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田中国務大臣 日銀総裁が西南太平洋でございますか、ニュージーランドへ出かけられる前に、ごあいさつに伺いたいということでありましたから、お待ちいたしましょう。いままで日銀総裁と私が会うときにはどこかへ隠れて会ったり、つまらないことばかりしておる。こんなことはいいことではない。場合によっては私が日銀に伺ってもいいし、日銀総裁が場合によってはおいでになっても一向差しつかえない。それは職権を侵すものじゃないかということを
考えているところにものの間違いがある。経済とか財政とか
金融という問題は、国民はその時点、その時点で命をかけてやっているから、財政
金融の
責任者というものは
自分の
立場だけ
考えて、それが昔からの伝統ですなどということは顧慮する必要はない。新しい姿勢をとるべきだ。そういうことでありますから、ちょうどおいでになるということなら、私もお会いしたがったから、ちょうどいいから
お話ししましよう。もしおいでになるなら、こっちも次官とそれから
銀行局長を同席させますから、副総裁もひとつ一緒においでになりませんか。いなくなれば当然総裁事務代理以下総裁代理がおやりになるわけですから、そういう
意味でお会いします、伺いましょう、こういうことで当日の九時でございましたか、しかしその前日池田総理の御承知の引退声明という、非常にむずかしい事態を迎えた翌日でありますので、時間的には非常によかったと思います。そういう
意味で、国民に対してもこの時期に際して財政
金融政策の姿勢を明らかにして再確認する必要がある、こういうことでございました。特にこういう事態のときに日銀総裁が二週間も出られるということ自体が、政治
責任を追及されることにもなるかもわからぬ、しかしそうでなくて、お互いに十分情勢を判断し、留守中に際しては十分の意思の疎通をはかり、合意に達していれば、あなたが二週間おられなくても一向差しつかえない。こういうことが了解されれば私はプラスになるということを前提にして会談をしたわけでございます。ですから儀礼的なものよりも、ある
程度の問題を前提として討議をいたしたわけであります。それは新しいやり方といってもいいと思います。それに対しては、一年間の引き締めを行なっておる、しかしその引き締めのときと変わっておらないのは、アメリカの利子平衡税の問題だけである。あとは国際収支が先行き不安であるという問題に対しては、経常収支は
バランスをする、貿易収支も
バランスをする、一−三月の輸入期といえ
ども経常収支は
バランスする可能性もある。そうすると去年あたり証券市場が落ちつくとか、それから
金融の引き締めということが解除できるというような事態は、こうなればやります。しかも私の再任七月の十八日の一週間ばかり前、日銀総裁は、もう今日の段階において必ずしも引き締めを行なう必要はないとさえも言われたときの
状態から比べてみると、非常に
数字がよくなっている。にもかかわらずこのごろはいつまででも引き締めるようなことを言っていることは、何か国民に対してめどを失わせるような気がいたします。その
意味で情勢判断をしたい、その
意味でまず総体的に見まして
金融調整はこれをゆるめる段階ではないという表現は一応いたしました。もう一ぺん再確認をしましょう。ただ
金融調整とか
金融解除というものが、過去のように一斉に公定歩合の引き上げを中心にして、ちょうどオリンピックのスタートのようにピストルを撃ってさあっと幕を締める、それを解除するときも、号令が出るような
状態でさあっと一斉に解除する、今度はそんなものにはならぬと思います。
ですからこれは金利の一つを
考えてみても、アメリカが利子平衡税は絶対に一年度の時限のものですと言っておったものが、今日ではこれを恒久法とせざるを得ないかもわからないということさえも平気で言っておるのです。同時にまたイギリスはあのような
状態を私たちもまあ懸念しておったわけです。IMFの十億ドル引き出し、スタンドバイの取りくずしを中心として各種のあのようなものは、IMF総会の前後から私たちも
検討しておったわけですから、そういう
状態を全部見てまいりますと、必ずしもそういうやり方ではいかぬと思います。特に経済が正常な段階に入っておるんだ、これよりも引き締めるということは可能ではないような気がします。同時に現在名目一〇%というものが、これをはずして一三%、一五%にできるような
状態にもない。案外われわれが
考えておった実質七、八%、名目九%ないし一〇%という理想の姿に、もうすでに現在入っておるんじゃないか。にもかかわらず一部には不況感がある。一部には倒産相次いでおる。これには月例経済
報告とか、日銀と
大蔵省の毎週の打ち合わせとか、そういう
数字に出てこないものがあるのじゃないか。それは信用流通の何分の一かは融通手形だという
実態が糾明されておらぬ。事実そうであるなら手形法の改正ということだけではなく、現実的にそれを打ち切るにはどうするのか。
中小企業に対して八百億、民間を全部入れて三千億とか五千億とかいうことで
数字は非常にりっぱですが、どうも
金融梗塞
状態ということを
考えますと、このように幹部にだけ金を入れるということが、はたしてこれでいいのか。かつて重電とか造船とか鉄鋼とか肥料とか、上から流すことによってようやく年末わずか十日間、十五日間の短い間に、
金融梗塞を解いて倒産を防いだこともあるが、そういう
実態を考慮する必要はないか。いろいろな問題があるので、日銀の窓口とか財務局の窓口とか、それから
金融機関だけの統計とか、そういうものにはたよれないもっとむずかしい複雑な経済、財政、
金融上の問題があるようでありますので、ひとつ第一の
状態として、
金融調整をはずす段階ではありませんが、少なくとも窓口規制というような問題、それからオペレーション制度、これらの問題については偏在しておる金を正常にする。金の流れというものがどうも正常でない、不正常だ。こういうことによっていろいろな障害が起きておるとしたならば、これを正常にするということ。いわゆるひずみの解消も調整過程において
相当大きくやるのだ。
ですからその
意味で証券に対して金を出すということ自体も、日銀も非常にいやがっておられるようですが、いわゆる日証金を通じてとか、いろいろな問題に対していやがっておられるようですが、議論ではなくて浮動株を集める。増資はやめる。しかし十一月の一日に配当支払いを行なうのですから、この金を日銀がお出しになるのですから、日銀がお出しにならなければ、手持ち証券、いわゆる相持ち証券をやはり市場にいかなる方法か何かで出して金をつくらなければならぬということにもなりますし、それから十二月から一−三月に対する手形のサイトが逆に二ヵ月延びるということになれば、これは下請に対してたいへんなことになります。そういう問題を
実態的に全部
調査になっておるのですか。銀行局との間に全部企業別にそういう事実の
数字をつかんでおりますか。おらないとしたなら、やはり少なくともそういうものに対しても十分な配慮をして、増資に対してのつなぎ資金を出すということだけでなくして、これから十月の配当、十一月の換金売り、ボーナス時期の換金売り、こういうものを全部
考えて証券対策イコール合わせて年末
金融、期末
金融の政策を立ててもらわないと非常にたいへんだと思います。財政
金融はそういうふうな一体的な関係でお互いに
考えたいと思いますが、どうですか、こういう
お話をいたしました。いろいろ議論した結果、確かに新しい
考え方、そういう
状態であろうと思います。だから全部引き締めたり全部解除したりというような
考えが正しいものだとは
考えておりませんし、われわれ自体も、クレジットラインを変更しなくても弾力的運用でやりますという姿勢はできるだけかたい姿勢をとっても、現実的には弾力的運用、その過程においてひずみの解消をはからなければならないということに対しては全く意見は違いません。こういう問題がずっとございまして、お出になっても一向差しつかえございませんでしょう。日銀総裁及び副総裁、
銀行局長は十分連絡をとりながらこのむずかしい事態に処して、国民の中に一人でも犠牲者を少なくするように、犠牲者を出さないというくらいのつもりで財政
金融政策をやるようにということで合意に達したということであります。でありますから、
比較的にいままでは合意に達してもしゃべらないというのを——私のほうではたいしてしゃべらなかったのですが、日銀総裁のほうで記者会見をして、非常に前向きに
お話になったということでありまして、今度は日銀総裁と大蔵大臣との間はうまくいったのだなあというようなことが二、三入ってまいりましたから、大体そのような
状態で非常にすなおな気持ちでお互いが意思の疎通がはかられたということで、結果としては日銀、大蔵両当局の
考えに相違はないということでございます。