです。しかもこういう公の法人というものは、解散するときにはどこか他のものにその財産を帰属しなければならぬということをきめておるわけです。ところが、持ち分のあるやつは自分が分けて取る可能性がありますから、そのときにきちっときめたらいいのです。それはそのときにやればいいのであって、前もってやる必要はないわけです。ここは法律をつくる場です、行政の場じゃないんだから、五年でも十年でも先に取れる法律の仕組みにおやりになったらいいのです。
  79. 泉美之松

    ○泉政府委員 おことばではございますけれども、租税債務は、公法上の債権といたしまして、五年間の時効で消滅することになっておるわけでございまして、十年でも十五年でもさかのぼってやればいいじゃないかとおっしゃいますけれども、そういうことは法的秩序を乱すことになるわけでございます。また、各事業年度所得というものが年々の所得なのでございまして、分配をするとかいうときに、その十年前の事態をさがし出してということは非常に困難なことになると思いますので、私どもは、そういう立法はなかなか問題がありはしないか、かように考えるのでございます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 私のおやじが八十年の長きにわたって蓄積したものを、ぽこっと死んだときに私に譲るわけです。そのときは財産税を取るわけです。この理論だって、それは通用しているわけでしょう。だからそれは法人が得た果実を持ち分に応じて分けるということがあるならば、分けるときにおやりになったらいいわけです。これはすぐ捕捉できるわけですよ。だからこの点は、私は私の理論が正しいと見ておるのです。一応あなたが、どうしても持ち分のあるものは持ち分のないものに比べれば差別せざるを得ない、税法上それが当然であるとおっしゃるならば、だんだん次に入っていきますよ。  そこで次は、この法律を見ますと、その事業医療の普及及び向上に寄与、とあるのですね。これは一体どういうことですか。その事業医療の普及及び向上に寄与というのは、他の病院、診療所といかなる点において具体的に異なっておるから、他の病院よりも所得二八%と、こう優遇することになるのか。医療の普及及び向上に寄与するというのは、他の病院とどういう点に特徴的に異なっている点があるのか、具体的に示してもらいたい。
  81. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の六十七条の二の規定で、医療法人のうち「その事業医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されている」、そういうことについて政令で定める要件ということになっておるのでございますが、これは医療行為そのものとして、持分の定めのあるものと持ち分の定めのないものとに差がないということは先ほど申し上げたのでございますが、ただ、いま申し上げました持ち分返還請求権なり残余財産分配の請求権の点から、初めのほうで持ち分の定めのあるものとないものとに区別しておるのでございまして、したがって、「医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、」という点は、持ち分の定めのあるものも定めのないものも、別段変わりはないというふうに思います。ただ、医療法人の中におきまして、持ち分の定めのないものの中におきましても、その内容にはいろいろ程度がありはしないかということからいたしまして、その程度につきまして要件をきめまして、たとえば一定規模以上の医療施設を持っておることが必要である、あるいはその運営につきまして寄付行為をした者の同族関係者が非常に多くおるということがないようにあってほしいといったような基準で、やはりそこに医療法人の中にも差別があるのではないか。私ども医療法人のことをそれほど詳しくは存じませんけれども措置法四十条のほうの規定に基づきまする承認申請のあれを調べてみますと、かなり差があるように見受けられますので、そこにやはり差を設けたらどうかということから、かような規定になっておるわけであります。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも答弁にならないのですがね。私はまだ一つ一つ尋ねていくのです。これは局長さん、まず、「持分の定めがないもののうち、」なんですよ。持ち分のないものすべてじゃないのです。持ち分の定めのないものの中にもまた類別が出てきている。優遇するものができてきている。優遇されないものもあるわけです。まず、持ち分のあるのとないのでは、持ち分のないのが優遇される。持ち分のないものの中でも、いま言った第一の、その事業医療の普及及び向上に寄与しておらなければだめなんですよ。これは一体具体的にどういうことですか、こういうことなんです。これは「あおによしならのみやこ」という「あおによし」というまくらことばなら、それはまくらことばでもいいのですよ。いま言ったように、持ち分のあるものもないものも、みんなこういう点については同じですということばなら、そんな「あおによし」は削ってしまってもいいのですよ。しかしこれは、「持分の定めがないもののうち」——「うち、」ですよ、こうきまっているのです。だからこれはあとでまた一つ一つ尋ねていきますから、いまあまり先のことは言わなくてもいいのです。医療の普及及び向上に寄与するとは一体いかなることか。持ち分の定めのないものとして特徴的に出てきているが、他のものとどういう点で違うかという具体的な点がわからぬと、ものさしがわからないのだから税金は取れないですよ。それはわからぬならわからぬで、次にいきますからいいですよ。
  83. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の「医療の普及及び向上、」の点でございますが、持ち分の定めのない医療法人の中におきましても、その医療法人の規模とか運営のやり方等によりまして、医療の普及及び向上に寄与する程度に差がありはしないか。その差がある場合に、そういう医療の普及及び向上に寄与する程度の高いものについて優遇しようという考えでございます。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、持ち分の定めのないもののうちに、やはり医療の普及と向上に寄与する率について差があるということらしいですね。そうすると、そういうことになると、次の「社会福祉への貢献」というのもやはりそういう意味ですか。
  85. 泉美之松

    ○泉政府委員 さようでございます。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、「その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていること」というのは、具体的に一体どういうことですか。
  87. 泉美之松

    ○泉政府委員 「公益の増進に著しく寄与し、」というのは、先ほどの医療の普及及び向上、社会福祉の貢献なんかが公益の増進のおもなる内容になるわけでございますが、そのほかの公益の増進に寄与している面もあれば、その点をも考えるということでございまして、公的に運営されているということは、公益の増進に著しく寄与するという要件のほかに、さらにもう一つ要件を加えたのでございまして、この運営が公的に運営されて、つまり、寄付行為者及びその同族関係者の恣意によって運営されているというようなことがなくて、公的に運営されておるということが一つの要件になっておるわけでございます。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 私的に運営されるというのと公的に運営されるというのと、税法上の区別はどういうところに基準があるのですか。たとえば医療機関で私的に運営されるということと、公的に運営されるということと、煮詰めていくと、一体究極にはどういうところに具体的なけじめが出てくるのですか。
  89. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは法人税法第五条の公益法人の場合の要件といたしましても、やはりその運営が公的になされなければいけない、特定の、たとえば理事長の専横、専断によって運営がゆがめられるというようなことがないようでなければいけない、これは公益法人として当然のことであろうと思うのでございますが、それと同じように、医療法人の場合におきましてもそういった面において公的に運営されることが、こういう軽減税率を適用する上においては必要な要件であるというふうに考えた次第でございます。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その次に今度政令で定める要件が出てくるわけですね。この政令で定める要件というのはどういう要件になるのですか。たとえば二、三例をあげていただきたいと思います。
  91. 泉美之松

    ○泉政府委員 この要件につきましては、目下検討中でございまして、いずれ厚生省当局ともお打ち合わせいたしたいと思っておるのでございますが、この場合問題になりますのは、現在租税特別措置法の四十条の規定におきまして、医療法人設立する際、財団たる医療法人及び持ち分の定めのない医療法人設立する場合の譲渡所得税及び贈与税非課税の承認基準というものが、大蔵省厚生省との間で協議をしてきめられておるのでございます。その基準を基礎にして四十条の場合は非課税であるし、六十七条の二の場合は軽減税率を適用するのでございますから、そこに若干趣旨が違う面もありますので、両者の基準を異にするかどうか、及び異にする場合にはどの程度異にするのがいいかという点について今後検討したいと思っておるのでございますが、四十条の基準を一応おもな点だけ申し上げますと、医療施設が総合病院であるか、または病院の用に供する建物の延べ坪数がおおむね三百坪程度であること、そしてその建物が耐火構造かもしくは簡易耐火構造であることなど防火保安上適切なものであること、これが医療施設についての一つの要件になっております。それから、この次の要件は問題のある点かもしれませんが、社会保険診療の給付の金額がその法人の全収入金額の八〇%以上であること、それから自費患者に対して請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によって計算されておること、それから医療施設が、病院、診療所につきまして医療法関係法令に基準が定められておりますが、その基準に適合したものであること、それから解散した場合の残余財産の帰属は国もしくは地方公共団体、またはこの基準に適合する医療法人とする旨を寄付行為または定款に規定していること、役員及び評議員の構成につきましては、理事の数が相当数以上、監事も二名以上、評議員の制度が設けてあって、その数は理事の数の二倍以上であること、役員または評議員については、それらの者と特別な関係にある配偶者、親族などが一名をこえて含まれないこと、役員の選任につきまして、寄付行為者またはその者と特別な関係にある者もしくは特定の者をもって充てることとされていないこと、つまりあるときに理事長が選任されたならば、その理事長のむすこさんが当然に理事長になるのだというふうになっているのではなくて、役員の選任についてはたとえば評議員会にはかって、理事会において選任するとかいうふうなきめ方がしてあること、それから役員及び評議員たる医師、看護婦その他の従業員の給与の額は、役員または評議員でない医師、看護婦その他の従業員と比較して著しく高額であってはならないこと、それからその寄付財産を寄付行為者またはその者の配偶者、親族等と特別な関係にある者の居住の用に供していないこと、というような条件になっているわけでございますが、これらの条件のうち六十七条の二の規定の適用上は、それほど厳格にしなくともいいのじゃないかというような点もあろうかと思いますので、それらの点につきましては、今後十分検討いたしまして基準を定めたいというふうに考えておるのでございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この六十七条の二の恩典に浴そうとする特殊の医療法人は、いま言ったような約十カ条程度の条件を大体全部満たしておかなければいけない、こういうことになるわけですがね。
  93. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたのは、措置法四十条の場合の基準でございますので、六十七条の二の基準として検討いたしました際には、いま申し上げましたとおりには必ずしもなるまいと思いますが、もし検討いたしまして基準を定めました場合に、その基準に該当しますれば六十七条の二の規定の適用を受けるということになるわけでございます。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 しかし、大体四十条の基準に近いところできまることは、いまの御説明でほぼ想像がつくわけです。そうしますと、いまの四十条の基準でだんだんふるいにかけていってみると、医療機関医療法人の中のどの程度が、持ち分のないものの中でこの恩典に浴しそうですか。病院の数にすればどの程度の数ですか。
  95. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ基準が明確にきまっておるわけでございませんので、はっきり幾らの法人ということは申し上げかねるのでございますが、滝井委員御承知だと思いますが、医療法人の数は、厚生省の調査によりますと、三十七年十二月末で千八百二十五ございまして、そのうち財団たる医療法人が三百一になっております。持ち分のない医療法人が幾らあるかということにつきましては、厚生省のほうではおわかりにならないようでございます。ただ私どものほうで、いままで四十条の承認実務を扱った経験からいたしますと、四十条のほうの承認をいたしましたものが五件、承認をいたさんとしているものが三件ございます。そのほかに、四十条の承認は譲渡所得のある場合にのみ承認を必要とするのでございますが、医療法人設立する際に債務のある場合もございまして、そういった場合には承認を要しません。そういったケースのものも散見いたしますし、それからまた、措置法四十条の承認は昭和二十八年の四月一日以降行なっておるのでございますが、医療法人の中には、御承知のとおり医療法改正されましたのは二十五年でございますので、それ以前に設立されたものもございまして的確な数字はつかめないのでございますけれども、調べましたときには、兵庫県だけでも持ち分の定めのない医療法人が二十程度あるということでございますので、全国的には相当数にのぼっておるのではなかろうかと思います。しかし的確な数字がございませんので、はっきり申し上げるわけにはいきませんけれども、こういうふうな数字になっておりますので、この基準の定めぐあいによってもちろん適用対象数は変わってくると思いますけれども、財団法人たる三百一のほかに持ち分の定めのない医療法人が相当加わる、まあ三百一のうち全部が適用になるかどうかはわかりませんけれども、そういった数字になるのでございます。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十七年の十二月の千八百二十五の法人の中で、まあ大体半分以下というところですね、いまのような御説明からしてみると。あなた方のほうで、これだけの税法を出してこれから基準をつくろうというのに、持ち分のない医療法人の数が全然わかっていないということはないはずだ。やはり立法するからには、その客体というものを相当正確に、持ち分のないものは一体どの程度あるかということをとらえておかなければいかぬし、厚生省にしても、租税特別措置法がこうやって出るからには——昨年以来、税制調査会等で相当問題になっておるはずです。税制調査会の答申を見ると、これはないのです。租税特別措置のところを三十九年の答申で見てみますと、社会保険診療報酬課税の特例は、負担の公平の見地から見て適当でないのでこれを廃止するというのはあるのですよ。しかしこれはないのです。ないのに御親切に出してくれておるのですが、どうも厚生省でもこれくらいのことを調べていないとすれば、厚生省も不勉強だと思うのですが、大蔵省税法を出そうというのに、その客体がどの程度あるかということをお調べになっておらぬというのも、これは不見識なことだと思うのですがね。そうしないと、一体租税特別措置でどの程度の減収になるかということもわからぬことになるわけです。そうでしょう。いままで予算では、租税特別措置ではどの程度の減収になりますということは大体説明しておるはずです。この法律を出すのに、予算が通って、予算関係法案だから早く通してくれ、通してくれというけれども、客体は全然捕捉をしておりません、いまからやるのでございますというのでは、ではひとつ出てくるまで待ちましょうかと、こうなるわけです。それはあまり不見識ですよ。それは泉さんのほうがそれほど不見識だとは思わない。日本の一流のお役人の集まっておる、しかも主税局が、どうかわからぬはずはないと思うのですがね。これは厚生省もほんとうにわからぬですか、主税局のほうもわからぬですか、四十条基準でいいですよ。
  97. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、財団である医療法人が三百一、それから持ち分の定めのない医療法人は、兵庫県などの数字から全国に類推いたしますと、約百程度あるのではないかというふうに認められるわけでござまいすが、ただその具体的な内容が明確にわかりませんので、こういう基準にしたら幾ら適用になる、こういう基準にしたら幾ら適用になるということが明確にできないのでございます。ただ、お話のように、いまの数からいたしますと、千八百二十五という医療法人全体の中からいいますれば、その割合は半分以下であるということになります。
  98. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 医療法人の施設関係の調査は、病院、診療所別、病院のうちでも一般、結核、精神というふうな別で調べておりまして、いまのお話の財団、社団の別は、大蔵省からいまお話がございましたように、三十七年末で千八百二十五のうち、財団が三百一、社団が千五百二十四、これぐらいしかつかんでおりませんので、持ち分の有無についての調査をやっておりませんで、はなはだ申しわけないと思います。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いま泉さんの言われたように、財団が三百一で、持ち分の定めのない医療法人は、兵庫県の二十程度から類推をすると百ぐらいだろう、まあ対象になるのは四十条を基準にすると四百ぐらいだ、こういうことになるわけですね。  そこで、そこまでの実態がわかってくれば、厚生省にちょっとお尋ねしたいのですが、医療法における「医師若しくは歯科医師が常時三人以上勤務する診療所を開設しようとする社団又は財団」、これが医療法人ですね。個人の診療所と、それからこういう医療法人の診療所とは、国民医療を推進する上に何か本質的な違いがございますか。
  100. 大崎康

    大崎政府委員 個人の開設する診療所とそれから医療法人の開設する診療所につきましては、一方が法人であり、一方が個人でありますから、その運営そのものにつきましては相違はございますけれども、行なう医療そのものについて本質的な差はないと存じます。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 それから公的医療機関と、持ち分がない、この六十七条の二の対象になる医療法人、これは医療の上で何か本質的な違いがありますか。
  102. 大崎康

    大崎政府委員 医療法第三十一条にいう公的医療機関の中には、地方公共団体それから国民健康保険組合、日赤済生会等があるわけでございます。その中を分類をいたしてみますと、地方公共団体及びその系統に属するものが一つ、それから特別法に基づくもの、これは日赤でございます。さらに社会福祉法人、こういうふうなことに相なっているわけでございます。そこで、その社会福祉法人なり何なりと、医療法人の中で持ち分の定めのないものとの差はどうであるかというふうなお尋ねでございますが、それは大別するに医療法人公益法人といいますか、社会福祉法人よりも公益性のきわめて強い法人でございます。その公益法人との差に主として帰着するのではないかと思います。公益法人は、御案内のように、積極的に公益を推進する法人でございまして、その設立につきましては厳重な監督庁の裁量があるわけであります。医療法人につきましては許可主義でございますが、それは一定の要件が備われば必ず許可をしなければならない、こういうふうなことに相なっているわけであります。その他二、三公共性の点について異なっているところがございまして、公共性は両方に認められるわけでありますが、その間に濃淡があって、公的医療機関の公共性が一段と高い、こういうふうに考えております。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 そこで、いまの持ち分のない六十七条の二の医療法人と、それから医療法の第三章公的医療機関、すなわち三十一条ですね、定義が三十一条にある、この医療機関とは、特に特徴的なのは公共性の濃淡ということが言われたわけです。そこで、ここから問題が出てくるわけです。  まず、医療機関の税金のかけ方は、この法律が通ったら一体何種類あることになりますか。
  104. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  医療機関は、滝井委員御承知のとおり、いろいろに分かれております。まず一つは、日本赤十字社、済生会等、先ほど公的医療機関と言われたもの、それから民法三十四条法人、これらのものにつきましては、法人税法五条一項によりまして収益事業を営まないと課税されないということになっております。収益事業につきましては、日本赤十字社なんかは、その行なう医療行為がすべて収益事業でないということになっております。それから民法三十四条法人のほうでございますと、健康保険法に基づいて委託を受けたとかいったような特殊の分については収益事業でない、その他の分については収益事業であるというふうに規定されておるわけでございます。いずれにしてもこういった公益法人につきましては、収益事業の部分に対しては二八%の税率で課税になりますが、その大部分は収益事業の収入でございませんので、非課税というのが多いわけでございます。それから医療法人のほうでは、この六十七条の二の規定の適用を受けて二八%の税率の適用を受ける医療法人と、それからその適用を受けないで、従来どおり三三%ないし三八%という普通の法人税率の適用を受ける医療法人、それから法人の中に、これはもうごくわずかでございますが、過去に認可されたもので株式会社形態のものがございますが、これもその他の医療法人と同じように、三三%ないし三八%の税率で課税されます。それから個人の開業医につきましては、個人事業所得として課税されるということになるわけでございます。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大ざっぱに分けて四種類になるわけですね。非課税のものと、それから二八%と、三三ないし三八%と、それから個人の経費を水揚げの七二%と見るやつ、この四つになるわけですね。  そこで、今度逆に個人のほうからいきます。そうすると、個人の診療所ですね。個人診療所は、その水揚げの七割二分を経費に見て、二割八分を所得と見るわけですね。これは生活保護とか社会保険に限ってですね。自由診療分と労災分は、それが健康保険と同じようなものであろうとなかろうと、これはその二八%に当たる部分の所得を六割とか七割に見るわけです。こういうかけ方になっておるわけですね。これは間違いないですね。
  106. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のとおり、租税特別措置法二十六条の規定によりまして、個人の開業医につきましては、社会保険診療報酬につきましては経費率を七二とし、所得率を二八といたしております。その中身は、いまお話しのとおりと思います。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、まずここで問題になるのは、持ち分のない医療法人、持ち分のある医療法人における自由診療や労災のかけ方は一体どうなるのですか。
  108. 泉美之松

    ○泉政府委員 それは普通の場合と同じように、その収入から支出を差し引いた差額が所得になるわけでございます。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この所得について二八%の率は、持ち分のない法人、二八%に今度下げますね。これは社会保険だけではなくて、自由診療も労災も、みんな経費を差し引いて、あとの所得は二八%でいくことになるのですね。
  110. 泉美之松

    ○泉政府委員 医療法人につきましては、持ち分の定めがあるとないとにかかわらず、また財団であると社団であるとにかかわらず、いまの社会保険診療に基づく所得率が二八%であるという規定の適用があるわけでございます。しかし、実際問題としては、滝井委員御承知だと思うのでありますが、法人の場合には、個人の開業医と違いまして従業員が相当おりますので、所得率はそのように二八にはならないのが普通でございます。したがいまして、医療法人の場合には、せっかく租税特別措置法の規定がございますけれども、その規定の適用を受ける場合もあろうかと思いますが、規定の適用を受けない場合のほうがむしろ多いのではないか。そうして得たる収入から支払った人件費その他の経費を控除しますと、所得率は実際は二八よりもっと低いのが普通だと思っております。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、低いとか安いの問題でなくて、これは租税特別措置法なんですよね。同じ租税特別措置法で、個人の場合は社会保険だけに限ったわけです。そして他のものは社会保険と生活保護法に限って、他のたとえば自由診療と労災については全く別の税率を適用するわけでしょう。そうですよ。全く別の税率というか、いわゆる税率といえば言える。経費を差し引くときに所得をよけいに見るわけだから、七二の経費は見ないわけですから、自由診療分については所得を二八%に見ずに、六割、七割とおたくは一おたくというか国税庁の末端の税務署は見るのです。そうしますと、今度は医療法人の、持ち分のない医療法人というものの恩典をつくった場合に、所得について二割八分の税を取るわけですから、その場合に、自由診療分もそれから健康保険分も一緒にしますかということを尋ねている、究極すれば。
  112. 泉美之松

    ○泉政府委員 税率と所得と少し誤解されているのじゃないかと思うのでございますが、法人税率は二八%でございます。それから社会保険診療報酬に基づく所得率は収入金額の二八%で、同じ二八%でございますが、片一方は所得率のほうでございまして、片一方は税率でございます。一〇〇の収入がありましたうちで、その二八が所得になりまして、その所得に対して二八の税率が適用になるという関係になるのでございます。したがいまして、社会診療報酬以外の収入部分につきましては、税務署の末端で収入金額から経費を控除しますと、収入金額の——これは専門科によって、たとえば内科であるか外科であるか産婦人科であるか小児科であるか耳鼻科であるかということの違いによってそこには差があると私は思いますけれども。いずれにしても、その差に基づいて所得というものをはじき出しまして、それに対して税率を適用するということになろうかと思います。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  そうしますと、今度は日赤とか済生会とかあるいは民法三十四条の法人、こういうものは、特に民法三十四条のものは、一定の条件がなければ非課税にならぬわけです。もっぱら学術の研究を目的とするとか、あるいは社会福祉法人ならばそれは無料というのですか、軽費診療というのが一割以上なければならぬとか、低所得階層が六割患者の中になければならぬとか、いろいろあります。それからもちろんそのほかに看護婦養成とかいろいろたくさんあります。そういうのがありますが、日赤済生会の場合に、岡本さんも言っておったが、自由診療分があるわけです。あるいは労災分があるわけです。こういうものが収入の中に非常に大きな比重を占めてき始めておるわけです。最近における医療機関の赤字を解消するための大きな原動力はそれらの差額徴収になってきておるわけです。そうしますと、このさいぜんの四十条の基準で持ち分のない医療法人を大体非課税に選択をしていく過程の中で、四番目の条件に出てきた自由診療分については、社会保険で診療報酬を取らなければいかぬということが一つの条件になっておるわけです。社会保険の診療報酬で自由診療分については診療費を払ってもらわなければいかぬ、こうなっておるわけです。これが行なわれていないわけです。問題はここです。そこで医務局にお尋ねをしたいのだが、一体医療機関が公共性があるかないかということは、一番具体的にあらわれるのはそこの診療報酬の支払いの状態です。診療報酬の支払いがほんとうに健康保険法の適用あるいはそれ以下で行なわれておるかどうかということが非常に重要なところなんです。公共性があるかないかというものさしはここが非常に重要なポイントです。そのほかにもいろいろあります。たとえば看護婦を養成しておるとかあるいはインターンを入れておるとかいうのもあります。ことしからインターンその他の受け入れについては損料を払って、それから謝金を払ってくるのですから、これは医療費とは無関係になるわけです。それは補てんしてやるわけですから税法上では無関係です。それから看護婦養成等は医療費の中からやるべきでない、別途の金でやるべきであるということは社会労働委員会でもすでに結論を出しておる。そうしますと、医療費の相当の部分が入院その他の差額徴収で行なわれるということになると、医療機関の公共性というものが非常に少なくなってくるわけです。一昨日でございましたか、岡本さん、聖路加病院のことを出したわけです。私もかつて聖路加病院を出したことがある、国立第一病院も出したことがある、あるいは日赤を出したことがある。日赤の六百、七百のベッドの中で健康保険ではいれる数は二百かそこいらしかない。私があれを指摘しましてからだんだんふえてきましたけれども、そういうことになっておる。あるいは東京第一病院では、洋服だんすや何か貸して、それを別会計にして、そのほかに一日二千円、三千円の入院料を取っておった。最近は千円ぐらいになっておるらしいですが、やかましくいわれると下げてくるのだけれども、そういうことをやっておる。岡本さんが、おれのところはそんなこと一つもやっておらぬけれども税金がかかって、しかも私的医療機関で公共性はないと言われる、こういうことなのです。ここを一体どう調整するかということです。四十条の基準公益性があるという一番大きなところは、少なくとも診療報酬が社会保険の点数、単価で支払われなければならぬというところが一番重要なところだ。それ以上取るようなところを公益性があるなんというのはどこを押しても言えぬと思うのですよ。だから私はここに公的医療機関課税問題が起こってくると思う。これは泉さん笑っておるけれども、笑いごとではないと思う。社会保険診療でやっておる分については、日赤でも済生会でも非課税にすべきだと思う。しかしそれ以外の自由診療分については、私的医療機関が、さいぜん言うように、どうやっておるかということをあなた御説明になったように、労災の保険と自由診療については普通の税金の課税方式をとっておるわけです。社会保険の恩典に浴させないわけです。そうすると、私的医療機関についてはそういう方向でお取りになっておるのに、公的医療機関になったら、幾ら高いものを取ってもよろしいということになっておる。ある大学は病棟を別につくって、ここへは一切保険患者を入れない。一カ月に四十万、五十万取るところがあるのですよ。なぜそんなに取らなければならないか、大学がやっていけないのです。厚生省社会保険審議会のある委員の人がそこに入院をして、取られてびっくりして私のところに問題を持ち込んだことがある。大学だから私はあまり言わなかったのですけれども、しかし館林当時の医療課長には、私はここで名前を伏せて指摘はしました。これが保険医療機関です。保険医療機関であると同時に大学の病院なんですね。それはもう大蔵省所管の虎ノ門共済病院へ行ってごらんになったらわかる。大蔵省の給与課が担当しておる虎の門共済病院へ行ってごらんなさい。これはえらい人ばかりが入って、公務員は少ししか入っておらぬから。しかも奥のほうに押し込められておる。いい部屋に入っておらぬ。そういう実態だから、こういうところは共済病院だって何だって税金をかけることは同じです。そういう行為について税金をかけなければならぬ。これを見のがしておる、そうして、この答申は、こういうところは、ぼくはどうも天下の中山さんは見落としておると思う。そうして零細な米の所得課税をせいとか、私的医療機関、中小企業に革命的な政策をとらなければいかぬというような、中小企業類似の医療機関の税金は撤廃せい、こういう答申を出しておる。これはまるっきり木によって魚を求むるのたぐいで、全く的を射てないわけですよ。だから私は、むしろ公的医療機関がそういう差額徴収をやらなければやっていけないというような、そういう姿を放置しておくことは許されぬと思う。だから、これは、そういう自由診療をやって一カ月に三十万も四十万も取るようなところはどしどし公的医療機関でも税金をかける。そうして病院がやっていけなければ、それは別に厚生省小林さんの医療行政でやるべきなんです。インターンをやって、インターンは養成をさせるけれども、金は一文も出さぬ。これはあなたの兄弟の大蔵省主計局がみんな切ってしまったのです。小林さんが二億円金を出してくださいと言ってもたった二千万円そこそこしか出さないのでしょう。五億円出してくださいと言っても二千万そこそこです。こういう形だから、小林さんのほうも差額徴収を目をつぶらなければいかぬということになる。日本の医療機関の税の体系というものは乱れてしまったのです。だから、私的医療機関に二割八分をやったならば、私は法人税なんかのこういうものをつくる必要はないと思うのです。法人も青色申告するか、それとも二割八分かどっちかをとりなさい、これのほうがいいのですよ。こういうように複雑化するからいかぬのです。医療機関を四通りにもする必要はないのです。公的医療機関で公のものは非課税にします。私的医療機関法人は全部経費を七割二分に見て二割八分です。これで困るものは青色申告で、実態でいきましょう。そうなれば、法人は給与その他があるから、大部分が二割八分以下になるのですよ。そうなれば青色申告したっていいのです。そして青色申告をした上で、税を取っていくということにしたらいいのです。一本にしたらいいのです。医療機関については、法人とか何とか分ける必要はないと思うのです。そういう形で税を単純化せぬと、いまの税法というものはみんなわからぬでしょう。われわれが読んだって税法というのはほんとうにわからぬですよ。わからぬで質問をしているようなものです。そうして法律はたくさんある。しかも法律のところを読んでもわからぬから、今度は全部政令にゆだねているわけです。そしてまたその政令は通達その他がうんとあって、それを全部集めて調べてみなければ、一体自分がどれくらい税金を払うかわからぬということでは、法治国としては下なるものですよ。だから池田総理は政治を知らぬ。彼は行政をするけれども、政治を知らぬ。税は知っているけれども、経済は知らぬと言われることになるのです。池田総理のもとで、大蔵省で税のはえ抜きでやったのですから、私はこういう点をもうちょっと簡素化すべきだと思うのです。いまのように四つの形になっておって、しかも公的医療機関というものが乱雑になって、私的医療機関よりか営利性を発揮している。あなたの言うように、四十条基準で当てはめたら、日本の公的医療機関は当てはまるところは一つもないと思うのです。公的医療機関一つも四十条基準に当てはまらないのに、今度それを法人には当てはめようというのですから、こんな無理な基準というものはないのです。だから、こういう基準をおとりになるときには、まず聖路加病院日赤済生会に当てはめてみて、そして日赤済生会が合格をする基準で他の医療機関に当てはめるべきだと思うのです。そうでなければ私は了承できないです。それで向こうが改めなければ、改まらないところは税金をとるのです。公的医療機関から税金を取って悪いということはない。取っていいのです。差額徴収分は取っていいのです。帳面を見たらすぐわかるのです。おととい、岡本さんの質問で、何かわからぬようなことを言っておったのですが、社会保険診療報酬の請求書というのがあって、一年間の請求書を押えれば、あとはみんな自由診療です。それはわかるのです。われわれはみんなそれをやられている。税務署が来て、一年の国民健康保険、健康保険、全部出しなさい。全部付けて出しますと、それ以外のものはカルテを見ればすぐわかるのです。こういう形で調べて、全部根こそぎ取られているわけです。したがって、公的医療機関だって、基金に出した請求書以外の収入がある。それは自由診療です。その分について税金をかけたらわけはないのです。だからそういう形で、フェアプレーでいかなければいかぬのです。公私医療機関は、お互いに国民医療の前進をやっているわけです。そこで、まず四十条の、あなたの当てはめようとする基準を、公的医療機関に当てはめてみると、私の見るところでは、日本の公的医療機関で当てはまるところは一つもないと思うのです。国立病院は落第です。東京第一病院なんか落第です。この落第なものをそのままにしておいて他のものをするというわけにいかぬのです。これは税法のたてまえからいったら、税は均衡をとっておかなければいかぬ。しかもいかなる権力者といえども税はきちっと取らなければいかぬと思う。いつか岸さんの税金が少ないといって国会でだいぶ問題になったことがあるが、きちっとしていかなければいかぬと思うのです。そういう点でどうですか。泉さん、非常に苦しい立場でお困りだと思うけれども、勇気を持ってえりを正さなければいかぬ。
  114. 泉美之松

    ○泉政府委員 公的医療機関につきまして、その医療行為と申しますか、その経営のやり方がかなり営利追求的な面があるということは、先般岡本委員から承りました。またただいま滝井委員から承ったのでございますが、何分私ども税当局者といたしましては、そういった医療機関の実態につきましてうといものでございます。そういった関係から、いままで公益法人であれば当然そういうふうになっておるものとうのみにいたして、非課税規定に入れておったのでございます。お話しのような実情がありといたしますれば、先般申し上げましたように、その実態を十分調査いたしまして、本来はそういう差額徴収といったような、営利追求的な面がないことが望ましいと思うのでございますが、しかしそれはあるいは病院経営上やむを得ないということでございますれば、他の法人に対する課税の権衡からいたしまして、そういった収益事業と認められる部分については課税すべきではないかというふうにも考えられますので、それらの点につきましては先般お約束を申し上げましたように、十分実態を調査いたしまして善処いたしたい、かように考えておるのでございます。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 現実に四十条に基準があるわけでしょう。この基準でものが運ばれていっているわけです。ところが一方、公の名のもとに、あるいは博愛と人道の名のもとに営利が行なわれているという、この実態は即座にやめさせなければいかぬわけです。やめなければ直ちに税法改正してやるべきだと思う。そういうことは野放しにしておいて、一方では苛斂誅求が行なわれるということは困るわけです。しかも、いままでの基準法律できまっているわけでしょう。四十条基準でこれからの医療機関の税金のかけ方というものはきまってくるわけです。特に六十七条の二なんていうのがきまってくる。ところがもとのえりを正させずに、そのまま放置しておってやるというわけにいかぬわけです。そこでこの基準をおつくりになろうとすれば、現在ある公的医療機関を四十条の基準ではかってみて、公的医療機関が全部だめならば基準をぐっと下げるよりほかにない。第一、自由診療が社会保険でなければならぬと書いているのに、岡本君が言ったように、保険証を持っていったら保険証はだめですよ、こうおっしゃる。そうなるとこれは公益性なんか全くない。そういうことが二十世紀の後半に法治国家で白昼公然と行なわれているのです。そして弱い人には、税制調査会が、ああいう社会保険の診療報酬で、私的医療機関に二割八分なんというのはけしからぬとおっしゃているわけです。一方、そうおっしゃているくせに、大蔵省の足元の虎の門病院は白昼公然とやっているというのでは、まるきり紺屋の白ばかまよりもまだ悪い。それから厚生大臣、三十八年の五月七日に医療制度調査会が、医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申を出しているわけです。この中に「日赤済生会などはその設立趣旨に沿って運営すべきである」ということが書いてある。「本来の目的遂行に支障を来たしている場合には、その財政的援助等について考慮する必要がある。」こういうことをいってくれておるわけです。われわれはここで日赤済生会その他についてもいろいろいっておるわけですが、これも三十八年の五月に医療制度調査会がこういう画期的な答申を出して、そして日赤その他も漸次改善をするということになっておりますけれども、依然としてやはり特一、特二等もあって、差額徴収もやるし、あなたの国立病院もおやりになっておるわけです。こういうことでは、いま言ったような税法上の不均衡が生じて、大蔵省基準をやろうとしても、その基準適用も支障を来たす、こういうことになるわけです。すみやかにこういうような公的医療機関は——この医療法をごらんになると、公的医療機関の診療報酬その他についても厚生大臣は定めることができるわけです。それから財政援助についても、この答申は、おやりなさい、こういっているわけでしょう。しかも設立趣旨が博愛と人道を目的としておるのです。ところが、そういう営利性を持たなければやっていけないという日本の医療制度というものは、どこか間違いがあるわけです。しかも税務当局が非常に苦難の道を歩まなければならぬというのは、むしろ種は厚生省がまいておることになる。そのまいた種の上に税務当局がまたあやまちを犯してきておる、こういうことになる。医療法の第三章の公的医療機関という名のもとに、いわばネズミ小僧と同じことをやりよる。目的さえよかったら手段は選ばぬということになる。これは日本の医療のためにとるべき道ではない。したがってこの税制をうまくやろうとすれば、まずそれを直してもらわなければならぬ。だからここの場合は二者択一です。一体いまの日本の公的医療機関と名のつくものがデラックス病棟をつくって、健康保険で入院できずに、差額徴収をしなければならぬという実態をなくすか、それとも、そういう実態が直され得ないとするならば、公的医療機関の名を抹消して、どしどし差額徴収については税金をかける、こういう二者択一に迫られておる。一体いずれを選ぶかということです。われわれとしてもこの租税特別措置法を審議するときに、この問題を黙って通すわけにいかぬわけです。これは非常に重要なところなんですからね。だからそういう曲がっておることがわかっていて通すわけにいかぬわけです。これは医療金融公庫法でも同じです。公的医療機関という名のつくものについては六分五厘にします、しかし私的医療機関については八分とか九分なんだ、こういう差別をやるのですから、公的と名がつくがゆえに利子を安くし、償還期限を長くする、しかし私的と名がついたために、利子を高くして償還期限は短くする、貸す坪数も少なくする、こういうばかげたことはないわけです。こういう矛盾がいまの日本の医療のすべてのものに一挙にあらわれてきておる。だからこういうくさいものにはいつまでもふたをしているわけにいかぬ。いまの日本のこの腐り切った状態を手術する段階に来た。だからまず第一にやり玉に上げるのは差額徴収をする公的医療機関以外に方法がない。そうしますと、厚生省はこれはたいへんだということになって改めることになる。これにおきゅうをすえる以外にいまの段階では厚生省は改め得ないのです。そこでまず隗より始めよで、あなたのところの共済組合虎の門病院からまず税金をかけるということです。   〔山中大蔵委員長退席、吉田(重)大蔵委員長代理着席〕 あそこは国家公務員の病院です。お金持ちは別な病院へ入れたらいい。あそこへ行って調べてごらんなさい。公務員は三割か四割しか入っていない。どうも公務員以外の者がたくさん入っている。こういう医療の実態をいつまでも改めずして当面を糊塗しておるということは日本の医療行政の恥辱ですよ。だからこれは厚生省が、保守党がメスを入れなければ、社会党が身をもってメスを入れる。まず租税特別措置法を通そうとするならば、公的医療機関に税金をかけるという言明をもらいたい。そうならばひとつこれを通そう、こういうことなんです。
  116. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもといたしまして、公的医療機関収益事業課税の対象外にいたしておりますのは、本来公的医療機関はその運営が適切になされておるものという前提のもとにやっておるわけでございます。ただ、いまお話を承りますと、そうでないということでございます。しかし、そうであるならば、本来そういうふうに正すのがまず先決ではないかと思うのでございます。しかし、その点について厚生省がどういうふうな御処置をとるかわかりませんけれども、その適正なやり方に戻らないということでありますれば、これは他との権衡上、私は収益課税をせざるを得ないと思うのでございます。したがいまして、それらの点につきましては十分実態を調査し、厚生省とも連絡いたしまして、善処いたしたい、かように申し上げたのでございます。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 公的医療機関が、いま言ったように、差額徴収をやることは、著しく公益性を欠いておるわけです。このことはこれから持ち分のない医療法人がこの法律の恩典に浴そうとするならば、自由診療というものは健康保険と同じでなければならぬという前提が一番重要なところだと思うのです。この法律の恩典に浴するということはどういうことかというと、さいぜん私が冒頭にくどくどと泉さんにその特徴をお尋ねしたように、医療の普及及び向上に寄与しているということが一つ、それから社会福祉に貢献しているということが一つ、同時にそれが公益性を著しく増進している、そして公的に運用されているということです。  そうすると、その公的医療機関が高い金を取って、独立採算のために従業員の給料を安くする。これはかなり公益性がないわけですよ。福祉も増進しておらぬ。お金持ちのためには奉仕するかもしれぬが、健康保険の患者のためには奉仕することが非常に少ないわけです。皆保険政策をとっている国家の政策に反しているということになる。むしろその論理から言えば、私的医療機関のほうが、全部健康保険でやっているとすれば、非課税にしてもいいわけです。私は税というものは実体論だと思う。だから私的医療機関がほんとうに健康保険でやる、自由診療も健康保険でやっておるならば、その理論から言えば、非課税にすべきである。いま大蔵省は、今後改めないとすれば収益事業として課税をするということですが、厚生省としてはこの段階でどうするか。われわれは待てませんよ。こういう問題は、来年まで待ってくれと言われても、来年のことを言えば鬼が笑いますから、こういうことがわかったならば、直ちに改めなければいかぬですよ。これはばく大な税の自然増収があるのですから、こういう社会保障の前進のために、赤字になれば補てんすることができますよ。それができなければ、診療報酬の医療費を上げるか、どっちかしかない。それを差額徴収でまかなわしておいて、今度は国立病院も財政投融資の金を借りて、その借りた金を利子をつけて払わねばならぬという制度をとることは間違っておるわけですよ。それをやればやるほど、病院は六分五厘の利子をつけて返さなければならぬから、うんとかせがなければ返せぬ。全く日本の医療というものが皆保険政策とマッチしない方向に動いているということは非常に嘆かわしいことです。これは一体厚生大臣としてほどう解決するか。
  118. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 公的医療機関がその公共性について不十分ではないかというお話でありますが、現在の公的医療機関が健康保険でできるだけやっていくということは言われるとおりでございますが、それが一部に、社会保険でやらない自由診療のものを、患者さんの要求等によって見ているものがあり、また保険で全体の患者をやりながら、患者さんのいろいろな欲求等によりまして部屋代等の差額を取っておるというふうなのも、ある程度は現状からいってやむを得ないのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、ただ、その程度がはなはだひどい、行き過ぎておるというのがあれば、これは改めなければならないと思います。ただ公的医療機関というものの性格が、この皆保険の現在において、健康保険によってやっていくということは一つの大きな指標ではあると思いますが、必ずしもそれのみでもないんじゃないか。たとえば、そのおのおのの設立目的にありますような、たとえば日赤におきましては災害救助等に出動していくとか、また先ほどお話が出ましたように済生会等では貧困者に対する救恤、看護婦の養成とか、僻地診療に協力する等々の、それぞれの目的を遂行することも、また公的医療機関としてのそれぞれの性格上必要ではないかと思います。ただお話しのように、現在公的医療機関がその性格を少し逸脱しておりますようなものもあることが、医療制度調査会の答申に出ておることは事実でございますし、われわれも漸次、いまの制度をその本質に向かって直していくというふうなことに努力はしていきたいと思います。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 直していくと言ったって、私は代議士に出てからもう十年ぐらいこのことを言っているのです。機会あるごとに言うのです。いま言ったように、三千円取っておったのが千円ぐらいにはしました、それから六百ぐらいのベッドで百ぐらいしかなかったのが、二百とか三百とか四百にふやすのはだんだんふやしてきておる。しかしそれは全部はやめ得ない。全部やめたら、いま言ったように給料が払えなくなる。だから岡本さんが言うように暖房費まで取ってしまう。それから入院するときには、前払いで身のしろ金を二万円取られる。入院の後に金を払うか入院の前に払うかということは、病院経営上非常に重要なんです。金繰りの上からも 入院をするときに二万円の金を先に取ることと、治療が終わって帰るときに入院料をもらうのでは、病院経営上金繰りが非常に違う。だから身のしろ金を先に取る、こういう制度があるわけでしょう。  それから、今虎の門病院のことを言ったが、今度は全国の労災病院を見てごらんなさい。労災病院というのは、けい肺とか脊髄損傷とか、その他労務災害の負傷を入れるわけです。全国の労災病院をお調べになると、労災の患者というのは四割か四割五、六分しか入っていない。あとは一般の患者を入れておる。そうしなければやっていけないのです。健康保険とか生活保護とかいうのを入れておるのです。だからこういう実態を、監督官庁である厚生省がもう少しふんどしを締め直してやらなければいかぬ。公的医療機関の名のもとに白昼公然とこういう差額診療をやって、デラックスな病院をつくって、年金事業団の金を借りてどんどんやるということはたいへんなことです。そういう点をやはり日本の医療行政はきちっと改めなければいかぬ。そして出すべきものは出すということになれば、医療協議会の緊急是正の問題なんか、あんなにもまぬですよ。ところが、そういうものは出さずに緊急是正だ緊急是正だといって引っぱっていって、そして差額徴収をどんどんやらしている。こういう形は、まるきり日本の皆保険政策に逆行しているわけです。だから皆保険政策をほんとうにやろうとすれば、まず公的医療機関はすべて健康保険の診療報酬でやるということです。そうしてそれでやっていけない部面は別途財政措置考える。そういう形で非課税になる、税金がかからない、こういうことになるわけであります。だからそういう形にぜひこれは、漸次やるのではなくて、相当速急にやらなければいかぬ、ラジカルにやる必要がある。そうして日本の医療機関のえりを正してもらわなければいかぬ。そうして公的医療機関の名を上に冠するということでなければ、公的医療機関のほうがその基準に合わぬというようなことでは、私たちは納得できません。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 この間大蔵委員会でも触れた点でありますが、早急にとかいうようなことでは、われわれは信用できません。だからこれは期限を切っていただきたい。いまから一年以内に公的病院は全部それらの差額徴収部分を廃止する、これを答弁してもらいたい。それができなければ、大蔵省は今後一年間に全部準備を整えて、来年の本日から全国の公的医療機関に対して一斉に課税をする。一年間猶予を与えますから、やれますかどうですか厚生省答えてください。
  121. 尾崎嘉篤

    尾崎政府委員 ただいま滝井先生の御質問に対して申し上げましたように、患者を保険で見るということは推進していきたいと思いますが、差額徴収、部屋代等を全部やめさすというようなことは、この一年間でやれと言われましても、それはちょっと無理ではないかと思うわけでございます。ただし、あまりに部屋代等の差額徴収を多く、たとえば大部分それでやっておるというようなところは、できるだけ是正さしていくように指導していきたい、こういうように思うわけでございます。
  122. 岡本隆一

    ○岡本委員 私、きょうは質問させていただく予定でおりましたが、私の聞きたいことを河野君並びに滝井君から大体聞いていただきましたので、少し残っている問題を関連の形で聞かせていただきたいと思います。  ちょうどいまお話が出ておりますが、いわゆる公的医療機関あり方についての私の批判というものは、私自身今日まで医療人として立ってまいりまして、胸のおさまらない点がある。そういう点を前回の委員会で、あらかじめきょうは個人の立場に立って言いたいことを言わせてもらうということを申し上げてやったのでありますが、いまお話の出ております公的医療機関差額徴収の問題は、たとえば先日私が秘書を入院させたある大学の病院は、部屋代を取っているのではないのです。私どもは、部屋代を個室専用で取っておる場合には、それが幾ら高くてもそれは認められると思っております。しかしながら、三人、四人の共同の部屋に、いわゆる総室に入っておりながら、しかも一日八百円の部屋代を取られておる、こういうふうなことは、私ども保険医療については許されないことだと思うのです。そんなことがいつから許されるようになったのか、それがお答えを願いたい第一点、また同時に、健康保険法の第四十三条ノ八の項に、保険医療機関が被保険者から徴収できる金額はどういうものだという規定がございますが、そういうことをしてもそれに抵触しないのかどうかという点、この二点についてまず保険局長からお伺いしたいと思います。
  123. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほど来差額徴収の問題がいろいろお話に出ておるわけでございますが、議論の前提として、医療行為そのものにかかる差額徴収は、これを認めないということは終始一貫しております。したがって、もしこういう点においてそれに違反しているようなものがあるとすれば、これはもう今日において直ちに具体的に処置をするということでございます。先生もよく御承知のとおり、そういうようなことをせざるを得ないようにさせたくないからこそ、私どもは制限診療といわれている問題について、つとめてそういう感じを担当する医師が持たないで済むようにという方向で、かなり思い切った措置を現在進めているわけでございます。ここで御議論になっている問題は、もっぱら部屋代の差額といわれる問題なんでございますが、これは一昨日も私ども医療課長から申し上げましたように、これは現在公認しているのでございます。先生がおあげになったような例について申し上げますと、その病院はおそらく基礎的な病室としては三人ではなくて、八人なりあるいは六人の病室を持っているのであります。そういう病室のほかに三人という病室があり、あるいは一人という病室がある。したがって三人になった場合には若干差額が払われる。一人になるともっと払われる。これはもう間違いないと思います。ただ、先ほど来お話しになっているように、およそ公的医療機関といいながらその大部分がという点が、何としても私ども先ほどからお聞きしておって非常に自責の念にかられるわけでございまして、この点は十分厳重に取り締まってまいりたいと思います。ただ、この医療に関する問題は単に取り締まるというだけで解決しない場合が多うございますので、条件を与えつつこれをいい方向に持っていく、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  124. 岡本隆一

    ○岡本委員 先日、十二月の十八日、委員会で長谷川さんの質問に対してあなたが答弁しておられます。その長谷川さんのあげておられる数字は、いま私が指摘いたしました病院は差額ベットが八二%という数字をあげておられます。つまりわずか一八%だけがあなたの言われるところの基礎的なベッドです。その他の八二%のベッドというものは差額を徴収しておるということです。それからさらに日大付属病院に至っては九九%という数字をあげておられる。九九%が差額ベッドだとすれば、一%だけがいわゆる基礎的なベッドである。しかしまあそれはこまの基礎なら一%でもいいかもしらぬが、しかしながら、公的医療機関の基礎的なものが針の先のようなものではまさにこれはさか立ちです。こういうふうなさか立ちした公的医療機関というものが許されていいのかどうか。しかも厚生省が今日までその実態を知らぬとはおっしゃれないと思うのです。知って今日まで何年かこういうふうな事態を認めたままですよ。しかも健康保険のいわゆる保険医療機関として認めておられる。かりに私的医療機関の私たちがこういうふうなことをやっておって、かりに患者から投書でもあって保険局から視察を受けたとき、はたしてそれが、保険医療機関として認められるかどうか。もし一%で、それでもって保険医療機関として認め得るとあなたがおっしゃるなら、私の病院も明日からこのようにいたします。私は今日まで医人としてまじめに生きてまいりました。そのかわりずいぶん苦しい思いもしてまいりました。しかしながら私はやっぱり医療担当者として、自分が医療に身を投じた限りは、どのようなことでもやっぱりまじめにやっていかなきゃならぬという気持ちを持って、医療事業を天職としてまいっております。しかしながら、私自身はいいとしても、私の従業員がかわいそうです。私の医療事業に協力してくれている人たちに十分な給与が与えられない。しかもわれわれと一緒に行動をともにしてくれているこの従業員がかわいそうだ。私自身の事業よりも、私どもの従業員にもう少し豊かな生活をさせてやりたい。もう少し人並みな生活をさせてやりたい。それが医療費を値上げしてもらいたいという私たちの大きな願望の一つなんです。こういうふうな差額徴収をやりながら堂々と保険医療機関としてやっていけるのなら、私だってこういうことをやってもいいと思う。私たちの従業員のためにやりたいと思います。しかしながら、そういうことは許されない。健康保険法の精神はそんなものでない。国民保険精神はそんなものでない。やはりできるだけ多くの人に、できるだけ医療費の心配なしに診療を奉仕するのが医療機関の任務であり、責務である。こういう観点に立って私は今日まで運営をいたしてまいっておる。しかるに、こういうふうな数字を現実に見まして——私はこの数字を見て驚いたのです。しかもそのやさきに私の秘書が突如院内で発病しまして入院しました。そのときに、私は委員会へこうして出なければなりませんので、ついていってやれなかった。保険証を持たして病院へ送りました。十一日目に退院するときに、九千何百円という——盲腸炎でございますから九千何百円という請求を受けて、払ってきておる。ところが、そのベッドは四人ほど収容する部屋でございましたが、一日八百円ついておる。だから、あなたのほうは差額を徴収することを認めておる、いまあなたはこうおっしゃいますが、それならなぜ全保険医療機関に対してその通達をお出しにならないか。運営が苦しかったら幾らでも差額部屋代として取りなさい、こういう通達をどうしてお出しにならないか。そんな通達をいただいた覚えはございません。そういう通達をお出しになるなら、なった上ですべての医療機関にひとしくベッドとして二人部屋、三人部屋、四人部屋程度までは取ってよろしい、こういうことなら全医療機関が取るでしょう。そうしたら病院側からもあまり強い値上げの要求もあるいは——それは、それだけでは不十分です。しかし私的医療機関が非常な運営の困難を来たしておるというふうな今日、やはりそういうようなことは私的医療機関の中にはやっているのもあるかもしれません。しかしながら、私的医療機関のほうがむしろこういうふうな差額ベッドの方法を持っておる率は少ないと思う。そういう点について、いまの御答弁は、あまりあなたのえてかってな運営であると思いますが、その点もう一度——それでは、現在までのことはいい。今後そういうふうな総室については少し差額をやめなさいというふうに言われるか、あるいはこういう基準ならここまで取ってよろしいということをきちんとおきめになって、どういう場合に取っていいか。またどの程度まで取っていい。たとえば総室について二人部屋、三人部屋がある。そうすると三人収容する場合にはせめて百円、二百円程度にしておきなさい。二人なら二百円ずつ取りなさい。一人について五百円取っていいものなら、一室五百円、かりにその程度までやむを得ないとあなたのほうで認識されるなら、それなら二人収容する部屋では二百五十円ずつ取りなさい。三人収容するところでは百五十円か百円ずつ取りなさい。こういうふうな基準というものをおきめになって、しかもそれを全医療機関に流されるべきである。やるものはかってに取らして、目をつぶっている。良心的に黙っているものはいつまでも苦しい運営に歯を食いしばって耐えておる、こういうことでは筋が通らない。どうされますか。どちらにされますか。これは厚生大臣からひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  125. 小山進次郎

    ○小山政府委員 この問題について、公私の医療機関を区別するという考えは全然ございません。公的医療機関なるがゆえに甘くという気持ちはございません。そういうことについて知らされていなかったために結果として不公平な扱いになっていた、こういう仰せがございますが、その点については、私、公平に知れるようにいたします。それから実態としてやはりこれは程度の問題だと思います。だれが考えてみても、全体の大部分が差額ベッドだというようでは困るのでありまして、そこは今後実態をきわめた上で十分措置したいと思います。   〔吉田(重)大蔵委員長代理退席、山中大蔵委員長着席〕  それから先生が仰せの、差額を取る場合の基準をということは、これは私深入りしたくございません。千差万別でございまして、それに介入することは、やはり医療機関との関係では避けるべきだと思っております。しかし、そういう場合について公私の扱いが異なるというようなことにすることはいたさない。これは必ずそういたします。
  126. 岡本隆一

    ○岡本委員 どの程度取っていいかというような基準はきめがたいというおことばでございますけれども、これはやはり使用料にいたしましても入院料にいたしましても、それぞれのサービスに対して取るのですね。たとえば基準看護の制度がございます。基準看護は、乙表でありますと七十六円です。七十六円の入院料の割り増しを医療機関が受け取るためには、看護婦の定員その他いろいろな設備の点でなかなかきびしい取りきめがございます。私のほうでも基準看護を取りたいと思いまして——現在でも三交代でやっております。三交代でやっておりますが、今日人手難のおりから、どうしても持続的に正看護婦の数を維持していくことが困難です。だから、いまはよそから、ちょっと名前貸してくれないかというようなことで借りてきて、そしてかっこうだけつけて基準看護、こんな病院がありますよ。そういうような形で基準看護を取っている。いつ査察を受けるやらわからない。査察を受けたときに、それに適格しないというようなことで指摘を受けては、これは私自身恥ずかしい。だから、とても基準看護を持続することは困難であるという見通しで基準看護を取ることはあきらめております。  それから、従来から基準寝具は提供いたしております。しかしながら、寝具を提供しながらその寝具代を請求できないということは残念だというので、基準寝具を取ることにいたしました。そのためにはまた非常にきびしいなにがございます。とにかく自分の家で洗たくできるだけの設備がほしい。だから洗たく屋が持つような業務用の洗たく機と同じようなとてつもなく大きな洗たく機を買って、現実にまた洗たく専任の人間を入れてそして基準寝具を取っている。そして得られるところの差額というものは四十六円です。一日四十六円の割り増しの入院料を受け取るためにそれだけの努力をしなければならない。二人、三人、四人入っている部屋に対してそのように簡単に何百円取ってもいい、好きなだけ取りなさいというふうなことであるとするならば、医療機関はそんな努力しなくてもいいのです。基準寝具や基準看護という制度、それのあなたのほうで設けておられる規格のきびしさ、それから差額徴収との間には、あまりにも大きな聞きがあるではないか、私はこう思います。保険経済から出すのはごめんです、わずかでも出すのはごめんですからと、きびしいなにを設けております。しかし患者から取るのは取りほうだいに取りなさい、これがいまの御答弁のように思います。だからそういうふうな医療保険運営の姿というものは、これは国民保険精神に非常にもとるものである、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  127. 小山進次郎

    ○小山政府委員 私のことばは少し足らなかったようでございますけれども、先生がおあげになった看護とか寝具、給食、これは私ども医療の内容そのものだと考えているわけでございます。したがって、これについてはおよそ差額なるものはもう認めない、基準寝具とかいろいろ言われておりますのは、もっぱらそこで提供されるサービスの内容について言われていることでございまして、それ以外にそういうことについて患者から取るということは、もうどんな医療機関であってもさせるべきでない、またしてないはずであります。それで最後に残っているのは部屋代の問題でありまして、これはもう文字どおり部屋代という考えなのであります。したがって、八人の部屋におろうとあるいは一人の部屋におろうと、そこで与えられる医療の内容というものは同じでなくちゃならぬわけであります。でありまするから、もし一人部屋にいるほうがよりよい待遇を受けてというふうな医療の本質に関してでございますが、そういうふうになっているというようなことがあれば、これはもう一日といえども許すべからざることになるわけであります。その点はもう厳重に被保険者のために守っていく線をいささかなりともくずすべきではないということでやってきているわけであります。ただ部屋代の問題につきましては、これはもう大正十三年からずっと通牒が出てやっているわけであります。いろいろ条件の違いもあって認めなくちゃいくまいということでやってきているので、それを認めている。ただ、その結果、最近少し野方図なのが出てきて、御指摘になっているような事例があらわれているということについて、この際われわれ御注意もありましたので全般的に実態を調べまして、この点については軌道に乗せることをいたすつもりでございます。
  128. 岡本隆一

    ○岡本委員 患者に対する医療サービスは、食事とふとんまでは医療サービスに入る。それじゃ部屋は医療サービスに入らないのか。やはり天井からほこりがぽんぽん落ちてくるような部屋もあれば、あるいはまた二人、三人いるのと、一人だけでプライバシーもあれば静かに休める、これも一つのサービスです。だからそういう意味において、個室においてプライバシーが持てるし、同時にまた病気で寝ている隣で終日うんうんうなっているというような人があれば、神経質な人は眠れません。だからそういうふうな意味において、個室に対してサービスするとおっしゃるのなら、大正何年かからずっと行なわれていることですから、これはなるほどと私どもも理解いたします。だから私のほうでも個室だけは個室料というものをあなたの言われるようにいま何がしか取っている。しかしながら、二人以上複数になった場合にはもはや個室ではない。だから個室専用料というものは取るべきではない、こういうふうに理解して運営してきた。ところが、もう至るところのこういう公的医療機関で、二人個室だとか三人個室というような便利なことばが生まれてきているという現実を知って、私は、ああ医療の退廃もはなはだしい、またこんなことを見のがしておられるあなた方もどうかと思う。しかもそういうふうなゆがんだ形へ医療を追い込んでいったというところに、政府医療行政に対する怠慢があるというふうに思うのでございます。しかしながら現実にこういうふうな大きな医療機関が、そういうゆがんだ運営をしておるのを当然だ——昔はそういうことをしておらなかったのです。こういうふうな病院でも昔はやはり総室は総室、個室だけしか個室専用料を取っておらない。そういうような二人個室、三人個室というものが生まれてきたのは、ここ数年のことではないかと私は思っております。だから、ここ数年はなはだしくゆがんできたものを今後永続さしていかれるつもりなのか、あるいはどこかでピリオドを打って、これをやめさせなければいかぬというような方針をとられるのか、その辺のところをもう一ぺん聞かしてもらいたいと思います。
  129. 小山進次郎

    ○小山政府委員 入院患者を収容いたします場合に、基礎単位として何人がいいかという問題については、これは本来の医療行政の面で研究をしてもらう必要があると思います。従来、先生おっしゃるように、確かに一般的な基礎になる部屋というのは六人ぐらいの部屋で、それ以外は一人、こういうものが多かったわけでありますが、最近はいろいろサービスの種類その他によりまして、あるいは二人、三人というものが出てきておるようでございます。この面については、私ども保険の面からかれこれ言うということをすべきじゃなくて、自然の流れとして医療上どういうふうな単位にひっくくられていくのがいいかという態度で考えたい。そうして出てまいりましたものに対して、どれを基礎部分として考え、どれを付加部分として考えるかということについて、先ほど来たいへん強く御指摘をいただきましたように、ややゆるふんになっておりましたのを、この際ひとつ思いを起こしましてきちんとしていくというふうにいたします。
  130. 岡本隆一

    ○岡本委員 いま、今後方針を変えていきたいという御答弁を承りましたので、この問題はその程度にいたします。  もう一つ、この前指摘いたしました私自身の体験として、入院した聖路加の問題について——私は別に聖路加を目のかたきにするわけではないのです。ただ聖路加へ入院したときの苦い体験と、また聖路加の院長が日本病院協会の会長であり、医療保険行政の中で非常に大きな役割りを果たしておるという点で、私は何とも割り切れない気持ちを持っておる。というのは、私はこの前の委員会でも申しましたが、入院したときに、もちろん個室へ入っても社会保険は通用するものといろ気持ちで保険証を出した。ところが保険ベッドに入る人以外はこれは通用いたしませんということで、保険証を突っ返された。そして話に聞きますと、大体ここにもございますが、八一%が差額ベッド、保険ベッドは二〇%よりないわけです。それ以外は全部自費診、個室に入った者は全部被保険者たる資格を放棄しなければならぬということになっておる。こういうことが健康保険法のたてまえから許されるのか許されないのか。それからまず……。
  131. 小山進次郎

    ○小山政府委員 この問題については、一昨日特に御指摘がありましたので調べましたところ、現在そういう事実はございません。先生のお話を承ると、五、六年前のことだそうで、どうもいろいろ聞いてみても、まだよくわからないという状況でございますが、いまはそういうことは一切やっておりません。
  132. 岡本隆一

    ○岡本委員 いまはやっておらない。それじゃいつまでやっておったのです。
  133. 小山進次郎

    ○小山政府委員 向こうのあれは、そういうことはやっておりません、こういうことなんでございます。
  134. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういう御答弁でありますと、私がうそついたことになりますから、聖路加で私のカルテを見てください。少なくとも一名にやろうと十名にやろうと、保険医療機関が出された被保険者証を突っ返したということは、そういう義務を怠ったという点では同じです、ただ罪の大小ということはあってもね。しかしながら、私の知っている範囲においては、私の入院した当時はそれが広範に行なわれていた。むしろ聖路加の性格がそういうものだから、頭からその覚悟で入院している人が相当あったでしょう。向こうは保険ベッド以外は保険を扱わないのだ。だから入った人が初めから保険証を出さないのかもしれません。そういう運営を頭から知っておる。私のようないなか者が何も知らずにめくらヘビにおじずで、保険証を出して恥をかいたのかもしれません。しかしながら、そういうふうな運営というものはあるべきじゃない。あなたは、聞いてみたけれどもそんなことないというようなことなら、向こうのカルテを全部一ぺん洗ってみてください。そうしてそういうことをほんとうにやっているかやってないか、あなたのほうは視察をなさるべきだと思うのです。そういうふうな御答弁で、その当時堂々と行なわれていたことが、いまは行なわれておりません、向こうに電話一本で聞かれて、それでああそうでございますか——私自身は体験者なんですよ。体験者がはっきり、しかも身分をあかして言っている。しかし私は今日まで言わなかったのです。内心聖路加の院長が病院協会の会長であり、そうして保険行政の中で大きな役割りを果たしておられる、そういうことを知りながらも、私は今日までは言わなかった。しかしながらこの医療問題の税の公平という問題になってくると、ああいうふうな運営をやっておるのに、医療機関公益法人というようなことで全く税金がかかっておらない。しかもわれわれのように、まじめな運営をやっている者はきちっと税法どおりの課税をされる。非常に大きなハンディキャップを受けながら、しかも従業員に十分な待遇もできないで、歯を食いしばって医療機関運営をやっていかねばならない。こんなふうなことがあっていいものか、こういうふうなことで私は本日申し上げているわけです。だからいまの御答弁では私は承服できませんから、これはまたこの次の機会に私自身のカルテをなにしてください。そのときのなにでは、保険証を医療機関に提出しない場合には、入院料が高いだけでなしに、レントゲンの撮影から一切の検査料まですぱっと変わるのです。保険料金じゃないのです。倍以上になるのです。そういうふうな運営が行なわれておるわけです。だから滝井君の言ったとおり、四十条によるところの公的医療機関として免税措置が受けられるというふうな——医療機関の自費患者に対するところの診療報酬も大体健康保険の診療報酬が基準とされなければならぬということは、先ほどからも話が出ております。ところがそうじゃないのです。自費患者に対してはもうぽんとはね上がったところの医療費を請求しておる。そういうふうな医療機関に対して免税措置がとられておるところにわれわれとしては納得しがたいものがあるということを申し上げておるわけであります。だから俯仰天地に恥じずですから、私の名前がここに出てもかまわない。こういうことが国会で問題になったということははっきりさせていただいていいと思います。その点ひとつお願いしたいと思います。  それでは私は最後に、きょうは厚生大臣と大蔵大臣と御両者に出ていただいて、保険医療機関運営の問題あるいは私自身日ごろ考えていることについて、いろいろ御意見を承ろうと思いましたけれども、大蔵大臣は御出席にならない。厚生大臣は尋ねてもうんともすんともお答えいただけないということでございます。しかしまじめな医療担当者はうんとあるので、医療担当者のほとんどは私のような医療行政の中にまじめに生きているものだということ、しかもそれは雨の日も風の日もやはり黙々として第一線で働いておる。しかも一番大きな特徴は、公的医療機関との競合の中に生きていかなければならない。公的医療機関は、一方では施設は全部公費でまかなわれ、そしてあと税金は全然かからない。非常に運営が楽です。私的医療機関はみずからのなにでもって、場合によれば負債を負い、設備をし、それでもって租税を払いながらそれの償却をしていく。非常にハンディキャップが大きい、その大きなハンディキャップをかかえながら、重荷を背負いながら、しかも第一線で公的医療機関が働かない深夜であれ休日であれ、そんなときに黙々としてみんな働いておるのです。だからそういう私的医療機関というものの占めている大きな役割りというものを十分認識していただきまして、今後の医療行政の中に大いに目を開いていただきたい。ことに公的医療機関すら、いま立っていかないといって悲鳴を上げている。私的医療機関はさらに苦しい。その私的医療機関の中にたくさんの医療従業員が働いておるのです。そういう人たちのためにももう少し目を開いていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいまの医務局長答弁、納得しません。そこでこれはいろいろ問題がありますから、少し具体的に詰めておきますけれども、基礎ベッドが一体全体の中の何割までは適正であると認めるかということ、医療上常識的な判断というものがなければならぬと思うのです。そういう形の基準を一体いつまでに準備できるかどうか、そうしてそれが二割は例外を認めて、あと八割は基礎ベッドとすべきである。その二割の中身は、今度はそれを小刻みにずっととるべきではないので、私は少なくとも一段か二段程度にこの段階を狭めるということ、そういうことにして、まずルールをつくるということが私は先決だと思いますから、これを全部排除しろということができないということであるならば、少なくとも公正な判断はどこまでであるというあり方を、厚生省としては内部的に医務局、保険局で検討して、その基準がいつまでに出せるか、それをちょっとまず先にお答え願いたい。
  136. 小山進次郎

    ○小山政府委員 前回申し上げましたように、いま実態を調べ始めております。したがって実態がつかめます時期がある際に今国会中には必ず実態を明らかにします、こういうことを申し上げたわけでありますが、ことしのことはそういう実態の調査と並行しながらある程度考えを整理していくということはわりあいにしやすい問題でございますので、これはあまり厳密にという意味でなく、おおむねととっていただきたいと思うのでありますが、実態について御報告申し上げるときは、ほぼそれについてとるべき措置についても大体こういうふうにいたしたいと思いますとか、あるいはもう少しこういう方向で詰めたいと思いますからしばらくお待ちをいただきたいとか、いずれにしてもものごとがきちんと進んでいるということがわかっていただけるような方法で御報告いたします。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 それではその基準が、大体この国会は五月十七日で終わりますから、おおむね五月十七日までに出るとするならば、私はさっき一年なんと言いましたけれども、一年要らないわけですよね。半年あれば十分ですよ。だからそうすればひとつ秋には臨時国会もあろうから、半年以内にいまの問題は基準が出たら、その基準に基づいた処理をしていただいて、その処理ができない部分、依然としてその基準からはみ出しておるものがある部分については、そのはみ出したもの以外、いまの基礎部分はいいけれども、そこから根っこ、上全部は課税するというところまで、これははっきりさせておかないと、この問題はなかなか確実に詰まらないと思いますので、まずその点を一点と、それから先ほどの、私いまの聖路加の調査の件、はなはだ適切を欠いている。そこでこの調査については、これは厚生省はやっぱりなかなかいろいろ関係があってどこまで調査ができるかわからないから、一ぺん国税庁で聖路加病院についてはそういう収入、支出関係等を調査をするということを、ひとつこれは所管外だからきちっと処理ができると思いますので、さっき滝井さんは社労で調査とありますが……。大蔵政務次官、実はさっき聖路加病院の話が出まして、岡本さんはこの間お話のような状態だったということなんです。ところが保険局長のいまの答弁を聞きますと、そういうことをしたことはありません、こういうことらしいのです、どうも保険局、厚生省はいういろそういう関係があって、なかなかやりにくい点もあるかもしれないので、これらの事態を明らかにするためにひとつ収入その他の諸関係を国税庁に調査をさせてもらいたい、こう思いますので、ひとつ政務次官のほうで善処をしていただきたい。
  138. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 お答えいたします。  聖路加病院の実態は財団法人でございまして、収益事業を営むものとして課税をいたしておるのが実態だそうでございます。そうしてその事業報告によりますと欠損ということはあるらしいのですが、ただいまお話しのように国税庁から調査することは可能でございますから……。その結果の報告によりますと、欠損の報告が出ておる、こういうことでございます。
  139. 山中貞則

    山中委員長 いまの点は重大問題ですから、国税庁において、その赤字であるかどうかはこれは別な問題です、そのような事態公益法人で行なわれておるかどうかの事態を過去五年くらいにさかのぼって調べてくることを委員長からも要求いたしておきます。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 聖路加病院公益法人非課税じゃないですか。いままで議論するときには、社会福祉法人非課税ということで議論をしてきたのです。厚生省もいままではアメリカの資本、その他もいろいろ入っておるから、あまり滝井さんつついてもらっては困るからということで非課税のはずだったのですが、いま税金を課しておるということは——しかし欠損だから課していない、そんなはずはないですよ。そうするといままでの答弁とは食い違う。
  141. 泉美之松

    ○泉政府委員 聖路加病院民法三十四条の規定により設立されました財団法人でございますが、先ほど申し上げましたように、民法三十四条法人につきましては健康保険法、日雇労働者健康保険法、厚生年金保険法または船員保険法のそれぞれの規定による施設の経営につき政府の委託を受けたものという限定があって、そういうものは収益事業でないということになっておるわけでございます。したがって、それ以外のものは収益事業ということになるわけでございます。ところが調査してみますと、聖路加病院はこれらの健康保険法、日雇労働者健康保険法、厚生年金保険法または船員保険法のそれぞれの規定による施設の経営につき政府の委託を受けておりません。したがって収益事業として課税するたてまえをとっておるのでございます。ただ調査してみますと、最近三年間は欠損の申告を出しておるということでございます。したがいましてその実態につきまして十分調査いたしたい、かようなことでございます。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、厚生省の医務局、これは公益法人として税がかからぬという部面に入れておるはずですよ。いままでは。いまのは収益事業で税がかかるのだ、かかるけれども、これは欠損だということと、公益法人だから税がかからないのだということと、これはだいぶ違うのですよ。これは大違いです。いままで厚生省はそういう態度をとってきたでしょう。大蔵省も、塩崎君のときにぼくは議論をしたのですが、聖路加病院非課税です、これは公益法人で対象にならないという言明が当時あった。私覚えているわけです。だからこれは厚生省のいままでの見解と——大蔵省もいまのような見解を言ったのは初めてです。初めて聞きました。いままでは聖路加病院公益法人だから非課税だということを言ってきた。税金をかけるのだけれども、赤字だからかけないのですという言い方をしてないのです。
  143. 泉美之松

    ○泉政府委員 聖路加病院は京橋税務署の所管法人になっておりまして、そうして昨年の三月までの事業年度につきまして、先ほど申し上げましたように三事業年度について欠損申告が出ているわけでございます。滝井委員がかつて御指摘になりました当時には、その実態がわからないまま公益法人として非課税といたしておったかもしれませんが、その後聖路加病院につきまして実態を調査して、収益事業を営んでおるものと認定して、申告書を出さすことにいたしておりますが、その申告書は欠損の申告が出ておるということでございます。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、医務局の見解はどうですか。これはいままでは公益法人として非課税として厚生省は一貫して取り扱ってきたはずです。
  145. 大崎康

    大崎政府委員 聖路加病院は、ただいま主税局のほうからお話がございましたように、財団法人でございます。税金の関係につきましては、財団法人はすべて非課税になっているわけではございませんで、大蔵省の施行規則及び告示等の関係によって課税非課税がきまることになっているわけでございます。それで聖路加病院につきましては、ただいま主税局からお話があったような課税ということになっていると考えております。  なおこの点につきましては、もう一度調査をいたしてみたいと思います。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたの前任者の時代には、これは非課税のものとして取り扱ってきていますよ。私きょう初耳なのです。過去三カ年間の申告が欠損である、だから税金をかけぬようにいたしております。本来はかけるものだというならば、聖路加病院はずいぶん昔から税金を払っておらなければならぬはずなのです。その場合には、いまあなたが逃げ道をつくっておったように、そのときは見落としていたかもしれません。それならさかのぼって税金を取らなければいかぬ。これは当然のことですからね。ところがそうではないですよ。だからあやまちはあやまちで、われわれはこれ以上追及しませんから、いままでは非課税にしておったのだということでもいいですよ。先の問題を言っているのですからね。
  147. 山中貞則

    山中委員長 それはおかしいですよ。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、白状してもらわぬといかぬのだから……。それはもう少し調査してもらうことにしましょう。そうしてひとつはっきりさせてもらいたい。  それで主税局長さん、保険局長答弁の中に非常に重要な点があるわけです。それは差額徴収、特に部屋代の差額徴収については、大正十三年でしたか、それ以来公認されているのです、こういうことです。しかし、その内容については立ち入るわけにはまいりませんという答弁であった。堀君のほうから、基準をつくれということがあったけれども、内容については立ち入ることができません。こうなりますと、いわゆる特一、特二の——日赤あたりでもあるのです。これは一万円、二万円の前もっての身のしろ金、保証金をとられるわけです。そうしますと、そういう特一、特二に入る人が一日に三千円も五千円もかかる部屋に入っておって、今度保険証を出してこれでしてくれというようなことは言えた柄じゃないですよ。またそういうところへ入る人は保険証を出さない、政界の領袖その他が入るのだから。委員長も入っておってとられたという話ですし、やられるわけです。そうしますと、これはそういう介入をしないところで差額徴収を部屋代については公認をされておるということは、連鎖的に治療についても非常に高度の治療が行なわれるわけですよ。これは最近は高度成長で、お金を持っておる人は、御存じのとおりアパートでも豪壮なアパートが建つわけでしょう、何千万円というアパート、こういうのもあるのですから、したがって、入院料くらいは何でもないわけですよ。それを、健康保険保険証を出して、初診料六十円とかいって、一日一万円とか五千円という部屋代を払う人が、初診料六十円を保険証で見てくれなんということは言いにくいわけですよ。だからそういう人たちは出さない。だからここでは公然と自由診療が行なわれるわけです。これが病院の重要な財源になってくるわけです。これは公益法人なり公共のゆえをもって最近はこれを野方図に許しておるわけです。最近は野方図に幾ぶんなっておるということを保険課長はお認めになっておる。こういうところについては非課税でしょう。しかもその病院を建てるときには、一体どこから金を借りてきたかというと、労働者が粒々辛苦して出しておる厚生年金、国民年金の還元融資の金を借りてくるのですよ。建てるときには、六分五厘の、二十五年の償還期限というような長い償還期限です。六分五厘で二十五年なら、ただでもらったようなものですよ。その金でデラックス病院をつくって、できた病院では差額徴収をどっと取って、多額の金を取ってやっていくのですから、これくらい公益性を欠いておるものはないですよ。これくらい自由主義の恩典を満喫しておる病院はないと思うんです。それが公的医療機関として白昼公然と横行しておる。それを国税庁では、税金をかけると言わずに、今度は中山さんたちは零細な診療報酬が二八%あるということはけしからぬ、こういう全く逆なことを言っておるけれども、今度はこれを中山さんに教えてやって、ここをひとつ取ってください。いまのように、これをやらなければ私たちは待てないです。こういうことはもう周知のことですよ。しかもあなた方は、医療法人では持ち分があるかないかというささいなことを条件にして、この法律をかぶせようとしているでしょう。一方においてはこういう大きな抜け穴をつくっておる。いわゆる大ものは忘れたころに無罪なりどころじゃないと思うんですよ。だからこういうところをまず直してからやるべきだと私は思う。だからこれは「持分」なんというけちなことを入れるべきじゃないですよ。入れずに、みんなしてやって、そうしていま言ったように持ち分について配分をとるときにちゃんと税を取ったらいいという理論になるのですよ、大きなところを忘れておるのですから。私が言うように、この法律が通ったら実施されるのだから、そういう点もうちょっと国税庁はしっかりそれを調べて——公的医療機関にいまのように差額徴収を公然とお認めになっておるのですからね。これは収益事業ですよ。これは収益事業と言わなければならぬ。私的医療機関の診療報酬の健康保険でやっておるのは税金をかける必要はない。それに税金をかけるのですから、税の均衡をとらなければならぬ、不均衡を排除しなければならぬ。社会保険医療についてはその均衡をとらなければいかぬ。社会保険医療については、公的医療機関私的医療機関も二八%でよろしい、それ以上のものについてはみな税金を取る、こういう公平の原則でぜひいってもらいたいと私は思う。そういうことをあなたはさいぜん調査しておやりになると言うから、私たちもしばらくお待ちをいたします。しかしそんなに長くは待てませんよ。この国会は五月十七日に終わるが、与党のほうは二カ月くらい延長するというから、七月かそこいらになるでしょう。だからここ三、四カ月あるのですから、抜き取り調査で、大体さいぜんの御説明のようにある程度の調査はされておって、三百一くらいの財団についてはおわかりになっておる。だから、公的医療機関厚生省の御協力を得ればすぐわかるわけです。それをお調べになって、そうしてこの国会中にひとつ態度を明らかにしてもらいたい。  それから聖路加病院等のことは、委員長等のいまの要請のありましたものも、ひとつすみやかに実態を出してもらいたい、こういうことです。
  149. 山中貞則

    山中委員長 ただいまの聖路加病院課税の件につきまして、主税局長答弁にあいまいな点がありました点は、後刻大蔵委員会において、主管の委員会でありますから調査の結果、社会労働委員会のほうに御連絡をいたします。  委員各位におかれましては、おそくまで御苦労さまでした。  これにて連合審査会は終了いたします。    午後六時十一分散会