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田中国務大臣 証券市場が不振であるということが高度成長の失敗である、こういうふうに論断をすることは非常に正鵠を得たものではないと
考えております。高度成長、
安定成長を続けていくために必要な資本市場はかくあるべきであるし、
政府は法制的にかくあるべきだし、また行政はかくすべしだとうい前向きの
姿勢でひとつ御理解をいただきたい、こう
考えます。それはなぜこんなになったかということでございますが、こんなになったということがどうにもならない
状態をさすものではありませんけれども、いずれにしても現在のものが理想的な姿ではない、将来の前進に対してここでいろいろな施策を行なうことを適当とする
状態であるということは事実でございます。
それに対して私が率直に二、三申し上げてみたいと思いますのは、一つには戦争に敗れた直後占領軍が財閥解体を行なって持株整理
委員会をつくって、それで相当期間自由市場、資本市場というものを閉ざしておったということがございます。これを戦後急速に証券会社をして大衆にはめ込めろという相当難問題を押しつけたわけであります。この問題は、私はいま非常にはっきりした問題があると思いますが、西ドイツも同じ
状態にあったわけです。そのときに占領軍は西ドイツに何を言ったか。日本に言ったことと同じことをやったわけです。銀行の細分化をやろう、そのときには、証券業務と銀行業務と一緒になっておるものをどうするんだというときに、ドイツは日本と反対の方向をやったわけです。御
承知の、銀行は分割に応じます——銀行はまた占領軍の言いなりじゃないのですから、場合によれば、ドイツ
経済のために必要があればまた合併すればいいので分割には応じます、ただし証券と銀行との業務分離は絶対反対しますということでひどく反対をして、ついに今日のドイツの証券と銀行との協調業務をそのまま存続せしめた。アメリカは逆に、こまかいものはひとつ細分化しようということでアンダーライター業務とディーラー業務は分けてしまう。日本はどうかというと、日本は銀行の分割は困る——財閥から名前は変えますが、銀行業務の分割は困ります、しかし証券には手を出しません、こういう西ドイツと全く逆なアメリカ寄りの
状態をとったわけであります。ですから、銀行は確かに百年に近い育成もありましたが、何とか戦後短い期間に今日の銀行業務が完結をせられたわけです。ところが証券は、そういう
意味でいろいろな戦後の思わざる
状態をしょいながら今日まできたわけであります。でありますが、今日市場から千億とか千五百億とか塩づけにするような
議論がなぜ出てきたかというと、年間三千億の配当を支払っておるわけです。配当の範囲内で増資をするというのがアメリカでもどこでもそうなんですが、日本においては六千億の増資が行なわれておる、こういうことであります。もう一つは、大衆投資家から見ますと、三十四年、五年非常によかった。株さえ持っておれば配当ではない、増資をすることがとにかく先決である、増資さえすればもうかるとか、利回り採算ということを度外視して、株さえ持てば三ヵ月でも五割は上がる、こういう時期が一時期あったわけであります。こういうときに、やはり適切な証券行政も必要であったと思います。私は、こういう場合に手抜かりがあったことは率直に
政府も認めなければならぬと思います。浮かれ歩いたと言うかもしれません。証券業者も年間一社に二千人の卒業生を採用する、またそうしなければ、また全国に支店を設けなければいわゆる証券を
国民大衆と密着せしめられなかったということもあることはあります。いろいろな問題が錯綜して今日の日本の直接資本市場の形成があるわけであります。ドイツでは、先ほど申し上げましたが証券法六十五条によって
金融機関は一切これを扱ってはならないということになっております。銀行のうしろには中央銀行である日本銀行がおりますが、証券はそういう大きな荷物をしょいながら
一体金融はどこからやるのか、場合によれば最終的には銀行を通じまして公社債担保
金融の道が開かれておったというだけであります。日証金の問題がありますが、その
程度の小さい日本の
経済ではなかったわけでありますが、なぜ証券企業のうしろに
金融機関のパイプを必要としなかったか、なぜそういうものと取り組めなかったか、これは指弾せらるべきものがあると思います。私はこういう具体的な事実を並べてきて、お互いがすなおな気持ちで
考え、OECDのかまえで留保はしておりますが、今回のIMFの総会等で、私の市場で日本の外債を出します。それは、出せば売れるでしょう。日本は
一体直接投資をいつ自由化するんですか、先進国のすべての人がそういう
要求をやっておるわけです。ドイツは逆に外貨が集まって、これをドイツ以外に投資をするように促進法律をつくっておりますし、アメリカは逆に利子平衡税法案を通さなければならなかったということもなかなか興味ある問題だと思うのです。これらのまん中にあって、日本の特異な資本市場は国際
経済に対応してどうあるべきかということは、これは当然
考えなければならない問題でありまして、私はその
意味で次期通常
国会には
証券取引法の改正案を
提出、御審議を願いたいということはかねて申し上げておるわけであります。でありますから、目先の問題だけではなく、やはりかかる歴史的な事実も十分解明をしながら、これらの中期
経済、五ヵ年
計画の中で、自己資本比率六一%が現在二三%に落ちておる。
一体これを六一%まで上げる必要があるか、五〇%でいいのか、四〇%でいいのか、せめて四三年には何%であるべきか。オーバーローンやオーバーボローイングの解消をみんなが唱えております。オーバーボローイングの解消、オーバーローンの解消というものが
安定成長率を下げることだけによって片づく問題ではない。
一体この資本に置きかわるものは資本市場の育成であるということをなぜ
議論しないのでありましょう。
税制上措置しようとすれば、それは特異なものに対しての
減税になる。千万人資本参加をしており、公社債を持っておる者がある。ごく一部の投機者を保護するものではないと私は声を大にしてきましたが、なかなか御理解が得られない。こういう問題と勇気を持って取り組むことが、やはり私は日本の将来の直接資本市場の育成であり、そこでおのずから学問的にも実際の上にも、日本にある間接資本と直接資本との総合調和、バランスがとれるものだ、また行政はそのような方向によって進められるべきだという
考え方に立って、各般の施策を行なっていることを御理解いただきたい。