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1964-09-28 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年九月二十八日(月曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 堀  昌雄君       天野 公義君    岩動 道行君       宇都宮徳馬君    奥野 誠亮君       木村 剛輔君    小山 省二君       纐纈 彌三君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       丹羽 兵助君    藤枝 泉介君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君      茜ケ久保重光君    卜部 政巳君       岡  良一君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       西宮  弘君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  委員外出席者         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉國 一郎君         大蔵事務官         (主計局総務課         長)      相澤 英之君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         参  考  人 山際 正道君         (日本銀行総         裁)         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月十七日  委員野原覺辞任につき、その補欠として平岡  忠次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員平岡忠次郎辞任につき、その補欠として  野原覺君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員毛利松平君及び岡良一辞任につき、その  補欠として丹羽兵助君及び茜ケ久保重光君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員丹羽兵助君及び茜ケ久保重光辞任につき、  その補欠として毛利松平君及び西宮弘君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員西宮弘辞任につき、その補欠として岡良  一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 金子一平

    金子(一)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。野原覺君。
  3. 野原覺

    野原(覺)委員 私は主として来年度予算、それから本年度補正予算についての規模あるいは財源その他重要な関連事項についてお尋ねをしたいと思うのであります。  新聞の報ずるところによりますと、今月の十八日の閣議で、来年度一般会計予算財投計画概算要求が報告されております。新聞には、一般会計予算概算要求は四兆一千六億円、本年度の二六%の増、財投については一兆八千二百二十七億円というような数字を出されておるのでございますが、予算でございまするから、数字のことでありますから、大臣から予算概算要求財投概算要求は正確にどれだけの数字を示しておるのかということをお聞かせ願いたい。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計につきましては、先ほど御指摘がございましたとおり、対前年度当初予算比二六%増しでございます。それから財投につきましては、ただいま御指摘がございましたように、一兆八千二百二十七億円の概算要求でございますが、国有鉄道鉄道建設公団地方公共団体、それから東北開発会社というのが未定でございますので、これらを集計をいたしますと、ただいま申し上げた数字よりも大きくなるということでございます。未提出の分につきましては、御承知のようにいろいろ事情もございますし、なお地方公共団体につきましては、地方からの要求数字集計しなければならぬので、八月三十一日の一般会計概算提出期限にはいつでも間に合わないというのが通例でございます。
  5. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、この四兆一千六億円の概算要求というのは実際はもっとふくれる。それから財投につきましても、いま大臣の御答弁にありましたように、国有鉄道鉄道建設公団、あるいは地方債地方公共団体の分、それから東北開発会社等を入れますと、これも膨大な額になる。そういたしますと、来年度一般会計予算概算要求は、一体どのくらいになるでしょうか。財投についてもおおよそのめどがわかればお述べいただきたいと思います。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計は八月三十一日に提出をした数字確定数字でございますから、これに対してもっと要求がふえるということはございません。  それから財投につきましては、御承知のとおり国有鉄道鉄道建設公団地方公共団体、こういうものでいま間に合わないものがございますので、この財投数字だけがふえる、こういうことでございます。それで、御承知政令事項できめておりますものは、一般会計は八月三十一日までに提出をするということになっておるわけでございます。財投一般会計提出にあわせて可及的すみやかに提出を願う、こういうことになっておるわけでございます。
  7. 野原覺

    野原(覺)委員 一般会計についてですが、公務員給与ベースは入っておりますか。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 公務員給与ベースにつきましては、御承知人事院勧告を待ってということでございますので、三十九年度ベースに対して概算要求いたしておるということでございます。
  9. 野原覺

    野原(覺)委員 入っていないでしょう。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 入っておりません。
  11. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、四兆一千六億円は公務員給与引き上げ分だけふくれるじゃありませんか。あなたはこれだけで確定だといいますけれども、この概算要求は当然ふくれなければならないでしょう。  その次には、沖縄財政政策援助費がこの概算要求に入っておるかどうか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 沖縄援助費も入っておりません。ですから、先ほどのことばをひとつ訂正いたします。おおむね確定に近い数字でございます。こう訂正させていただきます。
  13. 野原覺

    野原(覺)委員 その次には、三十九年産米生産者価格引き上げに伴う食管特別会計繰り入れ増、これも入っていないでしょう。いかがですか。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 食管会計につきましては、本年度ベース要求してございます。ですから、消費者米価引き上げができればそれだけ減るということになっておるわけです。今年度のままで要求しておる、こういうことでございます。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 消費者米価引き上げはするのですか。きまっちゃいないでしょう。きまっていなければ、やはり大蔵省としては概算要求の中に当然入ってくるものという判断をしなければいかぬじゃないですか。あなたは引き上げる個人的なおつもりをされていらっしゃるようですが、消費者米価引き上げがきまっていなければ、当然この食管会計繰り入れ増というものは概算要求の中に入ってくるものとして判断しなければならぬじゃありませんか。時間の関係もありますから、その次には災害復旧事業費の当然増、これも入っていないように私は思うのですが、いかがですか。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 食管につきましては、先ほど申し上げましたように、今年度ベース一般会計から繰り入れるという概算数字を計上いたしておるわけでございます。ですから、消費者米価が上がるということになれば繰り入れ数字は少なくなるということでございます。それから、災害の問題に対しては集計数字の中に入れておりません。
  17. 野原覺

    野原(覺)委員 大臣答弁は慎重にやっていただきたい。いいですか、田中さん、あなたは答弁を慎重にやってくださいよ。私はまじめに聞いている。概算要求は四兆一千六億円だ。これはふくれるのではないか。だれが考えてもふくれるとしか思われない。公務員給与ベースだって、年間を通じてばく大な金額になるじゃありませんか。沖縄財政援助費も入らない。それから災害復旧事業費の当然増も入らない。この三つを合計いたしただけでも、相当な金額にふくれるはずだ。しかも三十九年産米生産者価格引き上げに伴う食管特別会計繰り入れ増、これについてはあなたと私は見解を異にいたします。今日消費者米価は上げるとも上げないともきまっていない。きまっていない時点においては、当然概算要求の中に入れるべきだ。概算要求の中に入って、なお消費者米価をいよいよ上げるようになった、そういう時点においてはまた精算をしたらいいのであります。そうなりますと、この一般会計概算要求は、これらの金額を入れてどのくらいにふくれるとあなたはめどを立てておりますか。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知概算要求は八月三十一日までに提出を願いたいということでございますが、その八月三十一日現在で確定をしておらない要素につきましてはこれを見込んで概算要求をする場合もございますし、見込まないで、普通は確定をしてから出してくれということでございます。これは予算編成期までの時間が十分あるわけでございますし、災害等については現在査定中でございまして、実際に災害の総事業費が決定しないときに第二年度分のものとしてほんとうに概算をやるということよりも、確定を急げば当然三十九年度補正予算段階において数字確定するわけでございますから、そういう意味では八月三十一日現在の政令に基づく概算要求の中に入れなければならないという要素ではないように考えておるわけであります。
  19. 野原覺

    野原(覺)委員 いずれにしても、四兆一千六億円の概算要求というものは、相当な金額にふくれるわけです。四兆数千億円になるわけです。  それから、先ほどの財投でございますが、あなたのあげた国有鉄道鉄道建設公団、それから地方債地方公共団体の分、東北開発会社等、これを計算してみますと、本年度金額でいけば四千四百三億円になっておる。四千四百三億円というのは一兆三千四百二億円の、つまり本年度財投規模の三分の一の比重を持っておるわけです。それから考えますと、いまここに財投概算要求として出ておるところの一兆八千二百二十七億円に一兆三千四百二億円の三分の一、しかもこれは確定金額だ、本年度の分は。要求となればもっとふくれるでございましょうから、私、計算いたしてみますと、最終的にはざっと本年度財投の二倍、二兆六千億円ぐらいに財投要求もふくれてくる、このように判断いたしますが間違いございませんか。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 財投は私はいま確定的な数字を申し上げることはできません。その中の鉄道の問題につきましては、御承知の新規五ヵ年計画というものをいま国有鉄道考えておりますし、この中には運賃値上げ問題も研究されておるようでございます。しかもその中には鉄道基本問題調査会という専門会議をつくって検討いたしておるわけでございますので、未確定数字でございます。しかし、今年度よりもきっと要求は大きくなるということは当然考えられるわけでございます。  それから地方債におきましても、現在、地方開発、特に新産業都市負担区分をどうするかとか、地方債でもってやる場合、また開発銀行地方開発融資でもって行なう場合等、未確定的な要素がたくさんあるわけでございますので、これもさだかな数字を申し上げる段階ではございません。しかし大ざっぱに言いますと、あなたが言うとおり、ことしこの期間の総計が四千億ということだから、まあ二割五分上げれば五千億、五千億に一兆八千億加えれば二兆三千億になるだろうという程度の想定はつくわけでございます。
  21. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは各省に対して、例年概算要求は五割増しでございましたが、来年度概算要求は三割増しに押えてもらいたい、こういう要求でやられたように新聞は書いておりますが、例年五割増し要求をしておったのを三割増し、こういうように押えようという申し合わせを閣議でされたというのは、何か理由があるのですか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 年々五割増しという非常にいいルールをしきつつあったわけでございます。ところが国会等におきまして特に野原さんなども一般会計規模は大き過ぎるぞ、もっと政府姿勢を正さなければいかぬとおっしゃいますし、また他の国々の例を見ましても、対前年度最終的に確定をいたす予算については六%増しとか四%増しとかいうものでございます。日本のように三十六年度が対前年比二四・六%増しとか、三十七年度は二四・四%とか、三十八年度が一七・四%、それから相当均衡財政に引き締めたにもかかわらず、三十九年度は一四・二%、こういうことでありますから、一般会計を引き締めぎみにやらなければならないという理論から考えましても、五〇%増し要求していただいても、そんなものはならぬのでありますから、何でも大蔵省には出しますが、大蔵省でひとつ切ってもらいたいというような考えではなく、これはやはり各省大臣概算要求をするときに、自分の責任で大幅に重点項目をしぼるという姿勢はとるべきである、そういう意味から言うと、対前年度比五〇%増しを四〇%、三〇%、二〇%というように合理的に概算要求段階において姿勢を正すということが必要であろうという考え方に立ちまして、三〇%でお願いしたいという提案をし、閣議の決定を見たわけであります。
  23. 野原覺

    野原(覺)委員 大蔵大臣は一国の財政をあずかる方でございますから、もうすでに来年度予算についての規模財投規模一般会計予算規模、大よそのめどを立てておられるだろうと思うのでお述べいただきたい。一体どのくらいの規模財投はいくのか、一般会計予算は組むのかお聞かせ願いたい。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 いまの段階において三十九年度補正予算原資さえも捕捉できないという状態でございますので、四十年度予算規模を申し上げることは非常にむずかしい段階でございます。これはもう国会でなければ、お互いに質疑応答の中でいろいろなことをやっているうちに、まあこんなものですかなあとか、そうなりますかなあというような話はできますが、いやしくも国会でございますので、なかなか申し上げられる段階ではございません。ただいままで報道せられたもの、また私も一応考えたり試算をしてみたりしておる数字まで申し上げられないということではいけないと思いますから、無責任なというその前提をおとりにならないようにお聞きいただければ申し上げます。先ほど申し上げましたように、三十六年から三十九年までは二四・六、二四・四、一七・四、一四・二、特別会計に移した分を入れても三十九年度は一九・〇ということでございます。でございますから、中期経済見通しをいま策定中でありまして、この過程において申し上げることは非常にむずかしいと思いますが、財政見通し等考えますと、一〇%を上下するというところで予算が組めればまあ理想的だ、こういう考え方でございます。まあ上下でございますから、一二%ぐらいまでの財源が見込めるかどうかということも一応考え得るわけでございます。一般会計が一〇%程度というと、財投は少なくとも一四、五%、一五%以内で押えられれば合理的だと数字の上では考えられるわけでありますが、二〇%というラウンドの数字を押えてみますと、一兆三千億の二〇%ですから、二千六百億ふえるということが言い得るわけでございますが、通常原資において一体それをまかない得るのかという見とおしになりますと、多少無理なような気もいたします。しかし財投一般会計につきましては、一般会計健全均衡の線で一〇%に近づく場合は、ひずみの是正という問題から考えましても、財投一般会計伸び率対比率にこだわらないで伸ばすべきだという積極議論も一部にございます。しかしそういう考え方自体が間違いであって、一般会計及び財政投融資、また財政金融との一体的な運営を考えるということから考えますと、どうしても無制限的なものの考え方はできないというふうに言われておるわけでございます。これ以上ここで税収確定しておりませんし、申し上げられる段階ではないと思います。
  25. 野原覺

    野原(覺)委員 もちろん財源その他の関係もあるし、今後の経済見通し等もあるわけでございますから、私も確定的な数字をいまあなたから引き出そうということは無理だろうと思います。しかしながら、いまあなたの御答弁にありました一般会計については本年度の一〇%増ぐらい、大体その辺を上下する。それから財投については一五%の増だ、こうなってまいりますと、かりに本年度の一〇%増といえば、一般会計規模は三兆六千億、それから財投において一五%増でございますから、一兆五千五百億ぐらい、こういう金額を、私はいま頭の中ではじき出したのであります。そういうことを仮定して、私これから話を進めていこうと思います。あなたの大体のめどでございますから、きょうは大まかな議論をするので、こまかい数字について論争しようとは思っておりません。ここでは重要な問題について大まかな話をしていきたいのでございますから申し上げますが、一般会計概算要求は四兆数千億だ。私の計算によれば四兆五、六千億になるかもわからない。それを三兆六千億に押えるとすれば、あなたは一般会計で一兆円の大なたをふるわなければならぬ。それから財投においては、大体その要求は先ほど言った国鉄あるいは地方債その他を入れますと、二兆六千億の要求になると見なければならぬ。これはいままでの要求にはすでに入っておりません。それを一兆五千五百億に押えるとすれば、これまた要求のうち一兆円を削らなければならぬ。一般会計で一兆円削る、財投で一兆円削る、これはなかなかこの予算編成は容易ならぬものだということを、私どもこれだけ見ただけでも感ずるのです。あなたはどういう具体的な方針で一兆円削る大なたをふるうのか、これはさまっていないとは言わせませんよ。あなたは大蔵大臣ですから、まだその方針はきまっていないなどという逃げ口上は国民が許しませんよ。一体年度はどういう予算編成方針を立ててこの一兆円を削ろうというのか、あなたの予算編成方針についてお伺いしたいと思う。これはひとつ率直にお述べいただきたいと思う。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたがいま申されたとおりの数字にはなりませんけれども、まあ相当な大なたといいますか、いわゆる要求に対して最終的な予算編成過程まで概算要求削減を行なわなければならぬということはそのとおりでございます。仕事はどうか、たいへんな仕事でございます。しかしやらなければならぬ、こういうことでございます。  それから予算編成方針、これはもう内閣、党が一体になってきめるものでございますから、いま私がこまかい問題を申し上げるということはできません。これは普通ですと十二月の初めごろ、来年度経済見通しを立てまして、おおむねの税収をはじいて、そしてその中で予算編成方針を同時に発表して、予算編成段階に入るということでございます。また今日九月の末という時間的な状態から考えても申し上げられませんが、少なくとも自由民主党公約をしておりますものとか、政府が当然踏襲をしなければならないいままで発表された政策、それに合わせて新しい政治的な姿勢も加味して予算編成が進められるべきであります。要約いたしますと、国際収支の長期安定、経済安定成長の確保、物価の抑制、そのほかには絶えずでございますが、減税とか社会保障の充実とか文教の刷新強化とか、また地方開発とか住宅政策とか、これはもろもろのものがあるわけでございますが、いま私が申し上げたようなものは、いずれにしても重大政綱の柱になるというもので、ちょっと申し上げてもこの程度のものが考えられるわけでございますので、こういうものを土台にしながら、しかも乏しい財源の中からより重点的、合理的な予算編成を行なうということであります。
  27. 野原覺

    野原(覺)委員 たいへんな財源難ですね。これは新聞にもあなたの談話が相当出ております。そこで、たいへんな財源難だということは、私がお尋ねしなくてもあなたは御答弁があろうと思いますが、そうなると仕事はしなくてはならぬ、財源に困るのだということであれば、いかがですか、公債発行ということも来年度考えてもいいのじゃありませんか。この点いかがですか。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 一部においては減税財源等に充当するために公債発行も必要であるという議論がございます。しかし、私は、現在の段階において、開放経済に向かってこれから十年、二十年の長期安定的な計画を進めていくという現時点考えますと、公債によって一般財源を得るということにつきましては、時期はなはだ尚早である。少なくとも四十年度予算編成に際しては、内国債を発行しないで、健全均衡姿勢を貫きながら、しかも乏しき中からもほめられるべき重点的な施策を強力に進める、こういう基本姿勢でいくべきだというふうに考えております。
  29. 野原覺

    野原(覺)委員 大臣、妙なことを言いますが、あなたは佐藤派に属しておられる。ところが、佐藤さんは、この前の総裁改選のときでございましたか、私いま正確な記憶を申し上げることはできませんが、税金は高いから、これは減税しなくてはならぬ、仕事がたくさんあるのだから、公債発行もやむを得ないということを言っております。この点は、あなたは佐藤さんと違うようです。だからこの点のせんさくはいたしません。  それではお尋ねいたしますが、減税は来年度どれだけあなたはお考えになっておるのですか。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 間々申し上げておりますように、減税はしたい、また減税をしなければならぬという基本姿勢においては貫いておるわけでございます。しかし、減税につきましては、いま、御承知のとおり、税制調査会が根本的に検討し、今年の予算編成に間に合うように長、短期合わせての減税に対する答申を行なうことになっております。でありますので、この過程において何をどの程度やるというようなことを申し上げられる段階ではありません。しかし、御承知のとおり、自民党内閣としては十年間に一兆一千億余の減税をやってきたわけでありますし、その九〇%に近い金額所得税減税でもありました。いずれにしましても、実績もございますし、乏しい中でこそ大いに努力をするというところにまた国民の負託にこたえるということもあるわけでありますから、そういう考え方でいま鋭意検討段階でございます。
  31. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは先ほど、自民党公約については忠実に守っていきたいとおっしゃった。自民党は、平年度一千億の減税ということを、去年でしたか、言ってきたでしょう。平年度一千億、そうなれば減税は一千億ぐらいだと考えてよろしゅうございますか。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 平年度一千億ということは、自民党は申しました。今年度、いわゆる三十九年度は平年度二千三百億をこえたわけでございます。数字議論するわけではありませんが、二年分やった、こういうことも言えるわけであります。ですから今度はやらぬ、こういうことではございません。税制調査会答申を待ちながら、減税はどうしてもしなければならぬという基本姿勢には変わりはございません。しかし、いま、一千億はどうしてもやるのだろう、こういうことを言われますと、税制調査会でいま検討中でございますので、税制調査会は、二〇%とか二五%、自然増に対しては長期的に、五年間とか三年間とか減税考えるべきだというようなことも報道せられておりますし、自由民主党も、二〇%くらいは必要だとか、いろいろなことを言っておりますが、私がここで申し上げられるとすれば、少なくとも消費者米価が二〇%も上げていただけるようになれば、あなたがいま言ったところの千億減税はいやおうなしにやらざるを得ないなあという感じは持っております。しかし、消費者米価に対してもなかなか御批判もございますし、あなたも先ほど、米を上げることにはあまり賛成でないというようなニュアンスの御発言もございましたし、そういう問題ぐらいは申し上げられると思います。しかし、米を上げなければ減税しないのか、これはもう少し時をかしていただかないとなかなか申し上げられないということでございます。
  33. 野原覺

    野原(覺)委員 私の質問したことにだけお答えいただきたい。私は米との関連では聞いていないのです。私は率直に、端的に減税を聞いておるわけですから。あなたはいみじくも弱いところ、痛いところを言わざるを得なくなってきております。これはあとでゆっくり触れたいと思う。  そういたしますと、私が最初お尋ねしたのは、一兆円の大なたをふるうための予算編成方針は何かということをお聞きしたわけであります。あなたははっきりこれを言わないから、私は公債発行とか減税とかを持ち出して、いろいろ尋ねてきたのでございますが、いまあなたの御答弁を集約してみます。これはよく聞いておって、間違いがあったら直してください。大体来年度の編成方針は、国際収支、物価の安定をはかりながら、経済安定成長を目ざして財政健全均衡を堅持する、歳出については、これを効率化して重点的な配分をしよう、減税は断行する、国民の税負担は軽減をする、その金額は大体千億くらいをめどとしている、間違いありませんか。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 その前段のほうは非常に整備をされて、私が言わんとするところをそのまま申されました。減税は千億をめどにするということでございますが、その発言からあとのほう一行ばかりでございます。これは先ほどから申し上げましたように、いま私の責任で申し上げられる段階ではないということは御了承いただけると思います。千億をめどにしているということよりも、もう少し多くなるかもしれませんし、姿勢としてはできるだけ減税は多くしたいという考え方があるわけでございます。昨年度二千三百億の平年度減税を行なったあとでございますから、千億をめどにしているというと小さいなという国民的な感じもあるわけでございますし、それでは歳出の重点を考えるときに、千億一体できるのかという反対の議論もございますので、これらの問題は税調の答申を待ちながら、しかしながら、減税に対しては、単年度というよりも、長い目で見て国民が希望をつなぎ得るような状態、希望を託し得るような状態というものは何らかの線で打ち出したいという考えはございます。
  35. 野原覺

    野原(覺)委員 今月の十七日から十八日だったと思います。たしかあなたが概算要求を発表されたのと前後して、自由民主党では政策大綱を発表されております。まず読み上げてみますと、第一は経済のひずみ是正、第二は国際競争力の強化と輸出の増進、第三は住みよい社会の建設、第四番目には人つくり政策の充実、第五には減税と行政の簡素化、この五つの政策が重大な政策だというので、自民党がこれを発表しておる。当初自民党では、これまた新聞報道によって私は申し上げますが、九月に池田総理が全国遊説をやる、全国遊説をやるにあたっては、国民にアピールするものを整備しなければならぬというので、自民党の政調が準備を進めておった。ところが御承知のように、池田総理は病気になり、IMFの会議大蔵大臣は忙しいといったようなことが重なって、遊説はさたやみになってできなくなってしまった。そこで自民党の政調並びに幹事長、副幹事長、党の役員の方々は、この五つの重点政策、五大政策というものは来年度予算めどにするのだという記者発表をいたしておるわけであります。したがってあなたも、自民党の一員として、自民党大蔵大臣として、自民党のこの政策大綱がそのままあなたの来年度予算の重点施策になるのではないかと私どもは思う。いかがですか。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 議院内閣制であり、政党内閣でございますから、政党が発表した公約には忠実でなければならぬ、もちろん四十年度予算編成の基本として尊重してまいるという考えでございます。
  37. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、経済のひずみ是正をはじめとするこの五つの重点施策を行なうためには、大蔵大臣としてどのくらいな金をこれに充てようとなさいますか。一体どのくらいの金が要るものでしょうか。私ははっきりした数字を聞こうと思いませんよ。あなたがこれを行なうと言うのだから、行なうという限りには、私はその政策は作文であってはいかぬと思う。この政策は裏には金がなければできゃしない。どのくらいの金をあなたはいま頭の中で考えていますか。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 まだここで申し上げられるほどの数字がまとまっておりません。これは五ヵ年計画でやるのか、十ヵ年計画でやるのか、そういう計画もいま十分立てなければなりませんし、またそれを行なう組織体、国がやるのか、地方がやるのか、公社がやるのか、民間がやるのかという問題、いわゆる施行区分の問題も、当然その過程において立案されなければなりません。それだけでなく、一般会計でやるのか、減税政策をもって充てるのか、しかもこれは地方税と国税とどういう調和のもとで行なわなければならぬか、民間資金を活用する場合一体どうするのか、いままで政府保証のついておらなかったものに一体政府保証をつけるのか、また債券発行というようなことを認めていくのか、いろいろな問題が総合調整されて、これらの施策が前進するのでございますから、これはこれら十二月までじっくりと皆さんの御意見も聞きながら、野の議論も十分拝聴しながら、万全を期して最終的には有終の美をなしたいという考えでございます。
  39. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、この五つの政策大綱というものは、これはから証文の宣伝だ。単なる作文、単なる宣伝じゃありませんか。あなたがそれをお認めになれば、私はこの問題はこれ以上追及いたしません。しかしながら、自民党の役員さんは来年度予算編成めどにすると発表しておるのですよ。あなたは、予算編成の責任者として、そのめどぐらいはここで言うことはできませんか。自民党の言っておることとあなたの言っておることとは違うじゃありませんか。自民党は五ヵ年計画とも十ヵ年計画とも言っておりません。本年九月の総理の遊説計画でこれを述べたかったけれども、だめになったから、せっかくつくったこれは来年度予算編成めどだと言っておる。いかがですか。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 自民党の発表文につきましては、私たちも共同責任を負ってこれを強力に推進する、こう申し上げておるのですから、間違いございません。これはただ五ヵ条書いてあるから、金が幾らということを言わないと、どうも私の発言と自民党の文書とは違う、から宣伝だ——から宣伝じゃございません。これは社会党さんでもこういうことをやろうというと、一本の柱をぽんと立てますが、さあこれからやるにはひとつ予算も計上しなければいかぬし、税制上もしなければならぬし、年次計画はどうだということは、これからこの線に沿って検討が進められていくわけでございますので、自民党と全然意見のそごがあるということではございません。四十年度予算にはこれをひとつ十分盛りまして、かくのごとく盛りましたということで御審議をいただくということでございます。
  41. 野原覺

    野原(覺)委員 社会党はできないことは申しませんよ。社会党は宣伝だけはいたしませんよ。常にできるかできないか、金の裏打ちを考えて、私どもは政策を進めておるのですよ。その点あなた方と違うようです。  そこで次にお尋ねしたいことは、これは最も大事な点でいよいよ核心に触れてまいりますが、消費者米価です。その次は、公共料金です。いいですか。この二つが来年度予算編成の上に立ってきわめて重要ではないかと実は私ども考えておるのです。財源難とからんでこれがきております。これは大臣も、消費者米価についてはいま米審に諮問しておるのだ、米審の答申を待たなければどうともならない、こう答弁があろうかと思いますが、しかしあなたがそういう答弁をここでなさろうとも、すでにすべての新聞があなたの真意なるものを書いておる。消費者米価を二〇%引き上げる、二〇%引き上げなければ、来年一月一日からの分があるから、本年度補正予算すら組むことができない。それからいわんや来年度予算については、これは当然編成ができない、こう言っておる。そこで私どもは自民党政策大綱に大いに期待をしたのです。自民党政策大綱は、来年度予算編成めどにしておる、こういうのでございまするから、これが予算編成のものさしになるのだというのでありますから、いま予算編成にとって最も大事なことは、消費者米価についてどういう態度をとるのか、公共料金の一年間ストップについては一体どういう方針をとるのか、このことが今日来年度予算編成のポイントなんだ。あなた方の財政政策からいきますと、これがポイントになってこなくちゃならぬのに何も触れてないのです。もういいかげんで大蔵大臣国民に対してその真意を述べる責任と義務があると思う。いつまでもごまかすべきではない。だから消費者米価についてはどうするのか、公共料金を一年間ストップをしておるが、これについては一体どういう方針と態度をもって臨むのか。それでなければ、私は来年度予算について国民に対して納得と理解を求めることは不可能だと思う。これははっきり申し述べてもらいたい。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 消費者物価を安定させなければならないという考え方政策の基本になっております。それから四十年度予算編成に関しまして公共料金をどうするかという問題でございますが、この問題については御承知の国鉄等につきましては国鉄基本問題懇談会、米価に対しては米審にこれをいま検討をゆだねておるわけでございます。それから地方公営企業に対しましては、地方公営企業懇談会でいま将来のビジョンも描きながら具体的な施策を練っておる途中でございます。でありますから、私がいまここでさだかな御答弁を申し上げられないという段階は御承知がいただけると思います。なお政府としましても、こういう問題は非常に重要な問題でございまして、閣議決定をなして一年間公共料金の全面ストップという段階を経ておるのでございますから、これを修正をする場合には当然経済閣僚会議の議を経、閣議としての態度を決定をして実行に移すということになるわけでございます。でありますから、私がここでしいて申し上げられるとすれば、大蔵大臣としての立場でしかものが申し上げられないわけでございます。私の立場でものを申し上げるといたしますと、消費者米価というものは、新聞に報道されておるように、二〇%引き上げが望ましいという基本的態度であることは事実であります。しかしこの問題に対して総理大臣は非常に慎重な態度をとるべきであるということだけは強く私に言っておるということもつけ加えて申し上げます。自由民主党側とのいままでの話し合いによりますと、二〇%ということがどうかは議論の存するところであるが、何ぶんの引き上げは必要であるのではないかというような御意見があるように承知をいたしております。  それから他の鉄道料金とか電力料金とか、それから社会保障関係費というようなもの、公共料金に準ずるものがございますし、私鉄の料金、民間のバスの料金、地方公営企業の問題、あらゆる問題がございます。少なくとも一月一日からせきを切ったようにすぐにこれを解除することは、これは当然考えられない。ですから十分検討しながら、消費者物価の安定、抑制というものの基本線を貫きつつその現実的な事態に対処して、合理性をもととしての料金の改定というものは、いろいろな問題に対して考えなければならなくなるであろうということは申し上げられるわけであります。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、あなたの予算編成方針について、先ほどのあなたの御答弁を集約いたしまして、あなたがお認めになった点が一つある。それは物価の安定ということだ。国際収支の均衡と物価の安定をはかるのだ、健全均衡財政でいくのだ、これがあなたの予算編成に対する基本態度である。そこでお尋ねしますが、消費者米価引き上げるということになると物価安定と矛盾をしてくる。これは単なる物の値段ではありません。日本ではやはりお米というものが物の基本になっておる、この点を、大臣承知のように、経済界でもいろいろ議論をしておるわけです。そこでお尋ねしたいことは、あなたの言う物価安定策というのは何ですか、一体どういう具体的な方策で物価安定をはかろうというのですか。消費者米価を二割引き上げるのだ、公共料金もぼつぼつ解除していくのだ、一体どうして物価安定策をやるのか、これをお聞かせ願いたい。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 物価安定策につきましては、公共料金の一年ストップというものも有力な物価安定に対する一つの手段であることは事実でございます。しかし物価安定とはそのような問題だけで片づく問題ではございません。そんなに安易な問題ではない、もっともっと基本的な問題が存在することは御理解いただけると思います。まず物価安定ということは、大ざっぱにいってどういうことをするのかということでありますが、御承知のいまの賃金の平準化ということをひとつ考えてみましても、それは中小企業の合理化、いわゆる生産性の向上でまかなえないというような面があれば、当然中小企業とか農村の場合、生産品、サービス料金というものにはね返ってくるという事実がいま露呈しておることは事実であります。これは先進国を見ますと、日本の散髪料がまだ二百円であるとか百五十円であるとか——幾らよくても三百円だ、しかしアメリカに行けば千三百円じゃないかというところからいえば、議論の存するところではありますが、いずれにしても急激に物価上昇の要因になるようなことは、これはできるだけ押える。いわゆる合理化、近代化という面は当然考えなければならぬわけであります。それから東京都のように生鮮食料品が非常に高いという場合に、主産地からの東京都や大阪に対する交通網が整備をされておらないということで、交通網の整備、主産地の形成、こういうものも重要なものでございます。同時にまた東京はいま一千万になっておるにもかかわらず五百万人の流通機構を目標にして現在はつくられておる。一体五百万人の流通機構で一千万人をまかなっていって小売りマージンが二割とか三割という現状でいいのか、これを合理化すことができるのかという問題も当面する問題でございます。また都市に人口が過度に集中しておる。文化も産業も人口も、また生産に直結せざる人口が年間相当量流入をしてきておる。これを正常な人口分布に変えることができないのかということも有力な物価安定の手段でなければならぬわけであります。それだけでありません。いわゆる日本の生産、いろいろな生産のコストを下げるべくあらゆる角度から合理化、近代化を行ないつつ、国際競争力を培養していくとともに、いわゆる消費者物価というものをもっと下げることができないか、またそういうふうにすべきである。また企業の利潤というものが、現在賃金にだけこれが吸収をされるということでありますが、一般の観念から言いますと、合理化をせられたものの合理化の効果の分配というものは賃金に三分の一とか、いわゆる消費者大衆に三分の一とか、将来の危険負担とかまた企業の内部充実に三分の一とか、そういう議論もあるわけでありますから、一体そういう可能性というようなものは日本の企業にはないのかということにメスを入れる必要もあります。これはただ一つの考え方、公共料金を押えるということだけで、これらの物価対策が完ぺきであるというはずはないのでありまして、私はそれらのもろもろの問題に正面から取り組んで物価の抑制、安定ということをはかってまいるということが、政府自由民主党の基本的な姿勢であると理解をいたしております。
  45. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたの基本的な姿勢が、私に言わせるとどうもあやふやなんです。物価安定策をとるのだ、物価安定をはかるのだと言う。物価の安定はどうしてはかるのかといえば、総合的な対策をやるのだ、経済のひずみ是正でいくのだ、そんなことじゃ、国民は何を言っているかわからぬですよ。具体的にいって、やはり米を上げたら物価は上がりますよ。消費者米価を二割上げたら、物価ははね上がりますよ。国鉄の運賃を上げれば当然これは国鉄の運賃だけではなしに、水道料金にしてもそうだ、あるいは地方公営企業の料金にしてもそうなんです。そういった公共料金を引き上げれば物価は上がりますよ。そこで、それではここで大蔵大臣にお聞きしておきたいことは、あなたのおっしゃるように消費者米価が二〇%上がる、こういたしますと、わが国の今日の物価にどの程度の反映があるとあなたはお考えですか。ないならないでよろしいのですよ。あるとすれば一体どの程度物価の上昇に影響を来たすか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 米の持つウエートは消費者物価の中で七%でございますので、数字で二%上がれば一・四%は数字の上では消費者物価は上がるということは言い得るわけであります。ところが、二十五年に米価を上げたけれども消費者物価は下がっているという例もございます。これは消費者物価というものを安定せしむるのにただ数字の上だけで安定せしむるということだけではいかないのではないか。もっとやはりいままでの考え方が、あなたがいま御指摘になったように非常にものわかりのいい、だれが考えてもわかるというものをまず押えることによって消費者物価の抑制になるのだ、これはよくわかります。しかしその以前の問題としてもっと大きな原因もたくさんあるんだ。こういう問題と正面から取り組まないで消費者物価抑制対策というものが一体できるのか、こういう問題も一つ考えなければいかぬと思うのです。今度の四月の消費者物価の値上がりの最も大きなものは何かといいますと、学校の入学料金であります。それは御承知の戦前よりもまた戦争が終わった直後よりも、あなた方も御承知になっておるとおり高校全入運動、また大学に入る率も一番多くなる、こういう事実。しかもその学校が東京、大阪とか大都市に集中しておる。だから私が東大の地方移転問題をやっているわけです。地方に学校がある場合と東京にある場合と親の負担がどう違うか。これはもう取り組まざるを得ない問題でありますが、こういう問題は言ってもなかなかできないだろうというようなことで、消費者米価だけを引き上げてはならぬとか交通料金を引き上げてはならぬとか、消費者物価の非常に低い戦前は一体どうだったというと、市電の料金は七銭でありました。七銭を現在の物価で換算をするといまの公共料金よりも高かったことは事実なんです。鉄道料金またしかりであります。そうであったけれども、消費者物価というものは下がっておった。ですから昨年の十二月から調整を行ないながら安定成長ということも打ち出しておるわけですから、こういう総合的なものを十分考えて、国民自体がそういう政策を進めるんだということを、やはりお互いが協力し合うというところに消費者物価の絶対安定という路線が確保されるのでありまして、こういう問題に対してはひとつ皆さんからの格別な御支援、御協力を賜わりたい、こう考えます。
  47. 野原覺

    野原(覺)委員 七%の二割で一・四%なんというような数字を私もとり上げようとは思っておりません。これはあなたと同じように消費者物価の上昇というものはムードです。だから米を上げるということは、ものを上げているそのムードに非常に大きく影響するわけなんだ。この点私どもは心配しておるのですよ。しかもこれは大臣が御承知のように、食管特別会計というものはこれは三条と四条によって、三条では再生産を確保するために買い入れ価格は規制をする。食管のこの法律の四条によると、売り渡し価格の規制というものは消費者家計の安定だ。消費者家計の安定とそれから農民の再生産の確保、この二つでこの食管法という法律ができて特別会計制度が設けられておるわけです。そういけば、私はこの食管特別会計というものは当然赤字を予想しておるのですよ。国民の生活が安定をし、国民の所得が増加してその国民の生活の収支バランスというものが均衡しておる、バランスがとれておればこれは消費者米価引き上げてもよろしい。しかし今日の国民大衆の生活からいうと、とてもじゃないのです。したがって米代というものはむしろ税金で負担をするほうが今日の国民生活を安定させる上から必要ではないか、私どもは実はこういう所見を持っておるわけなんです。米を食べるのはどちらかというと低所得層に多いわけなのです。だから米代を上げたら低所得層の負担が大きくなる。その負担分についてあなたは社会保障でいくんだ、生活の保護費でいくんだというけれどもあなたが今日の財源難で一兆円の大なたを振るおうというその苦しい台所のやりくりからいって、それはもう言うだけのことであって、大したことはできないのですよ。そうすると低所得層に対する負担というものが大きくかかってくる。したがって税金を負担することのできる国民に、むしろこの際は米代の負担をさせるということが、私は今日の情勢からいって社会政策的な方策であり、物価安定の上からいってもこれはとるべき道ではないか、私は実はこういう所見を持って消費者米価問題に臨んでおるのです。しかしながら、あなたはこの点については残念ながら私のとは所見が異なる。だから、これはいずれまたあらためて予算委員会等においてお尋ねをしていかなければならぬかと思います。  そこで、時間もございませんから、ちょっと急いでお尋ねいたしますが、三兆六千億の一般会計予算を組むのだ、こういうことになってまいりますと、問題は財源ですね。財源については見通しがないということをあなたが言われておりましたが、私は見通しがないとは言わせません。あなたは大蔵大臣で昭和四十年度予算編成の責任者でありますから、今日来年度予算編成について見通しがないんだというようなばかなことは、だれも信用するものがないわけです。だからあなたとしては、もうすでにあなたのほうの事務当局その他で来年度財源はどうするんだということを検討しておるはずですね。どのくらいの財源増になるのか、財源一体どこから持ってくるのか。三兆六千億といえば、大体本年度か三兆二千五百億でございますから予算規模は三千五百億の増になります。三千五百億の財源というものはどっから持ってくるのですか。大蔵大臣
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 現在の段階で来年度税収をはじくわけにはまいりません。しかも減税規模がまだきまっておりませんから申し上げられませんが、中期経済見通しをつくりますときに四十三年までの平均の経済成長率を何%にするかということはいま作業中であります。私の個人的なと言いますか大蔵省限りで考えてみますと、実質七%ないし七・五%、名目で九%ないし一〇%、こういう成長率だろう、これを前提としてものを考えれば、まだ成長を見ながら見ますと、大体四千五百億くらいの自然増収が見込めるという考えでございます。この四千五百億程度自然増収を前年度の当初予算額三兆二千五百億に対比しますと一三・六%くらいの数字になると思います。しかし、この中で減税一体幾らということになるのか。また前年度剰余金の減が七、八十億ございます。それから当然支出をしなければならないというものがその中から差し引かれるわけであります。これは御承知の三税分二八・九%が地方交付税に回るわけであります。なお厚生省などで新しい政策をとっております。家族給付とかこういうものが厚生省だけでも大体七百億余の平年度限りによっての財源を必要といたします。こういうものを全部計算をしますと、財源が豊かでないということだけは事実でございますが、新聞でもって予算は組めない、きっとこういうふうに報道せられたものに対して、組めないとは何ごとであるか、こういうことでありますが、組めないとは申し上げておりません。組むのははなはだたいへんな作業であろう、こういう話をきっとやったと思うのです。ですから組むとか組まぬとかいうよりも、組まなければならないのです。大蔵大臣予算を組んで閣議の決定を経なければならぬと財政法にも書いてあるわけでありますから、これはやります。ただできるだけ合理的な予算を組みたいという考え方でございます。
  49. 野原覺

    野原(覺)委員 来年度税収の増は四千五百億だ、こういたしますと、その四千五百億の根拠に、いまあなたは経済成長率を大体一〇%——租税の弾性値はどのくらいと踏んでおりますか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 弾性値がありますから弾性値が計算されますので、いままでの例から考えまして、大体一・五倍の伸びということで、三千億の一・五倍の伸びで四千五百億と、大ざっぱな数字でありますが、こう計算をしておるわけです。
  51. 野原覺

    野原(覺)委員 本年度予算を組むときに、今年度経済成長率は九・七%とあなたは説明したように、私は記憶いたします。九・七%の成長率が実際本年度は何%になりますか。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ九月の法人決算等が出ておりませんから、十分明確な数字は申し上げられませんが、当委員会で予算を御説明、御審議を願いましたときは、三十九年度は実質七%、名目九%と、こういう基礎数字をはじいて税収を計算いたしておるわけでございます。しかし、私は現在の状態で見ますと、九%というものが、調整を続けておる過程においても一〇%程度にはなるのではないかというふうに考えられるわけでございます。
  53. 野原覺

    野原(覺)委員 これは事務当局にお尋ねをいたしますが、一〇%程度なんてごまかしてはいけませんよ。本年度経済の伸びは一二%ぐらいになるのではないか、いかがですか。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 これは事務当局に幾らお尋ねになっても、事務当局では答えられない問題です。これは十一月にならなければ数字が出てまいりません。ですから、私限りで、国会議員としての私でございますから、私がお答え申し上げておるのでありまして、まあ一〇%というのが大体の数字だろう。しかし昨年の成長率が高かったではないか、昨年度後半期は一四、五%にもなった、年間を通じても一二%になっておるということから考えると、今年度はもっと高く、一一%ぐらいになるかもしれない、そうじゃないか、こういうふうにたたみ込んでの御質問でございますが、昨年の——いま集計中でございますが、年間を通じて名目一二%になるだろうというようなことから考えても、それから一年間に近い調整を行なっておるわけでございますし、税収も伸びておらないということをもっとお考えになっていただけば、大体一〇%程度、こしてもそう大きくはなかろう、また、そういう大きな状態であれば、また幾らか諸施策を行なわなければならないという状態考えられるわけでありますから、大体私が言った一〇%程度ではございませんかということで御了承いただきたいと思います。
  55. 野原覺

    野原(覺)委員 かりに一〇%としても、租税の弾性値は一・五か二ぐらいになるとも言えないことはない。そうなってまいりますと、あなたが一兆円の大なたを振うのに、あなたがいま言っていることは訂正しなければならなくなりますよ。私は、四千五百億の税収というものは、その根拠はまだ弱いと思う、いまあなたの御説明がありますけれども。来年度は本年よりも、六千億ぐらいに税収の増というものが来るのではないか、このようにも思うのですけれども、この点はいずれ予算編成過程等も見て、私どもは議論をしていきたいと思うのであります。  時間がありませんので、大事な点について触れることができなかったのですが、最後に本年度補正予算についてお聞きしておきたいと思います。当然これは臨時国会提出されると思いますが、その補正予算の総額、規模はどのくらいですか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 補正予算規模はまだきめておりません。きめておりませんが、新聞等では千億をこすというような数字が出ておりますが、人事院勧告一体いつ実施するのかという問題が一つございます。それから災害で、いままでの災害だけではなく、これから十月に入って一体台風、集中豪雨その他のものが来ないのかというのも一つございます。それから御承知食管の問題が一つあるわけです。米価を上げていただけば、一−三月の分に対しては補正を組まないでいいということでございますが、しかし、これは生産者米価が上がっておりますから、当然補正予算段階においてどうしなければならぬかという問題が出てくるわけであります。それから税の自然増収が、現在のところでは大体五百億という数字をはじいております。これは主税局は、五百億でもう大体一ぱいですということでございます。国税庁は、五百億という数字が確保できると思いますが、大体その程度でございましょうというような話でございました。主計局や私は、もう少し出ないか——出たって、大臣、五十億か百億ですよ、そんなになかなか出ませんよ。——あなたはいま五千億とか六千億といっていますが、そんな数字はとてもありません。ですから、歳出要求が、新聞で報道するように千億をこすというようなことになれば、その財源をいかにするかという問題は確かに頭の痛い問題ではございます。ございますが、社会保障費その他、もう伝票が出てくれば当然計上しなければならない事務的経費の補てんという問題もございます。そういう問題からいって、少なくとも五百億で、公債を売るような歳出要求ではないということは事実でございます。
  57. 野原覺

    野原(覺)委員 そうしますと、補正予算の補正要因というのは、災害対策、公務員ベースアップ、それから食管繰り入れ増の問題、あるいは神田厚生大臣が発表いたしました医療費の緊急是正、この四つだと私どもは見ておりますが、そのほかにございますか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告、これが一つ確定的でございます。災害確定でございます。それから、三税がふえますと地方交付税の二八・九というのが、これは一つの柱でございます。もう一つは、社会保障費その他の事務的経費の補てんというのがございます。あとは食管という問題です。食管を入れれば五つになるわけですが、食管というのは、その前に上げていただければもう組まぬでもいいということになりますし、少しは組むけれどもの程度ということになった場合には、組まなければいかぬということになりますし、しかし、早急にはきまらないけれどもというような問題もございます。ですから、少なくとも四つはもう確定的でございます。食管をどうするかということは……。
  59. 野原覺

    野原(覺)委員 医療費はどうするか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 医療費は、まだ大蔵省で緊急是正をするというような状態までなっておりません。これは神田構想というのがいま日々報道されておりまして、所管厚生大臣がいまいろいろなことをお考えになっておるようでございまして、これらの問題に対して大蔵省に合議が多少あるだろうと思いますが、いずれにしても確定的にどうするというような状態ではございませんので、これを入れるか入れないかは、まだ補正予算提出期限がいつになるかというような問題、財源がどうなるかというような問題もからみ合っておるわけでございます。
  61. 野原覺

    野原(覺)委員 時間がないから、これでだんだん終わりに近づきたいと思いますが、最後に重要な点で一つ、公務員ベースアップの問題ですね。人事院勧告についてあなたはどうお考えですか。お聞きいたしますと、あなたはまた十月一日の実施を主張しておられるようです。人事院を設けた趣旨からいっても、五年間も連続して五月一日が十月一日に回されるということは、これは公務員ならずとも、だれが考えても承服できない問題なんです。人事院勧告というものを大蔵大臣はどう受け取っておるのか。こんなものはどうでもいいんだ、政府財源次第で、政府方針次第でどうでもこれはひねっていいものだとあなたはお考えなのかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告は可能な限り尊重するという考えでございまして、どうでもいい、どうひねってもいいなどという考えは絶対に持っておりません。
  63. 金子一平

    金子(一)委員長代理 野原君に申し上げますが、時間がありませんから……。
  64. 野原覺

    野原(覺)委員 可能な限り尊重するということであれば、毎年五月一日が十月一日に回されておるのでございますが、この点についてはきわめて遺憾だといわなければならぬとお認めになりますか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 その前にちょっと申し上げますが、五月一日実施のとおりやりますと、一般会計が六百二十億、特別会計が百二十五億、地方公共団体が八百七十五億で、千六百二十億の巨額の歳出を要するわけでございますが、これは一体財源上可能であるかという問題が一つございます。それからもう一つは、三十四年以前は可及的迅速にという勧告でございましたが、三十五年以後は五月一日実施、こういうことが明記されておるわけでございます。三十四年は可及的迅速にというのに翌年の四月以降という実施をいたしました。三十五年以降は五月実施に対して十月実施ということになっております。しかし先ほどから申し上げておりますとおり、これはもう五月にやりたいということはやまやまでございますが、いろいろな問題がございますので、十月実施をしてもなかなか金がたいへんだ、地方などは不交付団体まで支給財源に困る、単独事業は全部やめなければならぬ、しかも国は補てんできるのか、それはなかなかむずかしゅうございます。こういう問題がございます。そういう意味で一月実施ということはどうだということも事務当局レベルでは真剣に検討しておるようでございまして、私は初めから十月実施などという考えではなく、これは各方面からいろいろな数字を積み重ねまして、一月実施できるのか十月に実施できるのか、一体ほんとうに五月実施というのが可能なのか、非常にまじめに検討しておるということはひとつ御了解いただきたい。
  66. 野原覺

    野原(覺)委員 これで終わりますが、わが国の今日の財政財源があり余るということは私どもはまずないと思うのです。これはいつの予算を組む場合も、日本の場合には公共資本、社会資本、これが不足しておりますから、これは幾らでも仕事があるわけだ。だから財源難です。財源が余ることはない。しかしながら人事院の勧告は尊重しなければならぬというたてまえをとるならば、私はその尊重するという考え方の上に立って財源について考慮してやらなければならぬと思う。これは五年間にもわたって六ヵ月ぴんはねをされておるということでは、今日公務員諸君に対して、労働慣行を尊重しろとか、君らは秩序を守れと言うような資格は、池田内閣にはないですよ。今日あなた方にはありませんよ。あなた方がその権利を放棄すればいい。しかしながらあなた方は公務員に向かっては、何だかんだ、こうやるのだ、職場集会をやればそれは違法だ、何だと言って締めつけておる。それだけの締めつけをやるならば、当然政府が人事院の勧告を尊重するというたてまえの上に立って本年度は五月一日の完全実施、それをやるべきなんだ。財源がないというけれども、財源はありますよ。やる腹があればありますよ。ほかのいろいろな仕事があろうけれども、人事院の勧告というものは、今日石田労働大臣がジュネーブから帰ってきておりますが、ILOにおいても問題になっておるじゃありませんか。政府は公労委の裁定は完全に実施しておる。しかし人事院の勧告というものは五年間も完全実施をしていない。これでは今日公務員の労働者に向かって声を大にしていろいろなことを言いつけるところの資格も権限もないということを、私は指摘しておきたいと思います。いずれこの問題はあなただけでも解決しない問題でありますから、いま六者会談その他がなされておる段階でございましょうから、私ども社会党はこのような片手落ちな公務員給与に対する政府の態度は断じて承服しない、このことだけを申し上げて質問を終わります。
  67. 金子一平

    金子(一)委員長代理 只松祐治君。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 野原君がちょうど私が予定しておりました質問をだいぶ質問いたしました。引き続いて給与の問題から入りたいと思います。  本年度予算編成期のときに、私は六千八百億という自然増収というのは過大な見積りではないかということを再三にわたって質問をいたしました。あるいはいろいろなそういう観点から質問したときに、いや過大ではないし、本年度予算の組み方というものはきわめてりっぱなものだ、こういうようなことを答弁されたわけです。しかし今日大蔵大臣は口を開けば、補正予算その他財源がない、こういうことをたびたびおっしゃっておるわけなんですが、そういう観点からするならば、特にたとえば公務員労働者がこの予算を見た場合に、人事院の勧告さえも完全実施ができないというような予算の組み方——これは当然に物価上昇に比例して勧告が行なわれるであろうということは予測されるわけで、私もこの点に触れたところが、人事院勧告があれば尊重いたします、こういうことは大蔵大臣として答弁なさっておる。速記録をごらんになればわかります。そういう観点からするならば、この予算の組み方は非常に誤りであった、あるいは誤りでなくても無理があった、こういうことは言えると思うのです。本年度税収の見積もりあるいは予算の組み方、こういうものに誤りがあった、こういうふうに大臣はお考えになりますかどうか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 誤りがあったとは考えておりません。国会でもいつでも、税収がない、もうこれで適正なんです、こう言いながら二千億余にのぼる補正予算を組む財源が出てくるじゃないか、そういう組み方はまずいのだ、税収というものは確実に組むべきだと再三おしかりがあったわけであります。しかしその二千億の補正予算を組めるようなときは、こちらが当初考えた六%の経済成長率が一〇%になり、七・二%が一二%になり、また九%が一五%にもなり、一六%にもなった、こういう全く特異な時期における状態によって自然増収がはじき出されたわけでございます。今度は、十二月から引き締め基調に入っておるのでありますし、開放経済に向かって安定成長ということを考えますと、そんなにたくさんの自然増収ができると予想せられるというような状態であってはならないわけであります、こうお答えをして前提をはっきりいたしております。でありますから、七%の実質、九%の名目成長率を考え、六千八百二十六億の税収をはじきましたときには、これはもう今度は過大ではないか、こういうことでありました。過大ではないかというのですが、今度五百億程度自然増収があります、こういうのでありますから、これはあなた方がいままで非常に御質問また政府を御鞭撻賜っておった情勢からいいますと、今度は水増しもなかったし、取り過ぎもない、正常な見積もりをしたな、こういうことは一応御理解いただける。場合によってはあまりにも的確過ぎたんじゃないかという御批判はあるかもしれませんが、そのように理解をいたしております。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 ことばは重宝なものですから、観点を変えればそういう見方もできるかも知れない。しかしこれはしろうとでも、さっき本年度補正予算に必要な財源の大きなものをあげられましたけれども、私たちが当初論議をするときも、いま災害の問題は、災害はこうやって特別に二百億組んでおります。人事院の問題、それは尊重いたします——私たちも当初予算のときに、補正予算財源が必要ではないか、今日のようにこういう財源というものが必要になってくるのではないかということはいろいろ指摘をしておるわけです。まして三度にわたって大蔵大臣をつとめられた田中さんとしては、今年度内のどういうものが補正予算に必要になってくるだろう、あるいはおよそどの程度補正を伴うだろうというようなことは、これは見通しがあったと思います。ところが現在になれば、とにかく財源がない、財源がない、こういうことを言われるということは、少なくともいまみたいな答弁をされれば別ですが、常識的な考え方からすると、やはり誤りがあった。私はこう言っていいのだと思います。それが本年度補正予算の見通しさえもなかったというのでは、大蔵大臣としてはたいへんお粗末ではないかと思います。  それはそれといたしまして、そういう角度から見ましても、人事院勧告というのは当然に実施されなければならないと思うのです。大臣も、当初予算のときにはそういうふうに一応答弁なさっている。現在は財源がないから、こういうことでいろんな逃げの一手を打っていると思いますが、この人事院勧告というものをそのまま見ましても、私は実施しなければならぬと思うのですが、その前に、大臣は、この人事院勧告を正当なもの、妥当なもの、こういうふうにお考えでございますかどうか、ひとつお聞きしておきたいと思います。  いろんな生計指数の取り方その他も問題があるわけですが、たとえば一食六十四円六十八銭というようなもので食事費を計算して、犬や何かの食費にも劣るといわれておるわけなんですが、こういうもので計算しても、なおかつ人事院勧告が出ておるわけです。これも完全に実施できないということになると、一食六十四円どころか、結局六十四円を下回るようなもので公務員は飯を食らえ、こういうことになると思いますが、この人事院勧告をよ過ぎる、こういうふうにお考えでございますか。それとも、これはやっぱりかわいそうだ、こういうふうにお考えですか、どうですか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告は尊重いたしたいという基本的な考え方でございます。でありますから、人事院勧告はできるだけ実施をしたい、こういう考えでございますので、この考え方については只松さんと大体同じ考え方、こういうことでございます。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 いま、私と同じ考え方だし、尊重したい、こういうことでございますが、そういたしますと、精神的な尊重だけではなくて、宗教や何かも真善美から真善利というふうに、現在の社会では経済行為が伴わないことには、精神だけではなかなか満足を得られない。そういう精神ならば、完全実施ということは五月になるわけですが、五月は先ほどから財源がないというようなことで、無理だ、無理だというようなことをおっしゃっていますが、それならば、さっき十月とか一月とかいうようなことばもちょろりと出てきたわけでございますが、ずばりとしたものではなくても、とにかく、およそ、やはり十月なら十月実施ということぐらい出ないと、公務員なんかこのために非常にいま一生懸命陳情したり、私どものところにも請願、陳情その他くるわけです。一生懸命になっております。あるいは各地方自治団体といたしましても、大体十月からくるんだろうか、あるいはいつだろうかというようなことで、内々大蔵省なり自治省に伺いを立ててきていると思いますけれども、そういう地方政治にとってもこれはきわめて重大な問題を持つと思うのですが、おおよそでも大臣としてはどういうふうにしたいという希望でも、これは大臣としてお示しになるのが当然ではないか。人事院勧告が全然出てこなければ別ですが、すでに人事院勧告というものは出ているわけです。五月から実施しろ、十月は妥当じゃない。大蔵省当局としてはおよそこの辺は出したいというくらいのことは方向を出すべきではないか。およそでけっこうですが、大臣はいつごろが妥当だというふうにお考えになりますか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告の問題は、財政的な問題だけでなく、いろいろな問題がございますので、大蔵大臣だけで決定しないで、大蔵大臣、自治大臣給与担当大臣、労働大臣、それから官房長官、こういうメンバーで慎重にやらなければいかぬということになっております。ですから、先ほど申し上げたとおり、十一月実施というような案もあります。しかし、三十五年から非常に無理をしながら十月実施をしてきたのだから、十月実施をすると仮定した場合には一体どうなるかということも数字の上では検討いたしております。五月実施の場合はどうかということも、数字ははじいております。はじいておりますが、これはちょっと見込みがないということだけは事実でございます。これははっきり申し上げられると思います。ただ、一月実施とか十月実施とか十一月、十二月実施というようなこまかい計算をしておりますのは、交付団体だけでもって一体幾らになるのか、その交付団体以外には財源があるのかということで、不交付団体でも金がない。その金をもし捻出をする場合にはどのようになるかということになると、これはとにかく運賃を値上げしてくださいとか、それから公営で赤字が出ているものを政府一体見てくれるのかとか、それから、他に単独事業をやっているものを起債でまかなってもらえるだろうか、それから、政府が何らかの措置で一時的に金を貸してくれるのか、こういう非常にむずかしい問題がたくさんあるわけであります。でございますから、自治省自体が現在の段階で何月実施ということはできない。しかも集計を全部考えた場合に、大蔵省として一体三税のほか別なものを見れるのか、こういうお話がございます。見れるどころか、大蔵省が使う一般財源さえもいま見通しが困難である、こういうことでございまして、とにかくお互い国会にも、公務員にも、国民にも理解ができるようまじめな検討を進めるべきだというようなことで、各地方別に膨大なる資料をいま対象にして検討をいたしておる現状でございます。これもここで、一月とも申し上げられませんし、じゃ十月からやりたいということならよいということでありますが、これも先ほど申し上げたように、五人委員会、六人委員会で検討したいということでございますので、もう少し時をかしていただきたいと思います。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 総合的な結論はいまのようで各関係大臣のこともあるが、大蔵大臣としては何月からというような希望なり、意向はございませんか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 最終的には閣議で私も発言をしなければならない重要な立場でござますし、特に国家公務員だけではなく、地方公務員一体差をつけられるのかどうか、時期的に。その場合には、理論的にはつけられても、これはたいへんなことになるという議論もございます。では、地方公務員が一月になる場合、こっちも一月という場合一体どういうふうになるのか。その場合には十二月の年末給与一体どうなるのかという問題もございますし、これはなかなかむずかしい問題でして、大蔵大臣自体がいまとつおいつという状態でございます。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 では、そういう作業の終わる時期くらいははっきり言えると思いますが、いつまでに終わりますか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 九月の法人決算が、大体十一月の末には総会を聞くわけでございます。これは十四日間前、十一月十五日くらいには通知を発送しなければなりません。ですから、その発送をする前には取締役会を開くということでございますから、十一月十日ということになれば数字は大体確定するわけであります。ですから、私のほうでも、また自治省当局も、これらの問題に対してその仮決算、予想決算がわからぬかということまでいま進めておりますから、十月の末になれば大体の数字財源的な数字、それから、こまかい各都道府県別、市町村別の内容というものがつかみ得るのではないかという考え方はいたします。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 所管大蔵委員会で答弁しないくらいですから、十月一ぱいくらいまでは、とにかく公務員給与について最終的な決定はできない、こういうふうに当面確認してよろしゅうございますか。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 五人委員会、六人委員会の結論がどうなるかわかりませんが、少なくとも財政当局者としての私の立場から言いますと、十月一ぱいくらいかかるという考え方は事実でございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 はっきり言いますように、公務員地方公務員は非常にこれを重要視して、いま猛烈な陳情運動をいたしておりますが、ひとつできるだけ早く作業を進めて発表していただきたいということをお願いして、この項を終わりたいと思います。  次に、政府は、特に池田内閣は銀行証券対策を非常に重要視していろいろな対策を講じておられるわけですが、いま言いますように、労働者の問題についてはそれほど熱心とは私ども社会党は思わない。しかし銀行とか証券の問題はなかなか熱心におやりになるわけです。銀行と証券というのはいわゆる近代資本主義の二大メッカと申しますか、中心的な機関でございますから力を入れるというのは当然かと思います。しかし資本主義もいろいろ変貌はしてきておりますけれども、とにかく資本主義というのは一つの側面は自由主義が原則なわけですから、あまり金融機関あるいは証券機関というものに政府が関与したり、干渉するということは適当ではないのではないかと思うのですが、いろいろそういうふうにおやりになっておるのを大蔵大臣としてどういうふうにお考えになりますか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 市場に対して政府が関与をしないという原則は御指摘のとおりであり、これは厳に守らなければならぬことでございます。政府証券取引法の使命を十分考えまして、大衆投資者保護という面から証券市場、直接資本市場というものに対して十分な行政を行なわなければならないということは、これもまたけだし当然なことでございます。  もう一つは政府自体として日本の経済開放経済に向かわせる。開放経済に対応するような体質改善をやっていかなければならないというような面から、また間接資本市場である銀行を育成したように、直接資本市場である証券及び公社債市場の育成強化に対しましても積極的な姿勢をもって将来のために行政を行なっていくということは当然の政府のつとめでございます。でありますから、こういう基本的な姿勢、基本的な考え方に立ちまして、資本市場の育成強化を進めつつも、個々の問題、市場の問題等につきましては、政府は絶対に自由市場の原則を守っていくべきであるという考え方に立っております。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 さらにお尋ねをいたしますが、共同証券やなんかの増資でいろいろテコ入れやなんかやっておるわけですが、こういうふうに証券市場までもいよいよテコ入れしなければならない、あるいは干渉しなければならない、こういう事態に陥ってきているということは、池田高度成長政策が事実上失敗をした、こういうことが別な側面から言えると思うのですが、大蔵大臣としては、いやそういうことはないと答弁されるかもしれませんけれども、正直なところ、こういう面まで落ち込んできたというのは、これは必ずしも高度成長政策の単なるひずみであるとか、一時的なものであるということでは済まされないような気がする。現にけさの新聞でも、証券対策の効果は疑問というふうに朝日新聞なんかに出ておりますが、政府がいろいろな対策を打ち出してもなおかつ五円下がっておる、こういうことが言われておるわけです。政府の施策だけではこういうような証券市場がなかなかそう簡単に立ち直れない、ある面ではどうにもなるものではない、こういう点も言えると思うのですが、そういう点はどうお考えになりますか。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 証券市場が不振であるということが高度成長の失敗である、こういうふうに論断をすることは非常に正鵠を得たものではないと考えております。高度成長、安定成長を続けていくために必要な資本市場はかくあるべきであるし、政府は法制的にかくあるべきだし、また行政はかくすべしだとうい前向きの姿勢でひとつ御理解をいただきたい、こう考えます。それはなぜこんなになったかということでございますが、こんなになったということがどうにもならない状態をさすものではありませんけれども、いずれにしても現在のものが理想的な姿ではない、将来の前進に対してここでいろいろな施策を行なうことを適当とする状態であるということは事実でございます。  それに対して私が率直に二、三申し上げてみたいと思いますのは、一つには戦争に敗れた直後占領軍が財閥解体を行なって持株整理委員会をつくって、それで相当期間自由市場、資本市場というものを閉ざしておったということがございます。これを戦後急速に証券会社をして大衆にはめ込めろという相当難問題を押しつけたわけであります。この問題は、私はいま非常にはっきりした問題があると思いますが、西ドイツも同じ状態にあったわけです。そのときに占領軍は西ドイツに何を言ったか。日本に言ったことと同じことをやったわけです。銀行の細分化をやろう、そのときには、証券業務と銀行業務と一緒になっておるものをどうするんだというときに、ドイツは日本と反対の方向をやったわけです。御承知の、銀行は分割に応じます——銀行はまた占領軍の言いなりじゃないのですから、場合によれば、ドイツ経済のために必要があればまた合併すればいいので分割には応じます、ただし証券と銀行との業務分離は絶対反対しますということでひどく反対をして、ついに今日のドイツの証券と銀行との協調業務をそのまま存続せしめた。アメリカは逆に、こまかいものはひとつ細分化しようということでアンダーライター業務とディーラー業務は分けてしまう。日本はどうかというと、日本は銀行の分割は困る——財閥から名前は変えますが、銀行業務の分割は困ります、しかし証券には手を出しません、こういう西ドイツと全く逆なアメリカ寄りの状態をとったわけであります。ですから、銀行は確かに百年に近い育成もありましたが、何とか戦後短い期間に今日の銀行業務が完結をせられたわけです。ところが証券は、そういう意味でいろいろな戦後の思わざる状態をしょいながら今日まできたわけであります。でありますが、今日市場から千億とか千五百億とか塩づけにするような議論がなぜ出てきたかというと、年間三千億の配当を支払っておるわけです。配当の範囲内で増資をするというのがアメリカでもどこでもそうなんですが、日本においては六千億の増資が行なわれておる、こういうことであります。もう一つは、大衆投資家から見ますと、三十四年、五年非常によかった。株さえ持っておれば配当ではない、増資をすることがとにかく先決である、増資さえすればもうかるとか、利回り採算ということを度外視して、株さえ持てば三ヵ月でも五割は上がる、こういう時期が一時期あったわけであります。こういうときに、やはり適切な証券行政も必要であったと思います。私は、こういう場合に手抜かりがあったことは率直に政府も認めなければならぬと思います。浮かれ歩いたと言うかもしれません。証券業者も年間一社に二千人の卒業生を採用する、またそうしなければ、また全国に支店を設けなければいわゆる証券を国民大衆と密着せしめられなかったということもあることはあります。いろいろな問題が錯綜して今日の日本の直接資本市場の形成があるわけであります。ドイツでは、先ほど申し上げましたが証券法六十五条によって金融機関は一切これを扱ってはならないということになっております。銀行のうしろには中央銀行である日本銀行がおりますが、証券はそういう大きな荷物をしょいながら一体金融はどこからやるのか、場合によれば最終的には銀行を通じまして公社債担保金融の道が開かれておったというだけであります。日証金の問題がありますが、その程度の小さい日本の経済ではなかったわけでありますが、なぜ証券企業のうしろに金融機関のパイプを必要としなかったか、なぜそういうものと取り組めなかったか、これは指弾せらるべきものがあると思います。私はこういう具体的な事実を並べてきて、お互いがすなおな気持ちで考え、OECDのかまえで留保はしておりますが、今回のIMFの総会等で、私の市場で日本の外債を出します。それは、出せば売れるでしょう。日本は一体直接投資をいつ自由化するんですか、先進国のすべての人がそういう要求をやっておるわけです。ドイツは逆に外貨が集まって、これをドイツ以外に投資をするように促進法律をつくっておりますし、アメリカは逆に利子平衡税法案を通さなければならなかったということもなかなか興味ある問題だと思うのです。これらのまん中にあって、日本の特異な資本市場は国際経済に対応してどうあるべきかということは、これは当然考えなければならない問題でありまして、私はその意味で次期通常国会には証券取引法の改正案を提出、御審議を願いたいということはかねて申し上げておるわけであります。でありますから、目先の問題だけではなく、やはりかかる歴史的な事実も十分解明をしながら、これらの中期経済、五ヵ年計画の中で、自己資本比率六一%が現在二三%に落ちておる。一体これを六一%まで上げる必要があるか、五〇%でいいのか、四〇%でいいのか、せめて四三年には何%であるべきか。オーバーローンやオーバーボローイングの解消をみんなが唱えております。オーバーボローイングの解消、オーバーローンの解消というものが安定成長率を下げることだけによって片づく問題ではない。一体この資本に置きかわるものは資本市場の育成であるということをなぜ議論しないのでありましょう。税制上措置しようとすれば、それは特異なものに対しての減税になる。千万人資本参加をしており、公社債を持っておる者がある。ごく一部の投機者を保護するものではないと私は声を大にしてきましたが、なかなか御理解が得られない。こういう問題と勇気を持って取り組むことが、やはり私は日本の将来の直接資本市場の育成であり、そこでおのずから学問的にも実際の上にも、日本にある間接資本と直接資本との総合調和、バランスがとれるものだ、また行政はそのような方向によって進められるべきだという考え方に立って、各般の施策を行なっていることを御理解いただきたい。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 時間がありませんので、私も多少そういう点論議したいと思ってきたのですが、どうもできないのが残念です。いま率直に、ある段階で適切な手を打たなかったのは失敗といいますか、誤りがあった、そういうことをおっしゃいましたけれども、いわゆる池田高度成長政策というのはいま起こったのではなくて、ある意味ではもう終わりかけて終末に入ってきた。いまごろ銀行と同じウエートを持つ証券の対策を行ない、手入れをするということは、私はやはりある時期の失敗ではなく、池田内閣の大きな失敗だった、あるいは手抜かりだったろう、こういうふうに思います。それはそれといたしまして、日銀あたりがこういうものまで乗り出して手を打つというのは、通貨の安定をはかる日銀としては当然のことだろう、こうおっしゃるかもしれぬし、日銀法の二十八条なんかにもそのとおりのことが規定されておりますから、日銀法違反とは申しませんけれども、あまり差し出がましいことではないか。もっと自主的にこういうものはやらすべきではないか。あるいは損保協会ですか生保協会ですか、こういう増資には応じないというようなことを聞いておりますが、日銀は政府の機関として遂行するんだから、はねのけるということはないかもしれませんが、あまりこういうことを政府が干渉したり、日銀あたりにちょっかいを出させるのではなくて、やはり行政指導としてやる。しかも、突然やるのではなくて高度経済成長の施策の実施とともにやっていくというのが、やはり政治のあり方だと思うのです。そういうふうにお思いになりますかどうかということをお尋ねしたい。私たちはそれほど証券業界と関係はないけれども、少なくとも政治をするのはそういうふうなとっぴな対策ではなくて、恒常的に行なうべきだろうというふうに思います。  最後に、いまちょっと証券関係の税金のことに触れられましたけれども、私たちは法人税や証券やそういうものの課税の軽減ではなくて、常に勤労所得者、消費者、農民に対する税の軽減を主張してまいってきております。時間があればほんとうはこの問題をきょうよくお聞きしようと思ったのですが、一つだけお聞きしておきます。これは前回の所得税の討議のときに、所得税の納税者が非常にふえてきておるのではないかということを私は指摘してまいったのでありますけれども、大蔵省事務当局はそういう観点とあわせて納税人員を減らす、こういう観点からいわば課税最低額を引き上げるというようなことで、大体六十万円くらいまで課税最低額を引き上げる、こういう原案ができつつあるように聞いておりますが、大臣としてこの原案を支持する、こういうようにお考えになりますか。さらに、現在の原案はかたまっておらないにしても、いま徴税技術その他と考え合わせ、標準家庭で六十万円くらいが妥当だと考えるか、そういうことをお聞きしておきたいと思います。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 日本銀行の証券市場に対する金融の道に対しての御発言がございましたが、私はこの問題は慎重に検討しなければならないものであると思います。と同時に、現在日証金を通じて行なっておる融資、公社債担保融資、また共同証券に対するつなぎ融資とか、こういう問題は信用制度というものを維持していかなければならない中央銀行としての日銀の責務の中に入っておるんだというふうに考えます。しかも私は常に申し上げておりますように、中央銀行というものは都市銀行だけの中央銀行であってはならない。地方銀行も相互銀行も信用金庫も、系統金融まで調整できる機能、こういうものがあってはじめて中央銀行と称されるのではないか。発券銀行であるというなら、それは私はまた別な観点から申し上げますが、ただ歴史の重さだけで中央銀行の定義をきめるべきではない。テンポは非常に早くなって、戦後できた金融機関が二兆円、三兆円という融資をやっておる、こういう事実を考えるときに、中央銀行制度の範囲、いわゆる対象というものはいままでのようにしぼっていいとは私は考えておらないのです。しかもいわゆる金融資本というものは、間接資本と直接資本というものを当然同日に論ぜらるべきであります。しかも日本銀行がマーケット・オペレーション制度を金融調節の重要な機能として道を開いたわけでありますが、マーケットが一体正常に発達しておるかどうか。公社債市場の育成強化、皆さんが絶えず政府を鞭撻しておられる。これに対して日銀は一体全然関与しないでいいのか、こういうものと関係ないのか、私はそうは思わない。ですから、私は日銀法改正の問題で、ただ大蔵大臣と日銀との関係、指示権をどうするかというようなことよりも、一体中央銀行の世界的な業態はどうなっておるんだ、また日本は中央銀行の制度上どういうふうにあるべきであるかということも十分考えていくべきである。それには金融論、銀行論、中央銀行論というものをやるときには、証券とか直接資本と間接資本のバランスはどうとるべきかということはらち外に置いて議論が進められてきた、また立論され、論文が書かれてきたということは、私はもう一ぺん考え直す必要があるという考えに立っておる。重大な発言でありますが、私は信ずることを率直にここで披瀝をいたしておきたいと考えるのであります。そうでないと、開発銀行とか輸出入銀行とか、必要に応じて別な機関がどんどんできていって、中央銀行がどんなに金融調整をやろうとしても全くしり抜けになってしまう。証券に千億、千五百億円出すことがしり抜けになってしまうということを議論をする前に、一体日本銀行の調整の範疇にないものがどのくらい資金量を動かしておるか、そういうものが日本銀行の範疇に入るか入らぬかということが、私はより重大な問題だと思うのです。私はそういうものの考え方から、慎重ではありますが、中央銀行の制度も十分考えていくべきだという考え方でございます。  それから、税の問題でございますが、二千万人に納税者がなろうということは事実であります。この二千万人になんなんとする納税人口をなるべく少なくする。少なくするということよりも、これは経済が膨張し、国民の所得が上がっていくということになれば、また納税人口もふえるということは普通の議論としてあえて配慮すべき議論ではないと思いますが、低所得者までが納税者であるということは事実問題がございます。でありますので、課税最低限を上げるということは年々考えてまいります。六十万円まで上げたらどうかということは自民党政策でもありますし、皆さんも公約しておられますので、これは私は計算してごらんなさいと言ったら、主税局が、六十一万五千円くらい、ちょうど六十万円にはならない、六十一万五千円くらいでもって計算をすると大体千四百億ないし千六百億の減収になりますというメモが私のところに来ております。これは一年でやれるのか二年でやれるのか、三年でやる場合にはどうなるのかということは計算はいたしておりますが、これは全くの試算でございまして税制調査会答申を待って最終的判断をしたいという考えでございます。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 税調でそういう答申がなされればそれでは六十万円の案を実施するといいますか、その案を尊重するということをここに確言できますか。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 税調は初年度でこれをやるということは、いまの税制でそんなことはできないだろう、そういうことは税調を刺激したり拘束したりすることになるので、これは取り消してもけっこうですが、税調さんもひとつ長期税制ということを答申しようということを言っておられるので、これは専門家ですからまかしておいても、出たらひとつ尊重する、こういうことでいいのではないかと思います。六十万円出たら一ぺんにやるかというようなことは財源等十分他の政策ともにらみ合わせながら緩急の順序をつけて対処してまいりたい、こう考えております。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 完全実施でなくても、明年度、初年度からでも六十万円という線が出れば、税調が一応明年度のものも出ると思うのですが、出てくれば明年度から手をつける、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 個人的な考え方としては、何年間かで六十万円に到達するという答申があればこれは守りたいという考えだけを明らかにしておきたいと思います。
  90. 金子一平

    金子(一)委員長代理 春日一幸君。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 私は理事会の決定によりまして、持ち時間が五十分以内と制約をされておりますから、私の質問を要旨集約をいたしますので、大臣の御答弁もそれに御協力を願いたいと思います。  第一点は、政府の証券行政についてお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、政府は去る九月十七日でございまするか、大蔵省において株価対策に一個の基本線を定めまして、これに基づいて日銀、それから金融、産業界、証券業界、こういう首脳を集められまして、それぞれ基本線の実施について協力を求められたと新聞の報道によって承知をいたしました。それによりますると、その一つは証券業者に対する日銀融資の制度化に関する問題、他の一つは共同証券の強化、それから余剰株式の塩づけに関する問題、第三は企業の増資の自主的抑制に関する問題、こういうふうに報道されております。しかしながらこのいずれも画期的な政策でございまして、しかもそのことの及ぼしまする影響は国民の財産権に甚大なる関連を持つと考えますので、この機会に本委員会を通じて政府が示されましたところのその基本線並びにその会談というものがどのような形で妥結されたものであるのか、これをひとつつまびらかにされたいと思います。なお、時間を要するでございましょうから、願くばこれらの問題は文書によって本委員会にお示しを願いたいと思いまするが、この際、その肝心な骨子についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま御指摘になりました事項に関しましては、さる日大蔵大臣室に関係者においでいただきまして、日本の資本市場の育成強化という問題に対して政府側の意向も申し上げ、皆さんに御協議をわずらわしたということは事実でございます。その結果、幾つかの了解点に達したことも事実でございます。ただ、私も非常に慎重でありましたのは、政府がその市場対策というようなものを個々にやるというようなことがあってはなりませんので、きょうは関係の皆さんにおいでをいただきまして、ひとつ自由に検討していただき、しかるべく官民一体となって資本市場の育成強化に資したい、こういう考え方でこの会合を持ったわけでございます。でありますから、具体的に政府がどうするとか、こうするとかいうことではなく、お互いが丸テーブルを囲みながら十分現在の日本の資本市場に対する観念、また率直な認識、こういうものを土台にいたしまして、活発な意見の交換を行ない、基本的な合意に達したと見られるものを確認をし合いながら、具体的な問題に対してはすべて民間団体の自主的裁量にゆだねたわけでございまして、政府は一々特定な事項を羅列しながら協力を求めたということではないわけでございます。この中のものを簡単に申し上げますと、結果としましては資本市場の育成強化には政府自身もひとつ十分本腰を入れていただきたい、こういうことでございました。これに対しては税制上の問題をはじめ、各般の施策に対して長期資本市場の安定、拡大ということに対して十分な配慮をいたしたいと思います。なお証券取引法は次期通常国芸に成案の上提案をいたしたいと思います。この法律に基づきまして、証券業者及び証券市場、取引所等の問題に対しては、政府も積極的な施策を行ないたいということを申し上げたわけでございます。それで、この会談でおおむね了解に達しましたものは、共同証券というものに対してお互いがひとつできるだけ資本参加を行なって、共同証券を大きなものにして、市場にダブついておる市場の圧迫要因ではないかと言われておるようなものに対してこれを買い上げようということは異論なく、大体そういう線になったわけであります。もう一つは、共同証券に対して都市銀行も融資を行なうが、都市銀行の金繰りもそう楽でございませんので、日銀から共同証券に対する都市銀行のしりを見てもらうというような問題に対しても、大体日銀側も異論がないということでございました。また日証金を通じての証券業者及び共同証券に対する融資に対しましても、日銀が道を開いたものに対しては、はなはだ時宜を得たものだということに対して、日銀さんもそれを了とせられておったようであります。なお、銀行、地方銀行その他経済団体連合会の方々も、少なくとも貸本市場の長期安定ということに対してだれの責任というよりも、お互い自身がひとつ積極的に協力をし、共同の責任で安定化をはからなければならない。その過程において増資抑制という案が出ておりますが、これは金繰りその他の問題もありますので、すぐに期限の来ている社債というもののワクをどうしたほうがいいのか、またつなぎ資金に対して日銀及び都市銀行等、金融機関はどう見るのかという意見も活発に行なわれましたが、いずれにしても最終的には来年の二月以降の増資というものに対しては、ある一定期間抑制をするということも一つの問題点として必要があろう。その問題に対しては各界に協力を求めたい、求めよう、こういうようなすなおな意味でお互いが議論をして結論らしきものに到達をいたしまして、あとは一切民間の自主調整にこれをゆだねておるというのが現状までの事実でございます。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 新聞に報道されておりまするいわゆる三つの基本線、これはそれぞれ関係業界の首脳部の協議によって一応合意に達した。しかしいずれにしてもそれが大蔵大臣室で行なわれた会議であり、事実上はわが国の大蔵大臣の領導のもとに行なわれた会議でありますから、私はむしろ証券行政というものが国家の行政の大いなる一要素であるという点から考えまして、大臣はそういうような形で民間でしかるべくやるのだというような逃げ口上ではなくして、やはり証券行政の本来のあり方に即して、これは大いに強力な指導をやっていくのだ、私はこういう態度で問題の処理に取り組まるべきであって、いたずらに責任を転嫁するというような態度はその成果を阻害するものである。むしろ何をやったのかわからぬ形になり、さらに問題を混迷におとしいれるおそれなしとはしないのでございます。そういう意味で大胆率直にその問題についてお答えを願いたい。大蔵大臣としての確信のあるところをお述べ願いたいと思うのであります。  よって第一の証券業者に対する日銀融資の制度化に関しての問題でありますが、日銀が日証金を通じて行なう証券業者に対しまする融資の量、これは大体どの程度のものが想定されておるのでありますか。その懇談会においては、当面しておりまする証券業者の資金難を緩和することの機能を果たすためにはどの程度の資金が供給せらるべきものと大臣考えられておるのか。おおむねその会議で選択されて合意に達した線があると思うのでございますが、これをひとつお示しを願いたいと思います。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどの春日さんの基本問題に対してまず申し上げますが、大蔵大臣として、資本市場対策としてはっきりした態度をとるべきだという考え方はよく理解できます。同時に、外国から見ましても、また直接資本市場に影響のある、証券市場に影響のあることに対しては政府は関与しないという原則もやはり守らなければいかぬということで、非常に慎重な配慮をいたしておるわけでございます。でありますから、具体的な当面する問題その他につきましては、証券市場に直接影響のあるものに対しては、民間及び日銀等で十分御協議を願う。しかし私たちは証券取引法の条文に基づき、また政策の上から、日本の直接資本市場はどうあるべきかという問題にはかくかくのものを掲げながら真剣に取り組みます、表裏一体になってやろうという考え方でございます。  それからいまの日証金に対して幾らかということでございますが、これはいろいろな議論がございました。五百億とか三百億とか千億という議論をすぐ出すからいろいろな問題で、必要があればどこまでもやらなければならぬという、ひとつ腰を入れようという議論があったわけでございます。私に対してどの程度というようなことを個人的に聞かれた場合は、少なくとも日証金を通じては共同証券にもいきますし、また他の証券業者にもいくわけでございますが、大体どんなに考えても千億は必要であろう、こういう考え方。それから都市銀行を通じても、またストレートという道を開くにしても、共同証券に対しては、やはりどう考えても千億以上でなければならない。私は二千億程度のものが考えられれば非常に落ちつきを取り戻しながら正常化というものに一役買える、こういうことを個人的には申し述べておきました。とにかく千億とか二千億とかそんなことでなく、千億、千五百億にかかわらず必要なものに対しては日銀も前向きでめんどう見ますから、それに対してはぜひ産業界、また金融界、保険界、その他あらゆるものが共同責任体制で陣を張ろう、こういうことになったわけでございます。私がいま申し上げたのは、ほんとうにざっくばらんに申せということで私が発言をした、私が考えておったことを申し上げただけでありまして、申し合わせになったわけじゃありません。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 わかりました。  次は、その共同証券の資金をふやし、またこれに市中銀行から融資を行なって、共同証券がいま市中にあります余剰株を、三千億と俗にいわれておりますが、この中でとりあえず一千億程度のものを共同証券が買ってこれを塩づけにする、こういうようなことが新聞に報道されておりました。これはそのとおり、大体において合意に達した線がそれに相違ございませんか。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 千億以上は塩づけにしなければならないだろう、塩づけとはまあ一年以上でしょうなあ、こういうことではだれも異論はなかったわけであります。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 この場合、その資金が日本銀行から市中銀行、都市銀行に融資され、都市銀行が共同証券に出資する、こういうインダイレクトな方法がとられているそうであります。これは日銀から共同証券に直接融資するということはできないのでございますか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 私は必ずしもできないということはないと思います。また日銀さんでもストレートな融資ということも考えられないことはないという見解のようでありますが、共同証券そのものが御承知の、いまの普通の証券会社と同一という構成の上に立っておりますので、一体これをどうするかという問題もありましょう。しかしそんなことをしなくても日証金を通じてやれば当然できるわけでございますし、また市中銀行を通じてやれば十分できますし、またこの前提となって現在百五十億増資するものを三百億にし六百億にし、その二倍ないし三倍は信用提供度を高めよう、こういうことになっておりますから、必ずしもストレートの融資を必要とするかどうかという問題は別だと思います。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 私は、この合意に達せられました都市銀行をクッションとする共同証券への融資という問題は、ただでさえ都市銀行のオーバーローンを解消しなければならないことが金融正常化の問題として強く論ぜられておりますおりから、一兆二千五百億でありますか、すでに都市銀行は相当の額の日銀借り入れ額があります、ここへさらにこれだけの荷物を加えるということは、オーバーローン解消の基本的な要請に逆行するものでございますから、共同証券が一般証券会社と同格のものであるならば、これは日証金をクッションにしてこの共同証券へ融資する道もあり、あるいはまた新しく制度を開いて、共同証券を特殊の証券会社として日銀との間にパイプを通ぜしめる道もあり得ると思うのでございます。都市銀行というものが何のためにことさらに、オーバーローンを解消しなければならないときに、しかも一兆数千億の日銀借り入れがありますときに、さらにこの荷物をここに負担を加えなければならない積極的理由がどこにあるのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 私も実際はストレートにやるか、第二の方式として考えても日証金を通じて別ワク融資をするということが一番効果的だということを考えました。現在でもそういう考え方を持っております。片方において都市銀行や地方銀行、すべての方々が協力をする、こういう態勢になっておりますし、また日本銀行が都市銀行を通じて出す場合でも、日証金を通じて出すという道は閉ざしておらないわけであります。こういう道も考えるのですよ、こういうことでありますので、私はまあそれでもいいなという考え方でございました。特に日銀から出す場合には都市銀行を通しますけれども、共同証券に出る場合、また塩づけということで他の証券会社に出る場合でも、金利はそのままの金利でもって、手数料を取らないという程度の努力をしよう、協力をしよう、こういうことでございます。  もう一つ言えば、われわれも資金余力はありませんけれども、そういうものに対してなおプラスして、そのめんどうも見れるものは見ます、こういうこともありますので、いまの状態で都市銀行を通じてということも一つの手じゃないか。ただこんなことを言っているために非常にクッションが多くなって、長く時間がかかるということになると、案外理論だおれになるということで、ストレートということで日証金を通ずるほうが早いという議論も成り立つわけでありまして、これらの問題については十分検討を要すると思います。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、当面する株価対策といたしましては、共同証券の塩づけそのものが大体一千億円、それから日証金を通ずる証券会社に対する金融が一千億円、大体において二千億円以上の日銀資金が流されていくものとわれわれは理解して、大体間違いございませんか。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 千億とか二千億とか、そういうラウンドの数字で目標づけられては困る、そういうことなら千億出せばもうないのか、二千億になればもうないのかということで、そういうことよりも、必要なものに対してはお互いの共同の責任でひとつめんどうを見ようというほうがより合理的だというのが大かたの方々の考えでございました。私はただ千億とか二千億ということは、大衆に与える影響非常に大きいというふうには考えたし、意見を申し述べましたが、まあおまかせくださいということでございました。
  103. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますると、マキシマムはこの際限定すべきものではないけれども、しかし事実上その資金量にこだわらず、株価がおよそ安定するに必要なる資金量というものは、二千億をこえても日銀がめんどうを見、政府がこれに協力をしていくのだという方針が決定されたと見るべきでありますか、いかがでありますか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 千億とか二千億とかいうことを考えるよりも、あなたがいま御指摘になったように、必要なものに対しては資金的には確保していくと理解していいと思います。
  105. 春日一幸

    ○春日委員 合意に達した、第三項目の中で企業の増資抑制の問題が産業界の方々も加えて合意に達したということでございまするが、われわれは立憲法治国であり、法律によらざれば制限を受けることはないと思うのでございます。資本主義自由経済のもとにおいて、当面自己資本というものについては法律の制限は私はないと思うのでありまするが、にもかかわらず、企業がその企業遂行上必要とする資金を増資してはならない、これを差しとめるという問題については、その法的な根拠は一体何でありまするか、これを伺いたいと思います。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 臨時資金調整法もありませんし、逆に資本充実法がある、こういう状態において増資抑制ということでございまするから、政府が増資抑制をするということでなく、産業界、それから金融団体、証券業者、こういう方々が十分連絡をされて、必要であるという前提に立っておるのでありまするから、そのような結論が出されれば好ましいということであって、やらなければいかぬでしょうという考えでございましたので、私もそれを了としたにすぎないわけでありますから、準拠法はどうかと言われても、そういう法律に基づいて、戦時中のように思い切ってとめてしまう、倍額の増資をしなさい、こういう考え方ではございません。ただ会社の内容その他大衆に迷惑をかけるおそれのあるという場合には、現在五千万以上は財務局で審査をするということになっておりますが、財務局の権限まで全部発動してやろうという考え方ではないのであります。
  107. 春日一幸

    ○春日委員 これは現在の法律のたてまえでは、その企業が増資を必要とする場合は所定の手続、すなわち会社法に基づき、商法に基づいて手続をとれば、財務局は一定の資格条件を備えておれば、これをチェックすることはできないと思うのでございます。国民に与えられております基本的な権利というものは、どのような個人、すなわち今回集まって合意に達せられましたのは、大蔵大臣であり、かつまた産業界の首脳部であり、証券協会の会長であり、銀行協会の会長、こういうような首脳部が集まりましたけれども、そういうようなボスの合議によって、国民の基本的な人権というものが、制限されるということは、立権法治国においては適当でない。もしそういうことを必要とするのであるならば、そういうことを公共の福祉の名においてやらなければならないという、一個の経済的要因があるのであるならば、すべからく政府は法律を設けて、国民の前にこれの納得を求めていく、これが私は当然のあり方ではないかと思うのでございます。いうならば、かってに増資をいたしたならば引き受けないぞとか、金融をあとつけないというような、しゃくしであてがうとか、意地悪をするというようなやり方は、法律をもってすべての秩序の源泉としておりますわが国において、長期産業資金というものは、増資もしくは社債によって調弁すべし、こういうことが一個の基本になっております。その基本を、みずから行なおうとするものを制限するというようなときには、政策の基本に逆行するような特別措置をとろうとするときには、やはり当事者たちを納得せしめるだけの法的根拠というものが私はなければならないと思うし、特にこういうような場合に、それが必要でありますならば、政府は法案を提出して国会の審議を求めるべきであると私は思うが、この点いかがでありますか。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 純理論的に言えば春日さんのようなお考え方になるわけでありますが、しかし私は先ほどからるる申し述べておりますとおり、自主調整ということでございまして、政府はかかるものに対して基準を設けてやるというのではない。しかも御承知の、一月末までに増資が決定されて、権利搭ちになっておるようなものまでとめようというわけではありませんし、また業界も金融界も、一切のものが合意に達したという状態において、いろいろ相談をしよう。少数のボスが集まってばたばたいたしましても、これでもって押えるという考え方ではない。これは業界の代表、機関の代表者としてまいりまして、各機関でえらい議論をしております。増資圧迫要因にならないというものに対してはかまわないじゃないか。いろいろな議論新聞にもいろいろ散見しておりますとおり、そういう状態において自主調整を行なうということでございますから、ひとつ御了解をいただきたい。いま資金調整を行ない、資本調達に対して場合によっては政府が法律をもってやらなければならない、やれる道を開くということは、基本論としては私もよくうなずけますが、現在の資本の自由化、また現在の国際情勢、また外国で転換社債その他を出しているといういろいろなものから考えても、そういう事態にまで日本市場はいっておるというような考え方ではなく、よりいい資本市場をつくるために、自主調整をしていただく、こういうことでございますから御了解いただきます。
  109. 春日一幸

    ○春日委員 私はこれは非常に重大な問題と考えます。とにかくわが国の経済の均衡が破れておりますこの問題を解決するためには、何といっても金融の正常化、すなわち企業のオーバー・ボローイングを解消していく。それから金融機関のオーバーローンを解消していく、こういう問題が至上命令になっておること、すでに本委員会において何年かにわたって論じておるところでございます。したがいまして企業が資金を必要といたします場合には、やはりそのような安易な金融の道に依存すべきではなくして、みずから自己資本、すなわち増資を行なうなり、時期によっては社債を発行するなりして、長期資金は調弁すべきものである。金融に依存すべきものではない。いままで高度成長政策が最も多く借り入れに依存せしめたことが、今日の他人資本が七七%、自己資本が二三%というような、世界に全然その類例を見ざる奇形型になってしまったんです。だから、これを直すことのためには何といっても金融の正常化であり、一方自己資本の蓄積である、こう言われているときに、産業がどうしても必要とするものはとにかくこれを金融に依存しろ、増資はとりやめろ、これを押えつける政策それ自体がはなはだ基本政策に逆行しているというのが第一点。それから第二点は、失礼でありますが、大蔵大臣をまじえてその道の最高の責任者、ボスたちが集まって、そうしてそのような基本政策を遂行していこうとするその国民経済活動に対して、一個の制約を加えていくというごとの非立憲的なあり方、これは私は幾ら証券対策、わけて株価対策というものが当面の急務といたしましても、その当面の問題を解決することのために基本をゆがめていくということになりますると、私は後日に大いなる病根を植えることにならないか。私は重大な問題であると考えますので、この点について重ねて大臣の見解を伺いたい。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 いま御指摘のあったとおりでございまして、私も非常に慎重、かつ十分悩みながらあの会合をやったわけでございます。確かに自己資本比率を上げなければならない。場合によっては税制上も自己資本比率を上げるためにしなければならぬと考えておるのであります。にもかかわらず一時の現象ではございますが、そういう長期安定的資本市場を確立するためには一時的に圧迫要因になっておる株を塩づけにしなければならないとか、増資の一時抑制策も講じなければならないというようなことが過程の事実としてあるわけであります。これは金利を国際金利にさや寄せをするということを考えておっても、やはりある時期には金融調整を必要とし、公定歩合を上げなければならないという場合もありますが、少なくとも国際金利というものにだんだんともっていくという過程において上げたり、下げたりということがあるわけでございます。でありますから、私は理論的にはあなたが言われるとおり非常に矛盾を感ずるわけであります。矛盾を感ずるのでありますが、現実的な資本市場がそのような状態でありますので、一時的にそういう総合施策を、しかも自主的にやっていただくことによって、一日も早く増資がより活発にいって、日本の資本市場が非常によくなり、長期安定的な資本市場が拡大され、自己資本比率が上がっていく。また金融と直接資本とのバランスもとれ、ひいては金融機関の正常化、いわゆるオーバー・ボローイング、オーバーローンの解消も可能になるというためには、一時的にやむを得ないのじゃないかという、こういう考え方に立って、ようやく良識に訴えたというところでございます。
  111. 春日一幸

    ○春日委員 私は証券行政のあり方についてはかくあるべしと本委員会がしばしば具体的施策を提示しながら政府に善処を求めてまいりましたけれども、そのことが何ら解決を見ていないのでございます。たとえば職能分離を行なえとか、バイカイを規制しろとか、取引所の公共性を確保することのためにその機能についていろいろと推奨してまいりましたけれども、そういうことを何らなさずして、そうしてこの株価対策だけを取り上げて、ここにその施策を講ぜようとされておる。私はそれは当然必要ではありましょうけれども、それだからといってその対症療法といいますか、臨床療法といいますか、そのことを強行することのあまり、当然処理をせなければならないもっと根本的な治療、そういうものを全然やらないでおくというようなことは私は適当でないと思うのでございます。これ以外にやる方法がないのかということになりますと、これ以外にやる方法がなければそれでよろしい。そのことによって完全に治療がはかり得るならば、私は、この際増資の抑制というような金融正常化に対する至上命令に若干逆行するというような事柄を取り入れたとしても、それによって問題の解決がはかり得るならば、私は、実効があがってくるならば、考慮すべき点があると思う。しかし、私はこういうような問題では当面を糊塗するだけで問題の解決にはならぬと思う。だから私は念のためにもう一つ伺っておきたいのでありますが、今度の措置は、たとえば一千億の塩づけの問題にしろ、余剰株券あるいは日証金を通ずる証券会社に対する救済的な金融みたいなもの、これにいたしましても、これを買い手のない商品を、政府と言うと語弊があるかもしれませんけれども、とにかく政府が定めた一個の基本線に基づいて、日銀を通じてその資金のめんどうを見させるのでございますから、したがって買い手のない商品を政府が買い上げて、政治の力によってその商品の相場を買いささえようとする、そういうようなものであるといっても、これは言い間違いではないと思う。言い過ぎであるかもしれませんけれども、これは言い間違いではないと私は思う。私はこの際伺っておきたいのだが、もしこういうことをやっても、なお証券市場の現在の低迷性、これがなお払拭し得ないようなときには、依然としてその一千億の塩づけ、これを二千億、現在は株式市場におきまする余剰株の存在はかれこれ三千億といわれておるくらいでございますから、したがってそういうおもしになってのしかかっております余剰株について、どんどん将来とも買いささえていく方針であるのか。私はこれは重大なことだと思うのです。一千億といえば膨大な金なんです。それだけの金を買い進んでいく、塩づけするのでございますから、塩づけにして問題が解決すればよろしいけれども、依然として低迷しておるときには、一千億を投じた手前、さらに受け入れ施策を講じなければ元手を入れたんですから、要するに乗りかけた船なんだから向こう岸まで着かなければならぬでしょう。そうすると余剰株の実態というものが三千億と称せられておるときだから、千億ではなかなか実効があがらぬのではないかと思う。依然として低迷を払拭せざる場合はもう千億、それからもう千億というような形で買い進んでいかなければならないような事態を招来することなきや、大臣の見通しはいかがでありますか。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、必要な株式の塩づけに対する金はめんどう見ましょうということになっておりますから、それをそのまま裏返せば二千億になり、三千億になり、五千億になるかもしれぬ。こういうことでございますが、そうならないようにしなければならない、こういう考え方が日本の資本市場対策をどうするかということでございます。私はその意味税制上も金融とのバランスがとれておらないということに対して、利子課税を合わせてどうなるのかという問題も検討いたさせております。それから会社自体が内部留保をもっとよくしていくということのためには一体どうするのかという問題もございます。同時に国民自体が証券に対する認識、この問題もひとつもう少し勉強してもらう、政府自体もPRしなければいかぬし、資本市場というものが間接資本と直接資本があって、あなたの言うように、無制限に銀行から借り入れるというのはやむを得ざる一時の状態であって、少なくとも七七%も金融資本から借りて国際競争力をつけておるというようなことは、これはおかしいのだ、こういうことも十分考えなければいけませんし、銀行に対しては少し理解はありますが、証券市場というものに対してはどうも銀行のように理解がない、いろいろな方々の理解を求めるようにしなければいけませんし、また証券業法そのものを改正する過程において、証券業者を銀行と同じように育成強化しなければいかぬし、また取引所の持つ機能というものに対しても十分考えなければいけませんし、日証金というようなものと日銀との間に恒常的な取引ができたにしろ、この内容、日銀との関係、公社債担保金融等における問題、これもひとつ十分道を開いたり、また合理化していかなければなりません。またその上に御承知の自己資本比率を上げるというための資本蓄積法というようなものが、ある時期にある時間だけ必要なのか、こういうものも真剣に取り組む。そして最後には資本の自由化にたえ得るにはどうするかという大きな命題があるわけでありますから、こういうことをやはり総合的に考えて、これをひた押しに短い時間にそういう施策を総合的に立案して遂行するということをはかるためでございますから、私は三千億も五千億も日銀がかぶらなければならぬということは、これがそんなになってはたいへんで、そういう資本市場を招来してはならないという考え方に立っておるわけであります。
  113. 春日一幸

    ○春日委員 かりに今回のこの一千億の塩づけの問題だけに局限いたしましても、表現はともかく、その内実は、これは大蔵省の省議に基づいてそのような基本線が、政府方針であるかどうかは別といたしまして、定められまして、こういう大きな画期的な施策に踏み出したと思うのでございます。だといたしますと、後日株価は今後の問題といたしまして、少なくとも今回決定せられましたこの一千億円を、これを今度売り出すときに——塩づけしておいたんだから、いずれ今度売り出さなければならぬが、売り出すときには、やはりこれは政府大蔵省が少なくとも合議に参加するという形にならざるを得ないと思うのです。あるいは相談を受けて何らかの意見を述べるという形にならざるを得ないと思うのです。ものごとの筋合いはそうだと思うのでありますが、結果はそういうことに相なるのでございますか。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 これは自主的にやっていただくことでありまして、大蔵省は個別のものには関与しません、こう明らかにしておるわけでございます。しかしこれは根本論として、買い上げたものがいつか売り出されるということで、不安人気のもとになってはならない、またこれを売り出すときには、市場の圧迫要因になるということであってはならないということは原則であります。でありますから、塩づけということばが、そういう日本語が一体適切かどうかわかりませんが、日本人にはわかるということでございますから、これを売り出すときにいまと同じような状況、またせっかく資本参加してきた新しい国民、投資大衆というもののいやな材料にならないということだけは、十分考えなければいかぬというふうに考えております。
  115. 春日一幸

    ○春日委員 それで私が質問したことに対してストレートに御答弁になっておりませんが、要するに今回のその方策は、事実上この施策が必要なりと考えられて大蔵省が一個の基本的な方針を定められて、そしてこの連中を集められて、あなたが大蔵大臣室というさじきを貸して、そしてあなたのイニシアのもとにこの方針が決定された。この一千億を売り出すという場合には、あなたに何にも相談なしに彼らが売り得るはずがないと思う。この程度のものを塩づけしろやということですね。塩づけを日銀めんどう見ろや、よろしいということになった。今度売るときには、これを田中さんあるいは大蔵大臣に全然相談なしにかってに処分するということは、私はできない問題だと思うが、その点の関係はどうなりますか。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 これを売り出すときに大蔵大臣が一々指示するということはございません。向こうのほうからいずれお話がありましても、そういうものは政府が指示をするとか指導権をとるべきものではない。しかし原則的には、市場圧迫要因になったり、不安人気をかもしたり、最上の資本市場の発達を阻害するような時期、数量等を選ぶべきではない。そういうことに対してはみなさんが十分お考えになるべきだということはこのときには申し上げられると思いますが、大蔵大臣がいつごろに売りなさい、このくらいということは絶対やらない、こういう考え方であります。
  117. 春日一幸

    ○春日委員 それはわかると思うのでありますが、実際の運営はこういうようなことによって、とにかくあと買うか買わぬかの問題についてもきっと相談がぶちかけられてくる。売りましょうか、売りますまいかという問題についても、これはやはり何らかの意思表示をしなければならない羽目にあなたが置かれている事実は何人もこれは認めざるを得ないことだと思うのであります。私はそういう意味において重大なことだと思います。とにかく共同証券は証券会社であるとはいえ、一個の政策的証券会社というようなものでございます。だから、ここにはからずも日本国政府が四大証券と相並んで何千億という多くの株式について売買というものに参画するという羽目におちいったことの結果的の功罪論、私は、現実に行政機関としてそういうようなことが実際は逸脱行為にならないか、また資本市場というものの自由競争、公正なる競争の原則、自由主義経済の上にこれが将来禍根を残すことにならないのか、この点について十分猛省を求めておきます。なお十分の検討を求めておきます。  もう一つこの点について御検討おきを願いたいと思うのでありますが、とにかくこういうふうに一千億になった、品薄になったということとか、また金融のささえがあったから市場に活気を添えることのために、それをねらいとしてこの三つの施策が踏み切られたと思うのです。真のねらいというものは市場に対する大衆の魅力をこれに結びつけようというところにあったと思うのです。ところがその最終の真のねらいというものがはたしてそんな形で結果としてあらわれてくるかどうか。と申しますのは、幾らかよくなると、一千億がまたもや市場に放出されるのではないかということです。この一千億というものは日銀から貸し出すにしろ、借金でございますから、共同証券としては借金は返済しなければなりません。返済するためには手持ちの証券を売らなければならぬ。だから、ちょっとよくなると、共同証券は売って出てくる。しからばもともとになってしまうじゃないか。こういうようなところから、要するに大衆の魅力を市場に新しくつなごうとしてなされたこのせっかくの施策が、かえって腹にもたれて、これが今後の証券市況に対して重圧になるようなことにならないか。この点はどのような見通しを立てておりますか、御判断はいかがでございますか。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、共同証券が塩づけにする株式、また他の証券会社がやる場合もございましょう。それが新しい市場圧迫要因にならないという時期、方法その他十分検討さるべきだというふうに考えております。私自身が率直に申し上げれば、それを売り出せる時期というものはどういうときかということをたたみこんで聞かれると仮定してお答えすれば、政府も十分な資本市場対策が確立をして、少なくとも自己資本充実という大きな政策目的が達成されるように軌道に乗る、そういうとき以外にはかかるものを売りオペレーション、賢いオペレーションということで出したり入れたりするような性格のものでは断じてなかろうという観念であります。
  119. 春日一幸

    ○春日委員 今回の施策が画期的なものであり、実効が期待されておりますけれども、しかし、前に申し上げましたように、資本取引所の機能の拡大の問題、それから職能分離の問題、バイカイの規制の問題、その他いろいろ証分業務というものを改善、改革しなければならぬことは山くらいあると思うのです。だからそれをやれやれと言っても、いままでおやりにならなかった。しかし私はただ一つ指摘して御反省を求めたいと思いますが、ことしの二月証券取引審議会が「証券業者に関する諸問題」についてという中間答申をあなたに行なっておるわけなんです。その中には証券事故防止のために外務員に対する政府監督の強化の問題、外務員の代理権限を明確にして証券業者の賠償責任を明らかにしろ、それから顧客との紛争処理のため第三者を入れた苦情処理機関を証券業協会につくれ、これが第一項目。第二項目は、証券業協会の組織を全国一本化にしろ、さしあたって協会への加入を証券業の取引の要件にしろとか、それから証券業者の体質改善をはかるため登録制から免許制にしろとかいう問題等を最小限の問題として、とにかく本質にはこれは全然触れておりません。証券行政改善、改革の本質には融れておりませんけれども、しかしこれだけのことはとりあえずなさなければならぬであろうと答申をしておるのでありまするが、本日までこういう問題について何ら処理がなされておるとは思いませんが、一体どういうわけでこういう問題を不問に付しておるのでありますか、この点を伺っておきたいと思います。
  120. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘がございましたように、答申がございましたものは現在できるものから業者の意見も聞きながら、また業界の意見も十分徴しながら進めておるということでございますが、少なくとも証券取引法の改正案をまとめる過程におきましては、いま御指摘になっておるようなものが最小限のものでございます。まだまだございます。どうも大衆株ということで、国民が約一千万人にもなろうとしたときにはすぐ千株単位の取引にしてしまう。一体五百株では悪かったのか。どうも少し場当たり式というようなこともございます。ですから上場基準の問題もしかりでございます。上場してから二ヵ月、三ヵ月でもって二百円の株が額面を割った。そういうものに対する——私は証券市場は証券業者だけでなくして、やはり産業人の自覚というものも重大に指摘さるべきであろうと思います。こういうものに対してはだれも指摘をしない。ですから、日本の証券市場はどうあるべきか、いわゆる社債を発行する会社、その会社の首脳陣は一体どういうあれを持っておるのか、会社の首脳陣だけではなく、大蔵省に出すものについては膨大なものが出ます。それも経理のごく少数の担当者しか知らぬ。それからバランスは銀行に出すものがみんな違う。一体こういうことでいいのか、私はそういうものにも勇気をふるってメスを入れなければならぬ。そうしなければ日本の証券市場の確立、あなたが先ほど言った銀行管理というものは間違いないんだ。銀行管理というものは、ある一定の限度を越したらならないのか、自己資本、自己責任というものを確立しなければならぬ。——私は自己責任というものは、証券業者にも、産業人にも、金融界にも、また政府にも、あらゆる人々が身を正してこれに取り組んでいくという考え方でございますので、近く証券取引法の改正案を出すまでには、あなたの御質問に逐条お答えできるようにしたい、かように考えます。
  121. 春日一幸

    ○春日委員 あなたは大蔵大臣として声望は非常に高いけれども、しかし一つ一つかくのごとく論じてまいりますると、わが国産業経済の基盤でありまする金融市場にしても、証券市場にしても、全くその病根にむしばまれて、何らその根本的治療はなされていない。このことはあなた自体が十分御認識されておるところであろうと思います。  どうかひとつすみやかに抜本根塞的にこの二つの問題、正常化のために全馬力を振りしぼって働かれんことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  122. 金子一平

    金子(一)委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  123. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 午前中すでに証券市場対策についてだいぶ論議がございました。この中で、私が本年の四月に大臣との質疑の中で免許制の問題を含む証取法の改正について論議をいたしましたが、本日も来たる通常国会にこの問題を含めて証取法の改正が行なわれるという大臣の御発言がございました。そこで実はこの問題を私が取り上げまして以来いろんな方面での反響がありましたけれども、どうも業者の皆さんを含めて私どもの真意が少し伝わっていないところがある。登録制と免許制はそうたいして変化がないではないかというような問題もあったようでありますから、私は、今日のこの状態に至った証券市場の問題の中には業者の体質改善というものを含めていろいろ問題があったということは大臣もすでに御指摘になったところでありますが、そういう意味である程度、さっきもお触れになっておりましたけれども、証券市場全体の問題について土台から検討していかなければならない問題があるということに基づいて実は問題を提起したわけでございます。  そこでちょっとお伺いいたしたいのでありますが、通常国会は再開されるのが大体一月の二十日ごろでありますから、それに対して証取法の改正をお出しになるというきょうの御発言からいたしますと、証取審議会に対する諮問その他いろいろな過程を入れれば、大蔵省側としてはアウトラインについてはややまとまったお考えがあるのではないか、こう思いますので、現在時点における証取法改正についての具体的な構想についてひとつお伺いしておきたいと思います。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 証取法につきましては、十一月一ぱいには成案を得まして諮問をいたし、十二月一ぱいにはそれを見ていただいて、一月の劈頭には出したいという考え方でございます。証取法につきましては、ただ現在の届け出制を許可制にするというだけではなく、自己資本比率をいつどのくらいまで上げるのかとか、あるいは直接金融と間接金融とは一体どうあるべきか。それから株式及び公社債というものの状態、いわゆる産業資金の調達比率というものはどの程度めどを置くべきか。また公社債市場の育成という問題に対して、政府保証債と民間債との問題をどう調整するか。また日銀の買いオペレーション、売りオペレーションというマーケットとしての機能をどう発揮させるかという問題に対しては、やはり長期的なビジョンを確立しながら、これに合わせてスケジュールを組むということになるわけでございます。特に現在機関投資家の中にも金融機関とか、そういうものが株式を総持ちということになっております。これはいままではあまり触れたがらない問題でありましたし、あまり表に出なかったのですが、一面において余剰株式の塩づけをしなければならないというような状態にありながら、産業と銀行の関係を見ますと、大企業の大株主はおおむね金融機関であり、金融機関の大株主は大企業である。これはある意味においては両持ちですから、実質の株からは切り捨ててもかまわない株であります。こういう問題を全部整理をしてかかりますと、日本の株式の現状というものの新しい数字が出るわけですが、こういうものに対してなかなかデータを出さぬとか——これは大蔵省でも財務局でやれないことはないわけです。また取引所においても十分できるはずでありますが、そういうものをどうしていまよりもいい方向に持っていくのかということをなかなかやらないで、両持ちになっておるものに対しては配当しないでいいとか、そういうこそくな手段でもってその場を押しつけてきたというようなところも、相当、証券市場、資本市場のいろいろな悪い面になっていると私は思うわけであります。ですから、大衆投資ということを言いながら、実は自分の金繰りが苦しいので、なかなか増資に応じられないという問題も出てくる可能性もあるわけです。こういうものにやはりメスを入れて、現実にあらわれておる数字だけにとらわれた証券取引法の改正ということよりも、もっと根本的なものを考えながら、世界各国の例も十分徴しながら、証券取引法の改正というものは一部報道されるところでは全くびほう策を講じようというような話もございましたが、私はそういうものではいけない。やはり相当突っ込んだ立場で証券取引法の改正問題と取り組むべきである。ただその中で、現在あるところの中小業者、そういうものに対する経過措置というものに対してはやはり現状に合うように十分配慮をする。私はその場合にそういうところだけきびしくしても証券取引法の改正の目的は達成できるものではない。ですから現状に対しても十分な経過措置をとりながら、しかし将来少なくとも三年後、五年後、十年後には、日本の証券業者というものが、現在の金融機関とか、またほかの先進国で行なわれておるブローカー業務やディーラー業務が確実に分けられるというようなところまでいくべきである、そういう姿を想定しながらいきたい。いま小さいものを全部分けるということになるとこれはつぶれるということを意味するわけでありますので、つぶさないで大きくしていくという考え方でひとつ私自身もこの問題と積極的に取り組んでみようという考え方を前提にいたしておるわけであります。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 実は今度の証券に対する対策の問題というのは原因がなければならないわけです。その原因をあとでお伺いをいたしますが、その原因の中の一つは、私は証券市場そのもののこれまでの実態の中にたくさん問題があったと思います。その実態の中に問題があったのを排除しなければ、政府がいろいろと配慮をしたり日銀が配慮をしても、基本的な解決にはならない。やはり証券市場自体が、ことに業者を含め取引所も全体が変わってこなければならないと私は判断をしております。  そこでさっき取引所の問題にもお触れになりましたけれども、実はこの取引所の機能自体が、これまで必ずしも十分に機能を果たしておったかというのに、かなりそうでない面も見受けられるわけであります。一般に言われておるわけでありますけれども、大体取引所において、そのときどきで変化はありますが、約六〇%くらいは四社のバイカイが振られておる。残りの四〇%の中のさらに六割は四社の買い注文である。そうすると残った百社ばかりの会員業者というものが得ておりますシェアはまことに小さいものであって、はたしてそれで取引所の機能が十分に果たされておったかどうかという疑問がありますし、バイカイの問題については何回かわれわれもここで取り上げまして、相当に規制はされておるとは思いますけれども、現実には必ずしもそうなっていないわけです。特に私は業者の方たちに少し反省を求めたいと思うのは、実はこの二十四日、二十五日あたりの新聞を見ておりますと、ほとんど七割、八割というものが実はバイカイによって市場が成立をしております。ちょっとここに書いてあるのを、いろいろ問題がありますから少し読み上げてみますと、二十四日は、「この日は大証券中心のバイカイがきわめて多かった。出来高は久しぶりで概算一億株に上ったが、低目に押えても全体の六割強がバイカイだったとみられている。前場では山一、後場の前半は日興、引けぎわには野村と相次いで大量のバイカイがみられた。各社とも投信のころがしと説明してもいるが、決算期末の接近あり、実際には株式の疎開や委託手数料かせぎを目的としたものも多いといわれる。事前に買いあおり、高値ですかさずバイカイを振るといったケースが多いことからみても、かなり操作の意図が感じられる。  特に引けぎわ野村の動きが目立った。菱化成、三菱商、旭硝子、日通、富士写などを買いあおり、菱化成四百万株、三菱商三百万株、日通二百万株をはじめかなりまとまったバイカイを振っていたが、いかにも不自然な感じだった。」これは新聞の記事であります。あくる日は三千四百万株からのバイカイが振られておるということも出ております。片方では、いま政府なり日銀なり、全体に対していろいろと協力をしてもらいたいということで問題が提起されておる中で、今日この時点に立ってこのようなことが行なわれては、おまけにその何千万株のバイカイが投信のコロガシであったりするということは、一体これはどういうことでしょうか。私はこの証券業者自身が姿勢を正さずして、政府や日銀だけにたよっておればこの問題は解決をするというような安易な問題ではないと思うのですが、この事実について大臣はどうお考えになりますか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘の事実につきましては、投信の組み入れ、コロガシの問題、その他ございます。私はその問題を資本市場育成というときに十分メスを入れたいという考え方を絶えず明らかにしておるわけです。それは四社というものが中心で大きなバイカイが振られる、またそれによって大衆が幻惑されたりまたついてこなかったり、いま御指摘のその日は大衆がついておらぬ、四社のバイカイだけでそういう大きな取引が行なわれておる。ですからもっと大衆がわかりやすいように、郵便貯金なら一番わかるのです、単純で。銀行は特にわかる。保険もわかる。一番わからないのはどこかというと証券市場。だから大衆が寄りつかない。私は、こんな簡単な議論ですが、ここまでメスを入れて比較論が出てこないところが資本市場の育成ができないのだということを考えた。ですからある一部の専門家が、半くろうとといわれておりますが、こういう人たちだけが非常に敏感に動いておって市場を操作しておったり、またある時期には一つの機関投資家というと半くろうとといわれる人が大きく売り買いをやるということによって、大衆はそれに全く幻惑される。こういう、市場が小さいからであります。一つ申し上げると、横浜の生糸相場がある。非常に小さかったために、とにかく十億くらい金を持っていけばいろいろな問題が起きたことは事実であります。倍になったり半分になったり。こういう日本の市場ではいかぬという考え方で、私はやはりそういう問題を一つずつメスを入れて、そしてその制限はどうすべきである、またそれに対する取引所がまだまだ規制をすべきものもたくさんあります。規制というのではなくもつともっと実情に合うような上場基準もしかりでありますし、また取引法に基づいて出されておるものの中で、決算の処理は別でありますが、来年度の収支予測というものをつけなければならぬとか、また決算は赤字でありますが持っておる保有財産の評価というものをつけなければならぬとか、もっと大衆が市場に入りやすいように、入っても一部の人に大きく左右されないというようなものに対して、私は本格的に検討を必要とするという考え方でございます。でありますから、大蔵省の証券局も——今度おかげさまで証券局になりましたので、証券局になったら証券法だけをやっておるのではだめで、実務というものをもっとほんとうに勉強して、どう動いておるのかという実態を把握しないで日本の証券行政をやろう——大蔵省は証券のしりを持ち込まれると困るからということが前提で証券局ができなかったとさえ思っておるくらいに、これはむずかしいものであります。実際の動き、証券市場の内部事情や実態に対して、専門家も少ない、私はこういうふうにも思われるわけでありますので、あなたの御意見等を十分拝承しながら、証取法の改正段階において、法律だけではなく行政上も正すべきものは正していきたいという考えであります。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、ちょっと時間があまりございませんものですから、次から答弁を簡単にお願いしたいのですが、実はこの問題も、私がこの問題に触れましたのは、証券局としては過般投資信託協会に対して問題を提起しておるようであります。しかし私は問題を提起して自主的にどうかしてもらいたいなんという段階は過ぎたんじゃないかと思う。実は今日の証券市場の問題は、最大の原因はどこにあるかといえば、投資信託の問題にあると私は考えております。これは具体的な数を申し上げれば、昨年一年間に御承知のように株式の投資信託は全体としてのプラスになったものは二十五億くらいしか三十八年度じゅうはなかったわけです。本年度もその後の情勢を資料で見てみますと、ユニットでは千二百三十六億の設定に対して少なくとも一千三十億解約があるわけでありますから、二百三十億程度の増加ということになっておるようであります。オープンのほうは大きな設定がありましたから結局全体としては一月−七月で千四百七十三億に対して七百六十億円の解約ということでかなりいま残っておるようでありますが、しかしこれは八月もまた解約が八十六億ほどあったようでありますし、九月もさらに解約が進んでオープンの設定がないわけでありますから、解約はどんどん進行しておると思います。これまで、あの三十六年の好況をささえたのは、まさにこの大衆の投資家が投資信託を通じて株式市場に出かけたということに大きな原因があったわけでありますが、その後三十七年、三十八年ずっと投資信託が低迷をしておる。この中で、私どもはずっと前からこの投資信託の委託会社の分離問題をかなり強く申してきたけれども、両三年間この分離問題についてはほとんど見るべき実績がないわけであります。  これはちょっと事務当局にお伺いをいたしますが、この投信の四社はこの十一月までに持ち株を少なくとも一〇%以下に減らさなければならない、こういうことになっておりますね。大体昨年の十二月末の状態では四〇%内外みんな持っておったわけですが、十一月といえばあと一ヵ月しかありませんが、これははたしてそういうふうに進行しておりますか。
  129. 松井直行

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  期限までには、これは公正取引委員会の了解を得た関係もありまして、既定どおりやることになっております。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 持ち株の問題は私はおそらく公正取引委員会との関係で行なわれると思うのですが、役員の問題ですね。これは調べてみますと、各投資信託委託会社には本業の会長または社長、専務等がいずれも取締役として入っておるわけです。その中身を調べてみても、過去においてその本業の証券会社の職員であった者が大部分で、たまに一人あるいは二人程度それ以外のところから入った方もありますけれども、きわめて不十分な状態です。ですからこのことは、本業の会長、社長がいる取締役会でもとの部下であった人たちがはたしてどれだけ委託会社として投資信託の受益者のために問題が決定できるかという点に大きな疑問があるわけでして、それが最近のこの中においても何千万株というコロガシをやって投資信託の受益者の損害を招くような委託手数料を本業がとっていっておる。こういう事態を私どもはこの際は見のがすわけにはいかないと思うのです。だから投資信託委託会社と証券本業との分離の問題は、もし今後、私は、政府が先ほど大蔵大臣の言われたような相当ドラスチックな施策をとり、日銀もそれにどの程度協力なさるかは別としても協力をされるという段階にきておるならば、これはもう当然私は投資家保護のためにはどのようなことがあっても早急に分離をしてもらわなければ困ると思うのです。人的にもあらゆる意味において完全に分離をして、投資家大衆が安心して今度はこの投信委託会社は自分たち投資家のために責任が持てるのだということにならない限り、現在の投資信託というものはただどろ沼に沈んでいくだけの機能しか持っていない。前向きに何ら現在投資信託は機能を果たしていないわけです。大体見ておりますと、設定と解約が半々ならいいほうです。設定をしたらその次には必ず半分以上の解約がある。そうして中のいろいろな関係者に聞いてみますと、いま証券本業は七割ものものを投資信託に人間を投じてそうしてその他を解約をさして新しい投資信託の設定をやっておる。その結果起きておることは、純増部分は全体の中の一〇%から二〇%程度で、あとの八〇%内外というものは他の投資信託かその会社の投資信託を解約をして応募しておるというのが実情だと伝えられておるわけです。そのことは何を意味するかといえば、結局新しい投資信託の設定によって本業は手数料がとれるでありましょう。しかし結果としては、投資家はそれだけ手数料を、損を招いておるわけですから、全体として現在の投資信託の運営というものは、町ではこれは受益証券ではなくて受損証券ではないかといわれるほどに問題は実は深刻になっておるわけです。この投資信託の問題を重要な問題として政府としては一本柱を立てていただかなければ、今度の証券対策は私は十分な機能が発揮できない、こう考えておりますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  131. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 堀委員に申し上げますが、ただいま山際日銀総裁が参考人として御出席になりましたから……。
  132. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり完全分離という方向で強硬に進めてまいりたいという考えであります。また役員の兼任その他も認めないという方向でこれを整理していくという考えであります。整理してもなお昔の関係があるのでということをどうして排除するかという問題は当然検討いたします。  それから、投信がある時期非常に日本の証券市場を活発化すために大いに力があった、それはそのとおりであります。しかし、それがいまの株式市場の不振要因の一つではないかということをいわれておることも知っております。私たちはこの事実の究明ということに対しては努力しておるわけであります。もちろん、大きく手数料をかせぐ、同じ会社というような観念で口座を移すことによって結果的には大衆がばかをみるというようなことであってはならないし、これが株式市場の操作になるということになったらこれはたいへんな問題であります。でありますから、これらの問題に対しては取り組みつつ、実際問題としてこれが株式市場の圧迫要因にならないように、大衆を守るようにということの二点を中心にしながらこれから積極的な考え方で進めようということであります。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで投資信託の問題についてもう一つ問題がありますのは、過去における証券行政の誤りが一つあったと思います。それは何かといいますと、かつて私は公社債投信が出てまいりましたときに、当時の証券業協会長、全銀協の会長にお越しをいただいて論議をいたしました。そのとき申したのは、支払い準備は一体十分あるのかどうかという議論をいたしました。当時景気が非常によかったのでありますけれども、コールを二割だけとっておるというようなお話でしたから、私はそういう支払い準備では不十分ではないかということを申し上げたところが、猛烈な解約が殺到して、その結果は公社債担保金融によって処理しなければならぬ段階になったのであります。このいまの株式投信も実はもうすでに三年来不調になっておるわけでありますから、ともかく多少でも株価が回復をしたときにはすみやかに株式を減らすことによって支払い準備を厚くしなければならなかった機会が私は何回かあったと思うのでありますけれども、残念ながら今日は逆に株式保有量か八〇%をこえるというような異常な状態にきてしまっておるわけです。現在は株価が低いですからこれの処理についてはなかなか困難な問題がありましょう。しかし、少なくともこれだけのものを考えるときに当然解約というものを相当に想定をし、解約の流れに伴って支払い準備を十分に厚くさせないというような指導に私は大きな誤りが過去にあったと思う。そこで、なおかつ現在投資信託を設定しておりますか、今後に設定されるものについては少なくとも十分な支払い準備を置いて、それが今回の市場に対する圧迫要因にならない程度の措置は講じておいてもらわないと困るのではないか、こう思いますが、それについてはいかがでございましょうか。
  134. 田中角榮

    田中国務大臣 技術的な問題は証券局長をして答弁せしめますが、現在三年間の株式市場の状態から株式の組み入れが八二%になっておるということは事実でございます。こういうものに対してもっとバランスをとらなければいかぬという考え方が有力でございますし、支払い準備につきましても厚くしなければならないという考え方は全く同感でありまして、現実的にどのような時期的めどをつけながらまた新しいどういう組み入れの基準を設けるかという問題をいま検討しつつ、いつまで検討というのじゃなくて、具体的に新しい問題を認可するときにはそういう状況を加味しながら処理していくということでございます。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀の総裁御出席になりましたので、いまの投資信託の問題はそこまでにいたしますが、どうかひとつ、今回の増資調整の問題あるいは共同証券を通じての対策にあわせて、投資信託の問題というのは現在の当面する市場対策としてはきわめて重要な柱であるということを御認識いただいて、早急にひとつ具体策を講じ、そうしてこれをすみやかに具体化をしていただかないと、それが遷延すればするほど、この病根は深くなるというふうに私は思いますが、特にその点を強く要望いたしておきます。  そこで、総裁もお見えになりましたから、ちょっと大臣及び総裁にあわせてひとつ伺っておきたいことは、現在の資本市場の不振の原因を、御説明はけっこうですが、個条的に、どういうものとどういうものとどういうものが原因となって今日の資本市場の不振となったのかをひとつお答えいただきたいと思います。個条書きでけっこうでございます。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしいことだと思います。むずかしいことでございますが、大ざっぱに個条書きにひとつ申し上げます。  一つには、証券会社の内容、それから新しい資本市場というものに対しての対応する態勢が不備であった。それから過去三十四年、五年、六年ころは、好況にまかせて一挙に大衆層に食い込もうということで、無軌道というような、そういう勧誘の面もあった。株というものはもうかるものなんだという勧誘のしかた、いわゆる正しい資本参加というものの認識を国民各位に訴えるというような状態になかったということ。  それからもう一つは、先ほど言われたように、株の波動というものが非常に大きかった。それは投信に組み入れるという問題もありました。でありますので、あまりにも波動が大きかったので、国民大衆自体がちょっとついていけないというような問題があったと思うのです。それでまた証券市場だけではなく、取引所とかそういうものの中で上場審査基準の問題とか、それから、先ほど私もちょっと申し上げましたが、産業界自身が自分の産業というものの資金を維持していくのに、金融でまかなうものが幾らで、社債でもってまかなうものが幾らで、自己資本比率をどの程度につけていくかという自覚に相当欠けておったということも事実だと私は思います。  それから日本の、これは戦後の悪いくせでありますが、これは大蔵省でも考えなければならぬ非常に大きなポイントだと思いますけれども、法律が非常にこまかいことを要求しておるために、会社の実態、バランスをつくるときに会社の首脳部がほんとうにこまかいところまで知っておるのかということはあります。私はこの事実も幾らか指摘できますが、あまりにもむずかしいので、経理のごく少数の人たちだけが会社の実態を知っておるということはあります。  それから銀行に、五行に違うバランスを出す。これは全企業ではございません。もちろんこれは一部のものでございますが、また税務署へ出すものは違う。こういうような産業人の自覚というものも私はあったと思う。ですから、日本の基幹産業が額面であるにもかかわらず、そこから分離をした、歴史も何もありません一販売会社が、三百円でもってつけ出されて、とにかく三年間倍額増資をしておって三年目にも三百円であった、それが今度の市場の不振で百五十円になった、こういうことが平気で行なわれておるという市場の状態一体いいのかという問題もあります。  それからもっと申し上げると、証券というものに対しては、銀行の裏に日銀さんがおられるということでございますが、証券に対しては証券金融の道が確立せられておらない。それで公社債というようなものよりも、やはり幅の多い株式だけに飛びついたということ。ですから、政府も、やはり産業人もお互い全部がなぜ公社債市場の育成強化ということもあわせて進めなかったか、これは率直に言って、政府は自由市場というものに対してあまり関与してはならない、適当のときは適当に関与しておりながら、国民の目から逃げようとしておったような、及び腰の行政というものが私はあると思う。これは私率直に考えます。ですから先ほど申し上げましたように、証券市場のしりぬぐいばかり持ち込まれては困るというような考え方も確かにあったと思うのです。いろいろなものがございますが、もちろん最も大きなものはどういうものかというと、占領軍から持株整理委員会に移された財閥解体の株、これがある短い時期に大衆にはめ込まれた、いろいろな問題があると思うのです。ですが、日本の現在の証券市場がわずか十年間ぐらいの間でよくなり悪くなった、こういう状態でありますので、一口に証券市場の不振の原因はということを言うわけにはいきませんが、これはいろいろ言えば、私は何十ヵ条となく解決すべきものはあるし、最後には間接金融機関に対する育成と、直接資本市場とのバランスはどうあるべきかということを政府だけではなく——大体金融機関を育成することはまあしようがないだろうと思いながら、直接資本市場は投機の場に近いという観念、そういう判断もやはり私は誤っておったと思います。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 それではいま大臣がお話しになったもの以外に、山際総裁のほうで、ダブッておるものはけっこうでございますが、お答えをしていただきたい。
  138. 山際正道

    ○山際参考人 私がお尋ねの点に対して申し上げたいと考えておりますことは、ほとんど全部大蔵大臣の御発言によって尽くされております。なかんずくいま要点をというお尋ねでございましたが、私は根本的に考えて、要するに資本の蓄積が資本の需要に及ばぬという根本的な実態があると思うのでありまして、いま少し資本を大きく形成しようとするためには、国民全般の資本の蓄積を増加せしめる方策によりまして、その需給の均衡をはかっていくことに努力をしていく必要があると思うのでありまして、これはもちろん政府ばかりの責任ではございません。その事業にあたる個人その他当然その責任を負うべきだと考えております。  その次は、大きく申し上げまして、先ほど大臣が申されました発行会社の自覚、これが真の資本蓄積、自己資本の充実ということにはたして十分な配慮をしたかどうか、あるいは利潤の永続性、配当の持続性についての十分の自信のもとに増資を行なってきたかどうかという問題があります。発行会社としても大いに反省を要する点があろうと思います。さらに続きましては、先ほど御指摘のありました、流通機構がはたして完全に整備されておったかどうか、これも御承知のように一、二の風潮から類推いたしまして、非常に多くの株式の売買取引が行なわれなければ自立できないような機構にまで膨張してしまったのが今日の大きな原因をなしておると思います。やはり今後はどの程度の取引がノーマルであるか、それをよく測定して、それに見合うような機構を整えるということが、やはり根本的に安定的な発展を遂げるゆえんになろうかと思うのでございます。なおまた資本そのものに関する国民全体の認識が、初め金融資本に依存して発達してまいりました観念が、だんだんそちらに変化してまいるということがやはり発展の過程だと思います。その点におきまして株式というものに対する理解なり認識なりというものが、大臣も御指摘がございましたが、まだ十分発達はいたしておりません。この方面に対する啓蒙も、私は今後必要かと考えております。これらの点が私の考えておる点でございます。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 要点はそういうことだと思いますが、実は大臣及び総裁の御発言の中に、私が考えておりましたものが二点ばかり抜けておると思うのでございます。と申しますのは、一体株価というものは何かということを考えてみますと、なるほど先ほどお話のように、需要と供給のバランスの問題がありますから、発行会社の問題が一つございますし、あるいは流通機構の膨張のために、証券会社自体の経営が非常に困難になってきておるという問題もありましょう。しかしさらに大きな問題は、日本経済全体の動きの問題ではないかと思っております。さっきわが党のほうからも、あるいは春日さんからも指摘がありましたけれども、私は現在のこの証券市場の不振というのは池田さんの成長政策のひずみの最大のものだと思っております。自民党のほうでは中小企業や農業に寄ったひずみということをおっしゃっておりますが、中小企業や農業に寄ったひずみ以上にいま政府がこれほど考えなきゃならぬひずみがきたのは、私は日本の経済の問題としてあると思う。要するに株というものは収益が対象になるものでありますから、当然利益配当に還元されてくるわけであります。日本経済が、ちょっと資料をこの間出しておるのを見ましたけれども、主要五十銘柄を三十六年の十二月と三十九年の九月で比較をいたしておりました。ちょうど三十六年の十二月が旧ダウで千二百五十八円、今月が大体千二百三十九円ぐらいということで、ダウとしてはほぼ同様の状態でありますが、この五十社の一株当たりの平均を私、調べてみますと、三十六年の同じ情勢のときに十六円六十二銭ありましたものが、現在は一株当たりの利益がこの同じ主要銘柄五十社について十二円四十八銭になっております。七四%に利益率が実は低下をしておるわけであります。こういうふうに企業の資本収益率も全体としてやや下がってきておりますけれども、日本経済自体の収益性が下がっておるということが、実は株価が下がる経済の自然原則ではないかというふうに私は思います。  ですから、あとで伺いますけれども、はたしていまの千二百円台の株価というのは、いまの日本経済のいろいろな諸条件から見てこれでいいのか、安過ぎるのか高いのかという問題が私はあとにあるんではないかと思います。そういう日本経済の全体の問題、企業の収益率低下の関係が一つの大きな原因ではないか。  もう一つは、やはり金融が不正常な状態で長く放置をされてきております。これについては先ほど大臣もお触れになりましたように、金融が正常化されておるならば、私はこれほどのしわが、幾ら引き締めであっても、資本市場にはこなかったかと思いますが、どちらかといえば金融市場のほうは比較的統制的といえますが、管理的というようなワクの中にきちっと入っていて、フリー・マーケットはまさに証券市場だけがフリー・マーケットになっておるわけでありますから、片一方をぐっと締めればそれだけのしわがフリー・マーケットのほうに寄ってくるというのが経済原則として当然ではないか。ですから金融が正常化されていないために起こっているひずみのあらわれが一ついまの資本市場にある。この二点が実はこれまでお話しになった点に私が別途につけ加えたい点であります。  そこで金融正常化の問題というのは、もう長く問題にされて、金融制度調査会でもあるいは証取審議会でも公社債市場育成の問題に触れられておるのでありまして、今度のこの資本市場対策の一環としてどうしても公社債市場がつくられるような努力が真剣になされなければ、これは証券業者は株式だけでやるのではなくて、やはり社債の流通市場とあわせて証券業が並立をしてこなければなかなか問題は解決をしないし、先ほど大臣もお話しになったオペレーションも、私は現在の日銀のオペレーションなるものをオペレーションだと思っておりません。これはローンでございます。形式を変えたローンでございまして、相対ずくでやってオペレーションということばはどこから出てくるのか、私はやや疑問に思っておるのでありますが、これをやはり本来のオープン・マーケット・オペレーションにしない限りは、さっきお話しになったような銀行その他の金融機関と証券業者は常に格差を置かれた条件になるわけでありまして、ここに公社債市場がほんとうにできてきてオペレーションが行なわれるならば、金融機関と証券業は対等にその影響に参加できることになるわけでありますから、私は何をおいてもこの際は金融正常化の一環として公社債市場の育成を政府としては真剣に考えていただきたい。しかしそう簡単になかなかまいりません。コールが三分六厘も七厘もしておるときに、そう簡単にはまいりませんが、しかしその方向だけを私はこの際具体的に明らかにしていただかなければ、問題の解決にはならないのではないかと思うのであります。そうなってまいりますると、これは当然金利の問題でありますから、最終的には臨時金利調整法等を含めての金利自由化になりますけれども、そこまではなかなかたいへんでありますから、とりあえず私は、短期金利は据え置くとしても、長期金利の中における社債発行の弾力化の問題については、早急に検討を始めて踏み切っていただく段階にきておるのではないか、こういうふうに思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 金融正常化を進めなければならぬということは、金融政策としては大眼目として推し進めておるわけであります。それから都市銀行のオーバー・ローン、日銀依存度というのはひど過ぎる、これではいけないのでまずそれを取り上げる。同時に、企業側もオーバー・ボローイングということに対しては是正をしながら自己資本比率を上げていく。その過程において、資本というものと公社債で調達するものとのバランスをどうするかは十分進めてまいらなければならぬということであります。そういうオーソドックスなものの考え方政策の進め方の過程において、今度日本全体として調整段階に入ったわけであります。しかもこれが昨年の十二月から今日までというと約十ヵ月間行なわれておるわけであります。その反面に、日本の株式というものは機関投資家が安定株主になっておる。その機関投資家、大口株主というものが金融の引き締めを食っておるということでありますから、やはり換金といえば、不動産投資とか証券投資をやっておったわけですが、これを金繰りのためには市場へ出して換金しなければならぬという事実があります。そしてまた証券業者はこういうものに非常に弱い。銀行にも弱いし、大企業にも弱い。お得意さまですから……。そういう意味で、証券会社の名前で売り出されているものでも実は預かり株であったというようなものがあることは私は認めます。そういう意味で、どうも金融の正常化の過程における現象として自由市場へ寄っておるのじゃないかという議論があります。あることは事実です。幾分それをいなむことはできない事実もございます。ですからそういう意味で、この金融の正常化を進めていく過程においてあわせて直接資本市場の確立ということも進めていかなければ、金融の正常化はできるものではないというふうに考えられるわけであります。マーケット・オペレーションの制度の上からいっても、マーケットを整備をしなければいかぬ。これはもう当然のことであって、私が長く叫んでおりましたが、なかなかできない。これはなぜか。あなたが指摘したとおり、金利問題にひっかかっておるわけであります。特にこの金利問題の中には、政府保証債とかそれから地方債とかまた信託の問題とか、あまり細分化するとこういうものにも今度突き当たってきて、なかなかいかないわけであります。年間、今年度四兆三、四千億の預金純増がございます。来年度は三兆四、五千億と見ておるわけですが、この中でもって結局うんとふえるところは、信託と農業系統金融だけが五千億くらいずつふえていって、都市銀行を中心にした金融機関全機関でもって一応三千億しかふえない、こういう数字が一応想定されるわけです。ですから、こういう事実はやはり解明をしながら公社債市場というものの育成に必要なものと取り組まなければいかぬというので、現在、非常にむずかしい問題ですが、大蔵省でもむずかしいからということだけで手を染めないわけにいきませんので、まず率直に言って、銀行局と理財局の意見調整ということがあるわけです。ですから、理財局と銀行局の意見調整は半年前からやっております。そして証券局もこれに入る、また主計局もある場合には入らなければいかぬ、こういう考え方で研究をしておりまして、こんなことをあまりいままでも、大きな問題ですから、公の席上では申し上げないと思っておったのですが、問い詰められればそこにぶつかりますので、いまの段階において具体的なことをやってないのかということになると大蔵省の責任もありますから、明らかにしたわけですが、そういう問題と半年前から取り組んでもおりますし、具体的に現状打開はどうすべきかということも研究をいたしておるわけでございます。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいま原因を伺いましたのは、私も医者でありますけれども、病人を見るときは、やはりまず原因を調べなければ治療はできないわけです。原因を正確に確かめるということが、治療の、診断学の最初の第一項でありますから、そこでいまの原因をこう考えました場合には、やはり第一に日本経済の問題がありますから、株価というものが日本経済を反映しておるということになれば、一体いまの株価というものはそういう総合的な将来の多少の見通し、日本経済の見通しは、いま来年度はどうかといっても簡単ではないかもしれませんが、まあしかし本年度さっきの大臣のお話しで一〇%程度というお話しであれば来年度も一〇%内外、そう来年度は急激によくなるのではないのじゃないか、こう思うのでありますが、そこらのところに置いたとするならば一体いまのこの千二百円台という株価というのは経済の実態から見てどうなのか。ここらでいいのか、少し安過ぎるのか、そこらの点についての感触をひとつ大臣と総裁からお伺いをいたしたいと思います。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は株式市場に直接関与すべからず、こういうことでございますから私からお答えすることは非常にむずかしい御質問でございます。しかし日本の資本市場というものの評価はどうかというお問いに振り返ればお答えできないことはないと思う。  旧ダウ平均千二百円といえば単純で百円でございます。それが日本の代表銘柄を含めた第一部上場会社の国際的に通用する価格だ、こういうことを考えますと、私は少なくとも額面の倍額ということでいまの一部市場に上場されておるような会社の実体はつくれない。この何倍かの実体を有しておって、そうして今日日本の代表銘柄として上場されておるのだという私の経験から来ると、少なくとも五十円額面を維持できるのは百五十円程度の投資がなければ、五十円額面は公の市場で維持できないという事実、それから現在ニューヨーク市場は史上最高だと言っておりますけれども、これは一ドルのものが非常に大きくなっておるのでこれは日本の単純平均とは比較は全然できませんが、少なくとも額面の倍額が百円で旧ダウ平均千二百円だ、こういう数字がはじかれる以上、高い価格ではないということは経済理論として当然評価をしても間違いではない、こういうことは私は国際的に見ても言い得ると考えます。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 総裁にも同じ問題をひとつ……。
  144. 山際正道

    ○山際参考人 お答えをいたしますが、実は私は株価がどうあるべきかという点については非常に造詣が浅いのでございまして、お答えできないことは非常に残念に思います。  私がいま問題にしておりますのは、千二百円が高いか安いかということよりも、それを取り巻くいろいろな経済各界の雰囲気が非常な不安を感じて動揺を来たすかどうか、あるいは安定のままでその状態が維持されていくかどうかという点に実は重きを置いておりまして、その変化をしょっちゅう気をつけておるわけでございます。大体株価というものはなかなか人為的に算定することはむずかしいので、取引所という膨大な機構をつくりまして、そこにおのずから需要供給による価格の形成をつくろうというのがその本来の趣旨だと思います。それに対して実は私もそう経験によってこの辺ということは申し上げかねますけれども、少なくともその動揺、安定というものは経済界全体に及ぼす影響が非常に大きいと思いまするのでそれを覚悟することが大事だ、こう考えております。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 私も別に高い安いということだけにかかずらっておるわけではないのでありますが、ややもすると何か千二百円台が割れるということは非常に危機的なようにとられておるので、私はいまの経済の問題というものは自律性もあることであるから、そうこれに政府がかかずらいすぎることがかえって私は逆の面を呈しておるのではないかという感じもいたしますので、いまの状態からして千二百円というものが高くはないけれども、著しく低くてこれを上げなければならないというような問題ではないのではないかということを申したかったわけであります。  そこでちょっとさっき春日さんの質問の中で出まして、この点はちょっと大臣の御発言を確認をしておきたいのでありますが、大臣がきょう午前中の春日さんの質問に答えられた中で、日本銀行が日証金を通じて証券会社への金融、これはこの間から行なわれております。事の適否は別として行なわれております。現在のところ日本銀行が日証金を通じて共同証券への融資ということは行なわれておりません。さっきの話ではどうも日銀も了承しておる、日本銀行が日証金を通じて共同証券に融資をするということは了承しておるというふうな御答弁だったと思いますが、その点をちょっと確認しておきたいと思います。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 共同証券も証券業者として当然に日証金を通じてやれるわけであります。でありますから、私が先ほども申し上げましたように、共同証券に通ずる日銀さんがごめんどうをいただくということには、まずストレートにやるという手がひとつ考えられるわけであります。市中銀行を通じてやりますという手も考えられるわけであります。同時に日証金を通じてやるということも考えられるわけであります。でありますから、私は塩づけにして日証金だけでやるのだといっても証券の非常なむずかしさ、またいろいろな内情から考えまして、証券業者と日証金が完全に一体になる、こういうスタート・ラインに一列に並ぶということでなければ政策効果というものはなかなかあがらない、そういうことからいいますと、共同証券にだけ金を流すということだけでは済まないことであります。でありますから日証金にも金を流すという二本立てが非常にいいと思います。そうしますと日証金に流れたものが四大証券にもいくでしょうし、ほかの十の投信会社もございますから、そういうものにもいくでしょうし、またそこから共同証券にもいくという考え方、いわゆる複数のものの考え方のほうがより合理的ではないかという考え方を私は述べております。また日銀も、当時は佐々木副総裁が御出席になったわけですが、そういう問題も当然考えられる問題でありますが、具体的な問題に対しては私のほうでいろいろ考えますのでということでありまして、私はだから日証金を通じても共同証券にも当然資金は流し得るという考え方をとっておったわけであります。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこの問題は、しかし非常に対日銀の問題では大きな質的な変化があると思います。いま日証金を通じて証券会社に出されておりますのは、まず第一が四社だけでございます。これは公社債担保金融甲に基づいて行なわれておりますから、これは公社債担保金融であって、株式担保金融にはいまなっていないわけであります。いまお話しのように、もし日銀が日証金を通じて共同証券に金を流す場合には、共同証券は実は社債を持っていない、共同証券がいま持っているのは全部株式しかないのです。そうすると、ここでは株式担保になって、そうしてぐるっと回っていくことになるので、これはいまの日証金のパターンとは非常に違う形になってくると思うので、その場合に、そうすると、今度は日証金はその株を日銀に出して融資が受けられるのかどうか、現在日銀はたしか公社債以外には担保を認めていないのではないかと思うのです。この点はしかしやや問題があろうかと思うので、その点についてちょっと山際総裁からいまの大臣のお考えのように日証金を通じて共同証券に融資ができるということになるならば、これはいまのシンジケートを通じてやるのとはだいぶ違いが出てくると思いますので、その点についての日銀側のお考えを承りたい。
  148. 山際正道

    ○山際参考人 ただいま堀委員の御指摘のとおり日本銀行は株式を担保に資金を融通いたしておりません。ただいま日証金に対しましてもやはり公社債担保金融で出しております。日証金を通じて現にやっております四大証券に対する融資につきましても、やはり同じ原則が守られておりますので、私はただいまのお話のルートといたしまして、日証金を通じて共同証券へいく道もふさがれておるとは考えておりません。が、それでは直ちにそれを実行するとか、あるいはその担保には公社債以外のものをとろうとかいうことは決定いたしておりません。それはなぜかと申しますると、大体共同証券の成立の経緯からいたしまして、各金融機関が非常な熱意を持っていまの証券市場の安定のために特別に組織をいたしました証券会社でございますから、まだしばらくのところはその努力にまってしかるべきであって、それが今後の情勢によりましては道を閉ざしてはおりません。もしそういうルートに従って資金を流すとすれば、その際は担保はどうするかという問題につきましては、またそのときの情勢に応じて考えるべきでございましょうけれども、いまのところそれらの考えを変える考え方はとっておりません。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、実はいま金融は非常な引き締めが行なわれておりまして、中小企業はかなり倒産もございます。十月には売りオペレーションも行なわれて、さらに日本銀行としては、この二十九日には十月、十一月、十二月の新窓口規制のクレジットライン等の問題についても検討されるやに聞いておりまして、金融引き締めは継続をされておるものと私は確認をいたします。その中で私は、心理的効果の問題は別といたしまして、実態として、率直に言いまして、いまのこの対策はそう早急に成果が結びにくいのではないか。  私が少し証券界の方に申したいのは、あまり他人依存でなくて、もうちょっと自分たちで立ち直るようないろいろな努力が行なわれていいのではないか。今日の市場を見ておると、まさに共同証券の買い出動がなければ、もうともかくダウは下がるのだというようなこと、あるいは政府なり日銀なりから何らか対策が出てこない限りは、もう自分たちではどうにもならないのだというような無力感にどうもあふれておるのですが、これは私はやや問題があろうと思うのです。現在は資本主義の世の中でありますから、自己責任をもう少しやってもらいたいと思うのでありますが、そういう中で、先ほど、話のあやでもありますが、一千億、二千億、三千億、幾らでも必要があれば、塩づけにするためには出すのだというようなお話が出たわけです。しかし、これと金融引き締めとの関係というのは一体どういうことになるのか。  それからもう一つの問題は、増資調整の問題がございました。私も春日さんの考えにかなり近い考えを持っております。というのは、現在の商法は、二百八十条でございますかで取締役会に増資の権限は一切まかしておりますから、増資するしないは産業側の自主的な判断でやる。そこで今後の増資調整を二月までほうっておけば、これからあとやはり二千八百億くらい——二月ですから、十二月までで約千五百億ある。一月分として四百億くらい、ですから二千億くらい実はこれからまだ増資が行なわれるわけなんです。そうしてそこでようやくストップになるわけなんですが、そういう問題についても、ちょうど滞貨金融を片一方でやっておるから操短をしろというような関係と同じようなことになってくるわけですが、その滞貨金融がそれではいまの市場引き締めに作用しないのかといったら、私はやはり引き締めにかなり別の角度で影響を与えていくのではないか、こういうふうに思うのですが、大蔵省としては、いまのあなたの一千億、二千億、三千億、数はともかくとして、必要ならば幾らでもというお話は、心理効果として私は了承できますが、実際の金融引き締めとの関連では一体どういうふうに考えておられるか、その点をちょっと伺いたい。
  150. 田中角榮

    田中国務大臣 今度の引き締め態勢に入りましたのは、壁にぶつかってしまってどうにもならなくなってしまって入ったというのではなく、特に十分議論をしていただくということで、予算審議期間中である三月の十八日に公定歩合が引き上げられたわけであります。私は、タイミングとしては、非常にいいタイミングだと思っております。日銀がこういう措置をなさった、政府金融機関は一体どう考えているのかということで、国会の場においても、いろいろ国民の声を聞いたということ——国会が終わってからやろうなんということじゃなく、非常に前向きだったということを私は考えております。それだけに四月一日からの八条国への移行ということを前にして、国際収支の長期安定、経済安定成長、それから物価の抑制、こういうものを出したわけでありますから、非常に短期決戦というようなことが報道せられましたが、それはそのときのあやです。注射が痛いぞ、痛いぞといって注射を打つ人もありますし、痛くないのだ、あっという間に直るんだ、こういうことを言う人もありますから、私はそういうことが報道されても、あえてこれを否定しなかったわけです。耐乏生活はそう長くできるものじゃないというくらいな考え方でもって申し上げたわけであります。しかしこの前提となるものが先ほど申し上げたようなものであり、予防的な状態でやられた。でありますから、その過程において画一一律的な引き締めというのは、金融政策としてはまずい。これは一番やりやすい簡単な安易な道でありますが、これは取るべきでない。でありますから、これは調整を進めておりながらも、ひずみの解消ということについて努力しなければいかぬ。中小企業とか農業とかこういうものに対して金を出しても一向問題になるものでもないし、そうでなければこれはどうにもならないという状態になるわけであります。でありますから、私は、調整期間中においてきめこまかくいろいろな問題に対処してまいります。また対処することが引き締めという大宗をくずすものではない、こういう考え方でございます。でありますから、先ほど御指摘があったように、金融引き締め調整のしわが自由市場に寄っておるということもいなみ得ないとしたならば、私は、こういう問題に対して、金融正常化を進めるという点から考えても、きめこまかい施策の中に当然包含されるべきでありまして、私はこれが調整のしり抜けになるというような考え方は持っておらないわけであります。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀の総裁のほうにお伺いをいたしますが、どうもこれまでいろいろと市場で伝えられております中に、共同証券の融資等につきましては、何か別ワクで処理がされるようなふうに伝えられているものもございます。しかし私は、これまでの日銀のいろいろな方式を拝見いたしておりますと、クレジットラインにそう別ワクをつけてやるというようなことは、その他の産業にもかなり影響することでありましょうから、おそらくやその点については、追認といいますか、あとから見るということについては問題はないかもわかりませんが、初めから別ワクで見るというような処理というのはこれまでの日銀としてはなかったのではないか、今後それでは、この際はあるのかどうか、その点について、今度の日証金、共同証券をはじめとするところのいまの日銀からの貸し出しにつきましてはどのような取り扱いが——これはおそらく、日証金は市中銀行を通しておりませんけれども、共同証券は市中銀行を通して出るわけでございますから、それらについての取り扱いについてはいかがなものかをちょっと伺っておきたい。それと、いまの引き締めのしり抜けになるかどうかという問題をあわせてちょっと伺っておきたい。
  152. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまお尋ねの前段の部分、すなわち、いわゆる巷間伝えられます証券対策として必要な資金を日本銀行から出します場合に、これが貸し出し限度額や貸し出し増加額規制のワク外に認められるのかどうかということでございますが、私どもはその念を持っておりませんので、極力各金融機関は自己の資金を有効に使っていただきまして、自己努力を越えてどうにもしかたがなかったという部分が後に生じますれば、それはその銀行で検討いたしました上で、そもそもの規制額なりあるいは限度額なりを追認して拡大するということを考えておりますので、事前にそのようなワク外を認める考えはございません。  それから第二のお尋ねでございました増資を認めていく場合において、それが金融引き締めのしり抜けになりはせぬかというお尋ねでございますが、この点は実は増資につきましては、先ほど大臣のお話にもございましたとおり、各関係者が寄りまして、来年の二月以降の増資につきましては適度の調整を加えてまいることになっております。それに反してもあるいは商法上の自由であるからということで、もし会社が増資を決行いたしたといたしましても、そのときの金融情勢や金融機関、証券会社等の意向を無視した増資は、実際問題として危険が多く、その目的を達成し得ないというのが実情だろうと思いますから、必ずや発行会社は十分事前に金融機関や証券会社と打ち合わせまして、消化可能な限度にとどめるだろうと思いますから、それが金融引き締めのワク外に飛び出していくとは考えておりません。  それからまたいろいろと証券界に融資をいたしました金が引き締めのしり抜けになるかという点につきましては、これは私は、出し方にもよろうと思いますけれども、相当まとまった資金ができますれば、みんな現在の銀行なり証券会社はそれぞれ非常な負債を持っておりますから極力負債の償還に充ててもらいまして、そのために景気が刺激されるということのないように極力配意いたしてまいりたいと考えております。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 私が多少その点を心配いたしておりますのは、現在やはり金融が引き締まってまいりますと、これから年末に向けてかなり事業会社の株式換金売りが出るのではないか、これは大きな事業会社が非常にまとまったものを出しましたならば、これはわかりますけれども、現在のところ小口で少しずつ出てまいりますものについては、これは阻止のしようがないと思います。もちろん産業界のほうは、片や金融が引き締められ、片や増資も押えられるとなれば、持っておる株でも売らなければ運営がつかないという場合もやはり起こるかと思いますので、そういう形でその株がどんどん売られてくれば、実はこれはどうも阻止のしようがないし、それを市場で共同証券としてはだぶついた株だということで買い上げていくということになれば、結果としては、そういうところはかなり金融の引き締めがゆるんだと同じような結果が生じてくるのではないか。ですから、そこらの点は共同証券の買い方にもやはりかなり問題が今後出てくるんじゃないかと私は思うのであります。この共同証券の問題についてちょっとあわせて申し上げておきたいのは、この共同証券が今後動きます場合には、やはり投資信託の今後の問題というものを相当比重をかけてもらいませんと、単に市場にある株、あるいは証券会社が持っている株だけを買い取るということだけではなかなかこの問題は解決しないのではないか。投資信託が持っております現在の株価不振に対する影響というもの、これをあわせて考慮しながら共同証券は考えるべきだと思うのでありますが、そこで、大臣も時間がおありでないでしょうから、最後に大臣にだけは伺っておきたいのは、先ほどのお話のように、一千億か二千億かわかりませんが、相当な額、共同証券に金が行きますのは、私は現状として見れば、これは余った資金ではなくほとんどがやはり日本銀行の信用に基づくところの資金が出ていくのではないかと思うのであります。そうすると、共同証券というものは今日までのところは一証券会社という考えで問題を見ていっていいと思いますけれども、一千億、二千億の国家信用にささえられた証券会社なんというのは、私はちょっとあり得ないのではないかというふうに考えますので、おのずから今後そういう多額の増資及び臨調融資が行なわれていくという過程の中では、共同証券の性格というものはかなり公的な性格を持つものに変わってこないと、単に私的なものがそれほどの国家信用で株を買ったりするという点については、やや問題が生じてぐるのではないかという考えを持っておるわけであります。今日いますぐの時点ではありませんけれども、当然これが四百億なり六百億なりという増資が行なわれる段階においては、私は少なくともその社会的責任を含めて公共性の非常に高い何らかのものに転化されるべきではないのかというふうな気持ちを持っておりますけれども、この点について、特にその将来において、もし二千億なり三千億買った後にその株を将来はき出して、非常な利益がもし出たというような段階が遠い将来に起きたときに、それが実は国家信用にささえられて買ったものでありながら、一部特定のものの所有に帰するというようなことも、これはいかがなものであろうかという感じがいたしますので、今後共同証券を通じてのいろいろな施策が行なわれるとするならば、共同証券の性格という問題については新たな角度からの検討が必要になってくるのではないかと思いますが、その点についての大臣考え方を伺いたい。
  154. 田中角榮

    田中国務大臣 御説のとおりであります。現在の段階で日銀の総裁もお答えになっておりますとおり、特定なものというような観念でもってやるよりも、増資は民間の産業人から地方銀行その他できるだけの機関投資家式なものを一切網羅して、相当大きなものにしたい。それは現在百五十億になるわけでありますが、これを三百億にした場合、六百億程度の信用力というものは出るので、また次の増資をする場合には、それを見返りで融資はできる。できる場合には、都市銀行を通ずるということが一番いい、こういうことでありますが、しかしあなたがいま仮定の問題として言われましたように、千億とかもっと大きな金額を買い上げなければならない、またその資金も個人的な増資、そういうものだけではなく、ある場合においては日銀がストレートにやらなければならないとか、また先ほど、いまは考えておりませんと、こう言われましたが、日証金を通じて、日証金が公社債を借りても、日銀には担保を提供する、そして共同証券は自分の持てる塩づけの株を日証金に対して担保にしながら融資を受けなければならないというような特定なものに対するものになるという場合がもしありと——これは全くの仮定論であり、私はそうならないことをほんとうに希望しているわけです。ですから早いほうが少額で済む、こういう考え方を前提にしておるわけでありますが、いわゆる仮定論でそうなる場合にはこれは特定な人の利益に帰すべき問題ではありません。ですから売る場合、処分する場合等は、やはり国民大衆に利益が返るというような方法を考えなければならないわけであります。またその場合には、ある場合において共同証券というものをもっと公的なものとして規制を必要とするという場合も起こり得ることであります。しかしその合理的に敏速に措置をすることによって、これは不安人気ということで先ほどあなたも御発言でございましたが、実際から考えてみて、まだまだ日本の証券市場、日本の資本市場というものは将来性が非常にあるのでありますから、成長率はとまった、株式は多くてどうにもならぬというのではないのです。自己資本比率は二三%なんだというところに着目をするときには、そうならないことを希望する、しかし千億であろうが八百億であろうが、そういうものに対してもある時期押え込むということでありますから、一部の人だけが——これは戦後何かそういうことが一回ありました。二十四年ですか、非常に利益が出た。当然利益は出るでありましょう。こういうものに対して一部の人がその利益を壟断するというようなことは十分考えて、そういうことのないようにしなければいかぬ。これは全く仮定の問題としてお答えをしたわけであります。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がございませんので、主要な点について大体お伺いしたわけですが、この増資調整の問題を含めてさっきも私が触れましたけれども、問題はそんなにいま簡単に——共同証券があしたから千億円買えるわけでもありませんし、問題は実は相当長期にわたる、しかし政府としてはこれ以上の混乱を起こしたくないという配慮だろうと思いますし、私は日銀も同じだろうと思うのでありますから、そこらのところはやはり両者を含め、全体が少しそういう認識の上に立ってもらいませんと、この問題は何か施策は打ち出されておるけれども一向速効性はないではないかということになりかねないと思うのであります。そこらは政府側としても、この対策があしたから、あさってから有効にすぐきくというものではないのであって、いまの証券業の合理化、証券取引法の改正、あるいは私がさっき指摘いたしました投資信託の問題も、ユニット、オープンの問題ではなくて、これらはこれらとして新たな角度における投資信託を私は検討する段階にきておるのではないか。そうして大衆の資金がもっと不安なく参加ができるような道を新たに開かない限り、投資信託の分離も必要なのでありますが、なかなか問題は解決しないのではないかというふうに思います。そこらを含めて、私はあとまだ取引所の公益法人化の問題とか機械化、振りかえ決済制度の導入の問題とか、いろいろと証券市場に対する対策については私の考えを持っておりますが、時間がございませんから、次回にそれらを含めて論議をさせていただきますけれども、私ちょっと最後に一つ大臣に申し上げておきたいのは、要するにやや大臣の御発言が速効性があるかのごとく、そして金額もすぐ千億とか二千億とかたいへん歯切れのいい金額が飛び出すものですから、それを一般、市場を含めて、パッと受け取って、さあそれはいいぞというようなものになりがちな傾向があると思うのです。どうかそこらは大臣も、そういう市場の関係者なりいろいろな関係者はあなたの発言を非常に注視をいたしておりますから、いろいろな施策を講じられるについての心理的効果はわかりますけれども、それは実は千億と言えば、さっきお話のように、それじゃ千億いけばおしまいなんだなということになりかねないわけでありまして、ひとつ金額等についての発言は今後少し慎重にしていただきたいということをちょっと要望しておきまして、大臣に対する質問は終わりたいと思います。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 私は自発的に千億などということを言ったことは一ぺんもないのです。私は、必要であれば日銀さんは幾らでもめんどう見ます、こういう姿勢でございますからと答えるのですが、千億出るのですか、二千億も出るのですか——あなたも先ほど一千億も、二千億も、三千億も——非常に困っておる。いまあなたが一切言うな——私は言わないことが鉄則でございますから、これからひとつ御質問も、あまり証券に関しては千億とか二千億、三千億とおっしゃらないことをお願いをいたします。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀の総裁にお伺いをいたしますが、一体今回、いろいろと大臣もいまお話がございましたけれども、証券市場の対策について一国の中央銀行がそれまでのルールにないことをやったような例が、資本主義のその他の国にあったかどうか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  158. 山際正道

    ○山際参考人 お答え申します。中央銀行が直接証券市場につながるような資金を株価の動揺もしくはそれに基づく不安防止のために出動するというような事例は、あまり寡聞にして聞き及んでおりません。御承知のとおり、最近では世界で一番暴落がひどいのがイタリアであったと思いますが、これは約半ばに近いところまで暴落したと思います。それからフランスもそうであったと思いますが、このときにも私ども、いま調べてもらっておりますけれども、今日までの調査では、フランス及びイタリアの中央銀行は格別なことをしていなかったようであります。その点、実は十分私どもとしても考慮には入れておりましたが、何分にも資本市場の発達がおくれており、また資本の蓄積の少ないわが国といたしましては、どうしてもちょうど金融機関がオーバーローンその他によって資金を調達しおるがごとく、ある程度の中央銀行の発動によりまして、万一の場合における市況の安定をはかるということは経済の発達段階においてやむを得ないことであると判断をいたしまして、それをすらいたしませんで、よってもって起こる市場の混乱なり業界の不安の助成を思いまするときに、やはりこれはこの際その程度のことはやるべきであるというのでいたしました次第でございます。御指摘のとおり、他にはあまり例はないかと実は考えております。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、確かに日本の資本市場がまだ底が浅いですから、その他の国のようにはいかないと思いますが、アメリカの一九二九年でございますかのあの大恐慌のときでも、実はアメリカの連邦中央銀行は何もやらなかったようでございまして、やはり私は資本主義というものはある程度の自律性というものを尊重しないと、逆にあまりこう手を出すと、それが管理的になって、逆に自律性を妨げる要素になって、そのことがその後における自律的な立ち上がりに対してブレーキになるのではないか。先ほどから私は多少ダウ千二百円の問題にこだわっておりますのも、実は証券業者の対策として考えてみますと先ほどの流通機構の膨張の問題がございましたが、それにいたしましてもある程度の流通は確保されねばならないと思いまするが、このような管理的な価格ということになってきますと、これは流通については非常にうまみがなくなってきますから、流通量を下げるほうに私は管理価格というものは作用してくるのではないか、そのことは証券業者としての経営にさらに困難を加える方向になるのではないかという不安があるわけでございます。ですから、その点では必要やむを得ざる部分においての措置はこれは仕方がないと思いますけれども、少しはやはり市場の自律性というものの弾力を見ながら処理をしていただくということになるのが適当なのではないか、こういうふうな気持ちを私は持っております。それは証券市場がどうなってもいいというのではなくて、今後の証券市場をあるべき姿に立ち直らせるために必要な方向として、今後その証券市場に対しての協力の仕方にも一応のそういう限度というものがあっていいのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についての総裁の御意見をちょっとお伺いしたい。
  160. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまお述べになられました点は、大体において私も同感でございます。やはり株価の形成は非常に複雑な要因を持っておりますればこそ、国家が大規模に取引所の機構をつくりまして、そこで国家の関与せざる株価の形成をしていこうというのがたてまえでございまして、これは当然守らるべき原則だと思います。ただ今日の株式取引というものが有価証券として非常に各般の信用取引の基礎になっておりまするために、これを混乱動揺を生ぜしめます場合には、やはりそこに一種の国民経済的マイナスが起こりますから、私どもといたしましてはそのマイナスを除去するということが最大限度の実は努力でございまして、それ以上の価格の問題や、あるいはその他取引機構の改善の問題等につきましては、どこまでもこれは発行会社なりあるいは取引流通機構当事者自身の自律的な努力によって向上してもらわなければならぬ、こう考えておりまして、私どもの任務はどこまでも混乱防止ということの、何と申しますか、緊急の場合における臨時的措置、その範囲にとどまるべきものと考えております。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私ひとつお願いをしておきたいと思いますのは、やはり私どもも証券業者の合理化というものは積極的に進めてもらいませんと、流通機構の膨張のままでは、これは先ほどの不安がたえませんので、この点は合理化に必要な資金というものは、これは私先ほどいろいろ議論いたしておりました中で、証券市場対策という問題よりも、より本質的な問題として当面は必要な問題があろうかと思いますので、その点につきましてはひとつ日銀側としても、合理化に対してほんとうに必要な資金という問題につきましては特に配慮をしていただいて、それによって合理化が促進されることが、私はこのような状態から一日も早く抜け出られることになるのではないかと思うのでありますが、その点についてのお考えを伺っておきたい。
  162. 山際正道

    ○山際参考人 流通機構を合理化せしめるという問題は、まさに非常に大事な点でありますことは、御承知のとおりであります。日本銀行といたしましても、その目的の許す範囲においては、これに協力を惜しまない考えでおります。たとえば現にやっておりますことは、相当証券会社によりましては、金利の高い金の取り入れをいたしております。これは業態の不振にさらに困難を加えておる事情でございますので、なるべくシンジケート銀行等に話をいたしまして、普通の金利等の資金に借りかえさせるとか、あるいはどうしても手持ちの証券等の処理の関係上、ある種の流通資金が必要であるという場合におきましては、さらに銀行とも交渉いたしましてその金融をつけるという手伝いをいたしまして、しかしどこまでも自律的な合理化計画をもとにいたしまして、それを促進するという立場でいきたいと考えております。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、この十月から十二月の金融状態でございますが、これについて、いま御承知のようにようやく金融もだいぶ引き締めが浸透してまいりまして、各地で再び倒産もふえてきておるわけでありますけれども、十月−十二月期の金融引き締めに対するお考えといいますか、少しはクレジット・ライン等が上げられるようになるのか、新窓口規制を通じての日銀の態度はどのようになるのかを、ちょっと伺っておきたい。
  164. 山際正道

    ○山際参考人 大体の基本的な考え方は、七−九の基本的な考え方をそのまま貫いていくつもりでございます。いわば引き締めのままで推移いたしたいと考えております。ただ御承知のように、季節によりましておのずから繁閑がございます。ことにこの出来秋におきましては相当食糧関係政府資金の散布もございまするし、逆に今度年末に際しましては、商取引決済のために非常に資金が要るという場合もございます。それらを十分計算をいたしました上で、基本的には引き締めの体制を続けるという考え方で、十、十一、十二の金繰りを考えていきたい、かように考えております。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、やはり私さっきからちょっと申し上げておりますとおり、悪循環の環のようになってまいりまして引き締めが続いて、年末にくるとさらにまた換金売りのようなものが出て市場が困難になる、いろいろと今後にやはり問題があろうかと思いますが、その点はいま時間もございませんから残しまして、さっき大蔵大臣もお触れになっておりましたけれども、私どもも公社債市場育成、社債の金利の弾力化ということをこの際、短期金利はさておいて、行なうのが適当なのではないか。ただしそれは無制限に弾力化をしろということではございませんけれども、いまのように固定をしていたのでは、どうも問題が解決をしないのではないか。もう少し社債金利をある幅をつけてでも弾力化をすることによってこの流通を促進をする、それによることが私は金融正常化に対しての一つの窓口のようなものになるのではないかというふうに強く感じておるわけでございますが、それについての総裁の御意見をちょっと伺いたい。
  166. 山際正道

    ○山際参考人 ただいま御指摘の点は、私は全く同感に考えております。ただ御承知のとおり、現在は金利が自由化されておりません。一部コール市場のレートであるとか、あるいは一部の電話債券でございますとか、ああいうものについてはごく小部分において自由化されておるものもございますけれども、大宗を占める債券類等につきましては、金利は実は統制されております。何とかこれを開放いたしませんことには、真の金融の正常化にはならぬということで、私ども極力努力をいたしておりまするけれども、御承知のとおり金利はおのずから有機的に各般の種類のものに関連を持っておりますので、一環を取りはずすことは直ちに全般に累を及ぼす影響もございますので、その辺が非常にむずかしいことは先ほど大臣も申されたとおりでございます。ことに公社債の条件につきましては、既発債の価格等にも及ぼす影響もございますし、よほど慎重に取り扱わねばならぬことはよく承知しておりますが、私といたしましては、できるだけひとつ機会をとらえまして、多少なりともその方向に進むことにあらゆる努力を続けていきたい、かように考えております。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 最後にちょっと、これは非常に簡単なことでございますが、日銀事務当局を含めてお考えいただきたいのは、いまのオペレーションが行なわれるようになりましてから、実は日銀の統計月報を拝見をしておりますと、日銀対市中との間の関係が少しわからなくなってきまして、要するに日銀の勘定の中で公社債の部分を見ても、その中には資金運用部のものも入っておったりしまして、オペレーションの出入りはわかりますけれども、一体根っこからオペレーションがどうなっているかということがわからない仕組みに実はいまなっておるわけでございます。このためにわれわれ前は貸し出しだけを見ておれば大体よかったものが、貸し出しだけではわからなくて、オペレーションの出入りもどだいわからないというようなことになっておりますので、この点はひとつ統計上の資料等で一見いたしまして、日銀からいま一体どのくらい出ておるのかというのがわかりやすいような資料の作成等について御配慮をいただきたい。非常に複雑になっておりますので、ちょっといろいろ調べてみましたが、統計月報だけではわからないという結果が出ておりますので、こまかいことでございますけれどもひとつ御配慮いただきたい。以上で私の質問は終わります。
  168. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 佐藤觀次郎君。
  169. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 本日山際総裁をお招きしたのは、日銀法の改正問題、それからこれを中心として中央銀行のあり方等、日本銀行本来の使命のことについて率直な御意見を承りたいということが第一、それから第二に、堀さんからもいまいろいろ質問がありましたが、最近の証券問題の当面の問題として、日銀がかなり思い切ってやられるようなことを聞いておりますので、それを伺いたいと思っております。  そこで第一に、今度山際総裁は出られなかったのですけれども、佐々木副総裁が出られて、席上で日銀は積極的にこれに協力するというような発言をされておるのでありますが、それは現在非常に証券市場が悪いと認識されてそういう発言をされたのか、もう一つは、佐々木副総裁の発言は山際さんも同じ意見であるかどうかということについて、まず第一にお伺いしたいと思います。
  170. 山際正道

    ○山際参考人 蔵相主催の懇談会における佐々木副総裁の発言は、私が事前にことごとく相談をいたしております結果でございますので、すべて私の考えと見てくだすってけっこうでございます。  第二の点につきましては、先ほど実は堀委員に対するお答えのうちに含ましたつもりであったのでございますけれども、私といたしましては、どういたしましても信用機構を保持し、混乱を防止するということは、日本銀行の当然まかなうべき責任であると実は考えております。いまや証券界の実情が、日々新聞等で伝えられるごとく、ややもすればさような事態を予想してやや人心をいろいろと考えさしておるような部面も見られますので、ここでやはりこの市場が安定をし、またその混乱動揺を未然に防止するという態度に出ますことは、日本経済全体として私は必要なことだと考えましたので、その限度において日本銀行は出ていこうという決意をいたしました次第でございまして、実はその範囲のことを考えております。それ以上のことを考えてはいないわけでございます。
  171. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のようにその対策として堀さんからもいろいろ御意見がありましたが、共同証券がいままで多量に株式を買い上げたという問題、それから株式の大量買いということをたな上げで、市況がそれで一体安定するのかどうかという問題が出てくると思うのです。そこで御承知のようにいまの株の非常に過剰なるところは、最低千五百億から四千五百億ぐらいは大体だぶついておるというような、こういう意見がある場合に、ではどれまで買い上げたら普通の流通がうまくいくかどうかということについては、日銀は慎重なところでございますから、大体の目安を一体おつけになっておるのかどうか、これをひとつ伺いたいと思います。
  172. 山際正道

    ○山際参考人 こういう市場の情勢におきまして、何億円程度を買い上げればそれで安定をするという計算はなかなか立てがたいと私は考えます。相当心理的な要素もございまして、安定すれぱ売るつもりであったのが引っ込んでしまうという場合もございましょうしまた情勢いかんによっては新たに売りが出るということもございましょう。それを的確に計算するということは非常に困難でございますが、私はそうでなしに、先ほどもちょっと申し上げましたように、人心が国の施策なりあるいは日本銀行の施策なりに信頼をして、その不安からして市場をくずしていくというような動揺を防止するというのが根本のねらいでございます。どこまでやっても動揺は防止できないというならばその動揺を防止するまで日本銀行としては同じ態度を続けざるを得ないし、これ以上やる必要はない、動揺を防止するという見地からならばこれでもたくさんだという時代が参りますれば、むろんそこでとまるという考え方でございます。これを精密に、ちょっと何百億ならばとまるというふうに計算することは非常に困難なゆえに、いまだ算出はいたしておりません。
  173. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のようにいまの証券界の大体の町の声としては、いま証券を買えば必ず損するというような風潮があるわけでございます。しかし証券市場というのは、これはもう大体自由の立場でやるのであって、そういう中で人為的にこれを日銀がてこ入れをしていろいろ操作をするというようなことで一体根本的に立ち直るかどうかということに疑問があると思うのですが、その点は山際さんはどのようにお考えになっておられますか、お伺いしたいと思います。
  174. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまも申し上げましたとおり、日本銀行がこの問題に対しまして関与いたします限界は、不安動揺を防止するという一時押えとでも申しますか、とにかく緊急措置だけにとどまるのでございまして、それ以上に株界がふえるとかあるいは株価が上昇するとかいう問題は、流通機構の整備、その中においてことに有価証券業者の合理化、体質の改善並びに発行会社における各種の配慮というものが将来の株価の上昇を決定するものと考えておりますので、私は日本銀行としてはそこまで実は手伝うことは考えておりません。
  175. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つは、これは御承知のように証券市場はやはり現在の経済の半面をあらわす一つのあれでございますから、しかし、現在御承知のように経済の安定、いわゆる日本の成長もとまって、特に開放経済下ではなかなか産業も思うようにいかないという現状で、証券だけが、特に証券はひどいのでございますけれども、アメリカのように資本主義が発達しておってもなかなか不況のないような国と違いまして、日本のような経済の浅いところではなかなかそういうことが思うようにいかないという現状でございます。そういう中にあって、いろいろ大蔵大臣からの慫慂もあり、また業者からのいろいろな慫慂もありまして、日銀さんがいろいろ手を尽くされると思うのであります。しかしそれではたして安定するかどうかということについては、これは一般に疑問があると思うのです。大衆の心理状態がいまの状態では非常に悪い中で一体どれまでやったらどうなるというような目安がなければやはり中央銀行としての日本銀行が乗り出すことについては、多少冒険じゃないかというふうに思うのですが、その点はどのように総裁はお考えになっておられますか。
  176. 山際正道

    ○山際参考人 証券対策といたしましてはいま私が申し述べました点だけでは、ほんとうの一時押えの応急処置でございますから、本質的に対策にはなりません。どこまでもそれは先ほども申し上げましたとおりに、関係業界、これは発行会社もまた証券会社も含めまして、あるいは銀行等も入るかもしれません、これの自発的な努力によりましてみずからの計画に基づく体質改善をいたしまして、それが実を結びますときにはじめて真に立ち直るということを期待いたしております。また、今後の立ち直りは主としてその線において進められるべきものであるということを考えております。
  177. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど堀委員もちょっと触れられましたが、一方においては金融の引き締めをゆるめないという反面において、まあこれは金融を引き締めないで、このままうまくいけばいいけれども、なかなか思うようにいかない。おそらくこれは片方において金融引き締めをやって、片方で援助するというようなことは、どうも矛盾したような感じがするのでありますが、これは山際さん、そういうことないとおっしゃるだろうと思いますけれども、池田総理やそれから田中大蔵大臣あたりから、強制的に、圧力をかけて、やれというようなことでも言われたんじゃないか、こう思うんですよ。そういうことを率直に、こういうときでございますから、山際さんから伺いたいと思います。
  178. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまの証券対策の発動に関するお尋ねでございますが、これは私が全く自分の職責にかんがみましてこの際としてこの限度においては出て、この限度をもって進むべきであるということで決定いたしましたことでございまして、格別これによって強要されておるわけでも何でもございません。自分の判断でやっておりますことでございます。
  179. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つダウ平均の問題について私は伺いたいと思うのですが、どうも千三百円という線があって、それから下がるとだいぶひどいようなことを言われますし、それが千二百円になっても、まあ千二百五十円に押えたいというような声もあるのですが、一体ダウ平均というものの基準は、山際さんそういうものはないとおっしゃるようでありますけれども、日銀の総裁としていまの経済事情のもとでどれくらいまではまあいいんじゃないかというような線があるのかないのか、またそういう線をつくるべきであるかどうかということについての所見を伺いたいと思います。
  180. 山際正道

    ○山際参考人 このお尋ねはまことにむずかしいお尋ねでございまして、私自身としてもダウ千二百円が今日妥当な線であるというふうには実は申し上げかねますが、何と申しましても本来は株価の形成は前々申し上げまするとおり、需給関係の結果に基づいて形成さるべきものでございます。ただ、私が心配しておりますのは、いろいろな事情によって取引が混乱をいたすようなことは何としても消しとめなければならぬということだけでございます。実は株価の高低もしくはこの程度に維持することが健全であるというふうな判定は、具体的には実はいたしておりません。毎日毎日の取引の様相にもっぱら注意しております。
  181. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 証券対策については大蔵委員会で長い間、二、三年間ずっと大蔵省に意見をただしたのでありますが、ようやく証券局ができまして、松井さんが局長になられて、このごろようやく大蔵省の証券対策というものの芽が出たように思うのであります。だから、いわば、私たちはいままで証券業界に対しては、行き当たりばったりの、そういう考えが胸にありまして、それと同時に、一体日銀としてもこの株価対策についていままで御意見があっても、ただじっとしておられたのか、あるいは今度、われわれは突如と思うのですが、副総裁が大蔵省の招きでああいう会合に出られてやられたというようなことは、前々から予想されてやられたことであるかどうか、また、日銀という立場からこういうような証券の問題についてはどれまで腰を入れてやるべき問題であるかどうかということについての限界を総裁に伺いたいと思うのであります。
  182. 山際正道

    ○山際参考人 私は有価証券対策、なかんずく株価対策の問題に関しましては、中央銀行としておのずから守るべき限度があるとかねがね考えております。それは申し上げましたように、混乱を避け、信用の秩序を維持するという限度においてのみ、中央銀行に与えられた任務があると了解しております。でございますから、それ以外の分についての実は研究等も、率直に申しまして日本銀行といたしましてはとても大蔵省証券局がやっておりますだけの資料も持たず、実は研究も積んでおりません。しかし、何と申しましてもいわゆる証券民主化で今日非常にたくさんの人々の間に株式等が分散されております実情から考えますと、今後はこれが金融の秩序を守る上において時に大きな要素をもたらす原因になりつつあるということは私も認識をしてまいりましたので、今後は特にこれらの点については一そう研究を進めたいと考えております。
  183. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 証券問題はそれくらいにしまして、日銀総裁にたびたび大蔵委員会へ来ていただきまして、問題になる点は、日本銀行法の改正を通じて日銀の中立性の問題について、われわれ何べんか意見をただしました。今度は法案が出る、法律が出るというようなことで銀行局からもいろいろ意見が出ておりますが、一体日本銀行本来のあり方として私たちは中立性を主張しておるわけでございますが、そういう点について、山際さんはいままで二期も、しかも非常に慎重な方として信頼をされておるわけですが、この日銀法の改正という問題をどのように一体考えておられますか。これは根本問題に触れる問題でありますが、ひとつきょうは遠慮なく大蔵省大臣もおりませんから、ぜひひとつざっくばらんにお聞かせ願いたいと思います。
  184. 山際正道

    ○山際参考人 現在の日本銀行法は、御承知のとおり昭和十七年、戦争の始まりました年の翌年の制定でございます。したがいまして、当時の情勢と今日とでは雲泥の差がございますために、その内容につきましては非常な時代のかけ離れを感じます。日本銀行の当事者といたしましてもなるべく早い機会にこれが新装を整えて再出現いたすことを願ってはおります。ただ、何と申しましても、日本銀行法という法律は、通貨、金融制度の基本に関する法制でございますので、急ぎはいたしますけれども、なるべく慎重の上にも慎重を重ねて後日に悔いを残すことのないようなりっぱな近代的な中央銀行法をぜひつくっていただきたいというのが私の念願でございます。その内容の一部といたしまして、ただいま御指摘のございました中立性の問題は、昭和三十五年の金融制度調査会で、三年がかりで論議いたしまして、ついに、まだその結論を得ておりません問題でございます。現に大蔵省と私どものほうでいろいろ事務的に検討を重ねつつありますけれども、いまだむろん結論には達しておりません。私といたしましては、中央銀行が中央銀行として通貨価値の安定あるいは金融の疏通ということについての法的な義務をはっきり負わせていただきまして、その範囲においては自主的な判断でその任務を全うし得るようなりっぱな法制にひとつ御制定を願いたいということを念願いたしております。むろん、経済社会現象いろいろ多岐にわかれまするので、そわばかりが全部ではございますまい、通貨価値の安定、金融の疏通だけが全部ではございますまいけれども、いやしくもその点につきましては中央銀行というものが自主的にどこまでも自己の責任、判断において施策を行ない得るような余地を十分つくっておいていただくというのが私は最もよい制度ではないか、これはかつて国会でも申し上げたことがあるかと存じますが、いまだにそのような考え方で研究を続けております。
  185. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 たとえば私が調べたところによりますと、日本銀行は資本金一億円ですね。たった一億円といえば中小企業のちょっと毛のはえたようなものなんです。そういう例の中で、一体株主の配当はどのようにしておられるのか。ちょっと卑近なことでございますけれども、どうも意外なことが多いので伺いしたいと思いますが、どのように運用されておられるか。資本金一億円というのは、今日は——僕らには一億円というのはどえらい金でございますけれども、金融総元締の中央銀行が一億円の資本というのは、ちょっとよそへいっても人聞きが悪いし、それから現在ロンドン銀行とかオランダの中央銀行を見まして、非常にけげんな気持ちで見ておるのですが、その点はどういうことになっておりますか。
  186. 山際正道

    ○山際参考人 日本銀行の資本金は、お説のとおり、一億円でございますが、そのうち五千万円は未払い込みになっております。ただ、法律の制定するところによりますれば、これに対しましては、その出資金——これを出資金と呼んでおりますが、これに対して、大蔵大臣の認可を得て年五分の配当を続けるということになっておりまして、日本銀行法制定以来毎年年五分の割合での配当を続けております。しかも、出資権者の集会というものは法律上認められておりません。そういうような特殊の法人であり、特別の機構でありますので、先般昭和三十五年の金融制度調査会におきましても、どうせ国家信用を背景にしてやる仕事であるのであるから、資本というものは要らぬじゃないかという議論がございました。これは十七年の制定の当時にも実はあったのでございます。しかし、当時の立法技術をもっていたしますと、無資本をつくるということは法制上技術的に非常に困難な点が多かったものでございますから、しからば五千万円もどうかと思うから、まあ一億円、しかしお金は要らないのだから払い込みは未払い込みということでよろしいということでいたしましたままで、一億円で今日に及んでおるという経過でございます。まあその議論は、すでに申し上げましたように、三十五年の金融制度調査会においても出ておりますので、せっかくそれらの御意見を尊重いたしまして、現在なお事務的に検討を続けておるという段階でございます。
  187. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つ総裁に伺いたいのですが、日銀政策委員会というのがありまして、そうしてこれがおそらく相当の指導的な立場にある。しかも専門家の相当高給でかかえられておる人がおられるのでございますが、その政策委員会はどのように運営をされておるのか。これもはなはだ卑近なことでございますけれども、日銀を知るために、やはりどのようなことをやっておられるのか、これを伺いたいと思います。
  188. 山際正道

    ○山際参考人 はなはだ恐縮でありますが、先ほどちょっと私が申し上げたことについて訂正をいたします。実は現在資本金一億円は全額払い込み済みだそうでございます。私が実は原案を銀行局長でおりました時分にそういたしました。そのときは五千万円は未払い込みでおったものでございますから、今日もそうであると実は思っておりましたが、その後やはり司令部の指令にたしかあったと思いますが、その五千万円を払い込みました。一億円全額払い込みでございます。それは訂正をいたします。  それからただいまの政策委員についてのお尋ねでございますが、私は現在の政策委員の制度は、非常に実態上有効に運営されていると思います。幸いにいたしまして国会の御承認を経て、ただいま政策委員は任命をされております。もちろんそのほかに国会の御承認によらざる官庁代表は二人入っておりまするけれども、いずれもこの国会によって御承認を受けました方々は、各界においての非常に経験の深い練達の士でございます。定例の会議を週二回は閣議の日に必ずやっておりまするし、臨時の会議はそのつど催しておりますが、いずれの場合におきましても、私の感じでは、なかなか私どもの思い及ばざる経済社会の実態につきましても非常に含蓄のある御示唆をいただき、また御解説をいただきまして、施策の上に非常に有効に私は働いておるものと考えております。今後この制度がどういうことに変わってまいりますか存じませんけれども、どうかひとつ外部の学識経験豊かなる人々が中に参画されまして、実際の経験に基づき、実際のその理論に基づきましての非常なアドバイスないしは御助力をいただくということは、この種の機構としては私は非常に必要なことだと思いまするので、何らかの形においてその全能力をお傾け願えるような形で保存いたしたいものと念願いたしております。
  189. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど一つ聞き忘れたのですが、日銀の株主は国家の資本が入っておるのかどうか、個人で入っておられるのかどうか、その点を一つ総裁から伺いたいと思います。
  190. 山際正道

    ○山際参考人 資本金一億円のうち五千五百万円は政府出資でございます。民間の出資は四千五百万円でございます。
  191. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つ、この日銀の立場として私たちが伺いたいのは、たびたび総裁にも大蔵省銀行局長にも伺ったのでありますが、今日都市銀行が非常に発展をいたしまして、資金量も世界で何番というようなほうまでいっておりますが、しかし私たちが最近、先ほど資金需要が非常に多いといわれますが、日本の現在の経済の中でこの銀行の指導性というものが非常にむずかしくなっておる、競争も相当にひどいのでありますが、その中で銀行が一番大きな思惑をやっておるのは歩積み、両建てというようなお話がございましたけれども、土地資本に対して非常に融資をしておるということがたえず言われているわけでございます。これは大蔵省の銀行局の監督に属する問題でございますけれども、日銀の立場として山際さんはこういう問題、都市銀行の土地を担保にして金を貸すという問題ですね。これはもう笠信太郎氏が「花見酒の経済」の中でたえず言っておることなんですが、こういう問題について日銀の総裁としてはどういうような御意見を持っておられるか。これはときどきわれわれも至るところでそういう問題を聞きますので、派生的な問題でございまするけれども、山際さんの御意見をひとつお伺いしたいと思います。
  192. 山際正道

    ○山際参考人 都市銀行の貸し出しのうち、土地を担保に貸し出しをいたすという金額は、私も調べてみましたけれども、あまり多くは上っておりません。日本銀行は御承知のとおり土地担保では金を貸しません。したがって、全体の都市銀行の資産運用上から申しますると、わりあいにその率は低いと思います。ただ問題は、御承知のように昨年来やや都市銀行の貸し出しがいわゆるオーバーローンの様相を濃くいたしまして、全体としての貸し過ぎがあったということはいなめないと思いまするので、そこで、私どもといたしましては、貸し出し限度額に規制をするとかあるいは貸し出し増加額を規制するとかというような、貸し出しの膨張を防いでおりますけれども、ただいま御指摘の土地の問題がその間においてその膨張を助けておるというような問題につきましては、いまのところは安心をいたしておるような次第でございます。
  193. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ときどきそういう注意がわれわれにありますので、そういうことがないことを望んでおるわけでございます。  それから、金融政策の中で一番問題になるのは、金利の問題でありますが、これは御承知のように日本はこれだけの資本主義国、世界で有数な国だといわれながらも金利が非常に高い。これは一般の日本の経済事情がそうさしておるかと思いますけれども、この金利政策について一体山際さんは世界の水準に達成させるためにどのくらいの努力が要るか、どのくらいの年月がかかるのか、どうしたら日本の金利というものは世界の水準並みになるかというような何か御意見を持っておられましたら率直に一つ伺いたいと思います。
  194. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまのお尋ねの点は、実は、金融問題に関する根本的な問題だと思います。御指摘のとおり世界の先進国に比べますると、何と申しましても、わが国の金利は割高になっておるということが言えると思います。むろん金利の種類によりましては必ずしもそうも言えないものもございますけれども、全体として申しますならば御指摘のとおりであると私は考えます。それは一体どういうことに基づくかということになるのでありますか、一言で申し上げますならば、やはり伸びつつある経済において資金の需要が非常に多いにかかわらず、資金の蓄積ないし供給がこれに伴わないというところからおのずから金利の高騰を来たしておるという解釈がしかるべきでないかと思うのであります。ことに戦後日本は多年の蓄積を一朝にして失いまして再建の途についておる最中でございますので、その間の事情がさような事態を招いておるのが根本だろうと思います。そこでこれを解決いたしまするのには、どうしましても資金の蓄積、資本の蓄積に一そう励みまして、同時にまた、極力これを有効に使うことに——その真の需要の方面をも調整をいたしまして、そしてまたおのずから金利が次第に低下することを策していくよりしようがない。しいて人為的にやりますると、そのはね返りが必ずいずこかにあらわれまして、これは妙な経済状態におちいる可能性が多いと私は思います。さてそういう状態で世界の金利水準まで全体がいくのにあと何年かかるかというような問題になりますると、いかにも、私は先進諸国の国々を訪れまして、日本における資金の蓄積、資本の蓄積の乏しいことを思いますると、これはまあ、国民全体がもう一奮発いたしまして、何と申しまするか、資本なり資金なりの蓄積に一そう励んで、その上にこれを最も有効にむだなく使って、そして経済の安定をはかりつつ拡大をするということでございませんと、なかなか金利のバランスというものが先進国並みにはやってこないだろうと思います。何年かかるかという点になりますと、これは率直に申しましてちょっと年数をはっきり計算し得ない程度、まだまだ年月がかかるのではないかと思っておりますので、これは国民一般の努力のいかんにもよりますけれども、相当腰を据えてこの問題と取り組んでいかなければならないという感想を持っております。
  195. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど最初にちょっと触れましたのですが、中央銀行のあり方についてこれはまあ大蔵省から原案は出すのでございますけれども、しかし少なくとも山際さんは、御承知のように大蔵省銀行局長、次官までやられて、いわば民間の銀行に行かれて、おそらく私はこの中央銀行、日本銀行の総裁としては、これはまあ何と言っても山際さんはきわ立っておると思っておるのです。しかし、そうかといって、山際さん、いつまでも日本銀行の総裁をやっているわけにいかないので、やはり人間は死ぬということもありますし、それからいつどうういうようなことになるかしれませんので、そこであなたの御意見で、一体中央銀行のあり方として、これはとらわれずに、大蔵省はどう考えておるかと言わずに、大蔵省の局長や次官までみんなあなたの後輩でありますから、遠慮せずに、一体日本の中央銀行のあり方として、まあ銀行法の改正が出ると思うのですが、あなたの御意見としては一体ロンドン銀行とかあるいはオランダの中央銀行、これはアメリカにも中央銀行がありますけれども、これは国柄が違うからやむを得ないと思いますけれども、そういう点について、どこの国の中央銀行がいいモデルになるのかどうか。これは日本の事情もよく知っておられますから、その点をひとつ山際さんが率直にわれわれのために教えていただきたいと思うのでございますが、御意見はいかがでございますか。
  196. 山際正道

    ○山際参考人 非常に私の学識をお買いくださるのはまことにありがとうございますが、実はいろいろ規定等勉強もし、また人々にも会い、その運営の実際を聞き及んでおりますけれども、あるいはその結果十分に突き詰めてはおらぬかもしれませんが、英蘭銀行の場合とドイツの銀行の場合というのが、私自身といたしましては常にうまくいっておる中央銀行の例ではないかと実は思っております。しかしこれとてもいろいろ国情によりまして、必ずしもそれが直ちにわが国に移し得るようなことにはいかぬ点も多かろうかと思うのであります。要は国民一般の中央銀行というものに対する認識のいかん、それからまた各界の人々がどの程度中央銀行に協力してきたか、いずれも長い歴史を持っております。それらの歴史が今日の中央銀行を生んでおると思います。私どもはそういうふうな全体との調和を考えながら、日本の現在といたしまして最も望ましい中央銀行はどういう姿であるべきかという点を考えていきたいと思っておるわけでございます。
  197. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それからもう一つは、私は、現在の日本の経済の行き詰まりというのは、これはいま池田さんがのどで入院しておられますから、あまりとやかく言いたくないのでありますが、やはり日本の経済のひずみがいろいろなところに起きた。これはおそらく池田さんも総裁選挙ではいろいろ苦労されてそのひずみでのどが悪くなったと思うのでありますが、やはり日本の経済もこういうような高度成長とか所得倍増とかこういう大きな問題がやはりいろいろな点でひずみが来て、その中でいまの証券のような問題が一番大きく——アメリカの利子平衡税の問題も大きな要因でございましたけれども、少なくともそれが日本の経済の中に非常に矛盾が出てきたというように考えておるわけでありますが、そういう点でこのままの経済で日本の将来が安心していけるというふうな段階ではない——段階ではないというのは、一番流動性の多い証券界がこういうふうな混乱を来たしておるというような現状を見ても、やはり日本の資本主義というものにいろいろな矛盾が出てきたというように考えておるわけでありますが、その点は山際さんは一体どのようにお考えになっておりますか、これもついでに伺っておきたいと思います。
  198. 山際正道

    ○山際参考人 日本は御承知のとおり、国際的にいわゆる開放経済体制のもとにおいて自己責任主義に基づく企業の自由を本旨として発展を遂げてまいりつつあるのが実情であろうと思います。私は、この原則は日本の国情に、最も合っておりまして、それが最も能率のよい体制に来ておると考えております。ただしかしこれは計画経済とかあるいは統制経済とはやや趣を異にいたしましてときに予期せざるひずみが生じますということは避けがたいことである。現に政府当局もそのことは認めておられると思います。でありますから、今後は高度の成長を続けながらも局部的にいろいろ生じてまいりますひずみをいかに巧みに処理して全体の成長を続けるかという点に問題があろうかと思うのであります。  御指摘の証券界に起こっておりますひずみの問題も、やはり全体の経済の成長のもとにおいて起こった一つの局部的なひずみであろうと思いますので、これをいかに全体の成長を妨げずに、もしくは安定的に成長をせしめながらこのひずみを除去していくかということがわれわれの尽くすべき任務であろうと実は考えておりますので、中小企業の問題にいたしましても、そのほか各般の問題にいたしましても、ときにひずみが生じがちであります。これは自由経済というものは、おそらくはいろいろな事情によりまして各種の事情の変化もございましょう。それに伴いまして漸次起こってまいる点かと思いますが、それを巧みに処理してまいるということにわれわれ最善の努力をしてこの体制を続けていきたい、こういうつもりでやっております。
  199. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際さんは慎重居士でございますから、あまり問題になるようなことをなるべく避けられる点もあると思いますが、これは私たちの考え方——多少意見になりますけれども、どうも資本主義の経済というものの中に、アメリカのような国ならば別でありますが、日本のような人口が多い、国が狭いというような国には、やはり過渡的な現象として比較的、一面表向きには景気がどうにか進んできたというような段階にあった。しかしいつまでも日本の資本主義がアメリカのように上昇するとは考えられない点が多々あると私は思うのであります。そういう点で、いろいろな現象が出てきておりますけれども、少なくとも私は開放経済下の中で日本がこれからいろいろひどい波に打たれると思うのでありますが、しかしどう考えましても、こういうような物資の少ない、人口の多いような国では自由放任の経済ではやっていけないのじゃないかというように、これは私の議論でありますが、しかしそういう点についておれは日本銀行の総裁だからそう思っても言えぬというような点もあるかもしれません。しかし少なくともいろんな経済の現象の中にひずみが起きておるという現実は、これは否定ができないと思うのでありますが、そういう点について一体総裁はどのようにお考えになっておりますか。おそらくなるべく新聞で問題になるようなことを言わぬようにしたいと思われる点があるかもしれませんけれども、せっかく大蔵委員会へたびたび来ていただいておるわけですかり、ひとつ佐藤觀次郎に免じて率直な御意見を承りたい。
  200. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまお話のごとく、あるいは資本主義と言いあるいは社会主義と申し、ないしは共産主義というようにいろいろな主義が言われておりまするけれども、その内容は必ずしも明確ではないと考えまするし、またそれを唱える人々によって必ずしも具体的にはっきりはしておらぬかと考えます。要は現実の事態に即しまして、最も多数の人々が最大多数の幸福のうちに能率のいい経済発展を遂げ得るかということによって現実的に解決されていくべきものであろうと思うのであります。その見地からいたしますと、現在日本において行なわれております経済組織は、むろん一部においてはいろいろなひずみや弊害も起こります。でありまするが、それはそのつど矯正するもしくは調整する方法を講じながらも、基本においては先ほど申し上げました国際協調、開放体制下において自由経済組織による能率のいい経済発展を考えていくというのが最もこの段階においては適当ではないかと実は思っておりますので、私としては何々主義ということにとらわれることはないと思います。現在において最も能率のいい、弊害の少い、そしてみんなに幸福が均てんできる方法が何であるかということを現実に考えていくのがよろしいかと考えております。
  201. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際総裁はもう日銀の総裁として二期もつとめられまして、法王まではなられなかったけれども、しかし少なくとも練達の日銀総裁として、私から言えば失礼でございますけれどもなかなか評判がいい過程を越えられたということは、これは私ばかりでない、みんな知っているのではないかと思います。そこでせっかくこれから十年、二十年と総裁をやっているわけにはいきませんから、私があなたにお願いしたいのは中央銀行のあり方ということで、山際さんが日銀総裁をやってよかった、いろいろいままでの経過もありますからそれをどうこう言うことではありませんけれども、これだけの日銀、中央銀行としてのおみやげを残していったというような仕事をやるべき時期に来たのじゃないかと思うのであります。そういう点で私はあなたにお伺いしたいのは、日銀の総裁をこれからまだ五年、十年続けられることがあるかもしれませんけれども、いまの時点に立って日銀でこういうことだけは残しておきたいというような問題がありはしないか。またおそらくあるのじゃないかというふうに思うのですが、その点は一体どういうふうにお考えになっておりますか、率直な御意見を承りたいと思います。
  202. 山際正道

    ○山際参考人 率直に申し上げまして、私がこの職につきまして以来常時考えて脳裏を去りませんことは、いかにして金融を正常化するかという点でございます。金融正常化と申しましても先ほど来御意見のございましたとおり、その内容に至りましては各般のものがございますが、いろいろな事情によりましてなかなかその金融の正常化が進行いたしません。見方によっては逆行しているのではないかとさえ批評されておる時代でございますので、これは非常に残念でございます。何とかして正常な状態に持っていきたいということを念願としておりますが、これ自体非常にむずかしい問題を持っておりますので、どれからやっていいのかわかりませんが、少なくともこの問題を最も重要な命題として努力を続けてまいりたいと考えております。
  203. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう時間がきましたからこれで最後にいたしますが、いろいろ先ほど堀委員から大蔵大臣と一緒にいろいろ山際さんの御意見まで伺ったのでありますが、私がお伺いしたいのは、この金融正常化ということは、これはだれが考えましても、私が日銀総裁になってもそういうことは言うだろうと思うのです。だからそういう月並み的なことではなくて、やはり少なくとも日本が、この日本の経済を世界的にするというような立場からも、また将来日本がどのような形になろうとも日銀の指導方針はこうだというような、こういう抱負経綸がおそらくあるだろうと思うのでありますが、大体あなたは遠慮がちですからあまり言わぬように言わぬようにしておりますけれども、せっかく雨の中を来てもらったのですから、これだけは残しておこうというような最後の抱負をひとつ承って私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  204. 山際正道

    ○山際参考人 毎日の問題に追われておりましてなかなか系統的に考えられませんけれども、私は先ほど堀委員からお尋ねがございました金利を自由化するということは、どうしてもこれはやらなければならぬことと考えております。これがやはり金融正常化の根幹になると思っておりますので、何かの機会をつかみましては一歩一歩その方向へ前進さしていきたいということに最上の努力を尽くしてまいりたいと思っております。
  205. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  206. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま佐藤委員の質問に答えられまして、山際総裁はその重責を通じて痛感されておられますことは、何事もさしおいてまず金融の正常化をはかりたい、このようにお述べになりました。これについては全く同感のきわみでございまして、さればこそ問題をこの一点に集約をいたしまして、本委員会はしばしばこれを論じてまいったところでございます。  さて具体的にいかなる手段を尽くして金融の正常化をはかるかという問題になってまいりますと、どうしても一面には日本銀行法の改正、これはなし遂げなければ相ならぬでございましょう。けれどもこの問題はすでに答申も出ておることであり、改正案国会提出の問題ももはやぽつぽつ日程にのぼってまいっておると思うのでございます。これは各界の意見を網羅して適切な日銀法改正案が提出されるでございましょうが、私は当然これに相呼応する形において現在の銀行法が何らかの形で改正されるのでなければ、現在の銀行法をもってしてはこれによって金融の正常化をはかることはこれはしょせん望みがたいのではないかとおもんぱかられるのでございます。なるほど銀行業は現行法律のもとによりますとこれは私企業であり、原則として自己責任体制によって運営されてよい形にはなっておりますけれども、しかし銀行の本来的使命というものは、何といっても私は預金者の安全、それから信用秩序の維持及び信用の調整というこの三つの大きな公共的使命をになっておるものでございまして、この三つの公共的使命を銀行として完全に果たさしめまするためには、現在のような制度のもとにおいてこれがはたして可能であるかどうか、これは大いに国会においても、政府においても、また日本銀行においても、深く現状に照らして判断をする必要のある問題であると思うのでございます。  現に銀行がどういうような状態で運営されておるかと申しますと、預金者の安全でありますとか、あるいは信用秩序の維持あるいはまたこの信用調整というような三つの大きな社会的、公共的使命というものを彼らが真に痛感をして、その使命を果たし得る体制において銀行業務を運営しておるかどうか、これは現状に照らして十分判断のつくことであると思うのでございます。すなわち現在は過当競争、その結果あのような形でオーバーローンに相なっております。さらに都市銀行はその大企業との関連を強めまして、さらにさまざまな企業をその系列に置くことに狂奔をいたしておるのでございます。また一つの経営の実態を端的にとらえ上げて批判をいたしまするならば、実に三銭七厘というような高利で市銀は獲得し、これを二銭あるいは一銭九厘というような安い金利で大企業に流す。その逆ざやを補完するために中小企業者から歩積み、両建て、これをせしめておる。安い定期で、また高い金利で貸し与える、こういうようなことによってそれをカバーするというような、まあ言うならば銀行経営の現在のあり方というものはまさに修羅八荒そのものであるといっても過言ではないと思う。私は現在の銀行法がこういうようなやりたいほうだいのことがやり得るという体制のもとに置いておいては、金融の正常化はこれは望んでも果たし得ない。金融が正常化されなければ産業経済はいよいよ均衡を失してまいる。経済が不安定ならば社会不安、政治不安、これはたいへんなことでございます。したがって、私は、いま佐藤委員の質問に総裁が答弁されたがごとく、金融の正常化のためにはこの際銀行法の抜本根塞的なる改正がはかられなければならぬのではないかと考えるのでございます。午前中大蔵大臣答弁によりますると、証券取引法も次期通常国会提出される準備がもはや確定的で進められておるとのことでございます。この際日本銀行法の改正と相呼応して、そうして銀行法の改正をなすべきであると思うが、中央銀行総裁として山際さんの御見解はいかがでありますか。
  207. 山際正道

    ○山際参考人 ただいま御指摘のように銀行法は昭和初めの金融恐慌のあとを受けましてもっぱらその破綻を防止する目的を持って、そこに重点を置いて制定されたように私は記憶しております。したがって預金者保護の見地を非常に多く取り入れまして、どちらかと申しますと集めました資金は受信するほう——信用を与えるほうの分については社会的な見地からかくあるべしといったような配慮はわりあいに法文上はあらわれておることが少ないかと実は考えております。御指摘のございましたあるいは過当競争の問題であるとか、あるいは企業系列によってさらにそのシェアを拡大して競争するといったような方面の問題は、あの法律に関する限りは主として監督官庁の銀行検査、行政指導、また日本銀行の取引を通じての指導といった面にまかされておる面が少なくないと思います。この意味から申しますると、近代的なやはり銀行法といたしましては与信、受信ともに両方のバランスのとれた金融業法、銀行業法であってしかるべきだと思います。その点から申しますると、御指摘のようにあの法律はずいぶん古うございます。昭和の初めの制定でございまするので、もうここで再検討されてもよい時分ではないかと考えております。仄聞するところによりますとやはり金融制度調査会でもその種の議論が出ておりまして、適当な機会においてもう一ぺんそれを再検討しようじゃないかという機運も生じておるやに聞いております。やがてそういうことも日程にのぼろうかと思います。やはりこの法律につきましても改定を検討すべき段階に来ておるということにつきましては私も同感でございます。
  208. 春日一幸

    ○春日委員 せっかくの機会でございますので、改定をするとすれば改定を要する項目についてお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、これは当然現在のような営利主義を払拭いたしましてここに社会性を打ち出していこうという形になりますると、まず銀行の業務に携わりまする者は、これはやはり一個の公務員に準ずるの資格と責任を与えていかなければならぬと考えるのでございます。この点の御見解はいかがでございましょうか。  それからもう一つは、どうしてもいまの与信、受信の関係をやはり均等に法律によって規制をしていく。現在の銀行法を通読いたしますると、何となくこれはまあ一個の銀行組織法みたいなもので、貸し出し営業面について法律が明示する基準がこれは明確でございません。したがって銀行家が貸したいところへ自由自在に貸すという、言うならば金融政府状態といっても過言でないようなことが許されており、そのことが今日のいろいろな経済のゆがみをつくる原因に相なっておると思うのでございます。したがって、私どもは、この与信の関係についてやはり法律的な規制を加えるといたしまするならば大口貸し出しの規制、それから情実貸し出しの規制、長期貸し出しの規制、それから預貸率の規制、それから不動産比率の規制、それからもう一つは、やっぱりこの機会に資本市場との結びつきを、交流をはかる意味において公社債及び金融債保有の規制、また証券金融の規制、こういうような規制を加えながらやはり与信行為に対しまする社会性、公共性を確保していく、それから金融市場と証券市場との資金の交流を可能ならしめるように制度的にパイプを通じるようにこれをはかっていく、こんなことが私は必要不可欠の要因となるのではないかと考えるのでございまするが、総裁の御見解はいかがでありますか。
  209. 山際正道

    ○山際参考人 私の経験によりますると、官庁が銀行検査等に参りましたときに、その経営上片寄り過ぎるという点で指摘をいたしまする点は、ただいまおあげになりました大口偏寄の問題であるとか、あるいは系列化の問題であるとか、あるいはまた不動産所有額の問題であるとか等々、御指摘の点がはなはだ多いのでございます。ただ今日までそれが法制的に規制されておりませんのは、おそらくは私は察しまするのに、地方によりまた銀行の何と申しまするか発生的な沿革等によりまして、必ずしも画一的に規制することの困難な具体的の事情がいろいろその地方地方、その場合場合によってあるがためになかなか法制化できないという点があったのではないかと思うのであります。しかし今日、先ほども申し上げましたように、古くこの経験を重ねておりまするので、それらの多くの銀行検査等によって発見されました規制等の最小限度のものを法制化するということは今日不可能ではないと私は考えます。おそらくは金融制度調査会でもこの法律を再検討しようじゃないかという空気は、それらの指定事項等について法制化し得るものは法制化したらどうかということが考えられてきておるせいではないかと思うのでございます。実は銀行法の再検討をいかなる点においてなすべきかという点については私は実は十分の研究をいたしておりませんので、これ以上明確にお答えできないのはまことに残念でございます。
  210. 春日一幸

    ○春日委員 これはひとつ、それぞれの銀行の設立時点におきまする特殊事情等はあるではございましょうけれども、しかし現状におきましては金融機関の持ちまする金は大部分が預金者の金であり、足らざるは日銀から借りた国家的、社会的な金であります。このような銀行資金の源泉から判断をいたしますると、そのような社会性のある社会的な資金を流すのにその流し方が社会性を欠くというようなことが許されることではないと思うのでございます。したがいましてそのような立場に立って判断いたしまするならば現在の銀行が過当競争、それからまた産業に奉仕する本来的使命を忘れて産業を系列化せしめてこれに君臨をする、そうして金利体系は支離滅裂になってしままって、まさしく金融のメカニズムはこれを圧殺されてしまっておる。まあこういうような現状におきましてはもはや法律によってその弊害を除去することをはかるのでなければ、私は自然の状態で放置しておいては日本の経済そのものの病根をさらに深めるばかりであると思うのでございます。中央銀行総裁としてこの点についても十分それぞれの機関に影響力を与えていただくことを要望いたしたいと思います。  それから、日本銀行法が今回改正されるのでございますが、銀行法の第一条から考えましても、国の政策に協力をする、それから発券機関であり、また金融調整機関であるというような点から考えまして、これは純粋に国家の機能を果たす機関であるのでございます。したがって、日本銀行が特殊法人にいたしましても、そのようないままでのような形ではなくして、純粋の日本銀行、国有、こういう方式にその使命と性格とを合致せしめて、そうして国有日本銀行、こういう性格をむき出しに明らかにしていったほうが、私は、実情に即し、かつはまたその機能を果たす上においてもむしろ有益ではないかと思うのでありまするが、総裁の御見解はいかがでございますか。
  211. 山際正道

    ○山際参考人 それらの点は、目下いろいろ研究されておりまする日本銀行法改正案における新日銀法中において論議されておる事項と考えます。たとえば全部民間出資金は削除いたしまして、あるいは無資本にいたしますか、あるいは全額を政府の出資にいたしますか、とにかくそういうような観点もやはり考慮されておると思います。ただ御承知のように、国家の行為そのものではございません。やはり一つの商業上の機関として通常取引の線に沿っての取引を行なわなければならぬ点もたくさんございますので、それらの行動に支障のないそれだけの経済的性格は与えておく必要があろうと思います。その間の調和というものはやはり一つの問題点であろうかと思います。それらを含めまして、目下しきりに検討されておると了解いたしております。
  212. 春日一幸

    ○春日委員 次は、日本銀行のこの中央銀行としての機能についてお伺いをいたしたいのでございまするが、これは本日、午前中の大蔵大臣答弁の中で、大蔵大臣みずからが述べられたのでありまするが、日本銀行が発券銀行というのであるならば別であるけれども、中央銀行としての使命並びにその性格からいたしまして、日本銀行が主として都市銀行とだけ深く取引を結んでおるということは変なことであると、こう述べられておりました。すなわち金融機関には、都市銀行があり、地方銀行があり、相互銀行、信用金庫、信用協同組合等、さまざまなものがある。しかもこれらの金融機関が、現実に日本においてそれぞれの金融を行なっておるのであるから、中央銀行であるならば、中央銀行たる日本銀行が、都市銀行と取引を行なっておると同様に、それはその資金量に応ずる度合いというものは別に定められるでございましょうけれども、機会均等の立場において、当然他の金融機関とも取引があってしかるべきものである、まあ、こういう意味のことが述べられたと思うのでございます。しかるところ、現在日本銀行は、もっぱら都市銀行と取引をし、地方銀行には若干のもの、相互銀行は、特にその資金量の大きなものを選択して、それだけにわずかばかり、信用金庫には全くないと思うのでございます。信用協同組合も同然であると思うのでございます。法律によって設けられておりまするわが国の金融機関にして、あるものには中央銀行がその資金を流し、他のものには流さないという現状は、何か積極的な理由がございますか。この点ひとつお述べを願いたい。
  213. 山際正道

    ○山際参考人 日本銀行の金融調整機能は、御承知のように、国の資金需要全体につきまして総体的立場から調整をするという任に当たっておるのでございます。その意味におきまして、どういたしましても、金融上にウエートの高いところから、漸次その取引を開始してまいっているのが自然の経路であったのであります。そこで従来は、都市銀行を中心に、あるいは地方銀行というふうに伸びてまいりましたが、今日では、その資金量の増大に伴いまして、相互銀行、信用金庫その他のものと漸次取引を拡大しつつございます。おそらく全国の資金量に占めるそれら中小金融機関のウエートも高まってまいるかと思いまするので、私といたしましては、漸次これを拡大していく方針で現在進んでおりまして、現に逐次取引を拡大いたしているわけでございます。たとえば債券売買、いわゆるオペレーションの方法で資金を供給いたします場合におきましても、当初は都市銀行、地方銀行のみでございましたが、最近では相互銀行、信用金庫もその中に加えまして、資金量の全体的調整の見地から逐次有効な方法を検討しつつございますが、その傾向は今後もおそらく増進してまいることと思います。
  214. 春日一幸

    ○春日委員 自後の質問を進めますにあたりまして、私はこの指数を把握いたしたいと思うのでありますが、現在日本銀行が貸し出しを行なっております資金の額、都市銀行に対しますものと地方銀行に対しますものと相互銀行全体、信用金庫全体、これはもうざっとした数字でけっこうでありますから、この際お示しを願います。
  215. 山際正道

    ○山際参考人 手元に持参しております資料によりますと、昭和三十九年の八月末現在におきまして総計は一兆三千百六十一億、そのうち都市銀行が一兆二千九百二億、地方銀行が百五十八億、信託銀行が五億、長期信用銀行が九十五億、その他いろいろございますので、合わせまして六百八十五億ということになっておりますが、ただいま御指摘のございました信用金庫、信用組合に対します貸し出しはまだ出ておりません。
  216. 春日一幸

    ○春日委員 私はむしろこの信用金庫の問題について要請いたしたいのでございますが、御承知のとおり資金需要というものに応じて中央銀行がそういう資金調整の立場から貸し出しを行なう、こういうことでございますが、信用金庫といいますものは、いずれにしても、中小企業専門金融機関として政策金融の衝にあたるものでございまして、ここで中小企業金融が一般に梗塞していることが強く叫ばれておりますおりから、資金需要は多々ますます弁ずるというところにあると思うのでございます。したがいまして、この信用金庫全体として占めておりますその資金の量は、これは三十九年の二月末のあれによりますと、実に一兆六千何百億という大きな額にのぼっております。これだけの資金量をもって受信いたしておりますその金融機関に対して、しかも市中において中小企業金融がはなはだ苦しいと言われておるのでございますから、当然日本銀行は何らかのパイプをこれに通じて、大企業において資金需要があると同時に、中小企業においても資金需要が顕著でございますから、やはりそういう政策金融に、国の政策に協力する日本銀行といたしまして、当然そういう資金が流されてしかるべきであると思うのでございます。一兆二千億の金が都市銀行に流されておりますが、都市銀行の預貸率は大企業が八〇%、中小企業が二〇%という大きなアンバランスになっているのでございます。こういうような立場から考えましても、やはり一兆数千億が大企業に流されているならば、やはり相当の金額が——中小企業がわが国産業、経済の中に占めておりますその度合いから判断いたしまして、当然機会均等の原則、わけて国の施策は中小企業の後進性を取り戻すというところにもあり、商売は元手次第だから資金が必要なのでございますから、したがって、かねて高橋銀行局長にも述べたと思うのでありますが、日本銀行はすべからくこの全国信用金庫連合会等に何らかの特別ワクを設定して、そうして日本銀行の金融調整機能を、このような中小企業専門金融機関にも通ずるべきである、この説をなしておるのでございますが、これについて山際さんの御見解はいかがでありますか。
  217. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまも申し上げましたとおり、私どもの方針といたしましては、漸次中小金融機関の金融界におけるウエートの増大に伴い、またその資金量の増加に伴いまして、漸次その取引の範囲を拡大しつつございます。その取引のしかたにつきましては、ただいま御指示のございましたのも一つの方法だと思っております。方向といたしまして全くそのような同じようなことを考えております。順序に従って漸次その実現に努力いたしたいと考えます。
  218. 春日一幸

    ○春日委員 大企業あるいは基幹産業というものも、開放経済下において、やはり国際経済競争に民族を代表するチャンピオンとして立ち上がっていただかなければなりませんから、必要なる国家的資金がそこに導入されるということ、これは必要なことであると思うのでございます。けれどもわが国の中小企業の輸出通関量等からも判断をいたしますると、これは五四・何%という半分をはるかにこえております。わが国産業経済の中で生産、流通、貿易、あらゆる場面においてその圧倒的なボリュームを持っております中小企業、これが現実にいろいろと資金梗塞で、特に現在北九州地帯では、自己の責任によらずして関連倒産相次いでおる現状等にかんがみて、私はいまこそ中小企業金融機関がその機能を十分に果たさなければならないときであると思うのでございます。彼らをしてその機能を果たさせるためには、やはり大企業あるいは基幹産業に対して、日銀の資金のバックアップがありますと同じように、中小企業に対してもそれらの機関を通じて日銀的なバックアップがあってしかるべきだと考えます。幸いに御答弁によりますと、その方向に向かって御努力が進められておるとのことでございますから、願わくは、これはすみやかに御実現を願いたい。私はこの説をすでに昨年の暮れからやっております。今年の春も一回やりました。この夏ごろも一回やりましたが、その方向に向かって研究が進められておるという御答弁があるのみで、一向に何らの前進がございません。国会の意見というものは国権の最高の機関の意見であり、それがいかぬという意見が他にないとするならば、しかもあなたがやると言っておいて何もやらぬということは国会を軽視されておるのそしりなしとしない。私は、やる方向であるならばおやりを願いたい。やらないのならばやらないと言って御答弁をなさってしかるべきである。いつごろそういうことをおやりになりますか。この際、こういう要請を続けてまいりました経過にかんがみ、大体のその目途をお示しを願いたいと思います。
  219. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまお尋ねの点につきまして、具体的にいつごろという目標を実はまだ定めておりません。しかしただいまお述べの次第もございますので、鋭意研究も進め、その準備も整えまして、なるべく事情の許す限り早い機会においてその趣旨が通りますように改善を加えたいと考えております。
  220. 春日一幸

    ○春日委員 それでは時間がまいりましたから、あと二、三具体的な問題についてただしまして質問を終わりたいと思います。  その第一点は証券行政、株価対策に対する緊急措置に関する問題でございますが、ただいま堀君に対しての御答弁の中で、総裁の日銀の姿勢が大体示されたと思うのであります。それによりますと、この共同証券に対します日銀の資金の裏づけというものは、これはせっかくいままで共同証券に対して都市銀行が協力してきたのだから、したがってこの共同証券の増資に関する資金、また共同証券自体が塩づけにする株価購入資金、こういうようなものは都市銀行をクッションにして日銀が出すのだ、大体こういうような姿勢が示されたと思うのでございますが、そうでございますか。
  221. 山際正道

    ○山際参考人 さよう御了承願ってけっこうであります。
  222. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、この点については、何といっても都市銀行のオーバーローンの問題でございます。わが国産業経済の問題としては、何といっても至上命令は金融正常化の問題でありますが、金融正常化の中の第一タイトルは何といってもオーバーローンの解消のことにあると思うのでございます。いま一兆二千数百億の借り入れをいたしておりますが、ここにかりに一千億の資金が共同証券に要するといたしますと、さらに都市銀行の預貸率はそれだけ悪化する形になるのでございまするが、これは日銀としては全然意に介されないのでございますか。
  223. 山際正道

    ○山際参考人 都市銀行の資金事情、なかんずく預貸率の改善につきましては、極力その努力を要請いたしております。今回の融資につきましても、まず極力資金を集めましてみずからの力においてできるだけのことは解決してもらいたいということを前提にして考えております。その足らざるところは補うということでいきたいと考えております。
  224. 春日一幸

    ○春日委員 都市銀行がその資金難のために数千億のものをコールマーケットから借りておることは御承知のとおりでございます。そのことが都市銀行の営業について逆ざやとなり、彼らの経理状態を悪化せしめていることも、これまた御検討のとおりであろうと思うのでございます。すなわち、都市銀行には金がないのでございます。ないことがわかっておりながら、なおかつ都市銀行に一千億近い金を集めろ、こういうような形になりますと、そのしわは当然いろいろな形によって出ましょうが、これはそれぞれ企業に対する融資、わけて中小企業融資、こういうような面に向かって破局をしいる心配なしとはいたしません。この点についてどうお考えでございますか。都市銀行にその余裕ありとお考えになっておりますか。高いコールレートによってコールマーケットから資金を導入しておる現状にかんがみて、もはやそのような都市銀行としては一千億をあるいはこえるかもしれないと思われるようなそういう証券金融について、彼らが現在その余裕力を持っておるとお考えになりますか、いかがでありますか。
  225. 山際正道

    ○山際参考人 都市銀行につきましては、ただいま御指摘のとおり、資金の余裕ははなはだ少ないと思います。少ない中におきましても、極力資金の使途を節約いたしまして、自己努力による資金を捻出してもらいたいということがたてまえであります。そのほかの参加いたしております地方銀行等においても、銀行にもよりますが、なお自己資金の余裕にある程度のものを持っておるものもございます。さような場合にはそれをまず充ててもらうということを私ども願っております。自己努力によってどうしても調達できない分につきましては、緊急の事態に対する対策といたしまして、私どもから信用供与をする、こういう順序で考えております。
  226. 春日一幸

    ○春日委員 私はやはり事実関係がつまびらかである必要があると思います。民主政治は責任政治でございまして、秘密政治ではございません。したがいまして、いまや新聞にある程度歴然事項として報道されておりますことにもかんがみまして、すなわち共同証券は、とにかく十月上旬に五十億増資をする、中旬にさらに増資をして二百億くらいになるのではないか。それからいま余剰株式を買っていく、当面一千億程度のものはこれを買ってたな上げしていく、一年くらいをめどにしてやっていくのではないか、こういうことがすでに歴然事項として報道されておるのであります。こういうことは、事実でないならば事実でないとして明確にし、国民が誤解することを事前にこれは防がなければなりません。あるいは事実であるならば、そういうようなめどを与えて政策の効果を確保していかなければ相なりません。したがって、だといたしますると、その増資の資金、塩づけの資金、こういうものはここに新しく一千数百億のものが必要となってくると思うのでございまするが、もしそれ金融機関にしてそのような資金余力なしという答弁があなたの日銀になされた場合、日銀はこの方針について合議に参画し合意を与えた以上、やはりそれをめんどう見られるべきものとわれわれは理解しなければならぬ。国民はそう受け取るでありましょう。こう受け取って差しつかえございませんか。
  227. 山際正道

    ○山際参考人 前段にただいまお話のございました、金額をお示しの上のことにつきましては、私は三森社長としばしば懇談いたしておりまするけれども、さような計数的計画をまだ相談をいたしておりません。  後段において、たんだん仕事が進んでまいりますときにおきまして資金の調達が意のごとくできぬという場合においては、緊急の事態の処置として私のほうでめんどうを見るということは、これは申しておりますけれども、金額的にどういうことに近く相なるかということは、まだ具体的に話し合っておりません。
  228. 春日一幸

    ○春日委員 ならば、必要にして十分なる措置をとって協力するということでございますね。
  229. 山際正道

    ○山際参考人 そのとおりでございます。
  230. 春日一幸

    ○春日委員 次は、もう一点でございまするが、増資の抑制についてでございまするが、これは、その抑制をする。ところが一方増資を必要とする企業の側から判断をいたしますると、増資をしようと思ったらとめられたということでございますね。そうすると、資金がなければ困るわけでございます。あるいはこの必要なる資金を欠くことによって、大きなデッドロックに乗り上げる企業なしとは断じがたいと思うのでございます。こういうようなときには、金融機関は当然その合議に参加したものの責任といたしましてこのめんどうを見なければならぬ。すなわち増資にかわるところの金融という形によって問題をカバーせなければ相ならぬと思うのでございます。しかるところ、市中金融機関には資金余力はないと見るべきでございましょう。これが一個の常識でございましょう。そのとき日本銀行はこれについてめんどうを見ないものであるというふうに佐々木君は述べられておるようでございまするが、それでは一体どうなるのでございましょうか。増資はとめられた。銀行は金がない。そうすると、銀行が日銀へ泣きついた。求められた日銀はこれについてめんどうを見ないというようなことであっては、これはわが国の産業を破壊する形になる。その企業を殺害する形になる。これは当然何らかの形でそこに柔軟性があるべきものと考えるのでございまするが、佐々本日銀副総裁の記者発表と相関連いたしまして、この点の事実関係はどういうぐあいにわれわれは理解をすべきか、この点ひとつ明確にお示し願いたい。
  231. 山際正道

    ○山際参考人 ただいま御例示になりました点につきましては、万やむを得ざる資金の不足に対しては日本銀行はめんどうを見るということで佐々木副総裁と話し合っておりますので、おそらく会議の席上でもその趣旨の発言をいたしたことと私は存じておりますので、大体そうなっておると御了承願ってよろしいかと思います。
  232. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますると、増資はできるだけ押えよう、それからその主力銀行はかわって金融のめんどうを見ろ、主力銀行、市銀に余力なきときは、万やむを得ざるときには、日銀かわってそのことに弁ずる、こういうぐあいに理解しておいてよろしいのでございますね。
  233. 山際正道

    ○山際参考人 そのお話のとおりでございます。
  234. 春日一幸

    ○春日委員 私は最後に山際総裁に要望しておきたいのでございまするが、これは午前中も田中大臣に要望いたしました。何といっても経済というものは、あくまでも自由にして公正なる競争の原則というのがわが国の経済の基本憲章でございます。したがいまして、自由にして公正なる活動が何らかの形でチェックされなければならないといたしまするならば、これは憲法の規定からいたしまして法律によらなければならない。法律によらずして国民はその行動や財産に制限を受けることはないのでございます。でございまするから、公共の福祉の名において、すなわちわが国の証券政策として、あるいは産業政策として、この際増資を抑制せなければならないとするならば、そのような問題についてはすべからく一つの法律をつくってこれを国民に向かって協賛を求めてくるのが私は当然のことであろうと思うのでございます。しかるところ、新聞報道によりますると、このような画期的なこと、かってなかったことです、それをあえて断行するのに、日銀の首脳、証券界の首脳、金融機関の首脳、産業界の首脳、それから政府大蔵大臣、こういうような人々、言うならばボスだけが集まって、そこでどこかで話し合って、そうしてそれを新聞で発表して、国民に向かってそれに服従をしいる。こんなことはファッショみたいなものでございますね。私は、民主体制を経済の面においても政治の面においても確保するためには、法律によらずしてこのような基本的な国民の権利を制限するというようなことは好ましいことではないと思うが、総裁の御意見はいかがでございまするか。
  235. 山際正道

    ○山際参考人 過般の増資抑制のお話し合いというものは、法律的にこれを強制するというような立場で論ぜられたものではないのでございます。ただ実際問題といたしまして、増資が行なわれまする場合は事前にやはり金融機関、証券会社その他消化先につきましての十分なる打ち合わせのもとに発行されるのが常でございます。そういう場合において、株式過剰を唱えられておる今日、十分に打ち合わせの上に、その余地なしとすればそれは控えてもらいたいという道義的な話し合いの場を持ちたいということであろうと思うのでございまして、それ以上には出られませんことは、ただいま法律的見解として御指摘のとおりだと思います。
  236. 春日一幸

    ○春日委員 それは御答弁になりません。と申しますることは、Aの銀行にいってだめだったらBの銀行にいって交渉することがございます。Bの銀行にいってだめだったらCの銀行にいって話をするがよろしい、証券会社また同然でございます。ところが、AもBもCも、証券会社のほうにおいても同様にAもBもCも、申し合わせをしてノーということは、これは独占禁止法によって禁止されておりますることですね。こんなことは独禁法が禁止しておることです。みなが協定することによってそういうものをボイコットするというようなことは、これは許されることではございません。不公正取引の最たるものでございます。そういう問題は事実関係としてやること自体が悪いのでございまして、そういうことをやらなければならないならば、現在のこの証券の危局にかんがみてそのような非常手段を暫定的に時限的になされなければならぬとするならば、そのことを国会に向かって協賛を求めてくる、それはやはりとらなければならぬ当然の措置であろうと思うのでございます。事実関係として、銀行にいっても銀行がだめだ、証券会社に行ってもだめだ、だからだめになるのです、というようなことは、すべての銀行が申し合わせをすることであり、すべての証券会社が申し合わせをすることであり、申し合わせをすることによってボイコットすることは独禁法違反です。その独禁法違反の共同謀議にあなたは加担して、心に省みて恥ずるところございませんか。御反省を求めて私の質問を終わります。
  237. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 これにて山際日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  山際総裁には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は、来たる十月二十九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会します。    午後四時三十九分散会