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1964-10-29 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月二十九日(木曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       奧野 誠亮君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       纐纈 彌三君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       濱田 幸雄君    藤枝 泉介君       毛利 松平君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野原  覺君    日野 吉夫君       平林  剛君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  委員外出席者         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    中嶋 晴雄君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      秋吉 良雄君         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局次長) 佐竹  浩君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁次長   喜田村健三君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      松本  茂君         文部事務官         (管理局教育施         設部助成課長) 岩田 俊一君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    田中  勉君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      田中 鎭雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十月七日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  佐伯宗義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐伯宗義辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員野原覺辞任につき、その補欠として村山  喜一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員村山喜一辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  造幣事業に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議開きます。  本委員会におきましては、先般各地に委員派遣し、税制及び金融等実情調査いたしたのでありますが、その報告書が各派遣委員より提出されております。これを本日の会議録に参照として掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。      ————◇—————
  4. 山中貞則

    山中委員長 税制金融及び造幣事業に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。平林剛君。
  5. 平林剛

    平林委員 私は、ただいま委員派遣調査結果が議事録に掲載をされましたが、この件につきまして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。私どもは先般北海道調査派遣をされまして、陳情を含めてその実情調査してまいりました。その際特に国税庁職員赴任旅費日額旅費宿舎の問題につきまして検討する必要を認めましたので、政府の御見解を伺いたいと思うのであります。国税庁職員配置転換がその特殊事情によりまして他の官庁に比較をして量的に多く、その転勤率各省の三倍をこえておる実情からいたしまして、その赴任旅費実態調査してみましたところ、たいへんその支給された赴任旅費使用実額との間に大きな開きがあるということがわかったのであります。一例を申し上げますと、Aの職員配置転換を命ぜられまして新たに赴任をする旅費が、鉄道運賃や着後の手当、扶養親族移転料その他を含めまして三万一千三百六十円の官費支給に対しまして、実際には荷づくり作業運搬費用その他を含めて五万六百六十円、その差は一万九千三百円という赤字を出しておるのであります。これはBの職員、Cの職員、Dの職員、いずれの職員実例を見ましてもその赤字幅はおおよそ三〇%から五〇%の開きが出ておるのであります。これは私国税職員配置転換の量の多いこと並びにその職務の必要から避けることのできない実情等考えましても、あまりにも大きな赤字が出過ぎているのではないかという感じをいたしたのであります。さっそくその実情を、それならば全国各国税局においてはどうであるかという点を検討してみたいのでありますけれども、現在赴任旅費に対する赤字の割合は、ただいま私が示しました北海道実例よりは少なくなっておりますけれども、しかし相当程度赤字が出ておるということがわかったのであります。赤字の率というのは、これは政府資料国税庁資料によりましても、いずれも平坪の数字でございますから、個人別に見ますと相当の額にのぼる人もあるということは容易に想像できるのでありまして、職員にとりましては相当の犠牲をしいられておる結果になるのではないか。このことは政府の全般的な施策から見ますとささいなことかもしれませんけれども業務の都合で配転を命ぜられる公務員個人にとりましては重大な生活問題の脅威になるわけでありまして、私どもといたしましては十分これに配慮する必要があるということを考えたのでございます。これは私個人見解ではなくて、一緒に調査派遣をされた同僚議員ひとしく認めるところでございます。この際、政府見解を承っておきたいと思うのであります。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 当庁に入っております報告によりますと、いまお説のようなものが出ておりますが、お説のとおり重要なことだと考えております。いま一応こちらのほうで確実なところを調査の上、報告どおりであるとすればしかるべく処置をとりたい、かように考えております。
  7. 喜田村健三

    喜田説明員 赴任旅費赤字の問題につきまして国政調査で御調査があったということで、国税庁といたしましても実態がどのようになっているかということを至急調べてみました。まだその正確な中身まで十分検討しておりませんが、ある程度赤字が出ている。こういうことの集計が出てまいりまして、したがいまして、ただいま政務次官が答弁いたしましたように、その赤字内容についてもう少し十分検討する余地があるのでございますが、その点につきまして十分検討いたしました上、その結果を見まして定額改定ということを主計局とも十分折衝する、こういう方針でただいま検討中でございます。
  8. 平林剛

    平林委員 北海道における国税局赴任旅費実態調査表によりますと、先ほど私が指摘をいたしましたように、官費支給に対してその使用実額というのはいずれも三〇%ないし五〇%を超過しておる。ところが国税局のこれは東京をはじめ北海道も含めまして、特に都市に集中して配転をされる職員実態調査表が私の手元に届きました。これによりますと、北海道の場合はおもに高い人のものを代表的に選んで出した数字ではないか。国税局で調べた四百八十七名を集計した資料でございますが、これによると非常に低いのだ、大体一五%くらいになるのではないかというような反論的な資料が私の手元に届きました。しかし私はその説明納得しがたいのであります。なぜ納得しがたいかというと、北海道を例にとりましても、住居移転を伴う配置転換の場合はその九〇%のものが移転経費現行赴任旅費に対して平均三〇ないし五〇%の赤字を生じておるということでありまして、住居移転を伴う配置がえの場合九〇%までその状態であるということは、国税局が私に反論として示した資料はそこに違いが出てきているわけであります。代表的な四、五名をとってあらわしたのだからそういう大きな赤字になったのではないかということは、これは決して実情になっていないのではないか、こう考えるのであります。その点から見て、国税局のほうで急遽お調べになった年に集中して配置がえとなった者の四百八十七名の調査結果でも一五ないし二〇%の違いでございますから、しかもこれは平均数字であるということから考えますと、やはり相当考慮しなければならぬ点が含まれておると考えるのであります。いま幸い大蔵省主計官がお見えになっておりますから、私は主計官お尋ねをいたしたいと思うのであります。現在の赴任旅費単価はいつきめられたか、また私が指摘をいたしました点についてどうお考えになっておるかということをお答え願いたいと思う。
  9. 秋吉良雄

    秋吉説明員 御指摘のように現在の赴任旅費単価改定につきましては、昭和二十七年以来据え置かれておりましたものにつきまして、昭和三十七年におきまして五割の増額を見たわけでございます。その後におきましては単価改定をいたしておりません。それで私ども立場といたしましては、もちろん国税庁相当主要なウエートを占めますけれども各省立場考えていかなければならない立場にございます。今回四十年度の場合につきましても各省会計課長のほうといたしましては一応定額改定要求は現在のところございませんが、しかしながら先ほど来御指摘の点もございますし、また国税庁におきましても実態等検討もいたすようになっておるようでございます。その結果を見まして全体のバランス、それから私ども今後実態をよく調べましてしかるべく検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  10. 平林剛

    平林委員 各省各庁の比較において検討しなければならぬということはもっともなことでありますけれども、いずれにしても昭和三十七年以降において物価の上昇は引き続いて赤字要因となっておることは間違いないと思うのであります。また梱包、人夫その他の経費も増大しておると考えるのは私は常識的なことだと考えるのでありまして、このことは十分考慮せねばならぬ。このことを考慮していま各省との比較ということでこれはしばらくがまんをすべきだという理由にはならぬと思うのでございますが、いかがでしょうか、その点は。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席
  11. 秋吉良雄

    秋吉説明員 この問題に相当中身につきましての検討が必要かと思います。それぞれの費目においてどの点がどのように過不足があるかというような内容の点を十分見きわめた上でなければいけないと思いますが、いずれにいたしましてもこの問題は相当綿密な実態調査をやる必要があると思います。過去の場合も昭和三十七年の改定につきましても御納得のいくような相当綿密な調査をした結果御改定を願ったというような経緯もございますから、今後私どもといたしましては御納得のいくような十分な調査をいたしまして、もし必要があればしかるべく検討いたしてまいりたい、このように考えております。
  12. 平林剛

    平林委員 その赴任旅費の実際の使用実態でございますけれども、私は今日のように官費支給される赴任旅費使用実績が大きく離れて、これが三〇%なり五〇%の赤字になっておりますとどういうことが予測されるかということをお考えいただきたいと思うのであります。たとえば非常に経費がかかりますから、転勤のときにはひとつ関係先からせんべつをいただこうとか、あるいは出先のいろいろな機関を利用してそれによってまかなおうとかいうような考えがもし起こるといたしましたら、綱紀の粛正なんというものは一ぺんに飛んでしまいます。私はそういう実情がないようにするためにはやはり赴任旅費実態に即してこれを支払うべきである、しかも国税庁のような利害関係の多い職員に対しては一段とそのくふうが必要であるということを感じておるわけであります。でありますからよくひとつあなたのほうでも実態を調べて——これは私とも実情調査派遣された者の一致した見解として検討要求しておるわけでございますから、しかるべき結論を出していただきたいということを希望いたします。  次に日額旅費の問題についてお尋ねをいたします。これも同様な調査結果の中から発見をしたのでありますが、国税局職員日額旅費につきましてもその実情は一驚に値するという実情であります。私、この問題についてあらかじめ国税局から説明を求めましたけれども税務職員日常徴税業務を行なう稼働率というのは七〇から八〇%ある。つまり全職員の大半が毎日のように徴税業務のために外に出なければならぬ。そのときにバス代はかかろうし、電車代もかかろうし、弁当代もかかるだろう、こうしたことに対して日額旅費支給をされておるということを聞きました。ところが日常職務を行なうにあたって八キロないし十六キロぐらいの職務範囲においてはこの日額旅費が八十円である。十六キロから二十五キロまでは百二十円である。二十五キロ以上は二百円とこうございますけれども、私はどの程度税務調査範囲あるいは業務実情ということをつまびらかにはいたしませんけれども、どうも実情から考えますとこれではあまりひど過ぎるではないかという感じを持つのであります。一体今日の交通事情の中で、あるいは食糧事情の中で職員が一日税務行政のために日帰り出張をいたしましても八十円で処理できるということは考えられない。そういうことを考えますと、これについても政府検討する必要があるのでないかということを感ずるのでありますけれども、一体これはどういう基準でいままでおきめになっておるのでございましょうか。それから現状はどういうふうに把握をされておりますか。最初にひとつ国税局のほうから説明をしていただきたいと思うのであります。
  13. 喜田村健三

    喜田説明員 まず現状から申し上げますと、国税庁税務署調査旅費は、御承知のように、ただいま御指摘のように日額旅費支給されております。しかし現在税務署調査は、たとえば一ヵ所に行ってそれですぐ帰ってくるといったような出張ではなくして、納税者のほうに行きまして調べる。そうした場合に取引先調査をやらなければならない。こうした場合にはまたすぐ別のバスに乗って次の納税者のお宅へ行く。あるいは徴税の場合にいたしましても、転々と何ヵ所かを回って歩く、こういうような出張でございます。したがいまして、現在八十円、百二十円といったような日額旅費になっておりますが、これではどうも足りない場合が出てくるのじゃないか。こういうことで昨年来この改定をやれないかということで、現在も引き続き主計局折衝中でございます。  それからただいま御指摘の単に日帰り出張だけでなくして宿泊するという場合にも、たとえば現在千円というような旅費になっておりますが、とてもそれでは宿屋へ行って泊ることもできないというようなことのために、またそこで先ほどのような変なことで安く利用するというようなことがもし起こってはぐあいが悪い、こういうことで、この宿泊した場合の日額旅費というものもぜひ改定してくれ、こういうことで主計局に現在要求中でございます。まあたとえば実費が、車賃が非常にかかったというような場合には、また現在の規程によりましてその実費はまかなえるというような余地がございますので、実費の面が赤で出るというようなことはないと思いますが、しかし現在の単価実情からかなり低くなり過ぎておるということにつきまして、一般的な形で何か直すというようなことを現在折衝中でございます。これは現在旅費規則できまっておりまして、全職員日額旅費のただいま八十円、百二十円といったようなことは、大蔵省支給規則できまっておりますので、これを改定いたしますのにはやはり主計局のほうとの折衝を要しますので、その国の規則を変えてもらう、こういうことを現在交渉中でございます。
  14. 平林剛

    平林委員 国税庁に対しましては、仏どもいつも徴税行政のやり方あるいは徴税全般について文句ばかり言う立場にありますけれども、実際に携わっておる職員実情考えますと、やはりこの点は十分配慮してやる必要があるということを考えておるわけであります。この基準も私の承知しておるところでは、昭和三十七年度の基準で、車代、食事代その他をまかなうこととして考えられておるようでありますけれども、いかがでしょうか、大蔵省の側において、これを担当しておる主計官のほうで、これをひとつ本年度は検討して、改善をすべきだというお考えでしょうか。それともどうもこういう理由でできないというような理由がございましょうか。もしこの理由があれば、ひとつ私の納得するような御説明をいただきたいと思います。
  15. 秋吉良雄

    秋吉説明員 基準等につきましては、ただいま国税庁次長からるる御説明がありましたが、これにつきましては、やはり旅費改定に伴いまして、日額旅費改定各省バランスを見まして改定しております。そこで昭和三十七年度でございますか、改定を見たわけでございますが、六十五円の単価を八十円に改定しております。  そこで内容的に申しますと、御案内のように交通費食糧費が入っておるわけでございます。そこでこれにつきましても、各省のほうからは特に定額改定要求はいまのところございませんが、ただ国税庁につきましては、いま御案内のような要求が出ております。そこでわれわれはどのように税務特殊性考えておるかという点になろうかと思いますが、これにつきましては、交通費が多くかかりたという場合には、特別加算というような考慮も払う、それから滞納処分につきましては、一般よりは二割増加するというような税務特殊性を配慮してきめております。しかし今後この問題をどう解決するかという御指摘でございますが、これはいま検討中の段階でございまして、いまここではっきり申し上げるわけにはまいりませんが、各省バランスというような問題がいろいろございまして、十分慎重に検討いたしたい、こう思っております。
  16. 平林剛

    平林委員 政策全般あるいはその他こまかいことでありましても、圧力団体のあるところは、わりあいすっきり多少無理があっても通ってしまう実例が多いのであります。しかし圧力団体のないところ、あるいはまたいま職員の場合には十分な団体交渉権も与えられておらないという現状におきましては、私どもがかわってこれは十分配慮してやる必要があるし、またこうしたことは政府自体責任でもあると思うのであります。そういう意味から言いまして、私はこの日額旅費の問題についても十分検討し、しかるべき結論を出してもらいたいということをこの際希望いたしておきます。  もう一つの問題を申し上げます。これは宿舎の問題であります。これは北海道における国税職員宿舎という見地だけでなくて、全般的問題として政府のお考えを聞かしてもらいたいと思います。もちろん今日、国民全般住宅困窮実情にあるということは私ども十分承知しておるわけでありますけれども、特に私が取り上げようとしておりますのは、自分の意思によらざる配置転換の多い税務職員の場合に、この充足はそれだけよけいに政府責任があるのではないかということであります。国税庁当局の私に対する事前の説明によりますと、昭和三十九年度における宿舎設置状況は、二千六百四十二戸、その内訳は、一般用に千三百三十七戸、都市集中用として八百四十五戸、老朽建てかえ用四百五十九戸となっておると承知しておるのでありますけれども、これは一体政府責任として十分なるものであるかどうか、また国税庁としては職員宿舎の問題についてどういう見解と要望を持っておるかという点を私はこの際お聞きいたしたいと思うのでありまして、ひとつそれぞれからお答えをいただきたいと思います。
  17. 喜田村健三

    喜田説明員 国税職員転勤の問題につきましては、仕事性格上かなり転勤率が高くなってしまう、したがいまして、その宿舎の確保ということにつきましては、国税庁といたしまして非常に重点を置いて努力を重ねているところでございます。その結果、毎年十分ではありませんが、かなりの増加をいたしております。たとえば三十五年度には千十一戸、予算額にいたしまして約四億二千万円程度でございましたが、三十九年度には、ただいまお話のありましたように、二千六百四十一戸予算額にいたしまして約二十億、こういったふうにふえております。したがいまして、三十五年には保有率が二〇・九%でございましたが、三十九年度は三〇%、職員数にして約三割の宿舎ができてきている、こういったような状態になっている。逐年改善はされておりますが、しかし毎年転居を要する転勤者の数が一年に約五千数百名程度ございます。したがいまして、全部の人が公務員宿舎に入れるというわけではなくて、四割以下の人が公務員宿舎に入れる、あとの人は宿舎自分で見つけなければならない、こういったような実情になっております。借家に居住するということは、仕事性格から見ても、必ずしも望ましいことではない、そうした意味からも、宿舎の増設につきましては、今後とも一そうの努力を続けてまいりたいと思っております。
  18. 平林剛

    平林委員 いまお話しになりました昭和三十九年の二千六百四十一戸というのは、政府責任において建てるものだけではなくて、他の部分も入っているのじゃないですか。その点はどういう区分けになっておりますか。政府だけが二千六百四十一戸建てるというふうに聞いたのでは、間違いが起きるのではないかと思うのでありまして、その点どういう状況になっているかを明らかにしてもらいたい。  またいまのお話のとおりに、毎年五千人からの住宅を要する転勤者があるということでございますし、またかなり老朽家屋も多い。これは私案は選挙区の話で恐縮でございますけれども、実はある中小企業経営者税務署の査定した税金は高くて困る、間違いだ、しかしそれをどういうふうに話をしていいかわからぬ、そこであまりいい話ではありませんけれども税務署職員のうちを尋ねてひとつお願いをしてみようというような裏口の道を選んだ人があるらしいのであります。そうしてそのうちに参りましたが、途中で帰ってきてしまった。なぜ帰ってきたかというと、あまりにも貧弱なうちで、これがあのおそるべき鬼のごとき国税庁職員住居であるか、こんなところに頼みに行っても、とてもわしの税金をまけてもらうなどという話はできない、こういうことで帰ってきたというのであります。そこで私はそれはいいことだと言いましたが、その人がいわく、きっと国税庁というところは、ああいうような住宅職員を住まわせておいて、思想をうんと悪くして、そうして税務行政においては、鬼のごとき才能を発揮させるようなぐあいにできているのじゃないでしょうかなどという話をするから、まさかそんなこともないだろうという話をしましたが、私は老朽宿舎住居している職員実情を聞きまして、ためしにそのうちを見たのでありますが、やはりひどいものであります。そういうことを考えますと、毎年転勤をする人で住宅を必要とする者が多い。それにもかかわらず老朽宿舎があり、あるいは充足数も毎年毎年足らぬということになりましては、今後の税務行政の問題を考えますとゆゆしき問題も含まれておると思うのであります。そこで長期的な計画についてはどういう考えを持っておられるか。この二点についてお聞かせを願いたいと思うのであります。
  19. 喜田村健三

    喜田説明員 まず最初の本年度の建設計画の二千六百四十一戸という数字内訳についてでございますが、これは政府宿舎予算の中でまかなわれるものだけでございます。職員自分で建てた、あるいは金を措りて建てたというものは入っておりません。この中には政府予算に計上された建築費で建てるものと、それから共済組合から金を借りて政府が建てるという二種類がございますが、いずれも政府宿舎予算で建てるということにはなっております。職員の負担ということにはなっておりません。  それから二番目の老朽宿舎の問題は、ただいま御指摘のような国税庁宿舎保有率はほかの官庁より若干よくなっておりますが、その内訳がただいま御指摘のように非常に古いものが多い。それからまた狭いものが多い。こういう二つの事情がありまして、表面的に出ました保有率からだけでは判断できない。ただいま御指摘のような非常に質の悪いものがある。たとえば昨年の十月現在で、老朽宿舎とこちらで認めておりますものが二千五百九十戸ございます。それは至急に建てかえを要する宿舎でございます。それから狭いというほうで見ますと、たとえば九坪未満というような宿舎が全体の宿舎の中の三二%を占めております。十三坪未満に区切ってみますと約九〇%、これは戦後至急に宿舎を建てるという必要上狭い宿舎をかなり建てたのでありますが、それの数が相当多くなっておりまして、九〇%以上が十三坪未満ということになっております。また寮と申しまして、その家所属のそれぞれのたとえば炊事施設とか便所とかというものがないほんとうの寮というものが全体の四二、三%を占めておるというような実情で、至急にそうした数の問題だけではなくて質の面の改善も要するというような状況になっております。したがいまして、これを至急に何とかしなければならないというようなことで、現在国税庁といたしましてさしあたりの不足数と、それからいまの古い建てかえを要するような宿舎、それから東京あるいは大阪に職員を集めなければならない、その都市集中に件う必要戸数というものを全部で大体一万三千と見ております。このほかに、たとえば現在自宅に住んでいる、あるいは公団住宅に住んでいるということで現在安定している職員につきましても、転勤をした場合にはたちまち不安定になる。そうしたものも本来それを加えなければならないのですが、それを加えないでも現在一万三千の戸数が不足している。これを何とか三年間で解決するような目途で努力してみようということで、そうすると大体四千三、四百を毎年建てなければならない。そういたしますと宿舎予算が三十数億要る。こういうことになりますが、これにつきましては管財局につきます全体の宿舎予算の絶対額をぜひふやしてもらう、それと同時にその中での国税庁の割り当て分をふやしてもらう、この両方を通じまして何とかこの一万三千をできるだけ早く確保してまいりたい、こういうふうに思っております。
  20. 平林剛

    平林委員 国税庁宿舎建設の三ヵ年計画を見ますと、昭和四十年度においては、一般必要戸数、都市集中による必要戸数、老朽建設戸数合わせて約四千四百三十八戸、四十一年度で同じく四千五百三十七戸、四十二年で四千二百五十六戸ということに相なっておるようでございまして、それまでに合計一万三千二百三十一戸建設するというように承知しておるわけであります。しかし私は老朽宿舎実情から考えまして、この計画の見積りに対しても疑問を感じておるのであります。なぜかというと、一体必要戸数という認定はどういうふうにしておるかということが問題でございまして、いまお話がありましたように、九坪未満のものが三二%もあるというような実情から考えまして、これでもなお足りないではないか、一体国税庁としては宿舎建設の計画において必要戸数あるいはその他でもよろしゅうございますが、こうした計画を立てる基準というものをどういうところに置いておるか、これをひとつお聞かせいただきたいのであります。
  21. 喜田村健三

    喜田説明員 必要戸数の考え方につきまして、現在管財局に宿舎要求いたします場合に、たとえば非常に狭いところに住んでおるとか、非常に遠いところに住んでおるとか、あるいはその家がくずれかけている、そうした見地から現状で見ましてほんとうに家を建てて宿舎を確保してやらなければならないのが幾つあるか、そういう見方が全官庁の宿舎の必要戸数というものの共通の基準をつくって必要戸数をはじくというやり方が一つございます。それから先ほど申し上げましたこちらで三ヵ年計画で全体で一万三千という場合の必要戸数のやり方といたしましては、職員の全体の数、その中から転勤を要しない用人、施設職員のような者を除きまして、そのうち自宅を持っている者が何人、それから公団の宿舎のように安定したところにいる者が何人、それ以外に宿舎を必要とする者が何人ということで、その中から現在持っておる戸数を引いた数が幾らという両方の出し方があるわけでございますが、そのいずれも大体似た数字で六千数百ということになっておりますので、この三ヵ年計画一般的な必要戸数としては六千数百という計算になっております。ただ、いま申しましたように、この自宅を持っているあるいは安定した宿舎に住んでいると申しましても、転勤ということによってたちまちその数がまた新たに潜在的にふえる可能性を持っているわけでございます。
  22. 平林剛

    平林委員 私の承知しておるところでは、一般必要戸数の認定基準について、第一には一人二・五畳未満、第二には本俸の二〇%をこえる者、第三には立ちのきその他の特殊事情、第四には遠距離、六大都市の場合には二時間、その他において一時間三十分、第五としては老朽化、こういう基準で必要戸数その他をはじいておると聞いておるわけでございますけれども、いずれにしてもこの基準自身もいろいろ問題がある。私は国民全般住宅困窮のときに、特に国税職員についてこれを強調するというわけではございませんけれども、やはり国税庁の運営の方針の中にも「納税者にとって近づきやすい税務署とするためにも、また、仕事を能率的に行なうためにも、明るい健康的な職場を作って、気持のよい環境とすることがぜひとも必要である。このため、庁舎、施設等の改築改善に一層の努力を払うとともに、清潔、整とん、火災盗難の防止その他適正な管理に十分配意する。住宅事情が職員の勤務意欲に直接影響を及ぼす重大な問題であることにかんがみ、宿舎の増設と補修改善には特段の意を払って、その拡充に努めるとともに、既設宿舎の効率的な利用を促進して、職員住宅問題をできるだけ早急に解決するように努める。」と書いてあるわけです。前のほうにはいろいろこわいことも書いてあって、職務規律の改善だとかいろいろ、職務上他の官庁に比して過重なことを課せられているにもかかわらず、住宅の事情を顧みるとかような状態である。しかも、私問題だと思いますことは、たとえば国の予算で三十九年度に、先ほど御説明がありましたような建設戸数があるといたしましても、実際には、それを建てられるのは二年か三年くらい後になる。そうじゃないですか。実際には予算化したものでも、土地単価その他の事情で実現化が一年ないし二年おくれている実情でございますから……。いかがですか、そういう実情はございませんか、その点をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  23. 喜田村健三

    喜田説明員 国税関係の宿舎につきましては、たとえば二千六百ですか、宿舎予算がつきます場合には、大部分は年度内に建てる。若干繰り越すのがございますが、大部分は年度内に建つというような現状になっております。
  24. 平林剛

    平林委員 その点は私は指摘だけにとどめておきます。しかし、実情は、実際に常識で考えても、予算化されてから建設までには一年かかるということは間違いないことでございまして、やはり今日の建設単価その他から考えますと、なかなか適当なところが見つからないということで、二年ないし三年ということもあり得るということは常識だと思うのであります。そういう点から考えますと、現在あなたのほうで御計画になっておる建設計画そのものでも、なお職員住宅の事情については極端に悪いということが考えられるわけであります。そういう意味で、私どもは今回の視察の結果、特にこれらの問題について目を配った結果、かような点を政府に強く要望しようではないかということに達しまして、私特に皆さんにこの点を要求しておきたいと思うのでございます。そして、私ども要求する趣旨は、質問の中に申し上げましたように、単に税務職員であるから考慮するということでなく、今日の税務行政を円滑にするためにも、またこれが明朗なものとして、納税者に対する態度その他においても改善をせられるということを期待しておるということも間違いないわけでありますし、また綱紀粛正の面から考えまして、こうした面についてはやはり相当の配慮を払わなければならぬ官庁である、こういうことを考えて、特に強く要望いたす次第でございます。政務次官においても、この点十分に御配慮を願いたい。あなたのお答えを聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 御説のとおりだと思いまして、十分その点実現するようにつとめたいと思います。
  26. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 佐藤觀次郎君。
  27. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 理財局の佐竹さんにちょっとお尋ねしたいのでありますが、けさ早朝から銀行や信用金庫のところでは大ぜいの人だかりがございまして、何事かと思ったら、ちょうどオリンピックの千円銀貨、百円銀貨の引き換えがあるということで、非常にたいへんなことになっておるのですが、この間も理財局長に話をして、きのうはちょうど大阪で鋳造の造幣局の係の人に会ったのですが、せっかくこうしたことをおやりになるならば、売り出してからすぐ千円の銀貨が五千円にも六千円にもなるということ、こういうことはせっかく大蔵省が好意を持ちながら、結果においては非常に悪い結果が出るんじゃないかと思うんですけれども、その点はどういうような計画であったか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  28. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お答え申し上げます。オリンピック記念のための千円銀貨でございますが、これは計画といたしましては千五百万枚製造いたす、かように実はなっておったわけでございます。この春に、四月でございましたか、記念貨幣発行のための特別立法を御審議いただきました際に、その計画は千五百万枚ということを申し上げました。その後鋭意製造を急いでおりまして、オリンピックまでには、実は製造能力の関係から申しまして、全量を出すのはむずかしい、しかし少なくとも三分の二ぐらいは出さなければならぬということで、九月の末までに一千万枚を製造いたしました。これを十月の二日、オリンピック前に出したわけでございます。残りの五百万枚についてその後製造を続けておりまして、ようやくこれができ上がりましたものでございますから、オリンピックが済んであまりおそく時期が離れてもいかがであろうかということで、極力製造を急いだ結果、実は御承知のように本日二回目の引きかえをやった。これは実は五百万枚出ているわけでございます。
  29. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 計画はおそらくこんなに人気を呼んで——私いまの紙幣もあまり感心しないのですけれども、今度の千円銀貨だけはどうも魅力があるように思うのです。それでこういうものをつくったからこそ、なければ何でもないのですけれども、できればやはりみんなほしい。隣の人が持っておれば自分もほしいというのが人情でございます。こういう国民的な関心があるものを、千五百万枚といえば、大体日本には二千五百万戸あるから一戸に一個渡らない。一軒に一個渡る計算になればいいと思いますが、そういうものが銀行や信用金庫や郵便局あたりで持ち出されておりまして、不満の声がある。おそらく非常に不満の声があろうと思いますが、そういう点はどのようにお考えになっておりますか。
  30. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 御指摘のように、確かに第一回を出しましたときにも金融機関の窓口に行列ができるということでございまして、その間に混乱でも起こってはと実は心配をいたしておりましたが、幸いにしてこの点はさしたる混乱もなしに一応無事に済んでいるわけでございます。先ほどちょっとお話がございましたように、いろいろプレミアムがついているのではないかというお話もございます。これは私どももいろいろうわさ話等では聞くわけでございますけれども大蔵省におきましても、日銀におきましても、実はその事実を確認するまでには至っておらないわけでございます。確かに一部にそういうプレミアムがついているといううわさはございます。その点で千五百万枚というものが少なかったのではないかというお話のようでございますが、実はいろいろ最初考えまして、過去における世界各国で記念貨幣を出しました先例でございますとか、あるいは特にオリンピック関係の先例もございます。それを見ますと、実はフィンランドで出しておりましたときには六十万枚程度でございます。それから昨年の秋でございましたか、オーストリアのインスブルグで冬季オリンピックがございました。あの際やはり銀貨が出ておりまして、これは二百五十万枚、大体国民一人当たりに見まけと、フィンランドの場合には七人に一枚というような関係でございますし、日本の場合に千五百万枚といいますと、大体国民約六人に一枚という計算になります。それからこれらをいろいろ考えまして、まあまあこの程度であれば何とか一応さしたる混乱もなしに無事に済ませることができるかというふうに実は思っておりました。先ほど申しましたように、十月第一回の引きかえをさしたる混乱もなく一応済ました。問題は本日の交換状況なんかがどういうことになっておりますか、これは早急に調べまして、その模様等もよく見たいと思っております。また一体この程度のところで御満足とまではいかないかもしれませんけれども、まあまあ一応記念貨幣発行の目的を果たし得たのではなかろうかと実はかように考えておる次第でございます。
  31. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そのフィンランドとかオーストリア等とは、日本の国情も違いますし、これは農村ならそうたいしたことないのですけれども、大都市——東京のきょうの様子を見ると、おそらく大阪でも、名古屋でも、福岡でも、札幌でも、相当群をなしているだろうと思う。きょうも群集へ自動車が突っ込んだという話もしておりましたけれども、したがってそういうような弊害があると思いますが、しかし、品物をつくるのと違いまして、千円は千円で通用するのでございますから、別段腐るものでもありませんし、これはほとんどいまの場合は流通しないと思うのですが、この千円は流通可能にしてやることができないのか、そういうことは、私はこの間吉岡さんに聞きましたら、どうも銀が不足しているからむずかしいというような声もあるし、補助貨幣が非常に少ないといわれているから、オリンピックのためにわざわざそんなものをつくる必要はない、こういうようなことも聞いておりますけれども、しかし、せっかくつくるならば、ほかのものなら物が余るということもあるが、金だから余ることはないと思うのですが、そういう計算はどのようにされておるのか、もう少しそういう点の考慮があれば、私はこういうような変な、国民をいびるようなことはないと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか伺いたい。
  32. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 確かにおっしゃるとおりでございまして、物と違うわけでございます。それを考えまして、それではどの程度の枚数を出しましたならば完全に充足されるか、これは多々ますます弁ずということにもなりましょうし、なかなか実は計算としてはつきがたい面もあろうかと思います。そこで、先ほど申し上げておりますように、いろいろ各国の実例とか過去のそういう実績等を見まして、経験的なものとして見まして、まあまあこの辺なら落ちつくであろうかということで実はいかざるを得なかったわけでございます。同時に、ただいま佐藤先生御指摘のように、実は一円あるいは五円といった小額貨幣が足りないということで、造幣局では昨年来非常に大馬力をかけまして、そういう小額貨幣の増鋳というものを鋭意やっておるわけでございます。そういうことでございますので、やはり造幣局の製造計画にあまり支障が起こっても困るという問題もございます。かたがた、これまた御指摘のように、銀が足りないじゃないかというお話もございます。これ、先生御承知のように、実は銀の不足というものは世界的なものでございまして、非常な需給のアンバランス、ことに近年著しい不足になっておる。生産量の大体倍くらいの消費を最近やっておるようでございます。いまはどうやらストックでつないでおりますけれども、これがストックがなくなりますというと、相当銀の用途について考えなければならぬような状態に当面しておるようでございます。アメリカ等におきましても、実は一ドル銀貨というのがございましたけれども、これも銀が不足して、しかも銀が非常に値上がりしてきたというようなことで、一ドル銀貨の鋳造を実はやめております。先般出ましたケネディ・コインは、あれは御承知のように五十セントでございますけれども、日本の場合のように千円となりますと、相当形も大きくなりますし、銀の純分というものも相当多いわけでございまして、そういうようなこともあり、決して私どもは銀が足りないということを理由に申しておるわけではございませんが、そういう製造計画との関係、かたがたそういう銀の問題等々、一応過去の経験その他から見まして、まあこの辺のところでひとつ、ということでやってまいったわけでございます。
  33. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それからもう一つ、この銀貨をこしらえる費用と、それから千円札、これは紙ですから、そういうわけですから利害関係も多少考えておられるのか。これは国民が相当納得しない点があるのではないか。いろいろ私のほうにも、あなた大蔵委員だから一ぺん聞いてくれとか何とか銀貨を回してくれぬかというようなことを言ってくる方があるのです。あなたはきょうの結果を見ると言ったって、私は自動車で来ましたが、至るところ超満員で、中央食堂の職員もせっかく行ったけれどもだめになったといって、非常にくやしがっているようですが、大蔵省は雲の上におられるからわからぬかもしれませんけれども、おそらくきょうの東京だけの状況をごらんになれば、相当まだ不平が起きるのではないかと思うのですが、そういう点なるほど大蔵省は、これは製造能力が足らぬということも私ら開いておりますけれども、国民がどうも納得しないのじゃないかというような気もするので、千円紙幣をつくる場合と千円の銀貨をこしらえる場合には相当そこに差額があってつくれないのかということが一つ疑問になるわけですが、その辺はどうなっておりますか。
  34. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 いわゆる製造差益と申しますか、製造コストの額面との差額でございますね、千円コインの場合には、大体コストが地金その他加工費を入れまして四百円程度、紙幣の場合には——ちょっといま手元にこまかい数字がございませんのであとでまた御報告いたしますが、紙幣の場合の製造費と額面との差は、これは記憶で申し上げて恐縮でございますけれども、銀貨をつくります場合よりは差額が大きいわけです。したがって、その差益の関係で銀貨の製造を押えるのじゃないかという御質問かと思ったのでございますが、そういう趣旨は全然ございませんで、実はそういう損益計算は全然考えませんで、もっぱら——これは、御承知のように補助貨幣の体系の中に実はないものを、特別にオリンピックの記念だということでわざわざ補助貨幣の法体系から離れまして特別立法ということでつくったような次第でございます。そういうあくまで記念という趣旨でございますので、そういう損益計算とか何とかいう観念はとっておりません。ですから、私どもとしても、できるだけたくさんつくればそれに越したことはないと思っておるのでございますけれども、何ぶんにもいろいろな事情もございまして、まあぎりぎり一ぱいのところ、かように御了解いただきたいと思うのです。
  35. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 きょういろいろ結果が出ると思うのですが、もうこれ以上増産をするというような計画はないのですか。
  36. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 気持ちといたしましては、何とかふやせたらという感じは先生と全く同様に私も非常に抱いておるわけでございますけれども、実は先ほど来申し上げておりますような小額貨幣その他の製造計画等との関係もございまして、また百円コインとの関係その他いろいろございますものですから、なかなかむずかしい事情にあるわけでございます。まあその点ひとつ御了察をいただきたいと思っておるわけであります。  なお先ほど御質問の千円札の原価でございますが、これは六円三十七銭、非常に小さいものでございます。
  37. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 御承知のように、昨年千円紙幣の偽造がございましたね。これはあなた方の責任じゃないけれども、警察がようあげないで、まあうやむやになって、そんな理由じゃないだろうけれども新しい千円札ができた。そんなことを考えれば——ケネディ・コインも実はアメリカから帰った人にもらって非常に感心したのですが、大蔵省のつくるものはあまりじょうずなものはないけれども、オリンピックの今度のものだけは非常によくできている。相当各地区で——御承知のようにオリンピックは二百年に一度くらいしかないようでございますが、そういうときに、オリンピックを見られぬ人がたくさんいるから、せめて貨幣ぐらいは見せてやりたいという親心があってしかるべきだと私は思うのです。そういうような点で、銀が全然なければやむを得ませんけれども、おそらく、貨幣でありますから使用がダブつくというようなことはありませんから、そういう点の配慮ができるのかどうか。これは政治論になりますから鍛冶さんにひとつお尋ねしたいと思うのですが、一体あなたはどういうふうにごらんになっておるのか。あなたは大蔵次官だからおそらくいろいろなところから千円銀貨をせびられたと思うのですが、その点どういうふうにお考えになっておるのか、これは政務次官にひとつお尋ねいたします。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 突然言われても答えにくいのですけれども、おことばのとおり、たいへん需要が多いことは間違いないと思います。きのうも大阪へ行ってその話が出たのです。きのうの試験の一番眼目はこの千円銀貨でございました。それでその話があったのですが、イタリアのオリンピックのときに出したのから比べると非常に多く出したのでこんなことになるとは思わなかった、どういうわけでこんなことになるんだろうという話がございましたが、いままで銀貨がなかったものですから、珍しいということが私は第一じゃないかと思います。そこへ持ってきてオリンピック記念と言ったものだから一種の珍しいものに飛びつくような考えで、これはもっとできぬものかという話もありましたが、そう簡単にできないということであります。きょうは、けさラジオを聞いておりますと、自動車事故が二つもあったということで大へんだと思いますが、こういうのは一時の熱じゃございませんか。そういうことで、それほどいつまでも続くものじゃないと思いますが、なお一そう当局と相談して対処を考えたいと思います。
  39. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 日本人の記念切手とか、そういう問題についてはよその国と違った関心を持っておると思います。そういう心理作用もありまして、私たちには個人としてもやはりみんなにせめて一つくらいはというような声があるわけです。  そこでお尋ねしたいのは、そのほかの百円とかそういう銀貨が不足しているという声も聞かれているのですが、それもやはり能力が足りないのでできないのか、銀が不足してできないのか、それをひとつ佐竹さんに伺いたいと思います。
  40. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 百円銀貨につきましては御承知のようにオリンピック記念の図案をもって製造したものがございます。それで先ほどちょっと私ごとばが足りなくて申し落としたのでございますけれども、実は佐藤先生のおっしゃいますように、広く、とにかくオリンピックをなかなか見られない人たちも多いからせめてコインでもということであれしましたのが百円コインのもので、そういう趣旨を十分に考えまして、これは八千万枚こしらえることにしてあるわけでございます。そしてすでに相当出回っておるわけでございます。これについては実はプレミアムとか混乱ということはないようでございます。流通には必ずしも全量出てくるということでもないようでございまして、ある程度退蔵されておる面もあるようでございます。そういう意味で、オリンピック記念で百円銀貨というものが片一方にあるわけでございますから、それにあわせて千円銀貨——千円銀貨だけですといまおっしゃるように問題がシリアスになります。片一方、底辺に八千万枚という非常に膨大な、これはあくまでいわゆる従来出しております百円コインのただ図案を変えただけで特別のものでありません、これは必要があればさらに百円の製造を続けることはできるわけでございます。  ただいま御指摘の小額貨幣が足りないのじゃないかということでございますが、これは昨年あたり確かに御指摘のように百円貨も多少問題がありました。なかんずく一円とか五円なんかが非常に足りないということで問題になりましたが、その後鋭意造幣局におきましても製造を増加いたしまして、本年度におきましては五円、一円等の小額のものは大体昨年度の製造計画の二倍を予定しております。国民一人当たりの枚数等から見ましても、この三、四年前と比べますと大体倍くらいに出るという状態にまで実はなってきておりまして、昨今では、日銀の窓口等を通していろいろ聞いておりますけれども、窓口等の実情から見ましても、一円貨の引きかえを要求された場合に、一時、一、二年前はとても応ぜられませんというので要求量を削って日銀がかえておった時代がございましたが、いまではもう全部無制限に出しておるということで、実際問題としていまはそういう意味の不足はなくなっておるようでございます。それから百円コインのほうも、一時五月から六月ごろにちょっと百円が足りないということが新聞に出ました。これは実はオリンピック記念の百円銀貨を製造するということになったものでございますから、そちらのほうに全力をあげまして、これをオリンピック前に相当まとめてどんと出そうとしたために、五月ごろにちょっと百円貨の出が少なくなった時代がございました。しかしそれはオリンピック貨が出ましてからずっと解消されまして、今日では大体御心配になるような面はほぼ解消してきておるようでございます。
  41. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろお尋ねしたいのですが、私はちょっと用があるもんで……。今度の経験で将来こういう問題が起きた場合にはひとつ十分検討して、国民の素朴な欲求に対してはできるだけ満たせるような方法を、政府のやることですから十分検討していただきたい、配慮していただきたいと思うのです。われわれもあれほど人気を呼ぶとは思わなかった点もあるのですが、おそらく大蔵省もそういう予定ではなかったんだと思うのですが、意外な反響があって、ちまたではそういう話が至るところ持ち上がって、われわれもびっくりするくらい多いわけですから、そういう点も十分に御配慮願いたいと思います。  なお、酒米の値上げのことについてお尋ねしたいのですけれども、私ちょっと時間がないので午後にしたいと思います。
  42. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 有馬輝武君。
  43. 有馬輝武

    ○有馬委員 大臣に最初お伺いしたいことは、昭和四十年度の予算編成作業は現在どのように進捗しておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 八月三十一日をめどにいたしまして各省庁から概算要求書の提出を求めまして、大体提出は順調に行なわれたわけでございます。これに対して、いま事務ベースにおける集計——集計といいますのは、出てきたものに対して検算をさせてみて、一応正しいか、こういうことでございます。それから内容的に、昨年度すなわち三十九年度の予算との内容的対比、また新しい款項目別の事項に対する調査——査定をするという段階まではまだいっておらないようでありますが、全く事務的な段階で作業が行なわれておるわけであります。
  45. 有馬輝武

    ○有馬委員 その事務的な段階で作業が行なわれておるということでありますのに、最近の大蔵大臣の大阪に行かれる際の車中談なり、あるいは造幣局での関西財界人を前にしての演説では、少なくとも予算編成の大綱について明らかにしておられると思うのでありますが、この関連はどういうことでありますか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと私の御説明が足らなかったようでございますが、御承知のとおり予算編成に至るまでに三つも四つもあるわけでございます。一つは法律、政令に基づきまして各省庁から財務担当である大蔵大臣あてに概算要求をしなければならない、こういうことでございます。大蔵大臣はある時期をめどにして大体おおむね十二月末ということになりますが、内閣総理大臣及び各省各庁の長が要求をしたものに対して対案をつくって閣議の決定にゆだねなければならないという法制のたてまえになっておりますので、そのゆだねる過程においていま事務的査定が行なわれておる、こういうことをすなおな段階で申し上げたわけです。ところが、御承知のように議院内閣制でございますから、そういうものと全然別に事務査定というのをやるのは毎度のことだが、事務査定が終わらなければ答弁ができないというのじゃ困る、いずれにしても毎年の例がございますし、三十八年度の税の状態から来年度を推しはかれないか、しかもその過程において、三十九年度の第二次補正を、いま補正要因がきまって作業を進めているのだから、そういう前提に立って、現実の上に立って四十年度を想定して答えよ、いまの質問のような、そういう状態に対して答えるということもございます。もう一つは、政党内閣制でございますから政党と内閣が常に一体になって政策を立て、その政策を骨にして予算を組む、予算を組むことによってその政党の政策が行なわれる、こういうことになるわけでございます。でありますから、収党がいろいろな政策を掲げ、党側に対しては緊急政綱、また四十年度の予算編成大綱ともなるべき要求をいたしておるわけでございます。この与党からの要求を受け取った私たちがこれを十分見ながら、当然与党が出したものは政府責任でもございますから、これを具現すべく——一体与党の要求の倍くらいできるのか、これは与党の言うとおりしかできない、与党の要求するものも多少削ってもらわなければならないというふうになるのか、そういうものを検討いたしておるわけであります。ですから、検討の過程において、与党に対してわれわれが提示をしたものができるかできないか、せめて見込みだけでも聞かせろ、こういうことにはるわけでございます。でありますから、いろいろな段階がございまして、現在の状態、与党の段階においては与党の質問に答え、国会の段階においては国会の段階でお答えをする、それから事務的な問題につきましては現在査定中でございます。こういうことになるわけでございます。なお、御承知の三十九年度の予算執行の状態、税の状態は国会に報告をしなければならないのであります。ですから、その執行の過程において将来を想定して、この程度になるだろう、この程度になるだろうと思うけれども、明確にこれを答えるには時期が非常に早いとか、そういうふうな問題があることは過去、在来の例に徴しても御理解をいただけると思います。
  47. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、西下の途中で二十七日、また二十六日、それから翌日の発表されたものは、閣僚としての御発言であったというふうに受け取っておりまするし、また各報道機関もそのように伝えておりまするし、またその内容の面についても、たとえば政策減税、企業減税、所得税減税等の問題についても、閣僚としての、大蔵大臣としての御発言であったというぐあいに受け取っておるわけです。おまけに現在の事態というものは、私は、平生とは違っておる、このように思うのでありますが、その点の関連はどういうことですか。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろん池田内閣の閣僚、自由民主党内閣の閣僚であり、大蔵大臣としての発言であることはもう言うを待ちません。これは事実そのとおりでございます。  それから第二の、少し微妙な段階であるということはどういうことを言われたのか、どういうことを言われたのかということではなく、池田総理も辞意を表明しておるのだし、大蔵大臣も総辞職を前にして前言が変わる、こういう、いま、総辞職を前にしているのだからというような立場でより、そういうむずかしいような現実に対処したような姿勢で発言をすべし、行政に対して当たるべし、こういったような感じかもしれませんが、第二の段階に対しては何か明らかにしていただければお答えをいたします。
  49. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がお尋ねしたいのは、現在の池田内閣を構成してこられた、あるいはこれを支持してこられた河野さんが総理になり、あるいは田中さんが総理になられるなら、いまみたいな発言をされても、大阪におけるああいった談話を発表されても、ああそうかということで受け取れるわけですが、しかし、与党の総裁選挙の経緯にかんがみましても、私は、予算編成の大綱というものは総理がかわれば当然変わってこなきゃおかしいと思うのであります。河野さんや田中さん以外の人がなれば、これは当然変わらなければ筋が通らぬと思うのです。であるとするならば、新しい総理ができ上がらない前にあのような発言をされるのはおかしいじゃないかという立場からお伺いをしているわけであります。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもその考え方には遺憾ながら賛成できないのです。これは私はそう考えていないのです。総理がかわるから政策が変わるなんということはナンセンスだと思う。自由民主党の総裁というものは、これは総裁機関説であって、自由民主党の総裁は自由民主党の看板を象徴する機関、総裁であるというにすぎない。個人である。もちろん日本の憲法及び法律で属人主義をとっておりますから、それは少なくとも個人池田勇人であり、個人田中角榮であり、個人有馬輝武さんであることは事実ですが、少なくとも与党である自由民主党の総裁が総理に指名をせられるという議院内閣制、また政党政治の本質から考えまして、個人にウエートを置いて政策が左右されるということは、考えること自体がナンセンスだと思うのであります。そうじやありません。何万、何十万、何百万という全国党員の上に積み重ねられてきた自由民主党の政策、綱領は明らかに厳としたものである。ですから、この政策、綱領が総理大臣がかわるたびに変わるという考えは事実おかしいのです。政党政治であり、議院内閣制であるということを言いながら、どうも明治憲法的な属人主義を中心にした思想に立って考えればそうですか、池田総理が新しい総理にかわられても、もちろん内閣は総辞職をして新しい内閣が成立をせられても、党の政策が変わり、大筋が変わると考えるのはナンセンスだ。もしそのようなことを考えておるとすれば明らかに事実誤認である。認識の誤りであります。これは社会党の中でも、委員長がかわられて、多少ニュアンスの変わるものはあります。しかし、それでは富士山に登ろうとする方向を、富士山をやめてくれ、筑波山に変えてくれ、こういうように政策が全然変わると考えるのはおかしい、そんなことはない。私は、そういう意味で、自由民主党であろうが、社会党であろうが、党領が一人かわることによって、看板になる総裁、総理がかわることによって、全党員の思想、政策が制約を受けるとは考えておりません。これは、ほんとうに大多数の意見と総理、総裁の意見が違う場合、大多数が総理に従うものではなく、当然総理、総裁である者が大多数の党員の意思に従うべきである、これはもう当然のことでありまして、政策が違うとは私は考えておりません。これはだれがやっても同じことである。ただニュアンスにおいて、来年所得税減税をやろうかことしやろうか、こういう考え方の間には、またその過程において具体的な議論は幾らかございますが、そうでなくて、総裁個人の力、総理個人の力というものが、全党の大多数の意見よりも優先し、政策、綱領を明らかにしておる者が変え得る権能を持っておるのではないか、これはもう認識の相違であります。  それから第二の問題は、いまやめられるというときでありますからとにかく黙っているほうがいいのだ、これは日本人的な感覚としてはわかるのです。しかしいやしくも行政府考えはそうすべきものではない。これも私はいいかげんな議論で感情論でもってやるべきではない。憲法には明らかに、内閣は連帯して国会にその責めを負っておるのであります。これは十日でも十五日でも三十日間でも、与党のぐあいによっては後継首班がきまらないことがあり得る。その間一切姿勢を正して、仕事をやらないことが正しいのだ、政治は、国民九千万の生活は瞬時たりとも停滞を許さないのであります。でありますから、こういうことをしゃべっておる間にも死んでいく人がある。生まれてくる人がある。憲法はそれを要求しているのです。そうじゃないですか。そんな考え方で政治を考えては私はいかぬと思う。私もよく間違いがある。われわれもよくそういう考え方でやってきたのですが、これは確かにオーソドックスなものの考え方とすれば、荒っぽいことをどんどんやってどさくさにやったといわれるようなことはいかぬと思うのですが、そうじゃなく、既定方針がきまっておるものを、国民の少なくとも権利義務に関して権利を制約するようなものは多少テンポをおそくしてもいいと思うのです。私も何か聞きましたが、死刑の執行を行なうという場合には、こういう大きなときに、何か暫定的なときに行なってはいかぬとか、いろいろなことを旧憲法時代といえども昔から聞いております。しかし国民の権利を守ってやる、国民の福利増進をはかってやるような政策を、これはあるものがきまらなければストップすべしだ、私はそう考えておらない。それこそ憲法の命ずるところ、政治に瞬時の停滞を許さない。そういうことをやったために責任を追及されるならば堂々と追及されるべきであって、所信に向かって、国民幸福の追求に向かって前進をしていくべきである。それは当然職務を与えられた人の課せられた義務である。こういうふうな考えでございますので、明敏なる有馬先生ちょっとお考えいただいて、私が言ったこともそんなに逸脱したものの言い方、考え方に立っておるものではないということを御理解いただければはなはだ幸いであります。
  51. 有馬輝武

    ○有馬委員 第一点のそんなおかしいことがあってはならない、そのおかしいことが行なわれているんですよ。総裁選挙はそうではなかったんですか。少なくともいま大臣があげられたところの減税の規模の問題にしてもあるいは外貨の問題にしても、やはり池田総理なりあるいは佐藤榮作さんなり藤山愛一郎さんがそれぞれの大綱を掲げて総裁選挙を行なわれ、それがいま大臣かおっしゃるとおりであるとするならば、争う分野というものはほとんどああいった新聞紙面にあらわれてくるようなものは何もないはずだ。そのおかしいことが現実に行なわれてきて池田総理というものができ上がった、その人がやめようとしておる。当然変わってこなければあの総裁選挙の意義はなかったと思うのです。おかしいことが現実に行なわれてきておるから私はお伺いをしておるのです。減税の規模についても、佐藤さんは総裁選挙のときにちゃんとあげられたじゃないですか。そのあげられた問題について、大臣がちゃんと二十七日も二十六日も触れられておるから私はお伺いをしておるのです。と同時に、大臣のおっしゃるとおりに政治は瞬時もとどまらしてはならぬものだということを理解しております。だから私はお伺いしておるのだけれども予算編成の作業はどのようになっておるかということをお伺いしたのはそこにある。編成作業を急がせ、そうして大臣がそれなりのものの考え方を大蔵大臣としてコンクリートにしていくことも必要であるかもしれないけれども、それ以前の問題があるのではないか。それ以前にきまらなければ、そのコンクリートにしていくこと自体が大きな問題を残すのではないか。これは河野さんがなれば一応池田内閣の基本政策はそのまま踏襲するんだということもすなおに言えるかもしれません。いま山中君がいませんから言っておきますけれども、しかしだれがなるかわからないけれども、佐藤さんがなり藤山さんがなれば、減税の規模についても当然大綱は変わってこなければならぬはずです。いま急がせなければならないのは総理の指名であって予算編成作業ではないと私は思うのでありますが、そういった角度からお伺いいたしておりますので、いま一度お聞かせ願いたい。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 総理指名というものは早いほどいいというのはほんとうにお説のとおりです。池田総理は十分臨時国会にも出れる態勢にありながら、一日でも二日でも国会審議を制約するような状態になってはいかぬということで退陣をみずから決意せられたようであります。少し早過ぎたではないか、そこまで潔癖にしなくてもいいという世論があることは御指摘のとおりであります。しかしそのくらいきびしくみずからの責任感じたわけですから、これに対応して一週間、十日なんて言わぬできょうおきめになってもいいわけです。しかしいずれにしても公選をやっても最低二週間は要りますから、少なくとも党や国民周知の中でお互いに努力をしておるからきょうあすといわなくてもいいのではないですかという議論も現実論としてはあるわけであります。いずれにいたしましてもそういう政治的な動きの中で予算編成などやらぬでもいい、そこがなかなかむずかしいところですね。それはやはり法制上、憲法上から見ても大蔵大臣の権能、大蔵大臣の義務、国会——国会とは国民でございます。国民に対するやはり一番大きいのは財政の責任者である。これは国会議員の皆さんからも、財政、予算執行の上に立った来年度長期見通し、それはどんな場合においても大蔵大臣の国会に対する最も大きな義務でありますが、これを少し休め、こうおっしゃられるのは大臣をやめたほうがいいという間接的な御指摘かもわかりませんが、そうも考えたくない。そうでもないでしょう。ですからやはり私は有馬さんの言うことはよくわかるのです。お互いに政党人として考えればよくわかりますから、そういう大きな激動期にあって国民も注視しておる中でそんなばたばたいろいろなことをしゃべったというよりも、減税規模とかいろいろなことを申し上げても、これは税調からの答申を尊重いたしますと言っても、答申がまだ出てこないわけですから、出てくれば、私が幾ら希望的観測を述べてもそこでもっと調整をしなければならないということになるわけです。ただ米の値段をきょうぱっと二〇%できめてしまう、こうなるとそれは少し早いではないか、そういうものは新内閣誕生まで待ったらどうか、こういう御議論はよくわかります。しかし車中で多数の有能な記者諸君の追及もだしがたく逃げ切れないでついに記事になったということもあり得ることでございますのでひとつ御了解いただきたい、こういうことでございます。しかし私がおととしも去年もことしも述べておってもそれは国民の批判を受けるわけでありますし、国民がそれに対してマスコミを通じての政府考え方、現大蔵大臣の考え方、そういうものに対して的確な判断をされて、そうしてこの大臣だったらかわったほうがいい、次の内閣にはこういうものはやはり期待したい、同じ自由民主党の内閣でもきょうどれを優先するかあしたどれを優先するかという具体的なこまかい問題の取捨選択はあるわけであります。いろいろな政策の相違はあります。これはしかし大筋は変わらぬということであります。生産第一主義、分配第一主義、これが入れかわるかということはないのです。これは社会党と自由民主党の政策の相違でありますから、こういうことが全然変わってしまうというほどの政策の差はないわけであります。ですからそういう考え方でいましばらく予算の話などするなということであればもういたしません。きょうもお答えをしませんということになるわけです。そういうふうになるわけでありますから、そこはお互いに議論をしていくことによって国民の批判を受け、建設的な状態にあるわけでございますので、そこはひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  53. 有馬輝武

    ○有馬委員 私が言っておるのは、大臣の言われるように、政治的な空白をつくっちゃいかぬし、一日も停滞しちゃいかぬという前提に立っておるわけです。それと同時に、ことばのあやで大筋は変わらぬなどとおっしゃるけれども、これは変わることははっきりしておるのですよ、河野さんがなる以外は……。河野さんがなったって、これはある程度変わるでしょう。変わり方のニュアンス——それこそニュアンスの差で……。そういった際に、大臣はなかなか頭の回転が早いから、もう先回りして消費者米価の問題についても触れられたけれども、そういう大まかな問題については、これは当然やはり総理が最終的にきめるべき問題ではないかというぐあいに理解いたしておりますし、一日も空白をつくるなという大臣と同じ前提に立って言っておる。私は総理がきまらなければ、当然野党第一党である社会党の河上委員長に総理になってもらうのが筋だと思うのです。またそれだけの政策大綱もちゃんとでき上がっておりまして、それこそ社会党に渡していただけば、一日の停滞もいたしません。そういう意味でお伺いしておるのです。  そこで、きょうは答えませんとおっしゃった問題について若干お伺いしていきたいと思うのです。  その車中談でも、これはあとで堀委員のほうから詳しくはお尋ねがあるはずでありますから、そう突っ込んだお伺いをしまいと思うのでありますが、とにかく政策減税と所得減税についてフィフティー・フィフティーだというそのものの考え方の根拠についてお聞かせいただくと同時に、現在いわゆる明年度の増加財源、これを大体四千五百億円と見ておられるようでありますが、その根拠についてお聞かせいただきたいと思います。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 実際問題としていまから来年度の財源をさだかに予測することはむずかしい問題でございます。私も党でも記者会見でも大体そういうことを前提としてお話をしているわけでございます。まあ十二月の初めにでもなりまして時期が来ましたらひとつ申し上げます。こういうことを言っておったんじゃもう話が全然進まない、こういうことで、しかし過去の例に徴し、現在の歳入状況に照らして、実際実質経済成長率はどのくらいになっているんだ、名目成長率はどのくらいになっているんだと押されてきますと、大体こういうものさしをそのまま使えばこうなるということは言えますな、こういう話でございます。しかしそんなことはもう記事になるときには、来年度の税収四千五百億か、こういうことになるわけでございますので、これはひとつ十分御承知をいただきたいと思います。今年度の当初の経済見通しは、実質成長率七%、名目成長率が九・七%でございます。それが、昨年の十二月からことしの三月までにかけまして、各種の金融調整政策を行なって今日に至っておるわけでございます。生産も非常に高いし、輸入も高いというような状況が一部ございますけれども、全国産業の状態をしさいに検討いたしますと、さだかな数字をつかむわけにはまいりませんが、やはり名目成長率一〇%程度ということが想定できるわけであります。ところが、御承知の四十年度から四十三年度に長期展望をいたしまして、中期経済見通しというものを立てる場合に、いろいろな数字をはじいて、いろいろなデータを寄せ集めて、統計らしきものをつくって、中期経済計画の試算数字にいたしますと、やはり初めは七%ないし七・五%の実質平均成長率、名目成長率、とすると九%ないし一〇%という線でなければ押え切れないんじゃないかと考えておったわけです。ですから、私は、これは事務当局と数字を合わしたわけではありませんが、昭和三十九年度の予算審議の過程においての御質問にも大体そのようなお答えをずっと一貫して言っておるわけであります。非常に不確定数字でございます。しかしその後経済企画庁を中心にして経済審議会でずっと計算をしてまいりますと、大体私の言ったような数字に近いもの、私よりも少し高い数字が出るというように聞いております。これは七・五ないし八・一%くらいという数字でいかないとなかなかおさまらないのじゃないか、まあ高度成長、超高度成長といわれておった中に、体質構造上の大きな変化もあってやはり六%とか六・五%とか七%とかいうもので五年間の長期計画を立てられるような状態であるのかないのか、これは計算してみるとなかなかむずかしいという状態が出つつあるわけであります。そうしますと非常に苦しい。いまでさえも苦しいと言われておる中で、やはり名目一〇%の成長は遂げられておる、これ以上遂げる。昨年度一三・二%、この場合には引き締めをしなければならなかったという現実がございますから、結局いまの状態をずっと引き延ばしてまいりましても一〇%ということであります。ですからこの数字を来年度の予算の基礎になる経済成長率にそのまま移しかえて計算をいたしますと一〇%の成長率、今年度は二兆九千九百幾ら、まあ大体三兆円、ラウンドとして三兆円と税収を押えればいいわけです。これに一・五をかけまして四千五百億、大体そういうところが税収じゃないか、それは一昨年が四千三百億くらい、いま四千五百億、今年度が六千八百億、しかし六千八百億ですが、これは御承知の三十八年度の分も二千億ございますので四千七、八百億。その四千七、八百億から、五、六百億の減税の平年度化がございますので、成長率を計算しても大体四千五百億という数字がラウンドの数字として想定できる数字だ、こんなことでもって四千四、五百億でしょう、こう申し上げておるわけでして、確定的数字を出せということになればもう少したたないと出ないということになるわけであります。
  55. 有馬輝武

    ○有馬委員 いわゆる企業減税と所得税減税について、これはわれわれとしては意外な発言を車中で出しておられるのです。五〇%五〇%だ、どういう観点からそういうことばが出てくるのですか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 五〇%五〇%ということは、確定的に私が前から言ったわけじゃないのです。これはずっと車中一時間半くらいお互いが話し合いをしておって、最後のどん詰まりで、大体どのくらいになるのですと言うから、私もまあフィフティー・フィフティーかなということを言ったのです。これは記事になると、とっちめられるな、こう思ったのですが、いかんせん、出たものを出なかったとは、いやしくも私は答弁はいたしません。申し上げたことは事実でございます。これはちょっと変わったということでございましたが、それは私も確実にフィフティー・フィフティーにするという考えではございません。これはこういうことでございますからひとつ御了承をいただきたい。これからもきっと議論になるし、相当事件になる問題だと思いますので申し上げます。  一体税収をはじきますときに二〇%とか二五%天引きで予算が組めるのだろうか、こういうことをここ二、三ヵ月間ずっと検討してまいったわけであります。ところが、先ほどから申し上げましたように、経済成長率そのものが安定成長といいますか、そういった状態に入ってきて、税収というものはまあ千億、二千億というような——ラウンド一・五掛けたもの、要するに千億とか二千億とかいうものであり得ない、そういう状態が想定できるわけです。いよいよ税制、経済も本格的なものになってきた、しかしいまの制度上の欠陥といいますか、制度上は税収は水増ししてはならない、同時に過小評価をして出るであろうという補正財源等を留保してはならない、これは当然のことなんです。ですが、ほんとうに目一ぱい見積もってしまうと困るような、制度上の要請はございます。これはなぜかというと、好むと好まざるとにかかわらず、災害が起きれば三・五・二——昔は災害が起きても金がございませんから十年間でやります、こういうことだった。事実九年何ヵ月かかってまだできなかった災害復旧工事がございます。それに国会が業を煮やして三・五・二でやれ、こういうことになったわけです。初年度三、次年度五、三年目二の三・五・二しかもこれは絶対的な数字である。実際はそれより高い。なぜか。応急復旧、緊急災害復旧に対しては一〇〇%やれ、こういうことなんですから、実際の数字からいくと四ないし五をやらなければならぬ。ところが今度のように地震災害ということになると、半分橋をかけておくわけにはいきません。一ぺんにかけなければいかぬ。そういうことになると七〇%も八〇%も初年度、当該年度につけなければならぬ。そういう数字がきまってきましたから、いやおうなしに災害が起きると補正をしなければならぬ。もう一つは社会保障の問題でございます。これも薬とかいろいろお医者さんに行くと非常に便利でありますし、非常にいいのです。ところがその精算分は国に回ってくる。義務教育費の国庫負担の精算分もしかりであります。三月三十一日には市町村、府県が払うわけでありますから、この負担分はいやおうなしに精算をすれば国は自動的に払わなければいかぬ、計上しなければならぬわけであります。これはちょうど都市銀行の交換じりが日銀に回ってくれば、クレジットラインがあれば別ですが、ない場合は自動的に払わなければならぬ、決済しなければならぬ。それが設備投資の今日の原因になった。同じなんです。制度上そういうことがあるのです。ですから、これはほんとうに自然増収が何にもなくなってくる。それがノーマルなんだということになりますと、これはよほど考えてかからないとたいへんなことになるわけであります。その上になお減税をやろうというのですから、しかも長期五ヵ年間の継続減税をやろう、しかも天引二〇%、二五%をやろう、こういうことでありますから、これはなかなかたいへんなことではあります。できないことをできるように言って総評でも集まったらたいへんなことであります。ですから、これは深刻にものを考えるということは、財政責任者としては当然なことであります。しかもそれは自然増収の二〇%だから増収がなければゼロなんだ、こういうことにはならないのです。自然増収の二〇%というと大体四千億ないし四千五百億の二〇%を引いてそのうちの六〇%をかけてその二分の一は課税最低限の引き上げにやるんだ、知恵がありますからすぐこう逆算しますから、少なくともことしと来年度では六十一万円まで上がるな、こういう計算をして五年間上がらなかったらそれはたいへんなことになる。ですから、こまかい数字を計算してみますと、必ずしもいままでのような数字のはじき方ではいけない、こういう結論が出るわけであります。ですが、単年度主義だけでいっても困りますから、災害も予算は単年度主義であるけれども、災害に対しては三・五・二の継続を認める。同じようにせめて減税四十三年度にはどうなるというくらいのことをしなければなりませんでしょうなという、こういう気持ちをお話しを申し上げたのであります。それだけでなく、やはり四十三年になりますと経済が八%、八%でずっと伸びていきますと、日本の国民総生産が幾らになる、国民所得は幾らになる、現在よりも幾ら伸びますということがはっきりしてくるわけです。いままでの池田内閣自民党の所得倍増計画の中で一番の問題は資金計画なんです。産業資金計画というのがなかったのです。日本銀行の信用で幾らやる、外債で幾らやる、内国債を幾ら出す、公社債でもって幾ら調達する、資本市場の拡大強化によって幾らやる、こういうことを全然考えないでどかどかとやってきたわけです。そして逆なことを言っておったわけです。金融の正常化をやれ、オーバーローンの解消をやれ、オーバーボローイングの解消もやらなければならぬ。自己資本比率を上げなければならぬ。しかし税制上の優遇は税の公平の原則を害する。こういうがんじがらめにしておって、経済成長だけは相当強めてやる。ですから自己資本比率は二三%に落ちた。二三%に落ちて毎年倍増、倍増の増資をしなければならないような実体でありながら、六千億の増資はストップ、たな上げしなければならないような状態です。そうでしょう。ですからこれでは困りますので、やはり中期経済計画をやるときには産業資金調達のバランスというものは十分考えなければいけません。そういう場合に国際競争力とか何とかいうよりも、開放経済になってしまって、じかに国際経済の波動はわれわれの生活に影響をもたらしておるわけです。ですから議論もさることながら実質問題で、これはお互いが何かするときには集中的にやらなければならぬとしたら、あるものが犠牲になっても、結果的にその犠牲を取り戻してなお余りあるということもあるので、戦争のときにどうやったからというのでなく、現在経済戦争とも言うべき状態であります。ですから国際経済戦争に勝つということが国家的に要請せられることであり、避けがたき事実であるならば、これに対応する税制上の措置をとることもまたやむを得ない、こう申し上げたわけであります。それではどうも大臣の話を聞いているとわれわれが考えている所得税減税ということは圧迫されますな、こういうことで、圧迫はしたくない、私も絶対的所得税減税論者である。しかしその相反するというか、とにかくいずれを優先するか、非常にタイミングの上ではむずかしい問題を、両々相まって両立させていくためにはどうするか、やはり四十三年くらいの長期税制の上で減税を考えて、少なくともいま六十万円、六十万円と言いますから、四人標準家族六十万円か、六十一万五千円か、六十五万円かわかりませんが、最もいいものをひとつ四十三年にはこうやろう、四年間で割ると年間幾らずつ上がっていくということであります。それとあわせて日本の経済をつくるために必要な、俗に言う企業減税と言いますか、政策目的を達成するために、あえて行なわなければならない税制というかもわかりません。そういうものもあわせてやるという考え方でいく以外にないじゃありませんか。そうするとそれは一体七、三はどうなるのです。六、四もだめですか、五分五分の議論じゃないですかと言うから、まあ五年間を通じてどうしても二つともやらなければならないのだ、片一方だけやっても国民の利益は守れない、両々相まつところによって初めて国民の利益は守れるのだというならば、あえてフィフティ・フィフティの減税でもいいじゃないか。五割、五割ですな、フィフティ・フィフティとは五割、五割になります、こう答えたのであります。まあそこはなかなかむずかしいところでありますから、これから税制調査会の答申も出まして、その答申を尊重しながら、政府が来年度はどれにウェートを置く、再来年度はどれにウェートを置くか、財政上の調整もございますので、新聞記事だけに拘束を受けるということだけでなく、それはもちろん世に明らかにした政治的基本姿勢に対しては、大いに責任は持ちますが、かたくなな気持ちではなく、実情に合うような、より合理的な減税政策を立てたい、こう思いますので、ひとつ御理解いただきます。
  57. 有馬輝武

    ○有馬委員 全く理解できないのであります。それより前に、たまたま災害の例を出されましたので、これに関連して大蔵省並びに文部省にお伺いしたいと思ういでありますが、二十号台風で被害を受けた種子島に、本日初めて大蔵省と文部省から視察に行っております。来ていただくのはけっこうなんですが、たとえば全壊した校舎をそのままにしておけ——一日もゆるがせにできない教育を、大蔵省や文部省何を考えているかと思うのです。そして吹っ飛んだかわら、こわれたかわらの正確な数字をつかまなければならない、大臣はそういった指導をしておられるのですか。そこら辺について関係局長から明らかにしていただきたい。
  58. 岩田俊一

    ○岩田説明員 災害復旧の早期査定につきましては、これは今回の二十号台風の場合に限らずすべての場合についてそうでございますが、応急復旧を要するものは直ちにこれをやるように、それからその他の場合の復旧につきましても、早期復旧については必要に応じて着手するようにという指示をいたしております。その場合、財務局との共同査定をいうことがございますので、関係方面に連絡して、その上で直ちに着手するということをかねてから一般的に指示してございます。
  59. 有馬輝武

    ○有馬委員 私が言っているのは、あなた方のそういう指示がちっとも徹底してないということなんです。学校の校長や教頭が、このままにしておかなければいけませんのでといってほったらかしてある。それを一月以上もほったらかしておいて、いまごろになってから視察に出かける。その性根がどこにあるのかわからないからお伺いしているのです。指示が悪いのか、またその文部省のでれっとした態度にのこのこついて行く大蔵省大蔵省だ。どういうことなんです。
  60. 岩田俊一

    ○岩田説明員 ただいま申し上げました財務局のほうとの立会ということがございます関係上、現場確認をできるだけ確実を期するために、あるいは県のほうでさようなおもんばかりをした結果そういうような応急措置がおくれるというような事態になっているかと思いますが、こういう点につきましては、私どもさらに指示の徹底を期したいと思っております。ただ災害後、いまごろ出かけるというようなお話がございましたけれども、公立学校の復旧につきましては、今度の災害で見ますると、十九件、約三千五百校にわたっておるのでありまして、それらの各学校について一つ一つ査定していかなければならぬという数量の多いこと、それからもう一点は、学校の復旧につきましては、公立学校施設災害復旧費国庫負担法の規定によりまして、いわゆる改良復旧、木造であったものを鉄筋コンクリートづくりにするということも積極的に認められておるのであります。そういう関係もありまして、この復旧に際して地元の計画はどうなるか、全額国庫負担ではないわけでございますので、やはり地元もそれなりの考え方がございまして、復旧に際してどういうような復旧のしかたに持っていくかというその復旧計画が出てまいりませんと、国の査定ということは行なうことができないわけでございます。これは復旧計画をそのまま計上するのは問題はないのでございますけれども、地元の計画に合わせるということで従来から行なってきております。そういう関係で、私どもも、県を通じまして、あるいは直接市町村に対しましてできるだけ早期に復旧計画を立てて持ってきてくださいということをお願いしているわけであります。その計画がまとまりまして、その三千五百校の分がまとまりましたのがこの十月の二十日でございます。それに基づきまして出かけるわけでございますので、今日まで相当時間をとったわけでございますけれども、今後ともできるだけ復旧については迅速な手が打てるように努力したいと考えております。
  61. 有馬輝武

    ○有馬委員 幾ら大蔵大臣が渋くても旅費くらいちゃんと出してあるはずなんで、災害直後に行って、あなた方の指示が徹底してない部面があるならば、こういうことなんだという指導をすることこそがあたたかい行政じゃないかと私は思う。そういった面、ギャップを埋めていくのがあなた方の本省各庁の責任じゃないですか。新潟のときだって、私も直後に行ってみた。国民が行政府に対して不満を持っている点はそういう点なんですよ。査定の資料がそろわないなら、その後もう一ぺん出かければいい。この点は今後厳重に注意してほしいと思います。たまたま大蔵大臣から災害の問題が出たので、関連してお伺いしたんだけれども、こういったことは絶対に許せないことです。あなたには終わります。  いま大臣の答弁の中の減税の問題でありますが、たとえば例に出された六十万円までというものを、大蔵省では一年間でやろうというのを、これを三年に延ばす。一方ではそういうことをやりながら、政策減税、企業減税をやるのだ。そのウエートの置き方に——どっちも必要なことはこれは何だって必要ですよ。そのウエートの置き方が違うのじゃないか。それこそ国民の総意に沿わないで、ただ一部の、ほんとうに一部の者の意見に即したものを、フィフティ・フィフティだというのはおかしいじゃないかという立場からお伺いしておるのです。  それといま一つは、これに関連して参議院のほうとの時間のことを私は考えながら、まだ序論に入ったばかりで残念なんですけれども、いずれ予算委員会でまた詳しく伺いますが、私は、いまあげられた高度成長政策のアキレス腱というのは物価問題だと思う。それで特にこれは対外的にも、たとえばアメリカの忍び寄るインフレーションというか、クリーピング・インフレーション、それに乗っかった形で、この物価問題というものが非常にどえらい風に吹き飛ばされるぞということがわかっていながらやってきたその結果が、たとえば昨年のドル防衛による利子平衡税の問題で、立ちどころに馬脚をあらわしておるわけです。そういう意味では、この高度成長政策のアキレス腱でありますこの物価問題について、またまた大きな失敗をやろうとしているのではないか、こう見ざるを得ないわけです。少なくともこれは基本方針だけ、冒頭での大臣のそのものの考え方に従ってお尋ねをするのですけれども、一年間の公共料金値上げストップ、これに対して時間切れがきておるわけですが、どのようにされようとしておるのか、この点をお伺いしたいと思うのです。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどの減税の問題、ちょっと申し上げますが、私は三年間ぐらいでせめてやりたい、こういう前向きの姿勢を出したのですから、これはひとつ誤解いただかないようにお願いしたいと思います。
  63. 有馬輝武

    ○有馬委員 六十万円までのものは一年でやるということですか。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっとお待ちください。それはまだ六十万円までやりたいという気持ちがみんなあっても、なかなか何年でやれるのか、これは相当大きな減収が立ちます。いまあなたは一年間で大蔵省はやるということを言っておるのに、大臣は三年間と水をかけて——そんなことはありません。一年間でやるのは幾らか計算しなさいと言ったら、千五百億の財源が要ります。それじゃ一年でできないねと言ったら、主税局長は返事をしませんでしたけれども、千五百億ではやれる状態ではないということが常識でございます。ですが、それを一年でやるのか、一年半でやるのか、三年でやるのか、五年でやるのか。これは税調の答申を待ちながらわれわれも十分考えることでございますから、私は、どんなにおそくとも三年間で六十万円以上には課税最低限を上げたいねと、ほめられると思って言ったのですが、ばかに逆におとりになっておる。これはひとつ事情はそういうことでございますので、御了解いただきたいと思います。  公共料金の問題につきましての前提は物価問題でございますが、私は物価問題に対しては、ほんとうに政府も国民も取り組まなければいかぬ。しかも物価問題というものに取り組むことは政府だけではなく、国民全体が政府を叱咤勉励をしてやってもらわないとなかなかできない問題である、こういうことでございます。その中の一つが公共料金のストップでございます。しかし公共料金のストップもその有力な手段ではありますが、世界的に見て、物価の抑制というものに対して一体どういうことをやっておるかということ、一番きくのは貯蓄増強であります。とにかく金を吸い上げる、しかも健全な状態において貯蓄をする、これが物価抑制の一番の的確な施策である。これだけはいなみ得ない事実であります。ですから、イタリアなどは、いかにして貯蓄を推進しようか、これによってコストインフレ、物価を下げようかということに全く寧日ない状態であることも御承知でございます。戦後の昭和二十三、四年から五、六年にわたって日本が非常にインフレに悩みながらとってきた政策これも御承知のとおりでございます。ですから貯蓄増強それから奢侈消費、経済に直結せざる不要不急とでもいいますか、こういう部門に対する投資を抑制する、これも当然でございます。  それから第三には御承知の公共料金の抑制、こういうこともあるわけでございますから、そういう意味で、やはり相対的に考えればもう貯蓄性向は限度一ぱいでございます。貯蓄などはとてもできるものじゃございません、しかし物価は上がるから賃金を上げなくちゃいかぬ、こういう考え方だけを前面に出しておると、なかなか物価抑制ということはできないわけであります。これは歴史の示すとおり、世界各国がやっておるとおり、やはり勇気を持って各般の施策を総合的に行なうということが物価抑制に対しては一番きき得ることでございます。しかしまたその中のたった一つのものである、ぽんとやらなければならない施策の中の一つの、公共料金の抑制さえも堤はまさに切れんとしておるという御指摘でございますが、これは確かにそういうことでございます。はなはだ遺憾でありますが、十二月一ぱいということでありましてそのうち米の生産者米価引き上げに伴って消費者米価は上げなければならぬということは、それはもうほんとうに私もそう考えております。これは上げないでおりますと財源が足らないということが一つ。足らないから上げるのか、それだけじゃありませんが、減税財源などということとこれは対比して考えられる。米の値段は毎年上げるわけじゃないのです。米の値段を一年間二〇%近く上げることによって三ヵ年間継続の減税計画も同時にきまる。そういうことがなかなかむずかしい状態にもございます。それと次の問題としましては食管制度の問題そのものにもなる。これはまじめに私は考えております。私も新潟県の出身でございますから新潟県の選挙民の諸君などは来ますが、われわれが生産者米価を引き上げるとそれによってわれわれのところから都会に出かせぎに出てきておる人たちの消費者米価が上がるということは実際心苦しい。しかしそれを上げないでおいて食管制度がこわれて元も子もなくなってしまう、こういうことになるとたいへんですから、食管制度というものの中での可能な操作ということになります。生産者米価との関連、これはわれわれも十分責任を持つわけでありますから、そういう意味で消費者米価を考えてほしい、こうも言われておるわけでありまして、どうも諸般の情勢を考えて米の値段を引き上げないというわけにはいかないと思います。  その次には、鉄道が今度二兆九千億くらいという非常に大きな倍増計画をやっております。これに対して運賃でまかなうもの三十何%といっておりますが、私もこれは大宗としては、大きな鉄道の投資が行なわれる場合当然経常収入の増大によってまかなうべきものでありますから、これは値上げは必要であるというふうに考えます。しかしこれは直ちに米と一緒に同日を期してやるのかというと、そういう考えではございません。これは堤を切ったようにせきを切ったように、これをやったらその反動というものはたいへんなことでありますから考慮しなければならない。いつまでも同じ路線を走っておる公営のバスに対して金繰りをつけてやると同時に、民間に対しても税制上また財政金融上やれるわけはないのです。そういうものを無制限にやっていけるということはないわけでありますから、料金収入と企業の合理化でまかなっていく、こういうことでありますので、これは値上げも不可避であるということもあります。しかし不可避であっても、どれを優先しどういうふうな順位でやるか。しかもその中の幾つかは絶対的に値上げをしないというふうな新しい制度で吸収をしなければならぬかというような問題も十分検討していくべきだというふうに考えておるわけでありまして、これはたった一つ上げるにしても国会はたいへんなことであります。国会の御審議を願い、御賛成を願うということに対しては、政治の上で最大の関心事であるということを承知しておるわけでありますので、安易な値上げをやるという考えはごうまつもないということをお考え願って、せめてその気持ちはわかるがこっちのほうを先に上げたほうがよりベターだぞという御指示がございましたならば御高説をお聞かせ願いたい。これは国民的な知恵を結集して、どれを優先すべきだ、どれは財政投資でまかなうべきである、どれは税制によってまかなうべきである、こういうものは民間に払い下げるべきである、そういう手きびしいものの考え方でもってぴっちりと結論を出して、しかる後に値上げやむを得ないものに対しては踏み切る、このくらいな考えでございますので、御了解を賜われば幸いであります。
  65. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は先ほど池田内閣の高度成長政策のアキレス腱は物価問題であると申し上げましたけれども、現在日本全国津々浦々、新潟の片いなかでも、私のところの種子島のはてでも、国民の怨嗟の声というものは物価問題に集中しているわけです。その物価問題について——いま大臣が言われるように、これは国民全部の問題です。その意を体して政府がやらなければならない一番大きな政策です。そしてそのかなめとなるものは公共料金だ。それについてとにかくずっと見ておりますと、今度は私鉄もやっていけそうもなさそうだから私鉄運賃の値上げも認めてやろう、今度は食管特別会計の赤字がほかのすべてを圧迫するから消費者米価の値上げだ、そういう形で、これは主婦連のおしゃもじに対する挑戦じゃないのです。国民全体に対する池田内閣、後継内閣の挑戦ですよ。いま食管特別会計が危殆に瀕するということをおっしゃった。私も食糧庁で育ってきた人間ですからその事情についてはわかる。しかし私はこの物価抑制というような大きな命題の中で、食管会計を現状維持していくためにはどうかということと同時に、食糧管理法の根本精神に立ち返ってこの問題を見詰めるべきだと思うのです。決して生産者米価が今度一万五千一円が高過ぎたのじゃない。これは大臣も御承知のとおりです。それと同時に、大蔵省ではたとえばきのうの与党に対する説明の中で、家計負担に対する割合が、消費者物価指数に占める配給米の比重は七・二五%で、二〇%の引き上げを単純に換算すると消費者物価は一・四五%の上昇となるとかなんとかいうような、ほうとうに単純過ぎる説明をしておる。ここに問題があると思う。物価政策は完全にくずれていくじゃないですか。それをどうされるのかということを聞いておるわけです。これは単に低所得者層に対する問題じゃないですよ。おまけに、つけて加えて、こういった大きな誤りをおかそうとしておりながら、さらにそれに輪をかけて徳用米とは何ごとですか。田中さんはにっこり笑いながらやるから池田さんよりなお人が悪い。まだ池田さんのように貧乏人は麦飯を食えというほうが許せると思う。徳用米とは何ということですか。五等あるいは等外、準内地米、とにかく食えそうもない米を貧乏人は食いなさい。何ごとですか。それも一〇%上げるのだ。この性根について聞かせてください。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 徳用米計画というのは、私のほうでは米の専門家じゃございませんから、あなたは専門家だと言われましたが、私はよく知らないのです。これは食管会計は共管ではございますが、こういう技術的なほうは農林大臣が専管のようにやっていらっしゃる。だから農林大臣から、米をやむを得ず値上げをしなければならないとしても、低所得者にはできるだけ合理的な安い価格、できれば現行価格に近いものでもって配給できるような、需要を満たしてやれるようなものを専門家として考えろ、こういう言明があったわけであります。それに対して私のほうでは考えられないので、食糧庁のほうで何か知恵がございますか、こういうことでおまかせしたわけであります。私も、戦時中の名前のような特配米とか供用米とかよりもっといい名前があると思うのです。名前だけがよくても内容が悪ければたいへんでございますから、名前もよく内容もよくというものを食糧庁でお考え願う、それに対しては私もいろんなことがあって、無差別で——これは差別をつけて、何か配給通帳のようなものを持ってくれば一番いいのだと思いますが、なかなかそんなことは、子供もあるとかいろんな状態から考えて、そういう差別的な、あるいは低所得者でありますから同じ米を安く差し上げましょうというようなことをとるべきじゃない。もっとすなおな気持ちでもって低所得者対策はやれないかということで、いろいろ検討はさしたわけであります。でありますから最終的には、いまよりももっといい状態——ただ、何も制限がなくてやると、それじゃ業務用米というようなものの差別は一体どうなるか、この人たちは幾らでももうかる。実際のことはどうか知りませんが、制度の上では非常にいいけれど、この制度を続ける限り米屋さんばかりがもうかる。私はどういうふうにしてもうけるのかあまり専門家じゃございませんからわかりません。だから食糧庁でもってそういうことを言う話を聞くと、なるほどそうかなと思うようなこともあります。ですからそういうことはいろんなことに目張りをしながら、しかも低所得者に対してはとにかく影響をできるだけ押える。社会政策をあわせて行なう。こういう姿勢を出しておるわけでございますので、御注意その他十分検討をいたします。ただ、そんなことをするよりも上げなければいいのだ、こういうことが一番簡単であり、一番わかりやすいことばでございますが、財政責任者となって、あなたが先ほども言われたように、二十号台風と言わず、新潟の災害を見ても、全額をいまでも出してやりたい、こういうこともありまして、いろいろ国民側に立った歳出の状況を十分考えますと、低所得者には安い米をやりたい、しかし車に乗って酒を飲んで、車がぶつかるまで飲もうというような人にまで米を安く提供することもないじゃないか。いろいろと苦慮した結果、もっと合理的な方法はないか。ちょうど国の財政負担をもう少し合理的に調整をすることによって、より的確に国の力でもって措置しなければならないところにウエートを置いて、減税とか社会保障とか、それから低所得者対策とか、必要対策とか、私はやる仕事がたくさんあると思うので、そういう立場からせめて全部を補てんしないというのではなく、まあ二千億のうち千億ぐらい、せめてその値上げによってカバーさしてもらえないか、これは切なる願いでございます。しかしたびたび御発言もございますから、これは最終案をきめるまでには、より慎重に各般の状態考えて、まあこの段階ではやむを得ないであろうということを言われるぐらいまで徹底的に検討いたしたいと思います。
  67. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの大臣の御答弁からすると、池田内閣並びにだれがなるか知らぬけれども、その後継内閣は、物価問題については手を上げた、国民の悲願である物価問題についてはノーズロなんだということを明らかに告白されたものとしてきょうは受け取っておきます。それと同時に、やはり低所得者層にはむしろ特選米なりモチ米なりを安くして配給するというのであればまだ話はわかる。それと同時に、大臣の大阪談話で、一般会計予算のワクは三兆六千億か七千億になれば成功だ。その中で、せめてということばを使われたけれども、せめて二千億というものは食糧管理法のたてまえからして——食糧管理法というものは私が申し上げるまでもなく、大臣が一番よく御承知なんです。そのための農民、消費者に対する支出としては決して私は高過ぎる支出じゃないと思う。そういった立場からいまの点をお伺いしたわけです。  一時半までなのに、堀委員もおられますので、まだ序論に入ったばかりですが、いずれ予算委員会なり機会をあらためてお伺いしたいと思います。
  68. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 堀昌雄君。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が参議院で約束がありますから、ちょっと予定を変更して時間内で終わるようにしたいと思うのですが、この間山際日銀総裁との間で大蔵大臣は懇談をなすって、証券対策等について何か二、三話し合いをなすった結果を新聞紙上で私拝見をいたしました。あの要点をちょっと簡単に伺っておきたい。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀総裁が西南太平洋でございますか、ニュージーランドへ出かけられる前に、ごあいさつに伺いたいということでありましたから、お待ちいたしましょう。いままで日銀総裁と私が会うときにはどこかへ隠れて会ったり、つまらないことばかりしておる。こんなことはいいことではない。場合によっては私が日銀に伺ってもいいし、日銀総裁が場合によってはおいでになっても一向差しつかえない。それは職権を侵すものじゃないかということを考えているところにものの間違いがある。経済とか財政とか金融という問題は、国民はその時点、その時点で命をかけてやっているから、財政金融責任者というものは自分立場だけ考えて、それが昔からの伝統ですなどということは顧慮する必要はない。新しい姿勢をとるべきだ。そういうことでありますから、ちょうどおいでになるということなら、私もお会いしたがったから、ちょうどいいからお話ししましよう。もしおいでになるなら、こっちも次官とそれから銀行局長を同席させますから、副総裁もひとつ一緒においでになりませんか。いなくなれば当然総裁事務代理以下総裁代理がおやりになるわけですから、そういう意味でお会いします、伺いましょう、こういうことで当日の九時でございましたか、しかしその前日池田総理の御承知の引退声明という、非常にむずかしい事態を迎えた翌日でありますので、時間的には非常によかったと思います。そういう意味で、国民に対してもこの時期に際して財政金融政策の姿勢を明らかにして再確認する必要がある、こういうことでございました。特にこういう事態のときに日銀総裁が二週間も出られるということ自体が、政治責任を追及されることにもなるかもわからぬ、しかしそうでなくて、お互いに十分情勢を判断し、留守中に際しては十分の意思の疎通をはかり、合意に達していれば、あなたが二週間おられなくても一向差しつかえない。こういうことが了解されれば私はプラスになるということを前提にして会談をしたわけでございます。ですから儀礼的なものよりも、ある程度の問題を前提として討議をいたしたわけであります。それは新しいやり方といってもいいと思います。それに対しては、一年間の引き締めを行なっておる、しかしその引き締めのときと変わっておらないのは、アメリカの利子平衡税の問題だけである。あとは国際収支が先行き不安であるという問題に対しては、経常収支はバランスをする、貿易収支もバランスをする、一−三月の輸入期といえども経常収支はバランスする可能性もある。そうすると去年あたり証券市場が落ちつくとか、それから金融の引き締めということが解除できるというような事態は、こうなればやります。しかも私の再任七月の十八日の一週間ばかり前、日銀総裁は、もう今日の段階において必ずしも引き締めを行なう必要はないとさえも言われたときの状態から比べてみると、非常に数字がよくなっている。にもかかわらずこのごろはいつまででも引き締めるようなことを言っていることは、何か国民に対してめどを失わせるような気がいたします。その意味で情勢判断をしたい、その意味でまず総体的に見まして金融調整はこれをゆるめる段階ではないという表現は一応いたしました。もう一ぺん再確認をしましょう。ただ金融調整とか金融解除というものが、過去のように一斉に公定歩合の引き上げを中心にして、ちょうどオリンピックのスタートのようにピストルを撃ってさあっと幕を締める、それを解除するときも、号令が出るような状態でさあっと一斉に解除する、今度はそんなものにはならぬと思います。  ですからこれは金利の一つを考えてみても、アメリカが利子平衡税は絶対に一年度の時限のものですと言っておったものが、今日ではこれを恒久法とせざるを得ないかもわからないということさえも平気で言っておるのです。同時にまたイギリスはあのような状態を私たちもまあ懸念しておったわけです。IMFの十億ドル引き出し、スタンドバイの取りくずしを中心として各種のあのようなものは、IMF総会の前後から私たちも検討しておったわけですから、そういう状態を全部見てまいりますと、必ずしもそういうやり方ではいかぬと思います。特に経済が正常な段階に入っておるんだ、これよりも引き締めるということは可能ではないような気がします。同時に現在名目一〇%というものが、これをはずして一三%、一五%にできるような状態にもない。案外われわれが考えておった実質七、八%、名目九%ないし一〇%という理想の姿に、もうすでに現在入っておるんじゃないか。にもかかわらず一部には不況感がある。一部には倒産相次いでおる。これには月例経済報告とか、日銀と大蔵省の毎週の打ち合わせとか、そういう数字に出てこないものがあるのじゃないか。それは信用流通の何分の一かは融通手形だという実態が糾明されておらぬ。事実そうであるなら手形法の改正ということだけではなく、現実的にそれを打ち切るにはどうするのか。中小企業に対して八百億、民間を全部入れて三千億とか五千億とかいうことで数字は非常にりっぱですが、どうも金融梗塞状態ということを考えますと、このように幹部にだけ金を入れるということが、はたしてこれでいいのか。かつて重電とか造船とか鉄鋼とか肥料とか、上から流すことによってようやく年末わずか十日間、十五日間の短い間に、金融梗塞を解いて倒産を防いだこともあるが、そういう実態を考慮する必要はないか。いろいろな問題があるので、日銀の窓口とか財務局の窓口とか、それから金融機関だけの統計とか、そういうものにはたよれないもっとむずかしい複雑な経済、財政、金融上の問題があるようでありますので、ひとつ第一の状態として、金融調整をはずす段階ではありませんが、少なくとも窓口規制というような問題、それからオペレーション制度、これらの問題については偏在しておる金を正常にする。金の流れというものがどうも正常でない、不正常だ。こういうことによっていろいろな障害が起きておるとしたならば、これを正常にするということ。いわゆるひずみの解消も調整過程において相当大きくやるのだ。  ですからその意味で証券に対して金を出すということ自体も、日銀も非常にいやがっておられるようですが、いわゆる日証金を通じてとか、いろいろな問題に対していやがっておられるようですが、議論ではなくて浮動株を集める。増資はやめる。しかし十一月の一日に配当支払いを行なうのですから、この金を日銀がお出しになるのですから、日銀がお出しにならなければ、手持ち証券、いわゆる相持ち証券をやはり市場にいかなる方法か何かで出して金をつくらなければならぬということにもなりますし、それから十二月から一−三月に対する手形のサイトが逆に二ヵ月延びるということになれば、これは下請に対してたいへんなことになります。そういう問題を実態的に全部調査になっておるのですか。銀行局との間に全部企業別にそういう事実の数字をつかんでおりますか。おらないとしたなら、やはり少なくともそういうものに対しても十分な配慮をして、増資に対してのつなぎ資金を出すということだけでなくして、これから十月の配当、十一月の換金売り、ボーナス時期の換金売り、こういうものを全部考えて証券対策イコール合わせて年末金融、期末金融の政策を立ててもらわないと非常にたいへんだと思います。財政金融はそういうふうな一体的な関係でお互いに考えたいと思いますが、どうですか、こういうお話をいたしました。いろいろ議論した結果、確かに新しい考え方、そういう状態であろうと思います。だから全部引き締めたり全部解除したりというような考えが正しいものだとは考えておりませんし、われわれ自体も、クレジットラインを変更しなくても弾力的運用でやりますという姿勢はできるだけかたい姿勢をとっても、現実的には弾力的運用、その過程においてひずみの解消をはからなければならないということに対しては全く意見は違いません。こういう問題がずっとございまして、お出になっても一向差しつかえございませんでしょう。日銀総裁及び副総裁、銀行局長は十分連絡をとりながらこのむずかしい事態に処して、国民の中に一人でも犠牲者を少なくするように、犠牲者を出さないというくらいのつもりで財政金融政策をやるようにということで合意に達したということであります。でありますから、比較的にいままでは合意に達してもしゃべらないというのを——私のほうではたいしてしゃべらなかったのですが、日銀総裁のほうで記者会見をして、非常に前向きにお話になったということでありまして、今度は日銀総裁と大蔵大臣との間はうまくいったのだなあというようなことが二、三入ってまいりましたから、大体そのような状態で非常にすなおな気持ちでお互いが意思の疎通がはかられたということで、結果としては日銀、大蔵両当局の考えに相違はないということでございます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私どもが新聞紙上で拝見をしておりました内容とほとんど同じであります。私はやはりこれは金融引き締めの解除のスタートだと理解をいたします。なるほど時期的に年末という問題が一つきますから、年末金融というのは——このあとでおそらく皆さんいろいろ御議論が出ると思いますけれども、特に日本のいろいろな過去の慣習からして、いろいろなものの決済を年末にかけてかなり集中的に全体が行なう風習がありますから、この時点において非常な金融の逼迫が避けられない情勢が確かにありますから、その点についての年末金融という特殊的な問題と、それからもう一つの金融引き締めの解除のスタートという問題と、これは重なっておりますから、いずれに比重を置くべきかという点に問題がありますけれども、いまのお話の感触を伺っておりますと、どうもその年末金融の問題というよりも、大体金融引き締めのなしくずしの解除のスタートとして私は一応理解をいたします。そのことは今後の経済状況の変異の中でどういうふうに評価されることになるかわかりませんが、確かに金融引き締めというものはかなり浸透をしてきたことは事実でありますし、これ以上に倒産等が進行することは必ずしもわれわれも歓迎するわけではありませんから、その点はいいのでありますが、いまのお話の中のたとえば十一月の配当分を捻出するために、相互の持ち合いになっておる株を売るような場合には、それはひとつPOのようなかっこうで共同証券で買えというような何か発想があったようなふうに、実は新聞紙上では拝見しておる。これはやや筋違いなのではないか。もしそういうものがあれば、これは金融サイドの問題として処理がされるべきものであって、それをわざわざ持ち株を売ったものを共同証券で買うなどというような複雑なコースにたよるというのは、私はいかがなものであろうか、こういう感じがするのでありますが、その点について今後のそういうやむを得ざる決算対策上の処理の問題は、これは金融サイド上の問題として処理をするということをはっきりしておかないと、これはちょっと問題があるのじゃないか、その点はいかがでしょうか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 これも非常に重点で、私が解明しておかなければならなかった問題に対して的確な御質問でございますから、この際明らかにいたします。  まず第一番目の問題の弾力的——私は合理的という表現を使っております。これは日銀当局が引き締めと言うことに対して、私が金融調整ということを一貫して言ってきていることと同じニュアンスの差だと思います。弾力的、合理的、こういうことを言いましたのを引き締め解除の一つのスタート、こういうふうにおとりになった。これはそういうふうにおとりになってもいいと思います。いいと思いますが、これは必ずしも金融調整が解除するスタートということよりも、私は金融調整とか金融政策そのもののニューモードだとこう答えたわけです。新しいあり方はこうあるべきなんだ。がたんとドラスティックに解除する、ドラスティックに引き締める、こういうことを画一、一律的にやるのは無責任なことであり、その過程において非常に多くの摩擦が起きる。摩擦が起きないようにという考え方をこれから十分考えなければいかぬ。金融家も、われわれは金融上の専門家であって産業人でありませんから、当然起こり得る金融調整の過程において影響が起こると思うならば、それは産業人がみずからそれを考えるべきだというようなことでは金融政策になりませんぞ。金融政策というものが非常に重要であるだけに、やはり産業人の立場にもなって産業の実態を十分顧慮しながら金融調整は進めるべきであって、できるだけ過程における犠牲は少なくなければいかぬ。これが新しい、これからとらるべきオーソドックスな調節機能だと私は思います、こういうことを申し上げたわけでありますから、そこは受け取り方、認識のしかたの相違でございますのでたいしたことではないと思います。またあなたがそうおとりになっても、私もまあスタートです、こう考えてもたいした間違いではありませんと言ったって、それが大いに景気刺激の端緒になるというほどのこともございませんから、私もあえてこう申し上げておるわけでございます。しかも、ただ非常にきめこまかくやらなければいかぬというのは、画一、一律的なものよりも内容、これは大蔵省があまり資金統制的なものをやってはいかぬ、日銀も都市銀行や地方銀行にかわってこまかく銘柄別に締めてはいかぬということは理想ですが、何でもなくかまわずに、あなたのクレジットラインはこれだけですとつかみ金をやる。どこもここも必要なところも二割減、必要でないところも二割減では困るのですよ。やはり内訳の中まで多少は入られて自主性を侵さない程度に、そこにオペレーション制度もあるんじゃないか、こういうことまで言ってあるわけでありますから、これはただ端的にニューモードだからといって、マイナス面を全部そのままにして新しい方向にいこうという考えでないということだけはここで明らかにいたしたいと思います。  それから第二点のきめこまかくという中に、そうしてまた将来の政策にもつながるような生きた金を使わなければだめだと思いますよというところから出てきたたとえばの問題の中に、いま証券対策をやらなければいかぬ、また公社債市場の育成もやらなければいかぬ、金融の正常化もやらなければいかぬ、こういう二兎も三兎も五兎も追っていきながらその中でやはり多少伸びかげんの状態をつくらないと年末は越せない。こういう中で一番大きな問題は、いまの市場にある浮動株を千億ぐらい買い上げる、二月後の増資はある程度抑制する、これに対しては金は出します、こういうことなんですが、もう一歩進めてみますともっとむずかしい問題がある。それは二十年の歴史でやむを得ず今日まできておりましたが、市場にある浮動株の前身は何か、それからいまの市場圧迫の一つの要因になっておる投信の株は一体どうなのか。あれは無制限に投信でもって払い込んできたわけじゃない。それは機関投資家がある時期に持ち合い株式の状態で今日圧迫になるような株式ができてきたわけです。それで本命であるところの増資さえも抑制しなければならないような状態になっておる。まだそれを、水ぶくれといいますか、両者でもって減資をすれば簡単に済むというものが減資ができないというのは、それを使ってやはりボーナス月に年二回金繰りに使ってきた、暮れとお盆の資金決済のときの金繰りにも使ってきた、二回の配当金にも使ってきた、年に六回か七回この株が市場に出ることによって市場も相当混乱をしたということはいなめないことであります。ですから一面において証券市場の育成もやっているんですから、これを将来どうするかは別にしまして、十一月や十二月の過程におきまして、金を見てやらなかったために持っている株式を不動産が換金できない間だけ——つなぎでございますが、その間相当な株式が市場に出て、共同証券で買ったくらいのものは飛んでしまうということになるとアブハチとらずになりますから、そういう実態も産業界との間に十分調整をして日銀は考えてもらいたい、こういうことを言ったわけなんです。ですから共同証券というものが、私は必要であると思わぬが、将来どうしても必要であるというなら、これは市場圧迫にならないようにしてやらなければいかぬ。その場合は、いま市場が集めたものは共同証券の一部のたな上げ銘柄であり、また増資調整があって、やむを得ず共同証券が買い取り引き受けたものはたとえば共同証券の第二部で取り扱い、企業が相持ちしているものを今度はずっと安定株主として持っていくというプール機関的な面が必要であれば、共同証券のたとえば第三部会だというようなことも、夢のような話だが考えられないことはないでしょうと、私は将来を見て多少示唆に富んだ話をしたつもりです。だからこれをどうしようという考えではありません。ただ金のワクだけを一割切って渡せばうまくいきますよという数字的なバランスのしりだけでもって、今年度は十分金のめんどうは見ていますというようなことでは困りますよ。ですから産業人も、自分が換金しなければならないことを、日銀や都市銀行に全部話す。そうしないで、いまの産業人が共同証券の持ち株を私たちは持ちませんといっていて、暮夜ひそかに手持ちの株を売っている。そんなことでは困るので、これを全部明るみに引きずり出そうじゃありませんか。こういう話をしたわけであります。これを政策的に共同証券に買わせるとか、つなぎ融資をするとか、そういう特定な政策目的を持っての話し合いではないということだけは明らかにいたしておきます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話の一番最後のところですけれども、特定の政策目的につながらないのですが、道は二つしかないのです。つなぎ融資をするか、共同証券で買う以外に売るというものはどうしようもない。だから私が伺っているのは、その場合はつなぎ融資をするほうが正しいのではないかということを言っているのです。だからその点はどうなのかをちょっと答えておいていただきたい。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 つなぎ融資をするか、共同証券で買うかまさに道は二つしかないわけです。なければ一面において株が下がっちゃってどうにもならなくなるわけです。そういうことですが、私のほうでつなぎ融資をしなさいということは言っていないのです。その前の話がまだペンディングになっているものもありますから、増資に対してはめんどうはみますといっても、クレジットラインをくずさないで何とか弾力的にやれると思います、こう言っているだけです。共同証券に対して千億でも二千億でも出します、しかし都市銀行を通じてがいいと思います、こう言いながら、都市銀行だけじゃだめだから、日証金を通して二本で出さなければだめですよと言ってみたのです。ところが必ずしもそうは思いませんと言っておった。ところが私に反対だったのが、一ヵ月たたないうちに、興銀の中山氏初め、日証金の二本の線で、大蔵大臣の言うとおりやってもらわなければ困ります、こう言って、私のところにも日銀にも要求している。日銀はそれに対して答えないわけです。答えないのですが、まあまあというようなことでやってきたわけです。その上になお別な要請があるわけですから、こういうものも十分考えてやってくださいよ。それはもう十分考えてやります、こういうことでありまして前のものがまだはっきりと結論が日銀から出ておりませんので——出ておるのかもしれません。やります、おまかせください、こう言っているのですから、やるという結論は出ているのでしょう。ですからその次のものでありますので、私のほうで具体的にこれも金を出しなさい。出さなければたいへんなことになりますよとは言わない。こういうものもあわせて考えて遺憾なきを期してください、期せられますか。はあ期します、こういうことでありますから、じゃ心配ないですな、行ってらっしゃい、こういうことになったわけです。そういうところで一つ御理解賜わりたいと思います。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 それで私、ずっといまのお話を聞いておりまして、この引き締めを多少弾力的にしていくことになると、さっき大臣もちょっと触れられましたけれども、いまのところは金利の問題よりも量的規制の問題が非常に強くきいてきているのですから、量的規制を多少弾力化するについては、ある程度、さっきからお話のあるように、やはり金融機関と産業側の内部的にネットがはっきりするような処理がされてこないと、これは問題があるのではないか。それでないと、やはり日銀のほうはクレジットラインというような抽象的な処理をしなければならぬ。もっと具体的であるならば、何もああいうクレジットラインの問題でなくても、前にやっていたような窓口規制のような処理のしかたもあろうかと思うのです。だから、新金融調整方式なるものは、率直に言って、今度ずっと経過を見ながら、日本のような状態で引き締めをやっていくときには、ゆるいときはそれでいいのですが、強く引き締まってくるとなかなかむずかしくなってくる。やはりかなり内部に立ち入ったネットに関する問題の処理をされていかないとむずかしいのじゃないか。これは臨時国会でも始まったら、もう一ぺん山際さんに来ていただいて、そういう金融調節の方式の問題を論議したいと思っておりますが、そこまで立ち入っていけば、私はいまのいろいろな問題は、ややこま切れの処理をしてみても、比較的おそれておるような暴走を起こすような条件にはなりにくいのではないか、やはりそこに一応立ち入っていかなければむずかしいのじゃないだろうかという感じがいたすわけであります。  時間がありませんから、本日はこの程度としておきますけれども、ただ一つ、ちょっと私、大臣に注意を喚起しておきたいと思いますのは、私この前証券問題をやりましてちょうど一ヵ月になるわけですが、この間、まさに共同証券が必死になって買いささえて、千二百円攻防戦ということで完全な管理価格になってしまったわけですね。世界の証券市場——証券市場というのは私は自由市場だと思うのですが、その自由市場が完全に管理価格になっておるなんという国は資本主義の国ではないわけでして、これを国家信用の日本銀行がささえておるということは、言うなれば資本主義崩壊の前夜であるというふうな感じがいたさないでもありません。資本主義というものはもっと自由に調節力を自律的に持つ制度であるはずですから、その最も長所であるものをためて、国家信用によって株式を千二百円にささえておるというこのいき方と、これに対してもたれかかっておるかなりのものがあると思うんです。だからここらについては、まあ今後あなたが大蔵大臣をおやりになるかどなたがおやりになるかは別として、大蔵省の方針として、はたしていつまでもこういうことでいいのかどうか、これを長く続けることの裏目は、いまは買いささえの側で千二百円ですけれども、これを共同証券が千億なり千五百億円持った場合は、今度は上から売りながらの千二百円ということになるかもしれないわけです。表と裏があるわけです。ですから買うときは一生懸命買って千二百円をささえた。これがぱっぱっと千三百円になり四百円になれば知らぬ顔をしているわけにはいかぬと思うんです。国家信用で千二百円をここまでささえたら、裏側として、上がる場合は今度は売ってある程度のところに維持するということに結果としてなることは、いわゆる資本市場の機能を非常に減殺することになる。いろいろ議論はあります。議論はありますけれども、ここいらで新しい段階に立って、このダウ千二百円攻防の問題については少し総合的な検討をこの際ひとつしておいていただく必要があるのではないか、この点を要望いたしまして私の質問を終わります。
  76. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 午後二時十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十八分開議
  77. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 休憩前に引き続き会議開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまから来年度の財政投融資の問題に関連をいたしまして、私が三十八年の二月の十四日の大蔵委員会で簡易保険の運用利回りの問題について論議をいたしました。その席上で当時の理財局長が答弁をされておるわけでありますが、大体その利回りの状態については、当時の答弁にほぼ見合うような形で確かに少しよくなってまいっております。ただしかし、依然として、よくなったとは言いながら民間保険の運用利回りとの差額についてみますと、まだかなり大きな差額が残っておるわけであります。その点について、実は理財局長の当時の答弁では、「可態な範囲でそういう運用利回りの向上をはかって参りたい、かような考え方であります。」という答弁でございました。この運用利回りがこの三年間に少し向上をしてまいりましたのは、どういうような措置によってここまで向上をしてきたのかを、大蔵省側でも、郵政省の簡保局側でもけっこうですから、お答えをいただきたいと思います。
  79. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 運用利回りが向上してまいりましたのは、財政投融資原資といたしまして、簡保資金を運用いたします場合に、財投の中にも各種の金利のものがあるわけでございます。極力、たとえば政府保証債でございますとかそういったような金利の比較的高いもの、そちらのほうへの運用にウエートをかける、運用部資金全体に比べまして、簡保資金におきましてはそのような比較的高利回りのものを充当していく、こういう努力を実は年々続けてまいった結果でございます。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで資料をちょっと見ましても、三十六年当時が六・二六%であったのが、三十八年は六・四%とずっと一貫して上がってきておりますことは、私がこの前論議をいたしまして、大蔵省側としてもその方向で努力をされておるというふうな感じがいたしますが、そこで確認をちょっとしておきたい点があるのです。昭和三十六年四月六日に大蔵省の理財局長と簡易保険局長との間で何か今後の預託利率の問題について覚え書きが交換をされておるかのように伺っておるのですが、これの事実関係についてお伺いをしておきたいと思います。
  81. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまお話の点は、三十六年におきまして、理財局長と簡保局長の間に、昭和四十年度以降簡保の余裕金の継続的、安定的増大が見込まれますので、その際には他の長期預託金との権衡をも考慮して調整を行なうものとするといった趣旨の覚え書きが交換されております。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお読みになったとおりですが、そのことの実質的な意味といいますか、その他のものとの権衡を考えるという場合のその他のものというのは、大体何をさしておるのでしょうか。
  83. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 これはいわゆる運用部に預託をされますところの各種の資金のうちで、特に年金関係の預託といったものを頭に置いたものと考えております。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、年金関係のものというのの預託金利と権衡を考慮して調整を行なうということになりますと、その権衡をとる年金関係のものは六分五厘ですか。
  85. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 厚生年金関係あるいは国民年令等、そういう年金系統の預託の利率は、御承知のとおりに七年以上という非常に長期の利率でございますので、それに対しては現在六分五厘の金利をつけております。ただ、ただいまの簡保の余裕金の預託は、その意味におきましては年金等のごとく形の上では長期預託でないという点がございますので、そのまま直ちに比較するというわけにはまいらないと思います。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 前段についている昭和四十年度以降簡保の余裕金の継続的、安定的増大が見込まれるということは、いまの短期というものが、実質的には長期的効果を持つということを言外に表現したものではないのですか。
  87. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 御指摘のように、形の上では短期預託でございますけれども、それが年々歳々積もって、ある程度長期的に見ても、いわば根っこになるところのものがだんだんにレベルアップしてくるというようなことはもちろん考えられるわけでございますけれども、しかしさればといって、事の性質上、それでは七年なら七年の縛りものの預託であるかということになりますと、事の性質は短期に引き出さるべき筋合いのもの、ただたまたま結果として、そういうものが積み重なった結果、つまりある程度根っこになるということはございますけれども、どうも性質上としては、やはり長期の縛りものと同じようには考えがたいのではないか、かように考えております。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政省にお伺いをしますが、もちろん国の内部の問題ですから、形式と実質の問題を考えてみるときに、なるほど形式的には短期のものであるけれども、実質的には長期のものであるならば、長期の扱いをしてもいいのではないかと私は思うのです。そこでいま理財局側の答弁で、短期のものだから、いつでも引き出されるのではないか、引き出し得る可能性があるのだ、可能性の問題はあると思うのですが、いまのいろいろな法規、政令、法律、諸般のそういう規制のもとで、この預託金というものは、その根っこの部分からいつでも任意に引き出せるのですか、その点はどうなんですか。
  89. 田中勉

    田中説明員 引き出しの時期は、預け入れるときにそういう取りきめをいたしまして、それに従って引き出すことになっております。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、あなた方のほうの取りきめで、根っこの部分については、増加をしてくる間は、結果として残ってくるわけですから、その部分については向こう七年間は引き出しませんという取りきめをすることができるのですか。
  91. 田中勉

    田中説明員 理論的には可能かとも思いますが、実際の問題といたしましては、いま問題になっておるのは、私どものほうの余裕金についてでありますが、これは翌年度になりますと、積み立て金という形で私どものほうの管理に属するというたてまえでありますので、大体一年ちょっとの間が現在の行き方では最長の期間ということになっておるわけでございます。  根っこの部分の問題でございますが、この問題が起きましたのは、例の私どものほうの集中満期という時期に際会したためにそれを乗り切る、本年度がそのピークでございまして、本年度までは毎年余裕金が減少しておるということで、いまの根っこの問題は発生しないわけでございます。四十年度から集中満期のピークが越えられまして、四十年度から余裕金が増大の傾向にある、この点をねらってなされたものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、四十年度以降余裕金は漸増の傾向にあるわけでございますので、実際には一年たって私どものほうの預託金を引き出すということになりましても、さらにそれを上回る預託部分があるわけでございますから、そういう観点に立って根っこの部分というものは継続して存在する、こういうふうに私どもは見ておるわけであります。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 私もその部分はいいのですが、そうすると金には別に色はつけてないわけですから、入れて出すわけでしょう、毎年入れては出し入れては出しすると、結局減るときには根っこの部分がだんだん減るわけですから、これは私理財局側としても困ると思うのです。しかし過去の統計的な観察からして、そういう集中的な解約がない——今後どこかでまたくるのかもしれませんが、これはもう保険ですから、大体過去のものから将来はかなり推計をすることができるわけですから、そうしてその集中満期の時期を推計をして、それでいまの制度をそのままとするならば、可及的に、長期間には実際には滞留するものは明らかになるわけですね。それは何年になるのか、七年になるのか十年になるのか、これは計算をしてみないとわからないと思うのです。ですけれども、片方は七年ということで六分五厘がつくとならば、いまのような推計の上に立って、これは土台の部分については引き出さないという表現をしたって同じことですね。金には色がついてないですから、そういう処置をとることができないのかどうか。これは形式論で、実は大蔵省がいまのような答弁をしているから私はそういう形式論を聞いているわけですが、実質は私は何もそんなことをする必要はないけれども、形式論としてできるならば、形式を整えたっていいのじゃないか。形式論としてできないという何かの制約があるならば、今度は実質的な論議だけできまりをつけたらどうか、こう思うわけですから、そういう点は形式としては出たり入ったりだということですが、少なくとも根っこになる部分については、今後こういう過去の解約の状態、最近の募集の状態というものから推計をするならば、この程度は滞留ができ、可能であるということをもとにして、取りきめが可能なのではないか、こういうふうに思うのですがどうでしょう。
  93. 田中勉

    田中説明員 まことにおっしゃるとおりでございまして、集中満期は、これはいままで事業の歴史の上になかったことでございまして、今後数年間に、きわ立ってある一年だけ非常募集をする、したがいまして十五年、二十年後にそれが集中的に落ちるという事態はおそらく考えられないのではないかと思います。毎年継続して一定の募集というものをやっておる関係で、今後十年、十五年をいま考えましても、こういった問題は起きないように私どもは理解しておるわけでございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、その起きないことはいいのですが、要するに根っこの部分については引き出しません、あなたのほうのさっきのお話では、預けるときにいつ出すかという話をするということですから、そうすると結局だんだんふえる場合には、毎年入れては出し入れては出しても、今度は徐々にではあるけれども根っこの部分が大きくなるのですよ。その大きくなる部分について、ことしならことしのところで、この部分については七年間は滞留をいたします、引き出す部分というものは、結局その外側にある、ワクの外のものだけを処理しますということになれば、結果としては七年ものと同じ効果になって、六分五厘は私は理財局側が処置してもいいのじゃないか。これは形式ですから、実際にはいまのことが確認をされるならば縛りものと同様になるわけですね。そのことは事務局段階で両方で話をすれば私はできることだと思うのですが、そういう取りきめができるのかできないのか、できなければ次の段階に話をしていきたい、こういうことなんです。
  95. 田中勉

    田中説明員 いま直ちに七年なら七年預託する、こういうことは形式的には現在の法令ではできないかと存じます。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 形式的に法令でできなければ、処置のし方は二つですね。法律のほうを直す問題と、法律がそういう規制があるならば、法律は法律として、実質が片方にあるから実質のほうを見るか、この二つの点が問題になると思います。  政務次官、いまずっと私が話をしておるのを聞いていただけばわかると思うのですが、非常に形式と実質の問題があると思うのです。ただ、しかし、簡易保険というのは長期的なものですから、そうしてかなり計画的に大量に処理されておる問題ですから、私は、資金運用部に入ります金が大体どういうことになっているかといいますと、直接運用をしている簡保の分は三十八年で六分五厘二毛に回っておるのです。ところが資金運用部の預託分は五分三厘にしか実は回っていない。この部分が金額として昭和三十八年には約九分の一ぐらいある。自主運用部分というのが九千百二十四億あって、資金運用部預託分が一千億ぐらいで、かなりウエートが高いものですから、そういうふうに過去の滞留で出ない、縛りのものだと見られるものは、国の内部のことですから、それを六分五厘にならないにしても、五分三厘というような運用利回りはいかがかという気持ちが私はするわけです。だから、こういう点についてはいま形式的に法律を直す問題が一つあります。しかし法律を直さなくとも実質がそうなんで、相手が民間とかなんとかいうことではなくて、国の中の問題ですから、そういうふうに考えてみると、これは私は運用部側としてもう少し、さっきの覚え書きに基づいて高い利回りを払ってやったらどうか、それが簡保の加入者に返っていくわけですから。そう思うのですけれども、これは政務次官どうですか。
  97. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 私は、どうもあまり金の本質について研究しておらぬから答えられませんが、いま言われるがごとき、そうだと思います。しかし、簡易保険というものの金の性質から、そういう長い契約をしていいものかどうかそこに問題があるのじゃないかと思われますが、いずれひとつよく研究させてもらって御返事することにいたします。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 政務次官、まだあまりお詳しくないでしょうから、理財局のほうで少し答えてもらいますが、いまは特利で最高六分出すことになっておりますね。しかし、これはいまの申し合わせの覚え書きがあるとしたら、どのくらいまでいけるのでしょうか。昭和四十年度以降簡保余裕金の継続的、安定的な増大が見込まれるので、その際には他の長期預託金との権衡をも考慮して調整を行なうものとする、ということは、私がいまだいぶ時間を食って言ったことはあなたも理解されておると思いますが、結果として縛りものだと同様のことになるという判断の上に、しかし縛りものでなかったら六分五厘というわけにはいかないことはあるいはあるかもしれませんが、しかしいまのような最高六分というのでは私はちょっと納得できないのです。今後の問題としてそこらは一体どのくらいで処理をしたいというお考えでありますか。
  99. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 先ほどちょっとことばか足りませんで申し落としましたが、通常の例をとりますと、堀先生も十分御承知のように、期間一年のものでございますと四分五厘ということになります。それに対して簡保の利回りはいろいろ配慮がありまして、それが六分になるわけであります。現在の六分というものがすでにもう相当な優遇レートと私どもは実は考えておるわけでございます。そこで問題は、先生のおっしゃるように、さてその六分を一体どの辺までなら上げ得るかということでありますが、これは先ほど来申しておりますように、御承知のように運用部預託金利子というものはそれぞれ預託の期間ごとに明定されておるわけでございますから、したがって、実質はともかくといたしまして、やはりあくまで形式的な預託期間というものを見ざるを得ない。そうしますと、六分五厘というのは七年という非常に長期のものでございます。そういうものと直ちにそろえるということはとうていできない。これは先生も御指摘のとおりでございます。それではその中間があるかということでありますけれども、どうも中間というものもなかなか実はむずかしいと見ております。むしろそれよりも、先ほどちょっと先生御指摘の運用利回りが五分三厘、これはちょうど先ほど来お話のありました集中満期等の関係もあって、預託期間が非常に短いものも相当あるために利回りは下がっていく。だんだんこれが落ちてまいりますと、大部分のものは一年ものということになれば、これは当然平均利回りとして六分までいけるわけでございます。そういう意味から申しまして、この点は今後かなり改善されてくるのではないかと実はかように考えております。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 佐竹さん、この前の議論をお聞きになってないでしょうから、もう一ぺん簡単にやりますと、こういうことなんです。簡易保険の加入者の分布の状態は、ちょっと私簡易保険局にお願いをして調査資料をいただいたんだが、私が希望した調査資料にはなっていないので残念ですけれども、ただそれはそれとして、いまいただいている資料を見ますと、月額——月収入だと思いますが、二万円の収入のある人たちのところでは世帯の加入率が——これは六千ぐらいのサンプルですが、四五・六%というのが簡保で、民保が二三・一%、やはり低額所得のところは簡保の人が全体としても低いのですが、その中でも簡保のほうが多いようです。私もそうだろうと思います。それから二万円から三万円までの間も五二・二%が簡保で、民保が三八・五%で、大体低所得の人のほうに簡保が非常に多い。これは常識的に私もこれまでも感じておりましたが、そういう結果のようです。それから六大都市その他の市、郡部というので見ますと、加入状況については、郡部では簡保が六一・九に対して民保が三九・九と、やはり地方に非常に偏在をしておる。これも言えると思います。この二つから見まして、一体簡易保険に入っている人たちというのは、どちらかというと日本の中における後進地域で、そうして低所得の人が入っている。運用利回りが——時間がありませんから私のほうから申し上げますが、昭和三十八年の非常によくなったところで、簡保が六分四厘で民保が八分七厘になります。ですからこの間の差額は、二・三二%という著しい運用利回りの開きが実はあるわけです。これは民保のほうも過去に比べるとだんだん運用利回りは下がってきておりますし、簡保のほうは上がってきておりますから、傾向としてはやがてはどこかでかなり近いところにくるかもわかりません。しかし、少なくとも当面の現状及び過去から今日までに至る経過の中では、簡保に入っておる人たちは明らかに民保に比べて不当に高い保険料を払わされておる。これはもう間違いがない事実です。今日の低額所得の人が高い利回りのものが受け取れるのならいいのですが、低額所得者が低い利回りのままに置かれて、それはしかし財政投融資の原資だということで、国家目的に使われる資金のためにこうなっている。これは私がこの前の委員会でも強く指摘をしましたように、これはさか立ちをしていると思うのです。私はこの間簡保局長に来てもらったときもそう言ったわけです。これは簡保局長のせいでもありませんけれども、これだけ差のある保険を売って、たくさんとればとるほど、低額所得者の人は相対的な損失を受けておることになる。これは良心にちょっと何とか感じないかということを聞いたわけですが、これはしかし純粋に簡保局長のせいではなくて、大蔵省の理財局のほうが少し良心に響いてもらわぬと困るのではないかという感じが実は私はしているわけです。この前稲益さんはこう言っているのですよ。可能な範囲でそういう運用利回りの向上をはかってまいりたい、こう前の局長は言っているのですね。いまあなたのお話を聞きますと、現実に実質的に縛りものと同様な効果にこれからなるとすれば、私は率直に言って、可能な限りということは、六分にとめることが可能な限りだとは思わないのです。しかし結果としては長期のものであることは間違いないのです。また引き出す意思は簡保のほうもないと思うのです。制度上いまの状態では引き出せないと思うのです、一年間は運用預託をしなければならぬということになっているわけですから。幾ら引き出すといっても根っこの部分は引き出せないわけですからね。そういう客観的な事実があって可能な限り運用利回りを上げようということになるならば、もう六分でいいんではないかというような議論にならないのではないか、こう思うわけです。だからあなたにいまここで、それじゃ六分三厘にしましようとか四厘にしましようとかいうことを答えていただくつもりはありませんけれども、これは政務次官よくお聞きいただきたいのは、財政投融資の原資をふやしていきたいということは、大蔵省自体としても私は今後重要な問題だと思うのです。このもとになっておるものは、郵政の諸君がこつこつ足で歩いて、そうして集めてきた資金なんですね。言うなれば、人が集めてきた金だから安易に使うという態度では困るし、同時にその対象になっておる低額所得の簡保加入者の利益をもっと政府としては配慮をしてあげなければならぬ、みすみす毎年二分三厘ずつも損をさせてはならないのではないか、こう私は思うわけです。だから私はこの前にも注文がつけてあったわけですが、ここにそういう覚え書きまであるわけですから、いまの六分でよろしいというなら、私は覚え書きなんかはあまり必要がないのじゃないかと思いますが、こういう覚え書きをつくった以上は、四十年度以降においては、この預託金利の問題については、大蔵省としては省議にはかってさらに一段の検討をしていただきたい、こういうふうに思いますが、政務次官、どうですか、その方向で検討してもらえますか。
  101. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 以前の理財局長の稲益さんが先生御指摘のような答弁を申し上げたことは全く事実でございます。ただそのときの稲益さんの答弁の内容はいろいろ複雑な要素が含まれておったのではないかと実は私ひそかに考えるわけでございます。おっしゃるように、六分というものを上げるということのほかに、究極の目的としましては簡保資金全体の運用利回りを向上さしたい、したがって財政投融資に組み込まれてまいりますところの長期資金についての運用利回りの向上をはかるということも、これもまた当然努力しなければならぬということでございまして、それらについて今後一そうくふうをこらしたい、こういう趣旨も含めて何らか考えていきたい、こういうことではないかというふうに実は思っております。今後の私どもといたしましても、財投計画における資金配分についてはできるだけ好利回りのものに向けていく。御指摘のように、民保との関係をおっしゃられますと、これはかりに六分五厘の預託金利に上げたといたしましても、とうてい民保には追いつかない。そこはなかなかむずかしい問題だと思います。現在の民保の運用利回りというものはこれまた恒久的なものではなかろう。やはりそのときそのときの金融情勢、金融水準によって動くものでございましょうから、今日いささか御指摘のように開き過ぎておる感もございますけれども、必ずしもこういう形が恒久的なものとも思いません。私どもとしてはできるだけ財政投融資の面で利回り向上ということをはかりたい、かように実は考えておるわけでございます。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 問題は二つありますから、いまのお話で一つのほうの運用利回りの向上があったことは私は非常にけっこうだと思っておるわけです。前段でもそのことは触れたわけです。ただしかしいますでに民保の差があることは現実なんですよ。過去もあった。いまもある。その差の詰まり方は実に徐々にしか詰まっていないのです。私も昔からの資料を全部いまここに持っておりますけれども、だいぶ差はひどかったが詰まってはきました。しかし詰まり方はごくわずかです。おまけに財政投融資の原資として動いておる簡保資金が、これまでのようにこれからそう大幅にどんどんどんどんまだ上がっていくかどうかについては、私はそろそろ限界に近づきつつあると思う。これからの上がり幅というのは小さくなるだろう。しかし片方の民保のほうは急激に下がる条件はない。日本の金融情勢、金融市場というのは常に高いわけですから、実質的にそう簡単に下がってこない。ということになると、幾らにしても差があるということは間違いございませんね。だから差があるということならば差を縮める努力を許される範囲ですべきではないか。それが私は稲益さんの答弁だと理解しておるわけです。だからあなたの言われた前段のほうは私は評価しておるわけですから、さらに効率的な運用でやってもらいたい、こう思います。しかしそれはそれとして、やろうと思えばできることが残っておるのではないか。やろうと思えばできることが残っておるから、その点についても配慮を払うぐらいのことは私は大蔵省としてはしかるべきではないかと思う。これは何も郵政省のためにやっておるのじゃないのです。私は、ともかく四千五百万か幾らの数字になっていますが、実質は一千万ぐらいですか、よくわかりませんけれども、簡保の対象者のために言っておるのです。二つものがあるときに、ともかくも率の悪いほうに国民を勧誘して入れた。しかしそれは国家目的に奉仕をする理由があるのだということで入れたのだから、これに対して国家目的に奉仕をしておる者に国家的に報いるということを可能な範囲やるのが私は国としての責任だと思う。だからそれらについては私いまの答弁ではどうしても納得できないのです。だからこれはひとつ再検討をしてもらいたい。次の臨時国会にもう一ぺん私はこれをやりますから、それまでにひとつ省議を開いて可能な範囲における限度をひとつ検討してもらいたいと思います。真剣に私は考えておることですから、ひとつその点をお願いいたします。
  103. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 先ほどからのお話、たいへんどうも勉強させていただきまして、十分それらの点を考慮して答弁できるように研究してまいります。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に簡保局に伺いたいのは、簡易保険の解約失効の状態は大体どの程度になっておるかをちょっとお伺いしたいのです。その解約失効については、皆さんのほうの資料のとり方は総体的なとり方になっておりまして、必ずしも比較がしにくい条件があるので、ある年度、三十六年度なら三十六年度の簡保をその年にとったのがありますね。これが一年目、二年目にはその新規契約のうちでどれだけ解約失効があるかという比率でちょっとお答え願いたい。年度はどこか適当なところでけっこうです。
  105. 田中勉

    田中説明員 ただいまの簡保の解約率についてお答えいたしますが、三十六年度を見てみますと、一年内の解約失効率、これは金額率と件数率と両方ございますが、金額率で申しますと三・五%でございます。それから三十七年度が二・九%、三十八年度が二・三%、だんだん減少してまいっております。それから二年内の解約失効率、これも金額率で見てみますと、三十六年度が七・二%、三十七年度が六・五%、三十八年度が五・六%、かような姿になっております。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 それからちょっとお伺いしておきたいのは、簡保の場合の解約失効の際の返戻金といいますか還付金の関係ですね。要するに簡保というものはパターンがいろいろありますから、十年、二十年養老とか十五年養老とかいろいろあると思うのですが、一般的な原則として簡保の場合には、一体掛け金をかけて最初のうち解約失効になったときはそれが幾らか返ってくるのか、初めのうちは返さないけれどもどこかの時限になったら返すようになるのか、そこらをちょっと伺いたいのです。
  107. 田中勉

    田中説明員 還付金は契約して半年以上経過いたしませんと支払わないということになっておりますが、半年以上三年以内は積み立て金の九割を返すことになっております。それから一生を経過するごとにそれに一分を加えてまいりまして、最高がたしか九・八割になると思います。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 今度はちょっと角度が違うのですが、実は私この前から民保の解約失効の問題と返戻金の関係について当委員会で論議をして、大蔵省側にこれらについての義処方の要望をしておるわけです。いまの民保と簡保の差を見ますと、ちょっと皆さんお聞きになっておる方もありますから、民保の場合の一年以内、二年以内のそういう解約失効率をちょっとお答えをいただいてから話を進めたいと思います。向こうが金額で出しておりますから金額でお答えをいただきたいのです。
  109. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 実は解約失効の率につきましてはいろいろな数字がとれるわけでございます。分母を何にするか、分子を何にするかいろいろとれるわけでありますが、普通保険規定の継続率、これは解約率の逆数でございますが、一応三十八年度について申し上げてみたいと思います。月払いのものを申し上げますと全体で六二・一%継続しております。したがって三七・九%が解約失効になったということでございます。ついでに年払いで申し上げますと、いまの三七・九%に対応するものが二二・二%でかなりよくなっております。ただいま郵政省のほうでお答えになりました数字に対応するものを申し上げますと、三十八年度で金額で解約失効率は一二%という数字でございまして、おそらくこれに簡保のはうの数字は対応するのじゃないかと思います。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話で、これは確かに解約失効率のとり方で非常なむずかしい点がありますが、全体の契約高に対する全体の解約失効率を見ますと、民保と簡保の差が大体一対七くらいのようでありますから、ちょうどいまここへお出しになった民保のほうの一二・二%、簡保のほうの二・三%というのがおおむね対応することになるんじゃないかと、こう思うんですが、やはり私は、この簡保の側にもこの解約については問題があると思います。これはもう簡保の側でも指摘をされておるわけですけれども、「さらに解約失効率を年齢別にみれば、終身あるいは四〇年養老にあっては、四十歳以上では他の養老とほぼ同程度であるが、それ以下の年齢では若くなるに従って上昇し、若年層では契約後わずか一年前後にその半数以上が解約あるいは失効になっている。一方、四〇年養老を除く他の養老は、年齢による解約失効率の高低は比較的少ないが、二〇歳前後から三〇歳ぐらいまでの間は、他の年齢層よりも高く、約二倍に達している。加入者の実情にもっともふさわしい種類をすすめるとともに、保険思想」云々と、こう書いてあります。だからやはり私は、簡保の中でもいろいろと解約失効については今後検討を少し加えてもらわなければならない問題があると思うんですが、ただ、この中で顕著に違う点は、民保の月掛けの場合は、この間もここで明らかにしていただいたように、返戻金のないのが一年十ヵ月あるわけです。簡保の場合は、これで見ると六ヵ月かければ、もうそれからは積み立て金の九割を返す。一体この差はどこから出てくるのかということは、これはやはり少しこの分析が必要なのではないかという感じがするわけです。これまで私は、民保の問題の中で、一応一年十ヵ月は返戻金がないというのは、これはやむを得ないものかと、こう見ておったんですが、しかし簡保のほうも、やはり最初に保険を勧誘した場合には、その勧誘者に対しては、その当該支払い保険料かなんかをメリットとして、何か与えておるんじゃないかと思うんですが、その点ちょっと簡保局長のほうから、そういう新規契約の際におけるメリットですね、勧誘した局員に対するメリットはどうなっておりますか。
  111. 田中勉

    田中説明員 募集手当の点でございますが、これは第一回の保険料の大体平均いたしますと八二%、それから保険金手当というものがございまして、保険金につきましては、その六五%に千分の二を乗じた額、これをプラスしたものが募集手当となるわけでございます。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 民保のほうは、最初のいまの一種の募集手当は、大体どの程度になっておるのでしょうか。これは各社がありますから、一律にはいかないと思うんですが、一般的な例としては、どの程度でしょうか。
  113. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 御承知かと思いますが、簡保と民保ではたてまえが違います。募集人に出す給与の基準が違っております。大まかに申しますと、民保のほうは、保険金をベースに考えております。したがいまして、非常に大まかな例で申し上げますと、保険金百万円という契約をとるといたしますと、これが何ヵ月か後に解約になるかどうかにかかわらず、大体三万円近くのものが入ると、こういう形になろうかと思います。ただしこれは、ではどんな悪いものをとってもそういうふうに入ってくるんでは、もう契約をどんどんとればいいじゃないかということになりますけれども、そこはあとでチェックの方法がありまして、返戻をさせる。もし成績が非常に悪ければ、何ヵ月か後に、出した給与をさらに後の給与で差し引くというような形もとっておりますので、そういう点は問題はないわけでございまするが、しかし、最初に出しますのは、やはり二万円ないし三万円のものを出しておる、かような状況でございます。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 私は何も、片方は国の保険でありますし、片一方は民間でありますから、その民保を簡保に右へならえしろとは申しませんけれども、いまの解約失効の際の問題は、私はこれはちょうど逆になっておると思うのです。解約失効率の少ないほうが実は早く返してくれるのです。解約失効率の高いほうがなかなか返してくれないということは、これは逆なら話はわかるのですけれども、どうもちょっとさか立ちをしておる感じがいたします。ですから、これは銀行局側としても、その簡保のいいところはやはりできるだけ民保に取り入れることができるならば取り入れる方向であっていいのではないか。私はこの問題を見ておりまして、結論的に感ずるのは、この前もここで議論をしましたけれども、要するに保険勧誘者の諸条件だと思います。片方の簡保の場合は、郵政職員でありますから身分的な保障がされておりますし、いろいろな点でこれは常勤職員をもって充てておるわけであるし、片方は一種の非常勤職員をもって人海戦術で処理がされておる。ただ、その人海戦術が出てくるもとは、いまの百万円について三万円もの契約手当のようなものが出るところに、また人海戦術を起こす一つの原因もあるのではないか。だから、そういうことではなくて、ある程度常勤職員的なものが、そういう新規の手当が必ずしも高くないけれども、その生活給といいますか基本的な給与で保障される方向にやはり問題が進んでいかないと、この解約問題というものはいまのあの制度のままでは、これはなかなか解決の方向にいかないのではないか。私、たまたま今度簡保の問題を少し調べております中では、簡保についてはかなり解約失効率が少ないし、また解約失効になった人があまり大きな被害を受けないで済むという点は、国の保険としては非常に望ましい状態にあるというふうに思っておるのですが、これはひとつ他山の石として検討をしていただきたい、こういうふうに思います。  それから主税局長にちょっとお伺いをしたいのです。何か簡保メリットを少しつけてもいいじゃないかという気がしたので検討しておりましたら、簡保のほうも民保のほうも同じような要求が出ていて、例の相続税の問題なんですが、現在保険の相続税の問題というのは、法定相続人について一人当たり五十万円というものを基礎控除するというのがあります。私どもの党でもこれをこの前いろいろ検討してみたのですが、この制度の五十万円というのはかなり古い時期において五十万円になって、おまけに法定相続人でそういうふうに必ず分配がされるかどうかにも問題があるのです。そこで、遺族の中のその後における家計責任者、奥さんと子供たちが残った場合にはその奥さんに、子供たちだけしか残っていないときにはその子供たちの長子に対しては、物価変動なりいろいろな状態もあるから、一人だけについては百万円までの控除の引き上げをしてみたらどうか、こういうことを私どものほうでは検討をして、先般大蔵大臣に申し入れをしたわけですが、これらについて主税局としては、これは税制調査会もあることですからあれでしょうけれども、方向としてはどうでしょうか。そういう方向での処理が、全体の物価なり経済情勢なり、あるいは保険金額が簡保の場合でも百万円にも上がってきたというような情勢もありますから、処理をしてみてはどうかという気がするのですが、主税局側としてのお考えを伺いたいと思うのです。
  115. 泉美之松

    ○泉説明員 お話の点につきましては、堀委員御承知のとおり、ことしの春の国会におきまして簡保の限度額が百万円に引き上げられたのでございます。実はそのときに相続税の保険金の控除限度額につきましてもいろいろ問題があったのでございますが、すでに税制改正の法律案を国会に提出いたしましたあとでもございましたし、また、これらの問題につきましてはなおよく検討すべき点があるということから見送られて今日に至っておるわけでございます。この保険金の控除の限度額の引き上げにつきましては、お話のように相続人のうちの一人についてだけ引き上げるというやり方もございましょう。それからまた、相続人のすべての者に百万円と言わずに、もう少し低い限度でも同じように引き上げるのがいいのかどうかという問題もございましょう。そういったいろいろな点を検討して、この点も解決をしなければならぬ。それからまた、現在は相続人一人について幾らということになっておりますものですから、相続人が多い場合と少ない場合とで負担が違っておるわけでございますが、こういった点もはたしてこのままでいいかどうかというような問題もございます。そういった点もいろいろ検討いたしました上でこの点についての解決をはかりたい、かように考えておるのでございます。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 前向きに検討して解決をはかりたいというお答えでありますから、これから税制改正の時期でもありますので、ひとつ十分——せっかく保険に入っておる人たち、特に簡保の場合にはさっき申し上げたように、ふだんにおいて低い利回りで、ある意味では国家目的に奉仕していただいておるわけですから、だから、それに対して少しでもメリットを加えるという意味では、私はいまの問題は何も簡保だけにしろというわけではありませんけれども、特に簡保の限度が百万円になっておる現状でもありますから、そこらについてはひとつ十分検討してみていただきたいというふうに思います。  最後に、簡保問題というのは、私これで二回目なんですけれども、これは実際入っておる人の立場に立ってやはりいろいろ考えてあげるべき問題だろうと私は思います。だから、その点については単にいま私の申し上げたような運用利回りだけにとどまらず、あるいは税制の面においても、その他国として、これらの人に配慮のできる方向については総合的に十分検討を進めていただいて、せっかく簡保に入っていただいた人たちが、簡保に入ったために損だったというような人が多少あったとしても、できるだけそれを狭める責任は私は政府の側にあると思いますので、その点をひとつ十分に心にとめて検討していただいて、また一ヵ月ばかり後に臨時国会が開かれました際に、あらためて四十年度における運用方針その他についてもう少しきめのこまかい議論をしていきたいと思います。というのは、きょう、時間がございませんから、財投の面における運用の問題についても少し触れたいと思っておりましたけれども、たいへん長時間にわたりますので、本日はこの程度にいたしまして、あとは次会に論議をいたしますから、その点を含めて十分御検討をいただいておきたいと思います。
  117. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 佐藤觀次郎君。
  118. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 実は午前中ちょっと所用がありまして……。酒米の問題、酒の値上げの問題について、食糧庁の方も来ておられますから、少しお尋ねいたしたいと思うのですが、米価の値上げの問題は、国民の生活に非常に影響がありますので、新しい内閣ができてからこういう問題については聞くつもりでおりますけれども田中大蔵大臣が先ほど出席されたそうでありますが、事務当局の立場からまあ現在二〇%あるいは一八%というような値上げの案が出ておるわけですが、この点については食糧庁並びに国税庁のほうではどのようなお考えがあるか、これは事務当局だけの話でけっこうですから、ひとつお尋ねいたしたいと思います。
  119. 田中勉

    田中説明員 お答えを申し上げます。  三十九年産米の酒米の価格につきましては、例年酒米価格の算定のやり方等につきましては、生産者価格を基準といたしまして、それに酒米に大体該当すると思われます政府の諸経費を加算いたしまして、酒米の価格を決定しておるわけでございます。ここ一、二年来これらの政府経費の見方、また生産者価格におきまするいろいろな時期別の格差とか、あるいは包装代等の問題については、国税庁当局ともいろいろそれらの見方につきましてある程度固まりつつあるわけでございまして、本年度におきましても大体そういう従来の考え方に立ちまして算定をいたしまして、その結果ことしの酒米の価格につきましては、国税庁のほうから酒の醸造仕込みというような観点からいたしまして、早目に現物を売却してほしいというような御要望もございましたし、また、私ども食糧庁の現物を売却する場合からいたしまするならば、二、三年来におきまする暫定価格などによって本価格がきまらないというようなことの経過をたどってきたのでございまするけれども、先ほども申し上げましたように、大体ここ一、二年来政府経費の見方、あるいはその生産者価格の中に見ております包装代とかあるいは時期別格差の問題とか、こういう問題等につきましても、ほぼ大体考えがまとまりつつあって今日に至っておるのでございますので、まあ早く売却することを一つの目標にしながら、同時にまた最終価格の決定ということでいろいろ国税庁当局とも折衝をいたしました。その過程におきましては、もしも本価格がきまらないならば、暫定でも現物を売却せざるを得ないというような過程もあったわけでございますけれども、いろいろこれらの構成要素の諸経費を本年度の実態にかんがみまして詰めていきまして、大体これならば本価格で進もうというようなことになりまして、九月の二十五日に正式に現在の売り渡し価格が決定いたしたわけでございます。御参考までに申し上げますると、硬質の一等米百五十キロ当たり本年度におきましては一万六千二百九十五円ということに決定いたしたわけでございます。これは御参考までに申し上げますると、昨年の硬質米一等の価格は一万四千六百七十五円でありました。その差額は千六百二十円の値上がり、こういうことになったわけでございます。
  120. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ちょうどこれから酒の仕込みに入るわけですが、昨年は仕込みの前に米の需給関係が非常に悪くて、生産をする酒屋が非常に困ったということを私は聞いておるのですが、そういう点でことしはそういうことのないような処理ができておりますか、田中さんにお伺いいたします。
  121. 田中勉

    田中説明員 現在まで私どもが今年度のこの価格でやらなければならぬから、そこでできるだけ影響の少ない点で何とか予算の組めるようなところで調和をとってやりたい、こういうことが現在考えておるところでございます。まだ決定したわけじゃございませんが、そういう点で幾らか上げなければならぬのじゃなかろうか。しかし格差があるからといって、格差を全部上げなければならぬというものでもないだろう、こういうことを研究中のところでございます。
  122. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 非常にむずかしい問題でありまして、いたちごっこのような形でずっと連続しているわけですが、どっかの基点で一ぺんはっきりとしたポイントを打つべきじゃないかというように考えておるわけですが、それと関連して、先ほど喜田村次長から、酒米はどうにもならぬということであれば当然変わってくるのは酒が値上げになる、値上げになれば大衆が困る。北海道へ行きましても、二級酒の税金を下げてもらいたい。ちょうど九州の調査も出ておりますが、同じような意見があるわけでありますが、こういう問題について酒米が下げられなければ税金も下げてやるという何らかの形をとる必要があると思うのですが、その点は二級酒の税金を引き下げるという問題が一体考えられないものかどうか。これもどなたでもけっこうでありますけれども、事務当局からでもけっこうでありますから、ひとつ伺いたい。
  123. 泉美之松

    ○泉説明員 酒税、特に清酒二級の酒税率の問題につきましては、お話のように業界方面からいろいろ御意見がございまして、御承知のとおり、間接税につきましては三十七年に大幅な軽減を行ないましたので、現在の負担はある程度合理的になっておると思うのでございますが、しかし諸外国との比率等からいきますと、なおまだ酒税の税率が必ずしも低いとは言えない状況にありますので、私どもといたしましても、これの引き下げ方についてはいろいろ検討いたしているのでございますが、ただ御承知のように来年の自然増収がきわめて少ないといったような状況、その中でかりに減税を行なうといたしましても、酒税よりも優先して減税を行なう必要のあるものが多い。こういった状況からいたしますと、なるほど本年、酒造米の値段が上がりまして、これは昨年も上がったわけでありますが、その二つを合わせて四十年度の予算の編成に際しまして、酒税の、特に清酒二級に限ってでもその引き下げをはかるということはなかなかむずかしい困難な問題ではないかと思っておるのでございます。私どもといたしましては、消費者がお困りになる点もあろうかと思いますが、コストアップの額は、先ほど国税庁次長から申されましたように、一・八リットル当たりにいたしまして六円九十一銭、約七円でございます。前年の分を合わせますと十一円くらいでございますけれども、それらと手数料等を考慮いたしましてもしばらくごしんぼういただいて、自然増収もあり、また酒税等間接税につきましても引き下げ得るような時期におきまして、何年か分をまとめまして大幅な引き下げを行ない、それによって値段を引き下げるほうが消費者のためにはより効果が大きいのではないかと考えております。そういった方向で明年度はむずかしいでありましょうが、その後におきまして考慮いたしたいと考えております。
  124. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 泉さんは間税部長をやっておられたから、いろいろ事情を知っておるだろうと思うのですが、大体二級酒は一本三百円くらいというのが大衆が一番喜ぶということをずっと前から言われておったわけです。一般の二級酒というものを飲む階級は非常に低い層でありまして、少なくとも今度の酒造米の値上げに関連して酒が上がるということになれば、一番打撃を受けるのは二級酒を飲む階級が一番多いんじゃないかという気がするのですが、そういう点で泉さん、来年くらいまで自然増収がふえたらということでなく、外国と比較して、特にビールなんかと比較しても、酒の現在の状態は決して安閑としておられないような立場にある。特に泉さんは間税部長で地方の零細な酒屋さんの状態も知っておられるわけでありますから、ひとつ来年と言わず、ことしでもいいことは早くやったほうがいいのですから、そういう点は主税局長としてできないのかどうか、もう一度お尋ねしたい。
  125. 泉美之松

    ○泉説明員 この点につきましては、佐藤委員すでに御承知のとおりであろうと思います。先ほど申し上げましたように、減税をいたしますにつきましても、いろいろ優先順序の問題がございます。その中でまた減税財源と見比べまして考えますと、おことばではございますけれども、四十年度の予算に際しまして、酒税の引き下げをはかることは非常に困難であるというふうに考えざるを得ないのでございます。お話のように最近しょうちゅう、合成清酒を含めまして、そういった酒類の売れ行きがあまりよくありませんために、業界がかなり苦しい立場にあることはよくわかっておるのでございます。しかし清酒二級の売れ行きが悪いと申しましても、清酒二級は、やはり相当前年度に比べまして伸びておるのでございます。その点からいたしますと、業界が苦しいから、減税によってそれを救うということはなかなかできにくい。むしろ清酒の減税ということは、それを飲む国民大衆のためであって、必ずしも業界救済のために行なうわけではないのでありますから、そういった点を考えますと、四十年度の予算においてこれを行なうということはどうもむずかしい。はなはだ残念でございますけれども、四十年度はそれを見送らざるを得ない、かように考えるのでございます。
  126. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私も鹿児島にも行きまして、しょうちゅうの状態も見てきたのでありますが、やはりある点まで下げればそれだけ売れ行きがたくさんふえるんだから、税の収入全体としてそう損はないと思う。そういう計算は泉さんよく研究されたと思うのですが、税金を下げればもっとたくさん飲む可能性があるのじゃないか。もっと下げてもっと飲めば、結局においては税収は変わらぬと思うのですが、その点はどう考えておられるのか。これも泉さんについでだから伺っておきたい。
  127. 泉美之松

    ○泉説明員 お話のように間接税の場合におきましては、必ずしも税率が高いから税収が多いというわけでなしに、税率を引き下げることによって価格を引き下げ、それによって消費が伸びるということの期待できる場合もあるわけであります。しかし酒類につきましては、昭和三十年ごろまでの事態とその後の事態とはやや違っておりまして、御承知のように最近は酒類の需給関係からいたしますと、相当供給が豊富になってまいりましたので、値を下げたからといって、すぐに売れ行きがもっとふえるというものではございません。これはすでに三十七年のときに税率を改正いたしまして、相当引き下げたのでございますが、にもかかわらずしょうちゅう、合成清酒は、むしろ前年に比べて消費が減退しておるといったような状況にもあらわれておりますように、国民の嗜好がだんだんと変わってまいります。これは食べものの変化といったようなものとも結びついておるのでございますので、税率を下げたからといって、必ずしもすぐ消費がふえない。むしろ今後に基づきまして、すでに国税庁の御要望も十分入れまして売却の指令を出しておりますのは、百三十九万石の指令を出しておるわけでございます。ことしの米の集荷の実態を御参考までに申し上げますと、一部の地帯等におきまして早場の買い入れがおくれた地帯はございます。たとえば北海道とか宮城県とか長野県、栃木県、これらの地帯におきましては、時期別の格差の期限を延長するような措置を講ぜざるを得なかったような集荷の状況であったわけでございますが、全体といたしましては、大体関東から以西の方面におきましてはきわめて集荷が順調に進んでおりますので、この売却指令に基づきます引き取りも、現地におきまして相当順調に推移しておるというぐあいに考えておる次第でございます。
  128. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一つ田中さんにお伺いしたいのですが、昨年いろいろ調査しますと、農業協同組合のほうで、倉庫ががらあきだということで、倉庫料、倉敷料が多少なければ困るということでおくれたというようなことも聞いておりますが、本年度はそういうことはないという見込みですか。
  129. 田中勉

    田中説明員 本年度の農業倉庫の米の保管料の支払い問題につきましては、昨年度大蔵省との間において予算上の措置が講ぜられました。それは農業倉庫の中に入庫した米一俵につきまして毎期の保管料は支払っていくわけでございますが、総体の予算措置といたしましては、全国平均いたしまして一俵当たり十期の保管期数が確保されるような予算措置を講じておる次第でございます。もっと詳しく申し上げますと、実際問題として、この一年間農業倉庫に入りました米につきまして実際の保管期数を計算いたしまして、それがたとえば八期になるというようなことでございますれば、予算措置としては平均的に十期という予算措置を講じておるわけでございますので、その間の差額のものにつきましては、それを一年の終わりにおきまして、調整的な措置によって各農業倉庫にその金額を交付する、こういうたてまえをとっているのが今度の措置でございます。したがいまして、農業倉庫の側におきまして、極端に申し上げますと、こういう措置が講ぜられますと、むしろ早く出して手がかからないほうがよろしいというような機運もなくはない。これは極端な言い方でございますが、そういう措置を講じておる次第でございます。
  130. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そこでいま田中さんからもお話がございましたが、酒米が相当上がってくるということになると、それに関連して当然酒の値段が上がるように考えられるわけですが、その点は国税庁どのようにお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  131. 喜田村健三

    喜田説明員 お答え申し上げます。いまお答えありましたように、三十九酒造年度の原料米の払い下げ価格が九月二十五日決定されました。一石当たり一万六千二百九十五円ということで、前年に対しまして千六百二十円の上昇になっております。清酒の販売価格につきましては、六月一日に基準販売価格が廃止されまして自由販売、自由な価格体制に入っておりますので、価格決定は原則として業界の自主決定、自主性にまかせられておるのでありますが、当面政府の重要施策であります物価安定政策との関連もありまして、当分の間は清酒の値上げを自粛するように業界に対して要請して今日に至っておるところでございます。今回の清酒用の原料米の値上がりに伴う清酒二級の価格を試算してみますと、一・八リットル当たり六円九十三銭のコストアップになります・それから昨年度の原料米価格の値上がりを含めますと、これが十一円十八銭という程度のコストアップになります。しかし一方生産数量の増大に伴います操業度の伸長もありますし、また企業の合理化の進展といったようなコストダウンの要因もございますので、これらを総合して検討する必要がありますので、関係方面の意向であるとか業界の要望なんかを考慮して方針をきめたいということを考えております。
  132. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この前も堀委員から質問があったのでありますが、酒造米を高く売りつけるということは結局酒のほうの値段にはね返ってくることになるので、これは消費者価格と同じような値段で出せという意見を堀委員からも言われまして、私もそういうことを考えておるのでありますが、これはあとで税金の問題もお尋ねするのですが、そういう抜本的なことをやられると酒の値上げをしなくてもいいことになるのですが、そういうことはできないものですか。
  133. 喜田村健三

    喜田説明員 清酒用の原料米の価格につきましては、できるだけコスト主義によるべきであるという考え方に基づきまして、その実現方について食糧庁なんかと折衝してまいりました結果、三十七年産米、三十八年産米につきましての原料米価格はこちらの要望が入れられまして、おおむね合理的な算出基礎で決定されたということになっております。したがって本年産米の政府買い上げ価格が前年より非常に上がりました結果、その合理的とこちらが考えておりました算出基礎を使いますとこうなりますが、算出方法を違った方法に変えないで、コスト主義に基づく算出方法によるとこういった価格になるのはやむを得ないのではないか、こう考えております。
  134. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 酒の製造業者は間接的には税金をかせぐ形になっております。私はそういう点から考えて、私は酒屋ではありませんけれども、何か合理的、抜本的に考える必要があると思っておるのであります。そこで食管法の赤字という問題に関連して、きょうは大臣がおられませんから政務次官なり事務当局から伺いたいと思うのでありますが、食管の赤字というのは本質的に非常にむずかしい問題でございますけれども、簡単に食管の赤字があるからということで米価の値上げという問題が出てきて、おそらく二〇%の値上げをするという、田中大蔵大臣の大阪での、出先の発言が載っておりましたが、この食管の赤字というものは本質的に農民が米を出すから食管の赤字が出るのではなくて、政府がいろいろ徳用米とかその他の、低い賃金を取っている人々のためにやっている社会政策的な意義がありますので、そういう意味において私は食管法の赤字というものはそう過大評価をする必要はないのではないかと思っております。これは一貫した政府考え方があればわれわれも考えなければなりませんけれども政府はどういうようにこれを考えておられるのか。結局、米価を上げる、そうすれば消費者米価にすぐはね返る、それは食管の赤字が出るからだという、いつも三段構えになっているのですが、これは何かの形で根本的に片づける必要があるのではないかと考えるのですが、その点は政務次官なりあるいは事務当局からでも、こういう理由だとわれわれの納得のいくような説明を加えていただきたいと思うのです。
  135. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 たいへんどうもむずかしい問題でございまして、食管会計の赤字だけを考えてやるべきものでないということは考えられます。また物価の点に対しましても非常に影響のあることもわかっております。そうかといってどうも予算が組めない、財源がないということになりますとこれをどういうふうになるかわかりませんけれども、だんだん国民のふところぐあいがよくなりますと、むしろより高い酒のほうに消費が移るという傾向が見受けられるのでございまして、現に三十七年の改正以後は、税率の引き下げが大幅であったせいもありますけれども、一級酒の消費がものすごくふえたのでございます。またビールの消費が最近非常に多いことも御承知だと思います。そういった傾向がございますので、清酒二級酒とか合成酒、しょうちゅうの税率を引き下げまして値を下げましても、それによって消費がふえて税収は減らないというようなことはなかなか期待できないのでございます。もちろん私どもとしましては酒類の税率をきめますときにおきましては、いま申しましたようにできるだけ低い税率で、しかもできるだけ多くの歳入をあげ得るような方法を十分研究いたしまして、それに沿ったような税率を検討いたしてまいりますことはもちろんでございますけれども現状におきましてはいま申し上げましたように、税率を引き下げまして値を下げましても、消費がふえるという見込みはそういった酒につきましてはないのでございます。
  136. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 しかし御承知のように、密造酒というのが最近非常に減ってきたように思うのですが、それはやはりしょうちゅうや二級酒、合成酒が安くなったという点もあるので、間接的にはそれは非常にいいことだと私は思うのですが、その密造酒の現状、そういう点についてどういうような傾向になっておるのか、私は泉さんのいまの御意見には賛成しかねる点があるのですが、これは二級酒を飲まなくて、一級酒、特級酒を飲むようになったという理由は、これは私はまだ二級酒がわりかた酒が悪いわりに高いから、飲まないんじゃないかと思うのですが、その密造酒との関連はどういうふうになっておりますか、その点を伺いたいと思います。
  137. 松本茂

    ○松本説明員 密造酒の状況は、これは非常に把握が困難でございまして、はなはだ推定の部分が入るわけでございますが、ひとつ私どものほうで推定いたしておりますところでは、昭和二十五年あたりは非常に多うございまして、六十万キロリットル程度もあったろうかと推測いたしておるわけでございますが、その後大体減少してまいりまして、昨年あたりでは十三万キロリットル程度になっているのではないかというふうに推測いたしております。
  138. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 時間がありませんから、最後にお願いなり、また希望を申し上げまして、私の質問を終わります。  この食管の赤字の問題について、政府としてはひとつ根本的にこの問題についてのはっきりした見解を示していただきたいということ、それから酒米の売り渡し価格についてたびたび大蔵委員会でも問題になっておりますが、その問題についてのまず根本的な解釈、こういう問題について臨時会を開かれました後に質問いたすつもりでありますが、そういう点についてのわれわれの十分了解できるような、そういうことができますようにひとつお願いをいたしまして、おそくなりましたから質疑を終わります。
  139. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  140. 春日一幸

    ○春日委員 だいぶ時刻もたっておりますから、簡単に質問いたします。  第一番に、酒団法の関係でお伺いをしておきたいと思うのでありますが、御承知のとおり、この団体法も改正をされまして、不況事態に対処するための業者間協定、こういうものについては、一段と前向きの形で、法的措置がさらに濃縮した形で確保されております。こういう中において、酒団法はそういうようなこととは全然別個の世界のような感じで、酒団法の改正に符節が合っておりません。ことしの春の通常国会で、酒団法を改正せなければならぬのではないか。たとえば、四十二条の五項でありますとか、少なくとも組合協約に関する問題、それから組合協約に関する交渉の応諾義務なんか、これは当然基準価格が廃止されたことに伴う自由競争、これに備えて不況事態におちいる場合、それからおちいるおそれある場合、これに対する救済措置が業者の自主的な規制によって措置されるようにせなければならぬ。だから、酒団法の改正をなすべきであるという主張をいたしまして、国税庁はこれで大いに検討したい、こういうことでおわかりになっておると思う。当然こういう問題については検討が進められておると思いますが、その後どうなっておりますか。  税制だとこれは国税庁の所管だろう。酒団法の問題は国税庁の主管でしょう。税制ならば泉さんだけれども……。
  141. 泉美之松

    ○泉説明員 法律を直すことは私の所管なんですから、依頼を受けてやるわけでございますから、一応私から申し上げておきたいと思いますが、お話しのように、いわゆる酒団法といわれております「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」につきましては、かねてから最近の事態に即応いたしまして改正すべきではないかという、いろいろの御意見がございます。これを大きく分けると二つに分けることができようかと思います。一つは、先ほど国税庁の次長からもお答え申し上げましたように、本年六月一日から酒類につきまして基準販売価格の制度がなくなったわけでございます。ところがこの酒団法の中におきましては、酒類業組合が共同事業を行なう場合とかいうときに、不況要件の判定の一つといたしまして、酒の価格が「基準販売価格を著しく下回る等の事態が生じたことにより、」といったような要件が規定されておるわけでございますが、基準販売制度がなくなると、どうもいまのこの規定のままではぐあいが悪いのではないかというような点が第一点、それからいま一つは、春日委員案内のとおり、清酒につきまして近代化計画が進められ、また酒類販売業につきましてもそういった最近の生産業者の動向に即応して新しい行き方を考えなければならないようになってまいっておりますが、そういった見地に基づきまして、酒類業団体法の規定につきまして改正をすべき点がありはしないか、こういった問題と大きく二つに分けることができるわけでございますが、まず第一点の基準販売価格の点につきましては、少し苦しい言い方でございますけれども、とりあえずは「基準販売価格を著しく下回る等の事態」という「等」がございますので、そこで基準販売価格制度がなくてもこの趣旨は、要するに酒の取引の価格が乱れるということが不況の判定に役立つものであるというような考え方でありますから、基準販売価格制度がなくても、そういった事態を引き越こせば不況要件ありとして協定を結ぶことができる、こういうふうに解釈できるのではないかということで今日に至っておりますが、この点につきましては、何ぶんにも基準販売価格制度がなくなった今日でございますので、基準販売価格制度がなくなったというのは少し語弊がございまして、制度としてはあるわけでございますが、告示をやめたという関係がございますので、そういった点から言うと、あまりこじつけて読むのもいかがであろうか、そういった点から、こういった規定についてはいま少し規定を整備する必要があり、それからあとのほうの清酒業の近代化計画、あるいはそれに連なって販売業界につきましても、最近の事態に応じた態勢をとっていくにつきましては規定をやはり直す必要があろうということで、目下そういった点につきましては検討をいたしておる段階にあるのでございます。
  142. 春日一幸

    ○春日委員 泉局長の御答弁で方向はわかると思うのでありますけれども、いま述べられましたとおり、現実に基準販売価格そのものの公示はないわけでありますから、ないものを基準にして、そこに「等」を加えることによってそのような雰囲気を想定してというようなことは、法律としてははなはだ弱いと思うわけでございます。そこで、現実の問題としてこの基準販売価格がなくなったことによって、特にこの小売り業界では相当の競争の激化というものがあり得るものであり、現実にすでにその徴候があらわれてまいっておりますから、私といたしましては、この春の国会におきまする論議も十分そんたくされまして、そのようなありもしないものを基準にして「等」というような文字、それに似通った場合というような、そういうなまけたやり方ではなくして、いわゆる酒の業者が法律を基準として、その正常なる競争の中においてその事業が遂行できる態勢をつくってやるということは、これはもう大蔵省責任だと思うのですね。そしてそれがたいへん大きな難作業でありまするならば、これは別個の問題でありまするけれども、現実の問題としては基準販売価格というものは制度として残るけれども基準販売価格を著しく下回り、その他酒類の販売の競争が正常の程度を越えて行なわれることなどによって、取引の正常なる運行が妨げられるような場合は、かくかくのことができると、これは当然のことですね。これは通産所管の団体組織法があらゆる事態をとらえてすでに制定以来第三次の改正までやってきておるのですから、立権法治国においてはやはり法律を基準として経済活動が行なわれておる以上は、基準となるべきその法律というものはそんなひょうたんなまずみたいなことでなしに、水に映った二十日月、それから月のありかをそんたくするというようなばかげたことでなしに、私はもう少しそのものずばりで彼らが基準とすべきその法律というものが読んで字の通りに理解できるように、これはやるべきであると思うのです。通常国会、まあ臨時国会はいかがであろうと思いますが、すでに競争の徴候があらわれてまいりまして、そのことで内部紛争が局部的にもあらわれてまいっております。これが全般的に蔓延いたしますると、たいへんなことになると思いますので、私は組合協約の問題だとか——酒団法には組合協約に基づいての応諾の義務はないのでございましょう。団体法にあるものが酒団法にないということも、酒屋の事業の不況克服に対する一個の機能を欠如いたしておると思う。だから他の業界において応諾の義務なくんば組合協約の機能が十分果たし得ないという立場から、特に応諾の義務を付していること等にかんがみて、この酒団法においても応諾の義務を新しく創設するなど、私は少なくとも団体法に認められておる程度の事業内容、組合協約の制定、それから紛争処理の規定等を整備する必要があると思う。この問題は、泉さん、どうですか。
  143. 泉美之松

    ○泉説明員 組合間の応諾の義務などの点につきましては、これは団体法の制定当時、酒団法につきましてもいろいろ検討がされたようでございますが、その当時におきましては、酒類業団体、これは御承知のとおり八団体あるわけでございますが、この間には生産、卸、小売りといった面におきまして利害の相反する点におきまして、組合だけにそういうことをやらしておくのは適当ではなく、むしろ政府においてその組合間の調整をはかったほうがいいのではないかというような考え方もございまして、応諾の義務等につきましては、団体法にございますけれども、酒団法のほうには入れてないというふうに私ども承っております。しかし、先ほど申し上げましたように、最近の事態におきまして、酒類業団体がいかにあるべきかということを、この際もう一ぺん考え直す必要があるのではないかという見地から、これらの点につきまして十分検討いたしました上で改正案をつくりたい、かように考えておるのでございます。
  144. 春日一幸

    ○春日委員 聡明な立法家でありまする泉さんにはよく理解があると思うのですけれども、応諾の義務ということは、申し出たことを承認せよということではなくして、交渉はせなければならぬ。交渉する過程において大蔵省が中に入る、こういうことは何ら妨げないのでございますから、とにかく必要に基づいて組合が交渉を申し出たときには、われわれ話し合いをしろ、民主政治というものは話し合いでございますから、話し合いというもののポシビリティというものは、これは組合の自主調整の機能を確保するためには、話し合いの場所をなくするということはあり得ないと思う。すべての業種でも、農林所管でありますとか、通産所管でありまするとか、すべて所管官庁のない業界はないのでございますから、いまお説のような形でまいりますれば、応諾の義務はなくして、すべて役所が中に入ればいいじゃないかという説も逆説的になり得るわけです。そういったような背景の中においてもなおかつ組合交渉においては相手方は応諾の義務あり、こういうことになっておるのであって、したがってその話し合いの中において役所が行政指導の立場からそれぞれのアドバイスを行なうことは妨げないのでありますから、私は少なくとも団体法に基づく商工組合に与えられておりまするさまざまな機能は、特別弊害がありまする面は別といたしましても、本質的なものについては、これは十分勘案しながら、この酒団法を当世風に、しかもこの種の立法がそれぞれ改正されておりますその実情をよく重視されて、来たるべき通常国会に適切な処置をとられることを強く要望いたしておきたいと思います。  それから金融の問題について、これは主として政治論として政務次官のお耳に入れながらひとつ御検討願っておきたいと思うのでありまするが、最近信用がはなはだ膨張いたしまして、その中身となるものの中には、融通手形、交換手形というものが膨大な率を占めておると思うのです。手形割り引きの中には単名手形、商業手形があります。単名手形は企業自体の信用そのものが裏づけになるでありましょうし、商業手形は取引を行なったことに対する現金にかわる受け取り勘定としてそこに裏づけがあると思うのであります。ところが、ある意味において、交換手形というものは、本来的には単名手形でやるべきであるけれども、単名手形ではやれない。それかといって取引の裏づけもないから、そこで信用を捏造し、贋造して、言うなれば金融機関を偽って、あたかもこのような受け取り勘定があるかのごとくに装って、そしてその手形を相互に交換し、これを金融機関で割り引いて事業資金に使っておるが、私はこれが相当の率にのぼっておると思うのです。このことが北九州における関連倒産の一個の破局の原因となり、このことが全国的な金融恐慌の中にひそめられておる一つの病根になっておると思うのです。手形割引の中において交換手形、これは一体どのくらいの率を占めておると鍛冶さんは判断しておりますか。——それじゃ私が申し上げますが、これは金融機関あるいは興信所、その他われわれのごとき経済学者の間で推測をいたしておりますが、大体これはひどい人になると五兆円ぐらいありはしないか。十八兆円の二割、三兆数千億円を下回ることはないであろう、こういうような判断がなされておるのです。総貸し出しが二十三兆円といたしまして、手形関係の割引が十七、八兆円、そこの中の二〇%と見れば三兆数千億、ある人はそれをこえて五兆円をこえるであろう、こう言っておりますが、交換手形というものは本来的には単名で借りるべきものであるけれども、単名では借りられない。そこで商品の取引が裏づけになっておるものであるということを擬装して、そうしてその手形を相互に交換してこれを金融で割っておりますね。だから言うなれば、それは経済の実勢を反映しておりませんね。単名では信用がない。あるならば単名で借りられるけれども、借りられないから交換手形になる。それかといって取引というものの実態はない。しかもそれが、数兆円の金がその交換手形で割り引かれてこれが利用されておる。一ところに破綻を生ずるとこれが連鎖反応でぱっと大きなパニックになってくると思うのです。こういう事態が現実にある。これは何らかの形で金融正常化と同時に、年末から年始、二月にかけての金融恐慌を事前に何か手を打っていかなければならぬと思うのだが、こういう問題について大蔵政務次官相当研究されておると思うが、どういうことになっておりますか。
  145. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 いまのことならある程度私に知識がございますから答えられますが、初めからこの手形はもう落とすことができないんだ、こういうことを知りながらやるとすればこれは容赦はならぬことだ。こういうものがあるとすれば、これは何とかして取り締まらなければならぬが、どうもそういうものばかりでもないんじゃございませんか。この交換を——あまりいいことじゃない。交換をやりまするが、まさか向こうのほうで不渡りにしないだろう、こう思ってこちらも出しておる。向こうが不渡りにしなければこちらのものも落ちるのですから。それがどうも当てがはずれて向こうが不渡りにするものだから両方続いてくる、こういうことになりまするので、そういう悪いものは何とか取り締まらなければならぬと思いまするが、根本は、思うように金融ができ得ると思っておるものが思うにまかせなかったということが一番根本じゃございませんか。そういうところからくるのじゃなかろうかと考えられます。
  146. 春日一幸

    ○春日委員 問題は普通の商業手形なら、相手が不渡りになればこれはこれで済みます。相手が不渡りしたことによって相手だけの破綻ということでこれは一応済むと思うのです。ところが交換手形は相手が不渡りにすれば、こちらは交換しておるのだから、その額自体も不渡りにするか、あるいは保証金を積んで、こういう交換手形だから落とす理由はないという形にしても、それに相当する資金が要るでしょう。だからこういう交換手形を余儀なからしめているという現在の金融情勢自体は、これは高度成長政策がもたらしたところの大きな病状だと見るべきでありましょうけれども、しかしこれをこのままにほうっておいて金融は引き締めである、経済は委縮してくる、単名の発行はこれはなかなかできない。そうすれば何か取引があったかのごとくに擬装して手形をどんどん交換していかなければならぬ。相手が不渡りにすると、自分も不渡りにしなければならぬ。不渡りにするためには相当の資金を積まなければならぬ、あるいは自分自体が手をあげなければならぬ、こういうところに今日の金融の不正常と経済の脆弱性があるわけですね。だからこれは政府としても国としても、何らかの緊急の対策というものを講じていかなければならぬ。北九州において八月に関連倒産があり、この関連倒産はあたかも台風のごとくにだんだんと東に向かってくるといわれていますね。十一月にはこれは大阪へ来る、十二月には東海道を伝わって、東京、関東一円に大いなる恐慌を巻き起こすであろう、これはわれわれ経済学者の間では一つの定説になっておるわけです。だから私は、政府がこれを単名に切りかえていくとか何らかの別個の政策的信用供与を行なわなければ、すなわち長期的なおそるべき事態が予測されると思うのです。これは研究なんかされておりませんか。
  147. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 私はその点に対して特に勉強しておるということはございませんが、前から出ておる問題でございますから、私の本職の点からもよく考えてはおります。  そこで先ほどからお話しのように、もうこれは支払いできないのだ、落とせないのだ、こういうものであるとすればこれは容赦ならぬのですが、そうじやない、向こうで大丈夫この金は落とすんだ、したがってそれまでおまえの手形を貸してくれ、こう言うてやる。ところが向こうのものが売っておって、また向こうから手形を取っておる、たいていそうやる。だからひとつ故障すればみんな倒れる。だからこちらが手形が落ちると思っているのに支払いしなかった、それがもとでつぶれた、それを預かっていたものがまたつぶれた、こういうことになるので、問題は物を売って必ず支払ってくれると思っているのに、買った者が金融に詰まって不渡りにした、こういうところから出てくることが一番多いのじゃないかと思います。それを初めから払わぬつもりで初めから手形を出しておるということがあったら、これはたいへんなことでありますが、そのようなことでもなかろうと思うので、問題は、最初金融の、何というか、支払いができないようになったことに対する手当てをすることが一番大事なのじゃないでしょうか。
  148. 春日一幸

    ○春日委員 だからそのことを伺っているのですが、交換手形を発行することのよしあしとか、あるいは刑事上とかなんとか、法律上の責任問題じゃないのですね。とにかく本日現実の問題として、三兆円ないし五兆円という交換手形が現実に手形市場に横行している、金融市場に横行している。したがって、一方のそれが支払いできない場合には、必ず相手方に同額の手形債権債務が生じて、相手が落ちなければこっちは落としようがないものだから、結局本人が倒れる。倒れれば連鎖反応でずっと倒れてくる。そのことが北九州における集団倒産の一個の原因になっておるのですね。そのことはいいことではないことはわかっておるけれども、よかれあしかれこのような事態になってしまっておるのだから、こういうような関連倒産を事前に防止するためには、何らかの措置がとられなければならぬ、こういうことなんです。何らかの措置とは何ぞや。しろうと的に考えるならば、そのような交換手形を名乗り出さして、これは本来的には単名で融資を受けるべかりしものが、単名で受けられないものだから、商手の擬装をして金融を受けておるのだ、だから、これを単名に切りかえてくれ、単名ならば長期にいけるものですからね、そういうことによって一応関連倒産を防いでいく、こういうような非常措置をとらねばならぬ段階ではないかと思うのですよ。だからそういう問題について、いまこそ政府は政策の研究の手を染めなければならぬ時点に立ち至っておると思う。私が言うことは、もう十一月にあらわれてくるのですよ。そういうことがけしかるとかけしからぬとかいう問題じゃない。もうそうやっているのだから。しかも、金融常識では、二割から三割近いものが、みんな融通手形が含まれて商手の中で割り引かれておる。それだから、片っ方が、だれかそれを落とさぬという形になると、金融が窮屈になって落とされないものだから、落とさぬ。おれが落とさなければ、相手が落とさぬ。交換手形だから、落とせば損になりますからね。また、落とす資金もない。損得の関係と余儀ない事情とによって、片っ方も落とさぬ。落とさなければ、それが次々と将棋倒しに関連倒産の原因になってくる。だからそういうものについては、単名に切りかえるだけの資金供与とか、あるいは長期融資の救済措置とかを講じなければならぬ段階にきておると思うのですよ。しかも、北九州の倒産がずっと東に向かって進んでおるという現状にかんがみて、その策を急がねばならぬように思うのだが、大蔵省は何も考えておりませんか。
  149. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 それはもうずいぶん考えておるわけでございまして、ことにいまのおっしゃるようなことは、やはり資金関係に資力の薄い、いわゆる中小企業が一番多いのじゃないかと考えられます。したがって、やはり何といってもそれを防ぐ根本は、中小業者に対する金融の道を開いてやるということじゃないかと考えられます。そのほか、先ほどからおっしゃるように、払わぬことがわかって出しておるというなら、それに対する法律上の手当てもなきにしもあらずと考えられますが、まずまず私は、中小企業に対する金融の道を開いて渡すことが、一番の策じゃないかと考えます。
  150. 春日一幸

    ○春日委員 ただ問題は、いまの貸し出しシェアから判断しますと、いま金融機関の総貸し出しが二十三兆円あって、そこの中で中小企業金融乏しきといえども九兆円。九兆円の金を使っておっても、なおかつ随所に破産、倒産を続出せしめておるのですね。年末金融が八百億とか一千億とか言っておるけれども、九兆円のところへ一千億や八百億加えたところで、私は実質的な影響はないと思う。たとえば五十メガトンというような目方の中から五十貫とったって百貫目とったって、重量感に何ら変化がないように、九兆円使っておってもなおかつ中小企業金融は足らないのですよ。現実にいま使っておる貸し出しシェアを九兆円、それでも全然破産、倒産の率が減らないという現状の中において、年末金融をここへ財政投融資一千億や八百億加えたところで、それから中小企業金融機関に六千億出すというけれども、それもほんとうにそういうイヤマークつきでいくかどうか、これも私はまゆつばものだと思うけれども、それでもたいしたことはないのですね。だから私はいまここで即決できる問題ではございませんけれども、どうかひとつ、泉さんなんかだいぶ頭がいい方だから、省議なんかでこういう問題も一ぺん十分出して、交換手形、融通手形解消に関する金融上の特別措置を大蔵省として通産省と合議の中で、これは長期の資金を繰り出さなければならぬ。日本銀行から信用供与の、これはただ単に証券対策としていろいろなものを見ようと言っておるけれども、そんな騒ぎじゃないのですね。もしそれ、ゼネラルパニックなんかきたら、こんなものは実際たいへんなことだと思うのですよ。内閣の二つや三つどうなろうとなるまいと関係はありませんが、みんな破産、倒産していったらたいへんなことでございますからね。だからこの交換手形、融通手形解消に関する長期資金信用供与に関する特別措置をひとつしんみりと考えておいてもらわないと、私はこの十二月、一月の金融危機というものは回避できない。いま政務次官中小企業金融をどうすると言われておる。しかし実際には現在の常識的資金源というものは、財政投融資がああだこうだ、中小企業金融がああだこうだと言われておるけれども、そんなものは実際的効果を及ぼさないのです。絶対量が九兆円の中でなおかつこんな状態でございますから、そこへわずかばかりのスズメの涙、焼け石に水、そんなものを出したってだめなんです。これは相当本腰を据えて、融通手形解消に関する信用供与、これを非常の措置をいたしていかなければ、私はゼネラルパニックというものが避けがたいと思う。もらって取り上げる、もらって取り上げるモラトリアムというものがくるかもしれぬ、そんなようなことにしまして、御研究を願うことを強く要望しまして、私の質問を終わります。
  151. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十七分散会